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エレン「この長い髪を切る頃には」2

1進撃の名無し:2014/07/25(金) 18:53:56 ID:Yeod/N2g0
*続編です。ミカサ「この長い髪を切る頃には」→エレン「この長い髪を切る頃には」の続き。もう1回エレン視点で書いていきます。

*現パロです。現在、エレンの髪がちょっとずつのびています。(ミカサよりちょい長め。小さいしっぽ有り)

*舞台は日本ですがキャラの名前は基本、カタカナのまま進めます。漢字の時もあるけど、細かいことは気にしない。

*実在の人物とかは名前やグループ名等をもじっています。時事ネタも有り。懐かしいネタもちらほら。

*原作のキャラ設定は結構、崩壊。パラレル物苦手な方はご注意。

*原作のキャラ性格も結構、崩壊。原作と比べて「誰だてめえ」と思った方はそっと閉じ推奨。

*レスに対するお返事レスは返せない事が多いかも。体力温存の為。無視している訳じゃないんで、OK?

*感想は毎回有難い。でも自分の妄想話を書くのはNG。読んでいる人が混乱するから。本編と混ぜるな危険。

*雑談は雑談スレでお願いします。雑談嫌いな読者の方もいらっしゃるからね。

*現在、ジャン→ミカサ、ジャン(?)→サシャ、オルオ→ペトラ→リヴァイ←ニファ リヴァイ→ハンジ←モブリット ライナー→クリスタ←アルミン←アニ(?)←ベルトルト イアンリコあたりもちらほら。というか、そのつもりで書いています。

*安価時以外のアイデア・オリジナルの設定等の提案は禁止させて頂きます。(エレン「この長い髪を切る頃には」の時にトラブルが発生した為です)

*その代わり、安価出した時は出来る限り(多少無茶振りでも)採用する方針でやっていますので、宜しくお願いします。

*モブキャラも多数出演。オリキャラ苦手な方もご注意。キャラ濃い目。

*そんな訳で、現在設定しているオリキャラをざっとご紹介。


マーガレット(2年生♀)→大道具リーダー。漫画描ける。腐ってる女子。皆のお姉さん的ポジ。

スカーレット(2年生♀)→大道具。立体造形専門。ロボットもいける。たまに腹黒。

ガーネット(2年生♀)→大道具兼衣装。コスプレ好き。ちょっと大人しめのオタク。

アーロン(2年生♂)→役者。元野球部。高校から演劇始める。

エーレン(2年生♂)→役者。元サッカー部。高校から演劇を始める。

カジカジ(1年生♂)→役者。外見はエレンに似ています。明るい男子。愛称は「カジ」。

キーヤン(1年生♂)→役者。ジャンよりイケメン。歌上手い。

マリーナ(1年生♀)→役者。少年の声が出せる。ナレーションうまい。ほんわか系女子。


*原作のモブの名前が判明すれば……途中加入もあるかもです。

*外伝のキュクロとシャルルも出ています。二人は野球部投手とマネージャー。

*先生方の年齢設定が原作より(恐らく)若干高め設定になっています。

*リヴァイ先生(38歳)というおっさん設定に耐えられない方は御免なさい。

*加えてリヴァイ先生の潔癖症が病気レベル扱い(笑)になっているので、御免なさい。

*リヴァイ先生の性癖(?)も大分、斜めってる設定になっています。ご了承下さい。

*エルヴィン先生(43歳)も相当なオタク設定になっています。リヴァイより更に斜め方向に変態です。本当に御免なさい。

*ハンジ先生(36歳)が昔は美人だったよ設定です。ややモテキャラですが、リヴァイに比べれば蟻の触覚程度です。

*リヴァイ先生がモテ過ぎ設定です。気持ち悪いくらいモテキャラです。愛され過ぎて御免なさい。



*ラスト100レスは完成する迄、レス自重お願いします。レス足りないと書き手としてプレッシャー過ぎる。

*そんな訳で、現パロ(エレン視点編)を始めます。OK?

20進撃の名無し:2014/07/26(土) 20:45:30 ID:/LC3LqHE0
エレン「アルミン、とりあえずどこに連れて行こうか」

アルミン「うーん、あんまり人目につかないところがいいよね。あ、占い館ならどう? あそこは個室あるし。逃げようよ」

エレン「そうだな。一回そこに逃げるか」

マーガレット先輩の2年1組に急いで移動する。占い館の中は人も少なめで、暇そうにしている占い師がいた。

マーガレット先輩本人じゃなかったけど、多分クラスの人だろう。

取り敢えずそこの占いの個室席に座らせて、暫くそこで落ち着かせる事にした。

占い師「………ハンジ先生、どうかされたんですか?」

ハンジ「ううん、何でもないの」

占い師「何でもないって顔じゃないですよ。あ、良かったら悩みに合わせて占いましょうか?」

ハンジ「占い?」

占い師「はい。1回100円ですけど」

ハンジ「私、あんまり占いって信じない方なんだけど……」

占い師「まあまあ、気休め程度で聞いて貰えれば。暇つぶしにやってみて下さいよ」

ハンジ「………分かった」

良かった。とりあえず、ハンジ先生の顔が上がった。

占い師「12星座でいいですかね? 誕生日は……」

ハンジ「……9月5日」

占い師「乙女座ですね。分かりました……(パラパラ)」

マニュアルが一応あるからそれになぞって占いを始める。

オレ達2人はそれを後ろで見守っていた。

占い師「そうですね……乙女座の方が不安になりやすいのは『相手に合わせ過ぎようとして疲れた時』とありますね。ここ最近、相手の要望に応えようとし過ぎて振り回された経験はないですか?」

きっくー! ある。あるぜ。リヴァイ先生絡みでな。

スカート事件だとか、キス(ガムテ越し)事件とか。さっきのミスコンもそれに入るかも。

ハンジ「んー? んー……合わせようという意識はないけど、なんかいつの間にか合わせている事はあるかもしれない」

占い師「では、心当たりは一応あるんですね」

ハンジ「んーあると言えばあるけど……」

占い師「だとしたら、今は我慢しないで全て吐き出して下さい。不安を解消するには『泣きたい時は思い切り泣いて』とあります。自分を大切にする事が、これから先、生きていくのに必要な儀式であると、そう出ていますよ」

ハンジ「!」

その直後、ハンジ先生は硬直して、プルプルと震えだした。

ハンジ「今、泣いてもいいの……?」

占い師「泣かないとダメです。占いにはそう出ていますよ」

ハンジ「じゃあ、今、ここで、泣いてもいい? 泣いても、いいよね?」

占い師「大丈夫です。ハンカチとティッシュは準備万端ですから」

そしてハンジ先生はその直後、本当に崩れたように泣き出した。

大人だから、声は出さない様に殺しているけど、ぽろぽろと溢れているその涙を見ると、

こちらまで貰い泣きしそうになる。

21進撃の名無し:2014/07/26(土) 21:10:31 ID:/LC3LqHE0
ハンジ「ごめん……ごめん……リヴァイ、本当に……ごめん…………」

ずっと、リヴァイ先生に謝っていた。罪悪感からずっと、涙が止まらないようだ。

ハンジ「私が、ほっぺならいいなんてリヴァイに言わなければ……良かったのよ。私は彼女達のリスクを知っていたのに。舞台の空気に酔って、しまったせいで……あの子達は、私のせいで殺してしまった……」

懺悔の念。後悔の念に囚われてハンジ先生は泣き続けた。

ハンジ「もう、私はリヴァイの傍に居られない。あいつの友達としても、もう………」

大事な物をズタズタにされた恐怖からハンジ先生は怯えていた。

愛の恐怖を。実際に体験して初めて、震えているんだ。

ハンジ「ごめん……リヴァイ………うっ………ううう………」

ハンジ先生は一通り嗚咽を吐き出すと、少し落ち着いてお金を差し出した。

ハンジ「ありがとう。少し泣いてすっきりしたよ。500円玉しかないからこれでいい? お釣りは要らないから」

占い師「え? ああ……ありがとうございます」

ハンジ「エレンもアルミンもありがとう。2人とも、ミスコンに戻っていいよ」

エレン「でも……」

ハンジ「折角、彼女が出ているんだから応援してあげないと。ね?」

ハンジ先生の涙の跡が痛々しかったけど、オレは首を横に振った。

エレン「ダメです。今のハンジ先生を一人にしてはおけないです」

アルミン「エレン…(首振っている)」

エレン「でも、アルミン」

アルミン「一人の方がいい場合もあるよ」

エレン「…………」

ハンジ「もう大丈夫だよ。うん。こういうのは時間が解決してくれるって、分かっているから」

と、ハンジ先生はそう言って席を立った。

するとそれを入れ替わる様に、

モブリット「あ、ハンジ先生。探していました。あの……少しお話ししたい事が」

ハンジ「え? 何?」

モブリット「大事な話なので、2人きりになれるところでお願いしていいですか」

ハンジ「分かった。いいよ。じゃあね、エレン、アルミン」

モブリット先生がハンジ先生についていった。モブリット先生が傍にいるなら大丈夫かな。

気にはなったけど、オレとアルミンはミスコン会場の第一体育館の方に戻った。

もう、場所を取っていた前の席には戻れない。しょうがないから後ろの方で立ち見だ。

一応、ミスコンの方は再開していたようだ。2回戦に入って、ミカサは順調に勝ち上がり、次はペトラ先輩とアニの対決に入っていた。

22進撃の名無し:2014/07/26(土) 21:44:46 ID:/LC3LqHE0
2回戦のテーマは『ドキ☆ 彼氏の突然の訪問! 慌ててコーディーネートしたその私服は?』という物だった。

2回戦2組目は僅差でアニが勝ち上がり、準決勝1組目はミカサとアニの直接対決が決定した。

2回戦3組目はアンカ先生とサシャが対決して、ここも無難にサシャが勝ち上がった。

2回戦4組目の方はイルゼ先生が勝ち上がった。これで4ベストが出揃った。

エルヴィン『3回戦のテーマはこちら!』

ジャジャン♪


『彼氏との初めての夜デート♪ もしかして……の時に着る私服は?』


という何とも色っぽいお題だった。

ミカサは薄い水色のゆったりめの長袖シャツ、ややタイトなミニスカートで登場した。

ミカサ、足長いからすげえ映える。でも腕は隠すのか。不思議なバランス感覚だな。

手首のところはふわっと絞ってある。髪型はいつものおかっぱだ。

対するアニは黒をベースにしたフリルのシャツにやはりこちらもミニスカートだ。

ただしこっちはチェックの制服風だ。アイドルがよく着ているスカートに近い。

エルヴィン『……という訳で、皆様、集計をお願いいたします!』

という訳で集計に入った。結果は………>>23になった。

(*どっちが勝つか。安価とった方に委ねます。勝者を指定して下さい)

23進撃の名無し:2014/07/26(土) 23:12:04 ID:I9JkDQb60
ミカサ!!

24進撃の名無し:2014/07/27(日) 01:04:01 ID:K2mZFeb.0
ハンジ切ない…
うるっときてしまった
続き楽しみにしてます

>>23
よくやった!

25進撃の名無し:2014/07/27(日) 02:00:38 ID:8RA2FW3I0
ハンジせんせー(T-T)
リヴァイ先生男を見せてください!!

ミカサ優勝してくれ

26進撃の名無し:2014/07/27(日) 03:18:08 ID:3.u7L/RE0
エルヴィン『おおおっと! これは奇跡に近い。1グラム差でミカサの勝利だ! 大接戦だね!』

会場が轟いた。これは名勝負だった!

エルヴィン『紙一重だったね。アニ、惜しかった』

アニ『ここまでこれただけでも十分です。ミカサ、後は優勝するんだよ』

エルヴィン『おおっと、健闘を称えたった握手です。皆さん、拍手を!』

パチパチパチパチ………!

エルヴィン『3回戦2組目にいきます!』

サシャとイルゼ先生の対決だ!

サシャは今度は御団子頭にしてアップにしている。紺色のベースの水玉のシンプルなワンピースだ。

イルゼ先生はハイネックのオレンジがかったワンピースだ。柄はないけど、レースがあって綺麗だ。

エルヴィン『またもやワンピース対決だね。ワンピースが好きみたいだね。サシャ』

サシャ『あ、はい。私服はほとんどワンピースで、たまにロングスカートですかね』

エルヴィン『やっぱりウエストがゆったりしている方が好きなのかな?』

サシャ『それもありますけど、脱ぐのも着るのも楽なんですよ。ファスナーで一気にがっとしゃっとやればすぐ着脱できるので』

おおおお。サシャにしてはいいことを言っている。

エルヴィン『ふふ……なるほど。それはいい装備だね。対するイルゼ先生もワンピースで来たね。オレンジ色が良く似合ているよ』

イルゼ『厳密に言うと、サーモンピンクになるんですけどね。薄いオレンジだと思います』

なるほど。いやでも、どっちも似合っていて、どっちに投票したらいいんだこれ。

ジャン『………………』

あ、良く見たらジャンがオレの前の方の席に居た。あいつ、耳を赤くしてやがる。

やっぱりサシャの事、気になっているんじゃねえのかな。素直じゃねえよな。

エルヴィン『……という訳で、皆様、集計をお願いいたします!』

ここでミカサの決勝戦の相手が決まる。果たしてどちらになるか……。

エルヴィン『おおおっと! またまた奇跡が起きた。1グラム差でサシャの勝利だ! 今年は本当に激戦だ! おめでとう!』

サシャ『ありがとうございまああああす!!!』

サシャが飛び跳ねた。これは若さの勝利かな。

エルヴィン『ついに決勝のメンバーが揃いました。エントリーナンバー1! ミカサ・アッカーマン対エントリーナンバー12! サシャ・ブラウス! 2人の決選投票は3分の休憩後、行いますので皆様、今しばらくお待ちくださいますようお願いします』

という訳で3分間の短い休憩が入る。

ミカサがやっぱり決勝まで残ったか。でも何気にサシャも生き残ってすげえな。

あ、ジャンが頭を抱えだした。ここはもう、誤魔化しきかないからなあ。

27進撃の名無し:2014/07/27(日) 03:32:43 ID:3.u7L/RE0
エレン「おい、ジャン」

ジャン「うああああ?! 誰かと思ったらエレンかよ?!」

エレン「お前、さっきの投票、サシャに入れたんだろ?」

ジャン「んなわけねえだろ?! イルゼ先生に入れたよ」

マルコ「嘘ばっかり……サシャに入れたでしょ。ジャン」

ジャン「うぐっ……! ま、マルコ、ばらすなよ(眉歪める)」

エレン「サシャ可愛いじゃねえか。何が不満なんだよ」

ジャン「か、可愛くねえよ。ミカサに比べたら月とスッポンだろうが」

アルミン「でもサシャはスッポン食べそうだけどね」

ジャン「うっ……そういう意味じゃねえよ。その、全然タイプが違うだろうが!」

エレン「そりゃそうだけど、それとこれは関係ないだろ? お前、何でそこまで頑なになるんだよ」

ジャン「うー……」

ジャンが頭を抱えている。

ジャン「分からん! そもそも、他の女に目配っている場合じゃねえし!」

アルミン「やっぱりアレ? サシャが美少女ごっこした時にギャップにやられたとか?」

マルコ「ああ、確かにあの時のジャン、面白かったよね。まっさきに動揺していたし」

エレン「ああ、うちに皆で集まった時のアレか。あの美少女サシャバージョンに堕ちたのか」

ジャン「うぐっ……!」

ジャンは本当に面食いだな。いや、オレもある意味そうなんだけど。

ジャン「違う違う違う! 断じてオレは!」

エレン「はいはい。まあ、どっちでもいいけどな。あ、そろそろ決選投票始まるみたいだぞ」

ざわざわざわ……

ドラムロールが始まって照明がクロスし始める。

おおお。盛り上がってきたな。どうなるんだろう。

28進撃の名無し:2014/07/27(日) 04:08:54 ID:3.u7L/RE0
エルヴィン『お待たせいたしました。決勝戦のテーマを発表いたします。決勝にふさわしいテーマはこちら!』

ジャジャン♪


『彼氏との初めての一泊旅行デート。もう迷わない夜に着る寝間着は?』


寝間着?! 寝間着で勝負って、ちょっと刺激強すぎるだろ?!

誰だよこのテーマ考えた奴。天才過ぎる。御捻り投げ入れてえ。

エルヴィン『ついに迎えた2人の夜。その時に着る服こそが最も気を遣うべき服だと私は考えます。あ、勝負下着姿で出てくる訳じゃないから勘違いしない様に。あくまで寝間着だからね』

どっと笑いが起きた。つまりパジャマ対決って事だよな。うん。

エルヴィン『では、準備が出来たようです。まずは先攻! ミカサ!』

普通のパジャマかな。まあもう、それだけでオレは十分なんだけど。

…………とか思っていたら、オイオイ! まさかの浴衣キタあああああ?!

え? 何で? これって、あ! そっか!

旅館に泊まった時のイメージなのか。あの夏の続きを、もしかしてミカサは……。

そう想像したら、オレの息子はびくっと反応しかけてマジでヤバかった。

くそおおおお………アレ思い出すと今でも恥ずかしい。

エルヴィン『浴衣とは、なかなか渋いね』

ミカサ『旅館に泊まるのであれば、こちらの方がいいと思ったので』

エルヴィン『うんうん。いいねー。着付けもうまいね。自分でやったの?』

ミカサ『はい。出来ます。母に習っているので』

エルヴィン『現代の大和撫子がここに生き残っていたね。これは国で保護しないと』

と、言うと皆「異議ナーシ!」と笑っていた。

対するサシャは、またまたピンク色だった。おおおお? フリルのネグリジェだ!

髪もおろして寝る準備万端って感じだな。こっちもこっちで可愛い。

エルヴィン『こちらはネグリジェか。普段からこれなのかな?』

サシャ『はい! これだとお腹だけ冷やす事が少ないので、この恰好で寝ますね。パジャマだと、しょっちゅうお腹がつっと出て、冷やしちゃうんですよ』

つっと出るは「はみ出す」という意味だ。ちょっと分かりにくいかもしれないが方言だな。

エルヴィン『うむ。健康にもいい寝間着だね。さて、両者が出揃ったところで最終決選投票を行います!』

という訳で集計に入った。結果は………>>29になった。

(*どっちが勝つか。安価とった方に委ねます。勝者を指定して下さい)

29進撃の名無し:2014/07/27(日) 04:51:37 ID:kjI3M8a20
これはミカサだな

30進撃の名無し:2014/07/27(日) 05:38:24 ID:0y.thDvg0
エルヴィン『おおっと、5グラム差でミカサの方が重いね! これは浴衣の方に軍配が上がった! という訳で、第20回講文祭ミスコンテストの優勝者は1年1組ミカサ・アッカーマンに決定いたしました! おめでとう!!!』

わあああああ!

BGMが変わって一気に会場が盛り上がった。アシスタントの女性がトロフィーを持ってくる。

それを受け取ってミカサは綺麗にお辞儀をした。うーん。所作も完璧だぜ。

オレ、改めて見るとすげえ幸せな男だなと思った。

だってこんなに可愛い子を彼女にしているんだぜ? 自慢しか出来ねえだろ。

ジャンも拍手をしていた。そういえばこいつ、結局どっちに票を入れたんだろ?

エルヴィン『さて、優勝者であるミカサには記念にくまもんのお米10キロが贈呈されます。美味しいお米だから是非食べてね』

サシャ『お米えええええええ?! (涙目)』

サシャががくっとorzの状態になった。余程景品が欲しかったらしい。

するとミカサはサシャに駆け寄って、

ミカサ『サシャ。一緒に食べよう。お米10キロもあるので、後でおにぎりを作ろう』

サシャ『い、いいんですか?!』

ミカサ『後夜祭までに炊き上げるように準備すれば間に合うと思う。調理部に交渉しよう。炊飯器を借りられるかどうか』

サシャ『女王様ああああああ!!!! (がばちょ!)』

あ、クリスタが女神だから、ミカサは女王様なのか。なるほど。

ミスコンの女王様トロフィーと一緒に記念撮影をする事になった。

ラストはミカサ、サシャ、アニ、イルゼ先生の四人が並んで自由に記念撮影だ。

そして時間が来て、ミスコンはようやくお開きなった。

ミスコンが無事に終わると次はイントロクイズの準備に入った。

ミスコンが終わったメンバーがぞろぞろと舞台裏から出てくる。その中に浴衣姿のミカサがいて、すぐこっちに来た。

ミカサ「エレン!」

エレン「お疲れ。ミカサ」

ミカサ「ハンジ先生は……」

エレン「モブリット先生といっちまったよ。2人で何か話す事があるらしくて、何処かに行った」

ミカサ「そ、そう……(シュン)」

あれ? 予想していた反応と真逆だな。どうしたんだ。

ミカサ「エレン……どうしよう」

エレン「ん?」

ミカサ「勘違いしていたの。私はてっきり、リヴァイ先生の片思いなのだとばかり思っていたけれど、そうじゃなかったのね」

エレン「ミカサ………」

ミカサ「舞台裏で2人のやりとりを直接見たの。その時のハンジ先生の反応を見て、気づいた。ハンジ先生、リヴァイ先生の事を本当は………」

エレン「ああ。まあ、多分そうだろうな」

オレがそう答えるとミカサはもっとシュンとした。

ミカサ「ハンジ先生に悪い事をした。相思相愛なら、例え相手があのクソちび教師でも、ボタンを掛け違えるの程辛いものはない………」

ミカサが以前と打って変わって態度を改めた。どうやら2人の事を応援してくれるみたいだ。

31進撃の名無し:2014/07/27(日) 05:57:13 ID:3.u7L/RE0
ミカサ「クソちびが、舞台裏の椅子に座ったまま動かないの。叩いたり、殴ったりしたけど反応が全くなくて、動かなくなってしまった。まるで電池の切れたロボットみたい」

エレン「そうか………でも次の準備もあるからずっとそこに座らせている訳にはいかねえよな。迎えに行くぞ」

オレとミカサは一度舞台裏に戻る事にした。アルミンもアニもジャンもマルコも気になって後からついてきてくれた。

そろっと舞台裏を覗いてみると、奥の端の方にあるパイプ椅子に一人座っているリヴァイ先生が居た。

本当だ。ミカサの言う通り、死人みたいな顔している。

その傍でエルヴィン先生がしゃがんで「リヴァイ、立って」と声をかけている。

エルヴィン「次の準備がある。ここにずっと居られると邪魔になるよ」

リヴァイ「あ、ああ……そうだったな」

と、やっと我に返ったのか、目に光が戻った。

そして立ち上がろうとしたけど、うまく立てずにエルヴィン先生にもたれかかってしまった。

リヴァイ「………すまん。足にうまく力が入らない。身体が自分の物じゃない様に重い」

エルヴィン「分かった。肩を貸して貰おう。私とでは身長差が大きすぎるから……アルミン。君に頼んでいいかな」

アルミン「分かりました」

アルミンはリヴァイ先生に肩を貸して取り敢えず外に連れ出したのだった。

リヴァイ先生もとりあえず、人目につかない場所まで移動させないといけないな。

でもリヴァイ先生自身が歩くのが苦痛のようなので、とりあえず第一体育館の外に連れ出す事にした。

途中で女子生徒に大分注目されたけど、今はそれどころじゃない。

遠目にしてこっちに来ないだけ有難いが、ひそひそ声がうっとおしい。

何だかイラッとしたけど、今は自重した。今はリヴァイ先生を優先だ。

エルヴィン先生に頼まれてアニが自動販売機に走る事になった。

ミカサの方が足早いけど、今は浴衣だから転ぶと危ないからな。

その点、ミニスカのアニは本気で走るとガチで早かった。

数分で缶入りの紅茶を数本買って来て、それをリヴァイ先生に持たせたのだった。

紅茶を無理やり喉に押し込んでリヴァイ先生がずるっと座り込んだ。

ヤンキー座りをもっと崩したような座り方だ。天を仰いでいる。眩しそうに。

32進撃の名無し:2014/07/27(日) 06:39:02 ID:3.u7L/RE0
リヴァイ「………………昨日、謝ったんだがな」

エルヴィン「うん。キスした事だね?」

リヴァイ「ああ。準備が全部終わってから、ハンジを捕まえて、少し話した。でもあいつはずっと「あんたが悪い訳じゃない」って言って、笑っていたんだ。だから、許してくれたんだとばかり、思っていたんだが、手遅れだったんだな」

エルヴィン「……………」

エルヴィン先生もさすがに何も言えず黙り込んでいる。

リヴァイ「俺はハンジに縁切りされたんだよな。友人としても、もう付き合えない。そういう事なんだろうな」

エルヴィン「リヴァイ。それは少し考えすぎだよ」

リヴァイ「だが、そうとしか思えなかった。ハンジに拒絶されることがこんなに、堪えるとは思いもよらなかった」

と、言ってリヴァイ先生は静かに両目を閉じた。

リヴァイ「エルヴィン。前に言った事を覚えているか?」

エルヴィン「前に?」

リヴァイ「ああ。俺が前に、ハンジにはキスもセックスもしたいと思った事は1度もないと言った、アレだ」

エルヴィン「覚えているよ。はっきりと」

リヴァイ「すまん。アレ、よく考えたら記憶違いだった。正確に言えばたった一度だけ、昔、あった。かなり昔だが」

だろうと思った。多分。相当昔の話だろうな。

リヴァイ「俺が三十路になる年の2月頃だったかな。突然あいつが「ダンスの講師の資格が取りたいから、パートナーとしてつきあって!」と無理難題を言い出した。それから10か月程度の時間をかけて、ハンジと社交ダンスの練習をした。その時の事を、覚えているか?」

エルヴィン「ああ。良く覚えているよ。私も練習指導につきあったしね」

リヴァイ「俺はあいつとコツコツ練習を重ねて、12月にT都で行われるダンス大会に出場する事になった。そこで優勝すれば成績が認められて資格も得られるという大会だった。俺達は初出場にして、初優勝を果たして無事にお互い、資格を得る事が出来た」

あ、なるほど。という事は2人とも、社交ダンス出来るんだ。すげえな。

でもハンジ先生は何で社交ダンスやろうと思ったんだろ? ちょっと意外だな。

リヴァイ「俺は資格を得てからハンジに聞いたんだ。そもそも何で社交ダンスをやろうと思たのかと。そしたらあいつ、何て言ったと思うか分かるか?」

エルヴィン「いや……分からないな。見当もつかないね」

リヴァイ「俺の三十路に間に合うように、俺の三十路の誕生日プレゼントに、ダンスの講師の資格を俺にあげたかったそうなんだ。社交ダンスはペアじゃないと大会に出場できないし、つまりあいつなりの、サプライズだったんだよ」

うおおおおおなんだそれ。なんて粋なプレゼントだよ。

資格がプレゼント、だなんて。そんな発想、ハンジ先生にしか出来ねえな。

リヴァイ「それを聞いて俺は『それを早く先に言え!』と怒鳴ってしまったが。でも、嬉しかったんだ。ハンジは『私は家事とか女らしい事は殆ど出来ないし、プレゼントを買ってあげるのも下手だし、でもこれだったら、一生、体育教師のリヴァイの役に立つプレゼントになるかと思って』と言ってくれたんだ。確かに体育教師の俺にとってはこういう資格はないよりはあった方がいい。もしダンスを指導する立場になれば、そういう知識も経験も必要になってくる。でも、あいつは生物教師だ。必要があるのは俺だけで、あいつはただ、それに付き合ってくれただけなんだよ」

ぐはああああ何だもう、そのエピソード!!!

