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スタンドスレ小説スレッド

1新手のスタンド使い:2003/11/08(土) 01:58
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

63N2:2003/11/12(水) 18:26

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃               スタンド名:サムライ・スピリット          ┃
┃              本体名:モナ本モ蔵              ...┃
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫
┃  パワー - A〜0 .┃   スピード - ―    .┃   射程距離 - E    ┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃  持続力 - A   .┃ 精密動作性 - ―  .┃  成長性 ― C     ┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃ .「刀」のスタンド。スタンドをそれ単体で動かすことは出来ず、本体...┃
┃ が自分の手に持たなければならない。                  .┃
┃ しかしその切れ味は凄まじく、ダイアモンドでも一刀両断すること .┃
┃ が出来る(ただし、本体の意思によってその切れ味は自由に調 ...┃
┃ 節出来る。切れ味を0にすることも可)。                  ┃
┃ また、これは恐らくスタンド能力の一端なのだろうが、本体はこの...┃
┃ スタンドを発現し、手に持って戦うことでスピードA、精密動作性A....┃
┃ クラスの運動能力を得ることが出来る。                 ..┃
┃ スタンドが破壊された場合、ダメージは腕にフィードバックするが、.┃
┃ その伝導率は低い。                           .┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

64N2:2003/11/12(水) 18:31
以上、前スレに貼ったモナ本モ蔵編でした。
明日はギコ屋編2つを貼ります。

…でも、やっぱり改行増やすくらいの編集はすべきだったかな…。

>>さいたまさん
勝手で申し訳ないのですが、前掲示板でお貼りになった
リナー想像図をもう一度貼って頂けないでしょうか?
小説スレも一応あらすじを作っておこうかな、と考えているのですが、
モナーよりかは彼女の顔を入れた方が適切かと考えたので。

65:2003/11/12(水) 18:51
>>N2氏
このスレ>>15>>23>>37に貼ってあります。

66:2003/11/12(水) 18:52

「〜モナーの夏〜  9月17日・その4」


授業中、俺は色々と能力を試してみた。
思考までは視えないが、感情や体調は視ることが出来る。
透視のようなことも出来るようだ。
前の奴の背中を透かして、さらに前の奴が見える。

…待てよ。
この能力を生かして、女子の服だけを透かすことも…
俺はそっと、隣の女子を視た。

…ウホッ!!

その瞬間、頭に衝撃が走った。
よこしまな事に能力を使った罰だろうか。
俺は、本日3回目の気絶を体験した。


目が覚める。
学校の教室という空間特有の喧騒が、俺を覚醒させた。
俺は机に突っ伏していた。
周囲の人間は、ただの居眠りと思っているのだろう。
誰も、俺が気絶したことに気付いてはいないようだ。
まあ、面倒がなくていい。
ゆっくりと頭を上げる。
…ん? 妙なものが目に入った。
ノートに、覚えのない文字が書き込まれていたのだ。

「能力を使えば、脳に負担がかかると言ったはず。
 つまらない事で力を使うな」

…誰だ?
俺の字よりも遥かに達筆だ。
誰か、俺を監視しているのだろうか。
まあいい。些細なことだ。
とにかく誰かの忠告通り、この能力は普段は使わずにおいた方が良さそうだ。
時計を見る。12:00ちょうど。
まだ4時限目の途中のはずだ。
何故か、みんな休み時間のように立ち歩いている。
不審に思った俺は、前の席のフーンの肩をつついた。
「…何だ?」
「今、4時間目じゃないモナ?世界史の授業はどうなったモナ?」
フーンは椅子の上で反り返って、机の上で両足を組んでいる。
そう、こいつは授業中の態度が極端に悪いのだ。中身は八頭身フーンに近い。
「ああ、先生が欠席で自習だとよ」
フーンは面倒くさそうに答えた。
そういう事か。
自習の時間に、本当に自習をする馬鹿はいない。
仕方ない。もう一眠りするか…

67:2003/11/12(水) 18:53

昼食の時間になった。
誰とも話したくない気分だったので、一人で食堂に行こうかと思ったが…
ギコに捕まってしまった。
「おい、メシ食おうぜ」
ギコはそう言って、しぃ同伴で強引に俺を食堂まで連れていった。

「ところで、今日のじぃとの約束、ちゃんと守るんだろうな?」
食堂の椅子に座ってすぐに、ギコは訊ねてきた。
…今日の夜9時、中庭で会う約束。
気が重くなった。
「…その約束、なんでギコが知ってるモナ?」
「質問を質問で答えるんじゃねえよ、ゴルァ!」
ギコは逆切れで誤魔化した。
しぃはそんな俺たちを心配そうに見ている。
いや、俺の返答を待っているのか。
「…そりゃもちろん守るモナよ」
俺はそれだけを言った。
「そうか。確かに聞いたぞ。これは、俺との約束でもある。破ったら… ただじゃおかないからな」
「わ、分かったモナ…」
ギコは剣道の有段者だ。
それに限らず武道・格闘技マニアでもあり、筋トレは欠かさないらしい。
その彼がただじゃおかないと言った以上、破ったらシャレにならない。

「やあ、モナー君」
モララーが隣に腰を下ろした。
「昨日は大丈夫だったかい?」
「…ああ、大丈夫モナよ」
ギコが首をかしげる。
「昨日?何かあったのか?」
「僕とモナー君と、あと泥棒猫1匹で飲みに行ったんだよ。で、モナー君が酒に弱すぎて倒れちゃったんだ」
「不覚だったモナ」
俺はポリポリと頭を掻いた。
「自分の許容量くらいは分かっとけ、ゴルァ!」
ギコは言った。コイツはとにかく強そうだ。
モララーは悔しげな表情を浮かべてうつむく。
「あの後、僕がモナー君をホテルにでも連れて行こうと思ってたら… クソッ、あの忌々しい女が… あの女が…
 ことごとく僕の予定を邪魔しやがって… 泥棒猫…! 次に会った時は、覚悟した方がいいんだからな…!」
「全部聞こえてるモナ」
なるほど。リナーがいなかったら、俺は婿に行けない体になっていたかもしれないのか。
サンクス、リナー。
「また、いっしょにBARに行こうねモナー君。今度は二人で…」
モララーが頬を染めながら言った。
…お断りだ。
ギコは、突然大声を上げた。
「そうだ、今度、じぃちゃんと2人でそのBARに行ってみたらどうだ!?」
それに反応したのはモララーだった。
「…な! 僕は絶対に許さないからな!! モナー君は僕のものだからな!!
 ネカマにも精神幼児にも泥棒猫にもマイナーキャラにも渡さないんだからな!!」
そう叫びながら立ち上がったモララーだが、突然に前のめりにぶっ飛んで行った。
そのまま、炎上しながら食堂の壁に突っ込む。
めり込むモララー。パラパラと崩れる壁。
モララーの首がありえない方向に曲がっているような気が…

「ネカマって私のこと? 言うに事欠いて、モナー君は僕のもの?
 余りにも聞き捨てならなくて、ちょっとミサイルぶっ放しちゃった…」
そこにはレモナが笑顔で立っていた。
そして、俺の方を向く。
「モナーくん、一緒にご飯食べよ〜?」
「残念ながら、ほとんど食べ終わったモナ」
「なぁんだ…」
レモナはがっくりと肩を落とす。
そう言えば… 今日はトラップの脅威を感じない。
「つーちゃんはどうしたモナ?」
俺はレモナに訊ねた。
つーちゃんとレモナは同じクラスだ。
レモナが笑顔で答えた。「体壊しちゃって欠席だって。あのつーちゃんがねー」
信じられない。
あのつーちゃんが体調を崩すなんて…
鬼の霍乱というやつか。
「おい、そろそろ教室に帰るぞ」
ギコは唐突に言った。
気がつけば、昼食を全て平らげていた。もう、昼休みも終わる時間だ。
俺達はレモナに別れを告げて、教室に戻った。

68:2003/11/12(水) 18:54

あっという間に放課後。
すっかり眠っていて、最後の授業が終わったのにも気付かなかった。
今日は寝てばっかりだ。
俺は帰り支度を整えると、カバンを持って腰を上げた。
そういえば、モララーの姿を見ない。早退でもしたのだろうか。
ギコの姿も見当たらない。
しぃちゃんもいないので、一緒に帰ったのだろう。
さらに言えば、最近おにぎりの存在を忘れている。
学校休んでだんじり祭りを見に行ったとのことだが、つぶされてモチになってるんじゃないか?
とりあえず、仕方ないので一人で帰るか。


家に着いた。
リナーは、ガナーの部屋にいた。
驚いたことに、ガナーを看病しているらしい。
この機会に二人には仲良くなってほしいものだ。
いや、仲が悪いという訳ではないのだが、互いに遠慮しあう関係ってのも息が詰まる。
というか、さっきリナーの部屋を覗いたが、 …ダンボール増えてないか?
ダンボールの中に入っているモノは容易に想像できる。
なにやら、怪しい宅配業者も出入りしているらしいし…
まあ、細かいことは考えないことにした。
家の一角が武器庫になってしまった。それだけだ。
そう言えば、夕飯係のガナーが倒れたという事は…
そう、俺かリナーしかいない。
リナーに作らせるとまた犠牲者が出るので、俺が作るしか…
無理!!
俺にそんな甲斐性などない!!
しゃーない、コンビニ弁当でいいか。

という訳で、夕食を終えた。
ガナーには、おかゆを作ってやった。
ごはんをお湯に叩き込んでふやかすくらい、俺にもできる。
何て優しいお兄ちゃんなんだ、俺は。
そういう訳で、ガナーは部屋で眠っている。
台所には俺とリナー2人きりだ。
「あ、今日の9時ごろちょっと外出するモナ」
俺はリナーに告げた。
「最近は物騒だ。気をつけてな」
毎日殺人鬼探しで夜道をウロついているのに、物騒とは言いえて妙だ。
俺は少し可笑しくなった。
「もし、殺人鬼探しの時間に間に合わなかったら、先に行ってほしいモナ」
「ああ」
リナーはうなづく。
俺は、コンビニ弁当の残骸を袋に入れた。
それをまとめてゴミ箱に放り込む。
「さて…」
リナーは腰を上げた。ガナーの部屋に行くようだ。
俺は、リナーに訊ねた。
「もし今のモナが吸血鬼と出会ったら、どの程度戦えるモナ?」
「どの程度も戦えはしない。君には、奴等のスピードをとらえることは出来ないからな。
 あっという間に八つ裂きだ。意味不明な質問だな」
リナーは当然のように答えて、台所から出て行った。
「やっぱり、そうモナか…」
俺は呟いた。
だからといって、リナーに頼るわけにはいかない。
これは、俺の約束だ。俺一人でやる。

69:2003/11/12(水) 18:56

8時45分。
今から行けば、ちょうど9時には学校に到着する。
俺は、殺人鬼探しの時に所持しているバヨネットを手にした。
リナーから受け取った護身用。
法儀式済みの、対吸血器用の刺突用武器。
それを懐にしまう。
こんなものを使う事態など考えてもみなかった。
俺の今まで生きていた日常、そんなものは遠い過去だ。
俺は、踏み込んでしまった。
もう戻れない。
そう、戻れないのだ。俺も、あの子も。
だが感慨にふける時間はない。
躊躇も、恐怖も諦観も必要ない。
約束した… それで十分だ。


夜の学校に、全く人気はない。
そう。夜の学校は、昼間とは異質な空間だ。
俺はそんなことを思いながら中庭に出た。

鮮やかな月の光。
それを存分に浴びながら、じぃちゃんは立っていた。
一本だけ植えられた大きな木にもたれながら。
「…じぃちゃん」
俺は呼びかける。
じぃちゃんはゆっくりと振り向いた。
月光に照らされるじぃちゃんの姿。
妖艶――その言葉が一番似合う。
「来てくれたんだ…」
じぃちゃんは嬉しそうに、少し悲しそうに言った。
「そりゃ、約束だから来るモナよ」


俺はじぃちゃんに近づいていった。
「こうやって、二人で話せるって今までなかったよね」
「そうモナか?昨日、一緒に帰った時だって…」
じぃちゃんは、少しむっとした表情を浮かべた。
「全然話してないじゃない。モナー君、私の話なんか聞いちゃいなかったくせに」
「そ。そうだったモナか…?」
そういえば、そんな気もする。
「今までずっとモナー君がそんなんだったから… 私、嫌われてるのかと思って…
 モナー君、私がずっと好きだったこと、気付いてなかったでしょ?」
「すまないモナ。モナは鈍いから、全然気付いてなかったモナ…」
つくづくその通りだ。俺は、全く気付いてなかった。
「本当にねぇ…今までの私の努力は何だったのか…」
じぃちゃんがため息をついた。
このため息ももう何度目だ。
「本当に、モナは鈍いモナ… だから、聞きたいことが一杯あるモナ」
「うん、いいよ。なんでも聞いて」
じぃちゃんは嬉しそうに言った。
俺と話せることが、楽しくて仕方がないみたいに。
「ギコとしぃちゃんは、モナ達をくっつけようとしてたモナ?」
「そうだよ。あの二人、ずっと協力してくれて… 普通、あそこまで露骨なら気付くもんだけどね」
今まで、全く気付いていなかった。
俺の愚鈍ここに極まれり。
「いつからモナのこと好きだったモナ?」
「もう、覚えてないくらいずっと前から」
じいちゃんは頬を赤くした。
たぶん、俺の顔も真っ赤だろう。
「じゃあ…」
俺は、最後の質問に少しの間躊躇した。

「肉体を維持するために、何人の命を犠牲にした?」

じぃちゃんはうつむいた。
「5人、かな… 今のところは」
今のところは。
いずれ、その数は数え切れないほどに膨れ上がる。
そう、今まで食べたパンの枚数を覚えていないように。
「やっぱり、気づいてたんだね… 昨日から、体の調子が悪くて…
 人の血を吸わないと、生きれなくなったみたい…」
じぃちゃんは、うつむいたままで言った。
俺は、その姿をじっと見つめている。
「私の気持ちには気付かなかったくせに、そんな事は気付いちゃうんだね、モナー君は…」
じぃちゃんは、ため息をついた。
俺のせいでため息をつかせるのも、これが最後だ。
「…ごめんモナ」
俺は謝った。何に謝ったのかは、自分でも判らない。
今までのコトか。これからのコトか。
「こんな時に謝るなんて…本当に鈍いというか、デリカシーがないというか…」
じぃちゃんは顔を上げた。笑っていた。だが、哀しそうだった。

「じゃあ…殺し合おっか」
じぃちゃんは、寂しそうな笑顔を浮かべて言った。
「ああ…」
俺は懐からバヨネットを取り出した。

今日は本当に嫌な夜だ。
月はあんなに美しいのに。


  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

70ダンボール </b><font color=#FF0000>(M.nd32Bk)</font><b>:2003/11/12(水) 19:40
N2 さん、さ さん
二人とも乙です。
二人の作品 SAVE しときました。
これからもかんばって下さい。

71N2:2003/11/12(水) 20:10
乙です!!
日常と異常の境界線がパッと見では気付かないくらい自然で、
ゾクッとしました。頑張って下さい。

後、リナーAAの件スイマセンでした。気付いておりませんでした。
嗚呼、我が節穴の目…。

72N2:2003/11/13(木) 22:59
予告しました通り、ギコ屋編を貼り直します。
…しかし、改めて読むと特に最初の2話が厨臭い…。

73N2:2003/11/13(木) 23:00

             本編と時間軸は同じだが違う町という設定である。
           〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
                      ○
                     O
                    o
                ゴルァ ゴルァ
                   ∧ ∧  |1匹300円|
             ⊂  ̄ ̄つ゚Д゚)つ|____|
               | ̄ ̄ ̄ ̄|     ||           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
               |____|     ||    ∩_∩ <今から「番外・逝きのいいギコ屋編」が始まるよ〜
                              G|___|  \_____
|;;::|∧::::... / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄             ( ・∀・)∩
|:;;:|Д゚;)< 私も出るぞ・・・              ⊂     ノ
|::;;|::U .:::...\________             ) _ (
|::;:|;;;|:::.::::::.:...                       (_) (_)∧_∧  ∧_∧  ∩_∩
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             (    )(    ) (    )      ( ∧_∧(    ) ∧_∧
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              (    )∩_∩ (    )        (    )(    )(    )

74N2:2003/11/13(木) 23:00

 アナザーワールド・アナザーマインド その①

 血――それは生命の象徴であり、かつ自らの先祖との繋がりの証である。
 我々は血を、単なる酸素運搬器官としてではなく、むしろ神秘的な存在として捉えている。
 しかしこの血を――、全く関係の無い者が他者の血を渇望することなど、果たしてあるのだろうか?
 いや、我々は知っている…。生けとし生けるものの血を糧とし、己の力とする怪物の存在を…。

75N2:2003/11/13(木) 23:01

 風の噂で、どこかの町では『矢』だか何だかで騒動が巻き起こっている、とは耳にしたが、そんなことはギコ屋の商売には一切関係が無かった。
 彼にとっては、その地での売れ行きが全てであった。
 「今なら逝きのいいギコが1匹300円だよ〜!はいはいそこの皆さん寄ってらっしゃい見てらっしゃい、三陸沖で獲ったピチピチのギコ、こんなに逝きのいいのは滅多に手にはいらないよ〜!」
 「…全然売れねえな、ゴルァ」
 「…あ〜あ、全くだよ。最近売れ行きがとても悪いし、このまんまじゃまた夜逃げしなきゃいけないかな…。こうなったら、最近俺が習得したパフォーマンスで一気に客寄せするしかないぞ!」
 「…本気か?」
 「本気さ!じゃあやってみるよ!はいはい皆さん寄ってらっしゃい見てらっしゃい、今から逝きのいいギコ屋の世にも不思議なパフォーマンスが始まるよ〜!!」

 宣伝の効果で、少しずつ通行人が彼の方を向き始めた。
 「まずこちらに、逝きのいいギコがいます。そして彼の首に注目!!」
 ギコ屋は相棒ギコの頭を掴んだ。かと思うと、相棒ギコの首は引っこ抜けてしまった。
 「はい、何とギコの首が抜けてしまいました〜!あ、皆さん待って待って、何もここで皆さんには虐殺ショーを見てもらおうとしたんじゃないんですよ、まだ続きがあります、続きが。で、ここで首と胴を近くに置きます。で、この切断面に私の頭に巻いてるタオルを被せます。そしてここで私が3つ数えると、何とギコの首は元に戻っているのです!あ、ちなみにちびしぃはどこにもいませんからね〜。ではいきますよ。1,2,3!!」
 ギコ屋がタオルを取り払うと、ゴルァ!という威勢のいい鳴き声と共にギコは飛び上がった。勿論、彼の首は繋がっている。
 「はい、皆さんいかがでしたか〜?この世にも奇妙なマジックは以上です〜!!」
 周囲の観客達は、大いに盛り上がった。
 (よし、これなら最低20匹は下らないぞ)
 ギコ屋は売り上げを期待したが…、観客達は盛り上がっただけだった。中にはこれがただの大道芸と思って小銭を投げつける者までいた。
 「…駄目じゃねぇか」
 「うう…、せっかくこんな不思議な力を手に入れたのに…」
 「…大体な、これをやられる方のことも少しは考えろよ。はっきり言って生きた心地がしねえんだぞ、ありゃ。大体お前もなんで自分がそんな事出来んのか分かってねえんだろ?」
 「いやまあ、それもそうだけどさ…。でも原理が何だろうと客がウケれば万事良しって…」
 「駄目なもんはどう手を尽くしても駄目だぞ、ゴルァ」
 「…商売って 難しいね…」

76N2:2003/11/13(木) 23:02

 観客達は徐々に彼の元を離れ始めた。しかしその中に、頭からフードを被り、マントを羽織った男が一人、ギコ屋の元へと歩いてきた。
 彼はギコ屋の前に札束を落とした。
 「…これでそのギコを…いや、お前を含めたこの場にいる全員を買いたい」
 突拍子もない質問にギコ屋は目を丸くしたが、とりあえず自分の相棒を買いたいということだけはまず理解した。
 「お客さ〜ん、こいつは済みませんけど売りもんじゃないんですよ。それに私を含めたこの場にいる全員っていった…」
 ギコ屋の返事が終わるのを待たずに、男は突然袖から『矢』を出すと、手馴れた感じでギコ屋の胸を一刺しにした。
 「…!? かはっ…」
 「!!?? おい、お前ッ!!俺の相棒に何を…」
 「…最も、金を払ったところで才能が無ければ何の意味も無いのだがな…」
 そう言うと、男は観客達が悲鳴を上げる前に、その全てを『矢』で貫いた。
 「てめぇッ!大事なお客さん達まで…!!」
 「…無論、君とて例外ではない」
 男は、今度はギコの首に『矢』を突き立てた。
 「あがっ…、て、てめぇ…」
 「どうやらそこらのクズどもとは違って、こいつには『才能』があるらしいな…。やはり私の見込み通りであった」
 男はギコの首から『矢』を抜き取り、そして彼の耳元で一言、こう言った。
 「君は『矢』に選ばれた。おめでとう」
 その言葉を聞き終える前に、彼は気を失った。
 「しかし、それでも他に一人二人は見つかるだろうかと期待していたが、結局こいつだけだとはな…。だがしかし、ここ最近はハズレばかりに当たっていたし、まあ良しとするか」
 そう言うと男はギコを抱きかかえ、その場を去ろうとした。しかし、自分の背後から只ならぬ殺気を感じ、男は振り返った。

 そこには、有り得る筈の無い光景があった。先程確かに『矢』に貫かれたギコ屋が、『矢』で貫いた瞬間には全く『能力の手ごたえ』を感じなかったギコ屋が、ふらつきながらも立ち上がり、こちらに鋭い眼光を浴びせていたのだ。
 「お前…お客さんたちを殺した挙句にうちの相棒をさらおうなんて…どういう神経してやがんだ〜!?」
 (こいつ、確かに才能は感じなかったのに…)
 「お前に何かで刺されたおかげで…何だか変に力が湧いてくる感じがするしよぉ〜」
 (まずいな…普通なら『矢』に刺されればどんな者でも気を失うのに…。そうすればその隙に連れて行くことも出来るが、こいつはまさに私と戦う気満々ではないか…)
 「ならばッ!貴様の能力は惜しいが!私の前に立ちはだかる以上は貴様を全力で駆逐するまでよぉ――ッ!!」
 男はスタンドを発現し、ギコ屋の心臓めがけて拳を振った。
 しかし、男の拳がまさにギコ屋の胸にヒットしようとした瞬間…、男の腕は、音も無く拳と肘の間でスッパリと切り落とされた。
 「…!!?? 何ィ――ッ!!こっ、これはッ!!」
 「お前は絶ッ……………対に許さん!!ギコをとっとと返せ!!さもないと今度はお前の全身がニクコプーンになるぞ、クラァ!!」
 (馬鹿な…一体こいつ、何の能力を…。いや、それ以前に何故『矢』に刺されて…)
 男は瞬間、全てを理解した。先程のギコ屋の路上パフォーマンス、あれがギコ屋のスタンド能力によるものだとしたら。そして彼もあの時は自らのスタンド能力を自覚できるほど能力が覚醒しておらず、この『矢』がその覚醒の最後の鍵となったのだとしたら!
 (まずいな…どうやら今回も『ハズレ』らしい…。しかも最悪の…)

