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(´・_ゝ・`)ペアリングのようです(゚、゚トソン
1
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:02:26 ID:Q.JOBvVs0
彼は、私の主人。
彼は、私の事を名前で呼ぶ。
彼は、大の甘党。
.
569
:
名無しさん
:2022/07/10(日) 19:53:50 ID:3ZBj0nsI0
たのしみー
570
:
名無しさん
:2023/06/23(金) 12:54:06 ID:C1D/6W2s0
あーあーあー!完結してるぅぅ!
気が付かず申し訳ないです、、!
先程拝読しました!
とってもとっても面白かったです!
みんな幸せで嬉しいです!
作者様に届きますように!
571
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:49:45 ID:mZA/AUjk0
幸せを高く高く積み上げたら、もっと幸せになれそうな気が、しませんか
.
572
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:51:35 ID:mZA/AUjk0
(´・_ゝ・`)デミタス。金持ち。甘いものが好き。
(゚、゚トソン トソン。使用人。お酒が大好き。
.
573
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:52:23 ID:MwdLQxj60
しえん
574
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:52:29 ID:mZA/AUjk0
「おかあさん、これ膨らまなかったあ」
「あら、じゃあもう一度やってみる?」
(-、-トソン
(゚、-トソン
(゚、゚トソン「……」
(゚、゚トソン「…夢」
夢というのは往々にしてその人間の深層心理を映すものだと言うが、私の夢は何を映しているのだろう。
(゚、゚トソン「…ふう」
数年前までは考えられなかった、ふかふかなベッドから身を起こして溜息をつく。
また今日も嫌な夢を見た。
最近続く、夢見の悪さは度数の高いお酒では消すことができなかった。
眠れてはいるので仕事にも支障はないが、あまりに続くようなら眠れなくなってもおかしくはない。
(゚、゚トソン「そうなったらモーニングコール専門の副業でもしましょうか...」
(゚、゚トソン「…いや電話持ってないから無理か」
575
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:53:05 ID:mZA/AUjk0
く、とこぶしに力を入れ、突き上げる。 えいえいおーの体勢から伸びをした。
起きて準備をしなくては。
私の、仕事の。
顔を洗って着替えを済ませ、キッチンへと足を運ぶ。
私が働くでかいでかい屋敷の中の、一番気に入っている場所だ。
(゚、゚トソン「おはようございます」
誰もいないがつい挨拶をしてしまう。
この屋敷には訳あって使用人の私と、もう一人の人間しかいない。
住み込みで私がやるべきなのは掃除と家事、それから──
ボタンを押すだけでコーヒーが出来る機械は偉大である。私でも美味しいコーヒーを淹れることが出来るのだから。
最初の一杯を自分の朝ごはんにする。
576
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:53:30 ID:f7im.dXQ0
久しぶり!
支援
577
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:53:39 ID:OKcoQH/s0
初リアタイ嬉しい!支援!
578
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:53:43 ID:mZA/AUjk0
(゚、゚トソン「……今日の朝ご飯、 昨日から仕込んでいたフレンチトーストの予定ですがこれ今日のおやつにしてもよかったのでは?」
今更気づいても遅い。
それにあの菓子狂いがそんな誤魔化しで満足するわけがないのだ。
(゚、゚トソン「作りますか」
フライパンにバターを落とし、じゅうじゅういい音がし始めたところでミルクと卵液にたっぷり漬け込んだトーストを入れる。
(゚、゚トソン「いい匂いです」
ほんのり焦げ目がついたそれをお皿に移して、 冷蔵庫から切っておいたフルーツを取り出した。飲み物やカトラリーとまとめて台に乗せて運ぶ。
ダイニングへ向かいながら、幾分か慣れて来たはずの廊下に対して、ぼんやり長いなと思った。
579
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:54:20 ID:mZA/AUjk0
