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FFDQかっこいい男コンテスト 〜ドラゴンクエスト4部門〜

1名無しの勇者:2002/10/18(金) 20:17
DQ4の小説専用スレです。
書き手も読み手もマターリと楽しくいきましょう。

*煽り荒らしは完全放置。レスするあなたも厨房です*

18今宵、君は満月を見上げる【6】:2003/06/07(土) 22:32
 ソロが初めて泣いたのは、背に走る傷痕のことを話した時だ。
 人間に襲われかけたロザリーを庇って出来た、とただ事実を語っただけなのに、ソロは静かに泣き始めたのだ。
(なぜ、泣く?)
 自分を傷つけた側に属する彼が泣くのは不思議だった。傷を負った時より狼狽している自分にピサロは気付く。
(…イムルの村でも夢で見たけど…っ、あんなことをされたり、こんな傷を負わされたりして…あんたが人間を憎むのは当然かも、しれない)
 そう言って傷痕を指先で優しく辿る。
 ソロをそっと抱き締め、頬を濡らす涙を拭い取りながら、不思議な感情が徐々に覚えのある感情に変化していくのをピサロは感じていた。
 とても優しくて、柔らかい感じ。まるで今夜の月明かりのような――今思えば、これがソロへの恋を自覚した瞬間だったのだろうか。

19今宵、君は満月を見上げる【7】:2003/06/07(土) 22:32
寝室の大きな窓から、満月の優しい光が射している。
 ソロは一睡もできずに、ベッドに座って空を眺めていた。ピサロがロザリーの元に行っているときはいつもそうだった。
 ひとり寝が出来なくなったのは、多分ピサロと寝るようになってから。故郷が滅ぼされシンシアも死に、七人の仲間と出会って、元々得意ではなかった人付き合いに疲れていた頃、ピサロに出会った。
(シンシアは俺をどう思っているだろう)
 敵である男に抱かれ、彼なしでは眠ることすらできなくなった自分を。
 考えていた復讐すら実行できずに、彼の顔色を窺う日々――だが幸せだった。
 ピサロが人間を嫌いだと言っていても、自分を抱く腕は優しさに溢れている――それが分かるから。
 だから今、彼の腕を離したくなかった。
(ピサロが早く戻ってきますように――)
 心の中でだけ願うから、だから叶えて下さい――ソロは静かに満月に祈った。

20今宵、君は満月を見上げる【8】:2003/06/07(土) 22:33
夜明け近くなった頃、寝室の扉が微かな音を立てて開いた。ソロははっとして振り返る。
「今、戻った…」
 ピサロが相変わらずの無表情で立っていた。が、ソロの頬に残る涙の跡に気付いて、怪訝そうな顔でベッドに駆け寄ってくる。
「…泣いていたのか…それに瞳も赤い」
「あ、うん…ちょっと眠れなくて」
 理由は言いたくなかったから、ソロはすぐに話題を変える。
「それより、何でこんなに早く戻ってきたの?」
 自分の密かな祈りが通じたのだろうか。ロザリーの元へ帰ると三週間は戻ってこないのが常だった。ピサロはソロの隣に静かに腰掛けて、口を開いた。
「ロザリーとは、もう会わない」
「え…?」

21今宵、君は満月を見上げる【9】:2003/06/07(土) 22:33
 それってどういう、こと?――ソロの言葉を遮って、ピサロは続ける。
「彼女に言われたよ。私の心には他の誰かがいる、と」
「他の…誰か?」
 ピサロの言葉を反芻する。不安な気持ちが沸き起こって、ソロは思わず目を伏せた。そんな彼の頬をピサロは優しく撫でる。
「正直言って人間は今でも好きになれない…だが、お前は別だ」
「ピサロ…それって」
 『他の誰か』ってもしかして――不安と微かに湧き上がる喜びで瞳を潤ませながら、ソロはピサロを見上げた。彼は微かに微笑む。
「ソロを――愛している」
 一呼吸置いて告げた。
 ソロの瞳から涙が溢れる。ごしごしと擦るソロの手を取りながら、ピサロは彼の気持ちを無視していたと今更気付いた。
 そんなピサロの様子が分かったのか、ソロは微笑んで言う。
「悲しくて泣いてるんじゃないから」
「…では、お前も?」
 答える代わりに、背を伸ばして彼にそっと接吻けた。
 人間の涙には色々な想いが込められているのだな――長い接吻のあと、ピサロはしみじみそう言ったのだった。

22今宵、君は満月を見上げる【10】:2003/06/07(土) 22:34
「あ、実はこれから、マーニャさんとミネアさんが来るんだ」
 ピサロに押し倒されたソロは、シャツの裾から差し入れられたピサロの指先を押し留めながら言った。
「マーニャさんが、またエンドールのカジノで…モンバーバラへの船賃を…スっちゃったって」
 当分泊めて欲しいんだって、だから準備をしなくては、とソロは名残惜しそうにピサロの腕を抜けようとする。
「奴らが来るのか…」
 ピサロの脳裏に、やたら露出度の高い服を着て秋波を送ってくる姉とソロに近づく自分を胡乱げな瞳で自分を見る妹の二人が浮かぶ。彼女達のことはやはり好きになれないが、ソロには黙っておこう、と彼は思った。
「まぁいい…エンドールからならまだ時間が掛かるだろう」
「でも…」
 うなだれるソロの腕を取り、再度ベッドに押し倒す。
「今、欲しいんだ、お前が」
 お前が私の腕の中にいると実感したい――ピサロに告げられて、ソロは観念したようにピサロの首に腕を伸ばした。
 愛されているという喜びを感じながら――。

xxx a happy endeing xxx

23雫夜:2003/06/07(土) 22:38
ピサ勇完結です。
タイトルを少し変えましたが同じ話です。
今回は心理描写重視を目指してみましたが…玉砕(w
それではDQ3と6の方に戻ります。
ナンカエチーガカキタイキブン…。

24名無しの勇者:2003/07/01(火) 16:06
栗受け読みたいor書きたい
PS版やるかな

25檻【1】:2003/07/22(火) 18:43
 豪奢な造りの姿見には、全裸で下肢だけ女物の衣服を巻き、しどけなく口を開いている男が映っていた。その背後には彼よりも少し若い男――少年というべきだろうか――が座り、恥らう男の様子を揶揄するかのように薄く笑っている。
「あんたってホントにアリーナが好きなんだね。クリフト? 包んだだけで、」
 言って少年は服の上から男の中心を軽く撫でる。クリフトと呼ばれた男はその僅かな刺激にさえ身体を震わせ、喘ぎが漏れないよう唇を噛んでいた。
「…っぅく…ん」
 彼の漏らした体液が、アリーナの衣服に大きな染みを作っていた。少年の指が確かめるようにそこに触れる。
「挿れてないのに、こんなに濡らしてる…」
「あの、わ、私は…っ」
 少年の言葉にクリフトは狼狽する。恥ずかしそうに俯く彼に、少年は満足そうな笑みを見せた。
「あんたの仕える神様は、こんなことはしてくれないよね」
 気持ちいい? 少年はそう言って、指先で触れていた染みに爪を立てる。敏感になっていた先端は、あっけなく達した。
「あ…んっ」
 小さく喘いで、熱を吐き出す。布に覆われて見えないが、どくどくと溢れ出しているのが分かった。
 長い放出の後でぐったりとしているクリフトに、少年は命令する。
「服、外してよ。それからあんたがいつもオレを咥え込むところが鏡に映るように、膝立てて」
「できません…っ。いやです、勇者殿っ」

26檻【2】:2003/07/22(火) 18:44
 自分の浅ましい姿を想像したせいか、クリフトは涙を浮かべながら哀願する。
 勇者と呼ばれた少年は途端に不機嫌な表情になり、背後から指先でクリフトの乳首を抓った。
「ひぁ…んっ」
「この前教えたよね? 二人だけのときは名前で呼べって」
 おしおきだよ、と勇者は耳元に囁いて、乳首を更に揉みしだく。そこは鏡越しでも分かるほどぷっくりと紅く勃ち上がっていた。
「も…やめて、く、ださい…んっ」
「乳首を少し弄っただけなのに、またここが勃ってきてるよ」
 クリフトの抵抗など知らぬふりで、まだ布に包まれたままの彼の中心を指で弾いた。クリフトは喘いで身を震わせる。
「分かった。いいよ、服は外さなくても。その代わり、肩を落として腰を高く上げてよ。あ、オレにだけ見えるように、ね」
 尻を突き出すようにしろというのだ。鏡に映すのと変わらない勇者の仕打ちに、クリフトは思わず首を振る。
だが勇者は薄く笑っただけだ。あんたに拒む権利なんてないよね――そう言って。
「アリーナがあんたの今の姿を見たら、何て言うかな。男に触られて弄られてよがってるあんたを見てさ…」
「う…くぅ…んっ」
「ついでにクリフトを包んでいるのがアリーナの服で、それもクリフトが君の部屋から持ち出した、なんて言ったら、アリーナは――」
「やめ…っ、もう、言わないで…っ…くだ、さい」
 クリフトは観念したかのように身体をゆっくりと前に倒す。勇者はそんな彼の様子を見て、嘲笑った。

27檻【3】:2003/07/22(火) 18:44
「アリーナの名前は、あんたを黙らせるのにホント効果あるな。っと、そのまま両手で、挿れて欲しいところが見えるように開いて」
「…っ、く、ふ…っ」
 勇者が命じたように、両手で自分の尻を広げるようにする。彼を受け入れる場所が空気に触れて震えた。
「いやらしい眺めだね。あんたの襞、紅く蕩けてひくついてるよ…まだ何もしてないのに」
 クリフトはあえて勇者の言葉を無視し、囁くように言った。
「もう、やめましょう…こんな、ことは、もっとお互いを…っ、虚しくするだけ、です」
 クリフトの懇願を勇者は鼻で笑う。彼は太く滾った自身を、収縮を繰り返すクリフトの蕾に押し付けた。その熱さに、クリフトは身悶える。
「また、あんたのお説教? あんただって挿れちまったら、あんあん喘ぐだけのくせに」
 しかしクリフトは残った理性を振り絞るように、根気強く勇者に訴えた。
「今なら、神も…っ、私たちの、あやまちを許して、くださる、でしょ…う。
そうして、救い、をっ…」
「うるさい!!!」
 勇者は激昂し、そのままクリフトのなかに自身を突き入れた。ローションを使わず、指で慣らされることもないままの挿入が、クリフトに痛みをもたらす
「ひ、あぁん…っ、あ」
「むかつく…。オレの前で神とか言うな。前にも言ったが、オレは神なんか信じていない。シンシアを見捨てた神なんて…許さない!!」
 唸るように言う勇者に、クリフトはもう掛ける言葉がなかった。
「ゆ…しゃ、どの、あ、あぁ…や、ぁ…んっ」
怒りに任せて、彼は強引に腰を使う。その激しさにクリフトは遂に理性を手放した。

28檻【3】:2003/07/22(火) 18:45
 ミントスで高熱を出して倒れたクリフトに、パデキアの根っこを与え助けてくれたのは、まだ年若い少年だった。
その少年は以前、コナンベリーを苦しめていた灯台の魔物を倒したことから、町の人に『勇者』とあだ名されていた。その呼び名は、彼の仲間内ですっかり定着しているらしい。
あなたに出会えたことは神のお導きに違いない――助けてくれた礼を共にそう言ったクリフトを、勇者は嘲笑った。
(神なんて、いるわけないよ。ただみんなが勝手に拝んでるだけじゃないか)
 神官として長い間、神に仕えてきたクリフトには勇者の言葉が信じられなかった。
(でも、あなたが大灯台の魔物を倒せたのは――)
(神のおかげじゃない。実力だよ、オレの)
 クリフトの言葉を遮り、勇者が言った。じゃあさ、と彼は続けた。
(証明してみせてよ、オレに)
(え?)
 戸惑うクリフトに、勇者は暗い笑みを見せる。彼は無言でクリフトの衣服に手を掛け、引き下ろした。

29雫夜:2003/07/22(火) 18:46
>>28は【4】でつ。スマソ。

30雫夜:2003/08/03(日) 01:47
訂正です。
【1】で文章が抜けてるところがありました。
>「あんたってホントにアリーナが好きなんだね。クリフト? 包んだだけで、」
の後に、『もう、こんな風になってる』が入ります。

31檻【5】:2003/08/03(日) 01:48
(なに、するんですか?!)
(だから、証明してもらうんだよ。あんたに)
 二人はミントスの宿屋の屋上にいた。彼ら以外は誰もいないのが、せめてもの救いかもしれない。
 下着はまだ纏ったままとはいえ、夜気の冷たさにクリフトは身震いする。
勇者は彼の背を壁に押し付け、耳元に囁いた。
(これからあんたを犯してやるよ)
(お、犯すって、私たちは男同士、ですよ? それに私が仕える神は男色を禁じていて――)
 怯えるクリフトを頭一つ分高い位置から見下ろし、勇者は笑った。
(あんたの神様が正しくて、いつも見守ってくれるっていうんなら、こんな状態のあんたを助けてくれるだろ?)
 そんなことはありえないけどね、とくすくす笑いながら、勇者はクリフトのうなじに唇を這わせる。冷えた肌に彼の唇は驚くほど熱く感じて、それだけでクリフトは喘いだ。
勇者の手は下着を取り去り、クリフトの下肢に触れた。嘲る口調とは裏腹の彼の優しい仕草が、クリフトを撫で、高めていく。
(神様、助けに来てくれないね)
 クリフトの状態を揶揄するように、勇者が笑いながら言う。
(あんた、もうこんなに濡らしてるのに、まだ助けて欲しいとか思ってる?)
(ん…あっ、ん)
 先端に爪を立てられ、クリフトは喘いだ。そのまま勇者の指先は彼の雫を拭い取り、後ろへと伸ばす。
(ひっ、い、痛っ…やめ、て…っ)
 指を一本、なかを抉るように挿入され、クリフトの目尻に涙が浮かんだ。
(慣れてきたら、痛くなくなって、気持ちいいって思えるようになるよ)
 痛みに震えるクリフトのおとがいを撫でながら、勇者は優しく告げる。
慣れない行為に麻痺してしまったクリフトの涙腺は、静かに大粒の涙を頬に零した。

32檻【6】:2003/08/08(金) 23:48
勇者はクリフトの涙に一瞬戸惑ったようだがやめようとはしなかった。
なかの指を二本三本と増やされていく度に、クリフトの喘ぎも悩ましいものになっていく。遂には立っていられなくなって、ずるずると床に崩れ落ちた。
(あん…はっ、あぁっ、あ)
(気持ちいい?)
 力なく床に倒れこんでいるクリフトを見ながら、勇者がうっすら笑う。
クリフトは声を発せず、ただ荒く息を吐くことしかできなかった。
(これだけ解せば、大丈夫かな)
 なかに挿れていた指をゆっくり引き抜いて、勇者は、クリフトの膝を抱え上げる。
(いや、です。こんな、の…)
 自分がどんなにはしたない格好をしているのかがクリフトには分かって、力の入らない手足で必死に抵抗を試みた。だが勇者によって難なく押さえ付けられてしまう。
(後ろからの方が多分痛くないと思うんだけど…今、暴れたからやめた。前からあんたの恥らってる顔を見ながら犯してやるよ)
(や…っ)
 低く笑って、勇者は自身をクリフトに突き入れる。
 指とは比べ物にならない質感に圧倒され、なかを擦られる感触に身悶えた。
(あぁんっ…っは、ん)
 勇者が言った通り、クリフトの身体は挿れられる痛みを快楽に変換するようになっていた。。
 ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てて擦られると、強引にこじ開けられた蕾は快感に震えて収縮する。
(も…ゃ、あぁ…っ、んぁ、っ)

33檻【7】:2003/08/08(金) 23:51
 もう、助けて欲しいなんて思わないだろう? ――熱い吐息混じりで囁かれ、それだけで耳元は紅く染まる。
(私は――)
 神のことなど、いつの間にか頭から消え去っていた。
 禁じられていた男色に耽って、その快感の凄まじさに喘いでいる自分。
 神に許しを請う資格など既にないことを知りながら、心では免罪の聖句を呟く。
(私は――堕ちて、しまった)
 そんなクリフトの動揺に気付いたのか、勇者は腰の動きをそのままに、空いた指先で彼の左胸を摘む。
(あぁ――んっ)
 軽く摘まれただけなのに、それだけでクリフトの思考は真っ白になり、なかの勇者を締め付けてしまう。
 大きく喘いでしまってから、自分たちが外にいることを思い出した羞恥と、快楽に耽る自分への情けなさからか、クリフトの目尻に涙が浮かんだ。
(何、考えてたの?)
(…っ)
 隠しても無駄だった。勇者は気付いている。
 意地悪く微笑んで、クリフトを見下ろす。
(少し弄っただけなのに…こっちの胸だけ、すごく紅くなって膨らんでる)
 そのまま指の腹で尖った先を撫でられて、切なく喘ぎながら身を捩る。
(う…くふぅ…ん、ぁんっ) 
 勃ち上がったクリフト自身が勇者の腹に触れて、放出が近いことを訴えた。だが逆に彼はクリフトの根元を握りこんでしまう。
(ゆ…しゃ、ど…の…っ?)

