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( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )

1名も無きAAのようです:2012/11/23(金) 19:46:34 ID:tFLjG.4M0
ラノベ祭り参加作品

677名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:15:31 ID:ttGVJWA.0


(iii´_ゝ`)「……」

(#'A`)「兄者、こたえろ!!!」


兄者の力を振り絞った程度では、ナイフは早く飛ばない。
それどころか、それほど飛ばないうちに落下して地面に落ちる。
カランと高い音が響き、地に落ちる。
ただ、それだけ。


/◎ ) =| ) ……g


しかし、巨人の意識を逸らすにはそれだけで十分だった。
魂を持たない巨人は、武器を投げつけた生き物をはっきり敵として判断する。
ぎちりと無限軌道が動き、その体が兄者に向けて動き始める。

最奥の壁。その近くに座り込んだ標的。
動こうとはしない獲物へと向けて、巨人の体は動き始める。


(  _ゝ )「……ドクオ、俺が言ったこと覚えてるか?」

(#'A`)「なんかあったら、大声を出せってやつだろ」

( ´_ゝ`)「……そっちじゃない。もっと前の方だ」


.

678名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:17:51 ID:ttGVJWA.0

いろいろありすぎて、覚えていない。
いや、今はそんなことを言っている場合じゃないだろう――と、ドクオは叫びかける。
そんなドクオの表情から言いたいことを読み取ったのだろう、兄者の口元が小さく緩む。


( ´_ゝ`)「もし何かあったら、俺は無視して祭壇を壊せ……それでどうにかなるはずだ」

(#゚A゚)「大馬鹿野郎!!! お前まさか」

( ´_ゝ`)「大馬鹿野郎か。よく弟者にも言われるな」


兄者の顔に浮かぶのは飄々とした、表情だ。
さっきまでの、真剣な表情は何処にも見られない。
この、嘘吐き野郎。――ドクオは、そう叫ぼうとして、ぎちりという異音を聞いた。

ぎちり
ぎちり、ぎりぎり、ぎちり


耳障りなそれは、この部屋で幾度となく聞いた音だ。
ゴーレム。岩で作られた、魂をもたないバケモノ。


/◎ ) =| )


その顔面に穿たれた溝は、はっきりと兄者の姿を見据えていた――。


.

679名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:20:18 ID:ttGVJWA.0

――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――


( <_  ;)「――ぅ」


体が崩れ落ちる衝撃で、弟者は目を覚ます。
……意識を失っていたらしい。頭がはっきりと働かない。
ゴーレムの気配は間近にはない。しかし、奴がどこにいるのか、ぼんやりと霞む視界ではわからない。
全身が鈍く痛む。頭の中を支配するのは、痛いという言葉だけだ。


( <_  ;)「てき、……は?」


痛みをこらえながら、弟者は目を開く。
霞んではっきりとは見えない視界の中に、ゴーレムの姿は見えない。
助かったと弟者は思い――次の瞬間、頭から血の気が一気に引く。

痛む頭を振り、震える足を無理に支え立ち上がる。
その瞬間、体を覆う魔力が霧散した感触を覚える。
ドクオの結界が消失したためだったが、目覚めたばかりの弟者にはわからなかった。
……ブーンの風だろうか? そう思いながら、弟者は足を踏み出す。


(´<_`; )「……あにじゃ、……ブーン」


.

680名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:21:33 ID:ttGVJWA.0

体の至るところが痛みを訴えてくる。
しかし、動けないかと思った体は――意外なほどに自由に動いた。
歪む視界は何度か瞬きをすれば、ようやくまともに像を結んだ。


( ´_ゝ`)   (゚A゚#)


最奥の壁に座り込む兄者とドクオの姿が見える。
そして――、そのすぐそばには、間近に迫った岩の巨人の姿。


/◎ ) =| )


熱をはらんだ空気を排出しながら、巨人の腕が大きく動く。
胴体を中心として、円を描くように振るわれた腕が狙う標的は――、


(;´_ゝ`)「――やっぱ、来るか」


兄者。
身体能力の大半を持っていかれた今の兄者は、満足に動くことも出来ないはずだ。
弟者の顔から血の気が引く。しかし、ゴーレムの動きは止まらない。
ぶしゅぅと間の抜けた空気の音が響くと、巨人の腕が縦に向かって振り下ろす動きへ切り替わる。


.

681名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:28:44 ID:ttGVJWA.0

兄者は動けない。
そして、弟者も体勢をたてなおすだけで精一杯。

             オ レ
( <_  )「――――兄者っ!!!」



巨人は岩と砂でつくられた巨体を震わせて、その腕を兄者に向けて振り下ろし、


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682名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:29:31 ID:ttGVJWA.0
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683名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:31:24 ID:ttGVJWA.0

瞬間。
床から黒い何かがゆらりと立ちあがった
黒いうすっぺらな、水のようなそれは、動けない兄者を飲み込みながら天井に向かって伸びる。


(゚<_゚  )「――――兄者っ、兄者兄者ぁっ!!!」


身を裂かんばかりの声を上げ、弟者は黒いそれにむけて突進する。
しかし、遅い。
弟者の動きでは、黒い影にも、巨人の腕にも間に合わない。


そして、弟者の向かうその先。
黒い何かに飲み込まれた兄者の頭上――下に向けて振り下ろされようとしていた巨人の腕が


ぴたりと

                           止まった。


( A ;)「――どうにか間に合った」

(;  _ゝ )「弟者っ、ブーン! 俺は無事だっ!」


黒い影の向こうから声が上がるのを、弟者は聞いた。
その声は反響し、どこから聞こえてくるかわからない。
しかし、それは間違いなく兄者とドクオの声だった。


.

684名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:33:34 ID:ttGVJWA.0

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――――――――――――――
――――――――――――


( A )「目眩ましの結界を張った、こっちはこれでしばらく持つ」

(; _ゝ )「ちょっ、これ目眩ましだけなのか」


急に暗くなった空間のなかで、兄者は目を見開いた。

兄者とドクオの体は、先ほどの場所から移動していない。
ただ、その周囲は黒く陰り暗い影に覆われている。
少しだけひやりと涼しいが、それ以外は何も変わったことはない。
息苦しくもないし、空気の肌触りも変わらない――、ただ日差しが遮られて暗いだけ。


この黒い影がドクオの言う“目眩ましの結界”というものだろう。
兄者はふむと小さく息をついた。

兄者の位置からはゴーレムや弟者の姿が先ほどまでと変わらず、はっきりと見える。
しかし、不思議なことに弟者やゴーレムからは、兄者とドクオの姿が見えないらしかった。


('A`)「悪いか。どうせオレ程度じゃこれ一つが限界だよ」

(;´_ゝ`)「いや助かった」


.

685名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:35:06 ID:ttGVJWA.0

首を動かすのも辛いのか、兄者はこの状況だというのに微動だにしなかった。
ただ正面を向いたまま、口と表情だけを微かに動かす。


(#'A`)「そう思っているなら、自分で勝手に納得して先走るのはやめやがれ!
    お前がナイフ投げて注意を向けんでも、弟者にはちゃんとこれと同じ結界が張ってあったんだよ!!」

( ; ゚_ゝ゚)「……なんと、な」

ヽ(#'A`)ノ「こっちを守ったせいで、弟者の方の結界はダメになったし、ったく!」


ドクオは声を振り上げながら、ゴーレムの姿を見やる。
巨人は兄者やドクオの姿が見えなくなったことに動揺でもしたのか、上半身を回転させて周囲に目を走らせている。
ゴーレムは目でしか、標的の位置を判断出来ないのだろう。目の前の兄者やドクオに気づく様子はなかった。


('A`)「はぁぁっ、上手くいった。
   あとは、ブーンと弟さえどうにかできれば」

( ´_ゝ`)「……」

('A`)「この部屋の結界を解こう。もう、オレたちだけじゃどうにもならん」


この状況を突破するための手段は、もうこれしか残されていない。
兄者だって何かあったら、結界を壊せといったのだ。同じ意見だろう。
ドクオはそう思って、動き出そうとするが――、兄者は首を縦に動かそうとはしなかった。


.

686名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:37:46 ID:ttGVJWA.0

(; _ゝ )「……ドクオ。その前に、一つだけ頼めるか?」

('A`)「なんだ。いまさら、結界は解けないなんてワガママはもう聞かないぞ」


兄者はドクオの声には答えず、視線を横に向けた。
その視線が向かう先は、ゴーレムではなくその向こうの草むら。


( ´_ゝ`)「……アレを取ってきてくれ」

('A`)「あれ?」


踏み荒らされた緑の草の中。そこに、投げ捨てられたものがある。
細かな模様や金具によって装飾が施された、大振りの袋。
見覚えのあるそれは、弟者が出かける時からずっと手にしていた鞄だ。


(;'A`)「何をいきなり」

( ´_ゝ`)「……この状況だからな、出来る限りのことはするべきだと思われ。
      説明は後でするから、頼む」


そう言い切った兄者の顔に、諦めの色は見えなかった。
頭から血を流した姿のまま、兄者は口元に笑みを浮かべるとそう言い切った。


.