77N2:2003/11/13(木) 23:02

                  どうでもいいがとっとと助けろ、ゴルァ
            〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
                      ○
                     O
                    o
                ゴルァ ゴルァ
                   ∧ ∧  |1匹300円|
             ⊂  ̄ ̄つ゚Д゚)つ|____|
               | ̄ ̄ ̄ ̄|     ||           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
               |____|     ||   ∩_∩ <謎の男の腕が落ちた!!さてこれから先の展開は如何に!!
                             G|___|  \_____
|;;::|∧::::... / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄            ( ・∀・)∩
|:;;:|Д゚;)< 私もいよいよ・・・            ⊂      ノ
|::;;|::U .:::...\________            ) _ ( セツメイクサ…
|::;:|;;;|:::.::::::.:...                      (_) (_)∧_∧  ∧_∧  ∩_∩
|:;::|::U.:::::.::::::::::...    ∧_∧  ∧_∧  ∩_∩      (∀`  ) (    ) (    ) モトネタト セリフノカンジガ チガウゾ
            (    )(    ) (    )      ( ∧_∧(    ) ∧_∧
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78N2:2003/11/13(木) 23:03

 アナザーワールド・アナザーマインド その②

 ギコ屋は自分が今何をしているのか、実の所よく分かっていなかった。ただ何かに刺されたことで力が湧き、この男に対する憎悪をぶつけんが為に自らの『超能力』を使ったのだ。男の頭上に何か見たこともないようなものが漂っていることさえも、既に当然の如く感じられた。ともかく、ギコを何としても救わねば。彼の頭にはそれしかなかった。
 「さあ、ぼけっと突っ立ってないで、早くギコを返したらどうだ!」
 (まずいぞ…こうなれば、私の真の能力を使わねばならんのかも知れん…。しかしその上で万が一こいつに逃げられてしまったなら…これから『王』となる者として…、いや、スタンド使いとして敗北することになる…。ここで消えるか、それともこいつを消すか…)
 「何にもしないんだったら、こっちからいくぞ!!クラァ!!」
 ギコ屋は、やはり当然のように自らのスタンドのビジョンを出した。流石に商売柄からか、その顔はギコそのものである。しかしながら、どちらかと言えばその全体像は人に近く…、かつその四肢は人工の物の様である。
 (こいつッ、既にここまで…)

 「クラァ!!」
 ギコ屋はそのスタンドで一気に振りかぶった。そのパンチは男の顔をかすめた。
 (危なかった…いや、違う。こいつはスタンドを発現して本当にまだ間も無い。だからこそ、その扱いに慣れておらず、まだパンチの振りが必要以上に大きいし、しかも狙いが全然定まっていない。…だが、それでいてこのスピード、このパワーは何だ?このスタンド、想像以上に…危険だ!!)
 確かに男の予想通り、ギコ屋の拳の軌道は全く定まっておらず、すぐ背後の店のショーウインドウのガラスは見るも無残に割り砕かれていた。何発打とうとも、その全てが彼の頭上とか、あるいは胴を逸れてマントに当たるだけだった。だが、初心者対ベテランの戦いではあったが、そこには大きなハンディが存在した。
 (クソッ、だがいくら初心者相手とは言え、近距離パワー型に片腕一本で立ち向かうのは余りに辛い!もしこの状態でラッシュを打ち込まれたなら…)

79N2:2003/11/13(木) 23:03

 その時、男は気付いた。切り落とされた腕に、全く痛みが走っていないのだ。
 (…先程は余りに急な出来事の連続だったから気付かなかったが…、痛みが無いどころか、血の一滴すら落ちてこない)
 その落ちた手を見ると、それはまるで携帯電話のバイブレーションの様に震え出していた。かと思うと、腕は独りでに浮き上がり、凄まじいスピードで男の元へと戻って来た。そして、その切断面がピッタリと合わさると、何事も無かったかの様にまた一本の腕となった。
 「フ、フフ…。貴様の能力!見破ったぞ!!貴様の能力は!物体を一時的に切り離し!そしてまた元に戻るというものだな!!それさえ分かれば何も恐ろしいことは無い!」
 「…ちょっと違うな…。『切り離す』んじゃなくて、『分解』するんだ…」
 「それがどうした、たかがその程度の違いなど、無意味!!」
 男はギコ屋に対してラッシュの構えをした。
 「それはどうかな…?自分の周りをよくご覧よ」
 「何…!?」

 その一言で男が周りを見回すと、その壮絶な光景に恐怖した。彼の周囲には、まるで水晶で造られた剣の様なガラスの破片が無数に浮かんでいた。
 「俺がさっき、無意味に後ろのガラスを割ってたと思うなよ。ガラスを無数に分解し、その破片の一つをお前のマントの中に仕込んだ。今浮かんでいるガラスの破片はッ!お前のマントの中にある『破片』(パーツ)に引き寄せられるッ!!」
 「だがそれ位、私が防げないとでも思ったのか!!」
 「確かに、あんたの能力は凄いかも知れないが…、俺のラッシュがそこへと組み合わされば…どうかな?」
 男の返事を待たずして、ガラスの破片とギコ屋のラッシュが男に襲い掛かる。
 「クラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラァッ!!」
 「こうなったら仕方あるまいッ!『アナザー・ワールド』!!」

80N2:2003/11/13(木) 23:04

 彼が自らのスタンドの名を叫ぶと、途端に彼以外の全てのものは活動を停止した。…そして、じっくりとじっくりと、あたかもテープの逆再生の様に巻き戻されていった。
 「貴様には何を言っても分かるまい…いや、聞いても聞いていない過去へと巻き戻される訳だがな。我が『アナザー・ワールド』の能力は!世界の時間を巻き戻す!!そしてこの私だけが、無生物限定ではあるがその世界に干渉出来る!!時が戻る中で私が新たに『書き込んだ』活動は、再び時が再生された時に『逆再生』されるのだよ!!…丁度いい処刑方法を思い付いたぞ。果たして貴様ごときに防ぎ切れるかな…?」
 そう言うと男は、一本のナイフを懐から取り出し、その刃を持ってギコ屋の額へと投げ付けた。そのナイフは、柄の方からギコ屋の頭をすり抜けていった。
 「時が『再生』されれば、ナイフはお前の後頭部に突き刺さる。そしてお前は何も知らずに死んでいく訳だ。…私はこんな所で死ぬ訳にはいかないのだよ。必ずや…かの『DIO』の能力へと追い付き…空条モナ太郎、ひろゆき、そしてあの『矢の男』を超越してやる!!行くぞ、時よ、『再再生』しろッッッッ!!!!」
 再びガラスは動き出し、ギコ屋はラッシュを打ち出した。が、その場所には既に男はおらず、ギコ屋が仕込んだガラスの破片だけがその場に残されていた。

 「ば、馬鹿なッ!?」
 そして、彼がその突然の事態に気を取られている間に、ナイフは高速でギコ屋の後頭部目がけ飛んできていた。その様子を、男はギコ屋の遥か後方で眺めていた。
 「馬鹿は貴様だッ、ぶっ刺されぇぇ――――!!」
 その瞬間、近くの電柱の裏からまるでロボットの様な腕が飛び出し、そのナイフを弾き飛ばした。
 「…お前に弟が任せておけるものか、こうなったら私が救出しに行くまでだ!!待てえ――――ッ!!」
 電柱裏から一匹のどこかで見たようなギコが飛び出し、相棒ギコを抱えた男を追いかけていった。
 「えっと…、あれ誰だっけ???…ってそんな事は問題じゃない!」
 そう叫んで、ギコ屋も彼らの後を追いかけていった。だが、その時ふとあの客達が気になって後ろを見ると、彼は驚愕した。何と、あの男に刺された客達の傷が、全て塞がっていたのだ。しかし客も心配ではあったが、理由は分からなくとも傷が治っているし、目を覚ましはじめる者も中にはいたので、恐らくは放っておいても問題無いだろう、と彼は判断し、追跡を再開した。

 …スタンド使いはスタンド使いに引き寄せられる…。

 To Be Continued...

81N2:2003/11/13(木) 23:05

                        .______
                        │        .│
                        │都合により │
                        │無期限休業 |
                        | 致します。....│
            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ . . .|______|
   ドルァ ドルァ < By ギコ屋         ||
      ∧ ∧   \_____         .||
⊂  ̄ ̄つ゜д゜)つ                  ||
   | ̄ ̄ ̄ ̄|                    .||
   |____|                   


                        ∧_∧  ∧_∧  ∩_∩
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82N2:2003/11/13(木) 23:05

 降り注ぐ『バーニング・レイン』 その①

 結局、あれから相棒もあの男も、正体不明のギコも見つけることは出来なかった。
 それ以来、店は無期限臨時休業にして相棒探しを始めた。もう3日目だ。
 …あの日のことは、今でもよく分からないというのが本音だ。
 ワケワカラン男が突然現れたかと思うと何かで刺され、更には相棒を連れ去られた。
 心の中には、ぽっかりと穴が開いてしまった感じがする。
 オレにとっては、余りにも大きな損失だ。
 しかし、その矢みたいな物で刺されてからは、それ以前はおぼろげなものでしかなかった『超能力』が、もっと形ある物になったような気がする。

 「クラァ!!」
 叫び声と共に、オレの後ろからギコみたいな姿をしたやつが現れる。
 出て来い、と思えばこいつはすぐに出てくる。
 どことなく相棒のやつに顔が似ている気がしないでもないが、そんなことはどうでもいい。
 パンチを打て、と思えばパンチを打つ。
 キックを放て、と思えばキックを放つ。
 とにかくこいつは、オレの思うがままに動いてくれる。
 そして、こいつが何かを殴る時に「分解しろ!」と強く念じると、その物は粉々に、そして見えないほど小さく分解してしまう。
 が、どんなに強く念じても、必ず10数秒もすれば少しの狂いも無く元に戻ってしまう。
 …一体こいつは何者なのだろう?
 オレが言葉を掛けても、こいつは全然返事をしない。
 全く不気味だな…とは思うが、まあ、せっかくなんだし、使える物は有効活用させてもらおう。

83N2:2003/11/13(木) 23:06

 「すみませーん、この辺でこんなギコ見ませんでした?」(やべ、あらやだに声掛けちまった)
 「いやあ、全然見なかったわねぇ」
 「…そうですか、どうもすみません」(とっととこの場はずらからせてもらおう…)
 「あらやだ、でもこのギコちゃん、可愛い顔してるわね〜。家の近くの野良ギコちゃんもまたこれが可愛いんだけど、やっぱり人に飼われてるのは違うのかしらね〜」
 「は、はあ…。そうじゃないんですか?」(んなこと聞いてねえぞ)
 「でも、こんなに可愛いとあの野良しぃちゃんと一度会わせたくなってくるわぁ」
 「そ、そうですか…」(勝手なこと言うなよ…)
 「うん、そうよ!やっぱりこの子にはあの野良しぃちゃんがぴったりよ!」
 「そりゃ、どうも…」(…あんた、人様の飼い猫に野良をくっつけさせようなんてどんな神経してやがるんだ?)
 「ほらあんた、のんびりしてないで早くこのギコちゃん連れて来なさいよ!」
 「…あの、ですからそのギコを探しているんですが…」(てめえ、人の話聞いてたのか!?)
 「何よ、あんたいざって時に使えないわね〜」
 「……(去る)」(貴様、 頭   飛   ば   す   ぞ)

84N2:2003/11/13(木) 23:06

 もうこの町は片っ端から聞き込みをした。
 …だのに、全っ然目撃情報が無い。
 「はぁ…、あいつどこ行っちまったんだろ…」
 もうあいつとの付き合いは長い。
 お客さんから「こいつは、お前さんのところにいたほうがいいじゃろう」と返品されて、それを機にこれまでずっと2人3脚でこの商売を営んできた。
 いつも威勢のいい掛け声で客引きをしてくれた。時には大道芸もしてくれた。
 あいつをさらおうとした奴を帽子で撃退した時もあった(あの後相棒がやたら落ち込んでたのが気になったが)。
 どうしてもあいつがいいと言って聞かない客に駄目だと断ったら、そいつが運悪く地元の有力者で、見事に地域ぐるみで不買運動を喰らったこともあった。
 …いつもそばで支えてくれたのに、どうしてこんなことに…。
 …目の奥が熱くなってきた。こんな所で泣いたら大恥だ。
 オレは急ぎ足で裏通りへと入った。

 と、その時である。オレの前方に、見覚えのある姿が映った。
 「…あれっ!?」
 信じられない光景に、つい何度も目をこすってしまった。
 少し遠くて見え辛いが間違いない。相棒だ!!
 「お――いッ!ギコ――ッ!!」
 思わずあいつの名前を叫んでしまった。無意識の内に、足は勝手にあいつの方へと向かって地を蹴っていた。
 ところが…、あいつはオレの声を聞いてこちらをチラリと見るなり、走って逃げてしまったのだ。
 「あれっ…え…?」
 予想外の事態に一瞬戸惑ってしまったが、ここで逃げられたらもう一生会えなくなるかも知れない。
 オレは迷わずあいつの後を追った。
 「待て、ギコ――――ッ!後ろにマタタビ落ちてんぞ――ッ!」
 …全然見向きもしない。
 あいつは時折こちらを見ては、建物の間を野良猫の様に(元々猫だが…)スルリスルリと潜り抜けて行く。
 だが、決してオレの視界からは消えない。
 その様子は、オレを撒くと言うよりはむしろどこかへと誘導しているようであった。
 時々ポリバケツにぶつかったり、ドブにつまずいたりしながらも、オレは必死にあいつの後を追った。
 ふと、潮風が鼻へと飛び込んできた。
 「海…?」
 古びた雑居ビル郡を抜けると、そこは港だった。
 そこにある大きな倉庫の扉を開け、あいつはその中へと消えていった。
 オレもそこへと足を踏み入れようと、扉を引いた。
 …その瞬間、ある強烈な臭いが漂ってきた。血だ。
 マグロの解体作業か?んなこたぁーない。
 こんなに強烈な血の臭いがするだなんて、一体この中はどんなことになっているのか?
 そして、相棒は何故この倉庫に入ったのか?
 足が自然とすくむ。
 「が…頑張れ逝きのいいギコ屋!こん…こんな所でおじ…怖気付いてどうするんら…!!」
 …舌が回らない。
 それでも、いつまでこんな所に立ち往生していたら何のためにここまで来たのか、ということになってしまう。
 オレは意を決して、一気に扉を引くとその中へと飛び込んだ。

85N2:2003/11/13(木) 23:07

 相棒であるだなんて気付かなければ良かったのかも知れない。
 追っている途中でバテて諦めれば良かったのかも知れない。
 怖気付いて倉庫を前にして帰ったほうが良かったのかも知れない。

 中は、地獄絵図であった。
 地獄絵図と言うよりもむしろ地獄そのものであった。

 倉庫に入ってまず目に映ったのは、床に飛び散る大量の血肉だった。
 気が動転しているくせに、頭はすぐ冷静に自体を把握し始めた。
 まず、その大半が、元々はしぃ・ちびしぃであった『もの』であるということはすぐに判断出来た。
 しかし、そのどれもが、その肉体に大きな裂け目が入っている。
 次の瞬間には、これがただのしぃ虐殺厨の仕業ではないということを思い知らされた。
 奥には、多種多彩な者達だった『もの』が、所狭しと転がり、山積みにされていた。
 モナー、ギコ、モララー…、ぞぬ、ニダー、アヒャ…、とにかくそのどれもが誰だかすぐ分かる著名な連中ばかりであった。
 壮絶な光景に、オレも卒倒しそうになるが、かえって強烈過ぎて気を失えない。
 更に驚愕の事実は続く。
 奥の壁に、真っ赤な血人形が磔にされていたのだ。
 八頭身モナー?ギコ?フーン?
 …ところが、オレの予想はどれもハズレだった。
 血人形の下には、散りばめられた『白』が広がっていた。
 その『白』とは、よく見ると…羽毛である。
 …クックルだ。
 そんな馬鹿な。あのクックルがここまで無残な目に遭うはずがない。
 一体どこの虐殺厨の仕業だ?
 その瞬間、横でブボン、と鈍い爆発音がした。
 「グボエガロギガ…」
 「…骨がねぇーなぁー(w こいつも所詮はあの糞虫と同族ってことか…」
 何者かが、あのモンスターしぃを持ち上げていた。
 しかし、見た瞬間でこそまだモンスターしぃと判断出来たが、次第に肉は崩れ、血は吹き出し、すぐにそこらの肉塊と同じになってしまった。
 そして、その何者かとは…相棒であった。
 「……!!!!」
 「なあ、相棒よぉ――」
 突然声を掛けられ、身体がビクン、と飛び上がった。
 返事はとても出来ない。
 「虐殺…ってのはよ、しぃみてえに無抵抗で非力な連中にするのも面白いが…、普段強ぇ強ぇと呼ばれてる奴らを絶対的な力でねじ伏せるのはもっと爽快だな(藁」
 「ギコ…お前正気か?」
 聞かずにはいられなかった。あの口は悪くとも仁義に厚い相棒が、こんな虐殺なんて真似を出来るはずがない。
 「オレが正気かどうかは、顔見れば分かんだろ、ゴルァ」
 顔は…、アヒャってない。目も普通だ。普段の相棒と何ら変わりない。ただ1つ違うとすれば、その表情が異様に清々しいことくらいか。
 「おい…嘘だろ…お前はこんなことする奴じゃないだろ…」
 身体の奥底から、悲しみと怒りの震えが込み上げる。こんなやり場の無い怒りは初めてだ。
 だが、相棒はオレの想いを踏みにじるように、冷たく言い放った。
 「いいや、漏れの仕業だ…。この惨劇は、全てこの漏れが引き起こしたのさ!そう!この狭く暗い空間に閉じ込められた哀れな生贄達の絶望と苦しみの鎮魂歌!その指揮を執ったのは、まさしくこの漏」
 「黙れ!!!!」
 込み上げる怒りは、抑えられなかった。溢れ出る涙は、堰き止められなかった。
 「お前、一体何があったんだよ!?あの男に連れられてから、お前何が変わっちまったんだよ!!」
 「何も変わってはいないさ…。ただ1つ、あの『矢』に突かれてことで、この『バーニング・レイン』が発現したのを除けばな」
 相棒の後ろから、何者かが飛び出した。オレのものと同じ、『超能力』の塊だ。
 「まだ惨劇は終わっていない…。あと1人、最後の生贄がいる」
 「何!?」

86N2:2003/11/13(木) 23:07

 相棒の目線の先には、一匹のぽろろがいた。その様子は、ひどく怯えている。あの「最強」と謳われたぽろろが怯えるだなんて…。
 「てめえのやり方は最初っから気に入らなかった…。純真そうな振りをして何も知らねえ連中を喰らう、とはな…。漏れの『正々堂々』の心理に最も反する、最悪の大罪者だ。だからこそ、てめえは最後までとっといてやったんだぜ?他の手慣れの連中どもが為す術も無く肉塊に帰すのをただ見るしかねえ絶望を味わい、ギリギリまで追い詰められてから氏んでゆけ!!!!」
 相棒はその『バーニング・レイン』とやらを出したまま、ぽろろへと猛進していった。
 「氏ねッ、『最強』!!」
 ぽろろは壁の方へと後ずさりしていった。もうその表情は絶望の色しかない。
 「終わりだぁ――――!!」
 だが、相棒がぽろろを掴もうとした瞬間、ぽろろの顔つきが急に変わった。
 「ぃぇぁ!!」
 突然、ぽろろが巨大化した。
 「何ッ!!」
 ぽろろは敢えて腹を掴ませ、間髪入れずそのまま破壊される前に相棒を取り込んだ。
 「…ぃぇぁ」
 「こ…の下衆…や…ろ………」
 間も無く、相棒の声は聞こえなくなった。
 「………」
 ぽろろがこちらを見ている。その目は、どこかオレに申し訳なさそうであった。
 「…仕方ないよ、君のやったことは已むを得なかったんだ。確かにオレの大事な相棒ではあったけど、こんな目に遭ったのなら…」
 ふと、ぽろろを見る。様子がおかしい。
 「…おい、どうした!?ぽろろ、ぽろろ!!」
 「…ぃ…ぇ…」
 全身が痙攣している。目は白目を剥いている。オレの声は、もう耳には入っていない。
 次の瞬間、ボンと大きな音と共にぽろろの首が破裂した。
 直後、雪上がりの朝、屋根から水がまとめて垂れるような、ビチャビチャという音が倉庫に響く。
 そして…、ぽろろの首の代わりに、そこには血まみれの相棒の頭が生えていた。
 「…ぁ…」
 「『バーニング・レイン クラッシュアウト』…。てめえの身体には、有り余るほどのエネルギーを流し込んでやったぜ」
 相棒は、先程までぽろろ『だった』肉体から抜け出し、オレの方へと蹴り飛ばした。
 目の前に転がってきた首無し死体。一瞬うっ、と思うが、あのぽろろだ。首が無くなった位では、死ぬはずがない。
 「おい、ぽろろ、起きろよ!お前なら復活出来るだろ!!」
 首なしぽろろの肉体を必死に揺り動かす。普通なら、どんなに微塵になってもぽろろは復活できる。
 しかし、そんな兆候は一切表れない。
 「無駄だぜ」
 オレのすぐそばに、相棒は立っていた。
 「うわあ!!」
 掴まれる、という危機感を感じ、オレはすぐに後ろへと飛び退いた。事実、相棒が腕を振る姿が見えた。
 「漏れのスタンドは、物質にエネルギーを流し込む能力!ここにある屍は全て、『バーニング・レイン クラッシュアウト』で破壊した。過剰なエネルギーを注入された肉体は、その全ての細胞が核まで破壊される!核まで破壊されれば、何者でも蘇生は出来ない!ぽろろも!吸血鬼でさえも!!そう、こんな風にな!!」
 相棒はぽろろの身体を掴んだ。間も無く、その身体は崩れていった。
 「いいザマだ。これで『最強』はこのギコの手中にあるということが証明された!ギコハハハハハハハハ!!」
 「スタンド…吸血鬼?一体何のことだ?」
 吸血鬼はともかく、スタンドという聞き覚えのない単語。何を意味するか、思わず相棒に尋ねてしまった。
 「てめえは知る必要はねえ、ここで肉塊になるんだからな!!」

87N2:2003/11/13(木) 23:13



 「まさか、あれ程までとは…」
 暗闇の部屋で、かの男は悔やんでいた。
 (『矢』であのギコを貫いた瞬間、爆発的なエネルギーの流れを感じた。そこに天才的な才能を見出したからこそ、私は奴に部下のスタンドで洗脳を施したが…、よもやスタンドの方が暴走するとは思わなかった。あの『暴走バーニング・レイン』、奴はまだ私の意のままに動いてはいるが、もし私に牙を剥いたりでもしたなら…。クソッ、案じても仕方ない。ギコ屋よ…、あの私を差し置いて『最強』の座に君臨しようとしている愚か者を貴様の手で始末してくれよ…)



 「ここで貴様を頃し、あの男も頃す!『最強』のスタンド使いは、このギコ様だ!ギコハハハハハハハハハハ!!」
 「お前は…相棒なんかじゃない!絶対に化けの皮を剥いでやるッ!」
 (相棒はさっき、『正々堂々の精神』と言った…。本当の虐殺厨なら、あんなことは言わないはず。ということは、相棒には違いないがあの男に洗脳されている可能性が高い!待ってろ相棒!絶対にその目を覚まさせてやるからよ!)

