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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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立ったら投下がある。
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('A`)「おれ達がパーティーを組んで戦うとしたら、指揮はショボン、お前だ」
(´・ω・`)
('A`)「今みたいに一人一人の特性を見ることは出来ても、
それを組み合わせて、状況に合わせて動かす事なんて、
おれにはできない。
この五人の中でそれが出来るのは、
ショボン、お前だ」
(´・ω・`)「……来島さんも出来るよ」
川 ゚ -゚)「は?」
('A`)「ああ、そうだな。資質だけなら出来る可能性は高いと思う」
川 ゚ -゚)「いやちょっとまってくれ」
('A`)「でも、お前の目とクーの戦闘能力を充分に発揮させるなら、
お前が指揮を執るのが順当だろう?
悪いけど、戦闘能力はお前よりクーの方が上だ。
お前が前線に出るより、クーが前線に出た方が安全に敵を倒せる。
それにお前の持つ目の能力は、後方で全体を見渡すことで、
最大限に威力を発揮するんじゃないか?」
(´・ω・`)「それは……」
川 ゚ -゚)「二人とも私の声が聞こえているか?」
('A`)「お前だってわかってるはずだ。
自分の真価は、『人を使うこと』だってな。
だからお爺さんたちに」
(´・ω・`)「ドクオ!」
('A`)「……わるい。今はそれは関係なかったな。
でも、おれの言いたいことは分かるだろ?」
(´・ω・`)「……うん」
.
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ドクオの言葉に、珍しく声を荒げるショボン。
その声にツンとクーは驚いてショボンの顔を見た。
ブーンは何も言えず、少しだけ悲しそうにショボンとドクオの顔を見ている。
(´・ω・`)「でも……やっぱり……」
項垂れるショボン。
( ^ω^)「帰る日まで、みんなで頑張ればいいんだお」
ブーンが朗らかに、事も無げに言い放つ。
(´・ω・`)「ブーン……」
頭を上げるショボン
その簡単な物言いに、ドクオとクーは苦笑いを浮かべながらも追従した。
('A`)「そうだな」
川 ゚ -゚)「それしかない」
出来るだけ簡単に、何事も無いように。
(´・ω・`)「でも、皆に命が危険にさらされるようなことは」
それでも異議を唱えるショボン。
ξ゚⊿゚)ξ「なら、私達が危険にならないように、考えなさい」
しかしすぐにツンの言葉によって遮られた。
それはまるで最初にショボンが提案しようとしたことを認めるような言葉だった。
(´・ω・`)「え?いや、じゃあ」
が、違った。
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ξ゚⊿゚)ξ「ただし、私達は自由に動くわよ。
納得できる内容なら、従ってあげる。
でも、納得できなかったら指示になんて従わない。
どこかに閉じ込めるとか、この街から出ないなんてのはもってのほかだから、
それ以外で私達が出来るだけ死なない道を考えなさい」
(´・ω・`)「…………え?」
('A`)「……上から目線だ」
川;゚ -゚)「朋美……」
(;^ω^)「おー」
おもわず唖然としたショボン。
ツン以外の三人も同じような表情で二人を見た。
ξ゚⊿゚)ξ「だってそれしかないじゃない」
四人に対し、普段のツンと何も変わらない仕草で喋り続ける。
ξ゚⊿゚)ξ「本城の望みと、私達の思い。
そこら辺が折衷案でしょ?
本来なら自由に動いていい私達が、
納得できれば指示に従うって言ってるんだから、
喜んで欲しいくらいよ」
('A`)「うわ」
ξ゚⊿゚)ξ「ま、考えるのめんどくさいから、
細かいことは任せるっていうのもあるけど」
( ^ω^)「賛成だお」
ξ゚⊿゚)ξ「あと、自分の命も大切にして」
川 ゚ -゚)「ああ。私からも頼む。
自分の事も大事にしてほしい」
.
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( ^ω^)「来る時と一緒だお!
五人皆で帰れる様に頑張るんだお!」
('A`)「ああ、そうだな」
川 ゚ -゚)「うむ。内藤の言うとおりだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そういうことよ。わかった?」
(´・ω-`)「みんな……」
笑顔で告げる四人に、片目をこすりながら、やっと笑顔を見せるショボン。
(´・ω・`)「わかったよ。
皆で、生きて帰る。
その為に頑張るよ!」
('A`)「おう!」
( ^ω^)「だお!」
川 ゚ -゚)「うむ」
ξ゚⊿゚)ξ「やっとわかったか」
(´・ω・`)「償いは、帰ってからするよ」
('A`)「って、わかってんだが、わかってないんだか」
( ^ω^)「おっおっお。でも、ショボンらしいお」
川 ゚ -゚)「ならば私も帰ってから恩返し攻撃をしなければな」
ξ゚⊿゚)ξ「私鉄とバスとタクシー乗り放題くらいで良いわよ」
('A`;)「おいおい」
(;^ω^)「おっおっお」
川;゚ -゚)「朋美」
.
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ξ゚⊿゚)ξ「冗談よ、冗談」
(´・ω・`)「了解」
ξ;゚⊿゚)ξ「いやいや、冗談だからね!」
五人全員に笑顔が戻り、会話を交わす。
それは生徒会室で昼ご飯を食べている時のようで、
五人の心に落ち着きを与えていた。
('A`)「さてバカ話もこれくらいにして、
ショボン、これからどうするのが良いと考えている?」
(´・ω・`)「うん……」
時折笑い声も出るような会話を30分以上した後、
全員が一呼吸置いた時に、ドクオが真剣面持ちで口を開いた。
(´・ω・`)「出来れば、早めにこの街を出たい。
今すぐにでも。
この街の情報収集もしたいけど、
ひとまずはドクオの知識があれば事足りるだろうし」
川 ゚ -゚)「何故この街ではいけないんだ?」
('A`)「広いし宿屋も多いし、当分は拠点にしてもいいと思うが?」
(´・ω・`)「宿屋を借り続けてずっと中に籠るならそれもいいと思う。
でも、その道を選ばないなら、着実に安全に早急にある程度までレベル上げをしたい。
おそらくそう考えたβテストをやっていないプレイヤーはこの周辺で狩りを、
戦闘訓練を、レベル上げを始めると思う。
この街の中にいるだけなら、規模でみれば1万人いても大丈夫だと思うけど、
周辺で狩りや戦闘を行うと考えると、キャパが足りないような気がする」
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('A`)「そうか。ああ、そうだな。
そうなれば、この周辺のモンスターはすぐ狩られるだろうし、
狩場をめぐって争いが起こるかもしれない。
そうなると、まずは次の街か。
あそこにはアニールブレードのクエストもあるし、
早めに取りたかったからそれもいいか。
でも……いや……すぐはだめだ。最低でも一つはレベルを上げて」
ショボンの話を聞いて、考え込むドクオ。
最初は周りに聞こえるような声だったが、
だんだん小さくなり最後はぼそぼそと独り言になっていた。
ξ゚⊿゚)ξ「何がダメなのよ?」
('A`)「あ、いや、順当にいくとしても、まずは次の街
『ホルンカ』になると思う。
もともとそこには早く行きたかったから行くことには賛成だけど、
出来るだけ早くってのは、厳しい」
ξ゚⊿゚)ξ「なんでよ」
('A`)「行く途中にモンスターが出る。
さっき倒した青イノシシよりも強いやつが。
といってもそこまで変わらないけど、危険度が上がるのは事実だ。
それに、今はもう夜の時間だからモンスターの出現率も高くなってるし。
少し回り道をしてできるだけモンスターの出ない道を選ぶとしても、
『今すぐ』ってのは無理だ。
安全を考えるのであれば最低でもレベルを一つ上げてから行きたい」
川 ゚ -゚)「どれくらいかかる?」
('A`)「んー。夜はランダムで強いモンスターも出るから、
明日の朝から始めたとして、三日後の昼には全員出られるかな……」
(´・ω・`)「それだと遅い」
.
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( ^ω^)「どうしたんだお?そんなに慌てて」
(´・ω・`)「……さっきのは、一つ目の理由。
もう一つは、おそらくこの街はこの先更なる混乱に包まれる。
自棄になったやつが、何をしでかすか分からない。
街の中は『圏外』といって戦闘行為は出来ないから僕達に命の危険は無いと思うけど、
出来れば早めに出ておきたいんだ」
('A`)「んなこと言われても……」
(´・ω・`)「今ドクオの言っていたのは、五人全員で動いた場合だよね」
('A`)「ん?ああ」
(´・ω・`)「ドクオ一人なら、次の街まで行ける?」
('A`)「おれ一人なら?ああ。行ける。
でも、おれ一人行ったって……」
(´・ω・`)「もう一人、僕以外の三人のうち誰かを連れていくとしたら?」
('A`)「二人……。まあそれなら行けるかな。
ブーンにせよツンにせよクーにせよ、
一人ならおれもフォローできるだろうし。
あ、ショボンでも大丈夫だぞ?
ああ、そうだな。それなら行けるな。
その方法で一人連れて行って、おれがまた戻ってきてまた一人連れていけば」
(´・ω・`)「いや、流石にそれは効率が悪いよ。
それに、ドクオの負担が大きすぎる。
長く続く緊張や疲れが、ミスを誘うよ」
('A`)「じゃあどうするんだ?」
(´・ω・`)「まず二人で行って、その一人を鍛えてほしい。
そして、ドクオが大丈夫と思えるところまで鍛えたら、
二人で迎えに来てくれ」
.
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滑り込みで11月に来てたー
これから読みます
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('A`)「!なるほど。それなら五人での移動がいけるかもしれない。
昼の移動なら二人で三人のフォローも出来るだろうし……。
それに、あのクエストをやれば戦いにも慣れるしレベルも上がるはずだ」
(´・ω・`)「できれば、明後日の昼頃までにお願いしたいけど、間に合うかな?」
('A`)「一緒に行くのが、鍛えるのが一人なら充分だ。
運さえよければもっと早くできるかもな」
(´・ω・`)「出来るだけ安全に。
間に合えば嬉しいけど、急がなくていいよ」
('A`)「でも、それくらいで大丈夫なのか?」
(´・ω・`)「……現実世界からすぐに救出があるとしたら、
おそらく明日の夜までには帰れると思う。
でも、……おそらくそれは無い。
茅場晶彦、あの人は良くも悪くも天才だから、そんな結果にはしないと思う。
そして、この街に居てただただ向こうからの救出を待っている人が大きく騒ぎ出すのは、
多分明々後日くらい……。
扇動者がいればもっと早くなるかもしれないけど、多分それくらいだと思う」
川 ゚ -゚)「……騒動になるまでそんなにかかるのか?
