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エレン「この長い髪を切る頃には」2

1進撃の名無し:2014/07/25(金) 18:53:56 ID:Yeod/N2g0
*続編です。ミカサ「この長い髪を切る頃には」→エレン「この長い髪を切る頃には」の続き。もう1回エレン視点で書いていきます。

*現パロです。現在、エレンの髪がちょっとずつのびています。(ミカサよりちょい長め。小さいしっぽ有り)

*舞台は日本ですがキャラの名前は基本、カタカナのまま進めます。漢字の時もあるけど、細かいことは気にしない。

*実在の人物とかは名前やグループ名等をもじっています。時事ネタも有り。懐かしいネタもちらほら。

*原作のキャラ設定は結構、崩壊。パラレル物苦手な方はご注意。

*原作のキャラ性格も結構、崩壊。原作と比べて「誰だてめえ」と思った方はそっと閉じ推奨。

*レスに対するお返事レスは返せない事が多いかも。体力温存の為。無視している訳じゃないんで、OK?

*感想は毎回有難い。でも自分の妄想話を書くのはNG。読んでいる人が混乱するから。本編と混ぜるな危険。

*雑談は雑談スレでお願いします。雑談嫌いな読者の方もいらっしゃるからね。

*現在、ジャン→ミカサ、ジャン(?)→サシャ、オルオ→ペトラ→リヴァイ←ニファ リヴァイ→ハンジ←モブリット ライナー→クリスタ←アルミン←アニ(?)←ベルトルト イアンリコあたりもちらほら。というか、そのつもりで書いています。

*安価時以外のアイデア・オリジナルの設定等の提案は禁止させて頂きます。(エレン「この長い髪を切る頃には」の時にトラブルが発生した為です)

*その代わり、安価出した時は出来る限り(多少無茶振りでも)採用する方針でやっていますので、宜しくお願いします。

*モブキャラも多数出演。オリキャラ苦手な方もご注意。キャラ濃い目。

*そんな訳で、現在設定しているオリキャラをざっとご紹介。


マーガレット(2年生♀)→大道具リーダー。漫画描ける。腐ってる女子。皆のお姉さん的ポジ。

スカーレット(2年生♀)→大道具。立体造形専門。ロボットもいける。たまに腹黒。

ガーネット(2年生♀)→大道具兼衣装。コスプレ好き。ちょっと大人しめのオタク。

アーロン(2年生♂)→役者。元野球部。高校から演劇始める。

エーレン(2年生♂)→役者。元サッカー部。高校から演劇を始める。

カジカジ(1年生♂)→役者。外見はエレンに似ています。明るい男子。愛称は「カジ」。

キーヤン(1年生♂)→役者。ジャンよりイケメン。歌上手い。

マリーナ(1年生♀)→役者。少年の声が出せる。ナレーションうまい。ほんわか系女子。


*原作のモブの名前が判明すれば……途中加入もあるかもです。

*外伝のキュクロとシャルルも出ています。二人は野球部投手とマネージャー。

*先生方の年齢設定が原作より(恐らく)若干高め設定になっています。

*リヴァイ先生(38歳)というおっさん設定に耐えられない方は御免なさい。

*加えてリヴァイ先生の潔癖症が病気レベル扱い(笑)になっているので、御免なさい。

*リヴァイ先生の性癖(?)も大分、斜めってる設定になっています。ご了承下さい。

*エルヴィン先生(43歳)も相当なオタク設定になっています。リヴァイより更に斜め方向に変態です。本当に御免なさい。

*ハンジ先生(36歳)が昔は美人だったよ設定です。ややモテキャラですが、リヴァイに比べれば蟻の触覚程度です。

*リヴァイ先生がモテ過ぎ設定です。気持ち悪いくらいモテキャラです。愛され過ぎて御免なさい。



*ラスト100レスは完成する迄、レス自重お願いします。レス足りないと書き手としてプレッシャー過ぎる。

*そんな訳で、現パロ(エレン視点編)を始めます。OK?

58進撃の名無し:2014/07/28(月) 13:54:43 ID:Oz2Etvso0
斎藤(ジャン)『あ、あんたは留置所行きだからな。一緒に来て貰うぞ』

三村(ミカサ)『拙者も調査に協力するでござる』

斎藤(ジャン)『はあ? 第一容疑者が何言ってやがる! あとついでにその刀、没収!』

三村(ミカサ)『(ひょい)この事件、何かきな臭いでござるよ。斎藤殿一人では荷が重いかもしれないでござる』

斎藤(ジャン)『そ、そうかもしれないが、だからってあんたに手伝って貰う訳にはいかねえよ。あんた、ただの流浪人だろうが! ここは警察の領分なんだから、勝手に協力するんじゃない!』

三村(ミカサ)『……拙者の事が嫌いなのでござるか? (ウルウル)』

斎藤(ジャン)『うぐ?! (赤面)』

くそ! このミカサの色仕掛け、マジぱねえ。

これ、落ちねえ奴いねえだろ。ジャンの赤面がガチだ。

斎藤(ジャン)『そ、そういう訳じゃねえけど……つか、あんた男のくせに妙に色気があるな。男色なのか?』

三村(ミカサ)『さあ? どうでござろうな? さて、調査を進めるでござるよ。まずはその『仕置き人』とやらに会う方法を考えるでござる』

斎藤(ジャン)『話を逸らしやがって……』

三村(ミカサ)『ん? (小首を傾げる)』

斎藤(ジャン)『だああもう! 分かったよ! 今回だけだからな! 協力させるのは! このことは内密にしろよ?!』

三村(ミカサ)『かたじけないでござる』

斎藤(ジャン)『仕置き人の存在の裏を取ってくる。本当にそいつが存在するなら、恐らく闇の接触手段がある筈だ。囮捜査が必要になるだろうが……』

三村(ミカサ)『ではその囮役を拙者が請け負うでござるよ』

斎藤(ジャン)『はあ?! あんた馬鹿か?! それって自分の命を仕置き人に狙わせるって事だぞ?!』

三村(ミカサ)『構わんでござるよ。手がかりが掴めない以上、やってみるしかないでござる』

斎藤(ジャン)『な、なんでそこまで協力的なんだよ。何か理由があるのか?』

三村(ミカサ)『んー』

と、息をついて、複雑そうな顔になり、

三村(ミカサ)『やっと新しい明治の世になったというのに、自由に恋愛も出来ないのかと思うと、腸が煮えくり返るでござるよ』

斎藤(ジャン)『いや、あんた自身が恋愛が出来ないならともかく、他人の恋愛だろ? 何でそこまで感情移入するんだよ』

三村(ミカサ)『まあ、そこはほら、性格の違いって奴でござるよ。とにかく、拙者が囮を引き受ける故、準備が整ったら知らせて欲しいでござる。その間、拙者は独自に調査を進める故』

斎藤(ジャン)『はあ………っておいコラ! どさくさに紛れて逃げるんじゃねええ!!!』

と、叫びながら斎藤(ジャン)が三村(ミカサ)を追いかけるが既に遅しだった。

59進撃の名無し:2014/07/28(月) 14:42:48 ID:Oz2Etvso0


そんな訳で数日後。茶屋で合流した三村は斎藤と打ち合わせをする。

ちなみに茶屋の給仕役(ウエイトレス)でオレがまた女装する事になった。

2人にお茶を出すだけの簡単な仕事だけどな。

斎藤(ジャン)『裏は取れたよ。仕置き人の名前は「神谷赤司(かみやあかし)」という名前らしい。小柄で痩せた男らしいが、一応、これがその似顔絵になる』

三村(ミカサ)『ふむ。随分と目つきの悪い男でござるな』

斎藤(ジャン)『証言を合わせて作った似顔絵だからな。多少大げさには描いている。実際見て描いた顔じゃねえから、似てねえかもしれねえが』

三村(ミカサ)『いや、十分でござるよ。では今夜、早速決行するでござる』

斎藤(ジャン)『………本当にいいんだな? 命の保証は出来ねえぞ?』

三村(ミカサ)『やけに心配してくれるでござるな。拙者に気がある?』

斎藤(ジャン)『んなわけねえだろおおおお!? 誤解を招くような事を言うんじゃねえよ!!! オレはそっちの趣味はねえから!!!』

三村(ミカサ)『ははっ……なら良いでござる。拙者も安心して囮捜査が出来る』

斎藤(ジャン)『あーもう、しらねえからな。どうなっても……あ』

三村(ミカサ)『ん?』

斎藤(ジャン)『そういえばずっと「あんた」とか「お前」とか呼んでいたが、名前を聞いてなかったな。名前、教えてくれないか』

三村(ミカサ)『名乗るほどの者ではないと前にも言ったと思うでござるが』

斎藤(ジャン)『いや、囮捜査をやってくれる人間の名前すら知らないってダメだろ。教えてくれ』

三村(ミカサ)『………三村万心』

斎藤(ジャン)『分かった。三村だな。三村、今夜作戦を決行するから、準備を整えておいてくれ』

三村(ミカサ)『了解したでござる』

斎藤(ジャン)『じゃあ、また後でな。あ、ここの茶代はオレが払っておくから』

三村(ミカサ)『ありがたいでござる』

という訳で、2人が別れると………

三村(ミカサ)『斎藤殿に拙者の名前を知られていなくて良かったでござる』

と呟く三村であった。

60進撃の名無し:2014/07/28(月) 14:56:23 ID:Oz2Etvso0





月夜。月の明るいその夜にその作戦は行われた。

夜の人気のない道を一人歩く三村。その背後から、例の気配を感じた。

釣りにかかった魚がやってきた。後は釣り上げるだけ。

三村(ミカサ)『何か用でござるか?』

惚けた声で話しかけると、男は月を背景にして答えた。

神谷(リヴァイ)『あんたに恨みはないが、命を頂きに来た。三村万心で間違いないな?』

三村(ミカサ)『確かに拙者が三村でござるが………そちらも神谷殿で間違いないか?』

神谷(リヴァイ)『(ぴくっ)何故、俺の名を知っている?』

三村(ミカサ)『拙者は神谷殿と少し話がしたいでござる。時間を頂けないだろうか』

神谷(リヴァイ)『断る。俺は頼まれた仕事をこなすだけの仕事人。仕置きをする人間だ。余計な事は話したくない』

三村(ミカサ)『頑固で融通のきかない人でござるな。では、力づくで問わせて貰うしかないでござるな』

じりじり………じりじり………

直後、2人の神がかった殺陣の応酬が始まった……!!!


おおおおおおおお………


観客が見入っている。神谷(リヴァイ)と三村(ミカサ)の剣戟の凄まじさに度胆を抜かれているようだ。

すっげええ! 本番が一番、動きにキレがある。さすがだ!!

皆、裏方も一緒に殺陣に見入っていると、三村(ミカサ)が徐々に劣勢になってきた。

三村(ミカサ)『くっ……!』

神谷(リヴァイ)『なかなかやるな……(ニヤリ)』

だんだん動きが速くなっていく。一騎打ちだ。劣勢の中、それでもアクロバティックな動きを混ぜながら避けて、遂に来た!!!

ミカサの壁伝いだ! 体育館の舞台の壁を伝いながら、横移動をするという大アクションだ!

神谷(リヴァイ)『何?!』

三村(ミカサ)『うおおおおおおおおおお!!!!』


ガッキィィイイイイイイイ!


SEが、轟いた。直後、飛びのいて、神谷(リヴァイ)が汗を浮かべて距離を取る。

お互いに息を荒げて、そして三村(ミカサ)の方から口を開いた。

61進撃の名無し:2014/07/28(月) 15:15:29 ID:Oz2Etvso0
三村(ミカサ)『神谷殿……最近起きた、若い男女が川辺で死体で発見された事件をご存じではないか?』

神谷(リヴァイ)『ああ。その事件なら知っているが……』

三村(ミカサ)『噂では、神谷殿がやったのではないか、という情報を聞いた。何か知っている事はないでござるか?』

神谷(リヴァイ)『何? 俺はその事件については関与していないぞ』

三村(ミカサ)『やはりそうでござったか……(刀を下す)』

息を整えて三村(ミカサ)は言った。

三村(ミカサ)『剣を交えて分かった。神谷殿はあのような卑怯なやり口はしない方でござる』

神谷(リヴァイ)『何故そう言い切る』

三村(ミカサ)『そもそも、こんなに明るい月夜に暗殺を請け負う方がおかしいでござる。闇討ちをするのであれば、新月を狙う。闇の中の方が、仕事をしやすいでござろう?』

神谷(リヴァイ)『ふん……俺は金さえ貰えればいつでも仕事を請け負うだけだが』

三村(ミカサ)『それでも、自分の有利になるように事を運ぶのが普通でござる。神谷殿は犯人ではござらんな』

神谷(リヴァイ)『……………あの事件について追っているのか?』

三村(ミカサ)『(こくり)何か知っている事があれば教えて貰えないでござろうか』

神谷(リヴァイ)『ふん……』

刀を収めて神谷(リヴァイ)が答える。

神谷(リヴァイ)『俺が何故そんな余計な事を話さないといけない。情報を売ると思っているのか?』

三村(ミカサ)『そこを何とかお願いするでござるよ』

神谷(リヴァイ)『無駄だ。俺は仕事をこなすだけだ。貴様の命を取るまでは、この剣を振るうのみ!』

三村(ミカサ)『!』

再び剣戟が起きる。再び凄まじい殺陣が起きるが、そこに斎藤率いる警察官が突入した。

神谷(リヴァイ)『ちっ…!』

慌てて逃げる神谷(リヴァイ)。それを追いかける警官隊。

斎藤が三村に駆け寄って、

斎藤(ジャン)『大丈夫か?』

三村(ミカサ)『大丈夫でござる。しかし困ったでござるな。手がかりが何も掴めなかった』

斎藤(ジャン)『まあ、捜査なんてそんなもんだよ。気落とすな。また別の線から捜査を進めてみようぜ』

三村(ミカサ)『かたじけないでござる(しょんぼり)』

という訳で、その日の囮捜査は結局は失敗に終わってしまったのだった。

62進撃の名無し:2014/07/28(月) 15:49:18 ID:Oz2Etvso0



捜査が振り出しに戻って悩む三村と斎藤。

今度は惨殺された男女の実家である、名家を両方、再び訪ねてみる事にした。

一応、斎藤が来る前に他の捜査官もその家に足を運んで調査をしていたが、斎藤と三村も調査書以上の情報は得られなかった。

その両家はお互いの家をけなし合い、不仲で有名な名家だった。

お互いはお互いに2人の事件を忘れたがっていたが、一人だけ、2人の死を悼んでいる者が居た。

ジュリエット側の家に使えていた若い使用人の女だ。

使用人の女(アニ)『そうですか。まだ犯人は見つからないのですか……』

斎藤(ジャン)『すみません。こちらも調査を進めているんですが、なにぶん、手がかりが少なくて……何か気が付いたことはありませんか? どんな些細な事でもいいんですが』

使用人の女(アニ)『そうですね。お2人は小さい頃から仲が良く、お似合いの御2人でしたが、お互いの家長同士が仲が悪くて……人目を忍んでお会いされていました。いつか2人でこの家を出よう。そう決意されて、その「いつか」がおよそ1か月前でした。私もその手助けをしてあげたのですが、何分、ここの使用人なので、脱出の手引き以外の事は何も出来ず……』

斎藤(ジャン)『そうですか……』

使用人の女(アニ)『どうかせめて犯人を見つけてさしあげて下さい。どんなに時間がかかってもいいですので。でないと、あの2人が無念が浮かばれませんわ』

斎藤(ジャン)『分かっています。ご協力ありがとうございました』

そして、2人は屋敷を出ると、

斎藤(ジャン)『………三村?』

三村(ミカサ)『妙ではござらんか?』

斎藤(ジャン)『何が?』

三村(ミカサ)『いや、両家の家長同士が仲が悪いと言っておったでござろう?』

斎藤(ジャン)『ああ、そうだったけど、それが何か?』

三村(ミカサ)『であるならば、何故その屋敷同士がこんなに近くに……ほぼ隣同士に建てられているのか。おかしいとは思わぬか?』

斎藤(ジャン)『ん〜前の代の時は仲が悪くなかったとかじゃねえの? 今の代になってから悪くなってきたとか』

三村(ミカサ)『いや、それはないでござる。拙者自身も足で情報を稼いできた故、この両家は代々、少なくとも2代前くらいから仲が悪かったそうだ』

斎藤(ジャン)『ん〜? 祖父の時代から仲が悪いのにって事か。確かにそれは変な話だな。普通、どっちかが引っ越すなり、離れてもおかしくねえよな』

三村(ミカサ)『それに、亡くなった若い男女……跡取り同士が「小さい頃」に会っているのも妙でござる。本当に仲が悪ければ、そんな幼少期から会えるものでござろうか?』

斎藤(ジャン)『あー……』

と、妙に納得する斎藤(ジャン)だった。

斎藤(ジャン)『確かに、ちょっと妙ではあるな。ただまあ、それがなんだって言われれば、俺にも良く分からねえが』

三村(ミカサ)『拙者、もう暫くこの両家の周りを調査してみるでござるよ』

斎藤(ジャン『ああ。確かにその必要はあるかもしれないな。やってみよう』

という訳でとりあえず、両家を離れる2人だった。

63進撃の名無し:2014/07/28(月) 16:02:38 ID:Oz2Etvso0





斎藤(ジャン)と三村(ミカサ)が独自にそれぞれの足で情報を集めていたその時、再びあの男が現れた。

背後から奇襲をかけて三村の命を狙いに来た、神谷であった。

不意打ちを避けられて、神谷は舌打ちする。

三村(ミカサ)『ひ、昼の最中から暗殺とは、仕事熱心にも程があるでござろう!』

神谷(リヴァイ)『俺は契約期間内にきっちり殺らないと気が済まない性質なんだよ……次は殺す』

三村(ミカサ)『ま、待て! 神谷殿! その暗殺の依頼の件でござるが……』

神谷(リヴァイ)『ああ? (機嫌悪い)』

三村(ミカサ)『その、神谷殿と接触をはかるための囮捜査だった故、本当の暗殺依頼ではござらぬ。騙して悪かったとは思うが、契約を破棄して貰えぬだろうか?』

神谷(リヴァイ)『ちっ………何かおかしいと思ったが。やはりそうだったのか。ほらよ。前金はお前に返していいんだな?』

と、律儀に金を返す神谷であった。帰ろうとする神谷を三村は捕まえて、

三村(ミカサ)『神谷殿! この間の問いにもう一度、答えて下さらぬか?』

神谷(リヴァイ)『あんたもしつこい男だな。同業者かもしれない事件の情報を俺が売ると思うのか?』

と、逃げようとする神谷だが、

神谷(リヴァイ)『ただ、まあ、俺もひとつ気になっている事はある』

三村(ミカサ)『なんでござる?』

神谷(リヴァイ)『俺もその男女の死体をチラリと盗み見したが……普通の殺し方ではないのは確かだな』

三村(ミカサ)『それは拙者も思ったでござる。妙な殺し方でござった』

神谷(リヴァイ)『少なくとも俺達仕置き人は『殺す事』を目的として殺す。しかしあの男女の殺され方は……まるで人をおもちゃにして遊んだような殺し方だったな。嬲り殺しだったのかもしれん』

三村(ミカサ)『つまり怨恨の線でござろうか』

神谷(リヴァイ)『どうだろうな? そこまでは俺も分からんが、ただの殺人ではないような気もする。それ以上の事は分からん。後は自分でどうにかしろ』

と言って、三村のもとを離れる神谷であった。

64進撃の名無し:2014/07/28(月) 16:27:30 ID:Oz2Etvso0





家長1(アーロン)『目障りなハエが2匹いるようですね』

家長2(エーレン)『ええ。困りましたね。我々の家の事をまだ捜査している捜査官がいるようです』

家長1(アーロン)『感づかれる前に処分した方がいいかも知れませんね。あの例の男に依頼しましょうか』

家長2(エーレン)『それがいいかもしれませんね。仕置き人の彼に依頼しましょうか』

家長1(アーロン)『まだこの研究は世に出す訳にはいかんからな。しかしうちの馬鹿息子が、知らぬ間に薬の一部を持って出ていたとは……服毒自殺でもするつもりだったんだろうか』

家長2(エーレン)『うちの娘の方も、似たような事をしていましたよ。薬の一部を持ち出して駆け落ちするとは……やれやれです。おかげで2人を処分するのに大変な手間がかかってしまった』

家長1(アーロン)『まあいい。跡取りはまた子供を産んでもらえば代用は出来る。若い娘を見繕って……』


カラン………


その会話を盗み聞きしてしまった使用人の女(アニ)だった。

お盆を落としてしまって、へたり込んでしまう。

使用人の女(アニ)『あっ……』

家長2(エーレン)『………聞いていたのかね』

使用人の女(アニ)『も、申し訳ありません!! あの、その………』

家長2(エーレン)『聞かれたからには、ここから出す訳にはいかないな』

家長1(アーロン)『私の姿を見られたのもまずいな。ここにいる事はバレてはいけない』

家長2(エーレン)『何……この娘にも実験に参加させればいいのですよ』

家長1(アーロン)『いいのか? 使っても』

家長2(エーレン)『どうぞお好きに。うちの家の者ですから』

家長1(アーロン)『分かった。では、この薬を飲ませてやろう(牛乳用意)』

きた。お色気シーンその2だ!!!

メイドの恰好の使用人の女(アニ)が羽交い絞めされて、牛乳を飲まされるだけなんだが、これがもう、なんていうか、いろんな意味で酷い。

このシーンだけはアニじゃないと色気でないからってエルヴィン先生が説き伏せたんだよな。

これがなければ、オレが使用人の女の役をやっていたと思うんだけど。

オレが牛乳飲まされても、なあ? 色気足りねえだろ?

使用人の女(アニ)『ん……あっ……(ごっくん)』

音がエロ過ぎる!! ありがとうございます!!!

65進撃の名無し:2014/07/28(月) 16:37:41 ID:Oz2Etvso0
牛乳飲まされて、口の端から白い液体が零れて、力なく倒れそうになる。

もうこのシーン考えたの誰なんだよ。天才過ぎる。

その後、使用人の女(アニ)のアニは地下へ連れて行かれる。

そして暗転。地下には、薬を飲まされて身体を無理やり強化された「超人」達がトレーニングを積んでいた。

所謂殺戮マシーンだ。ただ命令をこなすだけの、人間兵器。

ちなみにその背景の殺戮マシーン役でオレも出ている。顔にマスクしているけど。

裏方の人間がここでも勢ぞろいだ。アニもここで洗脳される設定なんだ。

洗脳処置を施された使用人の女(アニ)は、今度は女忍者のような格好になる。

目の色が違う感じだ。いつも唸っている野生の獣のような状態だ。

家長2(エーレン)『例の仕置き人を使わなくとも、この娘を使って殺させても良いかもしれないですね』

家長1(アーロン)『ああ、そうだな。試しにやらせてみるか』

家長2(エーレン)『よし。では早速、実験をさせてみよう。奴らを殺して貰えるね?』

使用人の女(アニ)『……(こくり)』






新月の夜。その殺意の気配は突然、三村と斎藤の背後から襲い掛かった。

三村(ミカサ)『また神谷殿でござるか?! いい加減、しつこいで……』

斎藤(ジャン)『ん? 誰だ? あの娘は』

闇の中に浮かび上がる殺戮マシーン。彼女は容赦ない体術を繰り出して三村を襲う!!

66進撃の名無し:2014/07/28(月) 16:56:28 ID:Oz2Etvso0
三村(ミカサ)『?! この娘は………?!』

あの時の優しい使用人の女だと気づいた三村はすぐさま体勢を整えて逃げ出す。

斎藤(ジャン)『思い出した! 女の方の使用人の娘だな?! なんか様子がおかしいぞ?!』

三村(ミカサ)『で、ござるな……! 目を覚ますでござるよ!』


キンキンキン!!!


短刀で接近戦で食らいつくアニと防戦一方のミカサの対決だ。

ここもすげえ殺陣のシーンなんだよな。観客が「おおお」と食い入るように見ている。

使用人の女(アニ)『殺す……殺す……殺す……殺す!!!!』

完全にバーサーカー状態の彼女に三村は苦戦を強いられる。

刀がはじけ飛んで、今度は体術対体術の戦いになってしまった。

三村(ミカサ)『やむおえん!!! (バッ)』

剣を捨てて拳で対応する。おおおお。剣術だけじゃねえぜ! さすがだ!!

ミカサはアニの攻撃を見事に防いで流して攻撃を食らわない様に逃げる。

そして相手の体力を削って、一発、腹に入れて気絶させる作戦だ。

腹に一発入って、気絶させた。そのアニを体に抱き留めて……

三村(ミカサ)『一体何が起きているでござるか……?』

と困惑する三村。しかしその時、

使用人の女(アニ)『殺す! (開眼)』

三村(ミカサ)『?!』

三村が腹を抑えられて苦しみ始めた。強烈過ぎるハグの攻撃だ!

