[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
∵ Three dot ∴
102
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:40:56 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
<ヽ;`∀´>「気づいてたんなら忠告くらいしろニダ!!」
('A`)「わり。アイス食えよ」
迎えに来たバンの扉を開き、怒りを込めた第一声に、ドクはチョコチップとラムレーズンのダブルアイスで返答した
傍らにはうっすらと血が染みついたTシャツがビニール袋に詰め込まれているが、青痣や切り傷と言った目立った怪我は見当たらない
安堵するよりも先に、ニダーはストロベリー・アイスを舐める少女に目を向けた。他者の傷を吸い取り、自らの物にする不思議な力を持つディに
<ヽ;`∀´>「お前ッ!!」
('A`)「ちゃんと断った。擦り傷みてーなもんだすぐ治るってな」
<ヽ;`∀´>「っ……悪い。治して貰った僕が言えた立場じゃないニダ」
('A`)「気にし過ぎだ。アイス食えよ。お前らはこっちな」
非人間用に用意していたカップアイスを、それぞれに差し出す
ベチャベチャと品のない音を立てながら貪り食うのを見て、ようやくニダーも冷たい甘みを舌に乗せた
(´・ω・`)「相手は?」
<ヽ`∀´>「ハイン・タカオカって名前の女ニンジャだったニダ」
(´・ω・`)「『クノイチ』か。一度オプションで頼んだことあるわ」
<ヽ;`∀´>「何のオプションかは説明しなくていい。そっちは?」
('A`)「ああ、格闘家を名乗るただのオタクだった」
(´・ω・`)「ただのオタクはコンクリ粉砕しない」
<ヽ;`∀´>「やっぱボロクソにしたニダね……」
103
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:42:41 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「そんで、収穫はあったか?」
シェイクを片手にハンドルを切るショボンに、ニダーは肩をすかせて応える
<ヽ`∀´>「『12シスターズ』。そう名乗ってたニダ」
('A`)「まだ七人残ってんのかよ。もう次は折るぞ」
<ヽ;`∀´>「折んな。そっちは?」
('A`)「憶測に過ぎんが、少数精鋭なんじゃねえかと。それと、やっぱ狙いはビコとゼアだな。ディについては把握してなかった」
('A`)「あー、後、俺の家庭事情とかも掴んでたな。それでイラついてパキョっとやっちまったんだが」
<ヽ;`∀´>「相手さんドン引きしてたニダよ?にしても、昨日の今日でこうも的確に居場所を特定されるのは厄介ニダね。GPSニカ?」
(´・ω・`)「いんや、車を軽く調べてみたがその手のもんは見つからなかった。ドクとも話し合ったんだがよ、これだけ正確ならそんなもんに頼るまでもない探索手段を持ってんのかもしれねえってな」
('A`)「それかもしくは、『こいつらの腹の中』にそれらしき機器が埋め込まれてる、とかな」
( ∵)「ネェエエエエエ!!!!」
( ∴)「ネェエエエエエ!!!!!」
('A`)「ねえってよ」
(´・ω・`)「バケモノ同士意思疎通出来んのか。すげえな、顔が」
('A`)「脱臼ってどんくらい痛いか試すか?」
(´・ω・`)「ま、とにかくコソコソしたってしょうがねえってこったよ」
大きな通りに出ると、アクセルを踏み込む。行き先の案内標識には、『ブンゲー』と記載されていた
ホテルやカジノ場は瞬く間に後ろへと流れていく。元より、一介の学生である彼らには縁の無い場所だ。長居はしていられない
(´^ω^`)「顔上げて胸張って堂々と進もうぜ!!それが奴らにとって一番の煽りにならぁ!!」
『ドクもドクだが、こいつも大概性格がクソだな』。指摘しようか迷ったが、冷えた舌を回すのが煩わしかったので、心の内に留めておいた―――――
104
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:43:56 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
从;'ー'从「はわわ〜、酷い怪我ですぅ〜!!」
新緑色の修道服を着た女の鼻にかかった甘い声に、レモナは小さく舌打ちをした
それを窘めるように、トソンは脇腹を肘で突く。ファンデーションで隠されているが、疲れの色は『目の下』に浮かんでいた
(゚、゚;トソン「たった数人に……などと言えた立場ではありませんが、まさかここまで手酷くしてやられるとは想定外ですね」
从;⁻∀从「面目ねえよ……だけど、あいつら結構『慣れてる連中』だった。ちょっと痛い目見てもらおうとしたらこのザマさ」
|゚ノ ^∀^)「重症なのは、アンタよりヒートの方ね……」
ノハ ⊿ )「……」
自由の利かない右手を抱えながら、一言も話さず俯いたまま動かずにいる
修道女は心配そうにのぞき込むと、掌を合わせて擦り合わせる。すると、摩擦部から徐々に光が溢れ出す
从;'ー'从「はい、これ見て〜」
掌を開くと、光は『球体』となってぼんやりと浮かんでいる。ヒートがそれに目を向けると、酩酊したかのように気が抜けた表情になった
サダコと同じく超能力を持つ彼女は、この球体による『催眠術』を得手としている。ただし人を意のままに操るなどと言った便利なものではなく
意識を朧気にして痛みを感じなくさせる、所謂『麻酔』の効果に限られている
从;'ー'从「入れるよ〜?せぇ〜のぉ〜!!」
間延びした声とは裏腹に、外された手首と肘の間接を一息に繋ぎ治してしまう
彼女の真骨頂は催眠能力ではなく、この類稀なる『治療技術』であった
105
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:45:27 ID:9OubR0lk0
|゚ノ ^∀^)「それでー……女の子と、犬を連れていたって話だけど」
从;゚∀从「ああ、ヒーちゃんは車内に女の子を。俺はニダーって野郎が犬と一緒に歩いてるのを見てる。オメーらからの報告には無かったが、どういう事だ?」
|゚ノ ^∀^)「ウチらもモーテルの室内に上がり込んだワケじゃないからねー。サダコの予知夢にも現れてないみたいだし」
(゚、゚トソン「その点に関しましては、既に調査依頼を出しました。そもそも、サダコは病的なまでの『異形フェチ』。見た目が普通の女の子や犬ならば、歯牙にもかけないでしょう」
从 ゚∀从「当のサっちんはどこにいんだよ?」
|゚ノ ^∀^)「趣味の悪い店でお買い物よ。調査結果は?」
(゚、゚トソン「『ソウサク』にて、警察が女の子と犬をいっしょくたに載せたビラを配布していたそうです。ハイン、此方に見覚えは」
タブレット端末を受け取ったハインは、一目見て力強く頷く
从 ゚∀从「この子だ。アホそうに見えて意外とクレバーな犬だった」
|゚ノ ^∀^)「女の子の方は?」
从 ゚∀从「そっちは直接見ちゃいねえからな……ただ、ヒーちゃんが言うには『目立つ傷跡があった』って話だ」
|゚ノ ^∀^)「傷跡、ねぇ……」
【 (,,゚-゚) 】
ビラに写る少女は、不愛想ではあるがヒートが証言した『目立つ傷跡があった』という特徴とは一致しない
もしも件の三人組が、女の子を誘拐して『傷物』にするような連中であるならば、猶更確保を急がねばならないだろう
しかし、レモナの焦燥とは相反して、彼女たちのリーダーは『別の懸念』に注視していた
(゚、゚トソン「これらの犬は事故を起こした保健所の輸送車から脱走したものらしいのですが、不思議な事に『作業員』は全治半年の重傷を負ったにも関わらず、負傷、もしくは死亡した犬は一匹も見当たらなかったそうです」
从;゚∀从「お、おお……そりゃ喜ばしいけどよ、野良犬だろ?足引きずって逃げたとかじゃねえの?」
(゚、゚トソン「かもしれませんね。所で、ニュースは御覧になりましたか?まだでしたら此方を」
ニュースサイトから事故現場の写真を拡大し、二人の前に差し出す
横転した輸送車が左車線を塞ぎ、長い渋滞を作り出す原因となっている。あわや炎上一歩手前といった悲惨さだ
106
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:46:33 ID:9OubR0lk0
从;゚∀从「お、おお……結構な、アレだな」
(゚、゚トソン「他に思う所は?」
从;゚∀从「え?うーん……」
|゚ノ ^∀^)「左車線」
(゚、゚トソン「ご明察」
答えを聞いてもいまいちピンと来ないハインに『やれやれ』とため息を吐きながら、レモナは説明を始める
|゚ノ ^∀^)「いい?もし対向車が車線を外れて突っ込んできたら、どっちにハンドルを切る?」
从 ゚∀从「そりゃー……右だな」
|゚ノ ^∀^)「そう。歩道があろうとも、反射的に『逆側』にハンドルを切るものなのよ。危機回避の為にね」
从 ゚∀从「でもよ、それなら歩道からの飛び出しもあり得るだろ?」
(゚、゚トソン「ええ、可能性としてはありますでしょう。ただ、ハンドルを『左に切らざるを得ない状況』がもう一つあるんです」
从 ゚∀从「え?わかんない」
|゚ノ;^∀^)「アンタ本当に考えてる?」
从;゚∀从「頭使うのはオメーらの仕事だろォ!?早く教えろよ!!」
(゚、゚トソン「背後からの、襲撃です」
107
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:47:18 ID:9OubR0lk0
(゚、゚トソン「前部座席の間から運転手へと襲い掛かった場合、身体は必ず逆方向へ逃げようとします。その弾みにハンドルを切ったとしてもなんら可笑しな話ではありません」
从;゚∀从「つまり……?」
(゚、゚トソン「車内にいた誰か、もしくは『何か』に襲われた結果、事故に繋がった可能性もあると言う事です」
単なる不注意、あるいは『檻のロックの締め忘れ』で片づけられる事故ではあるが
三人組が捜索中の『犬』を引き連れている事実は、単なる偶然で起こったものでは無いとトソンは確信していた
|゚ノ ^∀^)「ウチらが負う超常保護対象と関りがある存在かもね」
(゚、゚トソン「ええ。捜索願が出されているにも関わらず、警察に届け出ない点も不審です。何にせよ、彼らの目的が達成される前に確保せねばなりません」
从;゚∀从「じゃあこんなとこで油売ってる場合じゃねえだろ!!」
(゚、゚トソン「当然、ちゃんと手は打ってあります。元より、サダコの予知夢で彼らの通過点は既に確認済み」
と、ここでタブレットにメッセージ着信の通知タブが浮かぶ
残りの『12シスターズ』メンバーが、配置に着いたという報告であった
(゚、゚トソン「執拗な追跡と予測不可能の襲撃。疲弊した所で美味しく掻っ攫う……」
手ごたえのある相手に、彼女のもう一つの側面が顔を覗かせる
(^、^トソン「これ則ち、『狩りの基本』ですよ。ハイン」
細く、緩やかな曲線を描いた瞼の奥の瞳は、真夏の太陽すら凍てつかせるような輝きを放つ
ハインは生唾をゴクリと飲み込んだが、付き合いの長いレモナはもう一度溜息を吐いた
|゚ノ ^∀^)「大人しく従っとけば、恐い目に遭わずに済んだものを……」
獲物の三人組に、ほんの僅かな同情を抱きながら――――
108
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:50:09 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
('A`)「作戦変更?」
(´・ω・`)「ああ」
ブンマルを出発してから丸一日が経過。ブンゲーまで残り数十キロ地点のガスステーションにて
ショボンはカフェテリアで購入した朝食のミラノサンドを齧りながら、傍らのドクへと提案した
(´・ω・`)「俺らは『追われてる』立場。だからこそ急いでセブンクロスに向かわなきゃならない。これが当初の予定だったな」
('A`)「まぁ……そうだな」
(´・ω・`)「逆にだぞ?もう先に潰しちまえば後はゆっくり向かってもいいんじゃねえかって思ったんだよ」
('A`)「エンカウントしてからバタバタするより、常に迎撃する心持で居るって事か?」
(´・ω・`)「間違いじゃねえが、もっと具体的な方法だ。『あえて待つ』んだよ」
ドクは顎を擦りながら、ウウムと唸って首を傾げる。攻めに転ずる姿勢は嫌いではないが、ブンマルでは『待ち構えられていた』
この作戦はむしろ彼方が取っている作戦であり、その為の舞台を追われている側の自分たちが用意するのは難しいのではないかと
('A`)「アテはあるのか?」
(´・ω・`)「実家」
('A`)「実家……あー……あ?」
(´・ω・`)「実はもう連絡もしてある」
(;'A`)「いやっ……ちょ、許可取れたのか?」
(´・ω・`)「おいおい誰の親父だと思ってんだ?」
109
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:50:29 ID:9OubR0lk0
_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> (´^ω^`)「頭可笑しいから二つ返事に決まっとるやろがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!」 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
(;'A`)「お前の家系どうなってんの?」
110
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:52:57 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「知っての通り、俺ん家はシタラバでも有数の牧場主。それだけに意味わからん組織も手を出しづらい……」
(´^ω^`)「……んじゃないかな!!知らんけど!!」
(;'A`)「オイオイ……」
(´・ω・`)「いや別に根拠が無いわけじゃねえよ。実際、あいつらは俺らの身元を調べておきながら『家族を人質』にする方法は今の所取っていない」
('A`)「ああ……」
ヒートにしろハインにしろ、モーテルでのやり取りにしろ、彼女達は真正面からビコとゼアを奪いに来ている
家族とは絶縁となったドクは兎も角として、ニダーとショボンに関しては『人質』という方法はある程度の効力は発揮するだろう
そうしないのは、血縁と言えど無関係の者達への配慮か。それとも、彼らが知らぬ内に既に手を回しているのか
少なくとも、ショボンの反応から見るに、後者の可能性は薄いとドクは前向きに捉えることにした
('A`)「確かに……あの女は俺の事を『悪党』呼ばわりした。どちらかと言うと、『義は我に在り』って感じの集団かも知れねえな」
(´・ω・`)「だろ?それに、あの格好も『ヒーロー』を意識してるようにも見える。様式美にこだわりを持っているなら、汚い手は使い辛い」
('A`)「俺が相手した奴も、ニダーが出会ったクノイチとやらも、わざわざ名乗りを挙げてるしな……そう考えると、俺らとんでもなく頭ハッピーセットな組織に追われてんじゃねえか?」
(´・ω・`)「まぁ面白……若干厄介なのは間違いないんだがよ」
('A`)「本音よ」
ミラノサンドを食べ終えたショボンは、包み紙を丸めてくず入れへと投げ入れる
ソースとパンくずを包んだ即席のボールは、『ゴール』の縁に当たって地面へと落ちた
('A`)「はずれ」
(´・ω・`)「Fuck」
('A`)「先に車戻ってるぞ」
(´・ω・`)「あー」
111
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:54:16 ID:9OubR0lk0
ゴミを拾おうと身を屈めた瞬間、くらりと眩暈が襲う。ここ数日の寝不足のツケが回っていた
(;´⁻ω⁻`)「っ……」
『よく食って寝る』。モーテルで発言した自身の言葉が身に沁みる
追手を迎え撃つというこの作戦には、比較的安全な場所で十分な休息を取るという目的も隠されている
刺客を撃退したドクやニダーの実力には信頼を置いている。しかし『疲労』には誰も勝つことが出来ないのだ
(;´・ω・`)「案外、疲れるもんだな……」
ゴミを確実に捨て、眉間を指で揉み解しながら車内へと戻ろうとしたその時
<ぎゃあ!!
<ぐあっ!?
(;´・ω・`)そ「ッ!?」
あちこちで、短い悲鳴が立て続けに響いた
112
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:04:39 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「……」
売店に目を向けると、従業員と利用客がカウンターや地面に平伏し、動いていない
『ここでも待ち伏せされていたか』。ヒーロー気取りの連中とタカを括っていた考えを改める
安否が気がかりだが、この現象の原因を知らぬまま近づくのは危うい
(;´・ω・`)「……ド」
車に戻った友人の名前を呼ぼうとしたが、『コツン』と踵に何かが当たって言葉を詰まらせる
見ると、拳大の色鮮やかな橙色の『ボール』。誰しも口にした事がある果実、『オレンジ』であった
(;´・ω・`)「……」
スーパーマーケットならともかく、ガススタンドに置かれているような物ではない
蹴飛ばすのも気味が悪いので、そっと離れようとしたその時
(;´・ω・`)そ「うおっ!?」
なんの前振りもなく、ショボンの顎を目掛けてオレンジが勢い良く『跳ねた』
身体を引いていたのが幸いして、前髪を掠めただけで済んだものの、まともに食らえばオレンジといえど一撃で卒倒する速度だった
(;´・ω・`)「ふざっ……けんなよ!!B級映画かっての!!」
トマトが襲いかかってくるカルト映画を思い出し、ショボンは車へと一目散に走ろうとするが
(;´・ω・`)「ぐっ……!!」
その通り道を、いくつものオレンジが転がり塞いだ
113
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:05:28 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「ドkうおお!?」
大砲も無く砲弾が、一斉に射出。補給機の影に転がり込んでやり過ごす
盾となった補給機は、ボコボコと鈍い打撃音をたてながら凹んでいく
(;´・ω・`)「ああそうだよな!!不思議が一個あんなら他にも沢山あるだろうよ!!」
ドクが相手した格闘家は『鉄塊拳』。ニダーが追われたニンジャは『身軽さ』を武器にしていた
しかしそれは、才能の有無も関わるだろうが訓練次第では誰でも手に入る代物だ。だからこそ『見誤った』
超常の存在を追い求める者が、『超常の能力』とは無縁と限らないのだから
(;´・ω・`)「『超能力の持ち主』だって……いるだろうさ!!」
売店の窓ガラスが割れ、オレンジが飛来する。頭を抱えながらその場から飛び出す
補給機にまた一つ、新しいクレーターが出来上がる。故障と異常を検知したのか、ガスステーションの看板に備え付けられたパトランプが光った
114
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:06:35 ID:9OubR0lk0
(;'A`)「ショボ……うおッ!?」
(;´・ω・`)そ「くっ……!!」
異変に気付いたドクが助手席から呼びかけてきたが、また別のオレンジが妨害をするように扉に衝突する
丸く凹んだ板金が、その威力を思い知らせる。運転席のニダーがエンジンを掛けて車を寄せようとしたが
(;´・ω・`)「来るなッ!!離れろ!!」
(;'A`)そ「ハァ!?」
ショボンはあえて『拒んだ』
(;´・ω・`)「車がオシャカになったらそこでもう『詰み』だ!!」
(;'A`)「ッ!!」
12シスターズの目的は『ビコとゼアの確保』であり、三人の身柄ではない
つまり『オレンジを操る超能力者』は最低でも足止めさえ達成してしまえば、事を優位に運べるのだ
(;'A`)「チッ……わかった!!とっとと済ませてこい!!」
(;´^ω^`)「おお余裕だぜぶっ殺してやらぁ!!!!!!!」
狙いを読まれた焦りからか、オレンジはUターンする車に目標を変えて弾け跳んだ
リアにいくつもの凹みを作ったが、走行の妨害までには至らず車は走り去る
ガスステーションの敷地外に出た段階で、オレンジは射出を止めて目標を再びショボンへと戻した
(;´・ω・`)「やっべ!!」
補給機から移動し、停まっている車の影に身を隠す。サイドミラーが果汁と共に吹き飛び、床を舞う
(;´・ω・`)「クソ、クソ……フゥー……」
呼吸を整え、動悸を抑え込む。『落ち着け、俺の番が来ただけだ』と自分に言い聞かせ、冷静さを取り戻していく
115
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:07:52 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「フゥー……」
オレンジの猛襲が、嵐が過ぎ去ったように止まる。フロント越しに観察してみると
(´・ω・`)「ん……?」
ラジコンのように不規則な動きで敷地内を転がっている。目標を見失っているようにも見えた
補給機を盾にした時は迷いなく襲ってきた。この『違い』を見極めれば、勝機はある
(´・ω・`)「探知の基準は何だ……?」
頭の中でざっと候補を挙げてみる。『視覚』『聴覚』『触覚』『温度感知』。その中から一つずつ選択肢を絞る
『触覚』。例えば空気の動きに反応するとしたら、無差別な方向へと射出して狙いが定めにくいのではないか?
