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( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ
773
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:09:00 ID:.nLUMdgE0
それを無視して、外へ。
廊下にて、デレは立ち止まった。
自分の拍動を確認する。
何も以上は見られない。
声だってもう聞えてこない。
ζ(゚ー゚*ζ「魔王さーん」
逸る気持ちを抑えて呼びかけてみる。
返事はない。
ζ(゚ー゚*ζ「ばーか」
再び罵倒してみるも、やはり返ってくる言葉は無かった。
いつもならすぐに反応して、攻撃してくるのに。
774
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:09:59 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*ζ「……本当なんだ」
デレは笑みを浮かべて、そう呟いた。
モララーさんの予想通りだった。
魔王の声はデレの部屋の中でしか聞えてこない。
そしてあの攻撃もまた、デレの部屋の中だけでしか行えない。
能力を発揮できる場所が限定されているのだ。
ζ(゚ー゚*ζ「ただーいま!」
今度は元気よく言いながら、デレは自分の部屋に戻った。
すぐに舌打ちが聞こえてくる。
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの? ちょっと外にいる人に用があったんだけど
どうしてすぐのお話やめちゃったの?」
目を細めながらデレは言った。
775
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:11:01 ID:.nLUMdgE0
「へえ……誰か来てたの」
ζ(゚ー゚*ζ「見えなかったの?」
「!! …………ああ、見逃しちゃってた」
言葉の前に空白があった。
それがはっきりわかったから、デレはますます笑みをこぼした。
ζ(゚ー゚*ζ「魔王さん、急に馬鹿にしちゃってごめんね〜」
軽やかにいいつつ、自分の席へ向かう。
ζ(゚ー゚*ζ「これからは仲良くしましょ!」
「あ、ああ……」
躊躇いがちの返事。
それっきり、声は聞えなかった。
776
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:11:58 ID:.nLUMdgE0
デレは声を出さず、ただその場で手足をばたばたさせた。
とにかく嬉しくて仕方なかった。
この煩わしい魔王を出し抜くことができたのだから。
デレは急いで紙にペンを走らせた。
魔王に対する実験結果を書くために。
魔王はおそらく声、つまりは音の能力を持っている。
ゆえに目は見えない。だから紙に何かを書いていてもばれやしない。
部屋を出てしまえば魔王の声も届かない。
だから、この部屋を避けてモララーと話せば問題ない。
あの身体を襲ってくる攻撃も音を応用したもの。
モララーはすでに、その攻撃についてひとつの仮説を立てていた。
いまだに人間の科学力が残っているテーベでの噂話。
長いこと稼働している機械の傍に立っていると、急な頭痛や吐き気に襲われるとのこと。
その原因は、機械が発している微弱な音の振動だと言われている。
攻撃をしてくる最中に部屋を出たら、攻撃はやんだ。
そのことから察するに、この攻撃は微弱な音波を応用したものに過ぎないのだろう。
黙々と紙に事物を書き込んでいく。
モララーに言われた通りに。
777
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:12:59 ID:.nLUMdgE0
ミセ*゚ー゚)リ「王女様!」
突如として扉が叩かれる。
ミセリの声が聞えてきた。
ミセ*゚ー゚)リ「ちょっとご用があるのですが!」
思わず舌打ちしてしまう。
なんて間の悪い従者だろう。
ζ(゚ー゚*ζ「ごめん、もう少しまって!」
この紙を隠さなければ、そう思った。
ミセリは魔人である可能性が高いのだから、魔王と繋がっているかもしれない。
もしかしたらこの突然の訪問も、自分を邪魔しに来たのかも。
机、そして棚を見回す。
ζ(゚ー゚*ζ「あ」
見つけたのは、使っていない鍵つきの棚。
何かしらの重要な物を入れる場所だが、いまだに使ったことはなかった。
778
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:13:58 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*ζ「ここへ……」
デレは鍵を取り出しそれを引き出す。
埃もなにもかぶっていない綺麗な空間。
そこへ紙を押し込める。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、そうだ」
デレが次に見たのは、自分の日記帳。
あそこにはモララーのことが書いてある。
もしミセリがこれをみたら、魔王に告げ口してしまうかも。
そう思って、デレはその日記もまた棚に押し込んだ。
ミセ*゚ー゚)リ「王女様!」
ζ(゚ー゚*ζ「いきますよー」
デレは確かに鍵を回し、城をかけた。
そしてその鍵を、重たいカーテンの一番奥にある留め具にかけた。
以後、その鍵つき棚はデレの日記と秘密の手紙の隠れる専用の空間となった。
779
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:15:00 ID:.nLUMdgE0
数時間後
( ・∀・)「そうか、当たってましたか……」
お城のとある物陰にて、デレはモララーに実験の結果を伝えた。
ζ(゚ー゚*ζ「はい!」
デレは目を輝かせて言う。
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとうございます、何から何まで」
デレは深々と頭を下げ、謝辞を述べる。
モララーは手を前に出して首を横に振った。
( ・∀・)「まだ魔王の特徴がわかっただけです。
正体についてはわからないまま」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、探してくれるんでしょう?」
(*・∀・)「それは、もちろん!」
モララーは力強く胸を叩いた。
(*・∀・)「そうしてあなたを護衛するのが私の役目ですし」
780
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:16:00 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*ζ「……嬉しい」
そう呟くと同時に、デレは頭をモララーの胸板に寄せた。
(;・∀・)「ちょ、ちょっと王女!」
慌ててモララーが手をあげ、デレの肩を押そうとする。
ζ(゚ー゚*ζ「やめて!」
急いでデレは叫んだ。
モララーの動きが止まる。
ζ(゚ー゚*ζ「……こうさせて」
今度は小さな、静かな声。
モララーの溜息が、その頭にかかった。
(;・∀・)「やれやれ、こんな姿、国王に見つかったらえらい目にあいそうだ」
そうぼやいて、ゆっくりと身を後進させていく。
建物の壁に寄り掛かった。
781
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:16:59 ID:.nLUMdgE0
モララーの手がデレの肩から離れる。
一旦空中で止まり、それからデレの背中へと回った。
デレはその感触が伝わるのをひたすらに待っていた。
その瞳が潤みだして、彼女は思わず目を閉じる。
また自分は泣こうとしている。
前にも涙を堪えたことがあったなと、そのとき思った。
でも、もうそれがいつなのかも思いだせなかった。
やがて今はもう泣いてもいいのだと気付き、感情を堰き止めるのをやめた。
涙も、声もそのまま
何も隠さずに
自然にそのような行いをするのは久しぶりだった。