そんないい話があるのに何でつきあってねえんだこの2人?!

と、思いつつも皆で静かに話の続きを待つ。

33進撃の名無し:2014/07/27(日) 06:56:46 ID:3.u7L/RE0
リヴァイ「ダンス大会が終わったその日の夜は2人でツインのホテルに泊まった。あの時、俺は初めて、ハンジをいい女だと思った。でもあいつはその後『これからもずっと、友達でいようね。あんたは私の最高の親友だから』って言ってきてな。その言葉に対して俺はずっと約束を守ってきただけだったんだよ」

旅行先のツインのホテルに泊まったのに手、出さなかったんだ。

オレの時(夏のアレ)より酷いお預けじゃねえか。もう何か、リヴァイ先生が可哀想過ぎる。

リヴァイ「大会の時に借りたドレスを買い取って、ハンジにあげたのはせめてもの礼のつもりだった。だけどあいつは、ずっと「要らないから!」って跳ね除けていたんだが、俺もそこは折れなかった。あいつのクローゼットの奥の方に無理やり押し込んで、ずっと仕舞わせていたんだ。それを今朝見つけて、全部一気に思い出したよ」

エルヴィン「なるほど。だからあの深緑色のダンス衣装を持ってきたんだね」

リヴァイ「ああ。俺にはもう、アレしか思い浮かばなかった。初めて2人で旅行した時の、思い出の衣装だったからな」

ジャンが凄い顔になっていた。

アレだな。リア充死ねを通り越して呪いそうな顔になっている。

リヴァイ「沈んでいた筈だ。地下深く、自分の気持ちが眠っていたのも、ただ、そう考えない様にしていただけだったんだ。俺は………」

リヴァイ先生はそう言って自分の気持ちを徐々に整理しているようだった。

リヴァイ「俺はハンジの事が好きだったんだ。恐らく、あの日の、三十路になった誕生日のあの日から、ずっと……」

すげえ遠回りな恋愛だなと思った。こんな事って、あるんだな。

だって8年……いや、もう9年近くか。ずっと気持ちを封印していたんだぜ?

その上で一緒に風呂入ったり、料理やら洗濯やら買い物やら。

一緒にいる時間は恋人と大差ないのに、でもキスとセックスだけはして来なかった。

単に我慢していたという話じゃなくて、それすらも感じない様に自分にそうさせていたなんて。

無意識って言うのは、案外馬鹿に出来ねえなとつくづく思った。

リヴァイ「ハンジは俺が三十路を越えてからはしょっちゅう「三十路〜おっさんおめー」とか「三十路っていいよね! なんか響きがいいよね?」とか何とか言ってよくからかってきたりしたな。ハンジの中では恐らく三十路がひとつのステータスだったのかもしれんが、特別なものにしたかったんだろう。俺もあいつが三十路を越えた時は同じように「三十路を越えたから早く嫁に行け。結婚しろ」と言い放っていたが、よく考えたらそうやって言い合う事を楽しんでいただけだったんだな……」

エルヴィン「うん。そうだね。君達のそれは、ただの夫婦漫才だったよ」

リヴァイ「ははっ……今頃、気づいちまって、本当に俺は、馬鹿だ」

と、自嘲しているリヴァイ先生が唇を噛んでいた。

34進撃の名無し:2014/07/27(日) 07:17:44 ID:3.u7L/RE0
リヴァイ「これが恋愛感情って奴なのか。俺は今、初めてそれを感じているのか………」

そう言えば以前、仮面の王女の時に「恋愛感情は良く分からんが」とか何とか言ってたなリヴァイ先生。

分かってなかったんじゃなくて、遠ざけていただけだったんだな。恐らく。

そうだよな。じゃねえと、よく考えたら、ラストシーンに「砂糖が足りない」なんて言わねえよ。

感覚的にそういう感情を全く知らないなら、分かる訳がねえんだ。

リヴァイ「自覚した途端にまさか振られるとは思わなかった。ははっ………はははっ……」

リヴァイ先生がストレスを紛らわす為に笑い始めた。

乾いた笑いだ。力がない。ただ、紛らわす為の笑いだ。

エルヴィン「リヴァイ。まだ振られた訳じゃないだろう」

リヴァイ「振られたようなもんだろう。もう、世話しなくていいと言われたんだからな」

エレン「それは違いますよ、リヴァイ先生」

オレはそこで思わず言ってしまった。

エレン「振られるっていうのは、ちゃんと自分の気持ちを相手に伝えて、相手から「ごめんなさい」と言われる事です。その過程を得てない状態ならまだ「振られた」とは言い切れないですよ」

リヴァイ「何で、そう言いきれる」

エレン「オレの時がそうだったからです。オレも危うく「振られた」と思い込んでしまいそうになったから。なあミカサ?」

ミカサ「う、うん……あの時は、誤解させてごめんなさい」

エレン「だから、リヴァイ先生はまだ、やるべき事をちゃんとやってないんだから、諦める必要はないんですよ」

リヴァイ「……………」

リヴァイ先生の視線が揺れていた。迷っているのがバレバレだ。

リヴァイ「しかし、ハンジにはもう、モブリット先生とか……」

エレン「だったら尚更急がないと、手遅れになりますよ。リヴァイ先生。モブリット先生とハンジ先生が付き合いだしてもいいんですか?!」

リヴァイ「……………分からない」

と、リヴァイ先生は頭を左右に軽く振った。

35進撃の名無し:2014/07/27(日) 07:41:47 ID:3.u7L/RE0
リヴァイ「ハンジが決める事に俺は口を出せない。それはただのエゴの押し付けだ。あいつの判断に俺の感情は関係ない……」

ミカサ「だからクソちび教師なのね。最低」

エレン「!?」

何だいきなり。ミカサがキレだしたぞ?!

ミカサ「このヘタレが。やっぱりハンジ先生にはリヴァイ先生には勿体ない」

エレン「ミカサ?!」

アルミン「あーごめん。僕も同意だ」

エレン「アルミンまで、何言ってんだよ!」

アニ「うん。異議なし」

エレン「アニも?!」

ジャン「はーさすがにオレもそれはないと思ったわー」

マルコ「だねえ」

皆が口々にキレだした。最低だのヘタレだの、無茶苦茶言い出している。

エレン「お前ら?! 言い過ぎだろ?! リヴァイ先生は教師なんだぞ?」

エルヴィン「うーん、教師である以前に、まず一人の「男」なんだけどねえ」

と、エルヴィン先生がくすっと笑っている。

エルヴィン「皆がキレるのも分からなくはないよ。ただ、リヴァイはもともとこういう性格だからね。自分の判断や感情を殺して、相手のやりたいように出来るだけやらせる。昔からそうだから、今更どうしようもないんだよ」

ミカサ「でもそれでは、相手が動かない場合は自分から動かないって事ですよね? ずるい」

アルミン「ずるいよねえ。確かに」

アニ「指示待ち人間?」

ジャン「そうかもな。受け身過ぎるんだよ」

マルコ「時と場合によるよねえ」

と、口々に言いたい放題だ。お前ら……。

エレン「あのなあ。一応言っておくけど、この中でカップルなのはオレとミカサだけ何だからな! 恋愛ってもんは、そう定規みてえにまっすぐうまくいくもんじゃねえんだよ!!」

と、一人だけリヴァイ先生を庇ってみる。

36進撃の名無し:2014/07/27(日) 07:53:46 ID:3.u7L/RE0
ミカサ「ではエレンは何故、私と付き合いたいと思ったの? 好きだと自覚したのはいつ?」

エレン「ええ? オレの場合はアレだよ。夏の海で、その……ミカサがヤキモチっぽい素振りを見せた時、なんかすっげえ浮かれちまって。何で嬉しいんだろ? って自己分析してみたら、やっぱりミカサの事が好きだからとしかと思えなくて……」

ミカサ「本当に? それ以前に私にヤキモチは妬かなかったの?」

エレン「それ以前? あージャンとかミカサの中学時代の金髪の先輩とか? その辺は妬いていたよ。今思うと」

ミカサ「ほらやっぱり。ヤキモチ妬いている。ヤキモチを妬いたらそれはもう、相手を独占したい証拠」

エレン「まあそうだけど、え? 今、その話、何か関係あるのか?」

イマイチ訳分からん。でも皆はニヤニヤしている。

ジャン「つまり、リヴァイ先生はヤキモチ、妬かないんですか? って皆、言いてえんだよ」

エレン「あー………」

そういう事か。回りくどいんだよ皆!

リヴァイ「ヤキモチ……だと?」

ミカサ「ヤキモチも妬かないような男は最低。度が過ぎるとダメだけど」

アニ「うん。同感。やっぱりそこは、女としては少しは妬いて欲しいよね」

リヴァイ「………………」

アルミン「でも、さっきモブリット先生、ハンジ先生と何か大事な話があるって言ってたよね」

エレン「あーなんか深刻そうな顔はしていたよな」

リヴァイ「!」

エルヴィン「2人が何処に行ったか分かるか?」

エレン「いえ、そこまでは。オレ達もすぐこっちに戻ってきたんで」

アルミン「もしかして、モブリット先生の方が先に告白しちゃうんじゃないの? このままだと」

リヴァイ「?!」

リヴァイ先生が胸を抑え始めた。よしよし。あと少しかもしれねえ。

37進撃の名無し:2014/07/27(日) 08:11:41 ID:3.u7L/RE0
煽ってみるか? でも煽り過ぎたらまたヘタレるかもしれないしな。加減が難しいな。

と、皆が考えていたその時、突然、誰かの携帯が鳴った。

リヴァイ先生のものだった。

リヴァイ「リヴァイだ。………何だって? マーガレットがそう言っているのか? 分かった。すぐそっちに行く」

え? またマーガレット先輩関連で何かあったのか?

リヴァイ「エルヴィン。ミスコンの病欠の辞退者っていうのは、マーガレットで間違いなかったよな」

エルヴィン「ああ。なんか少し体調が悪くて今、保健室で休んでいるそうだが」

え?! それってまずくないか。本番前なのに大道具チーフが倒れていたのかよ。

なんでこう次から次へとトラブルばっかり起きるんだ?

リヴァイ「どんどん熱が上がってきているらしい。でも、裏方に入ると言ってきかないとスカーレットが困惑して電話してきた。ちょっと保健室に様子を見に行ってみる」

と言ってリヴァイ先生が教師の顔に戻って駆け出したのでオレ達も心配になって保健室についていく事にした。

すると保健室のベッドの上で寝ているマーガレット先輩と周りにスカーレット先輩とガーネット先輩がいた。

リヴァイ「具合はどうだ?」

マーガレット「38.3度ってところですけど、大丈夫ですよ。本番までに下げれば…」

スカーレット「下げられる訳ない癖に何言ってるの。今日は休むしかないじゃん」

マーガレット「だああって今日は本番なんだよ? 休める訳ないじゃん! 大道具、今回先輩で入れるの私だけじゃないの」

スカーレット「そうだけど……リヴァイ先生からも言ってやって下さいよ。この子、親子ともども馬鹿なんですよ」

マーガレット「うちの血筋よ。しょうがないじゃん」

と、開き直られてもなあ。

リヴァイ「微妙な熱だな。動けない訳じゃないが、冷静な判断は無理だろ」

マーガレット「そんな事ないですよ。うちの親は肺炎で40度越えても原稿描いてましたからね」

エレン「あの、それはあんまり人としてやっちゃいけない事ですよ?」

マーガレット「まあ、そうだけど。でも40度はいってないから動けるよ。大丈夫だって」

リヴァイ「うーん、俺も似たような事はしょっちゅうやらかすから、なあ」

と、悩んでいる様子だ。えええ? そうなのか?

リヴァイ「ただ、裏方に入る奴は体調管理出来てないと足手まといだ。もし万が一、途中で抜けられたり、倒れたら本当に邪魔になる。それを分かっていて言ってるのか?」

マーガレット「はい。倒れないから大丈夫ですよ。新人3人だけに任せる訳にはいかないし」

カチン……

なんか信用されてないようでちょっとムカついたな。今のは。

38進撃の名無し:2014/07/27(日) 08:28:14 ID:3.u7L/RE0
リヴァイ「俺が役者に入っていなければ裏方に入るんだがな……エルヴィン。この後、お前予定有ったか?」

エルヴィン「いや、ミスコンが終わった後は特に何も。私が代わりに入ってもいいのか?」

リヴァイ「この場合は仕方ねえだろ。確かにマーガレットの言い分も分かるしな。新人3人だけで裏方をやらせるほど俺も鬼畜じゃない。経験者は絶対一人は必要だ。マーガレット。お前は裏には入っていいが、裏方はするな。裏で待機して何かあったら細かい指示だけをしろ。それでいいな? 寝転がってでも出来る仕事だ」

マーガレット「まーしょうがないですね。それで手を打ちます」

リヴァイ「そうと決まれば本番まで仮眠を取れ。俺もついでに寝て行こうかな」

エレン「リヴァイ先生?!」

リヴァイ「すまんが、俺も少し頭が疲れた。1時間でいい。寝かせてくれ」

と、本当にマーガレット先輩の隣のベッドに潜り込んでグーグー眠ってしまったのだった。

えええええ。マジか。俺はさすがにこういう行動は出来ないな。

本当にいいのかな。モブリット先生とハンジ先生の事を放っておくつもりなのかな。

エルヴィン「しょうがないね。マーガレット。裏方プランを今から頭に叩き込むからプラン表、私に見せてくれ」

マーガレット「分かりました」

と、すっかり気持ちを切り替えたのかエルヴィン先生も忙しい。

エルヴィン「今回、裏方に入るエレン、アルミン、マルコ。君達も一緒に話を聞いてね」

と、何故か保健室で打ち合わせを始める事になってしまった。

一応、大体の引継ぎを終える頃には本当に1時間経ってしまった。

あ、もうすぐお昼休みだ。昼飯食べないと…。

39進撃の名無し:2014/07/27(日) 08:41:33 ID:3.u7L/RE0
一旦、休憩します。お昼は何食べさせようかな。うーん。

40進撃の名無し:2014/07/27(日) 13:48:48 ID:nOJ4oxjY0
ペトラたちのカレーはもう食べたんだっけ?

41進撃の名無し:2014/07/27(日) 14:02:18 ID:3.u7L/RE0
そういやまだ前売り券使ってなかった。使いましょうかね。

42進撃の名無し:2014/07/27(日) 14:44:20 ID:3.u7L/RE0
ミカサ「エレン。前売り券、まだ使っていないので今日、使ってしまおう」

浴衣から制服に着替えてしまったミカサがそう言った。

エレン「そうだった。忘れていたぜ。じゃあ買いに行くか」

エルヴィン「あ、エレン。ついでに私の分も適当に買って来てこっちに持って来てくれないか。マーガレットと打ち合わせしながら食べるから」

エレン「あ、分かりました。カレーでいいですか?」

エルヴィン「任せるよ。頼んだ」

という訳でオレ達は一旦席を離れて昼飯を買いに行った。

カレーのところにはオルオ先輩がいた。あ、ペトラ先輩もエプロン姿に戻って働いている。

エレン「すんませーん。カレー下さい」

オルオ「はいはい。やっと来たな」

エレン「すみません。昨日はヤキソバ食ってました」

オルオ「いや、別にそれを責めている訳じゃないんだが。使い忘れる奴がたまにいるから、そうじゃなくて良かったと思っただけだ」

エレン「あ、なるほど」

オルオ「大盛りだったな。ちょっと待ってろ。トレーも1枚ずつ用意する」

という訳でオルオ先輩にカレーを貰って、ついでに話をしてみる事にした。

エレン「オルオ先輩はリヴァイ先生とハンジ先生の事、気づいてました?」

オルオ「ああ? んなもん、当たり前だろ。昔からあんなんだったよ」

エレン「そうですか……」

オルオ「リヴァイ先生大丈夫なのか? ミスコンでハンジ先生にふられたって、噂が流れまくってるぞ」

エレン「あ、やっぱりそうですか。まあ、今、仮眠取って寝てますけどね」

オルオ「そうか。寝られるんだったらまだマシか。あ、福神漬け忘れていた。いるか?」

エレン「あ、頂きます」

ミカサ「頂きます」

エレン「あ、エルヴィン先生の分もお願いします。大盛りでいいのかな」

オルオ「そうだな。まあ同じ量でいいだろう」

という訳でトレーを二つ頂く事になった。

43進撃の名無し:2014/07/27(日) 14:59:37 ID:3.u7L/RE0
オルオ「リヴァイ先生、まだ飯食ってないよな」

エレン「はい……食えるのか心配ですけど」

オルオ「カレーだと冷えると味がまずいからな。うーん。あ、福神漬けだけ持たせるか。これ、リヴァイ先生用な」

と、追加で小皿で福神漬けを持たされた。

エレン「ありがとうございます」

オルオ「いや、俺も何かしてやりたいんだがな。こっちの仕事もあるしな。すまん」

エレン「ペトラ先輩の方は大丈夫ですか?」

と、奥の方で仕事をしているペトラ先輩を気に掛けると、

オルオ「ああ。まあ、表面上は元気だよ。ただ、内心は複雑だろうな」

ペトラ「何? 私の噂話してんの?」

と、ひょいっとこっちの声が聞こえたのか、顔を出してきたペトラ先輩だった。

エレン「あ、すんません。勝手に話して」

ペトラ「別にいいけど……リヴァイ先生、大丈夫?」

エレン「今、仮眠とっているところです。大分、精神的に参ってはいましたけど」

ペトラ「はー……だよねえ。私も正直、舞台裏であの現場見ていたけど、アレはないわーと思ったよ」

エレン「ああ、そっか。ペトラ先輩も見ていたんですよね」

ペトラ「うん。敗者も勝者も舞台裏で待機だったからね。声漏れ起きていたのも酷いけど、アレは舞台装置を使い慣れてない子がやらかしたみたいね。文化祭実行委員の、えっと、背の高い、ベル何とか君が、ミスやったみたいで、後で怒られていたけど」

ベルトルト、お前何やってんだよ…。

ペトラ「ったく……ハンジ先生と別れた噂が流れた直後に、キャッキャ言い出すファンの子達もイライラするわ。あの子ら、人の事を何だと思っているのかしら」

エレン「ペトラ先輩はファンクラブの存在をご存じだったんですか」

ペトラ「ああ。3年の女子で知らない子はいないわよ。でも私は入ってなかった。だって『2人きりで話したりしたらダメ』とか『リヴァイ先生は皆の物』とか何とか訳分からん誓約書を誓わされるんだよ? アホ過ぎるわよ。私、そこまで頭悪くないし」

と、苛立った様子で先輩が答えた。

44進撃の名無し:2014/07/27(日) 15:19:22 ID:3.u7L/RE0
ペトラ「生物室の事件も後で生物部の子から聞いたわ。私、事件やらかしたあの子とは以前、話した事あったけど、ちょっと情緒不安定な感じだったんだよね。両親に放置されているっていうか、構ってくれる人が誰もいないような家庭環境で育ったみたいでさ。それをリヴァイ先生が定期的に家庭訪問していたから。それでグラッといっちゃったんだろうね。だから、あの子の事は私も責める事は出来ないけど…」

と、同じクラスの女子を同情的な目で見るペトラ先輩はやっぱり優しいんだなと思った。

俺はあんまりそこは共感出来ねえけど。やっぱり同じ女性同士だからかな。

ペトラ「でも、私も正直言って、目の前でリヴァイ先生のキスは、精神的にきつかったわ。アレ、台本か何かあったの?」

エレン「いえ………完全にアドリブです」

ペトラ「そうなんだ……じゃあ余計にしんどいわ。リヴァイ先生、ハンジ先生と付き合ってないってずっと言ってたけど、やっぱり大人の嘘だったんだね」

エレン「うーん。厳密に言うと、嘘ではないんですけどね。リヴァイ先生、あの時のあの瞬間まで、自分の気持ちに自覚なかったみたいで。時間差でそれに気づいて自分でびっくりしてましたよ」

ペトラ「…………リヴァイ先生、どんだけ自分の感情に鈍感なのよ」

と、ずーんと落ち込んでしまうペトラ先輩だった。

ペトラ「じゃあリヴァイ先生、今やっと、恋愛のスタート地点に立ったようなものなのね」

エレン「身も蓋もない言い方になりますが。その通りですね」

ペトラ「準備運動が長すぎる…。でもしょうがないのかな。友人の期間が長すぎたのよね」

オルオ「だろうな。近くに居過ぎて気づかないって奴だったのかもしれん」

と、2人はしみじみ言っている。

ペトラ「どうにかして元気づけてあげたいけど、今は回復を待つしかないかしら」

オルオ「とりあえず仮眠はとってるらしいからまだマシじゃないか? 本当にきつい時は不眠症になるだろ」

ペトラ「だよね。何回眠れない夜を越えたかしら。私も………」

と、恋愛片思い歴が長いペトラ先輩が先輩面を見せるのがちょっと面白かった。

エレン「タフですね。ペトラ先輩」

ペトラ「恋する乙女は強くなるのよ! メンタル強化しないとやってらんないわよ!」

ミカサ「同感です…」

エレン「ミカサ? え? 何? お前も何かあったのか?」

ミカサ「………教えない」

エレン「ミカサー?!」

また例の<●><●>の顔で言ってきたから焦った。

何だよ! 隠さなくたっていいじゃねえか!

