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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。

1 ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 22:13:10 ID:6CCOWjXw0

どーも作者です。

新しく作らせてもらいました。
設定だけ作っておいて最初の二話で終わる予定だったこの話がこれだけ続くことになろうとは。

半分くらいは終わっている予定なので、もう少しお付き合いいただければ幸いです。


話の投下の前に、各人の見た目データと大まかな設定を載せておきます。


この話は
川原礫著
『ソードアート・オンライン』シリーズのアインクラッド編を基に書かせていただいています。
基本的に設定を順守しているつもりですが、拡大解釈とまだ書かれていない設定に関しては想像で書いているので、その旨ご容赦の上、お楽しみいただけますようお願い申し上げます。


まとめ

ブーン芸VIP様
http://boonsoldier.web.fc2.com/

大変お世話になっております。

.

148 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:09:35 ID:VSwEoiVw0

('A`)「面白がっているだけだろ」

ξ゚⊿゚)ξ「否定はしない」

川 ゚ -゚)「同じく」

('A`)「……やだもうこいつら」
 _
( ゚∀゚)「…………」

ξ゚⊿゚)ξ!

川 ゚ –゚)!

('A`)!

三人で盛り上がっているのをじっと見ていたジョルジュに気付き、各自座りなおす。

('A`)「……まあとりあえず、謝るしかないんだし」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね。それしかないわね」

川 ゚ -゚)「そうだな」
 _
( ゚∀゚)「許してくれるかな」

('A`)シラネ

ξ゚⊿゚)ξ「さあ」

川 ゚ -゚)「どうだろうな」
 _
(;゚∀゚)「え?」

すがるように三人を見たジョルジュに対し、三人は三様にさらっと返した。
 _
(;゚∀゚)「そ、そこはもっとこう」

('A`)「結局は、お前がどこまでちゃんと謝るかだろ」

ξ゚⊿゚)ξ「そうよねー。そしてそれをどこまでショボンが受け取ってくれるか」

('A`)「二回目っていうのが痛いよな」

,

149 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:10:16 ID:VSwEoiVw0

ξ゚⊿゚)ξ「死にそうにならなきゃ良いってわけでもないしね」

川 ゚ -゚)「もしその状態になってしまっていた時に、前回は駆けつけることが出来たが、
今回は駆けつけることが出来たかは分からないわけだし。
……ショボンはそれを考えてゾッとしただろうな」
 _
(;゚∀゚)「…………」

自分を励ましに来たのか落ち込ませに来たのか分からない仲間達の言葉に、
何も言えなくなってしまうジョルジュ。

すると、再び部屋がノックされた。

( ´∀`)「モナーもな」

川 ゚ -゚)「開いてるぞ」

( ´∀`)「おじゃまするもな」

▼・ェ・▼「キャン!」

ノックをしたモナーがドアを開けると、足元からビーグルが走って中に入り、
ジョルジュの膝に飛び乗った。
 _
( ゚∀゚)「ビーグル!」

勢いに負けてベッドに上半身を倒すジョルジュの腹の上にビーグルが乗る。
そしてジョルジュの顔をぺろぺろと舐めた
 _
( ゚∀゚)「ちょ!おまえ!」

( ´∀`)「ビーグル!それくらいにするもなよ」

( ・∀・)「ちぃっす」

( ´∀`)「入り口であったもな」

( ・∀・)「バカがまたバカやったんだって?」

ビーグルに続いて、しかしゆっくりと中に入ってくるモナー。
そしてその後ろからモララーが顔を出す。

.

150 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:11:07 ID:VSwEoiVw0

(;´∀`)「モララー、本当の事でももうちょっと言葉を濁すもなよ」

('A`)「……実はモナーも毒は吐くんだよな」

( ´∀`)「もな?」

ξ゚⊿゚)ξ「ま、座ったら」

ツンに促されてそれぞれにソファーに座る二人。

( ´∀`)「それにしても、ジョルジュも懲りないもなね」

( ・∀・)「ほんとだよ、一回死にかけてるのによくもまあ」
 _
(;゚∀゚)「もうなんとでも言ってくれ」

ビーグルを抱えて上半身を起こすジョルジュ。
胸の位置にあるビーグルの頭をぐりぐりと撫でると、一鳴きしてから膝から床に飛び降りた。

( ´∀`)「まあでも元気そうで安心したもな」

自分の足元にやってきたビーグルを抱き上げて膝の上に乗せるモナー。
ビーグルは安心したように身体を丸める。

川 ゚ -゚)「さっきまで酷かったがな」

( ・∀・)「本気で反省したことをショボンに分かってもらわないと、まずいんじゃないか?」
 _
(;゚∀゚)「うう……」

( ・∀・)「ギルマス権限で、いきなり除名とか出来るんだろ?ちょっと確認してみたらどうだ?」
 _
(;゚∀゚)「こ、怖いこと言うなよ」

( ´∀`)「そうもなよ。モララー。だいたいギルドのメンバーから外されたら、この部屋いられないはずもな」

('A`)「そうなのか?」

川 ゚ -゚)「どうだろうな。この建物は二階から上はショボンか私が許可した者以外は
ギルメン以外は入れないよう設定してあるが、現時点で入っている者を登録から外した場合、
どのようになるのか…」

.

151 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:11:53 ID:VSwEoiVw0

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと興味あるわよね」

('A`)「入らないよう設定って言っても、扉が開かないように設定してあるだけだからなぁ…。
あれってこのエリアにも入れないように設定してあるんだろうか」

全員がジョルジュを見る。
 _
( ゚∀゚)「え?」

( ・∀・)「ショボンに言って、ためしにジョルジュを」
 _
(;゚∀゚)「てめえモララーこのやろう!」

( ・∀・)「冗談だ冗談」

笑うモララーを恨めしげに見ながら「冗談にならねぇって」と呟くジョルジュ。

川 ゚ -゚)「兎にも角にも、誠心誠意謝るんだな」
 _
( ゚∀゚)「……許してくれるかな」

( ´∀`)「大丈夫もなよ。
ジョルジュが自分から抜けたいって言わない限り、ショボンはジョルジュを除名したりしないもな。
だから、ちゃんと謝れば許してくれるもな」

( ・∀・)「これに懲りて、二度とやらない様にするんだな」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんとよ。あんたが落ち込んでるのは自業自得として、
ショボンが落ち込むと後に響くんだからちゃんとしてよね」
 _
( ゚∀゚)「え?」

( ・∀・)「……『え?』っておまえ、……え?分かってない?」

川 ゚ -゚)「分かってないようだな……」
 _
( ゚∀゚)「え?え?」

( ´∀`)「ブーンの姿が見えないってことは、ショボンの所に行ってるもな?」

.

152 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:12:38 ID:VSwEoiVw0

('A`)「ああ。とりあえずはあいつで落ち着かせてる。この後でモナー、行ってくれるか?」

( ´∀`)「わかったもな。ビーグルもいるから大丈夫もなよ。他の皆にも連絡はしてあるもな?」

川 ゚ -゚)「ああ。しぃとふさと兄弟は店が終わり次第来ると言っていた」

( ´∀`)「クックルとギコは農場にいたもな。心配してたから、後で追加連絡をしてあげてほしいもな」

川 ゚ -゚)「分かった」
 _
(;゚∀゚)「え?」

ξ゚⊿゚)ξ「このバカはほんとに……」

川 ゚ -゚)「はぁ…。いいかジョルジュ、ショボンはな……」

ひとり焦ったようにきょろきょろと周囲を伺うジョルジュ。
呆れたようにそれを見る5人だったが、説明するためにクーが口を開いた。





.

153 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:13:25 ID:VSwEoiVw0

執務室のソファーで、一人肩を落とし項垂れているショボン。

テーブルの上のカップには琥珀色のお茶が注がれているが、既に冷めている。

(´-ω-`)「はあ…」

大きくため息をついたときに、それを待っていたかのように目の前の扉がノックされた。

(´・ω・`)「はい」

( ^ω^)「ぼくだお」

(´・ω・`)「開いてるよ」

( ^ω^)「おつおつ」

にこやかに中に入ってくるブーン。
そして目の前のソファーに座る。

( ^ω^)「予想通り落ち込んでるみたいだおね」

(´・ω・`)「クー?」

( ^ω^)「クー」

(´-ω-`)「はあ…」

.

154 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:14:22 ID:VSwEoiVw0

( ^ω^)「おっおっお」

ため息をつきながら項垂れるショボンを見て、少しだけ楽しげに笑うブーン。

(´・ω・`)「笑い事じゃないよ、ほんとに」

( ^ω^)「ごめんだお。でもこういうショボンを見るのも久しぶりだなと思ったら、なんか嬉しくなったお」

(´・ω・`)「なにそれ」

( ^ω^)「よく気の付くギルマスさんだと有名なショボンにしては、僕が座ったのに飲み物出してこないし」

(´・ω・`)「まったく」

呆れたようにストレージを開くショボン。
そしてブーンの前に一つのカップを置く。

(´・ω・`)「はい」

( ^ω^)「ありがとうだお」

ブーンはそれを取り、口をつける。
ちょうど良い暖かさのそれは口の中に淡く広がり、柔らかい果実のような甘さと紅茶のような渋みを残す。

(´・ω・`)「で?何が嬉しいのさ」

( ^ω^)「ギルマスじゃないショボンを見られて、嬉しいんだお」

(´・ω・`)「ブーン」

( ^ω^)「ショボンは頑張りすぎだお。気持ちは分かるけど、もうちょっと肩の力を抜く時間を作らなきゃだめだお」

(´・ω・`)「……抜いてるよ」

( ^ω^)「ビーグルの事かお?」

驚いたように目を見開き、ほんの少しだけ険しい瞳でブーンを見る。

( ^ω^)「気付かれてないと思ったら大間違いだお。まあ最初に気付いたのはドクオだけど」

(´・ω・`)「そっか…」

.

155 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:15:20 ID:VSwEoiVw0

( ^ω^)「安心していいお。多分気付いているのは僕ら四人だけだから。
他の皆はただ純粋にビーグルとじゃれているとしか思ってないお」

(´・ω・`)「言っておくけど」

( ^ω^)「ショボンがビーグルの事を大好きだってのはちゃんとわかってるお。
ただ、あそこまで、それこそアホみたいにビーグルとじゃれつくのは、
ギルマスとしての自分に疲れた時のリフレッシュと、そういう自分を周囲に見せるためだってことだおね」

(´・ω・`)「……全部お見通しか」

( ^ω^)「幼馴染をなめちゃだめだお」

(´・ω・`)ショボーン

( ^ω^)「そんな顔してもだめだお」

もともと垂れ気味の眉をさらに下げてブーンを見るショボン。

しばらく見つめあう二人だが、ブーンの言葉でショボンが噴き出し、それを見たブーンがまた嬉しそうに笑う。

( ^ω^)「ショボンは頑張りすぎだお。もっと頼ってくれればいいのに」

(´・ω・`)「これはぼくの性分だからね。なかなか」

( ^ω^)「昔からそうだからよく知ってるけど、それでも……だお」

(´・ω・`)「それに…」

( ^ω^)?

再び表情に影を落とすショボン。

(´・ω・`)「これは、……ぼくがやならきゃいけないことだから」

( ^ω^)「まったく……。肩の力を抜かないと、それもできなくなるかもだお」

(´・ω・`)「うう…」

( ^ω^)「まあこの話はまた今度ゆっくりするとして、今は違うことでうじうじしているんじゃないかお」

(´・ω・`)!

( ^ω^)「だおねーーー」

.

156 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:16:24 ID:VSwEoiVw0

(;´・ω・`)「な、なんのことかな」

( ^ω^)「ジョルジュはショボンのことを嫌いになったりしないから、大丈夫だお」

(´・ω・`)!

顔を強張らせて固まってしまうショボン。
それをみて、肩をすくめやれやれと呟きながらカップに口をつけるブーン。

数分固まっていただろうか、ブーンが思わず「あれ?システム的に固まってる?」などと
思ってしまった頃に、やっと動き始めるショボン。

(´・ω・`)「大丈夫……かなあ……」

( ^ω^)「ジョルジュはちゃんと理由があって怒られたのに逆切れするような奴じゃないから大丈夫だお」

(´・ω・`)「それはそうだけど…」

( ^ω^)「なにが気になるんだお?」

(´・ω・`)「ギルド辞める?とか言っちゃったし」

( ^ω^)「クーから途中で止めたって聞いたお」

(´-ω-`)「クーが止めてくれたんだよ。思わず言ってしまうところだった」

大きなため息。
眉間にしわを寄せるブーン。

( ^ω^)「でも、言ってないお。
それにたとえ言っていたとしても、言われるようなことをやってしまったのはジョルジュだお」

(´・ω・`)「でもさ…」

( ^ω^)「ジョルジュはそれくらいわかってるお。自分が愚かなことをしてしまったことくらい。
そして、ちょっと過保護ではあるけどショボンが自分を心配して、しすぎて怒っているってことくらい」

(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「だから、ジョルジュがショボンを嫌いになんてなってないお」

(´・ω・`)「そうか…なあ……」

( ^ω^)「……」

.

157 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:17:21 ID:VSwEoiVw0

じっとショボンの顔を見るブーン。
それを不思議そうに見るショボン。

(´・ω・`)「なにさ」

( ^ω^)「気になるのはそれだけじゃないみたいだおね」

(´・ω・`)「………」

( ^ω^)「………」

(´・ω・`)「そんなにぼくって分かりやすいかな。地味に落ち込むかも」

( ^ω^)「おっおっお。大丈夫だお。
種明かしすると、これも幼馴染マジックと三人からの入れ知恵だお。
多分気にしてるって言ってたんだお」

(´-ω-`)「マジか…」

( ^ω^)「ジョルジュがうちを辞めて、釣り好きギルドに行くとかありえないから大丈夫だお」

じろっとブーンを見るショボン。
その瞳を不思議そうに見つめ返すブーン。

(´・ω・`)「なんでそんなことがわかるのさ」

( ^ω^)「分かってないのはショボンくらいだお」

(´・ω・`)?

疑心に満ちたショボンの問いに笑顔で答えるブーン。

あまりに自信に満ちたその言葉に次の句を継げずにいるショボン。

( ^ω^)「だいたいショボンはジョルジュがなんで釣りをするか分かってるのかお?」

(´・ω・`)「釣りが好きだから」

( ^ω^)「おっおっお。やっぱり分かってないお」

(´・ω・`)???

面白そうに笑うブーンを問い詰めようと思った時に、扉がノックされた。

.

158 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:18:11 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「ぶ、は、はい!」

( ´∀`)「モナーもな」

( ^ω^)「開いてるお」

( ´∀`)「おじゃまするもなー」

扉を開けて中に入ってくるモナー。
その足元を駆け抜ける影。

(´・ω・`)!

