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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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どーも作者です。
新しく作らせてもらいました。
設定だけ作っておいて最初の二話で終わる予定だったこの話がこれだけ続くことになろうとは。
半分くらいは終わっている予定なので、もう少しお付き合いいただければ幸いです。
話の投下の前に、各人の見た目データと大まかな設定を載せておきます。
この話は
川原礫著
『ソードアート・オンライン』シリーズのアインクラッド編を基に書かせていただいています。
基本的に設定を順守しているつもりですが、拡大解釈とまだ書かれていない設定に関しては想像で書いているので、その旨ご容赦の上、お楽しみいただけますようお願い申し上げます。
まとめ
ブーン芸VIP様
http://boonsoldier.web.fc2.com/
大変お世話になっております。
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(`・ω・´)「そ、そうか!」
(´・ω・`)「うん」
(`・ω・´)「いやー。おれもそうじゃないかと思ったんだけどよ。
自分で言うのってやっぱり憚れるじゃん」
(´・ω・`)「(嘘じゃないんだけど、なんかイラっとした)」
(`・ω・´)「それにしても、ハインは相変わらずだな」
(´・ω・`)「長いよね。諦めないし」
(`・ω・´)「しかし、ドクオはなんだってああ頑ななんだ?
ちょっと暴走気味だが、ハインは良い女だと思うが」
(´・ω・`)「……ドクオにも、思うところはあるみたいだね」
(`・ω・´)「おれにも言えないことか?」
(´・ω・`)「そんなことも無いけど、憶測だよ?」
(`・ω・´)「ああ。それでいい」
(´・ω・`)「うん。そうだね…。出会いは僕も聞いた限りだけど…」
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2.愛と誠と
2023年9月
ギルドN−Sの四人は、フィールドダンジョン『常世の森』を攻略していた。
(`・ω・´)「ふん!」
シャキンの両手剣が唸り、目の前の大型猿を一刀両断する。
(´・_ゝ・`)「やらせない!」
そのシャキンの背後を狙って跳びかかった小型猿をデミタスの片手剣が打ち払い、
更にミルナの槍が追撃した。
( ゚д゚ )「周りも気にしろ!」
(`・ω・´)「前以外は任せた!」
叫びながら大型猿を更に切り裂くシャキン。
その言葉にため息をつきつつも、湧いて出た二匹の小型猿をそれぞれに攻撃するデミタスとミルナ。
ため息をつきつつも、前を突き進むシャキンを頼もしく感じ、
更にその焦りも理解している二人は懸命にサポートをしている。
(´・_ゝ・`)「あいつの実力があれば大丈夫だとは思うが」
( ゚д゚ )「蜘蛛が嫌いだとは知らなかったな」
(`・ω・´)「こっちだ!」
大型猿を片付けたシャキンがウインドウを出して仲間の位置を特定する。
エリアにして後三つ。
レベルだけで言えば単独での攻略はギリギリ。
通常であれば何とかなると思うが、苦手なタイプのモンスターが出てしまうことを考えると、
今は無事に合流できれば……とだけ、三人は願っていた。
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从 ゚∀从「結構やばいな」
すらっとした体に革製の防具。細みの片手剣を構えたその姿は絵画のようだ。
実力も伴っており、この層の通常の敵であれば、一対一なら負けることは無い。
はずだった。
从;゚∀从「…クモは卑怯だろ」
人よりも大きな蜘蛛。
小型の蜘蛛型モンスターとは理性で戦えたが、自分よりも大きなこのサイズだと、
理性よりも感情で身体がこわばってしまう。
先程も仲間達と一緒に相対したのだが、威嚇された瞬間に逃げ出してしまった。
よく見ると剣の切先は細かく震えており、更に足も膝が笑っていた。
从;゚∀从「…ここで死ぬのかな…」
つい一週間前に仲間になったメンバーの事を思う。、
助けに来てくれる保証など、どこにもない。
メンバー募集を見て参加して、つまり知り合って一週間。
さらに戦場を放棄して逃げ出した知り合いを助けに奥まで来てくれるだろうか。
それは彼らが薄情とかそういう事ではなく、自分の命を大事だと考えた時に、
逃げ出した知り合いを自分の身を危なくさせてまで追うかということ。
ただこの一週間で知った彼らの人の好さを考慮すれば、助けに向かってきてくれていると思う。
けれど、彼らが来てくれた時に、自分が生きていられる保証などどこにもない。
巨大蜘蛛が、自分に気が付いた。
ソロとして隠密系のスキルは鍛えていたのに、
それを使って身を隠すのを忘れているほど混乱していた。
大きな体をゆっくりと動かし、自分を見る巨大蜘蛛。
八本の毛むくじゃらの足を動かして、自分に近寄る。
从;゚∀从「よ、よ、よよ、寄るなよ…」
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震えが大きくなる。
頭の中では逃げなきゃと思っても、それすらも出来ないほど体が固まる。
从 ;∀从「や、やだ……。助けて……」
涙なのか恐怖なのか、目の前がかすむ。
けれど自分を見る巨大蜘蛛が牙をもった口を開けて威嚇し、
左右一番前の足を上げたのは分かった。
从 ;∀从「!!!」
死を覚悟したその瞬間、大型蜘蛛の脳天から尻まで一直線に斬撃が走った。
从 ;∀从「え?」
更にすべての足を切り落とす様に刃が襲い、
身体が落ちる前にその醜い体にも幾筋も刃の線が走った。
目の前のモンスターがポリゴンに変わる。
何事か分からず、けれど自分が助かったことだけは分かり、膝をつく。
霞む視界のなかに、自分に近寄ってくる人影を見る。
緑色のカーソルと、決して高くは無い身長。
黒いコートと、武器は片手剣。
「倒したけど、良かったか?」
高くも無く低くも無い男の声。
自分よりは年下のようだが、落ち着いたその声に心が安らぐ。
「……良かったか?」
問いかけに、慌てて頷く。
「なら良いけどよ。……一人で無理そうなら、ダンジョンはいるなよ」
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从 ;∀从「なか、まと…はぐれ…て…」
恐怖からの解放で口までうまく回らない。
「ああ、まあ、それなら……でも…」
「おっ、おっ、あんまり攻めちゃ可哀想だお」
「……ねえ、そのギルドマークって…」
後ろにも二つの影。
声の雰囲気から、一人は男、一人は女のようだ。
从 ;∀从「あ、あり…がと……」
涙をぬぐう。
「とりあえず立って装備整えろよ。仲間の位置が分かれば送ってやるから。ブーン、ショボンに連絡しといてくれ」
( ^ω^)「わかったお。ツン、警戒宜しくだお」
ξ゚⊿゚)ξ「ん。って、私の話聞いてる?この人のギルドマークって」
拭って立ち上がろうとすると、手が差し出された。
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('A`)「立てるか?」
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从*゚∀从「は、はい…」
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その手を握り、立ち上がる。
从*゚∀从(…超カッコいい…)
('A`)(イケメンで背も高いとか、助けなけりゃよかった)
( ^ω^)「ショボンに連絡…っと…。
(ドクオの雰囲気が禍々しいお)」
ξ#゚⊿゚)ξ「そろそろ私の言葉に耳を傾けろ」
(;^ω^)「ご、ごめんなさいだお。で、彼のギルドマークだおね。
えっと……。あれ?あのマークって…」
ξ#゚⊿゚)ξ「やっと気づいたか」
('A`)(そろそろ手を離してくれないかな。男と手をつなぐ趣味ないんだが)
从*゚∀从(やだどうしよう。視線が重なってる。もしかして彼も私の事を?)
('A`)(見れば見るほどイケメンだなこの野郎。ケッ)
从*゚∀从「あ、あの…」
('A`)「はい?(早く手を離せ)」
从*゚∀从「お名前、聞いても良いですか?」
('A`)「ん?ああ、ドクオだけど(だから手を早くだな)」
从*゚∀从「ドクオさん…。あ、わ、私はハインリッヒって言います」
('A`)「ああ、そう。(名前までイケメンかよ。クソッ。しかも自分の事を『私』とか、どんだけだよ)」
从*゚∀从「そ、それでその…」
('A`)「はい?(なんでこいつは手を離さないんだ?)」
从*゚∀从「ま、まずはその…お友達から」
(;`・ω・´)「ハイン!無事か!!」
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どたばたとエリアに入ってきたシャキン。
その後にミルナとデミタスも続く。
( ^ω^)「おっおっお」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら。やっぱり」
(`・ω・´)「ブーンとツン?ドクオも?!」
('A`)「シャキン?」
( ゚д゚ )「どういう状況だ?」
(´・_ゝ・`)「謎だな」
从 ゚∀从「三人とも!」
とりあえずハインに近寄るシャキン達三人。
ブーンとツンも近寄る。
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( ゚д゚ )「で、これはどういう状況なんだ」
('A`)「どういう状況と聞かれても…」
全員がそれぞれに全員の顔を見る。
正確にはハインだけは彼の顔しか見ていなかったが、
誰もそれには気付かない。
( ^ω^)「おっ」
ウインドウを開くブーン。
( ^ω^)「ショボンからメッセージだお。
二つ先の安全エリアで落ち合えるか聞いてきてるけど」
(`・ω・´)「ショボンもいるのか。じゃああいつにまとめさせよう」
( ゚д゚ )「(ひでえ)」
(´・_ゝ・`)「(今ここにいない奴にまとめさせるとか)」
( ^ω^)「(さすがのシャキンさんだお)」
(`・ω・´)「行くぞ行くぞ」
先頭に立って歩き始めるシャキン。
その後ろをぞろぞろと続く六人。
('A`)(で、この手はいつになったら離してもらえるんだ?)
从*゚∀从(ドクオさん…ドクオさん…ドクオさん……どっくん……)
次のエリアで戦闘になるまで、ドクオの手は繋がれたままだった。
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(´・ω・`)「じゃあ、まとめると……」
( ゚д゚ )(なに!?)
(´・_ゝ・`)(まとめただと!?)