45進撃の名無し:2014/07/27(日) 15:39:01 ID:3.u7L/RE0
オルオ「はは! ま、この後の舞台もあるし、あんまりごちゃごちゃ考えている場合じゃねえけどな。リヴァイ先生が担任したOBとOGの方々がそろそろ会場入りする頃だろうしな」

ペトラ「なんか今回、規模が凄いらしいわね。300人超えそうとか何とか。海外から帰ってくる卒業生もいるとか」

オルオ「ああ。らしいな。リヴァイ先生が舞台出るっていう情報を聞きつけて、卒業生が一堂に集まるらしいぜ」

エレン「え? それマジっすか? さ、300人超えるって……」

オルオ「そりゃリヴァイ先生も教師生活長いんだから、卒業生が遊びにくらい来るだろう」

エレン「え、でも、数が多すぎませんか? そんなになるんですかね?」

ペトラ「一クラス35人くらいでしょ? んで教師生活が27歳からスタートで、今38歳だから11年越えてるし。12年目だっけ? 今年で」

オルオ「単純計算で385人の卒業生がいる計算になるな。そのうちの300人くらいがリヴァイ先生の舞台を見に来るって言ってるんだから、そうなるよな」

エレン「リヴァイ先生、人気あり過ぎですよね?! え? もうそれ、芸能人のレベルじゃないですか!!」

オルオ「んな事言われても事実だからしょうがないだろ。第一体育館のキャパ足りるか心配だな」

ペトラ「そうだよね。保護者だって来る筈だし。超満員御礼になるんじゃないかな」

ミカサ「プレッシャーかけないで下さい(ガクブル)」

あ、やべえ! そういえば大事な事を忘れていたけど、ミカサのあがり症、まだ完全には治ってなかったんだった。

だ、大丈夫かな。入学式を越える人の数が来たらミカサ、パニックになるかもしれん。

ペトラ「ふふふ……でも楽しいわよ? 超満員御礼の中でやる演劇は。なかなか経験できないし」

オルオ「だな。リヴァイ先生目当てで見に来る奴らが多いんだろうが、それでも、満員はいいよな。席が空いてないっていうのは、凄く嬉しいもんだ」

と、先輩達はあまり気にしていない。

あ、そっか。先輩達はミカサのあがり症をそこまで深刻に思ってないんだ。

あーどうしよう。これはまずい前情報を聞いちまったな。

エレン「ミカサ、とりあえず保健室戻るぞ」

ミカサ「う、うん……」

オルオ「ん? ここで食えばいいじゃないか」

エレン「あー実はかくかくしかじか」

と、マーガレット先輩の件を伝えると、

ペトラ「え? それマジで? 嘘……辞退者ってマーガレットの事だったのね。知らなかった」

エレン「はい。今、エルヴィン先生が急遽、引き継ぐことになったんで、昼飯を持っていかないといけないんですよ」

ペトラ「大変ね。何だか今年の文化祭は波乱万丈だわ」

オルオ「確かにな。でも、頑張れよ。ここを乗り切れば、絶対いい経験になるからな」

エレン「はい。頑張ります」

と、ぐっと拳を合わせてオレ達はカレー屋から離れてアルミン達と合流した。

アルミンは別のメニューを購入していた。たこ焼きとミックスジュースだけでいいらしい。

46進撃の名無し:2014/07/27(日) 16:14:45 ID:3.u7L/RE0
エレン「あ、そういやオレもたこ焼きとミックスジュースあったんだ」

ミカサ「一緒に買って戻ろう」

という訳でそれぞれの買い物を済ませてオレ達は保健室に戻った。

ジャンとマルコも後で戻ってきた。こいつらはお好み焼きを選んだらしい。2人で一緒に食うようだ。

んで、保健室でマーガレット先輩と打ち合わせを終わらせると、マーガレット先輩も横になって眠ってしまった。

リヴァイ先生はまだ起きねえな。もうすぐ13:00になるんだが。

エレン「起こした方がいいよな。劇部は人形劇の次だし……」

エルヴィン「そうだね。着替えの時間も必要だしね。リヴァイ、そろそろ起きろ」

リヴァイ「んー……」

と、軽い睡眠をとったリヴァイ先生がようやく起きた。

リヴァイ「……………」

エルヴィン「まだ、頭が起きてないな。水でも飲むか?」

リヴァイ「頂こう」

エルヴィン「了解」

コップ一杯の水を飲んでリヴァイ先生はようやく少し落ち着いたようだ。

目の感じが元に戻っている。まだ完全回復って訳じゃないだろうけど。

少なくとも、先程よりは大分マシになっていた。

エルヴィン「少しは元気になったかな?」

リヴァイ「大分な。今、時間は?」

エルヴィン「ちょうど13:00だね。あと1時間後だよ。準備に入らないと」

リヴァイ「そうだな。考えるのは舞台が終わってからにしよう」

エルヴィン「ああ。舞台が待っている。やるしかないよ」

という訳で、オレ達はマーガレット先輩だけを保健室に残して、それぞれの準備に取り掛かった。

もしかしたらマーガレット先輩はこのまま起きて来ないかもしれないけど、その時はしょうがない。

エルヴィン先生にある程度、引き継いだし、後はもう残されたオレ達で頑張るしかねえ。

47進撃の名無し:2014/07/27(日) 16:32:23 ID:3.u7L/RE0
第一体育館に劇部メンバーが全員揃った。舞台裏から人形劇を覗き見る。

どうやら桃園の誓いのところでクライマックスらしい。

三国志は話が相当長いから劇でやるならここまでになるよな。

無事に人形劇も終わったようだ。カジ達が一斉に舞台裏にはけてくる。

カジ「いやー! 緊張した! 人形動かすだけなのに緊張した!」

と、笑いながらこっちに来た。

カジ「連荘きついね! でもまあいっか! 衣装ある?」

アニ「はい。こっちに用意しているんで着替えお願いします」

マリーナ「私のもお願い! ジュリエットの衣装頂戴!」

舞台裏はバタバタだった。片づけと準備を同時進行にやるんだからな。無理ねえ。

準備が終わったミカサの顔色が悪い。やっぱり緊張しているんだな。

オレは後ろからミカサを抱きしめて、後ろから「大丈夫」と言ってやった。

ミカサ「え、エレン……」

エレン「大丈夫だ。今度はオレがミカサを支えてやる。だから安心して行って来い」

ミカサ「………うん」

ジャン「そこ! イチャつくのは後にしろ! 円陣やるぞ!!」

という訳で恒例の円陣だ。舞台幕が上がる前には必ずこれをやる。

全員が輪になって手を揃えた。ジャンの合図で掛け声をするんだが、掛け声の前には必ず部長の気合の挨拶が恒例らしい。

オルオ先輩がやっていた、アレだな。ジャンは一生懸命考えているようだ。

ジャン「あーもう、なんか今年の文化祭はいろいろ波乱万丈だけど、絶対成功させるぞ! 怪我すんなよ! 皆、いくぞー!」

一同「「「「「「おー!!!」」」」」」

さあ、手を押し込んで、ひとつになった後は駆け出すぜ!

静かに、幕が開いた直後、オレは度胆を抜かれる。

オルオ先輩の言っていた事は嘘じゃなかった。本当に超満員御礼の舞台だったんだ。

遠くの席の方から「リヴァイ先生ー!!! 元気ー?!」とかいろいろ声が聞こえる。

その声を聞いて、リヴァイ先生が舞台袖でびっくりしていた。

あ、親父達がちゃっかり前列に座っている。やべえ。失敗出来ねえな!

リヴァイ「…………あいつら、来ていたのか」

あ、うるっときているみたいだ。ちょっとレアなリヴァイ先生だな。

オレ達の文化祭は、いよいよクライマックスを迎えた。

そしてお馴染みのマリーナのナレーションが始まり、オレ達はその「異空間」に身を投げ出したのだった…。

48進撃の名無し:2014/07/27(日) 16:33:35 ID:3.u7L/RE0
キリがいいので一旦、ここまで。続きはまたノシ

49進撃の名無し:2014/07/28(月) 00:14:06 ID:dpkqebIY0
なんかいちいちオルオが格好良く見える不思議

OBOGの方々、
まだハンジ先生と結婚してないんですかー
くらい言ってもいいのよw

50進撃の名無し:2014/07/28(月) 01:12:39 ID:ejLXkbZ60
いよいよ舞台!
楽しみだー
続き超絶期待!!

51進撃の名無し:2014/07/28(月) 03:05:10 ID:Oz2Etvso0
あ、舞台のエンディングソングはどれがいいか安価取ります。
るろ剣風なので、一応候補としては、

1.HEART OF SWORD -夜明け前-
2.1/3の純情な感情
3.The Fourth Avenue Cafe

あたりかなーと思うんですが、どれが一番人気あるんでしょうかね?
ちなみにエンディング曲中に皆で1〜3人ずつ舞台に出て踊ります。

52進撃の名無し:2014/07/28(月) 09:42:42 ID:tkQ18GTA0
1

53進撃の名無し:2014/07/28(月) 13:03:54 ID:Oz2Etvso0




マリーナ(ナレーション)『今から約140年前黒船来航から始まった『幕末』の動乱期』

マリーナ(ナレーション)『渦中であった京都には沢山の維新志士達がいた』

マリーナ(ナレーション)『血刀を以て新時代『明治』を切り開いたその男達の中には、当然、歴史に名を残さぬまま命を散らした者もいる』

マリーナ(ナレーション)『そして生き残った者の中にも、歴史に名を残さず自ら表舞台を去った者もいた』

マリーナ(ナレーション)『闇の世を駆け、修羅さながらに人を斬り 新時代『明治』を切り開いたその男達は、動乱の終結と共に人々の前から姿を消し去り 時の流れと共に『最強』という名の伝説と化していった』

マリーナ(ナレーション)『そして浪漫譚の始まりは 明治十一年へと移りゆくーーー』



そして、BGMが一気に変わる。

必殺シリーズの、あの、音楽だ。人を仕置きする時の、あの音が会場に響く。



神谷(リヴァイ)『ふー………』

疲れた風の男がひと仕事を終えて風呂に入るシーンから物語が始まる。

男は風呂に入る為に、自分の衣服を脱ぎ棄てて、褌姿になる。

さすがにオールヌードという訳にはいかないので、ここは褌姿で風呂に入ると言う設定だ。

リヴァイ先生がいきなり舞台上で脱ぎだしたもんだから、会場が一瞬、ざわめいたけど。

舞台中はおしゃべり厳禁(合いの手は有りだけど)なので、皆、動揺を押し殺しているようだ。

実際、水をかけるわけじゃないけど、かけ湯したり、体を布で洗ったりする仕草はお手の物だった。

すげえうまい。所謂パントマイム的な感じなんだけど、本当に風呂に入って身体を洗っているような錯覚を覚える。

リヴァイ先生自身の風呂好きがよく分かるシーンだ。

そして体を洗った後は、大きな桶の中に入って、湯につかる。

音だけタイミングに合わせて水音を流している。

神谷(リヴァイ)『………(手で湯をすくう仕草)』

なんか色っぽいな。いや、男が男に色っぽいというのも変な話だけど。

手の動かし方がとても綺麗だった。ただ、湯を掬っているだけなのに。

神谷(リヴァイ)『…………あの男、只者ではないな』

神谷(リヴァイ)『今日は仕留め損ねたが、次は必ず………奴を殺す』

月夜に誓う様に呟いて、暗転となった。

54進撃の名無し:2014/07/28(月) 13:05:22 ID:Oz2Etvso0




そして一気に世界観が変わる。今度は西洋チックな舞台だ。

マリーナ(ナレーション)『昔々、ヴェロナという街にキャピュレット家とモンタギュー家という2つの旧家があり、この両家は代々、お互いを仇だと思っていがみ合っていました』

マリーナ(ナレーション)『キャピュレット家にはジュリエットという一人娘がおり、モンタギュー家にはロミオという一人息子がいましたが、この2人は舞踏会で出会い、お互いが仇の家の出身だと分かっても、思いは変わらず、両家の仲直りを願うロレンス上人に秘密の結婚式をあげてもらい、夫婦となりました』

マリーナ(ナレーション)『しかし2人はとある誤解から、お互いがお互いに死んだと思い込み、自ら命を絶つ事になるのであった………』

めっちゃ端折ってる! ロミオとジュリエットを3行で説明しちまうという荒業だな。

まあここは、ダイジェスト的な感じで説明するだけだから、台詞もないし、いいけどな。

舞台上では内側に明治バージョン、上から前世バージョンで重ね着して、説明が終わったら一気に脱いでしまうという方法を取っている。




月夜のシーン。明治時代。街道で野宿していた2人の男女が目を覚ます。

ジュリエット(マリーナ)『…………また、あの夢だわ』

ロミオ(アルミン)『夢? 僕も同じ夢を見たよ。君が目の前で死んでいて、僕も後追い自殺する夢だ』

ジュリエット(マリーナ)『私もです。貴方が目の前で死んでいて、自ら服毒自殺をする夢でした』

ロミオ(アルミン)『もう何度目になるだろう? 同じ夢ばかり見ている。この夢は、僕達に何か関係あるのだろうか?』

ジュリエット(マリーナ)『分かりません。でも……もしそうであれば、きっと、前世という物が存在するのかもしれない』

ロミオ(アルミン)『では僕達は前世は結ばれずに、この時代に生まれ変わったのかもしれない。この明治という世に……』

ジュリエット(マリーナ)『ロミオ様……』

ロミオ(アルミン)『この世に巡り合えた奇跡を、今度こそ、離さない。ジュリエット。僕と共に、地の果てまでついてきてくれる?』

ジュリエット(マリーナ)『はい。ロミオ様……(うっとり)』

追手1(アーロン)『おっと、そういう訳にはいかねえな、ご両人』

ここで裏方メンバーが追手の悪者役で総出演だ。オレも後ろの方で準備している。

追手1(アーロン)『探しやしたぜ。2人とも。随分遠くまで逃げていたもんですねえ』

ロミオ(アルミン)『くっ!』

追手1(アーロン)『名家の跡取り同士が駆け落ちなんざ、本当に出来ると思っているんですか? さあ、2人とも。おうちに帰りやせんか』

ジュリエット(マリーナ)『嫌です! 私は家を捨てました! もう実家には戻りません!』

ロミオ(アルミン)『僕達の事は死んだことにして、見逃しては貰えないか』

追手1(アーロン)『そいつは出来ない相談ですな。ま、本当に殺して差し上げる事は出来ますが? (ニタリ)』

ロミオ(アルミン)『!』

ここでオレ達、裏方メンバー(エレン、マルコ、エーレン、カジカジ、キーヤン、スカーレット、ガーネット)が一斉にロミオ(アルミン)とジュリエット(マリーナ)を襲おうとするが。

しかし、その時、

三村(ミカサ)『ふああああ………』

と、場の空気を読まない声が茂みから聞こえてくる。

三村(ミカサ)『折角、いい月見酒日和だというのに、無粋な奴らが邪魔してきたでござるな』

よいしょっと、表に出てくるその男。三村だ。

追手1(アーロン)『てめえ! 誰だてめえは!』

三村(ミカサ)『名乗る者の程ではござらんよ。さて、これは一体どういう事なのでござるか?』

追手1(アーロン)『邪魔する気か?』

三村(ミカサ)『邪魔をしているのはそちらでござろう? 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られると良くいうではござらんか』

追手1(アーロン)『邪魔立てするなら容赦はしねえぞ。野郎ども!』

一同『『『『『『は!』』』』』』

55進撃の名無し:2014/07/28(月) 13:07:30 ID:Oz2Etvso0
と、ここから一斉に三村(ミカサ)に襲い掛かるんだけど、そこを全部一気に倒しちまう殺陣シーンだ。

オレは所謂、やられ役だな。三村(ミカサ)にばっさり切られて倒れたらそれでOKだ。

全員を屠った後、お客さんの拍手喝采が起きた。鮮やかな殺陣に見惚れたようだ。

やっぱりミカサはすげえな。本当、こういうのやらせると様になる。

追手1(アーロン)だけは一人逃げていくけど、それを追いかける事はしない。

三村(ミカサ)『大丈夫でござったか?』

ロミオ(アルミン)『あ、ありがとうございました…』

ジュリエット(マリーナ)『ありがとうございます(ぺこぺこ)』

三村(ミカサ)『大した事ではござらんよ。して、ご両人はいずこへ向かう予定で?』

ロミオ(アルミン)『とりあえず、港まで向かって、国外の何処かに2人で逃げようと思っていました』

三村(ミカサ)『ふむ……では拙者も途中まで送って差し上げようか?』

ロミオ(アルミン)『え…でも、そこまで甘えるのは……』

三村(ミカサ)『遠慮しなくても良いでござるよ。拙者は流浪人。三村万心。暇ならいくらでも持て余しているでござる故、道中を一緒に旅するのは問題ないでござるよ』

ジュリエット(マリーナ)『では、東京の街まで、送って頂けたら……』

三村(ミカサ)『なるほど。東京は拙者の庭みたいな街でござるよ。道も分かる。出来るだけ近道を通って送って差し上げるでござるよ』

ロミオ(アルミン)『あ、ありがとうございます……なんとお礼を差し上げればいいか』

三村(ミカサ)『礼など要らぬでござるよ。では、一緒に行くで……(ぐるるる…)』

お腹の虫が鳴る。

三村(ミカサ)『………何か、食べ物を分けて貰えれば、それでいいでござる』

と、顔を赤くする三村(ミカサ)だった。

おおおお! 今のところ、特にとちったりもせず、うまくいってるじゃねえか!

死体役の状態で舞台を眺めていたけど、良かった。ミカサ、大丈夫そうだな。



そして暗転が入って、舞台は東京へ移る事になる。



明治の東京。そこで街中をすいすい歩いている三村(ミカサ)を、斎藤(ジャン)が見つけて追いかけまわす。

56進撃の名無し:2014/07/28(月) 13:09:09 ID:Oz2Etvso0
斎藤(ジャン)『こらあああそこおおおお!!!!』

三村(ミカサ)『あ、斎藤殿』

斎藤(ジャン)『あ、斎藤殿。じゃねえよ!! あんた、何回注意したらいう事聞いてくれるんだ?! 廃刀令! 刀を腰に下げて歩いたらダメだって言ってるだろうが!!』

三村(ミカサ)『これは本物の刀ではござらんよ? ほら、刃が逆さまになっているので、人は切れないようになっているでござる』

斎藤(ジャン)『そういう問題じゃねえから!! 新しい国の決まりが出来たんだから、それに従って貰わないと示しがつかねえの! これはメンツの問題なんだよ! ほら、没収!』

三村(ミカサ)『いやん……そう固い事言わず……ね? (ウインク)』

斎藤(ジャン)『うぐっ! (よろめく)』

うわあ! ミカサのウインク、破壊力抜群だな。

やべえ。こっちも余波を食らってドキドキする。

斎藤(ジャン)『だ、ダメなもんはダメだ! そもそも何であんた、わざわざそんなまがい物の刀を腰に下げて……』

三村(ミカサ)『ただの趣味でござる(キリッ)』

斎藤(ジャン)『嘘をつくなああ! 全く、本当、頭痛てえ……』

と、頭を抱えだす斎藤(ジャン)だったが、

斎藤(ジャン)『ただでさえ、最近物騒な事件が多発してるっていうのに、こっちは忙しいんだよ。あんたに構っている場合じゃねえんだよ。本当は』

三村(ミカサ)『何か事件が起きたのでござるか?』

斎藤(ジャン)『ああ。なんか川辺で男女の惨殺死体が浮かんできたらしくてな。そっちの調査の方で今、人が動いていて、オレも捜査中の身なんだよ』

三村(ミカサ)『男女の……死体? (ぴくっ)』

斎藤(ジャン)『ああ。可哀想に。まだ若い2人だったぜ。あれは異国の血が混ざっているのかもしれんが、綺麗な男女だった』

三村(ミカサ)『!』

そして川辺に移動する。野次馬が川辺に集まっている。

この辺の野次馬とかは、裏方メンバーがそれっぽく演じる。オレも出番だ。

ロミオ(アルミン)とジュリエット(マリーナ)が死体役で転がっている。

勿論、顔は青く塗って、死人の色に変えている。

死体の上に御座を被せて、直接は見せないけど、顔だけは観客に見せている。

死体をちゃっかり確認する三村(ミカサ)に斎藤(ジャン)はまた『こら!』と怒る。

57進撃の名無し:2014/07/28(月) 13:34:37 ID:Oz2Etvso0
斎藤(ジャン)『勝手に触っちゃダメだから! 何やってんだよ!』

三村(ミカサ)『死体が発見されたのはいつ頃でござるか?』

斎藤(ジャン)『ああ? 確か、今日の早朝だったかな。まだ発見されてからそう時間は経ってないが……』

三村(ミカサ)『犯人の目星は?』

斎藤(ジャン)『まだめぼしい情報も何もねえよ。何だよ? あんたの知り合いか?』

三村(ミカサ)『昨日の夜まで一緒に居た。国外に出るというので、港まで送ってあげたでござるよ』

斎藤(ジャン)『はあ?! ちょちょ……だったらあんたが一番の容疑者じゃねえか! ちょっと、話を詳しく聞かせろ!』

三村(ミカサ)『犯人は拙者ではござらぬ。刀にも血はないでござろう?』

斎藤(ジャン)『そんなもんは拭けばいい話だろ?! よし、ちょっとお前、一緒に来い』

三村(ミカサ)『その前にもう少し死体の状態を確認させて……(ペロ)』

斎藤(ジャン)『だかーら、勝手に触ったらダメだって…!』

と、その時、野次馬の声が聞こえた。

噂の商人(カジカジ)『これはアレだな。仕置き人が動いたなきっと』

噂の商人2(キーヤン)『ああ、きっと間違いねえ。仕置き人の仕業だ』

その声に三村(ミカサ)は反応して商人に声をかける。

三村(ミカサ)『仕置き人? 何の話でござるか?』

噂の商人(カジカジ)『あ、いやあ……ただの噂なんですがね』

噂の商人2(キーヤン)『ここ最近、やたら殺人事件が多いでしょう? その、仕置き人がやったんじゃないかっていう噂が出ているんで』

三村(ミカサ)『噂の出所はどこでござるか?』

噂の商人(カジカジ)『そこまでは知りやせんよ。私らも、風の噂程度に聞いただけなんで』

噂の商人2(キーヤン)『ただ、今、国の制度がいろいろ変っている過渡期でしょう? 不平不満を漏らす奴も多いんですよね。だから、国が裁けない事を代わりにやってくれる、仕置き人っていう仕事人がいるらしいっていう噂があって……』

噂の商人(カジカジ)『ま、所謂「仇討ち代行人」って感じですかね。昔は仇討ちしても咎められなかったけど、新しい制度ではそれがなくなったから、不満を漏らす奴も多いんですよ』

斎藤(ジャン)『なるほどな……分かった。そっちの線で少し調査を進めてみよう。情報提供ありがとうな。これは駄賃だ。とっとけ』

噂の商人(カジカジ)『へへ〜ありがとうございやす!』

ちゃりちゃりーん♪

お金を渡して商人達を下がらせる。斎藤(ジャン)の後を追う三村(ミカサ)。

58進撃の名無し:2014/07/28(月) 13:54:43 ID:Oz2Etvso0
斎藤(ジャン)『あ、あんたは留置所行きだからな。一緒に来て貰うぞ』

三村(ミカサ)『拙者も調査に協力するでござる』

斎藤(ジャン)『はあ? 第一容疑者が何言ってやがる! あとついでにその刀、没収!』

三村(ミカサ)『(ひょい)この事件、何かきな臭いでござるよ。斎藤殿一人では荷が重いかもしれないでござる』

斎藤(ジャン)『そ、そうかもしれないが、だからってあんたに手伝って貰う訳にはいかねえよ。あんた、ただの流浪人だろうが! ここは警察の領分なんだから、勝手に協力するんじゃない!』