三村(ミカサ)『うが……うぐっ……あああ!?』

その瞬間、自分の剣を抜いて背後から斎藤がアニを背中から切った。

上から下へ。鮮血のSEが入る。

そしてようやく我に返った使用人の女は、

使用人の女(アニ)『た、助けて……』

三村(ミカサ)『しゃべってはならぬ! すぐに手当てを……』

使用人の女(アニ)『薬を、飲まされて、体が、自由に、出来ずに……ご主人様達が…犯人だ……』

断片的にでも言葉を残そうとして、そして途中で命が果てる使用人の女だった。

躯を胸に抱きながら、三村(ミカサ)の瞳に怒りの炎が宿る。

三村(ミカサ)『断片的にしか分からなかったが、これはあの両家の家長が怪しいと見て良いのでござろうか』

斎藤(ジャン)『薬がどうとか言っていたな。まさか、この娘もそのせいで………』

三村(ミカサ)『…………許さぬ』

そして三村はそう言い捨てて使用人の女を斎藤に預けて、単身、屋敷に乗り込もうとする。

斎藤(ジャン)『おい、ちょっと待て。証拠もないのに乗り込むな! 裏付け捜査をしてからじゃねえと突入は……』

三村(ミカサ)『そんな悠長な事を言っていたら、またこの娘のような被害者が出るかもしれぬ!!』

斎藤(ジャン)『いや、まあそうだけど……』

三村(ミカサ)『拙者一人で行ってくる。斎藤殿は、この娘を弔ってやってくれ』

斎藤(ジャン)『え……あ、ちょっと待て三村ああああ?!』

そして三村は、闇の世界に一人で駆け出した。

67進撃の名無し:2014/07/28(月) 17:13:38 ID:Oz2Etvso0






そして再び屋敷のシーン。ソファのある一室だった。

契約を交わしているのは神谷本人だった。

神谷(リヴァイ)『今度こそ、本物の暗殺依頼だろうな?』

家長1(アーロン)『え? 本物?』

神谷(リヴァイ)『いや、以前、偽の暗殺依頼が舞い込んできたからな。こちらも信用問題がある。契約はきっちりして貰いたい』

家長1(アーロン)『そうですか。それは気の毒でしたね。ええ、今回は間違いない依頼ですよ。この小蠅のような男を始末して頂きたい』

神谷(リヴァイ)『ならいいが……』

家長2(エーレン)『紅茶のおかわりはいかがですか?』

神谷(リヴァイ)『ああ、頂こう』

神谷(リヴァイ)(ごくり)

家長2(エーレン)『………………』

神谷(リヴァイ)『なんだ? さっきから人の顔をジロジロと』

家長2(エーレン)『いえ、暗殺家業を行う方が、まさかこんなにあっさりとした罠に引っかかるとは思わなくて呆れていただけです』

神谷(リヴァイ)『何……? (グラッ)』

家長2(エーレン)『あの娘が失敗したという報告が来ましたからね。早めに次の矢を投入しないといけないと思いまして』

神谷(リヴァイ)『次の矢……だと? (フラフラ)』

家長2(エーレン)『ええ。あといい実験材料にもなりますし。一石二鳥ですよ』

神谷(リヴァイ)『くっ……貴様ら、まさか……!』

バタン……力なく崩れた神谷(リヴァイ)を再び地下へ運び込む。

68進撃の名無し:2014/07/28(月) 17:42:28 ID:Oz2Etvso0




暗転。三村が単身乗り込もうとするのを必死に止める斎藤の姿。

斎藤(ジャン)『頼むから突入はまだ待ってくれ! あんた一人で突っ込んでもどうしようもねえんだよ!! あの娘の命を無駄にする気か?!』

三村(ミカサ)『うっ……では一体どうすれば……』

斎藤(ジャン)『強引な手段だが、別の容疑で家宅捜査をかける。何でもいい! 無理難題ふっかけて、警官隊を突入させる! やるとすれば、その方法しかねえ!』

三村(ミカサ)『ではその別の容疑とやらを早くでっちあげるでござるよ!!』

斎藤(ジャン)『無茶言うな!! 今すぐには無理だ!! 他の警官たちに連絡するのにも時間がかかる。とにかく今、お前を一人でいかせられるか!!』

三村(ミカサ)『…………(目が据わっている)』

斎藤(ジャン)『分かってくれたか? じゃあここで大人しく待って……』

三村(ミカサ)『ああ。分かった。斎藤殿を信じるでござるよ……』

斎藤(ジャン)『良かった。じゃあオレは仲間を呼んでくるから、あんたはここで待っていてくれよ』

と、約束を交わして斎藤は闇夜を駆けだした。

残された三村は躯を抱えて、茂みの中に一度隠してしまう。

三村(ミカサ)『………すまなかったでござる』

と彼女に対して呟いて、三村は斎藤とは別方向に1人で駆け出したのだった。





数分後、仲間を連れて斎藤がすぐ戻ってきた。しかしそこには三村がいない。

斎藤(ジャン)『あの嘘つき野郎がああああああ!?』

と、頭抱えてそのまま直進して駆け出すのだった。

69進撃の名無し:2014/07/28(月) 18:19:47 ID:Oz2Etvso0





屋敷の中に単身突入して、使用人の一人を脅して屋敷の奥へ進んだ三村。

そこには家長1(アーロン)が一人、待ち構えていた。

家長1(アーロン)『ああ、この間の方ですか。またお会いしましたね。何か用でございますか?』

三村(ミカサ)『……………屋敷の中をもう1度、見せて貰いたい』

家長1(アーロン)『ん? 前に警察の方が来られた時に全てお見せしましたが?』

三村(ミカサ)『いや、まだ見せて貰っていない場所がある筈でござる。例えば、地下とか』

家長1(アーロン)『………貴方、見たところただの流浪人ですよね? 今日は警察の方とご一緒ではないんですか? でしたら貴方にはそれを見る権利はないと思いますが』

三村(ミカサ)『やましい物を隠しておるのだろう? 例えば、人の力を限界まで無理やり引っ張り上げる薬とか』

家長1(アーロン)『あなたは本当にうるさい小蠅ですね』

と、困ったように対応する家長だった。

家長1(アーロン)『言いがかりにも程がありますよ。何の証拠があって言っているのか分かりませんが、これ以上ここに居座る気ならば、私にも考えがあります』

と言って家長は合図を鳴らした。

そして雑魚キャラ用心棒の登場だ。裏方が一斉にマスクマンの状態で出てくる。

ユニフォームが筋肉マンのノリに近いけど。さっき地下でトレーニングしていた奴らがここで出てきた事にしているんだ。

家長1(アーロン)『我が家の用心棒です。彼らにあなたを始末して貰いますよ。やってしまい!!!』

という訳で、1対多数の殺陣が始まった!

ここはすぐにやられるんじゃなくて、ある程度三村に攻撃しないといけない。

その上で徐々にやられていく。そんな感じの演出になっている。

用心棒だけで倒せると思っていた家長は次第に焦り出す。

やられたオレ達は邪魔にならない位置で屍役だ。

家長1(アーロン)『ぬう……なんていう事だ。これだけの数をあっさり倒すとは。仕方がない。まだアレは完成はしていないが……彼を呼ぶしかない』

合図と共に、隣の部屋から、神谷が現れた。目の据わった神谷だ。

家長1(アーロン)『用心棒代わりに雇いました。彼にあなたを始末して貰いますよ。神谷さん、客人を殺していいです。これは正当防衛ですから許されます』

神谷(リヴァイ)『…………了解した』

そして神谷はゆっくりと、刀を抜いたのだった。

音楽が変わる。これは「アカイ」とかいう麻雀アニメの「神技」とかいうBGMらしい。

エルヴィン先生がそのアニメが好きらしくて、どうしてもここで使いたいと言ってきたんだ。

静かで優雅な殺陣が始まった。三村はそれを受けながらも嵐の前の静けさのように感じる。

そして殺陣が進むうちに、だんだん表情が崩れていく神谷。

三村(ミカサ)『神谷殿……?』

ミカサもだんだん、その寒気を感じて、遂に……

神谷(リヴァイ)『うっ……!』

また音楽が変わった。ここから急展開になる!

DS版のSAGA3のラスボス「神戦」の音楽を使用させてもらった。

この曲のイントロ大好きなんだよオレ。途中に流れる雄大なメロディも大好きだ!

三村(ミカサ)『神谷殿!?』

急激に強くなる。神谷もバーサーカー状態に突入だ。

70進撃の名無し:2014/07/28(月) 18:39:32 ID:Oz2Etvso0
苦しみながら剣を落としてしまって、頭を抱えて、素手での戦いに突入だ!

神谷(リヴァイ)『うおおおおおおおおおお?!』

絶叫。そして突撃。突然の変わりように三村も困惑する。

剣で応戦するものの、避けきれず、捕まる。

剣をお互いに落とした上での、肉弾戦に入った。

途中で神谷(リヴァイ)のタワーブリッジが入った。それを体を捻ってミカサが脱出した時、観客から「うあああ?!」と悲鳴のような動揺が広がった。

ここからはガチで凄い。剣での殺陣とはまた違ったアクション要素満載で、目が離せない。

三村(ミカサ)『なんて、強さだ……!』

防戦一方になる間、ミカサは刀を拾いなおして再び自分の間合いを取ろうとするが……

神谷(リヴァイ)の攻撃が勢い余って本当に刀に当たってしまい、刃が折れた。

三村(ミカサ)『えっ………』

三村(ミカサ)が顔面蒼白になった。まずい! これは打ち合わせにはない!

本当ならここから、剣を拾いなおした三村(ミカサ)側が覚醒する予定なのに。

剣がない状態では、覚醒のしょうがない。

呆然とするミカサ。アドリブで乗り切らないといけないけど、頭の中が真っ白になっているようだ。

神谷(リヴァイ)も青ざめている。散々寸止めの練習をしたのに、本番でやらかしてしまった顔だ。

だからオレは観客に聞こえない声で言った。

雑魚(エレン)『戦え……まだ、勝機はある……(小声)』

三村(ミカサ)『!』

雑魚(エレン)『ここに、ある!』

幸い、オレの傍に神谷側の刀が落ちていた。

三村(ミカサ)『で、でも……それだとラストの剣戟が無くなる…(小声)』

雑魚(エレン)『大丈夫だ! 先生を信じろ……いや、オレを信じろ! (小声)』

ミカサは迷っていたようだけど、剣を再び拾いなおした。

本当はラストでまた刀と刀の殺陣に入る予定だったんだけど。

もう仕方がねえ。素手と刀でやりあうしかねえ!

71進撃の名無し:2014/07/28(月) 23:08:14 ID:Oz2Etvso0
意図を察したリヴァイ先生は小さく頷いた。このままいくらしい。

ぶっつけ本番だ。刀と刀、体術対体術の殺陣は散々練習したけど、刀対体術は練習にない。

もうあとは2人の感性に任せてしまうしかない。完全アドリブの殺陣だ。

音楽が切り替わった。ここからはSAGA2の方の「死闘の果てに」を使う。

ゲーム音楽ばっかりですまん。この辺は完全にオレの趣味だ。

完全アドリブの殺陣だけど、大丈夫だ。2人の息はここ数日間で合わせられるようになっている。

だけどここでだんだん強くなる三村の脳裏に昔の記憶が蘇り始める。

バックスクリーンでその映像が流れる。舞台は暗くなって一時停止だ。

幕末の世を駆ける。火村抜刀斎の隣で、一緒に敵と戦う三村の姿だ。

口パクで会話する2人の映像が流れる。この時のるろ剣の方の火村剣心役はオレがやっている。

頬に十字傷を持つ伝説の男と何か話している。そんなイメージだ。

そしてまた時が動き出す。覚醒した三村は、刀を抜かないまま、鞘を我突のように突き出して、神谷の腹に攻撃を当てた。

本当ならここは逆刃剣で対応する筈だったけど、神谷の剣だと殺しちまうから鞘でやるしかなかった。

そして一瞬だけ正気に戻った神谷が頭を抱えながら起き上る。

神谷(リヴァイ)『くっ……俺は一体、何を……』

家長1(アーロン)『ひ、ひいいい……(ヨロヨロ)ま、まさか貴様! あの伝説の火村抜刀斎……?!』

三村の強さを目の当たりにしてそう疑い出すが、

三村(ミカサ)『いいや? よく間違われるでござるが人違いでござるよ。拙者はあの方の足元にも及ばない』

と、少し懐かしむようにしながら三村は言う。

三村(ミカサ)『ただもしも、ここに火村殿がいたらきっと、同じことをしたと思うでござる。神妙にお縄に頂戴しろ(じりじり)』

家長1(アーロン)『か、神谷! 時間を稼げ!! 君は仕置き人だろう?! 私を守るんだ!!! 奴を殺せ!!!』

神谷(リヴァイ)『うっ……!』

殺せ! という言葉に反応して再び神谷が苦しみだした。

しかしその直後、折れた刃を拾って自分で握って、家長1(アーロン)を後ろから羽交い絞めして固定した。

家長1(アーロン)『ひ、ひいいい?!』

神谷(リヴァイ)『俺ごと、殺せ……!』

三村(ミカサ)『!』

神谷(リヴァイ)『早く! こいつごと、俺を殺せ!!!』

家長1(アーロン)『な、何を……君は金で何でも請け負うんじゃなかったのか?!』

神谷(リヴァイ)『黙れ!! これは俺の誇りの問題だ……今すぐ…俺を……うっ……!』

苦痛に顔を歪め始める神谷に三村は動けない。

それを悟ると、神谷は自ら依頼人ごと、自分の腹を貫いた。

三村(ミカサ)『神谷殿……!!!!!』

神谷(リヴァイ)『ぐふっ……(吐血)』

三村(ミカサ)『しっかりしろ! 今すぐ手当を……』

神谷(リヴァイ)『三村……』

三村(ミカサ)『!』

神谷(リヴァイ)『出来るならもう一度……お前とは、素面の時に、剣を交えて見たかった………(がくり)』

三村(ミカサ)『神谷殿!!!』

その後、突然の警官の突入が始まった。

斎藤(ジャン)がすぐさま三村(ミカサ)に駆け寄り、

斎藤(ジャン)『大丈夫か三村!!!』

三村(ミカサ)『斎藤殿! 神谷殿が……!!!』

斎藤(ジャン)『くっ……遅かったか。すまねえ。もう一人の家長の方は包囲網を敷いてさっき、捉えたよ。あの娘の口の中に残っていた薬の成分が証拠になった。薬事法違反ってやつか? 逮捕状が出せたから、もう心配いらねえ。屋敷の中も警察で押さえられるから余罪も出せるだろう』

三村(ミカサ)『手間をかけさせたでござるな…すまなかったでござる』

斎藤(ジャン)『いや、もうしょうがねえよ。とりあえず、屋敷を出るぞ』

そして暗転。事件のエピローグへ移動する。

72進撃の名無し:2014/07/28(月) 23:28:30 ID:Oz2Etvso0



墓が二つ。神谷の墓とあの娘の墓を斎藤の金で建てて貰い、その墓の前で2人は話す。

斎藤(ジャン)『あの薬は人間の体というより、頭の意識を限界まで高める薬だったらしい』

三村(ミカサ)『意識を……』

斎藤(ジャン)『いわゆる、火事場の馬鹿力を誰でも意図的に作り出せるようにする。そういう薬の研究を進めていたんだそうだ』

三村(ミカサ)『一体、何故そんな研究を……』

斎藤(ジャン)『次の世の為に必要だと言っていた。いつかくるべき未来の時代の為に必要な研究だと、奴は主張していたよ。外国と戦争する時代が遠くない未来に必ずやってくるから、富国強兵が必要になると。その時の為に、研究していたと自白した』

三村(ミカサ)『外国と、でござるか?』

斎藤(ジャン)『ああ。オレにはちょっと俄かには信じられなかったが……どうもこの事件は、ここだけが根っこじゃねえみてえだ。奴以外にも、似たような研究をしている研究者が国中に居るらしい。家長同士が不仲を装っていたのは、協力体制を世間に悟られない為と、もし事が露見した場合はどちらかが逃げて、研究を続けるためのものだったらしい』

三村(ミカサ)『……そうでござったか』

斎藤(ジャン)『胸糞悪いけど、まだこれで終わりじゃねえらしいよ。はあ、何だってこんな面倒臭い事が起きるんだろうな。オレはただ、安定した暮らしがしたくて警察官になっただけだってのに……』

三村(ミカサ)『………まだ、本当の意味では戦いは終わってないのでござるな』

斎藤(ジャン)『ああ?』

三村(ミカサ)『何でもないでござる。お疲れ様でござったな。斎藤殿』

斎藤(ジャン)『ああ。疲れたよ。明日は休みだからゆっくり休みたい……と言いたいところだが』

三村(ミカサ)『ん?』

斎藤(ジャン)『あんた、今持っている刀、それ、神谷の持っていた物じゃねえか?』

三村(ミカサ)『ギクギク』

斎藤(ジャン)『人を切れる方の刀だったら、廃刀令に適用するぜ? という訳で没収!!!』

三村(ミカサ)『か、固い事言わないで欲しいでござるよ! これは神谷殿の遺留品!! 預かっているだけでござる!!』

斎藤(ジャン)『ダメに決まってるだろうが! あ、こらあああ!!!』


と、また追いかけっこが始まって、逃げ出す三村。

斎藤を撒いて、舞台に一人残って、天を仰ぐ。


三村(ミカサ)『富国強兵………の時代か』


と、ぽつりと未来を憂う様に呟いて、神谷と娘の死を一人、悼む三村。

三村(ミカサ)は涙を隠す様に俯いて、そして顔をあげて、また新たな旅に出るのであった。

73進撃の名無し:2014/07/28(月) 23:50:04 ID:Oz2Etvso0










ミカサが舞台からはけて、終わった。

さあ、ここからはエンドロールだ。皆、一気にいくぞ!!!

斎藤(ジャン)が再び舞台に出て、マイクのスタンドの前に立った。

エンディング曲は『HEART OF SWORD -夜明け前-』だ。

ジャンが司会をしながらメンバーを紹介していく。

恒例のイントロが流れた後は、ノリノリで紹介だ!

ジャン『まずは大道具チーフ! エルヴィン先生!!!』

10秒くらいの持ち時間で、音楽に合わせて適当に踊る。エルヴィン先生、格好いいな!

すっげえ様になってる。ダンスも上手いんだ。すげえ!

ジャン『次は、大道具三人衆! エレン! アルミン! マルコ!』

三人一片に舞台に出る。拍手喝采の中、ダンスを踊るって言うのは結構恥ずかしいなコレ!

アルミンもマルコもちょっと照れてるけど、10秒くらい踊ったら、次にバトンタッチだ。

ジャン『ロミオとジュリエット! アルミン! マリーナ!』

アルミンだけ残ってマリーナが追加して、2人でお尻を合わせて踊ってる。かわええ!

ジャン『音響・衣装! ガーネット! マリーナ!』

そして今度はアルミンが抜けてガーネット先輩が入る。

2人でくるくる回ってる。すげえ。バレリーナみたいだ。

ジャン『照明! スカーレット! キーヤン! カジカジ!』

照明メンバーと入れ替わる。スカーレット先輩がキーヤンとカジとのしていた。ひでえ(笑)。

ジャン『噂の商人! キーヤン! カジカジ!』

スカーレット先輩だけはけて、2人で殺陣をする。あ、キーヤンが負けた。

ジャン『両家の家長! アーロン! エーレン!』

悪役二人がやってきた。2人で一緒にブレイクダンスやりだした。すげえな!

ジャン『斎藤雀! オレ! ジャン!』

ちょっと笑いが起きた。ジャンがその場で踊ってみせた。

ジャン『神谷赤司 リヴァイ先生!』

きゃああああああ!!! 女子の悲鳴が体育館の天井を貫く勢いで轟いた。

リヴァイ先生、ちょっと赤くなってる。やっぱり恥ずかしいんだな。ぷぷっ。

ジャン『ラスト! 三村万心! ミカサ!』

ミカサがぴょんぴょん跳ねて出てきた。踊るのか? 踊らないのか?

あ、盆踊り始めた。なんか違うだろそれwww

アニ『ちょっと、一人忘れてない?』

ジャン『あ、やっべ! そうだった! お色気ヒロイン! 使用人の女! アニ!』

アニ『お色気は余計だから! (ゴス!)』

ジャンが殴られた。会場がまた、笑いに包まれる。

74進撃の名無し:2014/07/29(火) 00:01:58 ID:7qkTF8c60
ジャン『以上をもちまして、演劇部の公演『侍恋歌ーサムライレンカー』の方を終了させて頂きます。ご来場の皆様、本日は誠に観劇ありがとうございました!!!』

一同『『『ありがとうございました!!!!!!』』』

わーわーわー!

パチパチパチ………!!

拍手喝采だった。良かった。無事に最後まで乗り切った。

一回だけ危ないところがあったけど、乗り切れてよかった。本当に。

ジャン『皆、撤収!!!』

一同『『『撤収!!!』』』

ショッカーみたいなノリで撤収作業を開始する。

会場の外に出て、お客さんを見送りしないといけない。いそげえええ!

ジャン達と衣装はそのままで第一体育館の入り口まで出て、アーチを作る。

すると、すぐリヴァイ先生のところで渋滞が出来て人が出れない状態になってきたので、リヴァイ先生は一番最後の列に立って貰う事になった。

OB「リヴァイ先生! いきなり脱いでびびったっすよ! 腹筋顕在っすね!」

リヴァイ「ああ? アレを決めたのは俺じゃない。エルヴィン先生だ」

OG「だと思ったwwww超ウケたよwwww目の保養になったあwww」

リヴァイ「まあ、それならいいんだが。ほら、早く出ろ! つっかえるだろうが!」

OG「後でまたメールするね〜リヴァイ先生ー!」

と、次から次へと卒業生がリヴァイ先生にコメントを残していった。

いや、本当、リヴァイ先生の人気が凄すぎてびびる。でも、リヴァイ先生自身は照れくさそうだった。

75進撃の名無し:2014/07/29(火) 00:19:01 ID:7qkTF8c60
OB2「リヴァイ先生! 遂に舞台に出たんですね! あんなに嫌がってたのにどういう風の吹き回しっすか?!」

リヴァイ「嵌められたんだよ。エルヴィン先生に。無理やり出演決定された」

OB3「だと思ったwwwwでも似合ってましたよ先生!」

リヴァイ「ありがとう。でももう2度とせん」

OB4「そんな事言わず、来年も出て下さいよー」

リヴァイ「遠慮しておく。ほら、早く移動しろ! 邪魔になるだろうが!」

OG2「リヴァイ先生ー! 抱いてー!」

リヴァイ「今、汗臭いだから近寄るな! ハグはサービスしてねえぞ!」

OG3「ずるいー私も先生の匂い嗅ぎたいわwwww」

リヴァイ「勝手に嗅ぐんじゃない! 急いで出ろ!」

OG4「また後でメールするね〜!」

と、まあひっきりなしに声をかけられる。本当にすげえ。

リヴァイ先生の慕われ方が良く分かる。皆、ニコニコしながらやってくるんだ。

OG5「ねえねえ、リヴァイ先生。まだ結婚してないの? ハンジ先生は?」

リヴァイ「うぐっ……(青ざめ)」

ぎゃあああ! 今、その事は触れないであげてえええ!

と、叫びそうになったオレだけど、あえて黙る事にする。余計な事は言えない。

OG6「おや? その様子だとまだっぽい? まだ結婚してないの? 先生」

リヴァイ「うるさい。ハンジとはそういうのじゃないって何度も……」

OG7「またまた〜嘘ばっかり〜素直になりなよリヴァイ先生〜♪」

OG8「っていうか、うちらもうとっくに結婚していると思ってたんだけど。まだなんだ? うちらの方が先に結婚しちゃったけどwww」

OG9「教え子に先越された気持ちってどんな感じ? ん?」

うわあああ酷いOG達だ。フルボッコ過ぎる。

リヴァイ「ああ、お前ら結婚したのか」

OG9「子供ももういるよ。2人、こっちは1人だけど」

OG8「早く子供持ちなよ先生もー子供って可愛いよ?」

リヴァイ「はー……(遠い目)」

大丈夫かな。リヴァイ先生。なんかいろいろ考え込んでいるみてえだ。

リヴァイ「そりゃ俺も出来るだったら自分の子供が欲しいけどな……」

OG9「おお? じゃあ早く結婚しなきゃ。ハンジ先生、年いくつだったけ?」

リヴァイ「36歳だ」

OG9「じゃあ急がないとヤバいじゃん! さっさとプロポーズしなよおお」

リヴァイ「あーもう、お前ら、その話は後にしろ! 後がつかえる!」

と、また追い出していく。

76進撃の名無し:2014/07/29(火) 00:31:09 ID:7qkTF8c60
OB5「リヴァイ先生ー! 相変わらず壁伝い出勤しているんですか?」

リヴァイ「今はさすがにしてねえ。先生達に怒られたからな」

OB5「あ、そうなんだwwwいや、オレ、アレ好きだったんですけどねwwww窓から入ってくるのwww」

リヴァイ「あれは遅刻しそうになった時の裏ワザだ。グラウンドから直接、壁伝って窓から入った方が早いが、やはり危ないからやめろと、他の先生達に怒られたんだよ」

OB6「確かに。危ないけど、3階の教室の窓から外から入ってくるのってリヴァイ先生しか出来ねえっすよねwwww」

なんじゃそりゃ?! そんな事してたのかリヴァイ先生。

エレン「………(じと目)」

リヴァイ「昔の事だ」

と、照れているリヴァイ先生だった。

OB5「一回、ヘリコプター出勤もあったよな? ジャッキーチュンみてえにして学校に来たことあったけど、アレは爆笑したわwwww」

OB6「あったあったwwwwアレも後で怒られたんでしたっけ?」

リヴァイ「怒られたな。いや、確かにヘリコプターで出勤したらいけないというルールはないが、常識を考えろと言われたよ」

えええええ。リヴァイ先生、若い頃いろいろやらかしているんだな。

OB6「でも見ている分には楽しかったっすよwwwアクションスターみたいでwwww」

リヴァイ「そうか。もう忘れてくれ。ほら、早く移動しろ!」

と、またまた追い出していく。

これもう、キリねえんじゃねえか? どんどん人が詰まってきたぞ。

エレン「リヴァイ先生、もう先生だけ抜けませんか? キリないですよ」

リヴァイ「ああ。そうだな。俺は先に上がらせて貰おう。着替えてきていいか?」

エレン「はい。OBOGの方々には申し訳ないけど、これ以上詰まるとまずいです」

リヴァイ「分かった。後の事は頼む。お先に」

という訳でリヴァイ先生が混雑避けの為に先にアーチから離れた。

だけど、途中でやっぱりOBOGに捕まって、人だかりが出来てしまった。

あーあ。ダメだこりゃ。暫くは離して貰えそうにないなアレ。

77進撃の名無し:2014/07/29(火) 00:47:25 ID:7qkTF8c60
グリシャ「お疲れさん。エレン」

エレン「あ、父さん!」

ミカサの母「面白かったわよ。すごいわねえ。ミカサ、あんなに頑張っているとこを見れるとは思わなかったわ」

グリシャ「ああ。エレンの女装姿も可愛かったぞ」

エレン「そ、それは言わないでくれ、父さん……」

ちょっと複雑な心境になるからな。母さんそっくりになるし。

グリシャ「私達はこの後、2人でぶらぶらしてくるが、クラスの方を見てもいいのかな?」

エレン「んーコスプレ写真館だから父さん達は楽しめないかもしれないぜ?」

グリシャ「そんな事はないよ。じゃあ後で寄らせて貰うね。エレン、後片付けも頑張って」

エレン「ああ! ありがとうな! 父さんも!」

という訳で親父達も見送ったら、今度はミカサの方がこっちに寄ってきた。

ミカサは入口出てすぐのところに居たんだけど、オレの方が気になって来たみたいだ。

ミカサ「エレン。横に立っていい?」

エレン「おう。いいぞ」

ミカサ「あの時は、ありがとう」

エレン「ん? あの時?」

ミカサ「小道具が折れた時。まさか、あの程度の衝撃で刃が外れるとは思わなかった」

エレン「んーやっぱり本番は気合の入れようが違うから、リヴァイ先生も手加減間違えたんじゃねえのかな」

ミカサ「それもある。でも、私自身も本気で殺陣をやったから、その衝撃に耐えきれなかったのかもしれない」

エレン「かもな」

ミカサ「エレンが咄嗟に指示をしてくれなかったら、きっとまた、私は入学式の二の舞をしていたと思う。本当に、本当にありがとう……」

エレン「いいって。でもこれで少しは舞台恐怖症は克服出来たんじゃねえか?」

ミカサ「うん。パニックになりそうになったら、エレンを思い出す事にする。そうすればもう、私は何も怖くない」

おお。いい感じに克服出来たみてえだな。良かった良かった。

78進撃の名無し:2014/07/29(火) 01:28:32 ID:7qkTF8c60
ジャン「そろそろ舞台に戻るぞ! 撤収作業再開だ!!」

一同「「「はい!!!」」」

という訳である程度お客がはけてから舞台に戻って後片付けに戻った。

そしてあっという間に次の演目「英語劇 風と共に去りぬ」の劇が始まった。

オレ、この劇の内容を全く知らないんだよな。昔の映画が元らしいけど、どんな話なんだろ?

