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从 ゚∀从二人暮らしのようです(-_-)
1
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:11:46 ID:KbZp5als0
※ハートフル同棲ものですが少しエロがあります
2
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:12:05 ID:8lgbZhf20
2ゲット支援
3
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:14:21 ID:KbZp5als0
( ^ν^)やり残したことのようですノパ⊿゚)
从 ゚∀从二人暮らしのようです(-_-)
(-@∀@)その顔が見たかったようです川 ゚ -゚)
リハ*゚ー゚リ生きているか死んでいるかの境界線のようです爪'ー`)y‐
(´・_ゝ・`)また出会うようです(゚、゚トソン
4
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:19:15 ID:KbZp5als0
( ^ν^)やり残したことのようですノパ⊿゚)
JR常磐線北松戸駅から徒歩2分
鉄筋コンクリート造り 築15年
1K 家賃5.3万円
5
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:20:50 ID:KbZp5als0
住んでいるアパートに帰るなり俺が見つけたのは知らない少女だった。
そいつは俺の部屋のドアの前で体育座りをして眠り込んでいた。
どこかの学校の制服を着ていて、それは恐らく中学生のものだ。
全く俺にはその少女にもその制服にも見覚えがない。
しかしそいつは部屋のドアの前で寝ている。
もう秋だし寒かったのか膝を抱いて寝ている。
明らかに来訪者であると考えるのが自然だった。
とりあえず起こしてみなければ何も始まらないだろう。
肩をゆさゆさ揺らしてみる。
( ^ν^)「おい」
ノハ-⊿-)「んん…」
少女が目を覚ます。
俺を訪ねてきたが不在だったので待っている間に眠ってしまったといったところだろうか。
少女は立ち上がり、恐る恐る俺の事を見た。
ノパ⊿゚)「ニュッさん…?」
( ^ν^)「あぁ、そうだけど」
俺は眼鏡をして大きなマスクをしている。
この大きなマスクは俺の標準装備だ。
そうしなければ外も出歩けない。
ノパ⊿゚)「私の事、覚えてる?」
( ^ν^)「いや、全然。 初めて見たが」
ノパ⊿゚)「私、一度ニュッさんに救われてるんだ」
( ^ν^)「あぁ…」
俺は消防士だ。いや、正しくは消防士をやっていた。過去に。
消防車に乗り込み、放水をし、ガラスを割って家に要救助者を探しに行く。
それが俺の仕事で、何人もの命を救ってきた。
6
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:26:53 ID:4qu9ploU0
支援
7
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:27:18 ID:KbZp5als0
ノパ⊿゚)「二年前、八千代の米本団地で。 一軒から火が出て付近五軒が燃えちゃった」
( ^ν^)「あぁ…そうかそうか、お前あの団地のか。 家が殆どくっついてるもんだからどんどん燃え広がったやつだったな」
救助者一人一人をきちんと覚えてはいない。
それほどに火事というものは頻発するし出動回数も多い。
よほど顔が溶けてしまった者ならば暫く記憶に焼きついたりはする。
しかし、その団地での火事は忘れもしないものだ。
ノパ⊿゚)「うん、そこで私はニュッさんに助けられた」
( ^ν^)「よく俺だと分かったな」
ノパ⊿゚)「退院してから消防署を訪ねたんだ。 でももうニュッさんはいなかった」
( ^ν^)「あぁ、辞めたからな」
ノパ⊿゚)「どうして…」
俺は少し迷う。どうするべきか。
