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( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ
53
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:44:18 ID:BuuB5olM0
ある日の5時
朝靄が街を包んでいる。
待ち合わせは門の前。
秘密と言えども、門番ばかりは事情を知っており
むしろ彼らは余計な人物がこの場に現れないようにと見張る役割を果たしていた。
(;^ω^)「つきましたお!」
ブーンは駆け足でその場に滑り込んだ。
( ・∀・)「んー、ぎりっぎり」
(;^ω^)「大丈夫、な、はず」
両の膝の皿を手で覆い、むせこみつつ呼吸を整える。
('A`)「おう、すでに満身創痍だな」
聞きなれない声。
ブーンは首を僅かに動かして、その人物を見上げた。
(;^ω^)「誰ですかお?」
54
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:45:05 ID:BuuB5olM0
随分と顔の白い人だ。夜明け前の暗さに溶け込んでいる。
その人はふっと鼻を鳴らし、嘲笑ともとれる微妙な顔をした。
('A`)「俺の名はドクオ。モララーと同期なのさ。
今回の調査で付添を頼まれたんだ」
( ・∀・)「そう、俺が呼んだ。こいつも頼りになるぞー」
頼り、か。
ブーンは心の中で首をかしげた。
失礼ながら、目の前にいるひょろっとした青年が、頼れると評価される人だとはどうも思えなかったからである。
もちろんそんなこと言えないので、曖昧にブーンはドクオに笑いかける。
( ^ω^)「よ、よろしくですお」
('A`)「まあ、体調がよければそれでいい」
('A`)「そんなことより、問題の王女様はまだか」
( ・∀・)σ「あそこだよ」
モララーは指をさす。
お城に直通の、大通の真ん中。
55
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:46:06 ID:BuuB5olM0
真っ白な馬が闊歩していた。
すらりとのびた首、一歩一歩刻むようにおろされる脚。
その背には、黒いフードつきのコートを来た女性。
('A`)「……ありゃあ任務を良く理解してないな」
( ・∀・)「まあまあ、服装だけでも精一杯庶民に近づけたんだ。
箱入り娘なんだ、あんまり悪く言っちゃいけない」
( ・∀・)「な、ブーン……あ、こいつまた」
(;^ω^)「いや、いや! 大丈夫ですお大丈夫!」
モララーの張り手を今度こそかわすことに成功した。
とはいえ、見とれていたのは事実ののだけど。
ζ(゚ー゚*ζ「何を騒いでいるんですか?」
近づいてきたデレは、きょとんとした表情になっていた。
( ・∀・)「いえ、何でもないですよ。
ところで王女、この度の目的は理解していますか?」
56
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:47:05 ID:BuuB5olM0
ζ(゚ー゚*ζ「ええもちろん。
南の山の事件現場の調査です」
誇らしげな表情、そのことからよほど自信があることが伺える。
( ・∀・)「そうなんですけど……まあ、あれだな。うん。
とりあえずフードを被っていましょうか。
民間人に見つかっては後々面倒なので」
( ^ω^)「……きっとすぐ噂されるお」
('A`)「思ったことそのまま言っちゃだめだぜ。箱入り娘だからな」
(;^ω^)「受け売りですおね?」
ζ(゚ー゚*ζ「?」
やがてモララーの合図により、門が開けられた。
城下町と外の街とを結ぶ橋が姿を現す。
四頭の馬は、なるべく音を立てないように粛々とその場を後にした。
57
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:48:06 ID:BuuB5olM0
橋を超えたら、もう城下町ではない。
ただ領土としては国のものである。
森も石も山も国の財産であり、他国が進入することは許されなかった。
三人はまず草原の中の集落を目指した。
木こりたちと、旅人の集まる村だ。
城下町から南へ数キロ、多くの城の旅人がそこを最初の宿屋としていた。
もしこれがモララー率いる衛兵だけの集団だったならば、お昼前には到着したはずであった。
だけど、問題はすぐに明らかになった。
ζ(゚ー゚*;ζ「ちょっと、休んでもいいかしら」
「え」とモララーは振り替える。
( ・∀・)「まだ宿まで半分も歩いていないのですが」
ζ(゚ー゚*;ζ「すいません、疲れてしまったので」
確かに、乗馬というのは思いの外体力を使うものである。
いくら鞍をつけたとしても、馬は常に動いている。
体を支えるためには大腿部の筋力も必要になるし、上半身も絶えず移動させてバランスを取らなければならない。
58
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:49:04 ID:BuuB5olM0
こうして馬に乗ってきた以上、王女はそれなりに乗馬の経験があるはずだった。
しかし疲れてしまうのは仕方ない。
彼女は訓練を受けていない。衛兵とは比べられない。
( ・∀・)「わかりました。もう少ししたら小さな湖があります。
その湖畔で休みましょう。水分補給もできますし」
道のりが思いの外時間のかかるものとなることは明白だった。
一行は南へ歩く。
時おり東の森の中に人影や民家が見えた。
木こりとして働く人々の仕事場であり、集落もあるのだろう。
こちらを見ても何もしてこない。衛兵が見回りでもしていると思っているようだ。
そして、森の中には魔人も済んでいる。
彼らはどうしてか自然の中をこのんで住処としていた。
人間に協力するときだけ人間のいる町へ降りてくるのである。
人は町で、魔人は自然の中で、というように綺麗に住み分けられていた。
主要な労働力を魔人で賄えたため、人は不必要に繁殖する必要も無かった。
自然のいくつかを魔人のものとしても住む場所に困るということはなかったのだ。
やがて道が上向く。
坂道は蛇行しながら丘を上り詰めていく。
森は次第に木の本数を減らしていった。
上っている側からすれば、草原が丘を包んでいるように見えた。
ζ(゚ー゚*ζ「……これか、近いの、ですか?」
( ・∀・)「ええ」
59
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:50:05 ID:BuuB5olM0
素っ気ない返事だけをモララーは返す。
デレは言い返そうとしたのか口を動かしたが、結局思い直したように頭を振った。
そうして丘の頂きに辿り着いた。
ζ(゚ー゚*ζ「わあ!」
デレは両手で口を押さえて感嘆を漏らした。
ζ(゚ー゚*ζ「すごいわ! こんなにたくさん! 水が!」
深い青が眼下に広がっている。
小さいといっても、人間の体よりは全然大きい湖だ。
湖畔には色の濃い植物が生い茂り、湖を包み込んでいた。
ζ(゚ー゚*ζ「泳いではいけないのですか?」
あまりにも能天気な発言をするので、とうとうモララーは吹き出してしまった。
なんとか王女を傷つけないように、顔を無理矢理笑顔に変えてしまう。
( ・∀・)「流石にそれは不味いです。湖畔にだって人は住んでいますから。
姿を見せるわけにはいかないです。遊ぶなら森にしてください」
60
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:51:04 ID:BuuB5olM0
( ^ω^)「……」
お城の門を出てから今まで、ブーンは口を開いていなかった。
王女であるデレに気軽に話しかけるわけにもいかなかった、という事情もある。
見てるだけで自分は十分なのだし、それはそれで問題ない。
でも、それ以外の引っ掛かることがあった。
ただ、口にはしなかった。
湖畔はとても涼しかった。
ようやく夏も過ぎ去った頃合い。
水は冷たく、木々の間を抜ける風も心地よい。
ブーンは湖の側で馬の手入れをし始めた。