三村(ミカサ)『……拙者の事が嫌いなのでござるか? (ウルウル)』

斎藤(ジャン)『うぐ?! (赤面)』

くそ! このミカサの色仕掛け、マジぱねえ。

これ、落ちねえ奴いねえだろ。ジャンの赤面がガチだ。

斎藤(ジャン)『そ、そういう訳じゃねえけど……つか、あんた男のくせに妙に色気があるな。男色なのか?』

三村(ミカサ)『さあ? どうでござろうな? さて、調査を進めるでござるよ。まずはその『仕置き人』とやらに会う方法を考えるでござる』

斎藤(ジャン)『話を逸らしやがって……』

三村(ミカサ)『ん? (小首を傾げる)』

斎藤(ジャン)『だああもう! 分かったよ! 今回だけだからな! 協力させるのは! このことは内密にしろよ?!』

三村(ミカサ)『かたじけないでござる』

斎藤(ジャン)『仕置き人の存在の裏を取ってくる。本当にそいつが存在するなら、恐らく闇の接触手段がある筈だ。囮捜査が必要になるだろうが……』

三村(ミカサ)『ではその囮役を拙者が請け負うでござるよ』

斎藤(ジャン)『はあ?! あんた馬鹿か?! それって自分の命を仕置き人に狙わせるって事だぞ?!』

三村(ミカサ)『構わんでござるよ。手がかりが掴めない以上、やってみるしかないでござる』

斎藤(ジャン)『な、なんでそこまで協力的なんだよ。何か理由があるのか?』

三村(ミカサ)『んー』

と、息をついて、複雑そうな顔になり、

三村(ミカサ)『やっと新しい明治の世になったというのに、自由に恋愛も出来ないのかと思うと、腸が煮えくり返るでござるよ』

斎藤(ジャン)『いや、あんた自身が恋愛が出来ないならともかく、他人の恋愛だろ? 何でそこまで感情移入するんだよ』

三村(ミカサ)『まあ、そこはほら、性格の違いって奴でござるよ。とにかく、拙者が囮を引き受ける故、準備が整ったら知らせて欲しいでござる。その間、拙者は独自に調査を進める故』

斎藤(ジャン)『はあ………っておいコラ! どさくさに紛れて逃げるんじゃねええ!!!』

と、叫びながら斎藤(ジャン)が三村(ミカサ)を追いかけるが既に遅しだった。

59進撃の名無し:2014/07/28(月) 14:42:48 ID:Oz2Etvso0


そんな訳で数日後。茶屋で合流した三村は斎藤と打ち合わせをする。

ちなみに茶屋の給仕役(ウエイトレス)でオレがまた女装する事になった。

2人にお茶を出すだけの簡単な仕事だけどな。

斎藤(ジャン)『裏は取れたよ。仕置き人の名前は「神谷赤司(かみやあかし)」という名前らしい。小柄で痩せた男らしいが、一応、これがその似顔絵になる』

三村(ミカサ)『ふむ。随分と目つきの悪い男でござるな』

斎藤(ジャン)『証言を合わせて作った似顔絵だからな。多少大げさには描いている。実際見て描いた顔じゃねえから、似てねえかもしれねえが』

三村(ミカサ)『いや、十分でござるよ。では今夜、早速決行するでござる』

斎藤(ジャン)『………本当にいいんだな? 命の保証は出来ねえぞ?』

三村(ミカサ)『やけに心配してくれるでござるな。拙者に気がある?』

斎藤(ジャン)『んなわけねえだろおおおお!? 誤解を招くような事を言うんじゃねえよ!!! オレはそっちの趣味はねえから!!!』

三村(ミカサ)『ははっ……なら良いでござる。拙者も安心して囮捜査が出来る』

斎藤(ジャン)『あーもう、しらねえからな。どうなっても……あ』

三村(ミカサ)『ん?』

斎藤(ジャン)『そういえばずっと「あんた」とか「お前」とか呼んでいたが、名前を聞いてなかったな。名前、教えてくれないか』

三村(ミカサ)『名乗るほどの者ではないと前にも言ったと思うでござるが』

斎藤(ジャン)『いや、囮捜査をやってくれる人間の名前すら知らないってダメだろ。教えてくれ』

三村(ミカサ)『………三村万心』

斎藤(ジャン)『分かった。三村だな。三村、今夜作戦を決行するから、準備を整えておいてくれ』

三村(ミカサ)『了解したでござる』

斎藤(ジャン)『じゃあ、また後でな。あ、ここの茶代はオレが払っておくから』

三村(ミカサ)『ありがたいでござる』

という訳で、2人が別れると………

三村(ミカサ)『斎藤殿に拙者の名前を知られていなくて良かったでござる』

と呟く三村であった。

60進撃の名無し:2014/07/28(月) 14:56:23 ID:Oz2Etvso0





月夜。月の明るいその夜にその作戦は行われた。

夜の人気のない道を一人歩く三村。その背後から、例の気配を感じた。

釣りにかかった魚がやってきた。後は釣り上げるだけ。

三村(ミカサ)『何か用でござるか?』

惚けた声で話しかけると、男は月を背景にして答えた。

神谷(リヴァイ)『あんたに恨みはないが、命を頂きに来た。三村万心で間違いないな?』

三村(ミカサ)『確かに拙者が三村でござるが………そちらも神谷殿で間違いないか?』

神谷(リヴァイ)『(ぴくっ)何故、俺の名を知っている?』

三村(ミカサ)『拙者は神谷殿と少し話がしたいでござる。時間を頂けないだろうか』

神谷(リヴァイ)『断る。俺は頼まれた仕事をこなすだけの仕事人。仕置きをする人間だ。余計な事は話したくない』

三村(ミカサ)『頑固で融通のきかない人でござるな。では、力づくで問わせて貰うしかないでござるな』

じりじり………じりじり………

直後、2人の神がかった殺陣の応酬が始まった……!!!


おおおおおおおお………


観客が見入っている。神谷(リヴァイ)と三村(ミカサ)の剣戟の凄まじさに度胆を抜かれているようだ。

すっげええ! 本番が一番、動きにキレがある。さすがだ!!

皆、裏方も一緒に殺陣に見入っていると、三村(ミカサ)が徐々に劣勢になってきた。

三村(ミカサ)『くっ……!』

神谷(リヴァイ)『なかなかやるな……(ニヤリ)』

だんだん動きが速くなっていく。一騎打ちだ。劣勢の中、それでもアクロバティックな動きを混ぜながら避けて、遂に来た!!!

ミカサの壁伝いだ! 体育館の舞台の壁を伝いながら、横移動をするという大アクションだ!

神谷(リヴァイ)『何?!』

三村(ミカサ)『うおおおおおおおおおお!!!!』


ガッキィィイイイイイイイ!


SEが、轟いた。直後、飛びのいて、神谷(リヴァイ)が汗を浮かべて距離を取る。

お互いに息を荒げて、そして三村(ミカサ)の方から口を開いた。

61進撃の名無し:2014/07/28(月) 15:15:29 ID:Oz2Etvso0
三村(ミカサ)『神谷殿……最近起きた、若い男女が川辺で死体で発見された事件をご存じではないか?』

神谷(リヴァイ)『ああ。その事件なら知っているが……』

三村(ミカサ)『噂では、神谷殿がやったのではないか、という情報を聞いた。何か知っている事はないでござるか?』

神谷(リヴァイ)『何? 俺はその事件については関与していないぞ』

三村(ミカサ)『やはりそうでござったか……(刀を下す)』

息を整えて三村(ミカサ)は言った。

三村(ミカサ)『剣を交えて分かった。神谷殿はあのような卑怯なやり口はしない方でござる』

神谷(リヴァイ)『何故そう言い切る』

三村(ミカサ)『そもそも、こんなに明るい月夜に暗殺を請け負う方がおかしいでござる。闇討ちをするのであれば、新月を狙う。闇の中の方が、仕事をしやすいでござろう?』

神谷(リヴァイ)『ふん……俺は金さえ貰えればいつでも仕事を請け負うだけだが』

三村(ミカサ)『それでも、自分の有利になるように事を運ぶのが普通でござる。神谷殿は犯人ではござらんな』

神谷(リヴァイ)『……………あの事件について追っているのか?』

三村(ミカサ)『(こくり)何か知っている事があれば教えて貰えないでござろうか』

神谷(リヴァイ)『ふん……』

刀を収めて神谷(リヴァイ)が答える。

神谷(リヴァイ)『俺が何故そんな余計な事を話さないといけない。情報を売ると思っているのか?』

三村(ミカサ)『そこを何とかお願いするでござるよ』

神谷(リヴァイ)『無駄だ。俺は仕事をこなすだけだ。貴様の命を取るまでは、この剣を振るうのみ!』

三村(ミカサ)『!』

再び剣戟が起きる。再び凄まじい殺陣が起きるが、そこに斎藤率いる警察官が突入した。

神谷(リヴァイ)『ちっ…!』

慌てて逃げる神谷(リヴァイ)。それを追いかける警官隊。

斎藤が三村に駆け寄って、

斎藤(ジャン)『大丈夫か?』

三村(ミカサ)『大丈夫でござる。しかし困ったでござるな。手がかりが何も掴めなかった』

斎藤(ジャン)『まあ、捜査なんてそんなもんだよ。気落とすな。また別の線から捜査を進めてみようぜ』

三村(ミカサ)『かたじけないでござる(しょんぼり)』

という訳で、その日の囮捜査は結局は失敗に終わってしまったのだった。

62進撃の名無し:2014/07/28(月) 15:49:18 ID:Oz2Etvso0



捜査が振り出しに戻って悩む三村と斎藤。

今度は惨殺された男女の実家である、名家を両方、再び訪ねてみる事にした。

一応、斎藤が来る前に他の捜査官もその家に足を運んで調査をしていたが、斎藤と三村も調査書以上の情報は得られなかった。

その両家はお互いの家をけなし合い、不仲で有名な名家だった。

お互いはお互いに2人の事件を忘れたがっていたが、一人だけ、2人の死を悼んでいる者が居た。

ジュリエット側の家に使えていた若い使用人の女だ。

使用人の女(アニ)『そうですか。まだ犯人は見つからないのですか……』

斎藤(ジャン)『すみません。こちらも調査を進めているんですが、なにぶん、手がかりが少なくて……何か気が付いたことはありませんか? どんな些細な事でもいいんですが』

使用人の女(アニ)『そうですね。お2人は小さい頃から仲が良く、お似合いの御2人でしたが、お互いの家長同士が仲が悪くて……人目を忍んでお会いされていました。いつか2人でこの家を出よう。そう決意されて、その「いつか」がおよそ1か月前でした。私もその手助けをしてあげたのですが、何分、ここの使用人なので、脱出の手引き以外の事は何も出来ず……』

斎藤(ジャン)『そうですか……』

使用人の女(アニ)『どうかせめて犯人を見つけてさしあげて下さい。どんなに時間がかかってもいいですので。でないと、あの2人が無念が浮かばれませんわ』

斎藤(ジャン)『分かっています。ご協力ありがとうございました』

そして、2人は屋敷を出ると、

斎藤(ジャン)『………三村?』

三村(ミカサ)『妙ではござらんか?』

斎藤(ジャン)『何が?』

三村(ミカサ)『いや、両家の家長同士が仲が悪いと言っておったでござろう?』

斎藤(ジャン)『ああ、そうだったけど、それが何か?』

三村(ミカサ)『であるならば、何故その屋敷同士がこんなに近くに……ほぼ隣同士に建てられているのか。おかしいとは思わぬか?』

斎藤(ジャン)『ん〜前の代の時は仲が悪くなかったとかじゃねえの? 今の代になってから悪くなってきたとか』

三村(ミカサ)『いや、それはないでござる。拙者自身も足で情報を稼いできた故、この両家は代々、少なくとも2代前くらいから仲が悪かったそうだ』

斎藤(ジャン)『ん〜? 祖父の時代から仲が悪いのにって事か。確かにそれは変な話だな。普通、どっちかが引っ越すなり、離れてもおかしくねえよな』

三村(ミカサ)『それに、亡くなった若い男女……跡取り同士が「小さい頃」に会っているのも妙でござる。本当に仲が悪ければ、そんな幼少期から会えるものでござろうか?』

斎藤(ジャン)『あー……』

と、妙に納得する斎藤(ジャン)だった。

斎藤(ジャン)『確かに、ちょっと妙ではあるな。ただまあ、それがなんだって言われれば、俺にも良く分からねえが』

三村(ミカサ)『拙者、もう暫くこの両家の周りを調査してみるでござるよ』

斎藤(ジャン『ああ。確かにその必要はあるかもしれないな。やってみよう』

という訳でとりあえず、両家を離れる2人だった。

63進撃の名無し:2014/07/28(月) 16:02:38 ID:Oz2Etvso0





斎藤(ジャン)と三村(ミカサ)が独自にそれぞれの足で情報を集めていたその時、再びあの男が現れた。

背後から奇襲をかけて三村の命を狙いに来た、神谷であった。

不意打ちを避けられて、神谷は舌打ちする。

三村(ミカサ)『ひ、昼の最中から暗殺とは、仕事熱心にも程があるでござろう!』

神谷(リヴァイ)『俺は契約期間内にきっちり殺らないと気が済まない性質なんだよ……次は殺す』

三村(ミカサ)『ま、待て! 神谷殿! その暗殺の依頼の件でござるが……』

神谷(リヴァイ)『ああ? (機嫌悪い)』

三村(ミカサ)『その、神谷殿と接触をはかるための囮捜査だった故、本当の暗殺依頼ではござらぬ。騙して悪かったとは思うが、契約を破棄して貰えぬだろうか?』

神谷(リヴァイ)『ちっ………何かおかしいと思ったが。やはりそうだったのか。ほらよ。前金はお前に返していいんだな?』

と、律儀に金を返す神谷であった。帰ろうとする神谷を三村は捕まえて、

三村(ミカサ)『神谷殿! この間の問いにもう一度、答えて下さらぬか?』

神谷(リヴァイ)『あんたもしつこい男だな。同業者かもしれない事件の情報を俺が売ると思うのか?』

と、逃げようとする神谷だが、

神谷(リヴァイ)『ただ、まあ、俺もひとつ気になっている事はある』

三村(ミカサ)『なんでござる?』

神谷(リヴァイ)『俺もその男女の死体をチラリと盗み見したが……普通の殺し方ではないのは確かだな』

三村(ミカサ)『それは拙者も思ったでござる。妙な殺し方でござった』

神谷(リヴァイ)『少なくとも俺達仕置き人は『殺す事』を目的として殺す。しかしあの男女の殺され方は……まるで人をおもちゃにして遊んだような殺し方だったな。嬲り殺しだったのかもしれん』

三村(ミカサ)『つまり怨恨の線でござろうか』

神谷(リヴァイ)『どうだろうな? そこまでは俺も分からんが、ただの殺人ではないような気もする。それ以上の事は分からん。後は自分でどうにかしろ』

と言って、三村のもとを離れる神谷であった。

64進撃の名無し:2014/07/28(月) 16:27:30 ID:Oz2Etvso0





家長1(アーロン)『目障りなハエが2匹いるようですね』

家長2(エーレン)『ええ。困りましたね。我々の家の事をまだ捜査している捜査官がいるようです』

家長1(アーロン)『感づかれる前に処分した方がいいかも知れませんね。あの例の男に依頼しましょうか』

家長2(エーレン)『それがいいかもしれませんね。仕置き人の彼に依頼しましょうか』

家長1(アーロン)『まだこの研究は世に出す訳にはいかんからな。しかしうちの馬鹿息子が、知らぬ間に薬の一部を持って出ていたとは……服毒自殺でもするつもりだったんだろうか』

家長2(エーレン)『うちの娘の方も、似たような事をしていましたよ。薬の一部を持ち出して駆け落ちするとは……やれやれです。おかげで2人を処分するのに大変な手間がかかってしまった』

家長1(アーロン)『まあいい。跡取りはまた子供を産んでもらえば代用は出来る。若い娘を見繕って……』


カラン………


その会話を盗み聞きしてしまった使用人の女(アニ)だった。

お盆を落としてしまって、へたり込んでしまう。

使用人の女(アニ)『あっ……』

家長2(エーレン)『………聞いていたのかね』

使用人の女(アニ)『も、申し訳ありません!! あの、その………』

家長2(エーレン)『聞かれたからには、ここから出す訳にはいかないな』

家長1(アーロン)『私の姿を見られたのもまずいな。ここにいる事はバレてはいけない』

家長2(エーレン)『何……この娘にも実験に参加させればいいのですよ』

家長1(アーロン)『いいのか? 使っても』

家長2(エーレン)『どうぞお好きに。うちの家の者ですから』

家長1(アーロン)『分かった。では、この薬を飲ませてやろう(牛乳用意)』

きた。お色気シーンその2だ!!!

メイドの恰好の使用人の女(アニ)が羽交い絞めされて、牛乳を飲まされるだけなんだが、これがもう、なんていうか、いろんな意味で酷い。

このシーンだけはアニじゃないと色気でないからってエルヴィン先生が説き伏せたんだよな。

これがなければ、オレが使用人の女の役をやっていたと思うんだけど。

オレが牛乳飲まされても、なあ? 色気足りねえだろ?

使用人の女(アニ)『ん……あっ……(ごっくん)』

音がエロ過ぎる!! ありがとうございます!!!

65進撃の名無し:2014/07/28(月) 16:37:41 ID:Oz2Etvso0
牛乳飲まされて、口の端から白い液体が零れて、力なく倒れそうになる。

もうこのシーン考えたの誰なんだよ。天才過ぎる。

その後、使用人の女(アニ)のアニは地下へ連れて行かれる。

そして暗転。地下には、薬を飲まされて身体を無理やり強化された「超人」達がトレーニングを積んでいた。

所謂殺戮マシーンだ。ただ命令をこなすだけの、人間兵器。

ちなみにその背景の殺戮マシーン役でオレも出ている。顔にマスクしているけど。

裏方の人間がここでも勢ぞろいだ。アニもここで洗脳される設定なんだ。

洗脳処置を施された使用人の女(アニ)は、今度は女忍者のような格好になる。

目の色が違う感じだ。いつも唸っている野生の獣のような状態だ。

家長2(エーレン)『例の仕置き人を使わなくとも、この娘を使って殺させても良いかもしれないですね』

家長1(アーロン)『ああ、そうだな。試しにやらせてみるか』

家長2(エーレン)『よし。では早速、実験をさせてみよう。奴らを殺して貰えるね?』

使用人の女(アニ)『……(こくり)』






新月の夜。その殺意の気配は突然、三村と斎藤の背後から襲い掛かった。

三村(ミカサ)『また神谷殿でござるか?! いい加減、しつこいで……』

斎藤(ジャン)『ん? 誰だ? あの娘は』

闇の中に浮かび上がる殺戮マシーン。彼女は容赦ない体術を繰り出して三村を襲う!!

66進撃の名無し:2014/07/28(月) 16:56:28 ID:Oz2Etvso0
三村(ミカサ)『?! この娘は………?!』

あの時の優しい使用人の女だと気づいた三村はすぐさま体勢を整えて逃げ出す。

斎藤(ジャン)『思い出した! 女の方の使用人の娘だな?! なんか様子がおかしいぞ?!』

三村(ミカサ)『で、ござるな……! 目を覚ますでござるよ!』


キンキンキン!!!


短刀で接近戦で食らいつくアニと防戦一方のミカサの対決だ。

ここもすげえ殺陣のシーンなんだよな。観客が「おおお」と食い入るように見ている。

使用人の女(アニ)『殺す……殺す……殺す……殺す!!!!』

完全にバーサーカー状態の彼女に三村は苦戦を強いられる。

刀がはじけ飛んで、今度は体術対体術の戦いになってしまった。

三村(ミカサ)『やむおえん!!! (バッ)』

剣を捨てて拳で対応する。おおおお。剣術だけじゃねえぜ! さすがだ!!

ミカサはアニの攻撃を見事に防いで流して攻撃を食らわない様に逃げる。

そして相手の体力を削って、一発、腹に入れて気絶させる作戦だ。

腹に一発入って、気絶させた。そのアニを体に抱き留めて……

三村(ミカサ)『一体何が起きているでござるか……?』

と困惑する三村。しかしその時、

使用人の女(アニ)『殺す! (開眼)』

三村(ミカサ)『?!』

三村が腹を抑えられて苦しみ始めた。強烈過ぎるハグの攻撃だ!

三村(ミカサ)『うが……うぐっ……あああ!?』

その瞬間、自分の剣を抜いて背後から斎藤がアニを背中から切った。

上から下へ。鮮血のSEが入る。

そしてようやく我に返った使用人の女は、

使用人の女(アニ)『た、助けて……』

三村(ミカサ)『しゃべってはならぬ! すぐに手当てを……』

使用人の女(アニ)『薬を、飲まされて、体が、自由に、出来ずに……ご主人様達が…犯人だ……』

断片的にでも言葉を残そうとして、そして途中で命が果てる使用人の女だった。

躯を胸に抱きながら、三村(ミカサ)の瞳に怒りの炎が宿る。

三村(ミカサ)『断片的にしか分からなかったが、これはあの両家の家長が怪しいと見て良いのでござろうか』

斎藤(ジャン)『薬がどうとか言っていたな。まさか、この娘もそのせいで………』

三村(ミカサ)『…………許さぬ』

そして三村はそう言い捨てて使用人の女を斎藤に預けて、単身、屋敷に乗り込もうとする。

斎藤(ジャン)『おい、ちょっと待て。証拠もないのに乗り込むな! 裏付け捜査をしてからじゃねえと突入は……』

三村(ミカサ)『そんな悠長な事を言っていたら、またこの娘のような被害者が出るかもしれぬ!!』

斎藤(ジャン)『いや、まあそうだけど……』

三村(ミカサ)『拙者一人で行ってくる。斎藤殿は、この娘を弔ってやってくれ』

斎藤(ジャン)『え……あ、ちょっと待て三村ああああ?!』

そして三村は、闇の世界に一人で駆け出した。

67進撃の名無し:2014/07/28(月) 17:13:38 ID:Oz2Etvso0






そして再び屋敷のシーン。ソファのある一室だった。

契約を交わしているのは神谷本人だった。

神谷(リヴァイ)『今度こそ、本物の暗殺依頼だろうな?』

家長1(アーロン)『え? 本物?』

神谷(リヴァイ)『いや、以前、偽の暗殺依頼が舞い込んできたからな。こちらも信用問題がある。契約はきっちりして貰いたい』

家長1(アーロン)『そうですか。それは気の毒でしたね。ええ、今回は間違いない依頼ですよ。この小蠅のような男を始末して頂きたい』

神谷(リヴァイ)『ならいいが……』

家長2(エーレン)『紅茶のおかわりはいかがですか?』

神谷(リヴァイ)『ああ、頂こう』

神谷(リヴァイ)(ごくり)

家長2(エーレン)『………………』

神谷(リヴァイ)『なんだ? さっきから人の顔をジロジロと』

家長2(エーレン)『いえ、暗殺家業を行う方が、まさかこんなにあっさりとした罠に引っかかるとは思わなくて呆れていただけです』

神谷(リヴァイ)『何……? (グラッ)』

家長2(エーレン)『あの娘が失敗したという報告が来ましたからね。早めに次の矢を投入しないといけないと思いまして』

神谷(リヴァイ)『次の矢……だと? (フラフラ)』

家長2(エーレン)『ええ。あといい実験材料にもなりますし。一石二鳥ですよ』

神谷(リヴァイ)『くっ……貴様ら、まさか……!』

バタン……力なく崩れた神谷(リヴァイ)を再び地下へ運び込む。

68進撃の名無し:2014/07/28(月) 17:42:28 ID:Oz2Etvso0




暗転。三村が単身乗り込もうとするのを必死に止める斎藤の姿。

斎藤(ジャン)『頼むから突入はまだ待ってくれ! あんた一人で突っ込んでもどうしようもねえんだよ!! あの娘の命を無駄にする気か?!』

三村(ミカサ)『うっ……では一体どうすれば……』

斎藤(ジャン)『強引な手段だが、別の容疑で家宅捜査をかける。何でもいい! 無理難題ふっかけて、警官隊を突入させる! やるとすれば、その方法しかねえ!』

三村(ミカサ)『ではその別の容疑とやらを早くでっちあげるでござるよ!!』

斎藤(ジャン)『無茶言うな!! 今すぐには無理だ!! 他の警官たちに連絡するのにも時間がかかる。とにかく今、お前を一人でいかせられるか!!』

三村(ミカサ)『…………(目が据わっている)』

斎藤(ジャン)『分かってくれたか? じゃあここで大人しく待って……』

三村(ミカサ)『ああ。分かった。斎藤殿を信じるでござるよ……』

斎藤(ジャン)『良かった。じゃあオレは仲間を呼んでくるから、あんたはここで待っていてくれよ』

と、約束を交わして斎藤は闇夜を駆けだした。

残された三村は躯を抱えて、茂みの中に一度隠してしまう。

三村(ミカサ)『………すまなかったでござる』

と彼女に対して呟いて、三村は斎藤とは別方向に1人で駆け出したのだった。





数分後、仲間を連れて斎藤がすぐ戻ってきた。しかしそこには三村がいない。

斎藤(ジャン)『あの嘘つき野郎がああああああ!?』

と、頭抱えてそのまま直進して駆け出すのだった。

69進撃の名無し:2014/07/28(月) 18:19:47 ID:Oz2Etvso0





屋敷の中に単身突入して、使用人の一人を脅して屋敷の奥へ進んだ三村。

そこには家長1(アーロン)が一人、待ち構えていた。

家長1(アーロン)『ああ、この間の方ですか。またお会いしましたね。何か用でございますか?』

三村(ミカサ)『……………屋敷の中をもう1度、見せて貰いたい』

家長1(アーロン)『ん? 前に警察の方が来られた時に全てお見せしましたが?』

三村(ミカサ)『いや、まだ見せて貰っていない場所がある筈でござる。例えば、地下とか』

家長1(アーロン)『………貴方、見たところただの流浪人ですよね? 今日は警察の方とご一緒ではないんですか? でしたら貴方にはそれを見る権利はないと思いますが』

三村(ミカサ)『やましい物を隠しておるのだろう? 例えば、人の力を限界まで無理やり引っ張り上げる薬とか』

家長1(アーロン)『あなたは本当にうるさい小蠅ですね』

と、困ったように対応する家長だった。

家長1(アーロン)『言いがかりにも程がありますよ。何の証拠があって言っているのか分かりませんが、これ以上ここに居座る気ならば、私にも考えがあります』

と言って家長は合図を鳴らした。

そして雑魚キャラ用心棒の登場だ。裏方が一斉にマスクマンの状態で出てくる。

ユニフォームが筋肉マンのノリに近いけど。さっき地下でトレーニングしていた奴らがここで出てきた事にしているんだ。

家長1(アーロン)『我が家の用心棒です。彼らにあなたを始末して貰いますよ。やってしまい!!!』

という訳で、1対多数の殺陣が始まった!

