したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が901を超えています。1001を超えると投稿できなくなるよ。

大河×竜児ラブラブ妄想スレ 避難所2

1まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY:2009/10/29(木) 01:36:02 ID:???
ここは とらドラ! の主人公、逢坂大河と高須竜児のカップリングについて様々な妄想をするスレの避難所です。
アクセス規制で本スレに書けない、とかスレに書けないような18禁のエロエロ話を投下したい時とかに
お使いください。
    / _         ヽ、
   /二 - ニ=-     ヽ`
  ′           、   ',
  ',     /`l  / , \_/ |
  ∧    〈 ∨ ∨ ヽ冫l∨
    ',   /`|  u     ヽ
    ', /          /
    /  ̄\   、 -= /                   __
  / ̄\  `ヽ、≧ー                    _  /. : : .`ヽ、
 /__ `ヽ、_  /  、〈 、           /.:冫 ̄`'⌒ヽ `ヽ、 / 〉ヘ
/ ==',∧     ̄ ∧ 、\〉∨|         /.: : :′. : : : : : : : . 「∨ / / ヘ
     ',∧       | >  /│        /: :∧! : : : :∧ : : : : | ヽ ' ∠
      ',∧      |、 \   〉 、_       (: :/ ,ニ、: : :ィ ,ニ=、 : : 〉  ,.イ´
      ',∧      |′   ∨ ///> 、  Ⅵ: '仆〉\| '仆リヽ:|\_|: :|
      / /     |     └<//////> 、 八!`´、'_,、 `´イ. :|////7: !
    /_/       |、       ` </////>、\ ヽ丿  /. : :|//// : .丶
    ,'          |′         ` <//∧ : > </.: : :////〉: : : . ヽ
    ,'          |            / 个:<〉. :〉》《/.: ://///: : : : : : . \
   ,'           |、          〈 . : :│: |/. :/│/.:///////: : : : : : : : : . )
  ,'            |′           \:ノ. : |: :/Ⅳ/.:〈//////: : : : : : : : : :ノ
  ,'            |            /. : : : :|:///∧ : ∨///: : : : : : : : : . \

本スレ
【とらドラ!】大河×竜児【アマアマ妄想】Vol17
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1255435399/

489とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2011/03/25(金) 08:12:13 ID:???
お題 「役立った」「首」「期末試験」
 
 
 
「んーっ……!」
 昇降口から出たとたん、大河は大きくのびをする。
「やーっと終わったわねー、期末試験」
「おう」
 応える竜児も首筋を軽く叩く。
 勉強は好きだしいつもの如く役立った兄貴ノートのおかげで結果に不安は無いが、それでもやはりテストというものは緊張するもので。
 肉体的にはそれほどでなくても、やたらと肩がこった気がするのは不思議なものだ。
「だけど、これであと何日かすれば待ちに待った夏休み!」
「おう、そうだな」
「……あのねえ竜児、恋人と過ごす初めての夏休みなんだから、もっと喜びなさいよ」
「いや、去年も一緒だったじゃねえか」
「『恋人として』ってのは初めてでしょうが!」
「おう、そういやそうか、すまねえ」
「ふん、まあいいわ。で、どこに遊びに行く? 映画は定番でしょー。遊園地や水族館とかもいいわねー。去年は海だったし、今年は山でキャンプとか。ふ、二人っきりでお泊り旅行とかしちゃったりして」
「……大河、お前は大事な事を忘れている」
「え?」
「俺達は受験生だぞ。夏期講習だってあるし、それでなくたって正念場なんだから、そんなに遊ぶ暇があるわけねえだろ」
「で、でも、竜児も私も成績悪くないんだし……」
「そう言って油断するのが一番いけねえんだ。レベル下げたり、ましてや浪人なんて絶対にするわけにはいかねえんだからな」
 そんなことになったら、大河と結婚できるのが遅くなるから……とまでは、流石に面と向かっては言えないが。
「ううー……せっかく高校最後の夏休みなのに、ロクなイベントも無いなんて……」
「まあ、一緒にいられる時間は増えるんだし、デートだってたまに息抜き兼ねて近場でってぐらいならできるだろ。それに、イベントっていうなら一つ重大なのがあるじゃねえか」
「何よそれ?」
「夏休みだからって、大河は弟の世話がある時はうちに来るわけにはいかねえだろ」
「ん、まあね。でもその時は竜児がうちに来ればいいじゃない」
「おう、それだよ。今までは送って行っても玄関までとか、せいぜいリビングまでだったろ。だけど一緒に勉強するとなればだな、初めて大河の部屋に入れるってわけだ」
「そ、そんなの、去年いくらだって……」
「今の家になってからは初めてだろ。『恋人として』ってのもな」
「ひ、ひやゃ……」

490 ◆Eby4Hm2ero:2011/03/25(金) 08:35:15 ID:???
毎度転載ありがとうございます。
手打ちコピペもこれで最後……だといいなあ……

>>476-485
アマアマ、2828GJ!

491高須家の名無しさん:2011/03/25(金) 20:03:29 ID:???
転載しましたー

>>488
その後が読みたいってのは悲願だよね、特に竜虎好きにとってはw
あまり気負わずに書いてもいいと思いますよ〜。
個人的にはやっぱり竜虎愛が感じられる作品に触れられると幸せ。つまり488氏の作品が読めて幸せ。
色々と苦悩もあるでしょうが、納得できるSSが出来たらまた投下して貰えると嬉しいです。
その日が来ることを祈って!

492475:2011/03/26(土) 14:21:26 ID:???
そう仰られると意欲が湧きます。
だいたい書き上げるとすぐ読んでほしいと思っちゃいますが、>>488のような所は頭冷やして充分推敲します。
「ぼくの考えた最強竜虎愛」ですがwあと同サイズ2エピソードで区切れそうです。
またお会いできるよう精進します。

493高須家の名無しさん:2011/03/27(日) 23:36:08 ID:???
投稿しまーっす。

□□【タイトル】夢の中でも(虎、帰るアフター2)
□□□□【内容】竜虎ご近所デートの半日+夜〜翌朝を密着レポート。45KB

描写は必要最小限に留めておりますが最終パートはガチエロとなってます。
あなたの持つ竜虎イメージを損なうおそれがありますので、
読まれる場合はご注意ください。
かのう屋までは全年齢。夕食後は危険な時間です。

↓宜しくお願いします。

494夢の中でも(虎、帰るアフター2):2011/03/27(日) 23:37:39 ID:???
【これまでのあらすじ】春は三月。親元で高校を卒業した逢坂大河は懐かしい大橋の町に
帰ってきた!本来の転居予定を前倒して単身上京。荷物が届くその日まで。大河と竜児が
甘々+エロスで繰り広げるパートタイム同棲コメディ(泰子付き)。その2!

****

前の晩にいろいろとあった二日目。

朝ご飯を終えて、フニャフニャとくつろいで、大河は後片付け。竜児は洗たく。
大河のセーラー服に水洗いOK表示があるのをちゃんと確認してから、別分けドライモード。
スカートのプリーツも事前にしつけて抜かりなし。これで後のアイロンがけが楽に済む。
「大河ぁ、そのおネグも洗っちゃうから脱いでよこせー」
ベランダの洗濯機の前から室内に声をかける。
「ほーい。覗かないでよね」
「……覗かねえよ」
「なんだ。つまんない」
どっちだよ。カーテンをしゃっと引かれた自分の部屋を眺める。
ややあって、じゃこれお願い、とカーテンの隙間からほわほわレースの塊がつき出される。
一週間居候すると言う割に少ない荷物を見て、汚れものは溜めずに洗ってやらねばと思ったのだ。
おそらくは一泊でとりあえず地元に帰るとか親に言って出てきたのだろう。

居間に戻ってみると、高校時代のジャージに着替えた大河が掃除をしている。
睡眠中の泰子を起こさないように気を使って掃除機を使わず、略式ながらハンディモップで埃取り。
竜児はいくつか窓を開け風を通して埃を追い出すと部屋は大河に任せてトイレとお風呂掃除。
自分の太い毛と大河の長い毛が絡み合って排水溝に溜まっているのを取り除きながらどぎまぎしたり。
板の間をぴかぴかに磨き上げた頃には、洗濯も終わって昼近くなっていた。
「お前にうちを掃除してもらうとはな」
「居候の分くらいわきまえてるわよ……」
「皮肉は言ってねえよ。なんかこう、夫婦っぽいなってさ」
「そ、そうね。練習よ練習」
じゃあ褒美におやつを出そう、と竜児は冷凍庫からクリームチーズケーキを出して紅茶を入れる。
ふたつに折った座布団を枕にゴロ寝していた大河が起き上がって、まったりとお茶。
穏やかな日で、ベランダに干した洗濯物がときおりそよぐ。
「ねえアレ」
あそこに置いたから。と大河が思い出したようにテレビ台を指差す。
見るとメタリックブルーで商品名が銀箔押しで印刷してあるお菓子のようなパッケージ。
昨日開封しなかった事はもう怒ってはいないようだ。

間もなく、おはよー☆たいがちゃぁーん。竜ちゃぁーん。と泰子が起き出した。
顔を洗っている間に、竜児は手早くお昼のチャーハンを作る。
朝食のキンピラと卵焼きも泰子の前に並べる。家族三人もくもくと水入らずの食事。
もくもく?
泰子がテレビ台にチラと視線を向けるたびに大河がビクッ。
竜児の顔を見ればスルーっと視線を逸らす。

「も〜〜〜っ、やっちゃん楽しくなぁい!そんなに気を使うのやめようよ〜☆」
アレを置いて要らぬ刺激を子供らに与えたとは思わないようだ。
「竜ちゃんはぁ〜、年の割に落ち着いてるけどぉ、やっぱし男の子だからアレ要るでしょぉ〜?」
「たいがちゃんはぁ〜、煮詰まりやすいからぁ、竜ちゃんが壊れたら流されるでしょぉ〜?」
そんなとき、そんな日は、震えるその手でアレを開ければいいんでやんす。
口調はともかく、まあ意外にまともな事を言う。
やはり若くても保護者は保護者、と竜児も大河も他人事のように感心したのだった。
けど。
「やっちゃん寝不足になっちゃうから、りゅーちゃんの部屋でねえ☆」
「あ、う、うん」
泰子にひそめ声で囁かれて、大河だけトマトのように染めあげられてしまう。

495夢の中でも(虎、帰るアフター2):2011/03/27(日) 23:38:57 ID:???


もうひと寝するぅ〜☆と、泰子が部屋に消えたあと。
「おし、大河。買い物行こうぜ」と竜児。
「え?タイムセールはまだまだ先だよ。いまから?」
「お前の小物を買うし、それに」
竜児は一瞬だけ言い淀む。がそれは一瞬。恥ずかしい事なんかない。
「デートに誘ってるつもりなんだがな」
「うおう!竜児からで、で、で、でえとなんてせりふがが!」
なんだよう、変か?いいじゃねえかよ。
昨日より暖かいしさ。買い物しながら一緒にぶらぶらしようぜ。
「や、やぶさかではないわね。ヒマだし」
腕組みなんかして余裕をかましてはいるが、顔はまたトマトだ。完熟。
おう決まったな。じゃあ着替えてこい。
と言い終わらないうちに竜児の部屋にだっしゅ!ふすまをぴしゃっ!

女は身じたくに時間がかかると言われるが、大河の場合はそれほどでもない。
似合うファッションの幅が少ないと思い込んでいるのか、持っているのは同系統の服ばかり。
加えて、メイクは髪を整えリップグロスを塗るくらいのほとんどすっぴんだから。
それに旅行中の荷物に悩むほど服は入ってないだろう。
竜児がエコバッグに財布を揃えて、おざなりに髪をいじってきた5分程度で部屋から出てくる。
「お待たせ。……してないよねっ?」
「おう。へえ?」
大河のお出かけスタイルは、アイボリー基調で裾に若葉柄の入ったフリルの少ないワンピース。
いい具合に色が褪せたお気に入りカーディガンをアウターに羽織った春モードである。
薄茶色のニーソックスが緑萌える雰囲気で、ついでに絶対領域ほのかな煩悩も萌え出ずる。
「へえ?へえ〜?」
「なにさ?変?」
「い、いや……。柄ものは好みじゃないと思っていた。そんで驚いただけだ」
「まあ春だからね。はやりの花柄とか着たいけど。ちびだと子供服に見えちゃうんだよ」
「そっか。だったら大きめの葉っぱ柄はジミっぽいけど映えるよな」
本当はそんな事で驚いたわけではない。めっちゃ可愛いと思ったのだが。
竜児もジーンズとTシャツに着替えて1分。スタジャンを羽織って準備完了。
じゃあ行こうぜ、デートに。
うん行こう、デートに。
そういう事になった。

****

泰子行ってくるーとふすま越しに声をかけてお出かけ。
外階段を先に降りて、竜児は大河の手をすっと取る。
なんだろう?先回り、先回りで望みがかなうと大河は嬉しくなる。
「どこ行くの?りゅうじ」
そうだな……まずは。
まずは、お前の手を握ってどこ行くの?と訊かれたからには、あそこだよな。

公園を突っ切って、住宅街を抜けて、川岸に出る。土手に上がって遊歩道を並んで歩く。
「分かっちゃった。大橋だね」
「一応、プロポーズの場所だからな」
一段下がった歩行者用の橋を3分の1ほど渡ったところ。
かつての、雪のバレンタインデーと同じように、並んで欄干にもたれてみる。
「一年以上も経っちゃったね……」
「俺が身投げするなんて、お前が変な勘違いしてな」
「だから、謝ったじゃんよ」
「それに関しては未だに謝ってもらってねえ。でもそんな事はもういいんだ」
「そうそう。りゅうじもオトナになったもんだ♪」
見下ろせば結構な高さで、よく怪我もしなかったものだと思う。
あの日より水量は多く、水が滔々と流れている。
「まあ落とされたから何もかもが分かったんで、迷わずに結婚しようって言えたからな」
「そう……だね。死のうと考えていなければ、相手が死のうとしているなんて思わないよね」
大河の瞳は、もう懐かしいとしか思っていない色。
自分もそうだろう。

互いに、そうする事が当たり前であるかのように向き直る。
「ね、りゅうじ。あんたの事が、好きだよ」
「おう。俺も大河の事が、好きだ」
穏やかに晴れて川面を微風が渡る。
真昼間で他の通行人もいるのに、大河と竜児は顔を寄せ合ってキスをする。
恥ずかしくないわけではなかったけれど、この場所に置き放したものを一緒に拾えた。

「俺、あそこには独りで何回も行ったんだよ」
「あんがい女々しいところがあるんだ!りゅうじは」
「……お前が俺の立場だったらどうなんだよ?」
「心細くて毎日行くに決まってる!か弱いのよ?私」
「精神的にな。知ってる」
また土手に戻って並んで歩いた。
この先にさ、去年の秋にいわゆる複合商業施設ってやつが出来たんだ。
「駅ビルより店が多いから、そこで買い物しようぜ」
「あー。じゃあ私初めてだね。チェックチェック」

496夢の中でも(虎、帰るアフター2):2011/03/27(日) 23:40:18 ID:???


その途中で大河の携帯が鳴る。
「あ、ママだ」
おふくろさんから電話か。聞かれたくない家庭の話もあろうと竜児は手を解いて離れようとする。
大河は離さない。いいんだよ、聞いてけ。という顔をして出る。
「うん、うん。そう。もうずっとこっちに居るよ」
竜児のとこにお世話になってる。うん。だって。大丈夫だよちゃんとしてる。

え?うん、いるよ。
「ママが高須さんちの方にかわれって。話す?」
「……話さないわけに行かないだろうが。はい、高須竜児です。こんにちは」
ええ、いま出先です。近くの川の土手を歩いてます。はい。
「うちのワガママ娘が不躾なマネをして申し訳ありません。親御さんには改めてご挨拶しますね」
「はい。ご丁寧に恐れ入ります。帰ったら母には伝えます。……ええ、買い物に来ています」
ちらっと大河を見ると、私つまーんなーい、たーいくーつ、早く終われー、という三文芝居。
こっちだって誠実な青年を必死に演じてるんだ。もうちょっと我慢しろ。

「大河はカンシャク持ちで頑固ですぐ拗ねるからご迷惑をお掛けすると思いますが……」
「え?それは分かっています。でも素直で優しいおじょ、お嬢さんで。俺は、好きです」
うわあ、お嬢さんだってよ。俺いま完熟トマト状態じゃねえ?
……完熟トマトがもうひとつ傍らに転がっていた。耳を塞いで悶えてやがる。

大河のおふくろさんもなんか黙ってるな?ひとこと余計だったか?
「……ありがとうね。高須君。あれでも大切な娘なのよ。宜しくお願いします。節度を……」
「はい!俺も大切に思ってますから。あの……」
後ろで赤ん坊が泣く声と、おたおたした雰囲気が伝わって来た。
「任せて下さい!たい……お嬢さんに返しますね」
「ぅおっと!もしもしっ。分かったでしょ。こういう人なのっ。……え?うん。うん。はい。それじゃ」
ほらほらおしめじゃないの?もう切るよ?また電話するからっ、ね?じゃバイバイキーン!
いきなり電話を返された娘もおたおたしながら、話は終わった。

「ふう……ぷっ、くくく、くく……」
「ああー、びっくりした。……何が可笑しいんだよ、くそ」
「『お嬢さん』だって。ぷくく……」
「やっぱりお前、親を騙して出てきたんだな?大丈夫かよ」
「お前、とか何様?あんたにとっちゃ『大切なお嬢さん』なんでしょ?わたし」
そんなとこに食い付くんじゃねえ。……ふつう、お嬢さんでいいんだよ。こういう場面では。
もう俺はすっかり真っ赤っ赤なトマト。
「好きです、とか、任せて下さい、とか、もうね。……もう」
含み笑いで嬲ってくれていたくせに、このお嬢さんは再びトマトだ。
「ふつう……言わないよ?……そこまで」
「おう、なんか悪かったかな?最後になんか言われたか?」
「『避妊しなさいよっ!』だって……」
「……うお」

「あと、……ちゃんと連れて帰省しろってさ」
「まあまあ悪くねえ。大成功じゃねえかよ。面接にこぎつけたよ!」
「バッカじゃないの?」完熟トマトの分際で毒づく。甘い声で。
ああまで言ったなら、なんで「くれ」って言・わ・な・い・の・よ!この、グズ犬ーーーーーっ!!
ばちーんん!とケツに渾身のミドルキックをくらう。
「……夏になったら北海道に行こう?りゅうじ。ウニどーん!エビどーん!だよ!」
「痛えよ。バイトできなくなったら、どうすんだ?旅費」

大丈夫だよ?りゅうじ。
誰だってろくに会った事もない人を信用はできない。
だから、私は何度も何度も、あんたの事をどんなに『誠実な人』かママに話してきた。
きっとママは私の方がのぼせて、浮かれポンチで高須竜児にハマっていると思ってる。
さっきは伝えなかったけど、『……あんた好かれてるじゃないの!』って言われたんだよ!
帰省しなさいよ、の前にね。
本当に、面接にこぎつけたんだよ。
あんたに会って、知れば、きっとママもお義父さんもあんたを好きになる。
あんたと家族になれると思ってくれる。物心がつけば、後ろで泣いてた弟もね。
私は疑った事もない。
それに今日は、要求もしてないのにりゅうじが望みをかなえてくれる不思議。

「お嬢さんを、俺に下さい」
「情熱的にもう一丁!」
「お嬢さんを俺に下さいっ。一生涯大切にしますっ」
「いいねいいねー!何事も練習だ。も一丁っ」
「可愛くて肌がつるんつるんのもちもちで抱き心地がとっても幸せなお嬢さんを俺にくれーーっ」
「そんな事は云わんでいぃ〜〜っ!」
あまり人が通らないのをさいわい、トマトたちは喚きながら土手を通って目的地に着いた。

497夢の中でも(虎、帰るアフター2):2011/03/27(日) 23:42:19 ID:???

