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【場】『 星見スカイモール ―展望楼塔― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:02:24
今世紀に建造された『東海地方』を対象とする集約電波塔。
低層エリアには『博物館』や『ショッピングモール』が並び、
高層エリアの『展望台』からは『星見町』を一望出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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349小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/07/29(日) 23:48:02
>>348

   スッ……

不意に声を掛けられて、ゆっくりと振り返る。
この場に、他に喪服を着た人はいない。
今の言葉が自分を指していることは、すぐに分かった。

  「はい……」

振り向いた女は、まず会釈をして、それから太刀川に向き直った。
どうやら年齢は同じくらいのようだ。
左手の薬指に、飾り気のない銀色の指輪が見える。

  「――なんでしょうか?」

尋ねる声色は、至って穏やかだった。
表情には陰があるが、口元には静かな微笑が浮かんでいる。
右手の薬指にも、左手と同じ形の指輪が嵌っていた。

350太刀川叶『スマザード』:2018/07/30(月) 00:23:57
>>349

 両手の薬指に指輪。
 出来た嫁さんやなぁ。
 うちやったら、さっさと金に換えてまうかもな。
 ……誰かを好きになったことなんかないんやけど。
 まぁ、ともかくこれは喪中で間違いないやろ。
 旦那が亡くなりはって忘れられず……って感じか。
 若い頃はここに来たとか……それか別の理由で高いところにおるか。
「いやぁ、うち最近この街に来てん」
 ほんまに、最近。
 まぁそこそこ時間はたっとるけど、何を指針にして最近っていうのは人それぞれや。
 うちはうちがこの街に来たのは最近やなんて、全く思ってへんけど。
「ここが観光スポットって感じかなと思って、とりあえず登ってみたんやけどな。登ったはええけど、街全体は見えても、街の細かいところは見えへんやろ」
 なんや、これやと勢いのままでここに来た馬鹿みたいやな。
「やから、誰かに聞こうと思うてんけど……ここはカップルばっかで、声かけようにもな。そういうわけで、声かけてんけど」

351小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/07/30(月) 01:34:01
>>350

「はい……。
 この場所に立ち寄る人は多いようですね……」

「――仰る通り、眺めがいいですから……」

相手を気遣うような柔らかい口調で言葉を続ける。
太刀川の心の声に気付く素振りは全く見られない。
おそらく、本当に気付いていないのだろう。

「私は……晴れた日に自然公園を散歩するのが好きなんです」

「あちらの方に見えるのですが……」

軽く視線を動かして、自然公園の方を見やる。
その言葉の途中で、口を閉ざした。
質問を受けているのに自分の話をしていることを申し訳なく思ったのだろう。

「――どんな場所がお好きですか?」

「私の分かる範囲であれば……答えさせていただきます」

改めて視線を戻し、そのように応じる。
喪服と指輪に対する太刀川の考えは当たっていた。
それは紛れもない事実だった。

352太刀川叶『スマザード』:2018/07/30(月) 23:11:55
>>351

「自然公園……あぁ」
 あんまりよう見えへん。
 目ぇちょっと悪なったかな。
 まぁ大まかにあそこやろうというのは分かるし、どういうところかもなんとなく理解できるけど。
「ええとこやなぁ。見えへんけど」
 これはホンマ。
「冗談やけど」
 これはちょっと嘘。
「ん、好きな場所か……」
 金のある場所?
 もっというと自分の自由に出来る金のある場所。
 まぁ、そういうところはないし。
 あったら教えて欲しいけど、怪しすぎやろ。
 喪服を着た女の人に金を自由にできる場所教えてもらうって、サスペンス小説のワンシーンか。
「……食べもんの美味しいところ?」
 胃袋押さえとくんは必要よな。

353小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/07/30(月) 23:52:30
>>352

  「――ええ、分かります……」

冗談という言葉を聞いて、軽く頷きながら微笑む。
初対面ではあるけれど、親しみの持てる人だと思った。
それなのに――どうしてあの時のことを思い出すのだろう……。

今は亡き彼と出会う前に、自分は結婚詐欺に遭ったことがある。
偽りの愛に欺かれた経験がある。
今、自分の頭の中には、なぜかその時の記憶が思い浮かんでいた。

   ――考えてはいけない……。
      そんな失礼なことは……。

   ――ごめんなさい……。

初めて出会う人の前で、自分は何を考えているのだろう。
そう思うと、胸が痛んだ。
心の中で謝りながら、それを表情には出さないように気を付ける。

  「……食べ物ですか」

気を取り直し、心の中で少し考えてから町の一ヶ所を手で指し示す。
先程の自然公園よりは近い位置だ。
三本の高い木が立っている。

  「あの――三本の大きな木が立っている辺りの奥ですが……」

  「そこの喫茶店は、お茶とケーキがとても美味しいですよ」

  「私も……時々立ち寄ることがあります……」

354太刀川叶『スマザード』:2018/07/31(火) 00:15:18
>>353

 ……人を騙すっていうんは簡単で、それで奥が深い。
 嘘をついてそれを信じさせるっていうのは、程度にもよるけど簡単や。
 例えばやけど、体がぶつかったとして骨が折れたっちゅうんは無理筋やろ。
 当たり屋とかユスリとか、まぁあれはその場におる人間とか自分の雰囲気が大事なんやろうけど。
 でも、ぶつかってちょっとよろける。
 これを嘘やと思う人間てどんくらいの数なんやろうな。
 お互いの体格差とかはあるけど、大人の男にぶつかったら大抵の女はよろけるやろ。
 そういう社会通念的な部分も使うわけやな。
 でももっと大掛かりな、それこそ詐欺は難しいわ。
 大掛かりやし。
「そ、色気のない話やけど美味いもんは食いたいやろ? 食い倒れ、ほどは無理にしても」
 後は会話する時にご飯食べられる所の方がやりやすい。
 いきなりカラオケボックスとか無理やし。
「ふぅん。そうなんや、喪服のお姉さんのおすすめとかってあるん?」

355小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/07/31(火) 00:56:44
>>354

会話を続けながら、ふと先程のことが頭に思い浮かぶ。
さっき感じたことは、きっと自分の気のせいだったのだろう。
そう思い、先程の考えを心の中から打ち消した。

  「そうですね……シフォンケーキでしょうか……」

  「ラベンダーを使ったシフォンケーキがあるんです。
   私は、よくラベンダーのハーブティーと一緒にいただいています……」

  「とても美味しいですし……香りも落ち着きますよ」

ラベンダーの香りには、心の乱れを整える沈静効果がある。
彼の下へ旅立ちたいという『自殺衝動』に襲われた時、
私はラベンダーの香りで心を落ち着かせている。
それでも鎮められなかった時は――
『自傷行為』という『鎮静剤』に頼るしかない。

  「――ラベンダーは、お好きですか?」

  「私は……庭で少しだけ育てているんです」

  「すみません――関係のない話をしてしまって……」

軽く頭を下げ、また女性に向き直る。
考えてみれば、こうして同年代の女性と話をする機会は、
今まであまりなかったように思う。
そのせいか、つい関係のないことまで喋ってしまう。

356太刀川叶『スマザード』:2018/07/31(火) 01:15:17
>>355

「ハーブティー……そういうのもあるんや」
 正直、ちょっと苦手や。
 ああいうハッパ系はあんまり得意でなくてな。
 一応飲めるし、なんてことない感じで飲めるようにはしとるけど。
「ラベンダー? うん、好きやで」
 嘘やけど。
「あ、あーあー。気にせんでええよ。喪服のお姉さんの話聞きたいし」
 これは……いや、いちいち自分の頭の中で解説する必要もないわ。
「うち、ここに仕事で来たんやけど、やっぱりしばらく世話になる街やし。色々縁も繋いどきたいし」

357小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/07/31(火) 01:49:10
>>356

ラベンダーは好き――。
その言葉を聞いて、また同じ感覚を覚えた。
直感と呼んだ方がいいのかもしれない。
何となく、彼女はそうは思っていないように感じられた。
ただの思い過ごしだと考えようとしても、それが心から消えなかった。

   ――今日の私は、どうかしてる……。

   ――せっかく、こうしてお話してくれているのに……。

自分でも気付かない間に、心に乱れが生じているのだろうか。
少し前に『鎮静剤』を使ったばかりなのに……。
無意識の内に、自分の右腕に視線を落とす。
喪服の袖に隠されている色の白い腕には、包帯が巻かれていた。
包帯の下には、自傷を行った際の生々しい傷跡が残っている。

  「そうでしたか――お仕事で……」

  「どんなお仕事をなさっているんですか?」

それでも微笑みは絶やさない。
自分の勝手な思い込みで、相手を不快な気分にさせてはいけないのだから。
それに、自分と同年代の彼女がどんな仕事をしているのか、
純粋に興味もあった。

358太刀川叶『スマザード』:2018/07/31(火) 02:05:10
>>357

 右腕。
 視線が動いて、右腕に。
 左やないんや。
 ……出来た人やなぁ。
 ほんまに、よう出来とるわ。
 絵に描いたみたいにきれぇな人。
「仕事はな、占い……は、趣味。営業職やね。セールスマンっていうんやろか。女やからマンではないけど」
 セールスウーマンって言わへんよな。
 訪問販売員か。
 なんかえらい物々しい感じやんな。
 営業っちゅうか、詐欺も営業みたいなもんやな。
 どっちかっていうと、うちは霊感商法とかそっちの方の詐欺のが面と向かってはするけど。
「あ、喪服のお姉さん、ハンドクリームとか使いはる?」
 自分のカバンをごそごそまさぐる。
 確か……あったわ。
 まだ使ってへんハンドクリーム。
 一応マジモン。
 これは知り合いから試してみてって貰ったやつ。
 友達に勧めたいからって使ってもないのにいくつかもらった。
 試供品やな。
「夏場でも案外紫外線で皮膚の内側が傷ついたりするもんなんよ。手ぇ出してもらえる? 片手ずつじゃないとあれやし」
 どっちの手ぇが出るかなぁ。
 それか手ぇは出さずに自分で塗るか。
 念のため、こっちから手ぇを出しとこうか。
 真面目……ないし、優しいタイプ。
 好意を無下にするタイプでもないと思う。
 いや、ハンドクリームを塗ったげるんが好意かどうかは知らんけどな?

359小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/07/31(火) 18:20:36
>>358

  「占いがお出来になるんですね」

感心した様子で少しだけ目を見開き、軽く頷いた。
詳しいわけではないけど、占いにも多くの種類があることは知っている。
彼女の言う占いとは、どういった類のものなのだろう。

  「セールス……どんなものを扱っていらっしゃるんでしょう?」

占いと関係があるのだろうか。
それとも全く別のものなのかもしれない。
親しみやすいと同時に、どことなく不思議な人だと感じる。

  「ハンドクリーム……ですか……」

一瞬だけ、また右腕に視線が向いた。
女性の手を煩わせないためには、自分で塗る方がいいと思っていた
しかし、既に彼女は手を出してくれている。
自分で塗ることを強く言うと、彼女に対して失礼に当たってしまう。
迷った末に、静かに左手を差し出す。

  「――お願いします……」

自分で塗るべきだと考えた理由は、もう一つある。
右腕に巻いている包帯を見られたくなかった。
それを見られたからといって、自傷の跡だとは思われないだろう。
だけど、たとえ分からなかったとしても、
人の目に触れさせるようなものではない。
それは、自分が見られたくないだけではなく、
相手にとっても見たいものではないと思うからだ。

360太刀川叶『スマザード』:2018/07/31(火) 23:31:28
>>359

「タロット占いやけどな」
 オーソドックスやしな。
 あとは手相とかは覚えるん面倒くさい。
 占い好きからしたらタロット占いとかは通る道かもしれんけど、素人やとそうもいかんかったりするし。
「そ、ハンドクリーム……」
 また右腕。
 そんなに気になることあるんか。
 ま、別にええけど。
「ん、お姉さんサウスポー? うちもやねん」
 左手ね。
 それとも右腕が気になって右手出せへんかったか。
 出せへんのやったとしたら、右腕になんか感じるもんがあるんやとしたら。
 うん――――
「並んで飯食べる時とか右利きの人と腕がっつがつするやろ。やから箸とかペンとかは右手でも扱えるようにしてんけど」
 ハンドクリームを塗っていく。
 ちょっと、慣れへん行為やな。
 ボディタッチくらいはするけど、美人にハンドクリーム塗る瞬間とかないでな。
「ほら、目ぇでは見えにくいけど、触ってみたら分かるくらいにはさらっとするで。あとUVカットもあるし」
 それからうちは左手を離す。
「反対側もしとく?」

361小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/08/01(水) 00:39:32
>>360

右腕を気にしていることは確かだった。
けれど、それを悟られていることには気付いていなかった。
先程から度々感じていた、
理由の分からない心の動揺が影響していたのかもしれない。

  「はい……私は左利きです」

  「私にも同じような経験がありますので……
   そのお気持ちは分かるつもりです……」

同意の意を込めた微笑を、ハンドクリームを塗ってくれている女性に送る。
右手で扱う必要がない場合は、お箸も筆記具も左手で扱っている。
つい昨日も、いつものように果物ナイフを左手に持って、
その刃先を右腕の上で滑らせた。

  「……ええ、お願いします」

答えるまでに、少しだけ間が空いた。
やがて、目の前の女性に向けて恭しく右腕を差し出す。
内心では、まだ迷いがあった。
しかし、せっかくの彼女の好意を無にしたくなかった。
してはいけないと思った。

  「……ごめんなさい」

  「――見苦しいものをお見せして、申し訳ありません……」

袖の下には、白い腕に白い包帯が巻かれていた。
そして、謝罪の言葉と共に、そっと目を伏せる。
誤る理由は、それが自傷の跡だからだ。
一見して分からないとしても、決して気持ちの良いものではない。
本当は見せたくなかったけれど、
彼女の好意も無碍にすることはできなかった。

