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みんなで文才晒そうぜ part2

1以下、名無しが深夜にお送りします:2014/01/18(土) 18:14:17 ID:mNOcI4dM
ここはお題に沿った地の文込みのSSを晒すスレッドです

・主に地の文の練習や批評・感想の場として使ってください
・次スレは>>990が(規制等の際には有志が)必ず『宣言』して立てる事
・気楽な雑談がしたい方は酒場や休憩所でどうぞ

【注意】台詞形式のSSは受け付けておりません

前スレ
みんなで文才晒そうぜ
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1352992635/

お題>>2

67以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/22(土) 21:31:03 ID:2J6kO.SA
>>66
どんまい
>>66みたいに丁寧に評価してくれる人は貴重だと思う

68以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/22(土) 21:42:44 ID:1EFUGJbE
>>61の「電車から」を見逃すと微妙に読めちゃうのよね

>>65は余りに曖昧過ぎて
箱の所在は分かってるの?

69以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/22(土) 21:45:36 ID:JPSombRY
走れメロスだって語り手の位置が次々に変わってるんだから、突然の視点変更はいいと思う
実際は>>60-61は別物だったけど

70以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/22(土) 21:55:55 ID:6uVGTmFg
評価してくれたドジっ娘を咎めるだけだと印象悪くなるから便乗

>>61
ノスタルジア好き
電車を時間の流れの比喩として用いることで、
過ぎ去っていく日々の中でふと足を休めるのを表現してるんだなと。
周囲の人間が「例外なく疲労」を感じていることで、逆説的に自分も疲れているのを伝えてる。
密室から外の子供たちを眺める部分は、若かりし頃にはもう絶対に戻れないという絶望が読み取れる。
子供たちと過去の自分を重ねながら、けれども同時に今の自分と対比させられる「彼らだけが知っている」
という書き方には思わず溜め息が出たわ。「彼ら」の使い方がやばい。鳥肌が立つ。
俺から見た欠点が文才関係なくて申し訳ないが、改行をしてある程度長さを合わせてくれると読みやすかった。

>>65
一回読んでどういうこと? と思ったけど、何回か読み返して理解した。
言葉の裏をかくのが上手いわ。
1つの出来事を無駄に広げることなくここまで丁寧に書けるのは羨ましい。
文章も躍動感とは違う重みのある猛々しさみたいなものを感じさせる。
人間の汚れた賢さを率直に伝える面白さがあったわ。

71以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/22(土) 22:03:17 ID:RQ0rs2qc
>>60
>風が吹けば桶屋が儲かる。今の時代は学生が喜ぶ。なにせ電車が止まる。

この一行いいな
なんかテンポいいし、ちょっとクスっと来た
自分だけの秘密基地を彷彿とさせたって表現も個人的にはツボ

72以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/22(土) 22:06:39 ID:1EFUGJbE
文学は形式に寛容だけど視点を無視するとやっぱり読みにくいし乱文の評価を受ける
所詮俺らは凡人だから自由視点は難しいかな

73以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/22(土) 22:45:15 ID:97QB/aiA
>>60
消失したのは本来なら通常の学業をこなすはずだった今日という一日なのだろうか
でもおそらくその日はじめて入ったであろう教室に中身入りの弁当があるという事は、誰かが主人公のために置いたって事で
もしかして主人公の彼女であるクラスメイトが弁当だけ置いてさっさと帰宅した(そこで待ってるものと思ってた相手が消失してた)というのもあるのかなと想像が膨らんだ

>>61
去りし日の記憶の中にいる自分と無邪気な子供達の姿を重ね合わせながらも
窮屈な電車の中という閉鎖空間を表現する事で、あの頃には戻れない無情さを表現してるんだなと思った
そうじゃなかったら自分が歩いてる道端で子供達が遊んでたっていいものな


俺は>>65だけど、>>68の言う通り曖昧すぎたな。分かり易い文を心掛けるよ
>>70の感想は過大評価だけど、嬉しいです

74以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/23(日) 06:45:25 ID:BgDvYyko
珍しく伸びてるな、嬉しい
評価してくれる人がいるとやっぱりありがたいな

75以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/23(日) 09:13:01 ID:j4eDWsvY
 三日前、友人の携帯から奇怪な電話があった。
 仕事帰り、駅までの道のりをゆっくり歩いている途中の事だ。

「もしもし、俺だよ。突然で悪いけど、ちょっと聞いてくれるか。さっき面白い事があったんだ」

 そんな切り出しから始まった話は、俺にとっては全く面白くもなく、むしろ恐怖を感じさせる内容だった。

 人が目の前でいきなり消えたんだ。

 単純に、要点だけをかいつまむと、家にいたら何故か部屋に見知らぬ女が入ってきた。
 その女は「誰……?」と怯えた様な声で尋ねた後、急に目を見開き、それからつんざくような悲鳴。
 最後には、顔や体から血をだらだら流して声もなく消えたという。
 そんな身の毛もよだつような話だ。
 なのに、こいつはそれをひたすら楽しそうに喋っていた。
 もしも、こいつから聞いたのでなければ、俺も多分笑って応じたと思う。
 よくある幽霊話だなと。
 ネタが一つ増えて良かったなと。
 そうならなかったのは、友人がその日から行方不明になっているからだ。

 今日、また警察が俺のところに来てこう言った。

「あなたの言う通り、確かに電話会社の方に通話記録は残ってました。で、もう一度だけ確認したいんですけど、そいつは男の声で間違いなかったんですね? ご友人の女性ではなく。どんな声だったか、思い出せますか?」

76以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/23(日) 09:13:57 ID:j4eDWsvY
みんな、文章が上手だなあと思いました(KONAMI感)

投下ついでに、お気に入りのに少し感想
>>50
麻薬、絶対、良くない
だけど、麻薬やってるとか基地外とかの芸術家って本当にいい作品が多い気がする。なんか人の感性をどっかで越えてるんだろうかね
こういうノリ書けるのは裏山

>>61
スタンドバイミーに似てて好き。名前も思い出せないってのがいい味だしてる。個人的には、もう少し句読点があった方が読みやすいかも

77以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/23(日) 13:35:41 ID:T2F.c.7c
>>75
 >三日前、友人の携帯から奇怪な電話があった。

「友人の携帯」に意味はあるの?家に女が入ってきた直後であるならば友人は家の電話からかけているはず

>よくある幽霊話だなと。
 ネタが一つ増えて良かったなと。

リズム良く場面が進んでいたのに突然スローダウンした感はある
一つ消して前の文章に組み込んだ方が良いかも
 もしも、こいつから聞いたのでなければ、俺もよくある幽霊話だと笑っていただろう。

78以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/23(日) 13:47:52 ID:rKvETqeY
>>77
友人=女だぞ
主人公にとって、女の携帯を奪い電話をかけてきた男(犯人)こそが知らない者

ごめん、解説してしまったが>>77みたいなレスこそ>>75の思う壺だよね
なかなか上手い引っ掛けだと思う

正直、俺にも解らないのは血塗れになっても消えはしないだろ…ってところと、最後の警官が犯人だったりするのか?ってところ
もしかすると俺も上手く釣られてるのかもしれない

79以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/23(日) 14:11:13 ID:A4brCotM
文才スレだからと読み流しで済ませていまうと恥をかく
じっくり読まないなら内容に触れずに文章の良し悪しだけ書けばいい
面白かったよくらいの感想と共に

>>75
流血描写のあるホラーは苦手だけど読んじまった
内容勝負のスレじゃないから個人的には忽然と消える部分に
もっと力を入れていかにもなホラーの雰囲気を味わいたかったなと
でも俺も途中まで騙されたわ

80以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/24(月) 06:34:51 ID:3.qIyE3Y
俺、>>75だけど、読み返してしまったなって思った

>最後には、顔や体から……
の部分を
>その後の事はまるで覚えてないが、気がつくと女は消えていたという
にすべきだったね
あと、警察は無関係

引っかけを重視したら、文が浅くなって内容が不自然になったみたい。もう少し推敲すべきだったなあ。二人ともアドバイスありがとう

81以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/24(月) 22:28:41 ID:VOQBBdIc
一人の部屋で床に座る。なぜか体操座りになってしまった。
不安が止まらないのか、膝を抱きよせてしまう。
わけのわからないまま不安定になっている自分がいた。

とにかく、笑ってみることにした。笑えば楽しくなるに違いない。
笑い声は出た。でも、その声は乾いて聞こえてしまう。
腹の底から笑おうと、へそのあたりに力を入れてみた。しかし、腹から湧き出た何かは胸でつっかえて、そのままぐるぐると暴れまわった。
……うまく笑えない。

いっそのこと、大泣きしてやろう。思いっきり泣けばスッキリするのかもしれない。
楽しげな教室に一人ぼっちで取り残された自分。それに耐えられなくて教室でふせった休み時間。
悲しい事なんてたくさんあるはずだった。
しかし、声が悲しもうとする自分を邪魔する。「あなたが悲しんでどうするの? 悲しんだところで意味はあるの?」
とうとう、私の中の悲しみを消し去ってしまった。
……私は悲しむことさえもできないのか。

泣けてきた。
それだというのに、なぜか笑いがこみあげてきた。
ああ、今私は泣きながら笑っている。私は壊れてしまったんだ。
私の心はすり減ってなくなってしまったんだ。

本当に私はどうしようもないな。

82以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/25(火) 09:08:29 ID:2Y5E8kE2
>>81
消失・喪失・虚無感がよく表れてると思う
勝手に都合よく解釈すれば、悲しもうとした時にだけそれを制する声(自分の心理? 過去の記憶?)が聞こえるってのは、もしかしたら一縷の救いがあるのかも?
本当に壊れた人は自分が壊れたと認識できない気もする
希望かもしれないけど、それがあるから余計に辛いのか。パンドラの箱のようだ

83以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/27(木) 16:08:15 ID:jtZZUb9U
そろそろ次のお題?


