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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その3

410鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/16(水) 23:24:55
>>409

「……」

門倉の名刺に視線を落とし、少し目をそらす。
身元が明らかである方がいいかと思ったが、店舗の情報が塗りつぶされていた。
明らかと不明の狭間の名刺だ。

「名コンビて……」

くすぐったそうに笑う。
女性的な雰囲気のある顔がふにゃっと歪む。

「まぁ……とりあえず、取次は出来たわ」

411『せんせいのかくしごと』:2019/01/17(木) 22:32:45
>>410(鈴元)

様々な思いを抱きながら『鈴元』は取り次ぎの結果を待つ。
そして、ほどなくして『水野』がドアから出てくる。

「院長がお会いになるそうですよォ〜〜〜。これよりご案内いたします」

当然と言えば当然なのだが、院長が許可を出したようだ。
『水野』がカウンターの脇からせかせかと出てきて、二人を導いていく。

          ……… ……… ……… ………

改めて『カウンター前』からクリニック内を見やると、
いかにも高級そうなソファとテーブルが余裕をもって並べられている。
どうやら『待合スペース』といったところらしい。
外から見えないように観葉植物や衝立でうまい具合に隠されているのは、
プライバシーに配慮しての事だろう。

『水野』はその横を抜けたところにある通路へと進もうとしている。
通路の先を見やると『診察室』『カウンセリングルーム』
『セラピールーム』『レストルーム』『W/C』などと書かれたドアが並んでいた。

「さて―――行こうか」

『門倉』が『鈴元』に声をかける。
『水野』や『門倉』と話しながら向かってもいいだろうし、
気になる事があれば確認しながらついていくのもいいだろう。

412鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/18(金) 00:10:16
>>411

「はいな」

とてとてと二人について行く。

「……いろんな部屋があるんやねぇ」

「レストルーム、セラピールーム、カウンセリング……全部違う部屋なん?」

あと通路に何か変なものが飾られたりしてないか確認しよう。
なにか呪いに関するものがあるかもしれない。

413『せんせいのかくしごと』:2019/01/18(金) 21:50:53
>>412(鈴元)
通路を確認しつつ『鈴元』は歩を進める。
ところどころに観葉植物や暖色をメインとした『抽象画』が飾られている。
さすがに『お札』などは貼られていない―――少なくとも見える範囲には。

部屋の名はそれぞれ違うドアに書かれている。
ここまで分かれている意味があるのかどうかは確かに疑問だろう。

「『レストルーム』は施術が終わった後休んで頂くような部屋ですね。
 あとどうしても他の患者様に会いたくないとかの場合に待機して頂いたりって感じです。
 『セラピールーム』は患者様がリラックス出来るように
  いろんな話を聴いてさしあげる部屋です。
 『カウンセリングルーム』は具体的な悩みや希望を確認したり、
  施術の説明を行ったりする部屋となりますよ〜〜〜」

『水野』がそれぞれの部屋の解説をしてくれる。
一応は分かれている意味がある、という事だろう。

   ……… ……… ……… ……… ………

通路を進み切るとT字に曲がる構造となっており、右と左に分かれている。
右を少し見やると『手術室』『スタッフルーム』とそれぞれ書かれたドア、
そして『非常口』のマークが見える。

左には『院長室』と書かれたドア、そして『水野』はそこへと一直線に向かう。

           コン  コン  コン

                             「―――どうぞ」

 『水野』のノックに、少し低い『女性』の声が応える。

414鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/18(金) 23:48:05
>>413

「はぁ、なるほどぉ」

色々プライバシーとか客の精神などに気を遣うのだろう。
多分、ほかのどんな医者よりも注意すべき点かもしれない。
見た目に関する部分を商売にしているのだから。

そうこうしているうちに院長室の前に着いた。
深呼吸をひとつ。
少し心臓が早く動いているのを感じる。
緊張している。
それも仕方の無いことだ。
職員室に向かうのとはまた違う感覚だ。

「入ろか……」

入室する。

415『せんせいのかくしごと』:2019/01/19(土) 18:18:48
>>414(鈴元)
『鈴元』は覚悟を決め、入室する。
まずは『水野』、続いて訪問者である『門倉』『鈴元』の二人という流れだ。

『院長室』には、まず応接の為のローテーブルとソファが中央にある。
奥にはしっかりとしたデスク。書類やらパソコンやら電話やらがおかれている。
脇には書類棚やクローゼットのようなものが設置されている。

そして、デスクに座り、じっと入室者たちを見据えているのが、『白衣の女性』。
キャラメル色の長い髪は先に軽くパーマがかけられている。
メイクもばっちり決まっており、一般的な医者のイメージとはややかけ離れている。
年のころは………30代? 20代?
化粧のせいもあり、少々、年齢不詳のきらいがある。

「『院長』に面会したいという方々、お連れしましたァ」

  『水野』の言葉に女性が頷き、口を開く。

「初めまして、私が院長の『阿多 佳久子(おた かくこ)』。

       ―――水野さん、ありがとう。戻って構わないわ」

その言葉に『水野』は一礼し、部屋を出ていく。

ドアが閉まる音を背にして、『阿多』がデスクから中央の応接テーブルに移動する。
そして、手ぶりで『鈴元』達にソファに座るよう促す。

              「………あなた達が、『呪い』を解いてくれる
                   っていう人たち、という事なのよね?」

『阿多』は二人を値踏みするように眺めながら、そう問いかける。

416鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/19(土) 22:17:32
>>415

「ん」

(ハイカラなお人さん……)

一般的な……鈴元の中にある医者のイメージとは違う。
明るい髪色やその化粧はテレビの中で見るものの側面がある。
いわゆる女優……いや、この場合は文化人と呼ばれる人たち。
そういう人たちの雰囲気に近い。

(おかしいことやないよね)

美容外科の院長は美人の方がいいのかもしれない。
ある種の説得力を生んでくれる。
自分の院で行う治療は全て自分が最初に受ける、そんな医者もこの世にいる。
富豪が服や革靴で財力を示すように、美容外科医は見た目で腕を示す……のだろうか。

「鈴元涼ぉ言いますぅ。よろしゅうに、阿多センセェ」

阿多佳久子。
おたかくこ。
お高く子、では無いことを祈りたいがどうか。
値踏みするような視線はお高いところから注いでくるような気もする。

「えぇ、はい。僕らが、その呪いを解くって仕事を請け負ってるんです」

417『せんせいのかくしごと』:2019/01/20(日) 02:30:36
>>416(鈴元)

『鈴元』が挨拶の口火を切ると、

「ああ、そうです。私が連絡させて頂いた『門倉 良次』と言います。
 よろしく―――よろしくお願いします」

『門倉』も話を繋げていく。

「彼、鈴元君は―――『解呪』のプロフェッショナルでしてね。
 見て下さいよ、この『出で立ち』。いかにも、な感じがするでしょう?

 私は普段は『不動産屋』なんて標榜してますが、
 『仲介』するのは『物件』だけじゃあないって事です。
 こういった類の優れた人材と不可思議な事件を『仲介』する………

                    ―――つまりはそういう事です」

ペラペラと思いつくままに語っている感はあるが、
それなりに上手くまとまったところで、

「それでは、院長先生。『依頼内容』の方を改めてお教え下さい」

                       早速、『門倉』が、促す。

418『せんせいのかくしごと』:2019/01/20(日) 02:34:54
>>416(鈴元)

「まずは『呪い』について
 ―――発端は、去年の夏の話」

                 『院長』は語る。

「患者様の話を聴いていた『ナース』がここに駆け込んできてね、
 『患者の顔が崩れた!』とパニック気味に報告していたの。
 慌てて『セラピールーム』に駆け込んで患者様の顔を見ると………

  目や鼻や口がみんな顔の下の方に集まっていた。
  ………不謹慎だけど、季節柄、解けたアイスクリームを連想してしまったわ。

 奇妙な事にそれらの機関はすべて通常通り、機能していた。
 目は見えるし、匂いはわかるし、喋れる―――

 『レントゲン』なんかをとったわけじゃあないから
  具体的にどう繋がっていたかは不明だけど、
  少なくとも現在の医療の知見ではおよそ説明のつかない現象」

  『院長』は小さな溜め息をつき、また語る。

 「患者様もまたパニックに陥っていて、ろくな話は聞けなかった。
  もっとも自分でも『何が起きているか』分からなかったようだから、
  多少冷静でも、得られる情報はなかったでしょうね。

 私は途方に暮れながら、患者様を『レストルーム』に待たせておいた。
 すると、一時間ほどで、なぜだか分からないけど『症状』は勝手に収まっていた。
 私はとりあえず、患者様に十分な『謝罪金』を渡して、彼女を家に返した。
 念入りに『口止め』してね。
                        …………それが『始まり』」

              『院長』はさらに語る。

「その後も、ぽつ、ぽつ、とこの『崩顔の呪い』の発症は続いた。
 日時や時間は関係なく、タイミングや法則は一切、不明だけど、
                  ・ ・ ・ ・ ・
        それは大抵、『話をする場』で現れた。

 そして、対象も患者様だけじゃあなくて、医療スタッフにも『症状』は出た。
 まさに『無差別』………このクリニックが『呪い』にかけられているとしか思えない。
 『呪い』が出るたび『口止め』はしていたけど、少しずつ外部に広がりつつある。

 まだそれなりに患者様は来て下さっているけど、
  いずれは完全にそっぽを向かれてしまうでしょう。
          だから、今、食い止めなくてはならないの」

 ここで『院長』は二人を見る。だから『鈴元』たちに依頼した、そういう事だろう。
 このタイミングで何か訊いておきたい事などあれば口を挟むのもいいかもしれない。

419鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/20(日) 13:24:40
>>417-418

(また適当言わはって……)

解呪のプロフェッショナルではない。
ただの和菓子屋の次男坊で、学生だ。
訂正して混乱させてもいけないので鈴元はにこにこ笑うだけに留めた。

「……顔の下の方ってことは、福笑いにみたいに集まっとったって?」

想像するに尋常ではない事態だ。
途方に暮れたというがそれでもレストルームに患者を通すという判断が出来たのは良かったのかもしれない。
何も出来ないより、何かが出来た方が良かったのかもしれない。

「話をする場ぁ。最初はセラピー? の部屋で、それからはセラピーのとこ以外でもってことでええんやろか」

「反対に、呪いが起きへんかった場所ってあるん?」

部屋の種類が多い。
セラピールームとカウンセリングルームは多分呪いが起きる場所なのだろう。
だとすると、休む目的のレストルームは安全なのだろうか。
事実、レストルームで待たせたら呪いが解かれたわけであるし。

「後、最初の呪いが起きる前になんか、変わったことってしはった?」

「新しく人を雇ったぁとか、新しい業者の人が出入りしたぁとか……」

420『せんせいのかくしごと』:2019/01/20(日) 14:15:03
>>419(鈴元)
「一つずつ答えていくわね」

『鈴元』の数々の問いに『阿多』が応じる。

「『福笑いのように集まった』―――そうね、
 これも不謹慎かもしれないけど、ちょうどそんな感じ。
 最初は下に集まっただけだったけど、それからの事例では、
 『顔のパーツ』は様々な位置に配置されていた。乱雑にね」

「『最初はセラピーの部屋で次からはほかの部屋でも起こったか』。
 そうね、最初は『セラピールーム』で起こったけど、
 その次は『カウンセリングルーム』。主にこの二部屋で起こりやすい事例ではあるけど、
  スタッフの休憩室、『スタッフルーム』で起こった事もあった。
  『診察室』でも一度だけあったわね。
  その流れが呪いにとって『偶然』か『必然』かは、分からないけれど」

「『呪いのおきた事のない場所』………この部屋もそうだし、
 あとは『手術室』や『レストルーム』あたりもまだ出ていないわね。
 記憶している限りだと、先ほど挙げた場所以外では報告例はないはず」

「『最初の呪いが起きる前に変わった事』……………。
  ………ああ、そうね。少し、忙しくなっていたので、
           『ナース』を一人雇ったくらいかしら。
  『鬼塚 郷子(おにづか きょうこ)』さん。
  この『呪い』が始まってからも、辞めないで働いてくれているわ」

『阿多』は『疑問』への応答を終える。
これ以上『問い』がなければ、彼女の話は先ほどの続きに戻っていくだろう。

421鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/21(月) 01:14:08
>>420

一つ一つ、答えを確認する。
手術室やレストルームはまだ呪いが起きていない。
となると、顔が崩れる現象は何かの言葉がきっかけなのかもしれない。

(診察室で一度だけ……後でそのへんも聞いとこか)

「鬼塚さん。なるほどぉ」

静かに頷く。
話を続けてもらおう。

422『せんせいのかくしごと』:2019/01/21(月) 22:25:50
>>421(鈴元)
「―――それで、『依頼内容』というのは
 『この現象をなんとか止めて欲しい』という事。
 その為の『援助』は惜しまないわ」

『鈴元』の質問への返答も終わり、
『阿多』が話題を戻す。
『門倉』がそこへ口を挟む。

「そう―――その為に俺達はここへ来た。
  その『解呪』ッ 成し遂げてみせましょうとも!

  ………ただ、それには『情報』が必要でしてね。
       多ければ多いほど『解呪』の確率は上がる。

        ですので、しばらく『調査』の時間を頂いても?」

『門倉』の言葉に『阿多』は頷く。

「もちろん、最大限の協力はするわ。
 ここのスタッフに話をきいてもらっても構わないし、
 本日の予約の患者様に実際に接して頂いて、
  場合によっては『呪い』を引き起こしてもらっても構いません。

 ………こういう状況でもクリニックに通って下さる患者様を
     『実験台』にするのは心苦しいけれど、今日が『正念場』だと私は捉えているの。
     この事態を乗り切る為には………やむを得ないでしょう」

423『せんせいのかくしごと』:2019/01/21(月) 22:34:14
>>421(鈴元)

「それで、『患者様への接し方』だれど、
 流石に外部の人間として聞き込みをするのは『不審』極まりない。
 ですので、もし患者様と実際に接するというのなら、
 あなた達には『ナース』に扮してもらいます」

そして、『阿多』はさらっとそんな事を言い出した。

「ここには『カウンセリングルーム』と『セラピールーム』があるわ。

 『カウンセリングルーム』は一般の美容外科にもよくある、
 患者様のご要望や施術の希望など具体的な話を聴く場所。
 ここでは異性に聞かれたくないコンプレックスやデリケートな話題が出るので、
 基本的には『同性のナース』が対応している。

 一方、『セラピールーム』は当院独自のサービスとなっているわ。
 ここでは『異性のナース』が話し相手となって患者様を肯定し、
 癒して差し上げる空間です。患者様の話したい話をじっと傾聴する。
 そんなサービスが当院の人気の一端となっているの。

 当院の患者様はほとんどが女性、だから、
 『カウンセリングルーム』は女性のナース、
 『セラピールーム』は男性のナースが配置されている。

  ・ ・ ・
 どちらの『ナース服』も用意出来るので、必要ならば言って頂戴」

  ……… ……… ………
                  ……… ……… ………

ふと、『門倉』を見ると、少し目を泳がせながら『鈴元』に目くばせをしている。
おそらく、『鈴元君に任せるよ』のアイコンタクトだ。おそらく。

方針はすぐに決めなくてもいいだろうし、
一端、外に出て『門倉』と作戦会議をしてもいいだろう。

424鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/22(火) 00:22:57
>>422-423

「わかりましたぁ」

協力は最大限に頂こう。
実際に被害にあった患者に会って得られる情報もある。

「え、あぁ……」

ナース。
その言葉に動揺した。
どうするべきか。
門倉に視線でどうするか尋ねようとしたが向こうはこちらに任せる気らしい。

(どないしよかな……)

(門倉さんが女の人のナースは無理があるやんなぁ……)

「ちょ、ちょっと門倉さんと相談させてもらってええやろか?」

425『せんせいのかくしごと』:2019/01/22(火) 21:37:41
>>424(鈴元)

「―――ええ、いいわよ。聞かれて困るのだったら、
 外に出てもらっても私は構わないし」

 『鈴元』の『相談したい』という申し出に『阿多』はそう答える。

「………それと、一つ言っておきます。貴方たちに頼むのは『今日一日』『クリニックが終わるまで』。
      正直に言ってしまえば、貴方たち以外にも『解呪』が出来るというツテはあるの。
      数日かけるくらいなら、そっちに頼んだ方が『クリニックの為』と私は考えている。
      申し訳ないけれど、それを踏まえて効率的に動いて欲しいものね」

 突然告げられる『タイムリミット』。
確かにいつまでもグダグダ調査してもラチが明かないのは事実だが………。

「承知しました―――もちろん、本日中に『解呪』させてもらいますよ。
 じゃあ、『鈴元君』。外で、少し、話し合おうか」

『門倉』は『阿多』の言葉に頷き、『鈴元』と共に廊下へと出た。
幸いに、というべきか廊下は静まり返っており、誰もいない。

426『せんせいのかくしごと』:2019/01/22(火) 21:40:37
>>425(鈴元)

「さて―――『鈴元君』。とにもかくにもまずは『情報』が必要だが、どうしようか」

 廊下にて『門倉』が早速、語り掛けてくる。

「『院長』に提示された情報収集の方法は

 1.『スタッフへの情報収集』
 2.『カウンセリングルームで患者へ対応』
 3.『セラピールームで患者へ対応』         の三点。

  もっとも、『スタッフ』は複数いるのだろうから、
  その選択肢は更に細分化されるだろうね。

 また、あくまで『優先順位』の話だから、時間があれば、
 最終的には全ての選択をとる事も可能かもしれない。
 ―――時間があれば、だが。

 あとはせっかく、二人居るのだから『分担』するのも手だ。
 君が重点的に調べたいところは君自身が行くといいが、
 そうでなければ俺が単独で調査して、後で情報を擦り合わせる事も出来る。
 『セラピールーム』はともかく、『カウンセリングルーム』の対応は
 俺には『ちょっと厳しい』というのもあるからね―――興味はあるけれど。

もちろん、『院長』が提案した『調査』以外の行動をとるのも自由だろう。
要は『呪いの正体』を暴き、それを無くせればいいのだから。
『解呪』への道筋はいくらでもあるという事さ―――」

『門倉』が状況をまとめる。『院長』との会談時に言葉少なだったのは、
頭の中で『鈴元』と話し合う事を整理していたのだろう。

『門倉』はあくまで『鈴元』に判断を任せていく方針のようだが、
その思惑通り、『どうするか?』をさっさと決めてしまってもいいし、
もう少し『門倉』と相談するのも悪くないだろう。

427鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/22(火) 22:28:29
>>425-426

「どないしよか……」

今日中だ。
今日一日で今回の件に決着をつけなければいけない。
そのためにはもっと情報が必要だ。

「やっぱり……カウンセリングん所は難しいやんねぇ……」

セラピーでもカウンセリングでも、異性の対応であることは変わりない。
男性を相手にする時もそうだが、人によって怒りなどのポイントが違う。
なので、どちらに言っても失敗する可能性はある。

「カウンセリングの所は僕が行くわ。僕もそんな似合うかとか不自然じゃないかはわからんけど」

「門倉さんは……セラピーの所でぇ」

それからどうするか。

「あと、鬼塚さんってナースさんにお話聞きたくて、それと診察室で一回って言ってはったからその時の患者さんの話も」

「鬼塚さんはナースさんやからお仕事の空き時間に話を聞くとして、患者さんの方は都合つくかわからんよね」

仕事などの用事で手が空いていない可能性がある。

「やから、お電話でもええから話出来へんか、阿多センセに掛け合ってもらいたいんよ」

「僕から患者さんに直接……やと怪しいかもしれんから、阿多センセから患者さんにお願いした方が確実かなぁって」

鈴元はカウンセリングルームでの調査を選んだ。
どこかの空いた時間でナースの鬼塚と可能なら呪いを受けた患者からの聞き取りを行う。
門倉にはセラピールームでの仕事と、阿多に患者へアポイントを取ってもらえるかのお願いをしておく。

428『せんせいのかくしごと』:2019/01/22(火) 22:53:26
>>427(鈴元)

「ふむ―――順番としては

 『院長に、診察室で【呪い】の出た患者の話を聞く』
 『出来るのであればその患者と電話にて話をする、その仲介は院長にお願いする』
 『その後は、俺は【セラピールーム】で男性ナースとして、
  君は【カウンセリングルーム】で女性ナースとして、
  それぞれ患者の相手をして呪いの発現をチェックする』
  『時間の調整やアポがとれたら鬼塚ナースと診断室の患者と話をする』 という流れでいいかい?

  今はええと、13時50分か。
  おそらくだけど『患者』は『午後開始』の14時を回れば来てしまうのだろうね。
  それまでに二人で、『院長』から『診察室の呪い』について訊いてしまうのはどうかな。
  ついでに『患者』や『鬼塚ナース』へのアポ調整の依頼もそこで行う―――

  その後にそれぞれの『ルーム』へ………とこんな形でどうだい?」

『鈴元』の意見を『門倉』なりに整理して、再度、確認をしてくる。

429鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/23(水) 02:20:20
>>428

「うん。それで大丈夫です」

門倉の言葉に頷く。
問題は無いはずだ。

「それじゃあ、あんじょうよろしゅうお願いします」

430『せんせいのかくしごと』:2019/01/23(水) 22:16:47
>>428(鈴元)

「よし―――じゃあ善は急げ、だ」

『門倉』は再び『院長室』のドアを開け、
眼前の『阿多』におもむろに語る。

「さて………調査方針が決まりました。

まず、私、『門倉』は『セラピールーム』で、男性ナースとして、患者の『呪い』を見る。
一方、『鈴元君』は『カウンセリングルーム』で女性ナースとして、患者の『呪い』を見る。
つまりハサミ討ちの形となるわけですね。

あとは、時間が出来たらでいいので、新人ナース、『鬼塚さん』と話をしたいので調整をお願いします。

それともう一つ―――『診察室で起きた呪い』について『院長』に訊いておきたいのです。
出来るなら、当事者である患者さんにもお電話か何かでお話してみたいのですが」

『方針』を一気に『阿多』に伝える『門倉』。

                             それに対し、

「分かったわ。正直、『門倉』さん。貴方が女性ナースに扮するのは少し難しいように感じていたけど、
 『鈴元』君なら、当院の技術を用いれば十分に可能よ。
 といっても ――フフフ――― メスを入れたりはしないから安心してね。

 『鬼塚』さんはじゃあそうね、大体、一人目の『患者様』の対応が
 終わった後くらいに、話が聞けるように時間調整しておくわ。

 あとは―――『診察室』の患者様と話したいという件は………
 一応、連絡はとってみるけど、『デリケート』な話だから難しいかもしれない。

 私の方で知っている事は伝えられるけど、具体的にどんな事を訊きたいのかしら。
 もう最初の『予約』まで時間もあまりない事だし、手短に済ませられるといいのだけど」

                             『阿多』がこう返してくる。

と、いう事なので、『鈴元』の方で『診察室』での『呪い』について、
特に重点的に訊きたい点があれば、提示してみるのがいいだろう。
『門倉』の説明に問題があれば、補足をいれてもいい。

431鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/24(木) 00:18:11
>>430

「お、お手柔らかによろしゅうお願いしますぅ……」

「あの、肌があんま強なくて、お化粧とかするんやったらその辺も……」

不安だ。
メスは入らないにしてもどんなことを受けるのだろうか。
ナースになる過程が分からなくてドキドキしてしまう。

「患者さんは出来たらで大丈夫です。そん時は阿多センセにその診察室の時こと聞かせてもらえるとありがたいけど」

今の所、何か呪いが起きるきっかけになる言葉があるのではないかとにらんでいる。
患者に起きたことだから患者の発した言葉が鍵なのだと思うが、その場にいたなら先生でも大丈夫だろう。
それとも今の予想とは違うところが核心なのか。

「診察室の時に一回だけって聞いて思ったんやけどぉ」

「何か、普段とは違うことしたとかあるんやろか?」

「普段せん話したとか、なんか失敗があったとか」

432『せんせいのかくしごと』:2019/01/24(木) 23:42:18
>>431(鈴元)
「そう……それならウチにお肌の状態まで
 しっかり考えてやってくれるナースがいるから、その娘に頼むわね」

『鈴元』の『ナース変身』への不安に、『阿多』が医師として応える。

「そして………患者、『玉置(たまおき)』さんの事ね。
 あの人のことは印象に残っている。30代の女性だったんだけど、
 事前に『セラピールーム』で長時間、愚痴を言ってたにも関わらず、
 私の診療の時も、施術と関係のないお喋りをちょくちょく、しててね。
 なんでも『結婚詐欺』にあったとかで、それの愚痴。
 次はもっといい男を見つけてやる、って事で、二重にする相談をしていたのだけどね。

 彼女の愚痴をしばらく、どこか上の空で聞いていたのだけど、
 突然、短い悲鳴のような声が聴こえたから、ハッと『玉置』さんを見たら………
 崩れてきていたのよ―――『顔』が。
     『目』が離れていったと思ったら、『鼻』が曲がったりね。

 『話』にはきいていたから、私はすぐに彼女に落ち着くよう声をかけて、
 ―――しばらくして『レストルーム』に連れて行って休んでもらったわ。

 一応、彼女には『整形する際の不安が顔に現れる事がある』なんて
 もっともらしい事を言っておいたけど、半信半疑という感じだった。
 結局、彼女に関しては整形代をこっち持ちにして、それとなく『口止め』して、
 それで………おしまいね。特に『失敗』したとかそういうのは無かった」

『もういいかしら』というふうに『阿多』はここで話を止める。

433鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/25(金) 00:19:36
>>432

「おおきに……」

ナースになるのはそんなに気負わなくてよさそうだ。

「結婚詐欺……それは、えらい難儀な……」

それで美容外科に来たということか。
よりいい男性と巡り合うためだろうか。
鈴元には理解しにくい感覚だが、女性の心はそういうものなのかもしれない。
そうでなければ、その感情故に衝動的になっていたのか。

「うわの空ってことは、そんなに詳しくは覚えてはらへんってことでええ?」

「それやったらそれで大丈夫なんよ。お話しいただけるだけで御の字やし」

だから、それ以上情報がなければ変身することになる。
ナースに。

434『せんせいのかくしごと』:2019/01/25(金) 01:12:00
>>433(鈴元)
「ええ………ごめんなさいね。それ以上は特には」

『阿多』が首を振る。

「でも、一応、『玉置』さんには連絡しておくわ。
 大丈夫そうなら、アポをとっておきます」

そういうと『スマホ』をいじり始める『阿多』。
『玉置』の連絡先をチェックしているのだろうか―――

          と………
 ♪
    ズズズズン ズンズン
             ズッズッ ジャジャジャジャァ〜〜〜〜ン
                                       ♪

 なにやら勇ましい音楽が『阿多』の『スマホ』から流れてくる。
  特別、聴き覚えはないが―――

                ………   ポチッ

 『阿多』が尋常でなく素早い動きでスマホのボタンを押し、音量をミュートにする。

         ……… ……… ……… ………

「………じゃあ、『ナース』達には連絡しておくから、
 『スタッフルーム』に行って頂戴。貴方達にはそこで着替えてもらいます。
 もう最初の患者様が来るまで、そんなに時間はないから」

そして、『阿多』は先程のメロディには一切触れずに
少し厳しい口調で二人を『スタッフルーム』へと誘導する。
確かに時間がないのは事実だろう。

435鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/25(金) 01:21:58
>>434

「……」

にこっと笑って、少し頭を下げる。
聞かなかったことにすることに決めた。
波風を立てるようなことを言うのは好きではない。
そもそもこの音に対しての指摘が問題になるかは分からないが、無音状態にする速度があまり触れられたくないのを表している気がした。

「じゃあ、行ってきますぅ」

スタッフルームに移動する。

436『せんせいのかくしごと』:2019/01/26(土) 00:06:55
>>435(鈴元)
公の場でスマホの音を鳴らしてしまい、焦るような事はままある事だ。
時間もない―――『鈴元』はそのまま『スタッフルーム』へと向かう。それに続く、『門倉』。

 ……… ……… ……… ……… ………

「ここだったね」

『スタッフルーム』前に行くと、『門倉』が躊躇なくノックし、そのまま入っていく。それに続く、『鈴元』。

『スタッフルーム』はいわゆる『休憩室』のようで、大きなテーブルに複数の椅子が備えてある。
冷蔵庫や電子レンジ、流し場なども設置されている。ロッカーもある。
また、奥の方に男女に分かれたトイレ、また、文字通りの『化粧ルーム』も設置されているようだ。

『スタッフルーム』には二人の男女が居る。いずれもナース服を着ている。

「ようこそいらっしゃいました。私は『武藤』と申します。
 『武藤 暮(むとう くれる)』、看護師をしています。
 例の怪事件を調査している方々―――ですよね?」

眼鏡をかけた長い髪の女性が二人に会釈をする。
落ち着いた上品な印象だ。

「アレ、一人はまだ若いんじゃん? でもなんか雰囲気あるねェ〜〜確かに。
 『霊』とかそうゆうのバッとハラってくれそうなカンジ?
 こりゃあイケるんじゃあないのぉ? 『インチョウ』もイイ人呼んできたんじゃない?
 あ、オレは『角田 連(つのだ れん)』。よろしーく」

対照的にチャラい男。金髪に近い伸びた茶髪。わりに目立つピアス。
一般的な医療職のイメージとかけ離れているが彼も『ナース服』を着ている。

「―――『少年の方』………貴方ですね。
 『カウンセリングルーム』で私と共に患者の話を聞きたいとの話を伺っています。
 お聞きでしょうが、ここは『同性のナース』が立ち会う場所。
 でも、そうですね―――『院長』が言っていたとおり、貴方なら、大丈夫でしょう。
 早速、『化粧ルーム』に、共に行きましょうか」

二人が『スタッフルーム』に来るまでの間に、『院長』が連絡してくれていたようだ。
どうやらこの『武藤』が当面、『鈴元』の面倒をみてくれるらしい。

「あ、『セラピールーム』の人はオレとねェ〜〜〜」

一方の『門倉』は『角田』と、という事のようだ。

437鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/26(土) 00:25:42
>>436

「鈴元涼ぉ言います」

二人のナースに頭を下げる。
男性の方はなんだかナースというか医療従事者っぽくないが、院長と同じ理由だろう。
……多分だが。

「えっと、じゃあ武藤さんと一緒に、やね」

「よろしゅうお願いします」

「門倉さん、なんかあったら連絡でぇ」

門倉に小さな声でそう伝えて、化粧ルームに移動しよう。

438『せんせいのかくしごと』:2019/01/26(土) 01:07:44
>>437(鈴元)

「ああ―――分かった。幸運を祈るよ」

『門倉』も自己紹介を終え、『角田』と共に準備を始めた。
しばらくは別行動となるだろう。

 ………  ……… ……… ………

「では、始めます………

   ―――力を抜いて―――

              まずはスキンチェックから………」

『鈴元』は『武藤』と共に『化粧ルーム』に行き、

     そして―――

               桜が舞うように

                            生まれ変わる―――ッ!

  これが私……?  そう! これが『鈴元 涼』ちゃんだッッ!
  鏡を見れば、すぐそこに『ナース服の少女』が居る!
  『武藤』のスタンド能力か? と疑うばかりの超絶テクニックで、
  パッと見は完全に少年から少女に変化した『鈴元』。

「髪………束ねたままでもいいですけど、
 ミサンガをとってしまてもカワイイと思いますよ。どうします?」

『武藤』が尋ねてくる。
『医療の場』としては束ねておいた方がよさそうだが、
やはり少し価値観が違うのだろう。

439鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/26(土) 02:02:47
>>438

「は、はい……その、優しゅうしてな……?」

少しビクつきながらそんな風には返した。
力を抜いて、相手を受け入れる。

「こ、これが僕なんやね」

(なんかエラいことになってもうたなぁ)

武藤のテクニックに感嘆する。
と同時に客観的に自分の女装というものを久しぶりに見た。
正月などに親族の余興で母の着物を着たり、姉の服を着たが、それとは訳が違う。
本気の、全身全霊の、女装である。

「ミ、ミサンガ取るん?」

「うん……武藤さんがそう言うんやったら」

「僕はエエよ……?」

慣れた手つきでミサンガを解く。
癖のある黒髪が解放されて揺れる。
ふうと息を吐いた。
ポケットがあるならそこにミサンガを入れておこう。

「これで、エエ?」

440『せんせいのかくしごと』:2019/01/26(土) 02:30:25
>>439(鈴元)
ミサンガをとり、解き放たれる『鈴元』の黒髪。
それなりに彼を知っている者でも
彼だという事を認識できないかもしれない。

「いいんじゃないでしょうか。
   やはり、そちらの方が―――いいですね」

『武藤』が自然に『鈴元』の髪を慈しむように撫でる。

「では、そろそろ行きましょう。患者様には
 すでに『カウンセリングルーム』でお待ち頂いています」

『武藤』と共に、化粧ルームを出る。すでに『門倉』達の姿はない。
『セラピールーム』の方へ移動したのだろう。
『鈴元』たちもそのまま『カウンセリングルーム』へと向かう。

「30歳、女性、会社員、『戸葉 彩江(とば あやえ)』様。
 今からカウンセリングする方です。鼻を高くしたいとのご要望。
 具体的な施術の確認や説明は私が行いますので、
 『鈴元』さんは彼女の『思い』を傾聴してもらえれば、と思います」

着く間に簡単な説明を受ける『鈴元』。
せっかくの機会、この間に『武藤』に質問があればしておくといいだろう。

441鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/27(日) 00:39:46
>>440

「あ……え……」

思わず頬が赤くなる。
くすぐったそうに笑う。

「う、うん。行こか……」

いそいそと武藤について行った。

「戸葉彩江さん……」

「そういえば武藤さんは長いことここに務めてはるん? 落ち着いてはるって言うか……」

「あぁ、いや、こんなん仕事と関係あらへんし、聞かれても困るやんね? えっと、呪いって見たりとかしてはります……?」

442『せんせいのかくしごと』:2019/01/27(日) 01:01:47
>>441(鈴元)
「ええ、もう随分長く勤めていますね。『院長』には、とてもお世話になっています」

『武藤』がそう答える。

「『呪い』……ああ、例の『顔』が崩れてしまう………。
 はい―――ありますよ。二回ほど。

 ………貴女は、あれを調べているんでしたね。

         ………では、聴きますか? 『その時の音声』」

『武藤』から意外な提案を受ける。

「『院長』には内緒ですよ?
 『院長』はプライバシーを重視しているのでそういう事は禁止しているのです。
 ただ、いざ『クレーム』が来た時に困るのは私ですからね。
 適正な対応を行った『証明』として、ひそかに録音しているのです。

 ………もちろん、今すぐは無理ですよ。『予約客数人』の対応がありますからね。
                          それが終わった小休憩の時間にでも」

そんな話をしているうちに『カウンセリングルーム』はもう間近だ。
一応の収穫はあったが、最後に一言二言で
確認できる事があれば、さらに何か聞けるかもしれない。

443鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/27(日) 01:39:01
>>442

「長いんやねぇ。落ち着いてはるというか、慣れてはる感じやったからそうなんかなと思うて」

実際そうらしい。

「え、聞いてエエの? 音声」

「出来るんやったら聞かせてもらいたいんやけどぉ」

真実に近づくことが出来るのなら必要なことだ。
多少院長からの心象が悪くなるかもしれないが、こっちも期限がある。

「あ、その音声ってどこの部屋のやつやろか」

444『せんせいのかくしごと』:2019/01/27(日) 02:06:49
>>443(鈴元)
「音声はここ、『カウンセリングルーム』のものよ」

『武藤』が質問に答えるのとほぼ同時に二人は部屋と辿り着く。

  ………

          コン コン コン

   「失礼します―――『戸葉』様」

そして、『武藤』が一礼しながら部屋を入り、『鈴元』も続く。

部屋には『院長室』と同じような応接用のテーブルとソファが設置されている。
そのソファにどっかりと座るのは少し太めの、セミロングの髪の女性。
この女性が『戸葉』だろう。施術したいという『鼻』は………
確かに少し上向きでお世辞にも高いとはいえなかった。

「少し遅いんじゃなァい?
  ええええと、『武藤』さんだっけ? あとはぁぁ―――」

『戸葉』の視線が『鈴元』に注がれる。

「ナースの『鈴元』と申します。新人なので何卒よろしくお願いいたします」

その視線を跳ね返すがごとく、先輩として『武藤』が『鈴元』を紹介する。
これからこの『戸葉』の話を聴かなくてはならない。
『鈴元自身』からもしっかり挨拶しておいた方がいいだろう。

445鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/27(日) 02:57:35
>>444

「失礼します……」

少し緊張きた心地で中に入る。
この女性が戸葉なのだろう。
頭を下げて一礼をする。

「鈴元です。まだ未熟者ですけど、よろしゅうお願いします」

なるべく標準語のアクセントで話そうとするが、どうしてもお国の言葉が顔を出す。
多分、少し訛っているように聞こえるだろうが、誠意は変わらない。
にこっと微笑む。

446『せんせいのかくしごと』:2019/01/27(日) 23:57:30
>>445(鈴元)
「よろしくお願いいたします、『戸葉』さん」

『武藤』も『鈴元』にあわせ、礼をする。

「ふゥん、『鈴元』さんねェ―――
 随分と若そうだけどダイジョウブなのかしらねェ」

『戸葉』は値踏みするかのように『鈴元』を眺める。

「それはもう………『院長』も認めた『優秀』な人材ですので。

 それでですね、『戸葉』さん………本日はこの『鈴元』に、
   『お話の聞き役』をさせて頂いてもよろしいでしょうか。

    『新人』にもいつかは『経験』させなければいけない事。
     心優しい方にしか頼めない事なのです―――『戸葉』さんのような」

 『武藤』がそんな『戸葉』に依頼する。

 『戸葉』は『えェ〜どうしようかなァ〜〜』などと渋るフリをしていたが、
   『武藤』のヨイショに気をよくしたのか、最後には許可してくれた。

「いいわよォ、じゃあ、『鈴元』さんだったっけ。

   まずきかせてもらうけど、
                   アナタ、『人生の目的』ってなんだと思うゥ?

          『人って何を目指して生きていけばいいのォ?』」

そして『戸葉』が『鈴元』に問いかけてくる。
 見かけのわりに、いや見かけどおりの、『ちょっとヘビィ』な話し始めだ。

447鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/29(火) 01:58:12
>>446

(そら、若いわな)

中学三年生だ。
この院内の平均年齢を下げている一員である。

「人生の目的……ですか?」

考える。
どう答えるか、ではなく答えてもいいかという意味で。
こういう場はなるべく相手に合わせるべきだ。
特に、こういうタイプの人間は。

「美意識」

「あるいは、納得とか哲学と言ってもいいですけど」

じんわりと背に汗がにじむ。
鈴元涼の背にある刺青。
咲いた桜のそれは鈴元涼が咲いた桜のようになりたいと願ったから掘られたものだ。

「なので、何を目指すかと言われれば、自分の思う自分、かと」

448『せんせいのかくしごと』:2019/01/31(木) 22:47:31
>>447(鈴元)
「へェ〜〜〜『自分の思う自分』か。
        そうねェ、その通りかもねェ〜〜〜〜」

『鈴元』の答えに『戸葉』はそういうと高笑いする。
印象はけして悪くはなかったようで、彼女はそのまま話し始める。

「ワタシも自分の『美意識』を信じて頑張っていたわ。
 若いころはね〜〜〜志も信念もあったわねェ〜〜〜。

 でも、世の中、いろんな形の『障害』が多すぎるのよ。
  自分の思う自分を目指して一本気に生きても、
    つまァ〜〜らない事で
       足をすくおうとする連中が多すぎるのねェ〜〜〜

  だから、ワタシはもっとも単純で、だけど、
   大抵の困難を解決してくれる魔法の『切り札』を集める事にしたの。

            それはァ〜〜〜『お金』。
      私の『人生の目的』は『大金持ち』になる事よォ〜〜〜〜

    こういうと見下す人もいるけど、シンプルでいいと思わない?
     悩み続けるのも大事かもしれないけど、
      分かりやすい『価値』を見つけたら後はそれを目指せば、
       限りある人生の時間を一番有効に使えると思うのよねェ〜〜〜」

『戸葉』は自分の話を一方的に語りだす。
自分がいかに苦労したかや『金もうけ』の話などを怒涛の勢いで喋り倒していく。

これを聴くというのが、このクリニックのサービスに
なっているようだが、聴く方は結構、大変かもしれない。

とはいえ『鈴元』の目的は『呪いの発現』。
それがこういうシチュエーションで出やすいというのであれば、
とりあえず口を挟まず、彼女に喋らせておくのも手だろう。

あるいは、『戸葉』に『クリニック』について、尋ねてみるのも悪くないかもしれない。

449鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/01/31(木) 23:36:35
>>448

「なるほどぉ」

人間の喋りというのはだいたい三つ。
話したがりか、寡黙か、聞かれれば答えるだ。
寡黙はそもそも答えも淡白で会話になりにくい。
目の前の人間は話したがりだ。
自分の話した言葉をフックにして別の話を展開する。
こういうタイプは気持ちよく合いの手を入れてあげればいい。

「それは大変でしたねぇ」

同調。
下手に口を挟まず、とりあえずは喋らせておいてみよう。

450『せんせいのかくしごと』:2019/02/02(土) 03:49:49
>>449(鈴元)

『鈴元』のとったの態度は『同調』。
それに乗じて『戸葉』はペラペラと話を続ける。


  ペラペラ
          ペラペラ
    ペラペラ
                 ペラペラ

         ペラペラ
                          ペラペラ

  ………
           ………
                       ………

上手く行き過ぎたようで、『戸葉』の話は止まらない。
これがいいのか悪いのか――――

とりあえず、いまのところ、『呪い』の兆候は一切ない。
そんなに数多く出現するような話ではなかったので、
あるいは『戸葉』のケースでは『呪い』は発動しないのかもしれない。

「それでその娘、『株』とか『投資』とかそうゆうのは『よくない』っていうのよね。
 それは『ギャンブル』なんだって! 『邪道』なんだってさァ〜〜〜。
 あ、バカなんだ、って思うわよね。
 日本の教育ってお金を稼ぐ方法については教えないじゃない?
 むしろ『真面目に働く』のが唯一の道、みたいなノリだものね〜〜〜
 あれじゃあ仕方がないのかしらね。ああいう娘が産まれちゃうのは。

 でも、ふふふ、それなのによォ〜〜〜、ふふふ、笑っちゃう。
 その娘、体よく『カモ』にされちゃったのよ。
 ちょっとイケメン風の………ふう、よ。ふう。
 よく見たら大した事のない男に『マルチまがい』の商材
 押し付けられてヒイヒイ言っているの!
 『それだけで儲かる! 大金が入る!』
 そんな話を信じちゃうのねェ〜〜〜〜愚か。

 最後は『戸葉さァん、この化粧品買ってくださァい』なんて
 ナメた事言ってきたから、ブロックして、完全無視。

 今、どうしてるのかしらェ〜〜〜
    転落人生まっさかさまかしら? 自業自得だけど」

『これ、美容外科で話さないといけない話ィ?』みたいな無駄話が続く。
ただ、そういう話をサービスで聴いてあげているから、ここは流行っている(た)のだろう。
『王様の耳はロバの耳』。愚痴の吐露の場の提供は、それだけで『癒し』という事か。

451『せんせいのかくしごと』:2019/02/02(土) 03:53:27
>>449(鈴元)


 ………
         ………


 ゴゴ
            ゴゴゴゴゴ

          ゴ

                 ゴ
                                ゴ


 ―――そして、『その瞬間』は唐突に。

            ふと、『鈴元』は『異変』に気づく。

正確なタイミングは分からなかったが、
 いつのまにか―――『手』。
 『目』を覆うのにちょうどいいサイズの『小さな両手』。
  それが『戸葉』のそれぞれの目を覆っていた。

  その『デザイン』は人間のそれではなく、
           『鈴元』が馴染む『異能』の意匠だ。

  ゴ    ゴゴゴ  ゴ ゴゴゴ ゴ ゴ ゴ

 『戸葉』や『武藤』はそれに気づいていないように思える。
 もちろん、そういう『演技』をしている可能性はあるが―――
 少なくとも目が塞がれている『戸葉』は『見えて』いれば、
 何かしらのリアクションをするのではないだろうか。

 ………

      「………? あら? あらァ?」

『戸葉』が混乱し始めたのは『手』が動き出し、
彼女の目がそれにあわせ、左右に明確に離れていってからだ。
あそこまで離れれば『視界』に確実に影響があるだろう。

『手』は更に移動し、それにあわせ
 『左目』は『頬』に『右目』は『額』に移動し始めた。
『戸葉』は何が起きているのかわからず、
 自分の顔を触りだすが、『現れた手』は『戸葉の手』を『透過』する。

「ちょ、ちょっとォ? なに!?

      どう、どう、どうなってるのォぉぉ〜〜〜〜!?」

『戸葉』の悲鳴にも似た訴え。
『武藤』は意外なほど冷静だが、
彼女はこの現象をすでに何度か見ているとの事。
『覚悟』がある、という事なら、
取り乱したりしないのはおかしい事ではないのかもしれない。

このまま『観察』を続けるか、
     あるいは何かしらの『干渉』を行うか。
              それは、『鈴元』の考え次第だろう。

452鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/03(日) 00:21:58
>>450-451

「それは難儀でしたねぇ……」

柔らかく笑みんで返しながら相手の様子を見る。
話の内容も重要なので聞いておくが、気分のいい話ではないかもしれない。
否定できる立場でも人生でもないし、性格でもないからちゃんと聞くが。

「……!」

(出た、出てきた……!)

特に引っかかるような特別な言葉はなかったはずだ。
だとしたら、これは言葉に反応するものではないのか?

(来て……)

『ザ・ギャザリング』を発現し、現れた手を掴みに行く(パス精CCC)

「……多分、心のどっかの不安な気持ちが出てきてるんだと思いますから」

「目を閉じて深呼吸を……必要なら手を握っても……」

聞きいれられるかは分からないが、一応声はかけておく。
自分が取り乱しても相手の動揺をあおるだけだし。
どんな人間でもここに来た以上は自分の客だ。
この場で安心安全の保障は出来ないが、不甲斐ない姿は見せられない。

453『せんせいのかくしごと』:2019/02/03(日) 00:53:01
>>452(鈴元)
「不安………そう、なの………!?
 でも! グルグル目がァ〜〜!
  『メマイ』って、れ、レベルじゃあないわよォ〜〜〜!!」

『戸葉』に声をかけるが、容易に心を落ち着かせられる状況ではないようだ。

そこで、『鈴元』は、祈り、念じ、

           『 ハ ラ リ 』

     舞い落ちるように『ザ・ギャザリング』を発現する。
               そして、すぐさま、元凶の『手』を掴もうとするが………

                      ―――『するり』

『手』は『ザ・ギャザリング』のそれを『透過』して掴ませない。
おそらくだがこれは『能力(?)』の『象徴』のようなものなのだろう。
すでに『発動』してしまっている証―――普通のやり方で止める事は難しそうだ。

  ………

          ………

『一分』ほど経っただろうか。『両手』はおもむろに消える。
そして、後に残るは『手』が最後に消えた位置に『目』を持つ『戸葉』だった。
『右目』は顎の部分、『左目』は鼻の横あたりで固定されてしまっている。
そんな事態になっても、ずっと『見えて』はいたようだ。

    「…………ど、どうなっちゃったのォ!?」

『戸葉』にとってみれば『視界』が動くのが止まった形だろう。
このタイミングを逃さず、慌てて自らのバッグからミラーを取り出し、

   そして………
                       パたリ。

     自らの顔を確認した『戸葉』は、『意識』を失う。

「………倒れてしまいましたね。まあ、無理もないと思いますけど」

『武藤』が呟くようにそう語る。冷静そうにみえるが、その顔は蒼白。
やはり、『覚悟』していても『呪い』をみるのは
気持ちのいいものではない、という事なのだろうか。

「手伝ってもらえますか?」

『武藤』は部屋の奥に置いてあった『担架』を持ってきた。
さきほどは気付かなかったが、奥のスペースに『ベッド』もあるようだ。

               「一度、ベッドに寝かせてしまうので」

454鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/03(日) 01:57:24
>>453

(うわ)

触れない。
すでに顔の変質は決定づけられている。
回避は事前に謎を潰しておくしかない。

「……」

やってしまった。
申し訳なさそうに目を伏せた。

「はいな……」

武藤を手伝って担架を持とう。

「武藤さん、慣れてはるんやね。僕まだ心臓がバクバクして、全然アカンかったわ……」

「すんません……」

455『せんせいのかくしごと』:2019/02/03(日) 02:29:40
>>454(鈴元)
「『初めて』なら仕方がないでしょうね。
 先ほども言いましたが私は『二回』、直接目にしていますし
 他の人が見た話も聴いてますから―――」

二人がかりで『戸葉』をとりあえずベッドに乗せた。
グッタリとする『戸葉』。目の位置は奇妙な場所のままだが、
改めて見ると、まるで始めからその位置についていたかのような自然な癒着だ。

「―――大丈夫。時が経てば治りますよ。
 今までの発症した方すべてがそうでしたから」

『武藤』が『鈴元』にそう声をかける。

「………次の『予約』まで、まだ時間があります。
 少し落ち着いたら『戸葉さん』を『レストルーム』に運んでしまいましょう。

 ―――しかし、本当になぜ、こんな事が起こるのかしら。
     『呪い』だとか言うけれど『院長』は本当に頑張っていらっしゃるのに」

『武藤』が軽くため息をつく。
幸か不幸か、『呪い』のおかげで少しだが時間が出来た。

『考察』をするもよし、『情報収集』するもよし、いっそ『休息』したっていいだろう。

456鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/04(月) 04:22:59
>>455

「そうやとしても、流石です」

こういうことがそう何度も起きると院としても大変だ。
やはりこれはなんとかしないといけない問題である。

「……武藤さんが前に呪を見はった時もこんな感じやったん?」

457『せんせいのかくしごと』:2019/02/04(月) 21:55:04
>>456(鈴元)
「ええ、そうですね。私の時も、二度とも患者様の『話』を聴いていたら
 患者様の顔の部位があんな風に目まぐるしく崩れていって………
 終わる時間も大体あのくらいでした」

『手』の事には触れない武藤。
 時間については『能力』の施行時間とみるべきか。
 そして『条件』については、素直に考えれば、
  やはり『話』が怪しい、という事になるのかもしれない。

「先程も言いましたけど『録音』についてはのちほど。
 一刻も早く、貴方達に、『呪い』を解いてもらいたいものです」

『武藤』は心から心配しているようにみえる。
もちろん、人間の心中などそう容易く
分かるわけはないので、絶対とは言えないが―――

458鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/05(火) 00:26:38
>>457

「その時になんか変なもん見たりとかせぇへんかったですか?」

多分、手は見えてないのだと思う。
もしも見えていたのだとしたら教えてくれていただろうとも考える。
人を疑うより、人を信じていたかった。
少なくとも、現段階においては。
『ザ・ギャザリング』で攻撃する振りをすれば、反応があるか確かめられるかもしれないが、それをする気にはなれなかった。

「そうやね、録音とかも確認して考えんと」

「実際この目で見れたんは収穫といえば収穫やけど」

院的には起こさないに越したことはないだろう。

459『せんせいのかくしごと』:2019/02/05(火) 22:22:27
>>458(鈴元)
「変なもの……? この現象そのものが変と言えば変ですけど………?」

『武藤』が首をかしげる。やはり、心当たりはない、といった様子ではある。

 ………

        とぅるるるるる

と、ここで『カウンセリングルーム』の電話が鳴る。
手際よくそれに出る『武藤』。

「『武藤』です。

    ―――はい ――――はい。

                    分かりました。伝えます」

少しのやり取りで『武藤』は電話を切り、『鈴元』に話しかけてくる。

「『院長』からでした。『鬼塚』さんの時間がとれそうなので、
 もし、今、話を聴きたいのであれば、『院長室』まで来てほしいとの事です。
 ただ、まだ、他の『患者様』の話を聴きたいのであれば、
 『後回し』にしても構わないとの事でしたが―――」

『鬼塚』は確か、呪いが起こる前に雇ったナースという話だったか。

「いずれにせよ『戸葉』さんを『レストルーム』に運んでから、という事で構いませんか?」

460鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/06(水) 00:23:23
>>459

「いや、ええんよ。ちょっとそう思っただけで」

ひとまず、そういうことにしておこう。
現実はどうか分からないが。

「鬼塚さん?」

思ったより早かったか。
いや、これぐらいの予想だったか。

「……そうやねレストルームに運んでから、鬼塚さんとお話させてもらおかな」

461『せんせいのかくしごと』:2019/02/07(木) 00:02:14
>>460(鈴元)

『鈴元』の言葉に『武藤』は深く頷く。
二人は再度、協力し合い、担架に『戸葉』を乗せた。

 ……… ……… ……… ………

赴いた『レストルーム』は、部屋の雰囲気は他の物と似ていた。
大きなソファとテーブル、中央には『お菓子』が置かれており、落ち着いた雰囲気。
個別にトイレルームが取り付けられており、大きな鏡と洗面台もある。
奥にベッドがいくつかあるのも特徴か。
これなら何人か、倒れても問題はないだろう。

協力し合い、『戸葉』を『レストルーム』のベッドに移す。

「ありがとうございます。後の事は任せて頂ければ。
『院長室』は、分かりますよね?」

『武藤』が軽く会釈する。問題なければ、
そのまま『院長室』へと向かい、『鬼塚』と会うといいだろう。

462鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/07(木) 02:18:23
>>461

ベッドがいくつもあるのはそれだけ人が入れられるようにするためだろう。
他にも理由はあるかもしれないけど。
またこのベッドに寝る人が増える日を作らないといけない。

(それはそれで問題か)

施術が立て込み過ぎている。
鏡で身だしなみを一応チェックしておこう。

「うん。院長室は一人で行けます」

「ありがとうございます」

頭を下げて礼を言って、院長室に向かう。

463『せんせいのかくしごと』:2019/02/08(金) 07:04:11
>>462(鈴元)
まずは鏡で身だしなみをチェック―――
清潔感溢れる『ナース服』、そして主張しすぎない『ナチュラルメイク』。
『鏡に映る鈴元』は『鈴元自身』が見ても十分に『女子』に見える。

その後、『武藤』へ一礼し、『院長室』へと向かう『鈴元』。
『呪い』を『単純なスタンドの腕力』で防止できない以上、
とにもかくにも『解決』には情報が必要だ。
今は黙々と必要な情報を集めていく時だろう。

 ……… ……… ……… ……… ………

「―――どうぞ」

『院長室』にてノックすると、『院長』の声が『鈴元』を出迎える。
部屋に入ると、『阿多院長』および、少し陰鬱そうな印象を受ける
細身の女性が居た。女性は『鈴元』と同じナース服を着ている。

「『調査』は順調? 話のとおり、『鬼塚さん』を呼んできたけど」

 『阿多』の言葉に、

 「『鬼塚』です……よろしくお願いしします………」

ぽつぽつともう一人の女性が喋る。彼女が、『鬼塚郷子』なようだ。

「どうする? 私が居るとよくないなら、席を外すけれど―――」

『阿多』がそう提案する。

464鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/09(土) 00:24:46
>>463

「……」

見られる女装なのがやっぱり不思議な気分だ。
もう少し所作に気を使えば女性として一日過ごせてしまいそうで。

(……うぅ)

自分の男性性に不満は無いが、これこれで困りものだ。

「はは……おかげさんで」

院長の言葉に曖昧に笑う。
順調というか呪いを起こしてしまった。
収穫といえば収穫なのだが。

「鈴元涼ぉ言いますぅ」

鬼塚に頭を下げた。

「あ、えっと……鬼塚さんが院長とおった方が話しやすいんやったらそれで大丈夫なんやけど」

465『せんせいのかくしごと』:2019/02/09(土) 13:54:11
>>464(鈴元)

「いえ……別に、話せます。一人でも」

『鬼塚』がそう答える。大人しそうな感じではあるが、
流石に一人で話せないレベルでは
ここの仕事はこなせないという事だろう。

「そう………では、私は『診察室』の方へ行っているわね。
 そろそろ『セラピールーム』の患者様を診る準備をしておきたいし」

『阿多』はそう言うと、立ち上がる。
『セラピールーム』は『門倉』が立ち会っている方か。
『何事』もなければ、その後に『診察』という流れなのだろう。

このまま行けば、『阿多』は出ていくだろう。
そこから『鬼塚』との会話が始まるはずだ。

自分から何か言うようなタイプではなさそうだし、
『鈴元』から、会話を引き出してあげるといいのかもしれない。

466鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/09(土) 23:15:05
>>465

院長にはご退室願おう。
……『ザ・ギャザリング』を出現させ院長について行かせる。
セラピールームにいる門倉に呪いを起こしたのを伝えるためだ。
射程外の場合はスタンド会話で叫んでおこう。
一応、鬼塚にも見えているか少し確認だ。

「えっとぉ……改めて、鈴元涼です。今回の呪いの騒動をなんとかして欲しいと依頼されて、ここにおります」

改めての自己紹介。

「院長先生に呪いが起きる前に変わったことは無かったか聞いて、忙しなったから人を雇ったって話を聞いたんよ」

「それが鬼塚さん、でええんよね?」

467『せんせいのかくしごと』:2019/02/10(日) 00:25:01
>>466(鈴元)

『ザ・ギャザリング』が院長の後に続く。
『鬼塚』は見えていないように思えるが、それは、あくまで『印象』だ。

「あ、はい……『鬼塚』です」

『鈴元』の再度の自己紹介につられるように『鬼塚』も再び名乗る。

「え………『院長』がそんな事を言ってたんです?
 私が『変わった事』って………や、確かに『変な事件』が起こる少し前に
  私が入ったのは間違いないですけど………

   え………疑われているんですか? もしかして私が?」

『鬼塚』は敏感なところがあるのか、今の話だけで不安になってしまったようだ。

468鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/11(月) 04:27:57
>>467

鬼塚は心配性なのだろうか。
口数が少なそうな感じであるし、そうなのかもしれない。
警戒されたり不安な気持ちがある状態では話もしにくいか。

「でも院長さんはこの呪いが始まっても辞めずに働いてくれてるって言ってはったよ」

「院長さんからしたらありがたいことやと思うし、多分鬼塚さんが頑張ってはるん知ってるんやと思うんよ」

あの呪いを何度も見れば辞表を出したくなる者も出るかもしれない。
しかし、それでもこの病院には人がいる。

「それに僕の聞き方も悪かったんやと思うわ」

「変わったことはないかぁなんて、怪しい人の出入りとかなかった? って、聞くべきやったやんねぇ」

「鬼塚さんが来はったんは、変わったことは変わったことでも、嬉しいことの方やよ」

柔らかく笑ってそう伝える。
鬼塚が気にする事は何一つないのだと伝えたい。

469『せんせいのかくしごと』:2019/02/11(月) 11:51:22
>>468(鈴元)

「え………『院長』が私をよく思っているって事ですか?
 えへへ……本当ならうれしいな。
 『院長』、いつも、カッコいいし、趣味もいいし………」

『鬼塚』は照れる。不安はいくらか解けたようだ。

「それで………訊きたい事というのはなんですか?
 初めに言っておきますけど、私………『呪い』なんて全然分かりませんからね。
 ほかのベテランの方と違って、遭遇した事もないですし……」

真剣な表情で『鬼塚』は語る。

470鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/13(水) 02:06:54
>>469

「僕はそうやと思うます……うふふ、鬼塚さん、院長先生の事尊敬してはるんやねぇ」

信頼というか、憧れのようなものだろうか。
そういう関係になる人がいるのはいいことだろう。
目標のような存在だ。

「とりあえず呪いを見た時のことを……へ?」

遭ったことがない。
遭ったことがないといったのか。
ベテランか若手というのは恐らく関係がない。
鈴元自身が呪いを確認したのだから、きっと関係はないはずだ。

「……それは」

なんでと相手に聞いても分からないだろう。

「鬼塚さんって他のお人さんと対応が違うんやろか……」

「あ、鬼塚さんは一人で患者さんの応対とかのお仕事してはるんやろか」

471『せんせいのかくしごと』:2019/02/13(水) 04:52:49
>>470(鈴元)
「え………そういう話出ちゃってます?
 『鬼塚の対応なんか違うよねー』みたいな感じですか……?
   う……うう……が、頑張っているんだけどなぁ………。

 ひ、一人で応対する事もありますよ……。
   穏やかな方とか………大人しい方とかは………

   でも、私………なんか、『会話』を盛り上げるのが苦手で………
      よく喋る患者様は、『気持ちよく喋れない』とかで、先輩方を指名したり………

       イライラするとか……  なんとか………
                                   ………ううう……」

『鬼塚』は話しているうちに、だんだんと辛そうな感じになってくる。
話の限りでは、『患者が話す時間』が回数、質ともに
圧倒的に他のスタッフより少ないのだろう。

それでも『鈴元』よりは多いだろうが………
逆に『鈴元』が一発目に引き当てたのが『奇跡的』だといえるのかもしれない。

ともあれ、『鈴元』が『呪い体験』について
『鬼塚』に訊きたかったのであれば、あてが外れた事になるが―――

472鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/13(水) 22:57:08
>>471

「あぁ、すんません、辛いこと思い出させてもうて」

「誰で初めのうち慣れへんと思うし、ゆっくりで大丈夫やと思うよ?」

鈴元は彼女が今回の騒動の中心にいるのだと考えていた。
単純な考え方で、犯人の疑いがあると思っていた。
だから接触をしてみようと考えた。
若干毒気を抜かれた感があったが、しかし話してみれば犯人ではなさそうである部分の方が強い。

(気持ちよく……かぁ……)

「鬼塚さん、よかったら一緒にカウンセリングしてもらわれへんかな」

473『せんせいのかくしごと』:2019/02/14(木) 04:25:03
>>472(鈴元)
「あ………
        はい……ありがとうございます………。

 私、こういう感じなので、他の場所ではあんまり上手くいってなくて………
 『院長』みたいなステキな方の元………働けるのは本当に嬉しいです」

『鈴元』の優しい言葉に、『鬼塚』は礼を言う。

『犯人』………アレが『スタンド』ならば基本的にはそれを操る『本体』がいるはずだ。
極論を言えば、『本体』をどうにかすれば『スタンドの謎』など解かなくても事態は解決する。
『呪い』の能力の詳細や、発動条件だけでなく、本体自体を特定するというのも一つの手か。

「え………『カウンセリング』? ああ……今、『鈴元さん』がやっているんでしたっけ。
 『院長』が許してくれるんであれば………別にいいですけど」

『鈴元』の申し出を承諾する『鬼塚』。もっとも彼女が言う通り、
責任者である『院長』の許可は必要だろう。

474鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/15(金) 01:06:13
>>473

「うんうん。大丈夫やよ。いまお話してても鬼塚さん、ええ人やって思うし」

しかし鬼塚が犯人でないとなると困ったものだ。
院長の答えからすると新しい人の出入りもなさそうだし。
……流石に全スタッフを調べるのは難しそうだし。

「そう。もしかしたら呪いが起きる条件みたいなんがわかるんかもしれんと思って……」

「院長さんにお願いしてみよか……?」

475『せんせいのかくしごと』:2019/02/15(金) 07:53:12
>>474(鈴元)
『鈴元』は犯人について考える。
全スタッフ………そもそも全スタッフは何人なのだろうか。
『医師』は、おそらく『院長』一人。
更に『呪い騒ぎ』で人が辞めているとなると、意外と多くないのかもしれない。

「『呪いの条件』……? 私が居たら分かるんです……?
 でも、それが分かって『院長』が喜ぶなら私もうれしいです……
  『院長』、趣味もいいし、私に優しいし………」

『鬼塚』も乗り気のようだ。これ以上訊く事がなければ、
『院長』にお願いしにいくのもいいだろう。

476鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/16(土) 02:29:54
>>475

鍵になりそうなのは今のところ院長か鬼塚だろうか。
まだ分からないが。
原因が分からないことには絞り込みも難しいところだ。

「分かるっていうか、呪いが起きへんのはなんでかって調べられるんちゃうかなって」

(ほんまに院長さんのこと信頼してはるんやね……)

過剰とも思われるものかもしれないが、鈴元にとってはそれくらいの気待ちが普通だった。
院長にお願いしに行こう。

477『せんせいのかくしごと』:2019/02/16(土) 03:41:10
>>476(鈴元)

「なるほど……なんにせよお役に立てるなら喜んで……」

そんな『鬼塚』と共に、『鈴元』は『院長』の元、『診察室』へ向かう。

  ………

そういえば『ザ・ギャザリング』は無事、『門倉』の元へ行き、呪いの事を『スタンド会話』で伝えられた。

『ザ・ギャザリング』で確認した限りでは、『セラピールーム』では最初の患者との対話が終わっていた。
『セラピールーム』で『呪い』が発現した様子はなく、『角田』がそれとなく『門倉』にダメ出しをしていた。
さらっと聞いた感じだと、『門倉』がやたらと喋りすぎてしまったようだ。

そんなわけで『ザ・ギャザリング』は『門倉』に伝言を届けたまま、『セラピールーム』に居る。
そのままそこに居させてもいいし、一旦、戻すのもいいだろう。

        ………

そして、『鬼塚』と共に『鈴元』は『診察室』の前まで来た。

「……そう! ワタクシ、顔をいじるなんて! と思ってましたけれど、
 大事なお友達がねェ、しちゃったって言うんですのよォ。ですから………」

中から声が漏れてきている。どうやら『診察中』のようだ。

流れとしては『セラピールーム』で、『門倉』達が対応した患者なのだろう。
声が非常に大きいようで、それなりに分厚い『診察室』のドアからも患者の声が漏れ聞こえる。

「………主人も、子供たちも賛成してくれて、
     ワタクシ、感激してしまったんですのよ。

  センセは『独身』でしたっけ?