『温度感知』。高温に反応するとしたら、日光に曝されている地面や車のボンネット。エンジンの方を優先するはず
『聴覚』。的を『話し声』など人間が発するモノに絞れば無い事はない。しかし今しがた走り去る車に向かっていったばかりだ
(´・ω・`)「となればやっぱり……」
『視覚』。それも、ガスステーション内に限られる。操作範囲の限界とも捉えられるが、この敷地内限定で有効な確認手段がある
(´・ω・`)「『監視カメラ』」
補給機を見下す形で設置されたカメラは、何かを探すかのように首を左右させている
ショボンが逃げ込んだ車の影は、偶然にもカメラの視覚外に位置していた
(´・ω・`)「すると……」
カメラの映像を頼りにしているのならば、自ずと敵の居場所は突きとめられる。恐らく売店の中にある『バックヤード』
気絶させた従業員をロッカーにでも放り込んでポテチでも摘まみながら『モニター』を注視しているに違いない
しかし『ミスリード』という可能性も捨てきれない。売店に踏み込めば最後、オレンジの集中砲火を受けてあえなくリタイアなんて事も在り得る
116
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:08:57 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「……」
だがこうも思考の時間を与えられるのも腑に落ちない。死角に逃げ込んだのは向こうにもわかっている筈
車に攻撃を与え続けて表に出ざるを負えない状況を作り出す事も出来るだろう。そうしないのは何故か?『それが出来ない』のは何故か?
(´・ω・`)「『弾数』に限りがある」
サイドミラーを破壊したオレンジは、果肉と果汁を曝け出して爽やかな香りを放ちながら微動だにしない
『球体』の形を保て無くなれば、操作は出来ないのではないだろうか?もしそうなら、彼方も『無駄撃ち』は出来ない
操れるオレンジを全て『撃ち尽くせば』、後に残るのは果物で遊んだ罰当たりな痕跡だけだ
(´・ω・`)「だとすると……俺から動く必要もねえな」
『虎穴に入らずんば云々』という諺があるが、手に入れたい『虎児』も居ないのに突っ込むのは自殺行為に他ならない
元より、焦っているのは『能力者』の方なのだ。こうして膠着している間にも、目的は遠くへと逃げている
コソコソと隠れて様子を窺い続けているよりかは、直接確認してオレンジを叩きこんだ方が手っ取り早い
(´・ω・`)「……」
それに、『補給機』の故障から警備会社、もしくは警察に警報が届いた可能性もある
此方は『襲われている』立場なのだ。その何方かが到着すれば、堂々とその庇護に収まればいい
向こうもすっとぼける事は出来るだろうが、このままFPSのスナイパーのように『芋っていれば』言い逃れも出来なくなる
(´・ω・`)「ハハ。なんだよ、ジッとしてりゃ勝つなんて楽な戦いだぜ」
このまま何事も無く時間が過ぎれば、目論見通りこの戦いはある意味での『不戦勝』を迎える
能力者は連行されるかコッソリと逃げるかの二択を迫られてしまうだろう。当然、向こうもそれを理解している
(´・ω・`)「まぁ……そう上手くはいかねえよな」
売店から聞こえた『ガラスを踏みしめる音』が、淡い期待を打ち砕く
顔こそ見ていないが、しっかりとした足取りから件の能力者だと察した
117
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:10:21 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「……」
「出てこいっぽ」
(´・ω・`)「断る、と言ったら?」
返答の代わりに、背にもたれ掛かる車に『ドン』と強くオレンジが衝突する
(´・ω・`)「おーおー、有無をも言わせねえってか」
ショボンはスマホを取り出し、素早く画面をタップして尻ポケットに収めた
そして両手を上げながら、ゆっくりと車の影から抜け出す。オレンジ襲い掛かってくることは無かったが、代わりに『一つの場所』に集まっていた
(*‘ω‘ *)「……」
(´・ω・`)「ワオ、こいつは眩しいな。太陽が女の形をしたらアンタみたいになるだろうよ」
悪魔的な赤い唇と、刺激的なモカの日焼け肌。ビキニとホットパンツといった刺激的なスタイルに、ショボンは思わず口笛を吹く
半ば本音と欲望を交えた口説き文句に、女は短く刈り上げた髪をサッと掻き上げて受け流した。足下には、二十を超えるオレンジが雛鳥のように寄り添っている
118
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:11:54 ID:9OubR0lk0
(*‘ω‘ *)「悪いけど、ナンパに付き合う暇はないっぽ。大人しく人質になるならば、大怪我は勘弁してやるっぽ」
(´^ω^`)「いーいねぇ〜〜〜〜〜!!!!強引な女は最高に好みだ!!一晩じっくり苛めてくれるなら考えてやっても」
(*‘ω‘ *)「チッ!!」
(;´゚ω゚`)そ「うおおあっぶねえ!!!!!!!!!!!」
股下を通り抜けたオレンジは、料金機に衝突して弾け飛ぶ。当たれば同じように『潰れて』いたに違いない
(#´゚ω゚`)「何しやがんだクソアマァッ!!!!!!!!!!優秀な遺伝子殺す気かオオ!!!!!??????」
(*‘ω‘ *)「フン。ゲスな男を抱く趣味はないっぽ。次は確実に当てる」
(;´・ω・`)「ま、待て待て!!悪かったよ真剣になる!!な、何が望みだ!?金か!?」
(*‘ω‘ *)「知れた事。お前たちが『ビコ』『ゼア』と呼ぶ超常保護対象。並びに、女の子と犬。その身柄っぽ」
(;´・ω・`)「ハァ!?ディとビィもか!?関係ないんじゃねえのか!?」
(*‘ω‘ *)「答える必要はない」
(;´・ω・`)「オイオイ見くびって貰っちゃ困るぜ。俺ァ確かにゲスだが、得体の知れねえ組織に追われているかも知れないガキと犬を『はいそうですか』と渡す程クズ」
(;´゚ω゚`)・'.。゜「ジャゴホォ!?」
119
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:12:54 ID:9OubR0lk0
ショボンの鳩尾に衝突したオレンジは、役目を終えたと言わんばかりに地面を転がる
痛みと呼吸困難により、腹を抱えてその場に蹲る。女は抵抗出来なくなったショボンに近づくと、ブーツの底で頭を踏みにじる
(*‘ω‘ *)「お前の人間性などどうでもいい。ただ一言、『渡す』と言ってお友達を呼び戻せ」
(;´ ω `)「ゲホッ、ゴホッ!!」
(*‘ω‘ *)「それとも、渡せない事情があるのかっぽ?『お兄ちゃん』が、関わっているとか」
(;´ ω `)「ッ!!」
(*‘ω‘ *)「おっと」
『お兄ちゃん』という単語に反応を示したショボンの頭を、警告の意味も込めて更に強く踏みしめる
(*‘ω‘ *)「心当たりがあるようだな。そう、お前の兄には超常保護対象の私的利用疑惑が懸けられているっぽ」
(;´ ω `)「……」
(*‘ω‘ *)「沈黙は肯定と受け取るっぽ。何が目的で、どのような利益に目が眩んで愚行を犯したのかは、『一晩じっくり虐めて』聞き出してやるっぽ」
(;´ ω `)「……」
(*‘ω‘ *)「まぁ、協力次第では手心を加えてやらんでもない。色男のまま日常に戻りたいのなら……」
オレンジが一つ、ショボンの目と鼻の先へと転がる。何の変哲もない果実が、銃口にも似た恐ろしさを放っていた
(*‘ω‘ *)「『奴らを呼び戻せ』」
(;´ ω `)「わかった」
.
120
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:15:19 ID:9OubR0lk0
いとも呆気なく要求に応じ、女は目を丸くさせた。確かにこれまでも我が身可愛さにあっさりと超常保護対象を手放した連中は数多い
しかし、ショボンの一言にはこれまでとは違う、『奥の手』を感じさせる力強さが籠っていた
(*‘ω‘ *)「……何を企んでいるっぽ?」
(;´ ω `)「『シャキン・バーデラス』は贖罪の機会を求めている」
(*;‘ω‘ *)そ「!?」
支離滅裂な返答は、彼女たちが危険視する人物の『核心』に触れる発言だった
女の反応など構わずショボンは話を進めていく
(;´ ω `)「アホの兄貴がアンタらに迷惑を掛けたん事については、弟として心から謝罪する」
(*;‘ω‘ *)「そんっ……なの、どうだっていいっぽ!!贖罪とは一体なんだ!?」
(;´ ω `)「さぁな。知ったこっちゃねえよ。ただ、俺達家族の元に届いたのは、『スリー・ドット』の資料と『必ず送り届けろ』っつー短いメッセージだけ」
(*;‘ω‘ *)「スリー・ドット!?何の、何の話をしている!?」
(;´ ω `)「さぁな。それを追い求めて俺は行動を起こした」
(*;‘ω‘ *)「ッ……ならば猶更、我らが保護すべき存在だっぽ!!」
(;´ ω `)「お前らが悪意の無い団体と証明できるのか?有無を言わさず襲い掛かって来た、お前らが?」
(*;‘ω‘ *)「黙れ!!」
(;´ ω `)「ハハ……ハハハハハ!!」
(*;‘ω‘ *)「何が可笑しい!?」
笑わずにはいられなかった。これだから、女を手玉に取るのはやめられない
それが無様に地べたに這いつくばり、頭まで踏みつけられる屈辱の極みにいるのなら猶更だ。と
121
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:22:35 ID:9OubR0lk0
(;´^ω^`)「奴らを呼び戻せ?言われるまでもねえ。迎えに来てもらわねえと俺は先に進めねえからな」
(*;‘ω‘ *)「この期に及んで、アタイに勝つ気でいると?」
(;´^ω^`)「その通りさミス・オレンジ!!ハンサムの華麗な逆転劇で、物語の中盤を艶やかに彩ってやるよ!!」
(*;‘ω‘ *)「……付き合って、られないっぽ。シャキン・バーデラスについては身体に直接聞くことにする」
目の前のオレンジが、独りでに楕円状に変形した。発射前の『クラウチング』の姿勢に見て取れた
至近距離で弾丸が放たれようというのに、ショボンは尚もヘラヘラとした薄気味悪い笑顔を止めようとはしない
女は不快感と共に不気味さを覚え、自身の能力で手早く片を付けようとし――――
(*; ω *)そ「ッ!?」
ストンと膝を着き、倒れた
(´・ω・`)「いてて……ナイスタイミング」
拘束から逃れられたショボンに手が差し伸べられる。それをしっかりと握り、土ぼこりを払いながら立ち上がる
彼を起こした張本人は、額に浮かんだ汗を拭い、止めていた息を大きく吐く。荒く呼吸を繰り返し、地面に唾を吐いた
(;'A`)「ハァー、ハァー……『走って戻ってこい』なんて、無茶な注文だぜ」
(´^ω^`)「めんごめんご!!!!!!!」
('A`)「置いて行けば良かった」
(´^ω^`)「悪かったってオレンジ食えよ!!」
('A`)「いらねえ……」
ショボンは女と対峙する直前、ドクに『走って戻ってこい』とメッセージを送信していた
自身が残った時点で、女の目的が『確保』から『人質による交渉』に切り替わったのは目に見えていた
そこであえて目立つ抵抗は行わず会話による時間稼ぎを行い、特定のワードを小出しにすることで冷静さを欠かせ
格闘術に優れるドクが背後から忍び寄る隙を作って無力化させる、他力本願の心理戦に打って出たのだ
122
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:23:44 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「いやはや、持つべきもんは友達だなぁオイ」
('A`)「たまたま上手くいったがよ、俺らが遠くに逃げてったらどうするつもりだったんだよ」
(´・ω・`)「『逃げろ』とは、一言も言った覚えねえぞ?」
(;'A`)「良い根性してるぜ……」
当然、信頼が無ければ一か八かの作戦に打って出れない。実際、ショボンの意図を読み取れず遠くまで逃げてしまったかもしれない
だが彼らは直前でこう会話を交わしたのだ。『先に潰してしまえば、後はゆっくり進める』と
(´・ω・`)「どっちにしろ『逃げる』なんて選択肢、最初から頭に無かっただろ」
('A`)「まぁな……」
『叩き潰す』。このスタンスを予め共有していたからこそ、ドクは『逃げる』を良しとはしなかった
('A`)「で、こいつはどうするよ?」
(´・ω・`)「ほっとこうぜ。証人なら幾らでも『寝ている』からな。それに、カメラの映像が残っているなら俺らの正当性は主張できる」
('A`)「ハッ、お優しいこって」
(´・ω・`)「時間があったらガバガバにしてたけどな」
('A`)「何がとは聞かない。サッサとフケるぜ。面倒ごとが増える前にな」
(´・ω・`)「そうだな。急ごうか」
123
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:24:07 ID:9OubR0lk0
足早にガスステーションを去ろうとし、一度だけ振り返る
(* ω *)「」
(´・ω・`)「……良いもん見せて貰ったよ」
夢でも見ていたかのような数分間だったが、腹に残る鈍い痛みは紛れもない現実のもの
初めて目の当たりにした『超能力』は、心躍らせるに相応しい体験だった
(´・ω・`)「じゃあな。太陽の女」
ガスステーションから出ると、早速タバコを取り出して火を着ける。煙を存分に吸い込むと、まだ胸に残る興奮と共に
『オレンジ』のような太陽に目を眩ませながら吐き出したのであった―――――
124
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:25:15 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
ブンゲーには三つの顔がある。一つは『黄金』、一つは『西部劇』、そしてもう一つは『牧場』である
元々は黄金を求める開拓者達の集落であったが、ゴールドラッシュの時代が終わると産業を『映画』にシフトした
当時に雰囲気を色濃く残す街並みは、かの名作『荒野の用心棒』や『ペイルライダー』『許されざる者』と言った数多くの西部劇の舞台セットとして使用された
アメコミ映画が大規模な売り上げを記録する昨今に置いても、西部劇は一定の層に需要がある。全盛期と比べて数は減った物の、撮影は頻繁に行われているという
<ヽ`∀´>「元から帰る気はあったニカ?」
(´・ω・`)「軽く顔出す程度に留めるつもりだったがな。事情が事情だ」
('A`)「クッソ広ぇー……これ全部お前んちの土地か?」
(´^ω^`)「金持ち金持ち!!!!!!!!!!!金持ち最高!!!!!!!!!」
('A`)「じゃあ旅費も出せるしルームシェアしなくても良いとこ住めるだろ」
(´・ω・`)「生活費に関してはバイトで稼げって言われてんだよ。クソだろウチの親」
('A`)「俺みたいにボコって必要経費カツアゲしたらよかったのに」
<ヽ`∀´>「キミらどんな家庭環境で育ったら肉親相手にそこまで非情になれるの?」
その中心街から更に車を走らせること数十分。車外には柵で囲われた牧場が見渡す限り広がっている
馬の群れが並走して駆ける姿を、ディとビィは静かに。ビコとゼアは相変わらず奇怪な鳴き声を上げながら騒がしく眺めていた
('A`)「良いとこだな」
(´・ω・`)「シティボーイにとっちゃな。隣の芝生は青いもんだぜ?」
('A`)「ああ……それでデビューに失敗してそんなんになっちまったのか」
(´・ω・`)「隙あらば俺の人格を攻め立てるのやめろ」
125
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:26:06 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「到着っと。ようこそ我が家へ」
『バーデラスファーム』の看板が掲げられたログハウスは、広大な土地と比べると随分と小ぢんまりとした佇まいだったが
隣接するガレージには財力を誇示するように嫌味ったらしく高級車が並べられ、素朴な家屋とのミスマッチを演出していた
('A`)「あー……」
<ヽ`∀´>「あー……」
(´・ω・`)「何を納得してんのか知らねえが俺だってやめて欲しいよこのクソみてーな展示」
<ドジャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!!!!!!!
(∪^ω^)そ「ワフッ!?」
(#゚;;-゚)そ「!!」
外付けのスピーカーから、耳がキンと鳴るほどの大音量でBGMが流れ出し、車を降りた全員が顔を顰める
<バーデラスバーデラスバーデラスファーム♪肉とか牛乳とかいっぱい作るー♪
<ヽ;`∀´>「何!?怖い!!」
(´・ω・`)「ウチのテーマソング」
<シタラバ市場の食肉、乳製品の約三十パーセントはウチの製品ー♪キミの街のスーパーにも並んでるぜイェイェイウォウォ♪
<フンフーンフンフフーン♪
('A`)「おいうろ覚えじゃねえか」
(´・ω・`)「親父がふざけてんだろ……親父ーーーーーーーーーーー!!!!!」
126
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:26:52 ID:9OubR0lk0
(´^_ゝ^`)「なーーーーーーーーーーーーーーにーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!??????????」ドッドドドドドッカァアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!
