したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【場】『 私立清月学園 ―城址学区― 』

398今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/09/29(土) 22:48:31
>>397
結局パンを食べ終えたあと、知り合いと合流して帰ったのだった。

399日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2018/10/22(月) 03:57:03

別に意味があっているわけじゃあない。
意味がある事しかしないわけではない。
そういうのに『反骨』したくてやっている。

                  チュン 
            チュン


「……」

    ゴロ

そいつは屋上にいた。
数カ所だけ流れに逆らってくるりと巻いているが、
それ以外はきっちり切りそろえた金とも銀とも言えない髪。

――――二年の『日沼 流月(ひぬま るな)』だ。
不良グループの一員らしいが、仲間はここにはいない。

            ガチャ

ドアを開けた>>400がそれを見る事になる。
昼ごはんを食べに来たのか、景色を見に来たのか、
前に来たときに忘れ物でもしたのか、理由はともかく。

                    ・・・意味は必要ない。

400火野一稀『ザイセルフ』【高2】:2018/10/22(月) 22:27:38
>>399

彼女は学生だった。
だけれど頭には模範的なという言葉はつかない。
黒い髪、気の強そうな釣り目。
制服は着ず、ジャージを着ていた。
ただ、それも下だけの話で上着は完全に私服だった。

「……」

屋上に続く扉を開けて、先客がいるのを知った。
別にそれを気にする必要はない。
少し遠い位置の床に座る。

401日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2018/10/22(月) 23:59:24
>>400

             ゴロ

  ちらっ

(確か――――『火野』さんだっけ)

同学年で、目立たない人間でもない。
名前は知っている。話した事は少ない。
 
           ゴロ

別に触れて欲しくないんだろう。
日沼にも別に用事はない……意味がない。
こういうのを『気まずい』というのだろうか。

だから日沼流月はなんとなく、この空気に『反乱』する。

「おい、挨拶くらいしろよ!
 って思ってるわけじゃないけど、
 どうせだしちょっとお喋りしたいわけよ」

        ザッ

           ザッ

「気持ちいい沈黙ってわけでもないでしょ?」

   ストン

ずけずけとわざわざ近付いて、そこで腰を下ろす。

402火野一稀『ザイセルフ』【高2】:2018/10/23(火) 00:10:45
>>401

>おい、挨拶くらいしろよ!

「あ゛?」

その言葉に大きく開かれた視線を向ける。
立ち上がろうとした瞬間、自分の思った言葉が続かなかった。
大きく息を吐いて、またその場に座る。
特に近づかれたことに対する抵抗はない。

「んだよ、日沼……だったか?」

火野の目が向けられ続ける。
瞳には一筋の線。
そこを境目に右側が黒、左側がこげ茶になっている。
左右で瞳の色が違う。
右目左目ではなく、右側左側という概念。

「暇してんのか?」

にっと歯を見せて笑った。

403日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2018/10/23(火) 00:52:16
>>402

「冗談、冗談。ぷぷ、挨拶なんて堅苦しいよ」

「流月は『日沼』で合ってるけど、
 あんたは『火野』で合ってたよね?」

     ジィ

「そう、その『目』!」

「それで覚えてたんだ。名前」

           ニヘ

どうとるかは火野次第だが、
悪意は感じられない顔だった。
目を逸らす事なく、日沼は続ける。

「ヒマじゃなきゃこんなとこいないって〜!
 『逆に』あんたはどんな用事があって屋上に来たの?」

「多分だけど、流月と同じじゃない?」   

もし何か用事があるなら言いがかりだが、
無いのであれば――ひまつぶしの相手がここにいる。     

「何話す? 別に話すんじゃなくって、
 なんかゲームするのとかでもいいけど」

     「火野の趣味って、そういえば知らなかったわ」

火野も、日沼の趣味を知る機会はほぼなかっただろう。
そう遠くないある時期までは真面目な感じだったとか、
そういうゴシップ的な噂であれば、耳に挟んだかもしれないが。

404火野一稀『ザイセルフ』【高2】:2018/10/23(火) 01:42:40
>>403

「そうだろ? 皆、アタシの目を見るぜ」

「アタシの目を見てアタシを覚える」

目に対して侮蔑の感情を感じなかった。
だから、火野からすればそれは嬉しいことだ。
自分にとってこの目は宝物だから。

「アタシは暇だからきた」

特にしたい事もなかった。

「バイクとかが趣味だけど」

「アタシもお前のことあんまり知らねぇな」

「どっかのグループに入ったのは言わずと知れてるが」

405日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2018/10/23(火) 03:10:01
>>404

「バイクは、流月あんまり知らない。
 あんたのこと以上に知らないかも?
 今のところそこまで興味も無いのよね
 『反応』悪くてごめんだけども……にへ」

「流月はボウリングとか好きかな!
 マイボウルとか持ってる訳じゃないけど、
 いつかは買おうかな〜って思ってるし」

趣味の話に持ち込みかけたが、
グループと言われて日沼の目が光る。

「え? ああ、グループ。
 うん、『桜裏悲鳴(オリヒメ)』ね!
 知ってる? 結構有名なチームだけど」

知っていてもおかしくはない。
あまりハードではない不良グループだ。

「いきなりさ、一人でワルぶっても……
 それってただの『反抗期』でしょ?
 長い物には巻かれろじゃないけど、
 『反骨』するにもルールはあるというかさ」

              ヘヘ

「そういうのが知りたくて入ってわけよ」 

妙なマジメさだが、日沼の考えでは反骨と無軌道は違う。
軌道を外れるだけではなく、『異なる軌道』を知る必要があった。
ただ、桜裏悲鳴という流れに呑み込まれるつもりもないが。

「ちなみに……火野も割と、『不良』なイメージだけどさ。
 なんか入ってるの? チームとか、グループとか」

            「一匹狼でもイメージには反しないけど」

406火野一稀『ザイセルフ』【高2】:2018/10/24(水) 01:37:03
>>405

「ボウリングか、スポーツは好きだぜ」

体を動かすのは気持ちいい。

「おりひめね……」

「アタシは入ってねぇよ。いまいちピンとこねぇっていうか、合わねぇっていうか」

肌に合わないというか。
そういうタイプではなかった。
群れるのが嫌いとかそういう範囲だ。
仲間や友達は必要だが、つるむ相手は求めてはいなかった。

「喧嘩はそれなりにしたけど」

「楽しいのか、そのおりひめって」

407日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2018/10/24(水) 01:58:46
>>406

「スポーツ全般が得意ってわけじゃないけどね。
 ボウリングとか、ダーツとか、そういうのは好きかな」

「桜裏悲鳴のヤツらともたまに行くし。
 別に特別な事をするわけじゃないけど、
 ……楽しいかっていうと、楽しいかなァ。
 従わなきゃいけない『流れ』みたいなのもないし」

          にへへ

「ま、うちはあんま喧嘩とかないしィ……
 火野には肌合わないかもしれないわ。
 前まではそういうのもやってたらしいけど」

言葉は伝聞調で、実感も籠ってない。
実際、ここ最近『抗争』があったような話もない。

「で、火野……さっきからヒノヒノ言ってて、
 なんかこう『距離感』作ってる感じするわ。
 もうちょいカジュアルな呼び方にしようかな」

       「イヤじゃなければ、だけど」

「なんかあだ名とかある? 『ヒノッチ』とか。
 ぷぷ、それはちょっと安直すぎるか……ねー、ここでさ?
 私が作ってやる! って言えるほどはセンス無いのよ流月」
 
                 「あ、それか下の名前でもいい?」

408火野一稀『ザイセルフ』【高2】:2018/10/24(水) 04:50:26
>>407

「なるほどなァ……流れ、ね」

その言葉にあまり共感は出来なかった。
目の前の彼女と自分が同じ人間でありながら別人なのだと理解する。
人の中にあって流れを感じない時はなかった。
だからその流れの中で真っ直ぐに立つと決めた。
流れに逆らってでも真っ直ぐ歩くと決めた。

「多分……お前んとことはやってねェも思う」

わざわざ喧嘩をした相手の名前や所属している組織を聞き出したりはしない。
そういうのを必要としないのだ。

「別にあだ名とかはねェ」

そこまでの仲の相手はいない。
小学生の時でもあだ名はつけられなかった。

「別に下の名前でもいいけど、せっかくなら付けてくれよ」

「センスとかきにしねェし」

少し欲しがってみた。
人生を振り返る歳ではないが、いつか貰っておけばと思うかもしれない。
どうせなのだから、貰ってしまおうと思った。

「アタシも呼び方考えた方がいいか?」

409日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2018/10/24(水) 06:05:05
>>408

「流月、流れに『逆らう』のは好きなんだけどさ。
 ずっと逆らい続けなきゃいけないのは疲れるじゃん?
 それって、ただ逆向きに流されてるだけっていうか……」

「だから『流れ』が無い場所も欲しくなるわけよ」

               へへっ

日沼 流月の笑いはふざけた笑いで、
意味のない笑いなのかもしれなかった。
意味は、いらない・・・無くて"も"いい。

「へー、ないのね。それじゃせっかくだし考えようかな。
 ……『逆に』さ、フルネームで呼ぶとか考えたけど、
 それって流月が呼びづらいだけだから本末転倒だよね。ぷぷ……」

少し考えるような顔つき手つきで、巻いた髪を指で巻き直した。
ネジが巻き直されるように、思い出したように手を打った。

「だから! 『ヒノッチ』でいいんじゃね? って思うわけよ。
 これくらいのが流月が呼びやすいし、覚えやすいでしょ?
 変にひねったあだ名より、呼ばれた時『反応』しやすいでしょ!」

           にっ

「決まりね、ヒノッチ」

と日沼は新しく笑って、あだ名らしきものが決まった。
ずっとそう呼ばれるのかは分からないが、そういう流れが出来た。

「……ん? 流月の呼び方は流月でいいけど?
 考えてくれるなら……楽しみにしてみよっかな!
 それとも逆に全然期待しないでいる方がよかったり〜?」

410火野一稀『ザイセルフ』【高2】:2018/10/24(水) 23:54:03
>>409

腕を組む。
流れや逆らうという言葉。
そこを大事にしている、というかそこにこだわりがあるのだろうか。

「ヒノッチ……あー、いいんじゃねぇかな」

特に断る理由もない。

「期待しないでいい」

「流月でいいなら流月でいいだろ」

411日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2018/10/25(木) 00:30:33
>>410

「ヒノッチ、クールだね〜。
 じゃあ流月って呼んでちょうだい。
 なんだかんだそれが自然だし」

    ヘヘ…

日沼は軽い笑いを浮かべる。
それから、下ろしていた腰を上げ、
スカートの埃を落としながら動き出す。

      ザッ

「じゃ、仲も深まったということでね、
 流月はあっちに寝に戻ろうと思うわ。
 でもなんか用事あったら起こしてね」

「『自撮りがツイッターで10リツイートされた』――――
 ってくらいの用でもいいよ。ぷぷ、そういう柄でもないか」

   ザッ

     ザッ

             ゴロ

そういうと日沼は元の位置に帰り、
元と同じような転がる姿勢に戻る。

つまり、お互い元の自分の目的に還るわけだが、
なにかまだ話したい事があるなら多分日沼は起きる。

412火野一稀『ザイセルフ』【高2】:2018/10/25(木) 23:29:30
>>411

「クールか? そうか」

火の文字を持つが案外クールなのかもしれない。
ぶっきらぼうなだけなのかもしれないが。

「分かったよ、流月」

寝に行く彼女を止めはしない。
火野は座ったまま目を閉じた。
風が吹いていた。
それ以上、火野は話さなかった。
彼女自身も暇をしていたのだ。
特にあてもなくたどり着いた屋上。
そして一時の会話。
それで十分だった。
だから、それ以上火野は話さなかった。
静かに眠った。

413今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/12/19(水) 23:51:25

         ビュ   オオオっ

「寒〜〜〜〜っ」
「いや〜寒いですね! もう12月だもんなあ」

            『モウ少シ、厚着スベキデス』
            『帽子ナド 被ッテミテハ?』

「いや〜、だって1月とか2月はもっと寒いでしょ?」
「今本気で防寒すると、後がなくなるといいますか」

偶然一人で、通学路を歩いている。
これは帰り道で、空は少し暗いくらいの時間。

傍には先生が出てるから、もしかしたら目立っちゃうかも。
あんまり見える人っていないし、見えてない方が変な子だと思われそうだ。

変じゃないし、フツーなんだけど。

414小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/12/23(日) 16:38:24
>>413

   コツ 
        コツ 
             コツ

近くの脇道から靴の音が聞こえ、まもなく喪服を着た人影が姿を現した。
喪服の上から藤色のコートを羽織っている。
黒い帽子の下で、視線が少女とスタンドに向けられた。

  「こんにちは……」

  「また……お会いしましたね」

       スッ――

その顔に穏やかな微笑を浮かべて挨拶し、丁寧に頭を下げる。
そして少女の隣に立ち、共に歩き始めた。
向かう方向は同じらしい。

  「――今お帰りですか?」

冬の風は冷たく、暖かさが恋しくなる季節だ。
だけど、この凛とした空気を吸うと、心が引き締まるような思いを感じる。
だから自分は、どちらかというと冬が好きな方だった。

415今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/12/23(日) 21:48:43
>>414

「あっ、どうもどうも。お久しぶり」
「ってほどではないか」

               『コンニチハ、小石川サン』

「こんにちは小石川さん。お元気ですか?」

            ニコニコ

思いがけない知り合いに会って、ちょっと驚く。
道が一緒なのかな? 意外とご近所だったりして。

「ええ、学校から出たところでして」

家まではまだけっこう、時間がある。

「いや〜、お話する相手が出来て良かったです!」
「今日ばかりは、一人で歩く羽目になると思ってたから」


               『先生モ イマスヨ 今泉サン』

「先生は特別枠ですよ!」
「テレビで言うと私と先生はMCと言いますか」
「今日のゲストが小石川さんって感じで」

それにしても今日は寒い。
寒さって、みんな同じように感じるのかな。
だったらそれは、フツーに良いことだと思う。

「小石川さんも、どこかにお出かけだったんです?」

416小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/12/23(日) 22:48:33
>>415

「私も、今泉さん達とお話ができて嬉しいです」

「今は何となく寂しい気分だったもので……」

歩調を合わせて歩いていく。
自分も、ちょうど誰かと話をしたい気分だった。

「ゲスト――ですか……」

「よろしくお願いしますね」

そう言って、緩やかに口元を綻ばせる。

「私は……この辺りを少し歩いていたんです」
 
「散歩をするのが好きなので……」

二人の間を静々と微風が流れる。
その風に乗って、仄かなラベンダーの香りが辺りに漂う。

「自然公園の方へ行くことも多いです」
 
「森林浴――のようなものでしょうか……」

自然公園の木々の中を散歩することは多い。
心が乱れている時は、自然の中で過ごすと気持ちを落ち着けることができる。

417今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/12/23(日) 23:13:02
>>416

「私の場合、先生と二人分ですからね!」
「寂しいなんてのとは無縁にさせますよ」

         『ソノ通リデス』
         『ワタシハ “ココロ”ヲ 癒ス能力デハ ナイデスガ』
         『話セル トイウ事ガ ソノ代ワリニ ナリマスノデ』

「そんな大げさな事でも無いとは思いますが」
「えーと、よろしくお願いしますっ」

なんか重めな事を言い出す先生と、小石川さんと並んで歩く。

「散歩ですか〜、いいですね」
「森林浴もいいですね」
「森林浴、すごく小石川さんって感じ」

ラベンダー?だっけ、このにおい。
小石川さんって『花』のイメージがある。

「私、遊びに行くのってストリートの方が多くって」
「自然公園ってあんまり詳しくないんですよね」
「ピクニックとか、友達と行ったりはフツーにしますけど」

        『タマニハ 草花ニ 囲マレルノモ イイモノデスヨ』

「ですよね!」

「そこでなんですけど」
「小石川さんおすすめのスポットとかあります?」

418小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/12/24(月) 00:06:29
>>417

心を癒す能力ではない。
その言葉を聞いて、無意識に『コール・イット・ラヴ』へ視線を向ける。
見抜かれているような気がしたからかもしれない。

  「……今泉さんの先生は、いつも傍にいてくれるんですね」

  「素敵なことだと思います」

自分には、その人がいなくなってしまったから。
だけど、今は隣に知人の少女がいる。
彼女の存在が、心を過ぎる寂しさを少し薄れさせてくれていた。

  「そうですね……」

自分が好きな場所は、いくつかあった。
どこがいいだろう。
少し考えてから、言葉を続ける。

  「――自然公園の奥に、広い花畑があるんです」

  「夏は向日葵……秋はコスモスが見頃になります」

  「今の季節なら、もうすぐスイセンが咲き始める頃でしょうか……」

  「白い花が一面に咲いていて……とても綺麗な景色が見られますよ」

最初に思い浮かんだのは、その場所だった。
自分も、近い内に訪れるつもりでいた。

  「今泉さんは、どんな場所へ行かれるんですか?」

時には街の方に足を向けることもある。
けれど、それほど詳しいというわけではなく、あまり知っている方とは言えない。

419今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/12/24(月) 00:52:42
>>418

「そうですかね?」

       『先生ハ ソウイウモノデスカラ』
       『役目ヲ 果タスノガ ヨロコビ デス』

「まあ、素敵に越した事はないですね!」
「ありがとうございます」

先生はフツーのスタンドとは多分、違う。
それは私がフツーじゃ無いってコト……じゃない。

きっと。

・・・きっと。

「お花畑ですか!」
「いいですね〜。そういうところでピクニックしたいな」
「ロマンチックすぎますかね?」

       『芸術的デ イイト思イマスヨ』
       
「芸術はあんまり分からないですけど」
「それこそ、ステキな感じになりそうですよねっ」

お花に詳しいとかじゃない。
けど、お花畑ってフツーにイイ感じだと思う。
なんで?っていうのは、私には分からないんだけど。

「私ですか? そーですね、色々行きますけど」
「小石川さんが好きそうなところだと〜〜〜」

「う〜ん」

「表通りの『うさぎカフェ』……は、
 お洋服が毛だらけになっちゃいそうだし」

「そうですねえ、小石川さん『スイーツ』とか好きですか?」

420小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/12/24(月) 01:40:33
>>419

これまで、それほど多くのスタンドを見てきた経験はない。
ただ、彼女と並んで歩く『コール・イット・ラヴ』は珍しいと感じる。
少なくとも、自分のスタンドとは違っている。
もっとも、『コール・イット・ラヴ』程ではなくとも、
『スーサイド・ライフ』も似た種類が多いタイプではないかもしれない。
いずれにしても、その両方が精神の形であることは共通しているのだろう。

『補修』と『自傷』――ある意味では対照的とも呼べる能力。
それを持つ二人が並んで歩いているというのは、少し不思議な感覚を覚える。
もしかすると、これが『スタンド使いを結ぶ縁』というものなのかもしれない。

  「ええ、私も喫茶店で時々いただくことがあります……」

  「多いのは……甘さを抑えたシフォンケーキなどでしょうか……」

  「ハーブティーと合わせると、とても美味しいですよ」

自分の行動範囲は、そう広いものではない。
その中に、そういった品を扱う喫茶店がある。
静かな雰囲気が気に入って、今まで何度か足を運んだことがあった。

  「私の好みを気にして下さって、ありがとうございます……」

  「今泉さんのご自由に話していただいて大丈夫ですよ」

  「――私は、それで十分に楽しいですから……」

あまり悩ませてしまうのは申し訳ないと思う。
『コール・イット・ラヴ』の言葉通り、話しているだけでも心は癒されるのだから。

421今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/12/24(月) 02:21:20
>>420

「小石川さんって何かとオシャレですよね〜」
「ラベンダーとか」「ハーブティーとか」

           『ステキナ ゴ趣味 デスヨネ』
           『先生トシテ 興味深イ デス』

「生徒としても興味深いです!」

それがイヤミにならないんだもんなあ。
オトナの女性、ってこういう感じなのかな。

「ん。えー、そうですか?」
「私の好み100%だと、逆にちょっと話し辛いっていうか」
「遠慮とかじゃなくって、フツーに」

遠慮なのかもしれないけど。
自分としては、そういうつもりってわけではない。

「でもそうですね、好きに話すなら〜っ」
「『パンケーキ』が美味しい喫茶店があるんですよ」
「あっ、これも表通りです」

「フツーのパンケーキって、割と派手っていうか」
「アイスとフルーツとクリームと、って」「賑やかじゃないですか」

頭の中に先週食べたパンケーキが浮かんでくる。
あれも、美味しかったんだと思う。

「そこのはもっとシンプル!」
「バターと蜂蜜とアイスクリームだけでして」

               『ミントモ ノッテマシタヨ』

「そうでしたっけ? あは、よく覚えてますね」
「ともかく、それをカフェオレと一緒に食べてる時は……」

               ニコ

「あっ美味しいもの食べてるな〜!って気持ちになりますねえ」

422小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/12/24(月) 03:08:36
>>421

時折頷きながら、少女の話に耳を傾ける。
あまり自分が知らない話というのは、やはり新鮮に感じられる。
そこが、彼女と自分の違いの一つなのだろう。

  「パンケーキも美味しいですね……」

  「家で焼くこともありますが……お店のようにはできませんね」

  「初めて作った時は、少し焦がしてしまいましたから……」

過去の失敗を思い出しながら、静かに微笑する。
あれは、自分が結婚する前のことだった。
思い返すと、あの頃が遠い昔のような気がする。
まるで何十年も経っているような錯覚さえ覚えるが、
実際はそんなに長い時間は経過していない。
少なくとも自分の記憶は、昨日の事のように鮮烈に残っているのだから。

  「私も……お店でシフォンケーキとハーブティーをいただいている時は、
   それと同じような気持ちを感じます」

  「美味しいものを食べて、幸せを分けてもらっているような……」

  「――今泉さんと似ていますね」

          クスッ

これまでと比べ、やや明るく笑う。
好みだけではなく、部分で自分と彼女が違うことは何となく察せられる。
それは当たり前のことで、何の不思議もない。
けれど、何もかもが違うとも言い切れない。
こうして話してみると、少なからず共通する部分も見つかるのだと、改めて思う。

423今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/12/24(月) 23:21:11
>>422

「へぇ〜自分で作れるんですか!」
「ホットケーキなら作った事ありますけど」
「パンケーキはやった事ないなあ」

「……でも、なんだか意外ですね」
「小石川さんも、料理焦がしたりするんだ」「って」

          『誰デモ 失敗ハ アルモノデス』
          『驚クノハ 失礼 デスヨ』

「それはそうなんですけども」
「なんでも出来ちゃうイメージなので」

            アハハ

小石川さんってほんと、ソツがないイメージ。
だからそういうフツーな話もあるのは当たり前でも意外なんだ。

「あは、そうですねっ」

「美味しい物を食べた時の気持ちが、『幸せ』だって」

          『……』

「それって、とってもフツーで、素敵なコトだと思います!」

食べ物は美味しい。
美味しい物を食べたら、しあわせ。

その『フツー』は私にも、小石川さんにも同じことで。
それは私にとって、すごく素晴らしくってステキなフツーだ。 

「っと、そろそろ家ですね。小石川さん、お話楽しかったです!」

424小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/12/25(火) 00:12:01
>>423

「散歩の途中で知らない道に入って、迷ってしまったこともありましたから……」

「しっかりしないといけませんね」

     クス

「今泉さんの言われた通り、美味しいものを食べると幸せになれます」

「そんな時は、自分が感じた幸せを、今度は誰かに分けてあげたいと――
 私は、そう思うんです……」

「私と言葉を交わしたことで少しでも今泉さんが楽しかったと思って下さったなら、
 私も嬉しく思います」

そうして幸せを繋げていくことができたとしたら、それは素敵なことだと感じる。
大げさなことでなくてもいい。
日常の中にある、ほんの少しの些細なことの積み重ねを、
これからも続けていきたいと思う。

「こちらこそ、楽しい時間を過ごすことができました」

        スッ……

少女とスタンドに向き直り、丁寧に頭を下げる。

「またいつか、お話できることを楽しみにしています」

「今泉さん、『先生』――それでは……」

           コツ……
                コツ……
                     コツ……

別れの挨拶を告げて、前に向かって歩き始める。
少女のスタンド『コール・イット・ラヴ』は、心を癒す能力ではない。
けれど、自分は彼女に少しだけ心を癒したもらえたような――
何となく、そんな気がしていた。

425今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/12/25(火) 22:55:14
>>424

「それもフツーに意外なエピソード〜っ」

小石川さんってもしかして、結構お茶目なヒトなのかも。
そんな事を考えたりする。フツーに口には出さないけど。

「ほんとにとっても楽しかった、ですよ」
「小石川さんみたいなお姉さんって知り合いにも少ないし」
「お話してくれることも新鮮ですし!」

「はい、またお会いしましょーっ」

             『小石川サン、サヨウナラ』
             『オカラダニハ オキヲツケテ』

先生は頭を下げる。
私は手を振る。

     スタ

            スタ

こうして、私はフツーに楽しい一日を終える事が出来たのだった。

426今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/12/25(火) 23:22:32

それとはまた、別の日のこと。

「寒〜〜〜〜っ」

冬休み期間が始まった。
けど、私は学校に来ている。
大声では言えないけど補修ってやつ。

「…………」

補修だから友達もあんまり来てない。
普段遊んでてもみんな勉強してるんだなあ。

まあ、私もまずかったのは国語くらいだし。
フツーに他の教科は『セーフ』だったわけで。

         スタ

            スタ

なんとなく、まだ学校を出る気分にもならないし、
それに今日補修だからって遊び断っちゃったし、
あてもなく真冬の城址公園を、フツーに歩いてみたりする。

427今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/12/28(金) 00:08:49
>>426(撤退)

そしてフツーに帰ったのだった。

428ゼンチ『イースト・ミーツ・ウェスト』【高2】:2019/01/10(木) 03:00:23

      ザッ

          ザッ

「……」

雪が降っていた。
白と黒で揃った姿が、
今日は白に偏っていた。

(おや)

      チラ

(雪だるま)

自分も作ろうと思った。
座り込んで雪を集める。

  ベシャッ
      ベシャッ

人は今少ないが、
ここは中庭で、
隅の方でもない。

人の目につく可能性はそこそこあった。

429石動織夏『パイオニアーズ・オーバーC』【中3】:2019/01/10(木) 22:48:22
>>428
「おっ……雪だるまか?」
シャチのような頭の少年が一人現れた。
「こんな寒いってのに元気だねぇ」
ゼンチに気さくに話しかける。

430ゼンチ『イースト・ミーツ・ウェスト』【高2】:2019/01/10(木) 23:23:17
>>429

「ええ、雪だるまです」

    ベシャ

「寒いうちしか、
 出来ませんから。
 ……手は冷たいですが」

織夏に振り向く。

「――――初めまして」

挨拶する。
群れるのが好きというわけではないが、
『縁』については一つでも多い方がいい。

「月並みな言い方ですが、
 随分お洒落な髪型で」

(これはまるで、
 『シャチ』のような。
 あるいは『サメ』?)

「セットは、ご自分で?」

そして話題を探すのだ。
ゼンチなりの『コミュ力』ってやつである。

431石動織夏『パイオニアーズ・オーバーC』【中3】:2019/01/10(木) 23:35:32
「はじめまして。俺は石動織夏(いするぎ おるか)
その格好からすると先輩学年かな?」

「手が冷たい、か……ちょっと手を出してみな」

「実は俺ちゃん、魔法使いでね。手をちょっと温めるおまじないぐらいはできるんだ」

「ああ、この髪型?
クセ毛だよ。なんか放っておくとこの髪型になっちまうんだ。」

432ゼンチ『イースト・ミーツ・ウェスト』【高2】:2019/01/10(木) 23:59:29
>>431

「ええ、高等部二年生――――
 善知鳥 雷(うとう らい)です。
 お気軽に、『ゼンチ』とお呼び下さい」

「改めてよろしくお願いします、石動さん」

       ペコリ

雪を弄ったまま話すのも悪い。
やや不出来な雪だるまを背に、
立ち上がって石動に向かい合う。

「マホウ」

「……魔法ですか?
 それは、いったい」

(――スタンド?
 すぐそう決めるのは、
 良くない気もしますね)

「エエ、では、そうですね。
 ……お願いしてみましょうか」

      ゴソゴソ

(危険は、感じませんし)

左の手袋を外して、手を出す。
もう片方は『タトゥー』があるので。
まあ、隠してはいるのだけど。

「……エッ」

「クセ、ですか。
 それはまた……
 お似合いではありますが」

実際似合っていたので、
セットだと思ったのだ。
まさか天然だったとは……

433石動織夏『パイオニアーズ・オーバーC』【中3】:2019/01/11(金) 00:13:53
「ウトウさんか……確か鳥の名前だったっけ。俺がオルカだから動物つながりってわけだ」

「ちちんぷいぷい……」
人魚のような姿のパイオニアーズオーバーCを発現。

「お手手パチン」
〈オーオオオオオオ…………〉
その涙の『泡』をゼンチの手にパチンと当てる。

「ほい、これでちょっと温まるはずだぜ」
パイオニアーズオーバーCの能力の副次効果だ。

>1.気体、液体、炎、電流など『不定形物』の中を『水中』と同じような感覚で『泳ぐ』事が出来る。
>2.『不定形物』から直接にダメージを受ける事もない。毒等の影響も受けない。

炎などの高温はもちろん冷気などの低温で直接ダメージを負うことがなくなるという副次効果。
固体である雪の冷気は防げないが、寒風の冷気は十分防げるだろう。

「ポカポカしてこないかい?」
ゆえに寒風を無視できる程度に体が温まってくるはずだ。

434ゼンチ『イースト・ミーツ・ウェスト』【高2】:2019/01/11(金) 00:30:58
>>433

「鳥、らしいです。
 実物を見たことは、
 実はないのですが」

「オルカ――――ああ!
 シャチの仲間の、ですね。
 『奇遇』に感じます」

などとのんきな事言ってると、
あれよあれよとスタンドが出た。

「……!」

(『人魚』とはなんとも、
 珍しいヴィジョンですが)

     パチンッ

「これ、は……!」

   ポカ ポカ

「不思議な感覚です。
 『魔法』は伊達じゃない、
 といった所でしょうか」

「どうもありがとうございます」

(ありがたい……とはいえ)

こうも簡単にスタンドを見せるのも、
実際いかがなもの、なのだろう。

「その、石動さんは――――
 普段から『魔法』をお使いに?」

おせっかいなようだったが、気になった。

435石動織夏『パイオニアーズ・オーバーC』【中3】:2019/01/11(金) 00:39:59
「まぁ、な。
魔法が使えそうな時は結構使っちまってる。
使えるものは使う主義なんだ、なんかおかしいかい?」

「おっと、俺が魔法使いなのはちょっとだけヒミツな?」

436ゼンチ『イースト・ミーツ・ウェスト』【高2】:2019/01/11(金) 01:03:40
>>435

「いえ」

「隠すつもりがあれば、
 問題はないと思います」

        コク

「もちろん、言い触らしません。
 しっかり秘密をお守りします。
 このゼンチにお任せあれ」

小さく頷く。
そして。

「お返しになるかは、分かりませんが」

         シュル

左手に手袋を付け直す。

「私も、『魔法使い』です。
 自慢の『魔法』を持っていまして」

          メギャァ ―――ン

「愛銃、『イースト・ミーツ・ウェスト』」

「人気が無いとはいえ、
 見せびらかすには、
 少々物騒ですので……
 『一目』だけでご容赦を」

一瞬だけその手に現れた、
緑の鱗に覆われた『拳銃』。

・・・今はもう、雪を掬うただの手だ。

「――――さて」

「私はもう少し雪だるまを。
 この魔法が、解けないうちに」

「石動さんは、どうなさいますか?」

437石動織夏『パイオニアーズ・オーバーC』【中3】:2019/01/11(金) 20:15:51
「銃の魔法……そういうのもあるのか!」

「せっかく声かけたんだ、俺も雪だるま作っちゃうぜ!」
自分にもパイオニアーズの泡を当てる

「雪だるまを作ろう〜♪」
鼻歌を歌いながら雪球を転がしていく

438ゼンチ『イースト・ミーツ・ウェスト』【高2】:2019/01/11(金) 21:23:16
>>437

「先輩風を吹かせるようですが」

「人魚、動物、器具、銃。
 色んな魔法がありますよ。
 とても、興味深い事に」

多くの力を目にしてきた。
一期一会かもしれないが、
記憶には残り続けている。
優しい力も、恐ろしい力も。

「アッ」

「転がした方が……
 丸くしやすそうですね。
 手で丸めるよりも」

      ゴロゴロ…

「〜〜〜♩」

やや調子外れの鼻歌と共に、
同じように雪玉を転がしていく。

作ったってすぐ無くなるものだけど、
これは記憶の中だけじゃあなく、
明日の朝また来るまでは残っててほしいと思う。

439石動織夏『パイオニアーズ・オーバーC』【中3】:2019/01/11(金) 21:42:48
「色んな魔法、か」

「じゃあ、雪だるまを長持ちさせるような魔法もあるかもしれないな」
雪だるまを作り上げ、そんなことをつぶやく。

440今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/02/12(火) 01:45:05

私立清月学園・・・の、『学生食堂』。

ご飯を食べるはずだった友達が職員室に呼ばれた。
フツーに、他の友達グループにあとから合流するのも考えた。

「相席いいですかっ?」

けど、ちょうどいいところに知り合い(>>438)がいた。
今日はこの人と一緒に食べることにしようかな。断られなければだけど。

441今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/02/12(火) 01:46:27
>>440
(知り合いは>>438のひとじゃなくって、>>442のひとだ)

442鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/02/13(水) 22:02:38
>>440

『ビクッ』

「…あ、ああ」「今泉さんか」「こんにちは」

「もちろん構わない、どうぞ」

それまで『スマホ』を操作していた青年は、声をかけられ今泉の方を見ると
サッと目を逸らしつつも、机を挟んで反対側の席を押した。
高等部二年生、『剣道部』の鉄 夕立(くろがね ゆうだち)。
あるいは人懐っこい今泉なら、彼が少し『女性』を苦手としていること。
しかし、できる限りそれを『克服』したいことも知っているかもしれない。

「今泉さんは、普段から『食堂』で昼食を?」

『パキッ』

割り箸を割る鉄の前には、『もりそば』が置かれていた。

443今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/02/13(水) 23:15:17
>>442

「どーもです、鉄センパイっ!」
「よいしょっ」「すみませんね〜急に」

        カタンッ

座って、足元に荷物を置いた。
鉄センパイ。剣道部で、いっこうえの人だ。
確か……女子と話すのが苦手なんだよね。
悪い事しちゃったかも。だから一応、謝った。

でも、フツーに喋れてると思うんだけどな。

「いつもじゃないですよ」
「今日は学食で食べる子と約束してたんです」

「まあ、その子が職員室に呼び出されちゃったんで」
「あはは」「こうして鉄センパイと相席になったんですよ」

         パキ

割り箸を割る。

「スマホ、何見てたんです?」「『パズルゲーム』とか?」

私の今日のメニューは学食の『清月うどん』だ。フツーのうどんだ。

444鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/02/13(水) 23:33:47
>>443

「今日も今泉さんは元気そうで何よりだ」

快活な今泉の挨拶に、斜め下を見ながら鉄は笑った。
目線こそ合わせられないが、これでも鉄の中では中々打ち解けられている方である。
初対面の時こそ、単語でしか喋れず声も聞き取り辛く、『コミュ症』と言われても当然なほどだ。
ここまで喋れるようになったのは、それほど今泉が親しみやすい雰囲気だったのかもしれない。


『チュルル』

「なるほど」「先生もタイミングが悪いな…災難だったね」
「オレの方も、母が少し体調を崩してしまって」
「いつもは『弁当』を作ってもらってるんだけど、今日は『学食』なんだ」

もりそばを合間で食べつつ、今泉の話に頷く。

「最近『風邪』や『インフルエンザ』が流行ってるからな…キミも気をつけて」


>「スマホ、何見てたんです?」「『パズルゲーム』とか?」

「ん」「ああ…」
「この前学校の外で知り合った人にね。『LINE』を送ったんだ」

『チュルチュル』

445今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/02/13(水) 23:46:57
>>444

「私はいつでもフツーに元気です」「でも逆に」
「今は、風邪ひくのがフツーってくらいマスクの子多いですけどね」
「センパイこそ、予防大切ですよ! 身近な人がなってるんですし」

おしゃれとか予防とかでつけてる子も多いだろうけど。

「それにしても、いや〜ほんと災難でしたよっ!」

あやうく一人で食べることになるところ……
だけどこれは口に出さない。鉄センパイがそうだし。
私も一人で食べる日がないわけでもないし。

「もうちょっとタイミング考えて欲しいですよね」
「しんどい授業中とかならむしろ呼び出し万歳なのに」

怒られるような呼び出しでもないし、ね。

「へえ〜、学校以外の友達ですかっ!」
「いや、友達とは言ってなかったか」

「当てて良いです? センパイの……剣道関係の人!ですか?」

フツーに彼女さんかな?とか、考えない事も無いんだけど。
中学の時の友達とかに言う言い方じゃないし。

でも鉄センパイって部活にストイックなイメージだし、そう答えたんだ。

446鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/02/13(水) 23:59:59
>>445

『コクリ』

「確かに、な」「今日は帰りに『ポカリ』とか『ヨーグルト』とか買っていく予定だったけど」
「オレ含め家族の分の『マスク』も買っていくとするよ」

年下ながら、しっかりしている今泉さんの言葉に頷く。
同じ空間の中で過ごす以上、感染リスクは他の人よりも高いだろう。
武道をやっているから健康体の自負はあるが、それでも感染する可能性は低い方がいい。

「…今泉さんは、長女だったりするのかな?」

ふと気になったので、聞いてみた。彼女の家庭環境について自分は全く知らなかった。


>「当てて良いです? センパイの……剣道関係の人!ですか?」

「いや、残念ながら違うな」フフッ
「正解は…」「………」

「いや、何というか…本当にただ、街であった人なんだよな…」

よく考えなくても、そうとしか説明できない。
これで正解できる訳がないので、早々に答えをバラしておく。
実際に接点は『スタンド』なわけだが、これは話すわけにはいかないだろう。

「『烏兎ヶ池神社』って知ってる?」「そこの『巫女』さんをやってる人なんだ」

447今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/02/14(木) 00:22:08
>>446

「それがいいですよ。今風邪ひくと期末テストとかもあるし」
「期末……やだな〜っ」「今回は現文頑張らなきゃ」

風邪引いて休んだら受けずに済むかな。
フツーに再試験とかになる気もするし、『先生』も怒りそうだけど。
それで。

「あはは」「そう見えます?」

私は、笑って、笑顔を浮かべた。

「あれ、外しちゃいましたねっ」
「てっきり他校の『ライバル』とかかと」

それから、センパイの正解を聴いて笑った。

「それにしても」「巫女さんと知り合いなんですねえ」
「私あんまり、神社って行かないんですけど」
「『烏兎ヶ池』……えーっと、どこでしたっけ」

「どうしてまた、巫女さんと知り合ったんですかっ?」

鉄センパイのことだし、ナンパしたとかじゃないと思う。
何か困ってるところを助けてあげたとか、そういう方向かな。

448鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/02/14(木) 00:43:35
>>447

「『期末テスト』か…」
「あまり成績が悪いと部活に出られなくなるから、こちらもある程度頑張らなきゃな」

今泉さんに応じて、こちらもぼやく。
とはいえ『勉強』も嫌いではない。毎日の積み重ねで着々と分かることが増えていくのも、一種の自己鍛錬だ。
とはいえ、同じ鍛錬ならどちらかと言えば身体を動かす方がより好きな訳だが。

>「あはは」「そう見えます?」

「……?」「オレも外したかな」

笑顔を浮かべるが、答えまでは辿りつかせない今泉に首を傾げる。何となく、珍しい反応だと感じた。
彼女に限って家庭内の不和などあるとは思えないが、追求するほどでもないだろう。

「他校の『ライバル』とは、あまり親しくなりたくないかな…」「剣が鈍る」
「もちろんそれはそれ、と割り切れる人も沢山いるんだろうけど」「オレはそういうのが、とても苦手でね…」

溜め息をつく。我ながら、心が弱いと思う。
剣道では『気剣体の一致』が大事だが、もし親しい相手と打ち合うことになれば、自分は気後れしてしまうだろう。
…むしろ、してしまった。

「ここ…らしいよ」「オレもまだ行ったことないんだけれど」

スマホの画面を今泉さんの方へ向ける。
そこには、『烏兎ヶ池神社』の場所が地図アプリにピン留めされていた。
もっともたった今もりそばを食べ終えたから検索してみたばかりだが。

「………」

「えぇっと」

「街中で知り合って、ふとした共通点があって、それでその人は『悩み』…というほど本人は気にしていないんだが」
「それに関して解決できるかもしれない知り合いがいて、その辺りで連絡先を交換したんだ…」

なんともグダグダな説明だ。うまく『スタンド』を隠して伝わりやすくすることは自分には難しい。

「出会いといえば、今泉さんは?」「最近、新たな友人とか、面白い出来事はあった?」

なので、ボールを相手に投げてみた。

449今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/02/14(木) 01:02:06
>>448

「えーっ、そういうペナルティあるんですね!?」
「厳しいなあ」「私、部活は入ってないので」
「そこはまあ、気楽なんですけど」

     アハハ

まあ点数低いのはやばいんだけど。
私、成績あんまりよくないからなあ。

「鉄センパイ、真面目ですよねえ」
「ほんとに『剣士』みたいです」
「というか『サムライ』ですねっ」

ストイック、っていうのかな。
不器用っていうのは失礼だよね。
きっとフツーに、いい人なんだと思う。

「どれどれっ」

        ズイ

少し身を乗り出して、地図を見た。

「えーっと……川沿いの方かな」
「バスとか通ってるのかな」「あーっ、なんか」
「友だちがパワースポットがどうとか言ってたかも」

私自身はいったことないけど、話は聞いたかも。

「おお〜っ、人脈パワーですねえ。流石ですっ」
「っと、私ですか?」「そうですね〜」「うーん」

あの『町』のことは・・・フツーじゃないよね。
ユメミンとかになら話しても良い気がするけど。

「ちょっとした旅行みたいなことはしましたよっ」
「芽足さん……は分からないかな」「新しい友だちと一緒に!」

ぼかして話そうかな。

「まあ、有名な観光地とかじゃないし、お土産もないですけどねっ。日帰りだったし」

450鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/02/14(木) 01:25:11
>>449

「『部活』にもよるけどね」
「『文武両道』を掲げている所なんかは、部活を言い訳に勉学を疎かにはさせてくれないな」
「まぁ部活に熱中し過ぎて、成績が下がると親からの印象も悪くなるし」

例え部活側にそういった制約がなくとも、成績が下がれば口を出す親もいるだろう。
どちらにせよ、部活にのめり込むならある程度勉強が出来るに越したことはない、という話だ。

「そ、そうか?」「そう言われるのは結構嬉しいな」

自分とて男なので、『侍』っぽいと言われると、中々の嬉しさと少しの恥ずかしさがこみ上げる。思わず頬をかいた───。

「ッ!」

と、今泉さんがスマホを見るために身を乗り出してきたので、緊張のあまり、思わず後ろに身を引いてしまう。
こればかりはいつのまにか身に付いてしまった悲しい習性なので、仕方がない。
むしろ、これを予想して画面をもっと彼女の方へと近付けるべきだった。

「…すまない」

小さく頭を下げ、謝罪する。できれば不快に思っていなければいいが。
…とにかく、話題を変えよう。

「『パワースポット』」
「そうなんだ、若い子の間ではちょっと有名なんだな…」

一歳しか変わらないわけだが、それでも男子高校生と女子高校生では、基本的にそういった情報への敏感さに差が出る。
と思っている。多分。自分が疎いだけではない、と願いたい。
そんな事を考えながら、今泉さんの旅行の話を聞く。

(…ん?)

なんとなく、旅行みたいなこと、に歯切れの悪さを感じた。
いや、その点でいえば先ほどの自分はもっと酷かったが。計画された旅ではなかった、という事なのだろうか。

「そうなのか、じゃあこの『S県』の中で?」「どの辺りなんだろう」

開いたままの『地図アプリ』を指差して、訊いてみよう。

451今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/02/14(木) 01:41:00
>>450

「へぇーっ……うちって結構マジメ学校ですよね」
「けっこうどこもこんな感じなのかな」

他の学校の知り合いもいる。
けど、そういう踏み込んだ話ってしないかも。

「あっ」

と。

「すみません、こちらこそ」
「テンション上がって乗り出しちゃいました」「あはは」

そうだそうだ、鉄センパイはこういうの苦手なんだ。
椅子を引いて、元通りに座り直した。
思わずフツーにやってしまった。怒ってはないよね?

「そうですねえ。うーん、有名ではないかもですけど」
「ネットで検索しても」「上の方には出てこなかった記憶が」
「あんまり、宣伝熱心じゃないのかも?」

「まあ、私の友達はけっこうよかったって言ってましたね」

2ページ目くらいに出て来た気がするんだよね。
写真とかもあんまりでないし……見せてもらったような気はする。
あの写メがその神社なのかは、ちょっと自信ないけど。

「あっ」「えーとですね」
「この県ではないっていうか〜」

地図の上で指をさまよわせて・・・

「ここはですね……」
「ヒミツってことでお願いします」

そのままひっこめた。

             ニコッ

「芽足さんと私の秘密旅行なので、場所は秘密ってことで」
「べつに、そういう約束したとかではないんですけどねっ」

「お侍様、そういうことでご勘弁くださいませんか!」

なんて冗談も言ったりして、ごまかしておく。
説明しづらい話になるし……フツーじゃないと思われそうだ。

452鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/02/14(木) 21:51:17
>>451

「…いや、本当に。こんなオレにも話しかけてくれる今泉さんには、感謝しかない…」ズーン

こちらが申し訳ないのに、この快活な少女に謝罪までさせてしまうとは、更にいたたまれなくなる。
両手を顔の前で組みながら、額を乗せ溜め息をつく。

「この臆病さを笑ってくれる人ならありがたいが、『キモい』『怖い』と思わせてしまった事もあるからな…」
「でもこうして何度も話していければ、いずれはもう少しマトモになるかもしれない」
「今泉さんの優しさに甘えるようで申し訳ないが、またその内お世話になるよ」

ぎこちなくも微笑んで、チラリと一瞬だけ今泉さんと目を合わせる。
すぐに視線をさっと下ろすことになるのだが。

「ふぅん、知る人ぞ知る、といった感じか」
「あまり商売っ気のない、真面目な神社なのかな…まぁ行ってみれば分かるか」

鳥舟さんからも誘われていたし、一度お邪魔させてもらおう。元々、神社の雰囲気は好きな方だ。
あまり人混みはない方がいいが。

「・・・・・・・・・・」「なるほど」

「うむ、致し方ない。立ち入った質問は控えよう、大切な想い出ならば土足で踏み入る訳にも行かぬ」

若干渋い声で今泉さんのフリに乗りつつ、同時に思考する。

この県ではない?日帰りなのに?計画された旅行ならば、不可能ではないだろう。
だが、先ほどの『旅行のようなもの』という言葉からは、あまりそういった雰囲気はない。
しかし、ウソをついていたとしても踏み込む気はない。詮索されたくない事の一つや二つ、人にはあるだろう。
ましてや年頃の女性とならば尚更だ。


だから、これは何となくの行動だ。
どちらにしろゴミ箱の近くを通るのに、ゴミを投げて入るか試してみるかのようなものだ。
入らなければ、それでいい。

『その芽足さんは、同い年の友人なのかい?』

(確か、こうでいいんだったか?『スタンド会話』・・・)

453今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/02/14(木) 23:58:42
>>452

「おおげさですよ〜、あははは」

「センパイ、フツーにコミュ力あると思うんですけど」
「でも」「私で練習になるならお付き合いしますよ」

       ニコ〜ッ

目が合ったから、いい感じの笑顔を返した。

「どうなんでしょうねえ」
「水を有料で売ってたとか聞いたような」
「もし行ったらどんな感じか教えてくださいよ」

「秘密じゃなければ、ですけどっ」

自分で神社に行くことは無い気がする。
ちょっと遠いし。他にも神社あるし。
大学受験とか、するならお参りしに行くのかな。

「ははーっ、なんとご寛大な。ありがたきしあわせ!」

「……」

       シュルルルル

              『今泉サン コンニチハ』

≪あっ、先生を出しちゃった。こんにちは先生≫

スタンドの声、っていうのかな。
あんまりやったことはないけど何となくわかる。
出そうとしたんだけど、先に先生が出て来ちゃった。

≪そうですね。同級の芽足ヨロズさんって言うんですけど≫
≪面白くって、いい子なんですよ。友だちです≫

≪……センパイも、『そう』なんですねっ≫

この学校だけでもう何人目だっけ。あんがい、珍しくないのかな。

454鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/02/15(金) 00:48:10
>>453


『ッ!』

『驚いた。喋るスタンドもいるんだな…』
『こんにちは』

突然現れた『スタンド』の方を見ながら、周囲から変に思われない程度に小さく頭を下げる。
仮に意思があるならば、挨拶をしておくのは大事だろうから。

しかし、どうやら予想は当たったのだろうか。
自分と同じようにハッキリしない口調になってしまった理由は、ひょっとしてそれも同じ『スタンド』が関わっているから、か。

『そうなんだ。オレも最近よくスタンド使いに会うから、もしかして、と思ったけど』
『今泉さんもそうだったとは』
『芽足ヨロズさん、か。覚えておこう』

それならば、先ほどのように隠し事をする必要もない。改めて説明しよう。

『さっき話した神社の巫女さんも、スタンド使いでね』
『ただ、まだヴィジョンを見たことがないらしいから、それでオレを目覚めさせてくれた人に相談しにいったんだ』

455今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/02/15(金) 01:30:15
>>454

先生は礼儀正しく、頭を下げて挨拶している。

      『自己紹介ガ 遅レマシタネ』
      
           コール・イット・ラヴ
      『〝世界はそれを愛と呼ぶ〟』
      『先生、あるいは〝アイ〟ト オヨビクダサイ』

              ペコリ

≪そういうわけで、私の先生です≫
≪スタンド使い、っていうほど『使う』わけじゃないですけど≫

だから私は改めて、先生を紹介した。

      『先生ハ 先生ガ ヤルベキコトヲ スルダケデス』

≪フツーのスタンドは、自分で動かせるんですよね〜≫
≪まあ、スタンドにフツーとかないのかなって、思ったりもしますけど≫

いろんなスタンドがある。
一番フツーなスタンド、なんてきっと無いんだと思う。

≪へえ〜っ≫

≪やっぱり『神』っぽいスタンドなんですかね≫
≪そういうのは関係ないのかな≫

≪目覚めさせてくれた人……私と一緒かな≫≪和国さんですか?≫

違うなら、ユメミンが会った『音仙』って人かな。まだほかにもいるのかな。

456鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/02/15(金) 02:00:16
>>455

『今泉さんの一つ上、高等部二年生の鉄です。よろしくお願いします、アイさん』
『そして、こちらはオレのスタンドの「シヴァルリー」です』

こちらも己のスタンド、『シヴァルリー』を出して挨拶をする。
もっとも、こちらはアイさんのように自らの意思で話したりはできないが。
スタンド会話を用いても、『シヴァルリー』を通して自分の声を出すだけだ。

『「自動操縦型」…「音仙」さんの言っていたタイプか』
『「シヴァルリー」は自分の意思で動かせるというか、むしろ勝手には動いてくれないな』
『話相手にもなってくれそうで、素敵だ』

人懐っこくて話しやすい今泉さんには、よく似合っているスタンドだな、と思う。

『「和国」さん?いや、オレの場合は「音仙」という女性だ』『やっぱり一人だけじゃなかったんだな、こういうことができるのは…』

『その巫女さん─────鳥舟さんは少し特殊で、スタンドの名前だけは分かってるんだって』
『「ヴィルドジャルタ」』『…もし仮に神様だとしたら、少し危なそうな感じがするな』

言葉のフィーリングだけでのイメージだが。
自分の『シヴァルリー』は逆に、能力はともかく見た目は名前から推測しやすい出で立ちだ。

『スタンド使いといえば、中等部二年生の松尾さんもそうだったよ』
『黒髪でメガネをかけて風紀委員の女の子なんだけど』

できれば危険のない『スタンド使い』の情報は共有しておきたいと考え、あの少女の名を口にする。
友人のまた友人ともなれば、お互いが危険な超能力を持っていたとしても、争いに発展することはないだろう。
…そもそも、こんな良い子達がケンカをするところなど想像できないが。杞憂だろうか。

457今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/02/15(金) 02:40:18
>>456

         『鉄サン、〝シヴァルリー〟サン、ヨロシクオ願イシマス』

《シヴァルリー! 噛みそうな名前ですね!》
《見た目はかっこいい感じ……》

《わ、素敵ですって、先生! 褒められてますよっ》

         『アリガトウゴザイマス』
         『〝シヴァルリー〟トテモ強ソウデ 素敵デスネ』

《よかったですね先生》

先生のは、社交辞令なのかな。
スタンド同士だと強そうとかわかったりするのかも。

自動操縦型。私とは違うフツーの性格がある先生。
喋らないスタンドと、どっちが良かったのかな?
今は先生が私のフツーだ。他はあんまり思いつかない。

《へえ、『音仙』! 他の人も、その人に貰ったって》
《それが誰なのかは、内緒ですけど》

《それにしても、名前だけですか〜》
《スタンドくれた人が意地悪したんですかね》
《ヴィルドジャルタ》 《どういう意味なんだろ》

         『恐ラク、造語カ 固有名詞デショウ』
         『良イ〝スタンド存在〟ナラ イイノデスガ』

《ですねえ。暴れ出したりしたら怖いですしね》

先生はフツーにいい人だからいいけど。
もし好き勝手する『自動操縦』がいたら、怖いと思う。

《松尾さん、なるほど〜。覚えておきます》
《やっぱりけっこういるんですね、スタンド使い》

知らないような知ってるような名前だ。
二個下の後輩だから、中等部の時に会ってるかも。
もしかしたら名前をど忘れしてるだけかも。

またいつか、会ったら分かるかな。

《ふう……ごちそうさまでしたっ》

そういうわけで、自分の分の料理は食べ終えたんだ。
スマホを取り出して、何か連絡が来てないか見ておこう。

458ユメミン『ドクター・ブラインド』:2019/02/15(金) 03:09:22
>>457

ピコン♪

『イズミンきょうヒマ??ガッコーおわったらどっかいこ!!』

その時、ちょうど『ライン』の通知が入った。
時計を持った『白ウサギ』と、それを追う『アリス』のスタンプが添付されている。
送ってきたのは――――例の人物のようだ。

459鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/02/15(金) 03:22:37
>>457

>《それにしても、名前だけですか〜》
>《スタンドくれた人が意地悪したんですかね》

『どうなんだろうな』
『彼女の話を聞く限りでは、どうやら生まれついての「スタンド使い」の可能性があるんだ』
『「音仙」さん、「和国」さん、「生来のもの」』
『最低でも、スタンドに目覚める理由はこれだけあるらしい』

『神託』に関しては、言わないでもいいだろう。
神秘めいた言葉だし、あまり他人に吹聴する話でもなさそうだ。
…しかし、やはり他にもスタンド使いを目覚めさせる事が可能な人間がいたか。
『和国』さんとは、どんな人間なのだろう。機会があれば、是非とも会ってみたいものだ。
その人はまた、どんな理由で人々に『スタンド』を見出しているのだろうか。

「ご馳走様でした」

今泉さんが食べ終えたのに合わせて、こちらも手を合わせる。
そういえば、と思い自分も『地図アプリ』を消してスマホを見てみたが、新着の通知はなかった。
やはり当然、仕事中だろう。
そこで気付く。スマホの時計が、まもなく昼休みが終わる時刻を指し示していた。

「もうこんな時間か…少し話し込んでしまったな」
「それでは、オレはこれで失礼するよ」「また今度ゆっくり話そう」

「ありがとう、今泉さん」ペコリ

立ち上がり、少女へと向けて一礼をする。そして食器を持つと、置き場へと向かっていった。

460今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/02/16(土) 00:53:54
>>458(ユメミン)

あっユメミンからだ。

『ヒマだからどっか行きましょう』
『授業終わるまでにまたラインしますね』

スタンプで彩って、そんな内容を返した。

>>459(鉄さん)

《一口に『スタンド使い』って言っても、色々あるんですね》

スマホから顔を上げて、お話の続きをする。

《生まれつきスタンド持ってるって》
《どんな気持ちなんだろうなあ》

そんな事をしているうちにもういい時間だ。
昼休みの後は……英語だったかな。
眠くなっちゃいそうな、気がするな。

「いえいえ、楽しかったですよ〜」
「今度は、放課後にでも話しましょうね!」
「練習にもなりますし」「私は楽しいですし」

センパイは真面目な人で、でも冗談もわかる。
これはきっと楽しいってことなんだろうな。

「それじゃ、また!」

         『マタ オ会イシマショウ』

            ペコー

         『寒イ季節ナノデ オ身体二オ気ヲツケテ』

461日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/02/20(水) 01:21:21

「あ〜〜〜」


       ボ  ―― ッ ・・・


               「……」

(カラオケの『カラ』ってなんだっけ?
 オケはオーケストラ。だったはずだし。
 コレで調べたら一瞬で分かるけど、
 流月の反骨精神がそれを邪魔しちゃうや)

スマホを片手に持ってベンチに座り、空を見ていた。
物思いにふけっているように見えなくもないが、
数カ所が逆巻いた金とも銀とも言えない髪が、
不良がサボってるだけって真実を示してもいる。

           ダラァ〜ッ

                   コンッ

何気なく石を蹴とばしたら、ムカつくくらい真っ直ぐ飛んだ。

462三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/02/21(木) 00:27:16
>>461

  ――――コツンッ

飛んできた小石が、巻き毛の頭に当たりました。
辺りを見回して、クルリとカールした睫毛が、そちらへ向けられました。
そのまま、ゆっくりと歩いていきます。

     トスッ

「危ないです」

隣に座ってから、一言言いました。
真面目そうな生徒です。
そして、結構年下のようです。

463日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/02/21(木) 01:06:16
>>462

「あン?」

         キョロッ

やや目つきのよろしくない視線を向けた。
改造されてはいるが高等部の制服。
詳しいなら細部の色などで2年だと分かるだろう。

「あ〜。石!? ごめんごめん。
 蹴ったら思ったより飛んじゃってさ。
 ケガしてない? ばんそうこ持ってるけど使う?」

      ゴソゴソ

学生かばんではない、私物らしいかばんを漁って。

 ルナ
「流月、『不良』だからさァ〜〜〜ッ。
 ケガした時のためにばんそうこ持ってんのよ」

             ゴソゴソ

            「あった。はい」

あまりこう、『傷を治してくれる』感が無い……
『ファンシーなキャラクター』の絆創膏を箱ごと渡してきた。

464三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/02/21(木) 01:35:55
>>463

「大丈夫です」

「――――まだ生きてますから」

冗談のような口ぶりですが、表情は真顔です。
こちらは制服ではなくジャージ姿でした。
ポケットから土の付いた軍手がはみ出ています。

「ありがとうございます」

    ペコリ

頭を下げて絆創膏を受け取りました。
血は出ていません。
大した傷ではないでしょう。
でも、つい考えてしまうのです。
もし放っておいて化膿して病気になって――――『死んでしまったら』と思うと。

「一つだけいただきます」

箱から一つ取り出して、それを小石の当たった額に貼りました。
箱の方は、二人の間に置いておきます。
それから制服に目を留めました。

「高等部――――二年生の方ですか」

「剣道部の鉄先輩を知っていますか?」

神社の前で会った鉄先輩を思い出しました。
同じ学年なら、もしかすると名前を聞いたことがあるかもしれません。
とても生徒の多い学校なので、定かではないですけど。

465日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/02/21(木) 02:02:42
>>464

「いやいや、死なれたりしたらさ、
 『逆』に流月が大丈夫じゃなくなるわ。
 流月の石のせいだからお礼はいーよ」

           ゴソゴソ

「礼儀正しいのね」

絆創膏の蓋を指で押さえつつ、
かばんの小さなポケットに入れなおした。

「剣道部〜? ま〜流月は2年だけどね。
 鉄、鉄……のどまで出て来てるんだけど。
 クロガネ……あ、思い出した。ほんとに。
 えーーーーっと、ユウダチ……だっけ」

「知ってるっちゃ〜知ってる、かなァ……」

(女子と喋る時めっちゃキョドるやつだ、った気がする)
 
印象的な姿が頭の中にあったので、
幸か不幸かはともかく、思い出せた。

「なに、落とし物拾ったとか? 土触った後っぽいじゃん?
 それか『果たし状』とかならしっかり届けてやるけど。ぷぷっ」

そう言いながら、土に汚れた軍手に視線が向いていた。
このフシギ系な少女?に特別興味があるとかじゃないが、
3つは離れてそうな後輩があの同級生に何の用かは気になる。

466三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/02/21(木) 02:37:37
>>465

「『花壇の手入れ』です――――担当なので」

そう言って、校庭の一角を指差します。
そこには花壇がありました。
目立たない場所にあるせいか、少し地味な雰囲気でしょうか。

「用事らしい用事はないです」

「少し前、道に迷っていた時に助けていただきました」

「同じ学年の先輩なら、ご存知かと思ったので」

さっき流月先輩は、自分のことを『不良』だと言っていました。
『不良』という言葉には、怖い人というイメージがあります。
ですが、流月先輩は話しやすい感じがします。

「あっ――――」

「まだ挨拶をしてませんでした。中等部一年の三枝千草です」

「『三つの枝に千の草』と書きます」

「あの、流月先輩と呼んでもいいですか?」

「それとも苗字でお呼びした方がいいでしょうか?」

467日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/02/21(木) 03:01:02
>>466

「ああ、流月も昔やってたなァ〜〜〜ッ。
 なんだっけ、園芸委員? 緑化委員?
 ボランティア活動みたいなヤツでしょ?
 今なら絶ッ対『反抗』してたと思うわ〜ッ」

「水かけるくらいはしてもいいけどさ」

花壇に視線を向けて、すぐに戻した。

「あそ、んじゃいいや! ご存知ではあるけど、
 まじで知ってるだけだし……駄弁る仲でもないし。
 もし話すことあったら感謝してたって伝えとこっか?」

向こうから話しかけに来ることはないだろうし、
こちらからも探してまで声を掛ける気はしない。

「流月の事は『日沼さん』って呼んでいいよ。
 『流月センパイ』でもいいけど。好きに呼べばいい。
 ちなみに漢字は、『お日様の沼』に『流れる月』ね」

逆巻いた数カ所の髪が、風に揺れる。

「んで、もう言ったけどさ、高等部の二年で部活とかしてない。
 それでさ――――ただの帰宅部じゃなくって、『不良』なわけよ」

表情が明るい悪意に彩られるが、
それがそのまま害意に代わる様子はない。

「まっいわゆる『アウトロー』ってやつよ。どう、憧れちゃう?」
 
           「ぷぷ、ちゃわなさそうなカオしてるけどさぁ」

468三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/02/21(木) 07:12:01
>>467

「はい、美化活動です。『生徒会活動』の一つですけど」

「中等部の生徒会で書記をしているので……」

面倒な仕事を押し付けられただけ、と言う人もいるかもしれません。
でも、与えられた仕事は精一杯やり遂げないといけません。
千草は『立派な人』になりたいのです。
この仕事も、その目標に近付くための小さな一歩です。
少しずつ積み重ねることが、夢を叶えるために必要なことだと思っています。

「ありがとうございます。鉄先輩に会うことがあったら、その時はお願いします」

「――――『日沼先輩』」

           ペコリ

「はい――――」

       ニコ

「千草は、たくさんの人に尊敬されるような『立派な人』になりたいと思っています」

「『アウトロー』になったら、それが難しくなってしまいそうなので……」

「――ごめんなさい」

  ペコリ

不良になりたいという気持ちはないです。
でも、日沼先輩のことは嫌いになれません。
何となく、『親しみ』のようなものが感じられるからだと思います。

「日沼先輩も、昔は花壇の世話をされていたんですね」

「どうして先輩は『不良』になったんですか?」

昔の日沼先輩は、千草と似ている部分があったのかもしれません。
でも、今の先輩は『不良』だそうです。
共通点を感じるせいか、先輩が今の先輩になった理由が少し気になりました。

469日沼 流月『サグ・パッション』:2019/02/21(木) 15:41:00
>>468

「へぇ〜〜ッ、生徒会? 流月と『反対』ね。
 いや、不良の『反対』なら風紀委員か……
 ともかく、マジメ君だ! えらいと思うよ」

         イヒヒ

「流月は『反抗』するのが好きだからさァ〜ッ!
 こうして不良としてやっていってるわけだけど、
 べつにみんな不良になるべきとか思わないしさ。
 それだと、不良なのが普通になっちゃうじゃん?」

      「だから謝んなくていいよォ」

謝られると悪い事した気分になる。
悪い事したくて不良になったんじゃあない。
なにもかもお決まりだらけの世界への『反骨』だ。
お決まりに従ってりゃうまくいくなんて、幻への。

「それで、なんだっけ……えー、あ、花壇ね!。
 なんかそういうさ、水やり当番とかない?
 流月のそんときの担任の自己ルールだったかな。
 もうあんま覚えてないけどさ〜っ、やってたよ」

流月は花壇に気だるげに視線を向けた。
三枝のおかげか、花は生命を謳歌しているようだった。

「流月もさ、やっぱり生まれた時から不良だったわけじゃないしね。
 生まれた時から不良だったら、今頃は……医者でも目指してるかな」

    「こう見えて流月、地頭いいからさ! ぷぷっ」

目を細めて、吹き出すように笑う。
不良ではあるが無軌道ではない。軌道があってこそ逆の道を行けるのだ。

470三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/02/21(木) 22:57:13
>>469

「えらい――ですか……」

「……えへ」

褒められたので、嬉しそうに口元を緩ませました。
だけど、まだまだ自分は未熟者です。
これに慢心せず、もっとえらくなれるように頑張りたいです。

「『反抗』するのが好き……難しいです」

「でも、みんなが不良だったら不良が普通になるというのは何となく分かります」

『反骨精神』というのでしょうか。
そういう感情は、千草の中には見当たりません。
もう少し大人に近付いたら、その時に分かるのかもしれないです。

「――――凄いです、日沼先輩」

先輩とは反対に、目を大きく見開いて感心した声を上げました。
お医者さんという仕事は、相当に立派な人でないとなれないと思います。
それを目指せた日沼先輩は、本当に賢い人なんでしょう。

「千草も、いつか先輩みたいになれるように頑張ります」

「あの……『今の先輩』じゃなくて『今の先輩になる前の先輩』ですけど」

「でも――『今の先輩』も千草は好きです」

471日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/02/22(金) 00:05:43
>>470

「好きとか、はずいから! 素直すぎでしょ!
 べつに宣言しなくても好きに目指したらいいよ。
 流月の人生ってやつに、著作権とかはないからさ」

「いつか自伝書くとしたら別だけどね! ぷぷ。
 千草も自伝書くなら流月のことリスペクトしといてね!
 ヘレン・ケラーの自伝の『サリバン先生』くらいにさァ」

などといって、ベンチから立ち上がった。
見れば時間は区切りのいいものでもなくて、
立ち上がる前に時計を見た意味はなさそうだった。

「千草はえらいし、すごくマジメっぽいから、
 きっと流月より立派な人になれると思うわけよ。
 わかんないけどさァ、そんな気がするから」

「それじゃ、そろそろ行くね。
 剣道部の鉄君の事はちゃんと覚えてるから、
 もしあったら伝えとくよ……んじゃ、バイバイ!」

そうして、そのまま何処かへ歩いて行った。
学園にいれば、また会う時もあるかもしれない……

472三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/02/22(金) 00:34:25
>>471

「ヘレン・ケラーの自伝ですか?まだ読んだことがないです」

「明日、図書室へ行って探してみますね」

その話について、千草は詳しく知りませんでした。
千草の知らないことを知っている日沼先輩はえらいと思います。
自分にはない部分を、積極的に見習っていきたいです。

「はい、ありがとうございました。日沼先輩」

「よかったら、先輩ともまたお会いできれば嬉しいです」

「その時には、他のお話も聞かせてください」

        ペコリ

姿勢を正して、歩いていく先輩を見送ります。
少ししてから、千草も中等部の校舎へ向かって歩き出しました。
家に帰る前に着替えないといけません。

473三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/02/24(日) 04:40:26

今の時間帯は放課後です。
校庭の片隅にしゃがんでいる生徒がいました。
学校指定のジャージを着て、手には軍手をしています。

     ザック ザック

片手に持ったスコップで地面を軽く掘っていきます。
除草作業の最中なのです。
この草はどうやら根っこが深そうです。

474三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/03/01(金) 01:39:44
>>473

     ザック ザック
               ポイッ

根っこを掘り出した草を軽く放り投げます。
その先には手押し車が置いてありました。
そこには山程の草が積もっています。

「――こんなところでしょうか」



【撤退します】

475今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/03/25(月) 03:11:29

「・・・・・・」

      ドシャ

           アアーーーッ


              「・・・いたた」

階段から転げ落ちたんだよね。
それも、けっこうな勢いで。しかもあんまり人がいない校舎で。

「先生〜〜〜」

        シュル

              『今泉サン』
              『足元ニハ 気ヲ付ケテト アレホド』

           シュル

「いやあ、床が濡れてたみたいで」「あいたっ」
「歩きスマホとかはしてないですよっ」
「ほら、スマホ、ポケットの中。今のでぶつけちゃったんで」
「これの修理もおねがいします、一応」

                シュル

                    コール・イット・ラヴ
              『〝世界はそれを愛と呼ぶ〟』
              『スグニ 補修ヲ 開始シマス』

   シュル  シュル

まあ、フツーに、直せばいいだけなんだけど。痛いのは痛いし。それに……
廊下にへんなポーズで倒れて、テープでぐるぐる巻きにされてるのは、フツーじゃないし。
だから誰もここを通らないといいな、って思いながら、先生の補修が終わるのを待っている。

476三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/03/25(月) 20:53:38
>>475

    ヒョコッ

階段の手前の廊下の陰から、ジャージ姿の小柄な生徒が顔を覗かせました。
クルリとカールした睫毛と巻き毛が特徴的です。
何か音が聞こえたような気がして、様子を見に来たのでした。

