したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

Key Of The Twilight

1イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/01(火) 19:01:24
移動してきました。

現在、参加者の募集はしておりません。

503フィア ◆.q9WieYUok:2016/05/04(水) 13:54:56
【十字界】

シャムと別れた後、フィアはDDと共に十字界へ、ジーナの元を訪れていた。

「と、言う訳よ。

私としては今すぐにでも他の長老を集め、オリジンを討伐するべきだと思うわ
。」

群青の街では後一歩の所まで追い詰めた。
メルツェルを吸収したオリジンが如何に強くなろうとも、五人……いや、六人居ればオリジンを滅する事が出来る筈だ。

ノワールに害を及ぼすであろう、と声を掛ければマゼンタとヴェントは釣れるだろうか。
だが、そうそう勝手に動く訳にはいかない。

「だけど、その前に。

ジーナ、貴女に聞きたい事があるの。」

この世に生まれ出た長老はジーナを含めず12人。
しかしながら、ジーナは自分達と同じく長老であり、同じ魂の波長を持っていた。

「貴女、何者?

オリジンについて何か知っているわよね?」

彼女は一体何者なのか、どう言う存在なのか。
ジーナに詰め寄るフィアは静かに、しかし力の籠もった声で、問う。

「答えによっては、オリジンより先に貴女と戦う事になるかもしれないわ。」

交錯する紅瞳、フィアの眼光を眼鏡の奥で受け止め、ジーナはゆっくりと、口を開いた。

「……話始めたら長くなるけど、良いかな?」

ーーーーー

元々、オリジンと呼ばれる存在は三人居た。
その内の一人が、とある者との戦いに敗れ、放浪の末辿り着いたのか再構築が始まったばかりの世界だった。

生まれたばかりの世界を隠れ蓑にし、十字世界を作り上げ、長老を創った。
オリジンの目的はただ一つ、育ち切った長老を吸収し、自らを破った者と再戦を果たす事。

メルツェルを吸収し力を付けた今、オリジンは容赦なく長老達を、そしてノワールを狙って来る筈だ。
特に、言うなればオリジンと同じ存在であるノワールは必ず消されるだろう。

選択肢は二つ。
決別し戦うか、素直に吸収されるか。

戦い、オリジンを打ち取れば存亡の危機は免れるだろう。
また、後る二人のオリジンはこの世界に干渉する事も無い。

ーーーーー

「それと、ボクは君達の従姉妹みたいなモノなんだ。

君達の元となったオリジンとは別個体の、オリジンから生まれたのがボク。

ついでに言うと、オリジンとの戦いで鍵になるのはノワールだよ。

あの娘はオリジンと同じ存在でありながら、オリジンには無いモノを……ボクの血肉を、七大魔王の因子を持っている。

もう一つ言えば、ノワールの近くに居るであろう闇の王子もボクとは別の七大魔王の加護を受けれる筈さ。

とまぁ、聞きたい事とそれに対する答えはこれ位かな?」

504ルドラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/04(水) 17:53:54
【ポセイドン邸】

「イタイイタイイタイっ!ちょっ、何すんだ!止めろ無礼者‼」

地面に頭を押し付けられるなんてあり得ない。しかも愚かで下賤な人間なんかに。
ルドラは屈辱に顔を歪ませ、怒りのままに吠えた。

「ラディック!誰か!もう何でもいいからコイツを今すぐ殺せ!」

そこでハッと思い出す。
そうだ。今、配下の者は誰もいないのだ。全く揃いも揃って役立たずばかり。

頼れる者がいないと分かるや、途端ルドラからは威厳のいの字もなくなった。
駄々をこねる子供のように手足をバタつかせる。

「くそっ、くそっ!人間のくせに!
離せよ肉だんご(胸の辺りが)!×××女!××××!×××××
ッ‼」

そして放送禁止級の罵声を口汚く浴びせるが……。

その数分後…

「すみませんでした…。」

そこにはボロボロの姿で土下座をしているルドラの姿があった。
ナディアに余程酷い目に合わされたのか、顔色が真っ青だ。

「僕は姫の臣下でルドラと言うものです。訳あって姫には会えないので、伝言を…お、お願いしたいのですが…」

その口調は若干棒読み気味だが、先ほどとは売って変わった弱腰な態度である。
屈服という文字が彼の背景に浮かんで見えてきそうな程だ。

505サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/04(水) 17:55:19
【??】

どうも此処に来る以前の記憶が曖昧だ。
確か自分はバルクウェイの闘技場にいた筈だったと思う。
最後に覚えているのは、闘技会中に賊が侵入してきて大会が滅茶苦茶に荒らされたこと。
クロスと言う少年の力が暴発して、彼そのものが暗黒の虚に変貌してしまったこと。

そして自分はそれを封じるべく、あろうことか無策で虚の中に飛び込んだ。

そして…、気がついたら此処にいた。

初めはついに天国に来てしまったとばかり思ったものだが、聞いた話ではどうやら違うらしい。
ここは死者の魂を選別する場所だと、一番偉い人に教えてもらった。
では自分は死んだのだろうか。そう訊ねると男は首を横に振る。"正確にはまだ死んでいない"、と。

まだ、とはどう言うことだと疑問に思ったが、その時のサンディの感想は…「ふーん」だった。
自分でも驚くほど他人事で、不思議なことに危機的感情が全くわいてこなかった。まるで不安とか恐怖とか、負の情報を伝達する脳の回路が切断された感じ。

現に今だってお茶会に誘われたものだから、呑気にそこに足を運んでいる。しかも割りとルンルン気分で小さくスキップしながら。

「ごめんなさい、お待たせしましたー…」

お茶会の席には既に人が集っていた。席に腰かける面々を順に眺め、そこでふとサンディは目を見張った。

「あれ?あなた…セナさん…?
いや違うな………あ!もしかして姉御の弟くん!?えっと確か…そう!リト君!」

彼を見たのはバルクウェイで深淵から救い出された後の姿だけ。ずっと眠ったままだったから直接喋ったこともないが。
少しの間だけ行動を共にしていたセナと顔がそっくりだから、直ぐに分かった。

「良かった!目、覚めたんだね!」

サンディは嬉々とした様子でリトに駆け寄り笑顔を向けた。

506イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/04(水) 17:56:47
【バルクウェイ】

(闇の巣…)

レオールの口からその言葉を聞くや、アグルは思案気な面持ちでそれきり黙りこんでしまった。

代わりにイスラが言葉を挟む。

「こんな時でも自国の利益か…。
失敗すれば世界そのものがなくなるってのに…」

何だかやるせない様な気持ちになる。

しかし、それも仕方がないことだと思う。
自分達のように前線に出て戦う役割の人間もいれば、それを指揮する人間、今の戦いよりももっとずっと先を見据えて動く役割の人間もいる。

適材適所と言うやつだ。
全ての戦いが終わった後、社会を立て直していくには、むしろ彼らのような人間の力こそが必要となるのだろう。

「…状況はキツいがやるしかないな。なんせ世界がかかってる」

ここにいる数名で背負うには余りにも重すぎる荷物だが。
そこまで言うとイスラは不意に一同を見渡し、重い空気を吹き飛ばすかの様に破顔した。

「皆、自分の力を信じて全力を尽くそう。そして必ず生きて帰ってこよう」

507リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/08(日) 22:30:17
【ポセイドン邸】

いきなり抱きつく・・・・・のは結構無意識にやっている。大好き!って言葉もよく発言している気がする。
しかしセナは動じていない。微笑み返してくれることもあれば、無反応な時すらある。

だがアブセルの言葉の中に一つ実践したことのない事柄があった。

「よばい・・・・・?」

リマは首をかしげる。
ヨバイとはなんだろう。めちゃくちゃ?

「それやると上手くいくの?夜中に?セィちゃんきっと寝ちゃってるよ??」

あ、添い寝的なものだろうか。

「小さい頃は、セィちゃんとよく一緒に寝てたなぁ。リマ、雷が怖くて夜眠れなくなっちゃうから、心配してセィちゃんがいつも来てくれるの。リマが寝るまで傍にいてくれるつもりで来てくれるんだけど、いつもいつの間にか二人で寝ちゃってるの。懐かしいなぁ・・・・・」

リマは昔を思い出して楽しそうに笑う。
そう言えば・・・・・

「今もやっぱり夜の雷は怖くて、どうしても怖い時はセィちゃんのお布団に入っちゃうの。セィちゃんは背中ポンポンしてくれるから安心するんだ・・・・・」

そこまで話してリマはハッとする。さすがに恥ずかしい事を口走ってしまったことを自覚したのだ。

「・・・・それで・・・・・朝起きていつもジュノスさんに怒られるの・・・・・」

しかしここまで言ってしまえば引くにも引けず、声は小さくなりながらも最後まで言い切った。

508イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/08(日) 23:02:21
リマ>漫画かぁ…、機会があれば読んでみます⬅

おぉ、良かったですね^^
しかし異物混入ってwwちゃんと別のケース用意するのが偉いwあ、誕生日おめでとうございます!(^ω^)

いや、ただの自分のネガティブ妄想ですので、本当のところは分かりませんよ?(笑)ああ言うのは気持ちの問題なので、リアルの事情は気にしちゃ駄目なんだと思いますw

いやいや大丈夫大丈夫、変じゃない変じゃないw
てか本当に本命レイジなんじゃないの?(¬_¬)⬅
公表すればいいじゃない(笑)

頭になんかぶらさげてる黒髪……誰だ(笑)情報がアバウトすぎて分からんww
悔しいって(笑)まぁ秋ぐらいにアニメ化するみたいなので、見ましょうよ(^ω^)⬅
そう、あんなロリロリしいくせにTバックなんですよ。はー可愛い⬅

うーん…、自分的にはジルヨノで引っ付いて欲しいですけど。ただそれはそれで二人とも辛くなりそう…。その感情を乗り越えて幸せになってくれれば良いのですが…(--;)
このぉヨハンめ!可愛いじゃないか!( σ´∀`)σ⬅
そうしましょう!⬅

スカイハイw
ありがとうございます!頑張ります(笑)

509DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/08(日) 23:03:41
【十字界】

十字界に着いた頃には、少なくともジーナの話に大人しく耳を傾けられる程度には、DDの精神状態も回復していた。
そして、オリジンについての一連の話を聞いたのち、彼は大きな溜め息を吐いた。

「何だか…正直がっかりだわ。
あの人は本当に自分のことしか考えてないのね…」

なんというか、愛がない。とDDは言う。

オリジンが長老達を造った理由も、そして己の消滅を逃れる為、長老達がオリジンに反旗を翻すのも愛がない。

「分かる?ラブが足りないのよラブが!
アタシ達の心に愛がないばっかりに、こんなことになってしまったの!」

また面倒くさい高説が始まりそうである。
しかし続くのは長いため息だけ。どうやらそれだけの元気もないようである。

「とにかく…ごめんなさい。アタシは話を聞いてもまだ踏ん切りがつかないの…。
少し時間をちょうだい。他の長老達の意見も参考にしたいの」

消滅か決別か。DDは未だ決断を決めかねていた。
とは言え、気持ちは傾きつつあるようで。
ノワールに害が及ぶのだけは何としても避けたいと考えていた。

510レオール ◆.q9WieYUok:2016/05/10(火) 14:21:19
【バルクウェイ】

質問に対する答えに応えず、口を閉ざしたアグル。
そして、アグルとは対称的に声を挙げるイスラ。

彼の言葉に一同……アグル以外の面子、レオール、バッハ、そしてメイヤも頷く。

「すまないな……出来うる限りの援護、支援はさせてもらう。」

確か世界の命運を背負うには人数的にも重過ぎるかもしれない。
だが、一騎当千と言う言葉もある。

「出発は明日の朝にしよう。

皆の力を、無事を信じている。」

ーーーーー
「と、言う訳さー。

側近のマルトは戦争孤児、バッハはエクソシストの家系、どっちも異能者だ。

世界政府に追われる異能者や敗残兵やらを取り込み、師団は大きく成ったってこった。

まぁ、その中でも一番おっかなくてヤバい奴が裏切ったのは色々と不味いかもな。」

バルクウェイを発って二日、東南地域の大河を進む船の上、ウエスタンハットを被った男は調子外れな口笛を吹いた。
そろそろだな、と帽子の男……ビリーは船を泊め、前方を指差す。

「東南地域の龍穴遺跡はジャングルの奥に眠るピラミッドの中。

激しい戦いになる様なら退いた方が良さそうだ、側の大河から水が流れ込んで来たらお終いだからな。」

男の指差す方、そう遠くはなく見えるピラミッドに、レックスは目を凝らした。
大河のほとり、密林の先。

「手はず通り、僕とアグルの二人で遺跡へ侵入。

制圧の合図は無線機で、制圧後は後続の部隊と合流。

中継連絡は任せました。」

短く、最低限の作戦事項を口にし、レックスは歩き出す。
その歩調は速く、次第に早足、駆け足となり、レックスは一陣の風となって密林を駆け抜けた。

511レックス ◆.q9WieYUok:2016/05/10(火) 14:23:30
【東南地域/龍穴遺跡】

遺跡の中はカビ臭く、澱んだ空気が充満していた。
風を操る力で気流を生み出し、侵入口から絶えず新鮮な空気を送り込んでいるものの、如何せん臭いが鼻につく。

(澱んだ空気。

侵入痕も見受けられませんね……)

バルクウェイからの道中と同じく、アグルとの会話は必要最低限だ。

「アグル、そろそろ最深部の筈です。

今の所は僕達以外の侵入者は居ない様ですが、用心を。」

そして、自身もまた三叉鎗を構え、進んだ先。
淡く光る幾何学模様が張り巡らされた広い部屋、遺跡中枢へと辿り着いた。

燐光に満ちた部屋は、驚く程空気が澄んでおり、やや肌寒い。
広さは野球場程か、高さも有り、円柱形の様だ。

光る模様が走る床をゆっくりと踏み、レックスは最深部中央、台座の様な何かへと歩を進め……止めた。
眼鏡の奥、黒瞳が見据えるのは台座に腰掛ける小柄な女性。

「……先回り、されていた様ですね。」

くすんだ金髪と鮮やかな碧眼、身を包む鎧は重厚だ。
謎の人物、恐らくは敵であろう女性にレックスは鎗の矛先を向け、問い掛ける。

「貴女は、何の用で此処に?」

しかし、その問いの答えが来るのを待たず、疾走。

「私はラセツ。

黄龍の使いで、此処に来る者を皆殺しにしろと言われたの。」

女性が答えると同時に、勢いの乗った刺突を繰り出した。

「きっと、私は貴方達の敵。

貴方達も私の敵でしょう?」

風を纏ったその一撃は、台座から降り立った女性の片手、たった二本の指で止められてしまった。
その様にレックスは僅かに苦い表情を浮かべ、口を開く。

「そうですね、やはり敵の様です。

申し訳無いですが、容赦はしません!!」

そして、ラセツの名乗る女性が黄龍の軍勢、敵である事を確認出来たと同時にレックスは突き出した鎗を更に前方へと押し込む。
穂先でラセツの手を、腕を絡め取り、身を捩って反転。

中枢入口に居るであろうアグルへと投げ飛ばし、返しの穂先を横薙に一閃。
投げ飛ばしたラセツへと、巨大な風の刃を追い打ちにと放った。

「アグル!!任せましたよ!!」

512ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/05/11(水) 16:44:31
【ここにきて二人のレス速度が上がってて驚愕orz

レックスアグル組には新キャラあてがったんだけど、イスラメイヤ組にはどうしよう、既存の誰かを出すかはたまた……

一応出せる新顔は居てるんだけど、シデンさん出てきます?

とと、遅なりましたがリマさん資格試験合格おめおめ!社会人一年目ガンガレ!】

513イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/11(水) 17:37:08
大丈夫また遅くなるもよう(´∀`)b⬅
ゴールデンウィーク明けてから忙しくなっちゃったぃ
レスはポツポツ返していきますー

シデンさんはー…、ちょっとまだ待機で。すいません、新顔さんお願いしますm(_ _)m

514リト ◆wxoyo3TVQU:2016/05/13(金) 18:46:41
【過去】

「・・・・・リトは此処から出られない。」

"リトはいなくならないか""勝手にいなくなったら許さない"……おそらくアブセルはリトから"自分はいなくならない"などの意思をもった返事を求めているのだろうが、リトはただ事実のみを口にする。
リトはこの部屋から、一族の監視の目から逃れることが出来ない。勝手にいなくなるなどの行為は、自由が赦される者にのみ出来ることなのだとリトは暗に示していた。

「いなくなるのは、アブセルの方。」

リトとアブセルが離れることがあるとすれば、それは自由の赦されるアブセルの方が自分の意志でこの屋敷から出ていく時だろう。今一緒にいるのだって、アブセルが勝手に近づいてくることによる結果なのだから。

それにしても、

「・・・・・。」

重い。
暫く大人しくアブセルによるのしかかりを受けていたリトだが、不意をついて後頭部を上げアブセルの鼻頭に頭突きを食らわす。

出会った当初は何をしても反応を示さなかったリトであるが、最近では極稀に、このような感情のある仕草を見せるようになっていた。
それだけアブセルによるスキンシップが鬱陶しいとも言える。

515リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/13(金) 18:49:26
ヤツキ>>
ありがとう!
自分もイスラに同じく、頻度がまちまちだから早い時もあればめっちゃ遅い時もあって、分からないよ(笑)

516メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/05/14(土) 10:28:13
【東南地域/遺跡付近】

レックスとアグルが遺跡へ向かった後。
船の甲板で煙草を吹かすビリーは、無線機を、会敵の信号を受信したソレを握り締める。

空挺師団長のレオールを筆頭に、参謀、両翼共に異能力者だ。
非能力者の隊長分隊長も多々居るが、やはり戦力として上がるのは異能力者だろう。

(こんな時こそあの野郎、裏切り者のビカが居りゃあ良かったんだがなー…)

中でも、マルトと共に師団の両翼として武勇を馳せた男、ヴィカルトの強さは筆舌しがたい程だった。
強さをだけを追い求め、強者との闘いを楽しむ凶戦士ではあったが……

「まっさか黄龍側に着いてる訳無ぇよな、流石にビカ相手じゃ団長以外に勝ち目は……」

ーーーーー

【砂漠地帯/龍穴遺跡】

指定された遺跡は砂漠地帯にあり、夜の内に侵入を果たした遺跡内は静まり返っていた。
何者かの侵入痕はあるものの、数は一人分だけであり、予測していた大多数の敵勢力との戦闘は回避出来そうであった。

否、大多数の敵との戦闘は回避出来、呆気ない程簡単に遺跡の最深部へと到着したのまでは良かったのだが……

口腔内の血を吐き捨て、メイヤは再び剣を構える。
構えた剣の切っ先には長い銀髪の男。

(強い、強過ぎると言っても過言じゃない……)

イスラと共に到着した最深部には、一人の男が佇んで居た。
黄龍の使い、ヴィカルトと名乗る男は遺跡の装置を起動させるが、止めたければ剣を抜けと、イスラとメイヤに剣を抜かせた。