▼・ェ・▼「きゃん!」

(*´・ω・`)「ビーグルちゃん!」

座っているショボンの膝に乗り、胸に手をかけて顔をぺろぺろと舐めるビーグル。

(*´・ω・`)「ちょっ!ビーグルちゃん!」

ビーグルの行動にさすがに戸惑いながらも、嬉しさも隠しきれていないショボン。

( ^ω^)「おつかれさまだお」

( ´∀`)「おつかれさまもな」

席を立って横に移動するブーン。
モナーは礼を言いながらショボンの前のソファーに座った。

( ´∀`)「元気そうもなね」

( ^ω^)「さっきまで酷い落ち込みようだったお」

( ´∀`)「そうもなか」

(*´・ω・`)「ちょっブーン!変なこと言わない…ビーグルちゃん!そこは!」

ショボンの相手はビーグルに任せて情報を交換する二人。

( ^ω^)「あっちはどうだったお?」

( ´∀`)「あっちも酷く落ち込んでたらしいもな。モナーが着いた時には大分回復してたけど。
でもそんなに落ち込むなら最初からやらなきゃいいのに、ジョルジュはほんとにおバカさんもなね」

( ^ω^)「ほんとだおね。しかも二回目。ばれたらショボンにどれほど叱られるか想像できたはずだお」

.

159 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:19:02 ID:VSwEoiVw0

( ´∀`)「もなもな。それを忘れるくらいその魚をみんなに食べさせたかったもな。
それは嬉しいもなけど、やっぱりおバカさんもな」

( ^ω^)「だおね」

談笑する二人を横目で見つつ、ビーグルが繰り出す攻撃を甘んじて受けて至福の時を過ごすショボン。

( ´∀`)「さて……。ビーグル、そろそろこっちにくるもな」

▼・ェ・▼「きゃん!」

その声でぴょんとショボンの膝から飛び降り、モナーに駆け寄るビーグル。
そして足元で丸くなった。

( ´∀`)「おりこうさんもなね」

ビーグルの頭を撫でてやってから、ショボンをまっすぐに見るモナー。

( ´∀`)「ショボンはどうするもな」

(´・ω・`)「え?」

( ´∀`)「ジョルジュは本当に反省していたもな。
もちろんルールを破ったことはいけないこともなけど、ショボンはどうするもな?」

(´・ω・`)「……ルールを破った罰則はつけないと。でも…それ以上は…」

( ´∀`)「そうもなね。もう一度ちゃんと謝ってくれたら、それで良いと思うもな。
でも、ショボンも謝らないとダメもな」

(´・ω・`)「!?」

( ´∀`)「クーに途中で止められたとはいえ、言っちゃいけないことを言おうとしたもな。
それに関しては、ちゃんと謝らないといけないとモナは思うもな」

優しく微笑みながらショボンをまっすぐに見るモナー。

その優しくも厳しい瞳を見て、ショボンが息をのんだ。

(´・ω・`)「うん。ちゃんと謝るよ…」

( ´∀`)「それが良いと思うもな」

更に笑顔になるモナーを見て、頼りなさげに微笑むショボン。

.

160 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:19:49 ID:VSwEoiVw0

( ^ω^)「?ショボン?」

(´・ω・`)「モナーには、助けられてるなと思って」

( ´∀`)「モナにもな?」

(´・ω・`)「出会った時からだよ。殺さなくてもいい命を、あの時のぼくは怒りに任せて狩ろうとしていた。
それを止めてくれたのはモナーだから」

( ^ω^)「ショボン…」

( ´∀`)「あの時助けられたのはモナーもな」

(((´-ω-`)))「ううん」

瞳を閉じて首を横に振るショボン。
モナーとの出会いを思い出しているのであろう。

(´・ω・`)「あの時、そして今、助けられているのは僕の方だよ。
もちろんモナーだけじゃなく、ギルドの皆に、僕は助けられている。
そう……。それを、忘れちゃいけない。みんなを、守らなきゃいけないのに」

( ^ω^)「おっおっお。頑張るのはいいことだけど、頑張りすぎちゃだめだお」

( ´∀`)「みんながみんなを助けあって、支えあって、VIPをつくってるもな。モナーは、誰が欠けてもイヤもな」

それぞれの顔をみて、笑顔になる三人。

モナーの足元で丸くなっていたビーグルが顔を上げ、嬉しそうに一鳴きした。



.

161 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:20:51 ID:VSwEoiVw0




3.会議(公)




.

162 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:21:52 ID:VSwEoiVw0

三日後
ギルドホームの食堂兼会議室に集まったVIPの面々。

既に食事も澄まし、各人の目の前にはカップが置かれている。
そして彼らにしては珍しく、ほんの少しではあるが緊張感が漂っている。

(,,゚Д゚)「なんか空気が重いぞゴルァ」

ξ゚⊿゚)ξ「ホントよね。どうしたのよ皆」

( ´_ゝ`)「安定の空気クラッシャーがいるぞおい」

(´<_` )「天然って怖い」

( ´∀`)「こういう時はこの二人がいるのがありがたいもなね」

( ・∀・)「実は二人とも計算じゃないのか」

川 ゚ -゚)「ツンが計算でこれが出来る奴ならどんなに良いか…」

(*゚ー゚)「ギコ君もですよ」

('A`)「っていうかお前らも相当だと思うぞ」

( ゚∋゚)「ま、それがこのギルドの良さではあるな」

( ^ω^)「そうだおね」

次々に言葉を繋げていく面々。
そして全員がある一人を見ている。
 _
( ゚∀゚)「……なんだよ」

(´<_` )「いや」

( ´_ゝ`)「べーつーにー」

少しだけ和らいだ空気の中。
張り詰めさせていた張本人はジョルジュなのだが、彼は自分の顔をにやにやとみるメンバーの視線を
感じて更に居心地の悪い気分を味わっていた。

もちろんメンバー達が自分をばかにしている分けではないことくらいは分かっているが。

いや、ある意味ではバカにしているのだが、そこには嘲笑の意味合いは全くなく、
馬鹿なことをした自分がどう決着をつけるのか、面白い物が見られるかもしれないという期待と、
ほんの少しの心配が含まれているんじゃないかと感じていた。

.

163 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:22:52 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「遅くなってごめんね」

ミ,,゚Д゚彡「ごめんなさいだから」

ドアが開き、ショボンとフサギコが入ってくる。
三日前に罰則を言い渡された時以来、メッセージで反省文を送ったりして事務的に会話はしていたが、
久しぶりに見たショボンの顔に、思わず緊張するジョルジュ。

( ´_ゝ`)「遅いぞーーー」

(´・ω・`)「ごめんごめん。

ミ,,゚Д゚彡「ごめんなさいだから」
 _
(;゚∀゚)

こちらを見てニッコリと微笑んだフサギコを見て、少しだけホッとするジョルジュ。
謹慎の三日間の間、食事を運んだり暇つぶしにショボン以外の全員は部屋に何度か来てくれたので
久し振り感は無いのだが、であってからは二日と空けずに会っていたショボンと三日も顔を
合せなかったのは、やはり違和感を残してしまっている。

ジョルジュがそんなことをぼんやりと考えているうちにショボンとフサギコも席に座っていた。

(´・ω・`)「さて、みんなもう食事も済んでるとおもうから、早速本題に入ろうかな」

ショボンの凛とした声が部屋の隅々まで響き、全員の顔が引き締まる。

(´・ω・`)「まずは一つ」

全員の顔を一回ゆっくりと見回した後、ジョルジュで視線を止めた。

(´・ω・`)「ジョルジュ。言うことあるよね」
 _
(;゚∀゚)「あ、ああ」

何かあるとは思っていたが、一番最初に呼ばれるとは思わず慌てるジョルジュ。
しかしすぐに持ち直し、けれど慌てて立ち上がった。

ブーンやモナー、そしてツンとフサギコが心配そうにこちらを見ているのが分かる。
この部屋にいるときはモナーの足元で丸くなることの多いビーグルも珍しくモナーの膝に乗っていて、
なんとなく心配そうに見ていた。

.

164 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:23:55 ID:VSwEoiVw0

それを感じ、心を落ち着かせるジョルジュ。
 _
( ゚∀゚)「みんなすまん!おれはギルドのルールを破って、一人で57層の湖まで行ってしまった。
ルール上はまだソロ行動をしたらいけない場所だ。無事に戻ってこれたが、ルールを破ったのは事実だ!
……。ごめんなさい!!」

最後に叫ぶように謝り、同時に腰を九十度に曲げて頭を下げる。

(´・ω・`)「ルールを破っていたことが判明した時点で三日間の謹慎、その間は外に出ないで部屋にいて
反省文を書いたりして反省していた。……はず。まあ、部屋の中で何をしていたのかはみんなの方が
よく知ってると思うけど」

今度は素早くメンバーの顔を見る。

ジョルジュは『謹慎』していたわけだが、今回の罰則としてはよほどの用事が無ければ会うことは許されていない。
もちろんそれが建前であることは罰を下したショボン自身がよく分かっているのだが、
それでもやはり謹慎とはそういう事なのだということにしてある。
つまり、会いに行った、遊びに部屋まで行ったメンバーは建前上とは言えルールを破っているわけだ。

それを自覚しているため三人ほどは目をそらし、一人はよく分かっていないため不思議そうな顔をし、
残りのメンバーは分かったうえで笑顔を返した。

(´・ω・`)「まったくもう」

その口調は呆れているが、表情は柔らかい笑顔だった。
ショボンにとってギルドのメンバーのつながりが強いのは望むべきことなのだったから、当然と言えば当然だろう。

そう、その繋がりによって命がつながることがあることを、よく知っているから。

(´・ω・`)「それじゃあ今回のルール破りはこれで終了だね」

微笑みながらジョルジュを見るショボン。
そこにはあからさまにホッとした顔をしている仲間がいた。

(´・ω・`)「……ジョルジュ」
 _
(;゚∀゚)「お、おう」

.

165 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:25:04 ID:VSwEoiVw0

立ち上がるショボン。
そしてジョルジュに向かって、彼と同じように腰から九十度に曲げて頭を下げた。
モナーとクーとブーン以外が驚く。
 _
(;゚∀゚)「しょ、ショボン?」

(´・ω・`)「僕も怒りに任せて最低なことを言ってしまうところだった。ごめんなさい」
 _
(;゚∀゚)!

(´・ω・`)「クーが止めてくれたから最後までは言わないですんだけど、
それでもあれは許されることではない。だから、謝って済むことではないけれど」
 _
(;゚∀゚)「おれは言われて当然のことをしたんだ!だから謝ったりしないでくれ!頭を上げてくれ!」

(´・ω・`)「いや、それでもやはり」
 _
(;゚∀゚)「だめだだめだだめだだめだ!このことでおれに謝ったりしたらいけない!」

(´・ω・`)「もう謝っちゃったんだけど」
 _
(;゚∀゚)「おれはきいてない!だからノーカウント!」

(´・ω・`)「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな……」
 _
(;゚∀゚)「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー聞こえなーい」

(´・ω・`)「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな……」
 _
(;゚∀゚)「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー」

(´・ω・`)「……じゅげむじゅげむごこうのすりきれかいじゃりすぎょの…」
 _
(;゚∀゚)「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー聞こえなーい」

('A`)「二人とも…」

最初は神妙だったのだが徐々に変化していき、ショボンがふざけはじめたところで全員が疲れた顔をした。

(;´∀`)「ふたりとも、というかショボン、そろそろ終わるもな」

.

166 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:26:19 ID:VSwEoiVw0

川 ゚ -゚)b「さすがモナー。もうじき二人目のサブマスになるだけのことはある」

▼*・ェ・▼「きゃん!」

(;´∀`)「モナは引き受けてないもな!ビーグルも喜んじゃダメもな!」

▼・ェ・▼「くぅーん」

(´<_` )「なんだこのカオスな状態は」

( ゚∋゚)「平常運転だな」

( ・∀・)「否定する気もないが否定できないのは良いことなのか?」

( ´_ゝ`)「いいんじゃね」

('A`)「おわらね…」

( ^ω^)「どくおが仕切れば」

('A`)「無理」

( ^ω^)「だおね」

(,,゚Д゚)「うわぁ」

(*゚ー゚)「ここ三日くらいは皆テンション低かったから、こういうのも楽しいね。ギコ君」

(,,゚Д゚)「お、オウだゴルァ」

ミ,,゚Д゚彡「ポジティブなのはいいことだから」

(´・ω・`)「あかまきがみあおまきがみきまきがみ、しんしんしゃんそんかしゅしんしゅんしゃんそんしょー」
 _
(;゚∀゚)「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー聞こえなーい」

ξ゚⊿゚)ξ「はい!そこまで!」

がやがやと騒ぎ始めたメンバーを諌める鶴の一声。

ツンである。

.

167 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:27:15 ID:VSwEoiVw0

ξ゚⊿゚)ξ「ショボンもジョルジュもバカなことやってないの!」
 _
(;゚∀゚)「お、おう」

(´・ω・`)ショボーン

ξ゚⊿゚)ξ「まったく。…ショボンは依頼の話もあるんでしょ。さっさと始める!」

(´・ω・`)「はーい」

ツンに叱られ、改めて椅子に腰かけるジョルジュとショボン。
それをにやにやとみていたメンバー達だったが、ショボンが全員の顔を見ながら表情を引き締めるのを見て、
それぞれに姿勢を正した。

(´・ω・`)「それでは、ギルドに来た依頼の話に入ります」

ウインドウを出すショボン。
するとメンバー達の視界にメッセージの着信を知らせるランプが点滅した。
それぞれに自分のウインドウを開く。

(´・ω・`)「概略は今送りましたが、説明します」


.

168 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:28:40 ID:VSwEoiVw0

まず一つ目の依頼。護衛です。
依頼主は釣りギルド「ANGLER」のギルマス『ロマネスク』さん。
依頼内容は、57層主街区より3エリア先にある湖までの護衛と、釣りをしている最中の周囲の哨戒。
お連れするのはロマネスクさんと同じギルドのヒッキーさん。
あともしかすると増えるかもしれないようですが、最大で4人までとしてあります。

依頼そのものは難しい物ではないですが、57層という高層階のため、護衛班と哨戒班に分かれて湖まで移動します。
護衛班はそのもの護衛を。
哨戒班は先行してルートの確認とモンスターの殲滅を行います。
到着後は合流して湖で昼食及び周辺の探索。
今回はギルドとしては未踏破エリアですので、周辺の鉱物・植物の採取も積極的に行う予定です。

二つ目の依頼は戦闘訓練とパーティー戦の練習。
中層プレイヤーのレベル底上げ依頼です。
依頼主はエギル氏。
指導パーティーは『びろわかっぽ』。
盾持ち片手剣、両手槍、斧の三人組の戦闘指導とパーティー戦の練習、レベル上げを手伝います。
斧持ちは三人の中では多少レベルが高いようなので、盾持ち片手剣と両手槍の二人をメインに指導してほしいとのことです。
理想は斧使いのレベルにまで二人を引き上げることですが、そこら辺は出来る限りで。
レベル上げを兼ねた最終探索フィールドは40層を予定しています。

三つ目は調査業務。
これは情報屋アルゴさん、追加で僕からのオーダーです。
ちょっと気になるクエストがあるので、クエスト攻略と周辺の調査をお願いします。
クエストは23層ですが、時間があれば少し高層の迷宮区の調査もお願いする予定です。


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169 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:29:31 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「以上、班分けはこれから発表しますが、それ以外で何か質問ありますか?」

('A`)「これは全部同じ日なのか?」

(´・ω・`)「うん。本当は護衛と調査は明日を指定されていたんだけど、今日明日明後日は、
うちのギルドは探索禁止日程だから。どうみても緊急ではないからずらしてもらった。
訓練はもともと明々後日を指定で依頼がきてたから、OKしちゃってて」

('A`)「了解」

(´・ω・`)「他はある?」

全員の顔を見るショボン。
何人かは難しい顔をしているが、特に質問は無いようなので素通りした。

(´・ω・`)「大丈夫かな。まあ自分の担当依頼が決まったところでまたあったら言ってね」

更にウインドウを操作するショボン。
新たなメッセージが全員に届く。

(´・ω・`)「じゃあ班を発表します」

.

