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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

1ルイーダ★:2008/05/03(土) 01:08:47 ID:???0
【重要】以下の項目を読み、しっかり頭に入れておきましょう。
※このスレッドはsage進行です。
※下げ方:E-mail欄に半角英数で「sage」と入れて本文を書き込む。
※上げる際には時間帯等を考慮のこと。むやみに上げるのは荒れの原因となります。
※激しくSな鞭叩きは厳禁!
※煽り・荒らしはもの凄い勢いで放置!
※煽り・荒らしを放置できない人は同類!
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。
※どうしてもageなければならないようなときには、時間帯などを考えてageること。
※sageの方法が分からない初心者の方は↓へ。
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html#562


【職人の皆さんへ】
※当スレはあくまで赤石好きの作者・読者が楽しむ場です。
 「自分の下手な文章なんか……」と躊躇している方もどしどし投稿してください。
 ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。
※短編/長編/ジャンルは問いません。改編やRS内で本当に起こったネタ話なども可。
※マジなエロ・グロは自重のこと。そっち系は別スレをご利用ください。(過去ログ参照)


【読者の皆さんへ】
※激しくSな鞭叩きは厳禁です。
※煽りや荒らしは徹底放置のこと。反応した時点で同類と見なされます。
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。


【過去のスレッド】
一冊目 【ノベール】REDSTONE小説うpスレッド【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html

二冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 二冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html

三冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 三冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1139745351.html

四冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 四冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1170256068/

五冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 五冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1182873433/

六冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 六冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1200393277/

【小説まとめサイト】
RED STONE 小説upスレッド まとめ
ttp://www27.atwiki.jp/rsnovel/

156姫々:2008/05/31(土) 10:15:08 ID:VbnAj5DM0
>>154
①リリィ24歳、セラ16歳で設定していた気がします。
②容姿は日本版RSのままと思ってください。リリィに関してはWIZの特徴のまま女の人っぽく。
③リ「さて、天下一●道会だそうですが、どうしましょうセラ。」
 セ「あの‥‥それは本当に出なければいけないのでしょうか‥‥」
 リ「あまり気は進みませんけれどね‥‥。姫があまりに楽しそうだったのでつい押し切られてしまいました‥‥」
 セ「それじゃあ出ないとだめですよね‥‥。出るからには優勝を目指しましょうー」
 リ「その切り替えの早さを私にも少し分けてください‥‥。」
・・・くらいの感じで。言うなればリリィ⇒冷静、セラ⇒マイペースって感じでしょうか
④一人称、リリィ、セラ共に私
 二人称はリリィが基本あなた、名前が分かっていれば○○さん、
 セラは基本○○さん、明らかに年下なら○○ちゃん、○○君。(名前が分からなければ○○にはジョブ名)
⑤リリィ、鋼の杖DXor小さな杖LX セラ、松葉の笛
⑥リリィ⇒遊撃 セラ⇒召喚獣が前衛、本体は後衛
⑦リリィ⇒メテオシャワー、ヘイスト、ファイアボール、ファウンテンバリア、テレポテーション、
     ライトニングサンダー、ロックバウンディング、アースヒール、チャージ系、クリティカルヒット
 セラ⇒サマナースキル全種、治療、応急処置、蘇生
⑧リリィは特に無いかなと思いますがあえて言うなら女WIZです。
 セラは基本的に召喚獣を第三形態までランクアップさせず第二形態止まり
 って感じですね。あとペットを連れていない代わりに召喚獣を4体だしてたりします。
それ以外のオリジナル要素は多分無かった気がするので適当に書いてあげればそれっぽくなる気がします^p^

157ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/05/31(土) 11:42:09 ID:OhTl4zsk0
>>116からの続きですよ〜

「オレはここに宣言する・・・この一発に、『嵐』に勝利を託す!!」
大剣を握る両手を後ろに引き、力を溜め込むトレスヴァント・・・対する雪乃は涙を流しながらも彼を見据えていた。
「嵐やて・・・?どないな攻撃するのかはわからへんけど、その覚悟、しかと見届けて差し上げますえ!!」
そう言い放つ彼女がまたも踏み込む!!同時に空蝉を発動し、隊列を組んで襲い掛かる雪乃。再び黒い鞘から紅色の刀が抜かれる!
赤い曲線を描いて放たれる、それは神速の斬撃。さらには分身も同じ攻撃を放つがために威力は計り知れない・・・
「東雲流抜刀術 空蝉の意『彼岸乱舞(ひがんらんぶ)』!!」鞭のようにしなる一太刀、それが花びらのように散らばって
トレスヴァントの肉体を縦横無尽に切り刻む!!!彼の体からはおびただしいまでの血飛沫が舞い上がり、より凄惨さを
物語る。だがそれでも彼は耐えていた・・・攻撃が止むのを、反撃が確実に決まるその一瞬が訪れるのを!!!
「ほらほら、早う反撃せぇへんと死んでしまいますえ!?さっき豪語しはったあなたの覚悟は、その程度のもんやの!?」
もはや号泣といっても良いくらいに、雪乃は涙を流す。だが刀を振るその手は休むことなく、神速の斬撃を放ち続けている。

・・・そして太刀の嵐は止んだ。大剣を後ろに引いたままの大勢で、トレスヴァントは息も絶え絶えになっている。
鎧を粉々にされ、さらには容赦なくその肉体を切り刻まれた彼は血だるまに仕立て上げられていた・・・だがそれでも彼は倒れない!!
「・・・っ、ゲフっ!?ふぅ〜・・・ハァ、雪乃さんだっけか?この勝負・・・ゼェ、オレのっ、勝ちだ!!」
「っ・・・!!!まだそうやって強がりはるの!!?!もう実力の差は歴然やのに、どうしてまだ挑もうゆうの!?」

「お母さん、アンタぁ・・・典型的なタイプだよ。自分の実力に慢心して相手のことなど気にも留めない。それもアンタの速すぎる
 一太刀が、勝負を楽しむ間もなく一瞬で決着を着けちまうような剣術が、アンタを奢らせてるんだよ。それに言ったよな?
 『実力の差は歴然』だって・・・その台詞!!!今から放つオレの『嵐』を見てから言いやがれ!!!!」

ついにトレスヴァントの大剣が振り上げられた!!!だが奇妙なことに、その振り上げるまでの動きが残像としてはっきりと残っている。
さらには彼の握るビッグセイジにも異変が起きていた・・・普通のビッグセイジと違い、その色が蒼く染まっていたのだ。
「いくぜ・・・アンタのヒガンバナとかいう攻撃もそうだが、オレの『嵐』も避けられねぇぞ・・・うぉらぁっ!!!」
そして大剣は振り下ろされた!!!剣圧によって生み出された波動が雪乃に向かって飛んでゆく。
・・・一見すれば一般の戦士が使うソニックブロー、これが必殺の『嵐』だというのか?構わずに雪乃は衝撃波を空蝉で避ける!!
「・・・もうええどす!!結局は大ボラ吹きの三流どしたか、あなたみたいな人に・・・あやねは渡したくありまへんえ!!」
再び刀を抜いて斬りかかる彼女・・・この時、彼女は慢心していた。トレスヴァントの本当の『嵐』を避けた気になっていた。
そんな彼女の前に突如衝撃波が襲い掛かった・・・・!!!!ものすごい風圧、そしてビッグセイジが生み出す蒼い炎に身を包まれ
雪乃は重圧に逆らえずに吹き飛ばされた!!「なっ・・・あぁっ!?」そのまま背後の大木に叩きつけられ、初めてダメージを負う彼女。
・・・だがまだ、青い炎を纏った嵐は未だに収まらない。


向こうでは彼の斬撃のモーションがスローリプレイのように次々と、残像が立て続けに衝撃波を放つ・・・!!!
全弾は雪乃にクリーンヒットし、爆発音のような轟音と雪乃の断末魔とを森中に轟かせた・・・

「いやっ・・・いやぁああぁぁああぁぁぁぁああぁぁっ!!!!!?!!?!」

ズドドゴゴゴゴゴゴォォォオォン!!!!!!

「ディレイクラッシングとソニックブローの合わせ技だ・・・名は『ディレイ・ストーム』。そいつが、俺の・・・嵐、だ・・・」
言い残すと、彼は力なく前のめりに倒れた・・・蒼く染まったビッグセイジが、彼の手からこぼれ落ちる。

158ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/05/31(土) 12:00:44 ID:OhTl4zsk0
・・・トラン森での死闘が終わった。ディレイ・ストームを直撃で喰らったにも関わらず、雪乃は立ち上がった。
身に着けていた黒い着物はボロボロに破れ、ただでさえ高い露出度を余計に高くしている・・・地面に伏すトレスヴァントに歩み寄り
彼女は胸の谷間から一本の小瓶を取り出した。栓を開け、瓶の中に詰められたオレンジ色の液体を自分の口に含める・・・
そしてトレスヴァントの顔を見つめると、瞳を閉じて彼の口に己の唇を重ねた・・・

「(ごめんね、トレスヴァント君・・・あなたの口づけを奪ってもうて。でも、あやねちゃんと死別なんてして欲しゅうないからっ、
  あなたには生きてあやねちゃんを抱いてもらいたいからっ・・・ごめんね、トレスヴァント君!!)」

唇を重ねる彼女の瞳からは、一筋の涙が静かに流れ落ちていた。


――――・・・一方。トラン森の外ではもう一つの死闘が演じられていた!!
デフヒルズの狩猟民族はラフュア族の末裔の美女、ティエラと、雪乃の夫でラティナ(あやね)の父親である燈道の槍使い対決。
だがティエラは爆笑しながら戦っていた。脇で闘いを見届けているラティナは恥ずかしそうに顔を覆い、エレナは呆れ顔・・・
何故こんなことになっているのか?その理由は・・・

「喰らえ―――ィ!!東雲流槍舞術っ、『輪亜流乱忍愚(わあるらんにんぐ)』!!!」

・・・技名が暴走族の当て字よろしくこんな感じなのだ。ティエラにはえらくウケているのか彼女は爆笑しっぱなし。
「あはははははははははははは!!!!ぶぷっ・・・ちょっ、アンタ!!何その技名!?うぁ〜ダサいけど面白いっ!!!ププ〜っ!!」
燈道のワールランニングを軽々と避けるも、笑いのツボにハマった彼女には真面目そうな表情は見られない・・・とはいえ、
対する燈道は大真面目で戦っているのだが。そこが余計に娘のラティナの羞恥心を煽っていた・・・
「いやぁ〜ん////」と泣きそうな声でむちゃくちゃ恥ずかしがる彼女の肩をエレナが優しく叩いて慰めていた。

to be continued・・・ププッwwwww

159黒頭巾:2008/06/03(火) 21:15:51 ID:fou9k2gM0
◇―― リレー企画 ――――――――――――――――――Red stone novel[1/6P]

――ルフィエとネルがゴロツキ達とミリアを見掛けて問答しているのと同じ頃。

驚く男とプリナス目掛けて、薙ぎ倒されたゴロツキが飛んできていた。
その手に握り締められているのは、剥き出しのままのナイフ。
男はそれを避けようとしたのだろうが――後ろに“女性”がいるのを思い出して躊躇
したのが命取りだった。

「……紳士なのね、ありがとう」

プリナスは男の前に立ち、ナイフごとゴロツキを地面に叩き落として、言う。
完全に意識を失っているゴロツキに「ゴメンね」と内心謝罪しながら。
背後にいた筈の“女性”がいつの間にか前にいて自分の命を救ってくれたという事実に、
男はヘタリと腰を抜かして呟いた。

「あ、あんたいつの間に前に……いや、ありがとうと言うべきなのか」

こちらこそ、と笑顔を浮かべて前に向き直る。
ゴロツキ達は少女の強さに明らかに動揺していたが、対する少女には見えていない様子。

「やぅ〜! えっちぃのは『めっ』なのよ〜っ!! あぅ〜」

恥らう言葉とは裏腹に、錯乱状態の少女の拳が綺麗にゴロツキの鳩尾にめり込んだ。
哀れなゴロツキは、「ひでぶぅ」と宙を舞い、露店に突っ込む。
激突された籠からは盛られたフルーツが散乱し、運の悪い露店主の悲鳴が木霊する。

「うーん、ちょっとこれは危ないかな」

苦笑して、止めに入ろうと動く。
ちょっと過干渉過ぎるけれど、自分とそっくりな“彼”との約束を破る事にはならない
だろう。
この星に来る前の会話を思い出す。

「自己防衛の際は程々に――私としては殺さない程度にお願いしたいですが」
「わかったわ。何かに巻き込まれても力はセーブしておくわね」

……これは自己防衛の一種ね、うん。
そう思う事にしたら、話は早い。
緑の悪魔っぽいモノは少女の命令に従っているらしいと瞬時に判断して、
少女を止めに入る。
一足飛びで少女とゴロツキの間に飛び込み、ゴロツキの手からナイフを叩き落とし、
少女のパンチを受け流すと同時に槍の軌道を逸らす。
一瞬で行った筈のこの間に、同じく止めようと割り込んできた二人組がいたらしい。
ゴロツキのナイフはその背後から伸びた紅い布に包まれ、ゴロツキに刺さろうとしていた
緑の悪魔の槍は白い手に掴まれている。
尤も、緑の悪魔の槍を持つ白い手の主――土色のクロークを纏った小柄な人物は、
バランスを崩して倒れそうになっているが。

「ルフィエ、何をやっているんですか」
「だって、予想外の動きをしたんだよ、ネルくん」

倒れる寸前のその少女(クロークで見えないが、プリナスは声で気付いた)――ルフィエを
抱きとめたネルが溜息をつく。
突然現れた二人組に、プリナスは「タイミングがよすぎたわね。ゴメンなさい」と謝罪の
意を告げる。
ゴロツキ達は乱入者に呆然としている。

「引いてもらえますか?」

160黒頭巾:2008/06/03(火) 21:16:22 ID:fou9k2gM0
◇―― リレー企画 ――――――――――――――――――Red stone novel[2/6P]

ルフィエを離し、ゴロツキ達に武器を向けながら、ネルは言う。
お願いの言葉ではあるものの、口調と行動がこれなのだ――要望と言うより、要求に近い。
色めき立つゴロツキに、眉を一つ動かしてトドメの一言を放つ。

「ほらほら、騒ぎを聞きつけて警備員が来ますよ」

ネルの言葉に答えるように、遠くて呼子の音が鳴るのがゴロツキ達の耳にも聞こえたようだ。
ぐっと詰まったゴロツキ達は顔を見合わせ、「覚えてろよー!」と月並みな台詞で逃亡した。


一方、こちらはプリナス。
彼女の目の前、先程まで暴れていた少女――ミリアは、ポカンとした顔でプリナスの顔を
見詰めていた。
……見とれていた、が正しいのかもしれないが。

「ごめんなさいね。
 あなたが悪いんじゃないだろうけど、二次被害が出ちゃってるから止めさせて貰ったわ」

プリナスのその言葉に我に返った少女は、慌てて辺りを見回す。

「うにゅ〜。ごめんなさいなのよ〜」

周囲の惨状を把握したのだろう、しゅんとなる少女を「次は気をつけたらいいわ」と慰め、
「周囲への謝罪と片付けを手伝ったら如何かしら」と提案する。
途端に少女の顔が明るくなり、従えた悪魔と共にまずは被害を受けた露店へ向かっていった。

「ミリア、ちょっと熱くなっちゃったの〜。
 おじちゃん、迷惑かけてごめんなさいなのよ〜」
「嬢ちゃん、気にすんなや。
 ちゃんと謝ってくれただけでも十分だ……それに、元々悪いのはこいつらだしな!」

失神したままのゴロツキを蹴り飛ばした露店主が豪快に笑う。

「ありがとうなの〜!
 うにゅ、うにゅにゅ〜、ミリアもファミィと一緒にお片付けのお手伝い頑張るのよ〜っ!」
「二人で手伝えば、なんくるないさ〜」

ご機嫌に不思議な歌を歌いながら腕まくりをして籠を抱えたミリアとそれに従うファミィに、
露店主は「あはは、助かるよ」とウインクした。
あっちはもう大丈夫だろう。
むしろ、問題は。

「……少し話があるのですが」

目の前で警戒心を顕にしている少年だろう。
プリナスは苦笑して、「人のいないところに移動しましょう」と返答する。
尤も、興味津々な目線を送る野次馬も大分散ってはいたのだが。

「全く、商売上がったりだよ…… さっさと起きて自分の足で警備兵の詰め所に行けってんだ」

その場を離れる時に横目に見えた、文句を言いながらも手馴れた様子で失神したままのゴロツキを
ズルズル引き摺って行く露店主の姿に――この街ではこんな騒ぎは日常茶飯事かもしれないわねと
思いながら。

161黒頭巾:2008/06/03(火) 21:16:47 ID:fou9k2gM0
◇―― リレー企画 ――――――――――――――――――Red stone novel[3/6P]

「……さて、此処まで来ればいいでしょう」

振り返ったネルが、プリナスに向き直る。
その理由は簡単――彼女からは普通ではない“何か”を感じるのだ。
普段なら見逃してしまいそうな程に微かなモノだが、彼女は先程のあの騒動で“自分達ですら感知
出来なかった速度”で動いていたのだ。
確かに集中してみれば、彼女に対して違和感を感じる事が出来た。
胸元の[エリクシル]が、自分の本能が、警鐘を告げる――例えるなら、隠しても漏れてくる彼女の
圧倒的なまでの“存在感”。
先の大戦の敵の大将も凄くはあったが、目の前の彼女はそれともまた“違う”。
色々な修羅場を潜り抜けたネルであったが、こんな人間は他には“知らない”。

「……あなたは、“何者”ですか」

警戒も顕に、ネルは問う。
どうせ、隠しても目の前の相手には通用しないだろう。

「人間、よ」

苦笑して答えるプリナスに、眉を一つ上げて再び問い掛ける。

「“普通の人間”ではないでしょう」
「それを言うなら、あなた達も“そう”じゃない?」

返された言葉に、ネルは如何答えればいいのか一瞬迷った。
見るに、目の前のプリナスは問答を楽しんでいる風でもある。
このままネルが望む答えをくれるつもりはないのだろう。
ネル達もまた、出会ったばかりの彼女に一から説明するつもりもない。
つまりは、平行線。
ネルは溜息をつき、あからさまな警戒を解いた。

「……全くですね。僕としたことが、愚問でした」

それでも、頭の何処かで常に小さく警戒をする事だけは怠らない。
元警備兵としての、冒険者としての、そして――先の大戦を潜り抜けた戦士としての癖のような
ものなのだから、仕方がない。

「見れば見る程、綺麗な人だね……こんな綺麗な人、いるんだ」

……ただでさえ、共に旅をする大切な相方がこんなに暢気なのだから。
その相方――ルフィエのの言葉に、ネルの口から自然と溜息と呟きが毀れた。

「神格化したルフィエの美しさも、負けないとは思うんですがね……」

ポーっとプリナスを眺めるルフィエには、そんな呟きは聞こえなかったようだが。
そんな三人の背後、遠く呼び子が鳴る。
また何か問題でも起きたのだろうか。
昔と比べて復興が進んだ古都は、人が増えた分だけまた、騒動も絶えないらしい。

162黒頭巾:2008/06/03(火) 21:17:10 ID:fou9k2gM0
◇―― リレー企画 ――――――――――――――――――Red stone novel[4/6P]

が、ネルはふと、何時までも鳴り止まない呼び子に疑問を覚える。
胸騒ぎに耳を澄ますと、遠く何かの破壊音と誰かの悲鳴が聞こえた。

「ルフィエ!」
「あっち、だね」

一転、真剣な顔でルフィエの名を呼ぶ。
胸の十字架に両手を添えたルフィエも、噴水の方角を示した。
意見が一意したのだろう、一つ頷いたネルはルフィエの示す方に駆け出した。
その後ろを併走するのは、ルフィエと成り行きでついて来たプリナスの二人。
プリナスにしてみれば、別にそのまま別れてしまってもよかったのだが――この二人に興味
が沸いたのでついていく事にしたらしい。
そのプリナス、ヘイストを使った気配もなく――普通に“走って”いる。
割と本気で走っているというのに顔色一つ変えずについて来るプリナスに、ネルは内心舌を
巻く。

(この速さ、やはり普通の人間ではありませんね……)

同時に、遠い昔――先の大戦で、速さをウリにしていた仲間を思い出し、懐かしさを覚える。
彼の場合は特殊なヘイストを使っていた訳ではあるが。

「そろそろ見えますよ」

思考を切り替えたネルの声に、同じくあの[白の魔術師]を思い出していたルフィエも前を
向き直す。

「「え?」」

二人の口から思わず漏れた言葉が、綺麗にハモる。
目線の先には、本来街中に――いや、モンスターの蔓延るフィールドでも滅多に見ない姿が。
周りには、わらわら逃げ惑う警備兵達の姿。
成る程、先程の呼び子はこれの事だったのか。

「ちょっと、何で街中にバフォ沸いてるんですか」
「凄いね、バフォって初めて見たよ」
「まぁまぁ……このカマキリさん、バフォって言うの?」

実際は呆然としているのだが、如何見てものんびりと眺めている風にしか見えない三人に、
警備員の悲鳴が飛ぶ。

「そんな事より、如何にかして下さい!」

今まで必死に戦っていた(という名目だが実際は逃げ回っていたのだが)警備兵は涙目だ。
ネルに必死な目線を送るその他力本願な姿から……如何やら、ネルの実力を知っているらしい。

「仕方ないですね、さっさと片付けましょうか」

前に出たネルが、後ろに立つルフィエに声をかける。

「ルフィエ、[唄]を」
「無茶しないでね、ネルくん」

163黒頭巾:2008/06/03(火) 21:17:45 ID:fou9k2gM0
◇―― リレー企画 ――――――――――――――――――Red stone novel[5/6P]

神器を構えたルフィエが、[唄]を紡ぐ。
人間には理解出来ない、それでも美しいと感じる[唄]を。
ルフィエの[唄]を聴いたプリナスが、何とも形容しがたい表情を浮かべる。
例えるなら、怒っているような、安堵したような、泣きそうな――如何とも採れて、
如何とも採れない複雑な表情を。

「……手こずる筈はないですが、一応」

そんな、少し後ろで眺めている女性の存在を思い、ネルはルフィエに一言警告する。

「万が一の状態でも――神格化禁止ですよ、ルフィエ」
「うん、大丈夫だよ」

わかってるから、ルフィエは頷く。
彼女もまた、プリナスの不思議な“存在感”を感じ取ってはいたのだ。
後ろの女性が、“この世にあってはならないもの”と認識されるかはネルにはわからない
が――こんなところで[断罪者]を発動されたら、それこそ手がつけられない。
ルフィエが頷いたのを気配で感じ取ったネルに、何処からともなく風と炎の加護が飛ぶ。
力の出所を横目で見れば、眼鏡をかけたウィザードが杖を掲げていた。

「差し出がましいようですが、せめて支援だけでも」

一目でネルの実力を感じたのだろう。
その魔法使いは、「邪魔はしないでおこう」と横に立つ黒い頭巾の少女の本を持つ手を
止めていた。

「心遣いに感謝します」
「ご武運を……」

微笑んだネルに頷いて、魔法使いと少女は怪我をしたらしい警備兵へと向かって行った。

「では、行きます、よ!」

ルフィエの[唄]の援護を受けたネルは、地を蹴った。

◇―――――――――――――――――――――――――Red stone novel[−Fin−]

164黒頭巾:2008/06/03(火) 21:18:44 ID:fou9k2gM0
◇――――――――――――――――――――Red stone novel−Postscript[6/6P]

一難去ってまた一難。
別名、次の方に丸投げ(ちょ)
何やら自キャラを出すのが流行りらしいので、ちょろりと出してみました。
後からまた出てくるのか出てこないのかはお次の方にお任せします。
とにかく、ミリアとネルくん&ルフィエコンビを描写させて頂くのは楽しかったです。
偽者すぎて御免なさい、ネルくんなんて特に喧嘩っ早すぎて御免なさい。
私の中の彼らはこんなイメージなのです。
そして、カリアス好きすぎて勝手に出しました。
名前すら出てませんが。
でも、一番書いてて楽しかったのは被害者の露店主です。
イメージ的にはダンディで野性味のある元戦士で引退して久しいおじ様です(細かい)

ふと思ったのですが、このペースだと作家さん方が総出でも一周じゃ終わらなそう!
なので、既に書かれた方の二周目の素敵作品に期待すると同時に、まだの方の一回目も
wktkさせて頂きます、はい。
先のレスから後の感想はまた今度の機会に。

この番組は黒頭巾の提供でお送り致しました(番組終了後のCM風)

Red stone novel−Postscript――――――――――――――――――――――――◇

165◇68hJrjtY:2008/06/04(水) 05:48:54 ID:ucDDXGbE0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
リレー小説に続いて本編まで書き切るとは…恐るべし筆の速さ((( ´・ω・))
トレスヴァントvs雪乃の方は決着がつきましたね。相打ち、でもまあ多少の格の違いからか雪乃の勝利となりましたか。
真剣な文字通りの一騎打ちの二人の戦いとは異なり、橙道とティエラの戦いはなんか戦いというよりぶっとびバトル(笑)
マル暴語、橙道さんもしかしてその昔は若気の至りってヤツをやらかしてたんでしょうか(*´д`*)
このままティエラを笑い殺してしまうのか否か…決着の行方、楽しみにしてます。

>黒頭巾さん
ネルとルフィエとミリアと…さすが、読み込んでなければ書けないキャラの言動がしっかりしてますね。
っておじ様の設定細かッ(笑) 支援をくれたWIZはきっといけめんさんだろうなとか妄想しながら…
リレー小説に感想書かないとか宣言した舌の根も乾かないうちに感想しちゃった(ノ∀`*)

166名無しさん:2008/06/04(水) 19:01:11 ID:Xs.wtHjU0
キモチワルイのでageますね^^;

167rom:2008/06/04(水) 19:56:32 ID:b8HWWtQY0
>>166

見なきゃいい話ですね^^;

168ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/06/05(木) 11:16:28 ID:OhTl4zsk0
◇―――リレー企画――――――――――――――Red stone novel[1/4P]

『Rmuble and Hunting.』

深夜とはいえ喧騒未だ止まぬ古都ブルンネンシュティグ,だが今現在の喧騒は悲鳴が十中八九。何故なのか・・・?
「バォオァアアァア――――――!!!!」・・・バフォメットZin。大陸公認の世界猛獣図鑑によれば,その生物は
悪魔類ゴートマン属,その種の中でも一際危険度の高い,特A+ランクの要注意モンスターだ・・・
どういう訳だか古都に前触れもなく現れた,本来ならその辺のフィールドにすらいないはずの危険生物が暴れていた!!