  ………あらそう。

   おキレイなのにねェ〜〜
    やっぱり女のお医者サマだと色々と難しいのかしら? おほほ」

478鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/17(日) 02:31:00
>>477

(喋り過ぎ……かぁ……)

やはり喋る量なのだろうか。
鬼塚が呪いを見た事がないのが気持ちよく話せないからなら、その辺も関係がありそうだ。
まだ一応セラピールームにスタンドはいてもらおう。

「……」

診察室から聞こえてくる会話に少しだけ瞳が揺れた。
無意識のものだ。
あまり聞きたい話ではない。
阿多がどんな人生を歩もうとそれは自由で、独身であることも綺麗であることも何一つ問題は無い。
扉の向こうの客が笑う意味が鈴元には理解出来なかった。

「もうちょっとおろか」

479『せんせいのかくしごと』:2019/02/17(日) 10:33:48
>>478(鈴元)

『鈴元』は『診察室』の前で待つ事を『鬼塚』に提案する。
『鬼塚』は、無言。見ると明白な『怒りの表情』だ。
怒りのあまり、返事もできないような状況なのだろう。

「―――え?
 ああ、少し声が大きかったかしら?ごめんなさいねェ。
 『セラピー』の方であんまり話せなかったもので、つい。

  でも、ワタクシ、さすがにあの『ナース』さん、良くないと思うんですのよォ。
  自分ばっかり話しちゃって、アレじゃあねェ〜〜」

『ザ・ギャザリング』の情報と合わせて考えれば、『門倉』の事か。

ともあれ、『阿多』が患者の声が大きい事をそれとなく伝えたのだろう。
これ以降、『診察室』から声が漏れる事はなくなった。

「………『武藤さん』に聞いたんですけど、かなり昔に
 『院長』には『真剣にお付き合いしている人』が居たんですって。
 でも『お仕事』の事とか色々あって、結局、『結婚』しなかったって。

 『院長』はそれだけこの仕事に賭けているんですよ。
 ああいう厚顔無恥で極悪非道な誹謗中傷にも負けないくらいに………」

『怒気』と『気遣い』が、『鬼塚』の語りから感じられる。

480鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/19(火) 00:36:27
>>479

「……そんなことがあったんやね」

「やとしたら……まぁ、やとせんでも、さっきのは気持ちのええ物言いではなかったわぁ」

鬼塚の言葉に小さく頷いて同意する。
阿多を否定することなどできない。
自分が助ければいけない依頼人だからじゃない。
鬼塚に、人にこれほど慕われるにはよほどの魅力がなければならない。
ただ、人は時が経てば咲く花ではない。
努力の上に実を結ぶものがあるのだ。

「僕は今日のお仕事が終わったらさよならやけど、鬼塚さんはいてはるから」

「その院長センセの賭けを支えたってください」

(……)

そういえば、だが。

(さっき呪いを受けたお客さんもたしかあんな風に人を悪う言うてはったはず……)

(喋りたがりなんも一致してるんかな……)

(服の乱れが心の乱れ。じゃあ言葉の乱れは……)

顔の乱れか?
まさか。

481『せんせいのかくしごと』:2019/02/19(火) 20:34:33
>>480(鈴元)

「はい……! もちろんですとも……!
 『院長』は、出来る女で、趣味がいいですからね………!
  ずっとついていくつもりです………!」

 『鬼塚』が『鈴元』の言葉に強く頷く。

   そして―――

                               バタン

『診察室』から樽のような熟女が出てきた。
チャラチャラとつけた高価そうな装飾品は見せびらかす為につけているかのようだ。

彼女の顔に『異常』はみられない(元々の顔つきは『悪い』が)。
『言葉の乱れ』に着目した鈴元の憶測は、
少なくとも彼女に対しては当てはまらなかったようだ。

女はそのまま受付へと向かおうとしている。
これで『院長』はフリーになっただろう。

482鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/20(水) 23:25:49
>>481

(趣味がええのは知らんけど)

そこまでになると崇拝だが。

部屋から出る人を見る。
憶測は外れた。
また別のところから考えよう。

「行こか?」

鬼塚と院長のところに向かおう。

483『せんせいのかくしごと』:2019/02/21(木) 01:26:00
>>482(鈴元)

気を取り直し『阿多』のところへ向かう二人。
ノックすると、『どうぞ』の声。そのまま入る。

「―――ああ、お話はもう終わったの?
 何か実のある話が出来たならよかったけれど」

『阿多』は二人にそう話しかける。

「え………あ、はい。なんとなく、話は、出来ました。
 それで、ええと………『事件解決』の為に、
  私が『鈴元』さんと一緒に、『カウンセリング』を
    行おうという話になったんですけど………大丈夫でしょうか」

先程の話は『鬼塚』の方からしてくれた。

「それは、別に構わないわよ。
 『カウンセリング』の方は、もうしばらくしたら
 新しい患者様が来る予定だし」

あっさり許可を得る事が出来た。

484鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/22(金) 02:07:59
>>483

「ありがとうございますぅ」

「……正直、意外というか、ええんですか?」

慣れてない同士のペアということになる。

「鬼塚さんが呪いにあったことないってことで、話を聞いてたんやけど」

というか院長は知らなかったのか。

485『せんせいのかくしごと』:2019/02/22(金) 07:32:23
>>484(鈴元)

「………このままじゃあこのクリニックは潰れてしまう状況よ。
 だから『非科学的』だと思っても貴方たちに依頼した。
 『解決』のためだと言うのならよほどの事じゃあなければ許可します。

ただし、私には貴方たちが『本物』かどうか確かめる術はない。
 だから、期限は今日かぎり。今日だけはとにかく信じるし、
 今日で無理なら他を探す、そういう線引きをさせてもらっているわ」

『阿多』はそう答える。確かに補佐をつけているとはいえ
『鈴元』や『門倉』に直接、患者対応させている時点で、
それなりの『覚悟』はあるのだろう。

「『呪い』にあったことがない……ああ、『鬼塚さん』は当たった事がないんでしたっけ。
 『呪い』について訊きたいという事だったのなら、事前に言っておけばよかったわね」

『呪い』の直接体験は重要な情報ではあるが、他の情報に価値がないわけではない。
『阿多』としてはその他の情報を得るために『鬼塚』に接触したのだと思っていたのだろう。

 ………

それはそうと『ザ・ギャザリング』の視覚で、
『セラピールーム』にて『門倉』が一人になっているのが見えた。
どうやら『門倉』の相棒のナース、『角田』が何かの用事で席を外しているようだ。

もし、何かあるのなら一度、『門倉』と相談して
『現状の整理』や『新たな方針の模索』などしてもいいだろうし、
このまま、『鬼塚』と次の患者の『対応』を行ってもいいだろう。

もちろん、他の行動をするのも『鈴元』の自由だ。

486鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/22(金) 23:18:30
>>485

「……おおきに」

頭を下げる。
こちらとしても今日という日を全うしなければならない。
全て、だ。
全てを完全にしないと終わらせられない。

(もっと色々情報をとっときたいけど、どこからにしよかなぁ)

まだ手札も少ないし。
いったん整理した方がいいだろうか。
このまま呪いが起きるかどうかを確認し続けても、前進の兆しが見えないかもしれない。

『門倉さん、僕です』

『えっと、相談してもええやろか』

門倉が了承してくれたら以下のことを伝えよう。

『さっきお話聞いてたら呪いが起きて、その後に鬼塚さんから話を聞いてたんよ』

『鬼塚さん、呪いに当たったことがないって言うてはって』

『もしかしたら、呪いが起きへん理由がなんかあるんかと思ってこれからカウンセリングするんやけど』

『そっちの具合はどない?』

487『せんせいのかくしごと』:2019/02/23(土) 01:01:41
>>486(鈴元)
『鈴元』は『阿多』の話を受け、少し押し黙った。

  ―――ように『阿多』や『鬼塚』には見えただろう。

 ………

実際は『門倉』と『スタンド会話』を行っていた。

【こっちはまだ一人対応しただけで『呪い』に出会っていないね。
 少し、ほんの少しだけ『トラブル』があったが―――
 まあ『呪い』自体とは関係ないだろう】

    『門倉』が喋りすぎてしまった件の事だろう。

【『呪い』の起きない理由、か。
 ううん……時間があればそれもアリなんだろうが、
 話をきくに『呪い』が起こる確率はさほど高くはないんじゃあないか?
 それが『意図的』なのか『偶然』なのかは分からないが。

 例えば今回、俺が立ち会った際に『呪い』は起きなかったわけだけど、
 それが俺のせいかどうかは証明出来ない。鈴元君が明確な根拠の元、
 『実証』の段階に入っている、というのなら話は別だが―――】

     『門倉』はいつもの調子で長々と語る。

【個人的には今回の依頼、いくつか解決の糸口はあると思う。
 具体的には『呪いの条件』『呪いの理由』『犯人』あたりか。

 今、俺達は『呪いの条件』を中心に探っているわけだけど、
 これはもうとにかく『サンプル』を増やさないと難しいように感じる。
 出来るだけ多くの『発症事例』を集めて、それらを精査する事で条件を探る―――
 正攻法だとは思うが、時間がかかるし袋小路に陥る可能性もある。

『呪いの理由』はそもそもなぜこのクリニックが『呪いの標的』になっているのか、という話だ。
これが分かればその理由を排除する事で解決に導く事も出来るし、
更にさっき言った『犯人』にそのまま繋がる可能性がある。

『犯人』………もしかしたらそんな者はいないのかもしれないが、
俺はこの事件はあくまで『スタンド使い』が起こしている事件だと思っている。
だから、いわゆる『本体』だね。それを見つければ解決はグッと近づくんだが】

   『門倉』の言い分を信じるならば、『呪いの条件』と並行して、
   『呪いの理由』や『犯人』に繋がる情報も探っていくべきかもしれない。
   ただそうはいってもこちらも途方もない道な気がするが―――

【それはそうと鈴元君、君は実際、『呪いの現場』を見たという事だが………
 そこでこの『呪い』、いや、『能力』がどういうものか、何か感じた事はなかったかい?

 そもそもどういった『能力』なのか、それが理解できれば、
  芋づる式に『条件』や『犯人』も分かる可能性だってある】

488鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/24(日) 01:26:48
>>487

『鬼塚さんが呪いにおうたことがない理由は……その、おしゃべりが他の人より苦手ってことやと思うねん』

『僕ん時は相手のお人さんが喋りはる人やったから相槌を打っとったんやけど』

『やから、おしゃべりの中身になんかきっかけがあるんかと思ったんよ』

ただ、それは確証ではない。
予想の範囲を出ないものだ。

『うん、そういうところも探りたくて』

途方もないが、核心は近い。
それに犯人も理由も密接にかかわっている。
どちらかが分かれば大きな前進と言って差し支えないはずだ。

『……手ぇやった。スタンドで触ろうと思ってんけどすり抜けて』

『武藤さんが本体じゃないんやったら、勝手に動いてるんやと思う』

『手ぇのスタンドじゃなくて、能力を使うために手ぇが出てるんかもしれへんね』

『……手ぇが目ぇを動かしてて……福笑いみたいに……』

『そういえば、目ぇの位置だけ動かしてた気が……』

思い出してみよう。
あれは目だけを動かしたのか?
多分、そのはずだが。

489『せんせいのかくしごと』:2019/02/24(日) 08:54:35
>>488(鈴元)

【『おしゃべりの中身』、ふむ………そうだね。
 その話をきくに可能性としてはありそうだ。

 そして、『勝手に動いているであろう触れられない手』か。
  こちらのスタンドで無理やり止めるなんて事は出来なそうだね。
   『自動操縦』みたいなものだったら、やはり『条件』がありそうだが――――

 ………目が手を動かす。

           ………『福笑い』………

      確かに、今の話を聞くにその言葉はしっくり来るね】

『鈴元』は記憶を呼び起こす。『手』の動きに沿って動いたのは『目』だけだった。
だが、『阿多』は呪い時には『目や鼻や口がみんな顔の下に集まった』と証言していた。
『目』だけでなく顔のパーツがおかしな方向に動く………
それに『鈴元』の見た『手』を合わせて考えれば、『福笑い』というのは適切な見立てだろう。

【………やはり『鈴元君』を連れてきてよかった。
 そういえば君は最初から、そう表現していたね(>>419)。
 その『直観』―――俺にはないものだよ。

 『福笑いを模した能力』………
  仮にそれが正しいとすると、『呪い』という言葉とは違う趣きを感じるね。
 『条件』『理由』『犯人』、それらに繋がるヒントになるような気もする。

  それを軸にもう一度考察してみて、そして―――

    ………あ、すまない。『角田』さんが帰ってきた。
     この会話なら継続出来なくもないが、
     こちらもこちらで今の話を元に『情報収集』に集中してみるよ。

                            では、また―――】

『門倉』は一方的にまくしたて、そして、一方的に会話を中止する。
『ザ・ギャザリング』の視覚でも確かに角田は帰ってきている。

 ………

「………あの、じゃあ、『カウンセリングルーム』、行きましょうか?」

『鬼塚』が語りかけてくる。

当初の予定通り、彼女と『カウンセリング』しに行ってもいいだろうが、
『名探偵』とは気まぐれなもの。
『門倉』との会話を踏まえ、まったく別の事をしてもいいだろう。

また、どうしてもまだ『門倉』と相談したいという事なら、
その旨を『スタンド会話』で伝え、どこかで合流するのも手だ。

490鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/25(月) 23:16:47
>>489

『せやと、ええんやけど……』

福笑い。
なにか繋がるものはないか。
正月。
笑う門には福来る。
お亀……お多福。

(あぁ、お多福って阿多福やったか……)

そんなことも考えつつ。
ひとまず門倉とは解散しておこう。
後で合流出来そうならすればいい。

「……そうやね」

とりあえず鬼塚とカウンセリングに向かおう。

491『せんせいのかくしごと』:2019/02/26(火) 22:45:56
>>490(鈴元)

様々な思いを巡らせながら、
『鈴元』は『鬼塚』と共に、『カウンセリングルーム』と向かう。

「―――よろしくね」

去り際に『阿多』からの言葉。

 ………

「ええと……次の患者様は『板槻 波音(いたつき なみお)』さん。
 二重手術がしたい方みたいですね」

『カウンセリングルーム』に向かう間に『鬼塚』がそう教えてくれた。
『阿多』から渡されたのであろう資料を見ての発言。

移動にさほど時間はかからないだろうが、
今のうちに『鬼塚』に何か訊いておきたい事があれば、
訊いておいてもいいだろう。

492鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/02/28(木) 01:45:10
>>491

「二重手術」

まぶたを二重にするのだろう。
生まれつき二重の自分にはやはり縁がない。

「そういえば阿多先生って落ち着いてはるやんね」

「こないな呪いが起きてるけど取り乱してる様子もないし」

「怒ったりすることとかあるんやろか」

493『せんせいのかくしごと』:2019/03/01(金) 05:54:37
>>492(鈴元)
移動時に『阿多』の話題をふる『鈴元』。

「え………『院長』の話? 『院長』に興味がある?
  『鈴元』さん、もしかして『院長』を狙っているんですか………?」

    何やらおかしな方向へと話を展開させる『鬼塚』。

「やめといた方がいいですよ! やめといた方がいいですよ!
 『院長』は付き合えるようなタイプじゃあないんです!

『どこかに行きましょう』って誘っても、大抵断られる………
『阿多 佳久子』………院長は、33歳、独身……
仕事はまじめでクールビューティーな、『趣味』のいい女性……
なんだかエリートっぽい気品ただよう顔と物腰をしているため、
女子スタッフのあこがれの的だけど、オフの姿はほとんどみせない………」

謎の説明と共に『鬼塚』の話は続く。

「『呪い』についてはずっと起きている事だから、
 もう『取り乱す』という段階は超えているんじゃないですかね………。

『怒ったり』………ですか。
 ミスをすればそれなりに叱られますけど、それも仕事熱心だからでしょう。
 家だって隣だし、何かあったらすぐに対応できるようにしているんです……」

494鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/01(金) 22:32:18
>>493

「え、あ、え、いや、なんで?」

急にそんなことを言われて慌ててしまう。
ぽっと頬に赤みが差した。
別にそんなつもりはなかったのだが。

「あぁ……さいですか」

阿多福というよりはやっぱりお高い人か。
鬼塚の熱意が強いのは十分理解できた。

「家も隣なんや」

不思議な話ではないか。
通勤が楽である。
そのかわり、仕事とプライベートの境目が無くなっていくが。

「やっぱり落ち着いた人なんやねぇ」

『ザ・ギャザリング』にその家に呪いの原因がないか探しに行かせてみよう。

495『せんせいのかくしごと』:2019/03/02(土) 01:39:37
>>494(鈴元)

隣の家―――『門倉』が言っていたデカい家か。
『鈴元』は改めて『クリニック』と『デカい家』の位置関係を思い出す。

『ザ・ギャザリング』の射程距離は『20m』。
隣といってもデカい家、駐車場や塀、庭の位置関係から考えるに、
20mでは『家』を遠巻きに見るのが精いっぱいだろう。

そして仮に入れる距離だったとしても、
鍵がかかっていれば正規の方法では入りづらい。
強行突破するか、あるいは正規の方法、『阿多』に話を通すか―――

 ………

そうこうしているうちに『カウンセリングルーム』はすぐそこだ。
腐っても『鬼塚』は正規のナース、
『カウンセリング』は彼女に任せてもいいだろうが………

496鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/02(土) 02:54:29
>>495

無理そうか。
まぁ、それも仕方ない。
『ギャザリング』は近くに呼び戻しておこう。
何かの役に立つかもしれない。

「……」

とりあえず今回は鬼塚に任せてみようとは思う。
何が原因なのか、というのが気になる。
起きなかった場合と起きた場合の違いだ。
自分が口を出して呪いが起きてしまった時は、手の挙動が気になる。
あの時は目だけだったのには理由があるかもしれない。

「じゃあお願いしますぅ」

497『せんせいのかくしごと』:2019/03/02(土) 03:12:27
>>496(鈴元)

とりあえず、『ザ・ギャザリング』を呼び寄せつつ、
『鈴元』は『鬼塚』と共に『カウンセリングルーム』に入る。

 ………

「どうもォー、板槻です」

中には大学生くらいの茶髪の女性が居た。
切れ長の目は濃いメイクで大きく見せる努力がされている。

「え……あ、はい………あの……『鬼塚』………です。
 お話をききに……あ……ここの『看護師』なんですけど………」

対する『鬼塚』は露骨に緊張している。
腐っても正規のナースのはずだが………

 「あ……はい、よろしくお願いします」

『板槻』は笑顔を見せるが、どことなくぎこちない。
『鬼塚』の対応に少し戸惑っているのだろう。
助けを求めるかのごとく、ちらっと『鈴元』の方を見てくる。

498鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/02(土) 21:44:40
>>497

「……」

正規ナースの仕事振りだ。

「……」

鈴元の目的は基本として呪いが起きないケースを確認して起きたケースと照らし合わせることだ。
だから、極力鬼塚に任せよう。

「……」

任せよう。

「……」

それでも手を差し伸べてしまうのが鈴元の欠点である。

「えっと、鈴元って言いますぅ。今回は鬼塚さんの補佐で入らせてもらってるんですけど」

「お話をさせてもらって、ご要望とかご希望を聞かせてもらいますぅ」

にっこりと笑って話して、相手にリラックスして貰えるように努める。

499『せんせいのかくしごと』:2019/03/02(土) 22:04:58
>>498(鈴元)

「あ、はい。よろしくお願いします。

 あなたが……補佐………あー……補佐なんですね。

   ………なるほど。はい、では、ちょっとお話聞いてもらいますね」

『鬼塚』より明らかに流暢に喋る『鈴元』。
『板槻』は、そんな『鈴元』が『補佐』という立場な事に疑問を覚えたようだったが、
『鈴元』と『鬼塚』の年齢差を確認し、自分なりに納得したらしい。

 ………

「ええと、私は今、大学生なんですけどね。
 高校時代はすごく地味な存在で、クラスの隅で一人で
  本読んでるようなタイプだったんですけど。

 せっかく大学入ったんだからってんで、すこし頑張ってみようかなと思って。
  『普通』になる努力してみてるんですけど、ハハハ、どうも上手くいかないというか。
    自信ってのは『一朝一夕』で、つかないもんなんですよね」

そして、『板槻』は話し始める。

 ここから『鬼塚』に相槌を打たせるか、『鈴元』が話を繋ぐかは自由だ。

500鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/02(土) 22:44:52
>>499

鬼塚に任せよう。

「なかなか難しいですよねぇ」

「自信はねぇ」

相槌はうっておくが。

501『せんせいのかくしごと』:2019/03/02(土) 23:31:16
>>500(鈴元)

「そ………そ………そうですよね………
 自信……自信……そうなんですよね………

         それさえあれば……あれば………」

『鈴元』は『鬼塚』に対話の主導権を任せる事にしたが―――
適度な『鈴元』の相槌と違い、『鬼塚』のそれは、なんというか、『重い』。

「……あー、はい。
  そうなんですよ。自信がなくて、
   出来るだけ友達増やそうとしたり、
    メイクに力入れたり………。
      でも」
         「ダメだった……!
          そうですよね。そんなに性格変えられたら苦労しませんよね………。
          分かる、わかる、分かります………

            私も、本当、どうすればいいのか………
            ………ねえ、どうすればいいんでしょう?」

そして、今度は『板槻』の語りをもぎ取るように途中から『鬼塚』が言葉を紡ぐ。

 ………

話しやすい環境を作るのに確かに『共感』は有効だ。
もしかするとこれが『鬼塚』なりに
必死に編み出した『話法』なのかもしれないが………

「……ええと、あー、どうなんでしょうね。

 とにかく、まあ、私は自信がないので一番のコンプレックスである
  『一重』をなんとかしてもらおうとここに来ました。

   …………あー ……、あとは『先生』と話せば大丈夫ですかね?」

明らかにそわそわし出した『板槻』は
 話を相当端折ってこの場を終わらせようとしている。

  ………

    これが『鬼塚郷子』の『カウンセリング風景』―――ッ!

502鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/04(月) 01:13:15
>>501

不味い。
参考になるならないの問題ではなさそうだ。
もう少し話してもらおう。

「……二重に、とのことですが」

「どのような印象にしたいかなど、理想はございますか?」

「先生ぇにお話頂いてもいいのですけど、術前の時間は限られますので」

「有名人の方のように、とのことでしたら、そう、伝えておきます」

503『せんせいのかくしごと』:2019/03/04(月) 22:07:49
>>502(鈴元)

 「あー……はい。そうですね」

スラスラ問いかける『鈴元』に、『板槻』はホッと胸を撫で下ろす。

ゴソゴソとバッグからスマホを取り出すと………

「この人みたいな感じが理想なんですけど………」

画面に映る写真を見せてくる。

そこには、くっきり二重の20歳くらいの女性が映っていた。スタイルもいい。

「『華麗度100%ッ!』で有名な『成増・カレイド・万華(ばんか)』です。
 成増三姉妹の長女の………知ってますよね?」

『鬼塚』を見ると、オオ……という感じの表情を浮かべている。
彼女も知っているようだ。

「え………そりゃあ………さすがの私も知っています………
 凄いですよね、あの身のこなし………火の扱い………」

504鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/04(月) 22:51:40
>>503

「身のこなし……火の扱い……」

知らない。
世俗には疎い。
疎いというか、数が多すぎて実際に会わないと記憶できない。
テレビの向こうはどうにも世界が違うように思えて。
自分とは違う輝いた世界に見えて。

「こういう風に……ですね?」

「お好きなんですか?」

505『せんせいのかくしごと』:2019/03/04(月) 23:06:33
>>504(鈴元)

「あー、そうですね、憧れの人です。
 『仮面舞踏部 〜ドサ回り編〜』の頃から好きなんですよね。

 アレが出来るって信じられないですよね?

           『めくーるめーく♪ スピィいン ダーンス♪』」

『板槻』がニッコリと笑う。
知っていれば理解できる話なのだろうが………

 ………

このまま『鈴元』が話を促していくのも、
『板槻』との対話をほどほどに打ち切って次の行動に移るのもいいだろう。
もちろん再度、『鬼塚』にチャンスを与えてもいい。

506鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/04(月) 23:33:34
>>505

(ドサ回り編……?)

するのだろうが。
するのだろうが、そこを描写していいのだろうか。

(どこの層を狙って……?)

たぶん自分以外の層だと思われる。
それとなく鬼塚に目配せしてバトンタッチしよう。
多分、この話題なら膨らませられそうだし。

507『せんせいのかくしごと』:2019/03/06(水) 02:58:52
>>506(鈴元)

それとなく会話からフェードアウトする『鈴元』。
会話のスイッチを伝えるべく『鬼塚』に目配せをしたが、
緊張する『鬼塚』にはあまり伝わっていないようだった。

だが、彼女には彼女なりの仕事への『使命感』がある。
憶する事なく、『板槻』との会話へ突入していく。

 ………

20分ほど経っただろうか―――
ぎこちなくはあるがなんとか『鬼塚』の対応は続く。
『板槻』の方も『こういう人なんだ』と受容してくれたらしく、
それなりに会話は継続できていた。

「………あー、でも、ここでこんなふうに話が出来てよかったです。
 やっぱり悩んでいたんですよね。結構シリアスに」

『板槻』はどうやらある程度満足できたようだ。

「………そうですよね。眠れなかったりとかもあったんでしょう?」

『鬼塚』が相槌をうつ。だいぶ緊張は解けてきたようだ。

「ハハハ、寝つきの悪い日々が続いていたのは事実ですね。
 でもそれも今日で終わるかもしれません。
 整形なんてする必要ないよ、なんて言ってくれる人もいるんですけどね。
 あー、なんていうか、心と体って繋がっているんですよね。
 身体のもやもやをどうにかする事で心のもやもやを解決出来るなら、
 私はそれでいいと思っています」

 ………

508『せんせいのかくしごと』:2019/03/06(水) 03:00:53
>>506(鈴元)

 ………



   ギ   ュ   ウ    ン

     そして―――

『鈴元』にとっては二度目の邂逅が訪れる。

     『小さな一対の手』。

『板槻』の鼻と口あたりに出現している。
初出の場所はなんというか、それほど精密ではないように感じられる。
この能力が『福笑い』なのだとすれば、出現場所も『無作為』なのかもしれない。

例によって、この場にいる二人、『鬼塚』と『板槻』はこれに気づいていないようだ。


   ゴゴゴ   ゴ  ゴゴ  ゴ ゴゴ

『手』はゆっくり無軌道に動き出す。
『口』と『鼻』がそれにあわせ、奇妙に動き始める。

「………? なんだか、なんだろう。……おかしい、です」

それにあわせ『板槻』が異変を口にする。
対面する『鬼塚』の顔は、見てわかるほど青ざめている。
彼女にとっては『初』の対面となるのだからそれも止む無しか………

509鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/06(水) 10:11:30
>>507-508


なんとか穏やかに進行しているようでよかった。
あの手の発動条件が何かはわからない。
鈴元的には何らかの言葉があると思っていたが。

「!」

想定内だが、予想外だ。
板槻の言葉に荒っぽさや問題のある言葉はなかったはずだ。
前に見た時との類似点は現状見られなかったように思える。
だとしたら何が問題だったのか。
時間か?
それとも別の要因か?
というか、目の悩みなのに鼻にも手が出ている。
分からないが、この手の妨害は不可能らしいことは分かっている。
ただ、何とかしないといけない。

「……」

『ザ・ギャザリング』を発現。
板槻の顔に触れ、少しだけ揺らす。
花びら化を行い、手の目を奪えるか試す。

510『せんせいのかくしごと』:2019/03/06(水) 23:04:22
>>509(鈴元)

様々な要因に思いを巡らせながら、
『ザ・ギャザリング』を操作し、板槻の顔を揺らす。

 ゆ さ ゆ さ
                  は ら り

少しの揺れの為、『花びら』が数枚、舞い落ちる。
それは『板槻』の肌の表面が変化したものだ。

『花びら』が付着したものの『目を奪う』―――
その効力が『手』に効果があるか確かめたかったが………

   す る り

そもそも『花びら』は『手』をすり抜けて落ちてしまう。
先程もそうだったが『手』は顔のパーツ以外に干渉しないし、されないようだ。

 「え………肌が……? 今度は何………?」

実体化した『花びら』は『鬼塚』に混乱を生み出していた。
『板槻』も『ザ・ギャザリング』に揺らされ、混乱しているようだ。

 ………

 そして、『手』は『口』と『鼻』をバラバラな位置に置いた後、ふっと消えた。

511鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/07(木) 07:22:22
>>510

(あかんか)

花びらは解除しておこう。
やはり干渉はできない。
手が出てきてからでは遅いようだ。

「……」

さて問題はこれからどうするかだな。

512『せんせいのかくしごと』:2019/03/07(木) 23:47:36
>>511(鈴元)

『ザ・ギャザリング』の花びらは解除される。
しかしそれでも場は混沌としていた。

 ……… ……… ……… ………

沈黙が訪れる。実際はそれほど長い時間ではなかったのだろうが、
やけにゆったりと時が流れているように感じる。

「………私、なんか、おかしいんですけど」

 しばらくして、そう発言したのは『板槻』。

口が額近くまで移動しているのだから、異常な感覚があって当然。
だが、現実味がないこの現象に完全にはついていけていない、そんな様子だ。

確か、この『呪い』は時間で切れるという話なはず。
『レストルーム』あたりに上手く誘導して、付き添いつつ、
少し休んでもらうのがいいのかもしれない。
『鈴元』がそれをやってもいいし、傍らで目を白黒させている『鬼塚』か、
あるいは他のスタッフを呼んでその者に依頼してもいいだろう。

もちろん、他の思惑があれば、それを行うのも自由だ。

513鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/08(金) 00:16:44
>>512

「……術前のストレスが原因かもしれませんね」

「一旦休んでから経過を見ましょう」

それっぽいことを言いつつ。
冷静に考えればストレスで顔の部位の位置は変わらない。

「鬼塚さん、レストルームまでお願いできますか?」

「先生への質問は私がしておきますから」

鬼塚に付き添いをお願いしよう。

514『せんせいのかくしごと』:2019/03/08(金) 00:35:28
>>513(鈴元)

「あー………はい。
 声がなんか、頭に響いておかしい感じなので。
 はい、少し休ませてもらいますね」

『板槻』はどこかぼんやりとした様子だ。
明らかな奇異な現象に理性がついていかないのだろう。
感覚はメチャクチャだろうが、鏡などは見ていないので、
とりあえずまだ信じられそうな『鈴元』の言葉に飛びついた形か。

『鬼塚』は無言で『鈴元』の言葉にぶんぶんと首を振る。
かなりのショック状態のようだが、職務はなんとかこなしてくれるだろう。

                         ばたん

そして、二人は『カウンセリングルーム』を出ていく。

 ………

これから『鈴元』はどうするべきか―――

『カウンセリング』の継続、『武藤』が持っているという『録音』の確認、
『阿多』への報告や対話、『門倉』との相談、他スタッフへの情報収集………
その他もろもろ、やれる事は様々だ。

515鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/08(金) 23:47:27
>>514

椅子に座り、天井を向く。
すっかりあてが外れてしまった気分だった。
言葉の乱れでは無いのだろう。
門倉が相手をした患者には起きず、今回の患者には呪いが起きた。
喋る長さなのだろうか。
だとしたは門倉自身が呪いを受けていないとおかしくはないだろうか。
だとしたら、そこではない何かが問題なのだ。
武藤の持つ録音の確認で真実に近付けるだろうか。
……犯人や原因にはまだ遠い。
福笑いという発想が正しかったとして、そこに繋がる部分もまだわからない。

「一旦せんせと話し合うべきなんかな」

情報収集という意味では重要だ。
院全体のことを把握しているのも彼女だろう。

「……」

外部からの犯行でなければ内部からということになる。
呪いが起きる前にあった主な出来事である鬼塚の勤務。
怪しいかと思っが、鬼塚自身は特に関係がなさそうだ。
病院で働く人間は全員灰色だが、重要度が高いのは阿多だ。
彼女が知らず知らずのうちにスタンドに目覚めている、という可能性もあるかもしれない。

「阿多せんせぇー」

カウンセリングルームか、院長の部屋で話をしよう。

516『せんせいのかくしごと』:2019/03/09(土) 23:24:48
>>515(鈴元)
鈴元は独り、途方に暮れる。

 そこで、考える。考える事は重要な事。

   そして、出した答えは―――『阿多』に話を訊く事だ。

 ………

『鈴元』は『院長室』を訪ねる。
幸いというべきか、『阿多』はそこに一人でいた。
自分の机で何やら『書き物』をしていたようだ。
『鈴元』が来ると書いていた紙を裏にし、さっと引き出しにしまう。

 「ああ、貴方………『カウンセリング』は終わった?」

『阿多』が問いかけてくる。
どうやら『板槻』が発症した事はまだ伝わってないようだ。

517鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/11(月) 12:51:24
>>516

「……はい」

何を書いていたのか。
病院に関することだろうか。
それともカルテか何かか。
機密事項なのだろうが、今この場においてはなるべく多くを知っておきたい。
恥ずべきことだが覗き見させてもらおう。

「終わったのは終わったんですけどぉ……呪いが出て……」

『ザ・ギャザリング』を発現。

「とりあえず現状の確認とかも兼ねてお話をしたいんやけど」

「その、試したいこともあるしカウンセリングルームまで来てもろてもええでしょうか?」

カウンセリングルームに移動する流れになったら『ギャザリング』に引き出しを開けさせて中の書類を確認する。

518『せんせいのかくしごと』:2019/03/11(月) 21:16:57
>>517(鈴元)

「『呪い』がまた………」

『鈴元』の報告に、『阿多』は一瞬眉を顰める。

「試したい事? ………ええ、いいわ。
 『解決』の足しになるのなら、付き合いましょう」

『阿多』は『鈴元』の申し出を素直に受ける。
二人は部屋を出て、『カウンセリングルーム』へ―――

 ……… ………

そして、部屋に残されたのは、『鈴元』の異能、『ザ・ギャザリング』。
彼の目当ては、『阿多』がしまった紙だ。

ただの重要書類というだけかもしれない。しかしそうでないかもしれない。
引き出しを開け、紙を取り出し、裏返すと………

        なんだろう、これは?

そこに書いてあるのは、絵だ。『阿多』は絵を描いていた。
『落書き』といってもいいそれはかなり上手い部類に入るだろう。

そのモチーフは―――『奇妙な人型』。
ゴーグルをつけた顔は『皿』のようなものに埋まっている。
身体は黄色を基調としたスーツに覆われている。
傍らには『笑顔のディッシュ』と走り書きがしてあった。

519鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/12(火) 23:30:30
>>518

(え……?)

絵。
なぜ絵を描いていたんだ?
手慰みというか、暇潰しか趣味か?
しかし、この絵はなんというか象徴的だ。
皿に乗った顔。
皿は作った料理を乗せる物だ。
笑顔のディッシュ。

「そういえばせんせぇは仕事熱心な人やって聞いたんやけど」

「ご趣味ってあったりします? お散歩とか絵を描くとか、そういうのは」

「そこで会った人とかそういうのをしてる時に起こったこととかが関係してるかもしれへんから一応」

520『せんせいのかくしごと』:2019/03/13(水) 22:14:58
>>519(鈴元)

「………趣味?」

『カウンセリングルーム』への道すがら、
『鈴元』は『阿多』に問いかける。

その問いかけに怪訝そうな表情を浮かべる『阿多』。

  「いいえ、私は『無趣味』なのよ。残念ながら」

 『阿多』はきっぱりと自らに趣味などないと宣言する。

 「だから、そのへんの事はなんら関係ないでしょうね」

単純な『探り』のレベルでは、『阿多自身』はこれ以上、
この件、つまり『趣味』に関して何か喋る事はなさそうだ。

521鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/14(木) 01:39:14
>>520

「さいですか」

「それやったらよかったです」

微笑んで言葉を返す。
仕事の鬼、ということらしい。
笑顔のディッシュについて急に切り出すと怪しまれる可能性もある。
もう少し、話をしている流れで差し込んだ方がいいだろか。
カウンセリングルームに向かおう。

「カウンセリングを始めんとね」

522『せんせいのかくしごと』:2019/03/15(金) 03:31:45
>>521(鈴元)

『鈴元』は思案し、そして、二人は『カウンセリングルーム』に入る。

『カウンセリングルーム』には、誰もいない。
『鬼塚』は『板槻』を『レストルーム』に連れていっている。
おそらくだが次の『カウンセリング』患者はもうしばらく後に来るのだろう。

 「―――で、試したい事というのは何かしら?」

『阿多』が『鈴元』に早速、こう切り出してくる。

523鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/15(金) 18:20:59
>>522

「カウンセリング……ちゅうか、報告っちゅうか」

阿多が椅子に座ったら自分も座ろう。
座らないなら立ち話でいい。

「現状、二件の呪いと聞き取りの結果の報告」

「それからちょっと阿多先生ぇに聞きたいこともの質問」

「同時に、その間に僕らのどっちかに呪いが起きるかどうかも確かめますぅ」

これからするのはそういう事だ。

「最初の聞取りでなんか患者さんの言葉が呪いを起こすんかと思って調査しました」

「途中で鬼塚さんが呪いを見た事がないって聞いて……呪いが起きた時との相違点を探そうとして」

結果としては呪いが起きた。
鬼塚に任せたままにすれば恐らく起きなかっただろう。

「最初に考えた『言葉』が呪いを起こすっていう予想、僕の見た二人の患者の発言に似たような言葉はなかった」

方向性は似ていても違う悩みであるので当然とは言える。

「やから今度は時間にも注目しようと思います」

だからこの部屋での会話を選んだ。

(まだ発言が鍵であるとは思うけど)

524『せんせいのかくしごと』:2019/03/16(土) 00:51:26
>>523(鈴元)

『カウンセリングルーム』―――
『阿多』が座るのに合わせ『鈴元』も席に座る。

「なるほど………
 それで、『時間』というのは『話している所要時間』という事?
 しばらく『話し続ける』必要があるというわけかしら?」

 『阿多』はチラリと『腕時計』を見る。

「あまりにも長い間、話すのなら、スケジュールを調整しないといけなくなるわね」

 『患者』の予約などもあるし、当然といえば当然か。

「出来たらそういう実験は、
 他のスタッフにお願いしたいところだけど―――そうもいかないという事かしら」

525鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/16(土) 22:53:31
>>524

「そう、ですねぇ」

「この呪いがどこから来たのか、はまだ分からんけど」

「外からならこの病院が狙われてるってことで、同時にそれは院長が狙われてる可能性もありますから」

要は阿多に恨みを持った者が犯行をしているのではないかということだ。
だから、趣味のことを聞いたりした。
そういう説明をしよう。

「お忙しいとは思うので、その場合は他の人に手伝ってもらいますぅ」

「それと……ひとつ聞かせてもらいたいことがあるんですけど」

「『笑顔のディッシュ』って言葉に心当たり、あります?」

無いとは言わせないが。
時間が無くてもこれの答えぐらいは聞かせてもらおう。

526『せんせいのかくしごと』:2019/03/17(日) 18:48:15
>>525(鈴元)

「私が………狙われている。
 そうね、この呪いが『営業妨害』を意図しているなら、
 恨みを持っていると考えるのが自然ですものね」

『鈴元』の説明に『阿多』は首を振りながら答えた。

そんな『阿多』に『鈴元』は問いかける。
『笑顔のディッシュ』という言葉について―――

 「………」

一瞬、沈黙があったが、すぐに、

「……ああ、確か、『鬼塚』さんが好きな……
 何かのキャラクター………だったかしら?」

 そう答えた。

527鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/17(日) 20:50:44
>>526

「せやから、出来たら阿多先生からお話聞かせていただけた方が、とは思うんですけど」

そう言って笑いかける。

「……」

本当に鬼塚の好きなキャラクターなのか?
だとしたらなぜそれの絵を阿多が描いている。
指摘すべきか。

「先生の好きなもんやと思ってたんやけど」

どう反応するか。

528『せんせいのかくしごと』:2019/03/17(日) 21:46:47
>>527(鈴元)

「………なぜ」

 『鈴元』は、『阿多』の態度が硬直しているのを感じる。

  「なぜ、そう思うのかしら?」

『証拠』として『絵』の事を出すのは簡単だろう。
ただ、その場合、『鈴元』が何らかの方法で絵を盗み見た事を告白する事になる。
有益な反応が得られる可能性もあるが、信頼関係は損なわれるだろう。

529鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/18(月) 23:38:04
>>528

明らかな緊張。
やはり、何かあるのだろう。
つまびらかに話せば問題になる。
上手く切り抜けなければ心のシミを残す。
ハッタリにはハッタリで返してもいいが。
どう返すか。

「笑顔を作るんは阿多先生の仕事やから、かな……?」

「仕事熱心で尊敬するって鬼塚さんも言ってはったし」

誰からどこで笑顔のディッシュという言葉を聞いたのかは答えない。

「阿多先生大丈夫です?」

「なんか緊張してるっていうか、強張ってますけど」

530『せんせいのかくしごと』:2019/03/19(火) 20:46:39
>>529(鈴元)

「………なんでもないわ」

 『鈴元』の言葉に『阿多』は言葉少なに返す。

「………もう、いいかしら?
 さっき提案してた実験は『武藤』さんか『鬼塚』さんに手伝ってもらう形でお願いするわ。
 好きな方を使ってもらって構わない」

そして、話を強制的に打ち切ろうとする『阿多』。
これ以上、『笑顔のディッシュ』について語る気はないようだ。

531鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/20(水) 23:48:25
>>530

「……」

ここで阿多に行かれのは好ましくないかもしれない。
だが、恐らく彼女の中で自分への信頼度というものは下がっているだろう。
警戒の対象となっているような気はする。
下手に刺激しない方が得策なのかもしれない。

「阿多先生」

「この仕事をする以上、一日で出来ることは確実に全部潰さんとあかん」

「ごまかしや隠し事はお互いの勝手やけど、少なくとも僕は、今日の仕事を適当にしようとは思ってへん」

だからとりあえず、自分の想いだけでも伝えておきたい。

「今日のこの仕事で生まれる感情は一瞬。ただ、今日片づけられる問題を片付けられへんで終わる後悔は一生」

「やる以上は、やりきらせてもらいます」

532『せんせいのかくしごと』:2019/03/21(木) 05:57:26
>>531(鈴元)

「―――確かに私は貴方に依頼して、
     今日いちにちは貴方に協力する、そう言ったわ。

 ただ、それには限度というものがある。
 たとえば確たる理由や根拠もなく『裸になれ』と言われても、
 さすがにそれに応じる気はないという事よ。

 ………貴方にも何か思うところがあるようだけど。

        ………

             ごめんなさい、そろそろ失礼するわ」

『鈴元』は自らの思いを伝える。
『阿多』にもいくらかは響くところはあったのだろうか―――

  だが、結果として『阿多』は何も語らず

                                      バタン

            部屋を出て行った。

  ……… ……… ………

『阿多』が『笑顔のディッシュ』を話した以上に知っているのはあの絵からも明白だ。
しかし、彼女はそれをぼかした。
『裸になれ』などという喩えを出してきた。
それほどまでに隠したい事なのだろうか。

    ―――『先生の隠し事』

ただ、『阿多』は『確たる理由や根拠もなく』とも言っていた。
『笑顔のディッシュ』と『阿多』の具体的な関連、
あるいは事件に関わるであろう根拠をやましくない方法で収集、
提示できれば、彼女も観念して、何か語ってくれるかもしれない。

もちろん違う方向から事件を探ってもいい。
現在、『鈴元』の予定は白紙であり、フリー(自由)だ。

533鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/21(木) 21:34:17
>>532

「……どうも」

会釈をして阿多を見送る。
とりあえずはこのぐらいが限界だろう。
腕を組み、息を吐く。
どっと疲れが出たような気がする。
重たいものが体にまとわりつく。
人の心に深く踏み込むようで、どうにも気を張ってしまう。
礼儀、遠慮、それこそを美徳としつつも意志を伝える。
やはり作法とは難しい。

「『笑顔のディッシュ』かぁ……」

自分たちは笑顔を皿には載せない。
皿に載せた和菓子が笑顔を作った。
言葉というものを扱ったとしても、皿に載せるのは言の葉のサラダだ。

「門倉さんにもお願いしてみよかな……」

『ザ・ギャザリング』を操作して、門倉に『笑顔のディッシュ』についての調査をお願いしてみよう。
とりあえず鈴元自身もカウンセリングルームを出る。

534『せんせいのかくしごと』:2019/03/21(木) 22:07:45
>>533(鈴元)

『鈴元』は今あった事に思いを馳せながら、
『門倉』の方に『ザ・ギャザリング』を向かわせる。

―――『門倉』が居るであろう『セラピールーム』のドアは閉まっており、
中から薄っすら話し声が聴こえる。どうやら女性の声だと思われるので、
おそらく『患者』の対応中なのだろう。
『ザ・ギャザリング』が入るにはドアを開ける必要があり、
スタンド使いでない者が見れば、誰もいないのになぜかドアが開く形となる。
まあ、その中に『門倉』以外スタンド使いが居なければ
『不思議だね』で終わる話かもしれないが―――
しばらくすれば話も終わるだろうから、
それを待ってから用を済ませてもいいかもしれない。

『鈴元』は、『カウンセリングルーム』を出る。外には誰も居ない。

『セラピールーム』は使用中、おそらく『門倉』と男性ナースの『角田』が患者の対応をしている。
『阿多』はおそらく『院長室』か『診察室』に戻ったか。
『受付』にいけば受付嬢である『水野』や、場合によっては待っている『患者』に会えるかもしれない。
『武藤』や『鬼塚』は『スタッフルーム』や『レストルーム』あたりにいるのだろうか。
行ってないのは『手術室』や『トイレ』あたりだが、特別、理由もなければ行く必要もないか?

  さて―――

535鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/22(金) 00:18:31
>>534

『笑顔のディッシュを!』

叫ばしてみよう。
なにか反応があればきっかけになるかもしれない。
門倉にすぐ反応がなくてもいい、とりあえず自分がいることを知らせられるならそれで。

(行ってない所に行ってみよかな……)

手術室は難易度が高そうなので、さしあたってはトイレがいいか。

「あ」

今の自分は女性の格好をしているはずだ。
職員はこのことを知っているだろうが、不用意に入って大丈夫だろうか。
もちろん、男トイレにだ。

「……」

客は女性が多い。
ならば、男性トイレで誤解を招く可能性は低い。
男性トイレに入ろう。

536『せんせいのかくしごと』:2019/03/22(金) 07:34:20
>>535(鈴元)

『ザ・ギャザリング』が唐突に叫ぶ。
『門倉』は中でビクッとなっているだろう、おそらく。
他にもビクッとなった者が居れば怪しいのだが………
中を覗き見る事は出来ない。後で確認するといいかもしれない。

 ………

そして『鈴元』は『トイレ』に向かい―――
どちらに入ればいいか思案する。
昨今、議題にもあがるデリケートな問題………

とりあえず今回は『鈴元』は男子トイレを選んだ。

中には洗面台が二つ、立ってするタイプのトイレが二つ、二つの個室。
更に掃除用具置き場であろう細いドアが一つ。そして―――

  「………うわッ」

洗面台で手を洗う一人の男が居た。
20代中盤くらいか? ここのナース服を着ている。
名札には『武藤(拓)』と書かれていた。

「………あ、あなたは? ここは男子トイレですよ!」

『鈴元』がナース服を着ている事に疑問を覚えつつも、
とりあえず男子トイレである事を主張してくる。

537鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/22(金) 22:58:05
>>536

「あ……」

会ってしまったスタッフか。
大丈夫だ。
自分は男だ。

「あ、や、その、ちゃうんです。僕は鈴元涼っていって、院長先生から聞いてへんかなぁ、あの」

「呪いの件で来てて、それで……」

わたわたとしながら言葉を返す。
何かないかと言葉を探して、ぱっと目に付いたのはいての名札。

「武藤、さん……?」

「武藤暮さんじゃなく?」

538『せんせいのかくしごと』:2019/03/23(土) 00:36:19
>>537(鈴元)

「ぼ、僕ッ娘………」

『りょう』という名は女性にもある。
声はそれなりに低いだろうが、
それよりも『外見』のインパクトに引きずられ、
『誤解』は解けていないようだ。

「……あー、『姉』を知っているんですかね?
 俺は『武藤 拓馬(むとう たくま)』。
 『姉弟』ともども、こちらでお世話になっています」

混乱しながらもとりあえず、自己紹介をするこの男。
どうやら『武藤暮』の弟らしい。

「俺が後から来たんでここで『武藤』といえばもう姉の事になっちゃってますね。
 俺はもっぱら『弟』とか『拓馬』とかそう呼ばれる感じです」

更に補足までする。マイペースな人物のようだ。

539鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/23(土) 01:05:10
>>538

「え、いや……」

まだ誤解されている。
かと言ってじゃあここで証拠を見せるというのもはしたない話だ。
ゆっくり話していれば納得されるだろうか。

「あぁ、弟さんなんやね」

「拓馬さん、って言いはるんや」

優しく笑んで会話を続ける。

「拓馬さんはいつぐらいから働いてはるんやろか」

540『せんせいのかくしごと』:2019/03/23(土) 01:34:33
>>539(鈴元)

「………関西の人? とりあえず外に出ましょうか」

『拓馬』に促される『鈴元』。

「俺は二年半くらいかなあ。姉の紹介でそのままって感じですね」

多分『拓馬』は『鈴元』が何者かよく分かってなさそうだが、
とりあえずベラベラと訊いたことに答えてくれる。

「アレですか? トイレを間違えたんです? 女性はあちらですよ」

『誤解』は解けていないようだ。

541鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/23(土) 02:34:02
>>540

「……出身は京都やけど」

こちらに住んでどれくらいになるだろうか。

「二年半……長いんやねぇ」

となると呪いのことは知っているだろう。

「え、いや、僕……男の子なんよ……」

「今はカウンセリングのお手伝いと調査があるからお化粧とかさせてもろてるけど」

ぱっと相手の手を握ろうとする。

「ほら、手ぇとか男の子の手ぇやろ」

白くて柔らかい手だった。

542『せんせいのかくしごと』:2019/03/23(土) 11:41:27
>>541(鈴元)

「へェ〜〜京都。よさそうなところですね。

   ……って、男? 男って言いました?」

困惑する『拓馬』の手をギュッと握る『鈴元』。
白くて柔らかい温もりが『拓馬』に伝わっていく………

 ………

「あ〜〜いや! これは女ですね! まごうことなき女の手!
 俺は騙されない。むしろ君が親から騙されていたのでは?

  京都の名家で長男が欲しい両親は女に産まれた君を
  男として育ててそれに洗脳された君は自分が男だと
  思い込んでいるんですよ。マインドコントロールですよ。

  その『呪い』が今、解き放たれつつあるという事ですね。
  さっき言ってた『呪い』の件でズバリ! それでしょ?」

『誤解』は深まる。
まあ別に解く必要もないのかもしれないが―――

543鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/24(日) 00:43:31
>>542

「いや、男なんやけど……」

困ったように笑う。
手から年齢が分かるというのは嘘だったのだろうか。

「そんなに疑うんやったらお姉さんに聞きはったらええですよ……」

「えっと、呪いっていうんは顔の……」

あまり大きな声では言えないことだ。

「あべこべに変わるっていうあれ」

「それの調査」

544『せんせいのかくしごと』:2019/03/24(日) 12:47:11
>>543(鈴元)

「え〜〜本当ですか? ホントにホントォ?
 じゃああとで『姉貴』にきいとくか………」

 なおも疑う『拓馬』だったが、とりあえずその話題は終える。

「『呪い』ってあれか。顔が変わるやつ。
 俺もまあまあ見てますよ。グロい感じでイヤですよね。
 あれの調査かァ〜〜、そうかァ〜〜」

うんうんと頷く『拓馬』。思い込みはやや激しいようだが、
悪い人物ではなさそうだ。何かあれば訊いておいてもいいだろう。

545鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/24(日) 16:39:25
>>544

「そう、それなんですけど」

「拓馬さんも見たことってあります?」

とりあえずその辺から聞いてみよう

546『せんせいのかくしごと』:2019/03/24(日) 18:43:42
>>545(鈴元)

「ん、ああ、さっきも言った通りまあまあ見てますよ。
 顔のパーツがグシャーと色々動いたりするのがねー結構キツいですね」

『拓馬』の証言に『小さな双手』への言及はない。

「調査っていうと色々調べてどうにかしようってわけですかね?

 ん〜〜、俺なりに考えてみた事ありますけど、老若男女問わず
 アレは現れますし、話している『内容』もな〜〜バラバラって感じです。
 話している『時間』だって、話し始めてすぐに出るパターンもありましたしね。

 まったくのランダムか、あるいは、『言ったら出る』みたいな言葉があって、
 それに反応しているか………そんな感じじゃあないですか?」

『拓馬』が自説を述べる。

547鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/24(日) 21:07:08
>>546

「なるほど」

頷く。
拓馬の認識は自分のそれに近い。
どちらかと言うと、話している内容がバラバラであるという考えが補強された気もする。
全くのランダムというのは考えにくい。
鬼塚が見たことがない理由があの対応ゆえだとしたらやはり『言ってはいけない言葉』があるのだろう。

「僕の方もそんな感じの認識で」

「やっぱり何かしらの言葉に反応してるとは思うんやけど」

「心当たりとかってあります?」

548『せんせいのかくしごと』:2019/03/24(日) 21:36:22
>>547(鈴元)

「う〜ん、そこなんですよね。
 肝心のキーワード的なものが分からない。
 それがあるとしたら『一つ』じゃあないのは確かでしょうけど」

 『拓馬』はそう答える。確かに『一つ』であれば、
  数多い事例の中、絞り込む事が出来ただろう。

「……まあそもそも謎のパワーなんで、そういうの全部無視して
 まったく未知の何かで動いているのかもしれないですけどね」

『スタンド』の存在を知らない一般人にとっては、
これ以上の『考察』は果てがなく、難しいかもしれない。
(もちろん彼がスタンド使いではないという保証はないが)

 ………

『拓馬』はチラと廊下を見やる。
彼も仕事中だろうから、そろそろ戻るべきなのかもしれない。

549鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/25(月) 23:58:27
>>548

(まぁ、そうやんねぇ……)

事というのはそう単純ではない。
方向性のようなものを絞り込んだ方がいいかもしれない。

「拓馬さん、最後に聞かせて欲しいんやけど」

「『笑顔のディッシュ』って言葉に聞き覚えあらへんかな?」

「そのままじゃなくて、似たような言葉とかでもエエんやけど」

550『せんせいのかくしごと』:2019/03/26(火) 20:52:24
>>549(鈴元)
「『笑顔のディッシュ』―――
 ああ、確か、『鬼塚』さんがなんか言っていたな。
 専門的な話だったんで半分きいていなかったけど」

『拓馬』はそう答える。出てきたのはまた『鬼塚』の名前だった。

「なんか仲間が居るんですよ。『怒ったナイフ』……? とか、
 『明るいスプーン』みたいな名前の。

 ……すみません、自分が知っているのはこんなもんですかね。
    じゃあ、このへんでそろそろ。『呪い』の調査、上手くいくといいですね」

『拓馬』はそのまま去ろうとしていた。

551鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/26(火) 21:32:15
>>550

「鬼塚さん?」

阿多からではないのか。
それは阿多に悪いことをした。
言ったことは事実で間違いなかったのだろう。
気になるのは何故それを描いていたのかだが、そこはいま重要ではない。

「ま、待って……! それって有名なもんなんですか?」

専門的な話と言っていたが世間的に浸透しているのだろうか。

「鬼塚さんだけがそれを知ってるとか?」

552『せんせいのかくしごと』:2019/03/26(火) 22:07:06
>>551(鈴元)

「有名ってほどじゃあないみたいですよ?
でも『番組』でやってるらしいから知っているのは
『鬼塚』さんだけじゃないでしょうね」

『拓馬』はそう答える。

「『鬼塚』さんはそーゆーの好きみたいですね。
 アニメとか漫画みたいなの。
 自分も子供の頃は見てましたけど今はねェ……ちょっと」

 『拓馬』は軽く苦笑いする。

「詳しく知りたいならそれこそ『鬼塚』さんに訊いてみるのがいいんじゃないですかね」

553鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/27(水) 17:59:50
>>552

「分かりました。ありがとうございます、拓馬さん」

頭を下げて礼を言う。
スマホで確認してみよう。
ついでに『ギャザリング』で鬼塚を探す。

「……」

何か、進んでいるような気はする。

554『せんせいのかくしごと』:2019/03/27(水) 23:31:40
>>553(鈴元)

『スマホ』を取り出し、検索窓を開ける。電波はバッチリ。
得た情報を総合し、『検索ワード』を入れるといいだろう。

それはそれとして『ザ・ギャザリング』は『鬼塚』を探す。

 ………

いや、探すまでもなかった。
『男子トイレ』の隣、『女子トイレ』から『鬼塚』が出てきたのだ。

「え………あ、どうも………」

なんとなく気まずいのか『鬼塚』がペコリと礼をし、下を向いて立ち去ろうとする。

555鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/03/28(木) 23:36:34
>>554

「どうもぉ」

優しく笑って会釈する。
スマホを後ろ手で隠し、ギャザリングに操作させる。
触れられるならタッチパネルを操作出来るのではなかろうか。

「それで、どないでした? 患者さんは……」

一旦業務の話をしよう。
『笑顔のディッシュ』はそれからだ。

556『せんせいのかくしごと』:2019/03/31(日) 22:36:09
>>555(鈴元)

「ああ、あれから『武藤』さんがうまく話してくれて……
 『レストルーム』のベッドで休んでくれています。
 時間が経てばあの『呪い』も消えるはずですし……
 大事にはならないかと」

『鬼塚』が言う。ここで出てくる『武藤さん』は女性の、
つまり先程の『拓馬』の姉の方だろう。

「えー……『鈴元』さん、院長との話は終わったんですか?
 また、私が『患者さん』の相手をした方がいいんですかね?」

逆に『鈴元』の方から問いかけてくる。

557鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/01(月) 22:56:54
>>556

「そうなんですねぇ」

武藤が対応したなら安心だ。

「院長先生とのお話は終わったんやけど、他にも疑問があって」

「……『笑顔のディッシュ』について聞きたいんやけど」

558『せんせいのかくしごと』:2019/04/03(水) 07:00:18
>>557(鈴元)

「そうなんですよー」

『鈴元』の反応をオウム返しする『鬼塚』。
その様子は朗らかだ。
                  ………『その時』までは。

 ゴゴゴ
        ゴゴ

    ゴゴ

                         ゴゴ
             ゴゴゴ

『笑顔のディッシュ』という言葉を『鈴元』が発した途端、
『鬼塚』の様子が一変する。
何か、ただならぬオーラを放っているような気がする。

『鬼塚』の方を見る。その表情は時が止まってしまったかのように読めない。

「『笑顔のディッシュ』……? そう言いましたか………?

                               それって」


   ―――そして。

「それってローカルTV制作ながら口コミでプチバズりをめくるめく繰り返し
 今まさにクライマックス編を迎えようとしている『満腹戦隊タベルンジャー』、
 そのムードメーカーにしてノリボケ担当、黄色を司る『笑顔のディッシュ』!
 (タベルンディッシュ)。彼の事ですか?いや彼の事ですよねそりゃあね、
 他にそんな特徴的な名前のキャラなんているはずもないですよね(笑)。
 ああでも私としてはリーダーの『憤怒のナイフ』(タベルンナイフ)推しかな
 彼っていつも義憤に駆られてるんですけど落ち着くためにリンゴの皮剥き
 するんですよね。その皮の長さで怒りの強さが分かるって演出がエモい
 んですけどこの前のナイフ妹回見た?って見てないないですよねハハ
 皮が床までいって蛇がトグロ巻くみたいになっちゃってタベルンカップ、
 ああもちろん『安楽のカップ』の事ですけど彼に心配されるんですよ、
 あのカップがですよ?そこが尊いというか、いや別に刃×杯推しじゃあ
 ないんですよ?基本は刃×匙、いや匙×刃だな。うん。で、ナイフが
 結局、妹助けるんですけど、そのシーンがまた、またね……(極泣)。
 でも妹、意外と怪しいんですよね。今更六人目はないと思うんですけど
 三月で終わりですしね。いやでもマジで三月で終わっちゃうんですよ。
 終わったら私はどうすればいいんです?ロスってレベルじゃないですよ
 デスですよキルですよ、あああ、なんだか辛くなってきたどうしよう……」

怒涛の詠唱が始まった。
適当なところで止めないと延々と続いていきそうだ。

559鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/03(水) 23:13:50
>>558

「……」

(お兄ちゃんみたいやなぁ)

ここにはいない兄の姿を思い浮かべる。
思い返しても仕方のないことだが。
鬼塚に喋らせ続けてもいいが、終わりが見えない。
多分、終わらない。
鬼塚という人間の対話能力というのはカウンセリングである程度認識している。

「あ、あぁ、その笑顔のディッシュなんやけど……」

「院長先生と話してる時にそんな事聞いて。『鬼塚さんが好きなキャラクター』って」

「センセにも笑顔のディッシュの話しはったんかな?」

「後、そのキャラクターの見た目ってこんな感じ?」

阿多の描いた絵の特徴を伝えよう。

560『せんせいのかくしごと』:2019/04/04(木) 21:34:47
>>559(鈴元)

 !   !    !    !     !    !
   !    !    !    !     !    !

言葉のマシンガンの合間をくぐり、『鈴元』はなんとか自分の疑問を挟み込む。

「それは確かに『笑顔のディッシュ』ですね。
 あと、先生にも勿論話しましたよ。だって…………」

  と、ここで『鬼塚』の言葉が濁る。

「………い、いやなんでもないです。

 ……それよりアレですね、アレ。ディッシュ回の話します?
    『さらわれた』と『皿割れた』がダブルミーニングになっていた回。
    アレはガチでヤバい!て思っちゃいましたよね。途中で離脱とか
    アリなの!?って………」

何か不自然に話題を捻じ曲げた様子がありありと見てとれた。

561鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/05(金) 01:04:06
>>560

不自然。
どう突いたものか。
あまり優しくばかりしていても駄目だろうか。

「何でもあらへんことないよ」

「だって、何?」

「ディッシュ回も匙×刃もあんたさんの思うエモい(?)もオモロいも全部聞く境に、隠さんと僕に教えて欲しいんよ?」

562『せんせいのかくしごと』:2019/04/06(土) 23:03:30
>>561(鈴元)

「………いや! なんでも、なんでもないですよ!
 あ………そうだ、私は仕事中なんです!
       そうなんですよ!」

 『鬼塚』が何か『隠し事』をしているのは明白だろう。
 それも『阿多』に関する事のようだ………

「そろそろ失礼しなくてはいけないんですよ!
 先生は私と違うタイプだから………
 裏切るわけにはいかないんですよ! 残念ながら!」

『鬼塚』は半ば強引にその場から去ろうとしている。
『隠す理由』、それを指摘してやれば観念するかもしれないが………

563鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/07(日) 00:58:13
>>562

「……僕も仕事中やで」

何故隠す。

「それは、阿多センセが絵を描いてまうぐらい笑顔のディッシュのフアンやからですか?」

「それとも鬼塚さんと違うタイプのお人さんやからですか?」

確実に一歩進める好機が目の前にある。

「それとも、これが呪いの問題に関わっとるからですか?」

「鬼塚さん。それを聞くまでは僕はなにがなんでもこだわらせてもらいます」

564『せんせいのかくしごと』:2019/04/07(日) 23:59:33
>>563(鈴元)

 「え………あ………あ―――」

去ろうとしていた『鬼塚』に『鈴元』は言葉を浴びせる。

「絵を………そっか、『先生』の絵を見てしまいましたか。

        ………仕方ないですね。秘密ですよ?」


そして、『鈴元』はついに観念したようだ。
 深いため息をついた後、


  「『阿多先生』は――
                  『隠れオタ』なんですよ」


  信託を告げるようにそう言った。

「私がこのクリニックに来たそもそものきっかけは、
 『先生』がイベントでマンセ(※GM注:満腹戦隊の略)のグッズを
 買い占めているのを見かけたからなんです。
 その姿に見惚れた数日後、偶然、『先生』のクリニックの求人を見て、
 矢も楯もたまらず応募しました。
 そして無事、勤める事が出来たんですけど………。

  でも、『先生』は私がいくら『満腹戦隊』の話を振っても食いついて来ませんでした。
  ピンと来ました。『先生』は『迫害』を避けているのだと………。
  この趣味は色々悪く言う人がいますからね―――
  それを責める気には、なりません。私だって色々ありましたから。

   けれど、私は知っています。油断した時のスマホの着信音が『ゆけ!タベルンジャー』だったり、
   たまに満腹戦隊、特に『笑顔のディッシュ』の絵を練習している事を………。
   先生は手術も上手いし、とても器用なんですよね、だから絵を描くのも上手い」

『鬼塚』は至って真面目な口調で、ウソを言っているようには見えない。
やたらと『阿多』の事を『趣味がいい』と言っていたのはこれが原因だったか。

「………ってわけです。
 たぶん、鈴元さんは『呪い』絡みの『隠し事』だと思ったんでしょうけど、
 全然関係ない話なんですよ!

  話をきかないと納得しないでしょうから話しましたけど………

         ………みんなには、内緒ですよ?」

565鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/08(月) 12:46:04
>>564

「……さいですか」

「言わんよ。誰にも」

言ってどうなるというのだろうか。
それを言うことで解決するのなら心を鬼にするがそうでない限りは掘り起こしはしない。

「……」

あてが外れた感じがする。
また情報を探すところから始めよう。

566『せんせいのかくしごと』:2019/04/09(火) 23:13:17
>>565(鈴元)

「ならよかった。
 じゃあ私はこれで―――

 あ………マンセの話ならいつでもたっぷりしてあげますので」

『鬼塚』は『鈴元』が沈黙したのを機にペコリと礼をして去っていった。

 ………

何か意味ありげな『笑顔のディッシュ』はただのローカルな戦隊モノの
登場人物の一人で『院長』はそれについて知られたくないから隠していた。
『鬼塚』の見解では彼女が『隠れオタ』だったから………

普通に考えれば、『呪い』とは程遠い情報だ。
無用な情報に振り回され、無駄な時間を過ごしてしまった。
そういう事なのだろうか―――

                     ………

「………あ、居た。鈴元君」

 入れ変わり立ち変わり………
  トイレという場所柄だろうか、次にやってきたのは『門倉』だ。

「いったい何だったんだい? 『笑顔のディッシュを!』って」

 『ザ・ギャザリング』の叫びを『門倉』は聴いていたらしい。

567鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/11(木) 01:24:45
>>566

「どないしよかな……」

「あ、門倉さん」

ぺこりと会釈をした。

「あぁ、いや、笑顔のディッシュって戦隊モンがあるらしくて」

「それが関係あるみたいやったから、それを伝えたんやけどぉ……」

効果があるかどうかは分からない。

「鬼塚さんが好きみたいで、院長先生は……ええっと」

言わないと約束した。
何か言い変えられないか。

「院長先生も興味あるみたいやわ」

568『せんせいのかくしごと』:2019/04/12(金) 00:10:41
>>567(鈴元)

「『戦隊モノ』………?」

 『門倉』が怪訝そうな顔をする。

「そういうのって小さな『子供』が見るものじゃあないのか?

  『鬼塚さん』が好き………?
     『院長先生』も興味がある………?

                その話、本当かい?」

 『理解できない』といった顔で『門倉』は首を振った。

 つまりはこういう反応がイヤで、『阿多』は、『笑顔のディッシュ』に造詣が深い事を隠している。

            ………そういう事なのだろうか?