デレの思考がまっさらになっていった。
ただ温かな感触だけを感じて。
☆ ☆ ☆
782
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:18:00 ID:.nLUMdgE0
魔王の能力が判明した後、デレは国王に手紙を見せた。
(;´・ω・`)「…………」
国王の部屋で、彼は冷や汗を流しながらそれを読んでいた。
後日、デレとショボンはお城の外にて向かい合い、状況を理解し合った。
ζ(゚ー゚*ζ『それじゃ、やっぱりお父様は私を人質に脅されていたのですね』
(´・ω・`)『ああ、そうだ』
声を聞かれるのを防ぐために、筆談で会話した。
ζ(゚ー゚*ζ『それじゃ、これでもう大丈夫だとわかったでしょう。
私はあのお城から出ていきます。そうすればもう魔王に襲われることもない。
お父様だってあいつを追い出すことができますよね?』
文章を見せたところ、ショボンは残念そうに頭を垂れた。
783
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:18:59 ID:.nLUMdgE0
(´・ω・`)『残念ながら、すでに時間が経ち過ぎている』
ζ(゚ー゚*;ζ「?」
首を傾げ、デレはショボンの言葉の続きを待った。
(´・ω・`)『最近、世界のニュースが届かないとは思わなかったかね?』
ようやく返ってきた言葉が質問であり、いまいち要領を得なかったため、デレは訝しんだ。
ただ、ニュースが届かないことは事実であったので、首を縦に振った。
(´・ω・`)『実はね、この国の北にあるマルティア国と、西にあるテーベ国の雲行きが怪しいからなんだ』
(´・ω・`)『魔人の力を利用することに長けたマルティアと、人間の力を今だ信じてやまないテーベは
その根本から対立するところの多い国だった。だから、近いうちに折衝があるのではと噂されてもいる。
その間に位置するこの国が、内政で動揺したらどうなるか』
(´・ω・`)『基盤の弱まっているこの国に、両国の軍隊が押し寄せてくるだろう。
ただ戦争用の地力を強めるために、ラスティアの国民はその土地を追われてしまう。
そうならないためには、毅然とした態度を示し続けなければならない』
(´・ω・`)『だから、大規模な混乱を見せる行為は政治的に良くないことなんだ。
君がお城を出ていくことも、そのひとつ。隠し通せることではないんだよ』
784
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:19:59 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*;ζ『そんな!』
デレは文字と、身振り手振りで自分の衝撃を表した。
ζ(゚ー゚*;ζ『そうでしたら、お部屋を移るのはどうですか』
(´・ω・`)『いや、そうしたら魔王に、君が何を知ったのかばれてしまう。
あのお城はすでに魔王の手下で満ちている。その場所で魔王と明白に対立してしまうわけにはいかない』
ζ(゚ー゚#ζ『それじゃ、私はこれからもずっとあそこで鳥籠の鳥を演じてなければならないんですか!!』
父親に詰め寄って、デレは睨みつけた。
ショボンは引きつりながらもペンを動かした。
(;´・ω・`)『どうしても、ということになれば逃げるんだ。
ぎりぎりまで、国民に迷惑をかけるわけにいかない。どうかわかってくれ』
懇願するショボン。
そんな姿を見ても、デレの憤りはなかなか収まらなかった。
それでも、まだ刃向うことはできる。
モララーという希望があったからこそ、まだデレは自分の感情を抑え込めることができた。
785
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:20:59 ID:.nLUMdgE0
それから日々が流れていった。
魔王の正体は掴めないまま、1年以上の歳月が流れた。
デレは14歳になり、前よりも遥かに逞しくなった。
以前はただ魔王の存在に怯えていた。
だけど最近は魔王も何もしてこない。
そもそも面と向かって対立しなければ、無害な存在だった。
第一、今はモララーという存在ができた。
信頼できる人。自分が心の内を曝け出せる人。
閉塞感を感じる環境でも、彼がいることで心に余裕を持つことができた。
彼に会うこと自体が楽しみになっていったから。
残念ながら魔王の正体は掴めないままだったが
デレは次第に問題の解決に焦らなくなった。
変わり映えは無くとも、それは幸せな日々に変わりなかった。
だから、こっそりとなのだけど
この何事もない日々がずっと続いてほしいとも思っていた。
そうは上手くいかないだろうと、心の隅ではデレも理解していたのだけど。
☆ ☆ ☆
786
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:21:59 ID:.nLUMdgE0
307年 10月5日
(´・ω・`)「デレ、話があるんだ」
国王の部屋に呼び出されたのは、夕方のことだった。
こんな風に仕事の時間に、自分にかまってもらえるのは久しぶりだったので
デレは意気揚々と部屋の扉を潜った。
(´・ω・`)「ある衛兵さんとこっそり会っているよね?」
唐突に彼の名前が出てきて、デレはきょとんとしてしまう。
ζ(゚ー゚*;ζ「……え」
(;´・ω・`)「いやね、デレがこそこそ物陰に行っているのが見えたから。
つい追っちゃって、さ」
うっかりしていたのは事実だ。
彼と会うことに関しては魔王に見つからないように、とばかり気にしていた。
だから、実の父親に見破られる時がくるかもしれないということを、考えていなかった。
787
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:22:59 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*;ζ「な、何してるの!?」
(;´・ω・`)「そりゃあ僕らのお城なんだ。気になるじゃないか。
だいたい君だって年頃の女の子なんだし、もしかしたらって」
ζ(゚ー゚#ζ「勝手なことしないで!」
鋭い目を国王に向ける。
ショボンはやや動揺したようだが、すぐに居住まいを正した。
(´・ω・`)「デレ、頼むから静かに話を聞いてくれ。
それ以上あの人に会っていたら、危険なことになるかもしれない」
その言葉を受けて、デレは目を瞬かせる。
ζ(゚ー゚*;ζ「な、何を言ってらっしゃるの?」
(´・ω・`)『いいか、良く聞いてくれ』
紙を持って、ショボンがすぐに文字を記入する。
(´・ω・`)『魔王の声はたまにこの部屋でも聞えてくる。だから筆談に移る』
788
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:23:59 ID:.nLUMdgE0
(´・ω・`)『衛兵さん、はっきり書けば、モララーが君のために努力してくれていることはもうわかった。
そこでただ君らが親密な関係になるだけなら、僕だって邪魔しようとはしない』
(´・ω・`)『でもここには魔人がいるんだ。
現に僕だって、お城で働く魔人からこの話を聞いた。ただの世間話としてだが』
(´・ω・`)『今はただのかわいい噂程度で通っている。
しかしそのうち君らが話している内容までばれてしまうかもしれない』
(´・ω・`)『魔王に仇名す人だとばれてしまう前に、彼と会うことを控えなければ』
ζ(゚ー゚*ζ『……さっぱり理解できません』
デレは口を真一文字に結んで文字を見せつけた。
ζ(゚ー゚*ζ『どうしてそんな危険があると断定できるんですか。
あの人と会ってもうすでに1年半以上が過ぎています。
その間何も起きていないのに、どうして今になって』
789
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:24:57 ID:.nLUMdgE0
(´・ω・`)『最近、魔王の声の届く範囲が広がっているからだ。
この国王の部屋以外にも、声の聞える場所が表れ始めている』