そして、十数分後。
圧倒的な強さを見せるヴィカルトに対し、メイヤは攻め倦ねていた。

イオリにも勝るとも劣らない、寧ろ上回っているであろう剣術、体術。
そして結晶……珪素を操る異能は絶対的な防御力を見せ、闇の力を失ったメイヤでは突破は不可能。

会敵し、剣を抜いたからには退く訳にも行かない。
しかし、この敵を倒せるかと言われれば……

「どうにか、攻撃を通せないか……

イスラ、イスラの炎ならあの結晶の鎧を破壊出来るだろうか?」

517ナディア ◆wxoyo3TVQU:2016/05/15(日) 18:07:08
【ポセイドン邸】

「は?嫌だよ面倒臭い」

ルドラが大きく出ようと小さく出ようと、ナディアの答えは始めから決まっていた。
彼女は基本的に誰かの為に動いたりしない。その相手が知り合いでないのなら尚更。

ボロボロになりながら屈服するルドラを前にしてもナディアは全く動じず、全く興味無い様子で手をヒラヒラ振りあしらう。

「今こっちも立て込んでんの。自分で会えないんだったら諦めるか・・・そうね、あんた私たちのこと覗き見してたなら知ってるでしょ?今さっき目付きの悪い不良みたいな奴と女の子が席を外したの。あの二人があんたの姫?とやらと一緒に消えた男の子探しに行ってるから、追いかけて伝言頼んでみたら?」

518リト ◆wxoyo3TVQU:2016/05/15(日) 22:03:24
【???】

「は?誰・・・・・?」

客がもう一人来る。女性の言葉通り、まもなくして1人の少女がやって来た。それはいい。
驚いたのは、その少女が自分を知っていると言うことだ。そして馴れ馴れしい。
いつか会ったことがあるのだろうか?記憶がない。リトは考えを巡らせた所で、少女の言葉からある単語を拾った。

「姉御?あんた、ナディアの知り合い?」

彼女はリトのことを姉御の弟と言った。姉は二人いるが、そう呼ばれる可能性があるのは長姉の方だろう。

それより、目覚める目覚めないとは一体・・・・・

「あんた、"あっち"では眠った状態なんじゃない?良かったね、体は無事みたいだよ。」

リトの疑問を察してか、アネスがクッキーを食べながら口を挟む。
なるほど、元の世界に実在する自分の現状を知っているということは、深淵に落とされた自分の体は救い出されているのだろう。

納得しつつ、リトは少女を見た。
それにしても・・・・・

「あんた、此処で会ってる時点で俺が無事じゃないって分かんないの?あんたも死にかけてるんだろ?馬鹿なの?」

この場所が普通の世界でないことは聞かされているはずだ。女性の話によればこの少女も死んではいないようだが、少なくとも生死の境くらいにはいるのだろう。

519アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/15(日) 22:51:45
【ポセイドン邸】

「………二人で一緒に寝て何にもないの…?本当に?朝まで?」

アブセルは信じられないと言った様子で目を丸くする。
と言うか同棲までしてるのに恋人同士でも何でもないなんて…。おまけに雷が怖いとか、リマ姉はお子ちゃまだな。などと、負けず劣らず恋愛偏差値の低いアブセルは苦笑する。でも背中ポンポンはちょっと羨ましい。

「あのさ、いい?夜這いってのはこうやって相手とー…」

言ってアブセルは何の気なしにリマの腕を取る。
彼女の腰に手を回しかけたところで、はたと動きを止めた。

…………。

(あ…あれ?)

何故だ…。なぜ自分はドキドキしているんだ。

もしこれがリトなら、ふざけて抱き締めたり押し倒したり、下ネタ発言だって何だって出来るのに…。
何故か相手がリマとなると、例え冗談でも抵抗を感じてしまう。

それ以上踏み込むべきか決め兼ねていたアブセルだったが、リマの純粋無垢な瞳に見つめられていることに気づき激しく動揺した。顔を赤くして反射的に彼女から身を離した。

「や、…やっぱり何でもない…!
てかこんなことして遊んでる場合じゃないし!早くセイちゃん見つけないと!」

自分から話を振っといてとんだ態度ではあるが、リマに背を向けると、一人のしのしと早足で先を歩き出した。

520リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/05/17(火) 19:11:45
イスラ>>
さては乗り気でないなwww

かわいいです(●´ω`●)
うた〇リと黒執事は同調出来ませんでしたねwww嵩張りますが、別のケースに入れた方がやっぱりしっくり来ましたwww
ありがとうございます(●´ω`●)でもそろそろ年取りたくないwww

完全自己満足ですもんね、あれ。自分もイスラさんと同じ意見です(笑)

いや、絶対変な人ですって(笑)
いえいえ、好きなのは藍ちゃんです(●´^`●)
たしかに暇すぎてテレビのチャンネル回してる時「あ、う〇プリやってる」ってなって、チャンネル飛ばそうとした自分の手を止めたのはレイジでしたけど!「あれ、うた〇リにイケメンいる」ってなったけど!レイジは見掛け倒しなんです、あんな残念な人だとは思いませんでした!はじめのトキメキ返して欲しい( ー̀ н ー́ )
でもすぐ様マイエンジェル(藍ちゃん)が画面に映り、「なんか電波な子いるwww」ってなり、「つかショタっ(♢ω♢)」となりまして、めでたく「可愛い!好き!!」に至りました(●´ω`●)

自分は一般人にしては漫画に精通ひすぎており、かと言ってオタクと言うにはまだまだ甘ちゃん過ぎて、凄く微妙な立場なんです(´・ω・`)

あれです、刀剣乱舞の表紙を飾ってる袴の人。
え、あれアニメ化するんですか(OдO`)
うたプリも秋からやるみたいなんですけど、どっちが金稼ぎますかねwwwwww
可愛いんだwww

まーきっと、そこんとこはナディアが何とかするでしょうwwwあんなんでも頼りになりますしwww
まさかヨハンが可愛いと言われる日が来ようとはwwwツンデレこじらせると大変ですね←
よし、そうしましょう!!

スカイハイが通じたwww
あ、あの場所は死者も通る道だからヨハンも裁き受けに来れるぞ?あれ?いや、私は何も気づいていない←
そう言えば今リトたちがいる場所、良い名前が思いつかないで【】の中何もかけなくて困ってるんです( •́ .̫ •̀ )←

521ジーナ ◆.q9WieYUok:2016/05/18(水) 20:08:04
【十字界】

「ラブが足りない……確かにそうだね、この世界は殺伐とし過ぎてラブが足りない。」

DDの言葉にジーナは目を丸くし、しかしすぐさま彼の言葉に肯いた。

「でも、ラブで世界を救おうにも、オリジンに牙を剥こうにも準備は必要さ。
今すぐ決めろなんて言わないし、言えないよ。」

DDらしいと言えば彼女……彼らしい言葉にジーナは笑みを浮かべる。

「取り敢えず僕は行方知れずの他の長老を捜してみるよ、何かあればまた連絡くれると嬉しいかな。」

単独行動は避けて、なるべく二人一組で動くように、どうしても一人になるなら気をつけて。
と、ジーナは付け足し、開いたままの書物へと視線を落とした。

その様子が意味するのは会話の終わりだろうか。
フィアはどうする?とDDへ目を向ける。

「二人一組、丁度良いとは思うけど……」

522アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/20(金) 22:11:10
【東南地域、龍穴遺跡】

カビ臭い遺跡の最深部に待ち構えていたのは、重厚な鎧を身に纏った一人の女性。

ただ引っかかる点は、ここに辿り着くまで遺跡内部に人が進入した形跡が見られなかったことだが…。
しかし今それを考えている暇はない。相手が一人ならこちらも好都合だ。

「あの眼鏡…、女相手に手加減なさすぎ…」

容赦のないレックスの畳み掛けを眺めつつ、アグルもまた武器を構える。

そして最速の踏み込みから、雷撃を纏った刺突の嵐を繰り出す。
織り成す槍撃の衝撃波が、吹き飛んでくる敵に向かって放たれた。

523サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/20(金) 22:14:08
【?】

「あっ!た、確かに…!」

指摘されて思い出した。そう言えばここは通常とは異なる世界だった。

「じゃあリト君こんなところで何やってるの!?
早く帰らないと、姉御すっごい心配してるよ!」

浮かれている場合じゃないと分かるや、サンディの表情はそれまでとは一変。今度は膨れっ面でリトに詰め寄る。
今まさにお茶会を楽しみに来た彼女の言えた台詞ではないが、自分のことは眼中にはないようだ。

「あ、それから!あんたじゃなくて、あたしはサンディって言うの。これでも一応アマテラスの力を継いでるんだから!」

524レックス ◆.q9WieYUok:2016/05/21(土) 20:00:05
【東南地域/龍穴遺跡】

雷を纏った槍撃と巨大な風刃による挟撃は、人一人を粉砕するには十分以上の威力を持っていた。
しかしながらラセツは挟撃の直撃に耐え、腕の一振りで粉塵を払い、その姿を現した。

(……一応は予想していましたが、無傷、ですか。)

悠然とした姿でアグルの前方へ立つラセツに、ダメージは見えない。
最重要地点に遣わされたのはたったの一人。

しかしそれは、その一人が単独で遺跡を制圧、防衛出来る実力を持つと言う事を表している。
決して手を抜いた訳でも無い刺突を、アグルとの挟撃を無傷で防いだその実力は、少なくとも自分達と同等かそれ以上と見るべきだ。

レックスは再び三叉鎗を構え、鎧を纏う女、ラセツを注視し……放たれた拳を、寸の所で受け止めた。
予備動作は全く無く、寧ろ受け止めれたのは単なる偶然、強いて言うならば本能的な直感のおかげか。

捻りを加えた拳の一撃から続くのは、逆の手による喉への一突。
それをレックスは手の甲で叩き落とすと同時に、三叉鎗を捨てて短剣を腰から引き抜く。

(予備動作も無く!まるで瞬間移動ッ!?)

逆手に握る短剣でラセツの脇腹を狙うも、肘鉄により刃は粉砕。

(アグルよりも、背後の僕を狙うのは確かに意表を突けますが……ッ)

砕けた刃の破片が地に落ちるよりも速く。
踏み込んだ足裏は地を砕き、肘鉄から繋がる掌打は、寸分の狂いもなく、レックスの胸部を打ち貫いた。

(何よりも、僕らの攻撃をどうやって防……!?)

何かが弾ける様な澄んだ音が最深部に響き渡り、続く破砕音……吹き飛んだレックスが、最深部中央の台座の様な物に激突し音を立てた。
二種の相反する音が止んだ後、レックスが立ち上がらないのを確認したラセツは、残るアグルへと身体を向ける。

「次は、貴男か?」

525リト ◆wxoyo3TVQU:2016/05/22(日) 20:23:36
【??】

好きで此処にいるわけじゃない。
早く帰れなどと偉そうに説教をたれ始めたサンディに、今度はリトがムッとする番だ。

「余計なお世話だ」

かと言って「戻りたいけど方法が分からない」などと素直に言うはずもなく、リトは途端に不機嫌になって、自棄糞気味に手元にあった紅茶を飲み干した。

「・・・・・」

紅茶は苦手だ。クセのある匂いと味がどうも体に合わない。ちょっとずつ口に含むなら飲めないこともないが、一気に飲むとやはり紅茶の味が強調されてキツイものがあった。

「あんた、アマテラスだって?」

口直しにクッキーを食べ、落ち着いたところで先程のサンディの名乗りを思い出す。

アマテラス・・・・・ポセイドンに並ぶ四神の一人だ。

「あんたはどっち?今の人間?それとも初代?」

自分でも奇天烈な質問をしていることは自覚しているが、ポセイドンの力を受け継いだ者の初代であるリマに会ってしまっている以上、仕方の無い疑問だった。

そして、彼女が初代であるのなら、聞きたいことがあるのだ。

「アマテラスも、トールも、フレイヤも、何故闇の王子を始末しなかった?」

ずっと疑問だった。世界を滅亡の危機に追いやった一因である闇の王子を、何故生かしたのか。仲間でありながら、敵であるはずの王子に惹かれていくポセイドンを何故止めなかったのか。王子が後に改心し世界を救った事実があるとしても、今現在英雄として語り継がれていることが気に入らない。ポセイドンとの関係を悲恋を語る美談とされているのも気に入らない。

王子の存在のせいで闇は滅びなかった。二人が子を繋いだせいで、こうして闇は受け継がれてしまった。

「ポセイドンには出来なくても、あんた達には出来たはず。王子は消えるべきだった。」

そう口にした途端、ズキリと胸が痛くなった。リマの泣く姿が脳裏に浮かんだのだ。王子を求めるリマの姿を知っている。離れ離れになってとても不安そうだった。凄く会いたがっていた。表では笑顔を見せていたが人目のないところで嗚咽を漏らしている姿を見かけたこともあった。別人だと分かっていながらも自分を王子と重ねて安心を得ようとしていることにも気づいていた。
王子が消えたら、彼女はどうなっていたのだろう。ちゃんと生きていけたのだろうか。
彼女の事を思うとこんなに辛くなるのは何故だろう・・・・・

「・・・・・」

自分は残酷なことを言っている。分かっている。でも、止まらない。

「闇の王子さえいなければ俺は生まれずに済んだのに・・・・・」

526イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/23(月) 01:59:01
【砂漠地帯、龍穴遺跡】

流石単身で遺跡に派遣されただけのことはある。
悔しいが相手の剣術や身のこなしは自分よりも数段は上手だ。
二人係りで苦戦を強いられているのが良い証拠である。

(次に備えて体力温存…なんてこと言ってられないな…、全力で行くしかない…)

どうも彼の鎧は耐熱性に優れているようで、小手先だけの技では通用しない。

「分からないがやってみる…、フォローは頼む…!」

イスラはそうメイヤに言うと、構えを取った。
イスラにとっては数年前…、この時代から見れば何百年も前の出来事である、"塔"での戦いで見せた白き焔が顕現し身を包む。
彼の髪は赤茶から白髪へと染まり、背からは白く燃え立つ翼が広がった。

「いざ…!」

目映く光る剣は大気を焦がしながら一気にヴィカルトの元を駆け抜けた。
一閃、二閃、三閃…。剣筋が光る度、白焔の業火が舞い上がった。

527アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/23(月) 02:02:13
【過去】

「いった!」

不意に頭突きを食らい、後ろに倒れるアブセル。
だが彼はどんな仕打ちを受けようと、自分の行動にリトが何かしらの反応を返してくれることが嬉しいらしい。
にんまりと笑うや素早く起き上がり、懲りずにまた抱きついた。

「俺はいなくならないよ。ずっとリトと一緒にいる」

なんならポセイドンの神様に誓ってもいい。とアブセルは言う。

「リトは知らないだろうけど、俺リトと出会えて変われたんだよ。
何かさ…前まではずっと狭くて真っ暗なところに閉じ込められてる感じがしてた。すごく怖くて寂しくて…、抜け出したくても何か身動き取れなくて…。
…でも、それをリトが助けてくれたんだ。
リトが俺を明るいところに連れてってくれたって言うか、リトそのものがキラキラしてた…?って言うか…」

上手く言い表せないのが、もどかしい。
少ない語彙の中で暫く一生懸命言葉を探していたアブセルだったが、直ぐに諦めた。

「とにかく!俺はリトと一緒にいる時間が一番楽しいってこと!
だから、同じぐらいリトのことも楽しませてあげたい!リトに恩返しできるまではずっと側にいる!」

アブセルはアブセルなりにリトを喜ばせようと、あれやこれやと考えて行動していたらしい。
もっともその八割方は、彼自身の願望が前面に押し出されている為、周囲には伝わり難いが。

「いつかリトだって、ここから出られる日が来るから安心しろよ!
いまディア姉達がその為に色々準備してるんだってさ。だから"リトお衛り隊"の構成員である俺もそれに協力するんだ!」



【長々とアブセルの過去話に付き合って頂きありがとうございました!(^ω^)
何か止め時が分からなくなってきましたが…(笑)取り合えず自分の方はやりたいことも大体やったので、もしリマさんが良ければ切りの良いところで纏めて終わりにしようかなーと思いますが…如何でしょ?】

528メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/05/24(火) 11:09:55
【砂漠地帯/龍穴遺跡】

燃え上がる白焔に、メイヤ同様ヴィカルトも目を細めた。
先程までとは違う、猛々しいその焔はイスラの全力だろうか。

「師団は理由が無いと剣を抜かない者ばかりだった。
貴様達もきっとそうなのだろうが……面白い、私を楽しませてみせろ!」

白焔を纏い、その背からは燃える白翼が。
大気を焦がし、迫るイスラの剣閃は業火を巻き起こす。

珪素結晶の鎧が白焔を受け輝き、瞬く間に燃え上がる。
耐熱性などまるでなかったかの様に火が上がる鎧を脱ぎ捨て、ヴィカルトはイスラの剣を水晶の剣で受け流し、捌く。

しかし一閃、二閃ごとに水晶の剣も融解し、三閃目を受け止める事は叶わず。
剣を投げ捨て、ヴィカルトは回避行動を取ろうとするも、そこで死角からの一撃……背後に回ったメイヤの一突きが迫る。

だが、それを見越していたかの様にヴィカルトは身を反らし、その場で横回転。
360度水平に回転する身体に続く様に、彼の足元からは大小様々、無数の結晶の剣が飛び出した。

渦を巻ながら広がるそれは、まるで花弁の如く。

「く、そ……っ」

間一髪、即死を免れたメイヤは呻き声を上げる。

(闘技場でアグルが同じ様な技を使っていたから、咄嗟に反応出来たけど……!!)