88N2:2003/11/13(木) 23:13

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃        スタンド名:バーニング・レイン・コンチェルト        .┃
┃             本体:相棒ギコ(洗脳)              .┃
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫
┃   パワー - A   ┃   スピード - A    .┃   射程距離 - D  .┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃  持続力- C  ....┃  精密動作性- A  .┃    成長性 -C  ....┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃物体にエネルギーを流し、あらゆる効果を及ぼす。         ....┃
┃燃焼・冷却・電流・推進・放射能等のエネルギーを使う事が出来る。.┃
┃小さい物体であれば、銃弾のように発射できる。             .┃
┃更に放射能を直接流せば、細胞の核を破壊する事が出来る。   .┃
┃尚、洗脳によって本来よりスタンドは格段に力が上がっている。   .┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

89N2:2003/11/13(木) 23:15
以上です。
ご迷惑をお掛けしました。

90:2003/11/14(金) 20:54

「〜モナーの夏〜  9月17日・その5」


煌々と照りつける月光の下、俺達は殺し合う。
命を賭け、生を削ぎ合う。
こんなにも鮮やかな月の光。
その下で、俺達の舞台は幕を開けた。


じぃはこちらに突進して、その勢いで真横に爪を薙ぐ。
それがはっきりと視えた。
その動きをトレースするように、じぃは攻撃を繰り出す。
その場にしゃがみ込む事により、攻撃をかわしつつ懐に入ることができた。
心臓を狙ってバヨネットを突き出したが、いとも簡単にかわされる。
そう、この結果も視えていた。

俺の攻撃はスピードに欠ける。かすることすらできない。
一方、俺はかわすのが精一杯だ。
右から攻撃。頭部を狙った突き。じぃの攻撃は全て視える。
だが、かわしきれているかすら怪しい状況だ。

俺の体の様々な箇所から血が流れている。
じぃの攻撃は重すぎて、かすっただけでもダメージは大きいのだ。
だが、致命傷には達していない。
痛みも麻痺している。
弱音を吐く瞬間すら許されない。これこそが殺し合いだ。

じぃは高く跳び、そのまま爪を振り下ろした。
あと0.1秒、その場に留まれば即死。
だが、そう簡単に殺されてはやれない。
対象を失ったじぃの一撃は、地面に小規模のクレーターを作った。
砂が巻き上がる。
故意か偶然か、視界が阻まれる。
だが、俺の能力にいささかの遜色もない。
砂煙に紛れての一撃ですら、俺はかわすことができた。

だが… 決して俺が有利という訳ではない。
むしろ、俺のほうがはるかに死に近い。
じぃの体は人間のものではなく、スタミナも無尽蔵だ。
それは、俺が負けるのに充分な理由。
防戦一方では、疲労した俺がじぃの攻撃を食らってしまうのは目に見えている。
おそらく… 約7分後。
この目は、そんなことまで視えてしまう。

なら、俺の行動は明白。
右からの鋭い突き。そのあとの左腕の横薙ぎ。
何とか、それをかわす。
この攻撃をかいくぐって、体力が残っているうちに反撃しないと…
パワー、スピード、生命力、スタミナ、全てにおいて俺はじぃに遅れを取っている。
俺が勝っているのは、『視る』という能力のみ。
なら、この能力に勝機をかける…!!

91:2003/11/14(金) 20:56

俺は視た。
4秒後に、胸を狙ったじぃの突きが来る。
さらに視る。
動きだけではない。
もっと広く。もっと多角的に…
速さ、軌道、攻撃点、そして、俺自身を視る。
激しい頭痛。
しかし、構ってはいられない。
一瞬の勝機を視逃す訳にはいかないのだから。

じぃの腕が、俺の胸を貫いた。
通常なら即死。
そう、通常ならば。
俺は、貫かれる寸前に俺自身の身体を視た。
心臓はもちろん、肺にも脊髄にも重要血管にも影響がない隙間。
そのポイントを、意図的に貫かせた。

…もらった。
溢れ出る血液。勝利の余韻。一瞬の油断。
その全てが、じぃの判断を遅らせる。
今しかない。
だが、俺のダメージもかなり大きい。
立っていられるのも、あと7秒。
激痛に構ってなどいられない。
苦しみ悶えるのは、全てが終わってからだ。
俺はバヨネットをじぃの額に突き立てようとした。
だが… 俺はその手を止めた。

…見てしまったからだ。
じぃの瞳を。
そして思い出した。じぃとの思い出。
一緒に帰ったり、他愛ない話をしたり、一緒に食事をしたり…
この場には明らかに不必要な感情。
命を奪う相手の目を見てしまうとは―――なんて迂闊。
その躊躇が勝敗を決める。
そう、俺は完全に勝機を失った。

92:2003/11/14(金) 20:56

じぃは、腕を俺の身体から乱暴に抜き取る。
それだけの動きで、俺は地面に倒れそうになる。
溢れる血。感覚は完全に麻痺している。
じぃは右腕を高く上げた。
何の抵抗もなく、俺の身体を斬り裂くであろう鋭い爪。
俺は視た。
そのまま腕は振り下ろされ、俺の身体は袈裟斬り。
それでデッド・エンド。
もうかわす体力も気力も残っていない。
立っているだけで精一杯だ。

死ぬ寸前に、走馬灯のように記憶が呼び起こされるなんて嘘だ。
今の俺には、リナーの顔しか見えない。
もう、リナーと夜の町回りはできなくなるな… それだけが残念だった。
そして、振り下ろされる右手…

          *          *          *

そういう訳で、私に替わる。
『私』が舞台に立つのは不本意だが、これ以上のダメージは拙い。
振り下ろされる右手を切断。

驚きと共に飛び退く敵。
だが、戦意は喪失しない。
実力の差すら理解不能ときた。
吸血鬼として三流、戦闘者としては失格。
――ひどく無様。

突進しつつ、大きく振るう左手。
工夫がない。
もう見飽きた。その攻撃も、貴様の顔も。

緩慢で直線的な攻撃ごと、敵を斬り裂く。
左手を寸断し、胴体を袈裟斬り。返す刃でもう一度斬る。
心臓と頭部に一撃ずつ突き。そのまま首を刎ねる。
以上。
断末魔の悲鳴も別れの言葉も不要。

          *          *          *

ドサドサッ…
悪夢のような音。
バラバラになったじぃの身体が地面に落ちる音。
俺は…今、何をした?

地面に落ちたじぃの断片は、瞬く間に蒸発していく。

「うわあああぁぁぁぁ!!」
俺はその場に崩れ落ちた。
胸に激痛。
じぃに傷つけられた傷?
心の痛み?
分からない。何も分からない。

93:2003/11/14(金) 20:57

俺はじぃを殺すつもりだった。
学校でじぃの内面を見た時、吸血鬼化している事を理解した。
その時から、俺は殺すつもりだった。
そして、殺し終えた。
完膚なきまでに殺しきった。
じぃの身体は、一片たりとも残っていない。
俺は目的を果たした。
だが、それをやったのは「俺」ではない。
そもそも、なぜ俺はじぃを殺そうと思った?
楽にしてやりたかったから?
犠牲者が出ているから?
…それとも、単に殺したかったから?
じぃを殺したがっていたのは誰だ?

「…お前だったんだな!! 全部、お前がやったんだな!!」
俺は叫んだ。
こいつが…!
俺の中にいるこいつが…!
そう、少し前から薄々気付いていたのだ。
ただ認めたくなかっただけ。
「お前が…!!」
俺の叫びは中庭にこだました。
学校の中庭。
校舎に囲まれた空間。
俺がじぃを殺害した場所。
視界がボヤける。
胸の痛み。激しい眩暈。
もう、俺は壊れているのかもしれない。

「なあ、俺は何なんだ…?」
俺は、隠れているリナーに訊ねた。
「…気付いていたのか」
リナーが木の陰から姿を現した。
「彼女は、もう吸血鬼だった。人も殺している。君は、良い事をしたんだ。それ以上は考えなくていい」
「…黙れ!!」
俺は叫んだ。
「良い事だっただと!ふざけるな!!」
リナーに当たっても仕方がない。
分かってはいるが、言葉を止める術がない。
感情をブチ撒けないと、心がどうにかなってしまいそうだ。
「相手が吸血鬼だとか、人を殺してるとか… そんなんで割り切れる訳がないだろ!!
 俺は、お前のような化物とは違うんだ!!」

リナーは、驚いた顔をした後、うつむいた。
…長い沈黙
俺は、最低だ。

しばらくの沈黙の後、リナーは顔を上げた。

リナーは微笑んでいた。
――――――リナーは悲しみに満ちた表情を見せた。

「そうだな。私は…君から見ればしょせん化物だ」
――――――私は化物なんかじゃない。

「もう、殺すことにも心が麻痺してしまった」
――――――そうしないと、心が悲鳴を上げる。

「感情など、とうに無くしてしまった」
――――――そう思い込まないと、生きていくことすら立ち行かない。

全て視えてしまう。
俺は、自分の首を切り落としたくなった。
何がリナーを守る、だ。
そんな資格は、もうこれっぽっちもない。
じぃを殺した罪悪感…
俺が味わった以上の苦しみを、リナーは何度も何度も何度も経験してきたのだ。
「ごめん…」
今さら謝ったところでどうしようもない。
「いや、気にはしないさ」
リナーはまた嘘をついた。
「そんな事よりも…」
リナーは言葉を濁す。
そう、後に続く言葉を俺は知っている。
それは…聞きたくない。
だが、逃げるわけにはいかない。
耳を塞ごうと、顔を背けようと、真実は変わらないのだから。

リナーは、しっかりと俺の目を見据えて言った。

「…君が、殺人鬼だったんだな」





俺が戻れなくなったのはいつからだろうか?
リナーに会った時? いや、それは予兆に過ぎない。
吸血鬼に会った時? 関わらずに生きることもできたはず。
月光の下で吸血鬼と化した親しい女を殺した時、俺は戻れない場所に立ったのだ。
どこかで歌が聞こえた。
ひどく、哀しい旋律。
ここから俺の物語が幕を開ける…



「モナーの愉快な冒険」/プロローグ・〜モナーの夏〜 END

94N2:2003/11/14(金) 21:44
乙です!!プロローグとは思えません。
俺も明日には張れる!!…かも。

95ダンボール </b><font color=#FF0000>(M.nd32Bk)</font><b>:2003/11/14(金) 21:56
昨日、最初から読み直してみましたが、
やはりモナーがそうでしたか。
ところで、小説を書いている時に
気をつけていることって何かあるのですか?
よければ教えてください。

…長々とすみません。

96N2:2003/11/15(土) 20:51
>>95
ぎゃあそれでは結末をほのめかす描写を気にせずに
最後の最後でびっくりした漏れは

次スレテンプレ議論スレに貼るのもどうかと思ったので、
こちらに小説のあらすじを貼ります。
不都合等御座いましたら指摘お願いします。

97N2:2003/11/15(土) 20:52

□小説スレ作品紹介

◎本編

.      /
   、/
  /`
モナ本モ蔵編  (作者:N2)
◇かつて『矢の男』と親交のあったモナ本モ蔵。
男の素性に薄々感付きながらも何も出来なかった
自分を責めるモ蔵は、男を討つべく茂名王町へと乗り込む!

 モナ本モ蔵と『矢』の男 その①──>>46-49
.                その②──>>50-53
.                その③──>>54-58
.                その④──>>59-63

◎不完全番外編

   ∩_∩
 G|___|   ∧∧  |;;::|∧::::...
  ( ・∀・)  (,,゚Д゚)   |:;;:|Д゚;):::::::...
逝きのいいギコ屋編  (作者:N2)
◇「すいませーん、このギコください。スタンド持ってるんですよね?」
「はい、しかしお客さん、こいつは売りAAじゃないんですよ。」
「何だと、この三流夜逃げ商売人がうわ何をするやめr」
「ギコ、証拠隠滅手伝え。クリ(ry)!!」

 アナザーワールド・アナザーマインド その①──>>73-76
                        その②──>>77-80

 降り注ぐ『バーニング・レイン』 その①──>>81-88

◎完全番外編

    /´ ̄(†)ヽ
   ,゙-ノノノ)))))
   ノノ)ル,,゚ -゚ノi
モナーの愉快な冒険  (作者:さいたま)

プロローグ・〜モナーの夏〜
◇俺、モナーは普通の学生として、普通の生活を送っていた。
しかし、謎の行き倒れの女・リナーを助けた日から、俺の日常は完全に狂ってしまった。
吸血鬼、「空想具現化」、殺人鬼…。
それら全てが繋がった時、俺の物語が始まる。

 9月15日・その1──>>3-5
.        その2──>>6-8
.        その3──>>9-10
.        その4──>>11-14

 9月15日〜9月16日──>>16-18

 9月16日・その1──>>19-22
.        その2──>>24-29

 9月17日・その1──>>30-32
.        その2──>>33-36
.        その3──>>38-43
.        その4──>>66-69
.        その5──>>90-93

※敬称略

98新手のスタンド使い:2003/11/15(土) 21:44
前掲示板で消滅してしまったやつ書き直し(少し改造)。

合言葉はwell kill them!その①―アヒャと矢の男


虐殺ブラザーズを倒したつーは、自分の家へと急いでいた。
自分に付いている返り血はそのままなので、つーの事を見て気を失った人もいたが。
彼女の家は茂名王町(仮)の中にある私怨寺商店街の肉屋で結構お客の評判もいい。
「アーヒャヒャヒャヒャ!オメー何処で道草くってたんだよ!」
扉を開けると早速父親の声が飛んできた。エプロンがよく似合っている。
つーの家の家族構成は自分、父、兄、弟の四人で、母親はとっくに亡くなっている。
「ああ父ちゃん、何か知らんが俺に喧嘩ふっかけて来た奴らがいたから
 叩きのめしてやったんだ。」
「ほう、まだそんな命知らずな奴が居たのか!一般人でお前に勝てる奴なんて
 そうは居ないだろ。そんな事より夕飯の支度手伝え!今日は鍋だぞ。」
「了解!」
台所には所狭しと刃物が並べられている。もし地震なんかが起きた時に
こんな所に居ては、間違いなく怪我はするだろう。
「ところでアヒャの野郎は何処行きやがったんだぁ?俺より先に学校から
 帰ってきてるはずだぞ。」
「奴なら葱と豆腐が無かったから買いに行かしたぞ。それにしても遅いな、
 もう行ってから30分以上たってるぞ。」
「俺みたいに道草食っていたりしてな!」
二人は大きな声を出して笑った。はっきり言って五月蝿い。
そのせいで隣に住んでいる老人が心臓発作を起こし、危うく『天国の階段』を
昇りかけたのは内緒だ。


「あ〜〜〜ムカつく!何であんなとろいババア雇うかねぇあのスーパー!
 俺がナイフちらつかせなけりゃぁいったい何時間かかってたのか想像できねえよ!
 ちっくしょ〜!」
ぶつぶつと愚痴をこぼしながらアヒャは家へと歩いていた。
「あーあ。退屈な日常だなー。なーんかこう人生まるっと変わるサプライズな事件とかって
 起きないもんなのかねー。」
その時だった。彼の言う事件が起こったのは。
「うわあああああああああ!!!!!!」
「おわっ!何だ何だ今の悲鳴は!?家とは反対の方向からだぞ!」

この後の彼の行動は大体の人が想像がつくでしょう。


「事件の香り・・・・・。行きますか!」

99新手のスタンド使い:2003/11/15(土) 22:24

「くそ!こいつも駄目だったか・・・。」
ひっそりとした闇の中、二つの影が見える。
一つは何処にでも居そうなサラリーマン風の男で、もう息をしていない。
そしてもう一つが矢の男の物だった。
「まあいい。次の人材を探せばいいことか・・・。」
そう言って立ち去ろうとした時だった。
「・・・誰かが来るな。」

「おっかしいなー、悲鳴が聞こえたのは確かここいら辺だった筈だぞ。
 もしかして俺の聞き間違いだったのか?」
やって来たのはアヒャだった。よく悲鳴一つで場所が割り当てられたもんだと
つくづく感心してしまう。
「・・・丁度いい。アイツならがあるかもしれん。物は試しだ。」
矢の男は懐から弓と矢を取り出すと、アヒャに向けて狙いを定めた。
「さあ、お前の『素質』、確かめさせてもらうぞ!」
パシュン!


ヒュウウウン・・・・。ズシャアァ!!
「があっ!な、何が起きたんだって・・・・これって・・・『矢』!?」
「ほう、死ななかった所を見ると私の予想どうり、君にはスタンド使いとしての
 『素質』が有ったのだな。しかしスタンドのヴィジョンが見当たらないとはどう言う事だ?
 確かに君からスタンドのエネルギーが出ているのだが・・。」
「な!てめえは矢の男じゃねーかどうしてこんな所に!」
「む?何故この私が君の言う矢の男だと判ったのかい?」
矢の男は少し以外だという顔をして尋ねた。
「俺の姉ちゃんと兄ちゃんがお前に出会ってそのスタンドとやらが発現してんだよ!」
「なるほど。兄弟そろってスタンド使いになったと言う訳か。
アヒャは自分に刺さった矢を抜くと男にむかって放り投げた。
「お前の目的は俺にもわかんねぇ。だけどスタンドを出してくれた事については
 礼を言う。ありがとうよ。」
「ふっ、礼を言われたのはこれが初めてだな。では、有効に使ってくれ。」
そういい残すと男は風のようにいなくなった。

100新手のスタンド使い:2003/11/15(土) 22:54

「うわー滅多刺しにされてんなー。ご愁傷さまー。」
アヒャは矢の男が殺したサラリーマンを見つけた。
「とりあえず諭吉でも抜いておきますか。・・・にしても俺のスタンドって一体なんだ?」
そういって死体に近いた時だった。
・・・・じわり・・じわり・・・・・。
・・・・じわり・・じわり・・・・・。
「なんだ?なんか音がするぞ。」
よく見ると死体の周りの血液が、だんだんと自分の方へ向かってきている音だった。
「何だよこれ!なんで血が俺の方へ流れてんだよ!?・・・・まさか・・・。
 これがあいつの言ってた・・スタンド!?」
みるみるうちにアヒャの目の前で血液が集まり、人の形を作り出している。
「これか!これが俺のスタンドか!」
「ソウダ!俺ハオ前ノ分身ッテ訳サ!」
「なーるほど、ところでお前には名前ってついてんのか?」
「イイヤ。俺ニハ名前ナンテ無イ。コテハン名乗レヌ名無シサンッテ訳ダ!」
「じゃあ俺が名付親になってやんよ。そうだな・・・・。血・・。ブラッド・・。
 そんじゃブラッド・レッド・スカイってのどうよ?」
「イイナソレ!気ニ入ッタゾ!」



「案外この買出しも結構意味あったじゃん!行っといて正解だったな。」
アヒャは上機嫌で家へと向かった。

しかしアヒャは気づいていない。
自分がスタンド使いになった事でこれから巻き起こる
闘いの日々のことを・・・。

  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

101新手のスタンド使い:2003/11/15(土) 23:09
 ∧
 | |
 | | |ヽ,,,ノ|   ∧_∧
 | |< ゚∀゚ >_ ( ゚∀゚ )
 ヽ   WWW+/ヽ+  つ
  ヽ  ヽ:::::::/ ヽ/ ヽ ヽ
   \  MM (_) (__)
   /     ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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   ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
    ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
     ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;

スタンド名:ブラッド・レッド・スカイ
本体:アヒャ

破壊力-C スピード-B 射程距離-A
持続力-B 精密動作性-C 成長性-C

スタンド像単体では発現できず、血液と一体化する。姿は決まっていない。
能力は、血液と一体化し、自由に操作する。
攻撃時に、「切る」、「縛る」、「ぶん殴る」等の攻撃手段を得意とする。
意志を持ち、性格は楽天的。

思考分離型、一体化、直接攻撃型。

102N2:2003/11/16(日) 10:11
乙です。
頑張って下さい。

103新手のスタンド使い:2003/11/16(日) 10:14
コメありがとうございます。

104ダンボール </b><font color=#FF0000>(M.nd32Bk)</font><b>:2003/11/16(日) 12:51
遅れて乙ッ!!

105:2003/11/16(日) 13:26
>>95
AA作品を作る時も注意してる事ですが…

まず、キャラの行動やバトル発生の妥当性。
よく分からないシチュエーションでいきなりバトルが始まっても、
読む側はこれっぽっちも感情移入できないと思います。
勝っても負けてもどうでもいい、と読者に思われた時点で、作者としては負けですから。

あとは、セリフとか雰囲気作りとか伏線張りとか。
とりあえず、読む人間を意識するという点を重視。

106新手のスタンド使い:2003/11/16(日) 13:51
JOJOっぽくするなら、比喩表現などにカギカッコを使えばいいと思われ。
例「『ジョー・モンタナ』の投げるタッチダウンパスのように」
あと、長音は『ー』の代わりに『―』こんな風なダッシュを使うとベネ。
例「このクソ野郎がァ――――――ッ!!」
さじ加減を間違えると逆に格好悪いので注意。

107ダンボール </b><font color=#FF0000>(M.nd32Bk)</font><b>:2003/11/16(日) 14:00
>>105->>106
グレート!!
ナルホド、よく分かりました。
自分も注意しなければ…。

108新手のスタンド使い:2003/11/16(日) 14:02

いいアドバイス有難うございます!