ノパ⊿゚)「どうして辞めちゃったの」
( ^ν^)「その時にしくじったからだよ」
仕方ないだろう。
決意を固めて俺はマスクを外す。
少女が顔を強張らせるのが分かる。
そういう反応には随分と慣れた。
まるで腫れ物に触るような目つきでみんな俺を見る。
しまったといった表情をする。
( ^ν^)「二年前、その団地での火事。 しくじってこの有様さ」
俺の顔の右半分は焼けただれてしまっている。
現場で酷い火傷を負ってしまい皮膚は黒く変色しぶよぶよになってしまった。
自分でもとても気持ち悪いし醜い顔になったと思う。
( ^ν^)「おかげで人生台無しだよ」
8
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:29:55 ID:KbZp5als0
俺には婚約者がいた。婚約指輪も買っていた。
そいつが火傷を負った俺を初めて見た時の驚きと嫌悪感の入り混じった顔を忘れる事はないだろう。
一緒に頑張ろう、支えあおうなどとそいつは言ったが間もなくして俺のもとから離れていった。
俺は恐怖心が拭い去れなくなり逃げるように消防士という仕事を辞めた。
崩落して落ちてくる火だるまの天井が目に焼きついて離れない。
今でも時折その夢を見て飛び起きる事がある。
ノハ;゚⊿゚)「…」
少女は黙っていた。言葉を失っているようだった。
俺だって同情してもらいたい訳じゃない。そんな心はとっくに捨てている。
今はこんな顔を極力晒さないよう人目につかないように生きているだけだ。
マスクをしなければ外も歩けない。
( ^ν^)「思い出したよ、思い出した。 お前は火元の隣に住んでいたガキだったな。
確かに俺が助けた。 その次、隣の家でしくじったんだ」
ノハ;゚⊿゚)「わ、私はなんとか一度お礼を言いたかったんだ…」
( ^ν^)「あぁそうだな、ありがとうよ。 でも放っといてくれ」
ノハ;゚⊿゚)「その…」
( ^ν^)「まだ何か?」
ノハ; ⊿ )「いや…」
鼻を鳴らして俺は部屋に入った。わざと音をたてて鍵を閉める。
暫く少女はそこにいる気配があったが服を脱いで着替えている間に帰っていったようだった。
別に少女に悪意がない事なんて分かる。自分が大人げない奴だとも分かっている。
しかしあの日を思い出したくはないのだ。俺は全てを失った。
もう当時の職場との人間とも連絡を取っていない。
そもそもこんな顔では人に会うのも避けている。
同級生との同窓会はおろか親にすら会いたくない。
孤独でいいのだ。
次の日、仕事から帰るとまたそいつは俺の部屋の前で座っていた。
今日は眠っていない。俺の姿を見てぴょんと立ち上がる。
俺は露骨にため息をついた。
9
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:32:11 ID:KbZp5als0
( ^ν^)「何をしに来…」
しかしちょうど二つ隣の部屋の住人が出てくる。
制服を来た中学生ぐらいの少女と俺の組み合わせを見て怪訝そうな目つきになる。
俺は足早に部屋の鍵を開けた。
( ^ν^)「とりあえず入れ」
ノパ⊿゚)「いいの?」
( ^ν^)「変な目で見られるだろうが」
さっさと少女を部屋に上げてドアを閉める。
少女は当たりをきょろきょろ見回し妙にそわそわしていた。
年頃なのだろうし男の部屋は気になるのだろう。
( ^ν^)「出す茶もねーぞ。 俺のところに客人なんて来ないんだから」
このアパートに住み始めたのも仕事を辞めてからだ。
婚約者とは同棲していたしもっと良いマンションに住んでいた。
逃げるように元の生活を捨ててからはなるべく人とは会わないようにしている。
ノパ⊿゚)「いや…」
( ^ν^)「で、なんなんだよ」
ノパ⊿゚)「え」
( ^ν^)「何か用があるんだろ」
俺は鞄を床に置いてソファーにどっかと座る。
今やテレビ視聴も食事もこのソファーだ。
少女はやり場なく立っている。
ノパ⊿゚)「まずはちゃんとお礼が言いたかった…」
( ^ν^)「そりゃどうも」
ノパ⊿゚)「あ、あとはその…」