****

「『ビッグブリッヂ』……だって……」
「名称にはあまり突っ込むな。一般公募だった」
移転した工場跡地に建った複合商業施設。とは言い過ぎかも知れないくらいの規模ではあったが。
シネコンありゲーセンありパチ屋ありレストラン街ありで、ちょっとした賑わいだ。
「俺らの間ではベタ過ぎという話は既に済ませた。ゲーヲタがネタ的に喜んでる」
「ここで戦って負けると武器を取られる、とか?」
「そうそう。そんなの」
しょうもない会話をしながら中に入ると、さっそく大河の鼻歌。……やっぱそれだな。
そうだよ。オープン当初それ口ずさんでたやつは多い。名曲だからな。
「天然素材のロシアンルーレ〜ットぉ〜♪」
ボカロの方かよ。お前その歌詞、最後まで知ってんのか?
心でツッコミつつもししとうを食いたくなってきた竜児ではあった。
地下が食品売り場になっているが、価格は高目で品質はかのう屋と同じ。
まあ利用する事はないだろう。

ふたりはとりあえず1階のレディース専門店街をひと回りしてみた。
「ここはミセス向けが多い。フォーマルなのを探すときにはいいかも」
「そっか。上はカジュアルフロアだな。行ってみよう」
エスカレーターで上がる。
このフロアはティーンズ向けのようだ。広いスペースに品揃えがかぶらない店がいくつもある。
ロリータ系に強い店もあり大河なら気に入るだろうと思っていたのだ。
この上のフロアはアクセサリー屋の他に服の生地屋とかも入っていて、俺はそっちに興味がある。

予想通り大河は、わあ、とか、おお、とか言いながら念入りにチェックしている。
やっぱ女の子だなと思う。
「いいね。チビサイズも揃ってるし。これならばかちーとも一緒に来れる」
「おう、良かったな。女が満足する品揃えって俺じゃ分かんないからさ。……でよ?」
なんか気に行ったのがあったらプレゼントしてやる。と告げる。
「ええっ!?そんなあ」
「この財布には時折バイトしてプチ貯めまくった金がある。家計じゃねえ」
ふふん。とたまには竜児だって胸を反らしてみるのだ。
嬉しいけど、悪いじゃん。
いいんだよ。デートだっつったろ?元々お前が上京したらなんかプレゼントするつもりだったし。
俺にとってもお前にとっても記念日だろ?それが前倒しになっただけだ。
「ほんと?りゅーじありがとーっ!」と、いきなり抱きつく。
さすがにそこそこ客がいるここでは恥ずかしいぞ。いいから選べ、と程ほどにしておく。

それからたっぷり一時間、大河は広いフロアを走り回った。
あとから追いつく竜児に感想を求めて、手持ちのものとの組み合わせを必死で考えている。
考えてみればこういう買い物の大河を見るのは初めての事だ。
元が衣装持ちだから、あいつ目は肥えているんだよな。
欲しいものが見つかっても値段で止めたり俺の懐具合も考えてるらしい。
そうすると、なかなか決まらないかも知れねえな。
俺にしたって、これは大人の真似をしてみる背伸びだから、払える限り払ってやるぜ。
「服じゃなくて、アクセでもいいんだぞ?このフロアにも何軒かあったし、上にもあったな」
「うーん、アクセはね〜」金属ダメなんだよね。赤くなっちゃう。
ああ、そういえばそうだったな。
「金かプラチナかチタンならだけど、分不相応だし」
それに私ね、あんまり光りモノに興味ないの。時間かかってごめんね。
いいんだ。どうせヒマだし、そのために来たんだし。たっぷり悩め。
「お嬢さんよ、上のフロアも見てみようぜ」
「そうね」


3階はいわゆる小物屋が多かった。女子向けで少しローティーン向けか、制服の中高生が多い。
ちょっと場違いなので、大河を独りで放つ。俺は生地屋を見てこよう。
生地屋、というか服飾材料屋はフロア中央のエスカレーターから離れた隅の方。階段の脇にあった。
値段はやはり高目だが、服地やらを買える代わりの店は大橋にはないからな。
電車で都内まで行く事を考えると、徒歩圏なら重宝しそうだ。
などと考えながら布のロールの間を巡っていると、リボンテープのコーナーで足が止まる。
見覚えのある色だな……そうだ、川嶋の別荘で!
あの旅行のとき、大河は髪をぞんざいに上げて結んでポニテにしていた。あのリボンの色だ。
サイドを金糸でかがった薄緑の。素材はベルベット。
大河の髪を上げて、これで結んだら?春らしくて今日の格好にぴったりだな。
三白眼に怪しい光を帯びてヒモを持てば、これから誰かを絞殺するその筋の人、もちろんそんな事はなく。

498夢の中でも(虎、帰るアフター2):2011/03/27(日) 23:43:36 ID:???

しかし、なんだ?俺が大河のナリに口を出す?
いつまでもパジャマでうろうろするんじゃねえ、着替えろ!というのとは意味が違う。
あいつにはあいつがしたいと思う装いがあるわけだし。
でもあのときのポニテは可愛かった。もう一度見たい。
見たいと思うとどんどん見たくなる。
まあ、何と言っても本人に聞いてみなきゃ始まらない。店から一旦でて、大河を呼ぶ。
「この色、似合うと思うんだよ。ベルベットだから軽く見えすぎないし、葉っぱ柄とも合うし」
「なに?髪上げんの?別にいいけど。……ん?この色見覚えあるなあ?」
うん、手持ちのリボンの中に確かあったはず。届くのは来週だし、見つけられるか怪しいけどね。
あ?そうだ、別荘でしてた!
おう。思い出したか。
なんでそんな細かいこと覚えてんのよ。
「え?……それは、可愛かったから、ポニテ」
「あ?そ、そう?また見たいの?」お、おう。
「見てえ」
そうか!と大河はなにかを思い出した顔をして、早口で言う。
「あんたはそのリボン買ってきて。私2階に降りてるから。早くきてよね」
言うなり、店を飛び出し、だだだーっと2段飛ばしで階段を降りていった。

竜児はリボンをワンロール手に取りレジに。後で端をかがるための金糸も一緒に。
2階に降りると、近くの店からりゅーじぃ!と呼ばれた。
行ってみると、一着のブレザージャケットを手に取っている。リボンと似た緑だが少し色が深い。
「どう?色み。合いそう?」
おう?大河を下から順々に見て行って、買って来たばかりのリボンを見比べ、合いそうだと答える。
「じゃ、合わせてみるね?」
すいませーん、これ試着ーと店員を呼んで試着室に入る。

「サイズはちょうどいい」
ハコから出てきた大河はなかなか……どうして。
七分袖のそのブレザーは今年も流行ってるチビ丈タイプ。
いま着ている、ウエストきゅっ裾ふんわりなAラインのワンピと合わせると、劇的に脚が長く見える。
カーディガンでルーズな感じの方が良く知っている大河のイメージに近いけど、こっちが俺好み!
これでポニテリボンはものすごく可愛い。ちょっと興奮した。
という印象を正直に伝えたら。
「じゃあ、これがいい。……ただちょっといい値段かも」
眉を八の字にした困り顔で、どう?と聞いてくる。
見ると、確かにそこそこ。でも『払える限り』なんて額には遠い。大丈夫だ。

でもよ。
「俺はいいと思うが、お前の普段の好みと違うシンプルなラインだぜ?」
身体の線も出ちまうが……いいのかよ?
「いいよ?うん。そう、これがいいの」
これくださーい。あ、ここで着て行きますと店員に告げる。
あとリボン着けたいんで切らせて貰えます?裁ちばさみとメジャーと鏡貸して下さい、と。
道具を借りてレジ脇で、はいりゅうじ、リボンにしてちょうだい。と。

竜児はロールのパッケを開けて、ちょっと長さを計算して、メジャー当てて測ってチョキン。
少々ほつれるかも知れないが、端の処理はあとでやろうと決める。
その間に大河はヘアゴムを取り出し、鏡を見ながらウェーブのかかった後ろ髪を上げて位置決め。
やがてタックを取ってブラシをかけられたブレザーを、どうぞと店員に渡される。
袖を通して襟元を整え、くるっと後ろを向いてリボン結んでと言う。
丁寧に結び目をつくって完成。
想像した通りだった。
重すぎず軽すぎず、浮かれすぎず地味すぎず。ワンピとの組み合わせがいい感じ。
姿見を向けてもらい、嬉しそうに全体を映して何度も確かめている大河を横に見て代金を支払った。

****

店を出て、エスカレーターでなく階段を降りようとしたら、早くもリボンが緩んでいる。
「ちょっと待った大河。ヘアピン持ってるな?2本貸せ」
ベルベットだから緩みやすいんだな。
少しきつめに直してから、隠しピンで留める。これで大丈夫なはず。
ちょうど3階から降りてきた女子中学生らしいグループが大河を見てあー可愛いーと盛り上がる。
降りて行きながら話している内容が階段から聞こえてくる。
「彼氏かぁ?あれ?」
「親子じゃないよねー?」
「でもなんか良くね?あんな事してくれるのが彼氏だったら」
「あんなんちょー恥じいじゃん」
「えーいいよー?」
……
にやり。
にやり。
声をひそめて。
「彼氏だってさ、りゅーじ」
「恥ずかしいとは……まだまだコドモだな」
これが彼氏彼女の余裕というやつか。

499夢の中でも(虎、帰るアフター2):2011/03/27(日) 23:44:42 ID:???

「お腹すいちゃった」
「結構集中して走りまわってたもんな。夕食までもたねえか?」
「うん」
「じゃあ上で軽くなんか食べよう」
屋上がフードコートになっていることを思い出して上がってみる。
パラソル付きの丸テーブルが置かれたエリアを取り囲むように沢山の屋台。
やきそばたこ焼きお好み焼き。ドリンククレープソフトクリーム。
鯛焼き麺類焼きトウキビ、ケバブまである。

「ここいいじゃん。海辺みたい」
「オープンエアだから晴れの日限定だけどな。買ってくるから座ってろよ」
「うん」
なにがいい?
ケバブ……いやせっかくの格好で肉はないわ。お好み焼きとメロンソーダ。
なんだ、肉でもいいのに。じゃ俺がケバブ食うわ。
笑いながら食料の調達に行く竜児。

お好み焼きとケバブとドリンク二人分を抱えて戻れば、ありがちな事に大河がナンパされていた。
地元の他高生2人……ということは2年か1年。酷い言葉を浴びせられるなあと思いきや。
「ごめんね、わたし婚約者とデートしてるの」
これもある意味ではストレートに過ぎて酷いかも知れないが。
「あ、来た来た。ほらあの人」
2人組は竜児の顔を見てビクっと。っしたー、っしたー、と頭を下げてそそくさ立ち去る。
「いまのお前に指一本でも触れたら俺は荒事も辞さねえ覚悟だが」
食べものをテーブルに置きながら大河に話しかける。
しかし、あんだけ穏やかに拒絶するお前にはもっと驚いたよ。
「うん。いま最っ高にいい気分。天にも昇る心地なの。こんなときに汚い言葉なんか出ない」
と言いつつ、少し背を反らしたのは見ないふりをしてやろう。

お好み焼きとケバブを半分交換しろという想定通りの要求に応じて小腹を満たす。
メロンソーダは失敗した。自分では見れないけどすごい色になってるでしょ?と舌を出す。
確かに鮮やかな緑に染まっている。
「りゅうじ、あの」
緑色ではあるけれど、かしこまった口調に変わっている。
「プレゼントありがとう」
「なんだか無理に俺の趣味を押し付けたみたいだったのに、良かったのか?」
「あのね、自分が欲しいものよりも、りゅうじが好きだと思ってくれるものを貰えて良かった」
たとえば食べ物とかゲームとか、そういうものなら自分の好きなものがきっと嬉しい。
だけど服やアクセはさ、私にとっては違うんだ。

「うちを出た時より今の方が可愛いって。綺麗だって。りゅうじは思ってくれてる?」
質問ではあるけれど、分かりきってる。そう大河の顔には描いてある。
「もちろんだ。ああ、いやあのカーディガンだってよく似合ってたぞ」
それも分かってる。でもこっちの方がりゅうじはいいんだよね?
「私は自分がちびでちんちくりんだと思っていて、そこから自由になれる格好が好きなの」
だからりゅうじも知っていたクローゼットの中身、同じ傾向だったでしょ。
でもさっき生地屋さんでりゅうじの顔見て、声聞いて、分かったの。
「私はりゅうじのためだけに綺麗にしてたい。りゅうじのためだけに可愛くなりたい」
そう思うのがとても気持ちのいいことだってね。
蹴りなんか入れちゃった後だけど。……ほ、ほ本当にいま思ってるよ。
なんという完熟トマト。
……俺もか。

「だから、選んでくれてありがとうね」
これも自由にしてくれているんだ。大事にする。と服のあちこちを撫でる。
「りゅうじと居るときにだけ着る。約束する」それにね?
旅行の時のポニーテール、あんなに前のこと思い出してくれたのが嬉しいよ。
頬を赤らめながらも、満面の笑みで礼を言ってる大河にどぎまぎしてしまって。

500夢の中でも(虎、帰るアフター2):2011/03/27(日) 23:46:32 ID:???


おやつを終えて、そろそろ夕食の買い物に行く時間。
その前に大河のおふろ用品を買わねば。
ここにもドラッグストアはあるが、うちの近くの方が安いのでそっちで買う事にする。
言葉少なに。ときどき黙って視線を交わしては、えへ、とか、おう、とか短く。
竜児は大河から目を離さない。
大河は前を歩いて、ちょっと離れて竜児からよく見えるように。
横に並んで、肩で小突いてみたり。
信号待ちでは、いちちゅっごとに有料の投げキッスを直撃成功してみたり。
ついでに車道によろけて、慌てた竜児に引き寄せられて。
そのままエコバッグを提げた腕に絡んで。
見上げて。
見下ろされて。
大河の思い。――望みをかなえてくれる不思議。
竜児に見えたもの。
つむじの後ろで結んだリボンが、午後の日差しを控えめに反射している。

****

いつものドラッグストアの前に来ると、見慣れた美少女コンビに。
「あ!」「あ」「おう」「あ」
ばったりと。
木原麻耶と香椎奈々子。元クラスメート。
そりゃ小さな町だ。会っても不思議なんてことはない。
昨日卒業式だったのだから、今日仲良しがつるんでいて何もおかしな事はない。

「あれぇーーっ!タイガーじゃーん?あ、かわいーっ!イメチェンなのー?」
あでも親元に一回帰って来週引っ越してくるってー?
「麻耶、それよりこっちの腕絡ませてる彼氏を詳しく紹介してもらわなきゃ」
「何だよ、知ってるじゃねえかよ」
香椎は無視して大河を問い詰める。口調こそおっとりしているが恋話マニアなのだ。
「高須くんとデートなのぉ?デートなのぉー?ねえねえねえねえー?」
「あ、うん。そうだよ。」
親元に一回帰るっていうのはうそ。もうずっとこっちにいるよ。と木原にも答える。
「そうなんだー、友だちにも邪魔されたくないんだよねえ〜?う・ふ・ふ、やだぁもう〜」
「いーないーなぁ!2人が付き合ってる現場をあたしたちもやっと見れたって事ー?!」
木原が頬を桃に染めて竜児の肩を揺する。

「今日はばかちーとは一緒じゃないの?」
「亜美ちゃんなら今日明日と仕事で遊べないって」
「ふーん、そうなんだ。あんたたちも買い物でしょ?」
「そ。てゆーか、暇つぶしのコスメ漁り。タイガーは?」
「私はおふろ用品を見つくろいに」

「「おふろ用品?!」」

麻耶と奈々子のダブルツッコミ。
ホテル滞在ならばそんなものを揃える必要なし。
「このあとかのう屋で夕食の買い物するんだよ」

「「夕食の!!」」

ふたりは揃って高須竜児を凝視!状況は果てしなく黒に近いグレー。ていうか黒。
「きゃ。そーなのぉー?やっぱりぃー?」
仕方なく竜児は頷いてみる。
「お、おう。まあな。もうお前らをごまかすつもりはねえよ」
「うっわぁー!あ、じゃあ昨日は……?」
竜児がギク。っと。
「ひょっとしてタイガー……?」
大河がギク。っと。
「お泊り……なのぉー?」
「え、えと……その……うん♪」「おい!」

「「キャァァァァァァーー!!」」

「お、落ち着け」
高須竜児は元クラスメートの女子2人に背中と胸、裏表からばんばん叩かれた。
祝福と、僅かな嫉妬、大きな憧憬に裏打ちされたその暴行を甘んじて受ける。
詳しく!と香椎が拳を大河の口元に突き付けるインタビュアーの振り。
大河も乗ってしまって、昨夜の入浴シーンの公開に及んでいる。
うあああああああああ!
黙れ黙れ黙れそんなこと言わんでいいぃっ!と抵抗を試みるも1対3。
多数派がそーゆー事に興味津々のお年頃女子となれば、勝敗はおのずと決まっていた。
「ハァハァ、なんかもうあたしら今夜眠れるかな?」
「もうー、あたしこれから奈々子んちに泊まるー!泊まんべ。泊めて?」
「もーうまヤラシすぎるかね。じっくり語り合おうか。コスメ漁りなんかしてる場合じゃない」
「あたしたちお菓子買って帰る事にする!」
「じゃあタイガー、高須くん。お幸せにね♪」
「ありがとね。またね」
「披露宴には呼んでほしー!」
「お、おう。何年後になるかまだ分かんねえけど。来てくれな」
「きゃ。うん。またね。また会おうね」
「じゃーね〜」

501夢の中でも(虎、帰るアフター2):2011/03/27(日) 23:47:37 ID:???