( ^ω^)(さすがのショボンだおね)
七人が安全エリアに入ると、そこにはショボンとクー、そして流石兄弟がいた。
(´・ω・`)「ハインリッヒさんが苦手な蜘蛛に驚いてシャキン達とはぐれた後、
巨大蜘蛛と鉢合わせしてしまい、そこに僕達と別行動をしていたドクオ達三人が通りかかったから、
間一髪助けることが出来た…と」
ショボンが拡げた絨毯の上に座るギルドN−Sの四人とショボン。
他の六人は周囲に立っている。
そこで各人から簡単に話を聞いた後、ショボンが状況をまとめていた。
(`・ω・´)「なるほど。そういうことか」
('A`)「蜘蛛が苦手ねぇ。(イケメンにも苦手なものがあるってか。
女はそんなところにもギャップを感じて、そこに惹かれるのー!ってか。ケッ)」
从 ゚∀从「面目ないです」
(`・ω・´)「蜘蛛が苦手だとはな」
从 ゚∀从「…すみません」
( ゚д゚ )「謝ることは無いが、言っておいてほしかったな」
(´・_ゝ・`)「ああ、誰にでも苦手なものはある。そこをフォローしあうのもの、仲間だ」
从 ゚∀从「は、はい!」
(`・ω・´)「他にも苦手なのはあるか?」
从 ゚∀从「あー。蜘蛛が一番ですけど、基本的に足の多い虫系の生き物がちょっと…。
ちいさいのはまだ良いんですが」
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( ゚д゚ )「蟻とか百足とかは戦えてたよな」
从 ゚∀从「蟻は大丈夫でしたが、百足はちょっとやばかったです」
(´・_ゝ・`)「まじか。気付かなかった」
从 ゚∀从「蜘蛛は、あの毛むくじゃらなのもダメみたいで」
照れたように頭を掻くハインに、周囲に和やかな笑いが漏れた。
('A`)(イケメンは何をやっても様になるってか)
(´・ω・`)「まあ、そこら辺はまたゆっくり話し合ってよ。
新しくメンバーが増えたら、いろいろ話したり経験を積んで分かり合わないとね」
(`・ω・´)「ああ。そうだな」
大きく頷くシャキン。
そしてドクオ達三人を見る。
(`・ω・´)「三人とも、ありがとうな」
('A`)「あ、いや」
( ^ω^)「おっおっ」
ξ゚⊿゚)ξ「改まって何よ」
(`・ω・´)「大事な仲間を救ってくれたんだ。どれだけお礼を言っても足らない。
かといって、コルや品物では失礼だ。だから」
胡坐をかいていた足を正してきれいな正座をし、そして三人に向かって腰から頭を下げるシャキン。
ミルナとデミタスもそれに倣い、ハインも慌てて同じ様に頭を下げる。
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('A`;)「い、いいってシャキン」
(;^ω^)「そうだお!当たり前のことをしただけだお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「いつか逆の立場になる時だってあるかもだし、止めて!」
(´・ω・`)「ってことだから、止めてあげてくれる?四人とも」
慌てる三人を見て、ショボンが四人を促す。
(`・ω・´)「本当に、ありがとう」
真剣な表情なまま頭を上げるシャキン。
その気配を感じて三人も頭を上げた。
(´・ω・`)「この世界では、お互い様だからね。これくらいで良しにしておこうよ」
ショボンがさらっとまとめ、笑顔で四人を見た。
(`・ω・´)
まだ何か言いたそうなシャキンを見て、更に言葉を続けるショボン。
(´・ω・`)「でも四人目を入れたの知らなかったよ」
(`・ω・´)「ああ、まだ一週間だからな。今はお試し期間だが、うまくやれていると思う」
从 ゚∀从「!ありがとうございます。……でも」
( ゚д゚ )「どうした?デミタスが変態で気持ち悪いか?」
(´・_ゝ・`)「お前の間違いだろ」
从 ゚∀从「い、いえ、その…。なんか武器に違和感を持つことがあって」
(`・ω・´)「違和感?」
从 ゚∀从「ソロの時にはそんなに感じなかったんですけど、
スイッチの時とかちょっと武器の射程距離に違和感があって」
('A`)「ああ…」
ハインの言葉に首をかしげるメンバーの中、ドクオが何か思うことがあるかのような声を漏らす。
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(´・ω・`)「ドクオ?」
('A`)「多分、ちょっと踏み込みが浅い。もしかして、リアルの体型と今の身体、合致してないとか」
从*゚∀从「は、はい。少しだけ身長が低いというか、サイズが違う感じです」
(まだ知り合って少しなのに、そんなに私の事を見ていてくれたなんて)
('A`)「足の長さとかはキャリブレーション設定の時に適当にやるとずれることもあるみたいだから」
(足が長いと大変だよねー。おれは一生分からないだろうけどよ)
(`・ω・´)「ほぉ…」
(´・ω・`)「なるほどね…。どうしたらいいと思う?」
('A`)「そこら辺はショボンも一回見てみろよ。どうせこの後一緒に外に向かうんだろ?」
(´・ω・`)「戦闘に関してはドクオ先生には敵わないよ」
('A`)「まったくこんな時だけ。…まあ一番楽なのは有効範囲に融通が利く武器に変えることだけど、
投擲系はショボンくらいマニアじゃないと無理だから、槍とかにしてみるとか…かな。
ただ扱い的には片手剣より人によって難しくなるから、範囲の広い片手剣を選ぶのも手だけど」
川 ゚ -゚)「槍は人を選ぶのか?」
('A`)「んー。最初から使ってるとか、使ったことがあるなら別だけど。
片手剣に慣れてると、武器の射程距離は勿論持ち味が全く違うからな」
( ´_ゝ`)「そうだな。片手持ちと両手持ちでは構え、攻撃、防御、変わってくる。
慣れれば使えるようになるだろうが、それまでは大変だろう。
今まで武器は片手剣だけなのか?」
武器の話となると割り込んできた兄者。
普段と違う真面目な雰囲気にも誰も突っ込むことなく話を聞き、ハインの顔を見る。
从 ゚∀从「他には細剣を少し。槍を使ったことは無いです」
( ´_ゝ`)「おれは彼女の戦い方を見ていないから何とも言えないが、
ドクオ、武器の変更と片手剣の種類を選ぶようになるのでは、どちらがいいと思う?」
兄者の言葉を聞き、何人かが微妙な表情をした。
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( ´_ゝ`)「ん?どうした?」
(´<_` )「兄者よ、それはあんまりだぞ」
( ´_ゝ`)「え?武器の変更はかなり建設的な意見だと思うが」
(´<_` )「いやいや、そこじゃなくて、『彼女』って」
( ´_ゝ`)「え?だっておにゃのこだし」
(´<_` )「兄者…。ただのロリコンだと思っていたが、男にまで手をのばしはじめたのか?」
(`・ω・´)「兄者の変態に拍車がかかったか」
( ゚д゚ )「良かったなデミタス。仲間が出来て」
(´・_ゝ・`)「おれはショタコンだから、ハインくらいの年齢は管轄外だ」
( ^ω^)「それを胸張って言えるデミタスは凄いと思うお」
(´・_ゝ・`)「それに二次とNPC専門だしな」
ξ゚⊿゚)ξ「まったくこいつらは。
で、クーはさっきから何黙って彼の事見てるのよ。
美形すぎて見惚れてる…ってわけでもないでしょう?」
川 ゚ -゚)「あ、いや、ハインリッヒさんを何かで見た覚えがあるんだが…」
ξ゚⊿゚)ξ「イケメンだし、街ですれ違ったことでもあるんじゃないの?
…クーはそんなタイプじゃないか…」
川 ゚ -゚)「うむ…」
( ´_ゝ`)「お前らこそ何を言っているんだ?
どこをどう見てもおにゃのこだろ。
確かにハインリッヒってのは男名かもしれないが」
「いやいやいやいやいやいやいや…」
兄者の言葉に苦笑いを浮かべながら否定の言葉を口にするシャキン達。
あまりの否定に兄者も顔を曇らせるが、眉間に皺を寄せつつショボンの顔を見ると、
ショボンも不思議そうな顔をしていた。
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(´・ω・`)「いや、なにみんな、どうしたの?
ハインリッヒさん、誠に失礼ですが、女性で間違っておりませんよね?」
そんな表情のままハインに語りかけるショボン。
そのセリフに驚き、ハインとショボンの顔を交互に見るシャキン達。
从 ゚∀从「あ、はい。女です。よく間違われますけど」
「「「「えーーーーーーーーー!!!!??!!!」」」」
異口同音の叫びする数人。
(´・ω・`)「みんな失礼だよ。特にシャキンとミルナとデミタス。
一週間も一緒にいて」
(;`・ω・´)「い、いやだって言わなかったし」
(´・ω・`)「普通言う?『私は女です』とか。
僕は自己紹介で男ですって言ったことないけど」
(; ゚д゚ )「い、いやしかし」
(;´・_ゝ・`)「な、なんかスマン。ハイン」
从 ゚∀从「あ、いえ、間違われているかなとは思っていたんですが、
その方が円滑にいくならそれで良いかなと思ってしまい。
慣れてきたころにばれればそれはそれで良いかと思っていました。
こちらこそすみません」
慌ててハインに向かって頭をぺこぺこと下げる三人。
そしてハインも三人に頭を下げた。
(;^ω^)「ブーンも男の人かと思ってたお。ごめんなさい」
(´<_`;)「おれもだ。すまんな」
ξ;゚⊿゚)ξ「私も。ごめんなさい」
川 ゚ -゚)「私もだ。すまなかった。
しかし女性となると…。もしやあなた」
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从 ゚∀从
ハインがクーに向かって笑顔を見せる。
それを見て、クーは続きを言うのを止めた。
川 ゚ -゚)
(´<_`;)「しかし、気付いていたのはショボンと兄者だけか」
( ´_ゝ`)「…おれが言っても笑ってバカにしたくせに。
ショボンが言ったら全員驚くとか」
ξ゚⊿゚)ξ「しょうがないでしょ。兄者なんだから。諦めなさい」
( ´_ゝ`)
(´<_` )「まあ、仕方ないな」
川 ゚ -゚)「ドクオはどうだったんだ?」
('A`;)「え?お、おれか?もちろんわかってたぞ」
(女!?女!?女??!え!マジで!!???
え、さっきまで手をつないでたのが女!!??
小学生の時にかーちゃんとつないで以来だぞ!!??
かーーーー。離さなきゃよかった!!!)
从*゚∀从(気付いててくれたんだ!やっぱり私の運命の人!)
('A`)「分かるに決まってるだろ。こんなきれいな人に向かって男とか。みんな失礼だな。
ごめんな。ハインリッヒさん」
(お、おれ大丈夫?!気持ち悪がられてないか!?
あ、笑っちゃダメだった!気持ち悪いって言われる!)
从*゚∀从「い、いえ、大丈夫です」
(やだ、超紳士!超クール!やっぱり私の王子様!)
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('A`)(あーやばい。女だって知ったら緊張してきた。しゃべれねー。
マジイケメンだと思ってたけど、女だと思うと超きれいな人だった。
こんな人と話すことが出来るだなんて、SAOでなきゃ一生むりだったかも)
从*゚∀从(私、見つめられてる。もしかして彼を私の事を…。
何か喋ってほしいけど、寡黙なところも素敵!その目で見つめられたらもうだめ!)
('A`)(また手を繋いでくれたりしないかなー。無理だろうなー。
この世界は汚れないから手を洗う習慣とかなくてよかった。当分の間、手、洗わないでおこ)
从*゚∀从(そんなに見つめないで!でも見て!ああ!私おかしい!!)
('A`)(あれ?……なんでこの人おれの顔じっと見てるんだろ。
そっか。また変な顔とか気持ち悪いかとか思ってんのか。
こんなきれいな人から見たら、おれなんかモンスターレベルだよな…)
从*゚∀从(ダメ―!ダメ―!ドキドキしちゃう!)
('A`)(そうだよな…。おれなんか…)
短い会話の前後で色々な思惑が交差する二人。
(´・ω・`)(なんとなく、色々な思考が交差してる気がする)
( ´_ゝ`)「ドクオはどう思う?」
気を取り直して口を開く兄者。
ハインに向かって口々に謝罪の言葉を告げていた者も、兄者を見た。
('A`)「え?あ?え?なんですか?」
(先輩ナイス!何のことか分からないけど話を振ってくれてありがとう!)
(;´_ゝ`)「ドクオ…。彼女の武器の件だけどさ」
('A`;)「あ、ああ。片手剣で続けるか、槍に持ち直すかってことですよね。
一回槍を使ってもっと低層で戦闘してみて、それで決めてもいいかと思います」
(;´_ゝ`)「とりあえずそうだな。それでなんでお前は敬語復活してんだ?」
('A`;)「あ、いや、なんかその…。なんとなく」
从*゚∀从(礼儀正しいどっくんも素敵!)
ξ゚⊿゚)ξ(あれ?…もしかして彼女はドクオの事を…。いやいや無いか、そんなこと)
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(`・ω・´)「しかし、うちのメンバーでは一緒に戦えても教えたりアドバイスはちょっとな…」
ちらちらとショボンを見るシャキン。
あからさまなため息をつくショボン。
(´・ω・`)「じゃあみんなで行こうか。ドクオ、特に見てあげて」
('A`)「え?!お、おれ!?」
(ショボン!?おれがおにゃのこと!?何言ってんだこの眉毛!ナイス!)
从*゚∀从「よ、よろしくおねがいします!」
(どっくんが私を見てくれる!
しょぼくれ眉さんありがとうございます!)
(´・ω・`)「他にちゃんと見られる人いないでしょ。クーと兄者もサポートしてあげて。
あと、予備の槍の持ち合わせがあったら貸してあげて」
(なんとなくだけど、失礼なことを思われているような気がする)
川 ゚ -゚)「ああ、分かった」
( ´_ゝ`)「了解した」
(`・ω・´)「すまんなショボン」
(´・ω・`)「まったく。期待したくせに」
(`・ω・´)「はっはっはっは」
ショボンが促し、座っていた者が立ち上がって準備を始める。
ショボンのそばにはシャキンが近寄り打ち合わせを始めると、
自然に幾つかの集団が出来た。
その流れから外れたドクオとハイン。
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('A`)(やばい!やばい!やばい!嬉しいけどやばい!やっぱり無理!
ショボンありがとう!でもしね!いやしんじゃだめだけどしね!
どどどどどどどどうしよう!)
从*゚∀从「よ、よろしくお願いしまふ!」
(やだ!かんじゃったはずかしい!)
('A`;)「あ、、ひや、こちらこしょよろしくおねがいしあす!」
(かんだーーーーーーーーーーーはずいーーーーーーーー)
从*゚∀从(同じように噛んでくれた!なんて優しい人!大好き!)
お辞儀をしたハインに慌ててお辞儀で返すドクオ。
ξ゚⊿゚)ξ(二人して噛んでる!突っ込みたい!でも!)
川 ゚ -゚)(いろいろ突っ込みたいが、今突っ込んだら後の楽しみが半減する気がする)
ξ゚⊿゚)ξ
(ガマン!!)
