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(´・_ゝ・`)ペアリングのようです(゚、゚トソン
419
:
名無しさん
:2020/12/02(水) 21:56:47 ID:xc2dbHsw0
更新嬉しい、乙
420
:
名無しさん
:2020/12/03(木) 03:50:52 ID:56ysnCtQ0
復活ありがとうー!
421
:
名無しさん
:2020/12/03(木) 12:53:27 ID:YxAhIiCc0
生きてたのか!
422
:
名無しさん
:2020/12/03(木) 13:41:29 ID:8toF8V6g0
一気に読んでしまった……トソンのメモ微笑ましいな
423
:
名無しさん
:2020/12/03(木) 17:44:11 ID:RVQ/aa7s0
ふと思い出して10か月ぶりぐらいで覗きに来たら…まさかの昨日更新とは!
ずっと待ってました、無理せずゆっくり続きをお願いします!
424
:
名無しさん
:2020/12/04(金) 02:38:56 ID:oN6MBkgg0
こういうことがあるからブーン系はやめらんねぇんだ!
425
:
名無しさん
:2020/12/08(火) 11:17:21 ID:h1EImkwg0
まってたよー!
更新嬉しい!
トソンちゃんがんばれ〜
デミもがんばれ〜
426
:
名無しさん
:2020/12/12(土) 11:28:25 ID:z9St..oc0
続き楽しみ
待ってて良かった
427
:
名無しさん
:2020/12/24(木) 22:43:09 ID:4683Z4Wc0
番外編: ザコにもクリスマスはやってくる
.
428
:
名無しさん
:2020/12/24(木) 22:43:53 ID:4683Z4Wc0
【クラブAA】
ζ(゚ー゚*ζ「こんばんはー♪久しぶりに会えて嬉しいよ〜!」
(*^ν^)(天使……)
(;*^ν^)つ@「あ、お、俺も……。あの…これ、プ、プレゼント…!」
@ζ(゚ー゚*ζ「え?クリスマスプレゼント?わー!ありがとう!」
@ζ(゚ー゚*ζ「お菓子?かな?嬉しいー!!」
(*^ν^)(女神……)
(;^ν^)「シュトーレン?って言ってた…て、手作り、らしい…」
〆ζ(゚ー゚*ζ シュルシュル「そうなの?美味しそう!さっそくいただくね!」
(;^ν^)「え」
爪'ー`)y- 「失礼しますシンデレラさん、お電話が入ってます」
ζ(゚ー゚*ζ「え?誰だろ…ごめんなさいっ、ちょっと待っててね!」
( ^ν^)「うん」
429
:
名無しさん
:2020/12/24(木) 22:44:43 ID:4683Z4Wc0
ζ(゚ー゚*ζ「あれ?フォッさんお電話は?」
爪;'ー`)y- 「お馬鹿、電話なんて嘘!シンデレラちゃんダメよ!持ち込みも金品以外は禁止だし、何より客の手作りなんて絶対口にしちゃダメよ!」
ζ(゚ー゚*ζ「韮塚さんは変なことするようなお客様じゃないよ」
爪;'ー`)y- 「何かあってからじゃ遅いんだから!」
ζ(゚ー゚*ζ「むー…」
ζ(゚ー゚*ζ「…フォッさんっ!お願い!韮塚さんがああいう風にプレゼントくれるの初めてなのっ」
ζ(゚ー゚*ζ「嬉しい気持ちをせいいーっぱい伝えたいから、お願い!」
爪;'ー`)y- 「んんんんもぉ〜!その顔に弱いの知っててずるいっ!」
爪;'ー`)y- 「何か変な臭いがしたり味がしたらすぐぺっするのよ!」
ζ(゚ー゚*ζ「うんっ!ありがとうフォッさん!大好き!」
爪*'ー`)y- 「そういうのはお客に言いなさい」
430
:
名無しさん
:2020/12/24(木) 22:45:08 ID:4683Z4Wc0
ζ(゚ー゚*ζ「お待たせしてごめんね!」
(;^ν^)「い、いや、忙しい時期だろうし…し、仕方ないっていうか…今指名できただけで嬉しい…し…です…」
ζ(゚ー゚*ζ「…」
(;^ν^)「……?」
(;*^ν^)つ⊂ζ(゚ー゚*ζぎゅー
(;*^ν^)「!???ありがとうございます!?」
ζ(゚ー゚*ζ「えへへ、なんかぎゅーってしたくなっちゃった♪あ、お菓子いただくね!」
ζ(゚ー゚*ζもぐ
爪'ー`)y- (大丈夫かしら……)
431
:
名無しさん
:2020/12/24(木) 22:45:45 ID:4683Z4Wc0
ζ(゚ー゚*ζ「あ…」
ζ(゚、゚*ζ
ζ(;、;*ζ
(;^ν^)「えっえっえっごごごごめ、ごめんなさい!?どど、どうし…!」
爪#'ー`)y- 「だから言っ…!!」
ζ(;、;*ζ「ち、ちがうの、ごめん…ごめんねびっくりしたよね」
ζ(;、;*ζ「お、美味しいの…それで、何でかすっごく懐かしくて…」
ζ(∩、⊂*ζごしごし
ζ(゚、゚*ζ「…」
ζ(゚ー゚*ζ「…韮塚さん、美味しいお菓子をありがとう」
ζ(゚ー゚*ζ「作ってくれた人にも、お礼言っておいてもらえるかな」
(;^ν^)「……う、うん…」
432
:
名無しさん
:2020/12/24(木) 22:46:14 ID:4683Z4Wc0
××××××
爪'ー`)y- 「もー今日は焦ったわよ…本当に何でもなかったのよね?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、ごめんねフォッさん」
爪'ー`)y- 「次からは絶対ダメだからね!あとさっきの一口ちょうだい、今更だけど毒味するわ」
ζ(゚ー゚*ζ「だーめ!これは私のだから!」
爪'ー`)y- 「…わかったわよ…」
爪'ー`)y- 「そういえばシンデレラちゃん、明日お休みよね?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、プレゼント買いに行こうかなぁって」
爪'ー`)y- 「なぁにぃ?お客?それとも王子様見つけた?」
ζ(^ー^*ζ「ひみつ♪」
ζ(゚ー゚*ζ「……懐かしい味だったなぁ」
ζ(゚ー゚*ζ「元気かなぁ…トゥインクルちゃん」
ζ(゚ー゚*ζ「さて!早く寝て明日は韮塚さんへのお返し買いに行くぞー!」
433
:
名無しさん
:2020/12/24(木) 22:47:54 ID:4683Z4Wc0
以上です。短いけどありがとうございました。
ザコはクリスマスデート誘いそびれてるし連日通うお金と度胸はないのでクリぼっちです。
皆様は良いクリスマスを!
434
:
名無しさん
:2020/12/24(木) 22:49:42 ID:Dw9GiWIY0
乙乙乙!!!
心温まるクリスマスプレゼントをありがとう
435
:
名無しさん
:2020/12/24(木) 22:54:05 ID:.eQGqZ8c0
おつくり
436
:
名無しさん
:2020/12/25(金) 03:33:45 ID:z3uX09d20
シンデレラちゃん〜
437
:
名無しさん
:2020/12/25(金) 03:34:09 ID:z3uX09d20
シンデレラちゃん〜
438
:
名無しさん
:2020/12/25(金) 17:04:31 ID:Tc5hoQOc0
デレトソ尊い
439
:
名無しさん
:2020/12/25(金) 18:17:40 ID:wx/qAWdM0
更新来てた!おつ!!
