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クリフトとアリーナへの想いは Vol.1

1管理人★:2015/04/05(日) 00:08:03 ID:???
クリアリの話題を扱うための待避所です。
ほのぼのから悲恋物まで、あらゆるクリアリの行く末を語り合っていきましょう!
職人さんによるSS投稿、常時募集!

【投稿内容に関するお願い】
・原作や投下された作品など他人の作品を悪く言うのは控えてください。小説版も含めて。
・趣向の合わない作品やレスはスルーしましょう。
・個人のサイトやサークルなどを特定する投稿(画像などへのリンク含む)はご遠慮下さい。
・読む人を選ぶ作品(死ネタ、悲恋、鬱ネタ等)を投下する時には、先に注意書きをお願いします。
・性描写を含むもの、あるいはグロネタ801ネタ百合ネタ等は、相応の場所でお願いします。


    ,. --、
    | |田|| 姫様、お気をつけて
     |__,|_||     __△__ 
     L..、_,i    ヽ___/
 . 。ぐ/|.゚.ー゚ノゝ   / ,ノノハ)) クリフトがいるから
   `K~キチス  (9ノ ノ(,゚.ヮ゚ノi. 大丈夫よ!
    ∪i÷-|j @〃とヾ二)つ
    Li_,_/」   ん'vく/___iゝ
     し'`J      じ'i_ノ

クリフトとアリーナへの想いは@wiki(携帯可)
ttp://www13.atwiki.jp/kuriari/
 ※wikiに掲載されたくない場合は、作品を投下する際にお申し出ください。

619従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 13/26:2017/11/07(火) 17:29:40 ID:o46AGxQI
「……まあ腕とか足とか出てるけど、でも肌をさらしてるわけじゃないからね」
「…………」

胸もはんぶん出てるし説得力ないかな。でもほんとうに肌をさらすつもりはないの。
私はクリフトの目を見て言った。

「だいじょうぶだからね」
「………………」

「……はい」

クリフトがふっと笑った気がした。

――ありがとうございます――

クリフトはハンカチをほどいて私に頭を下げたの。やっぱり笑ってた。
よかった。もう大丈夫そうね、クリフト。

「姫さま」
「ん?」
「私はもうだいじょうぶですから、どうぞ湯浴みをなさってください」

クリフトはそう言うとお風呂のほうを見た。

「えー、まだいいわ」

私もマーニャとミネアがお風呂に入ってるのを眺めながら返した。

「ソロさんとゆっくりされてはいかがですか?」

え?

「なんで?」
「…………」

突然ソロの名前を出されて思わず聞いちゃった。
クリフトも聞き返されたのが意外だったのかな、驚いたような顔で私を見る。

「いえ、先ほどもソロさんと楽しげに話をされていましたし……」

…………。

「別にソロと話すのが楽しかったわけじゃないわ、いちばん風呂が楽しそうだったの」
「そう、なのですか」
「そう。今は別にソロと話す用事はないし」

620従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 14/26:2017/11/07(火) 17:34:08 ID:o46AGxQI
あれ、今なんの話をしてるの?

「特別話したいわけでもないし……」
「…………」
「だからもう少しここにいるの!」

あれ、なんだろう、なんで私ムキになってるんだろう。

「そうですか」
「そう!」
「わかりました。ではもう少し、ここにいてください」

え?

「…………」
「…………」

今なんて言ったの?
クリフトはお風呂のほうを見てる。さっき笑ったときみたいに穏やかな顔で。
えっと……今、クリフト、ここにいてって……言ったのよね。私に……
え…?

「あ、あのね!」
「?」
「私ちょっとお話ししたい人がいるの。ソロじゃなくてっ」

あれ、なんで私話をそらしちゃってるんだろう。

「ほら、あそこ、おじいさん!」

私はたき火の近くでまきを足しているおじいさんを見た。クリフトも目で追う。

「ひとりだとちょっと話しにくいの。いっしょに来てくれる?」

クリフトはまた驚いたような顔して私を見たけどすぐにさっきの穏やかな顔に戻った。

「はい、姫さま」


「お、大丈夫か?」

おじいさんのところに行こうとお風呂の近くを通ったらソロが声をかけてきた。

「はい、ご心配をおかけしました」

621従者:2017/11/07(火) 17:37:35 ID:o46AGxQI
すみませんちょっといったん席を外します。
また再開します。

622従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 15/26:2017/11/07(火) 18:14:16 ID:o46AGxQI
クリフトは苦笑いしながら頭を下げる。ソロもつられて苦笑い。ん?なんで苦笑い?
ふとソロがクリフトのずっと向こうを見た。苦笑いはなくなってた。

「ピサロ」
「え?」

ソロの視線の先には木かげに腰を下ろしてるピサロとロザリーがいた。

「あいつも呼んでくる」
「え…?」

ソロはおけにお湯をくんでピサロのほうに歩いてった。
ソロ……。

「おいピサロ!」

バシャッ!
ソロがピサロに勢いよくお湯をかける。服や髪がびしょびしょになるピサロ。
驚いてソロとピサロを交互に見るロザリー。

「…………」
「ソロさん……」
「服洗たくするからよ、ぜんぶ脱げよ。血もついてるからな」
「…………」

ピサロは無言でソロを見上げる。濡れた顔を手でぬぐうこともしないで。
ピサロって、敵の攻撃はひょいひょいかわすくせにソロが殴ったときや今はよけないのね。
なんでだろう、なんだかよくわからない。
ソロとピサロがこっちに歩いてきた。ロザリーも後から静かについてくる。
歩きながらピサロはそばに置いてあったおけを手にした。すかさずお湯をくむ。
バシャッ!!

「わっ!」

ピサロがすごい勢いでソロにお湯をかけたの。

「やったな…!」
「……」

ソロとピサロのお湯かけ合戦が始まった。

「ねえ、なにあれ……」
「さあ、なんでしょう……」

623従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 16/26:2017/11/07(火) 18:18:04 ID:o46AGxQI
なんでふたりとも必死なの。

「おいてめえら、遊んでねえでさっさと入りやがれ!」
「わ、わかったよじいちゃん」
「てめえもだ!そっちは女風呂だ、そこの耳のなげえじょうちゃんのためにとっときやがれ」
「む……そうか……」
「え…?わ、私も入っていいのですか?」
「あったりめえだ、みんなで入るように作ったんだからよ」
「まあ……ありがとうございます!」

「入ろうぜ」
「…………」

「ピサロさま……」
「………………」

ソロとピサロが向かい合わせでお風呂に入ってる。なんか、なんかヘンな感じ。
ピサロは髪が乱れないように上で束ねてるからますますヘンなカンジ。

「…………」
「…………」

「……なんだ」
「…………」

「なんでもねえよ」
「…………」


「おじいさんは、ソロの、本当のおじいさんなんですよね……」
「…………」

ソロとピサロのお湯かけ合戦も落ちついてお風呂へのお湯足しも終わってまき足しに戻ったおじいさん、
私は思いきって聞いてみた。

――むかしむかし、北の山奥に天女が舞いおりたそうです――
――そして木こりの若者と恋に落ちふたりの間にはそれはそれはかわいい赤ちゃんがうまれたとか――

――その昔、北の森の中に木こりの親子が住んでおった――
――木こりの息子は森の中で美しい娘と出会って結婚までしたのじゃが……――
――ある日雷にうたれて死んでしまったのじゃ――
――息子は死んでしもうたが親父のほうは今でもひとりで木こりをしておるそうじゃ……――

624従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 17/26:2017/11/07(火) 18:22:05 ID:o46AGxQI
――その昔、地上に落ちて木こりの若者と恋をした娘がおりました――
――しかし天空人と人間は夫婦になれぬのがさだめ――
――木こりの若者は雷にうたれ娘は悲しみにうちひしがれたままこの城に連れ戻されたのでした――
――しかし娘はどんなときでも地上に残してきた子どものことを忘れたことはありません――
――もし今のソロを見ればきっと涙にくれるでしょう――

――ひとつはっきりしたことは、ソロさんのお父上は死んでこの世にはいない、ということですね――

ブランカの言い伝え、天空城での言葉、クリフトの言葉……いろんなことを照らし合わせると見えてくる真実。
このおじいさんは、ひとりで木こりをしているお父さんのほう、つまり、ソロのおじいさま…!

「どうだかな」
「…………」

「北の森の中に木こりの親子が住んでたって。
息子さんは雷にうたれて死んでしまったけど、お父さんのほうは今もひとりで木こりをしてるって。
それ、おじいさん、あなたのことなんですよね…?」
「…………」

「さあな」
「…………」

だめだ、取り合ってもらえない。こっちを見てもくれない。このままじゃはぐらかされちゃう。
でも、でも、きっと合ってるはず。このおじいさんがソロの本当のおじいさまのはずなの。

「ソロには名乗ったのですか?教えてあげたのですか…?」
「………………」

「あいつが今求めてるのは身内でもねえしなあ」
「そんなのわからないじゃないっ」

おじいさんはちょっとびっくりして私を見た。私もまっすぐおじいさんを見た。

「ああ……」

おじいさんはずっと私を見てる。私も目をそらさないでずっとおじいさんを見てた。

「お前か……」
「え?」

おじいさんは手を止めた。私からいったん目をそらして遠くを見る。

「あいつも、お前みたいにまっすぐしゃべるやつだったな」
「え…?」

625従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 18/26:2017/11/07(火) 18:25:39 ID:o46AGxQI
おじいさんは改めて私をゆっくり見た。さっきとちがうとっても優しい目をしてた。
丸太を無造作に置いて私たちに座るよう勧めてくれる。私たちが座ったあとおじいさんも向かいに座った。
何かを言いかけようとしてやめて、また言おうとするけどやめて。
まるで口にするのが惜しいと言わんばかりにためらいながら、けどゆっくり話し始めたの。

――手放したくなくなっちまうからよ――

…………。

「ソロを……あいつを初めて見たとき、いっしゅん息子が帰ってきたのかと思った。
本当にそっくりだったんだ……。
しけた面も、ちょっときついこと言うと大声で泣きだすしぐさも、すぐ逃げだそうとするくせも……
なにもかも……。
ああ、こいつはオレの孫で、村でなんかあったなって、すぐわかった。
煙が上がってたようだったからな、空も紅かったし、まあそういうことだったんだろう」
「…………」
「なんで助けに行かなかったんだって、思うか?」
「ん……」
「…………」

「オレはオレでまあいろいろあったんだ。もうあの村には戻らないつもりでここに家を建てた」

まさか、村がなくなるとは思わなかったがな……おじいさんは小さくつぶやいた。

「もしソロに名乗っちまったら、お前はたったひとりの身内なんだって伝えちまったら……」

おじいさんはそこで一息つく。また惜しそうに遠くを見ながら、けど言葉を続けた。

――また手放したくなくなると思う……――

…………。

「手放したくなくて、意地でも手もとに置こうとして、反抗させて、村に逃げられることになって……」

――そうして息子は失った――

「…………」
「オレなりにちったあ反省して息子と嫁と孫を受け入れる準備はしてたんだ。あの風呂もそのひとつでな」

言いながらおじいさんはお風呂のほうを見た。
お風呂の中で結局取っ組み合いになってるソロとピサロに苦笑いする。

「だから……」
「………………」

626従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 19/26:2017/11/07(火) 18:29:22 ID:o46AGxQI
「ごめんなさい…っ」
「…………」

