[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
| |
応援提出スレ
1
:
みやこ
:2017/02/05(日) 20:59:38
ここに提出して下さい
20
:
ヒロとセント
:2017/02/09(木) 22:56:48
【お題キャラ:くま&天満宮ベガ&伊藤早矢梨】
【お題:もしかして、私達、入れ替わってる!?】
【書いた人:セント】
「はちみつおいしい……」
「あれがベガ、あれがデネブ、あれがアルタイル……」
「待て待て待ちなさい、あなた達。現実を見ましょうよ」
一人の少女が素手を蜂蜜の瓶に突っ込んでは腕を引き抜いては舐めている。
美少女が一人、首を捻じ曲げながら虚空へ指を向けた向こうでは、天井が消滅して星空が広がっている。
大きな獣が一匹、理知的な眼で他の二人の肩を揺さぶっている。
「落ち着け、伊藤君。彼らとは言葉でも暴力でもまともに会話することは叶わないだろうよ」
「落ち着くなんて無理ですよ、どうなっているんですか会長!!」
希望崎学園生徒会長、孤守悪斗の腕を掴んで嘆いているのは伊藤早矢梨である。ここにはいつもの努力によって磨き抜かれたルックス、振舞いを見せている彼女のらしさは無い。何より、会長に縋りついている早矢梨とは別の早矢梨がここにはいる。
会長の隣にいた早矢梨の傍へ、一匹の獣、くまが近づいた。そして、人語でもって彼女を𠮟りつけた。
「何やってんのよ、私!! 情けない!」
「そんな状態で正気を保っているあなたがおかしいのよ!」
「おかしいおかしくないじゃないでしょ。これまでだって無理することなんて何度もあったんだから、今回だって我慢しなさいよ、私」
お題とここまでの流れを見てもらえば、作者がしようとしていることが少しは分かっていただけただろうか。今回は入れ替わりの物語である。具体的に言えば、くまはベガの姿に、ベガは早矢梨の姿に、早矢梨はくまの姿になっていることになる。
ではどうして彼女がくまになってしまったのか。そして、どうして彼女が二人も同時に存在しているのか、それらについて説明しておかねばなるまい。
本来、今日は次のハルマゲドンに向けた戦斗素体の実験テストを行う予定だった。戦斗素体が戦場でどこまで判断力を発揮し、作戦を遂行できるかについて確かめる必要があることは、生徒会長が事前にチームの者達に通知していた。
しかし、実際に予定が合って集合することができたのは、企画した会長の他には、早矢梨、くま、ベガ、ロボット研究会のメンバーだけだった。
「仕方が無い。生物部のセント君の例があるからには、戦斗素体の挙動については確認を行っておきたかったが、後で個別に協力してもらうしかないな。まあ、何にせよ今日集まってもらった君たちには早速実験してもらおう」
「我々ロボ研が十全なサポートを行います。どうぞ存分に申し付けてください」
そして会長とロボ研の指導の下、戦斗素体の実験を行ったのだが、一通りのテストが終わったあたりでロボ研の協力者、姉崎氏が唐突な提案を行ったのだ。
「私達の全力少年は周囲の戦斗素体の操作を行うための機能がありますが、同時に何体か動かすことができるかやってみたいんですよねー。できたらきっと便利ですよー」
思いつきの提案であったが、そこにあまり心配性な参加者もいなかったため、その案は受け入れられてしまったのだ。
しかし、全力少年は戦斗素体同時操作の末にオーバーヒート。
こっちだったか……
21
:
みやこ
:2017/02/10(金) 00:15:16
1時間くらい後に、第1回分をまとめて提出してしまいたいと考えています。
まだ直したい方がいらっしゃいましたら、その旨教えて下さい。
そちらだけ提出を遅らせます。
宜しくお願い致します。
22
:
佐想美空
:2017/02/10(金) 21:57:00
結構な分量になったから昨日議事録にふざけて書いてたやつを投稿しておこう。
【蜂蜜ぬるぬるプロレス】
ダンゲロスハルマゲドンを前にして紅組ではメンバーの士気高揚を目指し、天満宮ベガと伊藤早矢梨の蜂蜜ぬるぬるプロレス対決企画が提案された。
当然のように、風紀委員の佐想美空から不健全であると強硬な反対があり、生徒会長は難色を示した。
しかし、熱に浮かされた紅組の男性陣から説得された生徒会長は最終的に蜂蜜ぬるぬるプロレスの開催を承認することとなった。
噂によれば偶然通りかかった一一動に背中を押されたのが最終的な決め手となったらしい。
また、試合に使う蜂蜜の提供はサーカス部で働かずに蜂蜜を舐めていたくまに求め、これはくまからも快く受け入れられた。
全ての準備は滞ることなく進んでいった。
そして当日―――
晴天の中、ベガとはやりんはロボット部とロボット研究会の協力によって提供されたロボットにより建造されたリングで対峙していた。
生徒会によって学園内に設置されたスピーカーからはDReAMと水川和巳のコラボレーションによって制作された大会テーマソングが流れてくる。
音楽につられて試合を一目見ようと生徒たちが集まってきた。
試合開始を前に紅組を代表して、御厨文化による宣誓文が読み上げられた。それを聞いて皆は大きく心を動かし感動の涙を流している。
グラウンドの片隅では桜火先生と逆光先生は満足そうにそれを見守っていた。
リングの上でベガとはやりんが互いの健闘を祈り、握手をする。
ついにゴングが鳴った。ついに戦いの火蓋が切られたのだ!
---- CM ----
「Aki-Can」シリーズ最新モデル
身長90cm、体重15kgのコンパクトボディ!