ここはすぐにやられるんじゃなくて、ある程度三村に攻撃しないといけない。

その上で徐々にやられていく。そんな感じの演出になっている。

用心棒だけで倒せると思っていた家長は次第に焦り出す。

やられたオレ達は邪魔にならない位置で屍役だ。

家長1(アーロン)『ぬう……なんていう事だ。これだけの数をあっさり倒すとは。仕方がない。まだアレは完成はしていないが……彼を呼ぶしかない』

合図と共に、隣の部屋から、神谷が現れた。目の据わった神谷だ。

家長1(アーロン)『用心棒代わりに雇いました。彼にあなたを始末して貰いますよ。神谷さん、客人を殺していいです。これは正当防衛ですから許されます』

神谷(リヴァイ)『…………了解した』

そして神谷はゆっくりと、刀を抜いたのだった。

音楽が変わる。これは「アカイ」とかいう麻雀アニメの「神技」とかいうBGMらしい。

エルヴィン先生がそのアニメが好きらしくて、どうしてもここで使いたいと言ってきたんだ。

静かで優雅な殺陣が始まった。三村はそれを受けながらも嵐の前の静けさのように感じる。

そして殺陣が進むうちに、だんだん表情が崩れていく神谷。

三村(ミカサ)『神谷殿……?』

ミカサもだんだん、その寒気を感じて、遂に……

神谷(リヴァイ)『うっ……!』

また音楽が変わった。ここから急展開になる!

DS版のSAGA3のラスボス「神戦」の音楽を使用させてもらった。

この曲のイントロ大好きなんだよオレ。途中に流れる雄大なメロディも大好きだ!

三村(ミカサ)『神谷殿!?』

急激に強くなる。神谷もバーサーカー状態に突入だ。

70進撃の名無し:2014/07/28(月) 18:39:32 ID:Oz2Etvso0
苦しみながら剣を落としてしまって、頭を抱えて、素手での戦いに突入だ!

神谷(リヴァイ)『うおおおおおおおおおお?!』

絶叫。そして突撃。突然の変わりように三村も困惑する。

剣で応戦するものの、避けきれず、捕まる。

剣をお互いに落とした上での、肉弾戦に入った。

途中で神谷(リヴァイ)のタワーブリッジが入った。それを体を捻ってミカサが脱出した時、観客から「うあああ?!」と悲鳴のような動揺が広がった。

ここからはガチで凄い。剣での殺陣とはまた違ったアクション要素満載で、目が離せない。

三村(ミカサ)『なんて、強さだ……!』

防戦一方になる間、ミカサは刀を拾いなおして再び自分の間合いを取ろうとするが……

神谷(リヴァイ)の攻撃が勢い余って本当に刀に当たってしまい、刃が折れた。

三村(ミカサ)『えっ………』

三村(ミカサ)が顔面蒼白になった。まずい! これは打ち合わせにはない!

本当ならここから、剣を拾いなおした三村(ミカサ)側が覚醒する予定なのに。

剣がない状態では、覚醒のしょうがない。

呆然とするミカサ。アドリブで乗り切らないといけないけど、頭の中が真っ白になっているようだ。

神谷(リヴァイ)も青ざめている。散々寸止めの練習をしたのに、本番でやらかしてしまった顔だ。

だからオレは観客に聞こえない声で言った。

雑魚(エレン)『戦え……まだ、勝機はある……(小声)』

三村(ミカサ)『!』

雑魚(エレン)『ここに、ある!』

幸い、オレの傍に神谷側の刀が落ちていた。

三村(ミカサ)『で、でも……それだとラストの剣戟が無くなる…(小声)』

雑魚(エレン)『大丈夫だ! 先生を信じろ……いや、オレを信じろ! (小声)』

ミカサは迷っていたようだけど、剣を再び拾いなおした。

本当はラストでまた刀と刀の殺陣に入る予定だったんだけど。

もう仕方がねえ。素手と刀でやりあうしかねえ!

71進撃の名無し:2014/07/28(月) 23:08:14 ID:Oz2Etvso0
意図を察したリヴァイ先生は小さく頷いた。このままいくらしい。

ぶっつけ本番だ。刀と刀、体術対体術の殺陣は散々練習したけど、刀対体術は練習にない。

もうあとは2人の感性に任せてしまうしかない。完全アドリブの殺陣だ。

音楽が切り替わった。ここからはSAGA2の方の「死闘の果てに」を使う。

ゲーム音楽ばっかりですまん。この辺は完全にオレの趣味だ。

完全アドリブの殺陣だけど、大丈夫だ。2人の息はここ数日間で合わせられるようになっている。

だけどここでだんだん強くなる三村の脳裏に昔の記憶が蘇り始める。

バックスクリーンでその映像が流れる。舞台は暗くなって一時停止だ。

幕末の世を駆ける。火村抜刀斎の隣で、一緒に敵と戦う三村の姿だ。

口パクで会話する2人の映像が流れる。この時のるろ剣の方の火村剣心役はオレがやっている。

頬に十字傷を持つ伝説の男と何か話している。そんなイメージだ。

そしてまた時が動き出す。覚醒した三村は、刀を抜かないまま、鞘を我突のように突き出して、神谷の腹に攻撃を当てた。

本当ならここは逆刃剣で対応する筈だったけど、神谷の剣だと殺しちまうから鞘でやるしかなかった。

そして一瞬だけ正気に戻った神谷が頭を抱えながら起き上る。

神谷(リヴァイ)『くっ……俺は一体、何を……』

家長1(アーロン)『ひ、ひいいい……(ヨロヨロ)ま、まさか貴様! あの伝説の火村抜刀斎……?!』

三村の強さを目の当たりにしてそう疑い出すが、

三村(ミカサ)『いいや? よく間違われるでござるが人違いでござるよ。拙者はあの方の足元にも及ばない』

と、少し懐かしむようにしながら三村は言う。

三村(ミカサ)『ただもしも、ここに火村殿がいたらきっと、同じことをしたと思うでござる。神妙にお縄に頂戴しろ(じりじり)』

家長1(アーロン)『か、神谷! 時間を稼げ!! 君は仕置き人だろう?! 私を守るんだ!!! 奴を殺せ!!!』

神谷(リヴァイ)『うっ……!』

殺せ! という言葉に反応して再び神谷が苦しみだした。

しかしその直後、折れた刃を拾って自分で握って、家長1(アーロン)を後ろから羽交い絞めして固定した。

家長1(アーロン)『ひ、ひいいい?!』

神谷(リヴァイ)『俺ごと、殺せ……!』

三村(ミカサ)『!』

神谷(リヴァイ)『早く! こいつごと、俺を殺せ!!!』

家長1(アーロン)『な、何を……君は金で何でも請け負うんじゃなかったのか?!』

神谷(リヴァイ)『黙れ!! これは俺の誇りの問題だ……今すぐ…俺を……うっ……!』

苦痛に顔を歪め始める神谷に三村は動けない。

それを悟ると、神谷は自ら依頼人ごと、自分の腹を貫いた。

三村(ミカサ)『神谷殿……!!!!!』

神谷(リヴァイ)『ぐふっ……(吐血)』

三村(ミカサ)『しっかりしろ! 今すぐ手当を……』

神谷(リヴァイ)『三村……』

三村(ミカサ)『!』

神谷(リヴァイ)『出来るならもう一度……お前とは、素面の時に、剣を交えて見たかった………(がくり)』

三村(ミカサ)『神谷殿!!!』

その後、突然の警官の突入が始まった。

斎藤(ジャン)がすぐさま三村(ミカサ)に駆け寄り、

斎藤(ジャン)『大丈夫か三村!!!』

三村(ミカサ)『斎藤殿! 神谷殿が……!!!』

斎藤(ジャン)『くっ……遅かったか。すまねえ。もう一人の家長の方は包囲網を敷いてさっき、捉えたよ。あの娘の口の中に残っていた薬の成分が証拠になった。薬事法違反ってやつか? 逮捕状が出せたから、もう心配いらねえ。屋敷の中も警察で押さえられるから余罪も出せるだろう』

三村(ミカサ)『手間をかけさせたでござるな…すまなかったでござる』

斎藤(ジャン)『いや、もうしょうがねえよ。とりあえず、屋敷を出るぞ』

そして暗転。事件のエピローグへ移動する。

72進撃の名無し:2014/07/28(月) 23:28:30 ID:Oz2Etvso0



墓が二つ。神谷の墓とあの娘の墓を斎藤の金で建てて貰い、その墓の前で2人は話す。

斎藤(ジャン)『あの薬は人間の体というより、頭の意識を限界まで高める薬だったらしい』

三村(ミカサ)『意識を……』

斎藤(ジャン)『いわゆる、火事場の馬鹿力を誰でも意図的に作り出せるようにする。そういう薬の研究を進めていたんだそうだ』

三村(ミカサ)『一体、何故そんな研究を……』

斎藤(ジャン)『次の世の為に必要だと言っていた。いつかくるべき未来の時代の為に必要な研究だと、奴は主張していたよ。外国と戦争する時代が遠くない未来に必ずやってくるから、富国強兵が必要になると。その時の為に、研究していたと自白した』

三村(ミカサ)『外国と、でござるか?』

斎藤(ジャン)『ああ。オレにはちょっと俄かには信じられなかったが……どうもこの事件は、ここだけが根っこじゃねえみてえだ。奴以外にも、似たような研究をしている研究者が国中に居るらしい。家長同士が不仲を装っていたのは、協力体制を世間に悟られない為と、もし事が露見した場合はどちらかが逃げて、研究を続けるためのものだったらしい』

三村(ミカサ)『……そうでござったか』

斎藤(ジャン)『胸糞悪いけど、まだこれで終わりじゃねえらしいよ。はあ、何だってこんな面倒臭い事が起きるんだろうな。オレはただ、安定した暮らしがしたくて警察官になっただけだってのに……』

三村(ミカサ)『………まだ、本当の意味では戦いは終わってないのでござるな』

斎藤(ジャン)『ああ?』

三村(ミカサ)『何でもないでござる。お疲れ様でござったな。斎藤殿』

斎藤(ジャン)『ああ。疲れたよ。明日は休みだからゆっくり休みたい……と言いたいところだが』

三村(ミカサ)『ん?』

斎藤(ジャン)『あんた、今持っている刀、それ、神谷の持っていた物じゃねえか?』

三村(ミカサ)『ギクギク』

斎藤(ジャン)『人を切れる方の刀だったら、廃刀令に適用するぜ? という訳で没収!!!』

三村(ミカサ)『か、固い事言わないで欲しいでござるよ! これは神谷殿の遺留品!! 預かっているだけでござる!!』

斎藤(ジャン)『ダメに決まってるだろうが! あ、こらあああ!!!』


と、また追いかけっこが始まって、逃げ出す三村。

斎藤を撒いて、舞台に一人残って、天を仰ぐ。


三村(ミカサ)『富国強兵………の時代か』


と、ぽつりと未来を憂う様に呟いて、神谷と娘の死を一人、悼む三村。

三村(ミカサ)は涙を隠す様に俯いて、そして顔をあげて、また新たな旅に出るのであった。

73進撃の名無し:2014/07/28(月) 23:50:04 ID:Oz2Etvso0










ミカサが舞台からはけて、終わった。

さあ、ここからはエンドロールだ。皆、一気にいくぞ!!!

斎藤(ジャン)が再び舞台に出て、マイクのスタンドの前に立った。

エンディング曲は『HEART OF SWORD -夜明け前-』だ。

ジャンが司会をしながらメンバーを紹介していく。

恒例のイントロが流れた後は、ノリノリで紹介だ!

ジャン『まずは大道具チーフ! エルヴィン先生!!!』

10秒くらいの持ち時間で、音楽に合わせて適当に踊る。エルヴィン先生、格好いいな!

すっげえ様になってる。ダンスも上手いんだ。すげえ!

ジャン『次は、大道具三人衆! エレン! アルミン! マルコ!』

三人一片に舞台に出る。拍手喝采の中、ダンスを踊るって言うのは結構恥ずかしいなコレ!

アルミンもマルコもちょっと照れてるけど、10秒くらい踊ったら、次にバトンタッチだ。

ジャン『ロミオとジュリエット! アルミン! マリーナ!』

アルミンだけ残ってマリーナが追加して、2人でお尻を合わせて踊ってる。かわええ!

ジャン『音響・衣装! ガーネット! マリーナ!』

そして今度はアルミンが抜けてガーネット先輩が入る。

2人でくるくる回ってる。すげえ。バレリーナみたいだ。

ジャン『照明! スカーレット! キーヤン! カジカジ!』

照明メンバーと入れ替わる。スカーレット先輩がキーヤンとカジとのしていた。ひでえ(笑)。

ジャン『噂の商人! キーヤン! カジカジ!』

スカーレット先輩だけはけて、2人で殺陣をする。あ、キーヤンが負けた。

ジャン『両家の家長! アーロン! エーレン!』

悪役二人がやってきた。2人で一緒にブレイクダンスやりだした。すげえな!

ジャン『斎藤雀! オレ! ジャン!』

ちょっと笑いが起きた。ジャンがその場で踊ってみせた。

ジャン『神谷赤司 リヴァイ先生!』

きゃああああああ!!! 女子の悲鳴が体育館の天井を貫く勢いで轟いた。

リヴァイ先生、ちょっと赤くなってる。やっぱり恥ずかしいんだな。ぷぷっ。

ジャン『ラスト! 三村万心! ミカサ!』

ミカサがぴょんぴょん跳ねて出てきた。踊るのか? 踊らないのか?

あ、盆踊り始めた。なんか違うだろそれwww

アニ『ちょっと、一人忘れてない?』

ジャン『あ、やっべ! そうだった! お色気ヒロイン! 使用人の女! アニ!』

アニ『お色気は余計だから! (ゴス!)』

ジャンが殴られた。会場がまた、笑いに包まれる。

74進撃の名無し:2014/07/29(火) 00:01:58 ID:7qkTF8c60
ジャン『以上をもちまして、演劇部の公演『侍恋歌ーサムライレンカー』の方を終了させて頂きます。ご来場の皆様、本日は誠に観劇ありがとうございました!!!』

一同『『『ありがとうございました!!!!!!』』』

わーわーわー!

パチパチパチ………!!

拍手喝采だった。良かった。無事に最後まで乗り切った。

一回だけ危ないところがあったけど、乗り切れてよかった。本当に。

ジャン『皆、撤収!!!』

一同『『『撤収!!!』』』

ショッカーみたいなノリで撤収作業を開始する。

会場の外に出て、お客さんを見送りしないといけない。いそげえええ!

ジャン達と衣装はそのままで第一体育館の入り口まで出て、アーチを作る。

すると、すぐリヴァイ先生のところで渋滞が出来て人が出れない状態になってきたので、リヴァイ先生は一番最後の列に立って貰う事になった。

OB「リヴァイ先生! いきなり脱いでびびったっすよ! 腹筋顕在っすね!」

リヴァイ「ああ? アレを決めたのは俺じゃない。エルヴィン先生だ」

OG「だと思ったwwww超ウケたよwwww目の保養になったあwww」

リヴァイ「まあ、それならいいんだが。ほら、早く出ろ! つっかえるだろうが!」

OG「後でまたメールするね〜リヴァイ先生ー!」

と、次から次へと卒業生がリヴァイ先生にコメントを残していった。

いや、本当、リヴァイ先生の人気が凄すぎてびびる。でも、リヴァイ先生自身は照れくさそうだった。

75進撃の名無し:2014/07/29(火) 00:19:01 ID:7qkTF8c60
OB2「リヴァイ先生! 遂に舞台に出たんですね! あんなに嫌がってたのにどういう風の吹き回しっすか?!」

リヴァイ「嵌められたんだよ。エルヴィン先生に。無理やり出演決定された」

OB3「だと思ったwwwwでも似合ってましたよ先生!」

リヴァイ「ありがとう。でももう2度とせん」

OB4「そんな事言わず、来年も出て下さいよー」

リヴァイ「遠慮しておく。ほら、早く移動しろ! 邪魔になるだろうが!」

OG2「リヴァイ先生ー! 抱いてー!」

リヴァイ「今、汗臭いだから近寄るな! ハグはサービスしてねえぞ!」

OG3「ずるいー私も先生の匂い嗅ぎたいわwwww」

リヴァイ「勝手に嗅ぐんじゃない! 急いで出ろ!」

OG4「また後でメールするね〜!」

と、まあひっきりなしに声をかけられる。本当にすげえ。

リヴァイ先生の慕われ方が良く分かる。皆、ニコニコしながらやってくるんだ。

OG5「ねえねえ、リヴァイ先生。まだ結婚してないの? ハンジ先生は?」

リヴァイ「うぐっ……(青ざめ)」

ぎゃあああ! 今、その事は触れないであげてえええ!

と、叫びそうになったオレだけど、あえて黙る事にする。余計な事は言えない。

OG6「おや? その様子だとまだっぽい? まだ結婚してないの? 先生」

リヴァイ「うるさい。ハンジとはそういうのじゃないって何度も……」

OG7「またまた〜嘘ばっかり〜素直になりなよリヴァイ先生〜♪」

OG8「っていうか、うちらもうとっくに結婚していると思ってたんだけど。まだなんだ? うちらの方が先に結婚しちゃったけどwww」

OG9「教え子に先越された気持ちってどんな感じ? ん?」

うわあああ酷いOG達だ。フルボッコ過ぎる。

リヴァイ「ああ、お前ら結婚したのか」

OG9「子供ももういるよ。2人、こっちは1人だけど」

OG8「早く子供持ちなよ先生もー子供って可愛いよ?」

リヴァイ「はー……(遠い目)」

大丈夫かな。リヴァイ先生。なんかいろいろ考え込んでいるみてえだ。

リヴァイ「そりゃ俺も出来るだったら自分の子供が欲しいけどな……」

OG9「おお? じゃあ早く結婚しなきゃ。ハンジ先生、年いくつだったけ?」

リヴァイ「36歳だ」

OG9「じゃあ急がないとヤバいじゃん! さっさとプロポーズしなよおお」

リヴァイ「あーもう、お前ら、その話は後にしろ! 後がつかえる!」

と、また追い出していく。

76進撃の名無し:2014/07/29(火) 00:31:09 ID:7qkTF8c60
OB5「リヴァイ先生ー! 相変わらず壁伝い出勤しているんですか?」

リヴァイ「今はさすがにしてねえ。先生達に怒られたからな」

OB5「あ、そうなんだwwwいや、オレ、アレ好きだったんですけどねwwww窓から入ってくるのwww」

リヴァイ「あれは遅刻しそうになった時の裏ワザだ。グラウンドから直接、壁伝って窓から入った方が早いが、やはり危ないからやめろと、他の先生達に怒られたんだよ」

OB6「確かに。危ないけど、3階の教室の窓から外から入ってくるのってリヴァイ先生しか出来ねえっすよねwwww」

なんじゃそりゃ?! そんな事してたのかリヴァイ先生。

エレン「………(じと目)」

リヴァイ「昔の事だ」

と、照れているリヴァイ先生だった。

OB5「一回、ヘリコプター出勤もあったよな? ジャッキーチュンみてえにして学校に来たことあったけど、アレは爆笑したわwwww」

OB6「あったあったwwwwアレも後で怒られたんでしたっけ?」

リヴァイ「怒られたな。いや、確かにヘリコプターで出勤したらいけないというルールはないが、常識を考えろと言われたよ」

えええええ。リヴァイ先生、若い頃いろいろやらかしているんだな。

OB6「でも見ている分には楽しかったっすよwwwアクションスターみたいでwwww」

リヴァイ「そうか。もう忘れてくれ。ほら、早く移動しろ!」

と、またまた追い出していく。

これもう、キリねえんじゃねえか? どんどん人が詰まってきたぞ。

エレン「リヴァイ先生、もう先生だけ抜けませんか? キリないですよ」

リヴァイ「ああ。そうだな。俺は先に上がらせて貰おう。着替えてきていいか?」

エレン「はい。OBOGの方々には申し訳ないけど、これ以上詰まるとまずいです」

リヴァイ「分かった。後の事は頼む。お先に」

という訳でリヴァイ先生が混雑避けの為に先にアーチから離れた。

だけど、途中でやっぱりOBOGに捕まって、人だかりが出来てしまった。

あーあ。ダメだこりゃ。暫くは離して貰えそうにないなアレ。

77進撃の名無し:2014/07/29(火) 00:47:25 ID:7qkTF8c60
グリシャ「お疲れさん。エレン」

エレン「あ、父さん!」

ミカサの母「面白かったわよ。すごいわねえ。ミカサ、あんなに頑張っているとこを見れるとは思わなかったわ」

グリシャ「ああ。エレンの女装姿も可愛かったぞ」

エレン「そ、それは言わないでくれ、父さん……」

ちょっと複雑な心境になるからな。母さんそっくりになるし。

グリシャ「私達はこの後、2人でぶらぶらしてくるが、クラスの方を見てもいいのかな?」

エレン「んーコスプレ写真館だから父さん達は楽しめないかもしれないぜ?」

グリシャ「そんな事はないよ。じゃあ後で寄らせて貰うね。エレン、後片付けも頑張って」

エレン「ああ! ありがとうな! 父さんも!」

という訳で親父達も見送ったら、今度はミカサの方がこっちに寄ってきた。

ミカサは入口出てすぐのところに居たんだけど、オレの方が気になって来たみたいだ。

ミカサ「エレン。横に立っていい?」

エレン「おう。いいぞ」

ミカサ「あの時は、ありがとう」

エレン「ん? あの時?」

ミカサ「小道具が折れた時。まさか、あの程度の衝撃で刃が外れるとは思わなかった」

エレン「んーやっぱり本番は気合の入れようが違うから、リヴァイ先生も手加減間違えたんじゃねえのかな」

ミカサ「それもある。でも、私自身も本気で殺陣をやったから、その衝撃に耐えきれなかったのかもしれない」

エレン「かもな」

ミカサ「エレンが咄嗟に指示をしてくれなかったら、きっとまた、私は入学式の二の舞をしていたと思う。本当に、本当にありがとう……」

エレン「いいって。でもこれで少しは舞台恐怖症は克服出来たんじゃねえか?」

ミカサ「うん。パニックになりそうになったら、エレンを思い出す事にする。そうすればもう、私は何も怖くない」

おお。いい感じに克服出来たみてえだな。良かった良かった。

78進撃の名無し:2014/07/29(火) 01:28:32 ID:7qkTF8c60
ジャン「そろそろ舞台に戻るぞ! 撤収作業再開だ!!」

一同「「「はい!!!」」」

という訳である程度お客がはけてから舞台に戻って後片付けに戻った。

そしてあっという間に次の演目「英語劇 風と共に去りぬ」の劇が始まった。

オレ、この劇の内容を全く知らないんだよな。昔の映画が元らしいけど、どんな話なんだろ?