わたし……いつの間にか目に涙がたまってた。息が詰まる。胸が苦しい……。
クリフトはなんにもしゃべらない。おじいさんもしばらく黙ってた。

「嫁も、お前みたいな気の強い女だった」
「…………」
「オレをまっすぐ見やがって、嫁と認めてもらおうと必死だったな」
「…………」
「息子を生き返らせてもらおうと必死だったって、後から聞いた……」
「…………」

――天女っつったって、オレたちとなんら変わらない……――

人間だったんだ、おじいさんは聞こえないくらい小さな声でつぶやいた。

「あんただろ?やたらソロに話しかけてくれてたのは」
「え?」

――じいちゃん、こないだ仲間になった女の子がやけに俺に話しかけてくるんだ――
――ほとんどがどうでもいい話だけど――
――へえ――
――さっきもどこ行くのって聞かれた。別にどこだっていいだろうのに、なんなんだろうな――
――そりゃてめえ、てめえのこと心配してるからじゃねえか?――
――心配?――
――おう――
――…………。……俺のこと心配するやつなんかいねえよ――

――俺は、地獄の帝王を倒して世界を平和にする勇者さまだから……――

――そいつがそうだったらどうすんだよ――
――どうって……――
――興味がなきゃ話しかけねえさ。少なくともそいつがてめえのこと気にしてんのは確かだ――
――…………――

――……じいちゃん……――
――あ?――
――俺……――
――…………――
――…………――
――……まあ茶でも飲むか――
――………――

627従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 20/26:2017/11/07(火) 18:34:05 ID:o46AGxQI
――泣かせちまった……――
――…………――
――アリーナ泣かせちまった……――
――……ああ、おまえによく話しかけてた女か――
――……うん……――

――シンシアを泣かせてからもう二度と女は泣かせないって決めてたのに……――

――……で、そいつはなんて言ってた?――
――…………。……一緒に行こうって……――
――へ、やっぱりてめえのこと気にしてるんじゃねえか――
――…………――

「…………」

おじいさんは私をのぞき込むように見る。うーん、なんだろう。

「ソロを見てると息子を思い出して、あんたを見てると嫁を思い出す」
「…………」
「あんたに先約がいなけりゃソロの嫁に欲しかったな」
「え!?」

そういうとおじいさんはクリフトを見るの。びっくりするクリフト。

「いえ、あの、私は、その……」
「?なんだちがうのか?」
「っ……」
「じゃあ、ソロにもチャンスがあるってことか?」
「いや、あの…っ」
「え?なんの話?」

クリフトがすっごくヘンな顔してるの。眉にしわが寄って……
こまる?くやしい?もどかしい?うーん、なんだろう、ほんとにヘンなカオ。

「はっはっはっ」
「〜…っ」
「?」
「それに、あいつももう気づいてるかもしれねえ」

――じいちゃんをじいちゃんって呼んでいいのは俺だけだからなっ――

「少なくとも、あいつにとってオレは特別な存在みたいだ」

それだけでじゅうぶんだよ、おじいさんはソロを見ながら言葉を切った。

628従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 21/26:2017/11/07(火) 18:37:47 ID:o46AGxQI
「それにしても……」

おじいさんはまた私とクリフトを交互に見る。うーん、なんだろう。

「てめえらはまったく……」
「…………」
「???」
「いつどこで誰がどうなるかわからねえ時代だ。
今日笑顔で別れたやつと明日も笑顔で会えるとは限らねえ。だから」
「…………」
「…………」
「思ったことはそんときちゃんと伝えな。後悔しねえうちにな」
「…………」
「…………」

思ったことはそのときに……

「はい」
「…………はい…………」

私に遅れてクリフトが返事した。あんまり元気のない声。
クリフト…?

「じいちゃん」

ソロが頭をふきながらこっちに歩いてきた。

「俺たぶん、あいつを殺したいんじゃないんだと思う」
「あ?」

ソロはいっしゅん私たちのほうを見たけど気にしない様子で言葉を続けた。

「俺さ、あいつを殺したいんじゃなくて、あいつに頭を下げさせたいんだと思う。
罪を認めて、償って、二度と同じこと繰り返さない生き方をさせたいんだと思う」
「…………」

――あいつのこれまでの人生を俺の手でひっくり返してやりたいんだ――

「あいつを殺しちまったらそれまでだ。きっと本当の意味であいつに復讐を果たせない。だから」

――バルザックはもういない。でもお父さんも帰ってこないのね。……当たり前か――
――バル……お父さん……――

629従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 22/26:2017/11/07(火) 18:41:26 ID:o46AGxQI
「あいつはまだ殺さない」
「……そうか」

「やりてえことが見つかったじゃねえか」
「……うん」

ソロ……。


「みんな、寄り道させて悪かったな」

お風呂も終わってご飯もすませて、一息ついたところでソロが声をかけた。

「いーえ、さっぱりしたしー」
「楽しかったわ、ソロさん」

マーニャとミネアもすっきりした顔してる。私もいい気分転換になったわ。
いちばん風呂、とっても広々してて手足いっぱいに伸ばしてもゆったり入れたの。
空を見ながら入るお風呂なんて最高!
あったかくてお湯もたっぷりで、ずっと入ってたいくらいだったわ。

「なんだ、もう行くのか?」

荷物をまとめようとするソロにおじいさんが声をかけた。

「ん、うん」
「…………」

「ふん!てめえらみたいなガキどもはこのままひと晩泊まっていきやがれ!」
「え?」

「こんな人数だけど泊ってっていいのか!?」
「毛皮ぶとんでよけりゃあな!」
「やったあ!」
「?」

「毛皮ぶとんってどんなの?」

ソロがまたにやっとするの。

「羽根ぶとんとはまた違うぜ?寝てみるか?」
「うん!」
「ひ、姫さま…!」

630従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 23/26:2017/11/07(火) 18:47:13 ID:o46AGxQI
「えー?なにこれ、みんな毛皮ぶとんなのー?高級じゃーん!」
「先ほどの大きなタルといいおじいさんて手先が器用なのですね」

ベッドがひとつにあったかそうな毛皮ぶとんがみっつ。けっこう広めだからひとつにふたりで寝られそう。
おじいさんは自分が食べる分しか動物を狩らないから毛皮ぶとんはとっても時間をかけて作ったんですって。
場所によって毛並みが違うからなんまいもぬい合わせて……
これはきっと、おじいさんの息子さんとお嫁さんとソロの分だったんだ……そう思ったらまた目が熱くなった。

「あまり大人数で押しかけてもなんです、私は馬車で休むとしましょう」
「あ、私もそうします。どうぞ皆さんごゆっくり」
「ふむ……。あまりクリフトのアホーめに姫さまを任せたくはないが、この人数ならまあよいでしょう」

ライアンとトルネコ、ブライはおじいさんにごあいさつして馬車へ戻ってった。
気を利かせてくれたのね。じいはクリフトにも何か小声で話してた。ふたりともまじめな顔。なんだろう。
半端に残ってる毛皮があったみたいでおじいさんが防寒に使いやがれってみんなに渡してた。すごいなあ。
私は毛皮ぶとんで寝てみたいから泊めてもらうようお願いした。
ピサロとロザリーはまたどこかに行っちゃったからあとはソロとクリフトとマーニャとミネアのよにん、
みんなでかたまって寝ればいいわよね。
おじいさんはベッドにお願いしてソロとクリフトで毛皮ぶとんひとつ、私たちさんにんで毛皮ぶとんをふたつ使わせてもらった。
さんにんで並んで寝るなんてそんなにないから嬉しい。
私たちはおやすみのあいさつをしても明かりを消しても小声でずーっとおしゃべりしてた。
羽織りをいっせいに放り投げたときの話がいちばん盛り上がった。
最初はあんまり乗り気じゃなかったミネアがけっこうノリノリで飛ばしてたのよね!
そしたらおじいさんにさっさと寝ろって怒られちゃった。あ、日課の腕立てふせが……うーん、ムリか。

「おやすみ、マーニャ、ミネア」
「おやすみー」
「おやすみなさい」


「てめえら、いつまで寝てんだ!」

朝、おじいさんにたたき起こされる。
私よっぽど疲れてたのかしら、毛皮ぶとんが気持ちよかったのかな、起きたときには日が高くのぼってた。

「あーよく寝た!」

おじいさんの家で朝ごはんをとらせてもらう。ちょうど動物を狩ってきたってお肉料理を用意してくれた。
馬車のやつらにも持ってけって持たせてくれる。
おじいさんて……マーニャが正に私が思ったこと、おじいさんてけっこうやさしい人じゃないのって代わりに言ってくれた。
クチは悪いけどって茶化しながら。おじいさんはいっしゅん手が止まる。

「やめてくんな!けつがかゆくならあ!」
「えー?」

631従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 24/26:2017/11/07(火) 18:50:53 ID:o46AGxQI
「おしりがかゆくなるなんて変なおじいさん」
「照れているのですよ」
「え?そうなの?」

なんで照れるとおしりがかゆくなるんだろう。よくわからない。

「私が照れるとおしりではなく頭のほうがかゆくなってきますけどね」

クリフトもよくわからない。
クリフト、昨日は元気なさそうに見えたけど、だいじょうぶだったのかな。
今はなんともないみたい。相変わらずすぐそこに座ってる犬を気にしてる。
うん、だいじょうぶかな、クリフト。

「あーあ、赤くなっちゃって。おじいさんて照れ屋さんなのね」
「うるせえ!」
「ちょっと姉さん……。
でも、照れるとおしりがかゆくなるなんて、ずいぶんと変わった体質の持ち主ですね」
「てめえもだまってやがれ!」

赤くなったおじいさんにマーニャがにやにやしてる、ほんとに照れてるのね。
どうしてみんなわかったんだろう。私さっぱりわからなかったわ。

私たちはおじいさんになんどもお礼を言った。
おじいさんはまた照れたのかな、さっさと出てゆきやがれってまた怒られちゃった。
ソロがおうって元気よく返事する。これがふたりのあいさつなのね。
また来たいな。ソロのおじいさま、いちばん風呂にやわらかな毛皮ぶとん!
修行のために山にこもってこんな小屋で過ごすってのも悪くないわ。
あ、修行といえば……

馬車に戻って出かけるしたくを整えたあと私は腕立てふせを始めた。
きのうはすぐに寝かしつけられたから日課の腕立てふせができなかったんだわ!
日課をこなしながらソロに声をかける。

「ねえソロ!」
「あ?」
「ソロはおじいさんのことが好きなのね!」
「…………」

「……まあ、俺の親代わりみたいな人だからな」
「そうなのね」

私は腕立てふせを急いですませてソロのそばに寄った。

632従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 25/26:2017/11/07(火) 18:54:42 ID:o46AGxQI
「村をなくして独りになって、最初に着いたのがこの家、最初はじいちゃんに追い出されたんだ」
「え…?」
「けど俺が、まあ、出ていこうとしたら引き止めてくれてさ、昨日みたいにひと晩泊まってけって、結局何日も泊らせてくれたんだ。
こづかいもくれたし防具もくれた。飯も食わせてくれた。だから俺も木こりの手伝いした。どんだけここにいたんかなあ」

そう言うとソロは少しだけ笑った。きっとそのときのことを思い出してるのね。
懐かしそうな顔してる。

――おい、あんまりひっつくなよ――
――…………――
――まったくてめえは……――
――…………――
――おい、寒いのか?震えてんじゃねえか――
――…………――
――だいじょうぶか?――
――……うん……――
――もっとしっかりくるまりやがれ。風邪ひいたらつれえぞ?ふとんいちまい足しとくか――
――…………――

