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( ^ω^)千年の夢のようです
-
9/24(水) 夕方より投下します
よろしくお願いします
前スレ
>( ^ω^)千年の夢のようです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1401648478/
まとめサイト様(以下敬称略)
>ブンツンドー
http://buntsundo.web.fc2.com/long/sennen_yume/top.html
>グレーゾーン
http://boonzone.web.fc2.com/dream_of_1000_years.htm
作品フィールドマップ(簡易)
http://imefix.info/20140922/321215/rare.jpeg
http://imefix.info/20140922/321216/rare.jpeg
-
狭い箱庭の中、
僕たちはやがて来る日を
静かに待っていた。
互いの額をくっつけ合い、
時に血霧まみれた水圧に
無様らしくひしゃげた事もある。
その度に、まだ柔らかな此の身は
再生して元通り…
求められるべき形に矯正される。
それは自我ではなく、
彼女の意志だったのかもしれない。
-
僕たちに与えられたこの箱庭は
極めて不安定な揺り籠だった。
繋がれた管から、触れる水溜まりから、
酸素を吸うたびに。
僕たちはぶつかり合う。
奪い合う、 生命を。
身が千切れるほどに。
そしてまた、再生を繰り返した。
-
本来、この箱庭が正常を許容するには
人数制限があったのではないかと
僕は思う。
では無理矢理に詰め込まれたのは
誰の意志か。 …母か? …それとも父か?
悦び勇んで来るべき未完成な生命を
脅かす…… 子殺し。
そんな状況を作り出す親がいるとは
考えたくない。
人智の及ばない領域ならば、きっと神が
戯れに介入しているのではないか。
…もし戯れでなければ
『神』という存在そのものが
そもそも不完全なのだ。
-
……だからこそ僕は問いたい。
観測者よ。
僕たちはなぜ生まれようとしているのか。
こんなにも歪な箱庭に押し込められてまで。
己は純真に生まれようとしながら
その一方で不純にも相手を殺さなくては
ここから生きて出られない。
もしこれを
神が司るのなら、戯れか、不完全ゆえに。
人が司るのなら、無知か、残酷さゆえに。
ーー そんな世界がもし…、
もしもどこかにあるのなら。
それは生命が始めて
目の当たりにする
地獄と遜色は無い。
-
完全を求めるつもりはない。
存在しないものは掴み取れず、
それ故に生命は完全を求めるからだ。
果たして求めるためには魂が必要になる。
魂のない生命は具現せず、現象もない。
魂は生命にとって、
文字通り『命』となる。
では一つの生命に容れるべき二つの魂が
混在するこの場所では
なにが起こるのか…自ずと解るはずだ。
-
僕たちは奪い合うべくして奪う。
育まれるための礎は一つ分しかないから。
弱肉強食。
座れる席は一つ分しかないから。
僕はそれが当たり前だと思っていた。
彼を押し退け、喰らい続けた。
誰に気付かれる前に芽生えた本能…
与えられた餌を貪る事を、
教えられるまでもなく。
生き物は元来、ある程度の
完成を律して生誕する。
産まれてすぐに立ち上がり、
殻を破り、
親の顔を覚えるよりも先に、
自分が何をするべきかを知っている
-
それに比べて僕たちはいかに
不完全な状態で産まれるか。
教えられることが少なすぎる。
覚えることが多すぎる。
身体の動かし方も、声のあげ方も、
生命を留める息の仕方まで。
すべて産まれてから
覚えなくてはいけないらしい。
食べることだけだ。
栄養を、
この管から注がれる僅かなエネルギーを
滞りなく摂取することだけ……
それが僕たちに与えられた
原始の神託 (オラクル) 。
唯一、何よりも早く、
知るを知る煩悩。
-
幾度傷付いても再生し、
それにより消耗したエネルギーを
栄養から供給する。
需要はない。 一方的だ。
一方的だからこそ、感じるものもある。
でも…そこに僕たちの意思はない。
あるのは餌を放る母の意志なのだと。
僕たちに意思はない。
餌を貪る意志だけがただポツリと。
-
ーー なのに、何故?
(推奨BGM:parting forever)
http://www.youtube.com/watch?v=0PxuRHGbg7A&sns=em
-
……君は弱かった。
そう思っていた。
餌を貪るのはいつも僕だ。
弱肉強食。
僕の方が強いのだと。
この生命に選ばれるのは
僕こそがなのだと、
漠然とした結果が輪郭を現していく。
見えない意志に、
自分が選ばれているのだと
そう感じていた。
-
だが違う、そうではなかった。
・・・・・・・
君は君の意思で…
僕に生命を譲るつもりでいた。
不完全ながらも必死に足掻く僕は
この箱庭で色々なことを吸収してきた。
領域も、栄養も、母の意志も、
ーー そして生命も吸収してきた。
それはすべて、君の魂の上で
転がされていたとも知らずに…。
-
支援
-
元々一つの魂が分かれた僕たちは、
いつしか別の個体として
膝を抱え丸まりながら、
選択の日を待っていた。
僕は貪ってきた。
周りにあるすべてのものを。
そこに意思はない… あったのは、
飽くなき生への渇望。
それは生き物にあるべき欲望。
…生きるのだから当然だ。
君は ーー 最初からそれを手放していた。
-
………。
これをなんと形容するのか、
僕には分からない…。
分かるのは、
彼という魂は僕に生命を譲るために
いま此処にいる
ーー そして
-
間も無く、
この箱庭にも終わりが来る。
僕たちはこれから長い…長い旅に出る。
理は此処とそうは変わりはしない。
弱肉強食。
強いものが生き、弱いものが死ぬ。
《怖 ι Ι 》
僕たちは此処で一つの魂だけを選び
『命』として産まれなくてはならない。
…残された魂は……此処で朽ちるのだ。
-
お疲れさま、 《怖ぃ》
僕のもう一つの魂よ。
さぞ苦しい想いをしただろうか?
……いや、意思なき僕たちに
そんな感情はまだ
芽生えてはいないだろうか?
《怖い》
心残りは、僕のこの思考が
一体何であるのか…それを知りたかった。
しかし、それももうリミットだ。
ほら…箱庭が崩れていく。
脆く容易い僕たちをぐしゃぐしゃにして。
-
支援
読んでるよ
-
この崩壊に君の身体は
きっと耐えられない。
それだけの蓄えを、今日に至るまで
すべて僕に与えてしまったのだから。
再生の糧はなく、
創生の鍵もない。
僕たちがこの箱庭において
楔とする、ずっとくっつけていた額が
離れようとしている……。
嗚呼、君の身体が
崩壊の波に浚われて
光の粒子に変換されていくのだと。
-
これは…
-
《コワイ》ーー。
だから僕は
此処で初めて手放した。
今まで蓄えてきたものを。
今まで奪ってきたものを。
今まで気付かなかった 《 怖 い 》
君の優しさに甘えていた…この魂を。
《恐い》さ。
粒子になるのは僕でいい。《怖い》
賢いふりをして最も愚かだった…
君より弱い僕が此処に残ろう。
《 怖 い …》
-
ーー 。
ああ、そういえば。
僕たちに、
名が付けられていたのを
知らないだろう?
もう触れ合えなくなる記念に
教えてあげる。
……ショボン。
君の優しさは時に決断を鈍らせる。
長い旅の中で…君を強く苦しませる。
-
君が優しさに
押し潰されそうになったなら
意思なき僕という魂を
思い出してくれないか?
