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【個】『学生寮 清月館』

1『星見町案内板』:2016/01/24(日) 23:51:17
月面を連想させる『灰色』のレンガで出来た『洋館』。
親元を離れた子供達だけでなく、一般学生もしばしば遊びに来る。
『自立心』、『向上心』を培う為、多くの『家事』は学生自身で行っている。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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34常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2016/12/17(土) 19:02:03
通りががったのは寮生でも教師でもなかった。
掃除用具をいくつか手に携えたそいつは、
…『メイド服』を着た男であった。


     『不審者注意!』

「いま不審者がうんたらって張り紙がチラリと見えた気が」
「………許せない…俺は許せません」

男は張り紙を目に入れるやいなや、
表情を鬼の如き憤怒のものに変える。

「まさか俺の清掃兼パトロールを掻い潜る輩がいるとは」
「少年少女の身を守るため!!気を配るのは家政婦の務め!!!」

廊下に落ちるホコリを箒とチリトリで寄せ集め、満足げに頷く。
すると一通りの清掃が終わったのだろうか、ツヤツヤになった窓を飛び出す。


「不審者め…貴様にはこの屋敷の『ホコリ一つ』にだって触れさせはしません…
 俺のような間違いを犯す人間を生み出さないためにも!!」

過去に自分の見たあの世にも恐ろしい光景を、しかし再び起こさせるまいと覚悟をしながら、「とりあえず防犯用具とか買うか」と買い物に向かうのだった。

35斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/08/20(日) 20:21:28
『スタンド使い』――それになるのには老若男女を問わないのかもしれない
だったら、僕のクラスや学校の生徒にもいないとは言い切れない

『スタンド使い』を探しつつ親睦も深められるなら都合がいいかも
そんな軽い気持ちでこの『清月学園学生寮』の下見に来ていたけど……

「……なんだこれ?」

それは適当に学生寮を回っていた時。
廊下の壁に貼られた一枚のポスターが目に付いた

        『不審者注意!』

……大きな字でそう書いてある。

「なんでこんなポスターがこんな……屋内にあるんだ、
普通不審者って言うのは表で出てくる人じゃあないのか?
この『学生寮』不審者が簡単に入れる場所だったのか?」

――参ったな

もし、このポスターが『学生たちのお茶目ないたずら』ではなく
『純然たる事実』だった場合 
もし、そんな風に不審者が多々出る何て噂が
僕のお爺ちゃんとお祖母ちゃんの耳に入った場合……

「『心配』するかな、2人に『心労』をかけてしまうかも……参ったなあ
ここに来るのはやめたほうがいいのかな。」

カチカチカチ…

僕は腕時計の螺子を巻きつつ途方に暮れていた
表情を苦笑いに変えても、有効な策が思いつくわけでは無かったが。

「……それにしても『学生寮』に来る『不審者』かあ
何してんのか想像できないし、何で捕まってないんだ?」

学校側にだって面子って物が有る筈だ、それなのに早々捕まらない?

「もしかして……『新手のスタンド使い』なのか?」
「『自分を透明にできる』とか…かな?無いとは言えないよなあ」

首に回った短いマフラーを弄りながら再び歩みを進める
もし、『スタンド使い』なら……

「せめて部屋を見て回ってから帰ろうかな……『古いポスター』かもしれないし
『不審者』が偶々見つかるとかは思わないけど。」

┌――――――――――――――――――┐

   学生自身で『家事』をして、
  『自立心』と『向上心』を培いましょう!

└――――――――――――――――――┘

斑鳩の歩いて行った廊下にはそんな標語が壁に残っていた。

36常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2017/08/20(日) 22:52:25
『家政婦』――それになるのには老若男女を問わないはずである
だったら、男性にしてメイドの男がここにいたって良いではないか。

『未来のご主人さま』を探しつつ親睦も深められるなら都合がいいかも
そんな軽い気持ちでこの『清月学園学生寮』に不法侵入していたけど……

「……なんだこれ?」

それは丁寧に学生寮の廊下を掃いて回っていた時。
廊下の壁に貼られた一枚のポスターが目に付いた

        『不審者注意!』

……大きな字でそう書いてある。

「なんでこんなポスターがまだ……屋内に!!!!、
普通不審者って言うのは表で出てくる人じゃあないですか!!!
この『学生寮』!俺がいる限り不審者が簡単に入れる場所なはずがない!!!!!」

――許せぬ

もし、かの不審者が『学生たちのお茶目ないたずら』であろうと
『純然たる事実』だった場合でも 
もし、そんな風に不審者が多々出る何て噂が
学生寮のお坊ちゃまお嬢様の耳に入った場合……

「『心配』!!!!みなさまの!!!『心労』!!!!!!……許せない!!!
ここに来る頻度を高めねばなるまい!!!!!!。」

ゴシゴシゴシ…

俺は掛け時計の硝子を磨きつつ奉仕の炎に燃えていた
表情は仁王のそれに変わり、学生諸子を護るための策を思いつくべく頭を回転させる。

「……『学生寮』に来る『不審者』!!!
何をされているのか想像したくもない!!! そも、何で捕まえる事ができていないのです!!!!」

学校側にだって面子って物が有る筈だ、それなのに早々捕まらない?

「クソっ……『新手のスタンド使い』に違いない!!!!!」
「よもや『自分を透明にできる』とか…!!かつて俺も見た事のある能力!!!!!」

エプロンの紐を絞めなおしながら再び歩みを進める
もし、『スタンド使い』なら……

「全部屋を見て回らねばなりません!!どうせお坊ちゃま方のお部屋には『古くなったお菓子の袋』とかが転がりまくっている!!!!
『ゴミ』!『不審者』!すべて掃除してみせます!!!!!。」

┌――――――――――――――――――┐

   学生自身で『家事』をして、
  『自立心』と『向上心』を培いましょう!

          家事に困ったときは
        メイドに頼ってください
└――――――――――――――――――┘

常原の歩いて行った廊下にはそんな標語(+マジックで書かれたメモ)が壁に残っていた。

37今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/03/30(土) 02:45:27

知り合い(>>38)に会いに、ここまで来たんだけど。

「ごめんくださ〜〜〜い」

        ぴん
            ポ〜〜〜〜ン 

門が閉まってるんだよね。
私はここに住んでるわけじゃないから、勝手に入れはしないし。

          ジィーーー ・・・

スマホを見て、今日会う約束をしてた相手からの連絡を待ってみる。
学生寮、ちょっと興味ある気がするから、下見がてら遊びに来たんだけど。
まあ下見って言っても、すぐ引っ越したりはフツーにできないわけだけど。

「……」

寝てるのかな、それとも出かけちゃった?
ぎりぎりに中から出てきてくれるのが一番いいよね。
待ってる人は来ないまま、待ち合わせの時間はもうすぐ、過ぎる。

38三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/04/04(木) 23:20:36
>>37

    ガチャ

「あっ――――」

「今泉先輩、こんにちは」

       ペコリ

少ししてからドアを開けて、お辞儀をしました。
入居したばかりなので、まだ諸々の整理が終わっていなかったのです。
そのせいで出るのが遅れてしまいました。

「お待ちしてました」

「まだ片付けの途中ですけど、どうぞ上がってください」

ひとまず大方の片付けは済んでいました。
来て間もないこともあって、室内は至ってキレイです。
基本的な家具は置かれていますが、それ以外の物はあまりありません。

「今、お茶を出しますので――」

「コーヒーか紅茶の方がいいでしょうか?」

39今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/04/04(木) 23:37:57
>>38

「こんにちはっ。ごめん、忙しいのに」「無理言っちゃって」

          ザッザッ

「お邪魔しま〜す」

              ズッ

靴を脱いで部屋に上がらせてもらおう。
どういう感じの部屋か、見たくて来たんだよね。
ほかの子の部屋ってもうカスタマイズ済みっぽいし。
三枝くんの部屋は、まだだって聞いたから。

「フツーにお茶でいいよ、お湯沸かしてもらうの悪いし」
「あ、そうだ。これ、お土産!」

「ここ置いとくねっ」
「つまらないものだけど、新居祝い。よかったら食べてみて」

お菓子の紙袋を……渡しに行くと邪魔だろうし、机に置いておく。

40三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/04/05(金) 00:00:53
>>39

「いえ、もうほとんど終わってますから」

「こちらこそ、わざわざお土産を用意して頂いてありがとうございます」

     コトッ

テーブルの上にお茶を二つ置きました。
それから、勉強机に置かれた紙袋を持ってきます。

「――結構いい部屋なんじゃないかと思います」

「それなりに広いですし」

「個人的な感想ですけど、ご参考までに」

中等部に上がったことが、入居のきっかけでした。
一人で暮らしてみることで、自分を成長させたかったのです。

「あの――もしよかったら、今泉先輩も食べませんか?」

「一人で食べるのも、少し寂しいので」

袋の中身を出して、テーブルの上に置きます。
中身は何でしょうか?

41今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/04/05(金) 00:42:28
>>40

「確かに、もうだいぶ片付いてるみたい」
「――うん、いい部屋かなっ」「住みやすそうだし」

       ガサッ

「あっ、そうだよね、開けちゃおっか!」
「『クッキー』買ってきたんだ」

              ごとっ

「よいしょ」

袋の中から、包装したクッキーを出した。
これならそのまま持ってきてもよかったかな。

「これ、美味しいんだよ。フツーに人気あるし」
「東京のほうのお店のやつなんだけど」
「スカイモールで売ってたから、買っちゃった」

箱を開けながら、説明する。

「三枝くん甘いものすきだっけ? 私はフツーに好きかな〜」

42三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/04/05(金) 01:15:30
>>41

「はい、好きですよ」

「『あんみつ』なんかが特に好きです」

「もちろん『クッキー』も好きですけど」

箱の中に並んだクッキーを覗き込みます。
今泉先輩の言う通り、どれも美味しそうです。

「先輩の『先生』は甘いものは――――」

「あっ」

「『先生』は食べられないんですよね?」

頭には、先輩のスタンドのことが浮かんでいました。
『コール・イット・ラヴ』は、自分の意思を持っていました。
だから、つい人と同じように考えてしまいました。

「『先生』も、クッキーを食べられたら良かったですね」

「そうしたら、三人で食べられたかもしれないです」

「千草のスタンドが入ったら『四人』になりますけど」

クッキーの一つに手を伸ばし、口元に運びます。
そのまま一口かじりました。

「――――美味しいです」

「何だかしっとりしていますね」

「ドライフルーツもたくさん入っていて、とても美味しいです」

43今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/04/05(金) 01:28:18
>>42

「あんみつ。あれもおいしいよねえ」

「あ、先生は食べないかな。食べてるとこ見ないし」
「『こころ』はあるけど、ご飯食べたりは出来ないんだよね」

           バリッ
「んん」

    ムシャムシャムシャ

               ゴクン

「……美味しい〜っ」
「いやー、思ったより美味しいねこれ」

「ドライフルーツ」「えーと」「パインとかかな」
「なんかそういう感じの味が、した気がする」

フツーにおいしくってコメントに困っちゃうな。
でも、お土産としてきっといいものを選べた気がする。

「もうちょっと部屋とか、見てみていい?」
「キッチンとか見てみたいかなあ」「あとシャワーとか」

「見られたらいやなものとかあったら、フツーに遠慮するけど」

でもまあ、あんまりやましいものとかなさそうなタイプだよね。
もちろん、誰だって見られたくないものくらいあるだろうし、そこは配慮するつもり。

44三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/04/05(金) 01:57:05
>>43

「こっちに入っていたのは『イチジク』ですね」

「それから『アプリコット』でした」

「果物や野菜のことは少しだけ詳しい方なのです」

「『ベジタリアン』なので」

クッキーを食べながら、お茶を飲みます。
でも、クッキーならコーヒーか紅茶の方が良かったかもしれません。
次の機会があれば、そうすることにしましょう。

「どうぞ、キッチンはこちらの方になります」

「そんなに広くないですけど、使いやすいですよ」

今泉先輩の先に立って、まずキッチンを案内します。
面積は広くありませんが、必要な機能がまとまっているという感じでしょうか。
持参した冷蔵庫や電子レンジ、オーブンなどの電化製品が置かれています。

