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【個】『学生寮 清月館』

73黒羽 灯世『インク』:2019/10/10(木) 00:06:00
>>72

(寮の事を私に教えて『上』に立ちたかったのかしら?
 大人しそうに見えて、それなりに『野心的』なようね)

マウントを取りたがる黒羽には、三枝の気持ちがわかる。
本当にわかっているのだろうか? とにかく、そう見た。
あえて口には出さない。『煽りたい』わけではないから。

「そうね、文武両道と言って大げさではないのだわ。
 期末テストの点も、スポーツテストの点も、
 どっちも上の方だし……上に立つ者と言えるわね。
 フフッ! 記者は『上』に立っていてこそ、だもの。
 上から下は見えても、下から上は見えない物が多い。
 それに……話す側に『甘く見られない』のも重要だわ!」

「つまり大いに役に立っている。おわかりかしら?」

それは黒羽の信条でもある。
記者は、『上』にいるべき存在である。
そして、『中立的』な立場であるべきである。

「……『生徒会』?」

「あらあら、あらあら! 『生徒会』の書記!
 あなたもなかなか『低くない』立ち位置にいるようだわ!
 ねえねえ、この荷物を置いたら、少し話を聞かせてもらってもいいかしら?
 もちろんお茶とお菓子くらい出すわ! 私、お茶を淹れるの得意なの」

少女の自室は整っていた。
無駄なものがないわけでもなさそうだったが、
散らかっていたり、汚れていたりする様子はない。

そしてなるほど、本棚というものは今は存在しないし、
それを置けるだけの、十分なスペースはありそうだった。

「よいしょっ……この辺りに置きましょ。……たぶん組み立てる必要があるし、
 それはあなたが帰ってからするのだわ。ゆっくり下ろして。手を離す時はいっしょよ」


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