( ^ν^)「なんだよ」
10
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:38:21 ID:KbZp5als0
ノハ*-⊿-)「その、その時からずっとニュッさんに恋をしていて」
( ^ν^)「はぁ?」
随分と急な話だ。
ノハ*゚⊿゚)「だからずーっといつか会いたいなぁって」
( ^ν^)「なんじゃそりゃ…だいいち顔も大して覚えてねーだろ」
ノパ⊿゚)「たしかにヘルメット? で殆ど見えなかった」
( ^ν^)「じゃあ」
ノパ⊿゚)「イケメンだったとかそういうのじゃなくて、ただ助けてもらえたってだけで」
まぁ火傷を負う前も決して良い顔立ちとは言えなかった。
( ^ν^)「で、まぁそれで俺のところに来て、どうしたいんだ」
ノハ-⊿-)「うーん、自分でもよく分からない」
( ^ν^)「お前なぁ、そういう恋心的なものがあるとしても、付き合う次元じゃないとか分かるだろ」
ノハ-⊿゚)「どゆこと?」
( ^ν^)「お前まだ中学生ぐらいだろ」
ノパ⊿゚)「まだ14…、ニュッさんおいくつ?」
( ^ν^)「33」
ノパ⊿゚)「33かぁ…14と33って離れすぎだし倫理的にどうかと」
( ^ν^)「そりゃあ俺のセリフだし俺としてもガキには興味ねーわ」
14歳なんてまだ恋に恋してる程度の年齢だ。
何に恋をしてどう行動すべきか分からないだろう。
身体的にも精神的にも未熟なのだ。
11
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:43:20 ID:KbZp5als0
ノパ⊿゚)「私もよく分からないんだ、長い時間うっすらと考えてた。
でもちょっときっかけがあって、そうしなきゃって」
( ^ν^)「んまぁ、とりあえずは分かった」
ノパ⊿゚)「うん」
( ^ν^)「悪い事は言わないから家に帰れ」
ノパ⊿゚)「え」
( ^ν^)「俺はもうお前が恋をした俺じゃない。
顔もこんなだし消防士でもない。
火も消せないし誰かを助ける事も出来ないんだよ」
俺は今やただの一般市民だ。
近くで消防車のサイレンが聞こえれば大変そうだなと思う。
火事で亡くなった記事を新聞で読めば可哀想だなとは感じる。
しかしもう俺にはどうする事も出来ないのだ。
消防士を辞めた俺にはどうする事も出来ない。
消防服がなくバケツに溜めた水を被った程度では満足に救助も行えない。
火に囲まれた世界で生きていたのに今では遠い異世界の事にように思える。
( ^ν^)「だからもうお前が恋した俺はいないんだ。 大人しく帰るんだな」
ノパ⊿゚)「でも…」
( ^ν^)「なんだよ」
ノパ⊿゚)「ニュッさんの事を好きになったのはたしかに助けてもらったからだよ。
顔もよく見えなかったしこれが恋なのかどうかも自分自身言い切れない」
けどね、と少女は続ける。
ノパ⊿゚)「だけどニュッさんが火傷をして消防士を辞めてしまっていてもそれで好きじゃなくなったりしない。
それに、その…」
( ^ν^)「なんだ」
言いにくそうだったのでじれったくなって促す。
ノパ⊿゚)「ニュッさんが火傷をしてそれを隠していても、私はそれでニュッさんに幻滅したり嫌いになったりしない」
( ^ν^)「…」
12
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:46:54 ID:KbZp5als0
ノパ⊿゚)「むしろだからどうした、というか、ニュッさんはニュッさんじゃないのかなって…」
人生台無しだとは言ったが婚約者が俺を捨てていったのは話さなかったはずだ。
俺はどこかでそう言ってくれる人間が現れる事を願っていた自分がいる事に気がつく。
見た途端に顔をしかめた婚約者、両親、知り合い達。
酷い火傷の顔を受け入れ、それでも良いと包み込まれるのを待っていたのではないか。
( ^ν^)「はは…」
我ながら感傷的だ。こんな子供に。
( ^ν^)「生意気なガキだな」
ノハ^⊿^)「えへへ」
( ^ν^)「褒めてねーよ。 お前名前は?」
ノパ⊿゚)「ヒート」
( ^ν^)「ヒート、な」