84以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/27(木) 17:53:59 ID:Q0JrrR4c
まだ早い様な気もするけど、一応決めとこか

あと投下する時とお題を決める時は保守もかねてアゲてね

『一撃必殺』

85以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/28(金) 04:39:00 ID:htEGQNsY
屋上のフェンス越しに遥か下方のグラウンドを見下ろす。
中庭と背の低い東棟を越えた先に見えるそこでは、
小さすぎて豆粒にしか見えない生徒たちが放課後の部活に精を出している。
文化部を選んだ僕に運動で汗を流す快感を知ることはできないが、
その必要性だけなら知識という形で記憶に定着している。

羨ましい。彼らを見るたびに心の中で嫉妬の火がぽつりと燈る。
スケッチブックの上をせわしなく走り回っていた鉛筆を休めて、
手の届かない遠くの風景をじっと見つめた。風に乗って彼らの声が聞こえてくる。
きっと彼らにはここに居る人間の姿には気付かないだろう。

グラウンドを駆け回る彼らを最初に見たときは、ただの風景にしか感じなかった。
風景とも感じなかった。歩道の植え込みに生える無名の草。路傍の石ころ。その程度だ。
小学生時代の私の学力は、クラスメイトの追随を許さないほどに飛びぬけていた。
特に得意科目だった算数は、三年生を終える春には既に数学の領域に足を踏み入れ、
授業で他の子がノートに割り算の筆算を必至に連ねる隣で、一人だけ因数分解を解いていた。
それだけに好みと目先の損益をかけ合せた損得勘定が得意だった。

学びがなければ不必要。時間を奪うものはマイナス。行く先を妨げるものに価値は無い。
内向的で閉鎖的。認めないもは異物として捉えて、自分専用の世界から徹底的に排除する。
中学に上がってもその傾向に変化はなく、馴染むことを拒絶する孤立が漂わせる独特の匂いに
周囲は眉をひそめ、鼻つまみ者として私を扱った。無愛想が教師に好かれていたのも要因だろう。

思春期なんてなければよかった。来なければよかった。衝動的に過去を思い出すと、
決まって負の感情がふつふつと沸き上がる。スケッチブックの上で鉛筆がぽきりと音を立てて折れた。
学びがなければマイナス。時間の無駄はマイナス。悪い部分を掛け持ったものが友達。

「今更どうにかなるわけないじゃない。ばーか」

曇る視界を上に向けて空を罵倒する。いわれのない文句に表情を暗くした空は、びゅっと冷たい風を寄越した。

86以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/28(金) 04:41:37 ID:htEGQNsY
強引に解釈をするならば鉛筆の芯が一撃で死んだあたりがお題の回収
どこかでお題に絡めなければと思いながらも最後まで交わらずに終わってしまった

87以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/28(金) 11:37:44 ID:oH58dKpk

えぇ。この部屋に来てくださったかたはあなたが始めてですよ。記念すべき最初のお客様です。ウフフフ。
えっ!?笑いかたが気持ち悪い?
ウフッ。ごめんなさい。幼い時からの癖で治らないんですよね。ウフフフ。
折角ですし紅茶でもお出ししますよ。遠慮はいりません。商談が家で行われるなんて楽しみで楽しみで。ウフッウフフフ。

あなたの為にお茶の葉を新しく買ってみたんですよ。それに水道の浄水フィルターも交換しました。買いだめしているミネラルウォーターでいれようかなとも考えたんですが、ほら東京の水道水って美味しいじゃないですか。
安全性世界一みたいな。だからわざわざ使わなくても良いかなと。ウフフフ。
そういえば東京の水って全て利根川水系からきているんですよね。知っていました?私、昨日ちょうど群馬県にあるダムにいきましてね。奥利根湖って言うんですけど。いやぁ良いところだったなぁ。湿度が高い所、好きなんですよね。ベタって張りついてくるような感じがなんとも…。それに私の子たちもジメジメしていると元気になるんですよ。昨日も喜んでましたねぇ。ウフッ。

あ、お味は大丈夫でしたか?
出しておいていうのもあれなんですけど私、紅茶とかダメなんで味の確認してないんですよね。ウフフフ。炭酸飲料しか飲めないんです。どこかのアイドルみたいでしょう?

ごめんなさいね、お喋りで。これも私の悪い癖で。では商談といきましょうか。
って、ん?
……どうかされましたか?
あぁ、カップを落として割ってしまったんですね。別に良いですよ、お気になさらず。特に気に入っていたわけでもないですし。ウフフフ。
でも破片は触らないで下さいね、危ないですから。

ご希望はヘビでしたっけ?
しばらくお待ちください。可愛い子ばかり揃えてますよ?ウフフ。
毒はない種類がお好みですかねではアルビノ君でもとってきますかね

88以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/28(金) 18:14:42 ID:OVGZOUdI
深々と咲いていた。物悲しい白色だった。
夜に濡れて、窓ごしの桜はいよいよ青ざめる。

雨だれるガラスに鼻の頭を冷やしながら、彼は息をのんだ。
手を伸ばせばかき消えてしまうような、あんな儚い美しさが好きだった。
彼は眺め続けるしかない。触れられないまま眺め続け、やがてそのまま失われるとそっと目を閉じて、
やるせなく染み渡る残像をかみしめることしかできないのだ。

保健室のストーブがごくりと油を飲む。

「先生、お茶いれたよ」

振り向くと、猫のような目の生徒が立っていた。すっと湯気をたてる味気の無いカップを二つ持って笑っている。

「ありがとう、遅くまですまないね」

「家は誰もいなくて寂しいから。はい、どうぞ」

今年度も引き続き保健委員をつとめる猫目は、最近になって髪を切った。

「ねえ先生」

「なに」

「好きよ」

春に散る花のように言って、猫目は軽やかに奥の部屋へ向かう。

……保健室の外の彼女をほとんど知らない。彼女が髪を切った理由さえ知らない。
温められたカップに口をつけて、彼は遠ざかる白いブラウスの背中を眺めるしかなかった。

89以下、名無しが深夜にお送りします:2014/02/28(金) 20:31:48 ID:WghyoJyw
うわぁ87ですが投下できてなかったんで続きを……読みにくくてごめんなさい

その前に私の自慢の子達、見ていきません?ウフフ。可愛いんですよ、皆。
この子達はタイパン、タイガースネーク。有名どころですね。あぁ触っちゃダメですよ。噛まれたら死んじゃいますから。ウフフ。
見て下さいよこの鱗…。妖艶で滑らかで……。まさに美というものが具現化したようですよね。

えっ隣の子達が気になりますか?さすがお目が高いですね。ウフッ。
この子達は比較的新入りなんです。
触りたいですか?どうぞ。その代わり死んでも責任はとれませんけど。あの子達が私の部屋で一番危険なんですよね。

……そんなに離れなくていなくてもも空気感染みたいなことはないので大丈夫ですよ?
近くで見て下さいよ。この子達、イチゴとコバルトって言うんですけどね。ウフッ。鮮やかな赤や深海を切り取ったような青が魅力的でしょう?
あら、珍しい。二匹が鳴いている。
寂しいのかしら?ウフフ。最近までこの子達の仲間がいっぱいいたんですよね。今は別のところにいますけど。
大丈夫ですよ。彼らは今はもっと広いとこに放してあげましたから。ウフフ。
それにしてもなんて綺麗な音色…。蛙の声といえば六月のイメージですが春に聴くのもオツなものですよね。

あの……寝てしまわれましたか?ウフッ。

ウフッウフフ。


 ̄ ̄ ̄
臨時ニュースです……
首都圏の川で魚が大量死しました……
皆さんは水を飲まないで下さい……

誰も見ていないテレビが薄暗い部屋で光っている

90以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/01(土) 03:19:15 ID:uutW/KDg

視界がひっくり返る、いや、自らひっくり返したのだ。

雲にも届こうかという高度で、魚の腹を思わせる機体の底面を太陽に向ける。そして操縦桿をぐいと引いた次の刹那、愚鈍に海原を横たわる醜い鉄の鯨の背が正面に見えた。

周囲で高射砲が炸裂している。しかし上着の裏に縫いつけた手作りのお護りがある以上、当たりはすまい。

あと少し、軌道を修正し固定できれば間違いない。

狙うは鯨の心臓部、そこへ通ずる排煙筒。
見る間に大きくなってゆく憎き米艦の輪郭に、己が命の刻限を知る。

父上、今も仏間の卓袱台の前で、口を一文字に結び座しておられるのでしょうか。どうか今、最期の時だけは幼き日のように『父ちゃん』と呼ばせて頂きとう御座います。

母上、貴女の作る牡丹餅が何より好きでありました。旅立つ日、それを皿いっぱいに盛りながら『めでたい、めでたい』と唱える貴女の目が濡れていた事、この愚息は気付いておりました。

姉上、庭の柿の木に登り、まだ熟れる前の実をかじった日が昨日のように思えるのです。料理の不得手な貴女の事、私は天からいつも心配しているとお心得下さい。

そして君よ、駅で別れし愛しき君。

どうか笑顔で送ってくれと、見えなくなるまで万歳をしてくれと頼んだはずだ。なのに思い出すのは涙化粧、行かないでくれと袖を握る君の姿ばかり。

嗚呼、二十年に満たぬ我が人生は、今この米艦を沈めて幕を閉じるのだ。

一撃必殺、必中轟沈。

あと僅か、ほんの軽く操縦桿を引──

91以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/01(土) 03:57:11 ID:hY8tfiRU
いつからだろう、ふと気付くと彼女の姿を探している事を自覚するようになったのは。
地下道を人の群に押し流されながら歩く朝も。家路を急ぐ人々から弾き出されそうになる夜も。