その情報は、デレの全く知らないものだった。
ζ(゚ー゚*;ζ『どうしてそんなことに?』
(´・ω・`)『おそらく……能力を使う場所として
最初にインプットしてあったのがこの私の部屋と、君の部屋だったんだろう。
だけどこのお城に粘着するうちに構造を覚え、声の伝わる範囲を拡大させてきたのではないかな』
(´・ω・`)『とにかく、油断していれば君もモララーも危なくなる。
まだ狙われていない今のうちに手を引くんだ』
ζ(゚ー゚*ζ「そんなの……」
デレはもう、紙の上にペンを動かす気力さえなくなっていた。
ζ(゚ー゚#ζ「そんなの聞きいれられるわけないでしょう!!」
叫んで、部屋を飛び出した。
魔王に聞かれようが知ったことじゃないと彼女は思った。
790
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:25:58 ID:.nLUMdgE0
辿りついたのは、いつかモララーに抱擁してもらった、あの建物の陰。
そこでただひたすら、デレは泣き続けた。
人目の届かない場所だが、それでもなお声を潜めて。
こんなの馬鹿げていると彼女は思った。
身体は自由なのに、思うままに行動できない制約があるなんて。
ただ会いたい人に会うことすらできないなんて。
妥協していた気持ちがなくなっていく。
心の内で、魔王に対する怒りが再び湧いてきていた。
必ずあの声の正体を突きとめてやる。
自分の手で、その息の根を止めてやりたい。
そんな凶暴な思いさえ抱くようになっていた。
791
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:26:56 ID:.nLUMdgE0
307年 12月27日
デレが15歳になって、暫くした頃。
モララーに通達が出された。
二度目の遠征、しかも今度は8カ月という長丁場だった。
出発の前の日、デレはショボンに許しを請うた。
どうかモララーに合わせてくれと。
ショボンは仕方ないといった表情で、二人に特別の部屋を用意した。
元々倉庫だった場所を整理した空間。
もちろん魔王の声が聞えたことも無かったし、普通の労働者だってめったに寄りつかない場所だった。
(´・ω・`)『それじゃ……僕が定期的にこの外を巡回しておくから』
デレとモララーをその部屋に入れたのち、ショボンは外に出て扉を閉めた。
鍵のしまる音。
もう中からしか開けることはできない。
792
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:27:55 ID:.nLUMdgE0
( ・∀・)『さて、と』
先に紙を見せたのはモララーだった。
( ・∀・)『遠くに行くことになっちゃったみたいです』
手短に書いて、モララーはぎこちなく笑った。
デレの方はというと、首を曲げて俯くばかり。
どうにも言葉が思い浮かばなかった。
( ・∀・)『……私はこのままお城には帰らない方が安全なんでしょうね』
不意に、モララーが自分の考えを書き始めた。
わずかばかり首を持ち上げて、デレはその文字を虚ろな目で追った。
( ・∀・)『このまま遠くへ行ったまま、帰ることを拒否すれば
私はあなたに会わなくて済む。そうすれば魔王に目をつけられることもない』
( ・∀・)『たとえ私が戻らなくても、あなたと国王は亡命するという手段がある。
国民のためになかなか使えない手段でしょうが、魔王の手から逃れるために最終的にはそうせざるを得ない。
テーベを越えてメティスにでも行けばもっと安全でしょう』
793
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:28:55 ID:.nLUMdgE0
( ・∀・)『私が戻ってくる意味なんてない。
そう思ってしまうのですが、デレ様はどうお考えでしょうか』
文字が途切れる。
デレはゆっくりと首を上げ、モララーを見た。
彼は静かにその言葉に対する答えを待っているようであった。
モララーが言うことは理解できたし、実際にそう思うこともデレにはあった。
合理的には正しい選択なのだろう。
このまま国の滅ぶのを見ながら、生き延びるという選択肢。
でも、どうしてか身体が言うことを聞かなかった。
デレは首を左右に動かす。
794
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:29:55 ID:.nLUMdgE0
ζ( ー *ζ「……帰ってきてほしいです」
ζ( ー *ζ「ちゃんとお城に帰ってきて、また私とこうして会ってほしいんです」
ペンを握れず、震える声でそう伝えた。
亡命したらもう会えなくなるかもしれない。
たったそれだけの事柄が、彼女を縛り付けていた。
( ・∀・)『……わかりました』
モララーはそう書いて、壁に寄り掛かった。
( ・∀・)『私はいつか必ずここに戻ってきます。
それで、そのときには必ずあなたを救います。奴を倒すために』
デレは、はっとする。
モララーははっきりと魔王と立ち向かう意思を示した。
自分の言葉のせいで。
795
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:30:55 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*;ζ「あ、あの…………」
口を開いて言葉を探した。
彼を思いとどめる言葉を。
ζ(゚ー゚*;ζ「……どうかさっきのこと、忘れてくれませんか」
ζ(゚ー゚*;ζ「この際私が嘘を言っていると疑ってしまってもいいです。
ほら、ここが魔王に聞かれているかもしれないのだし」
ζ( ー *;ζ「……私が本当のことを言っている保証なんて、どこにもないんですから」
ずっと自分に嘘をついてきていたからこそ、その発想が生まれた。
この場で口にすることができた。
自分は本当のことなど言っていないと、彼に思われたかった。
そうすれば彼は生きていられる。
合理的な選択できる。
796
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:31:56 ID:.nLUMdgE0
自分はいろんなものが欠けていたんだ。
デレは目を閉じて、思い返した。
母が死んだその日から、父によってお城に閉じ込められた。
そこで社交性を捨てた。
外に出たいという思いだけを募らせ、父への恨みを重ねてしまった。
そこを魔王に付け込まれた。
今、その結果として一見すると外に出られている。
でも、その実監視されている。
能力がわかっても、行動の制約があることに変わりはない。
何よりも、魔王に聞かれないためにと言葉を奪われてしまっている。
そのことがとても辛い。
自分の意見を伝えるのに、どうしたらいいのかわからない。
伝えない方がいいのかもしれない。
信じるなと言ってしまえば、どれほど楽か。
関係など断ち切ってしまえば、傷つくことなど何もないのだから。
797
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:32:55 ID:.nLUMdgE0
目を閉じているために、視界は真っ暗。
何も見えない。
自分の思考と同じ世界。
そんな世界の中で
いつかと同じ、温かさを感じた。
モララーの大きな手のひらを背中に感じ
彼の身体が寄るのを感じた。
デレの身が強張る。
でも怖くはなかった。
たとえ何も見えなくとも、何を言わなくとも構わない。
そう思えたからこそ、全てを受け入れられた。
デレの僅かな喘ぎ声が掻き消されたときにはすでに
言葉すら必要ではなくなっていた。
☆ ☆ ☆
798
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:33:55 ID:.nLUMdgE0
(;^ω^)「…………」
(;^ω^)「ここから先を読むのは、人として……」
( ^ω^) ペラペラ
( ^ω^)「……ん?」
( ゚ω゚)
(゚ω゚ )=( ゚ω゚)
(;^ω^) フゥ
( ^ω^)「もう少し、こう、流し読みで……」
☆ ☆ ☆
799