――なんか……父さんみたいだ……――
――てめえみたいなしけたやろうを息子に持った覚えはねえわ――
――へへ、父さんみたいだ……――
――…………――
――父さん…っ――
――だいいち歳が離れすぎてるだろう。オレのことはせめてじいさん……じいちゃんって呼べ――
――じいちゃん……うん、じいちゃん……っ――
――…………――

――じいちゃん……いてえ……いてえよお……――
――てめえ!なにやってんだ!――
――いてええ…!――
――キリキリバッタか、また派手に喰われやがって…!さっさと横になりやがれ!――
――うん…っ――

――いてえ……いてえよ……じいちゃああん……――
――あせるんじゃねえ、だいじょうぶだ。ゆっくりちゃんと息しやがれ――
――うん……はあ……ふう……――
――目は開けたままにすんな。よけい疲れるぞ。ちゃんとまばたきしやがれ――
――うん……――
――ちょっとくれえ閉じたって死にゃあしねえからな――
――うん…っ――

633従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 26/26:2017/11/07(火) 18:58:19 ID:o46AGxQI
――いてえ……――
――だいじょうぶだ、だいぶ血は止まったからな――
――俺、死ぬのかな……――
――バカやろう、ちょっとはらわた喰われたくれえで死ぬわけねえだろう――
――そっか……よかった……――
――まったく……――
――じゃあ、なんでこんなにいてえのかな……――
――そりゃてめえ、生きてるからに決まってんだろ。いてえっていってるうちはだいじょうぶだ――
――……どうしよう、そんなこといったらあんまりいたくなくなってきた……――
――バカやろう、いてえことにしとけ――
――うん……いてえよお――

――おう、あんまり無理すんな――
――腹の傷は治るのに時間がかかるし後にも響くから厄介なんだ。ここでちゃんと治していけ――
――……うん……――

――いいか、ソロ――
――どうしても相手を殺さなきゃならねえときは首か腹を狙え。そこが急所だ――
――腕や足を斬りおとしたところで相手は死にゃあしねえ、長く苦しませるだけだからな……――
――逆に相手もそこを狙ってくる。どこ失ったって急所だけはぜったいにとられるんじゃねえぞ――
――うん――

「実戦はぜんぜん違った。俺が村で習ってたことは本当に基礎で、じいちゃんに教わったことも多かった。
じいちゃんには敵わねえよ」

ソロが笑いながら話してる。なんだかすっきりした顔。ふっ切れたのかな。
きっと迷いが晴れたのね。やりたいこと、本当に見つかったんだ。見つけられたんだ。
それはきっとおじいさんのおかげ……
私もお城のみんながいなくなったときクリフトがそばにいてくれた。クリフトがぎゅってしてくれた。
だから今まで元気にやってこれた。
ソロにとってはここの木こりのおじいさんがそうだったのね。私はふとクリフトを見る。

「……?姫さま?」
「ううん、なんでもない。見てただけ」
「そ、そうですか」

クリフトがいてくれてほんとうによかったって思う。なんだかくやしいな。ひとりでなんでもできるはずだったのに。
でも、私も……
私のやりたいこと。

――思ったことはそんときちゃんと伝えな。後悔しねえうちにな――

ソロはピサロとの戦いに一区切りをつけた。だから次は、私の番。
あまりにいろんなことが起こりすぎて頭の中がぐちゃぐちゃだったけど、私もやっと決意が固まった。

634従者:2017/11/07(火) 19:02:40 ID:o46AGxQI
何かと謎の多い山奥の村ときこりの家ですが、山奥の村では宿屋の主人が「昔の習慣」と言いつつ部屋の掃除をしていたことから
かつてあの村は宿屋が稼働できるくらいには人の行き来があり木こりの親子も最初はそこで暮らしていたとしました。
それがソロが地獄の帝王を倒して世界を平和にする勇者と予言されてからは理解者のみを残して人を寄せつけなくなり
ソロが物心つくころには村の存在自体語られなくなったとしました。
(宿屋の主人は理解して村に残ったので別に宿屋が稼働しなくても生きていけるのですが何かと昔の習慣が忘れられなかったということで)
ブランカでは木こりの親子の存在は知られているも天女の存在はおとぎ話にされていたことから
村の存在を語られなくするために木こりのおじいさん(というかおじいさん世代の人たち)も一役買っていたのではと考え至りました。
また6章後にでもクリアリに絡めてこのあたりを書けたらと思います。ソロでクリアリ第二弾、どうぞ気長に待っていてください。

ありがとうございました。

635名無しさん:2017/11/11(土) 00:38:52 ID:c2bhkkMI
あら、これはこれは乙です。
長らくお見かけしませんでしたがお変わりなさそうで何よりです。
お越しになる頻度は人それぞれ。ご無理は禁物。
便りがないのは無事の知らせと前向きにとらえております。
wikiの管理人さんもきっとご無事なのでしょう。

作品を書く方も乙。他人投下のきっかけを作る方も乙。
今日の読み手も明日の書き手候補。
皆さん乙です。

636従者:2017/11/15(水) 17:27:10 ID:2e7LBrXc
乙ありがとうございます。お心遣い痛み入ります……。
以下の投下で6章は最後のエビルプリースト戦を残すのみですのでこれでやっと2章に戻ります。

PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、6章「失踪の行方」25レス分一気にいきます。
ほぼオリジナル展開ですご覧の際にはお気をつけください。クリアリパートは1/25〜14/25くらいです。
前回も今回もクリアリ以外の部分がとてもデリケートな問題で恐縮です。
2chではまず投下できなかった範囲と存じます。このスレの寛大さに心より感謝いたします……

637従者の心主知らず 失踪の行方 1/25:2017/11/15(水) 17:30:54 ID:2e7LBrXc
――お父さまたちを返してもらう――

「ピサロ」
「…………」
「話があるの」

食堂で夕食をすませたあと私はまだいすにかけていたピサロの前に立った。
ロザリーが驚いて私と後ろのクリフト、ブライを見る。ピサロは目だけこっちに向けた。

「私はアリーナ、サントハイム王の娘よ」
「……」

「そのようだな。エンドールの武術大会で知った」
「そう……」

「なら話は早いわ」

私はピサロをにらむ。

「お父さまたちをどこにさらったの」
「……」
「返して」
「…………」
「アリーナさん……」

ピサロは目線を戻して小さく息をついた。

「わたしではない」

…………。

「報を受けサントハイムに向かったときにはすでに廃墟になっていたのだ」
「なんじゃと…?」

なに言ってんのこいつ……。

「うそおっしゃい!」
「うそをついて何の得があるのか」
「だって、あんたがいなくたったとたんに魔物たちもいなくなったって聞いたわ。
あんたが魔物たちを連れてお父さまたちをさらったんでしょう!?」
「逆だ。魔物たちが身を潜めたから大会を放棄して現場に向かったのだ」

…………。

638従者の心主知らず 失踪の行方 2/25:2017/11/15(水) 17:34:31 ID:2e7LBrXc
「だって、だってお城を乗っ取ったじゃない!」
「ああ……。空き巣だったからな」
「そんな言い方…!」
「姫さま……」
「ピサロさま……」
「あんたじゃないっていうなら誰だっていうのよ。誰がみんなをさらったっていうの!?」
「教えてやる義理もない。どのみち、今となってはもうどうでもいいことだ」
「なんですって…!!」
「ピサロさま…!」
「返してよ…!!お城のみんなを返してよっっ!!」
「…………」

ピサロが笑った。笑ったの。こいつ…っ!!

「そうだ、そうでなくてはな……。
己がため、己が身内のためには手段を選ばない。やはり人間とはそういう生き物なのだ。
安心したぞ……」
「ピサロさま…っ」

寒くないのに寒気がした。鳥肌が立つ。息がつまって……背筋がぞくっとした。
なにこれ……。
気づいたらクリフトとブライが私の前にいて構えてた。とっさに私も身構える。

「何やってんだよ」
「ソロ……」
「ソロさん」
「…………」

「別段何もしておらん。もう寝ようと思っていたところだ」

寒気がいっしゅんで消えた気がした。ぞくぞくも消えてる。
いつもの食堂に戻ってた。
もしかして、さっきのはピサロのちから…?そしてこれは、ソロのちから……?
ピサロはソロが苦手なんだってことがなんとなくわかった。

「待ちなさいよ、まだ話は終わってないわ」
「お前に話すことはもう何もない」
「待ちなさいよ!!」

ピサロは返事もしないで食堂から出ていった。

「ピサロさま、お待ちくださいピサロさま!」

ロザリーが後を追って出ていく。振り向きざまに泣きそうな顔で私に頭を下げながら。

639従者の心主知らず 失踪の行方 3/25:2017/11/15(水) 17:38:07 ID:2e7LBrXc
「アリーナ、大丈夫か?」
「うああぁぁぁああああ…っ!!」
「アリーナ!?」
「姫さま…!」
「姫さま…っ」
「なんで、なんでえ…っ!?ピサロじゃないのお…っっ!?」


「姫さま……」
「…………」

私たちは部屋に戻った。私がお願いしてクリフトといっしょの部屋にしてもらったの。
ソロは何か言いたそうだったけど黙って見送ってくれた。じいも何も言わずにふたりにさせてくれた。

ここはサランの宿屋。私もピサロと決着をつけたい、ソロにそうお願いしたらわかってくれて。
故郷でつけるかって聞いてくれたんだけど、私は今のあのお城にはあんまり行きたくなくて……
でも勇気をわけてほしかったからとなりのサランに連れてってもらったの。
お前も来いよってソロが言ってくれて、ピサロとロザリーは何も言わずについてきた。
お昼をすませて教会に行って、神父さまにごあいさつしてお祈りしてご加護をもらって……

――これで決着がつくはずだったの…!――

部屋に戻ってからクリフトがなんどか声をかけてくれてたけど今は返事をする元気がなかった。
クリフトが私のこと見てるのわかったけど私は見なかった。
見られなかった。頭の中がぐちゃぐちゃでもやもや、なんだかぼんやりしてしまってるの。

「姫さま」
「…………」

クリフトはずっと私を見てる。

「あの口ぶりですと、ピサロさんは確実に何かを知っています。もう一度、話してみる価値はあると思います」

クリフトが話し始めた。やけにゆっくりで静かな声。

「それに……お詫びをしなければならないことがありますし」

え…?

「あんなやつに何を詫びるっていうの?」

私は思わず顔を上げてしまった。クリフトを見る。

「…………」

640従者の心主知らず 失踪の行方 4/25:2017/11/15(水) 17:41:44 ID:2e7LBrXc
クリフトも私がいきなり返事したからびっくりしたのかな、しばらく私を見てたけどまたゆっくり話し始めた。

「私たちは、デスピサロという名前だけを頼りに、漠然としたまま旅を続けてきました。
それがいつしか、サントハイムの皆さんをさらったのはデスピサロなのだと思い込むようになっていたのです」

――そうしなければ旅を続けられなかったから……――

「ですが、今日ピサロさんの話を聞いて、私がただそう思っていたかっただけなのだとわかりました」
「…………」
「サントハイムの皆さんをさらったのはピサロさんではなかったのです。その事実は、受け入れなければなりません。
今まで疑ってしまっていたことを……詫びたいのです」

…………。

「あいつは私たちにさんざんひどいことをしてきたのよ!?」
「姫さま……それとこれとは、話が別なのです。少し、難しい話なのかもしれません。
ですが、どうか、聞いてください……」
「…………」

「サントハイムを占拠したこと、ソロさんの村を滅ぼしたこと、人間を滅ぼそうとしたこと、これまで奪ってきた多くの命、
それらすべては決して許されることではありませんし、私も片ときとて忘れたことはありません」
「…………」
「ですが、だからといって、してもいないことをしたと疑っていい道理はないのです」
「きっとうそついてるのよ!」
「ええ、もしかしたらうそかもしれません。ですが、それを決められるのは私たちではありません。
彼がうそではないと言っている以上、私たちがそれを疑っていい理由はないのです。
誰がサントハイムの皆さんをさらったのか、それを教えていただくためには、まずピサロさんだと疑ってしまっていたことを詫びる、
それは人として、当然の礼儀ではありませんか…?」

……………………。

「わかんない…っわかんないよっ!私はクリフトみたく大人になんかなれないもんっ!」
「姫さま……」

クリフトは忘れてしまったんだ、今までのこと……
ロザリーを生き返らせてあいつに会いに行ったとき、あいつは私たちにお礼を言った。私たちと戦うことをやめた。
アンドレアルが飛んできたときも戦わないよう指示してくれた。あのとき、すこしでもいいやつなのかと思った。
これでよかったのかしらって、ほんとうにそう思った。
けど、ソロに向けたひどい言葉。
ロザリーはあんなに謝ってくれてたのに、あんなに泣いてくれてたのに、あいつはなんにもしなかった。
さっきだって、空き巣とかどうでもいいとか、ぜんぜん悪いことしたと思ってない。私たちの気持ちなんかなにひとつ考えてくれてない!
あんなやつに謝ることなんかひとつもない!!あんなやつ……!!