440
:
名無しさん
:2020/12/26(土) 01:16:15 ID:fSqkE3Ik0
うおおお聖夜にいいものを見た……
441
:
名無しさん
:2021/02/02(火) 14:00:50 ID:r/5NL4oE0
更新乙!
442
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:22:46 ID:c74JLiP.0
12.朴念仁な隣人は話が長い
.
443
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:23:09 ID:c74JLiP.0
(´・_ゝ・`)デミタス。雇用主のはずだがドアを使用人に蹴られた。
(゚、゚トソン トソン。ドアを蹴りとばした足先が痛い使用人。
.
444
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:23:42 ID:c74JLiP.0
(゚、゚トソン「小麦粉とベーキングパウダー、あと重曹をふるい合わせます」
(゚、゚トソン「こんな粉粉したものが素晴らしいお菓子になるんだから、凄いですよね」
(゚、゚トソン「シナモンも混ぜて置いておきます」
(゚、゚トソン「卵ときび砂糖を混ぜて、オリーブオイルを加えてさらに混ぜます」
(゚、゚トソン「きび砂糖を見ると何故かうっすら桃太郎を思い出しますね、わかるかなこれ」
∬⊂(゚、゚トソン「でぃさまから頂いたコレをひたすら擦り下ろして入れます」
(゚、゚トソン「先程の粉と混ぜ混ぜします」
(゚、゚トソン「180度のオーブンでブンします」
(゚、゚トソン「これが、でぃ様から教わった最終兵器です」
小さなメモを見る。
でぃ様が書いてくれたレシピ。
445
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:24:32 ID:c74JLiP.0
(#゚;;-゚)『私が教えられることはこのレシピと、あとは』
(#゚;;-゚)『坊っちゃんの部屋のドアは、右下を蹴り上げると開く、という事だけですね』
(#゚;;-゚)『何も出来なくて申し訳ないけれど、坊っちゃんをよろしくお願いします』
(゚、゚トソン(ありがとうございます、でぃ様。)
オーブンからいい匂いがしてきて、何故だか無性に泣きそうになった。
.
446
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:25:10 ID:c74JLiP.0
コトン。
焼いたばかりのキャロットケーキをテーブルの上に置く。
熱々の紅茶も。
部屋から引っ張り出した主人を無理矢理リビングへ連れてきて、椅子に座らせた。
あまりの強引さに圧倒されたのか諦めたのか、大人しくしていた主人が、キャロットケーキに気付いて少しだけ口元を緩ませている。
(´・_ゝ・`)「美味しそう…懐かしい匂いだ」
(゚、゚トソン「でぃ様がレシピを教えてくださったんです。にんじんも頂きました」
(´・_ゝ・`)「……そう、でぃさんのとこに行ってたんだ……」
(;´・_ゝ・`)「…えっ、でぃさんのとこに日帰りで行けたの??わりと遠いよねフットワーク軽いね?」
(゚、゚トソン「自分でもそう思います、せっかくでぃ様が泊まっていい、食事も出すからと言ってくださったのを泣く泣く、本気で泣きながら断ったんですよ、主人のために」
(´・_ゝ・`)「それは…申し訳ないことをしたね」
(´・_ゝ・`)「本当に……部屋に閉じこもったりして申し訳ない」
(゚、゚トソン「本当です。…と言いたいとこですが主人にもいろいろあるのでしょうから、まぁ、今日のところは許しますよ」
(´・_ゝ・`)「…はは、本当に君は…」
主人の笑顔を久々に見た気がした。
447
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:25:49 ID:c74JLiP.0
(´・_ゝ・`)「……この屋敷に何があったか知りたい、だっけ」
(´・_ゝ・`)「トソン君が気にするとは思わなかった。お酒しか興味ないんだと」
(゚、゚トソン「あながち間違いではないですね」
(´・_ゝ・`)「はは。…うん、いいよ。そんなに楽しい話ではないけど、聞いてくれるかな」
(゚、゚トソン「……はい」
(´・_ゝ・`)「…あのさ、話、長くなりそうだから、トソン君も座って一緒に食べない?」
主人は観念したようだった。
最終兵器は最強だった。
448
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:26:16 ID:c74JLiP.0
(゚、゚トソン「…でしたら、ペアリングも用意しましょう。丁度主人用に紅茶を淹れましたのでそちらを使います」
カチャリ、カップの上にスプーンを置いて角砂糖を乗っける。
ブランデーを上から少しだけ注いだ。
(´・_ゝ・`)「ねぇ今ポケットからお酒出てこなかった?」
(゚、゚トソン「ここからが素敵なので黙って見ててください」
(´・_ゝ・`)「はい」
ライターで火をつける。アルコールが燃えて、静かに青い火が灯った。
(´・_ゝ・`)「わぁ、綺麗だね」
(゚、゚ドヤン「でしょう。ティー・ロワイヤルと言います」
火が消えるのを見届けて、溶けた砂糖をカップに入れて混ぜる。
スプーンのカチカチいう音だけが、リビングに響いた。
(゚、゚トソン「どうぞ、キャロットケーキも温かいうちに」
(´・_ゝ・`)「やぁ、いい匂いだ。いただきます」
449
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:26:55 ID:c74JLiP.0
でぃ様にもらったメモに書かれていたのは、素朴なキャロットケーキのレシピだった。
グローブやカルダモンなどのスパイスは入っておらず、チーズフロスティングも乗っていない。
それでも人参とシナモンの良い香りが鼻を擽る。
フォークで一口分切り分けると、ゴロリと胡桃が顔を覗かせる。
口に入れるとまだほのかに温かく、ふんわりとした中にある胡桃の食感が楽しい。
人参の優しい甘さに笑みが溢れる。
何日か寝かせてしっとりとさせても美味しそうだ。
ティー・ロワイヤルも続けて一口。
ブランデーの香りが大人な気持ちにさせてくれる。温かい紅茶が喉を通り、ひと息つく。
なんて贅沢な時間だろう。
450
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:27:36 ID:c74JLiP.0
(゚、゚トソン「美味しいですね、流石でぃ様のレシピです」
(´・_ゝ・`)「…でぃさんは、何も話さなかったんだね」
(゚、゚トソン「ええ、主人が話さないことを、自分が話すわけにはいかないと」
(´・_ゝ・`)「でぃさんらしい。……このレシピはね、でぃさんが作ったわけじゃないんだ」
(´・_ゝ・`)「僕、にんじんが嫌いだったんだよね」
主人はぽつりぽつりと、静かに話し出した。
(´・_ゝ・`)「…僕は生意気な子どもだったんだけど」
(゚、゚トソン(なんとなくわかります)
私は、主人の話を邪魔せず聞く事にした。
.
