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( ^ω^)ヴィップワースのようです
1
:
名も無きAAのようです
:2013/10/20(日) 22:13:35 ID:mGY.ofts0
【 まとめ様 - Boon Romanさん 】
ttp://boonmtmt.sakura.ne.jp/matome/sakuhin/vipwirth.html
前スレ ( ^ω^)ブーン系創作板過去ログ(第9話〜第11話まで)
ttp://jbbs.livedoor.jp/internet/13029/storage/1339772726.html
前々スレ ( ^ω^)ブーン系創作板過去ログ(第5話〜第8話後 幕間2話まで)
ttp://jbbs.livedoor.jp/internet/13029/storage/1326485180.html
前々々スレ ( ^ω^)ブーン系小説板(第0話〜第5話途中まで)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/37256/1307375951/
2
:
名も無きAAのようです
:2013/10/20(日) 22:23:27 ID:mGY.ofts0
別に見るべき所もないのですが会話パートを投下させて頂きやす。
無駄に長くなりそうだった次話の冒頭に使う予定だった20Kbそこそこなので超短いです
気を抜いたら設定忘れてボロ出まくるので、よく見直してから投下します。
コーシー買ってくるので、日付が変わる前にはまた来ますね。
3
:
名も無きAAのようです
:2013/10/20(日) 23:00:28 ID:pb4zlgOoO
ω・)フムフム
4
:
名も無きAAのようです
:2013/10/20(日) 23:32:27 ID:oH5/k2yo0
おし待ってる
5
:
名も無きAAのようです
:2013/10/20(日) 23:56:39 ID:mGY.ofts0
窓の外、嵐に轟く雷鳴。
部屋の片隅で、私は膝を抱えながら震えていた。
突然の稲光が恐ろしい悪魔の影を照らした気がして、怖くなった私は走りだす。
暗い寝室を抜け出した先、温かい暖炉の前でくつろぐ両親のもとへ駆け寄る。
『……眠れないの?』
そう言って震えるこの身を抱き寄せると、背中を撫でてくれた。
それだけで、心の中に抱いていた不安がすぅ、と消えていく。
『大丈夫』
やがて温もりの中で、安心しきった私の意識はまどろみの中に溶け込む。
私へと向けられた両親の表情を強く思い出そうとした。
霞がかかったように、記憶の中の光景ははっきりと思い浮かべる事はできない。
だけど、そこには何よりも優しい笑顔があったのを覚えている。
*
6
:
名も無きAAのようです
:2013/10/20(日) 23:59:44 ID:mGY.ofts0
ξ゚ー゚)ξ「明けない夜はないのよ」
窓際で雨音に耳を澄ましていた私にそう言った、彼女の言葉。
それが印象深かったのは、どこかあの頃の母の面影を、彼女に重ねていたからか。
川 ゚ -゚)「なかなか、寝付けなくてな」
ξ゚⊿゚)ξ「身体に障るわ」
川 ゚ -゚)「……あぁ」
間断なく降り注ぐ雨音が、激しく屋根を打ち据える。
深く広がる夜の闇は、底が見えない程にも深い。
辛い出来事に荒んだ心の傷を癒やすには、とても長い時間が必要だ。
それでも明日というものは、必ず来る。
7
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:01:13 ID:nHlzWWMo0
だから今は、幼い頃のような恐怖はそこにない。
しばらく見失っていたものだった。
傍らに誰かが居てくれることの、安らぎ。
この景色を一人で見ていたら、きっと堪えきれなかっただろう。
ベッドの上で両膝を突いて祈りを捧げるツンの横顔を、クーは何気なく盗み見た。
ξ-⊿-)ξ「……」
真摯に、ただひたむきに祈る彼女の姿は、やはり堂に入ったものだと感じさせられる。
それが誰に向けられたものかと考えて、はた、とクーはある事を思い出す。
川 ゚ -゚)「――ツン」
8
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:06:31 ID:nHlzWWMo0
それは妖かしの木々から逃れた先の、洞窟での会話だったか。
感情をむき出しにしたクーに対して、彼女が立てた誓いの言葉。
いつでも反故に出来る、嘘偽りを述べても誰しもが気づかないような、口約束。
そんなものを、きっと馬鹿正直にも守り続けてきたのだろう。
だからこそ―――変わらない彼女に対してこそ、自分は変わらなければならない。
少しだけはにかみながら、クーはツンの瞳をしっかりと見据えて、言った。
川 ゚ -゚)「アンナと、パンゼル」
ξ゚⊿゚)ξ「それ……って」
9
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:07:48 ID:nHlzWWMo0
少しだけ間を置いて気付いたようだ。
目を剥いたツンの瞳の中に、きらきらと光が躍ったような気がした。
「私の、最愛の母と―――父の名だ」
そうだ、変わらなければならない。
そう思う事が出来たのは、彼女と彼らの、変わらない直向さに触れてしまったから。
自分にとって何より尊い二人に、その名も知らぬまま祈り続けてきたツン。
今この瞬間からは、彼女自身の言葉を届けてもらいたい。
本心を示す、他ならぬ信頼を寄せての言葉だった。
10
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:09:03 ID:nHlzWWMo0
( ^ω^)ヴィップワースのようです
第12話
「臥龍転生」
11
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:11:07 ID:nHlzWWMo0
― リュメ 【烏合の酒徒亭】―
一行がヴィップを発ってからおよそ9日。