「(普通なら古都にモンスターがいるとなれば,それはビーストテイマーに飼われている可能性があるはず…
  だが大陸の法律ではA+,それこそセミボス以上の等級のモンスターは飼育が禁じられている。一体誰が何のために!?)」

巨大なデスサイズを振り回しながら破壊行為を行うバフォメットへと,思考を巡らせるネルが向かっていく!!
同時にバフォメットも向かってくる者に気付いたのか,瞳孔の開いた狂気まみれの瞳を二人へと向けた・・・!!
「"第三段階(サード)"・・・発動せよっ!!」空間転移換装魔法によって取り出された眩く輝く黄金の剣と盾。
後方ではルフィエの心地よい美声によって『唄』が奏でられていた・・・耳に入る限り,それは無限の力を引き出してくれる。
剣を横に薙いで,ネルは分身を10人以上生み出して分散させて・・・バフォメットを包囲する形で攻撃を放つ。
避けようの無い立体的な剣のドーム,そして襲い掛かる無数の斬撃,それらがバフォメットの身体を容赦なく切り刻む・・・


一方,ネルとルフィエがバフォメットと対峙しているその外では,負傷した警備兵を魔術師とビーストテイマーが介抱していた。
「うぅぐっ!!?!はぁっ・・・あぁ,済まない。古都治安維持局たる者がこのザマとは,申し訳ないっ!!!」
「大人しくして下さい,喋りすぎると傷口が開いてしまいますよ?・・・ケルビー,ちょっと荒療治をやりますよ」
「承知した,いけめん殿。」「?何を・・・熱ぁっ!!?!あぁああぁああぁぁっ!!!!!あひひぃぃいぃぃ〜・・・」
眼鏡を掛けた魔術師が,傍らで心配そうに見つめている少女が使役する魔人に指示を下した。魔人は手に火の元素を宿し,
負傷した警備兵の傷口を熱で消毒した。熱さと傷口の焼けるような痛みに,男が悲鳴を上げる・・・
「あの,いけめんさんっ!今周りの人から噂を聞いたんですが,他にも危険なモンスターが古都を徘徊しているそうですっ!!」
「何だと!?厄介な事態になったものだ・・・あの二人は今バフォメットと闘っているというのに!!どうすればっ・・・」
ビーストテイマーの少女がもたらした新しい情報に頭を抱え込む魔術師,だがそこへ新たにもう一人警備兵が加わる。
「あ,アンタら!!早くここを離れるんだ,もうじきこの広場周辺は荒れるぞ!!」「・・・?どうゆうことで?」
「たった今,古都治安維持局の官僚達が決定を下したんだ,狩猟ギルド『アマゾネス』が動くらしいっ!!」
駆け込んできた警備兵の言葉に,魔術師と負傷者の2人に戦慄が走った・・・!!!少女には何のことかわからないが。
「あ,あの・・・『アマゾネス』が動くだと!?」「い,いけめんさんっ・・・何ですかその『アマゾネス』って?」

「いいかい,『アマゾネス』っていうのは女性のみで構成された,狩猟活動が中心のギルドなんだ・・・
 構成員は主にアーチャーやランサー,ビーストテイマーにサマナーが中心。とても気の強い者が多いようだ。
 特にこれだけは覚えてもらいたいが・・・アマゾネス酋長『銀の鷹(シルバー・ホーク)』ティエラ・ラファエルとその右腕
 ラティナ・シノノメは『二羽の鷹(ジェミナイ・ホークス)』のコンビ名でギルド・ウォーでも好戦績を残している。

 だが・・・アマゾネスの女戦士たちの狩りは,嵐が通り過ぎるように苛烈らしい・・・私たちもすぐにここを離れよう。」

魔術師の言葉に少女と魔人は頷き,負傷した警備兵を搬送しながらその場を跡にした・・・

169ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/06/05(木) 11:16:50 ID:OhTl4zsk0
◇―――リレー企画――――――――――――――Red stone novel[2/4P]

その頃,逃げ惑う人々の流れに逆らうようにプリナスは路地に立っていた。と言うか,ネルとルフィエの戦いを見届けていた・・・
「おい,お嬢さんっ!!アンタぁ,早くこの場から離れるんだ!!『アマゾネス』の狩りに巻き込まれたいのかっ!?」
「え・・・?なぁに,そのアマゾネスって言うのは?」「おいおい知らねぇのかよっ,あいつらの狩りは派手で破壊的で有名だぞ!?」
「まぁ,それは面白そうね・・・わたしも見てみようかしら?」「はぁ・・・巻き込まれてケガしても知らねぇからなっ!?」
プリナスに警告した市民は,これから起ころうとしている『アマゾネス』の狩猟活動のとばっちりから逃れようと避難中。
逆にプリナスはというと,その一般市民が恐れるほどの狩りの一部始終を見ようとワックワクのテッカテカ状態になっていた・・・

「(ふふ,ますます面白いことが起きそう・・・!!やっぱりこの星はわたしを飽きさせてはくれないみたいね。)」


―――――フランデル大陸西部,大オアシスに拠点を置く商業都市はアリアンの南・・・峡谷地帯デフヒルズ。
崖の上の小高い丘の上に,円錐状のテントが数基ほど張られていた。このキャンプ郡こそが『アマゾネス』の本拠地である。
テントには幾何学的な模様が施され,まるでどこかの部族の様な雰囲気を醸し出している。外では二人の女性が焚き火を囲う・・・
一人は銀髪のポニーテールに褐色の肌,白い布を胸にもう一枚を褌状に締め付け,傍には希少価値の高い槍,ホースキラーを置いている。
もう一人は金髪のショートヘアに,重武装のアーマーの下から紫色のレオタードを覗かせていた。彼女の武器は異国の薙刀状の槍。
「ん・・・んん〜っ!!ふぁ,今日も一日狩りまくったね〜。ラティナちゃん,あたし特性の栄養ドリンク飲む?おいしいぞ〜」
「もうティエラさんってば!今そんなの飲んだら,眠れなくなっちゃいますよ?それにわたしもう眠いし・・・あふ,おやすみなさ〜い」
鎧を脱いで,レオタードのみの姿になるラティナ。あくびを掻いてテントへと入ろうとするが・・・

「はぁ!?古都にバフォメットやら何やらが出たァ!?ちょっとぉ,元老のじっちゃ〜ん・・・遂にあんたもボケちゃったの?
 あ,ごめ・・・今の冗談冗談!!まぁとにかく,そいつら狩りに来てちょーだいってわけね!?あいよ〜,わかった!!」

「ティエラさん・・・?一体誰からの連絡ですか?」戻ってきたラティナが心配そうに訊ねる・・・・
「どうやら神様はあたし達の安眠妨害をしたいみたいだねぇ・・・古都のじっちゃんからだ,一仕事やらなきゃならないみたいよ!」
「元老院の方からですか!?大変っ、急いで取り掛からないと・・・えっと,鎧は,鎧は〜っと・・・」
すぐさま脱いだ鎧を再び着ようとするラティナだが,事は急を要する。それをティエラが制止し、すぐに出発を促した。
「今鎧を着けてる時間なんてないの!!それに,ラティナちゃんの機動力なら攻撃なんてそう当たらないんじゃない〜?よいしょっ!!」
軽くラティナにウィンクをすると、たった一蹴で向こうの崖へと跳躍していくティエラ。ラティナも彼女の後を追う・・・
崖から崖へ,谷を跳躍するその姿はまるで二羽の鷹。ティエラの長い銀髪がなびき、月明かりに照らされている。
「はぅう〜・・・やっぱり鎧着て来れば良かったぁ〜,夜の砂漠は寒いのにぃ〜!!」泣き言をラティナが言う・・・
「いいのいいの。それにラティナちゃんもさァ,もう少しオープンになったらどうなのよ?こんなにイイお尻してるのにィ♪」
「ひゃやっ・・・いやぁ〜んっ!!!ちょっ,いきなりお尻を撫でないで下さいよ〜!ティエラさんのエッチ!!///////」
移動しながら,彼女はTバックで露わになったラティナのお尻を愛撫する・・・そして恥ずかしがるラティナ。
しかし移動する速度は落ちることなく,疾風のように二人の女性は古都目指して走り続ける・・・

170ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/06/05(木) 11:17:16 ID:OhTl4zsk0
◇―――リレー企画――――――――――――――Red stone novel[3/4P]

同じ頃,デフヒルズの別のエリアに降り立つ者たちの影があった・・・
「ここがフランデル大陸・・・どうやらここはデフヒルズと呼ばれている場所のようですね。」
白いロングスリーブのシャツとズボン,白金色の髪を撫で下ろしているのは・・・『異端者』,宇宙を彷徨う非科学的生命体。
その名はノア,この世の法則の全てを超えた存在が,既に地上に降り立っていた。傍には二人の男性がいる。
「ノア,警戒なさって下さい。いくら夜とはいえ,まだ危険生命体の気配はゼロではありません・・・」
少年の姿をとるノアに警告をするのは,華奢な体格をした美青年・・・名はアナハム・エスカンダーロ。
「アナハム,ここまで来て君は几帳面過ぎるぞ・・・まぁ,僕としてもその意見を否定するわけにはいかないが。」
そしてさらに言葉を放ったのは,大柄な体格の無骨な印象を漂わす男性・・・ホサナ・クリストファー。
彼らを余所に,ノアはいきなりてくてくと砂漠を歩き始める・・・だが、そんな彼の前にいきなり巨大な影が現われた!!

黒い霧が出てきたと思いきや、今度は蒼い炎に変化する・・・そして形が整ってきた時には,一匹のリプリートマーキがいた。
「ギャハハハハハ!!!よぉ人間,闇に呑まれに来たのか!?」「・・・随分と手荒な歓迎ですね。ホサナ,この生命体は?」
「はっ・・・そいつはリプリートマーキ,霊魂系統の思念体かと思われます!」「ふむ・・・なるほど。」
ホサナは腕のガジェットを操作し,データを引き出してノアに伝えた。だが一方のリプリートマーキはシカトされることに
腹を立てていた。手に黒く渦巻く闇の元素を宿し,ノアへとデスタッチを放つ・・・!!!
「このクソガキがァっ!!!闇の神獣をおちょくってんじゃねぇぞォっ!!!死ねぇええぇぇえぇぇぇっ!!!」


「アクセス・コード XXX0998-DELT-(RpMk)/X:158cm,Y:310cm・・・デリート。」


人差し指でリプリートマーキを指し、ノアがコードのようなものを呟くと・・・リプリートマーキが一瞬で消えた。
跡形も無く,しかもコード一つで一瞬にして相手を消してしまうノアの能力の前に,ホサナとアナハムは戦慄していた。
「(あれが・・・ノアの能力,いや・・・その一部なのか!!?!これが『異端者』の力・・・やはりこの方には逆らえない!!)」
「(なるほど・・・彼にとってはこの世界を『消す』のも,人が呼吸をするのと同様のレベルでやってのけることが可能なのですね。)」
だが口にせずとも,二人の考えはノアに筒抜けだった。彼は二人を振り返ると,無垢な微笑を携えて言った・・・

「うんうん,二人ともお利口ですね。私だってこの世界を簡単に消したくないから,お二人にはちゃんと契約は厳守してもらいます。
 ではこれより,この星の・・・このフランデル大陸における"天使の卵"の捜索を開始しましょう。くれぐれも抜かりないように。」

「了解致しました,ノア・・・あまり無茶をなさらぬよう。」「右に同じく,です・・・」

3人は光に包まれると,各自の思い描いた場所へとテレポートを開始した・・・。

to be continued...

171ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/06/05(木) 11:30:19 ID:OhTl4zsk0
◇―――リレー企画――――――――――――――Red stone novel:Post Script

早速またもや二周目やっちゃいました〜;;;
やっぱり他の作家さんが書いたキャラを自分で書くっていうのは斬新で楽しいもんですw
さて、みやびさんのリレールールに則ってキャラ紹介を書いておきませう・・・

+ティエラ・ラファエル
・デフヒルズの狩猟民族"ラフュア族"唯一の生き残り。身長168cm、狩猟ギルド『アマゾネス』の酋長。
 銀髪の長いポニーテールに、露出度の高い部族の衣装や褐色の肌が特徴。性格は結構やんちゃでお茶目。
 かなりフレンドリーで家族愛が強く、誰とでもすぐに仲良くなれる。が、家族友達をバカにする奴には容赦しない。
 口調はちょっと男の子っぽい感じ、でも基本は女性らしい口調でb 得物はホースキラー。

+ラティナ・シノノメ
・東の異国からやってきた家出娘。身長159cm、イメージはゲームそのままで。
 この頃はまだ16歳、思春期ゆえに異性相手だと素直になれずにツンツンに。ツンデレktkr。
 口調は基本明るいかんじ、得物は青龍偃月刀。

続きどうぞ;;;

172黒頭巾:2008/06/06(金) 20:58:29 ID:fou9k2gM0
空気を読まずに新作投稿してみます\(^o^)/

***********************************************************


……ん?
如何した、眠れないのか?
はーん、さてはママが恋しくなったか。
ははっ、図星だからってそんなに怒るなよ。
俺もお前くらいの時はそうだったんだ。
何だ、不思議な顔をして……俺にもお前くらいの頃はあったんだぞ?
……そうだな、一つ提案だ。
ママは寝かせておいてやってくれ。
もうすぐお前の弟か妹を生むって大仕事が待ってる。
代わりに、兄貴になるお前に、俺が一つ昔話をしてやろう。
一人の男が成長する話だ。
退屈な童話じゃないぞ?
男なら一度は憧れる冒険譚なんだからな。
お、顔つきが変わったな。
おいおい、そんなに急かさないでもちゃんと話してやるから、ちゃんと布団に入って……そうだ、いい子だ。
よし、いくぞ。
昔々……。


【精霊のご加護】


……あるところに、小さな田舎の村があった。
何処にでもある長閑な村は、毎年豊作な不思議な村であった。
不思議に思った旅人に、村の年寄りは語る。
この村の祖先にはロマの精霊使いの血が混ざっているという伝説があるのだと。
昔、大怪我をしたロマの女達を村人が助け、それに感謝した女達の一部が村に留まり、村人との間に子を生したと。
その所為か、子孫であるこの村の人々は、精霊の気配を感じる事が出来た。
冷夏の前にはそれを知り、火の力で空気を暖める。
日照の前にはそれを知り、水の力で土壌を潤おす。
台風の前にはそれを知り、風の力で軌道を逸らす。
地震の前にはそれを知り、地の力で揺れを往なす。
精霊の声で自然の変化を知り、精霊の助力で自然の変化に対処する一族……それがこの村が毎年豊作であり続ける秘密なのだと。
旅人は酔った老人の語る伝説など信じなかった為、村の平和は護られた。
もし彼が吹聴して回ったならば……今頃この村の人々は拉致され、世界中に散り散りに派遣されていた事だろう。
この物語は、こんな村に生を受けた一人の少年から始まる……。


……俺の一族の力は、村の中でも尤も絶大だった。
両親は精霊の姿を見るだけではなく、普通に日常会話を交わせる程だった。
だが、俺は生まれてこの方一度も……精霊の声を聞く事も姿を見る事も出来なかった。
俺以外、こんな奴はいなかったし、昔存在したという話も聞いた事はなかった。
本当は実際にはいたのかもしれない……上手く隠し通していただけで。
尤も、俺にはそんな器用な芸当は無理だった。
両親が死んですぐの年、異常気象が村を襲ったのは……天の采配だったのだろうか。
そんな中でも豊作だった他の村人を余所に、俺の畑だけが不作だった。
俺は齢14にも満たぬ内に村人の憐憫と奇異の眼差しを一身に受ける事になった。

173黒頭巾:2008/06/06(金) 20:59:38 ID:fou9k2gM0

翌年、偶々村を訪れた冒険者を師と仰ぎ、村を出て一緒に世界を旅しながら武道の心得を習う事にした。
もう村にはいられなかった。
俺の精神は、村人の憐憫の眼差しに耐え切れなかったからだ。
日々の農業で俺の身体は基礎的には鍛えられていたし、他の村人と比べて足りない能力を補う様に人間としての感覚は鋭かった。
元々素質があったのだろうか、俺はめきめきと力をつけ、あっという間に皆伝の称号を得た。
冒険者としてもある程度名が売れ、続々入るクエスト依頼もこなして比べ物にならないくらい実力もついたし裕福になった。
それでも……村人の様に、あるいは村人とは違い武道家として自然を知り尽くした師の教えの通りに、風を、自然を、感じる事だけは出来なかったが。


そんなある日、立ち寄ったオアシス都市アリアン。
その名の通り巨大なオアシスが町の中央に鎮座する、砂漠の中にある商業の中心都市だ。
受けたクエストを終わらせた報告と同時に、また明日新しいクエストを貰うという約束をクエスト屋と取り付け、宿へと向かう。
横目に眺めるアリアンの象徴、巨大なオアシスが日光を受けて輝く。
ふと、その水際で遊ぶ一人の少女の姿が俺の目に留まった。
途端に心臓が早鐘の様に打ち鳴らされ、冷や汗が頬を伝う。
……“駄目”だ、あの少女は“駄目”だ。
嗚呼、願わくば……俺に気付かないでくれ。
俺の一族と同じ色の瞳を逸らされても、見詰められても、どちらにせよ正気でいられるとは思えない。
何しろ、彼女は精霊の力を召喚獣の姿に変えてこの世に留めているのだから。
動悸のする胸元を押さえて立ち去ろうとした俺に、少女が気付いてしまった。
……最悪のパターンだ。
瞳を輝かせた少女が、俺に詰め寄ってきた。
ちょ、近い近い!
嬉々として俺の顔を覗き込んだ少女は、挨拶もしないまま開口一番こう言った。

「凄いです!こんなに精霊に好かれてる人、見た事ないですよ!」

……この女は、何を、言っているんだ?
精霊に祝福された村で唯一、精霊に愛されなかったこの俺が、“精霊に好かれてる”だと?
脳裏に、村人達の声が過ぎる。
それは、まだ両親が健在だった頃の周りの言葉。

「流石、精霊に好かれてるわね」
「名前の通り、この村の未来を担う凄い力だわ」

それは、両親がなくなって俺の能力がない事に気付かれてからの周りの言葉。

「精霊が見えないなんて、信じられない」
「名前負けなのね、がっかりだわ」

俺に能力がないとわかったら、即座に掌を返した親戚の仕打ちは忘れ様にも忘れられない。
少女の興奮気味の声とは裏腹に、俺の心は急速に冷えていく。

「……ない」
「はい?」
「……見えなきゃ、聞こえなきゃ、意味なんかねーんだよ!」

吐き捨てる様に叫んだ俺の声は、鼓膜を伝わって何処か他人事の様に俺の脳内に響く。
突然声を荒げた俺に驚く少女を残し、俺は踵を返した。

174黒頭巾:2008/06/06(金) 21:00:15 ID:fou9k2gM0

……先程は取り乱してしまった、あんな年端のいかない少女に声を荒げるなんて。
宿の自室で寝台に寝っ転がって自己嫌悪する俺の脳裏に浮かぶのは、先程の少女の姿。
神獣達と心を通わせ、無邪気に戯れる、そんな一シーン。
サマナー、それは俺の劣等感をかきたてる、一番苦手とする人種。
精霊の声を聴き、精霊と心を通わせ、精霊を召還し、精霊を使役する。
ロマの女性の中でも、極々一部だけが持ち得る強力な能力故、圧倒的に数が少ない彼女達の姿を見るのは初めてだった。
短い時間とはいえ、俺の心に強烈な印象を残した少女。
あの短い時間が、村を出て漸く訪れた俺の心の平穏が乱した。
眠りにつけば夢の中で忘れたい過去が迫ってきそうという不安が俺を襲う。
結局、疲れた身体とは裏腹に、その日は中々寝付く事が出来なかった。


翌朝、俺は寝不足の頭を抱えつつ、クエスト屋へと向かった。
親父と二言三言会話を交わし、約束していたクエストの催促をする。
すると、もう一人来るから暫く待て、と言われた。
一人で行うのが難しいクエスト、と言う事なのだろう。
今までもそうして複数でクエストをこなした事があった。
砂漠の日差しに目を細める俺の目に、一人の少女の姿が映った。
昨日の様に、心臓が勢いよく血液を送り出す。
歩いてくる、あのロマの少女と目が合ったからだ。
向こうも気付いたのだ、黙ったままでいる訳にもいかないだろう。

「アンタ、昨日はすまなかったな」

頬を掻きながら頭を下げた俺に、彼女は慌てた様だ。

「怒ってませんから気にしないで下さい! むしろ、私の方こそ挨拶もせずに何かお気に障る事を言ったみたいで……ごめんなさい」

逆に謝らせてしまった。
此処で否定したら平行線になりそうだったので、流す事にした。

「何だ、知り合いだったのか。だったら話は早いな」

クエスト屋の親父の声に、嫌な予感が走る。
駄目だ、続きを言わせてはいけない。

「今回のクエストは、依頼主がお前さんら二人をご指名なんだ。一緒に行って貰うぞ」

……嗚呼、終わった。
乗り気な彼女とは対照的に、頭を抱えたくなる衝動を抑えるのに必死で、俺は上の空だった。


依頼内容はこうだ。
アリアンから東の砂漠にある墓の一つに、過去の栄光を飾る展示場があると言う。
其処を護る守護鎧から、最近亡くなった高名な冒険者シグの剣を取ってくる、という物だった。
あの背中の弱点があったとは言え、あのシグがやられるくらいの場所だ。
確かに一人で行くのは命知らずに違いない。
止むを得ず、暫くPTを組む事になってしまった。

175黒頭巾:2008/06/06(金) 21:04:09 ID:fou9k2gM0

ひとまずココまで。
今回は最後までシリアス…の予定。
予定は未定、そんなモノ。
私の事なのできっと何処かでギャグ要素入りそう\(^o^)/
その内、続き投下しに来ます。

結局、レスは盛大に蹴り飛ばしましたゴメンなさい(゚дノ|(お前)

176◇68hJrjtY:2008/06/07(土) 04:35:03 ID:pob35qCY0
>黒頭巾さん
武道×サマナキターとは思いながら、単純なカプ話ではなさそうな予感。
本能的に精霊から遠ざかっている彼とサマナたん、共に行動するというだけでも武道君同様に不安ではありますが…。
武道君が精霊から離れてしまった実態とか今後二人がどのような展開に突入するのかとかは気になりますが!(こr
しかし全ては父が息子に語る思い出話、といいますか…やっぱり黒頭巾さんはこういう小説18番ですね(*´д`)b
シリアスモノというわけで真剣な気持ちで読ませてもらいつつ続き楽しみにしています。

177あるプレイヤーのお話:2008/06/07(土) 16:23:03 ID:4EYViSBc0
誕生日が同じだねと、一緒に笑い会えてたあの頃が、一番幸せだった。
二人でPTを組んで、必死になって狩りもしたよね。
喧嘩もしたし、意見が食い違うことも何度もあった。
そのたびあなたは私を突き放し、私もあなたと距離をおいた。
それでもいつも、あなたの方から話しかけてくれて、メールをくれて、私は何度も、泣いて喜んだよ。
あなたと作ったギルドを抜けても、あなたは私を大切にしてくれた。
会ったこともない私に、クリスマスにマフラーをくれた。本当に嬉しかった。
私はあなたのことが好きで、本当に好きで、・・・ゲームの中ですれ違うのが段々と辛くなってきた。
私は引退した。ゲームではもう、あなたと会いたくなかった。


あなたと出会ってから一年くらいして、私はあなたに会いに行った。
あなたの車は煙草臭くて、それでも私はあなたが好きだから、平気なふりして笑ってた。
私と同じ名前のホテルがあって、そこに連れてってくれたのがすごく嬉しかったんだよ。
ぶっきら棒な態度で、あなたは何を考えているかよく分からないけど、あなたの愛は感じられた。
また来いよって言われて、また私は泣きそうになった。
あなたと知り合ってから、私はすごく泣き虫になったんじゃないかと思うよ。

数ヵ月後、私はまたあなたに会いに行った。
あなたは相変わらず感情が読めなくて、私はあなたが好きなのに、あなたといる時間がとても苦しくなってしまった。
それでもあなたは、あなたの地元まで連れてってくれて、案内してくれて、私が行きたがった岬にも一緒に来てくれた。

そしてまた数ヵ月後、あなたに会いに行った。
実家に連れて行ってくれた。
部屋はすごく汚くて、洋服で足場もないし煙草の灰が色んなところに散っていた。
目が覚めたときに、Gvに出場しているあなたを見たときには苛立ちを覚えた。


薄々気づいていた。
でも、そうでないことを願っていた。現実から逃げていた。


私が好きなのは、画面の中のあなた。
画面の中のあなたは、限られた時間にだけ現れ、私を大切にしてくれた。
お互い必要なときにだけ接して、嫌な感情や態度は一切取らない、伝わらない。
見えないがことがあなたの魅力になっていた。
でも。
3次元のあなたじゃ、だめだ。
画面の中のあなたに、恋をしていた。

そう思うと、一気に冷めてきた。
帰宅したよ、とメールを送ってみても、あなたは返してくれなかった。
そうだよね、今日Gvあったもんね。そっちに忙しいんだよね。ごめんね、邪魔だよね。

おはようのメールも送れなくなって、あなたに話題を振れなくなった。あなたとのメールが怖くなった。
それでも私はあなたが好きだった。


今私には、彼がいる。
彼のことがとても好きで、彼も私のことを好いてくれていて、すごく幸せ。
でも彼には、絶対に言えないことがある。
私はまだ、あなたのことが好き。
画面の中のあなたとは、叶わぬ恋。あなたは遠い人。
それでも私は、あなたのことを愛し続けます。

178白猫:2008/06/07(土) 19:07:58 ID:rOHiPurc0
Puppet―歌姫と絡繰人形―


第一章〜第五章及び番外編もくじ 5冊目>>992
第六章〜第十八章もくじ 6冊目>>924
第十九章 -愛しき君への言葉 迫り来るもう一つの敵- >>5-16
第二十章 -激戦の、一歩手前- >>43-50

 第二十一章 断罪者の覚醒 迫る最後の戦い



 「うわっ!?」
 「!」
突如視界が薄暗い部屋から夕方の大地へと変わり、ルフィエとネルは目を見開く。
しかも自分たちがいる場所は地上から数メートルの高さ。
完璧に地面に突っ伏したルフィエを見、ネルは苦笑しながら着地する。
地下迷宮へ突入したのがシーフの襲撃があった直後。
今は完全に真夜中だと思っていたが、空の星座の位置的には、今は精々10時を過ぎた頃。
 (ブリッジヘッドの方が一時間ほど時間が早いんでしたっけ)
まだ今のフランテルには「自分たちが住んでいる星」という概念は存在しない。
ただ「世界という大きな空間の外に太陽と星が輝いている」としてしか認識できていない。
世界が海で繋がれていると人が知るのは、ずっと先のことである。
 「――いませんね、どこにも」
クレリアは確かに古都へと向かったはず。だがどこにも、彼の姿が見えない。
あの短時間でこの"古都だった荒野"を駆け抜けることなどできるはずがないとすれば、
 「シャドウスニーキングしか無いですね……ルフィエ、さっさと行きますよ」
 「う、うん」
頭をさすって立ち上がったルフィエを見、ネルは溜息を吐く。
全く、彼女は気合が入ったら自分と張れる戦闘力を持っているというのに、入っていないときは本当にユルい。
とにかく、クレリアを捕獲するには骨が折れる。
ただ倒すことに意味はない。彼を捕獲し、助力をする誓いを立てさせなければならない。
そう、彼にしかできぬ助力――[イグドラシルの発見]。
ヴァリオルドの密偵たちが二か月かかっても見つけることができない。そんなものを見つけるには、どうしてもシーフ達の助力が必要なのだ。
 (クレリアの言い分も理解できるのですが――あの野心はどうも理解しがたい……)
と、

   ――――ヒュッ

 「ッ」
自分の背後から突如放たれた斧がネルの左肩に突き刺さり、
その痛みを食い縛り、斧を抜き取ったネルがそれを暗闇に向けて放ち、
だがネルの背後に既に躍り出ていた男が、ネルの背を蹴り飛ばした。
 「え!?」
ここでようやく声を上げたルフィエは、突如現れた銀髪の男と吹き飛ばされたネルに目を見開く。
瞬時に白と金色のドレスローブ姿、[神の母]を発動するが、

 「遅いな」
今まで目の前に立っていたはずの男――クレリアが、ルフィエの背後に回り込みその体を羽交い締めにした。
 「――――ッ!?」
両腕を締め上げられ、ルフィエは痛みに顔を歪めた。
これは、恐らくは古都で戦ったムームライトと同等の速度。加えてこの腕力。
背後を取られ、両手を封じられルフィエには成す術がない。
 「戦闘体勢を取るタイミングが遅過ぎるな。実力があろうとも、場数を踏んでいない武術家ほど脆いものもない」
ギリギリと身体を締め上げながら、クレリアは不敵な笑みを浮かべた。

実のところクレリアは、ネルのすぐ近くへ潜伏していた。
彼の[シャドウスニーキング]はただの潜伏術ではない。自分を辺りの物質と完全に同化させてしまうため、ネルやルフィエの探知能力がいかに高かろうとも、彼はそれを?い潜れる。
ネルの戦闘力はかなりのもの。あの迷宮を潜り抜けたということは、実力は自分と同等か、それ以上。
まともにやり合うわけにはいかなかった。そこで、今の一撃を放ったのだ。
自分の斧の標的はネルだけではなかった。
万が一ネルが避けた場合を想定して、その延長線上にルフィエが来るよう斧を放ったのだ。
咄嗟のことにネルは防御態勢を取れない。だが避ければルフィエに攻撃が行く。
 「いつまで経っても甘っちょろい戦い方だな、ネリエル。吐き気すら催す」
数メートルほど離れた場所で倒れるネルに、クレリアはクックと笑いかける。
しばらくネルは目覚めないだろう。斧には特製の毒が塗ってある。
下手をすればそのまま死に至り、最低でも体が数日は麻痺する。そういう毒だ。
シーフ相手に先手の一撃を与えたことを後悔するんだな、とクレリアは微笑み、ルフィエを掴んでいた両手を離す。
 「!?」
突如クレリアの捕縛から解放されたルフィエは、

次の瞬間、クレリアの神速の廻し蹴りで意識を失った。

179白猫:2008/06/07(土) 19:08:21 ID:rOHiPurc0


 「っ――」
朦朧とする意識の中、ネルは驚異的な精神力で意識を活性化させ、目を無理やりに開く。
途端に視界いっぱいに入る眩い光と、体全体を襲う鈍い痛みと倦怠感。
気だるい身体を起こし、右手で目をこすり、立ち上がる。
身体の感覚が今一つ掴めない。が、腹の具合で大した時間が経っていないことを悟った。
 (一晩中眠っていたのか……奴め、何処だ)
無駄だとは思いつつも、辺りを見回し手掛かりを探る。
が、当然のように辺りには、自分の血以外は何も変わった様子はない。
と、なると――
 (――ヴァリオルドかッ!!)
瞬間、
彼の身体を紅色の衣が覆い、その髪が紅色に彩られる。
同時に燃え上がる右腕が、今となっては懐かしい紅色の爪――[紫電狼の爪]へと変化した。
シーフ相手に[第三段階]を使うのは面倒だ。可能な限り速度を重視した、[紫電狼]で一気に叩かなければならない。
 (ルフィエの気配が僅かに感じられる……クレリア、父の許し無しに、ヴァリオルドの敷地を踏むことは許さないぞッ!!)
そう心中で怒鳴ると同時、
紅色の尾を引き、ネルが朝日の中を驀進する。古都に唯一無傷で残った、ヴァリオルド邸へ。

それを遠巻きに眺めていたカリンは、不安そうにマントを掴む四人の子供たちに言う。
 「大丈夫だ。フェンリ――ネリエルの奴なら、ルフィエを助け出せるだろう」
 「お姉ちゃん、怪我……いたくない?」
メアリーが不安そうに、カリンの右腕を見やる。
その右腕は、まるで腐敗したかのように青紫色に変色してしまっていた。
あの夜、突如侵入してきたクレリアから四人を守りながら戦ったカリンは、当然のように敗北し、右腕に傷を負った。
その大きな原因――階段で転び、カリンにクレリアの身代わりをさせてしまったメアリーは落ち込んでしまっている。
が、カリンは特に気にした様子もなく、その腕を持ち上げる。
 「フン、掠り傷だ。それよりもお前たちは此処にいろ。此処には魔物達も寄ってこないから問題ない」
そう子供たちに言い、カリンは腰の剣に手を添える。
負けっぱなしと言うのはどうにも、自分の趣味ではない。







 「随分と強情だな、娘」
短剣を手の中で弄び、クレリアはその刃に付いた鮮血を嘗め取り、言う。
その視線の先――まるで標本のように両掌を短剣で突き刺されているルフィエは、口の中に溜まった血を吐きだし、笑みを浮かべる。
 「ネルくんだけじゃなく、カリンさんにも怪我させて……ゼッタイ、許さないんだから」
その言葉に甲高い笑い声を上げたクレリアは、手に持った短剣をルフィエ目掛けて放つ。まるでダーツの的を狙うかのように。

   ――カッ!