君が苦しみに
一人で耐えられなくなったなら
生命なき僕という存在を
思い出してくれないか……。
ーー 君の意志、
僕が奪ってでも、
ひとときでも長く、
君を 生かしてみせる。
それが ーー 僕だけに与えられた
本当の神託 (オラクル) 。
-
でも、根底にあるのは《怖ぃ》れない。
…やはり、こわいんだ、僕。 ……
怖い
出来れば生きたい。
《恐》
生きたい。
生きたい。《怖い》
生き怖い。 生きたい。
き
生きたい、生き い、生きたい、生 ーー
い た イ
い ワ
恐 コ
い 助
よ の け
《やめるんだ》
に て
こ
ーー 生きたい。 わ
い…。
-
48
《生きたかった》
…ショボン、君は強かったんだ。
このとりとめのない
恐怖に打ち克てるほど優しく。
《本当は死にたくない》
消えていく今なら判る。
それとも……
僕のこの生への渇望は
限られた者だけが持つ願望だったのか?
例えばそう、永遠を生きて生きて、
決して消えない
願いが呪いであると
愚かにも気付かないような。
僕が浅ましく餌を貪るその隣で
日々、衰弱していた君は
…怖くなかったのか?
誰にも気付かれず 死んでゆく
自分の消失を 消えてゆく
僕は君のように受け止めてゆきたい。
-
弱肉強食。
僕が言い出しっぺだからね。
本当に強かった君だから、生きてくれ。
さあ、互いに旅立つ時間が来た。
後ろは見るな。 前を向け。
下は向くな。 見上げて歩け。
《さようなら弟よ》
できなかったら… げんこつ::;,,.,..
-
(推奨BGMおわり)
-
------------
〜now roading〜
(´・ω・`) ω・´)
HP / C
strength / C
vitality / D >> B
agility / B
MP / C
magic power / A
magic speed / D >> C
magic registence / D >> B
------------
-
それはブーンが海に落ちたのと同時だった。
天秤から弾かれるように飛び上がったのは
アサウルスが隠していた "触腕" に
蚊蜻蛉よろしく潰されたはずのショボン。
( #´・ω・`) 「…やってくれたね」
水飛沫を蒔いて再度アサウルスの躯へと。
押し潰された傷は見当たらず、痛みを訴える素振りもない。
ξ;゚⊿゚)ξ _3 「 ーー 間に合っていたようね」
ツンが初めに蓄えていた魔導力は
ショボンのダメージを落下の瞬間癒していた。
…結果としてブーンへのフォローは間に合わなかったが、
彼があれくらいでどうにかなるなど思わない。
絶大な信頼と…それでも不安になる気持ちは、
背中合わせにツンの心を足踏みさせる。
( ゚д゚ ) 「…」
(´・ω・`) 「ブーンは?!」
ξ゚⊿゚)ξ
つ∴o 「ブーンもあの触角に!
でもすぐ戻るわ、貴方はアサウルスを!」
叫びながら魔導力を組み直し
【シールド】を発動。
幾何学模様の光の壁がショボンの目の前で
主張するも、やがて透過した。
-
,,
ィ'ト―-イ、 ζ⌒
以`θ益θ以 ζ 《ーー ガゴガガゴ》
ζ((@))((@))
ζ_,
"
アサウルスの巨躯に生えた細い腕が
触手として不規則にうねりをあげる。
やはり元の両腕が再生したわけではない。
(´・ω・`) (無から有を生み出すのは物理的にはあり得ない。
恐らくはエネルギー源があるんだ。
…何を元にしてあんなものを…?)
その時、アサウルスの膝元からも新たに黒い槍が飛び出し、走るショボンの頬を掠める。
また触手…だが痛みはない。
軽く手首を返すだけの小さな動きで、それを切断する。
(´・ω・`) 「…」
剣には血糊もなく、刃が欠けた様子もない。
容易く斬れた触手もそのまま海へと落ちる。
-
バシャァッ
聴こえる距離でも無いのに
重い音が耳に届いた気がした。
それは着水ではなく第三の触手が生まれた音。
先より細いそれを、今度は太股から生やしているのだと認識する前に身体が動く。
目の前の触手は桂剥かれて縦に割れる。
「この程度ならば」
ーー そう口にした直後、
ショボンの見ている世界が薄暗くなった。
(;´゚ω゚`) 「!!」
頭上から逆さまになったアサウルスの顔と、
開かれた顎が間近に迫っている。
全速力で横に翔びそれを避けると
いま居た場所は大きな顋が喰い破る。
……アサウルス自身の太股から。
外殻ごとバキバキと、躊躇なく真っ黒な口の中へとその下半身が消えていく。
噴き出すのは赤い血液ではない。
高粘度の黄ばんだ涎のようなものが辺りに飛び散った。
三 ´・ω・`; )「何やってるんだこいつは?!」
ブーツの裏で踏み締めるアサウルスの躯は岩のように硬く、尖った間接は崖の踊り場となるため足場には困らない。
困らないが……安全地帯とはなり得ない。
ショボンはその要塞の上を渡り移動した。
-
----------
ーー /ヽ゛シャ
ーー バキッ
ーー バキッ
ーー バシャァッ
バシャッ
ーー バ キ バ キ ッ
ξ; ゚⊿゚)ξ 「……」
( ; ゚д゚ ) 「……」
(# ц )
耳に届く数多の外殻の割れる音に、思わず開いた口が塞がらない。
二人の視界で繰り広げられられているのは
咀嚼を行うアサウルスの上半身と、
それに抗いながらも無慈悲に暴れ貪られる下半身。
まるで異なる意思を内包しているかのように。
でなければ役立たずの躯に罰を与える司令塔。
…罪を精算する半身の罰音がこちらまで響く。
ミルナ達の場所からは陰になっているが
音はショボンの鼓膜も震わしているだろう。
雛鳥達が群れをなし、
同胞の生誕を祝うドラムが盛大に叩かれる。
-
ヽ /
γ ζ ζ
以 ζ `θ益θ ζ / :ギュルァアァ…
〜 、ヾ( ( @))((@) ゴアアァァアア…:
〆√ ヽ
∫ V⌒
(;´・ω・`) 「ーー …っ」
上半身を突き破りいづるのは無数の触手…
いや、黒い鞭、黒い大蛇とも。
ブーンの背を貫いた触角は目覚め、
黄色の眼の上から不規則にうねり、己よりも矮小な不死者を見下す。
一本一本、蛇が舌先を弄ぶかのように。
しなる鞭が外殻をバキリと叩くその度、
剥がれた破片が軍隊蟻へと姿を変えた。
ザワザワと ーー カサカサと ーー。
その巨躯を這う進軍は遅くない。
統率された蟻が向かうのは…甘く、甘い餌。
食すたびに栄養となり、
また子供を産み育むために必要な人間というエネルギーを求めているようだ。
-
:《クルゥルルル……キケケケ…》:
自らの下半身を瞬く間に喰らい尽くしたアサウルス。
歓喜しているのか、喉を震動させて唸った。
(; ゚д゚ ) 「!! こっちに向かってくる」
次の目標を定めたアサウルスが動き出す。
うねる大蛇が海を刺すごとに、少しずつ三日月島へと向かって。
朽ちて捨て置かれた両の腕は
その動きに抗わず、力なく揺れていた。
ξ゚⊿゚)ξ「そうね…いいじゃない、やってやるわよ」
(; ゚д゚ ) 「……?」
ξ゚⊿゚)ξ「【ライブラ】!」
光の珠となった魔導力が漂い始める。
間も無く一直線にアサウルスの巨躯に走るも
道中、その珠は二股に別れた。
一つは真っ直ぐアサウルスの元に。
もう一つは海の中へと潜り込むとやがて発光。
( ゚д゚ ) 「……いまのは?」
ξ゚⊿゚)ξ「生体反応を感知する魔法」
ミルナは今もまだ恐怖が抜けていない。
ツンもそうだと思っていた。
だから…彼女の落ち着き払った態度には
男として気を挫かれたような気になる。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ツンの脳内を巡る思考は素早かった。
直情型ではあるが決して浅はかではない。
ショボン一人でどこまで出来るのかが分からないが、囮と足止めは期待できない。
ここからは分担して戦わなくてはならない。
集束した触手が二足歩行を実現している。
ならばあれを止めればいい。
だが、あの腕のように一枚樹ではないだろう。
ξ -⊿-)ξ「……」
ともすればブーンのような【破壊】の剣技では恐らく相性が悪い。
あれを断ち斬るに優秀な【切断】の剣技を使う
ショボンが上半身の元に居てはいけないのだ。
まとめて分断するつもりでなければ止まらず…
どうであれ三日月島は世界から消失するに違いない。
-
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり…せめてもう一人いないといけないわね」