ロア村に一泊を滞在した一行は、デルタに無事の帰還を報せてやる事ができた。
そこには、無論クーも一緒に。
聞けば片道で2日の道程であるヴィップとリュメを繋ぐ街道を、デルタは僅か2日半の間に往復したという。
それというのも、クーの捜索に割ける人員がいなかったために火急の助けを求めに走ったのだった。
その彼とは今、錆びれたランプのかすかな灯火の下で、思い思いの時を過ごせていた。
爪'ー`)「最近どうだ、町は」
12
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:12:40 ID:nHlzWWMo0
( "ゞ)「件の騒ぎで随分死んじまってなぁ……どいつも、暗い顔して歩いてますさ」
爪'ー`)「……悪かったな。お前一人に、押し付けちまってよ」
カードに興じる彼らは、一進一退の攻防をその表情に出さぬまま会話を紡ぐ。
長年に渡って培われた、完成された様式美さながらだ。
( ^ω^)「あいてて……まだあいつのパンチ効いてるおね。
ショボン、ここらへんにアザ残ってないかお?」
カタンの森で妖樹に追い込まれた際、湖の中に放り投げてしまった事から新調した装備も、
今では年季の入った風合いが出る程にあちこちで傷や凹みが見て取れた。
この分では次の依頼を終えた辺りには、また数百spもの出費で大赤字になるな、と、
皮の胸当てに馬油を塗りたくりながら、ブーンは愚痴をこぼす。
13
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:14:18 ID:nHlzWWMo0
(´・ω・`)「大丈夫、随分と男前になってるよ」
魔剣による一連の惨劇に終止符が打たれた後も、拠点を置く盗賊ギルドが先導する形で、
リュメ全体が騒動の終息に向けた各種作業に追われたそうだ。
フォックスの弟分でもあるというデルタとは、酒を酌み交わしながらよく話した。
ヴィップを訪れた時、そこでブーンと意気投合してパーティーを組んだということ。
少し前まで手配犯として扱われていたショボンと、聖ラウンジ司教の娘、ツンがそこに加わった経緯。
そして、紆余曲折あれど、今はクーをパーティーに迎え入れたという事。
白く濁ったデルタの瞳は職業柄の鋭さが見て取れたが、つっけんどんな所のない彼とは
フォックス同様に、驚くほど自然に接する事が出来ていた。
( "ゞ)「へっ、あんな良い女二人も引き連れて、兄貴も役得だな」
爪'ー`)y‐「馬鹿言うなよ……手ぇなんて出してみろ、男としての俺が斬り落とされる」
14
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:15:31 ID:nHlzWWMo0
( "ゞ)「俺としては、気の強ぇ女は嫌いじゃねぇんだがな。
お前さんはどうなんだ? もしかして、兄貴の知らねぇ所でもう一人と進んでんじゃ……」
(*^ω^)「い、いやいや……ツンとは別にそんな事は全く……」
爪'ー`)y‐「お? 満更でもなさそうだけどよ、二股は良くねぇなぁリーダー。
お前にはあの吸血姫さんがいるじゃねぇか。
ツンなんて、あの対極の立場だってのに」
( 从*゚∀从『───惚れた』 )
○
。
(;^ω^)「ちょ、冗談じゃないおっ」
( "ゞ)「聞くからに背徳的な臭いがするねぇ」
(´・ω・`)「……聞くも涙、語るも涙の話さ」
15
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:17:02 ID:nHlzWWMo0
旅の疲労と、道中での戦闘による生傷の数々。
ここリュメに辿り着いた時にはもう、5人ともがぼろぼろな状態だった。
今晩は宿も埋まっていたが、見るに見かねた店主が客室用にと残していた一部屋を貸してくれたのだ。
一日だけ休んだ後、すぐにヴィップへと戻って楽園亭のマスターに無事を報告せねばならない。
( ^ω^)「上は……喧嘩になったりしてないかおね」
爪'ー`)y‐「今は疲れてるだろうけどよ、朝方になったらまたおっぱじまってるかもな」
恐らくは複雑なクーの心中をおもんばかるところはあるが、今は新たな仲間を
迎え入れられた喜びの方が大きい事は、ブーン達の表情にも表れていた。
危惧する部分があるとすれば、互いに譲らない性分だという事ぐらいのものか。
16
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:18:04 ID:nHlzWWMo0
( ^ω^)「そういえばショボン、何だお? それ」
(´・ω・`)「……ん〜」
傍らで一冊の書物に目を走らせるショボンは、没頭しているのか返事は返せど、顔も上げようとはしない。
こんな暗さで細かい文字ばかり見ていたら目が悪くなる、とブーンの言葉にも耳を貸さないぐらいだ。
人の会話も話半分に聞き流してしまうほど、彼にとっては大事なものが書かれていると窺える。
( ^ω^)「どれどれ」
(´・ω・`)「……あぁ、これね……」
17
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:19:11 ID:nHlzWWMo0
防具の手入れもそこそこに、彼が熱心に読む書物の内容を覗き見ようと、
ブーンはショボンの傍らに立つと、その頁に視線を落とした。
それはブーンにとっては不可解な文字であり、細かくびっしりと書き込まれる難解なもの。
構わずに頁をめくるショボンは、それを止まる事なく読み進めては、次々頭に入れているようだが。
かすれて判別不可能となってしまった表紙には、ショボンのような畑の者達が好む、魔導書にも似た風格を感じる。
(´・ω・`)「僕にとっては死霊術の入門書、みたいなものかな……」
(;^ω^)「……おっ? お、おぉっ?」
18
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:20:10 ID:nHlzWWMo0
(´・ω・`)「あのね、誤解の無いように言っておくけど―――」
(;^ω^)「ショボン……それは、それだけは間違ってるお!