(゚、゚トソン「広い家の何が不便って、キッチンとダイニングがかけ離れているところですかねえ。運ぶ間に料理が冷めそうです」
(´・_ゝ・`)「近かったらトソンくん、大々的にキッチンで酒盛りできないでしょ」
背後からひょっこり現れた人間の言葉はほんの少しだけ、聞き捨てならなかった。
私はどこであっても酒盛り出来るぞと、言いかけてやめた。
(゚、゚トソン「本日はお早いですね主人」
(´・_ゝ・`)「うん、いい匂いがしてきたから自然と足が動いたよ、おはよう」
(゚、゚トソン「おはようございます、流石は菓子狂い」
(´・_ゝ・`)「菓子狂い……酒狂いには言われたくないなあ」
このたれ眉のしょんもり顔が、この屋敷のもう一人の住人であり私の雇用主であり、 お金持ちの主人、 盛岡デミタスだ。
私の仕事は、掃除と家事とそれから、この主人に菓子を作ること。
580
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:55:04 ID:mZA/AUjk0
(゚、゚トソン「一応答えはわかっていますが聞きますね、主人今日のおやつこのフレンチトーストでもいいです(´・_ゝ・`)「だめ」だと思いました!即答畜生!」
ニッコリ笑って否定される。おやつはおやつの時間に食べるからこそおやつなのであって朝食はおやつとはまた別問題なのだと、おやつのゲシュタルト崩壊を起こす文句を言われた。
(゚、゚トソン「とはいえ主人も30代半ばでしょう、もう少し健康に気を遣って甘味減らしたら如何です?」
(´・_ゝ・`)「トソンくんも20代半ばでしょう、もう少し健康に気を遣ってお酒減らしたらどう?」
(゚、゚トソン「ドロー!!ほら早く温かいうちに召し上がってくださいよ」
(´・_ゝ・`)「はーい、いただきます」
581
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:55:41 ID:mZA/AUjk0
私と主人は似ているところなどほとんど無いが、欲に忠実なところは似ていた。
健康のために我慢が出来ないタイプの人間なので、お互い年齢を引き出されると痛いのだ。
引き分けという事にしてその話題を無理矢理終わらせる。
席についた主人の前に、出来立てのフレンチトーストとメープルシロップが入ったディスペンサーを置く。コーヒーにミルクを入れる間に、主人がたぷたぷとメープルシロップをかけていた。
カチャリ、ナイフで切り込みを入れている。粉砂糖をかけ忘れたが、あれだけメープルシロップをかけるのなら丁度良かったかもしれないと、たっぷり染み込んだ生地を口に入れるのを見て思った。
(*´・_ゝ・`)「うん、美味しい。カリカリしてるとことふわふわなとこがあるね、僕これ好きだなあ」
(゚、゚トソン「良かったです」
垂れ眉を更に下げて満足そうな顔をする主人を見て、ふふんと鼻を鳴らした。
582
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:56:20 ID:mZA/AUjk0
(´・_ゝ・`)「ところでさトソンくん、何か悩みでもあるの?」
この後は洗濯をして庭の手入れでもしようかと、考えていた時だった。
何口目かのフレンチトーストを咀嚼し終えた主人が、こともなげにそんな事を言うので思わずじっとり目を合わせてしまう。
(゚、゚トソン「デミタスのデはデリカシー無男のデですか?」
(´・_ゝ・`)「ひどい悪口を言う・・じゃあトソンくんのトは何?」
(゚、゚トソン「とにかく美しいトソンのト」
(´・_ゝ・`)「ずるい」
(゚、゚トソン「言ったもん勝ちですよ」
(´・_ゝ・`)「……何もないなら良いんだけど、目の下の隈が凄いことになってるから」
(゚、゚トソン「申し訳ないです、私、隈まで美しいから目立ってしまうのですね…」
(´・_ゝ・`)「それ何に謝ってるの?美意識?」
583
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:57:00 ID:mZA/AUjk0
主人は優しい人だった。
そうでなくても奥様を病気で亡くされているから、人の体調には敏感なのかもしれない。
確かに最近は隈が出来ていた。昼寝もしてる筈だけれど、睡眠が浅いようだ。
心配そうにこちらを見る主人に、これ以上悪態をつくのも仕方ないので観念する。
(゚、゚トソン「いや、本当に大丈夫です。ちょっと最近夢見が悪いだけで」
(´・_ゝ・`)「それ結構な原因だと思うよ」
(゚、゚トソン「うーん…………まあお気遣いだけありがたく貰っておきます」
何かあったら教えてねと、主人が言う。
口の端をキュッと上げるだけに留めて、お茶を濁した。
(゚、゚トソン(……本当に、主人にできることはないんですよね)
何故なら悩みの原因は判明していて、それが主人本人なのだから。
584
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:57:39 ID:mZA/AUjk0
