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みんなで文才晒そうぜ part2

90以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/01(土) 03:19:15 ID:uutW/KDg

視界がひっくり返る、いや、自らひっくり返したのだ。

雲にも届こうかという高度で、魚の腹を思わせる機体の底面を太陽に向ける。そして操縦桿をぐいと引いた次の刹那、愚鈍に海原を横たわる醜い鉄の鯨の背が正面に見えた。

周囲で高射砲が炸裂している。しかし上着の裏に縫いつけた手作りのお護りがある以上、当たりはすまい。

あと少し、軌道を修正し固定できれば間違いない。

狙うは鯨の心臓部、そこへ通ずる排煙筒。
見る間に大きくなってゆく憎き米艦の輪郭に、己が命の刻限を知る。

父上、今も仏間の卓袱台の前で、口を一文字に結び座しておられるのでしょうか。どうか今、最期の時だけは幼き日のように『父ちゃん』と呼ばせて頂きとう御座います。

母上、貴女の作る牡丹餅が何より好きでありました。旅立つ日、それを皿いっぱいに盛りながら『めでたい、めでたい』と唱える貴女の目が濡れていた事、この愚息は気付いておりました。

姉上、庭の柿の木に登り、まだ熟れる前の実をかじった日が昨日のように思えるのです。料理の不得手な貴女の事、私は天からいつも心配しているとお心得下さい。

そして君よ、駅で別れし愛しき君。

どうか笑顔で送ってくれと、見えなくなるまで万歳をしてくれと頼んだはずだ。なのに思い出すのは涙化粧、行かないでくれと袖を握る君の姿ばかり。

嗚呼、二十年に満たぬ我が人生は、今この米艦を沈めて幕を閉じるのだ。

一撃必殺、必中轟沈。

あと僅か、ほんの軽く操縦桿を引──


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