ログハウスのドアを蹴飛ばし、マイクスタンドを手に現れたショボンの父親
もとい、バーデラスファーム代表取締役『デミタス・バーデラス』のファーストインプレッションは
('A`)「遺伝か……」
<ヽ`∀´>「遺伝か……」
『間違いなくショボンの親父だわ』であった
127
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:27:47 ID:9OubR0lk0
(´^_ゝ^`)「パパだよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
(´・ω・`)「……」
('A`)「……」
<ヽ`∀´>「……」
(∪^ω^)「フンフンフンフン」
(#゚;;-゚)「……」
( ∵)「ウルサ」
( ∴)「キモ」
(´^_ゝ^`)「……」
冷たい視線に、髪の薄い頭も冷えたのか。マイクスタンドを戸口に立てかけると
(´・_ゝ・`)「ンンッ、待っていたよ。遠い所を遥々とよく来たね」
と、取り繕った
128
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:28:23 ID:9OubR0lk0
('A`)「いや、もう手遅れっす」
<ヽ`∀´>「ドン引きです」
(´・_ゝ・`)「目上の億万長者に失礼とは思わんのか?」
('A`)「やっぱクズは遺伝だったんすね!!」
<ヽ`∀´>「子が子なら親も親ニダ!!」
(´・_ゝ・`)「オイどうなってんだショボンオラ。これが初対面の友人の父親に対する態度か?」
(´・ω・`)「先ず気づいて欲しいんだが、テメーの奇行で俺にまで飛び火してんだよ」
('A`)「いや日頃の行いだろ」
<ヽ`∀´>「父親の所為にすんな」
129
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:29:20 ID:9OubR0lk0
(´^_ゝ^`)「うーーーーーーーーん父として恥ずかしい生き方をしてるようで何よりだ!!人を殺しても俺はびた一文保釈金を払わんからな!!」
(´・ω・`)「そいつはどーも。上がるぜ。一晩世話になる」
(´^_ゝ^`)「お前んちだ世話もクソもあるか。さ、キミらも上がってくれ。お茶を淹れよう」
( ∵)「ゴエエエエエエエエエエエ!!!!!!」
( ∴)「ゴエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!」
(´^_ゝ^`)「うんうんゴエゴエ!!!!!!!!何その生き物こっわ」
家内に通されて最初に彼らを迎えたのは数多くのムービースターとのツーショットとサインが入った額縁の数々
ドクとニダーは思わず立ち止まり、ポカンと口を開けて見上げていると、デミタスがグラスに並々と注がれた琥珀色の液体を二人に差し出した
(´^_ゝ^`)「ウェルカムドリンクだ!!!!!!!!!!」
<ヽ;`∀´>「あ、ああ……お気持ちだけ」
('A`)「どうも」
ドクは一息で呑み切ると、ニダーの分も立て続けに流し込む
空になったグラスを突き返されたデミタスは、余りに機械的で躊躇いの無い飲酒に目を丸くした
('A`)「お茶は?」
(;´^_ゝ^`)「お、おお……まだ飲むの?」
('A`)「いや別にウィスキーでも構わないけど」
<ヽ`∀´>「所で……あー、バーデラスさん」
(´^_ゝ^`)「水臭ぇなデミーで良いよ!!!!!!!!」
<ヽ;`∀´>「あ、いや、そこまで親しくなるつもりはないんで遠慮しときます」
(´^_ゝ^`)「ショボンーーーーーーーーーーー!!!!!こいつぶん殴っていいかーーーーーーーーー!!!!!????」
<親父が悪い
(´・_ゝ・`)「お前ら俺が嫌いか?」
130
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:30:08 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「その、従業員の方はいらっしゃらないのですか?見た所、ここは事務所も兼ねているように思えるのですが」
(´・_ゝ・`)「ああ、今日はもう全員上がって貰った」
('A`)「牧場ってそれで回んの?」
(´・_ゝ・`)「回んねえけど……?まぁお産の畜生もいないし……」
('A`)「畜生て」
<ヽ;`∀´>「畜産農家が吐いていい台詞じゃないニダ」
(´・_ゝ・`)「いや、喧嘩すんだろ?ここで」
二人は同時に応えようとして、言葉に詰まる。話が早すぎて、頭が着いて行かなかったのだ
そんな彼らを興味深そうに眺めたデミタスは、ポンと背中を押して奥へと案内する
(´・_ゝ・`)「ちゃんとワケは話すよ。その上で、キミ達を巻き込んだ事を謝罪させてくれ」
('A`)「……」
<ヽ`∀´>「いえ、そんな……」
(´^_ゝ^`)「え!!!!!??????許すって!!!!!!!?????」
<ヽ`∀´>「そういう所」
リビングに通されると、既にショボンは暖炉の前のソファーに深々と座って寛いでいる
ディとビコ、ゼアはテーブルでドーナツとミルクを。ビィはその下でジャーキーを楽しんでいた
(´⁻ω⁻`)「ハァー……」
(´・_ゝ・`)「キミらも自由にしてくれ。紅茶で構わないかな?」
<ヽ`∀´>「はい」
(´^_ゝ^`)「オーケー。とびきり美味いお茶を振舞おう」
131
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:32:25 ID:9OubR0lk0
遅れて来た二人も、テーブルの空いた席に腰を下ろす。ドクはビコとゼアが溢したドーナツのカスを摘まみ上げ、空いた皿に落とした
手持無沙汰になったニダーは、どうにも落ち着けずリビングを見渡す。すると、暖炉の上にある写真立てが目に入った
【 (´^ω^`)凸 凸(`^ω^´) 】
<ヽ;`∀´>「……」
カメラに向かって中指を立てる子供の頃のショボンと、彼によく似た年上の少年の姿
家族写真にしては少々刺激的な『ピースサイン』も気になったが、恐らくショボンの『兄』らしき人物に話の焦点を当てることにした
<ヽ`∀´>「お兄さんニカ?」
(´⁻ω・`)「あ?まぁな……もう三年くらい行方不明だが」
('A`)「……何をしでかしたんだ?」
(´⁻ω・`)「……」
ショボンは灰皿を引き寄せると、タバコを取り出して一服を始める
天井に紫煙がうっすらと立ち込め、鼻腔がキュッとしまるような臭いが漂い始めた頃、ようやく語り始めた
132
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:33:15 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「まぁ……兄貴個人が起こした問題じゃ、ねぇとは思うんだけどよ……兄貴が通ってた大学では、ちょっとした学生運動が盛んでな。所謂、アクティビズムって奴だ」
('A`)「要望通すために絶食するバカが集まるサークルか。もしくは、使命感で頭キラキラ股ユルユルの女との乱交スポットか」
(´・ω・`)「多分、どっちにも属するんだろうよ。で、当時付き合ってた彼女がそいつにズップシハマっちまってな」
(´・_ゝ・`)「表立っては言えなかったけど、正直クソアマだったねアリャ。はい、お茶だよ」
<ヽ;`∀´>「あ、ありがとうございます……それで?」
(´・_ゝ・`)「その頃、連中の矛先はブンゲーに向けられていてね。ゴールドラッシュ時代、シタラバ先住民を迫害して得た土地と財産を彼らに返せとSNSや動画サイトで抗議を行っていた」
(´・ω・`)「遥々ウチの牧場で大騒ぎするバカもいてな。親父も俺もアレだから何回かぶっ殺そうとしたんだが、その度に兄貴が仲裁に入った」
('A`)「堪ったもんじゃねえな……」
<ヽ`∀´>「ですが、迫害に関しての謝罪と賠償は既に済んでいる筈です。現存するシタラバ先住民が更なる要求をしただなんて話も聞きませんし」
(´・_ゝ・`)「あの手の活動は大概が自己陶酔か利権絡みだ。クラブで酒飲んで騒いでるのと殆ど変わらないよ」
<ヽ;`∀´>「偏見入ってません?」
('A`)「で……その頭ハッピーセットサークルと『俺らを巻き込んだ』って話はどう関係してんだよ」
133
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:35:06 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「ある日、兄貴から連絡があった。『セブンクロスの先住民と話を付けに行った彼女含むメンバーが帰ってこない』と」
('A`)「やったじゃん」
<ヽ;`∀´>「不謹慎ニダ!!」
(´・ω・`)「いや、俺らもドクと同じ返事をした。辟易してたからな。今夜からは枕を高くして寝れると喜んだ」
(´^_ゝ^`)「その日の酒は格別だったよ!!!!!」
<ヽ;`∀´>「ほんっとクズ親子だなアンタら!!!!!」
(´・ω・`)「まぁ、それで兄貴が納得するわけがなくてな。俺らの制止も聞かず、単身セブンクロスに乗り込んだ。それがちょうど三年前だ」
ショボンはここまで語り終えると、タバコを揉み消し、口の中を紅茶で洗い流す
('A`)「訊くまでも無いが……警察には?」
(´・_ゝ・`)「勿論、捜索を出して貰ったさ。僕も私財を投じて隊を送った。だけど、今日に到るまで一向に手がかりは掴めなかった」
<ヽ`∀´>「だけど、それだけ大規模な行方不明者が出ているならニュースになって然るべき事件です。隠蔽が?」
(´・_ゝ・`)「ああ、あったんだろうね。大学は元より、メンバーの家族、友人ですら口を噤み始めた。まるで最初から居なかったかのように振舞った」
(´・ω・`)「連中と兄貴の相違点を上げるとするならば、兄貴はグループに在籍しておらず、セブンクロスにも『後続』という形で出向いた。だから、俺ら家族だけはずっと納得いかないままだった」
('A`)「……それが、『スリー・ドット』に関連していると?」
(´⁻ω⁻`)「ああ……白状しよう。あの資料は大学からパクって来たもんじゃねえ。兄貴から送られたものだ」
いつも騒がしいビコとゼアが空気を読むほど、室内はシンと静まり返る
口火を切ったのは、意外にも
<ヽ`∀´>「あ、やっぱそうニカ?」
あっけらかんと返事をしたニダーだった
134
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:36:34 ID:9OubR0lk0
(´・_ゝ・`)「え?」
<ヽ`∀´>「え?」
('A`)「どういう事だニダー?」
<ヽ`∀´>「え?いやだって資料庫から持ち出したって言ってたけど、どこにも大学の印が押されてなかったし、資料にしちゃ文章がちょっと稚拙だったし」
(´・ω・`)「気づいてたのかよ」
<ヽ`∀´>「嘘が下手ニダ。それと、出発直後のキミはどこか『セブンクロスに着きたくなさそうな』雰囲気があった。話を持ち掛けて来たにも関わらず、『観光がてらのんびり行こう』だなんて口走ったり」
(;´⁻ω・`)「あー……しくったな。女は兎も角、野郎をだまくらかすスキルは備わって無かった」
<ヽ`∀´>「やかましいわ」
135
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:37:38 ID:9OubR0lk0
('A`)「それで……お前ら家族は、兄貴の足取りを掴むために俺らを巻き込んだと?」
(´・ω・`)「半分正解で、半分間違いだ」
('A`)「そうか」
返事は軽かったが、ドクの持つマグカップの取っ手がビキリと音を立てて捥ぎ取れる
思わず『高いんだぞ!!!!!!!』と文句を言おうとしたデミタスも、無言の圧力に口を閉ざす他なかった
(´・ω・`)「確かに仲間は欲しかったさ。親父に頼めば傭兵だって用意してくれた。お前らの実力を頼りにしてたのも確かだ。打算が無いと言えば嘘になる。だがな……」
ショボンはもう一度、噛み締めるように『だがな』を繰り返すと、いつもの腹立たしい笑顔を浮かべた
(´^ω^`)「何よりも、面白ぇ連中と一緒に危ねぇ橋を渡りたかった。それが一番の理由だ」
理由としては傍若無人で自分勝手であり、事実この数日間で何回も襲われている
ハッキリ言って納得出来る理由ではなく、信頼関係の崩壊も在り得る態度に、デミタスは白目を剥いた
(´ ゚_ゝ゚ `)「ピィ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(#゚;;-゚)そ ビクッ
しかし、人を小馬鹿にしたような理由を口走ったショボンに対し、当の二人は
('∀`)「はは……はっはっはっはっはっはっは!!!!!!!!」
<ヽ*`∀´>「はははははははははは!!!!!!!!」
大いに『笑った』
136
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:38:50 ID:9OubR0lk0
(´^ω^`)「文句あるか!?ええ!?」
('∀`)「いいや、無いね!!一言でも謝罪すりゃぶん殴ってた所さ!!!!」
<ヽ*`∀´>「それでこそ、僕らの良く知る『ショボン・バーデラス』ニダ!!!!」
(´^ω^`)「だっるぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!?????」
遠くなったデミタスの意識は、三人の若者の馬鹿笑いによって引き戻される
薄れていく驚愕と、家族の問題に巻き込んでしまった無関係の友人二人に対する罪の意識は、安心感と納得に変わっていった
(´・_ゝ・`)「……」
最初から、息子にはこの展開が見えていた。だからこそ、正直に『スリー・ドット』の出先について打ち明けたのだろう
人との繋がりとは、恐らく誰もが一生を懸けても解けない謎だ。女によって行方不明になった兄もいれば
(´^ω^`)「だーーーーーーーーーーーーーーーーーっはっはっはっはっは!!!!!!!!」
信頼と友情を築き上げた仲間と共に、その行方を追う弟もいる
(´^_ゝ^`)「ハハ……」
これまで息子たちに優劣を着けた事は一度も無かったが、この一点だけはショボンに軍配が上がった
弟が得た、『友』という心強い武器は、兄には得られなかったモノだったからだ
(´^_ゝ^`)「……」
しかしこうも考える。もしもシャキンが生きていて、何か大きな存在に必死に抗っている最中ならば
願わくば、あの気持ちの良い若者二人と同等の仲間と共に在って欲しい。とも―――――
137
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:39:36 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
(∪^ω^)「ゲフゥ」
ああ、これはいけない。鼻と舌が贅沢を覚えてしまった
しかし誰が抗えると言うのだろうが。目の前に差し出された、肉汁と脂滴る極上のステーキに!!
( ∵)「ゴエ」
( ∴)「エ」
私と同じく、腹を存分に膨らませた彼らも、その余韻を噛み締めている
無理もない。あの『デミタス』とか言う男、素行はともかく美味い肉を振舞うだけの甲斐性はあるらしい
この誇り高い私が思わず『この家の犬になっちゃうワン』と媚を売る所だ。まぁ?向こうがその気ならやぶさかじゃないけど??????