──事の発端は、以前屋敷に勤めていて今は実家が営む酒屋のバイトをしており生意気にもキャバ通いをしている雑魚、通称雑魚が発した言葉だった。
……
…
585
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:58:18 ID:mZA/AUjk0
( ^ν^)「そういやもうすぐデミタス様の誕生日だよな。誕生日会とかやるならハブんないでください」
買い物帰りにこの酒屋に寄るのがルーチン化していた。品揃えが良い。ただ一つ文句があるとしたら、たまにバイトが絡んでくるぐらいだ。
本日の酒は何にしようかとルンルン気分で選んでいた私に、雑魚は雷を落とした。
(゚、゚トソン「は?」
(;^ν^)「すみませんナマ言いました、俺も参加したいです祝いたいです!」
思わず低い声を出してしまった私に何を勘違いしたのか、慌てた様子で言い直している。違う、そういう意味で聞き返したわけじゃない。
(゚、゚トソン「いや、いやいやいやいや、待て待って……主人って誕生日あるんですか?」
(;^ν^)「アンタ雇用主をなんだと思ってんだ」
(゚、゚トソン「いや私勤めて3年目に突入しましたが一度もそういう話題出なかったので…てっきり金持ちって誕生日無いんだとばかり」
586
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:58:57 ID:mZA/AUjk0
真剣な話、本当に話題に出なかったのだ。
歳だって正確なものは知らない。恐らく30代位だろうという、それだけの薄らとした情報しか知らない。別に知らなくても困らなかったから。
そう告げれば雑魚はしばし考えた様子になり、そして口を開いた。
(;^ν^)「あー……もしかしたら乗り越えられてないのかもしれない」
(゚、゚トソン「乗り越える?」
( ^ν^)「デミタス様の誕生日って…」
…
……
587
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 21:59:36 ID:mZA/AUjk0
(゚、゚トソン「……」
(゚、゚トソン(聞くんじゃ無かったよなあ…)
食べ終えた主人の食器を台に乗せてまたキッチンへと戻りながら数日前のやり取りを思い返して、ため息をついた。
私の自然遺産ばりの息が惜しげもなく吐き出されるこの数日、悩んで悩んで悩み疲れている。
どうにかしてほしいとは思うが、その理由の原因の元凶に話してしまったら何もかもが台無しになるとわかっているので、主人に話せるわけがないのだった。
雑魚の話を聞いて一番に思ったのが、先程も言った通り『聞かなきゃ良かった』だ。
まず誕生日というものは厄介だ。
聞いてしまったら、耳にしてしまったら、何かしら祝わないとソワソワしてしまうのだ。
知ってるのに何もしなかったら、その日一日中「あー誕生日だと知っていたのに何もしなかった…」と謎の罪悪感に苛まれるのだ。
588
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:00:12 ID:mZA/AUjk0
(゚、゚トソン(私の傲慢さを舐めないでほしい)
相手が何も気にしないかもしれなくても、私が嫌だという理由でおめでとうを言いたいだけ。ありがとうのかつあげ、いやこれは強盗レベルの野蛮さだ。
但しこれは諸刃の剣でもある。
大体のおめでとうは返される。私はそれが嫌だった。
誕生日を祝わないのは心苦しいくせに、祝われるのは嫌いだった。傲慢極まりない。
(-〜-トソン(そもそも、主人が誕生日の話を持ち出さないのがおかしいんですよ)
誕生日なんて甘いものを合法的に摂取できる日だというのに、あのイベント大好き甘いもの中毒おじさんが自己申告を3年もしてこなかったというのは、やはり、つまり、雑魚が言っていた説が正しいのかもしれない。
589
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:00:51 ID:mZA/AUjk0
( ^ν^)『──結婚記念日なんだって。同じ日にしたら喜びが2倍で良いだろうって奥様が言って、そうしたんだって、聞いたんだ』
.
590
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:02:03 ID:mZA/AUjk0
主人はなんでも出来る器用な人間だけれど、奥様のこととなると屋敷のものを燃やしたり引き篭ったりする不器用な人間でもあった。
お墓参りにすらようやく最近行けるようになって来たのだから、結婚記念日と同じ日の誕生日が辛い思い出である可能性は無くはない。
私がそうであるように、主人もそうなのではないだろうかと思うと、迂闊にお祝いなんて出来るわけがなかった。
(゚、゚トソン「……」
∩(゚、゚#トソン「んむぁむむむなががが」
考えれば考えるほど、頭から火が出そうになる。
祝うのかい、祝わないのかい、どーっちだい!