        「あっ」

             「大丈夫で――――」

言いかけて、途中で言葉が止まってしまいました。
マスキングテープを体に巻いたスタンドが見えたからです。
もしかすると、このスタンドが原因で転んだのでは?
一瞬そんなことを考えましたが、すぐに間違いだと思い直しました。
どうやら治しているらしいと気付いたからです。

「えっと」

「大丈夫――みたいですね」

ちょっと考えてから、そう続けました。
少しずつ近づいていきます。
でも、その歩みは遅いです。
『怪我』という状況を見ると、無意識に『死ぬこと』を連想してしまうからです。
千草は、そういうものが怖いのです。

477今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/03/26(火) 00:06:14
>>476

首だけで振り向いて、そっちの方を見た。
中等部の子、かな。ジャージだからはっきりはわかんないけど。

「大丈夫に見える? まあ、フツーに大丈夫なんだけど」
「見えるってことは……先生が見えるんだ?」

             『今泉サン、動カナイデ』

じゃあ、敬語じゃなくっていいよね。

「いててっ」

             『動イタラ痛イデスヨ』

「あはは、階段から落ちちゃってえ」
「もしそこ、昇るなら気を付けた方がいーよっ」
「床、濡れてたみたいだから」

「……どしたの? なんか固まってる?」

何だか歩くの、遅いよね。
まあ私も、知らない先輩がいきなり倒れてたらそうなるのがフツーかも。

478三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/03/26(火) 00:36:37
>>477

「階段――から」

歩み寄ろうとしていた途中で、足を止めました。
廊下の壁に手をついて、軽く俯きます。
少し顔色が悪いように見えるかもしれません。

「すごく――」

「すごく痛そうです」

打ち所が悪ければ死んでしまうかもしれないです。
それを想像して、ちょっとだけ『クラッと』来てしまいました。
こういう事故の現場に出くわすと、よくこうなります。

「ふぅ……」

「――はい、見えます」

「その……先輩の『先生』が」

深呼吸して少し落ち着いたので、改めて先輩のスタンドを見てみます。
自分で喋っているところを見ると、自分の意思があるのでしょうか。
こんなのは、今まで見たことがありません。

479今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/03/26(火) 00:59:16
>>478

「すごく、痛いよ。フツーにねっ。あはは」
「治るけど、痛いんだよねえ」「フツーに。みんなと一緒」

         ニコ 

「『先生』っ、見えるんですってっ」

    シュルルルルル

         『エエ、ソノヨウデスネ』
         『ハジメマシテ。今泉サンノ 先生デ』

              シュルル

         『〝コール・イット・ラヴ〟』
         『ト、モウシマス』
         『補修中デスノデ、言葉ダケデ御容赦ヲ』

┌───────────────────────────┐
│ 『先生』と呼ばれるスタンドは・・・                    │
│ まるで『ミイラ』のように『マスキングテープ』に覆われていた。   │
│ 色とりどりの模様に全身を覆い隠されていた。.             │
│ シルエットは女性的で、物腰も併せ『女教師』を思わせる。    │
│ その辺りが・・・『先生』と呼ばれる理由なのは、想像しやすい。  │
└───────────────────────────┘

「まあ、見えるからどうってわけでもないんだけど」
「説明とか、しなくて済むのはラッキーだったかも」

         『今泉サン、少シ姿勢ヲ横ニ』

「いたた、こうですかっ」

         『エエ、アリガトウゴザイマス』
          
                 シュルシュル

先生にテープを巻いて貰いながら、中等部の子を見て、私は笑う。

          ニコ…

「『先生』は、傷を治してくれるスタンドなんだ!」
「だから怖くないよ。絵面は、フツーに怖いかもだけどっ」

         『コワクナイデスヨ。補修ニ 必要ナ事デス』

なんだかそわそわしてるの、スタンドを見るの、慣れてないのかな。
慣れてなくってもフツーだけど。私は、なんだか慣れて来ちゃったよね。

480三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/03/26(火) 01:28:43
>>479

「――はい」

        トスッ

先輩が笑いかけてくれたので、いくらか気が楽になりました。
誰かが来ても邪魔にならないように、壁際に背中を預けて腰を下ろします。
そこで『補修』の様子を見守ることにしました。
先輩の怪我が無事に治るかどうかを、ちゃんと見届けておきたかったのです。
このまま立ち去ってしまうと、気になって仕方がなくなってしまうからです。

「あの……」

「ご挨拶が遅れました」

「中等部一年生の三枝千草といいます」

「『三つの枝』に『千の草』と書きます」

「今泉先輩、『先生』――よろしくお願いします」

           ペコリ

膝を抱えて座った状態のまま、お辞儀をします。
少し行儀が悪いかもしれません。
でも、先輩が倒れているのに自分が立っているのは何だか申し訳なかったのです。

「千草は『妖甘』さんに絵を描いてもらいました」

「今泉先輩は『道具屋』さんですか?」

「それとも『音泉』さんですか?」

481今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/03/26(火) 01:58:54
>>480

                       イマイズミミライ
「はじめましてっ。私、高等部一年の『今泉 未来』」
「字は、多分三枝くんの考えてるまんま! フツーな字だよ」

                 『ヨロシク オネガイシマス』

「よろしくねっ」
「今泉先輩って。あは、良い響き〜」
「私部活とかやってないから、あんまりそう呼ばれないんだよね」

後輩の知り合いも、中等部3年とか2年ならいるんだけどね。
1年になると、あんまりいない。三枝くんくらい話すのは初めてかも? どうだっけ。

        シュルルル

          『補修 完了デス』
          『完治マデ シバラクオマチヲ』

「ありがとうございます、先生。5分、かかりますっ?」

          『一カ所 ダケデスガ』
          『他ニ 重傷ハ感知デキマセン』

「多分、左ひざですよね。そこは動かさないようにしなきゃ」

先生に答えて、少しだけ姿勢を動かして三枝くんを見る。

「いたた……三枝くん、スタンドくれる人詳しいんだね」
「私は『妖甘』さんだけど」
「オンセン?って人は名前だけ知ってる」
「けど、『道具屋さん』は初めて聞いたなあ」

「『スタンドくれる人』……そういえば、なんでくれるんだろうね?」
          
なんとなく、そんなことが頭に浮かんだ。フツーに、趣味とかなのかな。

482三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/03/26(火) 02:25:18
>>481

「今泉先輩も『妖甘』さんなんですね」

「同じ『出身』の人には初めて会いました」

「――何だか嬉しいです」

    ニコリ

「最初に出会った人は『道具屋』さんの出身でした」

「その次が『音泉』さんの出身で――」

「『なんで』――ですか……」

改めて考えてみると、不思議な気がします。
きっと何か理由があるんだと思いますが、それはなんでしょうか。
人差し指を唇に当てて、少し考えてみました。

「『見てみたいから』……でしょうか?」

「スタンドは、その人の内面の象徴だと聞きました」

「『それを見てみたいから』というのはどうでしょうか?」

もしかすると間違っているかもしれません。
でも、千草にはこれくらいしか考え付きませんでした。
本当のところは、本人に聴いてみるしかないのかもしれません。

「そういえば、今泉先輩も絵を描いてもらったんですよね」

「千草の絵は『根で棺桶を包む花畑』でした」

「先輩は、どんな絵だったか教えてくれませんか?」

483今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/03/26(火) 02:59:36
>>482

「『同じ中学出身だから嬉しい』みたいな感じだよねっ」
「まあ、うちは中高一貫だからそういうのあんまりないけど」

高校から入ってくる子もフツーにいるけどね。

「私の内面が、先生?」

           『先生ハ、先生』
           『今泉サンハ、今泉サンデスヨ』

「ですよね〜っ。私、先生みたいにマジメじゃないし」
「不真面目ってつもりもないですけど。フツーって感じで」
「まあ、よくわかんないですけどね。自分の中身が、なにかなんて」

「わかんないから、見たいって言うのはあるのかも?」

スタンドをくれる人には他人のこころがわかるのかな。
私のこころは、一体どういう仕組みになってるのかな。

「絵? うん、貰った貰った」

「三枝くん、『棺桶』だなんてイメージとちょっと違うかも」
「でも、『花畑』はなんかそれっぽいかなっ」

           ニコ

「えーっと、私は」
「『手をつなぎ輪になった学生』……だったかな?」
「どうかな、それって私っぽい?」

それは私の理想なのかもしれない。
フツーの事なのかもしれないけど。

「あは、初対面でイメージ聞いても、わかんないよねっ」

             『今泉サン、モウスグ 補修完了シマス』

484三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/03/26(火) 03:25:03
>>483

「今泉先輩とは会ったばかりなので、まだ先輩のことはよく知りません」

「でも、その絵は今泉先輩に似合ってると思います」

「何となく――ですけど」

「そこから『先生』が生まれたのかもしれませんね」

「その……そんな気がします」

スタンドは『理想』や『願望』からも生まれるものなのでしょうか。
それは、自然と納得のいく解釈でした。
もしかすると、千草にとっての『墓堀人』も、そうなのかもしれないからです。
決して苦しむことのない穏やかで安らかな最期。
それこそが、千草にとっての『人生の目標』だからです。

「『先生』、先輩の怪我が治りそうなんですね」

「――よかったです」

          ニコリ

まるで自分のことのように安心して、落ち着いた笑みを浮かべました。
怪我が治るというのは、言い換えれば『死が遠ざかる』ということです。
だから、それを見ると安心できるのです。

485今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/03/26(火) 04:06:25
>>484

「似合ってるかな。あは、ありがとうね」
「友だちがたくさんいると良いと思うし」
「手を繋いで、輪になる。それはきっといいことだろうからっ」

「先生がどうして生まれたのかは、わかんないけど」

         『私モ、ワカリマセン』『デスガ――――』

         『コウシテ今泉サンニ 指導ヲスル』
         『ソコニハ、カケガエノナイ価値ガアリマス』
         『私ハ、ソレデ構イマセン――――』

「先生、やさしいですねえ。流石先生だなあ」

         『先生デスカラ』
         『デハ、補修ノ時間ヲ終ワリマス』
         『今泉サン、足元ニハ重々キヲツケテ!』
         『三枝サン、マタオアイシマショウ。オ元気デ』

               シュルルルルッ

マスキングテープが全部外れて、私はちゃんと立った。

「よし、もう痛くないっ」
「私そろそろ行くね。三枝くんと話せて楽しかったよ」
「それと……ありがとうね、治るまで見ててくれてっ」

         ニコ

「それじゃ、またね〜っ」

そういうわけで、私は下の階に降りていくんだ。

ケガが治ったのを見て笑ってくれた三枝くんは、多分凄くフツーにいい子だ。 
ケガしたのは痛かったけど、また新しく仲良くなれそうな人に会えてよかったのかも。

486三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/03/26(火) 21:22:29
>>485

「こちらこそ、ありがとうございました」

「今泉先輩、どうぞお大事に」

「――というのは、もう必要ないんですよね……」

「またお会いすることがあれば、その時はよろしくお願いします」

「それでは失礼します」

           ペコリ

立ち上がって頭を下げてから、くるりと背を向けて歩いていきます。
職員室に行って、雑巾をもらってきましょう。
床が濡れたままだと、また誰かが足を滑らせるかもしれません。

「――――これも立派な人になるための一歩です」

今泉先輩は、とても話しやすくて親しみの持てる先輩でした。
また一人、尊敬できる人と知り合えて嬉しいです。
これは、きっと千草が『人生の目標』を叶えるための一歩になると思います。

「そうですよね――――『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』」

487今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/04/12(金) 02:42:13

「…………」

     サラサラサラ

部屋を、考えてるんだよね。
図書室でインテリアの本とか借りて。
ノートに書いてみたりとかして。

すぐ引っ越すなんて話じゃないんだけどね。
こういうの、考えるのがフツーに楽しいから。

           サラサラ …コンッ

「っと」

そうこうしてたら消しゴムに手が当たって、ちょっと遠くに落としちゃった。

488??『????・???』:2019/04/12(金) 22:55:18
>>487

 貴方が落とした消しゴムは、一人の女子生徒の靴のそばに落ちた。

「……あ」

小柄な女性だ。少し厚めの眼鏡と、黒い髪で目立たない容姿をしている。

「……どうぞ」

屈みこんで拾い上げ、開いてた本を閉じて貴方に近づき消しゴムを手元へ置く。

「……インテリア 好きなんですか?」

目立たない女性は、控えめに尋ねた。

489今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/04/13(土) 00:01:42
>>488

「あ、どうもどうも」「ありがとうございます!」

      スッ

消しゴムを受け取って頭を下げる。
わざわざ持ってきてくれるなんて親切だ。

「あっ、見ちゃいましたっ?」
「あ、じゃなくて本か」「そうですねえ」

ノート見られたかと思った。
見られてるかもしれないけど。
いや、見られて困りもしないけどね。

「えーと、インテリアが好きっていうか」
「まあ、フツーに興味があるっていうかっ」

手元の本は『家具選びのいろは』とか、
そういうのを本棚から持ってきて、揃えてる。

「そういう……えーと、何さんでしたっけ」
「まあいっか」「そういう貴女は、好きなんですかっ?」

「もしかして、詳しかったりします? インテリアの選び方とか!」

490??『????・???』:2019/04/13(土) 00:19:45
>>489

>詳しかったりします? インテリアの選び方とか!

「インテリアの選び方 ですか」

少女は、厚めの眼鏡を軽く弄り。少し考える仕草を終えて呟く。

「例えば風水や占いが好きなら、それに従ったものを選びますよね」

「けど 大半は自分の好むもの。気に入ったものを選ぶのが一番
好きな色 好きな食べ物 好きな映画 それ等に因んで連想する
ものを繕っていけば後悔のないもの……だけ ど」

「…………私は、逆に『自分が一番好きでないもの』
それを一つだけ決めますね」

「どうしてだと思います?」

491今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/04/13(土) 01:37:27
>>490

「好きなもの、ですか〜」

「あは、占いはフツーに好きなんですけど」
「風水っていうのは、よくわかんないんですよね」
「この機会に勉強してみようかなっ」

って、そういう話じゃないんだよね。
この人にはなにかフツーとは違う理論があるみたい。

「そうですね、あとは」「マスキングテープとか」
「うーん、でもそれだと家っぽくはないですよねえ」
「『ドールハウス』とか好きになってみようかな」
「家だけに」

興味はちょっと、あると思うんだよね。
アーケード街?だっけ、あそこにお店あるよね。

「え、好きじゃないもの?」

「うーん、なんででしょっ? なんでしたっけ」
「あの、ことわざの」「あっ、『臥薪嘗胆』?」

「あえて嫌いなものを部屋に置いて、モチベ上げていくみたいな……ですかっ?」

492??『????・???』:2019/04/13(土) 18:40:02
>>491(お気になさらず)

>あえて嫌いなものを部屋に置いて、モチベ上げていくみたいな

表情の伺うのが難しい眼鏡の下の口元が綻びの形を作る。

「臥薪嘗胆、なんて大仰なものでも無いですけどね。
生活し続けていく内に、大体長い歳月の中で気に入ったものや
好みも移り変わっていくんですよ」

「真っ白な壁も、いずれ染みで淀んでしまうから。
そう言う時はフローリングでもすれば壁は良いですけど
住み慣れた空間の全部を取り換えるのは難しいですから…」

「だから、最初から一つだけ明確に『黒』を入れておけば
あぁ、他の色も少々最近は好みから少し離れて来たけど
あの『黒』よりは良いと……少々廃退的な思考ですけどね」

493今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/04/13(土) 22:10:56
>>492

「へ〜。なんだかすごい話ですねっ」

なんだかむずかしい話だ。
この人、ものすごく賢い人なんじゃないかな。
私、そこまではっきり嫌いなものってあるかな。
好きなものが変わっても変わらないくらい・・・

・・・

・・・・・・考えても、仕方ないかな。

「ちなみに、えーと」「・・・」
「ごめんなさい、お名前なんでしたっけ」

「あなたも、部屋にそういう『嫌いなもの』とか置いてるんですか?」

この人は何が嫌いなのかな。
フツーに虫とか? そんなのは、いくらなんでも置きたくないよね。

494??『????・???』:2019/04/13(土) 22:42:49
>>493

>お名前なんでしたっけ

「……名前 ねぇ」

その問いかけは、極ありふれた 初対面な人間と会話するにあたって
特筆して何も可笑しくない質問だ。
 だが、少女はそれに本棚を背もたれにするようにして姿勢を変えて
腕を組み、ほんの少しだけ雰囲気を変えて告げる。

「正直 名乗るのは気が進まないんです。
いえ、そちらに自己紹介するのが嫌だって話では無いですし
犯罪歴がある訳でもないです。貴方に対し好印象はありますし
現在進行形でlike(好き)でありlike(同様)な方だなとも思ってます。
何故名乗りたくないのかって?
 私自身が半端者でしてね。自分自身の名と言うのが曖昧模糊で
その名前自身が 私と言う存在を表す呼称だ! としっかり
胸を張って言える気がしないんですよ」

ですので、お好きなように呼んでくださればと 少々蠱惑的な
微笑を少女は模った。

>『嫌いなもの』とか置いてるんですか?

「えぇ、ありますよ。ちょっとした画家に頼んでね。
何時もベソっかきなマンモーニな少女の自画像を部屋に飾ってます。
見る度に胸がムカムカしますが……臥薪嘗胆、それですね。
随分と自戒の役に立ってくれてます」

私は、貴方の事を何と呼べば宜しいでしょう? 

そう、少女は図書を愛する友好の士である貴方に問いかけ返した……。

495今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/04/13(土) 22:57:06
>>494

「へ」

「へぇ〜〜〜」

何言ってるんだろこの人。
ちょっと困っちゃった。

えーっと、つまり『名前に自信がない』のかな。
自分が何なのか、よくわかんないってコトなのかな。
そんなの、私だって同じなんだけど。

           イマイズミ ミライ
「私、高等部1年の今泉未来ですっ」
「呼び方は、なんでもいいですよ」
「あ、もちろんフツーなあだ名の範囲でですけど!」

でも、そう考えたらわからなくもないかな。

「名前がわからないとあだ名も考えにくいですねえ」
「う〜ん」「メガネ……」「は、そのまますぎか。あはは」

それでもいいって言いそうだけど。

「ベソっかき……」「は、嫌いなものだし」
「どうしましょうね」

「あ。じゃあ、逆に好きなものってなんですかっ?」

496??『????・???』:2019/04/13(土) 23:10:54
>>495

クッ クッ クッ

貴方の困った表情を読み取ったのか、少し低い笑い声を
隠そうとせず鳴らす。少々意地の悪い性格なのだろうか?
だが敵意は然程無さそうにも思える。

「今泉 未来……周りからは愛称でいずみんとか
呼ばれた事が一度はありそうですね」

>逆に好きなものってなんですかっ?

パチ…

その言葉に、少しだけ瞬きと真顔に顔つきが変化した。
少し黙考と唇に指を這わせたあと、口開く。

「んー……私は猫が好きですかね。ミー ミーと
可愛らしく泣く三毛の子猫が」

「それじゃあ、これから私はミーと名乗りましょう。
そして貴方をミライと呼びましょう」

ミーとミライ。口ずさむのにも語呂が良いじゃないですか

少女は軽やかに笑った。

497今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/04/14(日) 01:31:27
>>496

「あ、わかります?」「呼ばれますよ、イズミンって」
「やっぱり頭いいんですねっ」

もしかしたら、どこかで聞いてたのかな。
苗字はあだ名にしやすいし、偶然かもだけど。

「へ〜、猫」
「かわいいですよね」
「私も猫、フツーに好きですよ」

犬派猫派なんていうけど、比べられないよね。

「ミーさんですね、じゃあそう呼ばせてもらいますっ」
「よろしくお願いしますね、ミーさん」

って言ってたら、職員の人がこっち見てる。
ちょっと長いことしゃべりすぎたかな。

「ミーさん、ラインとかしてます?」
「図書館だし、おしゃべりし続けるのには向いてないかなって」

「連絡先交換して、あとでゆっくり話しません?」

498遊部『フラジール・デイズ』:2019/04/14(日) 21:08:26
>>497(切りが良いので、ここら辺で〆させて頂きます)


「lineは……しませんね」

(少なくとも、何時『私』が『誰』になるか不明な現段階では な)

この女学生と会話して解る。彼女は特に隔たりない白か黒で言えば
白(安全圏)に間違いなく与す存在だ。

(それでも、いずれ何処かで。この若干無益とも思える所作や邂逅が
思わぬ価値となって発掘されるのかも知れない)

「ですけど連絡先は勿論交換しますよ。未来とは友達でいたいですから」

敬称抜きで、そのまま名を告げたのは。出来うる限りの親愛を示そうと
思ったからだった。

黒も白も、様々な混濁色な我等であるものの。今は束の間の安らぎ(日常)
を受け入れるのも……やがて到達すべき道の為には必要だ。

499今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/04/14(日) 23:29:49
>>498

「あれっ、そうなんですか」
「それじゃあメールアドレスですねっ」

珍しいけど、いなくはないよね。
連絡先を交換して……

「よし」

「それじゃ、また後でお話ししましょうね」

    ヒソヒソ

今ごろ声を潜めたりして。
とりあえず、ここではこれで、お話は終わりだ。

500今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/04/19(金) 00:05:51


┌────────────────┐
│  中庭に置き忘れられたスマホだ。 │
└────────────────┘

         〜〜〜♪


              〜〜〜♪

┌───────────────────────────┐
│      白いケースが、マスキングテープで飾られている。      │
└───────────────────────────┘

                ┌────────────┐
                │ ・・・着信音が鳴っている。  │
                └────────────┘

501?????『?????』:2019/04/22(月) 20:45:34
>>500

通りがかった一人の女子生徒が、偶然スマホを見つけた。
着信音が鳴るソレを一瞥し、どうしようかと考える。
やがて、おもむろにスマホに手を伸ばした。

          ピッ

「――もしもし」

「えっと、私は持ち主の人じゃないんですけど――」

「たまたま鳴ってるのを見かけたので……」

電話口に向かって、遠慮がちに呼びかける。
話しながら、中庭のベンチに腰を下ろした。
電話の向こうにいるのは持ち主の知人か、それとも持ち主本人だろうか。

502今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/04/22(月) 23:42:52
>>501

「もしもし、未来―――――――――――――」

           「・・・」

              「未来の、知り合いですか?」

┌───────────────────────────┐
│電話口の向こうから聞こえるのは、落ち着いた男の声だ。     │
│話しぶりからして、このスマートフォンの持ち主ではないのだろう。│
└───────────────────────────┘

                ┌────────────────┐
                │   ・・・知り合いなのだろうか?    │
                └────────────────┘

503?????『?????』:2019/04/23(火) 00:32:23
>>502

雰囲気からすると、持ち主の知人なのだろう。
言い方からして、相応に近い間柄なのも分かる。

「はい、同じ学校の友達です」

「未来さんは……近くにはいないみたいですね」

「たぶん置き忘れ――だと思いますけど……」

       チラリ

「あの……未来さんのご家族の方でしょうか?」

会話を続けながら、液晶画面を確かめる。
登録されていれば、相手を確認できるはずだ。

504今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/04/23(火) 01:26:32
>>503

「そうか――――――友達。未来の…………私、は」

┌────────────────────────┐
│     知らない人間の名前を呼ぶ声ではない。       │
│  なにか、電話越しには、あるいは空気の振動でも・・・.  │
│    伝わりきらない『こころ』のようなものがあった。     │
└────────────────────────┘

「未来の…………」

        ┌──────┐
        │   ・・・・・・。  │
        └──────┘

           「……『父』です。はじめまして」

┌───────────────────┐
│ 画面には、『番号』しか表示されていない。   │
└───────────────────┘

  「…………すみません、切ります」

          「…………ああ」

      「未来と、これからも、仲良くして……あげてください」

505?????『?????』:2019/04/23(火) 01:54:22
>>504

「あ、お父さん――なんですね」

何も気にしていないような、何気ない口調で答える。
しかし、どこか『躊躇い』を感じる言い方が気になった。

「はい、分かりました」

表示されているのは『番号』だけ。
あるいは、そこに何かしらの事情があるのかもしれない。

「未来さんは、大事な友達ですから」

だけど、それは自分が踏み込むべきことではないだろう。
多分そう思う。

「これからも一緒に楽しく過ごせたらなって」

だから、それについて尋ねることはしなかった。
気にならないと言えば嘘になるけど。

「――そう思ってます」

足元に視線を向け、それから空を眺める。
ふと、持ち主の顔が思い浮かんだ。

「あの……未来さんに何か伝えることが?」

「もし良ければ、私が――」

そこまで言って、口を閉じる。
――やめよう。

「……いえ、何でもありません」

「この電話は、きちんと未来さんに返しておきますから」

「――それじゃあ、失礼します」

506今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/04/23(火) 02:23:14
>>505

「――――――ありがとう。未来をどうか、よろしく」

      ┌──────────────┐
      │   そうして、電話は切れた。  │
      └──────────────┘

        ┌──────┐
        │   ・・・・・・。  │
        └──────┘

    ┌──┐
    │ ・・・.│
    └──┘

・・・。

「…………」

            スタ スタ スタ

携帯落としちゃった。落としたのかなくしたのか、わかんないけど。
でも中庭にいたときはフツーに触ってた記憶あるし、このあたりにあると思うんだよね。

507夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/04/23(火) 02:55:16
>>506

     ピッ

「――……」

通話を切って、手の中のスマホをボンヤリと眺める。
最初は何てことない思い付きだった。
少しだけ『ネコ』被って、ちょっとした『サプライズ』でもやろうかなと。
ホラ、前回(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1456056964/8)は、
すぐバレたし。
そしたら、何だか思いもしない方向に行ってしまった。

「――――おん??」

       サッ

向こうからイズミンが近づいてくるのが見えた。
素早くスマホをポケットに入れる。
ベツにパクろうってワケじゃあない。

  「イッズミ〜〜〜ン」
          
      「イッズミ〜〜〜ン」

          「イズミンは『ナニか』をさがしているようだ」

              「では、ナニをさがしているか??」

                  「『めいたんていユメミン』がスイリしてみせよう」

                      「それは――――『おとしたケータイ』だ!!」

                  ババッ

ポケットからスマホを取り出してイズミンに見せる。
しそこなった『サプライズ』の代わりだ。
悪戯っぽい笑みを浮かべた表情には、先程までの深刻な様子など微塵も残っていない。

508今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/04/23(火) 22:24:09
>>507

「・・・・・・あっ、ユメミ〜ン! 偶然ですねえ!」

      ニコ

中庭で一人で何してるんだろう?
なにか面白いものでもあったのかな。犬いたとか?

「どうしたんです、なにか面白いものでも」

って、思ったことを言いかけたところで。

「えっ」「なになに」
「なんでわかっちゃうんですかっ?」

「そう、そうなんです、探しものを――――あっ」

それ、スマホ、ユメミンが拾ってくれてたんだ!

「ユメミンさっすがーっ」
「それですそれ、それを探してたんですっ」
「いやーっ、ありがとうございます!」

「ちなみに……なんで私のってわかったんですっ?」
「種明かし、お願いしていいですかっ? 『名探偵ユメミン』」

多分、見た目覚えてたのかな。
ユメミンの前でスマホ使うこと、けっこう多いもんね。
私以外でケースにマステ貼ってる人もあんまり見ないし。

509夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/04/24(水) 00:31:06
>>508

「なんでわかったかって??
 ホントは『キギョーヒミツ』なんだけどな〜〜〜。
 まぁ、いいか!!トクベツにおしえちゃおう!!」

「じつをいうと『ノーリョク』でわかった。
 これはイズミンのオトシモノだろうって。
 ホラ、いわゆる『レイのヤツ』で」

もちろん違う。
『ドクター』にはそんな能力はない。
『できなくはない』けど。

「――――なんてコトができたらベンリだよね〜〜〜。
 そりゃわかるよ。だって、みたコトあるし。
 もしケースかえてたとしても、デコレーションでわかるジシンあるね」

「イズミンの『シュミ』は、だいたいハアクしてるから。
 この『テープ』とか。
 そんなカンジ??」

さっきの通話のことは黙っとこう。
少なくとも聞かれるまでは。
なんとなく、いいにくいし。

「そういやさ、いまヒマ??
 かわったスイーツがたべられるトコみつけたんだ〜〜〜。
 なんでも『タコヤキみたいなシュークリーム』とか、
 『オコノミヤキみたいなパンケーキ』なんかがあるらしいって!!
 キョーミない??そんなのみたコトないし!!ゼッタイみてみたいな〜〜〜」

それに、あんまり湿っぽいのイヤなんだよね。
そのコトについて、私になんかできるワケでもないし。
だから、ユメミンにできるのは、コレくらいだ。

「――――これからイッショにいかない??」

今まで通り、一緒に楽しく過ごすことくらい。

510今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/04/24(水) 02:06:45
>>509

「あれ、『ドクター』にそんな能力――――って。冗談ですかっ」

          アハ ハ

「あは、趣味ばれちゃってましたか」
「こういうの好きなんですよね〜」
「白も好きだし?」

理由はわからないけど、好きなんだと思うんだよね。
好きだって思うものが好きってコトだとも思うんだよね。

「暇ですよ〜、スマホ見つけてくれたおかげで」
「見つからなかったら夜まで忙しいとこでした」
「ほんと、ありがとうございます」

「ちょうどフツーのスイーツ、食べに誘おうかなって」
「思ってたんですけど〜」

      ニコッ

「いいですよっ。行きましょう!」
「ユメミンとそういう変わったの、最近食べてませんでしたしね」

「場所は……星見街道のほうです? それとも横丁のほう?」

そういう理屈でいうと、ユメミンと遊ぶの、やっぱり好きなんだよね。
スマホ落としたのはどうしようかなって思ったけど、拾ったのがユメミンでよかった。

511夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/04/24(水) 02:47:07
>>510

「よし!!いくぞイズミンたいいん!!
 いまこそ、かくされた『おおいなるナゾ』をときあかすトキだ!!
 そこにはデンセツのヒホウがねむっているという!!」

「ユメミンがゴクヒにニュウシュした『こだいちず』によると――
 『ホシミカイドーほうめん』だな!!
 メインストリートからは、チョットはずれたバショか……。
 しるヒトぞしる『かくれがてきショップ』ってカンジだ!!」

        ピッ
             ピッ

『古代地図』――もといスマホに地図を表示して、イズミンに見せる。
使ってるスマホケースはデコレーションが賑やかだ。
様々な色のパーツが、あちこちにゴチャゴチャくっついている。

「そんじゃ、さっそくいこうぜ!!
 テイクアウトもできるみたいだから、おみやげもかってかえろっかな〜〜〜。
 ナニもいわずにだして、みんなをビックリさせてやろう」

        ザッ

そんなこんなで店に向かおう。
チョットわかんないコトはあったけど、そのコトはいいや。
イズミンと遊んでるのは楽しいし、ソレでいいと思う。
だって、ユメミンはイズミンの友達だから。
だから、きっとソレで十分なんだ。

512今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/04/24(水) 23:15:06
>>511

「『隠れ家的』! 良い響きですねえ」

     ずい

スマホを覗き込んで地図を見せてもらう。
知らないお店だ。友達といろんなお店行くけど、
ユメミンはやっぱりフツー知らない事を知ってる。

「へえーっ、こんなところにあったんですねえ、お店」
「ほんとに宝探しみたい」「味もお宝レベルならいいな」

「それじゃ、『秘宝』目指して張り切って行きましょっ」

              スッ

真っ白にマスキングテープを巻いた私のスマホ。
ほんと、見つけてもらえてよかった。
・・・メールとか来てないかな。
まあ、見るのはまた後でいいや。

「テイクアウトですか、それもいいですねえ」
「食べすぎちゃわないように気を付けないとっ」

今は、フツーに、スマホ見なくても楽しい時間だもんね。

513夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/04/25(木) 00:17:49
>>512

    ザッ
        ザッ

少しずつ中庭から遠ざかっていく二つの人影。
それは『普通の日常』だ。
ちょっとだけ変わってるかもしれないけど、それでも『いつも通り』の光景。

          ザッ
              ザッ

あの電話は、もしかすると『いつも通り』じゃないのかもしれない。
いつか何かがあるのかもしれない。
もしかすると、それは大きなことなのかもしれない。

                ザッ
                    ザッ

だけど、もしそうだったとしても、それは今じゃない。
今ここにあるのは、いつもと変わらない『普通の日常』だけ。
少しの余韻を残しながら、この小さな一幕は終わりを迎える――――。

                      ザッ
                          ザッ

514日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/05/19(日) 23:30:25

        ガシャ

「ふぅ――――――――――ッ・・・」

屋上の金網に背を預け、何げなく空を見上げる。
頭の中に浮かぶのは『アリーナ』の舞台だ。

(あれはやばかった……
 腕斬られたワケだし……
 ありえないくらい痛かった)

(ヤバい、『逆に』頭から抜けないな〜ッ……二度とやる気はしないけど)

「『サグ・パッション』」

               ガシャンッ

現れた大柄なヴィジョンが、金網を掴んで揺らす。

「流月、ヤバいほうに転がっちゃってないかなァ〜〜〜」

          「まだまだ『引き返せる』気はするけどぉ〜〜〜ッ」

515流星 越『バングルス』【高1】:2019/05/21(火) 00:21:43
>>514

   「うわっ」

   「あっ違いますうわっとか言ってないです。お口チャック」

屋上で雑誌でも読もうかな、なんて思ったのがいけなかったのだろうか。
先客がいた……のはまぁいいとして。
独り言をつぶやいている……のもいいとして。
スタンド出してる。
『私は近距離パワー型です』って顔したスタンドがめっちゃ金網掴んでる。
あまりにも自然に出しているものだから、流星越は思わず『うわっ』とか言ってしまった。
……まぁ、その表情はピクリとも動いていないのだが。
尾のように垂らした三つ編みが、僅かに跳ねた。
赤ぶちの眼鏡越しに、視線は金網を掴むスタンドへ。

   「……………今から何も見てなかったことにできませんかね」

   「歴史改変ビームみたいなの、出ませんか。出ませんね。おーまいが」

516日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/05/21(火) 01:54:56
>>515

「あン?」

      キョロッ

    ルナ
「いま流月のこと見てウワッて言ったでしょ!」

「言ってからお口チャックしても遅いし〜」

お世辞にも迫力があるとは言えない顔だ。
が、金髪とも銀髪とも言えない独特な髪は、
多少なりとも『不良っぽさ』を演出していた。
要は、こいつが『何』なのかは分かりやすかった。

           シマ
「べつにここ、流月の縄張りとかじゃないし、
 誰が来て何言ってても良いんだけどさ〜〜っ」

「ひとりごと言ってんの見られたくらい気にしないしね」

流月は『さほど』スタンド使いと会っていない。
特に、学校にいくらでもいるなんて、想像出来ていない。

「てゆーか、流月ビーム撃つように見える? ウケる。
 ぷぷ、『逆に』メガネかけてるあんたの方が撃ちそうだけど!
 なんだっけ、いなかった? メガネからビーム撃つキャラさ〜!」

          「っで、何しにここ来たの?
           流月に会いにじゃないよね?」

517流星 越『バングルス』【高1】:2019/05/21(火) 03:01:12
>>516

   「いえその」

   「もごもご」

もごもごって口で言った。

   「もちろんビームを撃ちに来たわけではないのです。撃てたら楽しそうですが」

   「エッちゃん雑誌を読みに来たんですよルナさん」

そう言って、手に持っていた『バイク雑誌』を胸の前に掲げる。
今日発売、朝のうちに買ってきたばかりの新品だ。

   「屋上で雑誌を読むなんて大変青春めいていてメモリアルがときめくアレなのでは、と。
    そう思ってやってきたはいいものの先客がいたご様子。
    いたご様子なのはともかく、ほら、その、なんと言いますか」

   「『ツッパった』方がいらっしゃるじゃないですか」

   「いえその、ルナさんではなく。殴る蹴るの暴行が得意そうなそこのお方。
    あ、でも『スタンド』だからルナさん自身でもある……?
    つまりルナさんは殴る蹴るの暴行が……いえ普通に苦手ではなさそうですね」

   「ともかくそんなわけで驚いてうわって言っちゃったわけです。
    ええ、どうにか言ってないことにできませんか。できませんね」

若干警戒気味の及び腰。
いきなり襲い掛かってくるとも思わないが、『ヤンキー』っぽい人を反射的に警戒する陰キャの定めであった。

518日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/05/21(火) 03:16:31
>>517

「『雑誌』か〜。『ジャンプ』だったら貸してよって言おうとしたけど」

「バイクね〜、それセンパイが読んでたな〜っ。
 てかバイク乗るの? えーっと、16からだっけ。
 だったよね。あんた不良って感じしないし、
 じゃあ『誕生日』もう迎えてんだ。 おめでと!」

「あ、でも、『逆に』そういうカッコでさ?
 不良やってるヤツも……『漫画』にいそーだけど」

バイク雑誌に視線を向けて、そのような話をしつつ、
やや歪んでしまった金網に背を預けて話す体勢に入る。

「『ツッパリ』ぃ〜? ってあの、『不良漫画』的な?
 え〜っ、流月そんな古い感じじゃないでしょ! ……あ」

           『ズズズ・・・』

「見えるんだ? 流月の『サグ・パッション』が。
 そーいうこと! そりゃ悲鳴も上げちゃうわ。
 見えるのもメガネパワー……なんてね、ウケる。ぷぷ……」

       クスクスッ

「まーとにかく、『サグ・パッション』ガタイいいし、
 流月もこいつ初めて見たときビビったし。
 流月自身は、暴力とか、好きじゃないし? ね?」

「べつに言っててもいい。あ、本読むなら座りなよ。そことか日向であったかいし!」

                  スゥッ

これ見よがしにスタンドの指で、なるほど影の都合で日向になっている場所を指さした。

519流星 越『バングルス』【高1】:2019/05/21(火) 03:48:02
>>518

   「あ、はい。ありがとうございます。
    私は別にこう、真面目な文学少女なんですけどね。
    いや嘘ですね。別に文学少女では無いです。
    ともあれバイクが好きな一般ガールなのです。乗ってるのは親戚のお下がりですが」

スッと態度が軟化した。
表情にはまったく出ないが、姿勢から警戒が薄れた。
この先輩、話しやすそうだな――――驚くほど早い掌返しと判断力であった。
ぼっち生活が長い彼女はかなりチョロかった。

   「お察しの通り。エッちゃんアイは透視力なのでバッチリその、『サグ・パッション』さん? が見えてしまいまして。
    私のは『そーいう形』をしてませんから……とてもビックリしましたね。心臓が爆発四散するかと。
    いえ、『人型』は何体か見たこともあるのですが」

   「あ、言葉に甘えますね。ベロベロ甘えます。ちょこん」

そんなわけでホイホイ日向に腰かけるのだ。
とはいえ雑誌を読みだすでもなく、興味はすっかり流月の方へと向いていたが。

                       ナガレボシ エツ
   「ルナさん先輩は……あ、私は『 流星   越 』と申します。ぶい。
    で、えーっと、ルナさん先輩は何かお悩みでしたか? エスパーなのでお悩みだった感じなのがビビビと伝わりまして。
    まぁ普通にルナさん先輩の独り言を聞いてしまっただけなのでエスパー全然関係ないんですが」

520日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/05/21(火) 04:09:24
>>519

                      ヒヌマ ルナ
「あ、ごめん自己紹介まだだっけ。『日沼 流月』だからよろしく!」

軟化した態度にもつられるように、挨拶を返す。

「へぇ〜、いいじゃん。お下がりでもさ。
 まー人から受け継いだっていうのが、
 『自分のじゃない』ってなるとこはありそうだけど」

「あっそうだ『写メ』とかある? 見してよバイク!」

           スッ

「『お返し』出来る写メとかはないワケだけど」

少女の愛機に好奇心を膨らませる日沼。
バイク自体が好きというわけでもないが、
コミュニケーションのための質問、というだけではない。

「へー、『人型』って他にもいんの!
 てゆーか、あんたもスタンド使いなの!?
 その『透視力』ってやつ? 『目力』的な!」

    「なんかウケる。意外と多いのかな?」

             ズズ

スタンドを、特に意味もなくいったん解除して、
それから少し間をおいて、真横に発現させる。

「流月がちゃんと見たのは『武器』だったかな〜。
 それがこう、悩みにも絡んでくる件なんだけど!
 悩み。そう、エスパーじゃなきゃわかんないかもだけど、
 ぷぷ……いや、笑う事じゃないんだけど、悩みあるワケ。
 うーんでも、エッちゃんってそういう相談できる相手かな〜」

      「ね、ね、口固い? あとで武勇伝とかなっても困るし。
        『逆に』なんかで漏れてそれで脅されたりしたらめっちゃ嫌だし〜ッ」

521流星 越『バングルス』【高1】:2019/05/21(火) 05:40:18
>>520

   「いいですよ。自慢の相棒の隠し撮り写真大公開です」

スマホを淀みなく操作すれば、風景写真に交じって『スーパーカブ』の写真が何枚か。
夕暮れ、海岸、山……『カブ』に乗ってあちこち出かけているのが察せられる並びだ。

   「私のスタンドは……実は眼鏡もバイクも関係なく、『剣』の形をしておりまして。
    あ、今度はマジの奴です。『剣と籠手』と言いますか。『バングルス』と呼んでいるのですが。
    なので『透視』とかでもないんですが……まぁ、詳しいことは『乙女の秘密』ということで。いやん」

無表情に頬に手を添えて『しな』を作った。
この少女、表情筋が死滅している。

   「そんなわけで私も『武器』だったりするわけです。
    どっちかというと『人型』が多数派、という特ダネを聞いたこともありますけども。
    あ、じゃあ私少数派? 迂闊。突然マイノリティと化しましたね……まぁ『スタンド使い』自体マイノリティだとは思いますが。
    でも実は皆さんあんまり見せないだけで、意外と『スタンド使い』って多かったりするのかも……」

   「……というのはともかくとして」

   「ご安心くださいルナさん先輩。
    このエッちゃん、こう見えて友達がさほど多くないので秘密を聞いても話す相手がおりません」

己の胸に手を当て、軽く逸らす。無表情に。
……それから、間。
一拍。

   「あっ自分で言ってて悲しくなりましたねこれ」

   「でも別にまったくいないわけではないんですよ、友達。
    ええ、これは少数精鋭なのです。ワンマンアーミー。そんなわけで比較的口は固いかと思われます。
    自分のこととなると余計なぐらいに饒舌だけど、人の秘密は決して漏らさないともっぱらの評判なエッちゃんなのです。
    ミステリアス指数の高さで言えば相当なものですよ私。いい女なので」

522日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/05/21(火) 18:24:59
>>521

「へーっ、アウトドア派なんだ!
 流月もインドアってわけじゃないけどね。
 こーいう色んなとこ行くのは足なくてやってないし」

「やっぱバイク良いなァ」

車種にはそれほど興味もないのか、
横から画面を覗き込み風景を見ていた。

が、スタンドの話になると顔を引っ込め、向き合う。

「えー、剣とコテ? 剣道やってるとか?
 なんかあんたのイメージと『真逆』な感じ!
 まーべつに詳しいことは聞かないけどね。
 ほら、流月の『サグ・パッション』だって、
 誰にも教えない方が戦った時強いと思うし」

    「戦う予定があるワケじゃないけどォ〜」

付け加えたのは、どこか慌ててだった。
しなを作るポーズには「何それ、ウケる」と零して、
傍らの『サグ・パッション』の頭から足先を見る。

「どーなんだろうね、流月のもそうだけどさあ。
 その気になったら誰だってやっつけられるじゃん。
 しかもバレずに。『完全犯罪』出来るよね」

「あ。相手がスタンド持ってなかったらの話ね!
 でもさ〜。みんなから嫌われてるやつとかでも、
 ある日突然やっつけられたりとかしないワケだし?
 たぶんそんなに数はいないんじゃないかなぁ〜って思うワケよ」

自分は違う……新元令和や、あの『ロボ子』なんかも、
スタンドをそういう『私刑』に使ったりはしなさそうだ。
が、『逆に』そう考えるやつがいてもおかしくはない。
それでも今のところ全国的にそこそこ平穏だ。なら多くはないのだろう。

「てゆーかウケる、友達少ないのそんな風に語るヤツ初めてだわ!
 うーん、それじゃ語っちゃおうかな。流月も、正直、抱え込みきれないワケだし」

「ね、ね、エッちゃんはさ〜〜っ…………」

       クルッ

逆巻いた後ろ髪の一房を丸めながら、言葉をまとめる。

「……その『剣とコテ』で人と戦ったこととか、ある?」

523流星 越『バングルス』【高1】:2019/05/21(火) 23:10:14
>>522

   「剣道、やった覚えもないんですけどね。不思議なものです。タモリさんがしたり顔するのが見えます」

実際――――剣とも盾とも縁のない人生を送ってきた。
なぜ『バングルス』が『ランタンシールド』なのか、と問われても……流星自身は答えを持たなかった。
心理学に明るい人間ならわかるのだろうか。欲求不満とか言われそうだ。

……閑話休題。

   「…………私はまぁ、能力的に『完全犯罪』は難しいのですが」

   「しかし言わんとすることはバッチリわかります。理解力が高いので。
    あるいは知らないところでは、割とそういうことが起こってたりするのかも……とも思います。
    本当に『完全犯罪』なら、あったことすら気付かれていないでしょうし」

   「ですから……いえ、ですからというわけでもないんですが。ナッシングなのですが」

一瞬だけ、目を逸らす。
逸らしてから、感情の宿らない瞳を流月に向けて。


   「――――ありますよ。人と戦ったこと」


   「あ、喧嘩とか犯罪とかデスゲームとかではなく。痴情のもつれとかでもなく。
    双方合意の上の『決闘』というか『スパーリング』というか、そういうアレで。
    ……まぁちょっと腕試しに。はい。私より強い奴に会いに行く、みたいな」

   「一回だけですけどね。先っちょだけです先っちょだけ」

524日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/05/22(水) 00:03:57
>>523

「?? なんでタモリ? まっいいや、流月のも『長ラン』だけどさ、
 こんなの今時着るやつとか……たまにしかいないしさぁ〜〜〜」

「そこはまあ、いいや」

能力と性格――――『叛逆』は『生まれついての性格』ではない。
ましてや『長ラン』という不良の『伝統』……あるいは、その裏側は。

「……まあいいや」

「ま〜そっか、言われてみたら本気で『完全』なら、
 人が行方不明とかなってるのに流月達が気付かないとかありそうだし」

               「そこは言い切れないか〜」
           
       「っで」

「…………えっ! あるの!? やば、ない前提で話そうとしちゃってた!」

「ひっくり返っちゃった〜っ。いや、流月もそーいう感じでさあ。
 や。腕試しとかじゃなくってお小遣い稼ぎにね?
 かる〜く、スタンドで戦うの、やってみたんだけどさ〜〜〜〜」

「……エッちゃんさあ! 腕試ししてみてさぁ、なんとゆーか……『どんな気分だった?』」

525流星 越『バングルス』【高1】:2019/05/22(水) 00:41:38
>>524

   「すみません。御覧の通り行動派なものでして……」

……あまり行動派っぽいヴィジュアルではないが。
少なくとも、『喧嘩』が好きそうな見た目ではない。

   「そしてなるほど。エッちゃん理解力が高いので事情は理解しました」

   「…………『どんな気分だったか』、と言えば……」

再度僅かに俯いて、己の右手の甲を撫でる。
『バングルス』。
『殺し合い』では無かったが――――『人を斬った』手だ。
今も消えない、『アリーナ』で戦った時の記憶。

   「……ちょっとこう、あまり引かないで貰えるとありがたいのですが」

   「正直ちょっとテンション上がったんですよ」

   「ウオオ私はすごいやつだ、みたいなテンションになりました。勝ちましたしね」

   「でも……終わってみれば、やっぱりちょっと『怖い』気もしました。
    『喧嘩』が好きなわけではないのです。ただちょっと、『思春期』なだけ、というか……」

   「…………ほんとですよ。刀身ペロペロしてケヒャったりしませんからね、私」

526日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/05/22(水) 13:11:43
>>525

「あ〜〜〜〜〜『逆に』ね? 逆にそれっぽい!」

どう見ても行動派ではないのだが、
『不良グループ』にも『地味なヤツ』はいる。
そういうやつは大抵かなり『ヤバイ』。
エッちゃんも若干ヤバそうだし、そういう事と考えた。

「ひかないひかない」

「……」

そして話を聞く――――日沼としては相当におとなしく。

「………………なるほどねぇ〜〜〜〜わかるよ!」

        「ワカル」

              「すごくわかる」

「流月もさあ、そういう感じ……戦ってるときはすごかった!
 歓声とかめっちゃあるしね、アドレナリンっていうんだっけ、
 『サグ・パッション』で思いっきり殴ったし、刀で切ったりしたし」

「で、終わったらヤバ〜ってなってさ、もうやらないどこって」

        「まあ、気分はよかったんだけどね。
         さすがにちょっと、色々忘れてからかな〜って」

                 「……でも『忘れられない』んだよねェ」

527流星 越『バングルス』【高1】:2019/05/22(水) 23:14:35
>>526

   「……そーなのです」

      「ロキではなく」

   「のめり込んではいけないな、と思いつつ」

   「けれども『クセ』になってしまいそうな自分もいて」

   「絶対にやめておいたほうがいいのに――――心のどこかで、また『戦い』を求めている自分もいるのです」

無表情に、手の甲を――――それを通して、あの時の戦いを見ている。
『人を殺せる力』で、『人と戦った』。
それで『高揚した』。
……家族にも、数少ない友達にも言えっこない。

   「…………話は変わるようで変わらないのですが」

   「私、実はバイクで旅をするのが趣味でして」

先ほど見せた写真からして明らかな事実である。

   「今は日帰りで行ける範囲ですが……いつか」

   「いつか、海外を旅行するのが『夢』なのです。アメリカンドリーム。アメリカじゃなくてもいいんですけどね」

   「自分探し、というか……自分の価値を試したい、というか……なんかそういう。
    私の場合、『戦い』に惹かれているのはそういう部分もあるかと思うのです。
    困難を乗り越えてレベルアップ、みたいな感覚ですかね」

   「なので逆に聞いてみたりするのですが、ルナさん先輩はそういう『夢』みたいなの、ございますか?」

   「『衝動』が理解できれば『納得』もできるかも、みたいな知性派の考えなのですが」

528日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/05/23(木) 00:14:24
>>527

「あっよかったァ〜〜〜流月だけじゃないんだ、こーいうの」

              フゥーーーッ

「にへ……流月だけじゃなくてよかった、って思う自分はどうかと思うけど!」

「『皆と一緒だから安心』ってのは、
 流月の流儀に反するワケなんだよねぇ。
 まあ、『逆に』だからこそ『叛逆』する価値もあるわけだけどさァ」

        「……」

それから、少し黙って流星の話を聞いていた。
『夢』――――『海外を旅行する』という夢は、まぶしい気がした。
別に夢を持つヤツに憧れるわけじゃないが、語る流星の真摯さがそう思わせた。

「ん〜まあ、流月は夢とかないかなぁ〜〜〜っ」

「高校終わるまでには見つけたいけど、
 そーいう『衝動』みたいなのは…………ああ」

そういえば、隠しているわけでもない。
仲の深い友人には、あるいは古い知り合いに走られていた。

「エッちゃんになら言っていいか。口固いイイ女でしょ!」

                イヒッ

笑みを浮かべた。

「――――『お医者さんにはならないこと』かな。流月の『夢』ってやつはさぁ」

529流星 越『バングルス』【高1】:2019/05/23(木) 00:42:47
>>528

   「……『お医者さんにならないこと』、ですか」

お医者さんに『なる』、ではなく。
『ならないこと』――――と、彼女は言った。

   「それは……なんというか」

   「複雑、ですかね?」

家庭の事情、なのだろうか。
親への反発……と、想像する。

   「お医者様、なるのはとても難しいと聞きますが……」

530日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/05/23(木) 01:02:17
>>529

「そ、流月って頭いいからさァ〜ッ。なれると思うワケよ」

            ガシャッ

フェンスに預けていた背を離した。

「でもならないの。それだけ。複雑じゃないよ。
 誰に言われても、ならない。他の事をするの。
 でも『逆らう』だけじゃダメなんだよね〜〜〜。
 ただ道に逆らって歩くだけじゃ、どこにも行けないから。
 流れに逆らった後どこに行くのかは、決めなきゃいけないから」

ほとんどよどみなく、日沼は思うところを口にした。
隠している訳じゃあない。それでもべらべら話す事じゃないが、
夢を話してくれた『イイ女』に、隠し立てをする気分でもなかった。
それでも、口から出たのは頭の浅いところにある言葉だけで、
『本当』といえるようなことは、言い切れなかったかもしれないけど。

「それがどこかってのは……高校終わるまでに決めとくワケだけど」

そして、『サグ・パッション』を解除して、
ちょうどすれ違うように『屋上』の入り口へ歩く。

「あっそうだエッちゃんさあ!」

「もしさ、『アメリカ』……『ハワイ』とかでもいいや!
 自分探しの旅行ってさ、それでまた写真撮ったら、
 流月にまた見せてよ! 『グランドキャニオン』とかさぁ〜」

       「だから『LINE』教えといて! やってるでしょ?」

531流星 越『バングルス』【高1】:2019/05/23(木) 01:45:58
>>530

   「はえー、なるほど……」

   「……少し、わかる気はします」

   「自分の力でなにかをしたい、というのは……私の『夢』は、そのようなものですし。
    さっきも言いましたが、自分探し的な。私の場合は、ですけどね」

ある意味では……『何をしたいか』を確かめるために、『旅をしたい』のだ。
『何をしたいか』、『何ができるか』。それを確かめるために。

   「見つかるといいですね。ルナさん先輩の道」

   「私もまだ見つかってないので、エラソーなことは言えないのですが。
    かといってしょんぼりしながら言うことでもないので、エラソーなことを言うのです」

えへん、と胸に手を当てて背を逸らす。
そのまま、歩いていくルナを見送って。

   「……『LINE』!」

   「失敬。普段あまり使わないので驚きました。
    もちろんばっちりオッケー丸です。うひょうLINE交換蜜の味」

無表情のままにテンションを上げ、わたわたスマホを操作する。

   「いつになるかはわかりませんが……写真を取ったら、必ず送りますね」

   「…………あ、先輩も今日の話、内緒でお願いします。お口チャックで。
    もちろん……ルナさん先輩は『イイ女』なので、あまり心配していませんけど」

532日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/05/23(木) 02:12:41
>>531

「わかる? いいね、エッちゃん。
 流月たち最初『逆』な雰囲気だと思ったワケだけどさ。
 エッちゃんも思ったでしょ? でも、結構共通点あるね〜」

「しかも応援してくれんの?
 いいやつ〜〜〜。流月も応援してる!
 見つけてない同士がんばろ!」

そこまでは振り返って答えて、
スマートフォンの連絡先を交換して。

「言わないよ、流月記憶力もいいからさ。
 こーゆう約束ってやつは、忘れないワケ。
 そのうえイイ女だから秘密は守るしね!」

それから、完全に入り口のほうに振り返った。

「んじゃ、またね。写真以外でも連絡してくれていーよ!」

            「流月からも連絡する、かも。ばいばい!」

   ギィ

       バタンッ

そうして日沼は屋上を去った。
後ろ姿で、表情は読めないが、言葉に嘘はなかったらしく『夢』が漏れる事はなかった。

533今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/15(月) 19:02:07

寮に引っ越すのって、書類とかいるんだよね。
よく考えたらフツーのことなんだけどさ。
私、家のこととか、あんまり知らないんだ。

         トコ トコ

ちゃんと必要なのは全部貰えたから、いいや。
知らなくても教えて貰えるから、良かったよね。
それで今はそれを持って歩いてるところなんだ。

  ツルッ

    「わっ」

そういう時に限って足を滑らせるんだよね。
雨が多いから。地面がぬかるんでるんだもん。
もう7月なのになんだか梅雨みたい。

私はなんとかこう、バランスを取れんだけど。
そのために手を持ってるものから離しちゃって。

書類の入ったファイルを水たまりに落としそうに、なって。

         パシッ

         『今泉サン、再三デスガ足元ニハ オ気ヲ付ケテ』

先生が取ってくれた。

「あっ! 先生どうもです。まさかこんなに滑るとは思わなくって」

反射みたいにお礼が出て、それから、人がこっちを見てないかなって見回した。

534嬉野好恵『小1』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/15(月) 20:03:36
>>533

「あっ――――」

少し離れた所から、その様子を見ている視線が『二つ』あった。
一つは花柄のワンピースを着た少女。
彼女の視線は、危うく転びかけた今泉に向けられていた。

        それから、もう一つは――――。

  (あれは――また『人型』か……)

  (いや……本体が『人間』なら当たり前の事なのかもな)

少女が背負ったリュックから頭を出している、一匹の黒い短毛の『チワワ』。
その視線の先にいるのは今泉ではなかった。
チワワが注意を向けていたのは、今泉の傍らに立つ『コール・イット・ラヴ』だ。

535今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/16(火) 15:28:58
>>534

「あっ」

目が合った。

「こんにちは〜」

        『コンニチハ』

だから挨拶をした。

先生も頭を下げてる。でも見えてるのかな。これ。
私がこけそうになったのを見てただけな気がする。

「石にね、つまずいちゃって」

だから、理由を言い訳みたいに言いながら近付いて。

        『…………』

先生は、少し後ろをついてくる。
怖がらせないため、かな。見えてたらだけど。

「えーと……お散歩かなっ?」「ワンちゃんかわいいね」

授業の帰りじゃないよね。服とか、犬とか。
校庭開放とかしてるんだったかな。広いもんね、ここ。

536今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/16(火) 15:41:02
>>535(追記)

┌───────────────────────────┐
│        今泉は、犬の視線を気にしていない。        │
│   犬が『先生』のいる辺りを見ていてもそれは犬だ。      │
│    だが・・・見られている者は、気づいている。       │
│     気づいているが、判断に困っているのだ。       │
└───────────────────────────┘

537嬉野好恵『一般人』【小1】&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/16(火) 18:13:09
>>535
>>536

「はーい!」

「今日はー、ここの公園であそぼうと思ってー」

「だから、あそびに来ましたー!」

少々背伸びしているらしく、子供っぽく拙い敬語で言葉を返す。
笑顔で話す少女の表情に驚きなどはなく、『先生』が見えている様子は全くない。
少なくとも、今の所は――。

    (『スタンド』は既に出ている状態だ)

    (そして、『距離』も縮まろうとしている……)

『問題』は――――『俺にとっての問題』は一つしかない。
この『スタンド』が、ヨシエにとって害を与える存在でないかどうか。
重要なのは、その『一点』だけだ。

    (あんまり見せたくはない――が……)

    (『念』には『念』を入れておく)

俺はヨシエを守らなければならない。
だから、『万一の可能性』に備える必要がある。
『起こってしまってから』では遅いのだ。

       シュルルルル

チワワの首輪には、革紐の『リボンタイ』が結んであった。
それが『淡い光』を放ち、独りでに解け始める。
まるで、見えない手で解かれていくように――――。

538今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/16(火) 22:50:40
>>537

この子が笑ってるから、私も笑うことにしたんだ。

「そうなんだ、広いもんねこの公園!」
「遊具とかはあんまり、なかった気がするけど」

城址公園だもん。城址って、お城の『あと』の事。
広いし、探せばあるのかもしれないけどね。

「ワンちゃんの散歩にはフツーに良さそうだよねっ」
「その子、名前はなんていうの?」

それにしてもやっぱり先生は見えてなさそう。
見えててほしいとは、思わないから、よかったのかな。

・・・でも。

「…………あれっ」

         『……! 今泉サン、少シ 下ガッテ下サイ』

      スッ

先生がそう言うから思わず私も一歩下がった。
犬の首に巻かれた……リボン? それとも、首輪の紐?

どう見ても、フツーじゃない。
そういえばこの犬、『先生』を見てるような気もする。

         『……私ガ 見エテイマスカ?』
         『アナタ ハ …………ソレトモ マサカ』

それで先生も、犬を見てるんだ。
質問してる相手も……この子じゃなくて、犬の方なのかも。

・・・『犬のスタンド使い』? そんな事も、あるのかな。

539嬉野好恵『一般人』【小1】&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/16(火) 23:36:16
>>538

「そうだよー。ここで一緒にあそんでるのー」

俺は、ヨシエ達のやり取りをリュックの中から見ていた。
今の時点では、特に危険はないように見える。
だが、それと用心するって事は別の話だ。

「『ディーン』っていうんだよー」

「――『ディーン』っていいまーす!」

ヨシエは、同じ内容を敬語で言い直している。
しっかりしてはいても、まだ子供だ。
その辺まで出来るようになるには、十分な経験を積むだけの時間が必要なんだろう。

     シュルルルルルルルッ

解かれた『リボンタイ』は、一本の『光の紐』となっていた。
先端部分は、『人の手』のような形となっている。
その『手』と少女の手が――繋がれた。

「――わっ!?」

直後、少女が驚きの声を上げる。
彼女の視線は、『コール・イット・ラヴ』に向けられていた。
少女は――『スタンド』が見えている。

《……俺が言いたいのは、これはあくまで『用心』だって事だ。
 万が一のための『保険』ってヤツさ》

《『条件』を同じにしたかったんだ。そっちが出してるから、こっちも出した……。
 『挨拶』みたいなもんだな。ちょっとばかり物騒なのが玉にキズだが》

《まぁ、何だ……これで『フェア』に話せるって事さ》

相手が『スタンド使い』なら、『スタンド』を通して意志が伝わる。
だから、おそらく俺の言葉も分かってもらえるだろう。
その前に、『人間と会話する犬』っていう事実を受け止めてもらわなきゃならないが。

540今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/17(水) 00:39:54
>>539

「あは、敬語じゃなくってもいいよ」
「私、別に、偉い人とかじゃないし」

       「って」

「『犬』の……『スタンド使い』ですか!」

びっくりすることだと思う。
人間じゃないスタンド使い、いてもおかしくはないけど。

犬と人間でも『スタンドで話す』と話せるのが、びっくりすると思うんだ。

「出してるっていうか、先生は『出てくる』んですよね」
「それにしても」「犬って、大人っぽい事考えてるんですねっ」
「私より頭良さそう」

思わずっていうか、反射的に敬語になっちゃうよね。
先生とか、大人の人と話してる感じ。こんな小さい犬なのに。

       『〝人ノ意思〟ヲ持ツスタンドガ イルノデス』
       『モシ 犬ガ 〝スタンド〟ニ 目覚メタトシタラ――――』
       『〝人ノ意思〟ヲ、獲得シテモ オカシクハ ナイノデショウネ』

「元から意思はあったのかもしれませんけどっ」
「……そこのところ、どうなんでしょう?」

フツー、人間には『こころ』があるんだ。
人間みたいに喋る犬にも、もとから、あるのかな。それがフツーなのかな。

541今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/17(水) 00:47:55
>>539

「あは、敬語じゃなくってもいいよ」
「私、別に、偉い人とかじゃないし」
「『ディーン』かあ、よろし――――」

       「って」

「『犬』の……『スタンド使い』ですか!?」
「って、あれっ、この子にも見えて―――あれっ?」

びっくりすることだと思う。
人間じゃないスタンド使い、いてもおかしくはないけど。
犬と人間でも『スタンドで話す』と話せるのが、びっくりすると思うんだ。

           『――――用心ヲ カケサセテ 申シ訳ゴザイマセン』
           『私ノ名前ハ〝コール・イット・ラヴ〟』

           『今泉サンノ 〝先生〟デス』

「出してるっていうか、先生は『出てくる』んですよね」
「危なかったりは、しませんから」「って言っても仕方ないですけど」

「……あ、ちなみに私は『今泉 未来』です。改めて、よろしくお願いします!」

それに、いつの間にかこの子にも先生が見えてるし。
分かるのは、これがこの子じゃなくって『ディーン』の力ってコトだけ。

「それにしても」「犬って、大人っぽい事考えてるんですねっ」
「ディーンさん、私より頭良さそうじゃないですか」

思わずっていうか、反射的に敬語になっちゃうよね。
先生とか、大人の人と話してる感じ。こんな小さい犬なのに。

       『人ノ意思 ヲ 持ツ スタンドガ イルノデス』
       『モシ 犬ガ スタンド ニ 目覚メタトシタラ――――』
       『人ノ意思ヤ知識 ヲ、獲得シテモ オカシクハ ナイノデショウネ』

「元から意思はあったのかも、しれませんけど」
「……そこのところ、どうなんでしょう? ディーンさんっ」

フツー、人間には『こころ』があるんだ。
人間みたいに喋る犬にも、もとから、あるのかな。それがフツーなのかな。

542嬉野好恵『一般人』【小1】&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/17(水) 01:24:51
>>541

「『コール・イット・ラヴ』さん、はじめましてー!」

「『ヨシエ』は『嬉野好恵(うれしのよしえ)』っていいまーす!1年生です!」

ヨシエは、まず『コール・イット・ラヴ』に、続いて未来に挨拶した。
最初は驚いていたが、今はもう落ち着いている。
すぐ状況に順応出来るのが、ヨシエの良い所だと俺は思っている。

    《『出てくる』?自分の意思で、か?》

    《いや――『なるほど』な……》

実際、俺自身も戸惑っている部分があった事は否定出来ない。
他のスタンドと出会った経験は少ないが、風変わりだというのは何となく理解出来た。
自分の意思があるなら、自分自身で出てきても不思議はないかもしれない。
ひとまず俺は、そのように結論づける事にしておいた。
少なくとも、知らなかった事を知ったというのは有益に違いない。

    《『年相応』ってだけさ。俺も『二歳』だからな。
     嫌でも考えなきゃならない事は色々と出てくる》

俺達みたいなチワワは、二歳で成犬になる。
人間に換算すると『23』とか『24』とか、大体その辺りらしいな。
要するに、人間よりもかなり早く年を取るって事さ。

    《『心』ってのがどういうものかによるが、
    それが『感情』って意味なら――あるような気がする》

    《嫌いなヤツには近付きたくないし、逆に好きなヤツの近くにはいたいと思う……》

    《だから――俺はヨシエと一緒にいるんだろうな》

543今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/17(水) 02:03:32
>>542

「ヨシエちゃんもよろしくねっ。私も1年生だよ、高校のだけど」

先生より先に、挨拶を返した。
1年生なのにすごくしっかりしてる気がする。

            『ハジメマシテ。ヨロシク オネガイシマス』

               ペコリ

            『エエ、私ハ〝意思〟ガアリマス』
            『必要デアレバ イツデモ 出ラレルノデス』

「おかげでさっきは助かりました、先生っ」

出なくていいときにも出てきちゃうんだけど。
でも、先生にはそれが出るべき時なんだろうけど。

「なるほど〜っ、犬の2歳は、えーと」

            『人間ノ〝20代〟ダッタハズデス』
            『厳密ニ 比較デキルカハ ワカリマセンガ』

「流石先生、詳しい。じゃあ私より一回りお兄さんですね」
「生まれた年で言えば、フツーに全然逆ですけども。あはは」
   
2年でここまで大人にならなきゃいけない犬って大変なのかも。    
時間の進み方とかも、私とは違うんだろうけど。どうなんだろうね。

「……」

「へえ、そうなんですねえ。ディーンさんも、『こころ』があるんですねえ」
「犬ってなんとなく、人間に近いイメージですもんね!」「なんだか、納得です」

                  ニコ

「すてきですねっ!」

笑顔になる。

「ヨシエちゃんも、ディーンのことすごく好きそうだし」「とっても仲良しって感じだねっ」

だって、リュックに入れてるぐらいだもん。よっぽど好きじゃないと、そうはしない気がする。

544嬉野好恵『一般人』【小1】&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/17(水) 02:53:32
>>543

「うん、大すき!」

「ディーンは一番大事な友だちだから――」

「だから、ずっと一緒!」

   ニコッ

ヨシエは、俺を好きでいてくれる。
だから、俺もヨシエが好きなんだろう。
単純な理屈だが、それが俺にとっては何物にも代えがたい。

    (だが――ずっと一緒にはいられない)

たとえ分かり合えたとしても、『人』と『犬』だ。
どれだけ願ったとしても、種族の垣根を越える事は出来ない。
俺は、ヨシエより先に『この世』から消える。

    《アンタらも、仲が良さそうだな。
     ちょっと変わった話ではあるが……》

    《『人間と会話する犬』と同じくらいには変わってるか?
     何にせよ――珍しそうなのは確かだ》

前に見た『人型のスタンド』は、意思を持っているようには見えなかった。
人型だから意思を持ってるワケじゃないらしい。
もっと色々なスタンドを見ていけば、もっと詳しい事が分かるんだろうが。

「じゃあー、今度はみんなで仲良しになりたーい!
 『ヨシエ』と『ディーン』と『未来のお姉さん』と『コール・イット・ラヴ』さんでー!」

    《……だ、そうだ》

ヨシエは寂しがり屋で、より多くの人間と仲良くなりたがってる。
それがヨシエの望みなら、俺は『手を貸す』だろう。
文字通り、今のように――――な。

545今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/17(水) 21:53:39
>>544

「そっか、そうなんだ」
「良いね」「すごく」
「そういうの、羨ましいかも」

犬は長くても20歳くらいで死ぬ。
だから、ずっとじゃあないんだ。

         『…………』

「私、ペットとかって飼ってないからさ!」

でもそんなこと、わざわざ言うのはフツーじゃない。
ずっと一緒。子どもの夢と現実は、一緒でいいんだ。

「先生は……仲良しというか、先生ですよねっ」

         『今泉サン ハ 〝生徒〟デスカラネ』
         『トハイエ』

         『教師ト 生徒二 友情ガナイトハ 限リマセンガ』

「そうですか? 先生がそう言うならそうなのかな」
「それじゃあ、四人で友達にもなれるね!」

「あ、ディーンが『人(にん)』扱いで良いのかは」
「ディーンさん、そこのところって良いんですかねぇ?」

犬的には匹のほうが嬉しかったりするのかな。
これは難しいよね。何が嬉しいとか、人間のことでも難しいのにさ。

546嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/17(水) 23:09:54
>>545

「――うんっ!」

「未来のおねえさんと『先生』も、ずっと一緒にいられるといいねー!」

ヨシエは明るく笑っている。
俺は、心の中で未来と『コール・イット・ラヴ』に感謝した。
ヨシエに対する気遣いを察したからだ。

   (『スタンド』があろうとなかろうと、俺は『犬』だ)

