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( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
1
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:46:34 ID:tFLjG.4M0
ラノベ祭り参加作品
202
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 22:32:12 ID:T2xLTBNg0
少女の周りには同行者の姿はおろか、乗り物姿さえも見えない。
兄者とて砂漠の民であるから、その不自然さは十分理解している。
しかし、それでも彼はこの場に少女を放置することを選ばなかった。
( ^ω^)b「まかせるお!」
(゚A゚; )「え? あ、どないしはったんです?」
少女はこのあたりではほとんど聞かない言葉遣いで言った。
東の大都よりも、はるかに東。東の果ての島で使われるのに近い言葉。しかし、そのことを兄者は知らない。
ただ、この少女は随分と遠くから来たのだなぁとだけ兄者は理解する。
(;´_ゝ`)「緊急事態だ。しばらくの間我慢してくれ」
( ^ω^)つ 《飛ぶお》
ブーンの手が動き、言葉ともとれない奇妙な音が兄者の耳に響く。
魔力を感じ取るとき特有の肌がぞわぞわと粟立つ感触は、兄者にとってどうにも慣れない。
弟者が魔法を好まないのは、この体質も影響しているのではないかと兄者は思う。
((゚A゚; )「え、や。何?」
( ´_ゝ`)「おっと、余計なことを考えている場合ではなかったな」
.
203
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 22:34:20 ID:T2xLTBNg0
兄者はその場からふわりと“飛んだ”少女の体を抱きとめると、自分の座る鞍の前の方に座るようにと誘導する。
少女の体は見た目よりもはるかに華奢で、力のほとんどない兄者でもどうにかなるくらいだった。
( ^ω^)「これでいいのかお?」
( ´_ゝ`)b「流石だな、ブーン。まさに完璧な仕事ぶりだ」
(゚A゚; )「えと、あの」
少女は兄者の手から離れて地面に降りようとして、荒巻の背の高さに怖気づいたようだった。
ラクダという生き物は、大人の男よりも背が高い。
その鞍の上となると体の小さな少女では、なかなか逃げられない。
( ´_ゝ`)「ここは今、盗賊と“流石”の自警団員が戦っていて危険だ。
あのままあそこにいたら、巻き込まれる可能性が高い」
(゚A゚* )「……」
( ´_ゝ`)「だから、お嬢ちゃんの身柄は俺が一時的に保護させてもらう。
まあ、ここは街でもないし、俺は弟者じゃないからそんな権限なんてないんだけどな」
_,
( ^ω^)「アニジャが難しいこと言ってるお」
(*´_ゝ`)ノ「え? 俺って、超かっこいい? 照れるじゃないか!」
.
204
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 22:36:03 ID:T2xLTBNg0
少女は兄者の言葉になにやら考え込んでいるようだった。
胸の前でぎゅっと小さな手を握り、兄者に問いかけた。
(゚A゚; )「えと、お兄さんはその、エライ人なん?」
( ´_ゝ`)「いやー、俺は別に偉くないけどね。
でも、妹がいるから、こんなところで女の子が一人なのはほっとけないみたいな感じで」
ヾ( ^ω^)ノシ「オトジャのほうが多分エライおー」
ヽ(;´_ゝ`)ノ コノ ウラギリ モノー ワーヾ(^ω^*)ノシ
少女はぎゅっと目を閉じる。
そして、砂丘の向こうの方向をじっと見てから、口を開いた。
(゚A゚* )「……その、ちょっとの間お世話かけます」
(*´_ゝ`)b「俺は兄者=流石。しばらくのあいだよろしくなー」
( ^ω^)∩「ブーンはブーンだお!」
彼らの挨拶に、少女はこくりと頷く。
……しかし、彼女は自らの名前を名乗ろうとはしなかった。
.
205
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 22:38:13 ID:T2xLTBNg0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
<*ヽ`∀´>「ウェーハハハハハ! 千載一遇の好機!」
男が振り上げた青龍刀に力を込める。
それが目に入っているというのに、弟者は男にへと突っ込んでいく。
( <_ )つ==|ニニニ二フ
大地を踏みしめる足は、人の速さを超え――。
一撃を加えた時よりも、男が武器を振り下ろすよりも、はるかに速く。
弟者は瞬く間に男の真横を通り過ぎると、すれ違いざまにその腹を撫で切った。
<;ヽ`∀´>「……くっ」
男の口から苦痛のうめきがあがるが、弟者は立ち止まらない。
青龍刀の間合いから完全に外れる場所まで来たところで、弟者はようやく振り返ると立ち止まった。
.
206
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 22:40:10 ID:T2xLTBNg0
(´<_` ).。oO(やはり、斬りつけても攻撃は通らない。か)
男との間の距離を図りながら、弟者は思考する。
男の長衣はどれだけ観察しても腹にあたる部分に血の染みどころか、傷ひとつない。
先ほどと同じ。確かに攻撃が通った感触があったというのに、切り裂かれた形跡はどこにもない。
( <_ ).。oO(魔道具か、もしくは魔法か。服だけじゃなく身体の強化もしているな)
弟者は奥歯を噛み締め、自分を抑えこむ。
今は激情に流されている場合ではない。ここで仕損じては、俺に危害が及ぶ。
弟者は、男の姿を見据えると口を開く。
<;ヽ`∀´>「い、一世一代の攻撃だったようだが、ウリには無駄だったようニダね」
(´<_` )「は、どうだか」
<#ヽ`∀´>「な、う、ウリは東の大陸の果てにある全ての起源の大国でも名のしれた男ニダ!
お前らみたいな有象無象のへなちょこ野郎とは違うニダ!」
男の顔色が赤くなるのと見て取ると、弟者は口元に笑みを浮かべる。
口の端を吊り上げ、しかし視線は相手を見下したまま。感情を乗せない平坦な声を出す。
(´<_,` )「ふーん。で?」
.
207
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 22:42:06 ID:T2xLTBNg0
その言葉の効果は劇的だった。
男の赤くなった顔が一瞬白くなり、それからすぐに怒りで沸騰する。
(´<_` )「その有象無象のへなちょこ野郎相手に、何もできないのは誰か。
そうだな。小一時間ほど問い詰めたいものだな。一体何処の誰が、そんなマヌケなことをするのかと」
<#`∀´> >「――なっ」
(´<_`*)「まったく、ド低能にもほどがある」
声を上げて笑いながらも、弟者の目は男との距離を測り続ける。
そして、掲げた曲刀を鞘に戻すと、やれやれと肩をすくめて見せた。
(´<_,`*)「お前さんのご立派な国とやらの程度が知れるな」
<#ヽ ∀ >「もう許さんニダぁぁぁぁぁ!!!!」
男は青竜刀を頭上に掲げると、弟者に向けて走りだす。
一歩、二歩、三歩。
間合いに入ると同時に振り下ろされる刀を、弟者は後ろに下がって避ける。
<#ヽ゚∀゚>「絶対に殺すっ!!!」
.
208
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 22:44:07 ID:T2xLTBNg0
そして、繰り出される右からの二撃目と、返す刀での三撃目。
( <_ )「……っ」
弟者の曲刀は鞘にしまわれている。
その無防備きわまりない状態のままで男の二つの攻撃を、後ろへと下がりながら回避していく。
一撃でもかすれば、おそらく最後。
そのギリギリの状況に弟者の頭からは血の気が失せ、息が上手くつけなくなる。
それでも、彼は余裕の表情だけは決して崩そうとしない。
<#ヽ゚∀゚>「これで最後ニダっ!!!」
(´<_` )「当たらん」
再び上段、めいいっぱいの力を込めて男の青竜刀が振り上げられる。
その攻撃を回避できる距離まで、弟者は渾身の力を込めると後ろへ跳ぶ。
着地。
それとほぼ同時に、体を反転。
男の攻撃の行く末は確認せずに、そのまま足に力を込める。
(´<_` )「お前では俺に追いつくことなど、出来ないからな」
<#ヽ ∀ > >「ぐぅぅ」
.
209
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 22:46:24 ID:T2xLTBNg0
踏み出した足が、砂の感触を伝える。
ひび割れた大地が、砂だけで満ちた砂丘へと姿を変えていく。
<#ヽ゚∀゚> >「ぜったいに、逃がさんニダ!!!」
(´<_` )「いくらでも吠えろ、下衆が」
そして、砂を踏むじゃりりという音と、ぶんっという刀を振るう音。
その音を耳に捉えながら、弟者は砂塵を再び駆けはじめる。
<#ヽ゚∀゚>「待てぇぇぇぇ!!!!」
走りだした弟者の背を狙わんと駆ける、男の姿。
それを確認して、弟者は確信する。
――かかった。
男が追いつけそうで追いつけない、ギリギリの速さを見極めながら走る。
速すぎてもいけないし、遅すぎても命が無い。
命をかけた鬼ごっこなど、とても笑えたものじゃないな――この状況下なのにそんな軽口を思いつく自分に、弟者は呆れる。
.
210
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 22:48:36 ID:T2xLTBNg0
息はつける。
頭の血の巡りも、今はもう良好。
あとは、最後の詰めでしくじらないだけ。
(´<_` )「そこで待つマヌケがいるか」
首元に手を伸ばす。
指に伝わるのは金属の感触。
気取られぬように細心の注意を払いながら、指を動かしその留め金を外す。
<#ヽ゚∀゚>「信賞必罰、とっととウリに首を差し出すニダァァァァ!!!」
やがて視界に広がりはじめる砂の丘。
弟者はそれをためらうこと無く、駆け上がる。
踏みしめるはじから崩れ落ちていく砂山を、弟者はこともなげに駆け登っていく。
<#ヽ゚∀゚>「ウリがこれくらいで力尽きるかと思ったニダ?!」
それから、少し遅れて男が砂の丘を駆け上がる。
足にも砂が絡みつくが、男の頭の中には弟者をしとめることしか残っていない。
素足に直接履かれた靴に、熱せられた砂が入り込むがそれにすら男は気づかない。
――そして、
.