34檻【8】:2003/09/04(木) 18:27
 達かせてもらえず、下肢に熱が溜まったままで苦しそうにクリフトは勇者を見上げる。犯されてから初めて彼を呼んだ、と半ばぼんやりとした頭で思った。
 根元を握る手の力を緩めないまま、勇者が訊いた。
(達きたいんだろ?)
(ん、ふ…っ)
(答えなきゃ、達かせてやんない)
 握る力を更に強くされ、クリフトは身を捩った。
(ゃ、はぃ…ん)
 小さくクリフトが呟く。もう神のことは頭にはなかった。身体の中の熱をどうにかして欲しい――その欲求だけが彼を支配していた。
(じゃあ、オレのことを名前で呼んでよ。知ってるよね?)
 そうしたら、達かせてあげる――囁くように勇者は言った。
 クリフトが頷くのを確認して、彼は握った手を緩め、止めていた動きを再開する。すさまじい快楽に意識が遠のきかけていたクリフトも、勇者の背に両腕を回した。
 突き上げられ、襞を擦られる度にクリフトは切なく喘ぎ、小さく勇者の名を呟く。彼の背にも気付かないまま爪を立てていた。
(あぁ―――っん…)
 勇者が最奥を突き上げるのと同時に、クリフトは細い悲鳴を上げて達する。その瞬間、勇者も強い力で締め付けられ、クリフトのなかに熱を注いだ。
 達して身体の力を抜いたためか、勇者がクリフトの上にゆっくりと覆い被さる。まだ繋がったままの下肢が、ぴちゃりと濡れた音を立てた。
 クリフトのうなじに顔を寄せた勇者が、愛しげに呟く。
(シンシア…)
 その目は虚ろで、クリフトではない誰かを見ているようだった。
 誰のこと、と訊きかけたが、勇者は既に寝息を立てていた。
 初めて勇者に犯された、ミントスでの夜。
 神の教えを破り、禁じられた男色の快楽に浸ったことと並んで、勇者が呟いた知らない女性の名前が、クリフトを何故か不安にさせた。

35檻【9】:2003/09/07(日) 22:10
 窓から差し込んだ朝日の眩しさで、クリフトは目覚めた。
どうやら昨夜、鏡の前で犯されたあと、気を失ってベッドに運ばれたらしい。焦点の定まらないクリフトの目に、ようやく上から覗き込んでいたらしい勇者の姿が映る。素肌にシーツを纏っただけのクリフトと違い、既に彼は服を着ていた。
 何も着けていない身体には、特に胸元に紅い鬱血がぱらぱらと散っている。昨夜の激しさと自分の浅ましさを訴えているようで、クリフトは頬を染めながらシーツを手繰り寄せた。
「あんたを居間から寝室まで運ぶの大変だったんだからな。全然目、覚まさないから困った」
 勇者はふてくされたようにそう言って、クリフトから背を向ける。身体は清められていて、勇者がタオルで拭ってくれたのだと分かった。
 その彼の背中に小さく、すみません、と呟けば、ふぅ、とため息とも取れない返事が返ってきた。
 勇者の故郷の村に程近い木こりの家に、この地方の偵察という名目で彼らは数日前から宿泊している。主の木こりはブランカへ行商に出てしまったため、ずっと二人きりだった。
(ミントスの夢、か)
 あのときは勇者の行為が、そしてそれを受け容れてしまった自分が嫌で嫌で堪らなかったのに、今では彼の手に触れられ堕ちることを望むようになってしまっている。

36檻【10】:2003/09/07(日) 22:11
 お互いを虚しくするだけ――勇者に言ったその言葉は真実だと思う反面、彼を拒めない理由が自分の中にあることもまた事実だった。
(醜い感情が私の心に巣食っているのは…神がくだされた罰だろうか)
 シンシアという女性が、勇者の故郷の村に住んでいた幼なじみだということも、後になって知った。彼が故郷と共に喪った大切な恋人だったということも。
 ここからそう遠くない場所に、彼女は眠っている。そのせいか感傷的になっている自覚はあった。
 シンシア――勇者が達するときに囁く名前に、胸を焦がされるようになったのはいつからだろう。

「――悪かったな」
「え?」
 不意に呟く声に視線を向ける。勇者がいつの間にかこちらを振り返っていた。
「ちょっとオレも…やり過ぎた。あんたが意識飛ばすなんて思わなくてさ」
 その物言いに何故かクリフトの方が気恥ずかしくなって、彼から視線を逸らして俯く。
「……」
 頬が染まっているのが自分でも分かった。勇者にはおかしく見えているだろうと思ったそのとき、屈み込んだ彼が指先でクリフトの頬に触れた。
「顔が少し赤いけど、熱でもあるの? つーか、身体、動かせる?」
「いえっ、別に。大丈夫、です」
 いたわるような仕草に、クリフトはかえってあおられる形になる。反動で少し身体が動いて、腰に疼くような痛みが走った。
 かろうじて声は上げなかったものの、一瞬顔を歪めたのは勇者に伝わったらしい。

37檻【11・ラスト】:2003/10/31(金) 23:53
 ふぅ、とため息を吐き、指の腹で軽く頬を撫でたあと彼は立ち上がった。
「あんたさ、今日は寝てていいよ。ま、半分はオレのせいだしね。それと大丈夫じゃないときはそう言えよな…神様が全部分かってるわけないんだから」
「え…っ?」
「無理はするなってこと」
 クリフトの反応をよそに彼は、何か飲むもの持ってくるから、と 部屋を出て行った。
今の自分はどんな表情をしているのかと思う。
(…憎めたら、いいのに。彼を憎み切れたなら、どんなに…っ)
 何も知らなかった身体を強引に拓かれ、禁じられた快楽を知ってしまった。旅を終えてサントハイムに戻ったら、いずれ国を継ぐであろうアリーナを支え、神官として残りの生を過ごす――勇者に出会う前はそう考えていたのに。だが抱かれる悦びを覚えた自分に、もうそんな生き方ができるとは思えなかった。
「……っ」
 溢れた涙は頬を伝い、寝台の上で握り締めた手の甲に零れ落ちる。
 いっそのこと、勇者が自分を物のように扱ってくれていたら良かったのに。
 体温を持つ己の肉体さえ疎ましいほどに、そう思う。
 クリフトが失神するまで苛め尽くすくせに、いつも情事の後の勇者は酷く優しい。だから戸惑ってしまうのだ。
 シンシアという名を耳元で囁かれる度に沸き起こる醜い感情――その理由ももう分かっていた。
「…き…です」
 一生伝えることはできない彼への想いを、涙混じりに口にする。
自分たちの関係が禁忌だと勇者に訴え続けるのは、もはや神に赦されたいからではない。
旅の終わりに、自分から彼の手を離せる自信がないから。
(勇者殿には笑われるだろうか。私はあんなに嫌がっていたのに、と)
 虚しい関係だと思う。我ながら浅ましいとも思う。
だがそう思われても、クリフトは未だ彼の腕に囚われることを願った。
飲み物を運んできたと思われる勇者の足音が、クリフトの耳に届く。
 涙を拭い、赤く腫れた目をそっと伏せる。
自分の涙の理由に、優しい勇者は気付いてしまうだろうから。
(罰を受けるのは、どうか私だけでありますように――)
 心の中で、静かに祈った。

〜終わり〜

38名無しの勇者:2004/12/19(日) 23:52
クリフト受け今更ながら凄い萌えるなぁ・・・・

39名無しの勇者:2004/12/23(木) 00:56
PS化バンザイですわ。
FCの頃はクリフト受けなんて殆ど無かったもんなー。

40名無しの勇者:2004/12/24(金) 15:12
いたストのクリフトはまじ可愛らしくて受けうけしさ全開で萌だ
これを気にクリフト受が増えるとよい
ジャンルの生垣を超えて・・・・
クククリとか(笑

41名無しの勇者:2005/01/14(金) 02:52
いたストでククに「せっかくだから楽しもうぜ。なあ、クリフト」
と言われた時はどうしようかと思った。

42名無しの勇者:2007/11/19(月) 23:37:06
DS化でここが賑わってくれるといいなぁ…。
で、やっぱりクリフト受が増えるといいんだけど…。

43名無しの勇者:2008/01/08(火) 14:12:26
勇クリすごく萌えますた
随分前のSSみたいだけどどうもありがとう

44どくがのナイフ1/3:2008/01/13(日) 00:04:02
勇クリです。


「やっぱりここに居た!
 クリフトさんはみんなと飲みに行かなかったんだ?」

 僕が部屋に戻った時、クリフトはベッドに腰掛けて荷袋の中を整理してくれていた。
 芸人のパノンさんが仲間になってくれ、「歓迎会をするわよ!」とマーニャが今夜、
仲間全員を酒場へ強制連行したはずだったんだけど。

「あー、私はお酒が苦手なので…。
 先日もみなさんにご迷惑をお掛けしましたから。」
「あれは病み上がりなのにマーニャが『あんたたちの歓迎会なのよ!』って
 クリフトに無理矢理飲ませたからでしょう。」
「あ、じゃあ、今日はパノンさんが…。」

間違いない。マーニャさんに絡まれている。そう思ったとき、クリフトと目が合って
僕らは思わず吹き出してしまった。

「でも、クリフトさんはつぶれたって構わないけど。
 ライアンさんやトルネコさんを背負って歩け、と言われたら
 さすがに泣くかもしれないけどさ。」

 実際、クリフトがつぶれた時、宿まで背負って歩いたのは僕だ。
僕より年上なのに

びっくりするほど軽くて、

あと、びっくりするくらい顔も手も綺麗に薄ピンクに染まってて、

こんな絵になる酔っ払いを見たのは初めてだと思ったんだ。

45どくがのナイフ2/3:2008/01/13(日) 00:07:31
「勇者さんもこっそり抜け出してきたんですか?少し赤いみたいですけど。」
 クリフトがさっきの笑いを顔に残したまま、僕を覗き込んでくる。
「うん、ちょっと飲んできたけど。」
 でも顔が赤いのはそれだけじゃないだろう。

「酒場は他に大勢お客さんがいてさ、マーニャとミネアが帰ってきてるって盛り上がってて。
 あ、手伝おうか?」
「ああ、いえ。もうすぐ終わりです。ありがとうございます。」

 今夜の宿泊地はモンバーバラだ。みんな今日のうちに帰ってこれるか分からないな。
僕はクリフトが荷物の整理をしているのを椅子に座ってぼんやり眺めていた。
あ、と、言うことは今夜はこの宿でクリフトと2人きりになる、ということか。

「ああ、やっぱり満月草がもう切れてますね。
 予備用に明日、出発前にでも道具屋で買ってきておきます。」
「えー。ミネアがキアリク覚えてるから大丈夫なんじゃない?」
「ああ…そうですね。私達だけで旅をしている時は誰もキアリクを唱えられなかったので
 満月草が必需品だったんです。」

 やはり、仲間が増えるとありがたいですよね、とクリフトさんはまた嬉しそうに笑った。
ミネアさんに甘えてばかりはいられないから私もキアリクを覚えなくては、と言いつつ、
続けて今度は1本の短剣と杖を取り出した。

46どくがのナイフ3/3:2008/01/13(日) 00:12:14
「これ、今日の戦闘で魔物が落としたんですけど、こちらはまふうじの杖だと思うのですが、
 こちらは何の武器か分からないんですよ。」
「トルネコさんに鑑定してもらわなきゃなあ…明日、二日酔いになってなければ、の話だけど。」
「そうですね。トルネコさんもお酒が強いから、マーニャさんと最後までお付き合いされるでしょうねぇ。」

 クリフトは短剣の鞘を抜いた。剣は長いこと鞘から抜かれていなかったのか、ところどころ汚れてさび付いている。
「あ、ここに何か書いてあ…痛っ!!!」
クリフトの指から血がこぼれた。「大丈夫!?クリフト!!」
「ああ…大丈夫です。」とクリフトが指をくわえてまた笑った。「すみません、そそっかしくて。」
 可愛い、と思った瞬間、僕は自覚した。僕はやはり、この人が好きだ。好ましい、とかそんなんじゃない。
きっとこの気持ちは…

「剣にうっすらと字が彫ってあります…『ど』…『どく』…」
そこまで言って、クリフトはカタン、と手から力が抜けたみたいに短剣を床に落とした。不思議そうに自分の手を見つめている。
「クリフト?」
「力が…」

 続けて腰掛けていたベッドからすべりおち、クリフトは床にしりもちをついて目をパチクリさせている。

「クリフト?どうしたんだ!?」
「力が…入りません…多分…これ…」

 情けなさそうな顔でクリフトが見つめている先を目で辿ると、短剣に書かれている文字が血で浮き上がっていた。
「『どくがのナイフ』…。」

47名無しの勇者:2008/01/13(日) 00:16:11
途中で「さん」付け忘れちゃいました…。
続き書けたらまた来ます。

48名無しの勇者:2008/01/13(日) 00:34:33
勇クリktkr!
続き待ってますねハァハァ

49どくがのナイフ1/3:2008/01/13(日) 12:52:44
勇クリ、続きです。

「やっぱり満月草、いりましたね。買ってきましょう。
 ミネアさん当分帰ってこないですよ。」
「お恥ずかしい…です…。でも…今日はもう…遅いですし…。」
 クリフトが苦しげに息を吐く。「このまま寝てしまえば…明日の朝には…治って…。」

 なんとか立ち上がろうとしているようだが、全く力が入っていない。
泣きそうな顔が可愛くてしばらく様子を見守りたくなったけど、助けを目で訴えてくるクリフトを
放っとくわけにもいかず、僕はベッドの上に乗り、背後からクリフトを抱え上げることにした。

「大丈夫、クリフトさん?」
「ご…ご迷惑を…お掛け…してしまって…」

 クリフトの切なげな吐息が僕の顔にかかる。
 潤んだ目ですぐそばから僕を見上げている。
 後ろから抱きしめたら驚くほど細く、それでも鍛えられた体だということと、

 そしてクリフトの体温が伝わってきた。

 僕の理性を麻痺させる理由なんて、それだけで十分だった。

 必要以上に背後から抱きしめて、一向にベッドに上げようとしない僕に、クリフトはまた苦しげに息を吐き、不思議そうに振り返り、僕の名を呼んだ。
「…ど…したんです…んッ!!」
 最後まで言わせずにその口を奪う。僕の口腔内でクリフトの言葉にならない抗議の声が木霊する。
 顎さえ痺れているのか、クリフトは易々と僕の侵入を許してくれて、痺れながらも逃げ惑う温かな舌をつかまえるのは至極簡単だった。
 僕は夢中になってクリフトの舌を吸い上げていたが、ふと、弱々しくもクリフトが力が入らない左手だけでなんとか抵抗しようとしているのに気が付いた。

50どくがのナイフ2/3:2008/01/13(日) 12:55:58
 僕がようやくクリフトを解放すると、クリフトは再びベッド下でずるずると伸びてしまう。
 酸欠状態だったのか、肩で大きく呼吸を繰り返す彼の右手を見たとき、なんで片手だけなのか、その理由が分かった。
 右手人差し指が血で染まっている。今度はその右手で苦しそうに胸を抑えて何度か咳き込む。
「クリフトさんは、僕を自分の血で汚したくなかったんですか。」
 ひょ!とクリフトの喉下から変な音が鳴った。指のことは本人も無意識だったようで、胸元に置かれた震えた右手を呆然と見つめている。
 その胸元は血でかすかに汚れていた。どこまで優しいんだろう、彼は。
 嬉しくなって僕は再び益々力が入らなくなった彼を今度こそ一気にベッドに引き上げた。
そのまま横たえると、クリフトは泣きそうな顔で…いや、もう涙がにじんでいたけど…僕を見上げた。

「や…やめてくださ…」
「僕、クリフトさんが好きなんだ。」

 またクリフトの言葉を遮ると、彼は大きく目を見開いた。僕がホイミを唱え、クリフトの指の傷を癒しても、目を見開いたまま固まっている。
上半身を抱き上げても抵抗が無い。天然メダパニ状態だ。そのままクリフトを抱きしめて再び体温を味わい、そのままうなじに唇を落とした。
再びビクリと体を震わせたのに味を占め、今度はすでに寝巻き姿だった彼のシャツの下から彼の体に直接触れる。そこでやっとクリフトが我に返った。
何度も僕の名を、力の入っていない声で呼んで、行為を中止するように懇願してくる。