687名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:40:08 ID:ttGVJWA.0

――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――


(´<_`#)「――ぁあああ!!!」


弟者は駆けた。
体の痛みはもはやどうでもいいものへと変わっていた。
それよりも、アイツだ。岩でできたバケモノ、あいつは俺――兄者を殺そうとした。

許せない。
アイツだけは、壊さなければ気がすまない。
――弟者の頭を支配するのは、もはや怒りだけだ。


折れた刀を振り、弟者がゴーレムの足へと迫る。
そのまま一閃。
青龍刀の残された短い刀身部分はそれでも、主の命を果たそうと火花を上げる。

戦略だとか弱点をつこうといった考えは、その動きからは欠片もみられない。
弟者の動きは相手に攻撃を加える。それだけしか考えていない動きだ。


(゚<_゚ ♯)「ぁぁああああああ!!!」


.

688名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:42:12 ID:ttGVJWA.0

弟者の口から上がるのは、獣のような叫びだけ。
壊れた武器をただひたすらゴーレムに振るい続ける。

一撃、二撃。

折れた刀が悲鳴を上げ、わずかに残された刀身が醜く歪む。
しかし、弟者の動きは止まらない。


( <_ ♯)「――っああああああ!!!!」


攻撃を避けざま、突きを放つ。
短くなった青龍刀は、それでもゴーレムへと届いた。
手首を捻り刀の軌道を、切りつける動きへと変える。
右手に走りこみ、位置を変えてもう一撃。


/◎ ) =| )

( <_ ♯)「ちぃっ!」


ブーンの援護はない。
武器も、壊れた異国の刀が一本だけ。
刀を振るう腕は重く、打ち込むたびに硬い岩の衝撃に腕を持って行かれそうになる。
攻撃の効果は見えず、武器を振るえば振るうほど体力が失われていく。

.

689名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:44:23 ID:ttGVJWA.0

――元より、弟者に勝ち目などはない。
それでも戦うのは、完全に意地であった。
弟者は、折れた武器を振るいながら、ゴーレムを睨みつける。


(´<_`#)「俺は――、もう二度と俺を」


失わないと決めたのだ。
そうなるくらいならば、自分が先に死んだほうがマシだ。
それで、結果。兄者が死ぬ形になるとしても、何もしないよりはるかにいい。


と(´<_`#)


ゴーレムの腕に、片手を掛ける。
腕の力で這い上がり、顔面の装甲へと跳躍しようと腰を落とす。
体が揺れる。それでも、ゴーレムの頭に一撃を加えようとしたところに、巨人のもう片方の腕が迫り……


回避は間に合わない。
もとより、回避をできるような場所にはいない。
それでも、避けようと力を込めた足がずるりと滑り――

弟者は、何もない空へと放り出された。


.

690名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:46:34 ID:ttGVJWA.0


体を捻り、弟者は辛うじて受身の姿勢を取る。
そして、そのまま弟者は地面にたたきつけられた。


( <_  ;)「――くっ」


落下の衝撃に息が詰まるが、動けないほどではない。
痛みがあるが、骨は折れていない。手にも青竜刀の柄が残っている。

まだ、戦える。


(´<_`#)「動け」


弟者は立ち上がろうとして――、その動きを止めた。
見上げた視線の先に、兄者とともにいるはずのドクオの姿がある。
ブーンを助けに来たのかと弟者は思い、すぐにその考えを打ち消した。

弟者の顔を、嫌な汗が伝う。

ドクオの気配を、感じなかった。
この状況だからこそ普段以上に、気を張っているにもかかわらず弟者は気づけなかった。
ドクオは気配を隠していたのだろう。そこまでして、ドクオが向かった先にあるのは――何だ?


(´<_` ;)「何、を……」


.

691名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:49:19 ID:ttGVJWA.0


弟者は視線をドクオへと向ける。
ドクオが向かう先、そこにあるのは弟者が投げ捨てた鞄だ。ドクオの細くて小さな腕が、鞄へと届く。


(゚<_゚ ; )「……まさか、」


あの鞄には、魔法石板が入っている。
ブーンやドクオたち精霊は、魔法を使うのに石板を必要としない。
魔道具や石板を使って魔法を使うのは、人間だけだ。

――この状況で、石板を必要とする人間は一人しかいない。


(´<_`#)「やめろ、ドクオ!!」



              (  _ゝ )


兄者だ。
兄者が、魔法を使おうとしている。あの時のように、兄者が――


.

692名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:51:13 ID:ttGVJWA.0



――今でも、思い出す。

物置代わりの、ガラクタが押し込められた小部屋。



              《止まれ》



魔力を込めた、絶対の制止の言葉。
振り払えなかった忌まわしい力。

魔法さえなければ――あの時動けてさえいれば、その後の展開は変わっていたはずだ。
兄者だけが、鏡に落ちることもなかった。
俺が、俺で無くなることだってなかったはずだ。


使わせてなるものか。
それだけは、絶対に避けなければならない。


.

693名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:53:49 ID:ttGVJWA.0


(゚<_゚ ♯)「……ドクオぉぉぉ!!!」


弟者の足が土を踏み、その身を立ち上がらせる。
ふらつく体を押さえつけ、ドクオの元へ向かおうと力を込める。


('A`)「……スマン、弟者。兄者の頼みだ」


殺気を込めた弟者の視線が、ドクオを貫く。
弟者はこれまでドクオに対して、攻撃をためらったことはない。
ドクオのもとにたどり着けば、弟者は手にした武器を振るうことだろう。

――しかし、ドクオの表情は静かだった。


('A`)「オレは薄情だが、意地が悪いわけじゃない。だから、お前の命令は聞けない。
    このままだと死ぬってわかってる奴を、放っておけるかよ」


弟者に向かって言い放つと、ドクオは背後へ向かって叫んだ。


('A`)/「ブーン!!! こいつを兄者のところに!!!」


.

694名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:55:44 ID:ttGVJWA.0

ドクオの近く、草むらの中から魔力が湧き上がるのと、弟者が駆け出すのは同時だった。
弟者の位置からでは、魔力の持ち主の姿は見えない。
しかし、ドクオの声がなくとも間違えることなんてヘマはしない。

これは、ブーンだ。
無事だったのかという安堵の気持ちと、ドクオなんかの味方をするのかという思いに、弟者の足が一瞬鈍る。


(#^ω^) 《兄者に飛ぶお!》

(´<_`; )「――くっ」


弟者の戸惑いをつくようにして、ブーンの魔法が放たれた。
一陣の風が、大振りのバックを載せて暗いうすっぺらな影へと飛び去っていく。


(#'A`)「兄者ぁぁぁっ、後は任せたぁぁぁっ!!!」


(;'A`)と( <_ #)


弟者の腕がドクオの首を捕らえる。
しかし、その頃にはもう全てが遅かった。


.

695名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:58:03 ID:ttGVJWA.0


(´<_`#)「――殺しておけばよかった」

('A`)「そりゃ、勘弁だな」


弟者の射殺すような目に言葉に、ドクオはそう答えた。
その言葉遣いは兄者のようだ。弟者はそう思い、そう思ったこと自体に舌打ちをする。


(;^ω^)「おおおオトジャ! こわいのはやめるお!」

(´<_`#)「……」


弟者はドクオを睨み続けている。
その手に力を込めることはない。そんなことをすれば、兄者を守る結界は消失してしまう。
弟者は力を込めそうになる手を、必死で押さえつけながら、ドクオに――


(# ゚ω゚) 《弟者、飛ぶお!!》

(´<_` ; )


ブーンの巻き起こした風が、ドクオごと弟者の体を押し流す。
そして、次の瞬間、弟者はブーンが起こしたのとは違う風と、震動を感じ取る。


.

696名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 22:59:27 ID:ttGVJWA.0


/◎ ) =| )//


高い位置から、振るわれた腕。
それはゴーレムの繰り出す、攻撃だった。
巨人の腕は、先ほどまで弟者がいた場所を寸分違わず押し潰した。


(;゚A゚)「あああ、アブね。死ぬぅ、死ぬからぁぁぁぁ!!!」

(´<_` ;)「――っ」


怒りに、完全に我を失っていた。
ブーンがいなければ、兄者を守るどころか自分の命さえなかった。
弟者の背を、冷たい汗が伝う。

ドクオを掴む手を放す。開放されたドクオは、小さく悪態をつくと羽ばたき始める。
弟者はドクオを睨みつけながらも、唯一残された武器――青竜刀の柄を握る手に力を込める。


(´<_` )「すまなかった」

(*^ω^)「大丈夫だお!!!」


弟者は顔を上げる。
今、向かうべきなのはドクオではなく、ゴーレム。
弟者は倒すべき敵へ向けて、折れた青竜刀を構えた。


.

697名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:01:24 ID:ttGVJWA.0

――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――


影の中を、一迅の風が吹き抜ける。
魔力を帯びたその風は、兄者の肌を粟立たせ、ドサリと何かを落とすと掻き消える。

兄者のすぐ正面、落ちたそれは――、兄者が求めていた弟者の鞄だ。


( ´_ゝ`)「……でかした、ブーン」


動かない右腕に力を込める。
だらりと力なく垂れた腕は、どれだけ力を込めても感覚がない。
まるで体に棒がぶら下がっているような、強烈な違和感。
それでも力を込めて動かし続けると、どうにか鞄に届いた。


(;´_ゝ`)「……あと、ちょい」


汗が頬に伝う。
動くたびに傷を刺激して、鋭い痛みが走る。
全身をじくじくと覆う鈍い痛みとは正反対の刺激に小さく呻きながらも、兄者は動きを止めない。
額から流れる血が汗と混ざって、兄者の服を汚していく。


.

