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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。

1 ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 22:13:10 ID:6CCOWjXw0

どーも作者です。

新しく作らせてもらいました。
設定だけ作っておいて最初の二話で終わる予定だったこの話がこれだけ続くことになろうとは。

半分くらいは終わっている予定なので、もう少しお付き合いいただければ幸いです。


話の投下の前に、各人の見た目データと大まかな設定を載せておきます。


この話は
川原礫著
『ソードアート・オンライン』シリーズのアインクラッド編を基に書かせていただいています。
基本的に設定を順守しているつもりですが、拡大解釈とまだ書かれていない設定に関しては想像で書いているので、その旨ご容赦の上、お楽しみいただけますようお願い申し上げます。


まとめ

ブーン芸VIP様
http://boonsoldier.web.fc2.com/

大変お世話になっております。

.

510 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:22:12 ID:EuI.0M8A0


豚女「げ。まじで?親無かよ」
鳥頭女「あれ?でも三者面談に汚い爺さん来てなかった?」
馬面女「なんか複雑みたいよ。
今はじいさんばあさんと一緒だけど、小っちゃいころはそういう施設にいたんだって噂」
足裏面女「マジキツイわー」



.

511 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:23:05 ID:EuI.0M8A0


( ・∀・)「付き合った女は独占欲が酷くてさ」



.

512 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:23:47 ID:EuI.0M8A0


ギャル「ぼっち落とすのチョー簡単だったよー。
友達いないから金持ってるし。良い財布。
え?本命?いるよー。いま転勤で遠距離。
卒業の頃に戻る予定だから、そしたら結婚するんだ。
ほら、とりあえず隣にいたら自慢できる顔じゃん。あいつ。
いいの、いいの。あたしと付き合えて感謝してもらわなきゃ」



.

513 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:24:32 ID:EuI.0M8A0


( ・∀・)「だから、仲間とかうざいんだ。ってことで、ギルドには入らない」


.

514 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:25:43 ID:EuI.0M8A0


(  ∀ )「もう、信じるもんか」



.

515 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:26:32 ID:EuI.0M8A0

ξ゚⊿゚)ξ「きも」

川 ゚ -゚)「ひくわー」

('A`)コレダカライケメンハ

(;^ω^)「流石にひどいお」

ξ゚⊿゚)ξ「とか、」
川 ゚ -゚)「言うとでも、」
('A`)「思ったか?」
( ^ω^)「お?」

(;・∀・)「え?」

モララーの告白に分かりやすい嫌悪を見せた四人だったが、
すぐに笑顔に変わる。

.

516 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:27:50 ID:EuI.0M8A0

ξ゚⊿゚)ξ「そこの男と長いこと友達やってるとね、結構わかってくるのよ」

('A`)「そいつが言っていることが、本心かどうかってくらいはな」

川 ゚ -゚)「今のお前の言ったことは、嘘ではないかもしれないが本心ではない」

( ^ω^)「っていうか、結構わかりやすかったお。だおね」

兄者達に同意を求めると、何人かが頷く。

(;・∀・)「か、勝手にしろ」

慌てて部屋を出ようとするモララー。
しかしドアの前に、フサギコが立ちふさがる。

(;・∀・)「おれはギルドには入らない。どけよ、フサギコ」

ミ,,゚Д゚彡「ダメだから」

(;・∀・)「ああ?」

ミ,,゚Д゚彡「モララーは、VIPに入るから」

(;・∀・)「おまえ、何を言って?」

(´<_` )「お、フサギコが言うか」

( ´_ゝ`)「あのフサが言うようになったな。
お兄ちゃん嬉しい」

(´<_` )「なんだ、フサギコの兄貴になったのか?」

( ´_ゝ`)「なんだ弟者。やきもちか?
バカだなあ。おれの…」

(´<_` )「よしわかった。次のフロアのボスにソロで挑め」

( ´_ゝ`)「死亡フラグは立てませーん」

(;・∀・)「え?こんな時まで脱線?」

ミ,,゚Д゚彡「モララーはVIPに入らなきゃだめだから」

(;・∀・)「しかもスルーした!」

.

517 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:29:00 ID:EuI.0M8A0

( ^ω^)「ツッコミ要因としてもギルドに欲しいお」

( ゚∋゚)「       」

ξ゚⊿゚)ξ「言っとくけどクックルだって充分ボケだからね」

(;゚∋゚)?

ξ゚⊿゚)ξ「このギルドでツッコミだけしてるのは私ぐらいでしょ」

('A`)「(これがまた本気だからな)」

( ^ω^)「(しっ。聞こえるお)」

川 ゚ -゚)「(もう聞こえているぞ)」

ξ#゚⊿゚)ξ「なに?そこの二人文句あるの?」

('A`)「ありませーん」
( ^ω^)「ないお」

( ´∀`)「このギルドは楽しいもなよ」

(;・∀・)「うわ。ここでおれに戻すのか」

▼・ェ・▼「きゃん!」

(´・ω・`)「確かに馴染んではいるみたいだけど」

(;・∀・)「なじんでないし」

ミ,,゚Д゚彡「はやく認めると良いから」

(;・∀・)「なにを?」

(´・ω・`)「でも…」

( ´∀`)「仲間が増えてうれしいもな」

(;・∀・)「おれの意思はどうした!?」

.

518 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:29:58 ID:EuI.0M8A0

( ´_ゝ`)「うむ。腕は確かだな」

(;・∀・)「なんの?」

(´<_` )「爪スキルもエクストラスキルだよな?」

(;・∀・)「そっちなんだ!」

ミ,,゚Д゚彡「モララーは入ると良いから」

(;・∀・)「おまえはまじめか!」

( ゚∋゚)「      」

(;・∀・)「おれには聞こえないから!」

(;゚∋゚)「!……」

川 ゚ -゚)「あー。クックルが落ち込んだ」

( ^ω^)「だめだおモララーさん」

('A`)カワイソウニ…

(;・∀・)「え?なに?今の俺が悪いの?ごめんなさい」

川 ゚ -゚)「お前の持つスキルをうちで活かしてみないか?」

( ・∀・)「やっと本音が出たなこのやろう。金を稼ぐなら自分でやるよ」

川 ゚ -゚)「?もう相方がいて漫才でもどこかのステージでやるのか?」

(;・∀・)「そっちのスキルかよ!やらねーよ!
っていうかそんなスキル持ってないから!」

( ^ω^)「これもノリツッコミに入るのかお?」

(;・∀・)「しるか!」

.

519 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:31:03 ID:EuI.0M8A0

ξ゚⊿゚)ξ「でも確かにこのツッコミスキルは惜しいわね」

(;・∀・)「引っ張るな!」

( ´∀`)「でもこのギルドに入るとボケに回るかもしれないもな」

( ^ω^)「おー」
ξ゚⊿゚)ξ「あー」
川 ゚ -゚)「あー」
('A`)アー
( ´_ゝ`)「あー」

視線が弟者とクックルに注がれる。

(´<_` )「おれは違うぞ。断じて違うぞ。モララー、信じてくれ」

(;・∀・)「だからおれにふるな!」

(;゚∋゚)「            」

(;・∀・)「だからおれには聞こえないって」

( ゚∋゚)「!…………」

(;・∀・)「?」

( つ∋゚)「     」

(;・∀・)「ごめんなさい!泣かないで!って言うか実は涙出てないよね!
手で隠して泣いてるふりしているだけだよね!
やっぱりおれはこの件に関して悪くないと思うんだけど!」

ミ,,゚Д゚彡「はやくギルドに入るって言うと良いから」

(;・∀・)「だからおまえはひとりまじめか!」

▼*・ェ・▼「きゃん!」

(;・∀・)「もうやだショボン!どうにかしてくれ!」

.

520名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 00:31:19 ID:HJ2fDhZI0
ツッコミのユニークスキルか...

521 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:33:21 ID:EuI.0M8A0

出入口をフサギコにふさがれた状態で散々喋りあうメンバーとモララー。
そしてさすがに1人でほぼ全員にツッコミを入れていたモララーは疲れ果て、
肩で大きく息をしながらショボンに顔を向ける。

(´・ω・`)「ほぼ初対面でこのメンバーと渡り合うスキルと実力。
やっぱりぼくの目は正しかった」

(;・∀・)「お前もかよ!」

(´・ω・`)「今まで話していて思ってたんだ。
モララーならこのギルドでツッコミにまわれるって」

(;・∀・)「おまえのギルメンを選ぶ基準は間違ってると思うぞ」

(´・ω・`)「うん。僕は間違っていたよ。スキルなんて関係ない。
モララーにもこのギルドに入ってもらいたい。それだけだった。
後のことは一緒に考えよう。協力するから」

( ・∀・)「なんだよ後の事って」

(´・ω・`)「漫才でステージに立ちたいなら」

(;・∀・)「そこのネタをひっぱってどうするよ!」

(´・ω・`)「さあモララー、ギルドに入るんだ」

(;・∀・)「そこでいきなり命令口調!?このタイミングで!?勧誘ウインドウまでだして!?」

.

522 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:34:30 ID:EuI.0M8A0

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

.

523 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:36:04 ID:EuI.0M8A0

前からショボンとフサギコにじりじりと詰め寄られるモララー。

(;・∀・)「え?え?え?」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

詰め寄られ、ソファーに座ってしまうモララー。
その拍子にあげた腕が、その指先が、【YES】を触った。

( ・∀・)「あ」

(´・ω・`)「よし、これでギルドの一員だよ」

(;・∀・)「ちょ、おまえ!それはノーカンだろ、常識的に考えておい」

(´・ω・`)「この非常識な状態の世界で常識とか言われても困るな」

(;・∀・)「うわ、マジかこいつ」

ミ*,,゚Д゚彡「嬉しいから」

(;・∀・)「呑気に喜ぶなおい!」

( ^ω^)「モララーって呼んでいいおね?」

ξ゚⊿゚)ξ「最初から呼べばいいのよ、呼べば」

川 ゚ -゚)「さて、これでメシにできるな」

ξ゚⊿゚)ξ「女の子がメシとか言わないの」

川 ゚ -゚)「はーい」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃ、ショボン、ふさ、食事の準備お願い」

('A`)オンナノコガショクジノシタクシナインダヨナ

ξ゚⊿゚)ξ「文句あるの?」

('A`)イーエアリマセン

.

524 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:37:54 ID:EuI.0M8A0

( ´_ゝ`)「なあなあモララー。ふりかえりの森で採取したんだろ?なんかいらない鉱石無いか?」

(´<_` )「あ、兄者、抜け駆けはずるいぞ」

( ´∀`)「モララーは何が好きもな?お肉なら相談にのるもなよ」

▼*・ェ・▼「きゃんきゃん!」
 _
(  ∀ )「めし…。その後は説教……」

(;・∀・)「それでおまえはいつまでそのままなんだよ!」

( ^ω^)「おーー」

('A`)「流石のツッコミスキルだな」

ξ゚⊿゚)ξ「ちゃんと拾うわね」

( ´∀`)「ツンはめんどくさいとスルーするもなから」

川 ゚ -゚)「これで思う存分ボケられるな」

(;・∀・)「今まではなんだったんだよ!」

疲れたように身体をソファーに投げ出しつつも、律儀にツッコミを入れ捲るモララー。

その肩を叩かれ、振り向くとクックルがいた。

( ゚∋゚)

( ・∀・)「な、なんだよ」

.