複数のスチール缶が緊急合体!、ロボット部から発進せよ!
DX 超合金 青春希望ロボ・アキカン大王!
---- CM ----
【無料公開分はここまでです。全てを読むにはだんげろだんげろと書き込んでください】
23
:
佐想美空
:2017/02/10(金) 22:58:05
じゃあこっちにも貼る
アキカン大王だ!
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=61382081
24
:
翻訳者
:2017/02/10(金) 23:20:07
【お題キャラ:二子石希望&桜火】
【お題:妊娠した女生徒のためにカンパを集めよう+闇鍋大会+相性占い】
【書いた人:翻訳者】
すき、きらい、すき、きらい、すき……。
誰かが誰かを好きになろうとしている、嫌いになろうとしている?
暗闇に閉ざされつつある冬の教室で、ひとりの女生徒がつぶやいている。うつむいたままで、花をちぎっている。
花びらの数は手に取った時点で決まっているんだから、本当だったら何の意味も無いってわかり切っているはずなのに、ぐすぐすと振り切れない涙と一緒に繰り返していた。
今日の掃除当番はさぼり屋だったのが少し有難くて、それでも女生徒は桜の花びらと一緒に眠りに落ちていった。
落ちていく、落ちていく、落ちていく。
何もない空間を堕ちていく。やみのなか、きっとおなかの中といっしょだね。
「ね、――さんのためにカンパを集めようよ」
「おいおい、何のために? ×××のかよ、育てるのかよ、犬猫じゃねえーんだよ」
「なんだよ、男子ぃ。そんなこと言って金出したくないだけじゃないの?」
「そーだよ。金出すってのは責任取るってことだろ? 大して知りもしないクラスメートのためにいつまでも金出し続けられんの」
「……、っすよ」「なんだって?」
「※ろせばいいんでしょ!」
(やめて!!!!)
結局、それしか言えなかった。知られたくなかったのに、いつの間にか噂は教室を席巻していた。
その時はやめてくれた。母親になるはずの人が叫んだから。
だけど、次にやって来たのは冷たいだけの視線だった。いくつものフィルターを通していて、まだ突き刺さっていく。
人のうわさなら二か月半もすれば消えてなくなるんだろうけど、あいにく噂は現実で――、お節介な女子がカンパを持ち掛ける、自称現実を見てる男子は見ないふり。
先生とかいう人もお父さんも見て見ないフリ、こんな現実みたくない!
「ならば、せめていい夢を」
優しげな言葉と共に、闇の向こう、頭が上で足が下で、ふわりと着地していた。
白い砂は暗い暗い海の底か、それとも時々金曜日の夜にやってるアニメで見る腐った海の底みたいだと普通の人だったら言うだろう。
----
25
:
葵春
:2017/02/10(金) 23:20:30
さぁっ☆ 今日の青春模様をお届けするよ〜っ☆
若さあふれる女子高生の甘酸っぱい一日っ☆ ハイライトでどうぞ〜☆
「ねー。雨の日は川の水位がびっくりするくらい上がるもんねー」
「そうそう。しかも最近はペットボトルとかゴミが一緒に流れてくるから汚れちゃって」
本日の教室の休み時間☆ 葵春ちゃんはのののちゃんと楽しくお話タ〜イムっ☆
いいねいいね〜教室でお友達の席まで行っての気軽な立ち話☆ 青春〜って感じ☆
話題は〜え〜っと〜「雨の日の河原あるある話」だね☆
そんな会話で盛り上がる女子高生二人ってどうなのかなっ☆ 女神さまちょっと心配☆
続きましてはお昼休み☆
購買でコッペパンを買った葵春ちゃんはくまさんのところで蜂蜜をもらって豪華なお食事☆
野生の獣に調味料を恵んでもらう女子高生って、絵面的に大丈夫なのかなっ☆ 女神さま心配☆
あらっ☆ お昼ごはんを食べ終えたところで体育館から聞こえるロックなリズムがガンガンと☆
軽音楽部の練習ね〜☆ 高校生ね〜☆ んも〜っ青春っ☆
葵春ちゃんも気になっちゃうわね〜そういうカッコイイのに憧れるお年頃よね〜☆
ステージの上で歌っているのは水川和巳君ね☆
胸を震わせ脳天にスコーンと抜ける声☆ 女神さまも思わず聞き惚れちゃいそう☆
あらあらっ☆ 葵春ちゃんもちょっとドキッとした顔で頬なんて染めちゃって☆
分かるわかるわ〜そうね〜カッコイイもんね〜カレのちょっとワルっぽい雰囲気とかね〜☆
すっごく健全だと思うわそういうの〜でもね〜女神さまちょっと親心発揮しちゃって心配☆
ホントに悪い子には引っかかっちゃダメよ〜☆
あたりはすっかり夕方になっちゃって☆
校門で生徒たちの下校を見送る逆光先生が全力を出すまでもなく綺麗な夕暮れねっ☆
今日は桜火先生も一緒に生徒のお見送りをしちゃってるのね☆
夕日をバックに桜吹雪がビュウビュウ舞っちゃって、これもう恋愛ゲームの卒業シーンよね☆
葵春ちゃんも元気に挨拶をして校門を出て、欠伸なんてしながらおうちに帰宅となりました☆
「ユースティティア」
「はいは〜い☆ なにかしら〜☆」
「今日も楽しかったね」
「そうね〜☆ とっても青春な一日だったわ〜☆」
河原の橋の下のテントの中で、今日もこの子はぐっすり眠る☆