362太刀川叶『スマザード』:2018/08/01(水) 01:28:13
>>361

「あーそうやんな。左利き用の道具も増えてきたけど、世の中の人が左利きになったわけでもなし。結局苦労しとる」
 もっとも、うちは横並びよりも対面して話すことのが多い。
 今回みたいにな。
 やから、あんまり気にはせぇへん。
 右手も普通に使えるし。
「はい、お願いされま――――」
 当たった。
 左手と右腕の関係もしっかりと見えた。
 まぁ、旦那が死んで後を追いたくて……いや、どうやろか。
 子供がおるから死なれへんのか、死ぬ決心がつかへんのか。
 そこはどうでもええか。
 満ち足りた人間よりも、抱えた人間の方が不安定で押すと倒れやすい。
 孫と住む老人より、一人暮らしの老人ってな。
「ええよ」
 ただな、うちは自分自身の善性っていうものを一番信じとる。
 誰も彼もを疑って、己自身も疑って、何もかもを偽るのが詐欺ってもんやが、うちはうちの人間の部分を捨てるつもりはない。
 騙して悪いなぁと思いながらも、しっかりむしる。
「そんなこと言わんといてや。今日初めておうた仲やけど、喪服のお姉さんがそう言う事言うんは聞きたくないから」
 やから、本心から相手の事を認めてしまう。
「これは生きた証や。別に、これでどうこうするつもりもない。気にせんでええよ、少なくともうちには」
 騙す気にならん。
 あんたみたいな人間は。
 嘘やけど、いやホンマに、仕事となったらきっちり盗るけど。
「やから今は黙ってお姉さんに手ぇ塗られとき。このド阿呆」

363小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/08/01(水) 02:26:02
>>362

私に子供はいない。
自分の命を終わらせることにも躊躇いはなかった。
それでも私が生きているのは、彼との約束があるからだ。
『自分の分も生きて欲しい』と、彼は最後に言い残した。
だから、その約束を果たすために私は生きている。

  「――はい」

女性の顔を正面から見据えて、ただ一言だけ告げる。
その短い言葉には決して浅くない感謝の念が込められていた。
この包帯の下には、見るに耐えない自傷の傷跡が隠されている。
だけど、この傷跡が私を生の世界に繋ぎ止めてくれている。
これは、私が今を生きている証でもあるのだから。

  「ありがとうございました……」

  「気分が優れなかったので……
   何だか元気になれたような気がします……」

袖を元に戻してから、女性に向かって丁寧にお辞儀をする。
その表情には、最初に顔を合わせた時と変わらない、
穏やかな微笑みが浮かんでいる。
彼女とは初対面であり、ほんの短いやり取りを交わしただけかもしれない。
それでも、心の中には確かに温かいものが残っていた。
会話の中で抱いていた直感めいた感覚も忘れてしまう程に。

   ――治生さん……。

   ――私は、あなたとの約束を守ります……。

   ――だから……私を見守っていて下さい……。

  「少し、外を歩いてきます」

  「今は日差しも弱まっているようですから……」

  「よろしければ――またどこかでお会いできることを……」

  「では……失礼します……」

もう一度、深々と頭を下げて、展望台を立ち去った。
名前も知らない女性――もし再会できた時には、
その名前を尋ねてみたい。
そう、心に思いながら――。

364太刀川叶『スマザード』:2018/08/01(水) 22:59:38
>>363

「ん。はい、どうも」
 といってうちはあのお姉さんを見送った。
 別に入り口まで連れてった訳じゃないで。
 その場でおらんくなるんを見送ったってだけ。
 元気に、か。
 別にそれ自体はどうでもいい。
 これが心の柔らかい部分に近づく一手とみてもいいし、人との繋がりの一つとみてもいい。
 あ、そういえば名前、名乗りも聞きもせんかった。
 はは、ま、それもええ。
 だって人間、初対面の奴に簡単に名前を教えるのは不用心が過ぎるってもんや。
 どれだけ世界が優しくても、それはならへんってことやで。
 というわけでおしまいおしまい。

365今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/11/01(木) 05:15:37

ここに一人で来るのは珍しいんだけど、そういう時もある。
だってこのあたりで一番大きなショッピングモールだから。

「……」

          ガサゴソ

  シュルル

          『今泉サン。浪費ハ ヨクナイデスヨ』

「わっ、先生。浪費じゃないですよ」
「ちょっと買い過ぎ感はありますけど」
「無くなってからじゃ困りますし」

雑貨屋さん、ファンシー小物屋さん、画材屋さん。
それから文房具屋さんをめぐってマスキングテープ集め。

今はそれの途中で、ベンチで休憩中。

「っくしゅ!」

          『風邪デスカ? イケマセンヨ』
          『冬着モ 買ッテ帰ルノハ ドウデスカ?』

「フツーに今くしゃみ出ただけですよ」
「誰かが噂してるのかな」「良い噂だといいなあ」

よく考えたらこんな公共の場で、先生とお喋りするって……
それがもう『変な噂』の原因になるかも。周りには独り言に見えるんだよね。

366小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/11/01(木) 18:34:10
>>365

歩いている途中で、不意にくしゃみをする声が聞こえた。
つばの広い帽子を被った頭を軽く動かし、その方向に反射的に視線を向ける。
まず、一人の少女が見えた。
次に、その傍らに立つ『見覚えのあるスタンド』が――。

       コッ コッ コッ ……

緩やかな足取りで、少女に近付いていく。
少女には、見知らぬ喪服の女の姿が見えるだろう。

  「――こんにちは……」

ベンチの側で立ち止まり、少女に向けて軽く会釈する。
それから、『マスキングテープのスタンド』に向き直る。

  「また……お会いしましたね」

  「――『コール・イット・ラヴ』さん」

『コール・イット・ラヴ』に向けて、少女にしたのと同じように頭を下げる。

  「その節は、お世話になりました……」

以前、このスタンドには歓楽街で出会ったことがある。
『傷を補修する能力』によって、『自傷』で生じた傷を治してもらった。
その時は本体が分からなかったが、この少女がそうなのだろう。

367今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/11/02(金) 06:39:24
>>366

「へ? あ、こんにちは。どーもです」

        ペコ

「??」

何だか分からないけど挨拶を返した。
返しちゃった、って言った方が良いのかな。
初対面なのにまた会ったとか、フツーじゃないし。

              『コンニチハ。〝小石川〟サン』
              『アノ後 経過ハ イカガデスカ?』

「えっ、先生は知り合いなんですか!」
「うーん、謎。そんなことあります?」「いや、あるのかも」
「先生、たまに勝手に出てどこか行きますもんねっ」

              『スミマセン、〝習慣〟的ナモノデス』
              『今泉サン、コチラ〝小石川〟サンデス』

          イマイズミ ミライ
「あっ、えーと」「『今泉未来』です」
「先生がおさきにお世話になったみたいで」

        ニコ

「せっかくなので」「私の方もよろしくお願いしますね!」

よくわかんないけど、先生の知り合いらしい。
そうなると、私も知り合いって事になるし、
せっかくなのでよろしくしておくことにしたわけだった。

368小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/11/02(金) 20:22:29
>>367

  「いえ、そんな――」

  「親切にしていただいたのは、私の方ですから……」

少女の言葉を聞いて恐縮し、困ったような微笑みを浮かべる。
事実、自分は傷を治してもらっただけなのだから。

  「はじめまして、今泉さん……」

  「私は、『小石川文子』と申します」

  「こちらこそ……どうぞよろしくお願いします……」

挨拶と共に、先程よりも深く頭を下げる。

  「はい――あの時はありがとうございました」

  「綺麗に治してくださったお陰で、以後も変わりはありません」

あの時の傷は、もちろん治っている。
跡も残っていない。

  「――……」

その代わり、今は新しい傷が右腕にあった。
昨日の夜、自分で付けた傷だ。
包帯が巻かれている腕は、袖に隠れていて見ることはできない。

369今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/11/02(金) 23:58:58
>>368

治すって言ってるから怪我してたのかな。
先生も私も、怪我したり物が壊れたらなんとなく『わかる』。
怪我を『してる』のは分からなくて、『した』のがわかる。
フツーじゃない感覚でなんとも言えないけど、直感みたいにわかる。

「へーっ、先生お手柄ですねえ」

            『先生デスカラ。怪我人ハ ホウッテオケマセン』

先生はそれを感じたら治しに行っちゃうから、そういう事なんだろうな。
なんで怪我してたのかとかは、フツーに聞くべきじゃないやつだよね。
こけたとかなら良いんだろうけど、デリカシーっていうのもあるし。

「先生は『治す』事のプロですからね〜」
「私もたまにお世話になってるんです」
「フツーにちょっとすりむいた時とか」

            『怪我ヲ シナイノガ 一番デスガ』
            『シテシマッタナラ 私ハ 必ズ助ケマス』
            『ソレガ〝ラヴ〟デスカラ』

「頼りにしてますよ、先生」
「まあ先生的には、頼らず平和で済むのが一番なんでしょうけど」

            『モチロンデス』

「ですよね」「そういえば、えーと」
「小石川さんは今日はお買い物ですか?」

服とか買いに来たりしたのかな。
いきなり黙るのもどうかなって思うから、
とりあえず世間話を切り出してみる事にした。

370小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/11/03(土) 17:39:16
>>369

二人の話に耳を傾けながら、心の中で考える。
『治す』能力――改めて、自分のスタンドとは対照的だと感じた。
『スーサイド・ライフ』は自分自身を傷付けることが能力のきっかけになるからだ。
ただ、似ている部分も少しだけあった。
『スーサイド・ライフ』で切り落とされた身体の部位は、解除すると『再生』される。
見方によっては、それも『治る』と呼べないこともないのかもしれない。

  「ええ――今泉さん達のおっしゃる通りだと思います」

  「怪我をすることなく過ごせるのが何よりですね……」

穏やかな微笑と共に、二人のやり取りに同意を示す。
その言葉に嘘はなかった。
けれど、自分は『自傷』を必要としており、実際に行っている。
そのことを考えると、内心では複雑な思いを感じずにはいられない。
しかし、それを表情には出さないように努めていた。

  「私は……花の種と苗を買いに来たんです」

  「自宅でラベンダーを育てているものですから……」

そう言って、腕に下げている小振りの紙袋を軽く上げてみせる。

  「少し前に、向こうの方に新しい花屋さんができたんです」

  「とても素敵なお店ですから、見ているだけでも楽しいですよ」

言葉と共に、慎み深い笑みが口元に浮かぶ。
そこに限らず、町の花屋には時々足を運んでいる。
先ほど言ったような品物を購入することが主な目的だ。

  「――お隣に座ってもよろしいでしょうか?」

言いながら、視線を少女の隣に向ける。
不思議なスタンドとの奇妙な再会と、その本体である少女との出会い。
挨拶だけで済ませてしまうよりは、もう少し話をしてみたい気持ちがあった。

371今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/11/03(土) 23:43:14
>>370

「痛いですもんね、怪我すると」
「フツーに嫌ですよね」

          『痛クナクテモ デスヨ』

「そうですね先生、痛くない怪我ってわかんないけど」
「ともかく、小石川さんも今は元気みたいで何よりです」

           ニコ ニコ

元気なのは喜ぶのがフツーだ。
なんとなく、元気じゃなさそうな顔だけども。
大人だしなにか悩みとかあるのかもしれない。

「へ〜、お花ですかっ」
「いいですねえ、オシャレで」
「お花屋さんって外から見るくらいしかないです」
「花より団子ってわけでもないんだけども」

「あ、どーぞどーぞ。すみません、荷物どけますね!」

       ススッ

マスキングテープがたくさん入った紙袋。
それから、脱いでいたブレザーを膝の上に。
先生にも後ろに回ってもらって座る場所を開けた。

「種や苗って事は、一から自分で育てるんです?」
「ガーデニングって、フツーどうやるものなのか知らないんですけど」

おしゃれな話だし、フツーにちょっと興味があった。
なので隣に座ってそれきりじゃなくて、お話をしてみようと考えた。

372小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/11/04(日) 00:59:33
>>371

  「――ありがとうございます……」

お礼を言って、少女の隣に腰を下ろす。
邪魔にならないように、紙袋は自分の横に置いた。

  「ええ――私も専門家ではありませんが……」

  「苗から育てる時は、まず植木鉢と土が必要になります。
   それから鉢の底に敷くネットと……底に敷き詰める石ですね」

  「花を咲かせるための基本的な手入れは、水やりと肥料です……」

  「種から育てる場合は、まず発芽を待たなければいけませんから……
   もう少し準備と時間がかかることになりますが……
   開花してくれた時の喜びは、とても大きなものですよ」

  「――私は、ラベンダーの香りが好きなんです……。
   優しい香りに包まれていると、気持ちが落ち着くので……」

  「だから、私はラベンダーを育てているんですよ」

一通りの話を終えて、隣に座る少女に微笑んだ。
そして、ハンドバッグの中から小さな布袋を取り出す。
その小袋からは、ほのかにラベンダーの香りが漂っていた。

  「この中には、ドライフラワーにしたラベンダーが入っているんです。
   こうすれば、いつも持ち歩くことができますから……」

心が乱れた時も、この香りが気分を鎮めてくれる。
けれど、それでも気持ちを抑えられない時もある。
以前、『コール・イット・ラヴ』に出会った時と同じように。

373今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/11/04(日) 02:55:53
>>372