525 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:40:44 ID:EuI.0M8A0

( ´_ゝ`)「なあなあモララー。ふりかえりの森で採取したんだろ?なんかいらない鉱石無いか?」

(´<_` )「あ、兄者、抜け駆けはずるいぞ」

( ´∀`)「モララーは何が好きもな?お肉なら相談にのるもなよ」

▼*・ェ・▼「きゃんきゃん!」
 _
(  ∀ )「めし…。その後は説教……」

(;・∀・)「それでおまえはいつまでそのままなんだよ!」

( ^ω^)「おーー」

('A`)「流石のツッコミスキルだな」

ξ゚⊿゚)ξ「ちゃんと拾うわね」

( ´∀`)「ツンはめんどくさいとスルーするもなから」

川 ゚ -゚)「これで思う存分ボケられるな」

(;・∀・)「今まではなんだったんだよ!」

疲れたように身体をソファーに投げ出しつつも、律儀にツッコミを入れ捲るモララー。

その肩を叩かれ、振り向くとクックルがいた。

( ゚∋゚)

( ・∀・)「な、なんだよ」

.

526 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:42:26 ID:EuI.0M8A0

( ゚∋゚)「これからよろしくな」

( ・∀・)「        」

( ゚∋゚)?

(;・∀・)「いきなり声が聞こえたーーーー!!
しかも結構良い声だぞおい!!」

( ゚∋゚)「良い声とか言われると照れるな」

(;・∀・)「そっちに反応する前に、いきなり聞こえるようになった理由を教えてくれ」

( ゚∋゚)「………きもち?」

(;・∀・)「そこで精神論かよ!しかも不思議そうに!つーか理由が分かってないのかよ!」

有耶無耶のうちにギルドの一員となったモララー。
その夜は、騒がしく過ぎていった。




.

527 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:46:17 ID:EuI.0M8A0

10.ブリリアント



五日後。

最前線の街。
転移門広場の片隅に、モララーはいた。

( ・∀・)「…久しぶりだ……」

目の前に広げた絨毯には、所狭しとアクセサリー系のアイテムが並べられている。

( ・∀・)「あのやろう…」


(´・ω・`)「とりあえず、ギルメンには必ず体術スキルは取ってもらってるから、よろしく」


( ・∀・)「よろしくじゃねえぞこのやろう」

心の中で突いているはずの悪態だが、小声で漏れているのはご愛嬌だろう。

目の前にいる二人の客も気付いていないようなので、問題も無い。

(か)「そういえば、あのギルドの話聞いたか?」

(き)「あのギルドって……ああ、VIPだっけか」

( ・∀・)?

目の前の客から洩れたギルドネーム。
どうやら自分が不本意ながらもそのギルドの一員であるということは分かっていないようなので、
そのまま聞き耳を立てた。

(か)「そうそう。すげえよな。中層ギルドなのに」

(き)「最前線とまではいかなくても、フロアボス戦レベルのクエストボスを、ここ数日で三体撃破だっけか」

( ・∀・)!?

.

528 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:47:30 ID:EuI.0M8A0

(か)「いや、たしかもう一匹倒して四体だったはず」

(き)「まじかよ」

(か)「例のふりかえりの森のボスを倒したのもあいつらなんだろ?」

(き)「あれのおかげで、NPCの店の回復POTのレベルが上がったんだっけ?」

(か)「いや、品揃えが良くなったとか聞いたぞ」

(き)「どっちにしてもすげえよなー。攻略組でもないのに」

(か)「生産系ギルドとしてはそこそこ有名だったらしいけど、
これで戦闘系としても名前が売れたな」

(き)「そういや、ユニークスキルも持ってるっていうよな」

(;・∀・)!

(か)「ギルマスが投擲系のユニークスキルを持ってるっていうあれか?」

(き)「あと、メンバーの一人が俊足のスキルを持ってるとか」

( ・∀・)?

(か)「へー」

(き)「ほんとかどうか、知らねーけどさ」

(か)「まあでもこれで、下手にちょっかいはかけられなくなったな」

(き)「攻略組も一目置いたって話だし、なんにせよ攻略が進むなら願ったりだ」

(か)「……百層…か」

(き)「血盟でも聖竜でも、もうビーターでもいいから、早く誰かクリアしてくんねぇかなぁ」

見ていたアクセサリーを置き、モララーに一声かけてから立ち去る二人の客。

しかし声をかけられたモララーは何も反応が出来なかった。

.

529 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:49:56 ID:EuI.0M8A0

( ・∀・)「どういうこと…だ?」

自然と洩れる言葉。

( ・∀・)「おれが岩と格闘している間にそんなことを?
しかも投擲と俊足のユニークスキルって…。
本気かあいつら?
いや……全部……おれのため?
おれのスキルを……隠すためか?」

指先が震える。

( ・∀・)「もしそうなら…。
おそらく全部、ショボンの狙い通り…。
なんだよそれ…。
自分達だってそんな風に注目されたら危険になるだろ。
なのに…」

目に浮かび始めた涙を、必死に止める。

( ・∀・)「まじか…。まじか…」

( ^ω^)「いたお!」

ミ,,゚Д゚彡「モララー!」

自分を呼ぶ声に一回うつむいてしっかりと目をぬぐうモララー。

顔をあげると、同じギルドのメンバーが三人いた。

ξ゚⊿゚)ξ「まったく。ちゃんとメッセージ返しなさいよ」

( ・∀・)「え?…あ。すまん」

ξ゚⊿゚)ξ「あら、今日は素直じゃない」

視界の隅に浮かぶメッセージ到着を知らせる点滅。

( ・∀・)「すぐ読む」

.

530 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:51:20 ID:EuI.0M8A0

( ^ω^)「いいおいいお。すぐ戻ってほしいってメッセージだお」

( ・∀・)「ああ、悪い。え?すぐに?」

ミ,,゚Д゚彡「緊急会議だから。早く片付けるとよいから」

(;・∀・)「な、なんかあったのか?」

ξ゚⊿゚)ξ「明日、あるクエストのボスにチャレンジする予定なの。
モララーも体術スキル覚えたのなら、一緒に来なさい」

( ・∀・)「うわ。命令形」

(;^ω^)「命令じゃないけど、モララーも来て欲しいお」

ミ,,゚Д゚彡「情報を集めたから、戦い方の案を出してほしいってショボンが言ってたから」

( ・∀・)「ショボンが…ね……」

何も言わず、目の前のアイテムを片付け始めるモララー。

ξ゚⊿゚)ξ「……もっと駄々をこねるかと思った」

(;^ω^)「ツン」

絨毯を丸めて立ち上がるモララー。
そしてぼそっと呟いた。

( ・∀・)「噂。聞いた」

(;^ω^)「おっ」

ミ;,,゚Д゚彡「だ、だから」

ξ゚⊿゚)ξ「あらそう。で?」

( ・∀・)「全部、あいつの思惑通りか?」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたの聞いた噂がどのレベルか知らないけど、多分そうね」

(;^ω^)「(ツンに一緒に来てもらってよかったお)」

.

531 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:54:47 ID:EuI.0M8A0

( ・∀・)「あいつ、恐ろしいやつだな」

ξ゚⊿゚)ξ「何をいまさら」

(;・∀・)「え、あ、うん。で、あんたらは良いのか?」

ξ゚⊿゚)ξ「なにを?」

(;・∀・)「いや、ほら、名前が売れればいろいろ弊害が」

ξ゚⊿゚)ξ「あるかもしれないわね。でもまあ、良いんじゃない」

( ・∀・)「なんで?」

ξ゚⊿゚)ξ「ショボンがやった行動で、私達にも影響があるのなら、それはあんたの為だけじゃない。
多分、死ぬほど色々考えて、裏で手をまわして、私達にとってより良い選択をしているはずよ」

( ^ω^)「多少のリスクより、大局を見たより良い方向を選択しているはずだお」

( ・∀・)「なんでそんな」

ミ,,゚Д゚彡「ショボンはいつもみんなの事を考えてるから」

( ・∀・)「…信じてるってことか…」

ξ゚⊿゚)ξ「言っとくけど、ショボンは勿論私たちにとってあんたがふざけた行動を取るなら、
私はあんたを殺すから」

ミ;,,゚Д゚彡「ツン!」

(;^ω^)「おっお」

ξ゚⊿゚)ξ「あいつは友達を信じすぎるのよ。
普段は人なんか信じてないくせして、一回信じたらもうダメ。
だから、そこら辺は私達が管理してやるの」

(;^ω^)「確かにショボンはそういうところがあるけど…」

ミ;,,゚Д゚彡「モララーは大丈夫だから」

.

532 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:55:59 ID:EuI.0M8A0

( ・∀・)「……友達?」

ξ゚⊿゚)ξ「そ、友達。
あいつにとってこのギルドは友達の集まりなの。
そしてあいつは、自分の命に代えても私達を、友達を守るわ。
だから私達は、あいつの足りない部分を補って、守ってやるのよ」

( ・∀・)「友達……」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたが『友達』にどんな思いがあるのか知らないけど、
すくなくともショボンとフサギコはあんたの事を信じてる。
友達だと思ってる。
私自身は友達の友達が自分にとっても友達だとか言うつもりもないし、
そんなことがある分け無いってことも知ってる。
でも、少なくとも友達の二人が信じている相手なら、
私もあんたを友達だと思えるようになるかもしれない。
っていうか、そこのバカとか何名かは、もう友達だと思ってるみたいだしね」

( ^ω^)「ご紹介にあずかりましたバカでーす。
って、誰がバカだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「…あんたはまったく……。ツッコミスキルが低いわよ」

(*^ω^)「ノリツッコミは難しいし恥ずかしいお」

ミ,,゚Д゚彡「モララー?」

(  ∀ )「友達…」

うつむき、表情を見せないモララー。

(  ∀ )「こんな偽りの世界で、友達だとか、信じるだとか…」

ξ#゚⊿゚)ξ「あんた!」

モララーの言葉に怒りをあらわにするツンだったが、ブーンに止められる。

( ^ω^)「モララーはよくばりだお」

.