ヨシエが大人になる頃には、俺はいないだろう。
だが、その時にはヨシエも一人前になっている筈だ。
だから、それでいい。
ヨシエなら、きっと立派にやっていける。
俺が傍にいなかったとしても、だ。

   《なら、三人と一匹だ――それでいいか?》

   《アンタを『一人』と呼ぶなら、だが》

俺は『コール・イット・ラヴ』の方を向いて言った。
スタンドは人間じゃない。
たとえば、『一体』と呼ぶ事も出来るだろう。
だが、人のような形をしていて、自分の意思がある。
それを『一人』と呼ぶのは自然な事だ。

   《いや――まぁ、いいさ。
    どんな呼び方をしたって、それでソイツが変わるワケじゃないからな》

   《リンゴを『リンゴ』と呼ぼうが『アップル』と呼ぼうが、モノは一緒だ。
    それと同じように、俺は俺だしアンタはアンタだ》

   《それが俺の答えさ。良かったら採点してやってくれないか――『先生』》

そう言って、俺は未来の隣の『先生』を見やった。
人間じゃないが自分の意思を持っていて、人間の傍にいる。
そういう意味では、俺と『似た者同士』なのかもしれないな。

547今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/18(木) 00:11:03
>>546

         『私ハ〝先生〟デスガ』
         『〝卒業〟ハ 無イデショウ』
          『今泉サン ガ 私ヲ 先生トスル限リ』

「それはよかったですっ」
「私も、先生から卒業する気はないので!」

先生は先生だ。
それが変わることは、たぶん私が幾つになってもない。
私は、ずっと勉強し続けるんだと思う。

           タイ
         『〝体〟デモ カマイマセンヨ』
         『デスガ 二人ト 一匹ト 一体トイウノハ……少シ 長イデス』

「そうですねえ、ここは三人と一匹にしましょう!」

ディーンは人間みたいなこころは有るけど、犬。
ヨシエちゃんは人間だ。これは間違いないよね。
先生は、人間の見た目で、人間みたいな、こころがある。
それで私もフツーに一人だ。人間だから。 三人と一匹。

         『エエ。名前ガ 違ッテモ 〝ソレ〟ハ〝ソレ〟』
         『トテモ 大事ナ 事デス』

         『ソウデスネ……〝90点〟ヲ ツケマショウ』

         『自分ガ 〝何〟カ …… 悩ンデイルナラバ 〝呼ビ名〟一ツガ 背中ヲ押スコトモ』

         『肩ヲ 支エル事モ アルノデハ ナイデショウカ――――』


「…………」

         『――――少シ ロマンチストカモ シレマセンネ』
         『今泉サン ハ ドウ 思イマスカ?』

「あ、はいっ、そうかも。そうかもしれないですねっ」

私は学生で、先生の生徒だ。
こころがある犬と会ってもそれは変わらない。間違いない正解なんだ。

548嬉野好恵『一般人』【小1】&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/18(木) 01:04:17
>>547

「うーん…………」

ヨシエは『先生』の言葉を理解しようとしているらしい。
しかし、まだ難しいようだ。
小首を傾げて考え込んでいる。

「『未来のお姉さん』は『未来のお姉さん』でー……」

「『ヨシエ』は『ヨシエ』……なのかなー?」

ヨシエは、頭では理解しきれてないんだろう。
だが、感覚としては分かっているのだと思う。
そして、今はそれで十分だ。

   《なるほど、な》

   《俺は犬だが、だからって『イヌ』って呼び方じゃあ他のヤツと区別がつかない。
    『ディーン』と呼ばれる事で、俺と俺以外の犬を分ける事が出来る》

   《アンタの言う通り、『名前』は大事なモノだ。
    『先生』のお陰で、俺にも良い勉強になったよ》

未来のスタンドが『先生』と呼ばれる理由が分かる気がした。
『先生』というのは、何かを教えるものだ。
そして、俺も一つ教えられた。

   《さて……じゃあ、改めて『三人と一匹』で挨拶するとしようか。
    ここで出会った記念に、な》

   《よろしくな――未来と『先生』》

「よろしくお願いしまーす!」

ヨシエは『二人』にお辞儀をした。
俺も、その『真似』をする。
何日か前に、神社でやったのと同じような感じだ。

「あっ、未来のお姉さんと『先生』も一緒にあそびませんかー?」

ヨシエはリュックを下ろし、俺はリュックの外に出る。
そして、ヨシエはリュックから子供用の小さなビーチボールを取り出した。
元々は、俺と一緒に『バレー』するつもりで持ってきたものだ。

549今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/18(木) 21:54:20
>>548

「私も、ちゃんと全部は分かんないけどね」
「でもきっと……それがフツーなんだと思う」

自分は、自分。
他人は、他人。
皆に"自分"があるんだから、きっとそうなんだ。

            『イエ、私モ 〝考エタ〟ダケデス』
            『本当ハ ソウデモナイ ノカモシレナイ』
            『先ニ役目ガアルカラ 名前ガツク ダケトイウ 考エモアリマスシ』

            『先生モ 間違エル時ハ アリマスカラネ』

先生はそう言ってるけど、何が間違いかなんてそれこそ、分かんないよね。
こころは、数学みたいに一つの答えがあるわけじゃないんだからさ。

「はいっ、よろしくお願いしますね!」

            『ドウゾ ヨロシク オ願イシマス』

「あ、ビーチボール! いいですね、先生どうですかっ?」

            『折角ノ オ誘イデス。私モ混ザリマショウカ――手加減ハ、シマセンヨ』

この後のことは、遊んだだけ。
先生はちゃんと手加減してくれるし、私だってそうする。
それがフツーだし、その方が、きっと楽しいんだと思う。

勉強する事はたくさんあるけどさ、こういう楽しい時間も大事だよね。

550嬉野好恵『一般人』【小1】&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/18(木) 23:50:03
>>549

    《…………そうだな》

俺は、『コール・イット・ラヴ』の言葉に短く同意した。
さて、難しい話はこれくらいしておこう。
今は、他にやる事があるからな。

    《まぁ、少なくとも――――》

    《勝負の上では『先生』も『』生徒》も対等だ》

    《やるからには、しっかりやらせてもらうさ》

「やったぁ!じゃあー、ヨシエからねー!」

               「――――はいっ!」

         ポーンッ

ヨシエが、両手に持ったボールを高く投げ上げる。
放物線を描いて飛んできたソレを、俺は頭で打ち上げた。
ボールは、『二人』がいる方向に飛んでいく。

    《上手いこと返してくれよ》

ヨシエは楽しそうだった。
その様子を見ていると、俺も喜ばしい気分になる。
だから――――ヨシエの幸せは俺の幸せだ。

551斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/07/22(月) 02:07:21
音楽室の窓には、雨粒が流星の様に流れていた
黒く分厚いカーテンを引くと、雨音が主張を抑える

ピアノの前に歩み、蓋を開いて埃一つ無い鍵盤に触れる
音の粒が溢れ、静かな校内に響いた

そして『影のような腕』が、演奏を始める
鍵盤がひとりでに動いたかのような光景の中で

余りにも正確過ぎる演奏が響だした
雨の匂いを纏わせながら。

552今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/22(月) 23:56:25
>>551

ピアノの音が、雨の音よりずっとはっきり聞こえた。

今日は使ってないって、部活の子から聞いたんだ。
だから『顧問』もやってるその先生はいないはずなんだけど。
こんな上手な演奏だし、何か用事があってここにいるのかも。

「すいませーん」
「先生いますか〜」「プリント持ってきた」

        ガラララッ


少なくとも、職員室にはいなかったし。
物は試し、音楽室のドアを開けて・・・

「ん」「ですけどっ」

「………………………」

ドアを開けたら、その人がいた。『影みたいな』腕で、ピアノを弾いてた。
私は、そういう時にどういう反応をすればいいのか、よくわかんなくて、固まった。

553斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/23(火) 01:47:01
>>552

貴女の視界は、日常に存在する、よくある放課後から、急激に深海に沈んだような、非日常に移り変わった。
ピアノを奏でる滑らかな『影』の指先が止まる。

ベートーヴェン作『エリーゼのために』の演奏が終わり、影の腕……よく見なくても解る、コレはスタンドだ……が愛おしそうに鍵盤をなでる。
同時に、カーテンでくぐもった雨音が再び戻ってきた


 ――目の前の彼は、『スタンド使い』だ。


彼が気配に気づき、貴方の方を振り返る

整った顔立ちに、柔らかな微笑みを称えている顔は、優し気な印象を与えるが
唯一、その眼だけは笑っておらず、何も映さない、氷のような瞳だった。

学生服は彼が貴女の先輩にあたる物だと示してはいたが
襟首には赤いスカーフが巻かれているだけだった。


 「……君は?」


その声には何の感情も混じってはいなかった。
その発言が、何を問うているのかも理解しがたい物だった。

……演奏の無い音楽室は、雨音だけが静かに奏でられている。

554今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/23(火) 02:43:19
>>553

「あっ」

雨が降ってるのを、思い出して、私は笑顔を作った。

┌────────────────────┐
│   『こころ』に無い笑顔にも『意味』だけはある. │
└────────────────────┘

「えーと」
「『今泉』って言います、『音楽の先生』を探しにここに」

「来たんですけど〜」

      キョロキョロ

「今はいない感じですかね?」

君は?って聞かれても、意味がいくつかあるよね。
君は誰? 君は何をしに? どっちにも、応えておこう。

「先輩、見てませんか? 先生を……」
「ピアノ使う許可とかって、たしか先生に貰う感じでしたよねっ?」

私の先生は、私の中にいる。あの影の腕はスタンドだと思う。
出てこないのは、スタンド使いだってわかって、刺激しないためなんだろうな。

555斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/07/23(火) 13:26:02
>>554

彼がピアノに向き合うと
影の腕が再び鍵盤を叩き始める
ベートーヴェン作、愛称『月光ソナタ』その第1楽章
再び緩やかな、どこか物悲しい旋律が音楽室を満たしていく。

「今泉さん、だね。」

貴女に背を向けたまま、呟くように喋り出した。

「『私』の名前は『斑鳩』。」

「残念だが、先生の事なら、もう此処にはいない
帰ってしまったから。」

「私は、あの人から、ここのカギを借りて
ここで演奏しているだけ……。」

「人生には、慰めが必要だから。」

ふと見れば、彼の身体にはところどころに『鎖』が巻きついている。まるで隠さない事が当然だと言うように。彼と彼のスタンドはただそこに在った。

「プリントなら、ここに置いておけば、私が帰る時に、持っていこう。」

「君は、どうする?今泉さん」

556今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/23(火) 23:07:51
>>555

聞いたことがある曲だけど、タイトルが思い出せなかった。
悲しい曲だと思う。それとも、悲しい演奏だからなのかな。

「『イカルガ』さんですか、初めましてっ」

どういう漢字で書くんだろう。
『東海林さん』みたいな特別な漢字なのかな。

「そうですか〜」
「先生、いないんだ」

       スタッ

「いやあ、『出し忘れた』プリントなので」
「先輩に持って行ってもらったりしたら、また怒られそうで」

体に巻き付いているのは、なんだろう。鎖?
ファッションじゃないのは、分かる。アレもスタンドなんだ。

「それにしても、持ってこいって言ったのに帰っちゃうなんて」
「まあいいや」「何か用事とかあったのかな」

自分を縛る鎖と、体から分かれた影みたいな『腕』。
この人はどういう人なんだろう。私にはわからない。

「イカルガ先輩、ちょっとここにいていいですか?」
「雨、夕方になったら止むって、予報にあるんで」

「ピアノ弾くなら静かにしておきますし」
 
                スタッ

まあ、イカルガ先輩は演奏しながらフツーにしゃべってるけど。椅子があるところに歩いていく。

557斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/07/24(水) 15:18:24
>>556

椅子を探そうとする貴女の視界に、学校の備品であるパイプ椅子、テーブル、そして
今いれたばかりと言わんばかりの、湯気の立つ紅茶の入ったティーカップとポットが入ってきた。

「……そうだな。」

香りはそれが正しく本物である事を証明している
……周りに今泉と斑鳩と名乗った男以外の影はない。

「私達も、観客が2人増えたところで、気にしないだろう。」

……いつの間にか、ピアノの側にもテーブルとポットが置かれている。
斑鳩が自分の手にソーサーを、もったカップを口元まで運んでいた。

「そこの紅茶でも飲んでいればいい、よければ、だが。」

影の腕による演奏は、第1楽章の終わりに差し掛かっている。

558今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/25(木) 01:01:40
>>557

「あれっ」「あれ〜?」
「いつの間にっ……あ、どうもどうも」

        ストン

椅子に座った。
テーブルまであるし、紅茶まであるのは予想外。
というか、ほんとに、いつの間に?

……そういう能力なのかな、って。
フツーに考えちゃうのはフツーじゃないなあ。

「それじゃあご遠慮なく、いただきますっ」

                  スッ

とりあえず一口飲んでみる。
私、紅茶とかあんまり詳しくないけど。

「……イカルガ先輩は、紅茶好きなんですか?」
「『ティーポット』でお茶出してくれる人って初めてかも〜っ」

ピアノ聴きながら紅茶のむってなんだか、おしゃれな感じがする。
紅茶の味がよくわからなくっても、美味しく感じるんじゃあないかな。

559斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/07/25(木) 03:23:38
>>558

「……いいや」
「私は、そこまで便利にはなれなかった。」


演奏を途切れさせないままに、彼は質問に答える
外の雨は僅かに弱くなり始めている……


「だが、知識としては知っている、それは『ウバ』だ」

「セイロンティーと呼ばれる紅茶の一つで、注いだ時に、カップの内側に黄金の輪を残し
 甘い花のような香りがある……本来は、濃いミルクティーが適している、が」

「丁度、今の季節頃に、最上の葉が取れるので選んだのだろう」

紅茶の説明が終わって数分後、影の腕が演奏を終了した。
『月光ソナタ』その第1楽章が終わったのだ。


               コトン


演奏が修了すると同時に、何かが置かれるような物音がする。

貴女がすぐそばの物音の方を見れば
『ティーポット』の乗っていたテーブルに『ミルク壺』と小皿に乗った数枚の『クッキー』
そしてもう一組の『椅子』を見つけるだろう


「『演奏の報酬』…として『観客』にも渡される、という事だな。」

そう呟く彼の傍にも、ほぼ同様の物を見つける事が出来る
椅子以外の物を。


「――リクエストはあるかい?」

560今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/25(木) 05:48:02
>>559

「?」「便利……?」
「そうなんですか、十分詳しそうなのに」

なんだか、ひとごとみたいな言い方。
私には、少しだけ、ひとごとには思えなかった。

「へー、これが『ウバ』っていうんですねっ」
「名前だけ、聞いたことあるかも」

ある気がするんだ。

「黄金の輪……うーん、出来てるかな」
「フツーな気がする」「わかんないけど」
「葉っぱが最上なだけあって、美味しいですねえ〜」

だろう、ってことはつまり。
この人の能力じゃなくて、他に誰かいるってことだ。
よく考えたらさっきも、私より一人多く数えてたし。
あれ、でも『私達も』とも言ってたよね?

私達、っていうのがイカルガ先輩と、その誰かで。
それじゃあ、増えた二人っていうのは……そういうこと?

「あれっ」
「クッキー……なんだかすみません、こんなに色々」
「って、イカルガ先輩に言うのも変ですけど」

「出してくれてる人が、見あたらないから」

どこに誰がいるんだろう?
透明人間みたいな人がいるのかな。
報酬って言ってるし、先輩本人じゃないのは確か。
それも、ひとごとなだけかもしれないけど。

それに、私の横に、もう一つ置かれた椅子……
やっぱり、『誰か』に分かられてるのかな。なんでだろ。
それとも、ここに『誰か』が、座ってたりするのかな。

先生はまだ、出てこなかった。
だから私はなんとなくその空間に手を泳がせて。
それから先輩の質問に頭を悩ませてみる。

「リクエストですか〜っ、私クラシックって、こう……」
「フツーに、知識がないんですけど」「うーん」
「あー、あの、なんでしたっけ」「落ち着く曲で」
「ウィキペディア……じゃなくて、えーと」

「そう、えー、『ジムノペディ』! あれ、弾けますか?」

どこで聞いたんだったかな、でも、覚えてるんだよね。

561斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/07/25(木) 20:00:41
>>560

彼の返答は困惑と謝罪が混じっていた物だった。

「いや、誤解させたようだが、今泉さん、貴女に聞いた訳ではない」


今泉の背後で何かが揺れる音がし始める
『本棚』だ、楽譜を仕舞い込んだ本棚がまるで地震であるかのように揺れている!

そして本棚から一冊の本が『射出』され、貴女の顔の側面をかすめて
ピアノの譜面台に叩きつけられた!

「『音楽室』に聞いたのだ……しかし君も気に入られたらしい」
「或いは、理想的な観客だからか。」

そう呟く斑鳩の眼前で、本……楽譜集のページが独りでにめくられ続け
あるページで動きを止める、そのタイトルは。

「1888年、エリック・サティ作、『ジムノペディ』……その第一楽章」
「『人類が生みえたことを神に誇ってもよいほどの傑作』と評される、ピアノ独奏曲。」


――斑鳩本人の指先が鍵盤を叩き、柔らかな、ゆったりとした旋律が流れ始める
それは先程の演奏に勝るとも劣らない物だった。


「今、起こっている全ての現象は、私の手によるものではない。」
「私のスタンド……『ロスト・アイデンティティ』は精々ピアノを弾く程度なのだから。」
「一人につき、一つの能力、『スタンドのルール』に反しているからな。」


彼の静かな口調は、この異常な事態でも何一つ変わることが無い
そして奏でられている旋律と同じ様に、ゆっくりと氷のように冷えた言葉が続く。


「もし、君の友人に聞けば『音楽室は使っていない』と答えるだろう」
「そもそもその友人には『スタンドで出来たピアノの音』など聞こえないのだから。」

「もし、君が音楽室のネームプレートの前に立ち『ピアノの音』が聞こえていたら」
「本来の音楽室とは、『違うドア』を音楽室を認識するだろう。」

「もし、君が『本来ない筈の音楽室』にはいったのだとしたら」
「『先生』も……ここにはいるわけがないのだ。」

「そして、もし……ここが、『スタンドの音楽室』だったとしたら」
「君はここに入った時、違和感を感じただろう、まるで『深海に沈んだ』ような……。」



 『ゆっくりと苦しみをもって』(Lent et douloureux)


僅かな雨音の中、作曲者の指示通りにその演奏は続いている。

562今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/26(金) 21:51:14
>>561

「え? じゃあ誰に――――」

            「わっ」

   スッ

「わっ」「え」「なにこれ……!?」

見たことが無い。
でもわかる。これは、びっくりすることだ。
イカルガ先輩の言葉も、目に見えてる光景も。
飛んできた本、勝手にめくれる楽譜。

――――『音楽室が生きている』みたいだ。

「じゃあ……ここは」

   キョロ  キョロ

「そう、入った時、変な感じがして」
「そっか」「そういう……へえ〜〜〜っ」

でも、ピアノを弾いてるのは先輩だ。
それは、音楽室が弾くより――――先輩が弾く方が上手だからかな。

「それじゃあイカルガ先輩も、『音楽室』に気に入られてるんですねえ」
「やっぱり」「上手だからですか? ピアノが……」

聞こえてくる旋律は、影の腕じゃなくっても、すごく上手だ。

「そう、『ジムノペディ』! こんな曲でしたねっ」

スタンドがどうとかじゃなくて、この人はピアノが上手いんだ。それに詳しいんだ。

563斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/07/26(金) 22:51:39
>>562

斑鳩 翔 彼がここを見つけたのは偶然でもあったし、必然でもあった

この校舎には偶に、白い靴下をはいたような猫が迷い込む
『スリーピング・トゥギャザー』と名付けられたその猫は、体を寸断して瞬間移動する『スタンド使い』だった

彼が猫を見つけた切っ掛けは、ラジオでの怪談話からだが、能力を加味しても、校舎では殆ど目撃されていない
では何処にいるのか ……その答えがここだ

『雨の日にのみ現れる、もう一つの音楽室』

しかし、スタンドには、この音楽室にいる彼らのような本体がいる
 ……恐らく独り歩きしているこのスタンドは、そこまでパワーが強くないのだろう
それ故に、『雨の日』と言う僅かな時間にしか、この部屋は表に出てこない。

「……。」

貴女が称賛した一瞬、彼の纏う空気のような物が変わった
だが、それは一瞬のことで、すぐに返答を口にしだした。


「……最初はミネラルウォーターしか出てこなかった」
「ただ、演奏を重ねると、『報酬』のレパートリーが段々増えてきてね」

「最近では、君が頂いているようなものまで出てくる」

「――『成長』しているのかもな。」
「君の傍の椅子も、君の『スタンド』を認識しているらしい。」

「『楽譜に正確だが、誠実ではない』」
「気に入られているとは思わないが ……『楽器』には『演奏する人間』が必要なのだろう。」

「或いは、演奏者そのものを『本体』としているのか……いや、憶測が過ぎたな、やめておこう。」


『ジムノペディ』、その第一楽章は3分40秒で終了した
――窓の外の雨は、大分まばらになってきている。


 「ご清聴、有難う。」

564今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/26(金) 23:35:03
>>563

「こちらこそ、ありがとうございますっ」

        パチパチパチ

演奏が終わったから、小さく拍手をした。

「『報酬』――――そっか、じゃあ、『ウバ』も音楽室が」
「それにお菓子も」「えーと」

      キョロキョロ

「ありがとうございます?」
「美味しいです、これ」

部屋にお礼するときって、どこに言えばいいのかな。

床?壁?空気?
こういう時のフツーって、わかんないや。
本体がいればわかりやすいんだけど。

「それと、演奏。すごくよかったです、昔聞いたのより素敵でした」

          ニコ…

「どこで聞いたのか、忘れちゃったけど」「まあそれはそれとしてぇ」
「音楽室が気に入ってるかは分かんないですけど、私は気に入りましたっ」

音楽を聴いたとき、それが良いのか悪いのか『こころ』で分かるわけじゃない。
でも、耳が聴いている。綺麗な音だし、リズムとかも、いいと思う。
誠実じゃないってことがこころで弾いてないってことだとしても、意味は、あると思う。

「――――あ。雨、止んできましたね」

                ガタ…

「私、そろそろ行こうと思います。先輩はまだここで弾いていきます?」

565斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/07/27(土) 00:19:51
>>564

ピアノの蓋をそっと閉じ、立ち上がる
拍手に一礼を持って応える、立ち上がっている所を見ると
学生服を着た姿は、彼女が着ている物とほぼ変わらなかった。

「演奏は終わった、『幼子は水浴びを好むが、季節は巡る』、私も退室するよ」
「……ただ、出るなら早くした方が『絶対に』いい」


 *ザザーッ* *リーン* *ゴーン*


音楽室に備え付けられた一つのスピーカーから
ノイズ交じりのチャイムが鳴り響く、本来ならこの時間には鳴り出さない筈の音が。

「私達のスタンドは、普段は出ていない ……『精神力』を使うからな
そしてこのスタンド ……『音楽室』が出ているのは『雨が降っている間』だけだ」



貴方の肘に何かがあたった、見てみればテーブルが『貴女に向かって移動している』
だがそれは、正確には違った、……全ての物が、いや、『部屋全体が縮みはじめている』!



「維持する力が無ければ『スタンドはしまわれる』」
「その時中にあった物が何処に行くのかは、私にすらわからない。」

――雨音は、もう聞こえない。

斑鳩が貴方の傍を早足で通り抜けると、音楽室のドアをやや乱暴気味に開く
『音楽室』のドアは既に、彼の身長から頭一つ分、下の大きさになっていた。


「お先にどうぞ、後輩。」
「……出ないのなら私は先に出るが、お勧めはしない。」



「――それと、君の『スタンド』によろしく言っておいてくれ。」

566今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2019/07/27(土) 02:26:34
>>565

「『季節は――――』って、どういう」「……?」
「あれ、チャイム?」

「わ……あれっ、この部屋……あ、そういう!?」
「教えてくれてありがとうございます、先輩!」

部屋から急いで出よう。
ここに来たの、先生に会うためだしさ。
それに先輩ともお話しできたし、とにかく、出よう。

     タタッ

「危ない危ない、消えちゃうとこだった……のかな?」

それとも、次の雨の日でずっと、あそこで観客になったりとか?
どっちにしても、フツーじゃないし……いやだと思うんだ。

「はいっ、今日は出てこなかったですけど」
「『先生』にもよろしく言っておきます!」

               「それじゃあ、またっ。イカルガ先輩!」

567斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/07/27(土) 14:01:00
>>566

放課後の廊下から見る窓の外は、雨の降った後の突き抜けるような青さがあった
でも、何故か妙に頭がぼうっとしていて……ここは清月学園だとわかったのは
女子生徒が僕に手を振りながら去って行く時だった。

「……。」

(今のは誰だろう?僕を知っているようだったけど)
(ここは……音楽室の前だ、でも、なんで僕は此処にいるんだ?)

               *カチン*

(そうだ、えーっと…あの子は今泉さんだ、僕の後輩で一年下の。)
(『ジムノペディ』が好きで、そして『スタンド使い』でもある。)
(それで……)

               *カチン*

(ここにいたのは、彼女が見えて、『廊下で挨拶してすれ違っただけだった』よな。)


妙に頭が痛い気がして、振り払うように頭を振る
腕時計を見ると、最後に見た時から大分時間がたっていた。


(うわ、もうこんな時間か、早く帰らないとお祖母ちゃんを心配させるよ、翔。)
(最近、通り魔が出たとかも聞くしな、怖い怖い……。)

斑鳩が廊下を歩み去ると、彼の背後にあった音楽室の扉は
雨の中の涙のように消え去った。

568三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/08/25(日) 23:39:13

                トトトトッ

千草は忘れ物をしてしまいました。
英語のノートです。
今は、それを取ってきた帰りなのです。

(こんなことでは『立派な人』にはなれません)

千草の夢は、『素晴らしい死に方』をすることです。
良くない行いをしていると、きっと『良くない最期』になってしまうのでしょう。
だから、千草は『立派な人』になりたいのです。
誰からも愛されて、好かれて、尊敬されるような人間になりたいのです。
そうすれば、きっと最期も素晴らしいものになると信じているからです。

(でも、本当は――)

千草は『死ぬ』のが怖いです。
もし『死なない方法』があるなら知りたいとも思っています。
だけど、そんなものがある訳がありません。
社長でも大統領でも校長先生でも、いつかは死ぬ時が来るのです。
千草が学校にノートを忘れる未熟者でも、それくらいは分かります。

「ふぅ……」

だから、千草は『素晴らしい死に方』をしたいのです。
死が避けられないなら、せめて最期は素敵なものにしたい。
それが千草の願いです。

「……暑いです」

           ポスッ

日陰のベンチに座ります。
帰る前に一休みしておきましょう。
具合が悪くなって倒れたら、もっと未熟者になってしまいます。
もしかすると、熱中症で命を落とすかもしれません。
それは嫌です。

569小林『リヴィング・イン・モーメント』【高3】:2019/08/26(月) 23:38:06
>>568

――ストン    ...ギシ

隣に腰を下ろす音、ベンチの椅子が軋む僅かな音。周囲の環境音が
少ないならば、蝉の鳴き声もするかも知れない。

「夢をね 見た気がするんです。
苦しいような…切なかったような、躍動感と言う
胸のこの奥の部分がね、どうにも治まりつかず語彙としては
浮かれる、と表現すべきかも知れません。
どうにも、不思議な夢でした。そして、何かが掴めそうで……
もう少しで、何か遠い昔に手から零れたものを思い出せそうでして」

空中へ、空へ掲げ伸ばした片手をゆっくりと膝に下ろす。

「……けれど、結局それは分からず仕舞いで目覚めてしまいました。
……千草さんはそう言った体験はありますでしょうか?」ニコッ

「あぁ、今日は暑いですから……アイスココアは申し訳ないですが品切れで。
冷えたマスカットティーと、レモネード。それと烏龍茶のストックならありますよ」

氷は無いですがね。と、薄く微笑してスタンドのある球体の水槽を三つ取り出した。

570三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/08/27(火) 00:08:21
>>569

『今この瞬間を生きる』――声を聞いた時、その言葉を思い出しました。
千草のスタンドと、どこか似通った名前のスタンドを持つ人。
それが、隣に腰を下ろした方でした。

「――いえ、ありません」

「『夢』を見たことはありますけど……」

よく考えてから、そう答えました。
この場合の夢は、寝ている時に見る方の夢のことです。
楽しいものもあれば怖いものも見ます。
小林さんは――何だか変わった体験をされたようです。
もちろん、千草には詳しいことは分かりません。

「いいんですか?」

「えっと――」

「それでは、『お茶』を……」

少し迷いました。
人様の手を煩わせるのは良くないことかもしれないと思ったからです。
でも、好意を無下にするのは、もっと良くないことでしょう。
だから、千草はお茶を頂くことにしました。
それに、喉が渇いていたのは本当のことです。

571小林『リヴィング・イン・モーメント』【高3】:2019/08/27(火) 00:24:59
>>570

「烏龍茶ですね。では、私はこちらのマスカットティーで
…乾杯の音頭は、またこうやって語り合える事を祝してにしましょう」

紙コップも持参はしている。冷えたての烏龍茶とマスカットティーを解除し
千草さんと自分の分。一つを渡して、もう一つは口付ける
猛暑を少しだけ忘れさせる涼やかな冷たさが喉を駆け巡る。

「……私はね」

「千草さんの歳よりも、もっと幼少の……小学生に入りたて位でしたかね。
その時に、一度私は完全に『壊れる』体験がありましてね」

フゥ…と冷たさを感ずる吐息を上へと舞わせる。

「それ以来、どうにも物心あった当初と違う存在に変わってしまいまして。
自分自身が人でなしか、生きる上での受容の捉え方が何か作り物に思えるのですよ。
……たまに、その壊れる前の頃の感覚が戻れそうに感ずる事もあります。
それが、今さっき話した『夢』なんですがね……」

もう、良く思い出せません。と溜息を吐き出す。

「共に、その中で守らなくてはいけない『誰が』が居た気がするんです。
其処に、決して忘れ手はいけない『何か』はあった筈なのです。
……何時も、そうなんだ。
私は肝心な時に本当に手放してはいけない選択を誤ってしまう」

紙コップに浮かぶ、薄緑色の水面に焦点が定まらない瞳が覗き込んでいる。

「私は『ブリキ』だ……この金魚(スタンド)と同じく魂に彩りは無い。
それでもです。それでも私は掛け替えの無かった、答えも見出せない
あるかどうかも分からない物を取り戻そうと躍起になっている。
……千草さんから見て、私は何に見えますか?」ニコッ…

何処か虚ろな微笑と共に、少女へ青年は問いかける・・・。

572三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/08/27(火) 00:45:44
>>571

「ありがとうございます。千草も、またお会いできて嬉しいです」

    ペコリ

冷えたお茶が喉を通りました。
額に浮かんでいた汗も、少しずつ引いていきます。
そして、千草は小林さんのお話をお聞きしました。

「…………」

それは難しい話でした。
とても難しいお話です。
千草には――未熟者の千草には、その一割も理解できないでしょう。
いつかは分かるのかもしれません。
でも、それは『今』ではないのだと思います。

「それは……」

これは『夢』に近付けるチャンスなのかもしれません。
ここで小林さんを納得させてあげられたら、きっと『立派な人』に近付けます。
『立派な人』なら、どう答えのが正しいのでしょうか。
どう答えれば、『立派な人』に近付けるのでしょうか。
千草は――――悩みました。

「――『人』に見えます」

そう答えました。
自分なりに知恵を絞っても、気の利いた答えは出てこないでしょう。
それに、小林さんが望んでいるのは『正直な答え』ではないかと思いました。
だから、千草は素直に答えました。
『誠実であること』が、『立派な人』になるために大切なことだと感じたからです。

「小林さん……」

「千草からも、お聞きしてよろしいですか?」

「――――千草は何に見えますか?」

573小林『リヴィング・イン・モーメント』【高3】:2019/08/27(火) 01:23:41
【場】『 私立清月学園 ―城址学区― 』
本日はすいませんが落ちさせて頂きます

574小林『リヴィング・イン・モーメント』【高3】:2019/08/27(火) 22:05:24
>>572

「―――そう  ですか」

『人(ひと)』 そう二つの単語であるけれども。
そう告げて頂いた事で 不思議と私は『赦して頂けた』ように思えた。

「……千草さんが ですが?」

少しだけ、答える時間に間が出来た。

人でなし 人未満な私が。答えを未だに模索中の自分自身に
彼女の望みえる言葉があるかと。

「……若輩者な私ですが」

「私には貴方が
『あるべき頂きを目指して進む』方に見えます」

「今は未だ険しく、遠い場所ですが。しっかり足を踏みしめて
そして見失わない場所に目指して歩みを運んでいるように……」

彼女は、私よりも小さな手と身体をしてるが。その瞳の奥底に
輝くものは何とも美しく そして損なわぬ硬さが見て取れるだろうか。

今は未だソレは小さいかも知れず、半ば埋めていても
いずれ掘り起こされ芽を咲かし、花か樹を育むだろうと思える。いや両方かも

「……私には無いものを千草さんは沢山持っていますね」

「それで良いんです。もう私には持てないものを、何時までも
しっかりと貴方は持っていて下さい」

575三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/08/27(火) 22:58:29
>>574

実は、少し不安でした。
千草の言葉が、小林さんを傷付けたりしてしまうことが怖かったのです。
だから、小林さんの返事の『響き』を聞いて、千草は安心したのだと思います。

「『あるべき頂き』……」

その言葉が、心の奥に音もなく染み込んでいきました。
千草が『目指している場所』は、果てしなく遠いです。
実現できるかどうかは分かりません。
もしかすると、失敗してしまうかもしれません。
ただ、小林さんの一言で『背中』を押してもらえたような気がしました。

「ありがとう――――ございます」

         ペコリ

その時、千草から見た小林さんは、どこか寂しそうに思えました。
ですが、そのことを聞く気にはなれませんでした。
それは、簡単に踏み込んではいけないことのように感じられたからです。

「今、千草は『清月館』に住まわせていただいてます」

「そのことを小林さんにも――小林先輩にもご報告したかったので……」

「あの…………『小林先輩』とお呼びしてもよろしいでしょうか?」

576小林『リヴィング・イン・モーメント』【高3】:2019/08/27(火) 23:21:57
>>575(この辺りで〆させて頂きます。お付き合い有難う御座いました)

「えぇ、先輩なんて言われる程の人柄はしてませんがね」

微笑と共に肯定しつつ物思いにふける。

私は遠い所へと、亡くしてしまった影を何時までも忘れずに何処か追っている。

彼女(千草)もまた。遠い所にある場所へ目指している。けど、私とは違い
それは未来(さき)にある物だ、きっと……。

「……清月」パチパチ

その単語に少しだけ瞬きをしてから、少し一文字と化してた口元を綻ばせる。

「はは では、一緒に家路へと戻りますか。
彼(ヤジ)も丁度戻ってきてる頃合でしょうし……今日は鍋でもしようかと
呟いてましたから、早く戻ってあげるべきでしょう」

「――行きましょう」

自身の住処でもある『清月館』へ戻る為、千草さんに手を差し出しつつ
その方向へ頭を向ける。

私の向かうべき先は、頂きか それとは逆に深い底となる黄昏か。

着いた時に私は何の風景を見 何を思うのだろう……それは未だ誰も
知りえないであろうけれど。

(今この瞬間……その感じ入り、巡り合う事を私は忘れない 
――忘れては いけない)

577三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/08/27(火) 23:55:23
>>576

「あっ、小林先輩も寮生なんですね」

まだ知っている人に寮生は少ないので、それが分かったのは嬉しいです。
一人暮らしをして成長するために寮に入りましたが、未熟な千草には不安もあります。
だから、小林先輩が寮生だというのは少し心強い気がしました。

「――『宮田さん』ですね。お元気そうで何よりです」

前に小林先輩とお会いした時は、お友達と一緒でした。
仲が良さそうで、ああいった繋がりを『親友』というのでしょうか?
千草にも、そういう人ができればいいなと思います。

        スッ

「はい、帰りましょう。小林先輩」

小林先輩と一緒に、千草は清月館に向かって歩いていきます。
人との繋がり――それが、千草の『夢』を叶えるためには大切なことだと思っています。

           スタ スタ スタ …………

イッツ・ナウ・オア・ネヴァー
『 今しかない好機 』を逃さないために、千草は歩いていきたいのです。

578斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/09/11(水) 00:30:50
学校屋上への階段は
リノリウムの床が太陽光を反射して、雲った鏡のようになっている

防火の備えを兼任した鋼鉄の扉は
夏という季節には不釣り合いな冷気と共に閉ざされていて

……当然のように鍵がかかっていた。

学校側が立ち入り禁止にした理由は想像できるが
防ぐに意味が無いのではないか? と思いつつ


  ――鍵を回して扉を開けた。


頬を撫でる風が涼やかで
屋上の高さを考慮しても、夏は確かに終わりに入っているのだろう。


鍵を懐に仕舞うと、点検用の中途半端な長さの梯子を上り
この学校の一番高い場所で寝転がり、暇つぶしにルービックキューブを回しだす

今、自分が抱えている問題と違って
この問題は焦って解く必要も無いので、暇つぶしには丁度良い。

 「いっきし!」

俺は『私立清月学園』の屋上で、日光浴を堪能していた。
夕涼みに鼻を擦りながら。

 「誰か、俺の噂でもしてんのかねぇ」
 「……なわけ、ねえかぁ?」

ぼたん飴をひとつ、口に放り込んで噛み締め
目の前の手軽な問題と再び向き合う、考えるのは苦手になっていた。

579斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/09/13(金) 00:29:41
>>578

欠伸を一つ、目の前には完成したパズルがある。
正方形が正しい色調に並ぶのは見た目で完成したと思わせる達成感がある物だ

俺はそれを床に叩きつけた

散らばった破片をかき集め
ピースを残った本体にはめていく

 (完成した物は、それ以上先が無い)
 (もう一度パズルを完成させたいなら、一度崩す他は無い)

正攻法で並べるよりも
遥かに早い時間で出来上がっていくパズル。

 (……今まで努力が『出来なかった』天才が、急に5年も努力に頼るのか?)
 (説得力がねえなぁ、『結果』は解っていたんじゃねえのか?)

再び完成したルービックキューブを、指先で回すと
色が錯覚で混ざり合い、奇妙な正方形の物体として見える。

 (あの天才、何に5年をかけたのか)

パズルを止め、懐に仕舞う
如何に自身と言えど、その記憶と思考が常に連続しているわけではない
夢の中の出来事が、現実ではまったく思い出せなくなるように。

 (あの野郎、自身の精神では『スタンド』が発現しないのを解っていて……)
 (ワザと5年かけて『自分を崩した』のか、そうでなくては『スタンド』にも成長の余地が無いから?)

立ち上がり、梯子を滑るように下りると
屋上へのドアに手をかけた、借りた鍵を粘土でカタを取って、成型したのは良いが
やはり見つかると事だ、前みたいに誤魔化せれば楽なんだが。

 「答え合わせが出来ねぇのが、面倒くせぇ所だな」

もし考え通りなら、それはいかれた賭けだ。

報酬はあまりにも不確定、失敗すれば自我の崩壊と消滅、廃人化
だが事実ならば、奴はそれに半分とはいえ勝ったことになる、まったくどうかしている。

 「――自分の事だってのに、なぁ?」

それでも、他に方法が無ければそれを選択し、実行したのだろう
我が事ながら呆れる愚かさだ、馬鹿と天才は紙一重か。


鍵のかかる音と共に、彼は屋上から去った
他には何も残らなかった。

580鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/10/01(火) 00:32:32
学園の中にある、静かな図書室。時刻は放課後。
数ある席の中で、端の方に座っている一人の男子学生がいた。
私物と思われる地図を広げ、その横にはメモ帳を置き、地図と交互に覗いている。
どうやら予習復習の類ではないようだ。

581猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』【高二】:2019/10/02(水) 00:16:45
>>580

「何をしてるのかな」

鉄の向かいの席に座る人。
栗色の髪、右側頭部にいくつかの編み込み、背が低く、幼めの顔立ち。
高等部二年の少年、猿渡。

「……探偵、ということでいい?」

582鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/10/02(水) 00:36:43
>>581

「おや、こんにちは」

声をかけられ、一旦手を止めてそちらを見る。
どこかで顔を見たことがあるかもしれない。ひょっとして同い年かもしれないな、なんて思いながら。

>「……探偵、ということでいい?」

微笑んで、小さく頷く。

「それに近いかな。とはいえ、まだ真似事レベルでしかないが」
「オレは二年生の鉄 夕立(くろがね ゆうだち)。君は?」

583猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』【高二】:2019/10/02(水) 00:50:43
>>582

「僕は二年の猿渡。君のことは知ってる、鉄夕立」

「と、言う前に自己紹介されてしまったけど」

左手を口に当て、唇に触れる。
それから言葉を続けていく。

「知らなかった、君が探偵志望だったなんて」

「……ってかー?」

「理由を聞いても?」

持ってきた本を机の上に置きながらそう言った。

584鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/10/02(水) 01:24:39
>>583

「オレの事を?意外だな、目立たない人間だと思っていたけど」
「それはともかく、猿渡くんか。よろしく」

一礼をする。唇に触れる猿渡くんを見て、
仕草のみならず中性的な顔立ちも相まって、中性的な人だなと思った。
もちろん、それでも男性ではあるため女性と違って緊張はしないが。

「最近世の中は物騒だからな」「調べて、気をつけておくに越した事はないと思って」
「君は、借りた本を返しに?それとも新たに借りに来たのかい?」

585猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』【高二】:2019/10/02(水) 02:35:25
>>584

「よろしくね」

そう、言葉を返す。
本の表紙を撫でながら鉄の様子を見ていた。
指先や地図に時々視線をやっていた。

「調べる……? あぁ、ハザードマップみたいなもの、かな」

「……そこに首を突っ込もうって話じゃないといいけど」

ぽつり。
そんな風な言い方だった。

「本を返してから、新しく借りに来た。これは新しく借りる予定の本」

「梶井基次郎の短編集と……ツルゲーネフの『初恋』を」

586鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/10/02(水) 21:16:09
>>585

「これは危険な事件の起きた場所でね」
「例えば、この辺りは…どうやら不良達が何人か一方的な『ケンカ』に合ったらしい」
「数人は『ヤケド』もしているらしい…君も気をつけな」

『星見横町』の辺りを指差しながら、猿渡くんに伝えておく。
もっとも、この事件は自分の探しているものではなさそうだ。『通り魔』ならともかく、個人の私怨にあまり関わるつもりはない。
無関係の人間が巻き込まれたり、『スタンド使い』が関係しているならば話は別だが。


>「……そこに首を突っ込もうって話じゃないといいけど」

「・・・・・」「オレは別に危険を好んだりはしないよ」

笑顔で肯定とも否定とも言えない返事をしながら、猿渡くんの手の中の本を見た。

「それはどういう本なんだ?浅学の身には、二人とも聞き覚えのない人なんだ」

587猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』【高二】:2019/10/02(水) 21:48:58
>>586

「火傷」

復唱し、頷いた。
そういうこともあるらしい。
なんとも恐ろしい話だという雰囲気がある。

「僕も危険は好まないよ」

口に手を当てながら言葉を返し、本を鉄の方に寄せる。

「梶井基次郎は……授業でもやるかな、檸檬は知ってるかな。あれの作者さ」

「ツルゲーネフ……というか、この場合は作品に興味があったんだ。初恋、なんとも言えない話らしいんだけど」

588鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/10/02(水) 22:01:04
>>587

「ああ、『檸檬』の人か」「国語の教科書を買った時に一通り読んだけど、確かに載っていたな」
「この作品を通してこれを伝えよう、とかではなくて、何だか独特で感情的で、でも入り込みやすい」
「不思議な作品だったな」

興味がわいた。
読み終えたら次に借りようかと思ったが、それより先にすべき事がある。
真実に辿り着いてなお、自分が生きていたら借りようか。
もし自分がその時には学生でなかったとしても、図書館になら置いてあるだろう。

「『初恋』…名前からすると、甘酸っぱい青春を連想させるけど」
「ところで猿渡くんには、気になる人とかいるのかい?」

589猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』【高二】:2019/10/02(水) 22:12:37
>>588

「丸善に檸檬を置いて爆弾魔の気分になるところがよく語られるけど」

「そこに至るまでの心境とか状況の描写が素晴らしいんだ彼は」

「独特の気持ちの落ち込みみたいな部分が鮮やかで……おっと」

途中で言葉を切る。
首を何度か横に振った。

「青春は青春だけど……これは優しくないね……オチを知ったうえで読もうとしているし……」

「気になる人? あぁ、いるけど……鉄くんはどうなのかな?」

590鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/10/02(水) 22:20:48
>>589

『初恋』に対する猿渡くんの反応を見て、何となく内容を察した。
少なくとも、恋する若者が報われてハッピーエンド。そんな単純なものではないらしい。

「あぁ、そういう意味でも『初恋』なのか」
「…あくまでオレの好みだけど、最後は幸福な終わり方をしているのがいいな」
「不幸なことは、覆しようのない現実として、近くにあったりするものだから」


>「気になる人? あぁ、いるけど……鉄くんはどうなのかな?」

「え゛っ」

図書室の中にも関わらず、思わず比較的大きな声が出てしまった。
軽い冗談のつもりで訊ねてみたら、本当に意中の女性がいるとは思わなかった。
ついでにそれが誰なのかも知りたくなるが、それは流石に無粋だろう。

「あ、ああ…そうなのか…」「いや、君は大人だな」
「オレは、その……ここだけの話、女性を目の前にすると、緊張してしまって…」
「ほとんどの女性とは上手く話せないから、そういうのとは縁が遠いんだ…」

遠い目で窓の外を見る。綺麗な夕焼けだ。

591猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』【高二】:2019/10/02(水) 22:53:43
>>590

「まぁこれはややこしい話だから仕方ないさ」

「僕だって見るならハッピーエンドが良いね」

頷いて同意して見せた。

「えっじゃないよ」

人差し指を唇に当てながらそう言った。
猿渡は不思議そうな顔をしている。
実際、不思議に思っていたのだろう。

「僕だって、緊張くらいする」

自分も視線を移動させて夕陽を見た。
綺麗だった。

「モテそうだけどね君は」

ぽつりと呟く。

「そうは思わないかい?」

592鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/10/02(水) 23:12:07
>>591

猿渡くんの言葉に、ゆっくりと頷く。

「…成る程」「緊張はするが、それに立ち向かい、制御する術を心得ているということか」
「憧れるな…オレも練習させてもらった事はあるが、どうにも難しい」
「竹刀を構えて相手に立ち向かう方が、まだ御し易い緊張だな」

緊張はするが、それよりもなお相手に対してコミニュケーションを取ろうとし、
好意的になってもらおうとする。並大抵の勇気ではない。少なくとも自分には。
同い年ながら、彼のことを尊敬する。

>「モテそうだけどね君は」

「…それは世辞だと受け止めていいのかな」
「その、本気だとしたら、君の期待には応えられなくて申し訳ないとしか…言えないな…」

俯いて、深く溜め息をつく。
異性と付き合った経験はおろか、手を繋いだこともない。バレンタインのチョコレートも
家族以外からもらった事はない。友人としての女性もいないわけではないが、それはモテるとは無関係だろう。

「とはいえ、別にオレはいいんだ」「もっと集中すべき事があるからな」

例えば、もし、仮に、万が一、偶然にも、自分のような男性を気にかけてくれる女性がいたとして、
その相手が死んだら、その人は恐らく悲しんでしまうのではないか。
ならば、今はそういう事を考えない方がいい。あの『通り魔』を見つけ出して、行動の意味を問うまでは。

593猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』【高二】:2019/10/02(水) 23:51:30
>>592

「まぁそこは人それぞれだよね」

事もなげにそう言った。

「君みたいなタイプは可愛いって言われるタイプだろう」

「そんな気がする」

左の手が唇に触れていた。
どこまで本気なのかは分からないくらいの表情。
ぼんやりとしているようで目に力はある。

「集中すべきこと」

「……それは聞いてもいい事かな?」

594鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/10/03(木) 00:02:53
>>593

「………可愛い、か…」「仮にそう言われたとして、男として思わないことがないでもないが…」
「何にせよ、向けられた好意はありがたく受け取るべきだろうな」

言われる姿はあまり想像つかないが。いや、確か塞川さんに初対面で言われたか。
どうあれ、彼は自分にも魅力があるのだと言ってくれている。
それはとても嬉しいことだし、少し自信がつく。

「ありがとう」
「そう言ってくれる君もオレは魅力的だと思うし、君が意中の女性と結ばれる事を祈っていないるよ」

礼を述べ、小さく頭を下げる。


>「集中すべきこと」

>「……それは聞いてもいい事かな?」


「…危険な事を好まないなら、あまりおススメはしない」「説明しても、信じられないかもしれない」
「それでも猿渡くんが知りたいのであれば」


「─────今度会った時に話すとしよう」「そろそろ部活の時間なんだ」

そう言って微笑みながら、地図やメモ帳をしまっていく。今日は顧問の先生が会議に参加していたので、開始が遅くなったのだ。
もちろん、次回会った時には彼も忘れているかもしれない。それならそれでいい。

595猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』【高二】:2019/10/03(木) 00:18:48
>>594

「……祈ってくれるといいよ」

礼に対して掌で返す。

「じゃあ、次の機会に」

「備えよ常に、と僕は思ってる」

机に置いた本を手に取った。
まだここにいるつもりなのだろう。
ここでお別れだ。

「頑張ってね」

596鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/10/03(木) 00:39:15
>>595

「備えよ、常に、か」「常在戦場…と言うと流石に時代錯誤かもしれないが、オレもそう思ってるよ」
「とある人が教えてくれたんだ。他人を犠牲にすることを何とも思わないような『悪』は、確かにいるんだと」
「自分が『正義』だとは思ってないが、それでもそういった『悪』に対抗する準備はしておいた方がいいだろうな」

「だから、もしそういった時はオレも微力ながら力になる」
「その時は、遠慮なく頼ってほしい」

猿渡くんの言葉に頷きながら、その瞳をじっと見つめる。
実に大袈裟な台詞だと、妹が通り魔の被害に合う前の自分なら思っていた。
だが、この彼は笑わないだろう。真剣に取り合ってくれるかは分からないが、無碍にする事もない、と感じた。

「ああ、お互いにな」

椅子から立ち上がり、手を振って図書室を後にした。
落ち着いて話せる、気の合ういい友人が出来た。
次に会う時は、彼からもいい報告が聞けることを願いながら、部活へと向かった。

597源光『オズボーンズ』【大学一年】:2019/11/26(火) 22:01:33

       バササササササササァァァァァ――――ッ

(『卑怯な蝙蝠』は、『適応』する事に失敗した)

日が落ち始めた敷地内の空を、十匹の黒い影が飛ぶ。
一見すると鳥のようにも見えるが、それはカラスではない。
翼を広げて羽ばたいているのは、群れを成す『蝙蝠』だ。

(だが、『彼ら』は違う)

(『オズボーンズ』は非常に弱く、とても脆い)

50mほど離れた所には、一人の青年が立っている。
片手に単眼鏡を構えており、『蝙蝠』を観察しているらしい。
『蝙蝠』は高速で飛び回り、やがて樹の枝にぶら下がった。

(――――だからこそ、『彼ら』は『強い』)

598源光『オズボーンズ』:2019/11/28(木) 21:09:37

(この世で最も強いのは『力』でも『賢さ』でもない)

    ザッ ザッ ザッ

踵を返し、学生寮に向かって歩き出す。
日が落ちて、足元の影は長く伸びている。
飛び立った『蝙蝠』が、青年の背後から追従する。

        バサササササササササッ

(――――それは最も『適応』出来る者だ)

599斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/03(火) 01:06:18
ジュゥゥゥウウウ……

「――じゃ、センセ 醤油取りに行ってください。」


清月学園の一角、理科室にて、僕は割りばしを割りながらそう答えた
目の前にはガスバーナーで加熱された金網、それに乗せられた『ホタテ』がその身を煮立たせながら
なんともいえないかぐわしい香りを漂わせている


「そんな事を言って、君 私の居ない隙に腹に納めるつもりだろう」


そう言うこの人はこの学園の理科担当だ、分厚い眼鏡に無精ひげ
ひょろひょろの体を白衣で巻いている、歯ブラシに学校のプリントを巻きつければ大体似たような外見だと思っていい
生徒からの評判は、いかんせん人が好過ぎるともっぱらの噂だ。


「しませんよこんな大味そうな物、醤油無いんだから」

「……私は学術的興味からだね」

「『異常成長した標本』を『同級生の伝手で入手した』のカバーストーリーですよね、さっき聞きました」


しばしの無言の後、眼鏡の位置を治したセンセが迷いながら口を開いてくる
ムリに威厳を見せようとして上体を逸らしているのがハトみたいでもある。


「……知識欲が湧かないかね?」

「今湧いてくるのは食欲ですね」


またもや無言。
これが演技なら冷や汗が流れるのが見えそうになる程、真に迫った表情だ。


「模範的な生徒なら先生の為に従うべきだと思わないかい?」

「見つけた僕を鮮やかに共犯にしたセンセの言う事では無いですよね?」


さらに無言の間が続く、実際、彼の此処までの行動にミスは無く
単なる給料の安い教員のささやかな幸運……に、なる筈だった
彼にミスがあったとすれば、僕に見つかった事だ。


「よし」

「こうしましょう先生『表』か『裏』か?」

両手をポケットに入れて
ようはコイントスの提案だ、運と言うのは万人に公平に見える事実である。

「いいだろう、表……」

僕はニヤリと笑って見せた

「い、いや、やはり裏だ、裏にする!」


「三回勝負はナシですよセンセ」

そう言及して右ポケットから出したコインを放り、落下してきたところを素早くキャッチする
――結果は

「――僕の勝ちですね よっセンセの鏡。」


苦悶のうめき声をあげながら、泣きそうな顔で理科室から逃げるように走って行った
今頃はなんと運が無いと考えながら歩いているだろう、この学園の廊下は長いのだ。

「……いったか。」

そう呟くと、懐から『醤油瓶』を取り出した

先程のコインは勿論、『裏と表が同じコイン』である。
センセが裏と言えば右ポケットの『裏だけのコイン』、表と言えばその反対のコインを使うつもりだったのだ

そして醤油はここにある。
無ければ食べないとは言ったが、あるなら話は別だ
さあ、努力の報酬(ホタテ達)を頂く時である。

……今この瞬間、何処かの学生か教師がドアを開けて入ってこない限りは!

600志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大学三年】:2019/12/03(火) 22:14:00
>>599

ガチャリ――――

その時、理科室の扉が開いた。
醤油を取りに行った教師が戻ってくるには早すぎる。
実際、そこに立っていたのは教師ではなかった。
一人の青年が、理科室の入口付近に立っている。
しかし、『高等部生』ではなさそうだ。

「ん…………?」

まず匂いを感じ、次いでその『出所』に目を向ける。
先程の教師ではないものの、青年の体つきは細い。
どこをどう見ても運動神経は良さそうには見えず、
むしろ不健康そうな雰囲気だった。
最も特徴的なのは、両目の下にドス黒い『隈』が刻まれている事だ。
十数年ほど不眠症が続いていれば、こうなるかもしれない。

「悪かったね。部屋を間違えたよ」

「ここは『理科室』だったと思ったんだけど――」

「『バーベキューハウス』に改装していたとは知らなかったんだ」

ここに来たのは、ちょっとした頼まれ事を片付けるためだ。
機材を幾つか借りてきてくれと、教授に言われてしまった。
それで、こうして高等部まで足を運ぶ羽目になった。

601斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/04(水) 00:59:21
>>600

「・・・・・・。」

落ち着け、落ち着くんだ斑鳩翔。

アサイラムファンは狼狽えない、一々サメの頭が増える事に狼狽えていたらあの撮影チームにはついていけない。
今度は尻尾が増えるんでしたっけ?

「志田先輩、申し訳ないんですけどちょっとこっちきてくれます?」

邪悪なる野望()はこのタイミングと隈取りが完璧な先輩によって打ち砕かれたが
まだ手が無いわけでは無いのだ。

「はい、これ持って」

「はい、此処に立って」

まあまあまあまあ等と言いながら無理やり醤油入り皿と割りばしを渡し
帆立達の前に立たせニッコリと笑顔をさせ

「はい、チーズ、サンドイッチ!」

 カシャリ
スマホのカメラ機能が子気味良い音をたてて、『証拠写真』を保存する。
この教室内でこの行為が行われるのは本日二度目である。

「――YHAAA!これでパイセンも共犯だぜ!責任問題回避!」

「じゃ、遠慮なく『ホタテ』食べて行ってください志田パイセン、何か悪いので。」



……なお、途中で彼が怪しんで暴れたりしたら作戦失敗である。

602志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大学三年】:2019/12/04(水) 01:33:22
>>601

「自分で言うのも何だけど、
 あまり写真写りが良い方じゃなくて申し訳ないね」

強引に皿と割り箸を持たされ、そのまま撮影は完了した。
しかし、その表情は笑顔ではない。
かといって不満そうな顔もしておらず、不思議そうに首を傾げる。

「いや、せっかくだけど遠慮しておくよ。
 実を言うと、さっき食堂でホットドッグを食べてきたばかりなんで、
 ちょうど腹に余裕がないんだ」

    コトッ

手近の机に皿を置き、その上に割り箸を乗せる。
それから、斑鳩の方に向き直った。

「ただ…………一つだけ『分からない事』があってね。
 もし良かったら教えて欲しいんだ」

「このホタテや醤油や諸々は『君の』だろう?
 それに、先生の『許可』だってちゃんと貰っている筈だ」

「そうじゃなきゃ、
 こんなに堂々と教室内で『バーベキュー』なんてする訳がないからね」

「それなのに――――
 何故『悪い事』のように言うのかが、僕には分からないな」

ここに誤算が生じた。
志田は、斑鳩が『許可を取った上でやっている』と思っていた。
だから、『共犯』や『責任回避』という言葉の意味を図りかねていたのだ。

「ええと……確か、斑鳩君だったかな。
 僕は『先生の許可を取ってホタテを炙ってる』と思ったんだけど」

「もし間違ってたら、訂正して貰ってもいいかな?」

603斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/04(水) 01:51:24
>>602

「えっ 違いますけど。」

彼は気に留めるでもなくさらりと言った

「醤油は家庭科室、ホタテはここの先生の、ガスバーナーは理科室の備え付け」

「ほら、その金網ビーカーとか乗せて温める用のアレですし。」

実際、金網は金網だがそのサイズはホタテがギリギリ一個乗るかどうかであった
偶に吹きこぼれた水分が蒸発し、音をたてながら白い線を残す。

「これは推測ですけど、あの先生が許可取ってるなら理科室でやらないんじゃないかな。
まあそれが裏目に出て、こうして僕とパイセンに見つかったんですがね!」

因みにこれを言うとさっき出て行ったセンセは新品のコピー用紙の如く真っ白になります等と言いながら
席に戻り、ホタテの一つに醤油をかけてかぶりつく

「うーん、やっぱいい所のだなコレ、標本用とか嘘だよあのセンセ。」

「……ところで僕も二つ解らない事があるんですけど、志田パイセンは何しにここに来たんです?センセ虐め?」

604志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大学三年】:2019/12/04(水) 14:53:29
>>603

>「……ところで僕も二つ解らない事があるんですけど、志田パイセンは何しにここに来たんです?センセ虐め?」

「それが冗談なら笑うよ」

言いながら、おもむろにポケットから『鍵』を取り出す。
斑鳩に背を向けて、『薬品棚』に歩いていく。
鍵穴に鍵を差し込み、音もなく棚を開いた。

「教授に頼まれちゃってね。
 勿論、この鍵を借りる『許可』は貰ってるけど」

      ガチャ
              ガチャ

「二つ目の答えは又聞きだよ」

背を向けたまま言葉を続ける。
手元では、薬品のラベルを確認していた。

「僕と同じゼミ生の妹が、君のクラスメイトなんだ。
 会話の中で、君の話が何度か出てきた」

          ガチャ

「……いや、これじゃないか。それで、何だっけ」

「ああ、そうそう。それで、君の事を知っていたという事さ」

「君が僕の事を知っていたのは――まぁ、この顔は目立つからね。
 悪い意味で」

605斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/12/04(水) 23:23:28
>>604

「ん、ん〜……。」

思案を一つ、これは僕の落ち度かもしれない


「いやあ、パイセンの妹さんに覚えていただけるのは、こういう顔に産んで貰った両親に感謝する所ですが。」

「妹さんだけだと、ちょっと解りませんね。」

「妹さんと言えば、パイセンみたいな人が、女の子達にどう可愛く例えられてるか知ってましたか?僕はそれで知ってたんですよ、まあ、それが悪い意味と言うなら、その通りになりますけど!」

「なので、そういう動物大好きメイクなのかと、今日見るまでは思ってました……が。」

ちらりと彼の背を見る
この位置では見えないが、彼の特徴は一目見れば充分わかる。

「3つ目を聞いても?もっとも、聡明な先輩の事ですから、何を聞きたいかは、言わずとも解りそうですがね!」

606志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大学三年】:2019/12/05(木) 00:25:07
>>605

「フフ――」

「『僕の妹』じゃあないんだ。僕は一人っ子でね。妹はいない」

「『僕と同じゼミに所属している男の妹』と言った方が分かりやすかったかな。
 とにかく、そこからの又聞きだよ」

     ガチャッ

「これでもないな……」

「こんなメイクをしてる生徒がいるんなら、是非見てみたいね」

「幸い、僕の場合は『鏡』を見ればいい訳だ」

           ガチャッ

「ああ、これかな……」

薬品を手に取り、振り返る。
その両目には濃い隈が見える。
皮膚に染み付いているかのようにドス黒い。

「それは分からないな。
 僕は心を読める訳でもないし、心理学者でもないから」

「まぁ、予想する事くらいなら誰でも出来る」

「『これ』に関係する事とか、そういう事かな?」

空いている方の手で、自分の目元を指差す。
特に気負った雰囲気もない口調だった。

607斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/12/05(木) 01:02:42
>>606

(まあパンダ先輩とかは流石に言えないかな!)

「ええ?パイセンの事だから、『超能力者』くらいはあると思ってたんですけど。」

「ええ、気分を害されたなら、流石に僕も悪いなあとは思うんですが。」

「その時には僕が悪いので、頭を下げて、ごめんなさいすれば良いし、だったら聞いてしまった方が、気にもならなくなるかなと。」

「明日、交通事故で死んだら、後悔しますからね、ああ、聞いときゃよかったなって。」

「知ってましたか先輩、宝くじで一等当てるよか、交通事故で死ぬ方が確率高いんですよ。」

「……つまり僕がこうして先輩にずけずけ聞くのは『交通事故』のせいと言う事で、どうかひとつ。」

「終わったこのは後悔してもしきれませんからね。」

608志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大学三年】:2019/12/05(木) 01:21:51
>>607

「ハハハ――――」

『超能力』という言葉を聞いて、軽く笑う。
どことなく乾いたような笑いだった。
悪意とか敵意といったものはないが、乾いた印象だった。

「『超能力』なんてものが、世の中にゴロゴロあったら怖いね」

「まぁ、もしあったとしても、
 そうそうお目に掛かれるものじゃないんじゃないかな」

「多分だけど」

以前、それが絡んだ事件に出くわした事があった。
あれは『温泉旅行』に出掛けた時だったか。
ちょっとしたスリルとサスペンスって所だ。

「その気持ちは分かるよ。
 後悔してからじゃ遅いからね。
 勇気を持って踏み切る事が大事な事だってある」

「それじゃ、僕も勇気を持って秘密を打ち明けよう」

「『これ』はね、『不眠症』だよ」

「はい――――おしまい」

薬品の容器を手の中で弄ぶ。
その口元は穏やかに笑っていた。
目の隈は相変わらずだったが。

609斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/12/05(木) 03:06:35
>>608

「そうですか?」

ガッカリしたような
そうでもないような、アメコミみたいな事は早々ない物だ、だってそれは漫画なのだから。

「僕は結構お目にかかってる気がするなあ、この前も、鳥とお話しするパフォーマーとか見れたし。」

「……まあ、見分けつかないんで、マジックとか言われればそれまでかな!」

2つ目のホタテを醤油をかけて一息にいただくと
バーナーを消して伸びをひとつ。

「それじゃ、さよならです志田先輩。」

「そろそろ僕が家庭科室の醤油を全部隠した事に気づいて、センセが戻ってくる頃合いだけど……」

メモを取り出して番号を書き、先輩に押し付け、出口へ向かう

「変な事聞いた詫びに、今度飯でも奢らせて下さい、好みの店、見つけときますよ。」

「それでは!」

簡単には見つからない物だ、と
だから奇跡と言うのだろう。

610<削除>:<削除>
<削除>

611志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大学三年】:2019/12/06(金) 23:40:13
>>609

「――――そう?随分と気が利くね」

「『ありがとう』」

至って何気ない様子で、立ち去る斑鳩を見送る。
まもなくして、当の教師が戻ってきた。
息を切らしている彼を見て、僕は『こう言った』。

「すみません、先生。
 斑鳩君が平らげてしまったみたいですよ。
 僕に片棒を担がせる気だったようですね」

「あぁ…………でも――――」

「その『お詫び』として、今度僕達に食事を奢ってくれるそうです。
 彼が場所を伝えてきたら、また連絡しますよ」

まぁ――――この程度は許されるだろう。
何しろ、無断で写真を撮られた挙句、『脅迫』されたのだから。
あまり悪い事をするもんじゃあないね。

612宍戸 獅堂『グロテスキュアリー』:2019/12/06(金) 23:53:31


「『体育用具室』って気が狂ってるよな」

 ぶつぶつと、誰にともなく呟く。
 独り言でも吐き出さなければやっていけないからだ。

「マジふざけんなよ……マジ……」

 この陰気な眼鏡の男子生徒には、誰にも明かせぬ秘密がある。

 彼の『眼』は、人の目には見えない『怪物』が映る、というものだ。
 なぜ人の目には見えないのか。
 奴らはあらゆる無生物に『擬態』して、人の目を欺いているからだ。

 頭がおかしくなっているわけではない。

「マジ……マジで……」

 怪しい陰気な眼鏡は、体育用具室の『扉』を睨んでいる。
 年季の入った木造の倉庫だ。
 少し開いている。鍵が掛かっているわけではないらしい。

「……誰か通りかかんねえかしら」

613蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』【非常勤講師】:2019/12/07(土) 01:47:37
>>612

「おや、悩みごとかな?」

声の方向には人。
羽織にジップアップのパーカーという着こなし。
その顔に表情なし。
硬くはないが笑ってもいない。

「何か困っているのなら、話は聞こうかな」

「先生として、ね」

陰気な眼鏡の学生を見ている。
そして、その肩越しに扉を見ている。

「何か忘れものでも」

614宍戸 獅堂『グロテスキュアリー』【高三】:2019/12/07(土) 06:14:26
>>613

(教員か……)

 蝶名林が声をかけたのは、陰気な眼鏡。
 不健康そうな顔色の、痩せぎすの男子生徒だ。

(年下を巻き込むよりか、大人の方がまだ安心か……?)

