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( ^ω^)ブーンがアルファベットを武器に戦うようです 番外編
1
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:05:20 ID:hO8klvI.0
■まとめサイト
http://boonsoldier.web.fc2.com/arufa.htm
■作者のtwitter
https://twitter.com/azwd
■作者のブログ
http://azwd.blog115.fc2.com/
完結7周年を記念した番外編を投下します
2
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:07:32 ID:SjK4iqw.0
まってた
3
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:08:08 ID:q72MZ64k0
④
4
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:08:16 ID:2BUC2mck0
wktk
5
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:08:27 ID:7DKooGO.0
4
6
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:10:38 ID:AsXBhTy20
うおおおおおおおおおおおおマジでかああああああああああああああ
7
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:10:42 ID:IlMRidFE0
待ってました
8
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:10:58 ID:y0cCGXkI0
実に、長かった。余りにも、長すぎた。
待ってました……!!
9
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:11:08 ID:uFHJ1fYo0
(´・ω・`)長かった。あまりにも長すぎた。
10
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:12:11 ID:ijMuGuqo0
あまりにも長すぎた……
11
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:12:30 ID:BBsZ7Wf.0
wktk!!!!!!!!!!!!
12
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:12:33 ID:hO8klvI.0
投下前に少しだけ前書きさせてください
今回、質問箱やDMなどで、「こういう話が見たい!」というリクエストを色々いただきました
その中でいくつか自分も書きたいと思ったものを完結7周年記念の番外編として投下予定です
ただし現状ではまだ書けていないものもありますので、ひとまず書けたものから順次投下していく予定です
今日の時点では投下するのは一つのみで、それほど長い話ではありませんが、お付き合いいただけたらと思います
よろしくお願いします
13
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:13:28 ID:uhXbqOOM0
しゅごいの!!待ってました!
14
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:15:23 ID:hO8klvI.0
【West Side Story】
――世界歴・527年――
――ヴィップ城――
( ゚∀゚)「ふぅ」
( ゚∀゚)(階段を昇り降りするだけで、一息つくなんて)
( ゚∀゚)(いくら病を得たとはいえ、情けない話だな)
( ゚∀゚)(もう若くはないことも、分かっているつもりだが)
( ゚∀゚)(どうしても昔と比較しちまうし、ショボンとも比較しちまう)
( ゚∀゚)(あいつが常に万全の状態で戦場に立っていることと比べると、俺は……)
( ゚∀゚)「……比較したって、しょうがねぇか」
( ゚∀゚)(外にでも行こうかと思ったが、従者たちもいねぇし、戻るのが億劫になるな。屋上で風にでも当たるか?)
15
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:15:24 ID:uFHJ1fYo0
"(ノ*>∀<)ノ
16
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:15:37 ID:LbBtfzoo0
楽しみすぎて噴死
17
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:15:45 ID:MsTt4iIA0
ウオオオオーーーー!!!!
18
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:17:41 ID:R7l/Px020
ジョルジュううう
19
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:17:48 ID:hO8klvI.0
( ゚∀゚)(……そういや、この前は屋上に居たらショボンに会っちまったんだったな)
( ゚∀゚)(あのときは――――)
――――ラウンジとの戦いは、しばらくお前に任せた。
迷惑かけてすまん。よろしく頼む――――
( ∀ )(……俺が、あいつに、頼むだなんて)
( ∀ )(情けねぇ。どうしようもねぇ体たらくだな)
( ∀ )(でも、俺が戦えない以上、ショボンにやってもらうしかねぇんだ)
( ∀ )(ハンナバル総大将が創り上げてきたこのヴィップを守るには、もうあいつを頼るしか――――)
( ゚∀゚)「情けなくて、どうしようもなくても……信じるしか、ねぇな」
( ゚∀゚)(とりあえず今日は、寄り道せず居室に戻るとするか)
ミ,,゚Д゚彡「ジョルジュ大将」
( ゚∀゚)「ん? フサギコか、どうした?」
20
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:19:21 ID:hO8klvI.0
ミ,,゚Д゚彡「お加減はいかがですか? まだ病を得てから日が浅いところですが」
( ゚∀゚)「今日は悪くねぇな。とはいえ、あんまり無理するわけにもいかねぇが」
ミ,,゚Д゚彡「これから、大将室に戻られるところで?」
( ゚∀゚)「そうだな、厠に行ってきただけだからな」
( ゚∀゚)「少し、城外を散歩でもしようかと思ったが、従者たちに余計な心配や手間をかけるのもな」
ミ,,゚Д゚彡「それでしたら、私が付き添います」
( ゚∀゚)「ん? お前がか?」
ミ,,゚Д゚彡「外光を浴びたり、風を感じたりしないと、気が塞がってしまうでしょうし。今後のヴィップについて相談したいこともあります」
( ゚∀゚)「そうか。まぁ、たまにはそうしたほうがいいと侍医からも言われてるしな。お前が来てくれるんなら、従者たちも安心だろう」
ミ,,゚Д゚彡「はい。よろしくお願いします」
壁|ゝ`)
(´<|壁
21
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:19:32 ID:y0cCGXkI0
ジョルジュ!!
22
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:19:33 ID:wIFxC2jU0
懐かしい
23
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:21:03 ID:y0cCGXkI0
サスガ兄弟!!
24
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:21:04 ID:hO8klvI.0
( ´_ゝ`)「よし、行ったな」
(´<_` )「危なかったな。フサギコが機転を利かせてくれて助かった」
( ´_ゝ`)「なんであいつあんなにすらすらと誘導する言葉が出て来るんだ? 前世と来世は詐欺師だろ絶対」
(´<_`;)「前世はともかく、来世まで詐欺師にしてやるなよ」
( ´_ゝ`)「とにかくこれで時間は稼げる。今のうちに準備を進めよう」
(´<_` )「既にヒッキー少将が”例のもの”を運び込んでいるはずだ。俺たちも手伝おう」
( ´_ゝ`)「あまり時間がないぞ。早くしろオトジャ」
(´<_`;)「寝坊しておいてその態度とは、流石すぎるなアニジャ」
・
・
・
<ヽ`∀´>「玉葱が足りないニダ。あと椎茸も。こっち持ってきてニダ」
<ヽ`∀´>「そうニダ、チヂミは浅い平鍋に均等に生地を流すニダよ。厚さが不均等になると熱の通り方に差が出ちゃうニダ」
<ヽ`∀´>「そっちのナムルはもう持ってっていいニダよ。早く運ばないと間に合わないニダ」
<;`∀´>「あっ、そのチゲはまだ煮込みが足りないニダ。もうちょっと待つニダ」
25
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:21:51 ID:y0cCGXkI0
ニダーwww
26
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:22:52 ID:hO8klvI.0
/ ゚、。 /「ニダー中将、お手伝いに来ました」
<ヽ`∀´>「おお、ダイオード。助かるニダ。早速だけどタッカルビを作ってほしいニダ」
/ ゚、。;/「いや、あの、作り方が分かりません」
<ヽ`∀´>「鶏肉の仕込みは終わってるし、他の材料と調味料はすべて用意してあるニダ。指示するからとりあえず鍋を火にかけるニダ」
/ ゚、。;/(自分で別の料理しながら指示できるんだ。さすがだなぁ)
<ヽ`∀´>「他の将校たちはどうしてるニカ?」
/ ゚、。 /「ジョルジュ大将が居室に戻りそうになったところを、フサギコ少将が上手く外に連れ出してくれたそうです」
<ヽ`∀´>「さすがフサギコニダね」
/ ゚、。 /「あとは、今のうちにヒッキーさんたちが”例のもの”を運んでいるはずですね」
/ ゚、。 /「これ、もう鶏肉入れちゃってもいいんですか?」
<ヽ`∀´>「熱は充分ニダね。いいニダよ。皮目から焼くニダ」
<ヽ`∀´>「あんまり長いこと外に連れ出してジョルジュ大将の身体に障ったら元も子もないニダ。急いだほうがいいニダね」
/ ゚、。 /「はい。あまり時間がありません。焼き目ついたので裏返します」
<ヽ`∀´>「いい感じニダ。急ぐとは言っても料理の出来栄えに妥協はしないニダよ」
<ヽ`∀´>「さぁみんな、出来上がったものはどんどん運ぶニダ! ファイティン!」
27
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:23:16 ID:AsXBhTy20
キャラたちが動いてるのを見るとそれだけでもうじーんとくるな……
28
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:24:42 ID:kSt5Snxc0
ニダー料理すごいな…
そして懐かしすぎる
29
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:25:09 ID:hO8klvI.0
・
・
・
(-_-)「……慎重に運んでくれ、転んで割ったりしないようにな……」
(´<_` )「ヒッキー少将、運んできました。これはどこに?」
(-_-)「……オトジャか……それは、袖机の上だ……頼んだ……」
( ´_ゝ`)「おーいオトジャ、こっちも頼……あっ」
(´<_`;)「おい!」
(;-_-)「……転んで割ったりしないようにと、他の者に言ったばかりなんだが……」
(´<_`;)「おぉ、よく掴みましたね、ヒッキー少将。流石です」
( ´_ゝ`)「流石、将官は違うよなぁ」
(´<_`;)「アニジャが気を付けていれば良かっただけの話なんだがな」
(-_-)「……とにかく、あまり時間がない……急ごう……」
・
・
・
30
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:27:03 ID:hO8klvI.0
( ゚∀゚)「今日は、そんなに寒くねぇな」
ミ,,゚Д゚彡「ええ。天気も好いですしね」
( ゚∀゚)「少し前までは、こんな風に外に出ることさえ叶わなかった。それを思えば、多少は良くなってきてるんだろうな」
ミ,,゚Д゚彡「一日も早く復帰していただきたい気持ちでいっぱいです。ラウンジとの最終決戦が控えていますから」
( ゚∀゚)「そうだな。でもまぁ、今度は東塔の連中もいるしな。今までとは勝手が違ってくる」
ミ,,゚Д゚彡「しかしやはり、ジョルジュ大将のお力がないと」
( ゚∀゚)「今のショボンは全土最強の武将だ。俺がいなくたって何とかしちまうだろ」
ミ;,,゚Д゚彡「いえ、指揮能力や戦局眼ではやはりジョルジュ大将が優るものと存じます。ショボン大将はまだ経験が浅く」
( ゚∀゚)「俺だって認めたくはねぇよ。けど、客観的に見れば随一だろうな、やっぱり」
( ゚∀゚)「あいつがオオカミを滅ぼす間に俺がラウンジから奪った城は、情けねぇが、そう多くない」
ミ;,,゚Д゚彡「相手が違います。大国ラウンジとオオカミでは、単純な比較はできません」
( ゚∀゚)「そりゃそうだが、それにしても、な」
ミ,,゚Д゚彡「今後のラウンジとの戦いで、ショボン大将の真価が問われます」
ミ,,゚Д゚彡「疑念を挟む余地のない結果を残さない限り、ジョルジュ大将を超えたとは認められません」
31
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:28:29 ID:uFHJ1fYo0
なんでだろう泣けてくる
32
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:29:06 ID:hO8klvI.0
( ゚∀゚)「お前の気持ちは、嬉しく思う。けど、俺はしばらく戦に出れねぇ。総指揮はどうしてもショボンになる」
( ゚∀゚)「下手に反発して、東塔との間に軋轢を生むなよ。今後のラウンジ戦では命取りになるぞ」
ミ;,,゚Д゚彡「もちろんそれは、重々承知しておりますが」
( ゚∀゚)「それならいい。上手くやってくれ」
( ゚∀゚)「……身体が少し冷えてきたな。そろそろ戻るか」
ミ,,゚Д゚彡「そう、ですね。お身体に障る前に、戻りましょう」
( ゚∀゚)「あぁ」
ミ;,,゚Д゚彡(……ジョルジュ大将、やはり少し、以前より気弱になってしまっているように感じられる)
ミ;,,゚Д゚彡(少し前のジョルジュ大将なら、ショボンを認める言葉なんて、絶対口にしなかったのに)
ミ;,,゚Д゚彡(口では戦場に戻りたいと仰っていても、心の中ではもう、復帰は難しいと思っているのかもしれない)
( ゚∀゚)「ふぅ」
ミ,,゚Д゚彡(やはり、なんとしてでも以前のような活力を取り戻していただかないと)
ミ,,゚Д゚彡(そのための計画だったけど、みんなもう準備は終わってるのか? 大丈夫か?)
ミ,,゚Д゚彡(気になるけど、これ以上はもう連れ回せない。みんな、頼むぞ!)