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:34:55 ID:.nLUMdgE0
308年 8月26日
モララーが帰還した。
そしてすぐに、デレと会った。
( ・∀・)「考えはあります」
こっそりと、モララーはデレにそう告げた。
( ・∀・)「この8カ月、私は状況を整理していました。
もうほとんど確証に近い考えを抱いています。
あなたにも協力していただきたい」
心強い言葉。
( ・∀・)「隙ができたらまた連絡します」
そのときはそれっきり、会話は終了した。
800
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:35:56 ID:.nLUMdgE0
308年 9月1日
ラスティア国、南の山にて事件が起こった。
テーベ国からの商人の死体が発見されたのである。
その死体は衛兵によって処理されたため、詳しい事情は国民には知らされなかった。
しかし、噂はすぐに広まった。
その人物の足取りから察するに、彼はラスティア城へと向かっていた。
しかしその人がいったい何をしようとしていたのかはわかっていない。
全てはラスティア城の衛兵により持ち去られてしまったからだ。
その商人の持ち物は、きっとお城にとって都合の悪いものだったのだろうというのが
噂話のだいたいの締め言葉となっていた。
801
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:36:56 ID:.nLUMdgE0
308年 9月13日
国王が2週間の外交に出かけた。
マルティア城に赴く、比較的規模の大きな外交であった。
前々から話し合いは続いており、その内実はデレにも知らされていなかった。
ただ、状況から察するに、テーベとも関係する事柄だろうと思われた。
最近では世界のニュースは届いてきていない。
不穏がラスティアの周囲を取り囲んでいた。
ニュースを見ることができない国民は、その状況を知る由もなかったが。
外交は戦争を避けるために行われる。
しかしそれが叶わない場合は、国民を守るために行われる。
なるべく被害を減らすために。
デレは、すでに後者の段階に至っていることを肌で感じていた。
モララーが彼女に手紙を送ったのは、その日の晩であった。
802
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:37:57 ID:.nLUMdgE0
手紙の内容を見る。
ζ(゚ー゚*ζ「これは……」
小さな言葉が口を突いて出てくる。
これくらいなら魔王に聞かれることはない。
その程度の加減はすでにできるようになっていた。
そこに書いてあった文字を見て、彼女は目を見開いた。
モララーの淡々とした字が目に映る。
『 作戦はすぐ行いましょう。
国王のいない間に、魔王を特定します。
あなたには、ある演技をしてもらいたいのです。 』
まさかこんなにすぐに動き出すとは思わなかった。
だからこその驚き。
そして、目はさらに下方へと移る。
何を演じたらいいのか、それが書いてあった。
803
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:38:57 ID:.nLUMdgE0
『 ・
・
・
まずは講堂にて
冷たい王女を演じてください。
・
・
・ 』
☆ ☆ ☆
804
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:39:55 ID:.nLUMdgE0
9月20日
南の山へ赴く前日
デレとモララー、そしてロマネスクは衛兵訓練場の近くで会合した。
どうしてロマネスクがいるのだろうとデレは不思議に思った。
だけどそれを聞く前に、もっと伺っておきたいことがある。
ζ(゚ー゚*ζ『言われた通りに演じることができていたでしょうか』
文字を見せつつ、デレは不安そうに首を傾げた。
モララーは微笑み、それからあらかじめ用意してあったメモを見せてくれた。
( ・∀・)『完璧です。これで、明日は大丈夫』
デレは安堵のため息をつく。
それからまたペンを動かし、次の言葉を綴った。
ζ(゚ー゚*ζ『それで、計画とはどのようなものなのでしょう』
真剣な視線が交錯する。
805
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:40:55 ID:.nLUMdgE0
( ・∀・)『魔王であると思われる人を連れていきます』
それから、モララーはその人物の名前を述べた。
デレは息をのむ。
ζ(゚ー゚*;ζ『そんな、まさか』
( ・∀・)『あくまでも推測です。
ただ、もしそうだとすると、あなたは国家レベルの陰謀に巻き込まれたということになりますね』
( ・∀・)『とにかくその人を連れて、我々は城下町の脱出を図ります』
脱出、という文字がデレの両眼に映る。亡命するのだろうか。
目を見開くデレ。モララーの続きを待つ。
( ・∀・)『もしその人が魔王でないならば、あなたは逃げることができます。
私が最も信頼する二人の衛兵と、このロマネスクがひっそりと護衛していますから』
モララーの指がロマネスクに向けられた。
ロマネスクは小さな咳払いをする。
( ФωФ)『恐れ多くも、王女様、私も尽力いたします。
それに私には信頼できる双子の魔人もついておりますゆえ、必ずお役にたちましょう』
魔人という言葉を見て、デレは微かに怯える。
ロマネスクは首を振って、その疑いを晴らそうとした。
( ФωФ)『大丈夫、彼らは私の地元からついてきている弟子のようなもの。
このモララーでさえ彼らのことは認めております。正しい心を持った魔人であると』
その言葉を見て、モララーは鼻で笑い、頷いた。
806
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:41:56 ID:.nLUMdgE0
( ・∀・)『私はこそこそ暗躍する魔人が嫌いなだけなんですよ。
とはいえ昔のトラウマから、魔人に対する疑いを完全には拭いきれていない。
それが私の弱さでもありますが』
そこまで書いて、モララーは首を横に振る。
こんな話を続けてもしかたない、といった様子だ。
( ・∀・)『話を戻しましょう。
もしその人物が魔王ならば、きっと私たちを襲ってきます』
( ・∀・)『ただし、あなたを直接襲うということはありません。
そんなことをすれば不思議な力を失うことになってしまいますから』
( ・∀・)『ですから、必ず他の魔人を利用しての攻撃を仕掛けてくるはずなのです。
もしわずかでも怪しい動きがあれば、私はそれを証拠として、その人物が魔王であると断定します』
( ・∀・)『そこから先は流れのまま、私は魔人と対決します。
そして私が勝ったとしても、あるいは負けたとしても、
最後には、この計画は私と言う不穏分子を消すためのものであった、と言い張ってください』
( ・∀・)『そうすれば魔王は、この旅路が逃亡のためのものでなかったと納得するでしょう。
あとは隙をついて、その人を倒せばいい。あなたは解放される』
807
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:42:55 ID:.nLUMdgE0
( ФωФ)『厄介事を消すために、私の連れの魔人が連れ添いの衛兵を眠らせます。
双子の弟の方がその能力を持ってますゆえ、できることなのです』
( ФωФ)『重要なのはその衛兵たちにそのような事件があったと理解させることです。
噂が広まれば魔王の行動は制約される。そうなると勝手にあなたを外へ出そうとはしなくなる。
あなたが外に行くことで生じる面倒な事態、正体がばれる危険をなくそうとするわけです』
( ФωФ)『魔王は外からの視線に意識を向け始め、隙が生じるでしょう。
そのときこそが、お城の内部にいる我々が奴を倒すチャンスとなるのです』
( ・∀・)『これが私の考えた計画です。
ご理解をいただけたでしょうか』
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