698名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:03:16 ID:ttGVJWA.0

指をひっかけ、鞄を引き倒す。
ごとりと重い音がして出てきたのは、石板が三つ。


(;´_ゝ`)「……届いた」


黒いつややかな、石材。
大市で濃紺色のヴェールの女から買った魔法石板と、遺跡で拾ったただの石板。
文様とともに刻み込まれた魔法は――、今の兄者にとって最後の武器だ。

最後の力を込めて、石板の一つを引き寄せる。
黒の盤面、刻み込まれた魔力は火の色をしている。


( -_ゝ-)「……」


瞳を閉じて、意識を落とす。
自分の下、意識の底――“自分”の内側に手を伸ばして、魔力を汲み上げる。

ゴーレムとの戦闘やドクオに気を取られ、弟者の意識は乱れている。
今ならば――、弟者に持っていかれた魔力を奪い返すのは、それほど難しくないはずだ。


( ´_ゝ`)「……魔力の扱いは、俺のほうが得意なんだ。
      長年、俺に魔力を預けたのが仇になったな、弟者よ!」


.

699名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:05:18 ID:ttGVJWA.0

弟者の抵抗をすり抜けて、魔力を取り戻す。
そして、炎の魔法が組み込まれた石板に、兄者は指を下ろした。


( ´_ゝ`)「……いくぞ」


青い指が、黒の盤面をなぞる。
右から左。
刻み込まれた凹凸を確かめるように。軽やかに、指は動く。


::( ´_ゝ`) ::「…」


体の内側を走る、魔力を指へと集中させる。
初めは弱く、それから徐々に強く。
石板に込められた魔力に、自分の魔力を上乗せし、増幅させていく。


( ´_ゝ`)「ひっさーつ!」


縦に横に。
指がたどる軌跡と、魔力は淡い光を放つ。
――それは、かつて描かれた言葉。ふきこまれた奇跡。


( *´_ゝ`)「なんかスゴイ炎っ!!!」


.

700名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:07:27 ID:ttGVJWA.0

兄者の指が最後の軌跡をたどると同時に、石板に刻み込まれた神秘は発動した。


――それは、初め弱々しい光をあげる小さな火だった。
それがイキモノのように動き勢いづくと、赤々と燃える蛇のように大きくなった。
ぐるりと炎が意志を持つように、動く。


(#´_ゝ`)「いけぇぇぇぇぇ!!!」


兄者の視線は、ゴーレムの顔だけを見つめている。
その視線に応えるように、赤へ白へと色を変えながら炎はゴーレムへと向けて走り始める。
駆け抜ける炎は、兄者の魔力と風を取り込みながらうねり、その大きさを増していく。


('A`)「なんだありゃ!!」

(;^ω^)「魔力だお!」


ドクオを越え、ブーンを越え炎は走る。
うねる炎の輝きは、青へと変わり――


(<_` #)「兄者っ」


ゴーレムの顔を、直撃した。


.

701名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:11:04 ID:ttGVJWA.0


/◎ ) =| ) G AAAAaaA G


炎が巨人の体を焼く。
鈍色の岩石には炎に焼かれても、大きな変化は見られない。
しかし、ゴーレムの上げる、悲鳴じみた音はこれまで以上に大きい。

巨人の腕が苦しむように、蠢く。
体をよじるように、上半身が右へ左へと振られる。
炎を纏ったままゴーレムはその身をよじり続け、その動きがある一点で止まる。


/◎ ) =| )


顔面にあけられた二筋の溝。
目のように穿たれた淵が向いたその先は――弟者の向こうに広がる、影の結界。
兄者のいるはずの、その空間。

結界に守られた兄者の姿は、弟者と同様にゴーレムからは見えないはずだ。
しかし、その目に当たる部分の空洞はじっと兄者のいる先を向いている。


――見えているのか。それとも見えていないのか。


わからない。
それでも、ゴーレムは兄者のいる方向から目をそらす気配はない。


.

702名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:13:23 ID:ttGVJWA.0

青かった炎は色を失い、巨人の腕の一振りを最後に掻き消えた。
そこにはもう炎の名残はない、辛うじて白く変色した一部の色だけが熱の激しさを伝えてくるだけだ。
ゴーレムの体が揺れ、ぎちりとその無限軌道が動き始める。

――向かう先は、不自然に漂う影の霧。
ドクオの影によって編まれた結界、その中。


/◎ ) =| ) gi t


巨人は、結界に守られた兄者を最大の脅威と捉えたらしい。
すぐ傍らにいる弟者のことなどもう、目に止めずにその足にあたる機関を動かし移動をはじめる。


(´<_`#)「やめろぉぉおおお!!!!」


弟者は大声を上げる。
しかし、敵は止まる気配をみせない。

まるで、あの時の再現のようだ。
現れたバケモノ、おそらくは俺を守ろうとして魔法を放った兄者。
そして、バケモノは兄者へと標的を変え……

――今でも、思い出す。
泣くことしか出来なかった幼い自分。最後に笑って、鏡へと引きずり込まれた兄者。


.

703名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:15:35 ID:ttGVJWA.0


違う。


自分には力があって、自由に動く手足がある。
腕はまだちぎれてはいない、足はまだ潰れてはいない。
そして、手にはまだ振るえる武器がある。

ならば、まだできるではないか――。


(´<_` )


弟者の目が、ゴーレムの顔を見据える。
そして、その足が地を踏む。

辛うじて手放さなかった、青龍刀の柄を握り締める。
武器は、もうこれしかない。
しかし、今は幼いあの時とは違う。


 lニニ|==と(´<_`#)


それを、ゴーレムの脚部。
体を支える無限軌道の起動部へ、渾身の力を込めて突き立てた。


.

704名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:18:13 ID:ttGVJWA.0


/◎ ) =| ) g?


一際、耳障りな音とともに、ゴーレムの動きが止まる。
体を支える駆動部に突き立てられた柄が、足を動かすのに必要な要の機関の動きを止める。
ゴーレムが動こうとするたびに、折れた刃からは火花があがり。耳を潰さんとするほどの怪音が轟いた。


/◎ ) =| ) g u?


ほんの一瞬できた隙を、弟者は見逃さなかった。
走りだそうとする視界の中に、かすかに光るものを弟者は見つける。
――それは兄者がゴーレムの注意をそらそうとして投げた、ナイフ。


( <_  )「うぉぉおおおお!!!」


転がっているナイフを手に取る。
そして、そのまま動きを止めた巨体へと向けて突っ込んでいく。

大きく踏み込み、一度目の跳躍。
無限軌道を支える岩と砂と何かの材質で形作られた、帯状の機関の上に着地する。
さらに跳躍、向かう先は動かない体に動揺するその腕。


.

705名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:20:58 ID:ttGVJWA.0


/◎ ) =| ) g


弟者を振り払おうと、ゴーレムの腕が動く。
しかし、弟者の跳躍はそれよりも早かった。
踏み込んだ足が解き放たれ、弟者の体は宙を舞う。


(<_゚ ♯)「死ね!」


三度目の跳躍で弟者の体は、その頭部へと行き着いた。
顔に穿たれた隙間。
そこに向けて、弟者はためらいもなくナイフの刃をねじ込む。


/◎ ) =| ) aaaaaaaaaa

(<_゚ ♯)「死ね! 死んでしまぇぇぇ!!!」


片腕をゴーレムの顔面の隙間にかけ、落下を始めようとする体を押しとどめる。
炎の魔法で熱せられた岩が弟者の手を焼くが、弟者はそれでも怯もうとはしない。
もう片方の手に握った、ナイフをさらに押し込んでいく。
隙間の向こうにあるものを貫くようにして、ナイフは深く突き刺さっていく。

ゴーレムの体が大きく揺れる。
弟者は腕と足で不安定な体を支えながら、ナイフを持つ手に力を込める。


.

706名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:24:22 ID:ttGVJWA.0

このまま死ね。死んでしまえ。
弟者の口からあふれるのは、殺意をこめた呪詛の言葉だ。


(<_゚ ♯)


弟者の声に思いに反応するように、ナイフは突き刺さり。
そして、とうとう


――ピシッ


頭部に異変が起こる。
かすかな音が断続的に走ったと思うと同時に、薄い線がその装甲に浮かび上がる。
ナイフの突き刺さったすぐ近くの場所から始まったそれは、瞬く間に頭部を貫くひび割れとなる。

弟者はさらに装甲を割ろうと、ナイフに力を込める。


/◎ ) =| ) aaaaaaaaaa!!! ag! aaaaaaaalgia


その衝撃に弟者の手が、とうとうゴーレムの顔面から外れる。
支えを失った体は地面に向けて落下を始める。


(´<_`#)「――ちっ」


.

707名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:25:44 ID:ttGVJWA.0

――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――


ゴーレムの装甲に、致命的な一撃が与えられたのに兄者は気づいた。


はっきりと目で捉えたわけではない。
しかし、ゴーレムの悲鳴が、頭部のその傷から漏れだした魔力が、はっきりと伝えてくる。
――やつを倒すには、今しかないと。

弟者はきっちりと役割をこなした。
ならば、兄である自分もやらなければならない。


(; ´_ゝ`)つ「もういっちょう!」


力のこもらない腕を引き上げ、もうひとつの石板を引き寄せる。
刻まれているのは先程とは違う文様。それは、《水》を司る魔力を込めた文字だ。
魔力を込めながら、兄者はそこに刻み込まれた文字を指でたどっていく。


.