明日も良い夢見てってね☆
女神さまは〜……今日はちょっとお仕事が残ってるわねぇ☆
* * *
「あなたは望と希の世界になんの用? 別の世界から来たみたいだけど」
「あら〜っ☆ 転校生さん☆ この青春バリバリ大平和☆ な世界にお邪魔してま〜す☆」
夜。月の光を反射する川面が、シャラシャラと静かな水音を立てる河原。
白いレースのドレスを纏い、白い羽根を広げ月下に浮かぶ女神の前に、
その異形を前にしてなお圧倒的な存在感を世界に放つ一人の少女が対峙していた。
「二子石望さんと希さん☆ 望さんで良いかしら〜☆」
「望としてはこの世界が気にいってるからさー。もちろん希もね。だから気になるんだ。
あなたは別の世界から来てるんだろ? あなたの目的は、青春を邪魔するものじゃない?」
「え〜っそんなことないわよ〜☆ 女神さま、そんなに腹黒そうに見えるかしら☆」
この一夜の邂逅こそ、葵春が希望崎学園紅白大合戦で能力を振るう原因となったもの。
それまで葵春のどのような行為に対しても、良かれ悪しかれ我関せずを貫いてきた女神の、
紅白大合戦への干渉を決意させた特異点。
「ふーん……喰えない性格してるよ、女神様」
その瞬間、言葉を残し、転校生の姿が消えていた。
女神が刹那の硬直の後、夜空を見上げる。月の光を遮り空を翔ける黒い影。
転校生が驚異的な跳躍力で、女神の頭上を捉えていたのだ。
「んぎゃっ☆」
転校生の一撃が女神の頭を叩き、女神が間の抜けた声をあげた。
攻撃? 否、それは転校生の能力により女神の頭に付与された白いボタンを押す一撃!
「もう一回聞くよ。あなたは何者?」
再び向かい合い対峙する形となった少女が、空に浮く女神に問いかける。
それはのらりくらりと質問をかわす女神の性格を切り替え、正しい回答を得るための妙手。
「……そうね。応えてあげましょう」
こうして、紅白大合戦を前に、未来の紅組は新たな戦力を得る事となった。
「我が名はユースティティア! 正義と天秤を掲げる公正の女神にして司法の守護者!
一人の男の人生を懸けた願いを請け負い、その対価を正しく世に求める者である!」
つづく
26
:
翻訳者
:2017/02/10(金) 23:20:55
“彼女”はそのどちらも知らなかったのだけど。
足下だけは明るく輝いていた。だから進める。歩き方は母親の後を追って知ったから。
(ここはどこ?)
夢の中、言葉があったらそう言っただろう。
夢だったら幾らでも見ている。答えてくれる人はいなかったけれど、明るい方へ明るい方へ進んでいけた。光る方に進むのは生物にとって最も原始的な習性であることときっと関わりはあるはずだ。
這うように歩く。進む。生きる。
やがて、光は足元から広がって、壁を、天井を、輪郭を作る。
光り輝くトンネルを潜り抜けて、辿り着いたのは上下左右が無辺と言えるほどの広大な空間だった。降り注ぐ光の量は太陽があったら目を焼き潰していただろう。
けれど、あたたかな光のみが降り注ぐ。いのちの光を受け止める空間は、一個の巨大な生命体で八割を満たしていた。
(おっきい)
誰もが言葉を失うだろう。地球上最大の生命、それはある種の菌糸類、もしくは一本の大樹である。
生命のみどり、木陰がなす黒に抱かれて、いつしか彼女はあたたかさに包まれていた。
「ここまでお客様とは珍しいわ。未だ名もない人よ、扶桑樹へようこそ」
優しい声を覚えているだろうか。両腕を広げて、歓迎するかのように、今にも抱こうとしているかのような姿勢を取ったその人は、夢の中の大樹に印象を似つかわせていた。
「桜火、その子はだあれ?」
しなやかな肢体、対になった猫の耳がぴょこりと頭の上の茂みから覗く。転校生「二子石希望」は自分自身が何の不思議でもないような当然の顔をしてそこに立っていた。
このふたりに出会ったのが普通の人であったとしても、夢の中の住人ならそういうこともあるだろうと思って納得するだろう。
当然、彼女は夢の中でヒトという生き物に出会うこと自体初めてだったのでなんら疑問を抱くことはない。
「ここまで大変でしたね、よしよし……」
桜火と呼ばれたその人は“彼女”のその両腕で抱き上げると、精一杯の慈愛を籠めた視線を向ける。
「親に捨てられましたか。黄泉津大神(ヨモツオオカミ) に選ばれし千と五百分の一よ」
「ひっどいはなし、引き離されちゃ生きていけないよね、望も希もソウ思うよ」
人の柔肌、すべすべのお肌で撫ぜているのに、赤ん坊になる前のいのちは少しぐずる。泣こうとする前兆を察して、桜火は少し悲しそうな顔をしてぽすりと双子の一人に渡した。
隠された腕、桜火の右腕、誘眠の花びらを散らしても夢の中でなお眠らせることは出来ない。
自分に言い聞かせるかのように、袖を引く。桜火は右腕を露わにした。
もう片方、振袖という衣装に包み隠されたもう片方の腕はごつごつとした木肌、節くれだった樹木であった。ああやっぱりねと言った表情で希も望も代わる代わる同時に納得した顔をする。
ここは夢の世界。
ヒトの深層心理、無意識の領域、そして命の生まれる場所。
----
続くよ!
