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レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。
( ^ω^)百物語のようです2013( ω )
1
:
◆Rsp62tAaew
:2013/06/28(金) 14:17:25 ID:PjQGMrTo0
( ^ω^)おいすー。ここは夏の祭り、百物語専用スレだお!
祭り開催まではルールの確認等自由に使ってほしいお!
( ^ω^)とりあえず今決まっているルールは
以下の通りだお!
・開催日は八月九日(金)から十八日(日)まで
※ただし投下できるのは金土日のみ。投下期間以外の本スレは作品の感想などご自由に使用してください
・作品はホラーでなくても幽霊、妖怪、人外などが出るならギャグでもなんでも可
・レス制限は一作品30レスまで。それ以上は個別スレ建てをお願いします。
・ながらはNG。個別スレを建ててそこでやるのは可。
※個別スレ参加の場合
レス制限無し。
スレ立て
↓
百物語スレにて投下開始報告、URLを貼る
↓
投下終了後、百物語スレにて投下終了報告(その際、前の人の数字を引き継いで話数宣言)
・1人何話でも投下可!
※連続投下→次に投下する人がいないか確認を取り、無ければOK
※作品の投下間隔についてはルールはありませんが少し間を開けることを推奨します
・イラストでの参加も可!一話としてカウントします。
※ただし作品への支援絵は作品としてカウントしない
・開催時間は18時から翌朝7時まで
・話が終わったら本スレ(自分でスレを立てた人はそのスレでも可)で蝋燭のAAを貼る
前回百物語のスレ
( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω )
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1344607128/
( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω )
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1345353530/
( ^ω^)他に変更点、疑問点ある方はなんでもいってほしいお!
439
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 03:27:05 ID:Vw2MxNqY0
川 ゚ -゚)「私がコンビニで買ったのは」
川 ゚ -゚)「……」
川;゚ -゚)「……トマト缶だ」
(#゚;;-゚)「……」
ζ(゚ー゚*ζ「へっ?」
川;゚ -゚)「……」
(#゚;;-゚)「……あっ、お鍋できる」
ζ(゚ー゚;ζ「そっか……、これまた、すごい偶然だ」
川;゚ -゚)「自分でもびっくりだよ……」
(#゚;;-゚)「よし」
(#゚;;-゚)「スープはお鍋にしよう」
川;゚ -゚)「しなくていいよ!」
終わり
440
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 03:27:49 ID:Vw2MxNqY0
(
)
i フッ
|_|
441
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 05:08:43 ID:/n1CwJTo0
すまぬ報告忘れてた
15本目
『ジェイソン・クールのようです』
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/lite/read.cgi/internet/13029/1376057071/l30
442
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 09:06:20 ID:ilBPGeOs0
オチに凄いほっこりしたわw
こんなんばっかなら深夜にも読めるのにwww
乙!
443
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 10:47:07 ID:4R6WVUdc0
乙
良い癒しだ
444
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 14:42:54 ID:GVmCX9Lk0
支援絵です
>>264-273
「ξ ⊿ )ξ枕元に佇むようです」よりξ ⊿ )ξ
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1096.jpg
445
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 15:15:23 ID:4R6WVUdc0
こわっ
446
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 17:13:20 ID:mj/IUaHAO
>>444
ひぎぃいいいいいいいいいいいいい
乙。怖すぎ泣いた
447
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 17:17:40 ID:WPUz/BRQ0
>>444
ワカッテマスも納得の眼力やでぇ 乙乙
448
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 20:53:58 ID:1yXu23aU0
ソウルイーターでもいたなこういうのビチョビチョ…
449
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:01:02 ID:68AY/e1M0
.,、
(i,)
|_|
16本目、ばんぶぅーぱにっくのようです
450
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:02:09 ID:68AY/e1M0
(,,゚Д゚) 「なあ」
ミ,,゚Д゚彡「なんだよ」
(,,゚Д゚) 「今日習ったさ…竹取物語さ…」
ミ,,゚Д゚彡「ああ、かぐや姫か」
(,,゚Д゚) 「萌えね?」
ミ,,゚Д゚彡「萌えるな」
451
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:03:11 ID:68AY/e1M0
(,,゚Д゚) 「竹を割ったら」
ミ,,゚Д゚彡「幼女」
(,,゚Д゚) 「幼女inBANBOO」
ミ,,゚Д゚彡「俺は幼女にinしたいけどな」
(,,゚Д゚) 「たまらんな」
ミ,,゚Д゚彡「たまらんスマッシュだな」
(,,゚Д゚) 「なんだそれ」
ミ,,゚Д゚彡「ほら、好みにストライクの進化系」
(,,゚Д゚) 「知らんかった」
ミ,,゚Д゚彡「今思いついた」
(,,゚Д゚)
(,,゚Д゚) 「しね」
ミ,,゚Д゚彡「ごめん」
(,,゚Д゚) 「ところでさ、この辺さ、竹林だよな」
ミ,,゚Д゚彡「田舎住んでて初めて良かったと思ったよ」
(,,゚Д゚) 「探すか、光る竹」
ミ,,゚Д゚彡「探そうぜ」
452
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:04:08 ID:68AY/e1M0
(,,゚Д゚) 「無かったな、光る竹」
ミ,,゚Д゚彡「いや、もう真夜中のミッドナイトだから気づかなかっただけだろ」
(,,゚Д゚) 「真夜中のミッドナイトおかしくね。てか真夜中こそ光る竹はわかりやすいと思うが」
ミ,,゚Д゚彡「ケータイ親から鳴りまくったせいで電池切れた」
(,,゚Д゚) 「俺も」
ミ,,゚Д゚彡「帰りたくないや」
(,,゚Д゚) 「Yes カミナリ!No かぐや姫!」
ミ,,゚Д゚彡「マイナスしか無かったな」
(,,゚Д゚) 「でも腹減ったし帰るか」
ミ,,゚Д゚彡「…待て」
(,,゚Д゚) 「男には帰りたく無くても帰らねばならない時がある」
ミ,,゚Д゚彡「行かねば」
(,,゚Д゚) 「竹光らぬ」
ミ,,゚Д゚彡「あの助動詞『ぬ』は完了だぞ」
(,,゚Д゚) 「知ってる。今のは打消『ず』の連体形だと言うことも」
ミ,,゚Д゚彡「なんだ、知ってたのか」
(,,゚Д゚) 「まあな」
453
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:05:09 ID:h.GZwhnY0
インテリジェントな二人
454