51どくがのナイフ3/3:2008/01/13(日) 13:02:17
 シャツをまくり上げ、胸元を触る頃にはクリフトはすでに泣きっ面になっていた。
 シャツを脱がし、胸の飾りをそっと口で転がす。
 もう片方の手でもう一つの飾りをつぶす。またクリフトが震えた。

 何度も繰り返し、胸元を中心にキスを降らすと、クリフトの息がまた荒くなってきた。

「お…お願いします…もう…くるし…」
「イかせて欲しい?」
「イク…?」

 その反応に今度は僕が軽く目をむく。こんな簡単なスラング知らないの?いや、まさかこの人…。

 僕の心中に沸いた疑惑を知ってか知らずか、クリフトは鼻先を赤くして泣き続けながら、
「こんなの…間違ってると…言ってるんです…」と訴えてきた。

「こういうのは…男女間で…するもの…だと…っ…ひッ…」
「じゃあ、アリーナとだったらいいの?」
「!…そういう意味じゃ…愛し合って…いる者同士で…する行為で……!
 や…!!!やめ」
「クリフトさんは僕が嫌い?こんな事する僕が嫌いなんだ?もう止めて欲しい?」

 今度は僕が泣きそうな顔でクリフトを覗きこむ。
 クリフトは涙で顔を濡らしまくっていたが、少し安堵したような顔で
「止めて…くれますか?」と嬉しそうに聞いてきた。

「やだ。」

 僕がクリフトのすでに立ち上がっていたものをズボン越しに鷲づかみにすると、
クリフトが面白いくらいにのけぞって細い声で喘いだ。
 白い喉元が良く見え、僕はそこにはまだキスしていない事に気が付く。

 激しく動く喉元に唇を当てても、クリフトはピクリ、と動いただけで抗議の声を上げなかった。
 不思議と首がピンク色に一気に染まっていく。見るとその顔は耳の先まで赤くなっていた。
恥ずかしそうに動かない両腕を持ち上げようとしているところを見ると、なんとか顔を隠そうとしているようだ。
 あれ、怒らないのかな、と不思議に思いつつ、僕はクリフトのズボンを下着ごと一気に下ろす。

「あ、ごめん!」
 そこで初めて、クリフトが今の一掴みで達していたことに気が付いた。

52名無しの勇者:2008/01/13(日) 13:09:38
次でなんとか終わります。改行不慣れで読みづらかったらすみません。

53名無しの勇者:2008/01/14(月) 09:16:45
おおなんという無垢なクリフト!
食われてしまうのかなどうなのかなwktk
初ものイイヨ初もの

54どくがのナイフ1/3:2008/01/16(水) 01:43:02
勇クリ、続きです。

 見る間に全身をピンクに染め上げたクリフトは、顔を隠そうと必死に腕を持ち上げようとして、
途中で断念したのかパタリと両腕をベッドに落とした。
 僕は自分も着衣を脱いで、「恥ずかしがらなくてもいいのに。」とクリフトを覗き込んだ。

「……わ…私は…。」
「僕、嬉しいよ。クリフトが僕の愛撫でイッてくれたんだもの。」

 ようやく「イク」の意味を身を持って分かってくれたのか、彼は眉根を寄せて目を閉じた。
僕はもっと気持ち良くなって欲しくて、柔らかな茂みの中でぐったりと寝ているものを今度は直に優しく握る。
クリフトが小さく息を吸って目を開けた。身を震わせている。

「大丈夫だよ。今度は乱暴にしたりなんかしないから。」
僕はクリフトの両足を軽々と割り、自分の体を間に入れた。
「こ…今度って…ま…まだ…何かするつもり…?」
 クリフトの声が緊張の為か少し高くなっている。
「え、まさか、これからじゃない。」僕は両手でクリフトのものを愛撫する。

 少し、クリフトの言葉が滑らかになってきたな。
 もしかしたらナイフの効き目が薄れてきたのかも知れない。
 こんだけ汗とか色んなもの出したら毒素も抜けたのかも。
 まぁ、こんな状態じゃ一緒だけど。

「イッてすぐだから応えるかも知れないけど、クリフト若いから大丈夫だよね。
 ほら、もう復活してきた。」
「だ…大丈夫なんかじゃ…も…ホントに…やめてください…。汚いです、そんなとこ…。」
 また目尻に涙がこぼれている。僕はクリフトへの愛撫を続けながら、次第に不安になってきた。

 僕の行為を拒否する言葉を必死に並べても、僕自身を否定したり、傷つけたりする言葉は一切口にしないクリフトの優しさが嬉しい。
 そして、僕の愛撫で感じてくれるクリフトの悩ましい姿を見ているだけで嬉しいし、何より興奮する。
 だけど、彼自身は…本当は辛いだけの行為でしかないのか。

「ねえ、今、気持ち良いでしょ?良くない?」
「く…苦しいんです…体が…熱くて…力が入らないから…堪えられな…。」

 なるほど。僕はほっとして行為を続行することにした。
確かにクリフトの両手は必死にベッドのシーツを掴もうとしているようだけど、
空しく指がシーツをなぞっているだけだ。

「熱が逃げればいいんだよね。」
「や…だから…もうやめてくれれば…て、な、何を…?」

 クリフトの顔が見えなくなるのは残念だけど、僕は手の中で震えている彼のものを口腔で覆った。
 さっきクリフトが放ったものの味もしたけど、僕は手と口を使って愛撫を早めた。
 クリフトの声は悲鳴から再び行為の中止を請うものになり、すぐに言葉にならなくなってあえぎ声しか発さなくなった。
 クリフトが腰を大きく揺らして小さな悲鳴を再度上げたのは、僕が舌を絡ませて吸い上げて、2度目にイかせた時だった。

55どくがのナイフ2/3:2008/01/16(水) 01:47:22
 クリフトは大きく上下する鬱血だらけの胸部以外、ナイフの毒が回った時以上にぐったりと動かなくなっている。
 僕はクリフトが放ったものを両手に吐き出した。
 彼の最奥を指でそっと探り、ぐっと力を軽くこめると、幸いにも(クリフトには不幸にも、かも)
麻痺がまだ続いていてくれたのか、それとも体が弛緩していたのか、
あまり拒絶されること無く指を沈めることができた。
 温かさを味わって、すぐに指を増やす。だけど2本目はさすがにきつい。
 このままじゃ僕も辛いし、クリフトも泣くどころじゃ済まないな。

「な…何を…なんでそんなとこに…」
 体内で動き出した指でさすがに我に返ったのか、クリフトは震える声で僕に問う。
「…聞かない方がいいと思うよ。」
 僕の台詞を受けて、僕の立ち上がったものを見て、上気してピンク色だった体が今度は見る間に白くなっていく。

「ま…まさか…。」
「大丈夫だよ。『初めての子でもちゃんと解せば入るんだ』って、マーニャさんが言ってた。」
「普段どんな会話してるんですか!は…入るわけ…無いでしょう!そ…そんなとこに…!!…やッ!」
「あ、ここの膨らんでるところがいいんだ?」

 しつこく指で引っかいてやると、クリフトはすすり泣きながらまたまた切ない声を上げてくれた。声がかすれてきてる。
 さすがに罪悪感が芽生えてきて、もう止めた方がいいのかな、とも思ったけど、
これまたクリフトのものが立ち上がりかけているのを見て速攻その考えも消えた。指を3本に増やす。
 クリフトは大きく何かを振りきるように首を横に数回振った。

「もう…やめて…わ…私はもう…耐えられません…か…体がもう…。」
「僕ももう耐えられないよ、一緒にイこうね。」

 明らかに言葉の意味が違うのは分かっていたけど、気付かない振りをして絡みつく粘膜から指を抜いた。
 クリフトの力の入らない両足を折り曲げて、腰を軽く持ち上げ、僕のものをあてがった。

「や…やめて…もう…許してくださ…」

 恐怖感か快楽か、声も体も震わせながら最後の訴えをしてくるクリフトの口を、ぐっと右手の平で覆った。
 左手がクリフトの左肩をしっかりと掴むと、彼は大きく目を見開いて僕の顔を見つめてくる。
 その目が観念したように閉じられ、彼の歯が震えてかすかにカチカチと音を鳴らしているのを聴いた瞬間、僕は彼を貫いた。

「!!!!!!!!!〜〜〜〜〜〜!!!!」

56どくがのナイフ3/3:2008/01/16(水) 01:51:27
 上へと逃げる体を押さえつけ、何度か休憩しながらも全てを入れてしまった時には、彼のものはすっかり萎えてしまっていた。
 そっと右手をクリフトの口から外し、歯を食いしばって痛みに耐えている彼の表情を見守りながら、その手を彼のものに添えて何度か擦ってみた。
 険しい表情だったのが驚きで固まり、やがて再び泣き顔に変わってくれたのを見届け、手を離す。
 逸る気持ちを抑えつつ、自分のものをゆっくりと抜き差しすると、何度目かにクリフトのいいところに当たったのか、ぴくんと体が揺れた。
 はッ!と小さく息を飲む音に僕は機嫌を良くし、しつこいくらいにその場所を何度も僕のもので擦り上げる。
 もうすすり泣きだけではなく、かすれがちで小さな喘ぎ声が混じっている。その口がまた苦しげに何かを呟いた。

「…て…くださ…」

 まだ拒否の言葉を口にしているのか、と僕は少し落胆しつつも腰を動かし続ける。
 クリフトは僕のそんな表情を見て、何故かまた顔をピンク色に染めながら涙をこぼした。

「お…お願いですから……」
「え?何?何て言ったの、クリフトさん。」
 
「『イかせて』…。」

 その言葉に僕自身がイきそうになり、ピタと動きを止めた。
 僕が必死に嵐が過ぎ去るまでトルネコさんやらパトリシアやらの顔を思い浮かべて耐えているというのに、
クリフトは「お願いします…もう耐えられな…」と泣きじゃくりながら懇願を繰り返してきた。
 僕は言われるまま、早くクリフトを楽にさせてあげたくて繋がったまま夢中で彼のものを握って一気に擦り上げ、3度目の絶頂を迎えさせてあげた。
 吐き出されたものはもう、薄くて水のようだったが、何度かに渡ってこれまでで一番長く精を吐き出し続けていた。

 クリフトは一瞬気を失ったけど、やがて僕の腰の動きが再開して、僕がもう一度彼のものを握りだした時にまた我に返って顔面を白くした。

「な…何してるんですか…」
「え、だって一緒にイこうって約束したじゃない。」
「一緒にイけば良かったじゃないですか!!!」
「うん、僕もそう思ったんだけどね。あまりにも突然可愛いこと言うもんだから計算できなくなっちゃって。」

 ぱくぱくと、何か言いたげにクリフトは唇を動かしたけど、結局その唇から紡ぎ出されたのは、涙まじりの喘ぎ声だった…。

57名無しの勇者:2008/01/16(水) 01:52:38
以上。終わりです。
ザキ防止用にまふうじの杖も用意していたんですが
結局使いませんでした…。

58名無しの勇者:2008/01/18(金) 22:25:17
フヒヒヒ、クリフトバージンごち(゚д゚)ウマー!
まぁ、クリフトが身動きできなくなっていたら犯されるのは当然ですよね
でもきっとちっとも学習しないんですよ、この人は
早く姫様に顔向けできない身体にされてしまうがいい

59名無しの勇者:2008/01/19(土) 23:47:06
54-57です。どうもありがとうございます。
クリフトがキアリク覚えられないと気付いた時から
なんとなくネタを考えてできた話だったんですが、
よくよく考えれば麻痺してたら魔法も唱えられないので
あまり意味は無かったなぁ、と今、気が付いた…。
でも勇クリ書けたからすっきりしたー。どうもでした。

60名無しの勇者:2008/01/23(水) 00:48:00
勇クリゴチでした!!!
なんと可愛らしい神官。罪すぎる。

61名無しの勇者:2008/01/23(水) 21:52:19
ボリュームのある勇クリありが㌧
禿しく禿しく萌えますた
よかったらまた来てください

62名無しの勇者:2008/01/31(木) 00:58:55
54-57書いた者です。喜んでもらえて嬉しいです。
実は続けてクリ受小説を書いたので投下します。

ただ、これ、読む人を選ぶかも知れないのですが、
クリ→アリ前提のあらくれ×クリフトです。
しかも聖域かも知れないパデキアイベントです。
それぞれの思い入れがあると思うので、イメージ崩されたくない方は
どうかスルーしていただけたらな、と思います。

63ミントスにて 1/8:2008/01/31(木) 01:05:04
 最近、旅をしていて自分がどうしようもなく役立たずなのではないか、と気が滅入るときがある。
 自分が忠誠を誓ったはずのサントハイム国の王や城内の人々が姿を忽然と消してしまった時から
芽生え始めたこの想いは、すでに大きく膨れ上がり、今は気が付くと自分の思考のほとんどを覆ってしまっていた。
 自分が守るべき、サントハイムの血筋で唯一残された姫が、逆にお供の者を守るように先頭を歩き続けているのを見て、私はひそかにため息をつく。
自分は彼女ほど武道に秀でているわけでもないし、かと言って自分の後ろを歩く教育係の宮廷魔術師であるブライ様ほど魔力が強いわけでもない。
せめて持久力だけでも一番になりたかったが、昔から体も弱いし、城の外に出たのもこの旅が初めてだ。
しかも長旅が祟っているのか、コナンベリーの港を出た辺りから体調が思わしくなかった。

「クリフト、ワシはてっきり、おぬしは鉄の槍を買ったものだとばかり思っていたがのう。」
 ブライ様がチラリと私を見る。「そりゃ『鉄の杖』と名前を変えた方がいいかも知れんの。」
「す、すみません。」
 私はギクリと足を止めた。足が重く、戦闘が終わった後、何も考えずに槍を背負い直さずに杖代わりに使っていたのだ。
「大丈夫、クリフト?顔色悪いわよ。」
 アリーナ姫が振り返り、私を見上げる。
「回復魔法がまだ使えるなら唱えちゃいなさいよ。」
 私は慌てて首を振る。まずい、心配されてしまった。ベホイミくらいなら唱えられるが、もうすぐ魔力が尽きそうだ。
 姫様やブライ様の為に残しておきたかった。

「いえ、もう、町が見えていますから。ありがとうございます。」
 自分は自然に言えただろうか。最後に微笑んだつもりだが、上手く笑えたかどうか自信は無かった。
私は姫様の目線から顔を逸らしたけれど、今度は彼女の腕に打撲痕があるのが目に飛び込んできた。
気付いたアリーナ姫がさっと腕を隠す。
「姫様!腕にお怪我が…!!」
「平気よ、これくらい。だから今は自分の体を癒して。
 クリフトが倒れたら、私が思う存分戦えなくて困るでしょ。」
 私は彼女の言葉にグッと胸が詰まった。アリーナ姫の優しさもありがたかったが、彼女の打撲すら気軽に治せない自分が不甲斐なかった。
姫を追ってサントハイムを出た時は、これほどまでに過酷な旅になるとは思っていなかった。
アリーナ姫は何も言わないが、戦闘の前線で戦い続けるのが辛くないはずが無い。ブライ様も体力的に連戦はきついだろう。
回復役が自分だけなのも、正直、体力も気力も限界に近かった。

 一向に自分の体を癒す様子を見せない私に呆れ果てたのか、「まぁ、確かにもうすぐ町に着くわね。」と肩をすくめた
アリーナ姫はすっと前を向き直り、再び歩き出した。私はホッとして後を追う。ブライ様がポツリと
「クリフト、おぬし、ヒットポイントが黄色くなっているのが分からんのか。」
と呟いたが、何のことを言っているのか問い返す前に魔物が現れ、それどころでは無くなってしまった。

64ミントスにて 2/8:2008/01/31(木) 01:10:26
「クリフト、あなたってホンットウに馬鹿よ!大馬鹿よ!!」

 アリーナ姫はミントスの町に入ってからも怒りまくっていた。
私は何も反論できず、ただ、杖にすがりつくようにして歩き続けるだけである。
先ほどの戦闘でアリーナ姫の腕に二つ目の打撲痕ができたのが分かった途端、
私はアリーナ姫が止める間もなくベホイミを唱えていたのだ。
直後、私は魔物から攻撃を受けて危うく命を落としかけ、しかも回復手段が無く、
這うようにしてミントスに辿り着いたのだった。
町の中の池が夕焼けに照らされ、キラキラと美しく光っているのが見えた。

「とりあえず、宿屋で部屋を取ってくるわ。」
 姫の言葉に「あ、私が…」と言いかけ、じろりとにらまれた。
そのまま姫は背中を向けて宿屋らしき大きな建物に向かって走っていってしまう。
ブライ様も私のことを険しい顔で見上げ、
「しばらくそこで頭を冷やしておれ。どこにも行くでないぞ。」
と姫様について行ってしまった。私は自分が途轍もなく大きな失態をしたような気持ちになり、気が付くと涙がにじんでいた。