・
・
・
33
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:31:14 ID:hO8klvI.0
ミ,,゚Д゚彡「いったん休息を取りますか? 大将室への階段は長いですから」
( ゚∀゚)「おいおい、そこまで重病じゃねーよ」
ミ,,゚Д゚彡「申し訳ありません、ではこのまま」
( ゚∀゚)「ま、昇りきったあとに多少息が乱れはするが、大したことねー。心配すんな」
ミ,,゚Д゚彡「はい」
ミ,,゚Д゚彡(……どことなく、嘯いているように感じてしまうのは、気にしすぎだろうか……)
( ゚∀゚)「ふぅ。やっと着いたな」
ミ,,゚Д゚彡「えぇ。中までご一緒してよろしいですか?」
( ゚∀゚)「ん? まだ何か話したいことでもあんのか?」
ミ,,゚Д゚彡「はい。お疲れでしょうか?」
( ゚∀゚)「楽な姿勢になっててもいいんなら話せるが、それでいいか?」
ミ,,゚Д゚彡「ありがとうございます。よろしくお願いします」
ガチャ
( ゚∀゚)「ん? なんだ、この匂い」
34
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:32:37 ID:y0cCGXkI0
何する気だ
35
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:33:09 ID:pt4.uWww0
支援……は要らないんだろうけど支援
36
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:33:14 ID:hO8klvI.0
ミ,,゚Д゚彡「ジョルジュ大将、奥の部屋へどうぞ」
( ゚∀゚)「いい匂いだな」
ガチャ
( ゚∀゚)「ん、これは……花?」
( ゚∀゚)「……梅の花か?」
ミ,,゚Д゚彡「勝手な真似をして申し訳ありません、ジョルジュ大将。実は」
( ´_ゝ`)「病床のジョルジュ大将を元気づけようと、お部屋での花見をみんなで考えまして」
( ゚∀゚)
(´<_` )「梅の花が咲いていたので、お料理と一緒にご用意しました」
<ヽ`∀´>「ウリの故郷の料理ですニダ。侍医と相談しながら身体にいい食材を取り入れましたニダ」
ミ,,゚Д゚彡「よかったら少しの間、我々と一緒に――――」
( ∀ )「…………」
ミ;゚Д゚彡「……ジョルジュ大将?」
(;´_ゝ`)「おい、これ怒らせたんじゃないか? 全部黙ってやったことだし」
(´<_`;)「まずいな。ハハジャとイモジャに遺言を残し忘れた」
(-_-)「…………」
37
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:34:19 ID:MToowkp.0
ときめきが止まらない
38
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:35:05 ID:SjK4iqw.0
西搭のこういう話いいなぁ
39
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:35:38 ID:hO8klvI.0
<;`∀´>「アイゴー、気に障ったようならチェーソンハムニダ、ジョルジュ大将」
( ゚∀゚)「ん?」
( ゚∀゚)「……あぁ、いや。そうじゃねぇんだ」
( ゚∀゚)「一瞬、桜の花かと思って」
(-_-)「……!」
( ゚∀゚)「ちょっと、驚いてただけだ。すまんな」
(´<_` )「あぁ、そうでしたか、よかった。桜の枝は切るなって言いますもんね」
( ´_ゝ`)「桜切る馬鹿、梅切る馬鹿だっけ?」
(´<_` )「『アニジャは馬鹿」も追加な。正しくは梅切らぬ馬鹿だ」
( ´_ゝ`)「あぁ、そうだったな」
( ゚∀゚)「礼を言う。わざわざ気遣ってみんなで準備してくれたんだな」
<ヽ`∀´>「ジョルジュ大将に一日でも早く元気になってもらいたいからですニダ」
(´<_` )「ラウンジとの戦も控えていますしね。ジョルジュ大将なしでは戦えません」
( ´_ゝ`)「我ら西塔所属の将の力を存分に見せるときがやってきますからね」
(-_-)「……お身体に差し障りがない範囲で、楽しんでいただければ……」
( ゚∀゚)「あぁ、そうさせてもらうよ」
40
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:36:25 ID:y0cCGXkI0
本編読み返しながら番外編を読んでる
このあと伝説の70話に繋がるのか
41
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:36:36 ID:kSt5Snxc0
アニジャは馬鹿wwwwww
42
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:37:27 ID:hO8klvI.0
・
・
・
( ゚∀゚)「おっ、うめぇなこれ。なんていう料理だ?」
<ヽ`∀´>「デジプルコギっていう料理ですニダ。豚肉に甘めの味がついてますニダ」
( ゚∀゚)「へぇ。お前の郷土料理って辛いもんばっかだと思ってたよ」
<ヽ`∀´>「確かにそういうのも多いですニダ。でも今日はどの料理も唐辛子は抜いてますニダ」
ミ,,゚Д゚彡「この鶏肉のも美味しいですね。これは?」
<ヽ`∀´>「それはタッカルビニダ。ダイオードが作ってくれたニダ」
( ゚∀゚)「そういや、ダイオードは?」
(-_-)「……仕事に戻っています……やるべきことは自分が全部やっておきますと言って……」
( ´_ゝ`)「優秀な部下を持って嬉しいよ俺は」
(´<_` )「真っ先に仕事押し付けようとしたもんな、アニジャ」
( ゚∀゚)「そうか。あいつも頑張ってくれたんだな」
43
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:39:27 ID:hO8klvI.0
( ´_ゝ`)「私もこの梅の花を頑張って運びました」
(´<_` )「土器を割りそうになってたけどな。手配してくれたのはヒッキー少将だしな」
( ゚∀゚)「そうなのか、ヒッキー。意外だな」
(-_-)「……所有地にたくさん梅の木がある商人と、たまたま知り合っただけです……」
<ヽ`∀´>「その話をフサギコが聞いて、今回のことを企画してくれたんですニダ」
ミ,,゚Д゚彡「話をしたら皆さんすぐ動いてくれて、ありがたかったです」
( ゚∀゚)「そうか……」
( ゚∀゚)「…………」
ミ,,゚Д゚彡「……ジョルジュ大将、やはりお疲れですか? 少し休まれますか?」
( ゚∀゚)「いや、食が細っててな。全部の味を確かめたら腹いっぱいになっただけだ」
( ゚∀゚)「俺はあっちの椅子に座ってるから、お前らたくさん食べろよ」
ミ,,゚Д゚彡「そうですか、分かりました。では遠慮なく」
・
・
・
44
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:40:50 ID:y0cCGXkI0
アニジャがいちいち面白いなw
45
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:41:22 ID:hO8klvI.0
( ´_ゝ`)「チゲってやつ初めて食べましたけど美味しいですね。温まります」
<ヽ`∀´>「本当は唐辛子が入るからもっと熱くなるニダ」
(´<_` )「辛い物が苦手なら、これくらいがちょうどいいかもしれませんね」
ミ,,゚Д゚彡「ナムルっていうんでしたっけ、これも美味しいです」
<ヽ`∀´>「オモニ直伝のナムルニダ。昔から好きだった料理ニダ」
(´<_` )「あの短時間でこれだけ作れるなんて、流石ですね」
・
・
・
( ゚∀゚)「…………」
(-_-)「……ジョルジュ大将……」
( ゚∀゚)「ん? どうした、ヒッキー」
(-_-)「……体調は、問題ありませんか……?」
( ゚∀゚)「あぁ。美味いもん食ったし、花も綺麗だしな。気分はいい」
(-_-)「……先ほど、仰られていましたね……」
( ゚∀゚)「ん?」
46
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:43:59 ID:hO8klvI.0
(-_-)「……桜かと思った、と……」
( ゚∀゚)「……あぁ、お前は気づいたか」
(-_-)「……今でも時折、思い出します……ハンナバル総大将が亡くなった日は、桜吹雪が舞っていました……」
( ゚∀゚)「そうだったな。桜の散る季節の、風が強い夜だった」
『――――桜は、まだ咲いてる……かな?』
( ゚∀゚)(あのとき、ハンナバル総大将は、何を思っていたんだろうか)
( ゚∀゚)(散りゆく桜に、何を、重ねていたんだろうか)
( ゚∀゚)「…………」
(-_-)「……あれから時が経ち、ヴィップも随分、変容しました……」
(-_-)「……実質的に、二つの勢力に分かれ、それぞれで戦い……強国たちと渡り合ってきましたが……」
(-_-)「……ハンナバル総大将亡きあとのヴィップが、敵国に潰されず戦えていたのは、ジョルジュ大将の存在が大きかったと……」
(-_-)「……それだけは、確信しています……」
( ゚∀゚)「珍しいことを言うもんだな、ヒッキー。でもお前は、世辞を言うほうじゃないよな」
(-_-)「……はい……」
( ゚∀゚)「素直に受け取っておくとするか」
47
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:46:06 ID:hO8klvI.0
( ゚∀゚)(……そうだな。ハンナバル総大将がいなくなったあとのヴィップを支えたのは、俺だ)
( ゚∀゚)(不遜でもなんでもない。間違いなくそうだ)
( ゚∀゚)(それを誇りに思ってきた。これまでも、そして、これからも)
(-_-)「……多くを喋りすぎました……ご無礼を……」
( ゚∀゚)「いや、いいんだ。礼を言わせてもらう」
( ゚∀゚)「お前たちの、おかげだ。大事なことを思い出せた」
( ´_ゝ`)「そういやオトジャ、お前さっき『アニジャは馬鹿』って言ってなかったか?」
(´<_` )「幻聴だろ、どう考えても」
( ´_ゝ`)「そうか、幻聴か。そりゃそうだよな」
( ´_ゝ`)「…………」
(#´_ゝ`)「いや絶対違うぞ! はっきり言ってただろ! このおたんこなす! あんぽんたん!」
(´<_`;)「悪口が子供すぎるぞ、アニジャ」
48
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:46:20 ID:R7l/Px020
大好きだった作品にまたこうやって立ち会えて感無量で泣きそう
49
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:47:45 ID:y0cCGXkI0
このヒッキーとの会話が何とも……
この時ジョルジュは誰も信じられなかったんだよな
50
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:48:13 ID:hO8klvI.0
ミ;゚Д゚彡「あまり騒がしくしないでくださいよ。そんな子供じみたことで」
(#´_ゝ`)「なにー! お前まで俺を子供扱いして! 子供に失礼だろ!」
(´<_`;)「そっちに失礼なのか」
ミ;゚Д゚彡「とにかく、落ち着いて」
( ゚∀゚)「……はぁ、まったく」
ミ;゚Д゚彡「あっ、ジョルジュ大将」
( ゚∀゚)「アニジャ、オトジャ。兄弟仲がいいのは悪いことじゃねぇけど、お前らには大人の貫禄ってのも欲しいところだな」
(´<_`;)「申し訳ありません」
( ´_ゝ`)「ほら、オトジャのせいで怒られたじゃないか」
(´<_`;)「ほぼアニジャのせいだと思ってるが、まぁ二人とも悪い」
( ゚∀゚)「フサギコも上官らしく厳しめに言ってやれ。年長者への敬いはもちろん大事だが」
ミ;゚Д゚彡「はい。今後意識します」
( ゚∀゚)「ニダーも食うのに一生懸命になってないで止めてやれ。お前が仲裁するのが一番だろ」
<;`∀´>「チェーソンハムニダ。作った料理の味が気になっちゃってましたニダ」
( ゚∀゚)「やっぱ、お前らだけにはまだまだ安心して任せられねーなぁ」
( ゚∀゚)「いつまでも病床で寝てらんねぇ、俺がいてやらねーと」
51
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:49:28 ID:MToowkp.0
69話読み返しつつこちらリロードしてるwktk
52
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:50:10 ID:hO8klvI.0
( ´_ゝ`)「そのとおりです。やはりジョルジュ大将に上に立っていただかなければ」
(´<_` )「本当は安心して任せていただくのが一番ですが、未熟な部分も多くあります」
ミ,,゚Д゚彡「今後も我々を導いてください、ジョルジュ大将」
<ヽ`∀´>「ウリたちも精一杯、ジョルジュ大将を支えますニダ」
(-_-)「……そのつもりです……」
( ゚∀゚)「改めて礼を言うよ。でも、心配されなくたって俺はすぐ戦場に戻るさ」
( ゚∀゚)「ちょっとだけ不在の間は迷惑かけるが、俺が今まで教えてきたことをよく思い出して頑張れ」
( ゚∀゚)「俺がいない間にラウンジに押されて城を奪われたりするんじゃねーぞ」
53
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:50:58 ID:kSt5Snxc0
こう見ると西塔かなり生き残ってるんだな
54
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:51:02 ID:hO8klvI.0
<ヽ`∀´>「みんなを取りまとめる役として、一層精進しますニダ!」
ミ,,゚Д゚彡「死力を尽くします!」
( ´_ゝ`)「サスガ兄弟ここにありと見せつけてきます!」
(´<_` )「皆がサスガ兄弟の名を忘れられないようにしてやりますよ!」
(-_-)「……頑張ります……」
( ゚∀゚)「あぁ」
( ゚∀゚)「……頼んだからな」
【West Side Story : End】
55
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:51:07 ID:x4pFnYmQ0
ヒッキーとジョルジュの関係好きだなあ
56
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:52:40 ID:uFHJ1fYo0
すごくいい………………。
やはり西塔も好きだよ……
57
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/16(水) 23:52:52 ID:hO8klvI.0
【West Side Story】は以上です、ありがとうございました
気づいてくれた方もいましたが、時系列的には第69話あたりのお話ですね
久々に西塔の面々を書きましたが楽しかったです
58
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:54:15 ID:SjK4iqw.0
乙
リクエストした者だけど本当によかった
ありがとうございました
59
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:54:32 ID:KnuyYbJM0
感無量
60
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:55:51 ID:5r11r01M0
アルファ番外編有難うございます!
61
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:57:15 ID:MToowkp.0
乙です!
まさかアルファの現行を今読めるとは……当時追えなかったので嬉しいです。
次も楽しみにお待ちしてます。
62
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:57:51 ID:61Gkfbqs0
投下乙です!
まさかまたアルファベット読めるとは...内容も相まって感動で泣きそうだわ
63
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:59:17 ID:2BUC2mck0
西塔のゆるいが泣ける漢たちの話、最高だった
現行で見れて本当に良かった
乙乙乙!
64
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:59:22 ID:y0cCGXkI0
乙……!!
アルファの投下は色んな感情が蘇りますね……感慨深い……
やっぱり69話あたりの話ですよね
この番外編のおかげで新鮮な気持ちで69話以降を読み返せます
65
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 23:59:41 ID:AsXBhTy20
西塔側のメンバーが見れて嬉しい
本当にありがとう、乙
66
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 00:00:09 ID:7bAkMrrY0
やっぱり西塔を・・・最高やな!
67
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 00:00:10 ID:MgJHJuyY0
書きたいこと多すぎて感無量とか書いたけど。
学生時代大好きで、70話が投稿される少し前から読んで、やっと追いついて70話を見た時の鳥肌といい絶望感といい、すごい作品でした。番外編、当時の続きを早く見たい気持ちが蘇り、なんだか涙が出てきそう。
本当にありがとうございます。
68
:
◆azwd/t2EpE
:2019/01/17(木) 00:00:48 ID:i4hvC4dI0
次のお話の投下がいつごろになるかは未定ですが、
書いてる途中ではあるので、なるべく早めに投下できればと思っています
また、「こういう話が読みたい」というリクエストは一応今も受付中です
めちゃくちゃたくさんは書けないと思いますが、せっかくの機会なので、一つでも多く書ければと思っています
このスレへのレスでもOKなので、お気軽にリクエストしてくださればと思います
書きたい度合いが同じくらいなら要望が多いものを優先することもあると思うので、他の方の要望とかぶってもOKです
あと、アルファについての感想や思い出なども、
いろいろ書いてもらえると自分が喜びます
結論:アルファに関することならだいたいなんでもどうぞ
69
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 00:02:00 ID:JHTZBTDg0
お疲れ様です!
何度も読み直してるだけあってすぐにあの頃へ戻れました!
他の話も楽しみにしています!
70
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 00:04:46 ID:BYUT03xQ0
乙です!
まとめでしか読んだこと無かったのでこうして生で見られて感動してます!
71
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 00:09:52 ID:gKrX1mKQ0
乙です!
西塔の面々も個性的で魅力あるなと再確認しました。
そしてあの70話に繋がると思うと…
次作の番外編も楽しみにしています!
72
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 00:10:02 ID:hRj6Iqms0
70話以降の絶望ったら無いよね……
(゚Д゚;≡゚Д゚)??!!←当時はリアルにこの顔して読んでました。
その前にポケモンも読んでいて、今後は西塔と力を合わせて戦っていくと思っていたので、まさかこんな展開になるなんて……?!(今思うと激熱展開なんですが)と。
アルファもポケモンも何回も読み返してます。好きです。
73
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 00:10:53 ID:UN4R/uM20
投下本当に有難う御座います…
まさかアルファの新作をもう一度読めるとは…
74
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 00:12:39 ID:hPJDauyY0
乙!アルファを読み始めた時、俺は高校生で、ガラケーでまとめを見てただけだった。あれから何年も経って社会人になって、初めてリアルタイムで読めて本当に嬉しく思う!!ありがとう作者さん!!
75
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 00:13:30 ID:4I0ojt7o0
乙です。
当時公私ともにつらい時期に、更新されるたびになにもかも忘れて興奮できたのを思い出しました。
やっぱジョルはええな〜。そりゃショボも惹かれるよな。
76
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 00:15:41 ID:D7qFseUs0
乙です!
77
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 00:18:43 ID:Ge4I6dfg0
最後のジョルジュのセリフがもう……
マジであのしょぼくれ(´・ω・`)は許せんよな
でもルージアルもめっちゃカッコよくて好きなんだよなぁ……やっぱりアルファは最高です
78
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 00:27:21 ID:suuKe3.A0
乙です
サスガ兄弟やっぱいいキャラしてる
79
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 00:47:33 ID:Ge4I6dfg0
あかんわ、興奮が冷めない
80
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 01:28:44 ID:.l.cLwTo0
オマァーーーーーっ〜!
81
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 01:41:44 ID:s4LwU2VY0
興奮するわ
82
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 02:32:01 ID:clXZy2uE0
ミルナとドクオの関係が好きだ
83
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 08:07:13 ID:sv0yhsQg0
乙!!
84
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 12:15:02 ID:OvuNhCSQ0
乙です!
アルファ完結7周年おめでとうございます。
こうしてまたアルファが読めるとは思いませんでした( ;∀;)
本当にありがとうございます!
85
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 16:12:43 ID:L5iCBS2g0
アルファとかまじかよ!!!
最高やんけ!!!
彼女にも読ませたけど絶賛してたよ!!
86
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 19:20:24 ID:x5igev2w0
――ミーナ城――
止まった。
城壁の上にいるショボンの動きが、止まった。
同時に、自分の動きも。
(;゚ω゚)「な……なんで……」
何故、ここにいる。
どうして。
この状況で、何故、現れたのだ。
どうしてここに。
(´・ω・`)「これは、驚いた……まさかお前が……」
ここにいるはずのない男。
ありえないはずの男。
しかし、いる。
確かにここにいる。
懐かしき、友が。
(‘_L’)「作者乙を言いに来ました…」
87
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 21:37:08 ID:25w4LSmA0
今北産業
88
:
名無しさん
:2019/01/17(木) 22:30:05 ID:Jz84v2yY0
作者の丁寧な文体や性格も含めたアルファだよなぁ
89
:
名無しさん
:2019/01/18(金) 21:13:03 ID:CuTabAzU0
フサギコはサスガ兄弟見ててどんな気持ちだったのかな?
ギコと何とか仲直りさせてあげたかったと今でも思うよ
90
:
名無しさん
:2019/01/20(日) 04:47:50 ID:k3KNJegc0
次はいつ頃だろ?
当時の楽しみが帰ってきて嬉しいなー
91
:
名無しさん
:2019/01/20(日) 11:29:37 ID:m17laZdI0
めっちゃよかった
気のきいたことはいえないけど、ありがとう、面白かった
92
:
名無しさん
:2019/01/20(日) 22:59:40 ID:JPRBimWs0
今のブーン系でこんだけレスを集めるとは流石だわ待ってましたありがとう
93
:
名無しさん
:2019/01/21(月) 19:46:06 ID:Y1Z2la820
乙乙
西塔の話が読めて嬉しい……
今も昔もアルファが一番好きです
94
:
名無しさん
:2019/01/21(月) 22:59:50 ID:VYiO.kVo0
ブーン芸さん仕事早い!