先程の広場では既に……」
(´・ω・`)「小さな騒ぎや騒動、小競り合いは勿論起きるよ。
当分は起き続けるさ。
今もあの広場では起きているんじゃないかな。
でも、全体を巻き込むような騒動は『指揮者』が、
『扇動者』いなければそう簡単には起きない。
一万人って数は、それなりの人数だからね。
無秩序な騒動にだって、引き起こす人や盛り上げる人はいるんだよ。
それに、こんな特殊な状況、だれも信じたくないからね。
『一回寝て、起きたら全部夢だった』って思いたい。
『壮大なオープニングイベントで、もうすぐネタばらしが来る』って思ってる。
それが大多数の人だと思う。
だから、受け入れたくない現実を受け入れて、絶望する。
大きな騒動が起きるのはこのタイミングだと思う」
.
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川 ゚ -゚)「なるほどな……」
ξ゚⊿゚)ξ「!あんた、もしかして……」
(´・ω・`)「なに?宇佐木さん」
ξ゚⊿゚)ξ「……いや、なんでもない。
……それにしてもあんた、ほんと、やなやつね」
(´・ω・`)「褒めてくれてありがとう」
ξ゚⊿゚)ξ「……褒めたつもりはないわよ。
まあいいわ。それでドクオ、誰を連れて行くのよ」
('A`)「ああ、連れて行くやつだけど……」
(´・ω・`)「うん」
('A`)「ブーン、良いか?」
( ^ω^)「お?僕かお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンなの?」
川 ゚ -゚)「私でもいいぞ?」
('A`)「……移動の時に必要な戦闘力ではクーは勿論ツンでも大丈夫だと思うけど、
何かあった際におれの指示で安全な場所まで逃げてもらうのを考えると、
出来るだけ足の速いやつがいいんだ」
川 ゚ -゚)「そういうことか」
('A`)「それに、着いてからのレベル上げなんだけどさ、
ついでに街売りしてない片手剣をゲットする為のクエストをやろうと思う。
おれの分も含めて二本。
結構使える武器だし、そのままその武器を使える片手剣使いの方が良いだろ。
この先落ち着いてからならまだしも、
折角少しは慣れた今の武器を変えるのは時間の無駄だから。
そして、そのクエスト中に戦闘に慣れてレベルも上げられると思う。」
.
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(´・ω・`)「うん。分かった。
ブーン、宇佐木さん、来島さん、良いね」
ドクオの説明に頷き、ショボンが三人に確認をした。
川 ゚ -゚)「問題ない」
( ^ω^)「……大丈夫だお」
ξ゚⊿゚)ξ「……しょうがないわね」
クーはすぐに返答したが、
ブーンとツンは互いの顔をちらっと見てから同意を告げる。
(´・ω・`)「二人を離すのは心苦しけど……」
ξ*゚⊿゚)ξ「な、何言ってるのよ!」
(* ^ω^)「おっおっお!
出来るだけ早くみんなを迎えに来られるように頑張るお!」
(´・ω・`)「危険だけど、頼むよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、時間かかってもいいから。出来るだけ安全にね」
川 ゚ -゚)「徳永、内藤、頼んだ」
( ^ω^)「頑張るお!」
('A`)「ああ。おれも頑張るよ。
あ、でさ、さっきからちょっと気になってたんだけど」
川 ゚ -゚)「ん?なんだ?」
('A`)「いや、クーだけじゃなくみんなにさ」
(´・ω・`)「なに?」
('A`)「この世界では、リアルネームじゃなくてこちらの世界の名前を使ったほうが良い」
.
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ξ゚⊿゚)ξ「そういえば顔が一緒だから普通に名前呼んでたわね」
川 ゚ -゚)「まずいのか?」
('A`)「んー。明確な理由があってまずいってことは無いと思うし、
リアルネームとこちらの名前を同じにしてる人もいるだろうから一概には何とも言えないけどな。
ただ、これから先この世界でそれなりの時間過ごすことを考えると、
こちらでの名前を使っていたほうが良いと思う。
こちらの世界で知り合う人もいるだろうし」
(´・ω・`)「そうなんだ。
そこら辺はよく分からないけど、ドクオがそう言うなら気を付けるよ。
ドクオとブーンはいいとして、ツンさんとクーさんだね」
ξ゚⊿゚)ξ「呼び捨てで良いわよ。
わたしもショボンって呼ぶから。
っていうか、あんたにツン『さん』とか言われるとむず痒くなる」
(´・ω・`)「酷いな」
川 ゚ -゚)「私も呼び捨てにしてくれ。
私も呼び捨てで呼ぶしな。
ブーン、君もそうしてくれ」
( ^ω^)「わかったお!」
(´・ω・`)「うん。僕もそうするよ」
('A`)「うん。それでいい。
それでショボン、おれ達が鍛えている間、
お前達はどうするんだ?」
(´・ω・`)「中央から離れた宿屋に籠ろうかと思う。
僕は、日中は情報収集の為に出たりするつもりだけど、
ツンとクーは部屋の中に居てもらうよ」
ξ゚⊿゚)ξ「やだ」
( ^ω^)「ツン、僕とドクオが戻るまではそうして欲しいお」
ξ゚⊿゚)ξ「うーーーー」
.
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川 ゚ -゚)「仕方あるまい。
三人とも街の外に出たりしないのは当然として、
闇雲に部屋の外には出ない様にしよう。
ま、二日が限度だと思うがな」
('A`)「戻ってこれるとは思うけど。……あ。そうだ」
(´・ω・`)「どうしたの?」
('A`)「ショボン、別に宿屋じゃなくてもいいよな?
鍵がかかって外から守れれば」
(´・ω・`)「うん。それは良いけど」
('A`)「ならあそこがある!」
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来ると思ってたから!
支援
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以上、本日の投下は終了します。
二十話はこれくらいの長さがあと数回続くので、
修正しつつゆっくり投下する予定です、
よろしくお願いします。
支援等、いつもありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
次回、『2.出発』
ではではまたー。
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作者、おむつー
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乙津
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乙乙
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おお、きてた
おつおつー、また待ってるぜ
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乙!
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おつ
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では投下を開始します。
今日もよろしくお願いします。
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2.出発
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ドクオの先導で教会を出た五人は、
何の変哲もない通路にやってきた。
街の外れに位置するその路地には店の看板を掲げている家も無く、
その通りには『民家』しかない様に見える。
( ^ω^)「なにもないおね……」
川 ゚ -゚)「またさっきの様な隠し店舗があるのか?」
('A`)「まあ見とけって」
ドクオの指示により、曲がり角に隠れる四人。
ドクオは一人角から十数メートル先の民家の前で立ち止まった。
ξ゚⊿゚)ξ「うわ。こっち見て笑った。
何あのドヤ顔」
川 ゚ -゚)「爽やかではないな」
(; ^ω^)「……許してあげてほしいお」
(´・ω・`)「なにするんだろ」
四人が見守る中、ドクオは大きく深呼吸すると目の前のドアを力強く蹴った。
(´・ω・`)「え?」
(; ^ω^)「ど、ドクオ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「何してるのあいつ」
川#゚ -゚)「ああいう行為はいただけんな」
蹴るというよりはドアを踏みつける様に、
足の裏で全部で四回蹴ると、すぐに隣の家の門柱の陰に隠れるドクオ。
.
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駆け寄ろうとした三人をショボンが
「とりあえず隠れて見ていてくれって言っていたし」
と言って制止していると、民家のドアが開いた。
女性が周囲を見回している。
そして誰もいないのを確認すると、ドアを閉めた。
それを確認したドクオが四人のもとに駆け寄ってきた。
ξ゚⊿゚)ξ「何やってんのよあんた」
('A`)「あれを後三回やるから、もうちょっと見ててくれ」
川#゚ -゚)「あと三回も?」
(; ^ω^)「おー」
(´・ω・`)「ドクオ、これはβテスターしか知らない内容なんだよね?」
('A`)「ん?ああ。っていうか、おれと数人しか知らないと思う」
(´・ω・`)「分かった。
ツン、ブーン、こちらに残って、誰か来たら声をかけて。
クー、僕と一緒に向こう側の角に移動しよう。
ドクオ、何をするのかは知らないけど、誰にも見られないようにしてくれ」
('A`)「え?あ。ああ。わかった」
(´・ω・`)「あと三回蹴ったらどうしたらよい?」
('A`)「終わったら呼ぶから、やってきてくれ」
(´・ω・`)「わかった。
じゃ、クー、向こう側に行こう。
ブーン、ツン、頼んだよ」
川 ゚ -゚)「う、うむ」
( ^ω^)「おっお。わかったお」
ξ゚⊿゚)ξ「わかった」
.
-
駆け出すショボンと、後に続くクー。
不思議そうな顔をした残った三人だったが、ドクオは気を取り直して民家の前に戻った。
同じようにドアに蹴りを入れるドクオ。
四回目の蹴りの後にドアを開けた女性は、
遠目で見てもイラついているのが分かった。
そして大きく音を立ててドアを閉めるのを確認すると、
ドクオが四人を手招きした。
ξ゚⊿゚)ξ「それで、これでどうなるってのよ」
('A`)「ショボン、これで中に入るとイベントが発生する。
基本どんな受け答えでも三日間はこの家の二階にただで寝泊まりさせてもらえるから、
この家を拠点にしてくれ」
(´・ω・`)「ここに?」
('A`)「ああ。この世界では、
宿屋の看板が出ているところ以外にも泊まれるところが結構あるんだよ。
ま、こんなフラグ立てをしなきゃいけないのはそんなにないし、
ただで泊まれるところはほんとに少ないけど。
ここも三日間泊まった後は、多分二週間くらいここにただで泊まることは出来ない」
( ^ω^)「全員分やらないとなのかお?」
('A`)「いや、パーティー設定している全員が泊まれる。
ここは元宿屋かなんかで、上にはリビング一つに寝室が二つあるんだ。
寝室にはベッドが二つあったから、三人なら充分だろ?」
(´・ω・`)「パーティー。
教会でやったあの設定?」
.
-
('A`)「そ。あれで今この五人はパーティー。
まあグループ設定されてるってわけだ。
って、早く入らないと最初からやり直しだから、ショボン、入ってくれ」
(´・ω・`)「う、うん。わかったよ」
詳しいことを聞きたそうなショボンだったが、
ドクオに急かされてドアの前に立ち、ノックをした。
『……誰だい?』
すぐに開かれるドア。
先程までの蹴りにより、
ドアの前に待機していたのだろう
(´・ω・`)「こ、こんばんは」
会釈をするショボンを上から下までじっくりとあからさまに見まわす女性。
同時にショボンも女性を観察する。
少しふくよかな体格。
身長もショボンより高いだろう。
そこまでは現実世界の人間と遜色ないが、大きな違いが一つ。l
頭の上に、エクスクラメーションマーク。
俗に言う『ビックリマーク』が浮かんでいた。
(´・ω・`)(これがクエスト受託マークなのかな)
『何か用かい?』
(´・ω・`)「え、あ、その」
('A`)「……え。会話が違う」
(´・ω・`)「い、色々とお話を伺いたくて」
『話……ね。あんたたち、旅行者かい?それとも冒険者かい?』
.