708名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:28:21 ID:ttGVJWA.0


兄者の魔力が石板に流し込まれるたびに、石板にこめられた魔法が。その力が強くなる。


( -_ゝ-)


石板は蒼く輝く。
指で辿られた部分が光をあげ、石板に込められた魔法を発動させる最後の鍵となる。


ぽたりと、しみだした水滴が地を濡らす。
石板から流れだした水は溢れ続け、勢いを増すとやがて水の柱となった。
そして、――


( ´_ゝ`)「お水さんお水さん、ヤツをやっつけろぉぉぉ!!!!」


兄者の言葉とともに、巨大な水の柱がゴーレムへと襲いかかる。
影の中でも透き通り勢いを失わない水の流れの向かう先は、巨人の頭部。
熱せられて変色し、ひびが走るその目に水の柱は直撃した。


/◎ ) `=,/、 )  AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA


濁流のような水の流れに、体の至るところから蒸気が吹き上がる。
音を上げてひびは広がり、細かな破片が飛び散る。


.

709名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:29:02 ID:ttGVJWA.0


が、それまでだ。

水の流れはゴーレムの体を大きく揺らすも、装甲を完全に砕くことも、体を倒すことのできないまま消える。
打撃を与えることは出来た。
巨人は、確実にその体力を失っている。
しかし、その体が巨大すぎて倒すことまではできない。


(; ´_ゝ`)「――くっ、無駄に頑丈」


.

710名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:30:26 ID:ttGVJWA.0

――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――



(#^ω^) ≪受け止めるお!!≫

(´<_` )「――!」


――空に放り投げられた弟者の体が、地面に叩きつけられることはなかった。
ブーンが引き起こした風が弟者の体を受け止め、その体を無事に地面に下ろす。
そして、それと同時に水の柱がゴーレムの頭を捉えるのを、弟者は見た。


/◎ ) `=,/、 )  AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA


.

711名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:32:46 ID:ttGVJWA.0


蒸気が、弟者の視界を埋め尽くしていく。
その向こうがどうなっているのかは、はっきりと見えない。
しかし、弟者は体勢を立て直すやいなや地を蹴った。


(´<_`#)「……」


その手には、もう武器はない。
シャムシールはどこかに飛び去り、青龍刀の柄はゴーレムの足を支える機関を貫いている。
唯一、手に入れたナイフも今はゴーレムの頭部へと突き刺さったまま。

弟者は地へと目を走らせる、そこに武器は見えない。


.

712名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:34:37 ID:ttGVJWA.0


(#'A`)「ナイフだ! あそこなら攻撃が通る」

(;^ω^)「でも、どうするんだお!」


ドクオの声に、弟者は視線をゴーレムの頭部へと向ける。
白い蒸気の向こうにそびえる巨体の姿は、はっきりとは見えない。
しかし、そこに武器はある。まだ、打つべき手はある。


(´<_`#)「そんなもの、後で考える」


ゴーレムの腕が向かってくる弟者を妨害しようと、無秩序に振るわれる。
それに対して、武器を持たない弟者の手が、もぞりと動いた。
その手が懐へと入り、何かをつかむ。


(´<_`#)「――クソが!」


紫のマントが翻り、中から取り出したそれを弟者は投げつける。
放たれたのは小さな何か。
それがいくつも、ゴーレムの腕に向かって飛来する。


/◎ ) `=,/、 ) !


.

713名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:38:41 ID:ttGVJWA.0

飛んできたそれから、身を守ろうとゴーレムの腕が一瞬止まる。
弟者は敵だという認識が取らせた、行動と判断。
それはゴーレムに、決定的な間を生んだ。


/◎ ) `=,/、 ) …


動きの止まったゴーレムの腕に、べたりとした何かが張り付き、あるいは跳ね返り飛んでいく。
投げつけられたそれは、武器でも、脅威でも、罠でもなかった。

しぃが調査隊本部で出した茶菓子。それから、硬貨がいくつか。
子供だまし以下の抵抗ともいえない抵抗。
しかし、それは目眩ましとしての役目を十分に果たした。


(#'A`)「そのままよじ登れぇぇぇ!!!」


止まった腕の間をすり抜けて、弟者は巨人の足元へと飛び上がる。
動きの止まった腕の上を走ると、その肩へとよじ登る。
そして、跳躍をはたすと、弟者はひび割れ変わり果てた巨人の頭部へと、たどり着く。

ナイフはゴーレムの動きにも、水の奔流にも負けずに巨人の“目”に突き立っていた。


(´<_`#)「死にさらせぇっ!!!」


.

714名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:40:07 ID:ttGVJWA.0

振り上げられた弟者の足が、小さなナイフをさらに押しこむように蹴りつける。


゛(´<_` )「――っ」

( ^ω^)「手伝うお!」


それと同時に、弟者の体を守るように吹いていた風がその流れを変えた。
ブーンの号令とともに、風が鎌鼬へと形を変え、ゴーレムの頭部へと襲いかかる。
物理的な衝動と、魔力による風。


/◎ ) `=,/、 )// W A A G A A


弟者とブーンの全力を込めた攻撃は、ナイフごとゴーレムの装甲の奥を貫いた。
その衝撃で、装甲の欠片がいくつか剥がれ落ちる。
しかし、そこまで。
装甲を破壊するには、まだ届かない。


(#'A`)「――まだ、ダメなのかよっ!?」


限界まで押し込まれたナイフは、それ以上は動かせない。
弟者の手に、もはや武器はない。
あと一歩というところまで迫りながら、弟者にはこれ以上は打つ手が無い。

.

715名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:42:17 ID:ttGVJWA.0

(´<_`#)「――ちっ」

( `ω´)「オトジャ、いったん下がるお!」


弟者の周囲に魔力混じりの風が吹き、その体を受け止める。
敵を捉えようと伸びたゴーレムの手を交わし、弟者の体は空中に逃れる。


(;'A`)「……どうする?」


このままでは、ゴーレムは倒せない。
兄者の魔法に期待するか、なんとかして結界を破壊し脱出するか。
どうする。どうすればいい――?


('A`)「何か手は……」


答えを出せないまま見回したドクオの視線が、銀色に光る何かを見つけた。
銀にひらめくそれは、折れた青龍刀の切っ先。間違いなく武器になり得るものだ。
これを弟者に手渡すことができれば――。


('∀`)「見つけたっ!!」


ドクオは青龍刀の欠片に、必死で手を伸ばした。


.

716名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:44:13 ID:ttGVJWA.0

――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――


ゴーレムの頭部を覆う装甲は、あと少しで壊れる。
しかし、完全に破壊しきるには、まだ足りない。


( ´_ゝ`)  《砕


とっさに、叫びかけた言葉を兄者は慌てて切る。
無意識のうちに巡らせていた魔力を根性でねじ伏せて、魔法の発動を力づくで止める。
出口を失った魔力が体じゅうを暴れまわるが、それもやがては沈静化する。


(;´_ゝ`)「……くっ」


無意識のうちに魔法を放ちかけていた自分に、兄者は舌打ちをする。
この十年間、決して魔法を使わないように気をつけてきたのに、一度魔力を使えばすぐにこのザマだ。


.

717名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:46:39 ID:ttGVJWA.0


魔法は使えない。少なくとも、弟者の前でだけは使いたくない。


(;´_ゝ`)「……どうする?」


弟者が魔法を受け入れられなくなった原因は自分だ。
10年前のあの日、とっさに放った《止まれ》という魔法が、今も弟者を縛っている。
魔法がなければ、俺に魔法を使わせなければ……弟者は今もそう思っているはずだ


( ´_ゝ`)「……」


今でもあの時の決断は、後悔していない。
しかし、今は違う。今はまだ取るべき選択の余地がある。
だから、俺はあいつが平気になるまでは、あの時のような魔法は使えない。
それがあいつの兄貴としての精一杯の矜持だ。

だから――、


.

718名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:48:07 ID:ttGVJWA.0

兄者の視界に、それが映る。
火と水の石板。そして、その横。鞄に収められていた、黒いつややかな傷一つない石板。
まだ何の魔法も込められていない、まっさらな板。

媒介や魔道具を使っているから大丈夫だというのは、詭弁だ。
言葉を使って発する魔法と、本質的に何ら変わりがないのはわかっている。
それでもこれが、今考えうる限りで最良の選択肢だ。


(;´_ゝ`)「……ええい、面倒なことはあとで考える」


振るえる指を動かして、石板に手を伸ばす。
思うように動かない腕と、体に走る痛みに舌打ちをしながらも、どうにか石板を引き寄せる。
兄者は口元から流れる血を指で拭う。


(; _ゝ )「――間に合えっ!」


そして、その指を漆黒の石の表面に乗せた。
そこには、辿られるべき文字の刻は刻まれていない。
代わりに指を濡らす血が、赤の線を残した。

自分の内側にある、魔力をあつめる。
井戸から水を汲み上げるイメージ。
汲み上げた魔力を全身へと巡らせ、組み上げていく。


.

