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( ^ω^)ブーンがアルファベットを武器に戦うようです 番外編

1 ◆azwd/t2EpE:2019/01/16(水) 23:05:20 ID:hO8klvI.0
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完結7周年を記念した番外編を投下します

219名無しさん:2019/06/14(金) 23:21:35 ID:XaS26pH60
乙でした!
ベルベットには長生きして幸せになってほしかったなと改めて思いました

220名無しさん:2019/06/14(金) 23:21:46 ID:7ModZuns0
乙でした。
近いうちにベルベットの登場するところ読み返そう

221名無しさん:2019/06/14(金) 23:23:11 ID:ihYGa5Yo0
乙でした

222名無しさん:2019/06/14(金) 23:35:25 ID:NR0nDgf60
レイルスの息子って誰なんだろーなー

223名無しさん:2019/06/15(土) 00:27:14 ID:kR3FfQjU0

ベルベットはヴィップの将というより、ブーンの忠臣だったんだな……

224名無しさん:2019/06/15(土) 02:32:33 ID:Qw6u2mUs0
作者さん乙

やはりこの物語は父ってのがテーマだよなぁ

225名無しさん:2019/06/15(土) 04:13:48 ID:1YO.erEk0
乙!

226名無しさん:2019/06/15(土) 12:15:58 ID:8uMPaDbU0
おつです!めっちゃ嬉しい
ベルベット…子供時代が気の毒すぎる…

227名無しさん:2019/06/15(土) 12:42:15 ID:xUHRmIvs0

特殊とはきいてましたが
ちょっと特殊過ぎませんかね…(困惑

228名無しさん:2019/06/15(土) 14:08:42 ID:fYOZCB8A0
おつです!
役人志望から国軍入り志望を目指し出した息子って、誰だろう
登場人物の誰かだったら面白いな。ロマネスクとか

229名無しさん:2019/06/16(日) 07:17:21 ID:ZSM2uZLc0
今読んだ!乙!
ベルベットの詳細な過去が知れて嬉しいやら切ないやら

230名無しさん:2019/06/18(火) 00:16:16 ID:NuUOiLew0
乙!
まさか番外編を今書いているところに遭遇できるとは!
当時リアタイで追い続けたことを思い出します。感無量です!

231名無しさん:2019/07/26(金) 21:11:11 ID:F0Y5eJAc0
ブーンドクオみたいなあ

232名無しさん:2019/11/13(水) 22:27:57 ID:ubPtaPcU0
改めて読み返してるけど
それぞれのキャラの国や人を想う気持ちがよく書かれすぎてて何度読んでも泣くわ
他の番外編も待ってますほんと

233名無しさん:2019/11/22(金) 11:56:26 ID:EgMDeqTk0
久しぶりに読み返してもやっぱ作者さんすごいなぁと思う
読み返すと止まらなくなり、興奮が収まらなくなり、頭の中がアルファ一色になってしまう

234名無しさん:2019/11/22(金) 21:43:04 ID:UyD/5VkE0
そういやモララーの過去がいろいろありそうな割に不明だったような
またんきとの関係知りたいな

235名無しさん:2020/01/10(金) 02:37:54 ID:M1SpP9EY0
その後のブーンの放浪生活?みたいなのも見てみたい

236名無しさん:2020/12/06(日) 12:42:25 ID:qW1Hb03U0
シラネーヨさんの過去編はまだなんですか!

237名無しさん:2021/05/13(木) 22:10:20 ID:.lYlbB3U0
保守すりゅ

238名無しさん:2021/07/30(金) 23:07:49 ID:c3CwZUAo0
最終更新二年前か…

239 ◆azwd/t2EpE:2023/07/15(土) 22:34:20 ID:YlMZ8lZw0
お久しぶりです、まったく音沙汰がなく申し訳ありません

twitterのほうで何かしら生存報告しようと思ったんですが、
しばらくログインしてなかったせいでメールアドレス認証などを求められ、
確か登録していたはずのメールアドレスが弾かれるのでログインできなくなってしまいました……

多分あのアカウントはもう復活厳しいと思うので、
もしDMとか色々いただいていたら大変申し訳ない限りです
たまに二次創作などの許可願いもいただいていたのですが、基本的にはOKなのでご自由にという感じです
(金銭が発生するものや著作権を侵害するものなどは除きます)