-
(´・ω・`)「ぼ、僕達は……冒険者です」
『その姿でただの旅行者ですとか言われたら、ドアを締める所だったよ。
立ち話もなんだ、中に入りな』
ドアが開け放たれ、五人を中に促す女性。
どうやら玄関という概念は無いようで、すぐにリビングの様になっていた。
八人は腰掛けることが出来そうなソファーセットがあり、促されて五人はそこに座った。
(´・ω・`)「ドクオ、この後はどうしたらいいの?」
('A`)「……任せる」
(´・ω・`)「は?」
('A`;)「βの時と、色々違ってるから掴めん」
女性が「ちょっと待ってな」と言って奥の部屋に行ったのを確認した後、
ぼそぼそと会話する二人。
その会話を呆れた顔で三人が聞いている。
('A`)「とりあえず生死にかかわる様な事にはならないはずなのと、
どこかに行くとか何かを選択する時にはウインドウが現れてキャンセルも出来るはずだから、
とりあえずは会話を進めてみてくれ」
(´・ω・`)「……分かったよ」
ショボンの言葉で会話が終わり、なんとなく黙り込む五人。
それぞれに部屋の調度を見回している。
部屋はかなり広いが、家具と呼べるものは彼らが座っているソファーセットぐらいだった。
奥に扉が一つと、二階に上がる階段があるくらいである。
しかし壁にはいくつもの絵画が飾られていた。
中には空に浮かぶ卵の様な絵もあるが、ほとんどは空と大地を描いた風景画だった。
壁にはアンティーク調の壁紙も貼られており、
βテスト時代に多くの民家や宿屋を見てきたドクオも新鮮な気持ちで観察していた。
('A`)(全然違ってる……)
.
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『待たせたね』
帰ってきた女性がローテーブルの上にコップを置く。
テーブルの長辺には三人掛けのソファーがあり、五人は男女に分かれて座っていた。
そして短辺にある一人掛けのソファーに女性が腰を掛けた。
『それはサービスだ、飲むも飲まないも自由だよ』
(´・ω・`)「いただきます」
テーブルの上のカップを手に取り、口をつけるショボン。
一口啜ると、弱い苦みの中にほんのりと甘さのある味が広がった。
(´・ω・`)「初めて飲む味です。これは?」
一瞬顔をしかめたショボンを見てにやりと笑う女性。
そして自分も一口啜ってから、口を開いた。
『これは【ラウラ草】という薬草を乾燥して作ったお茶だよ』
(´・ω・`)「よく飲まれるんですか?」
『ここでは採れない草だ。飲むのはたまにさ』
(´・ω・`)「貴重なものをありがとうございます。
ここでは採れないとのことですが、どちらで採れるんでしょう?
次の街ですか?」
『……【ラウラ草】は、この層では採れない』
(´・ω・`)「そうですか」
女性に対し、ニッコリと微笑むショボン。
.
-
『私の名前は『アイネ=ハウンゼン』。
ここに来たということは勿論私の名前は知っていると思うが、
自己紹介をするのは当たり前だからね』
(´・ω・`)「申しおくれました。僕の名前は『ショボン』です」
チラッと横を見るショボン。
二人の会話を黙って聞いていたドクオが慌てて口を開く。
('A`)「ど、『ドクオ』です」
( ^ω^)「『ブーン』ですお」
ξ゚⊿゚)ξ「『ツン』です」
川 ゚ -゚)「『クー』と申します。
本日は夜分にお伺いして申し訳ありません」
(アイネ)『気にすることは無いさ。
こんな時間、まだ昼も同じだよ』
川 ゚ -゚)「そうですか」
(アイネ)『それで、話ってのはなんだい?』
('A`;)!
NPCとの会話。
通常NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)との会話では、
一人一人に一定の会話設定がされており、
そのキャラクターに沿ったキーワードを与えることが出来れば、
会話が成立して話を進めることが出来る。
例えばある村の村長に『何かお困りですか?』といったようなセリフを言えば、
【村を襲うゴブリンを退治しろ】というクエストを始めることが出来るが、
『今日はいい天気ですね』と話しかけても、クエストは始まらない。
('A`;)(こんな状況で何の話をしろってんだよ)
.
-
(´・ω・`)「この世界の話をお聞かせ願いますか?」
('A`;)(はあ!?)
アイネの顔を見ながら迷うことなく告げるショボン。
焦った様にショボンの顔を見るドクオを見て、
残りの三人もショボンの顔を見た。
しかしショボンはそんなことは全く気にすることなくアイネの顔をじっと見ている。
すると、アイネの上に浮かんでいたエクスクラメーションマークの色が変わった。
('A`;)「え?」
思わず声を出してしまったドクオだったが、
アイネは気にすることなくショボンを見ながら笑い出した。
(アイネ)「合格だ。話してやろう」
('A`;)(はああああああ?)
豪快に笑いながらショボンの顔を値踏みするかのように見るアイネ。
そして笑い終わると、表情を引き締めた。
(アイネ)「私に話をさせる気にさせたのは、あんたが初めてだよ。
だが、全部を話すにはどれだけの夜を重ねればいいのか分からないほどこの世界は広い。
まずは自分で調べるんだね」
立ち上がるアイネ。
そして二階に上がる階段に向かった。
(アイネ)「ついてきな」
(´・ω・`)「はい」
立ち上がったショボンがアイネに続き、
その後を慌てて四人が続いた。
.
-
二階に上がると、人が二人余裕で通れる廊下の先にあるドアに連れて行かれた。
('A`)「おれが泊まったのは手前のドアだ」
川 ゚ -゚)「正式サービスで変わったのか?」
('A`)「分からない……。でも、この受け答えは無かったと思うから、
おそらくは変更したとおもう。
それか、テストの時は実装してなかっただけで、元からこうする仕様だったのか」
ドアは全部で四つ。
階段近くのドアを見ながらドクオは先に進んだショボンの後に続く。
(アイネ)「ここだよ」
アイネが奥の扉の一つを開くと中に入った。
その後をショボン達が続く。
(´・ω・`)「これは」
壁一面の本棚と、そこに収められた本。
ところどころに開いている個所はあるが、ほとんどが埋まっていた。
(アイネ)「ハウンゼン家が集めた知識。
『ハウンゼン=レコード』だ。
これが見たかったんだろ?」
(´・ω・`)「はい」
('A`;)「(えーーーー)」
(;^ω^)「(ショボン)」
ξ゚⊿゚)ξ「(この男)」
川 ゚ -゚)「(これが吉と出るか、凶と出るか)」
.
-
(アイネ)「ホントに度胸があるね。
そういうやつは嫌いじゃない」
ニヤッと笑ったアイネに笑顔で返すショボン。
('A`)「(どういうフラグなんだ?)」
( ^ω^)「(ショボンすごいお)」
ξ゚⊿゚)ξ「(うまくいきやがった)」
川 ゚ -゚)「(吉と出たようだな)」
(アイネ)「といっても、今お前達が読めるのはこの辺りだけだろう」
アイネが扉の近くの本棚に向かい、一冊の本を出した。
そしてそれをショボンに渡す。
(´・ω・`)「【はじまりの街】」
('A`)「この街の名前だな」
表紙に書かれた文字を読んだショボン。
開くと、そこには目次があった。
(´・ω・`)「これは……もしかしてクエストリスト?」
('A`)「なに!」
慌てて横から覗き込むドクオ。
そして目を輝かせた。
('A`)「うを!まじか!」
ξ゚⊿゚)ξ「クエストリスト?」
( ^ω^)「クエストっていうのは、
街や外にいるNPCから請け負うことの出来るアルバイトみたいなものだお。
街の中での簡単なお使いから、外に出て採取したりモンスターを何匹か倒したり、
あとは中ボスクラスのモンスターを倒すなんてのもあるお」
.
-
川 ゚ -゚)「クエスト……か。
それで、あの本にはそのリストが載っているのか?」
( ^ω^)「みたいだお。
通常は自分でNPCに声をかけて探さなきゃいけないから、
リストがあればすごく楽になるお」
ξ゚⊿゚)ξ「攻略本みたいって事?」
( ^ω^)「おっお。少し違うけど、そんな感じだと思ってくれていいお」
川 ゚ -゚)「なるほど。
それであんなにドクオが喜んでいたわけだな」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、なんかテンション下がってない」
三人の視線の先、先ほどまで目をキラキラさせていたドクオが目に見えて項垂れていた。
('A`)「クエストタイトルしか書いてねーじゃん」
(´・ω・`)「どこで請け負えるかも書いてあるよ?」
('A`)「まあそれは少しは役に立つけどさ。
攻略方法はともかく内容も書いてないとか……」
(アイネ)「当たり前だ。
冒険者なら、冒険者らしく自分で埋めるんだね」
('A`)「そりゃそうだけど…」
棚の二冊目を手に取るドクオ。
その本の表紙には【ホルンカ】と書かれている。
('A`)「街ごと有るんだな」
本を開くドクオ。
しかし、今度はクエストネームも書かれておらず、目次には数字だけが並んでいた。
('A`)「……名前も無いとか」
.
-
(´・ω・`)「行くことは出来るけど、
行ったことが無い街の本は見られるけどクエストネームすら分からない。
っていうことかな?
それにほら、この棚の本は出す事も出来ない」
違う棚の本に手をかけるショボン。
しかし出す事すらできない。
('A`)「この部屋、意味あるのか?いやない」
(´・ω・`)「そう?
自分で記録を取ることを考えたらかなり楽だよ?」
('A`)「そりゃそうだけどよ」
(´・ω・`)「それに、ヒントもある。
例えばこのはじまりの街の本。
ここ、ナンバーは書いてあるけどクエストネームは書いてない。
つまり、隠しクエストがあるってことだよね。多分」
('A`)「!なるほど。
隠しが有るか無いかが分かるだけでもかなりの手間が省ける……か?」
(アイネ)「自分の力で埋めることが出来れば、
それは歴史であり、経験であり、知識であり、糧となる。
そして、それ以外にここに来ればいいことがあるかもしれんぞ。
私を始め、ハウンゼンの者は知識や話が好きだからな」
(´・ω・`)「そうですね。ここの本をすべて埋められるよう頑張ります」
(アイネ)「頑張ってくれ。
といってもそれだけじゃ、折角ここに一番最初に来たのにつまらんだろう」
そう言いながら懐から一冊の本を取り出し、ショボンに渡した。
(´・ω・`)「……【アインクラッド】?」
.