ふたりと別れた大河と竜児はドラッグストアに入って買い物。
前を歩くふりふりポニーテールに思わず竜児は呟く。
「……見栄っぱり」
「なによ。い……いいじゃないのよ」
シャンプー、コンディショナー、ブラシなどをかごに放り込みながら。
一緒におふろ入って、私もりゅうじもすごく気持ち良かった。
「どこにうそがあんのさ?」
まあ、大意要約をすればその通りではあるのだが。
それに、私たちがバカップル的に幸福なのは木原にも香椎にも嬉しいことでしょ。
あんだけ心配をかけたんだからさ。
うーん。そうかも知れねえ。
「つまり。私も、りゅうじも、幸せにい続ける責任を負ってるわけよ」
それに、せっかくこうなったんだから。私だって一度くらい……友だちに冷やかされてみたいわ。
ふへへと笑った。

最後にかのう屋へ移動。

「今日はなに食べたい?大河」
「そうねー。昨日がとんかつだったから、お魚食べたい」
「栄養バランスの感覚もついたみたいじゃねえか」
「まあね。というよりはうちのお義父さんが魚介の美味しさを教えてくれたの」
「へえ?」
「趣味がアウトドアでさ、釣ってきた魚を捌く人なのよ。海産物が美味しいところだしさ」
「初めて聞いたな……」
「魚の目利きも市場に連れてってもらって教えてもらったよ。ウデ、見せようか?」
「おう。そりゃ楽しみだな」

鮮魚売り場にて。
「気にした事なかったけど、かのう屋ってモノがいいんだね。さすが地域密着人気スーパー」
「そうだな。その分ちょっと高めだけどごちそうの時は外せねえ」
じゃあ何を選ぶ?
「そうねえ……」
三月である。旬の近海もので、豊漁で値段が安いものを好き嫌いなく。が基本。
「メヌケがあるけど関東じゃあまり出ないから高いね。美味しいけど」
それに底物って分かりにくいからパス。
大河は冷蔵ケースの上をじっくり見ていく。
「まず、今の時期に美味しいアサリは確定。味噌汁もいいけど、春キャベツと酒蒸しにしたらいい」
ほう。ちゃんと教わって来たみたいだな。
「魚はサバにしよう?秋がいいけど春も美味しい。並んでる数も多いからいいのがあるはず」
「俺も同意見だ。これと、これとこれ、あとこれが鮮度いいな。目が澄んでえらが真っ赤だ」
大河の目利きを見るはずなのに、つい習慣で指差してしまう。

「ふっふーん。その中に正解は2パックだけあります」
「おうっ?!あとの2パックはダメか?」
「ダメじゃないけど、脂の乗りが少ないはず」
しめ鯖じゃなくてみそ煮食べたいもん。サバの脂はエイコサドコサ、血液サラサーラ♪
たっぷり乗ってるのがいいよね?
りゅうじの見立てた中で、腹に薄く金色の線が入ってパツパツに太ってるのがいいのよ。
これとこれだけでしょ。とウインクしたり。
なんという若妻振り!と感心してる間に、大河は鮮魚売り場の奥に声をかける。
「おじさーん、これとこれ3枚にしてくれる?うん。中骨いらない。みそ煮にするから皮に切れ目入れて」
「はいよー!ちょっと待ってておくれー。お?姉ちゃん残り少ないの拾ったね」
お前、やるな。
まあね。でも料理はまだ出来ないからりゅうじがつくるのよ。
じゃあ春キャベツと生姜を買ってくるからここで受取り頼む。
しばらく待って、竜児が戻ってくると、はいお待ち―と再パックされた片身が差しだされた。
切り口のエッジの立ち具合、腹側の脂の乗りを見て旨そうだと竜児は頷く。

「それにしても毎日目利き修行をしていたわけじゃねえだろ?すげえな」
「これはセンスね。同じお代なんだからいかに美味しいものを選り分けるかという」
「要するに食欲というわけだ」
「うるさいな……。でもね、まず美味しそうと思えるものを選ぶのが基本だから合ってる」
さっきりゅうじも美味しそうな4つをまず選んだでしょ?
あとはそこから知識で拾う。
深海魚は見た目グロいのが多いから、難しいけどね。
「一番間違いないのは、魚屋さんと仲良くなるのがいいんだよ」
お店にとっても仕入れて良いものは当たりくじみたいなもの。
いつもそれを選んで買って行く客がいれば共感を覚えて貰いやすいってわけ。
そこで、自分がわからなければ教えてもらう。おじさん、おいしいのどれ?って。
そういうふうに教わったのね。
これは英才教育だ。と竜児は思った。
会った事もない大河の義父に微かな嫉妬。俺の楽しみを俺よりも先に……。
とりあえずは、めちゃめちゃ美味しいサバのみそ煮を作ってやる。絶対負けねえ。
レジに向かう間に、竜児はバカ高い紀州南高梅の梅漬けをかごに放り込んでいた。

502夢の中でも(虎、帰るアフター2):2011/03/27(日) 23:49:37 ID:???

****

ただいまーと、帰りつく。
あれーたいがちゃんかわいーよぉ☆と泰子が興奮する。
ぽっぷんきゅーと!とインコちゃんにも褒められてる。
テレ笑いをしている大河を見ながら、竜児は買って来た食材を整理。
針箱を出してきて、ロールの残りからリボンを切りだす。同じものがあと2本取れた。
端をきれいに断って金糸でかがる。
そのチマチマした作業を、泰子が卓袱台に頬杖をついて眺めている。
ブレザーを脱いでブラッシング。鴨居にかけ終わった大河も窓側に座って同じポーズ。
仕上がったので大河の後ろに座り、今結んでいるものと交換して、もう一本を同じ処理。
「緩みやすいから……ひとりじゃ綺麗に結べないな」ね?と。
「おう……大丈夫。結んでくれるやつはきっといる」な?
「じゃあーやっちゃん頼まれても無視するでやーんす☆」
「えー?ひどいー!りゅうじがいないときはやってよー。あ、いいんだ。そうだった」
竜児の前でなければ、これは着けないと約束したのだった。

繕い物が終わると、さて!と竜児は立って、エプロン着用。男の戦場?へと向かう。
アサリの酒蒸しはスープを逃がさぬよう土鍋で!
サバのみそ煮はとびっきりの味付けで!
汁椀はコクとさっぱり両立の赤だしで!
意気込みが暑苦しい空気を醸し出す。竜児はメラメラと燃えている。
大河はそれをほっとく事にして、日が傾いたのを認めると乾いた洗濯ものを取りこむ。
時節柄、部屋に入れる前にブラシをかけながら仕分けて、泰子の指導でアイロンがけ。
もう着ないからと泰子のクローゼットに仕舞い込んだセーラー服が、のちに毘沙門天国で
新たな仕事着のヒントとなったのはまた別の話である。
当然、サイズが合わなくてわざわざ買うわけだが。

そうこうしているうちに、夕食が出来た。
八畳間の真ん中に卓袱台。窓側に大河、向かいに竜児、自室前に泰子。定位置に三人着いて。
「やっちゃんサバだーい好き☆おーいしーい♪」
「りゅうじ、これ?」
大河がみそ煮の皿に付け合わせている梅漬けを指す。
「今の時期安くないのに、珍しい事するね?」
MOTTAINAI精神はどうしたの。
「……まあ、たまには良いだろ。みそダレの単調さをカバーする箸休め。秘中の秘」
「まあ、確かに。この組合せだと、飽きずにご飯が進むわ」
「お、おう。そうだろ?梅肉を潰してみそダレと絡めたのをソースにしてみる、というのも」
んにゃっ?これは?!甘さと脂と酸味がー!と言いつつ今日の大河はわりと上品に食べ進んでる。
不思議そうな竜児の視線に気づいたのか。
「ん?服に汁とか飛ばしたくないだけよ?」
「春キャベツとアサリのだしもおいしー。醤油の香りが立ってるね」
「そうか。うん。良かったな」
やはりいい仕事をして認められると気分がいい。つい胸を反らしかける。
「いやあ、やっぱりゅうじの料理は確かだ。お義父さんの域にも行けるかも」

え゛?
竜ちゃーん、おかわりぃー☆
あ゛あ゛、はいはい……。
りゅうじー、こっちもー。
お゛う゛。
お義父さんの……域に……「行ける」?という事はまだ「行けてない」

大河は魚の目利きがちょっとできるだけの食いしんぼだが、舌は確かだ。
高い、安いは関係ない。食わず嫌いがたくさんあっても、旨ければ好物と認める正直な舌を持ってる。
ある意味、大河を味見役として傍らに置いてから自分の料理の腕も相当に上達したのだ。
虚ろになった竜児の瞳に、かつてと同じように屈辱の炎が揺らぐ。
これは、あれか?また負けるのか。俺は。北村のばあちゃんに続けて二連敗か。
シニアクラスでは所詮、歯が立たないというレベルか?
「……あんた、また魔に魅入られてる」
様子を見て総てを悟った大河が助け舟を出してきた。
「アウトドアの人って言ったでしょ。趣味の料理は最高。毎日のおかずはてんでダメ」
もぐもぐご飯を食べながら、あんたの方が総合点で上なんだからと言ってくれた。

503夢の中でも(虎、帰るアフター2):2011/03/27(日) 23:50:55 ID:???

ああ、食べながらだけどな。口の端に味噌ダレ付けたままだったけどな。
家の中で2時間かけてホタテパエリアなんか作らないでしょーが。ダッチオーブンで。
また大河は八の字眉の困り顔で言う。
「お上品にゆっくり食べてたら満腹感に襲われちゃったよ。三杯目がそっと突きだせない」
悔しいからあとは酒蒸しと赤だしローテいくわ。汁ものばんざい。うまっ。
濃すぎず薄すぎず丹精込めたタレで煮あげたサバはいつの間にか完食されていた。
そんなこんなで、危うくも竜児は境界から連れ戻されたのだった。

シニアクラスでも公式戦に出てこない無冠の名人。
「うはははははは、竜児。お前の食に対する情熱はそんなものか!」と嘲笑う和服の男。
あくまでも竜児の勝手なイメージだが。
ともかくも、心中で『北の巨人』と名付けられた義父との料理対決は……やはりまた別の話となる。

****

「行ってきまんするー☆」
と、今夜もぽよんよんと泰子が出かけたのは大河が洗いものを済ませた頃。
エプロンを外しながら行ってらっしゃいと見送って居間に戻ってくると、竜児のトラウマも収まっていた。
「ねえあんた。味噌ダレが余っていたからタッパにとって冷蔵庫に入れたよ。明日ワカメのぬたにしよ」
「おう。……お嬢さん。いや奥さん」
「へ?へへへ、へへ……そう?まあそう聞こえるように言ってみたけどね。へらへら」
「台所に立つ後ろ姿もいいもんだ」
「は、裸エプロンはだめだよ。まだ。……やっちゃんが出かけるまで後片付けしないでおくとか?」
だめなのかいいのか。
「い、いや。そういうのは初々しい新婚生活のために取っておくべきだ。……と、思う」

二人っきりになれば、どうしてもこういう方向に話題が行く。
だって俺たちは、私たちは。互いを思った恋人同士だから。
節度を持ってと釘を刺されながらも許された恋人同士だから。
こうして挑発するのに。誘いをかけるのに。それなのに一線を踏み越えるのが難しい。
もっと距離が遠かったら、きっと簡単にひとつになれている。と思う。
相手の気持ちを自らの欲望に従って好きに都合良く思えるなら。
そうしてつながってしまえば、そこからゆっくり始められるのだろう。
結果OKというやつで。

でも近すぎる。
大河は、竜児は、あまりに長い間互いの思いを察して分かろうとしてきた。
分からなければ互いが閉じ込められた迷宮から出られず、手を取り合う事は出来なかったはずだ。
今は分かるようになっていて、それは代えようもないほど嬉しく得難い。
でも同時に、欲望が一致しなければ最後まで行けないという事でもあった。
一年以上も前に、ふたりは偶々ひとつになれて、その記憶がさらに誘惑してしまう。
「ゆっくりこのままでいられたらいい」と。
抱き合い分かち合う幸福感に包まれ、でもほんの少しのもの足りなさを感じながらも。

竜児は自らの中の欲望の炎を、見つけしだい消すものと思う。
大河は自らの中にも欲望の炎が灯ると知らないでいる。竜児の炎が燃え移るのが理と思う。
いや、思っていた。昨日までは。
前に結ばれた日にどうやってその炎を扱ったのか。もう分からない。

今日は、思いが互いに伝わってから長く離れて、初めて恋人らしく過ごす事ができた日。
今日は、ずっと口火のような炎が灯っている。それを消したくはない。

竜児はつと立ち、黙って風呂に湯を張ってくる。
ふたりきりの居間に戻って食後の茶を飲み。窓側に座って大河に寄り添う。
点けたテレビを見ているけどうわのそら。なにか話すけれどうわのそら。
触れた肩口から互いの温度を感じる。
大河の顔を覗き込んでみると僅かに見上げて。
少しだけ不安の色が浮かんだ。どこに行くの、と問いかける。
それはすぐに消えた。どこにだって一緒に行く。丸く見開いた目で竜児を見ている。
竜児には大河の口火が見える。鳶色の瞳の奥、光を湛えて確かにある。
たぶんその使い方を教えてやれる。

504夢の中でも(虎、帰るアフター2):2011/03/27(日) 23:52:16 ID:???

伸ばした手で丁寧にリボンを解き、ヘアゴムを外す。ポニテがふぁさっと落ちて広がる。
「黙ってると、怖いか?」
ううん、とかぶりを振る。
「今日も一緒に風呂入ろうぜ」
俯いて、長い睫毛を瞬かせてこくんと頷く。
竜児はテレビ台に手を伸ばしてメタリックブルーの箱のシュリンクをぴり、と破く。
三つ入っている中箱のひとつを開けて、アルミパックを取り出した。
鳶色の瞳がそれをじっと見ている。
――望みがかなう不思議
大河にも聞こえてくる、湯船から湯があふれだす音。


無言で脱がしてやると、昨夜と同じように下着姿で脱衣所に逃げる。
台所との仕切りの暖簾をくぐって、後から竜児も脱衣所へ。
大河はすでに裸で待っていた。
過剰に恥ずかしがることもなく上気した頬に愛しさを覚える。
脱がされて浴室へ入る。

手順は変わらない。
大河が湯船につかっている間に竜児が身体と頭を洗う。
竜児が湯船につかると大河が出て洗う。
湯あたりしないようぬるめにして。
買ってきたブラシで、半身を乗り出して大河の髪を洗ってやる。絡まないよう、傷めないよう。
もともと愛用していたシャンプーの香りは、今がいつだったかと竜児を惑わせる。
泡を流してしまえば入浴としてすべき事はもうない。口数も少なに作業を終えた。

竜児は湯船から洗い場に降りて、膝をついて大河の肩を抱く。
ひざ痛そうと大河は立って、竜児に椅子を譲る。
それから腿を跨いで抱きつく。
竜児も背にしっかりと手を回して支える。
温かい身体が、すこし冷んやりとしはじめた大河を温める。
夜になっても暖かい日だが、熱めのシャワーを出しっぱなしにしてみた。
MOTTAINAI?構うものか。
大河のきめ細やかな肌に触れたあらゆる部分が反応して口火が炎に変わっていく。
「前にどうやってしたのか、もうほとんど覚えてねえよ」
照れくさそうに微笑んで、蕾にも似た唇を求める。
それから頭ひとつ分の身長差を埋めるように、竜児は背中を丸めて大河の首筋を愛撫。
触れ合った肌の感触を快く受け取りながら大河も答える。
「私だって」
言いながら竜児の鎖骨を唇でなぞり少し歯を立ててみる。――食べてしまいたい。
出しっぱなしのシャワーで湯気がもうもうと立ちこめてくる。
「でも、したいようにしていい」
りゅうじがきもちよくなれば、わたしきもちいい。きっと。
「乱暴にはしねえ。こうしているうちに思い出せるだろ。多分」
「乱暴にしたって……いいんだよ」
耳たぶを甘噛みしながら囁いてくる。わたしはりゅうじのものだもん。
ああ、大河はおれのもんだ。

炎が一段と大きくなり竜児を煽りだす。大河は俺のものだ、だから使えと。
これを消してしまえば、ただ抱きしめるしかない。
だけど、灼き尽くされてしまうとはもう思わなかった。
「りゅうじ……触ってみて……」
お前の中にも炎はある。それで俺を求め俺を使え。
「とろとろだ……たいが……」
アルミパックに手を伸ばし封を切って着ける。
大河がきもちよくなればおれもきもちいい。そうすればおれは大河のものだ。
長い離別の時を経て、大河と竜児はまた結ばれる。
切れ切れに響く甘い鳴き声とともに、シャワーの音が続いていた。

505夢の中でも(虎、帰るアフター2):2011/03/27(日) 23:54:25 ID:???