呻き声と共に込み上げる血反吐を吐き出し、文字通り、剣山に突き刺さり動きを止められたままヴィカルトを睨んだ。
風魔装束を着込んでいた為に即死は免れたものの、身体のあちこちが切り刻まれ、メイヤは動けない。

そんなメイヤに視線を向ける事無く、ヴィカルトは再び水晶の剣を生成。
イスラへその切っ先を向け、凶笑を浮かべた。

「白く輝くその焔、自らで受けてみるか!?」

その瞬間、白焔の輝きに照らされた剣山が、その輝きを乱反射させ光を増大させる。
周囲を塗り潰さんばかりに増した光はヴィカルトの持つ剣へ収束し、臨界点を突破。

水晶の剣を瞬時に蒸発させながらも、莫大な熱量を持った光線が、イスラへと放たれた。

529リマ他 ◆wxoyo3TVQU:2016/05/26(木) 20:23:08
【ポセイドン邸】

「?」

リマは不思議そうに首を傾げるも、アブセルの心情など知るはずもなく、その行動を不審がることもなかった。
そして、

「あ、セィちゃん!」

庭の中を一通り歩いたところで、漸く目的の人物を見つけた。
リマはセナの姿を見るや、嬉しそうに駆けていく。

-----

「何じゃと・・・・・」

セナの口にした言葉に、ノワールは驚愕の声を漏らす・・・・・

「到底信じられぬ・・・・・」

十字界に、自分の知らない秘密が存在し、何かが暗躍している。
黒十字はその全貌にしろ一端にしろ何かしらの情報を入手し、巻き込まれぬように手を引いたのか。その時点で奇しくも自分は既に身篭っており、向こうの目的は果たしていたというわけか。

「甘く見られたものよ」

ノワールは自嘲気味に笑った。

「だぁれだ!」

その時、この場の空気に合わず緊張感の全くない声が入る。
リマが背後からセナの目を隠しじゃれついたのだ。
途端、セナの表情がふっと柔らかくなる。
先程までの冷たい雰囲気が嘘のように。憑き物が取れたように。

「セィちゃん見つけた!ナディアさんが呼んでるよ?行こう」

二人がどのような会話をしていたのか疑問にも思わない様子で、リマは無邪気にセナの手を引いていく。
セナ自身もまた、これ以上話す気はないようだ。

「そなた、何故あの娘を連れてきた」

言いようのない怒りが込み上げ、ノワールはアブセルを睨む。

「わらわはあやつと話をしておったのだ。邪魔をするでない。」

530サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/27(金) 23:32:22
【?】

「え…、えっと……」

思ってもみない切り返しにサンディはすっかり困惑してしまった。
そもそも、なぜ闇の王子を始末しなかったのか、そんなこと疑問に思ったこともなかったのだ。

「残念だけど…、あたしはその時の当事者じゃないからその問いには答えられないよ…」

言ってサンディはしずしずと席に腰を下ろす。しかし身体はリトに向けたままだ。

「でも初代アマテラスのいー兄は、闇の王子のこと、敵だなんて見てなかったよ…?
むしろセナさんに対しては何だかいつも申し訳ないって顔して接してた」

この時代に来たイスラを見ていると、まるで久しぶりに再会した知人か何かのようにセナと接しているのが分かる。
だがその態度はいつもどこか遠慮がちで、変に気を使っていることをサンディは気がついていた。

「闇を封じる為、溢れ出た闇の全てをセナさんの身体に押し付けたんだよね?
いー兄言ってたよ。世界を救うためにセナさん一人に業を背負わせてしまったって。誰が犠牲になることもない最善の道が他にあったんじゃないか、って」

過去の話をイスラから少し聞いたことがある。
あの時は何が最善かを考える時間もなかったと言う。しかし彼は後悔しているようだった。

「リト君…、辛かったんだね…?」

話にきけば、リトは件の闇の王子の血を受け継いでいるらしい。
そのリトが今までどんな生涯を送ってきたのか、サンディには分からない。ただ彼の表情や言葉の節々から滲む痛みや苦しみといった感情は、悲しいぐらいに本物で、 また疑いようのない真実だった。

531サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/27(金) 23:34:03
リマ>バレたかww←

個別ケースとは何て贅沢なw
同意です、永遠の十代でいたいww

トキメかされましたか、詐欺ですね(笑)しかしなんやかんやレイジに縁があるようでww
めでたく、ってwwリマさんが楽しそうで何よりですww

自分もそんな感じですよー(^ω^;)確実に一般人じゃないけど、オタクからしたらにわか、みたいな。
結構周りにそう言う人いっぱいいますww

あー、多分あれかな?皆におじいちゃんって言われてる人(笑)
難しいところですねー(笑)でも自分は刀剣乱舞を応援します⬅
可愛いですよー。自分あと一ヶ月くらいしたら誕生日ですので、友人に島風の何か可愛いグッズをプレゼントでお願いしときましたw

そうか、ナディアさんに任せれば間違いないな(笑)
ツンデレこじらせた結果が家庭崩壊ww

お、良いじゃないですか!あの世でリトとヨハン再会させて和解させましょうよ⬅

んー、それなら…冥界とか黄泉国とか彼岸とか裁きの間とか…?そんくらいしか思い付きません(^^;

532ルドラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/28(土) 23:36:37
【ポセイドン邸】

「立て込んでる…?」

…とてもそんな風には見えないが。
あんたさっき暇をもて余すかの様に茶を飲もうとしてたじゃないか。
…と言いかけて、ルドラは止めた。
またボコられでもしたら堪ったものではない。
しかし…。

(会えないと言うか…、多分姫の方が僕に会いたくないと思うんだけどね…)

それにしても、見事な人選ミスだった。
彼女が一番発言力がありそうだったから頼んだのに、すっかり当てが外れてしまった。
かと言ってまた他の人間に頭を下げるのも癪だし…。

「もういい」

ルドラは諦めた様にそう一言。その場を空間跳躍しナディアの前から姿を消した。

533DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/05/28(土) 23:38:14
【十字界】

ジーナは相変わらず表立っては動かない気なのだろうか。
会話を区切って書物に目を移した彼女の傍ら、DDはフィアの言葉に頷いてみせた。

「フィア、アタシ思ったの…。今までアタシ達長老は独自の派閥を作って皆が皆、好き勝手に暮らしてきたわ。
中には派閥同士で争ったり、お互いを蹴落としあったり、それこそ他所のことなんて無関心だったり…。長老同士の接触も必要最低限で閉鎖的な状態が続いてきた…。
でもっ!そんなアタシ達だからこそ、今が力を合わせる時だと思うの!皆で協力してこの難題を解決させましょう!」

手始めに居場所が知れてるヴェントとマゼンダの所に行って、意見を聞いて来ようと話をまとめていた矢先、部屋の扉が音を立てて開いた。

「あれあれ〜?御二方もうお帰りですかぁ〜?
せっかくお紅茶淹れて来ましたのに〜」

間延びした声と共に入室してきたのは、トレイを手に抱えたラディックであった。
事件の後、彼はジーナの元で雑用をさせられていたらしい。

ラディックはニコニコしながら、二人に一礼した。

「フィアさんもDDさんもお久しぶりですぅ〜。
ルド坊っちゃんはお元気ですかぁ?」

「ええ、アタシ達とは途中で別行動になっちゃったけど、元気だったわよ。あと可愛かったわ〜」

そう応えたDDに対し、「そうですかぁ、良かったですよぉ〜」と言って、ラディックはジーナの方へ顔を向けた。
椅子に腰かけるジーナと目線を合わせる様に少し膝を屈め、掌を合わせて拝むような仕草を見せる。

「ジーナさん〜、そろそろ私も釈放させてくれませんかぁ〜?。坊っちゃんの元に行きたいんですよぉ。
あの方はは私がいないと何も出来ないダメダメな子なんですから〜。
ね?もう悪巧みもしませんからー、お願いしますぅ〜」

534リト他 ◆wxoyo3TVQU:2016/05/29(日) 17:57:29
【過去】

アブセルにとってリトの存在はとても大きいものらしい。
リトにとってもまた、言葉には表さずともアブセルによる影響は良い意味でとても大きいものだった。

言葉を発することの無かった彼が、話すようになった。
ずっと一人遊びばかりしていた彼が、トランプなどのゲームに興味を持つようになった。

リトの背に抱きつくアブセルには見えていないだろう。

"ずっと一緒"、そんな言葉を受けたリトが、照れくさそうに読んでいる本で顔を隠したのを。
"嬉しい""楽しい"、そんな感情をリトに教えたのは他でもない彼なのだ。

それは血のつながった姉達ですら成し遂げられなかった。友情とは、それだけ貴重なものなのだろう。

「・・・・・」

扉の隙間から、二人の様子を見つめる男が一人いた。
その眼光に傍にいた使用人達は皆萎縮する。
「すぐに追い出す」と平謝りするアブセルの祖父に、「放っておけ」と男は冷たく答えた。

「あの子供は相当なバカらしい。いくら罰を与えようと懲りずにあれ(リト)と関わろうとする。躾など意味を持たん、馬鹿らしくなった。」

そう吐き捨てて、男---ヨハンは部屋を後にする。

アブセルを連れてきた事は果たして正解なのか、未だに判断はつかない。
リトと同じ年頃の男子がいると知り、リトの退屈凌ぎにでもなればと思い迎え入れた。
正直、アブセルがリトを外に連れ出した時は自分の判断を悔やんだ。あの結果、リトの存在が世間に知れてしまったのだ。
隠し通せると思っていた。隠したかった。
存在が公になってしまった以上、この屋敷内も安全ではない。リトが成長し闇が成熟すれば"奴ら"はリトを奪いに来る。
しかし外に逃がす事も出来ない。判断を誤り続けた結果、トーマを巻き込み死なせてしまった。自分があがけば足掻くほど、犠牲が増える。

リトは生まれてはならなかった。しかし、生まれついた赤子の息を止めるほど自分は卑劣になることは出来なかった。リト1人の命で一族が助かるのなら容易いものだと、いくら自分に言い聞かせようとしても無理だった。

そして今もまた、リトがアブセルを気に入っているのを目の当たりにし、彼の存在を黙認してしまった自分がいる。

あの子に家族を教え、友を与え、果たしてこの行動は正しいのだろうか。

リトの進む道には死が待つのみ。それなのに、生への希望を持たせて良いのだろうか。

分からない。

何が最善の道なのだろうか。自分はこれからもずっと悩み続けるだろう。


【せっかくなのでヨハンの心情も絡めて締めさせてもらいました(ˊᗜˋ*)

こちらこそ、過去話にお付き合いいただきありがとうございました(●´ω`●)】

535アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/04(土) 23:26:16
【東南地域、龍穴遺跡】

鈍い衝撃音を耳に、アグルは相手の視線を真っ向から受け止める。再び手に槍を構え直した。

「…そうみたいだな」

レックスのことも気がかりだが、今は他人のことに構っている余裕はない。

しかし不可解なのは先の挟撃の際や、レックスとの応戦で見せた、彼女の瞬間移動のような攻撃手段。
単純に周りからは視認できぬ程の速さで動いているのか、それとも何か秘密が隠されているのか…。
まずはそれを暴かなければ勝機はないだろう。

(見極めてやる…)

刹那、夥しい数の雷槍が出現し、遺跡内部の空間をびっしりと埋め尽くした。
妖しい輝きを放つ、何千、何万という槍の切っ先がラセツを標的に狙いを定める。
そしてそれらは、完全に彼女の退路を遮断する形で、アグルの号令の元、風切り音を置き去りにその場から一斉に射出された。

536アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/04(土) 23:28:45
【ポセイドン邸】

話なんていつでも出来るだろ。と、いつもの調子で言い返しかけ、アブセルはふと思い直した。

「…悪かったよ」

そして何を思ったか、素っ気なくも謝罪の言葉を述べる。

「でもお前もどっか行くんなら一声くらいかけてから行けよな。無駄に探しちゃったじゃん」

どうもセナとノワールはお互い面識があるらしい。
そのことは今までのリトに対するノワールの言動や、彼女の故郷で意図せずして小耳に挟んだ話などから何となく分かっていた。
ただそれらを踏まえた限り、二人はあまり良い間柄とは言えないようだ。

二人がどんな会話をしていたか、気にならないと言えば嘘になる。だが聞いてもどうせ彼女は教えてくれないだろうし、本人にも事情があるだろう。
アブセルもそれ以上は何も言わず、リマやセナに続いて踵を返した。
と、その直後。

「姫」

背後から声がした。
見ればどこから入り込んだのか見知らぬ少年がノワールの足元に跪いていた。

「その…、報告したいことがある。
分を弁えぬ行為で申し訳ないが、今だけは御身の前に参じる無礼を許してほしい」

そうして彼はノワールに何やら耳打ちする。
内容はナディアに語ったものとほぼ同じものだ。

「見たところ、姫は今この場所を動けないご様子。
姫に代わって僕が子の捜索を行うことも可能だが…、如何しよう?」

全く気に入らないが、ノワールはリトと言う少年を主として置いているらしい。
そのリトが動けない現在、彼女自らが地に赴くのは難しいだろうと踏んでの発言だった。

537ジーナ ◆.q9WieYUok:2016/06/08(水) 00:44:07
【十字界】

確かにそうだ。
今こそ、今のこの状況だからこそ、一致団結するべきなのだろう。

フィアもまたDDの言葉に頷き、ヴェントとマゼンダの下へと空間跳躍しようとしたその時。
ポットとカップを乗せたトレーを片手に、知った顔……ラディックが姿を現した。

此方に一礼するその姿にフィアは小さく舌を打つ。
先にあった十字界での争乱、レオが命を落としたあの戦いの一因は彼にあるとフィアは今も思っているのだ。

膝を着き、拝むラディックにジーナは苦笑いを浮かべる。

「うーん、君の淹れる紅茶が飲めなくなるのは少し寂しいかな。
午後の一時は君の淹れる紅茶が無いとね?」

だが、その苦笑いもすぐに意地悪めいたモノに変わった。

「でも、ルドラの坊ちゃんが心配なのはわかるよ。
だけど今は非常時だ、彼の隣には君が居ないとね。」

そして、立ち上がったジーナはその意地悪めいた表情を浮かべる顔をラディックへ近づけ、続けた。

「ーーーーー」

その声は小さく、近くに居たフィアですら聞き取れない程。
しかし、もとよりジーナはラディックだけに聞こえる様に話しており、それを感じ取ったフィアは聞き返す様な真似もせず、話が終わるの待った。

「ーーーーーーと、言う訳さ。
言わば司法取引、交換条件だ。
坊ちゃまと合流してからでも、する前でも良い。
今さっきの“お遣い”きいてくれたら君を無罪放免にしよう。
どうかな?」

【お遣いとして適当に後々使えそうな伏線張っときます、内容はイスラさん自由にしてもらって大丈夫っす!】

538ラセツ ◆.q9WieYUok:2016/06/10(金) 16:54:18
【東南地域/龍穴遺跡】

アグルの号令の下、放たれるのは莫大な数の雷の槍。
遺跡を埋め尽くす程のソレからは、逃れる術は無いだろう。

ラセツは襲い来る雷槍の群れを一瞥し、フッ、と、笑った。

「眩しいな。」

それと同時に、雷槍が着弾。
轟音を撒き散らし、破壊の限りを尽くすその光は数刻の間止むことは無かった。

そして、遺跡内を破壊し尽くした後。
粉塵が止み、周囲の様子が見える用になった頃。

重厚な鎧の端々を焦がしながらも、ラセツがその姿を現した。
鎧は焦げ、身体の所々が黒ずんではいるものの、深刻なダメージを負っている様には見えない。

「今のは危なかった、選ぶべき未来が殆ど見えなかった。」

焦げた金髪を掻き上げ、ラセツはアグルへと視線を向ける。
アグルへと向けられた瞳は元の緑から虹色に変わっており、淡く輝いていた。

「不思議だろう?この、瞳は。」

その声はアグルの上空から。
落下と共に振り下ろした拳は僅かに目測を誤り、アグルの足元を砕いた。

砕け散り、舞い上がる破片に紛れるかの様に、ラセツはゆらりと立ち上がる。
その様子はひどくゆっくりにも見えた。

「黄龍が言っていた、私の眼はこの世の理から外れていると。

全てを見据える瞳は、ありとあらゆる可能性を、無限に分岐する未来を見据える。

私はその中から、一番良い道を進み続けてきた。」

そして、ゆっくりとした動きから反転。
破片が地に落ちるよりも速く、ラセツはアグルへと掌打を繰り出した。

「私には視える、貴方がどう動くのか。

私はどの未来を選べば良いのか。

貴方には見えるか?

私に打ち勝つ未来が!」

539DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/11(土) 20:16:04
【十字界】

ジーナから返ってきたのは了承の言葉だった。それに対しラディックはにまりと笑い頷いた。

「分かりました〜。お安いご用ですよぉ」

そうして居住いを正すと、まるで演目の終わりに見せる様な、恭しくそれでいて優雅な動作で礼を決める。

「ではでは〜、今までお世話になりました〜。
またお逢いできる日までご機嫌よう〜」

言い終わるや、彼の姿はその場から忽然と消え去った。
それを見届けたDDも「アタシ達もそろそろ行きましょう」とその場を後にする。

そして…、訪れたのは和風な概観をした立派な門扉の前。
マゼンダの屋敷だ。

使いの少年に、マゼンダに会わせてくれと伝える。
取り合えず客間に案内して貰い、暫し待つように言われた。

「それにしても…、ここは相変わらずね」

案内役の少年が部屋を出ていった後、DDは誰に言うでもなく口を開いた。

右を見ても、左を見ても、年少の男の子ばかり。
マゼンダの趣味が窺える。
可愛いものを愛でたい気持ちは解るが、流石に子どもに手を出そうとはDDだって考えない。



【ヤツキ>了解しました^^
お遣いの内容は本当に何でもいいんですか?
あ、それから戦闘レス遅くてすみません;
自分、戦闘描写苦手なので戦闘パートに突入すると途端に遅くなります(苦笑】

540フィア ◆.q9WieYUok:2016/06/14(火) 21:02:36
【十字界/マゼンダ邸】

一礼と共に消えるラディックと、彼が置いていった紅茶を味わうジーナ。
二人の間に交わされたやり取りも気になるが……

フィアはDDの言葉に頷き、彼と共にマゼンダ邸へと向かった。
そして、和風の門をくぐり抜けて客間へと歩を進め、屋敷の主を待つ。

「まぁ、人それぞれ好みがあるって事ね。」

DDの呟きに声を返し、フィアは続ける。

「DD、マゼンダとの話は任せて良いかしら?
私はちょっと馬が合わないと言うか、苦手なのよ……彼女が」

【何でも大丈夫ッス!それこそ希少
な紅茶を送ってくれとか些細なのでも良いですし、上手い具合に伏線としてどこか重要な局面で使ってくれても良いですしおすし!

了解すー、と俺も会話パート苦手ですのでww】

541リト他 ◆wxoyo3TVQU:2016/06/17(金) 14:14:52
【冥界】

あの時代で何が最善だったかなんて知らない。興味もない。
セナと言う男が本当はどんな人間で、四神が彼に何をして、どんな罪悪感を抱いているかなんてどうでもいい。
業?犠牲?元はと言えばセナが属していた組織が起こした惨劇ではないか。

・・・・・違う。こんなことが言いたいのではない。
サンディがあの時の四神の一人だったとしても、自分の胸のうちを明かすつもりなどなかった。
自分はどうして・・・・・

「・・・・・申し訳ございません。少し、席を外しますね?」

二人のやりとりを見ていた女性が不意に声をかけてくる。
そして、彼女が動き出して初めて気づいた。椅子に座っているものと思っていたが、彼女が座していたものは車椅子だった。アンヘルが手伝おうとしたが、大丈夫だと伝えて場を離れていく。

「始末するとかしないとか、凄く物騒。と言うか五体満足で生まれたクセして生まれたくなかったとか贅沢じゃない?」

リトが去りゆく女性を目で追っていることに気付き、すかさずアネスが口を挟む。

「あの人・・・・・」

「あぁ、母さまが行ったのは別にあんたの言葉が癪に触ったとか、そんなんじゃないと思うから安心していいよ。」

「・・・・・姉さま」

「私空気重いの嫌いなんだもん。あー、はい分かった分かったったら!」

アネスは放っておいたら憎まれ口を叩きかねない。アンヘルは姉を促し席を立たせる。

「私達がいたら話し辛いでしょ?事情は知らないけど、早いとこ自分たちで解決しなね。」

そう言ってアネスはアンヘルに連れられる形で席を離れていった。

「・・・・・」

場の空気を悪くした自覚はある。
悪くしたくてしているわけではない。のだが、気づいたらいつも憎まれ口をたたいている。

リトはサンディへ目を向ける。ほら、やはり沈んでいる。
こんな時はどうするんだっけ・・・・・

「・・・・・悪かったよ」

そう、リトはぶっきらぼうながらも謝罪の意を唱えた。
短い間であるがリマと接していていつの間にか身につけていたことがある。謝罪だ。
自分に非が認め、謝る。当たり前の事だが、リトには今まで出来なかった。
アブセルはいくらリトが冷たくしても嬉しそうにしているし、ナディアは腹を立てことすれいつの間にかケロッとしている。ヨノも笑顔で受け入れてくれる。今まで誰もリトに謝罪の機会を与えてこなかったのだ。だからリトは相手も傷つくのだと、そんな当たり前の事をイマイチ理解出来ていなかった。
しかしリマはどうだろう。自分の発言に一喜一憂する彼女はとても新鮮だった。感情が顔に出やすいため傷ついている時もすぐ分かる。

「あんたに言ったって仕方ないことだ。今の話は忘れて。」

542マゼンダ ◆wxoyo3TVQU:2016/06/17(金) 21:05:24
【マゼンダ邸】

「奇遇だね、私も同じだよ。」

時少なくして召使の少年に連れられたマゼンダが部屋に入って来た。彼女にしては早いお出ましだ。

「だけど私はあんたのこと苦手どころか、嫌いだね。」

フィアの言葉が耳に届いていたらしい。普段から来客を好まない彼女は、更に不機嫌そうな顔をしている。

「私は女が嫌いだ。特にノワールと、あの娘に肩入れするお硬い性格のあんたがね。」

マゼンダの趣味は相変わらずだが、最近"お遊び"の方は大人しくなったようだとヴェントが言っていた。あの時の失敗で懲りたのか、あの少年以上に気に入った容姿の者に会えないからか、理由は不明ながらも良い傾向ではある。

マゼンダは客人の向かいのソファに腰をおろすと、面倒くさそうに口を開いた。

「何の用だい。くだらない用件じゃないだろうね?話があるならさっさと語って帰んな。」

543アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/19(日) 12:43:45
【龍穴遺跡】

彼女の放つプレッシャーに、肌が粟立つ。
体感時間が妙にゆっくり感じるのは相手に圧倒されているせい?