109N2:2003/11/16(日) 15:16
ようやく完成した…。
ギコ屋編第4話貼ります。
長くて重いですが、ご容赦を…。

110N2:2003/11/16(日) 15:16

              (\(ヽ从,.λ
             (\巛(ヽ′`゜`ヽ
             (ヽζノ)  ・/W,・ヾ
             (ノγ《   ,ノ从ゝノ        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
              (/ξ(ソ .,_,,,.ζ        |正直、スマンカッタ
               (/ν´```^         \_______  __
                                          ヽ|
                ∩_∩                        ∧ ∧
                ( ;・Д・,)                       (゚Д゚;) ̄ ̄ ゝ〜
               と    つ                        UU ̄ ̄UU
                |   x |
.                U'⌒'U
               | ̄ ̄ ̄ ̄|                / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
               |____|          ∩_∩ < 逝きのいいスタンド使いのぽろろは今日も茂名王町で元気に生活中だよ〜!
                              G|___|  \_________________________________
|;;::|∧::::... / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄            (; ・∀・)∩
|:;;:|Д゚;)< 弟が謝罪してる…             ⊂     ノ
|::;;|::U .:::...\________            ) _ (  ナレナイマネスルカラ…
|::;:|;;;|:::.::::::.:...                      (_) (_)∧_∧  ∧_∧  ∩_∩
|:;::|::U.:::::.::::::::::...    ∧_∧  ∧_∧  ∩_∩      (∀`  ) (    ) (    )
            (    )(    ) (    )      ( ∧_∧(    ) ∧_∧
            ( ∧_∧(    ) ∧_∧        (    )∩_∩ (    )
             (    )∩_∩ (    )        (    )(    )(    )

111N2:2003/11/16(日) 15:18

 降り注ぐ『バーニング・レイン』 その②

 オレが倉庫に入ってから、まだものの2分も経っていないだろう。
 そう、時間にして、約2分。
 しかし、この2分間の内に、オレは本来普通の生活を送る奴が見るべきよりも何十倍多くの
 死体を目にしたことだろうか。
 相棒に壊された「未来」の数は、どれだけあるのだろう。
 そんなこと、考えたくもない…。



 「虚勢を張るのは簡単だ。しかし、それも単なる一時的なもの。喪前は随分と口では威勢の良いことを言ってるが、
 膝から下が笑ってんぞ!?(藁)」
 内心をあっけなく見抜かれた。
 当たり前だ。目の前でクックルも、モンスターしぃも、ぽろろさえも死んでいったのだ。
 彼らを上回る凶悪性を誇る、まさに「怪物」。
 そんな奴に目を付けられて、安心出来る筈が無い。

 しかし…、希望はある。
 この「怪物」は間違い無く相棒である。
 ただ、何かしらの術に掛かり、操られている。
 そうであるならば、やるべき事はただの一つである。
 「お前、あの男に何かされたんだろ?」
 この質問に対して、相棒は平然な顔をしていた。
 そして、大声で笑いながらこう言った。
 「ハァ? 俺はまともだぜ。俺はあの方に出会い、スタンドなどついて教わり、やっと理解したんだよ。
 お前と糞マターリと過ごしてきた日々がどれだけ間抜けで愚かで汚らしい物だったかという事をなぁ――――――!!」
 大声で叫び終えてから、相棒は大きく深呼吸する。
 絶対的な信頼で結ばれた筈の相棒の口から出たとは思えない言葉。
 分かっていても、ショックが大きい。
 でも、そのままボサっと突っ立っていれば、周りの奴らと同じ目に遭う。
 突進する事猛虎の如し。
 その相棒に向かって、オレは「スタンド」で攻撃する。
 右アッパー。
 外れる。
 すかさず左ストレート。
 駄目だ。生身のギコとは思えないスピードだ。
 「そんなの無駄無駄無駄無駄」
 今度は相棒が「スタンド」でラッシュを打ち込んでくる。速い。俺のよりも数段格上だ。
 「くそっ、『スタンド』ッ!ラッシュを防げ!!」
 こちらも負けじとラッシュを打つ。しかし、後出しだったのがまずかった。
 こちらの拳がギコの拳とぶつかる前に、向こうはオレの「スタンド」の腹にパンチを一撃打ち込んでしまった。
 …効く。強烈だ。口から血が吹き出し、立っていられない。
 「おやおやおや、腹痛そうだねぇ〜。いくらなあ、お前のスタンドのパワーが凄まじく、スピードも速かろうと、
 この『バーニング・レイン』のスピードには敵わない。ましてや、俺に攻撃を当てる事など出来る訳が無いんだよ」
 しかし、パンチ一発でここまで苦しいというのは、どういうことだ?
 ふと、腹に目を遣ると、そこには…裂け目が入っていた。
 幸い、致命的な傷ではないらしい。
 「その傷はそこらの死体のと同じ原理だ。殴ったのと同時に推進エネルギーを流せば、細胞が破壊され身体が裂けたようになる。
 尤も一発二発じゃ、てめえの肝っ玉のような小さい傷しか作れないがな、ギコハハハハハハハハ!!」
 では何十発も喰らえば他の者と同じ運命を辿るというのか。
 長期戦では分が悪い。早く決着を着けなくては。

112N2:2003/11/16(日) 15:18

 …ここでオレはある違和感に気が付く。
 さっきから相棒、喋り過ぎだ。と言うより、手の内を晒し過ぎだ。
 オレだったら、自分の「スタンド」の能力をベラベラ喋って、敵に塩を送るような真似はしない。
 では何故?
 自信過剰?――確かにそれはあるが、にしても言いすぎだ。
 ただの間抜け?――あいつは昔から頭の切れる奴だ。洗脳されていたって、そこまで変わりはしないだろう。
 なめ猫?――関係無い…。
 とすると、奴は逆にそうする事で何かを果たそうとしているのか?
 では何を?
 1つの可能性が浮かぶ。しかし、普通に考えれば絶対に有り得ない。
 だが、オレと相棒の仲であるならば、あるいは…。

 「お前、ひょっとしてさっきからベラベラ能力のことを喋ってんの、オレに倒してもらうためじゃないのか?
 あの男によって自分の意思とは違う行動をさせられている自分を、オレに解放してもらうために!!」
 余裕綽々といった相棒の顔付きが変わる。
 冗談抜きでマジギレした顔だ。
 「何言ってんだ…この漏れがそんな事、絶ッッッッッ………対にする訳ねーだろ!!!」
 明らかな態度の変貌。
 間違い無い。行動こそ何者かの意思に操られているが、心の底からは洗脳されていない。
 「俺はお前を絶対に元に戻す。その為には、再起不能もやむを得ないと思っている!!」
 「喪前は…最高に逝ってよしってやつだぁぁ―――――――ッ!!」
 大振りのパンチ一発。先程までとはまるで違う。
 その隙を、オレは逃さない。
 手近な鉄棒を手に取り、部分的に分解。
 鋭い槍にして、相棒目掛けて突きを放つ。
 右胸に命中。激しく血飛沫がほとばしる。
 しかし、ギコはまるでひるむ様子が無い。そのまま伸びたままのオレの腕を掴む。
 「馬鹿め、隙を作りやがったな!このまま推進力を与えて腕を吹っ飛ばしてやる!」
 貫かれた右胸から血を吹き出しながらも、力強く深呼吸をするギコ。
 オレの腕を、ぽろろ達の時同様強く掴む。
 しかし、何の変化も無い。
 「さっきオレにラッシュを打ち込む前に、お前が一回深呼吸した…あれが気になってたんだ。
 お前のエネルギーは、ひょっとするとその呼吸で作ってるんじゃないのか?」
 何も言わない。図星だな。
 「さあ、いい加減に観念したらどうだ?右肺が潰れたんじゃ、もうそのエネルギーもあてにならない」
 「…なめるな」
 ボソッと一言つぶやき、鉄槍を「スタンド」でへし折る。
 傷口からそれを抜き取ると、その痕に手を当て、例の呼吸をする。
 みるみるうちに、相棒の出血は収まり、傷口も塞がっていく。
 「呼吸が少なくなればエネルギーが減るが、0になる訳じゃあない。
 体中のエネルギーを集めれば血を固め、傷を塞ぐ事ぐらい出来る。そして、喪前は漏れの罠にはまっている」
 「何ッ!?」
 「お前の言う通り、漏れのスタンドは呼吸からあらゆるエネルギーを作り出す事が出来る。熱も冷却も推進力も…電力もな!!」
 周囲を見回す。オレの周りには、沢山の肉塊から流出した血の海が広がっていた。
 「クソッ、俺の周りの血を分解しろ―――ッ!!」
 「もう遅い!!回避不可能よぉ――――ッ」
 高圧的な嘲笑の後、相棒は廃タイヤの上からありったけの電流を流した。
 「ぐあああああああ!!」
 その隙に、相棒は倉庫から脱出してしまった。

113N2:2003/11/16(日) 15:20



 相棒は倉庫から数百m離れた公園にいた。
 追跡者が迫り来る気配は、無い。
 「偉そうな事言って、結局あの程度の電流でお陀仏とはな。さて、あの方と合流しなきゃな」
 「あの方って誰?」
 不意に上方から聞こえてくる声に釣られて見上げると、天から巨大な何かが降ってきている。
 「ロードローラーだッ!!!安心しな、潰れても死なない程度に壊してあるからな!!」
 「何故、お前はここまで…!!ゴラララララララララァ―――!!」
 オレがしぶとく立ち向かってくる事に一瞬焦りを覚えるが、そんな事を気にしている場合ではない。
 すかさずラッシュで応戦姿勢に入る。
 「無駄無駄無駄無駄…じゃなかった…。クラクラクラクラクラクラクラァ―――!!」
 落下するロードローラーをラッシュで攻撃する相棒。
 対して、オレはその圧倒的重量に自身のスタンドのラッシュで更に重みを加える。
 このままならオレの方が押し切れるのは、目に見えている。そう、このままの状態が続けば。
 「俺のパワーでは、この大きさでも跳ね返すのは不可能だ。諦めよう。だが、潰れるのを防ぐ事は出来る」
 質問するまでもなく、オレはその言葉の真意を理解した。
 ロードローラーの部品が、ポップコーンが弾けるように飛んでいった。
 「機械の部品に推進力を与えれば、この程度なら破壊する事が出来る!!
 漏れの身を按じて構造を脆くした喪前の甘さが敗因だ!!」
 ロードローラーが弾け飛び、激しく吹き飛ばされる。
 スタンドをクッションに、地面との摩擦によるダメージを防ぐ。
 すかさず起き上がろうとするが、もう目の前には相棒が立っている。
 この隙を逃さず止めを刺すつもりなのだろう。
 「く…クラァ――――ッ!!」
 「だから遅いつってんだろうが」
 凄まじいスピードで首根っこを掴まれる。間髪入れず、相棒は、「ぽろろを滅したエネルギー」を流す。
 その瞬間に、オレの身体は砂状になって散っていった。

 「やっとくたばったか…」
 激戦を追え、ギコは少し安堵した。
 ふと、ギコ屋のいた場所を見ると、何者かの毛が落ちている。
 よく見てみると、それは自分のものであった。
 「なるほどな、漏れが逃げる時に漏れの体毛を分解して、体内に仕込んでいたのか…
 そして戻るエネルギーに乗じてオレに接近するがてらにロードローラーを掴み、そのまま持って来る、と…」
 つくづく抜け目の無い奴、とギコは考える。
 この能力に目覚めてまだ日は浅いが、ここまで苦戦した相手は初めてだ。
 あの男の手下の者とも戦ったが、まるで格が違う。
 しかし、ここまで追い詰められても、そのプライドは決して傷付いてはいない。
 あとに残ったのは、これほどまでの強敵を打ち倒した『満足感』だけである。

 しかし、少しずつ少しずつ、心の中に『後悔』の念が浮かんでくる。
 折角の強敵を、こうもあっさりと殺してしまったのではつまらない、というのもある。
 だが、そんな物ではない、何か取り返しの付かない事をしたのではないかという罪悪感が、彼に襲い掛かる。
 徐々に晴れ晴れとしていた気分が沈んでゆく。

114N2:2003/11/16(日) 15:21

 その隙を、「オレ」は逃さない。

 「クラァ!!」
 背後から、強烈なパンチが命中。相棒の身体は、呆気なく吹き飛んでゆく。
 体制を取り直し、すぐさま振り返ると、そこに立っているのはオレであった。
 「馬鹿なッ、貴様はたった今『バーニング・レイン クラッシュアウト』で…」
 「危なかったよ…。放射能が来るのと同時に、自分を『原子』に分解しなかったらやられてた。流石に力使うな、コレは…」
 相棒の表情に絶望の色が浮かぶのが手に取るようによく分かる。
 当然だ。取って置きの技を破られたとあっては、自信も何もあったもんじゃない。

 …だが、それでもまだ目が勝負を捨てていない。
 お互い睨み合いの状態が続く。
 オレも、相棒も、どちらもが先手を打てない。
 先に動いた方の負けである。

 しかし、相棒の勝利に対するハングリー精神は、彼に最後の決定的チャンスを呼び込んだ。
 何も知らぬ子供が、この公園へとやって来たのだ。
 オレがその子に逃げろ、と叫ぶ前に、相棒は行動を終えていた。
 すかさず少年へと近寄り、その「スタンド」で掴み上げる。
 突発的に起こった超常現象に、少年は完全に困惑している様子だ。
 勝手に身体が浮かび上がり、同時に喉を圧迫されるような感じがしていることだろう。
 誰か助けを呼ぼうにも、声が出せないのだ。
 「クソッ、おい、止めろ!何も関係の無い民間人をこれ以上巻き込むのはよせ!」
 今更1人2人犠牲者が増えたところで全体的には大して問題ではないのかも知れない。
 だが、その1人2人が、オレにとっては大事なのだ。

 客商売を続けていると、沢山の人たちと出会う。
 中には本当に嫌味ったらしい奴だっているけど、でもやっぱり皆良い人ばかりだ。
 そういう人達を毎日見ていると、ああ、彼らはそれぞれが「自分」として生活しているのだなと思う。
 それぞれが皆この世に生を受け、それぞれが自分の意思の下に生活する。
 時には、利害関係だって生じる。
 オレは、儲けるために、なるべく高く商品を売りたい。
 客にしてみれば、なるべく安く良い品を買いたい。
 時には喧嘩沙汰にだってなるし、それがもっと大きな人間の集団同士のものだったなら、それは戦争となる。
 だけど、オレは思う。
 自分から見た世界を全てと捉えるのではなく、自分を客観視して他人から見た世界を考えれば、
 もっといつもの暮らしというやつが楽しくなる、と。
 オレも悪徳商売人じゃないから、なるべくお客さんには良い思いをして商品を買って欲しい。
 価格面でも、サービス面でも、出来る限りの最善をいつも尽くしているつもりだ。
 そうすると、不思議とまたお客さんが寄ってくる。
 そうしてまたギリギリの頑張りをすれば、それでまたお客さんが来てくれる。
 この一連の流れが、オレには楽しいし、またとてもいとおしい。
 そうしていると、段々とこのオレ以外の「自分」達がとてもかけがえの無い、大事な物に見えてくるのだ。
 だからオレは思う。
 自分の都合云々だけでそんな「自分」を抹殺する奴は、心の底から逝ってよしだ、と。

 もう今の相棒にとっては、この子供などたまたまやって来た虐殺№○○○程度にしか思えていないのだろう。
 だが、この子にとっては、その人生はそれで全てなのだ。
 倉庫の中では、数多くの「自分」が終わりを告げた。
 それをオレは、出来る範囲で守ることも出来なかった。
 ならば、彼らへの償いにもならないだろうが、せめてこれから絶たれようとしている命だけは絶対に守るしかない!!

115N2:2003/11/16(日) 15:21

 「民間人がどうした?漏れにとってはこの世の連中は全て、『漏れ』『その他クズども』、これしかないんだぜ!?
 だったら何の関係もねえ『その他クズども』は公平に利用したって何の問題もねぇだろッ!!」
 頭の中で、何かが切れた。決定的な何かが。
 「『バーニング・レイン』ッッ!!」
 再び深呼吸し、相棒のスタンドが子供にエネルギーを流し込む。
 時間は無い。
 「クラァァッッッ!!」
 スタンドと共に、相棒へと飛び掛る。
 だが、これは相棒の計算通りであった。
 「来ると思ったぞ…。喪前なら私に飛び掛ると思っていたッ!だがな、至近距離で果たして私の『バーニング・レイン』が
 エネルギーを流し込んで肉爆弾と化したこのガキンチョを防ぎきれるかッ!?」
 そう言って、相棒は子供を勢い良くオレへとぶん投げてくる。
 すでに子供の身体には裂け目が入りつつあり、その顔は苦悶の表情を浮かべている。
 「砕け飛び散る骨の雨に突き刺されてくたばりなぁ――――ッ!!」
 だが、相棒がこうすることもオレには予想出来た。
 子供の身体が内からはじけ飛ぶギリギリ寸前、彼はオレの射程内に入った。
 間一髪、ギリギリセーフである。
 「クラクラクラクラクラクラクラクラクラァ―――ッ!」
 スタンドのラッシュを子供に打ち込む。
 「馬鹿め、自分の身可愛さにガキを殺す道を選んだか!だがな、そいつが死んだところで、
 肉爆弾の炸裂は止められはしねえぜッ!」
 「…誰がそんなことすると言った?」
 「!! ・ ・ ・ 」
 子供の身体は、もう全身が張り裂けんばかりになっていた。
 だが、血は出ていない。
 子供の表情も、先程より穏やかだ。
 「砕け散れッ!」
 その声と共に、少年の身体は「分解」された。
 ミクロレベルで分解された身体に、エネルギーは留まれない。そのまま拡散してしまった。
 「こ…の策士が…!!」
 「いよいよ、いや、ようやくサシで勝負が出来るな、ギコ」
 相棒の感情は、完全に高まりきった。
 オレの怒りも、頂点に達する寸前である。
 と、ここで相棒が急に笑い出す。
 「…喪前、本当に漏れに敵うなんて思ってんのか!?(禿藁)確かに喪前のスタンドのパワーは凄い、それは認める。
 だがな、この漏れ様の『バーニング・レイン』のスピードには全然追いついてねえんだぜッ!」
 だが、その笑いには、最早余裕が無い。
 相棒がラッシュの構えを取る。同時に、深々と、最後の深呼吸をする。
 オレもパンチを打ち込みやすい姿勢になる。

 沈黙が続く。再びどちらも動けなくなる。
 その静寂を破ったのは、あの子供であった。
 オレのスタンドによる分解が限界に達したのだ。
 どさり、と少年が着地した音を聞き、相棒は再び少年を利用しようとした。
 隠し持っていたさっきの鉄槍の先端を少年に投げつける。
 当然、オレはそれをキャッチしようとする。
 その隙を、相棒は狙っていた。
 「ゴラララララララララァ――ッ!!」

116N2:2003/11/16(日) 15:22
 
 絶対負ける筈が無い。
 そう彼は確信した。
 圧倒的スピード差。
 直接戦闘における能力の有用性。
 そしてこの状況。
 何をとってもギコには負ける要素が無い。
 だが、1つだけ彼が考えていない点があった。
 それは――――
 「クラァッ」
 鉄槍を右手でキャッチしながら、ギコ屋のスタンドの左ストレートがギコの右頬にクリーンヒットする。
 「! ! ? ?」
 (そんな馬鹿なッ、こいつのスタンドは明らかにオレよりもスピードが遅…)
 もしや、と彼は思った。
 ひょっとすると、ギコ屋は極度の興奮状態におかれたことで、スタンドが本来以上の力を出しているのではないか。

 人体は、通常はその破壊を防ぐために限界まで力が出せないようになっている。
 だが、極限状態に追い込まれる事で、その抑制が消えて爆発的な力を出したという事例は世界に数多く存在する。
 ならば、スタンドでそれが絶対に出来ないという事は無い。

 相棒がひるんだ隙を、オレは逃さない。
 「クラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラァァァァ――――――ッッ!!!!」
 「ウがアッ、バアぁァァァ――――ッ」
 苦悶の雄叫びを上げながら相棒は吹っ飛んで行った。
 椎の木に勢い良くぶつかり、そこに倒れこむ相棒。木の幹には、大きなヒビが入った。
 「こ…このDQNめ…許さん…許さんぞ…貴様は絶対に許さんッ!!」
 独り言をつぶやきながら、再び相棒が立ち上がる。
 だが、もう勝負は決まっていた。
 駆け出そうとする相棒。
 しかし、思うように身体が動いてくれない。
 つまづき、全身が痙攣する。
 地に手を付けて立ち上がろうとすると、その甲に傷が入っている。
 血は出ていない。まさか。
 「き、貴様ッ、もしやこの漏れに分解エネルギーを…!!」
 オレは何も言わない。黙ってその様子を眺めるだけだ。
 「や…止めるんだ!そうだ、この漏れにここまで善戦した喪前の強さに敬意を表し、一緒に手を組もうじゃないか!
 我々2人が手を組めば、世界征服だって決して夢じゃ…」
 やはりオレは黙っている。相棒の最後の悪足掻きを、嘲笑するかの如く見下すだけだ。
 「…………この…このちっぽけな三流商人がああああああああ」
 最後の力を振り絞り、相棒が跳びかかる。
 だが、もう限界だ。
 「Crumble(粉々になりな)」
 相棒の身体は、砕け散った。

 ふと、そこから異様な煙みたいな物が飛び出す。
 煙はよく見ると、人の顔のようにも見える。
 恐らくは、こいつが取り憑いたことで相棒もおかしくなったのだろう。
 行き場を失った霊魂は、次の憑依対象をオレに選んだ。
 しかし、沈み掛けた西日の強い光がオレと相棒の間に挟まっていた事を、こいつは知らなかった。
 強烈な光を受け、いやあるいはスタンドの分解能力がこいつにも効いていたからなのかも知れない、
 霊魂は苦しみながら崩れ散っていった。
 と同時に、相棒の身体も分解状態から解放された。
 これで相棒も元に戻ってくれるだろう。
 気が抜けたと同時に力も抜けた。オレはそのまま倒れてしまった。