( ゚д゚ ) 「……さっきの男…ブーンは…?」
二人は海面を見るも、それらしき影は見当たらない。
あるのはアサウルスの外郭をなす細かな破片がパラパラと吸い込まれていく様のみ。
下の海にそびえ立つ大蛇は太陽コロナの如く
放射状を描きながら輪転する。
ξ゚⊿゚)ξ「ミルナ、貴方泳げる?」
( ゚д゚ ) 「えっ」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンを助けなきゃ」
( ゚д゚ ) 「…し、しかし……」
(# ц )
彼らの隣には自責の念に押し潰されたでぃ。
未だ横たわり起きる様子はない。
( ゚д゚ ) 「…」
まずミルナはこう考える。
『もしもツンが眠らせた住人が目覚めたら?』
…しかしその憂慮は見透け、遮られる。
ξ゚⊿゚)ξ「【スリプル】は刺激さえ与えなければ解けないと思うわ。
あの怪物と戦うのよ、私達もね」
-
ミルナは次にこう考えた。
自分達がやるのだ。 誰でもない。
そう、自分が。
( ゚д゚ ) 「…」
ξ゚⊿゚)ξ「私がショボンと一緒に時間を稼いでくるから、その間に貴方はブーンを引き揚げてきて」
自分はショボンのためにこの島に残った。
友達のために残ったのだ。
でぃにもそう言ったじゃないか。
( ゚д゚ ) 「……」
ξ゚⊿゚)ξ「危険がないとは言えないわ。
でも…私達がやらないともっと状況は悪くなる」
あの怪物に立ち向かえとは誰も言っていない。
誰にも言われていない。
ショボンも逃げろと警告していた…。
それを信じて人々を避難させたのも自分だ。
"現在" を選んだのは他でもない自分自身。
さっきまで、何か自分に出来ることはないかを
必死に考えていたはずだ。
ーー 自分に出来ることを。
ξ゚⊿゚)ξ「お願い」
( ゚д゚ ) 「…」
( ゚д゚ ) 「…俺は」
-
( ゚д゚ ) 「ーー ここで、でぃを護る」
ξ゚⊿゚)ξ
口をついて出た言葉は、提案の否定。
時間にしてひととき。
しかし、心の中では何日も何週間も考え抜いたほどの疲労感を伴った。
彼は彼なりに精一杯思い悩んだ。
ショボンを引き揚げろと言われれば、
もしかすると否定しなかったかもしれない。
むしろ今、危機に晒されているのは
あの触手にまみれた上半身に囲まれているショボンではないかとも心配する。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
身の丈を知らなくてはいけない。
単なる島内の運び屋だった自分が、あんな大きな怪物にこれ以上近寄れるわけがない。
( ゚д゚ ) 「ちなみに、あんたの魔法が確実に解けないという保障はあるのか?」
避難中に遭遇したアサウルスを通り抜けた住人らは、蟻の尖兵となって戻ってきてしまった。
まだ来るかもしれない。
もしそうなってしまえば…?
でぃの瞳が決定的にもう開かなくなるのは嫌だ。
ξ゚⊿゚)ξ「……。
経験上、可能性として高いってだけね。
私もこんなのと戦ったことはないもの」
-
( ゚д゚ ) 「……そうか」
ξ゚⊿゚)ξ「この島に武器はある?」
( ゚д゚ ) 「そこの崖下にショボンが用意した得物が沢山あ 「ありがと。」
( ゚д゚ )
ξ゚⊿゚)ξ「それを借りてくわね」
言葉尻はツンの言葉と重なりかき消される。
冷たくも鋭くもない、優しい声色を残して
ツンは走り去っていった……。
( ゚д゚ )つ 「あ…」
( ゚д゚ ) 「……」
( д )
----------
-
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
ヽヽヽヽヽヽ\\ヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ
ヽヽヽヽヽヽ \\ ヽヽヽヽ ヽヽヽ ヽ
ヽヽヽヽヽヽヽ \\ ヽヽヽ ヽヽ
ヽヽヽ ヽヽ \\ ヽ ヽ
ヽヽ ヽ ヽ \\ ズアッ !!
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
-
\\,,'∴
゜" ザ
「キリがない!」 (´・ω・`;)つ←── シ
〟. ュ
// ∵ ッ
//
孤立奮闘するショボンの視界には
四方八方から襲い掛かってくる黒き森。
何度斬り伏せても一歩を踏み出さないうちに
いくらでも頭をしならせ垂れてくる。
捌き切れない鞭は
ツンの【シールド】によって防いではいる…
かといって無防備に身体を晒すほど全面的に
信用することはできない。
(´・ω・`;) 「見えているのに ーー」
このままでは辿り着かない。
触手の先にはアサウルスの弱点とされる
二つの太陽が大きく脈打つ。
だが険しい道のりだった。
海空を見下ろせば
心なしか三日月島が近寄っている気がする。
-
足下の軍隊蟻は魔導力の放出で対応できるだけ
まだ救いがあった。
それでも魔導力は無尽蔵とはいかない。
気を抜けばこの不死の身は漆黒に染まり、
跡形もなく喰い尽くされるだろう。
蟻が食むのは肉体ではない。
魂の器である生命を貪るのだ。
痛みのない死が何をもたらすのか、もう一度試す気にもならなかった。
(´・ω・`) 「…」
ふと。
肌が触れあうほど目の前で
瞳から光を失っていった兄者の顔を思い出す。
触手の森をいくら斬ったところで
その数を減らすこともなければ、本体にダメージがあるかも疑わしい。
アサウルスの進攻も止めなくてはならない。
太陽に己の刃が通用するかも分からない。
「ショボン!」
(´・ω・`) 「ーー !」
逆扇に降り下ろされる触手群に危うく刺し貫かれるところだった。
身体一つ分の後退で事なきを得ると、無防備なそれを横薙ぎに一閃。
ーー だがそこにはひときわ太い触手…いや、
触腕が螺旋を描き、ショボンの首に迫る。
-
ξ゚⊿゚)ξ「させないわ!」
一度はショボンを危うく潰し殺した触腕。
二度目は不自然に軌道を変え、
あられもない方向へと尖端を歪み刺した。
その根元は空気の抜けたゴム毬のように大きくひしゃげている。
そうさせたのはツンが突き出す小さな拳。
(;´・ω・`) 「……無茶苦茶だな」
ξ゚⊿゚)ξ「せえっ ーー!」
回想と実相の狭間に気を取られ過ぎた彼を救った声主が、休まず大きく振りかぶるのは鋼のツルギ。
切断…までは出来ずとも大木を切り倒したように触腕を無力化した。
⊂ξ ゚⊿)ξ「アサウルスの移動を止めましょ。
貴方は下に行って。
私が代わりにここで注意を引くから」
ブーンと一緒にいた女性…ツンといったか。
正直なところ同じことを考えていたので
ショボンは彼女の提案に反論する気はない。
その身を案じることもなければ、
性差による気遣いもない。
-
「恩に着る」
 ̄´・ω・)
そう言い残し、触手のすき間を潜り抜けた。
さっきのように悠長に飛び降りはしない。
弾丸のように海面まで一直線に翔んだ。
それを捕えられる触手はなく、
今度は一方的にショボンの狙い通りその脇をすり抜け、直後アサウルスのバランスが少し崩れる。
「行き掛けの駄賃、
貰っておくよ ーー」ω・`)
ショボンはそのまま海の中へ。
上がる水柱の数は両手に足りなかった。
後を追うように、
アサウルスの脚を構成する大蛇の成れの果てもブチブチと悲鳴をあげて沈んでいく。
-
ξξ゚⊿゚)ξ:「ーー …さっそくやってくれたのね」
上にいたツンの足場が大きく揺れる。
出現した急勾配の坂を転げ落ちないようにと
外郭に突き立てようと試みたツルギは刺さらなかった。
その点はやはり男二人のようにはいかない。
相手が困難であればあるほど、
剣は単純な力で優劣が決まるものではないらしい。
ξ゚⊿゚)ξ∩「やっぱりこっちの方が ーー」
じっと手を見つめる。
細く白い女性らしい形と、男性顔負けの握力を誇る指先が徐々に赤く染まりゆく。
ξ゚⊿゚)ξつ「【フレアラー】!」
色が抜けると同時、空気が鋭く鳴り、駆けた。
広範囲の炎がツンを中心に走り盛る。
根元から焼き尽くされる黒い触手が
まるで踊り死よろしく狂い悶え、粒子となり散っていく。
その威力は残骸を蟻に変質する間すら与えない。
ξ゚⊿゚)ξつ「ーー 私には向いてるのかしら?」
-
( ゚д゚ ) 「…ショボン」
遠巻きに居るミルナからも、ショボンの姿はよく見えた。
海に落ちたのはきっとブーンを捜しに行ったのだろう。
ツンの提案通り。
それをしなかった自分の代わりに。
戦いが始まってどれほどの時間が経ったのか…
小一時間程度?