「きもちよかった……」
髪を乾かしてやってると、ずっと押し黙ってた大河がぽつんと口を開いた。
「髪を梳いてもらってるのが?」
「……ちがうよ。い……いじめないでよ」
「俺がまんできなくて、すぐ終わっちゃったから……もの足りねえだろ」
竜児が恥ずかしそうな声で問う。こういうときの男の子には最大のテーマとはいえ、つい。
どう答えられたところで、やっぱり恥ずかしいに決まっているのに。
もちろん大河にそんなことを斟酌できるほどの経験はない。
「……そう言えばそうだけど。きっと何時間つながってても足りないって思うよ」
そりゃ無理だー。と竜児が悶える。
無理は分かってる。だからお礼言ったのに。だったら聞かなきゃいいじゃない。
礼なんか言われてねえよ。
なんとなく露骨な会話を交わしているうちに、だいたい髪も乾いた。
はいおしまい。ぽんとパジャマの背中を叩く。

「りゅうじと一緒に寝る。今日はもう離れたくない。ちょっとだって嫌だ」
「俺の部屋に布団ふたつは敷けねえんだよな。どうする?」
「い……いじめんなっつってんだろ!あんた意外にドSなのっ?」
あたしゃいま浮かれポンチなのよ。おかしいのよ。気ぃ使えよ。
分かった分かった。悪りぃ。
布団を敷き真新しいシーツを張る竜児にぴったりとひっ付いて大河は邪魔をした。
敷き終わるといち早く滑り込む。
「あー、冷たいシーツがきもちいー。……ケットが男くさー」
ううーん。と全身で猫のような伸びをして頭まで布団にもぐり込む。
火の元確認を済ました竜児が部屋に戻ってきて、畳にはみ出た髪の毛に話しかける。
「ちゃんと洗ってるのにな。やっぱしみついて抜けないもんか」
「いいんだよツッコむな。ぜんぶ落としたら殺す。……いま布団はいでも殺す」
なーに言ってんだ。俺が入れねえだろそれじゃ。と遠慮なくはぐ。
おら、髪の毛踏んじゃうからよけろ。湯あがりトマトな大河の脇へ横になる。
確かに火照った脚に冷えたシーツがきもちいい。

「さあ殺せ」
大河がソッコー脚を絡めて竜児の肩をつかみ、胸に顔を埋める。ごんごん頭突きをかます。
「りゅうじりゅうじりゅうじりゅうじ……」
腕枕をして頭突きを抱え込み、零れる髪に顔を埋めると少しずつおとなしくなる。
大河の細い腕が隙間を通って竜児の背中を捕えてぴったりと抱き返す。
ベアハッグのつもりかと思うほど込めた力もやがて抜け、ふうーと熱い息を吐いている。
静かになって、鼓動だけを聞く数分間が訪れる。
「本当に……本当にね?きもちよかったの」
「女はどんな感じなんだ?」
「あのね?お腹の中に火があって、だんだん大きくなる」
「それは俺も同じだな。そのあと背中を伝って腰へ降りて行く感じだ」
お前もそうなの?……ちょっと違うかな?
りゅうじに触れてるところに大元の火が別れてつーって流れていく。
抱き合ってるとね、身体のあちこちでぼっぼって。
そんでりゅうじが触ってくれるとこには、ぼぼぼぼーっってね。
もうそれで溶けてしまいそう。切なくて。きもちいいの。
「ね。あのままだと溶けちゃうのかな?終わりがあるのかな?」
俺には分かんねえ……けどそんな大河を見てみたいな。感じてみたい。
何を話そうと勝手だが、ふたりの初めてのピロートークは、まるで試合のあとの感想のよう。

「きっと今日、デートしたせいだ……」
嬉しいことがたくさんあったから。
プレゼントしてもらってママに認めてもらってプロポーズの場所でキスできて。
りゅうじが私のこと好きって、ていうか、自分のものと思ってるのをずっと感じてて。
「お前も思ってただろ。俺が自分のものだって」
うん。それがお腹の中の火なの。分かり難い?
いや分かる。俺にもそれあった。今もあるよ。
「私も。それには何度も襲われて……テンパちゃって。怖いものって思ってた」
きっとみんな持っているもの。けど私が変だから襲われるまましかないんだって思ってた。
りゅうじが燃やしたときにあいのりするしかないのかなって。

大河は顔を上げて竜児を見つめる。
鳶色の瞳が美しく、蕾の唇が艶めかしく、耳元の産毛が銀に光って可愛らしい。
この大河は俺のものだ、と思えると竜児の口火がまた炎へと変容する。
と、瞳には包み込む親愛。唇には甘える笑みがすっと浮かぶ。
「でも、もう怖くない。ずっと持っていられる」
でしょ?と得意げ。
そうか。
いま俺の炎を感じとって、逸らして遊んでみたわけだ。そんなこともできるのか。
面白いな。初めて知ったことなのに。すぐに。
「付き合うって、恋するのって……面白え。すごくいいな」
「だからみんな欲しがるんだね?こんなに甘いなんて……ほんとに……」
知らなかった。

506夢の中でも(虎、帰るアフター2):2011/03/27(日) 23:55:30 ID:???

「ね、りゅうじ」
いまさっき逸らしたものを、
「りゅうじが……ほしいよ」
また取り返そうってか?
そんなに鳶色の炎を浮かべて、蕾の唇を濡らして?
手を引っ張っていたはずなのに、いつの間にか引っ張られている。まったく油断がならない。
お前に、おれ夢中だ……大河。

少しの静寂に不安を感じて、ずり上がって視線を合わせてくる。
だめかな?効果ない?……まだへたくそ?わたし。ばかちーならもっと巧くやれるのかな。
「りゅうじ……」
――望みがかなう不思議
「大河」
パジャマの隙間から腕をさし込まれて、じかに背中を抱かれる。
りゅうじの温度に触れて、お腹の火が広がっていく。
「もう一度……いいか?」
りゅうじの声を聞いてりゅうじの火を感じる。
りゅうじがほしい。
「うん……」

****

高須泰子が一夜の勤務を終えて帰宅した。
足音をひそめて階段を上がり、音を立てずに鍵を開ける。
窓から差し込む街路灯の僅かな明かりと、冷蔵庫の音だけに満たされた家。

――ほっほ〜ぉ☆
ふすまを閉め忘れてるのはどぉなのかなー?居間に足を踏み入れて、うふっと。
テレビ台に視線を走らせて、またふふっ。
竜児の部屋を覗き込む。
ひとつ布団で抱き合い眠る最愛の息子と息子の嫁。というよりも可愛い娘。

――よかったでやんすね☆
すうすうと幼子のような寝息を聞いて、泰子の胸に暖かなものが広がる。
独りで家を飛び出して、ふたりになって。
行き場を失った愛をありったけぶつけて。
そうしなくては生きてこれなかった。もうだめだ、と諦めたことも。
自分の歪んでいた愛情をひとりでなくふたりで受けとめてくれていた。この子供たちは。
だから息子は狂わずに、壊れずに済んだ。いくら感謝をしてもしすぎるということはない。
――ありがとう、たいがちゃん
屈みこんで、そっと広がった髪を撫でる。起こさないよう、そっと。
ふたりが三人になって、再び絆を結んだ四人家族になり、これからは五人になる。

机の上でふたりの携帯がLEDを点滅させている。静かにふすまを閉めた。
そろっと振り返ると。ごん!
「きゃんっっ☆」
酔っていたのだろう。卓袱台の角に脛をぶつけてしまった。
声が漏れぬよう口を押さえて、泰子は自分の部屋に駈け込む。
竜児が敷いてくれたのであろう布団の上で、黙って痛みに耐えた。

507夢の中でも(虎、帰るアフター2):2011/03/27(日) 23:56:35 ID:???


なに……音……?
薄目を開けてよろよろ身を起こす。目覚めてはいない。
あれ?
薄いブルーのカーテンの窓。開ければベランダ。その向こう……。
ベッドで寝ていたのに。
……りゅうじいるじゃん。
そっか。こっちで眠りたくて。あんまり思っていたから……。
あさはまだ。
ああ、忍びこんじゃった……ついに。
チャーハン……残ってないんだっけ。
いい。ねむいし。さむい。
いっしょにあさごはんだしいっしょにがっこいくし。
あしたごまかせばいいや……

ごまかすのか……
やだ……
ぽふ、と頭を置いてまた眠りに落ちていった。


夜が明けて、よく晴れた三日目の朝が来た。
りゅうじが見てる……ねむい。身体が動かない。
あ、でも明るくなってる。
起こさない……の?
遅刻……は?
少しずつ目が覚めてくる。
ああ髪ぼさぼさ。いいけど。見られても。りゅうじなら。
えっ?ハダカ?
なに?
「おう……おはよう。大河」
りゅうじにぎゅーっと抱きしめられる。
エロ犬っっ!?
え?そうなの?え?本気?――あ?
そっか。
いいんだ。
いいんだった。
これで。
混乱した記憶が解けて、ちゃんと並び直される。
ごまかすことなんかなにもない。

りゅうじの胸にぺたっと頬をつけて。
「んにゅ、おはよ〜」
「寝ぼけてたな」
「んー。ふわ〜あ。うん。まあまあいい夢みた」
指差した方向はりゅうじの部屋の窓。その向こうには……。
あっちから忍び込んでわたしあんたの布団にもぐりこんだよ。
「そうか。いい夢じゃねえか」
「やばいとも何とも思わなかった。とっても夢っぽかった」

可笑しそうにりゅうじが笑ってる。
うん。
そうなんだ。と大河も笑う。
望みがかなう不思議。

夢より現実の方が幸せなんて、まるで夢みたい。


――END

508高須家の名無しさん:2011/03/28(月) 12:38:16 ID:???
ああっ、いいなぁ〜。二人の笑顔が見えるんですよ!幸せそうで、眩しい笑顔が! 心が満たされる、なぁ〜て言うと大袈裟かもしれないけど、あなたの作品には大変癒やされています。GJ!!

509とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2011/03/29(火) 06:46:50 ID:???
お題 「させてる」「ペダル」「への字」
 
 
 
「ふぅ……」
 ブレーキペダルから足を離して、竜児はほっと一息。
「ちょっと竜児ってば!」
「おうっ!?」
 途端に助手席から浴びせられる大河の怒声。
「な、なんだよ大河」
「なんだよじゃないわよ! さっきからどれだけ呼んだと思ってるの!」
「お、おう、すまねえ」
「大体ね、あんたは緊張しすぎなのよ。口はずっとへの字だし、血走らせた目をこーんな三角にさせてるし。対向車線のおっさんがビビってたわよ」
「仕方ねえだろ、初心者なんだから。車だってじいちゃんが貸してくれてる物なんだし」
「それにしたって度が過ぎるっての! あーあ、せっかくの初ドライブが散々じゃないの」
「いや、ドライブって……近所のスーパーに来るだけなのに大河が無理矢理乗り込んできたんじゃねえか」
「ドライブはドライブでしょ」
「そりゃ広い意味ではそうかもしれねえけど……」
「まったく、コレを聞かせてもらえるのはいつになるのかしらねぇ?」
 言いながら大河が取り出したのは四枚のMD。
「!? おい大河、まさかそれ……」
「そ。あんたが作った『彼女とドライブの時にかけるBGM』春夏秋冬各バージョンよ」
「い、いつの間に……返せ!」
「だーめ。きちんと聞いてから」

510 ◆Eby4Hm2ero:2011/03/29(火) 06:52:17 ID:???
転載ありがとうございます。

回線工事の遅れでまだ手打ちコピペ……orz


>夢の中でも
GJ!
やはりアフターな竜虎は幸せでなければ。

511高須家の名無しさん:2011/03/30(水) 00:07:04 ID:???
>>507
やべぇ、デート中の二人がいちいち可愛くて悶える…!
良い奥さんになりそうな大河の成長っぷりと、美少女コンビとの交流が見れて嬉しい。10巻の大河付きバージョンみたいなw
初々しいのに、ずっと一緒に積み重ねてきたものがある二人ならではの安心感
みたいなのも感じられて、ホントもうご馳走様でした!

>>509
GJ!大河とドライブ妄想しながら作ったんだろうなと2828
早く復旧できるといいな。

512高須家の名無しさん:2011/03/30(水) 23:01:52 ID:???
うそぉん、本スレ初の規制くろた・・・orz

まぁいいか、本スレ>>513へのコメ
みのりんの鼻血が心配だw
甘すぎだがそれがイイ!

513507:2011/04/01(金) 01:49:08 ID:???
>>508-511
ご感想ありがとうございます。
原作10巻はラストがファンタジックなんでむしろ全肯定できました。
アニメは1年後の帰還というところにリアリティを感じて埋めてえ……と思いました。
次回でこの一連が終わる予定ではいます。またお目汚しできましたら幸いです。

514高須家の名無しさん:2011/04/04(月) 01:05:56 ID:???
また投稿させていただきます。

□□【タイトル】桜のころ(虎、帰るアフター3)
□□□□【内容】読まれる場合にはご注意ください。具体的描写は必要最小限に留めておりますがガチエロあります。
□□□□□□□□他にもあなたの持つとらドラ!キャラのイメージを損なう描写および設定が含まれます。60KB

実乃梨・亜美・北村が登場します。また、ガチではありませんが百合風味もありますので、
あらかじめお断りしておきます。
今回で完結となります。

↓宜しくお願いします

515桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:07:37 ID:???
【これまでのあらすじ】春は三月。親元で高校を卒業した逢坂大河は懐かしい大橋の町に
帰ってきた!本来の転居予定を前倒して単身上京。荷物が届くその日まで。大河と竜児が
繰り広げるパートタイム同棲コメディ(相変わらず泰子付き)。甘酸っぱいその3!

****

逢坂大河が大橋へ帰ってきて3日目の朝。

竜児は傍らに眠る大河を飽きもせず眺めていた。
カーテン越しに差し入る朝日に柔らかく照らし出されて、幼子のように眠っている。
今朝は先に目覚めたから、竜児は彼女の寝顔を存分に眺めていられた。
目つきが怖いと言われてはいても、こんな優しい表情だってできる。

ガラス細工……人形……精緻な美貌。
大河のすがたかたちを何度も形容してきたけれど、そればかりが本当ではない。
こどものように笑い、得意がり。少女のように恥じ入る。
少年のように挑発的で、母親のように優しく。そして素直な同い年。
熱い体温があり、感情を隠さず映し出す瞳と、この身体を掴む強靭な腕を持つ。
その総てが代え難く愛しい。

ゆっくりと規則正しい寝息が変わる。んふーと長く継いで薄目をあけた。
そろそろ目覚めるようだ。
起きるまで静かに見ていようと決めていたのに、動き出せば思いに突き動かされる。
「……おはよう。大河」と。
声をかけるなり、その小さな身体をかかえこんで抱きしめた。

んにゅ、おはよー。
夢をみてたよーと。まだ眠そうな声。
窓の外に隣接する建物。もう一年以上も前に住んでいた部屋からここに忍び込んでね。
傍らに潜り込んでみたのね。
そうしたらりゅうじが寝ぼけて、わたしにとんでもない事をしたんだと言う。
可笑しくなって、笑いだしてしまう。
大河も後を追って笑う。
ふたりとも可笑しくてたまらない。なぜって?
もしもあの頃そんな事になっていても、今日という日は変わらずに迎えられただろうから。


起き出して、午前中だけ浅い角度で当たる日差しを無駄にはできず、竜児は布団を干す。
明るくて気づかなかったが、机の上に仲良く並べて置いた携帯が瞬いている。
「あ。着信してる。りゅうじー、あんたのもー!」
開いてメールを読む。

「「あ。」」

 逢坂大河に告ぐ。
 お前が我々友人をたばかって高須邸に潜伏している事は既に分かっている。
 おとなしく悔い改めて、彼氏ともども投降せよ。
 本日(ランチタイム後の)13:00、Jonny'sで待つ。ちなみに他の2人も来る。
 待っているぞ!
                               北村祐作
 P.S. 審問に備えて口裏合わせを推奨しておく

同報で5人に宛てた投降勧告、というか会おうぜアポが昨夜おそく着信していたようだ。
その頃には大河も竜児も夢の中だった。
まあ起きていたとしても携帯は机上にあったから気づかなかったかもしれない。
「……なんで北村くんに分かっちゃったんだろうね?」
「お前な。昨日だれに俺たちのバカポー振りを見られたよ?」
「え?木原と香椎……あ!そっかぁ」
「川嶋→北原→櫛枝と捜査線が形成されるには充分だな。どうする?」
「もちろん行くよ?せっかく忙しいのに集まってくれるみたいだしね」
「審問とか書いてあるから結構聞かれるな。とりあえずはメシ食って対策会議といくか」
「うん。……あ、もうひとつ来てる」

516桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:08:48 ID:???

大河にだけ来ていたもう一通のメールは親友の櫛枝実乃梨からだった。
読んで、大河は八の字眉の困り顔になる。
やがて八の字の間にもう一本シワが入ってちょっと泣きそうな顔にも見えた。
竜児は覗きこんだりしなかったけど、その表情は少し気になった。

指定時刻に投降する、と全員に返信を済ませ。
まだ時間はたっぷりあるので、朝食・洗濯・掃除と高須家の日常に支障は来たさない。
友人たちと長時間つるむことになるだろう。泰子のおかずを2食分用意する事も忘れない。
さて対策会議という口実で単なる食後のお茶をのんびり喫する。
微妙な困り顔を続けている大河に竜児は気を利かして。

「俺はあいつらになら何を訊かれてもありのままで構わねえが。お前は?」
「う……うん。私も。ただね?木原や香椎とは違って北村くんたちは巻きこんじゃったから」
「そこだ。俺らがあんまり浮かれて万が一にでも傷つけるのはな」
「そう。……でもね」
神妙な顔で竜児を見る。迷いはなくなったようだ。
「みのりんも、北村くんも、ばかちーも、私は信頼してる。なんでも答えるよ」
「そうか。じゃそれでいい」
「うん」

あっさりと対策会議は終わった。そうして大河はもう一度メールを読み返す。

 わたしの大河へ
 きのう会ったばかりだけどまた行くよ。
 もう卒業だからね。わたしは『あのこと』をみんなにも話したい。
 あんたがそれを許すならば返信くれ。なければやめる。byみのりん

――わたしの大河。
もう長い間そう呼ばれてはいない、みのりんの特別な呼び方。
竜児とも未だ出逢わぬ頃。あの葡萄色の瞳と見つめあった。
懐かしくて甘くて、そして少し涙がでてくる記憶。


****

それはまだ私が誰も信じられなかった、高校に入学したばかりの春。
とある木曜日の午後に温かな雨が降り出して。
傘を忘れた私は、昇降口で大粒の雫が落ちるのを不機嫌ツラで眺めていた。
悩んだところで結局は走って、ずぶぬれでマンションに帰りつくしかないのだけど。
寒くてだだっ広い、独りの家。
ともかくはシャワーも浴びれるし、制服は乾燥機で明日までに乾かせる。
でも面倒くさい目に遭うのはいやだった。つまらない理由でグズグズと佇んでいた。

そこに、名前も知らなかったみのりんが傘をさしかけてくれたのだ。
「逢坂さん?入って行きなよ」
驚いて見上げた時のみのりんの顔。それは今でも忘れた事がない。

同じクラスの櫛枝ってんだよ。家まで送って行くからさあ。
屈託のない笑顔に釣られて、ありがたく相合傘で送ってもらったのだった。
ささやかに嬉しかったけど、無愛想に短く答えることしかできなくて。
マンションまでの僅かな道のりで何を話したのか。もう覚えてはいない。
「わお。ここなんだ。近いじゃん。全然まわり道じゃなかったよー」
あたしん家はこの先5分くらい。

ねっ!朝も一緒に登校しない?
坂下の曲がりっぱな。分かるっしょ?あそこで待合せしてさ。
「あ、うん。いいよ」
「じゃあまた明日ねー」
こんなふうにみのりんと出逢った。

517桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:09:51 ID:???