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:05:17 ID:68AY/e1M0
(,,゚Д゚) 「よし、帰るか」
ミ,,゚Д゚彡「やっぱ待て」
(,,゚Д゚) 「どうした」
ミ,,゚Д゚彡「この竹、節目から髪の毛が生えてる」
(,,゚Д゚)
(,,゚Д゚*) 「かぐや姫の髪!」
ミ,,゚Д゚*彡「かぐや姫の髪!!」
(,,゚Д゚*) 「待て!カッター出すからそれで切って助けよう!!」
ミ,,゚Д゚*彡「じゃあ俺は明かりを!!」
(,,゚Д゚) 「あれ、お前ケータイ電池切れたって…」
ミ,,゚Д゚彡「This is iPod touch」
(,,゚Д゚) 「IC」
455
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:06:15 ID:68AY/e1M0
ミ,,゚Д゚彡「ほら、切れ」
(,,゚Д゚) 「イエッサー」
ぎこぎこぎこ
ミ,,゚Д゚彡「ぎこぎこぎこ」
ぴたっ
(,,゚Д゚) 「呼んだか?」
ミ,,゚Д゚彡「いいえ」
ぎこぎこぎこ
ミ,,゚Д゚彡「ぎこぎこぎこ」
ぴたっ
(,,゚Д゚) 「呼んだか?」
ミ,,゚Д゚彡「いいえ」
456
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:08:03 ID:68AY/e1M0
ぎこぎこぎこ
(,,゚Д゚) 「な、あ」
ミ,,゚Д゚彡「なんだ?あ、iPod touchの充電もヤバイ」
ぎこぎこぎこ
(,,゚Д゚) 「かぐや姫、どっちが養う?」
ミ,,゚Д゚彡
(,,゚Д゚) 「俺だろ」ミ,,゚Д゚彡
(,,゚Д゚#) 「竹切ったの俺だろ?!」
ぎこぎこぎこ
ミ,,゚Д゚#彡「明かりやったの俺だろ?!」
ぎこぎこぎこ
(,,゚Д゚#) 「俺が切らなかったらお前かぐや姫見ることすらできなかったんだぜ?」
ぎこぎこぎこ
ミ,,゚Д゚#彡「俺が明かりをやらなければお前は切ることもできなかったわけだがな!!」
ぎこぎこぎこ
(,,゚Д゚#) 「第一かぐや姫のお爺さんは切ることでかぐや姫をゲットしたんだろ?!じゃあ切った俺が言わばお爺さんだ!!」
ぎこぎこぎこ
ミ,,゚Д゚彡「いいや!かぐや姫のお爺さんはかぐや姫入りの竹を見つけることでかぐや姫ゲットしたんだろ?!
じゃあ竹を見つけた俺が言わばお爺さんだ!!」
ぎこぎこぎ
ぱかっ
(,,゚Д゚) 「あ」ミ,,゚Д゚彡
457
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:08:17 ID:WPUz/BRQ0
桃ごと唐竹割りにされる桃太郎的な何かを感じる
458
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:09:15 ID:68AY/e1M0
(,,゚Д゚) 「…開いたな」
ミ,,゚Д゚彡「ああ、開いたな」
(,,゚Д゚) 「…竹を割っても…長い髪の毛だけだったな」
ミ,,゚Д゚彡「…多分…下にいるんだろ?髪引っ張って引きずり出してやろうぜ…」
(,,゚Д゚) 「…おう」
ミ,,゚Д゚彡「なあギコ」
(,,゚Д゚) 「なんだ」
ミ,,゚Д゚彡「…やっぱり交代で家泊めるって…どうかな」
(,,゚Д゚) 「あ、いいな、それ」
ミ,,゚Д゚彡「じゃ、最初はギコでいいよ」
(,,゚Д゚) 「いや、最初はフサに譲るぞ?」
(,,゚Д゚) 「……」ミ,,゚Д゚彡
(,,゚Д゚) 「ま、それは後で決めるか」
ミ,,゚Д゚彡「だな、先ずは引っ張るか」
459
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:11:49 ID:h.GZwhnY0
やな予感しかしない
460
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:11:58 ID:68AY/e1M0
ずるずるずる
(,,゚Д゚;)
ずるずるずる
ミ,,゚Д゚;彡
ずるずるずる
(,,゚Д゚;) 「かぐやちゃんは…髪長いんだな…」
ずるずるずる
ミ,,゚Д゚;彡「お、おれ…黒髪ロング好きだから全然おっけーだし?」
ずるずるずる
(,,゚Д゚;) 「お、俺もだし?」
ずるずるず
かっこん
(,,゚Д゚;) 「?!」ミ,,゚Д゚;彡
かっこん
かっこん
かっこんかっこんかっこんかっこん
バチンッ
ミ,,゚Д゚;彡「あ、あ…」
かっこんかっこんかっこんかっこん
(,,゚Д゚;) 「ど、どうしたんだ?!フサ!!!iPod touchの電気を付けろ!!」
かっこんかっこんかっこんかっこんかっこんかっこん
ミ,,゚Д゚;彡「と、と、と突然消えたんだよ…」
かっこんかっこんかっこんかっこんかっこんかっこんかっこんかっこんかっこんかっこんかっこんかっこんかっこんかっこんかっこんかっこんかっこん
(,,;д;) 「!!!???」ミ,,;д;彡
(,,;д;) 「に…」
(,,;д;) 「にげるぞおおおおおお!フサああああ!!」
ミ,,;д;彡「うううううううん?!?!」
461
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:14:13 ID:68AY/e1M0
ーーー
ーー
ー
( ゚д゚* )「お前らもバカだねぇい!!はっはっはっ!!」
( ゚д゚* )「かぐや姫だと思って髪の生えた竹を割って」
( ゚д゚* )「挙句にあいぽっどの充電切れをお化けの仕業にしよって!!」
ミ,,;д;彡「笑うなよおお…ミルナばあちゃん!!」
(,,゚Д゚) 「……で、なんで竹から髪の毛なんて生えてたんだ?」
( ゚д゚ )「ああ、あれはね。昔は修行の為に坊さんが生きたままお墓に入ってたら
髪の毛が石の棺の蓋から飛び出すほどえらく伸びてることがあったんだよ」
( ゚д゚ )「多分…あの竹の下で誰かが修行してたんだろうねぇ…」
(,,;д;) ミ,,;д;彡「ひぃぃぃぃぃ」
ミ,,;д;彡「じゃ、あのかっこんかっこん言ってたのは俺たちを呪う為か?!」
( ゚д゚ )「違う違う、多分あんたらか髪の毛引っ張る時に髪の毛が頭蓋骨に引っかかってて持ち上がって竹にぶつかった音だよ」
(,,;д;) 「本当か?!本当に俺ら呪われないんだよな?!」
( ゚д゚ )「ああ、勿論」
( ゚д゚ )「お前らは修行するほど真面目な坊さんが子どもを呪うと思うか?」
(,,゚Д゚) 「……」ミ,,゚Д゚彡
( ゚д゚ )「ほら、わかったら今日はうちで寝んしゃい、お家の人には電話しとくから」
(,,゚Д゚)「はーい」 ミ,,゚Д゚彡
462
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:15:57 ID:68AY/e1M0
(,,゚Д゚) 「なあ、フサ」
ミ,,゚Д゚彡「なんだよ」
(,,゚Д゚) 「俺さ…」
(,,゚Д゚) 「熟女もいける口でさ」
ミ,,゚Д゚彡「いける」
(,,゚Д゚*) 「駄菓子屋のミルナばーちゃん!」
ミ,,゚Д゚*彡「大人の魅力!!」
(,,゚Д゚*) 「やっぱ女は白髪になってからだよな!!」
ミ,,゚Д゚*彡「激しく同意する!!」
(,,゚Д゚*) ミ,,゚Д゚*彡キャツキャッ
かっこん
(,,゚Д゚) ミ,,゚Д゚彡
463
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:16:47 ID:68AY/e1M0
(
)
i フッ
|_|
464
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:17:52 ID:h.GZwhnY0
二人のダメっぷりとラストのかっこんのコントラスト……
乙乙
465
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:19:19 ID:WPUz/BRQ0
なんとも言えねえ 乙
466
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:21:15 ID:pkrurHRs0
乙
なんだこいつら反省しねえ
467
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:35:46 ID:h.GZwhnY0
熟女属性はあるが男色属性はなかったことに坊さんが嫉妬したのかも……
さて、冗談はさておいて十七本目行きますか
.,、
(i,)
|_|
桜の樹の下には、のようです
.