元気よく両手を大きく振り、ギターケースを背負って歩く君の姿を探している。

昨日はいつもの交差点のそばなど花壇に腰掛けて歌っていた。今日はどうだろう、会えるだろうか。そんな事ばかり頭にちらついて、仕事に手もつきやしない。

「ヒットした暁にはプレミアつくよ!今の内に買ってよ!」

最初に会った夜、さらさらと自作のCDの表紙にサインを書き付けて並べながら、「ま、夢のまた夢だけどさ」と笑った。

つい「買うよ。その代わり、君のファン1号になってもいいかい?」なんて言ってしまった。


「やったね!」

そう言ってはにかむ彼女の笑顔は、俺の心を刹那に虜にしたんだ。

92以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/01(土) 08:41:53 ID:riIsaGPo
無機質な文明の森の中を無数の悲鳴がこだまする。
平静を欠き、ただ生存本能だけを原動力に人々はひた走る。例え誰が逃げ遅れようと、例え誰が転倒し、それをどれだけの人が踏みつけようと。
知ったことではない。そんなこと気にする余裕などあるものか。

鉄で出来た冷たい森の中で、それをなぎ倒し進む影がある。
大きい。人類が何年と掛かり築き上げた青い空を隠す構造物群。見上げるほど大きいそれが、ちっぽけな物に思えるほど。
脚がある。顔がある。脚を見れば爪があり、顔を見れば牙がある。
それらは肉食獣が持つような攻撃性が見て取れるが、誰一人として肉食獣など連想しない。そんな生易しいもの、誰一人。
その巨体、あまりに奇怪。あまりに醜悪。あれを形容する言葉は──”怪物”以外何があろうか。
山の如き怪物がおぞましい叫びをあげながら、臭気を、破壊を、死を、恐怖を振り撒きながら、街を、命を蹂躙する。

それを止める物は無い。止められる者など在りはしない。
代わりに──怪物を睨み、立ち向かおうとする影が在る。大きさは人間ほど、いや、人間そのものだ。それを見た誰もが、彼は恐怖で体が動かないものだと、思っただろう。
だがしかし、彼の瞳に宿る灯は。恐怖に竦んだ者のそれではない。静かに燃える、戦士の瞳だ。
彼が、猛進する巨体に飲み込まれんとしたその瞬間。

怪物が止まる。
何故かは分からない。だが確かに怪物は彼を認識したその時、自らが砕いた有象無象と同じように蹂躙するのではなく、自らの意志で殺すことを決意した。
怪物の巨碗が振り下ろされる。山をも砕くそれが振り下ろされれば、彼だけと言わず、大地が、周囲の人々までもが衝撃波で殺される。誰もが自らの死を予感した。
そしてその数秒後───誰もが、自らの常識が覆るのを感じた。
受け止めていた。戦士の瞳を持つ彼が、大地をも砕く巨碗を、余裕を持って受け止めていた。
腕を振り上げ、また振り下ろす。破壊の権化がニ撃、三撃。両腕を交互に振り下ろす。受け止める。その全てを彼は受け止める。
そして七撃目。今度はその腕を掴み、投げた。怪物の腕が空を舞う。其処に居た誰もが───怪物さえ何が起こったのか理解できなかった。
唯一動じない彼は、左手をポケットに突っ込み、持て余していた右手を空に掲げる。
瞬間空気が振動し───気付けば巨大な腕がある。
それだけで怪物を越す大きさを持つ、巨大な右腕。それは、手を掲げた彼の、その手から延びていた。
怪物がそれを何と理解する間もなく、彼は巨碗を振り下ろした。
先程までの七撃を、あざ笑うかのような一撃。
轟音と振動が過ぎ去った後───其処には、山のような巨体さえ、何も残っていなかった。

93以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/01(土) 08:43:11 ID:riIsaGPo
無機質な文明の森の中を無数の悲鳴がこだまする。
平静を欠き、ただ生存本能だけを原動力に人々はひた走る。例え誰が逃げ遅れようと、例え誰が転倒し、それをどれだけの人が踏みつけようと。
知ったことではない。そんなこと気にする余裕などあるものか。

鉄で出来た冷たい森の中で、それをなぎ倒し進む影がある。
大きい。人類が何年と掛かり築き上げた青い空を隠す構造物群。見上げるほど大きいそれが、ちっぽけな物に思えるほど。
脚がある。顔がある。脚を見れば爪があり、顔を見れば牙がある。
それらは肉食獣が持つような攻撃性が見て取れるが、誰一人として肉食獣など連想しない。そんな生易しいもの、誰一人。
その巨体、あまりに奇怪。あまりに醜悪。あれを形容する言葉は──”怪物”以外何があろうか。
山の如き怪物がおぞましい叫びをあげながら、臭気を、破壊を、死を、恐怖を振り撒きながら、街を、命を蹂躙する。

それを止める物は無い。止められる者など在りはしない。
代わりに──怪物を睨み、立ち向かおうとする影が在る。大きさは人間ほど、いや、人間そのものだ。それを見た誰もが、彼は恐怖で体が動かないものだと、思っただろう。
だがしかし、彼の瞳に宿る灯は。恐怖に竦んだ者のそれではない。静かに燃える、戦士の瞳だ。
彼が、猛進する巨体に飲み込まれんとしたその瞬間。

怪物が止まる。
何故かは分からない。だが確かに怪物は彼を認識したその時、自らが砕いた有象無象と同じように蹂躙するのではなく、自らの意志で殺すことを決意した。
怪物の巨碗が振り下ろされる。山をも砕くそれが振り下ろされれば、彼だけと言わず、大地が、周囲の人々までもが衝撃波で殺される。誰もが自らの死を予感した。
そしてその数秒後───誰もが、自らの常識が覆るのを感じた。
受け止めていた。戦士の瞳を持つ彼が、大地をも砕く巨碗を、余裕を持って受け止めていた。
腕を振り上げ、また振り下ろす。破壊の権化がニ撃、三撃。両腕を交互に振り下ろす。受け止める。その全てを彼は受け止める。
そして七撃目。今度はその腕を掴み、投げた。怪物の腕が空を舞う。其処に居た誰もが───怪物さえ何が起こったのか理解できなかった。
唯一動じない彼は、左手をポケットに突っ込み、持て余していた右手を空に掲げる。
瞬間空気が振動し───気付けば巨大な腕がある。
それだけで怪物を越す大きさを持つ、巨大な右腕。それは、手を掲げた彼の、その手から延びていた。
怪物がそれを何と理解する間もなく、彼は巨碗を振り下ろした。
先程までの七撃を、あざ笑うかのような一撃。
轟音と振動が過ぎ去った後───其処には、山のような巨体さえ、何も残っていなかった。

94以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/01(土) 08:44:48 ID:riIsaGPo
ミスって二回送っちゃった

95以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/01(土) 11:30:20 ID:hY8tfiRU
>>87,>>89
ネタが割れると逆にうさんくさい、っていうか現実味がなさすぎて怖くない
上水に致死量の毒が入るレベルなら、大量発生系パニックホラーのほうが似合うと思う

どうせヤドクガエル使うなら
「現地の人々は、文字通り鏃に塗ったそうですよ?」
という台詞とコップを取り落とす描写に留めてはどうだろうか。

96以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/01(土) 16:09:02 ID:G7SV5DcA
>>95ありがとう!バイオテロとか書くときに参考にします!!
>>90家族の風景が連想できる素敵な文だと思います。最後に無残に散ってゆく機体の描写とかがあっても個人的には良いかなと思いました。
>>91爽やかで好きです。見ていてキュンとします。
地下道とか夜とか暗い表現が君に会えないときにあるので対照的に君がいる時は色のついた表現を入れてみたらどうでしょうか?
彼女らしい明るい空色のギターケースを背負って歩く後ろ姿とか

97以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/02(日) 00:07:51 ID:vjfwZ77w

耳障りな羽音が、俺の左右を行き来している。
遠ざかったかと思えば、蚊のように小さな虫が
耳から入り込んでくるような感覚がするほど近くまで寄ってくる。
しかし、その羽音はどう聞いても蚊のものではない。

俺は息を飲み、「二度目は気をつけたほうがいい」という医者の言葉を思い出す。
彼らは俺に対して、一撃必殺の武器を持っているのだ。

眼球だけを動かして、羽音の正体を探ってみたが、それはなかなか視界の中に入ってこない。
見えなくても正体はなんとなくわかるのだが、姿が見えない敵ほど恐ろしいものはない。

どちらにしろ、ここに留まるべきではない。
俺は彼を刺激しないように身を屈めて、脚をそっと動かし、その場からゆっくりと離れた。

離れてから先程まで立っていた場所に目を向けると、
思った通り、そこにはスズメバチがいた。
ここまで来れば一安心だろう、と一息吐いたところで、
俺は額にじっとりと汗をかいていることに気がついた。
怯えすぎだろ、と思わず自嘲せざるを得ない。

98以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/02(日) 00:09:36 ID:vjfwZ77w

スズメバチに背を向けて歩くのを再開しようとしたそのとき、耳元に羽音が現れた。
俺は驚いて、無造作に腕を振り回した。
我ながら間抜けな姿だろうと思うが、必死だった。

しかしその直後に、頭のてっぺんをトンカチで殴られたような激痛が、身体のどこかに走った。

刺された?

激痛に呼応して、今までどこかに身を潜めてじっとこの時を待っていたかのように、
吐き気と頭痛と腹痛が現れて、俺の身体をどこかに持って行こうとする。
俺は立っていられなくなり、湿った土の上に倒れこんだ。
水をかぶったみたいに全身が濡れている。
これほどにまで汗をかくのは最初で最後になるだろうな、と驚きながらも思った。

一分もすれば呼吸が苦しくなってくる。喉が締め付けられているようだ。
視界の縁から暗闇が押し寄せてくる。身体が硬くなってくる。

そうだ、エピペン。エピペンは?
こういう時のための薬があるじゃないか。

俺はバックパックの中に腕を突っ込んでエピペンを探した。
どこだ。注射器。どこなんだ。はやく。ない?
はやくしないと……。このままだと……

しかし、数分間探してもエピペンは出てこない。
まもなく、視界はほとんど暗闇で埋め尽くされた。
意識が朦朧とし、バックパックに突っ込んだ腕も凍ったように動かなくなった。
耳元では、勝ち誇ったような低い羽音が鳴り響いていた。

99以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/02(日) 00:54:19 ID:o6hjTewk
>>91
もしかして:





ひっ





だとしたら、よく仕込んだ

100以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/02(日) 01:40:54 ID:lesYwHGs
いや本人しか分からねえよ

101以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/03(月) 20:16:56 ID:609R3CSI
age

102以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/03(月) 21:28:03 ID:EdkWL7bA
しかし、みんな文才あるよな
いつの間にここ、こんなにレベルが高くなったんだろ

103以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 00:15:43 ID:TEOg7I4M
書けば書くほど上手くなっているんじゃないでしょうか
ではそろそろ次のお題いきますか?