ついでだから、見て行こうかな。時間はあるし。

制服に着替えたオレ達はそのまま会場の観客席に残って英語劇を見る事にした。

こっちは独立戦争の時代のアメリカを舞台にした恋愛劇だ。

細かいやりとりは分からないけど、英語はアルミンとミカサが得意だから、分からない時は解説して貰う。

あらすじを説明すると、スカーレットというモテモテ女性がアシュレーという美青年にだけはひっそり恋をしていたんだけど、振られちゃって、腹いせにアシュレーの嫁、メラニーのお兄さんと結婚しちゃうんだよな。

んでその様子をいやらしく傍観して見ていたのが、悪漢(ピカロ)の異名を持つレット・バトラー。

スカーレット・オハラとレット・バトラーの意地っ張りな恋愛模様がメインの恋愛劇だった。

戦争映画でもあるようで、元の映画は3時間くらいあるのかな? 長編大作らしい。

だからこの劇では勿論、やるのは途中までだ。

スカーレット側の南部が戦争に負けて、ボロボロになってスカーレットが実家のタラに帰ってくるけど。

絶望しかない状況で、スカーレットは土を食って誓うんだ。

もう、二度と飢えたりしないーと。

その名演技にオレは自然と涙を流していた。

やべえ! なんか思っていたより格好いい演劇だったな!

これ続きが気になるなあ。後でレンタルして観てみようかな。

ミカサ「素晴らしい劇だった……」

エレン「意外と面白かったよな。これ、相当古い映画が元らしいけど」

ミカサ「うん。名作映画によく名前が列挙されている。でも私も見たのは初めてだった」

エレン「そうかー今度、借りて一緒に続き見てみるか」

ミカサ「う、うん……(照れる)」

79進撃の名無し:2014/07/29(火) 01:36:03 ID:7qkTF8c60
そんな訳で時間が過ぎて、

ミカサ「あ、そろそろコスプレ写真館の方に戻らないといけない」

エレン「そうか。午後の写真撮影会の担当だったもんな」

ミカサ「うん。アニと一緒に写る。エレンはどうする?」

エレン「んーどうしようかなー」

と、考えていたその時、

アルミン「でも、この後、吹奏楽部がゲーム音楽やるって書いてあるよ? エレン、聞かなくていいの?」

と、アルミンが言ってきたので心が揺れた。

ミカサ「では、エレンはこのままアルミンと一緒にいるといい。私はアニと教室に戻るので」

エレン「いいのか? 悪いな。何か」

ミカサ「ううん。エレンも楽しめる方がいい。また後で合流しよう」

という訳で1回ミカサとは離れて、オレはそのまま第一体育館に残る事にした。

吹奏楽部の準備が整った。演目は詳しくは書いてない。お楽しみらしい。

音楽のダリス先生が指揮者となって壇上に上がった。

始まった。どの音楽から始まるんだろう。


チャッチャッチャラチャッタ! タ!


いきなりスペシャルマリオきたー!!!!!!

1−1の音楽じゃねえか! うわあ。これ、マリオ好きには堪らねえぜ!

80進撃の名無し:2014/07/29(火) 01:48:52 ID:7qkTF8c60


タッタタータッタタララ〜♪


やべえ。ゲームしたくなってきた。この音楽を聴いているとついそう思う。

1−1のマリオのゲーム画面を思い出しながら聞いていると、

途中で突然変調して、あ、スターを取った後のマリオの音楽になった!

でも、最後はゲームオーバーになった。酷いwwww

面白いなあ。吹奏楽でもゲーム音楽って出来るんだ。面白い発見だな。

そんな訳で次は、ファンタスティックファンタジーの名曲が来た。

ビッグブリッジの死闘だ! このイントロは熱い!

うわああ速弾きすげえええ! この曲、すげえ大変な曲だぞ?!

リコーダー演奏者もいるんだ。ソロパートの部分が神業だ。

相当練習したんだろうな。わっふ〜♪のところが素晴らしい!

その次は、うわ! また熱い曲が来た! 聖剣シリーズの子午線の祀りだああああ!!!

イントロ熱い曲が連荘できた。すげええ!

しかも2と3を繋げて来た。なんだこの圧倒的な演奏力は!

ああもう、興奮し過ぎだオレ。知ってる曲だとついついこうなるよな。

そして今度はセルタの伝説のエポナのテーマだ。

あ、ちょっと落ち着くな。これ聞くとしんみりする。

で、最後はなんと、おおおお! SAGAシリーズのステスロスのテーマとラスボスメドレーだった。

アレンジ加えてあるところもあるけど、すげえ格好いい!!

うわあああもう、何か興奮しか出来ねえ! 残って正解だった!!

あっという間に50分間の演奏が終わって、オレ、もう、お腹いっぱいになっていた。

アルミン「結構いい選曲だったねえ。すごいねえ。子午線の祀りって、相当難しい曲なんじゃないのかな」

エレン「ああ。あの速弾きのところ、神業だったな。ビックブリッジも凄かったけど」

81進撃の名無し:2014/07/29(火) 02:14:09 ID:7qkTF8c60
アルミン「うん。いやーこの選曲した人と友達になりたいくらいだね!」

と、オレとアルミンは大満足で吹奏楽部の演奏を聞き終えたのだった。

あ、遂に最後の演目だ。バンド演奏が始まるようだ。

ミカサとアニもこっちに戻って来た。やっぱりラストは皆で観たいよな。

リヴァイ先生もようやく着替えてOBOGの輪から解放されてこっちに来れたようだ。

リヴァイ「ふーやっとあいつらが離してくれた。やれやれ」

エレン「あ、リヴァイ先生もバンド演奏見るんですか?」

リヴァイ「最後くらいは、観たいと思ってな」

という訳で、いよいよラストの演目が始まる。

最初の曲は何だろうな。

ボーカル『女々しくて女々しくて女々しくて〜つらいよおおおおおおお!!!!!』

リヴァイ「?!」

あ、女々しくてだ。

ヤバい。この曲、今、1番リヴァイ先生に聞かせちゃいけない曲じゃねえか!!!

でも会場はノリノリだった。掴みの曲としては最高だけど、リヴァイ先生へのダメージがぱねえ!

顔隠して落ち込んでいる。あーあ。運がねえなもう。

82進撃の名無し:2014/07/29(火) 02:30:09 ID:7qkTF8c60
そんな感じで、

1.女々しくて シルバーボンバー

2.Let it Go〜ありのままで〜

3.ラブラドール・レトリバー AKB49

4.奏(かなで) スキマノスイッチ

5.小さな恋の歌 モンゴル880

6.secret base 〜君がくれたもの〜 ZON

7.サラバ! 愛しき悲しみたちよ モモクロ

8.空と君のあいだに ミユキ・ナカジマ

9.GET WILD  TN NETWORK

といろいろなジャンルがごちゃ混ぜで演奏された。

古いのもさり気に入っているのはきっと、保護者向けの選曲なんだろう。

そんな訳でラストの曲まであっという間だった。

ラストは何がくるんだろう。

ボーカル『えー最後は、この曲を選びました。皆、サビだけなら知っているかもしれません。ミスターチャイルドの曲の中ではマイナーかもしれませんが、聞いて下さい。ミスターチャイルドで『掌(てのひら)』です」

あ、これはアレだ。にこにこ動画でネタMADでも有名になったあの曲だ。

すげえいい曲なんだよな。元ネタ気になって探して聞いたことある。

ボーカル『て〜のひらに〜きざまれた〜いびつな〜きょ〜くせん〜』

ボーカル『なんらかの〜い〜み〜をもって〜うまれてきたあかし〜』

ボーカル『ぼ〜くらなら〜もとめあう〜〜さびしいどうぶつ〜』

ボーカル『かたをよせるようにして〜あいを〜うあっている〜』

あ、ちょっと間違えた。緊張しているみたいだ。

83進撃の名無し:2014/07/29(火) 02:47:24 ID:7qkTF8c60
歌は正直言えばジャンやキーヤンの方が上手いけど、でも、一生懸命歌ってて、凄く伝わる。

この歌が好きなんだろうな。そういう思いがしんみりと伝わってくるんだ。

ボーカル『だいたはずがつきとばして〜』

ボーカル『つつむはずがきりりきざんで〜』

ボーカル『なでるつもりがひっかいて! また愛もとめるぅぅ』

ボーカル『わかりあえたふりしたって〜』

ボーカル『ぼくらはちがった個体で〜』

ボーカル『だけどひとつになりたくて! 暗闇で! もがいて! もがいているぅぅぅ』

リヴァイ「……………」

リヴァイ先生が隣で聞き入っているのが分かる。

何だろ。共感する部分があるのかな。

観客も音楽に合わせて左右に揺れている。いい感じのラストソングだ。

ボーカル『ひとつにならなくていいよ〜』

サブボーカル『暮らしていたい場所〜』

ボーカル『認め合うことができればさ〜』

サブボーカル『それぞれが〜』

ボーカル『もちろんなげやりじゃなくて〜』

サブボーカル『あいしているひと〜』

ボーカル『みとめあうことができるから〜』

サブボーカル『それぞれが〜』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ〜』

サブボーカル『夢見てること〜』

ボーカル『なにを夢見てもいいよ〜』

サブボーカル『それぞれが〜』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ〜』

サブボーカル『信じてるもの〜』

ボーカル『何を信じてもいいよ〜』

サブボーカル『それぞれが〜』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ!!』

サブボーカル『暮らしていたい場所〜』

ボーカル『価値観も理念も宗教もさ〜』

サブボーカル『それぞれが〜』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ!!』

サブボーカル『あいしているひと〜』

ボーカル『認め合うことができるから〜♪』


それで素晴らしい!


ボーカル『キスしながら唾をはいて〜』

ボーカル『なめるつもりがかみついて〜』

ボーカル『着せた筈がひきさいて〜』

ボーカル『また愛〜求める〜』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ〜』

ボーカル『認め合えばそれでいいよ〜』

ボーカル『それだけが僕らの前の!』

ボーカル『くらやみを〜やさしく〜てらしてえええええええ♪』

84進撃の名無し:2014/07/29(火) 03:17:49 ID:7qkTF8c60
ボーカル『ひかりを〜ふらして〜あたえてくれるううううう♪』

あ、何か最後、ボーカルさん赤くなった。間違えたっぽいな。

どこ間違えたのか分からんけど、でもまあ細かい事は気にしない。

会場はすげえ盛り上がって、拍手喝采だった。

リヴァイ先生も拍手していた。いい歌だったなあ。

ミカサ「イイ曲。ラストに相応しい曲だった」

エレン「ああ。確かにな。いい曲だったぜ」

リヴァイ「……ひとつにならなくていい、か」

エレン「ん?」

何か今、言ったのかな。リヴァイ先生。

リヴァイ「いや、何でもない。この後は、グラウンドに移動して最後のキャンプファイヤーだ。保護者の差し入れもある。クラスの片づけが終わったら、皆でつまみながら閉会式やるぞ」

エレン「はーい」

という訳で皆ぞろぞろ退出して、クラスの片づけを終わらせたらグラウンドに集まって、キャンプファイヤーが始まった。

飲み物を紙コップで受け取って、皆で「お疲れ様ー」と口々に言い合っている。

校長先生の挨拶が終わって、あとは自由気ままにしゃべっている。

残ったカレーとかもこの時間に食べてしまうらしい。残したら処分が大変だもんな。

85進撃の名無し:2014/07/29(火) 03:18:47 ID:7qkTF8c60
キリ悪いけどここまで。ではまたノシ

86進撃の名無し:2014/07/29(火) 05:39:53 ID:A1eGo8/U0
アニ可愛いよアニ

打ち上げ無事にできるんだろうか…

87進撃の名無し:2014/07/29(火) 08:56:38 ID:wkUrIiTM0
とりあえずミカサはいつでもかわいいしアニミカコンビが仲良いのがすごくほっこりする

88進撃の名無し:2014/07/29(火) 11:45:06 ID:lw.Z5qnw0
舞台も面白かったー!
文化祭満喫した気分だわ
後夜祭も楽しみだ
ミカアニほっこり同意

89進撃の名無し:2014/07/29(火) 17:42:11 ID:osf9yHP.0
リヴァイ「………(もぐもぐ)」

あ、残ったカレーをリヴァイ先生がかきこんでいる。

エレン「お疲れ様でした。リヴァイ先生」

リヴァイ「ああ。昼はオルオが持たせてくれた福神漬けしか食ってなかったからな。さすがに腹が減った」

エレン「そういえばそうでしたね。リヴァイ先生は後夜祭の後はどうされるんですか?」

リヴァイ「あー3年の打ち上げだな。………ハンジの組と合同でやる約束だったがどうなるんだろうな」

と、ちょっと複雑そうな顔をするリヴァイ先生だった。

リヴァイ「もしかしたら気が変わって保護者の方に出るかもしれんな。あいつの事だし」

エレン「そうですか……」

リヴァイ「演劇部の方はどうする? 明日は振り替え休日だし、明日に回してもいいと思うが」

エレン「あージャン次第じゃないですかね。おい! ジャン!」

ジャン「あ? 呼んだか?」

エレン「演劇部の打ち上げどうすんだ?」

ジャン「あーそういや考えてなかったな。でもクラスの方の打ち上げと被ったらダメだよな。ユミルに聞いてくるわ」

と言ってジャンがユミルの方に駆け寄る。オレもついでについていくと、

ユミル(ぐったり)

ベルトルト(ぐったり)

ジャン「おーい、ユミルーって、死んでるじゃねえか!」

エレン「まるで屍のようだ」

ユミル「ああ? 何の用だ(機嫌悪い)」

ジャン「いや、クラスの打ち上げどうすんのかなって」

ユミル「今日はもう無理……明日にしてくれ。このままここで寝たい……(ぐったり)」

ベルトルト「僕も……(ぐったり)」

90進撃の名無し:2014/07/29(火) 17:54:42 ID:7qkTF8c60
と、実行委員の2人は死にかけていた。よほどハードな2日間だったらしい。

ユミル「全く……こんなに文化委員が神経遣う委員だと知ってりゃ絶対なってなかった」

ベルトルト「ううーん。中学の時より忙しかった。やっぱり高校になると本格的になるんだね」

ユミル「もう暫く仕事せんぞ! 遊び倒してやる!!」

と、文化委員の2人がブツブツ言っていた。

どうやらクラスの方の打ち上げは明日に回すらしい。

ジャン「だったら演劇部の方の打ち上げは今日やっちまった方がいいかな」

エレン「そうだろうな。んじゃ、皆にメールで連絡してくれ」

ジャン「あいよ」

と、部長職が板についてきたジャンが皆に連絡した。

リヴァイ「おい、お前らもカレー食うのを手伝え」

リヴァイ先生がこっちに来た。2回連続か。まあ仕方がないか。

ジャンと一緒にカレーを食っていたら、ミカサがこっちに逃げて来た。

あれ? アニも一緒に逃げて来た。追いかけられている様子だ。

ミカサ「エレン! 助けて!」

エレン「どうした?!」

アニ「ジャンも助けて!」

ジャン「なんでオレ?!」

女子生徒「ミカサさん! サイン下さい!」

女子生徒2「写真お願いします!!」

女子生徒3「握手もお願いします!!」

男子生徒「アニさん! お願いします! 握手お願いします!!」

男子生徒2「お願いします!」

男子生徒3「罵倒でも構いません!!」

なんかミカサに新規の女子ファンとアニにも変な男子ファンがついちまったようだ。

ジャン「あーそういうのはダメダメ! もう文化祭は終わったんだから」

一同「「「えー!」」」

ジャン「散れ! 散らないとカレーぶっかけるぞ!!」

一同はしゅーんとなって去って行った。

ミカサ「………何故か女子にもモテるようになってしまった」

エレン「だろうな。男装ミカサにもファンがついたみたいだな」

ミカサ「ううう……嬉しいような悲しいような」

エレン「いいじゃねえか。オレの自慢の彼女だよ」

ミカサ(ポッ)

あ、また赤くなった。可愛い。

91進撃の名無し:2014/07/29(火) 18:04:34 ID:7qkTF8c60
ミカサって結構、簡単に頬が赤くなるんだよな。ふふっ。

ミカサ「エレン。打ち上げはどこでやるの?」

エレン「さあ? ジャン、どこでやるんだよ」

ジャン「まだ決めてねえ。リヴァイ先生かエルヴィン先生にも来てもらった方が遅くまで遊べるけど、どうする?」

エレン「リヴァイ先生もエルヴィン先生も3年の方の打ち上げあるからそっちが優先だと思うけど、頼めば合同でやってくれるんじゃねえの?」

ジャン「まあ、その方が3年の先輩達とも話せるし、オレ達にとってはそれがいいけど」

ジャン「ちょっと確認してくる」

と、ジャンが移動していった。で、すぐ戻ってきて、

ジャン「カラオケで、部屋を別に取って合同でやればいいって話になった。3年に便乗でいいよな?」

エレン「ああ。いいと思うぜ」

ジャン「んじゃ、後夜祭終わったらすぐそっちに合流って事でいいよな」

と、ジャンがすっかり仕切り役だ。

マルコ「ふふ……部長役が板についてきたみたいだね」

マルコとアルミンもこっちに気づいて寄って来た。

ジャン「ああ?! んなわけねえよ。オレ、リーダータイプじゃねえし」

エレン「リヴァイ先生と同じ事言ってんな」

ジャン「あ? そうか?」

エレン「向いてねえって言ってる奴に限って、向いてる評価を周りから受けるんだから不思議だよな」

アルミン「言えてる。でも大体そんなもんだよね」

と、言うとジャンが物凄く複雑そうな顔をした。

あーこの瞬間の顔、写真に撮って見せてやりてえ。ジャン自身に。

でも、気づいてないんだろうな。ジャン自身も。そういう自分に。

エレン「あ……思い出した」

と、その時、オレはエルヴィン先生に個人的な用事があった事を思い出した。

92進撃の名無し:2014/07/29(火) 18:16:31 ID:7qkTF8c60
エレン「ミカサ、悪い。ちょっとエルヴィン先生のところに行ってくる」

ミカサ「ん? 私はついていってはダメ?」

エレン「いや、ついてきてもいいけど。ついてくる?」

ミカサ「うん」

エレン「じゃあ一緒に探すか」

アルミン「エルヴィン先生に用事なの? あっちの方でピクシス先生と話しているよ」

エレン「サンキュ、アルミン」

という訳で、エルヴィン先生のところに移動すると、

エルヴィン「やあエレン。ミカサ。お疲れ様」

エレン「お疲れ様でした。あの、エルヴィン先生、この写真、どう思います?」

と、言ってオレはこの間、無理やり撮ったリヴァイ先生の写真をエルヴィン先生に見せてみた。

ピクシス先生も一緒に覗いて顔を緩ませた。

ピクシス「いい写真じゃの!」

エルヴィン「どれどれ……ぷ! これは傑作だね。いつ撮ったの?」

エレン「文化祭1日目が終わって仕込みが終わった直後、リヴァイ先生と話す機会があったんで、その時に」

エルヴィン「いいねー。こういう顔が崩れたリヴァイは珍しい。画像くれる?」

エレン「あ、はい。それは勿論、いいんですけど。あの、エルヴィン先生から見たら、この画像をもし、ネット上で公開したら、どう思います?」

エルヴィン「ん? それはどういう意味かな?」

オレは頭の中に描いた計画の一部をエルヴィン先生に慎重に話してみる事にした。

エレン「単刀直入に言えば、人気が上がるか、下がるか。エルヴィン先生ならどっちに賭けます?」

エルヴィン「それだったら、上がる方に10万賭けちゃうね。この程度の変顔だったら、アイドルでもやってるよ」

エレン「そうっすかーじゃあ、この写真は失敗ですね」

うーん。残念だ。失敗だ。

エルヴィン「失敗? どういう事かな」

エレン「いやー……余計なお節介かなーとも思ったんですけど」

と、一応、前置きしてから、オレは続けた。

エレン「リヴァイ先生の人気をどうにかして「下げる」方法ってないかなって、ちょっと考えていて」

エルヴィン「ふむ。何故、そんな事を?」

エレン「オレ、リヴァイ先生とこの間話した時に、思ったんですよ」

と、エルヴィン先生にこの間の件をざっと話した上で意見を述べてみた。

93進撃の名無し:2014/07/29(火) 18:31:41 ID:7qkTF8c60
エレン「今のリヴァイ先生の異様な人気って、どう考えても「美化し過ぎ」な面が強いというか、ファンの子達は、本当のリヴァイ先生じゃなくて、美化されたリヴァイ先生に対して、脳内で勝手にアイドル化している部分もあるんじゃないかって、思っちまって」

ミカサ「確かに。皆、リヴァイ先生の悪い部分をちゃんと見ていない気がする」

と、ミカサも賛同してくれた。

エレン「だよな。だから、もう少し今の綺麗なイメージから、リヴァイ先生の本当の姿に出来るだけ、近づける事は出来ねえかなって思ったんですよ。そうすれば、今の異様な状況を少しは緩和出来ねえかなって、思ったんですけど」

エルヴィン「うーん。確かにそれは私もその手は考えたんだけどね」

と、エルヴィン先生は頬を掻く。

エルヴィン「ただ、それは諸刃の刃でもあるんだ。リヴァイのプライベート情報を生徒に見せたら、そのせいでファンを止める子もいるかもしれないが、もっと熱狂して、熱が過熱してくる子も出てくる。私なんか、特に、リヴァイのドジで可愛い部分が好きだから、そういう部分に惹かれてしまったら、かえって抜け出せなくなる子も出てくるんじゃないかな」

エレン「あーダメなところも可愛いってやつですか」

エルヴィン「そうそう。その辺は難しいよ。情報で勝手に妄想するのは人間の性(サガ)のような物だからね」

エレン「そうですか。じゃあこの写真は没ですね」

エルヴィン「でも、そういう発想自体は悪くないと思うよ。リヴァイ自身がブログ書くとかしてくれれば、それが一番いいんだろうけど、あいつも教職で忙しいし、現実的には難しいだろうね」

エレン「そうですか……」

難しいな。なんかいい手がねえかな。

エルヴィン「でも、そうやってアイデアを出してくるところは優しいね。エレン」

エレン「え? そうですかね?」

エルヴィン「うん。しかもこうやって他人にちゃんと前もって相談するところも偉いよ。リヴァイはいい生徒に恵まれたな」

エレン「いやー……うーん……」

なんかこそばゆいけど、問題は解決してないから素直には頷けなかった。

94進撃の名無し:2014/07/29(火) 18:54:57 ID:7qkTF8c60
ピクシス「ふん……そんな面倒臭い事をせんでも、さっさと結婚宣言をすれば、ファンをやってる子も目が覚めるじゃろうて。あやつが男らしく行動せんのが一番悪いんじゃろうが」

と、酒を飲みながらピクシス先生がブツブツ言う。

エレン「いや、それが出来れば一番いいのは確かなんですが、今のリヴァイ先生にそこまで求めるのは酷じゃないかと」

ピクシス「ふん……八方美人では大事な物を見失うじゃろう。あやつ自身、自分にとって本当に大事な人は誰なのか、いい加減見つめなおす時期なのじゃ」

エレン「まあ、それはそうなんですけどね」

ピクシス先生は機嫌が悪いらしい。これ以上突っつかない方がいいな。

ピクシス「あやつに酒を飲ませて泥酔させた時に必ず口に出てくる女は、誰なのか。早く奴自身に気づいて欲しいんじゃが………」

ん? 何の話だろ? 一体。

エルヴィン「まあまあ、ピクシス先生。その辺で」

ピクシス「ふん! 面白くないの! わしは早くあやつらの子供の顔が見たいんじゃ!」

ダメだこれ。すっかり酒が入ってる。そっとしておこう。

そんな訳でナンダカンダで宴も落ち着いた頃、オレ達は打ち上げのカラオケの方に移動する事になった。

リヴァイ先生達と合流して団体でカラオケの部屋を5部屋押さえる。

そのうちの1部屋を演劇部が貰って、残りの4部屋を3年の1組と2組が使うようだ。

こんだけの人数でカラオケするのは初めてだな。この間より人数が多いもんな。

あ、一応、ハンジ先生の顔もあった。良かった。こっちに来てくれたんだな。

エレン「ハンジ先生!」

ハンジ「やーエレン! 演劇部も合同でやるんだってね? 5部屋確保しておいて正解だったね!」

エレン「手配はハンジ先生がやってくれたんですか?」

ハンジ「うん。そうリヴァイと約束していたからね。え? 何で?」

エレン「いや、ハンジ先生、こっちに来ないかもしれないと思ってたから」

ハンジ「やだなー。くるよー。2組の担任教師なんだから。大丈夫!」

と、相変わらずの明るい笑顔だけど。

大丈夫なのかな。本当に。

95進撃の名無し:2014/07/29(火) 19:09:38 ID:7qkTF8c60
そんな訳で、打ち上げカラオケ大会が始まった。

演劇部の方にはオルオ先輩率いる3年生がこっちに合流してくれた。

やっぱり3年生がいてこそだよな。でも、こうやって遊べるのも今のうちなんだよな。

文化祭が終わったら一気に受験体勢になる。特に進学組は。

そう思うと、やっぱりうるっとくるものがあって、今更ながら、オレ、部活入って良かったなと思った。

ペトラ『ちょっと何、泣いてるのエレン?! どーしたの?!』

マイク持ってるペトラ先輩がマイク越しに指摘してきたけど、オレは涙を止められなかった。

エレン「だって……寂しいんですもん……」

ペトラ『ちょちょちょ! 人が歌う前に泣くのやめてよ! こっちも泣きたくなるでしょ?!』

オルオ「そうだぞ。エレン。まだ泣くのは早すぎるぞ」

エレン「すんません……」

ぐず……。なんだろ。舞台が終わって気が抜けたせいかな。

涙腺が止まらねえ。なんだコレ。こんなの、初めて経験するぞ。

ペトラ『もうー! エレンが泣くからこっちも泣きたくなってきたじゃないのおおおお! うわあああん!』

エルド「全くだ。本当に。お前は涙脆い奴だな」

グンタ「困った奴だ」

エレン「すんません……」

ジャン「気持ちは分からんでもないが、確かに泣くのはええだろ」

エレン「ジャンも涙腺潤んでるじゃねえか」

ジャン「これは汗だよ!」

意地っ張りな奴だな。本当に。

ペトラ『あああもう! いいわ! 泣いていいわよ! 私達だって、いろいろこう、我慢してたんだから本当は! 泣きたい時は泣いていいのよおおおお!!!』

いええええい! と、訳の分からんテンションでオレ達は歌って踊って盛り上がった。

ミカサもその様子を見つめながら、ちょっとだけ、潤んでいて、

ミカサ「エレン……」

エレン「んあ? 何だよ(ぐずっ)」

ミカサ「エレンと同じ部活に入って本当に良かった」

エレン「そうか?」

ミカサ「うん。あの時、エレンは自分で決めろと言ったけど。私はエレンと一緒で良かったと思っている」

エレン「そっか……」

と、ぐずぐず言いながらオレはミカサの隣で泣きながらカラオケを楽しんだ。

泣いて笑って騒いで。本当に楽しい打ち上げだった。

そしてあっという間に夜の11時になり、さすがにお開きにしようとリヴァイ先生が言い出した。

リヴァイ「これ以上遅くなると危険だからな。車必要な奴は出してやるぞ」

ハンジ「はいはい。女子は私が送ってあげるからね」

と、先生達が連携を取っている。

表面上は2人とも普通にしているけど、それがかえって痛々しく見えた。

96進撃の名無し:2014/07/29(火) 20:27:12 ID:7qkTF8c60
会計を済ませてゾロゾロと皆で外に出る。カラオケ店の外はすっかり夜だった。

リヴァイ「ハンジ、酒入ってないよな?」

ハンジ「んもー疑う気持ちは分かるけど、今回は飲んでないよ? あんたにも飲ませてないでしょ?」

リヴァイ「ならいいが…………あ、すまん」

あ、今、酒気を確認しようとしたな。リヴァイ先生。

それがいつもの事だったんだろう。だからつい、体が先に動いた。そんな感じだった。

顔を近づけて確認しようとして、それがいけない事だと気づいて慌てて遠ざかる。

切ないな。この距離感が。すごく遠く感じる。傍で見ていても。

ハンジ「うん。酒臭くないでしょ? だから大丈夫だよ。リヴァイ」

リヴァイ「………そうか」

ハンジ「あ、あとね。リヴァイに言っておかないといけない事、あったから、ここで言ってもいい?」

リヴァイ「ああ。何だ?」

生徒達はそれぞれグループを作ってわいわいまだ話しているけど。

その輪から少し外れて、ハンジ先生はリヴァイ先生に言ったんだ。

ハンジ「……………文化祭の最中に、モブリット先生に告白されちゃった」

リヴァイ「………そうか。やっぱりな」

ハンジ「あんたはやっぱり気づいていたの? モブリット先生の気持ちを」

リヴァイ「ああ。エルヴィンからモブリット先生の件については聞かされていた」

ハンジ「リヴァイはやっぱり、私にはモブリット先生とくっつく方がいいと思ってる?」

リヴァイ「……………」

うわあああああこれ、運命の分岐点だ! ここ間違えるとダメだ!!!