それとも実は丸一日経過してはいないか?
人は…そんな短時間で恐怖を克服できるのか?
( ゚д゚ )
アサウルスの上部でも赤い光が見える。
あれは炎か、得体の知れない別の何かか。
礼拝堂の前で足を地につけているのは彼一人。
ただ目の前のそれを見ているだけ。
(# ц )
( ゚д゚ ) 「なあ、でぃ。 大丈夫か?」
返事はない。
胸部の上下運動から彼女に息があるのは分かっている。
まだ…目覚める様子はない。
( ゚д゚ ) 「お前が俺なら、助けに行けるのか?」
そんな彼女に問い掛けている自分を、
ミルナは酷く卑怯者だと罵った。
----------
-
。
.゜
(´・ω・`)(……いた)
海中のそれほど深くない位置、
岩のソファで眠るブーンを見つけた。
首を反っているせいで表情は見えない。
。
゚.
(;´・ω・)(まずい!)
……近付いて、そこで始めて気が付いた。
彼の身に無数の蟻が集っている ーー。
生物には一定の酸素が必要なのだとしても。
アサウルスの破片は o
その全てが "蟻" であり、 ゜.
巨獣アサウルス ( ´>ω<)
そのものなのだ。
既存の生態系から勝手に
その性質を思い込んでいたせいで失敗する。
あの時も騙された。
O
o 。 。
.゚ o .
( ´>ω・) .゚
(:::ω:::::)
ひとまずはこちらが先決。
ブーンにへばりついている蟻群を引き剥がすべく、ショボンは魔導力を放出 ーー
-
。
.゜
(;´・ω・`)( ーーするとなれば、この蟻は…?)
この後どこに向かうかを想像し、息を飲む。
( ^ω^)『"魔導力" を意識するんだお』
ブーンから受けたアドバイス。
あのお陰でショボンは蟻に喰われず戦うことができた。
何故、この男はそれを言えたのだろう。
ショボンが三日月島で過ごした100年間、
魔導力に関する事項は
ビコーズの神託と、実生活における朧気な感覚のみが身体に教えてくれていた。
だが……それだけだ。
ツンも防御壁を張っていた。
ブーンも自身の傷を癒していた。
でもショボンにはそれがまだ出来ない。
これ以上のやり方が分からない。
。
.゜
(´・ω・`)(何かあるんじゃないか?
"魔導力" にはもっと重要な性質が)
-
試しに放出する魔導力の感覚を変えてみる。
…しかし、何も変化の起きないままに
ブーンを貪る蟻達がただ剥がれていくだけだ。
黒い雲がぶわりと一斉に浮力を得てしまう。
慌てて鞘から剣を抜き放つも
水中では思うように動けず、刃は虚しく水を切る。
霧散する蟻は散り散りに…やがて取り返しのつかないほどその範囲は拡がってしまった。
。
.゜
(;´・ω・`)(くそっ…!)
背中から首筋まで、海水より冷たい手のひらに
ショボンの心ごと鷲掴みにされる気がした。
この蟻達はこのまま海の中をさ迷うのだろう。
棲息域にある生物がその生命を喰い荒らされる未来図が、否が応にも脳裏を支配する。
ーー 弱肉強食。
長年培われた食物連鎖に異変が起きる。
ともすれば島の住人のように、
関わった生き物が蟻の尖兵として再びショボンの前に現れるかもしれない。
-
……揺らめく視界から蟻が消えた後。
ショボンは気持ちを切り替えブーンを担いだ。
全身に細かな傷は見られるが、致命傷はなさそうに思える。
彼の肉体は、蟻の牙を殆ど通していない。
ならば気を失っているのは
体力的な問題ではなく、精神的な何か……
万が一、彼が蟻に感染したとなれば大問題だ。
。
.゜( ω )
(´・ω・`) (…どっちがいいかな)
ショボンのなかで一巡した思考は
ブーンを素直に引き揚げることとなった。
暴走を恐れて今ここでひと殺すよりも、
復活を望んでアサウルスを早めに撃破する。
親元のアサウルスが死ねば
先ほど逃した蟻群も
その姿を維持できなくなる可能性に賭けた。
。
.゜( ω )
( ´・ω・`) (頼むよ、ブーン)
ブーンの探索にそれほど時間は掛けていない。
早めに戻ればツンも無事である可能性が高まるのだ。
若き不死者は酸素を求め、
海面に射し込む光のもとへと戻りながらも
その眩しさに瞳を閉じた。
-
『なあショボン?』
『なに? 兄者さん』
( ´_ゝ`)『お前、海の中をもっと見てみたいか?』
(´・ω・`) 『…まあ、興味はあるけど』
(´<_` )『生身じゃ限界がある…、が。
なんなら船に屋根をつけて囲ってしまえば潜水できるんじゃないかと思ってな』
(´・ω・`) 『そうなの?』
(´<_` )『酸素の供給や船体バランス、
エンジンの問題もあるだろうが、理論的には可能だと思うぞ』
( ´_ゝ`)『夢が広がるな……
うはww超重量潜水艦アニジャwwwwww 』
(´・ω・`) 『島の皆が乗れるくらいでっかいのねwwwwスピードシップ緒本wwww』
(´<_`;)『お前らそんなんだったか…?
無理いうな。 第一、それを造るのは誰だよ』
アナタ!