117N2:2003/11/16(日) 15:22

 「ご苦労だったな、逝きのいいギコ屋君」
 例の男が、日が沈んだのを見計らってギコ屋達の前に現れた。
 尤も、その声は2人の耳には入っていないが。
 「どちらも素晴らしいスタンドだ。これ程の能力とは私も予想していなかったよ。…だがな、残念な事に、君らは強過ぎる。
 今後成長して私の脅威と十分に成り得る存在だ。実に惜しいが、ここで死んで貰おう」
 男はまずギコ屋の方へと歩き出した。
 横たわるギコ屋の前へと辿り着き、スタンドを発現する。
 「『アナザー・ワールド』…」
 男はここで躊躇した。
 実際、ギコ屋のスタンドはここで殺すには実に惜しい。
 いっそのこと、両方に今度は強烈な洗脳を施してもいいと初めは思っていた。
 その為に、ギコを彼の前へと差し向けたのだ。
 しかし、取り憑かせた霊が悪かった。
 悪霊はギコの能力を極限まで引き出し、暴走させた。
 その引き出された能力の奥深さに、男は危機感を覚えた。
 ならば、いっそのことこの2人にはそもそも会わなかったも同じにしてしまった方が余程精神的には楽である。
 「さらばだ、ギコ屋!お前は『磔刑』だあああ――――ッ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 (ドォ――――――ン)
 周囲の風景が暗転する。
 男は空中に停止し、他の全てのものも動きを止める。
 大柄の男が2人の間に入り込み彼もまたスタンドを発現させる。
 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァ―ッ!」
 「そして時は動き出す」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ふと、男の視界から急にギコ屋が消えた。
 (そんな馬鹿な?奴には瞬間移動の能力など無い!それ以前にそもそも意識が…)
 だが、おかしなことはそれだけではない。
 天が下に、地が上に見える。 
 こんな姿勢で跳んだ覚えは無い。
 そして、少しずつ湧き上がる痛み。
 飛び散る血の雫。
 遠ざかっていくギコ屋。彼は動いてはいない。
 この事から導き出される答えは1つだけであった。
 「そんなッ、まさかッ!攻撃されて吹き飛んでいたのはッ!!私の方だったああああ――――ッッ!!!!」
 地面に落ち、そのまま転がり木にぶつかってようやく動きが止まる。
 向こうに見えるのは、大柄な男であった。顔には見覚えがある。
 「空条モナ太郎ぉ――ッ」
 モナ太郎は男の叫びには耳を傾けなかった。
 「やれやれ、財団の調査で『矢』があると聞きつけて来てみれば、まさか吸血鬼までいるとは、な…」

   /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

118:2003/11/17(月) 22:58
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      「モナーの愉快な冒険」
       影・その1
       
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これは夢だ。
遠い遠い世界。
遥か遥か昔。
目が冴えてくる。
夢にもかかわらず目が冴えるとは妙な話だが、目が冴えるには違いない。
そう、今は約100年前の異国。
おそらく大英帝国。
高級感の漂う部屋だ。
だが薄暗い照明のせいで、高級さは打ち消されている。
時計の音がやけに大きく聞こえた。
そんな部屋で、二人の人間が話している。

「『最強』とは、どういう意味か――――――」
不意に、男は訊ねた。
「どういう意味でもなく、最強なのが『最強』たる所以。そうではないですか?『破壊者』よ」
青年は微笑を浮かべながら答えた。
なぜだろう、俺はこの青年の顔に見覚えがある。
十字が刻印されたロングコートに覚えがある。
「それを、あえて答えてみようという趣向だよ…」
『破壊者』と呼称された男は、皮肉な笑みを浮かべて言った。
少しの間。
時計が時間を刻む音。
『破壊者』が口を開く。
「例えば―――――全てを破壊する、力」
「否」青年は答えた。 「偏に破壊のみの力など、『最強』には程遠い」

「例えば―――――人智を超えた、速さ」
「否」青年は答えた。 「それにも限界がある。物理的制約を受ける限り、『最強』とは言えない」

「例えば―――――鋼の如き、生命力」
「否」青年は答えた。 「しょせん片翼の盾、『最強』と呼ぶに足りない」

「例えば―――――誰をも及ばない、能力」
「…否」青年は答えた。 「「誰をも及ばない」と限定した時点でダブルスタンダード。その解は成立しない」
そして、大きく息をついた。「だが、真理には最も近い」

「『最強』の能力――レクイエムか…」
『破壊者』は呟く。
しかし、青年は首を横に振った。
「だが、矢に二度も審判を仰ぐとは…馬鹿げている。
 まして、あれは魂に作用する力。即ち『最強』か… とは、少し違う」

「なら… 何をもって『最強』とする?『蒐集者』よ」
『破壊者』は、最初と同じ問いを投げかけた。
間。
無慈悲な時計の音が、部屋に響き続ける。

「永遠――――」
青年は口を開いた。
「『最強』とは、『永遠』を内包している…」
青年はそう断言した。

「『永遠』か、…それも、まだ命題に過ぎん」
『破壊者』は言った。 「死を超越した『永遠』は本当に存在するのだろうか?」
「それは、司教として? それとも、代行者としての問いですか?『破壊者』… いや、我が友ブラムよ…」
青年は笑顔を見せた。
幼ささえ感じさせる笑み。
「もちろん、友人としての問いだ」
『破壊者』は、青年から危うささえ感じ取った。

しばしの沈黙。
『破壊者』は、青年に問いを投げた。
「『永遠』が存在するとしたら、君はあえてそれを手に入れようと思うかな?」
「かもしれませんね。魂を失わないですむのなら…」
青年は微笑んで言った。

―――――嘘だ。
―――――それは嘘だ。

彼は既に魅入られていたのだ。
彼は、其を手に入れ―――そして、失った。

119:2003/11/17(月) 22:59

目が覚めた。
小鳥がさえずっている。
ベッドから身体を起こし、時計を見た。
午前7時30分。普段起きる時間をとうに過ぎていた。
俺はゆっくりと体を起こす。
胸に激痛。
傷は塞がっているものの、痛みはある。
ヨロつきながら、ベッドから出た。
急がないと、学校に遅刻する。
ふと、鏡を見た。
胸に、大きな傷跡。
じぃに空けられた胸の穴。
傷自体は治っても、この傷跡は一生残るだろう。
「は、はははは…!!」
突然、笑いが漏れた。
俺は何をのうのうと生きているんだ?
殺人鬼が、学校に遅刻だって?
笑える冗談だ。
だから、笑い飛ばそう。
腹が空いた。
早く、朝食を食べないと。

階段を降りるだけで、胸に激痛が走った。
いかに重要器官に損傷はなかったとはいえ、あれだけの傷が一日で塞がるはずがない。
通常なら、入院ものだろう。
その俺がある程度動けるのは、リナーのおかげだ。
もっともリナーは「君自身の自然治癒力を活発にしただけで、私が傷を治した訳ではない」と言っていたが。
これがリナーのスタンド能力なのだろうか。
腹が鳴る。昨日は動き回った後、何も食べていない。
俺はキッチンまで急いだ。

キッチンにはリナーがいた。
「もう傷は良さそうだな」
無表情のままリナーは言った。
「なんとか動けるモナ。ありがとうモナ」
俺は礼を言った。
「そう言えば、ガナーは?」
「もう学校に言った。部活の練習と言っていた」
どうやら、妹の腹痛は治ったようだ。
俺は椅子に座ると、ちょっと冷めたトーストを口にした。

昨日、リナーに俺は殺人鬼であることを告げられた。
正確には、殺人を繰り返していたのは、俺の中にいるもう一人の俺だった事を指摘された。
それを告げられた時、リナーに殺されることを覚悟した。
だが、リナーはこう言ったのだ。
「君には恩がある。殺したりはしない」
俺は、驚きの表情を浮かべていたと思う。
その俺を、リナーは呆れた顔で見た。
「そこまで恩知らずじゃない。私を何だと思っているんだ?」

そして、リナーは俺をこう擁護した。
俺ともう一人は、身体を共有しているだけの他人な事。
だから、俺が罪の意識を感じるのは筋違いな事。
「君は、人を殺したいとは思わないだろう?」
もちろんだ。俺は大きく頷いた。
「なら、君は殺人者なんかじゃないさ。罪を犯したのは君の中の別人なんだから、
 君を責める理由はない。殺したのは、君の意思ではないのだから…」
リナーはそう言った。

120:2003/11/17(月) 22:59

そう簡単に割り切れるものではなかったが、かなり楽になったのも事実だ。
そして、リナーは今まで通り俺の家に滞在する事を告げた。
まだ町に吸血鬼は残存しているためと言っていたが、俺を監視する意図もあるんだろう。
まあ仕方ない。むしろ、その方が安心できる。
町の探索も今まで通り行うらしい。
探す対象が、殺人鬼から吸血鬼に代わっただけだ。
そう、しばらくはリナーと共にいられるのだ。
日常に戻れなくなった… なんて、なんのことはない。
昨晩だけ、日常から切り取られただけだ。
俺はこれからは日常に生きていく。

「何か楽しいことでもあったのか?」
リナーは言った。
俺はトーストを齧りながら、笑みを浮かべていたようだ。
それでいい。ネガティブに考えていても仕方がない。
俺の同居人を抑えながら、リナーと楽しく暮らす方がいいに決まっている。
だが、その為には、俺自身について深く知る必要がある。
「二重人格について、教えてほしいモナ」
俺は訊ねた。
「私は専門じゃないが…」
そう前置きして、リナーは語りだした。
「二重人格というのは俗称に過ぎない。正式な診断名は「解離性同一性障害」。症例は…まあ、知っての通りだ。
 原因に関しては多因子説が主流だな。特にKluft.R.P.の4因子説とBraun.B.G.の3Pモデルがよく知られている。
 4因子とは、解離能力、外傷体験、外的影響力と内的素質の相互作用、保護や慰めの欠如。3Pというのは、
 predisposing factors(脆弱性因子)、precipitating event(促進的事件)、perpetuating phenomena(永続性現象)だ」
「…面白いほどに意味不明モナ」
「つまり、子供の時の虐待経験などが、原因になるケースが多いということだ。心的外傷にさらされている子供が、
 『これは自分に起こっている出来事ではない』『だから痛くない』と自己暗示を続けることによって、
 本来の自分とは別の人格が生まれる」
そういう話は聞いたことがある。
「別人格の役割は様々だ。孤独な主人格を慰める友人であったり、主人格の代りに痛みや悲しみをひき受けたり、
 主人格には許されないような積極さや活動性を持っていたり、主人格が戻りたい幼児期であったり、
 主人格が持つには危険すぎる攻撃性や自殺衝動を持っていたりといった具合だ」
リナーは、言葉を選んで説明しているようだ。気を使ってくれているのだ。
だが、俺は虐待を受けた記憶など全くない。

それより、俺はもっと現実的な問題に気付いた。
「モナとモナの中の人が別人で、罪を感じる必要はないといっても…
 警察とかにその理屈は通じないモナ。捕まってしまうかもしれないモナ!」
「その心配は不要だ」 リナーは断言した。
「もう一人の君は、卓越した殺人者のようだ。警察から資料を取り寄せたのだが、
 指紋・毛髪・体液等の証拠は一切なし。目撃者もなし。凶器も、鋭利な刃物という以外手掛かりなし。
 夜という以外、犯行時刻もまちまち。犯罪生活曲線も不安定。どのアプローチからの接触でもお手上げらしい」
そうか。
俺は安堵のため息をついた。
素直に喜んでいいのか微妙だが、それでも捕まるよりはいい。
そんな話をしている間に、8時を回っていた。
このままでは遅刻してしまう。
「じゃ、行ってくるモナ!」
俺はそう言って家を出た。

121:2003/11/17(月) 23:00

教室に飛び込んで席についた。
案外、早く着いてしまった。
胸の痛みをこらえて走った甲斐がない。
先に来ていたギコが話しかけてきた。
「よう。モナー」
「おはようモナ」
「で、昨日の夜は、ちゃんとじぃとの約束を守ったんだろうな」
…胸に衝撃。
眩暈がする。
早くなる動悸。
胸が抉られるように痛い。
「そういえば、今日はまだ来てないな。朝は早いはずなのに…」
来るはずがない。俺が殺したんだから。
―――殺したから。
今までずっと忘れていた。
いや、意図的に思い出さないようにしていただけだ。
直接殺したのは奴だとはいえ、俺も殺意を抱いていたことに違いはない。
俺は、こんなところで被害者ヅラして何をしているんだ?

「おい、モナー!」
ギコは大声を上げる。「大丈夫か?ボーッとして…」
「…大丈夫モナ」
そう、大丈夫だ。
じぃは、既に人を殺していた。
人の血を糧にしていた。
もう戻れない身体だった。
ああするのが、俺の正しい道だったはず…
「で、結局昨日はどうなったんだ?」
「告白されちゃったモナ。でも…断ったモナよ」
俺は、何とか平静を装いつつ言った。
「そうか… それがお前の判断なら、何も言わんよ」
ギコは残念そうに言った。
「でも、この時間にじぃが来てないのは妙だな。お前、じぃを傷つけたんじゃないのかゴルァ!」
―――傷つけた。
これ以上ないほど傷つけた。

彼女の命を奪った。

「ああするより他に仕方なかったんだ!!」
思わず、立ち上がって怒鳴ってしまった。
「俺だってあんなことしたくなかった…! 好きでやったんじゃない!!」
ギコは目を点にして固まっている。
教室中の注目が俺に集まる。
「俺は狂ってなんかない!!狂ってるのは奴だけだ!!」
俺は教室を飛び出した。
訳の分からないままに走る。
時間の感覚がない。
足がもつれる。
胸が痛い。
俺は立ち止まって、大きく深呼吸した。
今頃、授業が始まっているだろう。
今さら教室に戻るのも気が引ける。
結局、俺は家に帰ることにした。


リナーは、居間で本を読んでいた。
「ん?今日は早いな」
「ちょっと、気分が悪くてモナ…」
リナーは心配そうな表情を浮かべた。
「…そうか。もともと、その胸の傷は一日で治るようなものではないからな」
「でも、リナーが治してくれたんじゃないモナか?」
リナーは首を振った。
「昨日も言ったが、治したのは君自身の治癒力だ。私はそれを促進させただけ。
 5日で治る怪我を1日に縮めただけだ。その分、君の身体には負担がかかっている。
 今日はゆっくり休んだ方がいいだろうな」
「…そうするモナ」
俺は部屋に戻って、ベッドに入った。

122:2003/11/17(月) 23:00

当然ながら、眠れない。
時間が時間だ。今は10時。
授業中なら寝れるのに、ベッドに入ると寝れないとは、なんて天邪鬼な体だ。
目を瞑ると、じぃの顔が浮かんでくる。
俺に思いを寄せてくれた女。
俺が殺した女。
…俺は、一生彼女に囚われたままなのだろうか。
ふと、疑問が湧いた。
なぜ、じぃは吸血鬼になったのか。
リナーは、二つの方法があると言っていた。
石仮面を使う方法と、吸血鬼の血を取り込む方法。
じぃに吸血鬼の血を取り込む機会があったとは思えないし、石仮面など問題外だ。
リナーに聞いてみるか。
俺はベッドから体を起こした。

「じぃ…昨日の女吸血鬼は、どうやって吸血鬼になったんだと思うモナ?」
居間で読書しているリナーに訊ねた。
「元々吸血鬼で、人間社会に紛れていたのではないか?」
リナーは本を閉じて脇に置いた。
「それはないモナ。確かに、吸血鬼になったのは最近モナ。
 本人もそう言っていたし、普通に日光の当たるところに…」

…俺は何かを見逃している。

「…いや、昨日の朝、学校でじぃに会った時はじぃは既に吸血鬼だったモナ。
 だけど…そのとき、教室には日が差していたモナ」
つまり、日光でも平気だった?
「それはありえないな」
リナーは断言した。
「吸血鬼は決して日光を克服できない。人間がいくら訓練しても、水中では呼吸ができないのと同じだ」
「でも、確かに…」
あれが間違いではありえない。
じぃが吸血鬼だと看破した時、確かに教室に日光が差し込んでいた。
リナーは首を振る。
「究極生物でもない限り、太陽の光を克服した吸血鬼などありえないな。
 私の見た限り、あの吸血鬼の身体能力は通常の吸血鬼と比べても劣る」
…究極生物?
どこかで聞き覚えがあるような…
何かが、脳内に押し寄せてくる。
…究極。最強。赤石。永遠の内包。観測者の不在。矛盾。時計の音。因子。原初の海。最強の不死者。
遺伝子。サン=ジェルマン。接合点。暗い部屋。太陽の克服。黒点。ロストメモリー。破られた約束。
何だ?
これは何なんだ?

「どうした?」
硬直した俺を見かねて、リナーが声をかけたようだ。
「…究極生物って、何モナ?」
「何でもない」
リナーは興味無さげに言った。
「ただのおとぎ話だ。公式な記録には、そんなモノの記載は無い。
 そんなのが存在するのなら、一度お目にかかりたいくらいだ」
そして、リナーはため息をつく。
「だが、君が嘘を言っているようには見えないな。日光が平気な吸血鬼か… 変種か、進化か、あるいは…」
そこで言葉を切った。
「あるいは?」
俺は聞き質す。
「天然の吸血鬼ではないのかもな」
「どういうことモナ?」
「いや、冗談だ」
冗談と言った割には、リナーは怖い顔をしている。
これ以上は聞くな、と言っているも同然だ。
仕方がないので話題を変えた。
「リナーは昼食はどうするモナ?」
「適当に食べるが、君は?」
「イマイチ食欲がないから、いらないモナ。まだ気分が悪いから、しばらく寝るモナ」
リナーは心配そうな目線を投げかける。
「大丈夫モナ。おやすみモナ」
俺は部屋に戻った。

123:2003/11/17(月) 23:01

結局、じぃが吸血鬼になった原因も、日光が平気な理由も不明って事か…
俺はベッドに入って、天井を眺めながら考えていた。
リナーは、またもや何かを隠しているようだった。
今の俺なら心の中を「視る」こともできるだろうが、倫理的に抵抗がある。
とりあえず、俺の心は決まった。
人に仇なす吸血鬼を殺す。
一匹でも多くの吸血鬼を殺す。
あの時じぃを殺そうとした理由は、正義感だ。
これ以上の犠牲者を出さないため。
そして、じぃを救うため。
ならば、その正義感を持ち続ける。
詭弁には違いない。
だが、あの時の動機を嘘にしないためにも、俺は自分を貫く。
方向性が間違っているのは分かっている。
傲慢な自己満足である事も分かっている。
だが、こうでもしないと…じぃに顔向けできない。
かなり気が楽になった。
同時に、俺は不器用だな…と自嘲した。


…眠ってしまったようだ。
まあいい。元々眠るつもりだった。
時計を見ると、午後7時。ちょうど夕食の時間だ。
いかに悲劇の主人公ぶろうと、空腹には勝てはしない。
キッチンに行ってみると、リナーとガナーの姿があった。
俺が寝ている間に、ガナーも学校から帰ってきたようだ。
驚いたことに、二人は談笑している。
と言っても、ガナーが一方的に話しかけ、リナーは相槌をうっているだけだが。
これまでのギクシャクした雰囲気は全くない。
やはり、昨日の看病のおかげでガナーが心を開いたのだろうか。
俺の分の夕食も用意されていた。
ガナーが作ったやつなので、安心かつ安全だ。

リナーが一番先に食べ終えて、部屋に戻っていった。
「リナーさん、綺麗だよね…」
ガナーは呟く。萌えない妹なりに、思うことがあるようだ。
「最初、綺麗なだけで嫌な女かなと思ってたけど。兄さん、見かけに騙されたのかなって…」
なかなか失礼なことをぬかしてくれる。
「でも、本当はすごく優しい人だね。無口だから分かり難いけど」
そう言われると、自分の事でもないのに照れてしまう。
俺は耳まで赤くしながら、ごはんを口の中に流し込んだ。
「ホントに、あんないい人をどうやってつかまえたんだか…」
「つかまえたって何モナ!モナはただ…」
道で気絶していたリナーを、連れて帰っただけだ。
拉致同然。つかまえるよりもタチが悪い。
そう、リナーは倒れていたのだ。
吸血鬼を赤子同然に扱うリナーが、なぜ気を失うほど追い込まれていたのだろう。
俺はあらためて疑問に思った。特に外傷もなかったはず。
さらに、町に迫る脅威。この町に潜んでいるという吸血鬼やスタンド使い。空想具現化。疑問はいくらでもある。
…それより、なぜ俺は「スタンド」という言葉を何の抵抗もなく受け入れている?
夢の中でもう一人の俺と話した時は、能力の説明だけで、スタンドについての説明はなかった。
なぜ、俺はスタンドを知っている?
そうか、あれだ。
俺の読んでいた漫画。
『矢の男』が、スタンド使いを増やす話だった。
…いや、どこか違和感がある。

「お兄ちゃん!?」
ガナーの声。
「どうしたの?急に固まって…」
どうも、俺は思考に没頭してしまう癖がある。
とはいえ、夕食はキレイに食べ終わっていた。
思考しながらも、口は動いていたようだ。なんて便利な体。
さて、体調はいいとは言えない。
夜の見回りまで、ゆっくり休むか。


…10時。
リナーと夜の町へ出かける時間だ。
今までと何も変化はない。
「殺人鬼探し」が「夜の見回り」に代わっただけだ。
何せ「殺人鬼」とは俺のことだったのだから、笑い話だ。
俺は居間に出た。
リナーが待っている。
「今日は、君は休むべきだと思うが」
リナーは俺の顔を見るなり言った。
「いや、行くモナ」
1人でも多くの吸血鬼を殺す。
リナーと共にいても出番はないだろうが、戦闘経験を積むことが重要だと思う。
何より、俺一人になったら、またあの殺人鬼が出てくるかもしれない。
「リナー」
俺はリナーに呼びかけた。
「もしモナの精神が殺人鬼に支配されたら、迷わずモナを殺してほしいモナ」
望まぬ罪を重ねるより、リナーに断罪された方がいい。
「…そうならない事を期待している」
リナーは関心が無さそうに言った。
俺達は、家を出た。

124:2003/11/17(月) 23:02

吸血鬼はすぐに見つかった。
スタンド使い同士は惹かれ合うという話があるが、吸血鬼も例外ではないのだろうか。
吸血鬼は、リナーの姿を見るなり逃げ出した。
「一昨日の吸血鬼よりは上質のようだな…」
リナーは追いながら呟いていた。
一昨日の吸血鬼は、リナーに正面から戦いを仕掛けて返り討ちにあったのだ。
リナーは『教会』に所属する、吸血鬼専門の殺し屋である。
「この服は、暗殺装束だ」 リナーは言っていた。
「この服に刻まれた十字を目にする事は、奴等にとっては断頭台に頭を乗せる事に等しい」
その通りだろう。
吸血鬼は十字架に弱いという伝承がある。
だが、吸血鬼達が十字架そのものを恐れている訳ではない。
奴等は、十字が刻印された集団を恐れているのだ。

リナーはたちまち吸血鬼に追いついた。
俺は、リナーの遥か後ろを走っている。
どうせ、俺は戦力にならない。
ならば、リナーの動きを「視て」戦いのセンスを磨く。
俺一人でも吸血鬼を葬れるようになるために。

リナーはその場からバヨネットを投げつけた。
逃げる吸血鬼の足を貫通し、地面に突き刺さる。
「GYYYYAAAA!!」
吸血鬼の動きが止まる…
と思ったら、地面に縫い付けられた左足を自分で切断した。
そして、逃げられないと判断したのか、そのままリナーに飛び掛った。
「塵ごときが。開き直ったつもりか?」
リナーは吸血鬼の顔を左手で鷲掴みにした。
右手にはショットガン。
それを吸血鬼の腹に押し当て、何度も引き鉄を引いた。
飛び散る血飛沫は、瞬く間に蒸発していく。
あの弾丸も法儀式済みなのだろう。
これ以上ないほどのゼロ距離に下半身は千切れ飛び、腹部は四散する。
リナーが、吸血鬼の顔を掴んでいる左手を離した。
吸血鬼の上半身は、イヤな音を立てて地面に落ちた。
「さて、話してもらおうか…」
問い質すリナー。
吸血鬼は不快な声を上げた。
「なんて不運なんだ、俺は… 『アルカディア』のいる町に着いたと思ったら、代行者に会っちまうなんて…」
「黙れ。貴様に許される言動は、『アルカディア』の居場所だけだ」
「へへへ… アンタほどの奴がそれを聞くのか? 見たとこ、5位よりも上位だろ? 奴の居場所なんて、
 能力の性質を考えれば明らかじゃないか?「空想具現化」の力が存分に振るえる場所さ…!」
「何だと?」
まずい。
リナーに隙が生まれた。
俺が行動を起こす前に、吸血鬼は右手を地面に叩きつけた。
巻き上がる砂煙。
その一瞬の隙に、吸血鬼は姿を消した。
「まだ、それだけの余力があったとはな… だが、塵への猶予期間は短い」
吸血鬼は上半身だけだった。
その地面を這っていった後が、くっきりと残っていた。

125:2003/11/17(月) 23:02

俺達は後を追った。
今日は追いかけてばかりだ。
おそらく、上半身だけなので動きは遅いだろう。
すぐに追いつけるはず。
路地裏のような場所に、その跡は続いていた。
あそこは行き止まりのはず。それで、袋のネズミ…

―――何だ?