451
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:29:00 ID:c74JLiP.0
++++
母は身体が弱い人で、僕を産んだ時に亡くなった。
母を溺愛していた祖父は身体を壊してずっと寝たきり
僕の小学校入学の前日についに亡くなり、
入婿だった父は祖父の会社を引き継いで多忙の日々。
家に帰ることは少なかった。
昔から働いていた使用人達はよく言っていたよ、僕に近寄ると良くないことが起きるって。
だから僕の面倒を見たがる使用人はいなかったんだ。
でぃさん以外はね。
452
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:29:21 ID:c74JLiP.0
(´・_ゝ・`)「ねぇ、何でおかずににんじん入ってるの?入れないでって言った!」
(#゚;;-゚)「にんじんは美味しいですよ坊っちゃん、召し上がってみてください」
(´・_ゝ・`)「嫌だ!だいたい僕、でぃ以外が作ったもの食べたくないって言ってるじゃん!」
でぃさんは厳しいところもあるけど、温かくて優しい人だった。
家族より遥かに長い時間を過ごしたし、僕に沢山のことを教えてくれた。
だから変な甘えが出始めた小学校低学年の辺りは、本当に大変だったと思う。でぃさんにとって僕はただの他人だったし。
何よりでぃさんにも家庭があった。
ずっと僕の面倒を見ているわけにもいかなかったんだ。
453
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:29:53 ID:c74JLiP.0
(#゚;;-゚)「そうは言っても、私はもうすぐ産休に入りますから、他の方に引き継ぎしないといけません」
(´・_ゝ・`)「何で勝手にお休みするの?でぃ以外の人なんて嫌いだ、絶対嫌だ!」
(#゚;;-゚)「あまりわがままを…」
そんな時だった。
('、`*川「こんにちは!」
(;´・_ゝ・`)「……は?」
彼女に初めて会ったのは。
454
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:30:16 ID:c74JLiP.0
(#゚;;-゚)「あら伊藤さん」
('ー`*川「お疲れ様です、でぃさん」
(;´・_ゝ・`)「なに、だれ」
('、`*川「初めまして。今日からデミタス様に仕えます、伊藤ペニサス17才です!」
(;´・_ゝ・`)「聞いてない、やだ!でぃが良い!何でこんな人…」
('、`*川「でぃさんが良いですよね、わかりますよ。優しいし、温かいし、とっても良い人、素敵な人。私もでぃさん大好きです」
(´・_ゝ・`)「なに…」
('ー`*川「でぃさんのように完璧に出来るかはわからないけど、頑張ります」
(;´・_ゝ・`)「う…」
(#゚;;-゚)(あの坊っちゃんが圧倒されている…)
455
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:30:46 ID:c74JLiP.0
('、`*川「それで、何を騒いでいたんです?」
(#゚;;-゚)「坊っちゃんは好き嫌いが多くてちょっと……手がかかりますがよろしくお願いします」
('ー`*川「はい!」
(´・_ゝ・`)「勝手に話進めないで!」
('、`*川「にんじんがお嫌いなら、ケーキにしましょうか」
(´・_ゝ・`)「にんじんのケーキ…?何それ変なの…だいたい甘いものも僕は嫌い」
('、`*川「そうなんですね、じゃあちょっと模索してみます。ちなみに、お好きなものはなんですか?」
(´・_ゝ・`)「…ないよ」
('、`*川「…じゃあ、私がお探ししますね」
(´・_ゝ・`)「は?」
('ー`*川「一緒に、デミタス様のお好きなもの、お探ししますよ」
(;*’・_ゝ・`)「何それ。変な人」
456
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:31:26 ID:c74JLiP.0
伊藤ペニサスという人は不思議な人だった。
生まれつき身体が弱く、働き口がなかなか見つからないところ、でぃさんに会ってうちの仕事を紹介されたらしい。
うちはそれまで若い使用人がいなかったから、とても目立っていた。
(#゚;;-゚)「伊藤さんに無茶言ってはいけませんよ、坊っちゃん。身体が弱いそうなので、無理をさせないようにしてくださいね」
(´・_ゝ・`)「無茶なんて言わないし…」
(´・_ゝ・`)(身体弱いの、お母様と一緒だな…)
('ー`*川「デミタス様、一緒にお屋敷探検しませんか!」
(;´・_ゝ・`)「!?」
身体が弱い、
全然そんな風には見えたことはなかった。
いつも楽しそうに働いていて、せっせと仕事をこなしていた。
彼女は何かを作るのが好きで、僕の食事だけではなく他の使用人達の食事も作ったりしていた。
昔は料理人も何人かいたんだけど、僕がでぃさんが作ったものしか食べなかったから辞めちゃってて、キッチンは彼女の城みたいになってたよ。
457
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:32:11 ID:c74JLiP.0
('、`*川「デミタス様、かき氷召し上がりますか?」
(´・_ゝ・`)「何それ」
('、`*川「……お祭りとかでよく売ってる、氷を砕いてシロップをかけたものです」
(´・_ゝ・`)「…お祭り行ったことないからわかんない」
('ー`*川「あ、じゃあ行きますか?来週近くでありますよ」
(´・_ゝ・`)「…行かない」
本当は行ってみたかった。
クラスの子たちも行くと言っていた。
騒がしくて、楽しそうなお祭りの音を毎年耳にしては羨ましかった。
でも僕は行く資格も何も無いと思っていたんだよ。
('、`*川「……」
('ー`*川「じゃあかき氷作りますね!それで毎年一緒に食べるんです、良いでしょう?」
(´・_ゝ・`)「毎年…」
(´・_ゝ・`)(この人、来年もいるつもりなんだ)
(*´・_ゝ・`)「……やぶさかではない」
('ー`*川「どこで覚えたんですかそれ」
458
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:32:44 ID:c74JLiP.0
ある時、彼女が声を荒げて部屋に入って来たことがあった。
('、`;川「デミタス様!何でこれ…っ、捨てられてましたけどどうしたんですか!」
手には僕が捨てたトロフィーや賞状の束。誰かに捨てられたと思ったのか、大事そうに抱えていた。
(´・_ゝ・`)「どうしたって…いっぱいあると邪魔になるから…どうせまたすぐいっぱいになるし…」
珍しく目をパチクリさせる彼女。
('、`;川「すぐ?でもこれ絵画だけのとかじゃなくて、色んな表彰で…」
(´・_ゝ・`)「僕はお祖父様に似てるから、何でも人並み以上に出来ちゃうんだって
だから何かで1位を取ったり、そういうのを貰ってくるのは珍しくないよ」
('、`;川「…えええ…すごいじゃないですかそんなの…」
(´・_ゝ・`)「うん、お祖父様はすごかったみたいだね」
祖父と直接話したことはなかった。
僕の顔は母に似ていたらしくて、僕を見ると祖父は悲しんで具合を悪くするからと会わせてもらえなかった。
才能は祖父、顔は母、屋敷も、金も、物も全部人のもの。僕のものは何もない。
459
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:33:16 ID:c74JLiP.0
('、`川「いえ、デミタス様がですよ?」
(´・_ゝ・`)「え?」
('、`川「似てるからってなんだって言うんです。私は母に似てるとよく言われますが、母は母、私は私です。母が成し遂げたことは母の功績。私の身体が弱いのは誰のせいでもない」
('、`川「デミタス様が絵が上手だったり、工作が得意だったり、文章を書けるのはデミタス様の力です。
─デミタス様の特技も、デミタス様のものですよ」
(´・_ゝ・`)「……」
('、`*川「うーん……2日ください」
(´・_ゝ・`)「え?」
何か考え込みながら彼女は部屋を出て行った。
460
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:34:13 ID:c74JLiP.0
('、`*川「デミタス様、お庭に来てください」
(´・_ゝ・`)「なに?」
宣言通り2日が経って、彼女は僕を庭に連れ出した。
そんなに狭く無い庭は、庭師によって綺麗に整備されている。
はずなのだけど、一角だけ不自然に土が盛り返した場所があった。
そしていくつかの苗。
('ー`*川「これはですね、デミタス様の身のお世話をして初めて頂いたお給料で買った、薔薇の苗です」
('ー`*川「そしてこのスペースは自由にしていいと庭師の方に許可をもらいました!」
(´・_ゝ・`)「…育てるの?」
('ー`*川「はい、ゆくゆくは素晴らしい薔薇のアーチにする予定です!」
('、`*川「宜しいですか、デミタス様のお世話をして得た報酬で買ったもの……つまり私とデミタス様の共同で手に入れたものと言えます」
(;´・_ゝ・`)(言えるかな…)
('ー`*川「これで一つ、この屋敷にデミタス様のものが増えました」
(´・_ゝ・`)「!」
('ー`*川「無いことはないですが、デミタス様が無いと思うのなら作ってしまえばいいんです。あの賞状やトロフィーも飾りましょう。それで、デミタス様のをたくさん増やすんです」