掌打がくると途端に現実に引き戻されたような気がした。アグルはハッとし、咄嗟に腕を上げてガードするも、それは腕をすり抜けてそのまま鳩尾をついた。

息が止まる。気がつけば後方の壁まで吹き飛ばされていた。

これが彼女の言う、力だろうか…。
先程の、手がガードの下をすり抜けて見えたのは、恐らく目の錯覚。彼女は攻撃が通る最も適した軌道とタイミングで掌打を放ったのだ。

喉奥から何かが込み上げかけたが、アグルはそれをぐっと堪えた。槍を支えにゆっくりと身体を起こす。

「未来が見える、か…。そいつは凄ぇな。
スゲー便利で…、スゲー退屈な代物だ…」

くく、と口から乾いた笑いが溢れる。

人生ってのは、何が起こるか分からないから面白いんだろう。初めから答えが解りきってるゲームなんて俺はまっぴらだね。

…きっと兄貴だったらこう言っただろう。

「あんたに打ち勝つ未来…?そんなん知らねーよ。…だけど、これだけは言える」

ふとアグルは口を閉じ、静かに呼吸を整える。
じゃりっと靴と地面が擦れたような音が聞こえたかと思えば、次の瞬間、彼の姿は忽然とその場から消えていた。

「俺はここで死ぬつもりはない」

そして現れたのはラセツの目の前。ぐっと彼女に肉薄し、それに合わせて槍を突き出す。

今のアグルは脊髄に直接信号を送り、反射だけで筋肉を動かしていた。
それは情報伝達に脳を介さない分、先程までよりもずっと速い行動を可能にした。

しかし無論、初撃は避けられてしまうだろう。
彼女の回避方向を予測して、更にそこに雷撃を放つ。
アグルはラセツの動きの何手先も先読みして具現化させた六つの槍と、そして雷撃を自在に操り、電光石化の如く怒濤の連続攻撃を繰り出した。


【ヤツキ>分かりました〜、簡単なのじゃ味気ないので、もし出来たらストーリーに関わる何かを考えてみます^^】

544サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/06/19(日) 12:49:49
【冥界】

「わかった。忘れる」

リトからの謝罪の言葉を受けるや、サンディは俯けていた顔を上げ、パッと表情を明るくさせた。

「あたしの方こそごめんなさい。よく知りもしないのに偉そうなこと言って」

席を立たせた三人には悪いことをしてしまった。
サンディは気持ちを切り替える意味も含め、カップに手を伸ばし紅茶を一口。…おいしい。
霊体になっても味が分かるなんて不思議だ。

「何かびっくりだよね。死んだ後もこうやってお茶呑んだり、お喋りしたりできるなんてさ。
あ、でも正確にはまだ死んでないんだっけ?幽体離脱って言うか?これが噂の臨死体験…!?みたいな!
リト君もそうなんでしょ?」

こんな状況にも関わらずサンディの口調は極めて明るい。
それどころか現状を楽しんでさえいるように見える。そしてお喋りな彼女の口は、油を挿した後の車輪並みによく回る。

「あたしもね、元いた世界に帰らなきゃって思うんだけど、正直言うと、このまま死んでもいいかなーって気持ちもあるんだ」

言いながら彼女はカップの縁を指でなぞる。紅茶の表面が緩やかに乱れ、そこに映り込む少女の影も合わせて揺れた。

「あの世にはお父さんとお母さんがいるから。二人に逢えると思うと死ぬのは全然怖くないの」

ふふふ、と笑う仕草は冗談ではなく、本当に嬉しそうだ。
そうしているかと思えば、今度は「でも」と言って、不意に視線をリトに預けた。

「リト君にはあたしと違って、心配してくれてる人も帰りを待ってくれてる人もいるの知ってるから。
だからさっきはつい"早く帰れ"なんて言っちゃった。ごめんね」

ナディアは態度には出さないが、ずっとリトのことを気にかけていた様だ。
リトの側に引っ付いていた男の子なんて、まるで世界が滅亡したかのような顔をして落ち込んでいた。
きっとその二人の他にも、彼にはまだ彼の帰りを待ち望んでいる人がいるはずだ。


【リマ>感動的な文章で締めていただきありがとうございました。
ショタリト可愛いよ!(*≧з≦)ショタリト!

しかし過去話やって思ったけど
アブセルの本命、ナディアでもおかしくなかったな、とか思いました。屋敷に来てからは初めて、自分の存在を言葉にして肯定してくれた人ですから。

まぁ今はリマにホの字な感じなんで、もう遅いんだけどww】

545ラセツ ◆.q9WieYUok:2016/06/21(火) 16:51:17
【東南地域/龍穴遺跡】

人生とは、選択する事の連続だ。
無限に枝分かれする選択肢から何をどの様に選ぶのか。

それが果たして正解なのか、不正解なのか。
目には見えない選択肢、未来とは未だ来ないモノ。

もしそれが、目で見えたのなら。
多くの人が、自分にとって最善の未来を選ぼうとするのだろう。

しかし、数多ある選択肢から一つを、大海から一粒の砂を探す事は難しく。
選ぶ以前に、無限なる選択肢が持つ情報量を脳が識別処理出来いのだ。

ただの人間が、ラセツと同じ瞳を持とうとも、彼女と同じ様に振る舞う事は出来ない。

「つまらないか。
確かにそうかも知れない。」

超高速の刺突から続く怒濤の連続攻撃は、その一撃一撃が凄まじい威力を秘めていた。
六本の槍と迸る雷光は、先程の雷撃を遥かに上回っており、アグルの気迫が感じられる。

それら全てを、ラセツは捌いていく。
受け流し、回避し、時には防御し、身に纏っていた重厚な鎧が原型の殆どを失った頃。

「だけど、泥沼に足を踏み入れる事が最善の選択肢だったりするんだ。」

先代のトールから受け継がれた槍の一撃をラセツは左腕を犠牲にして防ぎ、言った。

「戦う相手が強ければ強い程、最善の一手は見えにくくなる。
久し振りだよ、こんな怪我をしたのは。」

槍の穂先に貫かれた左腕から流れる朱を一舐めし、ラセツは笑った。
気付けば足元は濡れており、辺りからは滾々と水が溢れ出している。

どうやら激しい攻撃の余波で遺跡最深部の壁や床に罅が入り、遺跡側を流れる河水と地下水が流れ込んでいる様だ。
刻々と水量は増し、水嵩もそれに比例している。

546 ◆.q9WieYUok:2016/06/21(火) 16:52:51
唇を血の朱で染め、ラセツは辺りを見渡す。

「水没するまで余り時間は無さそうだ。
溺死したくなければ戻った方が良い。」

そして、再び虹瞳をアグルへ向け、槍に貫かれた左腕を一閃。
槍ごとアグルを弾き、浮かべる笑みを更に深くする。

「と言っても、戻らないのはわかってる……だから。
貴方の強さに敬意を表して、全力でいくわ。」

それと同時に、大気を歪める程の闘気が彼女を包み込む。
煌々と、そして猛々しく揺れる闘気を纏い、ラセツは再び掌打を、直撃すれば人間など木っ端微塵になる威力を持った一撃を繰り出した。

しかしその一撃がアグルを爆砕する事は叶わず。
掌打を受けた圧縮された空気の塊が弾け、突風が二人の……三人の周囲に吹き荒れた。

「初手でKOされてスミマセン……と、冗談を言う場合では無さそうですね。
アグル、僕が援護します。
全力でいきましょう!」

ラセツとアグルの間に割って入ったレックスは、吹き荒れる突風に髪を靡かせ、力強く、そう言った。

547ノワール ◆wxoyo3TVQU:2016/06/26(日) 19:28:28
【ポセイドン邸】

「そなたが何故ここに?」

目の前に参じた少年に驚くも、彼からそれ以上に驚くべき事実を伝えられたノワールは目を見開く。

「あの子が・・・・・」

生きていた。愛しい我が子。
生まれて間もなく引き離された、抱くことも乳をやることも叶わなかったあの子が。
しかし、伝え聞いた事態はとても喜ばしいものではなく。

閻魔に施された術により、ノワールはリトの側を一定以上に離れることが出来ない。リトが目覚めない今、ノワールはこの場を離れられないのだ。そして、たとえ離れられたとしても力を封じられ唯の小娘に過ぎない自分一人で救い出せるとも思えなかった。

ノワールは歯噛みし、目の前の少年を見据えた。

「そなたを行かせ、運良く探し出せたとする。じゃが、その後はどうする?そなただけで救い出せるのか?申してみよ。」

548リト ◆wxoyo3TVQU:2016/06/26(日) 21:10:46
【冥界】

少女は実に単純な作りをしているらしい。先程まで落ち込んでいたのが嘘のように、たった一言でコロッと表情を変えた。
自分で言った立場でなんだが、忘れろと言われて簡単に忘れられるものなのだろうか。

「嬉しそうだな」

楽しそうにつらつらと言葉を並べる彼女を、リトは面倒くさそうに頬杖を付きながら眺めた。
この感覚は懐かしい。お喋りな女・・・・・身近にもいた気がする。

(あぁ・・・・・)

リトの脳裏に二人の少女が浮かんだ。小さな体で態度のデカイ黒髪の少女と、そんな子供と同等に渡り合えてしまう知能レベルを持った銀色の髪の少女。二人は物珍しそうに世界を見て、その日あったことを嬉しそうに話してきた。二人同時に話すもんだから何を言ってるのか分からなくて、こっちは疲弊してるのにそんな状態に何故か嫉妬したアブセルが二人に張り合って割り込んでくる。騒がしい旅だった。

(けど・・・・・)

退屈はしなかった。
ノワールもユニも今はどうしてるだろう。アブセルに連れ戻された際、二人は邸についてきていないようだった。
リマと一緒だろうか?なら問題ないだろうが・・・・・二人は放っておくと何をするかわからないから。

「あんた、両親のこと好き?」

嬉しそうに両親の話をするサンディにリトはふと疑問を投げる。
彼女の口ぶりからは両親に愛されていたことが分かる。

「俺は好きかどうかも分からない。生きているのに、どっちも存在していないようなものだったから。」

母に拒絶され、父に冷遇されていた。両親と言う認識はあるものの、二人に対して何の感情もない。そう言えば、憎しみも恨みもないのは不思議だ。

「あんた、別に天涯孤独ってわけじゃないんだろ?人から嫌われるような性格でもないみたいだし。あんたこそ、誰かしら帰りを待ってるんじゃないの?変なこと言ってないでさっさと帰れば。」

549リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/06/26(日) 21:21:42
イスラ>>
ショタリトは自分の好みを最大限に詰め込みました(笑)
一人称が自分の名前とか、今のリトが知ったら恥ずかしさのあまり死んでしまうかも(笑)

たしかに!まぁナディアは女として魅力ないから惚れるとか難しいでしょうね(笑)】

550ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/07/01(金) 23:49:10
【こっちに来て二周年か、おめっとさんです!】

551イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/07/23(土) 16:07:26
【砂漠地帯、龍穴遺跡】

目を眩ませんばかりの光に、イスラは思わず腕を上げ顔を庇う。

(これは…っ!?)

直後、ヴィカルトの剣から大量の光が噴出した。
莫大な熱量と殺傷力を秘めたそれが、一直線に襲いかかってくる。

イスラは咄嗟にアマテラスの神器の一つ、宝鏡を生成する。
鏡面に触れた光線は鏡を蒸発させると共に別の方向へ屈折し、着弾した遺跡の壁と地面を粉砕し、溶解させた。

だが、それを持ってしても全ての光を逸らすことは叶わなかった。屈折しきれなかったものがイスラの片翼を穿つ。
痛みはないが再び飛べる様になるには少し時間がかかりそうだ。
そして、いくら炎で結晶を溶かそうと、こう反射させられては堪らない。

イスラは神刀、月読に手を伸ばす。

「…剣技、桜花爛漫」

抜刀するや、桜の花弁にも似た結晶の粒が一面に舞い上がった。まるで吹雪の中に迷いこんだかの様に花弁が視界を埋め尽くす。
そして…。

「メイヤ、大丈夫か?」

その隙に、イスラはメイヤを救出した。

もしかすると、今がヴィカルトに不意を与えられる絶好の機会だったのかもしれない。しかし彼の性格上、仲間を後回しには出来なかったようだ。

552アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/07/23(土) 16:10:09
【ポセイドン邸】

「正直なところ…必ず救い出す、と断言することは出来ない。
なにせ相手はそうとうヤバい奴等らしいから」

黄竜という連中達の戦力は未知数だが、少なくとも大陸一つを消し飛ばす程の力を持っていることは間違いない。
ルドラは言葉を続ける。

「でも出来得る限りの手は尽くすつもりだ。それこそ身命を賭す覚悟だってある。
そもそも元を辿ればこんなことになった原因の一部は僕にある。
こんなことで罪滅ぼしが出来るとは思わないが、過去、君に冒した罪の償いをさせて欲しい」

恐らくそれは本心からの言葉なのであろう。
そう語る彼の眼は真っ直ぐとしたもので、嘘偽りの匂いは感じられない。

ルドラはノワールの返事を待ったが、しかしそれよりも前に、別の何者かの声が場に割って入ってきた。

「私も参りましょう」

傍らの茂みがガサガサと揺れ、草かげから男が姿を現した。服に着いた葉っぱを払いながら、彼…ジュノスは微笑を浮かべる。

「話は聞かせて頂きました。
微力ながら、私もお力添え致します」

それを見たアブセルは、思わず半歩引き驚きの声を上げる。

「おっさん居たのかよ…。つかどっから出てきてんだ!もしかしてそこでずっと盗み聞きしてたのか!?」

「もちろん!そこの吸血鬼とセナ様を二人きりにさせるなど不安でしかありませんからね。
彼女が余計なことを口走らないように見張っておりました」

「…………。(完全に変質者じゃねえか…)」

それはさておき…と、ジュノスは視線を動かす。
ナディアの元に戻るのであろう、並んで歩くセナとリマはこちらの存在には気づいていないようだ。二人の後ろ姿を何か眩しいものでも見るかの眺め、ジュノスはノワールに言った。

「安心してください。保護したのち、子供をどうこうしようなど考えていませんから。
子の捜索を引き受けていた手前、そろそろそれらしい働きを見せておかなければと思っただけです。
それに…」

それに、今では一応自分も一児の親だ。
こう言ってはなんだが、ノワールの気持ちも分からなくもない。

しかし唯一の気がかりは、セナとリマ、そしてノワールを残して出かけることだが…。…そこはまあ、何かしらの手を打って置くことにしよう。

553サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/07/23(土) 16:12:48
【冥界】

「うん!大好きだよ」

両親のことを聞かれれば、サンディは大きく頷いた。

「あたし一人っ子でね、家もお客さんなんて滅多に訪ねて来ないような山の中にあったから、小さい頃は両親以外の人と接する機会ってあまりなかったんだよね」

今思えば、あれはわざと人目を避けて暮らしていたように思う。両親は知っていたのだ。いつか自分達の身に危険が及ぶことを。

「それでもあたしはその生活を嫌だと思ったことなんてなかった。
お父さんはあたしに剣を教えてくれたし、お母さんは落ち着きのないあたしが怪我をしないようにずっと側で見守っていていてくれた。
夜祭りの日は皆で里に降りて、花火みたり出店で金魚すくいしたりするの。星がよく見える時期はもっと山の上の方に登って、三人で並んで空を見上げながら色んなお話をして…、他にもいっぱい、いっぱい…」

懐かしい。
二人とも子どもの立場から見ても親バカだった。優しくて温かくて…。出来ることならあの頃に戻りたい。

「もしあたしが死んだとして…、多分、悲しんでくれる人はいるとは思う…。
でも、どうせみんな直ぐに忘れちゃうよ」

今更ながら、自分には特別に親しくしてきた人などいなかったことに気づく。
両親が死んでからは親戚だという家庭に引き取られたが、そこはあまり居心地がいいと言える場所ではなかった。
暫く一緒に旅をしてきたナディア達にしたって、出会って数ヵ月と短い付き合いだ。

一時的に悲しんではくれても、きっと直ぐに各々の生活に追われ、自分のことなど思い返しもしなくなるだろう。

「皆が必要としてるのはアマテラスの力であって、きっとあたし個人じゃないんだよね。それに…」

言いかけてサンディは口を閉じた。
目の前の、見えない何かを振り払うかの様に、手をブンブンと振る。

「…って、やめやめ!暗くなっちゃうね。
ねぇ、リト君のことも聞かせてよ。さっきからあたしばっか喋ってる」

554サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/07/23(土) 16:14:46
遅くなりすみませんでした;
二周年おめでとうございます!

555メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/08/04(木) 23:46:03
【砂漠地帯/龍穴遺跡】

発射点である剣を蒸発させながらも放たれるその光条は、天照の宝鏡をもってしても防ぎ切る事は叶わず。
イスラの片翼を吹き飛ばし、遺跡の壁面に大穴を開けた様子から見るに、直撃すれば影すら残らなかっただろう。

イスラの技、煌めく結晶の桜吹雪に紛れ救出されたメイヤは、彼の言葉に何とか頷いた。
風魔装束のおかげで即死と致命傷は免れたものの、裂傷は多い。

鎧に宿る治癒能力で多少は塞がってきているものの……

「死にはしなかった……けど」

直ぐには動けない、と続ける事は出来ない。
何しろ、ヴィカルトはまだ攻めに転じていないのだ。

先程までの戦いは全て、此方側から仕掛けたもの。
二人の連携を、そして白焔を凌いでの反撃だけでこれ程とは……

メイヤは無理矢理身体を動かし、剣を握る。
僅かに震える切っ先をヴィカルトへ。

(足手まといだな、これじゃあ……)

メイヤの戦闘力は、闇の力を失ってから数段下がっていた。
闇による攻撃力と再生力を武器にした、防御を省みない極端な攻め方はもう出来ない。

思えば今の一瞬も、イスラに取ってヴィカルトへ攻撃を仕掛ける最大のチャンスだった筈だ。
剣を向けながら、メイヤは唇を噛む。

闇の力があれば、いや、自分がもっと強ければ。
オンクーとの戦いは、相討ちであったが実質的には自分の負けであった。

(もっと力があれば、サンディを守れたかもしれないのに……もっと、もっと!)

今まで、力を渇望する事などなかった。
ましてやそれが誰かの為、誰かを想ってなどなかった。

だからこそ、今この胸に渦巻く感情が重く、辛い。
それは心身共に蝕んでいく毒の様にも感じられた。

556メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/08/04(木) 23:48:22
「……俺が囮になる。」

唇を噛み、剣を掲げるメイヤは声を絞り出す。
隣のイスラからは角度的に見えないだろうが、その表情は硬く、悲壮感が浮かんでいた。

「決定打が打てるのはイスラだ、だから……後は頼む!」

その表情を変えないまま、メイヤはヴィカルトへと駆け出していく。
それは地を這う蛇の如く、ヴィカルトを刃の射程圏に捉え、メイヤは下方からの斬り上げを放つ。

更に、斬り上げを起点にメイヤは連続して斬撃を繰り出していく。
しかしながらその全てをヴィカルトは受け止め、流し、反撃の一閃がメイヤの胸元を大きく切り裂いた。

だが、メイヤは止まらない。
水晶の刃を振り切ったヴィカルトへ長方形の箱……折り畳まれた巨大手裏剣を押し付け、展開。

「う、ぉぉぉおおおお!」

四方に広がる刃がヴィカルトの首筋、腹部、両肩を切り裂く。
更に、押し付けた手裏剣を捻り、メイヤは傷口を抉っていく。

そして、ヴィカルトの身体を抉る手裏剣を横薙し、投げ捨てたと同時に真白の剣を前方へ。
予想外の反撃、攻撃にヴィカルトは驚きの色を目に宿すが、迫る真白の剣に笑みを浮かべた。

「死ぬ気か、中々やる!」

同時に、抉られた傷口から水晶が噴出。
傷口を炭素繊維で塞ぎながら、噴出する煌めきが文字通り、前方のメイヤを削っていく。

そして、噴出する死の輝きが剣の型を成し、メイヤの突き出した真白の剣へと衝突。
一瞬の拮抗の後、水晶の剣がメイヤの左胸を大きく穿つ。

しかし、メイヤ持つ真白の剣もヴィカルトの左肩を貫き、更に。
取り出した二本目の長方形の箱を展開、瞬時に広がる手裏剣で、自分とヴィカルトの足先を突き刺し、地面に縫い付けた。

「今だ、イスラ!!」

557その他 ◆wxoyo3TVQU:2016/08/07(日) 11:30:52
【冥界】

「ねぇ、いいの?」

先を歩く弟にアネスは心配そうに呼びかける。

「・・・何が?」

「あの二人、残してきて良かったの?」

どうやらアネスはリトとサンディを心配しているらしい。無理もない、お互い初対面に等しいにも関わらず、既に揉め事を生じさせてしまってるのだ。

「大丈夫じゃない?」

「アンにしては珍しく適当じゃない」

「適当じゃないよ、確信もある。」

リトは事を荒立てたいわけではない。
四神を責めたが、本当は彼らに非がないことも分かっているだろう。
おそらく、闇の王子が真の悪でないことも。

「彼はちゃんと分別つくよ。ただ、今まで傷付きすぎて、自分がこれ以上傷つかない様に先に攻撃する癖が付いちゃってるだけ。」

相手が敵でないと判断すれば自ずと警戒を解くだろう。

「でも彼は沢山の人に愛されてる。そのことに早く気づけるといいね。」

リトが殻に閉じこもっている原因は両親に存在を否定された事にあるだろう。両親からの愛を求めるあまり、周りから向けられた愛情に気づけていない。

「アンってばまた悟りを開いたお爺ちゃんみたいなことを・・・」

どうしてこの子はいつも年齢と言動がそぐわないのだろう。
アネスは呆れ顔で弟を見つめるも、とうの本人は優しい笑顔を返すだけだ。

「愛し方を間違えなければ良かったんだけどね、あの人も。」

558その他 ◆wxoyo3TVQU:2016/08/07(日) 11:31:38
-----

「失礼します。」

扉をノックし、中の様子を伺う。彼女の声が耳に届くと、それまで書類と対峙していた視線がすぐに彼女のもとへ向いた。

「ミシェルか。」

彼女の姿を見つけるや、部屋の主、ルイは傍に控えていた従者に指示し車椅子が入室しやすいように扉を開けてくれる。

「どうだ?」

「とても頑なで・・・」

「だろうな。」

ルイの問いにミシェルが苦笑いで返すと、ルイも予想していたとばかりに溜息を吐く。
"そちら"も、"こちら"も、先は長そうだ。

「例の方は・・・」

ミシェルも同じことを気にかけている様子。ルイは首を振って答えて見せた。

「無理だ。本人にその気がない。」

まったく困ったものである。死者ない迷い人が二人いるだけでも面倒なのに、死者であるにも関わらず"逝き先"が定まらない者が来るとは誰が想像出来ただろうか。

人が死した後、天の国へ逝くか地の国へ逝くかは生前の行いによる査定が多くを占めるが、悪人か、善人か、も判断基準になる。
大抵、人の本質は生前の行いと比例しているのだが・・・

「行いは非道極まりなく、地へ送るに値する罪状だが・・・」

今こうしてルイを悩ませている者の魂はとても清廉で、本来ならば天に逝く権利をもつことの出来るものであった。

「行いと本質がまったく合致しない。本人は地を望んでいるが、安易に即決するには問題のある清さだ」

せめて、この歪みを作った原因と対峙すれば何か掴めるかもしれない、しかしそれさえも本人が拒んでいる。
もっとも、ミシェルの様子から察するにその"原因"の方にも不安が残る。

「彼は今どちらへ?」

そう言えば当事者の姿が見当たらない。
ミシェルがあたりを見渡すと、傍らにいた従者が口を開いた。

「判決が出来ない以上この部屋に留まっていても仕方がないからな、ルイが追い出した。」

"追い出した"とはあまりに乱暴な言い分だが、実際そうした言葉がふさわしい行動に出たのだろう。
ルイのことだ。相手に向かって邪魔などと発言したに違いない。目障り、とまでは言っていないと良いが・・・

「自由にしていいと言っただけだ。」

失礼を働いたのではないかと危惧するミシェルの心を察したのだろう。
ルイはすかさず口を挟めば、面倒くさそうに息を吐いた。

「いずれにしろ、いつかは会う必要がある。互いが互いの鍵を握っているからな。」

559リト ◆wxoyo3TVQU:2016/08/07(日) 11:32:14
【冥界】

「話すったって・・・」

一体何を?
リトの戸惑いをよそに、サンディの話を聞く体制は万全で、今か今かと待っている。

「見合いかよ・・・」

何故初対面の相手につらつらと身の上話をしなければならないのか。しかし、こちらが望んだことでは無いとは言えサンディの話を聞いてしまった。ここは自分も打ち明けるのが筋なのだろう。納得はいかないが。

「・・・あんたと違って俺は両親に対して楽しい思い出なんて何もない。姉達はどうか知らないけど、少なくとも俺はあの二人のもとで育ってはないから。姉達が親代わり。・・・そんくらい。他に聞きたいことあんの?大した記憶なんてないからアンタの期待するような楽しい話なんて出来ないんだけど。」

560DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/08/12(金) 05:22:23
【マゼンダ邸】

「ちょっとちょっとぉ〜、久しぶりの再会なんだからギスギスするのは無しでいきましょうよ〜」

入室するや、マゼンダは不機嫌な態度を隠そうともせず毒を吐く。
そんなピリピリした空気を和ませようと、DDは努めて明るい口調で発言するも、頭の中はどうやって話しを切り出したものかと思案していた。

普段ならば「元気だった?」とか世間話から始めるところなのだが…、マゼンダが乗り気でないのは明らかなので、回りくどいやり取りはない方が良いだろう。

「じゃあ単刀直入に…」と、足を組み、真剣な面持ちでマゼンダを見つめた。

「同胞の気配が一つ消えたことはアナタも気がついているとは思うけど…。
メルちゃんがオリジンにやられたわ」

やはり口に出してしまえば、その事実に再び対面する形となり気が重くなる。しかし目を背けるのは、それこそメルツェルに申し訳が立たない。
DDは静かな声音で先を続けた。

「ずっと死んだものと思っていたオリジンが、なぜ今になって姿を見せたのかは分からない…。
ただ彼は嘗て分かれた12の力を再び一つにしようと考えている。
要はアタシ達長老を喰らい、己の中に吸収しようとしているってわけ。
直にアナタも狙われるわ」

オリジンの暴虐を許せば、十字界は崩壊する。
その前にフィアやシャムは彼らの軍勢を討とうとしていることをマゼンダに告げる。
そして、自分はまだその決心がつかないと言うことも。

「今日ここに来たのは、それについてアナタの意見を聞きたかったから。
そして出来ればこの事態を収束するため、アナタの知恵と力を貸して欲しいの」

561アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/08/12(金) 05:23:36
【龍穴遺跡】

ラセツの一撃を防ぎ、吹き荒れる風と共に一人の青年が目の前に現れる。
アグルは一瞬きょとんとした表情を浮かべるも、直ぐに何が起きたかを察し、目を細めた。

「…おせーよ」

それは咎めているような口調でもなければ、呆れ半分に言ったものでもなかった。
レックスが復帰してくれたのは心強いことだ。

しかし…、と次にはその視線は足元へ。
部屋に雪崩れ込む水は、今ではもう膝下ほどの高さまで上昇しており、そう悠長にしている時間もないことが窺える。

「レックス…、今から3秒数えたら目を瞑れ」

そう小さな声で囁くや、アグルは先程までと同様、己の筋肉組織を活性化させ、前方へ飛び出した。

「じゃあ援護は任せた!さっさとケリつけんぞ‼」

水飛沫を上げ僅か一跳びでラセツとの距離を詰めれば、その勢いのままに相手の顔面目掛けて右ストレートを放つ。
しかしそれは直接的な攻撃を狙って仕かけた訳ではない。
アグルの拳はラセツに触れる寸前のところで止まったかと思うと、次の瞬間、そこから痛いほどの目映い光が溢れだした。

目眩ましだ。
まともに見れば人間の網膜など一瞬にして焼ききれてしまうだろう。

そしてアグルは間髪入れずにラセツの左斜め後方へ跳ぶ、振り向き様に大きく槍を回し斬撃を放った。

562レックス ◆.q9WieYUok:2016/08/20(土) 10:36:36
【東南地域/龍穴遺跡】

瞼を固く閉じても分かる、強烈な閃光。
アグルの言葉通り、レックスはきっかり三秒間目を瞑る。

しかし、動き出すのは三秒後では無い。
瞼越しに光を感じながらもレックスは大きく跳躍。

空中で大きく三叉鑓を振りかざし、ラセツへ狙いを定める。
矛先に空気を集め、圧縮に次ぐ圧縮を。

高気圧下で圧縮された大気は熱を持ち、一気にその暈を増そうとするも、レックスはそれを許さない。
超高気圧下の元で高熱を放つ大気は臨界点を超え、眩い光を放った。

高電離気体、それは即ちプラズマ。
風を司る四神の一角、フレイヤの力と魂を宿るレックスがプラズマを作り出すとは誰も予想出来なかっただろう。

しかし、彼の持つ矛先には、紛う事無い光の塊が見える。
圧倒的な光量と熱量を持つそれを、レックスは落下と同時にラセツへと叩き付ける。

アグルによるフェイントからの閃光による目眩ましと、それに続く横薙を手甲で防いだラセツは、レックスの動きに反応出来ず、プラズマが着弾。
眩い光と轟音、そして衝撃波が周囲を物理的に揺らす。

更に、衝撃波の後に再び爆発。
超高熱のプラズマと、流れ込む冷水が触れ合う事によって水蒸気爆発が起きたのだ。

連続する爆発が止み、白靄越しにラセツの姿を確認したレックスは左手を伸ばす。
既に水嵩は腰程にまで増えており、いよいよ時間が無い。

「……アグル、後は頼みましたよ。」

白靄が晴れるより速く、レックスは伸ばした左手で前方はラセツの周囲の気圧を操作し、小さなプラズマを次々と生み出し、小規模ながらも複数回水蒸気爆発を起こし続けた。

水蒸気爆発はその威力もさる事ながら、瞬間的に多量の水分を気化させる為、周囲の気温を急激に下げていく。

初撃の大きな水蒸気爆発から続く小さな水蒸気爆発は、爆発のみならず周囲の気温を急激に、それこそ瞬間的に摂取零度以下に下げ続けた。
その結果は、ラセツを中心に生まれる巨大な氷塊だった。

「本来ならばこのまま押し切り、彼女を倒せる筈だったんですが……流石、単独で遺跡に遣わされただけありますね。」

水蒸気からの気化冷却を行い続けながら、レックスはアグルへ声を掛ける。
勿論、その視線は氷塊から離れない。

「試合は引き分け、勝負は負けと言った所でしょうか。」

そして、伸ばしたままの左手とは逆。
三叉鑓を握る筈の右腕は……無い。

563レックス ◆.q9WieYUok:2016/08/20(土) 10:37:42
「プラズマを叩き付けたと同時のカウンター、見えてなかったのが幸いか片腕が吹き飛んだだけで済みました……」

そう、レックスの一撃と同時に、ラセツもまた手刀を放っていたのだ。

「水嵩はもう胸元まで、時間はありません。
僕がこのまま抑えますので、君は脱出して下さい。」

吹き飛んだ右腕はもう見つからないだろう。
傷口から溢れる血も致死量に差し掛かり、遭遇時に受けた一撃で内臓も破裂している。

時間的にも、自分はもう助からない。
ならば、やるべき事は一つ。

「……アグル、もう一度言いますね。」

口腔内、鼻腔からも溢れる血塊を肩で拭い、レックスは薄く笑みを浮かべた。
その薄い笑みには、決意と、覚悟が見て取れる。

「“後”は、頼みましたよ?」

564イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/08/22(月) 19:35:14
【砂漠地帯、龍穴遺跡】

「メイヤ…ッ!」

メイヤの剣戟には鬼気迫るものがあった。
捨て身の特攻。そしてついに、彼はヴィカルトの動きを止めた。
暫し唖然としていたイスラも、メイヤの声を耳にすればハッと我に返り、弾かれるように前に飛び出した。

しかし…。

(二人の距離が近い…。このままではメイヤにも俺の攻撃が…)

あともう一歩のところで二人の射程距離内に入る。
退くか、攻めるか。一瞬にも充たない時の中、イスラの心は二択の間で揺れ動いた。

(いや…)

迷うな。彼が決死の覚悟で作ってくれた好機。無駄には出来ない。
イスラは最後の一歩、地を思い切り踏み込んだ。

直後、世界が無音で包まれた。
聴力や痛覚、時間の流れさえも、余計な感覚は全て後ろへ脱ぎ捨てて。
手の内で輝く神刀、火乃加具土と月読。二刃が交わり一つに成った刀でメイヤの背後から居合いを放つ。

「ハァアッ‼」

今まで一度として成功しなかった、障害物の向こう側に置かれた対象物"のみ"を斬る技。

「天叢雲剣、金翅鳥―…」

紅き剣閃はメイヤをすり抜け、その向こう、ヴィカルトの胸を貫いた。

565サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/08/22(月) 19:36:31
【冥界】

「なるほど、お見合いかぁ。面白いこと言うね」

リトの言葉を耳ざとく拾ったサンディは、何が面白かったのか愉快気にケラケラと笑う。

しかし人の家庭環境には多種多様な形があるのだと、今更ながらに驚かされた。

両親から十二分な愛情を注がれて育ったサンディは、それが当たり前のことなんだとずっと思っていた。
親が子を愛すのは当然だし、また子が親を愛すのも当然だと思っていた。

その観念を抱くにあたった経緯は彼女が幸福であった証だが、それ故にサンディはリトの家庭環境が上手く想像できないでいた。

何故リトは両親と離れて暮らしていたのか。
それを訊ねることは簡単だが、同時に彼を不快な気持ちにさせてしまう可能性もある。
何か複雑な事情があるのかもしれないし、あまり詮索はしない方がいいのかもしれない。

だが、これだけは聞かずにはいられなかった。

「リト君…、ご両親と一緒に過ごしたいと思ったことはなかったの?」

サンディは小首を傾げ、リトに問いかけた。

566メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/08/26(金) 16:37:51
【東南地域/龍穴遺跡】

イスラの抜き放つ渾身の一刀、紅き剣閃。
金翅鳥……ガルダの名を冠するその一閃は確かに、ヴィカルトの胸元を貫いた。

味方であるメイヤには傷一つ付けず、しかし敵であるヴィカルトだけを貫くその技は、正に奥義と呼ぶべきか。

「……見事、だ。」

予想外、そして予測外の一撃にヴィカルトは驚愕の表情を浮かべるも、それも一瞬。
胸元に開いた傷口から溢れる朱の滝に目を落とし、フッと笑った。

溢れ、噴き出す朱によって血に染まるメイヤと、その肩越に見えるイスラへ視線を投げる。
神経系を珪素系物質に置き換え、文字通り光速の反射神経を得ているヴィカルトですら反応出来なかった一撃は、強敵との戦いを望む彼にとって満足出来るモノだろう。

水晶剣を支えにしつつも膝を着くヴィカルトと自身の足先を縫い付ける手裏剣を抜き捨て、メイヤもまた、よろめく。
その姿を見上げ、ヴィカルトは剣の柄を握り締めた。

「私の敗北だ。
だが、与えられた役割だけは果たさせてもらう!」

567メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/08/26(金) 16:38:44
その瞬間、地に突き立てられた水晶剣の切っ先から膨大な量の水晶の花……刃の如く鋭利な花弁と、鋭い棘を持った薔薇の群れが噴き出した。
それは瞬く間に広がり、遺跡全体を埋め尽くさんとばかりに花を咲かせ、蔦を伸ばしていく。

奇しくもそれは、崩壊しつつあった遺跡内部を支える役となったものの、最も重要である遺跡の起動装置周辺は誰一人近付けない程にまで薔薇が生い茂っている。

「くっ……これは流石にっ!!」

噴き出し、増殖し、咲き誇る刃の如き薔薇の花弁を、メイヤはよろめきながらも剣で防御し後退していく。
最深部を最も強固にし、周辺を埋め尽くす薔薇は言うなれば薔薇の結界か。