533 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:56:58 ID:EuI.0M8A0

(  ∀ )「おれがよくばり?おれは…ただ…」

( ^ω^)「『確かに体も偽りの物だし、目に映るものも全て仮想世界。
偽りの世界と言って良い。
でも、心と命は本物。
自分自身。
なら、それ以外の何を欲しがる必要がある?
それ以外の本物とやらに、どれだけの価値がある?』」

(  ∀ )「!」

( ^ω^)「前にある人が言った言葉だお。
もちろん肉体にだって価値はあると思うけど、でも、これを聞いた時に確かにそうだと思ったお。
だから、命という本物と、心という本物を手にしていながらそれ以上を欲しがるモララーは、
欲張りさんだお」

ミ,,゚Д゚彡「フサギコの心に、嘘は無いから。
モララーは友達だから。
一緒にがんばって、生き残って、一緒に脱出したい友達だから」

(  ∀ )「命と心…」

ξ゚⊿゚)ξ「あーもう、うだうだうるさい!」

しびれを切らしたようにツンが声を荒げる。

ξ゚⊿゚)ξ「ギルドがいやなら脱退でもなんでもすればいいでしょ!
グダグダ言い訳しながらもそれをしないってことがあんたの本心なのよ!
いい加減認めなさい!
みっともない!
結局あんたはどうしたいの!!
ほんっと、情けない!」

(;^ω^)「うわぁ」

ミ,,゚Д゚彡「つ、ツン」

(  ∀ )「!」

.

534 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:58:25 ID:EuI.0M8A0

ξ゚⊿゚)ξ「なんでそんなにグダグダなのか知らないし興味もないけど、
すくなくともあの戦いで私達と一緒に動いていた時のあんたはイキイキしているように見えた。
あんな場面なのに、どこか楽しそうにすら見えた。
その後のバカ騒ぎの時もね。
私もあんたのあの姿を見たから、仲間に、友達になれるかと思った」

( ^ω^)「!(飴と鞭の使い方がうまくなったおね)」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンは後で正座」

(;^ω^)「(こ、心を読むスキル!)」

ミ,,゚Д゚彡「モララーは、ふさやショボンと友達になるのがイヤ…だから?」

(  ∀ )「お、おれは!!」

ξ゚⊿゚)ξ「ショボンからメッセージが来てる。
『合流は出来たみたいだけど、何か問題発生?』
だって。
フレンドリストの位置検索で私達が一緒にいるのは分かってるみたいね」

(  ∀ )「おれは…」

ξ゚⊿゚)ξ「で、どうするの?」

ウインドウを消したツンが黙ってモララーを見る。
同じようにモララーを見るブーンとフサギコ。

やがてゆっくりとモララーが顔を上げた。

.

535 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 00:59:51 ID:EuI.0M8A0

( ・∀・)「そんなにおれと友達になりたいのか。仕方ないなあ」

ξ゚⊿゚)ξ「はあ?」

( ^ω^)「おっおっ」

ミ,,゚Д゚彡「なりたいから!」

( ;∀・)「…仕方ないから、このままギルドにいてやるし、力も貸してやるよ」

ξ゚⊿゚)ξ「……あんた…」

( ^ω^)「おっおっお」

ミ,,゚Д゚彡「嬉しいから!」

( ;∀;)「……友……達…だから……な。しかた…ない…」

ξ゚⊿゚)ξ「……はいはい。じゃあとりあえずさっさと行くわよ」

( ^ω^)「おー!いくお!」

ミ,,゚Д゚彡「今度のクエストも頑張るから!」

ツンが一番先に踵を返して歩き始め、その後に涙をぬぐってモララーが歩き出す。
そしてその後ろを楽しそうにブーンとフサギコが続く。



ギルドVIPが中層クラスで最強と呼ばれ、一目置かれるようになるのはこの少し後の話。





第十三話 終




.

536 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 01:03:28 ID:EuI.0M8A0
以上、十三話でした。

途中飛ばしたり休憩したり、失礼いたしました。

そして遅くなりました。
待っていて下さる方もいて、感謝しております。

本当にありがとうございます。
本当に書くモチベーションになります。

やはり、反応をいただけると嬉しいです。

支援、ありがとうございます。

モナーとビーグルとか、可愛くてかわいくて。
ありがとうございます。


さて今回の話が思ったよりも長くなったのは自分の力の無さ、構成力の無さですが、
それでも書きたいことは書けたので、まあいっかなと思っております。

次回は、予定では残りの誰かの話のつもりですが、
ちょっと重い話が続いた気もするので、
のんきなクエストの話か閑話になるかもです。

つまり未定です。

次回こそ来月!
と思っておりますが、どうなることやらです。


読んでいただき、ありがとうございました。
また次回、よろしくお願いいたします。

.

537名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 01:04:31 ID:bb/Io1bc0
え!?モララーってまだギルド入ってなかったのか!!
わりといるからギルメンなのかと思ってたw

538 ◆dKWWLKB7io:2014/08/03(日) 01:08:55 ID:EuI.0M8A0
あと、一応年表も置いておきます。

年表

2022年
≪11月6日SAO(ソードアートオンライン)サービス開始≫
12月
2023年
01月
02月ジョルジュ「五話 ここでも雨は冷たいから」
03月
04月フサギコ「九話 君への手紙」
05月モナー・ビーグル「三話 それから」
06月クックル「四話 緑の手」
07月
08月
09月モララー「十三話 ダイヤモンドだね」
10月
11月
12月ギコ・しぃ「一話 ギルド「V.I.P.」へようこそ」「二話 聖なる夜のキャロル」
2024年
01月「六話・七話 数え歌がきこえる」
02月「八話 それぞれのチカラ」
03月
04月「十話 迷走」「十一話 疾走」「十二話 錯走」


.

539名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 01:21:40 ID:a7wEU56c0


540名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 02:54:00 ID:oswIO1n.0
置いて行かれたアルゴさんになぜかワロタ


541名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 03:22:23 ID:HOA3Fmug0
以外とモララーの加入は遅かったんだな。なにより乙でした!

542名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 07:06:38 ID:Z1UPpeS20


543名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 16:18:29 ID:q4Xi1gM20
今回も読みごたえあったわ

544名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 18:15:44 ID:unStJE.M0
そういやギコしぃが入る時に
一番最後に加入したのはモラって記述があったな
モラが一番好きだわー

545名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 19:28:50 ID:q2ngOe/k0
うまくいえないのか

546名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 23:03:44 ID:d3PKlLyU0
待ったかいがありました。すごく面白かったです。

547名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 23:48:30 ID:jc0xvA4wO
ω・)モララーの人1倍仲間思いの理由が描かれててよかった思う

548名も無きAAのようです:2014/08/04(月) 03:22:54 ID:q9xAMv7U0
乙 くそモララーに泣かされるとは思ってなかった、一気に好きになったわ
残りは流石兄弟と初期メンか、どれにしろ楽しみにしてる

549名も無きAAのようです:2014/08/04(月) 20:39:05 ID:IADbxA9o0
モララーが和解するタイミングが、加入する時じゃなくて加入した後っていうのが素敵。
心を入れ換えた最後のきっかけが、ショボンでもフサギコでもなく、ツンであったっていうのも素敵。
毎話楽しみにしています。最新話更新、お疲れ様でした。

550名も無きAAのようです:2014/08/06(水) 01:40:46 ID:9zlRjSGs0
乙です
モラ好きだからこういう描かれ方されててすごく面白かった

551名も無きAAのようです:2014/08/09(土) 17:49:34 ID:v5rGrXtI0
読んでて登場人物全員の事が好きになるブーン系は何年ぶりだろ?次の更新まで毎日読み直すぞー

552名も無きAAのようです:2014/08/11(月) 02:11:37 ID:bwzmFtkI0
乙。次回も楽しみにしてます。

553名も無きAAのようです:2014/08/11(月) 16:28:26 ID:ewH/UsHo0
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1554.gif
( ・∀・)「イケメンの剣技をみたまえ」

554名も無きAAのようです:2014/08/11(月) 17:04:54 ID:wdbAV7NE0
爪で剣技とは さすがイケメン

555名も無きAAのようです:2014/08/11(月) 17:30:48 ID:ewH/UsHo0
>>554
爪でも斧でもソードスキルだろ

556名も無きAAのようです:2014/08/11(月) 19:57:12 ID:M9tIIcyI0
オ、オタ芸?

557名も無きAAのようです:2014/08/11(月) 20:08:24 ID:VvMvLWyo0
>>556のせいでペンライト振るプロオタにしか見えなくなった

558名も無きAAのようです:2014/08/11(月) 20:13:09 ID:6oqdUf9E0
イケメンオタ芸マスターか

559名も無きAAのようです:2014/08/12(火) 12:18:23 ID:BovpY.yA0
ラブライバーだったのか

560名も無きAAのようです:2014/08/15(金) 19:56:31 ID:TrOhyCfc0
>>556-559のせいでモラが隠れオタのイメージが着いてしまったんだがどうしてくれる

561名も無きAAのようです:2014/08/20(水) 06:10:58 ID:w2RI7k8YO
思ってた以上にモララーの過去がヘビーだった

562名も無きAAのようです:2014/08/24(日) 23:58:38 ID:PQ3N2tvg0
ツンとの関係性に納得できた。

563 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:27:35 ID:TEZ8S/2k0
八月ももうすぐ終わりですね。

ということで、十四話を投下します。

564名も無きAAのようです:2014/08/29(金) 23:29:04 ID:.7yXe6uc0
うっひゃあ
今日は最高だぁ
支援

565 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:29:25 ID:TEZ8S/2k0
( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。




第十四話 双頭の鷲の旗の下に





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566 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:30:54 ID:TEZ8S/2k0

0.あの丘をこえて



西暦2023年1月
第二層 戦闘フィールド。

町と街をつなぐこの道には特に名前は付けられていない。
モンスターも出てくるには出てくるが、道の周囲にはまばらに木が生えているだけのこのエリアは
通常の警戒をして、更に相応の経験を重ねた者が装備を整えていれば、危険性は低い場所とされていた。

もちろんゲームの中の死が実際の死に繋がるこの世界では、
モンスターの出てくるエリアでは全ての者が周囲を警戒し、
神経を張りつめているのが常だった。

ξ゚⊿゚)ξ「ねえショボン、次の安全エリアに着いたらお茶にしよう」

(´・ω・`)「もう?早くないかな」

川 ゚ -゚)「地図によるとそろそろ半分進んだようだし、良いんじゃないか?」

( ^ω^)「今日のお茶とおやつはなんだお?」

(´・ω・`)「まだ街を出て少ししか経って無いのに良いのかなぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「もうすぐ十時!おやつの時間よ」

('A`)「大工が家を建ててるんじゃないんだからよ」

川 ゚ -゚)「こんな緊張の連続では、心が休まらん。休めるタイミングで休むのが良い」

( ^ω^)「だおだお。いつ襲われるかドキドキしながら歩くのは大変だおね」

('A`)「はいはい」

(´・ω・`)「ドクオ先生のお許しも出たし、次の安全エリアで休憩しようか。…!」

.