170 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:30:35 ID:VSwEoiVw0


護衛班
ショボン(リーダー)、兄者、弟者、ブーン、ツン、モララー

哨戒班
ドクオ(リーダー)、フサギコ、ハイン、デミタス、トソン

教育班
クー(リーダー)、ジョルジュ

調査班
クックル(リーダー)、モナー、ギコ、しぃ、ビーグル



(´・ω・`)「人数が足りなかったので、ハイン、デミタス、トソンに応援を頼みました。
  _
( ゚∀゚)「お、おい、ショボン!」

(´・ω・`)「班分けの意味と各人の役割を説明します」

川 ゚ -゚)「おちつけ、ジョルジュ」



.

171 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:31:28 ID:VSwEoiVw0

まずは護衛班。
今回はモンスターが現れた際に守りが出来る面子が必須なので、
兄者と弟者に普段よりも重装備でよろしく。
状況によっては撤退も考慮しないといけないので、その際に活路を見出すための
速攻とコンビネーションが出来るブーンとツン。
進行・撤退等の判断はぼくがします。
モララーは全員の補佐が万遍なくできるのと、あともう一つの任務である湖についてからの
周囲のアイテム狩りでスキルを活用してもらうからよろしく。
ブーン、兄者、弟者、それにツンもそれぞれの職業に特化した鑑定スキルを持っているから、
ここらへんも期待してるよ。

哨戒班は戦闘力と隠蔽スキルをメインで構成。
今回探索する57層のエリアは二足歩行の人型獣と目で周囲を確認する虫型がほとんどだから、
隠蔽スキルが効きやすいはずだけど、気を付けて。
あとドクオにはトラップの解除関係にもそのスキルをいかんなく発揮してもらうつもりです。
デミタスとハインも同じ理由。トソンは戦闘は四人に比べて少し劣るけど、最近は状況判断が
出来るようになってきているみたいなのでそれに期待しておねがしました。
あと彼女も鑑定スキルをそれなりに鍛えているそうなので、哨戒班が採取・採掘をした時の鑑定を
やってもらうつもりです。

教育班は教える武器の種類から。
うちのギルドで盾持ち片手剣を一番使え、かつ斧の使用にも出来るのがジョルジュだから、
まずジョルジュが決定。
あとは両手槍を使えて、ジョルジュの暴走をセーブしつつ冷静に分析・指導が出来るのは
クー以外適任が見当たらなかったのでこの二人で決定。。
他の依頼のバランスから人数は二人だけど、もし教える時に周囲の警戒をするメンバーが必要なら、
NSかフリーのプレイヤーに連絡してみるので言って。

最後に調査班。
今回の調査はクックルが一人でリーダーをやってもらいます。
今までのように僕やクーの交代がない状態で、最初から最後まで指揮を執ってもらうのでがんばって。
ギコは最近練習してるスタイルを出来るだけ早くものにできるよう今回は積極的に使ってみるように。
しぃはそのギコをフォローしつつ、意識してレベル上げを。
モナーはビーグルと共に三人のフォローを。
低層階に近いしクエスト自体もそれほど難しくないようだけど、HPの残りには十分注意すること。
クエストの攻略やフラグ立て等はモナーと協力していいけど、フォーメーションの選定や戦闘時の指示、
POT強化など戦闘に関しては出来るだけクックルが一人で決めるように。

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172 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:32:35 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「以上です。だれか異議がありますか?」

全員の視線がジョルジュに集中するが、彼は一回大きく肩をすくませてから、首を振った。
 _
( ゚∀゚)「正直に言えば護衛か哨戒班になりたいところだが、今の理由を聞いても駄々をこねるほどじゃない」

(´・ω・`)「分かってもらえて嬉しいよ」

ジョルジュの言葉に笑顔で答えてから、ゆっくりとみんなの顔を見直すショボン。

(´・ω・`)「さて、他の皆も大丈夫そうだね」

('A`)「ハインよりシャキンかミルナがいい」

(´・ω・`)「隠蔽スキルの高いメンバーにしたって言ったよね」

('A`)……ハイ

うつむいたドクオを気にすることなく頷くメンバー達。

▼・ェ・▼「きゃん!」

(*´・ω・`)「ビーグルちゃんの一声も出たところで、今日のミーティングは終了としようか。
今日中に各班に細かい打ち合わせをするためのミーティング日程を送るので、班別で宜しく。
ではお疲れ様でした」

 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ川 ゚ –゚)
( ´_ゝ`)ミ,,゚Д゚彡( ´∀`)( ゚∋゚)
( ・∀・)(,,゚Д゚)(*゚―゚)
  「おつかれさまでした!」
      ('A`)(´<_` )

思い思いに席を立ち、隣の部屋に移動していく面々。
おそらくはソファーやクッションに座って、ショボンやクーの淹れたお茶を飲みつつ、フサギコの作った
お菓子を食べながら夜遅くまで喋るのであろう。

(´・ω・`)「……本番は明々後日……保険も、用意しておかないと」

部屋の照明を消しつつ呟いたショボンの言葉が、がらんとした白い部屋に消えた。


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173 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:33:20 ID:VSwEoiVw0



4.作戦(午前)




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174 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:35:12 ID:VSwEoiVw0

−教育班−


川 ゚ –゚)「失礼、パーティー『びろわかっぽ』の皆さんかな?」

30層主街区。時刻は朝の九時。
転移門前広場にいた三人組に、クーは声をかけた。

( ><)「は、はいなんです!」

クーが話しかける前からチラチラと見ていたビロードが、瞬間的に背筋を伸ばして直立不動の状態で返事をした。

(*‘ω‘ *)「落ち着くっぽ」

( <●><●>)「ビロードが緊張しているのは分かっています」

( ><)「き、緊張なんてしてないんです!す!」

(*‘ω‘ *)「ふう…」

( <●><●>)「やれやれです」

川 ゚ -゚)「久しぶりだな。三人とも。
パーティー名をつけていたから分からなかったが、なるほど。
三人の名前から『びろわかっぽ』なんだな」

仲良さそうに喋る三人を見て、同じく笑顔で語りかけるクー。

( ><)「!覚えていてくれたんですか!」

三人の顔が、花が咲いたように笑顔で輝く。

川 ゚ -゚)「何回か練習のお手伝いをさせてもらっているからな。
何度やっても盾で剣を受け流すのが下手なビロード君と」

(;><)「あ…」

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175 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:36:10 ID:VSwEoiVw0

川 ゚ -゚)「槍使いなのに何度言っても間合い以上に前に突っ込むぽっぽちゃん」

(*‘ω‘;*)「す、少しは改善したっぽ」

川 ゚ -゚)「最初は落ち着いているけど、終わりが見えた後に敵の数が増えると計算が狂って
テンパってしまうワカッテマス君」

(;<●><●>)「そ、そんなことは……あるのは…ワカッテマス…」

笑顔で自分の弱点を指摘するクーの言葉に、先ほどとは打って変わって表情を曇らせる三人。

川 ゚ -゚)「今日はレベル上げとパーティー戦の練習がメインと聞いているが、
この弱点が克服されていなければ、今回もここを重点的にやることになるな」

(;><)(;<●><●>)
「はーい」
       (*‘ω‘;*)

川 ゚ -゚)「おいジョルジュ!こっちだ!」

広場の入り口でキョロキョロと周りを見ているジョルジュに向かって手を上げるクー。
それに気付いたジョルジュが小走りにやってくる。

川 ゚ -゚)「買えたか?」
 _
( ゚∀゚)「ああ、売ってた売ってた。この周辺のダンジョンの地図は近くの街でしか売ってないからめんどくさいよな」

川 ゚ -゚)「ショボンなら一回通った道なら全部覚えているんだろうけどな」
 _
(;゚∀゚)「さすがにそれは……いや、ショボンならほんとに覚えてそうだな」

ウインドウを出し、クーに買ってきた地図を渡すジョルジュ。
それを確認してから、三人をジョルジュに紹介した。

川 ゚ -゚)「うん。大丈夫だ。さて、ここにいる彼らが今日探索を付き合うメンバーなのだが、
ジョルジュは三人に会うのは初めてか?」
 _
( ゚∀゚)「……。ああ、そうだな」

.

176 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:37:05 ID:VSwEoiVw0

(#><)「前に一回教わったんです!」

(*‘ω‘ #)「三人ともさんざん怒られたっぽ!」

(#<●><●>)「忘れられたのは分かってます」
 _
(;゚∀゚)「え?あれ?そうだっけ?」

川;゚ -゚)「はあ…」

三人の猛抗議に思わずたじろいでしまうジョルジュ。

それをみて深いため息を吐くクーだった。



.

177 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:38:31 ID:VSwEoiVw0

−調査班−


( ´∀`)「みんな揃ったみたいもなね」

23層。主街区転移門前広場。
朝早く人影もまばらな広場に、クックル、モナー、ビーグル、しぃ、ギコが円になって立っている。

(*゚ー゚)「朝早くからスタートできるクエストなんですね」

( ´∀`)「クエストのスタートは隣の村もな。今からのんびり行けば、ちょうど良いくらいもなよ」

(*゚ー゚)「そっか」

(,,゚Д゚)「のんびりでいいのかゴルァ」

( ´∀`)「今回は一つ一つの戦闘を着実にこなして、クエストのクリアと調査をするのが目的もな。
だから戦闘自体はゆっくりでいいもなよ。クエストもそれほど難しくないはずもなしね」

(,,゚Д゚)「分かったぞゴルァ」

(*゚ー゚)「はい」

にこやかに話すモナー達三人。

その三人を見ながら、クックルは静かにため息をついた。
モナーの足元にいるビーグルが、心配そうに見上げる。

(*゚ー゚)「クックルさん?」

( ゚∋゚)「ああ、今日は宜しく頼む」

(,,゚Д゚)「大丈夫かゴルァ。元気なさそうだぞ」

( ゚∋゚)「元気というか…気が重いというか」

( ´∀`)「この層なら今のモナ達なら問題ないもな。緊張しすぎる方がダメもなよ」

( ゚∋゚)「…分かってはいるつもりだが」

あからさまに肩を落とすクックル。

自分より大きな男が自分より小さく感じ、しぃが困ったようにモナーとギコの顔を見るが、
二人とも気の利いたことは言えないようだった。

(*゚ー゚)「……私は、クックルさんの指揮好きですよ」

.

178 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:39:28 ID:VSwEoiVw0

呟いたしぃの言葉で、驚いたようにその顔を見るクックル。
モナーとギコもしぃの顔を見るのでしぃも挙動不審になりつつ三人の顔を見る。

穏やかに自分に微笑むモナーを見て、次の言葉を紡いだ。

(*゚ー゚)「も、もちろんショボンさんやクーさんの指揮が嫌いだってわけじゃないですけど。
クックルさんの指揮も好きです」

( ゚∋゚)「おれの指揮がか?」

(*゚ー゚)「はい」

心底驚いたように聞き返すクックルに、こちらも驚いたように返事を返すしぃ。

( ´∀`)「どんな感じで好きもな?」

(*゚ー゚)「そうですね……」

小首をかしげるしぃをじっと見つめる三人。

(*゚ー゚)「ショボンさんは、上空から私たちと敵を見て、的確に指示を出す感じなんです。
そこには無駄なものが一切なくて、100ある一人一人の力を100完全に出し切れる戦闘。
そんな感じなんです。
ふつう、やっぱり自分の持つ力を100完全に使う事なんで不可能だけど、
ショボンさんはそれを出し切らせてくれる感じで、自分がこんなに戦えるなんてって、
驚いてしまいます」

( ゚∋゚)「あ、ああ。そうだな。あいつの指揮はすごい」

(*゚ー゚)「クーさんは、斜め上から私たちを見ていて、指示を出す感じです。
敵の武器や種族に対して最適な人を向かわせて、フォローできる人を一歩後ろに置いて。
ショボンさんのような細かい指示というよりは、戦いやすい場所を準備してくれる感じです」

( ´∀`)「そうもなそうもな。クーはそんな感じもな」

(*゚ー゚)「クックルさんは、私たちと同じ目線で私たちを見ていてくれる感じです。
目の前に現れた敵に対して、まず自分で考える。
そのあと、間違っていたりもっと正しいやり方があると指示を出してくれるんです。
だから自分の実力と得手不得手を感じつつ、自分で考えて成長できる感じなんです。
私たちのことをよく見ていてくれるって安心感があって。だから好きです。」

.

179 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:41:47 ID:VSwEoiVw0

(,,゚Д゚)「おお、おれもそう感じるぞゴルァ。
ショボンやクーとは違う形の安心感がある感じだ」

( ゚∋゚)「二人とも……」

( ´∀`)「クックルがみんなの事をよく見ていて考えていてくれるから、
そんなふうに感じるもなね」

( ゚∋゚)「おれが…」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

(*゚ー゚)「ビーグルちゃんもそうだって言ってますよ」

( ´∀`)「もなもな」

(,,゚Д゚)「考えてる時間より、動いたほうが良いぞゴルァ」

ギコが言うと、三人とも驚いたように彼を見た。

(,,゚Д゚)「?ど、どうしたゴルァ」

( ´∀`)「ギコの言う通りもなね」

(*゚ー゚)「はい」

( ゚∋゚)「……ああ、そうだな」

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180 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:42:38 ID:VSwEoiVw0

( ´∀`)「今日はゆっくりやるもな」

(,,゚Д゚)「がっつり戦うぞゴラァ」

(*゚ー゚)「もう、ギコ君たら」

( ゚∋゚)「………三人とも」

緊張したような。
けれど凛とした声で三人に呼びかけるクックル。

( ゚∋゚)「今日は宜しく頼む」

(*゚ー゚)「はい!こちらこそ宜しくお願いします!」

( ´∀`)「それはこっちのセリフもな。頼むもなよ」

(,,゚Д゚)「おぅだゴルァ!頼むぞゴルァ!」

クックルが突き出したこぶしに向かってそれぞれにこぶしを突き出す三人。

▼・ェ・▼「きゃん!!」

ぶつけられた四つのこぶしの上に飛び乗るビーグル。

( ゚∋゚)「ああすまん、ビーグルも宜しく頼むな」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

ビーグルの行動に笑いあう四人だった。


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181 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:43:53 ID:VSwEoiVw0

−護衛班−


57層主街区。転移門前。

ショボンを中心に、左からブーン、ツン、兄者、弟者、モララーと円になって打ち合わせをしていた。
前線に近く油断できない場所であるため装備は自分の持つ中で最高クラスの物を設定しているが、
さすがにツンとショボンは目立たないような抑えた見た目の装備にしていた。

(´・ω・`)「こんな感じかな」

出していたウインドウを閉じ、自分を見ていた五人の顔を見るショボン。

(´・ω・`)「気になるところはある?」

( ´_ゝ`)「二列編隊、先頭俺らでブーンとツン、その後ろに依頼人たち三人、その後ろにモララーとショボン…だよな」

(´・ω・`)「うん。何か問題あるかな?」

( ´_ゝ`)「モララー楽じゃね?」

( ・∀・)「はぁ?」

( ´_ゝ`)「結局俺ら四人で戦闘するようなもんだろ?」

( ・∀・)「兄者おまえ」

(´・ω・`)「今回僕は情報の統制に専念するために、
戦闘時以外それこそ戦闘開始の数瞬前までウインドウを開いているつもりなんだ。
それでモララーには、僕がウインドウを開いている状態での目になってもらう。
通常進行時の僕の目の代わりはもちろん、
僕が指示を出せない状況になった際のバックアップもお願いしてる。
代わりに兄者がやってくれるなら隊列を考え直すけど…」

( ´_ゝ`)「よーし、お兄ちゃん先頭の守り頑張っちゃうぞ!」

ξ゚⊿゚)ξ「アホね」

( ^ω^)「アホだお」

( ・∀・)「アホだな」

(´<_` )「アホな兄貴ですまん」

.