 ただ、自分は見たくなかっただけなのだ。姫様が怪我をしている姿を。
自分が彼女を守れなかった上に、その傷を癒してもやれないことを目の前に突きつけられたような気がして、耐えられなかったのだ。
自分勝手な行動を責められれば、反論の余地も無かった。姫様にもブライ様にも呆れられたに違いない。
2人の背中を見ていて、このまま自分が見捨てられてしまうのではないか、と私は急に不安に駆られた。

 ひとりきりで置いていかれたことが心細さに拍車を掛け、私は宿屋に向かって歩き出し、途端に眩暈に襲われ体のバランスを崩した。
地面に激突する!と覚悟したが、横から逞しい腕が伸びてきて、私を抱きとめてくれた人が居た。
代わりに帽子が地面に転がり、鉄の槍もガシャンと足元に倒れてしまう。

「大丈夫かい、お兄さん。」
 無精ヒゲを生やした羨ましいくらいに体格のいい男だった。良く日焼けをしている。どこかの船員のようだ。
「あ、はい…ありがとうございます。」
 助けてくれたのには感謝したが、どうもこの男が酒臭い。しかも私の腕を放さずにニヤニヤ笑って私の顔を見ている。
先ほどの戦闘で鼻血でも出てたのかな、と空いた方の手でさりげなく顔を触ったが何も付いていないようだった。

「あ、あの…?」
「兄さん、具合悪そうだな。ちょっと俺たちが介抱してやるよ。」
 反対側からも声がして、振り向くとバンダナを巻いた若い男がこちらを覗き込んでいる。
この男も船員のようだ。ああ、この人も酒臭い。

65ミントスにて 3/8:2008/01/31(木) 01:14:20
「大丈夫です。連れが居ますから。」
 嫌な予感がして手を振り解こうとするがビクともしない。すぐにもう1人の男も反対の腕をつかんできた。片方の手で鉄の槍を拾い上げる。
「そうだな。さっきから見てたんだ。あの爺さんたちが戻ってくるまでに行こうぜ。」
 両脇から抱えられ、足を踏ん張ろうとしてもズルズルと引きずられてしまう。変だ。なんなんだろう、この人たちは。
「やめてください。もう、大丈夫ですから。離して…。」
「いいから、いいから。」
 路地裏に連れ込もうとしているのに気が付き、私は思わず姫様とブライ様に助けを呼ぼうと振り返った。

どうしよう、ここで助けを呼んだら、1人で待ってることもできないのか、とまた怒られるかも知れない。
これ以上2人の足を引っ張っては…。酔っ払いをあしらう事もできないなんて、役立たずもいいとこだ。

 躊躇している間に、路地裏へと引きずり込まれてしまう。腕を離されたので逃げようと身を翻すと、喉元に鉄の槍を突きつけられた。
助けを呼ばなかったことを今更激しく後悔する。

「大人しくしろよ、兄さん。俺達、船が出なくて仕事も無いし、イライラしてんだ。」
「神官さんなら俺達の不満を解消してくれたっていいだろ?」
「お話を聞かせていただくだけでしたら…。」
 熱が出てきたらしく、こんな時だというのに頭がボンヤリしてきた。
そんなに変なことを言った覚えは無いが、男達は声を立てて笑う。
「それだけで済むわけ無いだろ?」

 気が付くとバンダナ男に唇をむさぼる様に奪われていた。抵抗しようとしたが、ヒゲ男に羽交い絞めをされて動けない。
酒の味がする舌が口腔内をなめ尽くす。逃げようにも痛いくらいに顎をつかまれ、歯を閉じることもできない。
息苦しさと嫌悪感でなんとか首をひねって顔を背けると、今度はそのまま耳に舌を入れられ、ガクン!と膝から力が抜けた。
自然、体重が背後のヒゲ男に掛かったが、ビクともせずに、力が抜けた私の体を、服の上からまさぐりだしている。
2本の手が上着の脇からシャツ越しに私の体を這いずり回った。

66ミントスにて 4/8:2008/01/31(木) 01:17:52
「やめて…」
 気持ち悪さと恐怖で再び涙がにじんできた。力が入らない。助けを呼ぼうと息を吸い込んだが、再びバンダナ男が私の口を自分の口で塞いだ。
 背後からヒゲ男が今度は反対の耳をなめ回してくる。ゾクゾクとわけの分からない痺れが何度も体を走った。
もう私は自分の足で立っていられなくなり、ヒゲ男が低い声で笑いながら手を離した時には崩れるように地面に座り込んでいた。
やっと口も解放され、何度も息を吸い込んだ。どうしよう、変態さんだ。男にこんな事するなんて。
情けないのと恐怖感と息苦しさで止めようとしても涙が止まらなかった。

「こいつ、本当に具合悪いんじゃねぇの?口の中熱いぜ。変な病気持ってんじゃねぇだろうな。」
「突っ込まなきゃうつりゃしねぇよ。」
「病気持ちはあんまり高く買い取ってくれなかったぜ?」
「黙ってりゃ分かりゃしねぇって。しかし、どんな服の構造になってんだ。脱がすの面倒だな。」
「何、泣いてんだよ兄さん。あんた、さっき、切なそうに俺達の体見てたじゃねぇか。好きなんだろ?こういうの。」

 頭上で飛び交う言葉が頭の中で意味を成すこともできず、私は息を必死に整えながら涙で濡れた顔を上げた。
男たちは私を見下ろし、何故か息を飲む。
「なんだ…兄さん、結構クルね、その顔。」
「あんたも気持ち良くしてやるからさ。」
 ヒゲ男は槍を手にして、槍先を私の胸元に突きつけた。「破られたくなかったら、その服、さっさと脱ぎな。」

 私は何度も首を振り、再び逃げるために立ち上がろうとしたがしたが、足元がふらつき、また倒れてしまった。
ヒゲ男が無言で近づき、私の腹部に激痛が走る。どうやら思い切り蹴られたらしい。しばらく起き上がれず、うめき声を上げてうずくまった。
 その時、ふと自分の魔力がまだわずかに残っているのに気が付いた。心のどこかで「MP3」という謎の数字が浮かんで消える。
ホイミくらいなら唱えられるかも知れない。しかし、ホイミを唱えたところで、今の体調ではこの男達に敵うとは思えなかった。
この男達が私をどこかへ売り飛ばそうとしているのは分かる。
ただ、今の一撃ですっかり私は絶望感に打ちひしがれていた。

67ミントスにて 5/8:2008/01/31(木) 01:22:10
「言うこと聞かないと、次は槍で貫いちゃうよ?」
「貫くのは槍じゃないかも知れないけどさ。」
 男達がゲラゲラ笑う。私はなんとか体を起こし、震える手でベルトを外した。上着を脱ぐと寒気が襲ってくる。
ああ、どうしよう。本当に体が不調を訴えてくる。シャツを脱ぐ時、ちらりと男達を見上げたが、嬉しそうにこちらを見つめているだけだ。
上半身裸になった途端、男達からほぅ、と息が漏れ、胸部をぺたぺたと触られたが、私は寒さを堪えるので必死だった。

 4本の手が離れるとすぐに頭をヒゲ男につかまれた。目の前に現れたモノに思わず「ひ…」と叫び声を上げてしまった。
きつい匂いが鼻につく。
「しゃぶってよ、兄さん。」
「い…いやだ…!!」
 拒否した瞬間、後ろからバンダナ男に鼻をつままれた。息苦しくなり、思わず口を開くとそこへヒゲ男のモノが突っ込まれる。
「歯、立てたら承知しねぇからな。」
 そう言って、私の頭をつかんだままヒゲ男が腰を動かし始めた。嘔吐感が急激にこみ上げてきたが、必死で耐える。
しばらくして、バンダナ男が私の前をズボン越しに掴んできて、危うく口の中の物を噛みそうになった。
くぐもった悲鳴を上げると、そのままヒゲ男のものが口の中で弾けた。
「こえー!急に握ってやんなよ、お前!!」
ヒゲ男に責められ、バンダナ男が愉快そうに笑う。
私は口の中のものを吐き出すとそのまま反射的に吐き気を催し、胃の中のものも全て嘔吐してしまった。
服を脱いでて良かったかも知れない。危うく精液と胃液まみれになるところだった。
 バンダナ男が私の腕をつかんで無理矢理に立たせた。そのまま壁に押し付ける。

「なんだ、元気ないじゃん。吐いて萎えちゃった?」
「もう…許してください…。」
 ヒゲ男は膝で私の前をぐっぐっ…と押し続けてくる。
「なぁ、こいつ、もう俺達でヤっちゃわね?どうせ次の船がいつ来るか分かんねぇんだし。
 すぐ死んじまいそうだしさ。」
「大灯台の魔物退治に向かったヤツが居るって聞いたぜ。
 どこの命知らずか、と思ったらどっかの商人らしいけど。
 それに聞いた話じゃ、伝説の勇者を見たヤツが居てさ。
 美人の踊り子と占い師を連れてて、剣術が優れているどころか、
 攻撃魔法も回復魔法も使える連中らしい。
 もうすぐどっちかが大灯台の魔物やっつけてくれるかも知れないぜ?」
「へぇ。じゃあ、俺達の仕事ももうすぐ再開できそうだな。
 その美人の姉さん達にもお目に掛かりたいもんだ。」

68ミントスにて 6/8:2008/01/31(木) 01:26:57
 ぼんやりと話を聞いていると、パシン!と頬をはたかれた。
「おい、下も脱げって言ってんだろ?」

「クリフトー!!」
 姫様の声が表通りから聴こえ、私は息を飲んだ。アリーナ姫の姿が路地の隙間から見える。
遠目からでも、姫様が私の帽子を抱きかかえて辺りを見回しているのが分かった。
ただ、向こうからはこちらが薄暗いせいか見えていないらしい。姫様が不安げにうつむいて、再び走り去った。

「あんた、クリフトっていうんだ?」
「あんたの連れの娘も可愛いな。少し幼いが、一緒に連れて行くか?」

 何をしてるんだ、私は。
 彼女を守ると、サントハイム国の神官になった時に誓ったのではなかったか?
 今、ここで力尽きるわけにはいかない。せめて、今聞いた情報を、彼女に伝えなくては。

「…あの子に見つかりたくない…。もっと奥でやってくれませんか…?」
 細い声で言うと、男達は笑って顔を見合わせた。「ああ、構わねぇぜ?」
 ヒゲ男が先に奥へと向かう。バンダナ男が私を奥へ連れて行こうとして腕をつかもうとした。
私は素早くスカラを唱え、その腕を弾き、腰をかがめて鉄の槍を拾い上げた。
驚くバンダナ男の足を切りつけると、男は悲鳴を上げてうずくまる。
そのまま私は鉄の槍を逆手に持ち、振り返ったヒゲ男の喉元目掛けて突き上げた。
ヒゲ男のうめき声が聴こえたが、結果を見ずに身を翻し、ふらつく足をなんとか走らせたのだった。

 路地裏から飛び出したものの、人通りが少なく、誰もこちらに気が付いていない。叫ぼうとしても、力が入らなかった。
振り返るとヒゲ男がバンダナ男と共に路地の奥から怒りの形相で向かってくるのが見えた。
再び前方を見ると、町の入り口辺りに姫様とブライ様の後姿が見えた。
声が聴こえれば振り向いてくれるだろうが、大声でも出さねば聴こえないだろうし、
第一、この汚れた姿のままでは姫様に会うことは断じてできない。
焦る気持ちで辺りを素早く見渡すと、絶好の逃げ場所が目に飛びこんできた。

 そのまま倒れこむように絡まる足をなんとか走らせ道を横断し、私はキラキラ光る夕暮れ時に赤く染まった池へと跳躍した。
 派手な水音が町中に響き渡った。

69ミントスにて 7/8:2008/01/31(木) 01:30:54
 足が立つかと思いきや意外と池は深く、意識が朦朧とする中で、それでも必死に水面から顔を出し、池の淵にしがみつく。
と、誰かに腕をつかまれた。ヒゲ男だ。反対の手でナイフを振り上げている。

 悪いことをする人でも、聖なるナイフを装備できるんだな。神は本当に残酷なほど平等だ。
と何故か私はのんびりそんな事を考えつつ、続けて絶望感でいっぱいになり、とっさに両目を閉じた。

 どこか遠くでヒャダルコを唱えるブライ様の声と、私の名を呼ぶアリーナ姫の声がする。
と、私の腕を握っていたヒゲ男の気配が吹っ飛んだ。
 訳が分からないままに、それでも今のうちだとばかりに池からなんとか這い上がると、目の前に泣きそうな顔のアリーナ姫と、どこから拾ってきたのか私の神官の制服を手にしているブライ様が私を見下ろしていた。
その背後に先ほどの2人組が折り重なるようにして倒れていた。

「頭を冷やせ、とは言うたが…どこまでアホウなんじゃ、おぬしは。」
「何してたのよ、クリフト。どれだけ探したと思ってるの。」
「すみません。…酔っ払いに絡まれまして…。」
「どんな絡まれ方をすればそんな格好で水泳する羽目になるのよ!」
 姫様にしては至極最もな意見だが、それどころじゃなかった私は池の淵に座り込み、気を失いそうになるのをなんとか必死で堪えていた。
体の震えが止まらない。

「姫様…伝説の勇者様が、旅をしているそうです。」
「え?」
「連れの方も居て…攻撃魔法と回復魔法が使えるのだとか…
 もしかして、目的は我々と同じかも知れません。」
「その話はあとよ。顔色、さっきよりひどくなってるわ。お医者さんに診てもらいましょう。」
「大丈夫ですから…!」
「大丈夫なんかじゃないわ!」

 姫様の目元が赤くなっている。でも今、言わなければ、と私はなんとか言葉を紡ぎ続けた。
「姫様、その方たちに力を貸してもらいましょう。仲間を増やせば…姫様の負担も…軽く…。」
「ブライ、その槍、貸して。」
「いや、あの、姫様、それは…。」
「私は…姫様の足を引っ張ってしまいますから…もう…ここで…。」
 次の瞬間、腹部に再度衝撃を受け、目の前が赤く弾けた。
「姫様、殺してしもうたのではないでしょうな!?」
「みね打ちよ!頭も診てもらえばいいんだわ!!」
 2人の声が遠くなっていく中、私はスカラで守備力上げといて良かった…と思ったのを最後に、意識は深い闇の中へと溶けていってしまった。

70ミントスにて 8/8:2008/01/31(木) 01:34:30
 …こうして病が回復した今なら分かります。
あの時、無力感を感じていたのは私だけでは無かった。
姫様も…恐らくはブライ様も自分自身に無力感を感じ、苦しんでいたんだと思います。
私は、病に侵されていたとは言え、とても後ろ向きな考えを持ってしまいました。
姫様の重荷になりたくない一心で言った言葉だったのですが、
あの後、しばらく意識が回復しなかったでしょう?
まるで死を予感させるような内容でしたから、益々姫様を苦しませてしまったようです。
目が覚めてからブライ様にまた怒られてしまいました。反省しています。

 それだけに、あなた方が我々の前に現れてくれたのは、本当にありがたかった。
あなたは「勇者」と呼ばれるのがあまり好きではないようですが、
少なくとも、私にとってだけではなく、我々3人にとっては、やはり救世主そのものだったんですよ。

 …しかし、2人組の男達のことを聞いて、すごく怒ってくれたのは嬉しいのですが、
何故、あなたはさっきから路地裏で起こったことをそこまで詳細に聴きたがるのですか?
あの…やはり話していて楽しい話ではないではありませんし、ここらでお仕舞いにしてくださいませんか?
え?ええ、そうですね、耳が弱いのは認めますけど、何故、そんな嬉しそうなんですか?
え、ちょっと…腕を放してください。
え、まさか、冗談ですよね、そんな。ちょっ…!!!

71名無しの勇者:2008/01/31(木) 01:36:19
以上です。改行不慣れで、読み辛かったらすみません。

72名無しの勇者:2008/02/01(金) 21:26:33
「変態さん」ってなんて可愛いんだクリフト・・
全てにおいてかわいいクリフトゴチでした

73名無しの勇者:2008/02/02(土) 04:18:18
ラストの勇クリにニヤニヤ。
クリフトかわいいなあ。まんべんなく萌えた。
作者様GJです!