468
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:37:37 ID:h.GZwhnY0
ーーー桜の樹の下には屍体が埋まっている!
梶井基次郎「桜の樹の下には」より
.
469
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:38:50 ID:h.GZwhnY0
ζ(-、-*ζ「……」スゥ、スゥ
( A )「……」
470
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:39:56 ID:h.GZwhnY0
ζ(-、°*ζ「……ん」パチ
( A )「……」
471
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:41:04 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ 「あぁ、もうこんな時間……」
ζ(゚ー゚*ζ「私ったら、日差しがあんまり気持ち良いから寝過ごしちゃった」
ζ(゚ー゚*ζ「おはようございます。小鳥さん、毛虫さん、蝶々さん」
( A )「……」
472
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:42:05 ID:h.GZwhnY0
ζ(^ー^*ζ「……そして、おはようございます。ドクオさん」
( A )「……」
.
473
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:43:03 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「すっかり春めいてきましたねぇ」
ζ(゚ー゚*ζ「暖かくて、過ごしやすい時期になってきました」
ζ(゚ー゚*ζ「あなたにとっては、どうですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「そちらは寒く、ありませんか?」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「暖かいのなら、いいんですけどね」
.
474
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:44:05 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「春眠暁を覚えずって言いますけど」
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんは、いつ見ても眠ってばかりですね」
ζ(゚ー゚*ζ「そんなに眠り続けていたら、いつか眠ることに飽きちゃいそう」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「いつかはあなたが目を覚ます日が、来るんですかね?」
.
475
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:44:55 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「春風が、吹きましたね」
ζ(゚ー゚*ζ「あの風はどこへ行って、誰と出会うんでしょうか」
ζ(゚ー゚*ζ「そちらは、いかがですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「風を感じることは、出来ていますか?」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「寂しくは、ありませんか?」
.
476
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:46:07 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさん、見てください。蝶々が飛んでますよ」
ζ(゚ー゚*ζ「私、蝶々って大好きです」
ζ(゚ー゚*ζ「あんな風にひらひらって、どこまでも飛んで行けたら、素敵ですよね」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「あなたにもあの蝶々が、見えてますか?」
.
477
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:47:25 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「あの蝶々は、なんていう名前だったんでしょうか」
ζ(゚ー゚*ζ「見た覚えはあっても、名前さえ知らない物者が、私たちの周りには溢れかえってる」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、他の何を知らなくても、あなたの名前だけは知っています」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……あなたの名前は、ドクオさん。そうでしょう?」
.
478
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:49:03 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「風も蝶々も、私なんかとは大違い」
ζ(゚ー゚*ζ「大地に根を張らずに動けるのが、羨ましく思える日が来るなんて考えもしなかった」
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんも、そう思いませんか?」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……応えてくれないのも、分かってはいるんですけどね」
.
479
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:49:56 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「あなたと私は、きっと似た者同士なんですよね」
ζ(゚ー゚*ζ「お互いに独りぼっちで、ここから動くことすらままならない」
ζ(゚ー゚*ζ「私はあなたに、少なからずシンパシーを抱いてます」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「あなたもそうだったら、私は嬉しいです」
.
480
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:51:03 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「……どうも私は、小難しい話ばかりしてしまいがちですね」
ζ(゚ー゚*ζ「寡黙なあなたと、話すことしかできない私では、そうなってしまうのも仕方ないことではありますけど」
ζ(゚ー゚*ζ「私とあなたは、もしかしたら意外にいいコンビなのかもしれません」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……あなたが笑ったように思えるのは、私の気のせいでしょうか」
.
481
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:51:49 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「ここからは、木の梢が邪魔して、空があんまり見えませんね」
ζ(゚ー゚*ζ「それだけが、ここにいて少し不満なことかもしれないです」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、その分たまに覗く空が余計に高く見えるのは、不思議な感じですね」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「あなたは空を見て、何を思いますか?」
.
482
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:53:18 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「ここは夜になると、本当に静かですよね」
ζ(゚ー゚*ζ「不満ばかり言ってはいけないけれど、夜の静寂はちょっと苦手です」
ζ(゚ー゚*ζ「宵闇の向こうに何かいる気がして、怖くって……」
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんも、そんな気持ちになることはありませんか?」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……本当に、ここは静かです」
.
483
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:54:44 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「……」
( A )「……」
.
484
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:55:46 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「……どれだけ話しかけても、あなたが返すのは沈黙だけ」
ζ(゚ー゚*ζ「私、なんだか虚しくなっちゃいます」
ζ(゚ー゚*ζ「せっかく、孤独じゃなくなったと思ったのに」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「それでも結局は、話しかけてしまうんですけどね」
.
485
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:56:43 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「……悲しいです」
ζ(゚ー゚*ζ「独り言のようにあなたに話しかけるのは、とても悲しい」
ζ(゚ー゚*ζ「……ねぇ、何か言ってくださいよ、ドクオさん」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
.