 眠そうに開かれた目が、じとり、と蝶名林を見る。
 親切にも声をかけてくれた相手を、まるで値踏みするような視線だ。

「……転校してきたばっかで、体操着持ってないんですよね」

 が、物柔らかな蝶名林の口振りを信用してか、事情を説明し始める。

「前の学校のヤツも、ちょっと色々あって捨てちまって。
 担任に相談したら、『仲の良い生徒』に借りるか、
 『用具室』にある予備のものを着るように、って言われたんだけど」

「『転校生』に、『仲の良い生徒』なんているか、フツー……?
 実質一択みたいなもんじゃねえか。分かって言ってたなら嫌味だよな……」


「……」


「『だから』 悩んでたんですよね」

 男子生徒の説明には、何か不自然な空白がある。
 しかし要約すると、『用具室』から体操着の予備を借りたい、ということだろう。

615蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』【非常勤講師】:2019/12/07(土) 10:35:30
>>614

値踏みするような視線も全く気にしない。
何処吹く風というやつだ。
だから出る言葉の温度も変わらない。
蝶の家紋の羽織が揺れて、男が言葉を返す。

「だから、の意味が分からないな」

初めの言葉はそれだった。

「実質一択なんでしょ? だったら借りればいい」

「体育をフケたいってんじゃなかったらね」

「何か問題でも?」

そう言って用具室の方に近付いていく。
なんてことの無い顔をして。

616宍戸 獅堂『グロテスキュアリー』【高三】:2019/12/08(日) 21:02:06
>>615

「理由が上手く説明できないが、苦手なモンってないですか?」

 男子生徒は、忌々しそうに扉を睨んだままだ。

「トマトの皮とか、ガソリンスタンドの匂いとか、
 魚のエラとか、指の骨を鳴らす音とか。
 俺にとっちゃ、『用具室』がそういうモンなんですよ」

「つーより、『用具室』の中身、ってのが正しいんだけど、……」

「……」

 用具室に近づく蝶名林に、期待と心配の入り混じった視線を送る。

617蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』【非常勤講師】:2019/12/09(月) 19:19:04
>>616

「俺は『孕』って字がそうだね」

「嫌な字だ」

用具室の扉に指をかける。
なんてことはなくそれを開け放つ。
扉の向こうに広がっているのは何の変哲もない用具室の光景だ。
土と埃の香りのするむせ返るような空間。

「で、用具室が苦手なの?」

「なんてことないだろ」

618宍戸 獅堂『グロテスキュアリー』:2019/12/09(月) 23:06:39
>>617

 蝶名林が開け放った、扉の中。
 薄暗い空間だ。

 屋外の授業のために必要な用具が、所狭しと散在している。
 金属バットにサッカーボール、メッシュ生地のビブス、ハードル、ライン引きのアレ……


 ギクリ、と、


「……」

 目に見えて、男子生徒の体が強張った。

「『苦手』っつーか……そうですね」

「先生、『例えば』なんですけど。『例えば』。
 もし『サッカーボール』が生きてたら、何考えてると思います?」

「大勢の人間に追い掛け回されて。
 土の上を転がされ、何度も蹴り飛ばされて。
 何も悪いことしてねーのに。
 人間のコト、どんな風に思ってんのか、とか」

 宍戸の視線は、苦手だと言った用具室の中を睨み続けている。
 汚物を見るように冷たく、親の仇を見るように鋭い。
 何が起きても見逃すまい、としているかのような、集中力を感じさせる目つきだ。

「そういうくだらねーコト考えちゃうんですよね、俺……」
「……先生は、用具室って平気な人?」

619蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』【非常勤講師】:2019/12/09(月) 23:56:55
>>618

「サッカーボールが何か考えてるとしたら?」

「……俺達と似たようなことでしょ」

しばらく黙ってからそう答えた。
奥に入ってそこにある体操服を引っ張り出してくる。
ついでに籠からこぼれてサッカーボールを蹴り上げた。
軽い雰囲気で何度かリフティングをして籠に蹴って戻す。

「ステーキを見て、牛の人生に想い馳せちゃうのに似てるね」

「でも牛は人間の思惑なんて知らないよ。食われるために生まれてきて、そして死ぬだけだろ」

「ボールだって蹴られるために生まれてきた、その役目を果たせずに箱の中で死ぬのとどっちのがいいかな」

男の表情に色はない。
蝶の家紋が抜かれた羽織が揺れている。
パーカーと羽織、洋装と和装。
全てを平等に区別せずに混ぜてしまう。

「俺はね、用具室駄目なの。ガキの頃思い出すから」

「……君はさ、このボールが本当に生きてると思う?」

620宍戸 獅堂『グロテスキュアリー』:2019/12/10(火) 01:17:57
>>619

「あ、ちょっと、」

 用具室に踏み入る蝶名林に、声はかけども足は動かない。
 易々と体操服を取って出てくる様を、ただ見守るだけだ。

「う、うぉぉ……勇者か……」
「先生、肝試しとか絶対効かないタイプでしょ」

 陰気な面構えは変わらない。
 しかし、先ほどまでの緊張はない。

 そのまま蝶名林の言葉に耳を傾けていたが、


「……はは」「確かに」

 少し、解れたように笑った。

「家畜の牛が何考えてようが、人間には人間の都合がありますしね」
「そりゃあ、そうか。無視している命の方が多いんじゃねーか」


 『グロテスキュアリー』。

          ・・・・・・
「『いいえ』、先生。そのボールは、生きちゃあいない」


 宍戸の眼球が、不気味な緑色に光る。
 その視線は、先ほどまで蝶名林が足蹴にしていた籠の中のサッカーボールには注がれてはいない。


       フ ・・・


 緑の眼光は、一瞬きで消える。と、陰気な面も戻ってきた。


「……だがやっぱり、どうも用具室は好きになれそうにはねえな……」
「それはそれとして、すみません先生。その体操服、俺にください」

621蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』【非常勤講師】:2019/12/10(火) 01:50:07
>>620

「俺は勇者じゃなくて破壊者なんだよ。あるいは戒を破る人なんだ」

返す言葉、向ける視線。
どこまでもフラット。
しかし、揺れない水面の奥底に潜むものがあることを人間は知っている。

「俺は野菜もお肉も美味しくいただくよ」

そして、変化。
笑った。
歯を見せて男が笑った。

「そのボールじゃないならどれなんだ?」

「これは俺のじゃないし、そのために取ってきたんだから当然渡すさ」

ずり……と音がした。
用具室の隅から這い出るもの。
プラスチックのような、粘土のようなものが人の形を取っていた。
そいつは光の届かない用具室の隅から現れ、籠の方へとゆらりと這って行く。

「ほら、どうぞ」

体操服を渡す。
もうその顔に笑みはない。

「……なんか、見えてるでしょ」

622宍戸 獅堂『グロテスキュアリー』:2019/12/10(火) 20:49:01
>>621

「勇敢だから幽霊が怖くない、ってんじゃなくて、
 そもそも幽霊とかハナから気にしてねー、みたいな話ですか?」

「ともあれ、ありがとうございます」

 恭しく一礼。

 面を上げて、用具室の暗闇を這う影に、緑色の視線を投げた。

「……どうですかね。まあ、『目はイイ』方ですよ」

 煙に巻いて、眼鏡を押し上げる。
 体操服を受け取って、袖を通す。
 間に合わせなので、サイズが合わなくてもご愛嬌だ。

「そういえば」

 そろそろ、予鈴も鳴る頃だろうか。
 体育の授業……敢えて出たくもないが。
 しかし、転校して間もないうちにサボタージュも拙い。

「先生、受け持ちの教科は?
 つーか、三年の教室に来ることあります?
 俺、転校してきたばっかで、まだよく知らないんですよね……」

623蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』【非常勤講師】:2019/12/10(火) 21:09:15
>>622

「なんで俺が幽霊怖がらないといけないのって感じ」

「俺には神様がついてるからね」

口ぶりからして、そういうのを信じていない、というわけではないのだろうか。
その目は据わっていた。

「はっ、よく言うよ」

その言葉の真意を掴んでいるような気があった。

「受け持ちは美術。非常勤だけどね、三年も相手にするし、準備室は暇だから適当にうろついてるよ」

「蝶名林ルロイ紗英、それが名前」

624宍戸 獅堂『グロテスキュアリー』:2019/12/10(火) 21:27:40
>>623

「『美術』。」

 刻むように呟く。

「……いや、『美術』かァ。
 人の作ったモンを見てる分にはいいんだが、
 肝心の成績がよくねーんだよな……
 まあ、分かった。『美術』の授業は、サボんないようにします」

 遠く、予鈴が響く。
 屋外の用具室から、本舎の体育館はやや距離があるが……
 急いで戻れば、本鈴には間に合うだろう。

「B組の宍戸 獅堂。授業ン時は、よろしくお願いします」

 背を向けて、走る。

625蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』【非常勤講師】:2019/12/10(火) 22:37:39
>>624

「実技の課題とか出来てなかったら来なよ。話とかは聞くからさ」

「暇だしね」

そう言って手をあげる。

「宍戸くんね、はいはい。その顔覚えたから」

見送る蝶名林。
男の背後でまだ人型は蠢いていた。
その後、しばらくしてサッカーボールがいくつか破裂していたのは別の話。

626日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/12/15(日) 03:39:20

          ゴ  オ オ オ オ

「ウワッ……!」

屋上には冷たい風が吹いていた。
ドアを開けた日沼は、それに目を細める。

           バサッ

      ボサッ

金とも銀とも取れない切り揃えた前髪が、
あるいは後ろ髪の流れに逆らった数房が、
風に巻かれて余計に『不自然』になる。

鍵は『開いていた』……

      キョロ

だから、手櫛で髪を直しつつ、視線を走らせた。
先客がいるかどうか……別にどちらでもいいのだけど。

627三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/12/15(日) 07:32:21
>>626

    ビュオオオオオ
              オオオオオオオ…………

風が吹き荒ぶ屋上に、一人の『先客』がいました。
ジャージ姿の小柄な生徒です。
もしかすると、どこかで見たような気がするかもしれません。
校庭が見下ろせるフェンスの近くで、うつ伏せに倒れているようです。
今のところ動く気配はありません。

628日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/12/15(日) 19:30:04
>>627

「え!?」

思わぬ光景に、目を丸くした。

「……え!! なに!? 千草ひっくり返ってるし! マジ!?
 なにしてんの!? ちょいちょいっ、起きて起きてって!!」

         バシッバシッ

声を出しながら、駆け寄って肩を叩く。
仰向けならなんか寝てるのかな?って感じだが、
コンクリ張りで床も汚い屋上にうつ伏せはヤバイ。
多少エキセントリックだから……でやる事でもない。
非常事態だと思うと自然に体は動くものだ。

「え……ヤバいじゃんこれ……千草こーいう冗談しないでしょ」

「いや『逆に』するのかな……ヤバい……
 千草、冗談なら今言わないとウケないからね!」

    バシッバシッ

居眠りをしてるとか……
何か目的があるとか……
それこそ冗談とか……

そういうのなら良いが……声を掛けながら肩を叩く。
不測に備えてスタンドを傍らに浮かべ、それを続ける。

629三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/12/15(日) 20:18:46
>>628

肩を叩かれますが、反応がありません。
その時の千草の状態は、何か狙いがあるわけでもなく、
居眠りしているわけでもなく、冗談でもありませんでした。
一言で表現するなら『気絶』していたのです。

「う…………」

    スゥッ――――

少しして、ゆっくりと両目を開けました。
ここは何処でしょうか?
どうやら屋上のようです。

「あ…………日沼先輩?」

先輩の顔を見て、少しずつ頭が働き始めました。
両手を使って体を起こし、その場に座り込みます。
そして、自分が何をしていたかを思い出しました。

「えっと……」

  「『練習』をしようと思って……」

     「『下』を見たら急に意識が遠くなって……」

        「それで……」

           「少し気を失っていたみたいで――――」

話している途中で、ふと『先輩の隣』に目が行きました。
そこにいるのは、大きな体格の『人型』のようでした。
まだ意識が朦朧としているのかもしれません。
そのせいで、おかしな幻覚を見ているのでしょうか?
目を閉じてから、もう一度よく見てみましょう。

         「――――す」

まだ見えました。
やはり、意識が正常に戻っていないせいでしょうか?
もしかすると、倒れた時の打ち所が悪かったのかもしれません。

630日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/12/15(日) 21:40:06
>>629

「あ、起きたし! ウン、流月だけど。
 急に倒れてるからビックリした! 貧血かなんか持病あるの?
 知らないビョーキなら怖いしさ〜、このあと保健室行った方が良いよ」

起き上がったのを見て、少し離れる。
髪の乱れを改めて直しつつそのまま立ち上がり、
傍らに浮かんでいた『人型』は、ようやく消した。

そして、そのまま隣に座り込む。

「別に熱中症とかなる季節じゃないしさ。
 あ〜でもなんだっけ、みんな気を付けてる夏より、
 冬のが『逆に』罹りやすいとか聞いたことあるカモ」

     フゥーー

「てか、こんなとこで練習?
 千草ってさ〜、運動部とかじゃないでしょ?
 たしか生徒会だよね? なんの練習してたの?」

「なんかあったっけ、行事とか……にへ、流月が知らないだけ?」

閉じた目、途切れた言葉の意味はまだ、気付いていない。
倒れていた人間のすることだ、混乱しているから……それでもおかしくない。

631三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/12/15(日) 22:25:06
>>630

「いえ、『病気』というか…………」

「その――――『体』は大丈夫ですから」

    ニコリ

千草は『死ぬ』のが怖いです。
多分、それは当たり前の事です。
でも、病気と言えば病気かもしれません。

「ここで『恐怖を克服する練習』をしていました」

「でも、そっと下を覗いてみたら気が遠くなって……」

『ここから落ちたら死ぬだろう』と思った瞬間、強い眩暈がしました。
体感ですが、大体『二秒くらい』で気絶したような気がします。
やはり、いきなりハードルが高すぎたみたいです。

「『恐怖を乗り越えて成長することを祈っておく』」

「『ある人』に、そう言われたので――――」

「それで……勇気を出して『挑戦』してみようと思ったんですが……」

「でも――――『このレベル』にチャレンジするのは、
 まだ千草には早かったみたいです」

静かに呟きながら、
『先輩の隣』に向けていた視線を『日沼先輩』に移します。
『妖甘』さん――千草に『目覚め』を与えてくれた人です。
その言葉に応えられるのは、もう少し先になりそうです。

632日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/12/15(日) 23:42:17
>>631

「なるほどね〜、流月それ分かんなくはないかも!
 苦手なことを『あえて』やるってのは、
 まー……誰かに言われたことっていってもさァ。
 ある意味『反骨的』ってゆーかさァ……共感できるよ」

    ガシャッ

「でも、気絶するまではやったことはないけどね。
 そーいうとこ、やっぱ千草ってマジメだよねェ〜ッ」

     イヒヒ…

振り向いて、なにげなく屋上から外を見る。
そして身を乗り出してフェンス越しに下を見る。
なるほど、落ちない保証があっても結構怖い。

「ちなみにアレ? 高所恐怖症ってワケ?」

……気絶する、という感覚は分からない。

「いきなりここってのは確かにハードル高そ〜。
 自宅の二階とか、ジャングルジムの一番上とか……
 ガラス張りの壁があるスカイモールの展望台とか?」

     キョロキョロ

「練習は良いけど無理して倒れるとかアブなすぎるし。
 あの……貯水タンク? あそことか絶対ダメでしょ!」

視線の先には、屋上の中でも一際高い貯水槽だ。
ハシゴで登れるあそこが、常識的な最高高度だろう。
もっとも、日沼はその常識に『反逆』出来るけど。

「落ちても怪我しないくらいの高さからが良いのかもね」

       「んー……朝礼台とか? ぷぷっ。
        流石にアレは低すぎるか!
        てか、生徒会任命の時に乗るもんね」

633三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/12/16(月) 00:18:52
>>632

「『あえてやる』――ですか……」

「何となく共感できます。いわゆる『荒療治』というのでしょうか?」

「でも、今回は失敗してしまいました」

    ニコ

「『高い所』は確かに怖いと思います。
 でも、『低い所』も場合によっては怖いです」

「千草は、まだまだ未熟です。
 だから、『怖いもの』が沢山あるのです」

「倒れるのは良くない事ですね。
 他の人に迷惑を掛けてしまいますから」

「日沼先輩、わざわざ起こして頂いてありがとうございました」

              ペコリ

    「…………『貯水タンク』」

                   「――――ですか」
    スッ
        スタスタスタ

日沼先輩の言葉を繰り返し、屋上の一角を見つめました。
静かに立ち上がり、おもむろに貯水タンクの方へ歩いて行きます。
そして、ハシゴに手を掛けて上り始めました。

                  カン カン カン

まもなく貯水タンクの上で立ち上がります。
一歩ずつ、ゆっくりとですが。
ここが『屋上で一番高い場所』です。
つまり、『フェンスの前より高い場所』なのです。
そこに立つ事で、
ほんの少しだけ『恐怖』を克服できるのではないかと思いました。
だから、その思い付きを実行してみたのです。
『善は急げ』――です

「このくらいのハードル、なら――――」

「――――何とか、越えられそうです…………」

634日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/12/16(月) 00:50:42
>>633

「『やれない』って決めつけられるとさァ〜。
 自分の中でもほんとにそれが出来なくなるじゃん?
 そうならないように、やれないって言われたことでも、
 あえてやってみるってワケ。何でもかんでもじゃないケドね。
 本気でやりたくない事とか、やる意味ないと思うし」

「それが『反骨精神』ってやつよ。
 にひ、お話含めてありがたく思っといて!」

などと言っていると――――
おもむろに歩き出した千草を目で追う。

「えッ! 千草何してんの!?
 そこ登んの、マジで危ないし!
 絶対ダメなやつって今いったやつだし!
 ――――あ、だから『あえてやった』のか。ぷぷ、ウケる!」

「千草、ほんとマジメすぎ!」

             タタタッ

「流月はさァ、なんていうの、『流れ』に逆らったら……
 ハードルを飛び越えたら、そこがゴールじゃなくってさ!
 その後、行きたい道行って、なりたいようになるのが大事だと思うんだよね」

そして、貯水タンクの傍まで近寄る。
お世辞にもバランスのいい場所じゃあない。
生徒が昇ることを想定している場所でもない。

「千草はさ、『怖いもの』無くなったら、どんな風になりたいの?」

千草を見上げながら、しかし引きずりおろしたり、やめろと叫びはしない。
行き当たりばったりではなく、千草の望む生き様なら、その『反骨』には価値がある。

635三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/12/16(月) 01:21:43
>>634

「飛び越えても――『ゴール』じゃない……」

「何となく分かるような気がします……。
 でも――分からないような気もします……」

「『怖いもの』がなくなったらなんて、今まで考えた事もなかったです」

千草の『怖いもの』――それは『死ぬ事』です。
本当は死にたくないけれど、それは無理な話です。
だから、せめて『良い死に方』を迎えたいのです。
『死の恐怖』を少しでも和らげるために。
そのために、多くの人から尊敬されるような、
『立派な人間』になれるように頑張ってるつもりです。

「克服しようとしてるのに――何だか、おかしいですね」

    クス

「でも、もし『怖いもの』がなくなったら……」

もしも、『死』が怖くなくなったら。
そうしたら、『良い死に方』に拘る事もなくなるのでしょうか?
『死の恐怖』がなくなったら、
いい加減な生き方をするようになってしまうかもしれません。
それは、果たして良い事なのでしょうか?
考えていると、何だかよく分からなくなってきます。

「…………よく分かりません」

「でも、今は――――」

           カン カン カン
                   ――――トンッ

「皆に尊敬されるような『立派な人』になりたいと思っています」

            ニコリ

ハシゴを降りて、屋上の地面に降り立ちます。
今は分かりませんが、いつか分かるかもしれません。
その時のために、
これからも『自分に出来る努力』を続けていこうと思いました。

636日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/12/16(月) 03:04:26
>>635

ハシゴから降りてくる千草の姿を、観ていた。

「流月もさ、ゴールがどこかはよく分かんないワケよ。
 立派なヒトになりたいとかも思わないし……
 かといって悪いヤツになりたいわけでもないしさァ!」

流れに逆らうことは『行く末』を増やす事だ。
決まった一本の流れから逸脱することは、
無数の行き止まりと、無数の支流を見出す事だ。

「千草と違ってまだ、なんにも決まってないワケ」

「まだ、決めたいとも思ってないし!」

「決まるとも限らないじゃん」

「だから」

決められた道は…………日沼流月の前に敷かれていた。

「『逆に』……流月には、分かんないことも大事な気がする。
 ぷぷっ、なんかそれこそおかしな話だけど! ウケるね」

あるいは今も。それを望まない限りは『反骨』は続く。
目覚めた叛逆の熱情は、きっと日沼の魂そのものなのだ。

        ビュ オオオオ ・・・

「……………てか千草さ〜、さっきから風寒くない!?
 流月、ちょいお菓子食べようと思ってたんだけどさ。
 寒すぎて食べてられないし! 校舎戻ろうと思うワケよ」

いずれにせよ……倒れていた後輩が無事だった事で、
来たワケと、ドアを開けた時に感じた冷気を思い出す。

「千草どーする? まだ、ここで練習してく?」

千草がどうするにしても日沼は立ち上がり、ドアに向かう。

637三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/12/16(月) 18:43:23
>>636

「『分からないことも大事』――――」

「分からないからこそ色々やれて……。
 それで、色々な事が分かるのかもしれませんね」

「何だかスッとしました」

    ニコ

難しい話だと思います。
でも、日沼先輩の言う事には共感が持てました。
今は、それで十分です。

「そうですね。
 だから『練習』には打ってつけだと思いました。
 今なら、もうちょっとくらいハードルを越えられそうな気がします」

「でも、『あえて』止めておきます。
 欲を出すのは失敗の元ですから」
 
「――――戻りましょう、日沼先輩」

日沼先輩の後ろから、同じように歩き出します。
最初は失敗しましたが、まずまずの結果が得られました。
だから、今日は満足しています。

         カツンッ

風の音に交じって、不意に『音』が聞こえました。
コンクリートの地面を、『金属』が軽く打ったような音でした。
千草の後ろ辺りから聞こえてきたようですが、
そこには何も見当たりません。

「『It’s now or never』」

「『今しかない』――千草の好きな言葉です」

638日沼 流月『サグ・パッション』【高二】:2019/12/16(月) 23:36:29
>>637

「『今やらなきゃずっとやらない』……『今しかない』」

「その言葉、めちゃ千草が好きそ〜〜〜。流月も分かんなくはないよ。
 今逆らわなきゃ最後まで逆らえないだろうなってコト、あるからさァ」

日沼もまた、共感を持つ事ができた。
意図が100パーセント同じでは、無いとしても。

     ビュオ
        オオォ

             カツンッ

「んじゃ戻ろ戻ろ。……ン?」

去り際、冬風に紛れる音を耳が拾って振り向いた。
そこには何もなかった。
何かを察せるほどは、まだ詳しくはない。

「? 何今の音! ……まあいいや。寒〜〜〜ッ」

…………だから立ち止まる事もなく、そのまま校舎に戻った。

639三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/01/05(日) 17:24:59

最近、『こんな話』があるそうです。
各教室に設置されているゴミ箱の中身が、
いつの間にか消えているというのです。
でも、みんなが出すゴミの量が減った訳ではありません。
どこか別の場所に、こっそり捨てられているということもありません。
それなのに、確かにゴミはなくなっているのです。

    ガラッ

ここは放課後の『ある教室』です。
そこには誰もいませんでした。
『千草以外』は。

          キョロ キョロ

誰もいないことを確認して、ゴミ箱を開けてみます。
中身は空ではありませんでした。
嬉しいことです。

「『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』」

         ザック ザック ザック

『墓堀人』のスタンドを発現し、『シャベル』で床を掘ります。
足場の強度を無視できますので、
そこに『穴』を開けるのは簡単です。
少し時間を掛ければ、
ちょうどいいサイズの『墓穴』の出来上がりです。

         ザザ――――ッ
                     ドササッ

ゴミ箱を傾けて、『墓穴』にゴミを流し込み、埋めてしまいます。
ゴミは『仮死状態』になっていますが、今は余り関係ありません。
あとの処置は簡単です。

    パッ

『墓穴』を解除します。
同時に、『埋められたもの』も『消滅』します。
環境にも優しい『埋立』です。
『人の役に立つ使い方』を自分なりに考えてみました。
これが、『最近の話』の真相という訳です。

640斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/07(火) 20:04:16
>>639

僕は気配を感じて扉を開けた

 「――おっと、失礼」

陽当たりのいい放課後の風景、嗅ぎ慣れた古い備品の香り
そして女子生徒がその風景の中に一人

 (『お目当て』は……いないようだ。)

周囲を見やり、肩を竦める、どうやら気配は目の前の生徒の物だったらしい
僕はそこまで勘が良いほうではないのだろう。

 「君、ここの生徒かい?」

何故そんな事を聞いたか?
最近のちょっとした『噂』のせいだ。

だって、『実は幽霊です』とか言いだしたら 
少し楽しいじゃあないか。

641三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/01/07(火) 21:00:06
>>640

その教室には、そこにいる生徒以外誰もいません。
至って静かなものです。
もちろん『人間以外の者』も、そこにはいないはずです。

「もし『生徒』じゃなかったら『不法侵入』になってしまいますね」

「立派な『犯罪』です」

目の前の生徒は、制服ではなく学校指定のジャージを着ていました。
身体は小さくて細く、平均より発育がかなり遅れているようです。
実年齢以上に幼く見えるのは、そのせいでしょう。

「中等部一年生の三枝千草と申します。
 『三つの枝』に『千の草』と書きます」

「――――はじめまして」

    ペコリ

お見かけした事はないですが、おそらく先輩でしょう。
ですので、丁寧に挨拶します。
第一印象は大事です。

642斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/07(火) 22:17:47
>>641

 「これはこれは、ご丁寧にどうも」

一礼を返し、『学生手帳』を開いて見せる
当然、手帳には僕の『名前』が乗っている。

 「僕は斑鳩、斑鳩翔。」

 「『ショウちゃん』でも『先輩』でもお気軽にどうぞ、『三枝』さん」

短く整えた頭髪
鎖の意匠を持ったカフス
学ランの胸元には赤いスカーフ

冬だろうと変わり映えがない僕の服装だ。

 「変な質問してすまない、と言いたいが」

 「最近妙な噂を聞くもんでね」

第一印象?彼女は『礼儀正しい後輩』って感じだ
自分が言うのもなんだけど、放課後に教室で1人と言う以外は、特に怪しい所も無い。

 「君、知ってるかい?」

――それ故に気になる個所は有る、『ゴミ箱』とか。

643三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/01/07(火) 22:45:41
>>642

「高等部の先輩ですね。
 『鉄先輩』や『日沼先輩』をご存知ですか?」

「同じ学年なら、お知り合いかと」

学年は斑鳩先輩と同じはずです。
クラスが別なら知らないかもしれませんが。
人数の多い学校ですから。

「――――『妙な噂』?」

「その内容をお聞きしない事には、何とも言えませんが……」

ゴミ箱は特におかしな点はありません。
外見は極めて普通です。
中身は空っぽですが、それはおかしな事でもないでしょう。

「どんな『噂』ですか?」

644斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/07(火) 23:13:34
>>643

首を振る

 「いや、そんなに難しい話ではないんだ、穏やかでもないのだけれど。」

適当な椅子を引いて腰かける
歩き回って足が棒のようだ、それもこれも『探し物』のせいだが

 「――『学校内に不審者が出る』っていう話」

『まだそこまで広がってはいないよ』、と
同時に『どうしてそんな事を?』を我ながら絶妙に表せる口調だったと思う

正直、僕もこれが事実かどうか解らないし。

 「それも、『下着泥棒』 ……ああいや、僕では無く」

人懐っこい苦笑を浮かべながら、まるで冗談事のように話し続ける
当人には笑い事では無いのかもしれないが、僕にもそれがどうにも信じられないのだ。

 「僕のクラスメイトが被害にあったって言う話さ。」

 「手口の方も正直、眉唾物で……その、馬鹿らしいとは思うけど」

だって、被害に会った彼女の言い分もそうだが
そんな事する理由あるかい?って話だから。

 「『ゴミ箱ごと持っていった』って言うのさ。」

 「――妙だろ?」

645三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/01/07(火) 23:39:17
>>644

「確かに妙なお話ですね」

「『学校のゴミ箱に下着を捨てた人』がいるんですか?
 家のゴミ箱に捨てた方がいいように思うのですが……」

思わず首を傾げます。
泥棒は悪い事です。
でも、学校内に下着を捨てるのはどうでしょう。
それこそ不思議な話のような気がします。
そう思うのは、千草だけでしょうか。

        ガタ

「――――続きをお願いします」

近くにある適当な椅子に座ります。
先輩の話は、これで終わりではないでしょう。
なので、続きを聞こうと思います。

646斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/08(水) 00:26:07
>>645

 「あー…… やっぱり気づいちゃうか。」

彼女の指摘を鋭いと褒めるべきか
それとも少し困ると考えるべきか、三枝という後輩が聞く姿勢なのは確かだ。

 「『泥棒』の方もそうだが、僕も彼女にこう言ったのさ『なあ、君はどうして学校に下着を捨てたんだ? 不用心にも程が有るんじゃないのか。』」
 「……最初に言ったけど、これはあまり穏やかじゃない話なんだ。」

頬を掻く、見ず知らずの相手にする話でもないが
同時に、目の前の女性に関係のない話……でもないだろう。

 「ところで、このせ……『清月学園』は知っての通りマンモス校だ」
 「お手手つないで友達100人…なんて簡単にはいかない事を、今じゃ僕達はよく知ってる、だろ?」

 「その中の最小単位、40人と顔見知りになれば『親友』が1人出来る間に」
 「『どうしても気にくわない奴』とかが、2〜3人くらい出てくるものさ」

視線をそらして廊下の方を見やる
人の眼を見ながら話したくはない話題なんだ、それが僕に関係なくとも。

 「――あんまり褒められた事じゃないよな」
 「『い』で始まって『め』で終わるような事は、さ。」

……溜息が漏れ出そうになるのを抑え込む

 「彼女の言葉は躊躇い混じりで正確じゃあなかった、『彼女』では無く、『彼女が庇っていた友人』が被害者で……」
 「『捨てた』のではなく『捨てられた』んだ。」

647三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/01/08(水) 00:43:48
>>646

「そうですか…………」

「それは言葉に出しにくい話題だと思います」

「でも――――」

    ズイッ

「『目を背けてはいけない事』です」

「そのお話は、『生徒会』に持って帰ろうと思います。
 何が出来るか分かりませんが、何かしなければいけません」

「その『責任』があると考えていますので」

千草はちっぽけな存在です。
ですが、聞いたからには行動しなければいけません。
それは、千草の『夢』に繋がる道でもあります。
誰からも尊敬される人間になる。
それが、千草の『人生の目標』です。

「あの…………すみません。話の腰を折ってしまいました。
 『噂』の話が途中だったかと思います」

「続きをお願いしてもよろしいでしょうか?」

648斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/01/08(水) 21:29:08
>>647

 「…………。」

少しは驚いた、大抵の場合は目を逸らし
見て見ぬふりをする、そういう物だと思っていたからだ。

 「今、全ての生徒に 君みたいな『責任感』が有ればなあ、と思ってるよ。」

 (……同時に、無くて良かったとも思うが。)

今、彼女……『三枝千草』に対しての印象は少し変わった
礼儀正しさ以外に、悲劇に対して目をそらさない『意志』が有るらしい

 「けど、『生徒会』に持っていくのはやめた方がいいな」

 「僕が何故こうして動いてると思う? ……頼まれたからなんだ。」

背もたれに思い切りもたれかかると、椅子の脚二本でバランスを取る
特に意味はない、あえて言うなら姿勢に飽きた。

 「この『いじめ』は単独ではなく、多くの場合……『インターネット』とかの……」
 「『赤信号、皆で渡れば怖くない』、みたいな集団心理の元に行われてる、『複数犯』なんだ。」

 「勿論、警告して、相手が反省し、二度としないと誓わせて仲直り それが理想だ。」
 「ただし、理想は理想、絵に描いた餅でしかない、もし『相手が1人でも逆恨みしたら』?報復は簡単だ」

 「『学園に必ず来る』怯えている被害者の肩を掴んで、無理やり引き摺って行けばいいんだから。」

ジェスチャーを交えながら話す途中で
廊下の方をちらと見やる、無関係とはいえ僕は探りを入れ始めた
恐らく、そろそろだとは思うが。

 「被害者に、さらに被害に会えとはちょっと言えないし」
 「だからと言って付きっきりで守る、と言うわけにもいかないんだ、『そう言う事』だとバレてしまう。」

視線を戻す。

 「この事について君が知らなかったように、『知ってる人は知っているが、大半の人間はこの事を知らない』」
 「こういう事実を下手に拡散するのも、被害者を傷つける、『いじめ問題』の根の深い所だよ。」
 
 「でも方法はある、ジャブを打っても返されるなら、ストレートで『再起不能』にすればいい、その為には『証拠』が必要なんだ。」
 「少なくとも、『謹慎処分』、或いは『退学』まで持っていくのが。」


椅子を戻し席を立つ、彼女に近づくと乾いた靴音が教室に響く
その必要が有るし、『この話は目を逸らしてはいけない事だ』。


 「……話を戻そう、僕は『証拠が必要になった』、『物証』、『証言』、『証人』。」

 「それが、『何故ぼくが此処に来たのか』という話にも繋がるんだ……『三枝千草』さん。」

 「僕は君が見ての通り、上の学年だ 本来なら此処で証拠を探すのは筋違い、収集個所の方が早いかもしれない」
 「だが、グループの1人がこう発言したんだ…『下級生の1人に証拠を捨てさせた』…ってね、その人は『証人』になる」

生徒手帳を取り出し、ページをめくる
大抵のものぐさな生徒には忘れられがちだが、こういう物はメモ代わりにもなる

 「噂の中身の実際はこうだ、『いじめでゴミ箱に下着を捨てられた女子生徒がいる』」
 「そして同時にもう一つの噂が最近流れてる、『ゴミ箱の中身がいつの間にか消えている』。」

例えば、『他の生徒から聞いた話を書き込む時』とか。
 
 「ここのクラスメイトの証言だけど、君は最近『放課後にこうして一人でいる』んじゃないかな?」

 「――誤解無く、単刀直入に言おう」

 「何故かそんな事をしている君を、今、『疑っている』。」

今度は目を背けない、笑顔で、しかし笑顔の無い瞳で真っすぐと。

649三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/01/08(水) 22:10:43
>>648

「ご存知ですか?
 そもそも周りは、
 『いじめが起きている』とさえ思っていないケースが多いのです。
 加害者にしてもそうです。
 単に『じゃれているだけだ』とか、
 『いじってみただけだ』とか思っているのです。
 生徒も先生も、皆そうです」

「その時、当人はどうすればいいと思いますか。
 我慢するだけです。ただ我慢して日々を過ごすだけです。
 ずっとずっとです。
 そして、誰もそれに気付かないのです」

「先輩の意見は、とても冷静です。
 落ち着いた第三者の意見です」

「でも……こんなことを言うのは心苦しいのですが」

「その――――」

「『それだけ』のような気がします」

    フゥ……

少し、少しだけ熱くなってしまいました。
こういう時は、深呼吸です。
静かに長く。

「『疑い』ですか……。
 そんな噂があるなら、疑われるのも仕方がないと思います。
 もし千草が同じ立場でも、そうするでしょう」

    スッ

「知らなかった事とはいえ、悪事の片棒を担いでしまった事を、
 心からお詫び申し上げます」

「千草の処分は斑鳩先輩にお任せします。
 どのようにも為さって頂いて結構です」

        ペコリ

椅子から立って、先輩に頭を下げます。
千草は嘘が苦手ですし、何より悪い事です。
でも、これで千草は地獄に落ちるかもしれません。
無残な死に方だけはしたくないと思っているのですが。
ここから挽回できるでしょうか?

650斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/01/08(水) 22:48:04
>>649

 「…………(違うな、ああ、違う)。」

『俺』の勘だが少なくとも、この三枝という女が自分から関わっているとは思えない
関わるような人間が、こうも熱くなるとも思えない、俺は怒りならよく知っている。

 謝罪と共に深く頭を下げる

 「――すまない、言い過ぎたな、顔をあげてくれ」

……一瞬ぼうっとしていたような気もする
廊下の方を見る、やはり近づいて来ている。

 「……君の言う事は、正しい、僕も頼まれただけの第三者だからな」
 「『それだけ』しかできないし、しない、冷たいようだけど『熱く』はなれない……自分が情けなくなるな。」

情けなさを振り払うように首を振る
言葉にするのは簡単だが、行動が伴わないならばなんの意味が有るだろう?

 「……君はやって無いんだろ?少なくとも自発的に加担してはいない」

 「そうなると謝るのは僕の方だし、元から探してたのは『証人』の方なんだ、証拠は別の方を集めればいいからね。」
 「いじめグループに加担してた下級生が別にいる、次を探さないとな。」

少し考えてから、ひとつ引っかかった事が有る
彼女の態度についてだ。

 「ところで、君は謝っていたけど あー……その、『何かをした』のか?」
 「『ゴミ箱の中身全てを跡形もなく消し去る』なんて、君が1人で出来る事だとは思わないんだが。」

651三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/01/08(水) 23:08:32
>>650

「いえ、生意気な事を言って申し訳ありませんでした」

    ペコリ

「――ええ、しました。千草が『一人』で」

「いつも考えているのです。
 自分が何か人の役に立てないかどうか。
 色々と考えてみて、『掃除』をする事にしたのです」

「千草が片付けたゴミはなくなりました。『永遠』に」

千草が『昇天』させたものは、どこへ行くのでしょうか。
それは千草にも分かりません。
ただ、『この世』に存在していない事だけは確かです。

「ですので……もう、それを取ってくる事は出来ません」

            ペコ

        「『ごめんなさい』」

652斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/01/09(木) 00:25:54
>>651

顎を撫で、少し考える
証拠を消したという確証はないが、彼女にはどうやら罪悪感が有るらしい
……此方としても、口の堅い人手が欲しい所ではあった。

 「間が悪かったんだ、誰も悪くは無いし、もし悪いとしたら、それは何も知らない君を利用した彼女たちの方だ。」
 「けれど、そこまで言うのなら、君が適任かもしれないな」

 「巻き込んでおいてなんだけれど…そこまで悪く思っているなら協力して欲しい」
 「証拠はなくなったかも知れないが、証人は必要なんだ、つまり……君の周囲で、その事態に加担している人間を」
 「一緒に探してほしいんだ、『高等部』の学生が『中等部』にいても、大体の場合は警戒されてしまうからね。」

 「そのお礼としては……そうだな、僕に出来る範囲で出す物を出すよ。」
 「金銭は少し五月蠅いのがいるから…現品だとか駅前のクレープとか。」

思いつくのはこの辺りだ
流石に目の前の後輩が『荒事』に首を突っ込むとも思わないが

(……いや、この責任感と意志の強さなら、何時か首を突っ込むかもしれないな。)

 「ところでその表現……つまり君は、新手の『スタンド使い』か?」

 「僕と同じ様に?」

653三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/01/09(木) 00:46:53
>>652

「お手伝い出来る事なら何でもします。どうぞ、ご遠慮なく」

「千草は――――
 『誰からも尊敬されるような立派な人間』になりたいと思っています。
 それが『夢』であり、『人生の目標』です。
 『人の役に立つ事をする』のは、その『一歩』になります」

「ですから、『お手伝い出来る事』が十分なお礼です」

千草が何よりも欲しいのは、自分の価値を高める機会です。
それを積み重ねて、立派な人になりたいのです。
『安らかな最期』を迎えるためには、それが必要です。

「『新手』…………?」

「それはどうか分かりませんが」

「でも――――『はい』」

      カツンッ
            ズズッ…………

『金属が床を打つ音』が響きました。
そして、『幽鬼のような姿のスタンド』が現れます。
目深に『フード』を被り、杖のように『シャベル』を携えていました。

654斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/01/09(木) 21:12:24
>>653

 「『尊敬』か」

こうして改めて口に出し、思い返すと
人生の中で尊敬する相手というものは結構少ない物だ。

他人の人格や行為を高いものと認め、頭を下げるような、また、ついて行きたいような気持になること。
うやまうこと。

例文:「親を―する」

 「僕は両親の事は尊敬しているよ、誰よりも何よりも」

 「君もなれるといいな ……そして。」

第一印象?『ぎょっとした』、もしかしたら、流石に僕の顔にも驚愕が出たかもしれない、彼女の台詞と妙に噛み合わないなとは思ったかな
なにせそのスタンドは、『尊敬されるような立派な人物になりたい』と言っている割にはあまりにも……暗かった。

目の前にあるそれは重たいシャベルを引きずる墓守のようではあった、誰の言葉だったか、『スタンドは性格』だ
少なくともそのビジョンは、尊敬を集めるような立派さは無く、むしろ『死への執着』を僕に強くイメージさせた。 

彼女は少なくとも嘘をついてはいないのだろう
ただ、恐らく立派な人物に、というのは……それが通過点か、或いは彼女自身も気づいていないか、だ。

 「それが君のスタンドか?」

見せてくれたのだから此方も見せなければならないだろう
少なくとも、あの律儀な男ならそうした筈だ。

そう呟く僕の腕に、影から引きずり出されたように『鎖』が伸び
右腕を雁字搦めにする『枷』のように巻き付く、幻覚でもなければ、幻でもない。

 ――『ロスト・アイデンティティ』

 「そう名前を付けられた、これが僕にとっての『スタンド』」
 「まあ、人探しにはあんまり役に立たないのだけど。」

廊下の方を見やる。

 「それじゃ、お互い自己紹介も終わって用件も済んだし……聞きたい事はもっとあるけど、そろそろ『逃げる時』かな。」

足音は大きくなっている、約4人程だろう。

 「ところで三枝さん 君、『彼氏』とかいる?」

655三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/01/09(木) 22:03:07
>>654

「『鎖』ですね」

「『鎖』と『シャベル』――――どちらも『金属』です。
 少しだけ似てるかもしれませんね」

    ニコ

「『It’s now or never』」

「そういう名前です」

千草は、『他の人のスタンド』を見た事は、ほとんどありません。
斑鳩先輩の事も、今さっき知ったばかりです。
だから、単純な比較は出来ません。
でも、きっと『斑鳩先輩だからこそ目覚めたもの』なのでしょう。
千草の『墓堀人』がそうであるように。

「?」

その質問に、首を傾げました。
そして、口を開きます。
ゆっくりと。

          「そ――――」

 ドタバタドタバタドタバタドタバタドタバタドタバタドタバタドタバタッ

千草の声は、逆方向から走り抜けていった『誰かの足音』に、
かき消されました。
きっと『偶然』でしょう。
その間にも、『四人分の足音』は近付いてきているようですね。

656斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/01/09(木) 23:40:53
>>655

 (……?)

廊下を走る足音に後輩の台詞はかき消された
放課後だってのに暇な奴が多いもんだな

まあ俺も人の事は言えねぇがな、退屈は俺の敵だ。

 「――話はいじめグループの方に戻るんだが」
 「リーダー格の女性が、これまた美人でね、その人に『彼氏』がいるんだよ」

ソイツの事はよく知ってる、『銀鶏』の奴だ
女の方が粉をかけたか、女を見る眼が無いんだろう
今度ガラス玉と交換をおススメしてやるか、運がよけりゃあ視力が良くなるぜ。

 「いかつい『お友達』を連れた、『業務用冷蔵庫』の上に『たわし』を張り付けた様な奴が」
 「僕の事は、まあ面白くないだろうな 見つかったら何される事か。」

俺か?俺は喧嘩は嫌いじゃない。
1:4だろうとタダでやられてやるつもりはねぇ
ただし他人を巻き込むのは趣味じゃない、それが女だと猶更だ。

窓の方に脚を向ける、窓を開くと流れ込む季節の空気
まあ今は傍の排水用パイプの方が重要だな、ひっかけて降りるにはこれで充分。

 「実のところ……さっきからその人達が近づいて来てるんだ、君は『今のところ』関係ないし。」
 「『ターゲット』にも入ってないだろうな ……どうする?此処にいるかい?」

俺は楽しい追いかけっこの時間だ、ニヤリと後輩に笑ってやる。

657三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/01/10(金) 00:35:33
>>656

「…………『暴力』は嫌いです。
 見たくはないですし、聞きたくもありません」

千草にとって、暴力は『死』を連想させます。
だから嫌いなのです。
だから怖いのです。

「千草には単純な力はありません。
 今ここで、『誰かを殴れ』と言われても無理です。
 殴りたくないですし、殴れる力もありません」

「でも、『殴られる』くらいなら出来ます」

「『年下の生徒会の一人に暴力を振るった』――――
 そういう『既成事実』を作ってしまえば、
 周りからの風当たりが強くなって、
 これまでのように幅を利かせにくくなるかと思ったのですが」

      ザック ザック ザック

言いながら、『墓堀人』が、扉の手前に『墓穴』を拵えます。
ごく普通に考えて、
教室の床に『穴』が開いているとは思わないでしょう。
だから、無警戒に足を踏み出す事でしょう。

「これで『足』を取られます。
 窓から出るのでしたら、時間稼ぎになるかと思います」

「斑鳩先輩、
 さっき千草が言った言葉を覚えていらっしゃいますか?」

「千草の扱いは先輩にお任せしました。
 どうぞ、『お好きなように』。千草は、それに従います」

「ただ…………一つだけお話しておく事が」

「あの、千草は『運動』が得意ではないです」

斑鳩先輩に向き直ります。
どうするかは先輩に一任します。
ただ、窓から降りる途中に『転落死』しないかどうかだけが心配です。

658斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/01/10(金) 23:34:02
>>657

 「……訂正しよう、君の事を少し驚いたと思ったが、今、君の『行動』にかなり驚いている」
 「君の行いは彼らにそこまで考える知性が無い、という前提なら有効だろう」

俺にいわせりゃ実際無いだろうなあいつら
階段を登らせると登りと下りで数が違うとか言い出す連中だ。

 「しかし、まあ」

鎖が伸びる、一度に伸ばせるのは約5m
もっとも分離した鎖はそれに含まないので
少しズルすれば地面と全身でキスする事無く、余裕で降りられる距離だ。

 「悪党と正義の人の違いは『手段を選ぶかどうか』だと言う人もいる。」

後輩をひっ掴んで窓際に寄せる
運動が不得意で自分から殴られようだって?
ようは受け身も取れないって事だろ?馬鹿な後輩。

 「一人の不幸の為に一人を犠牲に…では計算が合わないし」
 「何より、そんな事をしたと知れたら、僕に依頼した子は、僕を殺しかねない勢いで迫るだろうしね。」

苦笑しながら考える、まあそういう馬鹿は嫌いじゃない
何より女が怖いって事はうちのババアがよく証明している。
見捨てる選択肢は無い。

 「でも『好きにしろ』って軽々しく男性に言うのは良くないな、悲鳴を上げることになるぜ。」
 「――動くなよ?」

――俺は後輩を窓から突き落とした。

『鎖』…『ロスト・アイデンティティ』でぐるぐる巻きにした後でな、分離、結合

解けた後に出来るのは即席の『空中ブランコ』だ
ちゃんと手すりとシートベルト付き、問題は全部スタンド製なので、スタンドアレルギーだと辛い所だな。
ドのつく運動下手でも、暴れない限りは落ちないだろう。

物音に振り返ると、手下が何人か落っこちた向こうに『銀鶏』の野郎が額に青筋を立てているのが見えた、ざまあねぇな
ウインクの一つでも返して、俺も窓から飛び降りる。

頭上の怒号を聞き流して逃げるのは中々愉快なもんだが
この後輩をお姫様抱っこしてさっさと逃げたほうが良さそうだ。

659三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/01/11(土) 00:18:18
>>658

「…………そうですね」

「『殴られる』なら、
 もっと『人目につく場所』を選ばないと『殴られ損』です。
 大勢の前で試す方が、きっと大きな効果が得られ――――」

ここは『場所』が悪いです。
やるなら『目立つ場所』にしないといけません。
だから、とりあえず今は――。

        ドンッ!

不意に突き飛ばされて、いとも容易く吹っ飛ばされました。
『為すがまま』というのでしょうか。
つまるところ、そういう状態と言っていいでしょう。
ところで、斑鳩先輩はお気付きでしょうか。
千草の言葉が、途中で途切れた事を。

    「…………」

           「…………」

                  「…………」

『悲鳴』はありませんでした。
何故なら、千草は完全に『気絶』していたからです。
突き落とされた瞬間には、もう意識はありませんでした。

千草は『スタンドアレルギー』ではありませんが、
『死に対するアレルギー』を持っています。
いわゆる『ネクロフォビア』というものかもしれません。
少し前は、屋上から校庭を覗き込んで意識を失いました。

同じように、『死の恐怖に対する無意識の防衛本能』が働いて、
自動的に意識がシャットダウンしたようです。
つまり、後は全て先輩に『お任せする』という形になります。
お手数ですが――――どうぞ、よろしくお願いします。

660斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/01/11(土) 03:25:21
>>659

『死』、それは誰もに平等に送られる最後である。

 「悪い事したなあ、こりゃ」

僕も割と急いでいたとはいえ
まさかあんな台詞吐く子が落下で気絶するとは思わなかった
……いや、普通は気絶するものなんだろうか?

 「ふーむ……変わったお嬢さんだが、そんなに高い所が怖かったのかね?」

周囲の女性が微妙に個性的なために
普通の基準がいまいちピンとこない……ような
もう1人の後輩に今度聞いてみるべきだろう。

 「ま、『好きにしろ』って言われた事だし、目が覚めるまでは預かっておくか。」

でもサイドカーにバレないように後輩を突っ込んで
『ボーイズギャング』の知り合いに、バイクで走って預けに行くのはどうかと思う。

 「まあ俺達の家に連れてくとさ、ほら、ババアが怖いし」
 「追ってくる連中と起きる前にファイトクラブもいいけど、俺としては穏便な選択肢だと思うぜ?」

……彼女がなるたけ早めに起きる事を祈ろう
下手するとこの奇妙な『放課後F・C編』は、予想以上に長くなりかねない。

661夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/01/18(土) 21:42:07

そうか……そうだったのか……!!
ワタシは『いまだかつてダレもしるコトのなかったヒミツ』に、
きづいてしまった……。
いますぐカンケイシャをゼンインあつめてくれ!!
『のろわれたヤカタ』をつつむおおいなるナゾのベールを、
このワタシがときあかす!!
スベテのジケンのハンニン――――
『ハートのじょおう』のショウタイはオマエだ!!

「――――『モナカ』と『サイチュウ』って『おなじカンジ』だ!!」

これは、きっとまだダレもきづいていないにちがいない!!
ヒミツをしったワタシがソシキにけされるまえに、
このジジツをダレかにつたえなければ!!
そうおもって、ワタシはトナリ(>>662)にコエをかけたのだ。

662夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/01/27(月) 21:29:10
>>661

「どうよどうよ??どうよどうよどうよどうよ????」

「モナカと最中ですか……。言われてみれば、そうですね。
 気付きませんでした」

「こうしてまたヒトツ、おおいなるミステリーがあきらかになった……。
 しかし、セカイのナゾはかぎりない。
 アリスのボウケンは、はてしなくつづいていくのだ!!」

「アリス先輩とおっしゃるのですか。珍しいお名前ですね。
 高等部の方でしょうか?」

「まあな!!で、キミだれ??」

「中等部一年の三枝千草です。三つの枝に千の草と書きます」

「あぁぁぁ〜〜〜『カンジ』かぁ〜〜〜。
 きくところによると、アリスはカンジがニガテらしいんだよなぁ〜〜〜。
 なに??どうかくって??」

「はい、ええっと……」

そんなこんなでシュウリョウだ!!

663斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/02/14(金) 22:29:58
……今日は何の日か知ってるか?僕はマイクを切ってから声高に叫んだ。

 「――バレンタインだ!!!」

実際にはキリスト教司祭の聖ウァレンティヌスが、禁止された結婚式を毅然と行い、王に反抗して処刑された日だが
今日では日本の商社マン達の不断の努力によってカカオとミルクと砂糖と乙女心を消費する日に云々かんぬん。

だがそんな事が世の中のDK(男子高校生)に何の関係が有ろうか?
年がら年中頭の5割でピンク色の妄想している野郎共も、今日だけは乙女心エンジンフル回転(オーヴァードライヴ)
肩をソワソワさせ鼻息荒く、下駄箱という非衛生的な場所に素敵なラップを施されたチョコレートを夢見る日である。

なお、貰えなかった野郎はその日から1年を非リア充として過ごす事になる
ジュリエットのいないロミオのようなものだ、悲しいね、チャンチャン。

 「だっていうのに、ねー」

窓から外の校庭を見やると、校門の前に人だかりが出来ている
腕章を付けた学生はどう見ても『生徒会』である、右手には袋、左手にはメガホン
……そして袋の中には無数のチョコレート。

 「……生徒会による『チョコ狩り』とはいったい。」

事は数か月前に遡る
切り裂き魔という者ありけり、この事件自体はとっくの昔に沈静化したが
生憎世の過保護なPTAの父母達はこれに過剰反応したのだ、無理も無いとは思う、実際に被害は出ていたのだし。

 (ああ、校門前で麗しのチョコたちが回収されていく……)
 (弁当だという言い訳をしている子もいるぞ、なんと涙ぐましい努力、でも無理が有るとおもうな、その気合いの入ったラッピング。)

放課後には戻されるのだろうが、要はこの事態を狙って不審者だとかが校内に侵入しないようにとの事らしい
ついでにどこぞの風紀にうるさい方々が、学生が学問以外に浮かれるとは何事かと熱弁を振るったりでもしたのだろう、余計なお世話だ
梅の花が奇麗に咲いたこの時世に、このような蛮行を認めて良い物だろうか?いやない。

 「ロマンとチョコの欠片も無い……とはいえ、もう起った事には精々読唇術?くらいしか出来ないしなあ」

    ゴソゴソ

 「『Fly Me To The Moon』……フランク・シナトラ いや、宇多田 光versionあるじゃん こっちだな!」

カセットの一つを手に取ると、僕はそれを差し込んでからスタンドで仕掛けを施した
再生はきっかり30分後、そのタイミングで時間切れと共に僕の『スタンド』は解除される
射程20mというのは忘れがちだが、前後左右だけではなく、上下にも作用される物だ。

つまり、その瞬間に教室にいると、僕にここのカセットを再生できなかったという事になるのだ
実際には遠隔で差し込まれて、遠隔で再生スイッチを押されるのだが。

 「相応しい日には、相応しい曲くらい必要だよなぁ〜〜〜〜誰がカセット持ち込んだか知らないけど。」

そう言いながら放送室を後にすると、階段の踊り場でステップを刻みながら降りていく
先生無し、同級生無し、ミッションコンプリート、完璧だ 練り消しで型を取って接着剤で作った放送室の鍵を靴下の中に滑り込ませると
チャイムが鳴る前に教室に滑り込んで席に着いた、これで放課後までもが楽しみだ。

 (あ、エクリプス参上とか、張り紙でもすりゃあ良かったかな? ……まあいいや)
 (何者か解らない、未知っていうのは一番の恐怖だ。)

清月学園OBの皆様へ…と書かれたPTAのプリントを懐に仕舞い込む
後で飛行機にして飛ばしてやろう。

 (しかし、色々準備しても僕にはこの程度が関の山だ)
 (自動操縦型のチョコレートが歩き回ったりしない物かなぁ……その方が楽しいのだけど。)

664夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2020/02/15(土) 08:44:01
>>663

「――――やあ」

席に着いた時、『それ』は既に目の前にいた。
正確には、『斑鳩翔の机』に頬杖をついて待機していたのだ。
ソイツは『アリス』とか『ユメミン』とか『アルカラ』とか言われてる。
あ、アリスはジブンでなのってるんだったな。
みんな、アリスとよんでくれ!!

「この季節になると、『二種類の人間』がいるよね。
 『歓喜する者』と『嘆く者』さ。
 僕はどちらかって?もちろん『嘆く側』の方さ」

「僕に惹かれる『学校中の女の子達』が、
 一斉にチョコレートを持ってくるんだぜ?
 その度に、僕は『食べ切れないチョコの山』の始末に悩み、
 大いに嘆く事になるんだからね。
 一つ貰っただけで大喜びしてる連中が羨ましいよ」

「――『イカルガショウ』ってコのモノマネなんだけど、にてた??
 なんかさ、こんなコトおもってそうじゃない?? 
 アイツ、マジでキザなヤツだからな〜〜〜」

「あ!!そんでそんで〜〜〜『コレ』みて『コレ』」

      サッ

「ババン!!ナンだとおもう??フフフフフ」

片手を持ち上げると、そこには『小さな化粧箱』があった。
おもむろに、フタを開きにかかる。
ゆっくりと、焦らすように。

       パカッ

「なんと!!『チョコレート』だよ!!
 しかも『アリスモチーフ』!!たべるのがモッタイないな!!」

その言葉通り、箱の中身は『チョコの詰め合わせ』だった。
『チェシャ猫』や『白兎』や『トランプ』など、
アリスの世界を模したチョコレートが入っている。
割かし高そうな雰囲気だ。

665斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/02/16(日) 03:09:31
>>664

 「……夢見ヶ崎?え、今ここまで来たの?」

まず驚いた
正直毎年の事なので今回は放課後に持ち越しだろうなあ、くらいだと考えていた
授業前にくるとは思わなかった。

次に想像力が豊かだなあ、と思う
アリスが言ったようなイベントは確か前にもあったなあとは思う
イケメンに生んでくれた両親に感謝せねば、その時のチョコの数?ノーコメント。

最後に、よく此処まで隠して持ってこれたな、とも思う
あの生徒会が時代錯誤の刀狩りごっこに勤しんでいるというのに
一体どうやって隠し持ってきたのだろう?

だがそんな事を尋ねるより、まずは言うべき事がある。

 「――ありがとう、夢見ヶ崎。」

にっこりと微笑む、スマイル120%、ここで使わず何時使うのか?
周囲の女子達と野郎共が何事かはやし立てている気がするが
今の僕には念仏か真珠の如くであった、華麗にスルー。

 「凄いな、手が込んでる、コレなんか苦労しただろうに……食べて背が縮んだり伸びたりしそうだね」
 「感謝の言葉だけじゃお礼としては足りないだろうけれど、代わりにホワイトデーには期待しといてくれよ。」

そう言いいながらウインクを一つ
しかし見てみるとこの箱は成程、『化粧箱』である
いつも奇麗なネイルをしている彼女なので、持ち歩いていても不思議には思われないであろう

 (禁酒法しかり人間って逞しいのね……)

 「……でも、如何してここまで?」

666夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2020/02/16(日) 08:49:23
>>665

夢見ヶ崎はスタンド使いだし、運が良かったのかもしれない。
具体的な方法は『不明』だ。
いずれにせよ、当たり前のように教室内にいたことは間違いない。

「おい。おいおいおい。おいおいおいおいおい。
 まぁ、そうあわてなさんなって。
 まだ『ハナシのつづき』があるんだから」

「『コレをあげる』だなんて、いつダレがいった??
 コレは『ジブンよう』だ!!
 バレンタインセールって、
 イロイロかわったのがならんでてタノシーよね!!
 ついついショウドウガイしちゃったよ〜〜〜」

「だから、『コレ』はみせにきただけ」

    サッ

そう言って化粧箱を引っ込める。
代わりに取り出したのは別の箱だ。
デコレーションしてあるが、何となく『手作り感』がある。

「――――で、キミにあげるのは『コッチ』。
 ナカミみたい??しかたねぇなぁ〜〜〜」

          パカッ

「さっきみせたのをサンコウにしてワタシがつくったヤツ!!
 ハジメテにしては、なかなかイイできばえだとおもわんかね??
 このウサギのシルエットなんて、
 もうほぼオリジナルとイッショだもんな〜〜〜。
 となりにおいたらクベツつかんよね〜〜〜ゼッタイ」

箱に入っていたのは、先程のものと似たチョコの詰め合わせだ。
アリスモチーフなのは同じだが、やや形が崩れている。
本人の言うように、最初に見せたものを真似て作ったらしい。

「で、なんでココまでって??
 バレンタインっていうイベントにサンカしたかったから。
 『どうせならイチバンノリだろ!!』ってカンジだから、イマきた。
 でも、『かってきたヤツをわたす』ってのも、
 イマイチのりきれてないカンがあるなとおもって。
 どうせサンカするんなら、マジでやったほうがイイじゃん??
 だから『てづくり』。
 てづくりっつっても『カカオ』からつくったワケじゃねーけどな!!」

                 スッ

「だから、ハイ。『300かい』カンシャするように!!」

チョコの入った箱を差し出す。
受け取ろうとした瞬間に引っ込めるということはないだろう。
まぁ、タブン。
いっしゅん、やったらオモシロイかなとはおもったけど。
やるかどうかはベツとして、かんがえるのはジユウだ。

667斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/02/17(月) 01:29:59
>>666

「Oh、じゃあ化粧箱入りっていうのもそういう包装かぁ……恥ずかしいねえ、僕。」

がっかりしましたと肩を竦める
思い返せば確かにあげるとは一言もいってはいないのだ
これが若さ故の早とちりか、認めたくない物である
下げられていく化粧箱、サヨナラチョコレート。

 (でも『9股』かけてチョコ持った彼女達に追い詰められてるパイセンとか見た後だと、この程度の失敗カワイイものでは?)

人の振り見て我が振り直せ、しかしこうしてアリスの話を聞くに
何ともこのイベントに関して真剣に楽しもうとする姿勢は見てとれる
どうやったのかは兎も角、僕達のような『スタンド使い』には色々と抜け道がある物だ
例えば後30分ぐらい後に、校内に鳴り響く音楽とか。

 「……でも僕は夢見ヶ崎がカカオ丸ごと持ってこなくて良かったと思ってるよ」
 「持ってきてたら僕は腹抱えて笑うか、一周回ってソンケーするかの二択だったからね。」

例え超能力を持ってようが、人とは少し違っていようが
結局僕達は学生だし、そういうイベントが有れば楽しみたいのかもしれない

前に海岸で話された事を思い出す
彼女の眼の事を ……今の景色も、彼女には何色に見えているのだろう
夢見ヶ崎のネイルの如く、カラフルに見えているのだろうか?

 「ま、クベツつくかどうかは置いといて、有難く受け取るよ。」
 「勿論、可愛い後輩に頼まれれば、心の中で300と言わず1000でも万でも感謝して……今度は上にあげたりしない?ダイジョブ?」

苦笑しながら顔をほころばせる
ああ、そう考えれば彼女が今を楽しんでいるのは……とても良い事だ。

668夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/02/17(月) 17:23:23
>>667

「よかろう。これからも、そのキモチをわすれるでないぞ」

   ポンッ

チョコの入った箱は無事に手渡された。
引っ込めたりはしていない。
そして、そろそろ授業の時間も迫ってきているようだ。

「よし!!やるコトやったし、チャチャッともどるか!!
 いや〜〜〜なんかミョーな『タッセイカン』があるな〜〜〜。
 まんぞくまんぞく!!」

かつては何も映さなかった瞳は、今はキラキラと輝いている。
きっと、これからも眩い光を湛えていくのだろう。
生きている限り、ずっと。

「あ!!もしヒマだったら、またデートしてやってもイイぜ!!
 ただし、ツマランかったらかえるから、そのつもりで!!」

「――――じゃ!!」

            ババッ

そう言い残すと、嵐のように走り去っていく。
口には出さなかったが、チョコを渡したのは『別の理由』もあった。
斑鳩翔からは『不思議の気配』を感じる。
だから、チョコを渡した時の反応を見てみたかったのだ。
しかし、『イベントに参加したかった』というのが、
今回の行動の大きな動機なのも、また間違いない。

669斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/02/17(月) 21:29:07
>>668

去って行く後ろ姿に手を振り返す
隣の席から口を挟まれ、笑顔で軽口をたたいていれば

教室の扉が開き、授業が始まる
2月の窓から差し込む陽光は、薄い雲に遮られて弱弱しくも見える

――欠伸を一つ

放課後はどうしようか?

幽霊部員として、偶には顔を出しに何処かの部活に歩いてみてもいいし
『もう一つの音楽室』に行ってヴィヴァルディの夏の嵐を弾くのもいい
ドビュッシーの月の光も嫌いじゃない、それとも寮でチョコを齧りながら映画鑑賞?
いやいや、『嵐が丘』の続きを読んでしまおうか。

 (デートもいいかもな…次は水族館とか これで、起きると良いのだけど。)

でもまずは、次のイベントの確認を。
授業が終わり、席を立ち、廊下を王様のように歩く

―― 3 2 1 

 「……良い曲だろ?」

670斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/03/25(水) 23:05:20
桜のつぼみが大きく膨らみ、一部の枝は先走ってその花を開く3月
日の傾いた放課後に、僕は校舎の裏側にたっていた
その焼却炉は十数年前の『環境問題ブーム』により今はまったくといっていいほど使われておらず
『ああ、そんなのもありましたね』と取り壊すにも金がかかるのでススだらけで放置されている有様だ。

そしてこの学園にも無視し難い学生たちの話の種という物がある
――『七不思議』である。

(まあこのマンモス校の生徒数とその入れ替わりの数のせいで、内部事情がコロコロ変わるんで)
(七不思議と言っても8個あったり6個だけだったり上と下のクラスで内容が全然違ったりするんですけどね。)

アットホームな笑顔の絶えない噂です、ブラック会社の人材募集ばりに見境ねぇなーー等と考えつつ
抱えてきた『ラジオ』と『トランシーバー』を少し離れた場所に置く
普段なら不良グループがいじめられっ子をカツアゲかましてるような場所だが、偶々人がいなかったのは有難い
此処に来たのは一つの噂話の調査の為だった。

  『今は使われていない焼却炉の中から焼かれた者の声が聞こえる』

 「すごくうさんくさい。」

その話の第一印象はそれだけだ
そもそも話に出てくる『焼かれた者』が噂の常とはいえはっきりしないのだ
『犬』や『猫』だったり『いじめられた生徒』だったり…その場合は事件になっているだろうが…だが
この話が他の七不思議と違う点はただ一つ 『声を聴いたと断言する生徒が奇妙な事に多い』 という一点だけだ。

 (一応、そうなんじゃないかなーと確かめる手段は持ってきたんだけど。)

『スタンド』案件ならいくら呑気な自分でも無視はできない
そうして確認用の手段と共に此処に来たのだ……が。

 「……やっべ、僕一人だと確認無理では?」

足元で尻尾を揺らしている、餌の事しか考えてない猫は『スタンド使い』ではあるが
こういう点ではまったく協力しない女王様気質なので意味とか無いです。

 「じゃあ自分のスタンドをつか……纏うタイプだったわこの射程0」

詰み申した 出来ない事はどうあがいても出来ないのはこの世の摂理である 漫画やアニメなら兎も角
気合と根性と凄みで覚醒したりとかはしないのだ、ドのつく擬音を撒き散らしながらポーズ決めても駄目です。

 (――ここで待ってたら同じ噂知ってる誰かが来ないかな できれば話通じてチンピラじゃない奴とか。)

遠い目でそんな事を考えながら、誰もいないのをイイことに次のダンスで使うポーズ決めつつラジオのチャンネル用ツマミを弄っている僕でした
今ならスマホアプリで聞けるってのにカセットオンリー対応のラジオとかもう骨董品だよコレ。

671三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/26(木) 22:05:21
>>670

『手押し車』が置かれていました。
その上には、『雑草』が山積みになっています。
そして、手押し車の陰に千草がいました。
『草取り』をしていたからです。
先生に頼まれたのではなく、『自主的』です。

  ザッ

「斑鳩先輩、こんにちは」

        ペコリ

人の気配を感じて立ち上がりました。
『ジャージ』を着て『軍手』をはめた千草が見えると思います。
片手には『スコップ』を持っています。
『野外活動用』の格好です。
そういえば、前にお会いした時、
『窓から突き落とされた』ような気がします。
『記憶が飛んでいる』ので定かではありませんが。
思い出そうとすると、また意識が消えそうなので、止めておきます。

672斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/26(木) 23:57:49
>>671

 「……良い所に来てくれたぞ我らが愛すべき後輩!」
                                                                                  ベネ  
 「ハイ、コレ持ってー、君、声は良く通る方?ああいいんだ例えガラガラでも声が出せればALLオッケーカナリアのように美しければなお良し。」

そう言うと美作の手に『トランシーバー』を渡し、本人は急いで『焼却炉』の方へ翔け、耳を当てる
今までの行為が充分奇行の内に入るが今更である。

 「はーい、そのトランシーバーの『スイッチ』押して何か台詞言って見て―、何でもいいよー僕への告白なら常時受け付け中です。」
 「偶然知ってしまったけれど黙っておくには辛い事でもオッケーです、カモン後輩!」  ビッ

673三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/27(金) 00:20:45
>>672

「『告白』――ですか?」

その言葉を聞いて、首を傾げました。
よく分かりません。
でも、それは置いておきましょう。

      ピッ

「斑鳩先輩――その……」

「……いえ、『何でもない』です」

この前、千草を窓から突き落としましたか?
そう聞こうかと思いましたが、止めました。
何だか『眩暈』がしたからです。
ここで気絶すると、先輩に迷惑が掛かります。
先日も、絆創膏をくれた親切な方に助けて頂きましたから。

「先輩、千草の勘違いかもしれませんけど――」

ボタンから手を離して、トランシーバーを下ろします。
その時、風が吹きました。
何本かの雑草が、先輩と千草の間を流れていきます。

「――この距離なら、普通にお話出来そうな気がします」

674斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/03/27(金) 00:33:31
>>673

 「ああ、うん 勘違いでは無いんだけど 説明を吹っ飛ばすのは僕の悪い癖だな ごめんなさいね。」

例え超能力者だろうと話さなきゃ伝わらないんですよとどこぞの天パも言っている
しかし何処から説明した物か、数秒うなってから決めた。

 「いや実はさ、ここに焼却炉があるでしょ?」
 「この中から七不思議による『声がする』って噂が今広まっている(かもしれない)ので、その噂の検証だね。」

証明されたら?特に決めてはいないが新聞部にでも売りつけてみようか
こういうのは検証するのが楽しいのだ。

 「予想が正しければ……『聞こえる』筈なんだよな、というわけで」
 「必要性の話ではなく、検証のはなしなんだ、そういうわけで赤裸々に青春の叫びを……あ、大きいと聞こえないから意味無いな?」

トランシーバーを指差しながら告げる

 「できればひそひそ『それ』に話しかけて?」

675三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/27(金) 00:50:35
>>674

「『その中』から聞こえるんですか?」

焼却炉の方を見ました。
そんな話があるなんて知りませんでした。
斑鳩先輩が事情通なのでしょうか。
それとも千草が情報に疎いのでしょうか。
もしかすると、その両方かもしれません。

「はい、先輩が『そうして欲しい』と言われるなら」

トランシーバーを持ち上げます。
でも、まだボタンは押しません。
分からない所があるからです。

「でも、どうして『これ』を使うのでしょう?
 声が聞こえるなら、待っていれば聞こえてくるのでは……」

「静かにして、耳を澄ませておけば……」

今日の千草は、
何だかいつもより細かい事が気になるみたいです。
『記憶が飛んでいる事』と関係があるのかもしれません。
ともかく、先輩に頼まれていますので、ボタンを押しましょう。

「――もしもし」

676斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/03/27(金) 01:35:37
>>675

 「ああ、君は賢い 確かにそのまま静かにすれば、僕の耳に声が聞こえてくる」

焼却炉に耳をあてながら、聞こえてくるか細い無数の声の中から目当ての声が聞こえるのをじっと待つ

 「でもそれだと『噂』通りだというだけで、『どういう原理でどう起こっているかの確認』にはならないのさ……よし、三枝ちゃんの声が聞こえた!」

立ち上がり、膝を払うと学生服の襟を正しながら、満足げに頷いた。

 「――やっぱりこの焼却炉、『電波を受信』して何処かが振動してるみたいだな、それが話声として聞こえると。」
 「前に知り合いの歯医者がこんな事を言っていたよ、『患者の1人が毎晩幻聴に悩まされている』と」

 「でも、実際は幻聴じゃない 歯の詰め物が『FMラジオの電波を受信していた』んだ」
 「お陰でその詰め物から骨伝導かしらないけど、ラジオが幻聴のように聞こえてたんだろう……えーと」

傍にある骨董品のようなラジオを弄り始める、今時このサイズ持つのは金の無いラッパーくらいの物だ。

 「確か焼却炉から聞こえたラジオ番組が…ビンゴ!」
 「幽霊の正体見たり枯れ尾花 だっけ? 種が解るとこんな物だねぇ……『スタンド』じゃあなかったか。」

検証が成功したので嬉しいような、少しがっかりしたような、何にせよ斑鳩は満足げだ。

677三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/27(金) 01:59:13
>>676

「千草にも、先輩の言われる事が分かりました。
 だから『これ』が必要だったのですね」

最初は分かりませんでしたが、これで納得出来ました。
斑鳩先輩は、とても賢い方のようです。
同時に、前に聞いた事のある話を思い出しました。

「千草の親戚が、
 『独りでにスイッチが入るストーブ』を持っていました。
 誰もいないお休み中の事務所から火が出て、
 その火元が『ストーブ』だったとか――」

「『心霊現象』かと思われましたが、
 実際は不法に増幅された『違法電波』が原因だったそうです。
 それをストーブの回路が受信して、
 誰もいないのにスイッチが『オン』になって出火したと」

「この学校でも、そんな話が見つかるなんて思いませんでした。
 先輩のお陰で、変わった体験をする事が出来ました」

    ペコリ

「――ありがとうございます」

先輩は満足していらっしゃるようです。
それに貢献出来たのなら、千草にとっても嬉しい事です。
『誰かの役に立てた』という事なのですから。

678斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/03/28(土) 00:54:09
>>677

 「? ……まあお礼を言いたいのはこっちではあるんだが、どういたしまして?」

襟元のスカーフを弄りながら首をかしげる
そういえば時に気にしていなかったが。彼女はどうして此処にいるのだろうか?
空を飛んで来たとかだろうか?違うか。

 「うん、そういえば君の言っていた……あー 何だったかな クロガネ?君辺りには会ったよ」
 「多分、いい友人になれると思う 彼は少し驚いていたみたいだったが。」

確かスタンド使いだという事を彼は知らなかったらしい
忘れていた可能性も有るが、ここをほじくり返すのは拙い気もするのでスルーしとこう、僕に関係ないし。

 「よければ、彼と何時知り合ったか聞かせてくれないか?」

679三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/28(土) 01:17:02
>>678

「それは何よりでした。斑鳩先輩と鉄先輩は同じ学年でしたね」

    ニコリ

斑鳩先輩の言う通り、
きっとお二人は良い友達になれると思います。
千草は、その『橋渡し』になれたのでしょうか。
もしそうなら嬉しいです。

「『いつ』――ですか?」

最初に出会ったのは『神社』でした。
歩いている内に、道に迷ってしまったのです。
あれは確か……。

「ハッキリとは覚えていないのですが、
 大体『一年くらい前』でしょうか?」

「鉄先輩とは『町外れの神社』でお会いしました。
 道に迷っていた時に、助けて頂いたのです」

「斑鳩先輩、それが何か?」

680斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/03/28(土) 01:44:01
>>679

――1年?