絶対、絶対、間違えたらダメだ!! リヴァイ先生!!!

ハンジ「返事はまだ、してないんだよね。というか、本音を言えばモブリット先生とはそういう関係にはなりたくないんだ」

リヴァイ「振る気なのか?」

ハンジ「だって、モブリット先生、絶対結婚を視野に入れて付き合いたいって思ってる。真剣な告白だった。だから、ちょっと気が重くてね。彼の事を嫌いな訳じゃないんだけど」

リヴァイ「……………もう、チャンスは来ないかもしれないぞ」

ハンジ「結婚の? うん。そうかもしれない。でも、私にとってはそれは、大した事じゃないんだ。それよりも、同僚との良好な関係の方を優先したいんだけど」

リヴァイ「難しいだろ。それは。どう考えても」

ハンジ「ああ、やっぱり? 私が女だからかな。あーあ」

と、また、辛そうな顔になってハンジ先生が言う。

97進撃の名無し:2014/07/29(火) 20:28:26 ID:7qkTF8c60
ハンジ「面倒臭いな。男に生まれていれば、こんな風に悩まなくても済んだのかな。私はただ、仕事を優先して生きていきたいだけなのにな………」

リヴァイ「…………それはお前の本心なのか?」

ハンジ「本心だよ。だって仕事楽しいもん。私、リヴァイ程、全員の生徒を溺愛している訳じゃないけど、それでもこの教職は結構、気に入っているんだ。だって、生物好きな子達と出会えるじゃない」

リヴァイ「ああ、その気持ちは俺にも分かる」

ハンジ「でっしょー? 勿論、クラスの全員が生物好きって訳じゃないけど、一人くらい、たまにいるでしょ? 生物が異様に好きな子。そういう子に出会って、自分の知識を託せる瞬間を知ったあの時から、もうこれ、絶対やめられないって思ったんだ」

なるほど。ハンジ先生にとっての教職っていうのは、自分の知識を生徒に託す事なんだ。

ハンジ「私の話ってさ、長いからさ。よく敬遠されるけど、たまーにいるんだよ。話聞いてくれるオタクっ子が。そういう子達がまるで、昔の自分を見るようで、楽しいんだ。だから、絶対、今の仕事を辞めたくないんだよね」

リヴァイ「モブリット先生は結婚したらやめて欲しいって言っているのか?」

ハンジ「それは分かんない。だけど、『やめなくてもいい』とか『続けて欲しい』とは1度も言ってないから、潜在意識では辞めて家庭に入って欲しいと思っているかもしれない。確証はないけど」

リヴァイ「お前の悪い癖だな。そうやって、人の考えを悟り過ぎるところは」

ハンジ「そうかな? 注意深く観察していれば大抵の事は予想出来るよ。それが外れた事も滅多にない。だから、正直言えば怖いんだ」

リヴァイ「………………」

ハンジ「だから断るつもりでいるんだけど………どうやって断ればいいのか分かんなくてね。参ってる。いつまでも逃げる訳にはいかないし」

リヴァイ先生の眉間の皺が増えていく一方だな。

ハンジ先生、気づいてねえのかな。

もう、「甘えるのやめる」って言ったのに。その発言と矛盾した行動を取っている。

自覚がねえのかな。だとしたら、今、リヴァイ先生、相当苛ついていると思うぞ。

リヴァイ「そんなもん、ただ一言、『付き合えないからごめんなさい。同僚としてしか見れないから』と言えば済むだろうが。俺に愚痴るような事じゃねえだろ」

ハンジ「いや、でも………それじゃあモブリット先生、傷つけちゃ………」

リヴァイ「だからどうして、それを俺に言うんだ!! お前は俺に何を期待しているんだ?!」

ハンジ「!!!」

リヴァイ「うまく言い含める方法ならエルヴィンの方が上手い事を考えられるだろう。言っておくが、俺は口がうまくない。今言った以上のアドバイスなんて俺に出来る訳ねえだろ!!」

ハンジ「!」

リヴァイ「いい加減にしてくれ。俺にだって出来る事と出来ない事がある。出来る事はお前にしてやれるが、それ以上の事はしてやれない。たとえ職場の同僚だとしてもだ」

ハンジ「あっ………ご……」

ハンジ先生が青ざめている。まずい。皆、異変に気づきだした。

リヴァイ先生が一人で帰って行く。車出すって言っていたけど、それすら忘れているようだ。

ハンジ「リヴァイ……ご……」

ハンジ先生が取り残されちまった。皆、ざわざわしている。

ペトラ「ハンジ先生、ちょっといいですか?」

様子を見ていたペトラ先輩がハンジ先生に近寄って、一発、大きく頬をぶった。

一同は突然の、修羅場の勃発に青ざめて見守るしかなかった。

98進撃の名無し:2014/07/29(火) 20:30:13 ID:7qkTF8c60
ペトラ「ハンジ先生、今のはいくらなんでもハンジ先生が悪いです。リヴァイ先生がキレるのは当然じゃないですか」

ハンジ「う……うん。確かに、今のは私が悪かった。どう考えても私が悪い」

叩かれた頬を触りながら、ハンジ先生が混乱していた。

ハンジ「私、何を期待していたんだろう。リヴァイになんで、何で………」

グラグラしているのが目に見えて分かる。ハンジ先生、ちょっとまずい状態だな。

精神的に不安定になっているんだ。どうしようもないくらいに。

その原因に早く気付ければいいんだが。どうしたらいいだろう。

ペトラ「私、思うんですけど……線引き出来ていないのはリヴァイ先生じゃなくて、ハンジ先生の方ですよね?」

ハンジ「え………?」

ペトラ「今の会話、どう見てもリヴァイ先生に「甘えている」ようにしか見えなかったですよ? 自覚ないんだとしたら、尚、性質が悪い」

と、言い捨ててペトラ先輩がオルオ先輩の方へ行ってしまった。

その後にニファ先輩が駆け寄って「大丈夫ですか?」と気遣った。

ニファ「少し、落ち着いた方がいいと思います。立てますか? 先生」

ニファ先輩はハンジ先生の方を気遣っているようだ。担任教師だからかな。

いやでも、ニファ先輩もハンジ先生の事を恨んでもおかしくないと思うんだが。

ハンジ「うん、ごめん……ちょっと頭冷やしたいかも」

と言ってヨロヨロと立ち上がったハンジ先生だった。

ハンジ「ごめん。皆。先に帰らせてもらっていいかな?」

男子生徒「いいっすよ。あんまり気落とさないで下さいね。ハンジ先生」

男子生徒「そういう事もありますって」

と、3年生達は割とすんなりこの事態を受け入れているようだ。

やっぱり3年の貫録なのかな。いや、そうだな。多分そうだ。

3年にもなれば恋愛経験値はもっと増えるだろう。

リヴァイ先生とハンジ先生の方が少なすぎるんだよ。きっと。

そんな訳でその日の夜はもやもやした事件を抱えたまま打ち上げがお開きになった。

オレとミカサは何とも言えない顔のまま自宅に帰りつき、

ミカサ「ハンジ先生、大丈夫かしら」

と、案じてしまった。

エレン「確かに心配だけど……もうなるようにしかならねえよな」

果たしてこの三角関係はどう終着するのか。

その時のオレは、何とも言えない心地で予想すら出来ずにいたのだった。

99進撃の名無し:2014/07/29(火) 20:36:39 ID:7qkTF8c60
気になるところですが、とりあえず一旦休憩。続きはまたノシ

100進撃の名無し:2014/07/29(火) 20:41:11 ID:L.WPtn2k0
100

101進撃の名無し:2014/07/29(火) 21:14:40 ID:7g7vR01g0
ペトラ正論だけど先生相手にやりすぎ。
ちょっとイメージダウンだわ

102進撃の名無し:2014/07/29(火) 21:50:57 ID:7qkTF8c60







次の日、クラスの方の打ち上げが行われる事になった。

クラスの方の打ち上げはボーリング大会になった。ユミルが絶対これにするといって独断で決めた。

文化委員の仕事で相当ストレスが溜まっていたらしい。ストライク決める度に大はしゃぎしている。

ユミル「よっしゃああああああ! すかっとするうううううう!!!」

なんかテンションがいつもと違っておかしい。大丈夫かな。あいつ。

と、ついつい心配しながらオレもゲームに参加している。

今回は特に罰ゲームも何もないから安心だ。普通にボーリングを皆で楽しんでいる。

アルミン「ボーリング久々だね〜」

エレン「アルミン、ボーリング得意だよな。スピードのろいのに何であっさりストライク取れるんだ?」

アルミン「そこはほら、ボールのコントロールを磨いた訳だよ」

と、ちょっと得意そうだ。

ミカサも華麗にストライクを連発している。

カコーン…カコーン…と小気味よい音がボーリング場内に響いている。

皆、わいわい楽しんでいる最中、一人だけテンションの低い奴がいた。

クリスタだった。

エレン「ん? クリスタ、何か元気ねえな? どうした? 具合悪いんか?」

クリスタ(びくん!)

アルミン「そうなの? クリスタ」

クリスタ「う、うううん! そんなことないよ? 楽しいよ?」

エレン「クリスタもアルミンと同じ技巧派タイプなんだぜ。この間、やった時、思いっきり騙されたよな」

アルミン「え……この間っていつ? エレン」

エレン「あーミカサの夏に水着を見立てに行った時だな。あの時、クリスタも一緒だったんだ。んで、帰りにボーリングしたよな」

アルミン「裏切り者ー(棒読み)」

エレン「しょがねえだろ!! 呼び出されたのはオレとライナーだけだったんだし」

アルミン「いや、途中からでも参加させてくれたっていいじゃないかー(棒読み)」

エレン「あ、そっか。そう言われればそうだな。すまん……」

クリスタ「…………」

あれ? やっぱりクリスタの様子がなんかおかしいな。どうしたんだ?

クリスタ「あ、あのね……」

エレン「ん?」

クリスタ「2人は、ユミルの事、どう思う?」

え? ユミル?

ユミルの方を見ると、ユミルは「よしゃあああああ!」を繰り返してストレス発散し続けていた。

エレン「ああ、性格悪いけど根は悪い奴じゃねえのかな? 口悪いけど」

アルミン「エレン、それはほとんど悪口だよ」

エレン「えー? じゃあ、あ、意外と周りをよく見ているかな。気回せるっていうか。気配りは出来る奴だよな。口悪いけど」

アルミン「君も大概だよ。エレン……」

エレン「アルミンに言われたくはねえなあ。アルミンはどう思う?」

アルミン「んー……大人っぽい色気はあるよね。スーツとか似合いそうだね」

エレン「おま、ユミルにまでエロ目線でいうのか。このエロ師匠が!」

アルミン「え? ダメ? いやだって、ユミルは色気あるよ? まあ、僕はユミルはタイプではないけど」

と、言った直後、クリスタがびくっと激しく反応した。

何だ? なんか本格的におかしいな。顔赤いし。

エレン「……? なんか、気に障ったのか?」

クリスタ「ううん。別に……」

エレン「いや、でも顔、赤いぞ?」

クリスタ「?! (顔隠す)」

103進撃の名無し:2014/07/29(火) 22:09:50 ID:7qkTF8c60
アルミン「今、何か僕、変な事、言った?」

クリスタ「ううん。全然……その、私も実は、そう思うんだけど、それって変なのかな」

アルミン「え?」

クリスタ「ユミルが、大道具の恰好で走り回っている姿見て、なんかいつもと違うユミルだなあって思って。格好いいっていうか、色っぽいというか、凄くいいなって思って。でもこれって、変なのかな」

エレン「………別に変じゃないと思うぞ。オレもミカサの男装姿を見て「いいね!」って心の中ではしゃいでいたからさ」

クリスタ「でも、それはエレンが「男」だからでしょ? 私、「女」なのに「女」の人にときめくのって、おかしくない?」

アルミン「…………………」

あ、アルミンが石化した。

ええっと、それって、つまり、その……。

なんか、クリスタ、ちょっと、そっちの毛、あるって事なのか?

エレン「あーすまん。そのトキメキがどの程度なのかオレには客観的には分からんが、ユミルの事が好きなのか?」

クリスタ「それは、友人としては当たり前に好きだけど、この感情がそれを越えているのか、良く分かんない」

ズーン……

アルミンが倒れそうになった。やべええええ!

もう、次から次へと何でこう、恋愛事で面倒事が起きるんだ?!

エレン「んー………」

アルミンを支えながらオレは言った。

エレン「すまん。オレは同性に対してそっちの感情を持った事がないから、さっぱり分からん。だから無責任な事は言えねえけど、同性に対して「可愛い」と思うことくらい、男でもあるぞ?」

クリスタ「そ、そうなの?」

エレン「ああ。アルミンとか、あとそうだな。リヴァイ先生も……かな」

ミカサ「エレン、それは初耳。本当?」

ミカサがいきなりこっちに来た。うああああびっくりした!!!

ミカサ「エレン。ちょっとその件について詳しく聞いていいかしら? 特にリヴァイ先生の方を<●><●>」

エレン「いや、そんなに顔近づけるなって。あくまで例え話……」

ミカサ「例え話だろうが何だろうが、リヴァイ先生を「可愛い」と思った時点でダメ。許さない」

エレン「ミカサのヤキモチは凶器だな! 頼むからちょっと落ち着け!!! 今はクリスタの話だから!!!」

と、どうどうと、何とか宥めながら、

エレン「だから、女同士でも「格好いい」と思うくらい別に変でも何でもねえよ。ミカサも女のファンがついちまったくらいだからな」

ミカサ「うっ……それは確かにあるけど」

クリスタ「そ、そう……」

クリスタが落ち込んでいる。何だろ。求めていた答えが見つからなかったのかな。

104進撃の名無し:2014/07/29(火) 22:23:45 ID:7qkTF8c60
クリスタ「でも、もやもやするんだよね。ユミルに触りたい気持ちになったり、その、ヤキモチなのかなって思う事もあるの。独占欲みたいなの、あるのは分かる。勿論、友達同士でもそういうのあるってのは分かってる。でも、これって、その範囲内なのか、分かんないのよね」

エレン「んー……」

これって「それはレズです」なんて言っていいのかな。

もし違ったら、オレ、物凄く無責任な奴になっちまうし。

自分の感情を他人が決めていいもんじゃねえよな。悩んでいるのは分かるけど。

エレン「それはオレが決める事じゃねえよ。クリスタ。自分で決める事だ」

クリスタ「じ、自分で…?」

エレン「ああ。例えそれがどんなに「変」な感情でも、それをどう「定義」するかは、自分で決める事だろ? 人から見たらそう見えても、そうじゃない場合もあるし。逆もあるんじゃねえかな」

クリスタ「逆?」

エレン「所謂、ツンデレな奴とかそうだろ? ツンツンしているけど、本当は好きとか。冷たいようで、本当は声援を送っているとか」

クリスタ「意味がイマイチ分かんないよ。エレン……」

エレン「悪い。オレもあんまり口がうまくねえから、分かりやすくは言えないけど」

人の感情っていうのは、難しく出来ているからな。

一見、そう思えないような行動が実は、愛情からくる行動だったり。

愛情に見えて、実はそうではなかったり。

んー。すまん。だんだん自分でも言いたい事が良く分からなくなってきた。

エレン「………とにかく、ユミルが好きなら、多分、好きなんじゃねえの? それがどんな関係でもいいじゃねえか」

クリスタ「それって、無理に恋愛に定義しなくていいって事?」

エレン「それはクリスタ自身がそう「したい」と思った時に定義すればいい話で、「今」そうする必要はねえだろ?」

クリスタ「そっかあ……」

なんかすっきりしたのかな。クリスタの表情が明るくなった。

クリスタ「エレン、ありがとう。ちょっと頭の中が綺麗になった気がする」

エレン「おう。なら良かったな」

クリスタ「うん。ありがとう。エレンに話して良かった」

と、こっちの問題は一応、あっさり解決したけれど。

クリスタがユミルの傍に移動した後、オレはアルミンの方を見た。

アルミン「………………」

あーあ。今度はアルミンの方がどん底に堕ちてしまった。

むしろこっちを浮上させる方が難易度高いミッションだぜ。

105進撃の名無し:2014/07/29(火) 22:35:04 ID:7qkTF8c60
アルミン「まさかの斜めからの刺客だよ。ユミルがクリスタの心を盗んでいたなんて……」

エレン「いや、でもあれは、そういうのじゃないかもしれないけどな」

アルミン「限りなく黒に近いグレーじゃないか! ううううう……(泣き出した)」

エレン「でも気持ちは分からなくはねえよな。ユミルの大道具姿、結構、格好良かったし」

ミカサ「うん。ユミルは格好いい。それは私も同意する」

エレン「アルミンも自分から行動起こさないと、手に入らないんじゃねえの?」

アルミン「クリスタがユミルみたいな格好いい人がタイプなら僕は完全に論外じゃないか……(ズーン)」

エレン「うーん……(困惑)」

困ったな。どうしようかな。こっちの問題は。

アルミンが落ち込み過ぎてオレの太ももの上に顔を伏せている。

と、その時、その様子に気づいたアニがこっちに来て言った。

アニ「何やってるの? アルミン、エレンとイチャイチャして。そっちに目覚めたの?」

アルミン「誤解を招くような事言わないでよ!!! 僕は健全な男の子だよ?! (*起きました)」

アニ「膝枕してもらっている時点でアウトだと思うけどね。いや、私は腐ってないけど、マーガレット先輩がここに居たらテンションあがるなあと思って」

アルミン「そうだった。ちょっと自重しよう。うん。もう大丈夫だよ(キリッ)」

アニ「やれやれ。アルミンも失恋か。失恋レストランを開いた方がいいのかもね」

エレン「ああ。秋は失恋の季節なのかもしれないな」

アルミン「そ、そんな事ないよ。秋だって恋の季節だよ。人が恋しくなる季節じゃないか。冬に向けて」

アニ「ああ、クリスマス?」

アルミン「そうだよ。クリスマスまでに彼女欲しい! って思う男子もいると思うよ」

エレン「そういえば、ミカサ。クリスマスどうする?」

ミカサ「クリスマス?」

クリスマスで思い出した。恋人同士になってから初めての折角のクリスマスだからな。

長期的に計画立てて何かやりたいなあって思ったんだ。

106進撃の名無し:2014/07/29(火) 22:57:06 ID:7qkTF8c60
エレン「ほら、占いで「デートした方がいい」みたいな事も言われたしな。クリスマスはちょっと贅沢してみないか?」

ミカサ「贅沢……山登りとか?」

エレン「え? お前の中で山登りは贅沢なデートなのか」

ミカサ「うん。山登りはとても贅沢なデート……(キラキラ)」

エレン「そ、そうか……まあ、いいや。うん。それは今度やるとして、クリスマスは何か記念になるような事をやりたいな」

ミカサ「エレンに任せる(うっとり)」

アルミン「そこ! リア充爆発させないで! 爆ぜろって言いたくなるから! ジャンじゃないけど!」

エレン「悪い。ついついな」

と、ニヤニヤ話してしまう。

アニ「クリスマスか。今年も独り身かな。私も」

ミカサ「え?」

アニ「クリスマスを誰かと一緒にわいわい過ごしたことないんだよね。クリスマスパーティーみたいなの。やったことある?」

ミカサ「家族でひっそりとしたものはやるけど、クリスマスに皆でわいわいはしたことない」

アニ「だよね。今年くらい、やってみたいなあって思うけど……(チラリ)」

うぐ! この意味深な視線はなんだ?!

ミカサ「では、クリスマスは皆でエレンの部屋に集まろう。そしてゲーム大会をやろう」

エレン「ええええええ………」

言うと思った。ミカサ、この間のGWの集まりで味しめがやったな?

エレン「2人で過ごすんじゃないのかよー」

ミカサ「それは、イブの間に済ませて、当日は皆で集まりたい」

エレン「ああまあ、それでもいいけどさー別にー」

アニ(ニヤリ)

アニもたまにミカサを独占したいんかなって思う時あるが、これ確信犯だよなあ。

まあいいか。アニはいい奴だし。アルミンも混ぜて、仲いい奴ら集めてパーティーするのも悪くねえかもな。

……………と、この時はそんな風にぼんやりと考えていたんだけど。

この後、この予定を覆す、とんでもない予定が別に入る事になる。

そのある意味では運命の日と言える日に、オレ達は立ち会う事になるのだが。

まあ、それはもうちょっと先までのお楽しみにしよう。

そんな訳でその日はボーリングで打ち上げをしてその後は各自解散になった。

アルミンはまだちょっとフラフラしていたけど、アニが付き添っていたから多分大丈夫だろ。






そして次の日。10月7日。平穏な日常が戻って来た。

中間考査も近いから真面目に勉強しないといけないけど、実はテストの後には、1年生になってからの初めての「四者面談」が行われる予定だ。

担任教師と進路指導の先生と保護者と本人の四人で進路を相談し合うんだ。

だからオレはテスト後の進路相談に向けての準備も同時に進めないといけないな、と思っていた。

107進撃の名無し:2014/07/29(火) 23:20:09 ID:7qkTF8c60
とりあえずとっかかりが欲しいからエルヴィン先生のいる進路指導室にお邪魔しようと思って、その日の昼休み、オレとミカサは2人でお邪魔する事にした。

資料を見たりするのはエルヴィン先生の許可があればいつでも入れるようになっている。

その日はオレとミカサだけが昼休みに来ていたようで、他の生徒はいなかった。

まだ四者面談まで時間があるからかな。でも直前は混雑しそうだし早めに行動した方がいいよなと思って、オレ達は進路指導室に入ったんだ。

しかし、他の生徒はいなかったけど、代わりに別の先客が居た。

リヴァイ「ZZZZZ………」

ソファで寝転がって寝てるー?!