路地裏に、さっきの吸血鬼以外の何かがいる。
ひどく嫌な感じ。
身の毛がよだつ、という感覚だろうか。
初めて吸血鬼を見たときとも違う、同種でありながら相容れない感じ。

リナーも立ち止まった。
その何者かの存在を感じたようだ。
「…何かいる。吸血鬼ではない…」
リナーは服の中からサブマシンガンを取り出した。
全く関係ないが、あれだけの量の武器をどうやって隠しているのだろうか。
「気を抜くな。普通じゃないぞ…」
そんな事、言われなくても分かる。
場の雰囲気が視える。
路地裏に、黒い霧のようなものが立ち込めているようだ。
視覚化された、何者かの気配。
こんなものは視た事がない
余りにも異常過ぎる。
俺達は、警戒しながら路地裏へと踏み込んだ。


先ほどの吸血鬼がゴミのように地面に転がっている。
既に絶命しているのは明らかだ。
その胸には、「矢」が刺さっていた。
明らかに古いものと分かる、骨董品といっても差し支えない「矢」。
そして、死骸の傍らに立つ男。
顔は影になっていてよく見えない。
どちらにしろ、その異様な雰囲気のせいで顔を直視できないが。
男は「弓」を携えていた。
こいつは人なのか?
この男に比べれば、吸血鬼の方がまだ人間らしい。

その男は、俺達の存在を意に介していないようだ。
「こいつも… 選ばれた者ではなかった…」
男は吸血鬼から矢を引き抜いた。
そして…男はこちらを見た。
視線を受けただけ。
それだけで、死を意識した。
やはり、あれは違う。
俺達と根本的に違う。
絶対に関わってはいけない生物。

男は矢をこちらへ向けた。
「お前達は…どうだ…?」


  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

126N2:2003/11/17(月) 23:33
Newシリーズ突入ですね。
乙です。これからが凄まじく気になります。

127ダンボール </b><font color=#FF0000>(M.nd32Bk)</font><b>:2003/11/18(火) 00:20
遅れながら乙です。
二つの原作がうまく入り混じっており、
それでいて微妙に違うオリジナルっぽさがあり、
とっても面白いです。

128誇り高き愚者ボロギコ:2003/11/18(火) 17:33
茂名王町繁華街
その中心に流れる茂名川に架かる橋の下
そこに一匹のギコ族の男がいた
彼の名はボロギコ
どうして彼はここに住んでいるのか?
それは覚えていない、気づくとここで生活をしていた。
小さな頃から生きるための盗みはやってきたし、時には店主にばれてぶちのめされた。
町の不良チームに集団で襲われたこともあった。
そんな争いの中片方の耳はとれてしまっていた。
しかし、それでもボロギコはこの町が好きだった。
明日の食い扶持に困る生活だったが厳しい生活は彼にしたたかさを授けた。
そして・・・そんなある日

カァー
「っ・・・カラスに睨まれて泣かれたぜ・・・・縁起悪りーな」
橋の下に建てられた掘っ立て小屋、これがボロギコの家である。
「ま、そんなことちーとも気にしないがな、さ・・・生きるために・・・つりでもするかな」
そう言うとボロギコは川の前に立つ。
「つっ・・・・と」
ボロギコが竿を振るとポチャンと音が鳴り浮きが浮かび上がる。
「・・・今日は釣れねーぞ、ゴルァ」
ついつい出てしまったギコ族特有の口癖
それを気にすることもなくボロギコはつりを続ける
「・・・!来たっ!!・・・・・って長靴かい・・・・古典的な・・・・」
今日はえらくついていない、ボロギコがそう思ったとき
「えっ・・・・!?うぉおおおおおおお!!!」
一台の車が橋のガードレールを突き破りボロギコの方につっこんできたのだ!!
「セパレート・ウェイズ!!身を守れ!!」
ボロギコはとっさに彼自身のスタンドを発現させた
「ゴルァアアアアアアアアアア!!」
セパレート・ウェイズと呼ばれた人型スタンドが繰り出す数発の拳が車の向きを変えさせる
「はぁはぁはぁ・・・・」
「やっぱり・・・スタンド使いだったね・・・」
ボロギコの右方向から声がする
ボロギコとっさに土手の方を向いた
そこには一人の男が立っている
モナー族のようではあったが普通のモナーとは違い耳がつの状になっていた
「僕の名はつのモナー、ひろゆき様の命により、この町のスタンド使いを狩りに来た一人だ」
「何言ってやがるんだ?スタンド・・・この力のことかゴルァ」
「ふん・・・スタンド使いとわかった以上は本気で始末するのみよ!!」
そう言うと男は自分のスタンドを発現させた
「フォーチュン・イズ・バッド!」
フォーチュン・イズ・バッド
そう呼ばれたスタンドは手にしたコインを上空へと放り投げた。
「説明してやろう!我がスタンド、フォーチュン・イズ・バッドは!運を操作するスタンドだ!このコイントスの結果が表だったときッ!
貴様に不運が起こるッ!そしてっ!!」
スタンドがコインを受け取る
「結果は表だ・・・」
「・・・・ぐぁ」
ボロギコは突然うめき声を上げうずくまる
ボロギコの腕には先ほどの車の窓ガラスの破片が深々と突き刺さっていた
「ふふふ・・・ボロギコって言ったっけ?ついてないなぁ・・・普通なら無いよ・・・今頃ガラスが突き刺さるなんて」
「・・・これが貴様の」
「だが・・・貴様の不運は俺を幸運にするッ!貴様の死という形でなッ!!」
「てめぇ・・・」
ボロギコは立ち上がる
そして、ボロギコの脳裏にはこの不思議な力を身につけたときのことが浮かんでいた。

129誇り高き愚者ボロギコ:2003/11/18(火) 17:34
数年前のある日
ボロギコはいつものように生活をしていた。
その日も今日のように下手なつりをしながらかろうじて生活していたのだ。
そして、ようやく数匹の魚を釣り上げたボロギコは、掘っ立て小屋に戻ろうとした。
その時だ
ボロギコは自分の胸に生暖かい感触を感じた。
矢だ。
自分の胸に矢が刺さっている。
見ただけで致命傷とわかる位置、心臓。
ボロギコはその場に倒れると、すぐに自分の死を意識した。
その時、自分の正面に何らかの気配を感じた。
かろうじて首を動かし前方を見る
弓を持った男が立っていた。
ボロギコを見下すようにして、だ。
それを見たボロギコは全身の毛が逆立つほどの怒りを覚えた。
「この男はッ!自分の命を何とも感じていないッ!!」
彼はつらい生活は送ってはいたが自分の命に誇りを持っていた。
それは彼の誇りに対するかつて無いほどの侮辱だったのだ。
そのかつて無いほどの怒りを原動力に!ボロギコはなんとッ!
立ち上がりッ!
心臓を貫通している矢を自ら引き抜き!
ボロギコが立ち上がったことに驚く男の顔面をッ!!
力一杯ッ!!ぶん殴ったのだ!!
そして男が地面に倒れるのとほぼ同時に、ボロギコは意識を失った。

そこから先は覚えていない。
目が覚めたときには男はいなかった。
不思議なことに傷はふさがっていた。
数日後、ボロギコは自分に備わった不思議な力・・・スタンド「セパレート・ウェイズ」の存在に気付くことになる
こうしてボロギコは、スタンド使いとなったのだ!!


立ち上がったボロギコは、あのときと同じ怒りを胸に感じながらゆっくりとした口調でしゃべり出した。
「俺は・・・今現在社会的地位に置ける最下層にいる・・・生まれた時から親はおらず、今日まで生きるために片耳を失った」
「だが、こんな生活をしていても・・・いや!こんな生活だからこそ!
俺は自分の命に対しては誇りを持っているッ!貴様は今ッ!!俺の命を侮辱したッ!!!」
「この失った片耳にかけて!貴様は俺が徹底的にぶちのめしてやるぞゴルァ!!!」
ボロギコはそう叫ぶとありったけの殺気を乗せた眼で○○を睨み付けた
「うっ・・・吼えたところで何になる!貴様は今ついてないんだ!!お前は俺に近づくことさえできないんだよ!!」
○○はボロギコの殺気に一瞬おびえたが自分を無理矢理奮い立たせ再びコイントスをする
「表だ!!」
「やかましぃ!!俺は占いなんぞ信じねぇぞゴルァ!!」
ボロギコが走り出そうとした瞬間!
ボロギコの前方に火の手が上がった
「なにぃ!」
「ふはははは!!車から漏れだしたガソリンに電気系統のスパークで着火し土手の草に燃え広がったようだな!!」
○○はボロギコの不運に大声を張り上げる
「ところで・・先ほど見せた貴様のスタンドは・・・近距離パワー型だったなぁ」
「・・・・・」
「もう一度コイントスすれば貴様は確実に死ぬ!今までの経験からそれがわかる!!
だが貴様はコインが落ちるまでにここに来ることはできない!勝った!!フォーチュンイズ・・・」
フォーチュン・イズ・バッドがコインを上空に放り投げる
瞬間ッ!!
「セパレート・ウェイズ!!」
セパレートウエイズが前方に左腕をかざした。
すると!その腕が切り離され!エネルギー化し!発射される!!
「ブグァ」
そのエネルギーの弾丸は確実に○○の顔面に命中した
「ば、馬鹿な・・・貴様のスタンドは・・・近距離パワー型のはず・・・」
「俺のスタンド・・・セパレート・ウェイズは体の一部をエネルギーの弾丸として発射する、まさに身を粉にして戦うスタンドだ」
「貴様のような運に頼る温室育ちにッ!!負けるはずがねぇんだよ!ゴルァ!!!」
右腕!左足!右足!連続して発射される!!
「ゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ボロギコの方向とともに!とどめと言わんばかりに胴体が発射された!!
「ウゲェフ!!」
全弾直撃を喰らったつのモナーは土手に縫いつけられた

「勝つには勝ったが・・・飯は食い損ねるし、腕には怪我、おまけに火の海・・・マジでついてねぇぞゴルァ・・・・」


ボロギコ→家が燃えていることに気づき本日何回目かの「ついてねぇ」を言うことになる

つのモナー→全治6ヶ月、再起不能

130誇り高き愚者ボロギコ:2003/11/18(火) 17:34
スタンド名:セパレート・ウェイズ
本体:ボロギコ
破壊力:B スピード:A 射程距離:5m(エネルギー弾は約20m)
持続力:D 精密動作性:B 成長性:C
能力
スタンドヴィジョンの一部を切り離し破壊のエネルギーとして発射するスタンド。
発射したヴィジョンは20秒ほどで元に戻る。また、その破壊力は使用する部分の大きさに比例する。
そしてエネルギータンとして発射するために、分離→エネルギー弾化→発射のプロセスを取るため次のようなことが可能
1,分離してエネルギー化しない状態での射程5m以内における個別での操作(EX.分離した腕と腕のないスタンドで挟み撃ちなど)
2.エネルギー弾化した状態での射程20m以内における「設置」と好きなタイミングでの「発射」
また、この形態ならばダメージのフィードバックはないが「発射」以外の操作は不能。
すべてのスタンドヴィジョンをエネルギー弾化してしまうと戻ってくるまでスタンドの見えない一般人と同じになる。



スタンド名:フォーチュン・イズ・バッド
本体名:つのモナー
破壊力:D スピード:B 射程距離:B
持続力:D 精密動作性:A 成長性:D
能力
スタンドが「コイントス」をして表だったときのみ、指定した相手に不運を訪れさせる能力。
一回のコイントスで一度の不運を訪れさせる。コイントスの時対象にできるのは一人のみ。
スタンドの高い精密動作性と本体の訓練により、ほぼ確実に表を出すことが可能である。

131誇り高き愚者ボロギコ:2003/11/18(火) 17:38
初めてですが、書いてみました。
どうでしょうか?
「セパレート・ウェイズ」は依然僕がスタンドアイディアに書いたものを
改造して使っています

132新手のスタンド使い:2003/11/18(火) 20:26
初めの方は雰囲気が出ていていいと思うんだけど、
車が突っ込んできてからの展開があまりにも早すぎて、話についていけなかった。
演出的な部分をもっと端々に散りばめて、文章に深みを持たせる必要があると思われる。
本編の場合AAがついているだけまだマシに見えるのだけれど、
文章だけだとそれが強調されて感じられた。
今回の話を2〜3話分くらいの量にすると、ちょうど良いんじゃないだろうか。

133:2003/11/18(火) 22:17

「―― モナーの愉快な冒険 ――   影・その2」


          @          @          @


フサギコは大きな欠伸をした。
そして、そのドアの前に足を踏み出す。
馬鹿みたいに格式染みた自動ドアが、静かに開いた。
高級な自動ドアというのは、全く音がしない。
行きつけのコンビニの自動ドアはバリバリ言うのに。
全く… 官公庁の建物はいつもこうだ。
フサギコはため息をついた。
体制批判をするつもりはないが、もっとマシな国税の使い方があると思う。
いや、それこそ、骨の髄まで体制側の自分が言えた義理ではないんだが…
そんな事を思いながら、やけにいい響きの足音がする床をつかつかと進んだ。

ここに来た時、毎回顔を合わせるしぃ族の受付嬢の姿があった。
フサギコはブースにもたれながら話しかける。
「よお。最近どうだ?」
「大変なことがありましたよー!」
受付嬢は嬉しそうな声を上げた。
「昨日、オバちゃんが税金が高いってクレームつけてきて、1時間くらい熱弁を振るってたんですよ!」
フサギコは思わず笑ってしまった。
しかし、受付嬢はムッとした表情を浮かべる。
「笑い事じゃないですよー!! そのオバちゃん、「どうせ私達の税金で食べてるクセに…」って言ったんですよ!
 住民税も納めてないくせに、何言ってるのかって感じですよね! 消費税は国税だから、私の給料には関係ないし…」
受付嬢の愚痴は、意外かつ当然の成り行きで遮られた。
後ろに、彼女の上司が立っていたのだ。
「勤務中ですよ」
上司はぶっきらぼうに注意した。
受付嬢は口をつぐむ。
さらに上司は、こっちにも敵意のこもった視線を向けた。
「あなたも、そんな所で長話に興じられては困ります。私達も暇ではありませんからね」
つまり、とっとと用を済ませて帰れ、という意味だ。
確かにごもっとも。ここでは、自分は招かざる客だ。
嫌味の一つでも言い返してもいいのだが、あんまりここでのんびりする訳にもいかない。
さっきの皮肉ではないが、自分も、今から会う男も、決して暇ではないのだ。
とっとと用事を済ますか。
フサギコはその場を離れて、エレベーターに乗り込んだ。
「R」のボタンを押す。
エレベーターの揺れはほとんどない。
何から何まで、いいモノを使っている。
そして、すぐに屋上へ出た。
地上35階のビルの屋上。
とにかくだだっ広い。
遮蔽物も何もない。
自分があの男と話すときは、いつもこの場所だ。
「庁内では、誰が聞き耳を立てているか分からないですからね…」
それが、あの男の言い分だった。
まあ、ご大層な賓客室に通されるよりは遥かにマシだが。
ああいう場所は息が詰まる。
つまり、ブルジョアには縁がないということだ。

134:2003/11/18(火) 22:17

男は先に来ていた。
エリート然とした風貌。
切れ者を思わせる眼鏡。
冷たい目。
人間味を感じない、と噂されているらしい。
スタイリストでもついているかのような、スーツの着こなし。
そのネクタイは風になびいている。
構成要素の全てが癪に障る。
そう、自分はこの男が嫌いなのだ。

フサギコの姿を見て、男は言った。
「大失敗ですよ。3人送ったのに、『蒐集者』の前であっという間に殉職だ…」
やれやれ、といった感じで肩を竦める。
部下の命を何とも思っていない。
とことん気に障る。
「一人は爆死、一人は床と完全に融合して窒息死。一人は心臓を貫かれ即死。
 全く、遺族に何と説明したらいいのか…」
面倒事が増えた、とでも言いたようだ。
部下の死を悼む気は全くないらしい。
「でも…私としては、『蒐集者』をほっておく訳にもいかないんですよ」
男は言った。

この男は、警視庁警備局公安五課―――通称、『スタンド犯罪対策局』の局長を務めている。
そして、こいつ自身もスタンド使いらしい。
つまり、純粋な人間ではないという事だ。
生命エネルギーのヴィジョンを自在に操る。
手を触れずに物を破壊できる。
そして、様々な異能。
そういう者を、自分は人間と認めない。
スタンド使いどもも、化物の仲間だ。
フサギコはそう考えている。

「で、折り入って貴方に話があるんですが…」
局長は話を切り出した。
「まさか、俺に動けと言うんじゃないだろうな? それなら断るぞ」
フサギコは先手を打つ。
「そうですか…」
残念そうな表情を浮かべつつ、口元には笑み。不気味な男だ。

内心、フサギコは頭を抱えたい気分だ。
この男は、自分の属する組織を暗殺集団か何かと勘違いしてはいないか?
局長は話を続ける。
「この一件で、外務省から苦情が来ましてね… 国際問題になるとか、ヴァチカンに合わす顔がないとか…」
そして、わざとらしく手を叩いた。
「そうだ。外務省の連中を皆殺しにしてくれませんか?」
「馬鹿言うな。俺の立場でそれをやったらクーデターだ」
局長は意に介さずに話し続けた。
「おまけに、公安の奴等まで文句をつけてくる… 全く、クレームを処理できるスタンドが欲しいですね」
自分も公安に属している事を棚に上げての発言だ。
こいつらは、自分達を公安課の一つであると認めていない。
スタンド使いを相手にしているのだから、自分達は特別だとでも思っているのだろう。
馬鹿な選民意識だ。

局長は一人で喋り続けている。
「ところで、ヴァチカンでは我が国へのツアーパックが流行っているようですね。
 『異端者』、『蒐集者』に続いて、『破壊者』と『調停者』が入国したようですよ…」
流石に今のは聞き流せなかった。
教会が派遣した代行者が4人。
卓越した暗殺技術。吸血鬼殲滅に特化した強力なスタンド。
それらを併せ持つものだけが代行者を名乗る事を許され、スタンド能力を象徴した異名を与えられる。
つまり、そいつらも化物だ。
何のことはない、化物が化物に敵対しているだけの話。
そんな連中が、この国に集まっているのだ。
「なんだとオイ!!連中、この国で何をやらかすつもりだ?」
フサギコを驚かせたからなのか、局長は満足そうだ。
「さあ?ミサでないのは確かでしょうね」
そう言って笑った。
フサギコは呆れかえる。
しかし、笑いが止んだあとの局長の顔は真剣だった。
「…代行者が4人。これだけで、軍事的パワーバランスが変化する。他国の軍隊が駐留しているも同然なんだ。
 我が国の喉元にナイフが突きつけられたんだよ…」
これが、この男の本当の顔だ。
「で、公安五課としてはどうするんだ?」
フサギコは訊ねた。
「貴方達が皆殺しにしたらどうです?」
帰ってきた返事は、やはりふざけたものだった。
「いい加減にしろ。そう簡単に俺達が動けるか」
フサギコは言う。
局長は不服そうに言った。
「いいじゃないですか。侵略を受けてるも同然なんだから。マスコミも大目に見てくれるでしょう?
 貴方も、赤絨毯の上で「集団的自衛権を行使する!」なんて言いたくないですか? 憧れでしょう…」
付き合っていられない。
適当に返事をして、フサギコはその場を後にした。
やはり、あの男は嫌いだ。


          @          @          @

135:2003/11/18(火) 22:18

俺達の眼前には、矢を手にしてたたずむ男。
――――矢の男。
不意にその名が浮かんだ。
馬鹿な。それは創作上の人物だ。
だが… あの姿は、それと一致しすぎている。

俺は、男の内面を視た。
空白。
何も無い。
感情も思考も存在しない。
存在の意味も目的も持っていない。
なんだ、この不安定な存在は。
これが、生きていると言えるのだろうか。
それでいて、圧倒的な存在感。
圧迫感。威圧感。
矛盾だ。全くもって矛盾だ。

リナーは両手のサブマシンガンを『矢の男』に向けると、躊躇する事なく発砲した。
パララララ…という軽い銃声。
だが『矢の男』の姿は既にない。
ブロック塀が、意味もなく蜂の巣になっただけだ。

『矢の男』は、リナーの後ろに立っていた。
俺は確かに視た。
今の移動は、消えてから現れるまで1コンマのタイムラグもない。
スピードじゃない。何かの能力だ。
「貴様、スタンド使いだな…」
『矢の男』の声。
まずい!!
俺は飛び込もうとしたが、その間すら無かった。
うっすらと浮かび上がる『矢の男』のスタンド。
その拳が、リナーの背中に命中する。

…間違いなく即死レベル。脊髄を破壊するに充分な威力。
リナーの体は大きく吹っ飛んで、ブロック塀に激突した。
「リナー!!」
俺はリナーに駆け寄った。
しかし…
「大丈夫、カスリ傷だ」
リナーは素早く立ち上がった。
そんな馬鹿な。
今の攻撃は、武道の達人だろうとも受け流せるレベルじゃない。

「何をボーッとしてるッ!!」
リナーの声で我に帰った。
『矢の男』は、いつの間にか俺の真横にいた。
スタンドが、大きく真横に腕を振るうのが視える。
命中すれば、頭蓋骨ブチ割れ&飛び散る脳漿。
俺は、姿勢を低くしてその攻撃をかわした。
正確には、腰を抜かした。
その後に来る『矢の男』の追撃。
スタンドの拳が、腰を抜かしている俺に振り下ろされた。