-
(アイネ)「このアインクラッドの成り立ちと歴史をしたためた本だ。
その本を受け継ぐことが『ハウンゼン家』の当主たる証だから
やることは出来ないが、ここに来ればいつでも読ませてやろう」
(´・ω・`)「ありがとうございます」
(アイネ)「さて、そろそろ夜も更けてきた。
お前達、今夜の宿はとってあるのか?」
(´・ω・`)「いえ……」
アイネに促されて部屋を出る五人。
そして向かいのドアを開けたアイネが、そこに五人を通した。
(´・ω・`)「ここは……」
('A`)「βの時より豪華だ」
ξ゚⊿゚)ξ「なかなかね」
川 ゚ -゚)「居心地が良いな」
一階の最初に通された部屋が嘘のような部屋だった。
中央に置かれたソファーセットは大きさこそ先ほどの部屋のもとの同じだが、
見ただけで格段に良いものであるのが分かる。
部屋には他にも暖炉や燭台があり、天井には小さいがシャンデリアまである。
壁沿いには水差しの置かれたテーブルや棚などが備え付けられていた。
(アイネ)「三日くらいなら、ただで泊めてやろう」
('A`)「(ここでこのルートか……)」
(アイネ)「実はお前達が来る前に玄関にいたずらをされてな。
冒険者がいると分かればいたずらする奴もいないだろう」
ドクオを見ながらアイネが話す。
思わず視線を逸らしたドクオを見て、唇の端で笑った。
(´・ω・`)「いえ、払わせてください」
.
-
('A`)「え?ショボン?!」
(アイネ)「……どういうことだい?」
アイネの表情から笑みが消え、
冷たくショボンを見下ろす。
(´・ω・`)「今はやられてはいないのかもしれませんが、
おそらくここは宿屋をされていたのではありませんか?」
(アイネ)「ああ。そうだ」
(´・ω・`)「でしたら、ちゃんと料金は徴収してください。
【ハウンゼン=レコード】を読みに来る度に泊まらせてもらうわけにもいきませんし、
これからあの部屋を使わせていただくにあたって、
出来るだけ対等でいられるようにさせていただきたい」
('A`)「お、おい……」
(アイネ)「悪いがこの部屋は、というよりこの宿はもともと特別室のみでね。
どの部屋もこの街の通常の宿屋とは格も桁も違う。
あんた達に払えるとは思えないよ」
(´・ω・`)「では、外に宿を取ります。
この本を読む間、一時間ほど先ほどの
【ハウンゼン=レコード】の部屋をお貸し願いますか」
冷たく見下ろすアイネと、臆することなく対峙するショボン。
数分誰もしゃべらずその状態が続き、
ドクオが意を決して話しかけようと口を開こうとしたその瞬間、
アイネが大きな声で笑い始めた。
('A`)「(へ?)」
(アイネ)「意地っ張りなやつは嫌いじゃない。
しかもこのアイネさんに、
元宿屋ギルド総元締めのアイネ=ハウンゼンに意地を通すとは、
気に入ったよ。あんた」
.
-
心底面白そうに笑っているアイネ。
(´・ω・`)「では……」
(アイネ)「だが、あたしにも意地はある。
気に入った奴から宿代を貰うなんて、
アタシの名に傷が付くからね。
しかも他の宿に行かれたなんてことは以ての外だ。
絶対にここに、ただで泊まってもらうよ」
(´・ω・`)「……」
(アイネ)「明日、用事をいくつかこなしてくれ。
それが宿代ってことで良いだろう」
(´・ω・`)「用事ですか?」
(アイネ)「もちろん、今のあんた達にできるレベルでだよ。
今回はこの街の中で色々とお使いをしてもらうだけさ。
勿論、この先出来ることが増えたら色々やってもらうけどね。
それでどうだい?」
(´・ω・`)「そうですね……」
(アイネ)「女の我儘を笑ってきくのも、男の度量ってもんだよ?」
(´・ω・`)「はい。分かりました」
(アイネ)「よし!成立だ!」
笑顔で右手を差し出すアイネ。
そしてショボンも笑顔でその右手を取り、握手を交わす。
(アイネ)「この部屋はいつでもこれから好きな様に使ってくれ」
五人の耳に、チャイムの様な電子音が響いた。
('A`)「クエスト完了!?」
.
-
(´・ω・`)「え!?」
( ^ω^)「お!?」
ξ゚⊿゚)ξ「どういうことよ」
川 ゚ -゚)「今のは?」
そして続いて同じような、けれど旋律の違う音が彼らの耳に別々に鳴っていた。
(アイネ)「それじゃまた明日朝に待ってるよ」
呆然とする五人に構うことなく、
アイネはもう一冊小さな本をショボンに手渡した。
(アイネ)「これは一番最初に辿り着いた報酬だよ。
大事に使うんだね」
アイネは今日で一番人の悪い笑顔を見せると、部屋を出て行った。
('A`)「ショボン、それは?」
(´・ω・`)「【アイネの手帳】」
川 ゚ -゚)「アイネの手帳?」
小さな本を開くショボン。
最初の数ページに幾つかの文章が書かれており、
その次のページには数字の羅列が書かれ、
その先のページは空白だった。
.
-
(´・ω・`)「これも基本的にはクエストを記録する手帳みたいだね。
多分明日の『依頼』を筆頭に、
彼女から請け負うクエストでこれを埋めていくんじゃないかな。
そして、最初のページに幾つか書いてあるよ。
この手帳を持って来た者は、
【アイネ=ハウンゼンの宿】を無料で使うことが出来る。
多分ここがその宿なんだろうね。
ただし、継続利用は最長七泊八日。
使用した後は、その直前に継続宿泊した日数分利用することは出来ない。
つまり最大泊数の一週間泊まったら、その後一週間は泊まることは出来ないってことみたい。
この手帳を持っている者は、【ハウンゼン系列の宿】に泊まる際に、
宿ごとのサービスを受けることが出来る。
この手帳を持っている者は、【ハウンゼン系列が売る建物】を購入する際に、
手帳を埋めている率に相応した割引価格で購入することが出来る。
他にもいろいろ書いてあるけど、
【ハウンゼン家】はアインクラッドで宿屋とか不動産業を営んでる、
大富豪って感じなのかな。
この手帳はハウンゼン系の店で使える割引パスポートってことみたい」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、結構お得ね」
川 ゚ -゚)「うむ。役立ちそうだな」
('A`)「……」
(;^ω^)「……」
渡された手帳の内容を読んだショボン。
ツンとクーは部屋のソファーの座り心地を確かめながら素直に思ったことを口にしている。
川 ゚ -゚)「?どうした?二人とも呆けた顔して」
ξ゚⊿゚)ξ「締まりの無い顔が更にぼんやりしてるわよ」
(´・ω・`)「どうしたの?」
ショボンもソファーに腰掛け、
ツンとクーの二人とかけ心地について話しはじめても、
二人はぼんやりと立ちつくしていた。
.
-
(;^ω^)「……」
('A`)「……」
(´・ω・`)「ホントにどうしたのさ二人とも」
(;^ω^)「おーー……。
ねえドクオ、あの手帳って……」
('A`)「ああ。おそらく超レアアイテムだ」
(´・ω・`)「ふーん。そうなんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、珍しいアイテムなの?」
川 ゚ -゚)「ふむ。まぁ全員がこんなのを持っていたら、
宿屋の商売はあがったりだな」
ξ゚⊿゚)ξ「それもそうね」
(´・ω・`)「そうだね。
商売にならないかも」
笑う三人をよそに、ドクオとブーンの表情は更に強張る。
('A`;)「っていうか、超レアアイテムなんてレベルを超えて、
武器で言うところの魔剣クラス、
いや、多分、伝説級(レジェンダリー)……」
(;^ω^)「伝説級武器(レジェンダリー・ウエポン)ならぬ、
伝説級アイテムかお?」
('A`;)「……サーバーに一個しかないやつかも。
さっきあの人【一番最初に辿り着いた報酬】って言ってたよな」
(;^ω^)「うわぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「さっきから何ぼそぼそ話してるのよ。
このソファー座り心地良いわよ。
座ったら?」
.
-
川 ゚ -゚)「レジェンダリー?伝説級?
その手帳がそんなにすごいのか?」
('A`;)「凄いなんてもんじゃない。
……多分」
(;^ω^)「サーバーに、この世界に一つしかないアイテムかもしれないんだお」
ツンの隣に腰掛けるブーンと、一人用のソファーに腰掛けるドクオ。
テーブルの上に開かれた手帳をこわごわ覗き込む。
(´・ω・`)「レアアイテムかなとは思ったけど、これってそんなに凄いの?」
('A`;)「多分な。
規格外だろ。こんなの」
(; ^ω^)「さっきも言ったけど、
もしかすると世界に一つだけのアイテムかもしれないんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「ふーん」
川 ゚ -゚)「ほお」
('A`)「……相変わらず感動薄いなおい」
ξ゚⊿゚)ξ「まだそんなに恩恵受けてないし」
川 ゚ -゚)「実感が湧かないな」
('A`)「そうですか」
(´・ω・`)「あとさ、なんかレベル上がってるんだけど」
('A`)「え?あ、さっきの音!」
ウインドウを開いていたショボン。
慌ててドクオが開き、残りの三人もそれぞれに開いた。
.
-
('A`)「……レベル2。
っていうか、もうすぐ3?
なんだこれ……チートすぎる」
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、レベル上がったから一緒に行けるんじゃない?」
('A`)「え?ああ……。いや、ダメだ。
レベル上げってのは、戦闘の経験を積むってことでもある。
いくらレベルが上がっても、経験が無いのは恐い」
ξ゚⊿゚)ξ「そう……」
( ^ω^)「頑張ってくるから、待っててほしいお」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。頑張ってね。
絶対戻ってきなさい」
( ^ω^)「はいだお!」
川 ゚ -゚)「それで、結局なんだったんだ今のは」
('A`)「おれがβの時には、
部屋をただで借りるための隠しイベントだったんだ。
まさか、こんな事になるなんて」
(´・ω・`)「もともとそうだったけどテストのときは隠していたのか、
正式サービスに際して変わったのか……」
川 ゚ -゚)「こういったイベントをするとレベルが上がるのか?」
('A`)「イベントやクエストでも経験値は入るけど、
ここまで入るのは……。
まあ今回のも、本当はもう少し経ってからクリアされるのを想定していたかもしれないな。
ある程度レベルが上がってからなら、
この量の経験値が加算されても簡単にレベルが上がったりしないだろうし」
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、明日頼まれるお使いをちゃんと出来れば、
また経験値が入るかもしれないのね?」
.
-
('A`)「そうか。そうだな。可能性はある。
宿代の対価だから、お金やアイテムは手に入らないだろうし」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ私達もやるからね?ショボン」
(´・ω・`)「……うん。分かった」
('A`)「大丈夫だろ。
街の外に出さえしなきゃ」
川 ゚ -゚)「ああ。気を付けるよ」
(´・ω・`)
( ^ω^)「お?ショボンどうしたんだお?