 ………

「とにかく、それが『呪い』と関係がありそう、という事なんだね?」

569鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/12(金) 00:28:27
>>568

「うん、多分……」

本当にそうなのだろうか。
たしかにこの反応が嫌なのもあるだろうが、それだけか?
何か、どこかで繋がっていないのだろうか。
スタンドが精神の現れなら、その精神に関わるそれが関係していてもおかしくはない。

「……」

そう言えばスマホを起動させていたはずだ。
笑顔のディッシュを改めて調べておこう。

570『せんせいのかくしごと』:2019/04/12(金) 20:00:52
>>569(鈴元)

鈴元はスマホで『笑顔のディッシュ』を検索し、一番上のサイトを開く。
どうやら『満腹戦隊タベルンジャー』の紹介文のようだ。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

○満腹戦隊タベルンジャー○

ローカルケーブルテレビ『ホシフル』にて○○年〜××年(去年から今年)の間、放送されている『戦隊モノ』。
制作者が『自らの顔をあげてまで飢えを癒す超有名ヒーロー』に感銘を受け、
『お腹一杯食わせるヒーロー』をテーマに掲げ、作られた。
登場するのは『憤怒のナイフ』(タベルンナイフ:赤)・『冷静のフォーク』(タベルンフォーク:黒)
『哀愁のスプーン』(タベルンスプーン:青)・『笑顔のディッシュ』(タベルンディッシュ:緑)
『安楽のカップ』(タベルンカップ:黄)の五人。
低予算でのチープなつくりだが、イケメンの俳優陣を揃えた為か
メインターゲットである『少年層』だけでなく、その『母親層』からもそれなりの支持を受けている。

〜あらすじ〜

飽食の時代と呼ばれる現代日本―――
毎日、大量廃棄される食糧たち―――

『そんなに捨てるのならば、俺たちなど要らないよなあ』

雑に扱われた食べ物たちの『恨み』が集い産まれたのが『飢餓人(キガジン)』達だ。
食べ物を模したデザインの彼らが、あれやこれやの手で人間たちを飢えさせようと画策して来る。

その事態を見るに見かね、大事に使われていた『食器』たちの思いが一つとなり、
五人のヒーローを生んだ。それが『満腹戦隊タベルンジャー』である。
果たしてタベルンジャーとキガジン達の戦いの行方は………

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 「ふぅん……」

 いつのまにか『門倉』も『鈴元』のスマホを覗き込んでいた。

   「あ、やはりメインターゲットは『少年層』なんだな。そりゃあそうだろうね」

     変なところに興味を示し、うんうんと頷いている。
      自分の感覚が正しいと確信できた、というところか。

571『せんせいのかくしごと』:2019/04/12(金) 20:04:14
>>570
(誤)
>登場するのは『憤怒のナイフ』(タベルンナイフ:赤)・『冷静のフォーク』(タベルンフォーク:黒)
>『哀愁のスプーン』(タベルンスプーン:青)・『笑顔のディッシュ』(タベルンディッシュ:緑)
>『安楽のカップ』(タベルンカップ:黄)の五人。

                    ↓

(正)
>登場するのは『憤怒のナイフ』(タベルンナイフ:赤)・『冷静のフォーク』(タベルンフォーク:黒)
『哀愁のスプーン』(タベルンスプーン:青)・『笑顔のディッシュ』(タベルンディッシュ:【黄】)
『安楽のカップ』(タベルンカップ:【緑】)の五人。

572鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/12(金) 23:21:13
>>570

「まぁ母親層……女性からも人気はあるみたいやし」

若干フォローのようなことを言っている自分がいる。
何となく、悪い印象を与えたままにしておくのが申し訳ない気がしている。
でも多分鬼塚が好きなのは関係性も含めた作品の内容であって、イケメンだからというわけでもないのだろうけど。

「そう言えば、看護師の人と話してんけど、言ったら呪いが発動する言葉があるんじゃないかーって考えてはるみたいで」

「僕もそうかなぁって思うんですけど、どないやろうか?」

この場合のどう、というのは正しいと思うか否かという部分と、この番組もどこかに噛んでいると思うかという部分がある。

「福笑いっていう発想からは離れるけど」

「例えば、作品の内容になんか絡んでるとか」

573『せんせいのかくしごと』:2019/04/13(土) 02:11:09
>>572(鈴元)

「『母親層』か―――そういうものなのかね」

『門倉』は納得したようなしていないような、ビミョーな表情を見せる。

 ………

「『呪いが発動する言葉』か………うん、その可能性は大いにあるんじゃあないかな。
 被害者に共通点は見つかっていないし、長く喋る事でたまたまそのワードを踏んでしまった。
 という事なら『無差別』に『呪い』が出ている現状に説明がつく。

 そして………作品というのは『コレ』か。

   ………

     ………そもそも『コレ』が絡んでいるという根拠がよく分からないんだが」

 ここで『門倉』は声をひそめる。

「『鈴元君』としては、コレが好きな『鬼塚さん』、
  あるいは『院長』が、その………『犯人』だと思っているという事なのか?」

574鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/13(土) 22:24:09
>>573

「……やっぱり、繋がりとかなさそうやんね」

阿多が絵を書いていたのが思ったよりも引っかかったのだ。
ただそれだけの事だろう。
何かあるかと思うが、話しているうちに呪いとこの作品に繋がりはないと考えている。

「……今のところは」

「呪いが起きる前後に働き始めた鬼塚さんは、他の人よりは怪しいとは思ってる」

575『せんせいのかくしごと』:2019/04/14(日) 15:21:22
>>574(鈴元)

「なるほど………なかなか難しいな」

『門倉』が腕組みして考え込む。

「前も言ったかもしれないが、謎を解き明かすには
『犯人』『犯人の目的』『呪いの詳細』『呪いのキーワード』あたりを
明らかにしていくのがいいんじゃあないかと思う」

『犯人』――――――『呪いの起きる前後に働き始めた』という理由で
             『鬼塚』は確かに怪しいのかもしれない。

『犯人の目的』―――ただ、その場合、『目的』はなんだろう。『鬼塚』は
             少なくとも表面上は『院長』を慕っているように見える。
             『呪い』が続き、ここが潰れてしまえば『院長』と
             『鬼塚』の関わりは絶たれてしまう。
             そもそも、『呪い』が続きここが潰れる事で
             『利する者』など今まで会った関係者の中にいるのだろうか―――

『呪いの詳細』―――『呪い』………『小さな手』が『顔のパーツ』を無作為に動かす。
             それは『福笑い』という児戯、『呪い』とはかけ離れた言葉が
             ピッタリ来るように思うが、仮に能力がそれをモチーフに
             しているとしてなんだというのか―――

『キーワード』―――『福笑い』がモチーフだとしても単純に『笑い』や逆に『怒り』などが
             関係しているわけではないようだ。
             もっと他の、関連した『何か』がキーワードか―――
             ………もちろん、これは『福笑い』が『正しい』としたらの話だが。

「『犯人候補』である『鬼塚さん』を更に問い質すか………
 地道に『キーワード』を探るために『呪い発現』のケースをもっと収集していくか………
 『調査』を進めるならこんなところかな?」

『門倉』が提案する。それに従ってもいいだろうし、
『鈴元』に何か『閃き』があれば、それに沿ってもいいだろう。

576鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/15(月) 23:47:28
>>575

「んー……」

指が髪の毛をいじる。
どうするか。
現状、ひらめきは無い。
だからまた地道にやるしかない。

「とりあえず、キーワード探しかなぁ」

577『せんせいのかくしごと』:2019/04/16(火) 21:19:50
>>576(鈴元)
『鈴元』は『キーワード探し』について考える。
『キーワード』について調べるならば………

『カウンセリングルーム』にて新たな面接を行い、『呪い待ち』する。
あるいは『武藤』が持っているという『呪いの録音』を聞かせてもらう。
後は『阿多』に頼んだ以前『呪い』に遭ったという『診察室の患者』との
電話アポがとれているかを確認する。

このあたりだろうか。もちろん間接的に『キーワード』についての
心当たりを聴いて回るなどの挙動も考えられる。

 ………

「なるほど……ならば、俺はまた『セラピールーム』の方へ戻ろうか。
 二人目の面接も終わったが、まだ『当たり』がなくてね。
 少ししてから三人目が来るようだし、立ち会うのがいいかな」

『キーワード探し』という言葉を受け、『門倉』はそう提案する。
何か別の事をやって欲しいのなら頼んでおくといいのかもしれない。

578鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/17(水) 00:28:21
>>577

とりあえず武藤の録音を確認しに行こう。
情報は多い方がいい。
今までの分と照らし合わせられる。

「じゃあ、僕は武藤さんが持ってる録音を聞かせてもらおかな……」

「……門倉さんにはセラピールームをお願いして」

現状、鬼塚についてなどは憶測の域を出ない。
徒労になる可能性もあるので、同じ分野で呪いの謎を解きに行こう。

579『せんせいのかくしごと』:2019/04/18(木) 06:47:37
>>578(鈴元)

「分かった。ではまた―――」

『門倉』はそう言うと、『セラピールーム』の方へ向かう。

 ………

『鈴元』は、『武藤』に会いに行く事にする。
『武藤』が居るのは『レストルーム』か『カウンセリングルーム』、
あるいは『スタッフルーム』あたりだろうか。
『鈴元』に対応できる時間の余裕があればいいのだが―――

580鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/18(木) 23:32:00
>>579

武藤はどこにいるだろうか。

「……んー」

レストルームかもしれない。
呪いを受けた患者の応対は彼女がしているはずだ。
あの落ち着いた態度なら混乱した相手が落ち着いてからの話し相手としては適切だろう。
レストルームに向かう。

581『せんせいのかくしごと』:2019/04/19(金) 19:01:53
>>580(鈴元)

『武藤』の居場所に見当をつけ、『レストルーム』に向かう『鈴元』。

 ………

『レストルーム』のドアを開けると、予想通り、
そこには『武藤』が居る。パニックを起こした
患者たちはベッドで休んでいるようだ。

「あら、『鈴元さん』………調査は進んでいますか?」

よく見ると少し奥の方に『鬼塚』も居る。

582鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/20(土) 00:22:20
>>581

「どうもぉ」

「調査はまぁおかげさんで……」

「弟さんにもお世話になって」

武藤の方に近寄る。
録音の確認は人前でおおっぴらに出来ないだろう。

「録音の確認をさせてもらいたいんやけど……」

そんな風に耳打ちをしよう。

583『せんせいのかくしごと』:2019/04/20(土) 00:59:22
>>582(鈴元)

「弟……? ああ、不肖の」

『武藤』は一瞬だけ眉を顰めた。

「そして、『録音』ですか。そうですね―――
 ここは『鬼塚さん』に任せれば大丈夫ですし、
 次の患者さんまでは少し間がありますし。

      『スタッフルーム』に行きましょうか」

そう言うと『武藤』は『鬼塚』に少しだけ言付けし、
『鈴元』を促すように部屋を出ていこうとする。

問題なければ彼女と共に『スタッフルーム』に向かえばいいだろうし、
その道中、『確認したい事』があれば訊いておけばいいだろう。

584鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/20(土) 01:18:44
>>583

「ふふ……」

笑ってみせるが内心、ひそめられた眉が気になる。
どこかで自分もそんな風に言われているような気がしている。
しかし、それは今は関係の無いことだ。

「スタッフルームやね」

武藤に一緒に向かおう。

「そういえば、レストルーム内で呪いが再発したりとかってあるんです?」

585『せんせいのかくしごと』:2019/04/20(土) 01:38:44
>>584(鈴元)

二人は『スタッフルーム』へと向かう。

「『レストルーム』での『再発』は………確かなかったはずですね。
 大人しく休んでいる限りでは大丈夫という事なのかしら」

『武藤』はそう返答する。

 ………

そして、『スタッフルーム』に着く二人。
中には誰もおらず、気兼ねせず『録音』を確認できそうだ。

『武藤』はロッカーから『ボイスレコーダー』のようなものを取り出し、操作する。

「―――さて、準備はできました。再生して良いですか?」

586鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/20(土) 01:58:12
>>585

「やっぱり話したりせんのがエエんやろか?」

なにかキーワードが引き金になっているなら、だが。
カウンセリング中にキーワードをよく踏むのなら、ある程度傾向もありそうではある。

「えぇ、再生をお願いしますぅ」

587『せんせいのかくしごと』:2019/04/20(土) 02:01:25
>>586(鈴元)

「では、早速―――」

『武藤』は『ボイスレコーダー』をインタビュアーのマイクのように『鈴元』に向けた。
聞こえやすいようにという配慮か。『録音』は確か、『二名分』という話だったか―――

「まずは、『上条沙織(かみじょう さおり)』さん。
 目的は目尻の皺取りだったかな。彼女の『愚痴』は夫の母についてでした。

                         では、再生しますね」

  ポ  チ


 <……義母は私の事を家政婦かなんかだと思っていたんでしょうね。
     最初の頃のように時折ガミガミ言うだけならまだ可愛げがあったんですけど………
     夫と共謀して私を貶めてくるのには本当に辟易しました。
     夫の姉なんかも巻き込んで私を追い詰めてくる事もあったり。
     離婚? そりゃあ勿論考えてはみましたけど………
     でも子供がいるから。子供には罪はないから。
     別れてしまうという事までは考えられませんでした。
     それでですね、ある日………

                 え……          ええ  ! ? >


                             ポ  チ

 「この『えええ』のタイミングで顔が崩れたのに気付いたんですね。
 その後はパニック音声が続いていますが………
 『呪いの条件』を知るという事でしたらここまでで良いでしょう」

  『武藤』は淡々と説明していく。

  顔が崩れるのに『痛み』などの感覚はないようだから
  気づくのに『タイムラグ』がある可能性は大いにある。
  とはいえ、これだけ事前に会話まで再生したのであれば
  もし『キーワード』があるのならば、おそらくはこの中にあるのだろう。

588『せんせいのかくしごと』:2019/04/20(土) 02:03:17
>>586(鈴元)

「続いては『多摩川 糸子(たまがわ いとこ)』さん。
 この方は………頬を削る手術でしたか。
 『派遣社員』として働く理不尽を愚痴られていました。

  ポ チ

<いや―――そりゃあね………アタシだって
 『派遣』の道を選んだのはアタシ自身だってのは分かっているよ。
 でもさ、名前すら呼ばれない。ただ『ハケン』って頭ごなしに呼びつけられて………。
 『正社員』の奴ら以上の仕事してるってのに見下されっぱなしで過ごす事の屈辱!
 『ハケンの癖に』『ハケンが口出ししていい事じゃあない』
 『ハケン黙ってろ』『ハケンのせいじゃあないの?』
 ハケンハケンハケンハケンハケンハケン………アタシには人格があるんだ!
 『多摩川糸子』って名前があるんだ! うううう……

                       ……… ………ううううう………>

                            ポ チ

「この後泣きじゃくってしまって気づくと『顔』が崩れてしまったのでした。
 この方はなだめるのが大変でした―――」

『武藤』は淡々とした口調を変えず、

                      「―――以上です」


         『録音披露』を終えた。

589鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/21(日) 00:58:59
>>587-588

「……」

愚痴であることは共通点だ。
呪いがキーワードで起きるなら、両方に共通するものがもっとあると思うが。
……特定の言葉でなく、言葉の方向性だったりするのだろうか。
愚痴ってるというだけなら、門倉の応対した患者もそうだった気がする。
鬼塚と応対した患者は割とリラックスした感じでもあったし……

「……武藤さんからして、どう思います?」

「弟さんと話した時は、なんか呪いを起こす言葉があるんやないかーって、言ったりもしてたんやけど」

「武藤さんはなんか心当たりはあったりします?」

590『せんせいのかくしごと』:2019/04/21(日) 07:46:37
>>589(鈴元)

「弟がそんな事を………不束な」

『武藤』はそう言うと少し考え込む。

「でもまあ、そうですね。私の役割として悩みなどを聴くケースが多いので
 必然的にそういうシチュエーションでの『呪い』が多いですけど、
 そうでない和やかな雑談でも『呪い』は出ていると聞きますし、
 場面や話題は様々といった印象はあります。
 だから、そういった雰囲気とは関係なく、何か、特定の言葉を
 言ってしまうと『呪い』が出るというのは、まああり得る事なのではないでしょうか。

 ただ、その言葉がまったく同一のものではないでしょうね。
 それならさすがに私たちの誰かが気づく―――
 あとは、その言葉をそのまま使っているケースは
 もしかしたら少ないのかもしれません。つまり、
 会話の流れの綾でたまたま、その言葉を言ってしまっている、とか。
 そうなると『分かりづらさ』は更に増しますからね」

『武藤』も、もう一つの『武藤』と似たような見解のようだ。

591鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/22(月) 21:18:40
>>590

「はぁなるほどぉ」

見解は一致している。
少なくとも現場にいる人間が肌感覚で感じていることは重要だ。
ただやはりと言うべきか、呪いの現象、そのシチュエーションの幅が広い。

「あるいは、特定の言葉っていうより発言の方向性とかその時の感情とかも見るべきなんかもしれへんですかね」

「……」

この言葉、ではなくこの方向性。
感情の発露。
いや、それも遠いか。

「……」

福笑い、その考え方で言えば笑って欲しい時とか。
どこか悲観的な発言をした時に、とか。
ただ板槻の時はそれほど悲観的でもなかった気がする。

「録音、聞かせてもろておおきに」

592『せんせいのかくしごと』:2019/04/23(火) 03:40:19
>>591(鈴元)
「発現の方向性――― 感情―――
 そういう可能性もあるかもしれないけれど

  ………そのあたりの一貫性となると私には分からないですね」

『武藤』が返す。彼女にはおそらく『呪い』時に出る『小さな手』が見えていない。
見えていればその推理に差があったのかどうか………

「いえいえ。お役に立てる事があれば最大限に協力しますね」

『武藤』は大きく礼をした。何事もなければ仕事へと戻っていくだろう。
その後、『鈴元』はどうするか考えなくてはならない。

593鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/24(水) 23:55:25
>>592

「……」

「ほんま、おおきに」

多分、新しい閃きがないかぎりは武藤への質問で新しい鍵は得られないだろう。
現状それが浮かんでいない限りは武藤の時間を取るのはしのびない。

次は阿多の所に行ってアポが取れてるかの確認をしよう、

594『せんせいのかくしごと』:2019/04/26(金) 20:59:50
>>583(鈴元)
『武藤』に礼を言い、部屋を出る『鈴元』。
その足で『院長室』へ向かう。

 ………

『院長室』をノックすると、

    「―――どうぞ」

『阿多』の声が聴こえる。
その言葉に従い、入室する『鈴元』。

「………ああ。
  ………なにか、用かしら?」

『阿多』は自分の机の椅子に座っていた。
少々、苛立っているようにみえるのは、先程、『笑顔のディッシュ』について
問い詰めた件があるからだと思われる。

595鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/27(土) 00:56:42
>>594

「阿多先生、さっきはすいませんでした」

最敬礼。
謝罪する。
踏み込まれたくない部分に踏み込んだのは事実だ。
許して貰えるとは思わないが、謝らなければならない。

「さっきの無礼は仕事の結果でお返しさせていただきます」

596『せんせいのかくしごと』:2019/04/27(土) 14:17:12
>>595(鈴元)

「…………」

『阿多』は、ほんのわずかの間だけ値踏みするように『鈴元』を見る。
だが、すぐに目を深く閉じ、そして開ける。

「こちらこそ、申し訳なかったわね。
 失礼な態度をとってしまって―――」

『笑顔のディッシュ問題』―――

『阿多 佳久子(おた かくこ)』がそれを隠しているのは『隠れオタ』だから。
いい大人が理由もなく『子供向けの特撮』に興味を持っているのを
良く思わない人間も居る。だから隠している………

                ―――『鬼塚』の見解では、そういう事らしい。

 「………それで、用件は何かしら?
  仕事の結果で返すという事は何か朗報でもあった?」

『笑顔のディッシュ』についてはそれ以上は触れない。
ただ、『隠れオタク』というだけであれば、これ以上掘り下げる意味はなさそうではある。
そっとしておくべきか―――

597鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/27(土) 23:01:39
>>596

鬼塚の見解が正しいかはともかく、いま触る部分ではないのは確かだろう。
……鬼塚から聞いた話とかをすれば認めてくれたりしないだろうか。

「朗報、と言われるとそうとも違うとも言えへんのですけど」

「呪いの輪郭、みたいなのは分かってきてる感じですぅ」

「それで……アポイントメントの件なんですけど」

確認してみよう。

598『せんせいのかくしごと』:2019/04/27(土) 23:14:35
>>597(鈴元)

『鬼塚の話』をぶつければ観念して話してくれるかもしれない。
そんな想定をしつつも、とりあえずはアポの件を『阿多』に問う『鈴元』。

「そう……進んでいるのならよかった。
 『アポイント』……? ああ、『玉置』さんの件ね。

 彼女には連絡がとれて―――
  『少しなら話してもいい』と言ってくれているわ。

  貴女の準備がいいのなら、私から再度、電話するけれど」

『玉置』………『診療室』で呪いが出たという30代の女性(>>432)。
どれだけの情報が得られるかは不明だが、一応話はできるようだ。

599鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/28(日) 12:13:00
>>598

「僕の準備は大丈夫です」

そう告げる。
現状後ろに詰まったものは無い。
であれば時間が惜しい。
すぐにでも電話を取り次いでもらおう。

「今からでも大丈夫ですか?」

600『せんせいのかくしごと』:2019/04/28(日) 12:28:34
>>599(鈴元)

「ええ、分かったわ」

『阿多』は電話の子機を操作し、電話をかける。

 ………
                   ガチャ

「―――もしもし、私、『阿多美容クリニック』の阿多と申します。

 はい、はい……そうです。
                    先程話した件なのですが………

   大丈夫ですか―――では、ただいま代わります」

『阿多』が『玉置』に話をつけてくれたようだ。
子機を『鈴元』に渡してくる。

601鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/28(日) 21:23:56
>>600

「おおきに」

阿多に例を言って子機を受け取る。

「お電話代わりました。鈴元涼ぉ言います」

「玉置さん、でよろしいでしょうか」

どんな人だろうか。

602『せんせいのかくしごと』:2019/04/28(日) 21:40:40
>>601(鈴元)
「あァはい。玉置です。アナタがアレですか?
 何か話をききたいとかいう―――

  あの時の事は………辛い思い出なんですけど」

少しだけ早口の電話越しの声。彼女が『玉置』か。
自分の顔が崩れたという謎の事件は確かにあまりいい思い出ではないだろう。

「幸い後遺症なんかは一切なくて、
 落ち着いてから、手術もしっかりとして頂けましたから
 満足はしているんですけどもね………ええ」

603鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/29(月) 23:18:18
>>602

「はい。こちらとしても、思い出させるようなことになって申し訳ないです」

こちらはゆっくりと会話をする。
相手の早口に合わせるとお互いに焦ってしまう。

「お話しいただける範囲だけで大丈夫なので……」

「それで、当日の事を聞きたいんですけど、よろしいですか?」

604『せんせいのかくしごと』:2019/04/29(月) 23:53:11
>>603(鈴元)

「当日の事、ええ、ええ、ええ。
 先生と私の話は『録音』してあったので、
 ―――忘れちゃっている事でも時間をかければ答えられると思います」

 『玉置』が答える。

「あ。『録音』してあったのは別に変な意味があったわけじゃありませんよ。
 『先生』は分かりやすく説明してくれますけど、それでも
 一回じゃあ理解できない時もあるんでその復習の為に。ええ、それだけの意味です」

どうやら彼女は当日のやりとりを『録音』していたようだ。
『武藤』といい、最近は『手軽な記録』として
『録音』や『録画』はメジャーなものなのかもしれない。

605鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/30(火) 00:55:32
>>604

(録音か)

録音した事実自体は関係ないとは思う。
何を話したか、どんなことがあったのかが問題だ。
とりあえずはその時のことを聞いてみよう。

「まずは当日のことをお聞かせ頂いてもエエですか?」

「どういうお悩みで来られて、どんな話をしたとか」

「その時のお気持ちとか……」

606『せんせいのかくしごと』:2019/04/30(火) 08:00:57
>>605(鈴元)

「ええと………私は当時………
 男に捨てられたんですよね。
 『更科 健(さらしな けん)』………
  ああ、いま思い出してもおぞましいこの名前!
  結婚まで考えていたんですよなのに………」

『鈴元』の問いに『玉置』が語りj始める。

「気持ち? だから最悪ですよね。
  それで吹っ切って新しい人を探すために
   『二重手術』をしに来たんですけど………
    思いのたけを爆発させちゃってつい
    『先生』に長話をしちゃっていた記憶があります」

当日、彼女はかなり怒っていたようだ。

「話はだから、あいつ―――健の事ですよ。
 健は眼科医だって話で親も代々開業医だって言ってたのに
 すべて出鱈目、騙されていたって話をしました」

607鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/04/30(火) 23:53:24
>>606

「それは……」

辛いですね、と言いかけて少し考える。
辛い思い出を思い返させているのはこちらだ。

「大変でしたねぇ……」

まぁ、その後また大変なことになったのだけれど。

「それで、話をしていた時に、お顔が……?」

608『せんせいのかくしごと』:2019/05/01(水) 00:18:41
>>607(鈴元)
「そう………ですね。
 精神的なものだと………説明は、されましたけど」

『玉置』が答える。
そういえば『阿多』は『整形する際の不安が顔に現れる事がある』などと説明したと言っていたか。

「そこまで不安定だった気はしないんですけど………ね。
 そりゃあ、健に騙された事でそれなりにやさぐれてはいましたけど」

精神的には不満はあったものの特異なものではなかったようだ。

609鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/01(水) 23:18:01
>>608

阿多の言葉も真相が明らかになれば間違いではないのかもしれない。
あくまで、カモしれないという話で今まで出会った患者がそうなのかは分からないが。
……そうでない人もいたような気がしないでもない。
実際彼女もやさぐれてはいても不安はそこまでなかったようだし。

「……お顔のことが起きる前にどんなことを話してたかとかは、お話頂けますか?」

何か、キーワードのようなものがないか探す。
この言葉のあたりで、というのが分かれば前進にはなると思うが。

「より具体的にというか、こんな感じでこんなことを話してた、というようなことをお教え頂きたいんですけど」

610『せんせいのかくしごと』:2019/05/01(水) 23:50:44
>>609(鈴元)
「顔の変化が起こる前に話していた事………
ええと、さっき言ったとおり、いわゆる『結婚詐欺』、
騙された事に対する愚痴のような話です」

『鈴元』の問いに答える『玉置』。

「―――よければ、電話越しに流しましょうか? 『録音』」

そして、『玉置』が提案してくる。
一字一句覚えているわけではないだろうから、その方が『正確』ではありそうだ。

611鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/02(木) 10:36:06
>>610

「お願いします」

録音の確認が出来るのはありがたい。
確実なことだ。
玉置にその旨を伝えたい。

(今回はどんな感じか……)

612『せんせいのかくしごと』:2019/05/02(木) 19:12:17
>>611(鈴元)

「はい、ではちょっとお待ちください」

  ガサゴソ
             ガサゴソ

電話越しに何かをいじる音が聞こえる。
『レコーダー』を構っている音か。
しばらくして―――


「………はい、準備出来ましたので、再生しますね」

  カ チ

       ジィィ……………



<―――そうですね。未だにふっきれていない、というのはあると思います。
      でも彼………本当にいい人だったんですよ。
      更科健………ダマせるような男じゃあないと思っていたのに。
      だけど――それは私の思い込みだったんですよね。
      これから新しい人生を過ごしていきたい、心からそう思います。


                ………え? なんですか?>


                            カ チ


 「………こんな感じでしたね。このタイミングで『先生』で
  顔がおかしいのを指摘されて、『レストルーム』に案内されたというわけです」

613鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/02(木) 22:20:10
>>612

「なるほど……」

「その先生っていうのは、阿多先生でお間違いないですね?」

そこもとりあえず聞いておこう。

「……」

内容的にはやはりと言うべきか不安という感じはない。
言葉自体もポジティブである。

「その後は変化もなく、手術へ……?」

「レストルームでは特に問題は起きませんでしたよね?」

614『せんせいのかくしごと』:2019/05/03(金) 09:43:45
>>613(鈴元)

「ええ、先生というのは『阿多先生』ですね。

 手術は『レストルーム』で休んで落ち着いてから………

 問題といえばもちろん、『顔』の事でしたけど、
 少しの間、『顔』の色々な部分が動いたように思えましたが
 そのうち穏やかになって、そしてしばらく経って、
 その症状も消えて………それからは至って普通、という感じでした」

『玉置』が素直に答える。
『呪い』の流れは今までの証言や目撃例と同様という感じか―――

615鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/03(金) 13:10:32
>>614

「症状が消える時は自然に? ゆっくり部位が戻る感じでした?」

これまでの情報と比べるべきところは、やはり呪いが起きるまでに話していた内容だろう。
ただ今回は患者に対して質問が出来る状況だ。
なるべく、呪いについて突っ込んでおきたい気持ちがある。

「何か変なものが見えたり、聞こえたりとかは……?」

616『せんせいのかくしごと』:2019/05/03(金) 14:23:55
>>615(鈴元)
「症状は……なんかある瞬間、パッとすべて戻った感じでした。
 一気に『解放』された―――そんな感触です」

『玉置』は考え考え発言を続ける。

「変なもの………視界が目にあわせておかしかったですけど、
 そういう事はなかったように思います」

『小さな手』の目撃証言はここでもない。

617鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/03(金) 15:13:46
>>616

「一気に……特に前触れとかもなかったですか?」

能力の解除条件にハマった感じだろう。
であれば時間制限のある能力か。

「おかしいものの見聞きもない、と……」

やはりスタンド。
顔をこねくり回すあの手。

「……目の他にこの部位がおかしかったとかは分かりますか?」

顔の変化に法則性があるかもしれない。

618『せんせいのかくしごと』:2019/05/03(金) 18:58:07
>>617(鈴元)

「前触れ………分かりませんでしたね。
 『目』の他は、『鼻』が動いてしまった感覚がありました」

『玉置』はそう答える。
『顔が動いた』という事以外におかしかった部分というのには気付かなったようだ。

619鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/03(金) 20:17:30
>>618

「それは下の方に落ちていきましたか?」

「いえ、その、覚えてらっしゃらなかったり、思い出したくない場合もあると思いますので……」

辛ければいい、ということだ。
阿多の話では最初の患者は顔の下にパーツが集まっていたと言っていたはずだ。
自分が見た患者は横に移動していた。
なにか差異があるのだろうか。
とりあえず聞いておこう。

「あと、病院に来る前に不審な人に出会ったとかは無いですね?」

620『せんせいのかくしごと』:2019/05/03(金) 20:45:06
>>619(鈴元)
「下……どうだったかしら。
 とにかくまるで『遊んでいる』かのように
 フラフラと動いていた記憶があります」

『玉置』の返答は続く。

「不審な人……? いえ………

 駅から歩いて行きましたけど、
 『学生さん』とか『主婦』の方とか
 人のよさそうな『お婆ちゃん』とか、
 そういった普通の方々とすれ違っただけですね。

  その人たちと特別何かあったというわけでもないですし」

621鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/04(土) 22:38:36
>>620

「遊んでいる?」

遊んでいる。
スタンド自身の動きになにかあるのか。
挙動そのものになにかの意思が。

「福笑いとか、そんなふうにですか?」

思い切って聞いてみる。
迷ってる感じでないのなら、そういう感情で動かしていたのだろうか。

「不審な方はいないと」

良かった。
病院の外からの要因なら探すのに骨が折れる。

622『せんせいのかくしごと』:2019/05/05(日) 21:25:26
>>621(鈴元)
「『福笑い』………あァ、そうですね。
 デタラメな動きは何か悪意を持ってやっているというより
 子供が楽しんでやっているような―――そんな印象でした」

『玉置』はそう答える。

「ええ………『不審』というのがどういうものか分からないですし、
 さっき言ったとおり幾人かの人に会うのは会いましたけど」

『呪い』の犯人が必ずしも『不審者』とは限らないが……
とりあえず『玉置』はそう返答した。

623鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/06(月) 23:33:18
>>622

被害者の実感として福笑いに同意を得らたのは大きい。

「子供が……」

「……ありがとうございます」

「他に何か感じられたことはありますか?」

624『せんせいのかくしごと』:2019/05/06(月) 23:58:16
>>623(鈴元)
「他には―――特にないですね」

『玉置』は答える。

「私は、その、確かにおかしな現象に巻き込まれたんですけど、
 『阿多先生』にはそれはもうしっかり手術をしてもらって、信頼してます。
 『医療一筋』という感じで『院長先生』として頑張っている姿が尊敬できるというか―――

 詳しい事は分からないですが、貴方が『先生』を助けられるというのなら、
 ぜひ………頑張って下さい」

                         そして、そう話を締めた。

何事もなければ終話すればいいし、まだ何かあれば確認してもいいだろう。

625鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/08(水) 22:18:22
>>624

「はい、必ず」

「改めて、ありがとうございます」

話を終えよう。
聞けることは聞けているはずだ。
これ以上、鈴元の中に聞いておかねばならないこともなかった。

「……終わりました。せんせぇ」

子機を返そう。
門倉の進捗も気になるところだ。
スタンドを動かして確認してみるか。

626『せんせいのかくしごと』:2019/05/08(水) 23:53:51
>>625(鈴元)
「そう、よかった。
 ―――何かいい情報があったのなら更に良いけど」

『子機』を受け取る『阿多』。更に、

「………私への用事はこれで終わり、という事でいいかしら?」

 ………

『ザ・ギャザリング』を『門倉』の方へと向かわせる。
居るであろう『セラピールーム』の前まで行くと、
ドアが薄っすらと開いており、見ると、中で『門倉』が一人伸びをしていた。

627鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/09(木) 22:50:58
>>626

「……そうですねぇ」

阿多に微笑む。
それから少し考えて、鈴元は言葉を発した。

「福笑いってどない思いますか?」

一方で『ザ・ギャザリング』を使って門倉に声をかけた。

『進捗どないです?』

628『せんせいのかくしごと』:2019/05/10(金) 08:19:42
>>627

「えっ? ………福笑い? あの正月の遊びの?」

『阿多』は虚を突かれたように答える。

「どう思うと言われても―――
 特別な感情はないので答えづらいわね」

 ………

「あ、『鈴元君』のスタンドか!
 出たよ! 『呪い』! 今、患者さんはナースの『角田さん』が
 『レストルーム』に連れて行って介抱しているところだ」

『ザ・ギャザリング』のスタンド会話に『門倉』は興奮気味にそう返してくる。

629鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/10(金) 22:18:57
>>628

「なるほど……」

まぁ、そりゃあそうかもしれない。
福笑いなんて年がら年中するものでは無いし。
そもそもしないかもしれないし。

「……もしかしたら、それが呪いを解く鍵なんかもしれないんです」

「変な話かもしれへんのですけど」

………………

『そうなんですか?』

『それで、どんな状況でした?』

ギャザリングを通して門倉に話しかける。
鈴元自身が口に出さないように気をつけておこう。

『……角田さん?』

『あの男の人ぉ……やんね?』

630『せんせいのかくしごと』:2019/05/11(土) 01:11:18
>>629(鈴元)
「『呪いを解く鍵』……なの? 『福笑い』が……?」

『阿多』は困惑しながら返す。
とりあえず『福笑い』というワードで
あからさまに動揺したり、思い当たるフシがある様子はない。
………もちろん、『演技』の可能性がないわけではないが。

これ以上の反応は漠然とした問いや説明では難しいかもしれない。

 ………

「『角田さん』はその通り、俺と一緒に患者さんの対応をしていた男のナースさ。
 そして、今回俺達が対応したのは『斉出 進太(さいで しんた)』さんという
 男性の患者さん。髭の脱毛がしたいという話で来たんだ。
 どうにもモテないという話でね―――そこで色々話してくれていたんだが。

 ああ! 『鈴元君』に聴かせようと思って、
 持っていた『タブレット』でこっそり『録音』しておいたよ。
 ―――聴いてみるかい?」

また、『録音』。ただ、『録音』していない際にも『呪い』は起こっている。
これは『発動条件』とは関係ないだろう。

631鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/11(土) 23:28:10
>>630

「えぇ」

「今回の件、僕は初めに『福笑いみたいに?』って質問をしたと思うんですけど」

「さっきの患者さんも『デタラメな動きは子供が楽しんでやってるような』……と」

悪意を持っている感じではない。
そう彼女は言ったのだ。

「やから、関わりはない訳では無いと思うんですよ」

………………

『録音とってはったん?』

手際のいいことだ。

『うん、聞かせてもらえるやろか?』

632『せんせいのかくしごと』:2019/05/12(日) 04:05:11
>>631(鈴元)

「………よく分からないのだけど、つまり、
      ここで起こっている事は『呪い』じゃあなくて
       その―――『福笑いをしている』って事なの?
           誰かが……なんというか………超常的な力で?

              ………そんな不謹慎な事、いったい何の為に」

ほんのわずかだが、『阿多』が動揺しているように感じる。
それだけ『鈴元』の話が衝撃的だったのか、それとも―――

 ………

「よし―――
   じゃあ行くよ」

                 タ  ン

<女なんか結局のところ顔で人を選ぶんですよね……
 僕だってね、いろいろ研究したんですよ。
『モテる人がやっている108の行動』とか『これが正しいナンパ術』とか
『つれない女を確実に落とす語録集』とか『恋とは?愛とは?決定版』とか
 バンバン読んで研究したんですよ。でもね、だけれどもね、
 ちっともちっともモテやしない。こりゃダメだ。何がダメだ?
 つまり、つまりは顔だったんですよ!顔さえよけりゃあ、
 こんな苦労はしなくていい。というわけでまずは
 手始めに髭面直しにここに来たとそういうわけなんですよね。

                  ………あ、 あれ?>

「………とまあ、こんな感じだね。
  気付くと彼の顔を『小さな手』が覆い出した。
   『口』とか『目』とかをグルグル動かし始めて、
           そして一分ぐらいで唐突に消えた、というわけだ」

『門倉』は述べる。『鈴元』が見た光景とさほど変わりはないだろう。

633鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/13(月) 01:08:12
>>632

「おかしな話ではあるんですけどぉ」

「でも無から花が咲かないように、呪いも誰かが種を蒔いた、とは考えられます」

少なくとも鈴元はそれをスタンド能力として捉えた。
自分に見える数少ない超常のもの。

「……何の為にかは僕にはまだ分かりません」

「知ってるとしたら犯人か、狙われてる人間……」

「もしかしたら、阿多先生自信が知ってはるかもしれません」

………………

『ん』

『んー……』

口と目か。
鼻とか目をいじくるのは見た事がある気がするが、口。
それは初めてのパターンか?

『門倉さんは、なんやキーワード? になりそうな言葉とかは検討つきます?』

『この言葉を境に……みたいな』

『後はこの患者さんのことどないな人や思いました?』

634『せんせいのかくしごと』:2019/05/13(月) 20:04:42
>>633(鈴元)

「………私が知っている? どういう意味?」

 『阿多』が答える。

「…………何か言いたい事があるなら、ハッキリ言って頂戴。

       言っておくけど、『犯人』についての心当たりなんてないわよ。
       『恨み』とかも、少なくとも私には思い当たるフシがない。

    具体的な根拠をもって『犯人』を示すのは、貴方の仕事じゃあない?」

 少し苛だっているように感じられるのは、
 先だっての『笑顔のディッシュ』の問い詰めが尾を引いているのか、
 あるいは『調査』があまり進んでいないように感じられたからか―――

「―――ところで。

     言ったと思うけど、貴方たちに頼むのは『クリニックが終わるまで』。
                          もう、そんなに時間はないわよ」

 『阿多』の言葉に、壁にかけられた時計を確認すると
 時刻はいつのまにか『17時』を回っている。
 午後の部が終わるのは確か『18時』………タイムリミットは迫っている。

 『鈴元』はこれまで数々の『情報』を収集してきた。
 そろそろ、それらを『分析』し、『推理』として
 依頼主である『阿多』に突きつける段階なのかもしれない。

 少なくとも眼前の『阿多』は、『曖昧な問い』ではなく、
 『具体的根拠』を提示した建設的な『推理』でないと
 ろくな返答をしてくれないように感じる。

 もちろん、まだ『情報』が足りない、というのであれば、
      これからでも『情報収集』に回るしかないが―――

 ………

「患者はオドオドしていかにもモテなそうなヤツだったな。
 口説くには『押し』と『ウィット』が必要だよね」

 それはそうと、『門倉』もまた、『鈴元』の問いに答える。

「話のどのへんで『発現』したかは分からなかったんだよな。
 集中力が続かなかったかというか―――すまないね。

 『キーワード』か………『福笑い』って事なら
  『笑う』とか『遊ぶ』あたりかとも思ったけど、そんな言葉は言ってなかったし。
   逆にそれならすぐ分かる気もするしね。
    そういう直接的なワードではないのかもしれない」

 今現在、『門倉』は、あまりいい案は浮かばないようだ。
 ただ、聞き方によっては『門倉』の発想が何かヒントになるかもしれない。

『鈴元』が独力で何かに辿り着けるのならそれに越した事はないが、
今ある『情報』を精査しても、どうしても何の『目星』もつけられないようならば、
『門倉』に問いかけてみるのも一つの手だ。

635鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/13(月) 22:44:18
>>634

「そのまんまの意味ですよ……まぁ、知らへんみたいですからそれ以上どうこうっちゅうつもりもあらへんけど」

「……もうこないな時間なんやね」

(あかんな)

現状、答えにたどり着けてはいない。
ただ現在てもとにある情報以上に劇的なものがこれから見つかるのかは疑問だ。

「まぁ、あと一時間の付き合いやから、そないに怒らはらんでもええんよ」

お互いに必死だ。

「僕らがあかんかったらまた別なお人に頼みはるんやろ?」

…………

『それもせやねぇ』

誰にでも分かるキーワードではないのは明らかだ。

『……門倉さんってスタンド自体に意識があるとかってどない思います?』

                     オ
『いや、僕自身そういうお人さんに会うたことはあるけど』

『福笑いをしてるんはあのスタンドの手ぇやんね?』

『スタンドに意志があるんやとしたら、特定のキーワードっていうよりはもっと別の気持ちで動いてるってことはないんかな?』

636『せんせいのかくしごと』:2019/05/13(月) 23:22:10
>>635(鈴元)

「―――そのつもりよ」

 『別の人に頼む』という言に『阿多』は答える。

 「………そんな事を言うなんて、もう諦めているという事?」

『阿多』のアタリは、相変わらず強い。
『笑顔のディッシュ』などという『子供向け』のキャラクターに
興味がある事を探られようとしたのが、そんなに気に障ったのか………
いわゆる『オタク』であるという事はそこまでして隠したい事なのか―――

 ………

「『スタンド自体』に意識というと、『自立型』みたいなものか。
 その可能性はもちろんあるね。あるが………そうなると
 『射程距離』がひどく長かったり、場合によったら本体が死んでいるなんて恐れもある。
 『犯人』………『本体を探す』というのは難しくなるかもしれない。

 『福笑い』をしているのは確かにあの『手』だ。
 『小さな手』………俺はあの『小さな手』が、
 本体の手と『連動』して動いているものだと思っていたけど………」

  『門倉』のトーンが少し暗くなる。
  『自立型』の可能性は『本体』という存在から遠ざかる―――
  もちろん否定は出来ない可能性ではあるが………

「別の気持ち―――というのは被害者の心境という事かい?
 まあ、悩んでいたり不安がっていたりといった共通項はありそうだけど、
 でもそれって『整形』を受けに来た人々には大抵当てはまりそうだね。
 もっとたくさん出てもおかしくはない気はするが―――」

『呪い』が出た人々のみが抱いた気持ちの共通項………
少なくとも『門倉』にはまるで見当がつかないようだった。

637鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/13(月) 23:49:53
>>636

「いいえ。今日が終わるまでは当然、全力で……」

オタクであることをそこまで隠したいのか?
本当にそうか?
知らぬ存ぜぬを通せばそれで切り抜けられる問題ではないのだろうか。
……何かがあるのかもしれない。

(……多少のイケズは言わしてもらおか)

「嫌やわぁ。そないに思われてたやなんて」

「そないに気に障りました? 笑顔のディッシュ」

「別に誰が何を好きやなんて自由な話やし」

………………

『……やとしたら、スタンドの意志って考えるんは難しいかなぁ』

『ちゅうか、門倉さんはなんで本体の手と連動してると思いはったん?』

ギャザリングは鈴元自身とは連動していない。

『ほんまに連動してたらそれこそ整形手術みたいやけど……』

638『せんせいのかくしごと』:2019/05/14(火) 00:24:55
>>637(鈴元)

「『笑顔の――― ああ、またその話?
  貴方、さっきから変な話題ばかりね。

   以前も言ったとおり、『笑顔のディッシュ』とかいうのは
         『鬼塚さん』が好きなキャラクターでしょう?
   それをなんでか知らないけど私に結び付けて話してくるのは、正直、困惑するわ。

      ………それとも、何? 『鬼塚さん』あたりが変な事言っていたの?」

 『阿多』は呆れたように返す。
  正直、『鈴元』の信頼はかなり失われているようにも感じられるが、
   のらりくらりやっている時間は、もうあまりない。

 ………

「ああ、確かに………念じれば動く以上、連動している必要はないか。
 ただ、なんといっても『福笑い』は『遊び』だろう?
  もし本体がいるなら、『小さな手』とあわせて
  グルグルと自分も手を動かして遊んでいるじゃあないかと思っただけさ」

 『門倉』はそう述べる。『福笑い』で遊んでいる本体のイメージ。
 『小さな手』を動かして『遊ぶ』………
 それをなぜこの『クリニック』で起こす必要があるのか。

「『整形手術』か………。それなら、『阿多先生』の無意識のスタンドとかいう
 ケースもあるが、プロフェッショナルである彼女のスタンドにしては
 『稚拙』過ぎるというか―――せいぜい『整形手術ごっこ』レベルな現象だね」

639鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/14(火) 00:49:36
>>638

「じゃあなんで、絵ぇ描いてはったんですか」

「お上手に、お皿と黄色いスーツの……えぇっと、笑顔のディッシュでタベルンディッシュやっけ?」

………………

『手ぇを……』

本体が手を動かしている。
たしかに、納得は出来る。

『ほんまの福笑いやったら別室から手を動かして、あえて見えへん状態で遊ぶんも出来るか……』

……誰が本体だ?

『整形手術ごっこやったら、やっぱり犯人は阿多センセではないやんねぇ』

『ここの病院で誰かがやってる……誰かが阿多センセの真似をしてる……?』

『いや、真似っていうか、このクリニックの中でそんな風にするんって挑発的というか、意志は感じるんよ』

『別に街中でもええのに、ここでやることに意味があるか、ここでしたい意志があるんやないかとは』

640『せんせいのかくしごと』:2019/05/14(火) 02:27:30
>>639(鈴元)

「…………」

  『鈴元』の言葉に『阿多』はしばらくの沈黙。
  そして―――

「どこで聞いたのかは知らないけど、
 ………そうね、確かに『絵』は描いていた。

   ―――『鬼塚さん』に渡そうと思って。
       彼女が好きなキャラクターだから。

                  それだけよ。何か、問題?」

『阿多』は、『子供向け番組』のキャラクターの絵を描いた。それを『渡す相手』は、『鬼塚』だった。

   ―――それだけならば、隠す必要などない。おそらくはどこかが、『ウソ』。

    しかし、闇雲にそれを指摘しても、彼女はシラを切るだけな気がする。
      『阿多』はいったい、何をそこまで、隠したがっているのか。

        「―――もう、いいかしら? 私には仕事があるの。
             貴方のような人が続いて、結局、『呪い』が解けなければ
             その仕事もなくなるかもしれないけど。

             ………それもいいかもしれないわね。
                  『クリニック』が潰れたら、
                  仕事もせず、『家』でゆっくり長期休暇―――」

    『阿多』の『皮肉』の言が響く。
    その声色は『それもいいかも』などとはまったく思っていない事を思わせる。

    『鬼塚』いわく、『阿多』には昔いい相手がいたらしいが、
    『仕事』の事で色々あって『結婚』はしなかったらしい(>>479)。
    それほど『仕事』に賭けているのだろう。

 ………『阿多』の頑なな態度を見るにこれ以上の曖昧な『探り』は難しいように感じられる。
      であるならばこのまま『クリニック終了時間』を迎えるしかないのか―――

  ………

「『阿多先生』の真似か………彼女を慕っている『職員』は
 結構居るみたいだから真似しそうな『スタッフ』は居そうではある。
 ただ、そもそも、自分が勤める『クリニック』が潰れるような真似をするかな。慕っていると仮定するなら余計に。
 仮に『稚拙な能力』で上手くコントロール出来ない、けど使いたい! とかなら、
 それこそ『鈴元君』の言うように街中でもどこでも存分に『福笑い』なり『整形手術ごっこ』なりすればいい。
 まあ暴走しているとかで本体の意志に沿わない動きをしているならお手上げではあるが………

 あるいは『患者』? 手術がすでに終わった『患者』なら
 『クリニック』が潰れてもまあ問題ないともいえる。
 ただこれだと『射程距離』の問題がある。
 あの『小さな手』は、いわゆる『近距離パワー型』には見えないし、
 ある程度の『遠距離型』かもしれないが、それにしたってそれなりに近くに居続けなきゃならないだろう。
 『クリニック』に居ても怪しまれない『職員』ならまだしも、『患者』はいつまでも『クリニック』には居れない。

 あ、いや、射程距離が広範なら、『駐車場』とか『近くの路地』にでも潜み続けるといった手もあるか。
 ただ、『屋外』で、そんな不審者がいればすぐに噂になるはず。やっぱり難しそうだな」

『鈴元』の話を受けて『門倉』が語るが、彼が正しいのであれば、
それはつまり『本体』の目星をつけるのが、非常に困難な事を示していた。
『鈴元』が本日会ったのは、『門倉』を除けば『職員』と『患者』のみ。
その中に『本体』が居ない事になってしまう………

もちろんここは『推理小説』の世界ではないので、
『登場人物以外の存在』が『犯人』でも問題はないだろうが……
そんな人物を特定する事など果たして可能なのか――――?
せめて『居場所』でも分かればいいのかもしれないが………

もちろん『門倉』の推理が間違っているのかもしれない。
町一つレベルの『超遠距離型』の可能性や
さきほど除外した『本体』などいない
『自立型』の可能性もないわけではないが………

641鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/14(火) 21:32:38
>>640

「僕みたいな人がねぇ……」

否定はしない。
完璧な人間だとも、優秀だとも思っていない。
常に不完全で、未熟で、足りていない人間だと理解している。
劣等感を抱えてきている。
しかし、鈴元家の男子として不甲斐ないままで終わるつもりもない。

「ふふ、嘘ばっかり」

「好きなんを隠してはるんやろ?(>>564)」

「聞いたで、ぜぇんぶ」

流石に全部では無い気がするが。
聞けば鬼塚が話を振ってもそれに反応はしなかったのとことだ。
ならば、鬼塚に渡すはずなどない。
それに鬼塚から絵の練習をしていると聞いている。
あれもその練習ではないのか。
この矛盾は阿多が何かを隠しているからか、それともなにか別なことが理由か。

………………

『……いや、やっぱりこの中に犯人がおるはずやと思う』

選択肢は多すぎる。
だが、現状周りに不審者がいたという情報はなかったはずだ。
そもそもそんなものがいれば対処されているだろう。
なら、やはりこの中にいたと考えた方が自然に思える。

『潰れるようなことをする……っていうのは確かに不自然、やけどそれでも構わへんとしたらどないやろか』

『慕ってるのの逆やったら、そっちの筋は通りますよね?』

阿多に対しての感情が逆なのだ。

『もしあの手が本体の手と連動してるんやったら、その場におる時は発現できへん』

『カウンセリングルームやらの外なら問題はないし』

642<削除>:<削除>
<削除>

643鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/14(火) 21:41:47
>>641 (阿多への発言を追記)

「着信音までそれにしてるってのも聞いたけど」

「鬼塚さんが振っても知らんふりなんやんねぇ?」

「それに、だいたい鬼塚さんは『憤怒のナイフ』が好きなはずなんやけど?」

644『せんせいのかくしごと』:2019/05/14(火) 22:50:31
>>641>>643(鈴元)

『鈴元』は『阿多』の『かくしごと』を怒涛の勢いで糾弾していく。
『鬼塚』からきいた『阿多の"好き"の秘密』。
『着信音』。『鬼塚が好きなものとの矛盾』。

  ……… ……… ………

『阿多』は神妙な顔でそれを聞いていた。
『鈴元』の言葉ひとつひとつが彼女にどう刺さっているのか―――

 『鈴元』の話が終わる。すると、

       「………好き? 好きって、『私』が?
            私が『笑顔のディッシュ』を好きだって、あなたは言いたかったの?」

『阿多』は、噛みしめるように言葉を紡ぐ。

 そして―――


              フフ
                               フフフ


                    漏れたのは、笑い声だ。

「フフフ……
  そういう事なら―――そうか、そうよね。
               『鬼塚さん』みたいな人もいるんだものね。

    ―――そうね、私が、好きなのよ。『笑顔のディッシュ』」

 何か重荷がとれたかのような、あっけらかんとした『阿多』の告白。

  これが『鈴元』が求めた答えなのか―――?
  だとして、これで何かが変わるのか―――?

                              刻々と時は過ぎる。

 ………

「『クリニックが潰れても構わない』というのは確かに感じなくもない。
 『鈴元君』はそれが、慕っているの『逆』、つまり、『憎悪』から来ていると予想しているんだね。
 確かにこの短い調査じゃあ、人間の裏までは見通せない。
  『職員』の中に『阿多先生』を憎んでいる者がいてもおかしくはないが―――

  そして、まあ、休憩中とかなら『能力』を使えない事もないか………
  というかそもそも、『手を連動させる』というのも俺の勝手なイメージだしね。
  立ち会いながら能力を使えないという根拠には薄いか」

 そう、確かに『鈴元』の推測は一理ある。
                     ただ………

「ただ……これだとこれ以上、『本体』を絞り切れないかもしれないね。
 『鈴元君』が俺の知らない有力情報を持っているなら別だけど。
 時間を考えると新情報確保もそう多くは出来ない。
 となると『本体』の線からこの事件を解決するのは難しいのかな」

『門倉』が首を振るのが見える。他の線といえば『発動条件』あたりか。
だが、これにも新しい情報やひらめきはなく、一筋縄ではいかなそうだ………

645鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/16(木) 17:42:29
>>644

「……」

「なんで隠してはったんですか?」

このことが明らかになったとて、事件の解決に繋がるかは分からない。
しかし、なぜ阿多がそれを隠したのかは気になる。
このことが何かを隠す蓑になっていないか。

………………

『……視点を変えて発動条件の確認をしよか』

『……今までの流れやと、なんか能力を発現させるキーワードがあると考えてて』

『鬼塚さんは呪いを見たことがなかった』

ひとつずつ確認する。
まずは大きな部分からだ。

『鬼塚さんは話す量が他の看護師さんより少ないからキーワードを踏まんかったって結論になって……それで……』

『キーワードはこれっていう言葉じゃなくて複数あったり意味合いが近いもん、みたいな感じやったやんね?』

キーワードがあるのではないかというのは、鬼塚とのカウンセリングの後だったはずなので話の流れは多少前後している気はする。
が、とりあえず大まかな確認ならこれでも大丈夫だろう。

『……門倉さんも初めは呪いを見はらんかったよね?』

あれは門倉が話しすぎた、というのを患者が話しているのを聞いた。
それもキーワードによる発動条件というのを補強する事実だ。

『ここまでで、まだ足りてへんところとかはあるやろか?』

646『せんせいのかくしごと』:2019/05/16(木) 19:43:37
>>645(鈴元)

「それは―――

           『恥ずかしかった』からよ」

『鈴元』の問いに『阿多』は答える。
プライドの高そうな医者が『子供向け番組』のキャラクターを
好きだというのが恥ずかしくて、隠していた。
シンプルだが、ありそうな答えではある………

「………さて、さっきも言ったけれど、私には仕事がある。
 貴方にも『呪いの解明』という仕事があったはずよね。
 残りは、そう………30分くらい?

  まだほとんど何も分かっていないようだし、
  最後の調査にでも行ってきたらどうかしら?
  最後の1秒まで待つのは、待ちます―――」

ここで『阿多』は院長室の出口を手で指す。
『お引き取り下さい』のポーズ………
本来、『呪い』を解決してくれるというのなら、
多少遅れたところで歓迎してくれるはずだが………
追及が効きすぎたか、『鈴元』は相当、『阿多』の心証を損ねているようだ。

 ………

「まあ、『発動条件』についての流れはそんな感じなのかな。
 今、君から初めて聞く事もあるにはあるが―――
 気になる事はなんでもいいから教えておくれよ」

『鈴元』と『阿多』が険悪なムードになっている事など露知らず、
『門倉』はノンビリとそう答える。

「さて、こういう事を言うのもアレだけど、
 今更、『キーワード』以外の可能性を考える余裕はない気はするね。

  後は『具体例』を精査して『キーワード』を探すか、
  あるいは想像して、決め打ちするか。

 ただ、前者は俺には難しい―――というのも、
 結局自分では『一例』しか『呪い』を確認できていないからね。
 『鈴元君』はそれよりは確認出来ているだろうから、
 それを思い返してみるのもいいかもしれない」

今、この瞬間に『発動条件』でも言い当てる事が出来れば、
『阿多』の興味を引き、話を続ける事、
そこから更に『解呪』の糸口を掴む事も出来るかもしれない。

あとは『犯人』や『動機』………
あるいは『阿多』がどうしても反応せざるを得ない話題、
そんなものを提示出来れば―――
もっとも、そこまでして『阿多』と話を続ける必要があれば、の話だが。

………あるいは、『諦める』というのも一つの道である。

     そもそも『門倉』が受けた依頼であるし、
     一番の協力者であるべき『阿多』の態度はけして褒められたものではない。

     であるならば………

647鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/16(木) 23:29:21
>>646

『……』

『いま、思い出す……』

これまでの流れを一度思い出す。
症例は何度も見た。
残り時間が限られている以上、今出来るのはそれだけだ。
だから、それをするしかない。

『まだ、まだ時間はあるから』

諦めるわけにはいかない。
たとえこの場の全員が反発しても、この場に来た以上は仕事をこなす。
この場に来たのは門倉に協力を頼まれたからだ。
自分が断れば誰かが誘われるか門倉が一人で仕事をするだけだろうが、鈴元にとっては大事な舞台だ。

『ちょっと待ってて……』

648『せんせいのかくしごと』:2019/05/17(金) 02:35:50
>>647(鈴元)

     『鈴元』は必死に考える。思い起こす。

『犯人』『動機』『条件』、どれか一つでも分かれば大きな『進展』となる。
だが、逆に今の段階でもまるで見当もつかなければ、
時間内に『解決』するのは難しいといえるだろう。
もちろん、まだ時間はある………あるが、今にも追い出されそうな現状、
早急に『答え』を導き出さなければならない。

『桜吹雪』のように頭の中に今までの『情報』を散りばめ、分析していく………

【『発動条件』について】

『鈴元』が得た『呪いの瞬間の言葉群』は―――

一例目、自らが立ち会った『戸葉 彩江』(>>450-453
二例目、自らが立ち会った『板槻 波音』(>>507-508
三例目、『武藤』が録音した『上条 沙織』(>>587
四例目、『武藤』が録音した『多摩川糸子』(>>588
五例目、電話で録音を確認した『玉置』(下の名前不明。
      騙された相手は『更科健(さらしなけん)』(>>612
六例目、『門倉』が録音した『斉出 進太』(>>632)。

以上の『六例』か。

『キーワード』についての考察は
『武藤拓馬』(>>548)・『武藤暮』(>>590)の『武藤姉弟』がしてくれていた。
これが正しいのだとすれば、
『キーワードは一つではなく、また、そのまま使っていない可能性が高い。
つまり話の流れの綾でたまたま出てしまった』という事になる。

一つではない複数の言葉………
考えられるのは、『一つの事象を複数の言葉で表す』パターン、
たとえば『大判焼』は地方によって『今川焼』『回転焼』
『おやき』『御座候』など複数の呼び名を持つ。
もう一つはいわゆる『カテゴリ』のパターン。
『動物名』とか『植物名』とかそういう事だ。

そして『そのまま使っていない可能性』というのは、
『同音異義語』、たとえば『雨』と言ったのに『飴』と判別されるパターン、
あるいは文の繋がりで言葉になってしまったパターン、
たとえば「パスタをゆでた。孫と一緒にね」と言った際に
『ゆでたまご』と言ってしまったと判別されるパターンか。

【『本体とその動機』について】

『発動条件』とは別に『本体』やその『動機』についての分析。
これらは先程から行っている『門倉』との問答で言及されていた(>>638-644)。

『今までの関係者に本体はいないように思える』という突飛な『門倉説』(>>640)。
それに反論する『鈴元説』(>>641)。
『門倉』は『阿多を慕っている者の犯行』、『鈴元』は『阿多を憎んでいる者の犯行』と考えた。
実際にはどうなのか―――

『福笑い』という能力推測はおそらく当たっているのだろう。昔ながらの正月の遊び。
そのイメージを『呪いという言葉とは違う趣きを感じる』と評したのは『門倉』だったか(>>489)。
確かに『呪い』や『憎悪』とは程遠いイメージ………
ただ、善良そうな能力で悪行を働く者だって当然、居る。
負の感情から行われた事ではないとは『断定』出来ない―――出来ないが………
仮に『正の感情』からこの事件が行われたとしたら、犯人は、
『よかれと思った事が「呪い」と評されるような
 災いになっているのが分からない精神的に未熟な人物』なのかもしれない。
あとは『クリニックが潰れる事が「いい事」』と考えているなどという可能性もあるか―――

そして、今回の事件の情報の隙間に奇妙に纏わりついているのが『笑顔のディッシュ』だ。
『阿多が隠れオタクだから、子供向け番組のキャラクターについて興味がある事を隠していた』
という『鬼塚』の説は一見、正しいように思えるし、それだけの事ならば事件とは無関係なのだが………
『鈴元』が追及した際にあっさり認めた『阿多』の『言動(>>644)』の怪しさ。
これがもしウソならば、『鬼塚の見た光景(>>564)』、
笑顔のディッシュの絵を練習し、グッズを買い漁っていたのはいったい『何の為だったのか』?

 ………

他にも細かい情報はあっただろうが、
重要そうな『情報』はあらかた反芻出来たように思われる。

厳しい『阿多』の視線と、すがるような『門倉』の視線、
二つの異なる視線を浴びながら、『鈴元』は―――

649鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/17(金) 20:13:18
>>648

この呪いがもし行き違いならば。
この呪いの仕掛け人が本当に良かれと思っているのなら。
もしも自分が何かを仕掛けるのなら。
あるいは、自分がこの仕事をする上でしたい事は。

(人の笑顔……)

人を笑顔にする存在。
『人を笑顔にしようとする』その行為が幸か不幸か『人の顔を弄る』という方面なのだとしたら。
だとすればそこに悪意が存在はしないのかもしれない。
……今まで見た患者はどうだったか。
愚痴以外に共通点はあるか? 案外それが正解だったりするのか?

「……」

呼吸が荒くなる。
時間はない。答えを見つけなければならない。
答えを提示することだけが必要なのだ。
涙が出そうだ。
鈴元涼は自身が今よりも子供だった頃のことを思い出しそうになった。
まるで走馬燈だ。

「……あれ?」

「……阿多センセ、子供いはる?」

泣き笑いのような微妙な表情で鈴元は言った。
そう言えば自分は、阿多の家を覗いてはいない。

「……ねぇ、もしかしてグッズ買い占めてはったんも、絵の練習も、着信音をそれの曲にしてたんも、全部、お子さんのためにやってはった?」

「さっき、『鬼塚さんみたいな人もいるんだものね』って言いはったんって、自分の身近にはちゃんとお子さんのフアンがおるからじゃなんですか?」

真剣に付き合った人間がいたが結婚はしていない。
だが、子供がいるという可能性は消えていない。

………………

『……門倉さん、ちょっとお願いやねんけど』

『ちょっと、愚痴ってみいへん?』

もし、阿多に子供がいて、その子供が仕事に疲れた母の愚痴を聞いていたとしたら。
その母を笑顔にしたいというのが、子供の願いなのだろうか。
それとも母と仕事を変わって患者を笑顔にしたいのだろうか。
どちらにせよ、愚痴という方向性を狙ってみる。
どのみち、阿多への質問が合っていなければ駄目な話だが。

650『せんせいのかくしごと』:2019/05/17(金) 21:29:58
>>649(鈴元)

時間に追われ、追い詰められながらも、『鈴元』が捻り出した『答え』。
それは『問いかけ』にかわり、『阿多』に投げかけられる。
                ・ ・
   『阿多佳久子には、子供がいるのではないか?』

            『 ! ! ! ! 』

     その問いに『阿多』は、すぐには答えない。
       しかし、その表情には露骨な『驚愕』が張り付いている。

        それは彼女の『かくしごと』の核心に
        『鈴元』が辿り着いた事を示していた。

『子供向け番組』のメインターゲットは当然、『子供』。
一般に親世代である『阿多』が、その番組にこだわりを示しているなら、
まずは『子供の為』であるという可能性を考慮すべき。
気付いてみれば実に単純な話だが、大きなお友達である
『鬼塚』の言動が結果的に『煙幕』になってしまっていた、という事か。

もちろん『阿多』が『独身』だという事も、『煙幕』の一つにはなっただろうが、
しかし、逆に考えれば『独身』だからこそ、
『子供』の存在が『阿多』にとって『かくしごと』になったとも考えられる。

さて―――今まで『呪い』とまるで結びつかなかった『笑顔のディッシュ』が、
       『新たな登場人物』と繋がった事で事態は大きく変動した。
       『福笑い』……『整形手術ごっこ』……『正の感情』……
       『呪い』を解決したい『阿多』をこれから上手く『説得』できれば、
       先程までの最悪の事態を脱し、新たな局面を迎える事が出来るだろう。

  ………

 「え!? 愚痴!?  ど、どういう事だい?」

戸惑う『門倉』。
彼にしてみれば考え込んでいた『鈴元』が
唐突にあらぬ事を口走ったようにみえただろう。
『門倉』には『院長室』の出来事は一切分からない。
もう少し説明が必要だろう。

ただ、今、『鈴元』は非常に重要な情報を一つ得ている。
『犯人』『動機』『条件』の三つを並行して追うより、
一つ一つ確定していき、深めていった方が『調査』は捗るかもしれない。
もし移動する事があるなら、ついでに『門倉』と合流してしまうのも手だ。

651鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/17(金) 22:05:07
>>650

見つけられたようだ。
ひとつの糸口が。

「落ち着いて、聞いて下さい。僕も落ち着きます……」

深呼吸。
阿多からの評価は最悪だ。
必要なのは諦めと承認、それから合致。
目的を合致させ、阿多からの承認を得て、隠すことを諦めさせる。
ひとつの結論に落ち着くのはそれが問題だ。

「さっき僕が言った福笑い……つまりは、悪意のない……言い換えれば真心のある行為」

「それが呪いと呼ばれる現象の中に隠れてたもんでした」

「これはひとつの可能性の話ですけど、もしかしたらそのお子さんの、子供の無邪気さが今回の鍵を握ってるかもしれへんのです」

だが、それを認めるのは心情的に辛いものがあるかもしれない。

「……お察しは出来へんけど、今まで隠してた部分と晒さなあかんということ、グッズを買ったり絵ぇを練習しはるほど思ってはった我が子が問題の中心におるかもしれんこと」

「……辛いとは思います……」

「でも、事実が明らかになるまでは、どうか、力を貸して欲しいんです」

深く、頭を下げる。
説得を試みる。

652鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/17(金) 22:05:47
>>650

見つけられたようだ。
ひとつの糸口が。

「落ち着いて、聞いて下さい。僕も落ち着きます……」

深呼吸。
阿多からの評価は最悪だ。
必要なのは諦めと承認、それから合致。
目的を合致させ、阿多からの承認を得て、隠すことを諦めさせる。
ひとつの結論に落ち着くのはそれが問題だ。

「さっき僕が言った福笑い……つまりは、悪意のない……言い換えれば真心のある行為」

「それが呪いと呼ばれる現象の中に隠れてたもんでした」

「これはひとつの可能性の話ですけど、もしかしたらそのお子さんの、子供の無邪気さが今回の鍵を握ってるかもしれへんのです」

だが、それを認めるのは心情的に辛いものがあるかもしれない。

「……お察しは出来へんけど、今まで隠してた部分と晒さなあかんということ、グッズを買ったり絵ぇを練習しはるほど思ってはった我が子が問題の中心におるかもしれんこと」

「……辛いとは思います……」

「でも、事実が明らかになるまでは、どうか、力を貸して欲しいんです」

深く、頭を下げる。
説得を試みる。

653鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/17(金) 22:34:05
『あぁ、飛んでた……すんません』

ひとつずつ説明していこう。

『まず、阿多センセにはお子さんがおるかもしれへん』

『センセにそう聞いてみて……はいともいいえとも言わんかったけど、顔の感じやと当たってる』

『子供がやったんやったら悪意がないのも、整形手術ごっこなんも説明はつくやろ?』

子供のスタンド使いがいても、おかしくは無い。
自分も……自分では言えないが世間的には子供なのだし。

『それで、そのお子さんと会ったりしてみたいんやけど、一応阿多センセの説得をしてるとこ』

『……隠してはったところやしねぇ』

門倉と合流したいが、阿多との話がひと段落ついてからの方がいいだろうか。
突然院長室に来られると阿多も混乱するかもしれない。

654『せんせいのかくしごと』:2019/05/18(土) 02:10:37
>>652-653(鈴元)

一つ一つ、積み上げるように、
『鈴元』は『阿多』に言葉を投げかける。
『阿多』が隠していた子供が今回の『問題の中心』に居るという事。

それを丁寧に、『阿多』に告げる。


    それを聴いた『阿多』から出たのは―――大きなため息、ひとつ。


「―――もっと早く、率直に言ってくれればよかったのに。
     早々にその結論にたどり着いていたんでしょう?
     『玉置』さんの電話が終わって『福笑い』の話を始めた時にはもう。

     『デタラメな動きは子供が楽しんでやってるような』

                 なんて意味深な事を言っていたものね」

『阿多』が語る。
そういえばそんな話をしたか………(>>631)。
その後、『阿多が動揺しているように感じられた』(>>632)のは、
『自らの子供』の事を想起していたからだろう。

その後の会話の流れを思い返すに、『阿多』は薄々、
真相に気づいていたが、それを自分では認めたくなく、
『鈴元』からの決定的な『宣告』を待っていたという状態だったか。

その観点から見ると、『子供』に繋がる『笑顔のディッシュ』を
持ち出しておきながら、なかなか『真相』を告げない『鈴元』は
『蛇の生殺し』であり、『多少のイケズ』どころではなかっただろう
(これが『京都人』のやり方か)。
『阿多』が必要以上に怒ったのもやむを得ないといったところか―――

「………幼い子供が『念動力』で騒動を起こす『映画』を見た事があるわ。

     私の子、『福助(ふくすけ)』もそういった『超能力』を持っていて、
                   この『呪い』を起こしているかもしれない。

     だったら、会いに行きましょう。
      彼は隣にある『私の家』に居る。

            そこで真偽を確かめる。
                             ―――それでいいでしょう?」

『阿多』はすでに怒りを収めている様子だ。
『子供の存在』も今更、隠す気はないらしい。
この分だと、この『呪い』の『本命』に会いに行くことが出来るようだ。

 ………

「へェ、子供がねェ〜〜、あれ、でも結婚してなかったんじゃあなかったっけ
                      ………いやまあ、そういう事もあるか」

『門倉』は素直に納得する。

「でも確かに『子供』なら、今回の『犯人像』に適しているね。
 『福笑い』という『遊び』が能力、『先生を慕っている』、
  クリニックの隣の『家』に居るなら、物凄い遠距離型じゃあなくても問題ない。

  ああ、あの『スタンド』の手が『小さなサイズ』だったのも、
     『子供』の手と『連動』していたのだったら、納得がいくね」

『門倉』はうんうんと頷く。
『阿多』との交渉も順調であるし、問題なければ、
適当なタイミングで拾ってあげるといいのかもしれない。

655鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/18(土) 06:14:26
>>654

「いえ、恥ずかしい話やけど、この瞬間までは至らんかったです」

「自分の察しの悪さが一番の敵やったかもしれないです」

たどり着いてみれば、これまでの情報で十分に判りうることだっただろう。
道は平坦ではなかったが、蛇行していたのは自分自身だ。

「ええ、よろしくお願いします」

阿多の家に行こう。
解決までの時間は早い方がいいし、子供が呪いを起こしているかの真偽を確かめなければならない。

………………

『なんとか考えがたどり着いて良かったわぁ』

『……あ、センセの家行けるみたいやわ。行こか』

阿多の家に向かう途中で門倉と合流しておこう。

656『せんせいのかくしごと』:2019/05/18(土) 17:31:15
>>655(鈴元)

「そうなの?
 ………まあ、いいわ。とにかく、行きましょう」

寸前まで分からなかったという『鈴元』の話に、
『阿多』は少し首をかしげたが、すぐに話を進める。
その真偽を今、議論していても意味がない、と判断したのだろう。

 ………

二人が『院長室』を後にすると、ほどなくして『門倉』が合流してくる。
そのタイミングに『阿多』が怪訝そうな表情を浮かべる。

それに対し、

「―――これが『超能力』ですよ、『院長』!
     『鈴元君』と俺は『不思議な力』で交流出来るのです!
     大体の流れは把握済みなんですよ!
     出てくるタイミングもそれで分かったのです!」

          『門倉』が得意げにこう宣言する。
          事実ではある。事実ではあるが
          ………胡散くさい事、この上ない。

「………

     まあ、そういう力がある、と
     認めないといけないんでしょうね」

『阿多』のため息と共に、三人は『クリニック』の外へと出た。

来た時と比べ、周囲は少し暗闇を深めている。
これから『阿多の家』まで歩を進めていくのだが、
その間に『阿多』に訊きたい事などがあれば確認しておくのもいいかもしれない。

657鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/18(土) 19:10:34
>>656

「……」

門倉の発言に少し頭が痛くなった。

(静かにしといてもらった方がええんやろか……)

ゆっくりと息を吐いて首を横に小さく振った。

「阿多センセ」

阿多の家に着く前に阿多に質問を投げかける。

「阿多先生ぇはお家でお仕事の話はしはるん?」

658『せんせいのかくしごと』:2019/05/18(土) 19:29:37
>>657(鈴元)

「仕事の話? 『福助』と?
    ………あまりしないわね。
  もちろん、こういった仕事をしている、というのは教えてあるけど」

『阿多』が答える。

 「―――そもそも、話す機会があまりなかったの。
      今までは、本当に忙しかったから。
      最近は………わりと早くに帰れるようになってはいたけれど」

『今までは』というのは、『呪いが始まる前までは』という事か―――

659鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/18(土) 19:53:59
>>658

「……そうですか」

それまでかけた情熱の分、話す機会が失われている。
悲しいことだが、阿多としてはそれも子を思って働くからなのだろうか。
もしこの事件が解決した時、阿多は我が子と穏やかな時間を持てるのだろうか。

「……」

家に向かおう。

660『せんせいのかくしごと』:2019/05/18(土) 20:04:29
>>659(鈴元)

 ………

そして、三人は『阿多邸』にたどり着く。

               ピ ン ホ ゚ ー ン

インターホンを鳴らす『阿多』。

                   「―――はいィ」

ほどなくして応答したのはしわがれた『女性の声』。

  「佳代子よ。戻ったわ」

                 「あァ、はい、はい」

 『女性』が答え、しばしの時間が流れる。

「………私の『祖母』よ。『福助』の面倒をみてもらっているの」

その間に『阿多』が『鈴元』達に説明してくれる。

661鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/18(土) 20:14:37
>>660

「お祖母様がいらっしゃるんですね」

となると、福助くんの面倒は基本的にこのおばあちゃんが見ているのだろうか。
鈴元は実家の祖父母を思い出した。
優しくも厳しい二人だった。
この人はどんな人なのだろうか。

(……ん? あれ?)