182 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:45:29 ID:VSwEoiVw0

( ´_ゝ`)「だって今日の役割パーティーの盾だしー。盾持ち戦闘きらいだしー。
弟者だってー、嫌いなはずだしー」

(´<_` )「でもおれ練習してるぞ。盾と片手剣での戦闘」

( ´_ゝ`)「……え?」

(´<_` )「うちのギルドは守備重視が少ないというかいないからな。
護衛の依頼の時とかはおれとかジョル、あと兄者がやらないとまずいだろ。
今日は先行で哨戒班がいるからいつもの両手斧で行くけど。
そういえば、最近はギコも練習してるっぽいぞ、盾持ち片手剣」

じっと兄者の顔を見る弟者。

( ´_ゝ`)「……だっておれそんなの聞いてないもん」

ξ゚⊿゚)ξ「自分の役割をちゃんと考えなさいって事よ」

呆れたように言い放ったツンの言葉に頷く兄者以外の四人。

( ^ω^)「兄者と弟者は割り振りや使用武器を含めて分かりやすいパワータイプだから、
初撃の削りと最後の一撃には頼もしいけど、途中の削りの時は守りに回ってもらえると、
僕やツンが思い切り動けて助かるお」

(´<_` )「だな」

( ´_ゝ`)「…弟者がやってるなら、お兄ちゃんも頑張る」

ξ゚⊿゚)ξ「きも」

( ・∀・)「きもいな」

( ^ω^)「きもいおね」

(´・ω・`)「きもいのはデフォルトか…」

( ´_ゝ`)「ひとの決意をお前ら」

あからさまにふてくされた兄者を見て笑みをこぼすメンバー。

.

183 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:46:50 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「けど無理にやることは無いよ。
兄者が兄者らしく、みんながみんなの持ち味を活かして戦えるようにするのが、
指揮担当の仕事だからね。兄者の両手鎚は充分強いし守りも出来るし」

(*´_ゝ`)「ショボン…」

(´<_` )「ショボン、甘やかさなくていい。そして兄者きもい」

ξ゚⊿゚)ξ「ま、少しは周りを見ないとね。やっぱりきもいし」

( ´_ゝ`)「     」

(´・ω・`)「まあまあ、じゃあフォーメーションはそんな感じで。
状況に応じて指示は出すけど、基本的には原型保持の臨機応変。
つまりいつもの感じで、前線に近いけど緊張せずにいこう」

( ФωФ)「遅くなって済まんのである」

(-_-)「おはようございます」

ショボンの言葉に全員が頷いたとき、背後から声をかけられた。
今日の護衛の依頼主、ロマネスクである。
その横にはヒッキーがおり、背後には背の高い男がいた。

(´・ω・`)「おはようございます。時間通りですよ」

( ФωФ)「いやいや、色々と無理をお願いしているのはこちらゆえ、
本当は先に来て待っていたかったのである」

(-_-)「なのに…」

頭を下げるロマネスクと、冷たい視線で後ろにいる背の高い男を見るヒッキー。

(・∀ ・)「しかたないだろ」

ヒッキーに冷たい視線を投げつけられ、居心地が悪そうに頭を掻く男。
背の高さはクックルやモナーと同じくらいであろうか。
長い両手剣を背中に担いでいる。

(´・ω・`)「そちらが」

( ФωФ)「今日一緒に連れていく三人目である。マタンキ、挨拶をするであるよ」

(・∀ ・)「マタンキっす。よろしく頼むッす」

.

184 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:47:50 ID:VSwEoiVw0

(´・ω・`)「ショボンです。今日は宜しくお願いします」

前に出てきて頭を下げたマタンキに右手を差し出すショボン。
マタンキは嬉しそうにその手を握り、笑顔でぎゅっとつかんだ。

それを横で見ていたロマネスクがブーン達を見ながら一歩前に出る。

( ФωФ)「こちらこそである。皆さんも宜しく頼むのである。
吾輩はロマネスク。ギルドANGLERで、一応ギルマスをやっているのである。
そしてこちらがヒッキー」

ロマネスクに促されてお辞儀をするヒッキー。

それを笑顔で返し、ショボンが隣にいたモララーに目くばせする。

( ・∀・)「モララーだ」

( ^ω^)「ブーンだお。よろしくだお」

ξ゚⊿゚)ξ「ツンです。今日はよろしくお願いします。こちらの指示には従って下さい」

(´<_` )「テイだ。悪いが弟者と呼んで欲しい」

( ´_ゝ`)「おれのことは兄者と呼んでくれ」

(・∀ ・)「?」

( ФωФ)?

(´・ω・`)「あだ名のようなものなんですが、すでにそちらの方が仲間内には浸透しているので、
彼らを呼ぶときにはそちらでお願いします」

(-_-)「流石武具店の兄者さんと弟者さんですよね」

( ´_ゝ`)「あ、やっぱり腕がいいことで有名だった?」

(-_-)「え!?あ、は、はい、い、いや、…」

(・∀ ・)「!前に言ってた変な鍛冶屋がいるってあそこか!」

.

185 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:48:39 ID:VSwEoiVw0

(;ФωФ)「ちょ、おま」

(・∀ ・)「腕は良いけど売ってくれないことがあるって言ってたあそこだろ?
特に武器担当の方が変人だとか言ってたよな」

(;-_-)「ま、マタンキ」

ξ゚⊿゚)ξ「ま、噂通りよね」

慌てるロマネスクとヒッキーをよそに喋り続けるマタンキ。

言葉をなくした兄者の肩をブーンとモララーが両側から叩き、
弟者が困ったように自分の額に指を当てて首を振った。

(´・ω・`)「それでは今日のスケジュールと進行時のフォーメーションの打ち合わせをしましょう」

何事もなかったように進めるショボン。
それに驚きつつも、ロマネスクはもらったメッセージを開くために右手を振った。



.

186 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:49:27 ID:VSwEoiVw0

−哨戒班−


('A`)「全員集まったみたいだな」
从 ゚∀从「聞いてたのより多くないか?」

('A`)「フサのところに護衛の人数が一人増えたって連絡が来てた。
ANGLERの中では高レベルの一人で、名前はマタンキ。
見ればわかるけど、両手剣使いだ」
从 ゚∀从「なるほど」

57層転移門広場より少し離れた建物の最上階。
最上階と言ってもそれほど高い建物ではなく、彼らがいるのは5階の部屋だった。

アインクラッドにおいて、PCやNPCの持ち物ではない建造物は出入りが自由である。
ただし部屋に入っても鍵をかけることなどは出来ないし、
家具なども設置されていないことがほとんどであるため、
体を休めることには不向きであった。
結局自分のホームを持たないプレイヤーは宿屋などに泊まって体を休めている。

それでは利用価値は無いのかというとそういう事もなく、
扉を閉めれば原則的に声を外に漏らすことも無くなるため打ち合わせなどには使われている。

そして今彼らのように身を隠すために使用することもあった。

ミ,,゚Д゚彡「とりあえず予定通りみたいだから」

ウインドウを出していたフサギコがショボンからのメッセージを読む。
ロマネスクと打ち合わせをしつつ、情報を確認するふりをしながらフサギコにメッセージを打ったのであろう。

('A`)「それ、おれのところには来てないんだけど」
从 ゚∀从

ミ,,゚Д゚彡「多分今の状況が分かっているから」

('A`)……ソウデスカ
从 ゚∀从

.

187 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:50:35 ID:VSwEoiVw0

窓から外を、広場にいるショボン達を確認する三人。
しかし外からは見られないよう、窓のそばの壁に張り付き両側から広場全体を観察している。

('A`)
从 ゚∀从「で、なんでこんな風に外を見なけりゃいけないんだ?」

ミ,,゚Д゚彡「ショボンからの指示だから」

('A`)
从 ゚∀从「ショボンからの指示?」

('A`)「ああ、出来るだけ護衛している三人に存在を気付かれない様にすることってな」
从 ゚∀从「なんだそりゃ」

ミ,,゚Д゚彡「なにか考えがあるから」

('A`)
从 ゚∀从「それはそうだろうが」

ハインが眉間にしわを寄せて渋い顔をすると、部屋のドアが開いた。

(´・_ゝ・`)「遅くなった」

(゚、゚トソン「すみません。遅くなりまして」

入ってきたのはデミタスとトソン。
これで哨戒班の5人が揃ったことになる。

(´・_ゝ・`)「ドクオ、パーティーに入れてくれ」

二人は窓には近寄らず、入ってきた扉のそばの壁に背を当てて座った。

('A`)「了解」
从 ゚∀从

ドクオがウインドウを操作するとデミタスの前にパーティー勧誘の画面が現れる。

.

188名も無きAAのようです:2014/02/25(火) 23:51:22 ID:VSwEoiVw0

(´・_ゝ・`)「はいよ」

('A`)「トソンも」
从 ゚∀从

(゚、゚トソン「はい。お願いします」

トソンの前にも現れ、デミタスと同じようにYESのボタンをクリックした。

(´・_ゝ・`)「これでドクオをリーダーにしたパーティーの結成だな。出発はまだか?」

ミ,,゚Д゚彡「ショボンが一回道具屋に行くようにするって言ってたから。そしたら先行して出発だから」

(゚、゚トソン「それにしても、なぜ今回はこのようなシステムを取っているのでしょう」

('A`)
从 ゚∀从「だよな」

(´・_ゝ・`)「ふむ。確かに何か重い思惑がありそうなオーダーだが、行動自体はよい訓練だな」

(゚、゚トソン「訓練?」

(´・_ゝ・`)「5人パーティーで、常に隠蔽スキルを使って敵の目を欺きつつ進行。
更にエリアごとに戦闘と通過をこなしていく。
普段のギルドの戦闘からは、絶対にやらない行動だろう?」

(゚、゚トソン「それは…そうですが」

('A`)
从 ゚∀从「やらなきゃいけないわけでもないだろ?」

(´・_ゝ・`)「何事も経験さ。特にトソン」

(゚、゚トソン「はい」

(´・_ゝ・`)「今回はショボンから統制を頼まれているんだろ?」

(゚、゚トソン「統制と言っても戦闘ではなく、タイムスケジュールの管理と行程の指示だけですよ」

(´・_ゝ・`)「甘いな。行程管理、スケジュール管理ってことは戦闘によるエリア移動のタイミング、
つまりは全員の休憩時間、ヒットポイントの管理もしなきゃいけないってことだ」

.

189 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:52:36 ID:VSwEoiVw0

(゚、゚トソン「!」

(´・_ゝ・`)「頑張れ」

(゚、゚;トソン「む、無理ですよ私にそんなこと」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だから」

デミタスとトソンの会話に割り込むフサギコ。

トソンは慌てながらフサギコに反論する。
あからさまに狼狽しているが、声を荒げたりしないのは彼女の持つ資質であろう。

(゚、゚;トソン「む、無理ですって」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だから」

そんなトソンに対し、落ち着いて言葉を紡ぐフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「ショボンが任せられるって判断したんだから大丈夫だから」

その表情には揶揄や冷やかしは全く無く、逆にトソンに問いかけるように、
何を慌てているのか全く分からないといった顔だった。

(゚、゚;トソン「え…」

思わず絶句したトソンを見て、面白そうに声を出さずに笑うドクオ。

('A`)「諦めろトソン、ふさはショボン信者だ」
从 ゚∀从

(゚、゚;トソン「い、いや、そういう事ではなくてですね」

.

190 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:53:27 ID:VSwEoiVw0

('A`)
从 ゚∀从「ま、あいつが任せたんだから、トソンの出来る限りをやればいいさ」

(´・_ゝ・`)「そうだな。それでよい」

決して低レベルではないトソンだが、この5人の中では一番弱く経験も少ないことを自覚している。
それ故に、HPの管理などという大役を自分が行うことに狼狽えた。
しかし仲間達はそんなことは全く考えていないようで、笑顔で自分を見ていた。

(゚、゚トソン「……分かりました。どうなっても知りませんからね」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だから」

諦めたように肩を落としたトソンに対し、間髪入れずにフサギコが太鼓判を押す。

さらに肩を落としたトソンを見て、面白そうにドクオ達は笑った。




.

191 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:54:22 ID:VSwEoiVw0



('A`)「さて、動き始めたな」
从 ゚∀从

外を見ていたドクオが腰を浮かす。

ミ,,゚Д゚彡「完全に広場から出たら部屋の外に出るよう言われてるから」

しかしフサギコに制され、もう一度腰を下ろす。
そして自分の右肩に乗っている頭に声をかけた。

('A`)「おまえはそろそろ離れろ」
从 ゚∀从「部屋から出たら」

左にある窓から外を監視するドクオの右手に腕をからめて寄り添っていたハインが、
いやいやをするように首を振りつつその頭をドクオの肩に摺り寄せる。

('A`)「はぁ……」
从 ゚∀从

ミ,,゚Д゚彡「仲が良いのは良いことだから」

(´・_ゝ・`)「だな」

(゚、゚トソン「ですね」

('A`)
从*゚∀从

頬を赤らめたハインをみて、ドクオ以外が微笑んだ。




.