モララーたちに頼まれたからである。
実際に衛兵見習いは馬の手入れを行う立場でもあったので、そのこと自体に不満はなかった。
滑らかな毛並みの白馬が1頭、茶色い普通の馬が3頭。
畏れ多いので白馬は後回しにし、衛兵の馬から手入れにかかる。
馬が逃げないように、杭とロープで留める。
鞍を丁寧に外して、その下の背中を水で湿らせる。
すると、馬が柔らかく嘶いた。
61
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:52:05 ID:BuuB5olM0
( ^ω^)「蒸れて気持ち悪かったかお? 大変だったお。
今晩までには到着するだろうからもう少し辛抱してくれお」
伝わるわけでもないが、ブーンは語りかけながら手を進めた。
そんなにゆっくり休むわけにもいかないだろうし、急がなくては。
ふとモララーたちの方を振り向いた。
モララーとデレは相変わらず話し合っている。
湖畔に腰かけて、何事か、ときおり笑いを交えながら。
( ^ω^)「……」
モララーはデレと知り合いだったのだろうか。
この任務の内容については、モララーは聞かされていないようであった。
あの講堂での様子からはそう読みとれた。
でも、任務のことは知らなくても、妙にモララーはデレと親しそうに見えた。
モララーの性格故なのだろうか。
モララーは話も上手いし、きっと楽しいだろうな、とも思う。
だからああして笑っているんだろう。
早く仕事終わらせて、話したいな。
でも僕は何を話せるかな。
ちょっとだけ、胸が痛んだ。
62
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:53:05 ID:BuuB5olM0
( ^ω^)「あれ……」
今更、気づいたことがあった。
誰かもうひとりいたような。
('A`)「おい」
(;^ω^)「うおおおお!!」
('A`)「なんだよ、叫ぶなよ」
背後から、顔だけをブーンの横に突き出して、ドクオが声をかけてきていた。
まったく予想していなかったから、ブーンは必要以上に焦る。
(;^ω^)「ど、ドクオさん。どこにいたんですかお?」
('A`)「散歩。森が好きなんだ」
(;^ω^)「そ、そうですかお。
ていうかだったら手伝ってほしいですお」
('A`)「いやあ、俺は人見知りするたちだから」
( ^ω^)「……お、おう」
('A`)「はあ、まあ、暇すぎるし手伝ってやろう」
( ^ω^)「……」
63
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:54:06 ID:BuuB5olM0
失礼を承知で言うならば、物凄く影の薄い人だとブーンは思った。
しかし苦手というわけではない。
ドクオは自分の芦毛の馬の手入れに取りかかった。
ドクオに触られて少しだけ頭を振り、馬は猛々しく鳴いた。
とても大きな馬だ。威圧感もある。乗り手とは大違い。
ブーンはドクオの横顔を見ていた。
馬の方とは違い、顔色も良くなく、ひょろりとしている。
それでも馬には気に入られているようであり、いまいち印象のつかみづらい人だった。
( ^ω^)「ドクオさん」
('A`)「ん?」
( ^ω^)「ドクオさんはどうしてモララー先輩と知り合いに?」
この任務についたということは、モララーもドクオを信頼していたということなのだろう。
だったら普通の知り合いより深い親交があったはず。
いったいこの人がどのようにモララーさんと仲良くなったのだろう。
それは純粋な疑問であった。
('A`)「……ただ同期なだけだよ。
衛兵になったとき、たまたま一緒に演習して、話し合った。
それだけ」
64
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:55:05 ID:BuuB5olM0
それだけ?
あまりにも素っ気なくて、ブーンは暫く黙ってしまった。
やがてドクオの話がもう終わったことに気付き、あわてて言葉を発する。
( ^ω^)「そんな、それじゃどうしてこの任務に?」
('A`)「ん? ああそれは」
ドクオはそこでちょっとだけ間をおいた。
自分なりに考えているようでもあった。
('A`)「多分、俺があいつと同じことを考えていたからじゃないかな」
( ^ω^)「同じこと?」
('A`)「きいてない?」
( ^ω^)「え?」
('A`)「まあ、そうか」
そういって、ドクオは僅かに笑みを浮かべた。
('A`)「あいつは面白いこと考えているんだよ。
なに、気に入られているならきっと教えてもらえるさ。そのうちな」
65
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:56:07 ID:BuuB5olM0
('A`)「それにしてもあいつは凄い奴さ。
今じゃ衛兵トップのロマネスクさんからも一目置かれている。
俺たちの中じゃスターみたいな奴だよ」
とくに嫌みの感情もこめることなく、ドクオがモララーを見ながら言った。
当のモララーはいまだにデレと話している。
何をそんなに話すことがあるんだろう。
すると、突然モララーがブーンとドクオのいる方を向いた。
手を開いて口元に添えている。
( ・∀・)「ドクオー」
湖の向こう側から、モララーが大声で呼び掛けてきた。
('A`)「お、なんだかお呼びだしのようだ。
後はこの白馬だけだし、任せたぞ」
66
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:56:48 ID:BuuB5olM0
( ^ω^)「あ、はいですお」
少し寂しさを感じながら、走っていくドクオの背中をブーンは眺めていた。
早いところこの白馬を綺麗にしてあげよう。
これにはデレ王女が乗るのだから。
ブーンは白馬の横に立つ。
ちょっと見ただけでも、その毛並みが見事に整えられていることがわかった。
そして、手で触れてみて初めて、この馬が思いのほか若いことに気付いた。
純粋な白馬は稀少だ。
白馬と認識されている馬の多くは、先程のドクオの乗っていたような芦毛の馬の老成した姿である。
歳を取るにつれて、黒や灰色の毛色と肌が白くなっていく。色が抜けていくのである。
ところが、王女の馬は若い。
ということはこの馬は産まれたときから白馬だったはずだ。
67
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:57:57 ID:BuuB5olM0
馬が嘶いた。
( ^ω^)「おっと、ごめんだお。見つめすぎちゃったかお?」
ブーンはぺこぺこと頭を下げ、白馬の目を見た。
つぶらな黒目の周りが、ほんのりと青みがかっている。
( ^ω^)「……初めて見たお」
淡い水色目をもつの白馬。
馬の中でも稀少な白馬の、さらに稀少な品種。
前に見た王女のドレスローブの色を思い出させた。
王女はこのような高価な馬をどうして今日連れてきたのだろうか。
ブーンはふと疑問に思った。
たとえ王女と言えども、この馬の価値はわかっているはずだ。
ひょっとしたらどこかの大使からのプレゼントとか、そういう代物なのかもしれない。
だったら大切にお城に保管すべきじゃないのか。
68
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:58:57 ID:BuuB5olM0
ブーンは白馬の鞍を抱え、外した。
毛並みの潰れた様相が露わになる。
ブーンは顔を顰めた。
この馬は歩きなれていない。
( ^ω^)「疲れていたのは君だったんだおね」
ブーンは馬に語りかけた。
( ^ω^)「君が疲れて、重心がぶれて
それで王女の体力が奪われてしまったんだお」
ブーンは水を汲み、馬の背に濡れたブラシをかけた。
白馬が身を震わせる。
ブーンは少しだけ止めて、それからさらに優しくブラシをかけた。
( ^ω^)「今日のところはごめんだお。君は歩くの辛そうだけど
もう半日もしたら麓に着くはずだお。我慢してくれお。
たった一日二日、ちょっとハードな運動しているってくらいに考えるんだお」
69