(´・_ゝ・`)「…僕のものをつくる…」
(*´・_ゝ・`)「そっか」
('ー`*川「はい」
僕は彼女に惹かれていった。
憧れに近いものもあったのかもしれない。
461
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:35:08 ID:c74JLiP.0
彼女が働き始めてしばらくして、でぃさんが無事に出産したと連絡があった。
('ー`*川「デミタス様!聞きましたか?今度のお休みの日にでぃさんのお見舞いに行こうと思うのですが、ご一緒にどうですか?」
(´・_ゝ・`)「僕はいいよ」
('、`;川「えー!」
(´・_ゝ・`)「だって僕が近寄ると良くないこと起きるし…」
('、`;川「デミタス様…」
('、`;川「厨二…?」
(;´・_ゝ・`)「違うよ!」
462
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:35:30 ID:c74JLiP.0
彼女は使用人達の噂話を聞いたことが無かったようだった。
自分の口から言うのも変だと思ったけど、説明すると眉をこれでもかと顰めた。
('、`#川「誰です、そんなこと言うのは!」
(;´・_ゝ・`)「誰っていうか…でぃ以外の人はだいたい言ってる」
('、`#川「本当に、本当にくだらない!デミタス様、絶対にそんなことはありませんからね、気にしなくていいです!」
あんなに僕のことで怒る人をでぃさん以外に見たことなくて、少し気圧された。
(´・_ゝ・`)「……ありがと…でも、でもいいや。僕とでぃは所詮家族じゃないし、でぃも自分の子ども見るので手一杯で、僕のことなんて構ってられないよ」
('、`*川「……そう、ですか」
463
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:36:04 ID:c74JLiP.0
('、`*川「…どうですかデミタス様、そちらのキャロットケーキは」
(´・_ゝ・`)「……美味しい」
('ー`*川「…そうでしょう」
(*´・_ゝ・`)「にんじん美味しいね」
(*´・_ゝ・`)「僕これ好き」
('ー`*川「ようやく一つ見つけたました、デミタス様の好きなもの」
試作50品目で、ようやく僕がにんじんを美味しいと思えるキャロットケーキができた。
食べているのは僕なのに、彼女は本当に嬉しそうな顔で僕を見ていた。僕は何か気恥ずかしくて下を向きながら食べた。
(´・_ゝ・`)「…美味しかった…ごちそうさまでした」
('ー`*川「良かったです」
464
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:36:34 ID:c74JLiP.0
('、`*川「ところで来週また、でぃさんのお見舞いに行こうと思うのですが」
(´・_ゝ・`)「…いってらっしゃい」
('、`*川「デミタス様は先日勘違いされてました。でぃさんはもうデミタス様に構ってられないと」
(´・_ゝ・`)「勘違いじゃないよ」
('ー`*川「いいえ、勘違い。だってでぃさんは今もデミタス様のこと気にされています」
('ー`*川「今召し上がったキャロットケーキのにんじんは、でぃさんが作ったものなんですよ」
(´・_ゝ・`)「え?」
('ー`*川「でぃさんのおうちに行ってびっくりしました、お庭が畑なんですよ。聞いたら『坊っちゃんの野菜嫌いを無くすために、美味しい野菜を作りたくて』って、産休に入られる前から計画していたんですって」
(´・_ゝ・`)「でぃ…」
('ー`*川「来週、一緒に行きましょう。にんじん食べられるようになったご報告も兼ねて」
(´・_ゝ・`)「……うん」
姉のように、母のように、時には友達のようで先輩のように彼女は優しく温かく見守ってくれた。
465
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:37:04 ID:c74JLiP.0
彼女が働き始めて10年近く経った。
毎年かき氷を作って一緒に食べてくれた。
色んな行事を教えてくれ、共に楽しんでくれた。
その頃父の会社も軌道に乗っていて、忙しさもピークを越していたと思う。それでもほとんど家に帰って来なかったけど。
('、`*川「失礼します、デミタス様。お紅茶お持ちしました」
(´・_ゝ・`)「ありがと」
僕は高校生だった。
彼女、ペニサスは10年経ったのにあまり変わらなかった。
いつもハキハキ働いていて、僕はもうその頃は彼女のことを意識してた。
…この辺りのこと、詳しく言わなくてもいいかな?
駄目?そう…恥ずかしいんだけどな…。
466
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:37:33 ID:c74JLiP.0
相変わらず他の使用人は僕に近寄りはしなかった。
ペニサスだけが僕の世話をしてくれていた。
だから仕方ないんだけど、意識してる人間と部屋に2人になるってだいぶ心臓が痛かったよ。
なんだか胸が熱くて、誤魔化すように気になったことを口にしてみた。
(´・_ゝ・`)「…ペニサスは何かやりたいこととかある?」
キョトンとした顔の彼女。
唐突すぎたかな、と思った。
('、`*川「やりたいことですか」
(´・_ゝ・`)「学校で進路希望の紙もらったんだ。でも書くことがなくて」
467
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:38:07 ID:c74JLiP.0
('、`*川「…私は…いっぱいありましたよ、翻訳家、作家、絵本作家、画家、陶芸家…」
(´・_ゝ・`)「本当にいっぱいだね」
('、`*川「お家の中で、自分が作ったものが誰かを幸せにできるんです。素晴らしいですよね」
(´・_ゝ・`)「…やればいいのに」
('、`*川「…保険適用外の薬って、1ヶ月分が数万だったりして。お金が必要なんです。」
('、`*川「私には時間も余裕も、才能もないので」
(´・_ゝ・`)「……」
そんなことない、と否定するのも違う気がして口籠ってしまった。
('ー`*川「……なーんて、今はデミタス様のお世話をするのが楽しいのでそれで満足なんですよ!」
(´・_ゝ・`)「……あのさ」
(´・_ゝ・`)「また作って。キャロットケーキ…」
('、`*川「……」
('ー`*川「はい」
『満足』というのは痩せ我慢だったと思う。
彼女の家は母子家庭で余裕がなかったと、他の使用人たちが噂しているのを聞いたことがあった。
うん、あまり良い人達ばかりじゃなかったんだよ昔は。
噂話ばかりしてて、子どもの僕の耳にまで届いてたぐらいだからね。
468
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:38:44 ID:c74JLiP.0
大学4回生の年、彼女の誕生日にプロポーズをしたんだ。
それはもう、驚かれたけど。
('、`*川「今なんておっしゃいました?」
(´・_ゝ・`)「君を幸せにします。僕と結婚してください」
('、`*川「聞き間違いじゃなかった…」
(´・_ゝ・`)「嫌?」
('、`*川「嫌とかの前に…急では?」
(´・_ゝ・`)「サプライズ…」
('、`*川「……」
('、`*川「わたしにとってデミタス様は弟のような、子どものような、友達や良い後輩のようなそんな存在なんですよ、それに10歳も年が離れているし…」
(´・_ゝ・`)「でも、僕のこと嫌いでは無いでしょ」
('、`*川「……」
('ー`*川「…やぶさかではない」
(*´・_ゝ・`)「ふふ」
469
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:39:41 ID:c74JLiP.0
返事はいつまでも待つよと、そう話して。
その次の日に、父が過労死した。
またか、と思った。
きっと僕だけじゃなかったはずだ。
使用人達はヒソヒソと口を忙しそうに動かしていた。
久しぶりに見た父の顔が別人のようで、涙もすぐには出なかったよ。
葬儀もバタバタと終わり、僕は大学を辞めて父の穴埋めとして会社の手伝いをすることになった。
ひと月経つのがあっという間で、今自分がどこに居るのかわからなくなるくらい忙しい、いや急がされてたのかも。
470
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:40:13 ID:c74JLiP.0
( _ゝ )「疲れた」
('、`*川「デミタス様」
( _ゝ )「父が過労死したのがわかるよ、はは
祖父の会社だからさ、なんていうかアウェイなんだ。祖父は父をあまりよく思ってないって使用人さん達言ってた。もちろん僕のことも」
( _ゝ )「押し付けられるんだ、馬鹿みたいな量の仕事。そりゃ1人でやってたら家なんて帰れないよ。僕はうまく逃げてるけどさ」
('、`*川「デミタス様、今言う話では無いかもしれませんが」
('、`*川「先日のプロポーズ、お受けします」
471
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:40:45 ID:c74JLiP.0
彼女の同情だったのかもしれない。
誰も周りにいない僕を可哀想に思ったのかも。
彼女の気持ちはわからないままだけど、僕とペニサスは籍を入れた。
ペニサスはそのまま働きたい気持ちがあったようだけど、他の使用人達も混乱するからと仕事を辞めた。
.