( ´・ω・)σ ワーイ ムーリー
( ´_ゝ`)σ ∩(´<_`∩)
キミダッ! ムリムリムリー
-
( ω )
ii(´>ω・`)ii 「ーー ぶはっ」
海面に上がると、ありったけの酸素と
肺の中にどっぷりと溜め込んでいた二酸化炭素をコンバートする。
口を開けて何度も何度も息を吸い込んだ。
身体の中を流動する血液がグングンと活性化され、体内からエネルギー通貨を支払い終えると彼の身体に軽さが戻ってくるようだ。
巣潜りして遊んだ幼い頃よりも
長く潜れたのは身体の成長か、
不死ゆえにかはもう分からない。
「…惜しかったな…」
解体した潜水艦を尊び、一度だけ欠伸を許す。
( ゚д゚ ) 「ショボーン! そこかぁ!」
振り向けばそう離れていない海の上…
真剣な顔をして小舟を走らせるミルナの姿。
( ω )
(ι ´;ω・`) 「ミルナ……君は…」
( ゚д゚ ) 「ブーンはこっちに乗せて、お前はツンの所へ行ってくれ」
( ω )
(ι うω・`) 「……君も無茶するなあ」
-
横付けた小舟にブーンを乗せると、ミルナの嘔吐く声が聴こえた。
後から乗り上げたショボンが見たものは
背骨を挟むように2つの大穴で肉を抉られていた不死者の大きな背中。
ーー 常人であれば十二分に致命傷だ。
(;´・ω・`) 「これは酷い」
( ; ’ ω^)「……お」
(; ゚д゚ ) 「だ、大丈夫か? 動かない方が」
(;’ ω^)
つ◎ 「ぐ……助かったお」
目を覚ました途端に大汗をかきながらも
震える手で【ヒール】を詠唱。
弱々しい光がブーンを包む。
(;‘ ω^)
つ◎ 「ツンは…どこだお?」
(´・ω・`) 「陣形を変わってもらった。
僕が君を助けたのは移動を開始したアサウルスの足止めついでだよ」
-
一瞬だけ ーー 苦虫を噛み潰したような顔で
ブーンは目を伏せた。
それはショボンの言葉に、ではない。
(;^ω^)
つ◎ 「…急いで戻るお。
触覚に刺された時、急激な眠気に襲われた…
あれに不意をつかれたらツンも ーー」
(; ゚д゚ ) 「眠りって、【スリプル】とかいう魔法をあの怪物も使うのか?」
(´・ω・`) 「魔法については僕も分からない…
けど、嫌でも気付かされたよ。
アサウルスは単なる蟻の怪物じゃないって」
(;^ω^)
つ◎ 「ビコーズがこの日のために僕らを呼んだのも頷けるお」
(´・ω・` ) 「……」
当の御神体…そういえば姿が見当たらない。
( ^ω^)「それでも僕たちは出来ることをやるだけだお」
-
両腕を粉砕されたアサウルスが取った行動は
[無防備]。
少し考えれば罠だと分かるはずが、あの時は
なぜ二人とも隙をみせてしまったのか。
まるで思考や感情が "留められず先走った" かのように。
(´・ω・`) 「行こう。 今度こそヘマはしない」
( ^ω^)「だお!」
言うが早いか ーー
頭上に陣取るアサウルス目掛けて
不安定な船を足掛かりに二人の不死者が姿を消す。
彼らの跳んだ反動で船体は大袈裟に沈み、
辺りを波立たせた。
:(( ゚д゚ ): 「……三人とも無事でいてくれよ」
戦いに参加しないミルナも、
顔をあげると自分が今どこに居るのかを思いだして島へと戻る。
小さな舟を真逆に漕ぎだし、急いでアサウルスの元から離れる。
(( ( ゚д゚ ) 「………」
-
ここまで来るのも大きな勇気がいった。
もう充分だと思った。
同時に胸に去来するのは
ショボンに置いていかれた寂しさと、
とてもついていけないであろう不死者とアサウルスの戦闘に腰の引けた自身の不甲斐なさ。
この舟も、恐ろしい形相で蟻と化した人々が
乗っていたものをなんとか心を奮い立たせ、
押して海に漕ぎ出したのだ。
ショボンやブーンの身を案じながらも
同時に船底にも誰か張り付いていやしないかと想像したりもした。
これ以上は心がもちそうにない。
今日だけで一生分の感情を揺さぶられた気がする。
・・・・・・・
ーー 不自然なほどに。
(( ( ゚д゚ ) 「……俺はもう」
充分だ。 何度もそう思ってる。
ショボンやブーンやツンの三人を
信用する、しないの問題ではなかった。
「でぃを連れて…この島から離れよう」
人の言葉は口にして始めて完成する。
決意も、事実も、史実も、
……その心も。
-
(;^ω^)「ツン!」
ξ;;-⊿-)ξ「……」
前線に復帰したブーンの目に飛び込んできたのは、肩を落とし、へたりこむツン。
周囲の触手は根元から焼け枯れたものと
いまだ健在のものがある。
…だが、いずれもその動きは停滞。
代わりに蟻の大群がその尖端から続々と姿を現し始めていた。
(´・ω・` ) 「……」
ξ;;゚⊿-)ξ「二人とも…戻れたのね。 良かった」
三( ^ω^)「どうなってるお?!」
ξ;;゚⊿゚)ξ「こっちに来ちゃダメよ、ブーン!」
(;^ω^)):「おっ」
駆け寄るブーンを制止。
ツンの言葉は続く。
-
ξ;;゚⊿゚)ξ「アサウルスに魔法を返されたわ。
【リフレクト】とでも言うのか…とにかく、
私が使った【フレアラー】もそのままね」
ξ;;゚⊿゚)ξ「いま動きがないのは【スリプル】を放ったから。
でも…きっとそれももうすぐに返される」
瞬間、ショボンの頭に
浮かんだのはミルナの言葉。
ξ;;゚⊿゚)ξ「アサウルスは魔導力を吸っているのよ、蟻から、触手から…。
喰い喰われたものは養分として、アサウルスが使えるようになる」
ーー ミルナが【スリプル】を
知っているタイミング
ξ;;゚⊿゚)ξ「私自身ももう魔導力が吸いきられて動けそうにない。
だから今のうちに……アサウルスを倒して」
( ^ω^)「残るはあの太陽と触角かお」
ーー ブーンが触角から受けた
眠りのダメージ
(#^ω^)「把握したお、今すぐに ーー
ーー それ以外に与えた魔導力が
まだ残ってるのではないか…?
-
(#^ω^ ̄  ̄ あれを叩き壊す!」
ツンを傷付けられて怒ったブーンの姿が消え
 ̄  ̄´・ω・`)
今度は先走る感情に "感染" していない
ショボンの姿が消えたのはまったくの同時。
-
太陽に飛び込む二人を迎え撃つ二本の触角。
以`θ益θ以 《 ーーギギィ》
アサウルスの口角が釣り上がった気がした。
その尖端に込められた魔導力は、
(#^ω^)「!!」 (´・ω・`) 彡
【破壊】と【切断】
-
「だが次は僕の読み勝ちだ、アサウルス」
(´・ω・`)つ←── 「あの日、僕を
彡つ 殺せなかった失態を悔やむんだね」
-
二本の触角は二人の不死者に個々肉薄。
だが一本はショボン自らの抜刀術により
正面から相殺される。
魔導力の波動がショボンの身体を大きく後方に吹き飛ばした。
そしてもう一本…
ショボンの投擲した黒い槍は触角を
ブーンの眼前で貫き、軽く引き千切る。
以`θ益θ以 《ーー !!!?!》
あの日、ショボンと兄者を貫いた黒い槍。
今なら分かる。
兄者が先に貫かれたせいで、
この槍に込められた魔導力がその時点で失われたのだと。
先にショボンを貫きさえすれば
ショボンは一度死に、
そのまま不死蟻の尖兵と化す…
そういう筋書きだったのかもしれない。
現実には兄者が死に、
蟻になれず命を失った。
ショボンは兄者によって
その不死の命を助けられていたのだ。
-
(メメ´;; ω・`)
つ 「…一矢報いるのはその槍って決めてたからね」
空っぽの黒い槍は触角の魔導力を吸い込み
その威力を100%引き出したといえる。
果たしてその役目を達成したことになった。
(# ゚ω゚)「ぜぇえあァァアアッッ!!」
今度こそ完全なる無防備になったアサウルスの太陽の元に、全力で剣を振りかぶる男。
ーー 最も善なる精神を保ち続け
千年間、人を助け続けてきた不死者。
同時に【破壊】を司る、愚直で優しき人間。
その剣が、橙色に脈打つ剥き出しの太陽…
アサウルスの心臓を叩き壊した ーー!