(゚、゚トソン「パワー!!」
(゚、゚トソン「むしゃくしゃしたときはお酒を飲むに限ります、今日はお高いお酒開けちゃおうかな!?とっておきのお酒……」
591
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:02:48 ID:mZA/AUjk0
(──じゃあさ、じゃあさ!)
(゚、゚トソン
(゚、゚トソン「……そう言えば、そうでした」
はしゃぐ可愛らしい声を、思い出した。そうだ、あの時も一緒にお酒を…。
私はいつも、何かしらの優しさに助けられていた。
592
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:04:02 ID:mZA/AUjk0
(゚、゚トソン「……うん、やりますか。ありがとうの強盗」
私は傲慢で、強欲だった。これは主人のためではなく、私がやりたい事をしたいだけ。
(゚、゚トソン「パンが無ければケーキを食べれば、隈がひどいなら原因をごっそり消して仕舞えば良いのです。それがトソン流、美の秘訣です」
いざ、良質な睡眠を得る為に。
"\(゚、゚トソン「ヤー!」
593
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:04:44 ID:mZA/AUjk0
業務終了時間間際、手を挙げて主人を呼び止めた。
\(゚、゚トソン「有休ください。明日」
(´・_ゝ・`)「珍しいね、どこか行くの?」
(゚、゚トソン「キッチンに篭ります」
(;´・_ゝ・`)「えー……いや、まぁ良いけど、あんまり…どんちゃんしないでね」
(゚、゚トソン「決して覗かないでくださいね」
(´・_ゝ・`)「僕、最近鶴助けたっけ…」
これで準備は万全である。
594
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:06:16 ID:mZA/AUjk0
∩(゚、゚∩トソン「作ります、よーっ」
朝イチのこと。
久しぶりに掃除も洗濯も何もしなくて良い。ご飯だけは軽食を用意して主人に渡してあるので何も気にする必要はない。
桃より繊細な両頬をパァンと叩いて気合を入れてみる。これから作るものはそれだけ神経を使うのだ。
(゚、゚トソン「オーブンを200℃に予熱しておきます。これ、とても大事です」
(゚、゚トソン「小鍋に水とバターを…投入っ!とうっ!カリッとしてる方が都合が良いから牛乳と砂糖も入れますよ」
ヾ(゚、゚トソン「悩むけど薄力粉かなぁ…多分薄力粉で良いはず…木べらで混ぜます!マゼマゼトソン!」
ヾ(゚、゚トソン「生地がまとまってきました…こう、筋トレしてるような気持ちになってきますよね」
c- (゚、゚トソン「ふう」
カッカッカ≠(゚、゚トソン「溶き卵を少しずつ加えて……なんかこの瞬間が好きなんですけど、わかるかな…ある程度の硬さになるまで混ぜ合わせマッスル」
595
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:07:29 ID:mZA/AUjk0
▽(゚、゚トソン「絞り袋に入れて、にゅってします。こういう形を作る瞬間は苦手なんですけど、わかるかな…丸く絞って出して形を整えて…」
(゚、゚トソン「霧吹き!それが〜一番大事〜」
(゚、゚トソン「オーブンに!ブン!します!!はぁ…体力勝負やでぇ…」
(゚、゚トソン「オーブンの扉は絶対開けてはなりません、なりません…物語でそういうふうに言われると開けたくなりますよね、わかります。でも駄目です。温度を180℃に下げてまた焼きます」
素早く動く。いつもの三倍速。
やることが多すぎてふざけられない。
∀⊂(゚、゚トソン「クリームを作りますよ!小鍋に牛乳とバニラエッセンスを入れます」
バニラエッセンス→∀⊂(゚、゚トソン「…」
∀\(、゚トソン ペロッ
"(゚言゚トソン"「エンッ」