まとめられてたね
95
:
名無しさん
:2019/01/23(水) 17:46:03 ID:qv7Q8/820
ifで、ヴィップラウンジオオカミの将校がみんなこぞって登場する話とかみたいな〜
ハンナバル時代からも含めてみんなに出てきてもらいたい!
96
:
名無しさん
:2019/01/24(木) 10:32:09 ID:jbLXKnL.0
まさか平成も終わろうかというこのタイミングにアルファの新作とかマジか
懐かしくなってきたしまた読み返そうかな
97
:
名無しさん
:2019/01/25(金) 01:35:51 ID:E5BtHeXo0
乙
まさかの新作
98
:
名無しさん
:2019/01/25(金) 05:41:32 ID:jOmX1ILE0
ブーン系小説のまとめサイトでアルファを知り一気に読んでハマりまさか現行でアルファを読めるとか嬉し過ぎる
またゆっくり読み直してくるわ
投下乙!
99
:
名無しさん
:2019/01/29(火) 22:27:21 ID:u./C45Lg0
まさかまたアルファが読めるなんて
2019年は最高だ
100
:
名無しさん
:2019/01/30(水) 02:39:11 ID:j7BA2SOY0
投下乙です
70話はまとめで読んでたのに釣りかと思ったわ懐かしいw
101
:
名無しさん
:2019/02/15(金) 20:46:38 ID:2yyF8exs0
アルファ番外とかあったんか
しかも一回きりじゃないとか嬉しくさせてくれるじゃないの
102
:
名無しさん
:2019/02/23(土) 05:53:13 ID:Z5Q7ds.I0
久しぶりに創作板見てよかったまさかの投稿
乙
103
:
名無しさん
:2019/02/24(日) 11:47:22 ID:IDWVbHUk0
エイプリルのやつと合作あげてくれ(笑)
104
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 02:32:02 ID:VEVSdu0o0
たくさんレスありがとうございます
前回から二か月ほど経ってしまいましたが、次のお話を21日の夜に投下できると思います
お時間ある方、お付き合いいただけたら嬉しいです
105
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 03:12:42 ID:aepLhl1k0
全裸待機wktk
106
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 10:19:32 ID:UfKdBslE0
期待
107
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 15:30:16 ID:WPkTqpy20
あと一週間。。。
108
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 21:41:17 ID:a/TiUVXg0
今日じゃねーの?
109
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 21:42:14 ID:hc0MPZ4.0
アルファをリアルタイムで追えるとは・・・作者さんにはありがとうとしか言えない
110
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:29:52 ID:VEVSdu0o0
これから投下します、よろしくお願いします
111
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 22:31:23 ID:UGXRPMhc0
\( ‘ω’)/ウオオオオアアアアーッ!
112
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:31:53 ID:VEVSdu0o0
【最後の夜、静かな夜】
――世界歴・526年――
――ヒトヒラ城南東の森――
上下に揺れる火が近づいてくることに気づいて、意味もなく目を伏せた。
雨水を含んだ泥の、跳ねる音も同時にやってくる。
何人かが無言で走り抜けたあと、誰かの大声が遠来した。
しかし、なんと言ったのかまでは聞き取れない。
恐らくは、兵に対する指示の声だろう。
間違いなく、探している。自分と、フィルを。
この森でなんとしても、しとめるべく。
〔;´_y`〕(かなりまずい。このままでは、見つかるのは時間の問題だ)
自分の周りには誰も居ない。
既に陽が落ちてからかなり時間が経ち、月が雲の裏に隠れていることもあって、自分の足元さえよく見えないほど森の中は暗かった。
敵に見つかりにくい状況ではあるが、もし見つかってしまえば、間違いなく命はないだろう。
〔;´_y`〕(ラウンジに野戦で勝つのは厳しいと思っていたが、それにしても……)
ファルロ=リミナリーを主戦とするラウンジ軍に、散々に打ち破られた。
野戦を得意とするフィルが、その野戦で、ことごとくファルロに上回られた末の敗戦だった。
113
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:33:30 ID:VEVSdu0o0
恐らくファルロの力だけではなく、戦を組み立てたであろうカルリナ、総指揮を執ったアルタイムの力も合わさった故の強さだ。
それに引き換えオオカミ軍は、フィルの野戦の上手さに恃んだだけの戦い方だった。
自分も可能な限りフィルを支えたが、それだけではどうしようもないほどの勢いの差を感じた。
しかし、元より兵力差のある戦いだった。
ラウンジ軍、十四万。それに対するオオカミ軍、六万。
倍以上の兵を有する相手に正面から戦っては、勝てないのは当然だった。
〔;´_y`〕(最初から、まともに戦う気はなかった)
〔;´_y`〕(不意をついて相手をかき乱して、少数の兵でヒトヒラ城を守り、オオカミ城への撤退を視野に入れるつもりだったが)
あまりにも考えが甘かった。
不意をつく隙など、ラウンジは与えてくれなかった。
まともな戦いに、させられてしまった、というべきだろう。
野戦で敗北したあと、ヒトヒラ城に逃げ帰ることも許されなかった。
ラウンジが一足早くヒトヒラ城に押し寄せ、降伏を迫ると、呆気なく城兵は開門したという。
野戦での惨敗が伝わっていたのだろう。城兵のことは、責めたくても責められなかった。
ミーナ城がどうなっているか分からない現状では、もはや、オオカミ城に戻る以外の選択肢はなかった。
しかし、ヒトヒラ城からオオカミ城はかなり遠い。
何より、既にラウンジが兵をオオカミ城に向かわせているのだ。
最短でオオカミ城に向かう道には、間違いなくラウンジ兵が待ち構えているだろう。
だからといって遠回りしていては時間を多く失う。
どうすべきかと判断に迷っていたところでラウンジの追っ手に見つかり、手勢は散らされ、僅かな供の兵と一緒にこの森へと逃げ込んだ。
森で多くの者が固まっていれば、敵に発見されやすくなる。
それ故に、あえて散り散りになって動くことを選んだ。
自分の命だけを守れ。自分のことだけを考えろ。そう命令して。
そうして、独りの夜を迎えていた。
114
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:34:58 ID:VEVSdu0o0
〔;´_y`〕(決して広い森ではない。朝になって見通しが良くなれば、間違いなく敵に見つかる)
〔;´_y`〕(夜の間になんとしても、この森から脱出しないと)
今更、自分の命が惜しいわけではない。
しかし、国を守るために、一人でも多くの命を守るために。
まだ、中将として為すべきことが多くあるのだ。
そのために自分は、生き延びなければならない。
〔;´_y`〕(森の外はラウンジ兵に囲まれているだろう。不用意に出れば間違いなく討たれる)
〔;´_y`〕(ラウンジ兵のふりをして抜け出すか、ある程度の人数を集めて強引に突破するか。そのどちらかしかないが)
選択肢が二つしかないことが、情けなかった。
これがフィルなら、もう一つ、強力な選択肢が存在する。
単騎で敵の包囲を突破するという選択肢だ。
フィルが使用するアルファベットはR。壁は超えていないが、ラウンジのほとんどの将兵を上回るアルファベットだ。
また、フィル自身に果敢さもあり、複数の兵に囲まれたところで簡単には怯まないだろう。
単騎突破は現実的な選択肢だった。
一方、自分が操るアルファベットはO。
決して弱いアルファベットではない。しかし、大国ラウンジならば自分以上のアルファベット使いは何人もいる。
知略が評価されているカルリナでさえPなのだ。あまりに見劣りしてしまうアルファベットだった。
守りに優れるアルファベットではあるが、突破向きではないだろう。
何より、自分の性格と経験も、単騎突破には向いていない。
先陣切って戦うようなことは、したことがないのだ。
115
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 22:35:45 ID:.DiXDqew0
まってた
116
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:36:54 ID:VEVSdu0o0
〔´_y`〕(後方支援に優れるなどと、皮肉のように言われてきたが、誇りにも思ってきた)
〔´_y`〕(しかし、いざ絶命の危機に陥ってみると、何の役にも立たないんだな)
潜めていた息が、自嘲気味に口から漏れた。
悔やんだところで、今更、新兵に戻ってやり直せるわけでもない。
今できることを、やりきるしかないのだ。
〔´_y`〕(フィルも同じようにこの森に逃げ込んだはずだが、もう脱出したのか?)
〔´_y`〕(もしフィルを討ち取ったようなことがあれば喚声が上がってもおかしくないが、それは聞いていない)
〔´_y`〕(できれば無事に生き延びていてほしい。あいつの代わりは、そうはいない)
辺りを二度、三度と見回した。
遠くには火が見える。干戈の音も聞こえる。
まだ、戦いは続いていた。
自分の代わりなどは、いくらでもいる。
それは、自分自身が一番よく分かっていた。
しかし、指揮力があり、武力もあるフィルは、オオカミではミルナに次ぐ存在だ。
他国でも中将級の扱いを受けることは間違いない。あまり意見は合わなかったが、有能な将なのだ。
オオカミが生き残るために、絶対にここで失ってはならない戦力だった。
〔´_y`〕(いざとなれば、この命を擲ってでも)
フィルを生かす。フィルを、守る。
アルファベットOの柄を強く握りながら、そう思った。
117
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 22:37:02 ID:o4/zSIGM0
きた
118
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:38:55 ID:VEVSdu0o0
雨が止んだことで、方々に灯りが見えた。
できれば降り続けてくれたほうが助かったが、残念ながら、天は敵に回ったようだ。
いや、雲を空に残してくれただけでも、良しとすべきか。
今いるのが森のどのあたりなのか、分からない。
仮に中心だとすれば、走ったとしても森を抜けるまでに二刻はかかるだろう。
見つからないように慎重に移動すれば、更に時間がかかる。悠長に機を狙っているわけにはいかなかった。
〔´_y`〕(……行こう)
自分の周りには敵も味方もいない。
音を立てないように留意しながら、ゆっくり歩き始めた。
木の影から、木の影へと。
移るたびに一息つき、周囲を窺う。
炬火が遠くで上下していた。
近いところにはない。しかし、それも罠かもしれない。
あえて、火を消して炙りだそうとしているのかもしれない。
そう思った、すぐのこと。
〔´_y`〕「!」
不意に、炎が一つ、二つと現れた。
四半里もない。大きな音を立てれば、間違いなく気づかれる。
そして、その炎が、迫ってくる。
〔;´_y`〕(まずい!)
119
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 22:39:48 ID:/YSZHvYA0
後方支援の鬼ガシュー
120
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:40:42 ID:VEVSdu0o0
咄嗟に茂みに身を隠した。
できればもう少し視線に入らないような位置に移動したいが、気づかれる恐れが高まる。
この局面ではもう、身動きは取れなかった。
そして、炎と同時に、声も徐々に大きくなっていた。
「一度、アクセリト大尉に指示を仰ぎますか?」
「それも、考えるべきだろうな」
四人ほどが固まっているようだった。
若い声と、深みのある声。しかし、将校級の兵はいないようだ。
「状況が膠着してしまっていますし、漫然と探しつづけていても体力を無駄にするだけです」
「もう森の外に出てしまった可能性も考える必要があるでしょうし」
「分かっているが、勝手な行動は取れない」
若い兵たちの、不安と苛立ちが混じった声。
同じように怒気を含めた、統率している兵の声。
絶対に声を出せない状況であるにも関わらず、笑いが漏れそうになった。
若い兵は悪くない。統率役の兵の判断が、あまりに遅すぎる。
そしてそれが、自分と重なってしまったからこそ、自分を嘲りたくなったのだ。
121
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:42:47 ID:VEVSdu0o0
〔´_y`〕(外から見ればよく分かるな)
〔´_y`〕(慎重に考えているつもりで、実は、何も考えていないのと同じだ)
〔´_y`〕(こんな状況で自分を見つめ直すことになるとは、思いもしなかったが……)
〔´_y`〕(いや、こんな状況だからこそ、か)
何かに気づける機会というのは、決して多くない。
特に、自分の弱みであれば尚更だった。
できれば、持って帰りたい。
この課題を、オオカミ城まで。
そして今後に活かしたい。
叶うならば、フィルと共に――――
〔´_y`〕(ん……?)
〔;´_y`〕(……あれは、まさか!)
近づいてくるラウンジ兵の灯りで、微かに見えた。
木に凭れかかる男の横顔が。
フィル=ブラウニーだった。
〔;´_y`〕(まずい! あの位置は、ラウンジ兵に見つかる!)