「姫さま……」

641従者の心主知らず 失踪の行方 5/25:2017/11/15(水) 17:45:29 ID:2e7LBrXc
クリフトは寂しそうな顔してた。

「……必ず、情報を得てまいります……」
「…………」
「必ず、取り戻しますから……」

――サントハイムの平和は、姫さまの笑顔は、このクリフトが必ず取り戻してみせますから……――

クリフト……?
クリフトはとても真剣な顔してた。

「ですから、少しだけこちらで待っていてください」
「…………」

クリフトはそういって上着を羽織った。出かけるしたくをする。
クリフト……

「…………」

クリフトはなんでピサロに謝るの?謝りたいの?あんなやつ……
先に謝るべきなのはあいつのほうなのに、なんで……

「…………」
「…………」

お父さまたちのためなの……?私のために、ピサロに謝ってくるの……?
そうなの?クリフト……

「…………」

いつもの優しいクリフトなの……?いつものお説教クリフトなの……?

――忘れてしまったわけじゃないの……?――

「姫さま、ではすぐ戻ってまいります」

クリフトは一礼してお部屋から出ていった。何の迷いも戸惑いもなくさっそうと出ていった。
お部屋がいっしゅんしんとなる。

「…………」

クリフト……

「……………………」

642従者の心主知らず 失踪の行方 6/25:2017/11/15(水) 17:49:05 ID:2e7LBrXc
クリフトぉ…………

「やだ、まって……クリフトまってよっ」

私は勢いよく扉を開けて廊下へ出た。
私の声が聞こえたのかな、すぐ向こうでクリフトが振り返ってるのが見えた。

「姫さま…?」

私はクリフトのもとまで駆けていく。急いでそでをぎゅってつかんだ。

「姫さま?」
「私が行く」

え…?

「私が謝る……」
「姫さま……」

わたし、なに言ってるんだろう。

「私が謝って、私が聞いてくる……」
「…………」
「ちゃんと、自分のちからで聞いてくる……」
「………………」

「ご一緒いたします」
「…………ん…………」

思わず口をついて出てしまった言葉。自分でもびっくりした。
でも、だいじょうぶ。クリフトが行くのなら、私が行く。私はひとりでだってなんでもできるはずなの。だから、
たった今そう決めた。


「ソロ…ッ!!」

ピサロとロザリーのお部屋の前に行ったらピサロの声が聞こえた。
なんだかイライラしてるみたい。

「なぜだ!なぜだ…っ!!」
「ピサロさま…っ」
「人間とは欲深い生きものだ。愚かな種族のはずなのだっ!」
「ピサロさま、そんなことはありません」
「なぜお前はいつも……お前はこれまでどれだけの人間に狙われ続けてきたと思っているのだっ!!」

643従者の心主知らず 失踪の行方 7/25:2017/11/15(水) 17:53:02 ID:2e7LBrXc
っ…。
胸がずきってした。
そう、ピサロはロザリーを人間の手から守ってきてくれてたんだ……。
それはきっと、ほんとうのこと……。

「お前の必死の呼びかけに応じ、いく度も人間を見逃しては改心を試みさせた。
だが、結果人間たちのとった策は何だった?」
「…………」

……聞きたくない。そんな話聞きたくない。

「お前はどんな人間たちにも寛大だったが、人間たちはたった一人のお前に寛大だったか?
われわれ魔族に、寛大だったか…?」
「…………」

ロザリー……。

「でも……でも……それでもわたしは、誰かを憎んで生きていきたくはないのです……」

――みんなが笑って過ごせる日が、いつか必ず来ると信じてる――

ロザリー…っ

「それに、すべての命は尊ばれるべきだと、わたしに教えてくださったのはピサロさまではありませんかっ」

え?

「………………」

ガタッ。

「…っ」

え。

「んっ…」
「っ…」
「あぅっ…」

え?え…?何してるの?何かにぶつかった音……声を出したいけど出せないみたいな声……
背筋がぞわってした。もしかして、もしかして首とか絞めてるんじゃ…?
思わずクリフトのほうを見る。クリフトも少し焦ったような顔してこっちを見る。どうしよう…!

「ロザリー!!」

644従者の心主知らず 失踪の行方 8/25:2017/11/15(水) 17:56:36 ID:2e7LBrXc
私はいても立ってもいられなくなって扉を勢いよく開けた。

「あ…」
「アリーナさん…っ」

ピサロはロザリーを抱きしめてた。ロザリーを見てたけど、にらみつけるような目でこっちを見た。
ロザリーは顔を真っ赤にして目をそらした。

「何の用だ……」

ピサロはロザリーを離した。
ロザリーは顔を真っ赤にしたまま両手で口もとを隠して後ずさりした。

えっと……今……いっしゅんしか見えなかったけど……えっと……キス、してたのよね……。

「えっと……謝ろうと思って……」
「謝る?」
「疑ったから」
「…………」
「お城のみんなをさらったのはあなたじゃないって言ってたのに、疑ったから……」
「…………意味がわからん」

ピサロがこっちに歩いてきた。私を見下ろしことさらににらみつける。

「オレがきさまらに何をした?
確かにかの人間どもを転移させたのはオレではない。だがあの城を占拠させたのはオレだ。
きさまら愚かな人間どもを滅ぼそうとしているのもオレだ。きさまらにとって敵であることに変わりはない。
何を詫びることがある?頭がいかれたのか!?」
「っ…!!」

ピサロがイライラしてるのが伝わってきた。口調も荒い。
いっしょうけんめい我慢しないと私も頭が沸とうしそう。

「それとこれとは、話が別だから…っ」

わたしはいっしょうけんめい言葉で返した。

「お城を乗っ取ったのは許さない。ソロの村のみんなを殺したのだって、人間を滅ぼそうとしたのだって許さない!
ぜったい許さないっ!!
でも………っ…でも……だからって、みんなをさらってないって言ってるのにさらったって疑うのは悪いことだから…っ」

わたしはクリフトに言われたそのまんまの言葉をならべた。
自分でもなにを言ってるのかわからない。とにかくクリフトに言われたまんましゃべった。

645従者の心主知らず 失踪の行方 9/25:2017/11/15(水) 18:00:11 ID:2e7LBrXc
「アリーナさん……」
「だから…っ」
「………………」
「ごめんなさい…っっ」

ふるえる手をぎゅってして、わたしはいっしょうけんめい頭を下げた。

ガタッ!
いすが揺れた。ピサロがぶつかったみたい。でも私は顔を上げられなかった。
くるしい。もういやだ。いちびょうもここにいたくない…!

「じゃあ、おやすみ……」
「まて……まて……」

パタン……。


「姫さま……。よくがんばりましたね……」
「ん……」

けっきょく聞けなかった。だれがお城のみんなをさらったのか、聞けなかった……。
でも……

「もうあんなやつと話したくない……」
「……はい」

「姫さまは一番言いにくいことを誰よりも先に言ってくださいました。誰よりもがんばってくださいました。
後のことは、どうかこのクリフトにお任せください」

クリフトがそっと私の髪をなでてくれた。心地いい……。
なんだろう、いつもはこんなことしないのに。
私はクリフトを見た。クリフトも私を見てた。とっても優しい顔。優しい目。笑ってる……
クリフト……

――やっぱりいつものクリフトだ――

「ねえクリフト、いっしょに寝よ…?」
「えっ?……いえ、その、それは……」
「お願い、いっしょに寝て……」
「姫さま……」
「おねかい……」
「…………」
「おねがい、そばにいて…………」
「………………」

646従者の心主知らず 失踪の行方 10/25:2017/11/15(水) 18:04:04 ID:2e7LBrXc
「…………はい…………」


「姫さま…っ」
「……」
「あ、あの…っっ」

お風呂をすませ、着替えてお祈りしてベッドに入った私たち、私はクリフトの上に乗りかかった。
なんだか寒いの。からだがふるえてて眠れないの。ひっついてるとあったかいから……

「クリフトあったかい……」
「姫さま……」
「おねがい、このままでいて……」
「……は、はい……」
「…………」
「…………」
「…………」
「………………」

クリフトがわたしの腰にそっと手を回してくれた。
最初はさわったりはなしたりまるでおそるおそるさわるみたいな感じだったけど、だんだんしっかりふれてくれる。
あったかい……。

「…………」

どれくらい時間がたったのかな、ふとクリフトが手をほどいて動いたのがわかった。

「え?クリフトどうしたの?どこかに行くの?」
「…………」
「お手洗い?」
「いえ、ちょっと外に……。大丈夫です姫さま、すぐ戻りますから」
「やだクリフトどこにも行かないで。クリフトが外に行くならわたしも行く」
「姫さま……」
「わたしをひとりにしないで……」
「……………………」

「はい、姫さま」

クリフトはまたからだを戻して私の腰に手を戻した。どこにも行かないみたい。
ちょっと気を抜くと私より早く起きたりどこかに行ったりしてしまうクリフト、私は思いっきりぎゅってした。

「姫さま……」
「…………」
「………………」

647従者の心主知らず 失踪の行方 11/25:2017/11/15(水) 18:08:03 ID:2e7LBrXc
クリフトも私を優しくぎゅって返してくれた。
もう片ほうの手も伸ばして私の背中に回してくれる、私はほとんどクリフトの上に乗っかる感じになった。
私、重たくないかな、だいじょうぶかな……。

「…………」
「…………」

だいじょうぶかな……クリフト、もうどこにも行かないかな……。
だいじょうぶかな……。

「…………」
「…………」

だいじょうぶ、かな……。
わたし、またちょっと気が抜けたみたい。でもクリフトはずっと私をぎゅってしてくれた。
クリフトほんとにあったかい……。

「…………」
「…………」

――…っ――

…………。

――んっ…――
――っ…――
――あぅっ…――

「…………」
「…………」

あのとき……

「…………」
「…………」

キス、してた……。
なんで今になってあの光景だけ思い出すんだろう。ピサロはロザリーを見つめてた。
ロザリーは顔が真っ赤だった。

「ねえクリフトー……」
「……はい、姫さま」
「キスって、そんなに気持ちいいのかな……」
「っ…姫さま…!?」

648従者の心主知らず 失踪の行方 12/25:2017/11/15(水) 18:11:35 ID:2e7LBrXc
「ロザリーはね、アドンともキスしたことあるんだって」
「…………」
「アドンがずっと泣いてて震えててつらそうで、ぎゅってしてもぜんぜんおさまらなくて……
気づいたら自分からしてたんだって。
アドンね、キスしたらすっごく気持ちよさそうにしてたんだって。緊張がとけて、泣いてたのも震えてたのもおさまったんだって。
スライムがキスすると健康にもいいんだよって言ってたんだって」
「姫さま……」
「クリフトにお薬飲ませたときはよくわかんなかった」
「………………」