それから携番も交換し、朝も帰りもわりと一緒で、教室でもつるむようになり。
仲良くしてもらい嬉しかったのに。それをどう表現したらいいのか分からなかった私。
でもそんな事は無視して、櫛枝実乃梨は明るく踏み込んで来てくれた。
やがてひと月もたたないうちに大河、みのりんと呼び合う距離になっていた。

ある日、何度も朝の待合せに私が遅れるので、みのりんが言った。
「もー。お母さんにちゃんと起こしてもらえよー大河ぁ」
「ご、ごめん。……私、独り暮らしでさ。朝に弱くて……」
「え?あんな大っきなマンションで、独り……なの?」
「う、うん。事情があってさ」
「そーなのかー。……じゃさ、これからはわたしがモーニングコールしてやんよ」
「ほんと?」
「こんくらい任せとけよ、大河」

たぶんこのときだ。みのりんが扉を開けてくれたのは。

朝は一緒でいいけど、みのりんは部活をしていたから帰りはいつも終わるのを待っていた。
たいていは図書室で。
ひまつぶしの読書をしたり宿題を済ませたりしていた。
だから手乗りタイガー実はガリ勉!ていう伝説が残ってないのは写真部か生徒会の陰謀だと思う。
ひとを文学少女かなんかと勘違いして付き合えって言うおポンチを何度か撃退しただけなのに。
ともかくも、たった数分間だけれど、心を許せる友だちとふたりきり。
時には寄り道や買い食いをして過ごす時間というのは私にとって何より大切だった。

「ねえ。みのりんは何で私と友だちになろうと思ったの?」
「ん。大河がめっちゃ綺麗だったから」
みのりんねえ、可愛い女の子が三度のご飯より好きなのだよ。

言ってる事はポンチと同じなのに、どうしてみのりんに言われると嬉しいのだろう。
あの頃は分かんなかった。
そしてたしか夏服に変わる前の頃。珍しく遠慮がちにみのりんが訊いてきたのだ。
「ねえ。大河んちに行ってもいいかなあ?」

学校帰りにモスで食べ物買ってご招待したマンションの惨状は言うまでもない。
料理は全然できなかったけど、掃除はわざとしなかったから。
こんな……三世代でも住めそうなうちに独りで置かれてる事に抵抗したかったから。

使ってない部屋は汚れてないから、そこでいいと思っていたのだけど。
必ず通るLDKがこうではどうしようもなかった。
入ってしまってから気がついた。
「本当に独り暮らしなんだねえ……こんなに広いうちで……」
「うん……気持ち悪かったね。ごめんね」
こっち汚してない部屋あるからさ、と案内しようとした。そしたら。
いいんだよ、あたしに気ぃ使うなよ。
「大河……かわいそう……」みのりんは涙ぐんでた。

哀れみを買うなんてまっぴらだ。
その頃も、今でもそう私は思うような奴だけど。
でもそのときは、みのりんに悲しい思いをさせた事がどうしても辛かった。
そして私の家庭の事象を察して泣いてくれるのが嬉しくて。
みのりんは私の頭を抱えこんで、背中を撫でて泣いてくれた。
私も耐えてた思いを抑えきれずに。

ふたり泣き腫らした瞼でリビングの掃除をして。
汚れていないカップを探してお茶をいれて、並んでモス食べて。
遅くまで私たちはぽつぽつと身の上話をした。
いつも明るいみのりんがみのりんの家で受けてる扱いを聞いて驚いた。
分かってくれない家族に一緒に呪いの言葉を吐き。負けないでいこうと誓った。
そうして、その日から親友になったんだ。

518桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:10:53 ID:???

****

携帯をみつめてぼんやりと思い出していたら、竜児がどうした?と聞いてくれる。
なんでもない。考え事していると答えたら、そうかと放っといてくれる。
ありがとう。
ごめん。せっかくの一週間なのに。
居間のテレビ台の横に移動して、ちぢこまるように壁にもたれて。また思い出す。
大河は実乃梨に返信メールを送る。イエスと。
出かける時刻までは、まだ。


大河のレスをベッドに腰掛けて読む。
短く“いいよ”とだけ記されたメール。
離れてしまってからの一年、何度もこの話をしてきた。
そして置きっぱなしにした気持ちを一緒に回収できた。大河とは。
これは大河とだけ分かり合えていればいいこと。分かってる。
わたしがわたしの大河を大切に思い出して、大河がそれを知っていてくれればいい。
けど。

いま大河に高須くんがいるように、わたしにはあーみんがいる。
恋人じゃなくても同じように大切だから本当を分かち合いたくて止まらない。
まだ高校生の気分でいられるこの数日間のうちに。

“いいよ”か。もう一度メールに目を落とす。
あんたは変わらないでいるね?大河。
実乃梨は顔をあげて、初めてともに泣き合った夜から思い出す。

****

――夏。
部活と大河だけで過ごした高一のひと夏。
わたしは練習が終わると図書室へ迎えに行った。
そうでなければ、ネット裏で大河が待っていてくれた。
仲良くなってよくつるんでた北村くんが意外に大河に愛想よくてちょっと疑ったっけな。
あとでポンチの1人と聞かされてなるほどと思ったもんさ。

そうしてわたしらは大河のマンションに帰って、遅くまで一緒に過ごす。
掃除して洗濯して。一緒に食事して宿題して。たくさんダベってふざけて。
わたしはひととおり家事ができたから、やれることが一杯あった。
忙しくて、疲れて。そして楽しく充実した毎日。本当の家には帰ったら寝るだけ。
家族も、女友達のマンションで引っかかってると知ると、連日の深夜帰りに何にも云わなかった。
その関心のなさにも、いっそう反発していたかも知れない。

お気に入りのカップや着替えを持ちこんで。
半調理レトルトや中食や冷食ばかりの手抜き料理を、大河は手作りと喜んで食べた。
おままごとのようでも大河の暮らしを支えているのが幸福だった。
同棲……って言うんだよね。ああいうの。
それは夏休みに入っても続いていく。
部活はあったけど圧倒的に大河の側にいられる時間が長くなって、それで。
わたしは――。

****

ベッドに腰かけたまま再び実乃梨は俯いて、いっそう短くしたサイドをかき上げる。
けれども、どこにも引っかからない髪は何度も垂れてきて、そのうち掛かるに任せた。
これが自分の髪形なのだから仕方ない、と思う。
頬に垂れかかる髪がいやなら禿げヅラにでもするしかない。

****

――わたしは、わたしの大河を守ってやれると思い込んでいた。
最初に声をかけたのも小さくて可愛かったから。
悪い噂も聞くようになってはいたけど、あんなに可愛いんだからそれはみんなの勘違い。
わたしだけが彼女を分かってやれると思っていた。
仲良くなって、それは本当だと知ることができた。
みんな何で大河を怖れ遠ざけるのだろうといつも思ってた。
だから。
夏休みの終わり近く。
練習を終えていつものように大河のマンションを訪ねた日。

519桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:12:10 ID:???

「あぢいなー、くそ。ほら大河、アイス買ってきたよ」
「ひゃほーぅ♪買いに出なくて良かったっ。みのりんは期待を裏切らないね」
アイス大好きー。
アイスばんざーい。
ダンススタジオのようにだだっ広いリビングで猫のようにはしゃぐ。
こんな大河を、わたししか知らないでいる。
「なんだとー?エアコンの効いた部屋で昼寝ざんまいしやがってよー。この茶虎がぁ」
シャワー借りるぜぇ。
うん、アイスはみのりんが出るまで待ってる。
おうそうか。先に食ってもいいのに。愛いやつよのう……。
「大河?」
「ん?」
意を決して誘ってみた。いっしょにシャワー浴びないか?

なんでそんなこと思ったのか。
わたしは大河が可愛い、守ってやる、好きだ。そう思うだけでは足りなくなっていた。
好きすぎて、もっと。もっと大河の近くに行きたいと。
いつの間にかそういうふうになっていた。
きっと大河は無邪気にうんいいよ♪と応えてくれる。
部活の経験あるらしいから、練習後にチームメイトと裸のつきあいくらい?って計算も。

「え……?」
でもそれは浅はかな計算でしかなかったと思い知らされる。
わたしの思いはすぐに伝わって大河を惑わせていた。表情で分かってしまった。
急に恥ずかしくなる。
照れくさい、ではなく邪な気持ちがあからさまになった気持ち。
あ、いいんだいいんだ。そりゃよー外出なけりゃ汗もかかんよなー。

でも、ごまかしてバスルームに歩みを進めたら……。
大河はパタパタついてきたんだ。
「うん。練習後のシャワー気分も懐かしいかも。ゴロ寝してたけど♪」
「おーそうかい。じゃ隅々までおいちゃんが洗ってやるぜー」
「えへ♪」

「前ならえしてみ?おーやっぱ効き腕が指関節ひとつぶん長いもんだね」
「成長期だとね。テニスやってるとかなりね」
成長期ってー?たいがにいつ訪れるのー?さ来年あたりかー?
みのりんひどいー!
「たいがは肌きれーだな。赤ちゃんみてえ」
わったしっのたいがっ♪ぷにぷにっと。
ひゃあ!
「み、みのりんだって腹筋締まってるし。腕だって。それに……う、うらやましーーっ」
ぎゅーーっとハグしてムネに直接カオ埋める超セクハラ。
うぉー、やめろー、恥ずいじゃねーかよーとクネクネ逃げる。でも許す。
許すどころじゃない。幸せな気持ちでいっぱい。

「胸小さくてもたいがはたいがでスタイルいーじゃねーの。はなぢ出そう」
「そ、そうかな?」
「このウエストの細さはちょっとないね。ちゃんと筋肉付いてるし、かっこ良いよ?」
もやもやしていたものが急に凝縮してくるのをどうしたらいいのか。
ともかくも延々じゃれていればこの時間にもとりあえずの終わりはくる。
終わりが来たらまた出直せばいい。わたしたちの時間はたっぷりとある。
そう思っていたら大河がわたしを見上げたんだ。あの大きな宝石のような瞳で。
いいんだよ、いいよ、と。
――みのりんが望むなら、何でもするよ

初めて見た大河のその表情。そのときにわたしは近くにいて良いと許された。
邪だと思っていた気持ちも持ったままいて良いと赦された。
湯あがりに、はいと渡されたバスローブを着た。
高級品ですばらしい肌触り。
同じボディソープの香りを心地よく感じながら大河と寄り添ってアイスを食べた。
この嬉しさがいつまでも続くように願いながら。
だからもっと、今よりもっともっと大切にしなくちゃ、と思えた。
できる、と信じられた。
わたしが望むなら、大河は大河の望まないこともするという。
そんな生き物をどうして愛さずにいられるのだろう?

でも残暑の秋になって、わたしも、わたしの大河も想像しなかったくらい。
幸福な時間は、すぐに壊れてしまったのだ。

520桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:13:30 ID:???

****

「そろそろ何着ていくか決めといた方がいいんじゃねえか」
けっこう長い間ぼんやりしていた私に、りゅうじがまた気を使ってくれていた。
まだ時間はあるけど、こうも固まってばかりはいられない。
「ありがと。ごめんぼーっとしてて。りゅうじつまんないよね」
パジャマ姿のままりゅうじの首にぶら下がって親愛の情を示した。
寝たふりをしているに決まってるやっちゃんにも声をかけて起こす。

おはよー☆と部屋から出てきた泰子がシャワーに行って、なに着て行こうと大河が悩む。
あまり数持ってきてないからなーと。
「おう。じゃこれどうだ?」
竜児が泰子部屋のクローゼットから出してきたのは大橋高校の制服だった。
クリーニング済みでカバーもかけてあった。
「あんたが保管しててくれたんだ?あっちに業者が送ってきた中になかったから処分したと思ってた」
「お前がせっかくきれいに畳んでいったモンだからな」
クローゼットに入れておけば届くのは分かっていたけど。持っていたくなったんだよ。
そっか。変なシミとか付けてない?
……ねえよ。シワは……つけたけど。
ふふっ。付けても別に構わないのに。
おい……。

「まあこれなら何も悩みどころはねえだろ」
「そうね。じゃありゅーじも一緒に学ランでね?」
おうっ!俺もかよ。あったりまえでしょ、卒業後なんだからこれは一種の羞恥プレイよ。
袖を通しながら大河は軽口を叩く。
サイズがいまだぴったりな事に少しだけコンプレックスを刺激されながら。
あ、内ポケットに生徒手帳。写真も挟みっぱなし。
自分のメモさえ懐かしくページを繰る。所々にある天地逆さの悪戯書きは、みのりんの字。
余白がまだたくさん残っている。何か書き込めるだろうか。
そうして、また元の思い出に還る。
りゅうじが早めのお昼を作りに台所へ立った。

****

永遠に続くとさえ思えた親友との幸福な日々。
それは、私がパパのもとへ帰ることになって、呆れるくらい簡単に壊れてしまった。
一緒に転居先に行くという待合せの日にパパは来ず。
あの野郎はそんなやつだと。どこかで醒めてもいたけど、まただという絶望は重かった。
その日、遅くに訪ねて来てくれたみのりんと思い切り泣いた。

「たいがぁ……わたしの大河……」
「みのりん……」
「あんたを絶対に守ってやる……絶対にだ。あたしは……あたしはっ」

パパと暮らす事になったとき、良かったじゃんと喜んでくれた。
パパが私を裏切ったいま、あのクソジジイめがと怒り狂った。
でも喜びの裏には悲しさを。怒りの裏に喜びを。私は感じ取ってもいた。
力のこもったみのりんの腕に押しつぶされそうになりながら。
親に裏切られた絶望とともに、独りじゃないと思えて嬉しかったんだ。

それなのに。みのりんが泣いている。
私には分かってしまった。
抱きとめてくれよ、わたしのたいが。と。
私の方がかわいそうなんてとんでもなかった。
どうしてこうなった?
パパと暮らしてみのりんとも仲良く過ごす。
ちっぽけな私が望みすぎたから?
分不相応であると?
なら。だったら、どうしてその罰は私に向かわない?!
みのりんの胸にぱっくりと口を開けた傷が見えるような気がした。
みのりんが望むことを何でもする。何でもできる。
その傷は私しか塞げないんだと分かった瞬間から。

521桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:14:45 ID:???

あの頃みのりんの熱がどういうものか、実を言えば私には分からないでいた。
分からないままに。でも、応えずにはいられなかった。
同じものを私も持っていると思いながら感じていた、ほんの少しだけの違和感。
それを持ち続けたままで。ともかくも。

大河に抱きとめられて、ようやく気づけた。
わたしの大河が側にいれば嬉しい。いなくなったら悲しい。
クソジジイをこんなにも憎むのは傲慢なわたしの嫉妬でしかなかった。
奴が大河を裏切れば、わたしはわたしの思いを大河にぶつけ続ける事ができる……。
それが、本当の願い?!……だった……って?
そんなこと。
知りたくもなかった。気づきたくなかった。
だってこんなにも愛してやまない大河がいなくなってしまったら、わたし空っぽだ。
いま腕の中に捕まえている、わたしの可愛い大河。大切に守った茶虎。
細い腕にものすごい力を込めてわたしの背中を抱いてくれている。
いいんだよ……いいよ……と。
不意に実乃梨は力を失ってしまった。見上げる大河と目が合った。
大河のマンションの、リビングのソファのうえで。
長い時間、鳶色と葡萄色の瞳を開いたまま見つめあう。
思考が回り始めてすぐに止まる。
どうして?どうして大河?
どうしてもだよ。大丈夫だよ。

葡萄の瞳から、やがて堪え切れず涙があふれ出した。
やり切れなくて、どうしようもなくて、途切れずに頬をつたい落ちる。
大事なことに気づいてしまったのだ。
こんなにも今すぐ必要というのに。今ごろになって。初めて。

わたし、女じゃん。なにができる――の?

目の前にいるのは、わたしのものじゃない逢坂大河。
大河はわたしの致命傷を押さえて、大丈夫、大丈夫だよと懸命だ。
自分の背中にも痛い刀傷を負っているくせに。
わたしが女だから。それをどうしようもない。
大河を救えない。自分も救えない。このままなにも――できない。
ただ何の役にも立たない涙を流し続けるだけ。
鳶色の瞳が困ったように瞬いて、それから優しい光を浮かべて、――みのりん、と。
あとからあとから頬をつたう涙を、口を寄せて吸い取ってくれる。
たいが――っ!
たいがぁ……。たいが……。
……。

「たいがは優しいね」
「みのりんだって」
落ち着けたわたしは思っていた。大河はこんなふうに献身するのか。
わたしだけに?
ひょっとして、心をつないでくれた相手にはみんな?
一瞬で、躊躇うこともなく?
「それにさ……」
「なに?たいが」
「みのりんは、すごく女の子なんだ。きっと」
私、分かっちゃった。
「う……それは」
知りたくなかった。
「もう少しでたいがをモノにできたのによ」
軽口を叩いてみる。
ふふん♪と可笑しそうだった。
もうバレバレか。とわたしは苦笑い。胸にずきずきとした痛み。
「モノにしたかったら、いつでもどぉ〜ぞ」
おーよく言ったなあ〜なら遠慮なく……襲うぞぐぉら!
きゃーん!みみみみのりぃーーんぬっ!目が血走ってるぅ!タップタップタップ!
いつものように。ハグってモフってグリまくり。
あんたはそういうやつなのかな……?わたしの、であっても。なくても。
思いを込めて、1回だけどさくさのキス。もちろん。今ここにいる大河に。
さよなら……わたしの大河。
ありがとう大河。
大好きだよ。

そのあと、1日なにも食べていなかったことを思い出し、ふたりでJonny'sへ行った。
馬鹿みたいに喋って、食べたいものをお腹いっぱい食べて。
バイトの募集を見つけてその場で応募。書類はあとで持ってくることにして即決。
……空っぽのままでなんかいられない。
わたしがわたしでいる事が、この茶虎めを愛し続ける唯一の資格。
この胸に置き去られた大河への熱はそのまま残す。ずっと大切に持ち続ける。

522桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:15:57 ID:???