卑劣な真似をする奴を捕まえるために、自分もそんな道に身を堕とすなんて!」
(´・ω・`)「いや、だから―――」
(;^ω^)「ブーンはショボンにそんな事までして欲しくはないお……
それじゃ、あの時のいけすかない死霊術野郎と一緒の―――」
ばたん。
(#`ハ´)「―――お前らッ! うるせぇアルぞッ!」
その時勢い良くドアを開けたのは店主のシナーだった。
19
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:21:12 ID:nHlzWWMo0
爪;'ー`)(やっべ)
(;"ゞ)(お前ら、隠せ隠せ!)
卓上に置かれていた酒瓶を、慌ててシナーの目から遠ざけようとするのには理由がある。
店じまいの後、寝室へと下がっていった店主の背中を見送った後、盗賊二人が周囲の制止をよそに
気配を殺してカウンターの中へ接近を試みると、棚にある酒を2〜3本拝借してきた事から、
こうしてささやかな酒宴が行われる運びになったのだ。
(´・ω・`)(おっと)
(;^ω^)「……おっ」
(#`ハ´)「………」
爪;'ー`)(あちゃ〜)
20
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:22:49 ID:nHlzWWMo0
こういう場面に手慣れたフォックス達は、すぐにただ酒の酒瓶を椅子の下へと隠せていた。
だが、目配せの合図に反応の遅れてしまったショボンが座する卓上には、栓を空けたばかりの”緋桜”。
片時、シナーの視線は確実にそれへと注がれていた。
(#`ハ´)「……せめて、静かに飲みやがれアル」
(;^ω^)「おっ……」
だがシナーは、まるで気付かなかったかのように振り返ると、小声でそう言いながら寝室のドアをぱたりと閉めた。
ドアの向こうの気配がまた遠ざかった頃合いを見計らって、デルタが小声で囁く。
( "ゞ)「……ありゃバレバレだったな」
21
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:23:57 ID:nHlzWWMo0
爪'ー`)y‐「ま、その辺は盗賊ギルドの顔でよ、後からフォロー頼むわ兄弟」
( "ゞ)「しゃあねぇ」
(;^ω^)「はぁ……勝手に酒飲んでるのによく怒らなかったおねぇ。
楽園亭だったら、はげちゃびんのマスターにぶっ飛ばされてるところだお」
爪'ー`)y‐「そりゃあそうよ。なんたって俺らは正義の盗賊。
得てきた信頼ってもんがあんだよ」
( ^ω^)「確かに、盗賊が大手を振って歩いてる町なんてのも珍しいかも知れないお」
22
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:27:46 ID:nHlzWWMo0
シナーも解っている。
情報収集やその提供、真っ当な報酬が発生するそれらの仕事以外に、この町の盗賊ギルドが主とするのは盗み。
日陰者であるはずの存在である彼らが、しかしリュメでは必要とされている者達なのだということが。
ごく一部の富裕層と、多くの貧困層との軋轢が激しいこの町では、彼らがその帳尻合わせを請け負う。
富を分け与える、仕事を斡旋するなど、例として上げればそこそこ義賊の名に恥じないだけの活動を行っている。
日頃のそれも信頼の理由の一つだが、先の連続殺人の一件もある。
ギルドが事件解決に一丸となって当たった事は、この町に住み暮らす多くの人々の記憶にも新しい。
今でも、親子ともが犠牲者となってしまった少女と母親の自宅前には、献花の絶える事がないという。
(#^ω^)「おっ、そうだお。ショボン、忘れちゃいないお。
どういうことか話を聞かせてもらおうかお」
(´・ω・`)(やれやれ……忘れてくれればよかったのに)
23
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:29:01 ID:nHlzWWMo0
爪'ー`)y‐「けどよ、さっきのは俺もちょいと気になるぜ。
死霊術師なんてクソったれだと思ってるのは、一番がお前さんだろうによ」
(´・ω・`)「それはもちろんさ」
フォックスの言う通り、ショボンは死霊術師に対して対抗心を燃やすべき立場。
賢者の塔で共に研鑽を積むべき間柄であった天才、モララー=マクベイン。
人の生命を媒介する証拠品を発見し、その本性を暴いた事からショボンは彼によってはめられた。
現在ではモララー自身もギルド暗部数名を殺害し逃亡している罪で重要手配犯として触れ回られているが、
その後アークメイジとの対話を通して、ショボンは自らの手で嫌疑を晴らさねばならない立場になったのだ。
それだけでなく、アルバの村で罪なき人々の命をいたずらに弄んだ術者もそうであった。
彼ら禁忌を侵す者たちとは、ショボン自身が因縁に引き寄せられているかのように縁深い存在である。
24
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:29:48 ID:nHlzWWMo0