また難しい顔して」
ξ゚⊿゚)ξ「ダメだって言ってもやるわよ?」
(´・ω・`)「いや、それは一緒にやろう。
安全にレベルを上げられる可能性があるなら、やっておいたほうが良い。
経験も大事だけど、レベル、最大HPを上げられるチャンスを逃す手は無いからね」
( ^ω^)「じゃあどうしたんだお?」
(´・ω・`)「ドクオ、こういったβテストから変更ってのはよくあるのかな?」
('A`)「ん?ああ、そうだな。結構ある。
行けないところが行けるようになったり、クエストが増えたり。
今回みたいに分岐が増えたり」
(´・ω・`)「敵は?」
('A`)「敵?」
(´・ω・`)「見た目は同じモンスターだけど、動きが変わったり、
弱点が変わったり」
('A`)「!あ、ああ。そうだな。ある。…ああ、あるな。うん」
.
-
(´・ω・`)「それじゃあ、」
('A`)「ただ、ここ周辺のモンスターと、
次の街に行くまでの道すがらのモンスターは大丈夫だと思う。
まだ武器を持つタイプは出てこないから攻撃のバリエーションも少ないし。
もし出没モンスターが変わっていたら、一度撤退するよ」
(´・ω・`)「うん。気を付けて」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、ドクオ……」
( ^ω^)「大丈夫だお。
頑張ってくるから、ツンとクーもクエスト頑張って!」
川 ゚ -゚)「ああ」
ξ゚⊿゚)ξ「まったく、能天気なんだから」
( ^ω^)「おっおっ」
('A`)「さて、じゃあそろそろおれ達は行くか」
立ち上がるドクオ。
続いてブーンが立ち上がり、
自然と残りの三人も立ち上がる。
('A`)「見送りは良いぞ。
外に出ないほうが良いだろ?」
(´・ω・`)「うん……。
ドクオ、一つお願いがある」
('A`)「ん?」
(´・ω・`)「出来るだけβテスターだってことが周りに知られないようにしてくれ」
('A`)「?ああ、わかった。
でも、何故だ?」
.
-
(´・ω・`)「……長くなるし、杞憂で終わる可能性もある。
……戻ったら説明するよ、だから」
('A`)「わかったよ。
おまえが言うなら隠しておいたほうが良いんだろう。
気を付ける」
(´・ω・`)「うん。よろしく」
ξ゚⊿゚)ξ「……いってらっしゃい」
( ^ω^)「行ってくるお」
川 ゚ -゚)「二人とも、気を付けて」
('A`)「ああ」
互いの顔を見て頷きあう五人。
そしてせめて下まで行こうとする三人をドクオが制し、
ドクオとブーンだけが部屋を出て行った。
扉のしまる音がツンの胸を苦しめ、
クーの心に不安を呼び、
ショボンに後悔を覚えさせた。
けれど三人はそれを外には出さず、
しばらくの間しまったドアを見つめていた。
.
-
おつとおむつ、ありがとうございます。
以上、今回の投下を終了します。
次回、『3.武器』
また、よろしくお願いします。
ではではまたー。
.
-
乙
>>452辺りのドクオとブーンの気持ちすげえわかるわ
-
おつー!
-
おつおつ
-
そんなレアなアイテム持ってて大丈夫なんかな・・
-
乙です
現実世界もいいけどやっぱゲームに入るとおもしろい
次の更新まってます!
-
それでは、投下を開始します。
今日もよろしくお願いします。
.
-
3.武器
.
-
『はじまりの街』から『ホルンカ』への道。
最短ルートではないが、
ドクオ曰く『モンスターがそれほどでない道』とのことだった。
('A`)「ブーン、片手剣の良さって、なんだと思う?」
( ^ω^)「お?」
ドクオが指示した通りに進んできたブーン。
立ち止まり、道すがらの大樹の下に隠れている二人。
ブーンはやってきた道を、一目散に駆け抜けた道を振り返る。
そこには四体の狼がいた。
闇に浮かぶ赤い八つの光、瞳と思われるその光を見て、
思わず身震いした時に、ドクオに問いかけられた。
( ^ω^)「だいたい初期装備とか主人公は片手剣だおね。
良さ……。良さ……。良さ……」
狼を気にしながらドクオと喋る。
('A`)「大丈夫だ、この場所は後ろの奴には縄張り外だから。
あと一分くらいで叢に戻る。
そしたらこの先に一匹狼が出る。
それは倒そう。
そこでは、順調に倒すことができれば、
倒した後に次の奴が出てくるはずだ。
ここで少し経験を積む」
( ^ω^)「わかったお」
('A`)「で、なんだと思う?」
(;^ω^)「おー。使いやすいのかお?」
.
-
('A`)「それも一つだな。
片手で持って、手の延長線上の流れで攻撃することが出来る。
でも、それは一番じゃないと、おれは思う」
( ^ω^)「じゃあなんだお?」
('A`)「もう片方の手に盾を持てる」
( ^ω^)「おお!そうだおね」
('A`)「剣と盾、攻撃と防御を一つずつもてるんだ。
センスは必要だけど、かなり美味しいと思う」
( ^ω^)「なるほどだお。
あれ?でもドクオはもってないおね?
僕にも買えって言わなかったし」
('A`)「おれのやりたいスタイルには盾が邪魔なんだよ。
スキルスロットも二つしかないから剣と盾で埋まっちゃうし。
で、ブーン、お前も多分盾は持たないほうが良いと思う」
( ^ω^)「なんでだお?」
('A`)「お前の持ち味のスピードが損なわれる可能性が高い。
盾ってのは、相手の攻撃を受けて防ぐのが基本だ。
でもお前の持ち味がスピードなら、避けることが可能かもしれない」
( ^ω^)「スピード……」
('A`)「ただこれはおれの勝手な意見だ。
やりながらスタイルを決めれば良い。
スキルスロットの数にも限りがあるしな」
( ^ω^)「お……」
('A`)「さ、うしろの狼も去ったし、進むぞ。
まずはおれがやるから、二体目はブーンも参加してくれ」
( ^ω^)「わかったお」
.
-
立ち上がるドクオ。
ブーンも立ち上がり、二人とも剣を構える。
('A`)「いくぞ」
( ^ω^)「おうっ!」
二人は闇に向かって走り出した。
二人が部屋を出た後、少しの間雑談していたが、すぐに沈黙が襲ってしまった。
それを感じ、立ち上がるショボン。
そして壁際に設置された小さいテーブルの上の水差しを確認して、グラスに手をかける。
(´・ω・`)「飲む?」
ξ゚⊿゚)ξ「え。あ、わたしは……」
川 ゚ -゚)「ああ。頼む。
ツンも飲むだろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「え、あ、うん。そうね。よろしく」
(´・ω・`)「了解」
グラスを三つ用意して水差しを手にしようとすると、間違えて指先でタップしてしまった。
するとウインドウが現れた。
(´・ω・`)?
ウインドウを読み、頷いた後操作を始めるショボン。
.
-
そして横の棚からティーセットを出してグラスを片付け始めた。
川 ゚ -゚)?
ξ゚⊿゚)ξ?
クーとツンが見守る中更にいくつか操作をすると、
トレイの上にティーセットを乗せてショボンが戻る。
(´・ω・`)「なんかね、お茶みたいのがあったんだ」
テーブルにトレイを置いた後、二人の前にソーサーにのったカップを置いた。
ほのかに湯気が立っている。
(´・ω・`)「凄いよね。あたたかいよ」
先程までと同じ位置に座ってカップを手にしたショボン一啜りして、呟いた。
それを見たクーとツンもカップを手に取る。
ξ゚⊿゚)ξ「ほんとだ……」
川 ゚ -゚)「うむ。あたたかいな」
口を付けると、表情が和らいだ。
川 ゚ -゚)「……優しい味だな。
ほんのり甘い」
ξ゚⊿゚)ξ「昔飲んだような、初めて飲んだ様な。
不思議な味」
(´・ω・`)「……」
そんな二人を見て表情を緩めたショボン。
(´・ω・`)「さて、今日は疲れたでしょ。
早めに休もうか」
.
-
立ち上がり、奥のドアを開けるショボン。
一つ目と二つ目のドアは寝室のドアで、
三つ目は浴室に続くドアだった。
(´・ω・`)「こっちにはお風呂もあるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「今日はとりあえず横になろうかな」
川 ゚ -゚)「ああ」
ショボンが二回目に開けたドアの中を覗く二人。
セミダブルサイズのベッドが二つあり、リビングと同じ色調の部屋は、
落ち着くことが出来そうだった。
ξ゚⊿゚)ξ「この部屋使うから、入ってこないように」
(´・ω・`)「わかってます」
ξ゚⊿゚)ξ「よろしい」
川 ゚ -゚)「ショボンはまだ休まないのか?」
(´・ω・`)「とりあえずさっきの本を読まないと。
あとあの本の部屋を隅々まで調査したいし」
川 ゚ -゚)「そうか……。
手伝いたいところだが、逆に負担になるだろうから止めておこう。
あまり無理はしない様にな」
(´・ω・`)「うん。ありがとう」
ξ゚⊿゚)ξ「ちゃんと寝なさいよ」
(´・ω・`)「ありがとう。うん。ちゃんと休むよ」
その後明日の事も簡単に決めた後、
ショボンに就寝の言葉を告げてから二人は寝室に入った。
.
-
久々に遭遇した支援
-
部屋に入った後、
それぞれにベッドに腰掛ける二人。
スプリングを確かめた後、
ツンはそのままの姿で横たわった。
ξ゚⊿゚)ξ「不思議な気分。
疲れているから眠れそうだけど、
夢の中で眠る様なものなのかな」
川 ゚ -゚)「体が疲れているように感じるが、
現実世界の体は疲れていない。
本当に変な気分だ」
ξ゚⊿゚)ξ「倦怠感?
だるいとか、精神的に疲労しているっていう。
あれなのかな。
それが、身体の疲れのように感じているのかも」
川 ゚ -゚)「……そうか。着替えが無いんだな」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
川 ゚ -゚)「汚れたりしているわけではないが、服は脱がないとじゃないか?
特に防具はそれなりにごわごわしているというか……」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、うん。そうね。
この革のやつ、外さないとか。
普通に脱ぐのとは違うのよね」
川 ゚ -゚)「ああ。多分ウインドウで操作るんだと思う」
腰掛けたままウインドウを開くクー。
そして操作をすると、そのままの体勢で胸当てと腰回りの装備品が消える。
川 ゚ -゚)「ふむ。普通に脱ぐよりは楽だな。たたまなくてよい」
ξ゚⊿゚)ξ「何言ってるのよ」
.