74名無しの勇者:2008/02/11(月) 17:13:16
どうもありがとうございます。性懲りも無くまたクリ受です。
何だか申し訳なくなってきたので、これ以降、しばらく自粛します。
掲示板占領しまくってすみません。

では、勇クリ前提のピサクリです。

75無題 1/7:2008/02/11(月) 17:33:48
 ピサロさんを仲間にしてから初めてきちんと宿に泊まった町はエンドールだった。
「世界樹の葉」が無くなったから取りに行こう、と勇者さんが提案して、メンバーの一部はエルフの里に向かっている。
勇者さんは嬉しそうに私を「世界樹」に登らせようとしていたが、今回ばかりは固辞させてもらった。
あの人は何故、私が高い場所が苦手だと何度言っても忘れてしまうんだろう。
何度も伝えているはずだし、実際に登らされた時にも私がどれだけ青くなっているか、ちゃんと見ているはずなのだけど…。

 今夜は家族と過ごす、と言うトルネコさんをご自宅まで送ってから宿屋に戻ると、ライアンさんとマーニャさんが宿屋の食堂で向かい合わせにテーブルについて、夕食を摂っていた。
マーニャさんが私に気が付き、手招きしてくる。
「クリフトくん!ピーちゃんと今夜、同室になる勇気ある?」
「え…?」
 私はライアンさんの隣に座る。
「実は今夜、3人部屋を2つと2人部屋を1つ、宿を取ったんですが、
 夕食に誘っても ピサロ殿がさっさと2人部屋に入ってしまいましてな。
 我々とは食べるものが違うんでしょうかなぁ…?」
「まぁ、私達は3人部屋を使うとして、問題は男性陣よね。
 勇者クンは絶対ピーちゃんと同室なんてならないだろうし。」
「こういう事で気を使うのは信条に反しますのでな。ここは私が…。」
「すでに気ぃ使ってるわよ。もう欠席裁判でさ、『世界樹の葉』メンバーから選べばいいじゃない。」
「それではもうブライ殿しか居ませんぞ!どんな会話が繰り広げられるか考えるだけでも恐ろしい!!」

「あ…あの、いいですよ、私が同室になります。」

 2人がピタリと黙ってマジマジと私を見る。「クリフトくん、いいの?」
「ええ。正直に言ってしまえば、私はあの方が苦手ですが、一緒に戦う同志となったわけですから、
 そうも言っていられません。一度ゆっくりお話してみなければ、と思っていました。」
「いいのですかな、クリフト殿?あなたは神官ですぞ?方や向こうは…」
「いらっしゃい、ご注文はいかがなさいますか?」
 店員さんがやって来て、ライアンさんは慌てて口を閉ざす。
「あ、この定食と同じものを。それから、部屋に持っていけるよう、
 後からもう1人前追加で作ってくださいますか?」
 店員さんが下がると、マーニャさんが肩をすくめた。
「怖かったらいつでも言いなさいよ。
 それから、またいつかどっかの町で泊まることがあれば、
 歓迎会兼ねて飲みに行くから、ピーちゃんと打ち解けられそうなら誘ってみてよ。」

76無題 2/7:2008/02/11(月) 17:36:33
 夕食の乗ったトレイを持って部屋へ行き、緊張しながら扉をノックする。返事は無い。
そっと声を掛けてから扉を開けてみてもピサロさんの姿は無かった。
 なんだか気が抜けて部屋のテーブルの上にトレイを置く。と、その時、部屋のシャワールームが開き、全裸でピサロさんが現れた。
 あまりにも見事な体で絶句してしまう。美しい銀色の長髪に鍛えられた筋肉。まるで神話を描いた彫像のようだ。
「あ…あ、すみません。勝手に入ってしまって。」
 私は我に返って視線を落とす。ピサロさんがまるで観察するかのように炎のような赤い眼でしばらく私を見つめているのが分かる。
やっぱり…怖い。

「…構わん。今夜はお前が私の相手をしてくれるのか。」
「はい…あの、ご迷惑ではありませんか…?」
「お前は神官ではないのか。私と寝ることが辛くはないか?」
 私はピサロさんの言葉に驚き、顔を上げた。
「今は共に戦う仲間です!た…確かに、あなたを敵と思って長く旅をしてきましたから、
 上手く接することができず、こうしてあなたのそばで話していても…
 正直恐ろしいと思う気持ちもあります…。
 ですが、分かり合うことができれば、きっと…!」
「これは、お前の夕食か?」
「え?…あ、いえ、これあなたの分です。良ければ食べてください。」
「お前がシャワーを浴びている間に食べておこう。」
「シャワー…?ああ、そうですね。入ってきます。」
 食べているところを見られるのが嫌なのかも知れない。私は特に疑問も持たず、シャワーを使わせてもらうことにした。

 私が寝巻きを着て、脱いだ服を持って部屋へ戻ると、ピサロさんはまだ裸のままでベッドに腰掛けていた。
ジロリとこちらをにらまれ、ビクッと体を震わせてしまう。
「何故わざわざ服を着る。面倒だろう。」
「え?いえ、別に。これは習慣のものですから。あなたこそ、裸のままでは風邪をひきます。
 寝巻きをお持ちじゃなければ、そうですね、
 ライアンさんの服ならサイズが合うかも知れません。借りてきましょうか。」
「いらん。」
 一刀両断。またこちらをにらみつける。何だかさっきから会話に違和感を感じるのだが、やはり魔界の住民ならば多少言葉の表現にズレがあっても不思議じゃないかも知れない。

77無題 3/7:2008/02/11(月) 17:40:04
 私はピサロさんの視線に耐えられず、咄嗟にまた顔を逸らした。テーブルの上の夜食が全て平らげられているのが目に入る。
良かった、食べるものは私達と同じなんだな、
これならば、マーニャさんから頼まれた歓迎会の話も始めやすい。
「あの、ピサロさ…」
 振り返るとすぐ目の前に当人が立っていたから面食らった。
 その時、何か破裂したような音がして思わず天井を見る。なんか…少し息苦しくなったような…。
「えーと…あ、あの、良ろしければ今度…」
「お前は誰かに抱かれたことはあるのか?」
 ピサロさんは私の右腕を掴んで聞いてきた。質問の意味を飲み込むのにしばらく掛かる。え、今、なんて…
 次の瞬間、凄まじい衝撃が右腕から私の体を走り抜けた。数日前に体を重ね、最後に果てた時の記憶とその絶頂感が一気に蘇り、足から一瞬にして力が抜けた。
 構えることも無く突然襲った衝撃に私は思わず絶叫していた。腕を掴まれたままでなければ、そのまま座り込んでいただろう。
「…あ…あぁ…。」
「なんだ、相手はあの小僧か。初めてでないのなら遠慮する事は無いな。」

 私は、そこで初めてピサロさんが私を最初から抱く気で質問を重ねていたことに気が付いた。
今までの会話のわずかな違和感が全てストンと理解できた。
「え…?」とぼんやり彼の体を改めて見上げ、その冷ややかな赤い眼に映る自分を見つけ、一気に恐怖感で頭がいっぱいになる。
腕を振り解こうとしたが、解放してもらえない。体が震えてきた。
「や…すみません…私はそんなつもりじゃ…へ…部屋を変えて…。」
「お前の意思など関係ない。それとも、お前の代わりに誰かを差し出すのか?」
「ダメです!!
 そ、それに、今、私は大声を出してしまったから…すぐに誰かがここにやって来ます!」
「誰も来ない。」
「…え…?」
「さっき、この部屋の空間を『閉じた』。
 この部屋は私が元に戻すまでは異空間に留まっている。」
 今の破裂音か!やっと私はピサロさんの腕を振り解くことができ、ふらつく足で扉に向かった。ドアノブはピクリとも回転しない。
何度もドアノブを捻ろうとしている私の肩に、ピサロさんの手が乗せられた。痛いくらいに肩を掴まれ、自分でも滑稽なほど体が大きく震える。

78無題 4/7:2008/02/11(月) 17:43:48
「ど…どうして…。」
「私は人間を抱いた事が無い。人間を深く知るためには
 一度抱いてみた方が早いと思った。」
「もし、私ではなくライアンさんがここに来てたら、どうするつもりだったんですか。」
 私の言葉にピサロさんは愉快そうに笑った。
「さすがに好みはある。お前か、占い師の女か、
 あの気に食わない勇者の小僧が来れば良いと思っていた。私は運がいい。」

 私は息を飲んだ。
「やめて下さい!…あ、あの…私だけで…勘弁してください…。」
 自然と声が消えそうになったが、なんとか言葉になったらしい。ピサロさんは楽しげに「お前はそれほどの価値があるのか?」と私を覗き込んだ。
「他の者に無いものがお前にあるというのか。」
 その言葉にすぐさま必死で考える。

 この部屋から逃げられない以上、腕力や魔力で敵うはずが無く、私がピサロさんに抱かれるのはもはや決定事項だ。
恐ろしいが、殺されまではしないだろう。私が耐えればそれで済む。
しかし、ここで否定の言葉を言えば、他の仲間も同じ目に遭わされるかも知れない。
相手によっては2度と立ち上がれないほど傷つくだろう。
何か…私にしかできないこと…他の方にはできないような…しかし…。

「…あのお前が護衛している女も楽しめそうだな。」
「待ってください!!あの…私は…神官ですから…神の教えを説いたり、祈ることができます…!」

 ピサロさんが笑みを消した。私は自分の言葉に青ざめる。何を言ってるんだ、相手は魔王だというのに!

「す…すみません…あ、あまり、人に自慢できるようなものが無くて…。」
「面白い。」
 ピサロさんは私の肩から手をはずした。そのまま背を向けて自分のベッドに向かい、腰を掛ける。
「やってみせろ。」
 扉の前から動けずに、私は呆然とピサロさんを見つめる。
「私に抱かれながら神を説いてみせろ。」
 私は目の前が暗くなった。

79無題 5/7:2008/02/11(月) 17:46:53
「あ…あなたが目の前のよ…欲望に負けそうなとき…その欲望は…
 け、けして我々の神が…仕向けたわけでは…。
 私たちは…自分自身に芽生えた欲望に心を奪われ……落とされるのです…。」
「聴こえぬ。もっと声を張り上げねば、お前の下から聴こえる音でかき消されるぞ。
 もっとも、お前の下の口はその欲望を説いているようだがな。」

 裸に剥かれた私は、すでにピサロさんに組み敷かれ、体を貫かれている。
ピサロさんが放ったものか、私が2度ほど達して放ったものが流れたのか、それとも体が自己防衛で出したのか、私とピサロさんの結合部から耳を覆いたくなるほどの水音が部屋に響き渡っている。
私は涙で目の前が見えず、上手く呼吸もできなくなっていた。説教を続けているせいで喘ぎ声を堪えることもできず、言葉の合間合間にこれまで自分でも聴いた事の無いような声を出してしまって、情けなくて羞恥で体が震えた。
体中、透明なものと白く濁ったものとで汚れている。

「…悲しまないで下さい。私たちが信じる神は…悪を…許容しています。」

 こんな情けない惨めな姿で、私は神を説いている。一番耐えられないのはこのことだった。
何度か耐え切れずに思わず体が逃げたり、拒否の言葉を口にしたが、その度に押さえ込まれては、罰としてまた自分の体の記憶を呼び覚まされた。
それは彼との秘め事の数々で、ピサロさんはそれを読み取っては愉快そうにそれぞれの過去に対して侮蔑の言葉を、過去と現実の境界が曖昧になってきて混乱している私にいくつもいくつもぶつけてきた。
 何度か死の呪文が頭をよぎり、口にしかけたが、私はそれをなんとか飲み込んだ。

 これまで経験したことが無いような大きな存在が何度も私を侵し続け、嵐のような快楽に体がついていけない。
最初のうちは機嫌を損なわせるのが怖くて、なんとか愉しませなくては、と思っていたが、今は最初の言いつけの説教を続けているだけでも、たどたどしかった。
今なら教会の門番の子の方が上手く神を説けるに違いない。

 永遠とも思えるほどの時間、抱かれ続けているような気もしたが、実際にどれだけの時間が過ぎているのか皆目見当もつかなかった。
ピサロさんは一度私の中で達しているが、止める気配すら無い。
もしもこれが彼ならもう許してくれているのに…。
私は現実逃避もあっただろうが、彼に体を揺すられながら、意識が朦朧としてきた。

80無題 6/7:2008/02/11(月) 17:49:11
「神は…我々にそれを乗り越え…神の存在により近くなるよう…強くなるよう、望んでいるのです。
 ただ…現実は神が許したとは思えないほど苦しい。
 あなたが神を信じていないことは、ある意味正しい。」

 ピサロさんの動きが止まったが、私は気付かなかった。

「この世の中には色んな神が居て、それぞれの神を信じている者たちが居ます。
 遥か遠い極東の島では木や、土や、風に至るまで全てにそれぞれの神が息づいていると
 信じられているといいます。きっと…あなたの村をこんな姿に変えてしまった者にも…
 絶対に守り抜いて信じなければならない何かがあったのでしょう。
 もちろん…彼らがしたことは許されるものでは…ああぁっ!」

 私からピサロさんが出ていったことで、私は我に返った。「続きは?」とピサロさんが私を見下ろす。
「え…?」私は息を整えながらピサロさんを見上げる。
「今の説教の続きを言えと言っている。」
「え、続き?」
「やはり意識が飛んでいたのか…。また過去を読めばいいのか?」
「ひッ…!!」
 腕をつかまれ、身を縮めて震える私の姿がおかしかったのか、ピサロさんがふっと微笑む。そして「…もういい。」と私の横に寝転んだ。
2人寝るには狭いので、私はずり落ちるようにベッドから抜け出た。床にしりもちをつく。
「何処へ行く?」
「も…もう許してもらえたのかと…」
「上に乗れ。」
 私は冗談かとピサロさんを見つめたが、ピサロさんが眉をひそめたのが見えて、慌てて腰を上げた。
「ひぁぁ…。」私は再びぺたりと座り込む。
「何をしている?」ピサロさんはベッドを抜け出し、私の腕を掴んで、首を横に振り続けている私を無理矢理立たせた。
私の座っていた床で血と混じって白濁した粘着力のある液体が小さな音を立て、私は自分が一気に赤面していくのが分かった。
「ほぉ…?」
「す、すみません、あの…」
「私がお前に注ぎ込んだものだ。気にするな。」
 予期しない言葉に私は思わずピサロさんを見つめた。

81無題 7/7:2008/02/11(月) 17:52:53
 崩れ落ちそうな体を必死に動かし続ける私を見上げ、ピサロさんは「何故、さっき死の呪文を唱えなかった?」と聞いてきた。
「私を殺そうとしたのだろう?」
 私は首を横に振る。「あなたに…死の呪文は効きません。」
「ならば何故…」
「死のう、と思いました…。」
 私は微笑もうとしたが、顔が歪んでしまい、逆に涙がこぼれた。
「私1人耐えれば…と軽く考えていましたが、神の教えを口にしながら、
 こんなに乱れてしまって…耐えれるものでは無かった。」
「何故、死ななかった?」
「私たちの神は…自害を禁じていますから。」
 私の体はついに動けなくなった。ピサロさんの上に倒れるのだけは避けようとしたが、そのままベッド下まで落ちそうになった。
ピサロさんの腕に抱きとめられる。
「お前は死ぬ自由さえ奪われているのか。」
 そのまま体位を変えられ、再び下に組み敷かれる。ピサロさんは私の胸の中央に手を当てた。
「今、楽にしてやる。」


「……リク!!」
 私が目を覚ました時、ピサロさんの赤い眼が覗き込んでいて、一気に記憶が蘇って飛び起きた。不思議と体が軽い。
「無理するな。体力は全快しているはずだが、精神的には疲れ切っているはずだ。
 もうしばらく寝ていろ。」
「か、回復呪文を唱えてくださったのですか…。」
「蘇生呪文だ。成功したのは初めてだ。」
 また思考が固まりそうになった。「そ…蘇生…?」
「死姦も試してみたが、人間相手ではつまらなかった。」
「試しちゃったんですか…。」
 もうついていけない。想像することが恐ろしく、私は自分の体に視線を落とした。体が綺麗に拭かれ、寝巻きを着せてもらっている。
「あ、あの、ありがとうございます。」
「そんなに嬉しいなら、もう一度死んでみるか?」
「その事じゃありません!」
「ロザリーを蘇生させてくれたことには感謝している。」
 ピサロさんは夕食のトレイを持ち上げた。そして、軽々と部屋の扉を開ける。
「約束は守ろう。共に旅を続ける間、お前以外には誰にも手は出さない。」
「そ…そうですか!」
 私は安堵して礼を言いかけ、ふと言葉の意味が気に掛かった。お前以外に?
「なかなか面白かった。次の説教を楽しみにしている。」
 私が自分の血の気が一気に引いていくのを感じたのと、扉が閉まったのはほぼ同時だった。
「は…早く勇者さんに真の敵を倒すようお願いしなければ…。」

82名無しの勇者:2008/02/11(月) 17:55:18
以上です。どうもでした。

83名無しの勇者:2008/02/11(月) 20:34:42
ピサクリ!!
鬼畜魔王×神官実にゴチでした。萌えに萌えた。
これからも書き込んでください・・お待ちしております。

84名無しの勇者:2008/02/12(火) 20:14:59
アアアーピサクリぃぃぃ!
動悸が鎮まりません…!悶えました!
自粛するなんて言わずに、また書きに来て下さい!