ノパ⊿゚)「私に何か出来る事ある?」
( ^ν^)「なんでだ」
ノパ⊿゚)「ほら、何かちょっとずつ恩返しがしたい訳だよ」
( ^ν^)「何もねーよ」
ノパ⊿゚)「晩ごはんまだ? 何か作ってあげようか」
( ^ν^)「作れるようには見えないんだが」
ノパ⊿゚)「よく言われる。 だけど見かけによらず作れるんだ」
ヒートはそう言うと台所の方へ行った。お邪魔しますと冷蔵庫を開ける。
ノパ⊿゚)「これはあまり自炊しない冷蔵庫だ」
( ^ν^)「うるせえその通りだ」
13
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:49:37 ID:KbZp5als0
ノパ⊿゚)「あーでもこれと、これと…よし大丈夫」
( ^ν^)「まぁいいや。 勝手にしてくれ」
ノパ⊿゚)「うん、勝手にする」
俺はテレビの電源を入れてマスクを外す。
鞄からメビウスを取り出して火をつける。
( ^ν^)「お前14じゃやっぱり中学生か」
ノパ⊿゚)「そだよ」
台所の方から返事が返ってくる。
( ^ν^)「なんで飯作れるんだ」
ノパ⊿゚)「うち母子家庭なんだ。 あの火事の一年前に病気でお父さん死んじゃって」
( ^ν^)「あぁ」
ノパ⊿゚)「それでお母さんが遅くまで働いてたから私がよくご飯作った感じ」
( ^ν^)「なるほどね」
父親を亡くして一年後に火事で家まで無くすとは災難だ。
( ^ν^)「あの団地…五軒中四軒は全焼じゃなかったか」
ノパ⊿゚)「うん、うちも全焼。 もう二人だし、結局アパートに引っ越しちゃった」
( ^ν^)「大変だな」
ノパ⊿゚)「うん、大変だった。 大変だったんだ」
ふとそれならこんな男の部屋で食事を作っていて良いものかと疑問に思う。
しかしそこまでは言うまいと深々と煙を吐く。
ノパ⊿゚)「ごめんね、身の上話なんてするつもりなんてなかったんだけど」
14
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:51:42 ID:KbZp5als0
( ^ν^)「いいや、俺が訊いちまったんだから俺が悪いさ」
ノパー゚)「ふふ」
( ^ν^)「んだよ」
ヒートが台所からひょこっと顔を出した。
ノパ⊿゚)「ニュッさん超無愛想とか思ってたけど実は優しいよね」
( ^ν^)「うるせえ煙草投げっぞ」
ヒートが顔を引っ込める。
吸い終わってから灰皿に押し付ける。
ガラスの灰皿は暫く洗っていないので随分と吸殻が溜まっている。
ノパ⊿゚)「ご飯炊かないの」
( ^ν^)「めんどくせーし一人じゃな」
ノパ⊿゚)「ご飯食べないと大きくなれないよ」
( ^ν^)「お前はかーちゃんか。 あと成長期でもねーわ」
ノパ⊿゚)「レンジでチンするやつはないの?」
( ^ν^)「流しの下開ければある」
ごそごそと音がするが台所まで行くのが面倒だった。
まぁ見つけられなくはないだろう。
ノパ⊿゚)「あ、あった」
またがさがさ音がしたあとに聞き慣れた電子レンジの起動音がする。
設定された労働時間を終えると電子レンジはメロディを鳴動する。
暫くするとヒートが戻ってきた。
15
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:54:28 ID:KbZp5als0
ノパ⊿゚)「おまたせ」
ヒートが作ったのは野菜炒めだった。
冷蔵庫の中で眠っていた余りもの達だ。
ノパ⊿゚)「えーと」
またヒートが行き場をなくしていたので最近使わず閉まっていた座椅子を引っ張りだした。
( ^ν^)「まぁ座れよ」
ノパ⊿゚)「やっぱり優しい」
( ^ν^)「うるせえ」
ノパ⊿゚)「食べて食べて」
たかが中学生が作った野菜炒めだ。
それに野菜炒めなんて誰にも作れる。
そう思って期待もせず食べてみたが美味かった。
野菜も余りもので滞在時間は違えどそれぞれ冷蔵庫で眠っていたものだ。
ノパ⊿゚)「おいしい? おいしい?」
( ^ν^)「うぜえ」
ノパ⊿゚)「おいしい? おいしい?」
( ^ν^)「あーうまいうまい」
