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( ^ω^)は伝説になるようです

1名無しさん:2019/04/24(水) 17:21:09 ID:lttvRft2O
壁。

まだら模様の、苔むす岩壁と金属により築かれた、垂直な壁。

総長二十キロメートルにもおよぶ長大な絶壁を、今一人の若者が登っていた。

2名無しさん:2019/04/24(水) 17:23:49 ID:lttvRft2O
彼は岩場の切れ目に指をかけ、全身の力を用い体を押し上げてゆく。

遮るもののない青空からは絶え間無く太陽が照りつけ、汗ばむその身体には疲労が蓄積されてゆく。

過酷な道のりはまだ序盤の域であり、常人ならば既に心折れそうになる険しさを秘めていたが、この若者はそれすら征服せんとする強靭な意志を持っていた。

3名無しさん:2019/04/24(水) 17:26:53 ID:lttvRft2O
彼の名はブーン。

まだ二十代と若くはあるが、この世界では名の知られた凄腕のクライマーだ。

気を抜けば滑落して即死の危険な岩場で、ブーンは巧みに手を伸ばし、次の足場へ身体を運んでゆく。

歩みは鈍足であり、だが極めて慎重。

それでも運が悪いことに数日前ザイルが切れてしまい、現在命綱なしにここまで登坂してきた彼の熟達した技術は、ひとえに才能であり、またそれを導いてくれた恩人たちのおかげでもあった。

4名無しさん:2019/04/24(水) 17:28:54 ID:lttvRft2O
あと数十メートル登った先に、梁のよう突き出した奇妙な構造物が見える。

ふっ、と浅い息を吐き、全身に力をみなぎらせてより近くまで接近する。

根元の梯子まで手が届いた時、ようやくそこでアンテナの形を取っていることが判った。

( ^ω^)「おお……播種船の遺物だお」

視界いっぱいにそれをおさめながら、感嘆まじりにブーンは呟いた。

5名無しさん:2019/04/24(水) 17:32:52 ID:lttvRft2O
播種船――はしゅせん。

この壁の正体は遠い昔星々の彼方より訪れた移民船なのだ。

長い年月を経て老朽化したものの、船内の電源はまだそこかしこで生きている。

ステップに腰を降ろし、休憩もそこそこに早速荷物をほどくや、ブーンはそこから蛇にも似た一台の機械を取り出した。

6名無しさん:2019/04/24(水) 17:45:18 ID:lttvRft2O
背中に覗く電源スイッチを入れると、とぐろを巻いていた蛇がしゅるりと一本の紐へ変わる。

( ^ω^)「行け! 僕のスクワーム!」

主が命じると、するすると蛇が壁の亀裂へと潜り込んでいった。

ブーンの目的は、この船内に眠る超古代文明の遺物を探すことにある。

たとえ発見できなくとも、どこかで充電が出来ないかと期待しなから報告を待っていると、しばらく後に相手からの通信が入った。

('A`)「おーいブーン、ちょっと来てくれないか?」

どうやら蛇がなんらかの遺物を探し当てたらしい。

( ^ω^)「何かあったのかお? ドクオ」

彼が所有するスクワームに搭載された疑似人格AI・ドクオにブーンは応じた。

('A`)「ああ。なんか人らしきモノが倒れているんだけれどよ。
さすがに俺の力じゃ運べねぇんだわ。手伝ってくれ」

( ^ω^)「おkおk。じゃあ直ぐに向かうお。さて、取りあえずは……っと」

壁面に半ば埋もれるように設置されていた、ハンドル式のドアに指をかけて回す。錆び付いていて硬いドアだが、ブーンの鍛えてられた腕力ならばそれすら容易にこじ開ける事ができる。

7名無しさん:2019/04/24(水) 19:55:21 ID:gRudsYgY0
構わん続けたまえ

8名無しさん:2019/04/24(水) 21:47:05 ID:lttvRft2O
( `ω´)「フッ!」

一息で回したドアが奥へと開いて、そのまま室内へとブーンは侵入する。ドクオの報告にある例の人物のものなのか、埃がつもる床の上に、何者かの足跡が奥へ向け続いていた。

一旦屈んで、その足跡をよく調べてみる。埃の厚さから察するに、この足跡はまだ新しい。

どちらにせよ、こんな辺鄙な場所を訪れるなんて余程の物好きに違いない。

( ^ω^)(ま、僕もその内の一人なんだけれどさ)