「ねえクリフト……」
「…………」
「キスしよ…?」
「姫さま……」

「魔族やエルフの文化は私にはわかりません。
ですが、神に仕える者にとって口づけとは誓いを示すものです。将来を誓い合う者たちだけの神聖な儀式……」
「クリフトー……」
「……はい」
「難しいことよくわかんない」
「姫さ…んぅっ」

私はクリフトにキスした。クリフトが逃げないよう首に腕を回して。

「ん…」
「っ…っ」

クリフトのくちびる、やわらかい。あったかい。クリフトの匂いがする。今クリフトとすっごく近いんだ。
あ、ちょっと待って。やだもう、よだれたれちゃう。恥ずかしいなあ。
私は自分のよだれといっしょにクリフトのだえきも吸った。なんかヘンな味。
クリフトは最初されるがままになってたけど私といっしょでよだれがたれそうになったのね、私のだえきを吸ってきた。
私のなんておいしくないのに。キスってやっぱり抵抗あるなあ。
最初は気づかなかったけどちゅ、とかちゅぱ、とかヘンな音が聞こえてきたから私はなんとなく口を離した。

「ん……やっぱりよくわかんない……」
「ひめ…さま…」

クリフトは私を横によけてそのまま私の肩に顔をうずめた。

「クリフト?」
「どうか、このままで…っ」
「ん……」

649従者の心主知らず 失踪の行方 13/25:2017/11/15(水) 18:15:05 ID:2e7LBrXc
なんだろう、クリフトは顔をうずめたままだまっちゃった。
少しだけ息が乱れてるみたい、なんでだろう。
さっきのキス、息が苦しくなるほど長くはなかったと思うけど。

「…………」
「………………」

――思ったことはそんときちゃんと伝えな。後悔しねえうちにな――

またひとつ、思い出した。
あのとき、クリフトは元気ないように見えた。
次の日にはいつもの調子に戻ってたからあんまり気にしなかったけど、あのときクリフトは何を思ってたのかな。

「ねえクリフトー」
「…………」

クリフトは顔をうずめたまま返事しない。ずっとだまったまんま。うーん、ほんとになんだろう。
私は構わずあのときのことを聞いてみた。クリフトもきっと思うこといっぱいあると思うの。

「あのときクリフトは、何を思ってたの…?」
「…………」
「私には、言えないこと…?」
「………………」
「…………」
「……………………」

やっぱりクリフトは答えない。顔をうずめたまま。やっぱり言えないことなのかな……。
少ししてクリフトはゆっくり顔を上げた。今度は私を倒して上に乗っかるような体勢になる。さっきとはんたい。
クリフトが私を見てるのがわかった。でも暗くてどんな顔してるのかはわからない。

「姫さま……」
「ん…?」
「……………………」
「?クリフト?」

クリフトがゆっくり私に顔を近づけてきた。え?
え、もしかして……え、もういちど?え?え?えええ??

「ん…っ」
「っ…」

私たちはもういちどキスした。クリフトから来るとは思わなかったわ。
神に仕える身とか言ってたくせに。私にはよくわからないけどやっぱりキスって気持ちいいのかな。
クリフト、今、気持ちいいのかな。だからもういちどキスしてきたのかな。

650従者の心主知らず 失踪の行方 14/25:2017/11/15(水) 18:18:35 ID:2e7LBrXc
「……」
「……」

うーん、やっぱりキスってよくわかんないや。

クリフトはキスが終わったあとまた私の肩に顔をうずめた。
途中から私をぎゅってしてきて。私もぎゅって返したらちょっとびくってしたけどまたぎゅって返してきて。
ちょっとからだが震えてたからおふとんをかけ直してもっとぎゅってしたら少し落ち着いたみたいで。
そのまま寝ちゃったの。
うーん、なんだったんだろう。変なクリフトだったわ。
私はそっとクリフトの頭をなでた。動かない、よく眠ってるみたい。
きっと朝になればまたいつものクリフトに戻ってるわ。優しくてまじめで堅苦しいお説教クリフトに。
私はもういちどクリフトの頭を優しくなでた。私もゆったり目を閉じる。

「おやすみ、クリフト」


「娘」

食堂で朝ごはんを食べてたらピサロが寄ってきた。娘って私のことかしら。

「おはようございます、ピサロさん」
「……おはよ……」

私はちらっとピサロを見てすぐ視線を戻した。できるならもう話したくないから。

「…………」

ピサロはしばらく無言で突っ立ってたけどそのままあっちに行っちゃった。

「なんなのあいつ」
「…………」

「ピサロさん、夕べはあまり寝ていないかもしれませんね」
「え?」
「目が少しくすんでいましたから」
「…………」

そんなの知らない。

「娘」

朝ごはんを食べ終わったころあいつがまた来た。ほんとになんなの。

651従者の心主知らず 失踪の行方 15/25:2017/11/15(水) 18:22:06 ID:2e7LBrXc
「昨日の話だが」
「…………」
「サントハイムの人間どもを転移させたのは帝王エスタークだ」
「え…?」
「伝えたからな」
「え、待って。エスタークって、あいつでしょ?あの、地獄……そう、アッテムトの洞くつの奥にいた……」
「……そうだが」
「だって、倒したのに……。やっつけたのにどうしてみんなは戻ってこないの?」
「…………」

「術師を屠れば過去に施した転移魔術が反転するなどどんな理屈だ……」
「だって……だって……」
「姫さま……」

「なぜ、エスタークだとわかったのです?」
「……サントハイム城を占拠した目的の一つは時空転移魔術の軌跡を辿るためだった。
ただでさえ高位複合魔術だ、エスタークである可能性は高かった。魔素も強かったからな」
「あのまがまがしい気配ですね……」

「あの気配……。そうか……私としたことが……」

クリフトが手で顔を隠した。

「だが、そのエスターク帝王は予言のとおり討ち滅ぼされた……」
「…………」
「だから言っただろう。今となってはどうでもいいことだとな」
「そんな……」

確かに伝えたからな、ピサロはそう言って食堂から出ていった。

「もういちど、エスタークのとこに行ってみる……。もしかしたら何か手がかりになるものがあるかもしれないし」
「姫さま……」

「ご一緒いたします」


「え?」
「どうしても行きたいところがあって……」
「どこだよ」
「……すぐすむから。後ですぐ追いかけるから」
「…………」

「答えになってねえよ。俺たち今までずっと一緒だったろ?今度だって一緒だろ?」
「……でも、もしかしたら無駄足になるかもしれないし、みんなにも迷惑……」
「あのな、アリーナ」

652従者の心主知らず 失踪の行方 16/25:2017/11/15(水) 18:25:40 ID:2e7LBrXc
ソロは私をまっすぐ見てしゃべった。

「行きたいところに無駄なところなんて一つもねえよ。言えよ。どこでも連れてってやるから」
「…………」

私は口ごもった。なんていえばいいの?なんていえば、ソロを傷つけずに伝えることができるの?
ピサロと決着をつけたいって頼んだときはソロとおんなじ気持ちでいたから堂々と頼めたの。
でも、今回は……まだ希望があることに対しては……なんていえば……

「エスタークだったんです」
「クリフト……」
「サントハイムの人々をさらったのはエスタークだったことがわかったんです。
ですから、もう一度あの場所に行って何か連れ戻すための手がかりがないかを探したいのです」
「…………」

「それを早く言えよ。みんな、聞いたな?」
「聞いてなーい」
「聞いとけよっ」

「なんですって!?」
「行きましょう、アリーナさん!」
「善は急げですぞ、すぐ出かける準備をしましょう」
「皆さん、馬車の準備はもういいですよー」

「な?」

みんな…っ

「どうして……どうしてそんなに優しくなれるの……?」

――ソロの村のみんなは、マーニャとミネアのお父さまは、もうどんなにがんばっても戻ってこないのに…!――

「お前さ、世界樹の花手に入れたとき、真っ先に俺の村のみんなやマーニャとミネアの父ちゃんのこと口にしてくれたろ?
自分とこのやつらが助かる保証なんかどこにもなかったのに」
「…………」
「あれさ……すっげー嬉しかったんだ」
「…………」
「仲間の家族は俺の家族だ。少なくとも俺はそう思ってる。早く行こうぜ」
「………………」

「うん……うん……っ」

「ピサロ、お前は別についてこなくたっていいぜ」
「…………」

653従者の心主知らず 失踪の行方 17/25:2017/11/15(水) 18:29:13 ID:2e7LBrXc
「エスターク帝王のもとへ行くのなら同行させてもらう」

私たちはもういちどアッテムトへ向かった。


「俺も行くよ」
「ううん、お願い。私たちで行かせて」

アッテムトに着いて出かけるしたくもととのって、ソロが同行を申し出てくれたけど私は断った。
これ以上みんなに迷惑かけられない。ただでさえいっしょに来てくれたのに。
これは私たちサントハイムの問題、だから行くのは私とクリフトとブライのさんにんって決めたの。
そう、私たちの問題なのにみんながいっしょに来てくれた……急いですませてこよう。

「わたしは同行させてもらうぞ」

ピサロが口をはさんできた。

「なんで来るのよ……」
「勘違いするな。わたしはわたしで目的があるだけだ。別に並んで歩く必要もない」
「…………」
「ピサロさま、あなたが行かれるのでしたらどうかわたしも……」
「…………」

「お前は、ソロのそばにいたほうが安全だと思うがな……」
「ピサロさま……いえ、わたしは…っ」
「………………」

え、なにこの微妙な空気。

「………………別についてきても構わんが、もうそんな非力な腕でナイフなど振るなよ」


「そういえば、この場所ではお前たちに煮え湯を飲まされたのだったな」

歩きながらピサロがつぶやいた。にえゆ…?