567 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:32:32 ID:TEZ8S/2k0

呑気に話していたショボンが携えていた槍で空中を指し、構えを取る。
それと同時にドクオとブーンは片手剣を、ツンは細剣を持ってショボンの前に飛び出す。
クーはショボンと同じ槍を構えてショボンの隣に立った。

(´・ω・`)「まず二体!」

ショボンが槍で指した先に現れる巨大蜂と狼。

('A`)「先ずはおれが狼を行く」

ξ゚⊿゚)ξ「蜂は私ね」

前方の警戒を四人に任せて振り返るショボン。

(´・ω・`)「後方、空中に二体。このエリアならおそらく蜂。右は僕が行く」

川 ゚ -゚)「ならばもう一匹は私が行こう」

( ^ω^)「全員のフォローと警戒に回るお!」

既に前方の二匹はポップしており、ドクオとツンは戦闘を開始していた。

('A`)!

ξ゚⊿゚)ξ「は!」

この世界に囚われて二ヶ月と少し、フロアボス戦など要所の戦闘等には参加はしていないものの、
順調に戦闘を重ねてレベルを上げてきた五人にとって、このエリアの敵は脅威ではなかった。

川 ゚ -゚)「とりゃ!」

(´・ω・`)「とう!ブーン!ツンの右側2メートル!足元に一体!」

( ^ω^)「わかったお!」

四人を見渡せる位置で片手剣を構えていたブーンがツンの下に駆け寄った。

すると空間のひずみがブーンの目にも分かり、狼がポップする。

ξ゚⊿゚)ξ「もうすぐ蜂が倒せるのに!」

( ^ω^)「こいつはブーンの獲物だお!」

狼が完全に実体を現したとほぼ同時にブーンの片手剣が胴を二分割する様に閃いた。



.

568 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:33:55 ID:TEZ8S/2k0

安全エリア。
広げた絨毯の上に座る四人。
その目の前、一人一人にはカップが置かれ、
中央の籠には丸く茶色い饅頭の様なお菓子が何個も入っていた。

ξ゚⊿゚)ξ「ん。美味しい。これ初めてよね」

カップに口を付けたツンが頬を綻ばせながら更に口を付ける。

川 ゚ -゚)「昨日のより香りが好みだ」

(´・ω・`)「昨日のはちょっとジャスミンっぽい香りが強かったからね。
あれはあれで僕は好きなんだけど」

( ^ω^)「今日のお茶も昨日のお茶も美味しいお」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたは花より団子でしょ。それ、三つ目よね。少しは控えなさい」

( ^ω^)「おっおっおっ。おまんじゅうかと思ったら、持つと硬くて、
でも硬い皮を砕くように噛むと中の雲のように軽くふんわりとした生地が口の中に入って、
さらに奥から甘すぎないクリームがとろっと溶け出すんだお」

ブーンの感想を聞いて無言で一つ目に手をのばすツンとクー。

ξ゚⊿゚)ξ「あら」

川 ゚ -゚)「おっ」

食べた瞬間に笑顔を見せる二人。

それを嬉しそうに見つめるショボン。

ほんわかとした雰囲気が四人を包む。

('A`)「おまえら……」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたも座ったら?」

ひとり立ったままでいるドクオ。
武器を持ったまま周囲を警戒しているのだが、それでも片手にはカップを持っている。

.

569 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:35:16 ID:TEZ8S/2k0

('A`)「安全エリアとは言え圏外だからな。
モンスターが出ないってだけだ」

(´・ω・`)「ドクオのスキルがあれば周囲に来る人も分かるわけだし、座ってもいいんじゃない?
エリアに入ってきたら流石に警戒もするからさ」

('A`)モウアンナキマズイオモイハイヤダ

(;^ω^)「ああ…」

(;´・ω・`)「あれはね」

ドクオの呟きに、同意を見せる男二人。

しかし女二人は気にせずお茶をすすっている。

('A`)「一人立って警戒してりゃあまだ体裁が整うだろ」

(´・ω・`)「あれはちょっと肩身が狭い思いしたからね」

(;^ω^)「あの気分を『ちょっと』と言ってしまうショボンもなかなかだお」

つい先日も同じような場所でお茶にしたのだが、今いる場所と決定的に違うのが、
現在かなり需要のある道のため、通るプレイヤーがかなり多かったという事だった。

他のプレイヤーの視点で考えると、
安全エリアとは言え圏外で絨毯広げて呑気にお茶とお菓子を食べている彼らは、
かなり複雑な思いを抱かせてしまうに十分だった。

しかも五人パーティーのうち二人が容姿端麗な女性なのだから、
嫉妬も入り混じっていたことであろう。

.

570 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:36:05 ID:TEZ8S/2k0

ξ゚⊿゚)ξ「まったく変なことを気にするんだから」

川 ゚ -゚)「この道は、と言うよりこれから行く町はもう需要も少ないから人も通らないし、
良いだろう。というか、ここまで来て人目を気にしても仕方あるまい」

ξ゚⊿゚)ξ「で、ショボン、これってどこで買ったの?」

(´・ω・`)「ああ、中身は昨日行った街のショップだよ。それを軽く揚げてみたんだ」

( ^ω^)「ショボンは凄いおね。もうそんなことできるんだから」

(´・ω・`)「調理スキルのレベルは槍より上だよ」

川 ゚ -゚)「ほお!今日のお弁当も楽しみだ」

('A`)「いいのかそれ」

呆れるドクオをよそに出発の準備を始める四人。

今日はあるエクストラスキルを得るために進んでいる五人だった。



.

571 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:37:22 ID:TEZ8S/2k0

1.テイク・オフ



予定通り昼過ぎに町に辿り着き、圏内の広場で再び絨毯を広げる五人。
今度はドクオも大人しく座っている。

(´・ω・`)「さて、ここからが目的地への本当のスタートなわけですが。
っていうか、ほんとにみんなもやるの?」

( ^ω^)「おもしろそうだお」

(´・ω・`)「話によると結構大変らしいけど」

ξ゚⊿゚)ξ「とりあえず私は見学かな。
別にすぐ取らなきゃいけないスキルってわけじゃないし」

川 ゚ -゚)「そうだな。ゆくゆくは取ってみるのもよさそうだが。
それに全員これにかかりっきりになるのも不味くないのか?
取得クエスト中はそこから動けなくなるとかいう話だし。
ドクオはどうするんだ?」

('A`)「おれか?おれは…」

(´・ω・`)「クーとツンが取らないなら、二人が別行動する時にそっちで一緒に行動してほしいけど、
でもドクオも取っておいたほうが良いよね。あれ」

それぞれの手には黒パンで作ったサンドイッチがあり、更に目の前にはお茶の入ったカップがある。
また中央にはソーセージや野菜スティックが入ったバスケットが置かれていた。

そんな穏やかな空気の中これからの事を話しているのだが、
ドクオは一人気もそぞろに周囲をきょろきょろと見回していた。

( ^ω^)「さっきからどうしたんだお?」

.

572 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:38:38 ID:TEZ8S/2k0

('A`)「あーうん」

( ^ω^)「もしかして、先輩を捜してるのかお?」

('A`)「…ああ」

(´・ω・`)「ドクオが時々言ってた?」

('A`)「ゲーム、先輩も手に入れたって言ってたから」

川 ゚ -゚)「黒鉄宮の碑に名前は…って、そうか。
ゲーム内の名前が分からないんだったな」

('A`)「なんて名前でやるかは聞いてなかったし。
おれはほら、もともとお前らと始める予定だったから、向こうで会うのはまた慣れた頃にって話してたんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「……会えると良いわね」

('A`)「…ああ。先輩も誰かと一緒にやるって言ってたから、独りではないと思うけどさ」

川 ゚ -゚)「ブーンも友達なのか?」

( ^ω^)「ちょっと話したことがあるくらいだお。
ショボンもあるおね」

(´・ω・`)「?」

( ^ω^)「ほら、一つ上の流石先輩だお。ちょっとおかしな」

(´・ω・`)「ああそっか、あの先輩か。発想が面白い。
去年の文化祭で変な格好して歩いてたよね」

( ^ω^)「そうだお!そうだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「あーなんか見た覚えあるかも。なんかアフリカの原住民みたいなカッコしてた人よね」

('A`)「あの時やってた深夜アニメに出てるキャラのコスプレだったんだけど、
似てる小道具が揃わなくてオリジナル要素が強すぎて、一見ただの変人だったんだよ」

.

573 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:40:10 ID:TEZ8S/2k0

( ^ω^)「確かその元のキャラクターを当てたのがドクオだけだったんだおね」

('A`)「うん。その縁で仲良くさせてもらったんだ」

川 ゚ -゚)「しかし珍しいな。ショボンが一度でも話したことのある人を忘れるなんて」

(´・ω・`)「いや、忘れたわけじゃないんだけど、なんとなくイメージが一致しないんだよね。あの人」

( ^ω^)「?そうかお?」

('A`)「ああ、三年になってから少し落ち着いた気はしたけど、相変わらずだったぞ」

(´・ω・`)「そうなんだ」

('A`)「あ、でも…」

(´・ω・`)「どうかした?」

('A`)「春休みの間に交通事故あったんだよ。先輩。
だから始業式に来れなくって…。二週間くらい遅いスタートだったのかな。
一緒に観に行く予定だった映画の日に待ち合わせ場所に来なくって、
携帯もつながらないから心配してたら、夕方お姉さんから連絡が来て。
前日の夜に結構大きな事故にあったって聞いて…」

ξ゚⊿゚)ξ「大変だったでしょうね」

川 ゚ -゚)「無事でよかったな」

('A`)「運び込まれたのがショボンの所の病院だったからお見舞いに行ったけど会えなかったくらいだしな。
なんか外傷は少ないけど頭を打って意識が戻らなくて、集中治療室ってところにいた」

(;^ω^)「おっおっ」

川;゚ -゚)「助かってよかったな」

('A`)「休み明ける少し前にも行ったけど会えなくて…お姉さんと妹さんにすごく恐縮された」

ξ゚⊿゚)ξ「妹さんもいたんだ。お兄さんがそんな状態じゃあ、心細かっただろうな」

.

574 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:41:32 ID:TEZ8S/2k0

('A`)「確か男の兄弟もいるはず。
部屋が一緒で、気軽にオナ」

(;^ω^)「ドクオ!」
(;´・ω・`)「ドクオ!」

('A`;)「お、おおう」

ξ゚⊿゚)ξ?

川 ゚ -゚)?