鈴元はひとつの疑問が浮かんだ。
事件についてのことではない。
ごくごく、個人的なことだ。

(僕、着替えてへん……!)

自分は、女装したままで来ている。

662『せんせいのかくしごと』:2019/05/18(土) 20:39:32
>>661(鈴元)

 ガチャリ

「『佳久子ちゃん』、今日は早いねえ」

 そう言って出てきたのは狸のような容貌の『老婆』だった。
 もしかすると電話で話した『玉置』の目撃証言にあった
 『人の好よそうなお婆ちゃん』が彼女かもしれない。
 確かに『不審者』とは表現出来ない風貌である。

「………今日は、『お客』が居るの。
    『佳久子ちゃん』は………やめてくれる?」

 『阿多』は少し憮然とした表情で、老婆に語り掛ける。

「あらあら、これは失礼しましたァ。
 ええと、お二人は病院の『職員』さんかねェ。
 はじめましてェ―――
  『佳代子』の祖母の『阿多ヌキ(おた ぬき)』でございますゥ」

大仰に頭を下げる『ヌキ』。
ナース服を着ている『鈴元』と『門倉』を『職員』と思うのは自然な話か。
そして『鈴元』は………自身の懸念どおり女性と思われているだろう。

「しかし………初めてじゃあないかい?
   『佳代子』が職員さん連れてくるのなんて」

『阿多』は『子供』を隠していた。
であるならば、職員達を連れてこないのは当然と言えば当然か。
だが、これだけ近くに『家』があれば、『隠しきる』のは相当な苦労だっただろう。

663『せんせいのかくしごと』:2019/05/18(土) 20:44:57
>>662
五行目:
(誤)『人の好よそうなお婆ちゃん』が彼女かもしれない。
(正)『人のよさそうなお婆ちゃん』が彼女かもしれない。

664鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/19(日) 02:40:54
>>662

「うふふ……ええんちゃいます?」

人のよさそうな人だ。
……彼女も今回の呪いに関わる人なのだろうか。
いや、とにかく今は福助のことを考えていた方がいいとは思うが。

「初めまして、鈴元涼ぉいいます」

「まぁ、ちょっと色々ありまして……お邪魔させてもらいます」

665『せんせいのかくしごと』:2019/05/19(日) 11:15:51
>>664(鈴元)

『鈴元』は丁寧に『ヌキ』に挨拶する。
それにあわせ『門倉』も名乗りつつ、一礼。

「あァら、あら、ご丁寧にどうもォ」

『ヌキ』も深く一礼。朗らかに挨拶は済んだ。


 「………そういう事で。
                『福助』は部屋?」

『阿多』がややつっけんどんに『ヌキ』に問う。
怒っているというより、照れがあるのかもしれない。

「そうねェ、『福助ちゃん』は部屋にいるはずよォ。
 最近は『バぁバ』と遊ばずに一人で遊んでる事が多いわねェェ」

『ヌキ』の言葉に『阿多』は頷く。
そして、『鈴元』達に目配せしつつ、家の奥へと進んでいく。

666鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/19(日) 15:21:51
>>665

一人で遊ぶことが多くなってる。
もしかしたらそれも呪いが起きてる原因なのかもしれない。
あるいはスタンドに夢中になってるのかもしれない。
そういう可能性はある。

お祖母様に会釈をして、家の奥に進んでいこう。

667『せんせいのかくしごと』:2019/05/19(日) 18:49:23
>>666(鈴元)

家は外から見たとおり、『豪邸』といってもいいものだった。
地方都市で駅からそれなりに離れた場所とは言え、
結構なお値段なのではないだろうか。

『阿多』についていき廊下を進むと、
つき当たりに『おた ふくすけ』と表札のある部屋があった。

             「―――福助、入るわよ」

『阿多』が一声かけ、部屋へ入る。

  ……… ……… ……… ………

室内は『おもちゃ箱をひっくり返したような』という表現そのものの状態だった。
様々な『遊び道具』がそこら中に散乱している。

『カルタ』『羽子板と羽』『折り紙』『けん玉』『双六』などなど―――
『昔ながらの遊び道具』が多いのは『お婆ちゃん』に育てられたからか。
それにより『福笑い』という古風な遊びを知っていた、という事かもしれない。

             バ ッ

「あ! おかあさん! おかえり!
 きょうは ほんとうに はやいねェ〜〜!」

そして、『阿多』に飛びついてきたこの少年。
彼が『福助』という事で間違いないだろう。年齢にして4、5才くらいか。
本来、『幼稚園』や『保育園』に通っていてもおかしくはない。

喜色に染まる、ぽっちゃりした赤ら顔。
本当に『阿多』……『母親』の事が『好き』という事が雰囲気で伝わってくる。
仮に彼が本体だとして、やはり『恨み』という線は無いように思われる。

                  「………!  このひとたちは?」

ワンテンポ遅れて、『福助』が後ろにいる『鈴元』と『門倉』に気づく。
途端に顔が曇るのは、嫌われているというより人見知りによるものか―――

「大丈夫―――私の
              ………『病院』の人たちよ」

『阿多』が優しく紹介する。
格好の事もあるし、下手に本当の身分を紹介しても
混乱させてしまうという『配慮』だろう。

668鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/19(日) 19:38:57
>>667

(……カルタとか双六とか……)

正月にするような遊び道具も見える。
福笑いというモチーフにも納得がいくような気がした。
片付けがなされていないのは歳を考えれば仕方ない。

(……)

微笑ましい光景だ。
しかし、自己紹介をしないといけない。

「こんにちは」

「鈴元涼ぉいいますぅ。阿多、福助くん、やんね?」

「よろしゅうに」

669『せんせいのかくしごと』:2019/05/19(日) 20:35:51
>>668(鈴元)

先程同様、『鈴元』とあわせて『門倉』も挨拶をする。

「あ……うん、おた、ふくすけ……です」

『福助』は戸惑いながら、ゆっくりと返答する。
年頃もあるし、あまり、人と接する機会もなかったのだろう。
ただ、困惑しながらも素直に答えはしてくれる。

「ええとね、福助。
 今日は、少しね、ききたい事があるの。

                          その………」

そして、『阿多』が質問を切り出そうとする。
単刀直入に言えば、『呪いを起こしているのは「福助」かどうか?』。

だが、『阿多』は言い淀んでしまう。
おそらく、これからどう質問していいか、分からないのだろう。
それはそうか―――『阿多』にはあの『手』は見えないのだ。
『福笑い』の細かいニュアンスは分からないし、
そもそもがまだ『半信半疑』な部分もあるだろう。

「………」

助けを求めるように『阿多』が『鈴元』を見る。
そして更に、『門倉』もまた『鈴元』を見ていた。
『門倉』にしてみれば、すべては『鈴元』から聞いた断片的な情報にしか過ぎない。
まだ彼の中で状況を完全に咀嚼できていないのかもしれない。

結局のところ、
今この場で『福助』を上手く問い質す事が出来るのは『鈴元』だけ、という事か。

670鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/19(日) 21:17:31
>>669

「……座ろか」

「ええかな?」

福助と目線を合わせるためもあるが、立っているのも疲れる。
貴重品を入れていた巾着袋を持ってきていたら中の和菓子を阿多や福助に振る舞いたい。
子供を問い詰めるのは少々酷だ。

「改めて、鈴元涼って言います。今日は福助くんに聞きたいことがあってここに来たんよ」

笑顔で話す。

「そういえばさっきおばあちゃんから最近一人でことが多いって聞いてんけど、ほんま?」

その辺から聞いてみよう。

671『せんせいのかくしごと』:2019/05/19(日) 21:51:57
>>670(鈴元)

「………うん」

初対面の『鈴元』が話しかけてきた事で『福助』は一瞬硬直する。
しかし、母親である『阿多』が大きく頷くのをみた事で態度を軟化させる。
遊具で散らかった部屋をかき分け、自分用の小さな『椅子』にちょこんと座った。

この部屋はあくまで『福助の遊び部屋』らしく大人用の椅子はない。
『鈴元』は床に直に座る必要があった。

貴重品が入っているからか、お腹がすいた時の非常食用か、
その理由は『鈴元』自身が一番よく知っているだろうが、
ともあれ、『鈴元』はナース姿になっても『巾着袋』を有していた。

和菓子を渡すと、『福助』の緊張が少し解けたように感じた。
最近だと洋菓子を好み、和菓子が苦手な子もいるようだが、
『お婆ちゃん』に育てられた彼の口にはあうようだ。

「………うん、そうだよ。いろいろ、いそがしいんだ、ぼくは」

『独りでいる事が多いのか』という問いに『福助』はそう答える。

672鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/20(月) 22:36:59
>>671

「そうなんや」

一人でいることが多い。
それを忙しいと福助は言った。

「忙しいんって、なんか勉強とかしてるんかな?」

忙しいということは、何かをしているのだろう。
それが呪いに関わることなら分かりやすい話だ。
現実もわかりやすい話で終わってくれるのかは謎だが。

「良かったら、何してるか教えてくれへんかな?」

とりあえず聞いてみる。
福助にとって秘密にしたいことなら、多分隠されるだろうが。

673『せんせいのかくしごと』:2019/05/21(火) 19:41:58
>>672(鈴元)

「べんきょう? べんきょうは…あんまりしてない」

 少し申し訳なさそうに『福助』は答える。

「でも、"おてつだい"は、がんばっているんだよ!
 でばんが いつきてもいいように、ひとりでまっているんだ。
 おばあちゃんとあそんでいたら、"おてつだい"が
 まにあわないかもしれないしね―――」

『何をしているか教えてほしい』という問いに対して、
『お手伝いをしている』というのが『福助』の答えか。
返答がまどろっこしいのは幼児特有のものかもしれない。

674鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/21(火) 21:21:17
>>673

「お手伝い……?」

それが呪いになっているのか。
焦ってはいけない。
福助にとっては好意からくる行動。
もしそのお手伝いが呪いだったとしても辞めさせ方には気をつけなければならない。

「おばあちゃんのお手伝いじゃないってことは、誰のやろか?」

「もしかして……おかあさん?」

675『せんせいのかくしごと』:2019/05/21(火) 21:49:05
>>674(鈴元)

「うん、そうだよ」

 『福助』はあっさりと答える。

「おかあさん、"おしごと"ばかりで、いそがしそうで。
 ほんとういうと ぼく、さびしかったんだ。
  だって たくさん あそんでほしかったからね。

 だから はやく かえってこれるように "おてつだい"。

  カオをかえてあげる"おしごと"を てつだってあげていたの。

   そしたら さいきんは はやく かえってこれるようになった!
                       きょうだって そうでしょう?」

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『阿多』の方に視線を向けるなら、
 彼女の顔が複雑に歪んでいるのが分かるだろう。
  様々な感情が彼女の胸中に去来しているのは間違いない。

676鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/22(水) 01:20:53
>>675

「……」

今回の件、犯人が善意で呪いをまいている場合、問題がある。
いかにそれを辞めさせるかだ。
悪意のあるものは力による解決も出来るだろうが、この場合はそうもいかない。
好意を無下にするのがひとつの答えであり、相手の心遣いを無にするのがひとつの答えだ。
阿多は悪くない、そして福助も悪くない。
故に、難しい。

「福助くん、ちょっと手ぇを見ててもらえる?」

巾着を右手に持ち、『ザ・ギャザリング』を発現する。

「僕も福助くんと似たような……そうやねぇ、超能力というか……守護霊というか、そういうのを持ってるんよ」

『ザ・ギャザリング』の手で巾着を揺らし、花びらに変えていく。
とりあえず、巾着が半分くらい無くなるまでやる。

677『せんせいのかくしごと』:2019/05/22(水) 02:17:05
>>676(鈴元)


     ――― ぎ ゅ い い ン ―――

部屋に溢れるどこか緊迫した雰囲気を切り裂くかのように、
『鈴元』の傍らから産まれいずるは、『ザ・ギャザリング』。
『福助』の視線は当然のようにそのヴィジョンに引き込まれる。

              しゃあ ぁ ぁ ぁ ァ   ァ  ァ

その『ザ・ギャザリング』がしなやかに巾着袋を揺らすと、
巾着はその身を『花びら』に変え、散っていく―――
ここでようやく『阿多』も、この場で『特異な事』が起こっているのに気付いたようだ。
複雑だった彼女の表情の中で、驚愕の色が強くなる。

「わああ、すっごい! すっごいねェ!
  かっこいい……… 『たべるんじゃー』みたいだ!
      それに、おもしろいことができるんだねェ〜〜〜」

『福助』は『ザ・ギャザリング』の姿に好きな戦隊もののヴィジョンを見出したらしい。
『花びらに変える』能力もお気に入りのようだ。

678鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/22(水) 23:14:20
>>677

「うふふ……おおきに」

「でも、福助くんも出来るやろ? やってみてくれへんかな?」

「お手伝いしてんの見して?」

福助のスタンドを見てみよう。
スタンドの対象は門倉にやってもらえばいいだろう。
多分。

679『せんせいのかくしごと』:2019/05/23(木) 18:57:05
>>678(鈴元)

「え? "おてつだい"を?
  う〜ん でもなあ………」

『福助』は小さな腕を組んで考え込む。

「いつ どうして "おてつだい"できるかって
  ぼくにも わからないんだよね。
  そのときがきた! というのはわかるんだけど」

 ………

  どうやら『福助』の能力行使は多分に受動的なものらしい。
  口ぶりからするに『発動条件』すら理解していない様子だ。

「でばんがきたら、ぼくのてをね、うごかすんだ。
 あいてのかおは わからないんだけど
 さわった かんかくで め とか くち とか
 なんとなくわかるから あとは うまくうごかすんだよ」

本体も『手』を動かすのではないか、という『門倉』のカンは当たっていたか。
『相手の顔すら分からない』というのは
『福笑い』という能力予想からしてみると妥当なところか―――

出来上がった滅茶苦茶な配置も
『福助』にしてみれば『上手く動かした』という感覚だったようだ。
『幼児が描く似顔絵』が時に芸術的すぎる
配置になるのと似たような感じなのかもしれない。

680鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/23(木) 23:19:30
>>679

「……ふむ」

発動条件はあるがそれが分かっていない。
キーワードを言った人間が対象なのだろうが、本人が分からないのもしょうがない。
盗み聞きをして発動しているわけではなさそうだし。

「……そういえば、家におる時はお手伝いできるようになったりせえへんのかな」

キーワードのヒントになりそうなことを聞いてみよう。

681『せんせいのかくしごと』:2019/05/23(木) 23:37:30
>>680(鈴元)

「………どういういみ? うちは、ここだけど………。
 "おてつだい"は、いつも うちにいるときにやっているんだよ」

『福助』は困惑しながらそう答える。

682鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/24(金) 00:46:49
>>681

「あぁ、えっと……」

「例えば阿多せんせと一緒におる時とか、おばあちゃんと一緒におったり話したりしてる時に」

「その顔を動かすお手伝いが出来るって感じた時はある?」

683『せんせいのかくしごと』:2019/05/24(金) 12:44:41
>>682(鈴元)

「いっしょのひとのかおをうごかせたことはないよ。
 ぼくは"おしごと"の"おてつだい"をしているんだからね」

『福助』は答える。

つまり、『お仕事の現場』―――『クリニック』のみが能力下なのか、
それか、『福笑い』だから『見えている顔』に能力は使えないのか、
あるいはその両方なのかもしれない。

 ………

現状、『スタンドが見え』、『能力の発動説明が出来る』
『福助』が『呪い』の本体である事は、ほぼ間違いないだろう。
そして、『鈴元』達の目的は『呪いの解除』である。

『手伝わない』と願えば、能力はオフになるのかもしれないし、
仮に『能力発動』しても『手を動かさない』ようにしてもらえれば、
顔は動かず『呪い』も発動しないという事にはなる。

今、無理に『実演』してもらう必要はないのかもしれない。
(それはそれとして『発動条件』は気になるところだが)

684鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/24(金) 21:58:08
>>683

「あくまで院内でって、ことやね……」

何が当たりかをこの場では判断できないらしい。
なら無理に当てる推理をするよりは、福助に辞めてもらう方にシフトするのがいいかもしれない。
キーワードの特定は出来ないが、福助の説得なら出来る。

「そっか、分かった。おおきにね」

「それで今日阿多センセにここに連れてきてもらったんはね、福助くん」

「福助くんのお手伝い、してもらわんでも大丈夫って、お願いしに来たんよ」

あまり強い言葉を使うべきではないだろうと、言葉を選ぶように鈴元は言った。

「そうなるに至った流れは……阿多センセからの方がよろしいかな?」

阿多に視線をやり、話を振る。
呪いが起きてからのことなど、それをよく理解しているのは阿多だ。
それに、母親がその呪いに困っているだとか、そういうのを理解してくれると話が早い気もする。
……福助としてはあまりいいことでは無いのかもしれないが。

685『せんせいのかくしごと』:2019/05/24(金) 23:05:19
>>684(鈴元)

「えッ………ああ、そう
       ―――そうね」

突然、話をふられて戸惑う『阿多』。
状況は理解できているだろうが、
まだショックから抜け切れていないのだろう。

「福助、あのね………
 私は福助には苦労をして欲しくないの。
 いつも遅くまで帰ってこれないのは申し訳ないけど、
 『お手伝い』………それはしなくて大丈夫だから。
 お婆ちゃんと遊んで待っててくれると嬉しいな」

至った流れの説明といっても、
さすがに『手伝いが仇となって客が減った』
『困っている』とは母親の口からは言えないようだ。
大量の『遊び道具』に満ちた部屋をみるに、
意外と子供を甘やかすタイプなのかもしれない。

「………ぼくはべつに くろう していないよ。
     おかあさんがはやく かえってきたほうが うれしいよ」

そんな漠然とした説得に『福助』が反論する。
まあ、当然の流れか―――

 ………

このまま『阿多』の説得を見守るか、
『鈴元』が助け舟を出すか、
あるいは、他の方法を探るか………

686鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/25(土) 00:22:25
>>685

「……」

まぁ、人の心、親の心とは難しい。
鈴元涼が思うよりもずっと。

(僕が悪モンになった方が早そうかな……)

阿多には阿多で思うものがあるのだろう。
……気乗りのする話という訳でもないが、自分がある程度嫌われ役を買った方がスムーズになると判断した。
ただ、もう少しだけ見守ってみよう。
下手を打てば親子の絆にヒビが入るかもしれない行動だ。
だから少しだけ阿多に任せてみる。

687『せんせいのかくしごと』:2019/05/25(土) 01:46:59
>>686(鈴元)

「―――あのね、福助」

 『鈴元』が様子を窺っていると、
 『阿多』がポケットから一枚の紙切れを取り出し、
 『福助』に手渡した。

「あ! えがおの『でぃっしゅ』!」

 『福助』が興奮する。
  紙切れは『鈴元』が確認した例の絵が描かれたものだ。

「そう、『笑顔のディッシュ』。
 確か、この前に一緒に見た時、彼が言っていたわよね。
  『子供は子供らしく笑顔で遊べる世の中を作るのが私の仕事だ!』
                          ―――覚えているわよね?」

 『阿多』の言葉に『福助』は大きく頷く。

「私も一緒なのよ。

 子供―――『福助』が子供らしく笑顔で遊べるようにするのが、
   私―――『母親』の"おしごと"なの。

  『福助』が私の仕事を手伝ってくれるの、『先生』としての私は、とても嬉しい。

   でも、『仕事』は『大人』がする事。
      いつ来るかわからない『お手伝い』で
       お婆ちゃんと遊んだりしないで『福助』が一人で居るのだったら、
            『母親』としての私の"おしごと"が果たせなくなっちゃう。

                 私に『笑顔のディッシュ』の言葉を、守らせて」

 『阿多』が切々と語る言葉に『福助』は真剣に耳を傾ける。

   そして―――

  「………うん、わかった。『でぃっしゅ』のいったことだもんね」

                    なんとか納得してくれたようだ。

688鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/25(土) 18:39:03
>>687

「……」

どうやら納得してくれたようで、これなら呪い……おてつだいはもう起きないだろうか。
それでもまた何かあるのなら、それこそ自分たちが何とかするしかない。
家族の絆を超越するほどの出来事ではないと思いたい。

「門倉さん……」

そろそろお暇した方がいいだろうか。
一応、門倉に頼まれてきた形だ。
彼がいいと判断したのなら、それでいいとも思う。
もちろん、その上の阿多がまだ何かあるのならそれを聞こう。

689『せんせいのかくしごと』:2019/05/25(土) 22:17:28
>>689(鈴元)

「ああ―――」

 いい雰囲気の『親子二人』から少し離れ、『門倉』は頷く。

「これで一応は『依頼達成』というわけだね―――
 流石は『鈴元君』。俺が見込んだだけある。

         ………まあ、残った『謎』もあるけどもね」

『門倉』は親子二人に聞こえないように『鈴元』に呟く。
残った『謎』―――

「―――そう、『能力発動条件』だ。
 まあいずれ『福助君』が自身で気づくとは思うけど、
             個人的には気になるところではある」

 ………

『能力発動条件』。

『本体』『動機』『条件』のうち、最後まで残った『謎』。
『愚痴』なのではないかという推理もしてはみたが、
『阿多』は『福助』に仕事の話はあまり話していなかったようだ。
となると、少し的外れであるように思える。

基本的な考えは先ほど脳内で情報をまとめた路線でいいのかもしれない(>>648)。
すなわち―――

『キーワードを口にすると発動』『キーワードは複数ある』
『キーワードそのものではなく意図せず発語されたのかも』。

『院長室』ではついに解けなかったが、
実際に本体である『福助』を訪ねた事で、
『鈴元』は何か『大きなヒント』を掴んでいる可能性もある。

『スタンド』は無意識の才能。
『福助』が無意識に『キーワード』にするような
『複数の言葉』とは一体なんなのか―――

………

『門倉』の言う通り、一応は『依頼達成』できており、緊急性のある『謎』ではない。
『鈴元』が今、この瞬間に『ひらめいた』のなら告げるべきかもしれないが、
そうでなければ、この場はこれで終わり、という事でいいだろう。

690鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/26(日) 01:48:19
>>689

「まぁ、僕も頼まれたさかい頑張らしてもろたわ」

柔らかく門倉に微笑んだ。
持ち込まれた案件を解決できたのはいいことだ。
門倉の力になれたという事実が鈴元の中に満ちていく。
足りない自分の中を何かが埋めていっているような気がする。
これが自分の求めていたものなのかもしれない。
桜のような人間になりたいという思いを達成するとはこういうことなのだろうか。
少し、違う気持ちもあるけど。

「……発動条件なぁ……あんまりピンとは来てへんけど」

「タベルンジャー関係やと思うんよね。皿とか顔とか、そういうタベルンジャーに登場する言葉に関連してるんかなぁ?」

そんな事を鈴元は呟いた。

691『せんせいのかくしごと』:2019/05/26(日) 05:21:54
>>690(鈴元)

『鈴元』は事件を解決した事に達成感を感じる。
紆余曲折あったが、終わりよければすべてよし、だ。

 ………

「『タベルンジャー』………ああ、『福助君』の好きだという。
 確かに彼の『思い入れ』が能力に繋がっているという事は大いにあるだろうね」

『門倉』がぐるっと部屋を見渡す。
『鈴元』もそれをまねると、数々の『遊具』に紛れて、
『タベルンジャー』関連の遊具、
特に『笑顔のディッシュ』のものが多く存在する事が分かった。

「ただ、少なくとも『顔』という言葉は、『顔のパーツ』だの『顔が崩れる』だの
     さんざん『クリニック』で発声していたけど、『呪い』は発動しなかった………」

『皿』に関しても『鬼塚』が発声していたような気がする(>>560)。
そもそも『キーワード』が『タベルンジャー』関連であれば、
『鬼塚』に大量に『呪い』が発生していても不思議ではないが、そんな話は聞かなかった―――

「う〜ん、もし、いい『キーワード』があれば、『クリニック』にいる
 スタッフに連絡して『実験』でもしようかと思ったけど、
  俺にも、今はちょっと思いつかないな」

 『門倉』は首をふる。

「まあ―――いいか。
  すべてが分かるというのも味気ない気がするしね。

 さて、『請求』は………後日でいいかな」

そして、どうやら『門倉』も帰る判断をしたようだ。
『鈴元』がこれ以上、ここでやる事がなければ、共に帰路につく事になるだろう。

692鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/27(月) 23:07:59
>>691

「そこはお力になれんですいません」

頭を下げて、門倉に謝罪する。
後で気付くかもしれないが、今はまだ。

「センセ、僕らそろそろ……」

ギャランティの請求は後日門倉にやってもらおう。
帰る意思を阿多と福助に伝えておこう。
早く着替えないと本格的に不味い気もするし。

693『せんせいのかくしごと』:2019/05/28(火) 00:42:41
>>692(鈴元)

「いいさ――――
    なんて言ったって、俺にもまるで分からないんだからね」

『鈴元』の謝罪に『門倉』が爽やかにそう応じる。

 ………

「ああ―――そうね。
 本当に今日はありがとう」

『お暇』を告げる『鈴元』に『阿多』は、『鈴元』と『門倉』に深々と礼をする。
何の事かよく分からないだろうが、『福助』も母親にあわせ、礼をしてくれた。

「―――後日、伺いますので本日はこのへんで失礼しますね。

ああ、『福助君』。もしかしたら君は、ええっと、そう、
 『お手伝いの出番』がまだ時々出ちゃうかもしれないから、
 その時は『手』を動かさないでおいてほしい。
 お仕事はプロフェッショナルである『お母さん』に任せるといいよ」

『門倉』はそう言いつつ、自らの『携帯の連絡先』を『阿多』に渡す。後日のやりとりの為だろう。
また、確かに『福助』は『能力のオンオフ』すら上手く出来ない可能性がある。
その際でも『手を動かさない』事で『呪い』は十分に防げる―――

「ああ、着替えなどありますので『クリニック』に一度寄りますね」

『門倉』が更に言葉を重ねると『阿多』は『連絡しておく』との事。
『阿多自身』もそのうち戻るのだろうが、
今はもう少し『息子』との時間を楽しみたいというところか。

時計は『18時』をちょうど回ったところだ。
今となっては意味のない『期限』ではあるが、
一応、時間内に目的は達成できた事になる―――

694鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2019/05/28(火) 17:11:21
>>693

「……一応、時間内やね」

門倉にそう耳打ちして、もう一度阿多たちに頭を下げた。

「またなんかあったら、そんの時も門倉さんまでで」

帰ろう。
自分の家に自分の母はいないけど、電話くらいはかけてもいいかもしれない。

「それじゃあ、はばかりさんでした」

695『せんせいのかくしごと』:2019/05/29(水) 05:33:52
>>694(鈴元)

『鈴元』と『門倉』は『阿多邸』を後にし、
着替える為に『クリニック』に戻る二人。

『クリニックスタッフ』には『呪い』については『解決』した事、
『阿多』は所用により、『家』に帰った事を告げた。

結局のところ、『クリニックスタッフ』は『呪い』とは無関係であり、
残ったスタッフは逆境にも関わらず『阿多』を信じてついてきた面々だ。
彼らがいればこの『阿多美容クリニック』もきっと持ち直す事だろう。

『武藤』に化粧を落としてもらい、『鈴元』はいつもの『鈴元』へと戻った。
『武藤』が名残惜しそうな視線を送っていたように思えたのは
果たして気のせいだったのか―――

 ………

「―――ああ、はい。分かりました。
 それがいいですよ。『福助君』も喜びます。

   ええ、では……また、後日、よろしくお願いします」

―――『帰路』。

『門倉』が『阿多』からの電話を受け、今まさに切ったところだ。

「『阿多先生』は、今後、『福助君』を
 『クリニック』につれていく事にしたそうだよ。
  『お婆ちゃん』も一緒にね」

『鈴元』は『門倉』からそんな説明を受ける。
それなら『福助』の寂しさも解消する事だろう。

「『福助君』を今まで隠していたのは、
 『医者』としての職務を蔑ろにしたくなかったから、らしいよ。
 『子育て』しながら働く女医さんもたくさん居るだろうにね―――」

『門倉』はそう言うが、『阿多』の医者人生の中で思わせる『何か』があったのだろう。
彼女が『シングルマザー』なのも一因なのかもしれない。
ともあれ、今回の件はその信念を覆すきっかけになったようだ。

『せんせいのかくしごと』は、『せんせいの"かくしご"と』の件だった。
それを紐解いた事で無事、『解呪』は果たされる。

『呪いの正体』は、『福笑い』であり『母を思う子の思い』。
『災い転じて福となす』―――
これから『母子』の新しい幸せがやってくるに違いない。

今はまだ『一月』―――
なんだかひどく時が経ってしまったような気もするが、

新しい時代もやってくる。
『鈴元涼』の『今年』はこれからだ。


                             『せんせいのかくしごと』→『了』

696『せんせいのかくしごと』:2019/05/29(水) 05:38:00

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  禍福は糾える縄の如し。呪いも祝いも笑うが勝ち

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

戦隊ヒーローのような『お面』のヴィジョン。
『能力発動』時のみヴィジョンが現れる。

指定した場所で条件を満たした者の顔を『福笑い』にするのが能力。
『福笑い』になった相手に対し、本体の手の動きにあわせ、
自由に『顔のパーツ』を入れ替える事が可能。

入れ替える際には対象の顔の前に、
一対の本体と同じサイズの『小さな手』が浮かび、
その手が本体の手の動きと連動し、『パーツ』を入れ替える。
この『手』はヴィジョンというより能力の『象徴』に近く、
他スタンドによるものを含む、あらゆる物理的干渉を『透過』する。

入れ替え時間はおよそ『10秒』で、その時間が終わった後、
『顔のパーツ』は入れ替わった位置で『固定』される。
この際、顔のパーツがその機能を失う事はない。
(目や鼻や口がどの位置にこようが、見たり嗅いだり喋ったり出来るという事)
『固定』は一時間ほどで解除される。

能力の発動条件は―――『不明』。

『ディッシュ(笑)』 Dishwalla
破壊力:なし スピード:なし 射程距離:E(能力はA)
持続力:D 精密動作性:なし 成長性:A

・スタンド名の読み方は『ディッシュワラ』(スタンド名検索時に引っ掛かるように記載)。
 好きな戦隊モノのキャラクターから、事件後に本体が名付けた。
・(笑)にネットスラング的な悪意を感じない世代。
・能力下に入った者の大よその位置のみ本体は把握出来るが、
 肝心な『対象の顔』を把握する事が出来ない。
・また自分が何らかの方法で『視認している者』に能力施行は不可能。
 本体と対象との『距離』こそが『福笑い』における『目隠し』の役割を果たしている。

697『せんせいのかくしごと』:2019/05/29(水) 05:39:43

後日、『クリニック』を訪れ、報酬を貰ったという『門倉』から『10万円』が支払われた。
(『門倉自身』の取り分は全て自身の『不動産屋』の事故補填にあてたようだ)

  また『門倉』からなぜか『阿多美容クリニック』のメンバーの連絡先をもらった。
  なんだかそういうノリになってしまってね―――と言うが、どういうノリだったのかは不明だ。

「特に武藤さん………女性の方だね、彼女が『また連絡ください』って言ってたよ。
 『鈴元君』―――これは色恋の季節の始まりかもしれないよ。大事にするんだよ」

  『門倉』はそう言っていたが、『武藤暮』の目的は別にあるような気もする。
  ともあれ、気になるなら『連絡』してみるといいだろう―――


           鈴元涼『ザ・ギャザリング』→『10万円』&『阿多美容クリニック』
                            メンバー等との『コネクション』GET!

698『せんせいのかくしごと』:2019/05/29(水) 05:43:22

※ミッション特別報酬※ 『阿多美容クリニック』のメンバー等との『コネクション』について

①『武藤暮』とのコネクション

 「あの子………なかなか『良い』素材でしたね」

 ミッション中、『鈴元』に化粧を施し『女性ナース』に化けさせた『武藤暮』(>>438)。
 『鈴元』はどうやら彼女に『素材』として、気に入られたようだ。
 『武藤暮』の卓越した技術による『女装』を無料で依頼可能。
 ただしこの『女装』はあくまで『技術』。
 高度ではあるが、絶対ではなく『見る人が見れば分かる』。
 (言い切りで『見抜かれる』可能性は十分にある)

②その他の人物とのコネクション
 その他の人物や福助にも【場】『 PC間連絡スレ ―星間通信― 』【他】 で呼びかけてくれれば交流可能。
 ミッション内人物に何か用事があれば連絡するといいだろう。

※基本は【場】『 PC間連絡スレ ―星間通信― 』【他】で呼びかけてくれれば対応する。
 ①に関しては『門倉PL』がいなそうな時や、急を要する時、
 あるいは詳細を隠しておきたい時、気が乗らない時などは
 呼びかけずに『言い切り』で用いてくれても構わない。
※基本的に『場スレ』でのフレーバー、あるいは『鈴元PLのGMミッション』での利用を想定。
 『参加ミッション』や『GMが居る場』での利用の可否は『GM次第』。

699『月夜のV』:2019/07/27(土) 18:46:47

夜の街に月が差し込み、人は行き交い影は舞う

700『月夜のV』:2019/07/27(土) 18:51:24

         ザワ
             ザワ ザワ

歓楽街――――『星見横丁』。
いわばメインストリートである『星見街道』と比べると、その雰囲気には小さくない違いがある。
今のような時間帯は、それが特に顕著だ。
穏やかな月明かりと眩いネオンの輝きに照らされて、多種多様な人々が夜の通りを行き交っている。
その雑多な群集の中には、『彼』――『神原幸輔』も含まれていた。

       コッ コッ コッ

神原の前方から、一人の女が歩いてくる。
露出の多い『パンクファッション』風の女だった。
キャミソールに革のショートパンツ、網タイツ、ブーツ――そんな格好だ。
その上から、トレンチコートのように裾の長いノースリーブのジャケットを着ている。
フードを目深に被っていて顔は分からず、口元に引かれた真っ赤なルージュが目立っていた。

   コッ コッ コッ

女と神原の距離は、次第に縮まっていく。
当然だが、正面からぶつかるようなコースではない。
ごく普通に歩いていれば、何の問題もなく擦れ違えるだろう。

701神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/07/27(土) 20:41:35
>>700

先輩に飲みに行かないかと呼び出されたのがきっかけ。
しかし、先輩は嫁からのストップがかかってしまったらしい。
その連絡を見たのはもう出てしまった後のことで、腹をすかして戻るのも癪だった。
料理をする気にもならないだろうし。
だから、ちゃんとこちら側にやって来た。
一人で飲むのは退屈だが、師匠がいるならまぁ問題ない。
師匠は酒を飲めないが、飲んでいる人間と同じくらいは話す。

『ん』

「どうしたの師匠」

周りからは師匠である『ストロンガー・ザン・アイアム』が見えないので小声で話す。
最近はハンズフリーキットという便利なものがある。
片耳のワイヤレスイヤホンをしていれば通話しているのだな、なんて思ってくれる人が多い。

『あそこの女性だ。目深にフードを被っている……』

「案外サマになってるね」

『ははは。どこに目を付けているんだ。顔は見えないがお前が好きそうな雰囲気じゃないか?』

「ははは。そういう話はよそうか」

神原はいたって普通に、『ストロンガー・ザン・アイアム』は女性を見ながらすれ違おうとする。

外見
所々金髪に染めた黒い髪をゴムで縛っている。
181cm
下はスラックス、上は『ごめんあそばせ』と書かれた日本刀がプリントされているTシャツ。

簡易プロフィール
プロレスラー。
自身のスタンドである『ストロンガー・ザン・アイアム』を師匠と呼ぶ。

持ち物
スマホ、財布、プラスチック容器に入ったラムネ菓子、片耳のワイヤレスイヤホン

能力詳細
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453050315/75

702『月夜のV』:2019/07/27(土) 22:31:20
>>701

自身の『精神の象徴』であり、『師匠』でもあるスタンド――『ストロンガー・ザン・アイアム』と共に歩く。
師匠との会話は、スタンドの見えない一般人からすれば奇妙な光景に映りかねない。
しかし神原の考えている通り、ワイヤレスイヤホン一つで自然な場面に様変わりさせる事が出来る。

      ――――スッ

神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』が、『パンクファッションの女』と擦れ違った。
『ストロンガー・ザン・アイアム』が観察していたが、特に変化は見られなかった。
たとえば、擦れ違う瞬間に何かをしてくるといった様子もない。
そんな出来事は滅多にない事なのだから、当たり前といえば当たり前なのだろう。
そのまま何事もなく女は歩き去り、神原と『師匠』から離れていく。

       ワイ        ワイ
            ワイ       ワイ

目下の問題は、『飲む場所』を決めるという事になるだろうか。
この辺りは、飲食店や飲み屋には事欠かない。
今いる場所から見渡してみても、結構な数の店が確認できる。
当初の予定は潰れてしまったが、隣には『話相手』もいるのだ。
少なくとも、退屈はしないだろう。

と――――。

          ドンッ

「おいッ、きィつけッ…………」

髪を青く染めた少年の肩が、神原の身体とぶつかった。
言葉の最初の方は威勢が良かったものの、最後に行くにつれて声のトーンは小さくなっていく。
ぶつかった相手――すなわち『プロレスラー』である神原の体格が、予想外に良かったせいらしい。
『青髪』の後ろでは、連れ合いである『緑髪』の少年が立っている。
二人とも改造した制服を着用しており、一目で『不良』と分かる出で立ちだった。

703神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/07/28(日) 00:08:29
>>702

「あぁ、ごめんね」

当たったという事実だけに反応したのだろう。
他人から見ればあたまひとつ抜けて大きいのだから。
体格だって筋骨隆々という訳では無いが鍛えているから普通よりは大きい。

「危ないよこの辺」

改造制服だ。
若者がこの辺りをうろつくのは問題がある。
風紀的な話もあるが、明らかなカモだ。
その道のプロなら分かる事だ。

「気をつけてね」

704『月夜のV』:2019/07/28(日) 20:05:55
>>703

少年に軽く謝罪しつつ、ささやかな忠言を送る。
客観的に見て、それは極めて真っ当な対応と呼べるだろう。
神原が考えているような危険を彼らが理解しているかどうかは定かではないが、
『身の程』を知らない事は確かなようだ。

「ハハッ!なァに、ビビッてんだよ?」

「あァ?誰がビビッてるっつったよ!」

二人のやりとりを見ていた『緑髪』の少年が、『青髪』を煽る。
そして、『青髪』も乗せられやすい性格らしい。
神原の前に意味もなく立ちはだかり、口を開いた。

「――あァー……その、アレだ。アレだよアレ!わかんだろうが!」

ちっぽけな意地を張っているのか、何か気の利いたセリフでも言おうとしているらしい。
しかし、中身のある言葉が出てくる気配は一向にない。
それを見物している『緑髪』も、特に止めるつもりはないようだ。

            ザッ――――

その時、神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』には見えた。
二人組みの後方から、一人の若者が近づいて来る。
先程の『パンクファッション』の女とは違い、明らかに神原達がいる方向を目指して向かってきている。
顔つきや身なりから少年達より年上である事が分かり、体格も彼らよりは良いようだ。
神原のように部分的ではなく、髪の全体を金色に染めている。

705神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/07/28(日) 21:17:52
>>704

「……分かんないなぁ」

だからカモなのだ。
職業柄、あまり大事にしたくもないが。
ここでぶつかったのがもっと粗野な人間でなくて良かったな、という話だ。
酔っぱらい程度ならともかく、そういう仕事を生業にする者だったら、頭を下げて済む問題が金を払って済ませなければならない問題になる。

「なにをそう躍起になるのか。お小遣い稼ぎなら、もっと考えてしないと……」

『幸輔、人が来てる』

視線の向きを変える。
師匠が指さした先にいる金髪の若者。

「友達かな?」

誰にいうわけでもそう呟いた。
視線は外さない。

706『月夜のV』:2019/07/28(日) 23:31:19
>>705

彼らにとって、ぶつかったのが神原だったのは幸運と言える。
そして神原にとっては、そうでもない。
もちろん神原が本気で退かそうと思えば、どうとでも出来る相手だ。
いや、本気になる必要すらない。
ただ、相手をするのが面倒な種類の人間ではあるだろう。

       ザッ ザッ ザッ

神原の言葉が聞こえたらしく、二人組が後ろを振り向いた。
その間も、金髪の若者は足を止めずに歩み寄っている。

「ヤベッ――」

「うッ……『譲原』さん……」

『緑髪』は視線を泳がせ、『青髪』は若者の名前らしきものを口に出した。

       ザッ

「――――『小出』、それと『田丸』」

金髪の若者が声を掛ける。
神原にではなく、二人組に対してだ。
どうやら、『青髪』は『小出』で『緑髪』は『田丸』という名前らしい。

「ほっつき歩いてないで、さっさと帰れ。『あの事』もあるからな」

「…………分かりましたよォー」

『譲原』に注意された『小出』と『田丸』は、渋々といった調子で立ち去っていく。
彼らの様子から判断すると、友達というよりは先輩という雰囲気だった。
二人がいなくなってから、『譲原』は神原に向き直る。

「ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした――『神原』さん」

      スッ

謝罪の言葉と共に、姿勢を正した『譲原』が深々と頭を下げる。
名前を口にした所を見ると、どうやら神原の事を知っているようだった。

707神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/07/29(月) 22:58:32
>>706

『先達というのは大変だな』

学生の間でもそういうのはある。

「大変だね」

「俺の事知ってるのは意外だったけど」

「……あの事って?」

708『月夜のV』:2019/07/30(火) 00:49:56
>>707

「どうしようもない奴らですが、あんなのでも世話を焼いてやらなきゃいけなくて」

譲原は、少々はにかんだような表情を見せる。
先程の二人と異なり、譲原は私服だった。
チンピラ風のストリート系ファッションだが、物腰は丁寧だ。

「実を言うと、あなたのファンの一人ですから。試合を観に行った事も何度か――」

「それで、ええと……」

神原を見つめる譲原の目には、決して弱くはない尊敬の色があった。
ファンとしての話を続けなかったのは、
今の神原が『プライベート』である事に気を遣ったせいかもしれない。
ともかく、彼は話題を変えた。

「最近の事なんですが、この辺りで何人か『襲われてる』って話があるんですよ。
 やられているのは俺達みたいなのばかりで、『同じ人間』の仕業らしいですね。
 今は、被害に遭った全員が入院中です」

「『同じ人間』というのは、その――『手口』が同じと言いますか……。
 これは眉唾なんですが、話を聞く限りだと『得体の知れない何か』みたいなものにやられたとか……。
 それが本当かどうかはともかく、怪我の具合を見ると『凄い力』だった事は確かみたいですね」

「とにかく、『物騒な事件』が起きている――という事なんです。
 神原さんが被害に遭う事は恐らくないでしょうし、
 もし遭ったとしても、神原さんなら滅多な事にはならないとは思いますが……」

譲原の言葉の端々からは、神原に対する気遣いが滲み出ていた。
もし何か聞く事があれば、尋ねてみてもいいだろう。
知っている限りの事なら、彼は答えてくれるはずだ。

709神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/07/30(火) 23:40:49
>>708

「まぁ、世話を焼くのも仕事といえば仕事……立派な話さ」

自分の出会ってきた先輩たちもそうだった。
付き人として後輩がサポートすることもあるが、先輩は当然その背中を見せ続けなければならない。
培った経験を持って試合のアドバイスもしてくれた。
感謝しているし、だからこそ自分もそうしようと思う。
これは先輩から受け継ぐ意思だ。

「そう。嬉しいよ、こうやって会えるのもなかなかないしね」

もしかしたら物販の時に会ってるかもしれない。
だとしたら申し訳ないことだ。

「……物騒な話だね」

『得体の知れない何かというと、スタンドか』

その可能性は否定できない。
自分も以前怪盗騒動に巻き込まれたことがある。

「はは……格闘家がストリートファイトで負けるのも珍しい話じゃない」

「犯人の特徴は分からない?」

誰もその姿を見ずにやられたならよりより厄介だ。

710『月夜のV』:2019/07/31(水) 01:23:51
>>709

   スッ

神原の労いを受けて、譲原は黙ったまま頭を下げた。
何か言葉を言うより、そうした方が伝わりやすいと考えたのかもしれない。
あるいは、自分は気の利いた言葉を言えるような人間ではないと思ったか。

「それが、全員が『不意打ち』みたいな形でやられたらしくて……。
 犯人が現れているのは今のところ『夜』だけなんですが、
 暗い場所で気配を感じたと思ったら、もう――という感じみたいですね。
 気付いたら、近くの壁に叩きつけられていたそうです」

神原には、『温泉旅館』での事件解決に貢献した経験がある。
あの事件は、事前の調査と綿密な計画に基づいて行われた大掛かりな犯行だった。
それ程の規模ではなかったとしても、この件に『スタンド』が関わっている可能性は大いに有り得る。

「――だから、まともな目撃者がいない状態なんですよ。
 人影を一瞬だけ見た奴もいますが、特徴らしいものは何も……」

そう言いながら、譲原は軽く頭を横に振った。
現状で、犯人の姿を見ている人間はいないようだ。
神原の考えている通り、より厄介な状況と言えるだろう。

「そういえば――特徴とは少し違うんですが、やられた奴には別の共通点もありました」

「やられているのは確か五人か六人ですが、その内の半分くらいは『火傷』を負っていました。
 『顔』や『手』に、です。
 そんなに酷いものじゃなかったと思いますが……」

「俺が見た限りだと『根性焼き』されたって感じでもなかったですし、
 何となく腑に落ちない気はしますね……」

もし『スタンド』の仕業であるなら、譲原達のような『一般人』には分からないのも無理はない。
『スタンド使い』である神原か『スタンド』である『ストロンガー・ザン・アイアム』なら、
何らかの手掛かりになる可能性はある。
今後、二人が事件に関わる事があればの話にはなるが――――。

711神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/07/31(水) 22:54:40
>>710

「不意打ちかぁ」

『まぁ、闇討ちとなればそうだろうな』

面と向かっていざ尋常にとはいかないだろう。
そうなのであればもっと話が広まっているだろうし。
ままならないし、厄介な相手のようだ。

「火傷を顔や手に?」

根性焼きとは違うもの。
スタンドであればそれも可能か。

『顔や手につくということはそこに食らったわけだろうな』

(手についてるのは顔をかばったからかな……ガードの上から叩いたか)

『もしくは、そいつ自体に触れてしまったか』

出した拳に燃えるスタンドが……というパターンもあるだろう。

「そっか。ありがとう」

712『月夜のV』:2019/08/01(木) 04:00:05
>>711

「いえ、これくらい何でもありませんよ」

神原の謝辞に対して、譲原は含みのない笑みを見せた。
スタンドによるものなら、彼が語った話から考えられる可能性は少なくない。
いずれにしても、これで譲原の話は一段落したようだ。

「では、俺はこれで失礼します。他にも様子を見ておかなきゃならない連中がいるので……」

「神原さん――――お会い出来て光栄でした」

最後に改めて一礼して、譲原は立ち去っていく。
その時、彼を呼び止める者が現れた。
髪を赤い色に染めた、『レザーファッション』の男だ。

「よう、『譲次』ィ!街中でバッタリ会うとは奇遇だなァ」

「――あッ、お久しぶりです!」

『赤毛の男』が呼んだ『譲次』というのが、譲原の名前らしい。
譲原と『赤毛の男』は、親しげに挨拶を交し合っている。
その様子から判断すると、どうやら顔見知りのようだ。

――――そして勿論、神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は自由だ。
何の問題もなく、何処かの店に入って一杯やる事が出来る。
少なくとも、そのための場所に困りはしない。

713神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/01(木) 22:15:10
>>712

「またね」

「次は会場で」

手短に挨拶を済ませる。
あまり立ち話をして引き止めるのも悪いだろう。

『譲原譲次』

「……なに急に」

歩き出してから師匠がそんなことを口にした。

「あぁ、なるほど。譲原譲次で、あだ名はジョジョって?」

『そうだ。よく気づいたな』

精神の表れだというのならそれくらいは分かる。
よく分からなくなる場面もあるが。

「変だよ。そんなあだ名。響きが悪くない?」

『そうか? いい名前じゃないか?』

「……ま、どーだっていいや」

飲める場所を探そう。

714『月夜のV』:2019/08/02(金) 02:36:10
>>713

  ザッ

己の精神である『師匠』と掛け合いを交わしながら、神原は再び夜の街を歩き出す。
譲原のニックネームについては定かではないが、そう呼ばれていてもおかしくはないのかもしれない。
『赤毛の男』と譲原は、互いの近況について話しているようだ。

「おっと、お前は用事があるんだったなァ。つい話し込んじまった。じゃ、またな」

「はい――また近い内に」

『赤毛の男』は立ち去り、譲原も何処かへ歩いていく。
神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』が立ち寄るのに適当な店は、すぐに見つかった。
二人は店内に入り、不穏とは無縁の穏やかな一時を過ごす――――。

「――ありがとうございました〜」

若い女性の店員に見送られて、神原達は店を出た。
一杯やり初めてから、およそ二時間か三時間くらい経っただろうか。
心なしか、夜の色も濃さを増しているように思える。

                   ――――ガシャンッ

不意に、何かが倒れるような音が聞こえた。
空き缶やペットボトルの詰まったゴミ箱が、勢い良く横倒しになったような音だ。
そして、神原の足元に何かが転がってくる。

    カランッ
           コロコロコロコロコロ…………

それは、何の変哲もないスチール缶だ。
どうやら、近くの暗い路地の中から転がってきたようだった。
辺りには、神原以外の人間も『ストロンガー・ザン・アイアム』以外のスタンドも見当たらない。

715神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/02(金) 21:37:37
>>714

『穏やかじゃないな』

「誰かが酔った勢いで倒しただけならいいけどね」

脳裏によぎるのは件の通り魔じみた存在だ。
もし近くにいるのなら対処しなくてはならない。
神原がスマホのライト機能を起動して路地を照らし、師匠が前に出る。

「もしもーし」

716『月夜のV』:2019/08/03(土) 17:37:16
>>715

脳裏に浮かぶのは、例の『傷害事件』――その可能性は十分ある。
酔っ払った誰かが倒したという可能性も、それと同じくらいにはあるが。
いずれにせよ、実際に現場を確かめてみれば分かる事だろう。
神原の呼び掛けに対し、答えが返ってくる様子はない。
少なくとも、今の所は。

               ――――パッ

スマホのライトが、狭い路地を明るく照らす。
今の時点では、まだ特に目立つような何かはない。
ただ、奥の方にゴミ箱の中身らしきガラクタが散らばっているのが見えた。

        コロコロコロ…………

夜風に流されて転がり始めたペットボトルが、ビルの壁面に当たって動きを止める。
散乱したゴミの位置から見て、それらは路地を進んだ先の曲がり角の向こうでブチ撒けられたらしい。
さっき見かけたスチール缶も、その一部だったようだ。

「…………ッ」

風の音に混じって、それとは違う何かが聞こえた。
微かに聞こえる程度ではあるが、人の声に似ていたようだ。
神原の言葉に、誰かが答えたのだろうか。
『ストロンガー・ザン・アイアム』は、本体である神原の前に出ている。
仮に何者かが急に現れたとしても、対処する事は出来る筈だ。

717神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/03(土) 22:42:03
>>716

奥に進むしかないようだ。
ここで放っておくのも面倒と言えば面倒なのだ。
もうライトを照らしてしまった。
奥に誰かいるならもう自分がいることを教えてしまっている可能性が高いから。

「行こうか」

『あぁ』

師匠が前で神原が後ろ。
神原は後ろから誰か来ていないか警戒する役目を担っている。
師匠は拳を固め、臨戦態勢だ。

718『月夜のV』:2019/08/04(日) 17:44:53
>>717

    ザッ ザッ ザッ

万一の場合に備えて臨戦態勢を整え、路地の奥へ進む。
スマホは神原が持っており、後ろに注意を払いながら歩いている。
そのため、前方を照らす行為は少しばかり疎かになるかもしれない。
しかし、今の行動に支障が出る程ではないだろう。
神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は、散乱するゴミを踏み越えて角を曲がった。

「うッ…………」

曲がった先の路地裏に、誰かがうつ伏せに倒れている。
ライトの明かりが、その人物の姿を照らし出した。
顔は見えないが、服装や髪の色には見覚えがある。

            ヒュオォォォォォ…………

夜風が吹き抜ける路地裏に倒れているのは、数時間前に別れた『譲原』だった。
正確な状態は分からないが、負傷している事は間違いない。
神原達から見える限りでは、『一方的に叩きのめされた後』のような印象だ。

「…………ッ」

譲原の意識は、まだ辛うじて残っているようだ。
しかし、おそらくは限界が近いのだろう。
現在の様子から、それが察せられた。
譲原の傍らには、液晶の割れたスマホが落ちている。
どうやら、これは彼の私物らしい。

719神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/05(月) 21:03:09
>>718

「大丈夫、じゃなさそうだね」

神原は譲原の近くにしゃがみこむ。
怪我の具合などを見て立ち上がれるかなども確かめる。
師匠は師匠の視聴覚を持っているから周辺の警戒をしてもらう。

「例の?」

720『月夜のV』:2019/08/05(月) 23:08:11
>>719

譲原の状態を確認するため、彼の側に歩み寄る。
かなり痛めつけられている様子だが、少なくとも命に別状はないようだ。
間近で見て分かったのは、彼が手や顔に『火傷』を負っているという事だった。
譲原自身が話していた通り、それほど酷いものではない。
ただ、客観的に見て『火傷』だと判断できる程度ではある。

「――――あ…………ぐッ…………」

今にも閉じられようとしていた譲原の両目が、神原の姿を見て僅かに開いた。
既に、意識を失う寸前らしい。
おそらく、自力で立ち上がる事は難しいだろう。
返事の代わりに、彼は視線を動かした。
路地裏を抜けた先――道路を挟んで反対側の方向に当たる路地だ。

       ヒュオォォォォォ…………

周囲を警戒していた『ストロンガー・ザン・アイアム』は、奇しくも同じ方向に視線を向けていた。
その視界に、何かが映り込む。
夜の闇の中で確かに動くものがある――――『人影』だ。
道路を隔てて、それなりの距離が開いている。
暗さのせいもあって朧に見えるだけだが、神原達から遠ざかっている事は分かった。

                 ォォォォォォォォォォ…………

――――その傍らには、『人型スタンド』らしきものが見える。

721神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/05(月) 23:31:57
>>720

「悪いけど、担架は呼べない。だから今は寝てていい」

「仕事が出来たからな」

スイッチが入る。
人影と人型スタンド。
状況から見てあれが犯人である可能性は十二分にある。
譲原のことは心配だが救急車を呼んでいると逃げられてしまう。

「仇は打つ。神原幸輔にはそれが出来る」

『俺達がなすことだ』

人影に向かって走る。
師匠は『メディシンボールを発現』(www.amazon.co.jp/dp/B07JVZNL9R)
スタンドに向かって投げる(パス精BBC)

722『月夜のV』:2019/08/06(火) 20:06:32
>>721

譲原の容態を考えると、救急車は必要だろう。
しかし、一刻を争うという状態でもない。
ひとまずは、寝かせておいても問題ない筈だ。

    ダッ――――

瞬間――神原の心に火が灯る。
それは、熱い闘争の炎だ。
ここは試合会場ではなく、神原の活躍を見守るギャラリーはいない。
だが、今の彼を突き動かすのは賛辞や脚光ではない。
胸に宿る情熱のために、神原幸輔は走り出す。

              ド 
                シ ュ ッ ! !