ノハ*^⊿^)「いえーい」
そういえば人の作った食事なんて久しぶりだ。
定食屋にはよく行っていたが顔に酷い火傷を負ってからは殆ど行っていない。
顔の火傷を隠しながら食事をするのは難しい事だ。マスクだって外さなくてはならない。
こうして自分の部屋で誰かが作った食事というのが恐ろしく久しぶりなのだ。
だからだろうか。いや、そんな道徳的な心は持ち合わせていないはずだ。
16
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:56:42 ID:KbZp5als0
( ^ν^)「んだよじろじろ見るなよ」
ノパ⊿゚)「いやだって自分が作ったの食べてもらってるんだもん」
( ^ν^)「見るな」
ノパ⊿゚)「えーいいじゃん見せてよー」
顔を背けて食べるとヒートがブーイングの声をあげる。
ノパ⊿゚)「ケチ。 減るものでもあるまいし」
( ^ν^)「オヤジかお前は」
ノパ⊿゚)「中学生だよ?」
( ^ν^)「知ってるよ」
ノパ⊿゚)「全部食べたね」
( ^ν^)「そりゃあな」
ノパ⊿゚)「ごちそうさまでしたは?」
( ^ν^)「はいはいごちそうさまでした」
ノパ⊿゚)「よろしい」
ヒートが食事を片付ける。
ノパ⊿゚)「あ、灰皿溜まってる。 ついでに洗っとくね」
( ^ν^)「あぁ」
意外と気が利くやつだな、と俺は感心する。
ヒートが洗い物をしている間にまたメビウスを取り出す。
食後はやはり吸いたくなるもので全席禁煙の店は入りづらい。
火をつけようとしたところで灰皿を洗っている事に気がつく。
やむなし、取り出した一本を箱に戻した。
テレビは帯が移り古舘が神妙な面持ちで話し始める。
古舘は嫌いなのでテレビのチャンネルを変える。
( ^ν^)「そろそろ帰れよ、もう22時だ」
ノパ⊿゚)「あ、うん」
17
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 11:00:15 ID:KbZp5als0
洗い物を終えてヒートが台所から戻ってくる。
( ^ν^)「お前家近いのか?」
ノパ⊿゚)「んー、うん、まぁ近いよ」
( ^ν^)「なんだよ」
ノパ⊿゚)「ニュッさんっていつも同じ時間に帰ってくるの?」
( ^ν^)「あぁ、よっぽど何かなければ就業時間は基本的にいつも一緒だ」
ノパ⊿゚)「じゃあ明日また待ってるね」
( ^ν^)「マジかお前」
ノパ⊿゚)「おいしかった?」
( ^ν^)「まぁ…」
ノパー゚)「ならよし」
ヒートは満面の笑みを浮かべる。
俺は何故か好きにさせてやろうと思っていた。
今の職場までは列車通勤になる。最寄りのJRの駅まで徒歩2分なのでかなり近い方だ。
ただ最寄りJRの駅には各駅停車しか止まらず都心部の路線としては本数も少ない。
駅前も雑居ビルが少し並んでいるだけでちょっと歩けばすぐに代わり映えのない住宅地だ。
目立つ点を挙げるのならば駅の反対側に競輪場があり平日の昼間でも年配者が多いぐらいだろう。
またJRの路線に寄り添うように国道6号線が走っていて交通量は極めて多い。
住んでいるアパートもこの国道6号線に面しているのでとても静かな住環境とはならないのだ。
駅が近い割に家賃が安いのはそういう面も含めて考えられているのだろう。
帰りの常磐線各駅停車はいつも混んでいる。10両編成なのに席は空いていない。
あのような街でも一応は東京23区に属するの亀有・金町を出るとようやく少し空いてくるぐらいだ。
帰りに飲みに誘われなければ大体いつも同じ時間に帰宅となる。
それに誘われても俺は殆ど行く事がない。マスクを外で外したくない。
アパートの階段を上がるとやはりヒートは部屋の前で待っていた。
18
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 11:02:31 ID:KbZp5als0
ノパ⊿゚)「おかえり」
( ^ν^)「お前本当にまた来たのか」
しかも今日はしっかりとスーパーの袋を持っている。
( ^ν^)「準備万端じゃねーか」
ノパ⊿゚)「おうよ」