211
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 22:50:09 ID:T2xLTBNg0
顔を上げた男の目にうつったのは、一面の薄紫。
夕暮れの終わりに広がる空の色。しかし、当然のことながら今は夕方ではない。
――だとしたら、これは一体……。
……その時、男は完全に不意をつかれていた。
だから、その色彩が弟者の身に着けていたマントの色だと気づけなかったのは仕方のないことだった。
<;ヽ ∀ >「……くっ」
しかし、それでも男はマントの向こうから迫り来る何か――弟者の曲刀を、振り回した手でかろうじて受け止めた。
男の体に働く不可思議な作用は、不意打ちの攻撃でも刃を通さない。
男の体も、服も先程までと変わらず。切り裂かれた様子は一切ない。しかし、それでも痛みまでは完全に消せない。
<;ヽ ∀ >「――っ、たいニダ!」
バサリと音を立て男の顔にマントが落ちる。
男は痛みに顔を歪めながら布を顔からどけようとして、
何かに、足を
とられ、
――地に倒れ込んでいた。
.
212
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 22:52:46 ID:T2xLTBNg0
下が砂地であるため、男の体にさほどのダメージはない。
<;ヽ`∀´>「――っ!?」
しかし、それでも彼には何が起きているのか、理解できない。
ただ、自分が地に倒れ伏しているという事実に男は狼狽し。
(´<_` )「お前のそれは刃は防げても、衝撃までは殺せない」
声と、
己の上へと落下してくる弟者の姿を見た――
(´<_` )「それに気づかなかった時点で、お前の負けだ」
衝撃。
痛いのかすらわからなくなるほどの振動と熱とともに視界が一気に狭くなる。
チカチカとする光、消えた音、吸えない息……男はなんとか息を吸おうと口を開き、
……それっきり意識は完全に途絶えた。
.
213
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 22:54:20 ID:T2xLTBNg0
(´<_` )「……」
弟者は立ち上がると、動かなくなった男の顔を踏みつけた。
気絶したらしく、男が反応する様子はない。
それを確認すると、弟者は一息ついてから未だしびれる右腕を振った。
(´<_`;)「……ふぅ」
砂の丘に落ちたマントと、それを留めていた金具を見やる。
そして、小さくため息を付いた。
(‐<_‐;)「かろうじて及第点といったところか」
マントで視界を覆った上での、曲刀による不意打ち。
攻撃が通らないとわかった上で放ったそれは、あくまでも本命を隠すための目眩まし。
――本命は、足払い。
ここは慣れぬ者であれば、砂地に足を取られすぐに立ち上がることはできない。
この上ないほどに単純な手だが上手くはまった場合、その効果は馬鹿にできない。
そして、倒れこんだ男へと向かい、弟者は砂地へと飛び込むようにしながら肘打ちを放ったのだ。
.
214
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 22:56:36 ID:T2xLTBNg0
l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃい兄者、みっけなのじゃ!」
(´<_` ;)「――ぐぇ」
弟者は、今朝方の妹者とのやりとりを思い出す。
あの時の妹者は、突然弟者の体へと飛び込んできた。
子供一人の体重が不意に掛けられただけでも、彼は痛みにうめき声をあげたのだ。
同じ不意打ちの状況で、弟者の全体重と落下の勢いが加わった攻撃を受けた男はどうだったのか。
その結果は、ご覧のとおり。どれだけ不思議な力で身を守ろうと、その衝撃だけで意識が綺麗に刈り取られている。
(´<_` ).。oO(妹者には感謝しないとな)
弟者はここにはいない妹の姿に、感謝をささげた。
.
215
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 22:58:24 ID:T2xLTBNg0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
(;´_ゝ`)「弟者ぁっ! 怪我はしてないか!」
(;^ω^)「オトジャー、大丈夫かお?」
ラクダに乗った兄者と、ラクダの手綱を持ちながら飛ぶブーン。それと、もう一人。
彼らが到着したのは、それから幾ばくもしないうちだった。
一同は盗賊を縛り上げている弟者を確認すると、慌ててラクダから降りた。
⊂二( ^ω^)二⊃「オトジャオトジャー」
⊂( ´_ゝ`)∩「大丈夫か?」
(´<_`;)「……兄者、何だか頭が妙にテカテカしているんだが」
兄者とブーンの声に弟者は手を一旦止めると、ひきつった表情を浮かべた。
どうやら兄者が被った飾り布が、妙な具合に汚れているのが気にかかったらしい。
.
216
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:00:24 ID:T2xLTBNg0
( ´_ゝ`)ゝ「これは荒巻にもしゃもしゃ食わ――って、そうじゃなくて怪我はないのか!?」
(´<_` )「大丈夫だ。問題ない」
一方の兄者は、ざっと弟の姿を見回し怪我がないことを確認するとほっと息をついた。
それから倒れている盗賊の姿をおそるおそる確認する。
( ^ω^)「動かないお」
(;´_ゝ`)「……生きてはいる、みたいだな」
(-<_- )「とりあえずはな」
弟者は手を動かし、男を縛り終える。それから顔を上げ、その表情を変えた。
あまり動かないながらもそれなりに変化のあった弟者の表情が、失われていく。
(´<_` )「……」
( ´_ゝ`)「弟者?」
視線の先は――、兄者の後方。
彼の影にこっそりと隠れるように立った小さな人影。
.
217
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:02:27 ID:T2xLTBNg0
弟者の手が、曲刀を引き抜く。
花や蔦の文様が刻み込まれた美しい刀が、ためらい一つ見せること無く振るわれる。
目一杯速さで振るわれた曲刀が向かうのは、兄者の向こうの人影。
(; ゚_ゝ゚)「え?」
(;^ω^)「お?」
(゚A゚* )「……」
薄紫の獣の耳を持つ、まだ幼い少女。
彼女の首元へと向かって、弟者の曲刀はつきつけられる。
――しかし、刀はそれ以上先に動こうとはしない。
(´<_` )「……」
(; ゚_ゝ゚)「なん……で……」
何故ならば、
刀をつきつけられた少女のその手には光り輝く凶器が握られ、その武器は――
.
218
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:04:11 ID:T2xLTBNg0
――兄者に突きつけられていた。
.
219
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:06:17 ID:T2xLTBNg0
人生とは戦いの連続である――そう言ったのは彼ら双子の母であったか。
兄者にとってはまさしく今の状況こそ、その言葉にもっともふさわしいものであった。
(; ゚_ゝ゚)「……あばばば」
(;^ω^)「あ、アニジャっ!!」
目の前には曲刀を幼い少女の首へと向ける弟。
そして、背後には手にした武器を自分の腹へと突きつける少女。
両者は武器を互いに突きつけたまま、微動だにしようとしない。
(^A^* )「そりゃあ、ウチだって痛いのは嫌ですもん。
ニダやん風に言うなら、人質ってやつでしょか?」
(´<_` )「……」
一方は笑顔。もう片方は、一切の感情が抜け落ちた無表情。
どちらかが動けば確実に、無事では済まない。その重圧に兄者の体は知らず知らずのうちに震える。
(;´_ゝ`)))..「えーと、これは一体、どういうこと?」
(´<_` )「……そいつはさっきの盗賊の仲間」
.
220
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:08:28 ID:T2xLTBNg0
( <_ )「そして、おそらく……こいつが“魔法使い”だ」
(゚A゚* )「……どうして、ウチがニダやんの仲間やってわからはったの?」
少女は小首をひねりながら、弟者に尋ね返した。
もし自分が単なる通りすがりの少女だったらどうしたのと、彼女は問いかけるが弟者は答えようともしない。
(;^ω^)「ひ、人質? 人質ってなんだお!」
(;´_ゝ`))「すごく危ないってことだ!」
(*^ω^)「なるほど!」
ブーンと兄者は言葉の応酬を交わすが、それで状況が落ち着くはずもない。
むしろ、その場の空気はますます悪くなっているといってもいい。
(゚A゚* )「……だんまりね。まあ、ええよ」
( <_ )「……」
少女は兄者につきつけた凶器に力を込める。
彼女が兄者の腹につきつけられているのは、銀の刀身を輝かせる小さなナイフであった。
小さな――といっても、小柄な少女の手には大きすぎるようで、彼女は弟者を睨みつけながらも何度も握り直していた。
あと少し。あと少しだけ勢いをつけて刺せば、その武器は兄者の服を肌を貫くことだろう。
.
221
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:10:35 ID:T2xLTBNg0
(゚A゚* )「ニダやんを解放して。
そうしてくれはらへんのなら、弟さんがどないなるかわからんよ」
そして、彼女は弟者に向けてきっぱりと言い切った。
首元に突きつけられた刀に怯む様子は一切ない。
無謀なのか、それとも単純に度胸があるのか。
少なくとも彼女は、弟者の攻撃を受けるたびに声を上げていた盗賊よりはるかに肝が座っていた。
(´<_` )「それよりも俺がお前の首を切るほうが早い」
(゚A゚* )「嘘。せやったら、とうにそうしてる」
(;´_ゝ`)「俺、弟じゃなくてお兄ちゃん……」
恐る恐る口に出された兄者の言葉は、少女にも弟にも届かずに消える。
ブーンからは「ブーンはちゃんと知ってるお!」と声があがったのだが、やはり状況に変化はなかった。
(゚A゚* )「ウチは本気や」
(´<_` )「……」
弟者の表情に変化はない。
それは余裕だからではなくて、余裕が無いからこそだ。
.
222
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:12:42 ID:T2xLTBNg0
(゚A゚* )「なんなら、試す?」
脅しのためか、それとも本気なのか……。
少女は兄者の体に突きつけたナイフに力を込めて、その刃先をほんの少しだけ前に進めた。
( ;゚_ゝ゚)「ちょ、お願いヤメテ!!」
(゚<_゚♯)「――」
弟者の体が弾けるように動く。
しかし、その動きよりも速く、動いたものがあった。
.
223
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:14:20 ID:T2xLTBNg0
……それは兄者の腹。正確には彼の身につけた装束の懐部分。
(;゚A゚)「ひっ、何でオレ武器なんてつきつけられてんの!!!」
(;´_ゝ`)「ドクオ!!!」(^ω^;)
そして、辺りに響いたのそれは――ドクオの声だった。
兄者の懐がもぞりと動き、そこからずっと姿を消していたはずのドクオ顔を出す。
.
224
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:17:01 ID:T2xLTBNg0
……ドクオ、よりにもよってそこに隠れていたのか。
兄者とブーンにとってはその程度の感想なのだが、完全に不意をつかれた少女にとってはそれは脅威だった。
予想外の状況に動けなくなる少女。
一方、ドクオの登場にも弟者の動きは止まらなかった。
(;´_ゝ`)⊂(´<_` )グイッ
首を断とうとしていた動きを接近する動きに変えると、弟者は凄まじい速度で兄者の腕をつかむ。
力を入れすぎたせいか、兄者の体勢が崩れ、そのまま倒れかける。
しかし、弟者はそれには構わずに腕を引くと、兄者を少女から強引に引き剥がす。
⊂(;´_ゝ`)∩「痛い! 痛いって、弟者っ!」
(´<_` )「大怪我よりマシだろ」
兄者が少女から十分離れたのを見計らって、弟者はその手を離す。
支えを失ったことで、兄者の体は砂の上にどさりと倒れ落ちるが弟者はそれには気を止めなかった。
(゚A゚; )「――っ」
(;'A`)「なになに、どうしたのこの子?」
(;^ω^)つ「ドクオ! こっち来るお!」
一方、事情のつかめないドクオと少女は、弟者の動きに反応出来なかった。
.