192 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:55:50 ID:VSwEoiVw0

−教育班−


川 ゚ -゚)「だいぶ改善されてはいるが、まだ弱点は残っているな」

待ち合わせをした30層から少し下がり、22層のフィールドダンジョンを攻略したクー達5人。
訓練を申し込んだ3人から見ても低層であったが、三人は疲れていた。

(;><)「そ、そうですか」

(*‘ω‘;*)「まだダメっぽ?」

座り込んでいる二人を見つつ、クーが言葉をつなげる。

川 ゚ -゚)「そこまで疲れているのが証拠だな。
前に確認した弱点を突かれるような指示を出してはいたが、
レベルに対してそこまで疲れるということはまだ克服できていないということだ」

(;><)「うぅ……こんなんじゃダメなんです」

川 ゚ -゚)「ビロード君は体が大きくは無いから、パワータイプの敵の攻撃を盾で受け止めてしまうと、
そのあとの動きが封じられたり遅くなってしまう。その分だけ余分な動きが増えているな」

(;><)「うぅ…」

川 ゚ -゚)「後ろにいる人を守るために完全に受け止めようとする気持ちは分かるが、
自分のパワー、実力、相手との差を見極めて臨機応変に対応しないと、
逆に後ろにいる仲間達を傷つけてしまうかもしれない…。
まずはそれを考えてみると良い。そうすれば、受け流しや避ける意味も見えてくる。」

体育座りをして顔を膝に埋めてしまったビロードの次に、ぽっぽの顔を見るクー。
ぽっぽの顔がこわばる。

川 ゚ -゚)「ぽっぽちゃんは…」

(*‘ω‘ *)「わ、分かってるっぽ。突っ込みすぎなのは!」

川 ゚ -゚)「……それの理由も自分で分かっている……だな」

(*‘ω‘ *)!

.

193 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:57:14 ID:VSwEoiVw0

クーに叱られる前に自分で自分の弱点を告げたぽっぽだったが、
それを超えるクーの洞察に声をなくし、何も言えなくなってしまった。

川 ゚ -゚)「……それ自体は悪いことではないと思う。私にも経験があることだ。
だが、それは強さとは対極にあることの一つだと思う」

(*‘ω‘ *)「!…対極っぽ?」

川 ゚ -゚)「ああ。ギルド、チーム、パーティーならば、信じることも強さだと私は思う」

(*‘ω‘ *)「信じる…っぽ…」

川 ゚ -゚)「すぐには難しいが、今まで一緒に戦ってきた君たちならば出来ることだと思うぞ」

顔を上げて不思議そうに二人を見ていたビーグル。
それに気付かずにちらっと横を向いたぽっぽ

二人の視線が重なる。

(*‘ω‘ *)「な、何をこっちを見てるっぽ!」

( ><)「え?い。いや、二人が話しているのを」

(*‘ω‘ *)「女の子二人の会話を盗み聞きとか最低だっぽ!!」

(;><)「そ、そんな!だってこんな近くで話しているから」

(*‘ω‘ *)「ビロードを見損なったっぽ!」

(;><)「ぽっぽちゃん!」

立ち上がって赤くなった顔を隠すようにそっぽを向くぽっぽに対し、
慌てて立ち上がって頭を下げるビロード。

それを見て、呆れたように肩をすくめるクー。

その三人の後方に立つワカッテマス。
彼も肩を上下させて呼吸を整えながら、じっと見つめていた。

.

194 ◆dKWWLKB7io:2014/02/25(火) 23:58:55 ID:VSwEoiVw0

その横にジョルジュが立つ。
 _
( ゚∀゚)「参加しないのか?」

( <●><●>)「今は二人で話したほうが良いのはワカッテマス」
 _
( ゚∀゚)「そうかねぇ」

( <●><●>)「……私の戦いぶりはどうでしたか?」
 _
( ゚∀゚)「今のレベルなら問題ないだろ。今回はイレギュラーなポップも無かったしな」

( <●><●>)「……」
 _
( ゚∀゚)「けど、なんでお前だけレベルが飛び出たかは分かった」

( <●><●>)「!?どういうことですか?」

突然声をかけられても表情一つ変えなかったワカッテマスだったが、
ジョルジュの一言で大きな目をさらに見開いて横を見た。
 _
( ゚∀゚)「お前もあの子と一緒だよ。
二人がちょっとでも危なくなったら割って入ってお前が敵を倒してきたんだろ」

( <●><●>)!
 _
( ゚∀゚)「図星みたいだな」

黙り込んで再び前を見たワカッテマスをみて、困ったように笑うジョルジュ。
 _
( ゚∀゚)「おまえはあの二人が本当に好きなんだな。それこそ、自分の身の安全を忘れるくらいに」

( <●><●>)「……私の行動が間違っているのはワカッテマス…」
 _
( ゚∀゚)「間違っちゃいないさ」

目を伏せつつ呟いたワカッテマスに、ジョルジュは軽く返す。
その軽さに思わず顔を上げて横を見るワカッテマス。
 _
( ゚∀゚)「間違っちゃいない。誰かを助けたいって気持ちは。その誰かが好きな相手ならなおさら」

.

195 ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:00:56 ID:Qw/AbN2w0

( <●><●>)「……」
 _
( ゚∀゚)「ただ、その方法は色々あるってだけで」

( <●><●>)「?…色々?」
 _
( ゚∀゚)「戦いの場でその身を盾にする守り方もあれば、
自分の後ろを預けて相手の後ろを守るってのもある。
更に言えば、戦いはすべて任せて、それ以外のすべてを引き受けるってのもある」

( <●><●>)「????」
 _
( ゚∀゚)「なんてな、おれも、本当に分かってきたのは最近だから、ちゃんと説明なんてできねぇ」

自嘲気味に笑い、自分を見るワカッテマスを見るジョルジュ。
その強い視線に思わず目を逸らそうとしてしまったワカッテマスだったが、
なんとか踏みとどまってじっと見つめ返した。
 _
( ゚∀゚)「けどこれは言えるぞ。今の戦い方だと、万が一お前がいなくなったときあの二人はダメになる。
そしておまえが倒せない敵が出た時は、三人ともダメになる」

( <●><●>)「!」
 _
( ゚∀゚)「極論だけど、そういうこった。けど、お前だってそれくらいわかってただろ?」

( <●><●>)「……ハイ……ワカッテマス……」
 _
( ゚∀゚)「なら、大丈夫だ。あとは勇気だな。そして、その勇気を持つためにおれ達を利用すればいい」

にやっと笑ったジョルジュ。
ワカッテマスはその顔と発言に、顔全体で大きく驚きを見せた。

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196 ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:02:07 ID:Qw/AbN2w0

−護衛班−


森を進む9人。

中央にロマネスク。
その前にヒッキーとマタンキ。
その前を兄者と弟者が先頭で歩いている。

ツンとブーンは地形に対して位置取りを変え、しんがりを務めるモララーとショボンと
声を掛け合いながら進んでいた。

( ФωФ)「みなさんはさすがの強さであるな」

(-_-)「うん。まったく危なげないよ」

(・∀ ・)「すげえっすよ!」

(´・ω・`)「そんなことはありませんよ」

開いたままのウインドウを操作しながらショボンがロマネスクたちと会話する。
状況と前方・後方の視界確認をモララーに任せ、通常歩行時は情報統制に専念していた。

ロマネスク達三人に対してはルートとポップする敵の予備知識の確認としての名目で。
実際はそれはもちろんのこと、哨戒班・教育班・調査班等との情報共有をしていた。

そして事前情報と哨戒班から入る情報により優位な状況で戦闘に入れるようコントロールしているが、
その戦いは決して楽ではなかった。

実際のところ、レベルだけをみればそれほど強敵は出てきていない。
だが高層の敵は強いソードスキルに加えてモンスター同士の連携も行われているように感じ、
各個撃破をするための位置取りやソードスキルによるモンスターの列の分断、
戦闘の振り分けなどを瞬時に行うショボンへの負担は小さくはなかった。

もちろん全員ギルドのメンバーだけで戦っているのならばある程度の余裕を持つことが出来るのだが、
今回は『護衛』という依頼で動いている以上中央の三人に被害が出ない様に戦闘を行っていたため、
普段よりも何十倍も神経を使っていた。

.

197 ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:03:01 ID:Qw/AbN2w0

(・∀ ・)「でももうちょっとこっちに回してくれてもいいすっよ」

(-_-)「マタンキもたまには良いこと言うね。ショボンさん、そうしてください」

(・∀ ・)「たまにとかひどいっすよ」

( ФωФ)「そうである、そうである。一匹ずつなら吾輩達でも対処できるであるからな」

(´・ω・`)「そうですね…。
情報によると、この先のエリアで細かい敵が多く出るところがある様なんです。
迂回ルートを考えていたんですが結構な遠回りになるので突っ込んでみましょうか」

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっ。ショボン、大丈夫なの」

( ^ω^)「遠回りの方が良くないかお?」

( ФωФ)「分かったのである。釣りをする時間は多いほうが良いであるしな」

(;-_-)「ロマネスクさん…」

(・∀ ・)「正直すぎてさすがっす」

(´・ω・`)「実は先ほどから何回かお三人に戦ってもらったのは、
戦闘を見させていただく意味もあったんです。
あの戦いぶりなら大丈夫ではないかと判断もしました」

( ФωФ)「なるほどである……。『稀代の戦術師』殿にそう言われると照れるであるな」

(;´・ω・`)「な!なんですかそれ!」

( ФωФ)「また風のうわさで聞いたのである」

ロマネスクが漏らした二つ名にまた慌てるショボン。

聞いていたギルメンの五人がくすくすと笑う。

(´・ω・`)「……五人とも、帰ったら個別ミーティングね」

五人の口から洩れるブーイング。

それを見て笑みをこぼす三人。

その笑いはいつしか周りに伝播し、一人憮然とした表情のショボンを気にせず、
笑顔で次のエリアに続く道を進んだ。

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198 ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:04:08 ID:Qw/AbN2w0

−調査班−


( ゚∋゚)「しぃ右!ギコは続いてフォロー!」

狼男に向かってまっすぐに走るしぃ。

(*゚ー゚)「はい!」

(,,゚Д゚)「おう!」

自分に向かってくる敵に唸りながら曲刀を振り下ろす狼男。

しかしタイミングをずらした走法で近付いたしぃは危なげなくその刀をかわし、
狼男の武器を持たない半身側に駆け寄り、落ち着いてソードスキルを放った。

(*゚ー゚)「はぁ!」

高速の三連撃。

もともと短剣は一撃一撃のつながりが短く瞬時に複数回当てることが出来るのだが、
しぃの放つ連撃はもともと短剣を使っていたモララーが息をのむほどに成長していた。

狼男「ぎゃりゅあ!」

.

199 ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:05:10 ID:Qw/AbN2w0

目に見えて減少する狼男のHPバー。

それを確認することも無く、そのまま前に跳ぶしぃ。
硬直した状態ではあったが最後の一撃を放ちながらの跳躍であったため、
勢いを殺さずに狼男の後ろに着地する。

狼男「ぐりゅうぅぅ」

奇妙なうめき声を上げながらしぃを追おうとする狼男。

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

狼男よりは聞き取れる雄叫びをあげながらギコの片手剣が狼男の背中を裂く。
のけ反った狼男の腰を分断するように、腰をひねりながら更に横に一閃する。

(,,゚Д゚)「今度はこっちだゴルァ!」

ギコの放った一撃はソードスキルではない。
だが、上げたレベルの分と兄者が作った片手剣の性能により、
その一撃一撃は低レベル時代の単発重攻撃技ほどの威力を持っていた。

そして無理な態勢での追撃は行わずバックステップで距離を取るギコ。

改めてギコを敵を認めて曲刀を向ける狼男。

その背中を切り刻むしぃの短刀。

迷いの無い六連撃は狼男のHPバーを黄色に変え、赤くなる手前まで減少させた。

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!!」

動きの止まった狼男に真横に振りぬかれるギコの片手剣。

片手剣水平四連撃

その技は狼男の身体に水色に光る四本の斬撃を刻み、その体をポリゴンへと変えた。

( ´∀`)「お見事もなね」

.

200 ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:06:56 ID:Qw/AbN2w0

クックルのサポートとビーグルの放ったスキルによる攪乱はあったものの、
ほぼ一人で狼男を二体片付けたモナーがクックルに近寄る。

( ゚∋゚)「ああ。あの二人は強くなったな」

( ´∀`)「それももなけど、クックルの指示ももなよ」

( ゚∋゚)「……やめてくれ」

( ´∀`)「嘘や冗談じゃないもなよ。しぃも言ってたもなけど、クックルにはクックルの指揮があるもな」

( ゚∋゚)「……」

モナーとクックルが見守る中ギコとしぃはハイタッチをして勝利を喜び、
そして二人に向かって駆け寄ってきた。



( ´∀`)「ここで一度漏れが無いか確認するもな」

安全エリアまでたどり着いた四人は、中央付近の芝生の上に集まった。
今回四人がやっているクエストはいくつかの素材アイテムを集める必要があったため、
今までの行程での採取し忘れが無いかを確認するためだった。

もちろん、休憩の意味はあるが。

(*゚ー゚)「はい」

ウインドウを開いて自分が採取した素材を確認するしぃ。
ギコは採取は行っていないため、そばに立って周囲を警戒している。

( ゚∋゚)「クエストに必要な個数は俺が持つから、一回出して渡してくれ」

(*゚ー゚)「分かりました」

クックルとしぃがクエストに絡んだ確認をしている間に、
モナーはタイムスケジュールの確認とショボンから送られてくる情報の確認をする。

.

201 ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:07:39 ID:Qw/AbN2w0

( ´∀`)「(今までならしぃの隣でウインドウを覗き込んでいたギコが、
今は誰に何かを言われたわけではなく自発的に周囲の警戒をしているもな。
モンスターが出ない安全エリアと言われているとはいえ何があるか分からないもなからね。
……本当に成長したもな)」

皆が座って打ち合わせをする中、一人立って周囲を伺っているギコを見てモナーは微笑んだ。

(,,゚Д゚)「この辺りは食べられる木の実とかは生って無いんだなゴルァ」

( ´∀`)「……感心して損したもな」

(,,゚Д゚)「?なんか言ったか?モナー」

( ´∀`)「何でもないもなよ」

つまらなそうに呟いたギコの言葉に、思わずため息を漏らしつつ呟いたモナー。
ギコの問いかけに首を振ってから、自分が開いたウインドウに目を向ける。

( ゚∋゚)「どうだ?モナー」

( ´∀`)「今のところ予定より良いペースもな。
戦闘回数・ポップ数は事前情報よりも多くなってるもなけど、時間は短縮できているもなからね」

(*゚ー゚)「事前情報との食い違いはどれくらいなんですか?」

( ´∀`)「ちょっとまつもな……。ギリギリ誤差範囲内もなね。でもこの先次第では分からないもな」

(,,゚Д゚)「前より増えてるってことか!?」

( ´∀`)「……そうもな。敵のレベルは変わってないもなけど、一度のポップ数と出現エリアの増加、
あとポップする時間が短くなっているかもしれないもな」

( ゚∋゚)「それは……」

( ´∀`)「とは言っても、今のモナ達には特に問題になる増加ではないもなよ。
まずは今日の調査を出来るだけ正確に行うことが重要もな。
難しいことはショボン達に任せておけば良いもなから」

(,,゚Д゚)「そうだなゴルァ」

(*゚ー゚)「ですね」

.