それを生み出すヴィカルトを攻める余力も、時間も無い。
見れば薔薇の結界が支えになってはいるものの、遺跡全体が揺れ、崩落の兆しを見せている。

「イスラ、脱出を!!」

迷う時間は無い。
メイヤは瀕死の身体に鞭を打ち、薄らぐ意識の中、イスラへ声を掛ける。

そしてーー……

「間一髪、ギリギリの所だったな。」

遺跡から数十km離れた地点にある空挺師団分隊の野営地で、髭面の男が安堵の息を吐いた。
彼は後詰め部隊として、イスラとメイヤと共に派遣された分隊長だ。

遺跡から脱出した二人を回収、保護したのも小一時間程前。
重傷であるメイヤを衛生兵に託し、部下に周辺の状況を探らせていたのだが……

「どうやら遺跡は崩落、周辺一帯を巻き込んで地下奥深くへ沈んだようだ。
……残念ながら、遺跡の起動も確認されたがな。」

報告を受け、分隊長は苦虫を潰した様な表情を浮かべた。

「まぁ、アンタら二人が何とか帰って来れただけでも良しとしよう。」

568アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/09(金) 04:29:44
【東南地域】

覚悟を決めたような、信念のこもったレックスの瞳を見て、アグルは察した。

「レックス…、お前…」

こんな時、どんな顔をすればいいのだろう。どんな言葉をかければいいのだろう。

分からなかった。
ただレックスの意志は強固としたもので、止めることすら憚られた。

そうこうしている内に水嵩はどんどん上がってくる。
時間がない。

アグルはほんの数瞬迷った末、レックスから視線を切った。
結局彼の言葉には返事を返さなかった。
舌打ちだけを残し、遺跡から脱出した。



【砂漠地帯】

「そうか…」

報告を受けたイスラは短く応え、重い息をついた。

「すまない、力が及ばなかった…」

遺跡は起動。加えメイヤにも深手を負わせてしまった。弱音を吐きたいところではあるが、悔やんでも結果は変わらない。

イスラは顔を上げ、分隊長の髭面に視線を向けた。

「メイヤの容態はどうだ?
それと…、アグルとレックスの方はどうなってる?」

569 ◆.q9WieYUok:2016/09/10(土) 01:37:17
【砂漠地帯】

「いや、アンタらは良くやったさ。
ただ、相手が悪かっただけだ。」

イスラの視線を受け止め、分隊長は神妙な面持ちで続けた。

「通信用の無線機から聞こえた声から、相手は裏切り者のヴィカルトだとわかった。
師団でもアイツと互角に戦えるのは団長だけさ。
そんな相手と戦って、生きて帰って来れたのは僥倖……いや、アンタ達も相当な手練れってこった。」

そして、そう気を落とすなとイスラへ声を掛け、イヤホンから聞こえる報告に耳を澄ませーーー

570レオール ◆.q9WieYUok:2016/09/10(土) 01:38:20
ーーー

「……作戦は失敗、レックスは生死不明、メイヤは重傷で絶対安静、か。」

バルクウェイに駐屯する師団の母艦内、数ある会議室の一つでレオールは苦い声を絞り出した。

「すまない……俺の見通しが甘かったばかりに、君達の仲間を失ってしまう事になってしまった。」

同時進行していた二つの作戦は両方共に失敗。
先に報告を受けていた砂漠地帯での戦いからさほど時間を置かずに、東南地域の遺跡の稼働を確認したのも2日程前。

憔悴の色を浮かべながらもイスラとアグルの前に現れたレオールは、二人に頭を下げた。
しかし、酷だと思いながらもレオールは現状を二人に説明する。

「砂漠地帯、そして東南地域の遺跡稼働によりいよいよ世界の殆どが外郭に包まれてしまった。
各地では混乱による暴動も起きている。
幸いにもバルクウェイはまだ、陽の光が当たるがそれも時間の問題だろう……」

作戦の失敗、それは世界が闇に閉ざされる事を意味していた。
この2日間、レオールはスポンサーである中小国家と連絡を取り合いつつ、各地に散った偵察隊からの情報を受け、それらを纏めた上で次なる作戦を練っていた。

だが、それはアグルとイスラの前に顔を出せなかった言い訳には出来ない。
本来ならば、自分の立てた作戦により仲間を失った二人へ、真っ先に謝るべきだったのだが……

「今先程流した映像により、黄龍の居城が外郭上に現れた事が確認出来た。
表立って動く事から、向こう側は最終段階に入ったと予測出来る。
そこで、我々空挺師団は近隣諸国及びスポンサーである中小国家と共に軍を編成、外郭を突破し総力戦を仕掛ける事とした。」

それが何とか功を奏し、新たな作戦を決行出来る目処がついたのだった。

「だが、この作戦の頭数に君達二人は入っていない。
……これ以上、君達に戦いを強制する訳には、と思ってな。」

一応は作戦の詳細書類を配り、レオールは続ける。
その言葉が、それを続ける自分が如何に狡いかを知りながらも、それでも彼は続け、問い掛けた。

「だが、一つ伝えておきたい。
闇の巣から巨塔がそびえ立った。
外郭を突き破ったそれは、ほぼ唯一、地上から外郭上へ続く道となっている。

二人は、これからどうする?」

571リト ◆wxoyo3TVQU:2016/09/10(土) 13:16:29
【冥界】

「親という存在がどんなものか、そもそも俺は知らない。」

物心ついた頃から、いや、それよりずっと前から虐げられてきた。きっとこの少女には理解出来ないだろう。親に愛されることがどうゆうものか、自分に理解出来ないように。

「両親と離れて過ごすことが俺自身の身を守る為にも必要なことだった。一緒に過ごしたいなんて考えたことすらない。そう考えるのは、両親に対して少しでも情がある奴だけだ。」

リトの声はとても淡としていた。ただ事実のみを伝えるかのように。

「母は俺を生んで壊れてしまった。父は母を壊した俺を恨んだ。俺を敵視する二人と過ごしたいなんて思うはずもない。」

"寂しいの?"

そう口にした時、脳裏に少女の声が聞こえた。
思い返すと・・・以前同じように両親について聞かれた事がある。今と同じ答えを返した時、少女はリトの手を握り問いかけたのだ。

"どうしてそう思う?"

"そう言って自分を納得させてる、そんな感じ。仕方ないんだって。"

自分も同じだったから分かるのだと、少女は笑った。自分は神の子だと言われ両親と引き離された。両親は会いにこなかった。自分はどうしても会いたくて、社を抜け出して会いに行ったことがある。しかし久しぶりに会った両親は、自分を人間として見てくれなかった。村の人と同じように、神聖なものを見る目で、仰々しく接してきたのだと。

"境遇は少し違うけど、気持ちは同じだよ。リマね、凄く寂しかった。パパとママ、リマのこと見てくれなかった・・・"

そして少女は言ったのだ。

"リッちゃんも素直になっていいんだよ?寂しいって、ちゃんと言っていいんだよ?"

ずっと隠してきて、自分さえも騙してきた気持ち。
彼女に気付かされた。

「寂しくは、あった・・・かもしれない。」

暫しの沈黙のあと、リトはポツリと呟いた。
質問されなければ一生口にすることがなかったであろう両親への気持ち。

「でも、かと言って何が出来るわけでもない。そもそも、俺は闇の継承者が必要だったからつくられた。俺の気持ちなんて考慮されない。」



【いつも更新おそくて申し訳ないです( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )
いきなりですが、以前イスラさんが描いてくれたリマセナの陰陽現したみたいなイラスト、LINEのプロフ画像にさせて貰っちゃいました|ू・ω・ )】

572マゼンダ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/11(日) 13:06:38
【マゼンダ邸】

ギスギスはなし、そうDDは言うが、そもそも再会したところでマゼンダにとって利点はない。一生疎遠で良いくらいなのだからその申し出を受け入れる気など毛頭なかった。
ところでこの男、女?・・・性別が曖昧であるDDはマゼンダにとって奇妙な存在である。
女は嫌い、男は条件によって善し悪しが変わるが、DDはどちらにも属さないため良くわからない。少なくとも女ではない為たしかにこのメンバーでは1番マゼンダが話に耳を傾ける対象ではあるだろう。

そしてDDの話を聞き、不機嫌な表情を崩さぬままマゼンダはさらに眉をひそめる。

「ノワールはどうなんだい?」

オリジンは自分達を狙っている。では、ノワールは?自分達と違い、ノワールはオリジンの1部ではない。

いや、答えは聞かずとも明白だ。

「あの子が絡むとヴェントは面倒だからね・・・」

いつも冷静であるに関わらず、ノワールの事となると我を忘れ暴走する。それこそ自分の命など省みず。

「アンタが何を悩んでるのか知らないけど、聞く限りじゃオリジンは私らを生かすつもりなんて毛頭ない。どちらかが生きるにはどちらかが死ぬ。共存なんて無理。であるなら返り討ちにするしかないんじゃないかい?私はまだ死ぬ気なんてないよ。」

十字界に思い入れなんてないが、無くなるのも困る。

「本当はアンタ達と馴れ合うなんてごめんだけど、仕方ないね。今回は手を貸してやってもいいよ。・・・あいつの目もあるしね。」

マゼンダは溜息をついたかと思えば、嫌な事を思い出し苦い表情を作った。
いつぞやに会ったルイとかいう男。あれに睨まれると面倒なことになると直感した。
ジーナ。あの女が一目置く存在は侮れないと警鐘を鳴らす。
どうやらあの日自分が手を出した少年はあの男が目をかける者だったらしい。幸か不幸か、他のいざこざに紛れて大事は免れたが、あの時は運良く命拾いしただけ。次はないと警告も受けた。

「勘違いするんじゃないよ、今回だけだからね。」

573イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/17(土) 20:14:48
【バルクウェイ】

以前バルクウェイで新旧含めた四神のメンバーが顔を揃えた時は壮観だったものだが、今ではそれも見る影がない。
ナディアやバロン、別行動を取っている連中は仕方がないにしても、まるで櫛の歯が抜けるように人がいなくなっていった。

アグルに至っては、一番やる気のなかった自分が今ここにいるのが不思議だとさえ思っていた。…いや言い換えれば、一番やる気がなかったからこそ残ってしまったのかもしれない。

その傍らで、戦いを強制しないと言うレオールの言葉を受け、イスラは今それを言うのか、と苦笑を浮かべた。

「もうここまで来たら最後まで突っ走るしかないだろう。ここでやきもきしてただ結果を待っているよりかは幾分かは気も楽だ」

そうして書類を受け取りながら、イスラはアグルに目を向ける。
こちらの返事を窺うかのようなその視線。アグルは沈黙の後に言った。

「行くよ。黄龍のとこに行くには闇の巣を通らないとなんだろ?
俺はそこに用がある」

574サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/17(土) 20:30:33
【冥界】

「リト君ってさ、お父さんとお母さんが"そう"なっちゃったの…もしかして自分のせいだって思ってない?」

リトの口から両親の話を聞くにつれ、サンディの表情は何とも言えない怪訝なものに変わっていく。
彼女は控え目といった様子で尋ね、そして続けた。

「だからご両親の態度も仕打ちも、仕方がないことだって黙って受け入れてるんじゃないの?
たぶん…喧嘩だってしたことないんじゃないかな」

寂しい、と言えなかった彼が、面と向かって不満や反論を口に出来たとは考え難い。
もっともそんなことを言おうものなら、彼の立場は今よりももっと危ういものになっていたかもしれない。
子供は非力ゆえに大人の言いなりになるしかないのだ。

だがリトはもう幼い子供ではない。その気になれば理不尽な抑圧だってはね除けられる筈だ。

「さっき自分の気持ちなんて考慮されないって言ったよね。
でも言葉にしなきゃ、話し合いの場が生まれることもなければ、相手がリト君の気持ちに気づくことだってないんだよ。

今のリト君、色々溜め込み過ぎてて何か風船みたいなんだよね。いつか破裂しちゃうんじゃないか〜ってね」

つまり何が言いたいかというと…。
サンディは立ち上がり、リトに詰め寄った。

「大丈夫、リト君は悪くないよ!それに、もっと怒っていいと思う!
もっと我がまま言っていいし、我慢だってしなくていいんだよ!
リト君は闇の継承者である前に、一人の人間なんだから!自分の意見を言う権利だって何だってあるよ!」



【マジか… ( ´゜Д゜)・;'.、(吐血
そんなものよりもっと上手い方のイラストを画像にしなさいよぉ!←】

575DD ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/17(土) 20:48:33
【マゼンダ邸】

「やっだぁ〜、マゼンダったら、それツンデレの常套句〜」

どうやらマゼンダは渋々ながらも要求を承諾してくれたようだ。
DDは茶々を入れながらも、彼女にキスを投げる。

「でもアナタならそう言ってくれると思ってたわ、アタシ達はもうソウルメイトよ!」

予想よりも早く話がまとまってくれて助かった。
これでマゼンダはよしとして、残るはヴェントのみ。
DDはフィアに目配せしつつ、ソファから腰を浮かせる。

「じゃあ次はダーリン(ヴェント)のところに行って事情を説明しないとね。
ねえマゼンダ、あなたダーリンが今どこに居るか知らない?」

576ノワール ◆wxoyo3TVQU:2016/09/19(月) 21:12:12
【ポセイドン邸】

茂みより現れたジュノスを見るや、奇怪なものを見た時の嫌悪感に満ちた表情を浮かべたノワール。ルドラが目前へ姿を見せた時は一瞬眉を潜めるのみであった。ルドラの仕出かした件は彼が思っているほどノワールは重く見ていないらしい。

かと言ってどちらも信用出来ないことには変わりない。
だが、選り好みしている場合でないとも事実。

「・・・。」

命をかけると言ったルドラの瞳に嘘はなかった。
一方、ジュノスはセナの為であればどんな事でもやってのける男。娘の救出が結果的にセナの秘密を守ることに繋がるのなら、その身をなげうってでも成し遂げるだろう。

「分かった」

暫しの沈黙の末、ノワールは頷く。

「我が娘の命、そなたらに託そう。」

どちらにせよ自分は身動きが取れないのだ。今は一刻を争う事態。この2人にかけてみるしかない。

「じゃが、そなた・・・」

ノワールはまっすぐと、ジュノスを見据えた。

「娘の存在を、いつまであやつに隠しておくつもりじゃ?」

約束は守る。無事に娘が帰ってきたなら自らの口でセナに真実を告げることはしない。
しかし、秘密はいずれバレるものだ。このまま黙っていることは、果たしてセナにとって幸せなのだろうか。

「あやつならまだ良かろう。じゃが、娘の存在を知るのが、王子ではなく小娘の方だとしたら?」

心から信じているセナの不貞を、何かの拍子に知ったとする。リマの衝撃は計り知れないだろう。
せめてセナ自身の口から知らされた方が、まだ修繕の余地があると思うが・・・

「まぁ、あの2人の関係が崩れようとわらわに不利益はないからの。どうでも良い話ではあるが。・・・そうじゃ。」

ノワールは思いつき、悪戯な笑みをジュノスヘ向けた。

「その時は、我が子に父親を取り戻してやるとしよう。」

ノワールにとって必要なのは子供のみ。子供さえ取りかえせれば構わないと思っていることに嘘はない。
しかし、黒十字に恨みがあるのも事実。このまま見逃してやるのも惜しいのだ。

「答えは保留にしといてやろう。戻ってくるまでに考えておくのじゃ。」

子供を救い出しても、救い出さずとも、ジュノスにとって不安の種は消えぬのだと暗に示す。

「小僧、何をグズグズしておる。行くぞ。」

ノワールはそう意味深な言葉をその場に残し、アブセルを携え戻っていった。


【いえ、私にはイスラさんのイラストが最高の絵なので( • ̀ω•́ )✧
また描いてください(*ˊૢᵕˋૢ*)←図々しい】

577マゼンダ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/19(月) 21:20:54
【マゼンダ邸】

ダーリン。その言葉にマゼンダの眉がピクリと動いた。

「・・・知らないねぇ。アンタのダーリンなんて。」

ダーリンが誰を指すのか、そしてその者の居場所も知っている。
しかし教える気はない。

「私の知る限りじゃ、そもそもアンタにダーリンなんてもんは存在していないね。いつ出来たんだい?アンタを相手にするなんてかなりのもの好きじゃないかい。」

578レオール ◆.q9WieYUok:2016/09/20(火) 13:53:22
【バルクウェイ】

狡いとわかっていた、彼等は何をどう選び進むのかもわかっていた。
だからこそ、二人の返事を聞いたレオールは頭を下げたまま、動かない。

否、動けない。
彼は頭を下げたまま声を出す。

「……本当に、すまない。
闇の巣にそびえ立つ塔……黄昏の塔での戦いは、世界の命運を握る鍵だ。
だからこそ、君達にしか頼めなかった。」

そう、それは言わば“黄昏の鍵”だ。
ソレを手にした者こそ、世界の命運を、征く末を決めると言っても過言ではない。

「人員、物資、援助出来る事は何でもする。
気軽に……その、声を掛けてくれ。
此方の準備、総力戦まではまだ暫く時間がある。
何かあれば呼んでくれ。」

レオールは傍らに立つバッハに顔を上げる様に促されたが、それを拒む。
それは、イスラとアグルが会議室を後にするまで続いた。

ーーーーー

街中はいつも以上に騒がしかった。
夕暮れ時から喧騒は大きくなり、露天や屋台に人集りが出来る。

空挺師団を核に編成される一大戦力、周辺諸国の軍隊がバルクウェイへ集結しているからだろうか。
見慣れない人種、聞き慣れない言葉が騒がしさをより一層加速させていた。

「この手には何もなかった、刃を振るい、血塗れの手じゃ何も掴めなかった。
ずっと、そう思ってた。

幼子を寄り代に異界の悪神を降ろす計画、自分がその為に産み出された存在……
それこそ、イオリの子、死産したその子を禁術で蘇生し、急速培養されたのが自分だと知った時は本当に、生きる意味は無いと思った。」

そんな様子を遠目にしながら、オープンテラスの席に座るメイヤは口を開く。
一時は危篤状態にまで落ちたが、師団の医療設備により持ち直し、今では何とか動ける程にまでなっていた。

「でも、手を伸ばせば届く、この手でも掴めるモノがある。
サンディとこの街の露店を回った時、そう思えた。

だから、俺も闇の巣へ向かう。
サンディは暗黒の渦に消えた、なら、ありとあらゆる闇が集まるあの場所に行けば……闇の巣へ飛び込めば、あの子を見付けれると思うんだ。」

そう、サンディはきっと生きていて、闇の中から抜け出せずにいる筈だ。
それに、闇の巣には兄弟子であるユーリと、自分と同じ忌み子……闇を狙うクウラも姿を現すだろう。

「因縁を断ち切り、世界の命運も未来も掴み取る。
本当に欲しかったモノ、俺はその為に戦う。」

先の戦いで負った傷、その後遺症は大きい。
伸ばした左手は震え、眼帯で隠された左目は光を捉えない。

メイヤは空を掴む左手を下げ、同席するイスラとアグルへ薄く笑みを向けた。

「ガラじゃなかったな、こんな風に話すのは。」

579イオリ ◆.q9WieYUok:2016/09/20(火) 16:13:40
【虚空城】

黄龍の居城、虚空城。
闇に包まれつつある地上から遥か上空、外郭上に姿を現したその城は、数百もの多重結界により守護されている。

とある世界で、七大魔王と呼ばれた者の居城と全く同じその中には。
羅刹の王と水晶を操る凶剣士。

四凶と、不死身の兵団。
そして、四霊の二柱が陣を敷いていた。

「ま、十分準備はしたしな。
後はヤるだけだ。」

まさに要塞堅固、その城を眼前に、イオリは不敵に笑った。
そして、彼とその部下が乗る黒塗りの巨大な飛空挺は大空を切り裂き、多重結界を貫き、世界を統べる者の城へと乗り込んだ。