デレは考えた。
今、一気に見させられた計画は、確かに良くできている。
でもどうにも腑に落ちない点が一つ。
それを、ゆっくりと紙に書き出していく。
808
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:43:55 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*ζ『もし、その人物が魔王で、あなたが負けたらどうなってしまうのでしょう』
疑問を書き述べる。
モララーは腰に手を据えて息を吐き、それから一気にペンを走らせた。
翻る手。
デレの目に映る文字。
( ・∀・)『私はあなたを逃亡させようとしている悪者なのですから
魔王の側も躍起になって私を襲ってくるでしょう』
( ・∀・)『おそらくは、致命傷以上の傷を負わされます。
最悪の場合はその場で殺されてしまうかもしれません』
モララーは何事でもないというように、すらすらとペンを動かした。
そこから先へと話を進めるべく。
だけど、その動きは止められてしまう。
懐には見慣れた黄金の髪が見えた。
愛おしく弧を描いたそれらが、左右に振られる。
静かな、言葉も出せない否定。
809
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:44:55 ID:.nLUMdgE0
デレは彼の胸に顔をうずめた。
そのまま二度と動きたくないと思った。
目を合わせれば最後、彼が遠くへ行ってしまう気がしたからだ。
この場を離れれば、もう二度と彼は自分を抱擁しないだろう。
彼女はひたすら、その背中に彼の手が触れるのを待った。
彼と出会ってからいつも、彼女が涙するたびに現れてくれる温もり。
悩みを打ち明けた時も、遠征行きが決定した時も
それは優しく彼女を迎えてくれた。
だから今回も来てくれる。
この涙を止めるために。
いつだって来てくれたのだから。
そんな期待を抱くようになっていた。
810
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:45:55 ID:.nLUMdgE0
モララーの吐く息が、彼女の頂きにかかった。
空気が頭をなでる。
( ∀ )「ロマネスク」
モララーの声がする。
顔色はうかがえないものの、それは確かに彼の声だった。
彼女がずっと聴きたかったもの。
( ФωФ)「しゃべっていいのか?」
ロマネスクが怪訝そうに言う。
モララーは肩をすくめた。
( ∀ )「少しくらいなら問題ないだろ。
魔王だって、こんな衛兵だけが使う場所の隅っこのところまで
聞いてもしかたないだろうしな」
相変わらずの落ちついた口調。
彼女はその一字一句から安心を掬い取っていた。
( ∀ )「こいつを連れ出してくれ」
そんな健気な行いに、彼の言葉が止めを刺した。
811
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:46:54 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*;ζ「!?」
顔を一息に上げ、彼の顔を伺おうとする。
だけどその前に肩に力がかかり、足がよろめいた。
モララーが彼女を突き飛ばしたのだ。
デレの腕が宙をばたつく。
その腕の一端を、ロマネスクはしっかり握りしめた。
( ФωФ)「また明日、な」
ロマネスクはそうモララーに呼びかけた。
彼からの返事はない。
デレの目の前で、モララーは背をむけていた。
顔色も何も伺えない。
何も知ることはできない。
デレは困惑した。
なぜ自分は見捨てられてしまったのか。
どうして彼の手のひらは自分の背中を包み込もうとしなかったのか。
812
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:47:56 ID:.nLUMdgE0
崖を墜落する心持だった。
目の前に岩壁がある。
モララーの姿は崖の上。
何も見えないし聞えない。
手を伸ばしても届かない。
ただ下へ下へと落ちていくだけ。
誰も自分を救ってはくれない。
そんな暗い予想が一挙に彼女を包み込む。
どんな鳥籠よりも怖い暗闇。
背筋を駆け巡る悪寒が、彼女の喉を震わせた。
813
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:49:01 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*;ζ「どうして!?」
絶叫。
身体は既に扉の外に出ている。
返事はこず、音を立てて扉が塞がる。
もう一度叫ぼうとした。
その口が手のひらで塞がれる。
(;ФωФ)「こんな夜に叫んではなりませぬ!」
ロマネスクが彼女を制止しようとしていた。
デレは頭をふり、その手のひらから逃れようとする。
それが叶わないと悟ると、口を開いて歯をむき出しにした。
そのまま、噛みつく。
(;ФωФ)「!?」
814
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 21:49:39 ID:nfamNBCU0
デュクォォ…
815
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:50:02 ID:.nLUMdgE0
動揺する手。
間隙。
デレは身をかがめ、前へと突き進もうとした。
再び彼のいる扉へと。
(#ФωФ)「なりませぬ!」
ロマネスクの怒声。
腕が再び掴まれる。
猛烈な勢いで、背後に引き寄せられた。
身体の軸がぶれ、よろめき、地面へと投げつけられる。
衝撃で目がくらむ。
草の匂いが飛び交う。
薄目の先に人影を見た。
例の猫目。
816
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:51:01 ID:.nLUMdgE0
ロマネスクはデレに馬乗りとなり、顔を向けてきていた。
考えている余裕もなかった。
デレはすぐに肘を絞り、平手を振りかざそうとする。
( ФωФ)「ふん」
鼻を鳴らす音だけ聞えた。
腕が止まる。
ロマネスクによって平手が食い止められたことを、やや遅れて認識する。
(#ФωФ)「聞き分けのない小娘め。
モララー殿が何を思ってそなたと顔を合わせないのか、わからんのか」
ζ( ー *ζ「何が、ですか……」
彼女は久しぶりに口を開いた。
か細い声。
腕にますます力が籠った。
ζ(゚−゚#ζ「何がわからないっていうんですか!」
そこから彼女は、感情の赴くままに言葉を吐露した。
ずっと押し殺してきた言葉。
言ってはいけないと思い、耐え忍んできた気持ち。
817
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:52:00 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚−゚#ζ「あなたがたはまだ何を隠しているって言うんですか!
私が何をしたっていうんですか。せっかく何もかもひた隠しにして生きてきたのに。
自分の気持ちに嘘をつき続けて、やっとの思いでここまでこれて、
魔王の正体だってもう少しで掴めそうだっていうときに!」
ζ(゚−゚#ζ「目の前で……ずっと会いたかった人がいなくなってしまうかもしれない。
そんな話を聞かされるなんて、思いもよらないに決まっていますよね?
だったら泣いたっていいじゃないですか! それくらい当然の感情でしょう!?
それなのに何も声をかけてもらえず、抱いてももらえず、あげくはその人本人にまで遠ざけられて……」
ζ(;−;#ζ「何のためにそんなことするっていうんですか!
ただ愛する人のそばにいることがそんなにいけないことだっていうんですか!
どうして私はそんなにも我慢しなくちゃいけないんですか、ねえ。
私が何をしたっていうの。答えてよ! 何が陰謀よ、何が魔王よ!」
ζ(;−;#ζ「みんな少しだって私の気持ちを考えたことはあるの?
私がどんな気持ちで毎日あの暗いお城の中で過ごしてきたと思っているの?