719名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:50:42 ID:ttGVJWA.0


(; ´_ゝ`)「――上手くいってくれよ」


ありったけの魔力を込めて魔法を刻む。
要になる文字はわかる。――体をめぐる魔力が、感覚が告げている。
組み上げた魔力を纏めあげる。そして、火と水の石板にあった魔法を増幅させるための文句と共に、血で刻みこむ。

一度もてば十分なほど雑に作られた、石板。
それに向けて兄者は全身の魔力を流し込み、血で描き上げた文字をなぞりあげていく。
黒い石板に浮かぶ、血で書かれた文様の一つ一つが兄者の魔力を受け白に、青に輝く。


(♯゚_ゝ゚)「いけぇぇぇぇっっ!!!」


刻み込まれた魔法は、《凍結》。
そして、それは瞬時に発動した。

――熱せられた巨人の体に染み込んだ水が、周囲に漂う白い蒸気の霧が、石板に呼応するように一斉に凍り出す。
岩で作られた装甲の、至るところから氷柱が突き出していく。


/◎ ) `-i=,/、 )


装甲が大きな音を上げ、ひび割れていく。
今や巨人の頭部の装甲は、薄くひび割れ無事なところは何処にもない。
しかし、決定的なダメージには一歩及ばない。


.

720名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:52:24 ID:ttGVJWA.0

――攻撃しなければいけないのは、装甲ではなく、その向こうにある核。
そのためにはまず、邪魔な装甲を完全に崩さなければならない。

魔力をかき集め、練り上げる。
体の中を駆け巡り勢いをました魔力は、熱くて内側から体が焼かれるようだ。
それでも、まだアイツを倒すには足りない。
あのゴーレムを打ち砕くには、もっと魔力が必要だ。

――昔から、普通、人が見えなかったり使えなかったりするものの扱いだけは得意だった。
だから、今回もきっとどうにかなる。どうにかならなくても、してみせる。


(♯゚_ゝ゚)「――まだだっ!!」

(;'A`) !


そして、兄者は手を伸ばす。
伸ばすのは肉体そのものではなくて、イメージの手。魔力を操るその感覚の手を周囲に巡らせる。

兄者の回りを取り囲む影の結界。
それを支える魔力に手を伸ばす、結界を支える術をバラバラにして、魔力を飲み込む。
結界は霧散し、兄者の頭上には一気に青空が開ける。


(;゚A゚)「結界が……。まさか、兄者のやつ」


.

721名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:54:34 ID:ttGVJWA.0


(♯゚_ゝ゚)「まだ、足りないっっ!!!」


ドクオの戸惑いには気づかずに、兄者は声を張り上げる。

はっきりと見えるようになった視界。
宙に逃れた弟者と、ブーン。草陰の中でドクオが、信じられないものを見る表情を浮かべている。
……あいつらを守らなければならない。
そのためには魔力を。もっと集めなければ――。

兄者は大気に目を凝らし、その中にある魔力を感じ取る。
土の中にも、風の中にも、草にも魔力はある。
それをできうる限り引っ張って集め、取り込む。


(♯゚_ゝ゚)「――っ、く」


――全身が、炉になったようだ。
魔力を取り込み、回し、増幅させ、形を整える。
それだけの機関、それだけの機能。
そうして練り上げたありったけの魔力を、片っ端から石板に叩きこんでいく。


(♯ ゚_ゝ゚)「――っぁぁぁああああああ!!!」


兄者は吼える。ありったけの声と魔力をあげて吠え続ける。
そして、その声に応じるように、表中はより鋭く、大きく、力を増していく。


.

722名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:56:25 ID:ttGVJWA.0


/◎ ) `-i=,/、 ) gi



ピシリと音がする。
急激にその大きさを増していく氷の柱、広がる亀裂。

   

    ピシ

そして、


                             ピシ


           それがついに、




                           ゴーレムの体を、頭を貫いた。


.

723名も無きAAのようです:2013/12/06(金) 23:58:13 ID:ttGVJWA.0

しかし、装甲はまだ崩れない。
兄者の息はつまり、目が霞むが、それでも兄者は魔力を操るのを止めない。

まだ、足りない――。
だから、


(♯゚_ゝ゚)「弟者ぁっ、全部借りていく!!!」

(´<_` )「いくらでも持っていけ!!!」


弟者の体から、ありったけの魔力をもっていく。
息を吸うよりも自然に、腕を伸ばすよりもはるかに簡単に、魔力は兄者の体へと流れる。
その魔力の感覚は、どこからかき集めた魔力よりも馴染む。

あたりまえだ。
これは、弟者の魔力であると同時に自分の魔力だ。

――できそこないの、一人。
不吉な存在、本来ならば殺されなければならなかった命。
不安定でいびつな命と引き換えに得た力が、まっすぐとゴーレムを貫き壊していく。



そして、


                    ありったけの魔力をこめた氷の柱が


.

724名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:00:29 ID:yZraviHw0

                                                / / \
                                   `              `< ̄`フ
               <j                                   ` ‐´


       /〉    __
         `´    /!  {_
           // ̄ 7´                               ,. ┐
        //   /                             ,、   ,//」
       j,/    /                               `    ´ ̄
      く、  /
        \/ ,.、                                      ,.r 、        
           `´                                ///| 
    トj                                        | [,-┘
    ´                                           ̄       

.         __,.、                                              ,∠、 ,
       /{  ,> , 7、                                          ,.イ´_,.-〉´
        ヽにノ '´ [,-1                          /|ヽ     ,. '´ /‐'´ ,/
          ノ / / ,ト、                         '-―'´    /  r'    |
         く∠-┘ '‐ '                                 , /  /`丶、  !
          __                                     /_, ‐'´    _,.>!
      l´\/                                     / ̄|    _,.-'´
        ̄                                       /   !   /



岩の巨人の装甲を粉々に打ち砕いた――。


.

725名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:02:28 ID:yZraviHw0


そして、崩れ落ちた装甲のその向こう。
――埋め込まれていた、核がついに姿を現す。

古びた粘土板。
いつのものかすらわからない、その板には――今では失われた言葉が刻まれている。


(;^ω^)「あそこだけなんか違うお!」

(#'A`)「それが、奴の本体だ!」


粘土板に刻まれたその言葉。
それこそが、巨人を動かす魔法そのものであった。

古の伝承曰く、ゴーレム。
はるかに魔法が発達した時代に作られた。石板を触媒とした魔法の祖にして頂点。
疲れることを知らず、痛みを知らず、命令のままに従う、岩の巨人を作り出す秘術。
創りだされた巨人に命はなく、核に記された文字がある限り――無限に再生する。


(#'A`)「あの核をぶち壊せ! そうでないと、いくらでも再生するぞ」

(;´_ゝ`)「……なん、とぉ」


先ほどの攻撃で全ての力を使い果たしたのか、兄者は力なくへたり込む。
その視線こそ装甲による守りを失ったゴーレムへと向けているが、兄者の口からはそれ以上の言葉は出てこなかった。


.

726名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:04:23 ID:yZraviHw0


兄者は、動けない。
弟者にはもう、攻撃の手段がない。


/◎ ) 、/、; )

(#^ω^)≪切り裂くお!!!≫


その硬直した状況を、ブーンの魔法が打ち砕いた。
魔力を帯びた鋭い風の刃が、粘土板を襲う。


(;^ω^)「なんで?!」


――が、その風は粘土板に直撃する前に霧散した。
まるで粘土板自体が、魔法の力を拒否したかのようだった。


(´<_` ;)「魔法が、きかないのか?!」

(;´_ゝ`)「……なん……だと」


兄者と、弟者が言葉を失う。
最後の最後まで追い詰めたと思った。――しかし、それもここまでというのか?
誰もが言葉を失いかけた、その時。


.

727名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:06:13 ID:yZraviHw0


(;'A`)「……」


ドクオはふと、手元に目を落とす。
……そこにあるのは、弟者に渡そうとしてそのままになっていた刃。
輝くそれは、最後に残った武器だ。


('A`)「――弟者っ、受け取れ!!」


そして、ドクオは声を上げる。
必死の力で刃を持ち上げると、弟者に向けて掲げてみせた。
兄者以上に非力なドクオが必死に持ち上げたそれは、――へし折れた青龍刀の切っ先。
弟者は宙から降りると、その刃をひったくるようにして奪い取った。


(´<_` )「恩に着る」

(*'A`)「お、おう!」


ドクオの返事を聞くよりも先に、弟者の体が弾丸のような速度で動きはじめる。


.

728名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:08:36 ID:yZraviHw0


(#´_ゝ`)「弟者っ、やれっ!!!」

(´<_` )「把握した」


兄者の声が響く。


    オレ
――兄者がやれといったのだから、それは弟者にとって絶対だ。


二人分の力を込めた渾身の速度。
巨人の顔から落ちた瓦礫の山を駆け上がりながら、ゴーレムの核を目指す。


(´<_`#)「今度こそ終わりだ!!!」


.

729名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:10:09 ID:yZraviHw0

崩壊した体を抱えたゴーレムが、最後の抵抗といわんばかりに蒸気を噴き上げた。
周囲をすっぽりと覆う、熱く白い霧。
体の守りの大半を失いながら、それでも岩の巨人は腕を伸ばす。


             ( <  ::)


そして、ゴーレムの腕は人影を見つける。
振るわれる腕は、その人影をはっきりと捉えなぎ払う。
ゴーレムは歓喜の音を上げ、


(#゚A゚)「オレの影をなめるなぁぁぁぁ!!!」


はじけ飛んだのは、ドクオの創りだした影だった。

ゴーレムの創りだした白い蒸気の幕に、黒い影がいくつも動く。
蠢く影の群れ。
その影の間を縫って、走り出たのは。


(´<_`#)「砕けろぉおおおお!!!!」



――弟者。


.