104以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 00:46:57 ID:ln9gfSs.
お題は「意識の途絶える瞬間」なんてどうだろう

105以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 12:39:34 ID:/bhnsBCc
>>104
お題の出しかたとか前スレから色々学んでこような
お題変更↓

106以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 12:56:20 ID:P4UJappQ
別に>>104でもいいんじゃないかな…
ちょっと限定的なお題を各人がどう味付けを変えるのか、それも面白い気がするが

まあでもお題を例に倣ってシンプルにするなら、>>104を汲んで『気絶』でどうか

107以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 13:01:08 ID:aGmzWipU
>>104の何が悪いのか分からなかった…

108以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 17:08:16 ID:i8Kkd61U
俺も

109以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/07(金) 15:02:30 ID:T2XDVYsU
お題「プリクラ」とかどう?
ちょっと皆さんがどういうものを書くのか非常に興味がある

110以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/07(金) 15:16:33 ID:3WNNW7qY
>>109地味に面白そう
プリクラとかしたことないから自分は書けんが

111以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/07(金) 15:36:48 ID:odZRcAYk
プリクラ…だと?
今までにない感じだな

112以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/07(金) 17:16:40 ID:uT/M0ugs
 昔、彼女はこんな事を言っていた。

「撮るのが楽しいんじゃないんだから」

 じゃあ何が楽しいんだよ、と僕がやや呆れ顔で尋ねると彼女は「全部」といつも答えた。答えになんかなってないし、彼女自身答えを探す気もなさそうだった。「ほら、行こ」と僕の腕を引っ張って筐体の中へと結局連れ込む。僕は毎度観念せざるを得ない。

 はっきり言ってしまえば、僕はプリクラなんて撮りたくはなかった。なんだか気恥ずかしいし、それに写真に撮られるのは好きじゃなかった。僕はあまり顔立ちがいい方じゃないから、出来上がったシールを見て後悔する事も多いし、第一、それを友達に見せる様な趣味は持っていない。結局、机の引き出しの奥にしまいこむだけで、こんなのは金と時間の無駄遣いだと本当に思う。

 それなのに、デートに出掛ける度に彼女は僕と一緒に写真を撮りたがるし、プリクラを発見すれば必ず僕を誘って連れ込む。撮ったところで、僕は大体いつも興味のなさそうな顔か仏頂面をしているだけなのに。

「はい、これ。半分こ」

 手慣れた感じでハサミを使って切り分け、彼女はその面白くもなさそうな僕の顔を嬉しそうにバッグへとしまう。別にのろけてる訳じゃなくて、例えば僕以外の女友達と撮ってもそうなのだから、単純に彼女はプリクラが好きなだけだ。そして、単純に僕はプリクラが好きじゃないってだけで、彼女といるそれ以外の時間は僕だってきっと仏頂面以外の顔をしているだろうと思う。

 何がそんなに楽しいんだか。

 僕には一生理解出来ないだろうなって、そう思っていた。

 彼女が交通事故で亡くなるまでは。

 葬式の時、彼女のお母さんが僕にプリクラ手帳を渡してくれた。それは僕と撮ったプリクラだけを貼り付けてある専用手帳だった。中を開いてみると、一ページごとに貼られてるのはたった一枚ずつだけで、その一枚一枚にはその時のデートの想い出や感想が周りにぎっしりと書き込まれていた。何枚も、何枚も。これまで撮った写真やプリクラ全部に。

「撮るのが楽しいんじゃないんだから」

 僕はそれを見て、気が付くとその場に泣き崩れていた。どうしようもなく涙が止まらなかった。何で僕は仏頂面ばかりして撮っていたんだろうと、本当に後悔した。彼女はいつもこんなに笑っていたのに。

 だから、あれから十年以上経った今でも、僕は写真を撮る時は出来るだけ笑顔で写る様にしている。あの手帳も僕の宝物だ。嫁に見つかったらどうしようかと冷や冷やしてはいるが、それでもこれだけは何があっても捨てないだろう。

 最近は幼い娘を連れてよくプリクラを撮りに行っている。娘はそれを家中べたべた貼り付けて喜んでいるが、僕は何となくそれを怒れない。嫁にはその事で、きちんと叱ってよ、と怒られてはいるけれど、やっぱりそれでも僕は何となく怒れないんだった。

113以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/07(金) 17:17:50 ID:uT/M0ugs
こんな感じかな
投下ついでに、お気に入りのに感想を

>>90
毛色が違って新鮮だった
父上の下りが特に好きだな、妙に共感してしまう
最後にどうなったのか、そこをあえて書かないのもいいものです。良きかな、良きかな

>>91
縦読みを狙ってやったならすごいし、狙ってなかったらもっとすごい
ふとしたきっかけからなんか気になる娘っているよね、ほんわかしたよ

>>92
一撃必殺のお題通り。直球勝負だね
癖のある書き方なんだけど、読みやすかったのが見事
最後の一撃必殺は、不覚にも格好良いと思ってしまった。強い者をとことん描写してそれを最後に一発でひっくり返すって手法も王道だけど、それが上手く書けてるから、本当にお手本にしたいぐらいの正統派

114以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/07(金) 17:28:09 ID:MTidTOXo
>>112
前半のあるあるが後半の切ない感じを引き立てていて好き

115以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/07(金) 20:34:57 ID:yfzxjR4s
十二月の終わり頃。ひどく退屈な終業式を終え、今はまさに冬休み。

ひどく退屈な終業式を終えて迎えた冬休みは───どういうわけか、同じように退屈で。

友達が居ないという訳ではない。むしろ多い方だと、自覚している。
ならば遊べばいいではないかと思うだろう──実際、自分でも思った──が、どういうわけかそんな気力が出なかった。
十一月の頃はやれカラオケだ、やれゲーセンだと──大した予定も立てずに──意気込んでいた気もするが、今の私は対照的に、こたつの中でひどく無気力な生活を送っていた。

最近、隣の──いや、上下左右、全ての部屋が騒がしい。
カレンダーを見やれば、日にちは二九を指す。
そこで、私は漸く、世間が、年末年始の行事に右往左往する───所謂師走に突入していることを知る。

そんな師走の出来事だ。

物音の中でカレンダーの数字から、今は師走である事を知った私は───ふと、自分も師走の時期に倣おうと考えた。

理由は、よくわからない。敢えて言うならば───気分、だろうか。

ともあれ決まれば話は早い。隣の部屋──仲のいい喧嘩の絶えない家庭であったことを記憶している──から聞こえてくる物音は、おそらく大掃除によるものだろう。

ならば私も同じ事をしてみよう。

今は家族が出払っているので大胆には行えないが、とにかく──安直な大衆心理的発想で──大掃除をしてみよう。そう考えたわけだ。



116以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/07(金) 21:21:53 ID:yfzxjR4s
どうやら私の言う大掃除とは世間一般で言う普通の掃除に相当するらしい。

先ず、掃除機をかける。こたつを端に追いやり、その下まで。
しかしそれ以上はない。ただそれだけだ。
ホコリを吸い取ったのは自らの手の届く範囲だけで、部屋の隅すら手付かずだ。

次に、貯まった紙を片付けようと考える。

早速、様々な紙を選別する。
と言っても、大抵は要らないものだが。
処分されないものと言えば、くしゃくしゃになった電話帳と、自分が知らない内容の物だ。

しかし紙を選別していると、ついでに──と言うにはあまりに多いが──そうでない物までボロボロと。
淡い期待の成れの果て、何時しか無くした相棒やら───本当に、色々と。

そして大抵は処分。
必要性が完全に認められた物以外は大抵の場合必要のない物だ。
これは、私が十五余りの──まだ駆け出しと言って差し支えのない──人生で学んだ教訓の一つだ。

そんな折、一際目に留まる物があった。

117以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/07(金) 21:30:44 ID:yfzxjR4s
プリクラ。
おそらくは、──今友人と遊びほうけているであろう──姉の持ち物だろう。十枚程同じ画像が連なっている。内容は───背景がキラキラしており、極彩色の字で彩られた───成る程、プリクラだ。これだけなら取るに足らない事なのであろうが、一つだけ、鼻につく事がある。人間の顔までもが加工されている事だ。
写真とは、いわば過去である。
プリクラもその一種であるからして───つまりは持ち主の過去なのであろう。
現在とは、過去の積み重ねである。
当然だが、重要なことだ。つまり今現在ここにいる自分とは、過去があってこそ存在するものだ。

これを、プリクラに当てはめる。するとつまり、自分の写真を──つまりは過去を──加工してしまうプリクラとは、過去を偽ることになるのではないのかと。

───気に入らない。
特に理由はないが、気に入らない。
そこで、ふと、とある脳科学者の話を思い出した。
プリクラを好むのは主に女性である。これは間違いない。そして女性とは、自らの脳の中で、記憶を自分の都合のいい物に改竄してしまうのだという。
───成る程、そう考えればプリクラとは、女性のそんな習性を表しているのかも知れない。自分の記憶を改竄するように、自分の写真を───過去を改竄してしまうのだ。

まぁ、納得したところで気に入らないものは気に入らない。取り敢えずこのプリクラは自分の物ではないから、そこに置いておくとしよう。

そして再び始めた分別作業の中で、また見つけた物があった。

自由帳。
おそらくは、一昨年あたりの物だろうか。
───暫し見つめる。

捨てる。中身は見ない。
これも、あるいは過去に分類すべき物なのだろう。それを捨てる。

男は過去を改竄しない。
その代わり、忘れる。

118以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/08(土) 15:58:45 ID:bhk1UBWQ
もう次のお題に行きましょう