そこから抜け出そうとすることが、そんなに悪いことだったって言うの?
私はそんなにひどいことをしたの? なんでこんな目にあうの?」
ζ( − #ζ「お父様なんて嫌い。いっつも何にも言ってくれなくて、何考えてるのかわからなくて。
私をこんな目に合わせた奴らだって、嫌い。よその国だろうとなんだろうと。
魔王だって魔人だって人間だってみんな、みんな嫌い! 大っ嫌い!!
あなただって、モララーだって――」
818
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:53:00 ID:.nLUMdgE0
口は動いても、言葉が続かなかった。
頭の中がぐちゃぐちゃに崩れていく。
浮かんでいたはずの言葉が出てこない。
言おうとしているのに、身体のどこかがそれに刃向った。
ζ( − ζ「なんでよ……」
自分の口を抑えた。
どうにかしてその震えを止めようとした。
だけど、その腕も手も、同様に震えている。
指が上手く動いてくれない。
目で確認したいのに、霞んでいて何もわからない。
口から、目元へと手のひらを動かした。
流れて止まらないそれを止めようとした。
とうとう誰も止めてくれなくなったそれを、自分の手で。
何も塞ぐものが無くなった口から、声が漏れた。
言葉を覚えてもいない赤子のように。
意味をなさない音の羅列となって、夜気を切り裂いていく。
819
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:54:00 ID:.nLUMdgE0
( ФωФ)「…………」
ロマネスクは静かに横に異動してくれた。
おかげで彼女は身が軽くなるのを感じた。
今ならもう一度走りだせる。
ロマネスクを逃れて、もう一度あの小屋に入ることだって。
だけど、そんな発想さえももう思い浮かばないほどに
彼女の思考は退行していた。
悲しみを埋めるために、自分の手では小さすぎる。
一人では何も満たすことはできない。
涙を止めることさえもできない。
デレは今更のように痛感していた。
( ФωФ)「…………彼はあなたを愛しています。
愛しているからこそ突き放すのです。
あなたに生きていてほしいから。情が残っていては、魔王は騙せません」
820
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:55:00 ID:.nLUMdgE0
淡々とロマネスクが説明してくれた。
味気ないその厳めしい語りが、今の彼女には心地よかった。
その事実を理解するのに、誰の感情も介在してほしくなかったから。
( ФωФ)「どうか、わかってやってください、王女様。
彼はあなたに願いを託したのです。
それをどうか、無駄にしないでください」
草の上を撫でる音がした。
デレは指の隙間から覗き見た。
ロマネスクが深々と頭を下げているのが見えた。
821
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 21:55:40 ID:zwr5HcQQ0
モララー…
822
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:56:00 ID:.nLUMdgE0
ζ( ー *ζ「……やめてください」
しゃがれた声で、ロマネスクに語りかける。
ζ( ー *ζ「魔王であろうとなかろうと、いずれにしろ私は王女じゃなくなってしまうのです。
そうなればもう、ただの小娘と同じですよ」
力ない笑いが続いた。
空気を震わせることさえできない微笑み。
夜空で輝く星が見えた。
ようやく目は滲まなくなっていた。
心が絞られた。
何をすべきか、わかったから。
☆ ☆ ☆
823
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:56:59 ID:.nLUMdgE0
308年 9月20日
私は明日、モララーさんと一緒に南の山へ向かいます。
モララーさんはこれまで、一人で魔王の正体を推理してくれていたそうです。
これまで私が話したこと、一緒にいたこと、その全てから。
もしも彼の言うことが正しければ
私は大きな政治的陰謀に巻き込まれてしまったということになります。
いいえ、私だけではありません。
国王も、そしてモララーさんも、みんな。
こんなに非道な話は他に聞いたことがありません。
今回の調査に、モララーさんは決死の覚悟で臨んでいます。
私だって、同じ思いを抱いています。
私は近いうちに決着をつけます。
全てを終わらせるために。
☆ ☆ ☆
824
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:58:00 ID:.nLUMdgE0
10月25日 新嘗祭の夜
夜7時50分頃
デレは外にいた。
人影を避け、闇夜に紛れ。
その華奢な手には似つかわしくない、銀のナイフを握って。
彼女は以前日記に書いたとおり
全ての決着をつけるために、ある場所へと向かっていた。
そこには魔王が潜んでいる。
それを証明してくれたのはほかでもないモララーだった。
あの日の手紙を、デレは思い返していた。
行われていた計画も。
ひと月前のことでも、鮮明に記憶されている。
825
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:59:00 ID:.nLUMdgE0
お城の角を曲がる。
小屋が立ち並ぶ場所があった。
あそこが目当ての場所。
デレは唾を飲み込んだ。
手が震えている。
何度も魔王を殺す想像はしてきた。
このひと月で、何度も。
国王の帰りを待ち望んでいた。
あの性格からして、絶対に新嘗祭を敢行すると思ったからである。
しかし確定ではなかったため、目つきが鋭くなることはあったが。
一番隙が生まれるのはこの新嘗祭だと思っていた。
国王も、衛兵も手薄になるこのときこそ、自分が行動する絶好のチャンス。
826
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:00:00 ID:.nLUMdgE0
国王には内緒にしておいた。
どうせ心配され、止められてしまうと思ったからだ。
もう言うことを聞いている場合ではない。
モララーを殺されたことに対するデレの怒りは、もはや収まるものではなかった。
モララーの死体を確認してから、ロマネスクと話し合った。
計画の第二段階、魔王の暗殺を企てるために。
ロマネスクは確かに信頼できる人だった。
( ФωФ)『魔王は私が仕留めて見せますよ』
10月に入ってから、彼が一度提案してくれた。
( ФωФ)『あなたよりも私の方が力はありますし、魔王は油断するんじゃないですかな』
ζ(゚ー゚*ζ『いえ、私にやらせてください』
デレは丁寧な文字でそれに応えた。
ζ(゚ー゚*ζ『私は人質なんです。魔王は簡単に私を殺せない。
だからこそ油断が生じる。そこを倒しに行くんです。
それに何よりも、私があの人を殺したい』