その瞬間、リナーが日本刀で斬りかかる。
俺の顔面をスクラップにするはずだった拳は、その攻撃を防ぐのに使われた。
「…!」
『矢の男』のスタンドが、日本刀を押し返す。
リナーは一歩退き、日本刀を構えた。
左手を刀の柄に軽く添える。
それを腹の前で構え、相手の方に軽く傾かせる。
ギコに聞いた事があった。
――正眼。
あらゆる剣術において、基本にして最強の型。
一分の隙すら視えなかった。
鉄壁の防御でありながら、最強の攻撃態勢。
俺ならば、ああなった相手は絶対に倒せない。

まさに一閃。
リナーの体が、『矢の男』の眼前まで一瞬で移動した。
今のは、『矢の男』とは明らかに性質が異なる。
紛う事無き、スピードによる移動。
磨き抜かれた肉体が可能にする「速さ」。
その勢いを殺す事無く、リナーは刀を振り下ろす。
だが、『矢の男』にはそれすらも通じない。
拳で軽く受け流された。
さらにリナーは日本刀を振るう。

136:2003/11/18(火) 22:18

二の手、三の手を意識した動き。
それでいて、相手を殺傷することのみに洗練された攻撃を繰り出すリナー。
機械のような正確さ。
そして、最小限の動きでそれを捌く『矢の男』。
どっちも速過ぎる。
視えてはいるものの、俺の介入できるレベルではない。
だが、素人目に見てもリナーは不利だ。
日本刀ではスタンドは斬れない。狙うは本体のみ。
一方、スタンドの攻撃は日本刀では防げない。リナーにはかわすしか手段がないようだ。

リナーは、剣を大きく振りかぶって、左斜めに斬り下ろした。
まずい!
今のは、大きく隙ができる動きだ。
『矢の男』が、それを見逃すはずがなかった。
その攻撃を受け止めず、ガラ空きになった右側に瞬間移動する。
リナーは、完全に体勢を崩していた。
男のスタンドの拳が、リナーの胸を貫く…はずだった。
「甘いな…」
リナーは呟く。
日本刀に添えられていたのは左手だけ。
右手は背中側に回っていた。
そこから出てきたのは、なんとアサルトライフル。
『矢の男』は、用意された隙に引き込まれたのだ。
奴は完全に攻撃態勢に入っていて、反応しきれない。

引き鉄が引かれる。
フルオートで発射される弾丸のシャワー。
「…!」
『矢の男』の姿が消えた。
またもや瞬間移動。
しかし、攻撃の隙と心理の隙の両面をついたフェイントだ。
何発かは確実に当たったはず。

『矢の男』は5mほど後ろに現れた。
左腕から血を流している。
どうやら2発ほど命中したようだ。
たった、あれだけのダメージか。
あの距離からフルオートで撃たれて、あれっぽっちのダメージ。
やはり化物だ。
絶対に関わってはいけない、という勘は正しかった。
奴は、俺達に対抗できる相手ではない…

「相当訓練されたスタンド能力だ… 自身の動きと完全に調和し、美しくすらある…」
なんと、『矢の男』は笑った。
表情には出ないが、感情の変化を俺は視た。
「そして…」
『矢の男』はいまだに腰を抜かしている俺に顔を向ける。
「未来予知型のスタンドか… 私の動きを目で追えるとはな… 
 それに体が付いていくようになれば、かなりの力を発揮する…」
なんと『矢の男』は俺達に背を向けた。
「そのスタンド、大切に扱え…」
そう言い残して、『矢の男』は消えてしまった。

その場に立ち込めていた、異様な雰囲気も消滅してしまう。
逃げた…のか?
いや、奴を追い詰めたとは考えられない。
状況を考えれば、見逃されたとしか思えない。
しかし、一体なぜ?
俺は腰を抜かしたまま、呆然としていた。


  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

137丸耳達のビート:2003/11/18(火) 22:28
   たったったったったっ…………………
 うっすらと朝霧の立ちこめる田んぼの側を、二人の男が走っていた。
二人とも『モナー族』特有の優しそうな目をしている。
 片方はひょろりと細い体つきをした『初老の男性』で、もう片方は標準的な体型の『少年』だ。
走るペースに合わせて、頭の上の丸い耳がぴこぴこと揺れている。
 かなり息の上がっていた少年が、前を走る初老の男性に向かって音を上げた。
「おじぃちゃん、ちょと、休憩、しよ…!」
「何じゃ、情けないのぉ…儂の若い頃は二〇㌔くらい余裕じゃったぞ?」
 息一つ乱していない初老の男性が、呆れたように呟いた。
「そんな、事、いっても、もう、だめ、ぽー…」
「しょうがないのぉ…あそこのコンビニで休憩するか」
「おー…」
 コンビニに辿り着くなりベンチでぶっ倒れた少年を尻目に、財布を取り出してドアをくぐる。
       モナ ハジメ
 彼の名は茂名 初。本名よりも『ご隠居』と呼ばれることが多く、年齢より十歳は若くみられると近所のマダム達に評判だ。
古流武術を代々伝える茂名家の頭首だが、息子を若くして亡くし、今は外でヘバっている孫の『マルミミ』に稽古を付けている。
 付けているのだが…
「…この程度で音を上げるようじゃ免許皆伝は遠いのぉ…」
 ベンチに寝そべって必死で呼吸をしている孫にひとり嘆息し、ペットボトルに入ったスポーツドリンクをレジへと持っていく。
料金を払い、二本のボトルを孫の元へと持っていった。
「マルミミー。飲み物じゃよー」
「ありがと、おじいちゃん」
 ベンチから身を起こし、息継ぎ無しで半分ほどを飲み干す仕草に、自然と目が細まった。
まだまだ未熟だが、そんなこととは別に孫とは可愛い物だ。
「そろそろ学校の時間じゃの。もう帰るぞ」
「はーい」
「飲み終わったら出発じゃ」
「へーい…」
 空のペットボトルをゴミ箱へ放り込み、二,三回ほど深呼吸をすると、上がっていた息も収まった。
店員のあいさつに手を振って答え、家へと向かって走り出す。
 のどかな田園風景から、段々と家の密度が増えてきた。
周りの景色も、両脇にシャッターの閉じた店の並ぶ商店街へと移り変わる。
 しんと静まりかえった路地の前を通ると、急に茂名が足を止めた。
「…おじいちゃん?」
 訝しげに問い掛けるが、掌で制される。
「…マルミミ。"探って"もらえるかの?」
「探るって…何があるの?」
          ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「いいから早く。間に合わないかも知れん」
 表情は先程までと同じ柔和な物だが、その下にある物が違う。
ピンと張りつめた、『ナイフ』のような緊張感。
 それを感じ取ったのか、マルミミの表情が固くなる。
「…判った」
息を吸い、吐き、呼吸を整えて静かに両手を挙げ―――――

138丸耳達のビート:2003/11/18(火) 22:29
「シィイイァアァアア――――――ッ!! !?…許し…てぇ…!っ!!」
「っるせーな。やめるワケねーじゃん?こんな『楽しいコト』」
 モララー族の男性が二人、しぃ族の女性に暴行を加えていた。
いや、暴行というような生やさしいモノではない。
 四肢には何本ものナイフが突き立てられ、服をはぎ取られた体には刃物で卑猥な言葉が刻まれている。
夜明けも近いとは言え、狭い路地裏には彼等以外誰も踏みいることはない。
涙と涎を垂れ流しながら懇願するしぃ族の女性の『頭部』を掴み、地面に叩き付ける。
「ヒャッハー!ワルいね〜!」
 頬がアスファルトで削れ、元々は美しかったであろう顔が血で汚れ、隣の相棒から笑いが漏れた。
「大体、お前等、『しぃ族』、ってのは、虐待、する事、にしか、価値、ねぇ、だろがッ!」
 言葉の句切りと共に、がつがつと地面に額を叩き付ける。
女性は意識がなくなっているのか、されるがままで抵抗もしない。
「な、そろそろ朝になっちまうぜ?」
「あ〜?マジ?もうそんな時間かよ?」
「じゃ、ま…『死刑』にすっか〜!」
 ず、と四肢に突き刺していたナイフの一本を抜き取り、頭の上に振り上げる。
絶望に塗りつぶされた女性の心臓を突き刺すべく振り下ろそうとしたその瞬間―――――

  バシィッ!!

 『何か』が男達の真ん中で破裂した。
「わっ!? !!」
「何だこれ!目に染み…っ!?」
 言葉を全て続けることができず、片方の男が強烈なフックを喰らってその場にうずくまった。
「…間に合った…と言っていいものでは無いな…」
 ひょろりと細い『初老の男性』、茂名。
「大丈夫。まだ、生きてる」
 丸い耳の優しそうな『少年』、マルミミ。
「『モララー族の男』が二人、『しぃ族の女』が一人…コイツらで間違いは無いね」
「そうか」
 短く言うと、茂名が先程から振っていた『炭酸飲料』の缶を無造作に投げる。
掌を離れた缶は緩やかな放物線を描き、男達の目の高さで破裂した。

139丸耳達のビート:2003/11/18(火) 22:31
「わっ!? !!」
「何だこれ!目に染み…っ!?」
 言葉を全て続けることができず、片方の男が強烈なフックを喰らってその場にうずくまった。
「…間に合った…と言っていいものでは無いな…」
 ひょろりと細い『初老の男性』、茂名。
「大丈夫。まだ、生きてる」
 丸い耳の優しそうな『少年』、マルミミ。
「『モララー族の男』が二人、『しぃ族の女』が一人…コイツらで間違いは無いね」
「そうか」
 短く言うと、茂名が先程から振っていた『炭酸飲料』の缶を無造作に投げる。
掌を離れた缶は緩やかな放物線を描き、男達の目の高さで破裂した。
「うわっ…!」
 視界を奪われた一瞬で、後ろから首を掴まれる。細い腕をした老人のどこにこんな力があるのか、簡単に吊り上げられてしまった。
「なっ…なぁっ…!?」
 咄嗟に辺りを見回すと、先程フックを喰らった男も襟首を掴まれて立たされている。
動きはおろか、何をされたのか、老人と少年どっちどう動いたのかすらも判らない。
 『心臓』が不快に高鳴る。
それを見透かしたかのように、相棒の背中を掴んでいるマルミミが落ち着いた口調で話しかけてきた。
「怖いかい…?息も荒いし『心拍数』が上がってる」
「『何をされたのか判らない』『自分がコイツらに勝てるか判らない』―――『判らない』ことは『恐怖』を呼び込む」
「ひぃぃえっいぇぇあっ―――――」
空中で足をバタバタと振りながら、意味を成さない呻きが漏れた。
「あっあ〜!そんなに怖がらんでも殺しはせんよ。今後一切『虐殺』をやめて、『マターリ』と暮らせ。そうすれば危害を加えないでやろう」
「はっ…はははははははいっ!!誓ってもう『虐殺』なんかはいたしません!『ナイフ』も捨てますっ!だからぁっ!」
 声の裏に隠された威圧感に、がくがくと震えながら首を縦に振る。
「このしぃは預かるぞ。早急に手当てをせにゃならん」
そう言うと、掴んでいた手を離して血だらけのしぃをひょいと担ぎ上げた。
 マルミミも捨てられた『ナイフ』を拾い上げて、使えないように刃をへし折る。
何の『警戒』もせずに後ろを向けて、二人は大通りへと歩き出した。
                                ・ ・ ・ ・ ・
 その背中をみて、男達の恐怖に歪んでいた表情が獰猛な笑みへと変わった。
靴の裏に隠しておいた小振りのナイフを取り出し、逆手に構える。
相棒と目配せし、タイミングを計る。
(―――――劣等種の丸耳が。とんだ甘ちゃんだ!下らない情け。下らない慈悲そんなモンたった一本の『ナイフ』にも値しないことを教えてやるこの劣等種の奇形の糞耳共ォッ!!!)
   一…二…三ッ!
「てめぇぁ―――――――――ッ!!!!」
 心地よい重みを感じ、たった二歩で少年と老人の背中にそれぞれナイフを振り下ろし、振り抜いて―――――
                          ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
完全に死角から放たれたはずの一撃は、まるで最初から見抜かれていたかのように二人に受け止められた。
            ・ ・ ・ ・ ・ ・
「―――――僕に嘘は通じない。僕がお前の便所コオロギの糞にも劣る『心』を見抜けないとでも思ったのかい?」
                     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  ・ ・ ・ ・
「あっあ〜…案ずるな。最初も今も殺す気は無い。殺す気は、な」
 老人の掌が相棒の『頭部』を包み、自らの『胸』に連続した軽い衝撃を感じ―――――



 男達の意識は闇に塗りつぶされた。

140丸耳達のビート:2003/11/18(火) 22:33
「一応『救急車』は呼んでおくよ」
「『正義』も、『罪悪』も、『信念』も、『理由』すらなく…何故じゃろうな…」
そう呟くと、女性に振動を与えないよう、静かに家に向けて走り始めた。
「マルミミ。『戦争』の話をしてやった事があったじゃろ?」
女性をおぶったまま、僅かな哀愁を込めて言う。
「うん。小さい頃だけどね」
「儂は結局死に損なった訳じゃが…あんな輩を見ると『戦友』達が不憫でならんよ。儂らはあんな輩の為に命をかけたわけでは無いのに…のぉ」
「・・・・・・・」
 マルミミは何も言わない。老人の言葉に、ただ耳を傾けるだけ。
                 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
茂名は最近こう思う。何か得体の知れない空気のようなモノがこの世に充満していて、
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
名もないそいつらが人間を狂気に導いているのではないか―――と。
                                          ・ ・
その言葉はやけに抽象的でありながら実感を伴って茂名の心に思い澱みを形作っていた。
「何故じゃろうな―――」

何も知らないまま、彼等は走る。
慈悲無き運命の狭間で、行き着く先も判らぬまま。
一寸先も見えない闇で、彼等は何を視るのだろうか。
答えは誰も、判らない――――――――




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141新手のスタンド使い:2003/11/18(火) 22:40
アアンコピーペミスッ。 つД`)
脳内補正お願いします。

142新手のスタンド使い:2003/11/18(火) 23:22
乙です!

143N2:2003/11/19(水) 00:08
見てみたら作品ラッシュだー!!
皆さん、乙です!
今のオレの小説のパワーは「恋人」並になってきとる…。

144ダンボール </b><font color=#FF0000>(M.nd32Bk)</font><b>:2003/11/19(水) 17:06
>>143
「恋人」並=最も恐ろしい

145新手のスタンド使い:2003/11/19(水) 22:42

合言葉はwell kill them!その②―Runner 前編

はあ・・・・、はあ・・・・・、
俺の名前はアヒャ。この前「矢の男」にスタンド使いの素質と言う物を
引き出され、めでたくスタンド使いになった。
今、俺はある男を追っている。いや、追う羽目になった。
その男と言っても年齢は俺より下ぐらいの糞餓鬼なのだが・・・。

事の始まりは40分ぐらい前に遡る。
「ふう、やっと詰め替え作業が終わったよ。」
その時間俺は部屋に篭ってある事に専念していた。まあお世辞には綺麗とは言い難い部屋ですが。
壁は所々剥れていて、ポスターとナイフが刺さったダーツの的が掛けてあり、
床にはお気に入りの漫画や小説、MDプレイヤーとプレステ2がでんと置いてある。
こんな部屋でも窓からの景色はよく。高台の上の墓地が夕日に照らされている時が俺のお気に入りだ。

「おーい。アヒャは居るかー?」
部屋に入ってきたのは俺の兄貴、ネオ麦茶。野球部に所属している。
「居ますけど何かー?」
「今お前暇か?ちょっと行って貰いたいとこが在るんだけど。」
はあ、またかよ。野暮用でどっかいくんだったら人に頼まず自分で行けよ!
「どんな用事?」
「まず郵便局でこの手紙を出してきてくれ。後もう一つがこの本を買って来る事。」
兄貴は俺の目の前でチラシを見せた。
「『どすこい超常現象』何この本!?」
「いやいや、『どんとこい超常現象』だから。皆が今売れてるから買いだって言っててさ。
 それにしてもお前何してたんだ?」
兄貴は机の上にあった大量の血液パックと御煎餅が入っていた空き缶。そして
田舎でよく見る背負い籠を見て言った。
「ああ、俺のスタンドは何か『血液』を媒体にしないと出れないらしくてさ、
 近所の総合病院からパック詰めのをかっぱらって来たんだ。で、この空き缶に
 入れて血を保存しておこうとしたら、丁度いい入れ物が無かった。で、この田舎の爺ちゃんがくれた
 籠の登場ってわけ。」
「なーんかややこしいな。とりあえず後で駄賃やるから行って来い。俺の財布を
 あずとくから。」
「はいはい、ブラジャー(古いなこのギャグ。)」

146新手のスタンド使い:2003/11/19(水) 22:49
>誇り高き愚者ボロギコ
敵が自分の能力ばらし杉だと思います

147新手のスタンド使い:2003/11/19(水) 23:01

「で、手紙出しの任務は完了。後、何の本買う予定だっけ?
 たしか『どすこい超常現象』・・・・。」
「マスター。ソレ違イマスヨ!俺ガ聞イタノハタシカ『ドボルザーク超常現象』
 ダッタハズッスヨ。」
アヒャは動きやすさの実験も兼ねて、空き缶入りの背負い籠を背負っていた。
その空き缶の口からアヒャのスタンド、ブラッドが顔をのぞかせている。
二人とも・・・。何度も言ってるけど、『どんとこい超常現象』だから・・・。
いい加減覚えてくれよ。ブラッド、なんでドボルザークなんだよ・・。
二人は雑談しながら本屋へと向かった。
「あったあった。この本か・・・。」
アヒャがそう言って会計のため懐から財布を取り出したときだった。

ヒュン!

「あれ?財布が消えた・・・。」
「マ、マスター。アレアレ・・・。」
ブラッドが指差した方向を見ると。一人の餓鬼が走っていた。
手にはアヒャの財布を持っている。 スリだ。
「・・・・あんの餓鬼!店から出てきた瞬間にスリやがったな!追いかけるぞ!」
「了解!」
二人は全速力で走り始めた。手にあの本を持ったまま・・・。
「お、お客さん!お勘定ー!」
店の主人の声など届く筈もない。
「丁度いい。俺の相棒の能力、試してみますか!」


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148新手のスタンド使い:2003/11/19(水) 23:02
親にパソ規制されてるので後編はいつ貼れんのか分かりません。
つД`)アアン・・。

149_| ̄|○。o〇(102:2003/11/20(木) 02:17
「・・・まだ3時か」仕事にもまだ早い・・・だがこれ以上寝ているのもったいないような気がした。
まだ寝ようとする体と起こしてひとまず外に出た。
大したものは何も無い、普通の町並み。普通の中で一人だけ異常な俺。
人が避けて通っていく普通にももう慣れた。むしろ今では避けられなかった時のことすら思い出せない。
俺はただひたすら行きつけのBarへ向かった。
「ぃらっしゃ・・・なんだ、あんたかょぅ。」 ・・・客をあんた呼ばわりとはいい度胸だ。
「ぃぃかげんツケはらってくれょぅ。」 「まぁ・・・そんな細かいこと言うな、俺とマスターの仲じゃないか。」
「あんたがうちの店に来て一週間もたってなぃょぅ!」 「マスター、ダイキリお願い。」
「・・・ょぅ」
俺だって払えるなら払ってる。しかし金が無い。食うに困るのにツケなど払っている余裕などまったくをもって無い。
他のギコ種はもっと働き場所があるというのに・・・
俺に出来る仕事と言ったら今やっている深夜の肉体労働ぐらいのもんだろう。
この片耳を失った俺には・・・
この俺が対人の仕事が出来ることは皆無に近い、ただ耳が無いだけで。
Z武のように同情を集めるにも耳だけでは足りないだろう。
「・・・中途半端になっちまったもんだ・・・」
無言で出されたダイキリを流し込んだ。空きっ腹にアルコールが浸み込む。残ったのはグラスと空腹感だけだった。
「ありがとよマスター、またな。」「代金払ってけょぅ!」
「出世払いで、」「・・・・・・・・ょぅ。」
マスターの睨みを背中に受け、俺は家へ向かった。
行きと変わらない道のりだった。ただ背中に衝撃が走ったことを除けば。
「なッ・・・!」何が起こったのかさっぱりだった。背中に激痛が走る。
通り魔に襲われて死ぬとはなんとも情けない・・・死ぬとはこんなものか・・・
「おめでとう、片耳のギコ君。これで君もスタンド使いだ。」
・・・言い返す言葉はいくつも出てきたが俺に返せる言葉はなかった・・・

150_| ̄|○。o〇(102:2003/11/20(木) 02:20

「・・・コさん・・・ギコさん」

やかましい声で目が覚めた。・・・最悪の気分だ。
なんで俺の部屋に人がいるんだよ・・・耳障りだからさわぐんじゃねぇよ・・・
重い瞼を開けたその先にはいつもとは違う冷たいコンクリートの天井があった。

「ギコさん、しっかりしてくださいよ。」
どうやらこいつがやかましい声の正体らしい。
「聞こえてますか?ギコさん」「あぁ・・・聞こえてるよ。」
辺りを見回すとどうやら病院らしい・・・うるさい声の持ち主は看護師の格好をしていた。
あぁ・・・そういや俺は通り魔にやられたんだっけ・・・助かるとはまた中途半端な・・・
「まったくもう・・・自分に合ったお酒の量ぐらい理解しておいてください!」
「・・・はぁ?」なんで酒を飲むと通り魔にやられるんだ?
「あなたは急性アルコール中毒で道端でぶっ倒れてる所を助けられたんです!!」
「な・・・ちょっと待て、背中の傷は?何かに刺されて倒れてたんだぞ。俺は」
「誰の背中に傷かあるんですか!?まったく酒飲みはいっつもそうやって言い訳ばっかり・・・」
なんつー強烈な女だ。それはともかく・・・傷が無い?ありえないだろ、そんな事。
恐る恐る衝撃のあった場所にに触れてみた。・・・いつもの背中だ。
「ど・・・どういう事だ?」
「と・に・か・く、これからは飲酒も適度にしてくださいね!分かりましたか!?」
「ぁ・・・・・あぁ。」


最初から出てくまで終始騒がしい女だ。
しかし・・・なぜ傷が無い?まさか本当に酔って感じた幻想だったのか?
「どうやら何もお分かりでないようだ・・・ククク」
声?まだ誰かいるのか?
「もう戻れない・・・いままでの日常とおさらばするがいいサァ」
いた・・・今まで見たこと無い・・・奇妙な・・・猿?人?青毛の獣人のような外見・・・
「なんなんだ!?お前は!!」
「俺は俺サァ・・・それ以外の何者でもない。」
「病院で騒ぐな!!!」
やかましい看護師が鬼の形相で入ってきた。
「おぃ!お前、これはなんだよ!?」「な・・・お前って、私にはしぃってちゃんとした名前が・・・それにッ」
「あんたが指差してるとこには何も無いわよ!!!」
・・・嘘だろ?そんな・・・
「あれには見えないよォ・・・選ばれた者じゃないから。ククク」
・・・まだ幻想の中にいるのか・・・今日は厄日だな・・・