「……まあいい。それはすでに過去のことだ」

いいのなら口にしなくちゃいいのに、私たちがエスタークを倒したこと根に持ってるのかしら。
私たちはそれぞれのペースで洞くつに入ったんだけど敵と戦ってるあいだに結局いっしょになって。
ロザリーもいるからみんなで守るためにもいっしょのほうがいいかもってクリフトに耳打ちされて。
確かにそう思ったからなんだかんだいってやっぱりいっしょに行動することにしたの。
ピサロがすきなく強いのがなんだか腹立つ。この戦いが終わったらぜったい決着つけてやるんだから。
洞くつの奥へ、私たちはエスタークのいる玉座の間まで無事たどり着いた。

654従者の心主知らず 失踪の行方 18/25:2017/11/15(水) 18:32:39 ID:2e7LBrXc
「エスターク!私はサントハイム王の娘アリーナよ!」

私は玉座でぐったりと傾きかけているエスタークに大きな声で呼びかけた。

「エスターク!」

ちからいっぱい大きな声で呼ぶ。

「エスターク、返事して!」

「エスターク!!」

でもエスタークは動かない。

「お願いみんなを返して…っ!!」
「やはり、動かぬ……か」
「姫さま……」
「ふむ……」
「おねがい返事してっ!!」

エスタークはもう動かない。

「おねがいエスターク…っ!!」
「姫さま…っ」

もうにどと動かない。

「エスタークっ!!」
「アリーナさん……」
「おねがいっっ!!」

殺した。

「おねがい返事して…っっ!!」

――私たちが殺した――

「ごめんなさい…っ!」

――時間は戻らない。死んだ者はよみがえらない……――
――ごめんなさいぃ…っ!!――

どうすれば……わたしどうすれば……。

655従者の心主知らず 失踪の行方 19/25:2017/11/15(水) 18:36:05 ID:2e7LBrXc
「姫さま」
「クリフトぉ…っ」
「以前、さえずりの蜜を手に入れたあと、もしエルフたちが戻ってこなかったらとうなだれていた私に、
姫さまはおっしゃったではありませんか。それならそれで、また別の方法を探すまでだと」
「っ……」
「大丈夫です、きっと何か別の方法があるはずです。探しましょう」
「クリフト……」
「大丈夫です。さあ姫さま、戻りましょう」
「…………」
「確かに、この場所にはもう用はありませんな。ささ、姫さま、参りましょうぞ」
「………………」

クリフトとじいの声がとっても優しく聞こえた気がした。

「クリフトどうしたの?」
「…………」
「クリフト…?」
「む、何かあったか、クリフト?」
「いえ、今一瞬、エスタークが動いたような気がしたのですが……」
「え…?」

私は思わずエスタークを見る。

「…………」

動いてるかはわからない。

「……………………」

申し訳ありません、気のせいだったようです、そう言ってクリフトはこっちに向き直った。


「なぜ、詫びたのだ……」
「え?」

帰りみち、ずっとだまってたピサロが話しかけてきた。

「お前たちにとって、かつて地上に闇を落とした地獄の帝王エスタークこそ敵でしかないはずだ。なぜ……」

…………。

「敵だからって、何でもやっつければいいわけじゃないから」
「…………」

656従者の心主知らず 失踪の行方 20/25:2017/11/15(水) 18:39:33 ID:2e7LBrXc
アドンもそう。アンドレアルもそう。
もし最初からお話ができていたら、戦わなくていい敵だった。
きっと、殺し合いの戦いじゃなくて、競い合いの闘いができる相手だった。
もしお話ができていたら……

「何にもお話ししなかった。
お父さまの夢の話とか、歴史の話とか、周りの話しか聞いてなくて、いちばんかんじんな本人とは何にもお話ししなかった。
自分の目で、肌で、ほんとうに悪いやつだったのか、どうしてお父さまたちをさらったのかも、何ひとつ確かめないで攻撃した」

――なに…やつだ……。わが眠り…さまたげる者は……――

「それは、今思えば悪いことだったから」
「姫さま……」
「………………」

アドンやスライムは私たちに謝ってくれたから……。

「……それは、わたしが勇者を……」
「え?」

ピサロが歯ぎしりしたような気がした。すぐ向こうを向いたけど、イライラしてる…?

「かつて、エスターク帝王率いる魔族軍とマスタードラゴン率いる天空軍は大規模な戦争を起こした」

いきなりなに言い出したのこいつ。

「地上は戦火に巻き込まれたが、マスタードラゴンが一つの提案をし、エスタークが承諾し、戦場を時空間に移したそうだ。
天空ではどのように記されているか知らんが魔界の歴史書にはそう記されている。夢世界という単語も出ているが詳しくはわからん。
だが、もしその記述が事実であるなら、時空転移魔術はマスタードラゴンも使える」

え…?

「わたしは偽善者の代表になど会う気はさらさらないが、一度会ったことがあるのなら文字通り神頼みでもしてみたらどうだ?」
「ピサロさん……」

「王は夢でエスタークの存在を知りました。そしてこの場所も……。
エスタークもまた眠っていた……眠りながら転移させた……。
そして歴史書にある夢世界……それと何か関係があるのかもしれません。一度話を聞いてみる価値はあると思います」
「ふむ……夢世界か……」

マスタードラゴン……竜の神さま……

「姫さま、行ってみましょう。天空城へ」

657従者の心主知らず 失踪の行方 21/25:2017/11/15(水) 18:43:11 ID:2e7LBrXc
どうして……
私はピサロを見た。

「どうしてそんなことを教えてくれるの…?」
「…………」

「そんなこと……」

――わたしが聞きたいくらいだ――

エスタークは本当は死んでなかった。クリフトが感じた違和感は気のせいではなかった。
エスタークは生きていて、私たちの声も、私の必死の呼びかけも、みんな聞いていた。動かないのではなく動けなかっただけ。
いつかエスタークは再び目覚めることになる。でもそれは、私たちの知らないずっとずっと遠いお話。


「お前たちがなぜここに来たのかはわかっている。サントハイムの民たちは未だ捜索中だ」

天空城に着いて急いで玉座の間へ、竜の神さまは私たちが名前を呼んだだけでそう答えた。

「捜索中…?お父さまたちは、無事なの…?」
「かの者たちは生きている」
「ほんとに…?」
「転移された直後に察知した気配がそのまま残っている。わずかではあるが死者が出ていないことはわかる」
「ほんとに……っ」

どうしよう、もう前が見えなくなってる……。

「どうして……どうしてもっと早く教えてくれなかったの…っ??」
「それは……」

竜の神さまはその先をすぐ言わない。少し間が空いた。

「必ず見つけ出せるという保証がなかったからだ」
「…………」
「確証のないことで無駄に期待だけを持たせたくはなかった。また期待されても困るからだ。
今こうしてお前たちに話したのも、お前たちが自力でここまで情報を得てきたからこそできたこと」
「…………」

言ってることはなんだか難しくてよくわからなかったけど、私はお話が終わるまで待った。
ずっと竜の神さまを見てた。

「私からお前たちに報告するときは、かの者たちが無事見つかったときだ」

竜の神さまも私を見てくれた。目が合う。竜の神さまは私の目を見たままはっきり言った。

658従者の心主知らず 失踪の行方 22/25:2017/11/15(水) 18:46:42 ID:2e7LBrXc
――全力を尽くして捜索しよう――


「よかった……」
「姫さま」

お父さまたちは生きてる。神さまが言うんだもん、きっと生きてるんだわ。
生きてるならまた会える。きっとまたもとのお城に戻れる。
今は竜の神さまが捜してくれてるけどもしこの戦いが終わっても見つからなかったら私が捜してもいいんだし。
竜の神さまといっしょに捜せばきっとすぐ見つかるわ。

――お父さまたちにまた会える…!――

「よかったぁ……」
「はい、姫さま」
「よかったあああ……っっ」

からだのちからが一気に抜けた。私はふらついて地面に座りこんでしまった。

「姫さま!?」
「だいじょうぶ、ちょっと疲れただけ」
「姫さま……」
「姫さま、ようがんばったのう」
「…………うん…………」

「ソロ……ありがとう」
「俺は何もしてねえよ。お前ががんばったからだろ」
「ピサロ……ありがとう」
「愚かな人間がこれ以上増えるかと思うと虫唾が走るっ」
「なんですって!」

「まあまあアリーナさん、ピサロさんはあれです、照れ隠しなんですよ。
ソロさんやアリーナさんの真剣な思いに胸打たれたんですよね、ピサロさん?」
「うるさい黙れっ」
「「へ?」」

トルネコに言われて私とソロはそろって声をあげちゃった。ふたり同時にピサロを見る。
ピサロもこっちを見たけど口がへの字でヘンな顔してた。

「だから人間は愚かなのだ!もう寝る!!」

ピサロはすごい勢いで馬車に戻っていった。寝るって、まだ寝る時間じゃないけど。
夕食だってすませてないのに、変なピサロ。

659従者の心主知らず 失踪の行方 23/25:2017/11/15(水) 18:50:09 ID:2e7LBrXc
「ごめんなさい、皆さん……。ピサロさまは決して悪気があってああ言ったわけではないんです。
本当にごめんなさい……。私も失礼します」

何度も何度も頭を下げロザリーも戻っていった。

「皆さんが天空城に行かれている間にピサロさんとロザリーさんと少しお話ししたんですよ。
いやはや、なかなか深いことを考えてらっしゃる方々で興味深かったです。
信じられない話ですが、ピサロさんのおかげで私たちはずいぶん平和な生活をさせてもらっていたみたいなんですよ」
「なにそれ……」
「私たちは、世界征服を企み、人間を滅ぼそうとしたデスピサロさんしか知りませんが、そうなるまえのピサロさんの話です。
世界中を駆けずり回って罪人たちを取り締まってくれてたみたいなんですよ。
彼の中ではロザリーさんを狙うエルフ狩りへと転じないためだったのでしょうが、結果的に犯罪者が減っていたのは確かです」
「そんなのうそよ!」

私は思わず大声をあげてしまった。

「ええ、私も最初は信じられなかったのですが、話を聞けば聞くほど細かくご説明をされるものでね。
特にレイクナバやボンモール、エンドールでの話題を出されたときはもううそだと思うほうが無理だと思いました。
あまりに合点がいってしまったんです」
「だって、だって誰もピサロのことを知らないじゃない!」
「何度か各国に罪人を縛り上げて突き出したことがあったそうなんですが、当時の人々は魔族と知るやいなや
罪人を取り締まる味方ではなく国民を傷つける敵と勘違いして追ってしまったそうなんです。それ以来彼は表に出ていません。
ピサロさんも性格が荒いですし、どちらが悪いとは私は言えなかったのですが……」
「…………」

「マーニャさんとミネアさんでしたらこの事件はご存知じゃありませんか?
3年前モンバーバラで人気だった曲芸の一座が一夜にして壊滅、被害者たちは魔物に襲われたと証言するもどこにも証拠はなく、
被害者の素性を調べるうちに当時カジノを荒らしていた犯罪者集団と判明、誰のおかげともわからぬうちに取り締まれた事件」
「あ……」
「うそ……あれ……ピサロなの……?」

ピサロのことがますますわからなくなった。


――自分のことしか考えない魔族と他人のことしか考えないエルフとの出会いは世界を大きく変えた――

「彼は、今こうして人類を敵に回すまえからすでに、たった一人で人類と戦っていたのですよ……。
そして、私たち人類が変わらない限り、気づかない限り、これからもずっと戦い続けるのでしょう」

――終わりのない戦いを――

「もう、ピサロさん自身がそれに耐えられなかったのだと思います」

――希望のない明日に……変わることのない未来に……――

660従者の心主知らず 失踪の行方 24/25:2017/11/15(水) 18:54:06 ID:2e7LBrXc
「…………」

変わることのない未来……。

――たとえお前たちのような良識ある人間がいたとして、罪びともまた生み出される社会がある限り――
――人間はこれからも変わらないのだろう――

――我々魔族では人間を変えられない。変えられなかった……――
――いや、本当はもう、変えようとする前からわかっていたのだ……――

――人間は変わろうとしない。なぜなら変わる必要がないから――

ふと思い出されたのはアドンの言葉。
あのときは何の話をしてるのかわからなかった。けど……

――他種族同士が歩み寄ることは未来永劫あり得ない――

あれは、このことを言っていたの……?