ついでだから、見て行こうかな。時間はあるし。

制服に着替えたオレ達はそのまま会場の観客席に残って英語劇を見る事にした。

こっちは独立戦争の時代のアメリカを舞台にした恋愛劇だ。

細かいやりとりは分からないけど、英語はアルミンとミカサが得意だから、分からない時は解説して貰う。

あらすじを説明すると、スカーレットというモテモテ女性がアシュレーという美青年にだけはひっそり恋をしていたんだけど、振られちゃって、腹いせにアシュレーの嫁、メラニーのお兄さんと結婚しちゃうんだよな。

んでその様子をいやらしく傍観して見ていたのが、悪漢(ピカロ)の異名を持つレット・バトラー。

スカーレット・オハラとレット・バトラーの意地っ張りな恋愛模様がメインの恋愛劇だった。

戦争映画でもあるようで、元の映画は3時間くらいあるのかな? 長編大作らしい。

だからこの劇では勿論、やるのは途中までだ。

スカーレット側の南部が戦争に負けて、ボロボロになってスカーレットが実家のタラに帰ってくるけど。

絶望しかない状況で、スカーレットは土を食って誓うんだ。

もう、二度と飢えたりしないーと。

その名演技にオレは自然と涙を流していた。

やべえ! なんか思っていたより格好いい演劇だったな!

これ続きが気になるなあ。後でレンタルして観てみようかな。

ミカサ「素晴らしい劇だった……」

エレン「意外と面白かったよな。これ、相当古い映画が元らしいけど」

ミカサ「うん。名作映画によく名前が列挙されている。でも私も見たのは初めてだった」

エレン「そうかー今度、借りて一緒に続き見てみるか」

ミカサ「う、うん……(照れる)」

79進撃の名無し:2014/07/29(火) 01:36:03 ID:7qkTF8c60
そんな訳で時間が過ぎて、

ミカサ「あ、そろそろコスプレ写真館の方に戻らないといけない」

エレン「そうか。午後の写真撮影会の担当だったもんな」

ミカサ「うん。アニと一緒に写る。エレンはどうする?」

エレン「んーどうしようかなー」

と、考えていたその時、

アルミン「でも、この後、吹奏楽部がゲーム音楽やるって書いてあるよ? エレン、聞かなくていいの?」

と、アルミンが言ってきたので心が揺れた。

ミカサ「では、エレンはこのままアルミンと一緒にいるといい。私はアニと教室に戻るので」

エレン「いいのか? 悪いな。何か」

ミカサ「ううん。エレンも楽しめる方がいい。また後で合流しよう」

という訳で1回ミカサとは離れて、オレはそのまま第一体育館に残る事にした。

吹奏楽部の準備が整った。演目は詳しくは書いてない。お楽しみらしい。

音楽のダリス先生が指揮者となって壇上に上がった。

始まった。どの音楽から始まるんだろう。


チャッチャッチャラチャッタ! タ!


いきなりスペシャルマリオきたー!!!!!!

1−1の音楽じゃねえか! うわあ。これ、マリオ好きには堪らねえぜ!

80進撃の名無し:2014/07/29(火) 01:48:52 ID:7qkTF8c60


タッタタータッタタララ〜♪


やべえ。ゲームしたくなってきた。この音楽を聴いているとついそう思う。

1−1のマリオのゲーム画面を思い出しながら聞いていると、

途中で突然変調して、あ、スターを取った後のマリオの音楽になった!

でも、最後はゲームオーバーになった。酷いwwww

面白いなあ。吹奏楽でもゲーム音楽って出来るんだ。面白い発見だな。

そんな訳で次は、ファンタスティックファンタジーの名曲が来た。

ビッグブリッジの死闘だ! このイントロは熱い!

うわああ速弾きすげえええ! この曲、すげえ大変な曲だぞ?!

リコーダー演奏者もいるんだ。ソロパートの部分が神業だ。

相当練習したんだろうな。わっふ〜♪のところが素晴らしい!

その次は、うわ! また熱い曲が来た! 聖剣シリーズの子午線の祀りだああああ!!!

イントロ熱い曲が連荘できた。すげええ!

しかも2と3を繋げて来た。なんだこの圧倒的な演奏力は!

ああもう、興奮し過ぎだオレ。知ってる曲だとついついこうなるよな。

そして今度はセルタの伝説のエポナのテーマだ。

あ、ちょっと落ち着くな。これ聞くとしんみりする。

で、最後はなんと、おおおお! SAGAシリーズのステスロスのテーマとラスボスメドレーだった。

アレンジ加えてあるところもあるけど、すげえ格好いい!!

うわあああもう、何か興奮しか出来ねえ! 残って正解だった!!

あっという間に50分間の演奏が終わって、オレ、もう、お腹いっぱいになっていた。

アルミン「結構いい選曲だったねえ。すごいねえ。子午線の祀りって、相当難しい曲なんじゃないのかな」

エレン「ああ。あの速弾きのところ、神業だったな。ビックブリッジも凄かったけど」

81進撃の名無し:2014/07/29(火) 02:14:09 ID:7qkTF8c60
アルミン「うん。いやーこの選曲した人と友達になりたいくらいだね!」

と、オレとアルミンは大満足で吹奏楽部の演奏を聞き終えたのだった。

あ、遂に最後の演目だ。バンド演奏が始まるようだ。

ミカサとアニもこっちに戻って来た。やっぱりラストは皆で観たいよな。

リヴァイ先生もようやく着替えてOBOGの輪から解放されてこっちに来れたようだ。

リヴァイ「ふーやっとあいつらが離してくれた。やれやれ」

エレン「あ、リヴァイ先生もバンド演奏見るんですか?」

リヴァイ「最後くらいは、観たいと思ってな」

という訳で、いよいよラストの演目が始まる。

最初の曲は何だろうな。

ボーカル『女々しくて女々しくて女々しくて〜つらいよおおおおおおお!!!!!』

リヴァイ「?!」

あ、女々しくてだ。

ヤバい。この曲、今、1番リヴァイ先生に聞かせちゃいけない曲じゃねえか!!!

でも会場はノリノリだった。掴みの曲としては最高だけど、リヴァイ先生へのダメージがぱねえ!

顔隠して落ち込んでいる。あーあ。運がねえなもう。

82進撃の名無し:2014/07/29(火) 02:30:09 ID:7qkTF8c60
そんな感じで、

1.女々しくて シルバーボンバー

2.Let it Go〜ありのままで〜

3.ラブラドール・レトリバー AKB49

4.奏(かなで) スキマノスイッチ

5.小さな恋の歌 モンゴル880

6.secret base 〜君がくれたもの〜 ZON

7.サラバ! 愛しき悲しみたちよ モモクロ

8.空と君のあいだに ミユキ・ナカジマ

9.GET WILD  TN NETWORK

といろいろなジャンルがごちゃ混ぜで演奏された。

古いのもさり気に入っているのはきっと、保護者向けの選曲なんだろう。

そんな訳でラストの曲まであっという間だった。

ラストは何がくるんだろう。

ボーカル『えー最後は、この曲を選びました。皆、サビだけなら知っているかもしれません。ミスターチャイルドの曲の中ではマイナーかもしれませんが、聞いて下さい。ミスターチャイルドで『掌(てのひら)』です」

あ、これはアレだ。にこにこ動画でネタMADでも有名になったあの曲だ。

すげえいい曲なんだよな。元ネタ気になって探して聞いたことある。

ボーカル『て〜のひらに〜きざまれた〜いびつな〜きょ〜くせん〜』

ボーカル『なんらかの〜い〜み〜をもって〜うまれてきたあかし〜』

ボーカル『ぼ〜くらなら〜もとめあう〜〜さびしいどうぶつ〜』

ボーカル『かたをよせるようにして〜あいを〜うあっている〜』

あ、ちょっと間違えた。緊張しているみたいだ。

83進撃の名無し:2014/07/29(火) 02:47:24 ID:7qkTF8c60
歌は正直言えばジャンやキーヤンの方が上手いけど、でも、一生懸命歌ってて、凄く伝わる。

この歌が好きなんだろうな。そういう思いがしんみりと伝わってくるんだ。

ボーカル『だいたはずがつきとばして〜』

ボーカル『つつむはずがきりりきざんで〜』

ボーカル『なでるつもりがひっかいて! また愛もとめるぅぅ』

ボーカル『わかりあえたふりしたって〜』

ボーカル『ぼくらはちがった個体で〜』

ボーカル『だけどひとつになりたくて! 暗闇で! もがいて! もがいているぅぅぅ』

リヴァイ「……………」

リヴァイ先生が隣で聞き入っているのが分かる。

何だろ。共感する部分があるのかな。

観客も音楽に合わせて左右に揺れている。いい感じのラストソングだ。

ボーカル『ひとつにならなくていいよ〜』

サブボーカル『暮らしていたい場所〜』

ボーカル『認め合うことができればさ〜』

サブボーカル『それぞれが〜』

ボーカル『もちろんなげやりじゃなくて〜』

サブボーカル『あいしているひと〜』

ボーカル『みとめあうことができるから〜』

サブボーカル『それぞれが〜』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ〜』

サブボーカル『夢見てること〜』

ボーカル『なにを夢見てもいいよ〜』

サブボーカル『それぞれが〜』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ〜』

サブボーカル『信じてるもの〜』

ボーカル『何を信じてもいいよ〜』

サブボーカル『それぞれが〜』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ!!』

サブボーカル『暮らしていたい場所〜』

ボーカル『価値観も理念も宗教もさ〜』

サブボーカル『それぞれが〜』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ!!』

サブボーカル『あいしているひと〜』

ボーカル『認め合うことができるから〜♪』


それで素晴らしい!


ボーカル『キスしながら唾をはいて〜』

ボーカル『なめるつもりがかみついて〜』

ボーカル『着せた筈がひきさいて〜』

ボーカル『また愛〜求める〜』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ〜』

ボーカル『認め合えばそれでいいよ〜』

ボーカル『それだけが僕らの前の!』

ボーカル『くらやみを〜やさしく〜てらしてえええええええ♪』

84進撃の名無し:2014/07/29(火) 03:17:49 ID:7qkTF8c60
ボーカル『ひかりを〜ふらして〜あたえてくれるううううう♪』

あ、何か最後、ボーカルさん赤くなった。間違えたっぽいな。

どこ間違えたのか分からんけど、でもまあ細かい事は気にしない。

会場はすげえ盛り上がって、拍手喝采だった。

リヴァイ先生も拍手していた。いい歌だったなあ。

ミカサ「イイ曲。ラストに相応しい曲だった」

エレン「ああ。確かにな。いい曲だったぜ」

リヴァイ「……ひとつにならなくていい、か」

エレン「ん?」

何か今、言ったのかな。リヴァイ先生。

リヴァイ「いや、何でもない。この後は、グラウンドに移動して最後のキャンプファイヤーだ。保護者の差し入れもある。クラスの片づけが終わったら、皆でつまみながら閉会式やるぞ」

エレン「はーい」

という訳で皆ぞろぞろ退出して、クラスの片づけを終わらせたらグラウンドに集まって、キャンプファイヤーが始まった。

飲み物を紙コップで受け取って、皆で「お疲れ様ー」と口々に言い合っている。

校長先生の挨拶が終わって、あとは自由気ままにしゃべっている。

残ったカレーとかもこの時間に食べてしまうらしい。残したら処分が大変だもんな。

85進撃の名無し:2014/07/29(火) 03:18:47 ID:7qkTF8c60
キリ悪いけどここまで。ではまたノシ

86進撃の名無し:2014/07/29(火) 05:39:53 ID:A1eGo8/U0
アニ可愛いよアニ

打ち上げ無事にできるんだろうか…

87進撃の名無し:2014/07/29(火) 08:56:38 ID:wkUrIiTM0
とりあえずミカサはいつでもかわいいしアニミカコンビが仲良いのがすごくほっこりする

88進撃の名無し:2014/07/29(火) 11:45:06 ID:lw.Z5qnw0
舞台も面白かったー!
文化祭満喫した気分だわ
後夜祭も楽しみだ
ミカアニほっこり同意

89進撃の名無し:2014/07/29(火) 17:42:11 ID:osf9yHP.0
リヴァイ「………(もぐもぐ)」

あ、残ったカレーをリヴァイ先生がかきこんでいる。

エレン「お疲れ様でした。リヴァイ先生」

リヴァイ「ああ。昼はオルオが持たせてくれた福神漬けしか食ってなかったからな。さすがに腹が減った」

エレン「そういえばそうでしたね。リヴァイ先生は後夜祭の後はどうされるんですか?」

リヴァイ「あー3年の打ち上げだな。………ハンジの組と合同でやる約束だったがどうなるんだろうな」

と、ちょっと複雑そうな顔をするリヴァイ先生だった。

リヴァイ「もしかしたら気が変わって保護者の方に出るかもしれんな。あいつの事だし」

エレン「そうですか……」

リヴァイ「演劇部の方はどうする? 明日は振り替え休日だし、明日に回してもいいと思うが」

エレン「あージャン次第じゃないですかね。おい! ジャン!」

ジャン「あ? 呼んだか?」

エレン「演劇部の打ち上げどうすんだ?」

ジャン「あーそういや考えてなかったな。でもクラスの方の打ち上げと被ったらダメだよな。ユミルに聞いてくるわ」

と言ってジャンがユミルの方に駆け寄る。オレもついでについていくと、

ユミル(ぐったり)

ベルトルト(ぐったり)

ジャン「おーい、ユミルーって、死んでるじゃねえか!」

エレン「まるで屍のようだ」

ユミル「ああ? 何の用だ(機嫌悪い)」

ジャン「いや、クラスの打ち上げどうすんのかなって」

ユミル「今日はもう無理……明日にしてくれ。このままここで寝たい……(ぐったり)」

ベルトルト「僕も……(ぐったり)」

90進撃の名無し:2014/07/29(火) 17:54:42 ID:7qkTF8c60
と、実行委員の2人は死にかけていた。よほどハードな2日間だったらしい。

ユミル「全く……こんなに文化委員が神経遣う委員だと知ってりゃ絶対なってなかった」

ベルトルト「ううーん。中学の時より忙しかった。やっぱり高校になると本格的になるんだね」

ユミル「もう暫く仕事せんぞ! 遊び倒してやる!!」

と、文化委員の2人がブツブツ言っていた。

どうやらクラスの方の打ち上げは明日に回すらしい。

ジャン「だったら演劇部の方の打ち上げは今日やっちまった方がいいかな」

エレン「そうだろうな。んじゃ、皆にメールで連絡してくれ」

ジャン「あいよ」

と、部長職が板についてきたジャンが皆に連絡した。

リヴァイ「おい、お前らもカレー食うのを手伝え」

リヴァイ先生がこっちに来た。2回連続か。まあ仕方がないか。

ジャンと一緒にカレーを食っていたら、ミカサがこっちに逃げて来た。

あれ? アニも一緒に逃げて来た。追いかけられている様子だ。

ミカサ「エレン! 助けて!」

エレン「どうした?!」

アニ「ジャンも助けて!」

ジャン「なんでオレ?!」

女子生徒「ミカサさん! サイン下さい!」

女子生徒2「写真お願いします!!」

女子生徒3「握手もお願いします!!」

男子生徒「アニさん! お願いします! 握手お願いします!!」

男子生徒2「お願いします!」

男子生徒3「罵倒でも構いません!!」

なんかミカサに新規の女子ファンとアニにも変な男子ファンがついちまったようだ。

ジャン「あーそういうのはダメダメ! もう文化祭は終わったんだから」

一同「「「えー!」」」

ジャン「散れ! 散らないとカレーぶっかけるぞ!!」

一同はしゅーんとなって去って行った。

ミカサ「………何故か女子にもモテるようになってしまった」

エレン「だろうな。男装ミカサにもファンがついたみたいだな」

ミカサ「ううう……嬉しいような悲しいような」

エレン「いいじゃねえか。オレの自慢の彼女だよ」

ミカサ(ポッ)

あ、また赤くなった。可愛い。

91進撃の名無し:2014/07/29(火) 18:04:34 ID:7qkTF8c60
ミカサって結構、簡単に頬が赤くなるんだよな。ふふっ。

ミカサ「エレン。打ち上げはどこでやるの?」

エレン「さあ? ジャン、どこでやるんだよ」

ジャン「まだ決めてねえ。リヴァイ先生かエルヴィン先生にも来てもらった方が遅くまで遊べるけど、どうする?」

エレン「リヴァイ先生もエルヴィン先生も3年の方の打ち上げあるからそっちが優先だと思うけど、頼めば合同でやってくれるんじゃねえの?」

ジャン「まあ、その方が3年の先輩達とも話せるし、オレ達にとってはそれがいいけど」

ジャン「ちょっと確認してくる」

と、ジャンが移動していった。で、すぐ戻ってきて、

ジャン「カラオケで、部屋を別に取って合同でやればいいって話になった。3年に便乗でいいよな?」

エレン「ああ。いいと思うぜ」

ジャン「んじゃ、後夜祭終わったらすぐそっちに合流って事でいいよな」

と、ジャンがすっかり仕切り役だ。

マルコ「ふふ……部長役が板についてきたみたいだね」

マルコとアルミンもこっちに気づいて寄って来た。

ジャン「ああ?! んなわけねえよ。オレ、リーダータイプじゃねえし」

エレン「リヴァイ先生と同じ事言ってんな」

ジャン「あ? そうか?」

エレン「向いてねえって言ってる奴に限って、向いてる評価を周りから受けるんだから不思議だよな」

アルミン「言えてる。でも大体そんなもんだよね」

と、言うとジャンが物凄く複雑そうな顔をした。

あーこの瞬間の顔、写真に撮って見せてやりてえ。ジャン自身に。

でも、気づいてないんだろうな。ジャン自身も。そういう自分に。

エレン「あ……思い出した」

と、その時、オレはエルヴィン先生に個人的な用事があった事を思い出した。

92進撃の名無し:2014/07/29(火) 18:16:31 ID:7qkTF8c60
エレン「ミカサ、悪い。ちょっとエルヴィン先生のところに行ってくる」

ミカサ「ん? 私はついていってはダメ?」

エレン「いや、ついてきてもいいけど。ついてくる?」

ミカサ「うん」

エレン「じゃあ一緒に探すか」

アルミン「エルヴィン先生に用事なの? あっちの方でピクシス先生と話しているよ」

エレン「サンキュ、アルミン」

という訳で、エルヴィン先生のところに移動すると、

エルヴィン「やあエレン。ミカサ。お疲れ様」

エレン「お疲れ様でした。あの、エルヴィン先生、この写真、どう思います?」

と、言ってオレはこの間、無理やり撮ったリヴァイ先生の写真をエルヴィン先生に見せてみた。

ピクシス先生も一緒に覗いて顔を緩ませた。

ピクシス「いい写真じゃの!」

エルヴィン「どれどれ……ぷ! これは傑作だね。いつ撮ったの?」

エレン「文化祭1日目が終わって仕込みが終わった直後、リヴァイ先生と話す機会があったんで、その時に」

エルヴィン「いいねー。こういう顔が崩れたリヴァイは珍しい。画像くれる?」

エレン「あ、はい。それは勿論、いいんですけど。あの、エルヴィン先生から見たら、この画像をもし、ネット上で公開したら、どう思います?」

エルヴィン「ん? それはどういう意味かな?」

オレは頭の中に描いた計画の一部をエルヴィン先生に慎重に話してみる事にした。

エレン「単刀直入に言えば、人気が上がるか、下がるか。エルヴィン先生ならどっちに賭けます?」

エルヴィン「それだったら、上がる方に10万賭けちゃうね。この程度の変顔だったら、アイドルでもやってるよ」

エレン「そうっすかーじゃあ、この写真は失敗ですね」

うーん。残念だ。失敗だ。

エルヴィン「失敗? どういう事かな」

エレン「いやー……余計なお節介かなーとも思ったんですけど」

と、一応、前置きしてから、オレは続けた。

エレン「リヴァイ先生の人気をどうにかして「下げる」方法ってないかなって、ちょっと考えていて」

エルヴィン「ふむ。何故、そんな事を?」

エレン「オレ、リヴァイ先生とこの間話した時に、思ったんですよ」

と、エルヴィン先生にこの間の件をざっと話した上で意見を述べてみた。

93進撃の名無し:2014/07/29(火) 18:31:41 ID:7qkTF8c60
エレン「今のリヴァイ先生の異様な人気って、どう考えても「美化し過ぎ」な面が強いというか、ファンの子達は、本当のリヴァイ先生じゃなくて、美化されたリヴァイ先生に対して、脳内で勝手にアイドル化している部分もあるんじゃないかって、思っちまって」

ミカサ「確かに。皆、リヴァイ先生の悪い部分をちゃんと見ていない気がする」

と、ミカサも賛同してくれた。

エレン「だよな。だから、もう少し今の綺麗なイメージから、リヴァイ先生の本当の姿に出来るだけ、近づける事は出来ねえかなって思ったんですよ。そうすれば、今の異様な状況を少しは緩和出来ねえかなって、思ったんですけど」

エルヴィン「うーん。確かにそれは私もその手は考えたんだけどね」

と、エルヴィン先生は頬を掻く。

エルヴィン「ただ、それは諸刃の刃でもあるんだ。リヴァイのプライベート情報を生徒に見せたら、そのせいでファンを止める子もいるかもしれないが、もっと熱狂して、熱が過熱してくる子も出てくる。私なんか、特に、リヴァイのドジで可愛い部分が好きだから、そういう部分に惹かれてしまったら、かえって抜け出せなくなる子も出てくるんじゃないかな」

エレン「あーダメなところも可愛いってやつですか」

エルヴィン「そうそう。その辺は難しいよ。情報で勝手に妄想するのは人間の性(サガ)のような物だからね」

エレン「そうですか。じゃあこの写真は没ですね」

エルヴィン「でも、そういう発想自体は悪くないと思うよ。リヴァイ自身がブログ書くとかしてくれれば、それが一番いいんだろうけど、あいつも教職で忙しいし、現実的には難しいだろうね」

エレン「そうですか……」

難しいな。なんかいい手がねえかな。

エルヴィン「でも、そうやってアイデアを出してくるところは優しいね。エレン」

エレン「え? そうですかね?」

エルヴィン「うん。しかもこうやって他人にちゃんと前もって相談するところも偉いよ。リヴァイはいい生徒に恵まれたな」

エレン「いやー……うーん……」

なんかこそばゆいけど、問題は解決してないから素直には頷けなかった。

94進撃の名無し:2014/07/29(火) 18:54:57 ID:7qkTF8c60
ピクシス「ふん……そんな面倒臭い事をせんでも、さっさと結婚宣言をすれば、ファンをやってる子も目が覚めるじゃろうて。あやつが男らしく行動せんのが一番悪いんじゃろうが」