225
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:19:03 ID:T2xLTBNg0
( <_ )「すまない、仕損じた」
少女の手から開放された兄者に向けて、弟者は謝罪の言葉を口にする。
といっても、その眼は少女を見据えたままで、いつでも動き出せるように体勢を整えている。
(;´_ゝ`)∩「いや、しくじったのは俺だ」
(´<_` )「……もう一人いることは予想できたはずだ。
あの男に魔法がつかえるはずがなかったんだから」
弟者は奥歯を噛み、表情を歪めながら言う。
あの男は、自らを助けている“魔法”もしくは“魔道具”の力を理解している様子はなかった。
それどころか、自分が魔法に助けられているということにすら気づいていなかった。
それは男自身が術者でないことに他ならない。だとしたら、男に魔法や魔道具を授けたもう一人がいて当然なのだ。
そしてその術者は、おそらくあの少女。
本人は明言を避けていたが、この状況で出てきたのだ。十中八九彼女が術者で間違いない。
(゚A゚* )「……なんで、精霊が」
(;'A`)「本当にどうなってるんだ?!」
そして、その少女はドクオの姿に呆然としていた。
兄者が助かったことにも、弟者の行動にも思考が向いていない。
.
226
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:20:10 ID:T2xLTBNg0
(´<_` )「……」
(;´_ゝ`)「くっ」
隙だらけの少女に向けて弟者が一歩踏み出そうとするのを、兄者は見た。
弟者の手には抜き身の曲刀。相手は少女だというのに、素手で取り押さえるという発想はそもそも無いらしい。
弟者の顔に表情はなく、ためらう様子など欠片も見せない。
それだけで、兄者には理解できてしまった。
――こいつは、殺す気なのだと。
(;´_ゝ`)「弟者っ!」
Σ(゚A゚* )「――っ!!」
兄者の声に、呆けていた少女の瞳が、はっきりとした理性を取り戻す。
彼女は弟者の姿を見やると、ためらうこともなくその口を開いた。
(゚A゚* )
ぞわりと兄者の肌が粟立つ感触。
毛並みは逆立ち、その耳へと奇妙な音を伝える。
.
227
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:22:19 ID:T2xLTBNg0
(゚A゚# ) 《速く》
少女の口が音を紡ぐ。
――それは、魔力の乗った言葉の羅列だ。
ただの言葉に魔力を込めることで、その言葉を実現可能にするもっとも典型的な魔法。
発する言葉がシンプルであればあるほど。込める魔力が強ければ強いほどその魔法の威力は上がる。
少女の口にした音は、ブーンや、広場で出会った女が戯れに使ったのとは違う。
その目的だけを込めた、強固でシンプルな言葉だった。
( <_ )「……」
(;´_ゝ`)「……ぅ」
弟者を止めるべきであるという思考と、相手は魔法使いであるという戸惑い。
その迷いが、兄者の動きを遅らせた。
彼女の魔法使いとしての実力が高いものであった場合、死ぬのはこちらだ。
(´<_` )
弟者が、肉食の獣の速さで動く。
手にした曲刀が弧を描き、その軌跡を銀に輝かせる。
.
228
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:25:05 ID:T2xLTBNg0
少女の体から鮮血が飛び散るのを、兄者は見た。
.
229
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:26:34 ID:T2xLTBNg0
( A * )「――っ!」
弟者の手にした刀身が、獲物の流した赤い液体でべっとりと濡れる。
切り裂いた部位は腕。
少女が手にしていたナイフが砂の上に、落下する。
(´<_` )「悪いな」
(´<_` )「――そういうのは嫌いなんだ」
身にまとった衣服ごと、柔らかい肉を切り裂いて、それでも弟者の動きは止まらない。
魔法で自身の動きを“速く”した少女よりも、弟者の動きは速い。
むせ返るような血の匂いが、あたりを満たす。
(#´_ゝ`)「やめろっ!!!」
(´<_` )「……」
弟者は空いている手で、体勢を崩した少女の首元を掴み。そのまま、砂の地面に押さえつける。
頭を打ったのか、それとも傷口が痛むのか、少女の顔が苦痛にあえぐ。
( A ; )「……いた……ぃ」
.
230
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:28:35 ID:T2xLTBNg0
弟者はその顔に向かって、緩やかな曲線を描く刀を突きつけ。
そのままその刀を切――
( <_ )「死ね」
(;´_ゝ`)つ「弟者待て!」
兄者の声が響いたのは、弟者が声を発すると同時。
(;^ω^)「あ、あうあう」
(;'A`)「な、なあ。本当にどうなってるんだ?!」
(´<_` )「……」
弟者は手の動きを、ピタリと止める。
しかし、視線は未だ少女を睨みつけたまま。その目は決して、兄者を見ようとしない。
(;´_ゝ`)「殺すな。殺しはよくないぞー」
(´<_` )「それはできない」
.
231
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:30:35 ID:T2xLTBNg0
(;'A`)「おいおい、これマズイんじゃねぇの?」
( ´ω`)「……だお」
ドクオは慌ててふらふらとした動きで弟者の顔の回りを飛び回る。
が、その動きすらも弟者は目に入れようとしない。
彼の眼は少女の姿だけを、まったく感情のこもらない眼で睨み続けている。
(;´_ゝ`)「やめろ、弟者」
(´<_` )「ここは街じゃない。今後の憂いを断つためにも、盗賊は殺すのが鉄則だ」
(;´_ゝ`)「……うっ。でも、殺すのはよくないと思うのだが」
(´<_` )「殺すなというならば、最低でも舌を切るか喉を潰すことになるがいいな。
……念をいれるなら、手足も潰さねばなるまい」
(゚A゚* )「……っ」
寸前で止められた刀が、少女の肌をほんの少しかすめる。
致命傷には成り得ない小さな傷。しかし、彼女の肌からは血が滲みその紫の毛並みを汚す。
(;'A`)て「やめろ、弟っ!」
.
232
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:32:24 ID:T2xLTBNg0
ドクオの言葉にも、弟者は耳を貸す様子がない。
このままではダメだ。と兄者は声を上げ――、
(#´_ゝ`)「ううっ、ダメ絶対!」
あいも変わらず倒れこんだままの視界の端に、あるものの姿をとらえる。
それは縛られた姿で気を失った盗賊の姿と……薄紫の布でしつらえられた、弟者が身に着けていたはずのマントだった。
(#´_ゝ`)「絶対に殺すな、首も舌も手足も潰したらダメ!!」
兄者は叫びながらもマントをつかむと――、そこに縫い付けられている隠しに手を伸ばす。
幾ばくかの金貨と銀貨が触れる。しかし、兄者の目的はそれではない。
さらに指を進め、兄者はついにそれを掴んだ。
(; _ゝ )「……」
触れた途端に、全身に伝わる悪寒。
視界に光がはじけ。赤や青の光が渦巻く。
その感覚を強引にねじ伏せると、兄者はそれをマントから引きずり出す。
――それは、幾重にも文様や文字が刻み込まれた銀の腕輪だった。
.
233
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:34:30 ID:T2xLTBNg0
(´<_` )「……」
あれほどうるさかった兄者の声がいつの間にか止んでいることに、弟者は気づいた。
代わりになにやら羽音が聞こえるが、そちらは今は関係ない。
関係有るのは目の前の――、
(;A゚* )「……や、」
目に涙を浮かべながらも、なおも言葉を発しようとする少女の口を、手で押さえつける。
面倒だがこのまま舌を引きずり出せば、魔法を使われる心配はなくなる。
――いや、それよりもひと思いにやってしまうか。
そんな思考が、弟者の頭によぎる。
兄はおそらくこの少女を解放しろと言うだろう。
……幼いから、殺しはよくないから、たったそれだけ理由で。
甘すぎる。いつもそうだ。兄者には自分がいかに危険にさらされていたのか、全く自覚がないのだ。
(´<_` ).。oO(ならば、いっそ)
(#´_ゝ`)「――待て!」
曲刀を握り直した弟者に向けて、兄者の大声が上がる。
それから砂を踏み、こちらへと駆け寄る音。
.
234
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:36:24 ID:T2xLTBNg0
兄者の、足が視界に入る。
息を荒げ、なかば転がるようになりながらも、その足は止まらない。
(´<_` )「もう十分に待った。邪魔をするな」
(#´_ゝ`)「いいや、ジャマさせてもらうね!
お前さんには堪え性というものが圧倒的に足りない。それではいかんぞと」
兄者の様子はいやに自信に満ち溢れている。
弟者は少女の口元を強く押さえつけながら、兄者の様子を見やる。
( ´ω`)「……アニジャ」
(;'A`)て「おい、無茶はするなよ」
( ´_ゝ`)b「大丈夫だ。この俺が来たからにはもう安心だ!」
(#'A`)て「よりにもよって、お前だから心配してるんだよ!」
兄者の様子は普段と何ら変わりはない。
しかし、いや……その手に何かを掴んでいる。
(´<_`; ).。oO(まさか、)
それが何か悟った瞬間、弟者は息を飲んだ。
銀の腕輪――未だに見慣れぬそれは今日、手に入れたばかりのものだ。
.
235
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:38:25 ID:T2xLTBNg0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
それは昼前。
物売りの声と、人々の歓声。肉や食材の焼ける香ばしい匂いと、煙草や香草の鼻を突く臭い。
広場に立つ黒と紫を基調とした、小さなテント。
川 ゚ -゚)「やれやれ。よくもまあ、飽きないものだな。
いつまでもここで揉められては困るし、一つ提案がしたいのだが……」
魔法石板売りの店主から買った石板を返すと言い出した弟者と、それにつられて大騒ぎになった一同。
一同の様子を呆れ半分で見守っていた店主は、手首にはめた腕輪に手をやるとそっと口を開いた――
川 ゚ ー゚)「どうだろう、魔力封じというものに興味はあるかな?」
(´<_` )「……秘術の一つだと聞いているが」
彼女は口元に薄く笑みを浮かべると、腕輪を外す。
素材はおそらく銀。中央に嵌めこまれているのは、丸く加工された水晶か。
全面に刻み込まれた文字や模様は、装飾品としてはあまり見かけないものであった。
.