自分の首と皮一枚のところで突き刺さった短剣に、ルフィエは唇を引き絞る。
宙に舞う自分の髪に顔をしかめ、しかし顔を上げて笑った。
 「お終い?」
 「なぁに……シーフ達がいないからお前の[女]を壊すことはできんが、こうやって嬲る楽しみもまた一興だからな。
 ゆっくりと、じっくりと甚振り、ネリエルに見せつけてやるさ――」
 「……ネルくんは、あんたみたいな人に絶対、負けない」
ムッとして言うルフィエにもう一度笑い、クレリアはさらに短剣を取り出す。
既に放った短剣の数は7本。強がってはいるが、ルフィエの精神力は徐々に削がれていっている。
この強気の顔がゆっくりと苦悶に歪む様を想像するだけで、クレリアは笑みが浮かんできてしまう。
 「俺も奴も、単純な力などほとんど持っていない。エルフや魔物に比べれば微々たるものだ。
 だが俺達は[人間の戦い方]を学んだ。より狡猾に、より残酷に、より完璧に勝利する方法を学んだ。
 それがヴァリオルドの宿命――暗殺一家の宿命さ」

180白猫:2008/06/07(土) 19:08:56 ID:rOHiPurc0

ヴァリオルド家が貴族家として現代にまで残っている理由。
それは、莫大な経済力を持っているから……というわけではない。
いや、それも理由の一つだが、大きくはヴァリオルドの歩んできた道にある。

 ――ヴァリオルド家は嘗て、シュトラディヴァディ家の分家として他家の要人を暗殺する、暗殺一家だった――

 ――そして現代でも、ヴァリオルド家は暗殺を請け負い、大陸中を蹂躙している――

それが、ヴァリオルドが貴族家として生き残っている理由。
それが、ヴァリオルドが各国に強い権力を持っている理由。

それが――クレリア=ヴァリオルドが追放者となった理由。


 「幼き頃から、俺は暗殺者になることを強く望んでいた。
 ヴァリオルドの二代目当主――「スティリア=アラスター=ヴァリオルド・Ⅱ」のように、全世界を駆けるアサッシンになることを望んでいた。
 だが、あの愚かな父はそれを許さなかった……自分は数多の人間を殺めたというのに、「お前にもアネットにも、暗殺術は教えん。シーフの知識だけで十分だ」などと抜かした。
 妹はどうでも良さそうだったが、俺は激怒した。激怒し、自己流の暗殺術を学び、父を殺そうと目論んだ。
 が、父はそれを予測し、俺は追放者――没落貴族となり、ヴァリオルドの名を失った。
 その後ネリエル=ヴァリオルドが、あの愚かな父の志を継ぎ「父の遺言により、四代目――つまり私の死を以て、暗殺一家の汚名を返上する」などと裏で発表した。
 親子揃って愚かなものだ……暗殺者として生きていれば、恒久の富と地位を得られたというのに。それをみすみす逃すとは」
クレリアの長話を、ルフィエは呆然としながら聞き続けた。

ネルの父が、暗殺者。

ネルの兄も、暗殺者。

そして彼は? ――彼も、暗殺者?

人を何人も、何十人も殺めてきた?

ただ家を守る――そのためだけに?

そんなはずがない。

そんなことがあるはずがない。

ネルが人を殺めるなんて、そんなことがあるはずが……無い。


 「アイツの代で終わらせるものか……暗殺者は永遠に、暗殺者であり続けなければならない」
短剣を再び構え直し、ルフィエへと歩み寄る。
半ば放心状態となったルフィエは、クレリアの歩みを見、歯を食いしばる。

信じよう。

自分の中のネルを。

これまで過ごしてきた中の、ぶっきら棒で優しいネルを。

 「……そろそろ、かな」
口に溜まった血を吐き、ルフィエはクレリアを見据える。
その声に目を細めたクレリアは、しかし数本の短剣を鋭く、ルフィエに向けて放った。
が。

181白猫:2008/06/07(土) 19:09:20 ID:rOHiPurc0

   ――――…

それら全ての短剣がルフィエに到達する寸前、止まる。
 「――!?」
その光景に目を見開いたクレリアは、慌てて腰から巨大な投擲斧を抜く。
が、

   ――――…

締め付けられる。
体中が、まるで鉄で固められてしまったかのように。
と、

 「 お前は、この世にあってはならない存在 」

ルフィエの口から、マペットの言葉が紡がれる。
その言葉と同時、
両掌に突き刺さっていた短剣が、白い光に包まれ、抜ける。
トン、と地面へと降り立ったルフィエは、そも水色の瞳でクレリアを睨む。
 「 お前を、今ここに―― 」
ルフィエの豹変ぶりに、今更クレリアは気付いた。

彼女は、ネリエルや自分などという次元を超えている。
恐らく"コイツ"は、単純な戦闘力だけなら――あの[四強]すらも、凌ぐ存在なのかもしれない。
 「 ――断罪する。一十百千万億兆、この世に賜る愚かな生命、今ここに我断罪せん――『 ジャッジメント 』 」

瞬間、

たったの一撃、たった一撃の十字架で。
ヴァリオルド本低諸共、クレリア=ヴァリオルドを爆滅させた。








 「……ルフィ、エ」
ヴァリオルド邸が消滅したのを見、ネルは目を見開いた。
そして、ヴァリオルドの上空に召喚された十字架。
ルゼルでも、あれほど巨大な十字架を召喚することができただろうか。
それほど巨大で、強大な力が渦巻いているのを感じられた。
それでも被害が本邸だけで済んだのは恐らく――
 「至近距離で十字架を召喚したせいで、内部に力が集中したのか?」
 「――!? カリン、生きていたんですか。子供たちやセバス、執事たちは無事なんでしょうね」
 「……チッ。無事だよ。全員無傷だ」
ネルの言葉に舌を打ったカリンは、しかしネルの視界から自分の腕を遠ざけた。
それに気付かなかったネルは、消滅し跡形も無くなった本低へと走り出した。
その後ろ姿に溜息を吐いたカリンは、小さく「あの剣取っておけば良かった……」と呟いた。

182白猫:2008/06/07(土) 19:10:08 ID:rOHiPurc0


 「 ……ネル、くん 」
[断罪者]が発動し、自我を失っているはずのルフィエ。
そのルフィエが、小さくそう呟く。

想っていた。こんなときでも。
彼の兄を殺し――初めて人を殺めたというのに、そんなことは既に意識の外にあった。
 「 ネルくん――どこ 」
光の宿っていない瞳で辺りを見回すが、どこにも、あの紅色の光は見えない。
ルフィエの口から、マペットの言葉が紡がれる。
その光景は、傍から見れば奇妙極まりないだろう。
だがやはり、ルフィエはそんなこと考えもしていなかった。
ただ、ネルのことだけを。
想い、
欲し、
ただ、求めていた。
今すぐ自分の元へ来、そして笑いかけて欲しかった。
それだけで、それだけでいい。
それだけでいいから、どうか。
 「 ……来、て 」
そのルフィエの背後で、
小さく、紅色の光が灯った。







 「やはり、出てきませんね」
 「フン、出てくるわけがない」
既に日も高い昼時、地面を掘り起こしていたネルとカリンは額の汗を拭った。
スコップを地面に突き刺したネルは、土まみれの衣をパンパンと払う。
当初の目的、[クレリアに協力を求める]がクレリアの死により不可能となったため、今ネルとカリンは本邸のあった場所を必死に掘り起こしている。
ネル曰く[せめて装飾品の一つでも出てきてもらわないと大損です]とのことだが、跡形もなく吹き飛んだ場所から何か出てくるわけもなく。
金持ちは変なところで狡い、ということをカリンは今更再認識した。
 「ネルくん、カリンさん……お茶、入ったよ」
と、その背後で小さく、声が上がった。
それに振り向いたネルは少しだけ笑い、声の主――ルフィエに向かって歩み寄る。
お盆を持って力なく微笑んでいるルフィエの頭を撫で、盆の上に乗ったカップを二杯とも取った。
 「ありがとうございます、ルフィエ」
 「ううん……」
小さく首を振ったルフィエは、カリンの方を少しだけ見やって、すぐに第二邸の方へ歩いて行った。

 「……そういえば、セシェアの姿が見えませんね」
再びスコップを地面に突き刺したネルを鼻で笑い、カリンは紅茶をすする。
そういえば、第三邸にいるはずのセシェアをカリンは一度も見ていない。セバスもメイドたちも、どこに行ったか場所は知らないようだ。
ルフィエ曰く[本邸には自分とクレリアしかいなかった]とのことだったから、何所かへ出掛けてしまっているのだろうか。
だが今は、セシェアよりもルフィエの方が心配だ。

何かを悩んでいる。
ネルはルフィエがクレリアを消滅させたことを欠片も驚かなかった。
実力だけならクレリアよりも自分たちは圧倒的に上。自分の目的をルフィエに話していなかったのだから、ルフィエに文句を言う筋合いなどない。
"それよりも"。
ルフィエはクレリアを殺したことを――殺人を犯したことを悔やんでいるのだろうか?
それとも――"別の何か"を?

考えても考えても、答えが出ない。
ネルは心中で溜息を吐き、スコップを地面に突き刺した。

183白猫:2008/06/07(土) 19:10:56 ID:rOHiPurc0

 「……あの、セバスさん」
 「何ですかな? ルフィエ様」
初めて入るセバスの部屋に当惑しながら、ルフィエはそっと部屋の中央へ歩いてゆく。
ネル以外の男性の部屋に入ったことがないため、こういう場面であっても多少は緊張する。
だがやはりというかなんというか、"男性の部屋っぽい"如何わしい雑誌などは落ちていなかった。
まぁ、当たり前かと思う。ネルの部屋をこっそり散策してみたが、全く"そういうもの"は出てこなかった。
主人がカタブツならば執事もカタブツ、である。

ルフィエの姿を少しだけ見やり、山のように溜まっている資料を目を通していた(ネルの秘書的なこともやっているらしい)セバスは資料を机に置く。
 「……何か、お悩みのようですが」
悩み。
そう、悩みなのだろう。
ネルには直接聞けないこと。そしてネル以外ならば、セバスかアネットしか知らないのだろう。
 「……あの、その。…………暗殺者一家、について知りたいんです」
 「――!」
ルフィエの言葉に細い目を目いっぱいに広げたセバスは、しかしすぐに常の表情へと戻る。
一体どこから、とは聞かない。"どうせ"クレリアからに決まっている。
彼ら執事は"ヴァリオルドの血筋"を重んじるのでは無い。"ヴァリオルドの主"に敬意を表するだけ。没落した貴族など、"そこらの虫ケラ"同然。
と、思考が逸れたセバスは目の前の話題へと思考を戻した。
"暗殺者一家"。
つまり、ヴァリオルド家の裏の歴史。
どこまで話すべきか。
或いはすべて話すべきなのか。
或いは欠片も話すべきではないのか。
それらを数秒考え、セバスは隣の椅子を引く。
 「私の知っている範囲でならば、お教えしましょう。

   旦那様の――ネリエル=アラスター=ヴァリオルド・Ⅲの生きてきた道を」




ヴァリオルド家は実力だけならば、あの[アサシンギルド]にも引けを取らない暗殺者一家だった。
父、母、兄、弟、姉、妹、例外無く全員が、暗殺術を――人間の戦い方を、学んだ。
二代目の当主、スティリアのように、全世界を暗躍する暗殺者を輩出する。さらにはヴァリオルドの血を継いでいない者にすら教え、駒として使った。
一年に暗殺された要人の数の半分がヴァリオルド関係の暗殺者によって殺されている、という事実からも、当時のヴァリオルドの力は相当なものだった。

そしてまた、ヴァリオルド家現当主を始めとする四人もまた、例外ではなかった。
長男、クレリア。
長女、アネット。
次男、ネリエル。
次女、セシェア。
この四人――特にクレリアはスティリアの血を色濃く継いだ[天性の暗殺者]だった。
またネリエルも、実力だけなら兄にも劣らない、[天性の暗殺者]の素質を持っていた。
アネットは暗殺者としての教育すら受けず、セシェアは生まれつき身体が弱かった故に分からないが、二人にも恐らく[天性の暗殺者]としての素質を持っていたのだろう。
クレリアが父、カナリアとの衝突で追放されてから生まれたネリエルも、やはり暗殺者としての訓練を受けた。
最初の仕事を行ったのは四歳のとき。相手は名前すら売れていない若手の議員。
まだ祖父の健在だったその頃、ネリエルはその議員を"練習台"にし様々な仕事の極意を叩き込まれた。

そして、六歳の頃には既に

こなした"仕事数"は、600を越えようとしていた。

184白猫:2008/06/07(土) 19:11:19 ID:rOHiPurc0

一晩に約一人、悪い時にはフタケタの仕事をこなした。文句一つ言わず。
[ネリエルまでクレリアと同じ道を歩ませるのか]というクレリアとスティリアの口論は、影から何度も聞いていた。
そして、ある日そんな日々が鬱陶しくなった。
ただ人を殺し、金を貰い、手を汚し、また次の標的の元へ。
うんざりしていた。
別に正義の炎が燃え上がった等、そういうわけではない。
ただ、面倒になっただけ。

そして七歳の夏、

何の躊躇もなく、1000人目の"標的"――祖父を、殺した。
依頼主は、自分自身。

 (この世には"死んでもいいヤツ"なんて腐るほどいる)
その頃のネリエルは、本気でそう思っていた。
毎日毎日"そういう人間"を殺し、それでも標的は尽きることなく沸いてくる。
 (そして父も、兄も、――僕も、"死んでもいいヤツ"なんだ)
本気で彼は、そう思っていた。
今まで"死んでもいいヤツ"を数多、殺し、そしてまた自分も"死んでもいいヤツ"なのだろう。
だが、生きている。
どうして、生きている?
 (それは――僕が"生きなければならない"から)
せめて、一人でも多く。
せめて一人でも多くの、毒牙を抜こう。抜き続けよう。
その毒に侵される日が来るまで、抜き続ける。
それが自分の運命。自分の"罪"。
それが自分の定め。自分の選んだ――"道"。

 (もう戻れぬのなら、突き進もう)
それを決めたのは、僅か十一歳のこと。
幼すぎる彼の決意は、あまりにも大き過ぎるものだった。
 (血に塗れた蛇の道を――人の悲鳴の伴奏と共に、鬼道を歩き続けよう)
十三歳、幼すぎる当主が誕生し、ヴァリオルドの暗殺一家としての汚名を返上することとなった。





 「簡単に言えば――こんなところですかな?」
セバスの言葉をしばらく聞いていたルフィエは、ゆっくりと両の目を閉じた。
ネルは捧げたのか。
いつか訪れる未来――自分の子が当主となる未来のために、己の命を、捧げたのか。
全く、彼らしい覚悟である。
 「満足、いただけましたかな?」
 「……はい」
セバスの言葉に少しだけ微笑み、ルフィエは目の前に置かれた紅茶を少しだけ啜った。
その紅茶は少しだけ冷え、しかしまだ温もりの残った紅茶だった。

185白猫:2008/06/07(土) 19:11:41 ID:rOHiPurc0

後日。

ラグナロク発動まで、残り240日。
最近では常に紅色の衣を被っているネルは、早くも再建の開始された本邸の骨組みを見ながら溜息を吐く。
本邸には貴重な武具、宝石が大量に保管されていた故に、被害総額は千億を超えるかもしれない。
が、"それよりも"。
 (マイの"あれ"は、本当に正しいんでしょうか……)
マイからの"情報"――とある人物の居場所。
残り八ヶ月、自分はこれから此処へと向かう。
しかし、どうして。
 「……スバインの廃墟、ですか。遠いですね」
が、確かに"彼"はああいう場所を好んで、勝手に住み着いて勝手に自分の土地にする。
そう言えば、以前はアベルのキャンプを占拠して冒険者たちが泣きを見ましたか。
そこまで思い出し、ネルは大きなバッグを肩に番えて言う。
 「では、留守を任せましたよカリン」
ネルの言葉に小さく頷いたカリンは、少しだけ目を細めてから、ネルへと呟きかけた。
 「……小娘もブリッジヘッドへ修行、お前はスバインか。私も鍛え直すとするか」
 「そうして下さい。八か月後に鈍った腕で戦ってもらっちゃ困ります」
ネルの言葉にフンとだけ返し、カリンは踵を返し、第二邸の方へ歩いて行ってしまう。
その口からほんの小さく、聞き取れないほど小さい言葉が紡がれるのを、ネルは聞き逃さなかった。
 「…行ってらっしゃい」

 「…………行ってきます」







 「ちっがーうッッ!!!!!」
 「ごめんなさいッッ!!!!」
怒鳴るマイに必死に謝りながら、ルフィエは薬品を棚へと戻す。
ブリッジヘッドの、マイの元へ訪れたルフィエは早速[唄]についてマイから教わり始めた。
最も、最初の方は殆どが薬品の整理や魔方陣の書き直しや部屋の掃除。唄のうの字も学ばない。
だが、ルフィエは分かっていた。
"マイは、決して無駄なことはさせない"。
事実、何故かは全く分からないが、毎日毎日少しずつ、仕事をするたびに自分の魔力の限界値が上がっているのを感じているのだ。
此処にいれば、もっと強くなれる。
自らの母の罪。
それは自分の罪のも等しい。
ネルが鬼道を進むというのなら、自分もその道を進もう。
それは誰に強制されたわけでもない、自分の選んだ道。
そう。
 (もう、逃げない)







 「カリアス……行くわよ」
 「へい……全力で来てや、アーティはん」
アリアンのさらに西、何処までも続く大砂漠の一角。
そこで武器を構え合うアーティとカリアスは、互いに魔力を充填しながら距離をジリジリと縮める。
ルフィエからの伝書鳩によれば、240日以内に今の"倍"強くなれ、とのことだった。
全く、今の実力を築き上げるだけでも数年かかったというのに、240日でそれを倍とは無茶を言う。
が。
 (そうでもしないと、)
 (そうでもせんと……)

   ((ルヴィラィは倒せない))
そして、一跳。
アーティの紫電とカリアスの氷柱が、砂漠の中で激突し、大爆発を起こした。

186白猫:2008/06/07(土) 19:12:04 ID:rOHiPurc0


廃墟スバイン要塞。
此処へようやく到着したネルは、辺りに人気が無いことを確認するや否や、荷物を全て降ろした。
そして、小さく呟く。
 「『 第三段階 』」
瞬間、
彼の銀色の髪が突如紅色へ燃え上がり、その額を白色の仮面が覆い隠す。
今まで普通の状態だった右腕が突如光に包まれ、一瞬後には巨大な槍――グングニルが握られていた。
さらに左手を飾る、巨大な刃付きの盾、エルアダーク。
自らの背を覆うようにして広がるマント、[深紅衣]を纏い、ネルは紅色に燃え上がった瞳を開いた。
何時見ても見事で、何時見ても美しいその発動の姿。
しかし、それを見て歓声を上げる者は、いない。
 (……[先制攻撃]で探知できる範囲に――いた、一人)
グングニルの能力――超広範囲の内部、たった一人――そう遠くない距離に佇む、凄まじく巨大な魔力。
間違いない。
この"鬱陶しいまでに巨大な魔力"は、あの男のものだ。
それを確認したネルは、

   「……老師――――ッッッ!!!!!」

突如、凄まじい叫び声を上げた。


どこまでも響いてしまいそうなその声を聞き、ゆっくりとスバインの一角で老人が立ち上がった。
 「久し振りにあの子の声を聞いた気がするな…あの子、生きていたのかー」
クスクスと笑うその老人は、よっこらと立ち上がり声の方向を向いた。

と、

その背後で、まさに神速で回り込んだネルがグングニルを構えた。
 「覚悟ぉッ!!!!」
 「ほっ。速いの」
完璧に決まったと思われたその一撃、
その一撃を老師、と呼ばれた老人は軽々と避けた。
目を見開いたネルは、しかしグングニルをさらに横へと薙ぐ。
が、その一撃をピョンとジャンプしただけで避けた老師は、さらにグングニルの柄に体重を乗せ、

ネルの顔面に、両足を食い込ませた。

 「ッ」
仮面にヒビが入り、自身も吹っ飛んだネルはしかし、地面に軽く着地し紅色の衣を鋭く放った。
その衣が老人の体に巻き付いていくのを見、ネルは右手のグングニルに全神経を集中させる。

   「『 ――破、槍ッ!! 』」

つい先日会得したばかりの技を、すぐ目の前の老師へと放った。
凄まじい魔力と破壊力の投擲が、目の前の老師へと凄まじい勢いで放たれ、

鼓膜を破りかねないほど巨大な、大爆発を起こした。

その大爆発の中、縮れてしまった深紅衣を引き戻し、ネルは地面に突き刺さったグングニルを引き抜いた。
一拍後に溜息を吐き、ネルはゆっくりと背後に振り向き、諦めたように言う。
 「相変わらず、忌々しいほど強いですね……老師」
そこに何事もなかったように立っている老師は、ネルの言葉にクスクスと笑う。
 「いやいや、ネリエルも相当強くなっているなー。こりゃウカウカしていれない」
 「……僕はそんなお話をしに来たのではありません……」
 「だろうねぇ」
クスクスと笑う老師にイライラするネルは、[第三段階]を解除して言う。
 「老師、僕を240日で強くしてください。可能な限り」
 「うん、いいよ。暇だし」
ネルの真剣な言葉に、老師は軽く頷いた。

FIN...
---

187白猫:2008/06/07(土) 19:12:31 ID:rOHiPurc0

――次回予告――




 「……ようこそ、歓迎するわ――フェンリル、ルフィエ」
古都の空中に出現した鉄の箱、[イグドラシル]。
そこへと突入したルフィエ、ネル、アーティ、カリアス、アネット、カリンの六人。
迎え撃つは千体の魔物、サーレ、デュレンゼル、ベルモンド、プリファー、アンドレ、ムームライト、そしてルヴィラィ。
激戦、と言うのも生温い血みどろの戦いに、また一人、また一人と敵と味方が斃れてゆく。
そしてとうとう現れた、世界を滅ぼす史上最悪の兵器――[アトム]。
それを操るは、[第四形態]、デーモンとなったパペット。
迎え撃つは後背に光り輝く翼を持ち、一瞬で一体の傀儡を消滅させた一人の天使――


そして始まる、ルヴィラィとルフィエ、ネルと"三位一体の最後の傀儡"の戦い。
十三体の傀儡を滅ぼし、全てを終わらせるために。
全ての終わり――今、世界を賭けた最後の戦いが、始まろうとしていた。

ラグナロク発動まで――残り、十五分。




最終章、[-Epilogue-歌姫と絡繰人形]。
次回、完結。
---

番外編

そのに

第二回戦

リトルウィッチであり[歌姫]、マペット契約者
[神の母]ルフィエ=ライアット


vs

[ブルンの影狼]、エリクシル継承者
[紫電狼]ネリエル=アラスター=ヴァリオルド・Ⅳ


 「さて、僕の出番ですね」
紅色の衣を纏ったネルが、グングニルを構えて笑みを浮かべる。
同じく笑みを浮かべるルフィエも、クリーム色のドレスローブ――[神の母]を展開する。
片や紅色の光を放つ、圧倒的な破壊力を持つ"力の美しさ"。
片や白色の光を放つ、絶対的な統御力を持つ"魔の美しさ"。

アーティ達も実は、この二人が戦ったらどちらが勝つのか興味があった。
ネルはグングニルを手に入れ、ただでさえ恐ろしい戦闘力の[第三段階]に更に拍車がかかった。
ルフィエはパペットによる[神格化]により、古代魔法すらも駆使し魔法の力だけなら大陸内でも右に出る者はいない。
 「ネルくん、言っとくけど手加減しないからね」
 「勿論です。手加減なんかしたらぶっ飛ばしますよ」
ルフィエはスターワンドを、ネルはグングニルをそれぞれ構え、互いに距離を取る。
一瞬の沈黙。

 「――『 ブラス「『 ノヴァ! 』」
ネルが声を上げた一瞬後、ルフィエが鋭く指を払った。
瞬間、数個の光弾がルフィエの周りに出現、同時に総てが放たれる。
 「ッ!?」
自分の方が詠唱は早かったはず。それなのにルフィエの方が術の発動が先。
それに目を見開き、しかしネルは[深紅衣]を払い、全ての光弾を打ち落とす。

188白猫:2008/06/07(土) 19:12:52 ID:rOHiPurc0

[深紅衣]さえあれば、ルフィエの術のほとんどは無効化できる――それが、ネルに一瞬の安心感を生んでいた。
 「っは!」
 「!」
遠距離からネチネチと攻撃を加えると思っていたネルは、ルフィエの行動に目を見開いた。
何の躊躇もなく、自分の間合いに飛び込み、神器を自分へと向けてきた。
だが、近距離戦闘ならばネルの方に分はある。
驚いた時間もせいぜい1秒以下。瞬間的に半歩下がり、エルアダークを迎撃用に構える。
その、余りに見え見えな防御態勢。しかしルフィエはそれに乗った。
ネルが力で来るならば、自分も力で相手になろう。
神器を投げ、両の手を花のように合わせる。
その手に先と同じ光、だが光量のまるで違う光弾が生み出され、ルフィエはそれを右手で掴んだ。
 (やってみなさい、ルフィエ――ですが僕は)
 「『 スー、パー…… 』」
 (その一歩先を行く!)
 「『 ノヴァッ!! 』」
ルフィエが右腕を振り上げると同時に、ネルはエルアダークに力を込めた。
が、

   「【あいや待ったァ――――――ッッッッ!!!!!】」

 「ふぇっ!?」
 「な!?」
突如上がった声に、ルフィエとネルは顔を上げた。
二人だけではない。遠くで観戦していたアーティやカリアスも目を丸くして、その"乱入者"を眺めていた。
カリンはどうでも良さそうにフンと笑い、アネットは面白そうに微笑んだ。
ネルを蹴り飛ばし、ルフィエのノヴァを手ごと弾いたその"乱入者"は、フワリと地面に着地した。
片や、ワンピースを着両の手に大鎌を持ち不敵に微笑む、黒と白髪の少女――シャーレーン。
片や、アウグスタの僧侶服を着、光り輝く二枚の翼を持つ、金髪の少女――リレッタ。
此処に現れるはずのない二人の乱入に、ルフィエとネルは唖然とする。
 「な、なんでリレッタとサーレが……ていうかサーレ! 何の用です!?」
遠くで頭を抱えて立ち上がったネルは、慌ててグングニルを構えて言う。
まさかこのタイミングでこの二人が登場するとは夢にも思わなかったルフィエは、二人の登場に未だについていけてない。
 「……えーっと……? こんにちは?」
 【やっほー】
手をブンブンと振って笑うサーレに、ルフィエも引きつった笑みで返す。
一体どうなってるんだ、と溜息を吐くネルは、サーレに向き直って言う。
 「それで、何の用です」
 【え? バトルらんにゅー】
 「……は?」
サーレのウィンクに疑問符を浮かべたネルに、リレッタはクスリと笑って指を立てる。
 「番外編は何でもアリなんですよー」
 「……ああ、ソレですか」
リレッタの言葉に、ネルは全てを理解した。
つまり、アレですか。
 (どうやらタッグバトルトーナメントを書けなかったことを根に持ってますね)
と正鵠を射つつ、ネルは溜息を吐いて頭を掻く。
続ける―?と首を傾げるルフィエに頷き、「でも」と付け足した。
 「僕とルフィエの二人と――サーレとリレッタ。タッグバトルでどうです?」
 【……ふーん。いいよ】
不敵な笑みを浮かべるサーレとネルに、リレッタはクスリと笑ってルフィエに向き直った。
 「みたいですよ?」
 「うーん、いいよ。でも手加減しないんだからね」

189白猫:2008/06/07(土) 19:13:14 ID:rOHiPurc0


第二回戦(改)



リトルウィッチであり[歌姫]、マペット契約者
[神の母]ルフィエ=ライアット
and
[ブルンの影狼]、エリクシル継承者
[紫電狼]ネリエル=アラスター=ヴァリオルド・Ⅳ

vs

神々に恩恵を受けた正真正銘の[天使]、
リレッタ=アウグスティヌス
and
一体の[傀儡]であり大鎌を薙ぐ武術家、
シャーレーン



凄まじい閃光が再び上がったのを見、カリアスは頭をガリガリと掻いて溜息を吐く。
 「なんや、アッチの方が面白そうやったやんけ……」
 「で、あの場合決勝戦はどうなるワケ?」
激突する閃光を見ながら、槍を肩に番えるアーティは首を傾げた。
唯一全く興味のなさそうなカリンが、真っ黒の剣を磨きながら小さく言う。
 「……決勝戦であの二人と私達が戦い、勝者同士が戦えばいい」
 「アッタマええなぁ、黒騎士」
素直に頷くカリアスにクスリと笑い、アネットはひょいと手を上げる。
 「で、最後に私が戦うわけね」
そうなる、と頷いたカリンとその背にもたれるアーティ、
その真上に、突如巨大なハンマーが出現する。
リレッタの術が逸れたのだろう、と思考を流したカリアスは、そっと注意を促
 「……危ないで、アーティは――」

   ――ドォオオオオォオオンッッ!!!

せなかった。
哀れハンマーの下敷きとなったカリンとアーティに心中で「ドンマイ」と呟きかけ、カリアスは再び戦場の方を向いた。



 「ッハァアアアアアア!!」
 【っふ!!】
ネルのグングニルによる刺突、それをサーレは二本のデスサイズで鋭く弾いた。
グングニルの攻撃は以前戦ったときの金色の剣よりも相当重い。片方のデスサイズではいなし切れず、確実に吹き飛ばされる。
だが近接における戦闘ならば手数はこちらが上。勝てないわけでは――毛頭、ない。
 【そこッ!】
 「ッ!?」
鋭い左手の鎌の一薙ぎ、
その一撃が、見事にネルの盾を捉え、粉々に砕いた。
同時に起こる大爆発にネルは目を細め、しかし強い笑みを浮かべる。
ようやく槍を、"両手"で握ることができる。
同じく距離を取っていたサーレは、突然膨れ上がる魔力に目を細め、デスサイズを構え直した。
 〈デカいのが来る〉
 「――『 爆、風! 』」
地面に槍を突き刺し、同時に発動する術により凄まじい量の砂を、サーレに向けて巻き上げる。
それを鼻で笑ったサーレは、瞬時にデスサイズを構え、叫ぶ。
 【『 竜巻堕落、旋風 』】
目の前の巨大な砂の塊、それを一瞬で吹き飛ばしたサーレは、一瞬だけ感じるネルの殺気にデスサイズを無意識に構えた。
 「遅いッ!」
瞬時に回り込み、槍の一薙ぎでサーレの鎌を吹き飛ばしたネル。
その速さに不敵な笑みを浮かべ、サーレは砂で汚れた服も気にせず鎌を両手握りに変えた。
対するネルもここで攻撃を終えはしない。不安定な足場のままで槍に全神経を注ぎ、大技を放つ体勢を取った。
 【『 デス、スラッシュ!! 』】
 「『 破槍――ッ!! 』」

(この地点でトライデントはまだ使えねーよっていう野暮なツッコミはナシだぜ嬢ちゃん…番外編は何でもアリなのさ)

190白猫:2008/06/07(土) 19:13:37 ID:rOHiPurc0

 「やっぱり、硬いね――その盾。『 ウルトラノヴァ 』」
空中を舞うようにして飛ぶリレッタに笑いかけ、ルフィエは無数のノヴァを生み出し、瞬時に放つ。
多方向から向かってくる光の球を見やり、しかしリレッタは欠片の恐怖も抱かない。
スマグでは油断をしていたが、リレッタは事実、通常状態のネルよりも戦闘能力は格段に上なのだ。
 「『 [絶対聖域(サンクチュアリ)] 』」
瞬間、

ドドドドドド、と全ての光弾がリレッタに命中したかに見えたルフィエは、小さく溜息を吐く。
 「すごいね……[ウルトラノヴァ]を通さない」
そう言いながら見上げる先に立っているのは、蒼いジェルのようなものに包まれ、攻撃を全て受け切ったリレッタ。
[絶対聖域]。如何なる物理攻撃、魔法攻撃も、この盾の前には全てが無効化される。
最も、ある程度の知識があれば[絶対聖域]を超えた攻撃も可能である。だが、やはりウルトラノヴァ程度の攻撃ではあの聖域を破ることはできない。
が。
 「[古代魔法]なら、砕けるんじゃない――かな」
両の手に巨大な光弾を生み出し、ルフィエはリレッタに笑いかける。
それを見て溜息を吐いたリレッタは、しかし[絶対聖域]を解除して二つの十字架を構えた。
 「その通りです――この聖域は、[難易度6]以上の攻撃は防げない。あなたの術、[ルリマ]は――」
 「――難易度8、だよ」
その言葉が終わるや否や、ルフィエの口から酷く美しい歌声が紡がれる。
讃美歌のようにも鎮魂歌のようにも、子守唄のようにも民謡のようにも聞こえるその唄。
だが、それに聞き惚れるほどリレッタも暇では――ない。
 「私の最強の術で――応えるべきですね」
 「――行くよ、リレッタちゃん。『 ルリマ・ウルトラノヴァ 』」








 「で、どっちが勝ったわけ?」
(プレシングの巻き添えを食った)アーティは、ズタボロの格好で戻ってきた四人に問いかける。
そのせっかちな口調に苦笑する(何故か鉄拳を食らった)カリアスは、頭をさすりながら「お疲れさん」と声をかけた。
カリアスに小さく頭を下げたネルは、アーティの方へ向き直り溜息を吐く。
 「僕とルフィエの勝ちです。ですがもう疲れましたんで僕らはギブ」
お手上げ、と両の手を上げたネルに、目をぱちくりさせてアーティは言う。
 「なんだ、乱入してきた癖にてんで弱っちいのね」
 【ふーんだ。まだ力が弱っててマックスのパワー出せないだけだよーだ】
小さく負け惜しみの言葉を呟くサーレを見、アネットは小さく微笑んだ。
 (昔の私じゃない? 彼女)
 (知りません)
そっとネルに耳打ちしてみるが、ネルから返ってきたのは興味なさげな返答だけだった。


勝者なし(必然的にアネット=ライラが決勝戦に)。

 「さぁて、次は私た――」
すくっと立ち上がったアーティは、プレシングを受けた者同士妙な親近感が湧いたカリンへ向き直る、が。
 「…………」
カリンは目の前の剣を見ながら、声も無く泣いている。
見れば、その剣はちょうど中ほどで、見事真っ二つに折れてしまっていた。
金属疲労でも起こしたのだろう。あの折れ方ならば鍛冶屋に行けば直るが――
 「こりゃあ、戦えそうにないわね……」

勝者、アーティ=ベネルツァ―(カリンの戦意喪失)。

次回、決勝戦!