27
:
山田正宗
:2017/02/10(金) 23:23:16
【お題キャラ:二子石 希望&桜火&水川和巳】
【書いた人:薬岡龍汰】
孤守悪斗は猜疑心の塊であった。
コツコツと靴音を立てて、生徒会室の机の周りを歩き回る。
(……これは一体どういう意図だ……、ふむ)
孤守は自分の机の上に置かれた、「ソレ」を眺める。
(分かりやすい罠か……いや、しかし……)
孤守は、既に思考の袋小路に入り込んでいた。
ソレは一体、いつからここに置かれているのか?
ソレは一体、誰がここに置いたのか?
ソレは一体、なぜ置かれているのか?
ふむ、と独りごちた後に、ようやくソレを手に取る。
「……苺だいふく饅頭ケーキ……か」
幕間 孤守悪斗の孤独なる熟慮と苺だいふく饅頭ケーキ
説明しよう、苺だいふく饅頭ケーキとは!
希望崎学園最寄りの和菓子屋、四条庵の月一限定メニュー。
小振りの苺だいふくを、更に苺餡を使用した饅頭に仕立て、それを苺のショートケーキの上に乗せた苺まみれの逸品だ。
毎月、苺の日である15日限定の発売品であり、そのあまりの人気の高さゆえに抽選で販売されているのだ。
「嫌いではない……嫌いではないが……」
孤守は苺だいふく饅頭ケーキの大ファンであった。
最高級の苺をふんだんに使った餡、クリーム、スポンジ生地。
苺ケーキ、苺だいふく、苺饅頭の3つに分けて食べてもよし。
それぞれを一緒に口に放り込んで、ハーモニーを奏でてもよし。
ごくり
孤守が喉を鳴らす。
昨日の前日抽選にも参加したのだが、奮闘虚しく外れてしまった。
その、渇望していた苺だいふく饅頭ケーキが今目の前に……
問題は、その貴重品がなぜこうも無造作に、生徒会長の机に置かれているのかということだ。
(ストレートに考えれば……賄賂か……)
孤守は納得しかけた、だがしかし、何かしらを要求する手紙の様な物は無かった筈だ。
具体的な要求がないのであれば、単純に付け届けの様なものだろうか?
ただそれにしたって、差出人が誰かわからなければ意味があるまい。
コツコツと考えを纏めながら部屋を歩き回る。
(賄賂でないとすれば……テロリズムか!?)
孤守はカッと目を開くと、大袈裟に飛んで後ずさった。
ケーキに見せかけた爆発物、生徒会長暗殺、ハルマゲドンの発生……
孤守の脳裏に物騒な光景が浮かぶ。
危ない所であった。
あれだけ小さいサイズであれば、これだけ距離を取ってあれば問題あるまい。
スマホを取り出し爆発物処理班へダイヤルを掛けようとした孤守の手が……ふっと止まる。
(いや、待てよ……ここまでが賊の考えなのではないか?)
取り出したスマホをスッと胸ポケットにしまい、更に思考を進める。
(既に爆発物処理班が制圧されていたら……、油断した生徒会室になだれ込み掌握、クーデター……)
(どうする……どうすればいい……)
ロボ研、ロボ部、対処できそうな組織は幾らでもある……だが、賊の手に落ちていない保証は無い。
孤守の猜疑心は最高潮にまで高まっていた。
ガチャ
孤守の背後のドアが開く……
しくじった、孤守は悠長にしていた自分の愚かさを呪った……
やはり生徒会長になるべきでは無かったのではないか?
慚愧の念が心中に去来する。
「あら……どうしたの、孤守くん?」
柔らかな声で、孤守に話しかけたのは生徒会顧問であった桜花であった。
「桜花……先生?」
「一体、何をしているのかしら」
「い、いえ。見慣れないものが机の上に置いてあったので……」
「ああ、あれ。先生抽選に当たったからお裾分け。孤守くん、好きでしょ……それに……」
「それに?」
「1日遅れだけど、バレンタインデーでしょう」
桜花先生は優しく微笑みかけたが、結局毒物混入を疑って孤守は手を出さなかった。
【お題:バレンタインデー】
28
:
ハリー
:2017/02/10(金) 23:23:45
【お題キャラ:二子石 希望&桜火&水川和巳】
【書いた人:ハリー】
その日、佐想美空は不機嫌だった。否、その日だけではない。
ここ数日間、美空はすれ違った人が二度見するほどの怒りのオーラを見に纏い、学校中を練り歩いていた。
それを目撃した多くの生徒は何事かと一瞬驚き、次の瞬間には「ああ、あのことか」と納得していく。それ程までに彼女の怒りの理由は明白で、皆が思い当たるものであった。
皆がなんとなく知っていて、しかしどこか繊細に扱っている話題。風紀委員である美空が不機嫌になる話題。
そんなものは、一つしかない。
すなわち…現在希望崎学園で巻き起こっている、空前の恋愛ブームのことだ。
美空に言わせれば不純異性交遊ブームといったところであるが、しかし学園全体の雰囲気としてはこの浮ついた雰囲気は大いに歓迎されているようで、全くもって納得いかない。
我慢できずに独自調査に乗り出した美空の手元には、このブームに関する情報が集まっていた。
(どうやらブームのきっかけは1週間前…クラスで一番大人しくていつも目立たなかった女子生徒が、教室の真ん中で男子生徒に告白したのが始まりみたいね)
男子生徒はこれを快諾、晴れて2人はクラス公認のカップルになり、この情報を2人でいちゃいちゃしながら話してくれた。
美空の怒気は高まった。
(更にその日のうちに5組のカップルが成立…学年はばらばらだけど、共通点としてカップルのどちらかがそれまで想いを秘めていたことは分かった。それに、詳しくは聞けなかったけど告白した人たちはみんな、背中を押してくれた人がいるって言ってた…)
「実は私、ある人に応援してもらって幸せを掴んだの!貴女も出逢えるといいね!」昨日聞き込みをした相手からはこのようなことを言われた。
美空の怒気は高まった。
(不純異性交遊…不純異性交遊!!どうせ今日は告白の瞬間どんなに緊張したかとかでお互い盛り上がって、じゃあもっと緊張すること…しちゃう?みたいな話に発展するんだわ!!不潔、不潔よ!!絶対にこのブームの黒幕を見つけて…)
「あっ、やっと見つけた!貴女を探してたの!えーと、佐想美空ちゃんで合ってる?」
「風紀の裁きを…っ、は、はい?すみません、考え事を…」
何者かから声をかけられ、美空は慌ててそちらを見た。そこにいたのは頭にニット帽を被った私服の女性で、どう見ても学園の生徒ではない。
「確かにそれは私の名前ですが、貴女は…?」
「よかったー。貴女の想いの匂いを追ってこの世界に来たんだけど、この学園人が多くて中々見つからなくてね。探してる間にも想いを秘めた子がたくさんいて、そっちも対応してたからさ。
でも会えてよかった!というわけで彼に想いを伝えに行こう!」
美空は直感した。目の前の女性が、探していた黒幕だ!