( ^ν^)「おうよじゃねーよ」
鍵を開けて部屋に上げる。
また近隣住民に見られてはいないだろうか。
男の一人暮らしだという事ぐらいは知られているはずだ。
そんな男の部屋の前で夜な夜な女子中学生が待っているとさすがに不審に思われるかもしれない。
ノパ⊿゚)「お腹すいてる?」
( ^ν^)「まぁな」
ノパ⊿゚)「座って待ってて、すぐ作るから」
( ^ν^)「お前は嫁か」
ノハ*゚⊿゚)「照れるなぁ」
( ^ν^)「告白したんじゃねーよ」
ソファーに座ってメビウスを取り出す。
帰ったらまず一服するのが日課だ。
ノパ⊿゚)「今日はエプロン装備です」
( ^ν^)「持ってきたのか。 つかいちいち見せなくていい」
ノパ⊿゚)「新妻感あるでしょ」
( ^ν^)「お前は形から入るタイプだな」
19
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 11:04:59 ID:KbZp5als0
ノパ 3゚)「つれないなぁ。 もっと感想はないの?」
( ^ν^)「調理実習みたい」
ノハ-⊿-)「くっ…」
( ^ν^)「素直な感想だ」
ノパ⊿゚)「よし、じゃあ裸エプロンとかならどうだ」
( ^ν^)「中学生には興味ねーよ」
ノパ⊿゚)「ちぇ」
諦めてヒートが台所へ消える。
俺はテレビの電源を入れる。
ちょうどロンドンハーツが始まったところだ。
ノパ⊿゚)「今ってお仕事なにしてるの?」
台所の方から質問が飛んでくる。
( ^ν^)「建築板金工」
ノパ⊿゚)「ケンチクバンキンコー?」
( ^ν^)「まぁ分かんないわな」
ノパ⊿゚)「なにか作ってる人だよね? なに作ってるの?」
( ^ν^)「今は東京のマンション」
ノパ⊿゚)「へぇーすごいね」
( ^ν^)「仕事辞めて知り合いに紹介してもらったんだよ」
ノパ⊿゚)「あー」
20
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 11:07:12 ID:KbZp5als0
( ^ν^)「仕方ねーだろ、こんな顔じゃあよ」
顔を火傷してから俺は人と関わるのが怖くなった。
火傷を見て眉間に皺を寄せる奴ばかりだった。
とにかく見られたくなかった。隠して生きていたかった。
仕事中も通勤中も絶対にマスクを外したくはない。
同僚と一緒に食事に行く事も殆どない。
きっと職場では暗い奴だと言われているだろう。
それにマスクでも火傷は完全に隠しきれていない。
きっとその事もついでに挙げられているだろう。
ノパ⊿゚)「ごめん」
( ^ν^)「お前が謝るなよ」
ノパ⊿゚)「優しいね」
( ^ν^)「なんでだよ」
ノパ⊿゚)「この前なんかそれで追い返したじゃない」
( ^ν^)「…そんなんじゃねーよ」
きっとそれはヒートが火傷を見ても受け入れてくれたからだ。
俺はあの日わざわざ自分を探して訪ねてきたヒートを恐れた。焦った。
ヒートは火傷を負ったあの火事で助けられ、消防士だった俺に憧れていたのだ。
だから普段は絶対に見せないのに真っ先にヒートに火傷を見せた。
すんなり打ち砕かれ諦めてほしかった。
しかしヒートは受け入れた。
可哀想とも言わず無意味な励ましもしなかった。
初めての人間だった。
( ^ν^)「つーかレシート後で寄越せよ。 金は出すから」
ノパ⊿゚)「同棲してるみたい」
( ^ν^)「ほんっと中学生はマセガキばっかだな」
ノパ⊿゚)「最近の中学生は発育もいいよ」
( ^ν^)「お前は違うな」
ノパ⊿゚)「サイテーだね」
21
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 11:09:37 ID:KbZp5als0
フライパンで料理をしているようだった。
もう長い事使っていなかった気がする。
本当に料理器具なんて最低限のものしかない。
( ^ν^)「つーか本当に母親は大丈夫なのかよ。 中学生にしては遅い時間だぞ」
ノパ⊿゚)「あー、うん、大丈夫。 そのー、なんというかお母さん帰りすごく遅い」
( ^ν^)「はぁ…母子家庭は大変なのな」