川 ゚ -゚)
(;^ω^)「ツン?クー?」
それぞれの思いを抱えながら、準備を整えて歩き出す十一人。
.
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从*゚∀从「ドクオさんは、お強いんですね」
('A`)「いや、そんなことないですよ」
从*゚∀从「あんな大きな蜘蛛も一刀両断して」
(謙遜する姿も素敵)
('A`)「あれは…。まぁ、その…」
(あー。やっぱりなんか緊張する!)
从*゚∀从「片手剣であんなことできるんですね。すごくかっこよかったです!」
(言っちゃった!言っちゃった!やだどうしよう!)
('A`)「ははは。ありがとうございます」
(受け答え、間違ってないよな!大丈夫だよな!)
从*゚∀从「その後の剣捌きとかもすごくて、かっこよくて…」
(二回も言っちゃった!ばれちゃうかな!?好きになったのばれちゃうかな!?)
('A`)「ははは。剣技(ソードスキル)っすからね」
(そうだよなー。剣だけだよなー。この人も今から教わるから持ち上げてるんだろうな)
从*゚∀从「そんなことないですよ!流れるような剣でした!格好良かったです!」
(見た目もカッコいいけど、言われ慣れてるだろうからこっちで!
('A`)「ははは…」
(剣は…ね)
从*゚∀从「私も頑張ります!だから、いろいろ教えてください!」
(教えてもらえるときは会える!)
('A`)「そうですねー。VIPとN−Sは合同でクエストやったりもしますし」
(あーはいはい。教えてあげますよ。それくらいしか取りえないっすからね)
从*゚∀从「よろしくお願いします!ドクオさん!」
(やった!また会える!)
('A`)「…ハインリッヒさんは、なんでN−Sに入ったんですか?」
(なんか辛くなってきた。話変えよ)
从*゚∀从「あ、ドクオさん、良ければ『ハイン』って呼び捨てで呼んでください。
教えてもらってる時もその方が指示を貰えやすいと思いますし」
(今日の私は責める!彼女いるのかな。いるよね。でももしいなかった時のために!)
('A`)「ああ、じゃあハインって呼ばせてもらいますね」
(所詮ゲームネームじゃ、おれに呼び捨てにされても良いってか)
.
-
从*゚∀从「はい!」
(やった!呼び捨てゲット!一緒にいた二人のどっちかが彼女かな。
ツインテールがそうかな。でもドックンを好きな気持ちではきっと負けない!
過ごした時間が足りないなら、これから頑張る!)
('A`)「じゃあ俺の事もドクオで良いっすよ」
(ゲームネームなら呼べるだろ。ケッ)
从*゚∀从「え!?そ、そんな…無理です……」
(むりむりむりむりむりむりむりむり…。呼び捨てなんて恥ずかしすぎる!
それに金髪ツインテールが名前で呼んでたし!同じじゃダメ!彼女と一緒とかダメ!)
('A`)「あーはい」
(ゲームネームでもおれの名前なんて呼びたくないってか!)
从*゚∀从「あ、あの、あだ名で呼んでも良いですか?」
(私だけの呼び方で新密度UP!)
('A`)「ああ、いいっすよ」
(…ゾウリムシとか言い出すのかな。もう何でもいいよ)
从*゚∀从「じゃ、じゃあ……どっくん」
(呼んじゃった!呼んじゃった!恥ずかしい!!!)
('A`;)「ふぇ!?」
(ふぇ!?)
「「「「「 ふぇ !!?? 」」」」」
照れるハイン。
変な返事をしてしまうドクオ。
聞き耳を立てていて、変な声を出してしまうメンバー。
先頭を歩くショボンは、小さくため息を吐いた。
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4.心の比重と揺れる心と
(`・ω・´)「あの後ドクオをドックンと呼ぶのが流行ったよな」
(´・ω・`)「ハインが本気でドクオとツンが付き合ってると思っていたことにはびっくりしたよ」
(`・ω・´)「……ツンの怒りが激しすぎて引いた覚えがある」
(´・ω・`)「あれはね……」
思わずお互いの顔を見て苦笑いを浮かべる二人。
(`・ω・´)「で、ドクオがそんなふうに感じていたのは分かったが、それはドクオから聞いたのか?」
(´・ω・`)「うん。ドクオがフリーなのを知ってハインが本気のアプローチをしてきて、
そのアプローチが本気だと知ったドクオが動揺しまくってね。
戦闘にも影響してたから聞き出した」
(`・ω・´)「あらら」
(´・ω・`)「ブーンもいたから、二人で付き合えば良いって言ったんだけど、無理だって」
(`・ω・´)「なんでだ?」
(´・ω・`)「美女と野獣過ぎてきついってさ」
(`・ω・´)「なんだそりゃ」
少しだけ不愉快そうに言葉を詰まらせるシャキン。
(`・ω・´)「いろいろと謎な部分はあるが、ハインは本気だぞ。
そんな見た目なことで断っているとは…。あいつを見損ないそうだ」
(´・ω・`)「もちろん、建前だよ」
(`・ω・´)「?」
(´・ω・`)「このゲームをクリアするまで、色恋とか考えられないんだと思う。
っていうか、僕達が現実世界に戻るまで…僕達を現実世界に戻すまで……ね」
(`・ω・´)!
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悲しそうに話すショボン。
シャキンはその表情と口にされた内容に、息をのんだ。
(`・ω・´)「そうか…」
(´・ω・`)「誘ったことを、まだ気にしているんだろうね。
この世界に来たのは、自分達の意思だっていうのに」
(`・ω・´)「おまえは、人のことは言えないだろ?」
(´・ω・`)「……今は良いじゃん、それはさ。
それに僕は、ドクオ程応用効かなくないよ」
(`・ω・´)「ん?」
(´・ω・`)「怖いんだとも思う。僕ら…。ブーン、ツン、クー、そして…僕。
自惚れじゃなく、ドクオにとってこの四人は一番大事な友達なんだよ。
もちろん他のメンバーも大事な友達だけど、やっぱりさ。
でも、ハインを好きになってきている自分がいて、そんな自分が怖いんだと思う。
いや、嫌い…なのかもしれない」
(`・ω・´)「どういう事だ?」
(´・ω・`)「ぼくら以上に好きな人を、大事な人を作ってしまうのが、怖いんじゃないかな。
そして、そんな自分が許せない。嫌い。
ドクオなら例え恋人が出来たって恋愛脳になる様なキャラじゃないから、大丈夫だと思うんだけど」
最後はおどけた様に肩をすくめて話す。
けれどその表情はやはり悲しげで、シャキンの心は痛んだ。
(´・ω・`)「でも、少しずつだけど折り合いをつけ始めているような気がするんだ。
二人でクエストとか採取に行ったりしているみたいだしね。
……大事なものが増えるのは、良いことだよ。きっと。
ドクオなら、その分慎重になってくれるはずだから」
(`・ω・´)「……この先に期待だな」
(´・ω・`)「うん。そうだね」
最後に心からの笑顔を見せるショボン。
シャキンは、それを見て心の中で安堵の吐息を漏らした。
.
-
(`・ω・´)(こいつの方も色々とどうにかしてやりたいが……)
(´・ω・`)「どうしたの?じっと見て」
(`・ω・´)「いや、なんでもない」
(´・ω・`)?
再び部屋がノックされる。
(`・ω・´)「誰だ―?」
( ゚д゚ )「おれだー」
(´・_ゝ・`)「いるー」
(`・ω・´)「いいぞー」
ドアが開き、ミルナとデミタスが中に入ってくる。
( ゚д゚ )「ショボンがいると聞いたんだが…」
(`・ω・´)「流石にお前たちはちゃんと返事を聞くな」
(´・_ゝ・`)「ショボンがいると聞いたからな」
(`・ω・´)「……」
(´・ω・`)「ミルナ、デミタス、こんにちは」
( ゚д゚ )「おう」
(´・_ゝ・`)「だな」
(´・ω・`)「ぼくに何か?」
(´・_ゝ・`)「エクストとトソンから朝霧の探索の件を依頼されたと思うんだが…」
(´・ω・`)「うん。OKしたけど不味かった?」
( ゚д゚ )「いや、それはありがたいんだが、いくらぐらいかかる?」
(´・ω・`)「へ?」
.
-
( ゚д゚ )「こちらから依頼したんだから、費用が掛かるだろ?」
(´・ω・`)「ああ、他のギルドや個人から依頼されたら請求はするけど、
ここから取るつもりはないよ?」
(´・_ゝ・`)「いや、取ってくれないか」
(´・ω・`)「何故?」
( ゚д゚ )「おまえとシャキンが血縁ってことで最初から仲良くさせてもらってるし、
いろいろ便宜を図ってもらっているが、あの二人はそれに慣れ過ぎてしまったように思える」
(´・_ゝ・`)「VIPはサポートや教育を生業にしているところもある以上、
そこら辺の線引きはちゃんとしておいたほうが良いと思うんだ」
( ゚д゚ )「この前血縁だってことを知って以来、
ギルド同志が親密にしているのを普通の事だと思っている節もあるから、
そこら辺も一度締めておこうと思ってな」
(´・ω・`)「んーーー。出来ればみんなとはギルドの垣根無くいたいから、別に良いんだけど…」
(`・ω・´)「だが、一つのギルドではない」
(´・ω・`)「シャキン…」
(`・ω・´)「特に今回はお前に戦闘の指揮をしてもらいたいという明確な意思もあるからな。
一度あいつらにガツンとしておいたほうが良いか」
( ゚д゚ )「お前が言うなだが、おまえは言ってもいいのか」
(´・_ゝ・`)「一応このギルドのマスターだし、ショボンと血縁なのもこいつだし。
なんとなく納得は出来んが」
(`・ω・´)「……結構ちゃんとしたこと言ったつもりなんだけど」
( ゚д゚ )「へこむなへこむな。冗談だから」
(´・_ゝ・`)「おまえがギルマスだから、おれ達は集まってきたわけだしな」
(*`・ω・´)「そ、そうか?そうだよな。てへへへへっへへ」
.
-
( ゚д゚ )(うぜぇ…)
(´・_ゝ・`)(うざいな)
(´・ω・`)「……言いたいことと趣旨は分かったけど、やっぱやだ」
( ゚д゚ )「どうしてだ?」
(´・ω・`)「みんなとは、そういうの無しの繋がりでいたい。
確かにギルドは分かれているけど、みんなのことも大事だと思ってるから。
今までだってギルドの統合の話はあったけど、
その都度一つのギルドになることよりも二つのギルドでいる戦略性を
選ばせてもらったのは僕とシャキンだけど、
心の中では一つのギルドだと思ってるんだ。
二人にはぼくからも話すけど、今まで通り他のギルドや組織が絡まない時には、
そういうの無しでやりたい。
……だめかな?」
( ゚д゚ )「いや、分かった」
(´・_ゝ・`)「分かったか?二人とも」
ショボンの言葉を聞いてにやりと笑った二人。
そしてほんの少し開けておいたドアに向かって声をかける。
「「はい」」
返事と共に中に入るエクストとトソン。
(´・ω・`)「二人とも策士だね」
( ゚д゚ )「いや、おまえには負けるさ」
<_プー゚)フ「確かに甘えてました。すみませんっした」
(゚、゚トソン「そんなつもりはなかったのですが、気付かないうちに甘えていたと思います。
申し訳ありませんでした」
.
-
(´・ω・`)「いや気にしないで。
二人の事も、同じギルドのメンバーだと思ってるからさ。
僕にできる範疇の事なら、言ってほしい。
その分僕も無茶を言えるし、戦闘時の指揮も容赦なく出来るしね」
<_プー゚;)フ「き、気を付けます」
(゚、゚;トソン「お手柔らかにお願いします」
( ゚д゚ )「やっぱり一枚上手だったか」
(´・_ゝ・`)「そうだな」
にっこりほほ笑んだショボン。
冷や汗を垂らすトソンとエクスト。
ミルナとデミタスは少し悔しそうに笑い、シャキンはそんな五人を見て笑った。
.