 「ああ、いやね?彼も随分、君と親しい間柄のように見えたから 結構長い付き合いなんだね。」

1年友人でいて解らなかったのはどういう事なのだろうか
某海のナントカの如くというのは考え難いが。

 「……そうだな、彼は随分とお人よしそうだからな」

その優しさのせいで主、に彼女と『スタンド』を関連付けなかったというのもあるのだろう

 (呑気だと呆れるべきなのか、平和だと喜ぶべきなのか。)

何時か彼は年上の肉食系女性に(色々な意味で)美味しく頂かれそうな予感がする、戯言だけどね
僕は彼の幸福を祈って何処か遠い目で空を見つめた 色々は色々です。

 「ま、邪魔して悪かったけど、代わりに何か手伝えたりする? ……そういえばここで何をしていたんだろう。」

681三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/28(土) 02:05:05
>>680

「『草取り』です。雑草を引き抜いて『そこ』に入れているのです」

傍らの『手押し車』を指差しました。
そこには『雑草』が積もっています。
おそらく、これくらいで『十分』でしょうか。

「では、この手押し車を傾けて頂けますか?
 千草は、あまり力がないもので」

「根っこに付いた土で、だいぶ重たくなっていると思います」

  ズッ…………

     「『イッツ・ナウ』――――」

               ズズッ…………

             「――――『オア・ネヴァー』」

千草の背後から『幽鬼』が姿を現します。
それはシャベルを肩に担いだ千草の『墓堀人』です。
『墓堀人』を出したのには『理由』があります。

        ザクッ
              ザクッ
                    ザクッ

もちろん、『墓穴』を掘るためです。
『雑草用』なので、そんなに大きな穴は必要ありません。
ですから、すぐに『埋葬』の準備が整いました。

「斑鳩先輩――
 お手数ですが、『この中』に入るように傾けて頂けますか?」

682斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/03/28(土) 02:12:54
>>681

 「僕も力押しは得意じゃないんだけど、男の子として任されました」
 「……結構多いな、何時からやってたんだ?」

実際パワーがないのは悲しい事である、それが原因で負けた事は……特に無い、大体の場合は判断ミスだった、閑話休題
これも学校の一備品なのであろうと、手押車を押し『墓穴』にかたむけて草を流し込む。

          ドサドサドサ

見た目はあの健康食品を流し込んだ胃袋といった所か。

 「はい、流し込みましたよ 後輩」

……しかし、此処から如何する気なのだろう?

683三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/28(土) 02:33:04
>>682

「ありがとうございます、先輩。
 『後始末』は千草がやっておきますので」

       フッ――――

ただ『墓穴』を『解除』します。
後に残るのは、『元通りになった地面』だけです。
もし掘り返したとしても、そこからは何も出てきません。

「『墓穴』が消えた時、『埋葬された物』も一緒に『昇天』します」

「――――これで『完了』です」

        ズズッ…………

『墓堀人』が、千草の身体と重なるように消えていきます。
あの雑草が『何処へ行ったのか』は分かりません。
少なくとも、『この世界ではない何処か』でしょう。

「あっ、まだ仕事が残っていました」

「『スコップ』と『手押し車』を、
 倉庫に返しに行かなければいけませんでした」

大切な事を忘れる所でした。
それを済ませたら、『本当の完了』です。
『軍手』は私物なので、返さなくてもよいのです。

684斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/03/28(土) 04:33:25
>>683

 「……こうして見るのは初めてかな、その『能力』。」

埋葬された物が昇天する…というのは抽象的だが、恐らくは消滅したと捉えて問題ないだろう
改めて考えると中々面白い力ではある。

(それ故に、どうも『他人の役に立ちたい』…という軸線上に、このスタンドが出てくる理由が思いつかない)
(鉄の願いとそう変わらないように見えて、根底にあるものが違うのか……ま、願いが変わらないなら僕の『敵』ではないだろう。)

      パチ パチ パチ

 「ん、お疲れさま きっと頑張ったのだろうし、今後も君のことを応援させてもらうよ。」
 「――それじゃあ、また。」

何せ、自分の助力とかが彼女に必要になる日が来るとも思えないのだから
平穏というのは退屈の異音同義語である、それ故に手に届く価値が有るのだろう。

685三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/28(土) 19:05:38
>>684

「はい、それではまたいつかお会いしましょう」

「どうもありがとうございました、斑鳩先輩」

  ペコ

手押し車にスコップを置いて、両手で押していきます。
こうして一つずつ積み重ねていきましょう。
いつの日か『安らかな最期』を迎えるために。

(そういえば――)

(『鉄先輩が驚いていた』というのは何だったのでしょうか?)

(また今度、聞いてみましょう)

                  ザッ ザッ ザッ

686<削除>:<削除>
<削除>

687黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/03/31(火) 01:47:56

『新聞部』の部室を抜け、屋上に繋がる階段に座る。
特に意味は無い。うろついていたら、座れる所があっただけだ。

            …パラ

                …パラ

「……」

膝に置いたメモ帳をめくり、思考に耽る。
追っている事件の調査録に、『確定事項』はほとんどない。

――――事件。

『触れてもいないのに人が吹き飛んだ喧嘩』だ。
それは黒羽目下最大の興味である『スタンド』とも、
恐らく無関係ではない……はずなのだが。

(……手がかりはある、なのに踏み込めないのだわ!
 目撃者は被害者を含めて……少なくても、いるにはいる。
 でも、目撃証言はあいまいだったり、どこか『一致しない』!
 『そういうスタンドだから』なんて、考え出したらキリがないのだわ!)

     (……事件発生から、もう時間が経ちすぎているのもまずい。
      ……これを追う間に『旬を逃した』ネタもある。
      ……分かってる部分も、公に出す『新聞』にするのは難しい。
      私は『探偵』じゃなく、『記者』よ……考えなきゃならないのだわ)

その姿は階下からでも目立つし、屋上から出てくる者がいれば、もっと目立つだろう。

688志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大三】:2020/04/01(水) 23:17:19
>>687

「――……?」

たまたま通りかかっただけだった。
ちょっとした用事を済ませてきたからだ。
その内容は、特に言うような事でもない。

(随分と『真剣』だ。熱心だなぁ)

(ああいうのを見ると、僕も頑張らなきゃいけないと思わされるね)

(何をあんなに真剣に取り組んでいるのかは知らないけど)

ごく一般的な普通の感覚として、そう感じる。
そのせいか、無意識に足を止めて、そちらを見た。
ドス黒い程に濃い隈のある二つの目が、少女を眺める。

689黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/04/02(木) 01:04:02
>>688

ふと、顔を上げると―――――

「――――…………!?!?!?」

                 ドタッ

恐ろしい顔があったので、姿勢を崩した。

「な、何……!?」
(前に取材した『ヴィジュアル系音楽サークル』の人!?)

               (……じゃないのだわ、誰!?)

なぜ視られているのか。
知り合いではないのは確実で、
取材をしたくらいの間柄も無かった。

黒羽の夕焼け色の双眸に困惑の波が揺れる。

「何……何か用かしら! 見ているだけじゃわからないのだわ」

が、露骨に驚いたままでは負けた気がするので、
マウントを取り気味に話しかける事で『優位性』を取りに行く。

690志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大三】:2020/04/02(木) 01:28:29
>>689

「ああ、そうだね。悪かったよ。
 別に用事がある訳じゃあないんだけど」

そのように答えたのは、痩せ型の青年だ。
全体的にやつれた雰囲気で、あまり元気そうには見えない。
しかし、話し方は至って普通だった。

「ちょっと目についたんだ。随分と熱心な様子だったから」

「ただ、それだけだよ」

メモ帳に視線を向け、申し訳なさそうに肩を竦める。
どうやら『マウント』は取れたようだ。
そして、再び視線が少女に向かう。

「ついでに、何をしてるのか聞かせてもらってもいいかな?
 もし邪魔でなければね」

  スッ

声を掛けて、階下から一歩近付く。
まだ十分に距離がある。
断られた時は、このまま大人しく帰るつもりだった。

691黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/04/02(木) 02:21:37
>>690

「目についただけ――――」

        キョロ  

            キョロ

「確かにここでメモをしてたら『目立つ』のだわ。
 私だって、そこは分かってないわけじゃないの」

(改めて見ると、案外普通の人ね。
 それにあれは、メイクじゃなくて『クマ』?
 ……それはそれで気になるのだわ。
 この人は『何』? ……高等部ではなさそう。
 大学部? それとも、新任の教師か何か?)

(事件に関係は……もしなくても、
 話したことのない人と話すのは、
 何か刺激になるかもしれないわね!)

「フフッ、気になる? 何だと思う? 『部活動』の一環よ。
 良いわ良いわ、邪魔じゃないからこっちにいらっしゃい。
 ……見上げて話すのは、首が疲れるのだわ。だから」

      チョイチョイ

       「私より一段か二段くらい下に座ってくれる?」
 
指先を階段の、少し下の段に向けてから、手招きをした。

黒羽も流石に物理的な高低差まではたいして気にしてはおらず、
話した通りの理由だ。黒羽は長身だが、男子大学生の域ではない。

692志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大三】:2020/04/02(木) 02:41:51
>>691

「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて座らせてもらうよ」

了承を得た所で、そのまま距離を詰めていく。
近付くと、『不健康らしさ』がより鮮明に分かる。
何週間も、あるいは何ヶ月もまともに眠っていないと、
こんな顔になるのかもしれない。
もしくは『何年』も。
とはいえ、足取りは確かで、急に倒れるような事はなさそうだ。

「――それで、『部活動』だって言ったね。
 調べ物でもしてるのかい?調べ物をする部活というと……」

「少なくとも『運動部』じゃなさそうだ。
 それだけだと、まだまだ絞り切れないなぁ」

階段に腰を下ろし、考えながら言葉を続ける。
学校が大きいと、部活動の種類も多くなる。
『文化部』だけでも、結構な数があった筈だ。

「ええと――『文学』とか、そういうのかな?当てずっぽうだけどね」

693黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/04/02(木) 04:03:53
>>692

(……やっぱりクマだわ! でもでも、それはいったいどういうこと?
 徹夜でテスト勉強をしても、こうはならなさそうだけど……
 大学部の『研究室』は忙しいというし、そういう人なのかしら?)

黒羽は志田の姿を一通り視線でなぞる。
不健康。どころか、見てるこちらも『不安』になる程だ。
ともかく、座った互いの視線はほとんど同じ高さになる。

「文学は、近いのだわ。
 物を書いてるし、調べ物をが必要なのもそう。
 でも……決定的に違うところがある。
 おわかりかしら…………『新聞部』よ。私は『記者』」

「フィクションは無いってことよ、フフッ」

フィクションをやらかす記者も、いるだろうが。
そのような皮肉を投げられないことを祈りつつ……

「それで、まあ……単刀直入に言ってしまうけど、
 追ってる事件があるの。私だけが仕入れた『特ダネ』!
 公表出来るかはともかく、私も知りたいビッグニュース」

「でも、調べれば調べるほど泥沼というやつね。……その事を考えてたところよ」

そんなちょっとした懸念以上に、現実の厳しさこそ黒羽にのしかかる物だ。

694志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大三】:2020/04/02(木) 10:07:05
>>693

「はは、確かに君の言う通りだ。
 新聞記事がフィクションじゃあ困る。それは大事な事だね」

だが、記者も人間だ。
時にはミスを犯す事もある。
たとえば、自分では意図せずに、
フィクションになってしまう場合もあるだろう。
そんな事を考えたが、口には出さなかった。
何となく、言わない方が良さそうだと感じたからだ。

「それにしても『特ダネ』か……。気になるなぁ」

そうはいっても、学校の新聞部員が取り上げるものだ。
まさか世間を騒がす程にセンセーショナルな内容とは思えない。
ただ、気になるのは事実だった。

「それが秘密じゃなければ、是非とも教えて欲しいな。
 行き詰った時は、『新しい風』を入れるのも悪くないと思うよ。
 関わりのない人間に話してみる事で、
 何かしらの取っ掛かりが見つかるかもしれないしね」

「もっとも僕は素人だから、大した助けにはなれないと思うけど。
 でも、ちょっとした『気分転換』にはなるんじゃあないかな」

「それはそれで、
 今まで見えてこなかった何かが見えてくるかもしれないよ」

こちらは『特ダネ』の内容を知る事が出来る。
そして、彼女も『新鮮な意見』を聞く事が出来る。
お互いに『得』があるんじゃないか――要するに、そういう話だ。

695黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/04/02(木) 22:20:53
>>694

「そうね……………『一理ある』。
 いいわ、話す。でも秘密にしていてね。
 まあそもそも、人に話して信じてもらえるかどうか」

「追ってるのは……大まかに言えば、『喧嘩』」

――――――喧嘩。

それは問題の『本質』ではない。
あくまでさわりだ……反応を見たい。

「あなた、喧嘩とか……好きそうには見えないけど。
 いえ、でも見た目で判断するのはよくないわね」

口元に振袖状に改造した袖を当てる。
『志田』は不良といった雰囲気には見えない。
優等生かどうかは分からないが…………

「一応言っとくのだわ、私も『喧嘩の強さ』とか、
 『勝ち負け』とか、そういうのに興味があるんじゃないの。
 見た目通りよ……私、暴力だけは得意じゃないから。フフッ」

「あのね、つまりね、喧嘩の『結果』じゃなくって『成り行き』に、
 すごく『気になる所』があった。ここまで……おわかりかしら?」

696志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション【大三】』:2020/04/02(木) 22:58:44
>>695

「秘密は守るよ。これでも口は堅いんだ。
 だけど『喧嘩』か……考えもしなかった単語が出てきたね」

それくらいなら、どこにでもあるだろう。
しょっちゅう見かけるようなものではなくとも、
珍しいかといえば微妙な所だ。
少なくとも、それだけでは『ビッグニュース』にはなりそうにない。

「いや、君の見立ては正しいよ。『見た目通り』さ。
 喧嘩は好きじゃないし、もちろん得意でもない」

「『運動』するのは苦手なんでね」

乾いたような笑いを浮かべながら、顔の前で手を振って見せる。
スタンドとは違い、本体の自分の身体能力は、
標準よりもだいぶ劣る。
だからこそ、何かと『イヴ』の力が役に立つ訳だが。

「成り行きというと『どうしてそうなったか』って事だよね」

「誰かが誰かにイチャモンつけたとか、そういう話かい?
 その経緯が変わってたって事かな?
 それか、喧嘩していたのが意外な人物だったとか……。
 これだと『ゴシップ』になってしまいそうだね」

思いつくままに、言葉を並べる。
ここまでの説明では、特に意外性は感じない。
重要なのは『ここから先』なのだろう。

「でも、説明は分かったよ。
 それで――『気になる所』というのは何なのかな?」

697黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/04/02(木) 23:31:43
>>696

「あ……ちなみに、私は『運動は得意』なのだわ」

不要なマウントを取ってから、志田に大きく頷いて――――

「ともかく……理解が早いのね。上等だわ!
 そう、問題は『喧嘩があったこと』ではなく、
 『なんでそんなことが起きたのか』なのだわ」

「ただ今回の場合……『喧嘩の動機』とか、
 『喧嘩をした人が特殊』とかじゃなくってね、
 『喧嘩の内容』に不可解な点があったの」

          スゥ

口に当てていた袖から、手を出す。
作っているのは『握りこぶし』だ。

「普通は、こう!」

     シュッ

それを何もない空中に突き出す。
なるほど、お世辞にも喧嘩が得意な動きではない。

「……『殴る』『蹴る』よ。いえ、場合によっては『武器』もね。
 そういうものでお互いを傷つけあうのが『喧嘩』よね。
 私も……貴方も喧嘩は苦手でも、それは常識だわ。
 でも……その喧嘩は、そこが『おかしかった』そうなのだわ」

(おかしいというか……『スタンド』の影響だとは思うけど)

「『やられた側』はね……『何もされてないのに吹っ飛んだ』そうなの。
 手で触れた訳でも、自分から後ろに跳んだわけでもなく、急に『吹き飛んだ』」

                 「――――『信じられる』かしら?」

698志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大三】:2020/04/02(木) 23:52:13
>>697

『運動が得意』という言葉には、
同意の意を込めて頷くだけに留めておいた。
短いやり取りの間で、
この少女の『傾向』が少し分かってきた気がする。
それはいいとして――。

「――おっと」

    サッ

反射的に、軽く身を引く。
いきなりだったので、少し驚いた。
年下の少女相手に情けないかもしれないが、
自分の意思ではないので仕方がない。

「それは……確かに『変わった喧嘩』だ。
 君を疑う訳じゃないけど、俄かには信じにくい話だね……。
 何か『トリック』はなかったのかい?」

「たとえば、こういう事は考えられないかな。
 喧嘩していた二人がグルで、
 周りを驚かせるために仕組んだとか……。
 いわゆる『ドッキリ』みたいなものをね」

実際には、そんな事は考えていなかった。
何よりも、『スタンド』という単語が真っ先に頭に浮かぶからだ。
しかし、それを説明するのは容易じゃない。

699黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/04/03(金) 00:20:53
>>698

「あ……ごめんなさい。乱暴、だったわね」

拳を戻し、もう片方の袖で覆い隠しながら話を続ける。

「あなた、やっぱりなかなか鋭いわね。
 もちろん、『トリック』は疑ったのだわ!
 というより……今でも可能性は『0』ではない。
 ただ、『限りなく低い』と、私は考えているの」

事態の『目撃者』はSNSにしか見つからず、
そのツイートもすでに消されてしまっていた。
具体的ではない『うわさ』程度はゲーセンで聞けたが、
『ハッキリとこの目で見た』という証言は、ほぼ無かった。

しかし、集めた噂は『一定の真実』を浮上させた。
朧げな影ばかり掴まされていたが、集まれば輪郭程度にはなる。

「『喧嘩していた二人』って、あなた言ったわよね。
 そう、喧嘩をしていたなら『二人』は最低でも『実在』する。
 ……やられた方が誰かは、すでに調べがついてるの」

それが『被害者』だ。

「……それが『誰か』は具体的には言わないけど、
 『やられた方』は、『怪我』を負っているのだわ。
 そして、それはその人の……部活動にも影響してる。
 流石に『どっきり』で済ませるには『行き過ぎ』だわ」

「もちろん……行き過ぎたドッキリでしかないものを、
 大事になったから隠してるって可能性もある。だから『0』じゃないけどね」

700志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大三】:2020/04/03(金) 00:56:00
>>699

「なるほど……。確かに『ヤラセ』とは思えないな。
 話題作りにしても割に合わない」

「『それくらいの方がリアリティが出る』とも言えるけど、
 ちょっとやり過ぎかな。
 『思ってたよりも吹っ飛んだ』のかもしれないけどね。
 それにしたって、『トリック』のタネは分からない訳だ」

「……しかし、よく調べてるなぁ。素直に感心するよ。
 裏付けが取れているんなら、その推理にも説得力があるね」

さっき目にした熱心さは本物だったという事だろう。
自信ありげな態度に見合うだけの成果を出している。
ただ、それでも結論に到達している感じはない。

「『被害者』は特定済みなんだね?
 じゃあ、『もう一人』の方はどうなのかな」

「それが特定できれば、全貌が分かるかもしれないけど……」

「そこまでは、『まだ』掴めていないって感じかな」

この少女の上を取りたがるらしい傾向に配慮して、
『まだ』を付け加えておいた。
『加害者』は、おそらくスタンド使いだ。
そうだとすれば、簡単に尻尾を出すとも思えない。

701黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/04/03(金) 01:38:44
>>700

「なにせ、『話題になってない』もの。
 話題にしたいなら自分達でSNSに上げる。
 内輪の話題にしたいんだとしても、
 被害者の知り合いとかに広まるはず」

「……フフッ! 当然、私は『新聞大会』で入賞した事もあるのよ。
 これくらいの調査は簡単だわ。ただ問題は……そう、『もう一人』」

志田の『配慮』が功を奏したか、
気分よさげに、自慢気に語る黒羽。
しかし『もう一人』――鍵が見つからない事実には声色も落ちる。

「これが、まるでつかめないのだわ。
 噂で聞いた限りで、『顔』や『背格好』が見えてこない。
 せめて、『なぜ喧嘩になったのか』が分かればね……
 『加害者側』がどういう人物像なのか、見えて来そうなんだけど。
 記事にするならせめて『動機』くらいは掴まなきゃ、価値がない」

               フゥーー ・・・

ため息をつく。
喧嘩そのものをセンセーショナルに煽る記事は、どうせ書けない。
風紀的問題になりかねないし、真相は『超能力』とはとても言えない。

が、『部活動の選手がけがをした理由』は、『スクープ』になり得る。
あるいは、単純に『記者』としての好奇心として、『調べたい』欲がある。

「……というのが、今追ってる『特ダネ』というわけ。おわかりかしら?」

702志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大三】:2020/04/03(金) 02:18:19
>>701

「よく分かったよ。どうも色々と『謎』が多い事件みたいだね。
 これを解明するのは難しそうだ」

興味深い話だった。
スタンドは役に立つ反面、
使い方によっては大きなトラブルの元になる。
どんな道具にも言える事だが、
スタンドの場合は他のものよりタチが悪い。

「僕にはアドバイスなんて大層な事は出来ないけど……。
 『別の事件』を追うなんてのもいいんじゃないかな。
 もしかすると、こういう『謎の事件』みたいなものが、
 他にもあるかもしれないしね」

「そこから、解明の糸口が見つかるかもしれないよ。
 ドラマじゃないけど、『意外な共通点』があるとか……。
 とりあえず、可能性は『ゼロ』じゃあない」

目の前で事件が起こっているのならまだしも、
『イヴ』の能力は調査には全く向いてない。
出来る事といえば、こうして口を出すくらいだろう。
それも、素人考えの域は出ないが。

「それに、一つの事に集中しすぎてると、
 無意識に視野が狭くなりがちだからね。
 別の方面に意識を向けるのも悪くないと思うよ。
 さっきも言ったけど、『気分転換』ってやつさ」

「僕も、割と気分の『浮き沈み』が激しい方なんだ。
 気が沈んでる時は、他の事に集中する事にしてるよ」
 
「たとえば『テトリス』とか。
 あれは何時間でも続けられるからね。
 運動は得意じゃないけど、
 ああいう『作業的なゲーム』は得意なんだ」

「……いや、こんなのはどうでもいい話だったね。
 ええと――要するに僕から提供できる『新しい風』は、
 こんな所かな?」

703黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/04/03(金) 22:44:26
>>702

「そう、難しいのだわ…………調べ甲斐はあるけどね」

メモ帳を閉じる。
ペンのクリップを挟む。

「気分転換をしてみるのはいいかもしれないわね。
 それに最近、この事件のことばかり調べてたし……
 記者たるもの、『新聞以外』にこそ目を広げるべきだし」

「動機は分からないけど、『人を吹き飛ばす』ような人なら、
 何か別件で事件を起こしてる可能性も……ゼロじゃないのだわ!」

志田の言葉は、黒羽にそれなりの響きを与えた。
根の詰めすぎを理解していても、実感は自分1人では得づらいものだ。

「……『進展』を焦りすぎてたのかもしれないわね。
 どちらにしても、既にそれなりに経ってる事件なんだし、
 『鮮度』を求めるよりももっと幅広い視点で探すべきだわ」

        コク…

自分の考えを噛み締めるようにうなずく。
それから、改めて志田の方に視線を向けた。

「礼を言わせていただくわね、ええと……
 そういえば、お名前を聞いてなかったのだわ。
 ちなみに私は『黒羽』よ。是非覚えておいて、損はさせないから」

704志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大三】:2020/04/03(金) 23:26:02
>>703

「役に立ったなら良かったよ。
 『困った時はお互い様』って言葉もあるしね。
 だからって、僕が困った時に助けてくれって意味じゃないけど」

「お陰で興味ある話が聞けた。
 僕も、お礼を言っておくよ。ありがとう」

    スッ

階段から立ち上がる。
その体が、僅かに揺れた。
今まで座っていたせいで、少し立ちくらみを感じたのだ。
普通なら些細な事でも、『慢性的な不眠症』の体には堪える。
しかし、どうにか踏み止まれたようだ。

          トンッ

「――――っと……」

「いや、危なかった。うっかり落ちなくて良かったよ、はは」

(……『イヴ』を使えば、落ちても安全だったんだけど――)

(ここで『新しい謎』を作ってしまうのは、ちょっと不味いかな)

「僕は『志田』だよ。
 大学部の三年生だから、
 あんまり会う事はないかもしれないけど、
 もし顔を合わせる機会があれば、その時はよろしく」

「これ以上お邪魔しちゃ悪いし、僕は行くよ。
 何か新しいニュースが見つかったら、また聞かせて欲しいな。
 僕も気になるからね」

「黒羽さん――それじゃ、これで」

軽く片手を上げ、屋上に続く階段を下りていく。
その不健康そうな青年は、こうして黒羽の前から立ち去った。
ある意味では彼の存在も、
『一つの謎』ではあるのかもしれないが……。

705黒羽 灯世『インク』:2020/04/04(土) 01:06:17
>>704

「助けることはできると思うのだわ。私ならね。
 ま、新聞記者として出来ることに限るけど……
 ええ……それじゃあ、またどこかで。志田先輩」

       ヒラ…

「ああ……大学部は研究とかで大変だそうだけど、
 お身体には気をつけて。それだけ伝えておくのだわ」

袖を軽く振り、背中を見送る。
謎なところもあったが、概ね『良い出会い』だった。
調査そのものの進展だけが、良い記事を育てるものではない。

706白町 千律『ハード・タイムス』:2020/04/09(木) 00:50:31

『そいつ』は、『有名』だった。

        ピコン

頭頂部のアンテナのように立った髪。
バツ印のような形のヘアピン。
見開いたような、ぱっちりした目。

その他は没個性な、黒髪をショートカットにした少女だった。
だが、それらの『記号』で十分なほど有名だった。

「…………」

『風紀委員会』の『高等部3年生』――『白町 千律』は『有名』だ。

                  モク   モク …

『アジフライ』『野菜のお浸し』『味噌汁』を、
三角を描くように順に食べる彼女の周囲は、席が空いている。

707シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/04/12(日) 01:35:12
>>706

       ト ン

白町の正面に一人の女子生徒が座った。
両手で支えていたお盆を、テーブルの上に置く。
青みがかった短い髪。
やや濃い色合いの青い瞳。
そして、『燕尾服風』に改造した制服が特徴的だ。

「――――?」

(『この人』……どこかで見たような……)

(あっ!も、もしかして……。
 高等部風紀委員の『白町千律先輩』!?
 何だか、すごく『厳しい』って噂を聞いたことあるけど……)

(でも、今から別の席に移るのは失礼だよね……)
 
(――うん!笑顔で挨拶しなきゃ!)

「こんにちはっ」

        ニコッ

          ツヅラシルク
その生徒――『黒葛純白』は笑顔で会釈する。
『合唱部』に所属する『中等部三年』の彼女は、
『ある理由』から一部で有名だった。
『同様の理由』で、『高等部の合唱部』からも、
その存在をマークされていた。

708白町 千律『ハード・タイムス』:2020/04/12(日) 02:37:46
>>707

「こんにちは」

        コト・・・

まず、白町は箸をゆっくり置いた。
アンテナのような髪を揺らし、顔を上げた。
声色は澄んでいて、よく通る。

「『素晴らしい』!」

          パンッ

そして小さく手を打った。

「なんて……素晴らしいんでしょう。
 とてもいい挨拶。それに、いい笑顔です。
 会釈だけで済ませず、ちゃんと声と顔に出すその心がけ!
 わたくし……あなたを、好きになれそうです」

笑顔だった。見開いたような目が、爛々と輝いていた。
自身のお盆を少し下げて、『シルク』に大きくスペースを貸しながらだ。
親切な人柄、なのだろうか? 恩を着せるようなそぶりも無い。

                  ――――が。

「そんな素晴らしいあなた、だからこそ」

バツ印のような髪飾りが、電灯の反射できらり、と光る。

「――――――まだまだ『是正』の余地があると、思いませんか?」

少なくとも噂通り……『厄介』な側面があるのは、間違いなさそうだ。

「わたくしは思います。あなたのさらなる『是正』には、
 この場合……『相席いいですか』と一応聞くのが良いですね。
 学食の席は紛れもなく全員のものですが、無用なトラブルを避けられます」
 
「ちなみにわたくしの答えはもちろん『良い』ですよ。ゆっくり、お昼ご飯を楽しんでくださいね」

そして、『シルク』の持つ、ある種の『伝説』については、どうやら知らないと見ていい。

709シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/04/12(日) 03:06:09
>>708

「あ、ありがとうございます」

(良かった。『噂』は、やっぱり『噂』だったんだ)

  ホッ

向けられた言葉と笑顔に緊張が緩む。
肩の力を抜き、安心して食事に取り掛かろうとした。
しかし、釘を刺すように続けられた忠言に、身体が強張る。

「――はっ、はい。ごめんなさいっ」

ほとんど反射的に頭を下げる。
若干、怯えたような表情が浮かんだ。
しかし、気を取り直してどうにか持ち直す。

(や、やっぱり怖いぃ……。ど、どうしよう……。
 近くの席にいたら、もっと注意されちゃうかも……)

(ううん、怖がっちゃダメ。
 悪いのは私なんだし、注意されたら直せばいいんだから!)

「『指導』ありがとうございます。これから気をつけますねっ」

しっかりとお礼を言ってから、改めて食事を始める。
最初に箸をつけたのは、『豚の生姜焼き』だ。
ご飯の量は、どうやら『大盛り』らしい。

     パク パク パク

(うぅ、静かなのも怖いよぉ……。
 な、何かお話した方がいいのかな?)

「あの……『白町千律先輩』ですよね……?
 『高等部三年生』で『風紀委員』の……」

おそるおそるといった調子で、再び声を掛ける。
注意されるのは怖いが、されないのもそれはそれで怖い。
どことなく、『無言の圧力』のようなものを感じるのだ。

710白町 千律『ハード・タイムス』:2020/04/12(日) 20:16:15
>>709

「すぐに謝れ、礼を言える……『素晴らしい』!
 あなたはとても、礼儀の良い人のようですね。
 わたくし、ますます好きになってしまいます」

       ニコォ

「でも、どうかもっと好きにさせてくださいね」

                サクッ

アジフライを箸で二つに裂きつつ、笑みを浮かべる。

「わたくしをご存知だったのですね。嬉しい。
 あなたの言う通り、わたくし、『風紀委員』の3年。
 白町 千律(しろまち せんりつ)なのです」

噂はあくまでも噂。
厳しい風紀委員……『それだけ』でも無さそうだ。

「でも、わたくしはあなたのことを知りません。
 よければ『是正』の機会をくださいますか?
 お名前を……ぜひお名前だけじゃなく、自己紹介を。
 例えば、その『豚生姜焼き』……お好きなのですか?」

「ちなみにわたくしは、『アジフライ』が好きですよ」

   サクッ

箸使いは丁寧で、二つに裂いたそれをまた分割したのだ。

711シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/04/12(日) 21:00:14
>>710

「は、はいっ。そ、その……」

「――ありがとうございますっ」

褒められてはいても、何となく素直に喜べない。
『笑顔』が怖い。
その裏側に、『何か』があるのではないかと思ってしまう。

(自己紹介――とっても大切なことだよね)

(よしっ、頑張ろう!)

「私、『黒葛純白』です」

「『中等部三年生』で、一年生の時から『合唱部』に入ってますっ」

自身の所属を語る両目は輝いていた。
おそらくは、歌うことが好きなのだろう。
話が食事内容に向かうと、手元の皿と相手の皿を見比べる。

「運動部ほどじゃないですけど、歌うことも結構体力を使いますからっ。
 だから、『スタミナがつくもの』や、
 『ボリュームがあるもの』を食べてることが多いかもしれません」

「実は、時々運動部に『助っ人』で参加することもあるので……」

「そういう時は、いつもよりお腹が減っちゃいますねっ」

    ニコッ

部活動のこともあって、普段からよく食べる方だ。
『並』と『大盛り』と『少量』があれば、大抵『大盛り』を選ぶ。
つい食べ過ぎてしまうこともあるのだが、それは言わないでおいた。

712白町 千律『ハード・タイムス』:2020/04/13(月) 00:48:16
>>711

「『合唱部』ですか。
 『調和』を重んじる、良い部活ですね。
 わたくしも、好きですよ。『合唱』するのは」

           ニコォ…

「わたくし、『集団競技』が好きなのです。
 合唱は『競技』とも違うかもしれませんが、
 皆で一丸となって一つの目標に向かう。
 それがとても……素晴らしい。そう思うのです」

白町は『部活動』に参加してはいない。
『風紀委員』としての活動のみで知られている。

「だから『豚生姜焼き』……確かにスタミナが付きますね。
 とても丁寧に答えてくれて、ありがとう。わたくし嬉しいです」

「シルクさん。ぜひ、よろしく、お願いしますね」

笑顔の裏に何があるのかは分からないが、
とりあえず、その言葉には裏が無いようだった。

          スッ

「ちなみに、わたくしが『アジフライ』を好きなのは……美味しいからですよ」

                   ドボ…

そしておもむろにカバンの中から『中濃ソース』を取り出し、フライの一片に掛けたのだった。

713シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/04/13(月) 10:15:05
>>712

「はいっ。私、『歌』が大好きですから!」

声色が弾む。
『共感』を示されたことに喜びを感じた。
厳密には違うかもしれないが、
それでも嬉しいことには変わりない。

「こちらこそよろしくお願いします、白町先輩っ」

「あっ、『アジフライ』も美味しいですよ――」

「――ね……」

笑顔で返していたものの、
『鞄から出てきた品物』には驚きを隠せない。
フライにソースをかけるのは普通だ。
ただ、それを『持参する』というのは珍しい。

(あ、あれって『ソース』!?
 すごい……『持ち歩いてる』なんて……!
 ビックリしちゃったけど……顔に出したら悪いよね……)

(――――うんっ!こんな時こそ『笑顔』でいなきゃ!)

「『ソース』、合いますよねっ。
 お父さんも、フライにソースをかけるのが好きなんです」

        ニコ ニコ

内心の『葛藤』はありつつも、シルクは笑顔を崩さない。
中濃ソースから視線を移し、『フライの行く末』を見守る。
そして、『大盛りのご飯』は、既に半分ほどが消えていた。

714白町 千律『ハード・タイムス』:2020/04/14(火) 13:30:57
>>713

「好きなことに打ち込むのは素晴らしい……
 『練習』『試行』その繰り返しでもっと好きになれる。
 わたくしにとってのアジフライも、そういうものです」

「学食に置いてあるのは、しょうゆとソース。
 ですが、わたくしは……」

         キュッ

「『このソースが良い』」

              ゴソ

「――――『このソースも良い』」

       コト

中濃ソースのふたを閉め、カバンに戻し、
そして……入れ替わるように『タルタルソース』を出す。

「学食に、変わっていただくのは難しいでしょう。
 わたくしの好みだけで、システムを変えろというのも、
 はたしてそれは、『是正』と言えるのかどうかは熟考が必要。
 ならば、『わたくしが持参すれば良い』……『是正』しました。
 『システムが変わるより個々人が変わる方が早い』」

「ちなみに……『タルタルソース』は自家製なのです。ククッ、味もまた『是正』済み」
   
                     ウットリ

『白町 千律』は『有名』だ――――『厳しい風紀委員』であり、
もう一つ、『是正精神』に由来する『奇行』についても、一部では知られている。

「お父さんとは、わたくし、ご趣味が合いそうですね。
 あなた自身は、しょうゆか塩の方がお好きですか?」

そう問いかけてから、切ったフライの一片――――ソースを掛けたそれを口に入れた。

715シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/04/14(火) 15:50:17
>>714

(こ、この人……何だか『変』……!うぅっ……怖いよぉ……!)

(――ううん……。きっとよく出来た人なんだわ。
 だって、そうでしょう?
 『自分の都合で周りを巻き込む』のは悪いことだもん!)

(もしそんな人がいたら、きっと沢山の人に迷惑がかかっちゃう。
 私も、『ちょっとどうかな』って感じると思うし……)

シルクは、部内の誰よりもひたむきに、歌うことに打ち込んでいる。
しかし、実力は『最底辺』であり、その歌声は人を不快にさせる『ノイズ』だ。
だが、なまじ純粋なだけに、後輩も同級生も率直な『本音』を言えなかった。
彼女自身も、自分の実力が高くないことを知ってはいる。
だが、本人の認識する実力と実際の実力には『計り知れないズレ』が存在した。

「わ、私ですかっ?えっと――――」

「『これ』が好きなんですけど……」

視線の先には、備え付けの『マヨネーズ』があった。
それを手に取り、半分ほど残っている生姜焼きにかける。
高カロリーに高カロリーの『上乗せ』だ。

「こうやって、途中で味を変えるのが好きなんです。
 えへ……何だか『お得』な感じがしませんかっ?」

      パクパクパクパクパク

食事のペースが上がる。
別に時間を気にしている訳ではない。
ともかく、もうじき食事が終わりそうな気配だ。

716白町 千律『ハード・タイムス』:2020/04/14(火) 17:45:37
>>715

「『最後まで美味しく食べる』努力、『素晴らしい』!
 それに、カロリーを継ぎ足す……ますます『素晴らしい』!
 『合唱』のために『スタミナ』を補給する熱意を感じます。
 あなたの『お歌』、わたくしにいつか聞かせてくださいね」

笑みを浮かべる。
白町は『知らない』……『計り知れない』その歌声を。

『野菜のおひたし』を手元に引き寄せる。
白町の食べるペースは一定。

「このおひたしも、お醤油をもう少し足せばもっと『素晴らしい』」

             ドボ

「ただ……シルクさん」

「そう急いで食べては喉に詰めてしまいます。
 わたくし、あなたの健康のため『是正』をお勧めします」

            ス…

なぜ食べるのが早いのかは聞かない。
気にしていない、のかもしれない。 

「たくさん是正をして、『正しい真っ白』な人間になりましょう!」

      「例えば、そう、わたくしのように……ふふ、くふ……」

そして強硬に止めるようなこともしない・・・すぐに食べ終われるだろう。

717シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/04/14(火) 21:34:32
>>716

「はい!白町先輩に聞いてもらえたら嬉しいですっ。
 私、まだまだ『上手くない』ですけど――――」

「先輩に聞かせられるように、
 もっともっと『練習』しておきますねっ!」

前向きな笑顔で、『決意』を新たにする。
ここに合唱部の部員がいたなら、
苦い表情をしたかもしれない。
そんなことは関係なく、
シルクは張り切って部活動に精を出すだろう。

「ごっ、ごめんなさい!」

(ま、また注意されちゃったよぉ……。
 私って、やっぱりダメな子なのかなぁ……)

(大丈夫、一つずつ直していけばいいの。
 この世に失敗しない人なんていないんだから!)

「ありがとうございますっ。
 早く食べ過ぎるのは良くないですよね。
 私、反省します!」

        モグ モグ

食事の終盤になると、どうしても早くなりがちだ。
喉に詰まらせたことはないが、今後そうなることもありえる。
『指導』を受けて、素直に食べるペースを落とす。

「『正しい真っ白』な人間…………」

「私の名前、『純白』って書いて『シルク』って読むんです。
 多分『清らかで真っ白な人になって欲しい』っていう意味で、
 つけたんだと思うんです」

「――――だから、
 私も先輩みたいになれるように頑張りますねっ」

        ニ コ ッ

箸を置き、一片の曇りもない『純粋な笑顔』を向ける。
黒葛純白は、ひたむきで純粋で前向きで、決して挫けない。
だからこそ、合唱部員達にとって、
シルクは『お荷物部員』なのだ。

718白町 千律『ハード・タイムス』:2020/04/14(火) 23:41:11
>>717

「謙虚かつ、努力を忘れない心構え……本当に『素晴らしい』!
 わたくし、あなたのことを今日一日で、とても好きになりました」

           ニコォ・・・

「そう、反省できるあなたも、素晴らしい……!」

             …ズズ

「……んん」

味噌汁を啜る。
その間も、見開いたような目が黒葛に向いている。

「そうですね、わたくしにはなれませんが、
 あなたならきっと『純白』に近付けるでしょう。
 わたくし、信じております。そして応援いたします。
 あなたの親御さんと同じくらい、わたくしも祈りましょう」

「それこそが、わたくしの『使命』なのですから!」

一滴の墨も落ちない、『純白な笑顔』で返した。
白町千律は『ひたむき』で『純白』で『前向き』で、『決して挫けない』。
だからこそ止まる事のない『是正』で、千律は『有名』なのだ。

「どちらにしてもシルクさんは、そろそろ『御馳走様』ですね。
 わたくしはまだまだかかりますので、ぜひお先にどうぞ。
 わたくし、あまり人を待たせるのは、好ましくないと思うので」

「そうそう……『食後の歯磨き』も、ぜひ忘れないでくださいね!」

この、どことなく『厄介な感じの存在』との出会いが、
黒葛純白に何をもたらすかは……『異次元人』でさえ、知る由は無い。

719シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/04/15(水) 00:52:46
>>718

「――ご馳走様でしたっ」

もし『この二人を見ている者』がいたとしたら、
両者の間に『奇妙な相似』を見出したかもしれない。
一つは『純粋』であること。
二つ目は、それゆえに『厄介』な存在であるということだ。
露骨に悪意があるのなら、『まだマシ』というものだろう。
この場合、『悪意がない』のが最もタチが悪い。
だからこそ、お互いに引き合ってしまったのだろうか?
『主な生息場所』が別々なのが、『不幸中の幸い』と呼べる。

「じゃあ、お先に失礼しますね。
 お話できて楽しかったですっ」

    ガタ

食事を終えたシルクは、お盆を持って席から立ち上がった。
しっかりとエネルギーの補給を済ませている。
これで、『午後の練習』も元気にこなせるだろう。
『合唱部』の人間にとっては気の毒な話だが、
裏を返せば『被害が最小限になっている』とも言える。
いわば『防波堤』のようなもの。
『同情』を禁じえないが、
そういった者が存在するのは『事実』だ。

             ワ    タ     シ
例えば――――この『トワイライト・ゾーン』のように。

「はいっ、忘れません!」

「――白町先輩、ありがとうございましたっ」

『ワタシ』の存在は、『次元の防波堤』。
『ワタシ』が『シルクの歌』を受け止め、
『別の次元』に被害が『飛び火』することを妨げている。
そのように考えれば、
今の状態にも多少の価値が出てくるかもしれない。
逆に言うなら、そう思わなければ『やっていられない』。
誰かが代わってくれるのを願ったこともあるが、
『無駄な努力』だと悟るのに長い時間は掛からなかった。
その時間は、
『自らの運命を呪うために費やす』方が建設的だ。
それさえも飽きてしまったが。

「また、どこかでお会いしましょう。
 ちょっと恥ずかしいですけど、
 その時は『歌』をお聞かせしますねっ」

笑顔で『怪音波を撒き散らす』ことを宣言し、
シルクは立ち去っていく。
『ワタシ』には、それを止める手段はない。
もしあったなら、とっくにやっていただだろう。
出来るのは、『被害者』が増えるのを見守ることしかない。
『悲哀と悲愴の極み』――――
現在の心境を、『ワタシ』はそのように表現した。

720白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/04/21(火) 23:11:28

           チュン


風紀委員の主な活動に、『あいさつ』がある。
登校時間――――一般的な生徒の登校時間に、
正門の前に立って『あいさつ』をする。

          チュン



「…………」


現在時刻は『一般的な生徒の登校時間』ではない。

                     チュ ン

『部活動』などの『朝練』の時間に、そいつはすでに立っていた。
跳ね毛気味のショートカット。特に、アンテナのような一房。見開いた眼。

何を意味するのか分からない笑顔で、立っていた・・・

721逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/04/24(金) 00:12:53
>>720
『風紀委員会』の『高等部3年生』――『白町 千律』は『有名』だ。しかし、この男は知らない。
これが彼にとって初登校なのだから。

(『ガンジャ・バーン』が生えっぱなしだけど、まぁ、いいか)

一家心中が起きた果樹園の跡地など買い取る者は現れず、今では心霊スポット扱いだ。
食べた鼠が支配下に置かれるだけの無害な花畑なんぞ気にもされないはずだ。

(誰かと待ち合わせしてるのかなぁ?)

逢瀬泰葉は白町千律を見るなり来た道を逆走すると数分後、目薬を片手に戻って来た。
かなり不審な行動だ。それに見なれない顔。
伸び放題の髪から見える頬の火傷。
どう考えても逢瀬泰葉は怪しい奴にしか見えないだろう。

722一ノ戸 鳴『ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ』:2020/04/24(金) 00:25:32
>>720

 「………」

      チラッ (目が合う)
  
    「… ……」 トコ トコ 

『風紀委員』の前を無言で通り過ぎる小学生男児。
『清月学園小学校』『3年生』『一ノ戸 鳴』の名札。ドクロの描かれた野球帽。

723白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/04/24(金) 00:54:17
>>721(逢瀬)

初登校の人間は『知らない』。
白町もまた、彼を『知らない』。

「――――おはよう、ございます!!!!」

ファーストコンタクトは、そのよく通る『声』が成立させる。

「『忘れ物』を、思い出されたのですか?
 お早い登校だから『取りに帰れる』……『素晴らしい』事です」

           ニコォ ・・・

「もちろん忘れ物をしないのが、より素晴らしい事です」

間違いようもなく、『逢瀬』に話しかけている。
もう一人、『小学部』の生徒も今『登校してきた』ようだ・・・

>>722(一ノ戸)

「おはよう、ございます!!」

         ニコォ

笑みを浮かべて『挨拶』をする。

「お早い登校、『素晴らしい』…………!
 でも、『挨拶』が出来ればもっともっと『素晴らしい』」

             「そうは、思いませんか?」

挨拶をしないという事は『是正の余地がある』という事。
もっとも、この世に『是正の余地がない』ものなんて存在しない。

724逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/04/24(金) 01:39:09
>>723
「おはようございます。『忘れ物』じゃなくてコンビニまで目薬を買いにね?」

「立ったまま目を見開いてるから目が乾いてそうだな、と思って目薬を君に」

数年間も植物人間となっていたが性根は変わらない。
来た道を逆走してまで目薬を買いに戻る異常な真面目さは人からすれば、不気味に見えるだろう。

「ずっと眼を見開いて乾かないかな?
 うーん、そうでもないかなぁ?」

「自分はドライアイだから目が乾くつらさを知ってるし、だからといって自分が使ってる使用済みのを渡すのも良くないと思ってね」

押しつけがましいかもしれないが思い立ったら即行動。
新品の目薬を白町に差し出す。

>>722
髑髏帽子の男の子をチラッと見る。
かつての自分を見ているようで胸が苦しくなる。
過ぎ去った時は戻らないのだ。

「おはようございます」

少し柔らかい声で挨拶をしよう。
大きな声を出しては要らぬストレスを与えてしまうだろうから。

725一ノ戸 鳴『ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ』:2020/04/24(金) 02:27:24
>>723(白町)
「…………」
「そうかもしれませんけど」
「なんか 先生でも親でもない人に、そんな事言われても…みたいな」

ズボンに手を突っ込みながら『めんどくせ〜〜〜〜〜〜っ』って顔をしている。

>>724(逢瀬)
「ひゅっ!?」

髑髏帽の男児、一ノ戸は、
『顔面に火傷跡の残るやばそーな奴』に『睨まれて』(一ノ戸にはそのように見えた)
目をまんまるにしながら、ビビっている。

「お、おあようございます…」

726白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/04/24(金) 03:17:48
>>724

「あら、そうだったのですか。
 わたくしとしたことが誤解を……
 『是正』、しなくてはなりませんね」

         ペコ

「でもそれじゃあ、わたくしのためにこれを」

            ギュッ

「なんて」

両手で目薬を受け取り、
胸元で『祈る』ようにそれを握る。

「なんてっ。なんて『素晴らしい』んでしょう……!
 事態に気付き、己の力で助ける『思いやり』の気持ち。素晴らしい。
 わたくし、感激です。あなたのことを、好きになってしまいます」

そして、笑みを浮かべていた。

「この『目』は生まれつきのようなもの……疲れはしないのです。
 ですがお気遣いの『プレゼント』、ありがたく受け取ります。
 無論『風紀委員』としてではなく、個人として。わたくしとっても嬉しいです」

贈賄は受け付けない。そういうのは『是正』すべき悪習だ。が『贈り物』を喜ぶ感性はある。

>>725

「『知らない人の言うとおりにはしない』……素晴らしい警戒心。
 ですが……一つ認識を是正しなさい。わたくし、『風紀委員』です。
 このあいさつ運動は、委員会として、『先生に頼まれてやっている』のです」

「もちろん、強制する力は、残念ながら、今はありませんが」

目薬を手で弄りながら少し視線を低くして、そのように語り掛ける。
一ノ戸の露骨な顔にも、表情は笑みから変わらない・・・ 

「ですが、良いですね。ちゃんと挨拶が出来ました。
 ますます素晴らしい……あなたの事も、好きになれそうです!」

挨拶をした『理由』は問わないのか、気付いていないのか。

>両者

「お二人とも、素晴らしいあいさつでした。
 もっともっと『是正』していくためにも、
 これからも毎朝、挨拶を積み重ねましょう」

『風紀委員』――――そう口にした少女は笑みを浮かべる。
『初対面』の二人の顔を見渡しながら。

「ちなみに今朝は『朝練』ですか? それとも『自習』でも?
 雑談のようなものですので、お急ぎでしたらどうぞ、お通りなさい」

まさしくとりとめのない雑談、という風に話を振る。厄介者も人の子だ。

727逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/04/24(金) 21:17:46
>>725
「おっと、怖がらせちゃったか」

出会う相手全員にギョッとした顔をされるのも慣れてしまった。
身体は高校生でも精神面は小学卒業時から変わらない。
ほんの少しだけ寂しい気分だ。

「実は精神年齢は君と同じだよ。事故で身体だけが高校生になるまで寝てた、って言っても信じてくれないかぁ…」

「今も特撮が好き。20周年を迎えてるのには驚いたよ」

>>726
「ちょっと羨ましい。威圧感があるけど個性的で可愛いと思う」

「笑顔は大事だし、好きなものに好きと言えるのは見習わないとね」

にっこり笑ってみるが火傷を見て嫌な顔をされないだろうか?
果樹園を兼ねた家の焼け跡に出る悪霊の噂は自分のせいだし、『ガンジャ・バーン』を食べた鳥が居るからUMA出現の噂まで出回っている。
火傷さえ無ければ…

「うーん、日が当たれば起きる体質だから来るのが早くてね」

「みんなより早目に登校しちゃえば、誰も火傷を見て不快な思いをしない」

728一ノ戸 鳴『ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ』:2020/04/24(金) 22:54:33
>>727
「えっほんと!!?ぼくは……!!」
「……いや、特撮なんて子供の見るものでしょ 僕は見ないね」

風紀委員に渡した目薬とか、火傷痕の凄惨な顔を見たりする。

「変わったお兄さんだなあ」
「ぜんぜん 喋り方とかも小学生っぽくないし。ウソついてない?」

>>726
「『フーキイイン』?」

(なんだかわからないけどすごいのかなあ)

「僕は、『カギ係』」
「他の子よりずっと早く来て、教室を開ける」
「よそのクラスは知らないけど。僕のクラスは、そういう係決めになってる」

「この時間だと友達はいないけど。
 花に水やったり。授業の宿題やったり。 
 あと、スマホでアラキンの動画見たり……あっやば!!!」

『フーキイイン』は『先生』と『繋がってる』!
小学部のスマホの持ち込みは校則違反だった。没収か!?

729白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/04/24(金) 23:45:02
>>727

「ふふ……たくさん褒めてくれるのですね。
 くふっ、わたくし、とても嬉しいです!
 ぜひ、お互いの『良い所』を見習い合って、
 『是正』の『ウィンウィン関係』を作りましょう」

嫌な顔どころか、誉め言葉は素直に受け取る。
その威圧感のある目は『火傷』に向いたが、
やはり『畏怖』も『奇異』もそこには無い。

「例えばそう、その『気遣い』も素晴らしい……!
 『周り』に『配慮』を求めず、まず自分が『動く』。
 あなたはとても、気を遣える人なのですね!
 わたくし、感激です。『感銘』を受けてしまいそう」

「もちろんわたくしは一切『不快』とは思いませんが、
 誰もがわたくしのように振舞うとは限らない。
 かといって一人一人に説いて回ったとして、
 それが実を結ぶとは限らない…………
 『環境を変えるより、自分を変えた方が早い』!」

      「わたくしは、あなたの行動を支持します!」

>>728

「『カギ係』……とても重要な役目を、任されているのですね。
 『信用』され、それに応えることが出来ている……素晴らしい!
 わたくしも、そのように『信用のおける』風紀委員でありたいです」

「ちなみに、風紀委員は『毎日の学校生活を是正する』ための委員会」

スマホ、という言葉に、見開いた眼が光る。
心なしか、『バツ印』のような髪飾りも陽光に照った気がした。

「『スマホ』……『小学部』では……『スマホは持ち込み禁止』」

「そういう、ルールになっているのです。
 このご時世、『スマホ』の1つくらい持ち歩く方が、
 『迷子』の防止にもなり『安心』というご家庭もありますが、
 『ルールを変えるよりは個々が変わる方が早い』……『是正』すべきなのです!」

            「……『今日もスマホを持っているんですか?』」

>逢瀬

どうやら『一ノ戸』が目を付けられたようだ……『助け舟』を出すべきか、どうか。

730逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/04/25(土) 00:45:03
>>728
「そっかぁ。最近は見るのが深夜帯に移動しちゃったのかな」

顔と態度の露骨さが微笑ましい男の子だ。
この年頃になると自立心が芽生えて背伸びしたくなるものだ。
昔の自分も同じだったのだろうか。

「えっ、なにそれは…」

「先生がサ…あっ、いや、君が信用されている証拠だね!」

自分が小学生の頃に『カギ係』なる役割が存在したか?
先生の怠慢じゃないだろうかと思ったが余計な事は言わない方が良いだろう。

「スマホ? あぁ、携帯電話の新しい奴だね。最近はLINE? SNSだっけ? 先生と生徒が連絡を取り合うのに使ってるんだよね」

「『カギ係』だから特例かな? 『今日も』って事は『毎日』だよね。流石にずっと見逃すほど先生たちは無能じゃない」

「音楽室とか体育館を使う移動授業の時も頼まれてるの? 先生が遅れたりする時にスマホで連絡を取り合うのに使ってるんだね?」

「そうじゃない場合は没収で」

真面目に『カギ係』目線でスマホの用途を考察しながら確認する。
擁護するでもなく、批判するでもなく、ほぼ『中立』なスタンスを示す。
ただし、骸骨帽子の男の子寄りの『中立』だ。
この世に完全な中立など存在しない。それを自覚しての確認。
ちなみに没収提案も本心である。

>>729
「うーん、『ウィンウィン関係』というより相手の良いところを褒めたり探すのは人間として当たり前じゃないかな」

「悪い点から先に探すと粗探しに心理が向いてしまう。逆に良い点から先に見つけることで悪い点が見えてくることもある」

「あなたのスタンスと同じだ。私を『恐怖』の対象として見るより褒める点を見つけてくれた」

逢瀬は真面目だが規則などよりも自分の『納得』と感性で物事を判断するタイプだ。
器用に立ち回ってるように見えるが裏が無い。

「ビジネスっぽい視点じゃないというか。説明が難しいなぁ」

が、同時に所詮は身体だけが育った小学生。
肝心なところで詰めきれない。駄目駄目である。

731一ノ戸 鳴『ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ』:2020/04/25(土) 01:45:20
>>729(白町)
小学生は一瞬目を白黒させていたが、すぐに落ち着きを取り戻す。

 「前は持ってきている日もありましたけど 反省しました」

 「今日は持ってませ―――――」

>>730(逢瀬)

 「――――!?!?!?」

(『持ってません』と言いにくい雰囲気にされた!?!?)

 「もってま…」
 「ませ…まし……まそ…」

実際、一ノ戸は今日もスマホを持ってきていた。
人気動画配信サイトとか、そういうのを見るために…。
しかし、『持ってません』とシラを切ることでなんとかしようとしたのだ……

 「持って」

火傷顔の年上をチラリと見る。


  「『ます』」
  「もちろん、そこのおニーさんの言うような事情で。
   遊ぶためとかではないです」

(信じるぞ…しんじるからなーっ!!)
(『ウィンウィン関係』だからなーっ 意味はよくわかんないけど…)

732白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/04/25(土) 23:43:18
>>730

「人のいい所を、当たり前に探せる。それは美徳なのです!
 それを、意識して行うことが出来ている……
 『無意識でやっている』のと同じくらい、素晴らしいです!」

「それは自分を『是正』、出来ているのですから」

褒める。褒める。
とにかく褒める。

「もちろん、より具体的に『説明』が出来ればさらに良いですね。
 わたくしにも、あなたの考えの全てが理解できたわけではないですし。
 もっと『良い説明』が思いついたら、ぜひまた聞かせてくださいね!」

そして『是正』を勧告する・・・そういうタイプなのだ。

>>731

「ませ?」    「まし」  「まそ」

             「ます?」

怪訝そうに見つめている。
見開いた眼で……だ。『様子を見守る』。

「なるほど……『公益』のために、許されているのですね!
 『クラス全員』だけでなく、『学級』の『公益』のためですね。
 『警官』は『銃』を持てるのと同じ、『必要』な『特例』は認めるべき」

「やはり、あなたはとても、『信用』されてるんですね!
 わたくし、その『献身』の姿勢に感心しました。
 ならば、わたくしもあなたを『信用』しておきましょう」

どうやら『見逃された』ようだ。
笑みを深め、覗き込むように『一ノ戸』を見ている。

「ちなみにわたくしも、『持ち物検査』などを『特例』で認められてるのです。
 『持ってません』と言っていても、『確認』させてもらっていたところ……」

        「だからこそ、正直に答えたあなたは素晴らしいのです!」

・・・『持っている理由』については、若干の疑いを残しているようでもあるが。

733逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/04/26(日) 01:25:37
>>731
「君は鍵を任されてる。鍵を持つという事は他の子達を支配してるようなものなんだ」

「君は自分が思ってる以上に偉い立場にいる。自覚を持つべきだよ」

そんなに重い役目ではないが迂闊な行動をしないようにと釘を刺す。
まぁ、最低限の立ち回りが出来るなら大丈夫だろう。

「もっと『成長』するのが楽しみ。お名前を教えてくれないかな?」

にっこりと微笑みながら少年の頭を撫でる。
自分にも弟が居れば、こんな感じだったのかもしれない。


>>732
「それにしても『風紀委員』だからって朝っぱらから生徒を立たせるのは良くないね。生徒側の負担だけ大きくないかな?」

「『不良』とか怖くない? うーん、私の時代と違って不良なんか『絶滅』しちゃった?」

昔は上級生が爆竹を教室に放り込むだの、卒業生がバイクでグランドを好き放題に走るって話だけは聞いたことがある。
勿体無い。彼等が『絶滅』する姿を見たかったな。
その『瞬間』は、きっと美しいだろうから。

「そういえば、名前を聞いてなかった。私は高校三の逢瀬泰葉」

「『風紀委員』さんって呼ぶのも失礼だから最後に名前だけ聞きたいね」

彼女だって『破滅』は絶対に避けられない。
しかし、これ以上は無いという時を迎えるまでに『破滅』されては困る。

「もしかしたら助けになれるかもしれないから」

734一ノ戸 鳴『ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ』:2020/04/26(日) 02:32:44
 >>732(白町)
  (『信用』された…)
  (…ふつう『銃』の例えとかする?)
  (ずっと目がギラっとしてるし 怖いな)

 「…はい、クラスのための特例です 
  ありがとうございます…正しい使い方をします…きをつけます…」

 見開いた目の女子高生に覗き込まれて、
 ちょっとビビって帽子を目深にかぶる。


 >>733(逢瀬)
 「え、言いたくない 名前」

  (『支配』とか言われても)
  (うーん この火傷オトコこわい…勝手に撫でてきたし)

 「教えない!!」

 ちなみに、清月学園の校則で、小等部の学生は胸に名札を付ける事になっている。
 『3年│組 一ノ戸 鳴』と書かれたものが留められていた。


なんか…『極端な時のどうとくの授業』みたいな空気の二人だな…
高校性ってみんなこうなのか?大丈夫か清月学園。

735白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/04/26(日) 23:24:22
>>733

「わたくし、『白町 千律』という名前です。
 『逢瀬さん』、ぜひ、よろしくお願いします。
 あなたとは『素晴らしい』関係を築けそうです。
 そちらこそ、『是正』が必要でしたら教えてくださいね」

はじめに、自己紹介を返す。
それから心配の言葉に、両手を胸の前で合わせ、笑う。

「ふふっ……ご心配を、してくださるのですね!
 その配慮の心、わたくし『感激』を禁じえません。
 あなたのことは、どんどん好きになってしまえますね。
 ですがこの時間に立っているのはわたくしの意志!
 他の委員や、生徒指導の先生は、もう少ししたら来る事でしょう」

「それに、『不良』は――――」

「逢瀬さん、ぜひ覚えておいてほしいのです。
 いえ、『覚えておきなさい』。
 わたくしは、『完璧な風紀委員』……」

「つまり……ククッ。遭遇を恐れるなら、それは『彼らの側』です」

白町は鈍そうではないが華奢で、決して『武闘派』には見えない。
だが、言葉には確かな『自信』が見えた。『何かあるのかもしれない』。

>>734

「いいお返事です、『素晴らしい』!
 素直なのは美徳、わたくし、素直が好きです。
 『逢瀬さん』の言う通り、『成長』が楽しみですね!
 『公益』に報いるためにどんどん己を『是正』し、
 学年、いえ、小学部一の『カギ係』を目指しましょう!」

「よろしく、お願いしますね」

名前を呼ばないのは、『偶然』なのか、
それとも名乗っていないからなのか。

見開いた眼が笑みに、若干の歪みを帯びたようだった。

736逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/04/27(月) 06:19:24
>>734
「一ノ戸 鳴君だね? 私は『超能力者』なんだ。君の考えが分かる」

「…というのは嘘。半分だけね」

私が『ガンジャ・バーン』と名づけた奇妙な花。
ただ、あれが自分の精神に由来する力であると不思議な確信めいたものがある。
ちょこちょこ研究する度にヤバい成果を得て、取り扱いに困っているものの、相談できる相手の心当たりも無し。
同類が存在したところで味方と限らないので気長に研究するのも悪くない。

「鍵係がんばってね。先生の期待に応えられるように」

逢瀬は白町 千律のような威圧感は無い。
得体の知れない『異物感』を振り撒く本人は知ってか知らずか手を振って校舎の方に向かう。


>>735
「『完璧』って行き詰まりとか閉塞感のイメージがあるかな。『完璧』を目指そうと自分を『是正』するから白町さんは『完璧』なんだろうけどね」

人間は前進する生き物だ。『破滅』に至るまでは絶対に止まれない。
『是正』の行き着く先が美しい最後であると期待を込めて見守りたい。

「うーん、白町さんって『超能力』を使える人? 普通に考えて一人の女の子が『不良』に恐れられるのは変だよ」

「私も『不良』風情が何人来ようが…」

複数の不良相手でも『ガンジャ・バーン』の仕込みを終えていれば、一方的な敗北は有り得ないと信じている。
が、所詮は個人の力。集団相手には負ける可能性もある。

「おっと、人を驚かさないように早く登校したのに危ない危ない」

「危なかったら頼ってね。白町さんは友達が多そうだから大丈夫かな?」

「本当に無理しちゃ駄目だからね」

そう言って校舎の方に歩き始める。
独特な、しかし不快ではない甘い香りをさせながら。

737一ノ戸 鳴『ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ』:2020/04/28(火) 00:00:42
 >>735(白町)
 「カギ係がんばります……ゼセイします…」
 「はい…よろしくおねがいしマス……」
 「フーキイインさんも学校一になるべく頑張ってくださぃ…」

 相手の目つきに萎縮しながら、尻すぼみの返事をする。後ずさる。
 若干防犯ブザーに手を掛けている、小学生男児はなにかに怖がってるみたい。
  
>>736(逢瀬)

 「!? 超能力者!」
 「……ふ、ふん!!僕は持ってるよ、超能力!」
 「Nintend〇スイッチだって持ってるからな!賞状も!」

 コブシを握りしめながら、超能力発言に張り合おうとする小学生男児。

 「だから、おニーさんなんて敵じゃないんだからな…!」

   クルッ   ダダダダ〜〜〜ッ

 そういうと、小学生男児は、背を向け、小等部の校舎にむかって走り去っていった。
 逢瀬の事は『敵』認定したようだ。
 幼い時分らしい、カワイイものではあるだろうが。

738白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/04/28(火) 03:02:24
>>736

「逢瀬さん、『完璧』は『常に変わる』のですよ。
 ですから、完璧なわたくしは、常に是正し続けるわたくし。
 それをわたくしが言うまでもなく理解してくれた、あなたは素晴らしい。
 わたくし、嬉しいです。あなたの理解力は得難いもの。ぜひ誇りなさい」

「そう、あなたも……みんなも。『是正』し続けるのです。
 人は皆『一枚の布』……世界はさながら『パッチワーク』。
 いつか、『真っ白』で『まっすぐ』な一枚になれるように!」

          ウットリ

どこか陶酔的な表情を浮かべ、理想を語る。
その『是正』に行き着く先はあるのだろうか?