-
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三
三三三三三
三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
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------------
ー ザ□ッ 、υOΣ £。adiΠg----ー
ィ'ト―-イ、
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諢・4祉∴モ!・
J銀!・¥瘁冷
!溪!・/Se・阪宍隋披ス
l痺cヮ&・怜 > 續医・膩
莟翫R九訣:
売:/羶絎我)・散 ・初≡蕭倅コ
(推奨BGM:Crisis & Warning)
http://www.youtube.com/watch?v=qW7d5otOnjo&sns=em
------------
-
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三
二二三三三三
三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三
二三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
-
三三三三三
(´つω ・`) 「 ん ?」
「
お( ^ω^)
っ
ξ;; -⊿-)ξ 「
?
…
」
…
」
-
ーー 瞬間、彼らは自らの場所を見失った。
(´・ω・` )( ^ω^)ξ;; -⊿-)ξ
そこは雲浮かび髪撫でる空の上ではなく
指先ほどの輝きを点在させ、
漆黒に囲まれた…
まるで見たことのない宙の上に感じられる。
( ´・ω・`) 「……」
ブーンがアサウルスの太陽を破壊した途端、
もう片方の太陽にもヒビが入ったかと思えば
その隙間をこじ開けるように、堪えきれず黒い霧が漂い始めたのをショボンは見た。
あの時、目をまばたき気付けば此処にいる。
…ブーンを見やれば同じような表情。
(^ω^ )「…どういうことだお」
(´・ω・`) 「僕にも分からない」
ξ;; -⊿-)ξ
ここは酸素もあるのか、息苦しさとは無縁。
互いに姿を目視できるのは
辺りに散らばる粒子の灯りによるものかもしれない。
とはいえそれは照らしているのではなく、
浮き上がらせている……というイメージだが。
取り戻した平衡感覚を確かめるように、
彼らは二、三足踏みをする。
感触は無く、だが薄く張られた水が波紋のような揺らめきを生んだ。
-
(;^ω^)「ツン、…ツン?」
∪ ∪"
(("ξ;; -⊿-)ξ))
横たわるツンからの反応はない。
魔導力を吸いきられた…と言っていたのをすぐに思い出すと、ブーンもひとまず立ち直す。
(´・ω・`) 「平気そうかい?」
◎⊂(;^ω^)「魔導力は所謂精神力だから…どうやら昏睡してるみたいだお」
(´・ω・` ) 「…魔導力を元にした魔法っていうのは、僕の思うよりも複雑そうだね」
ブーンがツンに与えているのは【キュア】。
傷や体力を癒す【ヒール】と異なり、
身体に備わる免疫力や異物、異常をそれぞれ活性減退させる効果をもっている。
魔導力の枯渇はそのどれにも当て嵌まらないが、昏睡に至る精神ダメージへの、
抵抗力の手助けにはなる。
二人は筋肉を緊張させたまま
しばらくの間、その場から動かない。
これもアサウルスの攻撃なのかと警戒するが
待てども一向にその予兆は見られなかった。
-
( ^ω^)「ショボン」
掛けられた声に目を向ける。
( ^ω^)σ「あっちの灯りだけ、少し周りと違くないかお?」
彼が指差す方角に目を凝らすがショボンには今一つ伝わらない。
単に視力の問題か、でなければ魔導力の消耗によって見えているものが違うのかもしれない。
( ´・ω・`) 「…行ってみよう。
僕が前に立つ、君は後ろへ」
ξ;; -⊿-)ξ
∪( ^ω^)「頼むお」
ツンを背負い、ブーンは後方に陣取った。
ーー アサウルスは人を騙す。
ショボンは有事の対応のために得物を構えようとして、
( ´・ω・`) (……そういえば剣が)
手元から無くなっていることに気が付く。
残しておいた鉄槍も、鉄剣もない。
黒い槍も先ほど投擲してしまったのだから、
持っているはずもない。
今の彼は徒手空拳…
更に、体術の心得もない。
出来ることはただ一つ。
(´・ω・`) (壁になるしかないな)
-
足音のない空間に、
ただ靴の裏にある感触の存在を証明する波紋だけが広がる。
周囲の光の粒子は一切を停止しており
歩いている感覚とまるで乖離しているようで…時に、自信が無くなっては自身の脚を確認する。
ξ;; -⊿-)
∪( ^ω^)「なんだか……ちゃんと歩けてるかどうか不安になるおね」
( ´・ω・`) 「たしかに」
ξ;; -⊿-)
∪( ^ω^)「ショボンはあの灯りが見えないのかお?」
( ´・ω・`) 「灯り…っていうならね。
粒子なら分かるんだけど、正直見分けはついていない」
消えては浮かぶ光の粒子……
なんともなしに腕を伸ばしてはみるが距離感をつかめず、やはり手のひらは空を切る。
目を閉じても、開けていても、
残像が同じ風景を創り出してしまう。
暗闇は…想像を増長するものだ。
-
( ´・ω・`) 「……神の眼球、か」
ξ;; -⊿-)
∪( ^ω^)「おっ?」
ふと呟き、ブーンがそれに応えた。
ショボンは独り言が多い…
癖のようなものだが、それは寂しさの裏返しでもある。
( ´・ω・`) 「かつて "ふたごじま" にあった
教典の文頭…その一節に出てくる単語さ」
( ´・ω・`) 「《-偉大な神は、真っ暗闇な
その世界を憂いて己の眼球を取りだし、
その虹彩からは光を…瞳孔からは闇を…
硝子体は大地を…水晶体は海を産んだ》」
ξ;; -⊿-)
∪( ^ω^)「《この世界は
神の眼球そのものとして生まれ変わり、
また神の瞼の下に埋め直された。
これにより神の体温を得たことで世界には暖かみが生まれた》
ーー だったかお?」
続いて語られたこと驚きながら、
そういえば彼も昔、島に来ていたのだと思い出す。
ξ;; -⊿-)
∪( ^ω^)「《だが神もまた真っ暗闇の中にいる。
神が目を開ければ夜になり…
目を閉じれば朝になる…-》」(´・ω・` )
-
こんな場所で男二人が読み上げた言葉がおかしくて、見合わせて少し笑った。
それは兄者が繋いだ、彼らの共通の思い出。
不死でなくとも、
人は思い出を数珠繋ぎにして心のなかで
永遠に生き続けることが出来る。
【永遠の命】とは、
必ずしも不死者を指すとは限らない。
(( ( ´・ω・`) 「…それなら、
不死者っていうのは一体なんだろうね?」
ξ;; -⊿-)
(( ∪( ^ω^)「……」
最後のショボンの呟き…
ブーンの口から応えは返ってこなかった。
「……」 ξ;; -⊿゚)
(( ∪(
-
……やがて三人の前に現れたのは
アサウルスの胸部に宿存した橙の輝き ーー
熱源を持ち、鼓動脈を打つあの太陽だった。
アサウルスに埋め込まれていた時と違うのは
今、それが目の前の宙に浮かんでいて
内蔵のような球体を、
半身でなく、堂々と晒している点だ。
(´・ω・`) 「剣を一本借りるよ」
ブーンの腰鞘にある数本から手前の柄を握り
慎重に引き抜く。
血糊や刃こぼれも無い、極上の一振り。
自分が用意して使っていたものよりも、その重量には大きな差があった。
これとまともに斬り結ぶなどすれば、
並みの得物では堪えきれず破壊されるだろう。
そしてそれを難なく扱い、手入れを怠らなかったであろうブーンに対して、
ショボンは尊敬と畏怖を覚えた。
-
ξ;; -⊿-)
∪( ^ω^)「気を付けるお」
剣の扱いに、ではない。
此処に来て依然、沈黙を守るアサウルスは
不意討ちを喰らったあの時とまったく同じシチュエーション。
(´・ω・`) 「ああ」
最大限の警戒を解かないまま、鞘ごと借りて腰を落とした。
(´・ω・`) 「……」
ショボンが身に付けた抜刀術の利点は
"刃を抜くその瞬間まで自由に身を動かせる"
というもの。
間合い取りに焦らなければ、
そして、不意討ちに気を配りさえすれば
ギリギリまで回避に徹することが出来る。
(´・ω・`) 「…」
今のショボンでも
初撃だけならなんとかこの剣は扱えるだろう。
タメを作り上げながら
太陽まであと一歩。
-
太陽はド ク…ン ーー と、
ッ
その衝撃に反発して歪み、反り返る。
反れた衝動は反動となり内部を打ち付けた。
封じられ行き場を失ったエネルギーが、
何度も、何度も何度も何度も何度も ーー。
( 三 (´・ω・`; )
ショボンは定位置に戻ると、鍔を鳴らして刃を納めた。
ーー 彼の居合いは太陽を切り裂かなかった。
ξ;; ゚⊿-)
∪(;^ω^)「なんだお、これは?!」
剣を抜く前にその異変は起きたのだ。
「分からない、どっちだ?!」(´・ω・`;)
ξ;; ゚⊿゚) 「……魔導力が」
∪(^ω^;)「ツン ーー?」
ξ;;゚⊿゚)ξ「魔導力だけが、激しく膨らんでる」
-
ツンのその言葉に呼応するかのように、
太陽内部から確たる何かが突き破らんと
動きは激しさを増していった。
此処にいるぞ! 此処にいるぞ! 此処に!