「あ、貴女がこんなふしだらなブームを!許せません!あと彼って誰ですか!私に、す、好きな人なんて…!」
「いやいや、隠さなくても大丈夫。それとも、まだ自覚してないのかな?どっちにせよ私はそういうの分かるんだよね。
恋愛の気配っていうか…ま、そういうのを秘めてる子は大体引っ込み思案で告白できないからさー。せめて勇気が出るおまじないってことで、私の力を使ってるの。
それじゃ貴女も、どうか頑張って。えいっ」
「ぼ、釦?何を…っ、っっっ!!!れ、恋愛したい!男子といちゃいちゃしたい!私、彼に想いを伝えなきゃ…!!」
凄まじい桃色のオーラを体から放ちながら、美空は走ってどこかへ行った。彼女が自覚した想いがどんな結果を生んだかは、この世界でたった2人だけが知るところである。
29
:
しろは
:2017/02/10(金) 23:32:50
【お題キャラ:二子石 希望&桜火&水川和巳
【お題:くま】
【書いた人:しろは】
「あの時の俺は、そりゃあ酷いもんだったね」
来週リリースする新曲と全国ライブの宣伝のために出演したラジオ収録。
MCのDJに自身の過去について問われ、不世出の天才ロックスター水川和巳は頭を搔きながら、どこか郷愁を帯びた口調で語った。
「とにかくムシャクシャしてたんだよな。」
自身の才能を疎まれ、当時所属していた部を追放された和巳は、行き場のない若さゆえの高まりを周囲にぶつけていた。
道行く人々にギターで殴り掛かっては「ギターが滑ったんだ!」と言い訳をしていた日々。
ヘロインに蝕まれた彼の脳みそには、パンクロックとヘッドロックの区別すらつきやしなかったのだ。
「そんな荒れた生活を救ってくれたのが、あいつとの出会いだったのさ……」
_________________________
「ちょっとみんな! 授業中の居眠りは感心しないなあ」
希望崎学園教師の桜火は、春の陽気に誘われて舟を漕ぐ生徒たちに声を掛ける。
もっとも、生徒たちの眠気の原因は彼女の魔人能力『はなとゆめ-染井吉野-』によるところが大きい。
強大な睡魔は授業を受ける、強力な魔人転校生でもある二子石希望にも襲い掛かった。
(……ぐ、ぐぅ……ね、眠い……)
「良いですか? 人という字は……」
再び講義を続けようとする桜花。
(もう……これ以上は……でも……仕方がない……)
転校生スキル『アビシニアン=コントロール』発動!
桜花のうなじに黒いボタンが出現する。
これにより、彼女の「眠気を誘う」という性質が逆になる。
「……二人の人間がお互いを支え合って……」
桜の花弁が教室に舞う。
生徒たちの澄んだ眼差しが、教壇の桜花に向けられていく……
_________________________
「なるほどォ!」
サングラスを中指でクイッと上げながら、ラジオDJは感嘆の声を上げる。
不良の道から彼を救い上げ、天才ミュージシャンへの道を示した恩師。
なんと感動的な物語ではないか!