゚
(#‐;; -)゚ 「……」
(´・ω・`)「おっと、お姫様はオネムと来たか。ベッドに運んでくる」
('A`)「死ねよ……」
(´・ω・`)「なんで今のでアウトになるんだよお前が死ね」
ディが寝床に運ばれていく。まぁ奴もこの期に及んで交尾なんて馬鹿はしでかさないだろう
私も用意されたフワフワクッションで一眠りしよう。飢えと凍えの心配なく眠れるこの贅沢を享受しない手は無い
138
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:40:20 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「フスッ」
( ∴)「ゴエエエ」
何だよ寝ようとしてたのにうるせえなボケナス
( ∴)「ゴエ!!!!!」
(∪^ω^)「?」
ああ、なるほど。何処からかパクってきた『頭のリボン』を自慢しにきたのか
彼らにオスメスの概念があるのか疑問だが、人のメスは交尾の為に着飾るのが好きとも聞く
ええと確か……『オシャレ』と言ったか。ビコが一向に興味を示さないのを見るに、きっとゼアは『彼女』に当たるのだろう
(∪^ω^)「わんお」
( ∴)「ゴエ!!!!!」
『見分けが付きやすくなって良かったじゃないか』と伝えると、満足したのかビコの下へ帰っていく。やれやれ、ようやく眠れる
(∪^ω^)「……」
いや、なんだか催してきたな。先に出すもん出しに行くか
139
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:40:57 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「わんお」
<ヽ`∀´>「ん、どう……トイレニカ?」
おっ、中々わかるようになってきたじゃないか下僕一号
この家のドアは小柄な私には開けられないからな。こういう時こそ役に立って貰わねば
(´・ω・`)「お、どこ行くんだ?」
<ヽ`∀´>「彼のお手洗いついでに、外の空気を吸いに」
(´・ω・`)「ああ……付き合っても?」
<ヽ`∀´>「それはビィに訊いて欲しいニダ」
(∪^ω^)「わんお」
なんだこいつら雁首揃えて。そんなに私の排泄が見たいのか
変態の性癖に付き合わされて堪るか。来るんじゃねえ死ね
(´・ω・`)「良いってさ」
やっぱ人間ってクソだわ
140
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:42:15 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「はい、どうぞ」
(∪^ω^)「わんわんお」
着いてきたら半殺しにしてやろうと思ったが、奴らは棲み処の前に置かれてある椅子に腰を下ろした
変態趣味は無いようでホッとしたが、これはこれで逆になんか腹が立つ。やっぱり人間はクソ
(∪^ω^)「フヌッ……」
私はウンコした
<ヽ`∀´>「糞の始末は?」
(´・ω・`)「牧場だぜ?」
<ヽ`∀´>「ああ、そう……」
用を足して戻ったが、どうやらこいつらはしばらく戻る気は無いらしい。ショボンはあの臭い棒に火を点した
私としてはサッサとあのフカフカクッションに沈み込みたかったが……ふむ、だがこの場所の匂いと涼しさはまた心地良い
今まで『自動車』の屁と人間の喧しさが支配する環境に身を置いていたのだ。静寂を楽しむのもまた一興だろう
141
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:42:46 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「……」
(´・ω・`)「フゥー……」
(∪^ω^)「……」
<ヽ`∀´>「……セブンクロスに」
(´・ω・`)「ん?」
<ヽ`∀´>「セブンクロスに向かうのが、今でも怖いニカ?」
(´・ω・`)「……そうだな」
ショボンが吐いた煙が、部屋と月の灯りに照らされ、夜空へと消えていく
あの臭いだけはどうにも気に食わないが、見る分には面白いものだ
(´・ω・`)「やっぱ……確証ってもんは掴めなかったからな。家から遠く離れた大学で、資料を基に一から調べ上げても、得られたのは仮説だけだ」
<ヽ`∀´>「……」
(´・ω・`)「もしかすると、資料は兄貴からのもんじゃなくて只の悪戯だったかもしれないし、セブンクロスに辿り着いたとしても、そこには何も無いかもしれない」
(´・ω・`)「だから……言い出せなかった。純粋に冒険を望んでいるお前らに、無粋な問題を背負わせちまうんじゃねえかってな。だがよ」
142
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:44:11 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「このワン公がモーテルを訪れて……ディを介抱して、ビコとゼアが資料を引っ張り出したあの時、俺は神と兄貴に感謝したよ」
(´・ω・`)「俺は自信を持って、『未知』へ挑戦してもいいと言って貰えた気がした。あの瞬間から怖さは熱意へと変わったし、こうしてお前らにも打ち明けることが出来た」
<ヽ`∀´>「ハハ、とんだお調子者ニダ」
(´^ω^`)「勘違いしてもらっちゃ困るが、俺だって冒険はしたかったんだぜ?こんな事言っちゃアレだが、兄貴が行方不明になったお陰とも言える」
<ヽ`∀´>「いやそれは人として終わってる」
(∪^ω^)「わんお」
何を今更
(´^ω^`)「ダハハハハ!!だから俺ァ、無事に兄貴と再会したら面と向かってこう言ってやるんだよ!!『楽しい冒険だった』ってな!!」
<ヽ`∀´>「そりゃ……ゴキゲンなエンディングになりそうニダ」
(∪^ω^)「……」
『冒険』か。そう言えば、私もこいつらと同行してから、街中のゴミ溜めで暮らしていた時とは違う……なんというか、食事や交尾以外の『快感』を得られている気がする
だからこそだろうか。人間嫌いの私がここまで着いてこれたのは。ああ、ダメだダメだ。静寂なんてやはり性に合わない。余計な事まで考えてしまう
143
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:44:31 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「わんお!!」
(´・ω・`)「おっと……少し肌寒くなってきた。今日は早めに休もう。見張りなら親父がしてくれる」
<ヽ`∀´>「そうニダね。久々のベッドニダ」
腰を上げた連中に続いて、私も家の中へ戻ろうとした
(∪^ω^)そ「ッ!!」
<ヽ`∀´>「どうしたニカ?」
(∪^ω^)「……」
『いる』な。だが、まだ仕掛ける気は無いらしい。やれやれ、熟睡できると思ったのだがな
(∪^ω^)「フスッ」
今夜は私も、少々気張らねばならないみたいだ――――
144
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:46:35 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
(;´・_ゝ・`)「……」
デミタス・バーデラスはこれまで三度の命の危機を経験している
一つは幼少の頃、馬の尻の穴を火掻き棒で突いたら後ろ足で腹を強く蹴られた時
二つは学生時代、四股した『恋人たち』に拉致監禁され、睾丸を切り取られそうになった時
三つはショボンが生まれて間もない頃、妻が財産目当てに殺し屋を送り付けた時
いずれも持ち前の強運と根性で乗り切ってきたが、今夜ばかりは――――
(;´・_ゝ・`)「ふぇえ……こわぃぃ……」
『ボンテージファッション』のメガネ美女と、ゴシックロリータ姿の少女二人に詰め寄られている今夜ばかりは
大牧場を経営する代表取締役という権力と財力を以てしても、その余りの現実味の無さに『いよいよ年貢の納め時』と観念する他なかった
⌒*リ´・-・リ「動くななの」
*(‘‘)*「フリーズですの」
音も無く現れた侵入者に対し、せめてもの抵抗として向けようとした散弾銃は飴細工のように折り曲げられ今やただのオブジェクトとしてしか機能しない
それをいとも容易く行った二人の少女は、身の丈ほどもある『斧』と『剣』を、処刑人よろしくデミタスの喉元へと沿わせていた
(´;^_ゝ^`)「め、滅相もございませんでゲス!!お、お金なら用意いたしますでゲス!!」
ハハ ロ -ロ)ハ「ン〜……」
ボンテージファッションの女は、『プレイには適さない』一本鞭の柄先で頬をなぞる
ハハ ロ -ロ)ハ「ミスター・バーデラス。やり手の経営者と聞いていましたガ、駆け引きは上手じゃないようですネ」
(´;^_ゝ^`)「ゲヘヘヘ、面目ないでゲスゥ」
ハハ ロ -ロ)ハ「シッ!!」
145
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:47:20 ID:9OubR0lk0
鞭がしなり、デミタスは思わず目を瞑る。しかし、音速を超える事で生じる破裂音は聞こえず
(´;^_ゝ・`)「な、なにぃ〜?」
ハハ ロ -ロ)ハ「ふむ……『犬の毛』」
『巻き取られた』であろうクッションが、彼女の手に収まっていた
ハハ ロ -ロ)ハ「それと乾ききってない涎の跡ガ、彼らがここに訪れていたという揺ぎ無き証拠でス」
(´;^_ゝ^`)「いやぁ〜〜〜〜〜〜〜?????何のことかさっぱりでゲスなぁ〜〜〜〜〜〜〜??????」
ハハ ロ -ロ)ハ「どこに隠しましたカ?」
(´;^_ゝ^`)「ゥチわかんなぃ。マヂムリ。通報しょ……」
ハハ ロ -ロ)ハ「ヘリ」
*(‘‘)*「はいですのオ゙ッッッラ゙ァ!!!!!!!!」
野太い声と共に振り落とされた斧は、テーブルと床を粉砕。高級家具がもはや薪にしか役立たない木片と化した
(´;^_ゝ^`)「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」
ハハ ロ -ロ)ハ「我々の手に掛かれば、貴方の住まいをキャンプファイアーの組み木にしてしまうなどオチャンコサイライなのでス」
⌒*リ´・-・リ「このあばら家ぶっ壊して隅から隅まで探し出してやるの」
*(‘‘)*「それが終わったらガレージの車ですの」
(´;^_ゝ^`)「あひぃご勘弁くださいでゲス〜〜〜〜〜〜〜!!!!!あれ壊されるくらいなら息子の命の方が安いんでゲス〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
ハハ ロ -ロ)ハ「Good!!では居場所を教えてくださイ。ミスター・バーデラス。彼らの車も表に停まっていル。この家から出ていないのはわかっているのでス」
146
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:50:03 ID:9OubR0lk0
(´;^_ゝ^`)「アッアッアッアッ……あの、多分何か勘違いされていらっしゃると思うんでゲスがね……」
ハハ ロ -ロ)ハ「What's?」
(´;^_ゝ^`)「恐らく貴女方、下調べも無しに時間帯だけを狙って侵入して来た輩でゲス?だからちょいとレクチャーをさせて欲しいのでゲス」
⌒*リ´・-・リ「腕行くの」
*(‘‘)*「はいですの」
(´;^_ゝ^`)そ「ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーォヘイヘイヘイストップストップ!!すぐ!!すぐ教えるから!!」
ハハ ロ -ロ)ハ「Hurry up!!」
(´;^_ゝ^`)「急いだ方がいいのはアンタらの方だぜボンテージ・クイーン。ゴールドラッシュ時代、我が一族は金を求める連中の『食』を支えるために牧場を立ち上げた」
ハハ ロ -ロ)ハ「?」
(´;^_ゝ^`)「だがそれを良しとしない連中も多くてな。ならず者から命を狙われるなんてしょっちゅうよ。だからこそ牧場を、ひいては命を守るために策と『逃げ道』を作った」
『ヒヒン』と馬が上げた嘶きを聞いて、ボンテージは舌打ちをする
表に停めっぱなしだったミニバンはブラフ。彼らは何らかの『抜け道』からコッソリと逃げ出し、『牧場ならでは』の移動手段に切り替えたのだと気づいたのだ
(´^_ゝ^`)「さぁどうする?ここでおじさんと遊んでても良いが、その間にもあいつらは先に進んでいくぜ?」
ハハ;ロ -ロ)ハ「Hory Shit!!出し抜かれましタ!!追いますヨ!!リリ、ヘリ!!」
⌒*リ´・-・リ「ハロー、オッサンの息の根は止めないの?」
*(‘‘)*「ミンチですの」
ハハ;ロ -ロ)ハ「そんなノ後で幾らでもできまス!!せっかく奴らが足を止めたのに逃がしたとあってハ、我ら『サディスティック・スリー』の名折れでス!!」
(´^_ゝ^`)「だっさ」
ハハ#ロ -ロ)ハ「フゥン!!」
(´ ゚_ゝ゚ `)そ「あ゙っっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!」
今度こそ鞭の先端は音速を超え、破裂音と共にデミタスの頬がパックリと裂けた
147
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:51:17 ID:9OubR0lk0
(´ ゚_ゝ゚ `)「あっ……が……」
ハハ#ロ -ロ)ハ「食わせ者ガ!!貴様は後でじっくり可愛がってやル!!」
(´ ゚_ゝ゚ `)「ぐぅ……!!」
ハハ#ロ -ロ)ハ「追うゾ!!」
⌒*リ´・-・リ「はいなの!!」
*(‘‘)*「了解ですの!!」
デミタスの拘束を解いた三人は慌ただしく部屋を出た
残されたデミタスは、ボタボタと溢れ出す血を、カーテンで抑えて止血を施し
(´;^_ゝ^`)「ハ、ハハ……クソガキ共が、よくもこの俺を出汁に使いやがって……」
喉の奥から、『心底面白そうに』クツクツと笑った
(´;^_ゝ^`)「存分に暴れやがれ『冒険者』共。ここは俺の牧場、俺の街だ……一つ、盛り上げてやるぜ」
血で染まる指でPCを立ち上げ、ミュージックアプリをクリックする
選んだ選曲は、映画『ボヘミアン・ラプソティ』で再ブームメント巻き起こした『Queen』の名曲
♪Queen - Don't Stop Me Now
https://www.youtube.com/watch?v=HgzGwKwLmgM
外のスピーカーから、夜明け前の牧場へと響き渡った―――――
148
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:52:15 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
(´・ω・`)「チャイニーの軍師曰く、『兵は詭道なり』」
('A`)「なんだいきなり」
<ヽ`∀´>「今更賢いアピールしても遅いニダ」
(´・ω・`)「話は最後まで聞けウンコマン共。『戦争に置ける勝利の決め手は、敵をだまし、欺き、敵の兵力を疲弊させる事』だ。この家で奴らを罠に掛ける」
<ヽ`∀´>「閉じ込める気ニカ?」
(´・ω・`)「いいや、『焦らせる』んだ。今までの傾向から見て、奴らは俺らの動向をなんらかの形で予測している。だが……」
('A`)「正確じゃない」
(´・ω・`)「ああ。物理的な罠を仕掛けず人員を送り込んでいるのは恐らくこれが理由だ。正確じゃないからこそ、人の目で確かめる必要があると見た」
('A`)「付け入る隙、だな。だが奴らの襲撃タイミングに合わせられるか?」
<ヽ`∀´>「出来なくは無いニダ。こっちには優秀な見張りがいるニダ」
( ∵)b「ゴエエエエエエエエエ!!!!!」
( ∴)b「ゴエエエエエエエエエエエ!!!!!」
(´・ω・`)「本当に大丈夫かな」※Aqua Timez『虹』
<ヽ;`∀´>「ま、まぁ……ニンジャの時もオレンジの時も結構ギリギリでの警告だったけど……目安にはなるニダ」
('A`)「どう出し抜く?」
(´・ω・`)「地下室から牛舎まで抜けられる抜け道があってな。そこから抜け出して牧場から逃げる『振り』をする。出来る限り目立つようにな」
(´・ω・`)「あと親父とか使う」
(´・_ゝ・`)「えっ?」
(´^ω^`)「パパお願ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(´^_ゝ^`)「しょうがねえなクソガキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!一肌脱いじゃうぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!」
('A`)「仲いいなこいつら」
<ヽ`∀´>「仲……いいニカ?これ」
149
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:52:35 ID:9OubR0lk0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
('A`) と、思い返すドク・オーツだった
150
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:53:37 ID:9OubR0lk0
('A`)「ドンピシャだな」
ドクの独り言は、ゴキゲンなピアノとフレディ・マーキュリーの力強い歌声にかき消される
ログハウスの屋根裏の窓からポーチの屋根へと抜け出した彼は、出入り口から『目標』が飛び出すのを待ち構えた
鋭い鞭の音とデミタスの呻き声が気がかりだったが、先ずは脅威の排除を優先する
('A`)「さて」
侵入してきた時とは違い、慌ただしく扉が開く音が響く。ポーチの屋根を軽く蹴って飛び降り、頭上から奇襲を仕掛けた
ハハ#ロ -ロ)ハ「ッ!!!!!!見くびるナァ!!!!!!!」
('A`)そ「お゛!? お゛ぉ゛!?」
思わず下痢便が漏れ出しそうな声を上げたドクは、足首に巻き付いた鞭に振り回され――――
(;'A`)「っととぉ!!」
肩から地面へと落下。受け身を取って衝撃を和らげた
(;'A`)「なんだよ読まれてたか」
ハハ#ロ -ロ)ハ「豚の気配を探るなド、クイーンたるワタシにとっては呼吸に等しイ!!」
('A`)「そうか。デミのオッサンに豚の飼育量を増やして貰おう」
ハハ#ロ -ロ)ハ「やレ!!リリ!!」
⌒*リ´・-・リ「任せろなの!!どっっっっっっずごぉおおおおおおい゙!!!!!!!!!!!!!!」
(;'A`)そ「声野太っ!?」
振り落とされた一刀を、身を捩って躱す。背中に伝わる剣圧と衝撃は、小柄な少女に放てるものでは無かった
(;'A`)「っぶねえ殺す気か!?」
⌒*リ´・-・リ「その通りなの!!」
(;'A`)「ああそうだよなテメーらは話の通じる連中じゃなかった!!」
151
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:54:44 ID:9OubR0lk0
ハハ#ロ -ロ)ハ「その醜イ……マジ醜イ豚の相手は任せましタ!!私は車を用意しまス!!ヘリは馬を見失わないよう二!!」
*(;‘‘)*そ「しんどい方をヘリに任すなですの!!でもまぁやったるですの!!」
('A`)「おーおー慌てとる慌てとる」
⌒*リ´・-・リ「ブサイクは死ぬの!!!!!!」
(;'A`)そ「うおっとぉ!?」
足の鞭が解かれたドクは、後転して剣を躱す。素早く立ち直ると、構えを取った
('A`)「『兵は詭道なり』……か。教養は身を助けるな」
⌒*リ´・-・リ「何をブツブツいってるの……ブサイクな顔でマジキモいの」
('A`)「言ったなオイ?ガキだからって俺は一切容赦しねえぜ?」
⌒*リ´・-・リ「ブサイクは心の中も醜いの!!」
('A`)「……」
『疲れる』。容姿の罵倒など今やちっぽけな心の傷にもならないが
こうもバリエーションとユーモアに乏しければ与えられるのは虚無と疲労感だけだ
('A`)「お仲間の合流したけりゃサッサとそのなまくらで両断したらどうだおチビちゃん?言葉のナイフじゃ俺は殺せないぜ?」
⌒*リ´・-・リ「言われるまでもないの!!ぞっっっっお゙お゙お゙い!!!!!!」
銀に輝く半月が、ドクを『二枚下ろし』にせんと迫る
('A`)「……」
不意打ちを防がれ、鞭に不覚を取った。しかし、『それだけ』だった
ドクにとって巨大な剣を振り回す怪力少女など、取るに足らぬ小事であった―――――
152
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:56:13 ID:9OubR0lk0
*(‘‘)*「うりゃうりゃうりゃうりゃーーーーーー!!!!!」
一方、ヘリという少女は斧を肩に乗せ、走り去る蹄の音を必死に追いかけていた
足音は重く、進む一歩は走り幅跳びもかくやと言った距離。常人を遥かに超える速度で走っていたが、やはり馬の速度には敵わない
*(;‘‘)*「うおーーーーーーーーーーーー!!!!!速いですのーーーーーーーーーーーー!!!!!」
それでも健気に食らいつく彼女は、もう一種類の『蹄の音』に気付くのが遅れた
*(;‘‘)*そ「ですの!?」
(∪; ゚ω゚ )「おうおうおうおうおわんおうおうおうお!!!!!!」
側面から犬と
( ∵)「ハイヨーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
( ∴)「シルバーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
その背に乗った『超常保護対象』が
153
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:56:48 ID:9OubR0lk0
/フフ A_A ム`ヽ
/ ノ) ⊂ ・ ・⊃ ) ヽ
゙/ | / (__ω)ノ⌒(ゝ._,ノ <ンモーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!