「……超能力」

「ふふ……ふ、くふ、ククッ。
 『超能力』だなんて! ユーモアがあるのですね。
 わたくし、ふふ。とても楽しいと思いますよ。
 …………『風紀委員』」

「逢瀬さん、きっとわたくしたち『素晴らしい』仲間になれます。
 あなたのほうも、お困りごとがあったら、相談相手にはぜひわたくしを」

>>737

「はい、お互い頑張りましょうね。
 『是正』を心掛けるあなたの『素直さ』!
 それを忘れなければ、あなたはまさに敵なしなのです」

          ニコォ・・・

「それでは、よい一日を」

>両名

『登校』を再開する二人を、白町は微動だにせず、微笑んで見送る。
厄介な『風紀委員』に朝から絡まれはしたが……一日は、まだ始まったばかりだ。

739白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/05/03(日) 01:13:33

校舎の屋上は、『開放』されている。今いる人間は一人だ。

            パタ …

                   パタ  …


そいつは――――掲げられた『校旗』を見上げていた。
いつからかは分からないが、『風』のせいだろうか?
妙な曲がり方をしていて、白町千律がそれに気づいた。

「……」

アンテナの如く跳ねた髪を風に揺らし、見開いたような目で見上げていた。
その影に沿うようにして浮かぶ『ヴィジョン』は、蜘蛛のように『細い』。

740ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/05/03(日) 05:38:10
>>739

『人間』は一人しかいない。
そして、新たな人間がやってくる様子もない。
だが、そこには『先客』がいた。

校旗を掲げるポールの上。
おそらくは、白町が来る前からいたのだろう。
『ユニコーンカラー』を思わせる白・青・紫のトリコロール。
翼の一部と頭の冠羽が、
まるで『パーマ』を掛けたかのように逆巻いている。
一羽の『小鳥』が、そこに留まっていた。

『繁栄の秘密』を探るフィールドワークの一環として、
多くの人間が集まる『この場所』を訪れた。
しかし、この姿は人目につきやすい。
職業柄『ハーピー』は目立つ必要があるが、
『ブリタニカ』が目立つ事はトラブルに繋がりかねない。
だから、『ここ』を選んだ。
訪れる人間が少ない上に広い範囲を見渡せ、
危険があれば即座に飛び立てる場所。

「――……」

ちょうど見下ろしていたため、
意図せず視線が交差する形となった。
ここに来る人間は多くないが、珍しくはない。
だが、『見過ごせないもの』がある。
あの『ヴィジョン』――『ハロー・ストレンジャー』と同質。
これは、何かしらの『収穫』が得られるかもしれない……。

741白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/05/03(日) 22:34:48
>>740

「…………」

            『スタ』

                『スタ』

蜘蛛のようなスタンドが『ポール』ににじり寄って来る。
それを操る本体であろう少女は、無言で、『インコ』に視線を向けた。

・・・・・・視線を向けただけだ。

鳥語を話し始めるとか、スマホを向けるとか、そういう事はしない。
見開かれた目の先が、旗から『ブリタニカ』に変わっただけだ。

表情は、笑みに見える。

         『ギッ …』

                  『ギッ …』

その間にも、スタンドはポールに到達し……ゆっくりと『よじ登り』始めた。
四肢を器用に使っているのが『観察』出来る。『近付いてくる』ので、より分かりやすい。

742ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/05/04(月) 00:34:26
>>741

    グ 
      リ ン ッ ツ

大きく首を傾げ、少女を観察する。
その顔には、これといった表情は見られない。
鳥類は『飛行能力』を獲得した種族だ。
飛行には多大なエネルギーを要し、
『飛行に不要な器官』は退化している。
『表情筋』も、その一つだ。

「コンニチハ キミノ オナマエハ?」

「フフフ シミュラクラ ゲンショウ」

現在、ブリタニカの意識は、
『研究意欲』と『本能』が入り混じっていた。
通常の鳥であれば、本能を重視し、
今すぐ飛び立っていたであろう。
しかし、このブリタニカは『先進的鳥類』。
『本能』に振り回されるのではなく、
それを自らの意思でコントロールする事が出来る。
もっとも、そもそも普通の鳥なら『見えない』だろうが。

「レベル キュウジュウキュウ」

「シャシン トッテイイ?インスタ ニ アゲルカラ」

そして、『ただ喋っている』訳ではない。
こちらから言葉を発する事で、
相手から『新たな言葉』を引き出すテクニックだ。
どれが引っ掛かるか分からないので、
とりあえず『数』を並べる。
当然、『蜘蛛のようなスタンド』には最大の注意を向けている。
『危険域』に踏み込んでくるようであれば、
『脱出』する用意はある。

743白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/05/04(月) 01:09:55
>>742

「わたくしに、話しかけているのですか?」

意外そうに少女は声を上げた。
見開いた眼が瞬いたのが分かった。
『人間』だから、表情で語る。

「『喋る鳥』……あなたは、『インコ』なのですね。
 『人間の言葉をまねる』のは『擬態』の一種だとか!
 生き残るための知恵。生命の神秘……『素晴らしい』!
 『種』そのものの『是正』……わたくし、憧れます」

         パチパチ

「インコのことを、好きになってしまいそう」

『ブリタニカ』の『発話』に、手を打って喜ぶ。

「とはいえ、意味が通る『会話』ではない……
 擬態である以上そこまでは不要とはいえ
 そこを『是正』出来れば、もっと素晴らしいです。
 もっともわたくしがあえて言わずとも、それもまた、
 『愛玩動物』としての『進化』の中でそうなっていくのでしょう」

もちろん、『会話が出来る』とまでは思っていないのだろう。
思っているなら相当『メルヘン』だ。

          『ギシ …』

                    『ギシ …』  
    『ヒタ』

ポールを登るスタンドは、やがて、『旗』の隅へと、ゆっくり手を触れた。

744ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/05/04(月) 01:36:46
>>743

今まで様々な種類の人間を見てきた。
ストリートパフォーマンスの観客。
あるいは、この街で偶然『交流』を持った者。
または、単なる通行人。
しかし、この少女は今までにないタイプだ。
『学術的興味』が湧いてくる。
もっと『引き出して』みたくなった。

    「ワタクシ」

              「インコ」

       「ニンゲン」

                「デハナイ」

少女が発した単語を繋ぎ合わせ、
『一つの言葉』として発声する。
先程の言葉は、数を並べるのが目的だった。
だから、『意味』は通らない。
では、『意味が通る言葉』を発したら、どう感じるのか。
『それ』を見てみたい。

     「――――『ゼセイ』」

接近するスタンドにも気は配っている。
突然襲い掛かってくるという可能性もゼロではない。
少女の反応を確かめたのは、
『本体の性質』を探る意図もあった。

745白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/05/04(月) 03:08:14
>>744

こうなると、見開いた眼ははっきり驚きの色を帯びる。

「――――『素晴らしい』!!」

               シュ

                   ピン!!

「わたくしの『言葉』を、『真似て』……
 いえ、単なる声真似ではないのですね。
 『覚えた』言葉を使って、『文』を作ってみせた。
 まさしく『会話』をしたのですね!! 素晴らしいっ。誇りなさい!
 ああ、なんという知性なのでしょう……いえ、もはやこれは」

それとほぼ同時に、『校旗』が『真っすぐ』に伸びた。
風に揺れる事もなく、『見えざる手』に四隅を引かれるように。

どうやらそれが『スタンド』の目的だったようだが――――

「『普通のインコ』ではない……いわば『新鳥類』です!
 あなたはすでに、『種』として、是正された個体だったのですね。
 どこかで『教えられた』のか、それとも生まれ持った才能なのか。
 いずれにせよわたくし、この出会いに感動です」

「しかも……それでいて、『是正』の余地もまだまだある。
 発音、単語と単語の接続、言葉遣い。
 『是正』の余地とはつまり白紙の可能性……ああ素晴らしい」

                 ウットリ

「インコさん。あなたのことが、とても好きになってしまいました……」

                        『ギシ ・・・』

『旗』を超えて、ポールのより上へと、『人型のスタンド』が確かに登って来る・・・!

746ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/05/04(月) 09:36:31
>>745

少女の反応は思った以上だった。
驚かれる事は想定していたが、何やら妙に褒められている。
先程といい、相手の性格が見えてきたような気がする。

しかし、『是正』――もしや、それが『繁栄の秘密』なのでは?
現状に満足せず、常に改善を志す精神性。
そこに『相通じるもの』を感じる。
ブリタニカも、一般の鳥類から一歩進んだ存在。
いずれ『種族全体を先に進ませる』という『野心』もあるのだ。

      「 ! ! 」

――――などと考えていると、『スタンド』が迫ってきた。
この身は哺乳類と比べて非常に脆く、弱い。
明確な敵意を感じないとはいえ、
易々と『スタンド』の接近を許すほど能天気ではない。

               バササササァッ

ポールから飛び立ち、距離を取る。
『空を飛べるような能力』でない限り、追跡は困難だろう。
着地地点は、『フェンスの上』。

                      ――――ポスッ

     「ワタクシ」

               「アナタ」

         「ゼセイ」

                   「スキ」

これで機嫌を損ねられて、
それが攻撃の引き金にならないとも限らない。
スタンドを近付けられると困るが、『考え』には同意している。
それを態度で示す事で、『平和的解決』を図る。

747白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/05/04(月) 23:50:27
>>746

      「………………?」
 
「――――『見えている』?」

          ・・・ ピタ

「わたくしの『ハード・タイムス』。
 それが見えるあなたは――――『スタンド使い』
 安心しなさい。『攻撃』するつもりではないのです。
 もう少し、近くであなたを見たかった。それだけなのです」

               ひゅっ

「しかし驚きました。『動物』のスタンド使いは『珍しい』」

ポールから飛び降りたスタンドは、彼女の傍に控える。
少女は両手を広げ、『フェンス』にとまるブリタニカに語る。

「ですが、それはどうでもいいことですよね。
 スタンド使いであることは、有意ですが些事なのです!
 『素晴らしい』のは……『是正』を理解し、賛同する事!!」

「――――わたくし、『是正』が好きなインコさんが好きです」

良く通る声が、『和平』を宣言する。
いや、それ以上の『友好』を。

「インコさん……では味気ないです。
 わたくしの名前は、『千律』といいます。
 あなたのお名前も、教えてくれませんか?」

「わたくしたち、きっと、とても素晴らしい関係を築けると思うのです!」

ブリタニカの言葉が、形だけの同調ではない――と感じているのだろう。

748ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/05/05(火) 01:43:25
>>747

       グ リ ン ッ

大きく首を傾け、少女――『千律』を観察する。
『本気かどうか』という事だ。
『数日前に出会った少年』は嘘をついていた。
この少女の態度は、それとは対照的だ。
すなわち『本音』。

「ヒミツ――――」

『百科事典』に因む自身の名は『高度な知性』の証。
無闇に見せびらかすものではない。
ゆえに、軽々しく教えない事にしている。

     「ブ」

                 「リ」

           「タ」

                    「ニ」
      「カ」

教えたのは、『返礼』のためだ。
『鳥』に対して対等な態度を取るというのは、簡単ではない。
また、それに対して対等の態度を取る事は、
自らの『知性の証明』でもある。

「――――トクベツ」

とはいえ、『注意』はしておく。
決して他の人間に漏らさないように、と。
もっとも『ストリートパフォーマー』と『同一存在』である秘密を、
知られるとは思わないが。

749白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/05/05(火) 02:47:03
>>748

「『ブリタニカ』――――とても良いですね。
 『知性』溢れる素晴らしい名前なのですね。
 あなたが自分で付けたのですか?
 いずれにしても……『秘密』ですね。ふふ、くふっ。
 わたくし、『口の堅い』部類です。ぜひ安心しなさい」

「その代わり」

鳥に対しても『見下さない』のか。
『見下しているが表に出さない』のか。
あるいは、上下の意識がないのか。

「わたくしの『力』については、内密にしなさいね。
 隠し立てするものでもない素晴らしいものですが、
 あまり『広める』つもりも、無いのです」

              シュル ・・・

『ハード・タイムス』と名付けられたそれが、消える。
何事も無かったかのように、華奢な少女だけが朗々と語っている。
変わったことは『真っすぐ』揺れる、校旗だけ。『是正』されたのだ。

「聡いあなたは『素晴らしい』隣人!
 言いふらすことは無いでしょうが、
 くれぐれも。わたくし、信じています」

                            ――――♪

そう言って笑みを浮かべた時、少女の『スマホ』が音を立てた。

「呼ばれて、しまいました。名残惜しいですが『予定』は優先。
 ブリタニカさん。次にお会いする時には、より『是正』された『語学』を期待していますね」

そう言い残すと、屋上を出て『校舎内』に戻っていくようだった。
特別呼び止める事がなければ、奇妙な少女とのファーストコンタクトは、そのようなものだった。

750ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/05/06(水) 21:25:41
>>749

               「ワタクシ」

         「クチ」

  「カタイ」

自分には『秘密』がある。
だから、『他者』の秘密も明かさない。
お互いの『協定』のようなものだ。

  「オハナシ アリガトー」

               「ジャアネー」

『おかしな少女』だった。
『おかしな鳥』は、内心そのように思った。
その共通点があったから、遭遇したのかもしれない。

            ――――バササササァッ

翼を羽ばたかせ、果てしなく広がる大空へ飛び立つ。
ゆくゆくは、この空を『我々の世界』に。
そのためにも、『研究』を進めなければ――――――。

751樽谷 杏子『ライオンハート』:2020/05/17(日) 21:53:18
ここは『清月学園 体育館 武道場の片隅』

「……!」
  ……ドンドンパンッ!!ワンツーからのキック!

「……!」
    ……ドンドンパンッ!!ワンツーからのキック!

「……!」
      ……ドンドンパンッ!!ワンツーからのキック!

リズムよく音を立てつつ、少女が黙々とサンドバックを叩いている。
恐らく武道の為だろう、短くまとめすぎたベリーショートの髪や動きやすい格好は、
少女を一見して、男子と間違えさせてしまうかもしれないが、れっきとした女子である。

752氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/05/17(日) 22:42:08
>>751
「ああっ!また変なところに出た!」

サンドバックを叩く樽谷の後ろにふらふらとした足取りの少女が出現する
口ぶりからすると迷子だろうか
所在なさげにふらふらとした足取りで歩いている

「あぁ!こっちも違う」

 トタトタトタトタ
         トタタタタ

体育館内や武道場をどたばたと歩き回る
人によっては集中を乱すかもしれない

753樽谷 杏子『ライオンハート』 【中三】:2020/05/17(日) 23:02:56
>>752
イラッ……

「はぁっ!」

    ……ドンッ!一声とともにサンドバッグにハイキックの一撃を見舞う!

    ……ギシッギシッ……サンドバッグが大きく揺れる。

「ふぅっ……」
一息つき、汗を拭く。

>氷山
「……んで、どうしたんですか、あなたは?」
で、氷山さんに話しかけるのだ。

「ここは、武道場!そんな格好でフラフラしてると、危ないよ。」

「それとも、どこかの武道部への入部希望者ですか?」
少々ぶっきらぼうな口調で注意しつつ、話しかける。

754氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/05/17(日) 23:13:37
>>753
>……ドンッ!
「ひっ・・・!」

一際大きなハイキックの衝撃音を聞いてちょっとびっくりとする
真新しい制服をちょっとぶかぶかと来た少女だ
意匠を見るに高校一年生のように見えるが・・・

「す、すいません!転入の手続きのためにここに来たんだけど道に迷っちゃって
事務課に行こうとしてたんですけど・・・」

きょろきょろと周りを見ながら言う
つよそーな男の子(?)に注意をされてちょっと怖いのだ

755樽谷 杏子『ライオンハート』 【中三】:2020/05/17(日) 23:31:09
>>754
「ああ……転入生なの?驚かせて悪かったね。」

「よく見たら先輩じゃん、その格好。意匠からするに一つ上かな?」

    フキフキ……ゴキュゴキュ……
汗を拭き、ペットボトルから水を飲みながら応える。

「事務課は全然別の棟だよ!ここはジムの棟だから案内板見間違えたんじゃないかな。」

ちなみに、男子じみたベリーショートの髪と動き易そうな武道着に目を瞑って、落ち着いて観察すれば、杏子は声は高いし、背も低いので、女子と分かるだろう。

756氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/05/17(日) 23:41:50
>>755
>ジム
「あああぁぁぁ〜〜〜っそっかー!
さっきの人に『じむ』はどこにあるのか聞いたからそれで間違えたんだ!」

納得のいった表情で手のひらにぽんっと拳を置く
よく見るとそれほど怖くなさそう、むしろ親切な人だ、と気が付く

「ありがとうございます!
一つ下って事はもしかして中学生・・・なのかな?
あんなに凄いキックが出来て凄い! 空手か何かの稽古かな?」

武道着をまじまじと見ながら

「あっ それともキックボクシングとかムエタイ?
琉球空手とかカポエイラとかもあるらしいけど」

757樽谷 杏子『ライオンハート』 【中三】:2020/05/17(日) 23:53:20
>>756
「うんうん、スポーツジムじゃ転入はできないよねぇ。良かったら案内しようか?」

「アタシはこの学園の中等部三年生だよ。
樽谷 杏子(たるたに あんず)っていうの、ヨロシク先輩」

「アタシのこれはキックボクシングだ。まだまだウェイト足りないんで、威力出てないけどさ。」

758氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/05/18(月) 00:04:51
>>757
「今月からこの高校の1年生として転入する氷山(ひやま) あきはです
先輩なんてよしてくださいよー この学校では君の方が先輩なんだから」

と言いながら事務課まで案内されてついていく

「でも良かったー 学校に来てすぐに親切な人に巡り合えて」

と、世間話をしながら歩いていると・・・・

『ナァ、ヤッパリサッキノ看板ハ左ニ曲ガルベキダッタジャネェカァァ
コレダカラ嬢チャンニ任セルノハ嫌ダッタンダゼェェ〜〜』

「しっ、静かに 話してたらまた怪しまれるでしょ!」

どこかからか『男』の声が聞こえる・・・
氷山の方を向けば和風な意匠をした人型のスタンドが
氷山に重なって出現しているのに気が付くかもしれない

759樽谷 杏子『ライオンハート』 【中三】:2020/05/18(月) 00:19:39
>>758
「ああ、ちょっと待ってね。」
さすがに校内でファイティングな格好は目立つのでジャージを羽織ることにした。

てくてくてく……氷山を事務課に案内していく。

「事務課はあっちの棟の一階だよ。確かに新入生には分かりにくい位置にあるかも知れないね……」

だがしかし、

>どこかからか『男』の声が聞こえる・・・

バッ!!…………咄嗟に氷山から離れ、樽谷はファイティングポーズを取る。

「なんだい、今の声は?
先輩の横のそいつから聞こえたみたいだけど……?」

樽谷の影にうっすらと雌ライオンの意匠を持ったスタンド像が現れる。
尻尾を立てて、ファイティングポーズを取り、警戒しているのが見て取れた。

760氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/05/18(月) 00:27:33
>>759
「え? わっ、うわぁぁぁぁぁぁあああああ!
   ・・         ヴィジョン
そ、『それ』・・・・っ! その『 姿 』 ・・・・っ!」

『オッ?ナンデェ・・・オイ、アキハ、「似たような能力」ノ持ち主ジャネーカ』

突然、『ライオンハート』が出現したことに驚き、後ろに飛び跳ねる
本体を守るようにして『エド・サンズ』が一歩前に出た

『ア〜〜〜驚カセチマッテ悪ィガ俺達ニ敵意ハネエゼ』

ほれほれと手のひらを上に向けて無手のアピール
氷山本人は後ろに下がりすぎて背中から壁にぶつかった

761樽谷 杏子『ライオンハート』 【中三】:2020/05/18(月) 00:38:59
>>760
『グルル……』
「ちょっと、ビックリしたけど、似たような能力の持ち主……いて当然か。」

「敵意はない……まぁ、校内でやり合う理由もないし、当然か。信じるよ、その言葉。」

『グルル……』
「『ライオンハート』戻って」
雌ライオンの像のスタンド、『ライオンハート』は消える。

「自分で喋るのか?その『男』みたいなのは?」

「あと、背中大丈夫?」

762氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/05/18(月) 00:54:19
>>761
「は・・・はぁ・・・すいません、私以外にこの能力を持ってる人を見たのが初めてで」

呼吸を落ち着かせて話し始める
背中をちょっと痛そうにさすっているが「大丈夫です」と一言

氷山本人が一歩前に踏み出すと同時に『エド・サンズ』は一歩後ろに下がり控える

「『さんずさん』・・・『エド・サンズ』は私の能力・・・・らしいです
私自身もよくわからないんですけど、変なところで『ふわ〜』って変なことをしたら
いつの間にか出てきてくれるようになったんですよ
私の力が具現化した感じ・・・らしいですけど、私自身よりも頼りになるひとですよ」

『ヨセヤイ ヨセヤイ』

照れくさそうに手をひらひらとさせる
明らかにスタンド自身に意思があるように見える・・・
一人芝居だとしたらだいぶ面の皮が厚いふるまいだ

「私以外にも似たような能力を持っている人がいるって聞いたことがありますけど
『ライオンハート』・・・さん?は喋らないんですね」

763樽谷 杏子『ライオンハート』:2020/05/18(月) 18:12:45
>>762
「アタシも他の能力者を見るのは初めてだけど、いわゆる『気』か『守護霊』的なモノかなーと思っててさ。
 だとしたら他にも使えるヤツはいるはずだよなーと思ってたんだ。」

「どうも氷山先輩の『守護霊』は自分で喋るみたいだね。」

「アタシの『ライオンハート』は私が喋ろうと思わない限り、喋らないよ。」

そう言って、また、『ライオンハート』を出したかと思うと

     『ガオッ!!!   ってね。』

と咆哮した。

「こんな風に。アタシが思うにアタシの闘争本能ってヤツに反応してるんじゃないかと思ってる。」

764氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/05/18(月) 20:18:26
>>763
「『守護霊』・・・・まあ、私の中から出てきた力っていうより
江戸時代の亡霊とか背後霊って言った方がそれっぽいですよね
私の『さんずさん』の場合は」

『オイオイオイオイヨォォ〜〜〜
ソイツハ解釈間違いダゼ、あきはヨォォ・・・

アノ場所ニイタヤツモ言ッテタジャネェェカ

俺コト「エド・サンズ」ハ嬢ちゃんノ中カラ湧キ出タ「力」・・・
  ス タ ン ド
「傍に立つもの」ダッテヨォォォオオ〜〜〜!』

リラックスしながら談笑をしていたところに・・・

>ガオッ!!!
    
「わぁっ!」    急に吼えられてビビった

『ハァァ〜〜〜マッタク コレジャア先ガ思イヤラレルゼ
悪イナ杏子ちゃん、コイツハチョットビビリナたちデヨォォ〜〜

マ、闘争本能ッテノハ当ッテルカモシレネーナ
俺ミタイナヤツガ潜ンデルッテコトハ あきはノ中ニモアルンダロウゼ
ソノ「闘争本能」ッテェヤツガナァァァ〜〜〜』

『マ、俺ガチャント鍛エテヤラネート駄目駄目カモシレネーガナ』

765樽谷 杏子『ライオンハート』【中三】:2020/05/18(月) 20:42:20
>>764
「江戸で三途となると確かに和風だね。」

         スタンド
「なるほど、『傍に立つもの』。そっちの方が語感がいいね。」

「鍛えるの、いいね、いいね。氷山先輩も闘争本能、鍛えちゃう?」

「あ、そろそろ事務課に着くよ。エドちゃん、引っ込めた方がいいかも。」

※21:00から感想会のため、レスが遅くなります。

766氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/05/18(月) 21:32:34
>>765
   ・・・
『エドチャン・・・・?
オイオイオイ、俺ミテェナ剽悍ナ男子ニ対シテソンナカワイイ感ジハ・・・
「はいはいはーい、また変に思われるといけないから
しばらく休んでいてくださいねー『さんずさん』」

  スゥゥゥ・・・・ と『エド・サンズ』の姿が消えていく

「『さんずさん』はあんな感じに言ってるけども
私には闘争本能があるとは思えないんですよねー
ま、悪者と戦ってる人とかは凄いかっこいいとは思うんですけどね」

「杏子ちゃんが鍛えているのは、誰かと戦いたいからなんですか?」

※、了解です

767樽谷 杏子『ライオンハート』【中三】:2020/05/18(月) 23:30:17
>>766
>「杏子ちゃんが鍛えているのは、誰かと戦いたいからなんですか?」
「どうかな、確かに誰かと戦いたいってのはあるけど……」

「結局は、自分の為かな。
 今日の自分を超えた明日の自分でありたい、っていうワガママ。」

「おかしいかな?」

事務課のドアの前に立って聞く。

768氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/05/18(月) 23:36:30
>767
「成長のために鍛える・・・うん、いいと思います!
それもストイックで凄いかっこいい!」

そして、事務課に辿り着いた

「それでは、ありがとうございました!
おかしな『能力』を持ってる者同士、また縁があったらお会いしましょう!」

先ほどまでのような『超常』と離れ
普通の女子生徒として事務課に入っていった

769斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/06/02(火) 00:56:41

 ―――♪

それは雨の日に響く音色
梅雨の最中に確かに聞こえる音の粒

『20本』の指が鍵盤の上で踊り、残っているのは独りでに楽譜がめくれる音と彼の息遣いのみ。

雨の日にのみ存在する、放課後の不確かな音楽室
今やここだけが『私』の時間だ。

 (…しかし、勘弁してほしいな、指がこれだけあってもショパンのそれは弾きがたい)
 (独り、雨の匂いと演奏の余韻を楽しむには…随分と落ち着くのだが。)

770白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/06/02(火) 01:25:05
>>769

          カラカラ…

戸が開き、少女が静かに立っている。
流れるように跳ねた髪、頭頂部はアンテナのように。

「――――『ショパン』ですね。素晴らしい腕です」

見開いたような大きな相貌が、笑みに歪む。

風紀委員、だ。
腕章がそれを物語る。
…………あるいは顔も、知っているかもしれない。

771斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/06/02(火) 22:40:57
>>770

 「『楽譜に誠実であれ』 正確に弾き切るなら機械でよいと、常々言われていた。」

私は顔を向けずに演奏を続ける
向けずとも解る事は、今頃声をかけてきた女の傍には『椅子』と『紅茶』が入れられているだろう、と言う事だ。
此処はそういう場所なのだから。

 「とはいえ――あなたの感性でそう聞こえたのなら何よりだ 見知らぬ人。」

少なくとも聞いた声では無いのは確かだ
或いは聞いたうえで忘れているか……何方にしろ思い出すような時間は此処だと砂漠における水の一滴の如く貴重だ。

 「……それで?何か用だろうか。」

氷のような声色というのも、こういう場面では微妙な物だ
嘘を付かないと言う事は、他人に忍耐を強いると言う事でもあるのだから。

772白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/06/02(火) 23:11:25
>>771

「『正確である』事は、素晴らしいことですよ。
 演奏表現のよしあしは、どうしても主観になる。
 ですが、正確さは客観的に捉えられる評価なのです」

「ですがそれ以上を目指す心……それもまた素晴らしい!」

朗々と、よく通る声が部屋に響く。

「おやまあ。気の利くお部屋ですね。
 わたくし…………紅茶は好きです!
 この部屋のことも、好きになれそう」

その手が、紅茶と茶菓子を取った。
さして驚くような様子は見せない。

「いいえ用なんて。綺麗な演奏が、聴こえましたので。
 ただそれだけなのです。ここに入って来た理由はね」

「――素晴らしい『腕』です。
 この素敵な部屋は、あなたが用意したのですか?」

そして、その目は明らかに斑鳩の『影』を視認している。

773斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/06/02(火) 23:28:50
>>772

 「……そうとも言えるし、そうでないとも言える。」
 「とはいえ、そのいい香りは私の用意した物ではないだろうな……用意したのは『部屋』の方だ。」

しかし、肝の据わった女性…声からして恐らくは…だ。
普通なら気味悪がって口すら付けないと思ったが、多少『慣れて』いるらしい。

 「無論、私の想像が合っていればの話だ。外れるなどと微塵も思っていないが。」

この校舎事態に如何なる事件があったかは微塵も知らない事だ
だが『所々が古く、また新しい部屋』『一部が焼け焦げた楽器達』から、図書室の昔の記事などを合わせれば
確信に近い推測は出来る。

 「この部屋は『幽霊』のようなものだ。独りでに存在は出来ず、限られた時…雨の日に相応のエネルギーを求めて出現する。」
 「あるいは私の『腕』と同じ様な物……『ルール』がある以上は従って動く物。」

もしこの女性の眼がガラス玉でできていなければ
この音楽室の隣に元々の音楽室があるのが見えただろう。
そしてそれは…『新手のスタンド使い』と言う事でもある

『エネルギー』になる可能性のある人間以外は入れていない
『えり好み』と言う事か……まあ私も好き嫌いはあるのだ。セロリとか。

774白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/06/02(火) 23:58:13
>>773

「ああ! つまり主体は、この部屋なのですね。
 あなたもわたくしも、あくまで同じ『ゲスト』。
 いえ、演奏を任されるあなたの方が上でしょうか?
 ふふ……己の実力に嘘をつかない態度、好きです」

          ニコォ

「いつから? なぜ? どうやって?
 雨の日だけの『音楽室』があるのか。
 誰かが遺していった能力なのか、
 それとも自然発生したものなのか。
 あなたはなぜここに詳しいのか、
 そして独奏をしていたのか…………
 それは今のわたくしには分かりませんが」

視線は、焼け跡残る楽器に。
あるいは、傷痕のような部屋の造りに。

「確かな事は、二つあるのです。
 あなたの演奏は素晴らしく、紅茶がとても美味しい。
 わたくし、この『空間』が、好きになってきました」

少女は華奢な体に大きな身振りをつけながら、
称賛まじりに語り、やがて椅子の一つの前に止まる。

「ですが、だからこそ! もっと確かめてみたいのです。
 わたくしの、不完全な理解を是正したい……
 例えば生徒会、同じ『秩序』の士とも言えるあなたが」

斑鳩と直接会話を交わした事は無くとも、
風紀委員と生徒会は『無縁』とは言えない存在だ。

「――『スタンド使い』である事を今、知れたように。
 もっと知ってみたい……くふっ、お嫌じゃなければ」

           「わたくし、ここに座っても?」

指で、目の前の席を示す。拒まないならば、そのまま座るだろう。

775斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/06/03(水) 20:20:33
>>774

 「お互いにな、都合のいい餌というわけだ。」
 「次は……幻想即興曲か」

独りでにめくれる楽譜にうっすらと、だんだんと色濃く浮き上がる題名と音符の列
これも…前には無かった機能だ 『成長』しているのだろう、或いは粗野な音をたてないようにか。

 「好きにしたまえよ、元より私の物では無い」
 「所有者でもない人間が物の是非を決定するなど、お笑い草だ。」

 「また指の忙しい曲を選んでくれた ……あるいは難易度が上がれば私がミスをする可能性が有るからか
 私が失敗したことが無い以上、演奏のミスにこの部屋が何処まで寛容か等と解る筈もないな、もっとも……『私以外に演奏者を聞いた事が無い』辺り、想像はつくが。」

 「この演奏も……私の休息では有るが、同時に『ご機嫌伺い』のような物だからな」

20本の指が鍵盤を叩く、音の粒を並ばせ、其処に感情とうねりを混ぜながらも正確に
音楽というのは才能の協奏曲だ、優れた『作曲家』と無限に必要な『演奏者』の……。

 「無理やりに『空間を作り出し』『茶と菓子を用意し』『完璧に調律された楽器群』……どれほどのエネルギーかは知らないが、無尽蔵の力でないのは確かだ。」
        モンストロ
 「私達は今、鯨の腹にいるのとなんら変わりは無いのだ……骨まで消化されたくは無かろう。」

紅茶の透き通るような色あいには一点の曇りも無く、焼き菓子も解るものには上等な物だと解るだろう
だがそれは『報酬』であると同時に……『疑似餌』である事はまったく相反せず両立する物だ。
 
 (そして、秩序の士とは言うが、むしろ此処は独善的なルールに則った『私刑』の間に等しい場所だ。)
 (ま、この部屋を栄養不足で消滅させるのは簡単だが……その次に何が出てくるか解らん以上は続けざる他は無いな。)
 (私としても――丁度いい『休暇』だ。)

776白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/06/03(水) 23:02:12
>>775

「『自信』に深く満ち溢れながら、『分』を弁えてもいる。
 素晴らしい……あなたは、とても、『優秀』な人なのですね」
 
                   ニコ

「好ましいです。わたくし、好きになってしまいそう!」

屈託のない笑みを浮かべ、演奏を見る。
見守るではない。『見ている』だけ。

「そしてこの部屋も……『面白い』。
 だって、考えてもみなさい。
 狩猟、存続のための機能としては、
 もっと、もっと『是正』が可能でしょう。
 奏者を求める『音楽室』としての本能と、
 存在を維持する『生命』としての本能。
 あるいはそのせめぎ合いなのでしょうか」

「自然ではない、スタンドの『歪』な機能美――それもまた『素晴らしい』」

流れるように口からは『褒め言葉』が続く。
そして――――『目的』を持った菓子を、言葉とすれ違うよう口に運ぶ。

「ああッ……やはり、好きです」

「わたくし、『完璧』なものが理想だと思います。
 ですからこそ、『是正の余地』あるものも、好きなのです……」

ティーカップを音もなく置き、両手の指先を、胸の前で合わせる。

「この空間は、見つけてからもう、長いのですか? 『失敗した事がない』
 『一度や二度』ここに入った事があるだけではない……そういう口ぶりです」

777斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/06/04(木) 06:13:04
>>776

 「さてな」

演奏は続けられる、余った指を連弾の如くとして音を震わせながら……デメリットは途方も無く大きい
それでもこの場所にはメリットがある、『大抵の人間には邪魔されず』『入れる人間はスタンド使いのみ』
実に手軽な『スタンド使い』の診断装置だ、予想以上にこの学園にはスタンド使いというものは多いらしいのだから。

 「しかし、生きている間にさえ煩わしい物は多々あるのだから――」
 「死後はそれ以上に『ルール』に従わなくてはならない、そういう事もあるだろう。」

そしてこの場所で演奏している限りは、そのルールは殆ど適用されない
……正確に言えば『ルールが一つに纏められる』のだ、その点には嘘をつかずに済む。

 「その点は人間だとしても、そう変わりはない筈だ」
 (――意味があるかは兎も角。)

転調、うねり
旋律に感情を込める。怒り。嘆き。他人には吐き出せない物を鍵盤へと。

 「そう言う其方も、そう短くは無さそうだが……図書室当たりの騒動も消え失せた。」
 「『是正』と言ったな 其方の手か?」

778白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/06/04(木) 23:26:09
>>777

「際限なく増える『死者』がこの世に在るなら、
 それを縛るためのルールもまた、存在する。道理です」

「論理的な考え方をするのですね、素敵です」

所感を示し、紅茶を口に含んだ白町だったが、
図書室の騒動――その言葉に、顔を上げて静かに笑む。

「それに、ふふ……お耳が、早いのですね」

「その件は、生徒会に知れているのでしょうか?
 だとすればその問題意識と、『共有』の早さ。
 組織として、実に素晴らしい……あるいは」

        『シュルルル…』

背後に浮かんだヴィジョンは『蜘蛛』――
それを想起させる、細く、長い手足の『人型』だった。
余韻を持たせることもなく、すぐに消える。
 
「あなた個人が有能なのであれば、それも素晴らしい」

「どちらでも構いません。どちらにせよ……ククッ。
 そのご明察の通り、わたくしが、是正したのです」

実際には一人で、ではない。
中務千尋の協力は必要なピースだった。
理解しているが、あえて名を出す事はしない。

「顛末に関心がおありですか? それとも、『スタンド案件』そのものに?」

白町は他者への好意を隠さず示すが、それは盲信を意味しない。

779斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/06/05(金) 00:01:20
>>778

 「――いいや。」

演奏の最中に氷の如く透き通る声が響く
それは雨音にかき消されぬ冷たさだった

 「引き起こされた『事態』そのものは『私刑』に等しい行い、止めてみせたのは見事と称賛はする……するが、その上で」

思案するように目を瞑り、ほうと息を吐く

 「終わった『記録』に興味は無いな、私が欲しているのは今を生きている『結果』だ。」

かのスタンドが残っていれば、何かしらの変化があったかもしれない
だがそれもついえた以上は過去形に過ぎないことだ、『奇跡』に届かないのであれば興味は無い

それは『彼ら』の共通認識だった。

 「――とはいえ、手腕の方には多少の興味もある」
 「出来れば当事者から聞きたい物だな……雨のやまぬ内に。」

この場所での雨の切れ目は、この空間の終わりを意味する
中に入っている物がどうなるか?生涯解する事は無いだろうが……

今しばらく、この演奏が続くのは誰でも予想できる事だ
今は『梅雨』なのだから。

――私が演奏を終えた次の楽譜は、2本の腕で賄えるといいのだが。

780白町 千律『ハード・タイムス』【高3】:2020/06/05(金) 01:13:35
>>779

「ふふ……本当に『論理的』なのですね。素晴らしい。
 わたくし、あなたの事を好きになってしまいますよ」

笑みに歪んだ口から幾度も漏れるのは、
熱に浮かされたような言葉ではあったが……
編みたての、オーダーメイドの言葉とは感じられない。
口にする『好意』が事実でも、その真意は白町のみ知る。

「ええ、よろこんで。風紀として話せる範囲は、わたくし話します」

中務については伏せる、という意味だ。
協力者はいた。しかし彼女の名や、素性は出さない。

「一度は抑えた。ですが『再発』の可能性も、ゼロではありません。
 生徒会が『アレ』の倒し方を知ることは、学園治安の是正になるのです」

もっとも、風紀委員としても生徒会としても、それは公的な記録ではない。
学園のスタンド使い……知ってこそいても、その世界は決して、『公』にはならないものだ。

雨の中にだけ存在する演奏の中で、白町は『図書室の件』についてを、つらつらと語る・・・・・・

781村田瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/06/07(日) 16:33:48
カツ
             コツ
      カツ
                   コツ

「『職員室』ってよぉ〜〜〜〜〜」

 「なんであんなに入るとき緊張すんだろうなぁ〜ッ」

「別に悪いことしてるわけでもねぇのになあ〜〜〜〜〜〜〜」

摩耗した靴の踵を鳴らして歩く、下校の途中らしい学生が一人。

あなたはこの『学生』をを見たことがあるかもしれないし、ないかもしれない。

782小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』【高3】:2020/06/07(日) 17:50:34
>>781

ヤジ「ほぉ〜ん。『エクサーツ』って奴はそんなに強かったか」

「えぇ。決闘方式となると、持ち込める限界もありますし
そもそも危険物となれば流石に、ね」

ヤジ「まっ、相性ってのが存在するしな。
前見たいにテグスを使うのも良いんじゃねぇかと思うんだが」

校門付近で、壁に凭れ掛かるようにして二人の青年が雑談に興じている。
一人は制服を着崩して茶色くメッシュの髪に煙草を咥えている。
 もう片方は、バンカラに制服を纏う華奢で少し独特な雰囲気だ。

カチ カチ……。

ヤジ「ちっ、ついてねぇ。ジョー、ライターかマッチ」

「寮に置いてますよ」

ヤジ「おいおい、ライターは何時持ち歩いても役立つもんだぜ
……んっ、おーい!」

 火ぃ、持ってないかーっ? と、不良らしき一人が貴方に声を掛けた。

783村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/06/07(日) 18:07:19
>>782

「(ガッコの中で堂々と火ィ求めるたぁ、中々に太ぇ野郎だ…)」

ジュ ボウッ

「…ホラよ。センセーがたに見つかると面倒だからよ。
さっさとすましちまいな」

近寄っていって、ライターを取り出して火を差し出す。
こいつも『喫煙者らしい』が、口からも身体からもタバコの臭いはしない。

784小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』【高3】:2020/06/07(日) 18:29:39
>>783

ヤジ「おっ サンキュー」 ボッ ス―ッ……フー 「ふぃー」

「君ねぇ。親友
禁煙しろまでは言いませんが、初対面の方に火を借りるぐらいに
中毒になっているのは感心しませんよ」

ヤジ「固い事言うなよ。短い人生 酒や煙草の味を限りなく
楽しめる時は楽しむってのが、俺の筋でね」

破顔しつつ、美味そうに吸う不良を相方は諫めてる。その言葉を
飄々と躱しつつ、半分程吸い終えた不良は貴方に聞いてきた。

ヤジ「火ぃ貸してくれた、あんた……えぇっと、俺はヤジって言うが。
あんまり俺が知る溜まり場では見かけないな? 最近始めたん?」

こっそり、学校で喫煙するような仲間なのでは。とライターの所持から
勘くぐり、初対面な事から貴方にそう尋ねる。

「貴方に付き合って何度か嗜みますけど、やはり私は余り好かないですね
葉巻もキセルも、しっくりきませんし……あぁ、自分は小林ですよ」

ヤジ「無理して付き合わなくて良いってジョーは。
…………ふむ」

まじまじと、口に咥えた煙草を離しヤジと名乗った男は
不躾に貴方の上から下までを見る……急に何だろうか?

785村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/06/07(日) 18:34:29
>>783

786村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/06/07(日) 18:44:18
>>783
「俺は『村田』だ。」

「ガッコの中じゃあ吸わないってだけだ。バレたとき面倒だからな。
携帯灰皿持ってねぇってことはねぇよな?・・・持ってなきゃ使いなよ」

ライターを懐にしまいこんで、代わりに円筒形のものを差し出す。

「・・・なんかついてるかい。今日はわりときちっとした格好してるつもりなんだが。」

787小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』【高3】:2020/06/07(日) 18:48:24
>>786

ヤジ「いや、持ってるぜ 灰皿は勿論。マナーだからな……
――ところで、これ何に見える?」

そう、彼はおもむろにポケットからビー玉のようなものに
『ブリキの金魚のヴィジョンのスタンド』が入ったものを掲げた。


「…………」

小林は、そんな彼の挙動に注意を払うでもなく。呆れた面持ちで
村田とヤジを交互にゆっくり視線を送っている。

788村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/06/07(日) 18:56:31
>>787
「・・・・なんだいそりゃ・・・ああ、『とんぼ玉』か?」

ビー玉のようなものに顔を近づけ、まじまじと観察する。

「小さいころに親に連れられて、製作体験なんかやったの思い出すなぁ〜〜〜〜ッ」

「これ、アンタがつくったのかい?」

789小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』【高3】:2020/06/07(日) 19:15:59
>>788

ヤジ「その答えは、いいえ さ。なぁ『スタンド使いさん』」 フワッ……ガシッ。

僅かに、そのビー玉は宙に浮き それを再度手の平に掴む。

ヤジ「勘が当たったぜ」ニヤ

ヤジ「なんかちょいと、ただの素行不良と違うなーって背筋に走ったからよ」

小林「親友」

その相方の呼びかけは、淡々としてたが有無言わせぬ強さが滲んでいた。
真顔の声掛けに、彼は少し獰猛に近かった笑みを打ち消すと。へいへいと
頭を掻いて、貴方に話を続ける。

ヤジ「いや、スタンド使いだからどうこうって訳じゃねぇのよ。
単純に、使い手なのか? 否か? って事を知りたかったのが俺の目的。
それ以上、あんたに対して危害加えようとか一切ねぇ」

嘘なら、この煙草を丸呑みしたらぁと冗談めいた呟きを
溜息で小林は返しつつ、同じく貴方に話を引き継ぐ形で口開く。

「彼はね、少々特殊な力を持ち合わせた方達で興行する組織で
働いてましてね。その一環で、この学園にどの程度、使い手がいるか
大凡でも構わないので調査をしてるんですよ。
 とは言え、この学園。結構いると思いますけどね」

ヤジ「いや本当。曲がり角でパン咥えた女子とぶつかるよりも
高い確率で出会えるよな」

どうやら、不良青年は特殊な組織の一員だとの事だ……。

790村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/06/07(日) 19:32:52
>>789
「…はぁ?」

『何を言ってるんだ』という顔だ。

「カンが当たったとかどうとか言ってるとか悪いが、俺はあんたらの言ってることがひとっつも理解できねえ。」

「スタンド使いだとか組織だとか、一体なんのことだ?オカシな勧誘ならお断りだぜ。」

「だいたいなんだい『スタンド使い』って。俺が『矢沢永吉』にでも見えるってのか?」

この村田という男、『視えて』いるようだが、『スタンド』についてはさっぱり知らないらしい。
…『視えるはずのないものが視えている』ということすらも。

791小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』【高3】:2020/06/07(日) 19:45:58
>>790

ヤジ「あぁん??」

その反応に不良青年も似たような表情を浮かべる。だが、直ぐに怪訝さを
打ち消して ……なりたて? いや何かの干渉で見えるだけ? と
早口で何かしら呟いてから、眉間に皺よせて尋ねる。

ヤジ「えっとよ。今まで何か普通の人には出来ないような事が出来たりとか……
いや、この言い方だと主観が交じって混乱するか。
 えっとよ、自分の体から人の形してるけど人じゃない物体が出るだとか
突然手の平から何か産み出せるようになったとか。
 妙に直感が鋭くなる等の何処かしらの日にちを跨いで急に妙な才能に
目覚めたとか、そう言う心当たりってない?」

小林「とりあえず、一気に全部聞くのはやめてください。
えぇっと、村田さん。
 貴方がさっき水槽の中に見えた金魚などは、本来存在しないものを
存在してる幽体……これを通称『スタンド』と呼称してるんです。
私が説明するより専門家であり、恩師とも言えるべき方のほうが
色々と通じると思いますので。宜しければ『音仙』さんと言う方の
連絡先を教えますが……」

不良青年は貴方に矢継ぎ早に質問し、片割れは貴方に音仙と言う
謎の人物のいる住所を教えてくれた……。

792村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/06/07(日) 20:07:43
>>791

「・・・『信じられねぇ』な。何もかもがだ。気悪くしないでくれ。わかるだろ。」

すべてを黙って聞いた後、眉間にしわを寄せ、苦々しい表情で答える。

「その・・・『幽体』っつうのがどういうものなのか、今もって俺にはさっぱりわからないし、
急に『お前は霊能者だ』みたいに言われても、信じろってのが無理な話だ。」

だが、と切って続ける。

「心当たりがないわけじゃない。」

「・・・数か月前、『原因不明の高熱』で死にかけてな。医者と家族が言うにはしばらく昏睡状態だったらしい。」

「『臨死体験』で『超能力』に目覚める・・・そんな話は聞いたことのある話だ」

「あんたらがウソついてないんだとすりゃ、そこに原因があるのかもしれない」

793小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』【高3】:2020/06/07(日) 20:24:40
>>792
(※スタンドの発現を、より自分好みの演出で今後にしたいようでしたら
このままこの邂逅は有耶無耶な感じで次レスで〆させて頂きたいと思います)

ヤジ「『原因不明の高熱』……それかもな」

ヤジ「信憑性が無いかも知れんが『スタンド』ってのは
精神の発現、具現化なんだ。たまに制御出来ずに暴走するタイプもある
 さっき言った通り、人の形をしてるが人では絶対ないって言う形もあるし
剣とか銃とか、自然だったり人工物だったり何でもありさ。
……んで、そう言う力はな。『一般人には見えない』 少なからず例外は
存在するものの、大体は幽霊同様スタンド使いでないものはスタンドを
見る事は出来ない……それが、殺人鬼だったり心に黒いもん抱えてる奴なら」

考えれば、わかる程度にゃ凄惨だろ? だから組織を作って自衛も込めて
商売もしようって言うのが居るのさとヤジは煙草を咥え直し嘯く。

ヤジ「……『エクリプス』ってのが昔、そう言う奴等を束ねて
この町を表向きは麻薬なり新興宗教なり装って、裏で能力で支配しようとしてた。
だが、黄金の意志を持つ人々と。『アリーナ』の一助で壊滅したんだ。
 詳しく話すには、此処は目立ち過ぎるからまたの機会にするが」

小林「……残党も街に潜んでる事もありうるようですが。
安心して下さい。この町には正義感強い方々が多くいますし
私達も、何があれば村田さんの助けになりますから……」ニコッ

不良コンビは、町の歴史を語りつつ貴方に手を差し伸べる事を誓う。

ヤジ「あぁ、それと『スタンド』は精神の塊だ。
危険な時に咄嗟に出て防衛して制御可能になった事例もあるし。
自分で瞑想なりで精神修行をして緩やかに発現したって例もある」

もし自分の力を目覚めさせたいようなら前者はともかく後者で
座禅なり試すのも良い方法だとヤジは勧め。

小林「『音仙』さんは、スタンドの仕組みなどに大きく通じてます。
ですので、気が向くようでしたら相談してみれば良いですよ。
きっと、助けになってくれる筈です」

小林は『音仙』への紹介を再度念押しした。

794村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/06/07(日) 20:36:21
>>793

「・・・耳を洗いたくなるような話だこった」

自分でも知らぬ間に、とんでもない厄介ごとを抱えてしまったらしい。
今知った事柄は、おそらくそのスジの人間がかぎつければタダでは済まないものだろう。
そして自分はそれに対処する『術』を持たない・・・『今のところは』。

「あんたらの好意は喜んで受け取ろう。その・・・『音仙』って人にも、すぐに連絡をしてみるよ。」

「自分で自分のことがわからないままなんじゃあ・・・夢見がよくないからな。」

795小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』【高3】:2020/06/07(日) 21:01:41
>>794

ヤジ「しっかし、発現の自覚ない奴とはなぁ」

「君は少し無防備すぎる。通り魔めいた事件は今は耳にしませんが
そのような性質の人物と巡り会うかも知れないんですよ」

村田を見送りつつ、耳の穴を指で軽く掻くヤジへ小林は忠言する。

ヤジ「それでも『そう言う奴』だって知る事が出来る。
虎の尾かどうかは、触れて見なければわからないんだからな
……安心しろよジョー 俺達は『ジョジョ』なんだ。
今は聳え険しくても、何時かは頂上まで行けるさ」

「そう 願いたいものですね」

村田を見送った二人は、暫し時間を置いて学園を出る。
 『ジョジョ』 気高くも手を伸ばすのには遥か彼方の場所へと向けて

796逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/06/08(月) 00:24:20
昼休みとなり自由気ままに過ごす生徒たちの喧騒から離れた図書室。
そこに逢瀬は居た。机の上に大量の本を積み上げて。

「内なる無神経を啓発しろ。世界一鈍感な男になれ」

一種の開き直りだ。だが、人間が『地獄』から逃れる術は他に無い。
大抵の人間は『地獄』へと堕ちる。
生まれて死ぬまでに脳へと刻まれる他者の『死』は、確実に精神を疲弊させるし、老いは緩やかに余裕を削ぐ。
きっと『地獄』は脳の中にあるのだろう。
人は寿命で死ぬのではなく自分自身の心に殺されるのだ。

「眠たい。寝たくない」

起きていたい。夢は嫌いだ。
誰か来てくれさえすれば眠気も晴れるだろうか。

797小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』【高三】:2020/06/08(月) 00:53:35
>>796

「ここは寝る場所じゃないわよ」

そう、声が聞こえた。
積み上げた本の塔、その向こうに立っている人間がいる。
手には大量の本を持ち、それを本棚に収めていく。

「なにか、お悩みでも?」

798逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/06/08(月) 07:47:58
>>797
「うーん、大した悩みじゃないよ。
 どうやって美しく『破滅』するか。
 それを考えてただけだよ」

今しがた読み終えたばかりの物を本の塔の上に置く。
本読みなら多少は知っているかもしれない有名作品だ。
死者の国を夢見る特殊部隊の男が後進国に虐殺の嵐を巻き起こす言語学者を追う、という内容だった。

「邪魔かな? すぐに出てくよ」

本を片付けようと立ち上がった逢瀬の左頬の大きな火傷が少しだけ髪の間から見えるかもしれない。
首筋、腕、にも大小の火傷が見える。

「………」

一家心中から生き残り高校三年まで昏睡状態だった男子学生が現れた。
既に学校中の噂となっているが虐めの標的にはなっていない。
部活内で後輩から金銭を巻き上げる運動部の上級生に捕まるも、無傷のままで生還し、絡んだ上級生も無傷という不思議な事件も起きているらしいが…

「あっ、サプリ飲むの忘れた」

799小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』【高三】:2020/06/08(月) 22:18:21
>>798

慣れた手つきで本棚に本を戻していく。
小鍛冶明は図書委員だった。

「別いいたいのなら、いればいいわ」

自分の決めることじゃない、と言葉を続けた。
白い肌、黒い髪に黒い目。
冷たそうな人間だった。

「……」

横目で逢瀬の姿を確認する。
どこかで聞いた人のような気もするが、自分が相手のことをよく知らないことを理解している。

「貴方、美しく破滅したいの」

「どうして」

淡く微笑みながら、確かに逢瀬にそう言った。

800逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/06/08(月) 23:24:15
>>799 
「うん、なら居座らせてもらうね」

積み上げられた本の中から一冊の小説を手に取る。
紹介文にユートピアの臨界点と書かれた本だ。
そこそこ有名な小説なのだが、これを書いた作者は既に死んでいる。

「私は夏休みとか蝉が好きなんだ。
ほんの一瞬だけど輝きを放つ美しい姿に憧れと恐怖を感じる」

「けど、ずっと美しいままではいられない
桜は綺麗だけど散れば小汚ないゴミ。
人生も桜と一緒。それ以上生きていると醜くなってしまう前に散ってしまいたい」

主人公たちが自殺を図るシーンで手が止まる。
彼等には美しくなれる未来が待っているのに勿体ない。

「こう見えても精神年齢は小学生なんだ。
一家心中で独りだけ生き残って残されたのは火傷だけだよ。まさに現代へと蘇った『化石』みたいだよね?」

「全てに置いてかれた挙句、将来はどうなるのか分からない。でも、あっさり将来を決めつけて死ぬのは両親と同じで醜い」

「人生で一番美しい時を、それ以上は醜くなってしまうという一瞬に到達したい」

「そういえば、君は将来の夢とかあるのかな? 参考にしたいけど駄目かな?」

801小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』【高三】:2020/06/09(火) 00:22:55
>>800

「貴方にはそんな瞬間が来るのかしら」

微笑みを浮かべたまま、小鍛治はそう言った。
くすくすと小さく笑いながら。

「その夢は果てないわ」

「貴方が美しさの絶頂だと思える日が本当に来るのかしら」

小鍛治明はそう発する。
果てのない夢を実現するためにどこまで上がるのか。
その果てを見るのはいつになるのか。

「私の夢。そういうのはあまりないけれど」

「強いて言うなら、幸福であることよ」

「自由で私ひとりがただそこにいる」

小鍛治の手の中に現れたものがある。
銃剣が付けられたショットガン。

「そのためならなんだってやるわ」

802逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/06/09(火) 02:25:13
>>801
「かなり傲慢で奇妙な夢だけど…夢…
 そうか、これが『夢』なんだ。
 曖昧な願望でしかなかった、これが」

「私自身が美しくなくてもいい。
 誰かを美しくするための『破滅』
 そうすれば、私の『破滅』も美しく…」

昔から作り上げた物を破壊するのが堪らなく好きだった。
何度も壊しては作り壊しては作り続けた。
理由を両親に聞かれても衝動的なものを伝えられるわけがなく、今の今まで自分も分からなかった。
きっと自分は始まりから終わりまでが完璧なものを作りたかったのだろう。

「君の幸福は君独りだけが佇むものなのかな?
うーん、でも気高い感じがするね。
石ころのように沢山転がってるワルの求める自由とは違う感じ」

「穢らわしく飢えない。気高く飢える。
 そんな感じだといいなぁ」

本を閉じて小鍛治の方を向く。
知らぬ間に銃剣付きのショットガンを手にしている事に気がつき、驚いたように瞬きをする。
何となく自分の持つ力と根が同じ気がした。
意思の力。スタンドと呼ばれる存在。

「銃剣付き…? 格好良いスタンドだね。
 シンプルに強いって感じだ」

「私の『ガンジャ・バーン』より率直。
 そして、銃は独立のイメージが強い
 君の夢の内容からして多数相手に有利
 となる能力を持ってそうだ」

「ショットガンだからね」

自分の爪先を軽く小突いて『ガンジャ・バーン』の花を発現。
独特だが不快ではない甘い香りがするかもしれない。

「大体は、私のスタンド能力も分かるんじゃないかな?」

ふらふらと窓からの風に揺られる花は力強さの欠片もない。
ただ、甘い香りを放つだけの貧弱なスタンドにしか見えないが…

803小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』【高三】:2020/06/10(水) 01:18:39
>>802

「そう、破滅は美しい」

頷きながら、言葉を返す。

「だって、しがらみは邪魔でしょう」

「なんてことの無い人のために時間を浪費するのは悲しいわ」

その顔と同じくらい冷たく言葉が流れ込む。
ひとつひとつ、さも当たり前かのように振る舞うのだ。

「これはね、『ショットガン・レボルーション』」

「貴方のそれは……破滅を呼ぶんでしょう?」

「だって貴方、そういう顔をしているもの」

花には触れなかった。
ただ、銃をくるくると回しているだけだ。

804逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/06/10(水) 20:54:36
>>803
「…いや、私はそう思わないよ。
 だが、孤独を貫いた末の『破滅』は
 気高く美しい一面も持っている」

「敢えて私は繋がりを作ろうと思うよ。
 私が人生で最も美しい瞬間、その一瞬を
 誰かに覚えてもらいたい」

この点に関しては好みの違いで優劣は無い。
もしかすると彼女も、私のように決定的な『破滅』を経て生き残ったのかもしれない。
無関心で冷たい感じが父に似ているが人嫌いなのだろう?

「ヘンリー・ダーガーを知ってるかな?
17歳で孤児院を脱走し、19歳から清掃員を始め、1万5,000ページ以上のテキストと300枚の挿絵から成る物語を40年も費やし完成に近づけた方だよ」

「死後、彼の遺品を整理する大家は
 『非実在の王国で』という原稿を発見。
 所詮は身寄りの無い下宿人のゴミ。
 だけど、大家は『価値』を見出だした」

「『孤独』な男の『破滅』が価値を得た。
 彼の『孤独な破滅』は一種の美に昇華
 されたんだ」

「私は彼を美しいと思うよ」

      ポコッ
             ポコッ

逢瀬が発現した『ガンジャ・バーン』と呼ばれる花が2つに増殖した。
ちっぽけな花のヴィジョンに力強さは無い。
しかし、『増殖』の速度が異常だ。

「本体の生死に関係なく増殖する『無差別型スタンド』」

「『ガンジャ・バーン』を摂食すると、その生物は『草食恐竜』に近づいていく。
そして、次第に瀕死の『草食恐竜』そのものに成り果て、最後は『草食恐竜の化石』へと変貌させられてしまう」

「植物が『草食恐竜』を『絶滅』に追いこんだ学説を再現する。それが『ガンジャ・バーン』の能力」

こいつの事を私は気に入っている。
扁平足の者が自分のそれを補うデザインまでピッタリ好みの靴を手にしたような…

「ところで、そんなに私は不吉な感じの顔をしてるのかな? 不細工なんだ…」

805小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』【高三】:2020/06/10(水) 22:15:17
>>804

「……そう」

破滅。
逢瀬の願望を聞いて、やっと小鍛治は目線を逸らした。

「知ってるわ」

「読んだことはないけれどね」

図書委員だからか、それとも彼女の性質なのか。
それから、咲いている『ガンジャ・バーン』へと銃剣を向けた。

「……別に、そういう意味じゃないわ」

「貴方の持つスタンドですもの、破滅を呼ぶものでも不思議じゃないでしょう」

「少なくとも貴方の目はそう言ってたし、この花を見る表情もそういう感じだったんじゃないかしら」

くるくると銃がまわる。
『ガンジャ・バーン』から逢瀬の胸元へ照準が切り替わる。


「『ショットガン・レボルーション』の効果は『革命』強さか速さを逆転させる」

冷たい目が逢瀬を見ていた。

「まだ眠いのなら、これで起こしてあげましょうか」

806逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/06/10(水) 23:36:03
>>805
「長い眠りから目覚めた気でいたけど、
 君のお陰で半分ぐらい『目覚めた』」

                 ポコッ
    ポコッ    
             ポコッ

                    ポコッ

『ガンジャ・バーン』の花が四本に増えた。
このまま放置すると始末が面倒だ。
学生鞄から瓶を取り出して花を摘み取り密閉空間に封じ込める。
生殖を封じられた『ガンジャ・バーン』の花はボロボロとヴィジョンを消失させていく。

「そういった観察眼は歳上には敵わないね
 もし、『ショットガン・レボルーション』
 とやらが複数に効くなら『無敵』に近い」

「しかし、私の『ガンジャ・バーン』と少し相性が悪い。 森林を食い尽くす『草食恐竜』という圧倒的な強者。
 その弱肉強食より上の次元で進化と繁殖と進化を繰り
 返した『ガンジャ・バーン』とは…」

「それとこれとは話が別で今、撃たれたら
 私は確実に死ぬ。間抜けな感じに」

ちょっと自分の間抜けさがツボに入って少し笑う。
笑ってる場合じゃないが面白いのだから仕方ない。
最初から戦うつもりで繁殖させた状態の『ガンジャ・バーン』は無敵に近い。
彼女に支配した弱っちい鼠だとか鳥を差し向ければ、強弱など関係なく『鱗』で弾丸を防ぎ、逃げる程度はできるかもしれない。
今さっき枯らしてしまったが。

「どんな願望を持ったら強弱の革命なんて
 不思議な能力に目覚めるのか。
 私が教えた代わりに少しだけ教えてくれ
 ないかな?」

807小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』【高三】:2020/06/11(木) 19:46:55
>>806

「そう、それは良かったわね」

表情は変わらない。
本当に目覚めたことを良かったことと思ってるかは彼女のが知っている。

「別にここで内臓をばらまいてもらわなくてもいいのよ?」

「銃弾の威力も反転してしまうから、子供くらいの力しか出ないのよ」

もちろん、速度を反転すれば通常の弾丸相当の威力にできるが。

「どんな願望?」

それを聞かれて小鍛治は黙った。
少なくとも、そんなことを考えたことは無かった。
自分にとって『ショットガン・レボルーション』は自分の手や足と同じものだ。
あるのが当然の代物。

「気付けば持っていたわ。だから、どこまで私の精神に絡みついてるのかは分からない」

「強いて言うなら、革命とは強さの逆転だからじゃないかしら」

「私には他人の強さなんて関係ないもの」

「私は私の思う通りにするわ」

808逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/06/11(木) 22:55:52
>>807
「君の傾向からして強い怒り悲しみなどの
 方向性が強く出ているとは思えない。
 どちらかと言えば自然体の君の在り方
 が反映されているようにも思える」

「何者にも自分の在り方を歪められたく
 ないけれど、君の自由な在り方は社会の
 方からすると少数派に過ぎず、それに
 打ち勝つべく無意識にそれを発現した
 のかもしれない」

「君の強さは弱肉強食より上の次元だ。
 他人の強さなんて気にしないぐらいに
 君は強いんだ」

彼女の他人の意など気にも留めない生き方に多少は憧れる。
意識せずとも気高く生きられるというのは精神が成熟している証。
おそらく彼女にそんなつもりはないだろうが。

「名前を教えてもらってもいいかな?
 私の名前は逢瀬 泰葉。高三だよ。
 中身は小学六年生だけどね」

腕時計の時間を見ると昼休みの終わりが近い。
自分の読んだ本を片しながら彼女の顔を見る。

「『破滅』以外にも美しいものを見つけら
 れて良かった。
 君の『気高い孤独』が不変であることを
 祈っておくよ」

「あと、少し微笑んでたのも綺麗だった」

それだけ伝えると図書室を出て行く。
ほんの少し甘い香りを残して…

809小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』【高三】:2020/06/11(木) 23:33:53
>>808

「そう。ありがとう」

逢瀬の言葉に小鍛治は素っ気なく返した。
彼女は自分の性質に自覚的なのかもしれない。
どこまでも自分の道を歩くなら、自分の道を理解しないといけないから。

「小鍛治明よ。小さな鍜治屋は明るいで小鍛治明」

「さようなら、逢瀬くん」

810氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/14(日) 21:18:12

   ―――ヒュッ!
           ストッ!


        ―――ヒュッ!
               ストッ!

―――深夜、清月学園校内の弓道場
普段は物音ひとつない静謐な空間であるはずのそこに弓弦の音が静かに鳴る
見ると制服姿の女子が一人、矢を射っている

『コノ前負ケタノガクヤシイカラッテヨォォ〜〜
 何モコンナトコロデ練習スル事モナインジャネェカァァ〜〜〜?』

「何を言っているんですか?
 街中で弓矢の練習なんて危ないですし、警察に通報されちゃいますよ
 ここなら人目もつきませんし、静かに練習できます」

人影の姿は一つ
だが、『特別な才能』の持ち主がいれば囁くような男の声も聞こえるかもしれない

811ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/06/14(日) 22:08:54
>>810

    バササササササァッ

一羽の『ハゴロモセキセイインコ』が夜空を舞う。
学校付近を通りかかった時、奇妙な『音』が聞こえた。
『研究の余地あり』――そう判断する。

      フ ッ

高度が5mを切った時点で、
『正体』を秘匿するために『ハロー・ストレンジャー』を発現。

      ス ィ ィ ィ ィ ィ――――――ッ

                      トスッ

      グライド
上空から『滑空』を行い、音もなく弓道場に着地する。
月明かりに照らされて、その姿が徐々に露になっていく。
古代ギリシャ風の装束である『キトン』を身に纏った、
青・白・紫のポンパドールヘアの女。
両腕は『羽毛』で覆われ、背中には『翼』が備わり、
踵には『蹴爪』が生えている。

「――――こんばんは」

月光の下で、『鳥人』のような女が声を掛ける。
『学校関係者』とは思えない。
そもそも『深夜』なのだから尚更だ。

812氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/14(日) 22:27:08
>>811
「あっ どーも、こんばん・・・・・・わ?」

突然現れた奇妙な風体の女性
和やかに挨拶をされたためつい、普通の挨拶を返してしまうが・・・・

ワンテンポ置いて気が付く
まず、普通ならこんな時間・こんな場所にいるはずのない女性であり
そもそも、『恰好』がとても怪しい・・・・異様である

「そっ そういえば聞いたことがあります・・・・・・ッ! 『清月学園七不思議』!
深夜に弓道場で練習していると突然現れる『女性のお化け』っ!
あれ? 弓道場でしたっけ?音楽室でしたっけ? まあいいや!
逃げようとすると時速120kmで追いかけてくるけど、落ち着いて話をすれば大丈夫とかいう、あの!


あれ?ポマードを投げつけるんでしたっけ・・・・? まあいいや!」


「こんばんわ、いい天気ですね?」

早口でうろ覚えの噂話を呟いていく、詳細は全然覚えていない
そもそもこの学園に七不思議なんてあったかも割と怪しい
うろ覚えの噂話をもとにまずは天気の話を切り出した!(夜だけど)

813ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/06/14(日) 22:50:21
>>812

この女が『七不思議』かどうかは不明だ。
しかし、怪しいのは間違いない。
もし誰かが見ていたとすれば、
『七不思議の一つ』に加わっていたかもしれない。

「はい、今夜は空気が澄んでおりますから。
 この時間は気温も下がっていて過ごしやすいですね」

    ザッ

「ただ、コンディションを崩しやすい時期でもありますから、
 体調管理には気を遣いませんと」

          ザッ

「『病気』になると大変でございますから」

                ザッ

「どうぞ、お気を付け下さい」

一歩ずつ近付きながら、挨拶に対して丁寧な挨拶を返す。
ごく普通の自然な光景。
ここが『深夜の学校』であり、
目の前にいるのが『鳥人のような女』でなければ。

「――失礼ですが、ここで『何』をなさっておいでで?」

手の中にある『弓』を見つめる。
見た事があるような気もするが、今一つ記憶が曖昧だった。
何か……『遺伝子』に刻み付けられているような……。
遠い昔の『旧いイメージ』。
不思議と、そんな感覚を覚えた。

814氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/14(日) 23:07:54
>>813
「これはご親切にどうも
最近は暑い日が続いててクーラーを使う日も多かったですからねー
今日みたいな日にもエアコンを使ってたら冷えちゃうかもですね」

(ちょっ ちょっとずつ近づいてきてる・・・・!
 でも、『お化け』にしては凄く理性的で穏やかなような・・・?)

『深夜の学校』 『鳥人のような女』
非常に怪しげな要素であるが、『怪談話』としてはありえなくもない話である
突然の状況に困惑しつつも『怪談話』の真っただ中にいる事に多少の興奮を覚える


「これですか? えーっと・・・ちょっと事情があって『道具』の練習がしたくなりまして・・・
公園とかで練習すると警察を呼ばれたりしますからねー
ちょ〜〜〜・・・っとこっそり忍び込みましてコソ練してたわけですよー」

手に持った『弓矢』を『鳥人』に見せる
『矢』には矢じりはついておらず、代わりに松ぼっくりのような構造物がついている
『蟇目鏑』と呼ばれる非殺傷用の矢である

815ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/06/14(日) 23:27:37
>>814

「『コソ練』」

「『コソ練』――なるほど、『コソ練』ですか」

繰り返し発音し、『新たな言葉』を記憶する。
『言葉』とは『知性の欠片』。
それらを集積する事が、『人間研究の進捗』に繋がる。

「『こっそり忍び込む泥棒』の事を、
 『コソ泥』などと呼んでおりますね」

「すなわち、『こっそり忍び込んで練習する事』を、
 『コソ練』と呼んでいらっしゃる訳ですか」

「お蔭様で、また一つ『勉強』になりました」

そして、『弓』から『矢』に視線を移す。
頭脳の片隅に引っ掛かっているものが何なのか。
それが少しずつ分かりかけてきたような気がした。

「よろしければ、使って見せて頂けませんでしょうか?」

「――――私、『コソ練』に『興味』がありますので」

顔を上げ、少女に視線を向ける。
少女とは別に、『男の声』も聞こえてはいた。
しかし、今は放っておく。

816氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/14(日) 23:47:58
>>815
「・・・・『コソ練』
そ、そうですね〜、本当はこっそりとやる練習の事なんですけど
実際、私、こっそりと忍び込んじゃってるわけですし うん、それも『コソ練』です!」

こっそりと忍び込む部分を強調されると少しだけ罪悪感がチクリとする
だがまあ、ばれなければ『コソ練』の枠内でいいだろうと自分の中で納得する

「使ってる姿・・・・・ですか? わかりました
えぇっと・・・・まずはこうやって思い切り引いて・・・・ んっ・・・ ぎっ!」

『射』の姿を見せるために弦を引き絞る氷山
だが、弓の張力に筋力が負けているように見える
練習を始めたのは最近の事なので筋力も技量もまったくの『素人』なのだ!

「はっ!」

       ―――――ヒュッ!
                   ストッ!


放たれた矢は『的』とは全然見当違いの方向へ飛んでいく


『マッタクヨォォ〜〜〜ッ 全然駄目駄目ジャネェカァァ〜〜あきはヨォォ!
 弦ハモットコウ「グッ!」ト引キ絞ッテ 目線ハ両目デ「ガッ」ト合ワセルンダゼェ!』

ズズズズ・・・


最初に聞こえた『男の声』が再び聞こえる
いつの間にか・・・・氷山の背後に『人型のヴィジョン』が出現していた
彼は今の氷山の『射法』に不満を隠そうともしない口調だ・・・・

817ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/06/15(月) 00:13:17
>>816

「なるほど、これが『コソ練』ですか」

      グルゥ――――――ッ

「大変興味深いものを拝見させて頂きました」

見当違いの方向へ飛んでいった矢の軌道を、
体ごと動かして見送る。
弓矢の『実射』を目の当たりにしたのは初めてだった。
よって、『失敗した』とは思わなかったようだ。

「――――…………」

         グ 
            リ ィ 
                ン ッ

無言のまま、オーバーな程に首を大きく傾げる。
『鳥類』の眼は、『哺乳類』と違って、
『顔の側面』に備わっている。
これは、より広範囲を見渡すためだ。
その反面、正面方向を見る事は不得手としている。
こうして顔を傾ける事によtって、
ある程度は欠点をカバーする事が可能になる。
もちろん、これは『鳥の状態』の話であり、
『ハロー・ストレンジャー』を発現している今は、
『必要ない動作』だった。
しかし、『体に染み付いた癖』というのは、
なかなか抜けないものだ。

「――大変興味深いものを拝見させて頂きました」

818氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/15(月) 00:30:59
>>817
「あー・・・だいぶ変な方向に飛んで行っちゃいましたね・・・
いやもう、数本しか射ってないはずなんですけど、腕がもうプルプルして・・・

・・・・・というか、『さんずさん』の指導がいい加減なだけじゃないですかね」

最後の方は小声で後ろの『スタンド』に聞こえるように言う


>         グ 
>            リ ィ 
>                ン ッ

『鳥類』が行うぐるりと首を回す動作は・・・・人間が行うとすごく怖い
一般的に鳥類の頸椎の数は人間よりも多く、構造的に可動域が広くなるという
スタンドに頸椎などはないだろうが、それでも鳥類レベルの首の動きは脅威であるだろう

「ひっ!」

だからびっくりして驚いても仕方がないことだ ケッシテ『ヒヤマ』ガビビリナワケデハナイ

「あ、あの〜〜何かお気に召さないことでも・・・?」

>「――大変興味深いものを拝見させて頂きました」

「はっ はい! お見苦しいものをお見せしてしまい申し訳ありませんでした!」

819ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/06/15(月) 20:01:28
>>818

『鳥』を思わせるような『首を回す動き』。
それを『鳥』がやるのなら自然な動作だ。
しかし、今は仮にも『人間に近い姿』をしている。
そして、ここは『深夜の学校』。
そのシチュエーションが不気味さを更に加速させていた。

「『お連れの方』――――」

         ジ ィ ッ

「随分と『逞しい体つき』をなさっておいでのようで」

奇妙な角度に首を傾げたまま、言葉を続ける。
その視線は少女ではなく、
その背後に立つ『エド・サンズ』に向いていた。
この『鳥人のような女』――『スタンド』が見えている。

「――――『グッ!』で『ガッ!』ですか」

「『様子』を『音』で『表現』する。
 いわゆる『擬態語』と呼ばれる表現形式ですね」

         グ リ ィ ン ッ

「『とても個性的なパーソナリティ』をお持ちのようで」

言い終えた直後、首の角度が元に戻った。
未知のものを見かけると、つい『この癖』が出てしまう。
同族の中でも高い知能を有し、
『先進的鳥類』を自称しているが、
やはり『本能』には抗い難いものがある。

820氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/15(月) 21:10:34
>>819
「ひぃぃぃいい・・・・『さんずさん』・・・・この方、スタンドが見えてますよぉ・・・
魂の形であるスタンドが見えるって事はやっぱり・・・・『本物のお化け』!」

――思い込みによる勘違いはそう簡単には正せない
結果、最初の思い込みである『お化け』という発想がさらに補強されてしまった

>「『様子』を『音』で『表現』する。
> いわゆる『擬態語』と呼ばれる表現形式ですね」


『オ、オウ・・・・改メテ言ワレルト照レルゼ
マア、観客モイル事ダシ、折角ダカラ俺ガ手本ヲ見セテヤルゼ!』

『お化け』を恐れる氷山とは対照的に
『エド・サンズ』はブリタニカをあまり恐れていないようだ


   ズギャッ  ァァン!