ノパ⊿゚)「そうそう、大変なのよ」
電子レンジの低い駆動音がする。
パック白米を温めている間にヒートが食事を持ってきた。
今日は豚肉の生姜焼きだ。食欲をそそるいいにおいが部屋を占める。
( ^ν^)「味噌汁まで作ったのか」
ノパ⊿゚)「明日の朝も食べられると思って」
( ^ν^)「大したもんだな」
ノパ⊿゚)「もっと褒めていいんだよ、褒めて伸びるタイプだよ」
( ^ν^)「俺あおさ汁が好きなんだよな」
ノハ;゚⊿゚)「ひどい」
加熱したご飯を机に置いて食事が揃う。
ノパ⊿゚)「そういえば茶碗もないんだね」
( ^ν^)「ほら、このまま皿になるだろう。 サトウのごはんは優秀だ」
ノパ⊿゚)「…まぁいいや、いただきます」
( ^ν^)「いま可哀想な男だと思っただろ」
ノパ⊿゚)「すごいね、ニュッさん私の心が読めるの、超能力者なの」
( ^ν^)「うぜえ」
今日の生姜焼きも美味しかった。
やはり料理が上手なのだと思う。
きっと他にも作れる料理があるのだろう。
22
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 11:12:01 ID:KbZp5als0
ノパ⊿゚)「いまお嫁さんにしたいって思った? 思った?」
( ^ν^)「二度訊くあたりうぜえ」
ノパ⊿゚)「結婚する?」
( ^ν^)「冷静にツッコむとお前まだ十四だから結婚出来ないぞ」
ノハ;゚⊿゚)「はっ」
( ^ν^)「マジかお前、わりとアホの子か」
ノハ;゚⊿゚)「いやーアホじゃないし。 普通だし。 至って普通だし。 現文と英語超得意だし」
( ^ν^)「見事に文系な」
ノパ⊿゚)「でもニュッさん心配だよ、今の生活を続けるのはあんまり良くないよ」
( ^ν^)「お前はかーちゃんか」
ノパ⊿゚)「いや、ほんとに。 心配になるよ」
( ^ν^)「仕方ねーだろうよ」
ノパ⊿゚)「明日も明後日も作りに来てあげるよ」
( ^ν^)「いいよ、お前中学生だろ。 時間も遅いんだしよ、親も心配するだろ」
ノパ⊿゚)「家は大丈夫だから。 お母さん遅いから」
( ^ν^)「そこまでするかよ」
ノパ⊿゚)「するよ。 好きでしてるんだから、いいでしょ」
( ^ν^)「まぁ、な」
押し切られる形で俺は頷いた。
それからヒートと一緒にバラエティ番組を見た。
ああだこうだと言いながら一時間構成のバラエティ番組を見た。
帰る時に一応ドアまで見送るがヒートは名残惜しそうに帰っていく。
一人の部屋に戻って俺はまたテレビを見ながらメビウスに火をつける。
23
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 11:15:02 ID:KbZp5als0
きっと俺は無償の愛が怖いのだ。
あの婚約者のようにいつか裏切られるのではと心のどこかで思っているのだ。
素直に受け取って良いものかと困惑しているのだ。
ヒートの方はまっすぐなのに俺は捻れている。
それから次の日、その次の日、また次の日と本当にヒートは食事を作りに来た。
ああだこうだと話しながら食事を作り一緒に食べた。土曜日にもヒートはやって来た。
さすがにたいしたものだと感心してしまったし、無下にするのもどうかと思い始めた。
( ^ν^)「お前、明日ヒマか?」
二人で食事を終えヒートは皿洗いをして俺はメビウスを吸ってから一緒にテレビを見た。
テレビ・コマーシャルに入ったところで思い出したようにヒートに訊いた。
ノパ⊿゚)「ひまだよ」
( ^ν^)「遊びに行くか」
ノハ*゚⊿゚)「えっ、いいの?」
( ^ν^)「日曜日だしな」
ノハ*^⊿^)「やったー」
( ^ν^)「11時な。 駅でいいから」
ノパ⊿゚)ゞ「りょうかい!」
びしっと敬礼の真似をする。
次の日の11時に駅まで歩いていくとヒートは改札口の前で待っていた。
ただ今日も制服だ。昨日も土曜日だというのに制服を着ていた。
( ^ν^)「お前なんで制服なんだよ」
ノハ^⊿^)「えへへ」
( ^ν^)「えへへじゃねーよ」
ノパ⊿゚)「制服だと親子連れに見えるよ」