/ ノ⌒7⌒ヽーく \ /
丶_ ノ 。 ノ、 。|/
`ヽ `ー-'´_人`ー'ノ ※AAはイメージです
丶  ̄ _人'彡ノ
* ノ r'十ヽ/
\ /`ヽ_/ 十∨
*(;‘‘)*そ「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!??????」
暴走する牛の群れを引き連れ、此方に向かってきていたのだ
(∪; ゚ω゚ )「おおおおおおおおおおおおおお!!!??????」
*(;‘‘)*「ひぃいいいいいいいいこっちくんなですの!!!!!!!!」
これには怪力自慢も踵を返す他なく、彼女は文字通り『保身』に走る。背を見せたタイミングで、ビィは積み上げられた干し草の山に飛び込んだ
ビィが消えた事により、牛の誘導先はヘリへと移り変わる。マタドールにしては、随分と情けの無い姿であった
(∪; ゚ω゚ )「ゼッゼッ、ハァハァ……」
( ∵)b「ナイスラン」
( ∴)b「ナイスガッツ」
背中のビコとゼアが労いの言葉を掛けるが、ビィは少しも報われた気がしなかった
むしろ戻ったらこの作戦を言い渡したあのクソショボ眉毛の眉毛を噛み千切ろうと固く決意したのであった
154
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:57:53 ID:9OubR0lk0
時を同じくして、車を取りに走ったボンテージ・クイーンこと『ハロー』は
ハハ;ロ -ロ)ハ「……」
(´・ω・`)「よう」
(#゚;;-゚)「……」
『馬』で逃げ去ったと思われた『ショボン・バーデラス』と対峙していた
傍らには、リーダーから伝えられた回収目標の少女であるディの姿もある
ハハ;ロ -ロ)ハ「まんまト、分断させられたと言うワケカ」
(´・ω・`)「功を急いだなネエちゃん」
ハハ ロ -ロ)ハ「ふン。だが、ドク・オーツならまだしも、貴様が私に勝てる道理などあるまイ」
(´・ω・`)「どうかな」
ハハ ロ -ロ)ハ「すぐに思い知ルだろウ」
ハローは鞭をしならせると、二回、三回と地面を打ち鳴らす。生じた抉れが、その威力を証明していた
ショボンはディを下がらせると、後ろ手に隠し持っていた自身の『得物』を前に出す
ハハ ロ -ロ)ハ「それハ……?」
(´・ω・`)「おや、よくご存じの筈だぜ?アンタの商売道具でもあるだろうしな」
先端を輪の形に結んだ『投げ縄』であった
ハハ ロ -ロ)ハ「カウボーイ気取りカ?」
(´・ω・`)「オイオイオイ俺をどこの誰だと思ってやがる?大牧場の御曹司だぜ?正真正銘の『カウボーイ』さ」
円状に巻いた縄を右手で引き延ばして十分な長さを確保する。そして、『ヒュン、ヒュン』と横手に回転させた
(´・ω・`)「西部劇のガンマン風に言うなら……」
ハハ ロ -ロ)ハ「……」
(´・ω・`)「『撃ちな!!どっちが速いか勝負してみようぜ』っつー奴だ」
155
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:58:59 ID:9OubR0lk0
ハハ ロ -ロ)ハ「……見くびられタものダ」
(´・ω・`)「試してみないとわからねえだろ?」
鞭と縄。奇しくも似た性質を持つそれぞれの武器ではあるが、『用途』に歴然とした差がある
確かに縄は縛る、吊るす、結ぶと言った多種多様の機能性を持つ。しかし『人を痛めつける』事に特化した鞭のように、『これ』といった決定打はない
『無謀』だと、ハローはほくそ笑んだ。それは超人部隊の一員としての揺ぎ無い自信と、産まれながらの嗜虐性癖による高慢さによるものだった
ハハ ロ -ロ)ハ「でハ……貴方の父親と、同じ部位に……」
狙いはデミタスと同じく『頬』。目の前の憎き男が、苦痛で悲鳴を上げ、血を滴らせる姿を脳裏に浮かべただけで下腹部に『熱』が生じる
ハハ ロ∀ロ)ハ「傷をつけて差し上げましょウ!!!!!!」
興奮を燃料に、ハローは鞭を高々と振り上げた。その時――――
(´^ω^`)「アホめ」
ハハ; ∀ )ハそ「What a fuck!!?」
顔面が『ベチン』と叩かれ、メガネを落とす。予期せぬ不意打ちに、鞭の軌道は明後日の方向へと反れた
アンダースローで投げられた縄の結び目は、牛を捕まえるための『投げ縄結び』ではなく、根本を纏めた『硬結び』だった
ショボンの狙いは縄による『捕獲』ではなく、投擲による『目くらまし』だったのだ
ハハ;3 -3)ハ「はワワ、メガネメガネ……」
(´^ω^`)「かーらーのォッ!!!!!!!!!!!!!」
ハハ;3Д3)ハそ「あばばばばばばばぁぁああばばばば!!!!!?????」
露出の高いボンテージファッションが災いし、『スタンガン』は素肌に押し付けられた
筋肉は電流により強制的に収縮し、絶頂したかのように全身を痙攣させる
ショボンはスタンガンを放すと、銃口から立ち上る硝煙を吹き消す真似をして、尻ポケットという名のホルスターに仕舞った
156
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:00:07 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「サディストは煽り易くて助かる」
縄で身体をギチギチに縛り上げると、鞭を拾って茂みへと投げ捨てた
今までなら退治した後は放置で良かったが、ここは彼の実家。沙汰に頭を悩ませていると
(;'A`)「ショボン、無事か!?」
『無傷』ではあるが、焦った様子のドクが駆けつけてきた
(´^ω^`)「おおこの通りピンピンしてらぁ!!!!!!手伝ってくれこいつ親父に任せるから」
(;'A`)「マズいことになった」
(´^ω^`)「漏らしたのか?」
(;'A`)「ニダーが連れ去られた」
ショボンの顔から一瞬にして笑顔が消えた。ドクは自身のスマホを差し出すと、そこには
【 <ヽ ∀ > 】
車内にて気を失ったニダーの画像が写し出されている
彼にはビィ、ビコ、ゼアと共に牛舎にて『牛追い』の役目を任せていたのだ
(;´・ω・`)「別働隊かっ……!!」
限られた人数での『分断作戦』。地の利こそあったが、条件は彼方と『同じ』になる
真正面から目立つ形で現れた三人組は12シスターズ側のブラフであり、ショボン達はそれにまんまと乗せられてしまったのだ
157
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:01:09 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「ビィ達は?」
('A`)「……」
ドクのポケットがもぞりと蠢き
( ∵)「ゴエ……」
元気のないゼアが顔を覗かせる
('A`)「気を失った斧のガキと、こいつだけが牛に乗って戻ってきてな。俺もそれで異常に気付いた」
(#゚;;-゚)「……」
袖を引かれ、ドクはポケットからビコを取り出してディに差し出す
彼女は相変わらず無表情であったが、心底大事そうに胸へ抱きしめた
(;´・ω・`)「クソッ……悪い、俺の判断ミスだ」
('A`)「謝るな。今まで上手くやってけた方がどうかしてたんだ。それにまだ終わりじゃねえ」
(;´・ω・`)「……ああ、勿論だ」
ドクのスマホに送られたのは写真だけではない。短くメッセージも添えられている
『ホライゾンで待つ』。どの道、行先は変わらなかった
158
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:01:51 ID:9OubR0lk0
('A`)「それとだな……」
何かを言い籠り、チラリとディに目を向ける。ショボンはそれでドクの言わんとする事を察した
(;´・ω・`)「……親父か」
('A`)「……死にはしない傷だ。だが酷いのに変わりない」
(;´・ω・`)「……そう、っ?」
(#゚;;-゚)「……」
(´・ω・`)「ディ!!待て!!」
駆け出そうとしたディを咄嗟に引き止める。しようとせん事は既にわかっていた
だが、既に傷だらけの少女にそれを求められるワケがなかった
(;´・ω・`)「お前が背負う必要はない!!責任は吹っ掛けた俺にあるんだ!!」
(#゚;;-゚)「!!」
(;´・ω・`)「ディ……!!」
これまで見せた事ない力強い抵抗に、戸惑いながらも更に強く抑え込む。すると
(#∵)「ゴ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !」
(;´・ω・`)そ「っ!?」
喋れない彼女の感情を代弁するかのように、ビコが雄叫びを上げた
耳を劈く声量に、思わず拘束の力が緩む。その隙にディはログハウスへと駆け出した
159
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:02:26 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「……」
('A`)「……」
放心するショボンの背中を、ドクは力強く叩く
('A`)「せめて見届けるのが俺らの『責任』だ。ケジメは親父さんに着けて貰おう」
(´・ω・`)「……ああ、わかった」
少女の後に続き、彼らもログハウスへと重い足取りで戻る
旅立ちから初めての、『敗北感』を胸に抱きながら
160
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:03:22 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
(;´・ω・`)「おy」
(#´・_ゝ・`)「テメェ!!!!!!!」
リビングに入るや否や、血に染まったデミタスがショボンの胸倉を掴んで壁に押し付ける
ドクから『頬に酷い裂傷がある』と聞いていた物の、生乾きの血の下にはそれらしい傷は無い。代わりに
:(# ;;- ):「……っ」
頬に新たな傷が生まれたディが、傷口を抑えて蹲っていた
(#´・_ゝ・`)「どういう事だ……誰がこんな真似しろっつった!!」
(;´・ω・`)「……他でもない、その子だ」
(#´・_ゝ・`)「っ……」
(;´・ω・`)「親父……」
デミタスはショボンを突き放すと、自身の治療の為に使ったのであろう救急箱を引っ掴みディに駆け寄る
(#´・_ゝ・`)「……ニダ坊は?」
(;´⁻ω⁻`)「……連れ去られた。ビィとゼアも」
(#´・_ゝ・`)「そうか……見せなさい」
(# ;;- )「……」
(;´・_ゝ・`)そ「っ!?おい!!」
161
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:04:03 ID:9OubR0lk0
二人は最初、デミタスの反応はディの傷が塞がっている事に対しての驚きだと思ったが
(;∵)「ゴエッ!!ゴエッ!!」
ビコの喚き声と、クタリと力のないディを見て只事ではないと悟る
(;´・ω・`)「ディ!?」
(;´・_ゝ・`)「彼女を拾ってからこの症状は!?」
(;´・ω・`)「無かった……脈はあるな!!ドク!!」
('A`)「ああ、すぐ発とう。親父さん、迷惑を掛けたな」
(;´・_ゝ・`)「待て!!すぐに医者を呼ぶ!!」
(#∵)「ゴエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」
(;´・_ゝ・`)そ「うわっ!?」
('A`)「病院と警察がどうしても嫌いだそうで」
(;´・ω・`)「回復の当てがあるなら『スリー・ドット』しかない……ドク!!あの三人を詰め込め!!」
('A`)「オーライ。親父さん、手伝ってくれ」
(;´・_ゝ・`)「っ……」
『行かせていいのか?』と、迷いが生じた。伝説の地を目指したとしても、間に合わないかもしれない
その上、彼らの友人が得体の知れない組織に連れ去られている。ここから先は大人と警察と医師の領分では無いのだろうかと
だからこそデミタスはドクの要求にこう応えた
(;´・_ゝ・`)「……わかった!!」
大人であるからこそ、『大人の手間』を痛いほど知っている。警察はすぐ動いてくれるかわからない。医師はディを治療できるかどうか定かではない
そこに到るまでの時間と手続きは、『手遅れ』というバッドエンドに繋がり兼ねない。だったら、危険を承知で迷いなく突き進む息子たちに賭けた方が良いのではないか
親として無責任な考えである事は重々承知している。だが、子の想いと行動を信じて後押しするのもまた親の責務なのだ
162
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:05:18 ID:9OubR0lk0
準備は十分も掛からず終わる。後部座席にはロープで拘束した『交渉材料』を三人
二列目の座席にディを寝かせ、転げ落ちないように座高を荷物で埋める
('A`)「オムライスまでは?」
(;´・ω・`)「休憩なしで三、四時間って所だ……クソ、追う側に回るとはな」
運転席にショボンが座り、シートベルトを締める。最後に父親に挨拶をしようとパワーウィンドウを開けた
(;´・ω・`)「親父、行ってくる!!」
(´・_ゝ・`)「待て!!」
(;´・ω・`)「なんだよ急いでん……」
ログハウスからデミタスが持ち出した物を見て絶句する
凹凸が限りなく少ないシンプルかつ漆黒の銃身と、三十二連の『ドラムマガジン』
映画、『エクスペンダブルズ』でも活躍したフルオートショットガン『AA—12』であった
(´・_ゝ・`)「持ってけ」
(;´・ω・`)そ「持ってけねえよアホか!!!!!!扱えるわけねえだろそんなもん!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「安心しろ。非殺傷弾だ」
(;´・ω・`)「そういう問題じゃ……無理やり詰め込むんじゃねえ痛ぇよハゲ!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「お前もいずれ禿げる」
(#´゚ω゚`)「やめろや!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
窓越しに無理やり突っ込まれ、なし崩し的に持っていかざるを得なくなる
デミタスは最後に息子の肩を掴み、今までにないほど真剣な眼差しを向けた
163
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:05:53 ID:9OubR0lk0
(´・_ゝ・`)「ニダ坊とビィ、ゼアを取り戻して、必ず嬢ちゃんを送り届けろ」
(´・ω・`)「わかってる」
(´・_ゝ・`)「それだけじゃねえ。必ず無事に帰ってこい。それで初めて『完全勝利』だ」
(´・ω・`)「言われるまでもねえよ。なぁドク!!」
('A`)「当然」
(´^_ゝ^`)「……よし、行ってこい!!」
力強い後押しを受け、ショボンはアクセルを踏む
乗せる人数は増えたが、静かになった車内。バックミラー越しに父親の姿を確かめると
(´・_ゝ・`)「……」
高々と拳を掲げ、激励を送っていた―――――
164
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:07:39 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
<ヽ`∀´>「……それで」
男に生まれたからには、一度は『ハーレム』に憧れる。彼も例外では無く、多感なジュニアハイスクール時代には学友と妄想を馳せらせたものだ
しかし成長するにつれ、自身の身の程を知った今となっては、限られた時間と脳のリソースを『叶わぬ夢』に注ぎ込む事は無くなった
しかし人生とはわからぬもので、意外な形で『妄想』は現実となった。良いか悪いかは別として―――――
<ヽ`∀´>「綺麗どころが男を囲んで、一体何をおっ始める気ニカ?」
『多勢の女性に囲まれる』という願いが叶ったのは事実なのだから
(゚、゚トソン「……ホステルを観たことは?」
<ヽ;`∀´>「えっ、ちょ、ホントやめてマジで」
(゚、゚トソン「冗談です。目的さえ達成すれば、無事にお帰しします」
キツいジョークに愛想笑いを返し、ニダーは窮屈そうに身を捩った
牛舎で気を失い、目覚めた時には既にこの『廃工場』の中で拘束されていた
椅子に座らされ、両腕には手錠。脚には足枷が掛けられており、一歩も進めそうに無い
そもそも、抜け出せた所で『超人ポンコツ集団』から逃げられるとは限らない。ニダーは早々に脱出を諦め、迎えを待つことにした
165
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:08:03 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「手錠は何の為にある?」
(゚、゚トソン「はい?」
キャスターが壊れた事務椅子に座り、クルクルと回っていた『ニンジャ』が手を上げる
このセリフはジパング発祥のコミックからの引用であり、彼女にとっては馴染み深いものだろう
从 ゚∀从「逃がさない為にあるんじゃあない!!屈服させる為にある!!」
<ヽ`∀´>「知ってるニカ?」
从 ゚∀从「へへ、当然さ。『ジョジョ』だろ?」
|゚ノ ^∀^)「何それ」
从 ゚∀从「ジパングで一番面白いコミックだよ。今度貸してやるぜ。百巻以上あるけどな」
|゚ノ;^∀^)「それだけ多いと幾ら面白くても読む気が失せるわね……」
166
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:09:40 ID:9OubR0lk0
(゚、゚トソン「そのコミックが何か?知識を披露したいだけですか?」
<ヽ`∀´>「いや、アンタ方の思惑を表してるようだなって思っただけニダ」
(゚、゚トソン「ふむ……ええ、そう言われると間違ってはいない気がします」
今の状況は、ショボンが自宅の牧場を使った作戦と酷似している
これまで単独での待ち伏せと襲撃が多かったが、今回は地の利と数的有利を揃えての迎撃だ。攫われた自分と
(∪#^ω^)「ウウウウウ……」
鬱陶しそうに首輪を後脚で弄るビィ
川*д川「はぁああああああああんかわいいぃぃぃいいいいいい!!!!!」
(;∴)ノシ「ゴエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!」
そして『ナード』という言葉を体現したかのようなオタク女に強烈な頬擦りをされ続けるゼアを餌に
ショボン、そして最大の脅威であるドクを『屈服』させる為に用意された舞台なのだ
|゚ノ ^∀^)「心配しなくても殺しはしないわよ……」
<ヽ`∀´>「銃を弄りながら言われても説得力がないニダ」
|゚ノ ^∀^)「ウチらは別に殺し屋じゃないしねー。弾もゴム弾だから『死ぬほど痛い』程度で済むし」
<ヽ`∀´>「そりゃお優しい。所でブンマルでそこのニンジャに手裏剣やら鉤爪でぶっ殺されそうになった事に対する弁明はあるニカ?」
从 ゚∀从「乙女だから」
<ヽ`∀´>「なんでもかんでもそれで男が許すと思うなよ?」
167
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:10:46 ID:9OubR0lk0
从'ー'从「ご安心を〜。例えぇ、致命傷を負ったとしてもぉ、私がちゃーんと治して差し上げますからぁ〜」
背後からすり寄ってきた女が、ニダーの耳元に顔を寄せて吐息と共に囁きかける。ゾワリと鳥肌が立ち、思わず仰け反った
<ヽ;`∀´>「ヒィィ世界で一番信用できないタイプの女!!」
|゚ノ ^∀^)「ブフッwwwwwwww」
ワザとらしい吹き出し笑いを聴いて、ニダーの肩に女の指が力強くめり込む