「あっ――冷蔵庫の中身なら、まだあんまりありません」

「後で買い物に行かないといけませんね」

『見られたらいやなもの』という言葉を、そのように解釈していました。
今日くらいはコンビニで済ませても良いかもしれませんが、自炊も『自立』の一歩です。

45今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/04/05(金) 02:19:01
>>44

「へ〜っ、そうなんだ」「詳しいんだねえ」

「最近よく聞くよね、ベジタリアンって」
「私はフツーに何でも食べちゃうな」

宗教とか信仰とか、そういうのなのかな。
フツーにあんまり深く聞かないほうがいい気がした。

         スタスタ

「キッチン、使いやすそうでいいねっ」
「レンジとかは自分の……」「だよね?」

「流しも結構広いし」
「自炊とか、しやすそうだなあ」

それから冷蔵庫を見たら、先回りで言われちゃった。
中身を勝手にみるつもりはないけど、見なくていいみたいだ。

「三枝くん、料理とかできるんだっけ?」
「ここ、たしか家事とかはだいたい自分でやる方針なんだよね」

材料買いに行くって言ってるし、できるんだろうな。
なんていうか、フツーに、女子より女子力高そうな感じするし。

46三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/04/05(金) 03:01:44
>>45

「はい、そうですね」

「『自立心』を養うためだそうです」

「千草も、できるだけ早く自立したいと思っているので――」

「それで、ここに入居することにしたんです」

千草は、多くの人に尊敬されるような『立派な人間』になりたいのです。
今から『自立』の訓練をしておくことは、きっと役立つと思ったのです。

「料理も、自分なりに頑張っているつもりです」

「今は、まだ人並みですけど」

「今日は――『揚げ出し豆腐』でも作ろうと思います」

確か、豆腐は冷蔵庫になかったと思います。
忘れずに買ってきましょう。

「今泉先輩は、料理はよくされてますか?」

「何か得意なメニューがあれば教えて欲しいです」

一瞬、先輩の『先生』に聞いてみようかと思いました。
だけど、『先生』は料理の先生ではないです。

「それで――」

「『浴室』は、こっちですね」

キッチンを出て、浴室に向かいます。

「さすがに家のお風呂場と比べると小さいですけど――」

「でも、あくまで一人用ですから十分な大きさですね」

浴室の中は、こじんまりしたサイズです。
一人住まいですから、丁度いい大きさと呼べるんじゃないかと思います。

47今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/04/05(金) 03:09:49
>>46

「自立心、かあ」「えらいねっ」

「私は……まあ、料理、できなくはないし」
「たまに、作ったりもするけど」
「揚げ出し豆腐なんてどう作るかわかんないや」

「『スクランブルエッグ』とか得意かな!」
「ベーコンも一緒に焼いたりとかね」

卵を崩すやつ。
あれはフツーに、私でも作れるし、得意だよ。

それでお風呂を見せてもらったけど、まあこんな感じだよね。

    ザッ

「うん、十分だね」
「湯船も、けっこうフツーにちゃんとしてるし」

            ザッ

「もし寮住むとしてもけっこうやっていけそう、かな」
「ありがとうね、三枝くんっ。いろいろ見せてくれて」

               ニコー

「おかげでどんどんノリ気になってきたかも」

お礼は、ちゃんと言っておく。
お土産もけっこう私が食べちゃったわけだし。そういうの抜きでもね。

48三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/04/05(金) 20:00:47
>>47

「もし今泉先輩が学生寮に入ったら、お祝いに行きますね」

「今日のお返しです」

         ガチャ

浴室の扉を閉めて、また居間に戻りました。
それから少し話をしていると、丁度いい時間になっていたようです。

「――――途中まで送りますよ」

「買い物に行かないといけませんし」

「よかったら、また遊びに来て下さると嬉しいです」

「連絡を入れて頂ければ、部屋にいますので」

今泉先輩と一緒に玄関を出て、歩いていきます。
お祝いに来てくれた今泉先輩は、気配りの上手な人だと思いました。
他の人の良い所を見習っていきましょう。
そして、これから『自立』に向けて努力していきたいです。
寮に入居した今日、千草は改めてそう思いました。

49三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/01(日) 22:25:32

  ――――カリカリカリカリ

「ふう……」

         パタン

寮の部屋で、生徒会の議事録を整理していました。
一段落したので、少し休憩しましょう。
お茶でも入れようと思い、立ち上がった時でした。

                ピンポーン

「――はい?」

     ガチャッ

ベルが鳴ったので、外に出てみることにしました。
どなたがいらっしゃったのでしょうか?
もしかすると、千草が約束を忘れているのかもしれません。

50猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2019/09/02(月) 23:06:03
>>49

「やぁ三枝さん」

猿渡楓、十七歳、高等部二年、生徒会所属。
栗色の髪、右側頭部にいくつかの編み込み、背が低く、幼めの顔立ち。
三枝千草の知人。

「いま、時間いいかな?」

51三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/02(月) 23:48:39
>>50

「あっ、猿渡先輩でしたか」

中等部と高等部の違いはありますが、千草と同じく生徒会に所属している方です。
そういえば、鉄先輩や日沼先輩も高等部二年生ですね。
何だか、この学年の方と縁があるような気がします。

「どうぞ、入って下さい。
 今ちょうど、お茶を入れようと思っていた所なので」

先輩のために、ドアを大きく開けました。
室内は質素な方で、あまり物は置かれていません。
身の丈にあった生活をしなければなりませんから。

「――せっかくですから、先輩にもお茶をお出ししますね」

52猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2019/09/03(火) 00:01:01
>>51

「どうも、お邪魔するね」

頭を下げて部屋へと入っていく。
靴は揃えて玄関口に置いておいた。

「あぁ、お構いなく」

「そうだ。カップケーキをいくつか持ってきてるんだ。それをお茶請けしてもらえるかな」

そう言った猿渡の手にはビニール袋。
透明な袋の中で小さなカップケーキがいくつも閉じ込められていた。

53三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/03(火) 00:18:10
>>52

「ありがとうございます。では、そうさせて頂きますね」

    スタスタスタ

「カップケーキなら、お茶より紅茶でしょうか?すぐにお持ちしますので」

猿渡先輩に声を掛けてから、キッチンに入ります。
出てきた時には、両手でお盆を持っていました。
その上には、二つのカップが載っています。

「どうぞ、猿渡先輩。お口に合えばいいのですが……」

      コトッ

テーブルの上の先輩の前に、カップを置きます。
中身は市販の紅茶です。
先輩の好みを知らないのが、少しだけ不安ですが……。

「――そういえば、今日はどのようなご用でしょうか?」

猿渡先輩の様子を見ると、急ぎの用事ではないと思います。
もしかすると、千草が約束を忘れていたのでしょうか?
そうだとしたら申し訳ないです。

54猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2019/09/03(火) 00:47:30
>>53

「ボクはその辺り気にしないから適当でいいよ」

「三枝さんの好きなように」

カップケーキをテーブルに置いていく。
プレーン、チョコチップ、ココアパウダー練り込み、シュガーデコレーション。
様々な飾りつけのカップケーキが積まれていく。

「どうも……こちらこそお口に合えばいいけど」

「……ウップス」

カップケーキの山が少し崩れた。
落ちたカップケーキを持ち上げてまた積んだ。

「別に急ぎでもないんだけど」

「生徒会の活動はどうかな、とか。あとは……三枝さんが議事録の整理してるって聞いたから確認させてもらいたくて」

55三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/03(火) 01:07:20
>>54

「わっ――スゴイですね」

テーブルの上に積まれたカップケーキを見て、思わず瞬きしてしまいました。
二人で食べきれるでしょうか?
そこまで考えて、別に食べきる必要はないことに気付きました。
冷蔵庫に入れておけば、きっと数日は大丈夫でしょう。
他の寮生の方にお裾分けしてもいいかもしれません。

「そうでしたか。わざわざ気に掛けて下さってありがとうございます」

      ペコリ

「最初の頃と比べると、生徒会の活動にも慣れました。
 だけど、まだまだ未熟者ですので、今後も精進したいと思っています」

「議事録の整理は、だいぶ終わりました。
 少しは見やすくなっているといいのですが……。見て頂けますか?」

一冊のノートを先輩に差し出しました。
『生徒会議事録』というタイトルが付けられています。
会議の内容を記録するのが、千草の主な仕事です。
ですが、そのままでは少々見づらいです。
それを見やすくまとめ直したものが、この『生徒会議事録』になります。

「――高等部の生徒会はいかがですか?
 そちらの方は、よく知らないもので。
 精進のために、お話が聞けると嬉しいです」

56猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2019/09/03(火) 02:39:03
>>55

「焼き過ぎちゃったんだよね」

「ぼんやりしてたよ」

こともなげに言うけれど、言葉からは若干疲れたような色がにじみ出ていた。

「うん。議事録って慣れないと書くのが難しいから、と思って」

議事録を受け取り、猿渡はページをめくる。
時々その手を止めてじっくりと目を通したり、ページを戻したり。
途中、こぼさないように紅茶を飲んだりしながら一通り目を通して議事録を閉じた。
微笑んで、議事録を三枝に差し出す。

「いいんじゃないかな。分かりにくい所もあるけど、基本的には項目ごとでちゃんとまとまってるし」

「分かりにくい部分も、別におかしい所って訳でもないしね。内容自体がややこしいからそういう書き方になってるだけだね」

そう言ってカップケーキを一つ摘まんだ。

「高等部も基本的には変わらないかな……?」

「そっちよりは自由かもしれないけど、中等部と比べて無茶苦茶って訳でもない」

「あぁでも、受験だとかそういう部分に気を遣ったりはするかな。中学から高校と高校から大学ってやっぱり違うから」

57三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/03(火) 21:30:48
>>56

「手作りなんですか!猿渡先輩は料理がお上手なのですね。
 てっきり、お店のものかと思いました。とても良くできているので」

カップケーキを一つ取って、まじまじと見つめます。
千草は、まだ作ったことがありません。
自分にはない経験や知識を持っている人は、尊敬できる人です。
そういう人達から、多くのことを見習いたいです。
千草の目指す道は、それを積み重ねた先にあるのでしょう。

      パクッ

「――見た目だけじゃなく、味も美味しいです。
 猿渡先輩は本当にスゴイです」

ケーキを口に運び、先輩の言葉を黙って聞きました。
褒めて下さったようです。
とても嬉しいことですが、慢心してはいけません。
常に謙虚な気持ちを忘れずに、これからも学んでいきたいです。
でも嬉しいことは嬉しいので、顔に出たものを隠すことはできませんでした。

      ニコッ

「ありがとうございます。とても参考になりました。
 今度からは、もっと綺麗に纏められるようにしますね」

「……そうですね。おっしゃる通りだと思います。
 そのためにも、今の内から先を見据えていかないといけませんね」

大学生ともなると成人の方が多いですし、ほとんど大人のようなものです。
それに大学進学では、進んだ道が将来に与える影響も大きいと聞きました。
千草も、早い内から将来について考えておきたいと思います。

「――――猿渡先輩。先輩は、『鉄先輩』や『日沼先輩』のことをご存知ですか?
 二人にはお会いしたことがあるのですが、猿渡先輩と同じ学年だと思ったもので」

58猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2019/09/03(火) 23:46:18
>>57

「これぐらいは君にも作れるから大丈夫だよ」

「やってやれないことじゃあないさ」

こともなげにそう告げる。
落ち着いていて、嘘はない表情だ。

「まぁ、ほどほどでいいと思うよ」

「高校生になった途端大学受験を見据えろなんて言われるけど」

「ボクはそんなことしてたって、大抵の人には意味がないって感じるし……」

そう言った後に、猿渡は三枝のあげた名前に瞬きをした。
んー、と声を出して左手で唇に触れる。

「珍しい取り合わせだね、両極とは言わないけど……離れた場所にいる気もする二人だ」

「そりゃあ知ってるけど、それがどうかしたのかな?」

「気になることでも」

59三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/04(水) 00:24:41
>>58

「いえ、気になるといいますか……」

「最近、高等部二年生の方と知り合う機会が多かったので。
 鉄先輩と日沼先輩のようでしたから、猿渡先輩もご存知かと」

「お二人とも尊敬できる方なので、またお会いしたいと思っています。
 中等部と高等部だと、顔を合わせる機会も少ないですし……」

鉄先輩と日沼先輩は、確かにタイプの違う人だと思います。
ですが、千草から見ると共通している部分もあります。
それは、見習うべき所があるという部分です。

「あっ、猿渡先輩!
 もしお二人と会うことがあれば、『今後ともよろしくお願いします』と千草が言っていたと伝えて頂けませんか?」

「ご迷惑でなければですが……」

自分で挨拶できるのが一番なのですが、千草は中等部です。
高等部の先輩と話す場面は、多くありません。
そこで、両先輩と同学年の猿渡先輩にお願いしてみることにしました。

「猿渡先輩も、鉄先輩や日沼先輩とは違って見えますね。
 拙い表現ですが、どことなく飄々としていらっしゃるように感じます」

「猿渡先輩も尊敬できる先輩ですから。
 その落ち着きを見習いたいです」

こういう方を、掴みどころがないと言うのでしょうか?
もしかすると、失礼な言い方になってしまったかもしれません。
ただ、それが猿渡先輩の強さのような気がしたのです。

60猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2019/09/04(水) 00:35:26
>>59

