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【ミ】『星屑のサラウンド』

332斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/10/25(金) 21:42:37
>>329

彼は追ってくる黒羽と成田には眼もくれず、適当な自販機でペットボトル入りの水を3本買い
スポーツカーに乗り込むと、助手席に放り込んでいたザックを自身の足元に放り、キーを刺してエンジンをかける。

そうして二人が乗り込んできたのを確認すると
アクセルを踏む前にスマートフォンからQueen(クイーン)の(The Show Must Go On)をかけた。

ホテルまでの道へ車が向かう
すべての景色が帯のように流れていく。

『何があっても止めることはできない』
歌詞はその言葉を繰り返し続けている。


――そして、『ロスト・アイデンティティ』の腕がダッシュボードに、自らの拳ごと砕かんばかりに叩きつけられる
喉の奥から絞り出すような声と共に。


「奴らの方が『まとも』の筈だった……『正しい道』を行くと
だが、現実は悪いジョークだ、まともなヤツが横道に逸れ、いかれた奴が先に進んでいる
俺のような狂人などより、よっぽどマシな道を、俺より先に行く筈だと思っていた……。」

「だが、まともで立派な、正しい筈の人間が、ただの感情論で大を殺し小を救おうとして、
自身の生存にすら不都合な選択をするというなら……『まとも』とは何だ?」

――めまいがする。

痛む拳をハンドルに添える
僕の拳でもあるのだから、乱暴はやめてほしいのだが。

 (……『俺』が涙を流しているのなんて、初めて見たな。)

「すまない、まず暴言を謝らせてくれ
まごう事なき『僕』の本音では有るが、感情に任せて言う事でもない
彼らの動向を得られなかったのは、僕の落ち度だ……改めて、すまなかった。」

努めて冷静に舌を回し続ける
氷のような冷気を含む声は変わらないが、少なくとも刺すような棘は無い

「それと、自己紹介がまだだったかな。
僕の名は翔、『斑鳩 翔』だ、清月学園、高等学部2年、見せた通り『スタンド使い』だ。
鳥の斑鳩に、翔けるの翔、空は飛べないけどね。」

「黒羽さんの事は聞いてるよ、下の学年にそういう子がいるって
……清月学園新聞部、期待の才女、だったかな?
クラスメイトの噂で小耳に挟んでね、スタンド使いだとは思わなかったけど。」

「成田君には……僕が感染した時、僕を殺す時の為に、僕のスタンド能力を話しておこう。
『鎖を纏い、分離すれば同時操作できる影を生み出す能力』だ近距離パワー型だが、スぺックは精密動作以外は人間と変わらない。
射程『20m』、投擲なら『60発の鉄球』を、『胴体に穴をあける威力とまず回避は出来ない速度で』(ス精BB)で撃ちだせる」

「視界の死角も、装填の隙も無い、チラッと君のスタンドを見たが……近距離パワー型だろ?
殺す時は、『無理にでも接近戦に持ちんで』『体勢を崩す』んだ、一時しのぎだろうが『視界を奪う』のもいい
……ただし、至近距離に持ち込んだからといって、殺すのに時間はかけない事だ、『爆発』する。」

ペットボトルを開け、水を喉を鳴らして飲むと
影の腕がそれをドリンクホルダーに戻す。

「それから……」

「僕はもう、天才じゃない、それは5年前に『死んだ』。」

「――そろそろホテルかな、準備は?」


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