472
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:41:18 ID:c74JLiP.0
(´・_ゝ・`)「ただいま」
('、`*川「おかえりなさい、デミタス様」
(´・_ゝ・`)「ふふ、もう使用人じゃないんだから」
('、`*川「ああ、癖になってしまってるんですよね…ケホッ」
(´・_ゝ・`)「大丈夫?風邪?」
('、`*川「…そうですね、今日は少し冷えましたから」
(´・_ゝ・`)「暖かくして、薬は飲んだ?」
('、`*川「うん…ねぇデミタスさん。私一日中何もすることがないの、申し訳ないわ。やっぱり自分のことは自分でやりますよ」
(´・_ゝ・`)「うーん、すること…あ、君がやりたいって言ってたことをしてみるのはどう?物を書いてみたりさ」
('、`*川「…そうね、何か書いてみようかな」
473
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:42:01 ID:c74JLiP.0
ずっと働いてきたペニサスは、いきなり何もしなくても良いと言う状況にどうして良いかわからないような様子だった。
よく風邪をひいたり身体を壊すようになったから、あまり体を動かして欲しくなくて、身の回りのことは僕から使用人達にお願いした。
たまにでぃさんから連絡は来ていたんだけど、でぃさんも2人目が産まれててんやわんやみたいで、あまり会えてはいなかった。
.
474
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:42:39 ID:c74JLiP.0
('、`*川「デミタスさんは子ども欲しくないの?」
(´・_ゝ・`)「ええ?うーん、いたら楽しいかもしれないけれど。ペニサスがいれば満足だよ僕は。ペニサスは欲しい?」
でぃさんと電話で話した後、ペニサスはよくこの質問をした。
僕は正直言うと怖かった。母のことがあったから、身体の弱いペニサスとつい重なってしまう。
('、`*川「こんなお屋敷に住ませてもらって、こんな私をもらってくれたのに子を残さないのは…」
(;´・_ゝ・`)「ちょっと待って、それ本当にペニサスが思ってるの?誰かに言われた?」
('、`*川「……皆さん仰ってますよ、「使用人がうまくやったな」って」
(#´・_ゝ・`)「誰…いや、何となくわかった。君は気にしなくて良い、そんなことはない、本当にないから」
('ー`*川「ふ、ふふ。昔と反対ですねぇ」
(;´・_ゝ・`)「え…」
('ー`*川「大きくなりましたね…」
反対に、ペニサスは小さく見えた。小さい肩。まだまだ若いのに、か細くて折れてしまいそうだ。
力をあまり入れないように気をつけて、彼女の肩を抱きしめた。
475
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:43:12 ID:c74JLiP.0
昔からいる使用人達を全員首にした。
ペニサスはそんなことしなくて良かったと悲しんだが僕が嫌だった。
数人ほどの使用人を新しく雇った。
前に比べてだいぶ人数を減らしたから、無駄話をするような環境でもなくなって少し安心した。
けれど、ペニサスは良くならなかった。
.
476
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:44:48 ID:c74JLiP.0
(;´・_ゝ・`)「ペニサス、大丈夫?」
('ー`*川「大丈夫です、ただの風邪ですから」
(;´・_ゝ・`)「僕会社休むよ」
('、`*川「駄目ですよ、やっと仕事に慣れて来たって言ってたじゃ無いですか」
(;´・_ゝ・`)「うう…」
('ー`*川「いってらっしゃい」
(´・_ゝ・`)「行ってきます…何かあったら連絡してね」
('ー`*川「はい、あ、デミタス様」
(´・_ゝ・`)「ん?」
('ー`*川「帰ったらまたキャロットケーキ、焼きますね」
(*´・_ゝ・`)「ありがとう、楽しみだ」
477
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:45:31 ID:c74JLiP.0
.
478
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:46:46 ID:c74JLiP.0
その日、ペニサスは亡くなった。
風邪だと言っていたけど、もうかなり前から病状が悪くなっていたそうだ。
何も知らなかった。
何も聞けなかった。
何も見てなかった。
前の使用人達ならもっと早く気づけたのだろうか。
人を減らさなければ
人がもっといれば気付いてくれたのか?
何で誰も気付いてくれなかった?
いや、まず何で自分は気付かなかった?
彼女を愛していたくせに
何で?
何で
何で
結局やっぱり僕のそばに居ると良くないことが起きるんだ
僕は誰も幸せに出来ない
僕は幸せにはなれない
479
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:47:32 ID:c74JLiP.0
全て庭で燃やした。
彼女の写真、彼女が僕のために飾ってくれてたもの。
唯一、薔薇のアーチは壊せなかったけど。
葬儀に来てくれたでぃさんに止められて、いくつかのものは預かるって持っていってくれたけど、色々捨てた。
会社は他の人に任せて辞め、家に篭った。
会社も何もどうでもよかった。
そもそも祖父や父の遺産でお金には困らなかった。
何もすることが無いと彼女の後を追いそうになるから何かしようと思った。
僕は彼女を追いかける資格もない。
480
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:48:11 ID:c74JLiP.0
ふと彼女の言葉を思い出す。
('、`*川『お家の中で、自分が作ったものが誰かを幸せにできるんです。素晴らしいですよね』
(´・_ゝ・`)「…僕でも誰かを幸せに出来るかな」
(´・_ゝ・`)「なんて、無理だよなぁ」
僕は彼女がやりたいと挙げていた職業で作品を残すことにした。
まだ、誰かの幸せに縋り付きたかったんだ。自分や自分の大事な人たちは駄目だったから。
481
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:48:47 ID:c74JLiP.0
何年か死んだように生きてた。
でぃさんはよく来てくれたけど、誰にも会いたくなくてインターホン越しに会話をするだけだ。
作品を作ってはお金に変え、しばらくしたらまた違う作品を作る。
これが誰かを幸せにしてるとはとても思えなかった。
でもそうすることしかできなかった。
ペニサスの誕生日の日につい我慢出来なくなって、会いに行こうと思った。
482
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:50:19 ID:c74JLiP.0
('、`*川『デミタス様、まだ来ちゃ駄目ですよ。びっくりしました』
(´・_ゝ・`)『ペニサス、ペニサスだ。何してるの、一緒に帰ろうよ」』
('、`*川『デミタス様、ちゃんとした使用人の方を雇ってください。適当なものしか食べてなくて心配になります』
(´・_ゝ・`)『嫌だ、また人が僕から離れていくのを見たくない。僕はペニサスだけで良い』
('ー`*川『大丈夫、きっと貴方が見た事も無いような、そんな人が来てくれますから』
('ー`*川『幸せになってください、デミタス様』
(´・_ゝ・`)『ペニサス、ペニサス。ごめん、僕は君を幸せに出来なくて』
('ー`*川『 私は 』
.