827
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:01:01 ID:.nLUMdgE0
最後に付け加えた物騒な文字を見て、ロマネスクは狼狽していた。
(;ФωФ)『王女、そのような言葉を使われては……』
ζ(゚ー゚*ζ『いいんです。前にも言ったでしょう、私はただの一人の小娘。
だからどんな言葉を使っても責めないでください』
(;ФωФ)『…………そうですか』
( ФωФ)『では、私ももう少しフランクに接しますかな、小娘さん』
それから妙に、デレはロマネスクに気に入られだした。
よく尽くしてくれる人だとデレも感謝している。
今ごろは国王の部屋でモララーの形見を取りにいってくれていた。
最も、その命令には、
魔王を倒す方に手出ししてほしくないという思いも込められていたのだけど。
828
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:02:00 ID:.nLUMdgE0
小屋。
より詳しく言えば、それは厩舎だ。
デレはその扉を開いた。
魔王はいた。
いつものように、綺麗な体毛を棚引かせている。
ζ(゚ー゚*ζ「…………あなたが」
一言、デレは呟いた。
ナイフがまっすぐ前を向く。
829
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:03:00 ID:.nLUMdgE0
マルティア国から、数年前プレゼントとして彼をもらった。
青い目の白馬。
ナイフを握りなおす。
ζ(゚ー゚*ζ「魔王だったのね」
言うと同時に、デレは駆け出した。
月明かりから外れる。
真っ黒な通路を、ナイフを突きだして。
830
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:04:00 ID:.nLUMdgE0
魔人の特徴は獣の部分。
多くの場合、それは耳として現れる。
ただし中には、骨格レベルで変形してしまう者もいる。
人の身体と、馬の身体、二つを併せ持つ者もありうる。
モララーはそのことを考慮して
魔王の正体をその贈呈された白馬だと睨んだ。
だからあの日、南の山へ白馬も連れてくるように言った。
道中で、モララーが魔人を憎んでいることもにおわせて。
そうすれば魔王はモララーを襲いに来る。
ひょっとしたら殺しに来るだろう。
そうなれば、確実に、白馬が魔王と決まる。
結果として、モララーは殺された。
魔王の手下によって。
831
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:05:04 ID:.nLUMdgE0
デレは最後まで、演じ切った。
モララーの死体を前にして、あくまでも冷徹に振る舞った。
ロマネスクがこっそり連れてきていた魔人によって、ブーンたちも眠らせた。
計画は確かに上手く行ったのである。
それでも抑えきれない思いがあり
彼の額に口付けをすることで、その気持ちを静めた。
冷たくなる彼の顔を見降ろした彼女は、どうしても言いたくなった。
ζ(゚ー゚*ζ「人が口で言ったことを信じるなんて、馬鹿みたい」
あの倉庫で、デレが言ったこと。
帰ってきてほしいと言ってしまったこと。
それをモララーは実行した。
だから死んでしまった。
なんて馬鹿なんだろう。
少なくとも魔王だったら、絶対にそう言って嘲るだろう。
832
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:06:00 ID:.nLUMdgE0
だけど、
彼女はその愚かなまでのモララーの熱心さに救われた。
彼女は決して、モララーを嘲りたかったのではない。
魔王に疑われないように、細心の注意を払って呟いた
精一杯の労いの言葉だったのである。
833
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:07:03 ID:.nLUMdgE0
ナイフが振りあげられた。
全てを断ち切るために、
デレの顔が歪む。
これで終わるのだという安堵と共に。
「君は、まさか」
魔王の声がする。
口を動かしているようには見えないが、聞えてくる。
獣の部分が出ていれば、能力を使うことができる。
白馬の姿をしているから、能力を使ってきている。
声が聞えることも不思議ではない。
だから振り下ろす。
一気に。
834
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:08:00 ID:.nLUMdgE0
「僕がずっと白馬でいたと、本気で思っているのかい?」
ナイフが空を切る。
白馬の身体が縮んだからだ。
デレは舌打ちする。
言葉はよく聞き取れなかった。
でも聞いていても意味はないだろう。
それよりも早く仕留めなければ。
再び腕を振るおうとした。
だけど、その腕を後ろから握られる。
ζ(゚ー゚*;ζ「!?」
息をのみ、顔を振り向く。
835
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:09:00 ID:.nLUMdgE0
(゚、゚トソン「……いけませんよ」
従者の一人がそこにいた。
ζ(゚ー゚*;ζ「そんな、どうしてあなたが」
腕を振りほどこうとするも、信じられないほどの力がかかって離せない。
(゚、゚トソン「あなたにわかりやすいように説明するならば
私はずっとこのお城の内情を探っていたのです」
「そういうこと」
前で声がする。
デレは再び、魔王の声を向いた。
「この国はもう、前から目をつけられていたんだ。
マルティアにね」
836
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:10:00 ID:.nLUMdgE0
魔王の姿は変わっていた。
人間の姿へ。
ζ(゚ー゚*ζ「あ……」
言葉にならない音が漏れた。
ζ(゚ー゚*;ζ「そんな……」
思考が書き変わる。
今までの常識が覆る。
ζ(゚ー゚*;ζ「いったいどうやって!?」
837
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:11:00 ID:.nLUMdgE0
(゚、゚トソン「このお城が魔人のものになっていたからですよ」
後ろに立つトソンが淡々と説明してくれた。
(゚、゚トソン「最低でも半分以上が、我々の仲間ならば
多少不自然なところがあっても誤魔化すことができるというわけです」
(゚、゚トソン「だからある程度時間が経過した後に、あなたに近づいた。
そうして、実際に目でもあなたを監視していたんですよ」
「とはいえ、何を企んでるかまではわからなかったけどね。
その点は凄いと思うよ。南の山では完全に乗せられていたし」
「今日だって、こうして仲間に見張らせるくらいしか対策のしようが無かったもの」
ζ(゚ー゚*;ζ「対策って……どうして今日ここへ来るってわかったの?