236
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:40:55 ID:T2xLTBNg0
(´<_` )「……」
その腕輪を見たとたん、――これはあまり良くないものだ、と弟者は直感した。
同じ事を兄者も感じたようで、「うへぇー」と言いながらその表情を歪ませた。
それだけではなく、兄者はそのまま体をぶるりと震わせると、両腕をさすり出す。
( ^ω^)「これはなんだお?」
川 ゚ ー゚)「これはちょっと特殊なものなんだ。
一説には、魔神の持ち物だったとも言われている」
(;'A`)「げぇぇっ、魔神かよー」
弟者は店主の言葉に自分でも気づかないうちに、奥歯を噛み締めていた。
魔神――それは、精霊や竜なんかよりもはるかに格上の、それこそ神に等しい力を持った存在だ。
……それはもちろん、悪い意味で。
神と等しい力をもちながらも、気向くのままに魔力を振るい好き放題をする。
善行をすることもあれば、悪行もすることもある――と、世間一般では言われる存在だ。
川 ゚ ー゚)「そう怖い顔をするな。あくまでも噂だ」
薄く笑った表情は崩さないまま、彼女はそっと腕輪に指を這わせる。
そのまま彼女がそっと息を吸うと、弟者の肌がざわりと反応する。
.
237
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:45:05 ID:T2xLTBNg0
これは、魔力だ。
この女はこれから、魔法を使う。漂う魔力の量は、先ほどの戯れに使った暗示よりもはるかに強い。
弟者の手は腰に下げた曲刀へと伸びていた。
得体のしれない腕輪と、魔神、それから魔法石板と、魔法使い。
それらは弟者にとって刀を抜くのに十分な理由となった。
(;´_ゝ`)「おい、弟者待て!」
(´<_`#)「止めるな、兄者」
弟者の様子に気づいたのか、兄者の手が弟者の肩にかかる。
それを振り払おうとして、弟者は自分の行動が遅かったことを悟る。
川 ゚ -゚) 《 》
――魔法が発動する。
しかし、店主の発した音が何を示すのか弟者にはわからなかった。
……こういった魔法のたぐいが生じた場合、それが何を示す言葉なのか弟者には大抵読み取ることができる。
それが出来ないということは、それこそ弟者の理解を越える高度な魔法か、未知の魔法か。
魔法封じという言葉もあながち嘘ではないかもしれないと、店主を睨みつけながらも弟者は理解する。
川 ゚ -゚)「……これでこの腕輪は魔法や魔力を封印するようになった。
残念ながら、効果は一度だけだがな」
.
238
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:46:07 ID:T2xLTBNg0
(*^ω^)「おお、すっごいおー」
(;'A`)「魔力封じなんて貴重なもんを……随分とまぁ、大盤振る舞いなことで」
川 ゚ -゚)「これをやるから、お前たちは私の石板をおとなしく引き取って帰れ。
石板が気に食わないならばこれを使って封じればいいし、それ以外に使っても一向に構わん」
そして、店主は使い方を説明すると腕輪を机の上に放る。
弟者は無言で店主と、腕輪を見比べる。
(´<_` )「……それ以外に使っても、か」
(;´_ゝ`)「弟者さん。なんで、そこで俺の顔を見るのかな?」
(´<_` )「実験台が必要だと思ってな」
(; ゚_ゝ゚)「ちょ、おま、目、目が本気!! それ一度っきりしか使えないんだぞ!
魔法嫌いなのに、魔道具使うとかちょっと考えなおせ! 考えなおして下さい!!!」
銀の腕輪を拾い上げると、弟者はマントの隠しへとしまう。
二枚の魔法石板を抱えたままの兄者の腕を引きその場を離れるよう促すと、店主へ向けて言い放った。
(´<_` )「いいだろう、交渉成立だ」
川 ゚ ー゚)「お前なら、きっとそう言うと思ったよ」
.
239
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:47:36 ID:T2xLTBNg0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
一度きりの、魔力を封じる銀の腕輪。
その腕輪が今、兄者の手に握られている――。
兄者の意図はその動きでもう明らかだ。
(*'A`)「なるほど魔力封じか!」
(;^ω^)「え? え?」
魔力を封じて少女を解放する。
兄者の大馬鹿野郎は一度しか使えない貴重な道具を、たったそれだけのために浪費するつもりらしい。
(´<_`#)「――兄者」
少女の口から手を離し伸ばした弟者の手は、空を切った。
舌打ちし、兄者を捉えようと体を起こすが――、
(´<_`; )「――な、」
.
240
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:49:09 ID:T2xLTBNg0
前進に砂が絡みついているのでないかと思うほど、体が重くのしかかり上手く動くことができない。
自分のものとも思えない、その動きに弟者は愕然とする。
(*´_ゝ`)b「ちょっと、持って行かせてもらった」
(´<_`#)「くっ」
一方の兄者の動きは、これまでとは完全に別人。
砂丘で転んでいた時とは比べ物にならない速さで、弟者の腕をかいくぐり少女へと駆け寄る。
( `ω´)「がんばるお、アニジャ!」
(#'A`)ノ「行けー!!」
それでもなお兄者を阻もうとする弟者の顔に、ドクオが張り付く。
弟者は怒りの表情を浮かべながら引き剥がそうとするが、ドクオも渾身の力で耐える。
⊂(´<_`#)「どけっ、この羽虫っ!」
(#'A`)「いーやーだー!!」
弟者がドクオに気を取られた隙に、兄者は少女の元へとたどり着いた。
.
241
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:50:07 ID:T2xLTBNg0
(;A゚* )「……」
少女はその瞳に涙こそにじませてはいたものの、泣いてはいなかった。
ただその表情は青ざめ、その手は小さく震えている。
_,
(;´_ゝ`)「ごめんな」
(;A゚* )「……」
そして兄者は震える少女の左腕に、銀の腕輪をはめた。
嵌めこまれた水晶が光ったように見えたが、それも一瞬のこと。
すぐにその光も見えなくなる。
(゚A゚* )「――な、なに?」
(*´_ゝ`)ノ「ほい、たった今を持ちましてお嬢ちゃんの魔力は封印させてもらいましたー。
この腕輪が外れるまでは、絶対に魔法を使うことは出来ません!」
そう少女に向けてへらりと笑う兄者の顔に向けて――間髪入れず弟者の拳がつきささった。
ヘブッ(´く_`(#⊂(´<_`#)
.
242
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:53:07 ID:T2xLTBNg0
(;'A`)「スマン、弟止めるの無理だった!」
(; ゚ω゚)て「今日、4回目だお!」
痛みを訴える頬を抑えながら、兄者は弟の姿を睨みつける。
弟者が怒りの表情を浮かべていることに怯み、あわてて謝りそうになるがそれを何とかこらえ兄者は言う。
( ´_ゝ`)「弟者よ、痛いではないか」
(´<_`#)「殴ったのだから、当然だ。
……兄者は、自分が何をしたのかわかっているのか?」
(#´_ゝ`)「弟の狼藉を止めたに決まってるだろ。
これでめでたく魔力封印。魔法も使えないから解放しても大丈夫で、万々歳ですぅ!」
そう言い切った兄者の頬に、再び弟者の拳が唸る。
その拳は避ける暇もなく、兄者の頬に直撃する。
殴られたのは先程とは反対の頬。弟者は思い切り殴ったのか、痛いことこの上ない。
しかし、それでも兄者は引こうとはしなかった。
(´<_`#)「兄者はわかっていない!」
(#´_ゝ`)「いいや、わかっている。
俺は謝らないし、絶対に止めるからな!」
.
243
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:54:06 ID:T2xLTBNg0
同じ顔の二人が声を荒げ罵り合う。
両者はお互いしか目が入っていない。そして、精霊たちも兄弟たちの姿に完全に動きを止めている。
その隙を突いて――動いたものがいた。
(゚A゚* )「――――強くっ!!!」
先程まで震えていた少女が起き上がりながら、声を上げている。
しかし、それは魔法ではなく、単なる言葉として周囲に響いた。
少女が体から組み上げようとした魔力は、どうあがいても形にならない。
いや、組み上げようにも魔力そのものが今の彼女には捉えられない。
少女の顔がこわばりその視線は自らの腕――、はめられた腕輪へと落ちる。
(゚A゚; )「――っ」
腕輪に手をやるが、幾度試しても外れる様子がない。
決して頑丈そうではないのに、まるで意志があるかのように少女の腕から離れようとしない。
普通の腕輪ではない。少女はその瞬間にようやく理解した。
(゚A゚; )「魔力……封じ……」
魔力の封印。そんなことができる者は、そうめったにいない。
――だから、そんなものは嘘なのだと信じて、少女は逆転に賭けた。
なのに、なのに、なのにっ!
.
244
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:56:16 ID:T2xLTBNg0
( <_ )「だから、言っただろ」
どちらのものかわからない、男の声。
その声に少女は自分の残りの時間が尽きたことを、あきらめと共に悟った。
ああ、ニダやん。すまんかったなぁと――彼女は心のなかで、縛られ倒れたままの男に向けて謝罪する。
顔を上げて、少女は見る。
(´<_` )「殺すべきだって」
銀の光。
翻るシャムシールの刃。それが、彼女の視界いっぱいに映り……
(♯゚_ゝ゚)「――やめろっ!!!」
そして、鈍い音とともに少女の体に衝撃が走った――。
.