-
5.嘘と誠と
(`・ω・´)「いろいろスマンな、うちの奴らが」
(´・ω・`)「ミルナとデミタスは色々と気を使ってくれていいよね」
(`・ω・´)「お前のところだって使ってくれてるだろ」
(´・ω・`)「まあねー。でもギルド運営とか戦闘パターンとか、そういうのは基本自由気ままだから。
ミルナとデミタスはそこら辺もサポートしてくれているんでしょ?」
(`・ω・´)「ああ。だがギルドの件はお前に任せておけば良いし、
戦闘もドクオと兄者が見てお前がまとめればそれが一番だからだろ」
(´・ω・`)「本当は色々意見も聞きたいんだけど…ってどうしたの。
変な顔して」
(`・ω・´)「ミルナとデミタスが色々言ってくれるのって、おれが頼りないからか?」
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(´・ω・`)
(`・ω・´)
(´・ω・`)
(`・ω・´)
(´・ω・`)
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(´・ω・`)
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(´・ω・`)
(`・ω・´)
(´・ω・`)
(`・ω・´)
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(´・ω・`)「えっと……」
(`・ω・´)「慰めはいらない」
(´・ω・`)「はい」
(`;ω;´)「おれ、もっとがんばる」
(´・ω・`)「シャキンは今のままでいいと思うけどね。
もともと今のシャキンを知ってからギルドになったわけだし。
うちとはギルドが出来た経緯が違うんだからさ」
(`・ω・´)「そうか?そうだよな。うん、そうだ」
(´・ω・`)(このパターンも短い間に何回もやられると飽きるよね)
(`・ω・´)「しかし血縁と言えば、しぃちゃんに会った時は驚いたな」
(;´・ω・`)「いきなり話題を持ってくるよね。確かにあれは驚いたけど」
(`・ω・´)「いきなり『兄弟ですか?』だからな」
(´・ω・`)「ふつうこういうゲームの中では、
リアルの世界関連の事柄は言わぬが花ってところがあると思うんだけど。
思わずギルド外の人に言われた時用の『他人』『友達』ってのを強調しちゃったから、
あのあとこっそり血縁だってことを話して、注意はしておいたよ」
.
-
(`・ω・´)「知られてまずいことはないが、
どんな弊害が出るかは分からないからな」
(´・ω・`)「そういう割にはミルナ達に紹介してくれる時に最初っから血縁だって話してくれたよね」
(;`・ω・´)「あ、あれだな、あれ」
(´・ω・`)「あれ?」
(`・ω・´)「あの子の中では、この世界ももう現実世界と同じなんだろ」
(´・ω・`)「そう…だね」
(`・ω・´)「ああ」
(´・ω・`)「でも冷静にこの世界と現実世界を見つめているところもあるんだよ」
(`・ω・´)「そうなのか?」
(´・ω・`)「うん。実はさ…」
.
-
6.現実と事実と
2024年4月
ギルドVIP執務室。
ショボンが一人机に向かっている。
目の前にはいくつかのウインドウが開いているが、
どちらかと言う机の上の書類を中心に見ていた。
すると、ドアがノックされた。
(´・ω・`)「はい」
(*゚ー゚)「しぃです。今大丈夫ですか?」
(´・ω・`)「大丈夫だよ」
(*゚ー゚)「お邪魔します。あ、すぐすみますからそのままで」
ドアが開かれる。
目の前のウインドウを消しつつ執務机の前から移動しようとしたショボンを止めるしぃ。
しぃの後ろにはギコも居た。
(,,゚Д゚)「お邪魔します」
(´・ω・`)「二人ともお疲れ様。しぃ、今日はお店の方はどうだった?」
(*゚ー゚)「順調です。今日から出してるメニューも好評でしたよ」
(´・ω・`)「それは良かった」
(*゚ー゚)「データは夜の分とまとめますね。今日のランチも持ってきました」
(´・ω・`)「!ありがとう。食べるの忘れてたよ」
しぃが籐で出来たようなバスケットを胸の位置で掲げるのを見て、嬉しそうにお礼を言うショボン。
そして書類を机の端に寄せた。
.
-
机の上に置かれるバスケット。
(*゚ー゚)「どうぞ」
(´・ω・`)「うん。話の後でいただくよ。で?二人でどうしたの?」
(*゚ー゚)「あ、やっぱり話があるって分かります?」
(´・ω・`)「わざわざ二人で来られればねー。悪い話で無いのを祈るばかりだよ」
(*゚ー゚)「ちょっとめんどくさい話です」
(´・ω・`)「しぃがそう言うってことは本当になかなか手をこまねく内容なんだろうね。
聞くのが怖いなー」
(*゚ー゚)「ショボンさんなら大丈夫ですよ」
(;´・ω・`)「ほんとに怖いんだけど」
おびえるように眉をひそめたショボンを見て笑顔を見せるしぃ。
ギコはその後ろで挙動不審に目線を部屋のあちこちに飛ばしている。
(´・ω・`)「じゃ、なんだろう。身構えて聞こうかな」
(*゚ー゚)「はい、お願いします」
しぃがウインドウを開き操作すると、ショボンの視界の隅にメッセージ到着シグナルが現れた。
(´・ω・`)「ん?」
(*゚ー゚)「開けてください」
(;´・ω・`)「えっと…本気で怖いな」
ウインドウを出すショボン。そしてメッセージを開く。
(´・ω・`)「!え、これって…え?」
.
-
(,,゚Д゚)「お、おれとしぃの本名と住んでるところだゴルァ」
(´・ω・`)「う、うん。二人の名前と、それぞれの住所が書いてある。…ね。
ど、どういうこと?」
(,,゚Д゚)「しぃと話し合ったんだゴルァ。
リアルに戻ってから、また会いたいからショボンに二人のデータを教えておこうって」
(´・ω・`)「ギコ……しぃ……」
(*゚ー゚)「重荷だと思いますが、よろしくお願いします」
(,,゚Д゚)「頼むぞゴルァ」
(´・ω・`)「頼むって言われても…」
真剣な顔のギコ。
柔和な笑顔を見せるしぃ。
そんな二人を交互に見ながら、珍しく本当に情けない顔を見せるショボン。
その表情は困惑と喜びから来たものだった。
(*゚ー゚)「ギルマスとして、リアルでもちゃんと呼んでくださいね」
(,,゚Д゚)「頼んだぞゴルァ」
(*゚ー゚)「ショボンさんから連絡が来る前に私達が先にショボンさん達に連絡できたら、
ペナルティですよ」
(,,゚Д゚)「そうだぞゴルァ」
(´・ω・`)「ぼくの本名も渡しておこうかな」
(*゚ー゚)「いえ、それは大丈夫です」
(;´・ω・`)「え?ここで拒絶!?」
(*゚ー゚)「だって教えてもらってたら、私達から連絡出来ちゃうじゃないですか。
ギルマスとして、探してきてください。逃げたりしませんから」
(,,゚Д゚)「でもこちらも探す努力はするから、おれらが先に見付けることが出来たら罰ゲームだぞ」
(´・ω・`)「……ひどいな。二人とも」
.
-
(*゚ー゚)「私達をこのギルドに入れた以上、これくらいしてもらわないと」
(,,゚Д゚)「そうだぞゴルァ」
(*゚ー゚)「後悔しました?」
(´・ω・`)「する分け無いよ。二人と仲間になれて良かった。
二人を誘った僕の目は間違ってなかったって、改めて思うよ」
(*゚ー゚)「物凄い自画自賛ですね。さすがショボンさんです」
(,,゚Д゚)「おれ達もこのギルドに入れて嬉しいぞゴラァ」
三人が、三様の笑顔を見せた。
.
-
7.見せかけと真意と
(`・ω・´)「それは……」
(´・ω・`)「すごいよね。二人とも。まさかそういった行動に出るとは思わなかったよ」
(`・ω・´)「すごいな、彼女は」
(´・ω・`)「で、二人がそれをしたのが広まって、
次の日のうちに全員から本名と所在地が送られてきた」
(`・ω・´)「ハハハハッハハ」
(´・ω・`)「しかも全員『ショボンの名前とかいらないから。ヨロシク』だって」
(`・ω・´)「さすがVIP、統制が取れてるな!」
(´・ω・`)「嬉しいけど大変だよまったく」
ため息を吐くショボン。
しかしその表情はどこか嬉しげで、けれどどこか寂しそうだった
(`・ω・´)「…ショボン?なにか引っかかってるのか?」
(´・ω・`)「うん…。しぃの、多分真意がね」
(`・ω・´)「ん?」
(´・ω・`)「彼女は、かなり聡明だよ。
多分ぼく達五人が…僕にはシャキンが、それに兄者と弟者もリアルで繋がっていることを知って、
自分が独りだってことを改めて感じたんだと思う」
(`・ω・´)「独り?いや、ギコも居るしお前達だって」
.
-
(´・ω・`)「うん。アインクラッドで彼女は一人じゃない。
でも、リアルの世界とのつながりは無いんだよ。
独りなんだ。
生きて帰れればいいけど、もしも死んでしまったら、それで終わり。
自分がこの世界で生きてきたことを、生き抜いたことを、リアルの誰にも知らせることは出来ない」
(`・ω・´)!
(´・ω・`)「もし僕が死んでもドクオやブーンが生き残ってくれれば、
その生きた証を父さんたちに伝えてくれると思う。
多分、彼女はそれを考えている。だから僕に依頼したんじゃないかな。
多分……だけどね」
(`・ω・´)「聡い子だな」
(´・ω・`)「うん。
おそらくだけど、モナーやクックル、モララーあたりはしぃの真意に気付いているだろうね。
そして自分達の事も教えてきたんだと思う」
(`・ω・´)「…おまえが、
自分の命に代えても自分達を守ろうとしてくれていることを、
分かっているんだな」
(´・ω・`)「………そんな良いもんじゃないけどね。
僕も、自分のエゴのために頑張っているだけだし。
それにそんな重いことはしたくないから、
絶対にみんなが生き残ることが出来るようにする。
ギルドの全員が生き残れるように。
僕はその為なら何でもやる。
…………そう。なんでもね。
その為なら泥水もすする。
僕一人なら手も染める。
………誰に後ろ指を指されても気にはしない」
(`・ω・´)「ショボン……」
(´・ω・`)「きっと、シャキンだって僕と同じ気持ちだと思うよ!
だから、シャキンの事を宜しく頼むね!」
.
-
「……わかった」
「ん……」
どこから聞こえる二つの男の声。
そしてほんの少しだけずれていたドアが動き、カチャリと閉まる音がした。
(`・ω・´)「外で聞いてるやつがいるのにどこまで何を話すつもりなのかと思ったが、そういうことか」
(´・ω・`)「さっき入ってきたとき少し違和感を感じたんだ。
で、出て行ったあとドアがほんの少しだけ閉まっていなかった。
この部屋はうちと同じで完全防音仕様だけど、ドアが少しでも開いていたら外から聞けるからね」
(`・ω・´)「しかしなんだって盗み聞きなんてことをあいつらは…」
(´・ω・`)「珍しく長くぼくが居るから、心配だったのかな。
シャキンが独りで何かを抱え込むんじゃないかって」
(`・ω・´)「おれ、そんなに信用ないのか?」
(´・ω・`)「逆だよ。自分達を守るために一人で何かを抱え込んだりしてしまうんじゃないかって
思ったんじゃないかな」
(`・ω・´)「……」
(´・ω・`)「心配だったんだよ。シャキンの事が」
(`・ω・´)「だが、おまえを」
(´・ω・`)「ぼくの事も心配だったと思う。
……ぼくがシャキンにこんな話をしていることを知っているのは、二人だけだからね。
だから、シャキンが独走しないように、ぼくが迷走しないように、
知ろうとしてくれてるんじゃないかな」
(`・ω・´)「そうなら良いが…」
(´・ω・`)「あの二人とモナーとクックルは仲良いしね。
多分それなりに互いのギルドの情報交換はしていると思うよ」
(`・ω・´)「それは知ってるが」
.
-
(´・ω・`)「あと、気付いているでしょ?クックルの事」
(`・ω・´)「実はちゃんと喋れるってことか?」
(´・ω・`)「うん」
(`・ω・´)「ま、そりゃ。気付くさ」
(´・ω・`)「でも、知らないふりをしていてくれる。
と言うよりも、彼を心配し、彼が声を出せないことを周囲に分かる様にしてくれている」
(`・ω・´)「お前が何か企んでるってことは分かるからな」
(´・ω・`)「あの二人もそうしてくれている。
頭が下がる思いだよ。
僕もあの二人をあの二人が思っている以上に信用し信頼しているけど、
いつかちゃんとお礼を言わなきゃだね」
(`・ω・´)「あの二人が照れながら慌てる姿が見られるってことだな」
笑う二人。
無邪気な笑顔はこの二人は本当によく似ていた。
(´・ω・`)「さて、そろそろ帰ろうかな」
ひとしきり笑った後、ショボンが大きく伸びをした。
(`・ω・´)「なんだ、もう帰るのか?夕飯作って行けよ」
(´・ω・`)「そこ、ふつう『夕飯食べて行けよ』じゃないの」
(`・ω・´)「だってお前が作った方がうまいし」
(´・ω・`)「まったく。だいたいこのギルドホームの台所って使ってるの?」
(`・ω・´)「たまにトソンが」
(´・ω・`)「トソンが入る前は」
(`・ω・´)「……」
.