<ヽ;`∀´>そ「いたた痛い痛い!!治療とは真逆のことしてる今!!!!」
从^ー^从「フフフ〜」
<ヽ;`∀´>「助けてビィ!!」
(∪#^ω^)「わんお……」
<ヽ;`∀´>「露骨に嫌そうに鳴かないで!!」
(゚、゚トソン「アヤカ、その辺で。そろそろ彼らも到着するようですし、貴方は下がっていてください」
|゚ノ ^∀^)「ウチは別に構わないけどねー」
从'ー'从「はい〜、お言葉に甘えます〜。ロクに狙いも定められない×××の流れ弾が此方へ飛んでこないとも限りませんし〜」
甘ったるい声色はそのままに、差別用語を投げつけて『アヤカ』は工場の奥へと歩き去る
レモナは軽く聞き流したかのように見えたが、右手はいつでもその後ろ姿を撃ち抜かんと、ホルスターに収まる銃のグリップに触れていた
168
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:12:34 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「怖い……」
(゚、゚トソン「お気になさらず。いつもの事でして」
<ヽ;`∀´>「心労をお察しするニダ」
(゚ー゚トソン「フフ、いえ。楽しい職場ですよ」
冷徹だと思っていた美女が微笑みで表情を崩す瞬間というものは、時と場合がどうあれ男ならグッと来るものがある
胸と股間に込み上げた熱を堪えて、ニダーは気を引き締め直した。『ストックホルム』の二の舞だけは絶対に避けねばならぬと
<ヽ`∀´>「……超常保護対象と、言っていたニダね。アンタらの仕事って、UMA版動物愛護団体ニカ?」
(゚、゚トソン「概ねその通りです。UMA、都市伝説、怪異等、世界の在り方を変えてしまいかねないモノを『超常保護対象』と呼び、我々はそれらを世間の明るみに出ないよう保護、及び隠蔽を施します」
<ヽ`∀´>「どちらかと言えば……MIB?」
|゚ノ ^∀^)「そっちの方がしっくり来るわね。もっとも、あんな暑苦しいスーツ姿はゴメンだけど」
<ヽ;`∀´>「いや……」
ニンジャとか格闘ゲームキャラのコスプレするよりかはマシじゃないかと言いそうになったのを堪える
169
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:14:22 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「……悪用を目的にした組織では、無いニカ?」
(゚、゚トソン「真逆です。『悪用させない為に』我々は存在しています。保護も一時的な物で、ある程度のデータを取り終えれば安全な棲家へと返します。有名な例で言えばネッシーやビックフッドですね」
<ヽ;`∀´>「実在するニカ?」
|゚ノ ^∀^)「まぁウチらが担当したワケじゃないけどね。産まれてないし」
<ヽ;`∀´>「……Jesus」
(゚、゚トソン「驚くべきことでも無いでしょう?あなた方は既に彼らと遭遇し、ここまで旅をしてきたのです」
<ヽ;`∀´>「……」
世界の裏側を覗いている気分であったが、それ以上の不安が湧き上がってくる。『どうして敵対している筈の相手にここまで正直に話してくれるのか』
彼女たちは『殺しはしない』と言った。その言葉に嘘があるとは思えない。だが、超常保護対象を世間から『隠蔽』しているというのなら、自らの素性を打ち明けるべきではない
<ヽ;`∀´>「……関わった人間は、どう処理してきたニカ?」
(⁻、⁻トソン「……皆さん、大抵はそこに行きつきます。彼らの末路は主に三つ」
一つ、人差し指を立てる
(゚、゚トソン「記憶処理を施し、これまでと同じく平穏な生活に戻る」
二つ、中指を立てる
(゚、゚トソン「優秀な能力持ち主……例えば、超常保護対象『そのもの』や、使役している場合は、組織の傘下に加わってもらう」
三つ、薬指を立てる
(゚、゚トソン「超常保護対象の使用目的が悪質だった、もしくは見逃せない犯罪歴を持っている場合、然るべき機関へと引き渡す。以上です」
170
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:15:13 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「……僕たちは、どれに該当するニカ?」
(゚、゚トソン「あなた次第ですよ、ニダー・コクソン。時間も限られていますし、今度は此方から質問させて頂きます」
トソンの両手がニダーの頬を掴む。一見すると煽情的なシーンだったが、真夏だというのに氷のように冷たい指に
背筋まで鷲掴みにされたかのような悪寒が身体中を駆け巡る
(゚、゚トソン「『アレ』の正体を、『女の子と犬』を引き連れている理由を、そしてあなた方の目的を、正直に話してください」
<ヽ;`∀´>「……」
鋭い視線に射抜かれ、ニダーは懸命に思考を巡らせた。『大した理由が無いからだ』
確かにブンゲーで『ショボンの兄の手がかりを探す』という目的が新たに発生した。しかしニダーにとってそれは副次的なモノに過ぎない
『行きたいから』『見たいから』。旅立ったのにそれ以上の理由は無いし、ディやビィ、ビコとゼアと出会ったのも成り行きに過ぎない
計画的に連れ去ったワケでも無く、悪意と欲望を以てセブンクロスへと向かっているワケでも無い。それを正直に伝えた所で、彼女たちは納得するだろうか
<ヽ`∀´>「……」
いや、ただ一つ明確な目的は残っていた。あのモーテルで奇妙な拾い物をした瞬間から
成り行きであろうとも、追われる身になろうとも、三人で成し遂げようと決めた目標があった
<ヽ`∀´>「『セブンクロス』に、彼らを送り届ける」
(゚、゚トソン「……『シャキン・バーデラス』の指示で、ですか?」
<ヽ`∀´>「……アンタら、悪い人じゃ無さそうだから正直に話すニダ。『それもある』」
|゚ノ ^∀^)「ふぅん……?」
<ヽ`∀´>「だけどそれ以上に、僕らが『そうしたいから』。彼らが助けを求めたのはアンタらじゃなくて、僕らニダ」
从 ⁻∀从「……」
<ヽ`∀´>「聞き飽きた説得かもしれないし、そもそもあれだけ派手に抵抗して今更何をとも憤慨するかもしれない。だけど、僕にはこれ以上の言い訳はない」
171
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:16:33 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「そして……出来る事ならば、僕らにそれを達成させて欲しい。罰なら後で幾らでも受ける。だから……」
(゚、゚トソン「もう結構です」
顔を放され、ニダーは息を大きく吐いた。その瞬間
<ヽ;`∀ >・'.。゜「うぐっ……!!」
胸板を、『ヒールの先端』が強く抉った。椅子は後ろへと倒れ、受け身も取れぬまま後頭部を強く打つ
从;゚∀从「何やってんだよトソン!!」
|゚ノ ^∀^)「黙って」
ハインの抗議は、眉間に突き付けられた銃口によって遮られる
:<ヽ; ∀ >:「アガッ……」
(゚、゚トソン「『聞き飽きた』。ええ、その通りです。命乞いも、身の潔白も、私にとっては全て戯言に過ぎない。いっその事、悪逆の限りを暴露してくれた方がよっぽど信頼できました」
:<ヽ; ∀ >:「っ……」
(゚、゚トソン「信じれば足下を掬われるのがこの世界です。だったら、正当性を聞き入れるよりも最初から最後まで疑ってかかった方が余程安全ですからね」
:<ヽ; ∀ >:「っ、なら、どう……して……?」
(゚、゚トソン「『どうして弁明の余地を与えたか』、ですか?フフ、別に大した理由はございません。ええ、ございませんとも」
ヒールが倒れこむニダーの頬に突き刺さり、皮膚を捩じる。苦痛に呻く声が、廃工業に広く響き渡った
(^、^トソン「ただの『憂さ晴らし』ですよ。ミスター・コクソン」
:<ヽ; ∀ >:「ぐっ、が……」
(゚、゚トソン「まだ何か囀りますか?」
:<ヽ; ∀ >:「っ……Fuck You……Bitch……!!」
(^、^トソン「お里が知れますね。シタラバ人を騙る劣等民族が」
172
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:17:11 ID:9OubR0lk0
从#゚∀从「っ……おい!!やりすぎだぞ!!」
|゚ノ#^∀^)「黙ってって言ってるでしょ!!」
从#゚∀从「黙れるかよ!!」
額に押し当てられた銃口に、怯むどころか一歩踏み出す。怯んだのは優位に立つ筈のレモナの方であった
从#゚∀从「俺にはお前らほどのキャリアはねえ!!頭だって悪いし、騙されて割りを食う事だってある!!でもなぁ!!人として何が正しくて、何が間違ってるかくらいの区別がつく!!」
(゚、゚トソン「はて……?私は間違っていますか?」
从#゚∀从「ッ……!!」
キョトンと首を傾げるトソンに対して、レモナは唇をキツく結ぶ
从#゚∀从「そりゃ確かにそいつらには散々な目に遭わされた!!だけどよ、その気なら命だって奪えたはずだ!!俺も、お前らも、他の奴らだってそうだ!!見逃されてんだよ俺達は!!」
|゚ノ#^∀^)「それが信用に値する行為とでも言いたいの!?ヒートは大怪我負ったのよ!?」
从#゚∀从「でも殺されちゃいねえ!!こいつらはただ『防衛』しただけだ!!俺が言えた義理じゃねえけど、最初から素直に協力を申し入れれば大事にならなかったかもしれねえ!!」
(゚、゚トソン「ハァ……常日頃から頭が悪いと思っていましたが、まさかここまでとは」
从#゚∀从「ああそうさ!!だけどな、真摯な人間の言葉を聞き分けられないほど愚かじゃねえんだよ!!レモナ!!お前はどうなんだ!!」
|゚ノ#^∀^)「っ……人を信じた瞬間、後ろから撃たれた絶望がアンタにわかる!?見返りに身体を要求された瞬間の不快感は!?子どもに悪魔でも見るような眼を向けられた瞬間は!?」
从#゚∀从「わかるかよ!!関係ねえだろこいつらには!!俺に取っちゃ今のお前らの方が歪んで見えるぜ!!」
(゚、゚トソン「レモナ。泥の味を知らぬ者に言って聞かせるなど、時間と労力の無駄です」
|゚ノ; ∀ )「……」
(゚、゚トソン「足手まといになるようならば、暫く眠ってもらう他ありません。さ、早急に処置を」
銃口から、レモナの震えが伝わってくる。トソンからは見えないが、目には涙が浮かび、唇の端から一筋の血が垂れる
トソンとは違い、迷い揺れている。ハインはそれ以上言葉を重ねることなく――――
从#⁻∀从「……」
ただ静かに、目を瞑った
173
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:19:11 ID:9OubR0lk0
(゚、゚トソン「レモナ……?貴女も、私を失望させるのですか?」
|゚ノ; ∀ )「違う!!そんなワケない!!」
(^、^トソン「そうですよね。貴女だけは、ずっと私の味方でいると仰ってくれたのですから」
|゚ノ; ∀ )「……」
(^、^トソン「さぁ、引き金を。仕事が終われば、気の迷いが生じたハインに休養と『研修』を与えましょう。そしてこれまで通りっ……!?」
顔を踏みつける足が、段差を踏み外したかのようにバランスを崩す。確かめると―――
<ヽ#`∀´>「ぺっ……不味……」
『噛み折ったヒールを吐き出した』ニダーが、怒りの眼差しで見上げていた
(゚、゚トソン「おやおや、口も悪ければ行儀も悪いのですか?」
<ヽ#`∀´>「不愉快ニダ」
(^、^トソン「あら、ようやく本性を現しましたか。それで?何が不愉快なのでしょう?」
<ヽ#`∀´>「ダチの言葉すら受け入れない、テメーの甘え切った性根ニダ」
(^、^トソン「……お門違いでは?私は超常保護対象の保護の為、引いては人類の平穏と安寧の為に最善を尽くしているまでです。あの日、あなた方が素直に我々の要求を、何も言わず受け入れて貰えれば、我々もこうして揉めずに済んだ」
<ヽ#`∀´>「いいや、僕達の判断は……ドクの抵抗は、間違っていなかった。ダチにダチを撃たせるような真似する奴に、ビコとゼアを……ビィとディを任せられるワケが無い」
(^、^トソン「ほぅ?それで?」
<ヽ#`∀´>「アンタがこの仕事に就いて、どれだけ辛い目に遭ったのかは僕には想像もつかない。もし同じ境遇を味わったのなら、人を信じられなくなるかもしれない……でもな」
|゚ノ; ∀ )「……」
从 ⁻∀从「……」
<ヽ#`∀´>「少しは可笑しいと思えよ!!仲間が仲間に銃を向ける、今の状況を!!!!」
174
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:20:38 ID:9OubR0lk0
(^、^トソン「……レモナ、まだですか?」
|゚ノ; ∀ )「……」
(^、^トソン「レモナ、お急ぎを」
|゚ノ; ∀ )「……」
(^、^トソン「聞こえているのでしょう?レモn」
「そこまでにしとけっぽ」
工場の扉が、耳を劈くような軋みを上げて開かれる。ニダーは差し込む太陽の光に目を眩ませたが
<ヽ`∀´>「……ご到着、ニダか」
よく見知った姿は、しっかりと捉えていた
(´・ω・`)「……」
('A`)「空気おっも」
二人は工場の中ほどまで進むと、ドクは両手に抱えていたゴシックファッションの少女二人を
ショボンは背に負ったボンテージ・クイーンを。それぞれ乱雑に落とす
⌒*リ;´・-・リそ「痛いの!!」
*(;‘‘)*「レディの扱いじゃないですの!!」
ハハ;ロ -ロ)ハ「お尻打ちましタ……ヘイ、ヒート!!解いテ下さイ!!」
ノハ;゚⊿゚)「お、おう……」
ぶつくさと文句を言う三人の縄を、工場の外でオレンジの女と見張りに就いていたヒートが解きに掛かる
工場内の会話が聞こえていたのか、気まずい空気に戸惑いを隠しきれてはいなかった
175
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:21:46 ID:9OubR0lk0
(*‘ω‘ *)「そこのボクの言う通りっぽ。どうしてもと言うなら、レモナじゃなくアンタがケジメするべきっぽ」
(^、^トソン「何故です?私と彼女は一心同体。ならばどちらが手を下そうが一緒じゃないですか」
(*‘ω‘ *)「アタイにはそうは見えないっぽ。一心同体と言うのなら、レモナと同じく苦しんでいる姿を見せたらどうっぽ?」
|゚ノ; ∀ )「やめて!!トソンは何も悪くないの!!」
('A`)「ようショボン、こういうシリアスな場面に立ち会うと腹が痛くならねーか?」
(´・ω・`)「わかる。そういうのは部外者のいないところでやって欲しい」
<ヽ`∀´>「いや空気読むことを覚えて?頑張って?」
(#´゚ω゚`)「お前が連れ去られへんかったらこんな場面に遭遇せんでも良かったんやろがーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
<ヽ;`∀´>「ごめんて!!!!!!!」
(*‘ω‘ *)「……」
('A`)「あ、ごめん続けて?」
(*‘ω‘ *)「無茶言うなっぽ」
(´・ω・`)「まー、各々言いたい事はあるだろうがよ……」
ショボンはバッグを広げながらトソン達へと近づいていく。レモナは左手でもう一丁の拳銃を抜いて向けた
彼は脅しに臆することなく歩き進め、三メートルほど手前で立ち止まった
(´・ω・`)「取引と行こう。ここに俺らの目指す先『スリー・ドット』の資料と、ビコ、ゼア、ディの特性についてまとめたデータがある」
(゚、゚トソン「……それで手を引けと?」
(´・ω・`)「車内で連中から色々と聞いたよ。別に危ない……いやまぁオレンジぶつけられたり鞭でシバかれそうになったりしたけど……危ない連中じゃねーか」
<ヽ;`∀´>「ちょっと我慢して」
(´・ω・`)「あーあーうるせえボケナス。とにかく、あいつらの存在を公にせず丸く収めれば納得すんだろ?この情報と引き換えに、後は俺らに任せて欲しいんだよ」
176
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:23:31 ID:9OubR0lk0
(゚、゚トソン「情報はありがたく頂戴致します。ですが、その要求は飲めません」
(´・ω・`)「わがままし放題か????????」
(゚、゚トソン「あなたの行動がシャキン・バーデラスの指示による物だとするならば、自由に行動させるにはリスクが伴います。彼に悪意がない事を証明できないでしょう?」
(´・ω・`)「あー……まぁ、身内贔屓になっちまうかな。居場所もわかんねえし、そりゃ本人に訊いてくれとしか言えねえ。そこで転がってるアホみたく虐めたとしても、出てくるのは喘ぎ声だけだ」
⌒*リ´・-・リ「キショイの!!」
*(‘‘)*「ドン引きですの!!」
ハハ ロ -ロ)ハ「虐げる価値も無イゴミクズ!!」
('A`)「仮性包茎!!」
(#´゚ω゚`)「るせーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!ドクてめえ後でケツの穴増やすからな!!!!!!!!!」
从;⁻∀从「なんか気ぃ抜けるんだけど……」
(゚、゚トソン「ふぅ……困りますね。聞き分けてくださいよ。あなた達の領分では無いのですよ?」
(´・ω・`)「それを決めるのはお前じゃねえし、誰にも決める権利はねえ。それと、こっちも急いでんだよ。ディが危篤でな」
<ヽ;`∀´>「本当ニカ!?」
(´・ω・`)「ああ、ディの傷跡は恐らく『キャパシティ』を表してる。だから帰る必要があったんだ。役目を、終えようとしているんだ」
(゚、゚トソン「何を勝手に納得しているのかは知りませんが……此方にはまだ人質が残っているのですよ?聞き入れないと言うならば……」
トソンは懐から手帳サイズに折りたたまれた器具を取り出し、軽く振って展開する
バネ仕掛けが作動し、瞬く間に『弓』の形へと変貌を遂げた。続けて、胸ポケットのボールペンを引きぬき、三回続けてノックを行う
するとこれも特殊警棒のように勢いよく伸び、即席の『矢』へと変化する。それを番えると、ニダーの頭へと向けた
(゚、゚トソン「少々の犠牲を覚悟して貰わねばなr(´・ω・`)「射てよ」最後まで聞いてくださいません?」
<ヽ`∀´>「躊躇いなさ過ぎて引く」
177
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:24:19 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「『人々の平穏と安寧を守る』……ご立派なキャッチコピーだが」
ショボンはいつものようにタバコを取り出し、火を着ける。最早レモナは、彼の一挙手一投足に警告すらしない
『無気力』が似合う姿を横目に眺めながら、いつものペースを崩さずに語り掛けた
(´・ω・`)「今この場に置いて、アンタが一番平穏と安寧に程遠い真似してんぜ?」
(゚、゚トソン「……そんなこと、ない、ないですよ」
誰の目にも明らかなほど、狂った女は動揺を見せた。ニダーは彼女の人格を責めたが、これほどの効力は無かった
対し、女を手玉に取る事に長けたショボンはトソンの『プライド』を突く発言をした
幸いにも、ホライゾン到着まで『三時間』という猶予があった。捕らえた三人組から情報を聞き出すには充分な時間であり
それはショボンが得意とする『会話による心理戦』の武器を調達するまたとないチャンスであった
(´・ω・`)「どうした?早く射て。アンタの気は多少晴れるだろうが、後に残されるのは人を殺した後悔と毎晩枕元に立つニダーの怨霊だ。平穏と安寧から最も程遠い場所で一生を過ごす覚悟があんのなら、早く射てよ」
人格が破綻していようとも、人は誰しも譲れないプライドを持つ。トソンにとっては仕事に対する姿勢だ