「へーっ、確かに良いにおいですね!」
「自分で育てたら愛着も湧きそうですし」
「でも、愛着湧いたら勿体なくて使えないかも」

        エヘヘ

「私も今度買ってみようかな〜」

本当に買うかはちょっとわからないけど。
でも、花を育てるとしたらいつ以来かな。
覚えてないや。朝顔は育てた気がする。

       『買ウナラ キチント、水遣リシナイト イケマセンヨ』

「買ったらちゃんとしますよ、先生!」
「私フツーに朝顔とか枯らさない方でしたし」
「甲斐甲斐しく世話すると思います」

「買ったらですけど」

いつか買うかもしれない。
そーいうのは大事な気がする。

「ちなみに私はマスキングテープを買いに来たんです」
「今日買ったのは、特に良い匂いがしたりはしないですけど」

       すっ

「色とりどりなのは、お花と同じですよねっ」
「見せあいっこしましょう!」

袋を開けると、いろんな柄のテープ。
見せびらかしてもしょうがない気もする。
けど、お花を見せてもらったしお返しみたいなものだ。

374小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/11/04(日) 22:53:34
>>373

  「――『マスキングテープ』が、お好きなんですね」

少女の後ろに立つ『マスキングテープを巻いたスタンド』に視線を向ける。
スタンドは、本体の精神に根ざした性質を持つと聞いていた。
自分に『ナイフ』のスタンドが発現したことからも、それは納得できる。
おそらくは少女と『コール・イット・ラヴ』にも、そのような関わりがあるのだろう。

  「ええ……お花のように素敵な色合いだと思います」

袋の中に視線を落とし、素直な感想を告げる。
自然物と人工物という違いはあっても、
それぞれが様々な色を持つという点では共通している。
人と人の間にも、それと同じことが言えるように思えた。
違う人間同士でも、それぞれがそれぞれの色を持っている。

  「今泉さんは、どのような使い方をされているんですか?」

マスキングテープというものは知っているし、使うこともある。
けれど、そんなに頻繁に使うというほどではない。
袋の中に見える沢山のマスキングテープ。
それらは、どのような用途に使われるのだろう。

375今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/11/05(月) 02:51:31
>>374

「好きですね〜っ。便利ですし、可愛いので」
「フツーに物に貼ったり、飾りにしたり」
「あと壁用のやつとかもありますね」

太いテープをいくつか出して見せた。
ついでにカバーをデコったスマホも。

          ゴソ

「これです! 綺麗でしょ」
「部屋の壁に貼ったら壁紙みたいでおしゃれですよっ」

マスキングテープが好きだ。
テープはなんでも綺麗に覆ってくれる。
汚れとか割れとかも『補修』して、フツーにする。

             『今泉サン』

「あっ、そうだそうだ」

「すみません、まだ買い物がありまして」
「スマホで思い出しちゃった」「ちょっと行って来ますね」

「その前に」

               スッ


「よかったら連絡先交換しません?」
「せっかくですし」「もしよかったら、ですけど」

ちょっと休憩のつもりだったけど、話し込んじゃった。
新しい『無地カバー』も買うの思い出したし、もう一回雑貨屋さんかな。

376小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/11/05(月) 22:31:02
>>375

  「色んな使い方があるのですね……知りませんでした」

自分の知らない話を聞かせてもらえるのは興味深い。
穏和な微笑と共に、少女の言葉に耳を傾ける。
時折、軽く頷いて相槌を打ちながら。

  「お引止めしてしまいましたね」

  「楽しいお話をありがとうございました……」

感謝の意を告げて、バッグから落ち着いた色合いのスマートフォンを取り出す。

  「ええ……構いませんよ」

  「縁のある方が増えるのは、とても嬉しいことですから……」

連絡先の交換は、すぐに終了した。
そして、ベンチから立ち上がる。
座ったまま見送るというのは、失礼に当たってしまう。

  「今泉さん、『コール・イット・ラヴ』さん……」

  「またお会いできる時を楽しみにしています」

別れの言葉と深いお辞儀で、少女とスタンドを見送る。
その後は、彼女達と反対の方向に立ち去っていった。

377今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/11/06(火) 05:23:49
>>376

「意外と万能なんですよ〜」
「フツーのテープと違って見た目が綺麗なので」
「やろうと思えば何にでも使えるんです」

      ニコ

「登録、っと」
「こちらこそ! 楽しかったですよ」
「お花に詳しい友達って、あんまりいなくって」

スマートフォンをポケットに。
小石川さん、スマホの色が『っぽい』なあ。

          『エエ、マタ オ会イシマショウ』

「ありがとうございます小石川さん」
「それじゃ、また!行きましょう先生」

          『ホドホドニ 買イマショウネ』

そういうわけで、買い物の続きに向かった。

378美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/11/16(金) 21:45:07

「ふうっ」

買い物を終えて休憩スペースに座り、一息つく。
一人きりで、特に連れ合いはいない。
そろそろ恋人が欲しい季節ではあるけど……まぁ、これからよ、これから。

        ゴソ

           「――ん」

買ったものを確認するために袋の中を覗く。
チラシが一枚入っていた。
多分、商品を入れる時に一緒に入れられたのだろう。

       「……」

チラシの内容を黙読する。
新しくできた店の宣伝とか、ちょっとしたイベントの案内とか、そんなようなものだ。
あ、端の方に150円引きのクーポンが付いてた。

  「……あ」

思わず声が出てしまった。
チラシの一角に、その名前を見つけたからだ。
『Veraison』――この町のアイドルグループ。
その存在は知っていたが、なるべく見ないように意識していた。
別に嫌いという訳じゃない。
彼女達は何も悪くない。
これは私自身の問題だから。

「ふぅ……」

小さく深呼吸する。
昔は昔、今は今だ。
そう自分に言い聞かせる。
だけど、そうはいっても完全に忘れるというのは難しい。
やや神妙な面持ちで、チラシを眺める。

379稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2018/11/23(金) 21:31:31
>>378

「…………」

         ドサドサ

休憩スペースに腰を下ろす。
人が多い場所なので、メガネと帽子とマスクで、
顔と長い髪を隠している――――隠せているかは知らない。

(ちょっと買いすぎたか……?
 積んでる本多くなって来たんだよな……)
 
          (落ちものパズルじゃないんだから、
           いくら積んだって詰むわけじゃないけど)

  (……そういう考えでいると、
   オタクやめたときに詰みそうだ。えひ)

本屋の袋を2、3脇に置いて座る姿は、
文芸少女に見えなくも無い訳だが……
大人から見れば、それほど多すぎる量でもない。

     チラ

(…………………あ、僕らが載ってるチラシじゃん)

ともかく、本を置いた横目に、隣に座っていた女のチラシが見えた。
一瞬それを見つめてしまったが、特に珍しい訳でもないので、目を逸らす。

もちろん、深呼吸の意味などわかるわけがない。セールに満足してるのか?くらいだ。

380美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/11/24(土) 00:53:56
>>379

音が聞こえて、隣に誰か座ったことに気付いた。
チラシから反射的に顔を上げ、無意識の内に一瞬その姿を見た。
そして、またチラシに視線を戻す。

「……?」

その時に気付いた。
隣に座る人物と、チラシに写る三人の内の一人。
その両者が、どことなく似通った雰囲気を持っていることに。

(でも……まさか――ねえ)

一瞬しか見ていないが、帽子とマスクと眼鏡で風貌が分かりにくい顔。
それは、『変装』を感じさせた。
しかし、そんなことがあるだろうかとも思う。
タイミングが良すぎる。
『偶然』にしては。

(でも、まぁ――)

(折角だし、もうちょっと確かめさせてもらおうかな?)

       スウッ
             パカッ

荷物からコンパクトを取り出し、化粧のノリをチェックし始める。
その際、ほんの少し角度を変えて、隣の少女の顔をもう一度確認しよう。
まさか、とは思うけど。

381稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2018/11/24(土) 22:42:27
>>380

「………………」

(今目ェ合ったか……?
 僕のファンってわけじゃないよな……
 変装してるんだし……ばれないと思うけど)

(まあ……横のやつがチラ見して来たら、
 見返すのは常識的に考えて……変でもない)

           (気にしないどこ……)

ファン層とはあまりにも違う人間だ。
偶然というか、まあ、そういうものだろう。

そういうわけで、横の女を意識していない。
スマホを取り出し、SNSを見ているが、
何か書きこむでもないし……話題も雑多だ。
だから、それだけで『何者か』は分からない。

        ・・・

            ・・・
               
                ・・・

(……う、メガネ曇って来た……マスクのデメリットだ)

                (……)

    スッ

ポケットの小さなケースを出して、
拭き取り用の布を手に取り、眼鏡をはずす。

その瞳は――――小さな宣材と同じ、
どこか居心地の悪そうな、季節外れの桜色。

382美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/11/24(土) 23:31:25
>>381

「――……」

(そうらしい、わね)

鏡に映る印象的な桜色の瞳。
少女の顔の中で、それは一際目立つ特徴だ。
コンパクトをしまい、少し思案する。

(さて……どうしようかしら)

確認は取れた。
これからどうするか。
別に何かしないといけない理由はない。
ただ、これも何かの縁かもしれない。
そう思うと、この縁を無下に扱うのも勿体無い気がした。

「『稗田こいひめさん』」

少女の名前は知っていた。
正面を向いたまま、ぽつりと彼女の名前を呼ぶ。
周囲に聞こえないように声量は抑えている。

「――合ってる?」

それから横を向いて、少女に視線を合わせる。
表情には笑みがあるものの、正直なところ緊張してる自分がいた。
彼女を通して過去と対面することに、躊躇いを感じているせいかもしれない。

383稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2018/11/25(日) 00:54:07
>>382

          ビクッ

(なんだこいつ……何の笑いだそれ……
 …………いきなり『こいひめ』呼びだから、
 やっぱファンか…………それとも、アンチか?)

笑みの奥に何か、喜び以外に物を感じなくもない。
握手会に来たファン、とかとも違う……正体不明だ。

「……………………」

      「人違い……」

           「…………だったらどうする?」

                ニタァ

人違いで押し通そうと思わなくはなかったけど、
声を出してしまった以上はたぶん、隠せないだろう。

「……変装の質、ヌルかった? えひ……『目出し帽』でも被るべきかな」

      「アニメとかマンガの『黒ローブ』みたいに……
       都合よく顔が隠れるフードとか、あればいいんだが……」
  
   グイ

コートのフードを被る真似をして、それから声を掛けた女の顔を再度見る。
やはり知らない顔だ。声は……声だけでは分からない。はたしてどういう人間だろう。

「…………あー、その、悪いけど……あんま、ファンサとかは出来ないぜ」
  
                  「オフだし……人、多いし……」
 
もしファンなら悪いが、自分を『こいひめ』と呼んだなら牽制はしておこう。
握手代をCD一枚にするほど売れてはいないが、何でもしていてはアイドルにならない。

                      ・・・少しくらいは、良くしたいけど。

384美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/11/25(日) 02:01:24
>>383

隣の女は、稗田こいひめより十歳は年上に見えた。
ラフなアメカジ風ファッションに化粧っ気のある顔。
年相応の落ち着いた明るさがある。

「そうね。その場合は素直に謝るわ」

「私がハジかいて、それでオシマイ。それくらいなら安いものよ」

人当たりのいい表情を崩さないように意識している。
しかし、やはり心のどこかで緊張しているのは否めない。
普段は、内心の迷いや躊躇いは表には出さないことにしている。
ただ、この時ばかりは上手くいかなかった。
少しばかり、顔に出てしまっているかもしれない。

「アハハ――そんな格好してたら却って目立っちゃうんじゃない?
 でも、逆に目立つ格好をするっていうのは意外と効果あるかもしれないわよ」

「特徴は特徴を消してしまうから。
 身に着けているものに注意が向いて、
 着ている人自体には注意が向きにくくなるものなの。
 警官の制服は覚えていても、警官の顔は記憶に残りにくいのと近いわ」

「『目出し帽』や『黒ローブ』がいいかどうかは別の話だけれど、ね」

変装について話しながら自分自身の過去の経験を思い出す。
自分も、かつては町を歩く時には変装する必要があった。
だから、色々と考えては実行していた。
その場合、目立たないことを意識した格好をするより、
逆に人目を引くような服装を選んだ方が効果的なこともあった。
もちろん、その場の状況にもよるが。

(今は変装しなくても町を歩ける。嬉しいんだか悲しいんだか)

「ええ、分かってるわ。それじゃあ、少しだけ世間話でもしない?」
 
「気軽なノリで、ね」

「――っと、私だけ名前を知ってるっていうのも失礼よね」

よく通る声だ。
単に生まれつきのものという感じでもない。
ボイストレーニングとか、専門的な訓練を積んでいるような響きがある。

「申し遅れました。私は、こういう者です」

ややかしこまって名刺入れを取り出し、そこから一枚の名刺を取り出す。

「『業界的』には、ちょっとだけ近いかもしれないわね。
 受け取れないっていうなら見せるだけにしておくけど」

           スッ

そう言いながら、少女に向けて名刺を見せる。
そこには、次のように記されていた。

   『 今日も、あなたの隣に電気カナリアの囀りを
          
         《 Electric Canary Garden 》
      
                  パーソナリティー:美作くるみ 』

隅の方には、手書き風の小さなイラストが添えられている。
『電源コードの付いたデフォルメされたカナリア』だ。
マスコットキャラクターの『電気カナリア』。
――ちなみに、考案者は美作くるみだ。

385稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2018/11/25(日) 04:50:29
>>384

「…………まあ、それもそうだわな。
 ………………『美作くるみ』……ふぅん」

   (聞いた事ない……事も無い気がしてきたな。
    ラジオ……『巣ノ森』が聴いてた気がする。
    タイトルまでは覚えてないけど、声が似てる)

       (内容…………あんま覚えてないけど)

ハッキリ言ってしまうと覚えていない名前だ。
イラストは良い出来だが……番組名も知らない。
そもそもラジオを聴く、という習慣がないし、
グループのメンバーや知人が聞いていたとして、
正確に名前を憶えていられるほど印象深くはない。