ズッシリした重みのある『メディシンボール』。
本来は体幹トレーニングに用いられる『それ』を、人間を超える『師匠』の膂力を以って投げ放つ。
重さ『5kg』の球体が、人型スタンドめがけて高速でブッ飛んでいく。

「――――ッ!!」

                 ババッ

人影の近くに控えていた人型スタンドが、素早くガードの態勢を取った。
走り出した神原の足音が聞こえたか、あるいはボールが風を切る音に反応したのかもしれない。
スタンドの動きは、『ストロンガー・ザン・アイアム』に匹敵するスピードだ。
結果として、投じられたメディシンボールは防御を固めたスタンドの両腕付近に命中する。
状況的には相手に気付いていた神原達が有利だったが、距離があったために防がれたようだ。

                           ザッ

人影と人型スタンドは、足早に路地の奥へ消えていく。
人間以上である『ストロンガー・ザン・アイアム』の投擲を受けても、態勢を崩さなかった。
それを考えると、パワーも同等のようだ。

          ダダダッ

当然、それだけで終わる訳はない。
神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』が、人影と人型スタンドを追う。
その時だった。

     ガァ――――ッ
               ガァ――――ッ
                         ガァ――――ッ

目の前の道路を、三台の自動車が立て続けに横切っていく。
それらが通過した直後、人影とスタンドは神原達の視界から消えていた。
周囲は、再び静寂に包まれる。

                   キラッ

先程まで人影が立っていた辺りで、小さな何かが光った。
それ自体が光を放っているのではなく、月明かりを反射しているのだ。
人影とスタンドに意識を向けていたため定かではないが、走り出す前はなかったと感じられる。

  ザッ ザッ ザッ

ほぼ同時に――背後から何者かの足音が聞こえてきた。
誰かが、この路地裏に入ってこようとしているらしい。
足音は、徐々に近付いてくる。

723神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/07(水) 23:54:42
>>722

師匠は背後の警戒をする。
敵ならば直接攻撃ができる師匠が対応した方がいい。
神原は光ったなにかを見る。

『誰だ?』

「なんの用?」

724『月夜のV』:2019/08/08(木) 21:53:44
>>723

『何か』の正体を確かめるために、暗闇に目を凝らす。
しかし、それは小さく距離も遠い。
詳しい事を知るには、もう少し近付く必要がありそうだ。

  ズルッ

「おッ――――」

       ガッシャァ――――ンッ

曲がり角の向こうで、歩いてきた人物が倒れたらしい音が聞こえた。
不意に声を掛けられた拍子に、足元のガラクタを踏ん付けるかどうかして転んだようだ。
その声には、多少の聞き覚えがあった。

「――ッてェ〜……」

譲原と別れた後で、彼と話をしていた『赤毛の男』の声だ。
もし彼が敵なら、相当に間の抜けた行動と言えるだろう。
敵でないなら、間抜けではあるが『それ以上』ではない。

725神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/08(木) 23:05:21
>>724

「大丈夫ですか?」

師匠と前後を交代。
何かが向こうから接近する可能性は否定できないから警戒は続ける。
自分が赤毛の男に向き合う形になる。

「どうかしましたか?」

「譲原さんは?」

とりあえず聞いてみる。
譲原が倒れているのは知っているのだろうか。
倒れている譲原を見てこちらに来たのか?
それとも関係なく勝手に転んだのか。

師匠は『ツイストボール(ttps://www.amazon.co.jp/dp/B0727Z71D5)』を発現。
向こう側の何かを狙って投げつける(パス精BBC)

726『月夜のV』:2019/08/09(金) 00:14:36
>>725

おそらく、赤毛の男は譲原の存在に気付いてはいないだろう。
神原自身、角を曲がった時点で初めて譲原を見つけたのだ。
角の向こう側にいる人間が、事前に気付ける可能性は極めて低い。

「いや、ヘーキだよヘーキ。いきなり話しかけられたもんだからよォ……」

曲がり角の向こうから、赤毛の男が姿を現した。
照れ隠しなのか、ぶつけたらしい頭を触っている。
しかし、倒れている譲原を見て顔色を変えた。

「――――オイ、譲次じゃねェかよ!大丈夫か!?」

赤毛の男が譲原に駆け寄った。
そして、先程の神原と同じように譲原の状態を確認する。
ギリギリ意識が残っていたらしい譲原が、赤毛の男を見返した。

「すぐ救急車呼んでやる。おい、アンタ救急車呼んだか?呼んでねえなら俺が呼ぶぜ」

神原の返事を待たずに、男は自分のスマホを取り出した。
だが、番号を入れようとした所で何かに気付いたように動きを止めた。
その視線は、『ストロンガー・ザン・アイアム』に向いている。

「あー、何ていうかよ……。もし間違ってたら申し訳ねェんだが……」

「――――『アンタがやった』ってワケじゃねェよな?」

       ズズ

男の右手に『スタンド』が発現する。
リボルバータイプの『拳銃』のヴィジョンだ。
男の手は下ろされたままであり、当然のように銃口も下を向いている。
敵対されてはいないが警戒されているらしい。
神原が人影を見て犯人だと察しをつけたように、赤毛の男も似たような事を考えたようだ。

            ドシュッ

一方で『ストロンガー・ザン・アイアム』は、発現した『ツイストボール』を投げつける。
暗さと距離と小ささが災いし、人間並みの精度では命中させる事は難しかった。
直撃はしなかったが、衝撃の余波を受けた『何か』は軽く弾き飛ばされる。

                  コロン…………

結果的に、その小さな『何か』との距離は縮まった。
そして、『ストロンガー・ザン・アイアム』は『それ』を確認する事が出来た。
小さな装飾品――『バラを象ったブローチ』だ。
そこに『スタンドの気配』は感じられない。
『スタンド』である『ストロンガー・ザン・アイアム』には、それが何となく分かった。

      ヒュオォォォォォ…………
              
             コロコロコロ…………

それまでよりも強い風が吹き、『バラのブローチ』が『ストロンガー・ザン・アイアム』の足元で止まる。
『半自立型』である『ストロンガー・ザン・アイアム』には、『それ』をどこかで見た覚えがあった。
『それ』を見たのは最近の事だ。
雑踏の中で擦れ違った『パンクファッションの女』――
そのジャケットの襟に、同じようなデザインのものが着いていた。
擦れ違う瞬間、女の方に注意を向けていた『ストロンガー・ザン・アイアム』は、それを確認していた。

727神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/09(金) 01:05:08
>>726

「救急車はそっちで呼んで貰っていいかな?」

「それと、僕も同じようなことを考えてる。僕の師匠の能力はあくまで『トレーニング器具を出す』だけだからね」

『メディシンボール』と『ツイストボール』は解除しておく。
それから、師匠はブローチへと視線を落とす。

『幸輔、このブローチ、パンクの女がつけていた』

「パンクの女?」

『彼らと会う前にすれ違った女性だ』

「……あぁ、なるほど」

鍵を握っている存在であることに間違いない。
のだが、問題は赤毛の男だ。

「僕はやってない。信じるかどうかは君次第だけど、僕は僕ですることがある。邪魔をするなら、誤解を言葉以外で解く必要もあるかもしれないね?」

728<削除>:<削除>
<削除>

729『月夜のV』:2019/08/09(金) 20:58:00
>>727

改めて『ブローチ』を見ると、どちらかというと『パンク』よりは『上品』な印象があるように感じられた。
そして、発現していた二つの『トレーニング器具』を解除する。
赤毛の男は、それらを横目で眺めていた。

「『トレーニング器具』――ねェ……。今そこらに転がってた『ボール』も、その一部ってワケかい?」

       チラ

「ま……『トレーニング器具』で『火傷』したヤツの話は聞いた事がねェな」

赤毛の男は、譲原に視線を向けた。
正確には、彼が負っている『火傷』を確認したようだ。
その負傷が、『ストロンガー・ザン・アイアム』の能力と関わりがない事は理解したらしい。

「俺の『得物』は見ての通りだ。大体の予想はつくだろうが、相手から離れている方が都合が良い。
 多分、アンタのは逆だろ?近い方が有利なハズだ」

「もしアンタが敵だったら、力尽くで俺を黙らせるのが手っ取り早い。
 今みたいに近い距離なら、尚更アンタの方が有利だろうからな」

「だがアンタは仕掛けてこない。
 『この距離で攻撃がない』って事は、アンタの言葉が信用出来る証拠だと解釈するぜ」

どうやら、赤毛の男は納得したようだった。
救急車を呼ぶためか、再びスマホを弄りだす。
『拳銃のスタンド』が消えていないのは、近くにいるかもしれない『本当の犯人』を警戒しての事だろう。

「だがよ――『何があったか』ぐらいは聞かせてくれるよな?
 譲次とは、それなりに付き合いがあるからよォ。俺にとっても他人事じゃねえんだ」

ひとまず、赤毛の男が敵になる事態は回避出来たようだ。
今の所、彼は状況の説明を求めている。
付近には、神原達以外の気配は感じられない。

730神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/09(金) 22:18:43
>>729

ブローチは神原が拾っておこう。
何かに使えるというものでは無いかもしれないが、もしかしたらということもありえるし、手がかりになる可能性もある。

「……納得されて良かったよ」

別に赤毛と揉めたい訳でもないし。
狙うべきは譲原たちを襲った犯人でそれ以外は問題ではない。

「あぁ、それはね……」

譲原を見つけるまでと、見つけてからの話をしておこう。

731『月夜のV』:2019/08/09(金) 23:18:41
>>730

   スッ――――

神原はブローチを拾い上げた。
詳しくは分からないが、安物ではなさそうだ。
そこそこ値が張りそうなものに見える。

「――――なるほどなァ。『その話』は俺も聞いた事がある。大体の事情は分かった」

神原が話し終えると、赤毛の男は軽く頷いた。
その間に通報も済ませている。
しばらくすれば、救急車が到着するだろう。

「俺は……この件に首を突っ込む事にしたぜ。
 他の連中については知らねえが、譲次は気の良いヤツなんだ。
 こんな目に遭わされる理由なんかないと、俺は信じてる」

「だからよォ〜……その『犯人』ってのをとっ捕まえて、お灸を据えてやりてえんだ。
 ついでに、何でこんな事やってんのか吐かせたいと思ってる」

「――――アンタは?」

           ヒョイ

神原に問い掛けながら、赤毛の男が譲原のスマホを拾う。
電源を入れようとしたが、入らなかった。
壊れているようだ。

732神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/10(土) 00:26:13
>>731

「首を突っ込むのは問題ないよ、大丈夫。因縁という意味では僕の方が薄い」

赤毛は譲原の先輩筋にあたるだろうから、神原よりもよっぽどまっとうな理由だ。
神原は警察でもなんでもないから何かをしようとする意志だけで動いている。

「見逃して……なんて出来る問題でもないしね」

「彼は僕のファンだしね」

イイ所は見せたいわけだ。

「ところで、君の名は?」

733『月夜のV』:2019/08/10(土) 21:14:30
>>732

「それなら俺達の『目的』は一致してる。手を貸すぜ」

「俺は『花菱蓮華』――『蓮華』って呼ばれてる。アンタも、そう呼んでくれ」

「コイツは『スウィート・ダーウィン』。『死因の再現』が能力だ。
 『6発中5発』は『死』を『お試し体験』出来る『偽死弾』さ」

自身の名前とスタンドについて告げた蓮華は、『スウィート・ダーウィン』を解除した。
神原の話を聞いて、既に犯人は立ち去っていると判断したのだろう。
周囲を見渡した蓮華が、軽く頭を掻く。

「さて――――犯人がトンズラした後なら、もう近くをウロウロしちゃいないだろうな。
 とりあえず、今日の所は俺達も引き上げた方が良さそうだぜ」

「救急車が来たら、色々と説明しなきゃならねえだろうしよ。
 まぁ、その辺は俺がやっとくが…………」

喋っている途中で、不意に蓮華が黙り込んだ。
何事か考えているらしい。
数秒後、彼は再び口を開いた。

「アンタ、明日は時間作れるか?
 明日の夕方頃までに、こっちで調べられるだけの事は調べとくからよ。
 その時に、次の行動について話し合いてェんだ」

「『Priceless』って喫茶店がある。出てこれるんなら、明日そこに来てくれ。
 連絡先を教えといてくれりゃあ、後で場所を送るぜ」

やがて、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
もう少しで救急車が到着するようだ。
負傷した譲原に関しては、これで心配ない。

「――――そういや、まだ名前を聞いてなかったな。良かったら自己紹介してくれねェか?
 そっちの『師匠』も含めてよ」

734神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/10(土) 23:44:25
>>733

「……怖い能力だね?」

『リング禍の再現だけは勘弁してくれるか?』

危険と隣り合わせの仕事ゆえにそのあたりが気になってしまう。
微妙に苦い顔だ。
6発目については聞かないでおこう。
多分本物の死だと思うし。

「明日? 問題ないよ」

連絡先も教えておこう。
それに救急車も来たようで安心だ。

「New_Generation(新世代) New_Order(新秩序) New_Ruler(新支配者)」

「革命のギフテッド。Pro-Wrestling Stargazer、神原幸輔」

「ってのが表向きのお仕事」

『俺はストロンガー・ザン・アイアム』

『幸輔の師匠だ』

735神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/10(土) 23:45:02
※翌日に移行していただいて大丈夫です

736『月夜のV』:2019/08/11(日) 22:05:08
>>734

「イイねェ〜!随分とイカした自己紹介じゃねえか。ハハッ!好きだぜ、そういうのは」

連絡先の交換を済ませていると、救急車が現場に到着した。
降りてきた救急隊員が、手際よく譲原を担架に乗せて運び込む。
救急車に歩み寄る蓮華が、最後に神原達の方を振り返った。

「――――じゃ、『また明日』だ。よろしくな、神原さんよ。それから『ストロンガー・ザン・アイアム』もな」

蓮華が同乗した救急車が、明々と灯るサイレンと共に闇の中を走り去る。
神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』も、夜の歓楽街を後にした。
そして夜が明け、多くの人間にとって普段と変わらない一日が始まる――――。

  ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
              ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
                          ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・

    ザッ ザッ ザッ

その日の夕方、神原は蓮華との待ち合わせ場所に向かって歩いていた。
場所と一緒に送られてきた時間までには、まだ少し間がある。
ふと気付くと、そこは昨夜の犯行現場の近くだったようだ。
昨日の一件が伝わっているらしく、行き交う人々の何人かは現場の前で足を止めている。
もっとも既に片付けられているため、『事件の跡』を匂わせるようなものは見当たらない。

                スッ
                           スッ

大半の野次馬は、そこに立ち止まり続けてはいない。
通り過ぎる途中で少し眺めている程度らしい。
しかし、その場に佇んでいる人間が一人だけいた。
ワインレッドの『パンツスーツ』を着た女だ。
今の位置からは、角度的に後姿しか見えない。

737神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/12(月) 22:42:07
>>736

(?)

やけに目立つ服装の人間がいる。
なにかあるのかもしれない。
近づいてみよう

738『月夜のV』:2019/08/12(月) 23:37:45
>>737

  ザッ ザッ ザッ

やや進路を変えて、『パンツスーツの女』に近付いていく。
今の所、女の様子に大きな変化は見られない。
何かがあるのかは分からないが、そこに立ち続けている事は確かだ。

             ――――ザッ

神原と女の距離は、かなり近付いた。
途中で女が角度を変えたため、その横顔が見える。
両サイドが吊り上っている『フォックスタイプ』の眼鏡を掛けた、『キャリアウーマン風』の顔立ちだ。

「――――…………」

神原の接近に、女は気付いていないらしい。
相変わらず、無言で事件現場を見つめ続けている。
その視線の先を見ても、ただ路地裏の地面があるだけだ。

                         ザワ ザワ
                                ザワ

周囲を歩く人々の何人かが足を止め、また歩き去る。
それらは、ごく普通の野次馬だ。
しかし、『パンツスーツの女』は立ち去ろうとしていない。

739神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/13(火) 16:00:51
>>738

「警察の方ですか?」

そんなふうに声をかける。
ドラマなんかでは犯人は現場に戻ってくると言われるがこの人がそうなのかは分からない。

『幸輔、怪しい動きは見逃すな』

(分かってる)

ただ現場近くなので本当に犯人かもしれない。
花菱か呼んだ人間なのかそうじゃないかも分からない。
警戒はしておくが、悪い人ではない可能性にかけたいところだ。

「気になるものでも?」

740『月夜のV』:2019/08/13(火) 21:45:07
>>739

近くで見て分かったが、女の目線は一点に固定されてはいない。
路地裏の全体を見渡すように、音もなく揺れ動いている。
その表情には、僅かに『焦り』の色が窺えた。

「――――…………えッ?」

  クルッ

『パンツスーツの女』が、神原の方を振り向く。
不意に声を掛けられて驚いたらしい。
女が答えるまでには、若干の空白があった。

「いえ、まさか……。私は単なる一市民ですよ」

「ただ、ちょっと考え事をしていたんです。その、個人的な事で……」

「『とても大事なもの』をなくしてしまって。多分、この辺りだと思うんですが……」

女は平静を保とうとしているようだが、今一つ落ち着きが欠けていた。
おそらくは、よほど大事なものなのだろう。
それが何かは分からない。

女の首からは、ストラップ型のカードホルダーがぶら下がっていた。
どうやら、どこかの『社員証』のようだ。
距離が近いため、内容を読み取る事は簡単に出来る。

741神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/15(木) 16:36:43
>>740

「あぁ、そうなんですね。失礼しました」

「昨日知り合いが襲われまして……」

社員証を確認。
大事なものをなくしたとは運が悪い。

「気が立ってたみたいで」

師匠は女を見続ける。

「なくしたって、なにを?」

742『月夜のV』:2019/08/15(木) 20:12:34
>>741

「いえ、気になさらないで下さい」

本人が言った通り、女の態度は一般市民の域を出ていない。
これといって、怪しい動きのようなものはなさそうだ。
ここにいるのが不審と言えば不審だが、その理由は説明している。

「そう……でしたか……。お知り合いの方が……」

「――――お気の毒です」

女は表情を曇らせ、軽く目を伏せた。
おそらくは、同情の意思表示なのだろう。
そして、神原は女の胸元にある社員証に目を向ける。

┌─────────────――
│  株式会社Belladonna 社員証  
│―――――――――――――――
│       研究開発部        
│                       
│         調香師          
│                       
│         紅 儚          
│                       
│     KURENAI HAKANA     
└─────────────――

社員証には、そのように明記されていた。
『紅儚』というのが、『パンツスーツの女』の名前らしい。
添付されている顔写真も、目の前に立つ女の顔と同じだ。

「ええ――小さな『アクセサリー』です。誕生日に弟から貰ったもので、大切な……」

「……すみません。関係のない方に、こんな話をしてしまって」

女――――『紅儚』は、丁寧に謝罪の言葉を述べる。
それから、彼女は再び現場に視線を移した。
なくした場所について、他に心当たりがないか考えているのかもしれない。

743神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/16(金) 19:37:38
>>742

(いい名前だな)

『ん、いい名前だ』

儚という字はネガティブな印象もあるけれど、美しさだとかたおやかさのようなものを感じる。

「アクセサリー……? どんなのですか?」

「昨日もしかしたら見たかもしれないですね……」

あの拾い物だろうか。

744『月夜のV』:2019/08/17(土) 19:11:08
>>743

路地裏を見つめる儚の横顔には、隠し切れない不安と悲哀が滲み出ていた。
どこを捜すべきか、見つからなかったらどうすべきか。
そういった考えが、頭の中で渦巻いているように見える。

「えッ…………ご覧になったんですか!?」

   バッ

神原の言葉を聞いた儚が再び振り向く。
その表情には、驚きと期待が入り混じっていた。
思わぬ所で見つけられる希望が得られたせいだろう。

「『ブローチ』です」

「小さな『バラ』の形をした……」

話を聞く限りでは、神原が拾ったものと似ているようだ。
しかし、必ずしも同じものとは断定できない。
似ているだけで、実際には別物という可能性もある。

「――――ご存知でしょうか…………?」

儚は、すがるような目で神原を見た。
彼女からすれば、これが最後の希望という所なのだろう。
それを決定する権利は、神原が握っている。

745神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/17(土) 23:06:44
>>744

「これですか?」

拾ったブローチを彼女に見せよう。
隠したところで何かに使えるとは思えない。
彼女が持ち主なら返しておこう。
当然、彼女はかなり疑わしい人物になるが。

「これだとしたら、落とした時の状況って覚えてらっしゃいますか?」

『何があったか、覚えているか?』

それ以前にスタンド使いなら師匠が見えている可能性が高い。
目線なども見ておこう。
何かあるかもしれないし。

746『月夜のV』:2019/08/18(日) 00:57:49
>>745

『ブローチ』の存在は、疑いを掛けられる根拠としては十分すぎる。
しかし、状況証拠と言ってしまえば状況証拠だ。
『たまたま似たようなアクセサリー』を着けていて『たまたま同じような場所でなくした』という可能性が、
絶対に有り得ないとは言い切れない。
もちろん、常識的に考えれば『ほぼ有り得ない』レベルの可能性である事は確かだろう。
だが『事実は小説よりも奇なり』という言葉があるように、
そうした話が現実に起こる場合がある事も事実だ。

「あッ……!それです!良かった……。本当にありがとうございます……!」

    スッ――――

神原からブローチを受け取った儚は、それを左胸に着けた。
ワインレッドのスーツに、バラのブローチが映えている。
どうやら、少なくとも『同じ市販品』ではあるようだ。
オーダーメイドではなさそうなので、完全に同一かどうかまでは分からない。
改めて見ると新しい品物らしく、細かい傷の有無などで見分ける事も難しそうだ。

「……いえ、よく覚えていません。お恥ずかしい話ですが、少々お酒を飲んでいたもので」

「この辺りで転んだ事は覚えていたので、多分この近くだろうと……」

「猫を見かけて路地に入ったら転んでしまって……。猫が好きなんです」

それが、紅儚の証言だった。
この言葉が真実であれば、彼女は容疑から外れる事になる。
偽りだとすれば、犯人である疑いは濃厚だ。
だが、それを確かめるのは難しいだろう。
本人が自白するか、実際に『犯行現場』を押さえる事が必要になってくる。

                チラッ

儚の視線は、時折『ストロンガー・ザン・アイアム』の方向に向いていたような気もする。
しかし、それは神原達の後ろで歌っている『ストリートミュージシャン』を見ていたのかもしれない。
かなり目立っているので、そちらに注意が向いたとしてもおかしくはないだろう。
儚に『師匠』が見えているのかどうかについては、微妙な所だ。
現段階では、『どちらとも判断できない』と言える。

…………そういえば、それなりに時間が経過しているようだ。
蓮華との待ち合わせに間に合わせるなら、そろそろ向かった方がいいかもしれない。
多少の遅れ程度なら、大きな問題はないだろうが。

747神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/18(日) 21:33:00
>>746

「そうですか……」

時間が危ない。現状グレーというのが最終評価だ。
遅れて何かあるとまずいし。

「それじゃあ、気を付けて。無差別犯らしいですし……」

最後に少しだけ撒き餌を残す。
不良ばかり狙っている、というのを知っているかのカマかけだ。
これが済んだら移動しよう。

748『月夜のV』:2019/08/19(月) 19:17:30
>>747

もし神原が拾ったブローチが事件の前からあったなら、もっと話は簡単になる。
あれを見つけた時、神原達の意識は人影に向いていた。
地面に落ちていたブローチに気付くのに、多少の遅れがあったかもしれない。
儚にしても、酔っていたなら場所も正確には覚えていなかっただろう。
『グレーゾーン』という神原の判断は、至って適切だ。

「『無差別』…………そんな人が近くにいるなんて信じられませんね」

「――――酷い事です」

ブローチを見つけた事で精神状態が安定したらしく、儚の対応は冷静だった。
ただ、どこか『驚き』のようなものがあったような気はする。
それは単に、『無差別犯』という言葉のインパクトに驚いただけかもしれないが。

「あなたも気を付けて。ブローチを拾って下さった事は本当に感謝しています」

立ち去る神原に向けて、紅儚が丁寧に一礼する。
その時、儚の『手の甲』が見えた。
ブローチを受け取るために差し出した方とは逆の手だ。
そこに、まだ新しい『火傷』の跡がある。
その意味は定かではないが、何かあるのかもしれない。

    ザッ ザッ ザッ

やがて、神原は待ち合わせ場所である『Priceless』の前に到着する。
中に入るために扉を開けた時、それと入れ違いに『毛のない猫』が外に出て行った。
紅儚が見たと言っていた猫と同じかどうかは不明だが、おそらくは違う。
『スフィンクス』と呼ばれる珍しい種類だが、この一件とは何の関係もないだろう。
カウンターでは、西洋人と思しき初老のマスターが客にコーヒーを出していた。

「――よぉ、神原さん。ココだぜ」

店内の一角から、蓮華が神原を呼んだ。
テーブルの上にはチョコレートケーキとアイスココアが乗っていた。
甘党らしい。

749神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/21(水) 02:52:50
>>748

「……そうですね。困ったことで」

火傷については言及しない。
彼女が関係者なら自ずと分かることだろうから。
だからいまは聞きはしなかった。

(お)

『猫か』

可愛い。
こういう緊張感のある時に出会うより桜の花が咲くような季節に会いたいところだ。

「どうも」

「……僕も同じものを」

席に着いたら注文をとりあえずしておこう。

750神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/21(水) 02:53:07
>>748

「……そうですね。困ったことで」

火傷については言及しない。
彼女が関係者なら自ずと分かることだろうから。
だからいまは聞きはしなかった。

(お)

『猫か』

可愛い。
こういう緊張感のある時に出会うより桜の花が咲くような季節に会いたいところだ。

「どうも」

「……僕も同じものを」

席に着いたら注文をとりあえずしておこう。

751『月夜のV』:2019/08/21(水) 19:18:41
>>750

「お待たせ致しました。ガトーショコラ・クラシックとアイスココアです」

「――――どうぞ、ごゆっくり」

少し待った後で、神原が注文した二品をマスターが運んできた。
月日を感じさせる穏やかな微笑と共に、ケーキとココアがテーブルに置かれる。
彼が立ち去ってから、蓮華は話を始めた。

「ここのケーキは結構イケるぜ。ちょっとした穴場ってトコだな」

「あれから色々と聞き込んできた。
 『被害者』とか『被害者になりそうな連中』によ。
 それで、例のヤツが次に現れそうな場所が割り出せたんだ」

「ヤツには一定の『パターン』があるらしい。
 いわゆる『溜り場』みてェな場所を狙って出てくる。
 そんで、そこにたむろしてるヤツらを襲ってるって話だ」

「二回目に現れたのは、最初の場所から一番近い溜り場だった。
 三回目の場所は、二番目の場所の最寄だ。
 つまり、少しずつ『行動範囲』を広げてるんじゃねェかってのが俺の考えだな」

「その理屈が正しいんなら、次に現れるのは『昨日の場所から一番近い溜り場』って事になる。
 そして、ソコはまだやられてねえ。
 だから、次に出てくるとすりゃあ多分ソコだろうって結論になるんだ」

蓮華は話を一旦止めて、代わりにケーキを頬張った。
彼の話には続きがあるようだが、神原の見解を求めているのだろう。
当然ではあるが、彼は『紅儚』については知らないようだ。

752神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/23(金) 00:06:37
>>751

「それは楽しみだね」

ガトーショコラにフォークを突き刺す。
ぐっと力を入れて切り分けて口へと運んでいく。

「パターンか」

『ありえない話じゃあないな』

師匠がその言葉に頷く。

「法則性のある動き方をしてるなら今後もそういうことをしてくる可能性はあると思う」

「その法則性をズラすっていうなら、僕や師匠や君を警戒して衝突を避けてるってことになるけど」

『不良ばかりを狙う跳ねっ返りなら向かって来てもおかしくない』

犯人が何を思うかは知らないが、来てくれた方がありがたい。
それくらい簡単な相手であればいいが。

「あ、そういえばここに来る途中で……」

紅儚の話をしておこう。

753『月夜のV』:2019/08/23(金) 18:53:23
>>752

切り分けたガトーショコラを、手元の皿から口の中に運ぶ。
濃厚でコクのある甘さの中に、少々のほろ苦さが感じられる奥深い味わいだ。
これから『大きな動き』が待っているとすれば、丁度いいエネルギーになってくれるだろう。

「あぁ、言われてみりゃあ『パターンから外れてくる』って可能性も有り得るな。
 ヤツが病院送りにしたのは一人や二人じゃねえ。
 自分を追ってくる人間を警戒してたとしても、おかしくはねえと思うぜ」

「まぁ、その辺は実際に現れるまでは判断できねェ部分だろうけどよ……。
 少なくとも、今までの行動を見る限りじゃあ『法則』がある。
 だから、次も同じような感じで現れる見込みが高いってのは確かだぜ」

「『跳ねっ返り』か……。
 そういうヤツなら、警戒があっても自分で決めた『パターン』は崩さねェかもな。
 相手をビビらせたいとか、ビビッてると思わせたくないってのは有りそうな理由だしよ」

そして、神原の口から紅儚の話が語られる。
それを聞いた蓮華は、自分のスマホを取り出して操作し始めた。
社員証に記載されていた会社について検索しているようだ。

    スッ
           スッ

「…………『化粧品メーカー』だな。『香水』をメインに作ってるらしい。
 ま、ちょっと調べただけで何か分かるとは思ってなかったけどよォ」

紅儚が勤めているのは、そういった会社らしい。
『調香師』という肩書きとも一致する。
もっとも、それが手掛かりになるという訳ではなさそうだが。

「で――――話の続きなんだが、俺の方で一応の『作戦』も考えといた。
 さっき言ったように、ヤツが次に現れる場所の目星は付けてある。
 俺達で、ソコを『待ち伏せ』するってのはどうだい?」

「俺が囮になるから、神原さんは適当な場所に隠れといてくれねェか?
 上手くすりゃあ『挟み撃ち』を狙えるかもしれねえ。
 俺も――自分で言うのも何だが、『被害者』に近い見た目ではあるしよォ」

赤毛でレザーファッションの蓮華は、見方を変えれば『チンピラ風』とも言える外見だ。
神原が考えた通り、彼は既に襲われている譲原の先輩筋らしい。
もし犯人が現れたとすれば、『標的』にする可能性はあるだろう。

「それに、まだ俺のツラは割れてねえだろうしな。
 アンタは、姿を知られてるって可能性もある。
 まぁ暗かったんなら見られてないかもしれねェが、念のためって事でよ」

             グビィィィ――――ッ

そう言いながら、蓮華はココアを飲み干した。
昨夜の『人影』が、神原の顔を確認していたかどうかは不明だ。
神原側も相手を正確に見た訳ではないので恐らく『人影』も同じだろうが、絶対とは言えない。

754神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/23(金) 21:57:13
>>753

「……それでいこうか」

彼の提案に同意する。
敵の性格は分からないが、何度も繰り返している時点で跳ねっ返りの犯人の可能性が高い。
だから、法則を信じる。

「危険は承知の上なんだろう?」

「僕も全力を尽くすよ」

その言葉に支障が大きく頷いた。

755『月夜のV』:2019/08/23(金) 23:15:55
>>754

「あぁ、リスクに見合うリターンが期待できるんなら悪くねえ賭けだ。
 『虎穴に何とか』の精神ってヤツでよ」

蓮華の表情には、明確な意思が感じられた。
尽力を告げた神原や、それに同意を示す『師匠』と同じ種類のものだ。
囮役を買って出た彼にも、覚悟は出来ているのだろう。

「それに、俺だって『スタンド使い』の端くれだからな。
 最悪でも一発でノックアウトされやしねえさ」

犯人のスタンドには、まだ不明な点が多い。
しかし、今まで襲われたのは『一般人』ばかりだった。
その点において、今回は大きく違う状況であると言える。

「さて――――腹に詰めるもん詰めて方針も決まった事だし、そろそろ『準備』に出掛けるとすっか。
 さっき言った場所まで案内するからよ。
 実際に現場を見て、細かい動きを検討しようぜ」

    ガタッ

「いや、待てよ……。うっかり忘れちまうトコだった。
 もう一つだけ言っときてェ事があってよ」

     サッ

立ち上がりかけた蓮華は、途中で席に座り直した。
何か思い出した事があったらしい。
ジャケットのポケットを探り、そこから『壊れたスマホ』を引っ張り出す。

「コイツは『譲次』の持ち物なんだが、ちょっと気になる点があってよォ。
 意見を聞きてェと思って持ってきたんだ」

              トン

『譲原のスマホ』が、テーブルの上に置かれた。
液晶は無残に割れていて、既に使い物にならないのは一目で分かる。
昨夜の時点で、神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』も確認していた事だ。

「見ての通り、ブッ壊れてる。まぁ、そりゃ分かるんだが――――」

              クルッ

「――――問題は、『コッチ側からも壊れてる』って事だな。どう思う?」

蓮華の手が、スマホを引っくり返す。
割れた液晶の反対側――そこにも『破壊痕』が残っていた。
つまり、『二度』に渡って損傷を受けたと解釈する事が出来る。

756神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/25(日) 01:21:37
>>755

『無謀でないならいくらでもフォローは出来る』

「……出来る範囲でね?」

何事にも無茶というのはあるからして。

「スマホ……?」

『……裏側からも破壊されている』

おかしなことだ。
二度にわたってスマホを破壊する意図が読めない。

「踏んだ?」

「……踏んだにしても両方が?」

『両側に傷がつくほどの衝撃であればそれ自体が耐えられない可能性が高い』

一応スマホとしての形を保っているのだからそれはおかしい話だ。

「能力は火傷のはず……」

なら、なぜ両面に傷がついている。
思い出すのはいつかの事件。
あれは能力の発動に条件が課されるものだった。

「挟み込んだりするのが能力の条件……?」

「表面を叩いて裏側が傷つく能力って言うのは考えにくいから、そのパターンかな」

757『月夜のV』:2019/08/25(日) 21:03:24
>>756

かつて神原が遭遇したのは、『転移』を能力とする異形の『宝玉怪人』だ。
あのスタンドは、能力の発動に『宝石』を必要としていた。
同じように何らかの『条件』が存在しているという考えは、全くの的外れではないだろう。

「…………なるほどなァ。
 俺は、てっきり『証拠隠滅』するために念入りに壊したのかと思ったぜ。
 譲次が犯人の写真でも撮ってたのかと思ってよォ」

「アイツも事件の事は知ってたし、怪しいヤツには注意してたからな。
 もっとも、壊されちまってるから中身を確かめようがねェんだが……」

「それか、よっぽどの『スマホ嫌い』かもしれねェな。
 スマホを見ると、つい叩き壊したくなる性分とかよ。…………ねえか」

よく見ると、二つの破壊痕には多少の違いがあった。
液晶側の破壊よりも、裏側の破壊の方が大きい。
スマホにとって致命傷になったのは、どちらかというと裏側の傷だったかもしれない。

「――何にせよ、『故意に壊した』って事だけは間違いないと思うぜ。
 巻き添えになって偶然壊れたとかじゃあねえ。
 もし偶然なら、二度もやられてねえだろうからな」

     ガタッ

「じゃ――――行くか」

蓮華が立ち上がり、スマホをポケットに戻す。
先程の提案通りに、これから『作戦現場』に移動するようだ。
ケーキとココアが胃袋に収まっていれば、神原も彼と共に向かう事になる。

758神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/26(月) 20:45:33
>>757

「証拠隠滅にしたって、やり方はあるからね」

少なくとも神原が考えるようなことを犯人はしなかった。
何度か首を鳴らして息を吐いた。

「行こうか」

759『月夜のV』:2019/08/26(月) 22:14:34
>>758

分からない事があるのは確かだが、為すべき事は決まっている。
神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』の心には、それがある。
そのために、二人は共に動き出す。

「――――ありがとうございました」

マスターに見送られ、神原達は『Priceless』の外に出た。
既に日が沈みかけている。
夜の訪れも、そう遠くはない。

「ここから少し歩くが、そこまで時間が掛かるって程でもねえ。
 ヤツが現れるとしたら暗くなってからだろうしな。
 ま、ぼちぼち行こうぜ」

蓮華は、自分の物らしい『バイク』を手で押しながら歩いている。
それに乗らないのは、神原と『師匠』に気を遣っているからか。
ともかく、神原達は夕日に染まった街を歩いていく。

「いざ『やり合い』になった後の事なんだけどよ――」

「俺の能力については少し話したが、昨夜も言った通り『飛び道具』だ。
 面と向かってタイマン張るには向いてねえ。
 アンタの『師匠』みたいなタイプが相手だと、なおさら分が悪い」

「だから、俺は基本的に『援護射撃』に徹するぜ。
 神原さんと『師匠』には『前衛』をやって欲しいんだ。
 アンタらなら『タイマン向き』だと思うしよォ」

「それで構わねェか?」

現場に向かう道中で、蓮華は再び話を始めた。
客観的に見て、彼の能力が『前衛向き』であるとは言い難い。
蓮華自身も、『後衛』に徹した方が活きる能力だと考えているようだ。

760神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/27(火) 19:08:06
>>759

バイクは置いて行かないらしい。
愛車なのだろう。
神原もなんとなくその気持ちはわかる。
バイクはそこまでだが、道場の器具などは人一倍大事使うように心がけている。
若手の間から世話になったものだし、これが次世代を作っていくから。

「レスラーが君たちの後ろに立ってちゃあ格好つかないよ」

だから、飛び道具でなくとも自分が前に出るつもりだ。
援護してくれるだけありがたい。

761『月夜のV』:2019/08/28(水) 19:04:17
>>760

蓮華は何も言わなかったが、おそらくは神原が考えた通りなのだろう。
神原と蓮華は、別々の場所で生きている人間だ。
しかし、『共通する部分』もある。

「ハハハッ!そりゃそうだなァ。頼りにさせてもらうぜ――『革命のギフテッド』さんよ」

      ザッ ザッ ザッ

「それから、俺が撃つのはヤツとアンタの距離が離れてる時だと思ってくれ。
 パターン通りなら、ヤツが現れるのは暗くなってからだからな」

「視界が悪いと、どうしても命中精度が落ちる事になる。
 だから、お互いに至近距離でやり合ってるような状態では、俺は基本的に撃たねえ。
 狙いが狂ってアンタや『師匠』に当てちまったら、シャレにならんからよォ」

「何か合図を出してくれりゃあ、その時は上手く合わせるぜ。
 合図がなくても、俺が必要だと感じたら『自己判断』で撃つ事にする」

「――俺からは、そんなトコだな。神原さんからは何かあるかい?」

                 ザッ ザッ ザッ

通り過ぎた店の幾つかは、仕事を終えた客を迎える準備を進めていた。
道を歩く人々の中に、派手な化粧の女が混ざり始める。
少しずつ、街に『夜の匂い』が漂い出していた。

762神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/29(木) 22:44:36
>>761

「分かったよ。僕としても撃たれたくは無いしね」

『同士討ちは危険だ』

承知した。
確実に当てられる場面なら強力な援護になりそうだ。
そういう状況を作られればの話だが。

「……特にはないかな?」

763『月夜のV』:2019/08/30(金) 19:11:13
>>762

「まぁ気楽にってワケにはいかねェが、後は臨機応変にやるとしようぜ」

それだけ言って、蓮華は話すのを止めた。
続きがあるとすれば、『現場』に到着してからになるだろう。
そして、神原達は歩き続ける――――。

   ザッ ザッ ザッ

「…………よし、ここだ」

                 ザッ

神原達が辿り着いたのは、入り組んだ路地の突き当たりに位置する『袋小路』だった。
蓮華の話通りなら、この場所が溜まり場の一つになっているらしい。
そして、次に『犯人』の出現が予想される場所でもある。
例の噂が広まっているせいか、あるいは時間帯が違うからか、他に人の姿はない。
そこにいるのは、神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』と蓮華だけだ。

「さっきの作戦なんだがよォ、俺は『向こう側』で待つ事にするぜ。
 ヤツを『こっち側』に誘い込めれば、『退路』を無くしてやれそうだしなァ」

蓮華は、バイクを押しながら『路地の奥』に向かって歩いていく。
ここは『袋小路』であるため、当然その先は行き止まりになっている。
自分を囮にして、進む事が出来ない方向へ犯人を誘導しようという考えのようだ。

「神原さんと『師匠』には『反対側』を頼みてェんだ。
 ヤツが現れた後で『そっち側』を塞いじまえば、アンタと俺で『挟み撃ち』が出来る。
 もちろん上手くいけば……だがよ」

そう言いながら、蓮華は周囲を見渡した。
彼の視線の先には、幾つかの『非常階段』が見える。
『袋小路』の両脇に立つ雑居ビルの階段だ。

「――――『あの辺』なんかどうだい?悪くないと思うぜ」

蓮華が指差したのは、『袋小路の入り口』に最も近い位置に設置されている『非常階段』だった。
四階分くらいの高さがある。
踊り場のスペースも、そう狭くはない。

「俺の方に意識が集中してれば、『頭の上』に気を回す可能性は少ないだろうしよ。
 もし視線が向いたとしても、姿勢を低くしてりゃあ気付かれにくい。
 あの場所からなら全体が見えるし、待ち伏せするのに都合が良いんじゃねェか?」

街を染め抜く空の色が、徐々に『赤』から『黒』に変わりつつあった。
本格的な『夜』の到来までには、まだ余裕が残されている。
考える時間も、準備する時間も十分だ。



【MAP】左端が入り口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
□傘□□□□□自□□□□□自□□□□□□バ壁
神□□□□□□□□□□□□□□□□□□華□壁
師□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□ポ□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原
師:ストロンガー・ザン・アイアム
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
※:建物の裏口

764神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/08/31(土) 22:56:16
>>763

「挟み撃ち……単純だけど間違いない戦略だね」

『こちらに意識が集中していれば君の銃弾が背後を狙う形になるか』

敵が複数でなければ有効な手段だ。
地形的にも有利を取れるかもしれない。

「階段か」

『うむ。あそこでいいか?』

「どの場所で待つかが問題だね。四階だとバレないだろうけど、下りるのに時間がかかる」

『トレーニング用のロープでも出しておくか? だが、一気に下りるとなると難しいか』

「……一旦登ってみてどんな感じか確かめようか。手伝ってもらえる?」

出来るなら二階の踊り場辺りで待機したいが、実際に目で見てどうなのか確認してもらおう。

765『月夜のV』:2019/09/01(日) 20:46:56
>>764

あまり複雑な作戦になると、その分だけ隙も増える事になる。
単純な作戦は、それが少ない。
もちろん状況によるが、神原が経験した『怪盗騒動』程の複雑な作戦は必要なさそうだ。

「構わねェぜ。本番前に『リハーサル』でもしてみるとするか。
 俺が『犯人役』だ。下から見上げたとして、どんな感じに見えるか教えるからよ」

「――『俺の役』はコイツにやってもらう」

                   ザッ ザッ ザッ

突き当たりに停めたバイクに触れてから、蓮華は路地の入口まで移動する。
犯人が現れるとすれば、そちらの方向からだろう。
そして、神原は非常階段を上っていく。

            カン カン カン

足を踏み出す度に、金属的な軽い音が響く。
大きな音ではない。
慎重に進めば消せるだろうが、急いで下りたりすれば目立ちかねない。

「――――よし、行くぜ。スリー・ツー・ワン…………『アクション』!」

    ザッ ザッ ザッ

入口付近に立った蓮華が、二階の踊り場にいる神原達に合図を送った。
緊張感のない言い回しだが、彼なりに場をリラックスさせようとしているのだろうか。
緩やかな速度で歩き出し、立ち止まって頭上に視線を向ける。

「……『微妙』な所だなァ。そこまで高い位置でもないからよ。
 ジッと見られるとか、見られた時に動いたりしたらバレるかもしれねえ。
 俺の方に意識が向いてりゃあ、上を見る事は多分ねェだろうが……」

「まぁ、『本番』は真っ暗な状態だからな。
 見つからない可能性は、今より多めに見積もってもいいとは思うぜ」

四階なら見つかる確率は極めて低いが、下りるまでに時間が掛かる。
二階なら素早く下りられる代わりに、見つかる確率も相応に上がる事になる。
ロープで下りるにしても、その最中にバレないという保証はない。
途中で見つかれば、逃げられてしまうかもしれない。
あるいは、向こうから攻撃が来る可能性もあるだろう。

「俺はどっちでもいいぜ。なるべく上を向かせないようにはするからよ」

正面に気を取られたなら、上を見る確率は低い。
しかし、何かの拍子に視線が上を向く事が絶対にないとは言い切れない。
判断は、神原と『師匠』に委ねられている。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
□傘□□□□□自□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□華□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□ポ□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は二階部分にいる)
※:建物の裏口

766神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/02(月) 22:50:25
>>765

「……見つからないように祈ろうか」

『君の演技にもかかっているぞ』

彼が敵の視線の誘導をしてくれる。
その効果を信じよう。

「じゃあ師匠、あれでいこうか」

『ロープではないのだな?』

トレーニングチューブ(ttps://www.amazon.co.jp/dp/B011UJZIOM)を2本発現。
一番負荷に強いものを選ぶ。
これを手すりに結んでおこう。
明るい色だが闇の中なら紛れるだろう。
そこも確認してもらう。

「あぁ、後ポリバケツを一個階段の近くに置いといてくれないかな?」

「下りる時の目印にしたい」

767『月夜のV』:2019/09/03(火) 19:10:31
>>766

「ああ、こう見えても『演技』には自信があるからな。下手なドジは踏まねェさ」

「俺の表向きの顔は『スタントマン』なんだ」

それが蓮華の職業らしい。
もっとも、演技力の根拠になるかは定かではない。
少なくとも、即座にバレてしまうようなヘマはしないだろう。

       ズギュンッ

筋力トレーニングに用いられるゴム製の『トレーニングチューブ』を発現し、手すりに結び付ける。
鮮やかなグリーンの色合いは、やはり明るい場所だと目に付いてしまう。
闇の中なら、多少は見えづらくなるか。

「便利なもんだな。そいつを使って下りるってワケか?消防士みてェだな。
 そういうのは俺も『現場』で見た事があるぜ。『仕事場』って意味だけどな」

「もし視界に入ったら、ちょっと目立っちまいそうな気はするが……。
 まぁ、そっちを向かせないようにすりゃ平気かもな。
 そこら辺は真っ暗だろうしよ」

蓮華の言葉には、少々の不安が窺えた。
しかし、ハッキリ言わなかった所を見ると大問題という程でもないらしい。
実際にどうなるかは、その時の行動次第になりそうだ。

「分かった。この辺でいいかァ?」

       ガラガラガラッ
                 ゴトッ

蓮華が、近い方のポリバケツを神原達の真下に移動させる。
運んでいる最中に、バケツの内側で何かが転がる音が聞こえた。
そこから判断すると、中身は空き缶やペットボトルのようだ。

「――他に何かあるかい?俺の方は『準備万端』だぜ」



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
□傘□ポ□□□自□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□華□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は二階の踊り場にいる)
※:建物の裏口

【質問:手すりに結ぶトレーニングチューブは二本でしょうか?】

768神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/03(火) 23:29:55
>>767

「あぁ、なるほどね。お互い体が資本じゃないか」

しかも過酷なタイプの肉体労働者だ。

「黒いののがいいんだけど、今ぱっと浮かんだのがこれだったんだ」

結んだ2本のゴムチューブを引っ張る。
長さ的に厳しい所があるのであくまで飛び降りた時の勢いを和らげるためのものだ。

「うん、ポリバケツはその位置で」

「これでいいかな……」

769『月夜のV』:2019/09/04(水) 20:07:32
>>768

「よし、なら後は待つだけだな。俺は向こうで待機してるからよォ」

「今夜は、俺とアンタと師匠で『チーム』だ。ビシッと決めてやろうぜ」

      グッ

神原達にサムズアップを送った蓮華が、突き当たりの位置に戻っていく。
犯人を待ち受ける準備は整った。
そして、街に『夜』が訪れる――――。

  ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・

待機を始めてから、『二時間半』が経過していた。
袋小路に差し込んだ月明かりが、辺りを薄暗く照らしている。
犯人らしい人間は、まだ姿を現していない。

    ザッ…………

遠くの方から、微かに物音が聞こえた。
靴底が地面を踏みしめる音だ。
それは、確かに『何者か』の足音だった。

         ザッ
              ザッ
                   ザッ

一つの足音が、徐々に近付いてくる。
どうやら、神原達が待つ方向へ向かっているようだ。
このまま進んでくれば、もう少しで姿が見えるだろう。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
□傘□ポ□□□自□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□華□壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は二階の踊り場にいる)
※:建物の裏口

770神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/04(水) 20:33:08
>>769

「お互い全力で」

『……』

「師匠?」

『【ソウルフル・ラストマン】でどうだ?』

「チーム名考えてたの……?」

呆れた様子で神原がつぶやいた。
しかし、そんな雰囲気も待機をしていれば消えてしまうものだ。
神原はそこで息を殺す。

「……」

足音が聞こえるがまだそちらの方は見ない。
そこを見ることで感づかれるのは避けたいところだ。

771『月夜のV』:2019/09/05(木) 20:39:39
>>770

非常階段の踊り場で、神原は息を潜めて待ち続ける。
その間、足音は一度も止まる事なく接近していた。
音までの距離から判断すると、残り数歩で姿が見える所まで来ているはずだ。

                 ――――ザッ

不意に、足音が止まった。
その音源は、かなり近い。
理由は分からないが、ギリギリ姿が見えない程度の位置で停止している。

  …………ザッ

その時、神原達の耳は『別の物音』を聞き取った。
『もう一つの足音』だ。
『最初の足音』とは別の誰かが、この袋小路に足を踏み入れたらしい。

             ザッ ザッ ザッ

どうやら、『一人目』と同じ道筋を辿って近付いてくるようだ。
『一人目』は立ち止まったままで、その場から動く様子がない。
『二人目』の方は――――依然として進んで来ている。

772神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/05(木) 23:20:12
>>771

(二人目……?)

確かに犯人が複数の可能性もあったが、これはこれで少しまずい。
不意をつく奇襲が難しい。
片方に気付かれれば終わりだし、音が近い以上下手な動きはできない。

「……」

息を殺し、もう少し待つ。
彼が上手くやってくれればいいが。

773『月夜のV』:2019/09/06(金) 20:24:52
>>772

「――――おい、アイツら来ないってよ。集まりがワリィよなァ〜」

唐突に声が聞こえた。
どこか無謀で軽薄な響きのある若い声だ。
その声には聞き覚えがある。

    ザッ ザッ ザッ

路地の向こう側から、『一人目』が姿を現した。
髪を青く染めた不良少年だ。
通知を確認していたらしく、手にスマホを持っている。

              ザッ ザッ ザッ

「そりゃ、お前『アレ』のせいだろ。だから今夜は止めとけっつったんだ。
 昨日は譲原さんがやられたっていうじゃねえかよ」

青髪に続くように出てきた『二人目』は、緑髪の不良だった。
神原達は、この二人を知っている。
昨夜、神原に絡んできた『小出』と『田丸』だ。
譲原から注意を受けたにも関わらず、また出歩いていたらしい。
スマホをしまった『青髪』――『小出』が、奥に立つ蓮華の姿を見つけた。

「何だよ、揃いも揃ってビビりやがってよォ〜。
 …………あぁ?先客がいるじゃねぇか。ここらじゃ見かけない顔だなァ〜?」

「――――チッ」

小出に絡まれた蓮華は、対応に迷っているようだ。
犯人が現れる前に大きな騒ぎを起こしたくないと考えているのだろう。
まだ、彼が何かしらの行動を起こす様子は見られない。

「――もう行こうぜ。俺らだけ来てたって仕方ねぇだろ」

『緑髪』の不良少年――『田丸』が言った。
不意に頭を上げた彼が、頭上の『月』を見上げる。
おそらく深い意味はないのだろうが、視線の方向が少しズレたら神原達の方を向きかねない。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
田傘□ポ□□□自□□□□□自□□□□□□バ壁
小□□□□□□□□□□□□□□□□□□華□壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

田:田丸
小:小出
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は二階の踊り場にいる)
※:建物の裏口

774神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/06(金) 23:11:10
>>773

(これは……)

『……面倒だな』

小さな声で師匠が呟き、小さく神原が頷いて返す。
彼らが本来の被害者だろう。
だが今日この場においては神原と蓮華が加害者になるはずだった。
しかしここに来られると犯人が来た時に襲われる可能性が高い。
この立ち位置だと二人ともあの二人組を守れない。

「……師匠」

『うむ』

師匠に様子をうかがわせる。
あの二人組の後ろ、もっと入口のほうだ。
師匠に気づいたのなら彼らはスタンド使いとなり、逆に犯人の可能性がわいてくる。
気づけないなら、師匠に犯人が来てないか見てもらう。

775『月夜のV』:2019/09/07(土) 21:27:24
>>774

独立した視聴覚を持つ『ストロンガー・ザン・アイアム』が後方を窺う。
二人組が歩いてきた方向には誰もいなかった。
その先は曲がり角になっているため、様子は分からない。

「――――…………」

    スゥゥゥ――――ッ

ぼんやりと月を見ていた田丸が、おもむろに顔を下ろす。
一瞬だけ神原達の方向に視線を向けたが、偶然だろう。
『師匠』の姿が見えている気配はなく、身を潜める神原にも気付かなかったらしい。

「おい、一人来るってよ。ゲーセンの裏に来いとさ。どうする?」

ポケットからスマホを取り出した田丸が、小出に声を掛ける。
それを聞いた小出は田丸に向き直った。
蓮華は、二人の動きを観察しているようだ。

「――あぁ?こっちに来ればいいのによ。
 余計な手間掛けさせやがって。仕方ねえなァ〜」

           ザッ

どうやら、彼らは別の場所へ移動するようだ。
このまま新たなトラブルが起こらなければ、二人が邪魔になる事はなくなる。
ちょうど月が雲に隠れたらしく、辺りの暗さが増した――――。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
田傘□ポ□□□自□□□□□自□□□□□□バ壁
小□□□□□□□□□□□□□□□□□□華□壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

田:田丸
小:小出
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は二階の踊り場にいる)
※:建物の裏口

776神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/08(日) 21:19:19
>>775

「……」

胸がざわつく。
敵が来ないのは被害者が出ないことだが、待っている身としては少々じれる。
焦るといい事ないのでなるべく落ち着くように務める。
心配しすぎては良くないし、こちらも見栄のお仕事だ。

『これでゲームセンター裏に来たら最悪だな……』

「それが無いでもないから怖いところだね」

ひとまず二人が去るのを待とう。
一度蓮華と相談する必要があるのかもしれない。

『……月に叢雲華に風』

「平穏には嵐だね」

777『月夜のV』:2019/09/09(月) 20:32:02
>>776

二人が背を向けたのを確認してから、蓮華が神原達の方に視線を向けた。
その目を見れば、彼も神原と同じような事を考えているらしい事が分かる。
苛立ちを紛らわせるためか、軽く頭を掻いている。

                   ザッ ザッ ザッ

「――――さっきのヤツよォ、もしかして『例の犯人』なんじゃねえかァ〜?
 髪も『真っ赤』でスゲー怪しいぜ」

「おいおい、喋る前に鏡で自分のツラ見て来いよ。
 頭が『真っ青』のヤローが言えたギリか?」

小出が口を開き、田丸が応じる。
どうやら小出は蓮華に疑いを抱いたらしい。
いずれにせよ、この場を去るのであれば大きな問題はない。

            ザッ ザッ ザッ

「お前だって緑一色の『芝生頭』だろうがよ。
 その頭で『ゴルフ』でもやろうってのかァ〜?」

「うるせえよ。なら、お前の頭は『釣堀』か?
 オメーは『釣る側』じゃなくて『釣られる側』だろうけどな」

    ザッ ザッ ザッ

「『釣堀』なんてチッポケなもんじゃねえ。
 この色は『大海原』を表現してるんだぜ。
 そんぐらいデカい男になりてえって意思表示でよォ〜」

「そりゃ確かに大海原だな。
 『カエルから見れば』って話だがよ。
 こういう言葉を知ってっか?『井の中の――――」

遠ざかりつつも聞こえていた話し声が、唐突に止んだ。
まるでスピーカーのスイッチを切ったかのように突然の出来事だった。
闇夜の静寂が、辺りを包み込む。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
□傘□ポ□□□自□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□華□壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は二階の踊り場にいる)
※:建物の裏口

778神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/09(月) 22:47:58
>>777

唐突に。
それは、おかしい。
あきらかな異常。

「……!」

『蓮華! 不味いぞ!』

『奴はスデにッ、ここに来ている可能性がある!』

立ち上がり、入り口側に視線をやる。
師匠は右腕を上げ、ケトルベル(ttps://www.amazon.co.jp/dp/B01GNM1C3W)を右手に発現。
敵の姿は見えるか?

779『月夜のV』:2019/09/10(火) 19:49:22
>>778

ウエイトトレーニング器具の一種である『ケトルベル』を発現する。
言い換えれば、重さ『20kg』の『鋼鉄の塊』だ。
『ストロンガー・ザン・アイアム』の膂力であれば片手で軽々と持ち上げられる。

                          スッ

『師匠』の言葉を聞いて、蓮華が頷く。
彼の表情にも緊張が走っている。
蓮華は、右手をジャケットのポケットに突っ込んだ。

           シィィィィィ――――ン

立ち上がり、静まり返った闇の中に目を凝らす。
まだ敵の姿は見えず、目立つ物音も聞こえてこない。
しかし、『何か』が起きている事は間違いないだろう。

  …………コッ

曲がり角の向こうから、乾いた靴音が響いた。
先程の二人組とは種類の違う音だ。
おそらくは、『ブーツ』のような靴を履いているのだろう。

        コッ
               コッ
                      コッ

月明かりの失せた暗闇から、『何者か』が確実に近付いてくる。
その足取りからは、『罠』に気付いているような気配は感じられない。
距離を考えると、まもなく姿を確かめられるはずだ。

    ザッ――――

蓮華が、やや前方に位置を変える。
暗くなった事による命中精度の低下を補うためらしい。
その右手は、相変わらずポケットに入れたままだ。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
□傘□ポ□□□自□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□華□□□壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は二階の踊り場にいる)
※:建物の裏口

780神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/11(水) 06:43:27
>>779

神原は両膝を曲げる。
手はしっかりとチューブを握っている。
しゃがむのは溜める体勢だ。
跳ぶために必要なこと。
そして隠れるための姿勢でもある。

『……!』

師匠はそのままだ。
こちらに気づいたらケトルベルを投げてやる。
待つ。
その時を待つ。

781『月夜のV』:2019/09/11(水) 21:02:46
>>780

身を屈めた低い姿勢を保ちながら、両膝に力を溜める。
姿を隠すための体勢であると同時に、跳躍の準備でもある。
おそらく、『その時』が来るのは近いだろう。

           コッ――――

闇の中から、足音の主が現れる。
昨夜、譲原達と出会う前に擦れ違った『パンクファッションの女』だ。
格好も、あの時と同じだった。

「――――…………」

女の傍らには、『人型スタンド』が佇んでいる。
闇に溶け込むような漆黒の外套を身に纏う女性的なヴィジョンは、どこか本体の姿と似ていた。
顔の上半分はフードで覆われており、露出した口元には紅が差している。

「なッ――お、おい……『ソイツ』は……!?」

やや芝居がかった声色で、蓮華が言葉を発する
女は答えなかった。
返事の代わりに、スタンドが片手を持ち上げる。

    グイッ

その腕の先に――――『人』がいた。
スタンドが小出の胸倉を掴み、そのまま持ち上げている。
譲原と同じく命に別状はなさそうだが、気を失っていた。

              ドサッ

女のスタンドが、小出の体を軽く放り投げた。
わざわざ持ってきた理由は定かではないが、あるいは相手の恐怖を煽るためかもしれない。
蓮華の視線は『パンクの女』に注がれ、女の視線も蓮華に向けられている。

              スゥッ…………

女が腕を上げ、人差し指を蓮華に突き付けた。
『予告』のつもりだろうか。
今の所、上で待つ神原達には気付いていない。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小傘□ポ□□□自□□□□□自□□□□□□バ壁
黒□□□□□□□□□□□□□□□□華□□□壁
女□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

女:パンクファッションの女
黒:人型スタンド
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は二階の踊り場にいる)
※:建物の裏口

782神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/11(水) 22:52:57
>>781

やはり来ていた。
あの女か。
必ずこの場で仕留める。
だが位置が悪い。
挟み撃ちをするためにはあともう少しの前進を望まないといけない。

「……!」

敵の動きを見据える。
まだ気づかれていないならそのままでもいい。
観察するのはスタンドの方だ。
蓮華に攻撃するのならスピードなどをよく観察する。

783『月夜のV』:2019/09/12(木) 20:37:46
>>782

もし攻撃すれば、気付かれるのは明白だ。
敵の方も、これが『罠』だと悟る事になる。
そうなれば、逃げられてしまう可能性が高いだろう。
今の位置から攻撃しても、挟み撃ちには出来ない。
『職業的な戦士』でもある神原は、冷静に観察を続行する。

    コッ コッ コッ

「――――くッ、来るんじゃねえッ!!」

自らのスタンドを引き連れて、『パンクファッションの女』が歩いていく。
向かう先は蓮華がいる方向だ。
蓮華は焦ったような表情を見せている。
当然、これは演技だろう。
若干オーバー気味ではあるが、幸いバレる様子はない。

            コッ コッ コッ

「…………」

無言のまま、女は接近を続けている。
速くもなく遅くもない。
迷いや躊躇のない歩き方だ。
単に力を振るいたがっているというよりは、何かしら『明確な目的』を感じさせた。
あるいは、それが『動機』に関係しているのかもしれない。

                    コッ コッ コッ

高まる戦意を胸に秘めながら、神原は『人型スタンド』に目を向ける。
スタンドの両手には、長さ数cm程度の『爪』が備わっていた。
外見通りの鋭さを持っているとすれば、それは『武器』だと考えていいだろう。
そして、女とスタンドは共に距離を詰めている。
おそらくは、『ストロンガー・ザン・アイアム』と同じタイプと思って良さそうだ。

                       グッ

ポケットに突っ込んだ蓮華の右手には、力が篭っているようだ。
『パンクの女』とスタンドは、神原達に近付いている。
しかし、今の位置では女の視界に入ってしまうため、背後を取るのは難しい。
もう少しだけ待つ必要がある。
それも長くはないだろう。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小傘□ポ□□□自□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□黒□□□□□□□□□□□□□華□□□壁
□□□女□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

女:パンクファッションの女
黒:人型スタンド
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は二階の踊り場にいる)
※:建物の裏口

784神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/12(木) 22:59:22
>>783

(頼みの綱は彼だ。だからこそ信じる)

あのまま接近を続けてくれるならいいが。
気になるのは小出もそうだ。
途中で意識が戻って反応されたら厄介ではある。
すぐに起きるようなことはないと思うが。

(爪?)

武器になる。
スマホの両面が壊れていたのはあの爪で摘んだからか?
そんな単純なことなのだろうか。
それなら、普通の指でもなるはずだ。
精密動作性が低いとしてもそうはならないと思う。
それにあの爪が火傷とどう関係する?
未知の部分が多い。
とにかく待つしかない。

785『月夜のV』:2019/09/13(金) 20:38:47
>>784

     コッ コッ コッ
               コッ…………

不意に『パンクファッションの女』が足を止めた。
スタンドを正面に向かせたままで、本体が後ろを振り返る。
『待ち伏せ』に気付いたという雰囲気ではない。
おそらくは、『昨夜の出来事』を思い出したのだろう。
背後からの『メディシンボール』の投擲――
そうした『不測の事態』を警戒しているのかもしれない。

            バッ

それをチャンスと見てか、蓮華が右腕をポケットから引き抜いた。
その手には『スウィート・ダーウィン』が発現している。
正面に向き直った女を狙って、銃口が突き付けられた。

「動くんじゃあねェぞ。『コイツ』が何だか分かるな?
 今から指一本でも動かしたら、その瞬間にブチ抜くぜ」

「テメーは何者だ?何が目的で、こんな事をしてやがる?」

銃口を向けながら、蓮華が女を問い詰める。
神原の存在までは考えが及んでいないだろうが、
蓮華が敵である事は悟ったらしい。
その場から動かず、おもむろに口を開いた。

「――――あいつらが、どんな奴だか分かってるの?」

「まるで小石を蹴飛ばすような軽い気持ちで人を傷付けておきながら、
 その事を何とも思わずに平気な顔をして街を歩いている」

女の声は――聞き覚えのあるものだった。
夕方に出会った『紅儚』の声だ。
雲間から覗き始めた月明かりを受けて、
女の襟に留められた『バラのブローチ』が小さく光っている。

「あなたは――――そんな奴らの味方をするつもりなの?」

『パンクファッションの女』――『紅儚』の注意は、蓮華の方に向けられている。
今ならば背後を取れるだろう。
『月夜の終わり』が始まろうとしている。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小傘□ポ□□□自□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□黒□□□□□□□□□□華□□□壁
□□□□□□儚□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

儚:紅儚
黒:人型スタンド
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は二階の踊り場にいる)
※:建物の裏口

786神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/13(金) 22:49:44
>>785

『行くぞ……』

跳躍、手すりに着地してから降りていく。
着地点はポリバケツの上。
着地出来たらチューブは解除する。
ケトルベルは発現したままでいい。

「……」

目はそらさない。

787『月夜のV』:2019/09/14(土) 20:37:27
>>786

    バッ

手すりを踏み台にして跳躍し、非常階段から『戦場』へ降り立つ。
儚と蓮華は睨み合いを続けている。
そして神原達は、事前に移動させておいたポリバケツの上に着地した。

        ガタッ

着地と同時に、足元から微かに音が鳴る。
ほんの一瞬、蓮華の視線が神原達の方に向いた。
その僅かな瞬間を狙って、儚が動いた。

          ガシッ――――
                     ブォンッ!!

『儚のスタンド』が腕を伸ばし、手近にあった『放置自転車』を掴む。
両手で軽々と持ち上げると、蓮華めがけて勢い良く投げ飛ばした。
投擲のスピードは『高速(スB相当)』だ。

「――うおッ!?」

          ガァァァァァ――――ンッ!!

咄嗟に地面を蹴った蓮華が、横に跳んで倒れ込みながら発砲する。
その弾丸は、命中する事なく虚空を飛び去っていった。
投げ付けられた自転車も、蓮華には当たっていない。
自転車のように大きなサイズなら、当てられてもおかしくはなかった。
あくまで威嚇のつもりだったらしく、最初から直撃させる気はなかったようだ。

           ズザッ

「…………ッ!!」

振り返った儚が、神原の姿を認めて息を呑んだ。
フードを被っているが、驚いている事は分かる。
蓮華は地面に倒れており、まだ起き上がれていない。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小傘□神□□□黒□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□儚□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□台□□□□□ポ華□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』(現在ポリバケツの上にいる)
儚:紅儚
黒:儚のスタンド
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
※:建物の裏口

788神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/14(土) 22:10:10
>>787

なるほど。
速さは同程度。
となると今度はパワーと精密性だ。
それはおいおいとわかる事だ。

「やぁ」

ケトルベルを投擲(パス精BBC)
相手を狙い、MAPの左側気味に投げる。
回避するために右に回避して蓮華と自分に挟まれればそれでいい。

789『月夜のV』:2019/09/15(日) 20:31:44
>>788

     ――――ドシュッ!!

神原は、挨拶代わりに短い言葉を投げる。
一方、『ストロンガー・ザン・アイアム』が投げたのは『ケトルベル』だ。
容赦のない『鋼鉄の剛速球』が、紅儚に迫る。

「――くッ!?」

            ババッ

それに対して儚が選んだのは、『回避』ではなく『防御』だ。
素早く割り込んだ『儚のスタンド』が、放たれた『ケトルベル』をガードする。
強力な『ストロンガー・ザン・アイアム』の投擲だが、完全に防ぎ切られた。

「この『パワー』と『スピード』…………」

「昨夜の『アレ』も、あなただったようですね」

スタンドを近くに立たせた儚が、神原に問い掛ける。
儚が神原に対処している間に、蓮華は立ち上がる事が出来た。
『ケトルベル』は、『儚のスタンド』の足元に落下する。

「あなたは『彼』の仲間だと考えて宜しいですか?」

「私には――――あなた方と積極的に争う意思はありません」

『スウィート・ダーウィン』の銃口は、儚に向いている。
そして、儚は神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』の方を警戒している。
一瞬、彼女の視線が袋小路の入口側に向いた。

      ダッ     ダッ     ダッ
          ダッ     ダッ     ダッ

路地の入口に向かって、儚とスタンドが走り出す。
その軌道は真っ直ぐではなく『ジグザグ』だ。
背後からの銃撃を避けるためだろう。

    ガァァァァァ――――ンッ!!

              ガァァァァァ――――ンッ!!

「クソッ!狙いが定まらねえ!ワリィが何とか頼むぜ!!」

立て続けに発射された二発の弾丸は、儚の横を通り過ぎた。
その光景を視認した蓮華が、神原に叫ぶ。
このままでは逃げられかねない。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小傘□神□□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□黒□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□儚□□□□□台□□□□□ポ華□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』(現在ポリバケツの上にいる)
儚:紅儚
黒:儚のスタンド
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
※:建物の裏口

790神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/16(月) 20:22:57
>>789

『ケトルベル』は解除しておこう。
敵に武器にされたら面倒だから。

「昨日の事? あぁ、もちろん」

「ほんとは心のどこかで気付いてたんじゃない?」

敵の意識をこちらに向かせ、自分は観察。
火を放ったりするわけではなさそうだが、どうか。

「僕らには争う意思があるんだ」

『ここで止まってもらう』

「どんな理由があろうとね」

鍛練用木刀(ttps://www.amazon.co.jp/dp/B01H3GA81E)を発現。
儚の前に割り込むように接近して木刀を振る(パス精BBC)
長さがある分、ジグザグにも対応できるはずだ。

791『月夜のV』:2019/09/17(火) 06:18:11
>>790

抜け目なく『ケトルベル』を解除し、代わりに『木刀』を発現する。
儚の傍らに立つ『漆黒のスタンド』の能力は、未だに不明だ。
少なくとも、『火を飛ばしてくる』ような様子は見られない。

「――『ボール』に『木刀』……。
 先程の物は見た事がありませんが、何か『共通点』があるようですね……」

儚に『何かしらの理由』があるように、神原にも『戦う理由』がある。
『木刀』を手にした『ストロンガー・ザン・アイアム』が、
勢い良く正面を薙ぎ払う。
1m弱の長さは、リーチとしては十分だ。

    ガシィッ!!

「それは…………ええ、そうかもしれません」

                ギギギギギ…………

儚の前に出た『漆黒のスタンド』が、両腕を使って『木刀』を受け止めた。
そこから感じられる『パワー』は、『ストロンガー・ザン・アイアム』と『同等』だ。
現在、両者は拮抗した状態にある。

「…………そうですか」

「争いが避けられないのであれば、私も『全力』で立ち向かいます」

「『礼には礼を以って』――――」

          ド
            シ ュ ッ ! !

『木刀』を掴んだまま、『漆黒のスタンド』が蹴りを放った(パス精BBC)。
『パワー』・『スピード』・『精密性』――
それら全てが、完全に『互角』の一撃が飛んでくる。
神原と儚の距離が近いため、蓮華は撃つ事を躊躇しているようだ。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小傘□ポ□□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□神□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□黒□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□儚□□□□□台□□□□□ポ華□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』(特に指定がない場合は同位置)
儚:紅儚
黒:儚のスタンド
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
※:建物の裏口

792神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/17(火) 23:15:39
>>791

「話し合いでもいいんだけど、それで解決するかは分からないからね」

「……少なくとも、襲撃事件の犯人には」

力も同等。
厄介だ。
つまりはこちらに何かがあれば、一歩劣る場面が増えるということ。
それゆえに、警戒はより強くなる。

「これはお礼回りだッ!」

木刀を押すようにして力を籠める。
しかし攻撃の主体は木刀ではない。
木刀を『解除』
押し込もうとする力を回転力に変えて、姿勢は低く。
蹴りを放った相手の軸足に下段回し蹴りを放つ(パス精BBC)
相手の蹴りが上段なら姿勢を低くすることでかわせる。
中段か下段ならガードする準備もしたいが、攻撃を優先する。

793『月夜のV』:2019/09/18(水) 13:04:31
>>792

  フッ――――

          「――――ッ!?」

                        ガクンッ!

攻撃の刹那、神原は『木刀』を解除した。
それによって、『漆黒のスタンド』の体勢が一時的に崩れる。
しかし、既に放たれた蹴りは止まらない。

      ド ガ ッ ! !

                 ド ガ ァ ッ ! !

『漆黒のスタンド』が繰り出した低めの蹴りが、
『ストロンガー・ザン・アイアム』の胸板を強かに捉える。
『解除』を行った分だけ、
神原側に『僅かな遅れ』が生じたのだ。
だが、それだけではない。
『漆黒のスタンド』の蹴りは、
『体勢の崩れ』のために勢いが減衰し、
『当たるまでの時間』が引き延ばされていた。
結論として、両者の蹴りは『ほぼ同時』に命中する事になる。

            ドサァッ!

「――くッ!」

軸足を払われて支えを失った儚と『漆黒のスタンド』は、
その場に倒れ込んだ。
一方で、神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は、
後方に吹っ飛ばされる。
その先には、ポリバケツが置かれていた。

              ――――ガシャァァァンッ!!

派手な音と共にバケツが転がり、
中身である空き缶やペットボトルが散乱する。
ポリバケツがクッションになった事で、
壁面や非常階段に衝突する事はなかった。
神原達は、仰向けに倒れた状態にある。

「――……ッ」

両手を地面に置いて上半身を起こした儚とスタンドが、
神原を見据える。
タイミングは『ほぼ同時』ではあったが、
向こうの蹴りが当たる方が『少しだけ』早かった。
敵の蹴りが先に入った事で、
回し蹴りの威力も幾らか落ちていたのだ。

「『互角』…………」

「『基本的な性能』は、お互いに『互角』のようですね……」

蹴りを食らった箇所に、確かな痛みを感じる。
だが、行動に大きな支障を及ぼす程のダメージではない。
そして、それは儚も同じだろう。

        ダダッ

『スウィート・ダーウィン』を下ろした蓮華が走り出した。
向かう先は、放置自転車の奥に位置する『非常階段』だ。
何か考えがあるのかもしれない。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小傘□神ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□華□□□□□壁
□□□黒□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□儚□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚
黒:儚のスタンド
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
※:建物の裏口

794神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/18(水) 23:09:25
>>793

「ッッッ!」

『……ハードコアだなァ』

ポリバケツに突っ込むのは久しぶりだ。
突っ込むにしてもスチール製のものが多かったから。
敵へと視線を向けるが、向こうも体勢は崩れていた。

「そう、互角だ。だからこそ、技術がモノをいう」

「……一本調子だけど、あれでいこうか」

『知的にいこうか』

立ち上がりながら次に発現するのは『ジムハンマー』(ttps://www.amazon.co.jp/dp/B0067UUDAE)
ハンマーでタイヤを殴るトレーニング『タイヤ打ち』などで使われる道具だ。

「!」

『頼んだぞ蓮華!』

ほんの少しマップ左に動き、入り口側に寄る。
相手に視線を送り続け動向は見ておく。
蓮華の動きに敵の意識を一瞬でもそらせないか試すためだ。

795『月夜のV』:2019/09/19(木) 12:15:32
>>794

この場所は、神原が立ち慣れた『リング』ではない。
しかし、『やる事』は共通している。
即ち、目の前の相手を叩く事だ。
『ストロンガー・ザン・アイアム』と神原が、体勢を立て直しかける。
その時だった。

「あなたは随分と『場慣れ』しているようですね…………」

「ですが――――そうそう好きにはさせませんッ!!」

    バンッ!