「そうなんだ。別に気を遣わなくて大丈夫なのに」

「まぁ、中等部だと高等部の所には来にくいか……」

何となくそういう感情があるのは分かる。
経験としてはあまりないけれど。

「……伝えておくよ」

「でも君から直接伝えた方が二人とも喜ぶと思うよ」

静かに紅茶を飲み、そう答えた。

「飄々と……そうかな?」

「自分ではあんまり分からないけど」

「そうか……そう思うんだ」

61三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/04(水) 00:57:37
>>60

「先日お会いした高等部の先輩に、『自分は何に見えるか』と聞かれたもので。
 その方も、同じ寮生なんです」

小林先輩のことを思い出しました。
不思議な方です。
何かを悟っているような――そんな印象があります。

「千草から見ると、猿渡先輩はそんな風に見えました。
 もし気に障ったなら謝りたいです。ごめんなさい」

     ペコリ

「変な質問ですが……先輩から見て、千草はどう見えるでしょう?」

「千草は『立派な人』になりたいと思っています。
 自分なりに努力しているつもりですが、自分のことは自分では分かりにくいので……」

「ですので、今の自分が客観的にどう見えるかお聞きしたいのです」

       コトッ

飲んでいたカップを置いて、先輩を見つめます。
本当は、聞くのが怖い気持ちもありました。
ただ、将来を考えるために今の自分を知っておきたい思いの方が強かったのです。

62神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』:2019/09/04(水) 01:12:37
>>61

「何に見えるか? 弱気な話だね」

「……適当って言ってもいいけど」

その言葉に腕を組んで言葉を返す。
表情に変化はないけれど、何となくトーンは低かった。
目線を外し、何かを考えているようでもあった。

「別に、構わないけど」

「『立派な人』……そう。そうなんだ」

カップを置く三枝と反対にカップを持ち続けるのが猿渡だ。
外した視線は紅茶の水面に向けられていた。

「……まずは、真面目な子かな」

「不真面目ではないし、不親切でもない」

「やることはするし、誰に対しても一定の敬意を持ってるようにも見える」

63三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/04(水) 01:33:07
>>62

「そう――――ですか」

先輩の言葉を、頭の中で何度も繰り返します。
最もしてはいけないことは、人としての道を外れることです。
まだその道を歩いているのは、千草にとっては喜ばしいことでした。

「ありがとうございます、猿渡先輩」

   ペコリ

何か気の利く言葉を言おうとしましたが、思いつきませんでした。
だから、短いお礼の言葉を先輩に言いました。
その中に、今の気持ちを込めることにしたのです。

「『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』――」

それは千草の『墓掘人』の名前です。
千草の恐れる死との象徴である同時に、死後の安寧をもたらす存在。
それが千草の求める『到達点』なのかもしれません。

「千草の好きな言葉です」

    ニコッ

「先輩、このケーキを他の寮生にお裾分けしてもいいでしょうか?
 たくさんありますし、二人で食べるのも勿体無い気がしたので……」

「――それに、とても美味しいですから」

64猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2019/09/04(水) 01:47:13
>>63

「……でも忘れないでね」

「真面目さも優しさもそれだけでは薬にも毒にもならないってこと」

別に批判をしたいわけじゃないけどね、注釈をしてカップケーキをかじった。
表情は動いていなかった。

「イッツ・ナウ・オア・エヴァー」

復唱。
そして咀嚼。
その意味を噛み締めるようにして理解しにかかる。

「おすそ分けは自由にしてもらっていいよ。ボクも今日の分が余ったら寮で配ろうと思ってたから」

「ボクが配るより、君が配った方が受けよさそうだし……ってかー?」

そこでやっと猿渡も微笑んだ。

65三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/04(水) 02:13:40
>>64

それは、とても重い言葉でした。
少なくとも千草にとってはそうでした。
そして、それを忘れないようにしようと心に決めたのです。

「先輩、あの……もし――――もしですよ」

何か千草に手伝えることがあったら、その時は遠慮なく言ってくださいね」

「千草に出来ることは何でもしますから」

真剣な表情で、勇気を出して先輩に言いました。
もしも、それが危険なことだったとしても、千草は手伝いたいです。
『夢』に近付くために必要なことは、どんなことでもやり遂げたいのです。
千草は――――この世で何よりも『死ぬこと』が怖いです。
『死』に近付くことも、それと同じくらい怖いです。
ですが、『安らかな最期を迎える』ためなら、その怖さに立ち向かいたいと思っています。
『恐怖を乗り越えて成長することを願っている』――妖甘さんも、そう言ってくれました。

「あの……生意気なことを言ってごめんなさい。
 でも、どうか忘れないで下さい」

考えには、行動が伴わなければ意味がありません。
何かを成し遂げて、それを積み重ねること。
その大切さを、改めて感じられたように思いました。

「――――それなら……今から二人で配りに行きましょう。
 きっと、皆さん喜んでくれると思います」

     ニコリ

ケーキの入っていた袋を持って立ち上がり、先輩に笑顔を見せます。
お裾分けは、何かを成し遂げるための第一歩です。
とても小さな一歩ですが、それでも一歩には違いありませんから。

66猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2019/09/04(水) 02:35:33
>>65

「……何でもなんて言っちゃあ駄目だよ」

「必要だからって騙したらどうする?」

左手で唇に触れながらそう言った。

「うそうそ」

ほんの少し微笑みの色を声に含ませながら続ける。

「でも、覚えておく」

立ち上がる。
三枝が立ったから自分も立ったのだ。
これからやることは二人でないと出来ないから。

  オーパッキャマラド
「一緒に行こう友よ、だよ」

67黒羽 灯世『インク』:2019/10/07(月) 02:23:11

「んぐぐ…………っ」

      ゴツンッ

「このっ」   「私をてこずらせてっ」

            ゴツンッ

中等部の生徒、だろうか?

猛禽類か、蛇か――――あまりよろしくない目つきの少女だ。
顔立ちは整っており、袖が広く……振袖のように改造された制服も、
雰囲気に『浮いていない』……が、『大和撫子』と言うには雑味が多い。

自室と思われる部屋に『荷物』を運び込もうとしている。
どうやら『家具』か何かのようだ。

    フゥフゥ…

「……」

「『強敵』なのだわ……」

              ボソッ

が、段ボールの幅が絶妙に入り口と噛み合わない。
縦に持てば入りそうだが、その少女の細腕では難しそうだった。

68三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/10/09(水) 00:34:07
>>67

「――お困りですか?」

『高い少年の声』のような『低い少女の声』のような声がしました。
いつの間にか、小さな人影が近くに立っています。
『小学生と中学生の間ぐらい』の背丈です。
『少年のような少女のような風貌』でした。
服装はキッチリしたブレザーですが、これは私服のようです。

「お手伝いします」

    スッ

段ボールの箱に向かって、両手を軽く差し出しました。
困っている人を見かけたら、お手伝いする。
『立派な人』なら、そうするべきでしょう。
そして、千草は『立派な人』を目指しています。
だから、千草もお手伝いしたいのです。

69黒羽 灯世『インク』:2019/10/09(水) 01:20:15
>>68

少女は振り返って、目を細めた。
極端ではないが、背は三枝より一回りは高く、
見下ろすような形でその――――少年?を見る。

「あら、困っているように見えた?
 手伝ってくれるなら、断りはしないけど」

             グラッ

「……」

余裕っぽい顔を見せたが、重心がグラつく。
すぐに立て直したが、顔の焦りは消えない。

「いえ、ありがたく受け入れるのだわ」

・・・箱はなかなか、重かった。
手を差し伸べるとそれが分かる。

「……ちょ、ちょっと一旦下ろしましょうこれは。
 下ろして、向きを変えて、持つのが良さそうだわ。
 こう、あなたがそっちの端、私がこっちの端をね」

          フラッ

              「……おわかりかしら?」

70三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/10/09(水) 01:41:18
>>69

「はい、分かりました。では、こちらを支えますね」

    ユラリ

思ったよりもズッシリしていて、足元がふらつきました。
ですが、手伝うと決めた以上は後には引けないのです。
千草の『墓堀人』が力持ちなら良かったと、この時は思いました。

「中等部一年の『三枝千草』と申します。
 あの――失礼ですが、先輩でしょうか?」

お手伝いをしながら、尋ねてみます。
ここに入居するのなら、『寮生仲間』ということになるでしょう。
きちんと挨拶をしておかなければいけません。

「千草も少し前から入居していますので……。
 何か分からない事があれば、遠慮なく言って下さいね」
           
         ユラッ

「出来ることなら、何でもお手伝いします」

そう口にすると、ほんの少しだけ『立派な人』に近づけたような気がしました。
でも、思い上がっていてはいけません。
反省します。

71黒羽 灯世『インク』:2019/10/09(水) 02:45:39
>>70
             クロバネ トモヨ
「中等部…………『三年』の『黒羽 灯世』よ。
 あなたよりは先輩、ということになるのだわ。
 でも年上だからって畏まらなくてもいいのよ。
 フフッ、べつに……敬ってくれても良いけど」
 
背は高いにしても、非力なのは三枝と同じで、
こういうのは非力なのが二人集まっても、
軽く感じる『基準』に届かないのか……重いままだ。

が、黒羽の負担は減ったのか、顔に余裕は生まれる。

「あと、この寮には私も結構前から住んでるのだわ。
 これは実家から送られてきたの……よいしょっ。
 ……本棚ね。本をたくさん読みなさい、って事かしら」

「引っ越しとかじゃないの、だから荷物はこれだけだわ」

小等部はともかく、中等部以降の生徒は寮生も多い。
その大部分を任されるこの『清月館』においては、
以前からの入居者同士が初対面でも、何も不思議はない。
都市部のマンションに住まう者同士がそうであるように。

「頼もしいのね? その心構え、フフッ! 『悪くない』」

「お返しにあなたも、私に出来ることなら頼ってくれていいわよ。
 私にはね、強みがあるの。『勉強』を教えることも出来るし、
 『スポーツ』の方も、パワー以外はそこそこ自信があるのだわ。
 でも、それより一番得意なのは…………『記者』としての活動ね」

本棚と称された段ボールを、少しずつ屋内に引き込む。
扉をくぐると、どこか海外の柑橘類のような匂いがした。

「なにせ私は新聞部に入っているのよ。
 それでね、中等部分の校内新聞も書いているの!」

「それで……あなたの『出来ること』は、なにがあるのかしら?」

72三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/10/09(水) 19:31:19
>>71

「あっ――」

「そうでしたか……」

「――いえ、何でもありません」

先輩風を吹かせてみたかったので、少しだけ落ち込みました。
思い上がっていたバチが当たったのでしょう。
やはり、謙虚な気持ちを忘れてはいけません。

「黒羽先輩は『新聞部』なのですね。凄いです。
 千草は、新聞を『読む』ことしか出来ません」

「きっと黒羽先輩みたいな人を『文武両道』と呼ぶんでしょうね。
 それが、記者としての活動にも役立っているんでしょうか?」

また一人、『尊敬できる人』と出会えました。
日々、こういう出会いを積み重ねていきたいのです。
その先に、千草の目指す目標があると思えるからです。

「千草の『出来ること』ですか……」

「あの――『生徒会』に入っています」

「そこで『書記』をやらせて頂いています。
 記録を取ったり、取った記録を整理するのが主な仕事です」

ほんの少し、黒羽先輩の仕事と似ているような気がしました。
でも、それを口には出しません。
謙虚な気持ちが大切だと、千草は学びましたから。

73黒羽 灯世『インク』:2019/10/10(木) 00:06:00
>>72

(寮の事を私に教えて『上』に立ちたかったのかしら?
 大人しそうに見えて、それなりに『野心的』なようね)

マウントを取りたがる黒羽には、三枝の気持ちがわかる。
本当にわかっているのだろうか? とにかく、そう見た。
あえて口には出さない。『煽りたい』わけではないから。

「そうね、文武両道と言って大げさではないのだわ。
 期末テストの点も、スポーツテストの点も、
 どっちも上の方だし……上に立つ者と言えるわね。
 フフッ! 記者は『上』に立っていてこそ、だもの。
 上から下は見えても、下から上は見えない物が多い。
 それに……話す側に『甘く見られない』のも重要だわ!」

「つまり大いに役に立っている。おわかりかしら?」

それは黒羽の信条でもある。
記者は、『上』にいるべき存在である。
そして、『中立的』な立場であるべきである。

「……『生徒会』?」

「あらあら、あらあら! 『生徒会』の書記!
 あなたもなかなか『低くない』立ち位置にいるようだわ!
 ねえねえ、この荷物を置いたら、少し話を聞かせてもらってもいいかしら?
 もちろんお茶とお菓子くらい出すわ! 私、お茶を淹れるの得意なの」

少女の自室は整っていた。
無駄なものがないわけでもなさそうだったが、
散らかっていたり、汚れていたりする様子はない。

そしてなるほど、本棚というものは今は存在しないし、
それを置けるだけの、十分なスペースはありそうだった。

「よいしょっ……この辺りに置きましょ。……たぶん組み立てる必要があるし、
 それはあなたが帰ってからするのだわ。ゆっくり下ろして。手を離す時はいっしょよ」

74三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/10/10(木) 00:38:36
>>73

『夢』というのは『野心』とも言えます。
そして、千草には『夢』があります。
だから、千草には『野心』があるのかもしれません。
それは分かりません。
いずれ分かるのでしょうか。