「エンドールの武術大会に参加したとき誰もピサロという名に、その姿に、反応する者がいなかった。
それは彼にとって……」

――失望と落胆……――

「いえ、確か城内で……」

クリフトがすかさず口をはさむ。

「城内で、何名かピサロさんの名前に覚えのある方がいました」

――デスピサロ……。どこかで聞いたような名前じゃが思い出せんわい……――
――デスピサロに気をつけるんだ!――

「誰だって罪を犯したくて犯してる人なんていないわ」

私も思わず口をはさんだ。

「それなのに、罪を犯したからって人類すべてを滅ぼそうとするのはおかしいわ」
「……ピサロさんが言ってたんですよ」

――人間の中に善人と悪人がいるのではなく、人間ひとりひとりの内に善と悪が混在している――
――それまで善人として生きてきた人間とて何らかのきっかけで悪人に転じる可能性は0ではない――

「…………。だからって……そんな可能性……」

661従者の心主知らず 失踪の行方 25/25:2017/11/15(水) 18:57:43 ID:2e7LBrXc
そこから先が続かない。言葉を返せない。どうすればいいんだろう。どう返せば……
そんなときふと浮かんでしまったのは。
お父さまのお声が出なくなったとき焦ってエルフさんたちのさえずりの蜜を盗んでしまいそうになったこと……
事情があったところで罪は罪……エルフさんたちは人間をすっごく憎んでた……。

――確かに人間は、時に過ちを……その、犯します。ですが、それを悔い改めよき道へと進むことができるのもまた人間です――
――……でも、過ちは犯すのね。最初から犯さないっていう選択肢はないのね――

「……………………」

どうすればいいの……?

「いえいえ皆さん、そんな神妙にならずに……」

トルネコは穏やかに笑った。

「だからピサロさんにとってソロさんやアリーナさんのような方はほんとうに理解しがたいみたいです。
やられたらやり返すのが人間の本性と思っているようですね。
それをことごとく覆されたので腑に落ちない、意味がわからないと何度も言ってましたよ。
今まで本当に出会えていなかっただけなのかって。他にもいるのかって」
「…………」
「アドンさんが私たちに太鼓判を押してくださっていたそうで、ますますピサロさんを悩ませているのだとか」
「アドンが…?」

トルネコは笑ってうなずいた。

――ピサロ様、人間をみな滅ぼす計画、今しばらく吟味する必要があるかと……――
――滅ぼすに値しない人間を発見しました。ロザリー様もその者たちにはお心を許しているようです――
――他にも同種の人間がいるのか否か、またその境界がどこにあるのかが未知数――
――少なくとも今現在発見したかの者たちを消すことはロザリー様にとっても得策ではありません――
――恐れながらその者たちとは、奇しくも我々にとって敵でしかないと思っていた……――

「…………」

――勇者ソロとその一行でございます――

アドン……。
ピサロにそんな話をしてくれてたんだ。なんかちょっと言い方が気になるけど。
でも、私たちを信じてくれたのね。

「他種族の、それも魔族の方に評価をいただけるなど、なんとも誇らしいことです」

トルネコは嬉しそうに言葉を続ける。

――ソロさんやアリーナさんのような方がいる限りピサロさんが人間を滅ぼすことはないでしょう――

どれだけ確信を持っているのか、トルネコはそう断言した。

662従者:2017/11/15(水) 19:01:17 ID:2e7LBrXc
短編集「知られざる伝説」及びゲームブックではサントハイム民をさらったのはデスピサロとなっていましたが、
いずれもさらった目的や方法、その後の処置などが不明瞭な点(じゃあ王の失声症は誰のしわざ?とか)、
本編でのミニデーモンの台詞「闇のちからで消された」という言葉と照らし合わせるとどうにも補正しきれない点から
この従者シリーズでは小説版の「光の国」を参考に「夢世界」なる世界をさまよっていたとし
サントハイム王失声、サントハイム民失踪、お告げ所シスター消失はいずれもエスタークのしわざとしました。
また6章後にエスタークでクリアリを構想してはいるので書ける日来ましたら詳細をご覧いただけたらと思います。

それにしても、やっとクリアリのキスシーン書けました!ここまで長かった…!!やっぱこっぱずかしいですね
本当にありがとうございました。

663名無しさん:2017/11/18(土) 00:12:08 ID:gXm.bSbg
ある寒い日で小ネタを思いついたので置いときますね。

「うう、今日は寒い日だわ。クリフトー」
「はい、姫さま」
「手袋を脱いでちょうだい。私も脱ぐから」
「は…?手袋が何かありましたか?」
「いいから早く脱いでちょうだい」
「あ、はい」
「脱いだわね。よっ」
「ひ、姫さ…!!」
「冷たっクリフト手冷たいわよ。手袋つけてるのになんで?私より冷たいじゃない」
「ひめさmはなsてくだs」
「せっかくあっためてもらおうと思ったのに。しょうがないから私があっためたげるわ」
「……っ!!」
「クリフトどうしたの?なんか赤くなってない?」
「いえ、これは、その…っ」
「手をあっためてるのに顔があったまるってどういうことかしら。ヘンなの」
「……いえ、姫さまのおかげで全身があたたまりました」
「なにいってるの、私にそんなちからないわよ。クリフトったら大げさなんだから」

664名無しさん:2017/11/18(土) 00:52:13 ID:D/1bjsTo
乙です!

>>662
途中が空いたままで終盤を迎えたような、そうでもないような
ストーリーの流れ以前に、なんとも不思議な展開ですね
未完成のパズルに順不同でピースをはめていくのでしょう
早く完成図を見たいですがご無理のないように

>>663
発想が上手いですね
ふとしたきっかけで何かを思いついたときにクリアリに結び付けようってのがいいですね
クリアリのことが意識にあるからクリアリに結び付くんですから
クリアリへの愛がありますね

665名無しさん:2017/11/24(金) 19:40:44 ID:dwS9Vqh.
このスレ今どれくらいの人がいるのかな
ROMも入れればけっこういるのかな

666名無しさん:2017/11/28(火) 01:09:42 ID:Y8yjKdTs
偶然流れ着くのも難しい辺境の地、書き手がいることが奇跡といえば奇跡です
前スレが過疎ってから立った避難所ですし

667名無しさん:2017/11/30(木) 05:00:10 ID:YfEEFTtM
ハロウィンネタで書こうと思ったけど、ハロウィンよく分からないから無理でした
子供さんはともかく、子供さん以外がやることって仮装以外に思いつかないんですよ

668名無しさん:2017/12/04(月) 12:02:54 ID:Xx7hXIYQ
「お城の生活ってやっぱり退屈だわ。もうここには私の相手ができる人はいないし」
「……」
「でも、また旅に出たら……もう私のいないあいだにみんなに何かあるのはイヤなのよね……」
「姫さま……」
「そうだクリフト、私と勝負しましょうよ!」
「えっ?」
「この旅でクリフトも強くなったでしょ?私たちがどれだけ強くなったか確かめてみたいわ!」
「そ、そんな姫さま…!」
「さあクリフト、どこからでもかかってらっしゃい!」
「姫さま……恐れながら姫さま、私は今回の旅で昇天呪文ザキを使いこなせるようになりました」
「それがなによ」
「それはつまり、私と勝負するということは、最悪いのちを落とす危険性があるということです」
「だからなによ、クリフトがザキするまえにやっつければいいんでしょ?」
「そ……」
「そうでなくてもザキなんてよけてみせるわ。さあクリフト、かかってらっしゃい!」
「……………………」
「どうしたのよ!」
「姫さま……ひめさまとたたかうなんてわたしにはムリです。もうおゆるしください……」
「なによー、さっきザキするっていってたじゃない」
「おぬしら、玉座のまえで何をやっておるんじゃ。もうすぐ王が戻られるぞ」


クリフトがアリーナをうち負かすのにいっそザキでも使えればとかブツブツ言ってたのは
ザキが使えればそれを理由に打ち負かせられる(勝負も避けられる)と思ってたからかな。

669名無しさん:2017/12/09(土) 13:46:31 ID:S9BQIYO.
なるほどそういう解釈もあり得ますね
ザキ習得の動機について新解釈が出てくるとは意表を突かれました
そういう方向から掘り下げてSSを作っていくのも面白そうです
乙です

670名無しさん:2017/12/12(火) 22:53:06 ID:QNbFksbI
思えば570さんのストイックな治療ものがまだ投下されてないんですね
翌日になったら元に戻るクリフトなんて、あらすじだけでも心をつかんできます

671名無しさん:2017/12/16(土) 14:10:57 ID:P8GpQ726
木こりさんとソロさんの関係性は想像に任されている面が大きいんですけど、
ソロさんの置かれた状況とか考えると、一時的にせよ唯一の拠り所になった方ですから、
やっぱりソロさんとしては木こりさんに親近感を持つのが自然でしょうね
ソロが前を向いて次の一歩を踏み出せたのは木こりさんの力もあるでしょう

672名無しさん:2018/01/04(木) 11:44:21 ID:bIb948tE
あけおめ
クリアリ

673名無しさん:2018/01/04(木) 22:42:01 ID:K6yt.qhs
今年も良い年になりますように

678名無しさん:2018/01/22(月) 03:11:24 ID:JlTUMDlw
日本のバレンタインデーはチョコイベントになっちゃってますけど、
外国流のバレンタインデーでクリアリも捨てがたい気がします。

679名無しさん:2018/01/26(金) 02:18:57 ID:HoYuY.BE
男性から女性にチョコを贈るってのも最近では多いらしいです。
アリーナの手作りを手伝っていたらクリフトの手作りな状態になって、
なし崩し的にアリーナに贈ったみたいになるのも良い気が。

あの世界ではチョコじゃなくて別の物を贈る習慣というのも面白そう。
メッセージカードとか。

680名無しさん:2018/01/29(月) 03:23:16 ID:9jGa0BNQ
バレンタインデーは何か贈り物を贈りあうのが普通なんでしょうね
想い人と一緒にお菓子を食べる日とか設定を付けても面白そう

辺鄙な村のひな祭り→呪いの人形→ミステリーホラー
そんな雰囲気のクリアリ、どなたか書いてくれたら嬉しいです
無茶振りかも知れませんけど

681名無しさん:2018/02/03(土) 15:38:18 ID:ht.BFLxM
祝・クリアリつぶやきスレ新設!

共感を得られにくい特殊ネタなど、こっちに書きづらい話も書けそうです
会話を前提とせずに垂れ流せるつぶやきスレですから

682名無しさん:2018/02/12(月) 01:17:47 ID:xY0M1/zQ
バレンタインデーは想い人と一緒にお菓子を食べると幸せになれる日?

「大切に思ってるから」と、クリフトとブライと一緒に食べようとするアリーナ
「いや、そういう意味の日ではなく…」と顔をしかめるブライ
「こういう日なのです」と律儀に説明するクリフト
「いっそクリフトと結ばれた方がいいのかなぁ」とつぶやくアリーナ

そこから恋愛が始まっても良いかも知れません。

683名無しさん:2018/02/18(日) 02:26:10 ID:c90F54tg
クリフトが桜を好きだったが、色が地味なのでアリーナには魅力が分からず。
年齢を重ねてやっと魅力が分かったが、そのときにはクリフトはいない。
という切ない流れもいかがでしょうか?