爆睡している。黒ジャージ姿で寝ている。やべえ。起こしたらまずいよな。コレ。

と、思っていたら、あっさり起きた。あちゃー。

リヴァイ「あ? しまった。寝ていたか」

エレン「起こしてすみません……」

リヴァイ「いや、助かった。昼休みだろ? 昼飯食わないといかんからな」

ミカサ「こんなところでサボっていたんですか?」

リヴァイ「自宅じゃあまり寝れなくてな……」

心中、お察しするぜ。リヴァイ先生。

ハンジ先生、上の階に住んでいるんだもんな。そりゃ気になって寝れねえよな。

エレン「あの、食べてますか?」

リヴァイ「ああ。飯はちゃんと食ってるよ。ただ、寝る方がちょっとな」

と、目の下に疲労の跡を残してリヴァイ先生が言った。

リヴァイ「エルヴィンは? あいつはいないのか?」

エレン「後から来ると思いますけど。先に行ってていいと言われて鍵貰って先に部屋に入りました」

リヴァイ「そうか……」

リヴァイ先生が肩を落としている。無理ねえよな。

あの後、きっと謝る事も出来ずにいそうだ。この様子だと仲直りした感じじゃない。

リヴァイ「自分の口の悪さを後悔したのは今回が一番かもしれん……」

と、肩を落とす様は本当に可哀想だった。

エレン「まだ、謝れてないんですか?」

リヴァイ「目も合わせてくれなくなった。完全に距離を取られているよ」

ミカサ「そうですか………」

リヴァイ「なんでこう、俺は天邪鬼なんだろうな。本当は、ハンジが甘えて来た瞬間、嬉しかったのに」

ああ。やっぱりそうなんだ。だよな。そういう人だもんな、リヴァイ先生は。

108進撃の名無し:2014/07/29(火) 23:43:05 ID:7qkTF8c60
リヴァイ「モブリット先生と付き合わないという判断をしたハンジに喜んでいる自分がいるのに、それをさっさと実行しないハンジに苛ついた。モブリット先生を気遣うあいつの様子に嫉妬したんだよ。男として、最低じゃねえのか、これって」

ミカサ「いいえ? 全然。それはむしろいい傾向だと思いますが」

リヴァイ「そうなのか?」

ミカサ「はい。大丈夫です。それは正常な感情です」

おお。ミカサが珍しくリヴァイ先生に突っかからない。

やっぱり相思相愛だって気づいてからは態度が変わったな。ミカサ。

ミカサ「でも、そこで「俺に何を期待しているんだ?!」というような言い方をされていたのはマイナスだったと思います。あの時、ハンジ先生はそこまでは求めていなかった。ただ、リヴァイ先生に話を聞いて欲しかっただけなんだと思うので」

リヴァイ「解決策を俺に求めていた訳じゃなかったのか」

ミカサ「女なんてそんなもんです。聞いてくれさえすれば、後は勝手に自分で立ち直ります」

おお、そうなのか。じゃあオレも今度からそうしよう。

リヴァイ「そうか……いや。そう言われればその通りだ。いつもの俺達なら、それに気づいていた筈だ。やっぱりあの時は、お互いに正気じゃなかったんだな」

ミカサ「そうですね。でも人間は冷静でない時は必ずあります。私もそうです」

と、言ってミカサはオレの方を見て言った。

ミカサ「でも、失敗しても、克服する事は出来ます。私がそうだったので」

リヴァイ「……」

ミカサ「その為には誰かの力を借りる事も必要だと思います。リヴァイ先生の場合は、一人で抱え込み過ぎなのでは?」

リヴァイ「………………」

リヴァイ先生が顔を隠して泣きそうになっていた。

リヴァイ「今、優しい言葉をかけないでくれ。泣いてしまいそうになるだろうが」

ミカサ「泣けばいい。どうせ今、ここには私とエレンしかいない」

エレン「いいですよ。泣いても。リヴァイ先生。誰にも言いませんから」

リヴァイ「……………」

しかしリヴァイ先生は泣かなかった。

それどころか、笑ったのだ。微笑みを浮かべたのだ。

リヴァイ「お前らは本当に強いな。でも俺は天邪鬼だからな。泣けと言われたら泣きたくなくなるんだ」

ミカサ「面倒臭い……」

リヴァイ「ほっとけ。しかしこうやって話しているだけでも大分落ち着くな。ありがとう………」

と、リヴァイ先生がほっと空気を弛緩させた直後、



ハンジ「ごめんね。エルヴィン。急に時間とってもらって」

エルヴィン「構わないよ。どうしても相談したい事なんだろ?」



と、進路指導室に噂の人物が入ってきたのだ。

リヴァイ「!」

リヴァイ先生、反射的にソファにまた寝転がって隠れちまった。

ちなみに今、いるここは、間に仕切りがあって、ハンジ先生達のいるところから直接見えない。

上面図で説明すると、入り口から見て手前に机と椅子があり、その間に本棚があって、そこにソファとテーブルがある。

進路指導を2組以上でやる場合もあるから、話し合うスペースが2つあるわけだ。

オレ達がいたのはつまり、奥の方の席。エルヴィン先生とハンジ先生は手前の席に向かい合って座ったんだ。

109進撃の名無し:2014/07/30(水) 00:00:31 ID:OG5QGHz.0
お、オレも釣られて心臓がドキドキして来た。

何を相談するのか分からんけど、この距離なら2人の会話は丸聞こえだ。

ハンジ先生、周りを注意する余裕がないのか、エルヴィン先生と一緒に座るなり「どおおおおしよおおおおお」とぐだまいた。

ハンジ「困ったよエルヴィン! 私、またやらかしたよおおおおお!!」

エルヴィン「うん。何をやらかしたの?」

ハンジ「もう全部だよ全部! 何もかも!! モブリット先生には告白されるし、リヴァイのところのペトラに頬ぶたれるし、リヴァイとはまた喧嘩しちゃうし! 忙しすぎるよおおおおお!!!」

と、本当に何もかも曝け出すみたいだ。

エルヴィン「ハンジ。話が断片的過ぎる。ちょっと落ち着こうか」

ハンジ「う、うん……ごめん(赤面)」

あれ? 声のトーンが一気に大人しくなった。

ハンジ「…………あのね」

声が、可愛い。え? 何でいきなり? 変わったんだ?

ハンジ「わ、笑わないで聞いて欲しいんだけど」

エルヴィン「ああ。笑わないよ」

ハンジ「私、物凄い大きな勘違いをしていたのかもしれない……」

エルヴィン「勘違い? どんな?」

ハンジ「その……リヴァイ、との事なんだけど」

リヴァイ「!」

リヴァイ先生、目を大きく広げて動揺しているぞ。

今、すげえ心臓バクバクなんだろうな。オレもそうなんだけど。

盗み聞きしているのは良くないけど、出るに出れない状況だから仕方ねえよな。

110進撃の名無し:2014/07/30(水) 00:23:38 ID:OG5QGHz.0
エルヴィン「リヴァイがどうかしたのか?」

ハンジ「ええっと、ちょっと待ってね。今、頑張って分かりやすく説明するから」

エルヴィン「うん」

ハンジ「……………実は、昨日の振り替え休日にモブリット先生と2人で会ったんだ」

リヴァイ「!」

滝汗掻いている。リヴァイ先生、まだ動いちゃダメだ!!

ハンジ「勿論、お付き合いを断ろうと思ってね。申し訳ないけど、私は結婚を視野に入れた付き合いは出来ないし、何よりモブリットとは同僚でいたかった。でも彼はどうしても納得してくれなくて。だから私、思い切って言ったんだよね。自分のダメなところ。全部。出来るだけ、詳細に。そしたら、彼は『それでも真剣に交際したい』と言ってきてね。何もかも、私側の要望の条件を飲んでも、それでもいいから付き合いたいって言い出してきて、正直、驚いたんだ」

エルヴィン「それだけ彼が真剣にハンジを愛している証拠だね」

ハンジ「うん。まさかここまで食い下がられるとは思わなくて……だから、つい、言っちゃったんだ。私、風呂もまともに入らないくらい超がつく程の面倒臭がり屋だよって。リヴァイとの事は勿論、伏せたけど。そしたら、モブリット先生の方から『だったら一緒に試しに風呂に入ってみませんか』って言ってきて……」

その言葉を聞いた瞬間のリヴァイ先生の顔が凄かった。

な、なんていうか、スーパーサイヤ人になりかけ? みたいな?

表情の筋肉は動いてないのに苛立ちだけは伝わってくる。

これは相当、嫉妬しているんだな。まあ、無理もねえけど。

エルヴィン「入ってみたんだ」

ハンジ「うん。まあ、1回だけならいいかなっていうか、その……ごめん。正直、押し切られたような形だったんだけど」

リヴァイ先生、次の瞬間、顔を隠してしまった。

うわあ。認めたくないけど聞いちゃったって感じだな。

でもまあ、しょうがない。過ぎた事だ。続けて聞いていこう。

ハンジ「んで、まあ、その……リヴァイ以外の男の人に初めて、自分の体を洗って貰ったんだよね」

エルヴィン「ふむ……」

ハンジ「正直、その…リヴァイの時のような爽快感のようなものがなくて、さ。だらだら体洗うし。なんていうか、そこじゃない! みたいな。ええと、こういうのなんていうのか分からないんだけど、とにかく、その……なんか違うなって思ってしまってね」

エルヴィン「うん……」

ハンジ「でも折角洗って貰っているのにそんな事、言えないじゃない? だから適当なところで「もういいよ」って言って切り上げさせようと思ったんだけど」

エルヴィン「ふむふむ(ニヤニヤ)」

111進撃の名無し:2014/07/30(水) 00:46:56 ID:OG5QGHz.0
ハンジ「そしたらさ、その、モブリット先生が、その、だんだん、その気になってきて……私の、股を洗おうとしてきたから、思わず「そこはやめて!!」って、跳ね除けてしまって………」

ぎゃああああ! 当然の展開だろうが! 馬鹿かハンジ先生!!!

酷い話だな。それは男の立場からすれば泣くしかねえよ。

ハンジ「その瞬間、私、思い出したんだよ」

エルヴィン「何を?」

ハンジ「リヴァイと、一緒にダンスの資格を取りに行く為に旅行した時の事を」

リヴァイ「…………」

リヴァイ先生が真っ赤になっていた。なんだ? 何を言おうとしているんだろう。

ハンジ「あの頃から既に、私、あいつと良く一緒に風呂入っていたし、体も洗って貰っていたんだけどさ。リヴァイはね、絶対、その、あそこだけは、絶対。何があっても洗おうとしなかったの。だから一回、「なんで?」って聞いてみたんだよね」

リヴァイ先生の赤面度がどんどん酷くなっていく。これは面白い事が聞けそうな予感だ。

ハンジ「そしたらさ、『そこは人間の体で一番デリケートな部分だから力加減がとても難しい。洗ってやれない事もないが、同意がない状態では洗ってやれない』って言ってきてね。『そこだけは、自分でやれ。まあ、洗って欲しいならやってやれなくもないが……』って言って、こう、手首をくいっと動かしてね?」

リヴァイ先生、なんつーエロ発言してんだよ!!!!!

ミカサまで真っ赤になっちまった。これは酷い!!!! 酷過ぎる!!!

ハンジ「勿論、私は『丁重にお断りします!!!!!』って言って、慌てて拒否したけどね。だから、リヴァイは私の身体は洗ってくれていたけど、絶対、その、女性器の部分には触れなかったんだよ」

エルヴィン「それは初耳だったね。私はてっきりそこも込みだとばかり思っていたよ」

ハンジ「あー普通はそう思うかもね。でも、本当。うん。信じて貰えないかもしれないけど、そこだけは外していたんだ。あ、おっぱいも、かな。『自分でやれるだろ?』って。あいつが念入りに洗うのは背中側の方で、自分では洗いにくくて、汚れが溜まりやすい場所だったね。それ以外は、ざっと、する感じ。私が疲れない様に、必要最低限の洗い方しかしなかったのよ」

うはあああ……リヴァイ先生の顔がもう、赤いの通り過ぎて黒くなっているような気がする。

エルヴィン「ふむ……」

ハンジ「んで、今思うと、私がそう答えた直後、あいつ、小さく『ちっ』って、舌打ちしていたんだよね。私の気のせいだったのかもしれないけど、今となっては、確認のしようがないけど。でも、でもね………」

ハンジ先生がそこで大きく息を吸ってから言った。

ハンジ「それ、思い出した瞬間、私、なんかこう、ふわあああって、体が熱くなってきて、リヴァイとの思い出が一気にこう、蘇ってきて、身体に力が入らなくなってきて、震えてきてね。こういうの、もしかして、もしかすると、あの……なんていうか、その、私達って、実は、その………」

エルヴィン「あともう少しだよ。ハンジ、頑張って」

ハンジ「う、うん。あーちょっと、水飲んでいい? 喉カラカラなんだけど」

エルヴィン「紅茶を出してあげよう。ちょっと待ってて」

そして紅茶を入れて再開。ハンジ先生は落ち着いてから続けた。

112進撃の名無し:2014/07/30(水) 01:08:14 ID:OG5QGHz.0
ハンジ「私ね、こういうのも変な話だけど、セックスでイクっていう経験、まだしたことないんだよね」

いきなり赤裸々な話がきたな!

つか、こんな話聞いてエルヴィン先生もよく平気で居られるな。

ハンジ「セックス自体はその、何度か経験あるけど、エロ漫画とかビデオであるような、ああいう大げさな快楽の経験が一度もなくて。だからどこかで「女として欠陥品」なのかなって思っていて。まあでも、別に生活に困る事でもないし。それに「トキメキ」の謎が解けないうちはやっぱり、そういうの無理なのかなって諦めていたからね」

エルヴィン「そうだったね。では、今は違うのかな?」

ハンジ「うーん………その、私の場合は、もしかしたらその「快楽」そのものをあんまり求めてなかったんじゃないかなって結論になった」

エルヴィン「快楽を求めていない?」

ハンジ「そう。それよりも、「安心」というか「安心感」かな。うん。こう、どっしりとした、布団に包まれるような幸せっていうのかな。ふわっとするような、くすぐったいような。ドキドキじゃなくて、気が付くと、ニヤッとしているような。そういう小さな幸せを積み重ねていけるような。そんなパートナーが欲しかったのかもしれない」

エルヴィン「うん。では、その相手が、リヴァイなのかもしれないと。そう思ったんだね?」

ハンジ「うん………多分、そういう事なんだと思う。だからその、世間から見たら変なのかもしれないけど。私、その、リヴァイとは、男女の仲の範囲でつきあっていたのかもって、今になって思ったの」

エルヴィン「いいや? 全然変じゃないよ。ハンジ。というか、気づくのが遅すぎるよ」

ハンジ「やっぱり?! 私、やっぱり気づくの遅かった?! ああああ…………!」

と、変な声をあげるな。リヴァイ先生の顔色がやっと普通に戻った。

ちょっと落ち着いたようだ。でも、凄く嬉しそうだ。

ハンジ「見つからない筈だよ。私の中の理想って、若い皆がやってるような「ドキドキ」じゃなくて、「ニヤッ」だったんだよ。すっごく小さな幸せだったんだよ! 線香花火くらいの。それを地味に続けるような感じ! 一緒に馬鹿やってくれるような、そういう人を求めていたんだって、やっと分かったんだよ」

エルヴィン「それはつまり、リヴァイの事を、ちゃんと男性として好きだって事だね?」

ハンジ「多分……いや、ごめん。うん。ちゃんと、好き」

と、言った瞬間の声、すげえ可愛かった。

113進撃の名無し:2014/07/30(水) 01:26:38 ID:OG5QGHz.0
ハンジ「だからその、エッチしてないけど、しているような? 矛盾しているけど。ひとつになってないのに、ひとつになっているような。そういう関係だったのかなって、今になって思ってね。これって、やっぱり変かな?」

エルヴィン「いいや? 変じゃない。というより、エッチの「定義」の認識の方が間違っていると私は思うよ」

ハンジ「定義の方が?」

エルヴィン「そう。キスとセックスをしないと「エッチ」ではないと誰が決めた? 心が通じ合えば、たとえ触れる事すら敵わなくとも、それは恋人同士の愛の営みという事も出来るんだよ」

ハンジ「そっか……じゃあ固定観念に囚われていたのは私の方だったんだね」

と、すっきりしたようにハンジ先生は言った。

ハンジ「実際、すっごい気持ちいいなって、思っていたんだよね。リヴァイとのお風呂。酷い時は、途中で寝ちゃう事もあったよ。だって、あいつ、洗うの上手すぎるんだもん。でも、私が寝ちゃっても、ちゃんと服着せてくれて、その辺の床の上に寝転がしてくれてね。安心して寝る事が出来たんだ」

エルヴィン「つまり、ハンジにとって、リヴァイは安心出来る存在だったんだね」

ハンジ「うん。それに気づいたのは……あの子が体張って私の頬をぶってくれたおかげだよ。あの子には感謝しか出来ないよ」

ペトラ先輩の事だな。これは。

ハンジ「私にね、「リヴァイに甘えているようにしか見えない」って、超どストレートの言葉を注入してくれてね。その言葉の意味を噛みしめた瞬間、なんかこう、だんだん、パズルのピースが集まってくるような。自分の中の「謎」が全部一気に解けていくような。推理小説の解答を全部理解するような。不思議な感覚を味わったよ。あの子も辛かっただろうに。本当に、彼女には申し訳ない事をさせてしまったよ」

エルヴィン「そうか。では、ペトラが体を張ってくれたおかげで、今のハンジの「結論」が出たんだね」

ハンジ「スイッチボタンを押してくれたような感じだね。爆発させたのは、モブリット先生だったけど」

エルヴィン「そうか。そこまで結論が出たならもう、ここから先はリヴァイと本当の男女の意味で付き合っていくつもりなのかな?」

ハンジ「うぐっ……!」

あれ? その直後、ハンジ先生の声が詰まった。

114進撃の名無し:2014/07/30(水) 01:44:11 ID:OG5QGHz.0
ハンジ「むしろ問題はそこから何だよね……」

エルヴィン「何が問題だ? ハンジはリヴァイの事、好きなんだろう?」

ハンジ「いや、でも、この間、物凄くまた怒らせちゃってね。どうやったら謝れるのか分からなくて……というか、目合わせると、自分の顔が赤くなるの分かるし。まともにあいつ、見れない自分が居て、どうしたらいいのか分かんないんだよね」

ああ。目合さないって、そういう意味だったのか。

良かった。悪い意味じゃなかったんだ。

ハンジ「だからその……今後、どうしていったらいいのか、エルヴィンにアドバイスを」

エルヴィン「それはもう、私がどうこう言える問題じゃないな。愛の進路相談は、2人でやるべき事だから。なあ、リヴァイ?」

うあ!? ここでバラすのか?! 酷い!!!

リヴァイ先生がゆっくり立ち上がった。そしてくるりと、振り返り、

リヴァイ「ああ。じっくり話し合おうか。ハンジ」

と、言い出したのでハンジ先生は直後、「ぎゃあああああ?!」と大絶叫した。

ハンジ「え……嘘……今の、全部、聞いていたの?」

リヴァイ「ああ。全部、聞いた」

ハンジ「酷い!! エルヴィン!!! これ、完全に私を嵌めたね?!」

エルヴィン「人払いをして欲しいなんて一言も言わなかっただろ? 先客はリヴァイ達の方だったしね」

リヴァイ「ああ。ここのソファで寝かせて貰っていたからな」

ハンジ「あーうー(赤面)」

エルヴィン「じゃあ、ここからは、2人だけで大丈夫だね」

リヴァイ「ああ。手間をかけさせたな。エルヴィン」

エルヴィン「このくらい、どうって事ないよ。じゃあ、ごゆっくり♪」

という訳でオレとミカサも進路指導室を追い出されてしまった。

ドアの外でエルヴィン先生が悪い顔をしている。

エレン「な、なに話すんだろう……気になる」

エルヴィン「大丈夫。既に手は打ってある」

エレン「え?」

エルヴィン「ピクシス先生が今、監視室にいるから。進路指導室の様子はRECしている筈だよ」

ひでえええええええ!!!!

でも、超見たい。中の様子見たい。

ソワソワしちまう。どうしよう。実況してくんねえかな。

とか思っていたら、

エルヴィン「教室に移動してご覧? テレビ繋いで今頃、中の様子を中継している筈だよ」

もっと酷い事考えていたこの先生!!!!

ミカサ「エレン、教室に戻ろう」

エレン「お、おう……」

という訳で、オレ達はエルヴィン先生と別れて教室に戻った。

そしたら本当に、教室のテレビに中継が入っていて、リヴァイ先生とハンジ先生のガチ(愛の)進路相談が始まっていた。

115進撃の名無し:2014/07/30(水) 01:47:16 ID:OG5QGHz.0
そんな訳で愛の進路相談は次回。今日はここまで。
いろいろと酷い回ですんませんでした…orz

あと、ペトラが悪役になった理由、伝わったかな…。
ペトラはイメージダウンどころか、鬼になる覚悟でぶってますので、
許して差し上げて下さい。

116進撃の名無し:2014/07/30(水) 01:58:21 ID:AYVCKSFY0
はぁー面白かった、読みごたえあった!
乙でした
ハンジは軽くライバルなのに、奮起させるために手をあげたんだね
ペトラは強くて真っ直ぐな女だ
そしてミカサとアニ達のクリスマスパーティー、中止になるなかな…ドキドキする

117進撃の名無し:2014/07/30(水) 03:54:01 ID:sr7EdY2A0
悪役は大人にしてほしかった
周りに他の生徒がいる中であれは先生の面目が立たない
誰か大人が(ペトラの気持ちを汲んだ上で)宥めて欲しかったな

118進撃の名無し:2014/07/30(水) 05:13:59 ID:3ryxzPls0
1の作品なんだからグダグダ言うなよ
あやはリヴァイが好きなペトラだからこそよかったと思うよ

アニとミカサコンビまじかわ…

119進撃の名無し:2014/07/30(水) 09:15:01 ID:OG5QGHz.0
>>117
ハンジ先生はそういう面目とかを気にするようなタイプの先生ではないので大丈夫です。
むしろペトラ自身の周りからの評判とかが地に堕ちる事を心配しています。
だから「申し訳なかった」と言っています。

あとついでに言うなら、このシーンはオルオペトラの伏線も入ってます。
もうちょい先になりますが。すみません。

120進撃の名無し:2014/07/30(水) 09:41:25 ID:OG5QGHz.0
教室に残っている奴らは突然のお昼のテレビ放送に「なんだ?」とざわついている。

弁当食っている奴はもう大分少ないから、まったりムードで教室内で過ごしていたから余計にそうなった。

ハンジ『…………………』

リヴァイ『……………』

ハンジ『な、なんでニヤニヤしてるのよ〜』

リヴァイ『悪い。ニヤニヤが止まらないんだ』

ハンジ『そこのソファで寝ていたんだったら、途中で言ってくれたっていいじゃない!』

リヴァイ『言いそびれたんだよ。エルヴィンとの会話を邪魔しちゃ悪いと思ってな』

ハンジ『嘘ばっかり……盗み聞きしていたくせに』

リヴァイ『ああ。まあ、実はそうなんだが』

ハンジ『もう〜リヴァイは本当に意地悪ね! 恥ずかしい〜!』

と、顔を隠すハンジ先生だった。

なんだなんだ? 生徒達はまだ、事態を把握出来ずにテレビに注目している。

ハンジ『…………………』

リヴァイ『…………』

ハンジ『ちょっと! 黙ってないで何かしゃべってよ! 居た堪れないじゃない!』

リヴァイ『ああ……悪い悪い。照れているハンジを見るのは珍しいと思って、つい見入ってしまった』

ハンジ『やめてよ! じっくり見ないで! その……自分でも、どうしたらいいのか分かんないんだから』

リヴァイ『そいつは無理な相談だ。こんなに面白い事はない……ククク……』

2人の間に、甘ったるい空気が流れている。こそばゆいなあ。

ハンジ『あーうーその、えっと、どうしようか』

リヴァイ『ん?』

ハンジ『その、というか、それ話す前に、私から謝らないといけないね。ごめん……』

リヴァイ『何がだ?』

ハンジ『だから、その………あんたに甘えまくっていたことだよ。ペトラにぶたれて初めて、気づいた。私、物理的な部分だけじゃなくて、精神的な部分まであんたに甘えまくっていたんだって事を……』

リヴァイ『その、ペトラにぶたれたっていうのは、俺と別れた後の事か』

ハンジ『うん……あの子、半泣きで私をぶったんだよ。他の生徒がいる中で。本当に申し訳ない事を、彼女にさせてしまった………』

リヴァイ『そうか………』

ハンジ『だって、あんな事したら、ペトラ自身の周りからの評判が落ちるに決まっているじゃない。こんな私みたいなダメ教師の為に、あの子の手を煩わせたと思うと、大人として、自己嫌悪するよ………」

リヴァイ『過ぎてしまった事は悔やむな。ペトラには俺からも話しておくよ』

ハンジ『うーん……本当にごめんね』

リヴァイ『その事は後で何とかするとして。ハンジ。昼休み時間も限りがあるから、単刀直入に聞く。これからどうしたい?』

ハンジ『え? と、言うと?』

リヴァイ『ハンジはこれから、俺とどうしたいと聞いているんだ。ハンジ自身の今の素直な気持ちを聞かせてくれ』

きたあああああ!!! 盛り上がって来たぜ!

この辺になってくると、教室の奴らも大体察したようで、わくてかし始めた。

121進撃の名無し:2014/07/30(水) 09:54:28 ID:OG5QGHz.0
ハンジ『ど、どうしたいんだろう……?』

リヴァイ『おい……(イラッ)』

ハンジ『いや、待って! もともと、その辺の話はエルヴィンと話して自己分析してからリヴァイと話すつもりだったのよ! 心の準備もない状態で聞かれても困るよ!!』

リヴァイ『お前は本当に面倒臭い奴だな。そんなもん、俺に直接聞けばいいだろ』

ハンジ『じゃあ、聞いていい? リヴァイは、私と、どうしたいの……?』

リヴァイ『ハンジが話してくれたら答える』

ハンジ『それってずるくない?! 人には聞いておいて、答えないってずるくない?!』

リヴァイ『うるさい。いいから答えろ。ハンジが先だ。レディーファーストってやつだろ』

それ、使い方間違ってますよリヴァイ先生。

いや、分かってて言ってるんだろうけどな。多分。

ハンジ『うー……もう、しょうがないなあ。分かった。じゃあ、話す。話すけど……』

リヴァイ『ん?』

ハンジ『わ、笑わないで、聞いてね? 一応、前置きしておくけど』

リヴァイ『ああ。分かった』

ハンジ先生はそこで、区切って手で自分の胸を押さえてから言った。

ハンジ『提案したい事があるの』

リヴァイ『ああ。どんな提案だ?』

ハンジ『私達、試しに一緒に、暮らしてみない?』

おおおおおおお?! いきなり同棲の申し出だあああああ!!!

ハンジ先生、やるな! これは教室の中もざわめいてきたぜ!!