85名無しの勇者:2008/02/14(木) 20:23:08
や、ありがとうございます。あまりこういう掲示板に小説出すの初めて
だったんで1人で勝手に恐縮してたんですけど、
んじゃまた、いいネタ思いついたら落としにきます。
3作連続で落としたのでさすがに今は全く何も思いつきませんが…。

86名無しの勇者:2008/02/18(月) 22:52:03
久々に来たら栗受けの宝庫になっとる…!!
どれもこれも萌えまくりでした。ごちです。

87名無しの勇者:2008/02/24(日) 00:41:23
今日ここに初めて来たのですが、いいもの読ませていただきました!
もともとDQで801萌えはなかったのですが、クリファンでしたので
思いっきり禿げました(≧∇≦)

あぁ、美味しかったです〜(*´Д`)ハァハァ

88名無しの勇者:2008/03/04(火) 21:55:22
序盤、ちょっとピサ勇っぽくなったんですが、勇クリ投下します。
紛らわしくてすみません。
ちなみに単独でも読めるつもりですが、75−81の続きです。

89あやしいかげ 1/10:2008/03/04(火) 21:58:09
 最近のクリフトはどこかおかしい。なんとかクリフトさんが僕に自ら体を許してくれるようになってから、毎晩お願いしたいトコロをなんとか週2回ペースで頑張って耐えて、やっとこさ関係を保ち続けているというのに、ここんとこ、そのうち1回は拒まれるようになってしまった。その上、残りの1回もどこか辛そうな顔をする。
確かに真の敵との対決に備えて、これまで以上に激しい戦闘が続いているけど、そんなの今に始まった訳じゃない。
それにもっと気に入らないのが、神の教えを説く、とかで毎週、短時間だけど部屋でピサロと2人きりになっていることだ。
昨夜もそのことで僕はクリフトさんとケンカしている。

「その時間はわずかに15分位よ?だけど、その間、鍵が無いはずの部屋でも何故か魔法が掛かってて
 扉を開かなくしているし、扉に耳をつけても、クリフトくんの声どころか物音ひとつ聴こえないのよ。」

 マーニャさんが僕に声を潜めて疑問を投げかけてきたのは、2人でエンドールの城下町でネネさんの銀行にお金を預けた帰り道だった。

「しかもよ、部屋から出てくるクリフトくんが入る前よりも、体力全快してるのよ!
 一度、声掛けたらビクビクしちゃってさ。本人笑ってるつもりでも、顔が引きつってるのよね。」
「疲労困憊してるならともかく、元気になっているなら別にいいじゃないですか。」
 僕も気になっていた事だったけど、マーニャさんの推理が聞きたくて気の無い返事をしてみたら、マーニャさんは綺麗な眉をひそめた。

「あんたね、考えてもみなさいよ。クリフトくんかピーちゃんか、
 どちらが唱えたか知らないけど、体力全快ってことは、ベホマ使ってんのよ?
 ってことは、あの部屋でクリフトくんが瀕死の状態になってる、ってことじゃないの?」
「ベホイミかも知れませんよ。」
「一緒よ!なんでボーズが10分かそこら説教するだけで回復呪文掛けなきゃなんない位体力消耗する訳!?
 どこまで全力投球なのよ。馬鹿も休み休み言いなさいよね。」

 宿屋に到着すると、その前でマーニャさんは足を止めた。
「あんたさ、クリフトちゃんのこと大事に想ってんなら、なんとかしなさい。
 近い将来に旅を終わらせたとき、仲間全員でそれを喜びたいのよ、私は。」

 マーニャさんはそのまま振り返らずに宿屋に入っていった。
 僕らのこと、バレてたのか。

90あやしいかげ 2/10:2008/03/04(火) 22:00:25
 クリフトが道具屋に不用品を売りに行っている間にさっさと部屋割りを済ませた。
今日、ピサロと同室だったのは本来ライアンさんだったけど、僕は代わって欲しい、とライアンさんに頼んでみた。
ライアンさんは心配そうにしていたけど、僕が武器まで預けると最後は納得して部屋を譲ってくれた。

 僕が部屋に入ると、ピサロはベッドに座り、一本の杖を面白そうに眺めていた。部屋に入ってきた僕をチラリと一瞥し、ピクリと眉を動かす。
「話がしたいんだけど。」
 僕はピサロの前に立った。ピサロは何も言わず、目だけで先を促す。僕はマーニャさんの話していた疑問をそのままピサロに話した。

「…クリフトさんを密室に閉じ込めて、あの短時間でいったい何をしてるんだ?」
「1ヶ月も掛かるとはな。」
 ピサロは愉快そうに笑った。「いつお前が私を追求に来るか、と待っていたんだが、少し鈍すぎるな。クリフトも気の毒に。」
「ふざけるな!何をしたんだ、クリフトさんに…!」
「知りたいか?」
 笑みを浮かべたまま、ピサロは僕に問いかける。僕がうなづくと、部屋のどこかで破裂音がした。少し、息ぐるしさを感じる。
ピサロはそのまま僕の腕を握った。驚いた次の瞬間、大きな衝撃が体を走り、目の前に昨日、ケンカの末に無理矢理押し倒したクリフトさんの泣き顔が蘇る。
これは僕が絶頂を迎えた時だ。一気に体が熱くなった。

「…あんた、体の記憶まで触っただけで蘇らせることができるのか。」
「大事に想っているわりには、無茶をするな。私を責める権利がお前にあるのか?」
「抱いたのか、クリフトさんを…!」
「分かってて来たんだろう?」
 ピサロは立ち上がり、僕の顎に指を添えた。そのまま僕に口付ける。驚くほど長い舌が歯肉をなぞり、僕の舌を絡め取る。こいつ、腹が立つけど、上手い…。
体の熱が徐々に高まってくるが、心に浮かんできたのは、目の前の男に滅ぼされた僕の故郷の光景だった。

 ピサロが体を離す。僕は何の感動も無く、ピサロを眺めていた。どうやら僕の心を読み取ったらしい。
「私は信念に基づき、あの村を滅ぼしたまでだ。少しも間違った事をしたとは思っていない。」
 ピサロは冷ややかに僕に言い放った。
「だが大切なものを失う悲しみは分かる。一度は、ロザリーを失った今ならば……。

91あやしいかげ 3/10:2008/03/04(火) 22:02:17
「村ひとつ滅ぼしといて何を言っている!あんなに残酷にシンシアを殺しといて何を言っているんだ!」
 僕は思わず大声を出した。「シンシアは…シンシアとして死ぬことさえ出来なかったんだぞ!!」

「お前は自分の信念に基づき、ロザリーヒルにたどり着いた。
 そして、ロザリーに会う為だけに、門番を殺した。
 門番が居なくなったことで、ロザリーは誰に守られること無く人間になぶり殺しにされた。」

 僕は冷水を浴びせられた気分だった。ピサロは表情も無く、その血のように赤い眼で僕を見据えている。
「お前らが殺した我々の仲間はどうだ?
 お前が住んでいた村人の数よりもお前が殺してきたモンスターの数の方が遥かに多いとは思わないか?」
 僕は向かいのベッドに座り込んだ。怒りと戸惑いと不安が一気に僕の心を凍りつかせた。

「お前は何故、我々の仲間を殺してきた?私を殺す為に邪魔になるから殺し続けてきたのではないのか?
 勇者という芽を摘むために、それを守る村人を殺した我々と何がどう違うというのだ。」

「僕の怒りは…間違いだと言うのか?あんたが僕の村を滅ぼしたのも、
 サントハイムを無人の城にしたのも仕方ないと言うのか…!!」
「同じことだ。私がロザリーを殺されたことが仕方ないと納得できることではなかった、ということと。
 所詮、お前も私と同じ穴のムジナだということだ。」

 違う違う違う違う!僕は両手で顔を覆った。   だが、何が違う?

「お前はここに何しに来たんだ。折角あの神官がけなげにお前らを守っているのに、その努力を無にしに来たのか?」
「…守ってる?」
「他の人間に手を出さない、という約束だ。あまりに楽しませてもらえたのでな。約束を守ってやることにした。」
 ピサロは愉快そうに僕の顔を眺めながらベッドに腰を下ろした。

92あやしいかげ 4/10:2008/03/04(火) 22:03:52
「最初は人間というものを知りたかっただけだ。誰でも良かった。最初の部屋割りがあの神官の運の尽きだな。
 お前があの男を気に入るのも分かる。あれは貪り付きたくなる体だ。人間にしておくのはもったいない。」
「15分ほどの短時間で出てきていた…。」
「今、この部屋は異空間に留まっている。私が扉を開くまでは何人たりとも入室できない。
 ここの閉鎖空間は通常よりも時間が流れるのが遅くてな、外の15分はここでは2時間半ほどだ。」
「クリフトさんを…抱き続けていたのか。」
「週に1度の約束だ。ちゃんと体力を回復しておいてやっている。責め殺してしまったのも2回だけだ。」
「二度とクリフトに触れるな!!」

 感情が沸点に到達した。武器はライアンさんに預けてきてしまった。もし装備していたとしても、一対一では僕はこの男に敵わない。
相打ち覚悟で挑んでも、僕が死に、彼は瀕死で生き残る。そんな気がした。
 部屋を沈黙が支配する。ピサロからは反省する素振りが全く感じられず、僕は次第に怒りが静まってくるのを感じた。
ピサロはクリフトに対しても僕に対しても全く罪悪感を感じていない。むしろ楽しんでいたんだろう。

 ピサロは興味を無くしたのか僕から視線を外し、ベッドに転がった杖を再び手に取った。そして、薄く笑った。

「ひとつ、ゲームをしようじゃないか、勇者殿?
 お前が勝てば、私はもう2度とクリフトには手を出さん。約束しよう。」


 部屋の封印が解かれた途端、突如扉が開かれて、クリフトさんが血相を変えて部屋に飛び込んできた。
すぐに扉を閉め、素早く部屋を見回し、僕を見上げてにらみつける。
「勇者さんはどこですか!」
 僕は必死で感情を殺す。本当はすぐにでも抱きしめたかった。
「勇者の小僧はここには居ない。」
「じゃあ、何故、部屋の空間を閉じていたんですか!私以外には手を出さないと約束したのに!!」
「息苦しくなったんだろう。すぐに出て行った。空間を閉じたのは、ゆっくり休みたかっただけだ。」

 そう、僕は今、変化の杖でピサロの姿をしている。耳元でクスクス笑い声を立てているのは僕の影の姿となったピサロだ。

93あやしいかげ 5/10:2008/03/04(火) 22:06:24
 ピサロが提案した賭けは、僕がピサロの姿で正体を明かさないまま、クリフトを抱くことだった。
「もし途中で放棄したり、クリフトがお前に気が付いた時点でお前の負けだ。
 クリフトを異空間に閉じ込めたまま、2度と外へは出さん。絶対にだ。」

 クリフトは青ざめた顔で僕を見上げていたが、やがて緊張の糸が切れたのか崩れ落ちるようにその場へ座り込んだ。
「良かった…良かった…」と声を震わせた後、クリフトはハッと息を飲んだ。

「す、すみません、勘違いをしてしまって…。」
 部屋全体に何かの破裂音がする。ピサロが空間を閉じたんだろう。クリフトは弾かれたように顔を上げた。顔は血の気が引いたままだ。
「きょ…今日は約束の日ではありません…。」
「お前が勝手に決めた約束だ。私にはどうでもいい。」
 いいから早く僕に抱かれろ。僕はクリフトの腕をつかんだ。クリフトはこちらが驚くほど大きく体を震わせた。
まるで殴られるのを待っている子供のように体を竦ませる。もちろん何も起こらず、クリフトは目をぱちくりさせて僕を見上げた。
 あんた、この1ヶ月どんな抱き方してきたんだよ、と僕は呆れて影をにらみつけると、影は素早く床から伸びてきて、クリフトの腕に触れた。

 途端、視界が急に変わり、突然、揺れる天井が見えた。涙で歪んで見にくいが、これは昨日泊まった部屋の天井だ。僕の切羽詰った顔が現れる。

 クリフトの細い悲鳴で我に返った。昨日の僕との記憶を呼び起こされたのか。気の毒に、折角身構えていたのにフェイントを掛けられた形になってしまったクリフトの体は一気に薄い桃色に染まり、ガクガクと体を震わせている。
恐怖に震える姿だけならクリフトに同情するだけだっただろうが、残念ながらこんな状況だというのに、昨日のことをクリフトの視点で見させられただけで、僕はすっかりクリフトを抱く気になっていた。
何故なら、昨日、クリフトと僕の達したタイミングがほぼ一緒だったからだ。これを喜ばずに何を喜べというのか。

 ホント、こんな状況でおかしな話だけど、僕はどうやら微笑んでいたらしい。クリフトが僕の顔を見て益々青ざめた。

「あの、今日は…今のでお分かりになったと思うのですが…さすがに連日になるので…。」
「ごめん、無理。服脱いで。」

 クリフトは面食らった顔をして、目が何度か言い訳を探すように部屋をさ迷ったが、やがて目線を落とし、素直に震える手で服を脱ぎだした。
ノロノロと全裸になるとピサロのせいですでにクリフトの前が半立ちになっていた。
泣きそうな顔で恥ずかしそうに顔を逸らしたクリフトの胸元には昨夜の僕が付けた痕が残っている。
僕は、自分でも思いがけない感情が沸いてくるのを感じていた。
後ろめたい思いを急速に掻き消すほどの黒い感情。それは怒りだった。

「あの、シャワーを浴びさせてくださ…。」
「ヌく必要があるならここですればいい。」

94あやしいかげ 6/10:2008/03/04(火) 22:08:06
 僕の言葉にクリフトが固まる。

「いえ!今日は、汗をまだ流していませんから!」
「構わない。目の前でしてみせろ。」

 クリフトは耳の先まで赤くなり、途方に暮れた顔をした。何か言いたそうに口を開きかけたが、唇を噛んで向かいのベッドに座る。
もう一度僕の顔を確認し、諦めがついたのかクリフトはおずおずと自分のモノに手をかけ、拙い手つきでゆっくりと擦り始めた。

 熱をある程度引きずり出された後だっただけに、ぐちゅ、と水音が静かな部屋に響き渡る。
その音でますますクリフトは消え入りそうに体を小さくしたが、繰り返すほどに水音は消えず、クリフトの耳朶を犯し続けた。
クリフトは必死に泣きそうになるのを堪えながらも、律儀に言いつけを守って自分のモノを擦り続ける。

 段々と息が浅くなっていき、ようやくイけそうになって、クリフトは小さく何かを呟いた。
何と言ったか、こちらが身を乗り出しかけたとき、クリフトは不自然にピタリと動きを止めて、切なげに小さな悲鳴を上げた。
 不審に思って視線の先を辿ると、ピサロの影がいつの間にかクリフトのモノの根元を締め付けている。

「ちょ、あんた…!」
「もう…モンスターは連れてこないでください、とお願いしたじゃありませんか!」

 え、2度目なの!?僕が視線を戻すとクリフトが涙を溜めてこちらを見つめていた。

「そ、そんな約束したかな。」
「前は…ホイミスライムを連れてきて…!もう連れてこない、と言ったのに、次に連れてきたのはマドハンドだった…!」
 息絶え絶えに訴えられて、僕のキャパはもうパンク寸前だった。マドハンドてあんた。
「喜んでいたんじゃないのか?」
 僕の答えにクリフトは目を大きく見開いた。
「そんな…モンスター相手は嫌だと…あれだけ…やっ…!」
 続けてクリフトは座位を崩してベッドに両手を突いた。影がクリフトのモノに絡みつき、蠢いている。
「や…やめてください…今度は…何をさせるつもりなのですか…?」
 もう、ダメだ。僕の頭は真っ白になり、そのままクリフトを押し倒し、噛み付くように唇を奪った。

95あやしいかげ 7/10:2008/03/04(火) 22:11:32
 表情でバレる恐れがあったので、クリフトを背中から組み伏せて貫いた。
ピサロの影は気まぐれにクリフトを愛撫し、また何度かクリフトの喉元を軽く締め付けた。
クリフトの体は首にいつまでも影がまとわりついているせいか、いつも僕に抱かれている時よりも萎縮していて、その分いつも以上に締め付けて、なかなかに具合が良かった。
すすり泣きに近い喘ぎ声が漏れ聴こえる。本人はさぞ辛いだろう。

 クリフトが3度目に達した時、本人はそのままくたりと気を失ったが、影が「この男はこれからが楽しい。もう少し揺さぶり続けてみろ。」と言うから、僕はとり憑かれたかのようにその言葉に従った。
言われたとおり、クリフトは何度か揺すられると目を覚まし、今まですすり泣くだけだったのに、弱々しく行為の終了を途切れがちな声で訴えてきた。