(´・ω・`)「敵を破るためには、まず己も敵の手札を知っておく必要がある。
あくまでそのための手段さ。内容は、心底嫌悪感を抱くものだけれどね」
(*^ω^)「なんだ、そういうことかお……」
ほっと胸をなでおろした様子のブーンを前に、激しく誤解を受けたショボンはふぅ、と溜息をついた。
ようやくの理解を得られたものの、至極単純で愚直なその思考は、時々彼自身を心配させられる。
「あまり人に見せられたものではないが」
そう付け足して、大仰な動作で肩をすくめた後にショボンは言葉を続けた。
(´・ω・`)「これは、かつて人の身にレイスを降霊させて種を逸脱しようと試みた、
随分と行動力のある狂人が遺した研究成果―――その、写本だよ」
25
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:31:42 ID:nHlzWWMo0
( ^ω^)「そんなことしたらどうなっちゃうんだお……レイスって、死神だおね?」
実際に死神といえる存在と対面した事があるのは、この場にブーン一人。
一般的にはレイスとは負の感情が生み出す強力な悪霊として恐れられている。
だが彼にとって馴染み深い死神というのは、人間が死後に就くかも知れない職業としての方だ。
(´・ω・`)「それが出来たのかは、結局は明かされないままだね。
全くの未知だからこそ、その先に何があるのか僕も気になるよ」
爪'ー`)y‐「ふぅん。
話に聞いてみるだけなら、興味は惹かれるかもな」
(´・ω・`)「正直、術の可能性については僕自身、興味を惹かれる事実を否定出来ない程だ。
のめり込んでいく術者が居るのも、確かに頷ける」
26
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:33:45 ID:nHlzWWMo0
人を殺める。
最大の大罪にして、禁忌。
小心者であれば背徳感に耐え切れず、自ら命を絶つというのもままある話である。
だがその行いに高揚し、それにこそ愉悦を感じる人種も確実に存在する。
決して目を背ける事の出来ない、傲慢で、身勝手な人の性。
それは、本質としては悪なのだ。
( ^ω^)「……ブーンには、理解しがたいお。
人が自分の……ましてや、他人の命をいじくるなんてことは」
(´・ω・`)「僕もそう思う。
だが、そうして禁忌を侵さねば辿り着けない領域。
困難で、危うい道程であるがゆえに、人はその先に大きな価値を求めるんだろう」
27
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:34:52 ID:nHlzWWMo0
( ^ω^)「生きている、そう思えるだけで満足出来る人もいるのにお。
不老不死でも求めたのかおねぇ、その本のやつは」
(´・ω・`)「近い所だと思っているよ―――だが恐らく、この手法ではそれは不可能だともね。
今はまだ僕も術の手順や、必要とする道具に関して読み進めている最中だけれど」
( ^ω^)「例のモララーに関しては、期限の事もあるし放っておく訳にもいかないおね……
クーも加わった事だし、そいつの足取りが掴めたなら皆でぼっこぼこにしてやるのにお」
(´・ω・`)「大陸随一の隠蔽魔法の前には、誰一人が彼を見つける事など出来はしないさ
だからこそ、モララーが熟読していたこの書に、何かヒントがないかと思うんだ」
爪'ー`)y‐「目的が分かれば、今後立ち寄りそうな所でヤマを張る、と」
無言で彼の瞳を見据えて頷いたショボンに対して、フォックスは頭を振って肩をすくめた。
28
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:37:19 ID:nHlzWWMo0
魔術師ギルドのみならず、各街々でお尋ね者として触れ回られて、はやニ月を過ぎ―――
ヴィップ近隣に身を潜めているのならばまだ探しようもあるが、遠方の田舎町では手配書が
回っていない場所も決して少なくはない。
騎士団の目をも掻い潜る相手。
それを見つける事は限りなく困難だと、フォックスはそう考えているようだった。
爪'ー`)y‐「正味の話……本一冊からそこまで割り出すのは無茶だぜ。
誰もそいつの思考までは読めねぇさ、お前さんのおつむの良さでもな」
(´・ω・`)「それはそうなんだが……監視の目を始末してまで動くからには、必ず何か意図があるはずだ」
爪'ー`)y‐「やっこさんがその書にえらく感銘を受けて、
どでけぇ事を起こそうって誇大妄想を抱いたってか?」
29
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:38:41 ID:nHlzWWMo0
(´・ω・`)「僕にはそう感じるよ。
意外と、モララーと僕とは似たもの同士な気がするからね」
( ^ω^)「ショボンはそんな奴とは全然違うお」
(´・ω・`)「……識ることだ」
読みかけの魔導書を膝下におくと、ショボンは自分の頭を指さし、告げた。
(´・ω・`)「知識に対する貪欲なまでの欲求……子供のように旺盛な好奇心と言い換えてもいい。