486
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:57:54 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「私、語りかけていたらあなたが話してくれるような気がして、こうして喋っていたんです」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、それが無理だっていうのも分かってます。だって、あなたは……」
ζ(゚ー゚*ζ「……私のしていることって、無意味なことだったんでしょうか」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……今だけは、あなたの沈黙に感謝します」
.
487
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:58:58 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「……花をね、咲かせたかったんです」
ζ(゚ー゚*ζ「それはきっと、あなた色の花びら」
ζ(゚ー゚*ζ「怖いくらい綺麗な花が、人目もはばからずに咲き誇る。そんなところを毎日夢想していました」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「それは結局、夢に終わってしまいましたけれどね」
.
488
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 21:59:46 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「あなたの幸せって、なんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「私の幸せは、いずれ時が訪れるまで、あなたと共に過ごすことだった」
ζ(゚ー゚*ζ「けれど、その時がもうそこまで迫ってるみたいです」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……今まで話を聞いてくれて、ありがとうございました」
.
489
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:01:11 ID:h.GZwhnY0
『おぉい、あったぞ!!こっちだぁ!!』
ζ(゚ー゚*ζ「!!」
ζ(゚、゚*ζ「……あーあ、もう来ちゃったのか。もう少し時間がかかると思ったんだけどなぁ」
ζ(゚ー゚*ζ「私、あの人たちが来るの、本当はさっきから分かってたんです」
ζ(゚ー゚*ζ「虫さんも小鳥さんも静かで、気配を殺すようにしてたから」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
.
490
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:02:18 ID:h.GZwhnY0
ζ(゚ー゚*ζ「……神様との、約束だったんです」
ζ(゚ー゚*ζ「他人に死体を暴かれたら、それでおしまいだよ、って」
ζ(゚ー゚*ζ「それまでは好きにしていい、でもそうなったら、ちゃんと成仏しなさいって」
ζ(゚ー゚*ζ「可笑しいですよね。そうまでして、ここに残る意味なんてないかもしれなかったのに」
ζ(゚ー゚*ζ「……さよならは言いませんよ?もしかしたらまた、戻って来れるかもしれないし」
( A )「……」
ζ(゚ー゚*ζ「だから、約束して下さい」
.
491
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:03:35 ID:h.GZwhnY0
ーーーー『次に会う時は、きっと大輪の花をつけて……』
.
492
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:05:21 ID:h.GZwhnY0
ーーーー
ーーー
ーー
○月×日、午前10時21分。容疑者、宝満義子(ほうまん・よしこ)の供述通り、被害者、井出怜衣(いで・れい)の遺体が、日案市日津府山(にちあんし・びつふやま)山中の桜の木の根元より発見された。
(中略)
該当の桜は、その樹齢の長さと独居して佇むような出で立ちから、近隣住民により独桜樹(どくおうじゅ)あるいは独桜(どくおう)と呼ばれ
畏敬と信仰の対象となっており、そのことが遺体の発見を遅らせた一つの原因であると考えられている。
(中略)
なお、捜査には直接に関係のない蛇足的な事例ではあるが、遺体の掘り出し作業中、複数の作業員が女性の泣くような声を聞いたと発言している。
過労によるノイローゼの兆候の可能性もあるため、作業人員の増加を検討頂きたい。
ーーー担当捜査官の日報より、一部を抜粋。
493
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:06:40 ID:h.GZwhnY0
……翌年の春、もはや盛りを過ぎて花をつけることは叶わないとされていた桜の老木が、奇跡のように花を咲かせた。
その花の色は、人の血液を彷彿とさせるかのように毒々しい薄紅赤であり、他のどの桜と比べても類を見ない、妖しい美しさを湛えていた。
人々は、死体が埋められていた事実をその美しさと絡め、十数年ぶりに花が咲いたこととの因果関係に
畏れおののくばかりであったが、その花に込められた意味と約束を知る者は、当然のようにそこにはいない。
黙して語らぬ桜の老樹だけが、ただそこに佇んでいるのみである。
.
494
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:07:55 ID:h.GZwhnY0
ーーー桜の樹の下には屍体が埋まっている!
ーーーこれは信じていいことなんだよ。
終
495
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:08:49 ID:h.GZwhnY0
終わりです。長々と失礼しました。
(
)
i フッ
|_|
496
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:14:10 ID:98rvfEN.0
幻想的で好きだわ
497
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:14:12 ID:WPUz/BRQ0
乙 これは良い、とても良い。
498
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:34:51 ID:ld6kgv1U0
.,、
(i,)
|_|
18本目行きます
ξ ⊿ )ξ夢で終わらせてくれないようです
499
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:35:55 ID:ld6kgv1U0
川 ゚ -゚)「シャワーを浴びてるときとかって、後ろに気配を感じることってよくあるよね。ああいうときって上にいるんだとか」
ξ ゚⊿゚)ξ「………。」
ξ; ゚⊿゚)ξ「は?」
ツンは昔馴染みのクールと一緒にカフェでお茶をしていた。
クールは昔から幽霊とか好きで、霊感があるとかそういう噂が流れていた。
ツンは幽霊なんか信じてない。だからそんなことはずっと無視していた。
それも最近までの話だが。
500
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:37:51 ID:ld6kgv1U0
最近ツンはとても怖い目にあった。それが幽霊に関係するものだったから、そんな噂がたっているクールに相談してみたのだった。
「最近、シャワーを浴びてると後ろに気配を感じるのよ。」
ツンがそう話を切り出した途端、さっきの言葉を突きつけられたのだった。
ξ; ゚⊿゚)ξ「やめてよ……これからシャワー浴びるとき上見れないじゃない…」
川 ゚ -゚)「まぁ、有名な話なんだけどね。それで?まさかそれだけじゃないよね?」
501
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:38:50 ID:ld6kgv1U0
ξ; ゚⊿゚)ξ「う、うん……、本題はここからなんだけどね」
そうしてツンは先週起きた事をクールに話し始めた。
1人暮らしの狭い部屋にはシャワーの音が響きやすい。一人である事を認識させるかのようだ。
502
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:39:37 ID:ld6kgv1U0
しかしツンは後ろに何者かの気配を感じていた。