 この光景は見たことがあった。僕が初めてクリフトを抱いた日だ。あの時も、こんな風に泣きながら相手を煽るだけの無駄な哀訴を繰り返してきた。
僕がやってきた事はピサロがクリフトに強いてきたことと、何ら変わりは無い。

 僕がこの状況でクリフトを攻め続けているのは、クリフトを愛しているからではなく、ピサロが相手でも出てくるクリフトの無意識の媚態に、猛烈に心が掻き乱されたからだ。
最初は傷つけずに抱こうと思っていたけど、もう構ってはいられなかった。
 クリフトは優しい。悩める若き勇者に体を提供するほどに。相手が僕じゃなくても体を許すほどに。

『何を呆けている。クリフトが逃げるぞ。』
 ピサロの声に我に返ると、クリフトがベッド脇にいる影が恐ろしいのか、必死に僕の下から這い出そうとしていた。
こんなことして何の意味があるんだ。どうせ部屋からは逃げられやしないのに。
クリフトはベッドからバランスを崩して床へと大きな音を立てて落下した。痛みでうずくまっている。
 とにかく彼を攻め殺せばピサロは満足するのだろう。僕がベッドから降りようとしたとき、クリフトの目線が何かを捕らえたのに気が付いた。
クリフトはそのままベッドの下へ腕を伸ばす。果たして出てきたのは、変化の杖だった。

 僕は次の瞬間、変化の杖を奪い取った。クリフトの目に力が戻り、すでに正気を取り戻しているのが分かる。
ヤバい。この人は妙に勘がいいところがある。

「誰でもいいんだろ?」

 咄嗟に出た僕の言葉にクリフトは目を見開く。
「お前は誰が相手でも悦楽に溺れるんだ。娼館の女よりもタチが悪い。」

 杖を振る。僕の体は再び姿を変える。クリフトは床の上で体を起こしたまま驚愕の表情をした。

96あやしいかげ 8/10:2008/03/04(火) 22:13:55
「やめて下さい。冗談が過ぎます…!」
 僕はその言葉を無視してクリフトに近づいた。クリフトは力の入らない体でなんとか逃げようとするが、すぐに僕に後ろから抱きすくめられ、「嫌です!離してください!」と必死に叫んだ。
僕の体は…いや、ライアンさんの体はビクともしない。クリフトさんは自分の最奥に当たる熱を感じたのか、「ひ…!」と引きつったような悲鳴を上げた。
そのまま僕はベッドに腰掛け、クリフトを僕の上に降ろした。胸が締め付けられるような悲鳴を上げ、クリフトが僕の、ライアンさんのモノを美味しそうに飲み込んでいく。
僕は萎えたクリフトのモノを絞り尽くすように愛撫した。
クリフトはその僕の手を外そうと手を掛けたきたが、何度か体を揺するとすぐに力が入らなくなり、後はただ僕の手の上に自分の手を添えているようにして一緒に動いているだけになった。

 やがてクリフトは小さく僕の名を呼び、水のような精を吐いた。
こんな状態でも僕の名を呼んでくれるのか。それだけで僕は自分の中の黒い感情が消えていくのを感じ、同時に沸き上がる罪悪感に目頭が熱くなった。

 クリフトから自分のモノを抜き、彼をベッドに横たえる。僕自身も何度か擦り、手の中に精を吐き出したが、一部、クリフトの腹部に掛かってしまった。
クリフトがぼんやりと目を開く。僕の顔を見つめる。そして、吐息に近い声で呟いた。

「あなたは何も悪くない。」

 僕は目を見開いた。いつの間にか僕の姿は元の姿に戻っている。クリフトはそのまま瞼を閉じた。
「クリフト…?」僕はクリフトを覗き込んだ。「クリフト!!」

「お前がやり過ぎて気絶してるだけだ。休ませてやれ。」
 影はピサロの姿に戻っていた。そしてまた僕にあの言葉を囁く。
「お前がやってきたことは、私がやってきたことと何ら変わりは無い。」

 僕は首を横に振った。
「それで大事な人が守れるなら、魔物になろうと構わない。」

 ピサロの眉がピクリと動く。僕は宿の備え付けの布でクリフトを清めることにした。しばらく部屋に沈黙が訪れる。

「…全く、人間というものはもう少し脆いものかと思っていたがな。」
 ピサロが突然笑いを含ませながら言うから、僕は驚いて布を取り落としそうになった。

「『あなたが安易に人間を滅ぼそうと考えたのが全ての元凶ではないのですか』」
 ピサロは顔を歪めた。「あの神官が言った言葉だ。」

97あやしいかげ 9/10:2008/03/04(火) 22:15:34
「お前に言ったのと同じ台詞をあの神官を抱きながらぶつけてやったんだ。
 痛恨の一撃を喰らった気分だった。
 確かにそのとおりだ。騙されていたとは言え、
 何故これほどまでに人間を滅ぼそうと容易く考えてしまったのか。」

 ピサロは肩をすくめてベッドに腰を下ろした。
「普段は私に大人しく抱かれているくせに、さすがに腹が立ったらしい。
 その後すぐに青くなっていたが、
 なんとなく癪に障ったので思わず責め殺してしまった。」

 僕はピサロを見つめ、彼が背負っているあらゆるものの重さに思いを馳せた。そしてその十字架を背負わせたクリフトさんに視線を落とす。
彼は青ざめた顔をして目を覚ます気配が無かった。
「クリフトさんは最後まで僕に気が付かなかった。もう2度と行為を強制しないでくれ。」
 僕の言葉にピサロは「そうか?」と笑みを浮かべた。

「この神官は早々にお前の正体を見抜いていた。ゲームは最初からお前の負けだ。」
「クリフトさんは何も言わなかったじゃないか!」
「『夜の帝王』だ。」
「は?」
「2度目に連れてきたモンスターは『夜の帝王』だった。
 本当にネーミングどおりなのか知りたくてな。」
 ピサロは笑みを浮かべたまま話を進める。
「この男はお前を試したんだ。しかし、マドハンドとはな!笑いを堪えるのが大変だった。
 ご要望にお答えして3匹ほど連れてこようかと思ったぞ。」

「あんたじゃない、と分かっても中身が僕だとは気付いてなかったかも知れない。」
「お前が自慰行為をさせた時、お前の名を呼んだ。
 まぁ、これは普段から達する時にはお前の名を呼ぶことが多いからな。
 お前がその事を知って喜ぶと面白くないから、今回はお前の名を呼びそうになったら首を絞めていたわけだが。」

 僕は自分の馬鹿さ加減を思い知らされた。なんとくだらない嫉妬をしていたのか。

98あやしいかげ 10/10:2008/03/04(火) 22:16:54
「じゃ、なんでクリフトさんは何も言わずに抱かれるままになってたんだ…?」
「訳が分からなかったんだろう。どうせ私に脅されてるか、
 自分の不貞にお前が怒り狂ってるか、
 それぐらいは察していたかも知れないがな。」

「ゲームはあんたの勝ちってことか?クリフトさんを解放してくれないのか?」
 僕が震える声で言うと、ピサロは指を鳴らした。再度破裂音が部屋に響き渡る。部屋の封印が解けたのだ。

「蘇生呪文を完璧に詠唱できる者が私以外にこの神官しか居ないからな。
 本当の元凶を倒す為には幽閉など馬鹿げたマネはできん。」

 ピサロはあっさりと言う。僕はポカンとピサロを見つめた。まさか、最初からその気が無かったとか?

「今夜はお前がこの部屋を使え。私はロザリーヒルへ向かう。」
「ロザリーヒル?何しに行くんだ。」
 ピサロは目を逸らした。「クリフトの為、もう一部屋用意しておこうと思ってな。」
 僕が思わず大声を出しそうになった瞬間、ピサロは「冗談だ。」とベッドから立ち上がった。
「急にロザリーに逢いたくなっただけだ。しかし最後まで面白かった。
 これで終わりなのは正直惜しいな。」

 ピサロが部屋から出て行った。僕はクリフトの清拭を終え、彼が目覚めるのを待った。
 僕はクリフトに全身全霊で謝るつもりだ。目が覚めたら泣くだろうか、それとも怒るだろうか。
 どちらにしても全て受け入れる。僕はクリフトの何を見ていたのか。早くクリフトと話がしたかった。


 ピサロがマドハンドを呼ぶのなら一度くらいは許してやってもいいかもな、と少し考えてしまったことはクリフトには絶対に内緒だ。

99名無しの勇者:2008/03/04(火) 22:18:01
以上です。どうもでした。

100名無しの勇者:2008/03/05(水) 19:41:34
ぬああああー続き的新作ゥゥゥ!!ktkr!!
ゴチです!

101名無しの勇者:2008/03/06(木) 23:36:55
キターーー!!!乙です!
栗ももちろん、一途な勇者も可愛いなぁー

102洋二郎:2008/03/07(金) 08:41:37
半信半疑で試したらマジだった件w
騎乗位してあげただけで万冊くれるとかww
最近の若者は分からんわww
ttp://jbbs.livedoor.jp/movie/8433/?Pz87rm4v

103名無しの勇者:2008/06/23(月) 01:28:17
勇クリです。エロさ少なめ。
トランプの模様(?)はうろ覚えです。

104運命のカード 1/5:2008/06/23(月) 01:30:49
 きっかけはエンドールのカジノだった。格闘場でマーニャさんが3連続の大当たりを出し、ハイテンションになったメンバーが嬉々としてベットを続ける中、僕はその中にクリフトが居ないことに気が付いた。そういや、クリフトはいつもカジノには入ってこない。
先に宿屋に戻ったのかな、と入口に目をやると、クリフトの姿が見えた。少し寂しげに見えたその姿に、他のメンバーは全く気が付いていない。
僕はそっとその場を離れ、クリフトに近づいた。

「クリフト、どうしたの。マーニャが妙にツキまくって変なテンションになってて面白いよ。
 見にくりゃいいのに。」
 声を掛けると、クリフトは「いえ、さすがにこの姿では目立ちますから。」と首を横に振った。
なるほど、神官が格闘場で狂喜乱舞している姿は確かにあまり人にはお見せできないだろう。
「じゃあ、着替えてきなよ。僕の服貸してあげるからさ。」
「いえ、あの、賭け事自体、教えに反しますから。」
「えー、じゃあ、なんでここへ来たのさ?」

 僕にとっては特に何の意味も無い質問だったのに、クリフトが思いきり動揺した表情になったのに驚いた。
目が何度か言い訳を探すようにさ迷い、「すみません!宿屋に戻っていますから!!」と身を翻した。
「えー、ちょっと待ってちょっと待ってよ、クリフト!ごめん、僕、何か悪いこと言った?」
 とっさに腕を掴むと、クリフトは目を見張り、「いえ、勇者さんは悪くありません。」と申し訳なさげに言い、小さな声で、
「カードゲームが気になりまして…」と呟いた。
「え、何、ポーカーやりたいの?」

 僕の問いにピクリと肩を震わせ、観念したように顔を上げて、恥ずかしげに微笑んだ。
 ああ、もう、可愛いなぁ、この人。どうしてこういう事が素でできるんだろ。

「マーニャさんが以前、ポーカーをやっているのを後ろで眺めていたのですが、役を作っていくのが面白そうだな、と思いまして。」
「いいじゃない!やろうよ、ポーカー。」
 掴んだ腕をそのまま引っ張ると、クリフトは「いえ…」と僕の腕をやんわりと解いた。
「賭け事できないんです。ごめんなさい。ありがとうございます。」
「クリフトってそうやって何でも我慢しちゃうの?人生の半分損して無い?」
 思わず出た僕の言葉にクリフトの顔が面食らったように目をみひらいたけど、すぐに「気を悪くされましたか?」と不安げに僕に聞いてきた。
何、その反応。我慢している、という認識が無かったのか?

「分かった、分かったよ、クリフト!」
 僕はハァー、とため息をついた。
「僕、カード借りてくる。教えてあげるから宿屋で一緒にポーカーしよう。」
 その時のクリフトの顔は忘れられない。一瞬、ぽかんと僕を見つめて、
「え、あの、いいんですか?カジノを楽しまれなくても?」
と早口で僕の意思確認をし、僕が再度「マーニャかミネアがカード、持ってたし」とうなづくと、こちらが驚くほどの笑顔になった。

105運命のカード 2/5:2008/06/23(月) 01:32:47
「はい、ストレート。」
「スライムのフラッシュです。」
「!!」

 僕はガクリとうなだれた。お互いのベッドに腰掛け、サイドテーブルを間に挟んでポーカーを始めたのはいいけど、実はこれで3連敗だ。
クリフトはニコニコとカードを切りながら、
「本当に面白いですね、このゲーム。もっと早く教えてもらえば良かったです。」
と、カードを再び配り始めている。

 クリフトはポーカーの役や強さの順番をすぐに覚えた上に、慣れてくると異様に強かった。クリフトは表情豊かだし、思考を読むのは簡単だと思っていたけど、生憎、ポーカーができる喜びからか、終始笑顔を浮かべたまま、表情を崩さないのだ。
そういや、元々僕よりも魔力や運の強さも上だったな。今度、カジノに強制連行してやる。
 幸せそうに微笑み続けるクリフトを眺めていると、ふと、いい考えが思い浮かんだ。そうか、動揺させてみればいいんだ。

「クリフト、何も賭けてないとつまらないよ。」
「はぁ、でも、先ほども言いましたけど、賭け事は禁じられていて…」
 向かいのベッドに腰掛けているクリフトは困ったように眉根を寄せた。

「お金じゃなくてさ、負けた方が勝った方の言うことをきくってのはどう?」
「え?そんな、勇者さん、無理難題を言うつもりじゃないでしょうね?」
「無理難題なんかじゃないよ。僕が勝ったらクリフトを抱くだけだから。」
 クリフトは息を飲んだ。笑みが消え、みるみる青ざめていく。

 過去、僕は1度だけ嫌がるクリフトを無理矢理抱いたことがあった。最後には十分悦ばせたつもりだったけど、本人は結構ショックだったらしく、
「お酒に酔ってらしたからですよね?」と事故に遭遇したかのように、忘れようと努力しているようだった。その様子は僕にも衝撃を与えた。別に軽い気持ちで彼を抱いたわけではない。
こんな風に何もかも無かったことにされるくらいなら、忘れられないように何度も繰り返すまでだ。

「冗談はやめてください…」
「冗談なんかじゃないって。この前もそう言ったろ?僕はクリフトを好きだから抱く、それだけだ。」
「わ…私なんかを抱いて、何が楽しいのか分かりません。」
「僕だって何でこんな気持ちなのか分からないよ。でもクリフトが最後に僕にせがんでくれた時、すごく幸福になれたよ。」

 ガタン!とサイドテーブルを鳴らしてクリフトが立ち上がった。顔が赤いんですけど。どうしよう、可愛いな、畜生。

106運命のカード 3/5:2008/06/23(月) 01:34:17
「こんな賭け、私は認められません!もう今日はやめにしましょう。」
「クリフトが勝ったら、もう2度とこんなことは言わないよ。約束する。」

 目を逸らしていたクリフトが弾かれたように僕を見下ろす。正直、そんな約束守る気は無かったけど、クリフトには絶大な効果を発揮したらしい。
ここでゲームを降りたら、僕がクリフトを求めることを今後も許すことになるのだ。クリフトは泣きそうな顔で再びベッドに座る。僕は内心、気合を入れ直した。
「じゃあ、ここから3勝した方が勝ち。OK?」
 クリフトに確認すると、怯えたような顔でこくりとうなづいた。
よし、ゲーム開始だ。

 そこからはもう、面白いようにクリフトはボロボロになった。配られたカードを見て、色の白い顔をますます白くさせ、僕の笑顔を見てはビクリと大きく体を震わせる。
「ツ…ツーペアです。」
「騎士とクイーンのツーペア。はい、こっちの数字がでかいから僕の勝ちね。」
 こんな小さな役で勝てるとは。続けて今度はクリフトが勝利する。1勝1敗となったクリフトは、それでも見ていて気の毒になってくるほど手を細かく震わせていた。

「スリーカードです。」
「お、こっちはただのワンペアだ。クリフトの勝ちだね。」
 2勝したクリフトがホッとしたように笑顔を浮かべる。そんなに嫌なのか。分かる気はするけど、やっぱり腹が立つ。

「ソードのストレートです。」
「おっと、ごめん。フルハウスだ。」
 クリフトが「ひっ!」と喉を鳴らした。2勝2敗。次で勝負が決まる。
「も…もう、いいです。やめにしませんか?」
 耐え切れなくなったのか、クリフトが訴えるように僕に詰め寄った。キスできますけど、今は見逃してあげます。
「やだよ。それとも勝負を捨てて、僕に抱かれてくれるの?」
 僕の言葉にクリフトはグッと詰まって身を引いた。目が少し潤んでいる。手が震えてカードが上手く切れないから、僕が代わりにカードを配布した。
「私は…修行中の身です。恋愛はご法度なんですよ。」
 クリフトはわずかに震えた声でおずおずと言った。僕はカードを配り終えた。
「僕は僧侶じゃないから。」