と、酒を飲みながらピクシス先生がブツブツ言う。

エレン「いや、それが出来れば一番いいのは確かなんですが、今のリヴァイ先生にそこまで求めるのは酷じゃないかと」

ピクシス「ふん……八方美人では大事な物を見失うじゃろう。あやつ自身、自分にとって本当に大事な人は誰なのか、いい加減見つめなおす時期なのじゃ」

エレン「まあ、それはそうなんですけどね」

ピクシス先生は機嫌が悪いらしい。これ以上突っつかない方がいいな。

ピクシス「あやつに酒を飲ませて泥酔させた時に必ず口に出てくる女は、誰なのか。早く奴自身に気づいて欲しいんじゃが………」

ん? 何の話だろ? 一体。

エルヴィン「まあまあ、ピクシス先生。その辺で」

ピクシス「ふん! 面白くないの! わしは早くあやつらの子供の顔が見たいんじゃ!」

ダメだこれ。すっかり酒が入ってる。そっとしておこう。

そんな訳でナンダカンダで宴も落ち着いた頃、オレ達は打ち上げのカラオケの方に移動する事になった。

リヴァイ先生達と合流して団体でカラオケの部屋を5部屋押さえる。

そのうちの1部屋を演劇部が貰って、残りの4部屋を3年の1組と2組が使うようだ。

こんだけの人数でカラオケするのは初めてだな。この間より人数が多いもんな。

あ、一応、ハンジ先生の顔もあった。良かった。こっちに来てくれたんだな。

エレン「ハンジ先生!」

ハンジ「やーエレン! 演劇部も合同でやるんだってね? 5部屋確保しておいて正解だったね!」

エレン「手配はハンジ先生がやってくれたんですか?」

ハンジ「うん。そうリヴァイと約束していたからね。え? 何で?」

エレン「いや、ハンジ先生、こっちに来ないかもしれないと思ってたから」

ハンジ「やだなー。くるよー。2組の担任教師なんだから。大丈夫!」

と、相変わらずの明るい笑顔だけど。

大丈夫なのかな。本当に。

95進撃の名無し:2014/07/29(火) 19:09:38 ID:7qkTF8c60
そんな訳で、打ち上げカラオケ大会が始まった。

演劇部の方にはオルオ先輩率いる3年生がこっちに合流してくれた。

やっぱり3年生がいてこそだよな。でも、こうやって遊べるのも今のうちなんだよな。

文化祭が終わったら一気に受験体勢になる。特に進学組は。

そう思うと、やっぱりうるっとくるものがあって、今更ながら、オレ、部活入って良かったなと思った。

ペトラ『ちょっと何、泣いてるのエレン?! どーしたの?!』

マイク持ってるペトラ先輩がマイク越しに指摘してきたけど、オレは涙を止められなかった。

エレン「だって……寂しいんですもん……」

ペトラ『ちょちょちょ! 人が歌う前に泣くのやめてよ! こっちも泣きたくなるでしょ?!』

オルオ「そうだぞ。エレン。まだ泣くのは早すぎるぞ」

エレン「すんません……」

ぐず……。なんだろ。舞台が終わって気が抜けたせいかな。

涙腺が止まらねえ。なんだコレ。こんなの、初めて経験するぞ。

ペトラ『もうー! エレンが泣くからこっちも泣きたくなってきたじゃないのおおおお! うわあああん!』

エルド「全くだ。本当に。お前は涙脆い奴だな」

グンタ「困った奴だ」

エレン「すんません……」

ジャン「気持ちは分からんでもないが、確かに泣くのはええだろ」

エレン「ジャンも涙腺潤んでるじゃねえか」

ジャン「これは汗だよ!」

意地っ張りな奴だな。本当に。

ペトラ『あああもう! いいわ! 泣いていいわよ! 私達だって、いろいろこう、我慢してたんだから本当は! 泣きたい時は泣いていいのよおおおお!!!』

いええええい! と、訳の分からんテンションでオレ達は歌って踊って盛り上がった。

ミカサもその様子を見つめながら、ちょっとだけ、潤んでいて、

ミカサ「エレン……」

エレン「んあ? 何だよ(ぐずっ)」

ミカサ「エレンと同じ部活に入って本当に良かった」

エレン「そうか?」

ミカサ「うん。あの時、エレンは自分で決めろと言ったけど。私はエレンと一緒で良かったと思っている」

エレン「そっか……」

と、ぐずぐず言いながらオレはミカサの隣で泣きながらカラオケを楽しんだ。

泣いて笑って騒いで。本当に楽しい打ち上げだった。

そしてあっという間に夜の11時になり、さすがにお開きにしようとリヴァイ先生が言い出した。

リヴァイ「これ以上遅くなると危険だからな。車必要な奴は出してやるぞ」

ハンジ「はいはい。女子は私が送ってあげるからね」

と、先生達が連携を取っている。

表面上は2人とも普通にしているけど、それがかえって痛々しく見えた。

96進撃の名無し:2014/07/29(火) 20:27:12 ID:7qkTF8c60
会計を済ませてゾロゾロと皆で外に出る。カラオケ店の外はすっかり夜だった。

リヴァイ「ハンジ、酒入ってないよな?」

ハンジ「んもー疑う気持ちは分かるけど、今回は飲んでないよ? あんたにも飲ませてないでしょ?」

リヴァイ「ならいいが…………あ、すまん」

あ、今、酒気を確認しようとしたな。リヴァイ先生。

それがいつもの事だったんだろう。だからつい、体が先に動いた。そんな感じだった。

顔を近づけて確認しようとして、それがいけない事だと気づいて慌てて遠ざかる。

切ないな。この距離感が。すごく遠く感じる。傍で見ていても。

ハンジ「うん。酒臭くないでしょ? だから大丈夫だよ。リヴァイ」

リヴァイ「………そうか」

ハンジ「あ、あとね。リヴァイに言っておかないといけない事、あったから、ここで言ってもいい?」

リヴァイ「ああ。何だ?」

生徒達はそれぞれグループを作ってわいわいまだ話しているけど。

その輪から少し外れて、ハンジ先生はリヴァイ先生に言ったんだ。

ハンジ「……………文化祭の最中に、モブリット先生に告白されちゃった」

リヴァイ「………そうか。やっぱりな」

ハンジ「あんたはやっぱり気づいていたの? モブリット先生の気持ちを」

リヴァイ「ああ。エルヴィンからモブリット先生の件については聞かされていた」

ハンジ「リヴァイはやっぱり、私にはモブリット先生とくっつく方がいいと思ってる?」

リヴァイ「……………」

うわあああああこれ、運命の分岐点だ! ここ間違えるとダメだ!!!

絶対、絶対、間違えたらダメだ!! リヴァイ先生!!!

ハンジ「返事はまだ、してないんだよね。というか、本音を言えばモブリット先生とはそういう関係にはなりたくないんだ」

リヴァイ「振る気なのか?」

ハンジ「だって、モブリット先生、絶対結婚を視野に入れて付き合いたいって思ってる。真剣な告白だった。だから、ちょっと気が重くてね。彼の事を嫌いな訳じゃないんだけど」

リヴァイ「……………もう、チャンスは来ないかもしれないぞ」

ハンジ「結婚の? うん。そうかもしれない。でも、私にとってはそれは、大した事じゃないんだ。それよりも、同僚との良好な関係の方を優先したいんだけど」

リヴァイ「難しいだろ。それは。どう考えても」

ハンジ「ああ、やっぱり? 私が女だからかな。あーあ」

と、また、辛そうな顔になってハンジ先生が言う。

97進撃の名無し:2014/07/29(火) 20:28:26 ID:7qkTF8c60
ハンジ「面倒臭いな。男に生まれていれば、こんな風に悩まなくても済んだのかな。私はただ、仕事を優先して生きていきたいだけなのにな………」

リヴァイ「…………それはお前の本心なのか?」

ハンジ「本心だよ。だって仕事楽しいもん。私、リヴァイ程、全員の生徒を溺愛している訳じゃないけど、それでもこの教職は結構、気に入っているんだ。だって、生物好きな子達と出会えるじゃない」

リヴァイ「ああ、その気持ちは俺にも分かる」

ハンジ「でっしょー? 勿論、クラスの全員が生物好きって訳じゃないけど、一人くらい、たまにいるでしょ? 生物が異様に好きな子。そういう子に出会って、自分の知識を託せる瞬間を知ったあの時から、もうこれ、絶対やめられないって思ったんだ」

なるほど。ハンジ先生にとっての教職っていうのは、自分の知識を生徒に託す事なんだ。

ハンジ「私の話ってさ、長いからさ。よく敬遠されるけど、たまーにいるんだよ。話聞いてくれるオタクっ子が。そういう子達がまるで、昔の自分を見るようで、楽しいんだ。だから、絶対、今の仕事を辞めたくないんだよね」

リヴァイ「モブリット先生は結婚したらやめて欲しいって言っているのか?」

ハンジ「それは分かんない。だけど、『やめなくてもいい』とか『続けて欲しい』とは1度も言ってないから、潜在意識では辞めて家庭に入って欲しいと思っているかもしれない。確証はないけど」

リヴァイ「お前の悪い癖だな。そうやって、人の考えを悟り過ぎるところは」

ハンジ「そうかな? 注意深く観察していれば大抵の事は予想出来るよ。それが外れた事も滅多にない。だから、正直言えば怖いんだ」

リヴァイ「………………」

ハンジ「だから断るつもりでいるんだけど………どうやって断ればいいのか分かんなくてね。参ってる。いつまでも逃げる訳にはいかないし」

リヴァイ先生の眉間の皺が増えていく一方だな。

ハンジ先生、気づいてねえのかな。

もう、「甘えるのやめる」って言ったのに。その発言と矛盾した行動を取っている。

自覚がねえのかな。だとしたら、今、リヴァイ先生、相当苛ついていると思うぞ。

リヴァイ「そんなもん、ただ一言、『付き合えないからごめんなさい。同僚としてしか見れないから』と言えば済むだろうが。俺に愚痴るような事じゃねえだろ」

ハンジ「いや、でも………それじゃあモブリット先生、傷つけちゃ………」

リヴァイ「だからどうして、それを俺に言うんだ!! お前は俺に何を期待しているんだ?!」

ハンジ「!!!」

リヴァイ「うまく言い含める方法ならエルヴィンの方が上手い事を考えられるだろう。言っておくが、俺は口がうまくない。今言った以上のアドバイスなんて俺に出来る訳ねえだろ!!」

ハンジ「!」

リヴァイ「いい加減にしてくれ。俺にだって出来る事と出来ない事がある。出来る事はお前にしてやれるが、それ以上の事はしてやれない。たとえ職場の同僚だとしてもだ」

ハンジ「あっ………ご……」

ハンジ先生が青ざめている。まずい。皆、異変に気づきだした。

リヴァイ先生が一人で帰って行く。車出すって言っていたけど、それすら忘れているようだ。

ハンジ「リヴァイ……ご……」

ハンジ先生が取り残されちまった。皆、ざわざわしている。

ペトラ「ハンジ先生、ちょっといいですか?」

様子を見ていたペトラ先輩がハンジ先生に近寄って、一発、大きく頬をぶった。

一同は突然の、修羅場の勃発に青ざめて見守るしかなかった。

98進撃の名無し:2014/07/29(火) 20:30:13 ID:7qkTF8c60
ペトラ「ハンジ先生、今のはいくらなんでもハンジ先生が悪いです。リヴァイ先生がキレるのは当然じゃないですか」

ハンジ「う……うん。確かに、今のは私が悪かった。どう考えても私が悪い」

叩かれた頬を触りながら、ハンジ先生が混乱していた。

ハンジ「私、何を期待していたんだろう。リヴァイになんで、何で………」

グラグラしているのが目に見えて分かる。ハンジ先生、ちょっとまずい状態だな。

精神的に不安定になっているんだ。どうしようもないくらいに。

その原因に早く気付ければいいんだが。どうしたらいいだろう。

ペトラ「私、思うんですけど……線引き出来ていないのはリヴァイ先生じゃなくて、ハンジ先生の方ですよね?」

ハンジ「え………?」

ペトラ「今の会話、どう見てもリヴァイ先生に「甘えている」ようにしか見えなかったですよ? 自覚ないんだとしたら、尚、性質が悪い」

と、言い捨ててペトラ先輩がオルオ先輩の方へ行ってしまった。

その後にニファ先輩が駆け寄って「大丈夫ですか?」と気遣った。

ニファ「少し、落ち着いた方がいいと思います。立てますか? 先生」

ニファ先輩はハンジ先生の方を気遣っているようだ。担任教師だからかな。

いやでも、ニファ先輩もハンジ先生の事を恨んでもおかしくないと思うんだが。

ハンジ「うん、ごめん……ちょっと頭冷やしたいかも」

と言ってヨロヨロと立ち上がったハンジ先生だった。

ハンジ「ごめん。皆。先に帰らせてもらっていいかな?」

男子生徒「いいっすよ。あんまり気落とさないで下さいね。ハンジ先生」

男子生徒「そういう事もありますって」

と、3年生達は割とすんなりこの事態を受け入れているようだ。

やっぱり3年の貫録なのかな。いや、そうだな。多分そうだ。

3年にもなれば恋愛経験値はもっと増えるだろう。

リヴァイ先生とハンジ先生の方が少なすぎるんだよ。きっと。

そんな訳でその日の夜はもやもやした事件を抱えたまま打ち上げがお開きになった。

オレとミカサは何とも言えない顔のまま自宅に帰りつき、

ミカサ「ハンジ先生、大丈夫かしら」

と、案じてしまった。

エレン「確かに心配だけど……もうなるようにしかならねえよな」

果たしてこの三角関係はどう終着するのか。

その時のオレは、何とも言えない心地で予想すら出来ずにいたのだった。

99進撃の名無し:2014/07/29(火) 20:36:39 ID:7qkTF8c60
気になるところですが、とりあえず一旦休憩。続きはまたノシ

100進撃の名無し:2014/07/29(火) 20:41:11 ID:L.WPtn2k0
100

101進撃の名無し:2014/07/29(火) 21:14:40 ID:7g7vR01g0
ペトラ正論だけど先生相手にやりすぎ。
ちょっとイメージダウンだわ

102進撃の名無し:2014/07/29(火) 21:50:57 ID:7qkTF8c60







次の日、クラスの方の打ち上げが行われる事になった。

クラスの方の打ち上げはボーリング大会になった。ユミルが絶対これにするといって独断で決めた。

文化委員の仕事で相当ストレスが溜まっていたらしい。ストライク決める度に大はしゃぎしている。

ユミル「よっしゃああああああ! すかっとするうううううう!!!」

なんかテンションがいつもと違っておかしい。大丈夫かな。あいつ。

と、ついつい心配しながらオレもゲームに参加している。

今回は特に罰ゲームも何もないから安心だ。普通にボーリングを皆で楽しんでいる。

アルミン「ボーリング久々だね〜」

エレン「アルミン、ボーリング得意だよな。スピードのろいのに何であっさりストライク取れるんだ?」

アルミン「そこはほら、ボールのコントロールを磨いた訳だよ」

と、ちょっと得意そうだ。

ミカサも華麗にストライクを連発している。

カコーン…カコーン…と小気味よい音がボーリング場内に響いている。

皆、わいわい楽しんでいる最中、一人だけテンションの低い奴がいた。

クリスタだった。

エレン「ん? クリスタ、何か元気ねえな? どうした? 具合悪いんか?」

クリスタ(びくん!)

アルミン「そうなの? クリスタ」

クリスタ「う、うううん! そんなことないよ? 楽しいよ?」

エレン「クリスタもアルミンと同じ技巧派タイプなんだぜ。この間、やった時、思いっきり騙されたよな」

アルミン「え……この間っていつ? エレン」

エレン「あーミカサの夏に水着を見立てに行った時だな。あの時、クリスタも一緒だったんだ。んで、帰りにボーリングしたよな」

アルミン「裏切り者ー(棒読み)」

エレン「しょがねえだろ!! 呼び出されたのはオレとライナーだけだったんだし」

アルミン「いや、途中からでも参加させてくれたっていいじゃないかー(棒読み)」

エレン「あ、そっか。そう言われればそうだな。すまん……」

クリスタ「…………」

あれ? やっぱりクリスタの様子がなんかおかしいな。どうしたんだ?

クリスタ「あ、あのね……」

エレン「ん?」

クリスタ「2人は、ユミルの事、どう思う?」

え? ユミル?

ユミルの方を見ると、ユミルは「よしゃあああああ!」を繰り返してストレス発散し続けていた。

エレン「ああ、性格悪いけど根は悪い奴じゃねえのかな? 口悪いけど」

アルミン「エレン、それはほとんど悪口だよ」

エレン「えー? じゃあ、あ、意外と周りをよく見ているかな。気回せるっていうか。気配りは出来る奴だよな。口悪いけど」

アルミン「君も大概だよ。エレン……」

エレン「アルミンに言われたくはねえなあ。アルミンはどう思う?」

アルミン「んー……大人っぽい色気はあるよね。スーツとか似合いそうだね」

エレン「おま、ユミルにまでエロ目線でいうのか。このエロ師匠が!」

アルミン「え? ダメ? いやだって、ユミルは色気あるよ? まあ、僕はユミルはタイプではないけど」

と、言った直後、クリスタがびくっと激しく反応した。

何だ? なんか本格的におかしいな。顔赤いし。

エレン「……? なんか、気に障ったのか?」

クリスタ「ううん。別に……」

エレン「いや、でも顔、赤いぞ?」

クリスタ「?! (顔隠す)」

103進撃の名無し:2014/07/29(火) 22:09:50 ID:7qkTF8c60
アルミン「今、何か僕、変な事、言った?」

クリスタ「ううん。全然……その、私も実は、そう思うんだけど、それって変なのかな」

アルミン「え?」

クリスタ「ユミルが、大道具の恰好で走り回っている姿見て、なんかいつもと違うユミルだなあって思って。格好いいっていうか、色っぽいというか、凄くいいなって思って。でもこれって、変なのかな」

エレン「………別に変じゃないと思うぞ。オレもミカサの男装姿を見て「いいね!」って心の中ではしゃいでいたからさ」

クリスタ「でも、それはエレンが「男」だからでしょ? 私、「女」なのに「女」の人にときめくのって、おかしくない?」

アルミン「…………………」

あ、アルミンが石化した。

ええっと、それって、つまり、その……。

なんか、クリスタ、ちょっと、そっちの毛、あるって事なのか?

エレン「あーすまん。そのトキメキがどの程度なのかオレには客観的には分からんが、ユミルの事が好きなのか?」

クリスタ「それは、友人としては当たり前に好きだけど、この感情がそれを越えているのか、良く分かんない」

ズーン……

アルミンが倒れそうになった。やべええええ!

もう、次から次へと何でこう、恋愛事で面倒事が起きるんだ?!

エレン「んー………」

アルミンを支えながらオレは言った。

エレン「すまん。オレは同性に対してそっちの感情を持った事がないから、さっぱり分からん。だから無責任な事は言えねえけど、同性に対して「可愛い」と思うことくらい、男でもあるぞ?」

クリスタ「そ、そうなの?」

エレン「ああ。アルミンとか、あとそうだな。リヴァイ先生も……かな」

ミカサ「エレン、それは初耳。本当?」

ミカサがいきなりこっちに来た。うああああびっくりした!!!

ミカサ「エレン。ちょっとその件について詳しく聞いていいかしら? 特にリヴァイ先生の方を<●><●>」

エレン「いや、そんなに顔近づけるなって。あくまで例え話……」

ミカサ「例え話だろうが何だろうが、リヴァイ先生を「可愛い」と思った時点でダメ。許さない」

エレン「ミカサのヤキモチは凶器だな! 頼むからちょっと落ち着け!!! 今はクリスタの話だから!!!」

と、どうどうと、何とか宥めながら、

エレン「だから、女同士でも「格好いい」と思うくらい別に変でも何でもねえよ。ミカサも女のファンがついちまったくらいだからな」

ミカサ「うっ……それは確かにあるけど」

クリスタ「そ、そう……」

クリスタが落ち込んでいる。何だろ。求めていた答えが見つからなかったのかな。

104進撃の名無し:2014/07/29(火) 22:23:45 ID:7qkTF8c60
クリスタ「でも、もやもやするんだよね。ユミルに触りたい気持ちになったり、その、ヤキモチなのかなって思う事もあるの。独占欲みたいなの、あるのは分かる。勿論、友達同士でもそういうのあるってのは分かってる。でも、これって、その範囲内なのか、分かんないのよね」

エレン「んー……」

これって「それはレズです」なんて言っていいのかな。

もし違ったら、オレ、物凄く無責任な奴になっちまうし。

自分の感情を他人が決めていいもんじゃねえよな。悩んでいるのは分かるけど。

エレン「それはオレが決める事じゃねえよ。クリスタ。自分で決める事だ」

クリスタ「じ、自分で…?」

エレン「ああ。例えそれがどんなに「変」な感情でも、それをどう「定義」するかは、自分で決める事だろ? 人から見たらそう見えても、そうじゃない場合もあるし。逆もあるんじゃねえかな」

クリスタ「逆?」

エレン「所謂、ツンデレな奴とかそうだろ? ツンツンしているけど、本当は好きとか。冷たいようで、本当は声援を送っているとか」

クリスタ「意味がイマイチ分かんないよ。エレン……」

エレン「悪い。オレもあんまり口がうまくねえから、分かりやすくは言えないけど」

人の感情っていうのは、難しく出来ているからな。

一見、そう思えないような行動が実は、愛情からくる行動だったり。

愛情に見えて、実はそうではなかったり。

んー。すまん。だんだん自分でも言いたい事が良く分からなくなってきた。

エレン「………とにかく、ユミルが好きなら、多分、好きなんじゃねえの? それがどんな関係でもいいじゃねえか」

クリスタ「それって、無理に恋愛に定義しなくていいって事?」

エレン「それはクリスタ自身がそう「したい」と思った時に定義すればいい話で、「今」そうする必要はねえだろ?」

クリスタ「そっかあ……」

なんかすっきりしたのかな。クリスタの表情が明るくなった。

クリスタ「エレン、ありがとう。ちょっと頭の中が綺麗になった気がする」

エレン「おう。なら良かったな」

クリスタ「うん。ありがとう。エレンに話して良かった」

と、こっちの問題は一応、あっさり解決したけれど。

クリスタがユミルの傍に移動した後、オレはアルミンの方を見た。

アルミン「………………」

あーあ。今度はアルミンの方がどん底に堕ちてしまった。

むしろこっちを浮上させる方が難易度高いミッションだぜ。

105進撃の名無し:2014/07/29(火) 22:35:04 ID:7qkTF8c60
アルミン「まさかの斜めからの刺客だよ。ユミルがクリスタの心を盗んでいたなんて……」

エレン「いや、でもあれは、そういうのじゃないかもしれないけどな」

アルミン「限りなく黒に近いグレーじゃないか! ううううう……(泣き出した)」

エレン「でも気持ちは分からなくはねえよな。ユミルの大道具姿、結構、格好良かったし」

ミカサ「うん。ユミルは格好いい。それは私も同意する」

エレン「アルミンも自分から行動起こさないと、手に入らないんじゃねえの?」

アルミン「クリスタがユミルみたいな格好いい人がタイプなら僕は完全に論外じゃないか……(ズーン)」

エレン「うーん……(困惑)」

困ったな。どうしようかな。こっちの問題は。

アルミンが落ち込み過ぎてオレの太ももの上に顔を伏せている。

と、その時、その様子に気づいたアニがこっちに来て言った。

アニ「何やってるの? アルミン、エレンとイチャイチャして。そっちに目覚めたの?」

アルミン「誤解を招くような事言わないでよ!!! 僕は健全な男の子だよ?! (*起きました)」

アニ「膝枕してもらっている時点でアウトだと思うけどね。いや、私は腐ってないけど、マーガレット先輩がここに居たらテンションあがるなあと思って」

アルミン「そうだった。ちょっと自重しよう。うん。もう大丈夫だよ(キリッ)」

アニ「やれやれ。アルミンも失恋か。失恋レストランを開いた方がいいのかもね」

エレン「ああ。秋は失恋の季節なのかもしれないな」

アルミン「そ、そんな事ないよ。秋だって恋の季節だよ。人が恋しくなる季節じゃないか。冬に向けて」

アニ「ああ、クリスマス?」

アルミン「そうだよ。クリスマスまでに彼女欲しい! って思う男子もいると思うよ」

エレン「そういえば、ミカサ。クリスマスどうする?」

ミカサ「クリスマス?」

クリスマスで思い出した。恋人同士になってから初めての折角のクリスマスだからな。

長期的に計画立てて何かやりたいなあって思ったんだ。

106進撃の名無し:2014/07/29(火) 22:57:06 ID:7qkTF8c60
エレン「ほら、占いで「デートした方がいい」みたいな事も言われたしな。クリスマスはちょっと贅沢してみないか?」

ミカサ「贅沢……山登りとか?」

エレン「え? お前の中で山登りは贅沢なデートなのか」

ミカサ「うん。山登りはとても贅沢なデート……(キラキラ)」

エレン「そ、そうか……まあ、いいや。うん。それは今度やるとして、クリスマスは何か記念になるような事をやりたいな」

ミカサ「エレンに任せる(うっとり)」

アルミン「そこ! リア充爆発させないで! 爆ぜろって言いたくなるから! ジャンじゃないけど!」

エレン「悪い。ついついな」

と、ニヤニヤ話してしまう。

アニ「クリスマスか。今年も独り身かな。私も」

ミカサ「え?」

アニ「クリスマスを誰かと一緒にわいわい過ごしたことないんだよね。クリスマスパーティーみたいなの。やったことある?」

ミカサ「家族でひっそりとしたものはやるけど、クリスマスに皆でわいわいはしたことない」

アニ「だよね。今年くらい、やってみたいなあって思うけど……(チラリ)」

うぐ! この意味深な視線はなんだ?!

ミカサ「では、クリスマスは皆でエレンの部屋に集まろう。そしてゲーム大会をやろう」

エレン「ええええええ………」

言うと思った。ミカサ、この間のGWの集まりで味しめがやったな?