483
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:51:08 ID:c74JLiP.0
(´・_ゝ・`)「ペニサス?ペニサス!」
夢を見た。
久しぶりに彼女の顔を見た。
まだ駄目だと怒っていて、最後はなんて言ったのかわからなかった。
(´・_ゝ・`)「…まだ駄目、か」
プッツリ切れてしまった紐を見つめながら、ただただ泣いた。
ペニサスが亡くなって初めて泣いた。
『まだ』駄目なら、彼女がもういいと言ってくれるまで生きるしかない。
.
484
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:51:58 ID:c74JLiP.0
++++
(´・_ゝ・`)「どうせ来るはず無いと思って張り紙をした、その次の日に君が尋ねて来て驚いたよ」
(゚、゚トソン「……」
(´・_ゝ・`)「なんていうか……トソン君は殺しても死ななそうな、返り討ちにしそうな感じに見えたから、もしかしたら大丈夫かなって雇ったんだ。…ごめん」
(´・_ゝ・`)「君が見つけたのは、ペニサスが最後に書いてたものかな。僕も探したけど見つけられなかった」
(゚、゚トソン「キッチンの棚にありましたよ」
(´・_ゝ・`)「はは、彼女らしいところにしまってたんだね」
小さく息を吐く。真っ直ぐ目を見た。
(´・_ゝ・`)「…結局僕は誰も幸せに出来なかったし、幸せになっちゃいけない人間なんだ」
(´・_ゝ・`)「君が羨ましかった。幸せになりたいと素直に言える君が」
(゚、゚トソン
485
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:52:30 ID:c74JLiP.0
(´・_ゝ・`)「さっきも言ったけど、トソン君は自分とお酒以外に興味がないように思ってた。
でも君、実は人やものに興味もあるし、変だし、欲深そうに見えるのに物をあげたら素直に喜ぶし、行動力もあるし、態度も大きくて使用人としてはどうなんだって思うこともあるけど」
(゚、゚トソン「喧嘩をお売りで?」
(´・_ゝ・`)「このまま働いて欲しいって思うようになってたんだ、いつのまにか」
(´・_ゝ・`)「だから、話をしたら辞めていっちゃうんじゃないかって思って怖くなった」
(゚、゚トソン「……」
(´・_ゝ・`)「辞めちゃうなら、一度部屋にこもって1ヶ月くらい心の準備しようかと…」
(゚、゚トソン「そんなに引きこもるつもりだったんです?良かった早めにケリ入れて」
(´・_ゝ・`)「…話はこれでおしまい。1ヶ月の心の準備は出来なかったけど、またこのキャロットケーキも食べられたし僕はもう満足だよ。トソン君が嫌なら辞めても良い。好きにして良いよ」
(゚、゚トソン「……」
486
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:53:26 ID:c74JLiP.0
(゚、゚トソン(長かった ほんとに話 長かった)
季語無しの一句を読んでしまうくらいに、主人の話は長かった。
当たり前だ、この人の半生なのだから。
長い話でもつまらないとか、途中で嫌になったりしなかったのは、この人の話だからだ。
その話を聞いて嫌だと思わなかったのは、つまりそれが答えなんじゃなかろうか。
カラカラになった口を開く。
自分がどう生きてきたか話して、人が離れてしまうかもと不安に思う気持ちはこれでもかというくらいわかる。
今の長い話を、小さく震えながら話してくれた主人に私が言える事。
言いたいこと。
487
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:54:01 ID:c74JLiP.0
(゚、゚トソン「私も自慢じゃないですが周りの人を不幸にする人間でした。だから、人が離れていく怖さもなんとなくわかります」
(゚、゚トソン「でも、1人。たった1人の人が私を許してくれて、私を好きだと言ってくれた。私に幸せになってと言ってくれた」
(゚、゚トソン「…私は」
(゚、゚トソン「私は、人に何かを頂いた時、嬉しくて幸せだと思います」
(゚、゚トソン「美味しいお酒と、美味しい食べ物でペアリングしてる時はすごく幸せです」
(゚、゚トソン「私が作ったものを、誰かが美味しいと言って食べてくれたら幸せで……だから、主人が美味しいと言うたびに嬉しかった」
488
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:54:40 ID:c74JLiP.0
主人が誰も幸せに出来ない?
じゃあ私はなんなのだ。
(゚、゚トソン「誰も幸せに出来ないなんてそんなはずがないんです、」
(゚、゚トソン「わたしは」
(゚、゚トソン「私はここで働いて、幸せです。幸せをたくさんもらってるんです、主人から。幸せになってたんです」
主人が幸せになっちゃいけない?
そんなはずがない。だってあんなにも色んな人が心配しているんだから。
私は幸せになれた。だから、次は
(゚、゚トソン「いいですか、主人が一人で幸せになれないーなんて弱気なら、」
(゚、゚トソン「私が!主人を幸せにしてみせます!!」
489
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:55:12 ID:c74JLiP.0
(´・_ゝ・`)
(゚、゚トソン「だからワイン開けていいですか!」
(´・_ゝ・`)「えっあっ、はい」
(゚、゚トソン「キャロットケーキもう一切れいりますか?」
(´・_ゝ・`)「はい」
(゚、゚トソン「美味しいですか?」
(´・_ゝ・`)「うん」
(゚、゚トソン「はい、私幸せです。主人は?」
(´・_ゝ・`)「…ふふ、ははは。」
(´・_ゝ・`)「幸せだね」
(゚、゚トソン「はい!!」
490
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:55:46 ID:c74JLiP.0
無理矢理だと思う。
無理矢理だけれど、この甘ちゃんのくせにどこか意固地頑固で変に偏屈な主人には
私のような雑で大胆で無理矢理な人間を合わせてもいいと思った。
色んなお菓子とお酒でペアリングを楽しむように。
.
491
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:56:17 ID:c74JLiP.0
(゚、゚トソン「私、明日からもここで働きますんで」
ワインを注ぐ心地の良い音に負けないように宣言した。
震えそうになる手をぎゅっと握る。
目があった主人がいつにも増して眉を優しく垂れ下げていた。
(´・_ゝ・`)「……うん、お願いしたいな」
(゚、゚トソン「よろしくお願いします」
(´・_ゝ・`)「うん、よろしく」
492
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:56:56 ID:c74JLiP.0
冷めたキャロットケーキも、赤白混ぜ込んだような綺麗なロゼワインも美味しかった。
隣で主人が笑う。
さっきの、プロポーズみたいだったね、と。
では素敵なペアリングを用意しないとですね、と言って2人で笑った。
.