---

191白猫:2008/06/07(土) 19:13:58 ID:rOHiPurc0
どうも、白猫です。
今回は全てにおいてヒドイ描写です。これでも全力で書いたつもりです。"実力の半分の状態での全力"というやつです(意味不
リレー小説は早くもついていけなくなりました。たぶん私はリレー小説ROMるかと思います。69hさんに期待マーックス。
さて、次回が最終回なわけですが、番外編の「アネットvsアーティ」はひょっとすると本編終了後になるかもしれません。

もちろん68hさんのリクエスト、[ネルとルフィエが入れ替わり]はガッツリやります。(宣言

コメ返し


>68hさん
なるほど、68hさんにもそんな自己ルール(俺ルールとは別物)が。
そういえばこの小説も68hさんの感想直後ということになるのでしょうか。つくづく空気が読めない私orz
嵐の前の静けさ。残念ながら嵐っぽい嵐は起きませんでした(番外編は例外)。
覆面さんは最終章でもガッツリ……出る、かな?まだ考えていません。
カリンはちょっぴり関与しましたがアーティには触れず。アリアンと古都って遠いですよねー。片道十日くらい(白猫設定)。
ヴァリオルド本邸がなくなってしまいました^p^ネルくん涙目。往生際が悪い。

ガチバトル編。
リレー小説でネルくんとルフィエを出してしまったので、詳細をどうしても書きたかったのが大きな理由でしょうか。
いつもなら適当に流す変身描写も今回はちょびーっとだけ眺めに。
カリアスは変わるかもしれませんが、アネットはあまり変化が無いかもしれません。変化があるように書けないなぁ……。

999文字小説の方は描写が稚拙で申し訳ない……orz
普通に書いたら1500を軽く超えてしまい、泣く泣く描写を削り削り削り修正修正修正であんな文章にorz
もうできればアレは見たくはないです。
そして七冊目は観察に徹しようと思っています笑。

五冊の803から書き始めた[Puppet]。
フランテルとフランデルが被ってしまったときやヴァリオルド邸の位置の設定がコロコロ変わったりするのに一喜一憂しておりました。
思えばクリスマス用にちょこっとだけ投稿するつもりが、まさか七冊目まで伸びてしまうとは。
しかも七冊目においてはトップバッターという実力に合わない大それたことまでorz
なんとか完結させようと思います。できれば今回スレ[803]で〆たいですね(最終章はかなり長くなる予定)。
まぁ無理そうですので、「803を跨いで完結」をPuppet最後の目標に頑張ろうと思います。
そして続編も決定。これからも白猫をよろしくお願いします。
…天下一ですか? も、もうちょっと……(マテ

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
あらゆる描写……私が胸を張れるのは[戦闘描写]だけですよ苦笑
今となってはその戦闘描写の腕も鈍ってきているかもしれません。精進せねばorz
さて、気付けば正式な提案はDIWALIさんが行っていたのですね、コラボ小説。
私が執筆者という不相応な役目を任されたので、せめて期待に添えるようにしようと思っています。

192白猫:2008/06/07(土) 19:14:20 ID:rOHiPurc0

>スメさん
はい、特攻野郎です。もう特攻しか考えていません。馬鹿です。
大砲シーフはー……なんでしょう。ヤラレ役としか考えていませんでした。おいしいのかアレ汗
元々ギャグ小説家でしたので、あの軽いノリは好きな方です。次回作は全体を通してあのノリにチャレンジ。
えーと、たぶん今年のフランテル版黄砂は主にあの二人、もとい四人が原因です。
こらしめておいてください。気のせいにはなりませんでした(コラ

>みやびさん
メインクエ題材ありがとうございます。
次回作はメインクエに沿ったお話になる予定でしたので助かりますです笑
レッドストーンはもうINしないと決めた人なので、こういう情報はもう本当に欲しい人なんですorz
INしてたときですか?メインクエは最初止めでした。はい。
そしてリレー小説。
私は煽るだけ煽ってROMってしまいますが、影から応援はしていますよー

>黒頭巾さん
もう「他作家さんとのコラボ」が発動してしまっている!笑
ハロウィンが楽しみです。カリアスがどう料理(待て)されてしまうのかwktkが止まらない人です。
ごしゅじんさまもこちらで美味しく(ちょ)頂きます。期待はしてくれて……いいような、よくないような。
そうですね、√……ですが小説は何やってもだいzy(ry
はい、おばかさんです(ノ∀`*)ペチン
あのラットの写真は吹かせていただきました。まさにアレです笑
アフロカリアスは絵にして見せられないのが残念です。ですがメイドカリアスがいるのでいいです(ちょ

さて武道×サマナ編。
どこから言おう……えーっと、では一言。
もっと絡まs(以下略
流石にイッキは見せてくれませんか!ええい!焦らすな焦らすな!(誰
続きをバッチリ期待しています。さて、どうなるのやら笑

>177さん
二人のRSプレイヤーのお話。女性視点のお話はよく目にしますが、これもまたいい味を出していますね。
伝わりそうで伝わらない想い。読んでいて切なくなるお話でした。
私もRS内での恋愛は見てきた人です。それを思い出して読み、尚共感できる点もありました。
最も、私は女ではないわけなのですが。[恋をする人間]という点では共感できる点がたくさんありますね。
どんな形であろうと、恋をしている時は、その人が一番輝いて見える時だと思っています。
…あれ? 何の話でしたっけ?
あ、そう。小説ですね。
書き方が雑でもなく、書き過ぎてもなく。これを見たとき「読みやすい」と思いました。率直に。
このような描写方法は私も試したことがありますが、比べ物になりませんね。最も私が書いていたのはギャグ小説ですが苦笑
次回の作品も期待しています。どうぞ気兼ねなくご参加くださいね!



今回はこの辺で失礼します。
次回の、というか最後の[Puppet]投稿はずっと先になると思われます。(750あたりかな?)
間に短編小説でも書こうかなともくろんでいます。たぶん無理です。
それでは――白猫の提供でお送りしました。

193◇68hJrjtY:2008/06/07(土) 23:54:40 ID:pob35qCY0
>177さん
投稿ありがとうございます。
これは…なんだかとってもリアルで、小説として読み流すにはあまりにも切ない物語。
ネトゲを通じた恋愛というのは私も友人などの体験談を聞いた事もあるからこそ親身に読めました。
画面の中にいる相手と時間を共有する。そこにそれ以上のものを求めてしまう人、リアルとゲームとを完全に区別する人…。
心の行き違いや気持ちの伝わらなさというのがリアルな恋愛以上にネトゲでの恋愛は大きく、また伴う痛みも大きい気がします。
この物語の主人公が177さんなのかどうかはまた別として、彼女が幸せな恋愛を育んで行ってくれる事をお祈りしています。



>白猫さん
なんだか毎回言ってるような気がしなくもないながら…やっぱり文章量凄いよ!ど、どこがひどい描写なんだ…!?(;・∀・)
本編にリレー小説、そして天下一とさらにまた短編の目論見まであるとは。つくづく恐ろしい人だっ(え
パペット、終章を予感させるお言葉ですが、このままスレに置いておくばかりじゃ勿体無い。。とはいえまとめサイトはあの様子ですし…orz

さて、今回の見どころはヴァリオルド家の歴史と初登場となるネルの「老師」なる人物ですね。
ネルですら奇襲を受けて倒れたほどの実力の主クレリア、しかしあまりにも瞬間的にルフィエによって消滅…
普段はネルの方が戦闘面で目立ちますが、ルフィエも実力的にはネルと同等、それ以上のものを持っているということですね。
つくづくこの二人が未来に築く家庭を勝手に妄想すると楽しみな反面、ケンカしたら物凄い事になりそうですね(笑)
ルヴィラィという母を持つルフィエ、暗殺者として名高い祖父スティリアを持つネリエル。当人は認めたくなくても"血"は消えないものですね。
して、ネルの最強技ですら跳ね返してしまう「老師」。ネルやアーティ、カリアスたちの修行。240日後…楽しみにしています。

ガチバトル。
ネルvsルフィエという最も注目すべき、そして最も建造物破壊予感がするバトル…になんと乱入!(笑)
リレッタ、もはや懐かしい人になりつつある中こうして再登場してくれたのが嬉しいです。レイゼルはんもギャラリーでも良いので是非…(こら
ある意味当時からライバル同士だったルフィエとリレッタの一騎打ち的なバトルでもあったわけですが、やはり「ルリマ」、強い。
しかしカリンの剣があぼんしてしまわれた((( ´・ω・)) あの狙ってた剣、出てくるといいのですが(笑)

おぉ、あの入れ替わりネタ書いて頂ける…!なんだか勢いで頼み込んじゃったような感じでしたが、これは楽しみにお待ちしてます。もちろんゆっくりで構いません!
てかリレー小説期待されてるんですかorz
そして感想に偉い文章長くてすいませんです(;´Д`A

194みやび:2008/06/08(日) 21:33:47 ID:9KxznVoo0
◇――『メインクエ“CHAPTER1”より〜ダメルの歴史書』―――Red stone novel[1/6P]

 という訳でメインクエ関連の資料その②です。
 クリスティラの次に出てくるRS史ですね。
 ※ただし付随するお使いクエは割愛。歴史書のみの抽出です。
 例によって改行位置以外は誤字・脱字・句読点にいたるまで忠実に再現。
 またレス節約のため空行書式も割愛しました。
 では――




   序文――ゲールの言葉より。

 ようこそ。やっと来ましたね。待ってましたよ。
 レッド・ストーンに関する情報を得るためによくいらっしゃいました。ここダメルが、まさに
レッド・ストーンの全ての始まりの地なのです。
 レッド・ストーンを探す多くの人々は、天上界に行って諦めてしまいます。そこで手がかり
が途絶えてしまうからなのです。
 それに、たまに五〇匹のゴブリンたち(※1)に殺される場合もあって……。

(※1:編者注釈)ゲール自身が依頼したお使いクエ『言うこと聞いてほしけりゃゴブリン五〇
匹狩ってこいやわれー』のことですね。

 しかし、もしそれぐらいで倒されてしまう実力だとしたら、レッド・ストーンに関しては、これ
から先には一歩も進むことができないでしょう。
 レッド・ストーンに関する詳しい情報を得るためには、まずダメルの歴史を知らなければ。
 ダメルの歴史書は、大陸のいろいろな遺跡に分布されているのです。
 そう。大陸には、様々な遺跡があります。この遺跡を中心に、ダメルの歴史書が隠されて
いるのです。
 遺跡は、元々誰もが自由に出入りできた所なのですが、いつからか遺跡を守るモンスター
が出現して、いくつかの遺跡は非常に危険な場所となってしまったのです。

195みやび:2008/06/08(日) 21:34:18 ID:9KxznVoo0
◇――『メインクエ“CHAPTER1”より〜ダメルの歴史書』―――Red stone novel[2/6P]

   ダメルの歴史書 第一巻
   (注釈※入手場所:アリアン遺跡地下一階/古代の造形物内)

 三〇〇年余り前、レッド・ストーンを手に入れようとしていた追放天使たちは、悪魔たちの
包囲網を破り、当時栄えていた都市ダメルに寄り集まった。しかし、悪魔たちの罠に落ち、
ダメルは廃墟に変わって、地上に降りてきたほとんどの天使たちは、能力と記憶を失って
しまった。
 今、四方に広がっている追放天使たちが、以前に能力を取り戻せず人間ほどの能力に留
まっているのは、この時の後遺症のためである。またブルン王国に匹敵する国力を持って
た大都市ダメルも、悪魔たちの策略のせいで廃墟に変わってしまった。


   ダメルの歴史書 第二巻
   (注釈※入手場所:アルパス地下監獄地下一階/ミイラの体内)

 追放天使たちの悲劇の一部始終を知る手がかりを握っているのは、ゲールという天使だっ
た。
 ゲールも反逆に加わった上級天使の中の一人だったが、無残にも皆殺しにされる仲間の
天使たちの姿を見て心が変わったのだ。
 しかし、自首する勇気はなかったので、他の追放天使たちが赤い悪魔の姿に変えて脱出
するのを見ても、ただ呆然とするだけだった。
 事態が収まった後、一人残されたゲールは、偶然一人だけ生き残っていたことに対して
追求を受けるようになった。幸いにもゲールには“命の天使”という通り名があった為、死な
ずに生き残ったと解明されたが、レッド・ストーンを死守する事が出来なかった責任は重く、
ゲールは下界へと追放されてしまった。

196みやび:2008/06/08(日) 21:34:53 ID:9KxznVoo0
◇――『メインクエ“CHAPTER1”より〜ダメルの歴史書』―――Red stone novel[3/6P]

   ダメルの歴史書 第三巻
   (注釈※入手場所:アルパス地下監獄地下二階/イプリートマーキの骨の中
   ※古代ウィザードたちが歴史書を保護するために魔法で封印したとされる)

 その他にゼリオ、サミオ、ゲリオ、タムイ、パチラギ、リムディ、ザイル、ペイル、バイルな
どが、一番中心的な役割を担った反逆天使たちである。
 この他にも三〇〇〇人余りの天使が密かにこの反逆へ参加した。これらは作戦の成功
以後、皆赤い悪魔の仮面をかぶって地上へと身を隠してしまった。
 この天使たちは、自らの肉体を捨てて魂だけを赤い悪魔の体の中に移した為、天上界で
は皆、存在自体が消滅したと思われていた。
 後日、魂だけが消滅したような天使たちの死骸に対して、疑問を申し立てる調査員たち
もいたが、悪魔と激しい戦闘を交えた後だった為に、大きな問題になる事はなかった。
 その結果、追放天使たちと悪魔たちが手を取り合って犯したレッド・ストーン奪取事件は
迷宮入りになってしまった。

   ダメルの歴史書 第四巻
   (注釈※入手場所:アルパス地下監獄地下二階/ジャイアントの体の中)

 追放された副指揮官、天使ロシペルは天上界に反逆陰謀をたくらんでいた者だった。
 残り二人の上級天使であるアズラエルも、赤い悪魔の肉体に移り換わりレッド・ストーンを
奪取するたくらみに加わった。彼らは赤い悪魔の姿で、レッド・ストーンのかけらを持ってい
る悪魔たちの中で、一番中心的存在の悪魔である。

197みやび:2008/06/08(日) 21:35:30 ID:9KxznVoo0
◇――『メインクエ“CHAPTER1”より〜ダメルの歴史書』―――Red stone novel[4/6P]

   ダメルの歴史書 第五巻
   (注釈※入手場所:廃坑地下七階/ブラックメイジが所持
   ※ウィザードの契約により歴史書を守っている)

 三〇〇年余り前、レッド・ストーンを手に入れようとしていた追放天使たちは、悪魔たちの
包囲網を破り、当時栄えていた都市ダメルに寄り集まった。しかし、悪魔たちの罠に落ち、
ダメルは廃墟に変わって、地上に降りてきたほとんどの天使たちは、能力と記憶を失って
しまった。
 今、四方に広がっている追放天使たちが、以前に能力を取り戻せず人間ほどの能力に留
まっているのは、この時の後遺症のためである。またブルン王国に匹敵する国力を持って
た大都市ダメルも、悪魔たちの策略のせいで廃墟に変わってしまった。

 (注釈※上記は第一巻と同じ内容です。なぜかは不明。バグか編集ミスの放置か?
 以下続き――)

 悪魔たちが天使たちを追い出すのには成功したが、それによって失った事もあった。
 力強いエネルギー波動を起こすため、悪魔たちは持っていたレッド・ストーンの力を使っ
たのだ。
 力強いエネルギーを放出した火の神獣の卵たちは、一つが数十個の欠片に割れた。
 二度と修復出来ないと思われるほどひどい損傷をおった。もちろん、中には破損を免れ
た物もあったが、数百個の卵の大部分は小さな欠片となって、現在の

 (注釈※「現在の」以降は文章が表示されませんでした。もちろん最下段にスクロール済
みなのは何度も確認しました。おそらく文字表示関係(文字が大きく表示される)のバグで
しょう。クエのNPC会話でこれが起こると、稀に文章が途切れることがあります。
 よってページをめくるしかできませんでした。
 以下次のページ――)

 その為、悪魔たちの間でも争いが起きた。
 数万個のレッド・ストーンの欠片を巡って悪魔たちの間で紛争が起きたのだ。
 小さな悪魔たちは、各々小さな欠片たちを奪ってどこかに消え、その悪魔たちを捕まえる
為にまた他の悪魔たちの間で紛争が起きて……。 
 これによって、ただでさえ廃墟だったダメル周辺は浄土と化して砂漠に変わってしまった。
 レッド・ストーンの欠片は悪魔たちが持ったまま各地へ広がって行った。
 そうして、小さな欠片を持った悪魔たちは各々の力を蓄え始めた。

 ――以上、ダメルの歴史書より。
 このあとは最後の秘密ダンジョン・クエとなります。
 これまでですと叫びでPTを組んでもらってソロでクリアしていましたが、半死人状態なの
で面倒臭くて放置。以降の資料抽出は他の有志にお任せします。
◇―――――――――――――――――――――――――Red stone novel[−Fin−]

198みやび:2008/06/08(日) 21:36:02 ID:9KxznVoo0
◇―――――――――――――――――――――Red stone novel−Postscript[5/6P]
※本編中の誤字・脱字は脳内変換をお願いします。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      『メインクエ“CHAPTER1”より〜ダメルの歴史書』

 ――あとがき――

 白猫さんがメインクエを題材にするということで、SSを発掘してきました。
 お役に立てば良いのですが……(汗)

 しかしこのメインクエ①――過去に何度もクリアはしていますが、いつもいつもSS撮るの
を忘れてしまい、よって内容もうろ覚えでした。
 しかしあらためてSSを撮ってみると、なんだか矛盾が……(汗)
 まず、ゲールは最初、正体を隠して墓守ガイルとして登場しますが、身を隠していた理由
を「天使が自分を探している」と述べています。しかし実際には、クエ遂行中に「ゲールに会
え」と助言してくれたのは天上界の門衛長である天使のハルダエルです。
 仮に、クエスト遂行者(つまり人間)を利用してゲイルを探させようとしている――という設
定だとしても、地上の人間がいとも容易くゲールの所までたどり着けるくらいですから、天使
ともあろう者が「人間を利用しなければゲールの居所をつかめない」というのは説得力皆無。
 またそれに関するフォローも一切スルーという徹底ぶり。

 あとクエ中、手に入れた歴史書を翻訳してくれているなかで、NPCゲイルが歴史書を読み
終えたあとにこんなことをのたまいます。

『面白いことに僕と同じ名前を持った天使が登場しますね。僕も気になり始めました。冒険
家殿、僕も遺跡が言い表す忘れられた歴史が知りたくなりました』

 これはゲイルが記憶を無くしているという設定なのか、もしそうならばそもそも天使から身
を隠そうとする動機が思いっきり不明な訳ですが……(汗) あるいは本当に別人?
 この辺って、最後のクエを終えたところでスッキリさせてくれるんでしたっけ?
 まるで覚えてないです……。うーん(困)

 いずれにせよ、私の資料投下はここまでです。あとはどなたか補完してください(汗)

 このままおいとまするつもりでしたが、せっかくなのでリレー感想とお初さんのみコメント。
Red stone novel−Postscript――――――――――――――――――――――――◇

199みやび:2008/06/08(日) 21:37:47 ID:9KxznVoo0
◇―――――――――――――――――――――Red stone novel−Postscript[6/6P]

リレー参加>之神さん
参加お疲れ様です。
いやあそう来ましたか(笑) しかしこれぞリレーの醍醐味というやつですね。
先の展開がわくわくできそうな内容でナイスです。
ところで武道と言えば……なぜか68hさんを連想してしまうのですがべつに投稿の催促では
ないです。ですよね之神さん?(とひとに振る)

リレー参加>DIWALIさん
お疲れ様です。
またしても先の読めない展開でグッ。
この感じだとロード・ムービー風になりそうな悪寒ですね(ニヤニヤ)。
関係ないですがバーソロミューと言えば、デイブ・バーソロミューというアーティストがいました
ね。久しぶりに聴いてみようかなー、と思いました。ほんとに関係ない話(笑)

リレー参加>白猫さん
お疲れ様です。
これまたイレギュラーとは。SFチックなノリでおばさん嬉しいわあ^^
いやはや楽しませてもらいました。
でも今後はROMなんですね(泣) っと、天下一のほうも大変ですものね。
きっと68hさんがあとを継いでくれますよ(笑) 天下一頑張ってください!

リレー参加>黒頭巾さん
お疲れ様です。
しかしまた目まぐるしく展開してますね。楽しんで書いたことが伝わってきます。
実際既存のキャラや設定をイジるのって楽しいですしね(笑)

リレー参加>DIWALIさん
二週目お疲れ様です。
いやあタメますね。ドラゴン○ールかキャ○テン翼みたいな(笑)
お次の方は腕が鳴りますね。(わくわく)
ところで『世界猛獣図鑑』ですが、いつか編集して投下してくださるのかしら♪
何気に期待してます(笑)←すでに読者専モードですから(笑)

>177さん
切なくて物悲しいですね。
こういうのわりと好きです。
また投稿してくださいねー♪

っていうかレス節約で空行廃止したのに文字数限界まで使ってなかったりして(汗)
半死人なのに長くなっちまったい><
では引き続き通常の流れでどうぞ!
Red stone novel−Postscript――――――――――――――――――――――――◇

200177:2008/06/10(火) 23:17:59 ID:RSsslgM20
みなさんレスありがとう
時間をみてまた投稿させていただきます

毎度新作が投稿されるのを楽しみに・・・普段はロムっていますので

ではでは

201◇68hJrjtY:2008/06/11(水) 12:39:55 ID:f1HsgyLY0
>みやびさん
メインクエ、正直こうして時系列順に読んでみると意外な発見が多いですね。
公式サイトのキャラ紹介ストーリーもそうですが、RSって読み物として小説または漫画があってもおかしくないほど
分厚い設定やストーリーが背後にあるような気がします。っていうか実際あるのかな?
もしそういうのが存在するなら韓国語だろうが読んでみたいですね(読めないケド(笑))。
しかし矛盾点の発見は意外な落とし穴でしたね。やはりここは書き手さんの想像力で補ってもらうしか…!
白猫さんや姫々さん始め、メインクエを題材にした書き手さんの活躍を期待!

>177さん
ROM専さんでしたか、いやいやありがとうございます。
感想ばっかり書いてて全然小説UPしない奴も居たりする中で一筋の清涼感。
またUPしてくださる日を楽しみにしております。そしてまたいつかの未来に開催するだろうチャットイベントにも是非…(笑)

202黒頭巾:2008/06/11(水) 19:14:16 ID:fou9k2gM0
まずはレスから。

>68hさん
最初から単純甘々なカポー話だと個人的に食指がそそられないので話がややこしくなります^p^
武道くんは生まれつき精霊の存在を感じれませんので、サマナたんとは対極の存在な凸凹コンビ珍道中です(´・ω・)ノ
仰られる通り、語り部がいるお話ってのが好きなんですよ…笑
それは本人だったり、子孫だったり、仲間だったり、吟遊詩人だったり、神様的存在だったり…浪漫がある気がして。
うふふ、そんな期待をされるとシリアス台無しにしたくなります(お前)

>177さん
感謝スレを読んでいる気分になりました…リアリティがあると言うか、引き込まれると言うか。
凄く切なく、それでいて幸せを感じる、深い作品だったと思います。
ネット上の恋愛って、現実とはやっぱり少し違うんですよね…。
“画面の中の彼”に恋した彼女の気持ち、少しわかるかもしれません。
もし気が向かれましたら、またお待ちしております。

>白猫さん
ひゃっほーい、今回も盛り沢山だね、パパ!(誰だ)
某所で伺っておりましたが、実際文章になるとやっぱりクレリア凄いや!ガクガク(((((゚д゚;)))))ブルブル
ヴァリオルドの秘密が明らかになった訳ですが、例の遺品の並べられた部屋の存在を思い出しましたよ…伏線伏線!
セシュアの行方も気になりますが、あっさり軽い老師のもんせぇ強さとのギャップにメロメロです…じぃちゃん萌!(黙れ)
番外編は久々リレッタでもう和みました…めんこいよリレッタめんこいよ。
格ゲーの乱入思い出しましたよ…格ゲー[Puppet]やってみたいなぁ!笑
勿論カリアスを持ちキャラにさせて下さい…隠しキャラは老師で!(えぇ)
例のハロウィンは挫けず最後まで頑張ろうと思います…大阪の言葉を勉強しないと!
感想感謝、一言だけ…焦らしプレイは愛情です(何の)

>みやびさん
資料続編キタ―(・∀・)―ッ!!
メインクエの突っ込みどころの多さはもう筆舌尽くしがたいものが…矛盾点見つける度に爆笑しております。
第5巻の途中で切れてる部分は最初の重複分で文字数が足りなくなったからだと邪推しておりました。
私のにもそのバグが起きてたのかなぁ。
補完しようにもメイン2終わらせちゃったから別の方に期待…あ、進めると可愛いツンデレテイマちゃんとか出てきますよ!(ぇ)
楽しんで書かせて頂いたのが伝わってよかったです…他人のお子様だからこそ壊し甲斐がありまs(ry

203黒頭巾:2008/06/11(水) 19:19:16 ID:fou9k2gM0
『精霊のご加護』その2

その1 >>172-174

読むのが面倒な方へ、前回のあらすじ
「村八分にされたから家出したら幼女と出会っちゃった」

***********************************************************

に埋もれそうになっている街道を、注意深く進む。
少し後ろを歩く少女が、何か話題を探っているだろう気配がした。
砂漠の行進で会話など、体力を消耗するだけだと気付かないのだろうか。
ふと何やら思いついたらしく両手を打ち合わせた少女が、「自己紹介がまだでしたね」と足早に俺に追いついて振り返る。
日光を受けて眩しく光る銀の髪が、少女の動きに合わせてふわりと揺れた。

「私の名前は……」

その名の響きは確かに少女に似合っていた。
同時に、その名に含まれる意味も。

「“精霊の友”、か」

無意識に呟いた俺の言葉に、少女の顔が輝く。

「古代ロマ言語にお詳しいのですね!
 同業者以外に意味を当てられたのは初めてで……あ、ゴメンなさい」

嬉しそうに話す少女の顔が、俺の顔を見て曇る。
しくったな、そんなにその話題が嫌だと顔に出ていたのか。
如何しても、ロマ関連の話題だけはポーカーフェイスが出来ない。

「あの、えっと……そうです、貴方のお名前をお伺いしても?」

話題に困ったのか、恐る恐る聞いてきた少女に「適当に武道家とでも呼んでくれ」と返答になっていない返答だけを返して歩みを進める。
ロマにだけは俺の名前は言えない理由があったし、俺自身にも言う気もない。
後ろに付いて来る少女とは顔を合わせれなかった……きっと、しゅんとしているだろうから。
出会って間もないが、何となく行動が読める様になってしまっている。

「……はぁ」

俺は一体何をやっているのか、無意識に溜息が漏れる。
自分に対して吐かれたと勘違いしたのか、少女が身を竦ませる気配を感じて……俺は更に気が重くなった。

204黒頭巾:2008/06/11(水) 19:21:00 ID:fou9k2gM0
Σうぉぅ、ミスった! 正しくは↓コチラです…orz

『精霊のご加護』その2

その1 >>172-174

読むのが面倒な方へ、前回のあらすじ
「村八分にされたから家出したら幼女と出会っちゃった」

***********************************************************

過ぎた栄光の展示場は、アリアン東の砂漠にある5つの墓群どれからでも行けると言う。
本当なら呪いの墓を除く4つの墓からしか正式な入口は繋がっていない。
しかし、呪いB2で狩っていたPTが繰り返すワープの末に例の展示場へ飛ばされたという話を聞いた事がある。
となると問題は、何処から行くか、だ。
まずは魔法傭兵の墓は却下だ。
あの墓に巣食う主なアンデット、レイスやリッチは元素攻撃に対する抵抗が高く、サマナーの少女には厳しいだろう。
ならば警備兵墓は?
あの墓にもペインシーカーという巨大なダークリッチがいる筈なので却下。
前出の呪いの墓もB1はネクロマンサーの巣の為、却下。
残るは小さい傭兵の墓と傭兵達の大きな墓なのだが……生憎、この場所はどちらも行った事がない。
ただ、今まで他の冒険者に聞いた話によれば、どちらにもネクロ系の敵はいない筈なのでどちらでも行けそうだ。
ならばどちらにするか。
大は小を兼ねる、なんて言葉も脳内を駆け巡ったが、何も好き好んで大きな墓を回る事もあるまい。
小さい墓の方が楽だろう、そう考えた俺は小墓からのルートを提案し、少女もまた同意したんだ。