-
横になったまま、天井を向いたままウインドウを操作するツン。
胸当て、腰の装備が消える。
そしてそのまま布の衣服も全て消した。
川 ゚ –゚)「ツン?」
下着姿になったツンを見て首をかしげるクー。
ξ゚⊿゚)ξ「……パジャマとか欲しいな。
売ってるのかな。そういうの」
川 ゚ -゚)「どうだろうな。自分で作る事も出来るらしいぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「私の家庭科のレベルは知っているでしょ」
川 ゚ -゚)「こちらの世界ではスキルが全てだ。
裁縫スキルさえちゃんと持っていれば色々作ることが出来るらしいぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ針とか糸とか自分で縫ったりしなくていいの?」
川 ゚ -゚)「そう思われる」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなんだ。やってみようかな」
川 ゚ -゚)「そうしたら私の分も作ってくれ」
ξ゚⊿゚)ξ「りょうかーい」
白い下着姿のまま掛け布団に包まるツン。
川 ゚ -゚)「何をしているんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「へへへ。ふかふかで気持ち良いよ」
川 ゚ -゚)「まったく」
胸当てや靴といった『装備』のみを解いたクーが立ちあがり、
扉の横のパネルをタップする。
.
-
タップするごとに部屋の光が少しずつ暗くなった。
川 ゚ -゚)「ツンは、真っ暗はいやだったな」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。ありがと」
壁の燭台だけが、ぼんやりとしたオレンジの光で部屋を満たした。
自分のベッドにもぐりこむクー。
何度か寝返りをうった後、ウインドウを出した。
川 ゚ -゚)
小さな電子音が響く。
ξ゚⊿゚)ξ「脱いだ方が気持ち良いでしょ」
川 ゚ -゚)「うむ。
素肌にシーツの感触と毛のもふもふ感が直接当たって、
不思議な気分だ。
ツンも普段はパジャマだよな?」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。パジャマ。クーは浴衣?」
川 ゚ -゚)「寝間着だな。
だが最近はスエットにした」
ξ゚⊿゚)ξ「変えたんだ」
川 ゚ -゚)「楽だな。あれは」
ξ゚⊿゚)ξ「女の子なんだから、可愛いのにしなさいよ」
川 ゚ -゚)「上下グレーではダメか?」
ξ゚⊿゚)ξ「女子力低いので却下です」
川 ゚ -゚)「ピンクはあまり好きではないんだがな」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「ピンク以外にもオレンジとか花柄とかあるでしょ。
クーは明るすぎない赤が似合うから、そんな感じのにするように」
川 ゚ -゚)「……善処しよう」
ξ゚⊿゚)ξ「まったく」
それぞれに掛け布団に包まって会話をする二人。
言葉だけを抜き出せば取りとめのない『普段の』会話。
だがそこに流れる感情は、『普段』とはかけ離れていた。
そして沈黙が訪れる。
隣のベッドの上の友人が身じろぎ一つしないのを感じて、
クーは瞳を閉じた。
ξ゚⊿゚)ξ「寝た?」
川 ゚ -゚)「いや」
ξ゚⊿゚)ξ「そっち、行って良い?」
川 ゚ -゚)「ああ」
閉じると同時に声をかけられ、返事をした。
そして瞳を開けた時には、隣に友人が潜り込んできた。
ξ゚⊿゚)ξ「……ごめんね」
川 ゚ -゚)「いや、大丈夫だ。
セミダブル程度の広さがある」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、そうじゃなくて」
川 ゚ -゚)「それとも何か?私と二人では狭いとでも?」
ξ゚⊿゚)ξ「もう……」
.
-
寄り添うように横たわる二人。
お互いの肌が触れ、自然に繋がれる手。
二人は自他ともに認める親友だが、
性質からべたべたとする方ではない。
同じ格好をして手を繋いで繁華街を歩く女同士を見て
『バカみたい』
と同時に思う程度には冷めていて、気もあっている。
だが、今日は違った。
強く握られる手。
ξ゚⊿゚)ξ「なんか、変なことになっちゃったね」
川 ゚ -゚)「ああ」
ξ゚⊿゚)ξ「デジタルの世界。
ハイテクノロジーの成果。
ゲームの中」
川 ゚ -゚)「ああ」
ξ゚⊿゚)ξ「そう、ゲームの中なのよね。
敵を倒してレベルを上げて、
自分を鍛えて更に敵を倒す。
ゲームの世界」
川 ゚ -゚)「そうだな。ゲームの中。
ゲームの世界だ」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、遊びじゃなくなっちゃったんだね」
川 ゚ -゚)「遊んで、勝って、負けて、終わって、帰って、
『楽しかった』って笑うことが、出来なくなってしまった」
ξ゚⊿゚)ξ「ゲームだけど、遊びじゃない。
命がけのゲーム」
.
-
川 ゚ -゚)「武器で敵を倒さなければ、自分が死ぬ。
現実世界の自分が、死んでしまう」
訪れる沈黙。
クーは自分の手を握るツンの手が強くなったのを感じた。
そして彼女が自分に向かって寝返りをうったのを感じ、
なんとなくツンの方向に身体を向けた。
川 ゚ -゚)!
ξ ⊿ )ξ「……ごめん」
つないでいた手が解かれた。
そしてそのかわりにツンの両手はクーの背中に回された。
ξ ⊿ )ξ「ごめん……」
謝りながら、クーに抱きつくツン。
下着越しに互いの体温を感じる。
川 ゚ -゚)「ツン……」
ツンの名を呼び、自分の胸に顔をうずめる彼女の体と頭を抱える様に両手を回すクー。
川 ゚ -゚)「こんな状態になったんだ、私も心細い」
ξ ⊿ )ξ「違うの……」
川 ゚ -゚)「ツン?」
ξ ⊿ )ξ「わたし、いっしゅん、しょぼんのせいだって、思った」
川 ゚ -゚)!
クーに抱きつくツンの腕の力が強くなる。
ξ ⊿ )ξ「わたし、いっしゅん、ショボンに言われる前にそういう風に思っちゃった」
.
-
川 ゚ -゚)「ツン……」
ξ ⊿ )ξ「そして、ショボンが自分のせいだって言った時に、
本当に、本当に一瞬だけど、『その通りだ!お前のせいで!』
って思ったの」
川 ゚ -゚)
ξ ⊿ )ξ「でも信じて!本当に一瞬なの!
すぐにそんなの違うって思ったの!
ここには自分の意思で来たんだって、分かってた!
でも、でも、でも……ごめん……」
川 ゚ -゚)「そんなこと、思って当然だと思う」
ξ ⊿ )ξ!
川 ゚ -゚)「ただ私や、ドクオや、ブーンは、
ツンよりはショボンと付き合いが長いから、
そんな風に思わなかった。
それだけだ」
ξ ⊿ )ξ「ちがう……」
川 ゚ -゚)「あとな、私は……。
そしてきっと、ブーンやドクオも、ショボンの言葉に安心したんだ」
ξ ⊿ )ξ「え?」
川 ゚ -゚)「ショボンは、私達を生きて向こうの世界に戻すと言った。
あいつは不言実行でもあるが、それ以上に有言実行だ。
一度言ったことは、何としてでもやり遂げる。
だから、あいつがそういうなら大丈夫だろうって思ってしまったんだよ
ξ ⊿ )ξ「信頼しているのね」
.
-
川 ゚ -゚)「そんな良いもんじゃない。
私に限って言えば、結局甘えてしまっているんだよ。
あの日、あの土手で私に『qoo』のオレンジを手渡して泣き止ませた後、
要領を得ない私の言葉を組み立てて家まで連れて帰ってくれたあの日のショボンに、
私はまだ甘えているんだ。
あの日繋いでくれた手の温かさに、
私はまだ甘えてしまっているだけなんだ」
ξ ⊿ )ξ「クー」
川 ゚ -゚)「だから、ツンの持った感情の方が当たり前で、当然なんだ。
おそらく、自分を責めているショボンの心もな。
無条件であいつを信じている、
一瞬たりともあいつを責めなかった私達の方が、異常なんだ。
だから、ツンは気にしなくていい」
ξ ⊿ )ξ「でも……でも……」
川 ゚ -゚)「それにツン。
私はツンに感謝しているんだ」
ξ ⊿ )ξ「え?」
川 ゚ -゚)「ツンが言ってくれなかったら、
ショボンの事を信じるだけの、
その言葉にただ従う人形のようになってしまっていたかもしれない」
ξ ⊿ )ξ「クー」
川 ゚ -゚)「それではいけないんだ。
それでは、全ての責任をショボンに押し付けているのと変わらないんだ。
ショボンを頼るのと、すべて任せてしまうのは違う。
自分の事は自分で考える。
ショボンに頼るのはそれからなんだ。
それに頼ってしまうのはショボンだけじゃない。
ドクオにも、ブーンにも、そしてツン」
ξ ⊿ )ξ!
.
-
川 ゚ -゚)「ツンに頼ることだってある。
そして、私はみんなに頼ってもらえるようになりたい。
クーに任せておけば大丈夫だって言ってもらえるようになりたい」
ξ ⊿ )ξ「……クー」
川 ゚ -゚)「今はまだこの胸を貸すことくらいしかできないが、
これからは他の事でも頼られたいよ」
ξ ⊿ )ξ「クー……」
川 ゚ -゚)「それに、私が辛くなったら貸してくれるだろ?」
ξ ⊿ )ξ「!うん!」
川 ゚ -゚)「その薄い胸を」
ξ ⊿ )ξ「…………」
川 ゚ -゚)「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「どうせ薄い胸ですよ。
っていうかなんなのよこの胸は!
体触る時にずるしたんじゃないの!」
川 ゚ -゚)「いや、現実世界より少し小さい気がするんだが……」
ξ゚Д゚)ξ「なんだとーーー!」
その豊満な胸に顔をうずめたまま、更に奥に進むように顔を横に振るツン。
川 ////)「つ、つんやめろ」
背中に回していた手を解き、両手で胸を外側から揉むツン。
親指や人差し指が時折小さな突起に触れるが、
優しく柔らかく、時に強くその柔らかくて白い胸を揉むので夢中であまり気にしていない。
川 ////)「つ、つん」
.
-
ξ゚Д゚)ξ「ここがいいのか!
ここがいいのか!
でかい胸しやがってこの女!」
川 ////)「つ、つん」
押し退けようとしたクーの手がツンのお椀型の胸を包む。
ξ////)ξ「んっ!」
クーの、女性としては少しだけ大きめの手で優しく包める大きさではあるが、
その柔らかさと弾力は見事なものだった。
クーの甘い吐息に紛れ、
ツンの口からも色付いた息が漏れた。
川 ////)「な、なんだツンはこういう風にされたいのか?」
ξ////)ξ「ちょ、ばか、やめなさいよ」
親指の先で突起を弾いた後に下から優しく揉み上げ、
谷間を強調する様に両サイドから押さえる。
川 ////)「ど、どうだ?」
ξ////)ξ「ば、ばか……。こっちだって……」
川 ////)「んっ…」
ξ////)ξ「あっ」
川 ////)「そ、そこは……」
ξ////)ξ「だ、だめ……」
互いの胸や体を弄り始めた二人。
その攻防は、数分後転がった二人がベッドから落ちるまで続いた。
.