493
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 22:58:46 ID:c74JLiP.0
本日の投下は以上になります。
デミタスの話が長すぎてエラーが出て驚きました、こんなことは初めてです。
ありがとうございました。
次回最終話になります。
よろしくお願いします。
.
494
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 23:07:16 ID:pBjrTKuI0
乙乙乙
495
:
名無しさん
:2021/03/02(火) 23:21:49 ID:Ic9IoLi60
最高!
496
:
名無しさん
:2021/03/03(水) 13:29:35 ID:YX0na0Qw0
おつ!
最終話か〜早いな
ニュッくんのいた頃の話は出てくるのかな
497
:
名無しさん
:2021/03/03(水) 18:12:08 ID:kdt3e/7c0
ああああああああ!!!!!!
としか言えない
悶える
498
:
名無しさん
:2021/03/08(月) 21:45:32 ID:lNGBrG6Q0
おつおつ
終わってしまうのか…!!
499
:
名無しさん
:2021/03/11(木) 02:52:31 ID:265pEJ8U0
うあああああ乙!!とうとうペアリング(輪っか)が回収されてグッときた
終わるのは辛いがそれ以上に楽しみ!!
500
:
名無しさん
:2021/03/21(日) 04:02:18 ID:eHpqgSm60
ふと見たら初投下3年前なのか…
完結まで持ってきてくれて本当にありがとう
501
:
名無しさん
:2021/05/26(水) 23:58:32 ID:QGYuqPd.0
ほとんど一気読みした、今まで読んでなかったのが不思議なぐらい引き込まれた
寂しいのにあたたかくて大好き、最終回待ってる
502
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:15:30 ID:cSRVm2D60
主人と和解(?)して何日か経った。
「良いことがあった次の日は大体怖い」等と意味不明なことを言うため、クリスマスは私も主人も外に出ないようにした。
元々イベント事が得意ではない私は良かったが、イベント大好きおじさんは「はしゃぎ足りないね」と若ぶったことを言うのだった。
(゚、゚トソン(ふむ)
そこで私はある提案をした。
(゚、゚トソン「……というのはいかがでしょうか?」
(´・_ゝ・`)「良いと思う…というのも向こうが良ければだけど」
かくして今日、クリスマスのリベンジが行われようとしているのだ。
.
503
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:16:36 ID:cSRVm2D60
最終話:アーモンドクリームに幸あれ
.
504
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:17:12 ID:cSRVm2D60
(´・_ゝ・`)デミタス。おかしな菓子好き。主人。
(゚、゚トソン トソン。ふざけた酒好き。使用人。
.
505
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:18:04 ID:cSRVm2D60
(;´・_ゝ・`)「ああ〜なんかソワソワしてきちゃった、僕大丈夫?変じゃない?何してれば良いかな」
主人は朝からずっとソワソワしていた。
私も少し浮ついた気持ちがあったけど、いい歳した人間の落ち着かない様子を見て冷静になっていた。
(゚、゚トソン「大丈夫です、主人はいつも変ですよ。好きなことしていてください」
(;´・_ゝ・`)「じゃあ掃除でもしてようかな…」
(゚、゚トソン「いつものツッコミがないくらい調子悪い人に掃除してもらいたくないですよ…大人しく座っててくださいね」
(;´・_ゝ・`)「ええ…」
仕事も手につかないんだよ、とごちゃごちゃうるさい主人を無理矢理自室に押し込む。
私は私でやらなきゃいけないことがあるのでキッチンに向かった。
(゚、゚トソン「先日はあんなに部屋から出そうとしてたというのに…可笑しなものですね」
.
506
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:18:36 ID:cSRVm2D60
さてと。
気合いを入れるために腕まくりをして、わりかし寒いなと戻す。
代わりに両方の頬をパチンと叩いた。
(゚、゚トソン「今日作るものは過去一やることが多いです。なので真面目に作ってみましょうかね」
ゞ(゚、゚トソン カチャカチャ
”∩(゚、゚トソン グワシグワシ
(-、-;トソン「…イヤ……っ!!沈黙に耐えられない…っ!」
(゚、゚トソン「誰が聞いているわけでもないので張り切ってふざけながら真面目に作りましょう」
.
507
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:19:15 ID:cSRVm2D60
〆(゚、゚トソン「まずは毎度お馴染み、まぜまぜ☆トソンちゃん〜混ぜ☆トソします」
"⊂(゚、゚トソン「バターをざっと混ぜて、卵を様子見ながら少しずーつシャッシャッ、グラニュー糖さんも少しずーつ入れます」
廿(゚、゚トソン「あらかじめ淹れておいたアールグレイの紅茶です」
廿≠(゚、゚トソン「これとグランマニエを混ぜて入れます。これラム酒にしても良いです。あー良い匂いだなぁ〜」
…(゚、゚トソン「そして!アーモンドプードル氏の登場!です!」
…(゚、゚トソン「アーモンドプードルって名前が可愛いですよね、わかるかな。アーモンドサイズのプードル絶対可愛いですよ、ポケットで飼いたい」
(゚、゚トソン「要のクリームダマンドが出来ました」
(゚、゚トソン「クレームダマンド?クリーム?クレーム?おダマンなさい!」
508
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:19:57 ID:cSRVm2D60
(゚、゚トソン「ここでパイ生地が必要になります。料理番組なら出来上がった生地が出てくるところですが…これは現実なのでそんなに甘く…甘くな…」
[]⊂(゚、゚ドン「甘いんです、今日は特別に」
(゚、゚トソン「昨夜作っておいたパイ生地です。料理番組のようなことしてみたかったんですよね」
(゚、゚トソン「このパイ生地にクレーーームダマンドを搾ります、ギュッギュッギュ…」
(゚、゚トソン「そして秘密兵器をぐりぐりして…」
(゚、゚トソン「ぐりぐりとぐらぐりぐりぐり」
(゚、゚トソン「もう一枚のパイ生地を重ねて、卵を塗って一度冷やします」
冷蔵庫に物を閉まって一息つく。
(゚、゚;トソン「……私としたことが、やる事の多さにあまりふざけられませんでしたね…」
509
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:20:36 ID:cSRVm2D60
広い広いキッチンを見渡す。
このキッチンで料理をするようになってから、この屋敷で働くようになってから、半年以上が経っていた。
ここに来たばかりの頃はこんな気持ちで働くことになるとは思いもしなかった。
あんな主人におやつを作って、働いたお金でお酒を楽しんで、ただ幸せだと思うような──そんな生活を送れるようになるとは。
棚の奥から小さなノートを取り出す。
あれ以来中を読むことはなかった。主人も読みたいとは言わなかった。
主人のためにお菓子を作っていた、彼女のことを想像する。
(-、-トソン「………」
(゚、゚トソン「私をここで働かせてくれてありがとうございます」
誰でもない、彼女が私をここに連れてきてくれたのだと、先日の主人の話を聞いて思った。
私に幸せをくれた1人だ。
小さなノートを撫でる。
ありがとうございます。もう一度呟いて、作業を再開した。
510
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:21:24 ID:cSRVm2D60
冷やしたパイ生地を冷蔵庫から取り出して、専用のナイフで模様をつけていく。
これを失敗すると悲しいので頑張るけれど、美術センスというものがない自分には酷な仕事ではなかろうか。
(゚、゚トソン「…主人にやって貰えばよかったかな…いやでもそうすると驚きがなくなるし…」
パイ生地は常温で溶けてきてしまうので、フルスピードで模様をつける。
←⊂(゚、゚トソン「ぅ唸れ私の右手ぇぇ!!」
←⊂(゚、゚トソン『くぅん!』
(゚、゚トソン「ヨシ!なんとなくそれっぽくできた!」
(゚、゚トソン「オーブンでブンしますよ!!」
511
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:22:06 ID:cSRVm2D60
鉄板の上にそうっと乗せてオーブンに入れる。
パイ生地がオーブンの中で膨らんでいく様が好きだった。
オーブンからの熱が感じられる近さで、魔法のように膨らむ様子を見てすごいね膨らんできたねとはしゃいで、今美味しくなっているのよと母が笑う。
その時間が好きだった。
(゚、゚トソン「懐かしい匂い…」
母が毎年焼いてくれていたこれを、自分一人で作る日が来るとは思わなかった。
何を思いながら作ってくれていたのか、今なら何となくわかる気がする。
(゚、゚トソン(一人で作れたよ、お母さん)
(゚、゚トソン「……おっといけない、センチメンタルじゃーねー。味がしょっぱくなってしまいますね」
.