アリアンの東門を潜ると、其処は見渡す限り砂漠だった。
ともすれば砂漠の砂に埋もれそうになっている街道を、注意深く進む。
少し後ろを歩く少女が、何か話題を探っているだろう気配がした。
砂漠の行進で会話など、体力を消耗するだけだと気付かないのだろうか。
ふと何やら思いついたらしく両手を打ち合わせた少女が、「自己紹介がまだでしたね」と足早に俺に追いついて振り返る。
日光を受けて眩しく光る銀の髪が、少女の動きに合わせてふわりと揺れた。

「私の名前は……」

その名の響きは確かに少女に似合っていた。
同時に、その名に含まれる意味も。

「“精霊の友”、か」

無意識に呟いた俺の言葉に、少女の顔が輝く。

「古代ロマ言語にお詳しいのですね!
 同業者以外に意味を当てられたのは初めてで……あ、ゴメンなさい」

嬉しそうに話す少女の顔が、俺の顔を見て曇る。
しくったな、そんなにその話題が嫌だと顔に出ていたのか。
如何しても、ロマ関連の話題だけはポーカーフェイスが出来ない。

「あの、えっと……そうです、貴方のお名前をお伺いしても?」

話題に困ったのか、恐る恐る聞いてきた少女に「適当に武道家とでも呼んでくれ」と返答になっていない返答だけを返して歩みを進める。
ロマにだけは俺の名前は言えない理由があったし、俺自身にも言う気もない。
後ろに付いて来る少女とは顔を合わせれなかった……きっと、しゅんとしているだろうから。
出会って間もないが、何となく行動が読める様になってしまっている。

「……はぁ」

俺は一体何をやっているのか、無意識に溜息が漏れる。
自分に対して吐かれたと勘違いしたのか、少女が身を竦ませる気配を感じて……俺は更に気が重くなった。

205黒頭巾:2008/06/11(水) 19:21:54 ID:fou9k2gM0
沈黙に耐え切れなくなった頃、漸く到着した小墓は……確かに小さかった。
むしろ、二部屋しかなかった。
おかしい、この場所にはB2への入口がある筈なのに。
困惑する俺達の耳に、場違いな程に荘厳なミサ曲が届いた。
墓の中なのだから、ある意味では場違いではないのかもしれないが。
これは司祭が神に祈るスキル音。
しかし、俺達以外にこの場所に人の姿は見えない。
風の神獣が伝えたのだろうか、少女が壁を指差して「あっちから聞こえます」と言う。
いつしか音は止んでいたが、きっとその辺に隠し扉か何かがあるんだろう。

「こんな場所の隠し扉ってのはな……」

壁に向かおうとする少女を制し、俺は足元に落ちていた小石を拾って壁に思いっきり投げつけた。

「盗掘者を殺す為のトラップしかけてあんだよ」

途端に起こる巨大な爆発音。
煙が晴れた後には、傷一つない壁があった。

「迂闊に触るとこうなるからな」

先程の小石は爆発で粉々になったのだろう……欠片すら残っていなかった。
余程驚いたのか呆然と立ち竦んでいた少女が、はっと表情を変えて俺の背後に笛を向けた。
神獣達が俺の背後のゴーレムに向けて攻撃を繰り出す。
俺も気配から既に位置を割り出してあったゴーレムに、振り向く勢いを乗せたトドメの一撃を入れてやった。

「まぁ、考えるのは後にしようか」
「そうですね、先に片付けないと」

俺らの視線の先……奥の部屋からは、ゴーレム達がわらわらと沸いていた。
集中し感覚を研ぎ澄ませた俺の足が地を蹴る。
その勢いを殺さないまま、鈍重なゴーレムの顎を素早く蹴り上げる。
鉱物で出来たその身体は硬かったが、俺達武道家の肉体も鋼の様に鍛え上げているんだ。
その証拠に、体制を崩したゴーレムの胴を俺の右ストレートが打ち抜いた。
鈍い音と共に胴に広がる亀裂によって上下真っ二つになったゴーレムが崩れ落ちる……まずは一体。
その間に、少女は水の神獣を使って地下水脈を呼び起こしていた。
広がる水の波紋の中、少女の笛の音に合わせて地下から凄い勢いで筍が生える。
筍はゴーレム達の足に突き刺さり、自由を奪った。
これで相手の動きが制限され、致命打を撃ち易くなる。
いつの間にか俺の横に並んだ風の神獣が圧縮された風の衝撃波を放つ。
あまりの圧力に耐え切れず関節が異様な方向に曲がったゴーレムが、その動きを止めた。
やるじゃねぇか、でも負けないさ。
実際に目にしたからか、いつしか苦手だった筈の精霊の力を肯定的に捕らえだしている事に気付かず……俺は手近なゴーレムに回し蹴りを放った。


緑のゴーレムを総て倒すと、奥の部屋の中心に邪悪な気が溜まっていくのが視えた。
警戒する俺達の目の前、色違いのゴーレムが姿を現す。
纏うオーラからして今までのゴーレムとは桁違いだと一目に解る青いゴーレムが、その巨大な刃を持ち上げた。
避けるか如何かを一瞬で判断し、すぐ近くにいる神獣に当たらない様に白刃取りを選択する。
確かにその太刀筋は重かったが、俺にはその圧力を分散させるなんて簡単な事だった。
俺の動きの意味を悟った少女が即座に神獣の位置取りを少し変え、再び地下水脈を呼び出す。
これで俺の自由に動ける範囲が増え、鈍重な相手の攻撃を受け流せる様になった。
ボディメカニクスを知り尽くした俺の動きは、自分で言うのも何だが、無駄がない。
身体が資本なのだから、最低限の動きで最大限の効果を出さないといけないからだ。
青ゴーレムは結局俺に一撃も与えられないまま、不快な音を立てて崩れ落ちた。
古の主人との契約なのだろう、最期の言葉と引き換えに俺達の身体が光に包まれた。

206黒頭巾:2008/06/11(水) 19:22:53 ID:fou9k2gM0
飛んだ先は一部屋だけの小部屋だった。
瓦礫の他に唯一あるのは巨大な魔方陣のみ。
警戒しながら近寄った魔方陣にも反応はなかったものの、嫌な気配を感じ取る。
気配の出所、魔方陣の向こう側に半透明の幽霊の姿が見えた。

「バンシー……」

少女の声に答える様に、バンシーは赤い目を光らせて俺達に襲い掛かってきた。
身体を屈めて回避して、起き上がる勢いを乗せた正拳突きをカウンターで放つ。
俺の拳はバンシーの身体に易々とめり込んだ。
直接魂に触れられている様なひんやりとした嫌な感触が俺の拳から伝わってきた。
俺の拳が痛かったのか、効いていないのか……どちらともとれないバンシーは、カン高い声ですすり泣く。
途端に脳内に再生されるのは、過ぎ去った筈の村の情景。
忘れたい、忘れられない、そんな出来事。

「バンシーの、精神攻撃……」

噂に聞くその能力なのだと脳の片隅で理解しながらも、俺は足が崩れるのを止められなかった。
視界の端の少女も空ろな瞳で神獣を抱きしめ、しきりに「モンスターの声は聞こえないの」とか「ごめんなさいごめんなさい、お母さんごめんなさい」とか呟いている。
俺も過去を掘り返す幻聴に膝が折れ、情けなく地面に突っ伏して頭を抱える。

「可哀想に……精霊が見えないんですって」
「本当にあの夫婦の子どもなのか?」
「不義の子なんじゃ……」

両手で耳を塞いでも、村人のひそひそ声が木霊する。
嫌だ、嫌だ、やめてくれ。
お前達は、俺だけじゃなく死んだ両親まで貶めるのか。
これが嫌で俺は村を出たんだ。
……村を、出た?
そう、俺は村を出た。
師匠について修行を積んで……俺は冒険者になった。

「武道家ってのはな、心が折れたら終わりなんだ。
 何故なら、俺達は自分自身の肉体と心が武器だからな。
 肉体と精神の鍛錬を積み、心を強く持て……それこそが俺達の強さだ」

師匠の声が脳裏を過ぎる。
そう、武道家は心を強く持たなくちゃいけない。

「俺はもう、可哀想な子どもなんかじゃない……」

ゆらりと立ち上がった俺に、焦ったバンシーの精神波が強くなる。
だが、もうそんなもんは効かねぇ。

「俺は……武道家だ!」

叫びながら渾身の力で放った俺の拳が、慌てて逃げようとしたバンシーにめり込んだ。
冷たい嫌な感触は直ぐに去り、致命打を受けたバンシーの身体は断末魔の悲鳴と共に四散する。
再び光に包まれた俺達の目の前には、目指すB2へのポータルがあった。

207黒頭巾:2008/06/11(水) 19:29:50 ID:fou9k2gM0

続きはまだちょっと修正の余地ありなので、今回もここまで。
次は多分ラストまで一気にあげますー。

このまま無事に武×サマに落ち着くのか、それとも…?
なーんて書いてみるテスト。

では、お次の方の投稿楽しみにしておりますー(*´∀`*)ノシ

208◇68hJrjtY:2008/06/14(土) 20:31:09 ID:WYsMMu6M0
>黒頭巾さん
武道君とサマナたんのナイスコンビな戦闘シーンが描かれてニヨニヨしてます(*´д`*)
ですが後書き然り、このまま素直に終わらない、終わらせない黒頭巾触手がひしひしと…!(なんじゃそら
しっかし考えてみればアカダメ武道とバンブーサマナって機能的に考えても抜群の相性なはずですよねェ。
人口密度の少ない職同士(?)、是非とも武道サマナギルドとか欲しいモンですね。うん。
うーん、この話はどうなっていくのか…続きお待ちしてます。

209復讐の女神:2008/06/17(火) 04:58:13 ID:N35uQV7o0
>白猫氏
設定とか深く考えたことない私が、無い知恵をWikiで補助して考えました。
気づくの遅れてすみません。


ボイル
年齢:決めてないが、20台
容姿:イメージは公式絵
口調:ジェシ以外へは紳士的
一人称:私 二人称:君
武器:高位魔法杖
   ミスリルコート
戦闘方法:補助呪文を中心にして、罠を張るタイプ
使用魔法:攻撃は難易度3以下を全て。ただし、メインはファイアーボール。
     補助魔法は全て使用可能。

テル
年齢:決めてないが、16歳前後
容姿:イメージは公式絵
口調:お調子者で楽しげ
一人称:私 二人称:あんた
武器:レミネッサ(ロマの紋章入り)
   ロマの服
戦闘方法:状況に応じてモンスターをけしかけ、笛吹きで攻撃
 1匹は狼(スティ)で、あとは自由
使用魔法:テイマースキル全て。サマナスキルは笛吹きのみ

完全にこれで決定!!ってわけじゃないですけど、こんな感じです。
ネムネム…ZZZzzzz

210ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/06/17(火) 16:26:08 ID:OhTl4zsk0
Episode-08/B・・・Chase,Chase and Chase!!〜子守はつらいよ〜

トレスヴァントがラティナを追うために森を出たのと同じ頃の話・・・今回の主人公はミリアだ。
「ふみゅっ、うにゅにゅ〜♪お兄ちゃんに久々に会えるのよ〜!!ミリアるんるんなの〜、うにゅ〜♪」
ご機嫌にスキップしながらエルフの村の広場へと足を運ぶミリア、彼女のペットであるサーファイユとファミィも一緒だ。
「ねぇねぇミリア、そのミカエルって人はミリアのお兄さんなんだよね?どんな人?」伴走しながらサーファイユが尋ねる。
「えっとね、お兄ちゃんはミリアが小さかった頃からと〜っても強かったの!!それでねっ、ミリアにも優しくしてくれるの〜」
「今じゃミカエルは大陸でも5本指に入るほどの実力者になっちゃったさ〜。オイラもミカエル兄ちゃんは優しいから大好き〜」
「へへっ、ボクもミカエルさんに会ったら挨拶しようかな〜・・・何てったってミリアのお兄さんだもの、家族の一員としてね!」
「ありがとうサーファイユ、ミリアとっても嬉しいの〜!!」「あ、もう少しで広場に着くさ〜、いっさんば〜え〜!!」
笑顔と共にミリアたちは期待を膨らませ、兄がいるとされる村の広場へと向かう・・・


―――・・・その頃広場ではちょっとし騒ぎが起きていた。野次馬のエルフたちが取り囲むその中央にいるのは・・・
「うぉぉおぉぉぉおぉぉおぉやめろォォォオォォォォォオオォォォオ!!セクハラ反対っ、はんた―――いっ!!!」
もはや錯乱状態で泣きながら叫び声を上げるのは・・・そう、ミリアの兄であるミカエル。何で泣いているのか?それは・・・
「いやァ〜んっ、お姉ちゃんがイイことしてあげるって言ってるでしょ〜!!ミカエルちゃんも心を開いてぇ〜んっ!!あぁんっ/////」
大木にしがみつくミカエルを引っぺがそうと彼の体を掴み(同時に乳房やら何やらを擦り付ける)のは、彼やミリアの姉で長女。
フランデルでもその名を知らない者はいないまでの露出大好き淫乱女・・・フィナーア・ウォン!!!!(ド――――ン!!!!)
相変わらずヌードのままで行動している彼女だが、エルフにとっては彼女のそういう痴態はもはや御馴染み。
しかもこの村のエルフたちはトトカルチョ好きで有名らしく、現在は「ミカエルは何秒木にしがみ付いていられるか!?」という
ネタで賭けを展開している。「45秒に1万ゴールド!!」「い〜やあの兄ちゃん筋力ありそうだしな・・・3分持つのに20万だ!!」
「オイぃぃいぃぃっ!!!エルフの皆ァ、トトカルチョやってないでこのスケベな姉貴をどうにかしてくれぇ――――!!!!」
「あぁ〜っ!!!もう、らめぇっ・・・フィナちゃん何だかエッチな気分になって・・・ふぁ・・・んぁ〜っ////////」
「ひぃっ!!?!あんたオレを引っぺがすつもりが何やってんだよっ!!?つーかオレにくっつくな!!自慰するなぁ〜!!!」
豪快に涙を流すミカエル、そして彼の背にくっついて自慰し始めるフィナーア・・・だが、そこへ乱入者が突っ込んできた!!

「えっちぃのは『めっ』なのよ〜っ!!!やぁ―――――――っ!!!!」

映画に出てきそうな見事なまでに綺麗なドラゴンキックを放って、ミリアが飛んできた!!
しかも蹴りはミカエルにくっついてるフィナーアにクリーンヒット、「あふんっ/////」という喘ぎ声を残して彼女が吹き飛んでいく。
「ん・・・その声、ミリアか!?ミリアなんだな!!?!」「うんっ!!久しぶりなのよ、お兄ちゃん!!」
お互いの姿を確認すると、兄と妹の二人は走り寄ってお互いハグを交わす。嬉しさのあまり、ミリアは頬擦りをしていた。
「ん〜、大きくなったなミリア!!兄ちゃんもお前に会えてすっげぇ嬉しいぞ、ファミィはどうしてるよ?」
「うにゅ、ファミィも元気にしてるよっ!!それとねそれとね、ミリアに新しいお友達ができたのよ〜、サーファイユ?」
振り返ってミリアが手招きし、エルフ戦士のサーファイユが二人の下へと歩み寄ってきた。
「こんにちはミカエルさん、ボクはサーファイユ。この度ミリアと一緒に冒険することになったエルフの者です。」
「おっ、礼儀正しいエルフじゃないか。よろしくなサーファイユ、妹のこともよろしく頼むぜ!!」「はいっ!!」
会話に花を咲かす兄妹たちだが、そこへエルフの長老エドワードとエストレーアがやってきた・・・

211ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/06/17(火) 17:12:21 ID:OhTl4zsk0
「やぁ諸君、会話に花を咲かせているところ失礼するが・・・ミリア、早速お遣いの件について話があるんだ。エストレーア?」
「あっ・・・はい長老。んっと・・・え〜っと、コレですね?」「・・・うむ、たしかにコレに間違いない。下がっていいぞ。」
エストレーアは長老に何やら黒い立方体状の物質を手渡すと、すぐさまその場を後にした。周りにいるエルフの市民も退けると
長老は再びミカエルやミリアたちに振り向くと、真剣な面持ちでその口を開いた・・・

「まず、この箱について説明させてもらおう・・・これはスマグの魔術師たちの研究成果を私達エルフが独自でアレンジしたものの結晶だ。
 ときにミカエル君、世界各地を見聞した君にならこの黒い箱がわかるかもしれないが・・・何だかわかるかね?」
「ん〜・・・オレの目に狂いが無けりゃ、そいつは魔法称号をランダムに選択して、武器や装飾品をを融合させる『異次元の黒箱』だな?」
「ご名答・・・実はこの度、スマグ魔法道具販売店のシュトラセラト支店から依頼があってね、そのアイテムを改良するように頼まれたんだ。
 使用回数の制限をなくし、魔力を充填させることで何度でも使用できるようにね。ミリア、今回の君のお遣いは完成したこの試作品を
 シュトラセラトの魔法道具販売店に届けることだよ。お願いできるかな?」柔和な笑顔でエドワードが尋ねる。
「うぃ!ミリアお遣い頑張っちゃうもんっ!!お兄ちゃんも一緒に行こう?ね?」「ははっ、甘えん坊なところは相変わらずだな〜」
「そういえば・・・ミカエル君、たしか君は別件でこの森に来ていたはずでは?依頼を失敗すれば君の身柄は・・・」
「あぁ、そいつァ心配無用ってやつですよ。失敗したらしたで、また別のクエストで稼げばいいんですから。ハハハっ」
「それは何よりだ、ではミカエル君。ミリアたちの警護も兼ねて、このプロジェクトへの参加を認めよう。報酬はもちろん払うよ。」
「お兄ちゃ〜んっ!!早くお遣いに行こう〜!!!」「早くするさ〜ミカエル〜!!」「出発しますよ、ミカエルさ〜んっ!!」
ミリア、ファミィにサーファイユは既にエドワードから異次元の黒箱を受け取って移動を開始していた・・・
長老に一礼したミカエルはミリアたちの下へと走ってゆく。だがその後ろでは・・・

「うふふふふ・・・ミリアちゃんの突っ込みは予想外だったけどォ、あたしのスキンシップから逃れようだなんて100年早いのよぉ〜ん!!
 全力で・・・あふぁっ、はァぁぁっ!!?!・・・じ、邪魔してっ・・・あげるんだからァっ、あぁんっ///////」

乳房を激しく揉みながら自慰するフィナーアが、怒りの炎をメラメラと燃やしていた・・・彼女は怒ると激しく自慰行為をするらしい。

212ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/06/17(火) 17:13:09 ID:OhTl4zsk0
――――・・・さて、シュトラセラトへと続く道路へ抜けるために森の中を歩くミリアたち。木漏れ日が差し込み、植物の爽やかな香りが
森の中を包んでいる。もちろん楽しげな会話を繰り広げながら一行は談笑と共に歩を進める・・・・・
「・・・んでだ、長老さんが言うには『道中で色んなアイテムを混ぜながらテストさせてもいい』んだってよ、この黒箱!!」
「ふみゅっ、とっても面白そうなの〜!!ねぇねぇお兄ちゃん、ミリアも異次元でアイテムまぜまぜしてみたいのよ〜!」
「あ、それおいらもやってみたいさ〜」「ずるいよファミィっ!!ボクだってやってみたいんだからさ?」
黒く艶光りする、不思議な雰囲気を漂わす箱を3人と1匹はまじまじと見つめていた・・・すると一行の耳に何やら木を叩く音が。
茂みを掻き分けて進んでみると、エルフ戦士十二傑の一人はジャファイマ・・・彼女が大木に正拳付きをしているのが目に入った。
「おっ、久しぶり〜!!元気してっかジャファイマおばさん!?」「おろ!?ミカエル君じゃねぇな、何しつんづよ〜?」
ジャファイマの姿を見るや否や、ミカエルが嬉しそうに彼女の元へと歩いていった。彼女もまた嬉しそうに微笑んでいた。
「ふゃ、ジャファイマさんとお兄ちゃんって知り合いなの?」キョトンとしながらミリアが二人に問いかける・・・
「んだよ〜、ミカエル君ね、数年前にわんどの村さ来てらったのよ。そん時ミカエル君にファイアースキンば教えたのんもわだのよ。」
「あぁ〜、そういえばそうだったな〜。おばさんのおかげでオレもここまで強くなれたからな〜・・・いやホントありがとうな!!」
「あ、ジャファイマさん。そういえばさっきから木を叩いて何してるんですか?」「おぉ、木の実ば落どしてらんだして。んめぇど〜」
ジャファイマから採取した木の実をお裾分けしてもらい、談笑する一行。だが、そんな彼らをマークする影が茂みの中にあった・・・

「クヒヒヒヒ、あれがザッカルさんの言ってた今回の標的か〜・・・"炎の豹(フレイム・パンサー)"ミカエルがいるのは予想外っちゃ予想外だが、
 梃子摺りはしそうもないなァ・・・クヒヒヒヒ!!!」笑い声をあげるのは、小柄で太った火鬼系統のモンスター。
「でも殺す標的とはいえ、あんな幼女だとかわいそ・・・よ、幼女・・・幼女可愛いよミリアたんハァハァハァハァハァハァ/////////」
一人勝手に興奮しているのは、先ほどの火鬼の相方と思われる一体のレイス。鼻息の荒い彼に火鬼はゲンコツをお見舞いする。
「てめっ、ダリオ!!いい加減そのロリコン癖を治せって何回言わすんだゴルァ!?いつ見ても気持ち悪いんだよそのハァハァ言うのよぉ!!」
「え〜、別にいいじゃないっすか先輩〜!!でもね、やっぱりああいう可愛い娘ってもうっ・・・あぁミリアたんハァハァ、テイムして下さい〜」
「ウゼ〜!!!ウゼェんだよこのド変態のロリコンレイスっ!!目ぇ潰すぞコラ!?」「ヒィっ、ごご・・・ごめんなさい〜!!?!」
デコボココンビの天然漫才が茂みの中で静かに展開されていた・・・

to be continued...

213ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/06/17(火) 17:16:34 ID:OhTl4zsk0
あとがきですお(`・ω・)ゝ

はい、以前のチャットイベントで予告した『第2次ミリアお子ちゃま化エピソード』の始まりです。
しばらくはシリアス続きだったので久々のドタバタコメディ路線で頑張らせて頂きます。こうご期待?

214防災頭巾★:削除
削除

215黒頭巾:2008/06/23(月) 22:51:42 ID:fou9k2gM0
『精霊のご加護』らすと

その1 >>172-174
その2 >>204-206

読むのが面倒な方へ、前回のあらすじ
「幼女と行った墓地でオバケに会って倒しちゃった」

***********************************************************

B2の構造はB1とは違い、ちゃんと繋がっている様だった。
漸く動揺が収まった少女が風の流れを読み、奥地へと迷わず誘導する。
違うのは構造だけでなく、出てくるMOBもだった。
例えば、今俺達の目の前に立ちはだかっているのは、俺達より巨大な殺人スコーピオン。
遠く、毒々しい紫のアライブスコープの姿も見える。
鈍重なアライブスコープ相手なら駆け抜けても問題はないが、蠍は別だ。
背後を向ければ、その巨大で強力な毒針の一撃を喰らって天国が見える事だろう。
まぁ、生前の行い如何に依っては、向かう先は天国でなく地獄かも知れないが。
目の前の敵の外骨格が擦れるキチキチ音が地下墓地の冷たい空気に響く。
巨大な鋏と尾の毒針に注意しながら、その脳天に踵を落とす。
硬い殻に阻まれ流石に一撃で倒す事は出来なかったが、入れ替わりに放たれた神獣の攻撃の風圧も相俟って、その硬い殻に漸くヒビが入る。
後はそのヒビ目掛けて再び体重を乗せた踵落としを決め、ぐちゃりという嫌な音と共に脳髄を破壊した。
脳髄を破壊されても尚動き続ける、生命力が強い死体から警戒を怠らない様にしつつ、進む道を眺める。
既に脳細胞が破壊されているらしいアライブスコープを簡単なフェイントで壁に引っ掛け、出来るだけ戦闘を避けながら進んだ俺達は、遂に目的地へのポータルを踏んだ。


ポータルは人間とその従属にしか反応しない為、飛んだ先で少し小休止を入れる事にした。
俺は兎も角、まだ若い少女には強行軍は厳しかろうとの判断からだ。
案の定、ふぅと息をついた少女は、壁に背を凭れ掛けてぺたんと座った。
水を飲んで「生き返りましたー」などと呟いている。
俺は辺りを警戒しようとしたが、神獣達が周囲に気を配っているのに気付いて少し休憩を取る事にした。
立ったまま壁に寄りかかり、水筒のキャップを外して水を口に含む。
墓地の空気に冷やされて冷たくなった水が喉を通る感覚と共に、思考がクリアになるのを感じた。
確かに少女の言う通り、生き返った心地だ。

「先程は、ありがとう御座いました」

突然かけられた声に少女を横目で見る。

「私一人だったら、バンシーでやられてました。
 あー、それとも……その前に罠でやられてそうかも」

何処か儚げなその笑顔に、精霊使いという稀少な能力は稀少故に大変なのかもしれないと思った。
両親も親戚もテイマーの中に、先祖返りで精霊使いの能力を持って生まれたのだろうか。
だとしたら、俺と彼女が逆に生まれていればよかったのかもしれない。
あの村の中でなら、彼女の力は特異でもなく、強い能力者だと尊敬されるくらいだ。
尤も、俺に獣を躾けて使役する能力なんていうものもないんだが。

「いや、気にしないでくれ。
 俺もちょっと落ちかけたしな。
 それに……誰にだって、思い出したくない過去なんてのはあるもんだ」

後半は視線を逸らして小さな声で呟いたが、聞こえていたらしい。
小さな同意が返って来た。
暗い空気を打ち消そうと、少女に出立を告げる。
慌てて立ち上がる気配を背後に感じながら、警戒していた召喚獣の肩をぽんと叩いて労って歩き出す。

「盗掘者と守護鎧、でしたっけ」
「クエスト屋の親父の情報通りなら、警戒すべきはそれだけだな」

盗掘者は基本的には、ある程度の修行を積んだ冒険者の敵ではない。
だが、この場所にいる盗掘者はただの盗掘者じゃない。
こんな強いMOBの蔓延る墓地に忍び込むのだから、奴らはそれなりの腕を持っている。
……ただの命知らずでとても運と逃げ足のイイ馬鹿以外は。
例えば、今近くにいるのはそのどちらなのだろうか。
隠れているつもりなのだろうが、気配が微かに漏れている。
目線を送って気付いているぞとアピールすると、動揺する気配がした。
……うん、コイツは馬鹿だ。
俺が今そう決めたんだから間違いない。
こんな甘ちゃん相手なら退ける事は容易だろうが、態々無駄に闘う事もない。
釘も刺している事だ、本物の馬鹿がヤケになったとかじゃない限りは襲って来る事はないだろうと放置する。

216黒頭巾:2008/06/23(月) 22:53:14 ID:fou9k2gM0
それよりも、向こうからやってくる巨大な守護鎧の方が強敵だ。
俺達の視線の先を見遣ったのか、更に動揺が激しくなる馬鹿1号。
最早、気配はガン漏れだ。
戦闘中に邪魔されたらたまったもんじゃない。
逆方向を顎で示すと、慌てて示された方向へと気配が遠ざかっていった。
うん、もう帰ってくんな。
暫くの後、遠くで「ぎゃー、大量にいるー! MPK乙!!!!1」って悲鳴が聞こえた気がするけど……気の所為だな、うん。
てか、1って何だ、1って。

「大きい……」

近付いてきた守護鎧の姿に、少女が思わず呟いた。
殺人スコーピオンやゴーレムよりでかいんだから、その気持ちはわからないでもない。

「まぁ、倒すしかないからな。
 さっきのあのでっかい水場、頼むわ」

俺の言葉に答えた少女が笛を使って神獣に指示を出し、再び敷かれる水の布陣。
守護鎧の足を貫こうとした筍は、しかし硬い鎧と重量に阻まれ、折れた。
おいおい、反則だろ。
初めての事態なのか、一瞬固まった少女を庇う様に俺は守護鎧の前に躍り出た。
この手のデカブツは攻速が遅いから回避しやすいとの油断もあった。
案の定、大きく振りかぶったヤツの攻撃を回避しようとした俺の足元には、折れた筍がまだ散乱していたのに気付くのが遅れた。
このままでは回避出来ずに転倒すると判断し、防御体制に切り替える。
が、その判断は間違っていた様だ。
ゴーレムとは比べ物にならないくらい重い一撃を受け止めきれず、俺の身体は大きく跳ね飛ばされた。
まずい、この方向だと後ろにいる少女に激突する。
このままぶつかる訳にはいかない。
瞬時に判断した俺は、宙を舞ったまま無理に身体を捻って地を蹴り、軌道を逸らす。
お蔭で少女に当たる事はなかったが、バランスを崩した俺は受身も取れないまま壁に叩きつけられた。
骨が軋み、折れる鈍い音が俺の耳に響く。

「……くっ」

思わず小さな苦悶の声が漏れた。
頭も打ったのだろう、世界がぐるぐると回る。
トドメの一撃を食らわせようと歩み寄る巨大な守護鎧と俺の間に、泣きそうな顔の少女が両手を広げて立ちはだかったのが見えた。
馬鹿、逃げろ!
ぐらぐら揺れる視界と強烈な吐き気の中、叫びたくとも声が出ない。
風の神獣と水の神獣が少女を護る様に、守護鎧に向かっていく。
しかし、守護鎧の一撃一撃は重く、見る見るうちに治療が間に合わない程のペースで神獣達の体力が削られていった。

「ウィンディ! スウェルファー!」

少女の悲鳴が冷たい地下の空気に響く。
やばい、彼女を護らないと。
神獣が倒れたら、恐らく次は彼女が狙われる。
……でも、動かない身体で如何やって?
諦めるな、動かない筈はない、動く筈だ。
むしろ、動かすんだ。
俺は武道家だ、心だけは折らない。
神獣がもうすぐ倒されるというこんな時でも、心配そうに俺を振り返って「逃げて」と呟く彼女と目が合う。
何とか動く左手を振って否定の意を示すと、「如何して!」と叫ぶ声。

217黒頭巾:2008/06/23(月) 22:54:18 ID:fou9k2gM0
「ばっか……PTだろうが……」

精一杯の返答。
思ったより被ダメがでかいのか、その声は自分でも驚く程に小さく掠れていた。
それでも彼女に伝わったのは、風の神獣が伝えているんだろう。
本音は女だけ置いて逃げれるか、ってとこだ……こんな少女ですら俺を護ろうとしてんだぞ。

「嫌われてると思ったのに……」

彼女の大きな瞳から涙が零れ落ちた。
あーもー、泣くな。
うん、正直俺が悪かったから。
てか、こんな事してる場合じゃなくね?
ほら、神獣一体倒されたし。
頭痛と眩暈が漸く収まってきたから立ち上がろうともがいてみるも、自分の身体じゃないみたいに重い。
くっそ、ヘイストでもあれば!
……ヘイスト?
引っ掛かりを感じた俺の脳内に、先日の彼女の声が木霊する。

――凄いです! こんなに精霊に好かれてる人、見た事ないですよ!