「はい、千草に答えられることでしたら何でも。
 それに、先輩のお話も聞いてみたいので」

    ニコ

「喜んで、お受けします」

先輩とお話ができることは、千草にとっても嬉しいことです。
きっと勉強になると思うからです。
新しい出会いは、新しい学びのきっかけでもあるのです。

「――はい、分かりました」

黒羽先輩に合わせて、箱を下ろしていきます。
重いので、手を挟まないようにしないといけません。
腕が痺れてきましたが、最後まで気を抜かずに。

「慎重……にっ……」

         グッ

「手を……離しますねっ……」

そろそろ力が入らなくなってきました。
これを期に、もう少し運動も頑張ろうと思います。
黒羽先輩を見習いたいです。

75黒羽 灯世『インク』:2019/10/10(木) 01:22:24
>>74

             ズシン…

部屋の隅のスペースに、
大きな段ボールが横たわった。

「フゥーー……どうもありがとう。
 無事に運び込めて……よかったのだわ!」

額にかいた汗を拭う黒羽。
余裕の表情だ。

          プルプル

・・・その腕は微妙に震えているが。
三枝と、残存する力は変わらないのかもしれない。

「……ちょっと、お茶を入れるからそこで待ってて」

部屋の奥に引っ込む。

「緑茶でいい? 紅茶が良い? コーヒーもあるのだわ。
 お菓子はいろいろあるから、いろいろ持ってきてあげる」

そして壁の陰から顔だけ出して、そのようなことを聴いてきた。

76三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/10/10(木) 01:41:57
>>75

「ふぅっ……」

「お役に立てて――何よりです」

「――ふぅ……」

両手を軽く握ります。
もう少しで落とす所だったかもしれません。
無事に運べて良かったです。

「ありがとうございます」

    ペコリ

「先輩にお任せします。
 『動物性食品』以外なら、好き嫌いは少ない方なので」

千草は、いわゆる『ベジタリアン』です。
昔――人から見ると、そう昔でもないのですが、
千草は『人の死体』を見たことがあります。
その直後くらいから、『動物性食品』を受け付けなくなりました。
多分、『あれ』を思い出すからでしょう。
他の人より体の成長が遅れているのは、
栄養が偏っているせいもあると思います。

     キョロ

お手伝いしようかと思いましたが、却って邪魔になるかもしれません。
待つ間、失礼にならない程度に部屋を眺めます。
整理整頓の仕方など、参考にしたいと思います。

77黒羽 灯世『インク』:2019/10/10(木) 03:44:00
>>76

「――――『動物性食品』? フフッ。心配無用よ。
 お酒が好きなおじさんじゃないんだから、
 お菓子って言って『イカ』を持ってきたりはしないのだわ」

そういう経験があるのかもしれない。

     「あっそうだわ」

「置いてあるノートとか、勝手に触ったら、嫌よ!
 記者としての『マル秘情報』とかもあるから……」

三枝の要望を聞き届けて、
今度こそ黒羽は部屋から出て行った。

・・・部屋の中を眺める。

机には彼女の懸念らしきノートや手帳、ファイル、他に教科書など、
それなりに量がある紙の類が……パソコンの周囲に積まれていた。
紙そのものが置かれている事は無い。すべてファイルに綴じているらしい。

アルバムや日記帳など、大いに『プライバシー』であろうものもあるが、
そうしたものは『鍵付き』を選んでいるようで、望んでも見る事は難しそうだ。
小さなアロマディフューザーらしきものもあり、香りの発生源はあれだろう。

壁にはいくらか『表彰状』などがあり、その規模は大小問わない。
『書道』のコンクール、『塾』の物らしきテストの優秀賞、
『新聞大会』の『入賞』……由来不明の、『手作りの表彰状』……
どれも額縁に収まっていて、壁に取り付けられたフックに掛かっている。

中身の見えない棚や、クローゼットらしき棚など、調度品は高級感があり、
清月館の備え付けではない。本棚もそうだが……小遣いで買える範囲ではあるまい。

                         コポポポポポ……

奥からは茶を注ぐような音が聞こえてくる。もうじき戻ってくるのではないだろうか?

78三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/10/10(木) 17:49:31
>>77

「はい、触りません。
 『何があっても』、『絶対に』。
 勝手に人の物を触るのは、良くないことですから」

妙に力の入った言い方で、返事が返ってきました。
人の物を触るのは悪いことです。
そんなことをしていては、『立派な人』にはなれませんから。

「『表彰状』を沢山お持ちなんですね。千草も見習いたいです」

一番の関心は、やはり壁の『表彰状』でした。
それは、何か大きな事を成し遂げた証です。
沢山もらっているという事は、やはり黒羽先輩は凄い人なんでしょう。

(『表彰状』をもらえるのは、きっと『立派な人』です)

千草も沢山の表彰状を頂ければ、『立派な人』になれるでしょうか。
そうすれば、『素晴らしい死に方』が出来るでしょうか。
『表彰状』の群れを眺めて、そんなことを考えます。

「……」

「…………」

いつの間にか、考えることに没頭してしまいました。
一度『理想の死』について考え始めると、止まらなくなるのです。
黒羽先輩が戻ってきても、気付かないのではないでしょうか。

79黒羽 灯世『インク』:2019/10/10(木) 22:56:54
>>78

「良い心がけなのだわ。ね、もう少し待っていてね。フフッ。
 ペットボトルのお茶より、ずっとおいしく淹れているから!」

返事に返事を返して――――
それからしばらくして、部屋に戻ってきた黒羽。

「お待たせ〜……あら? あらあら。
 私の輝かしい『強さ』の証を見ているの?
 フフッ! 好きなだけ見せてあげるのだわっ」

            コトンッ

「とりあえずお盆、置くわね。中身は『緑茶』……それとお菓子」

机の上に置かれた木の盆には、ガラスの小さな急須と、コップ。
それに市販の『ごませんべい』や『抹茶チョコレート』など、
和風で揃えてはいるがあまり節操のない菓子類が並ぶ。

「……ちょっと? もしもし、あなた、聞こえてる?」

・・・そうしてから、没頭している様子なのに気付いて声をかけた。

80三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/10/10(木) 23:24:07
>>79

「……はい?」

    ハッ

「あっ――すみません。ちょっと『考え事』をしていたので」

我に返って、黒羽先輩に向き直ります。
ちゃんと人の話を聞かないのは悪いことです。
こんなことでは、『目標』から遠のいてしまいます。

「先輩の強さを『見習いたい』――と」

至って真面目な表情でした。
真剣とも言えるでしょうか。
お盆の方を見て、その表情が和らいだようです。

「ええと……『緑茶』ですか?
 黒羽先輩の分も注いでおきますね」

「先輩ばかり動いてもらうのは申し訳ないので……」

        トトトトト…………

急須を手に取って、コップにお茶を注ぎます。
先輩の分が先で、自分の分は後です。

「――――どうぞ」

          トン

先輩の前にコップを置きましょう。

81黒羽 灯世『インク』:2019/10/11(金) 00:29:21
>>80

「フフ、良いわね。他人の見るべき点は見習う。
 そうして自分だけでは立てない高さに上れる。
 私も、あなたの『強さ』を見つけたなら、
 それは参考にするべきかもしれないのだわ」

「そういう、素直に人を褒められる所とかかしら?」

           スッ

「あら、ありがとう。
 『謙虚さ』もあなたの強みのようだわ!」

緑茶は急須越しにも冷えていた。
コップに注ぐと、芳香と共に冷気も感じる。
水出し、というヤツなのだろう。
季節は境目だが、労働の後には良い。

「さて――――と」

「あなたの強みは見えて来たけど……
 最初に聞きたかったのは『生徒会』のことなのだわ」

「実はね、あまり取材をしたことがなかったの。
 『生徒会長』とかは、就任の時に誰か記事を書いてたけど。
 『書記』や『会計』なんかは、誰なのかも把握しきれていないし。
 ねえねえ、普段はどんな仕事をしているの? ……メモをしていい?」

                  スッ

ポケットからメモ帳を取り出しながら、矢継ぎ早に言葉を浴びせた。

82三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/10/11(金) 00:51:11
>>81

「どうぞ、メモはお構いなく」

正座して、居住まいを正しましょう。
これは『取材』されていると思っていいのでしょうか。
何だか緊張してきました。

「ええと……」

    コホン

思わず、軽い咳払いを一つ。
こうしたことは、あまり経験がありません。
変死体の『第一発見者』として、
警察の人達に色々と聞かれたことを思い出します。

「さっきお話した通り、会議の記録係と記録の整理が主な仕事です。
 他にも、色々と『雑用』などをやらせて頂いてます」

「今は自分が一番下なので、
 経験を積むために出来ることをしたいのです」

「あとは――――『花壇の手入れ』など。
 これは生徒会とは関係ないのですが……」

「そういった所でしょうか。お役に立てましたか?」

さすがは新聞部の先輩です。
『チャンス』を見逃さない姿勢は、ぜひとも参考にしたいと思います。
『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー(今がその時だ)』です。

83黒羽 灯世『インク』:2019/10/11(金) 01:28:10
>>82

「ああ! そんなに固くならなくっていいの。
 ちょっとした雑談くらいに思ってくれていいのだわ!」

とはいってもメモを取っているのだ。
取材、と考えても不思議など何もない。

「そうね、書き記す、と書いて『書記』だもの。
 やっぱりそういう事を主にするものなのね。
 雑用も、私も一年のころはしていたし……」

         クイッ

「そういう経験も『強さ』に繋がるものね。
 やったことがあるのと、ないのとでは違う」

コップを傾けてから、メモにペンを走らせる。
 
「『速筆』や『聴きとる力』がカギという点では、
 記者にも近いところがあるかもしれないのだわ。
 記者も、記す者、と書いて『記者』だもの。
 もちろん、記すだけじゃあないけれどね……花壇?」

「『お花が好き』ってこと?
 それとも、『書記として』しているのかしら?」

気になる単語を耳聡く拾った。初期の活動は普通だが、『花壇』は意外といえる。

84三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/10/11(金) 01:55:14
>>83

「いえ、『書記』の仕事とは関係ありません。
 『お花』は――嫌いではないですけど」

「どちらかというと『自主的に』です。
 あまり世話をされていなかったようなので」

    クイ

ひとまず、お茶を頂きましょう。
ちょうど喉が渇いていた所でした。
コップを置いて、さらに話を続けます。

「自分に出来ることはしていきたいのです。
 生徒会の活動に関わらず、どんなことでも」

千草の夢は『理想的な最期』です。
そのためにどうすればいいか、自分なりに考えました。
悪いことをすると、ロクな死に方をしないと聞きます。
では、その『逆』ならどうでしょう。
誰からも尊敬されるような『立派な人』なら、
とても『素晴らしい最期』を迎えられるのではないでしょうか。

「千草は『立派な人』になりたいと思っています。
 大勢の人から慕われて、支持されるような人物になりたいのです」

「ですから――今の内から積み重ねていきたいのです」

「その……大袈裟かもしれませんが」

    ニコ

黒羽先輩から固くならなくていいと言われたので、少し笑います。
ただ、表情は真面目なままでした。
それは、千草にとっては大事なことですから。

85黒羽 灯世『インク』:2019/10/11(金) 02:25:45
>>84

冷えた緑茶は、言うだけあってボトル詰めの市販品より、
雑味が少なく――――なんというか、『それっぽい』味がした。

「まあまあ! すごくいいことだと思うのだわ!
 『立派さ』……上位の立ち位置というのは、
 お空から降ってわいてくるものじゃあ、ないのよね。
 そのことを分かってるみたいだから――――あなたも『強い』」

「フフッ! もちろん私も分かっているけどね。
 私とあなた、今の時点ではどちらが『上』かしら?
 目指すところが違う以上、あえて比べはしないけどね」

比べたら私の方が上、と言外に込めつつ、
三枝の『強さ』もまた、黒羽の中で確かになったようだ。

「でも、『立派な人』……すごくいいと思うわ。
 あなたは『立派じゃない人』になんてならないと思う。
 私はそう思うの。……ねえ、大げさなんかじゃないのだわ!」

それが何かの意味を持つかは分からないが、
これもまた、一つの『支持』とは言える、か?