>>116は京極さんみたいですね

119以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/08(土) 17:35:32 ID:Nca950dc
履歴書に貼られるべきは証明写真である。
中高生が戯れに撮るプリクラをその欄で見つけたときは、一瞬眩暈がした。

「お前はどこに就職するつもりだ?」

髪の毛を指で弄ぶ生徒に、不安と呆れを混ぜ込んだ視線を向ける。

「先生だって知ってるくせに。高校女子からの熱烈アピールですよ」

しかし生徒は意に介さず。悪びれることもなく飄々として
こう言ってのけたものだから、さすがに顔を手で覆って天を仰いだ。
現実逃避したくなる場面に出くわしても、『一に忍耐、二に努力』を掛け声に
乗り越えてきた。が、さすがにこの問題だけは尻尾を巻いて逃げだしたくなる。

卒業後の進路に就職を選んだ生徒は、つい数日前にそれに関する講義を受けたばかりである。
生徒は特段に問題児ということはない。むしろ品行方正、成績優秀、学業良好の彼女が
就職に進むクラスを選択したときは、進学を信じていた職員室内が騒然としたくらいだった。

「先生はさ。私と特別手当て、どっちが好き?」

ひとつ机を挟んで座る彼女が身を乗り出して訊ねてきた。
確かに進学、就職をした生徒数に応じて特別な収入はあるが、
それを目的として長年面倒を見てきたつもりはない。

何も言わずに首を横に振ると、女生徒が履歴書に手を伸ばした。
履歴書の印字に取り消し線が引かれ、その下で『婚姻届』と正される。
他にも履歴を連ねる欄を縦に割って改変したりと手が加わっていき、
あっという間に履歴書の面影がなくなってしまった。
最後に紙の右下の隅に小さく丸文字で、「ご両親は説得済みですよ」の注訳が付け加えられる。
彼女が差し出してきた我が家の印鑑を受け取って押した判は、諦めよりもふんぎりに近かった。

120以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/08(土) 17:48:46 ID:Nca950dc
変更前に見苦しいすべり込み。

>>112
すっごいいい話で好き。情景が想像しやすかった分、その落差が心にきた。
言葉の前後を入れ替えたりすると、もうちょい読みやすくできそうで惜しいなってのが素人の感想。
でも好きよ。

>>115
全ダッシュ多すぎ。そしてお話が長すぎやしないか。
同じ表現が被ってたり、本筋に関係ない説明部分があったりで
けっこう省ける箇所があるから、全体の容量をもう少し減らせそうな気がする。
終わり方が随分すっきりしていてかっこいい。

お題変更なら↓

121以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/08(土) 18:43:04 ID:d.AsCtoo
>>112
見事、1レスで目を潤ませるとは。前に感想を書いてる人も言っている事だけど、あまりに何気ない過去の日常から突き落とされる感が堪らなかった。
しかもその悲しい出来事もまた過去の事で、後悔しつつも幸せな家庭を築いたところまで描かれてる。
手帳を捨てる事ができない、娘を怒る事ができない主人公の気持ちにも共感させられるものがあるし、大袈裟かもしれないけど短編一本読んだくらいの余韻があった。

>>116
ダッシュが多過ぎる……のは、おそらくわざとなんだろう。目をひくための仕掛けだと思えばある意味成功してるかもしれない。
このスレとしては非常に長いという事も、スパッとした終わり方を際立たせるための策略と思えた。
あとはダッシュで囲む内容、あの手法を使うならダッシュ内は『無くても成り立つが、より装飾するため』の文であるべきかと思う。何箇所か無くすと前後の文の繋がりに違和感が生まれる部分があったのが惜しい。

>>119
プリクラという決して証明写真には使えないものを貼っている時点で、その履歴書を真面目に持ってきたのでは無い事を予感させ、その通りに履歴書は何の効力ももたない婚姻届っぽいものに書き換えられる。最後の生徒のドヤ顔が目に浮かんでニヤけた。
本物の婚姻届に判を押すよりは抵抗が無いであろうただの落書き、でもそれに押印するのは確かに意思表示であって、教師の内心には葛藤と共に噛み殺した喜びがあるんだろう…と考えてまたニヤついた。


みんなすごいよなー

122以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/08(土) 18:43:41 ID:d.AsCtoo
おっと、お題は更に↓に頼む

123以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/08(土) 18:46:33 ID:UwjJJogA
頬ずり

124以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/08(土) 19:47:18 ID:JHyoLgZ6
24時間で次のお題かよ!
プリクラで書いてたのに!

125以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/08(土) 20:00:38 ID:ZsEwsTns
最近お題変えるの早いからなあ……
一週間ぐらいは期間欲しいよね
頬ずりはもう少し待って、ある程度出きったところで、変えてくれないか

126以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/08(土) 20:22:34 ID:TNHhSaMk
じゃあそうしましょうか

127以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/08(土) 20:31:51 ID:a3yfJCmg
あぶねえ、頬ずりを投下するとこだった
もう書いちゃったから、できるだけ次のお題は頬ずりキープで頼む

128以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/09(日) 00:18:56 ID:dMy6BTMg

私は悴んだ手に息を吹きかける。束の間温かくなったがすぐに熱は外気に奪われてしまった。
暦ではもう春のはずなのにどうしてこんなにも寒いのだろう。近年騒がれている異常気象の影響だろうか。そういえば今年は桜の開花が遅れると朝のニュースで言っていた。地球は温暖化が今も着々と進行しているはずなのに例年より冬が寒いのはどんな理屈なのだろう。
冷たい北風が私の長い前髪を弄ぶ。視界の中から久しぶりに黒い色が消えた。こんな景色はいつぶりだろう。前髪を伸ばし出す前だから三年ぶり。中学二年以来だろうか。
唐突に背筋にムカデのような虫が這い上がってくるような嫌な感じがした。
私はマフラーを巻き直してため息をつく。今日は本当に寒い。

根っからのインドアの私は外出が嫌いだ。友人がいないわけではないけれど人と関わるのも特筆するほど好きではない。休日は大抵適温にした自室で惰眠を貪っている。
ではなぜ今日は外出しているのか。その理由は一つ。家のガス系統がダウンしたため風呂が使えないからだ。

今朝は珍しく早めに起床した。朝食を食べている最中にデジタル時計に目を向けると六時前を表示していたのを覚えている。
そんな朝早くに私は這いつくばって探し物をしていた。
「どこに置いたっけ……」
予兆もなしに積み上げられた文庫本が頭上に倒れてきた。私はそれを手で払いのける。本の山が崩れてきたのは二回目だ。
整理されているとは言い難い私の部屋は毎日何かが無くなる。そして今日はエアコンのリモコンがどうしても見つからなかった。
しばらくは部屋中を捜索していたのだが寒さに耐えきれなくなった私はガスのストーブを物置から引っ張り出して代用することにした。
どうせ動かないという予想に反してブォンという鈍い音を鳴らした後、埃まみれのストーブは実に効率的良く部屋を暖めていった。ブランクを感じさせない見事な仕事ぶりであった。温風が足を包み、体の芯を赤く染めていく。
なんて気持ちが良いのだろう。私は堪らずお気に入りのブランケットを羽織って丸まった。至福の一時だった。

だが私がこの選択を後悔するのにそう時間はかからなかった。

目を覚ましたのは体が冷えたからだ。意識が途切れて何が起こったのかはすぐに察せた。
鮮やかに使命をこなしていたストーブが切れている。何度電源を押しても反応がない。カチッカチッと空しい音が響くだけだ。どうやら元栓からしまっているらしい。
すぐさま私はガス会社からきた最新の書類を探し、目を通す。役に立ちそうなことは何も書かれていない。
慌てて私はガス会社に電話する。繋がらない。
嘘だろう。私の目の前が真っ暗になる。手の中から書類が滑り床に落ちた。中からアンケート用紙が飛び出している。
私の家はオール電化ではない。風呂だけはガスだ。
一日位ならまぁいいやで済ましてしまう私だが昨晩は帰ってきてすぐに疲れて寝てしまった。さすがに二日連続は気持ち悪い。

こうして私は近場の銭湯に行くため外出することになったのだ。

129以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/09(日) 00:26:23 ID:dMy6BTMg

「ここかぁ」
飴色の板を使った小綺麗な屋根が印象的な銭湯。懐石料理の店と言っても通用しそうだ。私は大きな暖簾をくぐり室内に入った。
そこはなんというか、私の期待を大きく裏切った銭湯だった。外観こそ純和風だったが中には温泉だけでなくロココ調の浴槽やワイン風呂、ジャグジーなども設置されていた。フードコート、ゲームセンターまであった。
こういうのはスーパー銭湯というのだろうか。客層も若い。部活帰りの女学生らしき姿もチラホラあった。
来る場所を間違えたかもしれない。
私は髪の毛をあげ、派手なロココ調の浴槽に浸かりながら考える。初見は面食らってしまったデザインだが実際に入浴してみると滑らかな大理石が心地よかった。
「学校の人に会いたくないなぁ…」
ほんのり上気した頬を撫でながら呟く。彼らが嫌いなわけではないけれど私は面倒に感じてしまうのだ。

しかし、ついていない日というものはとことんついていないもので私は同級生と出会ってしまった。

私がジャグジーをたっぷり堪能し、さぁ上がろうとした時だった。私に向かって語りかける少女がいた。
「あれ?江橋ちゃん?」
一瞬、彼女が何を言っているか分からなかった。
そしてしばらくして気がつく。江橋は私の苗字だ。頭の中が真っ白になった。
手のひらで額を隠す。
「うん、そうだよ。」
「やっぱり!?あーびっくりした。いつもと印象違うから別人かと思ったよ」
あははと私は愛想笑いを返す。
彼女は私に入学式の時、話しかけてきた奇特な子だ。運動部に所属して溌剌としていて人気者。そそっかしいがどこか憎みきれない。
私とは真逆の子だ。
「今から出るの?」
「うん、まぁ…」
「私もなんだ!!一緒に帰ろうよ」
勢いに気押され、私は頷いた。

130以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/09(日) 00:32:54 ID:dMy6BTMg