いつの間にか7周年どころか10周年さえ過ぎてしまっていて、
今後も何かできるかは分からないのですが、いつかは何とかしたいという気持ちで、
とりあえず書きかけの番外編の冒頭だけここに残しておこうかと思います
中途半端で申し訳ないですが、よろしくお願いします

240 ◆azwd/t2EpE:2023/07/15(土) 22:35:22 ID:YlMZ8lZw0
【Flutter in the wind】
 
 
――世界歴・514年――
 
――ラウンジ城――
 
 外から戻ってきたときに一度脱いだ外套を、羽織りなおした。
 あの部屋はきっと、窓が開いているだろう。そう考えたのだ。
 
 早朝の野駆けを終えて城に帰ってきたあと、自室へ向かおうとしたところで、ベル=リミナリーの侍女に呼び止められた。
 瞬間、まるで心に虫が這うような、嫌な感覚に襲われた。
 ベル大将がお呼びです。そう言われたときには、悪寒すら感じた。
 
(`∠´)「早朝にすまないな、アルタイム」
 
(`・ι・´)「いえ。気になさらないでください」
 
 窓辺で風を受けているベルは、寝床で少しだけ身体を起こしていた。
 座る気力すらない。そう言われても納得してしまうほど、その痩躯からは覇気を感じなかった。
 
(`∠´)「今日お前を呼んだのは、他でもない。お前も分かっているはずの件だ」
 
(`・ι・´)「と、言いますと」
 
(`∠´)「お前を大将に昇格させる。クラウン国王に、そう話をつけた」
 
(`・ι・´)「何を。ベル大将がおられるのに、そのようなことは」
 
(`∠´)「よせ。分かっているはずだ。俺の命はもう、幾許もない」
 
 言葉は、出てこなかった。
 否定したいが、否定できない。ベルが日に日に衰えていくのを、この目で見続けてきたのだ。
 他を寄せ付けないほどの圧倒的な存在感が、失われていくのを、感じ続けてきたのだ。

241 ◆azwd/t2EpE:2023/07/15(土) 22:35:56 ID:YlMZ8lZw0
(`∠´)「クラウン国王とも意見は一致した。後任の大将は、他にはいないと」
 
 その言葉を素直に喜んでいいのかどうかは、分からなかった。
 序列で言えば、本来はシッティム=エクスタインが最右翼だろう。しかし、高齢であることを考えれば除外されたのは理解できる。
 他に、候補としてはガダン=ベオグラードなどもいる。その中で、自分が戦功で頭抜けているわけではない。
 
 恐らくは、アルファベットのランクで選ばれたのだろう。
 今のラウンジで、ベルを除けば、Sの壁を超えているのは自分しかいない。
 後任を決めかねたとすれば、アルファベットを理由にするのが最も将を納得させやすいはずだ。
 
(`・ι・´)「……ベル大将が、快復されるまでの間、というわけにはいかないのでしょうか」
 
(`∠´)「いかんな。自分が一番よく分かる。この病は、もう、治らん」
 
 ベルは、死期を明確に悟っている。
 そして、それが近いことも分かっているのだ。
 
 ラウンジは、大将を失う。
 稀代の英傑と称された、最も偉大な将を、ここで失うのだ。
 
 その現実が、あまりにも重く、苦しみを伴って、圧し掛かる。
 
(`・ι・´)「……私は、ベル大将に比べて、あまりにも矮小な存在です。同じように大将を務めることなど、到底叶いません」
 
(`∠´)「同じようになろうとしなくていい。お前は、存分に周りを頼れ。本来、大将とは、そうあるべきだ、と思う」
 
 気弱な発言だ、と思った。
 あまりにもベルらしくない、とも。
 
 改めて過去を見つめなおし、考え方を変えたのだろうか。
 それとも、死が迫り来る日々は、ここまで人を変えさせてしまうのだろうか。
 
 まだ朝なのに、もう夜が近づいているように感じた。
 この先は、人の姿も、路傍に転がる石も、進むべき道も、きっと見えない。
 僅かな星明かりさえもない。そう感じさせられた。
 