そうだ、“精霊の友”を称する彼女が“精霊に好かれてる”と言ったんだ。
風の精霊が回りにいてもおかしくはない。

「……なぁ、いるんだろう?」

よろよろと立ち上がりながら、俺は呟く。
まだまだ声は掠れて小さかったが、彼女の言う通り俺が“精霊に好かれてる”なら、きっと問題ない筈だ。

「……頼む、力を貸してくれ」

こんな俺を変えてくれそうな、こんな俺でも護ってくれようとする、そんな大切な人を失いそうなんだ。
如何か、俺にもう一度アンタらを信じる勇気をくれた彼女を護る為の力を。

「……なぁ、お願いだ!」

――大丈夫、貴方の声は聴こえてる。

血を吐く様に叫んだ俺の耳元で、“声”が聴こえた。
聖母の様な慈悲と威厳を感じさせる“声”が。

――愛し子よ、時は満ちた。

途端に俺の鼻腔を擽るのは、懐かしい風の匂い……あの村の、あの森の、香り。
……嗚呼、本当にずっと傍にいたんだな。

――我らの寵愛を受けし貴方に、風の“祝福”を。

“声”と共に、後ろから何者かに優しく抱きしめられるのを感じた。
同時に、鉛の様に重かった身体が普段のそれより軽くなる。
それは、望んでいたウィザードのヘイストを強力にした感覚で。

「……よし、いける」

俺は遠い守護鎧に向けて、強烈な突き出しを放った。
高速で打ち込んだ拳圧が烈風となって、少女にその手を伸ばそうとしていた守護鎧を襲う。
いつもよりよく聞こえる俺の耳に、硬い鎧に亀裂が入る音が響いた。
こちらに向きなおした敵に安心した俺は、風を乗せた攻撃を無数に放った。
守護鎧は反撃さえ出来ないまま、硬い鎧を亀裂だらけにする。
一足飛びで懐に飛び込み、0距離から放った俺の渾身の三連回し蹴りが守護鎧の動きを永遠に止めた。
今まで苦戦したのがアホらしい程、俺の圧倒的勝利だった。
今の俺の姿を見たら、きっと師匠は嬉しそうに目を細めるんだろうな。
ふっと笑った俺の前、嬉しそうに俺を見詰める彼女の頭の上にちょこんと座った風の精霊も、彼女と同じ嬉しそうな優しい笑みを浮かべた。
もう動かなくなった守護鎧の足元に目をやれば、求めるシグの剣が落ちていて。
かの有名な冒険者はその死の間際、何を思ったのだろうか。
……今となっては、誰も知る事は出来ないけれど。

218黒頭巾:2008/06/23(月) 22:55:02 ID:fou9k2gM0
数日後のアリアン。
鏡の様に光る巨大なオアシスの畔に俺はいた。
あの戦闘で負った傷は知り合いの司祭の回復で総て癒え、体調は万全だ。
今の俺の目には、ただの綺麗なオアシスだけではなく水辺で戯れる精霊達の姿も見える。
これ程の数の精霊達の憩いの場になっているから、このオアシスは枯れる事はないのだろう。
そのオアシスの前、初めて見かけた場所に今日も彼女はいた。
俺の肩に座っていた精霊が嬉しそうに彼女の周りを飛び回る。
俺は右手を上げて彼女に挨拶すると、彼女も笑顔で「こんにちは」と手を振った。
話し込むと切り出せなさそうで、さっさと手短に用件だけ伝える。

「……村に帰る、ですか?」
「あぁ、遠すぎて長く帰ってないから、一度両親の墓参りをしようと思う」

そう言った俺に、彼女は「是非そうした方がいいです」と微笑んだ。

「ほらほら、武道家さん! 善は急げです…早く準備しないと」

正直、彼女と別れたくなかったからまだ準備してないなんて、言える筈がない。
彼女の言葉に何とも思われていないのかと哀しくなった俺の手を引っ張りながら、彼女は更に言葉を紡いだ。

「何しろ、二人分の長旅の準備なんですからね!」
「……へ?」

我ながら間抜けな声が出たと思う。
ぽかんとする俺に、またまたぽかんとした顔の彼女が首を傾げた。

「え、一緒に連れてってくれないんですか?」
「え、だって……迷惑じゃね?」
「何で迷惑なんです?
 PTでしょ、一緒に行きましょうよ!」

え、いつの間に固定PTになってんの?
いや、嬉しいけど!
落ち着け、俺。
負けるな、俺。
これ、もしかしてまだチャンスあんじゃね?

「ね、武道家さん!」

目の前には、満面の笑顔を浮かべる彼女の姿。
出会った頃より距離が縮まった彼女だが、未だに俺を武道家さんと呼ぶ。
そりゃそうだ、俺はまだ彼女に名前を教えてないんだから。

「おい、ロマっ子」
「ロマっ子って呼ばないで下さい! 私にはちゃんと名前が……」

不満そうに頬を膨らませる彼女を遮って俺は続ける。

「……わかってる、メイ」

砂漠で道すがら聞かされた彼女の名を、古代ロマ言語の法則に則った愛称に略して呼ぶ。
頬を染めた彼女が「やっぱりお詳しいのですね」と驚きの声を上げた。
そうだな、俺の村の昔話も彼女に話してやらないとな。

「いいから、よく聴け……一度しか言わないぞ」

続く言葉を悟った精霊が、彼女の頭の上に座りながらくすくすと可笑しそうに笑う。
何だよ、そんなに笑うなよ。
一緒に長旅をするなら、名前くらい知らないと不便だろ?
言い訳を脳内で組み立て、慌ててそんな言い訳はもういらないと打ち消した。
むしろ、俺は彼女に知って欲しいんだ。
そんな自分の変化には、俺自身が一番驚いてる。
今までは、絶対に俺の名前を教えるなんて事は考えられなかった……特にロマには。
何故なら……。

「俺の名前はな……」

……古のロマの言葉で“精霊に愛されし子”という意味を持つ俺の名を聞いた彼女は、「貴方にお似合いの素敵なお名前です」とふんわり嬉しそうに笑った。

219黒頭巾:2008/06/23(月) 22:57:08 ID:fou9k2gM0

……話を終え、俺は横の息子の顔を見た。
いつからだろう、既にぐっすり夢の中。
何だよ、俺一人で惚気てたのかよ。
そう思うと、何だか可笑しかった。
まだまだコイツには早かったかな……苦笑した時、扉の向こうでは小さな物音。
扉を開けると、そこには当時の面影を残す愛しい彼女の姿。

「寝かしつけてくれたのね、ありがとう」

息子の顔を覗きこみ、今では俺の妻になったあの少女は……あの時と同じ、幸せそうなふんわりとした笑みを浮かべる。

「起きてていいのか?身体に障るぞ」

身重の彼女の肩にストールをかけて、咎める様に声をかける。
病気じゃないのに相変わらず心配性だわと彼女がくすくす笑う。

「そりゃぁ、心配ってもんだ……愛しい人の身体だからな」

仕返しに本音を漏らしてやれば、途端に頬を染める彼女が愛おしくて、その桜色の唇にそっと優しい口付けを落とした。
真っ赤な顔の彼女は、既に息子までいるって言うのに、いつまで経っても初々しいったらありゃしない。
まぁ、息子も寝たし、俺達も寝るとするか。
彼女の手を取り、寝室に向けて歩き出す。
扉を閉める寸前、振り向き様に見た息子の傍らには……あの日と同じ、優しい笑みを浮かべた精霊の姿。
寝台に眠る息子のミドルネームは、“精霊に祝福されし子”を意味する古い古い言葉。
……任せたよ、もう一人の母さん。
俺の小さな呟きを聞き取って嬉しそうに微笑んだ精霊に手を振り、俺は扉を閉めた。
もしかして、俺の力が封印されてたのは、彼女と出会う為だったんじゃないかなって今では思うんだ。
だとしたら、運命の神様はとんだ曲者だ。
まぁ、何にせよ……紆余曲折を経て、俺は可愛い嫁さんと可愛い息子ともう一人を得た訳だ。
そのもう一人……横を歩く彼女のお腹に宿ってる新しい家族の名前も、そろそろ考えないといけないしな。
難しい、もの凄い難題だ……何しろ、それはその子の人生をも左右する。
今は亡き両親もきっと、俺の名前をこうして考えてくれたんだろう。
難しくも贅沢なこんな悩みを持てる俺はきっと、世界一の幸せ者なんだろうな。



【精霊のご加護】...fin


***********************************************************


サブタイトルは、農家が武道家になった訳(ちょ)
こんなSSでも、武道×サマナと言い張ってみるテスト。
過去ログ見てたら、急にもくもくと武道熱が!
何かネタ降ってこねーかなと祈ったら降りてきたはイイモノの、長くなる長くなる。
ある程度はしょったので展開に無理が出てると思われますorz
クエのモデルは現在未実装(多分)の連作称号クエ『砂漠の支配者』の最終章から。
アリアンって難易度高いクエ少ないんですもの(´・ω・)
あらすじは国道さんを、某馬鹿は白猫さんをリスペクトです(お前)


コメ返し。

>68hさん
そうそう、バンブサマナは物理職との相性バッチリですからねー!
武サマG素敵ですねぇ…何かGチャでまったりと今晩の晩御飯のメニューとかお花の育て方が語られてそう(どんなイメージ)
Σてか、てか、黒頭巾触手って! 何ですかソレ!!爆笑
今だから言います、68hさんが武道家ネタだとテンション上がってたので68hホイホイとしてこの作品書き上げました(何と)


ちょろっと感想。

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
えっちぃのは『めっ』なのよ〜っ!!!>(p>д<)==p)`ν゚)・;'.、(イメージ/えぇ)
ちびっこ楽しみにしております…笑

220◇68hJrjtY:2008/06/24(火) 17:28:35 ID:EUTNfdx60
なかなか出現できず申し訳ないorz
小説はアレアレですが、ヲチだけはしてます(*´∀`)b

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
第二次ミリアお子様計画発動!…の前兆といいますか。なにやら怪しげな二人組が。
今回はそれ以外にもミカエルとエルフの里との繋がりも明らかになりましたね。やっぱりエルフは良い人たちだ!
異次元の黒箱とはまたなんとも怪しげなアイテムの出現。でもフィナ姉、その状態じゃ全然迫力が(ノ∀`)
フィナ姉という女王様のいる兄弟、その弟と妹に掛かるトラウマと過去なんかも気になりながら。
次回楽しみにしています。

>黒頭巾さん
そうか、冒頭の昔話シーンはこんな風に繋がるんですね。「名前」って本当に大事だと思います。
今回の小説、「精霊のご加護」は今までに無いほど戦闘シーンに力が入っていたように感じました!
68ホイホイ!?…そうですね、読み始めたハナから"武道キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!」と悦んでいましたが
もちろんそれだけじゃなくてなんだか最初はくっつきそうも無かった(?)この二人がどうなるんだろうとか
武×サマとか関係なく純粋にラブラブ小説として堪能させていただきました(*´д`*)
そしてお約束、「乙!!!1」には吹きました(笑)
次回作も楽しみにしております!

221国道310号線:2008/06/25(水) 02:11:50 ID:Wq6z33060
ご無沙汰しております。
現在、第三話が出来上がって清書の段階なのですが、
黒頭巾さんの『精霊のご加護』と激しくネタが被ってしまいました。
サマナー主人公で自然界の声が聞こえる聞こえないネタのシリアスもの(半分ギャグ)です。
本来なら投稿は控えるべきな上、大した内容じゃないのですが、もし許しを願えるなら投稿させていただけませんか?

222黒頭巾:2008/06/25(水) 17:39:27 ID:fou9k2gM0
>68hさん
そうです、最初と最後で繋げてみました(*´∀`)ウフフ
名前は親からの最初の贈り物とはよく言いますものね…私は名前負けしているので本名苦手ですが…orz
ギャグ書きなので戦闘シーンって普段はあまり触れない部分、触れてもネタに走ってしまったり…折角なので、勉強がてら書かせて頂きました。
力が入っていると感じて頂けたなら幸いです。
最初からラブいのもイイですが、くっ付きそうでくっ付かない関係もまた大好物です。
1ネタはGチャでよく目にするのでつい…最初から最後までシリアスに出来ない天邪鬼な私です(ノ∀`*)ペチン
次回作、ギャグのとシリアス再挑戦のを最終チェック中なので、ご希望なければアミダでどっち投稿するか決めておきます(待って)


>国道310号線さん
わー、お久しぶりですー!
ファンタジー系では被りやすいネタだとは思いますし、お気になさらず!
私も過去ログと被ってないかヒヤヒヤモノですし…チェックで見逃してないとイイなぁ(´・ω・)
お気遣い感謝ですが、投稿を控えるなんて言わないで是非是非ぺたりと投稿して頂ければ嬉しいですよー!
国道さんファンな私、モニタの前で正座して楽しみにしております(*´∀`)ウフフ

223黒頭巾:2008/06/25(水) 23:36:08 ID:fou9k2gM0
ふぁみりあいーえっくすシリーズ番外編?
 未知との遭遇 〜ESCADA a.k.a. DIWALIさんチのコの場合〜

******************************************************

――ある晴れた日の午後。
古都の喧騒の中を歩く一人の青年。
右手に持つ杖は捻じ曲がり、彼が魔術師である事を物語る。
左手には先程手に入れたばかりの魔術書が。
GHへ戻るまで耐え切れず行儀悪くも読みながら歩く彼を、人々は避けて歩く。
魔術師という人種は、自らの興味を示す分野には並々ならぬ情熱を燃やし恐ろしいまでの集中力を見せる事を……一般市民ですら知っているからだ。
GHまで後100m――そろそろ本を閉じようとした彼は興味深い一文を見付け、つい食い入るように見てしまった。
自然と足も止まる。
そして、往来の真ん中で突然止まると如何なるかと言うと。

「うにゅ!」

くぐもった悲鳴と同時に、背中へ走る衝撃。
――そう、ぶつかるのである。
軽くよろけた衝撃でも落とさなかった本を慌てて閉じ、彼は振り返る。
その動きに合わせて、陽光を受けた眼鏡がキラリと光る。

「あぁ、申し訳ない……怪我はないかな」

目の前で鼻を押さえる少女の目線の高さまで屈み、しっかりと目を見て謝罪する。
そんな彼に、少女は抑えていた手を放し、笑顔で両手をぶんぶん振る。
大丈夫と言うアピールなのだろうが――若干、鼻の頭が赤い。

「ふみゅっ,ミリア大丈夫なの!これからは気をつけるの〜,ごめんね,おにいたんっ」

一息に言った後、少女はぺこりと頭を下げて駆けて行ってしまった。
その後を、「ミリアはドジなんだから、もっと気をつけないと危ないさ〜」とか言いながら、緑の悪魔が追いかける。

「嗚呼……止める間も、きちんと謝罪する間も、なかったな……」

既に小さくなった少女とファミリアの後姿に、Gメンにして幼馴染の少女を思い出し、苦笑する。

「ファミたんとあのコみたいですね……って、今……あのファミリア、喋って……ました?」

ファミリアが喋ったという事実に固まった彼は、答える者のない問い掛けを口にする。
もし訓練次第で喋れるのだとしたら、あのコの連れているファミたんとも会話出来るのだろうか。

「これは……試す価値はありそうですね……」

驚きに少し下がった眼鏡をくぃと上げて、微笑んだ彼はGHテレポーターへ向けて再び歩き出す。
彼の脳裏は、あの小さなファミリアと会話出来たら嬉しいという事で一杯で。

「ファミリアが喋るなんて有り得ないー!」
「真昼間から寝てるんじゃないのー?」
「これだからマスタは……立ったまま夢を見るなんて危ないじゃない」

――そんな彼がGメンに一斉に非難されるまで、後5分。

******************************************************

ちょっぱやで書き上げてみました。
先程、チャットで少々お話して頂いた時のESCADA a.k.a. DIWALIさんの発言を元ネタにアレンジさせて頂きました。
こんな感じで、また他の作家さんのキャラお借りしても宜しいかしら…(゚д゚ノ|

224防災頭巾★:削除
削除

225防災頭巾★:削除
削除

226ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/06/26(木) 22:49:45 ID:fXH8Jej60
>黒頭巾さん
ちょっ,いけめんさんが何だかカワイイぞwwww
彼ってひょっとするとロリコンどころか『小さくて可愛いもの好き』なのでは,と思いました。
それに勢いだけで書いた駄文をここまでアレンジして頂けて嬉しいです,ありがとうございます〜

それと昨日はいきなり退席してしまい申し訳ありませんでした,また機会があれば色々おしゃべりしたいですね^^

227◇68hJrjtY:2008/06/28(土) 16:37:40 ID:FYKDTrxw0
>黒頭巾さん
ミリア+ファミィがゲスト登場゚+.(○´∀`ノノイエーイ
こうして見るといけめんさんとミリア、案外相性抜群だったりして(笑) えっちぃのには二人とも耐性無さそうですし!(何
蚊帳の外ながらあの書き手さんとこの書き手さんのこのキャラとあのキャラの相性はどうなんだろうとか色々妄想しています(*・ω・)
そういう意味でも白猫さんには是非とも武道会小説を頑張って!と言いたいところですが
だったらお前も小説書け!と返されそうで怖いので言いません…orz
しかし水面下ではチャットの方は盛んなのでしょうか…常駐参加できず申し訳ない(*- -)(*_ _)

228国道310号線:2008/06/29(日) 05:59:43 ID:Wq6z33060
第三話は黒頭巾さんの『精霊のご加護』と被った内容となってしまいました、申しわけございません。
投下のお許しはいただいたものの、実質私の我がままで投稿しています。
それはNGだろう、という方はスルーお願いします。



◆ストーリー紹介
この物語はオアシス都市アリアンを拠点とするギルド「セレスト・クルセイダーズ」を中心としたドタバタ劇です。
飽きやすい作者の都合により毎話ごとにストーリーと主人公が変わっていますが、大体、剣士ブルーノが出張っています。
一話だけでも読める作品を目指しているものの、細かいネタなどは前の話を読んでいただいた方が分かりやすいという事態に陥ってまいりました。

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・小説スレ六冊目

 第一話 〜 ミニペットがやってきた! 〜
 前編 >>487-490 後編 >>563-569

 第二話 〜 狼男と魔女 〜
 1 >>784-787 2 >>817-820 3 >>871-874 4 >>910-913

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こんにちは、私の名前はミモザです。
ギルド「セレスト・クルセイダーズ」の飼育係兼サマナーをしています。
あの時、私を助けてくれたのは誰だったんだろう。


第三話 〜 赤い呼び声(1)〜


―ファウンティンス・ハイランド
古都ブルンネルシュティングの遥か北にあるこの土地は、未だ人の手が及ばぬ未開の土地である。
そこはハイランダーという亜人の魔物が支配しており、冒険者であっても安々とは近づけない。
ハイランダー達が住むハイランド洞窟、その更に奥深くに隠された空間があった。
切り立った断崖の上に存在する石造りの遺跡内を魔力の炎が揺らめきながら照らしている。
自然が生み出した岩窟に突如現れる巨大な人工物は、とうの昔に打ち捨てられ朽ちかけた煉瓦が過ぎた年月を物語っている。
ただ、半永久的に消えることの無い灯火と錆付いた古の機械人形が帰らぬ主人を待ちわびていた。

薄暗い遺跡の通路に風のうなる音と獣の悲鳴のような鳴き声が反響する。
ミモザは狼が竜巻の風圧になぎ倒されたのを見るや否や右に飛びのいた。
胸の辺りまで伸ばした薄い金髪と赤いフードつきのマントがなびく。
襲い掛かってきた別の狼の牙は彼女の露わになっている左上腕の皮膚を切り裂き血をにじませた。
「っ!」
緑色の瞳がわずかに歪められたが、腕をかばいつつ狼からバックステップで距離を取る。
「おらぁ! おめぇの相手はオイラだってぇんだ!!」
着地した狼の正面に彼女の召喚獣ケルビーが回り込んだ。
火と鎧を纏った魔人の姿をしているケルビーの腕は槍のように先鋭に変形しており、炎を上げて狼の口腔を貫き上げる。
口から串刺しにされた狼はビクリと痙攣すると体の内と外から焼かれていった。
彼女が使役する召喚獣は自然界の元素を具現化したものだ。
一般にサマナーと呼ばれる者達は森羅万象の声に耳を傾け、心を同調させることにより、その大いなる力の燐片を操る。
また、中には人よりも自然に近い存在である魔物も味方にできる者もいた。

仲間を倒され、周りを囲んでいた狼達の動きが止まる。
これで残りの狼の数は前方に三匹、後ろに四匹。
対するこちらはケルビー、同じく魔人の姿をした風の召喚獣ウィンディーとペットの巨大なスッポンの三体。
三体はミモザを守るように彼女の周りを固めていた。
狼一匹一匹はそれほど脅威ではないが、群れで行動する彼等は統制の取れた攻撃を仕掛けてきた。
今も闇雲に攻撃せずにこちらの出方を伺っている。
しかし、それはこちらとて同じ、サマナーの戦術の優れた点はしもべ達との息の合ったコンビネーションにある。
飾り気は無いが素朴な感じの木製の笛を握りなおすとミモザは大きく息を吸う。
そして、ゆっくり吐き出すことで心を静め、不安や恐れといった雑念を払っていく。
「ケルビー、ウィンディ、金ちゃん。 いくよ。」
静かに、しかし、力強く囁かれた言葉に召喚獣達もしっかりした声で応えた。

229国道310号線:2008/06/29(日) 06:02:01 ID:Wq6z33060
ミモザと狼が動いたのはほぼ同時だった。
「突撃!」
笛で相手を指し示し、三体それぞれに異なる命令を出す。
前と後ろから1匹ずつ飛び掛ってくる狼、それぞれをケルビーとウィンディで迎え撃たせた。
金太郎も前方へ向かわせたが、歩みが遅いので狼へすぐには達しない。
弾丸のように駆けてゆくケルビーの後ろをミモザは付いて走った。
(まずは相手の陣形を崩さなくっちゃ。)
狼との間合いを詰めたケルビーは纏っている炎を激しく燃え上がらせ腕の槍を狼へ突き刺す。
若干大振りなこの一撃を狼は体勢を低くして召喚獣の右手へかい潜り、そのまま懐へ飛び込み反撃しようとするが灼熱の炎の壁に阻まれる。
火そのものとなっている下半身への攻撃を諦め、離脱しようとする狼をケルビーは返す刃で薙ぎ払った。
それならばと応援に入った狼二匹がケルビーの両側から彼の喉笛目がけて火を飛び越える。
「甘ぇぜ!」
意気のよい声を上げると、ケルビーは片腕だけでなく両腕を刃へ変化させる。
大口を開けて迫ってくる2匹の牙を硬質化した腕で頭をガードする形で防いだ。

ケルビーが前方の狼達を相手にしている隙にミモザは更に前へと逃れる。
これで狼達に挟まれていた状態を突破することに成功した。
ミモザは踵を返すと金太郎の位置を確認する、もうすぐ彼はケルビーに追いつこうとしていた。
「ウィンディ! 来て!」
すぐに笛で指示を出し、後方の狼四匹と乱闘しているウィンディを自分の方へ呼び寄せる。
「追いつけるもんやったら、追いついてみぃ!」
噛み付いてくる狼達の間を風のようにすり抜け、召喚獣は戦線を退く。
その後を狼達はぴったりと追いかけた。
途中、狼達はのろのろ歩くスッポンの巨大な体を通り抜けようとしたが、異常な威圧感に足を止める。

威圧感の主は金太郎だった、大岩と見紛う甲羅を背負ったスッポンは水掻きの付いた耳を逆立てて威嚇する。
これは只の威嚇ではない、ミモザが金太郎に下したのはペットに特技を使わせる命令。
ペットが技を出そうとした時に発される気で相手の注意を向けさせることが出来る。
それを脅威と見た狼達は標的を変えると、関を切ったように金太郎を襲う。
金太郎は特技は出さずに手足首を甲羅に引っ込めると猛攻に耐えた。
(まだ… まだだよ。)

十歩、九歩…

今度はケルビーを金太郎の元へと移動させる。
ケルビーは狼に自分を追わせるように牽制攻撃をしながら、指定された位置に進む。

…六歩、五歩、四歩…

意のままに群れを操る羊飼いのごとく、こちらが有利な陣形へと相手を誘う。
気づいた時には逃れられない篭の中へ相手を捕らえる。

…二歩、一歩、…零!

<<フレームリング>>
<<ゲイルパンチ>>

カウント・ゼロと同時にミモザと召喚獣の張り上げた声がシンクロする。
指定位置の金太郎にケルビーが接触すると、彼を中心とした円周上に炎が巻き起こった。
それに合わせて、ウィンディの竜巻が金太郎を攻撃していた狼とケルビーを追ってきた狼を巻き込む。
強い風に煽られ火の嵐となった起爆点はすべての狼を呑み込み、とぐろを巻きながら激しく炎上した。
身を焼かれる狼達の断絶魔が遺跡中に響き渡る。
その声にミモザは眉をひそめ顔をゆがめたが、笛を握り締め紅蓮の嵐をまっすぐに見つめていた。


嵐が過ぎ去った後、物言わぬ狼達の亡骸がボトボトと落下する。
「ふぅ…」
緊張の糸が切れたミモザは、その場にペタリとへたり込んだ。
ハイランド洞窟の遺跡に足を踏み入れてから、戦闘回数は両手の数を超えようとしていた。
「おぅ、ミモザ。 腕はでぇじょうぶか?」
ケルビーは彼女に近づくと顔をのぞき込む。
「平気だよ、そんなに深くないもの。」
傷口から溢れた血液は一筋の流れを作っていたが、気に病むほどではない。
ズキズキした痛みはあるが、ちゃんと腕も動く。
この程度なら召喚獣達の負った傷の方が深いほどだ。
彼女はカバンから消毒薬と包帯を取り出すと、テキパキと傷の処置にあたった。

230国道310号線:2008/06/29(日) 06:04:12 ID:Wq6z33060
ミモザの治療を受けているケルビーにウィンディは詰め寄る。
「おんどれの攻撃が遅れたからミモザが怪我してんど、分かっとるんかいコラ。」
「んだと、この鳥頭! だいたいおめぇの風は温ぃんだよ。 ちゃきちゃき倒さねぇからオイラがトドメを刺してやってるんじゃねぇか。」
「攻撃しか能無い単細胞に花持たしてやっとるに決まっとるやろが、この犬っころ。」
至近距離で眼つけ合う二体の召喚獣、その巨体の間に剣呑な雰囲気が漂う。
洞窟特有の湿り気を含んだ風が両者に吹きつけ、岩の切れ目をくぐり抜けると寒々しい音を鳴らした。
「てやんでぇ、やるってぇのか?」
最初に動いたのはケルビーだった、人と同じ形に戻していた腕を再び鋭い槍に変形させると半身をずらし構える。
「泣き見るんは、おんどれじゃ。」
受けて立つとばかりにウィンディはカギ爪をむき出すとファインティングポーズを取った。
一発触発の召喚獣の間にミモザは割って入り、二体を片手と背中で押しやる。
「もう、ケンカしないで。」
こういう事態は慣れているのか、彼女は三体の手当てを完了させたうえ、自分の腕にはしっかりと包帯を巻き終えていた。
ぐいぐいと押すも、何かとすぐに小競り合いを始める二体は武器を収めない。
「ほら、金ちゃんはしっぽを探してくれているよ。」
彼女は狼達の死骸の中から、焼けていないしっぽ毛をのそのそと選っているスッポンを誉めた。

金ちゃんこと金太郎という名のスッポンは、彼女のギルドメンバーである剣士が金を産むスッポンと偽られて買ってきたものだ。
案の定、水洗いをすると普通のスッポンだった金太郎はたまにミモザと冒険に赴いている。
金太郎は戦闘で乱れた狼の毛皮から綺麗なしっぽ毛を見つけると、それを誇らしげに咥えてみせた。
バチリと火花を散らせ、ケルビーとウィンディは競うように狼へと駆け出す。
仲が良いのか悪いのか、肩を並べて目的の物を探す召喚獣にミモザは笑みをこぼした。


彼女達が採集しているのはギルド紋章を作るために必要な筆の材料だ。
紋章品と呼ばれるそれらの材料は、いずれも人里離れた辺境でしか手に入らず、量もあまり取れない。
希少価値が高ければ値段も張る、そのためセレスト・クルセイダーズでは現品収入を図っていた。
各人それぞれが少しずつであるが七種類ある紋章品を集め、残るはここハイランダー洞窟の狼から取れるしっぽ毛のみである。
ギルド紋章用の上質な物は一見しただけでは見分けがつかないが、戦闘でも痛まずしなやかさを保っていた。