熱の入った夕焼け色の瞳が、鋭く、三枝を見据えていた。

「だって、おわかりかしら? 私も、『慕われる』とは違うけれど、
 どんな『圧力』にも屈さず、おもねることのない、
 『中立にして、強者』……そういう『上に立つ』存在を目指してるのだから」

              「『大げさな夢』とは、思わないのだわ。
               ――――あなたのその顔も、そういう意味でしょう?」

86三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/10/11(金) 02:44:53
>>85

「ありがとう――ございます」

    ペコリ

何と言えばいいか、少し迷いました。
でも、素直な気持ちを言葉にすることにしました。
そうするのが一番いいのではないかと思えたからです。

「先輩の『強さ』に負けないように、千草も頑張ります」

黒羽先輩の目標と千草の目標は違うのでしょう。
ただ、『上を目指す』という所は似ているような気がしました。
だから、何となく先輩に共感を覚えたのかもしれません。

「先輩のことを教えてくれませんか?」

「今は、どんな取材に力を入れているんでしょうか?」

「もし『秘密』なら――無理にはお聞きしませんので」

生徒会のことを聞かれたので、先輩の活動について尋ねました。
先輩が言われたように、記者と書記は似ていると思います。
『聴き取り』や『書き取り』以外にも、
何か見習える部分があるのではないでしょうか。

87黒羽 灯世『インク』:2019/10/11(金) 21:22:48
>>86

「フフッ、素直でよろしい。…………私のこと?
 構わないわ。…………そうね、話していい範囲なら、
 今は『事件』より『人間』に重点を置いてるのだわ。
 学内でそれほど大きな事件は、今は起きていないし」

        ピリ

「兆候とかは、無くはないけれど。
 それこそ『秘密』……杞憂なら、ややこしいもの」

菓子の包装を破きながら、曖昧な答えを返す。
実際に今黒羽が追っているのは……『スタンド使い』だ。

「だから今は、人間ね! 運動部とかすごく良いのだわ!
 夏の大会とかも終わって、部活動も落ち着いたから、
 インタビューがしやすいし…………」

      パラパラ

袋を半分ほど開けた菓子をコップの乗ったソーサーに立てかけ、
先程から開いていたメモ帳をめくる黒羽。これが取材帳なのだろうか。

「この前は高等部の、『卓球部 』の人にインタビューしたのだわ。
 個人戦で県『ベスト8』……全国の卓球部員の中で、相当『上の方』と言える。
 まあ、お話はごく普通だったけど。強者が変わり者ばかりとは限らない好例ね」

「ねえねえ。あなたの周りにも、いないかしら? 運動部の……強い人が、面白い人」

88三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/10/11(金) 22:07:20
>>87

「『運動部』――ですか。
 練習が忙しいと、お話を聞きにくいですしね」

「確かに、今は丁度いい時期だと思います」

    スッ

抹茶チョコレートを食べながら、黒羽先輩の話に頷きます。
そういえば鉄先輩も、こういうのがお好きなようでした。
前に喫茶店で会った時に、
『黒蜜ときなこのプリン』を注文していたことを覚えています。

「そうですね……」

質問されたのは、まさに鉄先輩のことを思い出していた時でした。
先輩は何人か知っていますが、
運動部というと真っ先に思い浮かぶのは鉄先輩です。
そこで、鉄先輩を紹介することにしたのです。

「『鉄先輩』は、いかがでしょうか?
 高等部二年生で、『剣道部』に所属している方です」

「大会にも参加しておられました。
 『個人戦』のメンバーに選ばれていらっしゃるので、『強い人』かと」

「――宜しければ、『連絡先』をお教えしましょうか?
 もし取材されるなら、『アポ』も取りやすいかと思いますので」

89黒羽 灯世『インク』:2019/10/12(土) 00:04:38
>>88

「ええ……そうなの、そうなのよ。
 このシーズンを逃すと、今度は冬の大会とか、
 来年に向けた合宿とか、またどんどん忙しくなるし」

             パリパリ

「取材だなんて照れ臭い、って人も多くって。
 大会の結果が出てすぐの今なら、
 『勢い』で受けてくれる人も多いのだわ!」

薄いごませんべいばかりを開封する黒羽。

「へえ、『鉄』……? ええと」

      パラパラ

メモ帳にはいくつもの付箋が付いている。
それを頼るようにして、どこかのページでめくるのを止めた。

「メモに名前があったのだわ。
 そうそう、剣道部……高等部二年生。あなたの情報通りね!
 でも、コネクションが無くって……会えてなかったのよね。
 良いのかしら? その人の『連絡先』……勝手に私に教えて?」

「ああもちろん、教えてもらえるなら喜んでもらうのだわ!」

90三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/10/12(土) 00:27:02
>>89

「もし何か問題が起きたら、もちろん責任を取ります。
 それに、黒羽先輩なら大丈夫かと」

「これでも人を見る目はある方ですから」

          ニコ

「鉄先輩は真面目で気配りの出来る人ですから、
 きっと実りのある話が聞けると思いますよ」

誰にでも教えたりはしません。
ただ、黒羽先輩は責任感の強そうな人です。
知り合って間もないですが、そう感じました。

「――では、お教えしますね」

           スッ

スマホを取り出して、鉄先輩の連絡先を伝えます。
いきなり知らない相手から連絡が来ると、
驚かせてしまうかもしれません。
このことは、後で鉄先輩にも言っておくことにしました。

「連絡先を伝えたことは、千草から鉄先輩に話しておきます。
 そうした方が、スムーズに話が進むかと思うので……」

「あっ――」

「鉄先輩は『和風』のものがお好きなようでした。
 お役に立つか分かりませんが、ご参考までに」

91黒羽 灯世『インク』:2019/10/12(土) 01:34:06
>>90

「あら、あら、あら。『謙虚』かと思ったけど……
 違うのね。あなたもやっぱり『強い』みたい。
 ええ、ここまでお膳立てしてもらったんだし、
 近いうちに『取材』を申し込んでみるのだわ!」

            スッ

「『実り』を手に入れるためには、動かなくっちゃあね。
 安心なさい、おわかりみたいだけど、私なら大丈夫だから」

    サラサラ

ペンでメモ帳の――白紙のページに連絡先を書く。
書道の影響だろうか、字は整っていた。

「そうね、至れり尽くせりだけど……お願いするのだわ。
 私が『会いたがってた』ってことにしておいてくれる?」

鉄の人柄は知らない。
三枝が勝手に教えたかのような形にしてしまうよりは、
黒羽が聴こうとした形にする方が、何かと良いだろう。

そして、緑茶を注ぎ直し・・・

「奇遇ね、私も和風が好きよ。
 有用な情報……ありがたくいただくのだわ!」

「会う場所は『甘味処』なんてステキかもしれないわね……」

92三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/10/12(土) 02:06:44
>>91

「分かりました。では、そのように伝えておきますね」

         ニコ

「ええ、そういった場所は喜ばれると思います。
 前に偶然、『喫茶店』でお会いしたことがありました」

「その時、『黒蜜ときなこのプリン』を注文しておられました。
 千草も少し頂きました」

「そういえば――その時、先輩は『地図』を広げていた気がします。
 地図の上に幾つか『印』を付けて……」

         スゥッ

「――『印』を付けて……」

無意識の内に、片手を頭に添えていました。
その地図の上に、
『暴行』や『通り魔』という、
物騒な言葉が書かれていたのを思い出したからです。
そういった『死』に繋がりそうな単語を見ると、
つい『クラッと』来てしまうのです。
こういう時は深呼吸です。
気分を落ち着けてから――言葉を続けます。

「『この街の危ない所をマークしておきたい』――
 そう言われていました」

多分、鉄先輩には何か考えがあったのでしょう。
でも、その理由は聞きませんでした。
何となく、軽い気持ちで聞いてはいけないような気がしたからです。

93黒羽 灯世『インク』:2019/10/12(土) 03:10:14
>>92

「あなた、人と会った時のことをよく覚えてるのね。良い事よ。
 まあ、私もそういうのはしっかり覚えておくタイプだけれど。
 そこのところは記者のたしなみだから……フフッ」

「それにしても、地図に……『印』?
 ……『危ない所をマーク』……」

              「っ」 

「――――――フフフッ! すごく、すごく面白いのだわ。
 剣道部がすることとは思えない、いえ、『何ならそんなことをする』のかしら?」

「つまり彼も何かを『探している』……
 単なる『運動部』という以上に、
 有意義で『上等』な話が出来そうね!」

(少なくとも、人に見られて困るような『マーク』じゃないようだし)

口元に幅広い袖を当てて、目を細めて笑みを浮かべる黒羽。

「これは取材のプランを練っておかなくっちゃいけないのだわ……!」

              ゴクッ
                  ゴクッ

高揚した口調でそういうと、緑茶を飲み終え、一息つく。
・・・一通りのことは話したのかもしれない。黒羽は次の話題をすぐには切り出さない。

94三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/10/12(土) 05:48:05
>>93

「――――…………」

うっかり言ってしまいましたが、良かったのでしょうか?
つい、そんなことを考えてしまいました。
黒羽先輩は喜んでいるようですが……。

「……分かりません」

「もしかしたら――『何か』あるのかもしれませんね」

でも、きっと黒羽先輩なら大丈夫でしょう。
『会いたがっていたことにして欲しい』という言葉から、
そう思い直しました。
気配りの出来る人でなければ、そんなことは言わなかったはずです。

    ――――ゴクッ

コップに残っていた緑茶を飲み干しました。
あまり長居しても、ご迷惑になると思います。
この辺りでお暇することにしましょう。

「ご馳走様でした、黒羽先輩。そろそろ失礼しますね。
 お話できて楽しかったです」

「あっ――」

  クロバネ      クロガネ
「『 黒羽 先輩』と『 鉄 先輩』――
 口に出してみると少し似てますね」

    クスリ

「――――それでは」

              ペコリ

立ち上がり、お辞儀をして出口に歩いていきます。
ところで、黒羽先輩はお気付きでしょうか。
今まで話していた相手は、
本当に『少年』だったのかどうか定かではないことに――――。

95黒羽 灯世『インク』:2019/10/13(日) 06:56:28
>>94

「『もしかしたら何か』を確かめるのが、
 まさしく、『記者』の仕事なのだわ!
 フフッ、隠し事ってほどでもなさそうだしね」

隠し事を暴くのには危険が伴うものだが、
少なくとも三枝に見せても問題ないものらしいし、
藪蛇を突つくようなことにはならない、と考えている。

・・・果たしてどうなることか。

「えっ……ま、まあ似てるかも? ……似てるわね。
 言われてみれば……一文字違いだものね、フフッ。
 こちらこそ楽しめたのだわ、次の楽しみも出来たし」

      「それじゃあまたね」

突然のユーモアに翻弄されつつ……
立ち去って三枝の背中を見ながら、メモを走らせる。

「…………」

      ピタッ

その名前、役職、年齢まで書いて……性別で、手が止まったのだった。

96今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/10/20(日) 18:17:30

ここに引っ越してくる話が、だいぶ進んできたんだ。
だから今日はちゃんと許可をもらって下見に来たわけ。
空き部屋の内装とか、庭とか……いろいろ見せてもらった。

「…………ふう」

      チャリン チャリン…

それで今は談話室にいる。
談話室っていうのかな?
寮生がお話したりするための部屋?

自販機があったりして、休憩にちょうどいいかなって。

   ポロ

「あっ」

         コンッ…… コロコロコロ

挿れようとした小銭が落ちて、転がって。
ソファの下の方に入って行っちゃうのを、私は目で追っていた。

97夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/10/21(月) 20:11:01
>>96

    ピコンッ

ふと、『LINE』の新着メッセージが届いた。
小銭が落ちて転がっていくのと同じタイミングだ。
今のところ、見える範囲に他の人はいない。

『イズミン、いまヒマ??』

『わたしはヒマだぞ!!』

『そういえばさぁ』

『ひっこしするんだって??』

『ビックリ!!』

『いや、チョットまてよ』

『イズミンがイマなにしてるかスイリしてみるから』

『ガクセイリョーのだんわしつでコゼニおっことした!!』

『どう??あってる??』

98今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/10/21(月) 23:52:06
>>97

『ごめんなさい今は用事でして〜 もうすぐ終わりますけど!』

『あれ、私話しましたっけ!
 すぐじゃないですけど、もうちょっとしたら寮に』

『え、推理ですか?』

       キョロ
            キョロ

ユメミンの推理は、当たるんだよね。
でも前は『元から知ってたから』だったし・・・
今回は? どこかから見てるのかな。

『わー、正解です! さすがは名探偵ユメミン』

『(拍手する兎のスタンプ)』

              ゴソ  

『なんでわかっちゃうんですかっ?
 私は名探偵じゃないんで、ヒントをください』

そこまで返信してから小銭を拾うためにしゃがんだ。
ソファの下、結構広いし、自販機の下に転がったりしなくてよかったよね。

99夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/10/22(火) 00:17:01
>>98

    ピコンッ

『ヒントその1!!
 わたしはミミがイイ!!
 (ピョコンと動く兎の耳のスタンプ)』

『ヒントその2!!
 わたしはアチコチでさいしんジョーホーをさがしてる!!
 (キョロキョロする白兎のスタンプ)』

『ヒントその3!!
 わたしはオクジョーからイズミンがソコにはいるのをみた!!
 (高層ビルのスタンプ)』

次々に『ヒント』が送られてきた。
イズミンのまえにたちふさがるナゾ……。
シンピのベールにつつまれたシンジツとは??
こんや、そのこたえがついにあかされる!!
きょうがくのラストをみのがすな!!

100今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/10/22(火) 01:20:55
>>99

          キョロ

              キョロ

ユメミンの『ドクター』は確かに耳が良い。
耳が良いんだけど……そんなに大きな音したっけ?
ユメミンは屋上にいるんだよね?