「その教師との出会いが水川さんを変えた訳なんですねェ!」
「いや、違ぇよ」
「えっ?」
次のテーマに向けて話をまとめようとするDJの出鼻が挫かれる。
「説教くせえ教師だなあと思ってよぉ。そのくせエロい身体してるもんだからその場で(ピーーー)してやったよ。そしたらあいつヒィヒィ言ってよが……」
「っちょ! ちょっと水川さん! ストップストップ!」
ロックスター予想しなかったロックな発言に慌てふためくラジオDJ。
DJ歴20年のベテランと言えども、水川ほど制御できない人間は初めてだった。
「その帰り道でくまに会ったんだよ」
「え!? くま!?」
「やっぱイラついてるときには甘いモンが食いたくなるんだよなあ」
「……?」
「旨いもんってのは、人生を変えちまう"パワー"があんのよ」
「……???」
話が見えないぞ、戸惑うとDJの目に、スタッフが掲げるカンペが飛び込んでくる
「……っとォその話は一旦置いといてェ。それではリクエストのお葉書いってみまっショ! ラジオネーム:ダンゲロダンゲロさんからいただきました」
まだ話し足りないと不満げな顔をするロックスターを身振りでなだめながら、DJは続ける。
「『水川和巳さんの曲大好きです。リクエストするのは、水川さんのデビュー曲です』とのことデス。それではお聞きくだっサイ。水川和巳デビューシングル、『HACHIMITSU LOVE』」
30
:
佐想美空
:2017/02/11(土) 00:13:39
桜火先生
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=61384805
半目がつらかった……
31
:
ヒロとセント
:2017/02/11(土) 12:48:27
【お題キャラ:くま&天満宮ベガ&伊藤早矢梨】
【お題:もしかして、私達、入れ替わってる!?】
【書いた人:セント】
「はちみつおいしい……」
「あれがベガ、あれがデネブ、あれがアルタイル……」
「待て待て待ちなさい、あなた達。現実を見ましょうよ」
一人の少女が素手を蜂蜜の瓶に突っ込んでは腕を引き抜いては舐めている。
美少女が一人、首を捻じ曲げながら虚空へ指を向けた向こうでは、天井が消滅して星空が広がっている。
大きな獣が一匹、理知的な眼で他の二人の肩を揺さぶっている。
「落ち着け、伊藤君。彼らとは言葉でも暴力でもまともに会話することは叶わないだろうよ」
「落ち着くなんて無理ですよ、どうなっているんですか会長!!」
希望崎学園生徒会長、孤守悪斗の腕を掴んで嘆いているのは伊藤早矢梨である。ここにはいつもの努力によって磨き抜かれたルックス、振舞いを見せている彼女のらしさは無い。何より、会長に縋りついている早矢梨とは別の早矢梨がここにはいる。
会長の隣にいた早矢梨の傍へ、一匹の獣、くまが近づいた。そして、人語でもって彼女を𠮟りつけた。
「何やってんのよ、私!! 情けない!」
「そんな状態で正気を保っているあなたがおかしいのよ!」
「おかしいおかしくないじゃないでしょ。これまでだって無理することなんて何度もあったんだから、今回だって我慢しなさいよ、私」
お題とここまでの流れを見てもらえば、作者がしようとしていることが少しは分かっていただけただろうか。今回は入れ替わりの物語である。具体的に言えば、くまはベガの姿に、ベガは早矢梨の姿に、早矢梨はくまの姿になっていることになる。
ではどうして彼女がくまになってしまったのか。そして、どうして彼女が二人も同時に存在しているのか、それらについて説明しておかねばなるまい。
本来、今日は次のハルマゲドンに向けた戦斗素体の実験テストを行う予定だった。戦斗素体が戦場でどこまで判断力を発揮し、作戦を遂行できるかについて確かめる必要があることは、生徒会長が事前にチームの者達に通知していた。
会長が自分の権限を使って広い空き教室を貸し切りにしてもらっていたので、空間の確保もばっちりである。
しかし、実際に予定が合って集合することができたのは、企画した会長の他には、早矢梨、くま、ベガ、ロボット研究会のメンバーだけだった。
「仕方が無い。生物部のセント君の例があるからには、戦斗素体の挙動については確認を行っておきたかったが、後で個別に協力してもらうしかないな。まあ、何にせよ今日集まってもらった君たちには早速実験してもらおう」
「我々ロボ研が十全なサポートを行います。どうぞ存分に申し付けてください」
そして会長とロボ研の指導の下、戦斗素体の実験を行ったのだが、一通りのテストが終わったあたりでロボ研の協力者、姉崎氏が唐突な提案を行ったのだ。
「私達の全力少年は周囲の戦斗素体の操作を行うための機能がありますが、同時に何体か動かすことができるかやってみたいんですよねー。できたらきっと便利ですよー」
思いつきの提案であったが、そこにあまり心配性な参加者もいなかったため、その案は受け入れられてしまったのだ。利用されたのは早矢梨、ベガ、くまの戦斗素体である。
この実験も最初は上手くいっているように見えた。三体の被操作機体は優雅な動きでダンスを踊り、クイーンビー顔負けのチアリーディングまでも実現してみせたのだ。
しかし、全力少年は戦斗素体同時操作の末にオーバーヒート。頭部の重要な配線が切れてしまったようで、動作を止めた全力少年はそのまま前方へと崩れ落ちた。
「うわーっ、ヒトロク式全力少年――ッッッ!!!」
「う、うろたえるな諸君! ロボット研究会はうろたえないっっ!!」
「&ruby(修理){緊急手術}だ、&ruby(部室){手術室}へ運ぶぞ!」
「あ、ああっ、動かしすぎました! ごめんなさいっ」
32
:
ヒロとセント
:2017/02/11(土) 12:48:56
「いや、これは俺達の責任だ。どうやら全力少年のスペックを過信し、君の操縦能力を過小評価していたようだ…… 姉崎氏、まさか試合直前になってもまだまだ成長しているとはな。本番でも、期待しているぞ!?」
「あ、ありがとうございます、任せてください部長さん!! この姉崎、まだまだ進化してみせます!」
「ははは、心強いな!! それではヒトロク式全力少年も更に君に合った形で改修を施すべきかな? よし、ついて来い姉崎氏、君のデータを測り直し、機能に反映させよう! 紅組の諸君、それでは失礼する!」
「すみません皆さん、私も失礼します!!」
ロボ研と姉崎氏がその場から去ると、そこには生徒会長孤守悪斗、伊藤早矢梨、天満宮ベガ、くまのみが残った(クマノミではない)。否、正確には彼らの戦闘素体も残った。
「あのー、会長。私達、というか会長以外の戦闘素体、動きが停止していません?これは大丈夫でしょうか。テストはこのまま継続しますか?」
「うーん、私も機械にはそこまで強くないからな。運動停止している機体にこのまま触れていいかも分からない。機械の専門家であるロボ研の皆が早く帰って来るのを待つべきだろう」
「私は良いですけど、あの二人はどうします?このまま待っていてもロボ研がいつ戻って来られるか分からない以上は、家に帰してあげてもいいのでは無いでしょうか」
「いや、セント君の例があるからな…… 急に自我が芽生えて逃げ出すか、いや場合によっては襲い掛かってくるやもしれん。その時には身を守るのに人数が必要だろう」
「はあ、それではこのまま待機ということで……」
しかし、それにしても退屈だ、と早矢梨は感じていた。会長は真面目だし男子だしで趣味の話をするのも難しいし、ベガはずっと架空の夜空の星を数えているし、くまははちみつを舐めている。誰かと会話しようとしても間が持たない。
彼女が軽い絶望に襲われていると、外から自身に満ち溢れた足音が聞こえた。
「わ〜っはっは! 困っているようだな紅組諸君、天才が駆けつけてやったぞ感謝しろ!」
現われたのはロボット部の自称天才、彩羽根彩羽である。右手にはコードレスハンダゴテ、左手には謎の基盤、抵抗、極小CPU、そしてハンダ! いかにもロボに詳しそうだ!