・・・キライとかじゃなくて、『琴線』に触れないジャンルだ。

「僕、オフで自分の名刺とか、持ち歩いてないしぃ……見るだけで頼む」

ラジオパーソナリティーとアイドルでは、
オフの気軽な話というのもけっこう難しい。
名刺を受け取ったらなおさら、後はもう仕事になるだろう。

「……でもまあ一応、改めて言うけど、僕は『稗田こいひめ』だぜ」

    「あー、よろしく…………それと」

                スッ

           「本名は、『稗田』……『恋姫』」

               「ってのは別に隠してもないし、
                オフならそっちで呼んで良いよ。
                えひ、特別扱いとかじゃなくて、
                ほとんどのやつにそうさせてるから」

帽子を下ろし、膝の上に載せる。
メガネの上に溢れ出した長い髪を指で払い、向き直る。

「……ラジオのパーソナリティーって、トークが仕事なんだろ」

「世間話のレベルも高そうだな……えひ、ついてければいいんだが」

         「政治とか……環境とか、スポーツも全然わかんないぞ僕」

386美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/11/25(日) 22:44:48
>>385

「あぁ、それは平気よ。
 そういう『社会派の話』は、別のパーソナリティーがやってるわ。
 私はリラックスして聴ける『カジュアルな話題』がメインだから」

「朝起きたらスマホが見当たらなくて、探したら冷蔵庫の中に入ってた――とか。
 私がドジやった事とか、最近の気になる事とか、そんな話をしてるわ。
 真面目な話と真面目な話の間の『端休め』って感じね」

「例えるなら、『スポンジケーキの間に挟まったホイップクリーム』よ。
 できれば、その上に乗ってる『イチゴ』を目指したい所だけど――
 なかなかそこまでは行けないわね。
 私も未熟者だから」

名刺を引っ込め、名刺入れに戻す。
何も、『出演交渉の前に根回しをしておこう』などとは考えていない。
そんな企画も持ち上がっていないし、持ち出す気も今の所ない。

「そういう訳だから、気軽にお喋りしましょう――『稗田恋姫』さん」

彼女がオフの時間を過ごしていることは分かっていたはずだ。
それなのに、『仕事中の呼び名』を意識してしまったのは、
直前までチラシを眺めていたせい――だけではない。
知らず知らずの内に、『アイドルとしての彼女』に注意を向けていたからだろう。

「実は、今あなたとバッタリ出会って思い出した事があるの。
 昔、私もアイドルに憧れてた時期があったのよ。
 まぁ、見ての通り、結果は『お察し』ってヤツなんだけど」

「さっき、このチラシを見てて、その時の事を思い出しちゃったのよね。
 『ちょっと羨ましいな』って。
 まさか、その直後に『ご本人』に出会えるなんて思ってもみなかったけど」

387稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2018/11/25(日) 23:38:29
>>386

「あぁ、そういうのなの……すまん、勉強不足だった。
 ……ってのも、『リラックス』出来てないわな。えひ」

           「……」

(は、反応しづれぇ……どうリアクションすりゃいいんだよ……)

リラックスを志す矢先に『アイドル志望』の過去。
一回り年上の……『同好の士』とも言えない気はする。
どれくらい憧れていたのか、結果としてどこまでいったのか。

「あ〜……うん、気軽に、ね」 「えひ……」

(…………やばいなこれ。
 こいつはそういう気じゃないんだろうけど、
 僕からしたら……何言いだすのもベリーハード……)

ラジオ局でパーソナリティーをやっているくらいなわけだし、
声もキレイだし、『素人でくすぶってました』って感じはしないけど。

「え……っと」

(羨むほどのもんでもない……なんてのは、
 口が裂けても言えないぜ……失礼すぎるし……)

美作にも、ファンにも、アイドルをやっている自分にも。

「…………ラジオって、『ハガキ』とかで話すイメージなんだけど。
 けっこう、パーソナリティーのトークが入ったりもするもんなんだな」

             「その辺も、カジュアルさって感じぃ……?」

アイドルの話を続けるのは流石に気が引ける。
どういうスタンスで話してくるのかも予想できないし、
とりあえず『ラジオ』の方の話から……気軽に、いけないだろうか……?

388美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/11/26(月) 01:30:43
>>387

アイドル志望の過去を語りながら、軽く笑ってみせる。
ごくごく自然な表情――に見えるはずだ。
上手くできていればいいけど。
普段通りなら、どうってことのないこと。
でも、この時は何だか妙に固くなってしまっていた。

(『リラックス』って言いながらこれじゃあ、パーソナリティー失格ね)

心の中で、ほんの少し自嘲する。
しかし、それを表には出さない。
出してしまったら、それこそ失格になってしまう。

「『ハガキ』――いいわね。『クラシックなスタイル』って感じで。
 最近は、なかなか見られなくなったわ」

話題の転換を受けて、あっさりとアイドルの話からラジオの話に乗り換える。
話題を作るのもパーソナリティーの仕事だが、話に乗ることも仕事の一部だ。
そして、相手の気持ちを察することも。

「今は色々あるものね。メールとかSNSとか……。
 あぁ、『ファックス』っていうのもあるわね。
 番組のサイトやSNSのアカウントからも投稿を受け付けてるわ」

「でも、その中でも私が一番大好きなのは『電話』ね。
 リスナーと直にお喋りできるっていう所が好きなのよねぇ」

「元々お喋りするのは好きだし、
 だからパーソナリティーやってるっていうのもあるわね」

内心で落ち着きを取り戻し、しみじみと語る。

もしかすると、それは『アイドルだった頃』を感じられるせいかもしれない。
だけどそれ以上にリスナーとの対話は『パーソナリティーとしての喜び』を感じる。
応援の言葉を送り、それが喜んでもらえた時は、自分のことのように嬉しくなる。
それは、『昔の自分ではない今の自分』だからこそ感じられるものだと思う。

以前は自分が『応援される側』だった。
最初の頃は、その頃に対する未練も強かった。
だけど、『今の喜び』を思うと、『応援する側』になった自分も好きになれる。

389稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2018/11/26(月) 03:19:27
>>388

「え……ラジオって今時、ハガキじゃないんだ。
 なんか……『そういうもん』だってイメージしてたわ」

      「SNS……」

          「あー、そういえば……
           それっぽいタグ見たことある」

                    「……気がする。えひ」

恋姫が想像しているのは、
夏休みのラジオ番組の『実況』で、
ラジオの投書そのものではないが……まあともかく。

「………………電話かぁ。
 僕は……電話、苦手なんだよな。
 だいたいメールですませちゃうぜ……」

「電話越しだと、なんつーかさぁ……
 コミュ力にデバフがかかるっていうか……」

         「……喋りづらくなるんだよな」

元々、コミュ力がある方ではないけど。
表情や手ぶりがわからないし、
こちらのそれを伝える事も出来ない。

普段から滅茶苦茶意識して苦手ってわけじゃないけど、
言われてみると・・・無意識で、あまり使っていない気がした。

「僕もファンと喋るのは嫌いじゃない。
 というか…………あー、好き、だし。
 画面越しとか、対面なら話せるんだけど、
 …………電話越しだと、なんかむずいんだ」

「美作サンは、なんか……『電話で喋る練習』とか、してんの?」

いつのまにか、緊張感のようなものは無くなってきていた。
やはり喋るのが上手な相手だからか……いい具合に、乗せられてきた感だ。

390美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/11/26(月) 20:45:24
>>389

「そうね……当たり前だけど、ラジオって耳で聴くものでしょ?
 だから電話とラジオって、何だかシックリくるのよ。
 まるで『ミントの入ったチョコレート』みたいにね」

ファンと喋るのが好きという気持ちは分かる。
自分もそうだったから。
だけど、この話は頭の中だけに留めておいた。

「そういう子は私の周りにもいるわ。
 ここだけの話だけど……最初の内は私も得意じゃなかったし」

声を潜めるが、これは冗談だ。
あまり大っぴらにする話でもないのは確かだが。

「――かといって、大層なアドバイスができるって程でもないけどね。
 私の場合は、多分『慣れ』の部分が大きいと思うから」

始めたばかりの頃は、苦労したことも多かった。
お喋りは好きだったけど、実際にやってみると上手くいかないこともあるのを、
その時に知った。
以前と比べると、今はしっかりしている――と思う。

「でも、強いて言うなら……。
 例えば――『ラジオを聴いてみる』と良いんじゃない?」

        フフッ

「ラジオって声だけで伝えるメディアだから、
 電話で話す時の参考にもなるんじゃないかしら。
 『どうすれば声だけで上手く伝えられるか』っていう事は、
 私達みたいなパーソナリティーも常に考えてる事だから」

「――あ、これは別に『宣伝』って訳じゃないわよ?」

弁解するように言ってから、軽く微笑する。
これも冗談の範疇だ。
敢えて言うなら『業界全体の宣伝』ではあるが、今そこまでの意図はない。

391稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2018/11/26(月) 22:31:43
>>390

「……チョコミント好きなの? 僕は好き。
 えひ、それはあんま関係ないか……
 まあ、そうだな、どっちも『声』だもんな……」

アイドルは全身で表現する。
時には言葉より雄弁に、
踊りやしぐさで『魅せる』仕事だ。

それは簡単な事ではないけれど、
声だけですべてを伝えるのも、
それとは別の意味で難しいものだろう。

「えひ、宣伝上手ぅ……って、
 言おうとしたのもお見通しだったか」

          「手ごわいな……」

   ニタ

「でも……そういうのも、いいかもな。
 なんかの作業用BGM代わりにさ……
 役に立つアドバイス、な気がするな……」

「あ……片手間に聴くだけ、ってわけじゃないよ」

一応弁明のようなものを添えた。
全身全霊で聞くわけでもないけども。

そして。

「…………それじゃ、僕はそろそろ行くけど」

「今日は…………あ〜、話せて良かった、と思うぜ」

一応買い物の途中で、この後も用事がある。
話題が途切れた時を見計らって、変装を直して席から立った。

392美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/11/26(月) 23:05:32
>>391

「参考になったなら良かったわ。まぁ、気が向いたら聴いてみて」

「――っと、これじゃあ宣伝になっちゃうわね」

       クスッ

『アイドル』――それは彼女にとっての『今』であり、自分にとっての『過去』だ。
だけど、稗田恋姫を羨ましく思う気持ちは、今は目立たなくなっていた。
そりゃあ、全然ないのかっていうと嘘にはなっちゃうけど。

でも、それ以上に彼女を応援したいという思いの方が大きかった。
何というか――『自分の分まで輝いて欲しい』と思った。
それも私の勝手な言い分かもしれないけど、そう思ったのは確かだ。

「うん、私も話せて楽しかったわ。アリガトね」

「それじゃ――『Have a good day!!』」

別れの挨拶と共に、恋姫を見送る。
しばらくして自分も立ち上がり、別の方向へ歩き出す。
心なしか、先程よりも軽やかな足取りだった。

393稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2018/11/27(火) 00:15:06
>>392

「とりあえず……番組とか調べてみる。
 好きな感じのやつがあったら、
 それが一番良いわけだからな……」

美作の心情は分からないが、
それが悪い物ではないのは分かる。
だから恋姫としても、悪い思いはしない。

「ああ、んじゃ、また…………」

       トコ

      「…………ありがとな」

                トコ

別れを告げて、恋姫もまた自分の行き先へ歩き出す。

394三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/05(土) 21:47:43

小柄な人影が歩いています。
小銭入れを開いて、中身を確認しているようです。
と、その時。

   「あ――」

         ジャララララ――――ッ!!

うっかり手を滑らせて、小銭入れを落としてしまいました。
そのせいで、中身が辺りに散らばっています。
これは、なかなか大変な状況です。

      「――やってしまいました」

その場にしゃがんで、小銭を拾い始めます。
それなりに入っていたので、かなり広い範囲に飛び散っています。
全部集めるのは骨が折れそうです。

395小林『リヴィング・イン・モーメント』:2019/01/05(土) 22:41:02
>>394

ヤジ「さっぶぃ〜な、オイッ」

相方と共に星見の街並みに足を運ぶ。

 吐息が白を空気に描いて無色の筋が口元から昇るのを見つつ
金属の雨音が耳の中を小気味良く打つのを聞いた。

 コロコロコロ……

ヤジ「ぉーっと。っそこの嬢ちゃん、派手にぶち撒けたなっ」

彼と共に転がって来た硬貨を屈んで拾い上げる。
 特に心に刻まぬ、些細な日常で起こり得る遭遇だ。

「どうぞ」

私も彼と共に女性の元に近づき硬貨を差し出す。

396三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/05(土) 23:23:11
>>395

お二人の前にいるのは一人の子供でした。
全体的に細い身体つきで、顔立ちは中性的です。
長い睫毛はクルンとカールしています。
見た目からは性別が分かりにくい容姿です。
年齢は、小学生と中学生の間くらいに見えます。

「ありがとうございます」

     ペコリ

小銭を受け取って頭を下げます。
親切な人達みたいです。
こんな人達ばかりだと世界も平和になると思います。

「――失礼します」

お二人の周りに落ちている残りの小銭を拾います。
あらかた拾い終わりました。
それから立ち上がります。

「失礼しました」

    ペコリ

もう一度お辞儀をします。
挨拶は大事です。

397小林『リヴィング・イン・モーメント』:2019/01/06(日) 18:55:32
>>396(レス遅れ失礼しました)

小林は175後半と言う、細身だが背丈だけはある……三枝を見下ろす形と
少々無礼であるがなってしまう。
 服装は、清月の高等部ブレザーをバンカラ風に身に着けてる為に
高校生である事は一目でわかるだろう。

琥珀の目は、揺るぐ事なく何処か乾いたような 静かな眼で貴方を映す。


 「えぇ、お気をつけて」  ペコッ クルッ カツカツ

 そして、私も同じく礼をし立ち去るため歩く。
日常のセピアが彩りを見せる中で今の巡り会いもいずれかの琴線を
微弱でも震わしたモノが文章の中に埋め込む事が出来るかと考え……