:(公トソン:「ゥオ…ゥベベ…」
(゚、;トソン「スンッ……バニラエッセンス、わかっていても絶対一度は舐めますよね、舐めますよね?」
(゚、゚トソン「はあ、恐ろしい罠…」
596
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:08:11 ID:mZA/AUjk0
(゚、゚トソン「ボウルに卵黄を入れて〜砂糖を入れて〜
本当はお酒もちょっと入れたいけど…今日はシンプルに行きますか……お酒はあとで私が全部いただきます」
(゚、゚トソン「めっちゃ混ぜます。黄金の右腕を見せてやる!」
(゚、゚トソン「うおおおお」
(゚、゚トソン「粉を入れてさらに混ぜます。あー腕が、腕が辛い…樽酒より重い物は持てない細腕ですからね…お酒以外のものを持つと駄目なんですよね」
"(゚、゚トソン「お鍋に入れてからまた混ぜ混ぜタイム!」
(゚、゚トソン「お料理全般そうですけど、初めてお菓子を作り出した人は何を考えてずっと混ぜてたんでしょうかね…私は今何が出来るかわかってるからめげませんけど、確実に出来るもの知らずにずっと混ぜるのすごいと思います」
(゚、゚トソン「お、ぽこぽこしてきましたね……火を止めて、冷蔵庫に冷やしておきます」
(゚、゚トソン「そうこうしてる間にオーブンがまたブンしましたね、取り出して熱を冷ましておきましょう」
597
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:09:18 ID:mZA/AUjk0
ジャジャン$(゚、゚トソン「ここで真打登場!実は買いました、主人の金で!泡立て器くんですジャジーン!」
デュガガガガ$(゚、゚トソン「角を!立てるように立てるように!泡立て器くんって暴れ馬にみたいになって楽しいですね」
(゚、゚トソン「生クリームを混ぜて先程冷やしていたクリームと一緒にしてからまた混ぜます。明日私の腕マッスルマッスルしてたらどうしましょう、ノースリーブ着なきゃかな」
(゚、゚トソン「よし、あらかた出来ました」
(゚、゚トソン「……昔お母さんと作った時は全然出来なくて、何回も作り直したな…」
,(゚、゚トソン「……」
(゚、゚トソン「…いや、しんみりしてる場合ではナッスルです、まだまだやることはたくさんです!皮の中にクリームを詰めていきます」
⚪︎(゚、゚トソン「丸いものって可愛いですね、このままペットにしたいな」
(゚、゚トソン「よし、出来ました」
598
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:10:01 ID:mZA/AUjk0
(゚、゚トソン「また小鍋に水とグラニュー糖、そして水あめを入れます」
(゚、゚トソン「小鍋が沢山ある屋敷で良かった。…いや洗い物のことを考えたらそうでもないのか?」
(゚、゚トソン「水あめって食べにくいけどワクワクするのはダイレクトに甘いからでしょうかね?辛口の酒のつまみに…はしにくいですね、やはり塩と砂糖がシンプルで一番素晴らしいおつまみです」
(゚、゚トソン「焦げないように…焦げないように…」
(゚、゚トソン「炊き込みご飯のおこげはあんなにありがたいのにどうして料理の焦げって厄介なんでしょうか…一度焦げたチョコを食べたことありますがあれはもうカカオ99%より絶望の味でしたね…」
(゚、゚トソン「キャラメル色になりました、OKです」
599
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:11:02 ID:mZA/AUjk0
一つ一つを大事に、丁寧に積み重ねていく。
(゚、゚トソン「……ほんとに、良いのかな」
(゚、゚トソン「……いやこれ見たら主人絶対喜ぶと思いますし…大丈夫と思わなくない…」
(゚、゚;トソン「…」
(゚、゚トソン(嫌だと言われたら素直に謝ろう)
.