202 ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:08:40 ID:Qw/AbN2w0

(;゚∋゚)「そういうもんでもないと思うがな。とにかく、一応今の時点でショボンに連絡しておいてくれ」

( ´∀`)「分かったもな。そういえばショボンからもメッセージが来ていたもなよ」

( ゚∋゚)「何かあったのか?」

( ´∀`)「まだ全文しっかり読んでないもなけど、各班の現状をまとめたみたいもな。
さっき一度こちらの状況を送っておいたもなから、そのまとめもなね。
特に問題は無いと思うもなけど、一応全部読んでおくもな」

( ゚∋゚)「頼む。こちらはクエストの確認をしておく」

( ´∀`)「宜しくもな」

(,,゚Д゚)「警戒は任せろだゴルァ」

( ´∀`)( ゚∋゚)(*゚ー゚)「(なんだ。食べ物探してただけじゃなかったんだ)」

(,,゚Д゚)??

自分が意気揚々と宣言すると、三人が何とも言えない瞳でこちらを見た。
不思議に思って三人の顔を見返すと、三人が三人とも慌てて視線を逸らした。

(*゚ー゚)「お、お願いねギコ君」

( ゚∋゚)「頼んだ」

( ´∀`)「よろしくもな」

(,,゚Д゚)「お、おうだゴルァ」

釈然としないがとりあえず警戒を続けるギコ。

クックルとしぃは芝生の上にマットを広げ、
その上に素材アイテムを並べてクエストのデータと照らし合わせていく。

( ´∀`)「(『……以上』もな…っと…。さて、ショボンからのメッセージを確認するもな)」

ショボンへの報告メッセージを送ったモナーは、届いていたショボンからのメッセージを開く。

.

203 ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:10:05 ID:Qw/AbN2w0

( ´∀`)「(緊急メッセージ扱いにはされてなかったから確認しなかったもなけど、
やっぱり大丈夫そうもなね。モナ達の事と、クー達、ドクオ達のこと。みんな問題無いみたいもなね。
で、最後に護衛班の事もなけど…。護衛は結局三人になったもなか。………!!!!!)」

ショボンからのメッセージを読んでいたモナーが小さく音が出るように息をした。

( ゚∋゚)!?

(*゚ー゚)!?

(,,゚Д゚)!?

疑似呼吸しかしていないこの電子の世界において、そのような呼吸はかなり珍しく、
思わずモナーを見る三人。

三人の視界の先には、自分が見られていることにまったく気付いていないモナー。

彼は目を大きく見開いてウインドウを凝視している。
ページ移動をしていたのだろうか、人差し指を立てた手がかすかに震えているようにさえ見えた。

(,,゚Д゚)「も、モナー?何かあったのかゴルァ?」

クックルとしぃがその様子に驚いて何も言えないでいたが、ギコは率直に問いかけをした。

(;   )!

固まった表情のままギコを見るモナー。

( ´∀`)「な、何でもないもなよ。
ショボンからのメッセージに新しい家畜の情報があったから、思わず驚いてしまっただけもな」

しかしすぐにいつものモナーに戻り、にこやかにギコと話しはじめる。

(,,゚Д゚)「お、また新しい肉が食べられるのか?」

( ´∀`)「ギコはお肉が好きもなね。うまくいけばそうなるもなけど、まだ分からないもな」

.

204 ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:11:07 ID:Qw/AbN2w0

(,,゚Д゚)「なんだ」

( ´∀`)「でも、新しい家畜が増えたら嬉しいもなね」

(,,゚Д゚)「この前の夕食に出た肉もうまかったぞゴルァ」

( ´∀`)「あれはどこにでもいるガルベカウもな。
ただ育成方法を変えてみたら、肉のレベルが高確率で高くなるようになったもなよ」

(,,゚Д゚)「そうなのか!」

( ´∀`)「育成も奥が深いもな」

(,,゚Д゚)「楽しみだぞゴルァ」

楽しげに会話をする二人を見て安心してアイテムに視線を戻すしぃ。

( ゚∋゚)「(……今は言えないこと……か。緊急でないなら、あとで聞けばいいか)」

(*゚ー゚)「クックルさん?」

( ゚∋゚)「ああ、すまん」

鋭い視線でモナーを見ていたクックルだったが、しぃの声に我に返りアイテムに視線を戻す。

( ´∀`)「(……今頃になってこの名前を目にするなんて……。
黒鉄宮の碑の名前は消されていなかったから、まだ生きていることは知っていたけれど……。
とりあえず、ショボンに連絡しないと。でも、なんて書けば……。
早く話しておくべきだった……。これは、おれのミスだ)」

ギコとの雑談を切り上げて、再びショボンへのメッセージを打ちはじめるモナー。

( ´∀`)「(あの日の事を、もっと詳しく話しておくべきだったんだ!)」

震えそうになる指を笑顔で抑え、メッセージを打つ。

( ´∀`)「(今のショボン達は、あの時のおれ達とは違う。だから、大丈夫だとは思うが…。
念のため、ドクオにも送った方が……。いや、でも……いたずらに……)」

打ち終えた頃、ようやく指の震えは完全に収まり、もう一度その短いメッセージを読む。
そして一呼吸した後に、しっかりと送信ボタンを押した。

.

205 ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:11:54 ID:Qw/AbN2w0

( ゚∋゚)「モナー。こちらの確認は終わった。そっちはどうだ?」

( ´∀`)「こっちも大丈夫もなよ。時間はまだ大丈夫もなけど、余裕をもって出発するもな?」

( ゚∋゚)「そうだな。余裕はあったほうが良い」

(*゚ー゚)「はい」

(,,゚Д゚)「そうだなゴルァ」

立ち上がるクックルとしぃ。

ギコも含めて三人で装備とフォーメーションの確認をし始める。

( ´∀`)「(そう。余裕が大事…。
……今のモナ達には、余裕を持つだけの底力はあるもな……だから大丈夫もな!)」

立ち上がるモナー。

先程のメッセージが送信されたのを確認してから、ゆっくりとした動作でウインドウを閉じる。

( ´∀`)「準備はいいもなか?」

(*゚ー゚)「はい!」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

( ゚∋゚)「よし、出発だ!」

手を上げて雄叫びをあげる四人。



モナーのメッセージをショボンとドクオが開くのは、その少し先だった。



第十話 終

206名も無きAAのようです:2014/02/26(水) 00:13:18 ID:1rqLX00gO
しえええん

207 ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:13:22 ID:Qw/AbN2w0

第十一話 疾走 に続く


.

208名も無きAAのようです:2014/02/26(水) 00:14:52 ID:1rqLX00gO
と思ったら終わりだった。乙

209 ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:17:01 ID:Qw/AbN2w0
以上、短めですが本日の投下終了です。

何とか2月中に投下できました。

といっても、続き物ですが。

この続きも半分くらいは上がっているので3月中にはなんとか。


バレンタイン…。
そんなものもありました…。
節分ネタならあったんですが、乗り遅れました。

機会があれば季節外れネタで。


ではではまた。
.

210 ◆dKWWLKB7io:2014/02/26(水) 00:17:59 ID:Qw/AbN2w0
支援ありがとうございます(*^_^*)

211名も無きAAのようです:2014/02/26(水) 00:29:15 ID:7zmPkx0Q0
おつ、次回も楽しみに待ってる

212名も無きAAのようです:2014/02/26(水) 01:07:57 ID:SBqO8vpY0
乙!

213名も無きAAのようです:2014/02/26(水) 01:31:38 ID:zhSeZw7w0


リア充爆発イベント待ってる

214名も無きAAのようです:2014/02/26(水) 14:44:15 ID:6hV0WJdQ0


215名も無きAAのようです:2014/02/28(金) 01:15:47 ID:I6sn4jsU0
乙 続きはよはよ

216名も無きAAのようです:2014/03/22(土) 10:09:22 ID:mrBQSh/s0
3月ももう残り少ないけど

217名も無きAAのようです:2014/03/27(木) 11:38:52 ID:iqvJIZLM0
もう3月ないよぅ

218名も無きAAのようです:2014/03/27(木) 13:30:39 ID:4/hxk0vA0
そう急かすなよ

219名も無きAAのようです:2014/03/28(金) 06:06:57 ID:RSaSlYSs0
作者応援してるよおお楽しみにしてるよおおおがんばれえええ

220アインクラッドのニーター:2014/03/30(日) 15:16:33 ID:iWwgDkJk0
ブーンがこれからどうなるのか楽しみ。
>>1は最近更新してないのかな?
待ち続ける☆ZE

221 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:24:02 ID:JCFDYpKw0



第十一話 疾走




1.作戦(午後)




.

222 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:25:57 ID:JCFDYpKw0


-哨戒班-


木々の中を走る五人。
ドクオはいつもと同じ黒いコートだが、残りの四人は揃いの暗い迷彩柄のマントを羽織っていた。

五人が走るのは、エリアの中心を貫く人が三人並んでも余裕を持って歩ける開かれた道の両側。
左右に分かれ、木々に隠れるように走る五人だったが、トソンの指揮でその行動は統制されていた。

進行方向を見て道の右を走るのは前からドクオ、ハイン、フサギコ。
左側をトソンとデミタスが走るが、前を走るトソンよりも右側のドクオは前を走っている。

時折左後方に視線を走らせるドクオ。

トソンが右手を斜め下に振るとドクオが走りを緩め、太めの木の陰に立つ。
それを見てハインとフサギコも同じように近場の木の陰に隠れた。
その時には、トソンとデミタスもそれぞれに木の陰に隠れている。

徐々に影に溶け込む五人。

それぞれが持つ隠蔽のスキルと身に着けた武具や衣服・アイテムの効果により、
その姿は木々に紛れ、背景に溶け込んでその姿を隠した。

.

223 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:28:26 ID:JCFDYpKw0

しばらくすると道の奥から狼男が三匹現れた。
持った曲刀や刀を陽光でぎらつかせ、周囲を睨みながらゆっくりと進んでいく。

狼男が五人の存在に反応して現れたのは明らかだが、
総合的に高いスキルレベルで隠れている彼らを見付けることが出来ないでいた。

周囲を伺いながらもドクオ達五人の隠れる木々のそばまでやってくる狼男。

緊迫した空気の中、狼男達が五人に囲まれるような位置まで来た瞬間、
中央の狼男の後頭部に一本の針が突き刺さる。

狼男2「ぐrぁyぅあうううあああ!!」

雄叫びをあげて針の投げられてきた方向を向く狼男2。
それに釣られて先頭を歩いていた狼男1と一番後ろにいた狼男3もその方向を見た瞬間、
木々の陰から飛び出す二つの影。

一つはフサギコ。

背後から狼男1の胴を一閃。
ソードスキルではないがクリティカルヒットとなったその一撃は狼男1のHPを三分の一ほど削った。

狼男1「ぐりゃぁぅらやぁああぅrぁああ!」

のけ反りながら雄叫びをあげて更に振り返ろうとするが、
その視界の死角に位置を移動したフサギコはすかさず狼男1の右腕の付け根を切り裂く。

ポリゴンと化した狼男1の右腕。

右手に武器を持っていたため狼男1は攻撃手段をなくしてしまった。

左手で無くなった右手を押さえるようなしぐさをしながら絶叫する狼男1。

そしてフサギコは満を持してソードスキルを放った。

居合の構えから放たれた剣技は狼男1の身体を宙に浮かす。
そして浮いたその身体を切り刻む剣技は狼男1の身体をポリゴンへと変えた。


.

224 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:29:26 ID:JCFDYpKw0

もう一つの影はドクオ。

狼男3の背中にまず二連撃を浴びせる。

('A`)「遅いな」

一つ一つのあたりは浅いが動きの遅い狼男3の隙をついてもう一撃を与え、
最終的にはHPを三分の一以上削った。

狼男3「ぎゃりゅるぐあぁああぁああ!!!」

闇雲に剣を振り回しながら振り返った狼男3。

しかし既にドクオは距離を取っており、冷静に観察する。

('A`)「なるほど」

ドクオが静かに体を動かす。
その動きは一見緩やかに見えるが、空気の隙間を縫うように、音を立てず、
風も起こさず、ギルド内でも三本の指に入る素早さで狼男3の真横に立ち、
武器を持つ手の肘を切り裂いた。

狼男3「ぎゃるyたあああるらあああ!!!」

('A`)「五月蝿いよ、おまえ」

同じく攻撃手段をなくした狼男3の身体を切り刻んでいくドクオの片手剣。

('A`)「これで終わり」

赤い光を纏った片手剣が、狼男3をポリゴンへと変えた。


.

225 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:30:22 ID:JCFDYpKw0

後頭部に針による攻撃を受けた狼男2は、針が飛び出した木に向かって走り出そうとした。

そしてその背中を襲うのはハインの大鎌。

フサギコやドクオに遅れること数瞬。
木の陰から飛び出したハインは左手に持った長柄の大鎌をバトンのように振り回し、
狼男2の背中に四本の傷をつける。

狼男2「ぐりゅあありゃああrっりゃあああ!!!」

大型の曲刀を両手で構えながら振り返った狼男2の背中に、今度はデミタスが襲い掛かる。

(´・_ゝ・`)「曲刀を振り回す簡単な仕事です」

水色に輝かせた曲刀を持ったデミタス。

多重六連撃

上下左右から舞うように振り下ろされ振り上げられた曲刀が狼男2の身体を切り刻む。

从 ゚∀从「ほーらこっちもまたくるぜ!」

背中からの攻撃にのけ反りながら硬直した狼男2の身体を前面からハインの鎌が襲う。

前後からのソードスキルの応酬に、狼男2の身体はポリゴンへと変わった。


戦闘の口火を切り囮役を担ったトソンも既に木の陰から出てきており、
狼男三匹がポリゴンに変わるのを視界の隅で見ながら、
次のエリアとタイムスケジュールの確認を行っていた。


.

226 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:33:01 ID:JCFDYpKw0



(゚、゚トソン「お疲れ様です。ここで13分休憩です」

狼男を3匹ポリゴンに変えた後三つのエリアを通り過ぎ、
うち二つのエリアで戦闘を行ったドクオ達五人は、
安全エリアでしばしの休息を取っていた。

(´・_ゝ・`)「トソンの指揮も板についてきたな」

(゚、゚;トソン「やめてください。それに私がやっているのは指揮とかではなく、
ただのタイムキーパー的な役割です」

(´・_ゝ・`)「謙遜するな」

('A`)
从 ゚∀从「頑張ってると思うぜ。戦いやすいしな」

(゚、゚トソン「もう止めてくださいよ…」

苦笑いをしながらため息を吐くトソン。

(´・_ゝ・`)「?どうした?」

(゚、゚トソン「いえ……。
実際に指揮下について戦っただけでもショボンさんのすごさは感じたつもりでしたが、
本当にあの人はすごい方だと思いまして。
劣化版も劣化版、足元にも及びませんが同じような『指揮』をする立場に立ってみて、
その凄さを改めて実感しました」

.

227 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:34:19 ID:JCFDYpKw0

('A`)「ああ…」
从 ゚∀从

ミ,,゚Д゚彡「ショボンはすごいから」

(゚、゚トソン「おっしゃる通りです。本当に」

(´・_ゝ・`)「ま、あいつは特殊だよ。特殊」

('A`)「否定はしない」
从 ゚∀从「しないんだ」

('A`)「つーかできない」
从 ゚∀从「そりゃそうだ」

(´・_ゝ・`)「特殊っていうか、異常だな」

デミタスの言葉に頷く三人。

ミ,,゚Д゚彡「……みんなひどいから」

フサギコの少しだけ非難するような、けれど消極的な言い方に笑みをこぼす四人だった。



.