フツーに、わかんないな。
うーん、『小銭が転がった』じゃなくて『落とした』って言ったよね。
目で見てるんじゃなくて、『聞いてる』んだとは思うんだけど。

「……」

             ガラララ

窓を開けてみた。

『えーっ、ぜんぜんわかんないですね』

             バタン

それから、ドアも。

『私、名探偵じゃなくってフツー探偵かも』

いくら耳がよくっても、音が聞こえるくらいの距離って限られてる。
他にも音ってたくさんあって、それが混ざり合うから。ユメミンは、どこだろう?

101夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/10/22(火) 01:54:27
>>100

       バタン

「――――あ」

思わず声が出てしまった。
手に持っていたスマホから顔を上げ、イズミンの方を向く。
開かれたドアの向こうにあったのは、見慣れた姿の相手だった。

「いまから『ヒントその4!!わたしはイズミンをおいかけてみることにした!!』と、
 『ヒントその5!!わたしはドアのそとでコゼニがおちるオトをきいた!!』を、
 おくるところだったのに〜〜〜」

        ゴソ

要するに、そういうコトだったらしい。
スマホをしまい、談話室に入る。
それから、置いてあるソファを見て、そこに座った。

「イズミンが『ひっこしする』ってハナシは、
 ついさいきんグーゼン『コミミ』にはさんでさぁ」

「オクジョーからみえたときに、そのコトをおもいだしたんで、
 チョットついていってみようかなぁ〜〜〜とおもって。
 ココって、そんなにきたコトなかったし??」

「でも、ホントにビックリだな!!
 ひとりぐらしかぁ〜〜〜。
 いつのまにか、イズミンがオトナのカイダンをのぼっていたとは……」

ウンウンと頷きながら、そんなコトを口走る。
冗談交じりだが、驚いたのは本当だった。
なんていうか、イガイなカンジがしたから。

102今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/10/22(火) 02:43:13
>>101

「あっ」

      ニコ

私は笑った。

「なんだ、フツーに外にいたんですねっ」
「どうやったのかなって、びっくりしてました」

びっくりするよね、フツー。
ユメミンもびっくりしてるみたい。

「座りましょっか」

ソファの、空いてる向かいに座った。

「ああ、そうだったんですね〜」

「クラスの子とかに、ちょっと話しましたし」
「引っ越し決まったのは……」「そこからかなあ」

別にだれに聞かれてもいいんだけどね。
ラインか何かで言った気も、しなくはないし。

「一人暮らしにあこがれてたってわけでもないんですけど」
「寮に住んでたら」「いつでも学校の友達に会えますし〜」

「それに、そう、オトナとして独立したって感じがするじゃないですか?」

103夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/10/22(火) 03:03:28
>>102

「ほうほう、イズミンやるなぁ〜〜〜。コレは、まけてられないな!!」

「ひっこしおわったらさ、アソビにいってもイイ??
 オヤツとかもってくから!!」

「『ひとりぐらしのトモダチのトコにアソビにいく』っていうのも、
 ソレはソレでなんとなくオトナなカンジがするし!!」

寮生のトモダチっていたっけ??
いたような気もするけど、少ないと思う。
だから、ジブンにとってもキチョーなタイケンになるんじゃなかろうか??

「そういや、こないだアリガトね。アドバイスしてくれて。
 ホントたすかったよ〜〜〜!!」

少し前の『デート』のコトを思い出す。
あの時は色々と楽しかった。
たぶん、イズミンのお陰でウマくいったんだと思う。

「まさか、イズミンもしってるとはおもわなかったなぁ〜〜〜。
 たしか『ピアノ』ひいてたんだよねぇ??
 やっぱキザなヤツだな!!」

104今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/10/22(火) 03:17:34
>>103

「いいですよ! むしろ大歓迎ですっ」
「私、インテリアとか、全然わかんないから」
「ユメミンそういうのセンスあって得意そうですし」

「デートのお返しにアドバイスしてください!」

ユメミンと私の服のセンスとかは違うと思うけど、
私、センスらしいセンスってのはないから。
だから、参考に出来ると思うんだよね。

「そうそう。デート、楽しめたみたいでよかったです」

「イカルガ先輩、『バラ』……の形の綿あめ買ってきたんですよね!?」
「あは」「ピアノは弾いてましたけど、そういう感じじゃなかったので」

「やっぱりデートだと、張り切るものなんですかねえ」

そう、そうだった。
イカルガ先輩の話……バラに、手で目隠し。は、してないんだっけ?
とにかく、意外なくらいキザで……ミステリアスだったんだ。

「ちなみに、あれからまた会ったり連絡したりしてるんです?」
「付き合いとか、そういうのじゃないのは分かってますけど〜。その後というか」

「そういうの気になるんですよねっ」

ユメミンは一つの所に留まらない。けど、少しくらい足を止めてたりはするかもしれない。
そういう話って興味あるんだよね。自分1人じゃ、どうやってもわからないところだったりするしさ。

105夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/10/22(火) 18:36:59
>>104

「おっ、イイね〜〜〜!!
 そんなコトいわれたら、ユメミンはりきっちゃうな!!
 スミズミまでビシッ!!とコーディネートしちゃうぜ!!」

「うんうん――『バラのワタアメ』。こんなカンジの」

        スッ

スマホを出して、イズミンに写真を見せよう。
ピンクと緑のザラメで出来たバラの形の綿菓子。
食べた後に撮ったらしく、若干欠けた部分が見えた。

「ジブンでつくるカンジのトコだったんだよね〜〜〜。
 『ワタアメせいぞうマシーン』みたいなのがあって、
 そこにオカネいれてさ。
 で、ナニがでてくるかとおもえば…………」

「でも、キレイでオモシロかったし、けっこうスキだったな!!
 もうないのがザンネンだな〜〜〜。
 『バラ』は『ハラ』のなかにはいっちゃったから!!」

「そのあとはコレといってナイかなぁ〜〜〜。
 わたしもイロイロといそがしいし!!
 ちょっとマエは、ひとりで『ユーレイさがし』にいってきたんだ。
 そういう『ウワサ』をきいたから、たしかめてやろうとおもって!!」

「まぁ、いってみたらタダのヒトだったんだけど。
 なんか『ショクブツ』のコトしらべてるっぽかったよ。
 『ショクブツ』っていうか『ヤソウ』っていうヤツ??」

夜中に人魂が出るっていう噂だった。
実際は、ライトの明かりだったんだけど。
それを持ってたヒトは『リカオン』っていう名前だったっけ??

「いや、『タダのヒト』じゃないか??『スタンド』もってたし!!」

106今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/10/22(火) 23:09:36
>>105

「わー、楽しみですっ。お部屋決まったら教えますね!」

どうせ住むんだもん。
色々考えるのが、フツーだ。

「それで……これですかっ。例の『バラ』」
「あ〜、ありますね、そういう機械」
「バイキングとかにもあるやつ」

「あはは、食べちゃえば全部同じですもんねえ」
「こうして画像が残ってるから、今でもわかりますけど」

お砂糖なんて、口に入れた段階でもう同じだもんね。
固いか、柔らかいかってくらいで。

「ああ、そうなんですねえ〜」

進展がないのは、予想通りかも。それより。

「というか……『ユーレイ探し』ですかっ」
「確かにありますもんね、そういううわさ。私も聞いたかも」
「正体はスタンド使い……」「多いですねえ、スタンド使い」

「でも、うわさになるってことは」
「スタンドが見えない人にも幽霊に見えたってことですよねっ?」
「そうなると〜、怖そうな感じの人だったんですか?」

107夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/10/22(火) 23:27:10
>>106

「なんか『ヒトダマ』がでるとかいうハナシでさぁ〜〜〜。
 いってみたら、なんと!!『ライト』だった!!」

ったく、ガセネタつかませやがって!!
ダレだ、テキトーなウワサながしたヤツは!!
セキニンシャでてこいよ!!

「ベツにコワソーなカンジじゃなかったな。
 ウチらとおんなじくらいのコだったし。
 カレシのシャシンとかみせてもらったっけ」

「『ユーレイ』みれなかったのはザンネンだな〜〜〜。
 まぁおわったコトきにしてもしかたないし、『ツギ』だな『ツギ』!!」

ジンセーはみじかいのだ。
あしぶみしてたら、あっというまにオバアチャンになってしまうぞ。
だから、ドンドンさきにすすんでいかねばならん。

「イズミンのほうは、さいきんほかにナンカあった??
 かわったコトとかオモシロいコトとか」

108今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/10/23(水) 00:32:06
>>107

「へ〜っ、そうだったんですねっ」
「確かに夜、草探してライトつけてたら幽霊っぽいかも」
「野草……」「生物部とかに入ってる子なのかな」
「まあいいや」

「私の方は、最近もフツーですね〜」
「特に何も……」

そう言いながら拾ったお金を見る。

「お休みも一人ぐらしの準備ばっかりですし」
「アルバイトとかも探した方がいいのかな〜、とか」
「私、バイトってしたことないんですよね」

中学生で出来るバイトって、無いし。
お手伝いって名目ならできるらしいけどね。

「ユメミンって〜、バイトとかしてる子います? 友達に」

「ユメミンはしてないですよね」「確か」

109夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/10/23(水) 00:56:14
>>108

「バイトかぁ〜〜〜」

「トモダチにはいないな、たしか。
 わたしもやってないし」

「まぁ、たまにやってるんだけど」

今のところ、『アリーナ』関係のヤツが多い。
闘技場に出たりとか、新しい競技のテストに参加したりとか、
子供の世話をしたりとか。
『アリーナ』とのコネは、面白いコトが見つかりそうなのでベンリだ。

「『イベントけい』のバイトとかどう??
 タノシソーじゃない??」

「そういうのだったら、キョーミあるな〜〜〜!!」

「それか、フリーマーケットとか!!あったらだけど!!」

バイトについて考えてる内に、ふと『あのコト』が頭に浮かんだ。
『アレ』は今までで一番ヤバい体験だった。
色んな場所に首を突っ込んできたが、
あれ以上にヤバイのはなかった。
今まで思い出さないようにしていたのは、
それを自分の中で消化するのに時間が掛かったからだ。
日常に帰ってきて、デートやら何やら楽しいコトを挟んだお陰で、
ようやく心が落ち着いてきた。

「あのさ……チョットだけいいたいコトがあるんだけど」

「きいてもらってもイイ??」

110今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/10/23(水) 02:02:39
>>109

「あ〜、『フツーじゃない』バイトですねっ」
「スタンド関係とかの」「地下闘技場でしたっけ」
「そういうのは私、出来そうにないし」

「イベント系! 楽しそうですね〜〜〜」
「イベント会社とか、バイト募集してるみたいで」
「まだちゃんとは調べてないんですけど」

「……?」

そこまで言い終えて、私は首を傾げた。
ユメミンの『こころ』は分からないけど、何かいつもと違う。
そういう気がしたんだ。だから私はうなずいた。

「いいですよ」

「ちょっとじゃなくっても」「言ってみてください」

私はユメミンにすべては話してない。
だからユメミンに全部話せって言えるわけじゃない。

けど、言いたいことがあるなら、それは聴く。友達だから、フツーだ。

111夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/10/23(水) 02:48:32
>>110

「――――ありがと」

自然と笑顔になった。
そう言ってくれるんじゃないかとは思ったけど、
もしダメって言われたらと思うと不安だったから。
そして、ぽつりぽつりと話を始める。

「チョットまえ、『ヘンなコト』があって。
 よみちをあるいてたら、いきなり『バール』でアタマなぐられて、
 ソレでしんじゃってさ」

「まぁ、ソレは『ユメ』だったんだけど」

「で、そのあとで、
 『ユメのなかでわたしをヤッたハンニン』とたたかうコトになって。
 ソイツをやっつけないと、
 『ゲンジツのジブン』もしんじゃうってハナシだったから」

「それで、たたかったんだけど、マジでヤバかった。
 『アタマいかれたヤツ』が、カンゼンに『コロスき』でかかってきてさ。
 『ドクター』の『ツメ』がふっとばされるし、
 そのツギは『ユビごと』なくなるし。
 さいごには『トラックのバクハツ』にまきこまれてイシキなくなったし」

「『しぬ』とおもった。マジで。
 イマまでそんなコトおもったコトなかったけど、ホンキでおもった。
 コワかった。『チョー』が『1000コ』つくぐらい」

「でも――――なんだかんだあったけど、かえってこれてさ。
 すっごいホッとした。『いきててよかった』ってシンケンにおもった」

そこまで言って、言葉を切る。
大体は言い終えた。
あと残ってるのはコレだけ。

「まえにイズミン、いってくれたじゃん??」

「『もしフシギのくににいったりするなら――』」

「『さいごはチャンとフツーのガワにかえってきてくださいね』って」

「こうしてイズミンとしゃべってると、
 『ホントにフツーのセカイにかえってこれたんだな』っておもえて」

「――――スゴイあんしんする」

「だから……こうウマくいえないんだけど……」

「なんていうか――――ホントにアリガトね」

      ニコッ

そう言って、もう一度笑った。
イズミンとお喋りしたり遊んだりしてると、『フツー』を満喫できる。
普段あんまり意識してない『フツーの大切さ』みたいなモノが、
分かるような気がする。
多分、それは大事なコトなんだろうと思う。
『フツーじゃないコト』の後だと、いつもよりもそう感じる。