(`∠´)「アルタイム」
 
 不意に差し出された封筒によって、視界が急に明るくなったように思えた。

242 ◆azwd/t2EpE:2023/07/15(土) 22:36:19 ID:YlMZ8lZw0
(`・ι・´)「これは……」
 
(`∠´)「お前に、頼みがある」
 
 恐らく、中には手紙が入っている。
 宛名などは何も書かれていない。真っ白な封筒だった。
 
(`∠´)「誰にも見られず、何事にも邪魔されない自信がある場所で、これを読んでくれ。そして、書いてあるとおりに行動してほしい」
 
(`∠´)「中に書いてあることは、絶対に他言するな。例えそれが、クラウン国王であってもだ」
 
 前半の言葉は、まだ、平穏を保って聞いていられた。
 しかし、後半の言葉は、明らかに異常さを感じさせられるものだった。
 
(;`・ι・´)「どういうことですか? クラウン国王にさえ言ってはならないとは」
 
 心が揺らぐ。
 これではまるで、クラウン=ジェスターを信用していないと言っているようなものだ。
 
(`∠´)「断っておくが、クラウン国王を信用していないわけではない」
 
 見透かしたように、ベルは言った。
 決然とした口調だった。
 
(`∠´)「ただ、あの人の考えは読めないところがある。その手紙に書いたことをそのまま伝えても、そのまま実行されない可能性がある」
 
(`・ι・´)「……クラウン国王なりの、より良い策に変更される可能性があると」
 
(`∠´)「そうだ。その可能性を排除したい」
 
 ベルの気持ちは分かる。
 クラウンは、自身が有能な戦略家であり、謀略家でもあるため、計り知れないところがあるのだ。
 手紙に何が書かれているのかは分からないが、ベルの望んだとおりに動いてくれるとは限らない。

243 ◆azwd/t2EpE:2023/07/15(土) 22:36:40 ID:YlMZ8lZw0
(`∠´)「読んだあとはすぐに燃やしてくれ。お前以外の誰にも知られたくはない」
 
(`・ι・´)「……それほどの策、なのですね」
 
(`∠´)「俺の死は、この世界にとって決して些事ではないだろう。ならば、利用しない手はない」
 
 常に、戦に勝つことだけを考えている男だった。
 しかしまさか、この男は、自分の死さえもラウンジの勝利に利用しようというのか。
 
 やはり、器が違う。
 比肩する者など、いるはずがなかった。
 
(`∠´)「これは、お前にしか頼めないことだ」
 
 ベルが、いつの間にか身体を完全に起こしていた。
 近づいた瞳には、まだ、星のような輝きが残っている。
 
(`∠´)「他の誰でもない、アルタイム=フェイクファーにしか頼めないんだ。頼む。お前しかいない」
 
 力強く名前を言われて、自然と、涙が溢れてきた。
 
 将校になる前、敵将を討つ武勲を挙げて、ベルに名を聞かれた。
 アルタイム=フェイクファーです。そう答えると、繰り返すようにベルは自分の名を呼んでくれた。
 そして、よくやったな、と言ってくれた。
 
 あれが、ベルに初めて認知された瞬間だった。
 言葉にできない喜びで、足元は浮つき、まともに前が見えないほど視界は滲んだ。
 あのときの情景が、不意に甦ってきたのだ。
 
 ベル=リミナリーのおかげで、今の自分がある。
 自分は、その大恩に報いなければならない。
 
(`・ι・´)「いつの日か、必ずや、ラウンジが天下を得たとご報告に参ります」
 
 後事は頼んだと言われ、涙声のまま、そう答えた。
 ベルは、喋るのが辛くなったようで、ただ小さく頷いただけだ。
 しかし、決して悪い表情ではなかった。
 
 ・
 ・
 ・

244 ◆azwd/t2EpE:2023/07/15(土) 22:37:04 ID:YlMZ8lZw0
 衣服の内側にしまい込んだ封筒を、二度、三度と軽く押さえる。
 不安を抑え込むように。
 
( ̄⊥ ̄)「中将」
 
 自室に戻る途中で、すれ違った。
 ファルロ=リミナリー。
 
 何か、言葉を繋ごうとしていたのは、分かった。
 しかし、自分の顔を見た瞬間、ファルロは口を噤んだ。
 
 今、自分がどういう表情をしているのか、分からない。
 平静を装っているつもりだったが、恐らく、そうではないのだろう。
 
 自然と広がった歩幅で、自室へと急いだ。
 すれ違う将兵は、一様に頭を下げてくる。
 将校となった頃から、変わらない。恐らくこれからも、変わらないだろう。
 
 自室に戻ってすぐ、アルファベットを手にした。
 
(`・ι・´)「夕刻には戻る」
 
 それだけを、従者に伝えた。
 従者は、ただ頭を下げるのみで、何も言葉は返さない。
 
 この従者に、誰も部屋に入れるなと告げれば、間違いなくそのとおりにしてくれるだろう。
 その間にベルの手紙を読めば、”誰にも見られず”というベルの言いつけを守ることはできる。
 