不時着どころか墜落と言っても過言ではなく、飛空挺は虚空城へ文字通り突き刺さった。
あまり衝撃に船の翼は居れ、船体は崩壊する一歩手前にまで大きく歪む。

そんな船を乗り捨て、イオリ達は虚空城へ侵入し、城内を駆け、進んでいく。
イオリを筆頭に、大罪の名を冠する傭兵達と、黒装束を着込む手練れの者達。

そして、彼等を迎撃する為に現れたのは不死身の軍団……処刑人の剣に所属していた科学者達から得たデータを基に、虚空城の設備により産み出された者達。
青い髪はデータの大元、ヴァイト由来のもの。

彼の持つ超再生能力を更に強化した巨躯に、数々の異能力を持つ彼らは、手強い。
更に、大量に複製培養された圧倒的な数の暴力は敵と認識した者を文字通り粉砕するだろう。

しかし、そんな軍団を前にしてもイオリ達が臆する事は決してない。
イオリの号令の下、傭兵達が、黒装束の強者達が勇猛果敢に進んでいく。

傭兵の頭、禿頭のグレゴリオがその姿を竜に変え、猛火を吐き出した。
その隣、狼男のヴァンはその爪牙で敵を切り裂く。

クウラの兄は狂笑を浮かべ、身に宿る闇を全開に。
溢れ出す闇百足の群れが敵軍団の脚を、腕を絡め取る。

更に、動きを止めた敵軍を、グレゴリオの双子の娘達が数多の刃で屠っていく。
勿論、黒装束達も負けず劣らず撃破を重ねる。

その上空を、イオリは蒼焔の翼をはためかせ、疾り抜けた。

ーーーーー

「さぁさぁ次に出て来るのはどちらさんかねェ!?
デコメガネよォ、俺はテメーを待ってるんだが!」

軍団の第一陣を抜けた先、鋼鉄の扉を斬り捨て、広がる暗闇へイオリは声を投げた。

580ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/09/22(木) 15:16:29
【私信ですが、昨日、無事に子供が産まれました!】

581イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/22(木) 18:25:09

【産まれましたか!ヤツキさんおめでとうございます!(*^O^*)
男の子ですか?女の子ですか?


それから…ジュノスとかも遺跡遠征の方に回したかったけど、もう塔が建っちゃったのね(笑)
ストーリー的には佳境っぽいけど、どうやってナディア組とメイヤ組を合流させよう?
あと、吸血鬼オリジンは黄龍達とは別に接点なし?

あとここから下はちょっとした提案…というか、自分のちょっと思い付いたことを唐突に書いてみようシリーズなんですが…

ゼロがこの世界そのものみたいな感じなんですよね?
ユニもその世界を形成する一部分的な存在だった、ってことにしてみてはどうでしょう?
例えばユニは世界の愛やら母性なんかを司る意志みたいなもので、何か知らんがゼロから切り離されてしまう。
その際にユニと言う人格と肉体を持ったはいいが、記憶も失い人間界をさ迷っていたところをバロンに保護された。

って、したらユニが重要人物っぽくなって、ユニの登場回数が増えて自分的にハッピー!なだけです。はい(・∀・)←
最終的にユニは記憶を取り戻し、自分の使命に戻らないといけないけど、リトと離れたくない!と乙女心の中で揺れ動く!なんてことを勝手に妄想してただけです。すみません】

582ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/09/22(木) 21:47:33
【陣痛本ちゃん来てから二時間半程のスピード出産ですた!
元気な男の子で、髪質、鼻と指先が俺そっくりだった(笑)
ありがとー!ここの二人には絶対報告しないとと思ってて!

っと、本編は取り敢えず進めれる所進めようかと思って、ちょっと急ぎ足だったけど……

これからの流れで考えてるのは、
闇の巣でのメイヤvsクウラ、アグルvsユーリ、イスラとヤツキの再開。
そこから塔頂上でステラvs先代組、終了後に頂上で一度全員合流。
その後は虚空城内にて決戦、この辺で残る四凶、四霊との決着、ラスボス戦へ〜

で、ナディア組は塔頂上で合流出来たらな、と。
vsステラ戦までに吸血鬼組の決着が着けば良いんやけど……
もしも決着つかなさそうなら、EXステージ、裏ボス的な感じで黄龍戦後にオリジン出しても良いかも?
その時はなんやかんや理由付け……世界ヤバいからオリジンより先にゼロ倒すわ、とかでも。
もしくはオリジンの足留めはジーナに任せろー!

とと、ユニの設定良いッスね!
それならば……世界の意志=ゼロ+ユニで、ゼロは陰、ユニは陽を司るとかどうでしょう?
分離してしまった原因は、100年前の戦いの影響とか。】

583リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/23(金) 06:54:55
ヤツキおめでとー!!!
凄い安産だね(笑)ヤツキに似た子ならイケメン確実だね!笑
温かい家庭を築いてください(*ˊૢᵕˋૢ*)


ユニの設定ありがとうございます!
てかあの子の登場数増えたらイスラさんハッピーなんですか(笑)
イスラさんが思いついた内容、自分が前にハマってたアドベンチャーゲームのサイドストーリーに似てて凄くテンションあがってます(笑)おかげでユニリトの方は結末まで一気に見えたのでお任せ下さい(*º∀º*)そう言えばあのゲーム、アニメ化もして後で観ようと思って録画してた筈なんだけどどこいったんだろ・・・最終回を観た兄が、主人公が翼生やして飛んでいったとか意味わからんこと言ってたから観るのやめたんですよね(笑)

584ユニ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/24(土) 00:22:51
【ポセイドン邸】

散々泣いて。泣いて。泣いて。
泣きつかれたのか、ミレリアは眠っていた。

様子を見に来たナディアはヨハンの葬儀が執り行われるまで寝かしておくと言った。

その場にいた者は部屋をあとにしたが、ユニのみがその場に残った。

何をするわけでもなく、ミレリアの寝顔をただじっと見つめている。

「・・・悲しい、ですか?」

悲しい。心が痛い。あの人はどこ?
ミレリアの心が叫んでいる。愛しい人を探している。

しかし、

「リト様はもっともっと、悲しいですよ。」

母親に否定される痛み。リトはずっと傷ついてきた。

「リト様は悲しくても、寂しくても、貴女みたいに泣けないですのに・・・」

ユニは呟き、ミレリアの眠るベッドに顔を埋める。

「どうしてリト様が分からないですか?リト様、ずっと迷子です。」

ユニは知っているのだ。

「リト様が生まれるのを、貴女は誰よりも心待ちにしていたです。」

大きくなるお腹を撫で、子守唄を口ずさむ。
元気に生まれておいでと優しく話しかけていた。

ユニは知っている。・・・何故、知っている?
リトと出会ったのはバロンを探すため地上に出た頃だ。それ以前の彼に会ったことなどない。それどころか、生まれる前の事なんて知るはずなどないのに・・・。

ユニはハッと起き上がる。

おかしい。

「リト様・・・」

最近なんだか違和感がある。変なのだ。
見えないものが見える。知らないはずなのに、初めて観る光景さえも既視感を覚えることがある。

ユニは部屋を飛び出し走り出す。
向かった先はリトが眠る部屋だ。

「リト様・・・リト様・・・!!」

ユニはリトに駆け寄り縋りつく。

「リト様・・・起きてくださいっ。いつまで寝てるですか!」

死人のように冷たい体。分かっている。簡単には目覚めないことは。

この異変を感じだしたのはそう、ちょうど、リトが贄として闇の巣に落とされた時からだ。

「ユニ怖いです・・・リト様助けて・・・」

いつもみたいに呆れ顔で、溜息を吐きながら「何を言ってるんだ」と、「お前の気のせいだ」と言って欲しい。
そうすれば、安心出来るのにーーー



【せっかくなので、闇の巣の一件で陰の方が力を強めたのと同時に、反動で対となるユニの記憶と本来の力も戻り始める感じにしました(*ˊૢᵕˋૢ*)】

585イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/24(土) 17:30:07
【ヤツキ>奥さんすげえw
ヤツキさんはいいパパさんになりそうやでぇ^^
子育て大変でしょうが、末永くお幸せに!

なるほどなるほど、流れ了解です。
オリジンはその時のストーリー進行によって臨機応変にやっていきましょうか^^それぞれの進行速度によってまた変わってくると思いますし

あと四凶のフロンはジルにぬっ殺してもらおうと思ってるので、勘定からは除外するものとしてください;


リマ>ユニ可愛いよ!癒されるよ!o(^o^)o⬅リトとのやり取りとかほっこりします(笑)
良かった…、大きなお世話なんじゃないかと心配しました;

確かにそれはとあるゲームのヒロインの設定をパクったものですが(⬅多分そのゲームではないかなぁ…?少なくとも主人公は翼生やして飛んでいかなかったしww
自分がパク…参考にしたのはアルトネリコ3ってゲームです。そのヒロインが挿入歌で「エグゼクフリップアルファージ」や「トキノスナ」って曲を歌うんですが
それはそれは良い曲なんですよー、よければ暇なときにでも聴いてみてください。和訳付き動画推奨です^^】

586アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/24(土) 17:34:58
【ポセイドン邸】

ジュノス達と別れた後、アブセルはセナ達を引き連れてリトの部屋へ戻ってきた。

「じゃあセイちゃんさん、とっとと着替え済ませちゃおうか。俺も、脱がせるのとか、脱がせるのとか、脱ぐのとか、手伝ってあげるから」

それもナディアにセナの身仕度を済ませてこいと言われたからであるが、リトの衣服を取りにクロゼットに近づいたところ、ベッドに伏せるユニの存在に気がつき、アブセルは眉を潜めた。

「おいユニ、お前またリトに引っ付いて…」

口を開き、そこで言葉を飲み込んだ。
ユニが今まで見せたこともない、まさに悲痛そのものといった表情を浮かべていたから。
アブセル唖然とし、やがてきまりが悪そうに言った。

「お前なあ…何て顔してんだよ。いつも阿呆みたいに能天気な面ぶら下げてるくせに」

587アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/25(日) 20:53:44
【バルクウェイ】

軒を並べる露店街の一角。イスラは夕映えに煌めく街の情景を瞳に映しながら、メイヤの声に耳をそばだてる。

「いや…俺も同じ気持ちだよ」

彼がこのように己の決意を口にするのは珍しい。それが何となく嬉しくもあり、励みにもなった。

「ただ身体の方はまだあまり良くないんだろう…?無理はしないでくれよ」

常人ならば剣を握ることさえ儘ならない状態であろう。本音を言えば、まだ医療施設で静養して貰いたい程であったが、メイヤにしてみてもそうは言っていられないのだろう。

「二人とも少し聞いてくれないか」

そんな折、今しがたまで沈黙を貫いていたアグルが不意に口を開いた。
彼は感情の読み取れない瞳を二人に向け、静かに先を続けた。

「闇の巣にはあいつ…ユーリがいる筈だ…。
自分勝手なことを言うようで悪いけど、あいつに関しては二人は手を出さないで欲しいんだ。
どうしても…あいつだけは俺の手で片をつけたいから」

――――――――


仲の良い兄弟がいた。
兄の名をレグナといい、弟の名をアグルといった。
二人は何をするのも一緒だった。
ご飯を食べるときも、夜眠るときも、遊びに行くときも、片時も離れたことがなかった。
それもそのはず。
二人はお互いの腰が繋がっていたのだ。

二人は今の状態に不満を感じたことは一度もなかったが、医者は一人を犠牲にしてでも分離手術をすべきだと両親に告げた。このままでは二人とも長くは生きられない、と。

両親は二人の手術を決意し、その選択を兄弟に託した。

「どちらが死ぬ?」

兄は言った。

「どっちでも同じだよ」

弟が言った。

「だって僕らは同じ存在だから。僕らはアグルでもありレグナでもあるから。身体が別れても、心は同じ場所にある」

そもそも二人の間には兄も弟もなかった。もっと言えば、お互いの名前すらどうでも良かったかもしれない。
ただ両親が決めたことだと、それに従っていた。

兄弟はチェスをして勝負をつけることにした。勝った方が生き続けると。

兄はわざと弟を勝たせた。
手を抜かれたことに弟は不服そうだったが、特に何を言う訳でもなかった。

「おやすみ、アグル」

「おやすみ、レグナ」

そうして二人は眠りについた。

次に目覚めた時、身体は驚く程軽く、違和感があった。
ただそれ以上に驚いたのは、何故目覚めたのが自分の方なのかと言うこと。
何の手違いか、今ここにいるのは兄のレグナであった。

588アグル ◆Hbcmdmj4dM:2016/09/25(日) 20:55:37
―――…

「兄は一族の当主になった。だけどそれから数年後、兄も一族も全員があいつ…ユーリによって皆殺しにされた」

アグルは淡々と語った。
西日の逆光が彼の顔に影を差し、その表情はよく見えない。
一連の話を聞いたイスラは少し言い難そうにしながら、彼に言った。

「その話を疑う訳じゃないんだが…、だとしたら君は…」

誰なんだ。とでも言いた気にアグルを見る。
アグルは口元にうっすらと笑みを見せた。それは自嘲の微笑みだった。

「手術は成功していたんだ。兄弟は二人とも生きていた。ただ…兄は本家に残って当主になり、弟は乳母とともに余所にやられた」

その事実を知っているものは一族の中でも極少数に限られていた。恐らく兄さえも弟が生きていることは知らされなかった筈だ。また自分も兄の生存を知らなかった。

「過去、先祖達が無茶をしたせいで、当時の俺達一族には敵対する連中が沢山いた。…ま、その辺の内容を言えば長くなるし、あんた等に聞かせるようなものでもないんだけど…。

ともかくそいつらと長年争い続けた結果が、一族の勢力の衰退だった。
一族の前途を憂慮した者達は、跡取りの一人を手術の際に死んだものとし、以来ずっとその存在を公に隠してきた」

それもこれも自分達の血が途絶えないようにと考えて取った、彼らの苦肉の措置であった。

「兄貴達が殺された事実を乳母から聞かされた時、一族が取り決めた本当の当主は初めから俺だったんだと言うことを知った。
同時に兄貴はずっと俺の影として生きてきたんだってことも。それも本人自身すら知らぬままにだ」

次第にアグルの口調に熱が帯びてくる。彼は怒りを抑えるかのように自分の腕に爪を立てた。

「許せないんだ…。兄貴が…一族が、必死に戦っていた時に、何も知らずのうのうと生きていた自分自身が…!
何かを得ようとも、知ろうとする努力すらせずに見殺しにした…!
そんな俺が罪滅ぼしをするとしたら出来ることは一つだけ。皆を死に追いやった連中に、同じ苦しみを与えることだけ…」

何も知らなかった。一族が何をしているかも、何をしてきたかも。ただ自分は世話役らの庇護のもと、安穏と日々を過ごしてきた。全てを聞かされたのは、一人きりになった後だった。

「あとはユーリだけなんだ…。かつてユーリを差し向けた連中は皆始末した…。奴を殺せば俺の報復は完遂する。
世界が滅ぶ前にあいつだけは何としても俺の手で止めを刺す…」

その眼は暗く、復讐に取り憑かれた者の眼だった。

「復讐の為に何人も殺して、多くのものを犠牲にしてきた…。レックスだってそうだ…。もう止まれない。止まってはいけないんだ…絶対に…」

もう誰かに語りかけている体ではなくなっていた。その言葉は呪詛の様に口から溢れ落ちた。
目の焦点も定かではなく、腕に食い込んだ爪が皮膚を破り、血が流れた。

無気力で常に冷めたような態度を装っていた彼のその内側には、ドス黒い怨恨と狂気の感情で満ち満ちていた。

589ユニ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/27(火) 00:37:29
【ポセイドン邸】

アブセルの下心丸出しの発言の意味を理解出来なかったセナは疑問符を浮かべ、ただ一言「一人で出来る」とだけ呟いた。

「・・・アブセルさん」

リトに縋り突っ伏していたユニははじめ来訪者に気付いていなかったが、自身の名前を呼ばれピクリと体を震わせる。
そして恐る恐る顔をあげ、その者が見知った相手であるとわかるや、ホットしたような表情を浮かべた。
しかし今にも泣きそうな顔である事には変わらない。

共に部屋に入ってきたセナも一瞬ユニへ目を向けるが特に気にした風もなく、アブセルがクローゼットから取り出しかけた衣装を受け取った。

「アブセルさん・・・ユニ、変なんです。ユニはユニの筈ですのに、ユニじゃないみたいで・・・。怖いです。アブセルさん、ユニはどうしたらいいですか?」

この不安をどうすれば取り除けるだろうか。一つでも何か答えが欲しい。
いつも自分の疑問に答えてくれたリトは目覚めない。
ならば代わりに、アブセルからでも答えが欲しいと立ち上がる。

・・・と、

「・・・セナ、様・・・」

そこで漸く、セナの存在に気付いた。
リトと一番不快繋がりのある先祖であり、堕とされたリトを救い出してくれた人。
息をしていないリトを「生きている」と言い、「簡単には目覚めない」と応えた張本人。

この人なら、知っている・・・?