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 22:59:47 ID:BuuB5olM0
白馬が小さく嘶いた。
言葉など通じないはずだが、水色の目は明らかに憂いの表情を浮かべていた。
と、突然白馬は顔をブーンに近づけた。
ぬっと迫るその顔に、ブーンは身を強張らせる。
(;^ω^)「な、なんだお」
ブーンがよけようとする前に、馬は口を開いた。
まさか噛まれるのではないか、そう思って咄嗟に目を閉じる。
馬の歯は頑丈だ。本気で噛まれれば捻りつぶされてしまう。
直後、ぬらりとした感触が頬に当たった。
恐る恐る目を開ける。
白馬が舌を引っ込める姿が見えた。
(;^ω^)「……?」
70
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:00:57 ID:BuuB5olM0
ζ(゚ー゚*ζ「すごい、懐かれたのね」
後ろから声を掛けられて、ブーンははっと振り向く。
言葉が咄嗟に出なかった。
デレがまっすぐに、ブーンを見つめてくれていた。
ζ(゚ー゚*ζ「私以外の人が触ると嫌がるのに。
あなたが随分親しみやすく見えたのね」
そういって、デレはまた一歩ブーンに近づいた。
ブーンの心臓が高鳴る。
嗅いだ事のない香りがデレから漂ってきた。
香水をつけているのだろう。ウェーブがかった髪がなびく。
ζ(゚ー゚*ζ「……?」
(;^ω^)「あ、いや」
71
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:01:57 ID:BuuB5olM0
デレは首をかしげるも、すぐに白馬に目線を映した。
真っ白な、しかし決して不健康ではない腕が白馬の横顔に添えられる。
彼女の肌が、白馬の肌と連なった。
ζ(゚ー゚*ζ「この子ね、すごく寂しがり屋なの。
私が遠くにいくときはいつも寂しそうにうずくまっちゃう。
だから気の毒で、今日も連れてきたの」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、いけなかったかしら」
デレが問いかけた。
その相手がブーンであることに、ブーン自身遅れて気付いた。
(;^ω^)「あ……聞えていたのかお」
ブーンは自分の頬が熱を帯びるのを感じた。
デレと話しているだけでなく、デレを責め立てるようにも受け取れる発言をしてしまったことに
羞恥心やら、罪悪感やら、様々な感情が湧き起こった。
とにかく何かしら謝りたいのだけど、それもどこかおかしい。
だからこの場合、どういえばいいのか、ブーンは悩んで、結局顔を俯かせるしかなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「……ありがとう」
72
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:02:57 ID:BuuB5olM0
はっとして、ブーンは顔を上げた。
デレの笑顔がまぶしい。
ζ(゚ー゚*ζ「実はね、モララーさんにこの馬の手入れを手伝うように言われてこっちにきたの。
でも私正直この子のことよく知らなくて、その、手入れとかそういうのは従者の仕事だったし。
だからお手伝いできるか不安だった」
ζ(゚ー゚*ζ「でもこんなにこの子のこと理解してくれる人が手入れしてくれるなら、安心できるわ。
だからありがとう、ブーンさん」
ζ(゚ー゚*ζ「せっかく歳が近いのだし、仲良くしましょ?
いつも堅苦しく話すよう教わっていて、こう気軽に話せる人がいてくれると嬉しいの」
たたみかけるようにデレは言葉をつづけた。
ブーンの認識が現実に追いついたときには、すでにデレの右手がブーンの前に差し出されていた。
握手を求められていることに気付くまで、さらに数秒。
(;^ω^)「あ……はいだお」
ぎこちなく伸ばされたブーンの手のひら。
若干震えているようにもみえたそれを、彼女の手のひらがさっと包み込む。
手を握れば、それは立派な友好の証となった。
73
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:04:00 ID:BuuB5olM0
それからブーンはモララーとペース配分について相談した。
白馬が無理しないように、歩みの速度、休憩の感覚をチェックしていった。
予定は遅延するばかりだが、人を待たせるような調査でも無かったので問題はない。
一行は湖を後にした。
草原の集落で昼食を兼ねた休憩を取った。
山から湖へと流れていく河川の傍に、細長い集落が形成されている。
とはいえ城下町ほどににぎわってはいない。今は仕事の時間だから。
このような集落は魔人が来た頃から役割が変わっていない。
むしろ楽に力が得られる分、退化している面もあった。
住民の多くは農業に従事している。
自分たちの生活のためでもあり、国王他各地の領主に納めるためでもあった。
一行は衛兵の一団という身分を隠して過ごした。
もし明かしていれば高待遇で高級な食事処に招待されたかもしれない。
もっとも小さな集落におけるそれは、本当に些細な待遇だっただろうが。
それからまた馬を休め、お昼を回った頃。
再び道を歩み始めた。
74
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:05:00 ID:BuuB5olM0
日が高い位置に上り、やがて角度を狭め始める。
景色は草原から岩場へと変わっていった。
坂道を登る機会も増えてきていた。
着実に山岳地帯へと近づいてきていたのである。
旅人がつくってきた道の上を歩んでいく。
秋の風が寂しさを際立たせた。
山の麓に着くまでは、人気のない道が続くことになる。
見かける人々は木こりや農夫から、林業や工夫に変わっていった。
( ^ω^)「……」
鉱山労働者の姿を見かけるたびに、ブーンは思わず目で追ってしまっていた。
ζ(゚ー゚*ζ「どうかしたの? ブーンさん」
(;^ω^)「え? あ、ああ」
75
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:06:06 ID:BuuB5olM0
デレは話しかけてくれるようになった。
しかし肝心のブーンが、いまだにそのことに慣れていなかった。
結果として冒頭に必ず情けない反応がついてまわった。
( ^ω^)「実は僕は鉱山の町の出身なんですお。
だからつい、あの人たちを見ていると両親を思い出すんですお」
ζ(゚ー゚*ζ「鉱山の町ってことは、南の山のそのまた南?」
( ^ω^)「たぶん、思っているよりもっとずっと南、海の方ですお。
南の山から先はずっと貴金属の鉱山地帯になっているんですお」
そういって、ブーンは胸元を指す。
そこにはペンダントが提げられていた。
( ^ω^)「母がくれたペンダントですお。
なんでも珍しい石が見つかったからって、僕にくれたんですお」
ζ(゚ー゚*ζ「それじゃ、結構遠くから……
じゃあどうしてあの国の衛兵に?」
( ^ω^)「ああ、それは」
ブーンにとってはもう2年も前のことだ。
13歳のときに衛兵見習いとして送られてきた。
( ^ω^)「たぶんほとんど他の人と同じ理由ですお。
この国の城下町は衛兵をたくさん訓練してくれるから、若者の修行にうってつけという噂が広まっていて
ブーンの両親もその話を聞いて、僕を修行させるために衛兵の技術を身につけさせようとしているんですお」
ζ(゚ー゚*ζ「へええ、そんな利用のされ方もあったのね、知らなかったわ。
それじゃブーンは衛兵になれたら故郷へ帰るの?」
76
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:06:59 ID:BuuB5olM0
( ^ω^)「うーん」
ζ(゚ー゚*ζ「……?」
( ^ω^)「帰れるといえば帰れるんですお。ただ何分お金がないもので
しばらくはお城の傍で暮らすと思いますお」
ζ(゚ー゚*;ζ「……なんだか聞いてしまってすいません」
(;^ω^)「え? え、あ、違うお! 別に皮肉とか嫌みとかそういうんじゃないお!