('A`;)「お、おな、同じ部屋だといろいろ大変だって言ってた。
それで結局会えたのは登校してきてからだったけど、
その時はおれの顔見て不思議そうな顔してたっけ。
ちょっと記憶がおかしくなってるって言ってたから、同じクラスの人達も心配してた」

(´・ω・`)「頭を強く打ったのなら、記憶障害とかあったのかな」

('A`)「もっと休んだらどうですかって言ったら、出席日数が厳しいから来てるとも言ってたな」

ξ゚⊿゚)ξ「うちの学校、そんなの気にしてたんだ」

('A`)「そりゃ気にするだろうよ。だろ?ショボン」

(´・ω・`)「一応ね。でも要所要所の行事への出席とテストを受けて、
ちゃんとした成績が取れてれば卒業は出来たはず」

('A`)「え?そうなの?」

(;^ω^)「さすがにゆるくないかお?」

川 ゚ -゚)「だが、確かちゃんとした成績ってのが肝だっただろう?」

(´・ω・`)「うん。学年10位内とか、全国統一模試での上位成績とか」

ξ゚⊿゚)ξ「あらら」

('A`)「じゃあ無理だ……よな。多分」

(´・ω・`)「僕に聞かれても分からないけど…」

.

575名も無きAAのようです:2014/08/29(金) 23:42:54 ID:hVmurqDw0
支援

576 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:43:11 ID:TEZ8S/2k0

ξ゚⊿゚)ξ「あら、そこら辺の情報収集もしているのかと思った」

(´・ω・`)「張り出された順位表は見には行ってたけど、さすがに覚えてないよ」

川 ゚ -゚)「(嘘だな)」

ξ゚⊿゚)ξ「(嘘ね)」

( ^ω^)「(ショボンなら全部覚えていそうだけど…)」

('A`)「(別に教えてくれてもいいのに。確か成績悪くはなかったよな。先輩)」

(´・ω・`)「でも、今日はいつにも増して探しているみたいだけど、何かあったの?」

('A`)「いや、あの先輩なら多分あのスキルは取りたいスキルだと思うから、
もしかしたらいるかも…って思って」

ξ゚⊿゚)ξ「でもこの情報って、あの情報屋さんとお金以外の取引で手に入れたんじゃないの?
まだほとんどの人は取れていないスキルって話よね。確か」

川 ゚ -゚)「ツン…」

ξ゚⊿゚)ξ「?」

('A`)「まあ、そうなんだけどさ。
先輩ならどこかから聞きつけて、やってきてもおかしくないよなって思って。
こういったMMORPGはおれよりキャリア長いしよく知ってるから、
先輩もアルゴから情報を手に入れてたりするかもしれないし」

ξ゚⊿゚)ξ「……ごめん」

('A`)「謝る様な事じゃないさ」

( ^ω^)「会えるお」

('A`)「?ブーン?」

( ^ω^)「会えるお。今日は会えなくても、必ず。会えるお」

川 ゚ -゚)「そうだな」

.

577 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:44:32 ID:TEZ8S/2k0

ξ゚⊿゚)ξ「ええ。そうね」

(´・ω・`)「そうだね。会えるよ」

('A`)「ああ…そうだな」

何かを吹っ切る様に手に持ったサンドイッチに食らいつくドクオ。
それを見た四人も、それぞれに思いを持ちながら食事を続けた。

全てをたいらげ、食後にもう一杯ずつお茶を飲んだ後出発の準備を始めた五人。

この町には転移門は無いが、東西南北に一つずつ出入り口である門があり、
ショボン達は手に入れた情報通りに東門に向かった。

川 ゚ -゚)「食事はこっちの芝生でもよかったな」

(´・ω・`)「そうだね。こっちも日差しが良い感じだ。
芝生もさっきのところより背が高いかな」

ξ゚⊿゚)ξ「絨毯あるし、そう変わらないでしょ」

( ^ω^)「あの絨毯はお買い得だったおね」

('A`)「ストレージは大丈夫なのか?」

(´・ω・`)「うん。見た目より容量は小さいから」

('A`)「なら良いけど、いざとなったら捨ててアイテムしまえよ」

(´・ω・`)「うん。分かってる。ありがと」

('A`)「お茶とかも……!!」

会話の途中でいきなり駆け出すドクオ。

(´・ω・`)「ドクオ?」

( ^ω^)「どうしたんだお!?」

その後を追うブーン。
三人もそれに続く。

.

578名も無きAAのようです:2014/08/29(金) 23:46:58 ID:1Y7SfGqk0
支援

579 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:48:23 ID:TEZ8S/2k0

東門のそば。
向かって右側の広場にそびえたつ大樹。
その下で自分のウインドウを操作している青年に向かって走っていくドクオ。
そしてそのまま叫んでいた。

('A`)「せ!先輩!?」

青年が振り向いた。

('A`)「先輩…ですよね……良かった…」

青年に駆け寄るドクオ。

(´<_` )「あれ、えっと…とくなが?」

('A`)「ゲームを手に入れたって言ってたから、ずっと気になってたんです。
このスキルの情報を手に入れた時、もしかしたら会えるかもって…。やっぱり来てたんですね!
タイミングが重なって良かった!」

(´<_` )「え?あ?え?」

ドクオの勢いに押されるように対応する青年。

( ^ω^)「流石先輩!」

('A`)「ブーン!先輩がいた!」

( ^ω^)「おっおっ!すごい偶然だお!」

(´<_`;)「ないとう…だったよな」

('A`)「【体術】スキルの事を知った時、先輩なら絶対取るだろうと思ったんです!
やっぱり、
『俺の妹が宇宙人な訳がないけど
幼馴染がゾンビで生き別れた姉さんが魔法少女になっていたから
もしかするともしかするかもしれない!』、
略して『オレナイ!』、に出てくるポコちゃんをおれの嫁と公言している先輩だったら、
このスキルを取りに来るはずだって!」

ξ゚⊿゚)ξ「なにそれ」

.

580 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:49:53 ID:TEZ8S/2k0

(;^ω^)「ラノベで深夜アニメをやってたのは知ってるけど、細かいキャラクターは僕もちょっと…」

ξ゚⊿゚)ξ「知ってる事にもひく」

川 ゚ -゚)「なるほど、流石先輩は『オレナイ!』の主要キャラの一人、
主人公のことを陰でずっと見ていて、
暴力的な事件に巻き込まれそうになるといつの間にか傍に現れて敵を片付けて、
驚いた主人公の顔を見ると頬を赤らめてもじもじしながら主人公の髪の毛を一本貰って去っていく、
『拳 法子(けん ぽうこ)』ちゃん、通称ポコちゃんのファンなのか」

ξ゚⊿゚)ξ「何そのストーカー怖い。だいたい髪の毛貰って何するのよ」

川 ゚ -゚)「その事がこの先どう絡んでくるのかがあの小説の肝の一つだ。
32巻まで出ているが、まだその謎は解けていない」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなに出てるの!?ながっ!」

川 ゚ -゚)「年に数冊出してるから、まだ十年少しのはずだ。
ちなみに彼女は確か一巻の終わりにシルエットのみで登場してから毎巻出ている人気キャラだ。
ここに来る前に丁度32巻が出たので読んだが、やっと宇宙に行って戦い始めたな」

ξ゚⊿゚)ξ「…ラブコメなのかと思ったら戦うんだ」

( ^ω^)「(まさかクーが読んでいたとは思わなかったお)」

川 ゚ -゚)「いや、基本オレツエーなハーレム系ラブコメだ」

ξ゚⊿゚)ξ「よくあるやつなのね。でもクーが読んでるなら読んでみようかな」

( ^ω^)「(僕には知ってるだけで引くとか言っておきながらかお)」

ξ゚⊿゚)ξ「だってあんたが部屋で一人でそんなの読んでたら普通ひくし」

( ^ω^)「…普通に心の声に反応するの止めてほしいお」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたは顔に思ってることが出すぎなのよ」

.

581名も無きAAのようです:2014/08/29(金) 23:51:05 ID:xtGIMtxc0
支援

582 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:51:19 ID:TEZ8S/2k0

('A`)「本当良かった。生きて会えて」

(´<_`;)「あ、ああ、そうだな」

(´・ω・`)「……スキルを取りに行かれるところですか?」

四人の勢いに多少引き気味に反応していた青年だったが、
最後に話しかけてきたショボンに落ち着いた笑みを返す。

(´<_` )「あ、いや、おれは」

('A`)「じゃあ一緒に修行しましょう!な、ショボン、良いよな」

(´<_` )「人を……え?」

(´・ω・`)「もうゲットされたのなら色々とお聞きしたかったんですが…。
これから一緒に取りに行くのは、ぼくは別に良いよ。みんなも良いのかな?」

(´<_` )「いや、おい、おれは」

( ^ω^)「いいおー」

ξ゚⊿゚)ξ「見たことある人だし」

川 ゚ -゚)「私も構わん」

('A`)「先輩!」

(´<_`;)「おいおい、」

(´・ω・`)「…じゃあ、行きましょうか」

(´<_`;)「あ、いや、だから…」

('A`)「さあ先輩!きっとポコちゃんの必殺技、スプリングシュガーキックが出来るようになりますよ!
もしかしたらオータムペッパーパンチも出来るようになるかも!」

(´<_`;)「ねえねえ、おれの声聞こえてる?」

珍しく顔全体に喜びをあらわしているドクオ。
それを見ているからこそ四人は青年の声を聞こえないふりをしていた。

.

583 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:52:43 ID:TEZ8S/2k0

川 ゚ -゚)「相変わらずの笑顔だな」

ξ゚⊿゚)ξ「さすがに私達は慣れたけどね」

( ^ω^)「満面の笑みとかほとんどしないから、顔の筋肉が慣れてなくてどこかぎこちないんだお」

青年の背中を押して、町の外へと足を進めるドクオ。
その後ろを三人が続く。

川 ゚ -゚)「特にこの世界に来てからは、初めて見たかもな」

( ^ω^)「…だおね」

ξ゚⊿゚)ξ「まだ気にしてるのかしら」

( ^ω^)「それは…きっといつまでも気にしてるお」

ξ゚⊿゚)ξ「……まったく。ま、それはもう一人もだけど」

川 ゚ -゚)「ああ、そうだな」

ちらっと後ろを見る二人。
そこにはまだ歩き始めていないショボンがいた。

川 ゚ -゚)「ショボン?どうかしたか?」

(´・ω・`)「あ、いや。大丈夫。ちょっとクエスト内容を整理していたらボーっとした」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオがもう出ちゃうわよ。外に」

(;´・ω・`)「いやいやいやいや。
ドクオー!!」

クーに話しかけられて歩き出していたが、慌てて駆け出すショボン。

('A`)「早く来いよ!」

珍しく大声を出したドクオに引っ張られるように、三人も駆け出した。




.