122進撃の名無し:2014/07/30(水) 10:22:34 ID:OG5QGHz.0
リヴァイ『それは「同棲」の提案だと受け取っていいのか?』

ハンジ『そうだね。リヴァイと一緒に暮らしてみたい。そういう感情が、今、私の中に「ある」んだけど』

リヴァイ『……けど?』

ハンジ『なんかこんな事を言っちゃうと、アレなんだけどさ。これって、よくよく考えたら、私、まるでリヴァイの体目当てに一緒に暮らしたいって言ってるようなもんだよね。あんたと一緒に入る風呂が癖になっちゃってさ。もう、他の男じゃダメになっちゃったみたいだし』

なんかそういう言い方すると途端にエロくなるのが不思議だな。

リヴァイ『ああ? (不機嫌)それの何が悪いんだ?』

ハンジ『ええ?』

リヴァイ『だから、それの何が「悪い」んだ? 別に俺はそれでも一向に構わんが』

ハンジ『じゃあ、同棲してくれるの?』

リヴァイ『いや、同棲の話じゃなくて「体目当て」でも別に構わないって言ったんだが』

ハンジ『あんた、どこまでマゾなのよ?! やっぱりサドに見せかけたドМだよね?!』

リヴァイ『そんなもん、どっちでもいい。話を逸らすな。つまり、ハンジから見て俺と同棲したいという感情があって、その理由は俺じゃないとハンジに与えてやれない事なんだろ?』

ハンジ『まあ、そういう事になっちゃいますね』

リヴァイ『なら、話は早い。………断る』

ハンジ『ええええちょっと、持ち上げといて、落とすって?! アレ?! あんた、やっぱりドSだった?!』

リヴァイ『SとかМとかの話は、今はどうでもいい。それより、同棲の件は承諾出来ない』

ハンジ『えええ……断られると軽く凹むんだけど。じゃあ、今まで通りの形態なら付き合ってくれるの?』

リヴァイ『そうじゃない。そういう話じゃない』

ハンジ『ん? つまりどういう事……?』

次の瞬間、一瞬、間があって、リヴァイ先生が唾を1回飲み込んだのが分かった。

皆もなんとなく予感している。これは、きっと、来るぞ。

リヴァイ『そういう話なら………ハンジ。結婚するぞ』

ハンジ『へ………?』

リヴァイ『だから、そういう話なら「同棲」よりも俺は「結婚」の形の方がいいと言っている』

ハンジ『え………えええええええ?!』

リヴァイ『何をそう驚いている。何かまずい事、言ったか?』

ハンジ『いやいやいやちょっと待ってよ?! 何で同棲を提案して断られて「結婚」の話になるの?! 訳が分からないよ?!』

リヴァイ『訳が分からんのはお前の方だろ。ハンジ。どうして「一緒に暮らしたい」っていう感情があるのに、同棲なんてかったるい事を言い出す。同棲する意味なんてあるのか?』

ハンジ『いや、あるでしょ?! こう、段階的なものっていうか、その、物事には順序みたいなものが……』

リヴァイ『それはお互いの事をまだ良く知らない男女の為にあるようなもんだろ。俺達の場合は必要ない』

ハンジ『え? そ、そうなのかな? いや、でも、いくら付き合い長いからって、それとこれとは別なんじゃ……』

リヴァイ『別じゃない。必要性がないならする必要はない。結婚の形の方が収まりついていいし、それに俺にとっても都合がいいんだ』

ハンジ『え? リヴァイの方にメリットあるの?』

リヴァイ『大いにある。だから俺は結婚の方がいい。同棲は、却下だ』

ハンジ『えええええ……ちょっと待ってよ?! それは私の方が承諾出来ないよ!』

リヴァイ『何故だ。何が不満なんだ』

ハンジ『だって、仕事続けたいし……』

リヴァイ『俺は別に辞めろとは言わん。むしろ続けた方がいいと思っているが?』

ハンジ『家庭に入らなくてもいいの?』

リヴァイ『俺が一度でもそういう部分をハンジに求めた事あったか? 今まで全部、俺が代わりにやっていたのに』

ハンジ『そういえばそうでしたね?! でもほら……結婚しちゃったら、リヴァイのファンの子達、泣いちゃうよ? また私、恨まれちゃうし、今度こそ、暗殺され兼ねないよ?』

リヴァイ『その点については、とっておきの秘策がある』

ハンジ『秘策……?』

リヴァイ『結婚を機に、俺の方が教職を辞めればいい。俺が代わりに家庭に入ってやろうじゃないか』

と、リヴァイ先生が爆弾発言したもんだから、他のクラスとか、いろんなところから絶叫が聞こえ出した。

いやあああああ?! とか嘘おおおおお?! とかいろいろ。

123進撃の名無し:2014/07/30(水) 10:39:21 ID:OG5QGHz.0
ハンジ『は……? あんた、何言ってるの? 正気なの?』

リヴァイ『俺はいたって真面目だが?』

ハンジ『いや、熱でもあるんじゃないの? あんた、教職捨てるって……馬鹿じゃないの?!』

リヴァイ『そうか? 別に自分ではそうは思わんが。むしろワクワクしているぞ。これでようやく専業主婦…いや、主夫か。俺の夢が一個叶う訳だからな』

ハンジ『そんな話は初めて聞いたんですけどおおおおおお?!』

リヴァイ『今、言ったからな。そもそも俺はもともと、なりたくて教職についた訳じゃない。ある意味ではエルヴィンに嵌められてうっかり教員になっちまったようなもんだ。だから、教職に未練がある訳じゃないんだよ』

ハンジ『で、でも……リヴァイを慕う生徒達がどんだけいると思っているの? あんた、生徒を見捨てる気なの?』

リヴァイ『それについては申し訳ないとは思っているが、背に腹は代えられん。ハンジと結婚出来るんだったら、俺は教職を捨てる覚悟はある』

おおおお。なんと男らしい発言なんだ。

その瞬間、ハンジ先生がうるっときちゃって。でも、寸前で堪えて、

ハンジ『だ、ダメに決まってるでしょ! そんなの、余計に生徒達に恨まれちゃう……!』

リヴァイ『ハンジ。何もかもがうまくいく選択なんて、元々無理な話だろうが。何かを捨てなければ、得られるものは何もない』

ハンジ『そうだけど! 私だって一応、教員なんだから! 生徒達に恨まれるのは辛いんだよ?! 今までどんだけ地味で地味で地味な嫌がらせとか嫌味とか言われてきたか!!』

リヴァイ『それは陰でやられてきたんだな。どうしてそれを今まで言わなかった』

ハンジ『あんたに言ったら、余計にこじれるでしょうが! あんたの人気、加熱し過ぎて本当にいろいろヤバかったんだからね!』

と、ハンジ先生が言った直後、リヴァイ先生が立ち上がって、ハンジ先生の席の隣に移動して、正面から抱きしめた。

ヒューヒューの声が教室であがる。向こうには聞こえてないだろうけど。

リヴァイ『今まで我慢させてすまなかった。ハンジ、本当にすまなかった……』

ハンジ『や、やめてよ……優しくしないでよ。涙が出てくるじゃない』

リヴァイ『元々、泣き虫の癖に何言ってるんだ。泣け』

ハンジ『もうーいろいろぐちゃぐちゃなんですけどおおおお?!』

と、ハンジ先生がリヴァイ先生の胸の中でわんわん泣いている。

それを愛おしそうに見つめるリヴァイ先生の姿が、すげえ格好良かった。

124進撃の名無し:2014/07/30(水) 11:01:14 ID:OG5QGHz.0
ハンジ『えっぐ……えっぐ…やっぱり、ダメだよ。リヴァイ』

リヴァイ『何が』

ハンジ『あんたが教職辞めたら、ダメだよ。そんな事しちゃったら、宝の持ち腐れじゃないの』

リヴァイ『その宝を独占する権利をやるっつっているのに。お前も素直じゃねえな』

ハンジ『だって、そんな事したら、私、多分、リヴァイ観察日記つけちゃうよ? イグアナ観察記録みたいにして、飼っちゃうよ? それでもいいの?』

リヴァイ『ははっ……そいつは面白いな。ハンジらしくていいんじゃないか?』

ハンジ『誘惑しないでよおおおお! 今、本気でそれをやりたい自分と理性との葛藤が始まろうとしてやばいんですけどおおおお?!』

リヴァイ『まあ、その辺はハンジに任せる。そろそろいいか? 結婚、承諾してくれるか?』

ハンジ『待ってよ! まだ承諾してない! 1ミリもOK出してないよ!』

リヴァイ『まだ抵抗するのか。しぶとい奴だな。お前も……』

ハンジ『いや、だって……その、よく考えよう。リヴァイ。冷静になって考えよう』

リヴァイ『何をだ』

ハンジ『この結婚のメリットについてだよ。私にはメリットしかない状態だけど、リヴァイの方のメリットって、何かあるの?』

リヴァイ『あー……』

と、リヴァイ先生は少し考えて、

リヴァイ『俺はひとつだけ、約束して貰えればそれでいい』

ハンジ『約束?』

リヴァイ『ああ。それさえ反故されなければ、俺はハンジと一緒に結婚生活はやっていけると思っているんだが』

ハンジ『それって、何?』

リヴァイ『俺と毎日、一緒に風呂に入って、俺にハンジの体を全部、洗わせる事だ。今度はもう、本当の意味で「全部」だ』

ハンジ『!!!!!!』

その直後、ハンジ先生が目を白黒させて口をパクパクした。

ハンジ『毎日なんて絶対無理いいいいいい!!! いやあああああ!!!!』

リヴァイ『あ、毎日はさすがにふっかけ過ぎか。悪い。定期的、でいい。とにかく今までのサイクルより少し多めに一緒に風呂につきあってくれるなら、俺はそれだけで満足だ』

ハンジ『いや、それも何か、その……やっぱり私の方のメリットじゃない? あんたどんだけ謙虚なのよ』

リヴァイ『そうか?』

ハンジ『うん……その、あの……それだけのメリットで、結婚って、やっぱり変っていうか』

リヴァイ『ふん……じゃあもっと納得する材料を提供すればいいのか?』

ハンジ『出来ればそうして欲しいけど……』

リヴァイ『分かった。後で文句言うなよ』

と、言って、リヴァイ先生が、動いた。

一同「「「「「「?!」」」」」

リヴァイ先生がハンジ先生の唇に、キスした。それもう、電光石火の勢いで。

ハンジ『?!』

うわ……しかも、その、アレだ。ガチで本気の方の、キスだ。

ハンジ『ん……んー……ん……あっ……ん……』

ハンジ先生、ヤヴァイ!! 声、超色っぽい!!!

おっぱじめたあああああ!!! 教育上、よろしくない展開きたあああああ!!!!

125進撃の名無し:2014/07/30(水) 11:18:16 ID:OG5QGHz.0
ハンジ『はっ……あっ……ああっ………ちょ……あっ……』

うわ……すげえ。見入っちまう。いや、これ、本当、誰か止めなくていいのかよ。

リヴァイ先生、完全に男のスイッチ入ってやがる。いいのかなコレ。

そしたら、天の神様がそれを察したのか、チャイムが鳴った。

昼休み終了の合図だった。

リヴァイ『ああ、次の授業か。今日はここまでしか出来なかったか』

ハンジ(ぼーっ……)

リヴァイ『という訳で、これが俺にとっての結婚する最大のメリットだ。理解出来たか?』

ハンジ(こくり)

リヴァイ『納得したか? だったら、返事を今、くれ』

ハンジ『…………はい』

リヴァイ『結婚、してくれるんだな?』

ハンジ『……はい。結婚します』

リヴァイ『良かった。籍はいつ入れる?』

ハンジ『リヴァイに任せる……(ぼーっ)』

リヴァイ『なら……面倒臭いからもう、俺の誕生日あたりでいいか? 12月25日で』

ハンジ『うん……(ぼーっ)』

リヴァイ『結婚式とか、詳しい事はまた後で決めるぞ。じゃあな。俺は授業の準備に戻る』

ハンジ『うん……いってらっしゃい……(ぼーっ)』

そして、ハンジ先生を置いてリヴァイ先生が先に進路指導室を出て行った。

凄かった。2人の愛の進路相談。一気に結婚まで持っていきやがった。

何だコレ。すげえニヤニヤしてくるんだけど。

ハンジ『……………は! 私は、今、何を………』

あ、ハンジ先生が我に返った。今更だけど。

ハンジ『うわあああああ勢いで結婚承諾しちゃったよおおおおおおどおおしよおおおおおお?!』

ハンジ『しかもあの、リヴァイとだよ?! キスされて、押し倒されて、承諾しちゃったよおおおおお?!』

ハンジ『何コレ?! 何コレ?! 何でこんな事になっちゃったの?! おかしくない? 何かおかしくない?!』

ハンジ『もう、私の馬鹿ああああああ?!』

と、今頃悶絶してゴロゴロして、困惑するハンジ先生が超可愛かった。

126進撃の名無し:2014/07/30(水) 11:50:08 ID:OG5QGHz.0
という訳でお昼のテレビ放送はそこで打ち切られて、皆、その後にすげえざわめき始めた。

ミカサ「け、結婚するって、今、言った……」

エレン「ああ。言ったな」

ミカサ「しかも、クリスマス。12月25日に籍を入れるって……」

エレン「ああ。その日はリヴァイ先生の誕生日だから丁度いいじゃねえか」

ミカサ「じゃあ、結婚式もその日にするのかしら?」

エレン「かもしれねえな。あ、でもそうなると、クリスマスパーティーどころじゃねえよな。オレ達、リヴァイ先生に世話になったんだし、2人をお祝いしてあげないと」

ミカサ「そ、そうね……そうなる」

エレン「何してやろうかな。やべえ! 次の授業どころじゃねえなコレ!」

教室の中も相当ざわめいていた。女子の一部はがっくり葬式のようになっているし、隣のクラスまでざわめいている。

その直後、もう1回、テレビ放送が来た。

あ、リヴァイ先生が一人で映っている。何だろ。何か挨拶するのかな。

リヴァイ『あー……授業始まる前に、すまん。ちょっとお知らせだ。12月25日、学校の体育館を借りて、俺とハンジの結婚式をあげてくれるっていう話がついたようだから、その日に結婚式の披露宴を行う。来たい奴は来てもいい。だが、生徒は全員、制服で来い。時間は追って知らせる。以上だ』

と、追加情報がきて、教室は更に轟いた。

もうこれ、学校をあげてのお祭り騒ぎじゃねえか?!

アルミン「凄かったねえ。公私混同もいいところだね! でも良かったよ。ちゃんとくっついて」

エレン「だな。今頃、エルヴィン先生とピクシス先生、祝杯あげているんじゃねえかな」

ミカサ「次の授業の準備、出来ない……」

エレン「はは! ちょっと遅れてくるかもな。次の授業はなんだっけ?」

ええっと、今日は10月7日。火曜日だから…。

古典か。キッツ先生か。だったらそろそろ教室にやってくるかな。

あ、やっぱり来た。キッツ先生も微妙な顔している。さっきの騒動、知っているんだろうな。

でも淡々と授業を始めた。そうだよな。授業しない訳にはいかないしな。

そんな訳で、いろいろざわざわしながらオレ達は授業を受けた。

リヴァイ先生とハンジ先生の恋の行方は強引に決着ついたけど、なんか2人らしいゴールの仕方のような気もするから、まあいいか。

オレは古典の授業を受けながら、どんな風に2人を祝ってやろうかなって考えていたのだった。

127進撃の名無し:2014/07/30(水) 11:51:35 ID:OG5QGHz.0
という訳で、やっとリヴァイ先生とハンジ先生が結婚する事になりました。
一気に書いて疲れたので小休止。また後で続きを書きます。ではノシ

128進撃の名無し:2014/07/30(水) 22:24:30 ID:W6APi.n20







その日の放課後。オレとミカサはもう一度、進路相談室に足を運んだ。

今の時期はテスト前だから部活の方も顔は出さなくてもいい。

テスト一週間前になると、部活動は完全に停止する。隠れてやると罰則がある。

だからその日はのんびりと、もう一度進路相談室に足を踏み入れたんだけど。

またまた先客が居た。リヴァイ先生とハンジ先生が言い争っていたのだ。

ハンジ「ひどいよおお……昼休みの様子が中継で生徒に筒抜けだったなんて、私、知らなかったよおおおお」

リヴァイ「ああ? んなもん、エルヴィンとピクシス先生なら絶対にやるに決まっているだろうが。生徒全員が証人だからな。前言撤回は絶対させねえぞ」

あ、やっぱりリヴァイ先生、中継されている事、気づいてあえてやったんだ。

すげえ信頼関係(ある意味で)だな。ハンジ先生、可哀想だけど。

こっちはすげえ面白かったんで口がにやけてしまう。

ハンジ「うわああああん! 嵌められたよおおお! こんな筈じゃなかったよおおおお!」

リヴァイ「うるさい。いい加減に諦めろ。もう、決まった事だ。それより細かい事をこれから決めていくぞ」

ハンジ「ううう………ぐすんぐすん」

ハンジ先生が真っ赤になって涙目なんだけど、超可愛い。

これ絶対、リヴァイ先生、わざとやっているな。苛めて楽しんでいるようにしか見えない。

エレン「あの、オレ達、四者面談用の資料を閲覧したいんですけど、奥の席、使っていいですか?」

リヴァイ「ああ。構わん。少々うるさいかもしれんが、それでも良いなら」

エレン「いえ。2人は2人で今後の相談、頑張って下さい」

という訳でオレとミカサは大学の資料とかいろいろ眺めながら、リヴァイ先生とハンジ先生の会話を背景に聞くのだった。

ハンジ「うううう………しかももう、結婚式の日取りまで決めちゃって。12月って早すぎない? しかも学校の体育館を借りるって。いつの間に打ち合わせていたの?」

リヴァイ「その辺の事はエルヴィンとピクシス先生が全て前もって根回ししておいてくれたそうだ。準備万端で待っていたそうだぞ」

ハンジ「もう、なんか完全に、ベルトコンベヤーに乗せられた荷物のような気持ちなんだけど」

リヴァイ「いいじゃないか。面倒がなくて」

ハンジ「そうだけどさー。うーん。なんかこう、理不尽な気持ちが拭えない……(がくり)」

リヴァイ「どうしてそこまで嫌がるんだ。やっぱり結婚に抵抗があるのか?」

ハンジ「いや、その……そういう訳じゃないんだけど」

リヴァイ「ん?」

ハンジ「なんかこう、今、地に足がついてない感じでね。心拍数がずっと、フル活動していて。心臓持たないっていうか、壊れそうになっているというか。この状態、いつまで続くのかなって思って……」

リヴァイ「ああ、そんな事か。だったらハンジ、オレの脈拍、測ってみろ」

ハンジ「え? 何で?」

リヴァイ「俺の方が、多分、ハンジより脈拍早いと思うぞ」

ハンジ先生がどうやら脈を測り始めたようだ。

129進撃の名無し:2014/07/30(水) 22:26:31 ID:OG5QGHz.0
ハンジ「………本当だ。私より、早いかも」

リヴァイ「だろ? だったら、問題ないだろ。俺もこういう事は初めてなんだ。緊張くらいはする」

ハンジ「そうなんだ………」

リヴァイ「浮かれているのは俺の方だと思う。その………強引な手を使って悪かったとは思うが、早くハンジを自分の物にしたくて堪らなかったんだ」

うははははは! すげえ会話だなコレ。いいのかな? 聞いちゃって。

ミカサもちょっと照れている。だよなあ。甘すぎる会話だもんな。

ハンジ「そ、そうだったの?」

リヴァイ「ああ。でないと、またいつ、別の男がハンジにちょっかい出してくるか分からんだろ。今度こそは「俺の女に手出すんじゃねえ!」って、代わりに言ってやりたいって思ったんだ」

ハンジ「え?」

リヴァイ「俺がもし、お前の彼氏だったなら、モブリット先生に告白された時点で、俺が代わりに話をつけにいっても良かった。あの時はそうする権利がなかった訳だから「俺にどうして欲しいんだ」って、つい怒鳴っちまった。すまなかった」

ハンジ「そ、そうだったんだ……」

まるで答え合わせのような会話が続いてハンジ先生の声が潤んでいた。

ハンジ「あんた、そこまで私の事、考えてくれていたんだ。ごめん……全然、気づかなくて」

リヴァイ「いや、俺の方こそ悪かったな。ただの愚痴に本気になって言い返すなんて、らしくなかった」

ハンジ「ううん。あの時、甘えた私も悪いのよ。これって、私の悪いところだよね」

リヴァイ「いいや? 俺はハンジに甘えられるのは嫌いじゃない」

ハンジ「え……?」

リヴァイ「嬉しかったよ。頼ってくれたのは。なのに素直にそれを表に出せなかっただけだ。俺もあんまり自分の感情を表に出すのがうまくない。そのせいで誤解も多々起きる。そんな時、何度、お前に助けられたか分からない。だからハンジが傍に居てくれないと困るんだ」

ハンジ「ええ? あ、もしかして、私、リヴァイの通訳的存在なの?」

リヴァイ「そうとも言うな」

ハンジ「うははは! そりゃ責任重大だね! じゃあもう、しょうがないか!」

と、やっと気持ちが落ち着いたのかハンジ先生が一度、手を叩いた。

ハンジ「それだけ必要とされているなら、肌を脱ぐしかないね! 分かった! 結婚を前向きに考えてみるよ。とりあえず、何から始めたらいいのかな?」

リヴァイ「そうだな。まずは、住居についてどうするか、だな」

ハンジ「あーそっか。今住んでいるところって、基本、独身の教員用だから、結婚した人は大抵出ていくよね。部屋の大きさが1人か2人用ってところだし」

リヴァイ「暫くは俺の方がハンジの部屋に通ってもいいが、ずっとそうする訳にもいかないよな。新居を考えるか?」

ハンジ「いいの? 探すの大変じゃない? 忙しいのに」

リヴァイ「その辺はエルヴィンに丸投げすれば喜んで探してくれるんじゃないのか?」

ハンジ「あは! それもそうだね。じゃあエルヴィンにも協力して貰おうか♪」

130進撃の名無し:2014/07/30(水) 22:28:23 ID:OG5QGHz.0
リヴァイ「学校からあまり遠くなり過ぎなくて……ハンジの荷物が多いから、収納が多い部屋がいいよな。4LDKくらいのマンションで考えておくか?」

ハンジ「いや、4LDKは大きすぎない? 3LDKでもよくない?」

リヴァイ「3も4も対して変わらんだろう。それにどうせ荷物増える癖に。初めから部屋数の多いところを押さえた方がいいんじゃないのか?」

ハンジ「いや、私の場合、あればあるだけ荷物ぶっこむだけだから。制限があった方がかえって助かるかなーて」

リヴァイ「ほう? だったら容量越えたら遠慮なくガンガン捨てるぞ? いいんだな? 後悔するなよ?」

ハンジ「うぐ! そう言われるとプレッシャーになるけど、4LDKになると家賃跳ね上がるからね。うん、そこで妥協しよう」

リヴァイ「は? 家賃を気にして遠慮する必要はない。金は使うべき時に使わなくてどうするんだ」

ハンジ「いや、だって! 悪いよ!! そこはほら、将来の為にも節約した方が」

リヴァイ「そこは節約するべきところじゃない。それに4LDKの方が後々の為にもいいだろ」

ハンジ「うーん。確かにそうだけどさ。本当にいいの?」

リヴァイ「金の事なら心配するな。大丈夫だ。こう見えても俺はそれなりにため込んでいる」

ハンジ「………いくらほど?」

リヴァイ「…………8000万くらい」

ハンジ「は、8000万?! ちょっと待って! 何をどうやりくりしたら教職だけでそれだけため込めるの?!」

リヴァイ「教員になる前に別の仕事もいろいろやっていたんだよ。土方仕事とか。宅配とか。主に肉体労働だな。若い頃、エルヴィンに無理やり大学行かされた時に、あいつに大学資金を全面的に肩代わりして貰ったから、それを返済する為に働いていたんだ。まあ、あいつはびた一文もこっちの金を受け取っていないんだが」

ハンジ「えええ……それは初耳だよ。あんた、エルヴィンに大学行かされたって、本当にそういう意味だったんだ。エルヴィン、まるであしながおじさんじゃない」

リヴァイ「あいつが勝手にやったんだよ。こっちの承諾も無しに。泥酔している時に、契約書を書かせるわ、大学先まで勝手に決めるわ……本当に、あいつ、何であそこまで俺にしてくれたのか……」

ハンジ「あーあれじゃない? 完全にパトロン感覚だったんじゃない? リヴァイがもし女の子だったらエルヴィンに召し抱えられていたかもしれないね」

リヴァイ「想像させるな……本当にやりそうで怖い(ガクブル)」

おおお。なんか裏話も飛び出して面白いな。

大学の資料見ているけど、リヴァイ先生とハンジ先生の会話が面白すぎて集中出来ねえな。

ハンジ「あははは……エルヴィン、リヴァイの事、大好きだもんね。案外、結婚してない理由ってそこだったのかな」

リヴァイ「おい。目を逸らしていた事を突き付けるな。俺も薄々、そんな気配は感じる事があったんだが、見ないようにしていたんだぞ」

ハンジ「本当に?! 襲われそうになった事あったの?!」

リヴァイ「いや、それはさすがにないが……なんていうか、たまに熱っぽい視線を感じる時はあった。そういう空気特有のな。まあ、俺は当然逃げたけど」

ハンジ「うはwwwww危ないwwwリヴァイ、同性からもモテるのって大変だよねwww」

リヴァイ「笑いごとか! あーもう、今はエルヴィンの事は横に置いておく。何の話をしていたんだったか」

ハンジ「家賃の件だよ。新居の大きさとか。あ、大きさもだけど、駐車場とかの事も考えないと。車2台とめられるところじゃないとダメだよね」

リヴァイ「ああ。まあ、車はそうなるな。うーん………そうなると、マンションよりも一戸建てを借りた方がかえって探しやすいかもしれないな」

ハンジ「あ、じゃあ学校からの距離は妥協する? ちょっと遠くなってもいいから郊外探す?」

リヴァイ「そっちでも別に構わんぞ。通勤に1時間以内なら何とかなるだろ」

ハンジ「おおお。プレッシャーだね。今までは片道5分で行き来出来たのが、1時間になるって思うと……」

リヴァイ「叩き起こしてやるぞ。毎朝な(どや顔)」

ハンジ「いやースパルタ教師きたああああ! ううう。やっぱり近くてマンションの方がいいかもー」

リヴァイ「まあ、両方見比べて決めてもいいだろ。その辺はエルヴィンの方が詳しいんじゃないか」

ハンジ「そうだねー。じゃあこの件は後回しにするとして……」

リヴァイ「ん? どうした。急に赤くなって」

131進撃の名無し:2014/07/30(水) 22:30:47 ID:OG5QGHz.0
ハンジ「いや、その……一緒に暮らす様になったら、一緒に寝るんだよね?」