ξ; ゚⊿゚)ξ「………だれ?」
振り向いても勿論誰もいない。
よくある話だ。
ξ ゚⊿゚)ξ「…早く寝よ」
シャワーから上がって、着替えていたらまた気配を感じた。
ξ; ゚⊿゚)ξ「………」
今度は無言で振り返る。
誰もいない。
ξ; ゚⊿゚)ξ「……疲れてるのよね」
そう自分に言い聞かせる事にした。
503
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:41:24 ID:ld6kgv1U0
TVを見ながら、ドライヤーで髪を乾かしていると
バヅンッ
ξ; ゚⊿゚)ξ「うあ〝っ!?何々?ブレーカー!!?」
ツンは真っ暗な部屋の中を、テレビの明かりを頼りにブレーカーを上げに行った。
ξ; ゚⊿゚)ξ「ドライヤー使ってるときは、他の電気を使わないようにしなきゃね…」
ブレーカーの下に椅子を立て、そこに上がり、ブレーカーに手を伸ばした。
ξ; ゚⊿゚)ξ「………なに…これ…」
髪の毛だ。
ブレーカーには大量の髪の毛が絡みついている。
504
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:42:34 ID:ld6kgv1U0
ゴリュッ、ガリガリ…ゴリュッ…
ξ; ゚⊿゚)ξ「ひっ!?」
シャワールームの方から骨と骨がこすれ合っているような音が聞こえる。
シャワールームを見ても誰もいない。
しかし音は止まない。
ぼどっ
なにかおちてきた
「ひぁ…あ……いやぁあああああああああああああああっっ」
ツンはその場で腰が抜けてしまった。
505
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:43:50 ID:ld6kgv1U0
首だ。
手もある。
まるで体はあるのに、首と手だけが姿を現しているかのような動きで、タイルを這って近づいてくる。
『ぎ…ぁが………』
ξ; ⊿ )ξ「ひぃ〝っ…!」
両手が前に出たら、今度は首がごきゃり、という音を発しながら前進してくる。
逃げなきゃ。
でも足が震えて…
腰も…
506
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:44:38 ID:ld6kgv1U0
水に濡れた手がツンの顔を乱暴に掴む。
大きく裂けた口が目の前でぱっくり開いたとき。
目の前が真っ暗になった。
507
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:45:56 ID:ld6kgv1U0
川 ゚ -゚)「んで…そこで気絶しちゃって、気が付いたらベットの上で、夢だったってオチ?」
ξ; ゚⊿゚)ξ「うん、まぁ、ただの夢なんだけどね…怖くて……。」
ただの夢だと今でも本気で思っている。
自分に言い聞かしているだけかもしれないが、自分が気を失ったのは脱衣所だ。ベットの上じゃない。夢でしかありえないのだ。
508
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:46:38 ID:ld6kgv1U0
ξ ゚⊿゚)ξ「クーはどう思う?」
川 ゚ -゚)「うーん…本当に起きたことなんじゃないかな?」
ξ ゚⊿゚)ξ「え」
川 ゚ -゚)「首と手だけの幽霊なら、ツンの後ろにずっといるじゃないか。」
509
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:48:56 ID:ld6kgv1U0
おわり
(
)
i フッ
|_|
一応補足、テレビがついてるのはわざとです。
最初のろうそくのAAずれてすまなんだ・・・
510
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:52:07 ID:h.GZwhnY0
単純だけど怖い……乙
511
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:13:53 ID:d3t9MV8U0
19本目をいただきます。
.,、
(i,)
|_|
512
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )1/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:15:35 ID:d3t9MV8U0
自室の布団の上で目を覚ました。
暑そうな夏の日差しが部屋に入り込んでいたが、特に何も感じなかった。
私は身体を起こして部屋を見回した。
物が散乱しているのが見受けられる。長いこと放置していたのだろうか。
久しぶりに来たのだっけなと思い、記憶を辿ろうとしても何も思いだせなかった。
身体の動きは頗る鈍い。自分の身体が老体なので仕方ない面もあるが、それにしても辛い。
まるで外から糸か何かで操っているようだ。
ふと思い立って、自分の左腕を右手でつねってみた。やはり痛みは感じない。
暑さも痛みも感じない。なんということだ、これでは生きている心地がしない。
ひょっとしたら私の身体は既に死んでいるのではないか。
何かの拍子で霊魂だけが残り、腐った身体を操っているだけなのではないか。
だとしたら、さしずめ私はゾンビのようだ。
しかしいったいどうしてこのような状態で、私の霊魂はここに残ってしまったのだろう。
突然、手に何か触れた。
しかし見てみても何も無かった。
513
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )2/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:17:06 ID:d3t9MV8U0
幸い部屋の中で杖を見つけたので、それを支えにドアまで向い、階下へと向かった。
家の間取りはなんとなく憶えていた。ずっと昔に来たかのような遠い記憶として残っている。
そして私には妻と双子の息子がいたことも、徐々に思いだしてきていた。
階下には双子がいた。二人ともいる。
(;´_ゝ`)「……!」
兄者の方が私をみて目を見開いていた。なんだ、何をそんなに驚いているのだ。
私が死んでいることに気付いているのか。
もし何か知っているなら詳しく話を聞こうと思い、私は兄者の反応を待った。
(;´_ゝ`)「あ、あんた歩けたのか」
私は眉を顰めた。何を言っているのだろう。歩けなくなった覚えなどない。
だいたい歩けないならなんで二階で寝ていたんだ。降りれないだろう。
それに目の前でそんなことを言うなんて失礼じゃないか。
私は兄者がこれから何を言うのかを待った。
しかし結局兄者はそれっきり、台所の方へと帰って行ってしまった。
拍子抜けした私は次に弟者の方に顔を向けた。
彼はこちらを見ずに雑誌を読んでいる。
私は声を掛けてみようと思った。
514
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )3/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:18:28 ID:d3t9MV8U0
しかし、うまくいかない。
言葉にもならない音を出したところで、私は話すことの難しさに気付いた。
いったいどうしたというのだろう。身体の構造的に問題があるのか。
そういえば死体は内部から腐っていくと聞いたことがある。声帯がもう使い物にならないのかもしれない。
(´<_` )「……兄者、どうやらだめだったみたいだな」
弟者は雑誌を読みながらそう言っていた。台所の方から大きなため息が聞こえてくる。
私には意味のわからない会話であった。
食事の席へは弟者が案内してくれた。介護慣れした人の手つきだ。どこかで実践しているのかも知れない。
私もこう動きが悪いと要介護者と変わらないのだろう。とにかく援助があるのは助かる。
(´<_` )スンスン
弟者がしきりに鼻をひくつかせているのに気付いた。
私は顔をしかめた。匂いでも気になるのだろうか。嗅がれる側は決していい気持ではない。
しかし身体が腐っていれば当然か。
今は夏場だし、私がゾンビであることに双子が気付くのもそう遠い話ではないだろう。
椅子に座っていたら兄者の作った食事が運ばれてきた。
弟者と自分には質素な朝食が、そして私の前にはおかゆが運ばれてきた。
515
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )4/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:20:05 ID:d3t9MV8U0
私には食欲が無くなっていた。それにもし身体の内部が機能していないならば消化もできないだろう。
だからスプーンにさえも手をつけずにいた。
(´<_` )「さすがに食べないみたいだな」
( ´_ゝ`)チッ
舌打ち?