-
(´・ω・`)「まったく」
(`・ω・´)「うちのギルドは生産系じゃないから良いんだよ」
(´・ω・`)「攻略組の中にも料理スキルを上げている人がいるって噂があるけどね」
(`・ω・´)「噂だろ、噂」
(´・ω・`)「まったくもう」
(`・ω・´)「作ってけよー。食材は買ってくるからさー」
(´・ω・`)「食べに来ればいいでしょ」
(`・ω・´)「えーー。だってさーー」
(´・ω・`)「食材は用意してくるようにね。
あと、店の方じゃなくてリビングの方で。
ついでに朝霧の洞窟の話もしよう」
(`・ω・´)「わかった。奴らに連絡しておく」
ウインドウを出してメッセージを打つシャキン。
ショボンはその姿をじっと見ている。
(`・ω・´)「ん?どうした?」
(´・ω・`)「なんでもない」
(`・ω・´)「変なやつだな…。よし、これでよしと。さて、夕食までまだ間があるから、まだいるだろ?」
(´・ω・`)「良いけど…なんか話でもあるの?」
ウインドウを消して真っすぐにショボンの目を見るシャキン。
(`・ω・´)「実はな、今日呼んだのはこれが本題と言っても良い」
真剣な顔でショボンを見るシャキン。
怪訝に思いショボンが口を開こうとしたその瞬間、
シャキンが言葉をつづけた。
.
-
(`・ω・´)「おまえは、いつまで殺人ギルドであるラフコフのやつらと接触しているつもりなんだ?」
.
-
(´・ω・`)
.
-
ストレートなシャキンの物言いに、思わず返答できないでいるショボン。
それは彼にとっては珍しいことだった。
(`・ω・´)「いつからかは聞かん。いつまでつながっているつもりだ?」
(´・ω・`)「何を…言っているの…と言いたいところだけど、無駄なんだろうね」
(`・ω・´)「何故かの見当はついている。だが、それにしても…」
(´・ω・`)「情報のソースはアルゴさんかな?でも、何故繋がっているかまで突き止めていたとは」
(`・ω・´)「彼女から聞いたのはお前がPoH達三人と接触していたことぐらいだ。
あとは経験からくる想像だが、間違っているとは思わん」
(´・ω・`)「間違っているかもよ?」
(`・ω・´)「報酬はギルドVIPとN−Sのメンバーの命。及び他のレッドギルドの情報ってところか。
対価は…ツンとブーンとクー。あとは兄者と弟者ってところか?」
(´・ω・`)「……すごいね」
(`・ω・´)「ラフコフには一度、4人で狩りに行った際に遭遇したことがある。
おそらくは首領のPoHとその他7人。
後から調べたら、その時近くのフィールドダンジョンで大量虐殺があったらしいから、
その流れだろうな」
(´・ω・`)「……効率の良い限定クエストの噂に騙された人達を殺しまくった…」
(`・ω・´)「ああ、それだ。
その時に居たのはハインまでの四人。
ちょうどハインがドクオに惚れた少し後の頃だな」
その事件を思い出し、顔を曇らせたショボン。
.
-
(`・ω・´)「おれ達を見て奴らは笑いながら武器を構えた。
おれは何とかして三人を逃がすことを考えた時、
奥にいたフードを被った奴が合図を出して、
そいつらは森の中に消えた。
あのフードが、首領のPoHだったんだろうな。
命が助かったことに、心底ホッとした。
三人も、身体がこわばっていた。
『人』から与えられる殺意がこれほどまでにキツイとは、思わなかった。
逃げるように街に戻り、近くの宿屋に入って、やっと落ち着いた。
そこで、思った。何故逃がしてもらえたのか。
その答えが、ついこの前、やっとわかったわけだ」
(´・ω・`)
(`・ω・´)「何故、ラフィン・コフィン、殺人ギルドと手を組んだ?」
(#´・ω・`)「手を組んでなどいない!」
(#`・ω・´)「だがそう思われても仕方ない状態じゃないのか!?」
(´・ω・`)「手なんか…組んでない…人を殺す手伝いなんて…していない…」
(`・ω・´)「人はそうは思わない。
…ラフコフの補給線。
なんだろ?」
(´ ω `)「……食事と、装備と服、POT関係。それらを時々渡しているだけだよ」
(`・ω・´)「…それを、手を組んでいると」
(#´・ω・`)「違う!僕たちの命を守るためだ!それしかなかったんだ!」
(`・ω・´)「おれはそれを信じられる。それが真実なんだろう。
おまえはおれに嘘は言わないから。
隠し事はあっても。
だが、他の者がそれを信じると思うのか?」
(´ ω `)「……さっき、…言ったよね。
何でもするって。
誰に後ろ指を指されても気にしないって」
(`・ω・´)「……ミルナやデミタス、ハインにも?」
(;´ ω `)!
.
-
膝の上で手を強く握って身体を固めていたショボン。
しかしシャキンの言葉に動揺して身体を震わせた。
(`・ω・´)「ギコやしぃは知っているのか?」
(´ ω `)「……話してはいない」
(`・ω・´)「モナー、クックル、モララー、フサギコ…」
(´ ω `)「話してはいないけど、多分知ってる…」
(`・ω・´)「良いのか?」
(´ ω `)「彼らが、みんなが生きていてくれるなら、僕はそれでいい。
その先で何が待ち受けていても、みんなが生きて、笑っていてくれるなら」
(`・ω・´)「ショボン……」
(´ ω `)「軽蔑…する?」
(`・ω・´)「いいや。しない。
でも、心から思うよ。
やっぱりお前がうちの会社を継ぐべきだって」
(´ ω `)「なにこんな時にそんなこと」
(`・ω・´)「祥大、気付いてないのか?
今のお前のが言っているのは、じいちゃんそっくりだって。
自分の手の中にいる者は命に代えても守るって、あれに」
(´ ω `)「似てなんかないよ」
(`・ω・´)「頑固なところもそっくりだ」
(´ ω `)「…ばかだな…」
.
-
(`・ω・´)「で、話してみろ。なぜこうなったのかを」
(´・ω・`)「え?」
(`・ω・´)「話してみろ。いくらなんでもお前が自分からあいつらに関わったとは思えない」
(´・ω・`)「……志也兄さん……」
(`・ω・´)「話せ」
(´・ω・`)「!!」
(`・ω・´)「は、な、せ。」
(´・ω・`)「…………………あれは」
.
-
8.死への誘いと生への渇望と
2023年7月
フィールドダンジョン『常夜の森』
鬱蒼と茂る木々。
空(実際は次のフロアの底なのだが、ほとんどの者は『空』と呼んだ)を隠す程に高くそびえ立ち、
横に広く葉を生い茂る木々。
鬱蒼と茂る草花は人の背の高さを超え、視界を邪魔している。
昼の時間さえ闇が支配するその森に、彼らはいた。
( ´_ゝ`)「弟者、逃げろ」
今流石兄弟は、オレンジプレーヤーを含む7人のプレーヤーに囲まれ、
その場を動けずにいた。
(´<_`;)「出来るわけないだろう!」
( ´_ゝ`)「何とかしておれが隙を作る。その間を縫え」
(´<_`;)「だから出来る訳がないと言っているだろう!
大体この状況でどうやって!」
( ´_ゝ`)「この前覚えたあの技を使う」
(´<_`;)「ば、馬鹿野郎!
あの技は確かに全方位に有効だが、
その後の硬直を考えれば今この場で使える訳が」
( ´_ゝ`)「だが、やらねば二人とも死ぬ。
おまえだけでも生き抜くんだ」
(´<_`;)「兄者…」
小声で周囲に聞こえない様に話す二人。
.
-
兄者の声は緊張に満ち、表情は厳しい。
弟者は兄者の言葉に反発しつつも理性的な反論をすることが出来ず、
ただ感情的に言葉を荒げるだけだった。
(´<_`;)「みんなを待とう。それまで二人で戦えば」
( ´_ゝ`)「もうすでにおれ達のHPはイエローだ。
POTを飲む隙も与えてもらえない今、反撃しても結果は目に見ている。
おまえだってわかっているだろう?」
(XX)「なにを 話して、いる」
(JB)「同じ顔した二人。片方だけでも生かしてやる?」
(XX)「二人の 殺しあいを、みせてもらう か」
( ´_ゝ`)「ふっ。どうせその後で残った方を殺すんだろ」
(XX)「 ばれて るか」
(JB)「ね、ヘッド。もうやっていい?」
髑髏のマスクをつけた赤目の男と黒いマスクを被った男に詰め寄られ、
武器を構えながらも後ずさりする兄者と弟者。
しかし周囲を数人のマスクを被った男に囲われており、
それほど後ろには下がれない。
(XX)「もう、良い だろ?」
( )
骸骨マスクと黒マスクが意識を向けた先にいる、フードの男。
大きなフードを深くかぶっているため顔は分からない。
おそらくは顔を隠すためにマスクも被っていると思われるが、
そんなことを考える余裕などなく、兄者と弟者は更に体を強張らせ、
それでも必死に武器を構えている。
.
-
(JB)「ヘッド、何考えてるの?」
集団の中では上位にいると思われる髑髏のマスクと黒いマスクの男。
その二人がさらに指示を仰ごうとするフードの男。
兄者と弟者の力量ならば、この輪を瞬間的に破ることはおそらくできる。
前に髑髏と黒マスクとフードの男の三人、
左右に一人ずつ、後ろに二人。
これくらいの人数ならば、隙間を作り逃げることが。
そしてそれは先ほど兄者が提案したような自らを犠牲にするようなやり方ではなく、
二人で逃げることを、生き続けることを選んだとしても。
だが二人はその行動を選ぶ気にはなれなかった。
髑髏のマスク、黒マスク、この二人は確かに強いと思われる。
でも本気で逃げようとすれば、戦えば隙を作ることは可能な様に思える。
しかしその後ろのフードの男。
こいつの手からは逃げられない。
そんな気がしてしまっていた。
特に兄者は初対面のはずのこの男の恐ろしさを、何故か知っているような気がした。
感じる圧力、前の二人や周囲から浴びせられる殺気とはまた違う、
恐ろしいほどのプレッシャー。
いつか、似たような何かを感じたことがあるような気がしていた。
弟者よりも冷静にこの場を観察できたのは、
弟者を守るという決意とともに、その経験によってなのかもしれない。
兄者自身はそこまで冷静に状況分析をしているわけではなかったが。
(´<_`;)「あ、兄者…」
( ´_ゝ`)「おれの言うとおりにしろ、弟者。
それに、死ぬと決まったわけじゃない。
あいつらがすぐ来るかもしれないしな」
前の三人を見据えたまま自嘲気味に笑う兄者。
口の端を少しだけ上げただけだったが、
弟者にはそれが『笑い』であると理解できた。
.
-
自らの言葉がおそらくは実現しないであろうという嘲り。
そして弟者は分かってしまう。
自分の兄が、自分を守るために自分の命を捨てる覚悟をしたことを。
そして弟者は知っていた。
自分の兄が、一度決めたことをそう簡単に覆そうとはしないことを。
(´<_` )「兄者……」
おそらくは、自分が何をしても兄者はあの技を繰り出す。
自分を中心に衝撃波を生む剣技を。
その衝撃波によってできた隙を縫って、自分は外に飛び出す。
そして……。
(´<_` )「わかった」
( ´_ゝ`)「…おまえは、生きろ」
弟者の決意を感じ、構えを取る兄者。
剣技の発動には、所定の構えを取る必要がある。
何度も練習し、何度も実践に使えば技の発動までの時間を短縮することは出来るが、
覚えたばかりの技ではそうはいかない。
(XX)「技の 発動」
(JB)「ハンマー系は覚えてないや」
両手持ちのハンマーを頭上に掲げた兄者。
最初は淡い青色に発光しだしたが、すぐに濃い青に変わる。
(#´_ゝ`)「うりゃあああああああああ!!!!!」
それはまさに渾身の一撃。
叫びながら跳躍し、振りかざしたハンマーを落下の勢いのままに振り下ろす。
本来ならば敵に当ててHPを削りつつ周囲の敵に衝撃波を与える技だが、
今回は前にいる三人を狙うふりをしながら地面を叩きつけた。
それは剣技による相殺を避け、確実に衝撃波を相手に与えるための策。
.