リヴァイ「そうだな」

ハンジ「その、私、寝相、めちゃくちゃ悪いの、知っているよね?」

リヴァイ「ああ。そうだな」

ハンジ「リヴァイ、ベッドから落っこちないかなーと思って、痛い痛い痛い! 耳ひっぱらないでええぎゃあああ!」

リヴァイ「余計な心配は無用だ。大きいベッドを買いなおせばいいだろ(手離す)」

ハンジ「え? ベッド買いなおすんだ? ダブルで?」

リヴァイ「キングだ(どや顔)」

ハンジ「どこのラブホテル仕様ですか?! いや、その、そこまですると、お金飛んでいくから、さ」

リヴァイ「何でさっきからそう、ケチケチしているんだ。金なら出すって言っているだろうが!」

ハンジ「だあああってええええ! あ、分かった! 和室で寝よう! 和風の生活も良くない? ね? (てへぺろ)」

リヴァイ「まあ、和室でも構わんが………体位が制限されるな(ボソリ)」

ハンジ「ん? 何か今、言った?」

リヴァイ「いや、何でもない。んんー……そうだな。分かった。寝室は和室でも構わんが、もし不都合が出てきたらベッドの生活に変えてもいいよな?」

ハンジ「多分、大丈夫じゃない? ほら、日本は畳の生活の方がいいって。きっと」

リヴァイ「今までがベッドだったから、すぐには慣れないかもしれないな。まあいいか。それでも」

ハンジ「後は何か決めておく事ってあったっけ?」

リヴァイ「家電とかはそれぞれの物を持ち寄ればいいし、特に新しく買う物はないよな」

ハンジ「あ、でも、私が使っている方はもうほとんどボロボロだし、これを機会に処分したいかも。リヴァイの使っている方に統一しようよ」

リヴァイ「まあ、そうだな。お前の部屋の掃除をすると、掃除道具も摩耗していたからな。そろそろ限界ではあったな」

ハンジ「冷蔵庫も洗濯機もギリギリだったよね。いやーその辺、ケチ臭くてごめんね!」

リヴァイ「お前の金の使い方は殆ど、飼っていた生物の餌代とかだったんだろ。足りない分は自分の金でこっそり補填して賄っていたんだし」

ハンジ「まあねー自分の事よりあの子らの方が可愛いからさーついつい、自分の事は後回しにしちゃうんだよねー」

リヴァイ「もう今度からそんな事はしなくていいからな。ハンジの分は、俺がまとめてやるから」

ハンジ「ありがとう。うん。素直に嬉しいよ」

おおお。なんか甘い空気が漂っている気がする。

リヴァイ「………ハンジ」

ハンジ「(ドキッ)な、なに?」

リヴァイ「お前、本当に、イッた経験、ないのか?」

ハンジ「ちょっとおおおおいきなり何言い出すの?! エレン達、そこにいるのに。その話はやめようよ!!」

リヴァイ「エレン、耳栓しておけ」

エレン「らじゃーです(*嘘)」

ハンジ「思いっきり聞く気満々じゃないの! ちょっと、エレンもニヤニヤしないで!」

エレン「え? 何ですか? 聞こえませーん(*嘘)」

リヴァイ「ほら、聞こえないって言っているんだからいいだろ。その件について、確認したいんだ」

ミカサ(ドキドキ)

ミカサまで真っ赤になっている。

ミカサ、結構エッチだからな。そういう話は耳ダンボしちゃうんだろう。

オレとミカサは耳栓したふりをして話を聞いている。

132進撃の名無し:2014/07/30(水) 22:32:44 ID:OG5QGHz.0
ハンジ「あーうん。その、はい。すみません……ごめんなさい」

リヴァイ「何を謝る必要がある。それはハンジの責任じゃない」

ハンジ「でも……やっぱり変じゃない? 私、36歳にもなって、そういう経験ないんだよ?」

リヴァイ「それは運がなかっただけだろ。もしくは、過去の男達の責任でもある。こういう話を聞いてもいいのか判断に迷うが……お前、今まで、何人の男と付き合ってきた」

ハンジ「…………それはエッチした人数で計算?」

リヴァイ「ああ。まあ、成り行きでやっちまった数も含めていい」

ハンジ「んー………5、6人ってところかな。多分、そのくらい」

リヴァイ「意外と少なかったな。そんなもんか」

ハンジ「うーん。私、そもそもそこまでエッチに執着なかったからね。ただ、傾向としては年下ばっかりで、年上とつきあった経験はないよ」

リヴァイ「あーなるほど。合点がいった」

ハンジ「え? 何が?」

リヴァイ「お前、まだスローセックスやったことないだろ」

ハンジ「え? 何それ。そんなのあるの?」

リヴァイ「あるんだよ。セックスにもいろいろ種類がある。パートナーが年下ばかりだったのなら、そいつら、余裕がなくてガツガツしたセックスを要求する奴らばっかりだったんじゃないか?」

ハンジ「何で分かるの?! まるで見てきたように言うね!」

リヴァイ「まあ、その辺はなんだ。若い頃はそんなもんだからな。俺も初めはそうだったし、数をこなしてから気づいた事だからな。女には、大まかに分けて2種類のタイプがいるって事を」

ハンジ「何それ? 何か面白そうな話だね。聞かせて(わくわく)」

リヴァイ「分かった。これはあくまで俺の自論になるが……」

と、前置きした上でリヴァイ先生の話が始まった。

リヴァイ「女には身体がすぐに濡れるタイプ、つまり短距離走者のようなタイプと、体が濡れるまでに時間がかかるマラソンランナーのようなタイプと2種類に分かれるんだ」

ハンジ「へー……それって比率的にはどんな感じ?」

と、すっかり生物の先生の顔になってハンジ先生が聞き入っている。

リヴァイ「俺の感覚だと、5割くらいがスローで、3割がクイック……まあ、これは俺が勝手に言っているだけの言葉なんだが、そんな感じだ。残り2割は、どっちもいける万能型の女だな」

ハンジ「えええ? じゃあもしかして、私、セックスのやり方が自分に合ってなかった可能性がある訳?」

リヴァイ「あくまで可能性の話だけどな。あと、初めてセックスした相手とのトラウマを抱えて、それ以後のセックスがうまく出来なくなるケースもある。お前、最初の時はうまくちゃんとやれたのか?」

ハンジ「………………痛いって感覚はなかったよ? ただ、その、アレ? こんなもんなの? みたいな拍子抜け感はあったね」

と、汗を浮かべてハンジ先生が言う。アレ? 何か様子が変だな。

嘘ついている様子ではないけど、それが全部ではないような。違和感があった。

リヴァイ先生はそれに気づいた様子はないけど。

リヴァイ「だとしたら、初めてのセックスでトラウマを抱えた訳じゃないんだな」

ハンジ「うん。初めての人にはとても優しくして貰えたよ。無理、言ったのに、ちゃんとしてくれたんだ」

リヴァイ「ん? 無理言った? まさかお前、自分から誘ったのか……? (イラッ)」

ハンジ「え……あ、いや……あははははは! む、昔の事だからもういいじゃない! ほら、リヴァイだって10代の頃、やりまくっていたんでしょ? 時効だよねえ?」

リヴァイ「………その口ぶりだと、初めては10代の頃にやったんだな」

ハンジ「な、何故分かったし……(遠い目)」

リヴァイ「相手は俺の知っている奴じゃねえよな? <●><●>(*疑惑の目)」

ハンジ「え? え? 何でそういう発想になるの?」

リヴァイ「何故、すぐ否定しない。お前、まさか………まさか………」

該当する人物がいるのか、リヴァイ先生がどんどん機嫌悪くなってきた。

誰だろ? リヴァイ先生には思い当たる人物がいるようだけど。

133進撃の名無し:2014/07/30(水) 22:34:52 ID:W6APi.n20
コンコン♪

エルヴィン「やあご両人。そろそろ新居のお話は煮詰まったかな? 私がいろいろ世話してあげよう(スタンバイ☆)」

と、まるで待ってました! と言わんばかりにエルヴィン先生が進路指導室にやってきた。

エルヴィン「おや? また喧嘩かい? 今度は何をやらかしたのかな?」

険悪な空気を察してそう言うと、

リヴァイ「単刀直入に聞こう。エルヴィン。お前、ハンジと昔、ヤッた事あるか?」

エルヴィン「……………(微汗)」

リヴァイ「答えろ。誤魔化したら容赦しないぞ」

エルヴィン「はー………バレちゃったか」

観念したようにエルヴィン先生は白状した。

エルヴィン「うん。もう20年前になるかな。1度だけしてあげた事、あるよ」

と、とんでもない爆弾発言が飛び出てオレとミカサは2人で「「ええええ」」って顔になった。

どどどどういう事なんだそれって?!

エルヴィン「今から20年前。私はまだ23歳だった。教職になりたての22歳の時、初めて受け持ったクラスの子が、ハンジだったんだよ」

ハンジ「私、実は講談高校出身なんだよね。エルヴィンとはその頃からの付き合いなんだ」

ええええええ?! それも初耳だぞ!?

エルヴィン「うん。で、翌年の、ハンジが16歳になった時だったかな。クラスの女子にいろいろ馬鹿にされて、やけくそになっていてね。「処女捨てたいから協力してお願いエルヴィン!!!」ってだだこねて。私も正直、困ったなあと思ったんだけど。教員としてはやってはイケナイ事だし。でも、どうもハンジは何か、特別な理由があるような気がしてね。ごめん。あの頃は私も若かったし、協力してあげたんだよ」

リヴァイ「……………」

エルヴィン「その頃からハンジはずっと「青春とは何ぞや」みたいな事を言っていてね。クラスの女子に「初恋もまだなの?」とか「処女ださい」みたいな事を言われてキレてしまったようでね。泣きながら訴えて来て。悔しいって。だから、ついつい、私もそんなハンジが可愛く見えて、………すみません。手出しました」

アウトだろ。いや、もう完全にアウトだろ。

20年前の事だから時効になるのかな。若気の至りで済ませていい問題じゃねえ気がするけど。

リヴァイ先生、頭抱えている。そりゃそうだよな。

リヴァイ「エルヴィン、よくまあ、事が発覚しなかったな。お前、教師生命、なくなるところだっただろ」

エルヴィン「その頃は今ほど、いろいろうるさい時代じゃなかったからね。勿論、バレたら懲戒免職だけど。でもその頃私も、自分の職業について揺れていた時期でね。親が教員だったから、そのまま習う様に教員に一応、なってみたけれど、実際やってみたら「うーん?」っていう違和感があって。だからバレたらバレた時でいいやって、思ったんだ。若いって怖いねえ」

リヴァイ「まあ、そういう気持ちは分からんでもないが。いや、でも……ハンジ、なんでよりによってエルヴィンを選んだ」

気分はすっかりorzだよな。リヴァイ先生。

ハンジ「んーエルヴィンなら、いいか♪ って思っちゃって。ごめん。あの頃の私、アホだったからさ。勢いだけは凄くて、好奇心が止まらないアホの子だったからさ。本当、ごめん」

と、ハンジ先生が手を合わせて謝り続けている。

リヴァイ先生、複雑な心境だろうなあ。

134進撃の名無し:2014/07/30(水) 22:36:41 ID:OG5QGHz.0
ハンジ「でもその時、エルヴィンが言ってくれたんだ。今回のセックスが気持ちいいものではなかったのなら、そこに「トキメキ」がないからだよって」

リヴァイ「え?」

ハンジ「だから、『ハンジがハンジらしく生きられる人にいつか出会えれば、必ず本当の、気持ちいいセックスは出来るから。今日の事は、誰にも言わないで秘密にしておこうね』って」

なるほど。ハンジ先生の「トキメキ」を追う旅はそこから始まったのか。

ハンジ「エルヴィンの言葉を信じて20年経って、やっと言っている意味が分かった気がするよ。時間かかり過ぎてごめんねーあははは……」

と、頭を掻いているハンジ先生だった。

エルヴィン「いやいや。それでも運命の人に出会えたのだから結果オーライじゃないか。そうだろう? リヴァイ」

リヴァイ「……………はあ。もう、俺には何も言えん」

と、すっかりしょげてしまったリヴァイ先生だった。

リヴァイ「エルヴィン、お前、ハンジの事、可愛いって言ったよな。だったら、俺に遠慮しているとか、ねえよな?」

エルヴィン「ん? どうしてそう思う?」

リヴァイ「いや、俺よりも先にハンジと出会っていたのも初耳だったし、お前、何でずっと独身を貫いているんだ?」

エルヴィン「え? 聞きたいの? 聞かない方がいいと思うよ?」

リヴァイ「もうこの際だから全部教えてくれ。驚かねえから」

エルヴィン「分かった。その言葉、絶対撤回しちゃダメだよ?」

と、意地悪い顔になってエルヴィン先生が言った。

エルヴィン「確かにハンジの事は可愛いと思っているよ。大人として成熟した後のハンジに再会してからも、ずっとそう思っていた。でも、ハンジよりも可愛い子を後から見つけちゃったからね」

リヴァイ「え?」

エルヴィン「お前だよ。リヴァイ。私はハンジよりも、リヴァイの方に心惹かれた。君がもし女の子だったら、拉致監禁してでも嫁にしたいと思うくらいには一目惚れだったんだよ」

うぎゃあああああ?! とんでもない発言がきたああああ?!

さらりと怖い事言っているぞ。ヤバイヤバイ。エルヴィン先生、ガチでヤバい先生だった!!

135進撃の名無し:2014/07/30(水) 22:38:07 ID:OG5QGHz.0
リヴァイ「あー……(ガラガラ声)」

エルヴィン「というより、もしリヴァイがそっちでもOKな人種だったら、私は正気では居られなかっただろうね。いやはや、道を危うく踏み外すところだったよ」

ハンジ「あーだから、エルヴィンはリヴァイに甘いんだね。納得したよ」

リヴァイ「いや、納得しないでくれ。ハンジ。ちょっと頭が痛くなってきた……(げっそり)」

リヴァイ先生がフラフラしていた。無理ねえな。これは。

リヴァイ「つまり、エルヴィンは「バイ」なのか?」

エルヴィン「そういう事になっちゃうのかな? うん。知らない方が良かったでしょ?」

リヴァイ「そうだな。今、俺は自分の選択を物凄く後悔している……(げっそり)」

エルヴィン「だから言ったのに。でも、私の新しい本命は別にあるよ」

リヴァイ「え?」

エルヴィン「早く2人の「娘」を産んでくれ。特にリヴァイに似た娘だと尚良い。その子を私の嫁として貰えないかな?」

リヴァイ「は……? (石化)」

ハンジ「えええ……そんな博打みたいな事、言わないでよー。性別だけは完全に「運」の世界じゃない」

エルヴィン「いやいや。私は博打に強い方だよ。大丈夫。君たちの間には「娘」が産まれると思っているから」

ハンジ「気が早すぎるよエルヴィンー……あれ? リヴァイ? 何か動かなくなったね?」

リヴァイ「………は! しまった。一瞬、気失っていた」

ハンジ「あはは! 器用だね!」

リヴァイ「笑いごとか!!!!! そうか。だからか。だから今までずっと、俺とハンジをくっつけるように仕向けていたのか」

エルヴィン「イエス。だから本当はもう少し早くくっついて欲しかったんだけどね。年齢的な問題もあるから」

リヴァイ「というより、完全な犯罪じゃねえかああ!!!!!」

あ、リヴァイ先生が絶叫した。

珍しい。ここまで大絶叫するリヴァイ先生、初めて見たかも。

リヴァイ「年の差いくつだと思ってやがる。今、お前の年、43歳だろ? 16年後で計算しても、59歳だろ? もうそれは孫と祖父の関係に近いんだぞ?! 正気の沙汰じゃねえだろ!」

エルヴィン「んー……でも、しょうがないんじゃない? 法律的にはセーフだろ?」

リヴァイ「倫理的な面から見たら完全にアウトだろうが!!!!」

エルヴィン「そんな事を言われても……せめてあと5年早く君達が結婚を決意してくれていればねえ?」

リヴァイ「いや、それでも十分犯罪臭がする。お前、ロリコンの気もあるのか」

エルヴィン「教え子に手出せた時点で、自分が鬼畜だって事は自覚しているよ(笑)」

リヴァイ「………もう嫌だ。この世界は残酷だ……(顔覆っている)」

ハンジ「まあまあ、リヴァイ。もうなるようにしかならないよ。諦めよう。ね?」

リヴァイ「お前らどっちも大嫌いだ!!!」

と、リヴァイ先生が拗ねだしてしまった。気持ち分かるわ……。

136進撃の名無し:2014/07/30(水) 22:40:17 ID:OG5QGHz.0
エルヴィン「困ったね。リヴァイが拗ねてしまった。どうしよう? ハンジ」

ハンジ「んー……リヴァイが拗ねた時は、とりあえず紅茶出すしかないんじゃない?」

エルヴィン「それもそうだね。紅茶でも飲ませて落ち着かせよう。入れてくるね」

と、言ってエルヴィン先生が紅茶を入れに行った。

リヴァイ先生がぐったりしていて、可哀想だった。

あまりにも衝撃的な情報が立て続けに入ってきて脳内で処理しきれていない状態だな。

リヴァイ「なんかもう、何もかもが嫌になった。もう、俺はやっぱり独身でいた方が良かったのか…?」

ハンジ「ええ? 今更それは言いっこなしだよ。リヴァイ。もう決めた事でしょ? 前言撤回はしないって、自分で言ったんじゃないの」

リヴァイ「それはそうだが……まさかここでこんな大どんでん返しが待っているとは思ってもみなかったんだ。子供、早めに作ろうと思っていたのに……(ブツブツ)」

ハンジ「あ、そうだったの? うーん。でも今すぐじゃなくても良くない? エルヴィンの件、納得出来ないうちは作らない方がいいと思うよ? エルヴィンの性格は知っているでしょ? 娘産まれちゃったら、本気で嫁にしようと画策してくると思うよ?」

リヴァイ「絶対、あいつには娘は渡さん……(ゴゴゴ)」

ハンジ「うーん。どっちに似ても嫁にしそうだから、難しいよね。多分、私に似ても嫁として貰いたいと思っているだろうし」

リヴァイ「息子が産まれたとしても危険だぞ。どう考えても。あいつとは縁切りした方がいいんじゃねえか?」

ハンジ「そんな不義理は出来ないよ! 私、エルヴィンにどんだけ世話になったか分からないよ! リヴァイだってそうじゃない!」

リヴァイ「それとこれとは別問題だ。あの野郎……本気で一度、締めた方がいい気がしてきたぞ(ゴゴゴ)」

エルヴィン「まあまあリヴァイ。紅茶でも飲んで落ち着いて」

と、紅茶を差し出してエルヴィン先生が差し出す。

とりあえず、それは頂くようだが……

俺はこの時、嫌な予感しかしなかった。なんていうか、リヴァイ先生が「神谷」に見えてしまって。

案の定、リヴァイ先生はフラフラしちゃって、眠ってしまった。

盛られたな。爆睡している。

もう、笑ってはいけないアレの中で最大の笑いだった。

今回ばかりは「アウト」だった。ミカサも「アウト」だったみたいで、笑い出した。

ミカサ「絶対、くると思った……盛られるって、思ったのに」

エレン「予想できたのに、出来たのに! ダメだった……!」

と、オレ達が声を殺して笑っていたその時、ハンジ先生がしみじみと言った。

137進撃の名無し:2014/07/30(水) 22:42:06 ID:OG5QGHz.0
ハンジ「あー寝かせちゃったんだ。まあ、それが一番いい手かもね」

エルヴィン「だろう? 今回、いろいろあり過ぎたからね。寝るのが一番のストレス解消法だよ。リヴァイに一番今、必要な事だ」

ハンジ「うん。そうだね。とりあえず、リヴァイは私が抱えて連れ帰るから。後の事は宜しくね。エルヴィン」

エルヴィン「了解した。じゃあね。ハンジ」

と、いう訳でやっと騒動が終わって、オレとミカサはやっと大学資料に目を戻した。

エルヴィン「おやおや。エレン。勉強熱心だね。ミカサも。今度の四者面談に向けての予習かな?」

エレン「あ、はい。今、何もとっかかりがない状態なんで、とりあえず、資料だけでも目通しておこうかと」

エルヴィン「ふむ。今はまだ、何も見えてない状態なのかな?」

と、エルヴィン先生が進路指導の先生の顔になってこっちに来てくれた。

向かい合って座って、話し合う。

エレン「そうなんですよね。エルド先輩には「語学系」とかどうだ? と言われた事もあるんですけど。オレ、そういうの向いているんですかね?」

エルヴィン「語学系ね。確かに語学が強いといろんな仕事が出来るけど、私が見る限り、エレンはもう少し違う職種でもいいと思っているよ」

エレン「え? エルヴィン先生から見たら、オレに向いている職業、分かるんですか?」

エルヴィン「あくまで私の「主観」になるけど……エレンの場合は「人の命を助ける仕事」に関する物がいいんじゃないかと思っているよ」

エレン「え? 医者とかですか? オレの親父は確かに医者ですけど、頭足りないから無理ですよ」

エルヴィン「そうか。なるほど……通りで。いや、血筋って奴か。確かに学力が伴えば、医者という選択肢もあっただろうね。でも私は、それよりももっと「危険」が伴う仕事でもいけると思うよ」

エレン「危険……ですか」

ピンと来ない。どんな仕事だろ?

エルヴィン「例えばそうだね。『消防士』とか『レスキュー隊』とか、あとは『自衛隊員』とかかな。君の緊急時の咄嗟の判断能力は、リヴァイからも少し話を聞いているし、舞台での本番の適応力。そして、マーガレットの家の事もマーガレット本人から聞いたよ。お母さん、助けてあげたんだってね?」

エレン「あ、まあ……成り行きというか、ついつい」

エルヴィン「うん。そういう緊急時の咄嗟の判断能力は君の「武器」になるんじゃないかな。加えて君は人の「命」に対してとても敏感に感じ取って、それを助けようとする気質がある。自分を犠牲にしてでも、人の命を助けたいと思った事とかないかな?」

ドキッ。昔の事を言われているようで、焦った。

あの、9歳の時の事件だ。でもエルヴィン先生、その事を知らない筈だよな。

エレン「……ない訳ではないです」

エルヴィン「だとしたら、それに「体力」さえ伴えば、割とその辺の職業が向いているように思えるよ。あくまで私の主観だけどね。参考になったかな?」

エレン「はい。とても。分かりました。その話を、親父にもしてみます」

エルヴィン「うん。四者面談、楽しみにしているよ」

と、言ってエルヴィン先生が先に退出していった。

ミカサ「凄い。さすがエルヴィン先生。すらすらと、導いてくれた。しまった。私も聞いておけば……」

エレン「まあ、それは今度の四者面談で話聞けるからいいんじゃねえか?」

ミカサ「そうね。そうする」

と、言って適当なところで切り上げて、オレ達は進路指導室を出る事にした。

そして職員室に鍵を返して、教室に戻ると、アルミンとアニが待っていてくれた。

こっちは中間テストに向けて勉強中だった。さすがだな。

アルミン「あ、終わった? じゃあそろそろ帰ろうか」

アニ「帰ろう」

エレン「おう。帰ろうぜ♪」

という訳で、いつもの日常に戻って、オレ達は帰る事にした。

中間テストの後は四者面談がある。その後は、きっと結婚式が待っている。

文化祭は終わったけど、オレの高校生活はまだまだ慌ただしい毎日が続きそうだった。

138進撃の名無し:2014/07/30(水) 22:45:22 ID:OG5QGHz.0
エルヴィンのファンの方、本当に申し訳ありませんでした(土下座)
エルヴィンが相当の斜め方向の変態になってしまって、書いていて楽しかったですが、
ドン引きされそうで怖いです。本当にごめんなさい。

とりあえず、ここまで。続きはまた今度で。ノシ

139進撃の名無し:2014/07/30(水) 22:50:52 ID:fdH4phvI0
もうすぐ誓約書についてのはなしでてくるかな?
もう本当ミカサ抱きしめてペロペロしたい。ちょっとくらいならいいよね

140進撃の名無し:2014/07/30(水) 23:26:26 ID:AYVCKSFY0
エルヴィンファンだけど面白く読んでたよ
あの人は常に斜め上を行くから…
平和な世界では何があっても不思議じゃない…かも
それより8000万もあるならマンションでも家でも買えばいいのにー
億ションもローン査定クリアするだろうし
あ、教職は転勤族だから賃貸のが良いのかな?

141進撃の名無し:2014/07/31(木) 02:27:14 ID:2GnQ2kgk0
>>140
転勤族なのは公立です。私立だとクビにならない限りは、
結構長く在籍する事は可能らしいです。実際、何十年もいる先生いたので。

あとリヴァイの方が子供の養育費とかも考えている(筈)なので、
賃貸優先で話していますが、安い中古物件とかあればそっちでも良いとか思ってます。
ただリヴァイの性格だと、新築を現金一括でドーン!
とか払いそうなイメージもあります。豪快なイメージ。ローンとか面倒臭がりそうな。
ハンジさんはそんなリヴァイを見てアプアプする感じです。

ま、エルヴィンのプランと相談しながらきっと決める事でしょうw

142進撃の名無し:2014/07/31(木) 02:30:06 ID:2GnQ2kgk0
>>139
ミカサをペロペロする前に、リヴァイ先生の特別授業を挟む予定です。
保健体育も彼の担当だから。もう少しお待ち下さい(笑)。

143進撃の名無し:2014/07/31(木) 07:20:26 ID:/wYRTh4.0
リヴァイ先生、行動はともかく、ちゃんとハンジ先生に好きだと言葉で伝えてたっけ?
つか、単なるエロ親父に見えてきた(笑)

144進撃の名無し:2014/07/31(木) 15:53:47 ID:2GnQ2kgk0
>>143
鋭い(笑)まだちゃんと好きって言ってないですよー。
あと元々相当なエロ親父ですのでそれで合ってます。

145進撃の名無し:2014/07/31(木) 16:32:41 ID:2GnQ2kgk0









その日の夜、オレは親父とリビングで少し話をする事にした。

四者面談についてと、今日、エルヴィン先生と話した事を親父にも話してみたのだ。

すると、親父は「ううーん」とちょっとだけ顔を顰めて、

グリシャ「そうか……進路指導の先生がそんな事を……」

エレン「ああ。まあ、職業の種類はあくまで「例え」として出してくれたんだけど、オレは「人の命を助ける仕事」に関する仕事に向いているかもしれないって。頭が良かったら、医者の適性もあるみたいな事も言われたんだ」

グリシャ「それは親としては嬉しい言葉だけど、そうか……消防士やレスキュー隊、自衛隊員ねえ……」

エレン「親父はどう思う? オレ、そういうの向いてそうだと思う?」

グリシャ「私としては、語学留学をさせる方が余程心臓にいいんだけどねえ」

と、困った顔をしていた。

グリシャ「命の危険のある仕事について欲しくない気持ちはあるよ。もしも自分より早くエレンが死んでしまったら、親としてこんなに悲しい事はない」

エレン「死ぬこと前提で話さないでくれよ。そう簡単にはくたばらねえって」

グリシャ「エレン。人は簡単に死ぬよ」

エレン「!」

グリシャ「私は常に人の「死」を見てきたからね。死ぬ時は、呆気なく死ぬ。それが人間なんだ」

エレン「…………」

グリシャ「ただ、生き方は自分で決める物だ。父さんがどんなに反対したって、エレン自身がどうしてもその道に進みたいと言うなら止める事は出来ない。親としては見守るしかないね」

エレン「……そっか」

グリシャ「でも、選択肢のひとつとして考えておくことはいいことだと思うよ。時間はまだある。じっくり考えなさい」

エレン「分かった。ありがとう。父さん」

と、言って今日のところはそこまでにして進路相談を終えた。

オレとしては、エルド先輩に進路を勧められた時の感触より、エルヴィン先生の話の方がしっくりくる感覚があったので、どちらかと言えばそっちの方に興味が沸いてきている。

ただ、一つだけ懸念しているのは、エルヴィン先生が付け加えた言葉。

そう、「体力」の問題だった。

オレの体力は多分、並み程度だ。ミカサとかリヴァイ先生に比べれば大分劣るだろう。

そういった激務の職業に耐えられるかと言えば、正直今のままでは自信がなかった。

エレン「体、もうちょっと本格的に鍛えようかな」

どういう道を進むにしろ、体を鍛えておくのは男として必要な事な気がした。

だから、オレは思い切ってミカサに相談する事にしたんだ。

ミカサは自分の部屋で筋トレをしていた。毎日の日課だ。

筋トレが終わってから風呂に入るんだが、その前に、オレはミカサに声をかけた。

146進撃の名無し:2014/07/31(木) 16:34:21 ID:2GnQ2kgk0
ミカサ「? どうしたの? エレン」

エレン「ミカサ。オレ、ミカサのトレーニングに付き合ってもいいか?」

ミカサ「え? ランニングは一緒にやっているのに? それ以外もやるの?」

エレン「ああ。もうちょっと、本格的に体を絞りたいんだ。協力してくれねえか?」

ミカサ「うん」

という訳で、オレもミカサの部屋で腹筋や腕立て等をしながら、進路の話をしてみる事にした。

エレン「ミカサは何か、めぼしい進路、見つかったか?」

ミカサ「いいえ……全然……さっぱり」

エレン「そっか。ミカサは成績もいいし体力もあるし、大抵の仕事をこなせそうだけどな」

ミカサ「でも……自分のやれる事と「やりたい事」は別だと思う」

エレン「ああ、それもそうか。やりたい事、何かないのか?」

ミカサ「…………………」

あれ? 長い沈黙だな。

ミカサ「ひとつだけ、ある」

エレン「お? なんだよ」

ミカサ「いつか、子供が欲しい」

エレン(ぶふー!)