122
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:45:17 ID:VEVSdu0o0
フィルに意識があるのかどうか、分からない。
ラウンジ兵の接近に気づいて、あえて動いていないのか。
それならまだいいが、もし意識を失っているなら、間違いなく発見されて討たれる。
やるしかない。
自分が、動くしかない。
瞬時にそう判断し、アルファベットOの柄を強く握った。
「ひとまず、森の外を目指そう。指示を仰いでから再度、森に入る」
「はい。その間も、フィルやガシューを探しながら――――ん?」
「おい、あの木のところにいる兵、あれって」
「フィル=ブラウ」
――――背後から、一閃。
胴を、斜めに斬り裂いた。
アルファベットOが、鮮血を浴びて、鈍く光る。
〔#´_y`〕「ふんッ!」
身体を半分捻って、隣にいた兵が後ろに向けかけた、その首を飛ばす。
その奥にいた兵が咄嗟にアルファベットHを向けようとしてきたが、Oを押し付けるようにして倒し、上半身と下半身を分断した。
「貴様、ガシューか!」
123
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:46:55 ID:VEVSdu0o0
統率役の兵がアルファベットIを抜いた瞬間、助かったと思った。
左手に持っていた鉦を鳴らされていれば、絶体絶命の危機だったのだ。
すかさず、前に突き出された両腕を斬り落とし、安堵感に包まれながら、首を刎ねた。
〔;´_y`〕「フィル!」
倒れたラウンジ兵を跨いで、すぐさまフィルに駆け寄った。
たまたま位置関係がよく、ラウンジ兵の背後を取れたためにフィルを助けることができたが、相変わらずフィルは微動だにしない。
単に意識を失っているだけなのか、もしくは、既に――――
〔;´_y`〕「フィル、無事か!?」
フィルの側でしゃがみ、まず脈拍を確認した。
脈動が、指に伝わってくる。生きている。
しかし、腹部を押さえた左手は、赤く染まっていた。
フィルの瞼が静かに、ゆっくりと開く。
|;`゚ -゚|「……ガシュー中将……」
〔;´_y`〕「良かった、生きていてくれて」
|;`゚ -゚|「申し訳ありません、敵襲を受け……」
〔;´_y`〕「いい。命があったことが何よりだ。傷は、深いのか?」
|;`゚ -゚|「分かりません……血は止まりつつありますが……」
自分で判断できないのであれば、恐らく、浅手ではないだろう。
傷口に当てている布を剥がし、自分の衣服を肩口から破いて再び傷口に当てる。
暗闇の中では、傷の深さまでは分からなかった。
124
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:49:55 ID:VEVSdu0o0
〔;´_y`〕「動けるか? さっきここで交戦したばかりだ、離れたほうがいい」
|;`゚ -゚|「少し、手を貸していただければ、何とか……」
フィルの脇の下に腕を差し込み、抱きかかえるように身体を起こした。
背中を木に支えてもらいながら、フィルは両脚を縦にする。
なるべく闇に紛れるように、木の影になるところを選んで移動を始めた。
フィルが傷を負っていることもあって、速くは動けない。
時間をかけて移動するしかなかった。
〔;´_y`〕「今、森はラウンジ兵に囲まれている。容易には脱せない」
〔;´_y`〕「慎重に動く必要があるが、かといって、時間をかければ機に恵まれるとも思えない。厳しい状況だ」
|;`゚ -゚|「はい。しかし、時間が経てば痺れを切らして森に兵を多く投入してくると思います」
〔;´_y`〕「……そうか、なるほど。そのときラウンジ兵を上手くかわせれば、囲みを突破する機が見える」
さすがフィルだ、と思った。
森に敵兵が多く入ってくることは、絶望が増すだけだと決めつけていたが、確かに囲みは薄くなる。
増援が来てしまうと厳しいままだが、全体的に混戦となっている状況では、確実に増援が来るとも言えないのだ。
この状況でも、フィルは活路を見出そうとしていた。
やはり、オオカミのためにはこの男が必要だ。
光の宿るフィルの瞳を見て、改めてそう思った。
|;`゚ -゚|「オオカミの兵は、森の中にどれほど残っているのでしょうか」
〔;´_y`〕「分からない。逃げ込んだときは千を超える数だったと思うが」
125
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:52:18 ID:VEVSdu0o0
自分とフィルがこの森に逃げ込んだことで、ラウンジの意識を森に向けさせることはできた。
森に入らなかったオオカミの兵は、オオカミ城まで帰りやすくなっているはずだ。
それだけでも、ここに逃げ込んだ意味はあった。
あとは、フィルを生きてオオカミ城まで逃がすことができれば、御の字だろう。
|;`゚ -゚|「囲みを突破するにしても、オオカミ兵の補佐がなければ難しい。ラウンジの指揮官が誰かにもよりますが」
〔;´_y`〕「恐らく、アクセリト=ゼルフレアだ。アルタイムやカルリナなどに比べればまだいいが、甘い将ではない」
|;`゚ -゚|「しかし、アクセリトだけに任せるとも考えにくい。他にも何名か、将校が来ていても――――」
――――不意に、肩を貸していたフィルの身体に、力が入った。
そう思った直後、視界が揺れ動き、やがて木々と夜空だけが見えた。
そして、夜の闇に銀色の線を引く、アルファベットF。
〔;´_y`〕「なっ……!」
先ほどまで、自分の胴があった位置だった。
アルファベットFは、的確に自分を狙っていた。
起き上がり、振り返った先には、不敵に笑う男がいた。
[ヽ´_』`]「完璧に不意を突いたつもりだったが、さすがはフィル=ブラウニー」
[ヽ´_』`]「DでFを引き絞る音が聞こえていたのか?」
すぐさま、フィルを守るようにアルファベットOを構えた。
フィルはまだ、起き上がることができていない。
126
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:54:15 ID:VEVSdu0o0
[ヽ´_』`]「しかし、もはや不意を狙う必要もない」
[ヽ´_』`]「二人まとめて、私が首を貰うとしよう」
キヴィア=ディトリシア中尉。
構えるアルファベットは、N。
それだけなら、自分がアルファベットOで斬り伏せればいい。
一騎打ちは得意ではないが、ランクで上回るならば、勝てる確率は高いだろう。
しかし、キヴィアの背後から、茂みを掻き分ける音。
一つや二つではなかった。
〔;´_y`〕「くっ……」
恐らく、二十人はいるだろう。
まだ背後にはいないが、いずれ囲まれるだろう。
できれば後退したいが、フィルが倒れている以上、それもできない。
打開の策は、何も思い浮かばなかった。
|;`゚ -゚|「キヴィアか。不意を狙うしかないとは、いかにもお前らしい」
フィルが、左手で腹部を押さえながら、立ち上がっていた。
苦悶の表情は、隠しきれていない。
それでも、敵を見据えていた。
127
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:56:13 ID:VEVSdu0o0
|;`゚ -゚|「正面から討ち取らんとする気概はないのか」
[ヽ´_』`]「愚かな。彼我の実力差を冷静に判断したまでのこと」
[ヽ´_』`]「何せ、二人の首に私の未来がかかっているのでね。四中将を二人も討ち取ったとなれば、将官さえ夢ではない」
|;`゚ -゚|「生憎だが、その夢は叶えてやれそうにない」
|;`゚ -゚|「私が、お前の首を地に落とすことになるからな」
フィルが、アルファベットRを構えた。
腹部を押さえた左手は、赤に染まりきっている。
〔;´_y`〕「フィル、今のお前では厳しい。ここは、私に任せて、お前は」
|;`゚ -゚|「ガシュー中将」
静寂さに包まれた森であっても、敵には届かない程度の声をフィルに向けた。
しかし、フィルははっきりと、その言葉を遮った。
|;`゚ -゚|「私が、この場を引き受けます。お逃げください」
〔;´_y`〕「何を……!」
|;`゚ -゚|「私は恐らく、もう、永くはもちません」
フィルが、両手でアルファベットを握り締めた。
その柄から、鮮血が幾滴も垂れ落ちる。
128
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 22:58:48 ID:VEVSdu0o0
|;`゚ -゚|「仮にこの場を切り抜けても、オオカミ城まで逃げ帰ることは、難しいでしょう」
〔;´_y`〕「弱気になるな、しっかりした手当てを受ければ大丈夫だ。絶対に生きて帰れる」
〔;´_y`〕「今の状況でお前を失えば、オオカミは深手を負うことになる。ミルナ大将に次ぐ戦力がいなくなるんだぞ」
|;`゚ -゚|「今の状況という言葉を使うなら、私が生き延びたところであまり力にはなれません。恐らく、オオカミ城に帰っても野戦にはならないでしょうから」
|;`゚ -゚|「ミルナ大将に何か策があり、時間が必要なのであれば、オオカミ城では籠城戦になります。そのとき必要なのは、ガシュー中将の力です」
|;`゚ -゚|「私など、籠城戦では役に立てません。広い視野で、支援する力に優れるガシュー中将の存在が求められるはずです」
〔;´_y`〕「馬鹿なことを言うな、私などよりお前のほうが」
[ヽ´_』`]「――――遺言の残し合いなら大目に見るつもりだったが、作戦会議となれば話は別だ」
キヴィアの合図で、背後にいた兵たちが動き出した。
こちらの手が届かない距離を移動している。
遠巻きに、囲むつもりだ。
|;`゚ -゚|「ここに二人でいても、更に増援が来てしまって共倒れになるだけです」
|;`゚ -゚|「早く、急いでください。できるだけ長く時間を稼ぎます」
フィルの言うことは、分かる。
二人がかりとはいえ、手負いのフィルと一緒では、キヴィアを討ち取るのは容易ではないだろう。
周囲の兵を往なしながらとなれば、尚更だ。
129
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 23:00:35 ID:FtdJ7/rg0
リアルタイム来たあああああああ
いやぁ、昔と比べてツイッターが普及して作者さんが告知してくれるとすぐ見れるから本当にありがたい
130
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:00:43 ID:VEVSdu0o0
フィルは、もう永くはもたないと言った。
考えたくはないが、本音かもしれない。自分自身のことは正確に把握しているはずだ。
それを考えれば、フィルの言うとおりにすべきだとも思える。
しかし、見捨てられない。
見捨てられるはずがない。
〔;´_y`〕「……フィル、やはりここは、二人で」
|;#`゚ -゚|「早く!! オオカミを滅ぼすつもりですか!!」
一瞬、身が固まるほどの一喝。
甘い考えを、瞬時に吹き飛ばされた。
自然と、足の爪先は、背後に向いた。
〔;´_y`〕「……すまない……」
フィルに背を向けて、走り出した。
心の中で何度も、何度も、謝りながら。
自分の無力さが、あまりにも憎かった。
悔しかった。情けなかった。
言葉に、できないほどに。
瞼に昇ってくる感情を振り払うように、ひたすら、闇の中を駆けつづけた。
・
・
・
131
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:03:01 ID:VEVSdu0o0
[ヽ´_』`]「先ほどの大声で更にラウンジの兵がここに集まってくる。もはや絶体絶命だな」
|;`゚ -゚|「集まってもらわねば困るな。そのための大声だ」
[ヽ´_』`]「……そうか、ガシュー=ハンクトピアを逃がすために、あえて、か」
[ヽ´_』`]「さすがはフィル=ブラウニー。冷静さを失ったものと思ったが、そうではなかったのだな」
[ヽ´_』`]「ありがたい。それほどの武将の首が取れるからこそ、私の価値も上がるというもの」
|;`゚ -゚|「あまり、何度も言わせるな。お前の首は、私が斬り落とす」
[ヽ´_』`]「果たして、どこまでその強がりを言い続けられるか、見ものだな」
・
・
・
(アクセ~゚ー゚)「フィルの声が聞こえたのは本当なのかな? 鉦は鳴っていないんだけど」
「鉦を持つ兵がたまたまいなかったのかもしれません」
(アクセ~゚ー゚)「うーん。なんか、罠っぽい気もするんだよなぁ」
「罠、ですか? この状況で」
(アクセ~゚ー゚)「この状況だからこそでしょ。フィルもガシューも簡単に諦めるような奴らじゃない。長くオオカミで活躍してるんだから」
(アクセ~゚ー゚)「とはいえ、フィルがいるなら兵を向ける必要もある。囲みを解くわけにもいかないから判断は難しいけど」
132
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:04:18 ID:VEVSdu0o0
数人の兵を連れて、ゆっくり歩を進めるのは、アクセリト=ゼルフレア。
この森の戦で、ラウンジを指揮執る大尉だ。
〔;´_y`〕(やはり、フィルに兵が向けられるのか)
森の外へ向かうべく、静かに駆けていたところで、敵兵に気づいて身を伏せた。
その相手がまさか、アクセリトだとは思わなかった。
(アクセ~゚ー゚)「とりあえず、百人ほどを向けさせよう。この森であまり多くを投入すると混戦になるから却って危ない」
「はい。伝えてまいります」
百人。
今の状況で、フィルの許へ押し寄せるとなれば、間違いなく命はない。
〔;´_y`〕「…………」
フィルは、犠牲になることを選んでくれた。
自分を生かすために、あの場に留まってくれた。
それを思えば、ここは百人が向かおうが千人が向かおうが、気にせず森の外を目指すべきだ。
ラウンジの意識がフィルに向けば向くほど、脱出できる可能性は高くなる。
そのためにフィルは、恐らく、一瞬でも長く時間を稼ごうとするだろう。
しかし、百人が向かうと聞いて、やはり思ってしまった。
自分は、フィルを見捨てられない。
フィルを、助けなければならない。
〔;´_y`〕(行こう!)
133
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:06:33 ID:VEVSdu0o0
力強く、駆けだした。
あえて、物音が立つように。
(アクセ~゚ー゚)「ん?」
「いま、走り出した者が」
(アクセ~゚ー゚)「ガシューかもしれない。追ってくれ!」
「はい!」
あえて、フィルがいる方向とは逆に向かった。
しばらくしてから身を屈め、森の外へ向かう方に石を投げる。
そしてそのまま静かに、方向を転換した。
追ってきた兵が森の外へ向かっていくのを感じながら、少し、移動する速度を速めた。
〔;´_y`〕(急ごう、猶予はない)
いかにオオカミ屈指のアルファベット使いとはいえ、フィルは手負いだ。
しかも、浅手ではない。一人で持ち堪えられる時間は、長くはないだろう。
少しでも早く行かなければ、手遅れになる。
その行く手を、塞ぐ影。
「ガシューか!」
「見つけたぞ! 止まれ!」
〔#´_y`〕「邪魔だ!」
134
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 23:07:08 ID:xYRnXQq60
俺の青春の一部にまた出会えたことに感謝
135
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:08:36 ID:VEVSdu0o0
二人のラウンジ兵が、アルファベットを構えようとした。
しかし、構え終わるよりも早く、走ったままアルファベットOを振るい、一気に二人の胴を裂いた。
鮮血が噴き出すよりも先に、脇を駆け抜ける。
もはや、誰に気づかれようと構わなかった。
フィルが、まだ生きているうちに、到着しなければ。
会わなければ。手遅れになる前に。
まだ、声が聞こえるうちに――――
|;`゚ -゚|「ぐっ……!!」
――――低く、鈍い、呻き声。
崩れ落ちていく、身体。
フィルの許に、到着した。
直後、フィルの背中は泥に塗れる。
フィルの目から、光が、消えた。
[;´_』`]「ハァ、ハァ……この状況で十人以上を討ち取り、私にも刃を届かせるとは……」
[;´_』`]「侮っていたことを、認めざるをえないが……しかし、終わりだ」
「中尉、傷が!」
「すぐに手当てを!」
[;´_』`]「そうだな。しかし、フィルの首を取るのが先だ」
136
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:10:21 ID:VEVSdu0o0
[;´_』`]「鉦も鳴らさず、私の力で討ち取ったんだ。首を取って、大いなる武勲を持ち帰る」
[;´_』`]「アルタイム大将もきっと私を将官に引き上げてくださるだろう。積年の願いであった将官に」
〔#´_y`〕「うおあああああぁぁぁ!!!」
自分でも気づかぬ間に、雄叫びをあげていた。
アルファベットNの切っ先をフィルの首に向けている、キヴィアを目掛けて、突進する。
振り下ろしたアルファベットOは、空を切った。
[;´_』`]「ガシュー=ハンクトピア。戻ってきたのか」
[;´_』`]「あまりにも愚かだな。フィル=ブラウニーの覚悟を無下に」
〔#´_y`〕「あああぁぁぁ!!」
二度、三度とアルファベットを振るう。
キヴィアが何かを言っているのは分かったが、内容は分からなかった。
理解する気も、なかった。
[;´_』`]「ぐっ! 全員で一斉に斬りかかれ!」
耐えかねたような声をキヴィアが出した。
同時に、複数の兵が動く気配。
まずは両脇から、アルファベットIが突き出された。
〔#´_y`〕「はぁっ!!」
薙ぐようにOを振るい、アルファベットIを破壊する。
隙を狙うようにキヴィアがNを振り下ろしてきたが、際どいところで防いだ。
次いでアルファベットHが襲いかかってくる。しかし、身体を捻りながらOで腕ごと斬り落とした。
137
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:12:18 ID:VEVSdu0o0
[;´_』`]「鉦だ! 鉦を鳴らせ!」
キヴィアが、焦燥に駆られた。
味方を、呼ぼうとした。
――――それこそが、好機だった。
[;´_』`]「ぐあああああああ!!!」
キヴィアの腹部に、アルファベットOの刃が入り込んだ。
身体を上下に分断することはできなかったが、確かに、刃は届いた。
元より肩口に浅くない傷があった。
恐らく、フィルが浴びせた一撃だろう。
そのおかげでキヴィアの動きは鈍かった。
フィルによる一撃がなければ、先ほどのキヴィアの振り下ろしは、防げていなかった可能性が高い。
こうしてキヴィアの膝を折ることも、できなかっただろう。
フィルの仇を、討つことができた。
今は、それだけで良い。
――――自分の背中から腹部を貫いた、アルファベットIを見ながら、そう思った。
138
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 23:12:35 ID:v7ZOv3ps0
ガシュー…
139
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:14:08 ID:VEVSdu0o0
[;´_』`]「く……そ……」
[;´_』`]「私……は……こんな、ところで……」
[;´_』`]「終わる、ような……男では……」
キヴィアの声が、先ほどより小さくなっているのに、何故か聞こえやすくなったと感じた。
恐らくは、自分の膝も地に着いたからだろう。
アルファベットが異様に重く感じる。視界も、安定しない。
それでも、僅かに残った力で、更にアルファベットを突き立てようとしてくる敵兵を斬り伏せることはできた。
周囲に、ラウンジ兵の気配は、感じなくなっていた。
〔´_y`〕「……フィル……」
〔´_y`〕「間に、合わなかった……すまない……」
うつ伏せに倒れたフィルに、手を伸ばす。
届かないことは、分かっていた。それでも、縋るように。
謝りたいことは、いくつもあった。
助けられなかったこと。戻ってきてしまったこと。
そして、何よりも、今まで力になれなかったこと。
足りないものが、多すぎた。
分かっていたつもりで、何も分かっていなかった。
それに気づくのが、遅すぎた。
もっと早く気付けていれば、オオカミを守れただろうか。
フィルを、守れただろうか。
140
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:15:51 ID:VEVSdu0o0