228 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:36:17 ID:JCFDYpKw0

('A`)「ん?メッセージだ」
从 ゚∀从?

ドクオがウインドウを出すと、引っ付いていたハインが離れてトソンに近寄った。

从 ゚∀从「そういえばトソン、投擲スキル上げてたのか?」

(゚、゚トソン「いえ、スキルレベルは中の下くらいですよ。意識して鍛えてませんし」

从 ゚∀从「それにしては百発百中じゃないか?」

(゚、゚トソン「的がゆっくり動いているのもありますが……ほとんどは、これのおかげです」

色白で理知的なトソンの顔によく似合う、細長い長方形の眼鏡。
アンティークシルバーのような光沢をもった細い蔓を人差し指で少しだけ動かすトソン。

从 ゚∀从「いつもかけてるのと違うけど、特殊なやつなのか?」

(゚、゚トソン「フサギコさんからショボンさんの指示書と一緒に渡されたのですが、
命中率と正確性がおそろしく大きく上がりました」

从 ゚∀从「へーーーーー」

(゚、゚トソン「すごいですよね。おいくら位するんでしょう」

ミ,,゚Д゚彡「!ごめんだから!」

(゚、゚;トソン「え、あ?いえ、欲しいとかそういことではなく」

ミ,,゚Д゚彡「伝えるの忘れてたから。
その眼鏡は今回のお礼にあげるって言ってたから」

(゚、゚;トソン「え、あ?いえ、そんな!報酬はちゃんといただくわけですし、こんな高価そうなものまで」

ミ,,゚Д゚彡「『形も色も趣味が別れるし、似合うやつも少なそうだけど、トソンなら似合うんじゃねーか?』
って言ってたから」

(゚、゚トソン!

.

229 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:37:49 ID:JCFDYpKw0

ミ,,゚Д゚彡「『すっとした細みの顔立ちだし、頭良さそうな雰囲気だから、似合いそうじゃね』
とも言ってたから」

(゚、゚*トソン「そ、それを言ったのは…作った方…ですよね」

ミ,,゚Д゚彡「だから!」

(゚、゚*トソン「じゃ、じゃあ遠慮なくいただきます。
お礼を言いに行かないとですね。

………もうそんな……私がきれいだなんて。モララーさんたら」

ミ,,゚Д゚彡「…え?」

(´・_ゝ・`)「誰も言ってないな。そんなこと」

从 ゚∀从「二人とも、野暮ってもんだぞ」

ミ,,゚Д゚彡?

(´・_ゝ・`)?

从 ゚∀从「ダメだこいつら。
そういえば二人ともホモだったな」

ミ;,,゚Д゚彡「ふさはショボンを尊敬しているだけだから!」

(´・_ゝ・`)「おれは二次とNPCのショタだけだ!」

(゚、゚トソン「デミタスさんはアウトですね」

从 ゚∀从「アウトだな」

ミ,,゚Д゚彡「アウトだから」

(´・_ゝ・`)「この高尚な趣味が分からないとは…」

.

230 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:38:51 ID:JCFDYpKw0

('A`)「何をまたわけのわからないことを」

四人で騒いでいるところに寄ってくるドクオ。

('A`)
从 ゚∀从「メッセージは読み終わったのか?」

('A`)「あーそのことなんだけどトソ…」
从 ゚∀从?

(´・_ゝ・`)「あ、ドクオ、このマントのことなんだが…」

自分が羽織っているマントを摘まんでひらひらとさせるデミタス。

('A`)「ん?どうかしたのか?」
从 ゚∀从

そのマントは遠目で見ると一見ただの黒色だが、
そばで見ると闇よりも深いような漆黒の地に、深い緑と濃い青が迷彩の様な柄を織成している。
今は動きやすいように前を開いているが、木の陰に隠れるときは
体のサイズより大きめなそれで身体を包むように前を閉じ、
更に顔まで覆えるようなサイズのケープもついているため、
少しかがめば本当に体全部を包むことが出来た。

(´・_ゝ・`)「売ってないのか?かなり欲しいんだが」

ミ,,゚Д゚彡「それはダメって言ってたから

(´・_ゝ・`)「そうなのか?」

('A`)「まだ量産できてはないみたいだな。
ツンとモラが弟者と一緒に試行錯誤して作ってたけど、ダメみたいだ。
これよりランクの落ちる奴はある程度量産出来そうらしいけど」
从 ゚∀从

(´・_ゝ・`)「そっか。残念だ」

('A`)「ま、使ってなきゃレンタルはするだろうし、
作れるようになりゃブーンの店に並べるだろ」
从 ゚∀从

.

231 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:39:50 ID:JCFDYpKw0

(´・_ゝ・`)「それまで待つか。ちなみにこれ、隠蔽だけならドクオのコートクラスの能力だろ?」

('A`)「いや、まだおれのコートの方が上」
从 ゚∀从

(;´・_ゝ・`)「まじか!それも弟者作だったよな!?」

('A`)「ああ。弟者が言うには、確かに全部レアレベルの素材で作ったけれど、
なぜこんなレベルのこんな防具が出来たのかわからんって事みたいだ。
実際、いまだに作ったコートの中ではこれが一番レアらしい」
从 ゚∀从

(;´・_ゝ・`)「はーーー」

('A`)「まずはこのコートクラスの防具や衣服を作るのが目標らしい。
一回は『ちょっとだけ!ちょっとだけ!』とか言って素材に戻されそうになった」
从 ゚∀从「ツンだな」

(´・_ゝ・`)「ひでえ。さすがツン」

ミ,,゚Д゚彡「……」

(゚、゚トソン「フサギコさん、ツンさんのフォローはしないんですね」

ミ,,゚Д゚彡「今のは出来ないから」

(゚、゚トソン「それでドクオさん、何かご用ですか。そろそろ出発する時間なのでお早めにお願いします」

('A`)「ああ、悪い、この後の戦闘スケジュールはどうなっているか知りたいんだが。
多分もうすぐ目的の湖だよな?」
从 ゚∀从

(゚、゚トソン「はい。あと5エリア、うち3エリアで戦闘を予定しています。」

('A`)「戦闘の規模は?」
从 ゚∀从

(゚、゚トソン「二回は先ほどの狼男三匹、一回は狼男一匹に巨大蜂3匹です」

.

232 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:41:31 ID:JCFDYpKw0

('A`)「蜂がいるか…」
从 ゚∀从?

(゚、゚トソン「どうかしましたか?」

('A`)「その戦闘、おれが抜けても大丈夫か?」

(゚、゚;トソン「え?」

('A`)「ちょっと野暮用で、ショボンの所に合流したいんだよ。無理なら諦めるが」
从 ゚∀从「えー」

(゚、゚トソン「正直厳しいと思います。
現状ドクオさん一人で一匹は倒していただいていますから」

(´・_ゝ・`)「フサが一匹、おれとハインとトソンで二匹にすれば良いだろ」

('A`)
从 ゚∀从「そうだな」

(゚、゚;トソン「で、でも蜂の方はどうしますか?」

ミ,,゚Д゚彡「トソンがこれを使えば良いから!」

いつ取り出したのか、十数本の細いナイフを手に持つフサギコ。

(゚、゚トソン「それは?」

ミ,,゚Д゚彡「もし飛ぶ敵に苦戦するようならトソンに渡す様にショボンから言われてたから」

自分に差し出されたそのナイフを受け取るトソン。
革のようなベルトに一本ずつ差し込まれている銀色のナイフ。
幅は指一本分ほどで厚さも厚くはない。というか薄い部類に入るだろう。
そして長さも手のひらにすっぽりと収まるサイズだが、重さはそれなりにあった。

(゚、゚トソン「これ…」

左手の手のひらに乗せたナイフをタップして情報を見ると、トソンの目が大きく見開いた。

.

233 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:43:18 ID:JCFDYpKw0

(´・_ゝ・`)「?どうしたトソン」

(゚、゚;トソン「けっこうなレア品です。しかも麻痺効果付」

ミ,,゚Д゚彡「兄者とショボンとクーが頑張ったから!
ショボンがその眼鏡をかけたトソンなら使いこなせるはずだって言ってたから!」

(゚、゚トソン「これ、本当に使ってよろしいんですか?」

ミ,,゚Д゚彡「余ったら返してほしいから」

(゚、゚トソン「…………分かりました」

ウインドウを開き、自分の記憶とショボンから渡された行程を再チェックするトソン。
そして装備ウインドウも操作して、自分の腰に渡されたナイフを装備する。

(゚、゚トソン「ドクオさん、離脱は可能です。
ただし、それによりこちらの負荷が大きくなるため状況によってはクリスタルの離脱を行います。
予定より危険だった場合の戦闘域からの退避はショボンさんに指示されていますので、
ご了承ください」

('A`)「わかった」

.

234 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:44:48 ID:JCFDYpKw0

(゚、゚トソン「みなさん、よろしいですね」

(´・_ゝ・`)「もちろん」

从 ゚∀从「ホントは一緒に行きたいけど、こっちは任せておけ」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だから!頑張るから!」

(゚、゚トソン「では私たちは出発します。ドクオさんは?」

('A`)「あいつらのところに向かう。……ふさ、」

ミ,,゚Д゚彡「?」

('A`)「あと、…頼んだ」

ミ,,゚Д゚彡「!分かったから」

フサギコに向かって一回無言でうなずくと、
ハインが離した腕をほんの少しだけいとおしそうに撫でながら近くの木陰に進むドクオ。
するとその姿は他の四人の視界から完全に消えた。

从 ゚∀从「どっくん…」

ミ,,゚Д゚彡「相変わらずすごいから」

(゚、゚トソン「時間です」

ウインドウを閉じ、前を向くトソン。

他の三人も会話をしながらも準備は済ませており、万全の態勢でトソンの後ろに立つ。

(゚、゚トソン「進行は右にハインさん、フサギコさんで。左は先ほどと同じ私とデミタスさん。
共通順序は私、ハインさん、デミタスさん、フサギコさん。
ハインさんは私の指揮を見逃さない様にお願いします」

フードをかぶる四人。

そして少しだけ前傾姿勢で走り始めた。



.

235 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:45:58 ID:JCFDYpKw0

−護衛班−


(´・ω・`)「おや」

通常進行時もウインドウを開いたままにしているショボン。
前のエリアでは戦闘を行っていたため閉じていたが、
次のエリアに移動してモンスターがいないのを確認した後は開いて移動していた。

前をちゃんと見ていないにも関わらずその足取りには危なげはない。
それは並んで歩くモララーが足元や前方の注意を世間話のように話しかけているからで、
与えられる過不足の無い情報によって、ショボンは普通に歩いていた。

今ショボンが見るのは自分たちが進んでいるエリアのマップ。
さらにそこにはモンスターの出現ポイントが情報として追加してある。

現状はほぼ収集した情報通りに進んでいるが、それでも細かい差異はあるため、
ショボンは通り過ぎたエリアに詳細なデータを出来るだけリアルタイムで追加していた。

本当のところ、この程度の長さと情報量ならば、ショボンは全てを記憶しておく自信はあった。
だがその場で感じたことはやはりその瞬間に記載した方が情報として確かなものであると考え、
特に今回は安全エリアでの追記ではなくリアルタイムの情報を入れるようにした。

実はその行動にはそれ以外にもいくつかの理由があるのだが、
彼自身それは杞憂で終わってほしいと思っていたため、彼の心だけが知っていた。

( ・∀・)「どうした?」

ショボンが漏らした一言に、モララーが反応する。

(´・ω・`)「いや、……調査班からメッセージが届いたからさ」

( ・∀・)「?調査班?……作戦中に?」

(´・ω・`)「うん。時間的にまだ調査は終わってないはずだし、
ついさっき状況確認の連絡ももらってるから何かなと思って」

.

236 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:47:09 ID:JCFDYpKw0

( ・∀・)「で?なんだって?」

(´・ω・`)「今から見るところ」

画面から目を離さずに軽く相手をするショボン。

( ・∀・)「……まだ見てないのかよ」

(´・ω・`)「見てないよ。さっきまで前の戦闘メモも書いてたし」

呆れたようなモララーの言葉をさらっと流すショボン。
全く気にせずにウインドウを操作している。

(・∀ ・)「お!なんすかなんすか!」

するとすぐ前を歩いていたマタンキがやってきた。

( ・∀・)「……」

(´・ω・`)「仲間からメッセージが届いたので確認をしようって話していたんですよ」

(・∀ ・)「いいっすね良いっすね。で、なんて書いてあったんすか?」

(´・ω・`)「いや、まだ見てないので」

( ・∀・)「(こいつのキャラあわねぇ)」

なれなれしくショボンの隣に並び、ウインドウを覗き込もうとするマタンキ。
しかし当然のことながら不可視モードになっており、マタンキには画面が見えない。

(・∀ ・)「ありゃ、見えない」

( ・∀・)「(当たり前だボケ)」

(´・ω・`)「マタンキさんは、このANGLERに入って長いんですか?」

自分の肩に顎を乗せるように覗いてきたマタンキ。
ショボンはそれをさりげなく避けつつウインドウを閉じた。

(・∀ ・)「俺っすか!俺は最近すっよ!」

.

237 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:48:18 ID:JCFDYpKw0

( ФωФ)「マタンキは前から釣り場でよく会っていたのであるが、
なかなかギルドには入ってくれなかったのである」

二人の会話を聞いていたロマネスクが歩調を緩め、ショボンとマタンキの横にきた。

それを見て更に後方に下がるモララー。

( ・∀・)「(やばい、なんかちょっとムカついてる。
なんだろ、これ。感覚が落ちたのか、鋭敏になったのか…。
落ち着け……おれ。冷静に観察しろ。ショボンの行動も計算に加えるんだ)」

(´・ω・`)「おや、そうなんですか?マタンキさん」

(・∀ ・)「昔パーティー組んでた時にちょっと気まずくなったことがあって、
それ以来出来るだけソロで動いてたんっすけどね。
ロマネスクさんとはうまが合ったっていうか」

( ФωФ)「釣りの腕もさることながら、ソロで動いているだけあって強さもすごいのである」

(´・ω・`)「それは先ほどまでの戦闘をみて感じていました」

(・∀ ・)「俺なんかダメダメっすよ。ただ闇雲に切りまくるだけっすから」

(´・ω・`)「またまたご謙遜を。斬撃は全て的確でしたよ」

(・∀ ・)「……すごいっすね」

(´・ω・`)?

( ФωФ)「流石ショボン殿である。あれだけの戦闘で我々の力量が分かるのであるな」

(´・ω・`)「それほどの事ではないですよ」

( ФωФ)「いやいや、『稀代の戦術師』の名はだてではないのである」

(;´-ω-`)「本気でそういった名前で呼ぶの止めてください」

笑うロマネスクとマタンキ。
苦笑いを浮かべるショボンを見ながら、モララーは今自分が抱いている負の感情を分析していた。



.