 ヤジ「(; ・`д・´) 待った待った待ったーーーー!!!」

……と、そこで恰好だけは茶色のメッシュで耳にピアスも付いてる
ヤンキー風味の連れが慌ててストップをかけた。

 「はい?」

ヤジ「いや、もうちょい話を広げろよ!!? どんだけ人と人との
関係をうすーくしてんだよっ! お前、これで仮に俺がだぞ!
お付き合い有難う御座いました、また宜しくお願いしますとかメ欄で
打ち込まれたら、軽くプッツーン…… って擬音と共に切れるからな!?
てめぇも作家志望なら、ある程度ここから世間話で掘り下げろよ!」

「……あのね、初対面のお嬢さんですよ 親友?」

ヤジ「初対面もクソも! お前はミッションで偶然知り合った
吊り橋効果の友人以外は喋れないのか!? イベントのある時しか
メルアド交換して必要時以外には何も送信しないのか!?
 心冷えすぎだろ! もっと熱くなってみろよ!」

堰が切ったように言葉の嵐をぶつけるヤンキー風味の若者は
貴方にクルッと振り向き、必死な顔つきで訴える。

ヤジ「(´・ω・`) ……すんません
出来ればで良いんで、こいつに人としての会話ってのを教えて
やってください。でないと将来が心配です」

無茶振りが飛んできた。
 小林は、解せぬと言う感じで小首を傾げて佇んでいる。

398三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/06(日) 20:08:20
>>397

落とした小銭は全部拾いました。
お金は大事です。
ちゃんと集められてよかったです。

「?」

お別れしたので歩こうとしたら、声が聞こえたので立ち止まりました。
お兄さんが、もう一人のお兄さんに何か言ってるみたいです。
こっちにも言ってるみたいです。
それを聞いて、小首を傾げます。
内容が難しかったのです。

「ありがとうございますは言いました」

「失礼しますは言いました」

「失礼しましたは言いました」

「他に忘れてることありましたか?」

「分からないので教えてください」

       ペコリ

分からない時は質問しないといけません。
だから、お兄さんに質問してみます。
そうしたら、きっと分かると思います。

399小林『リヴィング・イン・モーメント』:2019/01/06(日) 20:34:04
>>398

 ――ズルッ! と言う感じで貴方の言葉にヤンキー風味の若者は
ずっコケそうになる、が辛うじて転びはせず重心を戻した。

ヤジ「(;゚Д゚) ……ま、まぁ子供だし仕方がないよな。
いや、正しいんだよ。そりゃ普通は一般ピーポーが小銭落としたら
拾って、気を付けて下さいね それじゃあ。で、立ち去るのは正解だよ!?
 けどよ……けど、此処って『場スレ』じゃん!??
みんなが知り合う為の『場』じゃんっっ!!?
 そこは、もっとーこうっ そこで、何だか面白そうな人だな
ちょっと色々と身の上話を聞いてみようって感じになるべきでしょ!
 何時会話すんの!? 今でしょ!」


「……済まない、親友。君の話す内容の大まかな意味合いが
本当に 理解が及ばなくて」

ヤジ「(; ・`д・´) あー はいはい いいですよ!
メタってんのは解ってんだよ! でも、そうでもしねーと
こう言う時に話が末広がないの! お嬢さん! こいつの名は
小林 丈! 俺の名は 今日の気分は宮田 陣って事でヤジと
気軽に呼んでくれ! はい! それじゃあ君の名は!!?」

「勝手に人の個人情報を独白するの止めてくれないかな」

別に今日の今この場面では不思議と不快感はないが。親友とは言え
勝手にプロフィールを言われるのは心外だ。

400三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/06(日) 21:01:41
>>399

お兄さんの話を黙って聞きます。
人の話は静かに聞かないといけません。

「分かりました」

お互いのことを話したり聞いたりすればいいみたいです。
何となく分かりました。

「三枝千草です」

「三つの枝に千の草と書きます」

      ペコリ

宮田さんは面白そうな人だと思いました。
だから、宮田さんの身の上話を聞いてみようと思います。

「宮田さんのお話が聞きたいです」

「してくれますか?」

宮田さんを見上げてお願いしてみます。
お話をしてくれるでしょうか?

401小林『リヴィング・イン・モーメント』:2019/01/06(日) 21:10:30
>>400


ヤジ「(; ・`д・´)……え? 此処で俺の身の上話に移行すんのっ?
いや、まあ良いけどよ」

小林「そう言えば、私達が親友になる条約として
『過去について詮索しない』と言うのがあったね。親友」

 チャラけた雰囲気を打ち消し、ヤジと言う青年は三枝と相方に対して
交互に一瞥しつつ、参ったなーとぼやきつつ呟く。

ヤジ「……んー、俺の身の上ってよぉ。かいつまんで
結構ぼかして言っても、重たい空気になるからさ」

小林「止めておくかい?」

ヤジ「いや、別にいいさ。俺はよ『アリーナ』って所から
『証人保護プログラム』ってのを受けてるって言った所で。
お前は信じるかも知れないけど、三枝の嬢ちゃん。
あんたにとっちゃあ、行きずりの俺の過去が胡散臭くて
作り話にしか聞こえないだろ? ……ってか、嬢ちゃん。
『普通の人には見えない力』とか持ってたり?」

 苦笑い気味に、ヤジが三枝に聞いてきた。小林も、目線を
貴方のほうに向けてくる。

402三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/06(日) 21:35:02
>>401

アリーナ、証人保護プログラム。
聞いたことのない言葉です。
難しすぎて分かりませんでした。

「普通の人には見えない力ですか」

それは持っています。
きっと『墓堀人』のことだと思います。
でも、『恐竜人』を持っているスズさんの言葉を思い出しました。

『……そうなると、あまり見せびらかすのは不味いな、これは』

この前お話したスズさんは、そう言っていました。
だから、すぐに見せたりするのはよくないと反省しました。

「それは何ですか?」

首を傾げて、宮田さんと小林さんに聞いてみます。
確認は大切です。
もしかすると、違う力のことを言っているのかもしれません。

403小林『リヴィング・イン・モーメント』:2019/01/06(日) 21:44:42
>>402

小林「……そうだね。今日は凄く冷える
暖かいものは、どうですか?」

貴方の質問に、違った質疑応答が返された。
はぐらかすつもりなのか? と邪推する前に小林は腰にある
野球ボールサイズの水槽らしきものを出した……。

「マスカットティー ココア コーヒー お茶
どれが好きなのでも、御ひとつ」

 ……その中の一つを注文すると、小林がおもむろに
携行していたカップに水槽のボールを近づけた。

        シュン  チャポンッ!

 ! 水槽が解除されると、湯気が漂う。今淹れたばかり
らしい飲料水が瞬時に現れた。

小林「私は、液体をボール状に閉じ込める力を持ってるんですよ。
インスタント飲料水が入用の時は重宝しますが……元となる飲み物は
別個でいったん用意すべきですし」

 そこまで便利とは言えませんけどね、と小林は説明をした。

404三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/06(日) 22:16:56
>>403

「いただきます」

ココアをもらいました。
飲みます。
温かいです。

「――凄いです」

素直に感想を言いました。
スズさんの『恐竜人』も凄いですが、小林さんの『水槽』も凄いと思います。

《………………》

いつの間にか、足元に人影が座り込んでいます。
フードを目深に被っていて、表情は見えません。
杖のように立てたシャベルを両手で掴んでいます。

   スウッ

人影が幽鬼のように立ち上がりました。
立てていたシャベルを肩に担ぎました。
その姿は『墓堀人』のように見えます。

「ココアをもらったお礼です」

「喜んでもらえたら嬉しいです」

   ペコリ

頭を下げます。
『墓堀人』も同じようにお辞儀をしました。

405小林『リヴィング・イン・モーメント』:2019/01/06(日) 22:22:49
>>404

「いえいえ、これ位の事は何でもありません」

ヤジ「ん? ……あぁ、発現してんのか」

「こう言う時、話しに入れなくなるのは 少々気まずく感じる事は?」

ヤジ「なーに。ジョーが誰かと知り合う切っ掛けの呼び水になるんだ。
別に感謝と思ってくれるんなら、何時かどっかでスタンドアイテムを
オープンする店舗でも出来たら、見えるアイテムでもプレゼントしてくれよ」

「考えてはおくよ……三枝さんの、そちらの名前を伺っても?」

『ヤジ』は、どうやら一般人のようだ。スタンドが見えてない

小林は、貴方のスタンドの名を聞きたいようだ。

406三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/06(日) 22:44:45
>>405

《『イッツ・ナウ』――》
               
               《――『オア・ネヴァー』》
         
    《そういう名前の『墓堀人』です》

フードを被った『墓堀人』が、自分の名前を名乗ります。
名前を聞かれたら答えるのが礼儀です。

「小林さんは『妖甘さん』ですか?」

「それとも『道具屋さん』ですか?」

「僕は『妖甘さん』です」

スズさんは『道具屋さん』でした。
小林さんはどっちでしょうか。
『同じ人』なので、ちょっとだけ気になりました。

「よかったら、小林さんの『水槽』のお名前も教えてください」

質問が多い気がします。
欲張るのはいけないことです。
これからは気を付けようと思います。

407小林『リヴィング・イン・モーメント』:2019/01/06(日) 22:51:31
>>406

「『今この好機を逃すな』……ですか
少々不思議な御縁がありますね。『リヴィング・イン・モーメント』
 『今この瞬間を生きる』と言うのが、私のスタンドです」

 「私は、『音仙』と呼ばれる場所でスタンドを承りました。
道具屋? 妖甘?」

ヤジ「結構、この街には色んな供与者が居るようだからな。
その内の一つだろ」

 「成程ね……」

親友の言葉に相槌をうつ小林。三枝の複数の質問に気分を害した様子はない

「いえ、私も楽しいですから お構いなく。
供与者とは沢山いるものなのですね……何時か、他の方とも
お話すれば、私の啓蒙も深まり 視野も広がれば良いのですが……」

408三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/06(日) 23:28:16
>>407

「本当です」

「もしかしたら心の中が似てるのかもしれません」

「見た目はあんまり似てないですけど」

小林さんを見上げます。
この前計った時は150cmでした。
小林さんは随分大きいです。

《こっちの姿も全然違います》

『墓堀人』が口を開きます。
『水槽』とは似ても似つかない姿だと思います。
何となく、面白いと感じました。

「『音仙さん』ですか」

「他にもいたのは知らなかったです」

また違う名前が出てきました。
思ったよりもたくさんいるみたいです。
驚きました。

「『同じ人』に会ったのは、小林さんで二人目です」

「小林さんはたくさんの人に会ってるんですか?」

「――凄いです」

409小林『リヴィング・イン・モーメント』:2019/01/06(日) 23:39:31
>>408(おつきあい有難うございました。ここで〆させて頂きます)

「以前、温泉旅行に言った時は。プロレスラーの方で
よく喋る外交的なスタンドの持つ方が」

「もう一人は同じく人型スタンドを持つ方がいましたね。
アレは寡黙な方でした」

他にも、海岸沿いで見かけた方や。合コンと言う特殊な中では
多くのスタンド使いも見かけた。

 ありとあらゆる経験が、私の糧となる。それを苗床に
いつか花咲けば 私も一人前な作家とも胸張れる文章を書けるのだろうか?

「私もまだまだ若輩者です」

「これから、三枝さんが この街を練り歩けば
私以上の出会いを 経験を積み重ねるでしょう」

彼女へ目線を合わせるように屈みこみつつ告げる。

「その時は、また一緒に街でココアでも飲みかわしましょう
此処は冷える場所ですから、店内にでもね」

ヤジ「おぅおぅ、そりゃジョーにしちゃあ気が利くぜ!
何かあれば、俺達を頼ってくれよ三枝の嬢ちゃん。
俺達は『ジョジョ』を目指す者!
 何時だって、困った時は手助けするからよ」

 黄金の精神を追う二人組みは、貴方と出会う。

この交錯は、いずれまた新たな出会いの契機を作り上げる入口なのかも
知れないし、違うかも知れない。
 ただ、年は明けたばかり。これからの道筋は未だ誰にもわからない

410『三つで答えな 殺人犯を』:2019/01/21(月) 12:56:40
(※先着一名のみ。能力詳細とかいりません)

「ぜってー チャラ男だよ、このチャラ男だって!」

「いや、隣にいる女じゃないの?」

・・・星見スカイモール 展望楼塔高層エリアには若者の財布に優しい
フードコートが存在している。その一角で、何やら若い男女達が
わいわいと話しているのが聞こえる。

「まぁまぁ、質問は『三つ』だって事は理解して貰えてるよな?
それ以外は何も答えない。賞金は予め決めた通り三万だ」

 「前もって確認するが、後だしで犯人が代わっても問題ない
形式だったら、どうなるかわかってるな?」

「おぉ 怖い怖い。大丈夫だよ、ちゃんと推理に基づいたものだからさ
――さぁ 星見町で我こそはと言う頭脳明晰 灰色の頭脳の皆さま!
 冬山の仲睦まじきサークルで起きた殺人事件の真犯人!
それを、一枚の写真と三つの質問で答えた方には早い者勝ちで
三万を支払いましょう!」

何やら、結構スケールの大きい催しを勝手にフードコーナーで
している若者がいるようだ。

411宗海『エトセトラ』:2019/01/21(月) 18:26:00
>>410
「ん?」

買い物の途中で人混みを見つけた。
何事だろうかと、近づいてみる。

412『三つで答えな 殺人犯を』:2019/01/22(火) 09:52:35
>>411(参加受理)