エレン「2人で過ごすんじゃないのかよー」

ミカサ「それは、イブの間に済ませて、当日は皆で集まりたい」

エレン「ああまあ、それでもいいけどさー別にー」

アニ(ニヤリ)

アニもたまにミカサを独占したいんかなって思う時あるが、これ確信犯だよなあ。

まあいいか。アニはいい奴だし。アルミンも混ぜて、仲いい奴ら集めてパーティーするのも悪くねえかもな。

……………と、この時はそんな風にぼんやりと考えていたんだけど。

この後、この予定を覆す、とんでもない予定が別に入る事になる。

そのある意味では運命の日と言える日に、オレ達は立ち会う事になるのだが。

まあ、それはもうちょっと先までのお楽しみにしよう。

そんな訳でその日はボーリングで打ち上げをしてその後は各自解散になった。

アルミンはまだちょっとフラフラしていたけど、アニが付き添っていたから多分大丈夫だろ。






そして次の日。10月7日。平穏な日常が戻って来た。

中間考査も近いから真面目に勉強しないといけないけど、実はテストの後には、1年生になってからの初めての「四者面談」が行われる予定だ。

担任教師と進路指導の先生と保護者と本人の四人で進路を相談し合うんだ。

だからオレはテスト後の進路相談に向けての準備も同時に進めないといけないな、と思っていた。

107進撃の名無し:2014/07/29(火) 23:20:09 ID:7qkTF8c60
とりあえずとっかかりが欲しいからエルヴィン先生のいる進路指導室にお邪魔しようと思って、その日の昼休み、オレとミカサは2人でお邪魔する事にした。

資料を見たりするのはエルヴィン先生の許可があればいつでも入れるようになっている。

その日はオレとミカサだけが昼休みに来ていたようで、他の生徒はいなかった。

まだ四者面談まで時間があるからかな。でも直前は混雑しそうだし早めに行動した方がいいよなと思って、オレ達は進路指導室に入ったんだ。

しかし、他の生徒はいなかったけど、代わりに別の先客が居た。

リヴァイ「ZZZZZ………」

ソファで寝転がって寝てるー?!

爆睡している。黒ジャージ姿で寝ている。やべえ。起こしたらまずいよな。コレ。

と、思っていたら、あっさり起きた。あちゃー。

リヴァイ「あ? しまった。寝ていたか」

エレン「起こしてすみません……」

リヴァイ「いや、助かった。昼休みだろ? 昼飯食わないといかんからな」

ミカサ「こんなところでサボっていたんですか?」

リヴァイ「自宅じゃあまり寝れなくてな……」

心中、お察しするぜ。リヴァイ先生。

ハンジ先生、上の階に住んでいるんだもんな。そりゃ気になって寝れねえよな。

エレン「あの、食べてますか?」

リヴァイ「ああ。飯はちゃんと食ってるよ。ただ、寝る方がちょっとな」

と、目の下に疲労の跡を残してリヴァイ先生が言った。

リヴァイ「エルヴィンは? あいつはいないのか?」

エレン「後から来ると思いますけど。先に行ってていいと言われて鍵貰って先に部屋に入りました」

リヴァイ「そうか……」

リヴァイ先生が肩を落としている。無理ねえよな。

あの後、きっと謝る事も出来ずにいそうだ。この様子だと仲直りした感じじゃない。

リヴァイ「自分の口の悪さを後悔したのは今回が一番かもしれん……」

と、肩を落とす様は本当に可哀想だった。

エレン「まだ、謝れてないんですか?」

リヴァイ「目も合わせてくれなくなった。完全に距離を取られているよ」

ミカサ「そうですか………」

リヴァイ「なんでこう、俺は天邪鬼なんだろうな。本当は、ハンジが甘えて来た瞬間、嬉しかったのに」

ああ。やっぱりそうなんだ。だよな。そういう人だもんな、リヴァイ先生は。

108進撃の名無し:2014/07/29(火) 23:43:05 ID:7qkTF8c60
リヴァイ「モブリット先生と付き合わないという判断をしたハンジに喜んでいる自分がいるのに、それをさっさと実行しないハンジに苛ついた。モブリット先生を気遣うあいつの様子に嫉妬したんだよ。男として、最低じゃねえのか、これって」

ミカサ「いいえ? 全然。それはむしろいい傾向だと思いますが」

リヴァイ「そうなのか?」

ミカサ「はい。大丈夫です。それは正常な感情です」

おお。ミカサが珍しくリヴァイ先生に突っかからない。

やっぱり相思相愛だって気づいてからは態度が変わったな。ミカサ。

ミカサ「でも、そこで「俺に何を期待しているんだ?!」というような言い方をされていたのはマイナスだったと思います。あの時、ハンジ先生はそこまでは求めていなかった。ただ、リヴァイ先生に話を聞いて欲しかっただけなんだと思うので」

リヴァイ「解決策を俺に求めていた訳じゃなかったのか」

ミカサ「女なんてそんなもんです。聞いてくれさえすれば、後は勝手に自分で立ち直ります」

おお、そうなのか。じゃあオレも今度からそうしよう。

リヴァイ「そうか……いや。そう言われればその通りだ。いつもの俺達なら、それに気づいていた筈だ。やっぱりあの時は、お互いに正気じゃなかったんだな」

ミカサ「そうですね。でも人間は冷静でない時は必ずあります。私もそうです」

と、言ってミカサはオレの方を見て言った。

ミカサ「でも、失敗しても、克服する事は出来ます。私がそうだったので」

リヴァイ「……」

ミカサ「その為には誰かの力を借りる事も必要だと思います。リヴァイ先生の場合は、一人で抱え込み過ぎなのでは?」

リヴァイ「………………」

リヴァイ先生が顔を隠して泣きそうになっていた。

リヴァイ「今、優しい言葉をかけないでくれ。泣いてしまいそうになるだろうが」

ミカサ「泣けばいい。どうせ今、ここには私とエレンしかいない」

エレン「いいですよ。泣いても。リヴァイ先生。誰にも言いませんから」

リヴァイ「……………」

しかしリヴァイ先生は泣かなかった。

それどころか、笑ったのだ。微笑みを浮かべたのだ。

リヴァイ「お前らは本当に強いな。でも俺は天邪鬼だからな。泣けと言われたら泣きたくなくなるんだ」

ミカサ「面倒臭い……」

リヴァイ「ほっとけ。しかしこうやって話しているだけでも大分落ち着くな。ありがとう………」

と、リヴァイ先生がほっと空気を弛緩させた直後、



ハンジ「ごめんね。エルヴィン。急に時間とってもらって」

エルヴィン「構わないよ。どうしても相談したい事なんだろ?」



と、進路指導室に噂の人物が入ってきたのだ。

リヴァイ「!」

リヴァイ先生、反射的にソファにまた寝転がって隠れちまった。

ちなみに今、いるここは、間に仕切りがあって、ハンジ先生達のいるところから直接見えない。

上面図で説明すると、入り口から見て手前に机と椅子があり、その間に本棚があって、そこにソファとテーブルがある。

進路指導を2組以上でやる場合もあるから、話し合うスペースが2つあるわけだ。

オレ達がいたのはつまり、奥の方の席。エルヴィン先生とハンジ先生は手前の席に向かい合って座ったんだ。

109進撃の名無し:2014/07/30(水) 00:00:31 ID:OG5QGHz.0
お、オレも釣られて心臓がドキドキして来た。

何を相談するのか分からんけど、この距離なら2人の会話は丸聞こえだ。

ハンジ先生、周りを注意する余裕がないのか、エルヴィン先生と一緒に座るなり「どおおおおしよおおおおお」とぐだまいた。

ハンジ「困ったよエルヴィン! 私、またやらかしたよおおおおお!!」

エルヴィン「うん。何をやらかしたの?」

ハンジ「もう全部だよ全部! 何もかも!! モブリット先生には告白されるし、リヴァイのところのペトラに頬ぶたれるし、リヴァイとはまた喧嘩しちゃうし! 忙しすぎるよおおおおお!!!」

と、本当に何もかも曝け出すみたいだ。

エルヴィン「ハンジ。話が断片的過ぎる。ちょっと落ち着こうか」

ハンジ「う、うん……ごめん(赤面)」

あれ? 声のトーンが一気に大人しくなった。

ハンジ「…………あのね」

声が、可愛い。え? 何でいきなり? 変わったんだ?

ハンジ「わ、笑わないで聞いて欲しいんだけど」

エルヴィン「ああ。笑わないよ」

ハンジ「私、物凄い大きな勘違いをしていたのかもしれない……」

エルヴィン「勘違い? どんな?」

ハンジ「その……リヴァイ、との事なんだけど」

リヴァイ「!」

リヴァイ先生、目を大きく広げて動揺しているぞ。

今、すげえ心臓バクバクなんだろうな。オレもそうなんだけど。

盗み聞きしているのは良くないけど、出るに出れない状況だから仕方ねえよな。

110進撃の名無し:2014/07/30(水) 00:23:38 ID:OG5QGHz.0
エルヴィン「リヴァイがどうかしたのか?」

ハンジ「ええっと、ちょっと待ってね。今、頑張って分かりやすく説明するから」

エルヴィン「うん」

ハンジ「……………実は、昨日の振り替え休日にモブリット先生と2人で会ったんだ」

リヴァイ「!」

滝汗掻いている。リヴァイ先生、まだ動いちゃダメだ!!

ハンジ「勿論、お付き合いを断ろうと思ってね。申し訳ないけど、私は結婚を視野に入れた付き合いは出来ないし、何よりモブリットとは同僚でいたかった。でも彼はどうしても納得してくれなくて。だから私、思い切って言ったんだよね。自分のダメなところ。全部。出来るだけ、詳細に。そしたら、彼は『それでも真剣に交際したい』と言ってきてね。何もかも、私側の要望の条件を飲んでも、それでもいいから付き合いたいって言い出してきて、正直、驚いたんだ」

エルヴィン「それだけ彼が真剣にハンジを愛している証拠だね」

ハンジ「うん。まさかここまで食い下がられるとは思わなくて……だから、つい、言っちゃったんだ。私、風呂もまともに入らないくらい超がつく程の面倒臭がり屋だよって。リヴァイとの事は勿論、伏せたけど。そしたら、モブリット先生の方から『だったら一緒に試しに風呂に入ってみませんか』って言ってきて……」

その言葉を聞いた瞬間のリヴァイ先生の顔が凄かった。

な、なんていうか、スーパーサイヤ人になりかけ? みたいな?

表情の筋肉は動いてないのに苛立ちだけは伝わってくる。

これは相当、嫉妬しているんだな。まあ、無理もねえけど。

エルヴィン「入ってみたんだ」

ハンジ「うん。まあ、1回だけならいいかなっていうか、その……ごめん。正直、押し切られたような形だったんだけど」

リヴァイ先生、次の瞬間、顔を隠してしまった。

うわあ。認めたくないけど聞いちゃったって感じだな。

でもまあ、しょうがない。過ぎた事だ。続けて聞いていこう。

ハンジ「んで、まあ、その……リヴァイ以外の男の人に初めて、自分の体を洗って貰ったんだよね」

エルヴィン「ふむ……」

ハンジ「正直、その…リヴァイの時のような爽快感のようなものがなくて、さ。だらだら体洗うし。なんていうか、そこじゃない! みたいな。ええと、こういうのなんていうのか分からないんだけど、とにかく、その……なんか違うなって思ってしまってね」

エルヴィン「うん……」

ハンジ「でも折角洗って貰っているのにそんな事、言えないじゃない? だから適当なところで「もういいよ」って言って切り上げさせようと思ったんだけど」

エルヴィン「ふむふむ(ニヤニヤ)」

111進撃の名無し:2014/07/30(水) 00:46:56 ID:OG5QGHz.0
ハンジ「そしたらさ、その、モブリット先生が、その、だんだん、その気になってきて……私の、股を洗おうとしてきたから、思わず「そこはやめて!!」って、跳ね除けてしまって………」

ぎゃああああ! 当然の展開だろうが! 馬鹿かハンジ先生!!!

酷い話だな。それは男の立場からすれば泣くしかねえよ。

ハンジ「その瞬間、私、思い出したんだよ」

エルヴィン「何を?」

ハンジ「リヴァイと、一緒にダンスの資格を取りに行く為に旅行した時の事を」

リヴァイ「…………」

リヴァイ先生が真っ赤になっていた。なんだ? 何を言おうとしているんだろう。

ハンジ「あの頃から既に、私、あいつと良く一緒に風呂入っていたし、体も洗って貰っていたんだけどさ。リヴァイはね、絶対、その、あそこだけは、絶対。何があっても洗おうとしなかったの。だから一回、「なんで?」って聞いてみたんだよね」

リヴァイ先生の赤面度がどんどん酷くなっていく。これは面白い事が聞けそうな予感だ。

ハンジ「そしたらさ、『そこは人間の体で一番デリケートな部分だから力加減がとても難しい。洗ってやれない事もないが、同意がない状態では洗ってやれない』って言ってきてね。『そこだけは、自分でやれ。まあ、洗って欲しいならやってやれなくもないが……』って言って、こう、手首をくいっと動かしてね?」

リヴァイ先生、なんつーエロ発言してんだよ!!!!!

ミカサまで真っ赤になっちまった。これは酷い!!!! 酷過ぎる!!!

ハンジ「勿論、私は『丁重にお断りします!!!!!』って言って、慌てて拒否したけどね。だから、リヴァイは私の身体は洗ってくれていたけど、絶対、その、女性器の部分には触れなかったんだよ」

エルヴィン「それは初耳だったね。私はてっきりそこも込みだとばかり思っていたよ」

ハンジ「あー普通はそう思うかもね。でも、本当。うん。信じて貰えないかもしれないけど、そこだけは外していたんだ。あ、おっぱいも、かな。『自分でやれるだろ?』って。あいつが念入りに洗うのは背中側の方で、自分では洗いにくくて、汚れが溜まりやすい場所だったね。それ以外は、ざっと、する感じ。私が疲れない様に、必要最低限の洗い方しかしなかったのよ」

うはあああ……リヴァイ先生の顔がもう、赤いの通り過ぎて黒くなっているような気がする。

エルヴィン「ふむ……」

ハンジ「んで、今思うと、私がそう答えた直後、あいつ、小さく『ちっ』って、舌打ちしていたんだよね。私の気のせいだったのかもしれないけど、今となっては、確認のしようがないけど。でも、でもね………」

ハンジ先生がそこで大きく息を吸ってから言った。

ハンジ「それ、思い出した瞬間、私、なんかこう、ふわあああって、体が熱くなってきて、リヴァイとの思い出が一気にこう、蘇ってきて、身体に力が入らなくなってきて、震えてきてね。こういうの、もしかして、もしかすると、あの……なんていうか、その、私達って、実は、その………」

エルヴィン「あともう少しだよ。ハンジ、頑張って」

ハンジ「う、うん。あーちょっと、水飲んでいい? 喉カラカラなんだけど」

エルヴィン「紅茶を出してあげよう。ちょっと待ってて」

そして紅茶を入れて再開。ハンジ先生は落ち着いてから続けた。

112進撃の名無し:2014/07/30(水) 01:08:14 ID:OG5QGHz.0
ハンジ「私ね、こういうのも変な話だけど、セックスでイクっていう経験、まだしたことないんだよね」

いきなり赤裸々な話がきたな!

つか、こんな話聞いてエルヴィン先生もよく平気で居られるな。

ハンジ「セックス自体はその、何度か経験あるけど、エロ漫画とかビデオであるような、ああいう大げさな快楽の経験が一度もなくて。だからどこかで「女として欠陥品」なのかなって思っていて。まあでも、別に生活に困る事でもないし。それに「トキメキ」の謎が解けないうちはやっぱり、そういうの無理なのかなって諦めていたからね」

エルヴィン「そうだったね。では、今は違うのかな?」

ハンジ「うーん………その、私の場合は、もしかしたらその「快楽」そのものをあんまり求めてなかったんじゃないかなって結論になった」

エルヴィン「快楽を求めていない?」

ハンジ「そう。それよりも、「安心」というか「安心感」かな。うん。こう、どっしりとした、布団に包まれるような幸せっていうのかな。ふわっとするような、くすぐったいような。ドキドキじゃなくて、気が付くと、ニヤッとしているような。そういう小さな幸せを積み重ねていけるような。そんなパートナーが欲しかったのかもしれない」

エルヴィン「うん。では、その相手が、リヴァイなのかもしれないと。そう思ったんだね?」

ハンジ「うん………多分、そういう事なんだと思う。だからその、世間から見たら変なのかもしれないけど。私、その、リヴァイとは、男女の仲の範囲でつきあっていたのかもって、今になって思ったの」

エルヴィン「いいや? 全然変じゃないよ。ハンジ。というか、気づくのが遅すぎるよ」

ハンジ「やっぱり?! 私、やっぱり気づくの遅かった?! ああああ…………!」

と、変な声をあげるな。リヴァイ先生の顔色がやっと普通に戻った。

ちょっと落ち着いたようだ。でも、凄く嬉しそうだ。

ハンジ「見つからない筈だよ。私の中の理想って、若い皆がやってるような「ドキドキ」じゃなくて、「ニヤッ」だったんだよ。すっごく小さな幸せだったんだよ! 線香花火くらいの。それを地味に続けるような感じ! 一緒に馬鹿やってくれるような、そういう人を求めていたんだって、やっと分かったんだよ」

エルヴィン「それはつまり、リヴァイの事を、ちゃんと男性として好きだって事だね?」

ハンジ「多分……いや、ごめん。うん。ちゃんと、好き」

と、言った瞬間の声、すげえ可愛かった。

113進撃の名無し:2014/07/30(水) 01:26:38 ID:OG5QGHz.0
ハンジ「だからその、エッチしてないけど、しているような? 矛盾しているけど。ひとつになってないのに、ひとつになっているような。そういう関係だったのかなって、今になって思ってね。これって、やっぱり変かな?」

エルヴィン「いいや? 変じゃない。というより、エッチの「定義」の認識の方が間違っていると私は思うよ」

ハンジ「定義の方が?」

エルヴィン「そう。キスとセックスをしないと「エッチ」ではないと誰が決めた? 心が通じ合えば、たとえ触れる事すら敵わなくとも、それは恋人同士の愛の営みという事も出来るんだよ」

ハンジ「そっか……じゃあ固定観念に囚われていたのは私の方だったんだね」

と、すっきりしたようにハンジ先生は言った。

ハンジ「実際、すっごい気持ちいいなって、思っていたんだよね。リヴァイとのお風呂。酷い時は、途中で寝ちゃう事もあったよ。だって、あいつ、洗うの上手すぎるんだもん。でも、私が寝ちゃっても、ちゃんと服着せてくれて、その辺の床の上に寝転がしてくれてね。安心して寝る事が出来たんだ」

エルヴィン「つまり、ハンジにとって、リヴァイは安心出来る存在だったんだね」

ハンジ「うん。それに気づいたのは……あの子が体張って私の頬をぶってくれたおかげだよ。あの子には感謝しか出来ないよ」

ペトラ先輩の事だな。これは。

ハンジ「私にね、「リヴァイに甘えているようにしか見えない」って、超どストレートの言葉を注入してくれてね。その言葉の意味を噛みしめた瞬間、なんかこう、だんだん、パズルのピースが集まってくるような。自分の中の「謎」が全部一気に解けていくような。推理小説の解答を全部理解するような。不思議な感覚を味わったよ。あの子も辛かっただろうに。本当に、彼女には申し訳ない事をさせてしまったよ」

エルヴィン「そうか。では、ペトラが体を張ってくれたおかげで、今のハンジの「結論」が出たんだね」

ハンジ「スイッチボタンを押してくれたような感じだね。爆発させたのは、モブリット先生だったけど」

エルヴィン「そうか。そこまで結論が出たならもう、ここから先はリヴァイと本当の男女の意味で付き合っていくつもりなのかな?」

ハンジ「うぐっ……!」

あれ? その直後、ハンジ先生の声が詰まった。

114進撃の名無し:2014/07/30(水) 01:44:11 ID:OG5QGHz.0
ハンジ「むしろ問題はそこから何だよね……」

エルヴィン「何が問題だ? ハンジはリヴァイの事、好きなんだろう?」

ハンジ「いや、でも、この間、物凄くまた怒らせちゃってね。どうやったら謝れるのか分からなくて……というか、目合わせると、自分の顔が赤くなるの分かるし。まともにあいつ、見れない自分が居て、どうしたらいいのか分かんないんだよね」

ああ。目合さないって、そういう意味だったのか。

良かった。悪い意味じゃなかったんだ。

ハンジ「だからその……今後、どうしていったらいいのか、エルヴィンにアドバイスを」

エルヴィン「それはもう、私がどうこう言える問題じゃないな。愛の進路相談は、2人でやるべき事だから。なあ、リヴァイ?」

うあ!? ここでバラすのか?! 酷い!!!

リヴァイ先生がゆっくり立ち上がった。そしてくるりと、振り返り、

リヴァイ「ああ。じっくり話し合おうか。ハンジ」

と、言い出したのでハンジ先生は直後、「ぎゃあああああ?!」と大絶叫した。

ハンジ「え……嘘……今の、全部、聞いていたの?」

リヴァイ「ああ。全部、聞いた」

ハンジ「酷い!! エルヴィン!!! これ、完全に私を嵌めたね?!」

エルヴィン「人払いをして欲しいなんて一言も言わなかっただろ? 先客はリヴァイ達の方だったしね」

リヴァイ「ああ。ここのソファで寝かせて貰っていたからな」

ハンジ「あーうー(赤面)」

エルヴィン「じゃあ、ここからは、2人だけで大丈夫だね」

リヴァイ「ああ。手間をかけさせたな。エルヴィン」

エルヴィン「このくらい、どうって事ないよ。じゃあ、ごゆっくり♪」

という訳でオレとミカサも進路指導室を追い出されてしまった。

ドアの外でエルヴィン先生が悪い顔をしている。

エレン「な、なに話すんだろう……気になる」

エルヴィン「大丈夫。既に手は打ってある」

エレン「え?」

エルヴィン「ピクシス先生が今、監視室にいるから。進路指導室の様子はRECしている筈だよ」

ひでえええええええ!!!!

でも、超見たい。中の様子見たい。

ソワソワしちまう。どうしよう。実況してくんねえかな。

とか思っていたら、

エルヴィン「教室に移動してご覧? テレビ繋いで今頃、中の様子を中継している筈だよ」

もっと酷い事考えていたこの先生!!!!

ミカサ「エレン、教室に戻ろう」

エレン「お、おう……」

という訳で、オレ達はエルヴィン先生と別れて教室に戻った。

そしたら本当に、教室のテレビに中継が入っていて、リヴァイ先生とハンジ先生のガチ(愛の)進路相談が始まっていた。

115進撃の名無し:2014/07/30(水) 01:47:16 ID:OG5QGHz.0
そんな訳で愛の進路相談は次回。今日はここまで。
いろいろと酷い回ですんませんでした…orz

あと、ペトラが悪役になった理由、伝わったかな…。
ペトラはイメージダウンどころか、鬼になる覚悟でぶってますので、
許して差し上げて下さい。

116進撃の名無し:2014/07/30(水) 01:58:21 ID:AYVCKSFY0
はぁー面白かった、読みごたえあった!
乙でした
ハンジは軽くライバルなのに、奮起させるために手をあげたんだね
ペトラは強くて真っ直ぐな女だ
そしてミカサとアニ達のクリスマスパーティー、中止になるなかな…ドキドキする

117進撃の名無し:2014/07/30(水) 03:54:01 ID:sr7EdY2A0
悪役は大人にしてほしかった
周りに他の生徒がいる中であれは先生の面目が立たない
誰か大人が(ペトラの気持ちを汲んだ上で)宥めて欲しかったな

118進撃の名無し:2014/07/30(水) 05:13:59 ID:3ryxzPls0
1の作品なんだからグダグダ言うなよ
あやはリヴァイが好きなペトラだからこそよかったと思うよ

アニとミカサコンビまじかわ…

119進撃の名無し:2014/07/30(水) 09:15:01 ID:OG5QGHz.0
>>117
ハンジ先生はそういう面目とかを気にするようなタイプの先生ではないので大丈夫です。
むしろペトラ自身の周りからの評判とかが地に堕ちる事を心配しています。
だから「申し訳なかった」と言っています。

あとついでに言うなら、このシーンはオルオペトラの伏線も入ってます。
もうちょい先になりますが。すみません。


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