600
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:11:29 ID:mZA/AUjk0
コンコン、主人の部屋のドアを軽くノックして開ける。
奇しくも15時。おやつの時間だった。
(´・_ゝ・`)「あれ、織物おれた?」
(゚、゚ツルン「誰が美しい鶴ですか。キッチンに来てもらっても?」
仕事がひと段落ついたところだと言う主人が、ひょこひょこ後を着いてくるのを見て、すこし胸とお腹が痛かった。
601
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:12:26 ID:mZA/AUjk0
(;*´・_ゝ・`)「うわーーあー!!!なあにこれすごシュークリーム??あっカメラ…!はっ!食事の写真撮りたがる若者の気持ちが今初めてわかったよ!」
(;*´・_ゝ・`)「これ倒れない?っていうか食べれるやつ?どちらにせよすごいね!?」
キッチンに入るや否や、年甲斐もなくはしゃぐ主人にバレないようガッツポーズをした。
予想以上の喜び具合に、頑張った甲斐があったなと早くも筋肉痛がきている腕を摩る。
主人の前には、沢山のシュークリームがタワーのように積み重ねられている。
重ねすぎてキッチンから出られなくなってしまったのはご愛嬌だ。
+(゚、゚トソン「ふっふっふ、なんとこれ全て食べられます」
(;*´・_ゝ・`)「す、凄すぎる…!!何かのお祝いみたいだね」
(゚、゚トソン「お祝いです」
(´・_ゝ・`)「えっ何の日?建国記念日だっけ?」
(゚、゚トソン「今日…主人のお誕生日と、それから奥様との結婚記念日のお祝い、です」
(´・_ゝ・`)「え」
私の言葉に、主人が固まる。
やはり、地雷だったのだろうか。目を見れなくて床を見ながら早口で話を続けた。
602
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:12:59 ID:mZA/AUjk0
(゚、゚トソン「偶々ですが日にちを知ってしまったので、祝わないという選択肢がなかったんです。すみません、ありがとうの強盗です。いつも一応世話になっていますから、誕生日くらいはお祝いを…したかったんです」
(゚、゚トソン「でも主人がお誕生日を祝われるのが嫌ならその、もう一つの結婚記念日をお祝いすれば良いんじゃ無いかと思って、クロカンブッシュを、これクロカンブッシュという結婚式とかでもよく出るお菓子です」
(´・_ゝ・`)「そっか……なるほどね、それでずっと悩んでたんだねトソンくん」
主人がいつもの優しい声で喋り出した。
私はちらっと主人の顔を見て、相変わらずの下がり眉に今は少しだけホッとしたのだ。
603
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:13:37 ID:mZA/AUjk0
(゚、゚トソン「…」
(゚、゚トソン「私、私も誕生日、祝われるの好きではないんです。私も、大好きなおか…母と誕生日が同じで、昔は一緒にお祝いするのが大好きでした でも今はもう自分だけ歳をとって、お祝いなんてって」
昔働いていた所ではバースデーイベントがあった。
それは本当の誕生日ではない、店側に付けられた適当な日にちだったがそれでもやはり自分だけが祝われる事が哀しくて嫌だった。
稼ぐチャンスだと、自分に言い聞かせてもそれでもしんどい気持ちがあった時、一緒に働いていた天使シンデレラちゃんが朗らかな声で言ってくれたのだ。
ζ(゚ー゚*ζ『──じゃあさ、じゃあさ!トゥインクルちゃんのお母さんのお誕生日をお祝いしよ!』
ζ(^ヮ^*ζ『誕生日が同じ日なんてすっごく素敵だよ!そんな日にトゥインクルちゃんが悲しむより、楽しい気持ちの方が良いよ!』
目から鱗がぼろぼろ落ちた気分だった。
お母さんが亡くなった年から一度もお母さんを祝う事なんかしなかったから。
(゚、゚トソン「私それがすごく嬉しくて、祝ってくれる人がいることも悪いことではないんだって思えたから」
(゚、゚トソン「お祝いはしたかったのです」
604
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:14:17 ID:mZA/AUjk0
スカートの端を掴みながらぐだぐだと話すのを、主人は静かに聞いてくれた。
目が合い、ニコッと小さく笑われる。
(´・_ゝ・`)「ありがとう……沢山考えてくれて。……そしてごめんね、言いにくいんだけど…」
(゚、゚トソン「やはりお祝い嫌でしたか」
(´・_ゝ・`)「違う違う、あのね、僕の誕生日と結婚記念日は今日じゃないんだよ」
(゚、゚トソン
(゚、゚トソン「え?」
605
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:14:55 ID:mZA/AUjk0
(´・_ゝ・`)「10日後の17日なんだ」
(゚、゚トソン「あ の く そ ざ こ」
今鏡を見たら流石の私も般若のようになっているだろう。
なんたる赤っ恥。ここまで悩んで、日にちが違うだなんて。
(´・_ゝ・`)「韮塚くんに聞いたんだ」
(゚、゚トソン「彼奴はもう雑魚と呼ぶことすら勿体ない…ザって呼びます、ザ」
(´・_ゝ・`)「6月ってことまでは覚えててくれたんだね。いやあ2人には気を遣ってもらって申し訳ない」
ニコニコ笑いながら主人がクロカンブッシュを彼方此方から眺めている。先程までの緊張が嘘のようにどうでも良くなってしまった。酒を、酒を飲んでしまいたい。