512
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:22:47 ID:cSRVm2D60
リンゴーーーン
チャイムの音が聞こえ、胸が高鳴る。
この屋敷はチャイムの音すら厳かなので、普段その用途がほぼ宅配便なのが申し訳なかった。
けれど今日は違う。
れっきとした『お客様』が来るのだ。
(゚、゚トソン「はぁーい!!今行きまーす!!」
過去一大きな声で返事をしたが、この広さと壁の厚さのせいで聞こえてなかったら困る。
風の如く走るためにスカートを持ち上げ、そしてふと気付く。
(゚、゚トソン「あ。あなたにも来ていただきたいのです」
小さなノートを、忘れないように大事にポケットに入れてダッシュした。
.
513
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:23:32 ID:cSRVm2D60
(゚、゚トソン「いらっしゃ──……なんだ…」
ドアを開けてそこにいたのは、期待していたどの顔とも違ったので思わず声が低くなった。
(;^ν^)「何だってなんだよ!?よ、呼んだよな?呼ばれたよな、俺」
種も仕掛けもありはしない、雑魚師弟がそこにいた。
(゚、゚トソン「えーえー呼びました呼びました、主人がどうしてもって言うので仕方なーく」
(;^ν^)「し、しかたなくなのか?えっ帰ったほうがいい?えっ?」
(;´・_ゝ・`)「いじめないでよトソンくん」
チャイムの音が聞こえたからと主人も玄関まで来たようだった。
急いできたのか、少し息が切れている。
( ^ν^)
( ;ν;)ブワ
(゚、゚トソン「あー泣ーかせた泣ーかせた!主人くんが雑魚くん泣ーかせたー!」
(;´・_ゝ・`)「え?僕なの?トソンくんじゃなくて?」
514
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:24:17 ID:cSRVm2D60
( ;ν;)「デッデミダズざま…!おっ、おびざじぶりでず…!!おげんぎでじだが…」
(´・_ゝ・`)「あ。ああ…うん」
(´・_ゝ・`)「そう、そうだね。そうだったね。久しぶり、韮塚くんも元気かな。…ごめんね、色々」
( ;ν;)「デミダズざまがげんぎならいいんでず…」
(゚、゚トソン「…」
突然泣き出した雑魚の背中を、主人がトントンと優しく叩いている。
子どもをあやす様な大人の仕草だけれど、主人も泣きそうな子どものような顔をしていた。
(´・_ゝ・`)「あの時、何も話さず解雇通知とお金だけ送ってごめんね」
( ;ν;)「…良い、です…今こうして話せることが嬉しいから…」
(´・_ゝ・`)「…ありがとう」
515
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:24:55 ID:cSRVm2D60
( ;ν;)ズビー
ζ(゚、゚*ζ「大丈夫?ハンカチどうぞ」
( ;ν;)「あ、ありがとう……」
( ;ν;)
(;ν; )
(^ν^ )
( ^ν^)
( ^ν^)「!???」
(゚、゚*トソン「おっわっう、い、いらっしゃいませシンデレラちゃん!!!」
ζ(゚ー゚*ζ「はい、おじゃましますトゥインクルちゃん!」
.
516
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:26:35 ID:cSRVm2D60
++++++
数日前のこと。
主人にある提案をした日の夜のこと。
こっそり屋敷を抜け出した。行きたい場所が、会いたい人がいた。
(゚、゚トソン「寒すぎる」
吐き出す息が白い。鼻も指も冷たくなっている。
クリスマスも終わって、街の景色が正月モードに変わっている最中だった。
目的地までの道を足が覚えていた。店は終わりの時間。大体の人間はそのまま家に帰ったりなんだりしているが、彼女は店の裏を掃除している。そういう子だった。
"∬ζ(゚ー゚*ζ"
(゚、゚トソン(やっぱりいた)
(゚、゚トソン「…シンデレラちゃん」
ζ(゚、゚*ζ「!」
ζ(゚、゚*ζ「トゥインクルちゃん」
ζ(゚ー゚*ζ「トゥインクルちゃんだ!!」
顔を見た瞬間、冷たくなった鼻が熱くなった気がした。
目が合った彼女が一瞬呆けた顔をして、満面の笑みに変わったのを見て鼻だけじゃなく目も熱くなった。
話したいことはたくさんある。言わなきゃいけないことも。
けれど言葉が口から出てこない。シンデレラちゃんはそれを責めたりせず静かに私が話すのを待ってくれた。
517
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:27:21 ID:cSRVm2D60
(゚、゚トソン「本を」
ζ(゚ー゚*ζ「うん」
"(⊃、⊂トソン「……本を返しに、きました」
(゚、;⊂トソン「幸せになったら返しにきてと、言ってもらった本です」
ζ(゚ー゚*ζ「うん…うん」
(゚、゚トソン「ずっと借りたままで、待たせてしまってすみません」
ζ(゚ー゚*ζ「好きな人との約束は、待つ事も楽しいの。だから全然大丈夫」
シンデレラちゃんが私の手を握った。
彼女の手も冷たかった。
ζ(゚ー゚*ζ「トゥインクルちゃん、今、幸せ?」
(゚、゚トソン「…」
(;-;トソン「はい、すごく」
ζ(^ー^*ζ「良かった!」
そのあと少しだけお互いのことを話した。
そして今日のことを伝えた。
私が今働いている所に来て欲しいと。
彼女はもちろん!とそれはそれはいい笑顔で返事をしてくれたのだった。
+++++
518
:
名無しさん
:2022/01/02(日) 04:28:03 ID:cSRVm2D60
(;^ν^)「いいいい言っておいてよそういうさぁぁぁぁあでもありがとうございますありがとう!!」
(゚、゚トソン「言ったら言ったで緊張するかなと…」
(;^ν^)「それはそう!!!」
ζ(゚ー゚*ζ「韮塚さんこんにちは!韮塚さんもトゥインクルちゃんと仲良しだったんだね」
(゚、゚トソン「……」
(;^ν^)「……」
(´・_ゝ・`)「…」
仲良しか仲良しじゃないか聞かれたら仲良しなんかではないと即答するものだが、相手はシンデレラちゃんなので迂闊なことを言えず2人して黙ってしまった。
主人はそんな私たちを見て何か言いたげな目をしていた。
.
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