245
:
名も無きAAのようです
:2013/03/17(日) 23:58:33 ID:T2xLTBNg0
――――――‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
(゚A゚* )
< `∀´>つε=(~⌒) 「なんだガキか。生者必滅、さっさとのたれ死ぬといいニダ」
( A;* )「……ぅ」
<;`д´>て
< `―´>「……」
< `∀´>「あー、腹いっぱいニダ。もう食いきれないからこれは捨てるニダ。
捨てたものをそこにいる腹をすかせてそうなガキが食べたとしても、ウリには全然っ関係ないニダ」
(゚A゚; )「……あ」
< `∀´>「さっさと食うニダ」
(⌒~)=o(゚A゚* )「ありがとう」
< `∀´>「それ食ったらついてくるニダ
どうせ、ニムには家なんて無いニダ。ウリなら飯くらいは食わせてやれるニダ」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
――――――‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
246
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:00:28 ID:c1EC81wI0
( <_ )「――兄者」
(; _ゝ )「ふぃー、危ね」
( A ; )「……なんで、」
刀は確かに振るわれた。
彼女の頭は激しい衝撃に打たれ、それに耐え切れずに首はがくりと揺れた。
目がくらみ、なかなか焦点を結んでくれない。しかし、それでも彼女は血の一滴もこぼすことはなかった。
(゚A゚; )「……あ、」
代わりに落ちたのは、花の飾り。
彼女が耳に飾っていた赤い花をかたどったそれは、無残にも割れ。原型を留めていない。
あの男が、攻撃を外すとは思えない。
それでも外したというのならば、その原因がどこかにあるはずだ。
そう、その原因となったのは――
(;´_ゝ`)「大丈夫だったか、お嬢ちゃん」
.
247
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:02:05 ID:c1EC81wI0
(;'A`)「おい、止めるならもうちょっとマシな方法あっただろ!」
( ´_ゝ`)「今の俺じゃあれが限界なんだよ」
これまで殴られるばかりだった兄者の拳が、弟者の頬へとつきささっていた。
おそらく少女の命を護るために振るわれたであろう兄者の拳。それをまともに受けた弟者は、兄の姿をギロリと睨みつけた。
弟者の瞳は激情が燃え、その表情にもはっきりと怒りの色が浮かぶ。
(;^ω^)て「アニジャっ!」
⊂(´<_`#)「こんのっ、ド低能がっ!」
弟者の表情の変化に兄者がほっとしたのもつかの間、今度は弟者の拳が兄者に向かって振るわれた。
ブーンの声もむなしく、反応が遅れた兄者はその拳をもろに受ける。
兄者の体がふらつくが、それでも彼は倒れずに弟の姿を睨みつけた。
兄者の顔に怒りの表情が浮かぶ。同じ顔をした二人は、まったく同じ表情で向かい合った。
(∩ _ゝ )「――っ、やったな弟者」
(´<_`#)「なぜわかならない。俺は、俺の――」
(#´_ゝ`)「違うっ、お前はただ魔法使いを殺したいだけだ!」
(´<_`#)「それの何が悪い!」
.
248
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:04:11 ID:c1EC81wI0
怒声を上げる兄弟。二人の拳が動いたのは同時だった。
両者の頭に避けるなどという思考はない。
あるのは、ぶんなぐってやりたいという衝動だけ。
そして、振るわれた拳は、数秒の間をおいて両者の頬をえぐった。
(;^ω^)て
(;'A`)「……うわぁ」
痛みと、それを上回る衝撃に二人はよろけ、一歩後退る。
しかし、そんなためらいはほんの一瞬で、すぐにお互いの胸ぐらを掴み始めた。
その一連の動きは――まるで、鏡に写ったかのように、そっくり同じ。
(´<_`#)「何をしやがる。兄者はアホかとバカかと」
(#´_ゝ`)「そういうお前こそ、アボカドバナナかと」
(´<_`#)「こんな時までふざけるな!」
兄者が弟者の頬を殴りつければ、仕返しのように弟者も兄者の頬を殴りさらに蹴りを加える。
腹を蹴られた兄者は顔をしかめると、弟者を蹴り倒し、そのまま馬乗りの体制になる。
そして、そのまま抵抗の出来ない弟者の顔を殴りつける。
.
249
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:06:37 ID:c1EC81wI0
(´<_`#)「こん……の」
(; _ゝ )「ぐっ」
弟者を殴りつけるのに必死になっていた兄者の体を、弟者の肘が打つ。
必死の力を込めたのか。それとも、当たりどころが良かったためか、兄者の体が怯む。
その一瞬の隙を突いて、弟者は体を傾け兄者の下から脱出する。
その弟者の動きに今度は、兄者の体勢が崩れた。
それを弟者は見逃さず、今度は弟者が兄者に馬乗りになる体勢となる。
弟者の拳は兄者の頬を、瞼を、鼻を殴りつけていく。
(;゚ω゚)「な、な、な、何をしてるんだお!」
('A`)「……よくもまあ、やるもんだ」
(;^ω^)「ああいうのはよくないお! ブーンは全然楽しくないお」
お互いに一切引く気配はない。
蹴りつけ、衣服をひっぱり、引きずり倒し、殴る。
口が切れ、瞼が腫れようともその動きは止まらない。
顔面をかばう腕ごと殴りとばし、蹴り飛ばす。そして、殴られ、蹴り飛ばされる。
(;^ω^)「もうやめるお!」
.
250
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:09:13 ID:c1EC81wI0
('A`)「いいから、やらせとけ。死ぬようなことはないだろ」
(;^ω^)「でも、アニジャもオトジャも間違ってないお。なのににどうして……」
ドクオの言葉にブーンはその表情を歪める。
ブーンの目からみた兄弟はどちらも間違っていないように見えた。
命を脅かす敵は排除すべきだという弟者の主張は正しい。
しかし、それど同時に同族の命を奪いたくないという兄者の思いもまた、間違ってはいない。
('A`)「弟は間違ってはいないだろうけど、オレは兄者に協力する。
ブーン。お前はどうなんだ?」
(;^ω^)「……お」
助けを求めるように動いたブーンの視線が、少女の姿を見た。
弟者の手から開放された少女が、後退りをするとフラリと立ち上がる。
(゚A゚* )「……」
少女にはもはや魔法を使おうとするそぶりも、武器を拾おうとするそぶりもなかった。
二度の反撃の失敗は彼女から抵抗する気力を根こそぎ奪い去っていた。
彼女は力ない足取りで歩くと、未だ縛り付けられたままの盗賊の元へとたどり着く。
.
251
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:10:19 ID:c1EC81wI0
(゚A゚* )「ニダやん……」
しかし、少女の手は男の縛めをほどこうとはしない。
うちひしがれた表情で彼女は、男を見下ろしている。
(;A;* )「ニダやん。ごめん。ごめんなぁ……」
(;^ω^)「……」
少女の目から涙があふれこぼれていく。
その姿にかわいそうだという言葉がブーンの脳裏に浮かぶ。
胸の中にただよう痛いようなむずむずする感じは、いつかの感情の名残だ。
('A`)「おい、お前さん。気持ちはわかるが、逃げようとはするなよ」
そんなブーンの様子には気づかないまま、ドクオは声を上げる。
ドクオは少女の傍ら、その視線の前を危なっかしい姿勢で飛び回る。
('A`)「オレが言うのも何だが、兄者はなんの義理もないお前さんのために弟にケンカ売ってるんだ。
それを無駄にするような行動はやめろ。余計なことをすれば、今度こそ弟がやらかしかねん。それに……」
:.。.('∀`).。.:「兄者ならなんとかするさ!」
.
252
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:13:01 ID:c1EC81wI0
( ^ω^)「……ドクオ」
ドクオの弾けるような笑顔に、ブーンは言葉を失った。
その理由はわからないが、知らないほうがいい感情の作用によるものの気がして、ブーンは話を変えることにした。
( ^ω^)「そういうドクオこそ、まっさきに逃げたおね」
+('A`)「え?」
(゚A゚* )「……精霊はん。何、言わはってるんやろ」
そんな二人のやり取りは、少女の耳には届かなかった。
彼女の耳は精霊の声を捉えることができない。
しかし、訴えるような精霊たちの姿に、何か大切なことを言われているような気がして、彼女はそっと目を閉じる。
(‐A‐* )「……」
耳を澄ましてどれだけ集中してみても、精霊の声は聞き取れない。
その代わりなのだろうか、自分に向けて「ごめんな」と告げた男の声と表情が浮かんで消える。
武器を突きつけた相手に言う言葉とはとても思えない。優しい声。
.
253
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:14:21 ID:c1EC81wI0
ああ、そうか。
あの男は彼女がニダやんと呼ぶ男と同じ、とんでもない馬鹿なのだと少女は悟る。
……そう悟ったと同時に、彼女の心は折れた。
(゚A゚* )「あーあ。ウチの負けやわ」
裏切られたというのに、兄弟相手に拳を交えて少女の命を守ろうとするとんでもないお人好し。
そんな相手を、これ以上裏切ることなんてできない。
したくないと……彼女は思ってしまった。
(;A;* )「……ニダやん」
お人好しに拾われたことで永らえた命だ。
その最期がお人好しのために終わるのであれば、その帳尻だってあっている。
(;A;* )「ごめんなぁ。助けてあげられなくて……」
ただ、その思いが、選択が、ニダやんの命を救うことにならないことだけが、胸に痛かった。
.
254
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:16:14 ID:c1EC81wI0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
はたしてドクオの言葉通り、兄弟はしばらく殴りあった後、その動きを止めた。
砂山の上に体を投げ出し、二人はぐったりと動かなくなる。
( ノ_ゝ`)「……あー、口の中切れてら」
(ノ<_` )「調子に乗るからだ、ド阿呆」
互いの顔は腫れ上がりボロボロ。
それでも、互いの口は減る様子がない。
しかし、互いの表情は先程までとは違い、随分と晴れやかになっていた。
殴りあったのことでお互いにスッキリとしたのだろう。向けられる言葉も随分と落ち着いていた。
彼らの母である母者=流石の教えの一つ、納得するまで殴り合え。
その言葉は彼らにとって思いの外、有効であるようだった。
(♯ノ_ゝ`)ノ「とにかく、もう魔法が使えないんだから、この子は解放!」
(ノ<_`#)「その件で報復でもされたらどうする!」
(♯ノ_ゝ`)「その時は、その時だ!」
.
255
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:18:30 ID:c1EC81wI0
そう言い切った兄者の声の鋭さに、弟者はため息をついた。
普段は適当なことしか言わないのに、こうと決めたことは断固として譲ろうとしない。
兄のそういった性格を、弟者は誰よりも知っていた。
( ´_ゝ`)「弟者ぁー」
兄者がポツリと声を上げる。
( ´_ゝ`)「やっぱり、殺しはよくない。
ほら、後味悪いし、きっと後悔しちゃうんだぜ☆彡」
(´<_` )「……」
二人とも、こんなところでいつまでも貴重な体力を消費するわけにはいかないということは理解していた。
まだ、道のりは半分きたかどうか。
だけど、彼らはまだこんな所で足踏みをしている。
(´<_` )「……俺が言うなら」
(;´_ゝ`)て「いや、お前は何も言ってないし!」
そして、長い沈黙の末に弟者は言った。
その言葉に兄者は笑いかけてから、あわててツッコミを入れる。
弟者の表情が不満そうに歪むが、兄者はそれを無視して言葉をつむぐ。
.