なんで舌打ちなどされなきゃならんのだ。
( ´_ゝ`)「……なあ弟者、母さんの命日って明日だよな」
(´<_` )「ああそうだ。ちゃんとお供えしないとな」
母さん、つまり私の妻のことだろう。
しかしいつの間に死んだというのか、私は全く知らなかった。
あれほど私のために尽くしてくれた良妻にはなかなか出会えないと思っていたのに、なんと惜しい。
それにしても、そんな妻の死のことも忘れているなんて。
私はよほどひどい記憶障害に陥っているのかもしれない。
(´<_` )「しかし兄者、父さんの前であんまり母さんの話はしてくれるな」
(;´_ゝ`)「ああ……悪い」
それは私に気を使ってということだろうか。
それにしては妙に違和感が残った。
516
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )5/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:21:17 ID:d3t9MV8U0
ややあって、兄者が新聞を広げてくれた。
私は目を細めて日付を確認した。
私の憶えている時とどれほどのずれがあるのか検証したかったのである。
そして驚愕した。
そこにある年号は、私の記憶にあるものより五年は先のものであった。
どうやら私にはここ五年の記憶がすっぽりと抜け落ちているみたいだ。
( ´_ゝ`)「それじゃあ弟者、じいさんの世話は頼んだ」
それから兄者は仕事へ向かった。
弟者は家に残っている。はて、二人とも職についていたはずだが。
妻が死んでから私の介護のため、会社を休んでいるのか。
弟者は私を自室へと案内した。
私は既に弟者の心の内が冷え切っていることを感じていた。
介護の腕はあってもこの態度ではあまり好ましく思えない。
いつからこんな子になってしまったのだろう。
昔は弟者も兄者ももっと快活で騒がしいほどの兄弟だったのに。
自室で私は横になった。
どうにも疲れる。本来動くべきでない身体を動かしているのだから当然か。
517
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )6/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:23:08 ID:d3t9MV8U0
双子のことが気にかかった。
あの二人は私が死体だと気付いていはいない。
しかし私の家族であるのだから、何かしら私について知っているはずだ。
五年間という長期の記憶が無い私だが、あの双子はその期間についても知っているだろう。
口でそれを聞きだすことができないのがもどかしい。紙に書こうともしたが、思うように手が動かなかった。
そのうち、視界がぶれ、全てが真っ暗になった。
気がつけば寝ていたらしい。すでに日が暮れていた。
私はゆっくりと起きた。身体の鈍さは変わらない。
昼食も省いてしまったが、特に問題はないだろう。
どうも視野が不安定だ。右目が開いていない気がする。
身体が不自由なのはしかたない。このままで耐えよう。
それにしても、弟者は昼食のために私を呼ばなかったのだろうか。
それに他の、排泄とか着替えとかもなされた様子はない。記憶もない。
これではあまりにも淡白じゃないか。老人に対してこの仕打ちはいかがなものか。
私の憤りは募っていった。
そのときまた腕に何か触れた。
できる限り急いで振り返ってもやはり何も見受けられなかった。
518
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )7/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:24:27 ID:d3t9MV8U0
私は再び階下に降りた。
すると、なんと弟者と兄者がそろって夕食を食べていた。
二人とも私を見て呆然としている。
(;´_ゝ`)「う、うわああああああ!!!!」
兄者が弾けるように叫んで立ちあがる。
そのまま台所まで行ってしまう。
壁の隅からこっそりとこちらの様子を伺っていた。
弟者も冷や汗を流しながら身構えている。
座りながら、その右手には強く橋が握られていた。
(´<_`;)「どうしてだ……」
弟者が恐ろしく低い声で呟いた。
どうしてだと?
食事のために決まっているだろう。自分たちだけで食べておいて私に出し忘れたなどとは言えまい。
519
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 23:25:37 ID:68AY/e1M0
橋握る弟者
ゾンビものか…
支援
520
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )8/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:26:04 ID:d3t9MV8U0
(;´_ゝ`)「……ど、どうやら危害はないみたいだな」
兄者がほっとした様子で言った。
(´<_`;)「ああ、やっぱり普通じゃないみたいだけど」
弟者は私を見つめながら苦々しそうな顔をしていた。
私がゾンビであることにようやく気付いたということだろうか。
それならそれで好都合だ。私の身に何があったのかわかるかもしれない。
それにしても、先程の態度はなんだ。
およそ親に向けていいものではないだろう。
人を珍獣か何かのように扱いおって。
(´<_`;)「まああの身体じゃどうせ動いたところで大したことないさ」
弟者の冷たい言葉。なんでこんなこと言われなくちゃならないんだ。
二人ともどうしてこんなになってしまったのだろう。育て方に不備でもあったのか。
私は沸々とした怒りのままに、弟者の頭部を睨みつけた。
521
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )9/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:27:44 ID:d3t9MV8U0
(;´_ゝ`)「弟者、父さん怒ってるみたいだぞ」
兄者がおずおずと言った。
弟者が鼻で笑う。
(´<_`;)「そんなはずあるか。もう何年も前からボケてるんだぜ?」
(;´_ゝ`)「確かに五年前からそうだけど……怒ったりは普通にするんじゃないのか」
(´<_`;)「そんな怒ったりする動機なんて、その場限りしか持ち合わせていられないさ」
ボケてる? 痴呆症ということか。
五年前からということは、私の記憶が無い時期と一致している。
なるほど、私は病気のために記憶を保持できない身体になっていたのだな。
だからゾンビとなった今思い返しても、思いだすことができずにいたのか。
合点がいくと同時に、兄弟への不信感が募っていった。
冷めた口調に対する苛立ちばかりではない。
522
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )10/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:29:07 ID:d3t9MV8U0
きっと私は生前痴呆症で、足腰も悪くなっていたのだろう。
それにもかかわらず部屋は二階である。私は閉じ込められていたんじゃないか。
階下にも降りれず、一緒に食事をとることもせず、いやひょっとしたら何日も放置されていたのかもしれない。
朝弟者が言っていたことを思い出す。
何かに失敗した。ひょっとして私を餓死にでもさせようとしたのか。
そして私の魂が双子を憎み、恨むためのこの世に留まったと。
あいにくその恨みを私がすっかり忘れていたから何をする気にもなれなかった。
しかし今なら気持が形成されてきている。
自然と杖を持つ手が震えてくる。
腕が何かに握られる感触があった。
先程から私に触れてくるやつか。
私は苛立って手を振り拒んだ。
なんださっきから、うっとおしい。