112今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/10/23(水) 03:44:57
>>111

「………………………」

私はユメミンの話を最後まで聞いていた。
私にはユメミンの気持ちは、こころは分からない。
何もかもとんでもなくて、フツーじゃない話で。
でも『共感』っていうのを、することはできる。

「私は」

「私は、ユメミンが生きて戻ってきたのが」
「『嬉しい』です」「本当に……よかったって」

「そう思います」
「お礼なんてなくっても。友達が無事だっただけで」
「『嬉しい』ですよ」

私が知らないところで、ユメミンは死にかけてた。
私が知ってても、何か出来たかは分からない。
けど、そういうのが『スタンド使い』の『不思議の国』なんだ。

「……」

それでも。

「……」

「それでも……『不思議の国』なんですよねっ?」
「『不思議で怖い事』があって」「『フツー』で安心しても」
「きっと」「たぶん」「それでも」

「それでも不思議の国に行くのがユメミンだと思うから」

「やっぱり私は……いつでも『フツーの世界』にいる」
「それは、お礼が欲しいからとかじゃなくって」
「うまく言えないんだけど……そうするのが『友達』だと思うから」

「……だって『不思議の国のアリス』は、『フツーに帰る』までが物語ですから!」

私は『フツーであること』にせいいっぱいだ。そんな私が、友達としてできるのは、そういう事だ。

113夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/10/23(水) 18:29:42
>>112

「うん――――」

「あのときはコワイとおもったけど――
 でも、それでもやっぱり『ボウケン』したいんだよね」

「だって、わたしは『アリス』だから」

命の危険に晒されたことで、自分の気持ちを再確認できた。
もしかすると、また怖い目に遭うかもしれないと思う。
そうだとしても、この気持ちは変わらなかった。
生きてる限り、『不思議の国』を冒険したい。
それが私の『本当の気持ち』だ。

「そうだよね――――」

「『いったっきり』じゃあ『ツギのセカイ』にいけなくなっちゃうもん」

「だから、イマみたいに『フツーのセカイ』にかえってくるよ。
 こっちにだって、たのしいコトはいっぱいあるから」

「イズミンとオシャベリしたり、あそんだりしたいし」

「――――だから、ゼッタイかえってきたいな」

『不思議の国』を冒険した『アリス』は、
最後には元の世界に戻ってくる。
だから、私もそうじゃないといけない。
だって、私は『アリス』だから。

「ん〜〜〜!!なんか、しゃべったらスッキリした!!
 コイのなやみも、ソレいがいのコトも、
 トモダチにソーダンするってだいじだな!!」

「スッキリしたらハラへってきた。
 イズミン、もうすぐヨウジおわるんだっけ??
 なんかカルくたべにいかない??」

114今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/10/24(木) 01:09:27
>>113

「さすがユメミンですっ」
「私はほんとに……いつでも『フツー』ですからね!」
「ユメミンは好きなだけ『不思議』の世界に行って」

「それで、帰ってくるんです」
「それが、友達ですから」

私は……そうあるべきだと思う。
フツーじゃない『スタンド使い』になって。
それでも私は『フツー』であるべきなんだ。

「あは」

元気になったユメミンに、私は笑った。

「用事っていうか、もう少し見学しようかなって」
「思ってたんですけど〜」「別にもう切り上げてもいいかな」

「いいですねっ、どこか行きましょう」
「ユメミンおすすめのお店とかあります? この辺」
「なければ私が探しますけど」

席から立って、小銭を財布にしまい直す。
見学はいつでも来れるし、もう、必要な分はしたと思う。

115夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/10/24(木) 01:41:12
>>114

「うんうん!!
 じゃあユメミンの『データベース』にアクセスしてみるから!!」

新しい『不思議』を探すために、日々『ドクター』を使って、
色んな場所で聞き耳を立てている。
要するに、そうやって聞いた情報を思い出すというコトだ。
アレはおもすぎるし、かといってアレだとカルすぎてものたりないし……。

「ただいまケンサクチュウ…………よし!!」

「ホシミカイドーのほうに、
 あたらしく『フルーツサンドイッチ』のセンモンテンができたってハナシをきいてさぁ。
 マチをあるいてるときに、コミミにはさんだんだよね〜〜〜。
 なかなかヒョーバンいいらしいから、ソコいってみよう!!」

「なんかスゲーぶあついのもあるみたいだから、シェアしてたべない??
 たのんでみたいけど、ヒトリだとキツソーだし」

    タッ

ソファから立ち上がって、軽い足取りでドアの方に歩いていく。
イズミンが引越ししたら、その時は遊びにこよう。
ナニもっていこうかな??
きがハヤイか??
まぁ、きにすんな!!

「――――そんじゃ、いこう!!」

116今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/10/24(木) 02:49:00
>>115

「フルーツサンドイッチ! いいですね〜」

           ニコ

不思議な事だけじゃなくて、フツーのこともよく知ってる。
不思議とフツーは『表裏一体』ってやつなのかもしれない。

「飲み物も楽しみです」
「『フルーツ』に力を入れてるんだし」
「まだ寒くなりきる前に『スムージー』とか飲んどきたいな」

ユメミンの後から着いて行く。
前に進み続ける私の友達が振り返った時、そこにいたいと思った。

117斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/10/31(木) 14:34:49
男がいた
彼の周りの壁には、無数の飾りが張り付けられている。

〜♪

キラキラと輝くモール、オバケ達を象った切り絵、無数の駄菓子
傍に置かれた段ボール箱は、ハロウィン用の無数の飾りを詰め込まれ
子供のおもちゃ箱のような様相を呈している。

〜♪

彼は大量の飾りが入った段ボール箱を足元に置いて
口笛を吹きながら、飾りの一つ一つを両面テープで
白い廊下の壁をキャンパスの替わりと言うかのように張り付けていた。

118ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/11/01(金) 20:30:33
>>117

    パタタタッ

どこからか、一羽の『小鳥』が飛んできた。
『背中の羽』の一部が逆巻き、『天使の翼』を思わせる形を成している。
『頭の羽毛』も独特で、まるで『パーマ』をかけたような風貌だ。
全体的に、何となく『高級感』が感じられる。
少なくとも『普通の野鳥』には見えない。

「コンニチハ。ゲンキデスカ?ゴハンタベマシタカ?」

小鳥が喋り始めた。
これは『インコ』のようだ。
街中で覚えた言葉を口にしているのだろう。

          バサッ

「チョーウケタ」

「ハロウィンノ ヒトカト オモッテ」

「チョーウケル」

段ボールの縁に着地したインコが、中身を覗き見る。
それから、『大きく首を傾げるような動作』をした。
鳥類の目は人間と違って『側面』に備わっているため、
凝視する時は『片目』で見た方が都合が良いのだ。

119斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/11/01(金) 21:42:45
>>118

奇妙な訪問者に、陽気な口笛を止め
彼はチラと視線を向けた

「駄目だよ、それは」

軍人風に短く刈り上げた頭髪、学生服の首元には赤いスカーフが巻かれ
整った顔には微笑みを湛えている

「君の言う通りに、ハロウィーン用なんだ。」

瞳だけは笑っていないが
彼はいたって優しげに小鳥に向けて語りかける

「インコさん、体に悪いのも有るが、君は『仮装』してないだろう?」

「学生は勉学が本分だが、季節を忘れてしまうのは本末転倒
これはそう言う祭りのご褒美なんだ、この廊下じゃ、『季節感』って物がないからね」

       ニッ

「……と、解らない筈なのに言ってしまうのが、人類共通の『悪癖』なんだなぁ。」

〜♪

視線を戻し、陽気なハロウィンの口笛を吹きながら、壁にゴーストの切り絵を張り付ける
最初から彼は、『話せない』インコが何をしても、止める気は無いのだ。

120ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/11/01(金) 22:24:20
>>119

「トリフネ マーヤ ッテイイマス」

「ウラナイシ デス」

「ケンドーブニ ショゾクシテイマス」

インコは、何やら謎めいた文章を喋っている。
別々の場所で聞いた言葉を繋ぎ合わせたらしい。
『トリフネマーヤ』なる人物が、実際にどういう人間なのかは不明だが、
『占い師』や『剣道部』ではないだろう。

    ブンブンッ
           ブンブンブンッ

インコが『パンクロッカー』のように上下に激しく頭を振り始めた。
いわゆる『ヘッドバンギング』のような状態だ。
何かに興味を持っていたりすると、このような仕草を見せる事がある。
ハロウィン用の飾りに関心を抱いたのかもしれない。
実際、このハゴロモセキセイインコ――
『ブリタニカ』は、その知性を刺激されていた。

「キミ」   「ジンルイ」   「ガクセイ」

まるで会話の返事を返すかのように、少年の言葉が繰り返された。
見た目以上に賢いのかもしれない。
あるいは、ただの偶然か。

121斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/11/01(金) 22:53:34
>>120

塗装された壁に一つ、また一つと笑うカボチャやコウモリを張り付けていく
手際は稚拙だが、破れないように注意を払いながら

そんな最中にまた、インコ……『ブリタニカ』……が言葉を紡ぐ
単語を組み合わせ、まるで文章のように。


     (……?)


それは彼の視線と興味を引くには充分だった
すこし悩むそぶりを見せながら、目の前のブリタニカを見る。

 「……そうだな、僕は人類で学生の、『斑鳩 翔』」 「そういう君は『鳥類』で……」



――彼のポケットから、独りでに『スマートフォン』が、体をなぞる様に浮かび上がり
制服の左手首に止まると、ガラスの画面が独りでに点灯した。

アプリの一つを開くと、検索エンジンにインコの名前と共に
無数の画像が羅列されていく……少しして、一つの名前と画像が浮かび上がった



 「……『ハゴロモセキセイインコ』?」
 「ものまねをする個体がいて……これは、君の事だな」

一息を置いて、画面を追う
モニター越しに、色彩豊かな、ともすれば『華やかな』という表現が似合う鳥達が映る。

 「美しい羽は、品評会が各地で盛んに行われる程、人気が有る、と」
 「食べ物は種子、果実を好む、ふぅん。」

興味深いような仕草と共に、段ボールの奥に手をやり

 「昔、ペットに飼われてた大量のインコが野生化して、電線に止まっているっていうニュースがあったっけね。」

数回ほど漁ると、彼はそこから真っ赤な『林檎』を取り出した。


 「僕の『おやつ』のつもりだったんだが、半分いるかい?君。」

122ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/11/01(金) 23:35:49
>>121

目の前のインコは、スマートフォンで調べた情報と一致した。
どうやら、このインコは『それ』のようだ。
一般的に普通のセキセイインコよりも高い値を付けられている品種だ。

    ファサァッ

自らの美しさを誇るかのように、インコが羽を広げる。
ホワイト、コバルトブルー、バイオレットの三色。
背の『羽衣』は、価値が高いと言われる左右対称の形だ。

「インコ」   「カジツ」   「コノム」

         トッ トッ トッ

段ボールの縁を歩き、『ハゴロモセキセイインコ』が林檎に近付いた。
だが警戒心があるのか、いきなりがっついたりはしないようだ。
先程と同じ首を傾げる仕草で、林檎を観察している。

「ボク」   「キミ」   「ハンブン」

インコは、そのように囁いた。
先に食べてみせた方が良いかもしれない。
もしくは、食べやすいように半分に『分割』することを希望しているのか?

123斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/11/01(金) 23:50:59
>>122

 「結構賢い……と、言うより」

袖の下から折り畳みナイフを取り出して開くと
林檎に突き刺し、半分に割っていく

 「『賢すぎる』かな?」

先程までとは違う手先の器用さで、滑らかに半分に林檎を割ると
半分を段ボールの縁に、ナイフで刺して止める、きめ細やかな白い果肉の中央、芯の辺りは透き通ったように透明だ。

 「ものまねの『単語』を繋いだ『文章』で意思表示……っていうのは
 『チンパンジーが適当に叩いたタイプライターが、シェイクスピアの一節を叩きだした』くらいの物、だと思ってた」

 「それでも、こうして目の前にして、『結構ある事だ』とは、思えない」
 「……君が『特別』なのかな?」

半分になった果実を一口齧る
シャリリと良い音がした。

 「『僕』みたいに。」

笑顔を一つ、自身に向けての自嘲気味の苦笑なのか、仲間を見つけての愉快な笑みなのかは、表情からは解らない
ただ、彼は笑っている。

124ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/11/02(土) 00:12:57
>>123

斑鳩の思う通り、このインコは確かに『賢い』。
偶然会話が成立する事もあるかもしれない。
一回だけなら。
それが何度も続く事は珍しい。
あったとしても、どれ程の確率になるだろうか?