730名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:12:33 ID:yZraviHw0


折れた刃ごと、弟者の手が粘土板へ振るわれる。
しかし、握りのない刃では上手く力を込めることが出来ない。
弟者の手から血が流れ、粘土板を濡らしていく。


(´<_`#)「――くっ」


渾身の力を込めた一撃は、粘土板に浅い傷を作る。
しかし、そこまで。
粘土板は未だ健在で、砕かれるまでには至らない。


(;'A`)「くっ、あと少しなのにっ!」

(#゚ω゚)「まだだお!!!」


立ちあがった、ブーンの体から魔力が湧き起こる。
風がうなり、小石が舞い上がり、草が倒れ、千切れ飛んでいく。
その光景の中で、ブーンはとうとうそれを見つけた。

逆転のための最後の一手。
残された希望。


(#゚ω゚)「オトジャっ、手を伸ばすお!!!」


.

731名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:14:45 ID:yZraviHw0


(´<_` )つ


弟者は返事の代わりに、腕を伸ばす。


(#゚ω゚)≪飛ぶお!!!≫


ブーンの魔法が起こした強い風が、それを舞い上げる。
舞い上げられたそれが向かったのは弟者が伸ばした腕のその先。


(´<_` )つ==|ニニニ二フ


弟者の手がそれを掴む。
目で確認するまでもなく、握り慣れた感触がそれが何かを伝えてくる。
愛用の刀、シャムシール。

銀の軌跡が翻り、その手は一直線にひらめく。


.

732名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:18:10 ID:yZraviHw0




(´<_`#)「――トドメだぁぁぁぁぁっ!!!」



“獅子の尾”の名を持つ刀は、軽やかに翻り――主の命を完遂した。




.

733名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:19:09 ID:yZraviHw0




そのはち。  できそこないの一人


   おしまい



.

734名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:21:26 ID:PA7Y3QRs0
乙!すげーボリュームだった

735名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:21:37 ID:nESRoQx20
おつうううううううう

736名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:23:43 ID:yZraviHw0
オマケ10レス行きます

737名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:24:44 ID:yZraviHw0


 彡⌒ミ
.( ´_ゝ`)「姉者。父さんこれから母者さんと交代してくるけど、ひどいことはしないでね」

∬#´_ゝ`)「……はぁっ?」


 彡⌒ミ て
.(;´_ゝ`) そ ビクッ


 彡⌒ミ
.(;´_ゝ`)「えっと、えーっとー、オワタやブームくんたちは大切だけど。
      儂はみんなのことも好きだから、疑うとか犯人探しとか怖いことは……」


∬#´_ゝ`)「父者は、私や母者に任せておけばいいの!!拒否権などない!!」


 彡⌒ミ
.(;´_ゝ`).。oO(なんか、母者さんと話してるみたいだなぁ)


∬´_ゝ`)「わかったら、とっとと行く! 交代が遅れると母者、怒るわよ」

 彡⌒ミ
.( ´_ゝ`) ハーイ


.

738名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:25:40 ID:yZraviHw0




グッ∬´_ゝ`)q「よしっ、父者は行ったと……」




.

739名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:26:23 ID:yZraviHw0



               ,--,   __〃 ̄⊃
              / /   (,,  /
             (,〜〜〜〜〜/
         彡三 ミ 〉  ノ   /
        (´く_`*)´     /
       /.|^,ミ彡,^|ヽ、三三´
 (^o^) / i |、  y ,| i \ー´   (|^o^|)
 ヽ|〃 (__.i_|`''―‐'''|_i__)      ヽ|〃

         \(^o^)/
          ヽ|〃
               愛する花に囲まれる 父者=流石氏




おまけ劇場   l从・∀・ノ!リ人 でざーと×しすたーのようです


.

740名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:27:14 ID:yZraviHw0


∬´_ゝ`)「妹者ちゃぁん」

l从・∀・;ノ!リ人.。oO(あの声は怒ってる声なのじゃ)


l从・−・;ノ!リ人「な、な、な、なんなのじゃー?」


∬´_ゝ`)「父者の花が踏み荒らされてるんだけど、何か知らないかしら?」


l从・∀・;ノ!リ人「はへ?」


l从・∀・ノ!リ人「お花? えっと、どのお花なのじゃ?」

∬´_ゝ`)「中庭」


Σ l从・д・ノ!リ人 ビクッ


.

741名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:27:56 ID:yZraviHw0


∬´_ゝ`)「中庭の花」


l从・д・;ノ!リ人


∬´_ゝ`)「知ってるわよね?」


::l从・Δ・;ノ!リ人:: アワワワ



ガシッ∬´_ゝ`)つl从・Д・;ノ!リ人 て


.

742名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:29:00 ID:yZraviHw0

∬´_ゝ`)「あんた。中庭の花、踏んだでしょ」

l从・∀・;ノ!リ人「……あ、うぅ、えーと」


∬^_ゝ^)「そうやって挙動不審になったりするのが何よりの証拠よ、妹者ちゃん」


l从・〜・ノ!リ人「……きょ、ど?」


                     . . .
∬*´_ゝ`)「正直に話して謝れば、父者は怒らないわよ。
      ほーら、素直になりなさいなー」


l从・Δ・;ノ!リ人「い、い、妹者はやってないのじゃ!」


.

743名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:29:42 ID:yZraviHw0


::::∬*::::_ゝ::)::::「じゃあ、中庭の花はどうしてぐちゃぐちゃなのかしら?
         お姉ちゃんに教えてほしいわぁ〜」

l从・д・;ノ!リ人「それは! ……それは……」

∬´_ゝ`)「それは?」


l从・∀・;ノ!リ人「……」


l从- 、-;ノ!リ人「……言えないのじゃ」



∬#´_ゝ`)つl从・−・;ノ!リ人 ビクッ


∬#´_ゝ`)「妹者ちゃんは、お姉ちゃんが身内に対しては気が短いのはしってるわよね。
      お姉ちゃんこのままだと怒っちゃうわよ。いいのね?」


l从・−・;ノ!リ人「……」


.

744名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:30:38 ID:yZraviHw0


l从- -;ノ!リ人「……」



l从-∀-ノ!リ人.。oO(妹者は、やくそくしたのじゃ)



l从・д・ノ!リ人「妹者は、言わないのじゃ」


∬#-_ゝ-)「……そう」



スッ∬#-_ゝ-)  l从・−・;ノ!リ人 …



∬´_ゝ`)「私からはもう何も言わないわ。
      でも、母者には報告することになるけど、それでいいわね」


.

745名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:31:28 ID:yZraviHw0


ll从・∀・;ノ!リ人「……ははじゃ」


ズシン


∬´_ゝ`)「そ。母者は家長なんだから、何かあったら報告するのが当然の義務でしょ」


ドシン


ll从・∀・;ノ!リ人「……ううっ」

∬´_ゝ`)「今なら、お姉ちゃんが聞いてあげなくもないわよ」


ガッ


ll从・Д・;ノ!リ人「だめなのじゃ!!!」


.

746名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:32:15 ID:yZraviHw0





∬´_ゝ`)「話をすればほら、母者のお帰りだわ」





::l从・д・illノ!リ人:: ガタガタ



つぎのはなしに   つづく

747名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:33:04 ID:PA7Y3QRs0
妹者かわいい

748名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:39:29 ID:rQ.Jnv2.0
ラスボス終わったと思ったらまたラスボスとな


749名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:41:15 ID:mwwkQGYAO
超乙。


ここ来てから気に入った作品が逃亡ばっかで、ずっと待ってた現行にリアルタイム遭遇するの今回が初めてで、20時からずっとアホみたいにリロードしてた。

待ってた現行をリアルタイムで読めるってこんな嬉しいんだな。
作品の結末を知る事ができるのってこんなわくわくすんだな。

書いてくれてありがとう。
投下してくれてありがとう。

書きながら「俺キメェwww」と思ってるけどどうしても謝意を伝えたい。
完結も後日談もものすごく楽しみにしてる。

750名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:42:13 ID:yZraviHw0
以上で投下終了です
最終話になる「そのきゅう。」は明日の夜、後日談は月曜日の夜に投下できたらと思います

751名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:45:16 ID:yZraviHw0
長時間の投下にもかかわらず乙や感想くれて、本当にありがとう
長かったこの話もなんとか終われそうだ

752名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:52:28 ID:rFEOdAMo0
乙乙!

明日の夜も楽しみに待機してるわ

753名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 00:54:38 ID:wPZQZ7uw0
乙乙!
続きが読めてよかった、面白かった!
次も楽しみにしてる

754名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 01:11:34 ID:PA7Y3QRs0
いよいよ最終話か、寂しいぜ
でも楽しみにしてるからな!!!

755名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 02:25:11 ID:DJ1Z7hbk0
おつ!超ボリュームおつ!
熱い戦いだった!最終回も楽しみにしてるよ

756名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 12:17:56 ID:VPyeQ90g0
おつ!