ミモザ達は通路から少し外れた鉄格子の影に場所を移し、休憩を入れることにした。
抜け落ちた煉瓦の上に座った彼女は、首にかけてある布袋へしっぽ毛を入れると大切そうに胸元へ仕舞う。
「もう少しあった方がいいのかな。」
集まった毛束は彼女の細い小指ほどしかなく、布袋はぺちゃんこのままだ。
「狼なら飼っているってぇのに、そいつの毛じゃダメなのけぇ?」
「ここの狼じゃないとダメみたいなの。」
さっきの戦闘で取れたしっぽ毛は元の一匹分にも満ちていなかった。
遅々として進まないアイテム収集にイライラしているケルビーをミモザはなだめる。
一匹から取れる量が少ない以上、もっと多くの狼を狩らねばならない。
「よし、休憩終わりっ。」
彼女はマントに付いた土埃を掃って勢い良く立ち上がる、しかし、突然の目まいにタタラを踏んでしまった。
なんとか転ばずにいた彼女にウィンディは肩を貸す。
「なんや、フラフラしよってからに。 …もう帰った方がエエんちゃうか?」
紋章品集めをやり出して以来、我が家にしているギルドホールへ戻る日は段々と少なくなっている。
召喚士と言えどミモザは十五歳の少女だ、長旅と慣れない土地での戦闘続きで疲労が溜まっているのであろう。
「…まだ、大丈夫。」
ミモザは寄りかかっていたウィンディから身を離し、自分の足で体を支える。
既に他の材料を集め終えたギルドメンバーが、こちらに合流するとギルドチャットで言っていた。
ギルドチャットとは耳打ちの一種で、全ギルドメンバーと同時に会話し合うことが出来る。
彼女はギルドメンバーがたどり着く前に、少しでも多くのしっぽ毛を集め彼等の負担を減らしたかったのだ。

231国道310号線:2008/06/29(日) 06:05:14 ID:Wq6z33060
その時、鉄格子の影から狼が飛び出してきた。
「こんな場所にも出よるんかっ。」
彼女達を見つけ、遠吠えをする狼にウィンディーは舌打ちをする。
この遺跡の通路は数日間歩き回って、狼の通り道を把握したつもりだったが目算が甘かった。
彼女は自分の失態を悔やむと、笛をホルスターから取り出し右手に構えた。
「一昨日来やがれってんだっ!」
身を炎に包み、ケルビーは飛び掛ってくる狼へと突進した。
現れた狼は二匹、大した脅威ではない。
片方をケルビーに任せるとミモザはもう一匹にウィンディと金太郎を向かわせた。
ウィンディの放った竜巻で足止めされた狼に金太郎が噛み付く。
戦局は完全にこちらの優勢だ、彼女は追撃を指示すべく召喚獣との媒体である笛に意識を集中させる。
「ミモザっ、左だ!」
ケルビーの叫びにミモザはハッとそちらの方向を見やる。
いつの間にか彼女に忍び寄っていた狼が飛び掛らんとしていた。
(先に襲った狼は囮!?)
彼女はとっさに後ろへ飛びのいた、右腕を負傷してしまった時より遠くへと無意識にジャンプする。
しかし、それがいけなかった。
狼は避けれたが着地した地面が崩れ、彼女はバランスを失う。
「きゃっ」
石の破片がぶつかり合いながら落ちる音に少女の悲鳴が混じる。
踏み止まろうとした先は石畳がなく、彼女は通路の脇にポッカリ空いた闇の中へと飲み込まれてゆく。
刹那の間、飛び掛ってきた狼と目が合った。

‐落チロ‐

憎しみに染まった瞳がそう言ったような気がして、ミモザは伸ばしかけていた腕を下ろす。
「「ミモザ!!」」
主を助けようと召喚獣達は彼女の後を追い、奈落の底へと飛び込んだ。


空中でミモザを受け止めたウィンディは彼女を抱いたままハイランダー洞窟の深淵をゆっくりと降りていった。
50メートルほど落ちただろうか、通路は遥か頭上にあり、ぼんやりとした明かりが闇に境界線を作っている。
岩肌は切り立っている上、染み出す地下水のため湿っていて滑りやすい。
落ちれば一巻の終わりだと理解しているのか狼達は追ってこないようだ。
「おんどれは飛べん癖に意気っとんちゃうど、しかも、わしにしがみ付きよってからに。」
ごつごつした岩肌の地底に着いたウィンディは煩わしげにケルビーを見た。
「誰がおめぇにしがみ付くってんだ、オイラはミモザを抱いてたんでぃ!」
着地するやいなや、ウィンディから離れたケルビーはケッとそっぽを向く。
ケルビーの手は彼女をガッシリつかんでいたが、飛行能力を持たない彼はウィンディにぶら下がっていた状態だった。
「うっ…」
苦しげに彼女がうめく、意識を失ってしまった彼女の額にはうっすら汗が浮かんでいた。
「ちぃとばかし熱があるな。」
手のひらを彼女の額に乗せると、ウィンディーは顔をしかめる。
先程肩を貸した時に違和感があったため、帰還を勧めたが少々遅かったか。
「そぉか? しかし、人間てぇのは生温くていけねぇなぁ。」
同じく体温を見たケルビーだが、彼は首を傾げた。
「おんどれが熱すぎるんじゃい、ボケ。」
火の召喚獣、言わば火そのものであるケルビーと人間を比べるのが間違っているのだ。

ぐったりした少女の体は徐々に熱を帯びていき、彼女を抱いているウィンディの体温もどんどん上がっていくようだ。
いや違う、高温の源は彼女ではない。
「早よインシナ切れや、暑苦しゅうてかなわん。」
「い、今切ろうとしていた所でぃ!」
戦闘時に使う高温の炎を纏う術を発動したままだったことを指摘されたケルビーは急いで術を解く。
自身の魔力を落とすと、ガクッと全身の力が抜け、ケルビーの周りに魔力の光が散った。
ケルビーは召喚獣第一形態である、長いしっぽを持つ真紅の犬に戻ってしまった。
彼の炎で明るく照らされていた周囲は一瞬にして闇に包まれる。
「アホ、誰がパワーアップまで解け言うた?」
思わぬ事態に愕然としている彼にウィンディは呆れた声を出す。
「違わい! 勝手に解けちまったのよぉ。」
大分身長差が開いてしまった相棒を見上げ、ケルビーは吠えた。
召喚獣のランクは術者の精神力に依存する。
第三形態を保てなくなったほど、ミモザは衰弱しているのか。
そうこう考えているうちに、ウィンディからも魔力が光となって抜け落ちる。
つむじ風の上にトンガリ帽子を被せたような姿に戻ったウィンディは驚く間もなく地面へ落下した。
「ぐべぇ。」
ミモザを支えられるだけの体を失った彼は、そのまま彼女の下敷きになった。

232国道310号線:2008/06/29(日) 06:06:42 ID:Wq6z33060
気を失っている主人、ランクが落ちてしまった自分達、おまけにここは人が寄り付かぬ魔境の地下深く。
道具類が入っているカバンは何処かヘ吹き飛ばされたようで見当たらなかった。
絶体絶命の危機的状態を打開しようと、召喚獣達は知恵を絞る。
「こういう時はチャットで助けを呼ぶぜ!」
「ケルビーにしては冴えてるやんけ。」
ケルビーは早速チャットを試みたものの、やり方が分からず眉間にシワを寄せる。
ミモザが楽しげに会話しているのを見ていただけで、彼自身やったことがなかったのだ。
こう、目を瞑って精神を統一して…、そこからの手順が全く分からない。
それはウィンディも同じだったようだが、何か思い出したようにバッと顔を上げた。
「アレや! 半角スラッシュの後に名前+半角スペースや!」
「…何言ってんのか全然分からねぇぜ。」
意味不明の暗号を唱え始めるウィンディにケルビーは、平常を装っているが実はべらぼうに焦っていやがるなと思った。
そんなケルビーの冷めた視線に気が付いたのか、焦ったようにウィンディは空高く飛び上がる。
「エエか、わしが助けを呼んでくるさかい、ミモザを頼むで!」
そう言い残し、彼は闇の彼方へ消えていった。
しばらくウィンディが去った方向を見ていたケルビーは、横たえさせたミモザに視線を移す。
熱っぽい息づかいで胸を上下させている少女に、彼は静かに寄り添うと地に伏せた。
(こいつが辛い時に、また何もしてやれねぇのか…)
ケルビーの脳裏に昔の苦い思い出が蘇る。
彼は己の歯痒さにケッと息を吐き出すと、そびえ立つ漆黒の壁を忌々しげに見上げた。



つづく


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修正に手間取ってしまい投下が遅れました、すみません。

>黒頭巾さん
投稿のお許しとお心遣いありがとうございます!
あんなあらすじで良ければいくらでもリスペクトしてください。(笑
隠れ黒頭巾ファンの私が本人からファンと言われた日にゃあ、赤面爆死しそうですよ。
武道サマナ小説はにへにへしながら熟読させていただきました。
歌からSSシリーズは2曲目は知らない曲だったのでチェックしてみました。
原曲の端から見たらギャグなのにリアルでありそうなうすら寒い世界観が赤石の世界と見事に融合しています…

>68hさん
先のチャットでいただいた68hさんのリクエストもあり、
今までとは違うシリアス色の濃い作品を目指しました。
しかし、キャラ付けのために方言を使ったせいか初っ端からギャグの臭いがプンプンします。
力不足を反省しつつ、いつの日か完全シリアスものでリベンジできればと思います。

>スメスメさん
クエストで狩りに行った蟲の洞窟のカニに苦戦した懐かしき思い出が蘇りました…
騒ぎながらも夢を語り合ったアイナーが変貌してゆく様が物悲しいです。
アルとキリエの2人組みの冒険談を楽しみにしています。
スメスメさんの一人称の書き方は場面の見せ方が好きで参考にしています。

>みやびさん
初めまして、ひよっこ小説書きの国道と申します。
メインクエ関連データの書き出しありがとうございます。
私もメインクエは進めてはいるものの、記憶は薄れつつあるのでとても助かります。
リレー小説の企画立ち上げもお疲れ様です! 丁寧な書式やキャラ設定の話はとても参考になりました。
私はご覧の通りの遅筆のため、リレー小説参加は難しいかと思います… 草葉の陰からヒッソリ応援しております。

233国道310号線:2008/06/29(日) 06:08:15 ID:Wq6z33060
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ティエラさんのカッコ良さに痺れつつもラフィーナさんの行動にいけない気持ちになってしまいます。
ミカエルとミリアに忍び寄る妖しい影… 特にミカエルを狙う相手は強敵そうです、ガンバレミカエル!
ギルド・ウォー・コラボ! 面白そうと思いつつもいいネタの提供できるか不安です。
もし、キャラを使っていただけるのなら、好きなように扱ってください!

>姫々さん
セラとタスカのギクシャクした関係が解決するのだろうかとハラハラしていましたが、
両者が両者を思っていたという展開にじーんときました。
クールなタスカとルゥの戦闘シーンがカッコイイです! 
姫が変身したピンク色の武器は可愛いくて好きなので、登場すると嬉しくなります、続き楽しみにしています!

>177さん
初めまして、こんな透明感のある作品に惚れる国道と申します。
淡々とした語りの中に見え隠れする寂しさや愛情がなんとも儚いです。
理想は理想、現実は現実と割り切っている女性の強さに憧れを抱きました。
またの投稿お待ちしています!

>aY5Buyq.0さん
初めまして、戦闘シーンになるとパッタリ筆が止まる国道と申します。
戦闘シーンって難しいですよね… 私も他の方の戦闘描写を見るたびに尊敬の思いを募らせています。
主人公くんのシュールなキャラが見ていて楽しいです。
まだ十代なのに浮世離れしている彼の今後の活躍が気になりまくります、続き楽しみにしています!

>白猫さん
戦いが終結に近づき一息入れている修行編にもかかわらず、読んでいると高揚感が高まります。
それにしても、「今の"倍"強くなれ、」とは… あらためてルヴィラィの強さに戦慄を憶えました。
最大の山場を迎えるルフィエとネルの物語、天下一コラボの執筆頑張ってください!
そして、早くも次回作のお話が…!
盗賊や山賊がいるんだから海賊もいてもおかしくないですものね!
船に乗ってもテレポーターと同じく一瞬で現地に着いてしまうのが寂しい国道でした。

234◇68hJrjtY:2008/06/29(日) 16:36:11 ID:5az2n5xw0
>国道310号線さん
サマナたん主人公な小説ですが、セレスト・クルセイダーズ物語の続編でもあるわけですね!お待ちしてました。
さてさて、今回はシリアス戦闘シーンが光っていましたが、サマナの戦闘シーンというのもやっぱり楽しそう。
黒頭巾さんの武サマ話でも思いましたが、新キャラではサマナをやってみたくなるくらいでした(*´д`*)
それだけではなく召喚獣たちの個性的な事。本来協力関係なハズのケルビーとウィンディがケンカ仲良し&浪速系兄さんになってる(ノ∀`)
個人的には金ちゃんが気に入りました!って、また騙されたんかいブルーノ(笑)
個々の話は短編ながら、セレスト・クルセイダーズが成長していく国道さんの小説。続きお待ちしています。

235黒頭巾:2008/06/29(日) 22:31:53 ID:fou9k2gM0
ふぁみりあいーえっくすシリーズ番外編?
 未知との遭遇2 〜国道310号線さんチのコの場合〜

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僕の名前はふぁみりあーえっくす。
とってもとっても(中略)とーっても素敵なごしゅじんさまのぺっとだ。
僕のごしゅじんさまがどれだけ素敵かお話しだしたら止まらなくなっちゃうから……気になる人は過去ろぐ参照で!
今日はそんなごしゅじんさまとお買い物に来てるんだよ!
おあしす都市ありあんは、今日も盛況だ。
ごしゅじんさまは僕が逸れないように、抱っこしてくれてる。
途中でばんへせるさんのお店に寄って、きゃんでぃーを買ってくれたごしゅじんさま。
目指す装備を売ってる露店を探して、裏通りを歩く。

「うーん、惜しいなぁ……これじゃ、ちょっと補正が足りない」
「あちゃー、それは残念だなー。 ねーちゃんの探してる補正のもん、見付かるの祈ってるよ!」
「ありがとう」

露店主さんと会話しながら、露店をぐるぐる。
たまにはこんなお買い物も楽しいね。

「あ、いいかも」
「はい、らっしゃーい」

このお店は、気さくなごきぶりさんのお仲間さんがお店番。

「これ、ちょっと気になるけど……ちょっと勉強してくれないかな?」
「お、お嬢ちゃんプロだねぇ。 わかった、ちょっと座りーね」
「交渉おっけーなのね、ありがとう!」

難しい数字のお話をしだしたごしゅじんさまのお邪魔にならないように、僕は近くをきょろきょろ。
あれ、ちょっと離れたとこに何かある。
何だろう?
恐る恐る近寄ってみたら、何か茶色い塊。
じーって観察してみたら……あ、動いた。
ってことは、生きてるのかな?
僕の視線に気付いたのかぱちりと目を覚ました茶色いこは、浮かび上がろうとして……落ちた。
まるでお腹が空いて元気が出ないみたいに、しおしおやつれてる。
それを見詰める僕の手の中には、大好きなごしゅじんさまがくれたきゃんでぃー。
食べたい、凄く食べたい……けど。
目の前のこのこの方が、凄くお腹が空いてるみたい。
だから。
はい、どうぞ。
僕が差し出したきゃんでぃーを眺めて、茶色いこは困ったように空中でくるんと回った。
遠慮しなくていーよ?
そう言ったけど、茶色いこはふるふる首を振るだけ。
困ったなぁ。
そこに、ご用事を済ませたごしゅじんさまがほくほく顔でやってきた。

「あら、ファミちゃん……そのコ如何したの?」

そこで行き倒れてたの。
僕の答えにごしゅじんさまの目が驚きに見開かれた。

「……捨て子?」

必死にぷるぷる首を振る茶色いこ……何処にそんな元気があったんだろう。
あ、やっぱりへろへろ地面に落ちた。

「ご主人様と逸れたのかな? お腹空いてるのね」

きゃんでぃー差し出してるのに、食べてくれないのー。
虫歯さんなのかなぁ?

「ファミちゃん、このコはミニペットって言って、キャンディーは食べれないのよ」

ご飯は装備品なのよー、だって。
おー、このこが最近噂のみにぺっとさんだったんだね!
確かに、ごしゅじんさまの言葉通り……茶色いこの目線は、僕の槍に釘付け。
こ、これは代わりがないからだめ!
可哀想だけど、僕は槍を後ろに隠した。

「あ、さっきの狩りで出た店売り品、まだあるよ」

ごそごそ鞄を漁ったごしゅじんさまは、防具をいくつかと武器をいくつか並べた。

「うーん、このコ……何型なんだろ」

悩むごしゅじんさまの姿に、僕は前に聞いたお話を思い出した。
みにぺっとさんは何種類かあって、種類によってご飯が違うって事を。

「いつもご主人様に貰ってる系統のを選んで食べてくれる?」

ないすなごしゅじんさまの言葉に茶色いこは頷いて、全部を取り囲むようにぐるぐる回った。

「あら、雑食なのね。 はい、どうぞ」

ごしゅじんさまの差し出す剣を、茶色いこはんごんご飲み込んだ。
凄い……びっくり人間しょーみたい。
人間じゃないけど。

236黒頭巾:2008/06/29(日) 22:32:39 ID:fou9k2gM0

「ん、かなり元気になったわねー」

すっかりつやつやになった茶色いこは、ありがとうって、ごしゅじんさまの周りをくるくる回った。

「ご主人様にご飯貰ってないの?」

心配そうに首を傾げるごしゅじんさまに、茶色いこは必死でぷるぷる首を振った。
ご飯を貰ってるのに、何で行き倒れてたんだろう。
僕もごしゅじんさまも、頭の上に?まーくだ。
と、茶色いこがはっと何かに気付いて、慌てて飛んで行った。
向かった先には、はんらさんの姿?
あ、似てるけど違うはんらさんだ。

「お、てるみつくん、こんな所にいたんだな!」

探したんだぞーと豪快に笑ったはんらさんの周りを、てるみつくんと呼ばれた茶色いこがくるくる回る。

「君達は?」
「そこでそのコがいるのを見掛けて、迷子かなと……ご主人様が見付かってよかったです」
「そっか、ありがとう!」

にっこり笑ったごしゅじんさまに、そのはんらさんが笑顔を浮かべた。
あ、てるみつくんが、こっそりはんらさんの鞄にお金を入れてる。
もしかして、貰ったご飯を売ったのかな?
はんらさんはごしゅじんさまとのお話に夢中なのか、気付いてない。
と、そのはんらさんは自分を呼ぶ声に気付いたのか、後ろを振り返って声を上げた。

「ここだよ、テラコッタ! すぐ行くよ!」

遠く女の人に手を振ったはんらさんは、振り返って僕達にお別れのご挨拶。

「じゃ、行かないと。 またな!」
「はい、また」

ばいばーい。
見送る僕達の目線の先、はんらさんとてるみつくんは楽しそうにお喋りしながら歩いていく。

「お、てるみつくんてかてかじゃないか。 そんなに餌美味しかったか?」

うんうん頷くように尻尾を振るてるみつくんに、はんらさんは嬉しそうに笑った。

「貰った餌、如何してるんだろ……」

ぼそりと呟いたごしゅじんさま、やっぱり気付いてなかったみたい。
でも、これはないしょないしょなんだよ!
あの時目が合ったてるみつくん、言わないでって言ってたような気がするもん。
きっとね、ごしゅじんさまを思う気持ちは、みにぺっともぺっともご一緒。
また会えたら、きっといいお友達になれると思うんだ。
いつか、そんな日が来ればいいなぁ。

******************************************************

第二弾は国道さんチのコをお借りしました。
コレ、初めてチャットイベントでお会いした時から書きたかったんですよねぇ(*´∀`)
てるみつくん大好きだよ、てるみつくん(*´д`*)ハァハァ
快く許可して下さって、ありがとう御座いました(*ノノ)


さて、レス返し。

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
いけめんさんは何処を目指しているのでしょうねwww(ちょ)
ロリコンというよりは、“自分より小さな庇護すべき存在”に対して優しいんだと思います(ノ∀`*)ペチン
いえいえ、あれがあったのでつい妄想が膨らんで☆―(ノ゚д゚)八(゚д゚ )ノ―☆
あれは仕方がないですし、また機会があるのを楽しみにしておりますー(*゚д゚)b

>68hさん
二人ともえっちぃのは耐性ないっぽいのできっと気が合いますよ!笑
ぶっ飛ばすミリアちゃんと、真っ赤になって固まるいけめんさん!(後者情けないだろ←)
色んな作家さんの誰と誰で○○したらきっと△△…とか色々想像してしまいますよね!(ぇ)
68hさんの筆が進まないのに無理にとは言いませんので安心して下さいませ(*´∀`)
書き上がったら全力で読ませて頂きますが!(ぁ)
いえいえ、常駐は義務でないのでお気にならさず…お時間ある時にお会い出来ましたら嬉しいです(ノ∀`*)ペチン

>国道310号線さん
ぎゃぁ、こちらこそ赤面です!(*ノノ)
あの曲は現実では本当にありそうで恐いですよね…今度はまたSHでやりt(ry
わっほーい、金ちゃんってあのコですよね、第一話のオチのコ!
読んだ瞬間、即座に思い出してしまって(・∀・)ニヤニヤが止まりませんでした(自重)
G紋章の材料は、スウェブしか集めたコトないんですよね…他はそんなに大変だったのか!ガクガク(((((゚д゚;)))))ブルブル
ケルビーとウィンディの喧嘩漫才にもう笑いが止まりませんですよ!
こう来たか!爆笑
サマナーって実は育てたコトないので、戦闘シーンとか凄く勉強になりました…うぅ、サマナ作りたい!
個人的にツボだったのは、ミモザが手を降ろした理由です(´;ω;`)ウッ
ミモザの変調の原因と過去話、そわそわしながら続きを待っております!(ΦωΦ)フフフ

237国道310号線:2008/06/30(月) 00:00:23 ID:Wq6z33060
遅ればせながら、天下一コラボ用キャラクター設定です。
よろしくお願いします。


ブルーノ・グランディ 男 19歳

にぶい色の青髪に青眼、中肉中背の良く鍛えられた身体。
あまり身なりは気にしないので、髪の毛はボサっています。

ギルド「セレスト・クルセイダーズ」所属の剣士。
笑顔がたえない温厚な性格だが、仲間や弱い者を傷つける者は容赦しない。
元気で何事にもバカ正直に突っ走ります、人に騙されること多数、
しかし、ポジティブ思考なので本人はそんなに気にしていません。
ボケかツッコミかと聞かれたらボケです。
天下一参加理由は腕試し。

一人称:俺

口調は穏やかめ、イメージは体操のお兄さん。
相手を呼ぶ際は、君(女の子)、おまえ(男の子)、その人の名前(敬称なし)等。

戦闘方法:
一発の威力より、スピードを活かした手数重視の速度型。
そのため防具はショルダーパット・イージスといった軽装で、剣はグラウディス。
単体物理です、剣士スキルは一通り使えます。



以下レス返しです

>◇68hJrjtYさん
実は今回戦闘シーンも力を入れてみましたが、蓋を開ければギャグが半分を占めておりましたorz
サマナーは好きなキャラなので、そう言っていただけると嬉しいです!
召喚獣の方言は現地民の方が聞いたら怒り出しそうなくらい適当にしゃべらしているので、
ノリと勢いで読んでいただければありがたいです。(笑

>黒頭巾さん
うひゃー! てるみつくん&ブルーノ使っていただきありがとうございます!
きゃんでぃーを差し出すふぁみりあとてるみつくんの掛け合いが可愛くてイイ!
こんな、ほのぼのながら少し切ない物語に仕上げてくれるなんて、 …感激です。
ニヤニヤしながら読ませていただきました。
はい、ご察しの通り、スッポンは例のコです。 
紋章品集めクエは多少誇張している部分もありますが、面倒臭さが伝わればいいなと思って書きました。

238◇68hJrjtY:2008/06/30(月) 12:23:17 ID:b0o6OAWA0
>黒頭巾さん
てるみつくんキタ━o┃*´・ω・┠o━! そして食べたー(笑)
ふぁみたんの短編、なんだか久しぶりに読んだ気がします。でもやっぱり和ませてもらいました(*´д`*)
そうか、ふぁみたんの視点でははんらさんはどれも同じなんですよね(笑) 闇はんらさんも居ましたっけ(ノ∀`)
---
小説は…筆が進まないというよりあまりにもブランク長すぎて自分の書き方を忘れたというかorz ←それが進まないって事や!
書きたいと思っているネタの地点まで進めないんですよね…でも、皆さんに期待されてる(?)ようですし
いずれなんとか一作品だけでもUPできたらいいなとは思っております( ̄^ ̄ゞ

>国道310号線さん
おぉ、サマナ好きさんでしたか!
武道やっててもなかなか周囲にサマナ友人が居ないもので悲しい限り。イイ娘がいたら紹介して下さい(待
私も現地人ではないですがしかし関西弁を召喚獣が喋るという設定が面白いので良いじゃないですか!
そんなの気にせずガンガンどうぞー(笑)

239防災頭巾★:削除
削除

240ドワーフ:2008/07/01(火) 20:34:04 ID:AepyIIHk0
『梅の花』

彼がうちを訪ねてきたのは、随分と昔のことですね。今でも鮮明に覚えていますよ。
ええ、その頃にはもう両目を閉じていましたよ。杖をついてやってくる客なんて初めてでした。
しかも、その杖に腰の刀の刃を仕込んでくれなんて注文ですからね。嫌でも覚えてしまいますよ。
当然尋ねましたよ。目も見えないのにそんなものを扱えるんですか?護身用にしては物騒すぎやしませんかってね。そうしたら…いやはや、店の中を飛んでいた蝿を斬ってしまったんですよ。あれには参りました。
誠心込めて、精一杯の仕事をさせて貰いましたよ。
仕事を終えて杖を引き渡すときに、彼に尋ねたんです。その目は一体どうしたんですかって。全く不謹慎なことですよね。しかし、私としても仕事をした相手のことをちょっとでも知りたかったのです。あれほどの腕前の方なら、さぞかしすごい武勇の果ての負傷なのだろうと。
彼は私の質問に苦笑していましたよ。私の期待している答えは出せないという感じでね。今までも散々尋ねられていたのでしょう。
”自分で潰した”
そう言ったんです。私はさらに尋ねました。どうしてそんな事をしたのかと。
彼は話せないと言いました。ただの気の迷いだと。
そうなると益々知りたくなりましてね。お代は結構だから教えてくれとせがみました。
長々と説得しましたら、ついに彼も根負けしましてね。その日は早くに店をたたんで、店の奥で酒を酌み交わしながら彼の話を聞きました。
”助けたいと思っていた女を、逆に斬ってしまった”
彼はそう言って語り始めたのです。

ザトーとハナが出会ったのは南端の田舎町からブリッジヘッドへと向かう街道でのことだった。
ハナは父親に借金のカタに売られた女。買い取ったシーフどもによって幌馬車に荷物などと一緒に乗せられ、ブリッジヘッドへ運ばれていく途中だった。
街につけばハナには女郎の末路が待っていた。彼女自身そのことは良く分かっていたが、抵抗する事も無く諦めていた。シーフどもは物分りがいい女だと、さぞかし喜んだ事だろう。
さて、その幌馬車を襲撃する一つの影があった。義賊ザトーである。
彼は尋常ならざる剣さばきでシーフどもを切り伏せると。幌馬車の進路をブリッジヘッドからアウグスタへと変えてしまった。
ハナはというと、外の異常は騒ぎで聞きつけてはいたが、得体の知れぬ何者かに対する恐怖から荷物の陰に隠れ潜んでいた。
アウグスタの近くまでくると、ザトーは幌馬車を停めて急に中を改め始めた。
ザトーの目的は当時シーフどもの手によって広がりを見せていた麻薬のルートを絶つこと。南方の肥沃な土地に麦の栽培に紛れて麻薬の原料が作られているという情報を受けての襲撃だった。それは都市内への麻薬の流入を危惧したアウグスタからの依頼であったが、それが偶然にもハナを奴らから解放する事になったのだ。
結果としてザトーは麻薬の原料を発見。そして同時に隠れて震えていたハナも発見する。
ザトーにしてみれば全く予想だにしない発見であった。彼は動揺を押し隠し、怯えているハナをまず落ち着かせるために言った。
「安心しろ。助けに来た」
ザトーはハナを幌馬車から降ろし、彼女を落ち着かせようと努めた。
「君はどこから連れてこられたんだ。無事に送り帰してやるから教えてくれ」
そうザトーが尋ねた時、ハナの強烈な平手打ちが彼の頬に炸裂した。彼女は突然泣き出し、助けたはずのザトーを責めるように大声で喚き始めた。
「帰るですって!?一体どこに帰れっていうのよ!あたしは父親に売られたのよ。帰る場所も、行く場所も、もうどこにもないわ。これからどうすればいいの?どうやって生きていけばいいの?助けに来たですって…どこが助かったっていうのよ!」
そう言って彼女はへたり込むと、顔を手で覆った。
「生きていかれるだけ、女郎にでもなったほうがまだマシだった…」
そう言ってハナは泣き続けた。
ザトーは頬を抑え、泣いている女をじっと見つめながら誓った。自分の言ったことを守るため、義賊の誇りにかけて彼女を助けようと。

241ドワーフ:2008/07/01(火) 20:35:44 ID:AepyIIHk0
ザトーはハナを連れて旅に出ることにした。今までも旅がらすとして生きてきたが、今回は目的地の定まった旅だった。目指す場所は新興王国ビガプール。彼の国では南に豊饒な土地を見つけ、耕地開拓のための人手を必要としていた。
農家の手伝いをしていたことがあるというハナならば、受け入れてくれるかもしれない。それにシーフどもがメンツのために彼女を連れ戻そうとする可能性があったが、ビガプールであればその点も安心だった。外国のシーフを城下町に立ち入らせるほど衛兵も甘くはないだろう。
旅に出る準備をしている間、ハナは幾度と無く本当にいいのかとザトーに聞いてきた。名前しかろくに知らぬ女のために、何故そこまでするのか分からないという感じだった。通常であればハナのような女など捨て置いてしまうか、アウグスタの教会にでも預けて厄介払いをしてしまうところだろう。だが、それでは全く助けた事にはならないという彼なりの信念のためにそうしなかった。
海路を避けてアウグスタから北上し、陸を街道に沿って砂漠まで迂回してビガプールを目指す。かなり長い旅路を女を連れて行かねばならない。しかし、もう決めてしまった事だった。
ザトーとハナはアウグスタを発って一路鉱山街ハノブを目指した。
街の外を行くなら普通は護衛に傭兵を雇うものである。しかしザトーはそんな事はしなかった。他人の助けを金で借りるなど彼の誇りが許さなかったし、ハナを一人でも守れる自信があった。
だがその自信は彼女にとってはかなりの不安となっていたようだ。たった二人きりで行く街道は、彼女にとって心細いことだったろう。
それにハナは決して丈夫な女ではなかった。道中で何度も休むことになったが、彼女自身それを良しとせずすぐに歩みを再開してはまたすぐに休むことになるのだった。ザトーに世話になっているという意識からか、足手まといにはなりたくないという様子だった。
予定通りとはいかなかったが、なんとか二人は日が沈むまでには鉄の道を渡りきった。

