したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

スタンドスレ小説スレッド

134:2003/11/18(火) 22:17

男は先に来ていた。
エリート然とした風貌。
切れ者を思わせる眼鏡。
冷たい目。
人間味を感じない、と噂されているらしい。
スタイリストでもついているかのような、スーツの着こなし。
そのネクタイは風になびいている。
構成要素の全てが癪に障る。
そう、自分はこの男が嫌いなのだ。

フサギコの姿を見て、男は言った。
「大失敗ですよ。3人送ったのに、『蒐集者』の前であっという間に殉職だ…」
やれやれ、といった感じで肩を竦める。
部下の命を何とも思っていない。
とことん気に障る。
「一人は爆死、一人は床と完全に融合して窒息死。一人は心臓を貫かれ即死。
 全く、遺族に何と説明したらいいのか…」
面倒事が増えた、とでも言いたようだ。
部下の死を悼む気は全くないらしい。
「でも…私としては、『蒐集者』をほっておく訳にもいかないんですよ」
男は言った。

この男は、警視庁警備局公安五課―――通称、『スタンド犯罪対策局』の局長を務めている。
そして、こいつ自身もスタンド使いらしい。
つまり、純粋な人間ではないという事だ。
生命エネルギーのヴィジョンを自在に操る。
手を触れずに物を破壊できる。
そして、様々な異能。
そういう者を、自分は人間と認めない。
スタンド使いどもも、化物の仲間だ。
フサギコはそう考えている。

「で、折り入って貴方に話があるんですが…」
局長は話を切り出した。
「まさか、俺に動けと言うんじゃないだろうな? それなら断るぞ」
フサギコは先手を打つ。
「そうですか…」
残念そうな表情を浮かべつつ、口元には笑み。不気味な男だ。

内心、フサギコは頭を抱えたい気分だ。
この男は、自分の属する組織を暗殺集団か何かと勘違いしてはいないか?
局長は話を続ける。
「この一件で、外務省から苦情が来ましてね… 国際問題になるとか、ヴァチカンに合わす顔がないとか…」
そして、わざとらしく手を叩いた。
「そうだ。外務省の連中を皆殺しにしてくれませんか?」
「馬鹿言うな。俺の立場でそれをやったらクーデターだ」
局長は意に介さずに話し続けた。
「おまけに、公安の奴等まで文句をつけてくる… 全く、クレームを処理できるスタンドが欲しいですね」
自分も公安に属している事を棚に上げての発言だ。
こいつらは、自分達を公安課の一つであると認めていない。
スタンド使いを相手にしているのだから、自分達は特別だとでも思っているのだろう。
馬鹿な選民意識だ。

局長は一人で喋り続けている。
「ところで、ヴァチカンでは我が国へのツアーパックが流行っているようですね。
 『異端者』、『蒐集者』に続いて、『破壊者』と『調停者』が入国したようですよ…」
流石に今のは聞き流せなかった。
教会が派遣した代行者が4人。
卓越した暗殺技術。吸血鬼殲滅に特化した強力なスタンド。
それらを併せ持つものだけが代行者を名乗る事を許され、スタンド能力を象徴した異名を与えられる。
つまり、そいつらも化物だ。
何のことはない、化物が化物に敵対しているだけの話。
そんな連中が、この国に集まっているのだ。
「なんだとオイ!!連中、この国で何をやらかすつもりだ?」
フサギコを驚かせたからなのか、局長は満足そうだ。
「さあ?ミサでないのは確かでしょうね」
そう言って笑った。
フサギコは呆れかえる。
しかし、笑いが止んだあとの局長の顔は真剣だった。
「…代行者が4人。これだけで、軍事的パワーバランスが変化する。他国の軍隊が駐留しているも同然なんだ。
 我が国の喉元にナイフが突きつけられたんだよ…」
これが、この男の本当の顔だ。
「で、公安五課としてはどうするんだ?」
フサギコは訊ねた。
「貴方達が皆殺しにしたらどうです?」
帰ってきた返事は、やはりふざけたものだった。
「いい加減にしろ。そう簡単に俺達が動けるか」
フサギコは言う。
局長は不服そうに言った。
「いいじゃないですか。侵略を受けてるも同然なんだから。マスコミも大目に見てくれるでしょう?
 貴方も、赤絨毯の上で「集団的自衛権を行使する!」なんて言いたくないですか? 憧れでしょう…」
付き合っていられない。
適当に返事をして、フサギコはその場を後にした。
やはり、あの男は嫌いだ。


          @          @          @


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板