その点において僕とモララーは、それを強く抱いている者同士だろう。
彼が注釈を付けて自分なりの仮説や、今後実行に移そうとしていた内容などが
書に直接書き加えられていたのも見る辺り、随分といれこんでいるようだったからね」
30
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:39:54 ID:nHlzWWMo0
(´・ω・`)「求道の先―――その場所に辿り着いた時、果たして何が見えるのか。
今の奴には、そこまでの道筋というものも描いているように思う。
外道の法に手を汚しながら、それを恥ともしない感覚こそ、僕には無いがね」
( ^ω^)「人の身体に死神を降霊したとして……
それはもう、人じゃないおね」
(´・ω・`)「……そうだね。
あるいはこの研究を土台に、更なる悪質なものへ昇華させるつもりかも知れない。
多くの生命を馬鹿げた悪戯のために用いる愚劣な研究に、価値など見いだせない。
だが他への応用をとまず考えた僕の思考を、モララーは先んじていると思うんだ」
爪'ー`)y‐「そいつがショボンの言うとおりの野郎だとしたら、破滅的に歪んじまってるなぁ」
31
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:41:09 ID:nHlzWWMo0
( ^ω^)「自分のわがままで他人の命を奪うなんて、絶対に許せないお」
(´・ω・`)「あぁ、だからこそ絶対に捕まえなければならない。
必ずや探り当てるよ、奴の目的と足取りを」
( "ゞ)「……なんか、お前さんがたも随分と抱え込んでるみてぇだな」
(´・ω・`)「色々とね」
”不本意ながら”
深くため息を吐いたショボンの仕草から、そう言いたげな様子がきっと伝わっただろう。
自分たちでこなした依頼の分だけ、稼ぎになる。
そんな分かりやすい構造で成り立っている冒険者稼業は、実に気楽ではある。
働く時は働く、そうでない時は決まった宿で飲んだくれていてもいい。
32
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:47:52 ID:nHlzWWMo0
だが富や名声を得るという漠然とした目的だけでは、続けていられない過酷な職業でもある。
明確な目的、強い意思というものがそこに通っていなければ、一月と持たないのが現実だ。
各々なりの事情というものもある。
お互いの考えのすり合わせをしっかりと行っているパーティーでさえ、絆を深める以前に
解散してしまう事の方が多いはずだ。
その中で、ブーン達と組んでやってきたこれまでは、確かによくやれていた。
これからも、ずっとこうして行きたいという感情も生まれるほどに。
自身は時に追われるその最中にありながら、新鮮な体験に触れ、そこからの成長もあった。
各々が夢や理想を抱き、恐らくは複雑な感情を内包しているこのパーティーにあって、
自分は少し違う立ち位置にあるのだと、ショボンは会話のなかで再度己を戒めた。
縛られている存在だという事を忘れ、願望のみに自分を委ねる訳にはいかないのだと。
33
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:48:44 ID:nHlzWWMo0
(´・ω・`)(その後には……またすぐに旅立てるといいんだけど、ね)
仲間達は付いて行くと言い出すだろうが、その時には、きっと一人で決着をつけなければならない。
助力が見込めない訳ではなく、どうにも説明がし辛いこの感情は、意地だろうか。
いずれ離脱していく身ではあるが、今のような酒盛りの場は好都合だと思った。
各々の立ち位置を明確にしておけば、何かの拍子にパーティーが瓦解する心配事も減るからだ。
絆を深め、結束を強める事で跳ね除けられる逆境もある。
重要であるだけに、先にクーとツンが休んでしまったのは少しだけ残念だった。
あの二人が険悪でないか、まだ少しだけ心配に思っていたからだ。
( "ゞ)「兄貴なんか、そういうのはこれっぽっちもねぇでしょ」
34
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:50:09 ID:nHlzWWMo0
爪'ー`)y‐「馬鹿野郎、俺はうまいこと一財産当てて、この街ででかい面してる
ゴードンの野郎の食い物にされてるお前らの暮らしを支えるためにだな……」
( "ゞ)「……ま、今までどおり気ままにやっててくれりゃあいいさ。
当分は俺がこの街仕切らせてもらうからよ、安心して冒険者稼業楽しみな」
爪;'ー`)y‐「ま、まるで俺が遊び呆けてるみてぇじゃねぇか。
俺は貧困にあえぐ皆のためにだな……」
( "ゞ)「お? なら今日は”お頭”の懐から、ギルドの運用を賄う上納金を徴収してもいいんですかい?」
爪;'ー`)y‐「き、今日はちょっとな……またにしてくれ。
ここんとこ長旅続きで、儲けは旅費に消えてんだよ」
( ^ω^)(大部分は酒代と博打じゃないのかお?)