151_| ̄|○。o〇(102:2003/11/20(木) 02:42
以上・・・覚醒編でした・・・_| ̄|○もぅダメポですね・・・
上の間取りし忘れたし_| ̄|○文が厨なのが一番痛・・・

んで登場人物説明・・・

片耳ギコ・・・幼児期に事故で両親と片耳を失ったギコ種。
      2年前まで孤児院にいたが不況で潰れる。
      基本的にクール。そして激情。人並みはずれた適応能力があり
      どんな所でもすぐに馴染む。

看護師しぃ・・・片耳ギコ宅の近所の病院にいる看護士。
       某先生スレや教授スレのしぃのように
       性格は男勝り、凶暴、姉御肌。

青猿・・・某小説からのパクリ。性格は陰湿、非情、狡猾。

_| ̄|○コイツさんとかあんま先生とかもだしたいなぁ・・・

152:2003/11/20(木) 20:26

「―― モナーの愉快な冒険 ――   影・その3」


『矢の男』は去っていった。
立ち込めていた不気味な気配も嘘のように消えてしまった。
「なんで逃げたモナ? ヤツの方が有利だったはずなのに…」
リナーは日本刀やサブマシンガンを拾って、服の中に収めている。
「私達のスタンドや戦闘能力を試していたようだったな」
「試してた…!? その割には、殺す気マンマンだったモナよ?」
「こちらが死んでもいいくらいの気持ちだったんだろう」
確かにそうだ。
向こうは、明らかに手を抜いていた。
奴のスタンド能力、単なる瞬間移動だとは思えない。
もっと奥深い何かだ。
おそらく、あれは能力の応用に過ぎない…
奴の余裕さから、そんな事を感じた。
ふと見ると、リナーは肩膝をついていた。息も荒い。
「リナー! やっぱり、さっきの傷が…」
俺はリナーに駆け寄った。
「いや、大丈夫だ」
「でも、あんな威力の攻撃を受けて…」
「これは、さっきの打撃とは関係ない」
リナーは立ち上がった。
もう、苦しみの表情は消えている。
「それより、奴は君の事を未来予知型のスタンドと言っていたが?」
そうだ、リナーには俺のスタンドについて何も言っていなかった。
俺は、夢の中でもう一人の俺から受けた説明を繰り返した。
「楽園の外を視る力…『アウト・オブ・エデン』か…」
リナーは怪訝そうな顔をした。
「解せないな。能力が強すぎてヴィジョンが維持できないという事だが…
 そこまで強力とは思えない。実質、感覚補助に近い能力なのにな…」
「モナも、アイツの言動を100%信じている訳じゃないモナ…」
アイツは、俺の中に17年も潜み続けてきたのだ。
俺を騙すくらい朝飯前だろう。
「そして、確かにヴァチカンの名を出したんだな…?」
リナーは言った。
物覚えの悪い俺だが、アイツの言葉は覚えている。

『このスタンドは…ヴィジョンを持たないタイプだ。
 スタンドパワーは全て能力に傾けられているのだな。故に、ヴィジョンを維持できない。
 このスタンドを、ヴァチカンの連中はこう呼んだ…
 楽園の外を視る力…『アウト・オブ・エデン』 』

確かにこう言った。
「…」
何やら、リナーは下を向いて押し黙っている。
「何を考え込んでいるモナ?」
リナーは視線を上げた。
「君と私の出会いが本当に偶然なのか、と思ってな…」
「モナを疑ってるモナ?」
たちまち不安になる。
リナーに拒絶されたら、俺は…
「いや、君を疑っている訳ではない。君が黒幕なら、さっきのような話は何の得にもならんしな」
俺は胸を撫で下ろした。
そして、撫で下ろしついでに聞いた。
「リナーのスタンドって、どんな能力モナ?」
能力を容易くバラすのは三流。
聞いたところで、教えてくれるはずがないが。

「スタンド名は『エンジェル・ダスト』。私の体内を循環している液体状のスタンドだ」
…なんと、あっさりと答えてくれた。
リナーは戦闘者として三流だったのか?
俺のスタンド能力を教えたから、自分も律儀にバラしているのか?
驚く俺を尻目に、リナーの説明は続く。
「能力は、液体の『流れ』を操ること。だが、その力も射程も極めて低い。
 影響を及ぼせるのは、私の体内か、直接手で触れた箇所くらいだな。
 君の怪我の治癒を促進させたのも、この能力を応用したものだ」
なるほど。
別に、治療のための目的ではないのか。
「戦闘時には、脳内物質の分泌を自分でコントロールできる。アドレナリンやエンドルフィンなどだな。
 これによって、常人以上の身体能力を発揮できる」
だから、『矢の男』と戦ったときの動きは普通の人間の動きを凌駕していたのか。
「弱点は… 対スタンド使い戦では、本体を狙う以外に攻撃方法がない事だな」
そう、まさにさっきの戦いだ。
…リナーが容易く能力を説明した理由が分かった。
能力を知られても、いっさい影響がないからだ。
さらに、リナーはスタンド能力に頼ってはいない。
それどころか、どこか能力を嫌悪しているような…
別に、卑怯でもなければ周囲の害にもならない能力である。
俺の気のせいだろうか。

153:2003/11/20(木) 20:27

まだ質問はある。
「さっきのヤツは何モナ?」
『矢の男』に余りにも酷似している。
だが、『矢の男』はあくまで創作上の人物のはず。
リナーは少し考えて口を開いた。
「ASAの調査では、この町にはスタンド使いは存在しないはず。君がスタンド能力に目覚めたのも最近だしな。
 しかも、あの強力さ… ASAの脅威分布を適用するなら、間違いなくランクS。
 ただちに懐柔あるいは抹殺が必要なレベルだ。『空想具現化』の産物とみて間違いないな」
空想…具現化…?
創作上の人物、『矢の男』。
何だろう、この奇妙な符合は。
「その『空想具現化』ってのは、漫画のキャラでも問題ないモナ?」
「条件さえクリアされれば、創作上の人物が具現化されてもおかしくないが… 何か心当たりでもあるのか?」
俺は、『矢の男』に関する説明をした。
「なるほど。あれも、殺人者としての一つのカタチか。あれも当たりだな」
リナーは納得したようだ。
もう、俺だけ何も知らないのはたくさんだ。
「リナー!!モナにもこの町に潜む脅威ってやつを説明してほしいモナ!
 モナもスタンド使いだし、戻れないところまで踏み込んでしまったモナ!」
「戦闘中に腰を抜かしていた人間がよく言う…」
もっともだ。
返す言葉もない。
「リナーを守る」と言っておいて、肝心な時に腰を抜かし、守る対象に助けられるとは…
しかし、リナーは言った。
「しかし、今さら君をただの部外者と捉えるのは無理があるな…」
そして、リナーは語り出した。
「私は『教会』の指示で、あるスタンドを追っている。そのスタンドの名は『アルカディア』。
 『空想具現化』という強力な能力を持つ」
「? リナーは確か、吸血鬼を退治するのが仕事のはずモナ?」
そもそも、『教会』というのは吸血鬼を殲滅する機関のはず。
スタンド使いを相手にするのはお門違いではないだろうか?
「『アルカディア』の本体は、約150年前に死んでいる。その本体は吸血鬼で、『教会』が始末した」
本体が死んでも、スタンドが残るなんて…そんな事がありえるのだろうか。
「スタンドというのは生命エネルギーのヴィジョンだ。その生命エネルギーは本体から供給されている。
 よって本体が息絶えた時、生命エネルギーの供給がストップし、スタンドも消滅する。…通常のスタンドならばな」
つまり、『アルカディア』とやらは通常のスタンドではなかったという事か。
「本体を替えるタイプのスタンドと、死んでから発動するタイプのスタンドが、その例外に位置する。
 前者の場合は、物質を拠り代にして、所有者を仮の本体にするというのが多い。
 また、特定条件で元の本体を殺して移動する、というスタンドも存在する。
 このタイプのスタンドは、大抵意思を持っている」
そして、仮の本体の生命エネルギーで活動するという訳か。
まるで、憑依霊だ。
「そして、死んでから発動するタイプ。これは極めて例が少ない。発動すると暴走状態になるようだが…
 これは、『アルカディア』には当てはまらない」
「ということは、『アルカディア』は本体を替えるタイプのスタンドモナね?」
「その通りだ」
リナーは頷いた。

154:2003/11/20(木) 20:28

「『アルカディア』の特殊なところは、本体を持たない状態でもある程度は行動できるという事だ。
 キャパシティの高い本体候補を探したり、制限を受けながらも能力を使用する事が可能だ」
でも、スタンドは生命エネルギーのヴィジョンとリナー自身が言ったはず。
生命エネルギーの供給がない状態でウロウロするのは、理屈に合わない。
「生命エネルギーといっても、その質は様々だ。先ほど述べた、死んだ後に発動するタイプのスタンドは、
 怨念のエネルギーで動いているらしい。これも、生命エネルギーの一つと言える」
俺は、話についていくだけで精一杯である。
「『アルカディア』は、希望・願望のエネルギーで動いている。
 そして、その生命エネルギーを活動源にする代替に、人々の希望や願望を実現する。
 『アルカディア』は、そういう特殊な行動システムを構築した。完全な自律行動型だ。
 それを可能にするのが、『空想具現化』。 …奴の能力だ」
人々の望みを叶えてくれるなら、善良なスタンドではないのか。
「じゃあ、モナが大金持ちになりたいという願望を抱いてたら…」
「無効だ。『アルカディア』も、そんな個人個人の願望を叶えるようなヒマなことはしない。
 それなら、短冊にでも書いておいたほうがまだマシだ」
自分の人間性の低さが露呈したようで、何となくしょんぼりした。
「奴は、多くの人間が同時に抱いた願望を実現させる。その方が生命エネルギーを集めるのに効率がいいからな。
 奴の手段は主に、噂の実現だ」
噂?
希望・願望とは別物のように思えるが…
「噂というのは、希望・願望と紙一重なんだ。特に、無意識での願望がクセモノだ。
 現に、今回の連続殺人事件。恐れられる一方で、センセーショナルに騒ぎ立てる連中も多い。
 犠牲者が出る度に、マスコミが興味本位で書き立てる。それを受け取る側も、心のどこかで事件の継続を願っている。
 これは、悪いことではないんだ。無自覚なんだからな。
 人間である以上、他人の不幸を楽しんだり、どこかで日常からの脱却を願っているのは仕方がない。
 その闇を、『アルカディア』は利用してくる…」
そうして、噂が実現する訳か…

155:2003/11/20(木) 20:29

「話を戻そう。仮の本体を持っていない状態では、そんな風に希望・願望を実現させて生命エネルギーを得ている。
 しかし、仮の本体を得た場合、その性質が変わる。
 馴染むには時間がかかるものの、そいつから生命エネルギーを吸い上げることが可能になるからな。
 その状態では、『空想具現化』は強力になり、自身の思考をそのまま具現化する事が可能になる。
 人格も『アルカディア』に乗っ取られ、仮の本体は奴の操り人形と化す。
 今はその状態には達していないはず。そうなる前に一刻も早く見つけ出し、消滅させないとな…」
そんな厄介で危険な奴が、この町に潜伏しているとは…
「そして、その能力のおこぼれを預かるためか、また混乱に乗じて暴れるためか、この町に多くの吸血鬼が集まってきている。
 『アルカディア』の元の本体は吸血鬼だったし、奴等の世界では有名なスタンドだ。
 そいつら有象無象の殲滅も、私の任務のうちだ」
なるほど。だからリナーはこの町に来たのか。
「そんな折り、連続殺人事件が起きた。人々は納得のいく殺人鬼像を予想し、口々に噂する。それらが具現化していき…」
「…殺人鬼の影が発生する、ってことモナね」
「『アルカディア』はこの町を混乱させたいのだから、殺人鬼の噂はまさにうってつけだ。
 もう一人の君は、私が来てから殺人をやめているようだが… こうなってしまうと、元の事件はもう関係ない。
 殺人鬼の影が殺人を繰り返し、それが噂になり、さらに殺人鬼の影が増殖して… 悪循環だ」
とんでもない脅威だ。
『アルカディア』の存在が、この町を壊滅に追い込む可能性もある。
しかも、もう一人の俺が起こした事件が発端だ。
俺の思いを察してか、リナーが言った。
「もっとも、あの事件がなくても結果は同じだ。ただのきっかけに過ぎない」
そうだ。割り切って考えよう。

「ところで、噂になったら、何でも実現するモナか?」
「基本的に制限はないが…あまりに無茶な噂や、奴に不利な噂は実現しないだろうな」
…そうか。
『アルカディア』は死にましたデマ作戦は早くもボツのようだ。
「で、リナーは『アルカディア』の居場所を探しているモナね…?」
「ああ。さっきの吸血鬼のセリフを覚えているか?」

『奴の居場所なんて、能力の性質を考えれば明らかじゃないか?
 「空想具現化」の力が存分に振るえる場所さ…!』

そう言っていた。
リナーは、俺の目を見据えて言った。
「そう。つまり、この町で一番噂が囁かれる場所だ」
噂といえば…近所のオバチャン?
俺の頭に、「井戸端会議」という言葉が思い浮かんだ。
そして、付随して浮かぶヴィジョン。

ここに隠れてると、いろんな人の
愚痴が聞けて楽しいYO。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

.        ∧_∧
.       ( ・∀・ )
        と,     つ
   ┌──┴‐‐‐┴‐─┐
   └┬─┬─┬─┬┘
     ├┬┴┬┴┬┤
     ├┴┬┴┬┴┤ww
   ⌒⌒ ̄ ̄ ̄⌒⌒ ̄  ⌒

「…井戸の中?」
「馬鹿か、君は」
リナーは心の底から蔑んだ目を寄越した。
「大体、この町のどこに井戸があるんだ? 何時代に生きてるんだ、君は?」
全くその通りだ。
「この町で一番噂が囁かれる場所。君がいつも通っている場所だ」
「…学校!?」
俺は驚きの声を上げた。
リナーは頷く。
何てことだ… そんな身近な場所に…
「まあ、まだ確定した訳ではないが」

156:2003/11/20(木) 20:30

さらに、今や脅威は『アルカディア』だけではない。
「で、あの『矢の男』も殺人鬼の影ということモナか…」
「そう。無差別にスタンド使いを増やそうとする、最悪の影だ」
あれも、殺人鬼の正体として噂になったのだろうか?
いや… 3日ほど前に学校で、連続殺人事件の話が出た時…

『まさか、矢のようなもので刺されていたとかはないモナ?』

…そんな馬鹿な。
冗談で言っただけだ。噂になったなどというレベルじゃない。

「一人の願望や希望なら、実現はしないってさっき言ったモナね」
「ああ」
リナーは頷く。
「それが『アルカディア』にとっても都合がいい願望なら違ってくるが。
 しかし、そういう都合のいい話が潜伏しているはずの奴の耳に入ったら、だが…」
そうか、なら関係ないはずだ。

リナーは、話を続けた。
「『矢の男』は、作中で目的が明かされていない。スタンド能力も不明。その状態で奴は具現化してしまった。
 奴は、目的を失い、ただ矢でスタンド使いを増やす空っぽの人格に過ぎない。
 いや、目的を失ったというのは違うな。目的はないんだ。具現化した時点で、目的が不明だったんだから。
 すなわち、具現化する要素からこそぎ落ちた。君の能力で『矢の男』を見た時の空虚感はこれが原因だ。
 奴はあくまで、作中のあの時点での『矢の男』の疑似人格なんだ」
目的を持たず、スタンド使いを増やす、という行動だけが具現化した存在…
それが、奴だ。
「だから奴は、スタンド使いは相手にしないんだ。奴にとっては増やすべき存在だからな。
 邪魔をされない限り、スタンド使いを殺すのは奴の行動論理に反する」
「モナ達、思いっきり邪魔をしてた気が…」
「君は腰を抜かして戦闘不能だったし、私は撤退を考えていた。だから奴も見逃したんだろう」
リナーは少し不機嫌そうだ。
やはりムカついているのだろう。
戦闘者としてのプライドってやつだ。
「とにかく、奴はただ矢で人を射抜くだけの存在と化している。犠牲者も増える一方だろう。
 この町に生きていてもいい存在じゃないな…」

このままだと、奴の矢での犠牲者は雪だるま式に増えていく。
その中に、ギコやしぃ、モララーやガナーがいないとは限らない。
断然ガッツが燃えてきた。
「よし、奴をやっつけるモナ!!」
「いや、無理だ」
リナーの冷たい返事。
俺はズッコケそうになった。
「あのスタンドは強力すぎる。何より、私は対スタンド戦は専門外なんでな」
「じゃあ、どうするモナ!?」
「おそらく、『矢の男』は… この国のスタンド対策局・公安五課では対応できない。
 ASAに連絡して、討伐隊の出動を要請する」

ASA?
さっきも聞いた気がする。
「ASAって何モナ?」
「Anti-Stand Association。人に仇を為すスタンド使いを抹殺する組織だ。
なるほど。
スタンドを悪事に使う連中がいる限り、抑止力が必要という事か。
リナーは話を続ける。
「吸血鬼の殲滅組織は、世界にただ一つ。『教会』だけだ。
 だが、スタンド使いに対する組織は世界中に散在する。各国にも対応部署が存在するし、私的な結社・財団も多い。
 古くは『自由石工』や『Rosen Creutzes』、最近では『スピードモナゴン財団』などだな。
 その中で、最も強力かつ武闘派の組織がASAだ」
当然だが、そんなものの存在は知らなかった。
その存在は、一般人には極秘中の極秘だったことは想像に難くない。
「スタンド使いは、吸血鬼と違って徒党を組むことが多い。
 例えば…スタンド使いで構成されたマフィアやテロリストだな。当然、警察の手には負えない。
 そして各国のスタンド使い対策部署でさえも手に負えない事件が起きた時、ASAの支援が要請される。
 完全に武力行使専門だ。皆殺し機関という点では、『教会』といい勝負だ」
そして、そのASAに『矢の男』の討伐を要請するのか。

「今、連絡したとして…明日の昼に到着、夜に討伐実行といったところか」
明日の夜!?
「遅すぎはしないモナか?」
「『空想具現化』の能力は、夜の間しか効果を発揮しない。今日はもうすぐ夜も明けるし、問題はない」
なるほど。そう言えば、本体はかって吸血鬼だったと聞いた。
ふと時計を見る。
午前五時。
明日は土曜日なので半日授業だが、学校があることに違いはない。
が、そんな事は大した問題じゃない。
討伐部隊を要請したといっても、事情だけ告げて「頑張ってね」では終わらないだろう。
俺もそれでは納得できない。
なにせ、奴に見逃してもらうという屈辱を味わっている。

…忙しい一日になりそうだ。


  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

157ダンボール </b><font color=#FF0000>(M.nd32Bk)</font><b>:2003/11/20(木) 22:02
乙ッ!!

158N2:2003/11/21(金) 00:50
小説スレ、かなり盛り上がってきましたね。
乙です。

>>144
じゃあ、『サバイバー』に変更します。(プッチとDIOの会話の「どっちが強い」レベルで)

159:2003/11/21(金) 21:12
                    (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒
                    ( そろそろ人物紹介いるかな?
                 O  ( なんて言えないよなぁ…
               ο    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   /´ ̄(†)ヽ      。                       ∧_∧
_ ,゙-ノノノ))))) _∧_∧__                    (・∀・; )
  ノノ)ル,,゚ -゚ノi ( ;´∀`)                      /   /⌒ヽ
―/,ノくj_''(†)j l> (    )―┘、                  /⌒/⌒/ / |
‐―― く/_ハ_|ハゝ┐ ) )――┐                  (つ/_/ /\ |
      (_ノ_ノ  .(__ノ__ノ     |                (____/  ヽ
                                 _/ / /  \  丿
                   "~"    """  :::  (__( __ )  "~""  "~"
                """    :::          """

160新手のスタンド使い:2003/11/21(金) 21:24
>>N2
あのさ、こんなこと言える立場じゃないだろうけどそうやって自分を卑下する
コメントはしないほうがいいんじゃない?
本気で言っているなら「じゃあ投稿すんなよ」と思うし
謙遜だったとしても「『いやそんなことありませんよ』とでも言ってほしいの?」って
感じる人もいるだろうに。

161新手のスタンド使い:2003/11/21(金) 22:47
>>145より

合言葉はwell kill them!その③―Runner 後編


はあ・・・・、はあ・・・・・、
と、まあこんな事が起こったせいで俺は財布を盗った餓鬼を追いかけている。
しかし何かが引っかかる。どう見てもおかしい。
相手は俺より年下のチン毛も生えてなさそうなジュノンボーイ。
俺は奴より遥かに年期の入った高校生、それは事実だ。
ところがこの距離の差はどういうことだ?
本当だったらとっくに俺が餓鬼を捕まえているはずなのだ。
だが奴と俺の距離は縮むどころかだんだん広がっていく。
トリビアでもやっていたが、某金メダルランナーが一般人のスリに逃げられた(しかも餓鬼)
と言う事件は知っている。そう考えれば納得する。だが俺はどうしても納得できなかった。

「畜生!なんだってんだいったい!何でアイツは足が速いんだよ!」
「マスター、落チ着イタ方ガイイゼ。何ニデモ言エル事ダガ落チ着キヲ無クシタラ
 何ヲヤッテモウマクイカナイッスヨ」
そうだ、ここで奴を逃がしたら兄貴に何言われるか分かったもんじゃない。
ここは冷静に物事を見ることが大事だ。
ブラッドの言うように少し落ち着いて奴の行動を見てみた。
するとある事に気がついた。
「アイツ、よく見たら走っていない・・。『滑っている』んだ!」
奴はコンクリートの道路の上を、まるでスケートのようにして滑っていた。
「まさかアイツもスタンド使いじゃないか!?」
「ソノヨウッスネ。ケド地面ニハ何モ起コッテナイ。地面ヲ凍ラシテルンジャ無イナ・・。」
「あ!あの角をまがった。」
そこで奴に追いついた。天の助けと言うべきか、行き止まりになっていた。
「もう逃げ場はねーぞ。堪忍しな!」
だが、餓鬼はニヤッと笑うとこう言った
「バーカ!ここへ来たのはワザとだよ!」
そして餓鬼は壁に向かって走り出した。
次の光景に、俺は目を疑った

162N2:2003/11/21(金) 22:57
>>160
すいません…。
あれは、どちらかといえば洒落のつもりで言ったものですけど、
人に不快感を与えるような形になってしまいました。
皆さんにお詫び申し上げます。


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