「ねぇ、江橋ちゃんはどうして前髪をそんなに長く伸ばしてるの?」
着替え終わり、私を待つ彼女が枝毛をいじりながら聞いてきた。私は慎重に言葉を選ぶ。
「昔、転んだ怪我がおでこにあるから。」
私は嘘をついた。
「えっ?そんな理由?」
「あと、顔も大して可愛くないから」
「そんなことないって!!外人さんみたいで綺麗だよ!!」
「それはどうも…」
私の適当な返事に彼女は満足しなかったようだ。足音を響かせて接近してくる。彼女が足をつけた床に白い跡がついた。
「ちょっと動かないでね」
彼女は一方的に告げると私の髪を引っ張り始めた。背筋がぞわっと粟立つ。私は反射的に目を瞑った。
「はい、できた!!みてみて?なかなか上手にできたよ!」
「何が…?」
恐る恐る目を開けてみると視界がワントーン明るかった。
前髪がない?彼女が手鏡を取り出して私に向けた。
「こんな感じでどうかな?」
私の長くて鬱陶しい前髪は見事に編み込まれていた。ほつれも、緩みもない。傷痕も見えない。こんな技術を彼女はどこで手にいれたのだろうか。
「せっかく可愛いんだから勿体ないよ」
彼女は微笑んだ。やはり変な人だと私は思った。
「ねぇねぇ!!ここってゲームセンターあったよね!!せっかくだしプリクラ撮ろうよ!!」
彼女はまたもや私を半ば強引に連れていった。

131以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/09(日) 00:34:30 ID:dMy6BTMg


私は今、彼女と別れて一人で歩いている。街灯がボンヤリと点灯し始め、私を照らしている。私もまた街灯のようにしてボンヤリと手元のプリクラを眺めている。
ぎこちなく笑う私と笑顔に苦戦する私を見て笑う彼女。
北風が吹くが不思議と昼間より寒くない。気温は下がっているはずなのにどうしてだろうか。前髪が編み込まれてとばないせいだろうか。温かい湯船に浸かったせいだろうか。
きっとそれだけではない。私はプリクラを握りしめる。
私の世界にはまだまだ謎がある。例えば地球温暖化が進行しているのに今年の冬は寒い理由とか。
もちろん、学者はその謎をといているのだろう。しかし私は何故か知りたいとは思わなかった。この世界の誰かは知っているけれど、私は知らないこと。それが愛おしい。
私が一人暮らしなのには理由がある。髪の毛を伸ばしだした理由も他にちゃんとある。けれどそれを誰かに教えるつもりはない。彼女にもまだ教えるつもりはない。

プリクラの台紙を作るべきだ。直感が告げていた。その台紙を笑顔のプリクラが埋める頃、何かが変わる。
ガスのストーブやエアコンや湯船がなくたって温かくなるだろう。
私はそんな気がした。

132以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/09(日) 00:55:57 ID:dMy6BTMg

長くてすいませんという謝罪と感想を

>>115不思議な文の書き方ですね。私には絶対に考えつかない方法です。長編小説ではないから使える手法ですね。ただ、少しダッシュが多い気がしました。
文章の方はさっぱりとしていて好きです。

>>119先生の気持ちと女生徒の言動が目に浮かぶようで面白かったです。
文章もしっかりしていてすぐに読めました。ユーモアを書いてる時の宮部さんっぽいなと若干感じたり

133以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/09(日) 02:45:15 ID:Jxzt/R16
>>128
謝られても許さない。長い。
長いの嫌いだから、「お前何様?」の文句が出る覚悟で重箱の隅をつついてほじくる。

結末部分の文末に使ってる『だろう』の連続は意味があると思うけど、序盤での頻繁さは削れるはず。
『悴んだ』や『束の間』はルビがあればいいけども、それがない場合は平仮名に崩すと読みやすくなると思う。
個人差だろうけど漢字にできるものを全て変換すると文章が凝り固まって読む気が失せる。
状況によっては漢字を減らした文章を準備したほうが流れがよくなるし、 なによりも目に優しくなる。
不要な描写も多い気がするからさっくりと消しちゃってもいい。むしろ消そう。消せ。いらん。
そうすると見えにくくしてる前髪の「のれん」が短くなってすっきりする。
『体の芯を赤く染めていく。』等々、表現にこだわりがあるかもしれないけど、なんか違う。
体内は見えないから視覚的な表現は似合わない。というか体の芯が赤くなったら火傷。現実的にもヤバい。
そして無理矢理突っ込んだかのような突然のプリクラに笑った。その強引な絡め方は逆に邪魔だろと。
語り手が私なのは分かってるから文中の「私」が減らせそう。鬱陶しいから思い切って減らせ。
文才に関係ないけど、感嘆符と疑問符の後ろは一文字分の空白を置いてくれると助かる。

全体としてはかなり長いけど一文が短くて読みやすい。文章の書き方は好き。
このスレだから不満だけど、別の場所だったら面白く読めたと思う。というか面白い。内容は。
次から晒すのは物語じゃなくて文才を。

134以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/09(日) 07:36:45 ID:IjQCpTEc
まあ、短くまとめるのも文才だよな
限られた文字数でどれだけ表現出来るかってのも才能だとは思うし、それが出来るようになると長い文章を書く時にも文が引き締まって役立つはず

個人的には文章は気にせず読めたな。上手いと思うよ。
言うほど長いとは思わなかったけど、もう少し短く出来るとも思った

135以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/09(日) 13:38:29 ID:/z8hyqVA
前スレで1レスにするとか話も出てたしな。
物語ではなくて表現が見たいって意見もあったし。

136以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/13(木) 06:42:16 ID:lTIJePpM
age

137以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/13(木) 10:27:08 ID:RY4evkPM
いつも通りの退屈な講義を聞き流している。忘れていた事を思い出すようにして教授がホワイトボードに書き出す単語。それを時々写すだけの退屈な時間。暇なのか癖なのかは知らないが、教室内の誰かがノートをペンでトットッと叩く音が耳に残る。リズミカルに、だが不規則に鳴らされるそれは何かの催促のようにも聞こえた。それに促されるようにしてわざと音を立てて参考書を捲る。ペラララ、ペラ。ペラララ、ペラ。いつも必ず途中で一度止まるのはそこに異物の重みがあるからだ。
「はぁ…」
気が重い。だが見ないという選択肢はないのだろう。こういう事は本来、一度気が付くと放っておけるような物ではないのだから。僅かな躊躇を抑え込んで問題のページを開く。
―ああもう。
そこにはプリクラが貼られている。写っているのは俺ともう一人。照れながらもピースをカメラに突き付けた女の姿。このプリクラの持ち主だったはずの女。
悪戯の張本人を探し横の席を見る。いつもこの時間は俺の隣で寝ているのだが、今日は寝ていない。いや、今日も、か。ここ数日間で別人のように変わってしまった女だがその理由は分かっている。このプリクラも大分前に貼ったものを今になってようやく気付いただけのこと。指でそっと撫でると、隅が捲れることに気がついた。台紙から剥がすときに折ったのか、3ミリほどがドッグイヤーのようになってしまっている。
ちょうどいい摘まみだ。外してしまおう。勝手に貼られたのだから勝手に捨てても罪はないだろう。誰にも問われる事のない責任に免罪符を貼り付けて、ゆっくりとプリクラを剥がした。
「…剥がすんじゃ、無かった」
通路を挟んだ席の学生が、突然の一人言にこちらを向く。目が合うと、気まずそうな表情で視線を落とした。仕方の無いことだ。いい年をしていきなり一人言を呟き、泣き出した男をみたら誰だってそうするだろう。
プリクラの裏には消えかけたような筆跡。強がりの笑顔の裏に残された『ごめん。』の文字。
ああ、なんだ。あいつはちゃんと謝っていたのか。意固地になって責め立て、喧嘩別れをしてしまった女。今はもう隣にいない、冷たい目線しかよこさなくなった女。あまりに素直じゃない、こんなやり方しか知らない不器用な女。
いや、違う。不器用なのは自分だ。いつだって催促されるまでは行動が出来ない。後ろ向きな発言で行動を避けてばかりいる自分。
トットットッ。音が聞こえる。先程より早く、急かすように打ち鳴らされる。それに促され、仕方なく教室をでた。数人の視線を背中に感じるが、気にせずに進む。
トットットットットットッ。
段々と早くなる音に責められながら校舎を歩き回る。涙を流しながら彷徨う姿はどれだけ滑稽だろうか。ほんの少しの後悔が漂い始めた頃、ようやく見つけた。
トクン。
一際大きな音を立てると、催促の音は鎮まっていった。
『―――。』
一言だけ伝えると、女は泣きそうな眼を歪めて、紅潮した笑顔でピースを突き付けてきた。
トットットットットッ。また、せわしない催促の音が聞こえる。促され、女を抱き締める。
ああ。きっともう大丈夫なんだろう。いつだって正しく催促してくれるこの鼓動に身を任せていれば、僕たちは素直になれるのだろうから。

138以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/13(木) 10:33:57 ID:RY4evkPM
初めてやってみたが、お題というわりには「プリクラ」の印象が弱かったかなと反省はしている。

139以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/13(木) 10:39:29 ID:RY4evkPM
連投してすまんが見直したら最悪な事に気付いた。
一人称が俺→僕になってるわ。
最初の「俺」を「自分」に置換して見てほしい…いや、やっぱり出直してくるorz

140以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/13(木) 16:02:38 ID:KcXSJHK6
>>137
一人称のケアレスミスは特に気ならず
男女互いに恋愛に不得手な雰囲気が好き。
こういう体が痒くなるほどに純な話しを持ってこられると発狂するわ。

一番気になったのは
>「…剥がすんじゃ、無かった」
ってあるけども、その後悔のしかたが後の展開と反するものに感じた。
「もっと早くに剥がしておけばよかった」
とかの前向きな後悔の方がしっくりくるんじゃね?