ただその、魔人と触れ合うのが一般的になってからやっぱり鉱物の需要も減ってきていて」
簡単に強化する方法があるならば、そちらを取ればいい。
わざわざ鉱物から金属を精製しなくても楽に済む。
それがこの世界でまかり通っているルールの一端だった。
( ・∀・)「王女に向かってお金の話とは、大胆なことするねえ」
前方を走っていたはずのモララーが、いつの間にか速度を緩めてブーンとデレのそばに来ていた。
( ・∀・)「ひょっとしたら何か恵んでもらえるかもしれないな」
ζ(゚ー゚*ζ「そうだわ、ブーンさん。私に手伝えることがありましたらなんでも言ってください」
(;^ω^)「いや、そんな、なんてことを言うんだおモララー先輩」
77
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:07:59 ID:BuuB5olM0
それからまずモララーが笑いだし、つられてデレも口元を手で押さえた。
その様子を見て、ふとブーンの頭の中には疑問が再浮上する。
ただ前のときよりも聞きにくいとは感じない。
自然と問いかけの言葉が出てきた。
( ^ω^)「お二人は、お知り合いなのかお?」
すると、デレとモララーは顔を見合わせた。
目線で何事かを告げあっている。
やがて、モララーが口を開いた。
「前にお城でこの子を助けたことがあってね、それから」
「あら、もっと前から知っていましたよ?」
「え? そうなんですか?」
「ほら、衛兵の成り立てを集めたパーティーのときに、ちょっとだけ」
「あー、なるほど。
というわけだよブーン。他の衛兵とかと比べたら、ちょっと会っている回数が多いんだ」
78
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:08:59 ID:BuuB5olM0
モララーはあっさりとした答えを返す。
だけどその答えは、新しい疑問を抱かせた。
モララーはこの任務を初めから知っていたのではないか。
質問しようとして口を開いた。
しかしすぐにさえぎられてしまう。
('A`)「懐かしいな」
珍しく、後方を走っていたドクオが話に加わってきた。
('A`)「パーティーってお前ができあがってたときのことだろ、モララー」
( ・∀・)「そりゃあだって、衛兵に慣れて嬉しかったからさ」
('A`)「あのときはたまたま国王がいなかったから良かったものの
もしタイミングが悪ければその衛兵の資格も取り消されたかもしれないんだぞ」
( ^ω^)「……? 何か言ったんですかお?」
79
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:09:58 ID:BuuB5olM0
時期としてはおそらくブーンが入居してすぐの話だろう。
ブーンがモララーと知り合って間もないころ、モララーは衛兵になった。
そこでモララーは何かをしでかしていたのだろうか。
( ・∀・)「何、俺がここに来た目的を言っただけよ。
みんな修行のためだとか言ってるし、俺もその一種だと思ったんだけどな」
( ・∀・)「俺はな、強くなりたいんだよ。
魔人よりもずっと強く」
ブーンはいまいちモララーの言葉を飲み込めないでいた。
( ^ω^)「それって、どういうことですかお?
力なら僕らは魔人に勝てないし、修行したところで強くなるわけでも」
( ・∀・)「精神的な話だよ」
モララーはさらりといってのける。
ますます話が抽象的になっていく。
( ・∀・)「お前もそのうちわかるさ」
そういって、モララーは話を切り上げてしまった。
80
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:10:58 ID:BuuB5olM0
湖でドクオが言っていたことをブーンは思い浮かべた。
モララーなにかを企んでいるのだろうか。
そしてそれを王女が知っているのだろうか。
ブーンはこっそりとデレに目をやる。
しかし彼女は俯いていた。
髪に隠れて顔はまるで見えない。
これでは彼女の表情を読み取ることができない。
ただ、その姿から一瞬恐怖を感じたのは事実だった。
すぐにデレが顔を上げたので、きっとモララーもドクオも気付いていないのだが。
ブーンはデレを観察するのをやめた。
81
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:11:57 ID:BuuB5olM0
それからしばらく他愛のない話が続いた。
道からはますます緑が減っていく。
ブーンはようやくまともにデレと話せるようになっていった。
初対面のドクオにしたって、苦手とは感じない。
相変わらず何を考えているのかわからない節もあったが、
基本的には聞き上手な人であり、話しやすかった。
四人は着実に歩を進めていった。
和やかな雰囲気を抱えたまま。
このままいけば、ちょうど日が暮れる頃に麓の村に着く。
そこで少しだけ宿を取り、明日調査に出る。
多少変更はあったものの、計画はそうなっていた。
上手くいけば、だったが。
☆ ☆ ☆
82
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:12:57 ID:BuuB5olM0
('A`)「モララー」
山道に緑が戻り始めていたころだ。
もうすぐ道が開けて、整理された林が現れ、麓の村が現れるはずだった。
日が昇っているうちならば、雄大に聳える南の山が見えたはずである。
そんなところで、ドクオが声をかけてきた。
('A`)「匂ってきた」
( ・∀・)「来たか」
モララーが言う。
その手はすぐに、腰にある剣の柄に動いていた。
( ・∀・)「思ったより早いな」
('A`)「動いていたのかも知れない」
ブーンにとってわけのわからない会話が続いた。
二人の顔を見比べるブーン。
(;^ω^)「……誰かが襲ってくるんですかお?」
83
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:13:58 ID:BuuB5olM0
( ・∀・)「商人の事件がヒントな」
モララーは顔の端を釣り上げた。
ブーンは噂話を思い出した。
商人が襲われたのは魔人の仕業らしい。
(;^ω^)「……この調査の目的、ひょっとしてその魔人を始末することなんですかお?」
魔人が犯人であると知られれば、国家の内情が荒れる。
だから魔人が犯人であるという証拠を残したくない。
だから、その魔人そのものを消してしまえ。
そういうことなのか。
( ・∀・)「半分正解」
いつの間にか、モララーの周囲に靄が発生していた。
ブーンはあたりを見回す。
靄は自分たちを包んでいる。
これも魔人の仕業なのだろうか。
84
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:14:57 ID:BuuB5olM0
( ・∀・)「デレ王女、そろそろブーンに本当のことを教えてあげましょうよ。
もうブーンが立派な衛兵見習いであることは理解できたでしょう?」
ζ(゚ー゚*ζ「……少なくとも」
ブーンの横で、デレが口を開いた。
ζ(゚ー゚*ζ「悪い人ではないことだけは確かだと思っています」
(;^ω^)「……ひょっとして、やっぱりお二人とも何か仕組んでいたんですかお?」
さっきタイミングが悪くて聞けなかった疑問をようやく口にする。
( ・∀・)「その通り」
モララーが愉快そうに笑った。
( ・∀・)「講堂で話していたときはあの偉そうな衛兵さん騙すために、初めて聞いたふりをしたけどな。
もともとは俺と王女様で考えた計画だよ」
となればこの任務自体、この二人が仕組んだものだったのだろうか。
この、城下町から離れた場所でいったい何をしようというのか。
その詳細を聞こうとするも、すでにモララーは行動を始めていた。
モララーが剣を抜いた。
斜陽によって輝き、剣先がひどく赤く煌めく。
85
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:16:08 ID:BuuB5olM0
( ・∀・)「ブーン、デレの傍によって守っていてくれ。
片をつけるのは俺とドクオだ」
('A`)「おう」
ドクオは応え、馬の速度を上げる。
ブーンとデレを抜き去ると、モララーの横にならんだ。
二人とも既に白い靄のために、ひどくぼやけてしまっている。
ブーンは走りながら、デレの傍に寄った。
デレの顔が若干はっきりする。
微笑んでいることもわかった。
ζ(゚ー゚*ζ「この任務の目的は、魔人にも悪い人がいることをわからせることなんですよ」
デレが告白する。
ζ(゚ー゚*ζ「この任務、たとえ成功しても失敗しても、私はその結果を公に公表します。
そうすれば実際にこの事件を受けて、嫌が応にも国王は反応するはず。
もっとあの人の目線を、レジスタンスを含めた国民に向けさせるための苦肉の策です」
( ・∀・)「そういうこと。ブーン、お前はデレ王女を守ることに集中しな」
そう言ったのはモララーの声だった。
ただ、その姿はすっかりブーンの目から見えなくなっていた。
86
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:17:08 ID:BuuB5olM0