242ドワーフ:2008/07/01(火) 20:36:23 ID:AepyIIHk0
ハノブに着くとザトーはすぐに宿を取り、ハナをそこで休ませて自分一人だけ宿を出てしまった。ザトーに対して心のどこかでまだ疑いの気持ちを持っていたハナは彼の後を追いかけた。もしかしたら彼は自分を騙しているのではあるまいか。遠くの国へ行くといっていたが、もしかしてそこで自分を売るつもりなのではないか。ザトーに対してそんな疑念を抱きつつ追いかけた。
ザトーの行き着いた先は、街の一角にある小さな一軒家だった。中からは女性と小さな子供が出てきて彼を出迎えていた。彼の家族だとハナは思った。小さな我が子の頭を撫でて、妻と楽しそうに話している。それはハナの心にとってとても遠く眩しい光景だった。
ザトーはお金の入っているらしい小さな包みを妻に渡すと、家を後にした。男の子がずっと手を振っている。
しかしザトーの用事はそれでは終わらなかった。別の家に行き、別の家族に出迎えられ、またお金を渡して去っていく。そうして数件を同じようにお金を配って回った。中には夫の居る家族も見えた。
ようやく用事が済んだのか宿のほうへ歩き始めたザトーの前に、我慢できなくなってハナは姿を現した。
「一体何をしてたの?」
「鉱山での事故で亭主を亡くした家族、怪我で働けなくなっている家族に生活のための金を配っていた。アウグスタからの報酬でね」
ザトーは驚いた風もなく平然と答えた。ハナが追いかけてきているのに気づいていたのか、それとも予想していたのか。
「何でそんな事をしてるの?何の得にもならないのに」
「得ならあるさ。彼らの感謝の言葉が聞ければ、それこそが俺にとっての本当の報酬なんだ」
ハナは理解できないという風に首を振った。
「ただの自己満足でしょ」
「意外と難しい言葉を知ってるんだな」
ザトーは少し困ったような表情で笑った。
「人の一生の中で、心から満たされる瞬間はどれだけあるだろうか。人それぞれだろうとは思うが、俺にとってそれは他人の言葉に勇気付けられるときに他ならない。たとえそれが他の人にとって変に見えたしても、俺は自分自身のために、他人に尽くす」
ハナはぼうっとザトーの横顔を見ていた。彼の言う事が理解できないわけではない、だが彼女のこれまでの生き方が彼を否定していた。
「それより丁度良かった。宿に戻る前に買い物をしていくぞ。君も来るんだ」
そう言ってザトーはハナを連れて一軒の店に入った。
「好きなものを選べ」
そう言われた彼女の前に並んでいたのは杖だった。魔法使いのための物ではなく、旅行用のものだ。
「君はあまり足腰が丈夫ではないようだからな。杖の一本でもあったほうがこの先少しは楽になるだろう」
ハナは老人じゃあるまいしと内心思った。しかし、道中度々休憩を取って足を遅らせていたのは事実だった。仕方なく彼女は杖を選び始めた。
彼女の目は小さな梅の花が描かれた一本の前で止まった。

243ドワーフ:2008/07/01(火) 20:37:15 ID:AepyIIHk0
それからの道中、ザトーが買ってやった杖は思った以上に効果を発揮した。体重を分散できるためか、足への負担が減ってハナはあまり休む事も無くなったのだ。
そこからの道程は順調になると思われたが、今度はザトーが歩みを遅らせた。ブルンネンシュティグが近づくにつれて人が増え、人が増えると人助けをせずにはいられないザトーの性分が災いしたのだ。
おかげで彼らはしばらく古都に留まる事になってしまった。ハナは他人のために動くザトーに困惑し、目的を忘れてやしないかと心配していたが、次第にこれでいいのではないかと思い始めた。
自分が生きる事だけに精一杯だったハナにとって、ザトーの生き方は理解し難いものから憧れの対象に変わっていたのだ。それほどに彼は自由に生きていた。
しかしあまり長く留まり過ぎた事が最初の過ちだった。ブリッジヘッドのシーフどもがハナを取り戻しにやって来たのだ。
その時はザトーがいち早く気配に気づき、シーフどもを追い払ったが彼はそこでまたミスを犯してしまう。シーフを一人取り逃がしてしまったのだ。しかもザトーの正体に気づかれてしまった。
ザトーはシーフどもの間ではかなり名の知れた存在だった。それだけに今度はハナを狙ったりはしないだろう。足手まといを得た彼の元に必殺の刺客を送り込んでくるに違いなかった。
こうなると流石のザトーも道を急がざるを得なかった。自分と一緒に居るとハナにも危険が及ぶ可能性があったが、今更他人に任せて行けと言っても彼女は首を縦には振らなかった。
しかも、彼女はビガプールへ行くことを嫌がってしまったのだ。決して足手まといにはならないからと、ザトーと共に居たいと言い出したのだ。
ザトーは嫌がる彼女を説得し、引っ張るようにブルンネンシュティグを発った。
しかしその時にはすでに彼らの行く先ではシーフどもが送り出した刺客が待ち構えていた。
そいつは人間ではなかった。

244ドワーフ:2008/07/01(火) 20:38:00 ID:AepyIIHk0
砂漠のオアシスにある小さな町リンケンに立ち寄ったザトーとハナを訪ねる人物があった。その人物は町の住人で、娘が連れ去られてしまったと言って一枚の紙を彼らに差し出した。その紙には娘を返して欲しければ、ザトーという旅の男を北の地下墓地へ向かわせろとあった。
ザトーは罠であると知りつつもそこへ向かわざるを得なかった。ハナには町に残るように言ったが、やはり彼女は頑として聞かなかった。連れ去られた女性を連れて逃げる事を約束させて、ザトーはハナを連れて向かった。
墓の中は暗く、嫌な死霊の気配などを感じつつもザトーたちは墓の奥へと進んで行った。
連れ去られた町人の娘は意外と簡単に見つかった。意識もしっかりしており、乱暴をされた様子はどこにもなかった。
「そいつは連れて行け。ただし貴様は残れ」
低い声が聞こえてきた。刀を抜いて構えるザトーの前に、小さな仮面の悪魔が現れた。
「早く連れて行け」
ザトーは悪魔から目を離さずハナに言った。ハナは気をつけてとだけ言って女性を連れて出口へと急いだ。
ハナと女性の姿が見えなくなると、ザトーは悪魔に聞いた。
「人質に使うんじゃなかったのか」
「人質?たかが人間相手に?」
悪魔は嘲るように笑った。
「そのたかが人間に従って俺を狙ってきたんだろう」
「違うな。ゴミを利用して原石を探しているんだよ」
悪魔はそう言ってまた笑った。くぐもった不快な声だった。
「良い原石だ。長い戦いに鍛えられた強さが見える…実に、美味そうな魂だ」
ザトーはその悪魔に激しい嫌悪感と恐怖を感じた。そしてそれを振り払うかのように刀を振るうと、悪魔に向かって駆け出した。
ザトーが一太刀を浴びせようとしたとき、悪魔は手の平から小さな光を発した。すると、ザトーの目の前に彼の両親の姿が現れた。
驚いて動きを止めたザトーに向かって、母親の腹から刃が突き出してきた。ザトーは咄嗟に刀で受け止めて後ろに飛び退いたが、わき腹に浅く傷を受けてしまった。
両親の姿が崩れて消え去ると、剣を差し出している悪魔の姿が現れた。
「あっさり決まると思ったんだがな、そうもいかなかったか」
そう言って悪魔は剣を振り払って血を落とすと、ザトーに近づいてきた。

245ドワーフ:2008/07/01(火) 20:38:44 ID:AepyIIHk0
ハナと町娘が墓から出てくると、地上には町の人々が待っていた。心配して来たのだろう。
娘の無事な姿を見ると、皆が歓声を上げた。娘を抱いて泣いている父親の姿を見て、ハナも自然と涙が出そうになった。しかしハナは溢れそうになった涙を拭い去ると、再び墓の中に戻ろうとした。
「どこへ行くんだい」
町の人が言った。
「あの人がまだ中で戦っているのよ。すぐに助けに戻らないと!」
「ちょっと待った。あんたに何が出来るんだい?足手まといになるだけじゃないのかい」
しかしそんな町人の声を無視して彼女は墓の中へと入っていった。
墓の中の暗い通路を急いで進みながら、彼女は思った。
自分にもきっと何か助けになることが出来るはず。足手まといになんかならないと証明すれば、そうすればきっとあの人も認めてくれる。きっと、ずっとそばに居る事を許してくれるはず。
そう思うと、暗い地下墓地すらも怖くなくなった。

戦況は一変していた。
ザトーは最初苦戦を強いられてはいたが、悪魔を確実に追い詰めていた。
恐らくこの悪魔は人間を相手に長く戦った事が無いのだろう。今までの者は最初に見せられた幻に動揺してあっさりこいつに殺されてしまったに違いない。それだけに、何度も見せられてそれがただの幻だと気づくと驚くほど脆かった。
幻影を無視して陰に隠れているこいつを斬ればいいのだ。
人気のない墓場に呼び出したのはこの悪魔にとっての最大の間違いだろう。死霊の魂によって力が得られるなどと言っていたが、結局他に人が居ないと分かれば幻など全く問題にならなかった。
悪魔はもう戦う気力もほとんど無い様子で、身体のあちこちの傷跡から黒い液体を血のように垂れ流していた。
「とどめだ」
ザトーは悪魔に向かって刀を構えた。勝利が決まったも同然のこの状態が、彼の注意力を奪っていた。
悪魔が目を反らして、何かに気づいたというその様子を見逃していたのだ。
ザトーは悪魔との間合いを詰めていった。攻撃の間合いに入ったとき、悪魔の手が光った。
刀を振り上げたザトーの目の前にハナが両腕を広げ、横飛びに飛び出してきた。
「また幻か!」
ザトーは構わず刀を振り下ろした。
刀はハナを切り裂き、返り血を彼に浴びせた。

246ドワーフ:2008/07/01(火) 20:39:28 ID:AepyIIHk0
「なんで…どうして…」
「ごめ…ん…なさい」
血まみれでハナを抱きかかえ、これまで見せた事もない混乱した様子でザトーはハナに問いかけていた。
「あなたが…やられそうになってるのが…見えて。……それで」
「だからって飛び出してくる奴があるか!」
ザトーは涙声で叫んだ。
「それより…あいつが逃げる……」
「あんな奴なんかほっとけ。今はこっちが先だ」
ザトーはハナの身体を抱きかかえると、這いずって離れようとする悪魔を無視して駆け出した。
「下ろして…」
「すぐだ、すぐに地上に出られる。町に戻ってすぐに治療するんだ」
ハナの言葉など聞こえていない様子でザトーは走った。だが不思議な事に、いくら速く走っても地上の光は見えてこなかった。
「もういいの」
「いいものか!俺はお前を助けると言った。だから、何が何でも助ける!」
「あたしはもう助かった。人は人を利用するものだと思ってた。あたしは…人に利用され続けて生きていくんだと思っていた。でもあなたは違う。あたしの生きたいと思える生き方を見せてくれた。初めて誰かのために尽くしたいと思った。初めて、人を好きになれた…あたしの心は、あなたに救われた…」
ハナがそう言うと、ザトーの視界に眩しい光が差し込んだ。
まるで先ほどまでそこに見えなかったかのように、突然地上への出口が現れて彼を照らしていた。
「おいハナ。出口だ」
ハナは小さく、静かに息を吸って、それきりだった。

いやはや…、なんとも悲しい話ですね。
きっとあの杖もハナさんに買ってあげたものだったんでしょう。
汗で掠れてしまったのかもしれませんが、うっすらと梅の花が描いてあったような気もします。
そうそう、ここからは余談なんですけどね。
彼が出て行ってから数年もすると杖を持った冒険者を見かけるようになりましてね。
中には目をつぶってる人なんかもいたんですよ。はっはっは。
おや、あなたも杖なんか持っちゃって。流行はとっくの昔に過ぎちゃってますよ。
ん……?
その杖……あ!ちょっと待ってくださいよ!
ちょっとー!!

247ドワーフ:2008/07/01(火) 20:48:01 ID:AepyIIHk0
梅の花>>240-246
あとがき
お久しぶりです。覚えてくれてる人いるかなと不安になりながらも、
久々に書きあがったものを出してみます。
ちゃんと短く切って改行しとかないといけませんでしたね…。
読みにくかったらごめんなさい。

今回はユニークアイテムの一枝梅の刀をモデルに書いてみました。
一枝梅の刀→ソードスティックのU→杖の仕込み刀→座頭市
という連想から主人公の名前をザトーにして、盲目の剣客の話を書いてみようと…
とはいえ、剣客ではなくユニークの説明文にしたがって義賊ですが。
本当はもっと道中の話なんかを長々と書いてみたいななどと思ったんですが、
そこまで気力が持たず、短くまとめてしまいました。
マルチェドと違って救いのない話ですが…いえ、救えてはいるんですがね…。

248白猫@報告:2008/07/02(水) 17:49:12 ID:y.2k6V060
どうも、意味もなく湧いて出てきた白猫です。
天下●武道会の設定がほぼ完成し、後はトーナメント表の作成のみとなっています。
参加キャラは計17名。@参加職人さんは私を含め9名。各職人の方々、ほぼ2キャラずつ出演させています。
次回チャットイベントの際、トーナメント表を決定したいと思っています。
その時までなら、天下●への飛び入り参加も歓迎しています。是非どうぞ!

……さて、[Puppet]最終章が先ほど完成しました。後は投稿を待つだけとなっております、

が。

サイズがなんとまぁ 102KB もあります。確実に30レスは消費してしまう量。
ということで、最終章を分けて投稿するか一気に投稿するか現在葛藤しています。
皆様がよろしければ一気に投稿しようと考えていますが(一つの流れになってるので切りにくい、っていう…)、やはりこの場合は分けて投稿すべきですかね。
一応前後編に分けて投稿を検討していますが、その辺りの意見を頂きたく。

今日はとりあえず報告をば。
白猫の提供でお送りしました。

249◇68hJrjtY:2008/07/02(水) 18:46:11 ID:UdFsnD5.0
>ドワーフさん
Uアイテムの歴史シリーズキター♪そしてドワーフさんお久しぶりです。
今回のUは一枝梅の刀。RSで数少ない和名Uですが、それがまた座頭市の話とドンピシャ。
一枝梅の刀を仕込み杖にしてしまったというアイディアも驚きました。
でもあのグラフィックを見る限りではとても細くて一見杖に見えてもおかしくないですよね。あるいは本当に仕込み杖だったのかも。
こんな悲恋話があると思うと、今後一枝梅の刀を使う時にフイッと思い出しそうです(ノ∀`*)
ドワーフさんの次回作、お待ちしています。

>白猫さん
武道会&Puppet最終章、ほぼ完成ということでお疲れさ…と、この言葉は読んでからまた改めて(笑)
そしてまた30レス分とは…今までも相当な長さを誇っていた白猫さんの投稿ですが、これは最長記録ですね!?
私個人としては最終章ということもありますし、流れに乗ってだんだん高まるようにラストまで読み抜きたいという
個人的願望も含めて、一気に投稿するという案に一票。
ただ、ちょっと分からないですがこのしたらばBBSの仕様的に「連続投稿が可能かどうか?」というのがありますね。
試した事が無いので詳しい人に是非教えてもらいたいとは前々から思っていましたが。。
本家(?)2chの掲示板では連続した投稿が規制されている事もあります。ただ、ここが2chと全く同じとも思えませんしね。
以前出た改行数同様、このしたらば管理人さんが設定しているとは思われますが…この辺がクリアになれば是非。。

250憔悴:2008/07/04(金) 18:15:07 ID:Wv5HCA4E0
黒い地を音も立てず、人と思える物が歩く。
「此処も、久しぶりね」
人物は、黒いローブを脱ぐ。
その下には薄緑色の長髪が体の半分を覆っていた。
「風も、地形も、山も…変わらない」
兎が呼吸をするようなため息を付くと突風か、長い髪が左に揺れる。
「変わったのは…そう、この風くらいかしら」
聞いたら数分で忘れてしまいそうな蕭蕭とした声。
長くカールをした睫は大きな瞳をより一層と大きく見せる。
服の殆には小さな光る…宝石の様な物が散りばめられていた。
彼女は小さく息を吸い、腰から深緑色の笛を口に当てる。
声と同じく、笛の音も小さく高すぎる音で、すぐに風に消されてしまう。
「私も、変わってしまったのかも知れない…」
分厚い本を2冊、胸に抱える。
その本は血なのか、そういった模様なのか、赤く染まっていた。

昨日の場所が嘘のように黒い地は橙の太陽で照らされていた。
何もないように思われた土地は、家が数軒と、小さな店も並んでいた。
「あら、チェルちゃんじゃないの?」
「アレナのおばさま。元気でいらしたのですね、久しぶりです」
チェルと呼ばれた緑の髪の女性は微笑み、頭を下げる。
「大きくなったわねぇ。そういえばビカプールの東の方を調査されてたんですってねぇ。何か分かったの?」
「…い、いえ。何故か中に入れなくて。何かに守られているようですの」
「そうー。大変だけどがんばってねぇ。私はいつでも相談に乗るからねぇ」
「ありがとうございます。では、また」
チェルは其処から遠ざかると、人気の無い場所でコンパクトらしき物を開く。
そこには20代前半の青年が此方を睨んでいた。
「総帥直々にそんな危ない所に行くなんて…なにを考えてらっしゃるのですか!」
「他の隊員が言っても怪しまれるだけですわ。元々住んでいた私なら平気でしょう?」
「そうですが…ッ」
まだ何かを言いたそうにするが、チェルが区切り、
「それに、太陽が隠れると鬼になる住民…考えられませんわ。私の顔見知りばっかりですのよ?」
チェルはちら、とアレナの居る方向を見る。
「ですが、総帥も昨晩見たでしょう。夜は誰も居ないでしょう?その上アリアンの隊員の数人が見てるのですよ、リンケンの中で鬼を!」
「…もう少し調査して、何か分かったら連絡します…」
返事を待たず、コンパクトを閉じると、西の方角から空が黒く染まっていくのを目にする。

251憔悴:2008/07/04(金) 18:16:38 ID:Wv5HCA4E0
↑sageるの忘れていてすみません;

まだ最近のことだった。
その頃はまだ少し名の知れたビーストテイマーなだけだった、
そんなチェルの元に一通の白い便箋に入ったシンプルな感じの手紙が届いた。
総帥として活動することについて。
母がフランテルを治めていた者から総帥という地位を貰っていたことは知っていたが、まさかこんな自分に地位が移るとは思わなかった。
母はまだ都心で活動していたと思っていたから…
しかし、この頃にはもう彼女は感情を無くしていた為、然程のショックは受けなかった。
総帥としての活動はすぐ、というわけではなく、3,4ヶ月経ってからだった。
周りは年上ばかりの中、母の顔からか組織の全員は親しくしてくれた。
そんな中、ビガプールの貴族から依頼が来た。
その依頼の内容はこうだ。
ここ数日、町の若い女性達が夜中にビカプールの西にある地下遺跡へいくこと。
着いていき、自分らが入ろうとしても入れないこと、
そこへいった女性はいつの間にか家へ戻っていること、
しかし何回か夜が明けるたびにやつれ、終いに依頼主の妻が死んだこと、
まだその怪奇事件は収まってないため調べてほしい、とのことだった。
最初の内、付いたばかりの総帥、チェルは危険なため着いていかなかった。
しかし誰も入れないので、入り口まで行くことにした。
「ここが、その入り口?」
チェルが指差す場所には、大きな洞穴があった。
「そうです、しかしここを潜ってすぐ、扉が有り人一人入れないのです」
確かに、穴から中に入ることはできそうだった。
チェルは指示を出し、穴の中に入ってみることにした。
中は明らかに誰か、人間じゃないかもしれないが自然ではない造りをしていた。
「───…」
チェルは例の扉に右手を当てる。
静まり返った中、他の隊員は頭に疑問符を浮かべるが、チェルはあることを感じ取っていた。
"この扉は鼓動がするのだ"
「…なにもないですわ。けれど、少し調べたいことがあるので先に帰ってくださるかしら?」
その言葉を聞き、危ないんじゃないか…と少し心配顔を見せる隊員も居たが、総帥の明らかな確信を見、その場を去った。
(鼓動をする扉…いえ、鼓動じゃなくても振動でも…なにか手がかりがあるはずですわ…)
ふと、あるところを目にする。
扉と少し離れた場所に建っている石碑である。
其処には文字は書かれておらず、ただ石か何かをはめ込むようなへこみが4つあるのみ。
(…この大きさ…)
何か思い当たりがあるのか、鞄を少し漁ると、緑色の宝石らしき物をつかみ、左上のへこみにはめる。
カチ…と鈍い音がし、ぴたりとはまったと思うと、石碑のある反対方向の場所に入り口が開く。
「…なぜ父上が残してくれたエメラルドが…」
チェルは疑問を持ちつつも、奥の空間に進む。
…其処には一枚の紙が置いてあった。

252憔悴:2008/07/04(金) 18:21:46 ID:Wv5HCA4E0
途中途中穴が開いている紙は、見たところかなり古い物らしい。
チェルはくしゃ、と紙を握り締める。

そして今、だ
まだビガプールの事件は解決していないが、とりあえずリンケンの噂について調査を始めた。
その噂というのが、太陽が沈むと町人が鬼になる、という物だった。
リンケンに何度かいったことのあるチェルには信じられない話だった。
人が鬼に?そんなまさか。
そういったところだった。

゚・*:。.:・*:..:☆.+゚*゚+.。+゚゚.+:。.+:。☆゚+.。+゚゚.+:。.+:。+.。+゚゚.+:。.+:。☆

初めまして。
憔悴(しょうすい)と申します
今までROM専でしたが、
描きたくなったので描いてみました。
下手文ですが、暇つぶしにどうぞです。

253◇68hJrjtY:2008/07/04(金) 20:53:38 ID:rvBV3p4k0
>憔悴さん
初めまして&ROM専さんの執筆、ありがとうございます!
時折のROM専さんの投稿が実に嬉しい限りです♪
二代目総帥となったチェルの前に不思議な導きと共に口をあけた屋敷…
たった一人で入ってしまった(?)彼女ですが、この先に何が待ち受けるのか。
「父上のエメラルド」に反応した扉というわけで彼女にまつわる何かがあるのでしょうか。
続きの方、お待ちしています!

254国道310号線:2008/07/05(土) 03:34:02 ID:Wq6z33060
・小説スレ六冊目

 第一話 〜 ミニペットがやってきた! 〜
 前編 >>487-490 後編 >>563-569

 第二話 〜 狼男と魔女 〜
 1 >>784-787 2 >>817-820 3 >>871-874 4 >>910-913

--------------------

 第三話 〜 赤き呼び声(2) 〜
 1 >>228-232


前回のあらすじ: 紋章品集めの途中、ミモザが崖から落ちて遭難した


―― 呼んでいる、誰かが、私を ――

古都ブルンネルシュティングの西に位置する深い森は、街を包むように広がっている。
温暖な気候と肥沃な大地は豊かな自然を生み出し、様々な生命を育む。
人々はいつしか、広大な緑の土地をこう呼んだ、「グレートフォレスト」偉大なる森と。

木漏れ日が揺れる森の小道を、少女が大きな赤い犬と散歩していた。
薄い金髪を二つに下げ、萌ゆる草木と同じ色の瞳を持つ彼女は、何かをしきりにしゃべっていたかと思うと明る
い笑い声をあげる。
「それでね、ケルビーったら、おかしいんだよ。」
彼女は連れている犬ではなく、誰の姿も見えない空中に話しかけていた。
暖かい風が木々の間をすり抜け、ざわざわと葉音を鳴らす。
まるで、少女の言葉に応えるかのように。
「あー、そうなんだ。 うふふ。」
そして、彼女も見えないモノの返答に微笑みかける。

幼い頃、私は色んな声を聞くことが出来きました。
それは風の囁きだったり、花のおしゃべりだったり、動物のつぶやきだったり…
ありとあらゆるものが私に語りかけ、私の話を聞いてくれていました。
物心付いた頃から自然との会話は当たり前のことで、私にとっての日常でした。


歩いている道の脇から、今まで話していたものとは別のかすかな声を聞き少女は立ち止まった。
「ミモザ、どうしたってんだ?」
森の奥をじっと見つめる彼女に合わせ、隣を歩いていたケルビーも歩を止める。
「だれかが、痛い痛いって言ってるの。」
悲しそうな顔をしてそう告げると、ミモザはぎゅっと右手で自分の左腕を握った。
遠方から響く助けを求める声は、痛みも彼女の左腕に伝えさせた。
声の主を目指して茂みの中へ分け入る彼女をヤレヤレといった風にケルビーは見やる。
「気をつけろよ。」
彼は彼女を見失わないように、すぐさま後を追った。

青々した広葉樹の葉は太陽の光を浴びて宝石のようにきらめいている。
進むにつれ悲痛な声と森の住人達のざわめきが大きくなっていった。

−いるよ きたよ 大きいヤツ だれかいる もう動けない こっちいる いるよ いるいる−

「だれがいるの?」

−大きいの 黒いよ 知らない あんなの見たことない すごく大きい 怪我してる−

いつになく騒ぎ立てる声達、いつの間にかミモザは早足になっていた。
空が見えないほどに繁ったうす暗い雑木林を抜けると、少し開けた場所に出た。
小さい広場になっているその先は急な斜面が始まっており、木立に隠れて洞穴がポッカリ口を開けていた。
「この中だ。」
ミモザは迷う事無く洞穴の中に入る、
トゲが刺さった程だった腕の痛みは、まるで刃物で切り裂かれたように強くなっていた。
洞穴の入り口は小さかったが、中へ入るほど広くなっている。
訴えかける声はもうすぐそこから聞こえた。

少し歩いた洞穴の奥、闇の中にザワザワと蠢く巨大な影がある。
今まで感じたことの無い気配にケルビーはミモザの前へ一歩出ると低く唸り声をあげた。
「大丈夫だよ、ケルビー。」
彼女は勇敢なボディガードを下がらせると、相手を刺激しないようにゆっくり近づいた。
やがて暗闇に目が慣れていき、こちらを凝視する四対の単眼が浮かび上がる。

255国道310号線:2008/07/05(土) 03:34:56 ID:Wq6z33060

−近づくな、人間−

それは5メートルを優に超える深紫色の蜘蛛だった。
威嚇のため前脚を持ち上げるが、動作はひどく遅く、だいぶ弱っているのが見て取れる。
蜘蛛の制止にミモザは足をとめたが、自分の何倍もある巨大な相手を恐れる事無く見上げた。
「あなたが呼んでいたのね。」
この声、それに、振り上げている左前脚の大傷、間違いない。
痛みを感じる左腕に手を当てる、少女はあの声の主はこの蜘蛛だと確信した。
「あのね、痛いよ助けてっていう声が聞こえたの! だから、ミモザね、痛いの治しにきたの!」

やや興奮気味に話し出した彼女に、巨大な蜘蛛は戸惑った。
−おぬし、わらわの言葉が分かるのか?−
「うん!」
ハッキリと自分に答えた人間の子供を見て、蜘蛛は仲間から聞いたことを思い出す。
ビーストテイマー、魔物を使役し操る人間。
その者たちの中には、自然と共感し魔物の言葉を理解する者もいるという。
「…ねぇ、そっちに行ってもいい?」
ミモザは蜘蛛の傷ついた前脚をチラチラ見ながらたずねた。
左前脚の傷は脚の先から中ほどのまでバックリと口を開け、脚は今にも千切れそうだ。
痛いのを治しにきたということは、この左脚を治療したいのだろう。

彼女のやりたい事を蜘蛛は察したが、すぐに返答はしなかった。
ビーストテイマーに気を許すということは、自身が服従させられる危険性がある。
人間の下僕に成り下がることなど、彼女のプライドが許さなかった。
そうとは言え、今の脚さえ動かすこともままならなぬ衰弱した体では、自力での回復は絶望的だ。
屈辱的な生か誇りある死か、彼女は選択を迫られた。


−……かまわぬ、好きにしろ−

しばしの沈黙の後、吐き出す息とともに前脚を下ろす。
彼女は生を選んだ。
「うん!」
嬉しそうにパッと顔を輝かせたミモザは急いで蜘蛛に駆け寄ると、かけていたカバンから救命道具を取り出す。
そして、体液が流れるままに放置していた彼女の傷を治療し始めた。

「おめぇ、ここいらじゃ見かけねぇ面だが、何者だ?」
今まで成り行きを見守っていたケルビーが、大人しく治療を受けている蜘蛛に尋ねる。
蜘蛛を脅かさないようにとのミモザの配慮で彼女と距離を置いているが、万が一、蜘蛛が襲ってきた時に備えて
警戒は怠っていない。

−アラクノイド…、人間達がそう呼んでいる種じゃ−

この地より遥か北方に住んでいたが人間に追われ逃れてきた。
そう語る間、彼女はミモザの方を見ることは決して無かった。
蜘蛛から伝わってくる静かに燃える怒りにミモザはビクリと手を止めたが、そのまま傷薬を塗り続ける。

「はい、終ったよ。」
最後の包帯を巻き終わり、ミモザは笑顔でそう告げた。
傷は全身に及んでいたため、アラクノイドは蜘蛛のミイラのようになっている。
「しばらくは絶対あんせいだからね。 それから…。」
「おい、ミモザ、そろそろ帰るぜぃ。」
他に注意事項は無いかと思案していた彼女をケルビーは急かした。
洞穴の入り口から漏れる光は、すでに赤みを帯びている。
ミモザは慌てて散らかしていた道具をしまうと、ケルビーと共に外へ駆け出す。

−人間よ−

立ち去ろうとするミモザをアラクノイドは呼び止めた。
振り返った少女の半身は夕日を浴びて茜色に染まっている。

−他の人間にわらわの事を黙っていてはくれぬか? わらわを恐れて退治せんと此処に現れぬともかぎらん−

こちらを見すえるアラクノイドの瞳には、切実さが込められていた。
「うん、分かった。」
ミモザはうずくまったままの彼女に手を振ると、黄昏迫る森の中へと家路を急いだ。


あの頃の私は、森に入っては母から教わった治療術で生き物の怪我を治して回っていました。
彼女との出会いはそんな日常の一コマにすぎませんでした。
アラクノイドの頼み通り、彼女の事は私とケルビーと森のみんなだけの秘密にしました。


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