256
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:19:50 ID:enVc4rq.0
しえん!
257
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:20:31 ID:c1EC81wI0
( ´_ゝ`)「まあ、封じたもんはもうどうしようもないしな」
(´<_` )「いかんともしがたいが、封じてしまったものは仕方がない」
(*´_ゝ`)「ほう、わかってくれるか弟者!」
兄者はぱっと明るい表情になると、体を起こす。
両手を天に掲げパタパタと振り彼なりに喜びを表現すると、再び弟の姿を見やる。
(´<_` )「こうなった兄者には何を言っても無駄だからな。
……まったく、困った兄を持ったものだ」
( ´_ゝ`)b「だけど、流石だろ?」
(´<_` )「知るか」
ヽ(;´_ゝ`)ノ「いや、でも流石だっただろ。今のは!」
(´<_` )「……さてな」
そう言って、血をにじませ腫れ上がった顔をした兄弟は笑いあった。
.
258
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:22:44 ID:c1EC81wI0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
( ´_ゝ`)「ブーンも、ドクオも心配かけたな。めでたいことに話はどうにかまとまったぞ」
(;'A`)「なんというか、お前さんたちはよくもまあ、あんなに殴りあったもんだな」
( ´ω`)「ブーンはもうこんなのやだお」
腫れ上がった顔はそのままにして、兄弟はブーンの元へと舞い戻った。
彼ら二匹は、先ほどまで弟者が生命を狙っていた少女の回りを飛び回っている。
( ´_ゝ`)「それから、」
兄者は少女へと視線を動かす。
ナイフも魔法も失った少女は、盗賊の傍らに座り込んでいる。
そんな彼女に向けて、兄者は笑顔を作ると声をかけた。
( ´_ゝ`)「ごめんな。ひどい目にあわせてしまって」
(゚A゚* )「……、お兄はんは、ほんまにアホな人やわ」
.
259
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:25:16 ID:c1EC81wI0
どこか呆然としていた少女の瞳が、その顔が柔らかい表情を取り戻す。
ほっとしたような、すがるようなその少女の表情に、兄者の胸が少しだけ痛みを訴える。
(-A-* )「うちらの負けや」
少女はぽつりとつぶやく。
そして、その言葉とともに、少女は服の下から何かを落とした。
( ´_ゝ`)「ん?」('A`)
( ^ω^)「お?」
銃。金属で作られた刃。裁縫に使うには巨大すぎる針。
よくぞまあ集めたものだと言わんばかりの武器が、少女の服の下からは出てくる。
武器の数々に兄者の顔が一瞬固まり、その顔がさっと青くなる。
ナイフではなくてこちらの武器が使われていたら……それは考えたくもない想像だった。
(;´_ゝ`)「……弟者、やっぱお前が正しかったかもしれん」
(´<_` )「言い出したのは兄者だからな、ちゃんと責任はとれ」
(;'A`)「こぇー、こぇーわー」
(゚A゚* )「ウチもニダやんも投降する」
兄弟の言葉に少女は笑いを漏らすと、少女は負けを認めた。
.
260
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:26:18 ID:c1EC81wI0
・
・
・
<#ヽ`∀´>「のーちゃんに何するニダ!」
砂漠に男の声が響く。
盗賊の男――彼は相変わらず縛り付けられた体勢のままで、一同から見下されていた。
(;'A`)「こいつ、ずっと寝てたのか」
(*´_ゝ`)ノ「おはよう! なんかよくわかならいお茶の人!」
<#ヽ`∀´>「お茶はお前らのほうニダ!
なんたる侮辱、なんたる屈辱! 縛られてさえなければお前らなんて」
チャッ( ´_>`)つ==|ニニニ二フ<#ヽ`∀´>「ケチョンケチョンに……」
(;^ω^)「やめて!」
(;´_ゝ`)「弟者さん、止まって!」
兄者の声に、弟者は曲刀を鞘へと収める。
弟者が刀をしまうのをちゃんと確認してから、その様子を眺めていた少女は声を上げた。
.
261
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:28:05 ID:c1EC81wI0
(゚A゚* )「ニダやん。ウチらはもう負けたんよ」
少女の服は先ほどまでの戦闘で、いたるところが破れ、血がにじんでいる。
しかし、傷を負った腕には今は包帯が巻かれ、きちんと手当がされていた。
首の傷も同様で、兄者が持っていた薬によって治療がされていた。
<;ヽ`∀´>「のーちゃんなんで……。
巻き込まれないように、街にいろって」
(゚A゚* )「ニダやんは阿呆やなぁ。ウチが二ダやんを見捨てるわけないやろ。
ニダやんにはウチがついてなきゃあかんもん。
……まあ、今回ばかりは力及ばずやったけど」
少女の傷。それを見て取るった男の表情が、凍りついたように歪む。
少女はそれに困ったように笑うと、兄者を、そして弟者を見やった。
(´<_` )「相方は投降した。本来ならお前たちは殺されてしかるべきだが」
<;ヽ´∀`>「の、の、のーちゃん大丈夫アルか! じゃなかった、大丈夫ニダっ!」
(´<_` )「話を聞け。本来なら、二人とも殺すべきなのだが、
……とある筋からの要請で、それはしない」
(*´_ゝ`)「えっへん」
兄者の声に弟者は口元を曲げるが、すぐにその表情をとりつくろう。
そして、何事もなかったかのような表情を浮かべると、再び男へと向き直った。
.
262
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:30:22 ID:c1EC81wI0
('A`)「素直に兄者からの頼みって言えばいいのに、弟者のやつ……」
( ^ω^)「おっおー。でも、本当によかったお」
ブーンは明るい表情で言うと、兄者や少女の回りを勢い良く飛び回る。
それを眺めるドクオの表情もどことなく明るい。おそらく彼も機嫌が良いのであろう。
<;ヽ`∀´>「ふ、ふん。このウリが唯々諾々と従うと思ったニダ? そうはいかないニダ!
そんな事言って、動けないウリやのーちゃんを騙し討ちに」
(゚A゚# )「ニダやん。怒ってもええ?」
<;ヽ´Д`>「のーちゃん!」
少女の剣幕に男の表情がみるみる歪む。
そんな男の表情を見ながら、弟者は再び声をあげる。
(´<_` )「武器は回収させてもらう。最低限の水だけは持たせてやるからあとは何処にでも行くといい」
(*´_ゝ`)ノ「なー、こいつの武器ってこれだろー!!」
<;ヽ`∀´>て「う、ウリの愛刀ちゃんがぁぁぁぁ!! 天はウリにかくも艱難辛苦を味わえと」
兄者が男の近くに転がっていた刀を拾い上げると、男が大袈裟にも悲鳴を上げる。
弟者は兄者から刀を受け取ると、まじまじとその刀身を眺めた。
.
263
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:32:16 ID:c1EC81wI0
(´<_` )「――東方の武器だな」
( ´_ゝ`)「へー」
男の獲物は青龍刀。
美術品としても通じそうな弟者のシャムシールとは異なり、男のそれは無骨な切るためだけの刀だ。
装飾は柄の先にとりつけられた布のみ。柄には布が巻きつけてあるだけ。
柄にも刀身にも、鞘でさえも余計なものは一切ない。
それは純粋に戦いのためだけに作られた、武器であった。
<;ヽ`Д´>「ああ、ウリの愛刀ちゃん……」
(゚A゚* )「ニダやん、みっともない。それが条件やさかい、しゃあないやろ」
<;ヽ`∀´>て「のーちゃん冷たい!」
弟者は青龍刀を軽く振るう。
幅広のその刀は弟者の動きに、風を切り唸りをあげる。
(´<_` )「ふむ。少し軽いが……悪くはないな」
(*´_ゝ`)ノシ「弟者ーっ、そのままじゃ危ないから鞘も貰っちゃおうぜ!」
(´<_` )「ああ、俺がやるから兄者は下がってろ。マタ ヒトジチ ニ サレルゾ」
(;´_ゝ`) …ゴメン
.
264
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:34:48 ID:c1EC81wI0
まばたきほどの間に男から鞘は奪い取られ、弟者は奪い取った獲物をその身につける。
それに不満気な声を上げたのは、刀の元の持ち主と兄者の二人である。
<ヽ;∀;>「ウリの愛刀ちゃん……」
ヾ(#´_ゝ`)ノシ「弟者ばっかずるいぞー! 俺もそういうかっこいい武器ほしい!」
(´<_` )「兄者にはナイフをやっただろうが。あとその他もろもろ」
(;´_ゝ`)「……あのナイフにはちょっと苦い思い出しかないので。
っていうか、銃とかその他もろもろとか使い方すらわからないですしおすし」
弟者の腰には青龍刀とシャムシール。
そして、兄者の腰には小さなナイフが一つ。その他のよくわからない武器たちは袋に詰めて荒巻の上に。
男と少女の武器をあらかた取り上げたのを確認したところで、弟者は少女に向けて問いかける。
(´<_` )「他に武装は?」
(゚A゚* )「帯のところ。ほとんど使わへんけど、かっこええからて腰帯剣仕込んでる」
<;ヽ゚∀゚>「のーちゃぁぁぁぁん!!!」
(;'A`)「容赦ねぇなあの嬢ちゃん」
相方に裏切られたショックで男が声を上げるが、弟者はそれに構わず器用にも武装を剥ぎ取る。
.
265
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:37:51 ID:c1EC81wI0
( ^ω^)「これも武器かお?」
_,
(;´_ゝ`)「東方怖ぇー」
,_
(´<_`; )「流石にこれは……」
(;'A`)「武器にかけるなんとも無駄な労力……人間ってすごいんだな」
帯を模した鞘に仕込まれた剣。その姿は流石に衝撃的だったらしく、四人はそれぞれ声を上げる。
彼らはしばしその武器を眺めた後に、荒巻の背にした袋に放りこんだ。
(´<_` )「これで全部か」
<ヽ`∀´>「それはどうかな。ウリには実は隠された必殺技とか伝説の武器とかがあって……」
(゚A゚* )「せやな、これで全部や」
<;ヽ`Д´>「だから、のーちゃぁぁぁぁん!!!」
弟者は少女の言葉に頷き返すと、兄者にラクダに乗るように促す。
兄者は少女の姿を心配そうに眺めていたが、「荒巻―ぃ」と声を上げるとラクダにまたがった。
空をとぶのが苦手なドクオが、急げとばかりに兄者に続く。
.