( ^ν^)「やめろまだそんな歳じゃねえ」
はぐらかされてしまったような気がする。
ヒートの分の切符を買い与え、俺はICカードで自動改札機を通る。
残高表示の画面の位置が変わってしまいまたしても残高を見逃す。
どうしてJRはあんな位置に残高表示の画面を置くのだろう。
24
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名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 11:19:15 ID:KbZp5als0
ノパ⊿゚)「どこ行くの?」
( ^ν^)「中山競馬場」
ノハ;゚⊿゚)「デートだと思ったのに」
( ^ν^)「ははは、ららぽーとでも行くと思ったか」
ノパ⊿゚)「オッサン」
( ^ν^)「オイなんか言ったか」
ホームに降りるとちょうど10両編成の列車がやって来る。
地下鉄からやって来た古いデザインの列車だ。
二つ目の駅で乗り換えるとまた陳腐なステンレス製の車両が待っている。
沿線に大型商業施設などが多く土休日という事も重なり車内は混んでいた。
ノパ⊿゚)「混んでるね」
( ^ν^)「レイクタウンとかららぽーととかあるからな」
ノパ⊿゚)「あー一回だけ行った事ある。 めっちゃ大きいよね」
( ^ν^)「俺は行った事ないな」
ノパ⊿゚)「みんなららぽーととか行くのに競馬場ねえ」
( ^ν^)「嫌か」
ノパ⊿゚)「ううん、正直行ってみたかった」
( ^ν^)「行ってみたかった? なんでだ」
ノパ⊿゚)「お母さんが競馬好きで、よくテレビで見てたから」
( ^ν^)「へぇ」
ノパ⊿゚)「毎週スポーツ新聞買っててね、携帯で馬券買ってた」
( ^ν^)「今便利だからな」
ノパ⊿゚)「有馬記念っていうの? 毎年年末になると清算だーって」
( ^ν^)「お前のかーちゃん面白そうだな」
25
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名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 11:21:38 ID:KbZp5als0
元は貨物線として敷かれた線路は踏切もなく駅も少なく郊外をかっ飛ばしていく。
車窓から住宅街が幾つも見える。ところどころに集まっている。
( ^ν^)「次で降りるぞ」
ノパ⊿゚)「フナバシホーテン?」
( ^ν^)「そう」
駅に着くと家族連れやカップルなどが車内に残り、中年ばかりが降りる。
改札を出ると長いトンネルが続き列車を降りた客はぞろぞろとそこを歩いていく。
途中には歩くエスカレーターもある。ヒートは物珍しそうにそれに乗った。
ノパ⊿゚)「すごーい、歩くエスカレーターだ」
( ^ν^)「珍しいか? 空港とかにあるだろ」
ノパ⊿゚)「そんなに飛行機乗る?」
( ^ν^)「いや、全然だな」
トンネルが終わるとそこはもう競馬場の中だ。直結になっている。
ヒートにはまず見せた方が良いだろうと思いスタンドへ出る。
ノハ*゚⊿゚)「わー、テレビで見たやつ!」
( ^ν^)「なんという感想」
スタンドからは芝とダートのコースが見渡せる。
右手にある登り坂こそがドラマを産み出す仕掛けだ。
母親が好きでもヒートは仕組みを知らないようだったので教えてやる事にする。
マークシートを一枚持ってきてヒートに見せた。
( ^ν^)「馬券はこれに記入して買う」
ノパ⊿゚)「ふむ」
( ^ν^)「まずここは中山競馬場だから中山のところを塗りつぶすんだ。 そして次は7レースだから7を塗る」
ノパ⊿゚)「なるほどなるほど」
( ^ν^)「そしてここ、まぁ分かりやすいやつだけで行こう。 まず単勝ってあるだろう、これは単純に一着の馬を予想するんだ」
ノパ⊿゚)「一位の馬ってこと?」
( ^ν^)「そう、シンプルだろう。 まずはそれで買ってみよう」
ノパ⊿゚)「うん、分かりやすい」
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