全体的に『副題:不器用』みたいな感じで面白かったから次のお題で出直してこい

141以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/14(金) 21:19:31 ID:RMwqI0xQ
>>137だけど評価ありがとう。うん、やっぱそう思うよなー。

ほんとは「後ろ向きな意見ばっか言い訳にして、面倒くさがりで、なんもしてこなかったダメ男」をもっと表現できればよかった。
見なければよかった、は 「知らなければこんな罪悪感を感じたりしないでよかったのに」ってつもりだった。
でも催促されたから「仕方なく」を「言い訳」に女に復縁を願いにいくって感じが出したかった。
女とやり直してようやくちょっと変われた、みたいな。
やっぱり短くまとめようとすると、大事なところまで削れがちだわ…。
どうやって表現するか難しいと再確認できたよ。
心情描写のあたりに集中してもう少しがんばる。ありがとう。
他にも気になったとこあったら指摘してくれ。次回は注意する。

次のお題いつからだっけ?

142以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/15(土) 00:19:08 ID:rnzVa32w
一週間たつし、そろそろお題を次のにかえない?
>>123 でいいのかな

143以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/15(土) 00:20:57 ID:rnzVa32w
手が滑って途中のままあげちゃったわ。ごめん

144以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/15(土) 11:52:38 ID:dfBNe78A
 己より小さな体を抱きよせると、彼女は体を強ばらせながら俺の肩に顔を乗せる。
 ヒクつく頬のヒゲがくすぐったい。栗毛を撫でればくすぐったいのか彼女は俺の顎したにもぐり込む。
 抱っこが嫌いな彼女も、俺が抱く時は大人しい。本当は怖いのかもしれない。
 チョンチョンと俺の頬を彼女が頬をつける。愛しい彼女の小さな頬はひんやりとした毛に覆われていたが、とても暖かった。

145以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/15(土) 21:54:24 ID:Vr6TARCI
出だしの己の威力がすごいけども他はまったりとしてて雰囲気好き
彼女とのほのぼのいちゃいちゃを行数が許す限り見たいと思った
俺も髭のある小動物チックな彼女が欲しい

146以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/15(土) 22:51:39 ID:px39WxlA
>>144
おぅ、シンプルでいいね。ザラッとした舐めキッスに発展しそうな頬ずりだわ
確かに最初の『己』という表現はちょっと浮いてる気もするが、彼女側の視点で描かれた某文豪の作品出だしの『吾輩』を意識してる…とは深読みしすぎか

147以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/15(土) 22:58:00 ID:px39WxlA
親が我が子に頬ずりをする。その温もりを、絆を確かめるように。子がある程度の歳にもなれば、父親の頬ずりは「髭が痛い」だとか文句を言われる対象にさえなるが、それでも頬ずりをできる親子の関係は決して希薄なものではない筈だ。

血の繋がりはなくとも、愛すべき家族の一員たるペットに頬ずりをする事もあるだろう。多くの種では人のそれとは違う、ふさふさとした毛に覆われた彼らの頬。しかしそこで確かめられるのは、やはり互いの心の絆に違いない。

有機質か無機質かに関わらず、何か思い入れのある物に頬ずりをする事もあるかもしれない。例えば丹精込めて作った野菜や、ずっと憧れ続けた楽器や車。冷たく硬い感触の素材で出来ていようと頬を寄せてしまうのも頷ける。

若き恋人達が、結ばれて家族となったばかりの二人が、それぞれの居場所を確認するように頬を併せるのは、当たり前を過ぎて本能とも思える事だ。長く連れ添った熟年の夫婦がそうしていても、微笑ましいばかりで何ら不自然さなど感じない。

頬に覚える感触や温度がどうであろうとも、その行為により心に伝い湧き上がるのは愛しさや喜びといった、優しい感情。
頬ずりとは、幸福や充足感を得るためにとる仕草である筈だ。

だから今、私の頬に触れているごつごつとした皺だらけの冷たい肌から届く感情も、悲しみでは無いと信じたい。


「ありがとう」

母が私にくれた、最後の言葉。


絞り出した掠れ声は、とてもそれを唱える唇が私の耳元にあるとは思えないほど小さく弱々しいものだった。

心拍の途絶を告げる機械音が部屋に響き、付き添っていた医師が母の手首に指を当てる。

私の目から零れ落ちた温かい雫が、互いの頬の隙間を濡らしてゆく。

「ありがとう、おふくろ、ありがとう」

幼な子が母を真似るように、私はただ彼女が遺した言葉を繰り返した。

冷たくてごつごつした感触の、優しい頬ずりと共に。

148以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/15(土) 23:53:18 ID:Vr6TARCI
>>147
珍しく随想かなと思ったらいきなり死別してた
序盤が父さんで後半がママンってのがしっくりこなくてもったいない
どっちかのエピソードに偏ってくれるともっと面白くなったんじゃないかと

頬ずりの持つ性質を語るのは面白い発想でいいなって思った

149147:2014/03/16(日) 00:10:03 ID:WBySr/l.
>>148
批評ありがとう
言われてその通りだと感じて悔やんだ、糧にする

150以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/16(日) 00:25:38 ID:TsX4oYdc
我が家には賢い妹がいる。なんでもしたがるし、わりとなんでもできた。
兄妹一緒にお母さんから教わった一度きりのカレー作りで、材料と計量を
まるっと暗記してしまったのはまだまだ序の口。

料理が得意で家庭的なところが長所、ということではなく、勉強もそれなりにこなせた。
小学生の頃なんか学年が違うのに、担任から、「お前の妹は――」と
耳にたこができるくらい何度も聞かされたのをよく覚えている。

それでも運動がからっきしでいてくれれば、まだ兄である僕の立場があった。
昔はあった。今はない。情けない。でも憎めない。それが妹なのだ。
三点倒立を練習する横で華麗に逆立ちを決められてしまえば、もう認めざるをえなかった。

なんでもできるのが妹。なんでもできないといけないのが妹。それが皆にとっての妹。
本質満点から少し下がってしまった成績表を両親が憂うと、妹は僕を羨ましそうに見つめた。
僕は順調に成績を伸ばしていける余地があったから褒められる。その差が羨ましかったようだ。

「お兄ちゃんと一緒がよかったから真似してきたのに、今はなんだかとってもつまんない」

訊ねた僕の部屋で珍しく愚痴をこぼしたのは、妹が県内の有名進学校の高校を受験した晩のことだった。
眉を下げて寂しげにする妹を知っているのは僕だけであり、妹も僕にしかその表情を見せなかった。
隣に腰を降ろすと、肩にこつんと頭をぶつける。どちらからともなく手を重ねて握り合う。
妹の喜びは称賛だけではない。その感情は声には出さなくてもきちんと感じとれた。

「I want you to rub me.」

おねだりに応えて朱色に照った頬に手を添える。手のひらに口づけをされたのは、僕にすきがあったから。

「I rub you.」

残念ながら妹に愛はささやけない。愛おしいとだけ伝えると、それでも満足そうに微笑んだ。

151以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/16(日) 01:02:40 ID:WBySr/l.
>>150
言葉遊びは面白い。妹が言ったのは本当にrubだったか、兄がそうすり替えて捉えただけか、兄はrubに何も忍ばせなかったか…どうとも取れる憎い作りだと思った。

ただ、お題の頬ずりに対して描写は掌で頬に触れるのみに留まっている点と、『妹の喜びは称賛だけではない』の一文が気になった。

これだけ優秀で、僅かな成績の低迷でも親に渋い顔をされる妹にとって、称賛は喜びというより退屈で鬱陶しい当たり前のものになっているのでは…と

俺がそう思ったというだけだけど

152以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/16(日) 07:04:07 ID:rY7AmQRs
 突然の事で誠に申し訳ありませんが、私は今、複数名の宇宙人と同棲しています。

 わかります。お気持ちはわかります。まだ年端も行かない小娘でありながらこんなふしだらな行いをしている私に対して、きっと貞淑で良識的な皆様方はさぞかし軽蔑の眼差しを向けられる事でしょう。

 ですが、私と彼らとは一緒に住んでいるというだけで、非常にプラトニックなお付き合いをさせて頂いておりますし、お互い、一線を越える様な行為は一切致しておりません。また、もしその様な事になった場合は責任を取ると彼らは私に明言しております。

 いえ、明言というのは正確には正しくありませんが、とにかくそうはっきりと私に伝えております。というのも、彼らと私との意志疎通は全て体を触れ合わせる事によって行われておりますので、どうしても言葉にはならないのです。

 なので、それを証拠として提出する事は出来ませんが、しかし、それに一体何の問題があると言うのでしょうか。私と彼らはお互いに愛し合っておりますし、それはお互いによく伝わっております。愛さえあれば、などと陳腐な台詞を言うつもりはいささかもありませんが、少なくとも私と彼らとの同棲を淫らで破廉恥な行為などと何も知らない方から決めつけられたくはないのです。

 彼らは皆、私を抱き締めたり、私の頭を優しく撫でたり、私に頬ずりをして永遠に変わらぬ愛を誓ってくれておりますし、私も彼らの側で一生を添い遂げたいと切に願っております。愛に国境はないとよく申しますが、ならば種族の垣根を飛び越えても良いのではないかと私は強く思っているのです。

 もちろん、私の言葉は彼らには理解出来ませんし、私も彼らの言葉を理解する事は出来ません。ですが、愛や慈しみ、優しさなどというものは、言葉によって語るのではなく行動によって語るものではないでしょうか? 少なくとも、私はそう思うのです。万の言葉を用いて愛の言葉を囁かれるよりも、たった一回の抱擁や頬ずりの方が遥かに気持ちが伝わるのではないでしょうか。

 私は今、彼らの側で一生を添い遂げたいと切に願っております。ここまで聞いた上で、それでもはしたない女だと蔑まれるのならば私はそれでも結構です。何を言われようとも、今の私の気持ちは一切変わる事はございませんので。

 もちろん、こんな重大な事を今まで黙っていた私を皆様方が責めるのは当然の事かとも思いますし、この様に身勝手で一方的なメッセージを送るだけで何もかもが済まされるとは私も思ってはおりません。ですが、何も伝えないよりは、わずかながらでも伝えた方が良いのではないかと愚考し、ここにこうして書き込みする次第でございます。