684名無しさん:2018/02/18(日) 03:04:28 ID:c90F54tg
ほぼ同じネタが2年前に出ていたようです。
記憶の片隅に残ってたみたいです。

685名無しさん:2018/02/25(日) 21:19:50 ID:4Z42g8Ls
あの世界でひな祭りネタをやろうとすると辺鄙な村の風習が自然ではありますが
呪いの人形はともかくミステリーホラーは書きづらいかもですね…

686名無しさん:2018/03/17(土) 22:04:23 ID:mxeaBXWU
サントハイムに季節はあるんでしょうか。
暑くなったり寒くなったりするなら、そこからストーリーが生まれるかもしれませんね。

687名無しさん:2018/04/15(日) 01:00:39 ID:jJOj4xM.
サラン武器防具連盟による標語
「ちょっとまて! そんな そうびじゃ あぶないぞ!」

準備抜きで先へ行こうとするアリーナと、準備を重視するクリフト&ブライのやりとりを予感させます
そういったやりとりを通じてバラバラだった御一行にチームワークが生まれたりしてね

688名無しさん:2018/05/06(日) 23:29:42 ID:f/0yqmc.
クリフトの帽子って高さがありすぎるので、激しく動くと脱げると思います
戦闘前に兜を装備しているんでしょうか

わざわざ武器防具連盟の立札を設けておく親切さは絶妙です
ドラクエ4はうまく作ってありますね

689名無しさん:2018/06/18(月) 02:51:32 ID:QnWCykkU
2章の冒頭の敵の強さは絶妙で、武器防具を揃えていない場合には全滅しない程度に苦戦します

そこにサラン武器防具連盟による立て札の標語です
立て札の情報を無視した人に立て札の重要性を実感させる仕組みだったのかもしれません
アリーナたちは立て札を見て何を思ったのでしょうね

690名無しさん:2018/08/05(日) 15:53:36 ID:AoGy8YXo
皆様、熱中症にご注意を!

クリアリ×熱中症
あると思います。
アリーナが軽い熱中症になってクリフトが介抱するのが王道でしょうか。

691名無しさん:2018/09/13(木) 12:37:04 ID:fGT.JG2U
「あつい!あつーい!」
「姫さま、大丈夫ですか?」
「っもう、なんでこんなに暑いの!?今までこんな日なかったのにっ。あつーい!!」
「……姫さま、暑いといえば涼しくなるわけでもないでしょうに」
「クリフトちょっと手かして!」
「?…っ!ひ、ひめさま!?」
「あ、やっぱり。クリフトの手冷たい。ひんやり〜♪」
「〜〜△◎×っ!!」
「あれ、ちょっとクリフト、手だんだん熱くなってる。これじゃおでこ冷やせないじゃない」
「そ、そんな……熱いところに触れればそりゃ熱くなりますよっ」
「なーんだ、そっか。はい、手袋」
「あ…」
「じゃあクリフト、氷ぶくろを持ってきてちょうだい。それなら長く冷やせるわ」
「……はい、姫さま…」
「?クリフトなんかヘン。どうしたの?」
「い、いえなんでもっ!氷を取ってまいりますっ!!」
「??」


なんかちがう小ネタになった。

692名無しさん:2018/09/15(土) 04:27:17 ID:9XB1BWcU
乙です。
サントハイムが暑いとなると、テンペあたりが避暑地になりそうですね。
避暑地でも何かストーリーが生まれるのかも。。

残暑がもう1回くらい来そうなので、皆様お身体にはお気をつけて。

693名無しさん:2018/09/17(月) 13:41:36 ID:u0ec1omA
クリアリ成分が足りない!!
堅苦しい理屈とかうんちくとかなしにしてさ、もっとこう、

クリフト「姫さま好きじゃーー!!」
アリーナ「ちょちょっとクリフトどうしたの!?」
周り「ニヤニヤ」
アリーナ「ご、ごめんなさいこの人ちょっと酔ってるんです!お部屋に連れていくわ!」
〜翌日〜
クリフト「姫さま、昨夜は大変失礼いたしました…」
アリーナ「ほんとよもうっ」
クリフト「周りの方々の視線が気になるのですが、私は昨日何をしたのでしょうか。記憶がどうも…」
周り「ニヤニヤ」
アリーナ「え、クリフト覚えてないの!?」
クリフト「え、そんなに何かひどいことをしたのでしょうか!?」
アリーナ「(なんだ、クリフト覚えてないんだ…)」
クリフト「(わ、わたしはいったいなにをしてしまったのだ…!?)」
周り「ニヤニヤ」
ブライ「まあ、あのアホたれのおかげで結果的に姫さまの飲酒は免れたからよしとするかの」

とかさ、最後のブライなんて別になくてもいいからさ、もっとこう、
クリアリきゃーみたいなはっちゃけたノリもほしいよ!!
この板なんか冷静な雰囲気強くて自分だけはっちゃけるの寂しいYO!!

694名無しさん:2018/09/17(月) 13:50:21 ID:u0ec1omA
ちょっと下ネタ注意

「やだやだ今日のお洗濯は自分でやる!」
「何をおっしゃるのです姫さま、いつも私がしているではありませんか」
「今日だけはダメっ!」
「ふむ、よくわかりませんがもうまとめて浸けてありますので」
「きゃああっ」
「……どうしたのです姫さま?今日はいつもとずいぶん様子が……」
「……だって今日……」
「?」
「……今日、月に一度のあれになっちゃったのっ!」
「……」
「だからあんまり見てほしくなくって……」
「……」

ぶはあっ!!

「きゃああっクリフトどうしたの!?」

旅に出てからの洗濯事情よくわからんけどノリで書いた

695名無しさん:2018/10/08(月) 03:29:25 ID:HBrvXdUY
乙です

ほぼ入口のない孤島ですから過疎になるのは致し方なし
まったり運用と前向きにとらえるべきでしょう

696名無しさん:2018/10/08(月) 04:04:29 ID:HBrvXdUY
個人的には色々な作風があれば良いんじゃないかなと

このスレ、2chから派生しているからなのか派生元スレの過去の経緯からなのか、
空気を読めという空気というか空気を乱すなという空気は強めな印象なんですけど、
作品に対しては性描写を含むなどのNG事項に触れない限り許容範囲が広いですね
ウザがられそうな妄想でさえも、つぶやきスレで垂れ流すなら問題なさそうです

697名無しさん:2018/12/10(月) 04:42:50 ID:CutsTV2E
お城のクリスマスも旅路のクリスマスも。
クリフトとアリーナはどんなクリスマスを迎えるんでしょうね。

698名無しさん:2019/02/09(土) 00:32:39 ID:LrEIIavo
570さんの思い描くストイックなクリフトって、どういうストーリーだったんでしょうね
ご本人の投下がないまま話題が終わってしまった感

699名無しさん:2019/07/14(日) 11:43:29 ID:sgbN6/Ys
サントハイムに梅雨があったとしたら、それはそれでドラマを生みそうな予感が。
アリーナは晴天でも外に出してもらいにくいのでしょうけど、それでも気分は変わりますよね。
灰色の雲、終わらない雨。
同じ雨を別の場所で見ながら、クリフトとアリーナが物思いにふけるとか。
幼少の頃に聞いたおとぎ話を思い出すこともあるでしょう。

降り続く雨って、それだけで物語を生みそうな雰囲気をまとっています。
クリフトとアリーナにどんな物語が生まれるのか考えてみるのも楽しそうですね。

700名無しさん:2019/08/23(金) 12:09:45 ID:PS7ebXzw
2ch(5ch?)のクリアリスレがなくなって寂しい思いをしていたら
こんなところにこんな素敵な場所があったのですね…!
ごあいさつ代わりに小ネタを1つ。

701名無しさん:2019/08/23(金) 12:17:06 ID:PS7ebXzw
「アリーナ、お前は一生結婚しないつもりなのか?」

持ち込む見合い話を片端から蹴られ続けている大臣に泣きつかれ、
サントハイム王は、ある日、娘とのお茶の時間を利用して尋ねてみた。

「そんなことはないわ。良い人がいれば結婚したってかまわないのよ。」
にっこり笑う娘にサントハイム王は溜息をついた。
「そもそもお前の言う『良い人』の条件はなんなのだ。」
「そうねえ、当然、私よりも強くなくっちゃ!」
「…この地上でそんな生物は、ピサロか勇者殿くらいですじゃ。」
傍らに控えていた宮廷魔術師が、小さな声で突っ込んだ。
「あら、その2人にだっていつか勝って見せるわよ!…でも、そうね。ピサロは問題外だし
ソロも伴侶って感じはしないわね。だいたいソロにはシンシアさんがいるし。」
「それでは結局、結婚する気はないというのと同じではないか?」
眉根を寄せた父親に、アリーナは肩をすくめた。
「まあ、私より強くなくても、少なくとも組手の相手くらいはしてくれないとね。」
「…その条件でも、当てはまるのはごく少数ですじゃ…。」
「ふむ。それ以外にはないのか?お前と同じくらい強ければ良いと?」
「うーん、あとは、お互いに助け合っていける人かな。夫婦なんだし。」
「お前の傍にあって、お前を常に支えてくれる存在、か。」
「それは立場上、私の方が支えられることは多くなっちゃうかもしれないけど…
でも私だって相手をサポートしたいわ。お互い様だもの。」
「例えば、無理してぶっ倒れた相手のためにパデキアを探したり…とかですかのう。」
「ん?何か言った、ブライ?」
「いえ、何でもありませぬ。」
うそぶく宮廷魔術師を王は軽くにらむと、娘に向き直った。

702名無しさん:2019/08/23(金) 12:22:16 ID:PS7ebXzw
「強くてお互いに支え合って…か。見た目の話がないが、そこはどうだ?」
アリーナは考えるように頬に指をあてた。
「うーん、そうねえ…別に見た目は特に…あ、でも、だらしなくぶよぶよに
太ってるとかは嫌だわ。でもそれは見た目というより鍛錬の問題よね。」
「細身で締まっている体つきがよいということですかな。」
「うん?まあ、そんな感じかなあ。」
「顔は?不細工でも構わないと?」
「ええ、それは構わないわ。でも、笑顔が似合う人だとうれしいかな。」
「いつも姫様に会うたびに満面の笑みを浮かべ…」
王は咳払いしてブライの言葉をさえぎった。
「性格はどうだ?やはり男らしいタイプがいいか?」
「うーん…なよなよじゃ困るけど、ことさらに男らしくなくてもいいわ。」
「ということは、優しい方が良いということですかな。」
「お前をこれ以上甘やかすような男じゃ困るぞ。」
「『これ以上』って何よ、お父様ったら。でもそんなの私だっていやだわ。
言うべきことはちゃんと言ってくれないと。」
「姫様のご身分にかかわらず、くどくど叱ってくれる人、と。」
「…ブライ。」
「いやいや、王よ、老人の独り言ですじゃ、お気になさらず。」

お茶会も終わり、アリーナが出て行ったあと王は宮廷魔術師をじろりと見た。
「…何も言わんでよい。お前の言いたいことは分かっておるわ。」
宮廷魔術師は澄ました顔で答えた。
「あの条件にあてはまる人間は、世界広しといえどもあやつしかいないでしょうな。」

王は大きく溜息をつくと
「まあ、こうなることは初めから分かってはいたが…。」
苦笑いしながら、城に住む神官を呼び寄せるため、卓上の鈴を取り上げた。

703名無しさん:2019/08/23(金) 12:28:26 ID:PS7ebXzw
以上です。
まあこんな安直には行かないとは思いますが…というよりむしろ結婚に至るまでに
いろいろと障害があった方が個人的には萌えるのですが…小ネタということでご容赦を!

704名無しさん:2019/08/26(月) 16:25:49 ID:cgJ4Iq2k
まだまだ暑い中、乙です。
ブライさんが核になると安心感がありますね。
真夏のかき氷のように、ほっと一息。

紆余曲折があってもなくても、それぞれの魅力があり。
どちらも良いですね。

2chのあの場所は惜しかったですね。
文句ばかりの人や空気読まない人のせいで…。
最初から避難所があれば良かったのか…。

705名無しさん:2019/09/01(日) 20:11:47 ID:tp8m7jC2
初めてたどり着いた ここは楽園か

706名無しさん:2020/10/12(月) 01:50:32 ID:OHanocs.
コロナのような疫病にパデキアが効かなかったら、
サントハイムも苦労するのでしょうし、
アリーナやクリフトも苦労するのでしょう


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