そこを攻めれば、如何に頑固な者でも多少なりの心の揺らぎが生じる。『平穏』『安寧』。この二つのキーワードを繰り返し、その揺らぎを大きくしていく
加えて、内輪揉めを起こしている今の状況は、ショボンにとって強く働いた。互いに違う主張の衝突。つまりは相手を『説き伏せたい』と考えている者が、向こう側の組織に少なからず存在する
『味方』が多い今この時こそ、この旅に置ける最大の刺客を退ける『好機』なのだ
178
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:25:10 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「それとも、その役目もお友達に代わってもらうか?」
(゚、゚トソン「……れ」
一つ、この作戦には大きなリスクがある
(´^ω^`)「いいじゃん代わって貰えって!!どうせテメーじゃ何も出来ねえんだから、おんぶに抱っこしてもらえよ!!そんでアンタは安全な場所から人々の『平穏と安寧』を眺めて満足してりゃ良いじゃねえか!!」
(゚、 トソン「黙れ……」
(´^ω^`)「俺ら三人をぶっ殺してめでたしめでたし!!人々は何も知らず『裸の王様』によって与えられたふつーの生活を末永くアホみたいに過ごしましたってな!!ギャハハハハハハ!!!!!!!」
心の揺らぎが、奥底のマグマを引き起こし――――
(゚Д゚#トソン「黙れぇぇええええええええええええ!!!!!!!」
凄まじいヘイトが、ショボン自身へと向かってしまう事だ
179
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:26:44 ID:9OubR0lk0
矢尻の先はショボンの顔面へと向けられ、張り詰めた弦が解き放たれる
携帯式の弓とは言え、初速は毎秒六十メートル近い。たった数歩分の距離から躱すのは、余程の事がなければ不可能だ
『だからショボンは賭けに出た』
(;´^ω^`)そ「ごるぱァ!?」
側面から『空気』による強烈なタックルが、彼の身体を押し倒す
紙を掠めた矢は背後へと通り過ぎ、斜線上に居たドクを目掛けて真っ直ぐに飛ぶ
('A`)「あぶねっ」
それを何なく掴んで止めたドクは、驚きで目を見開くヒートに見せつけるかのようにクルクルと指先で回した
<ヽ;`∀´>「あれは……」
ニダーの視界は確かにショボンと、その周辺を捉えていた。そこに、彼を救った『存在』は見えていなかった
しかしその『正体』は知っていた。牛舎で彼とビィ達を連れ去ったのは、残された『12シスターズ』のメンバーだったからだ
意図的に存在感を失くす能力。そこに居てもまるで空気のように『気にならない』、これまでで一番恐ろしい能力者の一人がショボンを救った
ξ#゚⊿゚)ξ「ほんっ……とうに、他力本願のクズなのね!!アンタ!!」
(´^ω^`)「いやぁ面目ないガハハハハハ!!!!」
アラビアンな踊り子の衣装に身を包んだ女が、忌々しく舌打ちをしながら身体を起こす。ショボンの『賭け』。それはトソンの『仲間』に救って貰う事であった
一部過激なメンバーがいるものの、根っからの悪人でもなく、むしろ正義に準して行動している組織であるならば
例え競争相手であろうとも、危機が迫れば『助けに入る』。意見の衝突による内輪揉めの最中なら尚更可能性は跳ね上がる
ショボンは『博打』に見事勝利し、命の危機を回避した。それだけに止まらない。トソンは切ってはいけない口火を『切ってしまった』
180
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:27:39 ID:9OubR0lk0
('A`)「返すぜ。そらよっ」
ドクは受け止めた矢をダーツのようにトソンへと投げ返す。当たった所で小さな怪我をするだけで済む速度のそれを
|゚ノ;^∀^)「ッ!?」
冷静さを欠いたレモナが撃ち落とした。視線と意識が逸れた瞬間を
从#゚∀从「おらっしゃあ!!!!!」
|゚ノ;^∀^)「ぐっ!?」
『対立する者』は見逃さない。銃身を掴んで捻ると、肩の関節を極めて床へと押し倒した
(゚、゚;トソン「レモナッ!!」
(∪#^ω^)「わんお!!」
新たな矢を引き抜こうとしたトソンは、側面から襲いかかってきた『犬』を反射的に避ける
鬱陶しがっていた首輪と縄は解かれ、背中には
( ∴)「ゴエエエエエエエエエエッッハアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
オタク女の魔の手から逃れたゼアが雄叫びを上げていた
181
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:34:24 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「はわわ」
「落ち着いてください、今解放しますから!!」
またもや『空気』がニダーに語りかけると、手脚の錠が音を鳴らして外れる
彼の身体を起こしたのは、ショボンを救った女とよく似た容姿の女。強いて違いを挙げるとするならば
表情は柔らかく、片割れと比べて一部分が『豊満』である事だろうか
ζ(゚ー゚;ζ「さぁ、逃げて!!」
<ヽ;`∀´>「あ、あり、ありがとうございますニダ!!」
ζ(^ー^;ζ「いえ、貴方の言葉、心に響きました。御武運を!!」
(゚、゚#トソン「デレ!!貴女……逃すか……っ!?」
今度は飛来した『オレンジ』が、トソンの弓を叩き落とす。邪魔をした本人は肩を竦めてため息を吐いた
(*‘ω‘ *)「行けっぽ。アタイらの負けだ」
('A`)「良いのか?」
(*‘ω‘ *)「あんな立ち回り見せられちゃ、やる気も失せるっぽ」
('A`)「そんじゃ、遠慮無く。じゃあなストリートファイター」
ノハ#゚⊿゚)「フン!!貴様とはいずれ決着を着けてやる!!」
('A`)「おお、思ったより懲りてなくて何よりだな。まぁ精々精進しろや。トンズラすんぜテメーら!!」
(´^ω^`)「おおよ!!サンキューなお姉ちゃん!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「うるさい人でなし!!」
(∪^ω^)「わんお!!」
( ∴)「ヒンチチ!!!!!!!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「やっぱ待ちなさいそこの超常保護対象ォ!!!!!!!!」
182
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:35:21 ID:9OubR0lk0
数日間に渡る争奪戦はここにて終わり、ショボン一行は廃工場を後にする
最後に、ニダーだけが背後を振り返った。トソンは絶望したのか、その場にへたり込んで項垂れていた
('A`)「……こっから先はあいつらの問題だ。俺らの出る幕じゃねえ」
<ヽ`∀´>「……わかってるニダ。時間を取らせて悪かった」
('A`)「謝罪ならディに言うんだな。急ごう。恐らく猶予はあと少しだ」
エンジンを掛けっぱなしの車に乗り込むと、間髪入れずに出発する
後部座席では数時間ぶりの再会を果たしたビコとゼアが歓喜で踊り、『舞台』になっていたビィが鬱陶しそうに振り落とした
<ヽ;`∀´>「ディ……」
(#゚;;- )「……」
ディは目を覚ましてはいるが、身体を起こす気力は残っていない。顔色も青白に近づいていた
それでも、ニダーの顔の『傷』を請け負おうと手を伸ばす。彼はその手を優しく握ると、そっと彼女の腹の上へと戻した
(´・ω・`)「ここからセブンクロスの『入り口』まではすぐだ。だが肝心のスリー・ドットの正確な位置はまだ掴めてねえ」
<ヽ;`∀´>「……間に合うニカ?」
(´・ω・`)「少なくとも『案内役』は元気いっぱいだ。あとは俺らの『脚』次第だろう」
( ∵)b「ゴエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!」
( ∴)b「ゴエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!」
二体は『任せろ』と言わんばかりに親指らしきものを立てる
それだけで、ニダーの不安は多少解消された
('A`)「さぁ、伝説を拝みに行こうぜ」
気合の籠もった一声に、二人は強く頷き返す
冒険の『ゴール』が聳える山々は既に視界に捉えていた―――――
183
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:36:26 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
シタラバと、隣国『ソーサク』の国境をなぞるように聳え立つ山脈、『セブンクロス』
乾ききった空気と土、そして水の入手手段の厳しさから、別名『拒絶の山々』と呼ばれるその場所は
細々とした一本道が延々と続くだけで、ソーサクの国境沿いまで街らしき街は存在しない
(´・ω・`)「強行軍だな……」
ビコとゼアの知らせで車を停めた時には既に、辺りは夕焼けに染まっていた
本来ならばキャンプを張って明日に備えるべきだが、ディの容態がそれを許さない
('A`)「夜の山を歩いて進むとか正気じゃねえな……ニダー、本当に大丈夫か?」
<ヽ`∀´>「問題ないニダ。バランス感覚なら僕が一番優れてるし、キミらはキミらで役割がある」
ニダーの背中にはディが背負われており、両手を使う為にスリングでしっかりと固定されている
何度か屈伸をして重量による負荷を確かめると、そのまま準備体操を始めた
持ってきたキャンプ道具は全て車の中へと残している。元より探索による長期滞在の為に用意したものだ
『明確にその場所へと導いてくれる』ビコとゼアがいる今となっては、余計な荷物に他ならない
('A`)「頼もしいね。脚を滑らせて二人諸共真っ逆さまとか夢見が悪くなるからやめてくれよ」
<ヽ`∀´>「お前ほんと嫌な性格してんな顔面と性格ブサイク」
('A`)「ママァ!!!!!!ニダーが酷い事言ったァ!!!!!!!!!」
(´・ω・`)「お前の口がブサイクだからだろブサイク」
('A`)「俺の母親と同じくらい酷ぇなお前」
(´・ω・`)「間男と一緒に親父殺して遺産手にしようとした俺のお袋よりマシじゃん」
<ヽ;`∀´>「キミらどういう家庭環境で育ったの?」
184
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:37:25 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「灯りも心許ないな……オメーらの案内が頼りだ。頼むぜちびっ子コンビ」
( ∵)「ゴエ!!」
( ∴)「ゴエ!!」
(∪^ω^)「わんお!!」
(´^ω^`)「勿論オメーも頼りにしてるぜワン公!!」
ショボンは父親からの『餞別』を抱えなおすと、目の前に立ちはだかる『最後の難関』を見上げた
『兄が消えた山』であり、その原因となった『先住民』が棲む魔境。彼の膝は小刻みに『ふるえ』を起こした
:(´^ω^`):「……クク、参ったぜ」
ただし、臆病風に吹かれた『震え』ではなく、高揚による『奮え』である
(´・ω・`)「っしゃ……」
ガツガツとブーツの底で地面を蹴り、奮えを身体中に馴染ませる
(#´゚ω゚`)「行くぞォオオオオオオアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」
冒険者の雄叫びは、人を拒む山々にぶつかり反響し
(#'A`)<ヽ#`∀´>「「オオッッッ!!!!!!!!!!!!!」」
(#∵)(#∴)「「ゴエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!」」
(∪#^ω^)「わんわんおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
それに応える咆哮が後に続いた
(# ;;- )「……」
目指すは『スリー・ドット』。精霊の、故郷である
185
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:39:02 ID:9OubR0lk0
( ∵)「ゴエ!!」
( ∴)「ゴエ!!」
(∪^ω^)「わんおわんお」
暗くなり始めた山道を、ビコとゼアを乗せたビィの先導で突き進む
ありったけのライトやランタンで照らしているとは言え、やはり視界が悪く足下が覚束ない
しかし、その場で『最も安全なルート』を選んでいるらしく、窪みに足を取られたり躓いたりなどのトラブルは起きなかった
(;´・ω・`)「ハァ、クソ、重ぇな……俺ぁ別に海兵隊志望じゃねえってのに……」
('A`)「鉄の塊抱えながら山道なんて歩くことねえもんな……置いてくりゃ良かったじゃねえか」
(;´・ω・`)「襲われないとも限らねえだろ。ここで十数人が失踪してんだぜ?」
('A`)「まぁそうだがよ」
<ヽ`∀´>「その、先住民って悪い人らニカ?」
('A`)「何言ってんだお前。グリーン・インフェルノの二の舞もあり得るんだぜ?」
(´^ω^`)「密林じゃねえからこの場合『ロック・インフェルノ』だな!!ガハハ!!」
<ヽ;`∀´>「的確に最悪なチョイスを……そうじゃなくて、僕達は今『Rebel』を連れているじゃん。それの祭事が行われているなら、むしろ歓迎されるべきじゃないニカ?」
('A`)「あー……楽観的に考えりゃそうだな。どうなんだ?」
(´・ω・`)「わかんねえけど……先住民ってよ、マサイ族みてーに文化その物を観光業にしてる連中ならまだしも、マイナーになればなるほど『排他的』になる傾向があるんだ」
('A`)「学者が入る隙もねえって事か。それか、狭いコミュニティで築かれた同族の絆と縄張り意識」
(´・ω・`)「そう。余所からの『血』を取り入れる必要が無く、彼らだけのコミュニティで完結していたとする。その場合懸念されるのは……」
<ヽ`∀´>「外の世界からの侵略ニダね」
(´・ω・`)「その通り。彼らが俺達と同じ社会に参加しなかった理由の一つは、極端に『外』を恐れているからってのがある」
<ヽ`∀´>「……善悪関係は無く、『外から来た』と言うだけで迫害に値する。か」
('A`)「触らぬ神とやらだな……俺らは今、余計な世話を焼いて消えちまった連中と同じ道を辿ってんだな」
186
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:40:17 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「……避けるべきなんだろうな。お互いの為にも」
『冒険』とは『開拓』だ。世界の謎を解き明かす為に旅をして、研究を行う。だがその行為を、必ずしも全ての人間こ歓迎されるワケでは無い
かのクリストファー・コロンブスが、新大陸の原住民に対して虐殺と略奪を行ったように、これまで穏やかに過ごしていた人々へと災厄を運ぶ悪魔に成り得るかもしれない
好奇心や知識欲は必ずしも悪性を秘めてはいない。しかし『最悪』の事態を引き起こす『種』となる事はある
それを芽吹かせてしまうくらいなら、不可侵を突き通すべきなのだろう。だが――――
<ヽ`∀´>「そうも、言ってられないニダね」
('A`)「何があろうとも、『答え』は見つかるだろうしな」
そこに『家族』が関わっているならば、例え危険が伴おうとも踏み入れなければならない
(´・ω・`)「その通りだ……いざとなったらお前らを犠牲にして俺だけ逃げる」
('A`)「いやそれはねーよ」
<ヽ`∀´>「この期に及んでクズを貫き通すな」
(´^ω^`)「ぬぅん!!信念!!」
三人は疲労をかき消すかのようにゲラゲラと笑い合った。その時――――
(∪^ω^)「わんわんお!!」
何かを知らせるかのように、ビィが勢いよく吠えた
(´・ω・`)「っ……」
('A`)「ニダー、下がれ」
<ヽ;`∀´>「おっ、おう」
ショボンはAA—12を構え、ドクは深く息を吐いて呼吸を整える。二人はディを背負うニダーを庇うように前に出た
187
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:41:10 ID:9OubR0lk0
(∪#^ω^)「ウルルルルルル……」
姿勢を低くし唸り声を上げる。誰の目にも明らかにビィは『威嚇』していた
(;∵)「……」
(;∴)「……」
いつも騒がしいビコとゼアですら、静かに押し黙って互いを抱きしめ合っている
何度も『脅威』の存在を知らせていた彼らが『怯えていた』。火のない所に煙は立たない。何もなく見えようとも、そこには怯えるに値する存在が居る
<ヽ;`∀´>「……下がるニカ?」
('A`)「いや……多分これ『詰んで』んな。ショボン、お前ならどうする?」
(´・ω・`)「……退路を、断つだろうぜ」
<ヽ;`∀´>「……」
ニダーは唾を飲み込むと、背後を確認した。すると、『岩肌』が蠢き始める
(;´・ω・`)「おいおいおいおい……ダッチ少佐かよ」
『岩肌』は一つ、二つと立ち上がる。ライトの灯りに照らされたその姿は、肌を保護色に塗った人の形をしていた
各々が槍や弓など原始的な武器を手に、『外からの侵略者』を取り囲んでいく。僅かな風にすらかき消される足音は『捕食者』を連想させた
「ユメナラバ ドレホド ヨカッタデショ」
「イマダニアナタノコトヲ ユメニミル」
(;'A`)「なんて?」
(;´・ω・`)「分かるワケねえだろ……」
母国語では決して無い、彼ら独自の言語がヒソヒソと囁かれる。包囲網は徐々に狭まって行き、逃げ場は無くなる
どれほどの楽観主義者でも、『歓迎されている』とは思えないだろう。取るべき行動は二つ、『抵抗』か『服従』か
188
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:42:23 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「……どうする?」
(;´・ω・`)「……」
不意を突かずこうして取り囲むと言う事は、侵略者に対して何かしらの『目当て』を抱いている可能性が高い
それは個人が有する財産の略奪ではなく、『身体』や『命』に関連する物事ではないかとショボンは推理した
つまり、今ここですぐさま『殺される事は無い』。だったら、無暗に抵抗をして刺激するべきでは無いだろう
(;´・ω・`)「……従っとくぞ。今はな」
<ヽ;`∀´>「了解……」
「アナタ フラフラフラフラミンゴ」
(;´・ω・`)「お、おお……武器かい?ほらよ」
(;'A`)「渡していいのか?」
(;´・ω・`)「弾は抜いてある。ただのこけおどしだ」
(;'A`)「ほんっと良い根性してやがる」
原住民の一人にAA—12を手渡すと、彼はそれを興味深げに弄繰り回した後、部下と思わしき人物へと渡した
グリップを握り、トリガーを指で引いたのを見るに、『銃』の知識はあるらしい
しかし散弾銃の中でもかなりの特異体であるAA-12の扱いそのものには疎いと見た
「オサ!!オサ!!チハイノチナリ!!」
<ヽ;`∀´>「何する……やめろ!!」
後方の一人が、ニダーからディを引き剥がそうとする。無抵抗を選んだ身だが、譲れない者は守らねばならない
「オオン!!ジョジョリオン!!デビリオン!!」
<ヽ;`∀ >・'.。゜「うっぐ……!!」
腹に『棍棒』が叩きこまれ、ニダーはその場に膝を着いてしまう
189
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:43:21 ID:9OubR0lk0
(#'A`)「てめっ……!!」
「ベルモンドバンデラスダレヤネン!!ダレパンテェテェ!!」