無意味な思考が脳内を駆け巡る。
虚空を見上げると、自分の身体も、いずれ闇に染まるのだと感じた。
このまま、ここで二人で、果てるのだと――――
|` - |「……うっ……」
〔´_y`〕「……!」
もはや、視線を向ける気力さえない。
しかし、はっきりと分かった。
フィルの、声だった。
〔´_y`〕「フィル……! まだ、生きてくれて、いたんだな……良かった……」
| `゚ -゚|「その声は……ガシュー中将、ですか……」
| `゚ -゚|「もはや、目は何も、見えませんが……声だけは、何とか……」
〔´_y`〕「フィル、すまない……お前が身を呈して、逃してくれたのに……戻ってきてしまった……」
| `゚ -゚|「いえ……本当の最善は、二人で切り抜けることだったのに……私の我が侭で……」
本当は、フィルも分かっていたのだろう。
例え傷が深くとも、国のために動くのであれば、二人で生きる道を選ぶべきだと。
あのときのフィルは、今までに見たことがないほど、感情を剥き出しにしていた。
フィルの気迫に気圧されて、一人で逃げる道を選んだが、失策だった。
無様に足掻いてでも、二人で生きる術を考えるべきだったのだ。
しかし、今更遅すぎた。
141
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:17:27 ID:VEVSdu0o0
〔´_y`〕「しかし、一度は逃げる選択をしたのだから……それを貫くべきだった……すまない……」
| `゚ -゚|「いえ、本当は……独りきりで、逝くことを……寂しく思っても、いたので……」
| `゚ -゚|「戻ってきてもらえて……少し、安堵もしました……」
〔´_y`〕「……!」
初めて、かもしれない。
フィルが、弱みを見せるのは。
それは、もう、幾許も時間が残されていないことを表してもいた。
| `゚ -゚|「……オオカミは……どうなるのでしょうか……」
〔´_y`〕「……分からない……残った者に、託すしかない……
| `゚ -゚|「……そうです……ね……」
フィルの声は、掠れている。
もしかしたら、自分が上手く聞き取れなくなっているのかもしれないが、分からなかった。
| `゚ -゚|「……静か、ですね……」
142
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:20:06 ID:VEVSdu0o0
夜闇の静寂に、ゆっくり溶け込むような、フィルの声。
あまりにも、淡く、儚いものだった。
〔´_y`〕「……そうだな……随分、静かだ……」
とても、戦場にいるとは思えない。
まるで、オオカミ城の居室で、何の不安もなく寝床に入るような感覚だった。
| `゚ -゚|「……最後の、夜が……」
フィルの声が、空に向かう。
そしてゆっくり、降りてくる。
| `゚ -゚|「静か、な……夜で……」
| `゚ -゚|「……良かっ、た……」
あまりにも、静かな夜。
互いの吐息さえ、はっきり届いていた。
――――だからこそ、フィルの呼吸が途絶えたのも、はっきりと分かった。
143
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:22:03 ID:VEVSdu0o0
〔´_y`〕(……ゆっくり、休んでくれ……フィル……)
〔´_y`〕(私も……すぐ、追いつくから……)
〔´_y`〕(……あっちで、少しだけ、待っていてくれ……)
もはや、思考すらほとんど何もできない。
国への想いすら、言葉にできなくなっている。
分かることは、フィルが安らかに眠れたこと。
自分もどうやら、静かに眠れそうなこと。
夜明けのように白みゆく空を、見上げながら。
それだけは、はっきりと、思うことができた。
・
・
・
144
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 23:23:47 ID:FtdJ7/rg0
支援
145
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:23:51 ID:VEVSdu0o0
「間違いなく、フィルとガシューですね」
(アクセ~゚ー゚)「そうだね。格好だけ似せた偽者なんかじゃない」
(アクセ~゚ー゚)「二人とももう、息はないようだね」
「状況を確認して報告しにきた兵によれば、フィルが一度はガシューを逃がしたものの、ガシューは再び戻ってきたようです」
(アクセ~゚ー゚)「ってことは、途中で見たガシューっぽいやつは本当にガシューだったのかも」
「ともかく、ここでの戦は終わりですね」
(アクセ~゚ー゚)「だね。素早く兵をまとめて南に向かわないと」
「はい。では、フィルとガシューの首をお取りします」
(アクセ~゚ー゚)「ん?」
「おめでとうございます、アクセリト大尉。この武勲で恐らく、将官まで昇格することは間違いないかと」
「今回のオオカミ軍殲滅戦で、一番の勲功となりえるでしょう」
(アクセ~゚ー゚)「……いやいや、あのさぁ。何言ってんの、二人とも」
「え?」
146
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:26:33 ID:VEVSdu0o0
(アクセ~゚ー゚)「僕言ったよね、素早く兵をまとめて南へって。誰が二人の首を取れって言ったの」
「い、いや、しかし。ここで首を取らないなどありえない話で」
(アクセ~゚ー゚)「確かにこの森の戦で指揮を任されたけどさ、別に僕が討ち取ったわけじゃないし」
(アクセ~゚ー゚)「それより何より、あまりにも無粋すぎるでしょ」
「……無粋、とは?」
(アクセ~゚ー゚)「だってさ、フィルは逃がしたんだよ。ガシューを。自分が死ぬであろうことを分かってて」
(アクセ~゚ー゚)「そしてガシューも戻ってきた。多分、フィルを助けるためだけに」
(アクセ~゚ー゚)「本当は、国のためだけを思うなら、二人とも褒められた行動じゃないんだ。どっちかだけじゃなく、二人とも生き延びる道を選ぶべきだった」
(アクセ~゚ー゚)「今の状況を考えたら、間違いなく、二人ともオオカミに欠かせない存在だったんだから」
「それは、確かに」
(アクセ~゚ー゚)「でも二人は、互いを生かそうとした。国のためじゃなくて、多分、かけがえのない戦友だからっていう理由で」
(アクセ~゚ー゚)「二人とも、戦場に生きる者として、最後は自分の気持ちを優先した。僕はそんな最期が、嫌いじゃないんだ」
(アクセ~゚ー゚)「だからここは、このまま二人を眠らせてあげよう。それがこの二人に払える、最大限の敬意だ」
147
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:29:13 ID:VEVSdu0o0
「しかし大尉、敵将を討ち取ったという確たる証も持たずに帰れば、どんな処分を受けるか」
(アクセ~゚ー゚)「ま、さすがに打ち首にはならないでしょ。ちゃんと話せばアルタイム大将もカルリナ中将も分かってくれると思うし」
(アクセ~゚ー゚)「フィルとガシューは生死不明のまま歴史から去るってことになるかもだけど、それはそれで悪くないんじゃない? ダメかな?」
「そう仰るのであれば、私たちは、大尉の意向に従います」
(アクセ~゚ー゚)「ありがとう。やっぱりどう考えても、ここで二人の首を取るのは、どうにも気分が乗らなくてね」
(アクセ~゚ー゚)「戦場に生きる者としての想いをかけて戦った二人が、静かに眠れることを、心から願おう」
(アクセ~゚ー゚)「どうか、安らかに」
【最後の夜、静かな夜 : End】
148
:
◆azwd/t2EpE
:2019/03/21(木) 23:31:20 ID:VEVSdu0o0
【最後の夜、静かな夜】は以上です、ありがとうございました
ずっとなんとなくイメージしていたストーリーでも、
実際に書いてみるといろいろ悩むところがあったのですが、
最終的には思っていたものを形にできて良かったです
149
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 23:32:21 ID:0nhAMHZY0
おつです!!!
ずっと知りたかった彼ら二人の最期を描いて頂いて本当に嬉しい。
なんならアクセリトの株まで上がる始末w
150
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 23:33:00 ID:ilunwtXY0
乙
今から読む。
151
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 23:33:03 ID:J01EbHYY0
乙
フィルとガシューの最期がどんな感じだったのか気になってたから嬉しい
アクセリトが話のわかる奴でよかった、皆かっこいい
152
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 23:37:21 ID:1PjSunc60
お疲れ様です!
2人の行動にグッときました
アクセリト大尉イケメンすぎた
153
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 23:38:12 ID:2vcbXcMU0
アクセリト大尉は粋な男だなぁ…
(エグい程小物でぽっと出のキヴァなんちゃら中尉から目を逸らしつつ)
154
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 23:44:09 ID:FtdJ7/rg0
アクセリトは本編でもあんまり出てこなかったからあんまり印象なかったけど良いキャラしてるなぁ…
作者さん乙!
155
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 23:45:52 ID:bfCYXNFY0
乙です!
156
:
名無しさん
:2019/03/21(木) 23:58:58 ID:hc0MPZ4.0
乙
ガシューとフィルの最期が読めるとは感無量だ
四中将がオオカミ滅亡のきわで一枚岩になったシーンほんと熱かったなぁ…読み返そう
157
:
名無しさん
:2019/03/22(金) 00:16:53 ID:/B2ER4MY0
乙です!
興奮しすぎて半分以上頭に入ってこないからまた読み返す…
ヴィップもラウンジも好き、だけどそれにも増してオオカミが好きだったし、今でも大好きだ
158
:
名無しさん
:2019/03/22(金) 00:21:19 ID:dzB0hbQI0
この二人の最後見れてよかったわキツいけど
オオカミは散り際がかっこよすぎて辛すぎる
159
:
名無しさん
:2019/03/22(金) 01:19:30 ID:KjLZaWTw0
おつおつ
フィルもガシューもアクセリトも皆かっこいい
やっぱアルファ大好きだ
160
:
名無しさん
:2019/03/22(金) 04:23:29 ID:tm5GJDYg0
おつです!
161
:
名無しさん
:2019/03/22(金) 07:51:02 ID:bHFvmpqw0
乙です!
162
:
名無しさん
:2019/03/22(金) 10:07:38 ID:qTGoiMbE0
乙!これぞアルファという濃い内容だった
そして投下と同時にイッチローマリナーズ引退……
163
:
名無しさん
:2019/03/22(金) 22:27:06 ID:Mg0uEpnk0
超乙
今になってこの2人の最期が読めるとは
あとアクセリトがイケメンすぎる もっと活躍が見たかったな…
164
:
名無しさん
:2019/03/24(日) 14:31:36 ID:Fem9E.vg0
乙でした
165
:
名無しさん
:2019/03/24(日) 22:04:43 ID:MOlHUc6k0
otu
166
:
名無しさん
:2019/04/02(火) 01:15:19 ID:OijbipWQ0
まさか2019年になってアルファの新作が読めるなんて
もう最後に読み返したのも結構前なのに読んでたらスッと思い出せた
アルファは俺の青春の一部だよ
まだまだ期待してます
167
:
名無しさん
:2019/04/18(木) 04:25:54 ID:zU0.owUo0
こんなに嬉しいことはない。
もう7年も経ったって衝撃とまたアルファが読めた衝撃。
ありがとう。
168
:
名無しさん
:2019/05/25(土) 01:17:43 ID:PIBFeVq60
令和になって気がついた。
作者帰ってきてくれてありがとう
169
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:08:30 ID:YGRMhMt.0
これから【Past of Velvet】を投下します、よろしくお願いします
170
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 22:09:09 ID:AwWBgcb20
待っていた
171
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 22:09:57 ID:TjWs/Eyc0
よっしゃ
172
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:10:14 ID:YGRMhMt.0
【Past of Velvet】
――世界歴・507年――
「そろそろ、来る頃かな」
「あぁ、いつもの子?」
「最近、毎日来てくれてるからね」
( <●><●>)「――――こんにちは」
「やぁ、いらっしゃい。ちょうど、君の話をしてたんだ」
「そろそろ来てくれる頃かなって」
( <●><●>)「ギリアストさん、ファシアさん、いつもお世話になっています」
「いやいや、こちらこそ」
「ほんと、しっかりしてるねぇ。まだ十歳だっけ? とてもそうは思えないよ」
( <●><●>)「ありがとうございます」
173
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:11:53 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)「林檎と芋を二つずつ、葱を一束、塩を一袋、小麦を二袋、いただけますか」
「はいよ。いつも偉いねぇ」
( <●><●>)「いえ。やるべきことをやっているだけです」
「他にもどこか、買い物へ?」
( <●><●>)「はい。エリジンさんのところで魚と、レイルスさんのところで花の肥料を」
「そうかぁ、大変だね。はい、これ商品。お遣いがんばってね」
( <●><●>)「ありがとうございます」
( <●><●>)(少し、遅くなってしまいましたか)
( <●><●>)(早く済ませないと。お母様の機嫌を損ねかねません)
・
・
・
174
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 22:12:51 ID:mqLho5Sk0
お待ちしておりました!
175
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:14:21 ID:YGRMhMt.0
%) ^ー^)「ベルベット、お帰りなさい。お買い物はちゃんとできた?」
( <●><●>)「はい、お母様」
%) ^ー^)「魚は最後に買った?」
( <●><●>)「はい、最後に買いました」
%) ^ー^)「そう、偉いわね。先に買うと鮮度が落ちるからね」
%) ^ー^)「同じ失敗を繰り返さないのは大事なことよ。ベルベットが成長してくれて嬉しいわ」
( <●><●>)「はい。今後も気をつけます」
%) ^ー^)「それで、今日の試験の結果はどうだったの?」
( <●><●>)「試験は、不正解が一問」
%) ^ー^)「そう。一問だけだったのね」
%) ^ー^)「じゃあ、ご飯なしは一日だけね。この前より良くなったわね」
( <●><●>)「……はい」
%) ^ー^)「だけど本当は一問も間違えてはいけないわ。分かってる? あなたは文官の長になるのよ?」
%) ^ー^)「二年上の試験を受けているとはいえ、不正解なんて許されることじゃないの。分かってるわよね?」
( <●><●>)「はい、分かっています」
%) ^ー^)「じゃあ、まず庭を掃除して。終わったら寝るまで勉強ね」
( <●><●>)「はい、分かりました」
176
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:16:33 ID:YGRMhMt.0
・
・
・
( <●><●>)(今日の試験は、難しい問題ばかりでした)
( <●><●>)(不正解が一問で済んだのは、運に助けられたからこそ)
( <●><●>)(次は確実に、全問正解しなければ)
( <●><●>)(……雑草、固いですね)
( <●><●>)(抜かれまいと、抵抗しているのですか?)
( <●><●>)(……ようやく抜けました)
「やぁ、ベルベットくん」
( <●><●>)「ギリアストさん。先ほどはありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ。庭掃除のお手伝いかい?」
( <●><●>)「はい」
「ほんと偉いねぇ。うちの息子なんか遊んでばかりなのに」
( <●><●>)「いえ、やるべきことをやっているだけですので」
「いつもそう言うけど、ほんと大したもんだよ。うちの息子にも見習わせたいね」
( <●><●>)「……見習うべきではありません」
「ん? 今なんて?」
( <●><●>)「いえ、なんでもありません。申し訳ありませんが、掃除に戻ります」
「あぁ、邪魔して悪かったね。またお店に来ておくれよ」
( <●><●>)「はい、また伺います。よろしくお願いします」
「それじゃあ、また」
177
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 22:17:37 ID:TjWs/Eyc0
文官になる予定だったのか
178
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:18:59 ID:YGRMhMt.0
・
・
・
( <●><●>)(……今夜は、月明かりが少なくて、本が読みにくいですね)
( <●><●>)(しかし、勉強しなければ。試験で不正解があってはいけない)
( <●><●>)(満点を取りつづけなければ、きっとお母様は認めてくれません)
( <●><●>)(……少し、疲れてきました)
( <●><●>)(眠気も、ありますが……まだ、今日やるべき分が)
( <-><->)(終わって……いな……)
( <-><->)
・
・
・
―――― お父さん、明日は一緒に遊べますか?
―――― ベルベット。悪いなぁ、ちょっと勉強が足りてないから、時間がないかもしれない。
―――― そうなのですね。我が侭を言ってしまいました。
―――― いや、本当にすまない。今度こそ昇格を果たさないといけないからな。
―――― では私も、勉強を頑張ります。お母様に、褒めてもらえるように。
179
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:21:06 ID:YGRMhMt.0
・
・
・
―――― どうした、ベルベット。元気がないな。
―――― お父さん。実は、今日の試験の結果があまり良くなかったのです。
―――― そうか。まぁ、そういうときもあるさ。
―――― 本当は一番の成績を取って、期待に応えるべきなのに。申し訳ない限りです。
―――― お前はまだ子供なんだから、そんなに背負いこまなくていい。お父さんがもっと頑張るさ。
・
・
・
( <-><->)(……お父さん……)
%) ^ー^)「ベルベット?」
( <●><●>)「ッ! はい、なんでしょうか」
%) ^ー^)「勉強はどう? 進んでる?」
( <●><●>)「はい。まだ全て終わってはいませんが、問題ありません」
%) ^ー^)「そう。それならいいの」
%) ^ー^)「――――居眠りなんか、しないようにね?」
( <●><●>)「はい、分かっています」
%) ^ー^)「じゃあ、お母さんは先に寝るから。おやすみなさい、ベルベット」
( <●><●>)「はい、おやすみなさい、お母様」
180
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 22:21:42 ID:dz3nlsKk0
リアタイや!