フードコートの隅で、フレンチなり色々と各自好みのものを
食べてる若者達の中心で、サングラスをかけてる洒落た三日月の
ルアーのようなブレスレットを身に着けてる男子がニヤニヤと
一枚の写真を机に置いて喋っており、それに円陣を組んで他の者達も
覗き込んでいる。貴方に気付いた一人が声をかけた。

「お? あんたも飛び入り参加希望? まぁ、ちょっとこいつの
クイズを聞いてみてよ。それにちゃんと答えられたら三万贈呈だって」

どうやら、ある程度大金をかけたクイズイベントのようだ。
問題を提出してる若者も貴方に気付き、ニヤッとしつつクイズを始めた。

「よぉ、チャレンジャーさん。それじゃあ改めて問題を説明始めるぜ。
これは数年前に星見町の隣接した町の〇〇大学の登山サークルで実際に
起きたって言われる事件の事である。
 そのサークルが冬山に登った後、宿泊してる山施設で事件が起こった。
切っ掛けは、所謂痴情の縺れってやつ。犯行現場も、サークルメンバーと
関係のない奴が殺人の瞬間を目撃した事で直ぐに逮捕された。
 それじゃあ、こっからが肝心だ。
その殺人の犯人を、登山達成の記念写真から割り出してくれ」

周りの仲間たちは、無理だろ どんだけ難問なのさと口々に勝手に
感想を言い合っている。写真には大まかな特徴として

・人以外の風景としては、かなり吹雪く絶景の冬山頂上。
・左から 肩を組んで仲良く写る女性二人 それに強い視線を送るチャラ男
カップルらしき男女一組 大柄なポーズを決める男 少々目つきの危ない女

と、言うのが登山頂上達成した瞬間に写したものだった。

「それじゃあ、この写真から犯人を割り出してくれ。……おっと!
殺されたのは、左端の仲良さそうな女子二人の内の一人だ。
  因みに死因は、突き飛ばされた事による脳挫傷。
これが普通の場所なら、直ぐに病院に搬送すれば助かったんだけどねぇ」

犯人からすりゃ、過失致死傷罪って奴さ。と同情する感じで付け加えるが
そんな態度を関知せぬ様子で、周りの仲間は こんな写真からじゃ
特定出来ないだろうと口々に文句が上げられている。

「こんな写真じゃ無理に決まってるじゃん。犯行現場の写真とかじゃないし」

「だから、質問を『三つ』までOKだ。〇〇が犯人ですか? って質問も
当然受け付ける。ただし、飛び入り参加者限定だ。お前らは駄目だ」

「チッ……本当に答え合わせで、ちゃんとしたものだって納得出来るだろうな?」

「ちゃんと頭を捻ればな」

仲間同士で軽口を叩き合い、出題者は自信に満ちた顔で貴方に再度
挑戦的な笑みを浮かべる。

ルールは簡単。写真から真犯人が誰かを割り当てる。
殺されたのは、仲が良さそうな女性一組の内の一人。動機は
痴情の縺れと言う事から、犯人には恋人がいたか、被害者に
告白を迫って断られたりしたのかも知れない。

……出題者が、自信に満ちてる事からも相当に難問そうだ。
彼の言う通り、消去法と勘だけでは犯人を当てる事は難しいだろう。

413宗海『エトセトラ』:2019/01/22(火) 20:33:02
>>412
「よろしいかしら?」

群衆の中心にいる男性へ声を掛ける。
濃紺のダッフルコートを身に纏い、スクールバッグを肩掛けした、
いかにも『学校帰り』といった恰好だ。

「ルールの確認としての『質問』なのだけれど、

 『はい』か『いいえ』で答えられる、質問のみが許される。
 ……そうじゃないと、ゲームとして成立しませんよね?」

唇に薄い笑みを乗せ、気取らない仕草で問い掛ける。
先程の会話では、ハッキリとは言及されていないが、
この手のゲームの『お約束』として、ほぼ間違いないだろう。

    「(大学のちょっとした同好会、かしらね。
      ……折角だから、少しだけ付き合ってみましょうか。)」

不平を漏らす観客達を尻目に、ほくそ笑む。
回りくどい表現もあるが、それは問題の『前提』を隠すためだろう。
余計な情報に紛れさせて、回答者に有利な『ヒント』が隠されている。

   「(この事件、死因は『突飛ばし』による『脳挫傷』、
    そして、『過失致傷罪』だと出題者は口にした。
     ……この時点で、『共犯』は有り得ません。

     示し合わせて『犯行』に及ぶなら、『殺意』の証明に他ならない。
     つまり、その時点で『殺人罪』として、出題者は語るはず。
     答えを知る『神の声』で語る以上、これを『事実』であるとみなし、
     ―――――『犯人』は『単独犯』、つまりはおおよそで『7パターン』に絞られる……)」

唯一のヒントであり、徹底した探りが許されてる『写真』をじっと見つめる。
具体的には『順番』だ。『カップルらしき男女』は、どちらが『左側』か。

414『三つで答えな 殺人犯を』:2019/01/22(火) 21:23:16
>>413

>『はい』か『いいえ』で答えられる、質問のみが許される。
>……そうじゃないと、ゲームとして成立しませんよね?

「最初の『質問』としては、その回答は『はい』だ。残りの質問権利は二回」

「おいっ」ゲシッ

「痛っ! 何だよ、ちょっとした可愛らしいジョークじゃん
はいはい、真面目にやるよ。そりゃあ、この手の質問で
犯人の名前は? って聞かれて、俺が馬鹿正直に山田 太郎ですって
言ったら、もう名前からの連想ゲームじゃん」

隣にいた仲間に軽くツッコミの蹴りを受けた膝をさすりつつ
軽そうな口調で、貴方のルールの条件を明確化する。
ウミガメのスープとか同様、YESorNOの思考ゲームらしい。
あと当たり前だが、質問権利は三回ちゃんと残っている。

貴方は写真を細やかに観察する。冬山を登るのだから当然の事だが全員防寒着。
左側より、少しギャル風の女と 黒髪で人受けしそうな顔の女が肩を組んでる。
出題者は、その黒髪の女が被害者だと語った。
次に、金髪で防寒具越しにもアクセサリーが耳や首に見え隠れする男が
品定めするように目線を二人の女のほうに向けてる。その視線の先は
被害者かも知れないし、もう片方の可能性もありそうだ。
次に貴方が注視するカップル。
左側に日焼けした男がピースをしており、その腕に寄りかかって同じく
舌を出して笑ってる女も一緒のポーズをとってる。女は写真の右側にいる。

写真の中で一番図体が大きい男はボディビルダーか、それに近い趣味を
持ってるのがマッスルポーズを強調してる。そして右端には
少し目つきの悪い女が、余り楽しくなさそうな顔で映っていた。

「どうだい  質問は決まった? 『良い質問』を期待してるぜ」

出題するグラサンの男性は、貴方の回答を楽しそうにニヤッと待ち受けている。

415宗海『エトセトラ』:2019/01/22(火) 22:07:13
>>414
>「最初の『質問』としては、その回答は『はい』だ。残りの質問権利は二回」

      「えっ!?」

『スクールバッグ』内に『エトセトラA〜V』を発現。
バッグ内にある『純アルミ製』の『ヒートシンク』を――――

>「おいっ」ゲシッ

      「……ああ〜〜〜〜ッッ、びっくりした。

        .私、身体が弱い方ですから、
       .あまり脅かさないでくださいね?」

『エトセトラA〜V』を解除する。
そう、唯の『ゲーム』なのだから、スタンドが必要なはずがない。
ついうっかり、不幸な事故を起こしてしまうところだった……。

気を取り直して、『写真』の観察を終える。
正確に言えば、『観察』ではない。『ラベリング』だ。

      「この『写真』、別にどうしてもいいのでしょう?」

スクールバッグの中から『スケジュール手帳』を取り出し、
裏表紙に用意された『日付シール』を引き抜く。

      「『誰』がどうなんて解りにくいですから、
       こうやって、『ナンバリング』させて頂きます。

       左から、ネオギャルが『1番』、被害者が『2番』、
       アクセの男性が『3番』、日焼けの男性が『4番』、
       ベロっ娘が『5番』、マッチョが『6番』、不機嫌さんが『7番』」

      「―――――それと、『カヤの外』は可哀そうですし、
       『カメラマン』の方も『0番』にして、仲間に入れてあげましょうね」

目に入った特徴を淡々と述べながら、次々にシールを貼っていく。
『奇数』が『4人』、『偶数』が『4人』。作業を終えたのを確認し、一息つく。

      「――――では、質問を。

       『1.犯人に張られたラベルに書かれた数字は偶数ですか?』」

質問を省けば『貼られたラベルの枚数』を回答されかねない。
ゆっくりと、しかし『理』を押し付けるような、朗とした口調で問い掛ける。

416『三つで答えな 殺人犯を』:2019/01/22(火) 22:36:10
>>415

>ああ〜〜〜〜ッッ、びっくりした。

「はははっ! 驚いてくれたようなら、何よりっ」

「性格悪いんだよ、お前は」

宗海のリアクションを、お気に召したように笑う男性は
中々良い性格をしてるようだ。

>誰』がどうなんて解りにくいですから、
>こうやって、『ナンバリング』させて頂きます。

「あぁ、あぁ。構わないぜ 焼き増ししたのもあるし、幾らでも
好きなように加工してくれ」

>――それと、『カヤの外』は可哀そうですし
>『カメラマン』の方も『0番』に

『――ぁ』

「……ちっ」

貴方の言葉に、囲んで各自誰か犯人か考えていた者達も少しハッとした
顔つきになる。出題者の男も、余裕そうな笑みを消して露骨な舌打ちをした。

>1.犯人に張られたラベルに書かれた数字は偶数ですか?
 
「……『YES』 0、2、4、6の中に犯人はいるぜ。
――『見事』だ。くれてやる」

最初の質問だけだが、出題者は既に理解していた。
こうなれば、被害者を除けば残り三名。カメラマン、カップルの日焼け男
そしてマッチョの男だけが容疑者となる。残る回答権利は二つ……
消去法でも十分通用するのだ。出題者の敗北は明らかだから

「…………俺からも質問させてくれよ。
あんた、この手の問題を以前にもした事ある?」

「そして、あんたの予想では……いや、十中八九カメラマンだって
解ってそうな面してるから、こう聞くが。
あんたの想像では、カメラマンは何が動機で被害者を結果的に殺したと思う?」

三万を貴方のほうに滑らすように渡しつつ出題者は尋ねてきた。

417宗海『エトセトラ』:2019/01/22(火) 23:13:50
>>416
空気の変化を如実に感じる。
『詰み』の質問だから、出題者は容易く『投了』をした。
『写真』に触れていた手を両膝に置いて、静かに一礼をする。

     「では、折角ですから。
      頂いたお金は『ひなどり募金』に寄贈させて頂きます。

      本当、可哀想ですよね。
      国有の土地に『相談所』を建てるだけで、
      心の狭い『富裕層』に邪魔立てされるなんて――――」

手渡された『三万円』を恭しくも両手で受け取り、
手帳に挟み込みながら、出題者からの『質問』に耳を傾ける。

     「そう、ですね……。
      『秤』を3回使って『偽貨』を暴くクイズですとか、
      そういったものが近いのかしら。

      昔から『入院』が長くて、
      患者のおばあさんから貰う『懸賞雑誌』に、
      色々な知恵比べパズルが載っていたのよ」

此方の質問は当たり前のように答えられる。
淀みのない声調で語り掛け、静かに微笑んだ。

     「そうね。……『地上の縺れ』なのでしょう?

      この吹雪では、雪原に『カメラ』を設置しても、
      シャッターチャンスを『遠隔』で計るのは難しい。

      私はシャトルランが『10回』も出来ないくらい、『体力』がないから、
      真冬の登山なんて、……見ただけでも怖気が走るわ。

      それでも、『カメラマン』が登頂記念の写真に映らなかったのは、
      ――――愉しそうな彼女がいる『空間』を残したかったから、かしらね」

本当に『事件』があったから解らない。
だから、『核心』には触れず、一人だけ省かれた『集合写真』に思いを馳せた。
省かれたのではなく、自ら身を引いた、と信じるかのように。

      「――――それだけ、よ。
       細かい『動機』なんて解らなかったけれど、
       彼は、この場では『見る側』を選んだから、と」

      「これでいいかしら。
       無理に『動機』を当てはめるのは、趣味じゃないの」

手帳をスクールバッグに滑り込ませ、そっと立ち上がる。

418『三つで答えな 殺人犯を』:2019/01/22(火) 23:32:45
>>417(有難う御座いました。またいずれ、別の舞台での活躍を)

「――プッ   ははははっ!! あははははははっ!!」

あははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははっっっ!!!!!