266
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:38:36 ID:c1EC81wI0
( ´_ゝ`)「おーい、弟者ぁー」
(´<_` )「わかった」
兄者がラクダを乗るのを確認してから、弟者は盗賊たちへと再び向き直る。
何やら揉めはじめた男と少女の会話を中断しようと、弟者は口を開き――、その言葉を失った。
<#ヽ`∀´>「覚えていやがれニダー!!!
この屈辱、たとえウリが忘れようとも十億一兆の群集たちが」
(゚A゚; )「ニダやん。盗賊稼業なんてアコギな商売、もうやめたほうがええよ」
∩<#`∀´>⊃「やるニダ!! ウリはこの無限砂漠で伝説とうたわれる極悪非道の大悪人になるニダー!!!」
(゚A゚# )「うっさい! このボケ!!」
(;^ω^)「あばばばばば」
縛り付けられたままの男に、少女の回し蹴りがあびせられている。
一度や二度ではなく、三度や四度。
その光景を間近に見ていたブーンは、何か感じるものがあったのか「あばばば」と奇声を上げている。
(゚A゚* )「あ」
(´<_`; )「……」
(゚A゚* )「なんやもう、いろいろとご迷惑をかけまして。
ニダやんのこと助けてくれはって、感謝の言葉しかあらしまへん」
.
267
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:41:37 ID:c1EC81wI0
自分を殺しかけた相手を前にして、少女には動じる様子がない。
それどころか、口元に淡く笑みを浮かべると弟者の顔をじっと見つめた。
(´<_` )「……」
(;^ω^)「オトジャ……もう怖いことはもうやめるお……」
(゚A゚* )「ニダやんはどうか知らんけど、ウチは本気で弟さんのこと潰す気やった。
さかい、ウチが殺されるのは当然。せやけど、ニダやんだけは……」
助けたかったから。
少女は言外にそう言うと、弟者に向かって微笑む。
<#ヽ`∀´>「のーちゃん、そいつからとっとと離れるニダ!」
(^A^* )「きっと、アニさんとウチは似とるんよ。
アニさんの弟さんが、ニダやんみたいなお人好しやったみたいにね」
(´<_` )「……お前の言う弟が誰のことだか、本気でわからないな」
<#ヽ`Д´>「のーちゃん!」
男の声に、少女は「やかまし!」と怒鳴り返す。
二人の姿に背を向けながら、弟者は声を上げた。
.
268
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:42:38 ID:c1EC81wI0
(´<_` )「俺達の姿が見えなくなったら、そいつの縄をほどいてやれ。あとは知らん」
弟者の声に、少女はどんな表情を浮かべたのか。
それを弟者は知らない。しかし、きっと悪いものではなかったのだろう。
( ω )「よかったおね!」
( A * )「……おおきに」
弟者はそのまま自分のラクダ――中嶋の元へと向かう。
武器も取り上げたし、水も分けた。これ以上ここにいてもやることはない。
( ´_ゝ`)b「流石だな、弟者」
(´<_` )「いいから、行くぞ」
('A`)「だってよ、兄者」
(;´_ゝ`)「なんと! せっかく流石だなと言ったのに、ノリが悪いな弟者」
⊂二( ;^ω^)二⊃「アニジャもオトジャもドクオも置いてかないでおー!!」
最後に聞こえたブーンの声を背にしながら、弟者はラクダの背へとまたがった。
.
269
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:44:38 ID:c1EC81wI0
男と少女の二人組を背にして、ラクダは進みだす。
荒巻と中嶋の足が砂を踏む、その瞬間に兄者は大きく振り返った。
( ´_ゝ`)ノ「聞き忘れてたー! お嬢ちゃんはなんて名前なんだー?」
目いっぱいに張り上げた兄者の声に、少女はにっこりと笑う。
それは、花がさくような笑みだった。
(゚A゚* )「ウチはのー! それからこっちが、ニダやん!」
その声を聞いて、兄者の顔に笑顔が浮かぶ。
背後を振り返った不安定な体勢のままに、兄者はその手をブンブンと大きく振る。
(*´_ゝ`)ノ「のー者もニダやん者も元気でな!」
⊂二( ^ω^)二⊃「元気でーだおー!」
(´<_`; ).。oO(よりにもよって、元気でな、はないだろう)
(;'A`)「いくらなんでもそこで、元気でな、はないだろう……」
?('A`) (´<_`#)
.
270
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:46:13 ID:c1EC81wI0
そして、“流石”の街の一行は旅立っていく。
向かう先は、砂丘の山の向こう。その姿をのぞかせるソーサク遺跡。
<#ヽ`∀´>「ウリはニダやん者じゃなくて、ニダーニダ!!!
艱難辛苦、臥薪嘗胆耐えに耐えいつか、いつかぁぁぁぁぁ!!!」
( *゚A゚)ノシ「ほんまにおおきに! それと、かんにんなぁぁぁ!!!
どこまでも続いていく砂丘。
走り去っていった一行に向けて、響く二人組の声。
(゚A゚* )「じゃあ、もうちょっとしたらウチらも行こか」
<;ヽ`∀´>「のーちゃん、その前にこの縄ほどいてほしいニダ」
盗賊と少女。
ちぐはぐだけれども、きっちりと噛み合った二人組。
(^A^* )「ニダやんが、ちゃんと反省したらな」
<;ヽ`Д´>て アイゴー
彼ら二人がこれからどうなっていくのか、――それはまた別の話である。
.
271
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:47:13 ID:c1EC81wI0
そのよん。 人生とは戦いの連続である
おしまい
.
272
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:49:00 ID:c1EC81wI0
投下ここまで
思いの外時間がかかったので、オマケは明日あたりに投下します
そのご。は何事もなければ4月中に投下の予定です
273
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 00:49:20 ID:JFBHVXk.0
乙!
274
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 06:15:25 ID:HNK9gmxs0
おつおつん
275
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 23:35:49 ID:c1EC81wI0
オマケ6レス投下ー
276
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 23:37:22 ID:c1EC81wI0
∧三)ヘ
<∬´_ゝ`)>
∬ =><= Vつ
(/〈;゚・*・゚;)_/
./_/.〉ニニ〈 〃'´⌒`ヽ
〈,_,)/`‐--‐!! 〈((リノ)))i iヽ
! !.| l从・∀・ノ!∩ヽ
| !.| と)二二(/ヽ)
| !.| 〈_l_) ((
ノハヘハヘハ.ゝ U U
おまけ劇場 l从・∀・ノ!リ人 でざーと×しすたーのようです
.
277
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 23:39:30 ID:c1EC81wI0
∬´_ゝ`)「お姉様のお帰りよ―!! 愚弟ども早く出迎えなさーい」
∬#´_ゝ`)∩「兄者ぁぁー! 弟者ぁぁぁー!! 水持って来なさい、水!」
シーン
_,
∬´_ゝ`)「返事がないわね。まったく、弟どもはこれだから……」
∬´_ゝ`)∩「兄者ー、弟者ー。出て来なさい。
今なら、東方式謝罪儀式で許してあげるわよー。殴らないから」
……シーン
∬#゚_ゝ゚)カッ「ぶっ潰すぞゴルァ!!!」
.
278
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 23:41:28 ID:c1EC81wI0
シーン
∬´_ゝ`)「これでも返事はなし……ということは、本当にいないわね。
あー、せっかくご飯でも作ってもらおうと思ったのに。クソ弟者め」
∬´_ゝ-) んー
∬∩´_ゝ`)∩「妹者ー。妹者はいるー?
兄者達とどっかに行ったなら、そう返事をしなさい。
いるなら、お姉ちゃんのところにおいでー」
・・・
∬;´_ゝ`)「こんなに暑いのに、まさか出かけた?
我が家の弟妹はそろいもそろって……いやいや、あの兄者が外出とか」
∬´_ゝ`)「あ、女絡みか。それならあるわ。
どうせフラれるのにこりないわねぇ……」
.
279
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 23:44:21 ID:c1EC81wI0
∬;´_ゝ`)「……お腹すいた」
∬´_ゝ`)oグッ 「仕方ない……自分で何とかするか。
あー、母者も使用人やとってくれればいいのに。ケイビダケトカ」
ガサゴソ ゴッ
∬;´_ゝ`)「あ、」
三(´く_` ∬ キョロキョロ
∬´_ゝ`)「……まあ、食えりゃいいいのよ。食えりゃ」
ゴォッ
バキョッ きゃぁぁぁぁぁ
ガガガ
l从-〜-;ノ!リ人「うー」
.
280
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 23:46:56 ID:c1EC81wI0
パチリ l从・∀・ノ!リ人
ガタッ
ゴトゴト
l从・д・;ノ!リ人「なんの音なのじゃー?」
Σl从・Δ・;ノ!リ人「まさかドロボウさんなのじゃー?!」
.
281
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 23:49:03 ID:c1EC81wI0
・
・
・
ソロー ┃ol从・∀・;ノ!リ人「ドロボウさん。ドロボウさん。いるならでてこないでください。
いないならいないでいてください」
┃oll从-∀-;ノ!リ人 ギュッ
ガチャッ
∬;´_ゝ`) 「「あ」」 l从・∀・;ノ!リ人
.
282
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 23:51:17 ID:c1EC81wI0
l从・〜・ノ!リ人モグモグ
∬´。ゝ`) ムシャムシャ
l从・〜・*ノ!リ人「ちょっとコゲてるのじゃー」
∬#´_ゝ`)「これは私じゃなくて、火が悪いの。
もしくは、この最高のお姉さまを放置して、どっかいっちゃうごはん係が悪いのよ」
l从・∀・ノ!リ人「ごはん係?」
∬´_ゝ`)「ううん、なんでもない。ごめんねー、不味くて」
l从・∀・*ノ!リ人「妹者はこの味好きなのじゃー
とってもとっても、おいしいのじゃー!!!」
∬*´_ゝ`)「よしっ! 流石よね私。まさに天才って感じ」
l从>∀<*ノ!リ人「姉者は流石なのじゃー」
∬*´_ゝ`)b「流石よね、私たち」 ノジャーdl从>∀・*ノ!リ人
特にオチはない でざーと×しすたー おしまい
.