ひと月も間が空いているのに」
838
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:12:00 ID:.nLUMdgE0
「君の性格からして」
魔王がデレに歩み寄る。
その指先が、デレの額に触れた。
恐ろしいほどに冷たい指先。
「誰にも邪魔されない日を選ぶだろうなとは思ったよ。
国王にも、衛兵にも邪魔されず、自分だけで決着をつけに来るって」
「結局君は誰も信じてないんだよ。しいていえばモララーだけを信じていた。
そのモララーを殺されれば、そりゃもう怒って僕を殺しに来るだろうな。
一番お城に隙ができる日を狙ってくるだろう、じゃあ防いでおこうってね」
指が離れる。
魔王はゆっくりと歩みを進めた。
外へ向かって。
デレの視線がそれを追いかけていった。
839
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:13:00 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*ζ「……こんなことをしたら、もうこのお城にはいられないんじゃありませんか?」
ζ(゚ー゚*ζ「もしここで私に何かしようものなら、お父様が黙ってないですよ。
このお城に残っていた人から疑われます。そうなればあなたもただじゃすまないはず」
「だから、ここはもう魔人や僕らの味方ばっかりなんだって」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、まだ国王は人間です。
ちゃんとした人間の王様で、私のお父様。
第一、国民だって人間の方が多いんですよ? 魔人の王政なんて続くわけが」
「あてはあるよ。ちゃんと上に立てそうな人間はいる。
僕らの考えに協力してくれそうな人が」
魔王の身体が、進む。
840
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 22:13:17 ID:hqYQ83Bw0
しえn
841
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:14:00 ID:.nLUMdgE0
「それに、残念だけど王女様。
もうほとんど僕らの計画は終わりの段階だよ」
「もう君に人質の価値はほとんどない」
入口の前。
月の光が差し込んでいる。
ζ(゚ー゚*;ζ「価値は、ないって……」
「そりゃまあ、生かしてはおくけど」
魔王が指を鳴らした。
その背後に、多数の赤い目が浮かぶ。
魔人が来ている。
いつの間にか、厩舎を取り囲んでいたのだ。
魔王は改めて、デレを見据えた。
842
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:15:28 ID:.nLUMdgE0
「君らの王政は」
その顔がより鮮明になる。
見間違いではないことも、はっきりと思い知らされた。
ミセ*゚ー゚)リ「もう終わり!」
嬌声が響き渡る。
声質が違っていても、すぐにわかる。
あの魔王の声と同じ人が発する声。
843
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:16:28 ID:.nLUMdgE0
赤い目が迫ってくるのが見えた。
いくつもいくつも。
尖った叫び声が聞えてきた。
魔人の叫び声だ。
この厩舎に入ってこようとしている。
デレは歯を噛みしめた。
844
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:17:28 ID:.nLUMdgE0
ミセ*゚ー゚)リ「残念だったね、あと少しだったのに」
すっかり勝ち誇った表情のミセリが、声をかけてきた。
ζ( ー *ζ「……そう」
俯いたまま、彼女は言う。
ほとんど聞き取れないほどの小さな声で。
ζ( ー *ζ「これで勝ったと思うのなら、そう思っておけばいいわ」
髪に隠れたその奥で
デレの瞳は光を失わずに輝いていた。
頭に浮かんでいたのは、部屋に置いてきた日記帳。
魔王は間違っている。そうデレは思った。
彼女にはもう一人、信じている人間がいた。
☆ ☆ ☆
845
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 22:18:07 ID:oUUFHOhs0
うおお…支援
846
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:18:29 ID:.nLUMdgE0
南の山へ赴いた日
あの湖の畔で
彼女はモララーと会話した。
そのときの話題は、いったいどんな人を連れて来たのかということだった。
モララーは信頼できる人を連れてきたと言っていたが、それ以上のことは何も聞かされていなかった。
( ・∀・)「今ちょうど、あの馬のところにいますよね。あっと、振り向かないで。
下手に振り向いたらこっちに来ちゃうかもしれませんし」
そう語る彼の姿は、どこかにやけていた。
( ・∀・)「まずあの大きな鼻を持った細身の男はドクオと言います。
あいつは実はレジスタンスにいて、隙あらばお城に刃向おうとしています。お城にとっては悪者ですね」
ζ(゚ー゚*;ζ「い、いいんですか? そんなこと言っちゃって」
( ・∀・)「あ、捕まえたりしないでくださいよ? まあ、それくらい許してやってください。
あいつもまた魔人のせいで、とても辛い経験をしているのです。
立場こそあれ、だからこそ強い。だから信頼できると私は思っています」
847
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:19:28 ID:.nLUMdgE0
( ・∀・)「で、もう一人の少年。実は衛兵見習いなのですが」
ここで、モララーは口元を抑えて笑った。
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたのですか?」
( ・∀・)「いえね、あいつは……すごく優しいんです」
ζ(゚ー゚*ζ「優しい、ですか」
奇妙な言葉のように感じた。
そんなものが必要になるものなのかと、訝しんだ。
その気持ちも見透かすように、モララーは笑っていた。
( ・∀・)「何物も憎みきれない。だからこそ、誰にも選べないような選択をしてくれる。
あいつはきっと、魔人と人間のかけ橋になってくれる、そんな気がしてならないんです」
( ・∀・)「それが、ブーンを連れてきた理由なのです。
どうか、この計画が終わったのちは、彼を信じてやってください」
☆ ☆ ☆
848
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:20:27 ID:.nLUMdgE0
託すべきバトンは全て渡した。
モララーの信じたあの少年へ。
あの人の願いに自分の願いを重ねたのだ。
デレはそう思ったから、頬を緩ませていた。
ミセ*゚ー゚)リ「?」
不思議そうな声が聞えてくる。
そうだろうと思い、すぐに表情を切り替える。
胸の内に、思いは潜める。
これまで何度もしてきたことだ。
いつか、この冷たい感情を、
あの優しい衛兵が打ち砕いてくれるそのときまで
待っていようと心に決めた。
それもまた、一つの決意。
849
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:21:28 ID:.nLUMdgE0
こうして、
ラスティア国王女デレは、一旦世界の表舞台から姿を消すこととなった。
.
850
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:22:27 ID:.nLUMdgE0
'´ `ヽ !
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851
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:23:28 ID:.nLUMdgE0
―― 第六話 おわり ――
―― 第七話へつづく ――
.
852
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 22:24:10 ID:4fDvgHLE0
おおー……乙
853
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 22:24:46 ID:.nLUMdgE0
―― コラム⑥ 小ネタ ――
ミセ*゚ー゚)リ……M=魔王
(゚、゚トソン……S=しもべ
ラスティア城下町編はおしまいです。
次はテーベ国編なのですが、区切りもいいことですし
一旦時間をおいたり別の作品書いたりして頭を冷やしたいと思います。
ゆっくりお待ちください。
それでは。
854
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 22:30:29 ID:hqYQ83Bw0
乙!
そんな所に伏線?があったとは・・・
855
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 22:31:44 ID:Fy0LKOgQO
投下に気づいたら終わってた
今から読む
856
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 22:32:03 ID:.ZFC89Ss0
乙…上手いなぁ
857
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 22:55:22 ID:YSp3Icqc0
おつです!
すっごくドキドキした…!
ゆっくり待つよ!
858
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 23:24:13 ID:Fy0LKOgQO
予想外だったが今になってあれもこれも伏線だったのかと気づかされた
859
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 23:28:32 ID:NXaVFmGwO
ω・)おつ
860
:
名も無きAAのようです
:2013/09/14(土) 00:09:16 ID:SJI1rzyc0
さっぱり気付かなかったわ…
乙
861
:
名も無きAAのようです
:2013/09/14(土) 00:58:27 ID:fFlqprUo0
おつ
伏線やべえ!流石としかいいようがない
読んでてここまでドキドキしたのは久々だ
862
:
名も無きAAのようです
:2013/09/14(土) 04:11:45 ID:Nfa/SWck0
すげー…
863
:
名も無きAAのようです
:2013/09/30(月) 21:03:31 ID:yGuuVFcwO
ξ゚⊿゚)ξ別に待ってなんかいないんだからね
テストのために書きこんだだけよ、勘違いしないでね
864
:
名も無きAAのようです
:2013/10/13(日) 23:09:53 ID:/DR6zPF60
竜騎士になったデレを旗頭に、魔人たちを最も深き迷宮へ押し戻す…
あれ?
入れ替わり物の疑心暗鬼ドキドキ感は異常
865
:
名も無きAAのようです
:2013/12/09(月) 19:20:42 ID:wfZ2VIa.0
落ちついたらこっちも読ませてくれ
楽しみにしてる
866
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/02/02(日) 00:56:54 ID:QffNqF060
第一話〜第六話までを『第一部 王女と勇者の章』とします。
第七話からの『第二部 戦士と魔女の章』を小説板2にて投下を初めます。
今後もよろしくお願いします。
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/16305/1391263019/l50
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