支援
181
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 22:22:38 ID:mqLho5Sk0
カルリナもこんな感じの境遇だったのかねぇ
182
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:23:08 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)(……早く勉強を終わらせて、早く睡眠を取らなければ)
( <●><●>)(朝の火熾しの時間に、遅れてはなりません)
( <●><●>)(お母様の機嫌を、損ねては、なりません)
・
・
・
%) ^ー^)「おはよう、ベルベット。ちゃんと火を熾せたようね」
( <●><●>)「おはようございます、お母様」
%) ^ー^)「じゃあ、早く学舎に行ってらっしゃい。お昼は戻らずに、そのまま勉強してなさい」
%) ^ー^)「それと、帰りはいつもどおり買い物をお願いね。買い忘れないようにしてちょうだいね」
( <●><●>)「はい、分かりました」
( <●><●>)(お腹は空きましたが、まだ一日も経っていないから問題ありませんね)
( <●><●>)(勉強に集中できそうです)
「おーっす、ベルベット」
「おはよー」
( <●><●>)「……おはようございます」
183
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:26:11 ID:YGRMhMt.0
「歩きながら本読んでっと危ねーぞー」
「気をつけろよー」
( <●><●>)「はい」
「……あいつ、ずっと勉強してるよなー。病的なくらい」
「母親がめっちゃ厳しいんだろ? 悪い点取ったら怒られるんじゃねーの? 役人目指してるらしいしさ」
「その役人だった父親がいきなり居なくなったんだろ? 何があったんだろうなー」
「分かんねーけど、色々とやばそうだよなー、あいつんとこ」
( <●><●>)「…………」
・
・
・
「今日の試験どうだった?」
「悪くはなさそう。しかし、学年が上がる前だからって、毎日試験は勘弁してほしいよなー」
「まぁ、悪い点を取っても命を取られるわけじゃないんだし、別にいいだろ」
( <●><●>)(……今日の試験は、恐らく一問も間違いはありません)
( <●><●>)(昨日お母様に言われたとおり、しっかり勉強しておいたおかげですね)
「じゃあみんな、試験の結果を返すぞ。今日も一番はベルベットだ」
「間違いは一問だけ。みんな見習うように」
( <●><●>)「……!?」
184
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:29:21 ID:YGRMhMt.0
「あいつやっぱすげーなー。たった一問かよ」
「二年上の学級に来て受けてるのにな。化け物だよな」
( <●><●>)(間違いが、一問……)
「ほら、ベルベット。試験の結果だ。今日もよく頑張ったな」
( <●><●>)「……ありがとうございます」
( <●><●>)(……単純な書き間違い。しかし、間違いであることに変わりはありません)
( <●><●>)(間違えた自分が悪い。当然のことです。不正解はないと慢心して、ちゃんと見直せていなかったのかもしれません)
( <●><●>)(明日こそ、明日こそは、全て正解しなければ)
・
・
・
「やぁ、今日も買い物に来てくれたんだね。ありがとう」
( <●><●>)「ギリアストさん、こんにちは。今日は、玉葱を二玉と、長葱を二本、里芋を一袋分、胡椒を小袋一つ分、いただけますか」
「はいよ。いつも贔屓にしてくれて助かるよ」
( <●><●>)「今日は、ファシアさんは?」
「ちょっと出かけてるけど、そろそろ戻ると――――あぁ、ちょうど戻ってきた」
185
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:31:40 ID:YGRMhMt.0
「ベルベットくん、いらっしゃい」
( <●><●>)「こんにちは、ファシアさん。今日は、荷物をたくさんお持ちですね」
「えぇ。今度からうちで薬草を扱おうと思って、色々仕入れてきたのよ」
( <●><●>)「薬草、ですか」
「まずは効能を自分で確かめてみたいからたくさん仕入れたけど、捌ききれるかしらね」
( <●><●>)「母に伝えておきます。薬草もギリアストさんのお店で買えるようになったと」
「いやぁ、悪いねぇ。でも買ってもらえたら助かるよ。ありがとうね」
( <●><●>)「ありがとうございました。では、失礼します」
・
・
・
( <●><●>)(最後にご飯を食べたのは、昨日の朝でしたか)
( <●><●>)(空腹のおかげで、眠気は我慢できますね。しっかり勉強しなければ)
( <●><●>)(明日の試験こそ、全問正解を達成する必要があると、分かっています)
%) ^ー^)「ベルベット、お母さんは先に寝るわ。ちゃんと勉強しなさいね」
( <●><●>)「はい、おやすみなさい、お母様」
%) ^ー^)「明日こそ試験、全問正解してちょうだいね。一緒にご飯を食べましょう」
( <●><●>)「はい、必ずや」
%) ^ー^)「じゃあ、おやすみ」
( <●><●>)(……お母様も、一緒にご飯を食べたいと思ってくれているのですね)
( <●><●>)(お母様の気持ちに応えるためにも、勉強に一層、励まなくてはなりません)
( <●><●>)(……しかし、以前は一問不正解で一食抜きだったのに……どうして……)
( <●><●>)(――――どうして、お父さんを、”居なくさせて”から――――)
186
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:34:14 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)(……自分が悪いと、分かっています。自分は、無心で勉強しなければ)
( <●><●>)(お母様に、認めてもらわなければ)
・
・
・
( <●><●>)(……今日の試験は、昨日よりも、難しいですね……)
( <●><●>)(集中しなければならないのに、空腹で、頭が上手く回りません……)
( <●><●>)(試験に出ている問題は、昨日勉強したところなのに……)
( <●><●>)(……恐らく、全問正解は、厳しい……)
「――――じゃあ、今日の試験の結果を返すぞ」
「一番は今日もベルベット。昨日より難しい問題にしたのに、間違いは二問だけだ」
「よく頑張ってるな。明日の試験も頑張ろうな」
( <●><●>)「はい、ありがとうございます」
( <●><●>)「…………」
「ん? どうした、あんまり顔色が良くないな」
( <●><●>)「……いえ、間違いがあったことが悔しいだけです」
「そうか。ベルベットは向上心の塊だな。みんな、見習うように」
187
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:37:07 ID:YGRMhMt.0
・
・
・
( <●><●>)(あと二日、何も食べられないのが続くのですね……)
( <●><●>)(二日くらいなら、何とかなるのでしょうか……分かりませんね……)
( <●><●>)(今日の試験は、昨日よりも更に難しい問題だったと言えば、お母様も、もしかしたら――――)
( <●><●>)(……いや、そんなことは、望むべきではありませんね……)
( <●><●>)(今日は買い物に行く必要がありませんし、早く家に帰って、勉強をしなければ……)
「おーい、ベルベットくん」
( <●><●>)「?」
「偶然だね。今から家に帰るところかい?」
( <●><●>)「ギリアストさん。こんにちは。そうですね、今から帰るところです」
「そうかい。私も用事が終わったから、店に戻るところでね」
「ところで、あまり顔色が優れないようだけど、大丈夫かい? 体調が悪いようにも見えるけど」
( <●><●>)「いえ、試験の結果が良くなく、落ち込んでしまっていただけです。ご心配いただき、ありがとうございます」
「そうかぁ。じゃあ、良かったらこれでも食べて元気出してよ」
( <●><●>)「……これは、梨ですか」
「そうそう。店の売れ残りなんだけど、捨てるのももったいなくてね。まだ食べられるからさ」
( <●><●>)「ありがとうございます。しかし、母の許可なく受け取るわけにはいきません」
「いやいや、そんな大げさな。家に帰るまでの間に食べちゃってくれたらいいよ」
( <●><●>)「しかし……」
「本当に駄目なら捨ててくれてもいいから。はい」
( <●><●>)「……ありがとうございます」
188
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 22:38:40 ID:DdWONMG20
こんな家庭環境だったのか
胸がギューってなってきた
189
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:39:10 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)(……断り切れず、受け取ってしまいました)
( <●><●>)(これを、そのまま家に持ち帰ってしまうと、”お父さんと同じこと”に……)
( <●><●>)(しかし、せっかくいただいたものを、捨てるわけにもいきません……)
( <●><●>)「…………」
( <●><●>)(――――お母様、申し訳ありません……)
・
・
・
%) ^ー^)「庭の草引きと、花の水やりが終わったら、寝るまで勉強ね」
%) ^ー^)「明日こそ全問正解よ。大丈夫、あなたはやればできる子だから」
( <●><●>)「はい、お母様」
( <●><●>)(……お母様、やはりご飯なしは変わらないのですね……)
( <●><●>)(四日、食べられなくても大丈夫だと、確信があるのでしょうか……)
( <●><●>)(それとも……)
( <●><●>)(花のように、しばらく水やりだけでもいいと、思われているのかもしれませんね)
( <●><●>)(……いや、そんなことは考えてはいけない……お母様は、私のためを思って……)
( <●><●>)(……勉強しましょう。今できることは、それしかありません)
190
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:41:24 ID:YGRMhMt.0
・
・
・
( <●><●>)(……やはりまだ、耐えがたい空腹感はありますね……)
( <●><●>)(勉強に集中したくても、集中しきれません……)
( <●><●>)(試験は明日が最後……明日さえ乗り切れば、なんとかなるはずなのに……)
( <-><->)(……こんなとき、お父さんならきっと、優しくしてくれたでしょうね)
( <-><->)(お父さんなら……)
―――― ベルベット。勉強も大事だけど、人生はそれだけじゃないぞ。
―――― 人と人は支え合って生きていく。だから、人との関わりも大事なんだ。
―――― 勉強ばっかりして人との繋がりを失ったら、きっと生きづらくなるぞ。
――――だから、勉強は程々にして、誰かとお喋りしたり、遊んだりしてもいいと思うぞ。
――――まぁ、こんなこと言うとまたお母さんに怒られそうだけどな、ははは。
( <-><->)(お父さんは、優しい人だった……だから、お母様にも優しかった)
( <-><->)(でも、優しすぎたから……お母様に何も言えなくて、逆らえなくて)
( <-><->)(遂には――――)
( <-><->)(……お父さんに、また、会いたい……)
( <-><->)(でもそれは、きっともう、叶わないのですね……)
191
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:43:29 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)(……お父さんが残していった、役人の試験のための本)
( <●><●>)(こんなものよりも、もっと残してほしいものが、たくさんあったのに……)
%) ^ー^)「ベルベット?」
( <●><●>)「! はい、なんでしょうか」
%) ^ー^)「勉強は? ちゃんと進んでる?」
( <●><●>)「はい、問題ありません」
%) ^ー^)「そう。それならいいのだけど」
%) ^ー^)「――――あら、その本は?」
( <●><●>)「これは、お父さんが役人の試験のために、勉強に使っていた本で」
%) ^ー^)「そう。意欲があって素晴らしいけれど、今のあなたにはまだ必要ないでしょう?」
( <●><●>)「はい。申し訳ありません」
%) ^ー^)「ベルベット。あなたはお父さんと違って、やればできる子よ」
%) ^ー^)「きっと優秀な成績で卒業して、長官になれるわ」
( <●><●>)「……はい」
192
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:45:09 ID:YGRMhMt.0
%) ^ー^)「あぁ、お父さんもあなたくらい真面目にやってくれたら良かったのに」
%) ^ー^)「お父さんは本当に駄目な人だったわ。自分で努力しようとしないで、人に頼ってばかりで」
%) ^ー^)「ああいう甘えがあるから頑張れないのね。悪い見本だわ」
( <●><●>)「……お母様。できればもう、お父さんのことはあまり責めないでもらえれば……」
%) ^ー^)「なぁに? なにか、言いたいことがあるの?」
( <●><●>)「いえ……ただ、お父さんはいつも、私たちのことを想ってくれていて」
%) ^ー^)「本当に私たちのことを想うなら、もっと努力してほしかったわ」
%) ^ー^)「役人の昇格試験に何回も落ちて、給与も変わらなくて、生活は苦しいままだったのよ。本当に私たちのことを想ってくれていたかしら?」
( <●><●>)「それでも、普通の生活はできたはずで」
%) ^ー^)「普通じゃ駄目なのよ。あなたのおじいちゃんは、役所の一番上まで昇り詰めた人なのよ?」
%) ^ー^)「おじいちゃんの血を引くお父さんだって同じところにいけたはずなのに、役人になっただけで満足して。もっと上を目指すべきだったのに」
%) ^ー^)「小さい頃みたいな貧しい生活は、もう絶対したくなかったのに。お父さんはほんと、志が低かったわ」
( <●><●>)「……確かに、役所の長にはなれませんでしたが、しかし、昇格はしました」
%) ^ー^)「そう。私が努力させたおかげで、やっと一つだけね」
%) ^ー^)「自分に甘くて、他人に頼るところがあった。強制的にやらせなきゃ、何も変わらない人だったのよ」
( <●><●>)「……だから、お父さんが食べ物を貰ってきたときも、あんなに怒ったのですか?」
( <●><●>)「お父さんは、自分が食べたいと言ったわけではなかったのに……」
%) ^ー^)「自分が食べたいわけじゃないなら、断れば良かったのよ。貰ってきたのは、自分が食べたかったからに決まってるじゃない」
( <●><●>)「それは、決めつけでは……お父さんは、相手の好意を無下にできなかったのだと……」
%) ^ー^)「いいえ、そうに決まってるわ。仮に断り切れなかったのだとしても、それはやっぱり甘えがあるからよ」
%) ^ー^)「元はといえば、昇格試験に落ちた自分が悪いのに。試験に受かりさえすれば、ちゃんとご飯は用意したのに」
( <●><●>)「…………」
193
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:47:51 ID:YGRMhMt.0
%) ^ー^)「ベルベット。お母さんは、あなたにお父さんと同じ道を辿ってほしくないのよ」
%) ^ー^)「あなたはお父さんと違って真面目で、優秀だわ。だから、中途半端な甘えがあるなら、それは捨てなさい」
%) ^ー^)「自分に厳しくできたら、あなたは必ず長官になれるわ」
( <●><●>)「……お母様」
( <●><●>)「一つ、聞かせてください」
( <●><●>)「私が長官を目指すのは、何のためですか?」
%) ^ー^)「……分かりきったことを聞くのね。決まってるじゃない」
%) ^ー^)「”私たちのため”よ」
( <●><●>)「……私たちのため、ですか」
%) ^ー^)「えぇ。私たち家族が、不自由なく暮らすためよ」
( <●><●>)「…………」
( <●><●>)「分かりました、お母様」
( <●><●>)「私が、間違っていました」
194
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:49:44 ID:YGRMhMt.0
%) ^ー^)「そう、分かってくれたのね。お母さん、嬉しいわ」
%) ^ー^)「やっぱりあなたはお父さんとは違うわね。安心したわ」
%) ^ー^)「じゃあ、お母さんは先に寝るわね。勉強、最後までしっかりやるようにね」
( <●><●>)「はい、おやすみなさい」
( <●><●>)「…………」
( <●><●>)(……今日は、寝る暇はありませんね。考えましょう)
( <●><●>)(私に、できることを)
・
・
・
「珍しいな、ベルベット」
「お前が、試験で七問も間違えるなんて」
195
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:51:51 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)「……申し訳ありません、先生。昨晩、よく眠れず、集中力を欠いていました」
「いや、謝るようなことじゃないんだが、そうか。やっぱり体調が良くないんだな」
( <●><●>)「徐々に、良くなっていくものと思います」
「まぁ、今日で試験は最後だし、少しくらい気を抜いてもいいだろう。これまでよく頑張ってきていたしな」
( <●><●>)「……はい。ありがとうございます」
( <●><●>)(……気は、まだ抜けない……)
・
・
・
( <●><●>)「ギリアストさん、ファシアさん、こんにちは」
「あぁ、いらっしゃい」
「こんにちは」
( <●><●>)「今日は、白菜を一つ、青梗菜と人参と唐辛子を一袋ずつ、いただけますか」
「はいよ。いつも買ってくれて助かるよ」
( <●><●>)「それから、ファシアさん」
「うん? 私?」
196
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:53:41 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)「先日、薬草などを仕入れていると仰っていたと思うのですが」
「そうそう。そろそろお店でも出そうかと思ってるのよ」
( <●><●>)「実は最近、あまり眠れない日があるのです。不眠に効くものなどはありますか?」
「不眠ねぇ。眠りに誘う効果があると言われている、プラリティアという花はあるわ。お香のように使えば効果が出ると思うけど」
( <●><●>)「ありがとうございます。できればそれも譲っていただきたいのですが、実は……」
「どうかしたの?」
( <●><●>)「……今、花を買うだけの持ち合わせがないのです。必ず明日、お金を持ってきますので、どうか今日譲ってもらえないでしょうか?」
「あぁ、そういうこと。それなら、お代は要らないわ。効果がどうだったかを今度教えてもらえれば」
( <●><●>)「しかし、タダというわけには」
「いいのよ、少量だし。お得意様だしね」
( <●><●>)「……ありがとうございます。お言葉に、甘えさせてください」
「あ、ちなみにその花、そのまま食べたりすると効果が出すぎるみたいだから気を付けてね」
( <●><●>)「……分かりました」
・
・
・
197
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:55:21 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)「レイルスさん、こんにちは」
「おっ、ベルベットくん。今日も花の肥料を買いにきてくれたのかい?」
( <●><●>)「いえ。実は、家の庭に、桜を植えようとしていて。苗木はありますか?」
「桜の苗木かぁ。今はないけど、数日後で良ければ用意できるよ」
( <●><●>)「……何とか、明日に用意していただくことはできませんか?」
「えっ、明日かい? そんなに急に必要なのかい?」
( <●><●>)「母が、どうしても、と」
「うーん。まぁ、それなら何とかしてみるよ」
( <●><●>)「申し訳ありません。ありがとうございます」
「ま、いつもお世話になってるからね。じゃあ、また明日来ておくれ」
( <●><●>)「はい。よろしくお願いします」
・
・
・
%) ^ー^)「間違いなく、気の緩みがあったのね。それとも、試験に集中していなかった?」
%) ^ー^)「七問も間違えるなんて、あってはならないことよ。今まで積み上げてきたことが全て台無しになったようなもの」
%) ^ー^)「お母さん、本当に悲しいわ。あなたなら大丈夫だと、信じてたのに」
( <●><●>)「申し訳ありません、お母様」
( <●><●>)「全て、自分が悪いと分かっています」
198
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 22:56:40 ID:ihYGa5Yo0
雲行きが
199
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:57:08 ID:YGRMhMt.0
%) ^ー^)「分かっているなら、やることは一つだということも、分かっているのね?」
( <●><●>)「はい。食事も取らず、寝る間も惜しんで、ひたすら勉強します」
%) ^ー^)「分かっているなら、それでいいのよ」
%) ^ー^)「大丈夫。あなたは、やればできる子。きっと乗り越えられるわ」
( <●><●>)「……はい」
・
・
・
( <●><●>)(……お父さん)
( <●><●>)(守ってあげられなくて、ごめんなさい)
( <●><●>)(今更、もう、遅すぎるかもしれませんが……)
( <●><●>)(……それでも、せめて――――)
%) ^ー^)「ベルベット?」
( <●><●>)「はい、なんでしょうか」
%) ^ー^)「お母さん、今日は疲れて眠いから、もう寝るけど、勉強しっかりね?」
( <●><●>)「はい、分かっています」
%) ^ー^)「じゃあ、おやすみ」
( <●><●>)(……お母様)
( <●><●>)(悪いのは自分だと、分かっています)
200
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 22:58:38 ID:7ModZuns0
初リ・アルタイム支援
201
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 22:59:31 ID:YGRMhMt.0
%) - -)
( <●><●>)「……お母様」
%) - -)
( <●><●>)「……深い眠りに、就いているようですね」
( <●><●>)「お母様。私はずっと、間違っていました。勘違いしていました」
( <●><●>)「……お父さんがいつも、お母様に優しくて、言うとおりにしていた」
( <●><●>)「だから、お母様はいつも正しいのだと思っていました」
( <●><●>)「……いえ、本当のところは、分かりません。もしかしたら、お母様はやはり正しいのかもしれません」
( <●><●>)「ですが、今の私はもはや、お母様を受け入れることができません」
( <●><●>)「言うとおりにすることが、できません」
202
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 23:00:10 ID:mqLho5Sk0
プラリティアはセリオットも使っていたやつかな?