秋が深まるごとに、実乃梨が大河のマンションを訪れる機会は減っていった。
出逢った頃のように、登下校と学校でつるむだけの関係に戻る。
大河は北村を意識しはじめ、実乃梨はバイトを増やして部活に熱中。
わたしはもう泣かないからね。と宣言して。

初冬に入ったある日の学校帰り、大河が図書室で借りてきた小説に実乃梨が興味を示す。
ふと目に入ったタイトルが気になり、自分も読んでみたいと思ったのだ。
あと少しで読み終わるから借りてきた。すぐ回せるよと大河は言う。
甘えて、久しぶりにマンションを訪ねてみた。
多少散らかってはいるものの、自分で片付けているのだろうと実乃梨は安心する。
すぐに大河から回してもらって、その場で読み始める。
以前の様に、実乃梨は深夜まで居座って本を読んでいる。
大河は嬉しそうにお茶を出して、食べ物を買ってきて。
そして実乃梨と大河は変わらずに寄り添う。
「ちょっと私たちみたいだよね?」
「そうだなー。途中はじわじわ苦しくなるけどさ、ラストも不安を残すけどさ」
「ふふっ、それじゃなんにも救いがないように聞こえちゃう」
そんなことないよ?みのりん。大丈夫だよ。
分かっていれば、大丈夫かもな。
『あんたの自我は、わたしの自我じゃない』ってな。気づけたらね。
読み終えた本を閉じて実乃梨が言う。
内容はともかくタイトルがすごく気に入った。あんたにこう言いたい気分でいっぱいだ。
うん私も。それで読み始めたんだもん。
「たいが、好きだよ。いつまでも好きだよ」
「うん。ありがとう」
私もみのりんが好き。ずっとね。
「……うん」

その日から1年経って、実乃梨が再びここを訪れたとき。
それぞれに言いたい相手が増えていることをふたりはまだ知らないでいた。
『あなたに、ここに、いて欲しい――』

****


「おーい!ここだここだ!……なんだ、お前たち?」

大河と竜児が定刻チョイ前にJonny'sを訪れると、隅の6人がけボックスから眼鏡男が手を振っている。
北村祐作。元生徒会長にして竜児の親友。大河の親友でもある。
ランチタイムが終了して空いた店内。
ツレが先に来ているから、と店員に断って歩み寄る。

「何で制服着てるんだ?お、逢坂も。……いまさらだけど『逢坂』のままでいいんだよな?」
「こんにちは、北村くん。名字は変えてないよ。制服は、まだ高校生気分でいたいから♪」
「おお、そうかあ。亜美がまだだけどまあ、すわれ」
よお。
よおたきゃすきゅん。
みのりーん。
たいがー。
「制服の大河がまた見られるなんてな!サービス嬉しいぜよ!たきゃすきゅんはどうでもいいけど」
「うわぁ。櫛枝冷てーじゃねーか」
「高須くんのは見慣れてるからいーんだよ。さあさあ大河、隣こい!」
じゃあ高須も奥行け。お前たちを逃がすわけには行かんからな。あーっはっはっはっは♪
お前のハイテンションはなんか怖えよ。
席につくと、店内の暖房が効きすぎているようだった。
それに今日は平日。窓際で制服だと誤解を招きかねず、大河も竜児も制服の上着を脱ぐ。

そうこうしているうちに、亜美が来店した。
北村が呼ぶと、小走りで走り寄る。
「おっ待たせー。ちょぉーっとだけ遅れちゃったあ?やっぱしたくに時間かかるからぁー♪」
普段着の分際でこのいいぐさ。性悪チワワ健在!川嶋亜美の入場だぁー!!
などと全選手入場アナウンスみたいな北村のツッコミはガン無視で、大河を挟んで端にすわる。
「よっ♪」お愛想。
「よお。一日ぶり。仕事じゃなかったのかよ?」
「んーん?あ麻耶に聞いたのか。あいつらにはちょっと嘘ついたの☆ヒッマヒマ!」
「へー。まあつるむのをサボりたい時もあるか」
「まあね。独りで高校生活を思い返してしんみりとひたりたい気分?みたいな?」
「川嶋が普通の女子みたいなコメント吐くなんてな。面白え」
「ホント?高須くんにウケるなんて珍しいな。亜美ちゃん感動♪」
テーブルを斜めに横切って、大河の目前で、竜児の手をしっか!と握る。

523桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:17:24 ID:???

「おい」
無視すんな。
即座に低っくい声で威嚇のツッコミ。
おおっ老雄十八歳にしていまだピークは去らず!虎のふたつ名は伊達じゃない!逢坂タイガーだぁ!!
ノリノリだあ北村くん!
老雄って……。
ガーン北村くんにタイガーって発音された。北村くんに……。
はっそうじゃねえわ!

「くぉらばかちー……ひとのダンナになに愛想振りまいてんだ。喧嘩売ってるの!?」
「あーらタイガーいたんだ?小ぃっちゃくて全っ然見えなかったよー。え?ダンナ?籍入れた?」
「上っ等じゃないよ!また蚊ぁとか蠅ぇが飛びまわるかもよ?ここなら!ちなみに籍はまだよ」
「おーぅ。行っけ行けぇ大河ぁ。タダで見れるにしちゃ豪華すぎるカードだよ!」
ファイッ!
それぞれの手をガッと組んで……いや取っ組み合いまではしないけど。
「名勝負数え唄ってやつだな。うんうん」
「やぁーん。高須くぅーん。みのりちゃんと小っこくて見えないのがいじめるぅ〜☆」
「いやあ、俺止めねえぞ?懐かしすぎるしなー」
変なテンションではあっても、5人にとっては離別の空気を埋める大事な儀式みたいなもの。

じゃれ合いはそのくらいにして、注文とるぞー。みんなドリバーでいいか?
適当なところで北村が仕切る。バタバタとメニューを開いて。
私フレッシュミルクプリンサンデー。とドリバーね。
わたし付き合ってストロベリースペシャルザサンデー。とドリバー。
「はあ?あんたたち相変わらず好きなもん食うのね。まーた太るよー?」
あたしドリバーだけ〜。
男2人はどのみちいつもの。
注文を済まして、北村と竜児がドリンクを取りに行く。

あーん。
あーん。
大河と実乃梨はそれはもう美味しそうに互いのパフェを交換しつつ。
やっぱり春はイチゴだよねー。いやいやあんたは年中乳製品だろー。
シュガー抜きアイスティーの氷をストローでつまんなさそうにかき混ぜる亜美。
「ねえ……亜美ちゃんにもひとくち」
「なんか地獄の底から餓鬼の声が聞こえるね、みのりん」
「食べたきゃ注文すればいいのにね。変な人だねっ」
「あたしゃ契約条項に体型維持とかあんだよ!スイーツとか欲望のまま食えねえんだよ!」
「ふーん」
「へーえ?うまっ。ああほっぺ落ちそう〜」
あー!ちきしょーっ!!そんでも友だちかよっ。もういいっ。
すいませーんと店員を呼び、ストロベリーガレットを注文してしまう。
や〜いブタブタぁ〜。あんたらが言うなっ。
「やっぱ仲いいよな。お前ら」
コーヒーをすすりながら竜児が無責任なボケを。
「どこがだよ?」
我慢できずにイチゴスイーツのヤケ喰いに出た現役モデルさんが的確に受ける。


「卒業してしまったな。お前たちともそう会えなくなるけどこれからも付き合ってくれな」
「ゆーさくは留学じゃーん。ヘタしたらこのあと人生で何回会えるかだし」
やっぱ兄貴かい?あーみん。
そ。こいつ兄貴バカ一代だもん。
ひそめ声でさくっと意思疎通できる2人を見て、ずいぶん親密になったと大河は感心する。
「え?そんな事ないだろう。たぶん。とりあえず行ってみるだけだしな」
「まずは行ってみねえと何も分かんねえからな」
「北村くんはのう……行ったらとりあえず道場破り修行するの『それ、もしかすると兄貴?』ってさ」
なにそれ?
ネタ振ったのあーみんだろが。

「いやいや『兄貴に先手なし』だから」
北村の受けも分かり難い。
相手に先手を取らせるという意味でなく、生死の限界まですみれさんへの思いを耐え忍んで……。
「そうだよ。北村くん。押忍の心で」
梶○一騎に造詣があるとは逢坂も意外だな。ほんとに十八歳か?
い、いやあ。なんか言わないといけないような気がしてとりあえず。
「はははははっ。なんと片思いの人間の顔の珍妙なことよ!」と実乃梨。
「バカの顔だっ!」と北村の前に手鏡を差しだして、亜美。
「おこがましくもMITに対抗せんとする兄貴バカの顔だーっ!!」と北村がセルフで締める。
なんだかなねー。
緊張感ねぇーわ〜。
乗ったくせに退いて落とす酷い女ふたり。

「でー?兄貴と連絡してんの?」
「まあ……それなりに。いろいろとアドバイスもらったりな」
心なしか少し顔を伏せる北村の様子を見ると、それなりにそれなりらしい。
この男はいよいよダメになると大声で援けを求める性格だから、こうなら安心できる。
「行ったらHAHAHAHAHA!って彼氏紹介されたりしてなっ♪」
「むごいよみのりん……」
いや、そんなことは想定済みだっ!イメトレはもう何度も済ませた。
「吾、ことにおいて後悔せず!!」
それは宮本武蔵だろっ。と裏拳のツッコミ4本が同時に北村の顔面を襲う。

524桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:18:34 ID:???

おかしいなあ。ちゃんと梶原○騎つながりだったのに。
眼鏡の食い込みが痛かったのか押さえながらぼやく。まあ一時期はやった目潰しよりは安全だろう。
かけ直して。
「まあ、おれに何ができるのか腕試しだ。逃げ帰るのかもしれん。永住するかもしれん」
やれるだけは、やってみる。それはみんなも一緒だろ?
「まあな……」
なにか気のきいた激励を言おうと竜児が口を開きかけた。
すると女子三人が揃って胸前で腕をバッテンに組んでいる。
「なんだ?お前ら?」
「クサいかも?」
「クサいのやだ」
「モグ……モルグに放り込むぞおら」
大河……お前もか。酷え……。
う、うるさいっ。つ付き合いってもんがあるわーっ。
「高須のセリフがここ一番と言う時だけクサ過ぎて台無しなのは仕様だ。あまり責めるな」
それに……な?
それは逢坂だけが人柱になって聞けばいい。

「まあおれの話はこれぐらいだ。じゃ次は亜美な。進学するとは意外だった」
「まぁーねぇー」
正直、芸能界一本で行こうって熱意がね。ちょっと足りないって思う。
モデル仲間にはもっと目の色変えてこれしかないって、キッツくやってる子が何人もいてね?
結局はどこかでそういう子たちと競り合うことになるわけ。
そのとき蹴落としてガッツリできるのかはまだ疑問なのよ。
「だから、片足は普通に就職しやすい方に突っ込んでおく。それだけよ」
あーみん他にも言うことあんじゃねーのー。
うーん。やっぱやめとくかな。

「なんだよ。言いたい事があるなら言えばいいじゃねえか」
「あたしがねー?高須くんをどう思ってたかの話でも?」
おう……。と竜児が黙ると大河の目つきがキッと変わる。逆さ蒲鉾断面。
チッと舌打ちしたりもするが、もはやそんなので怖がるやつはここには1人もいない。
亜美が無視して続ける。
やっぱ三年になってクラスが分かれて。好きな時にいつも話できない距離になるとさ。
気持ちって増えもしないし減りもしないわけ。
それに、分かっていてくれると思えれば恋じゃなくても良いって話は前にしたよね。
「ばかちー、あんた……」
「別にあんたに気ぃ使ってるわけじゃないよ?タイガー」
竜児に話していたのに、大河に向き直る。
あたしはあんたが失踪して連絡がくるまでの一日、高須くんが好きだってすっかり忘れてた。
あんたともう一度逢いたい。ずっと友だちでいたかったのにって。
そっちの方が少しだけでも大きかったのよ。
だから、あんたが約束を守って帰ってきた。それでいいんだよ。
それにさ?

亜美はスイーツ用の長いスプーンで、んっと大河の喉元、竜児の胸元を続けて指す。
「こーんなの見ちゃうと亜美ちゃんもーぅ何にも言えねーしー☆」
竜児は鎖骨の辺り、大河は耳の下に紫色の刻印。
そんなには濃くないが医学的には鬱血というやつ。ベタに表現すれば、キスマーク。
おおう!と残りの2人が興奮する。
見つけた手柄はあたしのもん!とでも言いたげなドヤ顔で亜美が続ける。
「ちゃーんと朝見て、熱い蒸しタオルで目立たなくしてー、ファンデで消すんだよぉー☆」
な、なんだ川嶋。お前……経験あるのか?
まっさかぁ。常識でしょこんなのぉ。
「すごいなー高須。歯型まで……。逢坂って激しいなあ」
空気を読む事を知らない。というか意図的に無視した北村のコメント。
大河も竜児も迂闊だった。焦りまくり。
あ。アイスティーなくなっちゃった。祐作持ってきてー。
おう待ってろ。ついでにみんなのドリンクもな。

「たいがたいがー!見せてみ見せてみ!」
「やーんやん、恥ずかしいよー」
「うはぁ!キャラ違うよ大河ぁ!はははなぢ出そう」
えー。CM行きまーす(棒)。と言いたい竜児だった。

というわけだから?高須くん。
三年になってから何度か奈々子が言ってくれたんだ。略奪しちゃえばぁ?って。
あの子やさしいからさ、あたしの迷いが浮かぶと見つけてくれるんだよ。
それでいっつも安心できた。
ほんとは最後だから記念に……とかも思ったの。
でもね。
あたしがずっと見てきたのは、あの素敵なちびを分かってる高須くんなんだよね。

「そんなわけであたしは告白しないから。今日は」
バレバレだろうと関係ねーし。直接本人に言って初めて告白だからね☆
たぶんそれは現在のところ、亜美の人生で最高に魅力的なウインクであったろう。
「おう。」
伝わったかどうかは、高須竜児しか知らない。
いいのかい?あーみん。
あたしはね。
ドリンク持ってきたぞー。

525桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:19:45 ID:???

「失踪と言えば……。そうだな。丸一日にも満たなかったけど」
北村が眼鏡をかけ直して呟く。
おれたちは高須と逢坂の駆け落ちを支援して、吉報を待つ身だった。
ふたりいっしょに逃げてるなら希望をつなげて待つこともできると思っていた。
それが一夜明けてみたら壊れかけの高須だけが学校に来たんだよな。
「いや、逢坂を責めているわけじゃない。ただ、知ってもらいたいんだ」
ほんの半日なのに。
おれは永訣という言葉が浮かんで仕方なかった。
「宮沢賢治の詩……だね。『永訣の朝』」
少し間を置いて大河が受ける。続けて、あめゆじゅとてちてけんじゃ。と
それを聞いて、北村は静かに頷いた。
「このまま会えなくなってしまったら。……それは永訣と同じだ、とか思えてな」
逢坂からメールが来るまでの僅かな間だけでしかなかったけど。
おれは大切な友達と……。

まだ思い出すと胸に迫るのか、目に光るものが浮かぶ。
「ごめんね。北村くん」
みのりん。ばかちー。……りゅうじ。
ごめんね。
結局は親の都合で引き取られ、遠くへ転校する。という出来事でしかなかった。
それは友人にちゃんと説明して、離れても友だちでいてと伝えるだけ。
ただそれだけのことが、あの頃の大河にはできなかった。
子供であるゆえに、いよいよとなれば親に従う他に何もできないと分かったとき。
大切な人のために自分がここにいた痕跡をすべて消し去ることを選んでしまった。
それが永訣とまで思われるなど。考えもしなかった。
自分にそう思われる価値があるなどと、これっぽっちも信じられずにいたから。

りゅうじが、みのりんが。北村くんが、ばかちーが。みんなが。私に教えてくれたんだよ。
ここにいて欲しいって。
だから必ず帰ろうって思えたんだ。
ひとりずつを真っすぐに見据えながら、大河は心から礼を述べる。
「待っていてくれて、ありがとうね」

「あたしはさ、あのとき高須くんを殴ったんだよね」
「おう。櫛枝の腕力だからな。強烈だった」
悲しいのもあったけどさ、独りにさせたくないやつを何で手放したっ!?と思ったんだよ。
あたしには確信があった。高須くんにもあったはずだよ。
こいつは誰にもすがらないで、自分だけで決めて身を投げ出すやつなんだって。
実乃梨は傍らの大河を抱え込んで静かに話す。
「その最後の最後を、高須くんは手に入れたはずなのに……ってな」

「手に……入れたから。だな?大河」
「うん。りゅうじに全部あげて。全部をもらったから」
「そっ……か。大河。」
手を離しても戻って来れると思える力、を、高須くんにもらった、のか。
何度も何度も何度も思い描いた大河だけのやり方。高須竜児には無償で渡さなかった。大河の全部。
想像もできている、ほんの半歩先に大河が踏み出せた理由。
もう胸は痛まないけど、答え合わせだけが引っかかっていたんだ。
それはいまあんたの耳の下に刻まれている。
それは……わたしが踏み出せなかった半歩。
とっくに分かったつもりでいたけど、実際にも見ることができた。
この世界には本当にUFOがいた。

「ねえ。あーみん?わたしはあんただけに聞いてほしい」
「え?みんないるのに?」
「うん。聞かれても大丈夫。今どうしても言いたい」
本当の友だちになるためにあんたが知りたがっていたあのこと。
みのりちゃん……。
「わたしね。あのとき『大河に』振られたの」
聞いてはっとした顔は、女子ふたりだけ。

亜美はそれだけで総てを理解した。
「そうなんだ……」
最後の最後であんたの欲しかったのは……高須くんじゃなかったんだ。
んふ。全部分かっちゃった。
めちゃめちゃプライド高いね……みのりちゃん。
大河も理解する。
電話では「この話、墓場まで持ってく」と言ってたみのりん。
急に話したくなったのは、そうか。ばかちーに聞かせたくて。
りゅうじの顔をそっと盗み見てみる。分かってか分からないでか、優しい顔だ。

526桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:21:05 ID:???