584 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:54:35 ID:TEZ8S/2k0

目的地への道は、決して楽なものではなかった。

岸壁をよじ登り、小さな洞窟に潜り、スライダーの様な地下水流を滑る。

そして戦闘。

手にした情報通りの場所でのみで起こった戦闘ということもあり、
大きな問題も無く勝つことが出来た。

(´<_` )「君らは強いな」

('A`)「頑張りました!」

ξ゚⊿゚)ξ「ま、これくらいわね」

( ^ω^)「いっぱい訓練して、戦ったんだお」

川 ゚ -゚)「ブーンはもう少し剣技も練習しないとだけどな」

(;^ω^)「おー」

そして合計二時間ほど移動すると、目的の場所に辿り着いた。

そこは二層の東の端。
ひときわ高くそびえる岩山の頂上の近く。
周囲を岸壁に囲まれた小空間の中に、泉と一本の樹と、一つの小屋があった。

(´・ω・`)「着いたみたいだね。あとはクエストを受けるためのNPCに会って話しかけて…」

ショボンが先頭を歩き、小屋の前に移動する。
一度立ち止まると全員が揃ったことを一度確認し、小屋のドアを開けた。
そしてそこには、情報通り初老の男が一人いた。

土間の上で座禅を組んでいるため身長は分かりにくいが、
筋骨隆々たる体躯とバランスから、大男であることがうかがえる。

スキンヘッドに口の周りの豊かな髭を携えた見た目は、オーソドックスな【拳法の師匠】である。

ξ゚⊿゚)ξ「あれ?」

( ^ω^)「人を指さしちゃだめだお」

川 ゚ -゚)「そのようだな。頭の上に【!】マークもあるし」

(´・ω・`)「さて、多分全員でやれるはずだけど、ツンとクーはやらないとして」

.

585 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:55:35 ID:TEZ8S/2k0

ξ゚⊿゚)ξ「やっぱやる」

(´・ω・`)「へ?」

川 ゚ -゚)「私もやろう」

( ^ω^)「どうしたんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「まーほら、あれよ。またここに来るの面倒くさいじゃない」

川 ゚ -゚)「そういう事だ。食料は充分持ってきたんだろ?」

(´・ω・`)「うん。五人で一週間以上、六人でも一週間は持つはず。
色々器具と調味料も持ってきたから作れるし、
来る途中で採取できそうな食べ物もチェックしておいたから、
万が一足りなくなっても街まで戻らなくて大丈夫だと思う」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃ、そういう事で」

川 ゚ -゚)「だな」

(´<_`;)「お、おれは」

(´・ω・`)「一応パーティーに誘いますので、受けてください。
同一パーティーにいないと一緒に始められないかもしれないので」

(´<_` )「いや、だから」

('A`*)「先輩!どちらが先に取れるか競争しましょう!」

(´<_`;)「ああ…うん…」

ドクオの勢いに押されて、ショボンが送ったパーティーの誘いにYESのボタンを押す青年。

(´・ω・`)「ありがとうございます。
……ゲームでは【Tei】さんなんですね。
読み方は『テイ』さんでよろしいですか?」

(´<_`;)「あ、ああ…。うん。それで良いよ」

.

586 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:57:28 ID:TEZ8S/2k0

('A`)「おれは『先輩』で良いですよね?」

( ^ω^)「ブーンもそっちが良いお」

(´<_` )「別に……好きに呼んでくれていい」

('A`)「ハイ!
あ、でもブーン、『流石先輩』は止めろよ。
こういうところでリアルの名前を呼ぶのはマナー違反だからな」

( ^ω^)「おっおっお。ごめんだお。先輩もごめんなさいだお」

(´<_` )「ああ、いや、いいさ。別に」

(´・ω・`)「それじゃあ、話しかけるね」

中央の土間にどっかりと腰と座っている大男の前に立つショボン。
その後ろに全員が並ぶ。

NPC「お前達は入門希望者か?」

(´・ω・`)「はい。そうです」

NPC「修行の道は長く険しいぞ?」

(´・ω・`)「存じております」

ショボンの言葉を受け、初老の大男の頭の上のアイコンが【!】から【?】に変わった。
そして六人全員の前にクエスト受領のログが現れた後、
初老の男…師範に促されて奥のドアから外に出た。

そこは岩壁に囲まれた庭の端に位置し、巨大な岩が六個並んでいた。
一つ一つの大きさは高さ二メートル、差し渡し一メートル半ほどあるだろうか。

一番手前の岩をポンと叩いた師匠は、左手であごひげをしごきながら言った。

(師匠)「汝たちの修業はたった一つ。
両のこぶしのみでこの岩を割るのだ。
成し遂げれば、何時にわが技の全てを授けよう」

.

587 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:58:28 ID:TEZ8S/2k0

(;´・ω・`)「話には聞いていたけど」

('A`;)「…すごく……おっきいです」

(;^ω^)「そんなこと言って、ドクオは余裕あるみたいだおね」

ξ;゚⊿゚)ξ「やっぱりやめようかな」

川;゚ -゚)「ツン、二人で抜けるか?」

(´<_`;)「なにこれ」

(師匠)「この岩を割るまで、山を下りることは許さん。
汝たちには、その証を立ててもらうぞ」

呆然と岩と見つめる六人に構うことなく、師匠は懐からアイテムを取り出す。

それは、大きく、太い、立派な……筆。

全員が呆気にとられていると、左手にいつの間にか握られていた小さな壺に筆の先を入れると、
電光石火、全員の目の前をすり抜けた。

(師匠)「うむ」

満足そうに頷き、懐に筆と壺をしまう師匠。

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588 ◆dKWWLKB7io:2014/08/29(金) 23:59:36 ID:TEZ8S/2k0

(三´・ω・`三)「えっと…なにこれ」

(へ'A`へ)「へ?」

( s^ω^s)「おお?」

ξシ゚⊿゚リ)ξ「ちょっとまった!!」

川二゚ -゚ニ)「私はどんなだ!?」

(>´<_`<;)「……おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい」

.

589 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:02:01 ID:8BYwryE20

(師匠)「その証は、汝たちがこの岩を割り、修行を終えるまで消えることは無い。
信じているぞ、我が弟子達よ」

騒然とした六人を後目に、悠然と歩いて小屋に戻った師匠。

川#二゚ -゚ニ)「ショボン!」

両頬に二本ずつ髭を書かれたクー。

(;三´・ω・`三)「い、いや、情報にこれは無かった」

ショボンの両頬には三本ずつ。

(ヘ'A`へ;)「おれも聞いてない!」

鼻の下からほうれい線に沿って両側に一本ずつ髭を書かれたドクオ。
某ラーメン男の顔を思い浮かべてもらえると分かりやすいだろう。

(;s^ω^s)「おっおっお」

ドクオと似ているがもじゃもじゃっとしたあからさまにおかしな髭をかかれたブーン。

(>´<_`<;)「これ、これを割らないと消してもらえないのか?」

比較的まともな髭を書かれたテイ。

ξ#シ゚⊿゚リ)ξ「あの鼠!!!!終わったら覚えてろ!!!」

傍の泉で自分の顔を見たツンが唸る。

右の頬には細い三本のありがちな髭。左の頬には失敗したのか縦に二本の髭。
全員が「多分自分のはツンよりましだろう」と思ったとか考えたとか。

しかし切り替えの早さがこの六人に共通した良さであろう。

一度全員絶叫した後、それぞれに闇雲に割り振られた岩に拳を打ち込んでいった。




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590 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:04:11 ID:8BYwryE20
ξ゚⊿゚)ξ「鼠を呼べ」

五日後。
六人は最寄りの町のレストランにいた。

川 ゚ -゚)「…途中で食料が切れたのは痛かったな…」

ξ゚⊿゚)ξ「フード付けたままレストランに入るのはもうごめんよ」

(´・ω・`)「まあめでたく全員【体術】スキルゲットおめでとうと言うことで」

('A`)「先輩とブーンとおれが三日で、ショボンとツンとクーが四日か」

(´・ω・`)「パラメーターのどこが一番なのかな。
筋力値は五人はそれほど変わらないはずだけど」

( ^ω^)「ご飯が足りなくなったのは参ったお」

(´・ω・`)「全員食べまくったからね。僕も人のこと言えないけどさ」

ξ゚⊿゚)ξ「何はともかく、とりあえず鼠を呼べ」

('A`;)「まあまあ」

(;´・ω・`)「あとで話はしておくよ」

川 ゚ -゚)「ん?来るのか?」

(´・ω・`)「さっきメッセージを送ったら、また情報の取引をしたいって言われたんだ。
で、後でこっちに来るって。時間も遅いし。今日はこのまま泊まることにしよう」

川 ゚ -゚)「ふーん。そうか」

(´・ω・`)?

( ^ω^)「じゃあそれまでは、お疲れ様の会だおね。
先輩もお疲れ様だお」

(´<_` )「ほんとだよ。あのひげには参った」

ξ゚⊿゚)ξ「テイはまだましでしょ」

(´<_` )「ツンに言われると何も言えんな」

ξ゚⊿゚)ξ「うるさい」

和気藹々とした空気に包まれる六人。
頼んだ食事がテーブルに並べられ、ささやかな宴は二時間ほど続いた。
.

591 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:06:03 ID:8BYwryE20




二件目の店を出ると、日は落ちて街灯の明かりがぼんやりあたりを照らしていた。

視界の隅で時間を確認したショボンが口を開く。

(´・ω・`)「じゃあ僕はアルゴさんと話してくるから、
この後の行動はさっきの打ち合わせ通りで」

('A`)「ん。さっき手続きした宿屋に行ってる。けどどうする?一緒に行くか?」

ξ゚⊿゚)ξ「私が一緒に行って鼠に一発…」

(;^ω^)「それはさすがにツンさんおやめになった方が」

ξ゚⊿゚)ξ「冗談よ。クー、さっさと戻ってお風呂はいろ」

川 ゚ -゚)「ん?……あ、ああ。そうだな」

('A`)「じゃあ俺が一緒に」

( ^ω^)「僕が行くかお?」

(´・ω・`)「いや、待ち合わせはこの先のカフェだから、大丈夫だよ。
ただ、何かあったらすぐメッセージは入れるから、
ぼくが戻るまでどちらかはすぐ動ける状態でいてもらえるかな」

('A`)「りょーかい」

( ^ω^)「わかったお」

(´・ω・`)「テイさんも、今日はゆっくり休んでください。
これからの事はまた明日の朝よろしくお願いします」

(´<_` )「あ、ああ。……そうだな。今日はゆっくりさせてもらうよ」

(´・ω・`)「じゃあドクオ、よろしく」

('A`)「おう。みんな行こう」

ぞろぞろと宿屋に向かって歩いていく五人。
ショボンはそれを見送った後、街灯の光の当たらぬ陰をちらっと見てから歩き始めた。

(アルゴ)「ショボン、【体術】スキルゲットおめでとう」

.