( "ゞ)「へっ、ならどえれぇ山を掘り当てた時は、本当に頼むぜ」
35
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:51:28 ID:nHlzWWMo0
爪'ー`)y‐「あぁ、期待しないで待ってろ」
デルタの前に親指を突き立てて、陽気に振る舞うフォックス。
初対面であれば、彼が口にする言葉はそのどれもが軽薄なものに聞こえるだろう。
しかし、彼と二晩飲み明かしてみればきっとその認識は変わる。
義に厚い男であり、飄々とした風を装いながら、その実様々な想いを巡らせているのだと。
深い所に何かを抱え込んでいるからこそ、それを周りには見せまいと振る舞うように。
(´・ω・`)「二人は本当の兄弟のようだね」
( "ゞ)「そりゃ付き合い長ぇし―――
ま、外見こそ似ても似つかねぇがな」
36
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:52:42 ID:nHlzWWMo0
爪'ー`)y‐「かれこれ12、13年の腐れ縁よ」
( "ゞ)「何言ってるんだよ……”デルタはぼくが守るからな!”とか言ってくれたじゃねぇの」
(;^ω^)「おっ? フォックスが?」
爪;'ー`)y‐「……ばっ、ばっきゃろ! ガキの頃の話だろうが!」
( "ゞ)「いやいやいや、確かに言ってたさ。
貧民窟から抜け出す時に、俺の手を引きながらな」
爪;'ー`)y‐「ったく。
昔の話だろうが、昔の」
照れ隠しをするように、フォックスは卓に置かれたグラスを一気に底まで飲み干した。
幾度か酒飲み話の話題にのぼった事のある、彼の身の上話。
37
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:54:09 ID:nHlzWWMo0
毎度のようにすぐに当たり障りのない会話を振られて避けられていた事から、
本人にとってあまり触れて欲しくは無い部分なのだろうかと危惧してしまい、
それほど踏み込む事の出来なかったブーン達だった。
だが、彼の幼少時をあっけらかんと話すデルタが相席している今は、好奇心の方が勝った。
(´・ω・`)「君たちのご両親は?」
( "ゞ)「俺の方は、親父らしき男がくたばったのを目にしたがね。
兄貴の方は―――」
爪'ー`)y‐「あん? 最初からいねぇさ」
( ^ω^)「……おっ」
38
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:55:24 ID:nHlzWWMo0
貧民窟。
呆けも始まった余命幾ばくも残されていない老人や、育てる事が困難で捨てられる幼子。
あるいは、どこへ行ってもつまはじきとされる浮浪者達が集い暮らす、劣悪な環境下の集落。
貧しい農村などでは、食い扶持を減らす為に子供を間引くなどよく聞く話だ。
フォックスがそれと同じ、両親の顔も知らずに育った捨て子であったというのは初耳だが。
糞尿の悪臭と汚泥に塗れ、草や木の根を食み暮らす日常は、彼ら自身にとって遠い昔の事なのだろう。
( "ゞ)「なんでこんな暮らしをしなきゃいけねぇんだと、おてんとさんを恨んだ事もあったっけな……」
爪'ー`)y‐「そうさなぁ……けどよ、生き抜くのに必死で忘れちまうんだ。
そんなことは、そのうちな」
( ^ω^)「……」
39
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 00:57:02 ID:nHlzWWMo0
父母との死別を経験したというクーは、悲しい幼少時代を過ごしたと言わざるを得ない。
しかし、両親が愛情を注いでくれたであろう彼女とは、また事情が違う。
フォックスやデルタには、最初からそんな機会すら与えられなかった。
もっとも親しい間柄であるはずの血縁者と、ただ一つの想い出も存在しない。
それを考えれば、彼もまた同じように悲しい子供であったのだろう。
何かかける言葉はないか。
探してみたブーンではあったが、考え込んだ挙句に出てきたのは一言だった。
( ^ω^)「ブーンは、果報者だお」
ブーンなりの、精一杯の気遣いがそれだった。
辺鄙な片田舎で、愛情たっぷりに育てられてきた。
生い立ちに恵まれたブーンには、いくら仲間の心情を汲み取ろうとしても共有する事は出来ない。
過ぎ去った時間を経て形成されてきた、今のフォックスとの想い出を作っていく事しか。
40
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 01:02:01 ID:nHlzWWMo0
過去があるからこそ、今の彼があるのだと、仲間たちは想う。
逆境を跳ね除けようという意思を持つ、周囲をとても明るく照らしてくれる男の、今が。
爪'ー`)y‐「当たり前だ。
お前みたいに人生が楽しいです、みたいな面した奴はそういねぇ」
笑って言ったフォックスにデルタが同調して、今度はブーンへと話題が振られた。
( "ゞ)「で、ブーン。
お前は、両親はいるのか? 兄弟とかよ」
( ^ω^)「ブーンは一人っ子だお。