「ああ、君で良い。彩羽根君、どうやらそこの戦斗素体が動作不良に陥ったようだ。どうなっているのか調べてみてもらいたい。そしてできれば修理もお願いしたい」
「は〜っはっは、天才にかかればお安い御用だ。そもそも戦斗素体なんて使ってるから不具合なんて起きるのだ。まあ、それが分かってたら戦斗素体のテストなんか行かないだろう。だけど人の良い私はこうやって困っている皆を放っておけず、ついついここに来てしまったというわけさ」
「それで…… 君は今何をしているんだ?」
「え? 修理だが……」
「今君が弄っているのは、特に不具合の起きていない私の戦斗素体だが……」
「どうせ戦斗素体のことだ、後で不具合なんていくらでも起きるだろ、っと完成!!」
生徒会長が止める前に、彩羽が弄りまわしていた戦斗素体はいつの間にかスチール缶から作ったようなロボットに変わってしまっていた。
「メカラッタ!!」
そのロボットは怪奇な鳴き声を発し、目を光らせた。
「どうだ会長、これが私の考えた最強のロボット、アキカン大王だ。これで試合にも…… 勝利確実!」
「き、今日は戦斗素体の実験テストだったのに、これでは意味が無いじゃないか! ああっ、くま君のはちみつを盗み食いしようとして弾き飛ばされ…… 大破した! 明らかに弱体化してる、これで勝てる訳が無いだろう!!」
「ちっ、会長さんも私の才能を理解できないようだな。まあいい、そっちの奴らも今改良してやるからな」
「彩羽根君、ストップ! ストップだ。もういい!」
「わ〜っはっは!! そうはいくか〜〜!!」
彩羽が停止中の戦斗素体3体に詰め寄るのを会長と早矢梨が止めている時、彼らは新たに部屋の中に入ってくることには、誰も気づいていなかった。
「こんにちはー、すみません遅れましたー」
「……」
新たな侵入者はヒロインモドキのヒロと、自我を持つ戦斗素体のセントであった。
「ああ、セント君。丁度良い所に来た。君は自分の身体がどうなっているか分かっているかね? そこの戦斗素体が動作不良なので見てもらえると嬉しいのだが…… くっ、彩羽根君、そろそろ諦めてくれ。私は君のこれ以上の魔改造を見逃すわけにはいかない」
33
:
ヒロとセント
:2017/02/11(土) 12:49:33
「固いこと言うなよ会長さん、絶対アキカンの方が恰好良いって…… お、野良戦斗素体ではないか。お前もアキカンにしてやろうか〜〜!! 仲間になったんだからサービスだこれは!」
「……ッ!」
「あ、彩羽根君がそっちに向かってしまったか。すまんセント君、ヒロ君、ここのことは良い! 逃げてくれ!」
「え? あ、はい。逃げようかセント君」
「……(了承)」
「天才はアキカン候補を逃がさんのだよ!!! わ〜っはっは、はははは!!」
闖入者が去り、足音が遠ざかっていくと、会長は早矢梨に対し肩をすくめて見せた。
「このような立場の私でも、難しいな。万人を御するというのは。生徒会なら意欲を同じくして集まる者が多いからまだ楽だが、ハルマゲドンには不確定要素が多すぎる」
「でも会長は偉いですよ。それでも役割を放棄しようとしませんから。今日だって、会長がいなければ…… あっ、会長見て下さい、戦斗素体が動き出しましたよ、治ったんでしょうか、それとも」
最初に動き出したのは、ベガの戦斗素体だった。彼女はくまの戦斗素体が持っていたはちみつを取り上げると、瓶の中に腕を突っ込んで舐め始めたのだ。
「え!?」
次に動き出したのは、早矢梨の戦闘素体。彼女は首をグリン、と捩じり無理な角度を取ると、天井を指さして架空の星を観察し始めた。
「ええ!?」
最後に動き出した戦斗素体、くまの姿を取る戦斗素体は、自分の腕を見つめ、胴体を見つめ、足を見つめると声を上げた。
「えええ!?」
「ええええ!?」
早矢梨は絶句した。会長は面白げな表情をして目を細めた。くまの形をした戦斗素体は教室の後ろにあった予備のカーテンで体を包んだ。
「会長、これって……」
「ああ、入れ替わっているな」
「なんで少し楽しそうなんです?」
「気のせいだ。もしそのようなことがあるとしたら、一人だけ戦斗素体がアキカンになった挙句、大破したからではないかな」
「会長、彩羽根さんに戦斗素体を弄られて悔しかったんですね」
「立場上私以外の戦斗素体が改造されるのは止めたが、改造されなかった機体が正直憎かった」
「憎むなら彩羽根さんを憎んでくださいよ…… というか、冗談ですよね?」
「冗談だ。しかし、これが面白い光景なのも確かだ」
「はちみつこそきゅうきょくにしてしこうのしょくざい」
「あれはギャラクティック・ノヴァ、あれはM78星雲」
「ふ、服を着ないと…… いくらくまの姿でも裸は」
「はちみつおいしい」
「あれがアンタレス、あれがカウス・アウストラリス」