激昂して掴みかかろうとしたドクに、『Freeze』の意味を込めて何本もの槍の穂先が向けられる
ディを取り上げた先住民は、身体中に刻まれた傷跡を確認すると――――
「『Rebel』」
と、三人にも明確に伝わる、『精霊の名前』を高々と口にした
(;´・ω・`)「今……!!」
「コヨイ!!ボクタチハトモダチノヨウニ!!ウタウダロウ!!」
「「「ウーハァ!!!!!」」」
リーダーの号令に、先住民たちは一斉に色めき立つ。彼らは縄を取り出すと、三人を拘束せんと詰め寄る
(∪#^ω^)「わんわんお!!ウルルルルル!!」
人の事情など知った事じゃないビィは、手を差し伸べた一人に対して牙を剥くが、首根っこをヒョイと掴み上げられると
(∪#^ω^)「わんわんわんわんお!!わんお!!」
『背負い籠』の中へと収納され、上から蓋を閉められた
190
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:44:09 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「痛ってぇ……おいドク見たか?」
(;'A`)「ああ……ぐっ……居なかった」
縛られながらもその様を確認していた二人は、逆転になり得る『変化』を見逃さなかった
『ビコとゼア』の姿が、ビィの背中から消えていたのだ。先住民たちの様子を見るに、その事に気づいてはいない
(;'A`)「どう捉える?」
(;´^ω^`)「それを聞くか?」
『逃げた』など、『見捨てられた』など、微塵も思わなかった。不気味で喧しく、生意気で滑稽
そして頼もしく可愛げのある彼らは既に、三人にとってかけがえのない『友』となっていたのだ。疑うなど、最初から頭に無かった
(;´^ω^`)「耐え忍ぶのもまた冒険だ。信じようぜあいつらを」
(;'∀`)「へっ……言われるまでもねえや。さぁ!!天国だろうと地獄だろうと何処へでも連れてけや原始人共ォ!!」
「オレンジアームズ!!!!ハナミチ オン ステージ!!!!!」
両手を後ろに回され縛り付けられた彼らは、先導役を変えて再び歩き始める
太陽は深く沈み、数多に光る星々だけが、彼らの行く末を見守っているのであった―――――
191
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:45:04 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
「ウンメイノ ヤキニクロード」
「イカリノデスロード」
凡そ三十分ほど、柄で突かれながら進んだ先に『洞窟の入り口』に辿り着く
リーダーはその場にいた見張りに短く事情を説明すると、彼は三人と雑に抱えられているディを見てニヤリと笑った
「コチラガワノ ドコカラデモアケラレ マス」
松明に火打ち石で火を灯すと、洞窟の内部へと先導する
道は石を切り崩し整備され、山道と比べて格段に歩きやすかった
壁には恐らく『糞』を燃料とした灯りが等間隔で設置されている
('A`)「奴らの住居にご案内ってか。スイートルームは期待できなさそうだな」
(´・ω・`)「わかんねえぜ?Wi-Fiが使えるかもしれねえ」
<ヽ;`∀´>「これで生活水準高かったらシタラバ語話してても可笑しくないニダ……」
軽口を叩き合いながら洞窟内を『降って』いく。時間帯もあるだろうが、山の内部は熱帯夜とは無縁な程に肌寒く、汗ばんでいた身体を凍えさせる
光源は進むほどに増えていく。その反面、道幅は徐々に萎んでいく。『行き止まりなのではないか?』と不安が過るが
「イッショウニイチドハ イッテミタイナ オマエヲシアワセニシテヤルテ」
その際奥に、一般住居の扉ほどのサイズの『穴』、言わば『入り口』が待っていた
192
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:46:08 ID:9OubR0lk0
「シャナナナナナ!!アンタノシアワセガイチバン!!」
(´・ω・`)「入れってね、はいはい……」
背中をドンと押され、三人はその入り口を潜る。内部を目の辺りにした瞬間、それぞれが息を飲んだ
(;'A`)「こりゃすげえ……」
山の内部を丸々繰りぬいたかのような広大な半球状の空間。そこはまるで、天然が作り出した『野球ドーム』であった
壁際には石を掘り出した住居が点在し、窓穴からは暖色の光が溢れ出している
軒には商店や飲食店と思しき店舗が並び、動物の皮や串焼きなどの取引を、何かしらの『通貨』を使用して行なっていた
太陽や月の光の届かない山の奥底であるが、火の灯りだけを頼りにしている割には明るい
光源に磨き上げた『鉱石』を設置する事で反射による光の増幅を施していた
(´・ω・`)「思っていたより……文明は進んでるな。21世期にしちゃだいぶ遅れているが」
<ヽ;`∀´>「だけど……やっぱりこのコミュニティで完結している。アレを見るニダ」
ニダーが顎で指し示した先には、どこからか引いてきた『水』の貯水槽
岩をくり抜いて作られたであろうその場所から、何本もの溝に沿って流れていく
<ヽ;`∀´>「『水道』ニダ。人が生活するには厳しい筈のこの場所で、安定して水を得られる手段、そしてそれを分配する方法を彼らだけが知っている」
('A`)「となると……畜産及び農業も安定して行われていると考えるべきか。こいつら、こんなカスカスの土地だってのに結構『体格が良い』。さぞかし良いもん食ってんだろうよ」
(´・ω・`)「……」
('A`)「どうした?」
(´・ω・`)「いや……あいつらが使ってる『カネ』みたいなもん……」
「ドトールウジマッチャラテ!!」
(;´・ω・`)「あーはいはい!!静かにしますよ!!」
(´^ω^`)「尻穴チンポ野郎野郎が」
<ヽ;`∀´>「言葉が通じないからって滅茶苦茶言うじゃん……」
193
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:48:01 ID:9OubR0lk0
入り口から奥へ奥へと進み、反対側の壁際へと到着する
他の住居よりも一際大きく、派手な装飾も施されていることから『族長の豪邸』であると読み取れた
「ビバアフター スクール イェイイェイ」
「ハイハイハイピース」
召使らしき人物が、リーダーとディを抱えた先住民、それと三人を中へと招き入れる
室内へと入った瞬間、洞窟の中にも関わらず三人は『目を眩ませた』
(;'A`)「なんの冗談だよ……」
<ヽ;`∀´>「あれって……?」
(;´・ω・`)「やっぱそうかよ……」
天井にぶら下げられているのは、煌びやかな鉱石で造られた『シャンデリア』
素人目から見ても安っぽい代物ではなく、権力と財力を誇示するかのように光り輝いている
部屋の最奥には『狼』の毛皮が縫い込まれた『玉座』に、これまた装飾品を鎖帷子のように着飾った『老人』が鎮座している
傍らには三人を拘束した先住民よりも遥かに体格の良い大男が直立不動の姿勢で佇んでおり、外敵を厳しい視線で睨めつけた
「チンチンボウヤ Rebel セックスオンザビーチ」
傅いたリーダーが報告をすると、族長は腫れぼったい瞼をカッと見開かせた
グワと大きく開かれた口には、シャンデリアや装飾品と同じ『鉱石』で造られた差し歯が入れ込まれている
趣味が良いとは言えないファッションに、ドクは小さく「うわ成金趣味キッモ」と呟いた
/ ,' 3「Rebel!!!!マイッチングマチコセンセ!!!!!クックドゥドゥルドゥ!!!!!」
( ゚∋゚)「ウーハァ!!!!!!!!!」
族長の呼びかけに大男が応える。リーダーや召使達はその姿を、さながら『ヒーロー』でも見るかのように目を輝かせた
194
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:48:36 ID:9OubR0lk0
/ ,' 3「スギヤケンシ ヤッテヤロウジャネエカ コノヤロウ!!」
「ウーハァ!!」
族長が下した指示に低頭で応えると、三人を強引に部屋から連れ出した
(;'A`)「テンポ早えよ何だってんだ……ッ!?」
この中で唯一、『殺気』を感じ取れるドクは族長たちの方を振り返る
( ゚∋゚)「……」
それを放った張本人は、明確にドクだけを見つめ
( ゚∋゚)「……」
人差し指で、首筋を掻き切るジェスチャーをした
('A`)「……」
言葉は通じずとも、ボディランゲージはコミュニケーションの手段となる
意味するところは分かりやすく『生贄』か、それとも『戦い』か。いずれにせよ、ドクは自分自身が最も『死』に近いのだと確信し――――
('∀`)「へっ……」
( ゚∋゚)「!!」
『余裕の笑み』を返した
195
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:49:39 ID:9OubR0lk0
('∀`)「首洗って待ってろってか。上等じゃねえか」
彼は『心を折る』手段をよく知っていた。それ故に、『折る側』に有効な態度も熟知していた
恐れを表に出さず、なんてことないと受け流す『胆力』。攻められながらも、相手を見下す『受け手の反撃』
(#゚∋゚)「ヒカキンティビィー!!!!!ギンイロノヤツ!!!!!!センエイジャシュ!!!!!!」
効果は絶大だったようで、大男は口角から泡を飛ばしながら激昂し、召使たちが慌てて宥めかけた
(;´・ω・`)「おいなんであいつあんなキレてんだ?」
('A`)「さぁな?乳酸菌取ってねえんじゃねえの?」
<ヽ;`∀´>「どうしてそう人を煽って壊す事だけに長けてるニダ……」
これから何が起こるか。三人の中でドクだけが肌感覚で予測できていた
事態を対処できるのは、ショボンでもニダーでもなく、腕っぷしに自信がある自分以外に無い
('A`)「……」
ドクは更に強く『覚悟』を決めた。『死』に対するものではなく、今まで通り『勝ち』『生き残る』覚悟を
それが彼の生き様であり、誰にも踏みにじられる事のない『強者』としての誇りであった
196
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:50:59 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
(´・ω・`)「ドク、スイートルームだ」
('A`)「ああ、硬いベッドに岩の檻、フレグランスな香りのトリプル7。ジャックポッドだな」
移された場所は、生活圏より『下層』にある牢。灯りは僅かで薄暗く、うっすらと糞尿の臭いが漂っている
縄の拘束から解放されたものの、自由からは程遠い。装備品は全て取り上げられ、成す術もない
(∪#^ω^)「わんわんわんわんお!!!!!!!!!」
「イギー!!!!ザ フール!!!!!」
<ヽ;`∀´>「気持ちはわかるけど落ち着くニダ……疲れるだけニダよ」
同じく籠から解放されたビィは、『看守』に向かって怒りをぶつける。鳴声は狭い檻の中で反響し、鼓膜が僅かに痛んだ
('A`)「ビィよ、今は堪える時だぜ?後でギャフンと言わせた方が楽しいじゃねえか」
<ヽ`∀´>「陰湿極まってるニダ」
(∪#^ω^)「ブス……」
('A`)そ「ビィが喋った!?」
(´・ω・`)「被害妄想乙。それより、状況を整理しようぜ」
197
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:53:01 ID:9OubR0lk0
見張りに背を向けるように三人と一匹は円を組み、声を潜めて会議を始める
最初の話題は、ショボンが気づいた先住民の『通貨』についてだった
(´・ω・`)「ダイヤモンドだ」
<ヽ;`∀´>「は?」
(´・ω・`)「奴らは取引にダイヤモンドを使っている。それと族長の家のシャンデリアや装飾品、灯りの増幅にも使われている」
<ヽ;`∀´>「え、えと……え?見間違いとかじゃなくて?」
('A`)「いや、俺もそうだと睨んだ。ウチのババアが身に着けてるもんとよく似ていた。ショボン、お前は?」
(´・ω・`)「俺ァ……ガキの頃に親父が見つけたお袋の『ヘソクリ』だな。水切りの石に使わせてもらった」
<ヽ;`∀´>「えー、ええ……なにこの……金持ちと庶民のギャップ……」
ダイヤモンドの産地として有名なのは、北の大国『シベリア』や、南国『ワカンダ』などが挙げられるが
彼らの母国であるこのシタラバでも産出されている。中にはダイヤモンドを掘る事の出来る州立公園があるほどだ
しかしながら、狭いコミュニティとは言え『通貨』として使用できるほどの潤沢な産出量は未だかつて報告されておらず
もしもこの場所が公に知られるようになれば、『拒絶の山々』は『宝の山々』と名前を変えることになる
('A`)「思わぬ財宝が見つかったが、スリー・ドットと関連があるとは思えねえぞ?」
(´・ω・`)「いや、そうでもねえ。ダイヤモンドの発生原因の一つに、『太古の時代に地球に飛来した隕石の衝突』というものがある」
<ヽ;`∀´>「ッ!!それって……」
(´・ω・`)「Rebel……ディの祖先は『宇宙』からやって来たんじゃないかと思う」
(;'A`)「なるほど……辻褄は合うな」
(∪^ω^)「フンフンフン……」
(^ω^∪)「?」
198
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:53:54 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「……ビコとゼアは?」
(´゚ω゚`)そ「アーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!確かにそっちの方がそれっぽい!!!!!!!!!」
「ゴウランガ!!!!ニンジャコロスベシ!!!!」
(#´゚ω゚`)「っるっせえぞチンカス野郎が今盛り上がってんだから水を差すんじゃねえ殺すぞ!!!!!!!!!」
「……」シュン
(#'A`)「ちょっと男子!!見張り泣いちゃったじゃん!!」
<ヽ`∀´>「……」
('A`)「さぁ」
<ヽ`∀´>「乗らねーからな」
('A`)「ノリ悪の民か?だが、ニダーの説も一理ある。あいつらが一体何の為に行動しているかはわからないままだからな」
<ヽ`∀´>「すると……先住民はダイヤモンドという『恵み』を齎したRebelを『精霊』として奉っている。と」
(´・ω・`)「それも辻褄が合うが……『苦痛』とは関係なくないか?」
<ヽ;`∀´>「た、確かに……」
('A`)「その点に付いては俺に憶測がある」
(^ω^∪)「フンフンフン……わんお」
('A`)「わんおわんお。後にしてくれ」
(∪^ω^)「ブス」
(;'A`)そ「ぜぇーーーーーーったい喋ってるって!!!!」
(´・ω・`)「どうでもいいから早く話せよブス」
<ヽ`∀´>「合ってんだから一々突っかかるなブス」
199
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:55:00 ID:9OubR0lk0
('A`)「恐らくこの後確実に、俺はあの大男と対峙する羽目になる」
<ヽ;`∀´>そ「なっ……なんで?」
('A`)「さぁな……でもまぁ、『見抜いてる』感じはしたよ。この中じゃ俺が一番強いってな」
手持無沙汰になったのか、ドクは小石を指で弄び始める
('A`)「そんで……『殺害予告』もされたよ。お前の首を刈るってな」
(;´・ω・`)「オイ待てよ……だったら落ち着いてる場合じゃねえだろ!!」
('A`)「直ぐには殺されねえだろうよ。だってあいつは『強い奴』を選んだ。生贄にするなら別に誰だっていいだろ」
<ヽ;`∀´>「『戦う』と?」
('A`)「恐らくな。ありゃ結構強いわ。コスプレ・ガールには及ばねえがな」
(;´・ω・`)「ッ……それで『苦痛』か!!」
('A`)「ああ。このコミュニティで最も勇敢な『戦士』と、外敵である『俺』を戦わせて、『苦痛』を精霊に捧げる……多分、そういう意味合いを持つ祭なんだろう」
l
<ヽ;`∀´>「でもそれって実質『生贄』となんら変わりゃしない!!ここは彼らの『ホーム』で、『外敵』を勝たせるような真似を許すはずがないニダ!!」
('A`)「そうだな、だけど……」
指先で小石を地面へと押し付け
('A`)「『俺の方が強い』」
そのまま『押し潰す』。粉微塵となった石の残骸を、フッと吹き飛ばした
('A`)「それに、心配するのは俺じゃなくて『ディ』の方だ。奴らがRebelの特性を知っているならば、あいつらはきっと――――」
200
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:56:49 ID:9OubR0lk0
「いででででで!!!!!」
(;´・ω・`)そ「うおっ!?」
牢の奥から突如聞こえて来た『男の悲鳴』に、三人は思わず身構える
か細い灯りが届かぬその場所からぼんやりと、何かを引きずるビィの尻が見えた
(;^Д^)「何だよこいつ痛ぇ痛ぇって!!クソ犬が!!」
(∪#^ω^)「ウルルルルル!!」
『シタラバ語』で悪態を吐く薄汚れた身なりの男。伸び放題の髭と髪が、この場にいた年月を思わせる
若者はビィを振りほどくと、あんぐりと口を開ける三人に気付いて言葉を失った
(;^Д^)「え……は、え?」
<ヽ;`∀´>「ビィ、こっちに!!」
(∪^ω^)「わんお」フンス
ニダーはビィを抱きかかえると、警戒し後ろへと下がる
男は瞬きを繰り返し、目を擦って反芻するかのように三人と一匹の存在を確かめると
(;^Д^)「ああ、ああ……シタラバ人だ!!シタラバ人だろアンタら!!」
一番近くにいたドクの足にしがみ付いた
(;'A`)「ようようよう落ち着け兄さん。アンタ誰だ?いつからここに?」
(;^Д^)「た、助けに来てくれたんだろう!?ああ、良かった!!もう限界だ、沢山だ!!年月なんてとうに忘れた!!馬鹿共はみんな殺されちまって、残りは俺だけだったんだ!!」
(;'A`)「え?何?どういう事?」
(´・ω・`)「ドク」
(;'A`)「ショボンどうするこのひ……と……」
201
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 14:57:59 ID:9OubR0lk0
ショボンの冷たい声色に、ドクもニダーも察しが付く
(´・ω・`)「……プギャー・スマイリィ。学生運動サークルのリーダーだ。よく覚えてるぜ、そのムカつく面構え」
(;'A`)「こいつが……?」
名前を呼ばれた『プギャー』はショボンの顔を見上げ、『ヤニ』にまみれた瞼を見開かせる。そして
(;^Д^)「は、はは……あ、あの、バーデラスの、弟か……」
唇を戦慄かせながら、彼の『兄』を口にした
(;^Д^)「な、なぁ……あいつは!?あいつの指示で助けに来たんだろう!?いつ出れる!?いつ帰れる!?」
(´・ω・`)「……残念ながら、兄貴は行方不明だ。俺らもアンタと同じく捕まって、沙汰を待ってる」
(;^Д^)「は……?冗談だろ?オイ……」
(´・ω・`)「俺にとっちゃ兄貴じゃなくてアンタがここに居る事こそが一番の冗談だ」
(#^Д^)「ふざっ……けんじゃねえぞガキコラァ!!!!!!!」
激昂して掴みかかろうとしたプギャーを、ドクが軽く突き飛ばす
元より衰弱していたのか、簡単に地面を転がった彼は咽び泣きながら地面を殴った
(#;Д;)「こんなのって……ヒグッ、あるかよ……兄弟揃ってボンクラの役立たずなんざ……」
(;'A`)「あー……元からこういう性格?」
(´・ω・`)「いや、プライドと声がデカい自信家だった。根がクズなのは変わりないようだがな」
('A`)「じゃあ同情の余地ねえな」
<ヽ;`∀´>「自業自得だけど、ちょっとは手心加えてやるニダ……」
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板