『地面に置いた両手』をバネのように使い、儚が前方に飛び出した。
彼女の動きに追随して、
『漆黒のスタンド』が低姿勢の『タックル』を仕掛けてくる。
立ち上がる事を優先したため、それに即座に反応するのは難しかった。

             ガバァッ!
                       
                     ――――ドサッ!!

『ストロンガー・ザン・アイアム』が、『漆黒のスタンド』に押し倒された。
現在、二体のスタンドは『キス』が出来る程に至近距離だ。
オールスチールの『ジムハンマー』は、問題なく発現している。

「ハァッ……ハァッ……。
 そうやって次から次に『何か』を出され続けると、非常に困ります。
 時間が立てば立つ程に、私が不利になってしまうでしょう」

息を切らしながら、儚は呟くように言葉を続ける。
突っ込んできた時の勢いでフードは外れ、素顔が露わになっていた。
この姿の時は『コンタクトレンズ』に変えているらしく、眼鏡は掛けていない。

「そうなる前に――――『手』を打たせて頂きます」

       ガシッ ガシィッ

『漆黒のスタンド』の両手が、
『ストロンガー・ザン・アイアム』の両腕を掴む(パス精BBC)。
まだ『爪』には触れられていない。
しかし、その切っ先が食い込むまで長くは掛からないだろう。

                 カン 
                   カン 
                     カン 
                       カン 
                         カン

蓮華は、脇目も振らずに非常階段を駆け上がっている。
どうやら、攻撃しやすい上方から『狙撃』する考えのようだ。
儚にも階段を上がる音は聞こえているはずだが、
今の彼女は神原を最優先している。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小傘□神ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□黒□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□儚□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚
黒:儚のスタンド
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華は二階の踊り場手前まで上っている)
※:建物の裏口

796神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/19(木) 19:01:04
>>795

『ストロンガー・ザン・アイアム』は馬乗りになられた状態という認識で正しい?

797『月夜のV』:2019/09/19(木) 21:52:00
>>796

その認識で正しい。

798神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/19(木) 22:50:37
>>797
回答感謝

>>795

(面倒だなぁ)

マウントポジションを取られている上に腕まで掴まれた。
手が空いているから能力は使えるが押さえつけられては道具を振るえない。
設置も面に触れないといけないわけであるし。
厳しいところがある。

『……ロデオだ!』

足に力を入れ師匠は敵スタンドを下から跳ねあげようとする(パス精BBC)
相手が前のめりになればいいが、それが出来そうになければ暴れて体勢を崩すのを目的とする。

「……よっと」

>>794(メ欄)神原、右足、傘、ひっかけ
神原は右足で傘をすくいあげる。
儚を狙うように傘を蹴っ飛ばすのだ(パス精CCC)

799『月夜のV』:2019/09/20(金) 12:59:30
>>798

        ――――ド ゴ ォ ッ ! !

「ぐふぅッ!?」

『ストロンガー・ザン・アイアム』の両足が、暴れ馬の如く跳ね上がった。
強力な一撃が、『漆黒のスタンド』の胴体に叩き込まれる。
それによって、両腕を掴んでいた力が緩んだ。
『爪』には触れられていない。
神原達の想定した通り、『漆黒のスタンド』が前のめりに崩れる。

「ぐッ……!これは……流石に効きますね……!」

「しかし……私の『武器』は『爪』だけではありません」

              カァッ――――

「――――激しい『キス』は、お嫌いですか?」

    ガ ッ ! !

倒れ掛かった『漆黒のスタンド』が大きく口を開き、
『ストロンガー・ザン・アイアム』の肩に『噛み付いた(>>795『bite』)』。
紅の差した口元――
その口内には、『爪』と同程度に鋭利な『牙』が生え揃っていたようだ。
『牙』の先端が食い込んだ瞬間、鋭い痛みが走る。

                    シュバッ!

しかし、神原にも考えがあった。
『半自立型』としての特性を生かし、『壊れた傘』を儚めがけて蹴り飛ばす。
本体が攻撃されたのを見て、
『漆黒のスタンド』が『ストロンガー・ザン・アイアム』から離れた。

          バシィッ!!

「『同時行動』ですか……!器用な事が出来るのですね……」

間一髪で儚の下に戻った『漆黒のスタンド』が、
放たれた『傘』に蹴りを合わせて迎撃した。
速やかに敵を引き離せた事で、
『噛み付き』によるダメージは軽減出来ている。
儚の方も、ずっと組み付き続ける意図はなかったようだ。

                       カン 
                         カン
                           カン 
                             カン 
                               カン

階段を上っていた蓮華が、三階の踊り場で足を止めた。
そこを『狙撃位置』に決めたらしく、再び『スウィート・ダーウィン』を構える。
それなりに高い位置を選んでいるのは、
下から攻撃される事を避けるためだろう。

「――――オイ!!ここにもテメーの『敵』はいるぜッ!
 せいぜい用心するこったな!!」

敵の注意を引くためか、蓮華が儚に向かって叫んだ。
儚は立ち上がろうとしており、攻撃してくる気配はない。
蓮華の位置を耳で把握しながら、油断なく神原達を見つめている。
噛まれた事によるダメージ以外の影響は、現時点では感じられない。
『ストロンガー・ザン・アイアム』と神原の肩には、『噛み傷』が残っている。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□神ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□黒儚□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□傘□□□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚
黒:儚のスタンド
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華は三階の踊り場にいる)
※:建物の裏口

800神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/22(日) 17:39:06
>>799

『情熱的だな……!』

肩の痛みに顔を歪める。
まさか歯まで生えているとは思わなかった。

「……」

相手の動きを見つつ立ち上がる。
またタックルが来そうなら備えておこう。

801『月夜のV』:2019/09/23(月) 13:21:12
>>800

『噛み付き』のダメージは意外に深くなかった。
アクションこそ派手だったが、
元々ダメージ目的の攻撃ではなかったようだ。
神原の機転によって、速やかに敵を引き離せた事も大きい。
まだ痛みは残っている。
だが、痛みに慣れている神原なら無視できるレベルだ。

    ザッ

「今の『アプローチ』は……体の芯まで響きましたよ……」

蹴られた腹部を押さえながら、儚が立ち上がった。
その表情は、苦痛に歪んでいる。
先程の一撃が堪えているようだ。
そして、神原達も立ち上がっている。
敵が仕掛けてくる様子は見られない。

                 ガァァァァァ――――ンッ!!

    ガァァァァァ――――ンッ!!

「――――ッ!」

         バッ

闇を切り裂いて飛来した二発の銃弾が、儚の足元に着弾する。
その光景を見た儚と『漆黒のスタンド』は、反射的に後方へ飛び退いた。
ジャケットの裾を翻しながら、儚が腰の後ろに片手を回す。

「『基本的な性能』において、私達は『ほとんど同じ』ですが――――」

             スチャッ

「『能力』の方は全く違うようですね…………」

神原達の方に視線を向けつつ、儚が腰の後ろから『何か』を引き抜いた。
暗さで見えにくいが、『短い棒状の物体』である事は確認できる。
特に細くもなく、太くもないようだ。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□神ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□傘黒儚□□□□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚
黒:儚のスタンド
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華は三階の踊り場にいる)
※:建物の裏口

802神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/23(月) 16:50:03
>>801

(火傷の原因がまだ分からない)

(傷口から発露するタイプなら、もうマーキングはされてる……)

何度か肩を回し、大きく息を吐く。
ハイスパートな試合とは違う疲れ方をする。

「能力まで一緒なら楽でいい……」

師匠は肩に担ぐようにしてハンマーを持つ。 

(警棒かな……)

「師匠」

『あぁ』

師匠が前に立ち、神原が後ろに立つ。
師匠の体勢は低く、神原は平時と同じ。
ゆっくりと前進していく。

803『月夜のV』:2019/09/24(火) 15:03:38
>>802

ダメージを与える事が目的ではなかったとすれば、
そこには『別の理由』があるのだろう。
相手が『スタンド使い』なら、『能力』のためと考えるのが妥当だ。
神原の推理は、極めて論理的だった。

「『性能』が『互角』なら、『武器』を持つ方が有利になるのは当然……」

「つまり――今は、あなたの方が有利という事になりますね」

    ザッ ザッ ザッ…………

己の分身と共に、慎重に歩みを進める。
それに合わせるように、儚とスタンドも後ろに下がっていく。
互いの距離には、まだ大きな変化は生じていない。

「『あなたの能力』は拝見させて頂きました」

「お返しに――――『私の能力』を、お見せ致しましょう」

『何か』を握っている儚の手が、おもむろに持ち上がった。
その形状は、確かに『警棒』にも似ている。
しかし、そうではなかった。

         ――――カチッ
                    パッ

儚の親指が滑るように動き、最小限の動作で『スイッチ』を操作する。
同時に、暗い地面が明るく照らし出された。
儚が取り出した物体は、『懐中電灯』だったようだ。
そこから放たれる光が、儚と神原の間に位置する地面に向けられている。
光の中に、『ストロンガー・ザン・アイアム』の片足が踏み込んだ。

                         ジュゥゥゥッ

その瞬間、『ストロンガー・ザン・アイアム』の爪先に『熱』が走った。
『光』が当たっている部分が、まるで『火』で炙られているような感覚だ。
ダメージフィードバックによって、本体である神原にも伝わってくる。

「お分かり頂けましたか?」

「――――私に近付くと『火傷』しますよ」



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□黒□□□□□□□□□□□□□自壁
□□傘神□□□儚□□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚
黒:儚のスタンド
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華は三階の踊り場にいる)
※:建物の裏口

804名無しは星を見ていたい:2019/09/24(火) 18:40:20


805神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/26(木) 06:27:31
>>803

「僕からすればその爪や歯も十分凶器的だけどねぇ?」

『試合が出来るように歯だけは残しておいてやろう』

爪はなくなっていいだろう。

(懐中電灯?)

懐疑。
一転、熱。

「はは、火傷ねぇ。経験ないや。電流爆破、まだだしね」

笑ってみせるが熱いものは熱い。
二人同時に同じ方向へ動こう。
とりあえず光の線から抜けたい。

(……追い回されるだろうけど)

(マーキングして特定の条件下に入れることで発動する……?)

『』

806『月夜のV』:2019/09/26(木) 17:46:53
>>805

「『爪』や『牙』より『ハンマー』の方が『リーチ』は上でしょう」

「そして、『距離』という点では『ハンマー』より『懐中電灯』の方が上です」

『火傷』のダメージは、まだ軽い。
短時間ならば耐える事も出来るだろう。
だが、ずっと『光』を浴び続けているのは危険だ。

「『電流爆破』――――ですか?」

「私の知る限り、それに関わる職業は一つしか思い付きませんが……。
 道理で体格の良い方だと思いました」

『光』を浴びると『火傷』を負う。
いうなれば『吸血鬼』のような状態と呼べるだろう。
改めて見れば、儚のスタンドは『吸血鬼』を彷彿とさせるヴィジョンだった。
漆黒の外套とフード、紅に染まった口元、鋭い爪と牙。
月明かりの路地に立つ姿は、さながら『月夜の吸血鬼』だ。

  ――――ダダッ

神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』が『射線上』から脱する。
しかし、儚も何もしない訳ではない。
神原の予想した通り、手にした『懐中電灯』を向けてきた。
『懐中電灯』を持っているのは本体の儚であるため、
人間以上の速度で動く『ストロンガー・ザン・アイアム』には当てられない。
よって、彼女は神原の方に狙いを変えた。

             ジュゥゥゥッ

神原の腕に『光』が浴びせられ、火で炙られるような『熱』が生じた。
衣服に覆われている体の大部分には『光』が当たらないが、
『腕』・『首』・『顔』といった部分は露出している。
『火傷』を回避するためには、『光』を防ぐ手段が必要になるだろう。

                   コッ コッ コッ…………

儚はスタンドと共に後退し、神原達と距離を離す。
先程までのように接近してくる気配はない。
『近距離での格闘』を止めて『遠距離から削る』作戦に切り替えたようだ。

「――――『コイツ』を使えッ!」

                     バサッ

不意に、何かが神原の足元に落ちてきた。
蓮華が着ていた『レザージャケット』だ。
上から投げて寄越したらしい。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□神□□□血□□□□□□□□□□□□自壁
□□傘□□□□□儚□台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚
血:儚のスタンド
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華は三階の踊り場にいる)
※:建物の裏口

807神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/26(木) 20:23:47
>>806

「君の仕事は……言うまでもないか」

まぁ今はパブリック・エネミーだが。

「吸血鬼……」

『ん? ……それは転じるだろう』

噛み付いて吸血鬼が感染するという見立てなのなら、あれもそうでないといけない。
あのスタンドも吸血鬼でないといけない。

『蓮華! スポットライトを当ててみろ! 光を彼女に!』

神原はレザージャケットを頭に被り、衿口の辺から前を見る。
彼女に光を当ててみよう。
スマホのライトも簡単な懐中電灯になるはずだ。

「お互い、ままならないじゃあないか」

808『月夜のV』:2019/09/27(金) 18:26:06
>>807

「『スポットライト』――――ああ、『アイツ』の事かッ!!」

『ストロンガー・ザン・アイアム』の言葉を聞いた蓮華が、
突き当たりに停めてある『バイク』を見下ろした。
バイクには『ヘッドライト』が搭載されている。
神原の推理が正しければ、それは『強力な武器』になるだろう。

「クソッ!『キー』がねえ!どっかに落としちまった!
 すまねえ、すぐ捜す!その間、何とか食い止めてくれッ!」

レザーパンツのポケットから両手を引き抜き、蓮華は辺りを調べ始めた。
一歩ずつ階段を下りながら、落とした『キー』を捜している。
今すぐには見つかりそうになく、まだ時間が掛かりそうだ。

    バサッ

蓮華のジャケットを頭に被り、『光に対する防御』を行う。
これで、ある程度は光を防ぐ事が出来るだろう。
ただ、視界を確保するためには、その分だけ空けておく必要がある。
また、こちらからも『光の攻撃』を行うのなら、
『スマホを持つ手』を狙われる可能性もある。
それでも、先程と比べると露出部分が抑えられている事は間違いない。

「『香り』を扱う職業です。それはそれとして――――」

                      コッ コッ コッ…………

「あなたには『日の下を歩けない体』になって頂きました」

ジャケットを被り、スマホを取り出すにも、多少の時間は掛かる。
その間にも儚とスタンドは後退を続けているため、さらに距離が開いた。
それでも、『スマホのライト』を届かせる事は出来た。

「もちろん――――『私』は違いますが」

ライトを当てられた事で、儚のシルエットが壁に映し出される。
しかし、彼女は平然としていた。
大きく露出した二の腕や太腿は光を浴びているが、
全く焼かれている様子が見られない。
神原の考えは筋が通っている。
もし間違いがあるとしたら、それは僅かなものなのだろう。

「私の戦略は『単純』です」

儚が懐中電灯のスイッチを切って、それをスタンドに投げ渡す。
それから、一本目を取り出した時とは逆の手を腰に回す。
一瞬、『ホルスター』のようなものが見えた。
おそらく、そこに懐中電灯を収めていたのだろう。
引き抜かれた儚の手の中には、『二本目の懐中電灯』があった。

「――――『数を増やす』」

             パッ
                  パッ

一本目と同じく、二本目の懐中電灯がスタンドに渡される。
儚のスタンドは、その両手に懐中電灯を構えた。
先端を『ストロンガー・ザン・アイアム』の足元に向け、『点灯』する。

    ジュゥゥゥ ジュゥゥゥ

『ストロンガー・ザン・アイアム』の両足が焼け、その熱が神原にも伝わる。
神原には光を当てやすいが、露出部分が少ないためにダメージは薄い。
それに対して、『ストロンガー・ザン・アイアム』は全身を攻撃可能だ。
動きの速さは、スタンドに懐中電灯を持たせる事でカバーしている。
単純に動くだけでは、『光の攻撃』を避け切れない可能性が高い。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□神□□□□血□□□□□□□□□□□自壁
□□傘□□□□□□儚台□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚
血:儚のスタンド
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
台:台車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華はキーを捜している)
※:建物の裏口

809神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/27(金) 23:04:40
>>808

『当てるのは合図があってからだぞ!』

ふむ、と考える。
彼女は平気らしい。
じゃあ彼女のスタンドはどうだろうか。

「日の下に出られないのは大変だなぁ。人前に出る仕事だし」

「……師匠、ハンマーを」

『組み方を変えるか』

スマートフォンをポケットに入れ、ハンマーを握る。
前にステップして師匠は手を地面につきトランポリン(ttps://www.amazon.co.jp/dp/B07QC54H55)を発現。
動かすのにパBはいらなさそうなのですぐに発現できるだろう。
出せたら神原はジャンプして飛び乗る。

810『月夜のV』:2019/09/28(土) 17:31:15
>>809

本体である儚に、『光の攻撃』は効果がなかった。
だが、『スタンド』には効くかもしれない。
彼女のスタンドが『吸血鬼』のヴィジョンであり、
『吸血鬼化』と呼べる能力を持っている事を考えれば妥当な判断だろう。

「――――ああ!分かったぜッ!」

蓮華からは、そのように返ってきた。
彼は二階の踊り場まで下りている。
まだ『キー』は見つからないようだ。

「…………『トランポリン』?
 それは『飛び跳ねるための器具』だと認識していますが……」

「『ボール』、『木刀』、『ハンマー』、『重りのようなもの』。
 そして『トランポリン』」

「『運動』に関わるものでしょうか?
 あなたの『職業』を考えれば有り得る話です。
 そうなると、あの『重り』は『ダンベル』か何か……」

            コッ コッ コッ

儚とスタンドは依然として後退を続け、神原達と距離を離そうとしている。
おそらくは、後方の蓮華に対処するためという意味もあるのだろう。
儚の手が、傍らに置かれていた『台車』のハンドルを掴む。

「どのような『能力』であれ、私の方針に変更はありません。
 あなたがダウンするまで、遠くから『焼かせて』頂きます」

    グッ――――
              ダンッ!

鋼鉄製の『ジムハンマー』を握り、発現した『トランポリン』に飛び乗る。
その動きに合わせて、儚のスタンドも標的を変えた。
『防御の外』にある神原の両手を狙い、『二条の光線』が浴びせられる。

    ジュゥゥゥ ジュゥゥゥ

確かな『熱』を感じるが、ハンマーを取り落とす程ではない。
儚のスタンドの精密性は『人間並み』だ。
露出面積が小さいせいで、正確に光を当てる事は難しい。
よって、神原は皮膚を焼く『熱』に耐える事が出来る。
しかし、光を当てられ続けるのが危険な事には変わりない。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□神□□□□□血□□□□□□□□□□自壁
□□傘□□□□□□□儚□□□□□ポ□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚(台車と同位置)
血:儚のスタンド
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華はキーを捜している)
※:建物の裏口

811神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/28(土) 23:03:55
>>810

「あの重り……? あぁ、ケトルベルって言うんだよ」

二度、三度、飛ぶ。
勢いをつける。
エネルギー溜める。

「僕のやり方は君の手を焼かせるやり方がいいかな?」

一気に前方に跳ぶ(パス精CCC)
師匠でなく神原がジムハンマーを持ったのは体重を増させるためだ。
増えた分の体重でトランポリンのジャンプでより勢いをつけることが出来る。
入力した力の分だけトランポリンが跳ね返す。
前により広く跳ぶための力を求めていたのだ。
一応、片手で被っているジャケットは押さえておこう。

『挨拶だ』

師匠は跳び蹴りの構えをとって攻撃(パス精BBC)
届かない可能性もあるが、届かない場合はそのまま着地する。
攻撃の構えを見れば彼女も前進はしない。
元々、突っ込む気はないのだし。

812『月夜のV』:2019/09/29(日) 19:38:38
>>811

    ギシッ ギシッ ギシッ…………!!

                    ――――ド ン ッ ! !

三度の跳躍でエネルギーを蓄積させ、一気に解き放つ。
『ジムハンマー』の重量がプラスされた神原の体は、
増加した『トランポリン』の反発力によって勢い良く弾き出され、
計算通りに夜の空へ舞い上がった。
その行動は、『鍛錬する者』としての『知識』と『経験』に裏打ちされている。

「トランポリンは『飛び跳ねるための器具』――そう認識しています」

               バッ

「だからこそ、私は『これ』を確保しました」

神原が『トランポリン』で前方に跳ぶ直前、儚も行動を起こす。
自らのスタンドと共に、彼女は傍らの『台車』に飛び乗った。
間髪入れず、『スタンドの脚』で力強く地面を蹴る。

    ダ ン ッ ! !

             ガラガラガラァァァァァ――――ッ!!

蹴りの勢いによって加速した台車は、
儚を乗せたまま後方に向かって突っ込んでいく。
神原達が想定した以上に距離が開いた事で、
『ストロンガー・ザン・アイアム』の飛び蹴りは届かない。
進行先のポリバケツを薙ぎ倒し、台車は更に奥へ進む。

                      ――――ドゴォッ!!

              「ぐッ!」

    ドサァッ!

背後の壁に激突する前に、儚のスタンドが動く。
思い切り壁面を殴り付け、台車の勢いを相殺して強引に停止させた。
無理な行動が祟り、儚は台車から投げ出されて体勢を崩している。

「――――ハァッ……ハァッ……ハァッ……」

儚の呼吸は荒い。
激しい運動によるものか、あるいは内心の緊張かは定かではない。
再び距離を離されてしまったものの、彼女の後ろは『突き当たり』だ。
『それ以上』は下がれない。
神原と『師匠』は、少しずつ儚を追い詰めている。

    ザッ

蓮華は一階まで下りてきていた。
彼も戦況は気にしているが、落としたキーを見つける事に集中している。
現在、神原達は着地した直後の状態だ。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□□□神□□□□□□□ポ□□儚自壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□□□□台壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚(儚のスタンドと同位置)
台:台車
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華はキーを捜している)
※:建物の裏口

813神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/29(日) 20:32:02
>>812

「不審なことがあるとするなら」

「それだけのパワーとスピードを持ちながら全くそれを活かしてないことだ」

トランポリンを解除、その後にもう一度発現。
師匠は足を掴んで持ち上げ、光からの盾にする。

『寝業師になるには惜しい』

「成り立った基礎の上に乗せた寝技とも違う気はするけどどうか」

前進。
それくらいしかすることはない。

814『月夜のV』:2019/09/29(日) 21:31:10
>>813
トランポリンを構える位置は、体の真ん中辺りと考えて宜しいでしょうか?

815神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/30(月) 05:06:36
>>814
それで大丈夫です。

816『月夜のV』:2019/09/30(月) 18:17:46
>>815
回答感謝します

>>813

『吸血鬼』を思わせる儚のスタンドは、
『ストロンガー・ザン・アイアム』と互角の性能を備えている。
しかし、彼女は頑なに接近戦を避けて、遠距離攻撃に徹している。
その動きは消極的とも呼べるだろう。

考えられる可能性は、いくつか存在する。
状況は『二対一』であり、
儚は神原以上にダメージを気にする必要がある。
そのために、『安全策』を選んでいるのかもしれない。

または、
多彩な武器を発現できる『師匠』の能力を警戒しているとも取れる。
単に、彼女が『スタンド使いとの戦い』に慣れていないせいであっても、
おかしくはない。
あるいは――――『別の理由』があるのかもしれない。

    ガシッ
          グッ

神原と『師匠』が『盾』を構えて前進を開始する。
大型の『トランポリン』は、体の大部分を防御する事が可能だ。
それと同じタイミングで、儚も立ち上がる。

「…………『褒め言葉』として受け取っておきます」

            パッ
                  パッ

スタンドが握る懐中電灯が、『ストロンガー・ザン・アイアム』に向けられる。
再発現した『トランポリン』は、『盾』として十二分に機能する。
しかし、完璧ではない。

    ジュゥゥゥッ 
          ジュゥゥゥッ

『ストロンガー・ザン・アイアム』の両足が焼かれる。
神原の両足にも、火の上を歩いているような『熱』が伝わる。
胴体を守るような位置に構える以上、足元までは防ぎ切れない。
だが、『より致命的になるような部分』が焼かれる事は避けられている。
痛みに慣れているからこそ、耐えて前に進む事も不可能ではない。

「負けられない……」

「私がやらなかったら……誰が……」

儚は何事か呟いているが、独り言のようだ。
おそらくは、自分自身に言い聞かせているのだろう。
蓮華は神原の前進を横目で確認しつつ、周囲を見回している。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□□□□□□□□□□神□□□□ポ□□儚自壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□□□□台壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚(儚のスタンドと同位置)
台:台車
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華はキーを捜している)
※:建物の裏口

817神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/30(月) 23:59:58
>>816

「君がやらなかったら……?」

「さぁ、どうだろうねぇ」

まだ前進する。
もっと叩き込むための距離に行かないといけない。

「やり方ってのは何事にもあるけどね」

『なぜ通り魔をする?』

『意味があるのか?』

なるべく詰めておかないと削られるのはこちらだ。

818『月夜のV』:2019/10/01(火) 18:49:19
>>817

両足を焼き続ける熱に耐えながら、神原達は前進を続ける。
『強い意志』があれば不可能な事ではない。
そして、神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』には『それ』がある。
だからこそ、ここまで進んで来れた。
だが、意思の力にも『限界』がある。

    ジュゥゥゥッ 
          ジュゥゥゥッ

神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は、同時に理解した。
お互いの足取りが、徐々に『鈍ってきている』事を。
接近の最中、ずっと足を焼かれ続けているためだ。
まだ前に進む事は出来ている。
だが、そのペースはじわじわと落ちてきていた。

「…………『弟』が」

「弟は病気で、心臓が弱いの。
 少し前、ガラの悪い連中に絡まれて発作を起こした。
 でも、そいつらは自分のした事にビビッて逃げたのよ。
 救急車も呼ばずに」

「私は……二度とこんな事が起きて欲しくないと思った。
 奴らが幅を利かせていたら、また何処かで同じ事が起こる。
 気付いたら、私の隣に『ナイトシェイド』が立っていた」

「その時、私は決めたのよ。
 あいつらに『恐怖』を教えて大人しくさせてやるって。
 だから、私は…………」

『ナイトシェイド』――――それが『吸血鬼のスタンド』の名前らしい。
感情的な口調で一気に言い切ると、儚は言葉を止めた。
やがて、おもむろに深呼吸する。

「…………それだけです」

落ち着きを取り戻した儚が、そう付け加えた。
倒れた自転車を脚で退かし、彼女は一歩後退する。
その時――――神原達は見た。

             キラッ

『キー』だ。
儚の足元に『バイクのキー』が落ちている。
『ナイトシェイド』が投げた自転車を避けた時に、蓮華が落としたらしい。
蓮華も儚も気付いていない。
『キーの存在』に気付いているのは、神原と『師匠』だけだ。

                      ガシッ

「――――あなたは?」

儚が神原に問い掛ける。
同時に、『ナイトシェイド』が片方の懐中電灯を儚に手渡した。
その分だけ空いた手が、台車のハンドルを掴む。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□神□ポ□□□儚壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□□□□台壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚(『ナイトシェイド』と同位置)
台:台車
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華はキーを捜している)
※:建物の裏口

819神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/01(火) 23:50:44
>>818

「……なるほど」

「理解はした。納得はしてない」

世の中にはそういうことがある。
納得と理解は別の位置だ。

「君がそうすることで君の弟や他の誰かを守れるとは思えない」

「報復には報復で返す」

復讐どうこうを論じるつもりはない。
そんな戦いに神原は興味がない。
興味のある戦いとは魅せる戦いだ。

「僕は、僕を知る人が襲われたから戦う。彼の在り方なんて知らない、だけど僕は彼が襲われるべき人間に思えなかった。それだけ」

『いつか君の弟と観戦に来るといい』

「もっと健康に心臓バクバクさせてあげるよ」

師匠にトランポリンを軽く投げ上げさせる(パス精BBC)
そしてトランポリンに『ドロップキック』(パス精BBC)
彼女の上半身方面に向かってトランポリンを蹴飛ばそう。
神原はトランポリンの影に隠れつつ前進し鍵を拾いに行く。
踏み切りは同時だ、一気に行く。

820『月夜のV』:2019/10/02(水) 19:02:42
>>819

「――――…………」

神原や蓮華が知る限り、譲原に傷付けられる理由はなかった。
儚は何も言わなかったが、表情には迷いや躊躇いに似たものが見える。
彼女も、心の中では神原の言葉が正しいと感じているのかもしれない。

    ブンッ――――

この時、神原の胸中にあるのは『極めてシンプルな解答』だった。
そして、そのように彼は行動する。
それが『神原幸輔』という人間の在り方だ。

           ド ゴ ォ ッ ! !

『トランポリン』を放り投げ、続けざまに『ドロップキック』を叩き込む。
投げ上げられた『トランポリン』を見た段階で、儚も行動を起こした。
『ナイトシェイド』の片手に台車を掴んだまま、横方向に跳ぶ。

「ええ――機会があれば」

『投げ上げて蹴る』という『二動作』に対し、儚は『跳躍』という『一動作』だ。
これが本来の状態であれば、
『ストロンガー・ザン・アイアム』のスピードに物を言わせ、
命中させる事も出来たかもしれない。
それを阻んだのは、『両足の火傷』だった。
足に力を込めるのが僅かに遅れ、『ドロップキック』に遅延が生じたのだ。
長くはない時間だったが、
それが原因で『トランポリン』は回避されてしまう。

    ダッ ダッ ダッ ダッ ダッ

『トランポリン』を遮蔽物として利用し、神原は『キー』の確保に向かう。
しかし、本体である神原も『火傷』の影響を受けている。
蓄積されたダメージが響いているせいで、普段と比べて足取りが重い。
神原は、『キー』まで後一歩という所まで距離を詰められた。
だが、まだ確保は出来ていない。

               ――――ド シ ュ ゥ ッ ! !

儚が『トランポリン』を回避した直後、『ナイトシェイド』が台車を投げ放つ。
狙われたのは神原ではなかった。
その先にいる蓮華に向かって、矢のような勢いで台車が飛んでいく。

「クソッ!!」

          ガァァァァァ――――ンッ!!

キーを捜す事に気を取られていたために、
蓮華は回避が間に合わなかった。
反射的に発射された銃弾が、突っ込んでくる台車に命中する。
それによって多少は勢いを殺せたようだが、
完全に止めるまでには至らず、
なおも突き進んできた台車が彼を薙ぎ倒した。
咄嗟に『スウィート・ダーウィン』を盾にしたらしく、
直撃だけは避けられたようだ。
しかし、蓮華は倒れていて、すぐには起き上がれそうにない。

「もう『削る』のは十分です」

『ナイトシェイド』の持つ懐中電灯が、儚に渡された。
懐中電灯は二つとも『消灯』している。
両手を空けた『ナイトシェイド』が、儚の前に立つ。

「――――『決着』を付けましょう」



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□ポ□神□鍵壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□□□□儚壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚&『ナイトシェイド』
鍵:バイクのキー(トランポリンの下に落ちている)
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華は台車を食らって倒れている)
※:建物の裏口

821神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/02(水) 21:46:09
>>820

『蓮華!』

「……一手、二手、遅かったかな」

しくじった。
が、まだ終わりではない。

「……決着か」

ここまで遠かった。
この距離を詰めるまでの時間は試合の距離感とは違うものだ。

「これ以上下がる場所はない」

「でも、本当に君が決着をつけられるかな?」

「スタンドで攻めて、一気に照らして隙を作って刺す、そういう作戦かな?」

二人とも姿勢は低く、踵が少しだけ浮く体勢。
的は小さく。

822『月夜のV』:2019/10/03(木) 19:22:58
>>821

「――ッ……大丈夫だ……!まだまだやれるぜッ……!」

蓮華の声には苦痛の色が混じっていたが、まだ動く事は出来そうだ。
彼は、台車の下敷きになっていた。
それを両腕で退かし、何とか体を起こそうとしている。

「『ご想像』にお任せします……」

               デッドエンド
「いずれにせよ、ここが『行き止まり』――下がる気はありません」

この戦いの行方は、未だ不透明だ。
しかし、神原と『師匠』の心には揺るがぬ『闘志』がある。
ダメージは負っているものの、戦う力も十分に残っている。
まだ終わりではない。
それは間違いのない事実だ。

「…………最後に誰が立っているかは分かりません」

「しかし――――私は『全身全霊』を以って、あなた達に立ち向かいます」

体勢を低くし、踵を持ち上げる。
神原達は、自然と前傾姿勢のような状態になった。
それを見た儚が、片方の懐中電灯のスイッチを入れる。

    カチッ
             パッ
                     ジュゥゥゥッ

神原の『顔』に向かって、光が浴びせられた。
目をやられるような事はなかったが、顔面を炙られるような熱が走る。
他の部位と比べて、反射的に一瞬の『間』が空く事は避けられない。

     ――――シ ュ バ ァ ッ ! !

その僅かな時間の間に、『ナイトシェイド』が接近してきた。
姿勢を下げた神原達を狙い打つような軌道で、
素早く強力な蹴りを放ってくる(パス精BBC)。
既に体験しているように、
力も速度も『ストロンガー・ザン・アイアム』と同等の一撃だ。

「あなたのスタンドと私の『ナイトシェイド』は完全に互角でした」

「ですが――――『今は』どうでしょうか?」

最初の段階で神原も考えていたように、双方の性能が互角であるならば、
負傷が少ない方が相対的に有利になる。
儚は遠距離からダメージを蓄積させ、コンディションの『差』を作った。
その上で攻めに転じるのが、彼女の狙いだったようだ。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□ポ□神□鍵壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□□□血儚壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚
血:『ナイトシェイド』
鍵:バイクのキー(トランポリンの下に落ちている)
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華は起き上がろうとしている)
※:建物の裏口

823神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/03(木) 21:28:56
>>822

「残念ながらタフマンコンテストで負けるわけにはいかないんだ」

目への閃光。
やはりそう来るらしい。
自分が相手の立場ならそうする。

「こちらが不利なら」

『受けて立つ!』

踵を浮かせたのは前に突っ込む前提だからだ。
師匠は敵の軸足に向かって突っ込む(パス精BBC)
蹴り足側の腕を使って顔面への攻撃に備えておこう。
ぶち抜くように思い切り体当たりをかましてやる。

『読めている、初めからッ!』

824『月夜のV』:2019/10/04(金) 20:17:36
>>823

    ダッ!!

『ナイトシェイド』の蹴りに対して、
『ストロンガー・ザン・アイアム』が猛然と体当たりを仕掛ける。
しかし、その出足が僅かに遅れた。
これも『両足の火傷』が原因だ。
頭では分かっていても、『突っ込む』という意思に対して、
体がレスポンスを返すまでにタイムラグが生じる。
その点に関しては止むを得ない。

          ドゴォッ!!

結果、体当たりよりも先に蹴りが命中した。
防御のために構えていた腕に、強い衝撃が来る。
だが、前に出ていた事で、力が乗り切る前に蹴りが入った。
ゆえに、『ストロンガー・ザン・アイアム』は突き進む事が出来たのだ。
相手の攻撃を食らった後だったために、軸足を狙う事は出来なかったが、
目論見通り体当たりを成功させた。

         ド ガ ァ ッ ! !

                ――――ドサッ!!

蹴りの直後だった『ナイトシェイド』は、体勢を崩して押し倒された。
最初とは逆に、『ストロンガー・ザン・アイアム』が上を取った形になる。
ダメージレースでは儚が有利だが、状況的には神原達が有利だ。

「では、私が『何をするか』もお分かりでしょう」

         パッ――――

再び懐中電灯が向けられ、
神原の顔面に光が浴びせられる。
先程は低姿勢だったために、目に光は当たらなかった。
しかし、今は違う。

         ジュゥゥゥッ…………

両目が文字通り焼かれ、これまでにない激痛を感じる。
体の多くの部分とは異なり、目は外的刺激に弱い。
最悪の場合、『失明』の恐れも有り得る。

「ぐッ…………!」

蓮華は、鉄柵に掴まって体を起こそうとしていた。
その動きは平時と比べて鈍い。
やはり、今の一撃が効いているようだ。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□ポ□神□鍵壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□□□血儚壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚
血:『ナイトシェイド』
鍵:バイクのキー(トランポリンの下に落ちている)
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華は起き上がろうとしている)
※:建物の裏口

825神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/04(金) 22:44:51
>>824

「あぁ、分かってるとも」

被っていたジャケットを儚に向かって投げる。
投げたジャケットが光をさえぎってくれるだろう。

『俺たちを舐めないでもらおうか』

上を取れば足の怪我は関係ない。
踏み込みが効かない分、こちらがやったような突き上げる動きをされると面倒だが、そういうのは全身で抑え込むモノだ。
それをするために動く。

『俺は俺の意志で動く』

前腕を顔面に押し付けるように振り下ろす(パス精BBC)
肘で狙いたかったが当てる方を重視する。
線での攻撃で顔面を押さえつけてやろう。

826『月夜のV』:2019/10/05(土) 17:55:55
>>825

    バッ――――

神原がジャケットを投げつける。
それが儚と神原の間を隔て、光を遮る壁となった。
同時に、『師匠』も動く。
『ストロンガー・ザン・アイアム』は『半自立型』だ。
通常のスタンドとは違い、本体との『同時行動』に支障はない。

「『一人で二人分』…………私には真似の出来ない芸当です」

神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』は個別の意思を持つ。
異なる思考を持ち、別々に行動する事が可能だ。
だが、『ダメージフィードバック』が存在する。
スタンドのダメージは本体に返り、本体のダメージはスタンドに繋がる。
従って、神原が焼かれる事は、
『ストロンガー・ザン・アイアム』が焼かれる事でもあるのだ。

「しかし――――『無敵』ではありませんッ!!」

神原から伝わったダメージで、腕の振り下ろしが僅かに遅れる。
ジャケットの投擲によって、これ以上の火傷を負う事は防げた。
だが、既に生じている『間』は変えられない。

         ド 
           シ ュ ゥ ッ ! !

振り下ろしの直前に、両手を地面につけた『ナイトシェイド』が、
両足蹴りを繰り出した(パス精BBC)。
それは、神原達が想定していた以上の行動ではない。
光による妨害がなければ、対処する事は十分に可能だっただろう。
ただ、焼かれた分だけ対応は遅れざるを得なかった。
『ストロンガー・ザン・アイアム』の胴体に蹴りが炸裂する。

                   ――――ズザァッ

蹴りを食らった事によって軽く吹っ飛ばされ、やや体勢が崩れた。
それでも普段なら耐えられたはずだが、両足の火傷が祟っている。
神原達が分析した通り、『踏み止まる力』が衰えているせいだ。
蹴られた事によるダメージもあるが、
全く同じダメージを受けた儚も動けている。
その点に関しては五分の状態と言えるだろう。

「――チッ……ヤロー……!」

蓮華は、どうにか起き上がっている。
鉄柵に寄りかかり、『スウィート・ダーウィン』を構えた。
だが、引き金は引いていない。
神原達が射線上に入っているためだろう。
銃口を向けられている儚は、『ナイトシェイド』と同様の体勢だ。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□神□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□ポ□□□鍵壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□□□血儚壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚
血:『ナイトシェイド』
鍵:バイクのキー(トランポリンの下に落ちている)
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華は起き上がっている)
※:建物の裏口

827神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/05(土) 18:49:36
>>826

『面倒だな』

「そうだね」

息を吐き、相手を見る。
足を負傷している分、全てが後手という気がしないでもない。

「師匠、パス」

師匠に『ジムハンマー』を渡し、儚にむかって投げさせる(パス精BBC)
神原は放置自転車の方に向かって歩いていく。

828『月夜のV』:2019/10/06(日) 18:15:49
>>827

火傷のダメージが足枷になっている事は事実だろう。
儚は、それを利用している。
彼女は彼女の意思で動くからだ。
そして神原は神原の、『師匠』は『師匠』の意思で行動する。
その行く末は、まだ分からない

    ブ ォ ン ッ ! !

『ジムハンマー』を力強く投擲する。
命中すれば無事では済まない。
よって、儚は対処を迫られる事になる。

    バンッ!!
             ババッ

                 ――――ドゴォッ!!

地面につけた両手の反動で、『ナイトシェイド』が地面を転がった。
『ジムハンマー』と儚の間に割り込み、スタンドの両腕でガードを行う。
少なからず衝撃を受けたようだが、本体には当たっていない。

        ガァァァァァ――――ンッ!!

唐突に、『ストロンガー・ザン・アイアム』の真横を銃弾が通り過ぎる。
一時的に射線が通った瞬間を狙い、
神原達の攻撃に合わせて蓮華が発砲したのだ。
狙いが逸れる恐れもあったが、撃つ事を優先したのだろう。

                      カキィィィンッ!

「――――ッ!!」

飛んできた弾丸によって、儚の手から片方の懐中電灯が弾かれた。
頑丈な作りになっているらしく、まだ壊れてはいなかった。
点灯したままの状態で儚の近くに転がり、『ナイトシェイド』を照らす。

              ジュゥゥゥッ

「くッ…………」

『ナイトシェイド』の手に光が当たり、その部分が焼けるのが見えた。
その瞬間、儚の表情が苦痛に歪んだ。
彼女は焦った様子で懐中電灯を消してから、拾い直して立ち上がる。

「これで確定じゃねェか。『相棒の推理』はよォ?」

本体の儚に対して、光は効果がなかった。
だが、『吸血鬼のスタンド』である『ナイトシェイド』は光で焼かれる。
神原達の推理は、これで裏付けられた。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□師□神自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□ポ□□□鍵壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□□□□儚壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原
師:『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚&『ナイトシェイド』
鍵:バイクのキー(トランポリンの下に落ちている)
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華は起き上がっている)
※:建物の裏口

829神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/06(日) 21:27:27
>>828

「ふぅ、まぁ、これで手の内は読めたんじゃない?」

脂汗が額に浮かぶ。
蓮華が撃ってくれると信頼して良かった。
ただ削られてるのは変わりないが。
向こうものんびりしていられないだろうし。

「師匠。コンビネーションPart4だ」

『あれでいくか』

師匠は姿勢を低くして『ナイトシェイド』に突進(パス精BBC)……の振り。
途中でストップする。
MAP上1マス分進んだあたりでいい。
先程のことがあるから迎撃を誘いたい。
一拍遅れらせて神原は鍵を拾いに行く。
師匠は囮、本命はこちらだ。

830『月夜のV』:2019/10/07(月) 20:23:25
>>829

「あなたの『忍耐力』には心から敬服しますが――――」

「このまま『ダメージレース』を続ければ、
 遠からず倒れるのはあなたの方です」

『顔』、『足』、『手』――神原は複数の火傷を負っている。
最も重いのは両足の火傷であり、それ以外は大きな負傷ではない。
だが、全体の総量で言えば、かなり『削られている』事は事実だ。

「――――しかし、それを待つつもりはありません」

儚にとっても、あまり時間を掛けられないのは確かだろう。
元々、数の上では不利なのだから。
そして、スタンドの『弱点』も知られている。

    ダダッ!!

『ストロンガー・ザン・アイアム』が突っ込む。
それは、神原が動くための布石だ。
足元に落ちている『ジャケット』を拾い上げ、
『ナイトシェイド』が儚の前に立ち上がる。
しかし、『待つ気がない』という発言とは裏腹に、
彼女は手を出してこない。
マウントを取られた経験から、用心深くなっているらしい。

「『ストレートなアプローチ』には好感が持てますが、
 自分を安売りする気はありません」

            ジュゥゥゥッ

儚が懐中電灯を向けると、
『ストロンガー・ザン・アイアム』の胴が焼かれていく。
スピードの差があるため、本来なら儚では当てにくい状況の筈だ。
それが可能になっているのは、
突進の軌道が直線的であるからだった。

                 ――――キラッ

『キー』の位置は神原の間近だ。
儚も同じ程度の距離にいる。
そして、彼女は『ストロンガー・ザン・アイアム』を警戒している。
その隙に、神原は『キー』の確保に向かう事が出来るだろう。
しかし、儚は誘いに乗っていないため、
上手く『キー』を拾えるかは『賭け』になる。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□神自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□ポ□師□鍵壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□□□□儚壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原(まだ動き出していない)
師:『ストロンガー・ザン・アイアム』(現在ストップする直前)
儚:紅儚&『ナイトシェイド』
鍵:バイクのキー(トランポリンの下に落ちている)
小:小出(気絶している)
華:蓮華
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華はスタンドを構えている)
※:建物の裏口

831神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/08(火) 00:15:23
>>830

「笑わせてくれるじゃないか」

「闇討ち上手のお嬢さん」

神原の中で何かが変わる。
スイッチが入る。
歯車がかみ合う。
回りだす。
世界の見え方が変わっていく。

「ビビってんのが見え見えだ」

「拾ったジャケットはいざという時のための壁にするためだろ? 甘いぜ」

『蓮華! 今だ! ぶち込め!』

師匠は止まった勢いで前回り受け身。
これで、射線が空くはずだ。
ジャケットごと蓮華の射撃で狙わせる。
神原は予定通り鍵を奪いに行く。
師匠だけで駄目なら射撃で無理やりにでも動かしてやる。

832『月夜のV』:2019/10/09(水) 19:00:29
>>831

瞬間的に、神原の『心』が切り替わる。
現れるのは、『戦う者』としての神原幸輔だ。
それは肉体的な変化ではなく、意識レベルの変化だった。
強い意思の発露であり、確固たる決意の表れでもある。
あるいは、『覚悟』と呼ぶ事も出来るだろう。

「――――『ビビってる』?私がですか?」

    フッ

「『冗談』がお上手ですね」

軽く笑った儚の額には、汗が滲んでいる。
それは暑さのせいだけではないだろう。
彼女の表情には、確かに『焦り』の色が見えた。

         バッ――――

『ストロンガー・ザン・アイアム』の前転。
それによって『射線』が通る。
その時を待っていたのは、『彼』も同様だ。

「ブチ抜かれやがれェェェ――――ッ!!」

    ガァァァァァ――――ンッ!!

          ガァァァァァ――――ンッ!!

                ガァァァァァ――――ンッ!!

僅かな間に、『三発』の銃声が鳴り響いた。
だが、百発百中とはいかない。
やはり、この暗さが大きく影響している。
台車を投げ付けられた時のダメージも残っているのだろう。
一発目は外れ、二発目も当たらなかった。

                ――――バキャァァァンッ!!

しかし、『三発目』の銃弾は命中した。
儚が片手に握っていた懐中電灯の点灯部が、完全に破壊される。
光が消え、辺りは再び暗闇に包まれた。

「こ……の……ッ!!」

感情的に表情を歪めた儚が、蓮華を睨み付ける。
『師匠』の機転と蓮華の援護によって、
神原の動きが邪魔される事はない。
そのまま予定通り、腕を伸ばして『バイクのキー』を掴み取る。

「――――そう易々とッ!!」

    バサァッ

『ナイトシェイド』が腕を振るい、
至近距離に立つ神原の頭にジャケットが被せられた。
先程までとは違い、視界を確保する隙間はない。
完全に覆われてしまっている。
ジャケットの袖は掴んだままで、手放していなかった。
神原の読み通り、いざという時の盾にするつもりなのだろう。

           ゴ ォ ッ ! !

独立した視覚を持つ『ストロンガー・ザン・アイアム』には見えた。
ジャケットによる視界封じから間髪入れず、もう片方の腕で、
『ナイトシェイド』が神原に殴り掛かろうとしている(パス精BBC)。
おそらく、対応する時間は一秒もない。

「――んだよ……うるせーな……」

遠くから、間の抜けたような声が聞こえた。
今まで気を失っていた『小出』が目覚めかけているようだ。
もっとも、起きた所で何が出来る訳でもない。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□ポ□師□神壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□□□□儚壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原(キーを確保済み)
師:『ストロンガー・ザン・アイアム』(前転の直後)
儚:紅儚&『ナイトシェイド』
小:小出
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華がスタンドを構えている)
※:建物の裏口

833神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/09(水) 21:40:55
>>832

(……暗いな)

今日は明るかったり暗かったり忙しい。
電灯が付いたり消えたりするようだ。
何をされたかは分かっている。
だからこの次のことも分かっていると思う。

『幸輔』

かつて、教わったことがある。
師匠は遠い。
間に合わないはずだ。
選ぶ手は一つ。
飛びのく。
方向は放置自転車の方向。
自転車ごと倒れてもいい、とにかく遠くへ進む。
鍵はしっかりと握っておけ。

834『月夜のV』:2019/10/10(木) 20:23:26
>>833

「――……ッ!?」

寝ぼけ眼だった小出が、目の前の状況に目を見張っている。
もちろん、全てが分かる筈もない。
彼に理解出来るのは、『常識を超えた事態』が起きている事だけだ。

    ダンッ

一秒にも満たない時間の中で、神原は瞬時に判断を下した。
火傷を負った両足に鞭打って、咄嗟に後方へ飛び退く。
息つく間もなく、眼前に『ナイトシェイド』の拳が迫る。

「『殴られた衝撃を利用して距離を稼ぐ』」

                   バッ――――

殴り掛かろうとしていた『ナイトシェイド』が、その拳を開いた。
大きく広がる五指に生えた『爪』が、神原の首を掠める。
夜の帳の中に、数滴の赤い雫が飛び散った。

           ガシッ

「――――そういう考えですか?」

視界が塞がれていても、神原には感覚で分かった。
『ナイトシェイド』に胸倉を掴まれている。
首を掴むつもりだったようだが、
神原が飛び退いた事で狙いが逸れ、
結果的に胸倉を掴む形になったらしい。

    グイィィィ――――ッ!!

神原を掴んだまま、『ナイトシェイド』が力任せに腕を引き、
その場で転身する。
敵の動きに引きずられるようにして、
強引に体の位置を動かされてしまう。
次の瞬間、突如としてジャケットが取り除かれた。

「行かせない!!『光の下』にはッ!!」

          ブ ォ ン ッ ! !

今までジャケットを握っていた腕で、
『ナイトシェイド』が本命の拳を放つ(パス精BBC)。
手を空けるために離したらしく、ジャケットは儚の肩に掛かっていた。
神原の視界が戻っているため、
儚の必死の表情と敵の攻撃が見える。
狙われているのは胴体だ。
対処に使える時間は僅かしかない。

「クソッ……!!狙えねえッ……!!」

距離が近過ぎるせいで、蓮華は撃つ事が出来ないでいる。
彼は、一瞬『バイク』の方に視線を送った。
蓮華も、神原が『キー』を拾い上げるのを見ていた筈だ。
それが分かっている以上、彼も『自己判断』で行動するだろう。
どうするかは神原次第だ。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁☆壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□ポ□師□□壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□□□神儚壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原(キーを確保済み)
師:『ストロンガー・ザン・アイアム』(体勢は立て直せている)
儚:紅儚&『ナイトシェイド』
小:小出
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
☆:非常階段(蓮華がスタンドを構えている)
※:建物の裏口

835神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/11(金) 17:18:04
>>834

『ここが正念場!』

『腹をくくれ幸助ェー!』

神原は足を上げる。
身体を丸める様にして胴体の前に折りたたんだ足を出す。

「はは……!」

笑え。
窮地の時ほど胸を張れ。
回避はできないだろう。
だから受ける覚悟をしろ。
正直なところ、このパワーをまともに受ければ足を介しても内臓にダメージがいく可能性は高い。
それに、足も折れるだろう。
だが、それでもそうせねばならない。

『!』

再度の突進。
神原が足を上げ、空いた場所に滑り込むように師匠は進む(パス精BBC)
足に負傷をしているし、間に合わないかもしれない。

「……頼みます」

神原は鍵を手放した。

836『月夜のV』:2019/10/12(土) 16:47:54
>>835

腹を括り、攻撃を食らう『覚悟』を決める。
それは精神面の変化であり、身体に影響を及ぼす事はない。
だが、『覚悟』があるからこそ可能になる事もある。

          メ キ ィ ッ ! !

唸りを上げる拳が風を切り、『全力の一撃』が叩き込まれた。
神原が持ち上げた『足』――その片方に。
全身に強い衝撃が走り、呼吸が一瞬止まる。

    ビキッ

骨が折れている可能性も十分ある。
少なくとも、この痛みは『ヒビ』が入っている事は確実だ。
職業柄、神原には即座に理解出来た。
片足を犠牲にした事で、胴体部のダメージは最小限だ。
普段からの鍛錬の賜物で、呼吸の乱れも治まっている。

「ハァッ……ハァッ……」

「『一撃』で駄目なら『もう一撃』浴びせるだけですッ!!」

そして、神原が受けたダメージは『師匠』にも伝わる。
片方の足から、急速に力が抜けていく。
だが、既に突進した後であるため、まだ勢いは残っている。

「――――このッ!!」

          シ ュ バ ァ ッ ! !

突っ込んでくる『ストロンガー・ザン・アイアム』を見て、敵が動く。
依然として神原を掴んだ状態で、
『ストロンガー・ザン・アイアム』に蹴りが繰り出された(パス精BBC)。
やはり胴体を狙ってくる。
動き出したのは『ストロンガー・ザン・アイアム』の方が早かったが、
両足の火傷で僅かに出足が遅れた。
その結果、突進とほぼ同じタイミングで蹴りが放たれる事になった。

    スルッ

「!!」

神原の掌中から『キー』が滑り落ちる。
『バイク』の方向に移動を始めた蓮華も、その光景を確認している。
『ストロンガー・ザン・アイアム』に気を取られた儚は気付いていない。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自華□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□ポ□□□□壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□□□神儚壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』(師匠は突進中)
儚:紅儚&『ナイトシェイド』
華:蓮華(バイクの方向に移動中)
小:小出
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
※:建物の裏口

837神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/12(土) 23:09:52
>>836

「『ストロンガー・ザン・アイアム』はただの猪じゃねえ」

「もう何度目だ? 三度? 四度? 繰り返すよなぁ、必死になればなるほど工夫は出来ない。お互いに」

神原は殴られていない方の足を伸ばして『ナイト・シェイド』の胴体を狙って蹴り飛ばしにいく(パス精CCC)
自分が掴まれている以上、『ナイト・シェイド』はこちらの攻撃を透過出来ないだろう。
これで『ナイト・シェイド』や儚にダメージを与えて動きを止めたい。

『俺の目的は攻撃じゃあない』

>>835 メ欄(鍵 神→師 キャッチ)
鍵は神原から師匠へ。
師匠の突進は純粋な攻撃のためではない、神原の鍵をキャッチするためのものだ。
攻撃の間合いの外に鍵があるならいいが、なければ少し困ったところだ。
落ちる鍵をキャッチ出来たら即座に蓮華に向かって投げる(パス精BBC)

838『月夜のV』:2019/10/13(日) 18:41:34
>>837

それは、刹那の間の出来事だった。
神原と『師匠』と儚が、それぞれの意思で動く。
行動の結果は、すぐに訪れた。

「ええ、そうですね。『お互い』に」

「ですが――――『一つ大事な事』をお忘れですよ」

    キラッ――――

誰よりも最初に行動を起こしていたのは、神原だった。
自らの体を張って確保した『キー』を、敢えて滑り落とす。
それは、次に繋げるための『予備動作』だ。

           ブ ン ッ ! !

神原の行動は、『ストロンガー・ザン・アイアム』に引き継がれた。
『弟子』から託された『キー』は、手筈通り手の中に収まっている。
寸分の迷いもなく、それを即座に投げ放つ。

          ギ ュ オ ン ッ ! !

「あなたと私の『コンディション』には、
 既に無視できない『差』が開いている事をッ!!」

    ――――ドグォッ!!

『師匠』の行動から一拍分ほど遅れて、
『ナイトシェイド』の蹴りが命中した。
『ストロンガー・ザン・アイアム』の胴体に蹴り足が突き刺さり、
そのダメージが神原にも伝達される。
同時に蹴りを繰り出せば、どうしても『ナイトシェイド』の方が速い。
スピードの違いによって、神原の蹴りは先んじて潰されてしまった。
だが、神原達の『狙い』は既に達成されている。

「――――ッ!?」

    グ ワ ァ ァ ァ――――ッ ! !

投じられた『キー』の行方に、儚が気付いた。
『ナイトシェイド』の両手が神原の胸倉を掴み、
超人的な腕力で軽々と投げ飛ばす。
それに対応する前に、
神原と『師匠』は距離にして5m近く吹っ飛ばされた。

                         ダダッ!

「目的は『受け渡し』でしたか……!」

『ストロンガー・ザン・アイアム』が投げた『キー』を拾い上げ、
蓮華が全速力で走り出す。
向かう先は、当然『バイク』の方向だ。
それを見た儚が、壊れた懐中電灯を『ナイトシェイド』に渡した。
儚の表情には、明らかな『焦り』が見える。
蓮華は『スウィート・ダーウィン』を握り締め、儚を横目で一瞥した。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□華□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□ポ□□□□壁
□□傘□□□□□□□□□□□神□□□□□儚壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚&『ナイトシェイド』
華:蓮華(バイクの方向に移動中)
小:小出
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
※:建物の裏口

839神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/14(月) 19:17:41
>>838

「しばらく欠場か……?」

『生きていればそれでいい!』

「当然ッ!」

まだ戦闘の意思はある。
だから進むのだ。

「それ、壊れてるだろ」

投げて蓮華の動きを止めるつもりだろうか。

「やってやる」

師匠はトランポリンを発現。
思い切り投げて転がして、儚と蓮華の間の壁にする。

『走れ蓮華!』

840『月夜のV』:2019/10/15(火) 18:41:43
>>839

負傷は大きい。
その事実は変えられないだろう。
だが、神原の心には消える事のない『闘志』があった。
戦う意思がある限り、前進する事が出来るのだ。
その『強さ』が、神原幸輔を支えている。

「確かに壊れています――――」

「だから、こうするんですよッ!!」

             ドシュゥッ!!

剛速球の勢いで、『ナイトシェイド』が懐中電灯を放った。
しかし、神原は読んでいる。
それゆえに、対応するのは簡単だ。

    ズギュンッ
             ド ン ッ ! !

『トランポリン』の再発現。
そして、続けざまに投擲。
何ら問題はない。

                   ――――バシンッ!!

『トランポリン』が障壁となり、懐中電灯が弾かれた。
その間も蓮華が足を止める事はない。
神原と『師匠』を信頼しているからこそ、走り続ける。

「そうはさせない…………!!『絶対』にッ!!」

    バッ!!

唇を強く噛み締めた儚が、蓮華を追って走り出す。
不意に、蓮華が立ち止まった。
『スウィート・ダーウィン』の銃口が、儚に向けられている。

「そう来るだろうなァ……。
 こんだけ近いんならよォ――『目隠し』しても当てられるぜッ!!」

       ガガガガガァァァァァ――――ンッ!!

五つの銃声が重なり合うように聞こえ、『五連射』が撃ち込まれる。
『ナイトシェイド』が防御体勢に入ろうとしていたが、一歩遅かった。
そのボディに、数発の弾丸が命中する。

「なッ…………燃えッ…………!?」

               「あああああぁぁぁぁぁ――――ッ!?」

銃弾を食らった瞬間、儚が悶え苦しみ始めた。
全身が焼かれる『幻覚』のようなものを見せられているらしい。
事前に聞いていた通り、それが蓮華の『能力』なのだろう。

「『四秒』だッ!!ヤツを足止め出来るのは『四秒間』だぜ!!」

蓮華が神原に叫ぶ。
儚は、まともな行動が不可能な状態にある。
今なら体勢を立て直す事も出来るだろう。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□華□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□ポ□□儚□壁
□□傘□□□□□□□□□□□神□□□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚&『ナイトシェイド』
華:蓮華(バイクの方向に移動中)
小:小出
バ:蓮華のバイク
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
※:建物の裏口

841神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/16(水) 22:33:35
>>840

「『4秒』たしかに」

『いただくぞ、勝利も名誉もすべて!』

師匠は『ジムハンマー』を発現。
神原はスマートフォンを取り出す。
そしてそのまま前進。
壁伝いに儚の方に進んでいく。

「どうする、ここが正念場だ」

「観念するか、執念で来るかはお前次第だぞ」

『どのみち俺たちはその上を行くがな』

842『月夜のV』:2019/10/17(木) 20:17:25
>>841

    ダダッ――――

儚が苦しんでいる間に、蓮華は『目的地』に到達した。
『バイク』に乗り、『キー』を差し込んで捻るように回す。
セルモーターの回転と共にエンジンに火が入り、
軽快な駆動音が辺りに響いた。

「――――ッ」

「……ハァッ……ハァッ……」

ほぼ同時に、儚の意識が『偽りの死』から帰還する。
彼女の額には脂汗が滲んでいた。
それを拭おうともせず、儚が神原を見つめて薄く笑う。

「あなたが私の立場なら、観念して両手を上げますか?」

儚は追い詰められている。
しかし、彼女の表情に諦めの色はない。
神原と同じように、儚にも『戦う意思』は残っている。

「失礼ですが、そんな人には見えませんね」

          ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

「言った筈ですよ――――」

「私は『全力で立ち向かう』つもりだと!!」

機械の鼓動を思わせるエンジン音が小刻みに木霊する中、
儚が蓮華に向き直った。
肩に掛けていたジャケットを掴み、軽く膝を落として身を沈める。
だが、彼女が何かするよりも、蓮華が『点灯』する方が早かった。

            パ ァ ッ ! !

懐中電灯よりも数倍明るい『ヘッドライト』の輝きが、
夜の闇を切り裂いた。
その前方に立つ儚と『ナイトシェイド』に、強い光が浴びせられる。
結果は、火を見るよりも明らかだった。

「――――ッ!!」

    ジュゥゥゥッ         ジュゥゥゥッ        ジュゥゥゥッ
           ジュゥゥゥッ         ジュゥゥゥッ

「ぐッ…………うッ…………!!」

『吸血鬼』のスタンドである『ナイトシェイド』が、
『火炙り』さながらに焼かれていく。
それは儚にフィードバックし、火傷となって彼女の体を蝕む。
ただ、神原も体験したように、多少であれば耐える事も出来る。
それゆえに、儚も持ち堪えている。
しかし、そう長くは持たないだろう。

    ザッ――――

神原達は緩やかに立ち上がり、前進を始める。
やられた方の足を引き摺りながら、前に進む。
走る事は出来ず、平時と比べて歩みは遅い。
だが、まだ動ける。
だから戦える。

              スッ

スマートフォンを取り出す事は問題ない。
しかし、『ジムハンマー』を発現するための『空き』がなかった。
現在、『トランポリン』二つと『ジムハンマー』一つを発現している。
それらは解除されていない。
新たな『トレーニング器具』を手元に発現するには、
『空き』を作る必要がある。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□ポ□□儚□壁
□□傘□□□□□□□□□□□□神□□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚&『ナイトシェイド』
小:小出
バ:蓮華のバイク(蓮華はバイクに乗っている)
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
※:建物の裏口

843神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/18(金) 21:51:44
>>842

現状発現してるトレーニング器具をすべて解除し、師匠に再度『ジムハンマー』を発現させる。

「はっ」

『The Mighty Don't Kneel』

「強きものはくじけない」

非常階段右隣りの壁あたりまで進もう。

「どうする? このまま炙られるのを見るのもいいが」

「それじゃあ納得できないだろう」

844『月夜のV』:2019/10/19(土) 20:37:17
>>843

光の影響を受けるのは『ナイトシェイド』だけだ。
スタンドを解除すれば、儚がダメージを受ける事はなくなる。
しかし、神原に掛けた能力も同時に解除されてしまう。
だから、儚はスタンドを消す事が出来ない。
蓮華の存在も、その理由の一つだった。

     ガガガガガガァァァァァ――――ンッ!!

バイクに乗った状態で、蓮華が立て続けに発砲した。
連射された『六発』の弾丸が、儚に向かって飛んでいく。
その正面に、『ナイトシェイド』が立ち塞がった。

     ドバババババババババババババババッ!!

銃撃に対して、『ナイトシェイド』がラッシュを放った。
繰り出された拳の弾幕によって、全ての弾丸が叩き落される。
弾丸の対処を強いられたために、光を防ぐ事は出来ていない。

「――――うッ…………ぐッ…………!!」

    ジュゥゥゥッ         ジュゥゥゥッ        ジュゥゥゥッ
           ジュゥゥゥッ         ジュゥゥゥッ

儚の体は、確実に焼かれている。
このままの状態が続けば、いずれ彼女は倒れるだろう。
しかし、もし現状に変化が起これば、
結果は違うものになるかもしれない。

「ええッ…………」

「そうッ…………ですねッ…………」

腹の底から絞り出すような声で、儚が神原に答える。
火傷によるダメージが堪えているようだ。
だが、彼女の言葉からは『退こうとしない意思』が窺えた。
残る懐中電灯とジャケットが、『ナイトシェイド』の両手に渡される。
儚は、決して勝負を捨てていない。

    ザッ
            ザッ
                    ザッ

足を引き摺りながら、徐々に間合いを詰めていく。
『師匠』の手には、新たに発現した『ジムハンマー』が握られている。
普段なら即座に埋められる距離だが、今は少し遠い。
目的の位置に辿り着くには、もう数秒ほど掛かる。
この戦いに『決着』が訪れるまで、そう長くはないだろう。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□□□□□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□ポ□□儚□壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□神□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚&『ナイトシェイド』
小:小出
バ:蓮華のバイク(蓮華はバイクに乗っている)
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
※:建物の裏口

845神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/19(土) 23:05:30
>>844

「決着をつける権利がお互いに」

「お前を倒す権利は俺と仲間に」

「だが、俺を倒す権利はお前だけが持ってる」

だからまだ倒れてくれるな。
戦いが終わるまでは、まだ。
踏ん張れ。

『ぶっ叩く!』

師匠はハンマーを振ってポリバケツを儚に向けて打とう(パス精BBC)。
打ち上げる様にスイングして浮かせて飛ばしたい。
神原がやる事は一つ、スマホライトの点灯(>>843 メ欄 神原→スマホ、ライト起動準備)
たったワンタッチで起動できるはずだ。
ポリバケツを打ち上げて上半身方向への攻撃。
これによって儚は影ができることを理解するかもしれない。
『ナイト・シェイド』がポリバケツをキャッチすれば盾にできるかもしれない。
だから、神原がその可能性を潰してやるのだ。
二方向からの光だ。

846『月夜のV』:2019/10/20(日) 19:50:41
>>845

「――――フッ…………」

「素敵な…………『口説き文句』ですね…………」

神原の言葉を受けて、儚は微かに微笑んだ。
どこか儚い笑みだった。
それが何を意味するかは定かではない。
分からなくとも決着はつく。
そして、そのために神原達は行動する。

    バ ゴ ォ ッ ! !

豪快なスイングによって、ポリバケツが容易く吹っ飛ばされる。
それが向かう先には儚がいる。
スマホの『ライト機能』を駆使し、光を防がれる可能性も潰す策だ。

「そう――――」

「『あなたを倒す権利』を持つのは…………この『紅儚』ですッ!!」

              ダンッ

儚が斜め前方に跳んだ。
膝を落として身を沈めた体勢から、全力で跳躍する。
火傷のダメージが及んでいるために出足が遅れたが、
それでも彼女は動く。

         ド グ シ ャ ァ ッ ! !

                    ガラガラガシャァァァンッ!!