母さんも居たけど、元々身体が弱かったからお……」
( "ゞ)「そうかい。
頑丈に産んでくれたおふくろさんに、感謝しねぇとな」
( ^ω^)「だお。父さんもブーンが生まれる前までは傍にいたからおね。
そういう意味では、ブーンはやっぱり果報者なんだお」
41
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 01:04:41 ID:nHlzWWMo0
爪'ー`)y‐「そういえば、親父も冒険者だったっけな?」
( ^ω^)「……」
( "ゞ)「なるほど」
フォックスの問いかけに、ブーンは卓へと立てかけた剣の柄を無言で彼らの前に掲げた。
握りの下部には、粗削りではあるが特徴のにじみ出た、龍の彫刻が模られている。
日頃から肌身離さず帯刀する彼の姿から、この剣が彼に遺されたものだという事にはぴんと来たようだ。
( ^ω^)「父さんには会った事がないんだお。
この剣だけが、ブーンを産んで間もない母さんの所に帰って来たんだお」
(´・ω・`)「最後は、冒険の途中で?」
( ^ω^)「いや」
42
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 01:05:34 ID:nHlzWWMo0
頭を振ったブーンは、少し考え込んでいるようだった。
どちらなのだろうと、それを選びあぐねているように。
( ^ω^)「けど……多分、そうなのかも知れないお。
母さんがますます弱っちゃったのも、父さんが死んだ報せを受けてかららしいお。
それでも―――元々身体が弱いのに、ブーンを産んでくれたんだお」
爪'ー`)y‐「そりゃあ、最後に一目でも旦那に会いたかっただろうな。
親父さんもさぞ無念だったろうぜ」
( ^ω^)「でも、母さんとは物心つくまで一緒に過ごせたお。
だけど父さんの事は……他所に女でも作ってるんじゃないかと、まだふんぎりがつかないお」
( "ゞ)「かっかっか。
もしそうなら、一発ぶん殴ってやんねぇとな」
43
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 01:07:01 ID:nHlzWWMo0
( ^ω^)「ま、それは冗談だけどおね。
依頼を受けて洞窟に行って、そこで行方が知れなくなったんだお。
確か……ヒガンだとか何とか」
(´・ω・`)「あぁ、ヒガン鍾乳洞だね。
ヴィップから北に4日程の所にあると思う」
( ^ω^)「そうそう、一度立ち寄ってみたいと思ってるんだけどお。
なんでもそこで、底なしの地底湖に落ちちゃったっぽいんだおねぇ」
爪'ー`)y‐「なんつーか……」
事の真偽は分からないらしい。
だが危うく、ドジだな、と言いかけたフォックスが口をつぐんだ。
ぽりぽりと頭を掻いているブーンもまた、そう思っているようではあるが。
ただ、彼の父親が騎士団からも腕を見込まれた冒険者であったというのは、この場では明かされない事実だった。
44
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 01:08:03 ID:nHlzWWMo0
(´・ω・`)「ヒガンの鍾乳洞には、昔から龍伝承が残っているね」
( ^ω^)「おっおっ、そうなのかお?
父さんも龍好きだったらしいお」
龍とは、決して伝説とされるような幻想の生き物にあらず。
この大陸に実存が確認され、比べてしまえば人間など取るに足らぬ最強の生物。
人も、妖魔もその前では分け隔てなく、龍の腹を満たす餌でしかない。
強さ故の気高さ、それ故の孤独。
龍とは何を想い、何をして生きていくものか。
並び立つものなき存在への畏怖は、いつしか人々にとっては半ば憧れのように刷り込まれていった。
45
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 01:09:35 ID:nHlzWWMo0
(´・ω・`)「航海の手段が確立される以前、大陸の大部分は自然に閉ざされた未開の地だった。
そこに遠隔の離島からも人が集まるようになったのが、ヒロユキ=トゥーランドの伝説さ」
( ^ω^)「それはブーンも聞いた事があるお。
ツガなんたらっていうとんでもなく凶悪な龍を倒したっていうのが、
そのたった一人の男だってお」
爪'ー`)y‐「現実的に考えてみりゃあ分かるわなぁ。
たった一人であんな馬鹿でかい化物、倒せるワケがねぇってのに」
(´・ω・`)「さすがにおとぎ話だと笑う人も多いけどね。
その戦いの舞台となったのが、ヒガンの洞窟だと言われている。
あの辺りでは実際に目撃談もあるらしいよ」
( ^ω^)「今でも、そこには龍が居るのかお?」
46
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 01:11:43 ID:nHlzWWMo0
(´・ω・`)「今はどうかな……だけど、次代の龍がいないとも言い切れない。
なにせ龍とは、千年以上に渡り生き続けるとも言われる。
最後の時には己の叡智を、次の世代に託してね―――」
爪'ー`)y‐「あれって繁殖するのか?