宗海の言葉に静かに耳を傾け、彼女が立ち去ったのを視認して
暫くの間の後に、出題者は大爆笑した。
笑いの洪水だ。喧しい筈で、他の客にも迷惑になるのに関わらず
『不思議と』誰も注意しようとしない。

「して、やられたじゃないか? あんな小娘に完全敗北に関わらず
どう言う風の吹きまわしだ?」

「ぷっ くくくっ!! ふっ ぷっ っく……!
いや、失礼失礼! 余りに完敗でツボに入っちゃったよ!
それでも、彼女は最後の最後に真の凶悪犯を当てれなかっただろ?
 ――『エクリプス』って言う、僕ら今世紀最悪の存在をさっ!」

自信満々の宣言に、再度鋭い蹴りが襲う。

「出題と全く関係ないだろ」

「痛いっ!! ったく、もっと人生を愉しもうよ!
公園の砂場で、城を作る時も 必死で半日作ったソレを足で踏み潰す時も
盛大に笑って 嗤って 哂って愉しむ 楽しむ 娯(たのしむ)!
これから、もっともーーーっと愉快な事を巻き起こすんだから!」

「前半後半の与太話は置いといて、まあ これからが私達の本領発揮」

「――『予言』を元に この街に破滅を」

「――『工場』を下に この街に崩壊を」

「――『弓矢』を基に この街に再生を」

 『それじゃあ 始めよう 始めようっ 始めよう!』

……若者達は去る。騒いでいた彼らを視界に入れていた群衆は
今日を過ぎれば、彼等の姿形を記憶に残すものは誰一人おらずカメラ等の
記録にも残る事はなかった。

ただ、一人 正しい回答をした貴方(宗海)以外に……

419小石川文子『スーサイド・ライフ』:2019/02/12(火) 00:44:05

一つの人影が、音もなくベンチに腰を下ろす。
黒い帽子と喪服を身に纏った細身の女。
手にしたハンドバッグを、おもむろに開く。

  「――あっ……」

うっかり手を滑らせ、口の開いたバッグを床に落としてしまった。
細々とした中身が足元に散乱する。
その場から立ち上がり、身を屈めて小物を拾い集める。

420稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/02/12(火) 01:26:42
>>419

ベンチからやや離れた壁際から・・・

            トコ トコ

   スッ

「…………小石川サン」

近付いて来て、小物を拾いだしたのは『稗田恋姫』。

           「えひ……手伝うぜ」
 
   サッサッ

前に会った時とは違い、全身冬服装備で固めていた。
その手にはゲームセンターのものらしき『景品袋』がある。

421稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/02/12(火) 01:27:16
>>420(メール欄消し忘れです)

422小石川文子『スーサイド・ライフ』:2019/02/12(火) 01:55:10
>>420

声に気付いて、そちらに向き直る。
その顔には見覚えがあった。
何度か出会ったことのある、桜色の瞳の少女。

  「稗田さん――」

  「ありがとうございます」

穏やかな微笑みと共に、会釈を返す。
元々、それほど物は多くなかった。
それらを拾うのに、長い時間はかからない。

  「――……」

ベンチの下に転がっていた包帯を拾い上げ、顔を上げた。
それから、不安げな視線で辺りを見回す。
大事なものが見当たらなかった。
少女は気付くかもしれない。
ベンチの脚の陰に、木製の鞘に収まった果物ナイフが落ちていた。

423稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/02/12(火) 10:13:38
>>422

「えひ、気にすんなし…………
 知り合い……が物落としてたら、
 拾うのは常識的に考えて普通だし……ほら」

         サッサッ

それなりに手際よく拾い集め、
小石川に渡していく恋姫。

「……ん」

あらかた拾い終えたと思ったのだが……

「なんかまだある感じか……おっ。これじゃない?」

         スッ ・・・

「なんだこれ…………?」

ベンチの陰に、もう一つ何かあるようだった。
それを拾って……小石川に渡すために持ち上げる。

「うおっ、ナイフか……!? 事件の予感……!
 ……なんてな、えひ。これも小石川サンのだろ?
 あー、マイ箸とかの流れってやつなのかな……?
 鞘に入ってるとか本格的ぃ……名刀っぽいぜ」

         「…………はいこれ」

・・・もしあったとしても、その刃の意味を、
小石川の人柄とすぐに結び付けられはしないだろう。

やや疑問符を浮かべながらも、陰気な笑みと共に手渡す。

424小石川文子『スーサイド・ライフ』:2019/02/12(火) 19:45:54
>>423

持ち上げられたナイフに視線を向ける。
その瞳の奥には、大きな安堵の感情があった。
差し出されるナイフに向かって静かに手を伸ばす。

  「ええ、とても大事なものです……」

          スッ

  「ありがとう――ございます」

果物ナイフを受け取って、バッグの中にしまう。
他には、もう落ちているものはない。
それで最後だったようだ。

  「お陰様で助かりました」

  「もっとしっかりしないといけませんね」

        クス

ベンチに座り直し、少女に笑いかける。
その表情に浮かぶのは、どこか陰の残る微笑み。
ただ、思いがけず知人と出会えたことで、その陰も今は少しばかり薄れていた。

425稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/02/12(火) 22:52:00
>>424

「あ……そーなの……なんか高そうだもんな」

(…………つーか、銃刀法とか大丈夫なのか?
 いや、そんなにデカイわけではないか……でも、
 マイナイフ……って、普通持ってるもんなのか?
 マイ箸とかですら持つ気しないんだけど……
 小石川サン……潔癖症のケあったりすんのかな)

恋姫は『大人』に憧れる気持ちが薄い。
化粧の仕方もなんとなくしか分かっていないし、
カバンに何を入れるべきかも、考えていない。

「えひ、十分しっかりしてそうだけど……
 小石川サン、意外と抜けてたりすんの……?
 物めっちゃ落とすとか……? ギャップだな……」

凶刃の真意にはもちろん気付かないまま、
別の『へんな印象』を抱きつつナイフを返す。

「よいしょ…………」

            ドサドサ

同じベンチの、やや離れた位置に腰掛け荷物を下ろす。

「あ、そういえば何してたの…………買い物帰りとか?」

426小石川文子『スーサイド・ライフ』:2019/02/13(水) 00:08:58
>>425

ナイフを持ち歩く人間は、きっと少ないだろう。
そして、それは良いことではないと思う。
それでも、自分にとってなくてはならないものなのも確かだった。

  「時々……散歩の途中で道に迷ってしまうこともあります」

  「――失敗するのは珍しくありませんよ……」

        ……ニコ

  「ええ、新しくできたお店に……」

傍らに置いていた小さな紙袋を、軽く持ち上げる。
ロゴの入ったアロマテラピー専門店の袋だった。
そこから、ラベルの貼られた小さな瓶を取り出す。

  「――ラベンダーのオイルです」

  「私は、この香りが好きなもので……」

  「とてもリラックスできますから……」

おもむろに蓋を外すと、芳しい香りが辺りに漂う。
フローラル調の柔らかな芳香。
この香りに包まれていると、気持ちが落ち着く。

  「――稗田さんもお買い物ですか?」

まもなく蓋を閉じて、アロマオイルの瓶を袋に戻す。
それから少女の持つ袋に視線を向けた。
それが景品であることまでは分かっていない。

427稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/02/13(水) 00:33:53
>>426

「へぇ……なんか想像したら面白いな」

         ニタ…

「『地図アプリ』とか使っても迷っちゃうの?」

『しっかりした大人』にもおかしな面はある。
それは分かっていても、イメージが繋がらない。

「というか小石川サン、ラベンダー好きだな。
 ……えひ、まあ、似合うんだけどさ……
 このニオイ=小石川サンってイメージになってきた」

ラベンダーの芳香は普段から嗅ぐものではないが、
小石川と遭遇するたびに違う形で嗅いでいる気がする。

「僕も『アロマキャンドル』とか……たまに、買うし。
 こういうの、結構好きだ……今日は買い物じゃないけど」

            ガサガサ

「…………ゲーセン行ってたんだ」

袋の中にはよく分からない『箱』が入っている。

「プライズ……あー、UFOキャッチャーが、ここは多いから」

          「……結構調整はハードなんだけど、
            ここにしかないヤツもあるんだよね」

428小石川文子『スーサイド・ライフ』:2019/02/13(水) 01:22:06
>>427

ゲームセンターという場所には、あまり馴染みがない。
それもあり、やや不思議そうに箱を見つめた。
失礼に当たらないかという考えが浮かび、緩やかに視線を外す。

  「稗田さんは、お上手なんですね……」

  「――私も小さい頃に挑戦したことがありました」

  「……大きなぬいぐるみが欲しかったんです」

           クス

  「でも……ほんの少し動いただけでした」

幼少期の一幕を思い出す。
あれはデパートの店内だっただろうか。
忙しかった父が、珍しく遠出に連れていってくれたのが嬉しかったことを覚えている。

  「――コツがあるのですか……?」

  「それを聞いたら……私も上手くなれるでしょうか?」

少しばかり冗談めいた口調で告げる。
口元には穏やかな微笑があった。
それは、知人との会話を心から楽しんでいる表情だった。

429稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/02/13(水) 03:04:13
>>428

「小さい人形とかは取りやすいんだけど……今日は大物だった」

箱の上面には『アニメキャラ』風の絵が描いていた。
恋姫もそれについて、あえて説明をする気はなさそうだ。

「まあ……僕もプロとかじゃないけど……
 ゲーセン通ってたらエンカするの避けて通れないし……
 UFOキャッチャーも……素人じゃあないぜ」

        ニヤ

「コツは……うーん、取れそうな台探す事だから、
 あと課金額? なんというか、もともこも無い訳だけど」

          「えひ」

あまり詳しいというわけでもないので、
あいまいなアドバイスだけして袋を閉じた。

「でかいの取れた事たまにあるけど……
 なんだろうな、なんか……急にぽろっと取れるんだよな」

        「アーム……途中から強くなったりしてるのかもな。
         ……そういう『都市伝説』もあるくらいなわけだし」

430小石川文子『スーサイド・ライフ』:2019/02/13(水) 22:49:19
>>429

  「……選び方ですか」

  「新鮮な野菜にも見分け方があります……」

  「――同じですね」

      ニコ……

彼女と自分は違う人間であり、歩んできた道筋や生活範囲は異なる。
ただ、その中には共通する部分が垣間見えることもある。
それを見つけられることは、きっと楽しいことなのだと思う。

  「私の実家は……トマト農園なんです」

  「――ジャムやジュースも作っていますよ」

  「私も学生の頃は手伝いを……」

それは、クレーンゲームの記憶よりも少し近い時代の記憶。
自分自身が、隣に座る少女と同じくらいの年齢だった頃のこと。
泥に汚れながら、忙しく立ち働く父の仕事を手伝っていた。

  「あ……ごめんなさい」

  「私ばかり話してしまいましたね……」

  「昔の懐かしいことを思い出してしまったもので……」

431稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/02/13(水) 23:07:07
>>430

「『収獲』しどきの目利きってやつだな……野菜?
 ラベンダーは知ってたけど……へえ、トマト農家……」

なんだか意外な感じだった。
恋姫的にも『農家』は大事な仕事だと思うが、
小石川のどこか垢抜けたイメージとは違うように思えた。

「前は僕も自分語りした気がするし……
 えひ、ここはおあいこってことでひとつ」

他人の人生に深い興味はない。
自分の人生だけでせいいっぱいだ。

だが、聴かせてくれる分には、面白い。

「というか……トマトジュースは分かるけど、
 トマトジャムって……『ケチャップ』じゃね」

「えひ、情弱でわるいんだが……
 やっぱり……ジャムの方は甘かったりするの?」

        「トマトトークもうちょい聞かせてくれよ」

特に農業なんていうのは全く知らない話だし……
動画サイトやネット番組で『ドキュメンタリー』を見るような好奇心はある。

432小石川文子『スーサイド・ライフ』:2019/02/14(木) 00:06:47
>>431

  「――ええ、喜んで……」

        クス

  「トマトのジャムは甘いんです」

  「グラニュー糖やレモン汁を入れるので……」

  「酸味があるので普通のジャムとは少し違いますが、美味しいですよ」

どちらかというと、自分は街育ちではなかった。
客観的に比較すると、田舎で育った方なのだろうと思う。
街の暮らしに慣れたのは、今は亡き『彼』の影響が大きい。

  「――他には……フルーツトマトも育てています」

  「肥料や水分量を減らすと、普通よりも粒の小さなトマトができるんです」

  「その代わりに栄養が凝縮されて、イチゴよりも甘いトマトになるんですよ」

普段よりも、いくらか饒舌に言葉を続ける。
農園の娘として生まれたこともあり、何かを育てることは昔から好きだった。
趣味で行うラベンダーの栽培も、幼少期の経験が関わっているのかもしれない。

  「何だか……たくさん喋ってしまいました」

         ニコ……

  「――楽しんでいただけましたか?」

433稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/02/14(木) 00:33:49
>>432

「へぇ……ちょっと興味出て来たわ。
 僕、どっちかというと辛党だけどさ。
 ……ジャムとかフルーツトマトとか、
 甘いトマトってのは面白そうだな……」

(まあ、そこまでして食いたいとは思わんけど……
 小石川サン、楽しそうだし……えひ、空気読んどこ)

       (…………でも、どんな味なんだ?
         もしかして『ダイマ』されちゃったか……)

意外にノリノリな小石川のトマトトークを聴き、
多少なり興味を煽られる恋姫だった。
ちなみに、トマト自体は特別好きでも嫌いでもない。
甘い物……それこそジャムなどは好きではないのだが。

「楽しかったよ……えひ、まじでギャップって感じ。
 トマトにめっちゃ詳しい知り合い、他にいないし…………」

「……僕もなんか語りたいとこだけど、今日はこの後用事あるんだよね」

腕時計に視線を向ける。ゲームキャラらしきデザインだ。

「また今度聞かせてやんよ。……まあ、いやじゃなければ……だけどさ」

434小石川文子『スーサイド・ライフ』:2019/02/14(木) 01:18:22
>>433

  「――はい」

  「またお話できる時を楽しみにしていますね……」

      ニコ

少女――稗田恋姫とは、これまで何度か顔を合わせてきた。
それらは偶然ではあったけれど、嬉しい偶然だった。
彼女との会話は、いつも楽しいものだったから。

  「その時は――景品の取り方を教えてくれますか?」

      クス

ほんの少し冗談めかした、やや明るめの微笑を少女に向ける。
そして、立ち去るらしい彼女に合わせてベンチから立ち上がった。
少女を見送るために、深く頭を下げる。

  「……ありがとうございました」

  「――また、いつか……」

435稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/02/14(木) 01:26:48
>>434