木々の集まりが森を形成し始めた。
もうじき麓の村につく。
そんな場所で、もう景色も判別しにくいほどの靄ができた。
そして、敵は襲撃してきた。
☆ ☆ ☆
87
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:18:07 ID:BuuB5olM0
モララーは剣を握りしめた。
気配を感じたからだ。
('A`)「右だ」
ドクオの指示が聞える。
すでに彼の姿は見えない。
その声を信じるしかない。
モララーは右に腕を震う。
剣が前方左上から右方下へ流れていく。
ひっかかる感触があった。
血が噴き出すほどではないが、あたりはした。
姿の見えない敵の衣服か、体毛か。
後ろから悲鳴が聞えた。
(;・∀・)「ドクオ!?」
88
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:18:57 ID:BuuB5olM0
('A`)「いや、大丈夫だ。俺じゃない」
ドクオの冷静な声が届く。
('A`)「こっちにも襲ってきたんだ。さっきお前が切り損ねたやつ。
安心してくれ、俺には全部匂っている」
( ・∀・)「ああ」
モララーはにやりと笑う。
まったくもって、便利な男だとつくづく思う。
('A`)「左方後方から」
ドクオは絶えず指示を出す。
モララーは馬をとめた。
嘶き、前足を持ちあげて、後ろ足で立ち上がる馬。
そのままモララーは剣を水平にして左方に構えた。
89
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:19:58 ID:BuuB5olM0
手ごたえ、あり。
敵は左方後方からまっすぐ、剣のある方へ飛びかかってきた。
血が噴き出す音がする。
奴らにだって血は流れている。
人間と同じ。
手に何かがかかった。体液か、血か。
悲鳴がする。
およそ人のものではない。
猫の声をそのまま図太くしたような。
それが敵の鳴き声だった。
90
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:21:02 ID:BuuB5olM0
('A`)「右からもだ!」
ドクオの叫ぶ声。
いつも冷静な奴が、珍しい。
というよりも、焦っている。
「モララーは剣の柄の先をてこにして、くるりと剣を回転させた。
そのまま右へ突き刺す。
反応はない、空振り。
( ・∀・)「敵は一人じゃないんだな?」
('A`)「ああ、数まではわからないが、濃い」
ドクオはそういってから、呻いた。
(;・∀・)「どうした!?」
モララーが叫ぶ。
(;'A`)「すまん、足を負傷しただけだ!」
91
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:21:57 ID:BuuB5olM0
(;'A`)「何か……これは、弓?」
飛び道具。
モララーは舌打ちした。
そんなものまで使う魔人がいるというのか。
通常このような野党の魔人は己の肉体と不思議な力のみを武器とする。
他の道具に頼ることは少ない。
野党になるような魔人は人の作った技術が気に入らないと聞いたことがある。
なのに今の敵は道具を使ってくる。
これが意味することは何か。
「上だ」
声。
モララーは咄嗟に、剣の柄を握り、上へと突き刺した。
剣の先はまたしても、何も捉えない。
突如、モララーの馬が鳴いた。
これまで聞いたことのないほどの音量で。
☆ ☆ ☆
92
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:22:56 ID:BuuB5olM0
モララーがドクオと出会ったのは衛兵になってすぐの話だ。
2年前、お城の一階の講堂で宴会が開かれた。
新しい衛兵の誕生を祝うために。
その宴会の席で、彼は一人でいるドクオの傍に腰掛けた。
あからさまに酔っ払っており、ドクオは閉口した。
普通の人ともあまり話さないのにこんなのを相手にしたくないというわけだ。
でもモララーはすでにドクオに興味を抱いてしまっていた。
ドクオは何度かモララーから離れようとしたが、無駄だった。
どうもモララーは衛兵になれたことで喜んでいるらしかった。
目をキラキラさせて、自分の夢を語りだす。
( ・∀・)「俺は強くなって、故郷に帰るんだ。
俺の両親は魔人に襲われたことがあるんだ。普通に暮らしていてだぜ?
それで血みどろになって、魔人を殺そうと考えていたらしい」
( ・∀・)「でも、世間の空気がそうじゃなかった。
魔人には力ではかなわない。人類はむしろ魔人を利用して発展するべきだって。
そんなわけで、誰も魔人と戦おうとはしなかった」
( ・∀・)「俺はそんな世界嫌だった。
自分の身を守りたいときに、魔人なんか頼ってられない。
いざというときは自分で自分を、そしてその大切なものを守らなきゃならない」
93
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:23:57 ID:BuuB5olM0
( ・∀・)「だから力をつけるためにここにきた。
人間が学べる最強の技術がここにあったからさ。
ここで修行をつんで、故郷に帰って、まだ何とか生きてくれている母を安心させたいんだ」
モララーは手を握りしめていた。
心の底からそう思っているからこそ、話すには力が要る。
モララーは話し終えて、ふっと息を吐いてテーブルの上のお酒に手を出した。
その姿は面白かった。
少し変わっているなともドクオは思った。
('A`)「なるほどね……」
ドクオはそう言って、慌てて口を抑えた。
つい口をついて、そんな言葉が出てしまった。
後悔したがもう遅かった。
モララーはそれを見逃さなかったし、聞き逃さなかった。
モララーの顔が、意地悪げに歪む。
94
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:24:59 ID:BuuB5olM0
( ・∀・)「お、なんだお前しゃべれるじゃん」
ドクオはやれやれと、肩をすくめた。
モララーはドクオの前のグラスにお酒を注いだ。
( ・∀・)「さ、のみな」
(;'A`)「……あのさあ」
グラスに手を伸ばすドクオ。
こんな風に人と話すのは、いつぶりだったろう。
('A`)「あんたが大声で話すから釣られただけだよ」
ちびちびとワインを啜りながらそう答えた。
それでも、モララーにとっては十分面白いことだったらしい。
モララーは心底興味ありげに目を輝かせていた。
( ・∀・)「じゃあさ、今度はお前がここに来た理由を教えてくれよ」
95
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:25:53 ID:BuuB5olM0
('A`)「俺の夢は、魔人を倒すことさ。
昔魔人に襲われて、鼻を少し失ったんでな。
今ある鼻は詰め物をしたものなんだ。みためは普通だけど」
ドクオは小さな声で言った。
今まで誰にも、少なくとも寄宿舎に来てからは誰にも言わなかった。
この国は今魔人を受け入れ始めていた。
大きな声で魔人と敵対する発言をすれば、それだけで風当たりが強くなる。
衛兵ともなれば民衆の意見を大切にしなければならない。
個人的私怨を控える必要があることは重々承知だった。
だからこのときの発言も、相手が嫌な顔をすればすぐに「冗談だ」と笑い飛ばすつもりでいた。
そうすれば誰も傷つけずにすむからだ。
ところが、現実は違った。
(*・∀・)「おお、俺と同じだな!」
しれっと言ってしまうところが、モララーの不思議なところであった。
96
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:26:37 ID:BuuB5olM0
(*・∀・)「俺も魔人を倒したいさ。
ここにいる奴らはみんな甘ちゃんだからつまらねえ。
衛兵になる技術を身につけても、そこから伸びようとはしない」
(*・∀・)「もっと上の力をもつ魔人はごろごろいるのに、立ち向かおうとしないんだ。
他の人間だって同じ。魔人を前にして、みんな発展をやめた。
俺はそれに反対だ。俺は、魔人を倒して人類の世を取り戻したい」
ドクオはモララーを見た。
あまりにもまっすぐな目をした青年がそこにいた。
ドクオはしばし止まっていた。
それから次第に、笑いがこみあげてきた。
(*'A`)「へ、へへ」
上手く笑うことができない。
思えば人前で笑うこと自体が久しぶりだった。
顔の一部が欠損したこと。
そしてその結果、魔人の匂いがわかるという変わった能力を手に入れてしまったこと。
その普通ではない要素が、ドクオをいつも苛んでいた。
97
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:27:50 ID:BuuB5olM0
自分はきっと人と同じにはなれない。
だから誰とも付き合わなくていい。
どうせ仲良くなれる人はいない。
そう、思っていた。
はずなのに。
モララーは突然、ドクオの目の前で立ち上がった。
ドクオは目を白黒させる。
モララーは手を大きく広げ、上に伸ばした。
(*・∀・)「みんなーーーーーーーーーー!!」
大きな声がホールに響く。
注目が集まる。
ドクオは頬が赤くなる。