203
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 23:01:41 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)「私がもっと早くから優秀であれば、きっと、こんなことにはならなかった」
( <●><●>)「お母様の期待は私に向き、お父さんがあんな目に遭うこともなかったでしょう」
( <●><●>)「私もお母様と毎日、美味しいご飯が食べられたでしょう」
( <●><●>)「全て、私が悪いのです。分かっています」
( <●><●>)「分かっています」
( <●><●>)「お母様、ごめんなさい。悪いのは私です」
( <●><●>)「そう、分かっています。全部、分かっています」
( <●><●>)「分かっています」
( <○><○>)「――――分かっています」
・
・
・
204
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 23:04:10 ID:YGRMhMt.0
――翌朝――
( <●><●>)「…………」
( <●><●>)「…………」
「――――ベルベットくん」
( <●><●>)「!」
「おはよう。こんな朝早くから、どうしたんだい?」
( <●><●>)「ギリアストさん。おはようございます」
「お母さんに言われて、お手伝いかい?」
( <●><●>)「はい。実は、ここに桜を植える予定なのです」
「へぇ。それで、朝から穴掘りを」
( <●><●>)「まだ苗木をいただいていないので、どれほどの大きさを掘ればいいのか分からないのですが」
「あぁ、レイルスさんのお店で買うんだね。しかしちょっと、その穴は大きすぎるんじゃないかな、ははは」
( <●><●>)「そうですか。分かりました」
「桜、咲くの楽しみだね。私も見に来るよ」
( <●><●>)「はい。楽しみにしていてください」
「じゃあ、また」
( <●><●>)「…………」
( <●><●>)「…………」
・
・
・
205
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 23:05:03 ID:8Kh.GaBo0
ベルベット…
206
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 23:06:26 ID:YGRMhMt.0
―― 一ヶ月後――
「そうだな、お前の言うとおり、元の学級に戻ったほうが良さそうだな」
「やっぱり、上の学年でやっていくのは辛かったか」
( <●><●>)「申し訳ありません、ご期待に副えず」
「いや、よくやっていたよ、本当に。でも正直、今は勉強どころじゃないだろうしな」
( <●><●>)「平均以上の成績は残せるように、努力します」
「あまり自分を追い込みすぎず、程々にな」
( <●><●>)「ありがとうございます、先生」
「……ベルベットのとこ、父親に続いて母親まで居なくなったらしいぜ」
「本当かよ。何があったんだ?」
「分かんねぇ。あんまり本人が喋りたがらないみたいだ」
「追及しづらいよなぁ、そういうことって」
「そっとしておこうぜ。俺たちがどうにかできることじゃないだろうし」
( <●><●>)「…………」
・
・
・
207
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 23:07:55 ID:ihYGa5Yo0
あぁ…桜……あぁ…
208
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 23:08:28 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)(先生には、ああ言いましたが……)
( <●><●>)(やはり、以前のように勉強を頑張ろうという気には、なれませんね)
( <●><●>)(私は、役人になりたかったというより、役人を目指す自分でいなければならなかっただけでした)
( <●><●>)(その事実が今となっては、よく分かります)
( <●><●>)(……もはや、役人になる必要がなくなった今、私は何を目指して、どう生きるべきなのか……)
( <●><●>)「…………」
( <●><●>)「――――レイルスさん、こんにちは。先日は桜の苗木を都合していただき、ありがとうございました」
「あぁ、ベルベットくん。いや、貰うべきものは貰ってるし、こちらこそだよ」
( <●><●>)「あのときは無理を言ってしまったので、御礼と言ってはなんですが、うちにあった本などを貰っていただけないかと思いまして」
「そんな、わざわざいいのに。あぁでも、これは役人の登用試験に役立ちそうだなぁ」
( <●><●>)「確か、役人を目指している息子さんがいらっしゃったと思い出しまして」
「そうだね。でも実は、その気も少し変わってきているみたいなんだけどね」
( <●><●>)「そうなのですか?」
「まだあまり知られてないけど、実は、ヴィップ国軍のハンナバル総大将が亡くなったんだ」
( <●><●>)「!」
209
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 23:10:11 ID:YGRMhMt.0
「先日、桜の苗木を国に納品してきたんだけど、そのとき知り合いの商人から聞いてね」
「その話を息子にしたら、急に身体を鍛えだして。どうやら国軍入りを考え始めたみたいなんだ」
( <●><●>)「……役人としてよりも、軍人として、国を守りたい気持ちが芽生えたということですか」
「そういうことみたいだけど、親としては素直に賛成できなくてね」
( <●><●>)「息子さんを、失ってしまうかもしれないから、ですか?」
「そうだね。軍に入ったら中々会えなくなるし、戦場を生き抜けるとも限らないしね」
( <●><●>)「……確かに、そのとおりですね」
( <●><●>)(子を想う親の気持ち……そういうものなのでしょうね)
「この本、本当に貰っちゃっていいのかな? 一応、息子に渡してみるけど」
( <●><●>)「はい。一度は全て読んでいますし、今の自分には必要ないものですから」
「そうなのかい? じゃあ、遠慮なくいただくとするよ。ありがとう」
( <●><●>)「では、失礼します」
( <●><●>)(ハンナバル大将が亡くなって、きっと、国軍は混乱しているのでしょうね)
( <●><●>)(……軍人、ですか)
210
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 23:11:48 ID:ihYGa5Yo0
ここからか
211
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 23:12:03 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)(ずっと目指していた、役人への道。今は、その道を歩む気になれません)
( <●><●>)(目標を失って、これからどうすべきかをずっと、考えていましたが……)
( <●><●>)(戦場なら、”この手に残る感覚”を、薄れさせることもできるかもしれません)
( <●><●>)(……一考の余地は、ありそうですね)
・
・
・
「ベルベットくん、最近あんまりお店に来てくれなくなったなぁ」
「色々大変なんでしょう。家の庭で野菜を育てたりもしているみたいだし」
「そういえば、お金を稼ぐために山菜を採ったりもしているって聞いたなぁ」
「最近は身体を鍛えたり、剣術の練習をしたりもしてるみたいで、私たちより忙しそうよ」
「うちで引き取ってあげられないかと、思ったりもしたんだけど。あの子はそれを望まないんだろうなぁ」
「いつか両親が帰ってきてくれるかもしれないからって、あの家から離れるつもりもないみたいだしね」
「本当に、一人で生きていくつもりなんだろうなぁ。強い子だよなぁ」
「そうね。だからこそ、私たちが邪魔をしないように、あの子を静かに見守ってあげなきゃね」
「……お前は大人だなぁ、ファシア。毎日でも様子を見に行きたくなる自分が子供に思えるよ」
「あなたは少し、ベルベットくんを見習ったほうがいいかもしれないわね」
・
・
・
212
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 23:14:14 ID:YGRMhMt.0
――八年後(世界歴・515年)――
「なぁ、聞いたか? 今度の入軍試験、ブーン=トロッソ中尉が来るらしいぜ」
「入軍してたった一年で中尉まで昇格したのってすげぇよな。やっぱとんでもない威圧感なんだろうなぁ」
「試験でどんなことを試されるのか分かんねーけど、一目見れるだけでも貴重な経験だよな」
( <●><●>)(……ようやく、このときが来ましたか)
( <●><●>)(随分、長いときを待たされたような気がしますね)
( <●><●>)(……どれだけ時間が経っても、結局、”あのときの感覚”は消えなかった)
( <●><●>)(ヴィップ国軍には、今までの全てを上書くような、未知の世界が待っているのでしょうか)
( <●><●>)(願わくば、余計なことを考えないで済むような、熾烈な日々を送れますように)
―――― 人と人は支え合って生きていく。だから、人との関わりも大事なんだ。
( <-><->)(……お父さん)
( <-><->)(大丈夫です。私は、一人でも強く生きていけます)
( <-><->)(どうか、どこかで見守っていてください)
・
・
・
「――――君の名前は、なんていうんだお?」
( <●><●>)「ベルベット=ワカッテマス」
( ^ω^)「……期待してるお」
213
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 23:16:11 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)(……あの人が、ブーン=トロッソ中尉ですか)
( <●><●>)(想像とは随分違いました。さほど覇気が感じられず、他を圧倒するような空気も持っていません)
( <-><->)(……ですが、どこか、懐かしいような――――)
( <●><●>)(……ブーン=トロッソ中尉は、東塔の所属でしたね)
( <●><●>)(あの人が戦場でどう戦うのか、興味があります)
( <●><●>)(東塔を希望してみるのも、面白いかもしれませんね)
( <●><●>)(――――どうか、今までの全てを凌駕するような未来が、待っていますように)
【Past of Velvet : End】
214
:
◆azwd/t2EpE
:2019/06/14(金) 23:17:46 ID:YGRMhMt.0
【Past of Velvet】は以上です、ありがとうございました
>>202
よくお気づきで!
215
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 23:19:04 ID:dz3nlsKk0
乙乙
特殊な環境というからどんなものかと思ったら……
思った以上にハードな子供時代だったんだなぁ……
216
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 23:19:37 ID:DdWONMG20
乙!
番外編が本編に繋がるのはアツい
アルファは今でも一番好きなブーン系作品だからこうして番外編が見れて嬉しいよ
これからも楽しみにしてます
217
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 23:20:48 ID:mqLho5Sk0
>>214
乙でした。
本編終了後追い始めた身ですので、初リアタイができてよかったです。
ベルベットはブーンを慕っていましたが、ああいう育ちだったらこそ、ブーンの底なしの優しさと強さに惹かれたんですね……
218
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 23:21:27 ID:gjn2sSbk0
おつ!
219
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 23:21:35 ID:XaS26pH60
乙でした!
ベルベットには長生きして幸せになってほしかったなと改めて思いました
220
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 23:21:46 ID:7ModZuns0
乙でした。
近いうちにベルベットの登場するところ読み返そう
221
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 23:23:11 ID:ihYGa5Yo0
乙でした
222
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 23:35:25 ID:NR0nDgf60
レイルスの息子って誰なんだろーなー
223
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 00:27:14 ID:kR3FfQjU0
乙
ベルベットはヴィップの将というより、ブーンの忠臣だったんだな……
224
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 02:32:33 ID:Qw6u2mUs0
作者さん乙
やはりこの物語は父ってのがテーマだよなぁ
225
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 04:13:48 ID:1YO.erEk0
乙!
226
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 12:15:58 ID:8uMPaDbU0
おつです!めっちゃ嬉しい
ベルベット…子供時代が気の毒すぎる…
227
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 12:42:15 ID:xUHRmIvs0
乙
特殊とはきいてましたが
ちょっと特殊過ぎませんかね…(困惑
228
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 14:08:42 ID:fYOZCB8A0
おつです!
役人志望から国軍入り志望を目指し出した息子って、誰だろう
登場人物の誰かだったら面白いな。ロマネスクとか
229
:
名無しさん
:2019/06/16(日) 07:17:21 ID:ZSM2uZLc0
今読んだ!乙!
ベルベットの詳細な過去が知れて嬉しいやら切ないやら
230
:
名無しさん
:2019/06/18(火) 00:16:16 ID:NuUOiLew0
乙!
まさか番外編を今書いているところに遭遇できるとは!
当時リアタイで追い続けたことを思い出します。感無量です!
231
:
名無しさん
:2019/07/26(金) 21:11:11 ID:F0Y5eJAc0
ブーンドクオみたいなあ
232
:
名無しさん
:2019/11/13(水) 22:27:57 ID:ubPtaPcU0
改めて読み返してるけど
それぞれのキャラの国や人を想う気持ちがよく書かれすぎてて何度読んでも泣くわ
他の番外編も待ってますほんと
233
:
名無しさん
:2019/11/22(金) 11:56:26 ID:EgMDeqTk0
久しぶりに読み返してもやっぱ作者さんすごいなぁと思う
読み返すと止まらなくなり、興奮が収まらなくなり、頭の中がアルファ一色になってしまう
234
:
名無しさん
:2019/11/22(金) 21:43:04 ID:UyD/5VkE0
そういやモララーの過去がいろいろありそうな割に不明だったような
またんきとの関係知りたいな
235
:
名無しさん
:2020/01/10(金) 02:37:54 ID:M1SpP9EY0
その後のブーンの放浪生活?みたいなのも見てみたい
236
:
名無しさん
:2020/12/06(日) 12:42:25 ID:qW1Hb03U0
シラネーヨさんの過去編はまだなんですか!