    ツンツン

林檎の断面を、嘴で軽くつつく。
安全を確かめたのか、やがて啄ばみ始めた。
その様子だけ見ると、ごく普通のインコと同じだ。

「ボク」   「カシコイ」   「キミ ミタイニ」

インコが『人語』を口ずさむ。
その発話に何か意味があるのか、それともないのか。
『真偽』の程は不明だ。
ただ、たまたま出くわした人間と鳥が同じ林檎を口にしている。
それは事実としてある。

125斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/11/02(土) 02:16:41
>>124

    シャリ

「前に、君みたいなのを見た時は、『猫』だったかな」
「喋ったりはしなかったし、性格としても、しやしないだろうが。」

肩を竦めながら、最後のひとかけらを胃袋に放り込むと
手を拭いたハンカチを懐に納めて、飾りの一つを取る

「ところで、林檎の恩を着せるようだが、君に……」

口を開きかけ、思いとどまる
暫く悩むようなそぶりを見せ、彼は苦笑する

「…………いや」


 (……人間の事情を鳥に頼むのも、酷だろうな)


「――さ、続き続き」

そうして固まった後、何事も無かったかのように振舞うと
飾りの一つを手に、立ち上がった

「どれだけ特別だろうと、僕がいなくても神様がやってくれるわけじゃあないからな。」

それだけを言って笑うと、彼は壁を飾り付ける作業に戻った。


(鳥はああ言うが、僕は、賢くはないだろうな……賢ければ、もうやめているだろうから。)

126ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/11/02(土) 19:02:16
>>125

斑鳩は思い止まった。
そもそも、このインコが『スタンド』と関係しているという保障はない。
『ロスト・アイデンティティ』に対して反応したのかどうかも不明だ。
もしかすると、単なる『賢すぎるインコ』かもしれない。
それにしたって珍しい事には変わりないだろうが。

「アリガトー」

しばらく林檎を啄ばんでいたインコが、頭を上げて『人語』を発した。
そして、品評会が開かれる程に美しいとされている羽を広げる。
小さな天使――そう呼ぶ人間も中にはいた。

「コノ デアイニ カンシャヲ」   「アナタ ニ サチガ アルコトヲ」

どこかで聞いたのであろう言葉を、インコが発話する。
斑鳩の心を察したかのような言葉選びだった。
単なる『偶然』か?
それとも『特別』なインコなのか?
真実は分からない。

               ――――バササッ

最後の言葉を告げ終わり、ハゴロモセキセイインコが飛翔した。
廊下の窓から飛び出していき、そのまま見えなくなる。
その後には、抜け落ちたらしい一枚の『羽毛』が残されていた。

127斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/11/02(土) 19:58:39
>>126

結局のところ……
あのインコが『スタンド使い』だったとして

僕の両親を助けてほしい、精神を治すスタンド使いを見つけてほしい、等と頼むのは筋が通らないのだ
だって彼女はただの鳥であって、僕達の仇である『人間』ではないのだから。

窒息するような感覚の中、微笑むままに考える
僕は両親を助けるために行動している、これが『原則』

しかし良心に従えば、それは大体の人にとっては『迷惑』なのだ
他人に心を割くならば、誰に頼む事も出来ない事だ


 (……結局、そうだと気付いてしまっては、『良心』故に、僕は誰にも頼れないのではないかな。)


――最後の飾りが段ボールから消え去ると
空になった箱を抱えて、背を向ける

 「ハッピーハロウィン」

彼が誰ともなく1人ごちると
飾り付けられた廊下を背に、口笛が遠ざかって行った

128斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/11(水) 00:36:57

 「――割れてた?何が」

スマートホンのスピーカから落ち着いた男性の声が響く中
シャワーから上がった僕は雑に頭を拭いていた。

 「『サッカーボール』?知りませんよそんなの、前の『体育倉庫の大穴』だって、多分別の……でしょうけど
 見つからないほうがいいでしょう、その後起こしてないのなら事故みたいなもんですよ。」

 「例え心の中で『人殺しをしてやろう』と考えていても、考えるだけで一生行動に移さないのなら殺人鬼とは言えないでしょ?
 それとも、藪をつついて蛇を出してみますか?僕としては好都合ですけど……。」

 「え?いや、僕は情報屋ではないのでなんとも……それは、まあ 一人なら知っていますけど、費用何処から出るんです
 先生方が納得しませんよ、ただでさえ大きい箱の中でやりくりしているんでしょうから。」


バスタオルを放る、世間の回り物は資本主義に移行する前から後まで、ほぼ何時だって金である
人が死んだ等と言う所には、大体金の匂いがコバンザメの如くついてくる

ましてやそれが、世の子供達をいい所に行かせたい親心から出た金なら、猶更扱いには慎重になるのだ
少なくとも、サッカーボールやコンクリートの壁やホタテが、タダじゃないのは確かだ。


 「はい、それと……新聞部の方なんですけど、ええ、調べている子が
 有名なので直ぐ解りました、何回か賞も取っているみたいで。」

テーブルの上に乱雑に置かれた資料を手に取る
幾つかの名前に赤線が引かれ、その傍には目撃箇所と、ふせんで関連がありそうな事態をくっつけている

……僕の名前の近くがやたらカラフルなのは無視した、見てもしょうがない。

 「え?それだけじゃない? 屋上の鍵? ……いやぁ酷い奴がいたもんだなー、捕まえて死刑にしましょう、ダビデ王の如く。」

 「お褒めに預かり光栄です、もちろん、ええ
 それじゃ、生徒会長殿。」

通話が切れる、彼の懸念はよく解る事だ
ただでさえこの学校は『多すぎる』、何か出てるんじゃないかと洗ってみたが
今のところそれらしいものは見当たらない、僕の手では届かないという所だろう。

そして、その手の届かないところで生徒に対して『何か』が有った時
下手をすれば、そこに『別の恐ろしい何か』が介入してくるのだ、たぶん。

 「んー……何処から手ェつけるかな……っていうか
 このマンモス校のクラスメイトの数から何人かリストアップして、『あなたスタンド使いですか?』って馬鹿正直に聞くの?僕が?」


 (…………)


資料を放り投げた、紙吹雪のように、或いは雪のように紙切れが飛び散る。


 「―――手が足りないよォォォォ!
 無理とは言わないけど非効率的過ぎるだろ!あの生徒会長、かんぺき僕に押し付ける気だよコレ!
 大体なんだよこの部活の総数!この辺り絶対要らないだろ!誰だこの部活許可した教師!」

 「……これじゃあそれ専用の『部活』でも作った方が手っ取り早い、絶対
 でもそれを作るために、僕以外の『スタンド使い』が必要であって。」

卵が先か、鶏が先か?
哲学的な問題である、問題は答えではなく、僕は哲学者では無いと言う事だが

無駄に飛ばした資料を一枚一枚拾い集めて、纏めてベッドの下に張り付ける
秘密のスパイごっこは何時やっても楽しい事だ。

 「…………よし」
 「今日はもう『スパイダーマン』見よう、サム・ライミ版。」

部屋着に着替えてDVDを起動する、右手にポップコーン、左手にコーラ
問題は明日の僕がきっとやってくれるでしょう、頑張れ明日の僕。


 「『暗すぎる』とか言われるけど、かと言って『アメイジング』は明るすぎるんだよなあ
 確かにスパイディ特有の戦闘中の軽口ないけどさ、元がナードだぜ? ……まあ役者の個性生かそうと思ったら、ああなるのかな。」


元々は興味が無かったが
確か……そう、森の中で『あの子』に言われて興味を持ったのだったか

『スパイディ』僕とは似ても似つかない奴だ、彼女はどうして似てると言ったのか、単に能力のせいなのか
休日夜半の学生寮で、僕はぼんやりと映画を見ながら考えていた。

129?????『????・?????』:2019/12/12(木) 01:32:52
>>128
 「…アメコミ映画ですか ちかごろ流行っていますよね」
 
物音ひとつ立てずやって来た『男』は君の放り投げたバスタオルを拾い、
抱えた洗濯籠にそれを詰め込んだ。


 「お坊ちゃま」
 「頑張り過ぎは体に毒ですよ…たまの夜更かしは良いですが」
 「せめて、お風呂上がりは温かくしてください!ここの所冷えますから!!」


そして、君がポップコーンを齧ろうとしている横で、
男は手早く書類を拾い上げ、重ねて机に置いた。

  「失礼いたしました。ごゆっくり」

畳まれた毛布を君の脇に置き、静かに『男』は離れてゆく。

130斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/13(金) 00:33:54
>>129

 「やっぱりー?乾燥して寒い季節だと風邪とか怖いものなあ」

 「でも優秀な家政婦とか、メイドがいるとつい横着しちゃって、ねー。」

     ヒュンッ 

                ガキィン!

 「……ところで、そんなに急いで戻らずに、ちょっとお話してこうぜ」

 「そこまでしてもらって、茶の一つも出さずに帰すの礼を失するってもんだしな。」

全身に鎖を巻き付けた男が、ゆっくりと体を起こし、冷ややかな目で見据える
周囲のドアや窓の金具には、液体化した金属……のような物がへばりつき
開閉は破壊せねば不可能なほどに拘束されていた。

 「誰だ、オタク」 「ノックくらいして貰わねぇと、流石に『俺』も、ちと困るんだがよ。」

131常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2019/12/13(金) 02:46:35
>>130
男は君のほうを向いた。屈強な男だった。
そしてそう!斑鳩の察した通り、こいつはメイド服に身を包んだ『メイド』であった!!

 「『常原(ツネハラ)』でございます!」
 「ここの寮、などで家政婦をいたしております」

…『学園の裏事情』に詳しい君であるから、分かる。
君は、学園と密接な関係にある『清月館』が、『メイド』を雇っているなど聞いたことがない。
『部屋がいつの間にか綺麗になってて怖い』とかの噂なら聞いたかもしれない。
『しばし学生寮に現れる女装変態不審者』の情報なら…どこだったかで、確実に耳にした気がする。

 「お茶 ……身に余るお言葉ですが、洗濯をせねばならないので」
 「俺が『家事』をしないと、お坊ちゃまお嬢様型は来週も
 『洗っていないシーツ』でお休みになる羽目になってしまいます まったくだらしない!!!」


まるで何事もないかのように、開かなくなっているはずのドアに向き直る。
『常原』の手にはいつの間にか『鋏』が握られていた。

    [ギキキ…キュィィ……]

傍らには、小柄なヌイグルミのような、『ビジョン』。

132斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/13(金) 03:30:30
>>131

「…………」

目を背ける、視線を戻す、目の前にはやっぱりメイド服がある
何故か男性がそれを着用している、屈強な男性が、女性用のメイド服を、着用している。

――問題点が多すぎる。

 「さっき俺は『誰だ』って聞いたけどアレは訂正することにしたぜ『ツネハラさん』。」

 「『何だ』あんた。」

 「あ、因みにさん付けしたけど、これは別に親しくなりたいとか、尊敬からのさん付けではなく
 二度と関わりたくねえなあって感じの敬語だからよろしくお願いします。マジで。」

清月学園にも七不思議という物は有る
ただしかの学校はマンモス校、生徒の数だけ噂があり、8だったり6だったりするが
その中でも共通しているような事はある『ムキムキメイドさん』である、これが原因か、知りとうなかった。

 「というか待て、色々待て 何処から言っていいから解らねえから深呼吸をさせてください。」

割と知りたくなかった、そして今理解したくない事態が起きている上にかのメイドはスタンド使いに見える。
何でメイドなのか、メイドは神話生物であったのか、そんな物をデリバリーした覚えはない。

 (理解が追い付かねえ……。)

空を見上げたいが目に見えるのは天上であった
知ってる天井だ、助けてベンおじさん。

133常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2019/12/13(金) 21:23:03
>>132
「何、と仰られましても」
「俺は『メイド』ですよ……!?!?」

ツネハラは質問に若干困惑している。『見ればわかるでしょ…?』みたいな顔だ。

「関わりたくないなどと!悲しいですよ俺は」
「悲しいですが、お坊ちゃまがそうお望みであるなら…我慢いたします!」
「『今まで通り』、こっそり洗濯したりこっそりお掃除するに留めますよ!俺!」

斑鳩少年はこんなものデリバリーした記憶はない。ないのだが、
口ぶりからするにメイドさんはよくお部屋にサービスに来ているみたい。よかったね。

 「深呼吸しますよ俺も!」
  「すぅ――――――――――――――――」

      [チョキ チョキ]


ツネハラの大きな胸が膨らんだ。
メイド服は、フリルとかレースが付いてる感じの、
カワイイ目の装飾がついているやつだった。
胸元に若干だが露出がある。えっちだね。

      [キリ キリ ] 

後ろの『スタンド』は、鋏でドアを布か何かのように静かに切り裂いている。

 「―――――はァあああああッッッッ!!!!!!!!!」

メイド男が息を吐く。動作は静かなくせに声がでかい。


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