592名も無きAAのようです:2014/08/30(土) 00:06:35 ID:LOK1BRSg0
鼠を呼べにフイタ

593 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:07:24 ID:8BYwryE20

(´・ω・`)「アルゴさんはもう一回チャレンジしないんですか?」

陰から自分の斜め後ろに現れたアルゴ。
しかしショボンはそれに驚くことは無く、淡々と会話をはじめた。

(アルゴ)「……取れたら捗りそうだから、もう少しレベルが上がって情報を仕入れてからだネ」

(´・ω・`)「ぼく達五人、開始時のパラメーターと、スキルゲット時のパラメーター。
情報はそれでどうですか?」

(アルゴ)「……それは色々捗るネ。でも」

(´・ω・`)「もちろん五人の誰のパラメーターかは明らかにしません。
【体術】スキル以外のスキルに関しても。
五人だから、五分の一だから出来る情報公開の仕方になりますが、
それでも貴重だと思っています」

(アルゴ)「……いくら欲しいんダ?」

カフェの前を通り過ぎ、路地へと入るショボン。
少し奥に入り立ち止まり、後を付いてきたアルゴに向き合った。

(´・ω・`)「アルゴさんにとっても汎用性と有用性の高い情報だとは思いますが、
その分取扱いには細心の注意を図らなければいけない情報だとも思います」

(アルゴ)「ああ、その通りだヨ」

(´・ω・`)「コルではないモノとの交換を」

(アルゴ)「今度はなんの情報が欲しいのかナ?」

(´・ω・`)「今、もう一人の顔は覚えてもらいましたか?」

(アルゴ)「ああ。そういう要望だったからネ。
だからわざわざここに出向いたんだし、彼の情報も持ってきたヨ」

(´・ω・`)「ありがとうございます。情報料はこちらで」

(アルゴ)「…確かに。
これが調べた結果だヨ。」

二人の目の前に浮かぶウインドウ。
ショボンはさっと一読した。

.

594 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:09:38 ID:8BYwryE20

(アルゴ)「けど知り合いじゃないのかい?ドクオとブーン君が先輩と呼んでいたけど」

(´・ω・`)「ぼくが今考えているのはまだ仮説です。
僕がこれからアルゴさんに頼む情報の結果で、確定するか、間違いだと判明するか。
ですから、まだ分かりません」

(アルゴ)?

(´・ω・`)「お願いできますか?」

(アルゴ)「持ちつ持たれつとは言え、ショボンには色々世話になってるからネ。
わかった。受けるよ」

(´・ω・`)「ありがとうございます。では、詳細と今回の情報を送ります」

(アルゴ)「ああ、頼むヨ」

ウインドウを出し、既に書いてあったメッセージをアルゴに送るショボン。
アルゴは視界の隅にメッセージ到着のしるしが出たのを見て、ウインドウを開いた。

(アルゴ)「………」

メッセージの一文字一文字をじっくりと読むアルゴ。
そして読み終わると、にやりと笑った。

(アルゴ)「なるほど、だからわざわざ……カ。
まったく骨の折れる依頼だヨ」

(´・ω・`)「でも、アルゴさんなら難しくは無いでしょ?」

(アルゴ)「ま、記憶と情報を総動員させるサ。
分かり次第連絡する」

(´・ω・`)「ありがとうございます。追加情報があったら送ります。…よろしくお願いします」

踵を返して路地を出るアルゴ。

その姿はそれと同時に夜の闇に溶け込んだ。



.

595 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:11:28 ID:8BYwryE20

2.風紋



次の日。
まだ空は暗く、日の光が町を包むまでには一時間以上あるだろう。

宿屋の階段を下りる人影。

(´<_` )

階段を折り切ると、一度だけ振り返った。

そして数秒そうした後、再び出口に向かって歩き始める。

だが、その前に一人の男が立ち塞がった。

(´<_` )!

ロビーのソファーに座っていたショボンが、悲しそうに目の前に立っていた。

(´<_` )「……ショボン…」

(´・ω・`)「こんな時間に、どちらへ?」

(´<_` )「いや、…眠れないからちょっと外の風に…」

(´・ω・`)「フル装備で?」

(´<_` )「何があるかわからんからな」

(´・ω・`)「町の外に出るつもりなんですか?」

(´<_` )「…ああ」

下がっている眉を更に下げて自分を見るショボン。
それは強くは無いが自分を見透かすような冷静さを持ち、十秒ほどで心が折れる。

(´<_` )「どこまで、分かっている?」

(´・ω・`)「おそらくは、すべて」

(´<_` )「白日の下に晒す気か?」

(´・ω・`)「……はい」

.

596名も無きAAのようです:2014/08/30(土) 00:12:10 ID:PtT4HXyU0
支援

597 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:12:34 ID:8BYwryE20

(´<_` )「そう……か」

無言でお互いを見る二人。

(´<_` )「わかった。お前の指示に従おう」

(´・ω・`)「ありがとうございます」

(´<_` )「どうすればいい?」

(´・ω・`)「とりあえず、このまま。パーティーとして行動してください」

(´<_` )「良いのか?」

(´・ω・`)「はい」

(´<_` )「そうか…わかった」

踵を返し、階段に向かう。

(´<_` )「ショボン、お前も早く寝ろよ。
いつも誰よりも早く起きてるようだけど、ちゃんと眠ってるのか?」

(´・ω・`)「はい。ありがとうございます」

階段の手前。
先程と同じ場所で立ち止まり、少しだけ振り返ってショボンを見た。

(´<_` )「こちらこそ…。ありがとう」

そうつぶやいた後、階段を上り始めるテイ。

窓の外から、ほんの少し朝の光が差し込んだ。



.

598 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:13:54 ID:8BYwryE20

八日後


('A`)「今日の狩り終了!」

(´<_`;)「ふぅ…」

最前線の層でフィールドダンジョンの狩りを終わらせた六人は、
疲れた体を癒すために街に帰ってきた。

( ^ω^)「先輩もコンビネーションに慣れてきたおね」

(´<_`;)「まだ付いていくのに精いっぱいだがな」

ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり攻撃力が高い人が一人いると違うわね」

川 ゚ -゚)「ああ。狩りがはかどるな」

('A`)「おれ達は基本全員バランスかスピードの軽量系だからな」

【体術】スキルを獲得後低層階で一日狩りをした後、少しずつ狩場を上層階に移していた。
もともと五人はスキル獲得前から最前線の層で狩りをしていたため問題なかったが、
テイは下の層を中心にしていたこととメンバーとのスイッチ等、
コンビネーションを鍛えるために徐々に上げてきていた。

(´<_` )「しかし、前から思っていたんだが、
何故ショボンはあんなに早くモンスターの出現が分かるんだ?
ポップする位置を判別しているようだが」

('A`)「ああ、ショボンは」

(´・ω・`)「ごめんみんな。ちょっと良いかな」

五人の後ろを歩いていたショボンが声をかける。
何事かと振り返る五人。

川 ゚ -゚)「どうした?」

(´・ω・`)「ちょっと行きたいお店があるんだけど、みんなで行かない?」

ウインドウが出したままなところを見ると、今情報が来たのであろうことが伺えた。

.

599 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:15:26 ID:8BYwryE20

( ^ω^)「夕飯かお?」

(´・ω・`)「そうだね。結構おいしいらしいんだ。転移門で飛べるから、外には出なくていいし」

ξ゚⊿゚)ξ「別に良いんじゃない。美味しかったら後でショボンが再現するでしょ?」

川 ゚ -゚)「私も良いぞ。新しいお茶も欲しい」

(;´・ω・`)「新作のお茶はあるか分からないけど」

('A`)「いいんじゃないか?」

(´<_` )「ああ。おれも問題ない」

( ^ω^)「おいしいのなら問題ないお」

(´・ω・`)「じゃあ行こうか。宿屋も継続じゃないからそっちで探しても良いし」

その言葉に全員が頷き、今度はショボンが先頭で転移門広場に向かった。



.

600 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:16:53 ID:8BYwryE20

3層西の街。
街外れのカフェレストラン。

ξ゚⊿゚)ξ「ここって前にも来たことなかった?」

川 ゚ -゚)「確か、あった気がするが…」

('A`)「新しいメニューでも出たのか?」

( ^ω^)「味は良かったけど、お肉が硬かった覚えがあるお」

(´<_` )「おれは初めてだ。みんな色々行っているんだな」

周囲にはプレイヤーもほとんどおらず、中にも一組いるだけのようだ。

(´・ω・`)「とりあえず中に入ろう。ダメそうだったら他の店に行っても良いし」

ショボンに促され、中に入る五人。

すると中にいた一組のうち、奥に座った女が軽く手を上げた。

(アルゴ)「遅かったナ。ショボン」

ξ゚⊿゚)ξ「鼠!」

('A`)「…アルゴ?」

(アルゴ)「鼠って呼ぶのはいない時だけにしてほしいネ。ツンちゃん」

楽しそうに語尾を上げてツンの名を呼んだアルゴに、ツンの目尻が吊り上った。

ξ#゚⊿゚)ξ「あんたのおかげであたしはね!」

(アルゴ)「おや、直接取引をしたことは無いはずだけど、何かあったのかイ?
……ひげ……かナ?もしかして」

ξ゚⊿゚)ξ「!……な、何でもないわよ」

(アルゴ)「残念。面白い情報が手に入ると思ったのに」

('A`)「なんでお前がここに?」

(アルゴ)「アフターサービスだヨ」

笑いながら立ち上がり、軽い足取りですり抜けながら出口に向かう。

.

601 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:18:09 ID:8BYwryE20

(アルゴ)「じゃ、ショボン。依頼はここまでダ。後はヨロシク」

(´・ω・`)「あれ、結果は気にならないの?」

(アルゴ)「…人情話は嫌いなんでネ。また今度聞かせてくれればいいサ」

(´・ω・`)「ありがとう」

(アルゴ)「じゃあナ」

ドアを開け、外に出るアルゴ。
一連の流れを、ショボン以外は不思議そうに見守り、出ていく背中を見送った。

('A`)「おい、ショボン。いったいこれは」

自分に問いかけるドクオを視線で制し、残った一人の座るテーブルに近寄るショボン。

そしてテーブルの横に立ち、会釈をした。

(´・ω・`)「お久しぶりです。先輩」

(    )「…生徒…会長?」

(´・ω・`)「良かった。覚えていていただいて」

('A`)?

( ^ω^)?

ξ゚⊿゚)ξ?

川 ゚ -゚)?

(´<_` )

(    )「こんなゲームをやるようには見えなかったけど、きていたんだな。
眼鏡じゃないし、ちょっと混乱したが」

(´・ω・`)「先輩もよく知っている友人がやっていたので」

(    )「友達?…!あいつか!?いるのか!?」

.