「セナ様!」

ユニは堰を切ったように今度はセナに詰め寄った。
自分は関係ないとばかりに着替えの為黙々と服を脱ぎ出していたセナは急に矛先が自分に向いた為少し驚いたような表情を浮かべるが、ユニは気にも止めずセナの腕を掴み言葉を投げかける。

「教えてください!リト様はどうすれば起きるですか!?いつ起きるですか!?」

予想以上に力が強い。掴んだ指がセナの肌に痕をつけていくが動転していてユニ本人は気づいていていないのだろう。

「セナ様はわかりますか!?ユニに何が起きているか!今回の事があってからなんですっ。闇の王子様なら分かるですよね!?」

590リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/09/27(火) 00:38:40
【アブセルが脱がせることしか考えてなくて笑いました(笑)
そこまでユニのこと気に入ってくださっていたとは(笑)ありがとうございます(/ω\*)
ユニはこの作品のマスコットキャラクターですからね!←違う
むしろユニに重役与えてくれてありがとうございますヾ(●´∇`●)ノ
現在セナに対して盛大に粗相起こしてますがアブセルが止めてあげてください(笑)そしてセナはセナで女の子いるのに平気で服を脱ぐとはけしからん←情操教育サボっちゃダメじゃないですかジュノスさん。←←

そのゲームは知らなかったです|ू・ω・` )
自分がハマっていたのはシャイニングハーツと言うゲームなんですが、似た設定ってあるんですね(`・ω・´)
シャイニングハーツの方では記憶と感情をなくした少女がいて、その子のために色んな感情の欠片を集めていくんです。感情の方は少女自身が封じてしまっているので、欠片を集めていくと喜怒哀楽の鍵が手に入って、その鍵で感情を開放していく感じになります。感情が戻るにつれて記憶も戻り、その子自身が世界の核であることが判明するんですが、その子は「この重すぎる使命が嫌で逃げてしまったけど、ここで出会った大好きな皆の為に、大好きな人皆の住む世界を無くしたくない」って感じで自分の使命を全うするべく主人公のもとを去ってしまうんです。この時主人公の好感度MAXだったらこの子とのEDが迎えられるんですけど、MAXじゃなかったらここでお話は終了です(笑)彼女が自分の使命を受け入れることが出来たって意味でのハッピーエンドですからね(笑)私は個人的にこのヒロインの事が大好きだったので当然好感度MAXにさせましたが。隠しEDなのである時期を境に好感度が上がらなくなったり、EDを迎える為に色んな条件を満たす必要があったりと地味に難しいんです。いやぁいい思い出だ←

イスラさんの方のゲームも調べてみますね(/ω\*)

つか、フロンはジルがぬっ殺すって何勝手に決めちゃってるんですか(笑)ジルは本当は純粋で優しい子なんですからあまり傷つけちゃダメですよ?まぁ残忍なヤンデレな子なのでちゃんと殺りますけどね!←
・・・純粋で優しい残忍なヤンデレって何だ←←

そしてアグルの過去に涙です(´;ω;`)】

591ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/09/27(火) 01:19:47
【イスラ》母は強し、だったわwwありがとうございます〜!幸せになりますぜ!

っとフロンの件了解す!吸血鬼組は流れに合わせて、で(笑)

あー……アグルの過去話全くの予想外で涙。シャム双生児だったっけ?こんなタイプの。

リマ》新生児らしからぬしっかりした顔立ちしてて将来有望やでぇ!
ありがとね、パパさん頑張ります!

っと、四凶はもう一人、残ってるけどどうしよう?】

592メイヤ ◆.q9WieYUok:2016/09/27(火) 23:23:42
【バルクウェイ】

薄皮一枚隔てて蠢く激情。
その一端を垣間見、メイヤは口を閉ざした。

やる気の無さと無関心さ、それは内に秘めるどす黒い感情を表に出さない為の殻なのか。
暗い光を宿すその瞳を、メイヤは知っている。

復讐者の目、それは見慣れたモノだった。
殺しを生業にする一族の出の為に、自身も例に漏れず刃を振るって来た。

そして、時折出会う家族、知人、友人、恋人を奪われた者。
彼らはアグルと同じ目で襲いかかって来るのだ。

勿論、その者達の末路は言わずもがな。
東方最強の暗殺者集団と名高い一族の、更にその中でも屈指の実力者であるユーリに挑むのならば……

だが、アグルを止める事はしない、否、出来ない。
彼には彼の、戦う理由があるのだ。

「皆、各々に戦う理由がある。
今となっては、もうそれだけだな……」

単純な勝ち負けだけでは無い戦い。
世界の命運も、因縁も、そして、復讐も。

アグルへの返答は、雑音に流れて消えた。

ーーーーー

【闇の巣】

バルクウェイを発ち、数日。
必要最低限の物資を積んだ飛行艇で到着した決戦の地は、予想に反して静かだった。

艇から降り立ち、進んだ先。
そびえ立つ巨塔の麓、静寂に包まれる水辺。

塔へと続く橋の上に見える人影を前に、メイヤは足を止めた。
それと同時に、人影……クウラは被っていたフードを取った。

「アグル、イスラ。
アイツの相手は俺だ、タイミングを伺って、先に行ってくれ。」

現れたのはメイヤと同じ濡れ羽色の髪と、東方出身者特有の黒い瞳。
どことなく自身に似た顔立ちのクウラへと、メイヤはクナイを投げ、同時に疾走。

迫るクナイを避け、クウラは笑う。
そして、メイヤが放つ刺突を小刀で切り払い、両の腕を、小柄な背中から生える闇の大翼を一閃。

漆黒の羽が散弾となって辺り一面にばらまかれた。
ばらまかれた散弾は橋や水面に着弾すると同時に爆発し、周囲を轟音と爆裂に染める。

しかし、それはあくまでも戦いの合図だ。
クウラはメイヤへ凶笑を向け、メイヤはそれを受け止め、真白の刃を振るう。

「用があるのはこの死人だけさ、赤毛の二人は好きにしなよ?」

「だ、そうだ!二人共先に行け!」

593アブセル:2016/10/01(土) 01:51:29
【ポセイドン邸】

ユニが何を言っているのかが分からない。
アブセルは、お前はいつも変だろう。と顔をしかめるも。彼女の取り乱しようを見て、どうやら本気で思い詰めているらしいことを知る。

「こらユニ!セイちゃんさんが困ってるだろ!聞きたいことがあるならちゃんと分かるように説明しろ!
つかまず落ち着け!」

セナにすがるように詰め寄るユニを引剥がし、リトの寝るベッドの端に座らせる。
まだ何か言いたそうな彼女を一先ず黙らせると、再びセナに視線を向けた。

「セイちゃんさん。こいつはユニっていって、迷子になってたとこをリトが保護したんだ。
んーと…そんで絶望的に阿呆で無知で…」

今まで他の人にきちんとした形でユニを紹介したことがなかった為にした説明だったが、よくよく考えれば、自分は彼女について何も知らないことに気づく。紹介しようにも名前ぐらいしか言うべきことが見あたらず、アブセルは怪訝な表情をユニに向けた。

「…そもそもお前って何者なんだよ…?」

594シデン ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/01(土) 01:56:52
【虚空城】

幾重にも張られた結界は飛行挺の衝突によって破られ、城内にはイオリとその部下達が雪崩れ込む。

「下界のゴミムシ共がわらわらと小賢しいことだ…」

その実情を目に、シデンは嘆きため息を溢す。
闇に包まれた空間に雷光が迸り、それによって浮かび上がる男の姿に、彼は鋭い眼光を向けた。

「まさか勝てると思って来た訳ではあるまいな。なあ、イオリ?」

扉を破り入ってきた、イオリのその声に応えるように、シデンもまた口を開く。
直後、部屋全体に雷の結界が張られた。

「まあいい。貴様はこの俺が直々に始末してやろう。これで前みたいに途中で邪魔が入ることもない。じっくりサシで勝負を着けようじゃないか」

そうしてシデンは雷を刃に見立てたブレードを手にする。その切っ先をイオリに突き付け、不敵な笑みを浮かべた。

「時にイオリよ、貴様の女はどうした。あれは我らと同じく四霊の力を有する者…、本来ならばこちら側の人間の筈だろう」



【マゼンダ邸】

「もぉー!ダーリンって言ったらヴェンちゃんのことに決まってるじゃなぁーい」

マゼンダの皮肉にも気づかずに、DDはさも当然と言わんばかりに言葉を返す。

「なぁにぃ?ひょっとしてマゼンダってば、妬いてるのぉ?
ヴェンちゃんにぃ?あっ!やだ!もしかしてアタシに!?」

気持ちは嬉しいけど、生憎アタシにそういう趣味はないの。と一言断ってから、彼は続ける。

「まあアナタが知らないならしょうがないわぁ。ダーリンが住んでる館にでも行ってみましょ。思いがけないダーリンのプライベート姿が拝めるかもしれないし!寝起きドッキリとか!湯上がり姿とか!」

涎を垂らしながら嬉々として語るDDは、このままヴェントの住まいに不法侵入…いや、突撃でもしそうな勢いである。

595イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2016/10/01(土) 02:02:15
【リマ》アブセルはセナに対しても欲情するようです⬅
マスコットキャラ同意ですが、あれ…?彼女は一応ヒロインじゃなかったっけ?(笑)
そこもジュノスが教育するのかww彼は自分の都合のいいことしか教えないからリマが見張ってないと⬅

シャイニングハーツ、動画ちょっとだけ見ました^^
面白そうですね、女の子のキャラが可愛いし!
そんな重い設定とはかけ離れた予想外のほのぼのっぷりに驚きました(笑)
てかパンゲーって言われてるんですねw何故にパンww

そろそろ本気でジルがやばそう;また一つジルに罪を背負わせてしまうのね、いやぁ申しわけ⬅
そんな積もりに積もった鬱憤をどうぞフロンで発散させちゃってくださいw



ヤツキ》そうそう、何となく双子設定にしたかったので、どうせなら…とシャム双生児にしました。
あとユーリはトール一族と敵対してた連中に雇われた設定にしてしまいました(^-^;

596イオリ ◆.q9WieYUok:2016/10/01(土) 16:10:08
【虚空城】

雷光と共に姿を現した男に、イオリは笑みを返す。
予想通り、いや、リクエスト通りか。

「俺は勝てる戦いしかしねェんだよ……
まぁ、テメェとは決着つけねーといけないのは同意だがな。」

こちらへ雷刃を向けるシデンへ、イオリもまた刀の切っ先を向ける。
蒼焔を灯す妖刀、鸞は四霊である鳳凰と同質の力を秘めている。

「この世界は初めっから歪に歪み、狂っていた。
百年前の戦いで、その歪みは決定的なモンになった。
その際に、目覚める筈の四霊の性質も変わった。
白焔と黒端、二つに分かれた世界の中枢。
鳳凰は白焔の側に成ったって訳さ。」

イオリは話をしながらも刀を一閃、二閃、三閃。
燃ゆる刀身から三羽の火炎鳥が姿を現した。

火炎鳥は高く嘶き、蒼焔を撒き散らしながら高速飛翔。
シデンへ向かって羽ばたき、爆発。

「さてさて、無駄話は終わりだ。
決着つけようぜ、デコメガネ!!」

暗闇を炎で染め、イオリは獰猛な笑みを浮かべた。
そして、目の前に広がる爆炎へ向かって自ら飛び込んでいく。

597リト ◆wxoyo3TVQU:2016/10/02(日) 21:48:57
【冥界】

図星だった。
そう思っていなければ自分を保てなかったのだ。

「・・・無理だ」

サンディの言う通り、権利はあるのだろう。しかし、どんなに主張したところであの二人には届かない。

・・・違う、本当は彼女の言う通り、気持ちは届くのかもしれない。
しかしその可能性は限りなく低いから・・・多分、怖いのだ。面と向かって否定されることが。

ここで目覚める前、最後に見た父の顔を、言葉を今も引きずっている。

「・・・」

このまま話をしていてもリトの気持ちも、サンディの考えも変わらないだろう。
リトは立ち上がる、そしてぶっきらぼうに言葉を切り出した。

「あの姉弟、探そう。今の俺達がすべきなのは茶会でも話し合いでもない。ここから出ること、元の場所に戻ることなんじゃない?」

的を得てはいるがこの話を続けたくない故の言い訳だった。
「知らない」と言ってはいたが、この世界の住人である姉弟なら本当は何か手掛かりを持っているかもしれない。そう言ってリトはサンディの返事も聞かず歩き出した。

---その姿を、一人の男が見つめていた。

「・・・リト・・・?」

あてもなく歩いていたその男は、たまたま視界に入った少年に驚き足を止めた。間違いない、あの少年はリトだ。
男は信じられないと言った表情を浮かべる。

「何故・・・」

あの子がここにいる?そう考えかけて男はハッとする。
自分は何を言っているんだ。「この手」で、あの子を死に追いやったではないか。
長い間探していても結局救う手立てなど見つからなくて、一族を、他の多くの命を救う為に犠牲にした。
最期まで優しい言葉をかけてやることも出来なかった。代わりに存在を否定して、「利用する為に作った」などと酷い言葉を投げた。自分の前では一切表情を変えないあの子が、その最期の言葉を聞いて絶望を表した顔を浮かべたのを知っている。

「よかった・・・」

死なせたのに、男は、ヨハンはそんな言葉を口にした。
不相応なのは分かっているが、最悪の事態を免れたのは嬉しい。そう、リトの魂が無事だったことに感謝したいのだ。
贄にされたものはその身だけでなく魂までも喰らわれると思っていた。だから素直に嬉しかった。

そして、自分にこんなことを思う資格がないことも分かっているが、心を抗う事は出来ない。
そしてもう嘘をつく必要もないだろう。

「・・・リト・・・」

罪を重ねてきた自分は天に行けるはずもない。地の国へ行く覚悟は出来ている。
地の国へ行けば、決して転生することはなく苦しみ抜いて魂の消滅を待つことになるだろう。
だから最期に、この身が消えゆく前に、お前の姿を見ることが出来て良かった。

598ユニ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/03(月) 00:16:21
【ポセイドン邸】

取り乱したユニを引き剥がし落ち着かせようとベッドに座らせる。
セナはふとユニに掴まれた腕に目を向ける。

「・・・」

触れられた部分に火傷したような赤い痕があった。掴まれた際の痛みの原因は力加減だけではなかったらしい。
セナはその傷をアブセルに気れぬよう、彼がユニに意識を向けているうちに服を纏った。

「・・・ユニ、ですか・・・?」

一方、少し落ち着きを取り戻したユニはアブセルの疑問に口篭る。言うべきかどうか悩んでいる表情だ。
そして不意にリトを見る。

「リト様には言っちゃダメですよ?」

やがて決心したようにそう口にしたかと思えば、立ち上がり皆と距離を取った。

「ユニの姿、見せるです。」

言ってユニは少し前屈みの姿勢を取る。途端、ユニの背から大きな白い羽が広がった。それはおとぎ話に出る天使の羽根のよう。そして、翼を広げ顔をあげたユニの額には架空の存在であるユニコーンの角に似た物も生えていた。

「ユニはバロン様の使役魔です。バロン様の力で生まれ、ユニと言う名前を貰いました。この姿が本来のユニですが、見ての通り・・・その・・・醜いですので、普段はいつものユニの姿になってます。ユニは人間と同じ姿が良いですので。リト様には秘密、約束ですよ?こんなユニ見たら、リト様はユニのこと嫌いになっちゃいます・・・」

599リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/03(月) 00:17:16
イスラ>>
決めた、リトの声優はうた〇リの藍ちゃんの声にする!←いきなり何だ

ユニは記憶がないので、自分のことバロンに召喚された使役魔だと思ってることにしちゃいました←
世界の核と言うことでとても神秘的な姿(と言う設定)をしてますが、ユニは嫌みたいです←
因みに陽を司る世界の核→清い力の塊→闇を浄化する→セナにとって毒と言う謎設定作りました。リトにとっても毒ですが、リトはセナより闇の力は薄い&ユニ事態が本来の力を目覚めさせていなかったってことで今まで抱きついても平気だったという言い訳も作りました← リトが平気なのでアブセルにも害はないです← 今後ユニの力が強くなることでリトにも害なすようになりますが、ユニが力を制御出来るようになれば傷付けることもなくなります。


セナにも欲情とかwwwアブセルはリトの顔が好きなだけなんじゃ・・・(笑)
あれ?ユニってヒロインでしたっけ(笑)← ナディアは・・・ヒロインからかけ離れてますからやはりユニがヒロインか←
ジュノスはセナの教育係ですから(きりっ)
え、自分に都合の良いことって何を教えるのwww


シャイニングハーツがパンゲーと言われるのは、作中でパンを作って色んな人に配り、その際に喜怒哀楽の感情=ハートを集め、そのハートを材料にまたパンを作り〜って事をやるからです(笑)
もともとこのゲームは兄がジャケ買いしてきたものなんですが、パンを焼くのが嫌になった兄がプレイを放棄し、私に押し付けてきました(笑)話を進めるのにパン焼きは欠かせないんですよね〜
因みに私はパンを焼くのがむしろ楽しくて、色んな材料を集めてきてはどんなパンが出来るのかワクワクしながら焼き、嬉々として話を進めました←

申し訳なく思ってるように見えないwww
フロンで発散wwwフロンの存在意義がwww
ジルはヨノの愛に救われ、最終的にリトを溺愛するお兄ちゃんになると思うのできっと大丈夫です←何が


ヤツキ>>
すでに親バカ発揮してるwww

てか四凶って自分も誰かやってた気がするけど結構前過ぎて何のキャラだったか以前に名前すら思い出せない・・・困った(´;ω;`)

600ヤツキ ◆.q9WieYUok:2016/10/03(月) 07:42:12
>>599
四凶の余り=コニィ=リマの持ちキャラやで、空飛ぶ絨毯に乗ったお姉さんだった筈……かなーり昔に出て来てたよ!

601マゼンダ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/05(水) 22:46:03
【マゼンダ邸】

「あんた、今すぐその減らず口を閉じないとタダじゃ置かないよ」

涎を垂らし語るDDの目は本気だ。マゼンダは思わずDDに詰め寄りそうになるのを寸出のところで耐え、誤魔化すように咳払いを一つする。
ノワールが関わるとヴェントが我を忘れるように、ヴェントの事となるとどうも平静でいられなくなる。マゼンダとヴェントは同時期に生まれた為、兄弟のような情でもあるのだろうか。

「生憎、館に行ってもアレはいないよ。大抵、今の時間は森にいる。」

出来れば会わせたくもないが、放っておくと何をしでかすか分からない。マゼンダは観念しヴェントの居場所を吐いた。
ヴェントの日課は自己修練と若い吸血鬼達の教育及び鍛錬。自分達吸血鬼にはそれぞれ派閥があるが、派閥に属する前の吸血鬼達に基礎能力を仕込むのはヴェントの役目だった。
今の時間帯なら自己修練だろう。ヴェントは基本的に時間的行動パターンが決まっているため分かりやすい。

マゼンダは溜め息を吐き立ち上がる。

「勝手に動かれても面倒だ、行くよ。」


ーーーーー

案の定、ヴェントは森に居たようだ。
ある程度目星を付けた場所に向かうと、木の幹に刃で切り裂かれたような跡を見つけた。まだ新しい。
しかし当の本人がいない。まだ館に戻る時間ではないはずだが・・・。

「ヴェント!どこにいるんだい?アンタに客人だよ!」

マゼンダがそう声をあげると、まもなくして黒いコウモリが一同の元へ飛んできた。コウモリは一同の周りをぐるりと一周すると、付いて来いとでも言うように元きた森の奥へと飛んでいく。

「行くよ。」

マゼンダはコウモリの後に続いた。

コウモリが行き着いた場所は湖だった。
マゼンダは当たりを見渡すが、ヴェントの姿は何処にもない。

「ヴェント、何処だい?」

しかし此処にいるのは確かだ。マゼンダが再びその名を呼ぶと、途端、湖面から勢いよく人影が上がる。流石に予想していなかった場所から出てきた為、マゼンダは思わず声をあげた。

「驚いた!アンタ、なんて所から出てくるんだい!」

心臓に悪い。一体そんな所で何をしてるんだと非難をぶつける。
対するヴェントは顔に掛かった髪を払いながら、何を驚いているのか分からないとでも言うような表情を浮かべた。

「水浴びだ。・・・汗をかいたからな。」

602リマ ◆wxoyo3TVQU:2016/10/05(水) 22:47:23
ヤツキ>>

そうだ!コニィだ!
いつも目を瞑ってるお姉さん!ありがとう!


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板