606
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:15:25 ID:mZA/AUjk0
(´・_ゝ・`)「祝われるのがいやと言うわけではなかったんだけど、やはりどうしても…30越した人間がわざわざ自分の誕生日祝ってくれ!って言えないじゃないか。ハッピーバースデーハラスメント…つまりハピハラになりそうだし」
(゚、゚トソン「カピバラみたく言わないでください。ていうかハロウィンとクリスマスはあんなにイベントさせてるくせに?!」
(´・_ゝ・`)「ああでもそうだね、うん。嬉しい。誕生日と結婚記念日祝うのも祝われるのも久しぶりだ。ありがとう」
(゚、゚トソン「……」
最近で一番でかい溜息を吐いた。
甘ったれ下がり眉毛の主人は本当に嬉しそうな顔をしていて、毒気を抜かれる。
607
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:16:16 ID:mZA/AUjk0
(´・_ゝ・`)「トソンくんの誕生日はいつ?」
(゚、゚トソン「私の誕生日は6月15日です」
(´・_ゝ・`)「近いね。……あのさ、僕もお祝いして良いかな。君と、君のお母様のお誕生日を」
(゚、゚トソン「……」
(゚、゚トソン「高いですよ」
(´・_ゝ・`)「祝い代が?」
(゚、゚トソン「酒代が」
(´・_ゝ・`)「どんと来いだね!」
ドヤ顔で返してくる主人に、絶対無茶苦茶お高い酒を買って貰おうと誓った。
608
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:18:40 ID:mZA/AUjk0
そんな事を考えて、隣にある高く積み上げられた幸せの象徴を思い出す。
日にちが早かったとしてもお祝いとして作った気持ちは変わらない。これだけ高くて、艶やかなシュークリームが惨めになる必要はこれっぽっちもないのだ。
主人に食器を手渡す。乱雑になってしまったのは照れ隠しなんかではない。
(゚、゚トソン「とりあえず、召し上がってください。私はまだ有休中なのでお酒飲みますからね」
(*´・_ゝ・`)「わーい!……どうやって食べるの?これ」
609
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:19:38 ID:mZA/AUjk0
キャラメルで固められたクロカンブッシュに四苦八苦する主人は、とても良いつまみになりそうだなと思いながら笑ってミード酒を注ぐ。
一番上のシュークリームをもぎ取って齧る。カスタードが優しい甘さで、ミード酒のふんわりとした蜂蜜の香りが丁度良いペアリングになった。
(*´・_ゝ・`)「美味しい」
(゚、゚トソン「それは良かった」
(´・_ゝ・`)「ふふ、これだけ高く積み上げられてると、すっごい良い日って気持ちになるね。ありがとう、トソンくん」
(゚、゚トソン「…どういたしまして」
(゚、゚トソン(主人と奥様と、お母さんと、それから…私もおめでとうございます)
(゚、゚トソン「……」
(゚ー゚トソン
久しぶりに、今夜は良く眠れそうだ。
fin
610
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:23:28 ID:mZA/AUjk0
番外編の投下は以上になります。
お久しぶりの方もはじめましての方もお読みいただきありがとうございます。
>>570
さん、届きました。ありがとうございます、嬉しかったです。
6月中に仕上げて投下する予定でしたが大幅にズレました。でも投下できて良かったです。
前回雑魚の番外編を書くと言ったな、あれは嘘じゃ
また次回書けたらいいなと思います、気長に気長にお待ちください。
ありがとうございました。
.
611
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:24:44 ID:mZA/AUjk0
しえんついてるの今気付きました!
ありがとうございました!
612
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:41:43 ID:CD6vNwzs0
おつおつお
613
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 22:41:51 ID:cbV2EK4A0
サクサク読めたわ、乙!
ブーン系、シュークリームブーム…?
614
:
名無しさん
:2023/07/19(水) 23:46:04 ID:r0rgkgr.0
たまたま久しぶりに見に来たら投下きてたー奇跡!
ほっこりしたおつ!!
615
:
名無しさん
:2023/07/20(木) 00:09:14 ID:rCqE.rk20
おつ!
番外編うれしい
616
:
名無しさん
:2023/07/20(木) 15:14:32 ID:vgOhG/LE0
乙
617
:
名無しさん
:2025/01/04(土) 12:17:55 ID:B52hw1NY0
シュトレンやガレットデロワを見かけるたび
この作品を思い出します
618
:
名無しさん
:2025/03/06(木) 23:47:48 ID:dlNntido0
久々に読み返した
酒と甘いもんが欲しい
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