注目を集めるのにはなれていない。
どうしてこんなことを。
思わずモララーを見上げる。
98
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:28:44 ID:BuuB5olM0
(*・∀・)「俺たちは、魔人を倒すぞーーーーーーーーーーー!!!!」
ホールに響く、どなり声のような大きな声。
ホールは水をうったようにしんと静まり返った。
ドクオは心臓が怪しい動きをするのを感じた。
胃を中心に、内臓があらぬ方向へねじ曲がるみたいだ。
(;'A`)「お、おま、なにを」
なかなか言葉をつづけられず、ドクオは呻く。
どうにかこの場をおさめたい。
自分に注目が集まらないなら、なんでも。
しかし、その必要はなかった。
ホールのどこかからか、拍手が聞えてきた。
最初は数人。
次第に複数に増えていく。
99
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:29:45 ID:BuuB5olM0
音もそれにともなって拡大されていった。
手のひらと手のひらを重ね合わせ、音を鳴らす。
たったそれだけのことが、何人もの間で行われた。
結局、腹の底で同じことを考えている人はいたのだ。
ここは衛兵の祝賀会。
誰かを守る人が集まった場所。
何かしら力を欲した人たち。
世界の潮流とは違くても、本当は抗いたい。
自分の力で何かを守りたい。
この拍手が、内に秘めたその意思を如実に表していた。
会場は拍手の渦と化した。
モララーは自分でも拍手していた。
能天気な人だとドクオは見ていて思った。
そして、それをいいなとも思った。
100
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:30:44 ID:BuuB5olM0
('A`)「……モララーか」
ドクオはそう呟いて、顔を綻ばさせる。
それが二人の出会い。
このことは同期の間での秘密だった。
みんなモララーの人柄が気に入っていたし、
わざわざその暴言を告げ口してもメリットはなかったからだ。
だから宴会に出席していない、貴族を含めたお城の政務の人たちも、何も知らない。
そんな不穏分子の話など。
そしてこのとき、たまたま国王は外出中であり
宴会場にいた貴族はただ一人。
デレ王女だけであった。
☆ ☆ ☆
101
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:31:59 ID:BuuB5olM0
モララーは自分の手のひらにあったものが無くなるのがわかった。
剣が、柄が、消えた。
飛ばされた。
そうか。
モララーはようやく気付いた。
声を信頼しすぎた。
上に奴はいなかったんだ。
剣は、おそらく右から来た奴に飛ばされた。
突きを外した奴だろう。
あの剣、高いのにな。
うちの家宝だったのに。
惜しいことしたな。
102
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:32:59 ID:BuuB5olM0
鍔の部分にルビーが埋まった
まっすぐな鋼の諸刃の剣。
柄には特徴的な紋章。
後ろからうめき声が聞えた。
ドクオの声だ。
( A )「すまん……」
それが最期に聞えた言葉だった。
これで声を、鼻を失った。
モララーは、ふっと息を吐く。
それから、思いっきり吸い込んだ。
ほんの数秒もない間に。
腹の底に一気に力を溜め、叫ぶ。
103
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:33:58 ID:BuuB5olM0
(#・∀・)「ブーーーーーーーーーーン!!!!
三匹のカエル、覚えておけ!!」
それは、あの剣の奇妙な紋章の絵と同じ。
返答は聞えない。
すぐに、首筋に冷たい感触があった。
肉に食い込む。
獣の声。
そして、視界が黒く染まる。
☆ ☆ ☆
104
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:35:00 ID:BuuB5olM0
靄が晴れた。
ブーンは薄めを開けてそれを確認した。
実際には、何も覚えていなかった。
あのとき、モララーの叫び声が聞えた。
突然、靄を切り裂くようにして
カエルがどうとか。
でも、それを聞き終える前に衝撃が横からきた。
どうしてかわからなかった。
そっちには王女がいたのに。
デレが。
首をちょっとだけ動かす。
芦毛の馬が倒れているのが見えた。
ドクオの馬だ。
105
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:35:59 ID:BuuB5olM0
ドクオ自身を見つけようとしたが、見当たらない。
どうしたのだろう。負傷したかもわからない。
さらに首を動かす。
そして、安心した。
屈んでいる黒いコート姿の女性。
まぎれもなくそれはデレであった。
ずっと、今日一日見てきた姿だ。忘れるわけがない。
デレ、と声をかけようとした。
でも声がでない。
力が入らない。
相当大きな力で襲われたらしい。
体中が痺れている。
106
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:37:00 ID:BuuB5olM0
このままでは、デレが危ないのではないか。
嫌な予感がブーンの頭によぎる。
何もできず、ただ、目だけをデレに注ぐ。
デレはブーンに気付く素振りも無い。
ああ、どうか気付いてくれ、デレ。
頭の中で、ブーンは彼女の名前を、「王女」ともつけずに呼んでいた。
唐突に、足音がした。
「お戯れがすぎますよ、王女様」
107
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:37:59 ID:BuuB5olM0
誰が来たのだろう。
ブーンは目を細める。
コートの女性の傍に男が立っていた。
いつの間に現れたのか見当がつかなかった。
ただ、その鎧が衛兵のものだったので、ブーンは安心した。
そうか、衛兵が助けに来てくれたのか。
これなら安心だ。自分たちがダメでも、きっと衛兵が守ってくれる。
何せこの国自慢の衛兵だ。魔人ごとき、簡単に。
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、遊びすぎましたわね」
コートの女性が言う。
まぎれもなくデレの声。
108
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:38:59 ID:BuuB5olM0
でも、今まで聞いたことのない声。
とても冷たい印象があった。
コートの女性の横顔が見えた。
デレの横顔だ。
相変わらず、鼻筋がくっきりとしており、肌が白い。
既に日の沈んだ場所でも、月や星の明かりのおかげで良く見える。
だけど、目が違った。
輝きは無い。
真っ黒な瞳。
白い馬が嘶いた。
白馬は無事だったらしい。
ζ(゚ー゚*ζ「鳴いちゃだめ、大丈夫、もうすぐ帰るから」
デレが声をかけた。
ブーンの視界にいない白馬は、うなるような声を出してそれに応えた。
109
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:39:59 ID:BuuB5olM0
「本当に帰ってくれますかな」
衛兵が言う。
月明かりに照らされて、ようやくブーンはその人物がだれかわかった。
( ФωФ)「あなたは簡単に人を騙しますから」
110
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:40:59 ID:BuuB5olM0
衛兵トップの実力者、ロマネスク。
彼がこの場にいるなんて、驚きだ。
これはすごい。
きっと魔人なんか、あっという間に倒してしまったに違いない。
ブーンは内心喜んでいた。
それだけ貴重な人物だったからだ。
少なくとも、そう思っていた。
そのときは。
次の瞬間までは。
111
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:41:59 ID:BuuB5olM0
ロマネスクの言葉に対して
デレは頷いた。
ζ(゚ー゚*ζ「帰りますわよ。
こうして不穏分子も始末できたんですから。
遊びにしては上出来でしょう?」
112
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:42:59 ID:BuuB5olM0
デレが動いたことで、その足元があきらかになる。
彼女はそれを両の手で持った。
ゆっくりと持ち上げる。
デレはそれをしげしげと眺めていた。
無表情に。
果たして何か感じているんだろうか。
あの顔の奥底で、何を抱いているんだろう。
ブーンにはわからなかった。
そもそも今、ブーンの思考は働いていなかった。
それにくぎ付けだったから。
113
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:43:59 ID:BuuB5olM0
( ∀ )
デレが両手で抱えているのは、モララーの首だった。
下には何もない。ただの物体と化した顔。
.