-
ベッドから仲良く落ちた二人が我に返り、
互いの顔を見た後笑いあったころ、
隣の部屋ではショボンがダーツをしていた。
(´・ω・`)「……」
灯りの落とされた部屋の中で、
右手で構えた矢は青白く光り輝いている。
(´・ω・`)!
記憶の中の見様見真似だが様になっている姿勢で投げられた矢は、
吸い込まれるように的の真ん中に刺さった。
左手に持っていた別の矢を構えるショボン。
(´・ω・`)「まずは知識。
調べられることは、すべて調べる。
知れることは、すべて知る。
情報は、力だ」
投げられた矢は、青白い光をまとって的に刺さった。
(´・ω・`)「効率よく、力を手に入れる。
少しのことでは死なない体。
能力を身に付ける。
生きるための、力を身に付ける。
それぞれの特性に合致した、それぞれの力。
一人が最強になる必要はない。
いや、『最強』になんてならなくていい。
生き残るための、生き続けるための力があればいい」
二人が部屋に入った後に改めて室内を調査した際に見付けたダーツセット。
二十本の矢は、すでに半数が投げられていた。
.
-
(´・ω・`)「お金の単位はコル。
モンスターを倒せば手に入るけど、それを目的に戦うのは避けたい。
戦いは、自分を鍛えるためだけでいい。
生きるための力を手に入れるためだけでいい。
アイテムを売って稼ぐなら、
売る相手は価格を設定できるプレイヤーの方が最終的には儲けることができるはず
採取、宝箱、ドロップ品よりも、
自分で作って売ったほうが価格をコントロールできる」
呟きとともに手から放れる矢。
寸分の狂いもなく狙った場所に当たっていることは全く意識せず、
自分の思考の中に入っているショボン。
(´・ω・`)「需要と供給。
自分たちにとって必要なもの。
他のプレイヤーにとって必要なもの。
武器、防具、装備、アイテム、生活用品。
おそらくは、武器や防具、装備にアイテムは手に入りやすいはず。
ゲームとしての必需品は、低層階からも準備されているはず。
でも、『生活』のための品はそれほどではないはず。
けれど、これからここで『生活』するのならば、
戦い以外の『遊び』が重要になってくる」
構えた矢の放つ青白い光が部屋の中を飛ぶ。
(´・ω・`)「死なないこと、生きることは考えるまでもない。
その先にある、ここで生活するということを。
笑顔で、笑うことのできる生活をするためにできることを考えろ。
四人の顔に、笑顔を。
泥水を飲むのは、僕だけでいい。
汚い部分は僕だけが知ればいい。
四人には、笑顔で……」
.
-
《ホルンカ》
始まりの街の隣。
大きさは村と呼ばれる程度だが、
宿屋や武器屋といった基本の設備は整っている。
('A`)「さて、ここが目的の村だけど」
村の門をくぐり、圏内に入ったことを確認してから一息ついたドクオ。
そして振り返った。
('A`)「大丈夫か?」
(;^ω^)「つ、疲れたし危なかったけど、無事に着けてよかったお」
('A`)「だな」
剣を杖のようにして立ち、
肩で息をしている友を見つつ周囲を観察するドクオ。
('A`)「まずは一休みするか」
(;^ω^)「お?大丈夫なのかお?
来る途中の話だと、
このクエストを知っている片手剣使いは
殺到するんじゃないかって言ってたおね」
('A`)「思ったより……というか、
全然プレイヤーの気配がない」
( ^ω^)「そうなのかお?」
('A`)「ああ。
来るのがだいぶ遅くなったから心配だったけど、
ほとんどいないみたいだ」
( ^ω^)「そうなのかお……」
.
-
('A`)「ああ。
来るのがだいぶ遅くなったから心配だったけど、
ほとんどいないみたいだ」
( ^ω^)「そうなのかお……」
('A`)「あれを聞いてすぐ行動に移せたのは、
やっぱり少ないみたいだな。
ショボンがいてくれてよかったよ。
おれ一人だったらここに来る度胸なんて出なかったかもしれない」
( ^ω^)「ショボン……」
剣を鞘にしまい、大きく伸びをしたブーン。
( ^ω^)「ドクオ、行くお」
('A`)「休まなくて大丈夫か?」
( ^ω^)「早く手に入れて、強くなって、みんなのところに帰るんだお」
('A`)「……そうだな」
決意を込めてにっこりとほほ笑んだブーン。
それにつられて笑顔を見せたドクオ。
だがすぐにその笑みは消えてしまった
( ^ω^)「ドクオ?」
('A`)「結局ショボンに頼っちまったんだな」
( ^ω^)「ドクオ」
表情と身振りでブーンを促しつつ歩き出すドクオ。
ブーンも慌てて歩き出し、彼の横に並んだ。
('A`)「この世界でなら、おれがイニシアチブをとれる。
あいつを指導して、かばって、一緒に強くなって、
ショボンにおまえもおれたちを頼ったっていいんだって分からせるつもりだったのに」
.
-
( ^ω^)「ショボンに甘えてばっかりだったおね」
('A`)「ああ。
あいつが、その方が笑顔を見せてくれるから、
まずはそれでって思ってただけなのにな」
( ^ω^)「ショボンはまだ気にしているんだおね」
('A`)「多分。
三つ子の魂百までじゃないけどよ、
小学校でいじめられてたからって、
たまたまそれを気にしないおれ等に会って、
なんとなく一緒に遊ぶようになったからって、
そんなに気にしなくていいのによ」
( ^ω^)「本当に、それだけなのかお」
('A`)「ん?」
( ^ω^)「いや、本当にそれだけなのかなって思ったんだお。
それだけの理由なのかなって」
('A`)「んー。
まあ、いじめが無くなってクラスに馴染みかけたのが小5の途中。
中学校に入る前にはあいつの天才性でまた微妙にはぶられ始めてたからな」
( ^ω^)「中学校に上がる前の春休みに、
本城病院がマシログループの総合病院になって、
ショボンがその子供ってことが広まって」
('A`)「ゴマすって媚びる奴らと、
あからさまに陰口いうやつらばっかりで」
( ^ω^)「私立に通えって聞こえるように言ってたやつもいたおね」
('A`)「いたな。
マジむかついたから、下駄箱にごみ入れといた」
(;^ω^)「ドクオ……」
.
-
('A`)「ツンがあの場にいたらすごいことになってただろうな」
(;^ω^)「初めて学区が違って良かったって思えたお」
('A`)「表立ってのいじめってのは無かったと思うけど、
居心地は良くなかっただろうな」
( ^ω^)「私立に行かなかったのは僕たちと離れたくなかったって本当なのかお」
('A`)「どうだろうな。
おばさんが笑いながら言ってたけど」
( ^ω^)「でも、幼稚園で行ってた私立で持ち上がらなかったのも、
幼稚園でいじめられてたからなんだおね」
('A`)「それも言ってたな。
ま、4歳にして三島由紀夫とか量子力学の本とか読んでたらしいから、
浮いてはいたんだろうけど」
( ^ω^)「それは引く」
('A`)「だよなー」
立ち止まり、互いの顔を見て笑う二人。
('A`)「空気の読み方が大人のそれだったみたいだしな」
( ^ω^)「ショボンにとってはお遊戯とか絵本とか理解の範囲外だったみたいだおね」
('A`)「無理やり合わせても、ダメだっただろうな。
『大人びている』とか言えるレベルじゃないし」
( ^ω^)「見た目は子供、中身は大人」
('A`)「殺人はおきてないぞ」
( ^ω^)「おっおっお」
笑いながら歩き出す二人。
.
-
('A`)「人生経験積んでるわけじゃないから、
あの名探偵ほど子供のふりができてなかっただろうし」
( ^ω^)「本当に子どもなのに子供のふりってのもすごいおね」
('A`)「そういやそうだな」
今度は立ち止まらずに噴き出す二人。
そしてドクオが立ち止まり、ブーンも歩くのをやめた。
目の前には小さな民家。
( ^ω^)「この家かお?」
('A`)「ああ。ここでクエストを受ける。
病気の少女に薬を届けるお使い系だけど、
薬は出現率の低いモンスターからしかドロップできない。
あとでちゃんと話すけど、いろいろ注意点があるから気をつけろよ。
報酬でもらえる片手剣はそのままでも店売りより強いし、
強化次第では3層くらいまで使えるはずだ」
( ^ω^)「わかったお」
('A`)「よし、じゃあ入るか」
扉に手をかけようとするドクオ。
しかしブーンがついてこなかったため、
手をかける前に振り返った。
('A`)「どうした?」
.
-
( ^ω^)「ドクオ」
('A`)「ん?」
( ^ω^)「ぼく、頑張るお。
早く強くなって、みんなのところに戻れるように。
ツンを守れるように。
みんなを守れるように。
……ショボンに頼ってもらえるように」
('A`)「ああ。
おれも頑張る。
頑張るしか、ないんだよな」
決意を込めて頷き合う二人。
そしてブーンがこちらに向かってきたのを見てから、
ドクオは民家の扉を開けた。
《はじまりの街》
日付は既に明日になって数時間経っている。
ショボンは、流れ作業のように手を動かし、
矢を的に当てていた。
(´・ω・`)「どうすればいい……。
どうすればいい……。
みんなを守るには……。
笑顔で過ごしてもらうには……」
既に何度も読んだ本が足元に何冊か置かれている。
先ほどまでは時折思い出したかのように開き、
中を貪るように読んでいたが、
ここ一時間は開くことはなかった。
.
-
(´・ω・`)「まずは今わかっている事実の検証。
僕たちの持つアドバンテージを生かす方法」
先ほどまで青白く光っていた矢は、
今はオレンジ色の光を帯びている。
(´・ω・`)「知識を持つものは妬まれる。
それは、どんな世界でも同じ。
その知識を持たざる者に公平に分配し、
持つ者が持たざる者より不幸にならない限り、
その思いは消えない。
おそらくこの先、βテスターは妬まれ、忌避される。
その仲間である僕らも、その的になる」
ショボンの手から放たれた矢は、
弧を描いて的に刺さった
(´・ω・`)「僕は、僕を、僕自身を見てくれる皆を、
守るためならば、なんだってやる。
誰の命も、僕の命も、気にしない」
手に持った矢は青白く光り、
放たれると同時に光の直線を描きながら的に刺さった。
(´・ω・`)「……きにしない」
意識せずに再び矢を構えるショボン。
しかし手は動かず、オレンジ色の光だけが弱弱しく部屋を照らす。
(´・ω・`)「……父さん……母さん……。
あの爺に何を言われても、頼むから、馬鹿なことはしないでよ……。
……志也兄さん……。
僕達がログインした時にはまだ入っていなかったはず。
このことが報道されるまで何かしらの事情でこちらに来ていなければいいけど……。
……でも、もし……来ているとしたら……」
.
