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みんなで文才晒そうぜ part2

128以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/09(日) 00:18:56 ID:dMy6BTMg

私は悴んだ手に息を吹きかける。束の間温かくなったがすぐに熱は外気に奪われてしまった。
暦ではもう春のはずなのにどうしてこんなにも寒いのだろう。近年騒がれている異常気象の影響だろうか。そういえば今年は桜の開花が遅れると朝のニュースで言っていた。地球は温暖化が今も着々と進行しているはずなのに例年より冬が寒いのはどんな理屈なのだろう。
冷たい北風が私の長い前髪を弄ぶ。視界の中から久しぶりに黒い色が消えた。こんな景色はいつぶりだろう。前髪を伸ばし出す前だから三年ぶり。中学二年以来だろうか。
唐突に背筋にムカデのような虫が這い上がってくるような嫌な感じがした。
私はマフラーを巻き直してため息をつく。今日は本当に寒い。

根っからのインドアの私は外出が嫌いだ。友人がいないわけではないけれど人と関わるのも特筆するほど好きではない。休日は大抵適温にした自室で惰眠を貪っている。
ではなぜ今日は外出しているのか。その理由は一つ。家のガス系統がダウンしたため風呂が使えないからだ。

今朝は珍しく早めに起床した。朝食を食べている最中にデジタル時計に目を向けると六時前を表示していたのを覚えている。
そんな朝早くに私は這いつくばって探し物をしていた。
「どこに置いたっけ……」
予兆もなしに積み上げられた文庫本が頭上に倒れてきた。私はそれを手で払いのける。本の山が崩れてきたのは二回目だ。
整理されているとは言い難い私の部屋は毎日何かが無くなる。そして今日はエアコンのリモコンがどうしても見つからなかった。
しばらくは部屋中を捜索していたのだが寒さに耐えきれなくなった私はガスのストーブを物置から引っ張り出して代用することにした。
どうせ動かないという予想に反してブォンという鈍い音を鳴らした後、埃まみれのストーブは実に効率的良く部屋を暖めていった。ブランクを感じさせない見事な仕事ぶりであった。温風が足を包み、体の芯を赤く染めていく。
なんて気持ちが良いのだろう。私は堪らずお気に入りのブランケットを羽織って丸まった。至福の一時だった。

だが私がこの選択を後悔するのにそう時間はかからなかった。

目を覚ましたのは体が冷えたからだ。意識が途切れて何が起こったのかはすぐに察せた。
鮮やかに使命をこなしていたストーブが切れている。何度電源を押しても反応がない。カチッカチッと空しい音が響くだけだ。どうやら元栓からしまっているらしい。
すぐさま私はガス会社からきた最新の書類を探し、目を通す。役に立ちそうなことは何も書かれていない。
慌てて私はガス会社に電話する。繋がらない。
嘘だろう。私の目の前が真っ暗になる。手の中から書類が滑り床に落ちた。中からアンケート用紙が飛び出している。
私の家はオール電化ではない。風呂だけはガスだ。
一日位ならまぁいいやで済ましてしまう私だが昨晩は帰ってきてすぐに疲れて寝てしまった。さすがに二日連続は気持ち悪い。

こうして私は近場の銭湯に行くため外出することになったのだ。


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