114
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:45:00 ID:BuuB5olM0
デレは腕を屈め、それを自分の顔にさらに近づける。
口元へ引き、顔を動かし、
その物体の額であった場所に唇をつけた。
顔は動かない。
目は既に閉じられている。
さっきまで生きていたためか、まだそこまで造形は崩れていない。
目を開けて、いつものように笑ってもいいくらいだ。
むしろどうして目を開けないんだ。
あなたはあのモララーさんじゃないのか。
なんで。
115
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:46:01 ID:BuuB5olM0
( ФωФ)「さて、行きましょうか王女様。
あそこで寝ている衛兵はまだ生きているようですし、連れて帰りましょう。
しかし、まさか起きてはいますまいな」
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫、魔人の一人が眠らせる力を使ってくれたから。
明日の朝まではぐっすりですよ」
「それは良かった。
彼一人でも噂を流す役割には申し分ありますまい」
ζ(゚ー゚*ζ「効果は薄れますけどね」
デレはモララーの首を降ろして、立ちあがる。
116
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:46:59 ID:BuuB5olM0
ζ(゚ー゚*ζ「人が口で言ったことを信じるなんて、馬鹿みたい」
デレはそういうと、鼻で笑った。
まったく笑っていない目を伴って。
ブーンは目を閉じた。
なるべく見つからないように、自然に。
117
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:47:58 ID:BuuB5olM0
だけど本当は思いっきり目を閉じたかった。
強く強く。
千切れるくらいに。
これが現実だなんて思いたくなかった。
かき消えてしまえばどれだけいいか。
今日一日なんてなかった。
デレなんて、あんな、冷たい顔の王女なんて。
身体に手がかけられた。
持ちあげられる。
どこかへ運ばれる。
獣の匂いがする。
ああ、見えはしないが、魔人だろう。
逃れられない現実が、瞼を隔てた先にある。
どうしようもないことに。
118
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:48:59 ID:BuuB5olM0
この国の名はラスティア
終わりの意味を冠する国
そして
冷たい王女の治める国
119
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:49:59 ID:BuuB5olM0
―― 第一話 終わり ――
―― 第二話へ続く ――
.
120
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:50:58 ID:BuuB5olM0
―― コラム① 世界観 ――
1789年 テニスコートの誓い
いいか、みんな
( ゚д゚)
(| y |)
俺たち第三身分には自由と平等が必要だ
自由 ( ゚д゚) 平等
\/| y |\/
憲法が制定されるまで、我々は決して挫けず、諦めず
( ゚д゚) 憲法
(\/\/
121
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:52:10 ID:BuuB5olM0
<大変だー魔人が来たぞー
( ゚д゚) ⌒ 憲 ポイッ
(\/\/ ⌒ 法
(゚д゚)
(\/\/
122
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:52:59 ID:BuuB5olM0
( ゚д゚)「そのあと魔人は王様のところへ向かって話し合いを始めました。
争うつもりはさらさらありませんでした。
魔人としてはとりあえず住む場所ができれば良かったのです」
( ゚д゚)「魔人には不思議な力もあり、筋力も人間より発達していたので
王様としてもまともにやりあったら勝てやしねえと悟りました。
だけど王権は守んなきゃ。とりあえず魔人と一緒に暮らすかーと考えました」
( ゚д゚)「魔人は自然が好きだったので、庶民と協力することが増えました。
割と便利な仲間ができたって感じで、庶民は楽に暮らせるようになりました。
もし王様が調子こいてたら魔人を使って脅しかけることもできました」
( ゚д゚)「いってみれば革命しなくても結構良いバランスになっちゃったんです」
( ゚д゚)「これから興るはずだった産業革命もいらなくなりました。
労働力を必要としないから人口が増える理由もなくなりました。
みんな楽しくのほほんと、魔人と一緒に仲良くね」
( ゚д゚)「だけど魔人がみんなおとなしいとは限らないし
人間の方にも不満を持つ人たちはいたりしました。
その価値観の存在が物語の背景となっております」
123
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:54:00 ID:BuuB5olM0
( ゚д゚)「生活レベルもそんなに高くしなくて良くなったので、自然と生活は中世レベルに落ちました。
質が落ちたのではなくて、見た目がです。
なぜなら魔人と仲良くする手前、自然を大事にする必要がでてきたからです」
( ゚д゚)「それからたまーに戦争も起きます。
ただ、人間同士の戦争よりも魔人を使った戦いにシフトしていきました。
魔人の不思議な力は相手の数とかそういうの関係なく脅威となりえたので
国家そのものを強大なものにする必要性も消えました」
( ゚д゚)「国はそもそも小国であり、
ドイツとかイタリアの都市国家レベルでばらばらに存在するようになりました。
国王といっても、そんなに威張れる存在じゃないんですね。外交も大事です」
( ゚д゚)「人口もそこまでじゃないです。その代わり寿命が伸びました。
近世ヨーロッパの人間の平均寿命は25〜30歳と言われていますが、
この世界ではおじいちゃんもおばあちゃんもいます」
( ゚д゚)「人々の仕事も、力仕事はかなり衰退しました。
ほとんど勃興しかけていた工業も、技術が必要無くなったのでそのまま下火。
結局魔人の力を持ってしてもどうすることもできない自然相手の仕事、農業漁業林業
力があればいいってものじゃない伝統工業や山での何かとかあーだこーだが主流になっていきました」
124
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 23:54:59 ID:BuuB5olM0
( ゚д゚)「この設定は別に熟知しなくちゃ物語楽しめない、なんてことはないです」
( ゚д゚)「作中にも必要な説明は書いてありますし」
( ゚д゚)「面倒だったら、なんだかRPGのような世界がまかり通っていると理解すれば大丈夫です」
( ゚д゚)「ただ、スタート地点が魔王の城なだけなのです」
(゚д゚)ノシ まだまだ先は長いですが、できればせめて月一で書きたいなあと思います。
(| y | それではまた次回、お会いしましょう。
―― コラム① おわり ――
125
:
名も無きAAのようです
:2013/08/21(水) 23:57:56 ID:2s.aj1EQ0
乙
王女こええ…モララー(´;ω;`)
126
:
名も無きAAのようです
:2013/08/22(木) 05:39:15 ID:mQ01Xi2Y0
乙
予想してた展開を大いに裏切られたお
127
:
名も無きAAのようです
:2013/08/22(木) 10:09:22 ID:qDyc9qDE0
タイトル冷たい王女だったね…
王女こわい乙
128
:
名も無きAAのようです
:2013/08/22(木) 14:59:38 ID:f3darNGg0
おお…ファンタジーだ
すげー期待してる乙
129
:
名も無きAAのようです
:2013/08/22(木) 15:21:14 ID:41hr4lHsO
100レス超えとか長い一話だった、一気に読んじゃったけど
130
:
名も無きAAのようです
:2013/08/22(木) 17:56:49 ID:6Mr8HB9A0
乙ー
魔人の力ってどの程度なの?
現れたのが18世紀末でなく21世紀の現代だったならやろうと思えば駆逐出来た感じ?
131
:
名も無きAAのようです
:2013/08/22(木) 21:06:02 ID:Jc2XLkJY0
めちゃ続き楽しみ
132
:
名も無きAAのようです
:2013/08/22(木) 23:37:40 ID:Zs2.6sZc0
話も面白いし設定が俺得すぎる
期待しまくり
乙
133
:
名も無きAAのようです
:2013/08/23(金) 00:36:16 ID:o1BK5jVMO
ω・)ブーン頑張れ
134
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/23(金) 00:44:32 ID:UHuBuTEc0
>>130
できる範囲で簡単に答えるとすれば、何もない素の状態では人間より防御力と攻撃力がちょっと優れている程度です。
18世紀末の人間でもやろうと思えばぶちのめせるし21世紀なら機械が発展しているからやっぱりぶちのめせます。
ただ不思議な力があるために本気で戦うと人間側が非常にしんどくなってしまうのと、争いしたら国家やばいという理由から仲良くしてます。
魔人は次回から本格的に登場しますので、そのときに説明があります。
135
:
名も無きAAのようです
:2013/08/23(金) 14:40:30 ID:izVHysBI0
第一話からして100レス越えとか気合が半端ないな。
これは期待、ゆっくり追わせてもらいます。
136
:
名も無きAAのようです
:2013/08/24(土) 01:16:51 ID:6kCH5sjI0
最後の「スタートが魔王の城」って説明にグッと惹かれた
超期待
137
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/25(日) 00:08:50 ID:Oz.RPzaI0
―― 予告 ――
.