何かは知らないが私の邪魔はしてくれるな。
そう念じると感触は消えた。それっきり。
523
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )11/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:30:34 ID:d3t9MV8U0
(;´_ゝ`)「弟者、俺仏壇の方へ行ってくるよ」
(´<_`;)「命日は明日だぞ?」
(;´_ゝ`)「なんかいやな予感がするからさ」
それから兄者は席を立ち、食器を片付け始めた。終わってから仏壇へ行くということなのだろう。
私はふっと怒りが抜けた。そうだ、妻の仏壇をまだ見ていない。
この双子をどうにかしてやる前に挨拶くらいしておきたいものだ。そう思うと怒りは一応おさまった。
兄者が片づけを終え、奥座敷へと歩んでいく。
私もそれについていこうとした。
(´<_`#)「おい!」
弟者が突然叫ぶ。
驚いて弟者を見ると、これまで見たことないほど鋭い目で私を睨みつけていた。
524
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )12/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:32:07 ID:d3t9MV8U0
私は訝しんだ。弟者は私を止めようとしているのか。
なんでそんなことをする必要がある。私はただ妻の位牌を見たいだけだ。
それが夫と言うものだろう。どうして邪魔をする。
抑えていた怒りが瞬時に湧いてきた。
杖を握る手に力が込められる。
(´<_`;)「……っ、うう」
私の顔に恐れをなしたのか、弟者が呻いた。
心の隅に優越感が現れた。所詮わが子だ、父親には逆らえまい。
遠い昔に置いてきた純粋な支配欲。
時代錯誤と言われようとも私はその気持ちを根源に抱えて育ってきていた。
世の中を渡る上でひた隠しにしてきたが、もう限界が近い。
このように虐げられる現状があれば、その気持ちが湧いてくるのも無理はない。
私は杖をゆっくりと持ち上げようとした。
525
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )13/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:33:29 ID:d3t9MV8U0
( ´_ゝ`)「やめろ、弟者」
兄者が静かに言う。
私は腕を動かすのをやめた。杖の先だけが宙に浮く。
(´<_`;)「け、けど兄者!」
弟者は必死の形相で兄者に訴えかけていた。
兄者は首を横に振る。
( ´_ゝ`)「いいじゃないか。母さんくらいみせてやろう。
何かあったら弟者、お前が止めてくれ。俺も手伝うから」
弟者は何事か言いたそうに口を震わせていたが、反論はしなかった。
結局そのままテーブルに向き直った。食器を片づけるためだ。
私の杖を持つ手と背中を支える。介護の姿勢だ。
そのまま三人は奥座敷へと向かっていった。
526
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )14/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:35:13 ID:d3t9MV8U0
仏間に黒檀の仏壇があった。私も憶えている。先祖の位牌はそこに置かれていた。
そして記憶にない新しい位牌があった。それが妻のものなのだろう。
兄者が先頭に立ち、鈴を鳴らして、手を合わせる。
( ´_ゝ`)「……母さんが死んでから、もう一年になるよ。
母さんが服毒自殺したって連絡を受けて、急いでこの家に来た。
介護をまかせっきりにしていたのが悪かったんだと反省して、弟者と協力してじいさんを支えようと思った」
( ´_ゝ`)「でもすぐに、母さんが自殺した理由は別のところにあるとわかった。
父さんはすっかり変わってた。ボケが始まってて、いつも何かに憤ってて、ものすごくわがままな人になってた。
俺らは大人になってからの父さんしか知らなかったからさ、父さんがそうなっちゃうのを見ててショックだった。
そしてそんな父さんと結婚した母さんの受けたショックはもっとひどかったと思う」
( ´_ゝ`)「一年間耐えてみて、やっぱり俺らも限界が来た。
何を言っても父さんはすぐに忘れてしまうんだ、どんなに恨み事を言ってもけろっとしちまう。
それが一番つらかった。母さんが死んでいることさえ覚えてられないなんて」
527
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )15/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:36:16 ID:d3t9MV8U0
( ´_ゝ`)「だからかつて母さんが使った毒を食事に混ぜたんだ。それが昨日の話。
そしたらさ……なんでかわかんないけど、父さん元気になってやんの。もう意味分かんなくてさ。
急に歩けるようにもなってるし、毒なんて全然意味無かったし。嫌になるよ」
( ´_ゝ`)「でさ、昼間弟者が油断しているところを鈍器で殴って殺そうとしたらしい。
でもまだ生きてる。いや、たぶんあれはもう普通じゃない。だって、頭の右側が抉れてるんだもの。
きっと呪いとかそういう、人知の及ばないものだよ。俺たちじゃどうしようもない」
間をおいてから、兄者は嗚咽を漏らしだした。
苦しみに満ちた声が少しずつ発せられていく。
悲しみも怒りも、全てが混ぜ合わさった、ひどく聴き取りづらい声だった。
(#´_ゝ`)「どうして……どうして俺らはこんな目にあわなくちゃならないんだ!
俺らや母さんが何をしたっていうんだ! どうしてあいつを殺せない!!
どうして……どうして……ああ、せめてあいつにわかってほしい。忘れないように、その魂に、俺ら家族の恨みを刻みつけたい」
528
:
( ´_ゝ`)ゾンビがいるようです(´<_` )16/16
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:38:05 ID:d3t9MV8U0
兄者は仏壇の前に崩れ落ちた。
大人げない嘆きが仏間に響き渡っている。
その声が嗄れ、喉が腐り落ちようとも、彼は泣き続けるだろう。
私は腕が掴まれるのを感じた。
今までにないほどはっきりとした感触だった。
私はようやく理解した。
この光景を見ることこそが私の今いる理由なのだと。
そしてこの触れてくる者が誰なのかも、わかった。
私はもう、触れてくる手に刃向おうとはしなかった。
〜〜おわり〜〜
529
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:40:46 ID:d3t9MV8U0
(
)
i フッ
|_|
>>518
の13行目の弟者さんが橋握っちゃってる……指摘されて気付きました。
握ったのは箸でした。
530
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 23:42:39 ID:h.GZwhnY0
乙乙。可哀想なのは母か父か兄弟か……
しかし自殺したのが母者だと思うと違和感が拭いされないwwww
531
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 23:48:44 ID:NE1qcFrg0
おつ
ゾンビになったのが一番あかんかったのかな…
>>530
同じこと考えたわww母者と思ってしまうとどうしてもなww
532
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 23:51:02 ID:4ajtcZlE0
父者の腕を握ったのは死神かなんかか?
うちの婆様もそうなっちまうんかなあ…
つ!