「櫛枝が逢坂に振られた?ってのは初耳だな。ケンカでもしてたのか?」
「いーの、祐作は。これは女同士の話しなんだから」
「そうか……すまんな」
あんたのガチマッチョ心は同じ心を持つ兄貴に理解してもらえよ。
そ、それが意外なことに時々しおらしいと言うか。そういう手紙が。
文通してんのっ?!
今時じゃねーな、北村くん。
とりあえずローコストだったからな。日本語に飢えてるらしいし。

「まあ、わたしの話はそんなとこ。……そうだ大河」
覚えているかなあ?
なに?
「わたしは『あんたに、ここに、いて欲しい』もう一回言っとこう」
「あ。覚えてるよ。うん」
「これからも。いつもじゃなくても。ね?大河」
「うん。みのりん」
あーみんも。たきゃすきゅんもな。北村くんはどっちでもいいけど。おい、冷たい!
みんなにここにいてほしいな。そういう気持ちを持っていたい。また会いたいよ。
うん!
ん。
もちろん!
おう。
櫛枝の笑顔はやっぱり眩しい。竜児はそう思った。

さて、じゃあ今日の集まりのメインディッシュと行きまっしょいーっ!
櫛枝実乃梨はポケットティッシュを出してテーブルの上に置く。
びっと引っ張って一枚立てて。
はなぢ対策、かんりょー♪
シートの真ん中で挟まれた大河に向かってはすに構えて。
それはまあ〜いじめっこな顔で。
「……コラ。いっしょにお風呂入って気持ち良かったそうじゃなイカ?」
「へ……?」
北村も亜美もぐいっと半身を乗り出した。
平静を装って冷めたコーヒーを含みながら、青ざめた竜児が十字を切る。

「うあーぃ!騒いだ騒いだぁ!面白かったなあ!高須、逢坂」
「ほんと!北村くんが相変わらず裸族なのも分かったし。でも北米では止めた方がいいよ」
「そうだな。兄貴じゃないマッチョに勘違いされてもかなわんからな!」
ファミレスでの異端審問が一段落したところで、5人は北村の提案でカラオケに流れたのだった。

4月からの新生活に備えて、それぞれにやる事はそれとしてあったけど。
ヒマだろ?お前たち。場所変えて遊ぼう!と言われれば異存があるはずもなかった。
いつまでも騒いでいたい宴。
建て前ではカラオケ屋のルームチャージがハネ上がるからという理由。
本音ではカップルを2人きりにしてやらんと、という温情で早めにお開きとなった。

「でも裸はいいぞラは!うっ屈したものがパァッっと飛ぶ!逢坂もやってみろ」
「うん!うちに帰ったらね☆りゅーうじっ☆」
「お?そうだったな!今夜も仲良くしろよ!」
「任せろ北村くん!」
店先の路上。大河は傍らの竜児を見上げてなんちゃってインビな表情をつくる。
いろいろ白状させられて、エロ虎、などと呼ばれて。もうヤケなのかもしれない。
「お、おう。なんか身の危険を感じるが。まあ、いいか」
遅れて、実乃梨と亜美が出てくる。
「恥じいから大騒ぎやーめてくんなーい?」
「あと1回か2回しかできねーよこんなこと。大目に見てくだせーよあーみん殿」
「元々の予定は開けてくれるんだろ?エロ虎の引っ越しのあとさ」
えええっ?あんたが言うのかっ!他人事かっ!なんてこと!!
軽く暴行を受けるがみんなスルー。

「まあねぇ〜。じゃ次は来週ね。あ、来れたら麻耶と奈々子も呼んでいい?」
「もちろん!あ、じゃあ能登も呼んでやらないとね。アホロン毛も」
「春田は彼女さんとイロイロかもしんねえけど、連絡してみっか」
ね、ばかちー。能登と木原ってどうなの?
なーに、興味ある?
うん。私煽ったことあるし。
「あんたと高須くんよりグズグズしてるよ。でも卒業だしどうにかなるんじゃなーい?」
ま、来週くるなら見てみれば?
そうだね!仲良くなってればいいなあ。
「それから、その次は……北村くんが渡米する前に一度遊べるかな。どうだい?」
「ね!だったら日帰りでもう一度うちの別荘行かね?」
おお!それいいな!
わお!でも大丈夫なの?
「うん、春は使わないはず。朝イチで行って、泳げはしないけどお昼食べて、ダベって」
「さすがばかちー!あんた最高だ!褒めてやるっ」
「よーっし!食材用意してって腕ふるってやる!」
「シェフがやる気だあー!わっせろーいっ」
わぁぅ!こんなとこで筋トレやめてーっ。みのりーん。

限られた時間の中で、精一杯の思い出を作ろう。
駅前を歩きながら楽しい計画を練って、5人の気持ちはまたひとつに。
じゃあここで。まったねー。と北村と亜美が別れた。
だいたいの方向が同じ3人はもう少し。

527桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:23:11 ID:???

「じゃあ。高須くん、大河」
住宅街の辻で実乃梨が別れる。
「高須くん、ジャンピング土下座はしねえけど。大河のこと宜しくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。
あの屋上での壮大な勘違いを再現しようと。
この子は私の大事な大河です。気難しいところがあって心根の優しい子です。
「大河!幸せにしてもらえ!この優しくて強いやつに!」
葡萄色の瞳に夜空の月を映して、両の手をふたりに託す。
竜児も大河も言葉を発さず、でも大きく頷いて実乃梨の手を握る。
「高須くんも支えてもらえよ?」
「おう。もちろん」
ああ、勘違いはもう。してないんだな、と。
そして実乃梨は、大河と竜児ふたりの肩をいっぱいに広げた手でしっかりと抱いた。
「よし!じゃあな!また来週!!」
「おう!」
「またね!みのりん!」

****

実乃梨と別れたあと。散歩しねえ?と誘われて、大河は竜児と歩きだす。
暖かい日が続いていたせいか日が暮れても妙に生ぬるい。
えらく遠回りをする。
竜児がズボンのポケットに両手を突っ込んでいるから、大河には手を預ける所がない。
「北村……にさ?」
「ん?」
北村に兄貴が見つからなくて、お前の告白を受け入れていた。……としたら?
付き合っていただろうね。何をして良いのか、その先が分からなくても。
「そうなっていたら……櫛枝は……」
俺は……どうしていただろう。
竜児を見上げて、竜児の気持ちをひとつも見逃さないようにして答えようとする。
……同じだったろうね。と期待どおりに答えようとする。
黙したまま大通りを通り、昼間いたJonny'sの前を通る。
街路には桜の樹が並び、このところの陽気にふくらんだ蕾がいくつか綻び始めている。
春まだ遠い自宅の窓辺で想った桜を大河は見上げて。

「言わない」
ぴたっと歩みを止めた竜児がこっちを見下ろして、またすぐに歩き始めた。
機嫌悪くさせた?と心配になるのも一瞬。
全然機嫌なんか悪くない。変わらずに私を好きと思ってくれてる。

私がママに引き取られるって事だけは変わらなかったから。
それをいっしょに乗り越えてくれるのはりゅうじしかいなかった。きっと。
北村くんでなく。みのりんでなく。
でもりゅうじが言うようになっていたら……ここにたどり着けただろうか。
たどり着けたからこそ初めて言えることなのに。言ってもいいのだろうか。
「俺……ちょっと拗ねてるのかも」
ぽつりと言う。
やっぱり感づいていたんだ?

後をついてみたり、先を歩いてみたり。
住宅街の中を通って、見覚えのある角。立つ電柱には内科医院の看板。
「まだ傾いてるよ。ははっ♪」
「覚えていたか」
そりゃあね。2年も前なんだね。

「あんたが、もしかしてと思ってるようなことはなかった」
言わない。と告げたのにゆっくり言葉を紡いでみる。
黙って電柱に手を伸ばして触って、少し撫でて。
竜児を見上げて、さっきの実乃梨のように街灯の明かりと月とを瞳に映し出して。
「……そっか」
「そんなつもりはなかったし、みのりんも踏みとどまってくれたよ」
「そうか。悪りい。」
「いいんだよ。ただひとつだけ……」
つもりはなかったけど、その気持ちは嬉しかったんだ。本当に。
りゅうじがそれも気に入らないのは分かってる。
けど私、恥じるつもりは……ないよ。
「おう。……そんなの大丈夫だ」

528桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:24:14 ID:???

「だ、大丈夫って何?」
ここが一番大事なとこでしょ!りゅうじにとって。私にとっても。
あんたは出逢う前の私の過去も俺のもんだって。思ってくれない……わけ?
「は?だってお前いま居直ったばかりじゃ」
「居直る!?」
居直るって、ま、まるでわた、私が浮気者みたいに!
い、い、やそれはその通りかもだけどさ。なにそのしょうがねえな風な。
あー。遺憾だわー。私悪くないもーん。あ、これもう言ったことあるわ。
とにかくっ、りゅうじだけいっつもモノ分かり良く飲み込むなんて。そ、そ。
そんなの嫌なのっ。
「こういう場合、ふざけんなそんな過去は俺が消してやるっとか、じゃないのっ?」
「だってなあ。お前自身が消したいって思ってねえだろ?」
そもそも相手は櫛枝だし。
いくら俺が潔癖症だからってそんなとこまで。なあ?
「あーもう何だろ私?りゅーじのやきもち嬉しいのに足りないっ!寂しすぎるっ」
もうっ、分かってよっ!!
ああ。分かってるとも。
お前が自分の分を負担させろ。寄越せって思ってるのはな。
そうは言っても、これは分け合うほど大した何かがある話じゃない。
ま、要するに。
「こういうときは、こうやって流すんだよな……?」
もう子供じゃないから、芸はあるんだよ。大河。
電柱脇、街灯と月に照らされて。竜児はじたじたする大河の肩を押さえてちょっと屈む。
春の宵に渡る微風はやはり夢のようで、肌を撫でられくすぐったい。
ん……。
「落ち着いたか?」
「うん落ち着いた」早えな!
制服だし。この場所だし。おまけに季節もほぼ同じ。
今がいつなのか。ふたりそろって勘違いするには充分なシチュエーションでもあったろう。
「なんかね、すーーっと。余計な考えが落ちた!」
ポケットから出した竜児の左腕に絡みついて、夜の住宅街を帰途につく。
回り道のようでも、これが最短距離なのだ。


「ただいまー。あ、泰子もう出かけたか」
しょうがねえな。灯りつけっぱで行きやがって、だらしねえ。MOTTAINAI。
ついでに上着を脱ぎ捨てる大河にも小言。
ちゃんとハンガー持ってきて掛けねえと……お。
拾い上げたブレザーの内ポケットから落ちたのは生徒手帳。
「ああ、入れっぱなしか。……何だまだ写真2枚挟んだままだな」
「うん。え?あ?ちょ、ちょっとっ」
急に血相を変えて大河は手帳を取り返そうとする。
なんだよ?北村の写真持ってたって別に気分悪くねえよ。俺だって……櫛枝の写真捨てる気ねえし。
「そ、そうだよね。ははは……は。わっ?!」
竜児がページをぱらぱら繰りだしたのを見て慌てる。
「なんだ?これ」

縦軸に日付が並んでいる。うん、上京してからの日付だな?
じゃあこれ今日書いたもんか。
横軸にみみず?のようなヘタな絵、隣に虎縞猫の顔が並んで描いてある。ああ虎か。
ということは、みみずは竜。竜と虎、俺らだな。
タテとヨコに囲まれた余白に、○△×が記されていて……。
ふと見ると大河の頬がぷくっとふくれて、でも桜色に染まっていて、眉は八の字、瞳爛々。
誰が見ても明らかなほど恥ずかしがっている。
見るまに俯いていって。消え入りそうな声で。
「……た、対戦成績……」
「なんでこんなんで赤く……は?勝敗?ゲームなんてしたっけか?」
竜児の白星はなく、一昨日が△同士のドロー。昨日までの通算で△××。大河は△△○。
いつの間にか卓袱台の脇で向き合って座っている。

529桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:26:27 ID:???

おうっ!これって……?もしかして……?
「なあ?ひょっとして……俺の二勝一分け?」
「りゅ、りゅうじの……一勝二分けで、しょうよ……」
大河は正座のままぴょこぴょこ近づき、胡座の脛を膝小僧でつんとつつく。
そのあと身を乗り出して胸にごん!と頭突き。
「わ……わたしも一勝……二分け……かな。ははっ……」
「そ、そおか。どの辺が対戦なのかもはや分からねえが」
一勝できて……良かった……じゃ、ねえか。お互いな。
竜児も俯いているつむじに向かってごちん……と軽い頭突きをかます。
「……きょ、今日は……勝ち越せた……らいい……ね?」
「お、お、おう……」
負けゲームがないなら現時点で既に勝ち越せてるだろ、とか考える余地もなかったが。
相変わらず、回りくどい大河。
「しかしまたどうしてこんなマメな事を……?」
「き、記録しとけば後々役に立つ……んだって。……浮気とか」
「誰にそんなことを?!」
「……ばかち」
お前か川嶋ぁ〜〜。
んべっ、と憎まれ顔が浮かんだ。

――うぁ〜ん☆どおしよ〜?やっちゃん遅刻しちゃう〜
出勤の支度に忙しく、うっかりただいまに返事し忘れていたらこの始末。
まあ結局のところは物音でも立てて、間をとってからふすまを開ければ済む事なのだけど。
やっぱり泰子にもこんな雰囲気は楽しすぎるのだ。
――今日はちょっと遅れよーっと☆
ぽちぽち勤務先にメールを打つ。
ふすま越し1mにも満たない距離で続くイチャつきにニヤケてみる。

「勝ち越すには……やっぱ出場回数が、というか……大事だよね?ふへへ……へ」
「まあ……そうかも……知れねえな」
どこへ話題を流れ着かそうとしているのか。
少々不気味に感じながらも竜児はつきあってしまう。
「りゅうじ先発はアレかもだけど……抑えの守護神だよね」
「アレとか言うな」
だんだん乗ってくるとネタがはしたなくなるのは、しょうがないのかも知れない。
北村がバカ兄貴。おっと。兄貴バカ一代なら間違いなく大河は竜児バカ一代。
逆に竜児も同じである事は論を待たないだろう。

「ねえ……その……ローテってどれくらい?」
いきなりだな。中三日とかのあれか?
うん中一日要らないのはわかったけど。
は?ああそういうことか。
「そうだなあ……1時間くらい?……かな?」
昨夜の実績をバカ正直に答えてみる。

――りゅ、りゅーちゃん!ダメでヤンス!!もっとサバ読まないと死んじゃうっす〜よぉ☆
ふすまの陰で泰子が母親の顔に戻って青ざめている。

「1時間……そう?ふ〜〜ん」
ひと晩で4ゲームはできる計算……なのか。
そうすると守護神で6勝くらい?……ぐふふ。大勝利。パ、パコパコカーニバルぅ〜☆
指折り勘定してニヤついてもう一度ごん!と頭突き。
これは甘えてるのに加えて、とっととプレイボールを宣せよ、という催促でもあった。

そのとき、がたん!と物音。
「きゃんっ☆寝っ過ごっしたんすっ!」
ばたばたばたばた……と泰子部屋の中から。
大河と竜児は座ったままの場所で予備動作なしに10センチ飛び上がる!という。
到底人間わざとは思えない芸を披露してわたわたわたわた。

「き、着替えてくるっ」と竜児は自室に走り込む。
逃げ遅れた大河はぴうぴう鳴らない口笛でテレビリモコンに手を伸ばし、窓側の定位置に。
同時にふすまがばぁんっ!と開いてフルアーマー泰子登場。
「準備完了ッス!行ってくるっス☆」
「うん。やっちゃん。行ってらっしゃーい」と玄関まで見送りに立つ。
さすがは元手乗りタイガー。クールな常態に戻る速さは未だに他の追随を許さない。
桜色の顔は戻しきれなかったけど。
「おるすばん宜しくねー☆じゃましてごめぇん。にゃはっ☆」
きゅんと柔らかくハグして、泰子出撃。

「あぁ〜びっくりした。聞かれたなぁありゃ〜」
部屋着に着替えた竜児がふすまを開けて戻ってくる。
「……そんなことより」
ん?うわあ目が逆さ蒲鉾型に釣り上がってるよ。
「逃っげったっわね?……この私を置いて……」
機嫌を損ねるのと、貪り喰われるカーニバルとどちらが好ましいのか。
それも高須竜児しか知らない。


「りゅーじがやっちゃんにあんなこと知られたくないのは。うん、分かるよ」
お腹がいっぱいになったら完全に機嫌が直っていた。
怒る→腹がへる→鳴る→食事の提案→わっほいという余りにも慣れ親しんだコンボ。

530桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:27:47 ID:???

買い物に行ってないから食材は乏しかったけれど、こんなときにはそう。チャーハンだ。
カブとにんにくを切らしていたが、他は揃っている。春キャベツの残りに玉ねぎ、ベーコン。
甘すぎるのは紅ショウガでバランスを取ってやる。
居間で待っていればいいのに、大河は脇に立って調理を眺めている。
「ゴロ寝してりゃいいのに」
「ううん。見学してる」
そういや昼からメシ食ってなかったしな。と思いつつ。
見学者のために手元を見せ、わざとゆっくり野菜を刻みベーコンを刻み。炒めて取り置き。
合間にスープをつくる。
やらせろと言うのでスープの実を刻ませたら手返しは遅いがまあまあ形にはなっている。
大河の作業が終わるまで待って、卵を溶く。中華鍋に油を敷く。
「ここからは一気にやる。ペース落とせねえからな?」
「ふんふん」
炒めた卵が半熟で冷飯に絡んで、飯から出た水分がほかほかして、それが飛んでパラリと。
仕上げに香り付けのオイスターソースと醤油。流れるようなご家庭厨師。
うん。りゅうじはやっぱりかっこいいぃ。とあらためて感心されたり。

とまあふたりでチャーハン食い終わって、くつろいでいるのである。
「いくらもうバレバレってもね。顔合わせるのは恥ずかしいかも」
カルネアデスの舟板ってやつよね。私を見捨てたのはオトナになって赦してあげる。
うん。済まねえな。サンキューな。
「話は違うけど、ちゃんと観察してみれば料理は手順の組合せよね」
「そうだな。効率よくやろうとすれば詰め詰めにできるけど。手が離せない作業はそうは多くねえ」
毎日の家庭の料理なら、10分で出来ることを15分かけてもいいのよね。
「台所に立ってる間じゅう緊張してなきゃいけないと思っていたよ」
「大事なとこだけ気合い入れて、他は気楽にやればいいな」
「うん。できそうな気がしてきたわ」
りゅうじが私の料理を食べて旨いっ!って言ったらどんな気分なのかな。
おう、俺も楽しみにしてる。ちょっとずつ練習しようぜ。

ところでこんな流れで言うのもどうか……とは思うんだけど、さ。
んー?
「おふろ……入る時間よ……ね?」
「なんか……1日おきにかわるがわる誘ってるな。じゃ、入るか」
「う、うん。お湯ためてくるっ」
だっしゅ!

なんだな。機嫌は直ったし、カーニバルな空気も回避したようだし。
夫婦ってこんな感じなのかと、平穏に慣れ過ぎて図々しく竜児は思う。
でも湯が張られた頃に上機嫌なエロ虎からちゃあんと期待を外さない課題を負わされるのだ。
「んー。抑えの守護神にも、サービスエースを期待しとく」
「……テニスになってる」
大河が想定したゲーム数自体にはなんら変更ないらしい。

「そうよ。Loveから始めるんだもん♪」


「……2年の……秋にはお前とこうなってれば」
そうすれば……。もっと。
もう深夜。静かな声で竜児が呟いた。
竜児の部屋で、ひとつ布団で。懐に抱え込んだつむじに顎を当てながら。
「みのりんの事はどうしてたつもり?」
「関係ねえ……」
「北村くんが好きな私を?」
「それも……関係ねえ」
めちゃくちゃ言ってるね。
分かってる。
「だったら……秋じゃ遅いよ。夏休み。旅行に行く前。」
みのりんが、りゅうじを好きになる前。
お前の方だって。
私は……そうね?4月にもう友達になろうって言われて振られ済みだもん。
ああ、そうか。って無茶いうな。
……私もめちゃくちゃ言ってるだけ。
こうしていると私も心から思うよ。もっと早くこうしたかったって。

531桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:29:02 ID:???