「ん…………勉強しとくよ」

       ザッ

「取りやすい台とか……色々な」

          トコトコ

ベンチから立ち上がり、2歩歩いて振り返る。

「んじゃ、またな……小石川サン」

            「……あ」

「……ナイフ、警官が見てるとことかで落とすなよな。えひ」

冗談のつもりでそんなことを言って、恋姫はエレベーターへ去った。

436鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/19(火) 22:56:10
(うぅん)
(やはり、無理せずもう一つ袋をもらうべきだったか…?)
(ただ両手を使って分けるほどの重さでもないからな…)

休日の午後。『テスト期間』につき、午前中だけで部活が終わった鉄は、
学生服のまま竹刀袋を肩に担ぎつつ、片手にギリギリまで詰められた買い物袋を持っていた。
もらった袋が思ったより小さくて、なんとか力技で詰め込みました、という感じだ。

(…しかし、思ったより治るのが早くて良かったな…母さんも)
(もう明日か明後日には完治しそうだ)

『ポトッ』

歩きながら、口につけた『マスク』の紐の位置を片手で直す。
その瞬間、買ったものの一部が袋から落ちてしまった。
しかし考え事をしている鉄は、気付かずに歩いていく。

437佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/19(火) 23:57:04
>>436

         ヒョイ


       「――――へい」


少し癖のあるショートカット。
ミニスカートと、そこから伸びる黒タイツ。
フライトジャケットのポケットに片手を突っ込んだ、ごく普通の少女。
それが、もう片方の手で『落とし物』を拾い上げて。
顔を上げ、若干三白眼気味の瞳を向けて――――


    「落としましたよ、お兄さん」


口の端を持ち上げて笑いながら、前を行く落とし主に声をかけた。

……ところで、彼女は高校二年生。
もしかするとキミとは顔見知りかもしれないし、そうでないかもしれない。

438鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/20(水) 00:10:55
>>437

「え?」クルリ
「ッ?!」
「………あ」

声をかけられて、振り向き。
それが女性であったので、思わず驚いて、目を逸らしてしまって。
そして投げられた言葉の内容を頭の中で繰り返し、慌てて右手の買い物袋の中身を見た。
一番上に入っていたモノがなくなっている。

「すっ、すまない」「お手数を、おかけして…」

なんとか言葉を紡ぎながら、熱くなっていく頭の中で、努めて冷静になろうとする。
拾って頂いたのだから、当然受け取るために近寄らなくてはならない。
なるべく警戒心を与えないように、自然な立ち振る舞いを意識しようとして、自然ってそもそも何だ?という問いに直面し─────。
ようやく、その声に聞き覚えがあったことに気付いた。

「・・・・・佐奇森さん?」

クラスメイトの名前を口にしながら、一瞬だけ顔を上げる。
ちなみに落とした袋の中身は、ホームセンターで買った『ポーチ』と『釘』だった。

439佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/20(水) 00:24:34
>>438

    「ええ、ええ、佐奇森さんですとも」

   「風邪、大丈夫? 顔赤いよ、夕立クン」

カラカラと笑って、『ポーチ』と『釘』を差し出す。
……ん、『釘』?
ポーチはまぁともかくとして……『釘』?

    「……テスト期間中に『日曜大工』?」

     「ってわけじゃないと思うけど、どしたのこれ?」

『ポーチ』もまぁ、変と言えば変な買い物だ。
テスト前に、風邪っぽそうな顔して、『ポーチ』だの『釘』だの買い込むかフツー?

440鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/20(水) 00:44:57
>>439

「…拾ってくれたのが佐奇森さんで良かった」「ありがとう」

ふぅ、と息をつき感謝の言葉を述べながら、マスクをズラす。
そして差し出された『釘』と『ポーチ』を受け取った。
クラスメイトなら、手で受け取る程度なんでもない。いや、なんでもないは言い過ぎたが。
やはり目は合わせられないし。

「オレは無事だよ。これは『予防』」「母さんが少し前に風邪にかかってね」
「とはいえ、もうすぐ治るだろうけど。念のために、今日の買い物はオレが来たんだ」

分かって言ってるのか、それとも素なのか。何となくからかわれているような気がしつつも、首を振る。
心配させてしまっているなら、それはそれで申し訳ない。


>    「……テスト期間中に『日曜大工』?」

>     「ってわけじゃないと思うけど、どしたのこれ?」

「・・・・・・・・・・」ビクッ

思わず、動きが止まる。しまった、せめてこれは袋の一番下に入れておくべきだった。
いや、そもそも落とさなければ良かったのだが。何か上手い言い訳を探さなくては。

「これは、その、ええと…」

「………」

「…佐奇森さんは、『非常食』とか買っておくタイプ?」

441佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/20(水) 01:00:02
>>440

     「ああ、なるほどね」

      「お大事に、ってお母さんに言わなきゃ意味ない気もするけど」

風邪は感染する病だ。
かかった本人、その身内、そしてまだかかっていない人すらも、感染を防ぐために意識するのは重要なことである。
うんうん、感心なことだ。
佐奇森も手洗いうがいは徹底しているが、体調を崩しやすい時期なのだし。

   「……お、妙な反応」

と、鉄が妙な反応を示した。
まぁ彼が挙動不審なのは今に始まったことではないのだが(失礼)。

       「『非常食』?」

    「ああうん、たくさん買い込んであるよ」

      「こないだ『乾パン』の賞味期限が切れたから買い替えたとこ」

     「それがどうしたの?」


              「……まさか……『釘』を……ッ!?」

食べるのか!?(そんなわけはない)

442鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/20(水) 01:14:44
>>441

「…いや、その気持ちだけでありがたいよ」「母さんにしっかり伝えておく」

佐奇森さんはその瞳の影響でか、やや気が強そうな女性に見えるが
責任感が強く、気配りもできる女性だ。『クラス委員長』を務めているのも納得だろう。
そういえば、『山岳部』にも所属していた気がする。


>              「……まさか……『釘』を……ッ!?」

「ないない」「それはない」

顔の前で手を振って真顔で否定する。
『釘を食べる人間!』みたいなオカルト的な話も意外と信じるタイプなのだろうか。
それならしっかり説明しても通じるかもしれないが、ひとまずは、安全策で行こう。

「そうなんだ、やっぱり佐奇森さんはしっかり備えておくタイプなんだな」
「オレもどちらかと言えばそのタイプで、色んな事態…特に自分にとって、都合のよくない事態を想定しておく方でね」
「できれば使いたくないが、いざという時のために準備しておいた方がいいもの」

「ええと」「まぁ」「『コレ』がそうなんだけれど」

そう言って、『釘』と『ポーチ』を指差す。
…何を言っているか余計分からないかもしれない。自分もよく分かっていない。
元よりウソは得意ではないが、女性相手だと尚更かもしれない。

「さ、佐奇森さんは今日は買い物でここへと?」

とりあえず話題を変えることにしてみよう。

443佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/20(水) 01:35:20

   「あはは、ジョーダン、ジョーダン」

『土』とかは聞いたことがあるが、どう考えても『釘』は食べるものではない。
ショートカットを揺らしながら、カラカラと笑う。

    「ははーん、もしもの時の備えってワケ?」

  「なるほどねぇ……」

うんうん、と神妙な顔で頷いて、

     「いやだからって風邪引いた母親に代わって買うこれ?」

   「っていうか全然説明になってませーん」

    「『コレ』が必要になる状況って何よ。ゾンビパニック? でなきゃ不良の『カチ込み』でしょ」

手首のスナップで虚空にツッコんだ。
露骨に不自然だ。それこそ日曜大工でもするんだろうか。テスト期間に?
流石にそれはこう、『テスト前に片付けが捗る』とかのレベルを超えてないだろうか。

      「私は『方程式』と向き合うのに嫌気が差して気晴らしがてらお菓子買いに来たとこだけど」

    「その言い方だとキミ、『僕は違う理由で来ました』って感じ出ちゃうぞー?」

444鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/20(水) 01:47:58
>>443

>     「いやだからって風邪引いた母親に代わって買うこれ?」

>   「っていうか全然説明になってませーん」

>    「『コレ』が必要になる状況って何よ。ゾンビパニック? でなきゃ不良の『カチ込み』でしょ」

「ごもっとも過ぎる…」

目線を合わせずに、頷いた。
仮に自分でもそう思うだろう。ここまで流暢に反論したりはできないが。
ここは覚悟を決めて話すべきか。
彼女には『頭がおかしいヤツ』と思われるかもしれないが、
仮にそうなったとしても、クラスに吹聴するタイプではないだろう。

「オレも買い物がメインではあるけど、察しの通りこれは『私物』でね」
「・・・・・そうだな」

辺りを見回して、人通りが今は少ないのを確認。
何本も束ねられている『釘』の包装を破いて、その内一本を取り出す。

「佐奇森さんは、『超能力』を信じるタイプか?」
「…いや、話がどんどんヤバい方向に向かってるのは分かってる」
「とりあえず最後まで聞いてもらえれば」

445佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/20(水) 01:57:28
>>444

    「お……」

……話が。
少し妙な方向に動き始めたのを感じる。
楽しげに口角を持ち上げたままポケットから両手を出し、その掌を上に向ける。
続けてどうぞ、のジェスチャー。

        「OK」

     「聞こう。聞くよ」

   「とりあえず最後までね」

面白くなってきた。
そんな感覚があった。

446鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/20(水) 21:26:48
>>445

「ありがとう」

頷き、釘の先端で軽く自分の指を刺す。ほんの僅かに、赤い血が一滴浮き出てきた。
その指を見せ、とりあえず、この釘は『本物』だということを伝えておく。

「先日、オレはとある人から、『超能力』に目覚めさせてもらった」

「それで自分の能力について色々と試行錯誤したり」
「目覚めさせてくれた人に対して訊ねたりしてみたんだ」

「オレの能力には、『刃』が必要なんだけど」

釘を握る右手と重なるように、『シヴァルリー』を発現。釘から『殺傷力』を奪い、『なまくら』とする。

『ビュンッ!』

そしておもむろに、左手へと勢いよく突き刺した。

「…家にある刃物は一通り試したし、『日本刀』も借りて試してみたが」
「あまり大きいものは邪魔になるし、普段から持ち歩くのは危険過ぎる」
「それに、殺傷力が高過ぎるしな」

左手を、佐奇森さんへと見せる。血どころか、傷一つない左手を。
そして彼女へと歩み寄り、その『釘』を渡す。

「それでひとまず出してみた結論が、コレなんだけど」
「…『能力バトル漫画』とか見たことある?それなら理解しやすい か も」

説明しつつも、はたしてこんな説明で理解できるかどうか、不安は残る。
傷付かない『釘』に関しても、途中で手品のように入れ替えたと言われてしまえばそれまでだ。
佐奇森さんの懐の広さに期待したいところだが、どうか。
チラリ、とクラス委員長の顔を伺う。

447佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/20(水) 23:48:00
>>446

   「……へぇー」

          「うわっ」

        「…………痛くないの? マジで?」

受け取った『釘』で、恐る恐る自分の手を刺してみる。
……刺さらない。
痛くない!

    「うへー、すごいね夕立クン」

      「『日本刀』借りられる先ってナニ? って感じだけど」

     「あ、剣道場とかだと結構置いてあるんだっけ」

すごいすごいと感心しながら、『釘』を自分のあちこちに刺そうとしてみて遊んでいる。
当然どこにも刺さらない。とても『不思議』だ。

        「……ん、OK」

       「納得した納得した」

          「『釘』よか『カッター』とか『ハサミ』でもいいんじゃないかって気もするけど」

    「にしても夕立クン、度胸あるよねぇ」

      「『自分は超能力者です』って、フツー信じてもらえないよ? ヤバい奴扱いされるって」

ケラケラ笑って――――佐奇森は、フライトジャケットのポケットに手を突っ込んで仁王に立つ。
超能力者とか、フツーは信じない。
フツーは納得しない。当たり前だ。
……けど。


            「――――『こーいう子』でも無ければね。」


傍らに、『スカイラブ』を発現する。

448鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/21(木) 00:28:34
>>447

「『シヴァルリー』は、能力の対象下に置いた刃物に傷付けることを許さない」
「そういう能力なんだ」

『スタンド』の説明を付け加える。
どうやら信じてくれたようで、一安心だ。女性にヒかれるのは慣れているが、
流石にクラスメイトにあまり距離を置かれると、悲しい。

「いや、『地下アーケード』に『骨董品屋』があってね」
「店頭に並んでいたものから、少し『殺傷力』だけ借りさせて頂いたんだ」
「顧問の先生は持っているのかもしれないけど、学生の手の届くところに置くと危険だからね」

実際振ってみて、リーチも扱いやすさも申し分なかったのだが、値段が高いしかさばるし、何より危険過ぎる。
もし仮に『そういう事態』になったとしても、相手の命を奪いたいわけじゃあない。
ただでさえ、『シヴァルリー』。その能力には、危険が伴う。

「カッターやハサミも、あれば便利だなとは思うけど」
「まぁ『釘』はな…色々な所に刺せるのがいいんだ」


>    「にしても夕立クン、度胸あるよねぇ」

>      「『自分は超能力者です』って、フツー信じてもらえないよ? ヤバい奴扱いされるって」

「その通りだとは思う」「でも事実だからな」
「…いや、ヤバい奴ってところじゃあないぞ」

「説明して、理解してもらえなければ仕方ない。それはオレの不徳の致すところだから」

自分は、あまり嘘は得意ではない。だから単純に話して理解してもらうのが得策だと思った。
この前の風紀委員の少女とのやり取りでも思ったことだ。

「でも、キミは信じてくれただろ?─────」

と、そう語りかけた少女の隣には。自分と同じ、『超能力のヴィジョン』。

「・・・・・・・・・・」
「ここのところ、そういう機会が多かったからな…目玉が飛び出るほど驚く!ってわけじゃあないが」
「『クラスメイト』にいたのは流石にビックリだな」

改めて、自分の隣に『シヴァルリー』を発現する。


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