跳躍の遅延によって、ポリバケツは命中する寸前だった。
それを迎撃するため、『ナイトシェイド』の裏拳がバケツを薙ぎ払う。
中身がブチ撒けられ、辺りに派手な音が響く。
空き缶とペットボトルのビートが奏でられる中で、
儚は地面を転がり続ける。
彼女が止まった場所は壁際だった。

「――――チィッ!!」

    ジュゥゥゥッ         ジュゥゥゥッ        ジュゥゥゥッ
           ジュゥゥゥッ         ジュゥゥゥッ

儚が射線上から退いた事により、
結果的に神原が『ヘッドライト』の範囲内に入ってしまった。
『ストロンガー・アイアム』の全身に熱が走り、
そのダメージは本体である神原にも伝達される。
全身を焼かれる感覚は、
おそらく儚が体験したのと同じようなものだろう。
ここで神原が何もしなくても、蓮華が対応してくれる筈だ。
だが、そのために蓮華は、
一時的に儚から注意を外さなければならなくなる。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□ポ□儚□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□神□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚&『ナイトシェイド』
小:小出
バ:蓮華のバイク(蓮華はバイクに乗っている)
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
※:建物の裏口

847神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/20(日) 23:09:19
>>846

神原と師匠は儚に向かって進む。
ライトはあくまでも儚に向けておく。
ここから先は小細工を弄するのが面倒だ。
決着は早々につける。

「寂しいじゃないか」

「俺から目を離すなんて」

『ハンディキャップマッチだが、試合の権利は我々にある』

痛む足を動かして走れ。

848『月夜のV』:2019/10/21(月) 20:55:09
>>847

    ザッ ザッ ザッ――――

力を振り絞り、全力で前に進む。
しかし、『走る事』は出来なかった。
片足を殴られた時のダメージは、やはり無視出来ない程に大きい。
『意思』は十分にあっても、『体』の方がついてこないのだ。
こればかりは、『意思の力』でもどうしようもない。

「位置を変えて『光』から逃れたつもりか?
 だが、一時凌ぎにしかならねェぜ。
 こっちも動けば、それで済む話だからな」

              ドルンッ

車体の方向が変わり、再び『ヘッドライトの光』が儚に向けられる。
しかし、儚の表情に『焦り』はなかった。
眩しそうに細めた目でバイクを一瞥し、息を吐きながら起き上がる。

「――――『目を離す』?」

「目を離してなどいませんよ」

    フッ

「私が注意する必要があるのは、もう『あなただけ』ですから」

起き上がった儚の視線は、神原達に注がれている。
彼女は、蓮華に対して注意を払っていない。
何故なら、『その必要がない』からだ。

「まずは――――『こう』します」

    ド シ ュ ゥ ッ ! !

『ナイトシェイド』によって、『もう一本の懐中電灯』が投げ放たれる。
狙われたのは『バイク』だ。
儚に向けられていた『ヘッドライト』の中央に、
剛速球の勢いで命中する。

                   ガシャァァァァァンッ!!

「クソッ!!やられた!!」

ヘッドライトが破壊され、光が消える。
辺りを照らしているのは、神原が持つ『スマホのライト』だけだ。
当然だが、ヘッドライトに比べれば弱い。

「――――これで『大きな光』は役立たずです」

「そして、あなたと私の距離が近ければ、彼は『撃つ事が出来ない』」

               バサッ

スマホのライトに対して、儚がジャケットを翳した。
それによって、光の大部分が防がれてしまう。
『ナイトシェイド』は、スマホのライトを避けて儚の隣に立っている。

「……来てくれて嬉しいですよ。
 『こちらから近付く手間』が……省けましたから」

「今の状態では……少しの労力でも惜しいですからね……」

                  ――――ザッ ザッ ザッ

神原と儚の距離は近い。
おそらくは、『決着の時』も同じぐらい近いだろう。
対峙する二人を見て、蓮華が『スウィート・ダーウィン』を下ろした。

「…………その女の言う通り、『この距離』じゃあ俺は撃てねえ。
 だからよ、『そいつを倒す権利』はアンタと『師匠』に譲るぜ」

    ザッ…………

そう言って、蓮華はバイクから降りる。
彼は『手を出さない』事を決めたようだ。
神原の勝利を信じているからかもしれない。
あるいは儚の言葉通り、
『今の自分に出来る事はない』と感じているとも取れる。
もしくは、ここまで全力で戦ってきた二人に対して、
『彼なりの礼儀』を払ったのかもしれなかった。

849『月夜のV』:2019/10/21(月) 21:00:58
>>848

「どのような『結果』になろうとも…………これで『最後』です」

「――――『ナイトシェイド』ッ!!」

  ドババババババババババ
      バババババババババババババババ
          ババババババババババァァァァァ――――ッ!!

「私の『全身全霊』を以ってッ!!『あなたを倒す』ッ!!」

儚の叫びと同時に、
『ナイトシェイド』の『ラッシュ』が、
神原めがけて繰り出される(パス精BBC)。
言葉通り、『全力の攻撃』なのだろう。
彼女は、『この攻撃』で『神原を倒す』つもりだ。

神原と同じく、儚にも『これ以上の策』はない。
このラッシュで神原を倒せなかった時点で、彼女の敗北が決定する。
成功しようと失敗しようと『これで最後』――
儚が口にした『これで最後』という言葉は『そういう意味』だ。

神原も儚も消耗が激しく、お互いに残る体力は少ない。
『次の行動』で『勝敗』が決まる。
『どう応じるか』は神原次第だ。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□ポ□儚□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□神□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚&『ナイトシェイド』
小:小出
バ:蓮華のバイク(蓮華はバイクから降りている)
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
※:建物の裏口

850神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/22(火) 00:47:04
>>848-849

「はっ……」

「俺も、同じ気持ちだよ」

神原はしゃがみこみながらスマホを放り投げる(パス精CCC)
狙いは大まかに『ナイト・シェイド』の方だ。
ライトで焼けるかどうかは別にいい。
くれてやるだけだ。

「ストロンガー・ザン・アイアム」

『取るのは10カウントだッ!』

取るべき行動はひとつ。
全霊の力を込めて『ストロンガー・ザン・アイアム』は『ナイト・シェイド』へラッシュを仕掛ける(パス精BBC)
敵は神原に攻撃を仕掛けている。
なら、通るはずだ。
確実にぶっ飛ばす。

851『月夜のV』:2019/10/22(火) 20:38:29
>>850

お互いに『相手を倒す権利』を持ち、お互いが『それ』を行使する。
『両者の意見』は一致した。
神原と儚が、同時に『攻撃態勢』に入る。
『ストロンガー・ザン・アイアム』と『ナイトシェイド』――
『純粋な格闘戦』において、
『完全に互角』の性能を持つ『二体のスタンド』が、
事前に示し合わせたかのように動き出した。
蓮華は身じろぎ一つせず、黙って戦況を見守っている。

     ド ゴ ォ ッ ! !
                   ド ゴ ォ ッ ! !

『ストロンガー・ザン・アイアム』の拳が『ナイトシェイド』に叩き込まれ、
それと全く同じタイミングで、
『ナイトシェイド』の拳が神原に叩き込まれた。
回避が間に合わなかった理由は『三つ』ある。
第一に、神原と『ナイトシェイド』の元々の『スピード差』だ。
また、互いの距離は非常に近く、『拳が到達するまでの時間』も、
ほぼ存在しない。
『スマホを投げる』という動作を混ぜた事も、
『意識レベルの時間差』を生んでいた。
それは、『ほんの一瞬の差』でしかない。
だが、この緊迫した状況では『大きな違い』にも成り得る。

    メキメキィッ

神原の体内から、骨が軋むような音が聞こえた。
アバラにヒビが入ったようだ。
そして、おそらくは儚も。

  ドババババババババババ
      バババババババババババババババ
          ババババババババババァァァァァ――――ッ!!

  ドババババババババババ
      バババババババババババババババ
          ババババババババババァァァァァ――――ッ!!

                      デュエット
荒れ狂う暴風のような勢いで、『拳の二重奏』が響き渡る。
『ナイトシェイド』の拳が神原を打ち、
『ストロンガー・ザン・アイアム』の拳が『ナイトシェイド』を打つ。
『ナイトシェイド』のダメージは儚に伝わり、
神原のダメージは『ストロンガー・ザン・アイアム』に伝わる。
神原と儚の体は、瞬く間に傷だらけになっていった。
壮絶な殴り合いの果てに、
どちらからともなく弾かれるようにして双方が吹っ飛ぶ。

        ――――ズサァッ

神原の体は仰向けに倒れた。
『ストロンガー・ザン・アイアム』も同様だ。
全身が酷く痛む。
感覚から判断すると、骨の数本は折れているかもしれない。
一瞬、意識が消えかけたが、どうにか持ち堪える事は出来た。

                        ――――ドサッ

儚は、うつ伏せに倒れていた。
彼女の負傷も重いようだ。
片手には、まだジャケットを握り締めていた。
傍らに立っていた『ナイトシェイド』の姿は消えている。
『意識が残っているかどうか』は、見ただけでは分からない。



【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□ポ□儚□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□神□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚&『ナイトシェイド』
小:小出
バ:蓮華のバイク(蓮華はバイクから降りている)
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
※:建物の裏口

852『月夜のV』:2019/10/22(火) 20:42:41
>>851

【MAP】左端が入口側、右端が突き当たり

壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁壁★壁壁壁壁壁壁壁壁
小□□□ポ□□□□□□□□自□ポ□儚□□バ壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□自壁
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□壁
□□傘□□□□□□□□□□□□□□神□□□壁
壁壁壁壁※壁壁壁★壁※壁壁壁壁壁※壁★壁壁壁

神:神原&『ストロンガー・ザン・アイアム』
儚:紅儚
小:小出
バ:蓮華のバイク(蓮華はバイクから降りている)
自:放置自転車
ポ:ポリバケツ
傘:壊れた傘
★:非常階段
※:建物の裏口

853神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/23(水) 23:31:55
>>851

「……くそッ……生きてるだけでお釣りが来るな」

痛みに歯を食いしばる。
勝者と敗者の境界線、自分がどちらかは分からない。
立ち上がれるなら立ち上がろう。

「生きてるか……?」

『いまのは効いたぞ……』

854『月夜のV』:2019/10/24(木) 20:28:32
>>853

    ザリッ…………

全身を苛む苦痛に耐えて、神原は立ち上がる。
体を動かす度に、小さくない痛みが走る。
だが、それでも神原は立ち上がる事が出来た。
神原でなければ、今頃は立てなかったかもしれない。
これも日頃の鍛錬の賜物だ。

「…………う」

神原の呼び掛けに応じるかのように、か細い声が聞こえた。
それは儚の声だった。
少なくとも、『生きてはいる』ようだ。

            ザッ…………

火傷を負った両手を地面につき、儚が上半身を起こした。
スローモーションのように緩慢な動作で、立ち上がろうとする。
今にも倒れそうな様子だったが、どうにか彼女は立った。

    ズギュンッ――――

その傍らに、『吸血鬼のスタンド』が発現する。
本体の負傷を反映しているためか、その姿は何処か朧に見えた。
なお強い意志を宿す儚の両目が、神原を真っ直ぐに見つめる。

             ――――フッ
                           ドサッ

次の瞬間、『ナイトシェイド』のヴィジョンがブレるように消えた。
それに続いて、儚も崩れるように倒れ込む。
仰向けに横たわり、そのまま動かなくなった。
立ち上がり、スタンドを発現した事で、
残されていた力の全てを使い果たしたらしい。
死ぬような事はなさそうだが、もう立ち上がってはこないだろう。

「『勝った』――――みてェだな…………」

やがて、蓮華がポツリと呟いた。
神原は立っており、儚は倒れている。
それが『勝者と敗者の境界線』だ。
神原は『勝った』。
長く続いた『月夜の戦い』を制したのは、
『神原幸輔』と『ストロンガー・ザン・アイアム』だ。

    ヒュォォォォォ…………

儚の最終的な敗因は、『壁を背にしていた事』だった。
吹き飛ばされた際、壁に近かった彼女の体は、
神原よりも激しい勢いで叩き付けられた。
その要因が、儚の体力を大きく削り取ったのだ。
神原と『師匠』の奮闘あってこその勝利である事は間違いない。
それでも、もし儚が『壁際』にいなければ、
違った結果になっていたかもしれない。

855神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/24(木) 23:05:50
>>854

『けっ……ちゃく……』

「お疲れさま」

師匠と拳をぶつけ合った。
それから、蓮華にも拳を突き出す。

「君もね」

かなりしんどい状況だ。
面倒で手ごわくて、もしも次というのがあったなら自分が負けているかもしれない。

「どうしようかな……」

「えっと、紅さん?」

「意識、ありますか?」

856『月夜のV』:2019/10/25(金) 21:05:43
>>855

      ――――パァンッ

神原と『師匠』が互いの拳をぶつけ合う。
静かになった袋小路に、心地良い音が聞こえた。
耳と心に響く『勝利の音』だ。

「ああ、お疲れさん。
 アンタにばっかり傷を負わせちまって悪かったな。
 ゆっくり休んでくれ」

蓮華が片腕を伸ばし、神原の拳と自分の拳を突き合わせた。
それから、倒れている儚に視線を向ける。
神原の言葉に対して、彼女からの反応はなかった。

「完全に『気絶』してるみてェだな……。
 とりあえずは『病院』か。コイツもアンタも……」

    ピッ

蓮華は自分のスマホを取り出して、電話を掛け始めた。
救急車を呼んでいるようだ。
それが済むと、彼は神原に肩を貸した。

「ここじゃ救急車が入ってこれねェから、
 入口まで移動しなきゃならねえ。歩けそうか?」

「おい――――オメーは、そこに倒れてるヤツを連れて来い」

「えッ…………?は、はいッ!!」

           バッ
                   ダダッ

蓮華が小出に声を掛けると、彼は勢い良く立ち上がり、
儚の近くに走っていった。
両腕を使って儚の体を抱え上げ、こちらに戻ってくる。
小出は特に力持ちには見えないので、
彼女の体重が軽かったようだ。

「よし、行こうぜ」

「――……『長い夜』だったなァ」

          ザッ――――

神原に肩を貸しながら、蓮華が歩き出した。
その後ろから、儚を抱えた小出がついて来る。
角を曲がった先で、緑髪の『田丸』が倒れていた。
彼も気を失っているが、それほど大きな負傷はないようだ。
検査は必要になるだろうが、後から救急車に乗せれば問題ない。

857神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/25(金) 23:21:49
>>856

「疲れた……」

「けど、あぁー……」

小出に向かって声をかけた。
病院に行くのは問題ないがやり残したことがある。

「僕が彼女を運ぼう」

師匠もいれば大丈夫だろう。
自分も怪我をしているから、できるならでいい。

858『月夜のV』:2019/10/26(土) 19:11:16
>>857

「――――わッ、分かりましたッ!!」

神原に呼ばれた小出が、速やかに近寄ってくる。
スタンドは見えないとはいえ、あの激闘を目の当たりにした事で、
彼の中にも何かしらの変化が起こったらしい。
その彼に代わって、神原の両腕が儚を支える事になった。

    スッ――――

彼女の体は、儚い程に軽かった。
だから、重傷の身でも抱き上げる事が出来る。
先程まで熾烈な争いを繰り広げていた相手だが、今は静かだ。

「ハハッ!『革命のギフテッド』には余計なお節介だったな。
 思ったより元気そうじゃねェか」

「いや――今夜は『ソウルフル・ラストマン』だったか?
 なあ、『師匠』よォ」

神原から離れた蓮華が、軽く笑った。
そうはいっても、神原も中々の重傷である事は見れば分かる。
彼も本気で言っている訳ではなく、冗談のつもりなのだろう。

「オメーはソイツの担当だ。あー……ちょっと待ってくれるか?」

倒れた田丸を見下ろし、蓮華が小出に指示を出す。
それに従い、小出は田丸の体を起こした。
一方の蓮華は、袋小路の突き当たりに向かって歩いていく。

「『コイツ』も頑張ってくれたからよォ。
 ここに残したままにはしておけねェよな」

                        ポンッ

蓮華の手が、ヘッドライトの割れたバイクを軽く叩いた。
ここに来た時と同じように、彼は車体を両腕で押してくる。
神原が思っていた通り、やはり愛車のようだ。

         ザッ ザッ ザッ…………

儚の体を抱えて、神原は『師匠』と共に歩き続ける。
彼女は眠っているようにも見えた。
もうすぐ入口だ。
向こう側に『街の光』が見えてくる。
やがて、遠くの方からサイレンの音が聞こえてきた――――。

859神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/26(土) 20:48:30
>>858

「ははっ、レスラーが苦悶の表情を浮かべるのはね、リング上と家だけって決まってるんだ」

きついのはきつい。
こちらだって負傷しているから。
だけど彼女を倒す権利が自分にあるように、倒した人間を助ける権利も自分にはあると思うのだ。

『あぁ、俺たちはチームだ蓮華』

師匠はそう言った。
それぞれがそれぞれの仕事を持った。
サイレンに捕まる前に動こう。

860『月夜のV』:2019/10/27(日) 17:18:10
>>859

神原には儚を『倒す権利』があり、それを実際に行使した。
その結果として、神原は彼女に勝利したのだ。
だからこそ、敵であった儚を『助ける権利』も持っている。

「――立派なもんだな。全くアンタは大した男だぜ」

歩きながら、感心したように蓮華が言う。
神原達は路地を抜け、通りに出た。
まもなく救急車が到着し、神原達を乗せて病院に向かう。

    ………………
           ………………
                  ………………

そして――――『夜』が明ける。
医師の診察を受けた後、神原は病室のベッドで眠る事になった。
負傷の度合いから見て、このまま入院する事になりそうだ。
おそらく、しばらくは『欠場』扱いになる。
神原の活躍を心待ちにしているファンは、残念に思う事だろう。

        ――――コン コン コン

神原の耳に、病室の扉をノックする音が聞こえた。
今の時間は午後三時だ。
看護師は今さっき出ていったばかりだから、どうやら来客のようだ。

861神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/27(日) 19:40:36
>>860

「そんなもんじゃないよ」

神原が彼女を連れていくのは簡単な理由だ。
だが、それはまだ明らかにはしないでおこう。

………………

「欠場だねぇ……」

『まぁ今のシーズンはお前の試合が少なかったのが幸いだな』

「でも組まれてるのは組まれてたからね、申し訳ないな」

ベッドで横になってそんなふうに言う。
師匠がいると入院生活も楽でいい。
話し相手には困らないわけだし。

「ん?」

「どうぞ」

来客か。
蓮華だろうか。

862『月夜のV』:2019/10/27(日) 21:26:34
>>861

    ガラッ

「――――よう、俺だ。見舞いに来たぜ」

神原の予想通り、現れたのは蓮華だった。
片手には白い箱を下げている。
箱の表面には、『Priceless』の文字があった。

「『土産』を持ってきたから後で食ってくれよ。
 話し合う時に行ったろ?そこの店で買ってきたんだ。
 『テイクアウト』もやってるからな」

「中身は『チーズケーキ』だ。
 アンタが好きかどうかは知らないが、
 俺の知る限り、『チーズケーキが嫌いなヤツ』は見た事ないからな」

サイドテーブルの上に箱が載せられる。
ベッドの横には、小さな椅子が置いてあった。
そこに蓮華が腰を下ろす。

「実を言うと、見舞いに来たのは俺だけじゃなくてよ」

    ガラッ

蓮華の言葉の後に、もう一人の訪問者が入室した。
金髪の若者――『譲原』だ。
頭や腕に包帯を巻いており、火傷の跡も幾つか残っているが、
神原よりも負傷は少ない。

「大体の話は蓮華さんから聞きました。
 随分と御世話になってしまったようで」

「――――本当に、ありがとうございました」

ベッドに歩み寄ってきた譲原は、真っ直ぐに姿勢を正して、
大きく頭を下げた。
今回の一件について、彼にも色々と思う所はあるのだろう。
ただ、今の彼は神原に深く感謝すると同時に敬意を表している。

863神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/28(月) 01:04:44
>>862

「こんにちは。元気そうて何よりだよ」

『体が資本だからな』

ちょっと今回は出血大サービスが過ぎた。
ケガはなるべくさけたいところだし。

「甘いのは嫌いじゃない……おっと」

「君か、元気……とはいかないかもしれないけど、自分で歩けるのはいいことだね」

譲原に向かって手を挙げた。
敬意には応えないといけない。

「君も食べなよ……えっと、そういえばあの人はどうだった」

儚の具合も聞いておこう。

864『月夜のV』:2019/10/28(月) 18:40:08
>>863

蓮華も攻撃は受けていたものの、見る限りでは大きな傷はない。
これも、神原が前衛として体を張ったからこそだ。
勝利を収めた神原の怪我は、
言い方を変えれば『名誉の負傷』とも呼べる。

「ええ、俺の方は大した事ありませんよ。
 あの二人も一通りの検査を終えたら退院する予定です」

そう言いながら、譲原は笑ってみせた。
彼の方も、それなりの怪我は負っている。
自分以上に負傷している神原に対して、気を遣っているのだろう。

「ああ、『アイツ』の事か……。
 ずっと眠ってたらしいが、少し前に意識が戻ったみてェだな。
 さっき受け付けで聞いてきたんだ」

当然と言えば当然だが、儚も同じ病院に収容されたようだ。
蓮華の話では、今は目覚めているらしかった。
詳しい容態については、まだ分からない。

「で…………ついでに様子を見に行かないかと思ってよ。
 病室の場所も分かってるからな。動けそうか?」

長時間でなければ、歩き回る事は許可されていた。
ベッドの近くには松葉杖が用意されている。
自力で歩くのであれば、それを使った方が良さそうだ。

865神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/28(月) 19:37:58
>>864

「問題ないなら良かったよ。それが一番大事だからね」

何はともあれ元気が一番だ。
幼い時からそう教わってきている。
今でもそう思っている。

「あぁ、じゃあ行こうか」

細かい思考など必要ない。
彼女と会っておきたいという気持ちもあった。
対立していたし、戦っている最中は色々と思う所があるが、終わった今となってはそういう気持ちが霧散している。
戦って、自分が勝ち、彼女が負けた。
家族に手を出されたわけでもないし、それだけで手打ちにする意味がある。

「案内よろしくね」

松葉杖を使って、彼女の病室まで移動しよう。

866『月夜のV』:2019/10/28(月) 21:53:36
>>865

敵対し、互いに傷付け合った。
だが、それは過去の話だ。
少なくとも、『神原幸輔』という人間にとっては。

「ああ、行こうぜ」

「――俺も行きます。邪魔でなければ」

蓮華が短く答え、椅子から立ち上がる。
松葉杖を突いた神原が続き、譲原も同行する。
彼にも、儚に会っておきたいという思いがあるのだろう。

「この上の階だな」

先を歩く蓮華が、エレベーターのボタンを押す。
その時、神原達の後ろから近付く者がいた。
青髪と緑髪の二人連れ――『小出』と『田丸』だ。

「あッ!昨日はどうもッ!お疲れ様でしたッ!」

神原達を見つけた小出が挨拶してくる。
やたら丁寧な態度だ。
そこには初対面の無礼さはなかった。

「いやァ〜!凄かったなァ〜ッ!
 傷付きながらも立ち上がる勇ましい姿!
 あれこそ『男の中の男』って言うんッスかねェ〜。
 マジでカッコ良かったッスよォ〜!
 あ、握手してもらってもイイッスか?」

「えっとォ……俺は良く知らないんッスけど……。
 何か、すっかり世話になったらしいッスね。どもッス」

興奮した様子の小出とは対照的に、
戦いを目撃していない田丸は静かだった。
だが、彼も小出と同じく、神原に感謝しているようだ。
今回の神原の活躍は、
二人の不良に更生するきっかけを与えたのかもしれない。

867神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/29(火) 00:39:54
>>866

「握手、いいけど……」

元気だが多少騒がしくさえ感じる。
まぁいいかと手を差し出した。
更生することはいい事だ。
初めから道を違えなければもっといいけれど、そう上手くはいかないだろう。

「君たちは検査? それとも、僕たちに会いに?」

868『月夜のV』:2019/10/29(火) 17:29:03
>>867

「ああ、オレらは検査ッスよ。それが済んだら退院って事で。
 まぁ、多分大丈夫だろうって言われて――」

「どうもッ!オレ、尊敬しちゃいますよォ〜!」

    ガシッ

田丸が説明している途中で、小出が神原と握手を交わした。
これだけ元気があれば、体調も問題なさそうだ。
神原が思った通り、あまり騒がしいのは問題だろうが。

「ここは病院だぞ。もう少し静かにしろ。
 検査の前に摘み出されてもいいのか?」

後ろにいた譲原が、小出に言う。
その時、ちょうどエレベーターの扉が開いた。
最初に蓮華が乗り込み、譲原も続く。

「スンマセン。じゃ、オレらはコレで。
 なんつーか…………ありがとうございました」

「――――ありがとうございましたッ」

田丸が神原達に頭を下げた。
小出も同じように一礼する。
エレベーターに乗り込めば、儚の病室は『すぐそこ』だ。

869神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/29(火) 20:28:40
>>868

「別にいいよ」

「跳ねっかえりもほどほどにね」

手をあげて礼に応じる。

「あの人たちも無事そうで良かったね」

エレベーターに乗り込もう

870『月夜のV』:2019/10/29(火) 21:47:54
>>869

神原が乗り込んでから、蓮華が扉を閉めた。
今後は、あの二人も少しはマシになるかもしれない。
少なくとも、そのきっかけにはなっただろう。

「ま、無事に生きてりゃ十分だよな。
 マトモに生きられるんなら更に良しだ」

エレベーターが上昇し、まもなく停止した。
扉が開き、蓮華を先頭にして神原達は歩いていく。
やがて、一つの病室の前で蓮華が立ち止まった。

「『ここ』…………みてェだな」

    スゥッ――――

病室の扉をノックするために、蓮華が片手を持ち上げた。
その直後、不意に扉が開く。
扉を隔てた向こう側に、一人の人物が立っていた。

「あッ、すみません――」

病室にいたのは、線の細い少年だった。
年齢は、先程の二人と同じくらいらしい。
病院関係者には見えないから、おそらく見舞い客だ。

「えっと…………失礼します」

謝罪の言葉を告げ、少年は蓮華の横を通り抜けた。
何か用事があるのかもしれないし、
来訪者である『厳つい集団』を警戒しているとも思える。
特に呼び止めたりしなければ、そのまま歩き去るだろう。

871神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/30(水) 17:20:18
>>870

「ん?」

少年。
少年か。
なにか、引っかかるような。

「あぁ」

『なるほどな』

たしか、儚が言っていたような気がする。

「君、ここの人の弟さん?」

872『月夜のV』:2019/10/30(水) 19:00:36
>>871

儚の話によると、彼女には弟がいる筈だった。
バラのブローチを渡した時も、それを『弟から貰った』と発言している。
ある意味では、その弟が事件の発端であるとも言えるかもしれない。

「えっ――――」

「あっ、はい…………」

神原の言葉に対して、遠慮がちな肯定が返ってきた。
儚とは正反対に、気弱な性格らしい。
彼は、躊躇いながら神原を見つめた。

「あの……失礼ですけど、どちら様でしょうか?」

「その――姉が何か……?」

どこか奥歯に物が挟まったような言い方だった。
儚の弟が、どこまで知っているのかは分からない。
少なくとも、『師匠』の姿が見えていないのは間違いないようだ。

873神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/30(水) 22:56:02
>>872

「僕は……あぁ、お姉さんの知り合い? みたいな」

「こっちは僕の友達」

とりあえずそういうことにしておこう。
殴り合いをしましたとは口が裂けても言えない。

「お姉さんが君のこと、心配してたから」

「元気?」

874『月夜のV』:2019/10/31(木) 00:04:11
>>873

「――――あぁ、そうだったんですね」

安心した様子で、少年が表情を緩めた。
『実情』を伏せておいたのは正解だろう。
儚にしても、おそらく同じような事を告げる筈だ。

「その……姉は『思い込み』の激しい性格なんです」

「それでいて何というか……『正義感』みたいなものが強くて――」

「そういう性格のせいで、時々『トラブル』になる事もあったので……」

神原達との間に何か問題を起こしたのかと思ったのかもしれない。
弟からも、儚の『欠点』は認識されているようだ。
だが、迷惑がっている雰囲気はないため、仲は良いらしい。

「ええ、今は大丈夫です。薬は使ってますけれど」

儚の言葉によると、彼は心臓が弱いという話だった。
確かに体は細いものの、倒れそうになっているというような事はない。
一人で歩いている所を見ても、今は深刻な状態ではなさそうだ。

「あの――――すみません。そろそろ失礼します」

「お見舞いに来て下さって、どうもありがとうございます」

そう言って、少年は神原達に頭を下げた。
そのまま、彼は立ち去っていく。
しかし、途中で何かを思い出したように立ち止まった。

「今ちょうど、姉は『出歩いてる』みたいですけど、
 待っていれば戻ってくると思いますので…………」

875神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/31(木) 13:09:35
>>874

「あぁ、それは……感じないでもないかな」

やはり身内と言うべきか。
よく見ているのだろう。

「あぁ呼び止めてごめんね」

儚は出歩いているらしい。
元気な様子でよろしい事だ。

「……じゃあ待たせてもらおうかな」

876『月夜のV』:2019/10/31(木) 19:05:16
>>875

「ええ、僕は姉を探して来ますので…………」

少々の苦笑いを残して、少年は立ち去っていく。
彼を見送ってから、蓮華が病室の扉を開いた。
やはりというか、室内は無人だ。

「留守とはなァ。アンタといい丈夫なヤツが多いもんだ」

冗談めいた言葉を投げ掛けながら、蓮華が室内を見渡す。
ベッド脇のサイドテーブルには、大きめの角型封筒が置かれていた。
その上に、一枚の書類が載っている。
見た所、『香水』に関する内容のようだ。
『Nightshade』という商品名の隣に、
『夜の香り』というキャッチコピーが併記されている。

「――――『あれ』じゃあないでしょうか?」

窓の外を見ていた譲原が、神原と蓮華に声を掛けた。
松葉杖を突きながら、中庭を歩いてくる人影が見える。
一人でベンチに腰を下ろしたのは、確かに儚だった。

「どうしましょう?こちらから出向いた方が早い気はしますが」

877神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/31(木) 21:09:15
>>876

「頑丈じゃないとやれないこともあるからね」

儚のタフネスは予想外だが。
まぁ、決定打の攻撃も負傷してる状態からであったし仕方ないか。

「ん?」

譲原の言葉に反応して窓の外を見る。
いた。

「入れ違いか。ままならないな」

直接出向こう。

878『月夜のV』:2019/10/31(木) 21:47:26
>>877

儚も神原と同じ程度か、それ以上の傷を負っている筈だ。
彼女は見た目よりもタフなのかもしれない。
負傷した部位が、神原とは違うせいもあるだろう。

「――――仕方ねェな。ま、よくある事さ」

    ザッ ザッ ザッ

一階に下りた神原達は、中庭に続く通路を歩く。
空は、爽やかに晴れ渡っていた。
日光浴をするには、ちょうど良い日和だ。

             ザッ

向こうの方に、ベンチに座っている儚の後姿が見える。
特に何をするでもなく、静かに佇んでいるようだ。
他の患者も何人かいるが、数は多くない。

                 チラ…………

三人の足音に反応してか、儚が軽く振り向いた。
彼女の視線が、神原に向けられる。
その表情からは、敵意や悪感情は感じられない。

879神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/10/31(木) 23:09:07
>>878

「やぁ、紅さん」

まずは手を挙げて挨拶だ。
またあの弟に出会っても不自然じゃないように。

「隣、いいかな?」

880『月夜のV』:2019/11/01(金) 18:17:04
>>879

穏やかな挨拶と共に、ベンチに近付いて行く。
熾烈な殴り合いとは無縁の光景だ。
事情を知らない他人から見れば、
ごく普通の知人か何かに見えるだろう。

「ええ、こんにちは」

儚は眼鏡を掛けていた。
昨日の昼に見かけた時と同じ『フォックス型』の眼鏡だ。
あの時と違うのは、服装と体の状態だった。

「――――どうぞ」

入院着を着た儚の体は、あちこちが包帯で覆われている。
広範囲に負った火傷のためだろう。
もちろん、胴体に受けたラッシュは骨にも響いている筈だ。

「少し『考え事』をしていた所です」

「あなたの事も考えていました」

そう言って、儚は空を見上げた。
頭上に輝く太陽が、全てを明るく照らしている。
『吸血鬼』が存在できない『光』に溢れた世界だ。

「そういえば――お名前を聞いていませんでしたね」

881神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/11/01(金) 22:10:53
>>880

「へぇ、それは光栄……ほんとに?」

冗談っぽく笑ってみせる。
別に疑ってる訳でもないけれど。

「僕の名前は神原幸輔、神の原に幸せと車がつく方の輔」

一文字ずつ片付けて自己紹介。
師匠が間髪を入れずに喋りだしたので少し困った顔。

『俺はストロンガー・ザン・アイアム。幸輔のトレーナーだ』

「で、彼らは……」

二人の自己紹介は二人に任せよう。

882『月夜のV』:2019/11/01(金) 22:48:43
>>881

「ええ、本当ですよ」

「どうも、神原さん――それから『トレーナー』さんも」

儚が神原に笑い返す。
落ち着いた笑みだった。
何かに駆り立てられているような雰囲気は見えない。

「花菱蓮華だ。蓮華って呼んでくれ」

「譲原です。譲原譲次」

二人も神原と同じように、簡単な自己紹介を済ませた。
そして、四人がベンチに腰を下ろす。
まず口を開いたのは儚だった。

「あなたも私も、しばらくは『缶詰』になりそうですね」

「退院したら――また『続き』をしますか?」

そのような事を言って、儚が神原の方を見る。
至って何気ない口調だった。
本気かどうかは分からない。

883神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/11/01(金) 23:57:16
>>882

「缶詰は間違いないね」

『トレーニングも中止だな』

「そんなこと言って前はトレーニングさせたじゃん。退院する前よりも体大きくなったし」

かつての思い出に愚痴をこぼす。
怪我をしているときは療養に専念すべきだというのは共通の認識のはずだが。

「続き……まぁ、リマッチは断らないから紅さん次第でいいけど……」

「会うならそういう以外の用事がいいなぁ」

正直、『ナイト・シェイド』の相手は骨が折れる。
能力の性質が分かった今でもそう思う。

884『月夜のV』:2019/11/02(土) 20:06:20
>>883

「いえ、そのつもりはありません」

「あなたの気持ちを確かめてみたかっただけですよ」

儚は頭を横に振って、薄く微笑んだ。
彼女にも、積極的に戦う気はないようだ。
そもそも、目的のない争いはしないタイプなのだろう。

「さっき『考え事』をしていたと言いましたね」

「『やり方』が間違っていた事は認めます」

「実際に『失敗』した訳ですから――それが証拠です」

一つ一つ噛み締めるように儚は言う。
彼女なりに『正しい事』をしようという意図はあったらしい。
だが、弟の語った通り『舵取り』は上手くなかったようだ。

「『一つ』いいでしょうか?」

「俺から、その……『紅さん』に言っておきたい事が」

やや躊躇いながら、譲原が会話に入ってきた。
何か言いたい事があるようだ。
彼がついて来たのも、そのためだったのかもしれない。

885神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/11/02(土) 22:41:40
>>884

「よかった……」

「僕も君みたいな人を二度も殴りたくない」

冗談めかしているけれど本心だ。

「うん……そう言ってもらえてよかった」

「そういう風に思ってくれるだけであの戦いに意味がある」

改心、とは少し違う。
改めたのは認識だ。
それでいい。
彼女も根っからの悪人ではない。

「ん?」

譲原の話を聞く姿勢になる。
彼は彼で思うところがあるのは分かる。

886『月夜のV』:2019/11/02(土) 23:48:11
>>885

『紅儚』という人間が、根本的に変わった訳ではない。
しかし、神原の戦いには十分な意味があった筈だ。
事実、彼女は自らの認識を改める事が出来たのだから。

「俺は、あなたの弟さんを置き去りにした連中が誰かは分かりません」

「でも、もしかすると俺の知っている奴らだったかもしれない」

「だから、そいつらの代わりに謝らせて下さい」

    バッ

「――――申し訳ありませんでした」

儚に向けて謝罪の言葉を告げ、譲原が深く頭を下げた。
客観的に見て、彼は被害者であって加害者ではない。
しかし、そうしなければ気が済まなかったのだろう。

「いえ…………」

儚は、どう答えるべきか迷ったらしい。
譲原を見つめて、しばらく考えている様子だった。
やがて、おもむろに彼女は口を開く。

「私は――あなたを傷付けてしまった」

「だから、その事を謝らせて頂きます」

    スッ

「…………申し訳ありませんでした」

譲原に対して、儚が丁寧な礼を返した。
それぞれが謝罪を終え、互いに顔を上げる。
そして、二人の表情から徐々に曇りが消えていった。

887神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/11/02(土) 23:59:23
>>886

『良かったな』

「だね」

そう言ってお互いに頷いた。
儚にとっての懸念事項はこれでもうないだろう。
であれば、再びああいうことが起きることも無い。
もとより、彼女はもうそういうことをすることは無いのだけれど。

「……うん、本当によかった」

888『月夜のV』:2019/11/04(月) 04:04:21
>>887

「ああ、これで『一件落着』ってトコだな」

神原達と同じように蓮華が頷いた。
これで、この事件は、ほぼ完全に片付いたと思っていい。
後になってから新たな問題が持ち上がる可能性は限りなく低い。
『月夜の吸血鬼』が街を跳梁する事は、おそらくもうないだろう。
神原と『ストロンガー・ザン・アイアム』の力なくしては、
この結末は有り得なかった筈だ。

                  ザッ ザッ ザッ…………

「――――『衛』?」

足音を聞いて振り返った儚が、小さく呟いた。
後ろの方から、彼女の弟が歩いてくるのが見える。
姉である儚を探していて、ここまで来たようだ。

「さてと…………俺らはボチボチ引き上げるとするか。行くぜ、譲次」

「二人とも、しっかり治療に専念してくれよ。
 故障してる時に無理に体を動かして、
 それで怪我が悪化でもしちゃあ元も子もないからなァ」

蓮華が立ち上がり、軽く笑いながら神原達に言う。
それに続いて譲原も立った。
彼らの用事は、これで済んだようだ。

「――――じゃあ、いつかまたな。お疲れさん」

「お疲れ様でした。どうか、お大事に」

    ザッ

そう言い残して、二人は立ち去っていく。
後に残されるのは、神原と『師匠』と儚だけだ。
何かやり残した事があるなら、そのための時間は十分にある。
この場に留まって日に当たっているのもいいかもしれない。
神原と儚は同じ病院に入院しているのだから、何の問題もない。

889神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/11/04(月) 09:57:30
>>888

「早く現場復帰しないとね」

『待ってる人たちがいるからな!』

リングの上が自分の職場であり、生きる場所だ。
だから、あくまで今回のことは寄り道である。

「お疲れ様」

二人を見送る。
まだここに座っていよう。
今日はいい日だ。

「……今度、弟さんとウチの試合見に来てくださいよ。やられても立ち上がる強さを見せてあげますよ」

「それと……弟さんには知り合いって言っちゃったから、ちゃんと僕の知り合いになってくださいね」

890『月夜のV』:2019/11/04(月) 20:43:31
>>889

「ええ、是非そうします」

「私も、あなたの『本来の姿』を見てみたいと思っていましたから」

神原の誘いに対し、儚が穏やかに返す。
今や、熾烈な争いは過去のものとなった。
この場を包んでいるのは、どこまでも平穏な空気だけだ。

「その強さを『今後の参考』にさせて頂きますよ」

「あなたとの『やり取り』は随分と刺激的でしたからね」

「『知り合い』と呼ぶには十分すぎる程の一夜でしょう?」

口元に笑みを浮かべながら、儚が告げる。
もしかすると、神原との戦いで、
彼女の中にあった『闘争心』に火が付いてしまったのかもしれない。
だからといって、誰かに暴力を振るったりする事はないだろうが。

    ザッ

「――――姉さん、ここにいたんだ」

「あ…………さっきの方ですね」

二人の姿を見つけた儚の弟――『紅衛』が、
神原の方を見て言った。
彼には、神原は儚の知り合いだと説明してある。
それを察してか、儚が神原に視線を送った。

「こちらは『神原幸輔』さん。私の友人の一人よ」

「彼は『プロレスラー』でね。とても『強い』方なの」

そのようにして、儚が衛に神原を紹介する。
『強い』という部分には、若干の『含み』が感じられた。
『実際に戦ったから』などとは言えなかったに違いない。

891神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/11/04(月) 21:01:00
>>890

「刺激的ねぇ」

「間違いないや」

師匠も頷いて同意した。
あれが刺激的でないなら不感症だ。

「どうも……さっきも会ったけど」

衛に対してそう言って会釈をした。

892『月夜のV』:2019/11/04(月) 23:37:38
>>891

    スッ

衛も神原に会釈を返す。
それから彼は、ベンチの空いている所に座った。
衛の方を向いた儚が、彼に語り掛ける。

「神原さんが退院したら、一緒に見に行きましょう。彼の『試合』を」

「きっと良い経験になると思うわ」

「多分――――『力』を分けて貰えると思うから」

衛は病気を患っている。
今は小康状態のようだが、まだ完治はしていないらしい。
だからこそ、リングで戦う神原の雄姿が、
『良い影響』を与えてくれると考えているのだろう。

「そう……なんだ……」

「分かったよ。ちょっと怖い気もするけど……」

「でも……僕も見てみたいから」

儚の言葉に、衛が笑顔で頷いた。
それを見た儚も笑って見せる。
これも、神原がいたから実現した光景だ。

「神原さん、その時はよろしくお願いします」

「――っていうのも変ですけれど……」

「あはは……」

照れくさそうに、衛が神原に言った。
次にリングに立つ時には、紅姉弟も観戦に訪れる筈だ。
やがて、儚が口を開いた。

「その前に退院しなくちゃ。私たち『二人とも』ね」

「でないと、『魅せる事』も『魅せられる事』も出来ないんだから」

儚が神原に向き直った。
彼女の目は、神原と『師匠』の両方を見つめている。
その瞳の奥には、『奇妙な信頼』のようなものが見て取れた。

「――――そうじゃないですか?」

893神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/11/05(火) 01:12:53
>>892

「ぜひどうぞ」

「僕がベルトを巻くところを見せてあげよう」

自信たっぷりにそう言った。
嘘を言うつもりは無い。
すなわち、もっと強くなってリングに上がる。

「よろしくでいいよ」

「声をかけてくれればチケットもこっちで用意しますから」

それくらいは買って出よう。
せっかくのお客さんだ。

「えぇ、もちろん退院が先ですけど」

「出ればばっちり魅せますよ」

『なぜなら俺たちはプロレスラーだからだ』

強い意志を持って神原と師匠は言葉を返した。

894『月夜のV』:2019/11/05(火) 20:27:10
>>893

二人の前で、自らの『決意』を表明する。
その言葉は『意思の力』に裏打ちされており、一点の迷いもない。
それが『神原幸輔』という人間の在り方であり、
彼を支える『ストロンガー・ザン・アイアム』の存在意義なのだ。

「ええ、期待していますよ」

「その…………楽しみにしてますから」

笑顔の儚と衛が、それぞれのエールを神原に贈る。
二人とも『神原の活躍』を信じている。
新しい『ファン』が、また二人増えたようだ――――。

    ガララッ

病室に戻り、蓮華が置いていったケーキの箱を開けると、
一緒に『封筒』が入っていた。
どうやら、今回の協力に対する『謝礼』らしい。
チーズケーキの味も、なかなかの『美味』だ。

――――――――――――――――――――――――――

神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』⇒『全治二ヶ月』

『肋骨骨折』
『脛骨にヒビ』
『両足にⅡ度の火傷』
『顔・胴体・両手にⅠ度の火傷』
『全身打撲』

⇒謝礼として『三十万』獲得。



                       『月夜のV』⇒『終幕』

895『月夜のV』:2019/11/05(火) 20:59:06

★氏名―紅儚
★スタンド―『ナイトシェイド』
★能力―爪および牙で傷付けた者を『同族化』させる吸血鬼
★性別―女 ★年齢―24歳 ★身長―171cm
★血液型―B型 ★星座―蠍座
★髪の色―黒 ★瞳の色―黒
★職業―調香師 ★趣味―カクテルの自作
★好きな映画―マディソン群の橋 ★好きな色―深紅
★大事なもの―家族
★性格―基本的には落ち着いているが、
      『正義感の強さ』と『思い込みの激しさ』を併せ持ち、
      ふとした事で暴走しやすい。
★外見―つり目が目立つキツめの顔立ちで、髪型はショートカット。
      フォックス型の眼鏡とワインレッドのパンツスーツを着用し、
      『襲撃者』として活動する際にはコンタクトレンズに変え、
      露出の多いパンク風の出で立ちに着替えていた。
      着替える理由は、変装目的と自身を鼓舞するため。
★備考―主に香水を扱う化粧品会社『Belladonna』で働いている。
      自身が開発した『Nightshade』という名前の香水は、
      『夜の仕事をする女性達』に愛用されているらしい。
      『神原幸輔』との戦闘後、『襲撃者』としての活動を止めた。

896『月夜のV』:2019/11/05(火) 21:01:14

【月夜のヴァンパイア】『紅儚』のスタンド。

黒いフード付きの外套を身に纏い、
鋭い『爪』と『牙』を備えた『女吸血鬼』のヴィジョン。
『月明かり以上の光』を浴びるとダメージを受ける特性を持つ。
『爪』か『牙』で傷付けた生物を『同族化』させることが能力。

『同族化』した者は体質が変化し、
『ナイトシェイド』と同じ弱点を植え付けられる。
すなわち、『月明かり以上の光』を浴びれば、
ダメージを受ける身体となってしまう。
ダメージの性質は『火傷』に近く、
光が当たっている部分が焼かれているような痛みを覚える。

『ナイトシェイド』Nightshade
破壊力:B スピード:B 射程距離:E(2m)
持続力:B 精密動作性:C 成長性:D

897『黄昏のS』:2019/11/18(月) 22:19:12

『黄昏』に『知恵の獣』と『旅人』が『謎』を巡って『言葉』を交わす

898『黄昏のS』:2019/11/18(月) 22:24:36

ある日の夕刻、『小林丈』と『日下部虹子』は、
同じ喫茶店の別々の席に座っていた。
店の名は『Priceless』――――『金では買えない』という意味だ。
ウッド調で統一された店内には、落ち着いた雰囲気が漂っている。

《作る者は欲しいと思わず、売る者も欲しがらず、
 使う者は使っている事に気付かない》

不意に、何処かから何者かの『声』が聞こえてきた。
普通に耳にするものではなく、『スタンドを通して聞こえる声』だ。
現在、小林と日下部以外の人間は『二人』いる。
一人は主人である初老の西洋人。
彼は、カウンターの向こうでサイフォンと向き合っている。
もう一人は、奥まった席に一人で座っている子供らしき客。
背中を向けているため、顔は分からない。

《――――『それ』は何か?》

声は尚も続く。
どうやら何かの『謎掛け』のようだ。
敵意や悪意といったものは感じられない。

899小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/18(月) 22:52:54


《作る者は欲しいと思わず、売る者も欲しがらず、
 使う者は使っている事に気付かない》

 「――メメント・モリ(死を忘れるなかれ)
その答えは『棺』ですね」

 「……? どちらにおられるのでしょうか」

脅かそうと言う気配は無い。穏やかな店内に入り混じる
スフィンクスを連想とした堂々とした言葉遣い。

スタンドを使ってまで正体を明らかにしようとする気は無い。
 詮索は時に失礼に値すると言う事も学んでいる。

少し天井に顔を向けつつ声の主へ答えは告げた。



○プロフィール
清月学園高校三年生。在る過去により若干人間味が薄い
老若男女問わず丁寧な物腰を心掛けている

☆外見
清月の制服をバンカラマントのように着こなす。平日でも着用してる
顔は、特別美醜に寄らない。ただ、よく周囲に風変わりと言われる。
装飾品には無頓着だか、親友の勧めでネックレスや付けピアスも時折する。

△所持品
財布・スマホ・ハンカチ
ショルダーバック↓詳細
ttps://item.rakuten.co.jp/auc-touch-the-sky/bbm003/
バック中身下
メモ帳・筆記用具
鉛筆削りポンナイフ・水筒(マスカットジュース)


★スタンド能力概要
玩具の金魚のような小さな群体型のスタンド。
液中に発現し、周囲の液体を集め『水槽』を形作る。


『リヴィング・イン・モーメント』
破壊力:D スピード:C 射程距離:B(30m)
持続力:C 精密動作性:C 成長性:D

☆能力詳細
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453050315/114

900小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/18(月) 22:56:05
>>899(追記)

既に注文がなされているのなら、おすすめの軽食と
マスカットがテーブルに置かれてるか、もう少し後で届く描写も
付け加えられるのなら付け加えて頂きたい。

901日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/18(月) 23:33:14
>>898(GM)

金で買えないものなんてあるんだろうか。
金で買えないなら、どうすればいいのだろうか。
金で買えないものは、金以外でも手に入らないのではないか。

こんな名前の店に来たのは、ただ、座りたかったからだ。

「『棺桶』だなんて、縁起悪〜い」

          パラ…

「縁起なんてどうでもいいけどねえ」

メニューに視線を落としていたが、顔を上げる。
薄い笑みがそこにあった。

「ね、ね、ここって『クイズ喫茶』なの?」
「注文もクイズ当てないとぉ、出来なかったりするのかな〜」

「私ね、『キャラメルマキアート』が飲みたいんだ」

●持ち物
財布とスマートフォンとカバン。
カバンの中はハンカチやティッシュ、化粧ポーチ、文庫本。

●能力
肉体内部に発現する何匹もの『ベニクラゲ』のヴィジョン。
本体の細胞と同化しており、負傷を『若返り』によって治療する。

『アット・セブンティーン』
破壊力:C スピード:C  射程距離:E
持続力:E 精密動作性:B〜C 成長性:B
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453050315/113

●外見
垂れ目気味で童顔、小柄。バニラホワイトの髪を三つ編みにしている。
服装も白が基調となっており、雰囲気はどことなく『カイコガ』を彷彿とさせる。

●簡易プロフ
17歳を自称し、実際それくらいの年齢に見える、欲深い少女。
目に見え、数値化できる『価値』にこそ人生の真理を見出しているようだ。

902『黄昏のS』:2019/11/19(火) 00:12:45
>>899(小林)

遠隔操作可能な『リヴィング・イン・モーメント』を使えば、
相手の正体を知る事は容易い。
しかし、小林はそれを選ばなかった。
今の状況を考えれば、それは適切な選択だっただろう。

《その通り。答えは『棺』だ》

納得したような響きと共に、再び『声』が返ってきた。
小林の答えは『正解』だ。
なお、テーブルの上には、『注文した品』が既に置かれている。
(品物は自由。喫茶店にあるものなら大抵あると考えて良い)

《君は『私の声』が聞こえるようだね》

《――――それは素晴らしい》

《私は『ここ』にいる。
 手間を掛けて申し訳ないが、声のする方に目を向けてくれたまえ》

謎めいた『声』は、そのように語り掛けてくる。
そちらに視線を向ければ、『声の主』が分かるだろう。
また、小林と同じように『声』に反応した『少女』がいたようだ。

>>901(日下部)

《それは少し違う。
 店の趣向ではなく、あくまで私個人の嗜好だと思ってもらいたい》

《つまり、答えなくとも『品物』は来るという事だ》

「――――『キャラメルマキアート』ですね。少々お待ち下さい」

初老の主人が、笑顔で日下部に応じる。
『声』の言った通り、『注文』は普通に通ったようだ。

《今のは、『私の声』が聞こえるかどうかを確かめたかったのだよ》

《同時に『二人』も見つかるとは素晴らしい。
 私は、『ここ』だ。
 億劫でなければ、こちらに視線を向けてもらいたい》

穏やかな口調で『声』は続ける。
声の方向に目を向ければ、『声の主』が分かりそうだ。

「『キャラメルマキアート』でございます。どうぞ、ごゆっくり……」

そうこうしている間に、主人が『キャラメルマキアート』を運んできた。
テーブルの上に、それが置かれる。
そして、日下部と同じく『声』が聞こえた『少年』がいたらしい。

903小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/19(火) 00:21:55
>>902

「えぇ 聞こえます。私は小林
小林 丈(たける)です」

 名乗りつつ、テーブルに置いてある水差しでコップの水を
注ぎ出し、唇を僅かに湿らせ『声』のほうに体を僅かに向ける。

今の名乗りは『声』の主と『少女』どちらにも向けた。

(――『素晴らしい』の意味合い……これの意図は)

単語に対し頭の中で吟味しつつ、その視線は導かれるようにして
正体の主のほうへと向けられた。

904日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/19(火) 00:26:09
>>902

「わ〜よかった、美味しそお」
「キャラメルの匂いがする」

     スゥ

「ね、写メ撮るね。店員さぁん、ダメなら言って〜」

スマホを取り出して、飲み物の写真を撮る。
写真はいい。主観を『形』に残せるから。

そして……

「んん」

《こう? これで良さそうかな》
《首動かすくらいなんてことないよお。どこの誰?》

首は周囲を見回して声の主を探す。
もう一人店にいる『少年』には、今はまだ特に触れない。

905『黄昏のS』:2019/11/19(火) 00:57:46
>>903
>>904
(ALL)

日下部は写真を撮った。
まずまず『フォトジェニック』と呼んでいいだろう。
特に注意される事もなかった。
そして――――。

奇しくも、小林と日下部は同時に視線を向けた。
そこには『猫』がいた。
ただし、生きている猫ではない。
正確には、石造りの『猫の彫刻』だ。

《まず名乗っておこう。私は『ロダン』という》

    スッ

『声』と共に、『彫刻』の後ろから『本物の猫』が姿を現した。
よく見かける猫とは異なり、毛も髭もない。
『スフィンクス』と呼ばれる品種の猫だ。

           ズッ

《――――『スフィンクス』だ》

『猫』の傍らには『スタンド』が佇んでいた。
獅子の体に人の頭部を持ち、背中には翼が生えている。
表面には、石造のような質感があった。
そのヴィジョンは、神話に現れる『スフィンクス』と、
実在する『スフィンクス』のハイブリッドを思わせる。

《力を持たない人間には、『私の言葉』は届かない。
 ゆえに、私とやり取りが出来るのは『力を持つ人間』に限られる》

《すなわち、君達のような人間の事だ。
 そして、私は『そういう人間』を求めている》

《単刀直入に話そう。
 私の『遊び』に付き合ってもらいたい》

《といっても、何も『ボール遊び』をして欲しい訳ではない。
 少しばかり『頭』を使って頂く事になるだろう》

《もちろん『タダで』とは言わない。
 相応の『ギャランティ』も用意してある。
 無論、『人間の世界で通用するもの』だ》

『ロダン』と名乗った『猫』は、二人に語り掛ける。
『遊びに付き合う』――端的に言うと、それが目的のようだ。
どのように用意するのか不明だが、『報酬』も出るという話だ。

906日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/19(火) 01:40:06
>>904(小林)
>>905(GM)

「キャラメルの味でおいしい〜。マキアートって何だろうね?」

キャラメルマキアートに知性に欠ける感想を述べる。
今はそれ以上に集中すべき対象があった。

彫刻には流石に表情が崩すが、本物の猫には頰を緩める。
別に、猫が特別大好きというわけではないが……

《猫も……スタンド使いになることあるんだ?》

《それに、喋れるっていうのもびっくり〜》
《『スタンド』って、生き物の共通言語なのかもね》
《『ロダン』さん、よろしくぅ》

《あ! あのね、私のことは『クサカベ』でいいよお》
《どうしてもって言うなら『ニジコ』でもいいけど》

スマートフォンを机に置いた。
これを使うようなゲームではないだろう。

《頭脳遊びか。んふふ……お金をチラつかせられちゃうと弱いよお、私》

《ロダンさんそれにね、私ね、パズルの本とかよく読んでたし》
《そういうの得意かもね。才色兼備って呼ばれてみたいかも。かわいさは自信あるし》

            クルッ

そこまで言うと首をもう少し動かし、小林を見る。

《んふふ…………タケルさんはそういうの得意? 》

特に彼と知り合いとかではないが、そこにいるのだから話しかけるのだ。

907小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/19(火) 09:33:27
(すみません寝落ちしてました)
>>905(GM)

一瞬彫刻が喋っているのか? と思えたが、その背後から姿を現す
ほぼ無毛に近い産毛で覆われた猫を見て、これが声の主かと得心する。

(考える人ならぬ 考える猫……か)

「一旦失礼。こうでもしないと周りに独り言と思われるでしょうから」

攻撃の意思が無い事を宣言しつつ、水差しより
『リヴィング・イン・モーメント』を発現。これで、この場の会話に参加。

一番大き目のサイズで発現しつつ、掌に収めた金魚はロダンを見る。

『まぁ、私は物書きを生業としてる為。このやりとりだけでも
千金に値しますから、そこまで報酬に関心は有りませんが……
”遊び” えぇ楽しそうです。貴方が望むままに付き合いましょう』


>>906(日下部PC)

>タケルさんはそういうの得意?

『謎解きは、文学に携わる以上幾つか手習いしてきましたが……
まぁ多少は経験あるので、自信を以て望みますよ。日下部さん』

独特の雰囲気の女性だ。人と関わり合えば、その人物の内面が
深く潜った水面の底にある色合いが理解するように深まって知れる。

此処にいる『ロダン』と『日下部』と共に謎に接すれば
私と言う色を失くした存在にも、幾らかは昔過ぎ去った色を
思い出す切っ掛けとなりえるだろうか……。

908『黄昏のS』:2019/11/19(火) 17:58:09
>>906(日下部)

『キャラメルマキアート』の味は上々だった。
値段を考えると、安いとも思える。
案外、『隠れた名店』なのかもしれない。

《そう、『共通言語』だ。
 これがあるからこそ、私は『遊び相手』を探せるという訳だよ》

ロダンは流暢に喋っている。
その話しぶりから『オス』である事は察せられる。
年齢は分からないが、もし人間に換算したなら、
日下部や小林よりは、それなりに年上になりそうな雰囲気だ。

《それは素晴らしい。
 『相手』が見つかっただけでも歓迎すべき事だが、
 レベルの高い者なら、なお喜ばしい》

才色兼備と呼ばれるかどうかは、日下部次第だ。
少なくとも、『永遠の若さ』に近いものは既に持っている。
『若さ』を『美しさ』と捉えるなら、
片方は備えている事になるかもしれない。

日下部とは異なり、小林は報酬に大きな関心はないようだ。
『数字』を重視する日下部とは対照的と言える。

>>907(小林)

水差しの水から『リヴィング・イン・モーメント』を発現した。
小林の宣言もあって、ロダンは特に反応はしなかった。
そういえば、日下部と名乗った少女は、
特にスタンドを発現している様子がないにも関わらず、
『スタンドによる会話』に参加出来ている。
何かしら『特殊』なタイプなのだろうか?