思索にふけるのを程ほどに切り上げ、ブーンは更に奥へと進んでいった。

9名無しさん:2019/04/25(木) 13:54:38 ID:PIF6Hy02O
数分後。ドクオのビーコン反応が強まってきた。そろそろだな、とブーンは彼へもう一度通信をつなぐ。

( ^ω^)「ドクオ」

( 'A`)/「おう、こっちこっち」
居場所を告げるためコツコツとドクオが壁を叩いた。首を巡らしようやく彼の下へ辿り着くと、そこには確かに一人の女性が仰向けに倒れている。

川  )

眠っているのかそれとも気絶しているのか。整った顔立ちをした彼女はぴくりとも動かない。その姿を見下ろしながら

「……死んでる?」と相方に訊ねてみるも

('A`)「さぁな」

蛇は首を振るばかり。解らない、というリアクションが返ってきた。

('A`)「取りあえず放っておくのもアレだし運んでやろうぜー」

あとで目覚めたら相手に何者か訊ねてみよう、と二人で決め、ブーンは彼女を背中におぶってやった。

10名無しさん:2019/04/26(金) 20:12:01 ID:YH88/GiIO
広い、広い大きな背中────

記憶の奥に眠っていた、なにか懐
かしい感覚を呼び覚ます優しいぬくもりがある。

(……父上)

( ^ω^)「お?」

( 'A`)「気がついたみたいだな」

休憩地点へもう間もなくというところで、それまで背負っていた女性の目が覚めた。

川;゚ -゚)「ん……?」

目覚めるや否や、突然目の前に見知らぬ男の顔があり彼女は混乱した模様である。

川;゚ -゚)「……えっと」

( ^ω^)

川;゚ -゚)「……どちらさまでしょう?」

11名無しさん:2019/04/27(土) 06:31:17 ID:YXJvIZpIO
そう訊ねる他なく、不安げに発した彼女に対し、肩越しに振り返った男――ブーンはにこやかに自己紹介する。

( ^ω^)「僕はブーンだお」
そう名乗ってから視線を降ろし、
「で、こっちが相棒のドクオ」

と足下を這う金属の生き物を彼が紹介する。

( 'A`)ノ「ヨッ。別嬪だなねーちゃん。
あんたが倒れていたところを俺が発見していま運んでいる最中な訳よ。ここまではおk?」

川;゚ -゚)「あ…ああ……なるほど把握した」

軽口を叩く奇妙な機械と、同じく妙な男──とはいっても、相手の素性をまだ知らぬ所為ではあるか。説明されるがままこくんと彼女は頷いた。

( ^ω^)「別に怪しいものではないからそう緊張しなくてもいいお」

川 ゚ -゚)「……だろうな。君の顔を観るからにどうみたって私を襲う程の度胸があるとは思えない」

(;^ω^)「ちょwwヒドスwww」

突然冷静になるや辛辣な言葉を浴びせられずっこけそうになるブーン。

川 ゚ -゚)「ああ済まない。自他共に私は表裏のない性格と呼ばれているのだ」

(;^ω^)「……ああハイハイそういう事ね。オーケーオーケイ、その様子なら命に別状はなさそうだお。もう降ろしてもいいかお?」

川 ゚ -゚)「君はこんなうら若き乙女に歩けというのかい? なんと鬼畜な……」

(;^ω^)「もうやだなんなのこのひと……」

12名無しさん:2019/04/27(土) 06:35:20 ID:YXJvIZpIO
冷却水のながれるパイプが無数に走っている。その中の適当な一本に傷をつけ、こぼれ出た水を組み茶を沸かす。