そう主張する太陽は腕を生やす。
サイズにして、人間と同じ形をした腕。
引っ張られるように段々と、
肩、顔、頭、胸、腰……
やがて足先まで生え揃った頃、太陽は
いつのまにか姿を消してしまう。
ξ;; ゚⊿゚)
∪(;^ω^)( ;´・ω・`) 「 ーー…」
あとには全身橙の人型が佇む。
……誰かが唾を飲み込む音がして、
それと同時に "それ" はひっくり返った。
・・・・・・・・・
天地ではなく、表裏。
蛸を捲るように、服を捲るように。
剥き出しの血管が捲れ仕舞われる。
-
ξ;; ゚⊿゚)
∪( ゚ω゚)「!!!」
そうして現れたのは
从 ∀从
一人の女性らしき、人間。
(;´・ω・`)
ショボンの心中は驚愕に満たされつつも、
視線は釘付けにはならなかった。
なぜならば ーー
ξ;゚⊿゚) 「あな、た……」
∪(;゚ω゚)「な、なんでこんな、ところにいるんだお…?!」
……不死者である、ブーンとツンが
より大きなショックを隠しもせずにいたのを見てしまったから…。
-
从 ∀从
从 ゚∀从
从 ゚∀从 「ーー ……ぁ」
(´・ω・`;) 「…知ってるのかい? あれを」
ξ; ゚⊿゚)
∪(; ゚ω゚)「……」
从 ゚∀从 「……よう、久し振り」
その声は人間だった。
その姿形は紛れもなく人間だった。
此処がどこだか分からなくとも、
アサウルスと無関係であるはずはない。
ξ;゚⊿゚)
∪(;゚ω゚)「ーー ハインリッヒ…」
从 ゚∀从 「ありがとな二人とも。
それと…もう一人のお前も不死者だろ?」
(;´・ω・`) 「!」
从 ゚∀从 「いまは限られた時間しかない。
聞いてくれ、そして、伝えてほしい」
-
涼しげな声だった。 だが微かな焦り。
ハインリッヒと呼ばれた女性から
敵意を感じることは全く無かった。
むしろショボンには…
悲痛のなか掴みとった一握りの機会を
一切合切逃さないために身を潜めていた囚われの神のように思われた。
从 ゚∀从 「アサウルスは死なない。
"生きる概念" と "生きたい願望" が
この世にある限り、遅かれ早かれまた現れる」
从 ゚∀从 「前者は人間に必要なもんだ…
でも、後者はすぐに行く先を誤っちまう」
从 ゚∀从 「何かに祈るな、見えないものにすがるな。
人は自分の足で歩けるように出来ているし、
他人の手をひととき握ることは、すがり祈りとは関係がない」
その言葉は唐突で、
前提が何かも分からなければ
答えが何かも解らないものだ。
ξ;; ゚⊿゚)
∪( ゚ω゚)「……」 (;´・ω・`)
ーー 尚もハインリッヒの独白は続く。
神託のように。
-
从 ゚∀从 「ブーン、俺のことは気にすんな。
済んだことをいちいち引き合いに出しても仕方無いしな」
从 ゚∀从 「これからだ。 未来のこと。
もうこれ以上、不死者なんていらないんだよ」
从 ゚∀从 「でないとアサウルスが利用しちまう……
生きる願望の、塊であるお前らを」
:从; ゚∀从:「ーー ぐっ」
(; ´・ω・`) 「…?」
:从; ゚∀从σ:「…ダメだ時間が全然足りねえ。
この、上にいる奴も…連れてけ、邪魔だ」
ξ;゚⊿゚)ξ「え……あっ!」
ショボンとブーン達が見上げると、
そこにはもう一つの太陽が脈動していた。
さっきは気付かなかったが
同じようにモゴモゴと動いている。
-
:从; ゚∀从:「そいつは、そいつで……
アタシとは別のところから、アサウルスに引き摺り込まれたらしい」
:从; >∀从:「ーー っはあ、はあッ」
ξ;;゚⊿゚)ξ「ハイン!」
:从; ゚∀从:「……いつだか前…アタシにはちと分からないが…
先に降りた、もう一匹のアサウルスがいた。
……東の方角、そいつが処理した、
けど、代わりに……、そのザマだ」
ハインリッヒは苦しんでいる。
だが、一体何に対して ーー
《ビシィッ》
⊆‖(´・ω・`; ) 「?!?! ーー なっ?!」
直後、ショボンの腕には
闇から伸びた黒い何かが巻き付いている。
慌て、隣を見ればブーンやツン、
そしてどうやらハインリッヒにも既に。
⊆ξ; >⊿゚)ξ⊇「くっ ーー!」
( ゚ω゚)⊇「ふぉぉぉっ?!」
-
:从; ゚∀从:「ーー ちくしょう、あんだけ時間かけてもこれしか主導権が握れねえのか?!」
:从; ゚∀从:「ブーン、お前の拘束だけならアタシがなんとかしてやる!