「ちょっ…… あなたたちはもっと動揺しなさいよ」
ベガとくまは自分達のスタイルを崩さないため、カオスは広がるばかりである。最初は本物の早矢梨が頑張っていた。頑張ってクマになってしまった自分を励まし、もしかしたら動揺しすぎて少し変になったのかもしれないベガとくま、戦闘素体達を落ち着かせようと話しかけもした。くまと化した早矢梨はその内落ち着いたが、他の二人と二体、(一人と一匹と二体?)はよく分からないことを呟くばかりだった。
「せめてその首はやめてベガさん! 痛めそうで怖いの!!」
「あれは王様、あれは王子、あれはイトコ達……グキッ」
「いま変な音した! 怖い! もういや!!」
カーテンを羽織ったくま、中身は早矢梨が、本物の早矢梨の肩に手を置き、優しい声で言った。
「あなたもだんだん落ち着きを失ってるわよ」
「あなたはいつの間にか落ち着きすぎよ!!」
「まあいいわ、私がとりあえずこの場がこれ以上おかしくならないように見張ってるから、ロボ研でも何でも呼んできなさいな」
34
:
ヒロとセント
:2017/02/11(土) 12:51:18
くまの姿をした早矢梨は、そう言うと他の戦斗素体二人に近づき、声をかけるのだった。
「あなたたちも少しは協力して、混乱してるのは皆同じだから、少しづつ慣れるなり落ち着くなりしないと、会長も困るでしょ」
他の戦斗素体二人に反応は無い。くまの姿の戦斗素体は、少し詰め寄り、今度は二人の肩を揺すぶって言った。
「あなたたち、あんまりその体を汚したり、変な姿勢を取ったりしたら、隠れたのに匂いで場所がばれたり、本番で体を痛めたりするかもしれないのよ。自分の身体に戻るまでで良いわ、我慢しましょう?」
二人に反応は無い、というより彼らは正気を無くしたように動作を続けるのだった。ここで物語は冒頭まで戻る。
「我慢というか、今回ぐらいは嘆いたっていいじゃない。どうせロボ研が来ればどうにかしてくれるでしょ……」
本物の早矢梨はもうやけくそだった。そもそもどのようにしたらこの場が解決したと言えるのかもわからなくなったのだ。どうせ身体が元に戻っても、くまははちみつを舐め、ベガは星を眺めるのだ。
「あー、分かった。あなた、これを解決しようなんて思ってたのね。違うわ、私はそんなこと言ってない。我慢はそういう意味じゃない。あなた、私が最初に皆を励ましたのだって、解決のためじゃないでしょう?」
「え……?」
早矢梨は思い出した。この騒動が起きた後に自分が何故行動を起こしたのか、そしてもう一人の自分が何を言おうとしているのかを。
「カッコを……つけろってこと?」
「そうね、これまでだってそうだったでしょう。だったら今だってそうしましょうよ」
「そういえば、あなた最初、服が無いことを気にしてたわね」
「そ、裸じゃ恰好悪いから」
早矢梨は笑った。
「会長、ロボ研の人たちを呼んできてください。私はもう少し彼らが落ち着くようになだめてみます」
「そうか」
会長は大人しく教室を出ると、ロボ研のメンバーを呼んできた。
「落ち着いたのね、やっぱりその方が良いじゃない、私」
「そうね」
そうして彼女たち
彼女達は元の姿に戻ったのだ。
「格好悪い所見せてたら、山ノ端一人との差が広がっちゃうよね。せめて格好つけなくちゃ……」
終わり
ベガ視点モノローグも書こうと思いましたが時間が間に合いそうにありません。今日は用事があるので戻るのも遅くなります。それでは失礼
35
:
セントとヒロ(スマホから)
:2017/02/11(土) 13:07:25
一応モノローグ
私、天満宮ベガは少し自己評価の高いところがあった。シャフ度でも許されると思うところがあった。他人より優れているところがあると思っていた。
……それが何かは分からないけれど。
私は周りの人々を下らないと思っていた。蜂蜜ぬるぬるプロレス、放送部のはやりん☆、何を言ってるんだこいつは、というのが、私の希望崎生活の環境として私を取り囲んでいた。
だから、いつも私は上を見ていた。あてのない星を見つめて、他の人と目も合わせなかった。
ただ、今日私は伊藤早矢梨さんを実際に見て格好良いと思ってしまった。ただ格好をつけているだけではなかったらしい。あの山の端一人を意識していたのか。どうやったって、勝てるとは思えないのに。
それでも、少なくとも私は彼女に尊敬の感情を抱いた。あの二等星は、一等星よりも眩かった。
「あれは、私の好きな人」
呟いてしまった。
聞こえてはいなかったみたいだ。
36
:
セントとヒロ(スマホから)
:2017/02/11(土) 13:10:18
今投稿したのがモノローグというよりは、エピローグだった気がしてきました。頭が馬鹿になっている
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板