-
手が動き、矢が放たれる。
的に向かって弧を描くオレンジの光。
そして中央に刺さっていた矢に当たった。
二つの矢が、床に落ちる。
初めて、的に当たらなかった。
(´ ω `)「……たすけて」
窓の外では、朝の白い光が街並みを照らし始めていた。
.
-
以上、本日の投下を終了します。
乙と支援、ありがとうございます。
次回、『4.スキル』
よろしくお願いします。
ではではまたー。
.
-
乙
-
ショボンも人の子か…
乙
-
正直本編より今の話が面白いわ
おつ
-
おつおつ
-
おつ!
-
>>494
だからこそのシャキンの存在なんだろうな
-
乙乙
-
人の子だけど真ん中に刺さったダーツに当ててるんだよな…
おつ
-
今思ったんだけど>>398の2023年って一年ズレてないすか
-
おむつー
-
こんばんは。
それでは投下を始めます。
今日もよろしくお願いします。
と思ったら。
あーーーーーーー。orz
>>501 様
ご指摘ありがとうございます。
間違えてますね。
はぁ……orz
脳内修正をお願いします。
それでは、はじめます。
.
-
4.スキル
.
-
アインクラッドに囚われてから三日目の昼、
始まりの街の入り口で五人は合流した。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、ドクオ、無事でよかった」
( ^ω^)「おっお。強くなって帰ってきたお」
('A`)「こいつ頑張ったぞ。もう一人でも往復できる」
川 ゚ -゚)「頑張ったのはドクオも同じだろ。
お疲れさま」
外から手を振ってやってきた二人に駆け寄ろうとするツンとクー。
しかし門の外に出る前にドクオとブーンが慌てて走り始め、
門の中で落ち合うことができていた。
(´・ω・`)「メッセージはもらっていたから無事なのは分かっていたけれど、
顔を見られてやっと安心できたよ。
二人ともお疲れさま」
( ^ω^)「おっお。ショボンもお疲れさまだお」
('A`)「村で飯食べてるときにレベルが急に上がってびっくりしたぞおい」
ξ゚⊿゚)ξ「ふふん。
私たちがこっちで何もしないと思ったら大間違いよ。
ショボンのよみ通り、あの人の指定したクエストは経験値が得られるのが多かったようよ」
(´・ω・`)「パーティー設定してあれば離れていても加算してくれたからね。
最初のクエストでそれが確認できたから、やれるクエストは全部消化したよ」
( ^ω^)「危ない真似はしなかったんだおね」
川 ゚ -゚)「外に出るクエストはショボンがストップさせたからな」
('A`)「それでここで待ち合わせだったのか」
(´・ω・`)「そういうこと。
フラグは立てまくったから、
いまから六つ消化して、できれば今日中、
遅くとも明日の朝には旅立ちたい」
.
-
( ^ω^)「おっお!戦闘は任せてだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「私たちの戦闘訓練でもあるんだから、
あんたたち二人だけ戦っても仕方ないんだからね」
('A`)「ん。了解」
川 ゚ -゚)「だが、ブーンの戦いぶりを見られるのは楽しみではあるな」
( ^ω^)「おっおっお。
見て驚くなだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「……すぐに追いつくからね」
(´・ω・`)「それじゃあ行こうか。
まずは青猪ニ体と、緑猪一体を倒したい」
('A`)「わかった」
それぞれに武器を握り待ちの外に出た五人。
街に残った三人は久し振りの戦闘に少し緊張気味だったが、
帰ってきた二人の落ち着いた身のこなしと指示により、
順調に戦闘を重ねていった。
アイネ=ハウンゼンの宿
消化予定のクエストを消化することはできたが日が落ちてしまったため、
この日もこの宿に泊まることにした。
川 ゚ -゚)「もともとその予定ではあったのだがな」
('A`)「どうした?クー」
川 ゚ -゚)「いや、もっと早くクエストを消化できたら、
今日中に次の町に行きたいとショボンは言っていたなと思ってな」
.
-
('A`)「?ああ。そんなことも言っていたな。
最後にはあいつも戦闘に入れ込んでいたけど」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんとよね。
最初は私とクーが戦うのを後ろでむすっとした顔で見ていたくせして」
リビングでくつろいでいる三人。
ドクオはまだソファーの快適さに慣れていないが、
ツンとクーはゆったりと腰かけている。
('A`)「まあそういうなって。
最初のうち、二人の戦闘はやっぱり危ういところがあったから。
おれとブーンがついてちょうど良い感じだった」
ξ゚⊿゚)ξ「とはいってもねぇ」
ツンに至っては半分横になっているような姿勢で、
ふかふかのひじ掛けに手をのせて、その上に顎をつけて会話していた。
川 ゚ -゚)「うむ。
長刀と槍はやはり勝手が違うし、
剣技も槍としての技だからまだ慣れていないな。
その点でいえば、ツンの方が武器の使い方はうまいんじゃないか?」
あまりの行儀の悪さに隣に座っていたクーがお尻を軽くたたいた。
ξ゚⊿゚)ξ「そう?」
クーの言葉に疑問符を投げかけてから「良いのよドクオは」と言いながらも起き上がり、
テーブルの上のカップに手を伸ばすツン。
('A`)「こいつの行儀の悪さは知ってるから大丈夫」
川 ゚ -゚)「そういう問題じゃない」
ξ゚⊿゚)ξ「変なところで真面目なんだから」
.
-
川 ゚ -゚)「ブーンに嫌われるぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「な、なんでそこでブーンの名前が出てくるのよ」
('A`)「ブーンも知っているから大丈夫だ」
川 ゚ -゚)「さすがは幼馴染ということか」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンといえば、あの二人も遅いわね」
('A`)「そうか?
どうせブーンが寄り道してるんだろ」
視界の左上を気にしながらドクオが答える。
そこにはパーティーメンバーの名前とそのHPバーが表示されていた。
川 ゚ -゚)「最初は少しなれなかったが、
便利なものだな」
ξ゚⊿゚)ξ「でも視界が塞がれるわよね」
同じように表示を見る二人。
一番上に自分の名前とHPバー。
その下に友達四人の名前と対応するHPバーがあり、
今近くにいない二人のHPが満タンのまま動いていないことを確認した。
('A`)「非表示にもできたはずだけどな。
あと透過率を上げて薄くしたり。
でも出来れば慣れておいてほしい」
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり?」
('A`)「仲間の命綱になるかもしれないからな」
川 ゚ -゚)「だが、五人分でもそれなりに視界を塞がれているから、
これが十人、二十人と増えたら」
('A`)「パーティーは最大六人だから、
増えてあと一人分だよ」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「六人?」
('A`)「そ。
行動を一緒にしたりすることはできるけど、
互いのHPを確認しあえたり戦闘時の効果を分け合えるパーティーを組めるのは、
最大で六人なんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなんだ」
('A`)「クエストやイベントで参加人数が固定されたりしたら
増減する時もあるかもしれないけど、
滅多にないだろうな」
川 ゚ -゚)「それではやはりあの時のショボンは嘘をついたんだな」
ξ゚⊿゚)ξ「そういえばそうね」
('A`)「何かあったのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「昨日お使いクエストをやってるときに、
変な男に声をかけられたのよ。
ちょうどショボンが一人で買い物してて、
私とクーが少し離れたところで待ってた時だったから
ナンパだと思ったんだけどさ」
川 ゚ -゚)「どうせ私たちの容姿に対して
美辞麗句を並べているだけだと思って
全く話しは聞いていなかったんだが、
ショボンが戻ってきたら
『俺も仲間に加えてくれ!』
と言い出したからびっくりした」
ξ゚⊿゚)ξ「そうそう。
朝から後ろを付いてきてたみたいで、
ストーカーかと思った」
川 ゚ -゚)「なんとなく後ろにいるなと思ってはいたが、
どうせまたツンがつけられているんだと思ったんだがな」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「はいはい。
ストーカーもどきのナンパはあんたの方が多いでしょ。
一見清楚系だから」
川 ゚ -゚)「ツンは見た目が派手だから、
とりあえず声をかけてくるようなバカが多いだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうそう。
だから昨日の奴みたいに付きまとう系はクー相手よ。
あーでも、昨日の奴はあの時の奴に似てた感じがする。
ほら覚えてる?駅で待ち合わせした時に声をかけてきたバカ」
川 ゚ -゚)「数が多くて覚えきれない」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、あの時よ。
あんたがなんだかってお寺にお参りに行きたいとか言って
駅で待ち合わせした時に声かけてきたオールデニムでリュック背負った」
川 ゚ -゚)「ああ。あの時のバカか」
ξ゚⊿゚)ξ「似てない?」
川 ゚ -゚)「雰囲気は似ていたかもな」
ξ゚⊿゚)ξ「えー。似てたってー」
川 ゚ -゚)「高岡美咲と結城かなえの区別がつかない者に似ているといわれてもな」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクモの顔なんてみんな一緒よ。
っていうか、ちゃんと見てないし。
着こなし方を参考にしているだけなんだから」
川 ゚ -゚)「たかみーの方は芸能界デビューしたみたいだぞ。
ドラマの出演が決まったとかなんとか書いてあった」
ξ゚⊿゚)ξ「へー。やっぱあの雑誌のドクモはそっちに行くんだ。
そういえば水樹リンダも出身だったよね」
.
-
川 ゚ -゚)「ああ。
芸能界への道になってるな。
ツンも原宿辺り歩いてればスカウトされるんじゃないか?」
ξ゚⊿゚)ξ「興味ないからなー」
('A`)「えっと……いいか?」
二人の脱線した会話に割って入るドクオ。
ξ゚⊿゚)ξ「なに?」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
('A`)「色々と突っ込みたいところはあるんだけどさ、
とりあえずその男とショボンの会話を覚えてる?」
会話を途切れさせられたことは気にせずにドクオを見る二人。
そのドクオの顔はかなり疲れたように見えたが、
二人ともそれに関しても気にしなかった。
川 ゚ -゚)「一言一句覚えているかけではないが、
流れくらいなら」
('A`)「どんなだった?」
川 ゚ -゚)「私たちがクエストを消化しているのを見て、
今のここで既にそんなことをしている人を初めて見た。
仲間に入れてほしい。
そんなことを言っていた」
ξ゚⊿゚)ξ「そしたらショボンが無理って答えて、
でも引き下がらなくて、
結局リアルからの友達で作ったパーティーで
もう入れることはできなとか言って、
何とか諦めさせてたわよ」
('A`)「……ふむ。
そっか……。
ショボンは、驚いてたか?
話しかけられたとき」
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