-
だから視線はあくまでも敵に、今回はこの一団のボスであろう、フードの男に視線を向けて。
兄者の放った技はハンマー系武器の固有剣技。
個別の攻撃と共に周囲に衝撃波を放つことが出来る技である。
威力は高く、衝撃波を受けた敵は硬直を起こすため、
使い方次第では戦況を変えることの出来る重要な技であった。
だがその威力・能力の分剣技後の硬直も長めに設定されていた。
特に覚えたばかりで技の熟練度も低い今は硬直時間が最大であった。
それでも技をしっかりと当てることが出来れば敵に与えた硬直と相殺できる設定ではある。
そう、敵に当てることが出来れば。
(:´_ゝ`)「行け弟者!!!!」
地面を叩きつける数瞬前、兄者の視界から三人は消えていた。
それはこの技を予期していた証拠。
自分の企みが、すべて見抜かれていた証拠。
自分の技が見抜かれたこと、フードの男を狙っていないこと。
地面に当たった瞬間に輪の様に広がる衝撃波から逃れるための行動。
身体能力を高めている高位プレイヤーだからできる行動。
おそらくほんの少しの予備動作で、衝撃波の届かない空高く飛びあがっているであろう三人。
己の死を覚悟しつつ、今は術の発動と共に同じようにジャンプして逃げた最愛の弟を思う。
しかし耳に届いた唸り声に、深い悲しみを覚えた。
(´<_`#)「うりゃあああああああああ!!!!!」
困惑しつつ硬直時間でも動かせる首から上を最大限に動かして声のした方向を見る。
逃げたはずの弟が、斧を構えていた。
上空に飛んでいるフードの男と黒マスクの男を見ながら、斧を構える弟者。
斜め右下から左上に一撃目を放つ剣技を使い、飛んだ二人を一度に切るつもりなのだろう。
そう、「二人」を。
.
-
(XX)「残念」
七人のうち、雑魚の四人は衝撃波で飛ばした。
フードと黒マスクの二人はジャンプして避けた。
最後の一人、骸骨マスクは後方に飛んだあとに繰り出した剣技によって衝撃波を防御していた。
そしておそらくは防御後に一撃繰り出すことの出来るであろう剣技に沿って、
その細い剣を、細剣とはまた違う幅を狭くした細く薄い剣によって、
無防備な弟者の脇腹を突き刺していた。
(´<_`;)「っ!!」
技をキャンセルさせられた場合も硬直は起きる。
無防備な状態の弟者を更に追撃することなど、容易なはずだった。
しかし骸骨マスクはそうはしなかった。
(XX)「今のは 仕方ない。剣技の 流れ だから。それに まだ 殺してない」
攻撃を許可しなかったフードの男に言い訳じみたことを言っている。
しかしフードの男は返答しなかった。
それを許されたと判断した骸骨マスクの男。
そして三人が兄者と弟者の前にさっきと同じように立つ。
衝撃波を受けて倒れていた四人も復活し、苛立ちと殺気を隠そうともせず武器を構えている。
ただ一つ変わったのは、弟者のHP。
赤く変わったそれを、兄者は凝視した後弟者を見た。
(´<_`;)「逃げられるわけ、無いじゃないか」
弟者の狙いは分かった。
兄者の企みがうまくいった場合は、三人を通常の武器による追撃によってさらに大きな隙を作り、
兄者を抱えてでも逃げるつもりだったのであろう。
考えられた最悪の状況により三人が上空に逃げた場合は自分の剣技によって三人を追撃し、
できた小さな隙によって、けれど硬直から回復しているであろう兄者を連れて逃げるつもりだった。
だが実際は更に最悪な状況だった。
剣技による衝撃波の相殺と追撃による自身の負傷。
それは弟者の読みの浅さが招いた結果と言うには酷ではあるが、
そうとしか見えないのも事実であった。
.
-
(´<_`;)「……すまない…兄者…」
( ´_ゝ`)「おれも想定外だった…」
とうとう八方塞を感じた兄者にとって、そうとしか言えない状況だった。
必死で逃げる方法を考えるが、暗闇の中だった。
唯一の光明は、何故かまだ自分達が生きていること。
本来ならばもう殺されていてもおかしくないのに、なぜか生きている。
光明ではあるが、理由が分からない以上すがることは出来ない。
兄者は、最近は仲間に、ギルマスに任せてしまっていることに、一歩踏み出した。
( ´_ゝ`)「で、何が目的なんだ?」
(XX)「殺したい だけ」
(JB)「もっと楽しみたいけど、これくらいで終わりかな」
( ´_ゝ`)「おまえらはそうでも、そいつは違うだろ」
『生きるために情報を引き出す』
自分よりも達者な者がいるならばそのものに任せてしまうという
兄者の悪い癖が出て最近はすべてショボンに任せているが、
兄者自身はこの作業は嫌いではなかった。
画面上、短いセンテンスの受け答えと相手の取った行動でその真意を測る。
MMORPGのプレイヤーとして行ってきたこと。
兄者はそれが苦手ではなかった。
得意であるとは言わないが、大きく外れたことは無かった。
ショボンの様に相手の顔色や仕草から読み取ることは苦手だが、
今の相手はマスクを着けていて顔が分からないから、画面と同じ。
そう思うことにより、口を開く。
( ´_ゝ`)「殺人ギルド、『Laughing Coffin』。
何が狙いだ」
兄者は変人だが、馬鹿ではない。
.
-
変態だが、考えることを放棄したりしない。
思考と観察力だけならば、ギルドでもトップクラスである。
ギルドの中でその事に正しく気付いているのは実の弟とギルドマスターだけだとしても。
( ´_ゝ`)「ギルドマスターの『PoH』!!
何とか言え!」
フードの男が笑ったような気がした。
( ´_ゝ`)?
(´<_` )?
そして弟者は兄には劣るものの思考能力を持ち、
更にそれを埋めて余りある誠実さと思慮深さ、
正しい方向への行動力を持っていた。
兄者が思いついたことに対する瞬発力だとすれば、
弟者は考え抜いたことに対する持久力。
兄者の言葉から何を考えているのかを見抜き、
おそらくは兄が見逃してしまうような全体の雰囲気に気を配っていた。
それにより、弟者は斧を再び振り上げた。
(´<_`#)「おりゃああああああああ!!!」
それは絶叫。
斧を振り上げたまま空間を震わせるような雄叫びをあげる。
(;´_ゝ`)「弟者!?」
隣にいる仲間の狼狽した声に触発され、
思わず全員が弟者を見た瞬間、青い突風が吹いた。
.
-
( )
(XX)!
(JB)!
反応できた三人は流石だろう。
トップスピードで突撃してきたブーンの片手剣を、PoHは極端に少ない動作で避け、
髑髏とマスクはその場で自分の武器を使ってはじいた。
もともとブーンには三人を傷付けるつもりはなかったため、そのまま兄弟の周囲を駆ける。
周囲にいた者を牽制するブーンの片手剣。
三人以外は後方に数歩避けた。
そして周囲の視線をブーンが引き寄せた時、髑髏と黒マスクにドクオの片手剣が襲い掛かる。
死角から放たれたその攻撃すらも二人は自らの武器で防御したが、
流石に今度は後方に飛んだ。
そしてそれを見逃すことなく、できた隙間に向かって走り出す兄者と弟者。
その後ろをブーンが追い、髑髏とマスクを動かすことに成功したドクオの横に立って武器を構えた。
兄者と弟者もその後ろで武器を構える。
( ^ω^)「間に合ってよかったお」
( ´_ゝ`)「すまない。二人とも」
(´<_` )「助かった」
('A`)「安心するのはこの場から離れた後だな」
ドクオの言葉に気を引き締める三人。
そのまま逃げることも出来たように思えるが、
背中を見せないほうが良いという指示により、
四体七での対峙という図式が出来上がった。
.
-
(JB)「……よくもやってくれたね」
(XX)「二人がかりの 奇襲とは いえ 俺達を だしぬいた」
自分達の後ろに悠然と構えているPoHを感じつつ、
余裕を持ったふりをしながら武器を構える。
その前にブーンの威嚇で簡単に動いてしまっていた四人が立つ。
(XX)「邪魔。退け」
しかしすぐに髑髏マスクの男が左右に追い払った。
情報よりも強くしたたかだった同じ顔の二人。
情報以上に強いと思われる追加の二人。
確実に殺すためには、快楽を得るためには四人は邪魔だと考えていた。
もう一人、黒マスクの男は同じことを思いつつも、違うことに考えを向けていた。
(JB)「まだ、いるよね」
先に集めた情報から、突進してきた男が素早いことは理解している。
そしてもう一人の黒ずくめの男が、戦闘では飛びぬけている事も分かっている。
だが、もう一つのピースが、欠けていた。
( )
それに他にも仲間はこの場にくるだろうと思い口にした言葉だったが、
それを聞いた、自分が崇拝する、
心酔していると言ってもよい男が、
笑ったように感じた。
(JB)?
その真意がつかめず、
振り返りたいが目の前の標的から目を離すことも出来ず、
ただ武器を構える黒マスクの男。
しかしその対峙は長く続かなかった。
醜態を見せてしまった四人が、
耐え切れずに剣を振り上げて突進した。
.
-
(;^ω^)!
('A`;)!
(;´_ゝ`)!
(´<_`;)!
それはブーン達四人にとっても意外な行動であり、
反射的に武器を向ける。
(XX)
(JB)
そしてそれは骸骨と黒マスクの二人にとっては好機。
自分が彼らの意識から外れたのが分かった二人は、
武器を構えて一歩踏み出そうとした。
しかしそれは出来なかった。
いつの間にか視界の隅に映る右手。
それは自分達の支配者の手。
その手は自分達が動くことを望んでいないことが、
今までの経験から分かったから。
(XX)!
(JB)!
そして目の前に起きた出来事に、驚きを隠せなくなる。
獲物であるブーン達に向かって襲い掛かった四人の手下が突然倒れたのだ。
視線だけで状況を確認する骸骨と黒マスクの男。
その目には、四人の首に刺ささるナイフが映った。
.
-
麻痺属性の毒を付加させてあったようで、
四人の黄色に変わったHPバーの上には黄色い稲妻のようなマークが点滅している。
獲物であるはずの四人は再び自分達に向かって武器を向けている。
前の二人が苦しそうな顔をしているように見えた。
(XX)「………何が 起きた」
(JB)「投擲?」
情報で読んだ投擲使いの存在。
今ここにに欠けていたそれを思い出し、黒マスクが呟く。
(´・ω・`)「これ以上、戦う意味は無いと思うけど。
今ならだれも死なないで済む」
四人の後ろから、頭の上に浮かぶカーソルをオレンジにしたショボンが現れた。
( ^ω^)「」
('A`)「」
( ´_ゝ`)「」
(´<_`;)「」
(´・ω・`)「僕達は、ここにいる誰一人として死ぬことは望まない」
そのまま仲間達の前に立つショボン。
倒れた四人を気にすることも無く、前にいる三人、
いや、フードの男をじっと見る。
再びフードの男が笑った気がした。
(JB)「ヘッド?」
(XX)?
フードと男がウインドウを出すが、数度操作をするとすぐに消し、踵を返す。
.
-
(JB)「ヘッド!?」
(XX)「殺らないのか!?」
立ち去ろうとするフードの男を追いかけるように振り返る二人。
その視線の先で男は立ち止まり、右手の親指だけを折り、指を振った。
指先は、地面に向けて。
(XX)「…チッ」
(JB)「分かった」
三人が視線を外したその数瞬の間に、ショボンの指示により四人は後ずさっていた。
しかし、ショボンはその位置を動かない。
再び振り返る髑髏と黒マスクの男。
その手の武器が、あやしく光ったような気がした。
(´・ω・`)「………」
髑髏の男がまず動く。
(;^ω^)「ショ!」
しかし髑髏の男の武器は地に倒れた仲間の身体を貫いた。
「!!!!」
麻痺状態は、意識がなくなるわけではない。
自分の身に何が起きたのかを認識し、
視界の隅の自分のヒットポイントバーの光が減るさまをただ見つめる。
一人の男が、薄いガラスが砕ける様な音と共にポリゴンと化した。
(´<_`;)「な!なにを!」
(;^ω^)「仲間を!?」
ショボンの周りを髑髏の男が更に走り、剣で地に倒れた男たちを切り刻む。
(´・ω・`)「……こいつらに、そんな意識があるもんか」
.