107運命のカード 4/5:2008/06/23(月) 01:38:46
 僕はカードを確認する。ワンペアだ。やばい。表情を変えないまま、クリフトをチラリと見ると、クリフトはカードを手に取らず、まだ僕を見つめていた。
目が合った瞬間、泣きそうな顔で慌ててカードを手に取った。少し、表情が緩む。うわ、いい役だったのかな。こうなったら心理戦だ。

「人間、いつ何が起こるか分からないんだ。
 僕は二度と後悔したくない。欲しいものは絶対手に入れる。」

 僕はすでにいい役が固まっているフリをして1枚だけカード交換した。ラッキー、ジョーカーだ。これでなんとかスリーカード。
クリフトの目線は僕の顔とカードを何度も行き来した。さぁ。無駄な勝負に出ろ、クリフト。
今の「ほどほどいい役」を捨ててしまえ。
 クリフトはギュッと目を瞑った。顔は青ざめているけど、鼻先が赤い。ああ、泣かしちゃったか。
クリフトが震える手で1枚、カードを捨てた。カードの束から1枚抜いて、それを見た瞬間、

 彼は驚愕したように大きく体を震わせた。

「あ…あぁ…!」
 クリフトの手からカードが全てこぼれ落ちる。軽いパニック状態に陥ったようで全身を震わせていた。
「クリフト!」
 クリフトの腕を掴むと、クリフトはすでに涙を流して「い…今のゲームは無効です…」と搾り出すように言った。
「それは無理だ。約束だよ。」
「でも…でも、私の…!」

 無駄な抵抗をするクリフトの唇を自分のそれで塞いだ。自分の気が済むまで何度もキスを繰り返し、そのままベッドに押し倒す。
キスのせいで虫の息になったクリフトの服をさっさと身包み剥ぐと、クリフトは恐怖で硬直していた。

「…そんなに怖がられちゃ、ちょっと傷つくんだけど。」
「い…今の…ゲームは…無効にしてください…。」
「まだ、そんなこと言うんだ!?」
 涙目で訴えられたら、こちらも惚れた弱みもあるし、心が咎めてしまう。僕は彼の上に乗ったまま、サイドテーブルに手を伸ばした。
 クラウンのキング、クイーン、騎士、10。え、これ、まさかのロイスト!?最後のカードは…!?


「THE HANGED MAN」


「うっわ、これ、タロットじゃん!」
 ミネアから借りたから混じっちゃったのかな。裏面も良く見るとサイズだけしか合ってなくて他のカードとデザインも違った。

108運命のカード 5/5:2008/06/23(月) 01:42:40
「その…そのカード、どういう意味ですか?」
「え?」
 クリフトは僕にすがるような目で見上げてきた。

「こんな…こんな状況で出てくるなんて、何か神からの啓示としか思えません!
 『吊るされた男』なんて!
 な…何か、不吉な意味でもあるんでしょうか?」
「や、でも、成位置みたいだし。これは苦行に耐えて出た結果を…」

 ミネアからの受け売りを説明しようとして、僕は気が変った。ベッドに散乱したクリフトの着衣からベルトを手に取り口に咥えると、クリフトの両腕を掴んだ。
縄結びの速さは旅を始めて身に付いたものだ。
「え?え?何を…」
「こんなのが神の啓示なら、そういう姿で頑張りなさい、ってことじゃないの?」
「そんな!」
「拘束はベッド柵が定番だけどねぇ。今日は後ろからいっとこうかな。」
「なに?何の定番ですか!?後ろって何!?…あぁぁっ!」

 体をすっと撫で上げるだけでクリフトはまるで僕を煽るように細く悲鳴を上げて、背中を仰け反らした。これで無意識の行為だから恐ろしい。
「終わったら、説明してあげるよ。ちゃんと意識を飛ばさずに居てくれたらね。
 さて、みんなが帰ってくるといけないから、とりあえず、この部屋には鍵を掛けておくね。」
 
 始めは辛いけど、いつかは報われる。気長に考えろ…だったかな。あとは「自己犠牲」。最近の僕の状況にも、クリフトの状況にもピタリと当てはまる。
さすがはミネア。居なくても占いをピタリと当てちゃうんだもんなぁ。
 少し冷えたクリフトの体を後ろから僕が抱きしめた時、クリフトの体の震えが少しマシになったのが救いと言えば、救いかな。諦めただけかも知れないけどね。

109名無しの勇者:2008/06/23(月) 01:44:21
以上です。どうもでしたー。

110名無しの勇者:2008/06/24(火) 00:29:28
勇クリきてたー!
クリフトかわいいです。ゴチでした。

111名無しの勇者:2008/07/11(金) 00:31:18
新作きてたー!ヽ( ゚д゚)ノヽ(゚д゚ )ノ2人ともかわいいよ!!
乙でした!!

112名無しの勇者:2008/07/20(日) 23:55:57
「前は…ホイミスライムを連れてきて…!もう連れてこない、と言ったのに、次に連れてきたのはマドハンドだった…!」

このあたりの詳細をお聞かせ願いたい。
と言ってみるテスト。

113108:2008/07/24(木) 00:22:07
>110
>111
ありがとうございます!

>112
のんびり待っててくれるなら夏休みの課題だと思って書いてみます。

114108:2008/07/28(月) 00:09:03
…すみません。のんびり待ってて、と言いながら、書き始めたら3日間で書き上げちゃいました。
ピサクリ前提のホイミスライム×クリフトです。
触手、書き方が良く分からず、勢いで書いてます。

115108:2008/07/28(月) 00:15:24
「無理なさらないでくださいね、クリフトさん。
 今はマシになりましたけど、朝はひどく疲れた顔でしたよ?」

 戦闘が終了したところで、ミネアさんへの交代を断った私に、彼女は顔に疲労の色を浮かべつつも心配してくれている。
戦闘終了後の回復はほぼ彼女が担ってくれているから魔力が乏しくなってきているのはお互い様のはずだった。
「大丈夫です。高いところも終わりましたし、ここから先は安心して歩けそうですから。」
 冗談めかして言うとミネアさんはクスッと笑い、「じゃあ、お言葉に甘えて休ませてもらいますね」と馬車の中へと引っ込んだ。ちなみに現在は隠しダンジョン探索中だ。

「大丈夫ですかな、クリフト殿?」と先頭を歩いていたライアンさんが振り返る。
「心配しないでください!さあ、行きましょう。」

 笑顔を作り、ふと振り返ると無表情でこちらを見ているピサロさんと目が合った。ビクッと体が振るえ、慌てて目を逸らして歩き出す。
 そうだ、気付かれてはいけない。私がここ最近3日と置かず、彼に体を提供していることを。

 ダンジョンの角からモンスターが数匹現れた。私は腰に差してあった魔封じの杖を素早く抜き前方へ大きく振るった。魔法を封じられた魔物たちが力任せに襲ってくるのを前衛でライアンさん、ピサロさん、勇者さんが応戦してくれている。私も杖をベルトに差しなおすと素早く背中に背負った剣を抜いたが、すでに半数以上の魔物が倒されていた。
ピサロさんが仲間になってくれたおかげで最近は後衛に居る事が多い。炎などのブレスを吐く魔物さえ出なければさほど大怪我をすることも少なくなった。
 だから、おそらく油断していたのだと思う。すぐ背後にモンスターが迫っていたことに気が付かなかったのだから。
鞭のように風を切る音を立て、剣を持っていた手を弾かれ、ギョッと振り返るとそこに居たのはベホイミスライムだった。

 心臓が止まるか、と思うほど体が恐怖で萎縮したせいで2撃目は脇に入ってしまい、横へ吹っ飛ばされて馬車に体が衝突、中から女性陣の短い悲鳴が聴こえた。
驚かせてしまったことを申し訳なく思いつつ体を起こせば、3撃目のためにベホイミスライムが長い触手を再び持ち上げるのが見えた。ダメだ、これも防げない。

「何やってんだ、クリフト!」
 前衛からひとっ飛びで走りこんできた勇者さんが一撃でベホイミスライムを仕留めてくれた。

「ありがとうございます…。」
「あんなのに何ボコられてんだ!何の為にはぐれメタルのフル装備渡してると思ってんの!?」
 勇者さんに一喝され、私は「す、すみません!」と慌てて立ち上がった。
「おかげでダメージはそれほど受けてません。」
「そういう意味じゃ無いだろ!」
 確かに今の行動はまずかった。べホイミスライム相手に吹き飛ばされるなんて、昨日までの私ではあり得なかった失態だ。
「まぁまぁ、私もホイミスライム系を倒すのは未だに迷いますからなぁ。あいつを思い出してしまって…。」
 ライアンさんが間に入ってくれたが、フォローが的を得ていない。しっかりしなくては、と自分自身に言い聞かせ、
「いきなりで驚いてしまったんです。今後、気をつけますから。すみませんでした。」
と、勇者さんの叱責を封じた。勇者さんは「どうしちゃったの?」という目でしばらく私を見つめていたが、
「…傷、深かったら治しといてよ?じゃあ、出発しようか。」
と肩をすくめ、私に背中を向けた。パトリシアが動き出してから、私は馬車の中へも「驚かせてすみません。」と声を掛け、気持ちを奮い立たせるように一歩目を踏み出した。

 大丈夫、大丈夫だ。「通常」ならホイミスライム系はそれほど強くないし、攻撃以外のことなんてしてこない。また自分自身に言い聞かせるように心の中で呟き、顔を上げた時、再びピサロさんと目が合った。

 微笑んでいる。

 私は再び恐怖心で縛られそうになり、ギュッと杖の柄を握り締めた。もうダメだ。これ以上は耐えられない。もうダメだ。もうダメだ。これ以上は耐えられない…

116ツワモノ 2/5:2008/07/28(月) 00:20:35
↑ すみません、タイトル入れるの忘れてました…。
↓ 続きです。


 これ以上は耐えられない…。

 昨夜、私はピサロさんの部屋の前に立ち、いつものように心に沸く恐怖心と戦っていた。宿屋に泊まる度にピサロさんに呼び出されていて、もうこれで3度目だ。
人間を抱いたことが無い、というピサロさんに、他の仲間には手を出さない、という交換条件で始めたことだが、1度目はもう死ぬか、と思うほど凄まじかった(実際一度は死んだらしいし)。
2度目は驚くことに私が話す神の教えを、1時間何もせずに興味深そうに聴き入っていた。まぁ、途中で飽きてきたのか、説法を続けるように言うと、そのまま私を着衣ごしに触りだして泣いて頼んでもやめてくれなかったのだが。
 私は自室から持ってきた聖書に視線を落とした。中で何をされるか分かっているのに、それを阻止する術が分からない。いつも悩んだ時は聖書を読んで様々な苦難を乗り越えてきたが、今回ばかりは解決法が分からなかった。
ページをめくる度、ピサロさんにされた事を思い出すのだから、集中して読めるはずも無い。

 私が何度目かのため息をついた時、突然、扉が勢い良く開いた。とっさの事に反射的に身を引いたが避けきれず、鼻先に扉が直撃した。
痛みのあまりに左手で顔を覆った次の瞬間、右上腕に何かが絡み、扉の中から思いっきり引っ張られた。バランスを崩して部屋の中に倒れこんだ私の背後で扉がまた勢い良く閉まる。
ピサロさんの仕業かと鼻を押さえつつ顔を上げると、部屋の奥のベッドで腰掛けている姿が見えた。今日は裸じゃない。私が手にしていたはずの聖書が吹っ飛んでしまったようで、彼の足元に何度も回転しながら滑り込んでいく。
 聖書を拾い上げるピサロさんを見上げつつ、では今、私を引っ張り込んだのは誰だったんだろう、とぼんやり考えた。パシン!とまた空間が閉じられる音がする。
これで、当分の間、この部屋にはどれだけ叫んでも誰も入ってこなくなるのだ。

「部屋の前で突っ立ったままいつまで待たせるんだ。」
「あの…頻度が高すぎませんか?
 魔族の方は普段どれだけなのか存じ上げないのですが、さすがに辛くて…。」
「終了後、全快させているはずだが?こちらは毎日でも構わな…」
「無理です!絶対無理ですから!!」
 私は床に座り込んだまま慌てて言った。「き、気持ちの切り替えができなくなるのです。」
「ほぅ。」
 ピサロさんは興味深げに私を見つめる。「昼間でも貫かれている気分になるということか?」
「そ、そんなあからさまに…。」
 私は顔が火照るのを感じた。ピサロさんはじぃっと考え込んでいる。

「…試してみたいが、この旅が落ち着いてからの方が良さそうだな。
 分かった。今後、もう少しペースを落としてやろう。」
「ありがとうございます…。」
 礼を言いつつも、旅が落ち着いてから、ってどういう意味だろう、真の敵を倒すまで、って言ってなかったっけ?と不安な気分に陥った。
「ところで、この本は何だ?」
「あ、それは聖書です。神の教えが書かれています。
 興味がおありのようだったので、読んでいただこうかと思いまして。」
「ふーん。」
 興味無さげに鼻を鳴らし、ピサロさんはベッドに腰掛けたまま、ページをめくり出した。私は途端に手持ち無沙汰になり、床に座ったままでピサロさんを眺めていた。

 頭上に異様な気配を感じたのはその時だ。

117ツワモノ 3/5:2008/07/28(月) 00:24:02
 つま先で床を蹴り、部屋の奥へ飛んで振り返ると、先ほどまで座っていた場所に、ビチャビチャビチャ!と大きなクラゲのお化けのようなモノが降ってきた。
ホイミスライムだ。しかも3匹も。表情が掴めない3つの顔がじぃ〜と私を見つめている。私は立ち上がって剣を抜こうとしたが、すでに武装解除していて、手が空しく空を切った。

「さすがだな。顔面に落としてやる予定だったんだが、猫並みの反射神経だ。」
 ピサロさんが笑みを浮かべて私に顔を向けた。
「何の目的で、こんな事!?」
「無論、お前を襲わせるつもりだったんだが。」

 ホイミスライムは普通のものより一回り大きめだった。3匹は顔を見合わせ何か呟きあっている。
「…これ、いつも見かけるホイミスライムよりもレベル高くないですか?」
 ホイミスライムから目を離さずに訊いてみると、視界の端でピサロさんが枕の下から金色に光る腕輪を取り出すのが見えて、思わず振り返ってしまった。
「そ、それって、黄金の腕輪ですよね?」
「進化の秘法でレベル60前後に成長させてみた。」
「そんなことに使わないでください!」

 ホイミスライムから目を離した瞬間、私の左足に1本の触手が巻き付いて引っ張られた。転倒した私は、そのまま3匹の元へと寄せられる。
抵抗しようとした両手を別の触手で拘束され、触手という触手が首や足首や胴回りに絡みつき、私は一気に体が恐怖で凍りつくのを感じた。粘液が体にまとわりつき、生理的にも嫌悪感が湧き上がるのを抑えられない。
力を込めて引っ張っても何本も絡みついた触手はビクともしてくれなかった。数本の触手が着衣の裾から入ってきて直接胸部に触れ、心臓の上で這い回った。

 殺される…!

「助けてください!助けて!!」
 私の叫びにピサロさんは聖書から顔を上げ、私の姿を眺めると「もう少し経ってから呼んでくれ。」と再び視線を戻した。
「お、お願いします…!う、うわッ!」
 触手が私の脇腹をなぞっていく。体を仰け反らせた私は、今度は背中を背骨に沿ってなぞられ、「あああぁぁっ!」と声が漏れた。自分で思ったよりも大きな声が出て、途端に気恥ずかしくなったが、それを恥じ入る隙すら与えられず、耳やら脇やら胸部やらを何本もの触手で触られ続けた。声を堪えようと歯を食いしばっても、意識が体に容赦無く与えられ続けている愛撫に流され、思考に霞が掛かってしまう。

 …愛撫。自分の中で浮かんだ言葉にハッと我に返る。そうだ、このホイミスライムには私を殺す気が無い。私の体を弄んで、私の体の熱を一方的に上げようとしているだけだ。
一体だけならなんとか素手でも抵抗できただろうが、複数で来られると為す術も無い。それを全て考えた上で、ピサロさんは3匹もここへ連れてきたのか。

 触手がズボン越しに下肢の付け根あたりを触れてきて、私は背筋が凍りついた。嫌だ、こんなのに触れられるのは嫌だ。こうなったら3匹まとめて…

「ザラ…ッ」

 口を開けた瞬間、2本の触手が私の口腔に飛び込んできた。


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