 この星にいる猫族を代表し、皆様方にお伝え申し上げます。

 愛しております。

 名無しの猫より。


 追伸。

 カツオブシが好きです。もっとちょうだい。

153以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/17(月) 19:01:44 ID:Yc6cCQz.
>>152 話の始まりかたが、武者小路実篤をおもいだした。古風な物言いで文芸的な演出をするなら、プラトニックみたいなカタカナは気になるかも。平仮名にするか日本語にするかのが締まりはいいかなと。感覚的にエロティックな文面に対して内容が猫との同棲というのは面白いかな。ただ後半にいくにつれて段々とその文学的表現のこだわりが薄れていくのがあまりに残念。せっかくならば最後まで通してほしかったなと。嫌いではないです。

154以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/18(火) 01:14:07 ID:fGsk3fFM
一人の帰り道、頬にできたニキビをポリポリと掻く。
ニキビを掻くと悪化することはわかっている。でも、やめられないのだ。
ニキビが気になって仕方なくて、つい掻いてしまう。

ふと、暗いところばかり見ている僕にはお似合いのクセだと思った。
これからも僕はニキビをポリポリと掻いて、そして嫌われ続けるのだろう。

ふと、道端に二匹の猫を見つけた。
猫たちは仲睦まじく頬ずりしてじゃれていた。

僕の頬を掻いていた指に目を移すと、ニキビから出た血で汚れていた。

155以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/18(火) 01:16:27 ID:fGsk3fFM
推敲途中で投稿してしまった、すごく恥ずかしいorz

156以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/18(火) 06:43:14 ID:fw4djVEk
>>155
ドンマイ

つかお題が猫くらいの勢いになってきたな(笑)

157以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/18(火) 08:38:20 ID:fw4djVEk
「可愛いげのない奴」
不器用で後ろ向きな性格をした僕の口は、そんな言葉を捻り出した。それを聞いた女は不機嫌に顔を歪ませ、何も言わずに立ち去った。
――またやってしまった。
この間も下らない喧嘩をして、ようやく素直になると誓って復縁したばかりだというのに。素直になりたいと思っているのに、どうして僕の口はそれを理解してくれないのか。
構内で何重にも設置された放送機材が次の講義時間を教えてくる。力強く反響する鐘は、僕の間違いを指摘する警告に聞こえた。だからと言ってこの口が一緒では巧く弁解などできないだろう。
――仕方ないか、それに講義に遅れてしまうし。
自分の口を言い訳に行動を起こさない僕は、以前から比べて進歩したのだろうか。相手に責任をなすりつけて言い訳にしていた頃よりはマシだと信じたい。誓いを立てたからといって、人は簡単に変われないのだ。講堂で女を見かけた。見かけたといってもいつもの席にいるだけだ。600人収容・自由席のこの講堂においては誰もが自分のテリトリーを持って着席する。毎回ほぼ決まってそこの範囲へ足を運ぶ。目に見えなくともそれがわかるのだ。だから僕もそれに従う。女の横。僕のテリトリーはあまりに狭い。唯一の指定席だ。
はぁ、と大きな溜め息が横から聞こえる。見ることはしない。面倒に関わっていくのは苦手だから。
『私の台詞だわ』と聞こえて来ると、目は僕の意に反して女を見る。そして僕が『睨んでも無駄よ』と言われる。僕は口だけでなく目まで素直じゃないらしい。退屈な講義の最中、女の言葉を反芻する。意味はわかる。可愛げの無いのは僕だと言いたいのだ。しかしどうすれば可愛げが出せるかなど知らない。知っているなら教えてくれ。
教授はまだ鐘もならない内に終了を告げた。寒い寒いと手を擦り合わせて帰り支度をする女を見る。仕方がない。聞くなら今しかない。僕は女の冷たい手首を掴んで引き寄せる。驚いて抵抗する女。また勝手に語り出しそうな口と目を閉じさせ、その冷たい掌に僕の頬を擦り付ける。動物に見られるおねだりのボディランゲージだが、目と口を閉ざした僕にはもうそれしか語る術はなかった。意図に気付いてくれるだろうか。
『やればできるじゃない』。女の声と同時に終業の鐘。講堂の唯一の放送機材は今度こそ正解の鐘の音を響かせた。自分の行動を振り返り、正解を認めたくなくなる。やはり素直じゃないのは僕だった。

158以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/18(火) 08:44:57 ID:fw4djVEk
前回(プリクラ)のリベンジしようと同じキャラをつかって挑戦したけど
やっぱり主題が弱いっていう連敗っぷりだ
泣きたくなるな

159以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/18(火) 18:59:18 ID:5LNXdPsI
そう卑下するほど悪いもんでもないと思うよ。
謙虚すぎるのも良くないし、もうちょっと自信持っていいと思う。

ただ三行目の『顔を歪ませ』は『眉間に皺を寄せて』とか『口をへの字に曲げて』とかのほうが不機嫌の表現としては適切かと。

あと改行する時、時々一段落あけた方が見た目すっきりするかもね。

160以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/18(火) 19:36:43 ID:5LNXdPsI
 頬擦りとは、愛情表現である。

 他人がどう考えているかは知らないが、少なくとも僕はそう考える。それはきっと、過去にそれを認識したその時から。或いは物心つかぬ頃、母や父からそうしてもらったその時から、ずっと変わらない価値観なのだろうと思う。当時の心境など知る由もないが、きっと。

 頬擦りとは、愛情表現である。

 つまり頬擦りをする相手には、少なからずそのような感情を抱いている、ということなのだろう。それは愛玩動物であり、我が子であり、愛する人であり、時に無機物ですらある。相手の意志はどうあれ、憎むべき敵に頬擦りはしないだろう。

 頬擦りとは、愛情表現である。

 僕はしてみたい。無性に。頬擦りを。抱き締めて、体温を感じて、顔を寄せて、頬擦りをしたい。何故かと聞かれたら、答えることは出来ない。これは欲求というより、衝動。そして衝動とは、理由が存在しないからこそ衝動たりえるのだ。

 してその相手とは、僕が握りしめる携帯電話の、その画面に映る電話番号の、その持ち主。彼女は僕が愛する人だ。僕を養ってくれる家族には悪いが、それ以上、僕の最上の愛を注ぐ人である。
 彼女の側は──

 ──程度は知れずとも、愛してくれてはいるだろうと思う。ならば。頬擦りを行うのに過不足は無いだろう。
 受話器のマークを押す。


 僕が握りしめる携帯電話の、その画面には、通話終了の文字が映っている。通話時間、十秒。つまりはそれだけで会話は終了したという事であり、それ以上の発言を許されなかったということでもある。

 頬擦りとは愛情表現である。

 何故断られてしまったのだろう。彼女は僕に愛情を抱いてはいないということだろうか。
 わからない。
 もしや、頬擦りという行為自体に問題があったのか。ならば、頬擦りという行為についてもう一度考えてみようか。

 頬擦りとは愛情表現である………

161144:2014/03/18(火) 20:02:01 ID:VedbIUi.
>>145
 評価ありがとう。
 自身とか自分とかあるけどやっぱり一人称って統一したほうがいいのか。
 実際モデルがいるからちょっと走りすぎた気がする。

>>146
 評価ありがとう。
 うさぎの舌はザラザラしてないし、彼女は抱っこ中は服しか舐めないんだ(泣)

>>147
 すまん、ガチ泣きした。
 前半と後半の雰囲気の落差にちょっとついて行けなかったごめん。

162147:2014/03/19(水) 09:17:50 ID:u1b34bsU
>>160
最初、繰り返す『頬擦りとは〜』があまりにくどいと思ったが
最後の展開と再度繰り返させる事で主人公の思考感覚がずれている(病んでる?)事の
表現だったんだなと感じた。読んでて「ん?…んん……ん?…おぉ」って感じだった
面白いと思ったよ

ただちょっと読点が多すぎるか
それも思考の特異性を表現するための事かもしれないが

>>161
うさぎだったんかい、それならちょっとでも『長い耳』とかのキーワードが欲しかったかな
俺の文で泣いてくれてありがとう

163>>154の改訂:2014/03/20(木) 15:04:34 ID:Id1Lbu7Q
一人の帰り道、僕は道端で歩いている二匹の野良猫を見つけた。
灰色の猫と、茶黒のシマシマの猫だった。
なんとなく足を止め、それを見つめた。

猫たちは木陰に入ると、頬をすりよせあいはじめた。灰色の猫はゆったりとした動きで右の頬を擦りよせ、次に左の頬擦りよせ、それでも満足せずに再び右の頬を擦りよせた。嬉しそうに目を細めていて、それがやけに目についた。

僕は右の頬のニキビを掻いた。
ニキビを掻くとひどくなるってわかっていた。それでもお構いなしだった。
仲良さげな猫を見ていると、掻きむしらずにはいられなかった。
自分の悪いところを気にせずにはいられない。それが僕なのだ。

頬にジンワリとした痛みが広がった。
ニキビを掻きすぎたのだ。
頬を掻いていた右手の指を見ると、点々と血が付いていた。
人さし指の腹で血の出たニキビをなぞると、指に血がべったりと付いた。

猫は相変わらずじゃれあっていた。当然、その頬にはニキビなんてない。

僕には頬ずりなんて無理だ。そう考えると、猫を見るのがつらくなった。

猫がこちらに気づいたらしく、頬ずりをやめて僕の方を見た。
僕は猫から目を背け、再び歩き出した。
後ろで猫がにゃあと鳴くのが聞こえたが、振り向く気にならなかった。

164以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/20(木) 22:33:24 ID:IWLapErQ
>>160
恐くて好きだ。
単にフラれたとかいろいろ考えたけど…
やっぱりこいつは病んでるって思える。
書き方うまいとおもう。

165以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/22(土) 03:00:41 ID:y95FWOOk
一週間たったけどお題の方どうする?

166以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/22(土) 09:35:53 ID:KHS.0N0E
変えてもいいんじゃない
お題↓で


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