-
聞こえないほど小さな声で呟いたショボン。
そしてその言葉通りに、髑髏の男が三人を、黒マスクの男が一人をポリゴンと変えた。
( ´_ゝ`)「…………」
('A`)
(´<_`;)「……」
(#^ω^)「ひどいお…」
一歩踏み出そうとするブーンを止めるドクオと兄者の手。
怒りに我を忘れそうになったその思考を、ギリギリのところで踏み止まらせた。
('A`)「落ち着け」
( ´_ゝ`)「あいつの覚悟を無駄にするな」
拳を握る二人の震える手。
ブーンの前にはいつの間にか弟者が立ち、その手の斧は大地を突き刺していた。
(´<_`#)
震える肩が、その思いを物語るようだ
( ^ω^)「みんな…」
(XX)「…チッ」
(JB)「よく訓練されてる。六人も殺れるかと思ったのにな」
動かない五人をつまらなそうに一瞥してから後ろを向く二人。
そしてまるで散歩をするかのような軽い足取りで去って行った。
.
-
(´・ω・`)
('A`)
( ´_ゝ`)
(´<_`#)
(#^ω^)
黙ってその後ろ姿を見送っていた五人。
そして三人の姿が消え、頭上のカーソルも消えた。
すると茂みからクーが現れた。
川 ゚ -゚)「みんな、…大丈夫か?」
(´・ω・`)「うん。大丈夫だよ」
クーにしては珍しく。
といっても彼女をよく知っていなければわからない程度だが、
どこか怯えた様に声をかける。
それにショボンが返すと、四人の緊張も少しだけ緩くなった。
('A`)「クーが来てたんだな」
川 ゚ -゚)「ああ。ツンが追いかけようとしたがショボンが止めた。
それで私が来た。ツンはジョルジュ達と少し前の安全エリアにいるはずだ。
……来なくて正解だった。
ツンならあの瞬間飛び出していただろう」
武器を持たない左手で、自分の身体を抱くようなしぐさを見せるクー。
少し震えていた。
ここにいる六人は、見たことが無かったわけではない。
人が、ポリゴンに変わる瞬間を。
けれどそれはモンスターとの戦闘でのことで、
今見たような人同士の殺し合い、いや、虐殺ではなかった。
.
-
クーが飛び出さなかったのはツンより正義感が劣るわけではない。
ただその瞬間を見た衝撃により、身体の前に心が凍ってしまっただけだった。
そして、彼女よりはショボンの背中を長く見ていたからだった。
川 ゚ -゚)「大丈夫か?ショボン」
(´・ω・`)「僕は、大丈夫」
いつもと変わらないその表情に、逆に違和感を感じつつ、口を開くのを止めてただ頷いた。
四人もそのやり取りを見て、自分の心を落ち着かせようとする。
(´・ω・`)「とりあえずみんなと合流しよう。
はぐれないように気を付けて進むよ。
ブーン、ドクオ、先頭を宜しく。
クーはその後ろで地図を開いて道案内を。待ってる皆には僕が連絡を入れておくよ。
続いて兄者と弟者。
しんがりは僕が務めるよ。
ドクオ、ブーン、あとでアライアンス回復用のクエスト、手伝って」
ショボンに頼まれ、ドクオとブーンが快諾する。
兄者と弟者もやると言い出し、
当たり前の様にクーがこの後の予定に自分を含めて組み込んだ。
いつも通りのショボンに安心しつつ、言われた通りの陣形で進み始める五人。
一歩遅れて歩き始めたショボンは、ツン達にメッセージを送りながら、
ついさっき届いたメッセージに目を通した。
.
-
二日後。
深夜。
真夜中でも、プレイヤーがいなくはならない。
同じ場所でも時間の経過で現れるモンスターが変わるため狩りに出るプレイヤーは多く、
またそのプレイヤー目当ての生産系職業を選択したプレイヤーも数多く活動している。
しかし最前線でもなく低層でもないフロアの特色の少ない街などには、
やはりプレイヤーの数は少なく、夜ともなれば静けさが街を包み込む。
(´・ω・`)
ホームでもないその街の公園に、ショボンはいた。
大きくも小さくも無く特徴も無い噴水を見ながら、
背凭れのあるベンチに座っている。
そして二つのタンブラーを取り出すと、一つを自分の右横に置き、手に持った一つに口を付けた。
三人は余裕をもって座れるベンチの中央に座っているショボン。
そしてもう一口啜ってから、横に置いたタンブラーと今持っていたタンブラーを交換した。
そして今手に持っているタンブラーに、口をつけた。
( )「うまい」
それは闇から浮かび上がった人影。
ショボンの右斜め後方、背凭れに背を向けて、少しだけ寄りかかるように立っている。
その手には、いつの間にかベンチに置かれたタンブラーが持たれていた。
(´・ω・`)「……ありがとう」
褒められたことに対して形だけの謝辞を伝える。
.
-
( )「自分で淹れたのか?」
(´・ω・`)「もちろん」
たわいもない会話。
こんな夜中にわざわざ待ち合わせてする必要もない他愛もない会話。
一見緊張感も無いだらだらとした会話。
そしてその空気を一変させたのは、ショボンだった。
(´・ω・`)「で、何の用?」
その一言で、空気が変わる。
( )「わかっているだろう?」
二人とも口調は変わらない。
けれど空気は変わった。
(´・ω・`)「分かる訳が無い」
ショボンの言葉は、氷のように冷たい。
(´・ω・`)「だいたい、僕を目の前に引きずり出すためだけに、
メッセージを送るためだけにあんなことをする。
更に仲間を四人も簡単に殺すような奴の考えることなんて、
分かる訳がない。
…………分かりたくもない」
( )「『ギルドV.I.P』のギルマスはモンスターの動きを読むと聞いた。
そして戦略家で、中小ギルドのギルマスでいさせるのは惜しいという噂だ」
そんな冷たさを全く意に反さず、軽く返したフードの男の声は重く響く。
(´・ω・`)「自分の事をモンスターと同列に扱うのは勝手だけど、
あいにくと僕の目は節穴らしくてね、プレイヤーにしか見えないよ。
少なくとも見た目は」
そしてショボンもその重さを受け流し、何とか自分のペースに持っていくための言葉を紡ぐ。
.
-
( )「お前の姿が人に見えている以上、俺の姿が人に見えるのは当然だな」
どこか面白そうに言葉を返すフードの男。
二人は視線を合わさない。
互いに百八十度逆側を見ている。
しかし意識はお互いと周囲に向けられていた。
(´・ω・`)「申し訳ないけど、僕は明日も早いんだ。
用があるのなら、さっさと言ってもらいたい」
まるで痺れを切らしたかのように、言葉早に話題を変えて返答を促すショボン。
( )「切り替えの早さも想像以上だ」
(´・ω・`)「……早く言ったら」
( )「ふっ…」
吐息のように一息吐き出すフードとの男。
それは笑ったようにも聞こえ、ほんの少しだがショボンの心に波を起こす。
( )「おまえは、俺と同じ。こちら側の人間だ」
そして唐突に放たれた言葉。
それは先ほどほんの少しだけ揺らめいたショボンの心の水面を、
大きく波立たせた。
( )「仲間を壁にしてナイフを敵に突き刺す冷酷さ。
剣を囮にして相手の油断を誘い、投擲のナイフを急所に突き立てる度胸と技能。
目の前で人が消えても表情一つ変えないその胆力。
自分が手を汚すことに躊躇しない豪胆さ。
すべてが物語っている」
(´ ω `)「………」
( )「おまえは、守る側じゃない。殺す側だ」
フードの男の声はショボンに重く響く。
けして押し付けるような重さではなく、包み込むようなバリトンの音。
声は音と化し、ショボンを包む。
.
-
( )「こちら側に来い。
おまえの本質は、そんな場所よりもこちらの方が活かされる」
それは悪魔の誘い。
言葉だけを理解し反応するのであれば一笑に付すことの出来る様な内容。
だがフードの男の声はそれを許さない。
心の奥を揺さぶり、思考の隙間を縫うように染み渡る。
自分でも感じていた自分の冷酷さ。
『敵』に対して、たとえ仲間を守るためとはいえどこまでも残酷になる自分。
『仲間』以外の『敵』が目の前でポリゴンに変わった時、
仲間が息を飲むのを背後で感じながらもまったく動じなかった自分の心への恐怖。
それらすべてをフードの男は知っていて、分かっていて、自分を認めてくれているという錯覚。
それは心を揺れ動かすには充分な錯覚だった。
しかしショボンはそこで踏み止まった。
.
-
(´・ω・`)「僕は友達を守る」
.
-
ブーンの顔が、
ドクオの顔が、
ツンとクーの顔が、
流石兄弟の顔が、
ジョルジュ、フサギコ、モナー、ビーグル、クックルの顔が、
心に浮かんでは消え、
自分の心を支えてくれるのが分かる。
(´・ω・`)「今の僕は、そのために生き、その為に考え、動いている」
心の中で澱んだフードの男の声を、洗い流す様に。
(´・ω・`)「『敵』を殺すために生きているんじゃない。
『人』を殺すことに喜びも感じていない」
ゆっくりと、確実に、自分を取り戻す。
(´・ω・`)「彼らと共に生きたい。ただ、それだけ。
確かにその為にならどんなこともするけれど、
その為以外の事で、誰かを殺すことなんてしたくない。
殺さずに済むのなら、殺さないで済ませたい」
立ち上がり、振り返るショボン。
鋭い視線で、フードの男の後ろ姿を見る。
(´・ω・`)「だから僕は、そっちにはいかない」
.
-
フードとの男が動いたのは、どれくらい経ってからだろう。
ショボンの視線に射抜かれていることを感じつつ、
動かないでいた男。
数秒のような、数分のような、数十分の様な沈黙と止まった空気。
そして男は肩を震わせた。
(´・ω・`)?
( )
声を立てずに笑う男。
それは傍から見て笑っていることが分かるように意識した肩と身体の揺れ。
その芝居がかった動きに一瞬心奪われるが、すぐに手の中に隠れるナイフを装備するショボン。
( )「あの男ほどではないが、おまえも面白い」
身体の演技はそのままに、乾いた声で呟く男。
( )「圏内で武器を構えても仕方ないだろう?」
(´・ω・`)
答えずに、ただナイフをいつでも投げられるようにする。
( )「食料と、POT。あと武器と防具、装備もだ」
(´・ω・`)?
( )「必要なものは、追って連絡させる」
(´・ω・`)「何を言って…」
( )「断るのなら、おまえのギルドのメンバーを一人ずつ殺す」
.
-
(´・ω・`)!
( )「対価として、お前達ギルドは狙わない。殺さない。
だが断るのなら、一人ずつ殺していく。
おまえは殺さない」
(´・ω・`)「……対価はギルド『V.I.P』、およびギルド『N−S』全メンバーを狙わないという保証。
それはお前たちが手に入れた、他のレッドプレイヤーの情報も含まれる」
( )!
(´・ω・`)「メンバーの誰かがプレイヤーに殺された時、
僕は君たちを疑う。
それは君にとっても本意ではないはず」
( )
男の肩が揺れる。
それは先ほどの様な演技ではなかった。
( )「本当に、おまえは面白い」
腕を振った男の前に現れたウインドウ。
そして数回操作をして、消した。
( )「うまかった」
振り返ることなくタンブラーをベンチの上に戻し、歩き出す男。
ショボンは目の前に現れたウインドウに、軽く舌打ちした。
.
-
【「PoH」さんからフレンド申請が来ています】
【YES】 【NO】
.
-
忌々しげにYESを触るショボン。
フードの男。
殺人ギルド『Laughing Coffin』ギルドマスター。
アインクラッド最強最悪のレッドプレイヤー。
『PoH』
その後ろ姿が、闇に溶けて消えた。
.
-
すみません。30分ほど席を外します。
-
支援
久々に更新連打して待つくらい楽しんだわ…
と思ったらまだ更新あるんですか!やったー!
-
支援ありがとうございます。
それでは、再開します。
焼肉食べたい。
-
7.君とボクと
2024年5月
ギルドV.I.P.のホームで開かれた食事会は、二時間ほど前に終了していた。
二ギルド合同で行うことが決定した『朝霧の洞窟』の探索は、
パーティーを三つに分けて最終的にゲットしたアイテムの数とレア度で優劣を競うイベントとなり、
久し振りのお祭りイベントの決定に、メンバーも楽しげだった。
そしてここは人気のない公園。
40層のホームから転移門を使用して移動してきた彼は、
三人掛けのベンチに座った。
ストレージからタンブラーを二つ取り出すと、
一つを右横に置き、もう一つに口を付けた。
公園の暗がり。
街灯の陰から現れる一つの影。
フードを被って顔を隠したその影がベンチに近寄り、タンブラーを手に取る。
そしてそのままタンブラーの有った場所に座った。
.