 だが、ここではない。
 ここではあまりにも、考えなければならないことが多すぎる。
 それでは、”何事にも邪魔されない”という条件は守れない。

245 ◆azwd/t2EpE:2023/07/15(土) 22:37:38 ID:YlMZ8lZw0
 自室を出て、階段を降り、城門をくぐった。
 厩舎では、朝露の残る原野を駆けさせていた馬が、ゆっくりと秣を食んでいる。
 
(`・ι・´)「駆けさせたばかりなのに、すまないな」
 
 馬の首筋は、まだ汗で少し湿っていた。
 鼻孔からは荒々しく白濁した息が漏れている。
 
 轡を銜えさせ、鐙に足を掛けた。
 軽く手綱を引く。馬の前脚が持ち上がる。
 
 遮るもののない原野を駆けだした。
 
(`・ι・´)(落ち着こう、少し時間をかけて)
 
 目的地までは三刻もあれば着く。
 混濁した思考を落ち着かせるにはちょうどいい。
 
 間違っても落とさないように、何度も封筒に手を当てた。
 そして、気持ちが落ち着くにつれ、分かってきたことがある。
 
 この封筒は、明らかに分厚い。
 今後の指示を先々まで、詳細に書いてあるのかもしれないが、いくらベルでも、それほど未来を見通せるとは思えない。
 
 つまり――――

(`・ι・´)(恐らく、今後の指示だけではない)
 
(`・ι・´)(何か、別のことまで書かれているとしか思えない)
 
 何ら確信を持てる要素はない。
 しかし、何故か自分の直感を疑う気になれなかった。
 
 ・
 ・
 ・

246 ◆azwd/t2EpE:2023/07/15(土) 22:40:15 ID:YlMZ8lZw0
少しで申し訳ないですがここまでです
またいずれ続きを投下できたらと思います
書けるかどうかわからないですが……
がんばります

247名無しさん:2023/07/15(土) 22:43:16 ID:BYgraoo.0
わーい!
乙乙です

248名無しさん:2023/07/15(土) 22:44:34 ID:zFNiOAsY0
まさかリアタイ遭遇できるなんて嬉しすぎる
アルファがずっと一番好きな作品です
続きいつまでも待ってる

249名無しさん:2023/07/15(土) 23:12:33 ID:142a4lAc0

十数年ぶりのリ・アルタイム

250名無しさん:2023/07/15(土) 23:24:27 ID:m0k8k/2E0
乙乙
続きがとっても気になります!

251名無しさん:2023/07/16(日) 00:05:25 ID:fv2REZeY0
うおおおいつまでも楽しみにしてる
暑いから体調に気をつけてください

252名無しさん:2023/07/16(日) 01:18:15 ID:akYh9slM0
ありがとうございます

253名無しさん:2023/07/16(日) 06:47:51 ID:5GjJEMtI0
おいおいどこの「新参」がageたんだ…

う あ あ あ あ あ(ベルの手紙書き文字)
アルタイムが原野を練り駆けてる〜!!!

254名無しさん:2023/07/16(日) 06:59:36 ID:PA8KxHng0
ワクテカ

255名無しさん:2023/07/16(日) 23:10:51 ID:Qano75tE0
まさかまた来てくれるとは思わなかった嬉しい
ベルはクラウンのことも読み切ってたのかほんと英傑だな
続き待ってます

256名無しさん:2023/07/17(月) 11:50:29 ID:6Pj3vZ8A0
ホアッ!!!???

257名無しさん:2023/07/17(月) 11:50:58 ID:6Pj3vZ8A0
ホアッ!!!???