『エド・サンズ』の掌中に『弓と鏑矢』が出現する

『コウヤッテ・・・・「グッ」トヤッテ・・・』

       ギチギチギチ・・・・・

『「ガッ!」ダ!』

      シャッ!
                       ――――ズドッ!

ピンッとした姿勢で矢を放つ
放たれた矢は真っ直ぐに突き進み、遠くの『的』へと当たった
先ほどの氷山とは違い、堂に入った見事な『射法』だ

821ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/06/15(月) 22:41:50
>>820

「なるほど――これが『正しい見本』という訳でございますね」

『エド・サンズ』の傍らに立ち、
流れるような一連の動作を見守る。
女の声色には『感嘆』が窺えた。
同時に、この『道具』の『用途の一つ』を思い出す。
『狩猟具』――
古来この『兵器』によって多くの『同族』が狩られてきた。
それを間近で見る事が出来たのは、
なかなかの『収穫』だった。

「『素晴らしいもの』を見せて頂き、『感謝』を申し上げます」

    スゥッ…………

「お返しに、私も少々『芸』をご披露させて頂きましょう」

            パ
              チンッ

静かに片手を持ち上げ、指を鳴らす。
数秒ほど、無音の時間が流れた。
やがて、遠くから『羽音』が聞こえてきた。

  バササササササササササササササササ

     サササササササササササササササササッサ

        ササササササササササササササササササ

          ササササササササササササササササササササ

              ササササササササササササササササササァッ

現れたのは『鳥の群れ』だった。
種類の異なる多数の『野鳥』が、
『群れ』を成して集まってきている。
『鳥が人を襲う映画』のような光景だ。
しかし、そうはならなかった。
『群れ』は女の周りに集まり、全員が大人しく留まっている。

「――私は、このような『芸』をしております」

822氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/15(月) 23:11:02
>>821
『マッ コンナモンカネェ?
オイ、「あきは」、今ノチャント見タカ? 「弓」ッテノハコンナ風ニ使ウンダゼ?』

「はぁ〜〜、いつ見ても惚れ惚れするような綺麗な姿勢ですねー
『お姉さん』にも気に入ってもらえて何よりですよ」

自分の『スタンド』の行いに感心している
ふと気づくと『弓矢』は瞬き一つの間に消えてしまっていた


>「お返しに、私も少々『芸』をご披露させて頂きましょう」

>  バササササササササササササササササ


「え?  きゃっ 『鳥』が・・・・ッ!」

――突如、集まる鳥の群
『往年のサスペンススリラー映画』を思い出すような光景だ
あまりに古い映画なため、氷山自身はその映画を見たことはないが・・・
それでもその『恐怖』は人類の本能レベルで根付いている

「と、『鳥』がこんなにたくさん集まって・・・・『鳥のお姉さん』」
「・・・・・・ッ!?」

『鳥』・・・・そして、『女性』・・・・ッ!
氷山の脳裏に一つの『怪談話』が思い起こされる・・・ッ!

「『姑獲鳥』・・・っ」

――――『姑獲鳥』という妖怪がいる
なんでもその妖怪は『他人の子供』をさらってどこかに連れていくのだとか


「(子供をさらう妖怪・・・・もしかして・・・だから学校に・・・・!?)
 ひ、ひぃぃぃいい、まさか・・・・・まさか・・・・っ!
 『芸』というのはまさか『鳥で人をさらうこと』なのでは・・・っ!?」

不気味な行動を繰り返すブリタニカの姿を見て、氷山の正気は少しずつ削れていく
そして・・・・とうとう妄想とでも言うべき妄言が自然と口から零れ落ちてしまった

823ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/06/15(月) 23:45:48
>>822

   ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

深夜の学校で相対する『少女』と『鳥人』。
目の前に立つ女は、確かに『妖怪』じみている。
『姑獲鳥』であったとしても不思議はない――のかもしれない……。

「『コソ練』のお邪魔をして申し訳ございませんでした」

            ザッ

「そろそろ失礼して――私は『巣』に戻らせて頂きます」

  バサササササササササササササササササササササササササササ

   サササササササササササササササササササササササササササ

   サササササササササササササササササササササササササササ

    サササササササササササササササササササササササササササ

   ササササササササササササササササササササササササササササササァッ

女が挨拶すると、待機していた鳥達が一斉に羽ばたいた。
乱舞する群れが『カーテン』のように女の姿を覆い隠す。
鳥達が飛び去った後、女の姿は煙のように掻き消えていた。
『ハロー・ストレンジャー』を解除し、
『鳥の群れ』に自らを紛れ込ませたのだ。
そして、『同族』と共に夜空へ舞い上がった。

         「バイバーイ」

最後に、『小さな声』が聞こえた気がした。
『人のような声』だったが、『微妙に違う』ような……。
もしかすると、本当に『人外』だったのかもしれない……。

824氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/16(火) 00:00:25
>>823
「はぁ・・・っ はぁ・・・・っ
あれは・・・・・いったい・・・・なんだったのでしょうか・・・・っ?」


――――後日。


生徒A「ねえ聞いた? あの『噂』」
生徒B「聞いた聞いた!『弓道場に出る鳥女』でしょ!」
生徒A「あれって実際にあった話なんだってね! あたしの友達の友達が言ってた!」
生徒A「夜の学校で『コソ練』してるとどこからか『鳥女』が現れてその子をさらっちゃうらしいよ!」
生徒B「でも『鳥女』って何なんだろうね? 私が聞いた話だと『子供を取られた母親の霊』って話だけど」
生徒A「あたしが聞いたのは『インコのお化け』だって話だよ」

生徒B「・・・・・『インコ』? まっさかぁ〜〜〜っ あんなにカワイイのが人をさらうわけないじゃん」
生徒A「だよねぇ〜〜〜!」
   ・
   ・
   ・
   ・
生徒AB「「ぎゃはははははは!」」


氷山あきは『エド・サンズ』⇒しばらく『鳥』がトラウマになるがなんとか復帰
              『再起可能』!


『弓道場の鳥女』     ⇒『学校の七不思議』として新たな噂に加わるが・・・
               人の噂も七十五日・・・・いずれは忘れ去られるかもしれない

825黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/07/04(土) 02:19:37

『黒羽』は今日、持ち上げられに持ち上げられた。
『部の取材活動』の最中に押し付けられたため、
『仮に当たったら部の活動費にする』事を約束していた『宝くじ』。
それがなんと、『250万円』もの莫大な資金に化けたのだ。

(さすがにここまでの『大金』になるとは、
 想像もしていなかったけれど……
 私のおかげで『新聞部』は数年は備品に困らないのだわ!)

(…………ほしくなかったと言えば、嘘になるけど。
 でも、『部活動』で貰ったものだし……『10万円』は手元に残せたし)

さらに――いくら『部活動』で得たとはいえ、
黒羽が『手に入れた』資金だったのは間違いない。
最終的に、『10万円』は確保出来た。
(もっと貰う事も出来たが、『功名心』が勝った)


「―――――フフッ!!」


――――『10万円』。
なんだかんだ『中学生』の黒羽には『十分すぎる』。
そういうわけで、上機嫌で校内を歩いていたのだった。

826黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/07/05(日) 02:42:30
>>825

――――そして部室に戻っていった。

827シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/07/12(日) 12:56:00

 〜〜℃¥$¢£%#&*@§♪

      〜〜℃¥$¢£%#&*@§♪

          〜〜℃¥$¢£%#&*@§♪

屋上。
聞くに堪えない『怪音波』が響き渡る。
それが耳に入ってしまった不運な者は、
不快な『頭痛』に見舞われる事だろう。

   「うんっ!今日は何だか調子いいみたい!」
         
       「よ〜し!もっと頑張ろう!」

『歌唱練習』――――『シルク』は、そう呼んでいた。
『ワタシ』は『騒音公害』と呼んでいる。
『思想の食い違い』とは、非常に悲しく哀れなものだ。

828斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/12(日) 21:25:43
>>827

 「どういうことだ――ッ!」

すきっ腹を抱え 屋上へ続く扉を華麗かつ乱暴に蹴り開ける 
そんな蛮行に及びながら 僕こと『斑鳩 翔』は勇ましく叫んだ。

――何故こんな蛮行に及んだのか?

昨今の古い店のパンを侮るなかれ
陳列棚からそれを外から見やるガラスまで美しいとは言い難いが

その棚に並んでいるラップに包まれた如何にもな安物のパンは無二の味である
具は貧相だがそれを挟むパンは雲の如く柔らかく、ラップの包みからでさえ甘い香りがしだし
頬張ればこれを表現可能な語彙が浮かばない程に夢中になれる。

そんな折角買ったそれを、今日の様々な単行本数巻分のごたごたで食いそびれ
『こうなれば誰にも邪魔をされぬ屋上でたべるのだ!』等と勇み足で移動すれば……

時代外れの蓄音機に円形の黒板をセットし、ダイアモンドの針を乗せて無理やりに再生したかのような騒音が展開されていた。

 ――どういうことだ。

右手のコッペパン達(こぺお、こぺこ)を危うく握りつぶしかける。

 「どういうことだ――ッ!」

僕は階段を二段飛ばしで疾走した、可哀そうな扉まであと6 4 2 0
そして最初の蛮行に戻る。

 「向こう側の見える正義感で生徒会の権力乱用すら辞さないッ!」

『頭痛』のする薄っぺらさともいう。

首に赤いスカーフを巻き、ジャラジャラとした学生服を着崩しながら屋上に来た。
……コレが斑鳩翔・・・・・・僕である。

829シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/07/12(日) 23:17:39
>>828

      「ひっ!?ひぃっ!?」

              「な、何ですかっ!?」

  「いッ、い――――」

           「いきなり、何なんですか!?」

『シルク』は『混乱』している。
無理もない。
突如として『意味不明な暴言』を投げ付けられたのだから。

だが、『シルク』――――これは決して『理不尽』ではない。
全ての『原因』と『責任』は君自身にある。
だから、この男を責めるのは筋違いというものだ。

もっとも、それを『シルク』が理解する事は『決して有り得ない』。
その『事実』を『ワタシ』が知っている理由は簡単だ。
何故なら、誰よりも理解させようとしているのが『ワタシ』だからだ。

(『何もしてないのに』怒られちゃったよぉ……。
  もしかして、この人『不良』か何かなのかなぁ……)

      (うぅッ……怖いよぉ……)

          ジリッ

               ジリッ

『燕尾服』風の改造制服に身を包んだ少女が、怯えながら後ずさる。
『白い髪』と『黒い瞳』。

        ツヅラシルク
彼女の名は『黒葛純白』。
中等部では名の知れた『合唱部のお荷物部員』である。

                    ワ  タ  シ
それを『異次元』から傍観する『異次元生物』の名は『トワイライト・ゾーン』。

830斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/12(日) 23:35:09
>>829

蹴り飛ばして屋上に出たはいいが、其処に想像していたような『蓄音機』も
『九龍城塞』もかくやの違法建築っぷりのスピーカー群も存在しなかった。

 「……おや?其処にいるのは我らが『合唱部部員』の『ツヅラ』さんでは?」

そしてそれだけが何やら怯えた表情を浮かべて怯えた行動をし、怯えた眼つきをしている
……成程、怯えているらしい まああの騒音を至近距離で聞けば無理もない話である 哀れな。

ここは優しく接するべきなのはWW1前にバルカン半島に拳銃とサンドイッチを持ち込んではいけない事より明らかだ。
制服の埃を払い、襟元をただして口を開く。

 「落ち着き給えよ君、怪しい者ではない 君と同じくここの学生だとも」

多少ひしゃげたコッペパンで人を指しつつ落ち着かせる
なんでこのパンはひしゃげているのだろう。これでは食感が台無しである。

 「『品行方正』 『公明正大』 という言葉は紙上のインクである内は素晴らしい輝きを放っているが」
 「人の舌に乗っていると途端にくすんだ10円玉より見苦しいと思っているただの『生徒会』員……。」

 「あまり頼りにならない高校2年『斑鳩 翔』とは僕の事だ。 ご清聴ありがとう。」

どこからともなく呆れたような拍手が響く。
何故生徒会員になっていたか?それは僕にも解らない
気が付いたら何故かこうなっていたので惰性で続けているが、自分には明らかにあっていない気がする。どうでもいいけど。

 「君、時に聞くが此処に九龍城塞もかくやの違法建築をかました蓄音機を見てないか。」
 「此処に絶対に有る筈なのだが。」

『絶対』なのに『有る筈』とはこれいかに?
どうでもいいけれど。

831シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/12(日) 23:58:54
>>830

  ビクンッ

   「せ、先輩ですか……?」

       「先輩なんですか……?」

          「こ……こ、こんにちは……」

『斑鳩』に対し、『シルク』は肩を震わせながら挨拶した。
初対面のインパクトが尾を引いている。
その影響で、『怖い』という印象が植え付けられてしまったようだ。
『シルク』が怖がろうが、『ワタシ』には関係のない事だ。
無関係であるにも関わらず、『呼び出し』には応じなければならない。

「み、見てませんけどぉ…………」

「そっ、それに――――」

「そんなの全然聞こえませんでしたしぃ…………」

    ジリッ…………

相変わらず『シルク』は『斑鳩』から距離を取っている。
『斑鳩』の言葉は正しい。
『音程の破綻したオルゴール』は、ここに存在する。
そして、『シルク自身』は決して気付かない。
それこそが、『シルク』が持つ『悪質さ』の根源である。

832斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/13(月) 00:20:10
>>831

 「――そうか、騒がせた事失礼。後輩。」

どうやら至近距離で聞いた事に聴覚が麻痺したようだ
その割には僕の言葉が通じているが、まあそういう事も有るだろう。
一礼して騒がせた事を詫びる

 「『アルバトロス号』の出番はまだ先だな。」

屋上にいた彼女が見ていないという限りは、事実そんな物はなかったのだろう。
彼女の歌声に関しては……まあ……噂にはなっているが、それはそれとしてかのような騒音を出せる声帯なるものが存在しているわけもない。
『生徒会ニコニコ調査書類』にもただ単に『ひどい』とのっているだけだ。

 「ついでにもう一つ失礼、お昼がまだなんだ。」

我らがこぺおとこぺこは既に半分ほどひしゃげているが
だからと言ってかの店舗のパンである事には変わりがないし、舌触りの良さとミルクの甘い香りが失われているわけでもない
胃袋で仲良くする分には…多少崩れた見た目だとしてもなんの不都合もない事だ。
 
 ――ガンッ!
               ダンッ! 
                             ストッ!


 『地面を蹴り飛ばし、跳躍 落下防止用のフェンス及び中途半端な梯子を足場代わりに蹴り飛ばし 自身の身長以上の塔屋上部に座り込む』

 「――頂きます。」

こうしてほうばるとやはりあのパン屋のパンは無二の味わいである
今日起こった単行本数巻分における騒動すら許せる気持ちになる気がするので不思議だ。

833シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/13(月) 00:47:23
>>832

「『アル』…………?」

『シルク』は『斑鳩』の言い回しを理解出来なかったようだ。
それは『ワタシ』もだが。
『シルク』と『ワタシ』の考えが一致する事は非常に稀な事だ。
このような出来事は、あと『千年』は起こり得ないであろう。
『シルク』の生命活動が停止すれば、
『ワタシ』も『呪縛』から解放されるのであろうか。

「――――えッ!?」

(助走なしで、あんな動きが出来るなんて……。
 『私だって、出来るかどうかちょっと自信ないよぉ……)

         ハッ

    (も、もしかして――――!)

(――――この人、『人間じゃない』!?
 人間の姿をしてるけど、本当は『異次元生物』なのかも!)

(ど、どうしよう!

 オ  ト  モ  ダ  チ
 『トワイライト・ゾーン』みたいに『分かり合えたら』いいけど、
 もしかしたら『怖い異次元生物』かも…………!)

(ううん!『オトモダチ』とも『分かり合えた』だもん。
 きっと、今度も分かり合えるはずだよね!)

(――――よしっ!)

       スゥゥゥゥゥ…………

 〜〜℃¥$¢£%#&*@§♪

      〜〜℃¥$¢£%#&*@§♪

          〜〜℃¥$¢£%#&*@§♪

出口の見えない迷走とも言うべき思考の紆余曲折を経て、
『シルク』は歌い始めた。
『シルク』は、『歌』によって『ワタシ』を縛り付けている。
彼女は『気持ちが通じた』と考えているが、
実際は『正反対』だ。
そして今、『斑鳩』を『異次元生物』だと考えた『シルク』は、
『分かり合う』ために、『心を込めて』歌っている。
その襟元には『コウモリを模したピンマイク』があった。
『斑鳩』は再び頭痛に襲われる。
それこそが『シルク』の歌声であり、
彼女の能力である『トワイライト・トーン』は『それ』を助長する。

834斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/13(月) 01:47:34
>>833

 ――犬も歩けば棒に当たる そういう言葉がある。

しかし考えてみると犬にとって棒とか投げて拾ってくるものであって
むしろ当たっても嬉しがる生き物ではなかろうか?これではこの言葉の本来の意味を喪失しているだろう。

幼子が成長して、かつての衣服が着れなくなった時のように
今こそまったく別の衣服へ変更すべきである 例えば、そう……

 『斑鳩も歩けば騒音に当たる』


         [筆者では表現不可な歌唱]


 「――――は。」

言葉が出なかった

より正確に言うなら言葉を出すべき言語野が麻痺した
というより目の前の現実が認められなかった。

『音痴』という言葉を見て『そうはいってもカラオケの『5点』くらいなんでしょ?ジ〇イアンじゃあるまいし。ワハハ』
等という甘い見積もりは異次元の彼方に吹き飛ばされ ついでにコッペパンを頬張っていた幸福な気持ちもM78星雲辺りにサヨナラした。

帰ってきたのはウルトラマンでは無く異次元を跳躍すべきえげつない歌唱であった
なお彼の跳躍は、単純に彼のスタンド…影の脚によるタイムラグの無い壁蹴りが実行可能にさせた事だがそんな事を目の前の燕尾服の少女が知る筈もなし。

無論、彼の聴覚も世間一般で言う所の『普通』であるので
我々が蟻の会話を理解できぬように、この歌唱を理解できなかった。
『せいい』と『さつい』は二文字しか違わないのだ 二文字も違うともいう。

 次の瞬間、彼は塔屋にひっくり返った。 そして動かなかった。

835シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/13(月) 20:54:36

「えっ――――――?」

(あれっ?急に倒れちゃった…………?)

(もしかして…………)

(お腹いっぱいになって眠くなっちゃったのかな?)

(でも、こんな所で寝てたら身体に良くないよね。
 他の人にだって迷惑が掛かっちゃうもん)

         ソソッ…………

           「あのっ」

    「『お休み』してるのにすみませんっ」

「でも、こんな所で寝てたら具合が悪くなっちゃいますよ〜っ」

『悪質な誤解』を抱えたまま、『シルク』は恐る恐る『斑鳩』に近付き、下から呼び掛ける。
『シルク』――――『斑鳩』の具合は既に悪くなっている。
他ならぬ君自身が齎した『災厄』の被害を被ったのだ。
そのように糾弾したい所だが、『ワタシの主張』は『シルク』には通じない。
だが、『シルクの主張』は『ワタシ』に届いてしまう。
見紛う事なき『理不尽の見本』とでも呼ぶべき状況が、ここに存在する。
しかし、意思の疎通を諦めた今となっては、嘆く事さえも愚かしく感じているのが本心だ。

836斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/13(月) 22:31:14
>>835

おや、むこうで誰かが手を振っている
アレは誰だろう?少なくともそんなに親しい人があの川の向こうにいただろうか
そう思って川を見ていると、なにやらすさまじくえぐい色合いをしていて――……

そう、そういえば思い出した
僕が生徒会役員になったのはあの日、転校から数か月たったある日だった

僕は単に一向に決まらない役職に業を煮やして適当に手をあげたのだが
後から後ろで黒髪の女性が手をあげている事を知ったのだ

まるで親の仇みたいに睨んでいたが
その時の僕にはとんと覚えが無かった

彼女は長々と情熱的かつ論理的な熱弁を振るったので
彼女がなりたいのだと思い僕は譲ることにした――そう、それで適当な事を言おうとして……

 『僕が生徒会役員になったときは、スピーチの時間を10秒以下にします。』

何故か僕が選ばれてしまったの……だ

 「――どう!」 カッ!

 「いう!」 ダンッ! グルン

 「ことだァ――ッ!」 ズタァァン!

怒りの余り 僕は起き上がりざまに糾弾とバク転起立を同時に決めた。
10.0 9.8 9.4 10.0。

 「説明だ!説明を要求する!さもないと僕は君をアルバトロス号パイロットに任命してしまうぞいいのかッ!」

837シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/13(月) 22:58:46
>>836

「――――――ひぃッ!?」

(や、やっぱり怖い人だった!きっと『怖い異次元生物』なんだ!)

      ザザザァッ

             キ モ チ
(ど、どうしよう……!『 歌 』が伝わらなかったのかなぁ……)

突然の怒声に怯え、『シルク』は激しく後退する。
今後、『恐ろしい異次元生物』というレッテルが剥がれなくなる可能性が浮上した。
だが、『ワタシ』には一向に関係のない事だ。

(ううん、諦めちゃダメ!きっと、『想い』が足りなかったんだ!)

(気持ちを込めて歌えば、必ず『分かり合える』はずだよね!)

(だって――――)

 オ  ト  モ  ダ  チ
(『トワイライト・ゾーン』とも『分かり合えた』んだから!!)



  〜〜℃¥$¢£%#&*@§℃¥$¢£%#&*@§♪

  〜〜℃¥$¢£%#&*@§℃¥$¢£%#&*@§♪

  〜〜℃¥$¢£%#&*@§℃¥$¢£%#&*@§♪

  〜〜℃¥$¢£%#&*@§℃¥$¢£%#&*@§♪

  〜〜℃¥$¢£%#&*@§℃¥$¢£%#&*@§♪

  〜〜℃¥$¢£%#&*@§℃¥$¢£%#&*@§♪


『前向きな思考』の果てに、『シルク』は一つの考えに至った。
より一層の『想い』を込めて、自らの声帯を震わせ始めた。
『トワイライト・トーン』が、その破壊力を増幅している。
『次元の壁』すら超え、『異次元生物』さえも強制的に従わせる程の威力を秘めた、文字通り『次元の違う歌唱力』。
だが、『ワタシ』は『傍観者』に過ぎない。
即ち、『ワタシ』には『シルク』を止める力がないという事だ。
その『結果』は言うまでもないだろう。

838斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/14(火) 00:12:47
>>837

また意識が暗転していく、理由は言わずもがなとりあえず歌うのをやめて欲しいのだが
やたら長いストーリー読むときスキップするみたいに声帯を16連打するのはやめて欲しい。割り込みようがない。

ああ、めのまえがまっくらに……

 『――流石にこれ以上は見過ごせねぇかな お嬢さんよ。』

【影のような黒い腕】がもう片方のコッペパンをシルクの口にあてがおうと動いた
【ロスト・アイデンティティ】の自律行動のような物だ、実際には着ぐるみに近いが。


 『つっても…気持ちわりぃ……何の冗談だこりゃあ。』
 『たかが【声】で俺が引きずり出されるってどういう状態だよぉ……取りあえず【それ】やめてくれ。事あるごとにそれとか【ディズニープリンセス】か。』

 『話もできねえ。……なぁお嬢さん まさか道行く相手に全員そうしてんのかぁ?』
 『その場合【カレー】に【コンデンスミルク】かける行為くらいには正気を疑っちまうんで、頼むから違うと言ってくれ。』

839シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/14(火) 00:48:51
>>838

「――――――もッ!?」

『シルク』の口に『小麦粉を主原料とした食物』が捻じ込まれた。
必然的に『歌声』は止まり、『世界』に『平穏』が訪れる。
『ワタシ』は『傍観者』だ。
『シルク』が何をしようと何をされようと、ただ見ているのみ。
本来であれば、それさえも放棄したい所だ。
しかし、この呪縛が『ワタシ』を縛り付けている。
『世界』に『平穏』が訪れても、『ワタシ』に『平穏』が訪れる事は決してない。

    「むぐっ――――」

               「――――もがっ」

『シルク』は何か言おうとしていた。
そして、『耳にした声』が『ある種のテレパシー』であると本能的に悟ったらしい。
『トワイライト・トーン』を通して、『己の意思』を飛ばす。

         《『良かった』ぁ…………!》

『想いが通じた』とか『歌で分かり合えた』などという『有りもしない幻想』は今すぐに捨て去るべきだ。
『ワタシ』の意思が伝わるのであれば、そう言っていただろう。
それが『不可能』な事は、既に分かっている事だった。

   《――――こんにちは!『異次元生物』さん!》

   《あなたは、どこの『異次元』から来たんですか?》

『シルク』は耳に入っていないようなので、『ワタシ』が代わりに答えておこう。
その答えは『ノー』だ。
まず、『斑鳩』が『通常の人間には困難な動き』を見せてしまった事が、『第一の原因』として挙げられる。
そして、それを見た人間が、『異次元生物』を従える『シルク』であった事が『第二の原因』だ。
最大限に簡潔な言葉で表現するなら、『不幸な事故』だ。
もっとも、当の『シルク』は『不幸』とも『事故』とも思わない。
『シルク』の持つ恐るべき『前向きさ』が、『マイナスをマイナスだと認識させない』のだ。

840斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/14(火) 01:04:45
>>839

 『はぁ?そりゃあママンの……ああん?こりゃ【スタンド会話】で……』
 『なんだ お嬢ちゃん同類かよ。』

呆れたような、疲れたような声色で俺が喋る
内面から叩き起こされたのは違いないが、こりゃどういう状況なわけだ?

 『まぁ?広義の意味で言っちまえば人類みんな異次元生物だけどよぉ……【俺】が怒る気にもなんねぇのはメイド野郎以来だなぁオイ。』

――実際の所、『ロスト・アイデンティティ』が自発的に会話する事は無く
目の前の人間がスタンド使いだと露ほども思ってない以上、この会話は本体の口を通して出ている…のだが。

違うといえば、『人格』が違うのだ。
『俺』という 名前すらない心の一つ 斑鳩 翔は多重人格者である。

 『ま、よかったなお嬢ちゃん お陰で俺達の作ったグライダー……【アルバトロス号】で海にダイブする羽目になんなくて よ。』

841シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/14(火) 21:46:22
>>840

至近距離にいる今、『シルク』の襟を明確に視認出来る。
『コウモリを象ったピンマイク』が、そこに発現していた。
『それ』は『アクセサリー』などではない。
『エコロケーション』の能力を持ち、『異次元』から『ワタシ』を『召喚』してしまった力の源だ。
『斑鳩』には、『それ』が『スタンド』だと分かるだろう。

         《 やっぱり! 》

『シルク』は『異次元生物』という部分に反応した。
同時に、『それ以外の部分』には反応しなかった。
言い方を変えれば、『聞き流した』という事だ。

《やっぱり『異次元生物』だったんですねっ!
 『そうじゃないかなぁ』とは思ったんですけど――――》

《――――また『異次元人』と出会えて嬉しいですっ!》

《でも、ちょっぴり意外でした。だって、私達と同じような姿をされてますし》
 
《『異次元』にも色々あるんですね〜っ》

     オ  ト  モ  ダ  チ
    《『トワイライト・ゾーン』とは全然違いますねっ!》

断じて言うが、『ワタシ』は『シルク』の『友達』ではない。
『家族』のように掛け替えのない仲でもなく、『他人』のように関わりの薄い間柄とも異なる。
『ワタシ』は『被害者』だ。
そして、『シルク』――――君は『加害者』だ。
『ワタシ』と『シルク』の繋がりは、それ以外には存在しない。

842斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/14(火) 22:13:34
>>841

 『ノックして…もしもぉーし』

 *chop* *chop*

会話の矛先がもはや異次元にしかいってねぇ 泣けるぜ
まあ、そういう類の女性だとは理解しちまったが、俺の対話力が試されている。

…ニャウリンガルで事足りるのかねぇ?

 『……ん?俺以外にも多々いるのぉ?清月学園って何時エリア81になったんだオイ?』

ところで俺ァここに昼飯を食いに来たが、来て早々にとんでもない声に邪魔され
もはや味の余韻すら吹き飛んだ 俺も被害者名乗っていいんではなかろうか?

 【とはいえこの…通信簿に『人の話を聞きましょう』って書かれそうなのを怒る気にもなれねぇ…】
 【恐らく『スタンド』なんだろうが……】

チラと襟元を見ると、通常の制服には不似合いな『ピンマイク』のような物が見えた
何時の俺ならそのまま視線を下にさげたんだが、さっきの『歌のようなもの』がこれのせいだと願うばかりだ。

 【シャクだしやっぱグライダーに括り付けて飛ばしてやろうかな。自由飛行部門だし。】

とはいえスタンド使いだと解った以上は、俺の事情的には確認の必要が有る。
俺は『イヤイヤ』対話を続けることにした 疑念を持つなただ祈れ 殴れば終わる分チンピラ相手の『対話』の方が簡単な気もする。

 『あー……んー…… それ、どんなヤツ?』

843シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/14(火) 22:40:31
>>842

《ここに来るのは、やっぱり『次元の壁』を超えてきたんですか?》

この瞬間、多くの人間が『話が通じない』という感覚を味わう事だろう。
『その感覚』には『ワタシ』も同意せざるを得ない。
何故ならば、『ワタシ』は常に『それ』に晒され続けているからだ。

だが、『斑鳩』――――君の置かれている状況は『マシな方』だ。
『対話を放棄する』という選択肢を行使する権利があるのだから。
『ワタシ』には、それすら許されていない。
理不尽な運命という名の引力によって、強制的に『対話』を余儀なくされるのだ。
厳密には、それは『対話』ではない。
『一方的なコミュニケーション』を『対話』とは表現しない。
それは、『忌まわしき呪縛』に他ならない。

     《あっ、じゃあ『紹介』しますねっ!》

     ズ
           ズ   ズ   ズ 
                         ズ   ズ

突如として、『斑鳩』は『違和感』を覚える。
その正体は分からない。
だが、『何かがおかしい』という『圧倒的な違和感』が存在する。
例えるなら、『視覚』と『他の感覚』が食い違っているような『違和感』だ。
何も見えない。
しかし、そこに『何かがいる』。
『そういう感覚』だ。

844斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/15(水) 02:59:34
>>843

 『今、まさに超える気分を味わってっかな。』

それもベルリンの壁レベルを
正確に言えば便器の蓋にソースかけて舐めてる気分。うへぇ

 『……あー【紹介】?』

そりゃあ『キューブ』とか『タンホイザーゲート』あたりから出てくるもんだろうか?
頭が前後に長くて体液が酸だったり、指先を突き合わせると発光する系のお友達じゃなけりゃいいんだが。

 『…………ッ!?』

その時感じた物を表現するのは難しい
なにせ名前がついていないからだ

例えば林檎なら 丸くて 赤い だとか、そういう特徴も言えるが
『何かの色がついているが どの色でもないし透明でもなければ不透明でもない』
『〇ではあるが△でもあるし □でもある』

なんて、何でもありな物は……特徴に値しないからだ。
だから精々俺に出来るのは、逃げる準備と、戦う準備くらいのもんだった。

845シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/15(水) 20:11:24
>>844

    ズ   ズ   ズ

                ズ   ズ   ズ

                             ズ   ズ   ズ

本来であれば、何も存在しない筈の『無の空間』。


        ズ   ッ

                     ズ   ッ


そこから――――太い『両腕』が生えてくる。


        ズ   ズ   ズ   ズ   ゥ   ッ


次に現れたのは、『異形』めいた『頭部』だった。
感情の窺えない両目が、無機質な輝きを放っている。


      ズ   
              
             シ
             
                    ン   
         
                          ッ


最後に、力強い『両足』が地面に降り立ち、全長『2m』の『人型生物』が屋上に出現する。
その肉体は『スタンド物質』で構成されてはいるが、この『生物』の本質は『スタンド』ではない。
『次元の壁』を超えて『召喚』された『異次元生物』だ。

《『トワイライト・ゾーン』っていうんですっ!
 私の『歌』を聞いて、『異次元』から来てくれたんですよっ!》

《きっと、お互いの『気持ち』が通じ合ったんですねっ!》

『シルク』は『ワタシ』を見ながら、いつも通り好き勝手な事を喋っている。
『シルクの歌』が、『異次元』から『ワタシ』を引きずり出した要因である事は確かだ。
だが、決して『通じ合って』はいない。
その事実を理解させたいと思った回数は、もはや思い出すのも馬鹿馬鹿しい。

846斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/15(水) 21:33:22
>>845

 『いや、もし【アレ】が通じてるなら俺ァ今すぐ逃げたと思うぜ』

UMA(Unidentified Mysterious Animal 【和製英語】) それが第一印象だった
むしろそれ以外の表現が一切思いつかなかった それほどに異質だった。

 (明確にスタンド……なのか?)

月刊ムーが小躍りするであろうそれはおよそ全長2m
どうやらスタンド物質…で 出来ているのだろう 或いは別の世界からここに来るのにそれが一番、都合がよかったという可能性もある。
 
 (しかし、アレで喜んでいるならもうちょい喜々してきそうなもんだが)

いやいやと休日の父親達の如くのっそりと現れたように見えるのは気のせいだろうか?
…きっと気のせいなのだろう 姿形が人間に近いからと言って好むものまで人間に近いとは限らない。

 『ま、好みは人それぞれ……いや、バケモノそれぞれか。』

並んだ姿は美女と野獣。
ただし提供元はディズニーではなくアサイラム。そんな感じ。

 (会話が出来たり…は しねぇんだろうな じゃなきゃ此処まで一方的に断定しないだろうし)
 (――話を聞かないという説は兎も角)

 『まあ(どうでも)いいんじゃねぇかな 危険そうでもないし暴れるわけでもないし。』
 『見るもん見れたしこれでいいだろ 、そんじゃぁな』

一応生徒会に所属している身としては、このスタンドに本体が操られている可能性を危惧したが
見た限りはそういう事もなさそうであるであればもはやさっさと去るのが吉であろう ――自分の両親の助けになりそうにもない事だし。

 『・・・・・・ああ。』

踵を返して屋上を去る前に、一つ用事を思い出した

 『こっちも断定しちまったんで 一応確認として聞いておきたいんだが……嬢ちゃん「名前」は?』

847シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/15(水) 21:58:46
>>846

『異なる次元』から『召喚』された『異形の存在』――――『異次元生物』。
その出自や生態については、『この次元』の誰にも理解する事は出来ない。
決して解ける事のない『永遠の謎』だ。

「あっ、『シルク』って呼んで下さいっ」

『小麦粉を主原料とする食物』を体内に摂取した『シルク』が、自らの声で応じた。
重ねて言うが、『ワタシ』の意思は『シルク』には通じない。
同様に、『ワタシ』の意思は『斑鳩』には通じない。
もし通じるなら、この『呪縛』を解く手段の手掛かりを訪ねる所だ。
この繋がりを断ち切る為であれば、どのような労苦も惜しまないと言い切ろう。

「――――また、お会いしましょうね〜」

『シルク』は小さく手を振り、『斑鳩』と別れた。
『斑鳩の選択』は『正解』だ。
あるいは、『運が良かった』とも言えるだろう。

「ふふっ、何だか『元気』出てきちゃった」

「よーしっ!もっと頑張ろうっ!」

次の瞬間、再び屋上に『怪音波』が響き渡った。
『聴覚器官』に『不快感』を齎されたのが『ワタシ』だけだった事は、ある種『不幸中の幸い』だ。

848氷山『エド・サンズ』:2020/07/19(日) 21:00:29

    ビュオオオオォォォ・・・


            ビュオオオオオォォォ・・・

「さて・・・」
         「どうしましょうかねー・・・」


背の高い木々が生い茂る『城址公園』の一角
夕方近くで人通りも少ないその場所に一際大きな木が生えていた
その木の上の方から少女の呟き声が聞こえる


    ブラァ〜〜〜〜


木には上からロープのようなものが吊り下げられている
何者かが木に登るために使ったのだろうか?

849氷山『エド・サンズ』:2020/07/20(月) 20:45:36
>>848
人知れず、気配は去った

850村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/24(金) 02:49:04
『高等部図書室」

  「・・・ないな。」

『トライコーン』なる不良少年集団との戦いが明けて数日・・・村田は図書室にいた。

パラ…
  「『事件の実態』が隠せても、負傷者や損壊物の記録まではごまかせないはず・・・と思ったんだが。」
                      パラ…
  「不自然な記録は『みあたらない』。」
                                  パラリ…

眉間にしわを寄せ、過去に星見町で起きたあらゆる『事件』『事故』の記録を漁りながらつぶやく。

  「そういった記録についてまで『改竄』ができるなら、とんでもなく大きな『組織』が背後に動いているに違いないが・・・」

  「そんなものが動いているなら、『トライコーン』はあんな規模になる前に潰されているか、『組織』に吸収されているはずだ。」

事情を知った今だから分かる街の『奇妙さ』を、村田は感じ取っていた。
それに、『トライコーン』が言っていたことについても、まだわからないことが一つある。

  「『ゲンマと似た能力を使う女』・・・」

本当に奴は『火元』だったのか?あるいは、『大火』が振り撒く『火の粉』の一つだったなら?

851烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/25(土) 23:40:21
>>850
「……少しいいかい?」

熱心に調べ物をする『村田』に、どこからか声が掛かる。
顔を上げれば、長机のはす向かいに座って本を開けた少女と目が合うかもしれない。
伸び過ぎたような長髪を払って、話しかけてきた。

「ええと……君は、何を調べてるのかな。
盗み聞きするつもりはなかったんだけれど……つい耳に入ってしまった。
すごく物騒な単語が、いくつも出てきたような気がしたんだが……」

周囲には、他の生徒はいない。

852村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/26(日) 01:32:58
>>851

  「…」 ピク!

誌面にむけた顔を上げず、「しまった」という表情を噛み殺す。

  「…気にするな。遅れてきた『中二病』だ。」

誤魔化すのがヘタクソだった。

853烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/26(日) 20:02:09
>>852
「あはは、顔に出ているよ。
誤魔化すのが下手だなあ。しかも、言うに事欠いて『中二病』……だなんてさ」

くっくっと声を殺して笑い、手元の本を閉じた。

「そうやって難しい顔をして、一人で何かと戦っている人が、私の周りにいた事がある。
その時は、私の臆病さゆえに彼の事情を知る事は出来なかったけれど……後に後悔したものさ。
力になれるかどうかはわからないけれど、せめて話を聞いてあげるくらいはできたんじゃあないかってね。
……それとも、見ず知らずの年下の女なんかには、そんな話は出来ないかい? 先輩」

854村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/26(日) 20:36:17
>>852

  「…気後れはする。
   あんたが女だからとかそういうことじゃあねえ。話がややこしい上に、憶測の域を出ないからだ。」

  誌面をめくりながら、言葉を続ける。

  「そのややこしい憶測が当たっていた場合…実に面倒なことになる。
  自分のケツまくるくらいのことはできるつもりだが…他人のことまで気にする余裕は、今の俺にはねえ。」

  「それとも何かい?あんた…
   見ず知らずのガキの与太話に首突っ込んでやろうって余裕があるほど暇なのかい?」

855烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/26(日) 21:14:13
>>854
「名前は烏丸香奈枝という。あんた、じゃあない。
苗字で呼んでくれると嬉しいな。気に入っているんだ」

毛先をくるくると弄びながら、茶化すように言う。
村田の言葉を聞いて、目を細めた。

「そうかい、『面倒事』。
別に、構わないよ。そういうことこそ、誰かに頼らなきゃね。
私だって、君の『負担』になる気はないし……って、何の話かは知らないけれど。
勿体つけずに話せばいいじゃあないか。
お察しの通り、暇だしね」

856村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/26(日) 21:50:26
>>855

  「ついこの前の話…チンピラの集団に絡まれてな。
   全員叩きのめしたし、それ自体はいいんだが…」

  「俺に対して誰も何も言ってこねえのと、そいつらを追ってらしかったもう一人の動きが気になってな。」

誌面から顔を上げ、背もたれに身体を預けて上を向く。

  「いくら相手がチンピラだろうと、コトがコトだ。サツなりなんなりがちょっかい出してきてもおかしくないはずなのに、それがない。」

  「考えすぎかもしれないが…『なかったコト』にされてるんじゃないかと思ってな。
   他にもそういう形跡がないかと思って資料をひっくり返していたんだが…」

857烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/26(日) 21:59:03
>>856
「ふうん、物騒な話だ。
何人くらいの相手なんだい?」

『村田』を値踏みするように、じろりと遠慮のない視線を送る。

「それに、不明瞭な話だ。
『誰も』、『もう一人』。
たださ、あれなんじゃあないの?
そういう人たちの論理なんて、別に詳しくはないけれど。
ほら、『メンツ』が立たないから黙ってる、とかそういうのさ」

「君は、『隠ぺい』があったって、そう思っているのかい?」

858村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/26(日) 23:05:28
>>857

  「どうだったかな…全員で12人くらいか。
   それなりの規模だ。その12人全てが口を噤んでいるとは考えづらい…」

全部自分がとっちめたわけではないが。

  「少なくとも…『ないことはない』とおれは思ってる。
   何か…ウラで糸をたぐっている奴らがいるはずだ。『自警組織』なのか、『暴力団』のようなものなのかは分からないが…」

  「…『アリーナ』…『エクリプス』…」

少し前、小林から聞いた単語を思い出す。

  「この単語に聞き覚えは?」

859烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/26(日) 23:19:13
>>858
「………ええ、『12人』?君が、ひとりで?
すごいな。何か、『格闘技』とかやってるのかい。
いや、そんなレベルの話でもないのかな」

心底驚いた風に、目をぱちぱちと瞬かせる。
それだけなら『一般人』としては当然の反応だが、
どこか『村田』を見る目つきが、鋭くなったような気がした。

「それならさ、直に聞いてみたら?
君が『のした』、その12人の誰かに」

「そんなに結束が固くないのなら、逆に口を割る人もいるかも……何だって?
いや、『知らない』………それは何? 何かの『組織』の名前、とかそういうのかい」

860村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/26(日) 23:59:50
>>859

  「難しいだろうな…余罪のあった野郎はとっくに塀の中だろうし、
   逃げおおせた奴がいたとして、この広い街の中から探し出せるとは思えない。」

顎に手を当て、眉間に皺をよせる。
こんなことなら、『ゲンマ』を叩きのめす前に吐かせておくんだった。

  「…そういう名前の組織がある…そんな話を聞いたコトがあってな。
   それがこの件に噛んでいるのかどうかは知らないが。」

  「仮に噛んでいたとして、その組織の噛みようによっては…」

ただではすまないだろう、という言葉をあえて伏せる。いうまでもないことだからだ。

861烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/27(月) 20:40:30
>>860
「うーん……まあ、それはそう、なのかな。
そもそも、だけれど。君は、『何もない事』について疑問に思っているんだよね。
君が12人を返り討ちにしたのに、『何もない』」

「それって、もし、何かの力で『隠ぺい』があったとして、
君にとって、『良い事』なんじゃあないのかい?
ある意味では、君の起こした『事件』を、もみ消してくれている、とも言えるよね。
それが気に入らないってことかな?」

小首を傾げながら、ひとつひとつ確かめるように村田へと言葉を投げる。

862村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/28(火) 18:29:03
>>861

  「今回はな。正直言ってヒヤヒヤしたが…」

『深山兄妹』のことが脳裏をよぎる。

  「おれ以外に巻き込まれた人間がいたとして、そいつが心身にダメージを負ったとして…
   事件がもみ消されたなら、そいつは泣き寝入りになっちまう。」

  「そんなことは許せないし、気に入らねえ。」

実際に、深山兄妹は危ないところだったのだ。
事情を知らない男…あの『斑鳩』というやつと先に出会っていたなら…殺しはすまいが、ある程度の怪我は負っただろう。
俺とて事情を知らなければそうしていた筈だ。
それらを自己責任というには…あまりに理不尽だ。

  「…とまぁ、全部仮定の話なんだが…こんなところだ。」

863烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/28(火) 19:49:55
>>862
「ふーん、正義の味方ってわけだ。
『泣き寝入り』……ま、そうかも知れないね」

小さくため息をついて、目に掛かる髪の毛を払うでもなく、
その向こうからじっと『村田』を見つめる。

「君の言う通り………『仮定の話』だ。
君の事件に、何らかの組織が関わっているかもしれない。
そのうえで、その人たちが『隠蔽工作』をしているかもしれない。
正直、お話にならない………って言ったら、怒るかい?」

くっくっと笑って、一瞬の間、『村田』の反応を伺う。

「信じるよ。というか、信じてみる……かな。
確かに、何の動きもないのはおかしいのかもしれないし……
君が口にした名前、そういう表に出てこないような団体が、この『町』にあるのは『事実』、なんだよね?」

864村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/28(火) 20:33:55
>>863

  「いいや、言ったはずだぜ。『遅れてきた中二病』だってな。」

くつくつと笑う烏丸に対し、鼻で笑って返す。
…揺るぎのない態度だ。後ろ暗いところがあるとか、そういった人間の態度ではない。自信に満ちた人間のそれだ。

  「組織の有無についても、ヒトから聞いた話で何処まで信用が置けるのかはわからないが…
   手がかりはその名前くらいなもんだ。」

  「昔なら鼻で笑って気にも止めなかったろうが…」

今となっては話が違う。良くも悪くも、村田は知ってしまったから。
この街のありよう、この街の…裏の騒々しさの一端を。

865烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/28(火) 20:44:29
>>864
「『名前』しか聞いてないのかい?
何か『特徴』とか、そういうのは無いのかな」

自信に満ちた『村田』の表情に、すい、と視線を逸らす。

866村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/28(火) 22:22:42
>>865

  「その名前以外には何も。
   さもなきゃ、こんなに行き当たりばったりな調べ方しない。」

机の上にうずたかく積まれた資料の山を目の端に捉え、ため息をつく。

  「事件事故の記載に不審があれば、関わった人間、被害者、容疑者…そういった人間を伝って辿り着けたかもしれないが…どうにもこの調べかたはよろしくないらしい。」

これだけ調べても、何も見当たらなかったのは確かなのだから。

(…逆に考えるなら、あんなことがおこる街でこれだけ何もないってのは、かえって不自然なのかもしれないが…)

867烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/28(火) 22:51:40
>>866
「そうかい。
どういうシチュエーションでそんな情報が転がり込むのかわからないけれど、妙な話だね。
てっきり、私にまだ隠している事があって、
それでそんなに中途半端な話になっているのかと思ったけれど」

例えば……と言いかけて、言葉を飲み込む。
かたん、と音を立てて、椅子から立ち上がった。

「まあいいや。面白い話をありがとう。
こっちからお願いして話してもらった割には、何にも役に立てなくて済まないね。
ただ……この町には、確かにそういう『奇妙な』雰囲気がある。
もしも、私が何かの『事件』に行き会って、君の言う通りに何か大きな力の影を感じたら……その時は君にも報告するよ。
だから、その時には……そうだな、君の名前くらいは教えてくれたら嬉しいかな」

と、冗談めかして言って、軽く手を振って図書室を去っていった。

868村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/29(水) 20:03:59
>>867

  「………」

去っていく背中を黙って見送る。

  「…こうして噂レベルでも広げていけば…いつか『かかる』はずだ。人の口に戸は立てられねえ。
  …とはいえ、それじゃあ悠長すぎる。」

呟いた後、用済みになった資料を閉じ、本棚に納めていく。

  「…何も起こらなければそれでいいんだが…念を入れておくに越したことはねえからな…」

片付けを済ませ、その場を去る。

869斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/08/15(土) 13:11:00

 「僕はもう少し可愛げのある物だと思っていたよ」

学食の茶わん蒸しをつつきながら不服気に笑う

 「何故こうなったんだ?」

おわん大のサイズのソレ(茶碗蒸し)を
先輩のAがほうばると、底の方に白いものが見えた。

 「秋の花火と同じさ、寮母が季節外れの『ユリネ』を大量に買い込んでしまったんだ 安いから。」

 「『ユリネ』?」

大学一年の先輩……の滑舌はあまりよろしくない
そのせいで聞き慣れた物がまるで宇宙からきたんじゃないかと錯覚する程度には。

 「底にあるだろう?すくうと固形だが、口に入れるとホロホロと崩れて 根野菜特有の苦みと旨味が口内に広がる。」

 「不味くは……ないけどさ。」

不味くはない、むしろ美味い それ故にサイズの異常さが目立つのだ。
Aが立ち上がる。

 「ママがいないんだろ?味わっとけよ」

 「関係ない。」

食堂から去り行くAの背を見送りながら
一人残された僕は可愛げのない茶碗蒸しをつついてた。

870斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/08/16(日) 23:34:08
>>869
 
短い悲鳴に振り返ると、猫の尾っぽが窓から滑り出すのが見えた

 「――げ」

ハリウッド映画に面白黒人枠が付き物の様に
夏には怪談がつきものだ。

それが『薄っぺらな猫が隙間から食い物を盗んでいく』ような事だとしても
怪談には違いない。

 「…アイツ、『スリーピング』」
 「またラジオで騒がれちまうぞ…!」

僕は早々に食堂を後にする事にした。

871ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/16(水) 01:40:10

    キコキコキコ

「――――ふぅん」

        キコキコキコ

「ここが『私立清月学園』ね」

            キコキコキコ

「なかなか広いじゃないの」

                キコキコキコ

「わたしの遊び場所にしてあげてもいいわ」

                    キコキコキコ

愛車(自転車・補助輪付き)で『城址公園』を通りかかる。
乗っているのは幼い少女。
外見は西洋人だが、呟く言葉は流暢な日本語だ。

872ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/16(水) 19:48:54
>>871

その少女は制服姿であり、どこか『格調高さ』が漂っている。
通っている私立幼稚園の制服だ。
ピアノやバレエなどの、
『習い事』のカリキュラムに力を入れているらしい。

「『練習』しないと上手くならないわ」

    キッ

「もっと『練習』しないとダメね」

適当な場所に自転車を止め、サドルから降りる。
前部のカゴには、大きな『テディベア』が入っていた。
それを両手で持ち上げると、手近な木陰に腰を下ろす。

「『練習』は広い場所でやらないと」

        ――――トスッ

「狭い所にいると『心』まで狭くなるから」

独り言を呟きながら、テディベアを自分の正面に置く。
傍目から見ると、『ままごと』でも始めるかのような光景。
ちなみに、このテディベアは『二代目』だ。
『初代』とは物心つく前からの付き合いだった。
でも、今は『引退』している。

873朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2020/09/16(水) 22:42:49
>>872

「ぬおおおおおぉぉぉっ ス!!」 ダダダダッ!!

最近めっきり暑さが薄れて涼しくなってきたかと思えば
また直ぐに暑くなったりと気候が不安定っスけど!
 この悪の首領は常に猪突猛進絶頂 絶好 絶好調っス!!

 「むむむっ! ス!!
そこの園児よ! 何をしてるっスか?」

 何時も通り全力疾走でランニングをしてたら、どっかの
小奇麗な制服の幼稚園児が一人いるのを見かけたっス!

子供が一人なのは最近物騒だし危ないっス!
 ちょっと話しかけて、迷子だったら交番まで案内してあげるっス!

874ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/16(水) 23:11:43
>>873

     チラ……

ほんの少し顔を上げて、こちらに走ってくる相手を見つめる。
猛然と駆け寄る様子を見ても、全く慌てる様子がない。
外見こそ子供そのものだが、
年齢にそぐわない落ち着きがあった。

「言っとくけど『アソビ』じゃないわよ。
 わたしは『練習』をしてるんだから」

「あなたこそ何よ。急に走ってきたら危ないでしょ」

          スクッ

「――そういうことをしたらいけないのよ。
 わたしより大きいのに、そんなことも分からないの?」

おもむろに立ち上がり、両手を腰に当てて朝山を見上げた。
体は小さいが、態度がデカい。
言ってる事自体は間違っていないが、
どことなく『気位の高さ』が垣間見える。

875朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2020/09/16(水) 23:23:29
>>874
クルクル
   シュッ
      タンッ!
            シャキーンッ!!

我こそは普段は元気一杯、うちゅー統一部の部長
だがその実態は悪の首領モーニングマウンテンっス!!
 なんだか偉そうな雰囲気の幼稚園児っス!
負けずにこっちも腰に手を当ててっ! おーーーきく胸を反らしつつ
鼻を鳴らしながら自己紹介を交えて話してやるっス!!

「ふ〜〜〜んふんっス! いけない事をするのは悪の醍醐味と言うものっス!
自分は悪の首領だから、急に走って来ても問題ナッシングなんっス!
 因みに名前は朝山 佐生っス! いずれ、この場所からも見えるH城どころか
星見町も支配する名前なんて覚えておいて損はないっスよ!」

威張りつつ、何の用かと聞かれたので正直に答えてあげるっス!

「何の用もなにも子供が一人で公園にいたら危ないっス!
親と待ち合わせとかしてないんだったら、私がお家まで送ってあげるっス!
もし迷子だったら、交番まで連れてってあげるっスよ!」

「ところで、何の練習をしてたっスか??」

一人で練習っ! もしかしたらお遊戯会とか、縄跳びとかの練習かも
知れないっス! 今日はけっこー暇だし、良ければ手伝ってあげるのも
吝かではないっス!

876ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/16(水) 23:57:47
>>875

「『悪の首領』?何なのソレ。『ごっこアソビ』でもしてるの?」

「『コドモ』ねぇ。
 わたしより大きいかと思ったけど、
 中身はわたしよりも『オコサマ』だったみたいね」

わざとらしく大きなため息をつきながら、
呆れた表情で首を横に振る。
この手のタイプは、まともに相手をするだけ損だろう。
頭の中で、そんな風に考えていた。

     「 I’m 『 five years old 』 」

「公園くらい一人で来られるわ。
 もし『悪いヤツ』が来てもへっちゃらよ」

      「…………『悪いヤツ』?」

何かに気付いたように、顎に片手を添える。
目の前にいる朝山は、『悪の首領』だと名乗った。
『悪の首領』とは『とても悪いヤツ』という意味だ。

        ニ   ヤ   リ

「いいえ、『今日のカリキュラム』を変更するわ。
 やっぱり『練習』には『実践』が一番だから」

  ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

「それに、『悪いヤツをやっつける』のは『いいこと』だものね。
 わたしは練習ができるし、誰も困らない」

       「――そう思うでしょ?」

       パチンッ
            ――――ドシュゥッ!!

不敵な笑みを浮かべた園児が指を鳴らすと、
『テディベア』から『人型スタンド』が飛び出した!
まるで『空間の歪み』で構成されたような、
全身が『半透明』の奇妙なスタンドだ。
園児が操る『人型スタンド』は、
朝山に掴み掛かろうと腕を伸ばす(パス精CBC)。

877朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2020/09/17(木) 00:13:18
>>876

>パチンッ
            >――――ドシュゥッ!!

朝山 佐生と言う存在は、基本的に頭が悪い。
 恐らく、誰もが彼女と会話すれば幼稚園児も例外なく……その御花畑が
頭に咲いてるような態度と言語で察する事が出来る。
 殆ど反射的に生きていると言うのが、朝山 佐生だ。

故に――。

     ――ズンッ     パァァァ――ッ

 タンッ    ザァァッッ!

スタンドが飛び掛かってくると認識したのと同時に。
 『ザ・ハイヤー』を瞬間的に発現し、その能力による『モーション・キャプチャー』
による光球を自身に発射させ、スタンドの腕振る動作を遅く(精ス:BD)するのと
朝山自身が回避行動で横に跳ぶ(精ス:DB)のも、自然な事である。

「っおっとと。危ないっスよ?」

足がぐらつきつつ、後ろに倒れそうになったのを体勢を低くしつつ
真顔でダイアナを見詰めつつ注意する。

878ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/17(木) 00:29:17
>>877

狙い通り、何ら問題なく回避は成功した。
というより、そもそもダイアナはスタンドに関して『素人』であり、
朝山とは『経験の差』が大きく違う。
最初から相手にならないのだが、ダイアナはそれを知らない。

「フン、『悪者』にしてはやるじゃない」

「だって、あなた言ったでしょ?自分は『悪の首領』だって」

    「『悪いヤツ』をやっつけて――――」

    ザッ…………

          「――――なにが悪いのよ!!」

            バッ!!

『策』などというものは何もなく、
『人型スタンド』は愚直に正面から突っ込んでくる。
朝山ならば、いなすのは容易いだろう。
どうとでも料理できるはずだ。

879朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2020/09/17(木) 00:37:32
>>878

 パッ

真顔で朝山は『ザ・ハイヤー』の右腕を掲げる。

 「ザ・ハイヤー キャプチャー」

               ポォ――ッ

              「チェンジ――!!」

繰り出された光球は『オンリー・ガール』向け放たれる。
命中と同時に、ザ・ハイヤーは片腕をぶんぶん高速で回す(ス精:AE)

その再分配はオンリー・ガールの飛び掛かる動作に齎され……まるで
かたつむりのように動きは、その動作が終えるまで鈍くなる(ス精:EA)

タッ――グゥ ンッ!!

その間にも、朝山は無言で真顔でダイアナに。彼女の動きがほぼ封じられた
スタンドをやり過ごして迫る。
 当たり前だ、こうなればスタンドなど関係なく幼稚園児と中学生の体格なら
朝山がどのようにでも料理出来よう。
 中学生ならではの脚力とスピード、そして伸びた腕で彼女の両脇を掴み。


   ――こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!

「うおおおおおおおおぉぉぉぉ〜〜〜〜〜!!!!! っス!!」


 これぞ、必殺モーニング・マウンテン ダークフィンガー!! っス!!


 必殺くすぐり攻撃のお見舞いだーーーー!!!

880ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/17(木) 00:51:54
>>879

「こッ!『これ』はさっきと同じッ!?」

「どうしたのよ『オンリー・ガール』!!
 どうして動かないのよ!!」

「ちゃんと動いてッ!!動きなさいよ!!」

            ザッ…………

     「――――ひッ!!」

半ば無力化された自らのスタンド。
そして、眼前に迫る『悪の首領』。
起こるであろう恐怖の光景に、思わず両目を固く閉じる……。

    「ひッ!ひひひひひひひッ!!
     ひひひひひひひひひひひひひィッ!!」

次の瞬間、ダイアナは大口を開けて笑いながら身悶えした。
『モーニング・マウンテン ダークフィンガー』!!
『悪の首領』の恐るべき技が、
いたいけな幼稚園児に襲い掛かったのだ!!

「ダ、ダメ!!もうダメ!!
 あは!!あはははは!!あはははははははははは!!
 ひひひひひひひひひひひひィィィッ!!」

半透明のスタンド――『オンリー・ガール』は、
いつの間にか解除されていた。
笑い転げている状態で、
まともにスタンドを動かせるはずがない。
今ここに『悪の勝利』が決定した!!

881朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2020/09/17(木) 11:27:23
>>880(レス遅れ失礼しました)

ぴくんぴくんと痙攣して倒れ伏すダイアナを尻目に、いい仕事をしたと
言わんばかりに額の汗を拭うポーズと共に遣り遂げた顔で鼻を鳴らすっス!!

「ふんっス!! いつもエッ子先輩にくすぐり攻撃を受けて、躱しての
特訓がここぞとばかりに活かされたっスよ……ッ!」

「それはそれとして、倒れてると汚れちゃうっス。折角の洋服が
汚れちゃうっスよ!」

手を引っ張って、ぽんぽんっと汚れた背中とか叩いて払っちゃうっス!!

「改めて仲直りっス!!
いきなりスタンドで飛び掛かられたら反撃せざるを得ないっス!
 以前は辻蹴りと言う危ない通り魔だって彷徨ってたっス。
でも、まぁ!! この悪の首領がけちょんけちょんに打ち負かしたんっスから
もう蔓延る悪は居ないんっスけどね!!」

唯一無二の悪は自分だけだと自慢しつつ、お喋りするっス!!

882ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/17(木) 14:50:12
>>881

「ひひひひひ!!あはははははは!!」

「はぁッ……!!はぁッ……!!」

このまま笑い死ぬかと思われた寸前、
手を引っ張られて立たされた。
そして背中も払われるが、その直後に身を翻す。
片手にテディベアを抱えながら、朝山を上目遣いで睨む。

        キッ!

「フン!そうやって手懐けようとしたってダメよ」

「『仲直り』なんてしないわ!!あなたは『悪者』なんだから。
 悪者なんかと仲良くするのは、
 お金もらってソイツらを見逃してる、
 『クサレ政治家』だけで十分よ!!」

      バシッ!
             バシッ!
                    バシッ!

喋りつつ、テディベアのボディに鋭いパンチをブチ込む。
癇癪の八つ当たり。
『初代が引退した理由』は『これ』である。

「でも、『ツジゲリ』っていうのは興味あるわね。
 聞いてあげてもいいわ。詳しく教えなさいよ」

一歩も引かない高飛車な態度で要求する。
この『アサヤマ』とかいうヤツは『スタンド使い』。
なら、その『ツジゲリ』も『スタンド使い』かもしれない。
『スタンドに関係する情報』は多い方がいい。

         オンリー・ガール
このダイアナが『唯一無二』になるために。

883朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2020/09/18(金) 10:49:38
>>882

「えーっ? 仲直りしないんスかっ!
なら、部下になればいいっス!! 今ならこの悪の首領の部下になれば
のり先輩のおいしーい御菓子が毎月無料で振舞われるっスよ!」

我が部下である、おかし幹部の のり先輩は毎月お菓子を作ってくれるっス!
ほっぺが落ちる事請け合いだから、その御菓子の魅力にたちどころに
この幼稚園児も陥落する事間違いないっス!!

「『辻蹴り』は、少し前に夜道を通ってた人をスタンドで強化した蹴りで
昏倒させていた通り魔なんっス! 
そんで、我こそが先程のザ・ハイヤーキャプチャーチェンジで動きを
封じ込めると共にけちょんけちょんにやっつけたんっスよ!!
 いやー、あの時は血で血を洗う壮絶なる死闘だったスねー!!」

調子よく、辻蹴りの蹴りが斬撃のような刃となって襲い掛かって来ただの
誇張表現を繰り広げつつ超絶にダイアナへ自慢する!!

884ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/18(金) 21:27:22
>>883

「はぁァ〜?『部下』なんかなるわけないじゃない!
 ぜ・っ・た・い!!ならないわよ!」

でも、お菓子は興味がある……。
食べたいけど、仲直りはしないし部下にもならない……。
あ!いいこと思いついたわ!

「じゃあ、あなたがわたしの部下になればいいのよ。
 そうしたら、
 その『のり先輩』とやらのお菓子を食べてあげるわ。
 ウフフ!名案でしょ!」

「ふーん、そんなのがいたのね。
 でも、あなたにやられるくらいだから、
 どうせ大したことないんでしょ?
 わたしだったら、もっと簡単にやっつけてあげたわよ」

「『オンリー・ガール・ステルスアタック』でね!!」

自信たっぷりな笑みを浮かべる幼稚園児。
ついさっき負けたばかりなのだが、もう忘れたらしい。
ダイアナは切り替えの早い性格なのだ。

885朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2020/09/18(金) 22:18:38
>>884(良ければ次で〆させて頂きます)

「ぶーっ! 私が悪の首領なのに、なんで部下にならなくちゃいけないっスか!
それに、辻蹴りはチョーちょーーー強かったスよ。
 私でなければ危うく多数の犠牲者が今も、あの道沿いまで出来上がってたっス」


うーむっ! 部下にもならないし、仲直りもしない。
それなら、いいことを思いついたっス!

「それじゃあ、スタンドでバトルもしたし。そっちと私は
ライバル同士の関係っスよ!
 ライバルっ! うんんっ 良い響きっスねー!!
とりあえず、今日はのり先輩が美味しいカップケーキを作ってくれる
約束だったんス! 一緒に良ければ行くっスよ!!」

「それと、名前も教えてくれると嬉しいっス!!」

手を差し出して、握ったらいざ出発っス!!
 美味しいカップケーキが私達を未来で待ってるんス!!!

886ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/18(金) 22:46:49
>>885

「『ライバル』?わたしとあなたじゃ釣り合わないわ。
 わたしが空に輝く月だとしたら、あなたは砂粒ね」

       フンッ

「でも、まぁ――『たまたま』の『まぐれ』で、
 わたしも全然『本気じゃなかった』とはいえ、
 『そこそこいい動き』をしてたことは褒めてあげてもいいわ」

言い方が回りくどいが、
『ライバル』という提案は許可されたようだ。
テディベアを愛車(補助輪付き自転車)のカゴに乗せ、
シートに座る。
そろそろ『補助輪』を取りたいが……
内心ちょっと怖いと思ってることは内緒だ。

「『ダイアナ』よ。
 いずれ『世界に腰を下ろす女』の名前になるわ」

「覚えておきなさい」

          キコキコキコ

「ホントは知らないヒトについていっちゃいけないんだけど、
 わたしはいいのよ」

               キコキコキコ

「だって、わたしは強いから」

愛車(補助輪付き自転車)を漕ぎ始めた。
その最中、心の中で密かに『ブラックリスト』を開き、
そこに『アサヤマ』の名を書き込んだ。
このダイアナ、結構根に持つタイプなのだ。

朝山『ザ・ハイヤー』→『ダイアナのブラックリスト(いつか痛い目に遭わすリスト)』に入れられる。

887円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/10/27(火) 22:16:37

『円谷 世良楽』が一人でいるのは稀だった。
円を好み、縁を好む彼女は常に人の『輪』の中にいる。
人の輪の外は、誰も住めるはずのない極寒の世界だ。
住んでいるとしたら、それは耐えているだけに違いない。

「……」

……『リトル・スウィング』に目覚めてから、
一人でいる時間が増えたことを自覚している。

スタンド能力の練習のため、という口実もあったが、
自分の中にだけある『それ』が、なんとなく距離を作る。
繋がりが切れたわけではないし、切るつもりもないが、
しかしこうして、一人で校舎の屋上なんかに来ていた。

888円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/10/29(木) 04:58:53
>>887
しばらく後、その場を去った。

889円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/11/01(日) 01:57:44

パンダのような色使いのパーカーを羽織った、
こげ茶色の髪の女子生徒が鼻歌交じりに歩いている。

弁当を家に忘れて来た。
昼休みはパンを買って友達と食べたが、
この放課後になって、空腹が目を覚ました。

「〜〜〜♪」

『円谷』は学内ではほぼ常に人と一緒だが、
『帰宅部』であり熱心な委員会などにも属さないため、
放課後の時間は『望めば一人になりやすい』時間だ。

好きなパンを好きなだけ買うには、一人の方が気遣いは無い。
だいたいはそうした心境で、『購買』の近くまで歩いて来ていた。

890シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/11/01(日) 02:17:21
>>889

                 「とっ…………」

               ヨロッ

     「とっとっと…………」

          フラッ

前方から、白い髪と黒い目の少女が歩いてきた。
『燕尾服』風に改造された制服を着ている。
両手には『大量のパン』が抱えられていた。

  「あっ――――」

      ポロッ

腕の中から溢れるように、『メロンパン』が転げ落ちる。
両手が塞がっているせいで取る事が出来なかった。
包装されているので食べられなくなる事はないが、
即座にキャッチする事は難しかった。

891円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/11/01(日) 02:39:00
>>890

          シュッ

「わっ危なーい」

              ぱし


「これ、あたしにくれるの?
 ハロウィンのお祝いに?
 そういうわけじゃないよねー。ハイ、返すね」

「って、今返してもまた落としちゃうか!」

キャッチしたメロンパンを差し出す。
受ける印象はさておき、人懐こい笑顔だった。

「ねー。そんなにたくさん、一人で食べるの?
 見かけによらず大食いなんだ。あたし3つくらいでお腹一杯」

『大量のパン』の視線を向けながら、なれなれしく言葉を続ける。

892シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/11/01(日) 03:55:39
>>891

「あっ、ありがとうございますっ」

        ニコッ

無垢な笑顔を返しながら、メロンパンを受け取る。
といっても、パンの山に乗せてもらう形になったが。
どちらにせよ助けられた事には変わりない。

「エヘヘ、そうなんですっ。
 部活やってると、何だかお腹すいちゃって」

「ついつい沢山食べちゃうんですっ」

うず高く積まれた菓子パンや食事パンの後ろで笑う。
買い占められている事はなくとも、
目当ての品は売り切れているかもしれない。
そんな事には全く気付かず、目の前の相手を見ていた。

(うーん、見かけた事ないけど先輩なのかなぁ?)