-
('A`)「おせえよ。自分で指定しておいて」
(´・ω・`)「…時間通りだよね?」
('A`)「お前の事だから早く来ると思って、二十分も待っちまった」
(´・ω・`)「ちゃんと時間書いたのに」
( ^ω^)「おっおっお!ぎりぎりセーフだお!」
('A`)「アウトだボケ」
( ^ω^)「すまんこ、すまんこ。道に迷っちゃったんだお」
(´・ω・`)「転移門のある公園からまっすぐ一直線なのに」
( ^ω^)「おっおっお」
風のように駆けてきたブーンが逆側に座り、にこやかに話す。
彼が来ただけで場の空気が和むのは、昔からだった。
自然とドクオとショボンの顔も柔らかくなる。
ショボンから差し出されたタンブラーを手にするブーン。
口を付け、ニッコリと微笑んだ。
( ^ω^)「今日のも美味しいお」
(´・ω・`)「ありがと」
('A`)「まったくこいつは」
( ^ω^)「三人で話すのも久しぶりだおね」
('A`)「…そういや、そうか?ん?」
(´・ω・`)「そうだね。三人だけってのは久し振りかも」
ブーンの言葉に考え込む二人。
.
-
('A`)「……へたすりゃ、一年以上前か?」
(´・ω・`)「そうだね。ここ一年は必ず他の人がいたかも」
( ^ω^)「学校帰りはいつも三人だったのに、懐かしいお」
(´・ω・`)「うん」
('A`)「だなー。よくバーボンハウスに寄ったよな。
シャキンさんが謎のお菓子出してくれて」
( ^ω^)「今やバーボンハウスと言えばショボンやフサの店ってイメージだから、
すごく不思議な気分だお」
('A`)「店の名前をバーボンハウスにしたのは、
シャキンさんと会えるかもってことだったしな」
(´・ω・`)「うん。ギルド名は学校名。
店は兄さんの店の名前にして、
耳に入った時に、目にした時に近くに寄ってきてもらうためだから」
('A`)「学校の方は結局おれ達だけだったけど、
バーボンハウスの方は狙いが当たったな」
( ^ω^)「会えて良かったお」
(´・ω・`)「うん」
言葉少なげな友の顔を両サイドから訝しげに見るドクオとブーン。
その視線を感じつつ、ショボンが口を開く。
(´・ω・`)「今日さ、N−Sのホームで、兄さんに怒られちゃった」
('A`)「あー」
( ^ω^)「おー」
ショボンの言葉に、納得する二人。
.
-
( ^ω^)「ショボンは昔からシャキンさんには弱かったおね」
('A`)「っていうかショボンをちゃんと叱れたのって、
小父さん小母さん以外だとシャキンさんくらいだったよな」
( ^ω^)「中学の時の真鍋先生」
('A`)「いたなー。重箱の隅をつつこうとして返り討ちにあったバカ。
新卒だったのにすぐ辞めちゃった」
( ^ω^)「小学校の音楽の…」
('A`)「雪下のババア!いたいた!」
( ^ω^)「ショボンにやり込められたのを見た時は胸がすっとしたお」
('A`)「あの腹黒ババアにはみんな辟易してたからな」
( ^ω^)「コンビニの店長とか」
('A`)「マルエイスーパーのクソおやじも」
( ^ω^)「ゲーセンで絡んできた大学生」
('A`)「最終的には涙目になってたな」
( ^ω^)「スクランブル交差点の角の駐在」
('A`)「映画見に行くときにのったバスの運転手」
( ^ω^)「駅前で話しかけてきた宗教の人」
('A`)「市営体育館の受付のじじい」
(;´・ω・`)「ちょ、ちょっと二人とも」
('A`)「ん?」
( ^ω^)「なんだお?」
(;´・ω・`)「僕、そんなになんかした?」
.
-
('A`)「自覚無いとか」
( ^ω^)「大丈夫だお。だいたい理不尽なことを言い出した人に言い返していただけだお」
('A`)「ああ、そんな感じだな」
( ^ω^)「だいたい」
('A`)「だいたい」
(´・ω・`)「なんか釈然としない」
一瞬の沈黙の後、噴き出して笑いあう三人。
大声ではないが少し声を上げて、楽しそうな笑顔を見せる。
('A`)「というか、だいたいおれとかブーンが目を付けられてなんか言われて、
それに対してショボンが怒るって図式だな」
( ^ω^)「嬉しかったお」
('A`)「だいたいだけどな」
( ^ω^)「だいたいだお」
(´・ω・`)「だいたい『だいたい』って言いすぎだよ二人ともだいたい」
笑顔のまま、それでも少し困った様に眉を下げて止めようとするショボン。
それでまた笑う二人。
そして笑顔のままドクオが疑問を口にした
('A`)「で、なんで叱られたんだ?」
(´・ω・`)「…ラフコフの事がばれた」
/
-
空気が止まり、慌てて周囲を見回すドクオとブーン。
(´・ω・`)「大丈夫だよ。周囲に人はいないから。二人だって、とも来る時に見てきたでしょ?」
('A`)「念には念をだ」
(;^ω^)「……」
ため息を吐くドクオ。
ブーンは緊張した面持ちでショボンの顔を見る。
(;^ω^)「ショボン…」
(´・ω・`)「うん。アルゴさん経由だって」
(;^ω^)「おー。僕のせいだおね」
(´・ω・`)「アルゴさんへのリークは僕がギルマスとして決めたことだよ。
少し早い気もするけど、シャキンに知られてしまうのも想定内だし」
(;^ω^)「おー。でも…」
('A`)「でもでも言っても仕方ない。
で、どうするんだ?」
(´・ω・`)「どうするって?」
('A`)「シャキンに叱られて、切るのか?」
(´・ω・`)「そんなことをしたら、全員を守る自信は無いよ」
('A`)「だが、俺達は強くなったぞ。仲間も増えた」
(´・ω・`)「僕達全員が生き残れる確信。
彼ら全員を殺すか牢獄へ送る自信。
そんなものが無い限り、そんなことはすべきではない。
そしてそんな確信も自身も僕は持てないよ」
('A`)「……」
( ^ω^)「じゃあ…」
(´・ω・`)「うん。とりあえずこのままでいこう」
.
-
('A`)「アルゴはどうする?
これ以上このことを外に触れ回るようでは…」
(´・ω・`)「アルゴさんにはこれまで通り僕達を疑い、見張ってもらう。
あと、別に情報を誰これ構わず売っているわけではないよ。彼女は。
シャキンに流したのは、おそらくシャキンが最初に何かを掴んで…なんだと思う」
('A`)「そっか…。
うん。そうだな。それが良いか。
あいつなら攻略組へのパイプも太いし、もしもの時には…」
( ^ω^)「エギルさんとは仲良くさせてもらってるお」
('A`)「ああ、斧使いで雑貨屋の。店やりながら攻略組、しかもタンクってすごいよな」
( ^ω^)「その上私財を使って中層プレーヤーの育成もしてるお」
(´・ω・`)「そうだね。僕達もそのお手伝いをさせてもらってるわけだし」
( ^ω^)「お、そうだったお。
ショボン、エギルさんが一回ゆっくり話したいって言ってたお」
(´・ω・`)「そうなの?じゃあ今度店に行ってみようかな」
( ^ω^)「昨日メッセージが来てて。
僕とは道具屋つながりで何度も会ってるけど、ショボンとも一度ちゃんと話をしてみたいって」
(´・ω・`)「そうだね。
ちゃんと話したのは育成の概略を決めた時で、それ以降は実務レベルの話ばかりだし。
っていうか、フレンド登録はしてるんだからメッセージで直接言ってくれればいいのに」
( ^ω^)「………」
('A`)「………」
(´・ω・`)「え?なにその沈黙」
( ^ω^)「………」
('A`)「………」
(´・ω・`)「ちょ、ちょっと?」
.
-
( ^ω^)「………」
('A`)「………」
(´・ω・`)「ふたりとも?」
( ^ω^)「………」
('A`)「………」
(´・ω・`)「どうしたの?」
( ^ω^)「………そりゃあ」
('A`)「………やっぱり」
(´・ω・`)「ん?」
( ^ω^)「………稀代の」
('A`)「………戦略家様だし」
( ^ω^)「敷居が…」ブフォッ
('A`)「高いんじゃ」グフッ
(;´・ω・`)「ここでそのネタ引っ張る!?
そして笑うなら言わないで!」
笑い出す二人。
そしてショボンも笑顔になり、三人を柔らかい空気が包んだ。
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8.キミと僕と
2023年7月
PoHが去った公園に、一人佇むショボン。
近くの木陰で、影が揺らめいた。
(´・ω・`)「追わなくて正解だよ。
君は『VIP』でも『N−S』でもないから、殺されていた」
ベンチの上のタンブラーをしまいつつショボンが呟く。
「そうみたいね。居ることには気付いていたみたいだし」
どこからか聞こえる声。
「でも、よかったの?」
(´・ω・`)「とりあえずは、あいつの口車に乗るよ。
実際僕は『脅された』わけだしね」
「いや、そうじゃなくて、これを見てたのがあたしだけだってこと」
(´・ω・`)「きみに、見ておいてほしかったんだ。
多分、この世界で、僕をよく知りつつ赤の他人である君にね。
何事にもとらわれない、客観的な立場で」
「赤の他人とか、酷いなー」
(´・ω・`)「実際そうでしょ。あの時から、あんなに引き留めたのに、独りで動いているんだから」
「それを言われると痛いけどねー」
(´・ω・`)「……皆とは、会ってる?」
「ブーンの店に買い物には行くよ。その時ツンとかクーとかには時々会うかな。
他人のふり、知らないふりをお互いしてるけど。
あ、アルルッカバー君にも時々会うよ」
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-
(´・ω・`)「そうなんだ。顔をみて元気そうなのが分かればみんなも嬉しいよ」
「ショボン君も?」
(´・ω・`)「もちろん」
「うれしいなー」
(´・ω・`)「はいはい。……気を付けてね。
君が集めてきてくれる情報にはいつも助かっているけど、心配だよ」
「……ありがとう」
(´・ω・`)「まだ、ギルドに入る気にはなれない?」
「…………」
(´・ω・`)「また誘うよ」
「…………また、連絡するね」
独り言のような会話はそこで途切れ、ショボンは悲しげに周囲を見回した後、その場を去った。
第15話 終
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以上、本日の投下終了です。
いつもありがとうございます。
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以下、年表です。
2022年
≪11月6日SAO(ソードアートオンライン)サービス開始≫
12月
2023年
01月
02月ジョルジュ加入「五話 ここでも雨は冷たいから」
03月流石兄弟加入「十四話 双頭の鷹の旗の下で」
04月フサギコ加入「九話 君への手紙」
05月モナー・ビーグル加入「三話 それから」
06月クックル加入「四話 緑の手」
07月ショボン、ラフコフ(PoH)から勧誘される。
→断るが、脅されてギルドとしての関わりを余儀なくされる
08月
09月モララー加入「十三話 ダイヤモンドだね」
ギルドN−Sにハインが加入。(下旬 ハインがドクオに惚れる)
10月
11月
12月ギコ・しぃ加入「一話 ギルド「V.I.P.」へようこそ」「二話 聖なる夜のキャロル」
2024年
01月「六話・七話 数え歌がきこえる」
02月「八話 それぞれのチカラ」
03月
04月「十話 迷走」「十一話 疾走」「十二話 錯走」
05月「十五話 表とウラと」
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乙!
つまりドクオは「俺、このゲームクリアしたらハインの気持ちに答えるんだ…」という死亡フラグが建ってるって事だな
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待ちまくってました!
今から読む!!
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乙乙
面白かったです
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おつ!
ひとつ胸のつかえが取れた。刺さりっぱではあるが……
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乙です。
不安が1つ解消されて、ホットしてます。
ショボンを疑ってしまってた自分が恥ずかしい。
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ω・)乙。初期メンバーは知ってたんだな。しぃ、ギコが暴走していらんことしそう
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来てた!
乙
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乙 今回もじっくり楽しませてもらった
仕方ないとはいえきつい選択だな
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こんにちは
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