533
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 23:55:07 ID:d3t9MV8U0
>>532
書いてるときは妻を想定していたけど、受け手次第かなとも思ってみたり。
母者のAAなんて使ってたらそれこそ別の意味での恐怖になりますね……ww
534
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:11:56 ID:AdtwW4/A0
二十本目いきます
.,、
(i,)
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535
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:12:53 ID:AdtwW4/A0
lw´‐ _‐ノv「やぁ、ひさしぶりだね」
( ФωФ)「全くであるな」
白いワンピース、大きい麦わら帽子。
風になびく豊かな黒髪と、赤いリボン。
彼女に足は、ない。向日葵畑が彼女を透けて見えて、彼女は輪郭を取り戻す。
自分が目を細めると、彼女も目を細め唇で弧を描いた。
lw´‐ _‐ノv「こうしてまともに君と話せるようになって嬉しいよ」
( ФωФ)「それは吾輩の台詞である」
自分が言うと彼女は鈴を転がすような声で笑った。
そうだね、そうだねとひとしきり笑って空を仰ぐ。
lw´‐ _‐ノv「私は結局自分の足で立つことなく逝ってしまったね」
( ФωФ)「……致し方なかろう」
lw´‐ _‐ノv「今更身体について文句をいうつもりはないさ、こうして立つという視界を手に入れたことだし」
( ФωФ)「立っていると言っていいものかわからないが」
lw´‐ _‐ノv「浮いている、と言う方が正しいかな?
どちらでもいいだろう、私は今こうしているのだから」
彼女が生前こうして清々しい笑みを浮かべたことはあったのだろうか。
自身の記憶に問いかけるが思い当たらない。
記憶にある彼女は白い顔で俯いて、諦めの表情を浮かべているばかりだった。
唯一、双子の姉といる時は薄く笑っていたけれど。
536
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:13:58 ID:AdtwW4/A0
lw´‐ _‐ノv「……謝っておいてくれたかい?」
脳内に赤髪の、健康的な女性の姿が映る。
目の前の彼女が同じ顔を思い浮かべたのだと悟って、何をだと聞いた。
lw´‐ _‐ノv「これ、借りっぱなしだから。もう返せないけど」
帽子のつばを右手で握って、眉を下げる。
赤いリボンはお前の姉によく似合っていた。
そう言うとわかってるよ、と少し頬を膨らませた。
lw´‐ _‐ノv「すこし、憧れてただけ」
( ФωФ)「健康な姉に?」
lw´‐ _‐ノv「なんで私だけ、って思ったよ。
私が寝てても彼女は立って、走って、私が見れない景色を見てた。君もね」
( ФωФ)「……」
lw´‐ _‐ノv「ああ、恨み言を言いたいわけじゃないんだ。
私の身体がどうしようもないことなんてわかってたし。
君達は動けない私に世界を見せようとしてくれた。だから嫌いになんてなれなかった」
( ФωФ)「嫌いになっていた方がよかった、とでも言いたげだな」
lw´‐ _‐ノv「……その方が、楽だったのかもしれないと思わないでもないよ。
でも君達を羨ましいと思いこそすれ、憎めはしなかった。やっぱり、好きだったんだよ」
( +ω+)「……そうか」
お前の姉は、お前を亡くして以来泣いているのだと。
自分がお前の分の健康をうばってしまったのだと。
恨んでいるに違いないと、自責の念に駆られていることをお前は知らない。
知らせてどうなる。自分だから彼女に会えるのであって、彼女は姉には会えないというのに。
537
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:15:17 ID:AdtwW4/A0
lw´‐ _‐ノv「ねぇ、ここは綺麗なままだね」
彼女は振り返って言う。
向日葵が風に揺れて、黄色い花びらが舞った。
帽子のつばを抑えたまま、彼女は笑う。
lw´‐ _‐ノv「ここが好きだったんだ、ずっと来てみたかった」
( ФωФ)「綺麗だろう、吾輩が埋めたのだ」
lw´‐ _‐ノv「彼女と、でしょう。妙に見栄っ張りだね君は」
( ФωФ)「実質吾輩は手伝っただけなのだがな」
lw´‐ _‐ノv「だろうね。でも、綺麗だよここは」
彼女の人生の大半を過ごした部屋が見えた。
たった数メートル、彼女が移動しただけでとても珍しく見えるのはなぜなのだろう。
今そこでは姉が泣いているのだろう。白いシーツを握りしめて、肩を震わせているのだろう。
lw´‐ _‐ノv「向日葵が好きなんだ、彼女が初めてくれた花だから」
( ФωФ)「吾輩も渡したはずだが?」
lw´‐ _‐ノv「彼女の方がはやかった。初めて咲いたんだって、笑顔で持ってきてくれた。
私の髪に挿して似合うと言ってくれたよ」
( ФωФ)「結局二人で髪に飾ったまま寝たのだったか」
lw´‐ _‐ノv「そうそう、起きたら花びらが落ちちゃってて泣いたんだ」
彼女の手は向日葵を通り過ぎた。触れることが叶わなくなった身体に、溜息を吐いた。
これが見れるから夏は好きだったんだけどな。呟いた言葉は地に落ちた。
自分の方を向いて、彼女は笑う。
538
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 00:16:27 ID:AdtwW4/A0
lw´‐ _‐ノv「彼女は元気かい?」
本題に入ったと、思った。
彼女の癖は知っていた。言いにくい話題に入るとき、妙に話を変える。
そして自分は本題から逃げてはいけないともわかっていた。
( ФωФ)「……沈んでいる。お前が逝ってから、ずっと」
lw´‐ _‐ノv「笑っては、いないのかい?」
( ФωФ)「笑えるはずなかろう。彼女はお前に逝ってほしくなかった」
lw´‐ _‐ノv「無理だとも知っていたろうに」
( ФωФ)「……わかっていても、心が追いつかないのだろう。
吾輩は寄り添うことしかできん」
lw´‐ _‐ノv「笑顔が好きなんだけどね。沈んでいる顔なんて似合わないよ」
( ФωФ)「……そこには、同意しよう」
lw´‐ _‐ノv「……ああそうだ、この手があるじゃないか」
ひらめいた、という顔をして彼女は麦わら帽子からリボンを外す。
姉の髪に似た赤布を吾輩の首にかけて、よし、と笑った。
lw´‐ _‐ノv「伝えておいてよ、私は恨んでなんかないって。
これ持って行っちゃってごめんって。返すね、」
( ФωФ)「……名を、呼ばないのか?」
lw´‐ _‐ノv「嫌だなぁ、呼んだらこっちに来ちゃうかもしれないよ?
それに、そろそろ時間切れだ」
彼女が吾輩の頭を撫でて、感触が消えた。
目を開けると既に彼女の姿はなかった。首にかかる布だけが彼女のいた印だった。
向日葵畑に背を向けて、室内にはいる。
目指すは彼女のいた部屋、姉のいる部屋。
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