757名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:01:42 ID:yZraviHw0


/◎ ) 、/、; )  gu gi gi



一刀のもとに切り伏せられ、粘土板が崩れ落ちた。
ゴーレムを動かしていた、失われた文字が薄れ消えていく。
核の崩壊。その瞬間、ゴーレムを構成していた魔法は完全に消滅した。


(´<_` )つ==|ニニニ二フ

(;^ω^)


ごとりと音がして、ゴーレムの腕が落ちた。
無限軌道が潰れ、岩の重みに耐え切れず体が大きく倒れ込む。



( ´_ゝ`)

(゚A゚)


倒れてきた岩の衝撃に、地面が大きく揺れる。
ゴーレムはもはや、単なる巨大な岩の塊と化していた。


.

758名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:04:29 ID:yZraviHw0



_.◎ ) 、/、; :::



岩の巨人は動かない。
崩れ落ちた体を再生しようとする気配もなかった。


(*´_ゝ`)「おお」

ヽ('∀`)ノ「やった、やったぞ兄者!」


ゴーレムを構成していた岩たちが、砕けはじめる。
音もなく崩壊は続き、最後には大量の砂と岩の欠片が残るだけとなる。


(*^ω^)「すっごいお、オトジャ!」

(´<_` )「……やった、のか?」


もはやそこにゴーレムの原型はない。
――そして、石の巨人は死に至り。その動きを永遠に止めた。


.

759名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:05:29 ID:yZraviHw0





( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )





.

760名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:06:21 ID:yZraviHw0





そのきゅう。 ――そして、旅の終わり




.

761名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:08:05 ID:yZraviHw0

ゴーレムが完全に動かなくなったのを見届けると兄者はその場に完全に倒れ込んだ。
もう自分の体を支えることも出来ないらしく、倒れこんだ姿のまま兄者は動かない。
ただ、その口だけを動かして、兄者は大きく息をついた。


(; _ゝ )「流石にこれは――」

( <_ ;)「――疲れたな」


弟者もそう返事を返すと、兄者の傍らに座り込む。そして、そのままその場に転がった。
さっきまで剥き身の刃を握っていたせいか、弟者の手からはまだ血が流れ続けている。
ともに満身創痍な状況。兄弟そろって、命があるのが不思議なくらいだった。


(; ^ω^)「大丈夫かお!」


そんな兄弟たちの傍らに、ブーンは飛び寄る。
ドクオはその場に浮いたままだったが、ブーンが動くのを見て慌てて飛びはじめた。
兄者も弟者も倒れこんだまま、ぴくりとも動こうとはしない。


(; _ゝ )「おい、弟者。いい加減に体力とか力とかその他もろもろを返せ。
      もう口と指くらいしか動かんのだが……」

( <_ ;)「兄者が持っていったままの、疲労痛み傷その他もろもろを返せば考えてやろう」


.

762名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:10:25 ID:yZraviHw0


(;´_ゝ`)「ハハハー、何のことかなー」

(´<_`#)「ハハハー、もちろん兄者のことだ」


動こうとはせず、口だけを使って兄弟の応酬は続く。
視線だけを動かして睨み合うが、互いに限界なのか殴りあうような気配はない。
弟者は拗ねたように顔を尖らせ、兄者といえばそっと弟から視線をそらした。


(´<_`#)「いいから、早く返せ」

(;´_ゝ`)「ちょっ、やめ、おねがいやめ!」


視線を逸らした兄者の胸ぐらを、弟者が掴む。
力を使い果たしたように横になっていた弟者が、動くとは思っていなかったのだろう。
突然の弟者の動きに、兄者の顔が驚いたかのように歪む。
兄者は弟の腕になんとか抵抗しようと大声を上げ、その瞬間顔面を真っ青にした。


(; ゚_ゝ゚)「っう――!!」

(´<_`#)「さっさと返せと言っているだろう。この阿呆!」

(iii ´_ゝ`)「えー、大丈夫だってぇ。全然、大したこと無いし……」


.

763名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:12:17 ID:yZraviHw0


(´<_`#)「何度同じことを言わせる気だ、この馬鹿」

(#´_ゝ`)「いいや、決めましたー。ダメーですぅー」


兄者はそう言い切ると、弟者から全力で目をそらす。
弟者はそんな兄の姿を睨みつけるが、殴りかかるわけにもいかなかったのか手を放す。


(;´_ゝ`)「っう……」

( ;ω;)「あばばばば、やめるお。やめるおー」

(;'A`)「お前ら兄弟は、どうしてこう仲が悪いんだ……」


ドクオの声が聞こえたのか、弟者から開放された兄者の口元がわずかに歪む。
しかし、何も告げる気はないのだろう。兄者の口からは言葉は出てこなかった。


( ;ω;)「アニジャー、だいじょうぶかお? こういうときは、だいじょうぶでいいんだおね?」

( ´_ゝ`)「ふむ。この場合は、大丈夫であってるな」

( ;ω;)「ほんとかお? アニジャはだいじょうぶかお? だいじょうぶ?」


.

764名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:15:11 ID:yZraviHw0


兄者の口元の歪みが消え、変わりに笑みが浮かぶ。


(*´_ゝ`)「なんて言ったって俺は流石だからな。
       この程度ならば、全然平気だし。ものすごーく、元気な件」

( <_  )「……」


('A`;)::「――っ」


かわりに弟者の顔から表情らしいものが根こそぎ消えたのを、ドクオだけが見た。


(´<_` )「兄者、聞かせてくれ。
      俺に痛みを返さないのは、本当に大丈夫だからか?」

(;´_ゝ`)「う、え?」


風向きが変わったことを悟ったのだろう、兄者の表情に困惑が浮かぶ。
弟者の声は静かで、感情らしい感情が見えない。
……これはマズい傾向だ、という思いが、兄者の脳裏に小さく広がる。


(;´_ゝ`)「えっと、ちょっとくらいは痛い件?」


( ;゚_ゝ゚)と( <_  )


.

765名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:16:13 ID:yZraviHw0


とりあえずそう告げてみた兄者に向けて、弟者の腕が伸びる。
弟者は兄者の服の胸元を掴み、力任せにぐいと持ち上げた。


(iii ゚_ゝ゚)「――っ」


兄者の顔が一気に白くなり、呻き声とも呼吸とも付かない声が喉から漏れる。


(iii _ゝ )「ぐっ……っカ……ハッ」

と(´<_`#)「これでも大丈夫だというのか!?
       本当はとっくに限界なんじゃないのか!?」


兄者の喉からは言葉にならない息が漏れるだけだ。
やめろと言いたいのか、何度か同じ形に口が動くが、それすらも声にならなかった。


(;゚A゚)「おい、兄者のやつ。やばいぞ!」

(#^ω^)「やめるお!!」

と(゚<_゚ ♯)「ろくに動けないんだろう? 話すことだって、つらいはずだ。
       なのに、なんで兄者はそうやってヘラヘラと笑っていられるんだ!!!」


.

766名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:18:31 ID:yZraviHw0


ドクオとブーンが弟者の肩をひっぱり、彼を止めようとする。
しかし、一度激高した弟者は止まらない。


(iii _ゝ`)「……っぃ」

と(<_゚ #)「俺がいつもどんな思いでいたか、兄者はわかってるのか!!!」


(#^ω^)≪放すお!≫


なおも兄者を締め上げようとする弟者の動きを、魔力の流れが断ち切る。
ブーンの使った暗示の力により、弟者の手の力が緩み兄者から離れる。


(*'A`)」「よしっ、ブーンよくやった!」

(;^ω^)「オトジャだめだお! そういうのぜんぜん楽しくないお!」

( <_ #)「なんで……」


弟者の目が、魔法を放ったブーンを捉える。
その口が歪みブーンに向けて怒りの声を上げようとし――、響いた声がそれを止めた。


(iii _ゝ )「……わか……って……た」


.

767名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:20:48 ID:yZraviHw0


途切れ途切れに響いたその声の主は、兄者だった。

弟者の動きが止まる。
一方の兄者は浅い呼吸を何度か繰り返し、ようやく深く息をついた。


(iii ´_ゝ`)「……ほんと……容赦ないの……な」

(;'A`)「おい、兄者。本当に大丈夫か?」

(iii ´_ゝ`)「あー、骨が何本かいってるかな? 命には別状はないと思われ」


そのまま動かずに呼吸を繰り返すと、兄者の顔色はようやく落ち着いた。
「痛かったー」と呟く表情は、もういつもの兄者のものだ。
本気なのか、それとも表情を取り繕っているだけなのか。人間の感情に疎いドクオには理解できない。


(;^ω^)「……オトジャ」

( <_  )「……」


弟者の顔からは、怒りの色は引いていた。
代わりに浮かぶのは、途方に暮れ呆然とした表情だった。


(´<_` )「……わかっていたとは、どういうことだ?」


.

768名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:22:30 ID:yZraviHw0


辺りに沈黙が落ちる。
弟者の視線は今や、ブーンではなく兄者に向けられていた。


( ´_ゝ`)「……」

('A`)「おい、答えてやれよ兄者」

(;^ω^)「……」


ドクオが促すように、兄者の肩を叩く。
ブーンは黙りこくって、兄者の姿を見守っている。
沈黙は長いようにも短いようにも思えた。そして、兄者は黙り込んだ末に、ようやく口を開いた。


(;´_ゝ`)「……やっぱ、話さなきゃダメだよな」


こういうのは柄じゃないんだよな、と頬をかきながら兄者は言う。
「むむー」とか「ふむー」とか意味のない言葉を呟いた後で、兄者はようやく語り始めた。


(;´_ゝ`)「あー、お前が10年前の件で後悔してるのは知ってた。
      魔法や神秘のたぐいに俺を近づけないようにしてたのもな。まあ、やたらと暴力的ではあったけど」


.