258名無しさん:2023/07/30(日) 00:38:11 ID:46rdLrFI0
また番外編読めるなんて本当に嬉しい
続きいつまでも待ってる

259名無しさん:2023/08/03(木) 14:17:49 ID:3GbnZG3o0
たまたま見たら番外編…!完全に予想外だった。うれしい

260 ◆azwd/t2EpE:2023/10/15(日) 00:35:02 ID:Sz1M1yRs0
 竹林に入るところで下馬し、手綱を引いて歩き始めた。
 小雨が降り出したが、地面は既に泥濘している。
 恐らく、昨日も雨が降っていたのだろう。
 
 以前来たときよりも道が荒れており、馬が転倒しないように慎重に進む必要があった。
 これが何を物語るのか、分かってはいたが、あまり考えないようにした。
 
 半刻ほど歩いたところで、小さな家が見えてきた。
 磚ではなく木材で作られた家で、周囲の竹と相俟って、いつ見ても美しく感じる。
 
 入口の戸を引いて中に入った。
 薄暗く、はっきりとは見えないが、そこに居るのは分かる。
 会うのは半年ぶり、いや、もう一年ぶりだろうか。
 
ヽ〜ゝ・ノ「やあ。来てくれたのか」
 
 床几に腰掛ける父の姿は、以前よりも小さく見えた。
 単に背中が曲がっただけではなさそうだった。

261 ◆azwd/t2EpE:2023/10/15(日) 00:35:41 ID:Sz1M1yRs0
(`・ι・´)「すまないな、随分と日が空いてしまった」
 
ヽ〜ゝ・ノ「気にしないでくれ。忙しいんだろう」
 
 いつもどおり、沙汰の無さを責めることもない。
 幼い頃は厳しく接されることも多かったが、軍人となってからはいつも気遣う言葉ばかりを投げかけてくれる。
 
(`・ι・´)「身体のほうは、どうなんだ?」
 
ヽ〜ゝ・ノ「今日は、さほど悪くないな」
 
 やはり、あまり良くないのだろう。
 こけた頬も、骨が浮いて見える手も、それを物語っている。
 しかし、心配をかけまいとする気持ちを察してしまうと、何も言えなかった。
 
 木材を自ら運び、この家を一人で建てるほど、頑強な父だった。
 その面影は、もう、どこにも見つけることができない。
 
ヽ〜ゝ・ノ「今日はどうしたんだ、と訊きたいところだが」
 
ヽ〜ゝ・ノ「どうやら、訊かないほうが良さそうだな」

262 ◆azwd/t2EpE:2023/10/15(日) 00:36:05 ID:Sz1M1yRs0
 昔から、そうだった。
 いつも、こちらが考えていることを全て見透かしてくる。
 ほとんどの場合、何も言えなくなって、ただ苦笑するだけになる。
 
(`・ι・´)「すまないが、作業場を貸してもらえるか? 一人きりで、やりたいことがある」
 
ヽ〜ゝ・ノ「もちろん構わないが、あまり手入れできていなくてね」
 
(`・ι・´)「問題ない。ただ、すまないが」
 
ヽ〜ゝ・ノ「大丈夫だ、何も邪魔したりしないよ」
 
 何も言わずとも、全てを察してくれるのが、ありがたかった。
 軽く頷いて、筵から腰を浮かした。
 
ヽ〜ゝ・ノ「これは、独り言だから、特に何も反応を示さなくていいんだが」
 
 俯き加減の父から、漏れた言葉。
 か細い声なのに、何故か鋭さを感じた。

263 ◆azwd/t2EpE:2023/10/15(日) 00:36:45 ID:Sz1M1yRs0
ヽ〜ゝ・ノ「恐らく、近いんだろう。ベル様の死期が」
 
 やはり、見通されている。
 自分の表情から、様子から。全て。
 
ヽ〜ゝ・ノ「私には何もしてやれないが、時間と静穏を確保することはできる」
 
ヽ〜ゝ・ノ「じっくり考えてみるのもいいだろう。私は、ここで待っているよ」
 
 父に背中を向けた。
 何も言わず、隣の作業場へと移動した。
 
 父の言葉どおり、作業場は荒れていた。
 ところどころに苔が生えており、物も整理されていない。
 以前はよくここで木材を切ったり箪を作ったりしていたが、最近はそれもなくなったようだ。

264名無しさん:2023/10/15(日) 00:40:40 ID:5U7C/49k0
リアタイ嬉しすぎる支援

265 ◆azwd/t2EpE:2023/10/15(日) 00:43:22 ID:Sz1M1yRs0
超絶スローペースで申し訳ない限りですが、また書けたら投下します

266名無しさん:2023/10/15(日) 00:47:38 ID:5U7C/49k0
乙!!続き楽しみに待ってます!

267名無しさん:2023/10/15(日) 11:03:17 ID:i0wpL1lY0
乙乙
読めてとても嬉しい

268名無しさん:2023/10/15(日) 19:53:56 ID:/Q/dREbQ0
おつです


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