138
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/25(日) 00:10:18 ID:Oz.RPzaI0
ツンの声だ。
彼女の声は今、抑揚が少ない。
感情を押し殺しているようにも思える。
通常、このような話し方をする人間はよほど感情表現が苦手なのではないかと心配になる。
でも、もちろんツンは違う。
今の彼女は感情をさらけ出すわけにはいかないのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「配達員の話によるとね、確かに部屋番号は同じだったって。
でも良く考えたら棟のアルファベットを見間違えていたらしいのよ」
頬を汗が伝うのを感じる。
お皿の上に、落下し、破裂した。
(゚A゚* )「へえ、それじゃ別の棟にいってたんだね。
どこかわかったの?」
ξ゚⊿゚)ξ「いいえ、でももう検討はついているの。
だって、私のところに来ていた荷物は男物だったんですもの」
ミ*゚∀゚彡「なるほど! 男性用のAからFの棟のどこかってことね!」
(゚A゚* )「全部探すのに最大6往復か……もし手伝えそうなら手伝うよ!」
死刑台に送られる気分で、その会話を聞いていた。
今自分は13階段を上っているんだ。
139
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/25(日) 00:11:47 ID:Oz.RPzaI0
ミ*゚∀゚彡「3人で探せば2回で済むね!」
6から2
13階段が4.33段に
ξ゚⊿゚)ξ「あら……ありがとうみんな」
(゚A゚* )「これからずっと過ごすわけだし」
ミ*゚∀゚彡「これくらい協力してあげるって!」
ξ*゚⊿゚)ξ「それじゃ一番近いF棟から探してみましょ」
階段が爆発した。
140
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/25(日) 00:13:09 ID:Oz.RPzaI0
―― 第二話 手作り地球儀と三匹のカエル ――
次の月曜日の夜10時から投下開始。
141
:
名も無きAAのようです
:2013/08/25(日) 00:22:23 ID:qFEqCjUg0
おお待ってる
142
:
名も無きAAのようです
:2013/08/25(日) 00:53:17 ID:XlDu5Ers0
楽しみだよ
143
:
名も無きAAのようです
:2013/08/25(日) 00:53:41 ID:vQPGbetIO
おい、3日で100レス書きあげたのかよ
期待して舞ってる、疲れたら休みながらだけど
144
:
名も無きAAのようです
:2013/08/25(日) 01:46:09 ID:UprCnjmw0
ペース早すぎだぜ、無理すんねい!
145
:
名も無きAAのようです
:2013/08/25(日) 09:37:23 ID:mvDdyczk0
楽しみ楽しみ
146
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 21:55:13 ID:x6g1yXaQ0
そろそろ投下をはじめます。
147
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 21:56:17 ID:x6g1yXaQ0
2年前の9月
寄宿舎への入居が始まる月。
この日、ブーンはラスティア国の中央に位置するお城に到着した。
国王及び貴族が生活する城だ。
なぜなら、衛兵見習いとなるための申し出が受理されたからである。
南の南のそのまた南、鉱山と貿易の町から遙々、魔人に引かせた大型車でやってきた。
魔人の馬力は凄まじいが、それでも過重労働をしてしまうと体力がもたない。
ゆえに休みを挟みつつ、2日かけてたどり着いた。
それでも馬の倍以上の速さである。
寄宿舎F棟3階368号室
ブーンは自分の部屋番号を記したメモ書きを何度も確認した。
部屋を間違えるなんて面倒なことは起こしたくない。
入隊初日から他人に迷惑をかけて目をつけられるようなことはあってはいけない。
F棟の3階にたどり着き、ゆっくりと部屋番号を確認する。
300,310,320……
148
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 21:57:23 ID:x6g1yXaQ0
一つのブロックごとに10単位で扉の数字が増えていく。
扉の前に『入居予定』札が貼ってある部屋もみられる。
この寄宿舎に入居予定だが、いまだ入居者が来ていない部屋なのだろう。
それらの部屋の前にはたまに荷物が置かれていた。
先に荷物だけこちらに送っているということだ。
ブーンも同じこと立場であり、自分の部屋の前には荷物が積まれているはずであった。
340,350,360……
361,362,363……
ブーンは入隊についての合格発表を見ていたときを思い出していた。
あのときもこうして数字を一つ一つ見ていき、自分の数字を探したものだ。
何故かこんなときは異様に緊張してしまう。
たかが数字なのに。
もう入隊しているのだから心配はないのに。
365,366,367……
149
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 21:58:17 ID:x6g1yXaQ0
368
当然のことながら数字はあった。
ほっとして、扉の前の床を見る。
荷物があるはず。
荷物はあった。
綺麗に紐で縛られた赤い色の袋が1つ。
しかし、どうも小さい。
嫌な予感がした。
生活のための道具を母に頼んでいたはずだったのに、なんで小包1つで足りているのだろう。
独り暮らしはそんなに甘いものだろうか。
自分が難しいイメージを勝手に抱いていただけだろうか。
せめて母がどんな袋に包むかしっかり確認すればよかったと、ブーンは今更後悔した。
とにかく、袋を抱える。
中身は木箱だ。錠も何もない。
部屋の鍵はすでにあるのでいつでも入れるが、
この場でも木箱は簡単に開けられるように思えた。
150
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 21:59:21 ID:x6g1yXaQ0
赤い袋の結び目をほどく。袋はただの四角い布となる。
風流な色合いを浮かばせた木箱が露になる。
なかなか綺麗だが、はたしてこんな造詣が母にあったかなとわずかに疑問を覚えた。
木箱の蓋に手をかけ、はずす。
既にこのとき、この箱は自分のものではないのではという予想がブーンには立っていた。
それでも万が一ってこともあるから開ける。
もし見るからに自分のでなければ、事務所に持っていく。
それでいいと思っていた。
蓋の下に現れたのは、青い小さな地球儀だった。
ブーンは思わずその場で固まった。
まさかこんな箱の中から地球が出てくるとは。
それに、よくみればその地球儀は市販のものではないようであった。
材質は紙のようだが、弾力がある。
魔人の不思議な力によって強化されているのだろう。
この世界では良くあることだった。
その地球儀はかなり広範囲にまでペンでチェックが付されていた。
手書きでかかれた国名。
どうも二人か三人で書いたようだ。
達筆もあれば、稚拙な字もある。筆跡もばらばら。
151
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:00:19 ID:x6g1yXaQ0
これは自分のか、どうか、ブーンにはわかりかねた。
その所有者を現すサインが無かったからである。
もしかしたら母が、何らかの趣向でこの品を送りつけてくれたのかもしれない。
そうとなれば、手紙で確認する必要がある。
今時魔人を使えば、今から送っても明日には帰ってくるはずだ。
それから事務所に送っても問題はないように思えた。
何より、この地球儀には不思議な魅力があった。
製品では作り出せない親しみやすさ。
もう少し、この地球儀を眺めていたい。
そんな軽い気持ちだった。
だから、ブーンはその地球儀を抱えて、部屋に入っていったのだった。
152
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:01:20 ID:x6g1yXaQ0
―― 第二話 手作り地球儀と三匹のカエル ――
.
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