238 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:50:02 ID:JCFDYpKw0



(´・ω・`)「ここから先のエリアでは、戦闘があります」

ショボンの指示で街道の隅に集まる八人。

(´・ω・`)「お願いしていた通り、そこではロマネスクさん達三人にも戦闘に参加してもらいます」

( ФωФ)「うむ」

(・∀ ・)「任せてくれっすよ」

(-_-)「はい」

ショボンの言葉を受け、表情を引き締める三人。

(´・ω・`)「情報では、この先に出るのは狼男タイプの剣士が三匹、槍使いが一匹。
更に狼と蜂のポップが複数報告されています」

(´<_` )「結構多いな」

( ^ω^)「狼男の槍持ちは珍しいおね」

( ´_ゝ`)「二つ前の層でもでたよな。確か」

ξ゚⊿゚)ξ「居たわね。結構槍捌きがうまくて面倒だった覚えがある」

( ・∀・)「ああ出た出た。懐に入るのが面倒くさかった」

(´・ω・`)「情報によると、槍持ちが先頭に一匹、そのすぐ後ろに剣士が一匹。
少し距離を開けて剣士が一匹、その更に後方に一匹の順で出るらしい」

(´<_` )「その順序は変わらないのか?」

(´・ω・`)「今のところはね。
ただこの道は湖への道でその先の街へは別ルートで行けるから、
それほど情報は積まれてない。だから…」

.

239 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:51:07 ID:JCFDYpKw0

( ´_ゝ`)「臨機応変」

(´・ω・`)「そういうこと。一応担当は決めるけど、その都度指示を出すからよろしく」

( ^ω^)「いつもと一緒だお」

ξ゚⊿゚)ξ「よね」

(´<_` )「また身もふたもないことを」

( ФωФ)「吾輩達はどうしたらよいのであるか?」

(´・ω・`)「槍持ちはこちらで対処します。
剣士の内の一匹と、狼及び蜂が出てきた際の遊撃をお願いしたいのですが」

( ФωФ)「分かったのである。二人もよいであるな」

(・∀ ・)「腕がなるっすよ!」

(-_-)「大丈夫。問題ない」

(´・ω・`)「ただ、今話していた通り情報が少ない為変更の可能性もあります。
実際ここまでの道のりでも情報との相違点がいくつかありましたので」

( ФωФ)「!全て調査済みなのであるか?」

(´・ω・`)「はい」

驚いたロマネスクに驚きつつ頷くショボン。

今回のように戦闘をしながらのほぼリアルタイムでの情報整理は今まで行ったことが無かったが、
毎回自身やギルドのメンバーが行った戦闘は記録し、流通している情報との差異を確認していた。
今回も作戦のギリギリまで情報屋から情報を買いあさり、基本的な情報は完全と言ってもいいだろう。
整理した情報は情報屋にフィードバックを行い共有化を図っているが、
基本的にはギルドのメンバーの命を守るための行為であり、
ショボンにとっては当たり前で基本的な行為だった。

そのため、同じギルドマスターであるロマネスクが驚いたことに彼は驚いてしまった。

.

240 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:52:55 ID:JCFDYpKw0

(;ФωФ)「そ、それは全てのギルマスがやっているのであるか?」

(´・ω・`)「ギルマスがやっているかどうかは分かりませんが、
ある程度の大きさのギルドならこういった情報統制をする担当者がいるのではないかと思いますよ」

(;ФωФ)「マジであるか…」

(ФωФ)

(ФωФ )

(-_-)「僕は無理だよ」

(ФωФ;)

( ФωФ )

(・∀ ・)「ロマネスクさん頑張るっす!」

( ФωФ;)

( ФωФ)

(;´・ω・`)「え、いや、僕を見られても」

(;ФωФ)「……マジであるか…」

(;´・ω・`)「…とりあえず先に進みましょうか」

(;ФωФ)「そ、そうであるな」

あからさまに動揺したロマネスクを気遣いながら更に注意点をいくつか告げ、
戦闘エリアに足を踏み入れた。



.

241 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:56:08 ID:JCFDYpKw0

戦闘は、予定よりも長引いていた。

(;^ω^)「ツン!」

ξ゚⊿゚)ξ「こっちは大丈夫!そっちを片付けて!」

ブーンの剣が風となって狼男を切り裂き、ツンの細剣は光線のように光り輝いて狼男を突き刺す。
その攻撃は一つ一つが充分な攻撃力を持ちモンスターのHPを削るのだが、
倒すことが出来ないでいた。

▼#・w・▼「ギャウ!」

狼男の足元にいる狼。
姿はビーグルに似ているがその毛色は焦げ茶色で、一般的なモンスターである。
しかしビーグルと同じ特技を持ち、傍らに居る狼男のHPを回復することがあった。

▼#・w・▼「ギュワ!」

もちろんブーン達に対して爪や体当たりなどのの攻撃もしてくる。
その攻撃力も動きも脅威ではないため簡単にかわせるし、
たとえその攻撃が直撃してもVIPの六人にはほとんどダメージはない。
しかし動きは阻害されるため、狼男に体勢の立て直しや回復行動を取られてしまい、
戦闘は長引いてしまっていた。

(#ФωФ)「こりゃ!こりゃ!」

(-_-)「ふっ!はっ!」

ロマネスク達三人は更に苦戦していた。

三人に対してはショボン達の位置取りにより他の敵とは独立させて狼男一匹と戦ってもらっていた。
しかし狼男のHPが黄色になりかけた頃にその足元に狼が現れ、
狼男のサポートを始めた。

順調に狼男のHPを削っていた三人であったが、
お供の狼が現れた途端、一転してその戦いぶりは混乱していた。

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242 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:58:07 ID:JCFDYpKw0

(・∀ ・)「うおりゃ!!」

マタンキの両手剣が狼男に向けて振り下ろされる。
しかしその体に狼が体当たりをくらわせ、軌道がずれた両手剣は空振りして大地に突き刺さる。

この場合、本当ならばロマネスクとヒッキーが狼の気をひいて相手をしていなければいけないのだが、
連携が取れておらず位置取りが出来ていない三人は互いが互いの動きを邪魔してしまい、
互いのフォローもモンスターへの攻撃も中途半端なものとなってしまっているように見えた。

それでもロマネスクとヒッキーは付き合いの長さからかアイコンタクトがかろうじてとれているのだが、
全く取れていないマタンキとはうまく連携が取れないでいる。
いっそのこと全員が声を上げて戦えばいいのだが、
もともとソロプレイヤーであるマタンキはそれが苦手で、
残る二人は互いとは声を出さなくても出来てしまっていたため声を出すのが逆に遅れてしまい、
思うように倒せずにいた。

(´<_` )「おい!ショボン!」

( ´_ゝ`)「どうする!」

事前情報よりも狼男は一匹多く現れ、兄者と弟者はそれぞれ狼男を一匹ずつ対応している。
そしてその足元にはそれぞれお供の狼がおり、ブーンやツンと同じ様に膠着状態と化していた。

( ・∀・)「あとはお前に任せる!」

兄者と弟者の攻撃は強力だが、連発には向かない。
つまり狼男に攻撃を仕掛け相手に大ダメージを与えることが出来るが、
その隙を狙って狼に襲われてしまい、追撃が出来なくなる。
かといって狼を狙えば狼男に隙を見せることになるためそれは出来ないでいた。

そこで活躍するのがモララーである。

モララーは主に兄者と弟者が戦っている『狼』と時折現れる蜂の相手をしていた。
空を飛ぶ敵に対して爪での攻撃は不利な様に見え、
実際短剣などリーチの短い武器を持つ者の中には苦手とする者も多い。
だがモララーの戦闘センスと経験の前では空を飛ぶというアドバンテージは無いに等しかった。
さらに言うならば、地を駆ける狼の素早さもとくに意味を持たない。

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243 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 21:59:11 ID:JCFDYpKw0

モララーの持つ戦闘センス。
それは『読み』である。

戦闘経験と瞬時の観察により相手の動きを読み次の行動を予測する。
飛び道具を持たない敵ならば、自分に攻撃を仕掛ける動きさえ読めれば攻撃は当たらないし、
逆にこちらの攻撃を当てることが出来る。
どんなに素早くても移動する先が分かれば避けることも追うことも出来る。

ショボンのように味方の動きも考え、更に指示を出すのは苦手だが、
視界に入った敵の数が片手の指の数ほどなら、敵の動きを読むのはショボン以上、
ギルド一と言われている。

( ・∀・)「ほい!ほい!ほい!」

そして今その能力は如何なく発揮され、兄者と弟者のサポートをしていた。

(´・ω・`)「キープ!」

( ^ω^)「了解だお!」

ξ゚⊿゚)ξ「ん!」

( ´_ゝ`)「早くな!」

(´<_` )「分かった!」

( ・∀・)「りょーかい!」

ショボンの声に反応してそれぞれにこたえる五人。

ショボンから出された指示は『キープ』
それは現状の維持。
今の状況で言うならば、本気は出さないで目の前の敵と対峙するということだった。

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244 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 22:00:31 ID:JCFDYpKw0

そしてそのショボンは何をしているのかというと、位置取りをしていた。

この戦闘エリアは、鬱蒼と茂った木々の中を長い道が半円のように大きく弧を描く形をしていた。
木々によって視界は邪魔され、入り口から入ってある程度歩かないと出口が見えない長い道。
そして敵は反対側から進んでくるため、道の半ばごろで敵と遭遇するのがほとんどだった。

今回はブーンが先頭でツンが続いて走って早めにエンカウントを行ったため、
半ばよりは出口寄りで戦闘が始まった。
そしてその中の一匹をショボンとモララーが誘導して道の入り口近くまで移動させ、
その一匹をロマネスク達三人に引き渡しつつ戦況を確認していた。

(´・ω・`)「ロマネスクさん!さらに入口の方へ誘導してください!
入口近辺は蜂もポップしないはずなので落ち着いて戦えます!
残りの敵はこちらで抑えるのでそちらには行かせません!」

( ФωФ)「分かったのである!二人とも!分かったであるな!」

(-_-)「うん!行くよマタンキ!」

(・∀ ・)「おいっす!」

攻撃を重ねる三人。
そして狼男と狼を入口の方へ追いつめた。

(´・ω・`)「そちらは頼みます!」

( ФωФ)「任せるのである!」

ロマネスク達の位置を確認した後に逆側、VIPの面々が戦う場所に走り出すショボン。

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245 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 22:01:49 ID:JCFDYpKw0

(´・ω・`)「兄者!5!重単範囲!弟者!3!単ノックバック!兄者と合流殲滅!
モラ!4!弟者の代わり!僕も入る!ブーンとツンは制限有りのキープアウト!」

腰に付けた円盤型の武器を手に取り、構えながら叫ぶ。

( ´_ゝ`)「おう!」

(´<_` )「よし!」

( ・∀・)「OK!」

( ^ω^)「わかったお!」

ξ゚⊿゚)ξ「遅い!」

ショボンの指示を受けて動きを加速させたブーン。
そしてそれを横目に見つつ、細剣の先を的確に相手に突き刺していくツン。

(´・ω・`)「1」

ショボンのもつ円盤が緑色に輝く。

(´・ω・`)「2」

簡単なモーションで円盤を投げるショボン。

(´・ω・`)「3!」

(´<_` )「うをりゃ!!!」

弟者が斜め右下から左上に大斧で狼男を切り上げると、一緒に衝撃波のような風が生まれた。

狼男はHPを減らされ硬直しつつ後退し、
足元の狼は旋風の様に吹き荒れた風によってその場に硬直する。

(´・ω・`)「4!」

(´<_` )「任せた!」

( ・∀・)「よいしゃ!」

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246 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 22:03:09 ID:JCFDYpKw0

兄者に向かって走り出す弟者。

弟者がいた場所に移動するため走り出すモララー。

その背中に向かって攻撃を繰り出そうとした蜂のHPは既にモララーによって赤に変えられており、
背後から襲うショボンの投げた円盤によって胴体を切り裂かれると、その身体をポリゴンに変えた。

(´・ω・`)「5!」

( ´_ゝ`)「こんちくしょ!」

大金鎚を頭上に掲げ、勢いよく振り下ろす兄者。

モーション的にかなりの大振りな為狼男に逃げる隙を与えてしまったが、
掠る様にその身体に当てることが出来た。

攻撃判定としては肩先のほんの少しに当たるに終わったが、
狼男のHPが目に見えて減る。

そして地面に穴を開けるような勢いで振り下ろされた大金鎚は、
その場所を中心に半径数メートルの衝撃波を生んだ。

その威力で硬直する狼男とお供の狼。

更に兄者も剣技後の硬直をしてしまうが、狼男を背中から巨大斧が袈裟懸けに切り裂いた。

( ´_ゝ`)

それを見てにやりと笑う兄者。

弟者が振る巨大斧は更に縦横無尽に狼男を切り裂き、十数秒後にその場から狼男を消した。

後方から兄者のもとに駆け寄ったショボンの右手には、手元に戻ってきた円盤が持たれている。
そしていち早く硬直が解けそうになった狼を、手に持った円盤で切り裂いた。

更にそのまま走り抜け、武器を片手剣に持ち直すとモララーの横に立って狼男と対峙した。

ショボンに切り裂かれた狼は、攻撃を受けたことにより戦闘目標の変更を起こし、
走り抜けたショボンを追おうと向きを変える。

しかしその間に兄者の硬直が解け、狼のその体に、大金鎚が振り下ろされた。



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247 ◆dKWWLKB7io:2014/03/30(日) 22:04:17 ID:JCFDYpKw0


本気を出したブーンのスピードは、狼男はもちろん狼の動きすらも軽く凌駕する。
しかしスピードと引き換えに重さは捨てているため、
武器の能力と各種ステータスアップアイテムによって攻撃力を上げてあるとはいえ、
掠る程度の一撃を与えたところでは狼男のHPを大きく削ることは出来ない。

しかし一撃で減らすことの出来るHPが少量だとしても、
二撃、三撃と回数を重ねることによって与えたダメージの総量は増え、
二匹の狼男と二匹の狼のHPを着実に削っていた。

数を重ねて敵を倒すブーンに対し、ツンは正確で的確な攻撃を敵に与えることによって、
敵を倒すことが多い。

今回は風の様に舞うブーンとそれに翻弄される四体のモンスターに対し、
ツンは隙間を縫うような一撃を与えていた。
普通ならばブーンの動きを邪魔することを恐れて攻撃の手を休めいてしまいそうだが、
ツンは気にすることなくモンスターを攻撃する。

信頼。
ブーンは自分に当たる様なミスはしない。
そして自分の戦闘指向や動きをブーンは分かっているはずだから、
躊躇して動きを鈍らせてしまう方がブーンの動きを阻害するだけでなく、
自分もしくはブーンを攻撃してしまう可能性が出てしまう。
だから自分は自分の出来る精一杯をする。

そして懸念。
今のブーンの動きが100%の本気ではないのは分かっているが、
それでもこの速さは精神を消耗する。
脳が、神経が焼切れるような痛み、終わった後の疲労感や倦怠感。
出来るだけ早くモンスターを倒すことによって、ブーンの負担を減らしたい。

そんなことを漠然と思いながら、ツンは攻撃を重ねた。



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