602 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:19:12 ID:8BYwryE20

(´・ω・`)「ドクオ!こっちに!」

ショボンに呼ばれ、ぎこちなくテーブルに近付くドクオ。
そしてショボンの隣に立ち座っている男の顔を見る。

('A`)「え?」

(    )「良かった!生きてたんだな!
気にはなっていたけど、こっちで付ける名前を聞いてなかったから!」

('A`)「どういうこと…」

(´・ω・`)「アルゴさんとの約束だと思いますが、もう立って下さって大丈夫です」

(    )「そうか!」

男が立ち上がり、ドクオの正面に立った。

( ´_ゝ`)

(;^ω^)「お?」

ξ;゚⊿゚)ξ「え?」

川;゚ -゚)「なん…だと…」

(´<_` )「……」

その男の顔は、テイと同じだった。

('A`)「せん…ぱい?」

( ´_ゝ`)「生きてたんだな!
なんか、ほら、一層の攻略依頼、色々一部で酷い言われ様になっていたから気になっていたんだ」

ハイタッチをしようと手を振り被るが、ドクオは呆然と自分より高い位置にある顔を見つめている。

( ´_ゝ`)「なんだ、どうした?
久し振りにこの美貌を見て感動してるのか?」

.

603 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:20:43 ID:8BYwryE20

('A`)「ああ……先輩だ」

( ´_ゝ`)「何言ってんだお前」

(´・ω・`)「先輩、あっちの顔も懐かしくはなですか?」

( ´_ゝ`)「ん?」

目の前のドクオに会えたのが本当に嬉しかったのか、
全く周囲に気を配らずにしゃべり続けていた男だったが、
ショボンに促されてブーン達を見た。

( ´_ゝ`)「おお!お前も来てたのか!こいつの友達の、だよな」

( ^ω^)「は、はい…。おー。懐かしノリだお」

( ´_ゝ`)「可愛い子二人もつれてまったく。
ま、おれの嫁にはかなわないけどな。
みんなおれ達と同じ学校の友…達…………え?」

ブーンの後にツンとクーの顔を見て軽口を叩いた後、
その後ろで自分を見ない男の顔を見て表情が輝いた。

( ´_ゝ`)「弟者!」

駆け寄ろうと踏み出した一歩。
しかし二歩目は出ず、喜びに満ちた表情が戸惑いに変わった。

( ´_ゝ`)「……生きていてくれて、ありがとう……。
いや、生きているのは黒鉄宮の碑の名前を毎日見に行っていたから知っていたが…」

そしてテイと同じように少しだけ顔を伏せ、唇をかんだ。

( ´_ゝ`)「会えて…嬉しい」

最後の呟きは、そばにいたドクオにしか聞こえなかった。

それに対して、全く喋らないテイ。
ただ少しだけ悲しそうに、横を向いている。

.

604 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:23:08 ID:8BYwryE20

ξ゚⊿゚)ξ「…ちょっと、どういうこと?
ショボン、説明してくれるんでしょ」

川 ゚ -゚)「ああ、そうだな。ショボン。説明を」

(´・ω・`)「もちろん。僕も聞きたいことがあるしね。
ただ、このままここで話すのは不用心だから。
先輩、ここに来る前にアルゴさんと部屋を借りたかと思うんですが」

( ´_ゝ`)「ああ。借りてきた。ちょっと広いリビングのある」

(´・ω・`)「そこで話しましょう。連れて行ってもらえますか」

( ´_ゝ`)「……分かった。でもその前に一つ、聞いていいか?」

(´・ω・`)「なんでしょう?」

( ´_ゝ`)「この状況は、全部お前が作り上げたってことで良いのか?」

(´・ω・`)「はい。そう思っていただいて問題ありません」

( ´_ゝ`)「……わかった」

状況が分からず唖然としているドクオの頭を軽く叩き、
通路にいるブーン達に向かって歩き始める男。

その後ろをドクオを連れたショボンが続いた。

その動きにつられてブーン達が先にドアに向かい、表に出る。

( ´_ゝ`)「こっちだ」

最後に店を出たショボンを確認し、彼は先頭を切って歩き始めた。



.

605 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:24:23 ID:8BYwryE20

3.追想〜ある遠い日の〜



連れて行かれたのは、高級に分類される宿屋だった。

最上階、といっても四階建てだがその一番奥にあるこの部屋は、
大きなリビングと、ベッドが二つある寝室。
そしてゆったりとした洗面所とバスルームが備え付けてある。

( ^ω^)「すごいおね」

なんとなく、状況は全く分かっていないが状況に順応したブーンが呑気な声を出し、
ツンとクーに睨まれる。

部屋の中央には二人掛けのソファーが二つ。
ローテーブルを挟んで向かい合わせに置かれており、
今は片方にテイが座り、正面に同じ顔の男が座っている。

(´・ω・`)「アルゴさんお勧めの場所なので、外に漏れることも無いと思います。
もちろん聞き耳スキルを鍛えたプレイヤーがドアの外に居たら問題ですが、
場所が奥まっているので、注意していれば分かるでしょう」

二人以外は壁に沿って立っており、
特にドクオは扉のすぐそばに立って、気持ちを半分外に向けていた。

誰も何もしゃべらず、静寂が部屋を支配していた。

(´・ω・`)「……何から説明すればいいか考えましたが、まずは、状況を説明します。
それで良いですか?先輩、テイさん」

( ´_ゝ`)「ああ、頼む」

(´<_` )

テイは喋ろうとせず、ただ頷いた。

.

606 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:25:26 ID:8BYwryE20

( ^ω^)

ξ゚⊿゚)ξ

川 ゚ -゚)

('A`)

残りの四人も黙ってショボンを見ている。

(´・ω・`)「本来ならばマナー違反ですが、あえて紹介させていただきます。
みんな、こちらがぼく達と同じ学校の先輩。『流石 克睦』先輩だよ」

('A`)!

( ^ω^)!

ξ゚⊿゚)ξ!

川 ゚ -゚)!

( ´_ゝ`)「…徳永、内藤、久しぶりだな。こんな場所だが、会えて嬉しいよ。
そっちの美人二人もうちの学校だよな?
なんとなく見覚えがあった」

('A`)「あ、はい。お久しぶりです。おれも、会えて嬉しいです」

(;^ω^)「ぼ、ぼくもですお!で、でも…」

(´<_` )

自分達に久しぶりと声をかけた『先輩』に挨拶をしつつも、
今まで『先輩』と呼んでいたいテイを見てしまう。

(´・ω・`)「そして、テイさんは、先輩の弟さん…でよろしいですか?」

(´<_` )「ああ。双子の弟だ」

四人が息をのむのが分かる。

.

607 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:26:35 ID:8BYwryE20

(´・ω・`)「よろしければ、リアルの名前を、出来れば漢字も教えていただいてもよろしいですか?」

(´<_` )「ん?ああ、いいぞ」

ウインドウを開き、ショボンにメッセージを送るテイ。

(´・ω・`)「…なるほど。これはみんなにも送ってよろしいですか?」

(´<_` )「好きにしてくれ」

ショボンがメッセージを送ると、四人の視界の隅にメッセージ到着ランプが光った。

そして四人がウインドウ操作を始める前に、ショボンは話を進めようとした。

(´・ω・`)「お二人は…」

(´<_` )「先に聞いていいか?」

(´・ω・`)「はい」

(´<_` )「何故俺が『弟』だと分かった?兄者に…そいつに兄弟構成でも聞いていたのか?」

(´・ω・`)「さっき、先輩が『弟者』と呼んでいらっしゃったので」

(´<_`;)「あ…」

(´・ω・`)「ただ、その前から…。
今回の状況に対して仮説を立てた時点で、おそらく弟さんだと思ってはいました」

(´<_` )「?何故?」

(´・ω・`)「先輩の名前は知っていましたから、もしかしたらと推測しました。
その後アルゴさんが先輩を発見してこちらでの名前を送ってもらった時に、
おそらく正しいだろうと思っていました」

(´<_`;)?

('A`)「どういうことだ?ショボン」

.

608 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:28:13 ID:8BYwryE20

(´・ω・`)「二人を兄弟と仮定した時に、
先輩の名前、『克睦』の『克』の字には『兄』という文字が入っていたのと、
テイさんの『テイ』が『弟』から来ているとすれば、答えはおのずと」

(;^ω^)「おっおっおっ。普通考え付かないお」

ξ;゚⊿゚)ξ「ほんとよ」

(´・ω・`)「そして先輩のこちらでの名前は『Kei』。読み方は『ケイ』。
『克睦(かつちか)』のどこにも『ケイ』は入ってないから、
先輩は『兄』を意味する『ケイ』なんだろうと。

川 ゚ -゚)「テイさんのリアルネームは『悌梧(だいご)』。
『悌』の字には『弟』が入っているというわけか」

(´・ω・`)「そう。だから今名前を教えてもらって、推測は正解だったと思ったよ」

ξ゚⊿゚)ξ「で、一番知りたいことが残ってる。
同じ顔をしている理由が双子の兄弟なのも、どちらが兄で弟なのも分かった。
で、なんでテイはドクオとブーンの事を知ってたのよ!」

('A`)「おれ、先輩に双子の弟がいるなんて知らなかった」

( ^ω^)「ブーンもあったことないお」

川 ゚ -゚)「というかショボン、おまえ、
いつからテイさんが私達と同じ学校の先輩じゃないと思っていたんだ?」

三人がクーの顔を見た。

ξ゚⊿゚)ξ「そうか…。そうよね。それでなきゃ、鼠に調査を依頼したりしない…」

('A`)「おい、ショボン」

(´・ω・`)「僕にしてみれば、ドクオが不思議に思ってなかったことの方が不思議だよ」

('A`)!

(´・ω・`)「でも、気持ちは分かる。
生きて会えたことが嬉しくて、多少の違和感には目をつぶってしまったんだろうね。
知らず知らずのうちに」

.

609 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 00:29:34 ID:8BYwryE20

('A`)「どういうことだ?」

(´・ω・`)「あの町で会った時に、ぼくは違和感を覚えた」

('A`)!

( ^ω^)「お!?どうしてだお!?」

(´・ω・`)「先輩、ドクオから聞いたんですが、
こういったMMORPGはよくやられていたんですよね?」

( ´_ゝ`)「ああ。もともとネットゲームはやってたし、
ナーヴギアで遊ぶ初期アクションなんかもやっていた」

(´・ω・`)「そして弟さんは、やったことは無かった」

(´<_` )「そうだな…。普通のRPGはやったことあるが、
ネットにつなげてリアルタイムで他のプレイヤーと話したりするようなのはやったことは無い。
兄者がやっていたのを横目でチラ見したことはあるが…」

(´・ω・`)「おそらく、そこからのずれ…というか、
初歩的マナーのずれで、ぼくは違和感を感じました」

(´<_` )「おれ、なんかしたか?」

(´・ω・`)「初めて会った時、弟さんはドクオに向かって『徳永』、
ブーンに向かって『内藤』と呼んだんです」

( ´_ゝ`)!

('A`)!

( ^ω^)!

ξ゚⊿゚)ξ?

川 ゚ -゚)?

(´<_` )?

六人のうち三人は気付き、三人は小首をかしげる。

川 ゚ -゚)「どういうことだ?ショボン」

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