769名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:24:19 ID:yZraviHw0


(゚<_゚ ; )「気づいていたのか……」


弟者の瞳が、驚愕に見開かれた。
その声はかすかに震え、信じられないと呟いている。
そんな弟の態度に、失礼だなと言うように兄者は口元を歪ませた。


( ´_ゝ`)「だって、昔そう言ってたし。あれだけ露骨だと、流石の俺でも気づくわ。
      というか、弟者は俺が気づいているって知らなかったことに驚きな件。
      ブーンやドクオとかに対する態度とか、本当にもうひどかったし」

(;^ω^)て「そ、そうだったのかお!! オトジャはブーンがキライだったのかお?!」

('A`)「……ブーン。お前ってやつは、本当にいいやつだな」


心の底から驚いたような声を上げるブーンの姿に、ドクオはしみじみと言った。
ドクオとて弟者の行動原理を理解していたわけではない。しかし、嫌われているということくらいはわかっていた。
しかし、あれだけ無視され続けていたのに、嫌われていると思わなかったとは……。ブーンの脳天気さが、ドクオは少しだけ羨ましくなる。


(´<_` ;)「なら、どうして」

(;´_ゝ`)「いやぁー。俺もなぁー。
      弟者が頑張ってるなら、その通りにしてもいいかな〜って思ったこともあったさ」


.

770名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:26:22 ID:yZraviHw0


( -_ゝ-)「でも」


ドクオの戸惑いなど気づかないように、兄弟の会話は続く。
兄者は瞳を閉じて沈黙した後、意を決したように言葉を告げる。


( ´_ゝ`)「世界はさ、俺らがまだ知らないものや、面白いもので満ちてるんだ。
      それを見ないふりをするだなんて、俺にはできない。ブーンじゃないが、そういうのは楽しくない」


そうやって、告げられた言葉はなんとも脳天気なものだった。
深い考えがあるだけではないその言葉に、ドクオは思わず声を上げようとする。
しかし、その言葉が向けられているのはドクオではなくて弟者だ。ドクオは出かかった声を、なんとか抑えた。


(*´_ゝ`)「お前が嫌いな、魔法や神秘のたぐいだってさ。悪いことだらけじゃないよ」

(´<_`#)「だが!」


弟者の声が怒りの色を帯びる。
しかし、弟のその様子に兄者は気分を害した様でもなく平然としていた。


( ´_ゝ`)「ブーンは悪いやつだったか?
      今日起こった出来事は、本当に散々なことばかりだったのか?」


.

771名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:28:19 ID:yZraviHw0


( <_  ;)「――っ!」


そして告げられた問いかけに、弟者はとうとう言葉を失った。
何度か口を開いて反論しようとした末に、弟者はブーンの顔を見た。


(;^ω^)「……あうあう」

(´<_`; )「……」


弟者の口からは言葉が出ない。
かわりにその眉がひそめられて、表情の薄い顔に困った様な色が浮かぶ。
兄者はそんな弟の表情を見て取ると、それ以上はたたみかけようとはせずに話題を変えた。


(*´_ゝ`)「それにだなー。お前が心配するからちゃんと、魔法は使わなかったんだぞー。
       石板だけ……魔道具だけでなんとかしちゃったお兄ちゃんマジ偉い、マジ立派!」

(*^ω^)キャーカッコイイー  シンデー('A`*)


(*´_ゝ`)「ほら、石板魔法ってもさー、魔力なしで誰でも使える便利アイテムだからさー。
       技術の進歩って偉大だよねー。こんなに使えるんだって、わかったろ? だから今後も使用の許可をオネシャス」


ドゲシッ(#´_>`)つ)#)゚_ゝ゚)アイヤー


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772名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:31:58 ID:yZraviHw0


(´<_`#)「こ の 大 嘘 つ き が !」


怒りが限界を超えたのだろう、弟者は兄の顔を殴りつけると、とうとう大声を上げた。
さっきまで「とっくに限界なのだろう」と問いかけていたのと同じ人間とは思えない殴りっぷりに、ドクオは言葉を失った。


(#);_ゝ;)「ひどいっ、弟者たんのおにちくっ! 悪魔の所業っ!」

(´<_`#)「マッチ程度の火しか出せないシロモノで、あんな大火力出しておいて何言ってやがる!
      さんざん魔力を使い倒しておいて、何が便利アイテムだ! それに最後の攻撃、お前その場で魔法石板作っただろ!
      ”使う”と”作る”じゃ大違いだ、この阿呆!」

(;´_ゝ`))「ヤ、ヤダナーソンナコトシテナイデスヨー。
       そ、それに仮についさっきというか今作ってたとしても、石板使ったことにはかわりないじゃないですかー」


(;'A`)「……お前ら、なんだかんだ言って本当は元気だろ」


殴られたと文句を言う兄に、怒り顔で詰め寄る弟。
その姿は兄者が動かないことさえ除けば、朝から見慣れた二人の姿そのものだ。


⊂(´<_`#)「俺に気を使ったつもりだろうが……全然気遣いになってないぞ。
        わざわざ面倒くさい真似しやがって、このアホ兄貴! 馬鹿たれ!」


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773名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:34:30 ID:yZraviHw0


( ´_ゝ`)「……だって、かっこつけたかったんだもん」


弟者に言われるがままになっていた兄者が、ぼそりと声を上げる。
その声は小さかったが、弟者はしっかりと聞いていた。


(´<_`#)「は?」

(#´_ゝ`)「俺だってお兄ちゃんだから、弟に対してかっこつけたくなるんですぅぅ!!!」


弟に聞きつけられて開き直ったのか、兄者は大きな声を上げる。
しかし、そう言い切ったことで満足したのか、兄者は怒りの表情を引っ込める。


( ´_ゝ`)「俺は、お前や妹者の兄貴だからな。こういう時くらいは、かっこつけさせてくれ」


そして、あげられた言葉は、先ほど上げた声とは対照的に落ち着いていた。
その真剣ともいえる言葉に、弟者の表情が固まる。
弟者の顔から興奮した様子が掻き消え、浮かんでいた表情が消える。


( <_  )「……」


一瞬、和らいだ空気が再び凍っていく。
兄者がしまったと思う頃には、もう遅かった――。


.

774名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:36:52 ID:yZraviHw0


(;^ω^)「お? どうしたんだお?」


弟者の表情の変化に、ブーンが声を上げた。
しかし、ブーンの声に言葉を返すものは誰もいない。


(´<_` )「……兄者は俺だ」


長い長い沈黙の末、弟者は口にする。
絞り出したようなその声は、とても小さかった。


(´<_` )「俺の考えることが兄者の考えることで、兄者の考えることが俺の考えることだろう?」


泣くのを我慢する、子供のような声だった。
それでも、弟者の顔には何の表情も浮かんではいかなった。


(´<_` )「だから、兄貴なんて言うのは止めろ……」


泣くわけでも、すがるでもないその姿に、兄者は黙り込んだ。


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775名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:39:18 ID:yZraviHw0


( -_ゝ-)「……」


再び沈黙が流れた。
兄者は長い長い時間をかけて、弟者へ向ける言葉を探しているようだった。
沈黙は重く、どう反応していいのかわからないらしいブーンが辺りを飛び回りはじめる。


( ´_ゝ`)「弟者。お前も本当はわかっているんだろう?
      こうしてつながってしまってはいるけど、俺とお前は別の存在だって」


そして、沈黙の末。
兄者はようやく答えを口にした。


(´<_` )「……兄者が何を言いたいのかわからない。俺は兄者で、兄者は俺だ」


('A`)「……」


それが、兄者と弟者の間にある決定的な考えの違いなのだろうと、ドクオは悟る。
遺跡の中でドクオが兄者に問いかけた、仲が悪いだろうという問いの答えはきっとこれなのだろう。
双子だから、魂を共有しているからこそ発生する、決定的な価値観の相違。
「仲が悪いわけじゃないんだ」という兄者の言葉の意味が、ドクオにはようやく理解できた気がした。


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776名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 20:40:33 ID:yZraviHw0


(;´_ゝ`)「あー、違うって言っても通じないんだろうなぁ、お前さんには。
      お前の言いたいこともわかるが、それは違うんだ。間違ってる」


兄者の言葉は、途切れ途切れではっきりとしなかった。
しかし、そこには紛れも無く真剣な響きがあった。


( ´_ゝ`)「俺とおまえは確かにつながっている。それは変えようのない事実だ。
      だけど、さ。一度別れてしまったものは、もう取り戻すことなんて出来ないんだよ」


兄者の言葉に、弟者の眉がぴくりと動く。
弟者は顔をしかめ不愉快だという表情を隠しもしなかったが、兄の言葉をじっと聞いていた。


( ´_ゝ`)つ「お前の毛並みは若草の色だろう? 俺は、空の色だ。染めたってもう元には戻らない。
        お前の背は俺よりずっと高いよな。誰も、俺がお前の兄貴だなんて思わない」


( ´_ゝ`)「お前は星が読めるか? 風は、空は読めるか? 無理だよな。
      俺だってお前から力をぶんどったとしても弟者みたいに動けないし、料理だって作れない」


「ほら、違うだろう?」と兄者は言う。
そして、彼は真剣な表情のままさらに続きを口にする。


.


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