《私は、『知恵と謎』に『至上の価値』を見出している。
 それが私にとっての『Priceless』――『最も価値あるもの』だ》

《その点、君の意見には大いに賛同出来る》

過去に失われ、欠落したもの。
それは小林の心の中にある空白だ。
こうした『非日常』の積み重ねが、
『色』を取り戻すための一助になるかもしれない。

(ALL)

《――――素晴らしい》

二人の承諾を聞いて、ロダンは満足気に唸った。

《では、『タケル』と『クサカベ』――――
 君達にゲームの『ルール』を説明しよう。
 種目は『言葉のパズル』だ》

《これから私が『五つの言葉』を提示する。
 それらの言葉には『一つの共通した法則』がある。
 それを言い当てる事が出来れば『正解』だ》

《『答える権利』は『一人につき一度』。
 すなわち、『君達二人合わせて二回』という事だ》

《『答え』は、二人で『相談』して決めてもらいたい。
 もし必要であれば、私から『ヒント』を出す》

《『ヒント』は『三回まで』だ。
 ただし、一度『ヒント』を使う度に『点数』が下がる》

《『ノーヒント』で当てた場合は『4点』を出そう。
 『ヒント』を一度使ったら『3点』、二度使ったら『2点』、
 三度使ったら『1点』だ。
 不正解だった場合は『0点』になる》

《君達が得られる『報酬』は、最終的に獲得した『点数』による。
 もちろん、数字が大きい程に『額』も増える》

《『ルール』は以上だ。質問があれば聞こう》

そこまで話してから、ロダンが言葉を区切った。
『二人で協力する』――このゲームは、そういった内容のようだ。

909 小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/19(火) 19:51:30
>>908(GM)

世の中には色々なスタンドが有る。ルールを敷いて限定の空間で
身の振り方を省みず思い思いに振舞えるスタンドであったり。
鋼のような剣、食物で成長するスタンド。人型しかり、そう言えば
夢の中でスタンド使いの動物が居て、その腹部にスタンドが付いてた事も
確かあった筈だ。彼女のスタンドも、そう言った部分的な服の裏等に
発現するスタンドなのかも知れないと考える。

(・・・夢、と言えば。ある時、私はとても長くてとても短い
夢を過ごした時があった気がするな)

自身の事は一旦置いておこう。今は『ロダン』とのゲーム

『では一つ ご質問を。いえ、このルールに関しては問題ありません
私が聞きたいのは”その先”』

『口ぶりから、言葉のパズルは第二の設問もあると踏みましたが。
その場合は獲得した得点自体を失う、若しくはソレをベットにするのは
可能なのでしょうか? 
 一問だけでしたら、私の言葉は忘れてください』


--遊び相手 彼はそう告げた。遊びは長く保ちたいと言うのが
どんな生物でも大い傾向だ。
 このルール自体は問題ない。ただ続く先に対しては隣に控える
女性とも争いかねない懸念もある。少々保険とは言わぬが確認も必要だろう。

910日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/20(水) 11:00:18
>>908(GM)

「しかも、コスパもいい〜。 ……………」

《んん〜、それなら質問とかはないかな》
《『点数』の基準も、分かりやすくて良いね》

      ニコ

《いつでも始めていいよ。『時は金なり』……んふふ》

ロダン"さん"と呼ぶのは、その声色の成熟ゆえにだ。
目を細めてその猫を見て、頷く。

>>907 >>909(小林)

《わあ〜っ頼もしそお〜。協力して頑張ろうねえ》

文学青年に笑みを向け、彼の活躍にも期待を寄せる。
日下部も読書を嗜んでいたが、知識には偏りがある。
鋭い質問を飛ばす彼の『知性』は大きな力になるだろう。

911『黄昏のS』:2019/11/20(水) 17:46:16
>>909(小林)

ふと、いつか見た『夢』の出来事が脳裏をよぎる。
『死』を間近に感じる程にリアルな体験だった。
しかし、この場は『生命の危険』などとは何の関係もない。

《君は良い所に目を付けた。
 『一回だけ』で終わってしまってはつまらない。
 だから、『問題』は『五つ』ほど用意させてもらおう》

《このゲームは『加点方式』だ。
 正解すれば『点数』は増え、不正解なら『点数』は変わらない。
 そのどちらかだけだ》

《つまり、『点数』が減る事はない。
 そして、一問目の『点数』は二問目以降に持ち越される》

《『最終的な評価』は、
 五問目終了時点での『合計点数』によって決まるという事だ》

《他に質問は?》

>>910(日下部)

《ふむ――――素晴らしい答えだ》

小林が日下部と異なるベクトルの人間である事は確かだ。
物事の考え方が多い程に、思考の可能性は広がる。
そういう意味では、日下部の存在も小林にとって助けになるだろう。

(ALL)

《あの…………》

二人と一匹のやり取りに、不意に『別の声』が入ってきた。
その声の出所は、『もう一人の客』だった。
少年とも少女ともつかない中性的な顔立ちの、小柄な人物。
フォーマルなブレザーとショートパンツという服装だ。
その姿に、小林は見覚えがあった。

《お邪魔かと思ったので黙っていました。すみません》

《『三枝千草』と言います》

    ペコリ

《小林先輩、こんにちは》

    ペコリ

千草は、小林と日下部の両方に頭を下げた。
傍らには、『人型のスタンド』が佇んでいる。
目深にフードを被り、肩にシャベルを担いだ『墓堀人』のヴィジョンだ。
奇妙な偶然だが、最初の『棺』の謎掛けとは無関係だろう。

《ほう、『三人目』がいたか。君も『参加』するかね?》

《いえ、あまり自信がありませんので……。ここで『見学』しています》

そう言って、千草は向きを変えて座り直した。
このまま『ギャラリー』に徹するようだ。

912日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/20(水) 21:36:41
>>911(GM)

《ありがとありがと〜》
《クイズの方も素晴らしい点数取るからね》

《5つあるなら……『15点』以上かな》

      ペロ

口元に垂れてる気がするキャラメル味を舐めとる。

褒め言葉よりずっと雄弁なのは点数だ。
点数が低くてもいいなんて慰めはない。
目に見える価値をまた一つ手に入れてやる。

《んん、邪魔じゃないよ。込み入った話でもないしね》
《間違えたら物投げてくるとかなら別だけど、話に入ってくるだけだし〜》

話しかけてきたのはタケルさんの知り合いらしい。
なら、まあ、別に何か邪険にするものでもないだろう。

《『見てるだけ』も同じ〜》
《見てて楽しいのかは分かんないけどねえ》

《それとも私、クイズバラエティの芸人さんみたいな派手なリアクションした方がいい?》

見た目にも可愛らしく、不愉快さは無い。
見た目は目に見えるステータスで、大事だ。

《んふふ、じゃあホラ、『観客』も来たとこだし始めちゃおうよぉ。ゴ〜ゴ〜!》

913小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/20(水) 22:21:57
>>911(GM)
(以前参加させて頂いた『夢』のミッション自体は打ち切り形式も
相まって、私のPCの中で其の体験に関しては『封印』若しくは
ほぼ記憶に覚えてない形にして頂ければと)

…スリ スリ クルクル

球体の水槽を手の平の中で転がし、ほぼ温度がない冷たさのみ伝えられ
指の感触と拒否感ない冷たさは思考をクリアにしていくのに役立つ。

何かが起きた事は確かだ。明晰夢では無い 心臓と……側頭部だろうか?
激しい痛みと熱 そして胸の奥底に埋まった大切だったと思える何かが
もう一度見えそうだった気がする。 ――何処かに在り日思ひ出

『いえ、質問はこれ以上ありません。回答有難う御座います』

(ルールは問題ない。何処かしらにトリックは見えない
あくまでも個人の知力の度合いが試される)

空白の過去への憂いを瞬きと共に追いやり、掛けられた声に
目線を向ければ、奇しくも今その放置を決めた悩みの独白を聞いてくれた
知人と久し方の邂逅を知り、微笑を作る。

「えぇ、こんにちは 千草さん」

 「……ご主人。もう一脚 貸して頂きますね」

千草さんの隣に椅子を置く。
『墓堀人』(イッツ・ナウ・オア・ネヴァー)の為の席を設け
自身も千草さんの近くへ座り直し、ロダンへ首を向ける。

『では、ゲームをお願いします』

そして、隣へと声を掛けた。

「……近くに居るだけで、勇気を貰えます。それだけで十分です
それだけで心強いのです。ですので傍で見守って下さい」――ニコッ

何時か遠い遠い場所でも、傍で誰かが共に闘ってくれた気がする……

914『黄昏のS』:2019/11/20(水) 23:09:03
>>912(日下部)

日下部が尊重する価値観は、おそらく小林のそれとは違う。
だが、そこに込められている『重み』は対等だ。
それがあるからこそ、『遊び』にも真剣さが生まれてくる。

《はい、ありがとうございます。ここで見させて頂きますね》

《頑張って下さい》

『先輩』と呼ぶからには小林と同じ学校に通っているのかもしれない。
この辺りなら清月生だろうか。
小等部か中等部かは不明だが、高等部ではなさそうだ。

《では、始めようか》

>>913(小林)

奇妙な『何か』が頭の片隅にこびり付いている。
思い出そうとしても思い出せない。
何かがあったのか、それとも何もなかったのか。
真相は『藪の中』だ。
もし何かがあったとすれば、
それはスタンド使いとしての『糧』の一部にはなっているだろう。

「あ、すみません。小林先輩」

        カツン…………

小林の用意した席に、『墓堀人』が腰を下ろした。
下ろしたシャベルの先端が床に軽く当たり、金属質の音を立てた。
立ったままでも本体の疲労が増す事はないだろうが、
小林の配慮は千草に届いている。

「何かのお役に立てるなら嬉しいです」

    ニコリ

千草は微笑んだ。
小林の深奥まで察している訳ではないだろう。
だが、小林に向けている素直な感情に偽りはない。

《では、始めようか》

915『黄昏のS』:2019/11/20(水) 23:23:57
(ALL)

《――――『ストーン・エイジ(石器時代)』》

    ブワァッ

本体であるロダンの声に応じて、『スフィンクス』のスタンドが動いた。
傍らにあった『猫の彫刻』に、『石の翼』が覆い被さる。

           ズ
             ズゥッ

『猫の彫刻』が、徐々に形を変えていく。
出来上がったのは、一枚の『板』だった。
石造りの彫刻が『石板』に変化を遂げている。
『石板』の表面には、『五つの言葉』が刻まれていた。

     『 仲間 』

                   『 成魚 』

            『 怪物 』

     『 友情 』

                『 病気 』

《これが一つ目の『問題』だ》

《さて…………考えてくれたまえ》

ロダンは言って、悠然と尻尾を揺らす。
これらの言葉に共通する『法則』を見つけ出す。
それが、小林と日下部の『勝利条件』だ。
『知恵の獣』と『旅人』のゲームが始まった。



【相談中は、基本的にGMレスはありません。
 相談が終了した時点で、その旨をメール欄で伝えて下さい。
 また、ヒントを希望する場合も、その旨をお伝え下さい】

916小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/20(水) 23:50:50
>>914-915(ALL)

「それは『仲間』を持ち それは『成魚』であり
それは『怪物』でもあり それは『友情』をも持ち
 そして……それは『病気』ともなる」

  キュルキュルキュル

水槽は回転される。何故、『リヴィング・イン・モーメント』は
『回転』を持つのだろう? 何故水槽は回転する力を秘めてるのだろう
ずっと、ブリキの金魚を見つめても。この力は声を発しはしない。

金魚……金魚……魚……私の力の源泉 私の記憶の故里(ふるさと)
今この瞬間に何を成すべなのか


 「――それは〜〜のぼりとして群れで空を舞う。
群体で成魚として特例のモノは『トビ』と言う
在来の種を荒す外来の魚としては『怪物』として
忌み嫌われもしえている。
そして、これは〜〜わずらいと通称で呼称されもする」

「……私は、この問いの答えを『コイ』と整えますが
日下部さんは、どうですか?」

917日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/21(木) 00:05:47
>>913(小林)
>>914-915(GM)

《わあ〜、タケルさんって優しいんだぁ〜》

スタンドの椅子を手配するタケルさんに笑みを向ける。
意味はない気はするけど、彼には重要なのだろう。

それから、五つの言葉……を、見る。

《仲間!》
《友情〜》
《怪物に》
《成魚、せいぎょ?》
《……病気、の五つかあ》

        クイ

カップを傾けて、唇を少しだけ甘みで濡らす。

……よく分からない。

>>916(小林・相談)

《タケルさぁん超頭いい〜、よくそんなの思いつくね》
《でも……どーかな、恋、鯉、濃い……色々考えてもさ》

《成魚は良いとしてね、病気もまあそうかも》
《怪物、ってのはちょっとしっくり来ないし〜》
《仲間と友情って、恋とは違う気がするよ?》
《友と愛ってlikeとloveで、似てるけど大違いだもん》

《んん〜〜〜》

《全部漢字だ! ってのは問題に合ってない答えでしょ》
《濁点の数とかも関係なさそう?》

漢字を目を細めて見つめる。
小林のアプローチは言葉の意味を重視している。

《仲間の間に『日』……友情の情に『月』で怪物の怪に『土』》
《でも成魚とビョーキには関係ないみたい、曜日とは違うかぁ》

日下部は目に見える、はっきりした答えを先に探す。
つまり字形や読み方、そうした『客観』で確かな部分の答えを。

918小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/21(木) 00:38:13
>>917(日下部PC)

「確証……にはなりませんが。カリフォルニア州サンノゼ市……アメリカ合衆国にある
日本庭園の名前は日本『友情』庭園で、その池に棲むのは岡山市から贈呈された『鯉』でして。
まぁ、これを謎に照らし合わせるのは こじつけに近くもありますね。
 色んな水質でも適応して生き延びる生命力もあるので、交配が募ったコイは海外では
畏れられてるのも事実なんですが」

日下部さんの客観的な視点。私には無い視点からの『疑問』もとても有益なものだ。

縛られてはいけない。ただ一つの解法でない 井の中でない海のように視点を広げてみよう。

「全部、漢字……確かに、そうだ。それが共通点で答え……」

いや、でも日下部さんは自ら違うであろうと撤回を出している。
確かに、これの共通点は全て日本語であると告げられては次からの謎に
対しても、私としては何も発せなくなるだろう。

「次善策、としてコイを入れるとして。……このような謎掛けの場合は
二つの単語に一番強く共通するものを照らし合わせ、そこから他の単語にも
手を広げるようにして解法を導くのが適当な形かと」

「私は、そのようにしてコイわずらいと成魚のコイを結び付けてみましたから」

日下部さんに、私自身の推理の仕方を説明しつつ他の答えを巡らして見る……。

919日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/21(木) 01:22:55
>>918(小林)

《やっぱ頭良いんだ〜。沢山本読んでるから?》
《んふふ……でもさ、なんていうんだろ》
《タケルさんは頭いい、『だから解ける』わけで〜》

《それを、『言葉のクイズ』として出さない気がするんだよねえ》

アメリカの日本庭園の名前なんて『知識問題』だ。
スマートフォンで検索する前提なら話は別だけど。

そういう知識は、自分にはない。ふつーは無い。
逆説。『そういう知識を求める問題』とは思えない。

《ん〜〜〜四つの繋がり、ならあるんだけど》
《仲間の『仲』以外は、全部『音読み』の漢字なんだけどねえ》

《怪物の怪と友情の情はどっちも『りっしんべん』だけど他は違う》

《文字の形とか読み方じゃ、ちょっと思いつかない……意味の方なのかなあ?》
《全部『生き物』に関係のある言葉? っていうのは範囲が広すぎるか〜》

920小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/21(木) 18:39:02
>>919(日下部PC)

成魚=病気 まず最初に、結びつきそうで結びつかない単語で
照らし合わせ、密接しそうな単語が『コイ』だった。

他には、あるだろうか? これは謎掛け 
普通の魚の病床と、謎で出題された病気で仮に結びつくとしても
他の友情 仲間 怪物が繋がり得るとは思いつかない。

……やはり、私は固定観念に囚われているのか『コイ』以上の
回答を持ち合わせられない。

『どうしますかね 私としては、既にやれやれと言う擬音が
心境に流れてる次第で。
 勇気を以って、これを答えとするか。慎重を期して
ヒントを頂きましょうか?』

この『コイ』を元に答えとするか、ヒントの提示を頼むか
協力者へと確認を行う。

921日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/21(木) 20:49:20
>>920(小林)

《んんん、もし間違えたら0ポイント》
《でもヒントをもらって正解ならそれで3ポイント》
《ふたつ貰っても……まだ2ポイント残るし》

《タケルさぁん、ねえ、ここはヒント聞いちゃおうよ》

コイ、が正答とはどうしても思えない。
成魚というのも、ちょっと微妙だ……
鯉の稚魚に別の名前があるなんて聞かない。

が、だからといって何か思い浮かぶわけでもない。
五つの言葉には見た目の共通点が浮かばない。
だから前提を間違えている可能性もある。

法則……って言い方をしていた。
数学の法則が、『主観で変わる』とは思えない。

《考え方の、向きっていうのかな〜》
《答えが分かるかは置いといてねえ》
《向きが間違ってたら、一生答えには着けない》

《私達の考え方で良いのか……早めに確認しとこ?》

もちろんそういうヒントとは限らないけど。
最初だからこそ、ここでのヒントは後にも活きるかもしれない。

922小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/21(木) 22:07:35
>>921(日下部PC)

『そうですね。成魚となれば、コイの他に代表各と言えば
ブリやスズキにボラなど連想出来ますが。病気に無理やり関連させるとして
まさぁエボラ熱で『ボラ』なんてのは厳しいし、仲間や友情 怪物といった
ものと繋がるとも思えない。ここはヒントを貰いましょう』

>GM

『……と、言うわけで。ヒントを頂いて宜しいでしょうか?』

ロダンへとヒントを頂く事にする。

彼は中々な賢者だ。我々の想像に及ばない答えを秘めているのなら
その口から、その調べを一節 聞かせて頂こう。

923『黄昏のS』:2019/11/21(木) 22:29:04
(ALL)

『スフィンクス』――――ロダンは、
黙って二人のやり取りに耳を傾けていた。
そして、小林の言葉を聞いて頷いてみせる。

《『ヒント』を出す前に言っておこう。
 これらの『五つの言葉』が、
 『一つの何か』を指しているという訳ではない。
 あくまで『共通する法則』を見つけ出す事が、このゲームの狙いだ》

《そして、これは『言葉のパズル』だ。ゆえに『知識』は問わない。
 『漢字が正しく読めるか』というような最低限の知識は必要だが、
 専門的な知識は必要としないと考えていい》

《さて…………『言葉』には様々な側面がある。
 たとえば、『文字の形』や『意味』や『読み方』などだ》

《最初にクサカベが言ったように、
 これらの言葉は全て『漢字』で構成されている。
 そう、この問は『漢字』に注目してもらいたい。
 ただし、これを解くには少しばかり『ウィット』が必要になるだろう》
 
《『行間を読む』という言い回しがある。
 この場合は『行の間』ではなく『言葉の間』だが、
 近い部分はあるかもしれない》

《こうすれば――――幾らか分かりやすくなるのではないかな》

           ブ ワ ァ ッ

『ストーン・エイジ』の翼が『石板』を包み込む。
翼が離れると、『石板に刻まれた言葉』に変化が生じていた。



      『 仲 間 』

                      『 成 魚 』

             『 怪 物 』

    『 友 情 』

                 『 病 気 』



《……?漢字と漢字の間に『隙間』が出来たみたいですね。
 どういう意味なんでしょうか……》

小林の隣に座る千草が、不思議そうに首を傾げる。
その言葉通り、二つの漢字の間に『スペース』が空けられている。

《この『法則』が当てはまる言葉は他にもある。
 数多くあると言っても差し支えない。
 そう…………今さっき出た『一生』という言葉も含まれるようだ》

《――――『最初のヒント』は、この辺りまでにしておこう》

924小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/21(木) 22:59:06
>>923


      『 仲 間 』

                      『 成 魚 』

             『 怪 物 』

    『 友 情 』

                 『 病 気 』


「――!! そうか……っ 千草さん、有難う
解りましたっ 解りましたよ! 
 正解は 『目の前にあった』! 私の隣、いや私も
我々の事っ  そう言う事かっ!」

 千草さんの手を取り、我が意を得たりとばかりに告げる。

 つまり…… こう言う事。

 
      『 仲”人”  ”人”間 』

                   『 成”人” ”人”魚 』

             『 怪”人” ”人”物 』

    『 友”人 ”人”情 』

                 『 病””人” ”人”気 』


 『答えは私達 ”人””間の事!』

925『黄昏のS』:2019/11/21(木) 23:32:55
>>924(小林)

「――――えッ?」

千草が呆気に取られた表情を見せる。
不意に手を取られたため、驚いたようだ。
そして、小林は確信を持って自らの解答を告げる。

《そう――――答えは『人』。
 より詳しく言うと、
 『間に人を入れると二つの言葉に分かれる』という法則だ》

《『一生』の間に『人』を入れると『一人』と『人生』に分かれる。
 さっき言ったように、これも『法則の範疇』と言えるだろう》

《見事な解答だ。実に素晴らしい。
 ルールに従って『三点』を授与しよう》

小林の答えに、ロダンは満足気に喉を鳴らす。
『正解』だ。
『石板』の片隅に、得点が刻まれた。

                 [現在の総得点:3/20]

(ALL)

《では、『二問目』に移るとしよう》

    ブ ワ ァ ッ

             カリカリカリカリカリ
                      カリカリカリカリカリ…………

『ストーン・エイジ』の翼が大きく広がり、
石板に『次の問題』が刻まれていく。



     『 背負い投げ 』

                      『 迷路 』

             『 お化け 』

   『 ソファー 』

                 『 糸コンニャク 』



《さて――――考えてくれたまえ》

926日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/21(木) 23:53:06
>>924(小林)
>>925(GM)

《すご〜い。私ね、ヒント貰っても分かんなかったよ》
《やっぱタケルさん頭いい〜》

小さく拍手をする……精密に、音を立てずに。
やっぱりタケルさんの力……発想力はこの勝負に大事だ。

《2問目はまた、全然分かんないね》

《迷路》
《お化け》
《ソファー》
《背負い投げ》
《糸こんにゃく》

《ぱっと見だと……『文字数』で並べられる法則〜?》

そしてクイズの方向性は、先ほどと違いそうだ。
少なくとも『漢字を割る問題』はあれ一つだろう。

《さっきの理論でなら迷路屋敷、お化け屋敷》
《糸こんにゃく屋敷なんて無いよねえ〜。んふふ》

927小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/22(金) 09:38:49
>>925(GM)

     『 背負い投げ 』

                      『 迷路 』

             『 お化け 』

   『 ソファー 』

                 『 糸コンニャク 』

先程は、空間の隙間を見つめ続ける内に天啓とも思える程に脳内物質が
著しく前頭葉の筋の隙間を冷たい液体が流れ込むかのように答えが
見いだせていた。『ロダン』の出す問題は 必ず法則性がある。

(となれば……日下部さんの文字数が一文字ずつ増える法則。
一見すれば、階段状に広がりは見せられてる。だが”それだけ”か?)

>>926(日下部PC)

『分断させ漢字を入れる事は、まず無理ですね。……カタカナにして見ますか
メイロ・オバケ・ソファー・セオイナゲ・イトコンニャク
めいろ・おばけ・そふぁー・せおいなげ・いとこんにゃく

……ふむ? どれかア行のみを抜いても単語として通用すると言うわけでも
無さそうですが、諦めるには早い。もう少々考えて見ましょう』

日下部さんにも応援の言葉を掛けつつ、自身も思考を続ける。

928日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/22(金) 14:05:52
>>927(小林)
>GM

《あ! なるほどね〜。タケルさぁん私分かっちゃったよ》

不敵っぽい笑みを浮かべて、文字を指差す。

《メイ、ロ》
《オバ、ケ!》
《ソフ、……アー》

《それから》

《……せ》 《オイ、ナゲ》
《イトコ、ンニャクう〜》

カタカナにするというアイディアがそれを見出した。
背負い投げだけ若干違うけど……まあそれはいい。
知らないだけで「せおい」って言葉もあるかもしれない。

つまり。

《姪っ子に叔母さん、祖父、甥っ子、従兄弟》
《全部、なんていうの? 親類? の名前だよねえ》
《親族だっけ〜? どっちでもいいか》

《んふふ、どうどう〜? 私、いい線行ってると思うけど》

主観の入り交じらない、はっきりした答えを用意できた。

929小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/22(金) 18:42:47
>>928

パチパチ

瞬きを数回、日下部さんの言葉に反応しての瞼の開閉を反復。

『ははぁ……成る程』

姪 叔母 祖父 甥 従兄弟

背負い投げのみ、最初の頭文字が異なるのは簡単に
謎を解かせないようにする為だろう。おい、から始まる単語だと
全ての単語の最初に注目すると容易に解読されやすくなる。

反論はない。二問目は日下部さんの快挙だ。

「お見事です」 パチパチ

大きく反響しない程度に、自分も賛同と賛意の柏手を数回打ち
ロダンへと、こちらも回答に問題ない事を示し頷く。

930『黄昏のS』:2019/11/22(金) 19:47:34
>>928(日下部)
>>929(小林)

《ほう――――》

《やはり君は『レベル』が高いようだ。
 『カナに直す』というタケルのアイディアも優れている》

《『正解』だ。これらの言葉には、全て『親族』の名前が隠されている。
 タケルも気付いたようだが、
 『背負い投げ』だけ言葉の頭でないのは『意図的』だ。
 それに惑わされなかったのは素晴らしい》

《実に申し分のない解答だ。満点の『四点』を授与しよう》

                 [現在の総得点:7/20]

《お二人とも凄いです。
 こういうのを『チームプレイ』と言うのでしょうか?
 千草も見習いたいです》

千草が羨望の眼差しで日下部と小林を見つめた。
ロダンも感心した様子で軽く頷いている。
『15点以上』という日下部の見立て通りなら、
およそ半分くらいは獲得しただろうか。

(ALL)

《では、折り返しの『三問目』だ》

    ブ ワ ァ ッ

             カリカリカリカリカリ
                      カリカリカリカリカリ…………

再び『石板の言葉』が書き換えられていく。
まもなく、『三つ目の問題』が完成した。



     『 稲荷 』

                     『 顔 』

            『 姉妹 』

     『 水 』

                   『 軍鶏 』



《さて――――考えてくれたまえ》

931小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/22(金) 22:14:20
>>930(GM)

「『チームプレイ』と言うなら。最初の問題の提示の際
千草さんが『隙間』と述べてくれなくては閃きませんでしたよ。
十分、私の力になってくれてますよ」

千草さんに、自身の気持ちを明かしつつ。日下部さんにも
微笑を向けつつ、答える。

「――私も、少々挽回しませんとね。
答えは、こうです。
稲荷⇒”い”いなり 言い成り
顔⇒”か”かお   カカオ
姉妹⇒”し”しまい 獅子舞
水⇒ ”み”みず  蚯蚓
軍鶏⇒”し”しゃも シシャモ  

ですね? ロダンさん」

932日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/22(金) 22:18:21
>>929 >>931(小林)
>>930(GM)

《やった〜〜〜。最高点だあ。んふふっ》

      ニ コォ〜

《この調子でどんどんやっちゃおうねえ、タケルさん》
《得意分野がお互い違うみたいだし》

《千草クンに良いところを見せちゃお〜》

ヒント無しで解けたのは良い。
気分も良いし、最高得点を取れたからだ。
最高得点は誰が見ても間違いなく、凄い。

次の問題もそうありたい。
石版を見て、何気なく読み上げる。

《稲荷、姉妹、顔、えー、軍鶏。水》

《いなり、しまい、かお、しゃも、みず》

《いあい、いあい、あお、あお、いう》

《い、あ、お、う》

《そだねえ、『え』の音をどれも使ってないとか?》
《んんでも、タケルさんの答えの方が綺麗かも〜。私もそっちでいいよお》

答えになり得る気はするが、タケルさんの答えはもっときれいだ。
それなら、そっちの方がいい。問題としての『完成度』を信頼する。

933『黄昏のS』:2019/11/22(金) 23:08:20
>>931
>>932

《そう、タケルの答えが『正解』だ。
 これといって私から補足する事もない。『満点』だ》

《――――非常に素晴らしい》

                [現在の総得点:11/20]

《いえ、そんな……》

《でも、役に立てたなら嬉しいです》

    ニコリ

小林の言葉に、千草は笑顔を見せた。
二人に向ける視線には『尊敬』が篭っている。
そして、再びロダンの声が響いた。

(ALL)

《タケルとクサカベ――――君達の解答は素晴らしい。
 私も、それに相応しい問いを出さねば失礼に当たる》

《君達に敬意を表して、ここからは少し『ハードル』を上げよう。
 『次の問い』は、少々手強いものになるだろう》

《だが、君達なら解けるかもしれないな》

    ブ ワ ァ ッ

             カリカリカリカリカリ
                       カリカリカリカリカリ…………

『ストーン・エイジ』が動き、石板に新たな言葉が刻まれる。
『四問目』だ。



     『 天使 』

                     『 白黒 』

             『 鶴 』

     『 変身 』

                   『 狼煙 』



《さあ――――解いてくれたまえ》

934小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/22(金) 23:55:22
>>933(GM)

『尊敬』など 一番私の価値に見合わないものだと 私自身が良く理解してる。

私に力があれば”守れた筈”だ 私に先見あれば”失わなかった筈”だ

遠く 遠く もう遙か昔。私(小林 丈)が出来る前に事。

…………そう言えば、私は。そう言った取り零しを つい最近にも
身に覚えがあった気がする。

 いや、今はよそう。ロダンが私達を試している 挑んでいる。
今は彼の期待に応える事が大事だ。

『……天使、白黒、鶴、変身、狼煙』

当たり前だが、割り込める漢字、親族等の関連、語尾を続けざまに
発音する事でも名詞が確立するようには見えない。

(……白黒、これは確かモノクロームとも読む)

ロダンは『ハードルを上げる』と告げた。

『エンジェル・モノクローム・クレイン・トランスフォーム・ビーコン』

”えんじ” ”くろ” ”いん(※印色) ”む(色)” ”こん(紺)”

(……いや、流石に英語に読み換えすのは無理がある)

ただ、発想は良い筈だ。もう少し考えを進めてみよう

935小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/23(土) 01:19:53
>>934(追記)

……駄目だ、考えが纏まらない。

もう一度、今度は平仮名で考えてみよう。

てんし しろくろ つる へんしん のろし

 …………?

『……日下部さん、これは全部”一筆書き”なのでは?』

そう考えを振ってみる。

936日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/23(土) 12:40:30
>>933-935(GM・小林)

《や〜、敬意って示されたの初めてかも。うれしいねえ》

正答の喜びもつかの間、次の問題はまた『難問』だ。

《……なんだろ〜、全部の言葉の漢字に"日"の形のパーツがある?》
《んんでも、違うな。『天使の使』をそう考えるのは無理矢理すぎるか》

ロダンさんの自信も、身のないものじゃないのが分かる。

《……あっ、一筆書きかあ〜》 《そういう方向性ねえ》

    スイスイ

《……ほんとだ》

《タケルさぁん、頭柔らかいねえ!》
《物をいっぱい知ってると、堅くなりがちなのに》

指で文字を書いてみる。
なるほど一筆書きだ。

今までの問題とはまた毛色が違う答え・・・
だけど、ハードルを上げると言っていた。ありえる。
懸念があるとすれば……やっぱり、毛色の違いか。

1問目と3問目は言葉を足す問題だった。
足すべき言葉に『法則性』があった。
2問目は言葉を抜き出す問題だった。
これも、同じ『法則性』のある言葉を抜き出した。

《うーん、これが正解な気がしてきたよ》
《ヒント貰って、確認してみるのはアリだとは思うけど》

《でも、"偶然こうなる"とは思えないよねえ》
《一筆書きのひらがなってそんなに多くはないし〜》

ひらがなにすると一筆書き。法則性はある。偶発性も低い。
だけど、それなら『発音に"え"が含まれない』のも法則だ。
これがロダンさんが想定する正答なのかどうか、というのが懸念だ。

《目に見えて分かる、立派な共通点だよお》

懸念。形のない不安だ…………形のある答えより重く見るものじゃない。

937小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/23(土) 14:52:02
>>936

”一筆書き””
  文字通り、字を書く際に離さないようにする技術。

偶然で、これ等がなされてるとは考えにくい。もう一つヒントを
頂いて確実性を高める事も出来るが……。

『いえ、これを回答と致しましょう。
日下部さんは得点を高め、最大限の報酬が出来れば欲しい。
それならばリターンを賭け、ノーヒントで。
 正解である事を期待しましょう』

実際、これ以上の共通点や関連となるものが見た所無い。
わざわざ英語に直したり等、そこまで複雑にして答えを割り出すより
平仮名で、この一点の技術のみが共通すると言う紛れもない真実に
自然と身を任せるべきだろう。

『間違っている場合は、私の報酬が差っ引いて頂ければ済む話ですし』

『と、言うわけで。ロダンさん
”一筆書きの法則” これを正解として出します』

938『黄昏のS』:2019/11/23(土) 19:00:37
>>937(小林)
>>936(日下部)

《『平仮名にすると一筆書き』になる。
 そう、それが『正解』だ。君達には聊か簡単過ぎたようだな》

《ふむ、素晴らしい成績だ。『四点』を授与しよう》

                     [現在の総得点:15/20]

    パチパチパチ
             パチパチパチ

千草が静かに拍手を送った。
隣に座る『墓堀人』も同じように手を打ち合わせている。

《ここだけの話だが、『スティーヴン』はヒントが二つ必要だった》

ロダンがカウンターの向こう側に視線を向けた。
今は奥にいるらしく姿が見えないが、
『スティーヴン』とは主人の名前らしい。
しかし、ロダンと意思疎通が可能なのは『スタンド使いだけ』の筈だ。

(ALL)

《さて…………いよいよ『最終問題』だ。
 少々名残惜しいが、この『遊び』も終わりが近い。
 私も、締め括りに釣り合う問いを披露するとしよう》

《用意はいいかな》

    ブ ワ ァ ッ

            カリカリカリカリカリ
                     カリカリカリカリカリ…………



     『 国 』

                    『 双葉 』

             『 花 』

     『 寺院 』

                   『 竹 』



《――――これらに共通する『法則』は何か?》

939日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/23(土) 20:08:22
>>937(小林)
>>938(GM)

《やった〜。タケルさん流石! かっこいい〜》

《私の目標点はこれで超えちゃったね》
《15点。ヒント一回ずつ使って全問正解と同じ》

《でも、ここまで来たらねえ》
《タケルさん、ここまで来たらだよねえ?》

次もヒント無し・・・それが理想だ。
スティーヴンに完勝したい。スティーヴン? 誰だ?
ここのスタッフのことだとは思うけど。

未知のスタンド使いっていうのは、案外いるものだ。

《国、寺院、花、双葉、竹》

《今回は一文字多いねえ、これが意味あるのかな……》

植物関係の言葉が多いのはおそらく関係ないだろう。
言葉そのものの意味は、今まで触れられていない。

《共通する法則……んん、ひらがななら……くに、じいん、はな、ふたば、たけ》
《カタカナはクニ、ジイン、ハナ、フタバ、タケ……表記を変えると分かりやすい問題が続いてた》

《双葉ってのがなんだろうねえ、他とちょっと違うのはこの言葉かな》

だからこそ今回は、というのもありえるけど・・・考えつつ、タケルさんに話を振る。

940小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/23(土) 20:35:28
>>938(GM)

拍手に対し、照れくさく軽く頭を掻いて呟く。

「いえ、滅相も。たまたま平仮名を描いたら閃いただけですから」

スティーヴンさん? の事については全く把握してない。目の端で奥の
店主が居るだろう場所を一瞥するものの、この最終問題に関して
私も神経を研ぎ済まなければいけない。

 キュルキュルキュルキュルキュルキュル……ッ

水槽を回転させる速さの如く、頭の中も回転させてみる。

>>939(日下部PC)

「日下部さん……もう一度、復唱して貰って良いです?」

 くに じいん はな ふたば たけ……上の序列から考えて

くに ふたば はな じいん たけ……と並び変えてみる。

『……んんー ”はなばたけ”と言う字が作れる。
 じいん くに で”虹”と”インク”と言う単語も。
だが、それだと”ふた”と言う字が余りますね。
蓋(ふた)と言う字は有りますが……これは法則性となるか?』

『もう少し探って見ましょう』

941日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/24(日) 00:35:46
>>940(小林)

≪くに、じいん、はな、ふたば、たけ≫

≪文字を並び替えて別の言葉?≫
≪にく、いんじ、なは、けた……ばたふ≫
≪ばたふは知らないなあ〜≫

≪はなばたけ、にじ、いんく、ふたの方がまだそれっぽいかもねえ≫
≪でも……『法則性』っていうには、今までの問題みたいに綺麗じゃない気がする≫

『1つの言葉になる』とか『どれも別の言葉になる』ならそれっぽい。
けど、そういう組み合わせは頭の中に浮かんでこない。

≪クニ、ハナ、ジイン、フタバ、タケ≫

カタカナを指で書く。

≪KUNI、HANA、JIIN、HUTABA、TAKE≫

英語っぽい発音で言ってみる。

≪漢字を分解するにしても『竹』と『花』がシンプルすぎるよねえ≫
≪竹は『ケケ』で、花は『キ』と『イヒ』……んん、カタカナに分解しても寺院とかは無理だ≫

とりあえず思いつくことはどんどん言ってみる。この問題は今まで以上に難しそうだ。

942小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/24(日) 23:41:55
>>941(日下部PC)

国 双葉 寺院 花 竹

くに ふたば じいん はな たけ

……まだ、取っ掛かりが見えない。ここは『今』に対し一旦目を閉じ
過去の流れに対し身を翻して思考を整えてみよう。

第一問は二つの漢字の中に一つの漢字を入れる事が可能な法則

第二問は親族の名前が隠されている法則

第三門は最初の語句を重複させても別の単語となる法則

第四問は全ての文字が一筆書きとなる法則

どれも全て『文字』に対するパズル。ならば字をばらばらにして
別の単語として完成出来る事も法則になるだろうか?

「どうも、しっくり来ませんね……一応、国籍マーク
寺院マーク、双葉マーク、花マーク、竹マークなんてのも
有りますが。それじゃあ最初に指摘されたように知識問題だ」

今まで覚えて来た知識はまっさらにして、これ等五つに対し
共通して当て嵌まる『法則』が 必ずある。

「……う〜〜〜ん  
日下部さん、一つ思い付いたものは、思いついたんですが……」

国⇒くにくに(意味:まがりくねるさま)
双葉⇒ふたふた(扇を動かしたり鳥が羽ばたいたりした
ときに立てる音や、そのさまを表す語)
寺院⇒陰々(薄暗く、寂しいさま)
花⇒はなばなしい
竹⇒たけだけしい

「……と、言うのはどうでしょう?」

943日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/25(月) 02:17:05
>>942

《んん……いんいん、とふたふた、かあ》
《あんまり使わない言い方だよねえ》

補足説明がある通り、『直感』を欠く気がした。
言ってしまえば言葉は変幻自在だ。
誰も使わない言葉もこの世界に『今』作り出せる。

・・・目を閉じて、すぐに開く。

《くに……にく、『憎々』しい》
《たけは……けた、『ケタケタ』笑う》
《ふたばは、ばた。『ばたばた』はよくある擬音だよね》
《じいんは『いじ』で『イジイジする』》

《……でも花は違うか、『那覇』はあるけどナハナハなんて知らないし〜》

タケルさんの答えから連想できたが、どうもこれも違いそうだ。
偶然としては一致率は高いけど、それこそ言葉は変幻自在だからとも言える。

《んんんん……突破口ってやつが見えないよタケルさん》
《悔しいけど〜……悔しさより『点数』だ。ヒントもらうのも考えた方がいいかも》

ここまできたらノーヒントが理想的だけど、意地を張って0点はよくない。
堂々巡りに陥る前に、ヒントを一つもらっても『目標』よりはずっと上の点数だ。

944小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/25(月) 18:38:50
>>943(日下部さん)

『そうですね、ヒントを仰ぎますか・・・』

一応最初の語句と、さんを付けると
苦惨・不参・持参・破産・多産となるが、当て付けが少々大きい。

一問目から四問目まで。全て美しい法則がロダンの問題には秘められていた

最後を無理くり共通項を自作するよりも、正直を美徳として
ヒントを一問貰い、正攻法に挑むべきだろう。


『――と、言う事で。すみませんがロダンさん
最後の問題のヒントを願います』

945『黄昏のS』:2019/11/25(月) 21:33:16
(ALL)

ここでヒントを得たとしても、『一点』を消費するだけだ。
手掛かりを掴む事を優先するのは正しい判断と言えるだろう。
二人のやり取りを悠然と眺めていたロダンは、
求めに応じて再び口を開いた。

《私が見る限り、君達は賢明な人間だ。
 タケルもクサカベも、このパズルの『コツ』は、
 かなり飲み込んでいる事と思う…………》

《ただし、『最終問題』は、これまでの四問とは趣が異なる。
 従って、解明には『違ったアプローチ』が必要になるだろう》

《この『謎』を解くためには、多少の『知識』を要する。
 しかし、決して『専門的知識』ではない。
 最初のヒントで述べた通り、
 あくまでも『最低限の知識』の範疇に含まれる》

《君達も、そしてタケルの隣に座っている君も、
 その『知識』を有している筈だ》

「えっ?そうでしょうか……?」

千草はキョトンとした顔をし、『墓堀人』も首を傾げている。
『分かっていない』という表情だ。
だが、ロダンは『千草にも分かる』と言う。

《――――ここまでにしておこう。
 聊か少ないかもしれないが、君達のレベルに合わせた結果だ》

946小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/25(月) 22:47:11
>>945

『違ったアプローチ』……か

「千草さんは中等部……つまり『中学生』でも既に知っている範囲の
『5個1組の概念』と合わせる、とかですかね」

となれば、幾らか挙げてみよう。

五行 - 道教で、木・火・土・金・水。

五色 - 上記の五行に相当する色で、青・赤・黄・白・黒。

五感 - 視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚。5種類の感覚。

五方 - 東・西・南・北・中。若しくは左・右・前・後・中。

五体 - 頭・首・胸・手・足。

「……と言う感じで、以上のものを国 双葉 寺院 花 竹に照らし合わせる」

となれば、一番有力なのは何だろうか……?

947日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/25(月) 23:40:04
>>945
>>946

《アプローチ……知識かあ》

《タケルさぁん、ふつうの中学生は多分ね、五行知らないと思うな〜》
《だって私も知らなかったもん。んふふ、五感はわかるけど》

《五感なら、花は鼻! で、国は……口? 寺院はじいーっと見るから目》
《でも双葉と竹が結びつかないし〜、それ以外も無理やりっぽいか》

タケルさんの方が知識はあると思う。
けど、そういうハイレベルの話ではなさそうだ。
一般常識……国、双葉、竹、寺院、花。

五つあるから五つの何かとは限らないけど……結び付けやすくはある。

《んん……そうじゃなきゃ地図記号、とかは違う》
《双葉、竹、花》
《国》 《寺院》

《それこそ最初の音読み訓読み……じゃないんだよねえ》
《寺院だけ違う》 《言葉自体には全然共通点がない》

五つの言葉だけで考えると、国、という大きすぎる言葉が共通をよく切る。
何かを接続しようとすると、言葉として用途の狭い竹と双葉が邪魔になる。

中学生でも知っている知識となると英語もか……だが双葉と寺院は『怪しいところ』だ。

948日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/25(月) 23:40:22
>>947(メール欄抜け)

949小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/26(火) 00:47:46
>>947

『双葉 寺院……この二つの単語は本当に、謎を解くにあたって
難解ですね。国 竹 花ならば、まだ何とかなりそうだが
この二つが読み解くにあたって険しい……』

一般常識……千草さんでも有する知識。そちらに視線を向ける

千草さん 『墓堀人(イッツ・ナウ・オア・ネヴァー)』

印象深い事は記憶から掘り起こしてみる。となれば、つい先程に
最初の問いに対し『隙間』を述べて、私が彼女の手を握って閃きを口に……


       …………”手”……っ

「――手」 ガタッ!

 千草さんに対し再度その片手を両手で包み込むようにして凝視する。
そして抑揚を付け述べてみる。

 「”待” ち ”人”(人さし指)
  ”花”   ”薬” (薬指)
  ”中”   ”国” (中指)
  ”双”   ”子” (小指)
  ”親”   ”竹” (親指)」

 「――日下部さんっ どうでしょうか!?」

950日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/26(火) 02:05:16
>>949

≪タケルさぁん、惜しいとは思うんだけど〜〜〜≫

≪寺院の寺は『待つ』とは違うよお≫
≪ロダンさんなら、そこをひねっては来ないと思うんだよね≫

≪花薬っていうのも私、あんまり知らないし≫

そうするなら『待合室』とでも出題すればいい。
背負い投げ、という『ズラし』はあったけど。

正解は分からない。
が、不正解をはじくことはできる。

≪でも……双葉とか竹とかの『使い方』は良い線いってる気がする≫
≪どっちも使えるような何かを用意するのがいいのかも……んん≫

≪竹……竹林、竹馬? うま……一般常識なら『干支』?≫

≪双葉、花、国、寺院……やっぱり寺院がとくに邪魔〜〜〜≫

≪寺院の線からだと繋がる言葉とかは思いつかないし、字に特徴もないんだよねえ≫
≪寺、に土、って字が入ってるから曜日か、星の名前……っていうのは強引すぎるし≫

951小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/26(火) 10:28:09
>>950(日下部PC)
(※すいません、ちょっと疲れてました)

(…………そうだ『寺』は『待』とは違う)

多分、また呆気にとられているだろう千草さんに謝罪を述べつつ手を離す。

(今までの情報……『スティーヴン氏はヒントが二つかかる』
『千草さんも把握している中学生レベルの基本的な知識を合わせる』
スティーヴン氏は、まず間違いなく海外出身)

日下部さんも行っていたローマ字変換をしてみるか?

hutaba
take
hana
kuni
jiin

「ここは寺院の”寺”部分はもう考えないほうが良いかも知れません。双葉も、もう一つの
ほうは無いものとして私は考えて見ます」

寺院 双葉、この二つの単語で考えると、竹 花 国と合わせようとすると
どうしても邪魔が入る。院 それと双 又は葉で
と、なると何が合わせられる?

952日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/27(水) 07:29:38
>>951(小林)

《そだね、今までの問題も言葉の"全部"に意味があったわけじゃないし〜》

《ノイズにしちゃうのもいいのかも》

言葉から一部の要素を抜き出す問題もあった。
今回も双葉は『双』を持ち出すための言葉かもしれない。
が、そうではないかもしれない……

よくない。考えが完全に堂々巡りしはじめている。

《んん〜〜〜、双葉さえなければね?》
《寺院は印字、国は肉、竹は桁、花は那覇……なのになあ》
《偶然にしてはよく揃ってると思うんだけど〜〜〜》

キャラメルマキアートを一口飲む。
ここまで考えても『出てこない』……しかも2人揃って。

たぶん何か、すごい見落としがあるんだろう。
だけどそれがなんなのかがわからない。

《双……は、双眼鏡、双子、双翼、双極、えーと、双六(すごろく)》
《子……双子、竹の子……他は違うね。六で数字……双六、三国志、これも違う〜》

《だめだ〜タケルさあん、私もうなにも思いつかないよ》
《ねえ〜、ちょっと負けた気はするけど……0点よりはいいし、ヒント追加しない?》

このままいくと無理筋の考えを続けるか……
そこから捻り出した無理のある共通点しか出せない。

答えになる知識は持っているはずなのに、引き出せない。
引き出すためのとっかかりがない……それを得るにはヒントが最適だ。
それでも……最初に決めたはっきりした目標、『15点』は超えられる。

953小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/27(水) 10:44:41
>>952(日下部PC)

「そうですね、少々惜しいですが……」

曜日の月 火 水 木 金 などでは当て嵌まらない。
基礎的な五つ一つの概念を語尾に色々接続してみたが未完成。

日下部さんは、幸いにも一定の目標には到達してるようだし
私自身、こうやって他の方とやりとりするだけで構わない。
極論、得点など0でも良いわけなのだから。

「ではロダンさん、改めて ですが。ヒントを……」

「それと、千草さん。申し訳ないです
二度も行き成り手を握って……」

ヒントの提示と謝罪を口にしつつ、返答を待つ。

954『黄昏のS』:2019/11/27(水) 20:25:58
>>952(日下部)

温かいキャラメルマキアートが喉を通る。
同時に、その甘味が心と体に染み渡っていく。
多少は『脳の疲れ』も取れたように感じた。

『二点』を消費し、『第二のヒント』を得る。
日下部の提案に対し、小林も同意した。
この『堂々巡り』を脱するためには必要な事かもしれない。
日下部も小林も、解明に必要な『知識』は持っている筈だ。
『第二のヒント』で、それを掴む事が出来るだろうか。

もっとも、既に『個人目標』は達成しているのだ。
少なくとも、その点における憂いはない。
しかし、これに『正解』すれば、より『上』を目指す事が出来る。

>>953(小林)

「いえ、そんな……。気にしないで下さい。
 少しビックリしただけですので……」

「何かのお役に立つのでしたら、いつでもどうぞ」

    ニコリ

小林を見上げ、千草は笑顔を見せた。
純粋で曇りのない表情だ。
しかし、隣には不気味な『墓堀人』のスタンドが座っている。
それら両者の対比が、どことなく『底知れなさ』を漂わせていた。
それが『何に由来するものか』は、まだ分からない。

(ALL)

『解答権』は『一人につき一度』だ。
このまま一か八かで答える事も出来なくはない。
しかし、確信がない状態で正解に至る見込みは薄いだろう。
『ヒント』は『二つ』残っていた。
『迷宮入り』の可能性も考慮すれば、
『アリアドネの糸』を使うのは賢明な選択と言える。

《これまでの四問を突破する上で、
 君達は様々な『解法』を編み出して見せた。
 それは非常に素晴らしい事だ。
 ただ、『複雑な方法』ばかりが『解法』とは限らない》

《『思考の選択肢』が増える事は、
 『単純な解法』を無意識に除外してしまう一因とも成り得る》

《つまり――――この『問い』は『そう複雑ではない』という事だよ》

《この『謎』を解くために幾らかの『知識』を要する事は、
 先程も話した通りだ。
 それについて、もう少し詳しく説明しよう…………》

《『五感』や『干支』や『地図記号』など、
 今までに様々な案が出されている。
 しかし、ここで必要な『知識』というのは、もっと『身近』なものだ。
 ほとんど『日常的』と言ってもいい》

《それは、一見よく覚えているように思える。
 ところが、いざ思い出そうとすると、意外に出てこない。
 慣れ過ぎている事によって、却って意識の外に置かれてしまう。
 『灯台下暗し』という言葉があるが、
 そういった類の『知識』と呼べるだろう》

《君達は『寺院』と『双葉』に手を焼いている。
 しかし、この中では『寺院』は分かりやすい方だ。
 『竹』などは少々分かりにくいかもしれない。
 『双葉』は『寺院』ほど分かりやすくはないが、
 『竹』よりは分かりやすいと言える》

《そして、この『法則』に当てはまる言葉は『五つだけ』ではない。
 他にも幾つか存在する。
 即ち、『五つで一組の概念』ではない…………》

《――――『二つ目のヒント』は、この辺りにしておこう。
 念の為に言うが、一人が解答した後も『相談』は可能だ》

「何だか頭が疲れてきました……」

    ズズ

「……千草には難しすぎるみたいです」

千草は目を白黒させながら、両手で持ったカップを傾ける。
『カフェオレ』を飲んでいるようだ。
ロダンは『スフィンクス』のスタンドと共に、また静観の構えに入った。

955小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/27(水) 22:59:10
>>954(GM)

「……えぇっと」

『墓堀人』に顔を向ける。そう言えば、彼? 彼女? は私が千草さんに対する
挙動について不服と思ってるのか、黙認しているのか。
謝罪するのも、こちらが何かふしだらな思惑があった事を肯定してるようだし
私の親友(ヤジ)にも、無闇やたらな謝罪は控えろと言われている。

「……その、応援をお願いします」

なので、傍らに控える墓堀人にも頭を下げて願う事に留めた。

《これまでの四問を突破する上で、
 君達は様々な『解法』を編み出して見せた。
 それは非常に素晴らしい事だ。
 ただ、『複雑な方法』ばかりが『解法』とは限らない》

《『思考の選択肢』が増える事は、
 『単純な解法』を無意識に除外してしまう一因とも成り得る》

《つまり――――この『問い』は『そう複雑ではない』という事だよ》

・・・・・・
複雑ではない

我々(日下部・三枝)や、外国の方(スティーヴン)でも十分回答出来るもの。

国・双葉・竹・花・寺院

『竹』などは少々分かりにくい

竹…………竹……たけ……

――たけ? そう言えば、私の下の読み方にも似てる。
『丈は中国や日本の伝統的な長さの単位』……

「嘘でしょう」

思わずと言う感じで呟く。確かに、『灯台下暗し』

国を『こく』と読み 1刻 2刻

花を『か』と読み 1価 2価

寺院は最初の語句『じ』で 1時 2時

竹は『たけ』で 一ぶ丈 2ぶ丈

双葉は『たば』で 1束 2束

『この五つ全て、別の”単価”
そう言う事ですか……?』

『日下部さん、共通と思われる法則。
一つ見つけましたよ』

956日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/28(木) 02:37:12
>>954(GM)
>>955(小林)

「いや〜、私にも難しすぎるよ。まいったまいった」

軽口を言いつつタケルさんの新しい答えを聞く。
なるほど、これなら『寺院』も『双葉』も解決だ。

・・・懸念もなくはない。

≪花のやつ、私聞いたことないなあ≫
≪一価……え〜と、理科か何かの単位?≫
≪それだけがちょ〜っとだけ不安だけど≫

花、という言葉は『難しい』と言っていなかった。
寺院は『時』でわかりやすい。
丈よりは束の方が分かりやすい。

花……一価、二価というカウントは果たして『一般知識』か?

≪でも、4つも『それっぽい』し≫
≪1つも『そうとも言えなくもない』≫

≪タケ〜ルさん、私それ、アリだと思うな〜≫

それでも、他に答えは思いつかない。
というよりこの答えを捨てるほど良い答えが浮かんでこない。

(……寺院は簡単、竹が分かりにくい? 寺院……Gん……)
(た…K? いやいや、双葉も国も違うじゃん。ここまで単純じゃないか〜)

(寺院がわかりやすい……しかも今まで以上に単純で、日常知識……???)

957小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/28(木) 07:36:21
>>956(日下部PC)

『1価は原子価の事、ですね。流石に、その価は難しいですし
1科目 2科目とかの”科”かも知れませんし』

『少なくとも、ロダンさんの説明に当てはめてみれば
寺院が、1時 2時の じ と成るとすれば、それらしい
一束や1ぶ丈などは中等部で学習しても可笑しくないでしょうし』

他にも幾つか存在する法則であり、我々にとって単価は慣れ親しんでいる。

『とにかく答えない事には、点数も只下がり。
つい少し前も言いましたが、なんでしたら報酬は一部渡しますしね。
私はこれを答えとして臨みたいと思います』

『”全ての言葉に、単価としての文字が隠れてる法則”
ロダンさん これが私の答えです』

958『黄昏のS』:2019/11/28(木) 20:21:38
>>957(小林)

《なるほど――――》

《君は知識があるだけでなく、優れた発想力の持ち主だ。
 『私も気付かなかった答え』を導き出したのだから。
 新しい何かを生み出す知性の鋭さは、実に素晴らしい》

《他には、所属を表す『一課』・『二課』なども考えられるだろう》

ロダンが小林を見やり、感心した様子で深く頷いた。
千草はロダンと小林を交互に見つめている。
『正解が出た』と考えたらしい。

《ただ…………『私の想定した解答』とは異なる。
 ゆえに、それは『正解』ではない》

小林の解答は、確かに大きな矛盾はないように見える。
しかし、ロダンの意図した答えとは食い違っていた。
つまり、『不正解』だ。

(ALL)

《残る『解答権』は『一度』のみ》

《クサカベ――――『君の分だけ』という事になる》

ロダンが日下部に向き直り、改めて告げた。
『解答権』は『一度』、『ヒント』も『一度』。
もし日下部が『不正解』になれば、『最終問題』は『無得点』に終わる。

《では…………『ゲーム』を続けよう。
 タケルの『解答権』は失われたが、先程も言った通り、
 クサカベが答えるまで『相談』は自由だ》

959日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/29(金) 03:23:21
>>957(小林)
>>958(GM)

≪あちゃ〜、だめだったねえ、タケルさあん≫
≪でも惜しかった〜≫

深い驚きはない。
これはタケルさんも想定していた。

≪あのね、報酬は分けてくれなくていいけど〜≫
≪私が正解分かるまで、考える力だけ分けてね≫

≪勝って手に入れたトロフィーは大きい方が良い≫
≪でもタケルさんだっておカネは必要でしょ?≫

不正解になっても相談は出来る。
やっぱり、彼の思考・発送を分けてもらわねば勝てない。

≪んんん〜……≫

≪寺院がわかりやすいほう……っていうのがなあ。
 それも、日常……でも意外に出てこないもの……≫

≪寺院……ジーンズ……タケルさんは心当たり、ある?≫

最後のヒントを使うのも視野に入れつつ、いったんタケルさんに振る。

960小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/29(金) 10:13:47
>>958
>>959

酷く落ち込む程のものではない。確かに、自信を以て導き出した回答が
外れていた事に対して良感情が湧き出すと言う事は普通無いだろうが
結果として単価が正解でないと言う、一つの解法を外す事は出来たのだから。

『単価は違う……となれば、言葉の中に他に隠されてるものは
一見少なそうですね。付け加えられる単語は、考えればありそうですが』

こうなると、共通の法則となる単語が隠されてる可能性は低い。
となれば、春夏秋冬などの関連ある言葉を加える事でも別の名詞となる
等といった共通性が見いだせそうなものだが。

(改めて、中高生で有する知識について掘り下げてみますか)

然し、選択肢がそれでも無数にある。自身も中等部なら
多少は心当たりを挙げられたのかも知れないが。

『漢数字やそれに関連する字を最初に付け加えると言うのは?
それですと”無双” ”小竹” ”一院” ”大国” ”一花”
と言う単語が作れますし』

他にも、色々あるかも知れませんが……と付け加え。

961日下部『アット・セブンティーン』:2019/11/29(金) 22:41:24
>>960(小林)
>GM

ロダンさんは頭がいい、頭がいいから無駄がない。
言葉全てがヒントになってると思っていいはずだ。
一見よく覚えているけど、いざ思い出すと出てこない。
その表現はまちがいなく大きなヒントになっている。

(タケルさんの言ってる数字……これは違う気がする)
(数字は思い出して出てこないってものじゃないから)

(数字)

数字。私の好きなもの。
私の好きな、数字……………………数字が書かれたもの。

(……数字? んんん、数字……ああ)

      スッ

「ああ〜〜〜〜〜〜〜〜っ」

おもむろに『財布』を出す。
そして、その中身を机の上に広げた。
私の財布にはお金がそんなに入ってない。
なぜかというと豪遊したから。

でも。

「タケルさぁん! 私、分かっちゃったよ〜」
「これ見てみて」

         ジャラララ…

「えーと、一円玉は別にいらないか」

回答になるものはちゃんと揃っていて、よかった。
五円玉。十円玉。五十円玉。五百円玉。
そして全ての硬貨に書かれた……『日本国』の文字。

「これ。五円玉の裏、ここに『双葉』でしょ〜〜〜」
「十円玉は平等院鳳凰堂……寺院だよね、これ」
「五十円玉はこれ、名前知らないけど、お花」
「百円にもあるけどね、違うお花だけど〜」

「で、ロダンさん……竹は『わかりにくい』けど、これだよねえ?」
「五百円玉のここ、竹の葉っぱ〜」「で、国は全部に書いてて」

            ニコォ…

「んふふ……この五つの共通点は〜、『日本円の硬貨に書かれてるもの』ってことだよねぇ?」

962『黄昏のS』:2019/11/29(金) 23:40:38
>>961(日下部)

《頭脳遊びか。んふふ……お金をチラつかせられちゃうと弱いよお、私》

《いつでも始めていいよ。『時は金なり』……んふふ》

≪でもタケルさんだっておカネは必要でしょ?≫

そう、『正解』は既に出ていた。
後は、『それ』に気付けるかどうか。
そして、日下部は『それ』に気付いた。
大きなヒントになったのは、小林の言葉だ。
『数字』――――それに関係するもの。

《フフ…………》

不意に、ロダンが笑った。
それは、何か意味ありげな笑いだった。
やがて、彼の視線は日下部に向けられた。

《私は『君なら分かるだろう』と思っていた。
 何故なら、今までのやり取りの中で、
 君は何度も『答え』を口にしていたからだ》

《クサカベの言う通りだ。
 それは『日常的』に触れるものでありながら、
 『価値』の方に気を取られてしまうせいで、
 表面の『文字』や『図柄』は意外に記憶に残らない。
 『日本の硬貨に刻まれているもの』――――
 それこそが、この『謎』の答え》
 
《――――『君の勝ち』だ》

             [現在の総得点:17/20]

「日下部さん、凄いです。
 知っているけど気付きにくい……。
 言われてみると、本当にそうですね……!」

「あの…………」

「『日下部先輩』とお呼びしてもいいでしょうか……?」

千草が、おずおずという調子で日下部に言った。
千草は、日下部に敬意の篭った眼差しを向けている。
どうやら、大いに『尊敬』されたようだ。

(ALL)

《これで『言葉のパズル』は終了だ。
 二人とも、私の『遊び』に付き合ってくれた事に感謝する。
 君達のように賢い者と出会えた事は、私にとって大きな喜びだ》

《では、当初の取り決めに従い、『報酬』を授与するとしよう。
 タケルとクサカベ――君達の総得点は『17点』。
 このルールにおける最高クラスの『点数』を獲得した》

《よって――――君達には、『これ』を渡したいと思う》

スフィンクスのスタンド――『ストーン・エイジ』が尻尾を持ち上げる。
その尻尾の先端が、小さな『何か』に巻き付いている。
それは、何処にでもある何の変哲もない二つの『小石』だった。

963小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/11/30(土) 19:56:21
>>962(GM)

『成程……脱帽です、日下部さん』 パチパチパチ

『Priceless』 『金』で買えない……この店そのものが
正解を暗示していた、そう称して過言でない。

私には思い浮かばず、彼女は見出した。過程より結果そのものが
重要だ。この場の華を飾るのは間違いなく日下部さん。

(千草さんも、友人に成り得る人。
人同士の縁が出来て良かった)

私はきっと、彼女の傍にも 誰の側にも長く居る事は恐らく出来ない。
異性であり 千草さんと異なり追い求めるものが空白な私よりも
執着心であれ何であれ、奥底からの熱量を何処かへと迸らせている
日下部さんのほうが、きっと千草さんの隣に居るほうが合うと思われる。



ロダンさんからスタンドを介して差し出されたもの。

『……? これは……』

『石』 と言われると、呼び起こされるものは何時か前に起きた
怪盗事件における『隕石由来のアクセサリー』だ。

(……いや、然し まさか)

軽く脳内で小首を振る。
アレはスタンドを目覚めさせるものだと言われた。そのような
貴重なものが幾つも星見町に転がってるとは余り思われない。

(然し、スタンドは惹きあうものだと謂われる……)

拒否する理由も無いのだ。素直に手を差し出し受け取る事にする

964日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/01(日) 05:38:38
>>962(GM)
>>963(小林)

《やった〜。んふふ、まーね、私お金好きだから〜》

《言葉が好きなタケルさんの、役に立ててよかったよ》

このゲームそのものの適正はタケルさんの方が上だ。
ほとんどの問題は、タケルさん主導で解いてくれた。
最終問題も、彼との相談なしでは解けなかった。

《呼び方は、好きにしていいよ》
《私は千草くんって呼ぶからねえ》

《好きなだけ敬って、それでね、崇め奉ってえ〜》

        ニコ……

好意ってやつ自体はそれほどでもない。
けど、目に見えてわかる尊敬は、悪い気はしない。
すくなくとも、おべっかじゃない気はする。

そして・・・

《わお、これ何ロダンさぁん? 猫の通貨?》

    ジ…

《……まあ楽しかったよ、私も。たまには頭使わないとだねえ》

謎の……その辺にありそうな石を見つめ、手を伸ばす。
ほんとにただの石、かもしれない。まあ、猫だし。

とりあえず貰っておこう。まあ、その、形に残る思い出にはなる。

965『黄昏のS』:2019/12/01(日) 18:06:34
>>963(小林)

最終的に正解に辿り着いたのは日下部だが、
そこに導いた小林の助力も大きい。
それ以外の問題においても、小林は鋭い知性を発揮した。
総合的には、『二人で掴んだ勝利」と呼べるだろう。

《これは『石』だよ。
 謎掛けでも何でもなく、文字通りの意味でだ》

《もっとも、この場合は『鉱物』と表現した方が適切かもしれないが》

そして、『小石』を目にした小林の脳裏に、
かつて遭遇した『怪盗事件』の記憶が蘇る。
『スタンドを目覚めさせる隕石のアクセサリー』を狙う一味を、
同じ場に居合わせた二人の仲間と共に撃退した。
小林の考え通り、
『それ』は何処にでもあるような代物ではない筈だ。

    スッ

人知れず黙考した後――――小林は自らの手を差し出した。

>>964(日下部)

《そう、これは我々の世界で流通している『通貨』だ。
 安っぽく見えるかもしれないが、君達の使う貨幣に換算すると、
 ざっと『一万円』程の値打ちがある。
 いわば『一万円玉』とでも呼ぶべきかな》

至って真面目な口調で、ロダンは告げた。
その後で、次のように言葉を続ける。

《――『冗談』は、この程度にしておこう。
 『これ』は、我々にとって大きな価値のある物ではない。
 だが、『君達の世界』では相応に価値ある物と言えるだろう》

単なる『ジョーク』だったらしい。
冗談も言葉遊びの一種である事を考えると、
案外彼は冗談も好きなのかもしれない。
一方で、ロダンの言葉には意味ありげな響きがあった。

    スッ

そして――――日下部は自身の手を差し出す。

(ALL)

《――――『ストーン・エイジ』》

    ポイッ――――

『ストーン・エイジ』の尻尾がしなり、『二つの小石』が宙を舞った。
やはり、『ただの小石』にしか見えない。
『その時点』では。

           ブ ワ ァ ッ

『石造りの翼』が、『小石』を包み込むように受け止める。
一瞬後、翼が再び開かれた。
そこには、『二つの宝石』が輝いている。

《タケルには『ブルーフローライト』。和名は『蛍石』。
 『知性』を象徴するとされている石だ。
 持つ者にインスピレーションを与え、
 創造的かつ理路整然とした思考をもたらすと言われている》

          チカッ
                   チカッ

どこか儚げな印象も与える『淡い青色の宝石』が、
スフィンクスの『右翼』に載せられている。
小林の『リヴィング・イン・モーメント』にも、
少し似ていると言えるかもしれない。

《クサカベには『ゴールドルチルクォーツ』。和名は『針水晶』。
 持つ者に『金運』をもたらす石だ。
 特に、この『ゴールドルチル』は、その『最高峰』と呼ばれている》

           キラッ
                    キラッ

その名の通り、透き通った水晶の内部に、
『黄金色』に輝く『針状の結晶』が縦横に走っている。
その宝石が、スフィンクスの『左翼』に載せられている。

《私からの『ささやかな贈り物』だ。受け取ってくれたまえ》

《現在の相場で考えると…………
 どちらも『十万円』程の価値はあるだろう》

左右の翼に載せた二粒の宝石が、二人に差し出される。
これがロダンからの『報酬』のようだ。
その輝きは美しく、たとえ宝石の知識がなくとも、
紛れもない『本物』だと感じられた。

966小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/12/01(日) 22:30:34
>>965

『蛍石』 パワーストーンとして閃きを与える力があると言われている。

掌で、未だ翳りない日差しを受けて煌く蒼は瞳の中に映り込む。
 
「有難うございます」

長く見ていると、何処か忘却に追いやった出来事を思い出せそうになる。
何時か何処かで、私は長いような短い旅をした気がした。
その時も誰か複数の人達と共に歩みを進めて、この蒼と真逆な朱色の華を
体から撒き散らし死闘を演じたような……それは、夢現の幻想の一抹なのかも。

大切に胸元の懐へ仕舞う事にしよう。いつか、そう遠くない内に私は取り戻せるのか。
蛍石の蒼の輝きは、宙で硝子を回し浮遊する『リヴィング・イン・モーメント』にも
反射して同色の煌きを一部分染めていた。

(期待しても良いのだろうか)

(私のようなものでも、何時か追い求めたものが目の前に戻って来る事を……)

967日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/01(日) 23:59:37
>>965(GM)
>>966(小林)

《ふうん、猫から何か買いたくなったら使えるかな〜》
《ってなぁんだ、冗談か》

   パシ

《本物の宝石だ。凄いね、良い能力だねえ》
《『ゴールドルチルクォーツ』》

     ジィィ

《きれ〜だ》

手に乗せた宝石を覗き込む。
宝石。目に見えるはっきりした『価値』のかたまりだ。

《意味とかはよくわかんないけど、高そ〜。十万!?》
《売っちゃおっかな〜、お金いるまでとっとこうかな〜》

《んふふ》

ビー玉くらいの大きさでも、その『かたち』は独特だ。
こういうのは良い。お札や硬貨よりもっとわかりやすい。

《楽しかったのがね〜、これで何倍も大きくなったよ》

《タケルさーん、ロダンさぁん、それに千草くんもありがとね》

968『黄昏のS』:2019/12/02(月) 01:44:17
>>966(小林)

小林の胸に秘められている『失われた何か』。
いつの日か、『それ』を取り戻す時が来るのだろうか。
歩み続けていれば、いつかは辿り着けるかもしれない。

    ――――チカッ

手の中の『蛍石』は何も語らない。
しかし、その『輝き』は真実としてある。
少なくとも、今日ここで巡り合った『黄昏の非日常』は、
小林の旅路を彩る小さな一歩に成り得た筈だ。

>>967(日下部)

          キラッ キラキラッ

日下部の手の中に、確かな『価値』がある。
抽象的な概念ではなく、明確な質量を持った『物質』として。
『ゲーム』の中で、日下部は『知性』という形で、
自らの『価値』をロダンに示した。
だからこそ、その報酬として得た『宝石』は、
日下部自身とも言えるかもしれない。
決して揺らぐ事のない『価値』が、今そこにあるのだ。

(ALL)

《私にとって、非常に『価値ある時間』だった。
 改めて感謝を述べさせてもらいたい》

《タケル、クサカベ――――ありがとう》

《私は常にいるとは限らないが、もし気が向いた時には、
 また足を運んでくれると幸いに思う》

《その時は――また新しい『謎』を用意しておこう》

「あの……お二人とも、とても凄かったです……。
 千草も、是非お二人を見習いたいと思いました」

    クルッ

《ロダンさん、次は千草に『挑戦』させて下さい》

二人に触発されたらしく、千草はロダンに向き直った。
ロダンは尻尾を揺らしながら、それに応じる。

《ほう、それは結構な事だ。
 しかし、日を改めた方が良くはないかな》

《――――見たまえ。もう大分日が傾いているようだ。
 今から考え始めると、夜になってしまうかもしれない》

ロダンが窓の外に視線を投げた。
彼の言葉通り、ぼちぼち『良い時間』になって来ている。
もし特に用がないと思えば、店から立ち去ってもいい頃合だろう。
もちろん、小林と日下部は客だ。
残っていたとしても、誰も咎めはしない。
どうするかは、二人の自由だ。

    スッ――――

いつの間にか、カウンターの向こう側に、
柔和な微笑を浮かべた主人――『スティーヴン』が立っていた。
ロダンが彼を見ると、スティーヴンもロダンの方に視線を向ける。
飼い主と飼い猫というような雰囲気とは違っていた。
どちらかというと、『対等の間柄』を思わせる空気が漂っている。
これも、一つの『謎』と言えるのかもしれない。

969小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2019/12/02(月) 19:07:27
>>968(GM)

『そうですね、ロダンさんの告げる通り。もう日暮れに差し掛かっている
夜更かしは私は平気ですが、千草さんは少々酷でしょう』

光陰矢の如し……か。驚く程に時間が経つのが早い
 まだ店内に残るのも構わないが、千草さん程の年齢の方を一人
学生寮に帰らせるのも忍びない。特に冬の夕暮れを一人っきりで
立ち去らせるのは親友が居合わせれば僅かに顔を顰めているだろう。

「送っていきますよ」

千草さんに声をかけつつ、マスター『スティーヴン』に顔を向ける。


「マスター『ロダンさん』随分長く居させて頂き有難う御座います。
また来る時は宜しく願います」

道のりは未だ険しく頂きは見えず。
されど、一歩は一歩 確かな前進はしている筈なのだ。今この瞬間は……

主人と、ロダンの関係性も気に掛かる。だが、それは今後来日してからの
楽しみにとっておいて良いだろう。

  ――キュルキュルキュル

ポケットに入れたリヴィング・イン・モーメントは回転を続けていく。

970日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/02(月) 19:40:27
>>968(GM)
>>969(小林)

「あれ、もう夜じゃ〜ん。時間の過ぎ方って曖昧だよね」
「『時計』はハッキリしてるのにさあ」

     コト…

「もうそろそろ、帰らなきゃ」
「タケルさん、千草くん、私ね、寮の方じゃないからここでお別れだけど」

「また遊ぼうね、約束だよ〜」

空になっていたカップをソーサーに置いた。
外の空は誰の目にもはっきり、夜だ。

「ごちそうさま」

マスター……スティーヴンさんの方を向く。

「あのね、『キャラメルマキアート』が美味しかったから、また来るねえ」

それから、『ロダン』の方を向く。

《飲み物はおんなじ味でも、何回でも美味しいよ》
《でもね、謎解きは『新しい味』を期待してるから》

《だからまた遊ぼうね、約束だよ〜》

それだけ言って、店を出る。

971『黄昏のS』:2019/12/02(月) 21:30:42
>>969(小林)

「あっ、そうですね……。ありがとうございます、小林先輩」

「では、寮までご一緒しましょう」

    ニコリ

千草は笑顔で小林に告げる。
この場に小林の親友はいない。
しかし、今は隣に千草がいる。

「こちらこそ、ご来店に感謝しております」

「――――ありがとうございました」

《さようなら、タケル。またいつか》

          カランッ

千草と共に店を出る小林の耳に、
スティーヴンとロダンの声が届いた。
『リヴィング・イン・モーメント』は回り続ける。
小林が歩んでいく道筋を紡ぐかのように。

>>970(日下部)

「はい、日下部先輩。またお会いできる時を楽しみにしていますね」

    ペコリ

千草が日下部にお辞儀をする。
また会う事があれば、きっとまた敬意を持って接してくるだろう。

「それは何よりでした」

「是非、お待ちしております」

    ニコ……

日下部の言葉に、スティーヴンが穏やかに微笑んだ。

《さようなら、クサカベ。また会おう》

「――――ありがとうございました」

           カランッ

ロダンの『声』とスティーブンの声が日下部の耳に届く。
そして、日下部は店の外に出た。
来た時と違うのは、ほんの少しだけ『価値ある重さ』が増えた事だ。

(ALL)

そして二人は、それぞれの道を歩き出した。
『小さな非日常』は、黄昏の終わりと共に幕を下ろす――――。

(ふむ…………)

『Priceless』に残されたのは、ロダンとスティーヴンだけだった。
しばらくして、ロダンが小さく首を傾げる。

《――――どうかしましたか?》

《いや……何でもない》

スティーヴンの問い掛けに対し、ロダンはそのように返す。
しかし、少し気に掛かる事があったのは事実だった。

(チグサ――『少年』と見るべきか『少女』と見るべきか……)

(外見からは分かりにくいが、あの『匂い』からすると恐らくは……)

最後に『もう一つの謎』が残された――――のかもしれない。



小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』⇒『十万円』相当の『ブルーフローライト』獲得。

日下部『アット・セブンティーン』⇒『十万円』相当の『ゴールドルチルクォーツ』獲得。



                         『黄昏のS』⇒『終幕』

972『黄昏のS』:2019/12/02(月) 21:55:08

★氏名―ロダン
★スタンド―『ストーン・エイジ』
★能力―『鉱物』を操作するスフィンクス
★性別―オス ★種族―スフィンクス ★趣味―知恵比べ
★性格―成熟した男性を思わせる落ち着きがあり、
      『ウィット』を好む。
      通常の猫を超える高い知性を持ち、
      知恵比べに『至上の価値』を見出している。
★外見―毛も髭もない猫。
★備考―カフェ『Priceless』に間借りしている。
      主人のスティーヴンには『家賃』を払っているため、
      飼い猫ではない。
      自分の『声』が聞こえる人間を見つけては、
      報酬と引き換えに『謎掛け』を持ち掛けている。

【黄昏のスフィンクス】『ロダン』のスタンド。

人間の上半身・獅子の胴体・鷲の翼を併せ持つ、
石造りの『スフィンクス』のヴィジョン。

翼で触れた『鉱物』を別の『鉱物』に変化させる能力。
種類を変えるだけではなく、厚さや形を変えたり、
表面に言葉や模様を刻む事も出来る。

本体であるロダンは、この能力を、
『謎掛け』の出題や『報酬』を渡すために使っているようだ。
それ以外の主な用途は『家賃』の支払いである。

『ストーン・エイジ』Stone Age
破壊力:C スピード:B 射程距離:D(5m)
持続力:A 精密動作性:A 成長性:C


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