今やせいぜい一匹や二匹しかいねぇんじゃねぇか?」
(´・ω・`)「繁殖の手段が交配のみ、と見られていたのはつい最近までの話さ。
学会を賑わすとんでもない発表が、僕ら魔術師の間でも一時話題になってね」
爪'ー`)y‐「へ? ガキ生むんじゃねぇのか? どうやって増えるんだよ」
(´・ω・`)「それなんだが……生命としての在り方が、僕達人間には考えられないものなんだ。
確かに胎内にて子を宿す、だけどそれは、また姿形を変えた自分自身でもある。
”転生”―――それが、正しいのかな」
47
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 01:13:18 ID:nHlzWWMo0
( "ゞ)「ほぉ、たった一匹で受胎しちまうってのか? どういう仕組みだそいつぁ」
(´・ω・`)「それについては、簡単に解ってしまえば苦労はないよ。
多くの探検家や学士達が生涯を捧げた対価に、爪の垢ほどの僅かずつ明かされていく代物さ」
( ^ω^)「……なかなかにロマン溢れる生き物だと思うお。
大昔は龍を操って戦う国だとかもあったんだって、絵本で見たお」
(´・ω・`)「それこそが、いわゆるおとぎ話だね。
あのような存在を、誰が縛れるはずもない」
爪'ー`)y‐「俺も聞いた事があるような気がするけどな……まぁ、話盛ってるとは思ってたけどよ」
(´・ω・`)「悪龍ツガティグエに生贄を捧げ、それに守られていたという小国の話だろう」
48
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 01:19:22 ID:nHlzWWMo0
(´・ω・`)「”龍の国”の話を元に物語として美化したものや、史実を書き連ねたものも現存する。
気高く孤高に生きるという事は、裏を返せば、我が強くわがままというところかな。
人間などに従う程、龍とは気の長い生き物じゃあないさ」
龍の国、かつてそう呼ばれた国は滅んだ。
ツガティグエの力を盾に増長したその国は、近隣諸侯に怒りを振りまいたという。
そうして、英雄ヒロユキ=トゥーランドがツガティグエと戦った機に攻め込込まれて。
それゆえ彼らは自らの手で滅びたというのが、多くの人々の認識ではあるようだ。
自らの手に余る力を持ちながらも、人はより以上のものを求めてしまう。
その強欲がなければ今日までの文明の発達がないのもまた、事実ではあるのだが。
49
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名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 01:20:29 ID:nHlzWWMo0
( ^ω^)「共存してるから、思い上がっちゃったって訳かお。
龍の気が強い所も嫌いじゃないけど、やっぱり怖いおね」
爪'ー`)y‐「そいつは、今ニ階で寝息を立ててる誰かさんのことか?」
(;^ω^)「ばっ……ちっげぇお!」
( "ゞ)「ごちそうさんとだけ言っとくぜ。
けどまぁ、その手彫りはよく出来てるよな……いい腕してるじゃねぇの、親父さん」
もの言わぬ小さな龍の造型は、決して緻密とは言えぬものの、その粗さが猛々しさもまた表現している。
当初の持ち主であったブーンの父親の目には、そう映る存在であった事が、ありありと窺えた。
爪'ー`)y‐「龍とばったり出くわしたのかもな、ブーンの親父さんは」
50
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 01:22:01 ID:nHlzWWMo0
( ^ω^)「案外、そうかも知れないおね」
なかなかに精巧な、長剣の柄にあしらわれた彫刻。
それを施した父親が伝えようとしたものは、何なのだろうか。
もしかすると、意味自体がないのかも知れない。
それらを尋ねようと、ブーンはときどき、仲間達にも内緒で手紙を書く事がある。
宛名が無く、決して届くはずのないその手紙は、自分の父親へと宛てられたものだ。
”こっちは元気でやっている”
”母さんはこんなことを言っていた”
”今、父さんは―――”
いつも書きかけに終わり、途中でペンを放り出す。
書き終えてしまえば、父親がもうこの世を去ってしまった事実を、認めてしまうようで。
だが、きっとそうなのだろうと考えている自分も、確かに存在していた。
51
:
名も無きAAのようです
:2013/10/21(月) 01:24:11 ID:nHlzWWMo0
(´・ω・`)「もしかして、父親を探すためにかい?」
( ^ω^)「……」
ショボンの問いかけの意味は、ブーン自身がよく解っている。
冒険者になった意味、そして、こうして旅を続ける理由についてだ。
たった一人、サルダの村を後にしたのは、夢を抱いたからだけではない。
父親の後を追うようにして、もしかすると、どこかで生きているのではないかと。
だが、今はあの時と少し違う考えだった。
( ^ω^)「ちょっと違う、かおね」
爪'ー`)y‐「ヴィップの近くなら、親父さんのいなくなった場所にもすぐ寄れんだろ」
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