(でも、すごく気さくで話しやすい人みたい)

「私、中等部の三年生なんですけど、もしかして先輩ですか?」

893円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/11/01(日) 22:52:34
>>892

「いいよいいよー、お礼なんて。
 あたしの手があるとこに落ちて来ただけだもんね」

            ボスッ

素直にパンの山の上にメロンパンを積む。

「部活やってるんだー。
 お腹減るのは運動部?
 んーでも体育会系には見えないかな。
 練習キツーイらしい『吹奏楽部』とか?
 」

『部活情報』は友達から聞いている。
文化部でキツイのは『音楽系』――そういう噂だ。

「ちなみにあたしは帰宅部だー。学年は『高1』」

              「だから1つ先輩だねー」

もっとも、中等部と高等部の差はあるだろうが。

「部活じゃなくって、『人生の先輩』だー。
 別に年上だからえらいわけじゃないけどー。でも、先輩だね!」

894シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/11/01(日) 23:25:10
>>893

「私は『合唱部』ですっ。
 歌うのって意外と体力も使うんですよ〜。
 だから練習が終わった後は、
 いつもお腹すいちゃってますねっ」

「あ、でも運動部もたまに……。
 掛け持ちじゃないですけど、
 『手伝い』みたいな感じで参加する事があって……」

「その後もお腹すきますねっ。あはははは〜」

            ニッコリ

シルクは先天的に『音痴』であり、
その歌唱力と音感のなさは『壊滅的』だ。
しかし、何故か運動となると人並み以上に出来る。
度々『助っ人』を頼まれたり、
あちこちの部から勧誘される事も少なくない。
ただ、運動部に入ろうという気は起きなかった。
どれだけ下手だったとしても、
歌う事が何よりも大好きだからだ。

「――先輩は、これから帰る所ですか?」

「えっと……『お疲れ様です』っ」

       ペコッ

そう言って頭を下げた。
さっき乗せてもらったメロンパンが、また落ちかける。

895円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/11/01(日) 23:56:28
>>894

「へー、すごい。とってもすごいじゃーん!
 それって『文武両道』ってことだよ。
 あたし、どっちもそんなにだから、
 どっちも出来るってすごいと思うんだなあー」

実情を知らない円谷は気楽なものだ。
気難しい時の方が少ない性分だが。

「んー、あたしー?
 あたしはねー、パン買って帰ろうかなって!
 今日、じつは、お昼あんまり食べてなくって」

             シュッ

「見ての通り、ダイエットとかじゃないわけだけど」

と、自分の腹を縦に撫でる。

小柄で、どちらかと言えば細身な体格。
食事を抜く意味は無い。『忘れただけ』なのだから。

「だから、そーだねー。疲れてる。エネルギー切れー」

   スッ           「パンを支えるエネルギーで精一杯!」

落ちかけたパンに手を添える。その手首に、『5輪のブレスレット』が光る。

896シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/11/02(月) 00:15:16
>>895

「わっ――と……!」

「あっ、ありが――――」

うっかりパンの山が崩れる所だった。
添えられた手が堤防のように、それを支えてくれた。
慌てて体勢を立て直し、『手首』に視線が向く。
正確には、そこにある『五つの輪』に。
驚きの表情が浮かび、お礼の言葉が思わず止まってしまう。

「そ、『それ』…………」

「オシャレなブレスレット――――」

「――――です、ねっ!」

       ニコッ

落ち着きを取り戻し、表情を笑顔に変える。
自分以外にもいる事は知っていた。
だけど、実際に会った経験は少ない。
その一人は、今『目の前』にいる。

897円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/11/02(月) 01:19:10
>>896

「『これ』――――気になるー?
 気になるんだ〜、わかるよ。
 わかる。名前は『リトル・スウィング』」

              クルン

「褒めてくれてありがとーねー!
 あたしのことを褒められてるみたいで、嬉しい」

もう片手で、ブレスレットを弄る。
『腕についている』今は、それはただの『飾り』。

「って、先にあたしの名前を、
 知ってもらった方がよかったよね。
 あたし、『円谷世良楽(つぶらや せらら)』
 呼び方とかは、呼びやすいようにしてね」

         ニコ

「それで、後輩ちゃんは?
 なんて呼べばよかったんでしょーかー?」

『スタンド』を指摘されても、動じる事はない。
それは『特別』だ。とても……だが『恥じる』『怖れる』物ではない。

898シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/11/02(月) 01:58:38
>>897

(堂々としてるなぁ。さすが先輩って感じ。
 私だって最上級生なのに全然『先輩』出来てないし……)

(高等部に上がったら、私もこんな風になれるかなぁ?)
 
(――うん、頑張ろう!)

「じゃあ、『セララ先輩』って呼ばせてもらいますっ!
 可愛いお名前ですねっ!」

「その――『リトル・スウィング』の方も、
 何だか可愛い感じで」

「あっ、私『シルク』っていいます。
 『純白』って書いてシルクですっ」

「それから、『こっち』が――――」

       フッ

一呼吸の後、襟元に現れる小さな『コウモリ』。
それはコウモリの形をした『ピンマイク』だ。
自分の『片割れ』であり、スタンドの『片方』でもある。

「――――『トワイライト・トーン』っていうんですっ!」

『もう一つのスタンド』は出てこない。
彼は友達だ。
お互いに気持ちが通じ合っていると感じる。
シルクは、そう思っていた。
そして、そう思っているのは『彼女だけ』だ。

899円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/11/02(月) 02:29:57
>>896

「褒めすぎだよ! うれしーからいいけどね。
 あたし自身可愛いから、
 名は体を表すってやつかなー?
 なんてねー! 可愛いとは、思ってるけど」

        ケラケラ

「でもシルクちゃんも可愛いよ。
 名前も、お顔も。きっと性格も。
 それから『スタンド』も、ちっちゃくてさー。
 たぶん、お歌もとっても可愛いんだろうね」

軽口はもちろん、『知らないから』だ。
もし仮に『歌』がかわいいなら、
『友達』でいられるかもしれないだろうに。

「今度、聴かせてよー。歌。カラオケか何かでさ。
 あたしもさ、カラオケの点数みんなより高いんだー」

それが遠回しな『自殺行為』なのも、勿論気づけない!

900シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/11/02(月) 02:51:08
>>899

「いいですねっ!いつか一緒に行きたいです!
 そんなに自信がある訳じゃないんですけど、
 セララ先輩に聞いてもらえるなら、
 『張り切って』歌いますからっ!」

「楽しみにしてますっ!」

        パ ァ ッ

喜びの色を満面に浮かべて誘いに応じる。
最近は『一人カラオケ』ばかりで、
誰かと一緒に行く事は全くなくなっていた。
だからこそ、先輩の言葉が本当に嬉しかったのだ。

        《――――…………》

 ワ    タ    シ
『トワイライト・ゾーン』は、
その光景を『異次元』から観察していた。
シルクとカラオケに行った人間は、
二度と彼女と一緒には行かない。
例外は一人も無かった。
そうした経験から、『何が起こるか』は容易に予想出来た。
それを止める事が出来ないのは、心から残念でならない。

「あっ、つい話し込んじゃって……。
 セララ先輩、購買に行くんでしたよねっ」

「私も、そろそろ行ってきますっ。
 あの――色々ありがとうございましたっ」

「それじゃっ!」

          ペコッ

お辞儀をして、歩き始める。
今度はパンを落とさないように、ゆっくりと。

901円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/11/02(月) 20:35:27
>>900

「うんうん、あたしも楽しみだよー。
 それじゃあまたね、シルクちゃーん」

購買の方へと歩き去る。
未来に待ち受ける『地獄』を、知らないまま――

902村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/12/23(水) 22:12:45
カチンッ  チチチチチチ・・・
  
  ボ
   ウ ッ!

チリチリ…  シュワワワ…

学園内にある『調理室』から、何やら香ばしい香りがする。

『オリーブオイル』と、それで炒められている『ニンニク』の匂いだ。

903斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/12/24(木) 01:05:29
>>902

 調理室のドアを叩きつけるようなノックの音と共に
 男性の声が外からかかる。

 「――開けろ!デトロイト生徒会だ!」

904村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/12/24(木) 01:29:39
>>903

唐突な生徒会のエントリーだ。
開けろと言われれば開けてやりたいが・・・

「(・・・今は手が離せない・・・仕方ないな)」

調理室の重厚な観音開きの扉へは、村田の手は片手間に届かない。なので・・・

ズギュ ン !!

 『ディズィー・スティック』を発現!

 「おいでませェェェェェェェ―――――――ッ!!」

 ド
     カ ァ ッ !!

『蹴り開ける』! 『扉』をッ!

905斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/12/24(木) 02:26:48
>>904

激突音と共に観音式の扉が開く

――誰もいない
廊下には影も形も無……

 「あっぶねえな……」

い事も無い、正確には開け放たれた扉の横から
ひょっこりと顔を出した。

 「ノックしてる人の事考えてますかー、特に相手が馬鹿正直にドアを叩いてた場合、鼻面への不意打ちになる事とか。」
 「君、チャイム鳴らした宅急便相手にもそういう事するわけ?謝罪が絶えないだろ。」

乱暴に開いたドアを一瞥し、そうぼやきながら料理中の君の前を横切るのは
首元に赤いスカーフを巻いた同学年の男性だ。

 「成程?手が離せなかったわけだ ……ドアの損傷位置が低いな、どうやって蹴った?」

906村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/12/24(木) 02:50:01
>>905

 「来るとわかってる客と、そうでない客への『もてなし』が違うのは道理じゃねぇかい?
  手荒なのは認めるが・・・と。」

顔を火元の鍋から動かさず、視線だけを扉のほうにやる。
手元はせわしなく、ニンニクを炒める鍋のほうに向けられている。

 「どこかで見た顔だな。あんた。」

いつかの『トライコーン』との戦いを思い出す。あの時は顔に何かを塗っていたが、こんな顔立ちだったはずだ。

 「ま、別にいいか。で、生徒会の方が何の御用なんで?」

村田が顔を向けているコンロの上には、開いた貝殻のような形をした、おかしな形の『銅鍋』が火にかけられている。

907斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/12/24(木) 03:20:36
>>906

「別に?」

事もなげにそう言い切ると、適当な場所に腰掛ける。

「君が何もしない真面目で優良な生徒なら。こっちも用事なんてないさ、それに……聞きたいことが有るのは君の方だろ?」

村田瑛壱。
そう呟いて脚を組む、あれはアリーナの仕事だった。

「図書室で何やらこそこそしていたらしいじゃないか。……あの時の君は興味がないと思ってたがな。」

908村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/12/24(木) 15:22:38
>>907

 「『アリーナ』、『エクリプス』…
 俺がその二つについて調べていたのは、組織自体に興味があったからじゃない。」

口を開けた銅鍋で玉葱を炒め、油を馴染ませる。

 「俺が気にしているのは、『深山兄妹』がこれから先、面倒ごとに巻き込まれないかってことだけだ。
 一般人とはいえ、スタンドの絡む事件に関わった以上、目をつけられてもおかしくない。」

 「奴らに手を出してくるようなら『どちら』であれ、俺の全てを賭けて『潰してやる』…そう考えただけのことだ。」

鍋に蛤、魚の切り身、剥いた海老を放り込み、鍋の口を閉じる。

 「…で、お前は『どっち』だ?」

909斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/12/24(木) 22:42:13
>>908

 「自分を問えって?結構な無理難題を言うじゃないか」

両手の指を互い違いに、虫の歩みの如く滑らかに動かす
意味は無いが単に落ち着くだけの動きという物は有る。
鬱病患者というものは特に。

 「ところで……『深山』って誰?」

首を傾げるとどうにも心当たりがないような所作で肩をすくめる。

 「覚えてないんだけど、あれかな?『トライコーン』で君の傍にいた女の子の事。」

910村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/12/25(金) 00:52:11
>>908

 「ああ、そうだ。兄貴の方は『二本角』にされていた。」

トクトク…
         グイィーーッ

調理に使った『白ワイン』を取り出し、グラスに注ぎ一息に飲み干す。

 「あの事件が誰の差金なのかは知らん。興味もねえ。
 だが『音仙』に曰く、この街はどうにもそういう連中がら多いらしい。
 その中にゃこの間の『ゲンマ』のようなやつもいるんだろう。」

 「過ぎたことはどうにもならんが…これからのことはどうとでもなる。
 彼らが被害者である事実は消えずとも、これ以上被害が及ばない為に動くことは出来る。」

911斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/12/25(金) 21:03:27
>>910

 「立派だねぇ……物言いは。」

言う事ならば誰にでもできる
まあそれを言うだけでも勇気が有ると捉える事はできるだろう。

 「しかしそう言う事なら『潰す』なんてますます言葉は使わないほうがいいな」

 「周囲に無節操に力を振り回し、悪戯に『深山』のような一般人に被害を拡大させて……」

 「態々敵を作りまくって、袋叩きに有ったのがあの『トライコーン』なんだ。」

ただし、『勇気』とは『蛮勇』という言葉の類義語である事を忘れてはならない。

 「――君、彼の跡を継ぐ気かい?」

ニヤリと口を歪ませるとすぐに作り笑いに戻る。

 「ま、どの道アレは長くなかったけどね、僕達全員にとっても危険だった。」

912村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/12/25(金) 22:26:34
>>911

「そうだな…それも『悪くない』な。
 正しいと思って『流れ』た先がそういう結果なら…『諦め』もつく。」

火にかけられた鍋を眺めながら、同じように一瞬だけ笑みを浮かべる。

 「俺はね、『俺の生きる明日』を今日より良くすることだけに興味がある。
 善だとか悪だとか、正当だとか邪道だとか…そんなことは『どうだっていい』。
くだらない世間の話や、世界の話も聞き飽きた。」

 「目下の命題は彼らの安全の保証と、この鍋の味つけだけだ。」

つまみを回し、コンロの火を止める。あとは余熱調理で良いだろう。

 「たったそれだけを邪魔する奴がいるなら…
 『俺の明日の平和』を脅かす何者かがいるなら…
  そいつらにとっての、望まれざる『来訪者』になることに躊躇いはない。」

913斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/12/26(土) 01:35:56
>>912

 (成程 ……鏡を見るとはかくも滑稽な物か)

 「――面白い奴だな、君。」

 「明日の自分が、今日より良くなると期待しているのか、そこは僕との違いだな。」

肩を竦める。

 「まぁ、心配の方は杞憂だろうけれど」

 「君の、お嫌いな世間の話だが、『トライコーン』が『アリーナ』に排斥されたのは弱者を守る為。」
 「この『弱者』というのは君の言う2人じゃないぜ、僕ら…『スタンド使い』の事だ」

 「この力は数が少なく、露見し難い けれど見境なしに使えば幾らなんでもおかしいとは思われるだろう。」

 「その時僕らは、君が守ろうとしている2人…世間に排斥されるだろうな
 なにしろ 取り上げる事も、禁止する事も出来ない透明な拳銃を僕達は持っていて」

 「ホモ・サピエンスは肌の色だの思想の違いだの、信じる物が違うだけでも殺し合いが出来る種族なんだから。」

爪にヤスリをかけながら続ける、うん、今日も奇麗だな。

 「まあ何が言いたいかと言うと……『2人に関して心配する必要は何もない』って事さ、僕はその為に『アリーナ』の依頼を受けてあそこにいたんだ。」

 「むしろ危険なのは君の方なんだぜ、或いは……『僕達』か。」

彼の明日を脅かすのが、『スタンド使い』とは限らない
もし、どうしようもない理不尽が彼の身に降りかかり、それを彼が『あり得ない力』に頼って退けてしまったばあい
それを恐れて依頼を出すのは、『エクリプス』と『アリーナ』だ、そしてその依頼を受けるのは……。

 「うっかり君の言う、くだらない世間に殺されてくれるなよ?出来れば1人でひっそり死んでくれればなお良い。」

爪に息を吹きかける、完璧だ。

914村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/12/26(土) 02:59:08
>>913

「いろいろと『諦め』てきたからな。
 ・・・せめて、必ず来る『明日』ぐらいは、よりよいものを望んでもバチはあたるまい?」

『銅鍋』の貝殻のように閉じた蓋を開ける。
オリーブオイルとニンニク、それから魚介の出汁の豊かな香りがあたりに立ち込める。

 「だが、俺の欲した明日がよりよくなるために、俺が『いらない』というなら・・・
 その時は、『そうする』だけだ。」

どこからか貝杓子を取り出し、『銅鍋』の中身を皿に盛りつける。

 「ま、おれのことはどうだっていい。『深山兄妹』に危害が加わらないことが分かれば、それで十分だ。
 今日は少し枕を高くして眠ってもよさそうだ。」

ふふんと心底嬉しそうに鼻を鳴らし、口角を吊り上げる。
その顔のまま振り向き、皿に盛った料理を、『斑鳩』の前にある机へ差し出す。

 「『魚介たっぷりのカタプラーナ』だ。『ポルトガル料理』・・・食ったことあるかい?」

915斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/12/26(土) 15:51:59
>>914

掌を突き出して指を折り曲げて数える。

 「――調理器具と場所の無断使用だろ?
 飲酒に自暴自棄、暴力行為に贈賄。」

おっと、既に折り曲げる指が足りなくなった
突き出した掌を戻す。
 
 「諦めている割には、自分の事を自由にできると憚らない。
 あまつさえそれを食えって?『生徒会』の僕に!」
 
『村田』を両の瞳で見据える
『自分の事はどうでもいい』『正しければ死んでもいい』『善悪や世間の評価に興味がない』
どうやら不適合者真っ逆さまだ。
  
 「まったく、『くだらない世間』一般の『良い子』とは程遠いな君は!」

……そしてなんとも、一点を除いてよく似ている
皿を受け取り、苦笑しながらやや投げやり気味に台詞を返す。
 
 「……フォーク有る?」

916村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/12/26(土) 19:11:58
>>915

「『調理器具』は全部俺のだぜ。数える指が足りるな。」

にやりと笑って、フォークとスプーンを差し出し・・・

 「『飲酒その他』については、これで目をつぶってもらうとするかね。
 ・・・『魚介料理』には『白ワイン』がぴったりだ。」

グラスにワインを注ぎ、同様に差し出す。

 「美味いメシは、よりよい明日のために欠かせないものだ。
 明日への『活力』、『期待』、そしてもっと美味いものを作るって『野心』のため・・・
 あんたとおれのよりよい明日のために、『乾杯』しようじゃねえか。」

酒はともかく、料理は美味かったはずだ。
手をかけずとも、下ごしらえが十分ならうまく仕上がる・・・
それが『カタプラーナ』という料理であり、よりよい明日もそうして迎えるものなのだから。

917夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/01/26(火) 19:35:46

放課後の図書室。
片手にペンを握り、机に向かっている。
『真剣』な表情だ。

           カリカリカリ…………

机に載っているのは、一冊の書籍だった。
『よむ・かく:くりかえし漢字ドリル(小学三年生一学期)』。
勉強中らしい。

918ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/26(火) 22:17:00
>>917

「り……ゆう。じそく。はこぶ。はこぶ」


何やら後ろからブツブツ聞こえる。
しかもその内容は、今まさにやっているドリルの漢字だ。


「みじかい。くらい」


ちなみに書いてあるフリガナを読み上げているだけなので
答えを言っているわけではない。

919夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/27(水) 10:33:50
>>918

   チラ…………

            クルッ

                ――――バッ!

後ろを振り返って、また前を向く。
前を向いたかと思うと、今度は勢いよく振り向いた。
いわゆる『二度見』というヤツだ。

「ナンだ??『よそのスパイ』か??
 ケイカイゲンジュウな『ホウカゴのトショシツ』に、
 この『アリス』いがいに『シンニュウシャ』がいようとは……」

「わたしは、
 この『アンゴウ』をカイドクしているさいちゅうなのだ。
 このナゾのアンゴウブンのなかに、
 『しんへいきのセッケイズのありか』が、
 こうみょうにかくされているという……」

「『セッケイズ』はわたさんぞ!!『よそのスパイ』!!」

即興で捏造した背景を語った。
『しんへいき』のしょうさいは、
『アリス』がしょぞくするホンブでもまだつかめていないが、
てにいれるとセカイをせいするともいわれているモノだ。
それがアクのてにわたらないために、
なんとしても『アンゴウ』をカイドクせねば……!!

920ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/27(水) 13:00:42
>>919

「いけん。びょうき……うん?」


背後にいたのは、金髪の子供だった。
やたらと大きめの服を重ね着している。
年齢は小学生低学年くらいだろうか。


「何を言っておるんじゃ?
 よくわからんが、わしは悪くないぞ。
 わ、わしをどうするつもりじゃ?」


突然、怒涛の設定を浴びせられてよく理解できなかったのだろうか。
とはいえ何か友好的でない雰囲気は察したらしい。
キョロキョロとあたりを見回す。厳重な警備とやらを警戒しているのかもしれない。

921夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/27(水) 17:00:44
>>920

「さては、まだ『ゴクヒジョウホウ』をつかんでいないな??
 ワレワレのほうがさきをいっているというコトか……。
 しかし、こんご『ニンムたっせいのショウガイ』になるカノウセイも、
 ひていはできない……」

         ガタッ

「いまのうちにてをうつべきか……」

漢字ドリルを手にして立ち上がり、
じりじりと少しずつ距離を詰めていく。
特に警備とかはなく、今ここにいるのは、
たまたま二人だけだった。
ほんらいであれば、
『AAAクラスのセキュリティー』がほどこされているのだが、
ついさっき『エージェント・アリス』によって、
すべてカイジョされてしまったからな。
『トクシュカクヘキ』とか『レーザートラップ』とか
『サイミンガス』とかイロイロだ。
そこらへんのシーンは、
『コレクターズエディション』のエイゾウトクテンでみられるぞ。

「だが、イマは『セカイのソンボウ』がかかっている。
 きょうりょくしなければ、
 『ジンルイのキキ』はのりこえられない!!」

「そうはおもわないか??『エージェント・フェアチャイルド』」

         ズィィィィィッ

コードネームを与えつつ、漢字ドリルをグイッと突き出す。
『カンジ』のニガテなアリスに、
『3ねんせいよう』はまだちょっとハードルがたかかった。
『2ねんせいよう』にしときゃよかったな!!

922ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/27(水) 17:48:17
>>921

「む?
 よその……? アリス以外に……?」


子供は遅ればせながら気づいた。
この目の前のアリスとやらが自身がシンニュウシャであることに。
つまり、セッケイズを守る側ではなく、奪取に来た側。


(この娘、ワルモノか……?
 いや、人類の危機を乗り越えるということは正義……?
 何か勘違いしているようじゃが、
 わしが無関係であることがバレるとまずい……のか?)


全然状況は掴めないながらも、完全に雰囲気に気圧されてしまっている。
なんか知らないがジリジリ近づいてくるものだから、
同じだけ後ろに下がるが、本棚に背が当たってしまう。
これ以上後ろに行けないというのに、漢字ドリルを突き出される。


「わ、わかった。わかったから落ち着くんじゃあ……」


フェアチャイルドと言われても当然、心当たりは皆無だ。
誰と勘違いしているのだと思いつつも、『きょうりょく』を受諾する。

923夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/27(水) 18:53:53
>>922

「よしよし、ハナシがわかるな。
 『フェアチャイルド』なら、そういうとおもったぞ!!」

      スタスタスタ

              ――――トスッ

漢字ドリルを引っ込めて、また椅子に座る。
机の上には『ロリポップキャンディー詰め合わせ』が置いてあった。
この前の『パーティー』でもらったヤツだ。

「タチバナシもナンだから、
 とりあえずソコにすわるとイイぞ『フェアチャイルド』」

「ついでに、このアメもくってイイぞ『フェアチャイルド』」

         ヒョイッ

棒付きのキャンディーを口に咥えつつ、
自分の向かいの席を指し示す。
お菓子で懐柔しようという策だ。
たとえ『よそのスパイ』であっても、
かつコトよりあらそわないコトがだいじだ。
ジブンがさきにたべるコトによって、
『アンゼン』であるコトをアピールする。
イチリュウのスパイには、ぬけめなさがダイジなのだ。

「『フェアチャイルド』は、
 さいきんナニかオモシロいコトとかあった??」

そして、さりげなく世間話にシフトしていく。
実の所、漢字の勉強に疲れたので、
ちょっと息抜きしたかったのだ。
ちょうどタイミングよく『フェアチャイルド』が現れたので、
引っ張り込もうという魂胆だった。

924ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/27(水) 22:26:22
>>923

 「?」
          「?」


急にすごくフレンドリーになったので混乱しつつ逆にビビる子供。
ペースは握られっぱなしだ。
言われるがままに席に座る。


「書をしまうのか? 解読するのではなかったのか?
 わしの話が何か関係あるのか?
 お、面白い事?
 ……ええと、その、こ、この間、ラッコを撫でたこと、とかじゃろうか」


とりあえず手に取ったキャンディーを手で弄びつつ、
チラチラと顔色をうかがう。

925夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/27(水) 23:25:21
>>924

「ほうほう――――」

「『ラッコ』か。きいたコトはあるな〜〜〜」

       ズイッ

「――――みたコトはないけど!!」

興味を引く話題が出てきて、思わず身を乗り出す。
アリスはアリスだから、
『見た事がないもの』には目がないのだ。
コイツはみのがせんな!!

「『ラッコ』ってどういうヤツだっけ??
 『ハネ』はえてた??『きのぼり』がトクイとか??」

「あ、せなかに『カイガラ』しょってるヤツだっけ??」

知識にある情報を総動員して、
まだ見ぬ『ラッコ』の姿を頭の中でイメージする。
『視力』を得たのが最近のため、
たとえ情報を知っていたとしても、
それが実際の外見と一致しにくいのだ。
『じめんのした』でくらしてたようなきもするな……。

926ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/27(水) 23:40:14
>>925

「ラッコを知らんのか」


と言いつつ、子供だってラッコが世間一般でどの程度の知名度なのか知らない。
知らない方が普通なのかもしれない。
だが今まで気圧されていた分、精神的優位に立てそうと思ったのか口は軽くなる。


「ラッコは……海に住んでおるやつじゃ……確か、多分……
 わしが見たのはパーティ会場じゃったが。
 だから羽が生えてたり木登りとかはせん、と思う。水タイプじゃから。
 灰色っぽくて、見た目は……直立した鼠? と言っても耳は小さくて……
 体の大きさはこう、このくらい」


椅子から飛び降りると、棒付きキャンディーを杖のように振って、ラッコの大きさを表現する。
1mちょっと……この子供より少し小さいくらいか。


「毛が触り心地がよくての。
 あ、貝殻? 背負ってはおらんかったが、
 ラッコが貝殻を持っておるというのは聞いたことがある気がするのう。
 いや、持っておるのは石……?」

927夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/28(木) 00:43:23
>>926

「しらんのじゃよ、『フェアチャイルド』」

「ほうほう、そんなヤツだったのか。
 おもったよりちいさいんだな。
 で、『イシ』をもってるのか……。
 『フシギなニオイ』がプンプンするな!!」

大きく頷きながら、興味深げに話を聞く。
『ラッコ』……ソレはミチのチョウセイメイタイ……。
パプアニューギニアのおくちで、ゲンチジュウミンによって、
ソンザイがささやかれていたという……。
はたしてジツザイしているのであろうか??
そのシンギをとうべく、カメラはげんちにとんだ!!

「ん??『パーティー』??」

「アリスも、さいきん『パーティー』いったけど。
 もしかして、ソレ??
 『キグルミ』みたいなの、いなかった??」

会場に行った時、ラッコらしきモノは見えなかった。
トイレにでもいってたのか??
それとも、ジツはラッコは『イチリュウのスパイ』で、
たくみにケハイをけしていたのかもしれないな……!!

「アリスは『ウラのほう』にいってたからな〜〜〜。
 ウマいことハメられたか!!」

928ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/28(木) 01:09:10
>>927

「着ぐるみ?
 いたかもしれん」


そこらへんは注目していなかったのか、あまり記憶が定かではなさそうだ。
そして話しているうちに、世界の危機やスパイの事はもう忘れたらしい。
この子供の記憶はあまり当てにならないかもしれない。


「パーティは、何の集いなのか知らんが、
 なにか食べ物が並んでおって、勝手に取って食ってよい感じじゃったな。
 ラッコも刺身を食っておった。
 あ、あとプレゼント交換もあったの」


椅子に座り直し、服の毛玉を毟る。


「クッキー食うか? 飴のお返しじゃ。
 ……この飴……何味があるんじゃ?」


と思ったら、毛玉を毟っていたはずの手に、
いつのまにかチョコクッキーを持っていて、渡してきた。
包装を破っていないとはいえ行儀が悪いが、飴は味を選び直そうとしている。

929夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/01/28(木) 15:36:03
>>928

「じゃ、ヤッパリおんなじパーティーじゃねーか!!
 ナンだよナンだよ、もっとはやくいくんだったな〜〜〜。
 おもったより『ヘンソウ』にジカンがかかったからな……」

あのパーティーには、『夢見ヶ崎』ではなく、
『アリーナ』のリングネームである、
『アルカラ』として参加したのだ。
出掛ける前の事を思い出す。
白衣を着て、ウィッグを着けて、黒いサングラスを掛けて……。
たいしたコトしてないって??
えらぶジカンがながかったんだよな。

「おっ、いいね〜〜〜。
 よのなか『ギブアンドテイク』だ。
 ギブしたらテイクするのがジョーシキだからな。
 『フェアチャイルド』は、よくわかってる!!
 しょうらい『オオモノ』になれるぞ」

         スッ

遠慮なくクッキーを受け取った。
キャンディーは『詰め合わせ』なだけあって、
多種多様な種類があるようだ。
欲しいヤツは大体見つかるだろう。
ところで、どれくらいオオモノになるとおもう??
タブン『3メートル』くらい??
じゃ、わたしは『4メートル』をめざすぞ。
コンビのなまえは『7メートル』だな。

「おおきくなるには、たべるコトがだいじだ。
 だから『フェアチャイルド』も、よくたべてよくアソブんだぞ」

「ところで――『コレ』、どっからだしたの??」

         ズギュンッ

手に持ったチョコクッキーを指差しながら、
背後に『ドクター・ブラインド』を発現させる。
『両目を閉じている人型スタンド』だ。
両手の『爪』は鋭く尖っており、
手術に使われる『メス』のようだった。

930ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/30(土) 10:35:48
>>929

「うむ。大物というか……
 わらしべ長者にわしはなる」


世はまさに大交換時代。
しかし、この子供に地の文を読む能力は無い。
2000万パワーズ的論法のチーム名の話題は
返事されることはなく虚空に飲まれていった。


「イチゴ味か、メロン味か。
 迷うところじゃな……」
「…………」
「……うーむ」
「…………」
「のう、クッキーを2枚やるから飴を2個貰っても……のわ! オバケ!
 のわわ……」


飴を選ぶのに夢中であまり聞いていなかったようだが、
振り向いた瞬間、ビビッて椅子から落ちそうになる。
その時、手から机の上にこぼれ落ちたのは、
一瞬前までは持っていなかったはずの『クッキー』(とセーターの毛玉がいくつか)だった。

931夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/01/30(土) 14:37:37
>>930

「『オバケ』だとォ〜〜〜??
 『Sクラスエクソシスト・じょしゅだいり(ふつかめ)』のわしが、
 アレとかコレとかでカイケツしてしんぜよう!!」

         ババッ

                  「『オバケ』は!!」

              ババッ

  「どこだ!?」

『爪のあるスタンド』が素早い動きで周囲を見渡す。
『閉じた両目』で見回している様子は、
奇妙に思えるかもしれない。
いや、まて。
あいてがオバケでも、『ケンカごし』はよくないな。
まずはコミュニケーションをとるコトをためすべきだ。

「オバケさん、ちょっとウチらとハナシでもしませんかね??
 ほらほら、キャンディーとクッキーもあるコトだし。
 ハロウィンには『9ヶげつ』くらいはやいけど。
 あ、オバケってモノたべるんだっけ??」

ついでにハネがはえてて、きのぼりがトクイで、
あとじめんのしたにすんでて……。
あ、そりゃ『ラッコ』か??
ラッコは、さわりごこちがよくて、
イシをもってるちいさいイキモノだろ!!

「おん??クッキーくれるのか。
 ギブアンドテイクのセイシンでオーケーだ。
 スキなのをもっていくとイイぞ、『フェアチャイルド』」

「ところで、このクッキーさぁ。
 たべても『ケダマ』にもどったりしない??」

そう言いつつ、もらったチョコクッキーをかじる。
キャンディーはどれでも取っていいらしい。
『交換成立』だ。

932ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/30(土) 22:26:51
>>931

「……なにやっとるんじゃ?
 妙なやつじゃのう」


ヨタヨタと椅子の上で姿勢を安定させる。
芝居がかったコミカルな動きに逆に安心したようだ。
オバケと呼ばれたのが自分の事だとわかっているのかいないのか。
スパイだのエクソシストだの、身分がコロコロ変わるし、
まとめて、変なヤツ、という印象で括られそうである。


「……大丈夫じゃ!」


特に言い訳したり、ごまかしたりもせずに言い切った。
『クッキー』は大丈夫らしい。
返事を聞く前に食べてるあたり豪胆だが、齧っても、
特におかしな所は無く、普通に市販の安売りクッキーとしか思えない。
気になるとするならば、2つのクッキーは同じに見えることだろうか。
量産品なのだから同じで当然と言えばそうだが、包装に貼られた値引きシールの位置まで同じだ。

933夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/30(土) 23:17:36
>>932

「ん…………??」

クッキーを食べつつ、二つの包装を見比べて首を捻る。
確かに変なものではないようだ。
毛玉の味もしない。
ケダマくったコトあるのかって??
きくな!!

                 ドシュッ

         ドシュッ

『爪のあるスタンド』が、本体を『爪』で軽くつついた。
これによって、『超人的嗅覚』と『超人的味覚』を、
本体に移植する。
その状態で再びクッキーを食する。

 「サクッとしたショッカン……チョコのあまさ……」

        「こ……これは……」

    「『いたってフツーのクッキー』!!」

    バァァァァァ――――――――ンッ!!

「このわたしがいうんだからマチガイない。
 『しるヒトぞしるグルメ・クイーン』とよばれてるからな!!」

「あ、そうだ。
 せっかくだから『フェアチャイルド』にも、
 『グルメのセカイ』をタイケンさせてやろう。
 イマちょうど『キャンペーンちゅう』で、
 ムリョウでおためしできるらしいぞ。
 ツイてるな、『フェアチャイルド』」

        ――――チョンッ

『盲目のスタンド』が、人差し指で子供を軽くつつく。
触れられる感触はあるだろうが、
精密さゆえに痛みは皆無だ。
攻撃ではなく、『超人的味覚』を移植して、
『舌』を肥えさせてやろうという考えだ。

「さぁ、そこの『キャンディー』をたべてみなさい。
 『クッキー』でもイイけど」

『移植』されたなら、超人的に『ブースト』された味覚によって、
『グルメの舌』になっているだろう。
具体的には、『ミネラルウォーターの銘柄』を当てられる程に、
味覚が鋭くなるという事だ。
普段よりも『味』が鮮明に感じられ、
『材料一つ一つの味』さえも識別出来るであろう。

934ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/30(土) 23:29:00
>>933

「普通のクッキーじゃが……」

「?」

「なんじゃ?」


普通のクッキーをオーバーリアクションで食うさまを不思議そうに眺める。
とはいえテンションがおかしいのは最初からなので、
特に不信感は増さなかったのか、おとなしくツンツンされた。


「うむ。
 イチゴ味を」    ペロ……

                    「これは!?」

     バキッ
                 ガリガリ バキ


思わず飴を嚙み砕いてバリバリ食べてしまった。


「メロン味の方もじゃ……
 この飴……何かお高い飴だったりするのかの!?」


自分の味覚ではなく飴が特別美味しいものだと思ったらしい。
2個目の飴は大切にペロペロする。

935夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/31(日) 00:14:41
>>934

「うむうむ。
 『もらいもの』だから、くわしくはしらんが、
 ジツは、たべるタイミングによってアジがかわる、
 『ユメのキャンディー』なのかもしれないな……。
 せけんではムメイであったが、
 じっさいはセカイイチともしょうされる、
 『ここうのオカシショクニン』のウワサを、
 ちまたできいたコトがあるようなないような……!!」

プレゼント交換でもらった品なので、
どんな物かは実際知らない。
もしかすると、実は値打ち物だったのかもしれない。
外見的には、
特にそんな雰囲気は漂っていなかった気がするが、
そっちの方が面白いし、
その可能性もゼロではないだろうと思っておく。

「そういえば『フェアチャイルド』は、
 『わらしべチョウジャ』になるんだっけ??
 『ユメ』をもつのはイイことだ。
 ユメがかなうように、アリスもおうえんするぞ!!
 『フェアチャイルド』もアリスをおうえんしてくれよな!!」

          サクサクサク

「『アリスのユメ』いったっけ??
 『セカイのゼンブをみる』のが『アリスのユメ』だ!!」

普通のクッキーを食べながら、さっき聞いた話を思い出す。
『わらしべ長者になる』という話。
それが自分のでも誰かのでも『夢』は好きだ。

936ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/31(日) 00:28:49
>>935

「味はイチゴとメロンじゃが!?」


とても美味しく感じたが、味が変わっていたわけではない。
なんとも適当な会話である。


「それは壮大な夢じゃな。
 何かスパイ?やらエクソシスト?だいり?ジョシュ?グルメクイン?
 やら色々やっておるのもその一環というわけか」

「何をしても夢の実現に近づくという意味では
 良いかもしれんの……」


適当な本を開くだけでも知らないことを知れるので、
夢に近づいていることには変わりない。
向かおうとする意志があるとしても、道のりが長すぎていつかは辿り着く。とは言えないが。


「とりあえず向かうのは大切じゃな。
 わしも少しづつ交換品を増やしておる。うむうむ」


わらしべ長者のようにステップアップしているかどうかは不明だが、
とりあえず品目が増えれば前進していると言える。

937夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/31(日) 00:55:24
>>936

次に食べた時には『超人的味覚』は消えている。
その頃には、『普通のキャンディー』に変わっているだろう。
そういう意味では、
『これから味が変わる』と言えるかもしれない。

「そうそう。
 『セカイをみる』ためには、
 イロイロけいけんするコトがチカミチだ。
 『フェアチャイルド』はよくわかってるな!!
 さすが、『ユメをもつモノどうし』だ!!」

長い道のりだが、死ぬまでには実現しようと思っている。
普通に考えれば、それでも時間が足りないだろうが、
やる前から諦める気はなかった。
何よりも、視力を得てからというもの、
『そうしたい』という気持ちが尽きないからだ。

「よし!!ガンバろうぜ『フェアチャイルド』!!」

         バッ

「おたがいの『ユメ』にむかって!!」

高まったテンションのまま、
クッキーを持つ手を大きく突き上げる。
そんな感じの流れで、この後も続いたらしい。
ここで、ひとつダイジなコトがある。
『3ねんせいよう』はムズかしすぎた。
つぎの『かんじドリル』は『2ねんせいよう』にしよう。

938ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/31(日) 01:23:18
>>937

「おや……?」

「?」


急に普通の飴になってしまったので首をかしげ


「お、おおー」


合わせておずおずと手を上にあげた。


……そして結局、アンゴウ(漢字ドリル)は解かれることなく、
セカイのソンボウがかかったしんへいきのセッケイズは忘れさられ
世界は闇に包まれ(日が落ちて暗くなっ)たのだった。
だが彼女たちは歩み続ける。明日を夢見る限り……!
エージェントアリスとフェアチャイルド出会い編 完!

939斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2021/02/06(土) 00:05:43
――ブゥゥゥン

薄暗い体育館でライトセーバーを持ち対峙する二つの影あり

 「君、赤のセーバー大好きだな?」
 「紫が良かったんだけど作ってくれなかったんだ……」

青のセーバーを持つ少年の型は『ソレス』
弓を引くような独特な構えを取る防御の構えである。

 「お前のそれ今レジェンズ(非正史)にならなかったっけ?」
 「うるせぇ!俺の中では今も正史なんだよ!!!」

赤のセーバーを持つ少年の型は『シエン』
逆手片手の構えで用いる高い攻撃性と制圧の構えである。
 
 「うわ、めんどくさいオタクだ。」
 「スターウォーズのオタクでめんどくさくないヤツとかいるの??」
 「やかましい……さっさと始めろジェダイとシス。」
 「アイツ嫌々きた割にはノリノリじゃん。」

静寂でも何でもない空間で、踏み込まれた床が摩擦音をたて
双方の光剣が今、優雅な、或いは力強い線を描きながら交差し――

 「はい、失格ゥー。」

部員のブーイングと審判のルール違反を告げる声で
練習試合が終わった。7回目だった。

 「また剣先を後ろまで回すの忘れただろ!……中々慣れないもんだなあ。」

これなるはフェンシング『ライトセーバー』部門の一幕であった。
ライトセーバーを手元でクルクルと回しながら苦笑する

 (……影の頭部でギリギリ見えたが、攻撃を止めて良かったな
  うっかり自分が反則になる所だった。)

面白半分で突っ込んでは見たが中々うまくはいかない物だ
これではグリーヴァスごっこもできそうにない
斑鳩はそう独りごちる。

940斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2021/02/07(日) 01:01:33
>>939

 (しかし、銀河の平和を守る『超能力者』の宇宙の騎士ねぇ……)

事実そういうスタンド使いもいそうでは有るが
思いつく限りで該当しそうなのはいなかった

 (アリーナも営利団体、自分の利益が確保されている間は
 金の卵を産むガチョウを自分の手で絞殺すわけも無し)

無論、それが尊敬の対象ならばいい
だが現実は他者に知られるべきではない力だ。

 (激発しそうなやつは諫めなければ、この町が疑心暗鬼から戦場になって
 祖父母が巻き込まれる事故が起こる可能性は高くなる)

 (だから、この町の治安も守る 守るが……。)

手にした手製の『ライトセーバー』を回す
これは所詮おもちゃだ、そして力をおもちゃとはき違えた連中が目立つように振り回し
袋叩きにされて死ぬ

いわゆる生殺与奪の権を握る『スタンド使い』という『個』の強者でさえも
弱者の『集団』には敵わない……その例は最近何度も目にしていた。

これが自分に当てはまらない
そう考えるほど、斑鳩は愚かでは無かった
或いは、愚かであった方が余程救いが有ったのかもしれない。

 「ぬるま湯の風呂だ、浸かっていても温まらないが…出るには寒すぎる。」

どこを見る事も無く、ひとり呟く。

 「こんな事を考えて ――遠のいていく気がするんだよな。」

身体を動かしている間はなにも考えずに済む

自分の将来への閉塞感を首を振って振り払い
仮初の友人との遊戯に戻った。

941甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』【高一】:2021/02/13(土) 11:01:32
校舎裏

「これ、受け取って」

>>942に差し出したそれは、ハート型にラッピングされている
これは、バレンタインのチョコ…!?

942甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』【高一】:2021/02/14(日) 19:13:42
>>941
生徒1「……嫌な事件だったね」
生徒2「死人が出なかったのは幸いだった」

こうして血ョコレート事件は幕を閉じた

943円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/02/14(日) 23:16:49

キャップを被りパーカーを羽織り、
モカブラウンの髪をセミロングにした猫顔の少女――
制服から見ると『高等部』だろう。
彼女は手に『紙袋』を持って歩いている。

     ビリ

       ポトッ

その底が破れ、『赤い包装』の何かが落ちた。

         ……彼女は気付いていないようだ。

944ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/15(月) 22:44:22
>>943

「……ん?」


通りかかった小学生くらいの子供が『赤い包装』の物を拾う。
ここが高校の廊下だというなら不似合いな人物だが……
小学生でも入り込める場所だとしても、
金髪と青い目、日本人ではなさそうな顔立ち、
大人ものの服を重ね着したような恰好は不審ではある。


「うーむ?」


少女を小走りで追いかける子供。
そして後をつけながら袋を観察する。
穴が開いているならば、さらに何か落っこちてくるのだろうか。

945円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/15(月) 23:32:10
>>944

赤い包装は『そういう商品』というよりは、
誰かがあとから紙で包んだ物に見える。
中身は不明だが……なんなんだろう?

ここは高等部の校舎から、校門に向かう途中の廊下。
中等部や小学部の生徒も紛れ込んでおかしくないが、
しかし、それはそれとしてもナイは『怪しい』。

……が。円谷世良楽は『気付かない』。

          「〜〜〜♪」

上機嫌で注意が逸れているらしい。
チョコレートのCMソングを鼻歌で歌いながら歩く。
その機嫌の『もと』が失われていく事に気づかず……!

    ズズズ…

          ポトッ

  ――そうこうしているうちに『二つ目』が落ちてきた!
    『ラメ入り』で、さっきよりレアアイテムっぽい青い包装だ!

946ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/15(月) 23:40:00
>>945

「やはりか」


落とし物が少女のものであるという確信が無かったのかもしれない。
しかし、目の前で新たに落とし物をしたということは、先の『赤い包装』物も、そうなのだろう。


「うむ」


ひょい、と拾い上げて……平然と少女の後についていく。
自分の怪しさは気にしていないらしく、足音をひそめるでもなく、
やましい事をしているという雰囲気も無い。

947円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/15(月) 23:49:53
>>946

          パサッ

さらに『黄色い袋』も来た!
これは包装紙ではなく、
リボンのついた袋のようだ。
なんとなく甘い匂いもするぞ。

       スタスタスタ

こいつについていくと良いことがあるの……か?

「〜〜〜〜〜♪ んーフンフンフン」

           「フン……ん! んんー?」

    「あれあれっ」

     ピタッ

「えー、なんだろ……なーんか変な気がするなー!」

だが、それもここまでかもしれない……
何かの違和感に気づいたらしく、立ち止まってしまった。

948ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/15(月) 23:58:20
>>947

「お」


拾う。袖の余った両手に、3色の落とし物を抱え、
当然のようについていく。


「急に立ち止まってどうしたんじゃ?」


下から覗き込むようにして声をかけた。

949円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/16(火) 00:46:09
>>948

「わっ!! おばあちゃん!?」

         ピョン!

跳ねるほどに驚いた。
が、すぐに振り返って『ナイ』に気づいた。

「……じゃなかった。
 えーっなになに、きみって誰ー!?
 わー、なんかいっぱい持ってるしー!かわいいー」

突如出現した(わけではない)謎の子供……!
両腕で何かを抱えているその姿に目を奪われるが、
次の瞬間には『それら』が何かに気づく。

「…………って、あれあれー!  
 どこかで見たような気がすると思ったらー、
 それ、あたしが貰った『チョコ』じゃないですかー!」

   「なんかさー、袋が軽くなった気がして。
    てことは……落としたの拾ってくれたんだー!」

円谷は短絡的なので、深読みなどはしない。
落としたチョコを拾ってくれた謎の子供に、大いに喜ぶ。

950ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/16(火) 00:58:14
>>949

「うむ。拾った」


悪いようにとられなかった事に安堵する……様子は無く、平然としている。
そんな想定は元よりしていないのかもしれない。


「お菓子の家のあの……子供たちみたいにわざとかと思ったぞ」


森を歩くときにパンを撒いて道しるべにしたヘンゼルとグレーテルの事である。
だったら目印を拾うなという話だが、実際は本当に落としていただけだったのだしいいだろう。


「なんじゃ、貰いものか?
 お前さん人気者なのか?
 アイドル……アイドルか?」

951円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/16(火) 01:09:40
>>950

「えらーい! きみってすっごい良い子だねー。
 あたしが子供の頃なら、
 拾ったらそのままどっか行っちゃうかもー」

「あはーっ! それってなんだっけ、メン……?
 あー、メンデルとグレーデル? だっけ!
 きみは、あの子たちと同じくらいえらいと思いまーす!」

かなりの無知を見せつけつつ、
手を差し出してチョコを受け取ろうとするが……

「あ! えらいからさー! チョコ、分けてあげよっか?
 あたし、チョコ好きだけどこれ全部食べると太っちゃう」

思いついたように、そのような提案をした。

「あたしって可愛いけど!
 アイドルじゃないんだけどねー。
 『フィギュア』って分かる?
 別にプロとかじゃないけどー、あれやってるから!」

つまり、『フィギュアスケート』だ。
特別に何か結果を出してはいないし、
それについて特に自負とかもないが……
皆がなんとなくやってる部活とかと、同じようなこと。

「だから太っちゃったりしたら、あんまり良くないんだよねー」

      「これはそれで貰ったんじゃなくて、
       友達同士で交換しただけのやつだけどー」

952ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/16(火) 01:33:14
>>951

「そう、それじゃ」


それではない。
メンデルは遺伝学の祖である。
メンデルは偉いが、ヘンゼルとグレーテルが偉いかというと……どうなのだろう。


「知っておる。人形のことじゃろう。テレビで見たぞ。
 服を着てカメラで撮るんじゃろ。
 確かに太るのは困るじゃろうな」


言葉だけを捉えるならば間違ってはいない。
人形→マネキン→モデルのような脳内変換が起こったのだろう。
つまりフィギュアとは服を着て写真を撮る職業である!


「ふーむ。そういう事ならば有難くいただきたいが、わしも交換したいぞ。
 しかし食物以外か」

953円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/16(火) 01:50:02
>>952

「よかったー、間違ってるかもって思った!」

間違ってるのだ。

「えー! 人形じゃないよーっ。
 あ、でも観てもらうって意味ではそうかも。
 あたし、すっごい動くけど。
 氷の上で滑るスポーツだからさー」

    「あ! あっちのベンチで交換しよーよ!」

言いながら、すたすたとベンチに歩いていく。
立ち話もなんだし、食べるなら尚更だ。

「えー! きみもあたしに何かくれるってことー!?
 どーしよー、別に食べ物でもいーけど!
 ほんとなら全部自分で食べようと思ってたしー」

理想はあっても、燃やす熱意はあまりない。
適当な生き方をしているのだ。

「じゃあじゃあ、何か面白いものとか持ってますかー?」

954ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/16(火) 02:05:30
>>953

「氷で滑る?
 痛そうじゃな」


滑る=ころぶ。という想像らしい。
イメージがギャグのようになってきた。
というかこの会話自体が漫才のようだ。すれ違い系の。


「面白いもの?
 そう言われると面白いものはあまり無いかもしれん……
 変な模様の石ならあるが……」


ベンチに座り、背中のリュックを降ろして、取り出したのは石だ。
確かに変な模様ではある。顔にも見える気がしないでもない。


「うーむ、面白いものか。曲がった釘とかは面白くはないか?
 車の先っぽについておるマークとか……」

「面白いものではないが、食い物でも良いのならば飴なんかがあるぞ。
 チョコが太るというのは一気に食うからじゃろ。
 飴ならば寿命が長いから後で食えばよい。多分」

955円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/17(水) 01:17:57
>>954

「ちがうちがーう!
 コケるんじゃなくて、滑って踊るんでーす!
 まぁ、コケちゃうこともあるけどー」  

      「テレビで見たことないー?
       大きい氷の上でさー、
       音楽が流れてて、踊ってるの」

見た事がないとして、
円谷の言葉だけで判断するなら、
それは相当に奇妙なスポーツだろう。

「えー! 変な石はいらなーい。
 確かに変だけど、きれいじゃないし。
 宝石とかなら欲しいんだけどー」

石を見たが、価値は見出せなかった。
首を傾げて、指で小さくバツを作る。

「クギとかマークも、あたしそんなに興味ないかなーっ」

         「アメってゆーの見せてくれる?」

956ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/17(水) 01:28:37
>>955

「ふうむ……?
 なぜわざわざ氷の上で……」


子供の脳内では、海に浮いた氷山的なものの上で、
ペンギンやアザラシが踊り狂うイメージが浮かんでいた。


「よいぞ」


そう言って小さな手で石と釘を握りこみ、開くと、そこには棒付きキャンディーがあった。
透き通った赤と緑が宝石のようだ。


「イチゴ味とメロン味があるぞ。
 そちらのチョコは赤青黄色があるが……何か違いがあるのかの?」

957円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/17(水) 01:41:24
>>956

「えー? ……あれ、なんでだろ!?
 言われてみたらよく分かんないなー。
 うーん、氷の上ってよく滑るから、
 クルクル回ったり出来て楽しーし、
 見てる方もそれで楽しーからじゃないでしょーか!」

「きっとそう! あはーっ。あたし答え出しちゃったなー」

円谷はあまりそういうのを掘り下げて考えない。
仮に考えても、持論になるほど深くまで掘れない。
この答えも、心の根底にあるものとかではない。

      スッ

「わ! すっごくキレイな…………んんー?
 なんだろなんだろ。あたしこれ見た事ある気がする。
 なんだっけ、前に買ったんだったかなー?」

この飴を見たことあるのは当然で、
そもそも円谷が『プレゼント交換』に出した物だからだ。

「わっかんないけど……
 キレイだし、美味しそうだしー、
 これならあたしのチョコ、どれとでも交換オッケー!」

     「何のチョコかは知らないけどー。
      あーでも、赤いのは一個食べたけど、
      なんかサクサクしたの入ってたっけかなー」

特に確信もないので、そこにそれ以上触れはしないが……

958ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/17(水) 01:50:11
>>957

「そういうのものかの。
 わしは氷の上で踊った事がないからわからんが……
 次に湖が凍っておったらやってみるか」


この町の湖が凍るのは知らないが、そもそも来年まで覚えていないだろう。
万が一実現したら水死体が上がってくる可能性もあるが。


「赤、青、黄色。わしは色で言えば青が好きじゃが……
 ……こういうのは一番小さなものが良いとされておる。舌切り雀で見た。
 おぬしはイチゴとメロンどっちが良い?」


奇縁に気づくことも無く、色に惑わされず一番小さな包装のものを手にする。

959円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/17(水) 02:19:44
>>958

「あたしも大きい池とかでやったことあったなー。
 でもでも、普通のくつだと滑りづらいしー、
 スケートリンク行けば靴も貸してもらえるから、
 そっちのほうがあたし、もーっと楽しいと思うよ!」

実際、池や湖を利用したスケートリンクはあるし、
円谷がやったことがあるのは『そっち』の話だ。
が、それは『適している池』を使っている話で、
H湖でやるのは『マジでヤバい』かもしれない。

「あたしメロンの方が好きかなー。
 イチゴも好きだけどね。
 メロンって甘くて美味しいからさー」

「じゃあじゃあ、これとこれで交換。はいどーぞ」

             スッ

黄色の『袋』が、一番小さかった。
手に取ってみても軽く……中身もあまり多くは無さそうだ。

「……てゆーか、あれあれ!?
 きみって、この飴さっきどこから出したんだっけ?」

「なんかさ、いつの間にか持ってたよねー?」

ふと、子供の『手』をみた時違和感に気づいた。
先ほどは流れでスルーしていたが、何か、妙な気がする。

  ……さっき持っていたのは、釘とか石じゃなかったか?

960ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/17(水) 02:29:49
>>959

「ふうむ。どれどれ」


黄色い袋……赤と青は包装紙らしいが、
これは違うということは、ビニール製かなにかだろうか?
リボンを解いて、中を見てみる。


「うむ。わしはそういうのが出来るんじゃ。すごかろう」


意識が袋に行っているせいか、適当そうな答えが返ってきた。
適当とはいえ嘘では無いとするなら、
『いつのまにか持っていた』事を肯定するような返事だ。

961円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/17(水) 03:03:59
>>960

「すごーい! それって『手品』ってこと?
 どこにも持ってなかったもんね、さっき。
 それとも…………ねえ、『スタンド』って事?
 もしかして、きみも『スタンド使い』なの?」

スタンド使いであることを言い触らしたりはしないが、
相手がスタンド使いなら、その場合隠す理由もない。

ともかく……ビニールの黄色い袋には、
英語らしき崩れた字が書かれていた。

「それねー、黄色は……あれあれ、なんだっけ。
 そうだ! マカロンだったと思う!  
 ナントカって難しい名前のお店のー、
 ほら、スカイモールの地下で売ってるやつ!」

おそらく買った店のラッピングだろう。
開封すると、中身は円谷の言う通りだった。

「貰った時に一個食べたけど、結構美味しかったなーっ」

      「マカロンって美味しいんだよねー。
       それに見た目もカワイイしさ、
       プレゼントにもピッタリって感じー」

サイズは一つ一つ小さく、4つほどが入っているようだ。

中身が無くなっているような様子はないので、
一個食べた、というのはこの袋の中身とは別なのだろう。

962ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/17(水) 03:13:24
>>961

「……スタンド。おお、それ、そんな名を他の者も言っておった。
 わしは霊がついておらんので、どうも忘れやすいんじゃが、
 多分それじゃろう」


ヴィジョンは無いらしい。
そのせいか自分がスタンド使いという自覚も薄いようだ。


「マカロン。
 柔らかそうに見えるが、触ってみるとそうでもないの」


袖から指を出してつんつん突いてみる。
4つ……ということはそれぞれ色(味)が違うのだろうか?

963円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/17(水) 03:23:08
>>962

「えー、レイ? レイってお化けの事!?
 やだー。あたしもそんなのついてないよー!
 それに、あたしの友達のスタンド使いの人も、
 本人はちょっと霊っぽいけど、ついてはないしー」

「たぶん変わったことできるならスタンド使いのはず!」

ここで言う『友達の人』とは、
『御影』のことを指している。
よって、一方的な認定である。
円谷はこういうことをする。

「まーあんま知らないけどねー、他の人の『能力』って」
    
    「なんかさー、広める物でもないしー。
     自分から探し回ったりするのも、
     がっついてるみたいだと思われそうだしー」

円谷は楽天家で、短絡的でもあるが、
極端に目立ちたがりというわけではない。
スタンドのような『変わったこと』は、
そんなにひけらかすべきではない……という社会性がある。

「あはーっ、マカロンの感じって他にないよね。
 堅くも柔らかくもないっていうのかなー?
 食べても、なんか、言葉にできない感じだしー」

語彙が足りない、というのもあるが。

「えーっとねー、なんだっけなんだっけ。
 えとえと、赤はイチゴだったはず!
 緑は……抹茶! 茶色はコーヒーだったと思うなー」

      「この黄色いのはバナナ? あ! レモンかも」

ともかく、そんな不思議な食べ物マカロンが四種だ。
色の違いがそのまま味のイメージのようだが……変なのは無いらしい。

964ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/17(水) 03:38:25
>>963

「わしが出会ったスタンド使いはオバケが多かったがのう。
 透明なのやら、サムライのようなのやら……」

そうではない者もいたのだろうが、やはりヴィジョンがあると
印象深く覚えているというせいもあるのかもしれない。
視覚的なインパクトは記憶に残りやすい。


「お前さんも霊はついておらんのか。仲間じゃな」


ヴィジョンそのものが無い子供と、人型ヴィジョンが無いというだけの少女では、
実情は異なるが、そんなことは知る由も無い。


「ほう。食べて確かめるか」
                   サモ…


黄色いマカロンを齧ってみる。

965円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/17(水) 04:10:35
>>964

「あーでも、そうだ! あたしも見たことはある!
 いたいた、オバケみたいなの動かしてる子!
 『あっち』がよくあるスタンド……なのかなー?」
 
「うーん、わっかんないねー。
 見たことあるのはそうじゃない方が多いしさー」

        「スタンドって奥深そーっ」

垣間見た奥の深さに浅い感想が口に出る。
先日経験した『遊園地』での戦いも、
何の偶然か居合わせた大半が『人型では無かった』。

「あははーっ! 仲間仲間ー。
 仲間同士よろしくねー。
 あたしセララ。あ、名前ね!」

マカロンはなんというか、ほどほどの味だ。
義理のプレゼントならこんなものだろうし、
美味しいといえば美味しく……ほのかにレモン味がする。

「ねえねえ、きみの名前はなんてゆーの? 教えてよー」

966ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/17(水) 04:23:00
>>965

「ペロ……これは、レモン」
                  サモサモ


一度口をつけた以上、全部食べ切ってしまう。


「かっこい名じゃの。
 わしの名前は無いんじゃ。
 ユキシラという家に住んでおるし、ユキシラと呼んでくれてもよいぞ。
 む?」


向こうから大人が歩いてくるのが見えた。先生だろうか?
ユキシラは素早く荷物をリュックにしまい、ベンチから立ち上がる。


「残りは帰って食うんじゃ。
 ではセララちゃん。『交換』ありがとうの」


先生を避けているのか、そう言うと、道なき芝を去っていった。

967円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/17(水) 06:54:29
>>966

マカロンは小さく、腹にはたまらないが、
逆に言えば食べやすく、美味しすぎないのも良い。

「あはーっ! でしょでしょー!?
 あたしのママとパパって、センスいーんだー」

名前を褒められるのは、嫌いじゃあない。

「……っえー! 無い!? なにそれなにそれ!
 名前無いとかそんなのアリなのー!?
 まあでも、ユキシラちゃんがいるんだし、
 無いってこともアリなのかなー。
 あ、ユキシラちゃんって呼ぶね」

「あ! それ賞味期限近いから気をつけて!
 それじゃユキシラちゃん、じゃあねー。またねー」

円谷は基本的に、深く考えない。
都合の良いように考えるし、
都合の悪いものごとをあまり考えない。

          ペリペリ

「あたしもかーえろっと」

巡り戻ってきた飴を開封して舐めつつ、その場を去った。

968小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/20(土) 18:36:39

『城址公園』の一角。
木陰に『黒い女』が佇んでいる。
『喪服』を着て、同色のキャペリンハットを被っていた。

  「――……」

足元には一匹の子猫。
事情は分からないが、足の一本に細い針金が絡まっていた。
それを見て、音もなく『右手』を持ち上げる。

             スゥッ

次の瞬間、女の手に『ナイフ』が握られていた。
実体を持たない『精神の刃』。
『スタンド』だ。

969御厨道:2021/02/20(土) 20:54:37
>>968

ニヤニヤとした顔でそれを見ている女がいる。
傍の木に登り、幹に体を預けていた。

「����������」

じぃっ、と貴方の動きを観察している。
何をするでもなく、そこにいる。

「����������ケケケ」

970小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/20(土) 21:06:06
>>969

      ――――ドシュッ

頭上の存在には全く気付いていなかった。
そのまま右手を振り下ろし、子猫の足を『断つ』。
豆腐を切るかのような容易さで、『左後ろ足』が切断された。

                「ニャー」

         フワ……

『足』が浮かんでいる。
出血もなく、子猫は至って平然とした様子だ。
足が切り落とされた事で、
絡んでいた針金が『切断面』から抜け落ちた。

971御厨道:2021/02/20(土) 21:21:18
>>970

「……」

一挙手一投足を観察する。
切断された足と元あった場所とナイフを見た。
ひとつひとつを理解するために。

(……この後はくっつくかな?)

何となく予想をつけつつ観察を続ける。

(後から斬撃が定着するタイプってのもあるか……?)

972小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/20(土) 21:38:49
>>971

     ススス……

             ――ピタ

浮遊する『足』が空中を漂い、子猫の胴体に寄り添う。
『切断面同士』が重なり、次の瞬間『切れ目』が消失した。
概ね『予想通り』だったと思っていいだろう。

         「ニャー」

針金が解けた子猫が後ろ足を動かす。
その動作は自然で、『切れる前』と何ら変わりないようだ。
『ナイフ』で切ったものは切り離され、
『切断面』を合わせると元に戻るらしい。

             ……フッ

『右手』から『ナイフ』が消えた。
それから、『黒い女』が地面に手を伸ばす。
また『事故』が起こらないように、落ちていた針金を拾い上げた。

973御厨道:2021/02/20(土) 23:20:46
>>972

974御厨道:2021/02/20(土) 23:25:19
>>972

(やっぱりか……)

ウンウンと頷き、そのまま木から落ちてきた。
べちゃりと地面に叩きつけられたものの受身はとっている。

「よう、お姉さん」

「なかなかいいスタンドじゃねぇか」

「針金、捨てといてやろうか?」

975小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 00:56:06
>>974

  「え……?」

『落下』に驚き、思わず身を引いた。
手の中に針金を握ったまま、その姿を見つめる。
帽子の下で、両の目を軽く見開いていた。

  「『針金』……ですか?」

  「あの――」

       スッ

  「はい、お願いします……」

目の前の出来事に、思考が追い付いていない。
ただ、待たせてしまうのも申し訳ない。
そのような思いから、相手の勢いに押され、
言われるままに『針金』を差し出していた。

976御厨道:2021/02/21(日) 01:10:21
>>975

針金を手に取る。

「ところでさ」

「あんた、スタンド使いだろ?」

さも当然、というふうな言い分だった。

「それ、なんて名前だ?」

ぐにぐにと針金を変形させて遊んでいる。

977小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 01:37:37
>>975

  「ええ……」

          コク……

  「確かに私は――『スタンド使い』です」

どこか不思議な女性だった。
『スタンド』を知っているという事は、
彼女も『スタンド使い』なのだろうか。
外見からは窺い知る事が出来なかった。

  「――『ビー・ハート』」

  「そういう『名前』です……」

決して間違いではない。
ただ、厳密には多少の『違い』があった。
『ビー・ハート』は『第二のスタンド』の名前。
『本来のスタンド』は別にある。
しかし、たった今使ったのは、確かに『第二の刃』だ。

978御厨道:2021/02/21(日) 07:35:12
>>977

ぐり、と体を地面にゆっくりと擦るように寝転んでいる。
着ているジャージはほつれが所々にあった。
しかし本人はそれを気にしている様子もない。

「な・る・ほ・ど」

「そういう名前なんだな」

「切って、またくっつける……って?」

体が起きる。
それでも尻は地面にくっついたまま。

「な・る・ほ・ど」

「……ん、あぁ。申し遅れた。アタシは御厨道(みくりや・たお)って言うんだ」

979小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 19:31:48
>>978

  「御厨さんとおっしゃるのですね……」

  「……『小石川文子』という者です」

           ニャー

名乗り返しながら、丁寧に頭を下げる。
足元の子猫が、その姿を不思議そうに見上げていた。
それから、猫の興味は御厨の方に移ったようだ。

  「ええ――そうです」

  「『傷付けない刃』……そう言われました」

『自傷の刃』と対になる『不殺の刃』。
それを得た時、
これまでの自分には出来なかった事が出来るようになった。
『自分の身体』ではなく、『他者の肉体』を切り離す『第二の刃』。
これを使う度に、『あの事』を思い出す。
『幻の町』と、そこで出会った『人々』の事を。

980御厨道:2021/02/21(日) 20:02:30
>>979

「あんたそんな名前なんだな」

「……おー、よしよし。ちちち」

猫をあやすように手を伸ばす。
こちらに来るように猫を誘っているのだ。

「傷付けない刃ねぇ」

確かにそうだという風に頷いている。

「まぁ、こんな話してる時点でお察しのことだとは思うけどよ」

「アタシもそういうのを使うわけなんだがね」

ニヤニヤとした笑いが消えて視線が貴方に向かう。
御厨の中には小石川文子という人物に対する興味があった。

「ツレにいわく、スタンドは精神の発露……ってことは」

「あんたは誰も傷つけられない優しい人なのかね?」

981小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 20:57:40
>>980

  「ええ……」

           トッ トッ

子猫が御厨の方に歩いていく。
そちらに向けた視線を、改めて目の前の女性に注ぐ。
『スタンド』を知る者は、多くの場合『スタンド』を持つ。
自分がそうであるように。
これまで出会ってきた人々が、そうであったように。

  「私は……」

  「誰も傷付かずに済むなら……それが最良だと思っています」

  「もし誰かが傷付けば、『その人を愛する人』が傷付くと……」

  「ですから――」

  「いえ……『分かりません』」

言葉を切り、軽く目を伏せる。
自分が『優しい人間』なのかどうか。
『スーサイド・ライフ』と名付けられた『精神の刃』で、
人を傷付けた事がある。
もしかすると、
誰も傷付けずに済む方法があったのかもしれない。
自分には、それが出来なかった。

982御厨道:2021/02/21(日) 21:39:31
>>981

寄ってきた猫を抱き上げたり撫でたりしている。
この女もかなり動物的なので似通ったところがあるのかもしれない。

「傷つかず、ねぇ」

ニヤニヤと笑う。
何か、思うところがあったようだ。

「ナイフの形しててそりゃあないんじゃねぇかな」

「まぁ、人生いろいろだ。あんたが何を感じていて『ビー・ハート』を手にしてるのか、知らねぇけどさ」

983小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 22:06:25
>>982

  「それは……」

思わず、言葉に詰まる。
核心を突かれたような気がした。
『ナイフ』は人を傷付けるが、『ナイフ』が独りでに動く事はない。
人を傷付けるのは、それを使う『人間』。
そして、『刃』を扱うのは他でもない『自分』なのだ。

  「『矛盾』しているのかも……しれません」

『スーサイド・ライフ』は『自傷の刃』。
『生きなければならない理由』と、
『死を望む衝動』の間で生まれた能力。
だから、『本体』を傷付ける事は出来ない。
その代わり、『他者』を傷付ける事は出来る。
『傷付ける意思』を持って扱えば。

  「自分の事なのに――よく分からなくて……」

  「……おかしいですね」

相手の笑いにつられたように、無意識に微笑んでいた。
陽気な笑みではなく、どこか陰を帯びた笑い方だった。
『ビー・ハート』は『不殺の刃』。
『他者』を傷付ける事は決してない代わりに、
『本体』を傷付ける事が出来る。
『スーサイド・ライフ』には不可能だったが、
しようと思えば、自ら命を断つ事も出来る。

  「――あなたは……?」

984御厨道:2021/02/21(日) 22:50:42
>>983

「そんなこと知らねぇが」

「自分のことがわかってるやつなんて世に何人いるか」

こともなげに言ってのけてまた猫を撫で始める。

「あたし?」

「ないしょ」

985小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 23:07:44
>>984

  「……そうですね」

自分の事というのは、分かっているようで分かっていない。
近いようで遠い存在。
そういうものなのかもしれない。

  「自分の事は分からない――」

  「それも『答え』なのかもしれません……」

子猫と戯れる御厨を見つめる。
彼女は自分の事が分かっているのだろうか。
その答えは、彼女自身の心の中にあるのだろう。

  「御厨さん、お話して下さってありがとうございました」

         スッ

  「――失礼します……」

居住まいを正して深々と頭を下げ、再び猫を一瞥した。
その姿を目に留めた後、御厨に目礼する。
静かに歩き始め、徐々に公園から遠ざかっていった。

986御厨道:2021/02/22(月) 19:47:53
>>985

「そうなんじゃなぁい?」

歩いていく小石川を見送っていく。
腕の中で猫がにゃあと鳴いていた。
御厨道は笑っている。

「己のことが分かったやつなんてイカれてやがるか知ったふうになってるだけと相場が決まってるんだよ」

「けけけ……」

987名無しは星を見ていたい:2021/02/26(金) 23:23:17


キーン  コーン カーン コーン ……


【場】『 私立清月学園 ―城址学区― 』 その2
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1614349342/


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板