すぐに…アイツの太陽も ーー ぶっ壊し、たら…!」
⊆(´・ω・`;) 「?!」
:从; ↑∀从:「お前らだけでも此処から逃がしてやるからよ!」
-
《パリンッ》
(;^ω^)⊃「?!」
硝子の割れる音と共に、ブーンを捕らえていた闇が解放される。
ブーンは迷わなかった。
バランスを崩しながらも真上に跳ぶと、
もがき足掻く太陽目掛け、
重い剣を突き出すとビチビチ血の雨を降らす。
割れる太陽の中から、血にまみれた男が一人
…もたれていた身をゆっくりと落下させる。
赤く紅く熟れた果実の種が握られ/.,:;;'A)
押し出されるように。
",
,...:,
( A )
片手に銃斧を握りしめて離さない男を抱き止める余裕は無かった。
ブーンも共に落ちながら、叫ぶ。
手を伸ばすように、その声で。
「ハイン! お前も ーー」(^ω^;)
-
从; Γ∀从 「ーー …クーに、よろしく頼むわ」
-
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三
三三三三三
三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
-
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三
二二三三三三
三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三
二三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
-
血涙を流しながら笑ったハインは…
そのまま闇腕に囚われ呑まれた。
それは僕達の視界が呑まれるのと
どちらが早かったのか。
気付けば三人は離れ離れになった。
僕は海にたゆたい、
通りかかりの船に掬い上げられる。
結局そこが何だったのか
分からないまま ーー。
-
(推奨BGM:おわり)
-
------------
〜now roading〜
从 ゚∀从
HP / D
strength / E
vitality / E
agility / C
MP / B
magic power / B
magic speed / B
magic registence / C
------------
-
乙
-
「ーー 以上が僕の話。 (´・ω・`)
長くなってすまなかったね」
ショボンが大きな溜め息をつくと、
山小屋の中は空気の鳴る音に満たされた。
組んでいた腕を離し、代わりに指を絡める。
_
( ゚∀゚) 「……」
ジョルジュは完全に聞き入っていたようだ。
当人の記憶の夢の後すぐに
こんな話を聞かされたからだろうか、
一点を見つめて動かない。
ショボンは何か声をかけようとしたが
考えをまとめる時間も必要だろうと思い、
彼の視線が揺れるのを黙って待っていた。
……だから、その沈黙を破ったのはもう一人。
今回の話が始まる直前にドアをぶち破り
乱入を果たした、遠慮知らずの狼藉者。
その細く長い腕が振られたかと思うと
パァン、と、掌から心地よい叩音を鳴らす。
ジョルジュの肩が跳ねる。
顔を上げてじとりとそちらを見るが、鳴らした本人はたいして気に止める様子もない。
気にするような人格でも無さそうではあるが。
-
川 ゚ -゚)「それでここに私を連れてきたのか」
(´・ω・`) 「途中で勝手に寄り道してたのはそっちでしょ」
川 ゚ -゚) 「…出逢ったばかりの相手に
妙に馴れ馴れしい口を利くんだな、お前は」
水の都に立ち寄った際、同じく出入り門で
追い返されていたのが彼女だった。
清く長い黒髪を隠しもせず、伸ばした背筋は神々しさすら感じさせる。
ーー だが初対面ではない。
クーとショボンは過去、既に出逢っている。
だが…
今の彼女はそれを憶えてはいなかった。
(´・ω・`) 「利害が一致してるんだから言いっこ無しだ。
僕の話もこれで終わったし、これからどうやって水の都を元に戻すか考えようよ」
-
ワカッテマスの遺した策略の一部であろう
都住人以外の締め出しは、他の地域からすれば大問題となりつつある。
すなわち
『証を持つ者だけを受け入れる永久中立国』
…こんなもの、皮肉にも程がある。
川 ゚ -゚) 「…まったく、なぜ私が追い出されなければならないんだ」
彼女をここに連れてきたのは、その問題を解決するに役立つであろう期待。
そして、もう一度……
ハインリッヒから承けた
たった一言を彼女に届けるために。
-
川 ゚ -゚) 「あの門番の顔は覚えた。
後で処罰してやりたいが……職務に忠実なのは誉めてやるべきか」
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( ゚∀゚) 「……」
なぜ記憶を失っているのかは分からないが
ショボンの知る彼女は、聡明な大魔導士。
道の途中で何かに気をとられると、
すぐ横道に逸れるような行動を取る点を除けば、率直で嘘のない人物だとショボンは評価する。
ただし、
「水の都の女王である」
という彼女の言葉には強い驚きを受けた。
_
( ゚∀゚) 「都の住人すべてに配られたオーブ
…それをなんとかして手に入れるか?」
(´・ω・`) 「都市に入れなければ、都市から出てくる人もいないのに?
中立国ゆえの自給率の高さが、習慣的な商人の出入りも抑えてしまっているのが仇になってるね」
川 ゚ -゚) 「外部からの影響をなるべく受けないために、私がそうやって作り上げたのだから当然だ」
ε_ (´-ω-`;) 「…だから。
今はそれがまずかったんだってば」
-
過去を忘れた彼女は
どうやらまた懲りずに歴史へと介入していたらしい。
ショボンの驚きはそういう意味だ。
川 ゚ -゚) 「何を言うか。
真に責めるべきは、この事態を引き起こしたワカッテマス……あ、今はお前だったな」
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(;゚∀゚) 「だから俺じゃないっての。 いや、
違わないけどさ…俺だけど俺じゃない」
川 ゚ -゚) 「お前を締め上げればソイツが出てくるんじゃないか?
そうでもなければ信用できないんだが」
_
(;o゚∀゚)o 「おーっとそこまでだ、危害を加えるなら反抗するぜ?
ただでさえ、そのしょぼくれから痛い目見させられてるんだからな」
彼女は……あの時も女王だった。
記憶がなくなれば、
人はまた同じことを繰り返すのかと。
そう、ショボンは思わずにはいられない。
-
(´・ω・`) 「真面目にやってくれるかな?
都を戻す手段を考えないと先に進まないんだけど」
彼女は一度裏切られた。
守ろうとしていた普通の人々に。
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( ゚∀゚) 「あっ、そうだ! 土塊!
賢者フォックスに成り済ましてた泥人形が、
他にいるかもしれないんだよ」
川 ゚ -゚) 「フォックス…しくじったか?
それほど迂闊な奴では無いと思ったが」
そして今度もまた、
意図せず裏切られようとしている。
ワカッテマスという彼女のイレギュラーは、
歴史のイレギュラーと同義。
何かを作り上げるということは、歴史を作り上げるのと同じことだ。
人が誰かに声をかけて、
その誰かは人に触れて、
積み重なって創られるのが ーー 歴史。
ショボンが、兄者を通して
ブーンやツンと出逢ったように。
ジョルジュが、ツンを通して
ショボンと出逢ったように。
アサウルスを通して、
ハインからクーに、クーからワカッテマス、
ワカッテマスはジョルジュへと ーー。
ミルナやでぃも、
きっとどこかで誰かと繋がっていくのだ。
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川 ゚ -゚) 「なんとかして王宮の侍女にでも接触できればいいのだがな…」
(´・ω・`) 「まがりなりにも女王なら、
いざという時の抜け道か何か、用意しなかったの? 」
川 ゚ -゚) 「内から外には出られるが逆は無い。
……というか、よくそういうのがあると判ったな?」
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( ゚∀゚) 「……」
(;´・ω・`) 「…あのねえ」
穏やかだったはずの歴史が
時に酷く歪曲してしまうのは何故だろうか?
人の歩みが道となり、河となる。
人の寄り添いが森となり、空となる。
自然に生きるならば
人が傷付かなければならない理由など
見当たらないのに。
川 ゚ -゚) 「…」
_
( ゚∀゚) 「……」
川 ゚ -゚)「貴様、さっきから何を見ている?」
-
クーに当時の記憶が無かったのは
幸いなのかもしれない。
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( ゚∀゚) 「…いい乳だ」
川 ゚ -゚) 「は?」
ジョルジュ…そしてワカッテマスの傷は、
少なくともクーに向けられない。
(´・ω・`) 「まさか……ジョルジュ、君は」
川# ゚ -゚)「さっきからそれを見てたのか?」
クーから、彼に向けて傷を抉ることもない。
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( ゚∀゚)o彡゜ 「キレイなものは癒しだろ?
きっと君の胸は俺の運命の ーー」
川# ゚ -゚)つ 「…【フォース】」
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ーー 傷痕を留める人数は
少ないほうがいい ーー
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