自分と相手のために用意したコーヒーを目の前の人物に手渡し、「さて、それじゃ君のことを聞かせてもらうお」とブーンは話を切り出した。

( ^ω^)「いったい君は何者なんだお? どうしてあんなとこに倒れていたんだお?」

川 ゚ -゚)「うん、そうだな。話せば長くなるが」

いれたての熱い飲み物にふうふう息を吹きかけながら、クーと名乗る少女は自分の身にこれまでに起きた出来事を語りはじめた。

川 ゚ -゚)「私の故郷はこの壁のすぐ麓にあってな、君みたいな探索者が持ち帰ってきた遺物の復旧を産業にしていたんだ」

('A`)「おお、ひょっとしてヴィップ村のことか? あそこの技術者たちは凄腕だからな。俺も修理で何回か世話になったことがあるぜ」

川 ゚ -゚)「そうだ。知ってるなら話が早い。私の両親はそこでも名の知れたマイスターでね。特にエンジン関係の修復に定評があるんだ。村だけでなく国中に弟子がいるんだぞ」

( ^ω^)「ほう。それはそれは立派な方だお。素晴らしいご両親をお持ちで君も鼻が高いんじゃないかお?」

川 ゚ -゚)「うん、私は両親をとても尊敬していたし、いずれは後を継ぐつもりでいた。ところが──」

13名無しさん:2019/04/27(土) 13:36:41 ID:YXJvIZpIO
「あれは一昨年の秋のことだった。

私の父の腕を聞きつけ、どうにか動かせないものかと王都からとある品が運び込まれてきた。

でもそれはこれまで私たちが扱ってきた機械とは全く異なる代物だった。
まるで人間だ──本当に人間そっくりの素材で作られた、眠った妊婦だったんだ。

気味悪がりながらどうにか調査を進め、一年がかりで機動までこぎつけた……そこまでは良かったのだか、目覚めると同時にそいつは村人たちへ襲い掛かってきた。

ある者は首をもがれ、またある者は腹を裂かれて死んだ。奴は殺戮機械そのものだった。
私は、両親に庇われなんとか生き延びたのだか……」

すると突然、言葉を切ったかと思いきやクーは上着を脱ぎはじめた。

14名無しさん:2019/04/27(土) 13:41:15 ID:YXJvIZpIO
(; =ω=)「!? ちょ、ちょっと君なにしてんの?!」

あわてて視線を逸らそうとするブーンに、「見てくれ」と彼女が落ち着いた声で言う。

(;^ω^)「い、いや、でも……」

川 ゚ -゚)「良いから。頼む」

動揺するブーンの腕を強引に剥ぎ、クーは素の上体を彼の眼前に晒す。

(; //ω//)「ちょおおおおおおお…………って、え?」

遮るものを奪われ、赤面するブーンの表情が突然、固まった。

( ゜ω゜)「何だ……それは……」

彼は──視た。

クーの白い肌の下で蠢く、異様な隆起の存在を。

麻疹のように点在するそれらが絶えず煽動をくりかえし彼女の身体を作り替えている。特に左脇腹から両胸元にかけてがそれらが顕著で、女性らしき腰のくびれも、膨らみも──何もかもが醜く失われている。

('A`)「化け物かよ」

機械だからだろう。歯にも着せぬ物言いでドクオが感想を告げると

川 ゚ -゚)「そうだ。化け物だ」

言われた当人であるクーもまた、それに憤することなく、ただ頷きかえしていた。

15名無しさん:2019/04/27(土) 16:21:48 ID:kzathJR60
ちょい昔のブーン系みたいでいいな
支援

16名無しさん:2019/04/27(土) 19:20:15 ID:YXJvIZpIO
コメントどもです。
二瓶勉とか飛浩隆みたいなSFが好きなので、そういうの目指して頑張ります

≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒


(; ゜ω゜)「……」

ブーンは動揺を隠しきれなかった。
侵食型の攻性生物──噂くらいは耳にしたことがあるが、まさかその被害がこれほど酷いものであったとは。

(; ゜ω゜)「その……なんだ、苦しくはないのかお?」

川 ゚ -゚)「は? なにを言っているんだ君は。苦しいに決まっているだろう」

だから倒れていたんだと、呆れた表情のままにクーは返事をする。

(;^ω^)「……いや、ゴメン。失言だったお。それにしても放置したままという訳にはいかない筈だお。何か治療の手立ては?」

川 ゚ -゚)「ああ、まさにそれを今探しているところなんだ。この壁の何処かに住むと云うハイ・フロスガーの噂を聞いたことはあるか?」

('A`)「んぁ? 知らねぇな……何者だい、そいつは?」


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