283
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 23:53:56 ID:c1EC81wI0
投下ここまで! 6レスじゃなくて7レスだった……
支援と乙くれた方々本当にありがとうございました
284
:
名も無きAAのようです
:2013/03/19(火) 00:12:57 ID:1.fCHpkM0
おつ 和む
285
:
名も無きAAのようです
:2013/03/19(火) 10:51:09 ID:Bn/8MFDMO
ニダー可愛かった
オマケも可愛い
乙です
286
:
名も無きAAのようです
:2013/03/21(木) 07:23:34 ID:OUvlTcPQ0
おつおつ
287
:
名も無きAAのようです
:2013/04/14(日) 22:14:52 ID:x5/2sQRQ0
4月の20日か21日に投下するよ
本編65レス前後。オマケ7レス前後の予定
288
:
名も無きAAのようです
:2013/04/16(火) 09:34:06 ID:bRS65HRI0
フォーウッ!
全裸マントで待ってる
289
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 19:45:35 ID:M.Sc.APo0
企画とかとかぶっちゃったけど、投下いくよ!
290
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 19:46:32 ID:M.Sc.APo0
(;´_ゝ`)「……」(´<_`;)
ひび割れた大地を超え。広がるのは一面の砂。
吹き抜ける風に、砂が舞い上げられる。
舞い上げられた砂は辺りを舞い、地表の形を少しずつ変えていく。
( ;_ゝ;)「……茶が……めっちゃしみるんだが」
((´<_` ;)「……耐えろ」
口にした香草の清涼感が、殴り合いでできた傷に痛みをもたらす。
それは兄者も弟者も同様のようで、両者の眉根にはしっかりと皺がよっている。
口に広がる痛みに涙しながら、兄者は茶をごくりと飲み込んだ。
(´<_` )「……やっぱり減らすか、香草」
(;´_ゝ`)「いや、でも入ってないと物足りなくないか?」
(;'A`)「二人揃って何やってるんだか」
(*^ω^)「とっても楽しそうだお!」
広がる砂丘の只中にいるよく似た二人の男と、白と紫の二匹の精霊。
――彼らは今、のんびりと休憩中だった。
.
291
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 19:47:46 ID:M.Sc.APo0
( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
.
292
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 19:48:36 ID:M.Sc.APo0
そのご。 ようこそ、ソーサク遺跡へ
.
293
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 19:50:02 ID:M.Sc.APo0
(;´_ゝ`)「いやー、さすがに暑くていろいろと無理ー」
(´<_` )「もう正午だかららな。しばらくは暑いぞ、兄者」
ニダーとのーの盗賊二人組から別れて幾ばくか。
一同はラクダに乗ってひた進み、兄者の体力が限界を迎えはじめた頃、休憩を取ることになった。
( ^ω^)「おっおー、ブーンは平気だおー」
('A`)「影なめんな」
ヾ(;´_ゝ`)ノ「この裏切りものどもめ!!」
騒ぐ兄者他二匹から目をそらして、弟者は周囲を見回す。
風は相変わらず吹いている。しかし、この程度ならば視界が利かなくなるなくなることはないだろう。
兄者の天候予測でも風、気温ともに良好と出ているし、この先天候だけは心配しなくてもいいらしい。
(´<_` )「しばらく休むとするか」
熱砂の中を吹く風は、体から水分と体力を奪い去ろうかとするように容赦なく体を焼いていく。
しかし、この程度の暑さならばこの季節においては当たり前のことだ。
弟者は手にした茶を一口飲み、やはり傷に染みたのかその表情を再びしかめた。
.
294
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 19:52:26 ID:M.Sc.APo0
( ^ω^)「オトジャー、何してるんだお?」
(´<_` )「……」
弟者はブーンの見ている横で、荷袋から鍋を取り出す。
そしてその中に、同じく袋に用意されていた食材を適当に切って放り込む。
その間、弟者はブーンに視線を向けず、言葉も発しようとはしなかった。
( ´ω`)「また無視されたおー」
('A`)「お前もメゲないよな」
ヨシヨシ( ´_ゝ`)ノ(´ω` )オー
(´<_`#)
オトジャ タン コワイ( ;´_ゝ`)ノ(^ω^ ;)ヤメテー
('A`)「……お前ら、本当に楽しそうだよな」
.
295
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 19:54:18 ID:M.Sc.APo0
( ´_ゝ`)「ところで、弟者さんは何してるんですか?」
(´<_` )「腹減ったから飯」
弟者はそう答えながらも、動かす手を止めない。
茶の入っているポットをどかして、食材を適度に炒めはじめる。
鍋が熱せられれるのにしたがって、じゅぅぅと音が上がり周囲には香ばしい匂いが立ち上る。
(;´_ゝ`)「えー、市場でいろいろと食っただろ」
(´<_` )「さんざん動き回ったから、腹が減った件について。
やはり砂丘は疾走するものではないな……あれは疲れた」
(*^ω^)「おー、またご飯だおー。おいしいんだおー」
(;'A`)「また、食うとな」
そう答えながらも弟者の目は、鍋と食材を真剣に見つめ続けている。
野菜に火が通ったことを確認してから、水とともに香草を鍋の中へと入れた。
( ´_ゝ`)「まあ、わからんでもないがな。俺も腹減ったし」
.
296
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 19:56:33 ID:M.Sc.APo0
(´<_` )「兄者よ。暇ならさっき奪った武器でも処分しておけ。
使えない武器があっても危険なだけだ」
(;'A`)「これじゃどっちが盗賊かわかったもんじゃねーな」
(´<_`#)「……」
ドクオの声に、弟者の視線が鍋からドクオへと移る。
その視線の鋭さに、ドクオは手を上下に動かすと顔を蒼く染める。
(;゚A゚)「ごめんなさい、弟様!
むしらないで、投げないで、刀突きつけないでぇぇぇ!!!」
( ^ω^)「ドクオ。まだ、オトジャは何もしてないお」
( ´_ゝ`)「えーと、武器武器っと」
しかし、一日のうちに同じような出来事が何度か繰り返されると人とは慣れるものである。
この程度なら大丈夫だろうと言わんばかりに兄者は荷物を探り、ブーンは慌てた様子もなくのんびりと声を上げる。
('A`)「うん。お前ら冷たい」
そんな二人の様子に、ドクオは少しだけ泣きたくなった。
理由はわからない。しかし、彼にとって泣きたくなるなんてことは随分と久しぶりで、それが少しだけ嬉しかった。
.
297
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 19:59:02 ID:4XQ0N49sO
来てるー!支援!
298
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 19:59:48 ID:M.Sc.APo0
( ´_ゝ`)つ┏━「おとじゃぁぁぁ、お前、銃使えるぅぅぅ?」
(´<_`;)「使えないこともないが、手入れはできんぞ。
それに粗悪な銃の場合、下手に触ると暴発するぞ」
(;´_ゝ`) ヒィィ ('A`;)
( ^ω^)?
のーとニダーから取り上げた武器の入った袋。その中にある武器たちを掲げて兄者は声を上げる。
弟者は鍋の上に蒸し器を置きながら、その問いに答えていく。
( ´_ゝ`)ノ◯「じゃあ、この何だかわからない輪っかは?」
(´<_` )「使えるわけ無いだろこの阿呆。指切るぞ、指」
(*´_ゝ`)「えーと、じゃあなぁ」
( ^ω^)ノ┃ ♭ヽ('A`)
袋の中の大半は、のーが隠し持っていた使用方法すらもわからない武器の数々だ。
兄者はそれらを一つ一つ取り出しながら、「これはどうする?」といちいち弟者に確認していく。
.
299
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 20:00:42 ID:M.Sc.APo0
(´<_` )「袋に詰めてたやつはまとめてそのへんに埋めとけ。
仕込み武器や暗器なんぞがあっても、使いこなせない件」
( ´_ゝ`)「やっぱ、弟者でも無理か」
弟者は蒸し器に小麦粉の練り物を入れながら、火の具合を見る。
どこからか集めてきた枯れ草を火の中に足し、随分と調理に熱中している。
( ´_ゝ`)「あ、そうだ。俺の持ってるナイフと弟者の持ってるセイリュートーは?」
(*^ω^)「セイリュートーってなんかかっこいい響きだお!」
(;'A`)「危うくオレに刺さるとこだった、あのナイフ……」
が、兄者の声が聞こえると同時に弟者は腰に下げた青竜刀をスラリと抜いた。
あいも変わらず弟者の表情は変化に乏しいが、その瞳はいきいきと輝いている。
+(´<_` )「これはいい刀だ、俺がもらう。
機能と威力しか追求していないにもかかわらず、洗練された見た目。
そして何より、あの男の馬鹿力にも耐えうるその丈夫さ。きっと名のある職人が鍛えたに違いない。
それにしてもあの盗賊、刀の手入れだけは欠かさなかったらしいな。随分と、美しい刀身をしている」
(;´_ゝ`)「い、いきいきとしてますね弟者くん……」
(´<_` )「そうか? ナイフは兄者の好きにしていいぞ」
.
300
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 20:02:35 ID:M.Sc.APo0
( ´_ゝ`) ざっくざくー
( ^ω^) ざっくざくー
('A`) ざっくざくー
ヾ('A`)ノ 武器入り袋ダバァー
( ´_ゝ`) ダバァー
(*^ω^) ダバァーだおー
( ^ω^) 砂ドシャー
(*´_ゝ`) ドシャー
('A`)ゝ どしゃー
( ´_ゝ`)b「よし終了! さーて、弟者ぁぁぁぁ」
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301
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名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 20:04:21 ID:M.Sc.APo0
(´<_`*)「……」
( ^ω^)「おー、すごいおー」
弟者が先程まで見ていた鍋は煮込みの段階に入ったのか、火にかけられたままになっている。
かわりに弟者が手にしているのは大きめの皿。
その中には白い粉と水が注がれ、弟者はそこにおもむろに手を突っ込んだところだった。
(;´_ゝ`)て「弟者さん、おもむろにパンをこねようとするのやめて!」
(´<_` )「ああ、兄者か。結局、ナイフはどうしたんだ?」
兄者の声に答えながらも、弟者の動きは止まらない。
小麦粉を混ぜ、その形がまとまり出したところで、力を入れてこね続ける。
(;´_ゝ`)「せっかくだし貰うことにしたけど……って、もう本格的に生地作り出してるし」
(´<_` )「腹が減ったんだから仕方がないだろう」
( ´_ゝ`)「いや、今日中に帰る予定だよな? ジカン カカルゾ」
d(´<_` )「先のことより、目先の飯のほうが大切ですが何か」
(;'A`)「コイツ言い切りやがった」
(;'A`)ゴメン (´<_`#)
.
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