思わず吹いて、腕立てをやめて潰れてしまった。

エレン「お、おまえなあ……」

ミカサ「だ、だって……それくらいしか思いつかない。正直言えば、お嫁さんになれればそれでいいとさえ思っている」

エレン「そ、そうか。じゃあオレ、責任重大だな」

ミカサ「え……」

エレン「だって、ちゃんとした職業につかないと、ダメだろ? 子供育てられないだろ?」

ミカサ「………」

エレン「ん?」

ミカサ「それって、プロポーズとして受け取って、いいの?」

エレン「!」

あ、やっべ! オレ、先走り過ぎた!!!!!

エレン「あ、その、ミカサの旦那になるとすれば、その必要があるだろって話で、ええと、ごめん。ちょっとフライング過ぎた」

ミカサ「ううん。嬉しい……」

ほやっと笑ってくれた。うわあああん。可愛い。

もうこの状態、何回繰り返せばいいんだ。いい加減、手出したい。

でも、まだ親父に例の誓約書の件、確認してねえんだよな。

エレン「ミカサ。あの、例の誓約書の件、どうする?」

ミカサ「出来れば確認したいけれど。その前に、エレンとも確認したい」

エレン「ああ、多分、思っているのは同じ事だよな」

ミカサ「うん。あの誓約書の「穴」について」

エレン「誓約書の内容は「オレ」の方からの接触はダメで「ミカサ」からの接触については特に明記がなかった」

ミカサ「うん。多分、私はそこに何か「別の意味」が隠されているような気がする」

エレン「うーん。本当にそういう「エッチ」な事をさせたくないなら、確かに「両方」を規制するよなあ」

親父はどういうつもりであの誓約書を作ったんだろう?

エレン「親父に今、確認してみるか? 早い方がいいよな?」

ミカサ「うっ……でも、もうひとつの可能性もある」

エレン「え? もうひとつの可能性?」

ミカサ「ただの明記ミス。こちらから指摘して「あ、忘れていた。ごめんごめん。じゃあミカサからもダメにしよう」とおじさんに言われてしまったら、穴がなくなってしまう」

ズーン……

さすがミカサだ。よくぞそこに気づいた。

あっぶねー! 危うくその手にひっかかるところだった!

ここは慎重に行動を起こさないと。うん。誰かに相談するべきだな。

147進撃の名無し:2014/07/31(木) 16:45:34 ID:2GnQ2kgk0
エレン「だ、誰に相談するべきかなコレ」

ミカサ「エルヴィン先生だと思う。エルヴィン先生ならきっと、客観的にこの誓約書の意図を読み取れるような気がする」

エレン「ああ、かもしれないな。こういう知略でエルヴィン先生に勝てる人はそうはいねえ」

親父も相当の曲者だけど、エルヴィン先生だって負けやしねえ。

エレン「よし。そうと決まれば、今度エルヴィン先生に時間つくって貰って相談してみようぜ」

ミカサ「うん。そうしよう。是非そうしよう」

と、その時、タイマーが鳴った。

ミカサ「お風呂の時間になったので入ってくる」

エレン「おう。いってらっしゃい」

と、規則正しく生活するミカサを見送って、オレはその場にごろんと横になった。

ミカサの部屋、ミカサの匂いがしていい気分になれるんだよな。

エレン「……………」

いかんいかん。邪な事を考えるところだった。自分の部屋に戻ろう。

そんな感じで、とりあえずの方針を固めて、その日の夜は終えたのだった。





次の日、オレ達は早速エルヴィン先生を捕まえて放課後、ちょっと時間をとってもらって進路指導室で話す事にした。

例の誓約書のコピーを見せてみる。すると、エルヴィン先生は「これは…」とちょっと驚いた顔を見せた。

エルヴィン「ふむ。では今日は2人の「愛の」進路相談という事で、私が話を受けていいんだね? (ニヤリ)」

エルヴィン先生が昨日より嬉しい顔で答えてくれた。

本当に人の恋愛事、大好き過ぎるよな。この先生。

エルヴィン「そうだね。ちょっと待って。ピクシス先生も同席させていいかな?」

エレン「え? ああ、まあいいですけど」

ミカサ「あ、そう言えば賭け事の精算、まだしていなかった(汗)」

エレン「あー……じゃあついでに全部話すか。説明するのにも必要だしな」

ミカサ「いいの?」

エレン「しょうがねえだろ。いいよ。こっちにも味方欲しいしな」

連絡を受けてから5分もしないうちにピクシス先生が進路指導室にやってきた。

くるの超はええ。本当、機動力有り過ぎる。

ピクシス「悩める生徒の為に参上したぞ。して、状況は?」

エルヴィン「まずはこちらの誓約書をご覧ください。ピクシス先生」

と、誓約書のコピーを見せると、同じように驚いていた。

148進撃の名無し:2014/07/31(木) 17:01:30 ID:2GnQ2kgk0
ピクシス「ほほう。なるほど。これは……」

エルヴィン「まずは2人が付き合うまでの経緯と、今の状況を詳しく説明してくれるかな?」

エレン「あ、はい……」

という訳でオレとミカサは一緒に今までの経緯を大体説明する事にした。

まる、今年の3月に親父が再婚した事。その関係で連れ子同士も一緒に同じ家に暮らす事になった事。

一緒に暮らしていくうちにだんだん、オレの方からミカサに惹かれて、夏に自分から告白して、お互いの気持ちを確認した事。

でも、その際にうっかり親父にその事が即座にバレて、誓約書を交わす事になった。

その流れを大体把握して貰ったのち、エルヴィン先生達は「なるほどね」と笑ったのだった。

エルヴィン「エレンのお父さんはなかなかの策士だね。これは、いやはや」

ピクシス「ふふふ……いいのう。愛の試練というやつじゃのう」

と、ニタニタし始めたのだった。

エレン「愛の試練……ですか」

ピクシス「じゃのう。して、律儀にこれを守っておるのか? お主?」

エレン「うぐっ……その、微妙に破っている事もありますが、でも、本格的な手はまだ、出してないです」

ピクシス「ほうほう。しかしそろそろ、辛かろう。我慢にも限界があるというもんじゃ」

エレン「おっしゃる通りで……」

エルヴィン「エレンとミカサはつまりこの誓約書の「穴」についてどう捉えたらいいのか、迷っているんだね?」

ミカサ「はい。わざとなのか、それともただの明記ミスなのか。判断がつかなくて」

エルヴィン「エレンのお父さんはお医者様なんだろう? 明記ミスは、まずないね。そんな初歩的なミスはあり得ない」

エレン「だとしたら、やっぱり裏の意図が?」

エルヴィン「うん。まあ、恐らく、こうかな? という意味は分かるけど、それは私が指摘していい問題なのか、ちょっと判断がつかないね。もしかしたら、自分達で気づいて欲しいのかもしれないし」

エレン「オレ達自身で、ですか」

エルヴィン「そうそう。お父さんからの「謎かけ」みたいなものだね。それを自分達で解く事が出来れば、もう少し先に進ませてあげてもいいかなって思っているかもしれない」

エレン「ううーん……」

頭悪いオレにとっては、こういうの苦手なんだよなあ。

149進撃の名無し:2014/07/31(木) 17:11:16 ID:2GnQ2kgk0
エルヴィン「どうする? カンニングしたいなら教えてもいいけど。ただ、もしそれが間違っていた場合の補償はしないよ」

エレン「あ、それもそうか」

そうだよな。エルヴィン先生の「答え」が必ずしも当たっているとは限らない。

ここはオレ達自身で答えを見つけるしかないのかもしれない。

エレン「分かりました。それが分かっただけでも十分です。相談にのってくれてありがとうございました」

ミカサ「ありがとうございました」

ピクシス「ふふ……まあ、どうしようもない時はここの部屋を使えばよかろう。なあ、エルヴィン」

エルヴィン「ここのソファ、倒せば簡易ベッドになるからね。必要になったらいつでも言ってね」

エレン「あ、ありがとうございます……(照れる)」

本当、この人達、教員としてダメ過ぎる先生だろ。いや、有難いけど。

ミカサ「ち、近いうちに借りるかも……」

エレン「ミカサ! 馬鹿! 言うなって!」

そんな事言ったら、絶対RECされちゃうぞ!

ほら案の定、先生2人、ニタニタ笑っているし。全く…。

エルヴィン「また困ったことがあったらいつでもおいで。愛の進路相談の方が楽しいしね」

ピクシス「じゃの。人の恋路の行方ほど、酒の摘まみに適したものはないからの!」

ノリが良すぎる…。

という訳で、とりあえず気持ちが落ち着いたので進路指導室を退席する事にしたのだった。

150進撃の名無し:2014/07/31(木) 17:27:37 ID:2GnQ2kgk0








そして、教室に戻る途中、オレ達は売店の前あたりで騒ぎを見かけた。

なんだ? 女子の団体が異様に集まっているな。リヴァイ先生でもいるのかな。

そう思って、視線を巡らせると……

エレン「!」

囲まれていたのはペトラ先輩だった。一人だけで、女子の集団に囲まれている。

何か異様な空気だった。何か起きたんだろうか?

心配になったオレとミカサは顔を合せて、そっと様子を覗き込んだ。

すると、何やら言い争う声が聞こえてきたのだ。

ペトラ「絶対、嫌。何で署名なんかしないといけないのよ」

3年女子1「あんたのせいで、リヴァイ先生がやめるって言い出したんでしょうが! せめて署名運動くらい、協力しなさいよ!!!」

ペトラ「はあ? 何言いがかりつけてんのよ。リヴァイ先生が教職やめるのは私のせいじゃないでしょ」

3年女子2「あんたのせいのようなもんじゃない! あの時、ペトラがハンジ先生をぶったりしなければ、あのまま2人はこじれて別れていたかもしんないじゃん! あんた、リヴァイ先生のこと、好きなんじゃなかったの?! なんで矛盾した行動したのよ!!」

ペトラ「……………」

ペトラ先輩は答えない。っていうか、なんなんだこの空気。

女子って怖い。集団で一人を追い詰めるって、やっていい事じゃねえだろ。

151進撃の名無し:2014/07/31(木) 17:49:27 ID:2GnQ2kgk0
3年女子2「放っておけば良かったじゃん! その方が都合いいじゃない! なんであんな真似したのよ! リヴァイ先生の方が教師やめるなんて、私達、思ってもみなかったのに……」

3年女子3「ペトラのせいだ……リヴァイ先生、やめて欲しくないよ……」

3年女子4「私達に謝りなさいよ! 勝手な事したのはあんたでしょ!!」

おいおい。なんか話がおかしな方向に転がってるぞ。まずくないか。これ。

ミカサも戸惑っている。どうしたらいいだろう。これ。

ペトラ「絶対、謝らない。私は確かに、悪い事をしたとは思ってるけど。謝るとすればハンジ先生よ。あんた達に謝る義理はないわ」

3年女子2「なんですって……」

ペトラ「ハンジ先生を辱めた事は本当に悪かったと思ってる。でも、あの時はアレしか方法が思い浮かばなかった。賭けだったの。あの一発で、目を覚まさせる事が出来なければ、きっと今頃……」

3年女子2「一体何の話をしているのよ。賭けとか。意味分かんないわよ!!」

3年女子3「あんたのせいでどんだけの女子が落ち込んでいると思っているのよ! 泣かせているのはあんたのせいよ!」

ペトラ「泣きたいのはこっちの方よ!!!!!」

と、その時、全身全霊を込めてペトラ先輩が言い返した。

ペトラ「そりゃ私だって、本当はリヴァイ先生に教職をやめて欲しくないわよ!! でも、それは先生自身が決めた事で、生徒の私らが口出す事じゃない。先生自身が悩んで決めた結論なんだから、私達はそれを受け入れるしかないでしょ。自分勝手なエゴばっかり押し付けて、少しはリヴァイ先生の気持ちを考えなさいよ!!!!」

3年女子2「じ、自分勝手って……自分勝手なのはペトラの方でしょうが!!」

ペトラ「ええそうね! 私も自分勝手だわ! そんな事は重々承知しているわよ!! でもね、私は1年の頃、オルオと一緒に大道具で裏方をやっていた。その時、照明の事故が起きて、危うく2人とも死にかけたのよ。それをリヴァイ先生は身を犠牲にして助けてくれたの。命がけだよ?! 間一髪、スライディングして、2人を抱えて、助けてくれたの。私はあの時から、リヴァイ先生に一生、味方するって決めたの!!! あんたらの薄っぺらいファン心理なんかとか比べられるもんじゃないのよ!!!」

3年女子2「う、薄っぺらい……ですって……(ゴゴゴ)」

ペトラ「ええ、薄っぺらいわ!! この期に及んで、何でリヴァイ先生が教師を辞めるのか、その意味も理解出来ないようなあんたたちには決して分からないでしょうけどね!!!」

3年女子2「言わせておけば……! (手を構える)」

まずい! 本格的にまずい事になって来た!!

誰か止めないと。暴力事件になる!!!

と、そう思った直後……


ガシッ!!!


女子の間に立った、女子が居た。

ニファ先輩だった。

3年女子2「に、ニファ……」

ニファ「もう、やめようよ。ペトラをぶっても、意味ないでしょ」

3年女子2「で、でも……(涙目)」

ニファ「私は、ペトラの気持ちも分かるし、皆の気持ちも分かるの。だから、ちょっと聞いて欲しいんだけど」

と、言ってニファ先輩がペトラ先輩を庇った。

152進撃の名無し:2014/07/31(木) 18:11:01 ID:2GnQ2kgk0
ニファ「あのね。ミスコンの時、ハンジ先生とリヴァイ先生がこじれた後、リヴァイ先生、どんな状態になったか、知ってる?」

3年女子2「え…?」

ニファ「実際、それを見たのはミスコンに選ばれた女子だけだから、皆には分からないだろうけど、リヴァイ先生、完全に呆然自失だったの」

と、言ってニファ先輩が辛そうに目を落とした。

ニファ「真っ先に、私とペトラが駆け寄ったわ。でも、ペトラの声も私の声も、全く聞こえていない状態だった。ミスコンの女王に選ばれたあの綺麗な女の子、ミカサさんもいろいろ声をかけていたけど、ダメだった。エルヴィン先生が声をかけて、ようやく我に返ったみたいだったけど、あの時のリヴァイ先生、本当に死人のような顔をしていたんだよ」

3年女子2「……………」

ニファ「私もペトラも、あの状態のリヴァイ先生を見て悟ったの。リヴァイ先生、本当にハンジ先生の事、好きなんだって。多分、相当根深いところに、ハンジ先生の存在が「いる」んだって。多分、リヴァイ先生にとっては、なくてはならない存在だって。無くしたら、生きていけないくらいに大事な人なんだよ。ハンジ先生は」

3年女子2「…………」

ニファ「リヴァイ先生、好きになっちゃう子が多いのもしょうがないよ。でも、リヴァイ先生はあくまで「先生」だからね。アイドルじゃないんだし。生徒の私達がどんなに叫んでも、その愛が本当の意味で届く事はないよ。ロリコンじゃないみたいだし、リヴァイ先生がハンジ先生を選んだ以上、そこから先の事は、リヴァイ先生の自由だと思うよ」

3年女子2「で、でも……」

ニファ「署名運動自体を反対する訳じゃないよ? その活動をすればリヴァイ先生も気が変わるかもしれない。でも、何でリヴァイ先生が自分から「辞める」って言い出したのか。その意味は、やっぱり冷静に考えた方がいいと思うよ」

3年女子2「…………」

ニファ「ペトラも、ちょっと言い過ぎ。薄っぺらいとか、勝手に言っちゃダメだよ。人の想いは、他人に測られるものじゃないんだから」

ペトラ「………ごめん」

3年女子2「…………」

ニファ「いろんな事がいっぺんに起き過ぎて頭、疲れているのは分かるけどね。受験勉強の疲れもあるんでしょ? 皆も、ちょっと一回、落ち着こうか。署名運動も、一回休止した方がいいと思うよ?」

3年女子2「そうだね。ニファの言う通りだわ。ごめん……」

ニファ「ほら、あんまりここにたむろっていると、他の人に迷惑だから。解散しよ? ね?」

と、言って、皆ゾロゾロ何処かに行ってしまった。

ニファ先輩とペトラ先輩だけがそこに残って、2人はまだ話を続けるようだ。

153進撃の名無し:2014/07/31(木) 18:26:19 ID:2GnQ2kgk0
ペトラ「ニファ、ごめん……本当に、ありがとう」

ニファ「いいよ。あの時のリヴァイ先生の顔、知っているの、3年だと私とペトラだけだもんね」

ペトラ「うん……」

ニファ「リヴァイ先生に、二度とあの時のような顔、させたくなかったんだよね? だから、賭けに出たんだよね?」

ペトラ「うん………」

ニファ「ペトラは賭けに勝った。だから、もう、これ以上、意地張らなくていいと思うよ」

ペトラ「うん……うん……」

その直後、ペトラ先輩はニファ先輩の目の前でわんわん泣きじゃくった。

辛かったんだろうな。相当。今までずっと、意地張っていたんだ。

そうだよな。片思い歴、長いんだよ。ペトラ先輩。

高校生活のほとんどを、リヴァイ先生を想って過ごしてきたんだから。

ペトラ先輩のした事は決して褒められるような事じゃない。

きっと、あの光景を見て、ペトラ先輩にドン引きした人も多いと思う。

でも、それでも、自分の事を殴り棄てて、ペトラ先輩は賭けに出たんだ。

リヴァイ先生の幸せを願って。

ペトラ「ニファ、ありがとう…本当に、ありがとう……ごめん。本当に、ごめん……」

ニファ「……私も、一緒に泣いてもいい?」

ペトラ「うん…泣こう! もう、いいよね?」

ニファ先輩も一緒に泣いている。わんわん泣いている訳じゃないけど。

それは一筋の、小さな涙だった。

154進撃の名無し:2014/07/31(木) 18:46:42 ID:2GnQ2kgk0
と、その時、一番ここに来て欲しくない人物がこっちにやってきてしまった。

リヴァイ先生だ。

リヴァイ「何か、騒ぎが起きていると聞いてこっちに来たんだが……もう収まったのか?」

ペトラ「!」

ニファ「!」

リヴァイ「どうしたんだ? 2人とも。何かあったのか?」

ペトラ「い、いえ……何でもないです。ね? ニファ?」

ニファ「ええ。ちょっと、2人で内緒話をしていただけですよ」

リヴァイ「? 内緒話で泣くほどの事があるのか?」

リヴァイ先生!! 今は深く突っ込まないであげてくれ!!!

リヴァイ「ああ、そうだ。ペトラ。今、時間あるか?」

ペトラ「あ、はい。大丈夫です」

リヴァイ「少し、話をしてもいいか?」

ペトラ「2人きりで、ですか?」

リヴァイ「その方がいいとは思うが、時間がないならここでもいい」

ペトラ「………ここで聞きます」

リヴァイ「分かった。…………すまなかったな」

ペトラ「………ハンジ先生の件ですよね」

リヴァイ「ああ。ペトラにぶたれた事を、ハンジが気に病んでいた。ペトラにぶたれたおかげでようやく、全ての「謎」が解けたと。その為のスイッチボタンを押してくれたのは、ペトラだったと。そう言っていたんだ」

ペトラ「そうですか……」

リヴァイ「俺もあの時はすまなかった。生徒を放置して先に帰るなんて、やっていい事じゃなかった」

ペトラ「仕方がないですよ。あの時は」

155進撃の名無し:2014/07/31(木) 19:08:28 ID:2GnQ2kgk0
リヴァイ「いや……すぐカッカして行動を起こすのは俺の悪い癖だ。冷静な自分で居られないのは大人に成りきれていない証拠だ。中途半端な大人ですまない」

ペトラ先輩は首を左右に振っていた。愛おしそうに笑っている。

リヴァイ「リヴァイ先生が短気なところもあるのは、皆知っているから大丈夫ですよ」

リヴァイ「……面目ねえな。本当に」

と、リヴァイ先生が苦笑する。そして、

ペトラ「あの、リヴァイ先生」

リヴァイ「ん?」

ペトラ「教職を辞められるのはいつ頃になられるんですか? 2学期までになるんですかね?」

リヴァイ「いや、その事について何だが……」

と、リヴァイ先生が更に顔を歪めている。

リヴァイ「その……すまん。辞めると言ったのに、なかなか学校側が受理をしてくれない事態になっていてな。校長先生に「ふざけんなこの野郎。代わりの教員、いねえのに何、寝ぼけた事言ってるんだ? 絶対受理しません(黒笑)」と、言い切られてしまって、どうにもこうにも動けない状態になっている」

と、うっかり裏話を聞いてしまって、オレ達は驚いた。

ペトラ「え? 学校側が受理しないって、そんな事、あるんですか?」

リヴァイ「いや、俺も今回のケースは初めての事だから、良く分からんが、俺は3学期までは続けて、3月末で辞めるつもりで交渉したんだが「辞める時は1年から半年前の間で前もって打診するのが常識だろうが!」と怒られてしまった。教員になる前に働いてきた職場ではそんな事は一度もなかったから、どうしたもんかと頭を痛めている」

へえええそうなんだ! 初めて知ったぜ!

仕事って、いきなり辞めるとか出来ないんだ。へーへー。

勉強になったぜ! 覚えておこうっと。

ペトラ「では、続けられるんですか……?」

リヴァイ「うーん……それも難しい問題なんだ。例の、その……ペトラは知っているのか? 俺のファンクラブについては」

ペトラ「はい」

リヴァイ「その件や、ハンジに対する風当たりの問題が解決しない事には、俺が教師を続ける意味がないんだ。八方塞がりとはこの事だな」

と、リヴァイ先生が本気で悩んでいた。

156進撃の名無し:2014/07/31(木) 19:22:59 ID:2GnQ2kgk0
リヴァイ「せめてあと1年続けて、来年辞めるか……だな。そうすればさすがに生徒達も諦めてくれるだろう」

ペトラ「じゃあ、まだ猶予期間はある訳ですね。卒業式は一緒に過ごせるんですね」

リヴァイ「ああ。まあ、ペトラ達の代はきっちり見送るつもりではいたよ。そこは安心していい」

そう、言い切った瞬間、ペトラ先輩がまた泣き出してしまった。

リヴァイ「お、おい……どうした? ペトラ?」

ペトラ「良かった……卒業式、一緒に出られるんですね? 本当に良かった…」

リヴァイ「あ、当たり前だろ。俺の性格、知ってるだろ。キリの悪いところで辞めるのは性に合わないんだよ」

ペトラ「はい……!」

と、泣き笑いでペトラ先輩が答えたのがとても印象的だった。

良かった。ペトラ先輩、少し落ち着いたみたいだ。

ミカサ「あの………」

と、その時、傍観者に徹していたミカサが声をかけた。

リヴァイ「ああ、ミカサもいたのか」

ミカサ「こっそり居ました。その、どうしても辞めないといけないんですか? リヴァイ先生」

リヴァイ「辞めた方が、解決すると思ったんだが」

ミカサ「いえ……その……私の経験上、それはかえってまずいのでは、と思ったんですが」

リヴァイ「え? それはどういう意味だ?」

ミカサ「…………女の執念を舐めてはいけません」

と、ミカサがまるでホラー映画のような顔つきになって言った。

157進撃の名無し:2014/07/31(木) 19:32:35 ID:2GnQ2kgk0
ミカサ「確かにリヴァイ先生が教師を辞めてしまえば、表面上はハンジ先生の嫌がらせは少なくなるかもしれません。しかし、リヴァイ先生の見えない部分で、必ず精神攻撃はこっそりしてきます」

リヴァイ「何……?」

ミカサ「結婚したら、尚更酷い陰湿な精神攻撃をしてくる可能性もあります。私は、リヴァイ先生自身が目を光らせて、生徒達を見張っている方がまだマシだと思うんですが」

リヴァイ「な、そ、そういうものなのか?」

ミカサ「(こくり)………女って、怖いんですよ? ククク………」

やめてえええ! 夏の怪談みたいに話すのはやめてくれえええ!!!

本気でガクブルしながらそれを聞いていたら、

リヴァイ「そ、そうか……そういう可能性もあったのか。すまん。俺もちょっと浅はかだったな」

ミカサ「よおおおく考えた上で、決断された方が良いかと。ククク……」

だから、ミカサ! 脅し過ぎる!!

でも、その言葉はリヴァイ先生に響いたみたいで「分かった」と答えてくれた。

リヴァイ「貴重な意見をありがとう。エルヴィンにも話してもう少し、煮詰めてから今後の事を考えてみる」

ミカサ「その方が宜しいかと……(ニヤリ)」

リヴァイ「ああ。そうする。じゃあな」

と、言ってリヴァイ先生は職員室に帰って行った。

ペトラ「み、ミカサ……ありがとう」

ミカサ「いえいえ。私は女性の味方なので。リヴァイ先生が辞める方が個人的には嬉しいですが、ハンジ先生が可哀想な目に遭うのは、ちょっと」

ペトラ「うん。そうだよね。女って、怖いもんね」

ニファ「うん。怖い怖い」

女同士で「怖い」言い合う姿って、奇妙だな。

自覚しているからこそって事なのかな。不思議だな。


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