237
:
名無しさん
:2021/05/13(木) 22:10:20 ID:.lYlbB3U0
保守すりゅ
238
:
名無しさん
:2021/07/30(金) 23:07:49 ID:c3CwZUAo0
最終更新二年前か…
239
:
◆azwd/t2EpE
:2023/07/15(土) 22:34:20 ID:YlMZ8lZw0
お久しぶりです、まったく音沙汰がなく申し訳ありません
twitterのほうで何かしら生存報告しようと思ったんですが、
しばらくログインしてなかったせいでメールアドレス認証などを求められ、
確か登録していたはずのメールアドレスが弾かれるのでログインできなくなってしまいました……
多分あのアカウントはもう復活厳しいと思うので、
もしDMとか色々いただいていたら大変申し訳ない限りです
たまに二次創作などの許可願いもいただいていたのですが、基本的にはOKなのでご自由にという感じです
(金銭が発生するものや著作権を侵害するものなどは除きます)
いつの間にか7周年どころか10周年さえ過ぎてしまっていて、
今後も何かできるかは分からないのですが、いつかは何とかしたいという気持ちで、
とりあえず書きかけの番外編の冒頭だけここに残しておこうかと思います
中途半端で申し訳ないですが、よろしくお願いします
240
:
◆azwd/t2EpE
:2023/07/15(土) 22:35:22 ID:YlMZ8lZw0
【Flutter in the wind】
――世界歴・514年――
――ラウンジ城――
外から戻ってきたときに一度脱いだ外套を、羽織りなおした。
あの部屋はきっと、窓が開いているだろう。そう考えたのだ。
早朝の野駆けを終えて城に帰ってきたあと、自室へ向かおうとしたところで、ベル=リミナリーの侍女に呼び止められた。
瞬間、まるで心に虫が這うような、嫌な感覚に襲われた。
ベル大将がお呼びです。そう言われたときには、悪寒すら感じた。
(`∠´)「早朝にすまないな、アルタイム」
(`・ι・´)「いえ。気になさらないでください」
窓辺で風を受けているベルは、寝床で少しだけ身体を起こしていた。
座る気力すらない。そう言われても納得してしまうほど、その痩躯からは覇気を感じなかった。
(`∠´)「今日お前を呼んだのは、他でもない。お前も分かっているはずの件だ」
(`・ι・´)「と、言いますと」
(`∠´)「お前を大将に昇格させる。クラウン国王に、そう話をつけた」
(`・ι・´)「何を。ベル大将がおられるのに、そのようなことは」
(`∠´)「よせ。分かっているはずだ。俺の命はもう、幾許もない」
言葉は、出てこなかった。
否定したいが、否定できない。ベルが日に日に衰えていくのを、この目で見続けてきたのだ。
他を寄せ付けないほどの圧倒的な存在感が、失われていくのを、感じ続けてきたのだ。
241
:
◆azwd/t2EpE
:2023/07/15(土) 22:35:56 ID:YlMZ8lZw0
(`∠´)「クラウン国王とも意見は一致した。後任の大将は、他にはいないと」
その言葉を素直に喜んでいいのかどうかは、分からなかった。
序列で言えば、本来はシッティム=エクスタインが最右翼だろう。しかし、高齢であることを考えれば除外されたのは理解できる。
他に、候補としてはガダン=ベオグラードなどもいる。その中で、自分が戦功で頭抜けているわけではない。
恐らくは、アルファベットのランクで選ばれたのだろう。
今のラウンジで、ベルを除けば、Sの壁を超えているのは自分しかいない。
後任を決めかねたとすれば、アルファベットを理由にするのが最も将を納得させやすいはずだ。
(`・ι・´)「……ベル大将が、快復されるまでの間、というわけにはいかないのでしょうか」
(`∠´)「いかんな。自分が一番よく分かる。この病は、もう、治らん」
ベルは、死期を明確に悟っている。
そして、それが近いことも分かっているのだ。
ラウンジは、大将を失う。
稀代の英傑と称された、最も偉大な将を、ここで失うのだ。
その現実が、あまりにも重く、苦しみを伴って、圧し掛かる。
(`・ι・´)「……私は、ベル大将に比べて、あまりにも矮小な存在です。同じように大将を務めることなど、到底叶いません」
(`∠´)「同じようになろうとしなくていい。お前は、存分に周りを頼れ。本来、大将とは、そうあるべきだ、と思う」
気弱な発言だ、と思った。
あまりにもベルらしくない、とも。
改めて過去を見つめなおし、考え方を変えたのだろうか。
それとも、死が迫り来る日々は、ここまで人を変えさせてしまうのだろうか。
まだ朝なのに、もう夜が近づいているように感じた。
この先は、人の姿も、路傍に転がる石も、進むべき道も、きっと見えない。
僅かな星明かりさえもない。そう感じさせられた。
(`∠´)「アルタイム」
不意に差し出された封筒によって、視界が急に明るくなったように思えた。
242
:
◆azwd/t2EpE
:2023/07/15(土) 22:36:19 ID:YlMZ8lZw0
(`・ι・´)「これは……」
(`∠´)「お前に、頼みがある」
恐らく、中には手紙が入っている。
宛名などは何も書かれていない。真っ白な封筒だった。
(`∠´)「誰にも見られず、何事にも邪魔されない自信がある場所で、これを読んでくれ。そして、書いてあるとおりに行動してほしい」
(`∠´)「中に書いてあることは、絶対に他言するな。例えそれが、クラウン国王であってもだ」
前半の言葉は、まだ、平穏を保って聞いていられた。
しかし、後半の言葉は、明らかに異常さを感じさせられるものだった。
(;`・ι・´)「どういうことですか? クラウン国王にさえ言ってはならないとは」
心が揺らぐ。
これではまるで、クラウン=ジェスターを信用していないと言っているようなものだ。
(`∠´)「断っておくが、クラウン国王を信用していないわけではない」
見透かしたように、ベルは言った。
決然とした口調だった。
(`∠´)「ただ、あの人の考えは読めないところがある。その手紙に書いたことをそのまま伝えても、そのまま実行されない可能性がある」
(`・ι・´)「……クラウン国王なりの、より良い策に変更される可能性があると」
(`∠´)「そうだ。その可能性を排除したい」
ベルの気持ちは分かる。
クラウンは、自身が有能な戦略家であり、謀略家でもあるため、計り知れないところがあるのだ。
手紙に何が書かれているのかは分からないが、ベルの望んだとおりに動いてくれるとは限らない。
243
:
◆azwd/t2EpE
:2023/07/15(土) 22:36:40 ID:YlMZ8lZw0
(`∠´)「読んだあとはすぐに燃やしてくれ。お前以外の誰にも知られたくはない」
(`・ι・´)「……それほどの策、なのですね」
(`∠´)「俺の死は、この世界にとって決して些事ではないだろう。ならば、利用しない手はない」
常に、戦に勝つことだけを考えている男だった。
しかしまさか、この男は、自分の死さえもラウンジの勝利に利用しようというのか。
やはり、器が違う。
比肩する者など、いるはずがなかった。
(`∠´)「これは、お前にしか頼めないことだ」
ベルが、いつの間にか身体を完全に起こしていた。
近づいた瞳には、まだ、星のような輝きが残っている。
(`∠´)「他の誰でもない、アルタイム=フェイクファーにしか頼めないんだ。頼む。お前しかいない」
力強く名前を言われて、自然と、涙が溢れてきた。
将校になる前、敵将を討つ武勲を挙げて、ベルに名を聞かれた。
アルタイム=フェイクファーです。そう答えると、繰り返すようにベルは自分の名を呼んでくれた。
そして、よくやったな、と言ってくれた。
あれが、ベルに初めて認知された瞬間だった。
言葉にできない喜びで、足元は浮つき、まともに前が見えないほど視界は滲んだ。
あのときの情景が、不意に甦ってきたのだ。
ベル=リミナリーのおかげで、今の自分がある。
自分は、その大恩に報いなければならない。
(`・ι・´)「いつの日か、必ずや、ラウンジが天下を得たとご報告に参ります」
後事は頼んだと言われ、涙声のまま、そう答えた。
ベルは、喋るのが辛くなったようで、ただ小さく頷いただけだ。
しかし、決して悪い表情ではなかった。
・
・
・
244
:
◆azwd/t2EpE
:2023/07/15(土) 22:37:04 ID:YlMZ8lZw0
衣服の内側にしまい込んだ封筒を、二度、三度と軽く押さえる。
不安を抑え込むように。
( ̄⊥ ̄)「中将」
自室に戻る途中で、すれ違った。
ファルロ=リミナリー。
何か、言葉を繋ごうとしていたのは、分かった。
しかし、自分の顔を見た瞬間、ファルロは口を噤んだ。
今、自分がどういう表情をしているのか、分からない。
平静を装っているつもりだったが、恐らく、そうではないのだろう。
自然と広がった歩幅で、自室へと急いだ。
すれ違う将兵は、一様に頭を下げてくる。
将校となった頃から、変わらない。恐らくこれからも、変わらないだろう。
自室に戻ってすぐ、アルファベットを手にした。
(`・ι・´)「夕刻には戻る」
それだけを、従者に伝えた。
従者は、ただ頭を下げるのみで、何も言葉は返さない。
この従者に、誰も部屋に入れるなと告げれば、間違いなくそのとおりにしてくれるだろう。
その間にベルの手紙を読めば、”誰にも見られず”というベルの言いつけを守ることはできる。
だが、ここではない。
ここではあまりにも、考えなければならないことが多すぎる。
それでは、”何事にも邪魔されない”という条件は守れない。
245
:
◆azwd/t2EpE
:2023/07/15(土) 22:37:38 ID:YlMZ8lZw0
自室を出て、階段を降り、城門をくぐった。
厩舎では、朝露の残る原野を駆けさせていた馬が、ゆっくりと秣を食んでいる。
(`・ι・´)「駆けさせたばかりなのに、すまないな」
馬の首筋は、まだ汗で少し湿っていた。
鼻孔からは荒々しく白濁した息が漏れている。
轡を銜えさせ、鐙に足を掛けた。
軽く手綱を引く。馬の前脚が持ち上がる。
遮るもののない原野を駆けだした。
(`・ι・´)(落ち着こう、少し時間をかけて)
目的地までは三刻もあれば着く。
混濁した思考を落ち着かせるにはちょうどいい。
間違っても落とさないように、何度も封筒に手を当てた。
そして、気持ちが落ち着くにつれ、分かってきたことがある。
この封筒は、明らかに分厚い。
今後の指示を先々まで、詳細に書いてあるのかもしれないが、いくらベルでも、それほど未来を見通せるとは思えない。
つまり――――
(`・ι・´)(恐らく、今後の指示だけではない)
(`・ι・´)(何か、別のことまで書かれているとしか思えない)
何ら確信を持てる要素はない。
しかし、何故か自分の直感を疑う気になれなかった。
・
・
・
246
:
◆azwd/t2EpE
:2023/07/15(土) 22:40:15 ID:YlMZ8lZw0
少しで申し訳ないですがここまでです
またいずれ続きを投下できたらと思います
書けるかどうかわからないですが……
がんばります
247
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 22:43:16 ID:BYgraoo.0
わーい!
乙乙です
248
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 22:44:34 ID:zFNiOAsY0
まさかリアタイ遭遇できるなんて嬉しすぎる
アルファがずっと一番好きな作品です
続きいつまでも待ってる
249
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 23:12:33 ID:142a4lAc0
乙
十数年ぶりのリ・アルタイム
250
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 23:24:27 ID:m0k8k/2E0
乙乙
続きがとっても気になります!
251
:
名無しさん
:2023/07/16(日) 00:05:25 ID:fv2REZeY0
うおおおいつまでも楽しみにしてる
暑いから体調に気をつけてください
252
:
名無しさん
:2023/07/16(日) 01:18:15 ID:akYh9slM0
ありがとうございます
253
:
名無しさん
:2023/07/16(日) 06:47:51 ID:5GjJEMtI0
おいおいどこの「新参」がageたんだ…
う あ あ あ あ あ(ベルの手紙書き文字)
アルタイムが原野を練り駆けてる〜!!!
254
:
名無しさん
:2023/07/16(日) 06:59:36 ID:PA8KxHng0
ワクテカ
255
:
名無しさん
:2023/07/16(日) 23:10:51 ID:Qano75tE0
まさかまた来てくれるとは思わなかった嬉しい
ベルはクラウンのことも読み切ってたのかほんと英傑だな
続き待ってます
256
:
名無しさん
:2023/07/17(月) 11:50:29 ID:6Pj3vZ8A0
ホアッ!!!???
257
:
名無しさん
:2023/07/17(月) 11:50:58 ID:6Pj3vZ8A0
ホアッ!!!???
258
:
名無しさん
:2023/07/30(日) 00:38:11 ID:46rdLrFI0
また番外編読めるなんて本当に嬉しい
続きいつまでも待ってる
259
:
名無しさん
:2023/08/03(木) 14:17:49 ID:3GbnZG3o0
たまたま見たら番外編…!完全に予想外だった。うれしい
260
:
◆azwd/t2EpE
:2023/10/15(日) 00:35:02 ID:Sz1M1yRs0
竹林に入るところで下馬し、手綱を引いて歩き始めた。
小雨が降り出したが、地面は既に泥濘している。
恐らく、昨日も雨が降っていたのだろう。
以前来たときよりも道が荒れており、馬が転倒しないように慎重に進む必要があった。
これが何を物語るのか、分かってはいたが、あまり考えないようにした。
半刻ほど歩いたところで、小さな家が見えてきた。
磚ではなく木材で作られた家で、周囲の竹と相俟って、いつ見ても美しく感じる。
入口の戸を引いて中に入った。
薄暗く、はっきりとは見えないが、そこに居るのは分かる。
会うのは半年ぶり、いや、もう一年ぶりだろうか。
ヽ〜ゝ・ノ「やあ。来てくれたのか」
床几に腰掛ける父の姿は、以前よりも小さく見えた。
単に背中が曲がっただけではなさそうだった。
261
:
◆azwd/t2EpE
:2023/10/15(日) 00:35:41 ID:Sz1M1yRs0
(`・ι・´)「すまないな、随分と日が空いてしまった」
ヽ〜ゝ・ノ「気にしないでくれ。忙しいんだろう」
いつもどおり、沙汰の無さを責めることもない。
幼い頃は厳しく接されることも多かったが、軍人となってからはいつも気遣う言葉ばかりを投げかけてくれる。
(`・ι・´)「身体のほうは、どうなんだ?」
ヽ〜ゝ・ノ「今日は、さほど悪くないな」
やはり、あまり良くないのだろう。
こけた頬も、骨が浮いて見える手も、それを物語っている。
しかし、心配をかけまいとする気持ちを察してしまうと、何も言えなかった。
木材を自ら運び、この家を一人で建てるほど、頑強な父だった。
その面影は、もう、どこにも見つけることができない。
ヽ〜ゝ・ノ「今日はどうしたんだ、と訊きたいところだが」
ヽ〜ゝ・ノ「どうやら、訊かないほうが良さそうだな」
262
:
◆azwd/t2EpE
:2023/10/15(日) 00:36:05 ID:Sz1M1yRs0
昔から、そうだった。
いつも、こちらが考えていることを全て見透かしてくる。
ほとんどの場合、何も言えなくなって、ただ苦笑するだけになる。
(`・ι・´)「すまないが、作業場を貸してもらえるか? 一人きりで、やりたいことがある」
ヽ〜ゝ・ノ「もちろん構わないが、あまり手入れできていなくてね」
(`・ι・´)「問題ない。ただ、すまないが」
ヽ〜ゝ・ノ「大丈夫だ、何も邪魔したりしないよ」
何も言わずとも、全てを察してくれるのが、ありがたかった。
軽く頷いて、筵から腰を浮かした。
ヽ〜ゝ・ノ「これは、独り言だから、特に何も反応を示さなくていいんだが」
俯き加減の父から、漏れた言葉。
か細い声なのに、何故か鋭さを感じた。
263
:
◆azwd/t2EpE
:2023/10/15(日) 00:36:45 ID:Sz1M1yRs0
ヽ〜ゝ・ノ「恐らく、近いんだろう。ベル様の死期が」
やはり、見通されている。
自分の表情から、様子から。全て。
ヽ〜ゝ・ノ「私には何もしてやれないが、時間と静穏を確保することはできる」
ヽ〜ゝ・ノ「じっくり考えてみるのもいいだろう。私は、ここで待っているよ」
父に背中を向けた。
何も言わず、隣の作業場へと移動した。
父の言葉どおり、作業場は荒れていた。
ところどころに苔が生えており、物も整理されていない。
以前はよくここで木材を切ったり箪を作ったりしていたが、最近はそれもなくなったようだ。
264
:
名無しさん
:2023/10/15(日) 00:40:40 ID:5U7C/49k0
リアタイ嬉しすぎる支援
265
:
◆azwd/t2EpE
:2023/10/15(日) 00:43:22 ID:Sz1M1yRs0
超絶スローペースで申し訳ない限りですが、また書けたら投下します
266
:
名無しさん
:2023/10/15(日) 00:47:38 ID:5U7C/49k0
乙!!続き楽しみに待ってます!
267
:
名無しさん
:2023/10/15(日) 11:03:17 ID:i0wpL1lY0
乙乙
読めてとても嬉しい
268
:
名無しさん
:2023/10/15(日) 19:53:56 ID:/Q/dREbQ0
おつです
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