それでも。
「年が明ければ、ママに引き取られるっていうのは変わらないんだよ」
もし、りゅうじにここまでの気持ちを持ってたら、私……行けなかったな。
そしたらりゅうじはきっと……。全部捨てて一緒にいてくれたね。
「ああ、そうしていたな」
「一か月くらいかなあ?逃げ切れるの。そして捕まって」
やっちゃんもママも二度と私たちを逢わせてはくれなかったよ。
だから二十歳になったら家を飛び出して一緒になるんだよ。きっとね。
「同じようなこと考えるんだな。俺は……それでも悪くねえって気もしてる」
「うん……私も。りゅうじとなら」

高校生活の真ん中で半年だけ結びついて。
そのあと無理やりに2年ほど引き離されて。
耐えて、壊して、呼び合って、また逢う。
それもまた、あり得たかも知れなかったやり方。
「でもね。今の方が守り切ったものがずっと大きい。ずっと、幸せって思ってる」
「……そうだな。そうだ」
「私、そう言えば考えられる限りの最短で帰って来たんだよ。褒めて?」
「ああ!よくやったよ、お前は」
俺の手の届かないところで、大半はお前だけの力でな。
くしゃくしゃと頭を撫でる。へへへ、とテレ笑い。

4月になれば別々に進学だ。その前に引っ越し日のあとは寝るのも別々……。
こうしていられるのもあと少しだね。
でも慣れないと。でも慣れるのかな?
「そろそろこうしている方が当たり前に思えて来て……ね」
「慣れろ。俺も慣れるからさ」
「うん」
とーこーろーでー?
にぎっ!
おうっ?

「またやる気?」
「け、喧嘩売ってるみたいだな。……お前がその気なら、その、え〜と」
「さすがはりゅうじだわ。約束を違えない男だね☆」
「約束?……なんかしたっけか?」
「『傍らに立つ』っていう……」
下・品!とつむじに手刀を叩きこむ。

「うぅ〜。まありゅうじの体調もあるだろうし。今日はもうやめとく。手刀痛いし」
「そうか、そんなら……寝」
「……でも!どうしても!どう〜しても襲いたくなるんなら……拒否しない」
「……」
「期限は眠くなっちゃうまでね」
「……」
「黙りこんじゃったよ……。きっと眠いんだ?。眠るがいい。落ちるまで見てる」
「……お前なあ」
ふわぁ〜あふっ。とわざとらしく可愛い欠伸をかまされたり。
ややあって竜児はもぞもぞっ、と。
もー。りゅーじはしょーがないねえ〜♪などと囁かれて。
騙されてる気がする!うまいこと操縦されてる!とどこかで思いながらも。

でもまあ、大河だから仕方ないと。そんな事は前からずっと分かっているのだ。

532桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:31:17 ID:???

****

手荷物だけで大橋に帰って来てからの一週間が夢のように過ぎた。
手をつないで、寄り添って出かけ。買い物をし、食事を作り、作り方を教わり、笑いあって食べる。
独り暮らし用の家電を選ぶのを手伝ってもらったりした。
お互いの進学先をチェックしに行くという口実で都心にも行った。
あのメタリックブルーの、お菓子のようなパッケージはいつしか空になって。
新たに二つ目も買ってきて、どちらのうちに置くかとちょっと悩んでいる。
対戦成績はどうやら勝ち越し気配なのだが……大河が記録を見せないので本当のところは謎だ。
ほら、こういうのは主観でしょ。
というとこを見ると気を使って演技をしているのかもしれない。……などと。
竜児は多少びくびくとコンプレックスを刺激されてもいる。
そんなこんなで、今日は引っ越し荷物が到着する。

「セッティングまで業者さんがやってくれるから手伝いは要らないのに」
「なにか男手がいるかも知れないだろ」
それに掃除もなー♪と道具もひと揃い持参で変態的な笑みも凛々しく竜児は大河についてきた。
……まあ、実際に出番はなかった。
入居者と作業者の計3人が入れ替わり立ち替わりでワンルームマンションは一杯。
邪魔だから出てろと言われて、玄関先にの通路に追い出された。
所在無げに突っ立ってるのも退屈なので、扉などぴっかぴかにする。

やがて引っ越し業者が作業を終えて帰ると、やっと上げてもらえる。
「お待たせ。じゃあ、りゅうじ。お掃除してくれる?私食べ物買ってくるから」
「おう。この広さなら……15分もあれば」
じゃ頼むわー。おおっなんじゃこりゃあ!玄関がぴっかぴかだあ!
靴をつっかけて買い物に出る大河を見送って、やっと竜児の腕まくり。

「どうよ?」
「ホントに15分で塵ひとつないなんて……りゅうじすごい!かっこいいっ!」
コンビニで買ってきたソバをずぞぞぞ、とすすりながら暮らせるようになった部屋を眺める。
ベッドが入って、ライティングデスクが入って。姿見と大きめのハンガーラックでほぼ一杯。
でもこだわりで、カーペットに小さなローテーブルなんか置いた床生活らしい。
ふたりでぴったり寄り添うとちょうどいいスペース。
「ずいぶん服が少なくなっちゃったな」
「うん。整理してオクで売っちゃった。けっこう引っ越しの足しになったんだよ」
落札者がいい齢のおばさん多くて、こんなフリフリ着るの?って思ったんだけど。
……実はこども用に買ってくれてたんだよね。複雑な気分だった。
まあともかく、この小さな部屋が今は身の丈にあってる。
竜児にプレゼントしてもらったブレザーもしっかりカバーをかけて下げてある。
そのうちバイトして、就職して、自分で稼いで少しずつ好きなものを揃えて行くよ。
そしていずれ、りゅうじと。あたらしいうちへ。
ね?
想像すると、自然と笑みが湧いてくる。

しまった。デザートにアイスが食べたくなった。買い忘れたっ。
と言うので、連れだって出かける。
いっしょに散歩をする口実なのは分かりきっていても、突っ込むことでもない。
いろいろ忘れては、そのつど無駄に練り歩けばいい。
コンビニでアイスを買って、帰ろうとすると公園で食べて行こうと大河が誘う。
高須家の近く、旧大河マンションの向かいにある児童公園で。

533桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:33:36 ID:???

ベンチに並んで腰かける。昼下がりの公園は近所の母子連れでそこそこ賑やか。
母親と遊ぶ子供を楽しそうに眺めてアイスを食べていた大河は唐突に言い出す。
「ねえりゅうじ。こどもほしい。私と、りゅうじの」
「え?今……か?」
「うん。いますぐほしい。……と思ってる。って話」
「ああ、そうか。そういうもんなんだよな、女は」
うん。と頷いて大河は続ける。
りゅうじといっぱいしてさ、きもちよくなりたくてさ。そのたびにほしくなってくるの。
あ……りゅうじが、じゃなくてこどもの話ね?
い、いやりゅうじもほしいけどさ。
とりあえずこれはそうじゃない話。
「来月、来ないといいなあ。なんてね。思うのよ」
「お、おい?」
分かってるよ。分かってる。全部守り続けるためには、いまは無理。
「俺は。……いつか欲しいけど。先にお前をもっと……って思う」
男だからさ、ずるいけど。
「あー。そうか。そうだよね。気持ち、移っちゃうもんね女親って。どうしてもさ」
そこ斟酌しないで無神経に言ったのは悪かった。忘れて?
なにも今こども産まなきゃ絶対いやなんてことは思ってない。
できるだけ早く、っていうんでもない。そこは私も自然に普通にでいいの。
ただ私がそういう気持ちになるってことだけ覚えていてくれればいい。
おう。
アイスを食べ終わってコンビニ袋に片づける。
公園の桜が弾けたポップコーンのようにいっそう開いてきていた。五分咲きといったところか。
あれは春を迎えた人の嬉しさが花の姿を借りている、と大河はふと思う。

「ママがね?去年弟を産んだのよ」
「ああ、聞いたな。可愛いんだってな」
ぽふん、と竜児に寄り掛かって、夢見ごこちで続ける。
いまはもう可愛いばかりだけどね?産まれた直後は全然そう思えなかったの。
でもママもお義父さんも、見たこともないようなえびす顔でさ。私驚いちゃった。
ママのグズグズデレデレな顔なんて見たことなかったから。
「好きな人とこどもつくればあんなに嬉しいのか……って寂しかったんだ」
でもね、私を産んだ時も同じだったんだって。
そうなんだ、私もあんな顔で眺めてもらえたんだって。

そうしたらさ、私はどんな顔するんだろ。りゅうじは?ってね。すごく見たくなった。
「それは、俺も見てえ。いますぐにでも」
へえ?とニヤつく大河に慌てて訂正。あくまでも男のエロ心を別として……な?
じゃあそれ満たしてやるか、とこれも口実にする大河。

「りゅうじ。……ん?」
「こんな近所でかあ?子供だって見てるのに。……通報されるかもしんねえし」
「……あんたの誹謗中傷は不問に付すわ」
ま、恥ずかしいよね。
私ね、一週間もいっしょで。ご飯もお出かけも寝るのもいっしょでいたら。
りゅうじに対してはあんまりテンパらなくなってきたの。
こんな自分がいたのか、とも思うけど。なんだか嫌いじゃない。
「なんて言うか……りゅうじにイカされるたび変わっていくわたし。みたいな?」
下・品!
お約束の手刀をつむじに振りおろそうとしたが、竜児の手はしっかりと膝の上で握られていた。
「まあ、オトナになるってのはこういうことよ?」
んーーと顎を突き出して目を閉じる。
淡い茶の髪が微風に遊ばれ、隙間に耳が見え隠れ、頬は桜色。大河はやっぱり美少女。
但し綻ぶ花のような可愛い唇の端に、さっきまで食ってたアイスクリーム。
「オトナねえ?」
竜児はティッシュを取りだして、こどもの世話をするように拭ってやる。
ゆっくりと、丁寧に。
やがて可笑しくて、くくくと笑いだしてしまう。
「あ!だだ台無し?なんだ私!こんなにキメたとこなのにっ」
「別に恥ずかしいことが言えるようになったからって大人じゃねえだろ」
ドジ!ああなんてドジ!と嘆く大河の肩を抱いてやる。
大河はずいぶん変わったし、俺も変わった。だけど別人になったわけじゃねえ。
前のまま甘ったれなお前もちゃんといる。俺は変わらずに好きだよ。
しゅしゅしゅ〜んと空気が抜けていくふうで、小さな身体が一段とちぢこまる。
桜の艶が完熟トマトの色に染めあげられ。俯く。
「そ、そう……ね……」
小学生のように、ちんまりと。う、嬉しいわ……と。

そして竜児は突然にキスをしたくなった。
もっとなんかイイコト言ってこいつをテレさせてやろうかぐらい余裕でいたのに。
自分の顔が熱くなってくるのが分かる。なぜだ?なんの前触れもなく?
しかもこんなこどもっ振りになった時にって、俺大丈夫か?
様子を感じ取って大河が顔をあげる。鳶色の瞳に不安の光を湛えて見つめる。
どうも、なんて言うか。それでトドメを刺されたような。
ここは公園。子供も見ているけど。ええい!
来いよアグネス!
負けた竜児が桜の下で奪った唇は、アイスクリームの味がした。

534桜のころ(虎、帰るアフター3):2011/04/04(月) 01:35:05 ID:???

結局は、まだまだ大人の真似ごとをして浮かれているだけと知る。
大河も。竜児も。
熱に浮かされながら、一瞬でも離れたくないと思える幸福に包まれていた七日間が終わる。

望んだ全部を諦めないで手に入れて、そして守り切る。
それは長い人生をまるごと賭けて挑まねばならない大勝負。
自分たちはそのスタートを切ったばかりと。何度も済ませた同じ決意にまた至る。
傍らにつないだ手に力を込めてみれば、同じ強さで握り返してくる。
この絆と思いつづく限り、何だってできる。どこへでも行ける。
部屋までのわずかな道のりを歩きながら、そう思う。

「いい陽気。神、枝に這い、かたつむり空に知ろしめす。すべて世は事も無し。……ね?」
「赤毛のアンと言ってしまいそうだが、上田敏訳のブラウニングだな。海潮音」
「さすがはりゅうじ。理系の分際でよく知ってること」
「ちなみに神と蝸牛が逆だ。枝に這わせてどうする」
「はははっ、バレた〜」
すべて世は事も無し。

戻って。
荷物の、特に服の整理を始めっか、と提案する竜児に先にやる事があると伝えた。
私は白いプレートとマジックを出して。キュキュッキュ、と丸っこい字で。
そう。表札を出すの。
まあ儀式よね。

逢坂竜児
  大河

「連名かよ。てか俺なんか入り婿みてえ。……まあ、防犯にはいいのか」
「そ。気分。そして練習。管理会社になんか言われたらそう言っとく」
男のふたり暮らしって疑われねえかな?
なおさら防犯上有利じゃん。
そうか。
「名字を高須に書き換えるのが楽しみ。でしょ?」
「おう!」

ふたりで玄関先に、つっかけで出た。
扉の上辺近くの高さに付いたホルダーは、もちろんきれいに掃除してくれている。
竜児はふつうに。私はちょっと背伸びをして。
プレートに手を添えて、せーのでいっしょに差し込んだ。
私は思いを込めて竜児を見上げる。
楽しそうに見つめ返してくれる。

胸の奥がくすぐったくて、小鳩のように笑いだしてしまった大河を竜児は優しく見る。
この世界でただひとりだけそれを見ることができる。

そうしてふたりは扉を開けて。笑いあいながら部屋に入っていった。


――END





※作中にて、以下の一部を引用させていただきました
新井素子『あなたにここにいて欲しい』
宮沢賢治『永訣の朝』
ロバート・ブラウニング『春の朝』上田敏 訳

535高須家の名無しさん:2011/04/04(月) 02:13:21 ID:???
まだ読んでませんが、乙乙!
あとの楽しみにとっておこう…

536高須家の名無しさん:2011/04/05(火) 00:03:34 ID:???
幸せだー。読んで幸せになったー。
ここの所荒んでいたので、涙が出た。
本当にありがとう。

537高須家の名無しさん:2011/04/06(水) 20:33:28 ID:???
同じく。
やっぱ皆で和気藹々してると嬉しいなー。みのりんとの危うい過去は読んでてどきどきした。
公園イチャイチャに死ぬほど萌えた。ドジっ子健在な大河も、タガが外れた竜児も可愛いよ…
ぬくもり溢れる読後感でたまりません。幸せになれよ…!
完結お疲れ様、そしてGJでした!

538高須家の名無しさん:2011/04/07(木) 23:19:12 ID:???
いいよーいいよーGJだよー!

539514:2011/04/08(金) 20:43:00 ID:???
>>535-538
ご感想ありがとうございました。
ネタ的にご不快を感じた方にはお詫び申し上げます。

時節柄、どうしても優しく力強い方向でしか書くことができませんでした。
もっと竜虎が絆の力でいろいろ乗り越えるのが本当なのでしょう。
それは他の書き手の方に期待しますね。
感想にレスを返すのは荒れる元らしいですが、こちらは失礼ながら過疎なので大目に見て下さい。
ついでに蛇足ながら、本編+アフターのプロット発案の元になった曲をご紹介します。
http://www.youtube.com/watch?v=gNFJFQSsXMQ

音楽はエロス描写以上に個人の好みだと思いますので、お勧めはいたしません。
ということで、ありがとうございました。

540高須家の名無しさん:2011/04/13(水) 00:25:31 ID:???
本スレ>>563の絵って、まとめサイトにあるやつじゃないっスか。
9スレ目のまとめにあったわ。

あと、探してる絵はまとめサイトのリンクから飛べる「べろべろ」さんのところを上から順に見ていけば良いと思うよ!

541気付かない想い ◆QHsKY7H.TY:2011/04/28(木) 13:17:45 ID:???
「フンッ!!」
「てっ!?」

 突如、問答無用でイキナリの目つぶし攻撃を敢行したのは言うまでもなく、

「何すんだ大河!! 視力が落ちたらどうする!!」

 手乗りタイガーという名誉か不名誉かいまいち判別のつかない二つ名を付けられた少女、逢坂大河。
 日も暮れ始めた夏の夕方と呼ぶに相応しい時間帯。
 同時にタイムセールを各所でやり始め、いかに勝利者となるかの瀬戸際になる時間帯でもある。
 世の奥様方よろしく、タイムセールの内容をチェックしながら歩いていた高須竜児は突然の目つぶし攻撃に当然の如く抗議の弁を述べる。
 目という部位は人の一生においてとても重要な役割を果たす感覚器官。
 それが失われることがどれだけ大変な事なのか、お互いわからない歳では無い筈である。
 その辺どういうつもりなんだコラァ!? と言った具合に釣り上がった凶眼は、一見してか弱そうな少女にガンを付けるヤクザそのものの出で立ちだが本人にその気はもちろん無い。
 目つきは生まれつきのものであって本人の意志ではなく、ただただ理不尽の理由を問いたい、というのが本心のそれである。
 悲しいことにこの世にそれがわかる人間は少なく、周りで買い物をしていた奥様方は恐怖で離れていき、近くの交番に駆け込む者までいるのが現状だが。

「眼がエロいのよ、眼が」

 一方、竜児の目つきを生まれつきのものだと理解出来る数少ない人間に分類される筈の彼女は、彼のその凶眼を見てあろうことかエロいと発言する。
 人間という人種が何十億と住むこの星において、彼の眼を見てそんなことを言えるのは世界広しといえども彼女ぐらいのものだろう。

「あんたさっきからあっちをチラチラこっちをチラチラ、何処見てるのよこの駄犬が」
「しょうがないだろ、チラシに乗っていない突然のタイムセールをやりだす店だってあるんだ。チェックするのは多いに越した事はない」

 加えて竜児は昔からその眼で勘違いされる傾向にある。
 自然とそういう人達が近くにいないかを探る癖も彼にはあった。

「どうだか。さっきはあっちの女の人の事見てたみたいだし、かと思えばあっちの小学生。ホント見境無いわねこのエロ犬は。みのりんに言いつけちゃおうかなぁっと」
「く、櫛枝に!?」

 彼女の言ってることは事実無根……ではないのだが、意味するところは全く違う。
 前述する通り竜児は周りの視線を極端に意識する為に、自分をそういう目で見そうな相手にはこちらから予防線を張っているのだ。
 大河の言う「見ていた」は正しいがその理由は大河の言う『エロ目的』とは一致しない。
 だが彼女にそう説明したところで大人しく話を聞く相手では無く、加えてリーサルウェポン……いやアルティメットウェポンの存在まで口にされては竜児に為す術は無かった。
 握った拳を開いて、諦めに似た思いで竜児は肩を落とす。 話してもどうにもならないのなら文字通り諦めるしかない。反論するだけ無駄なのだ。
 そんな悟ったような竜児の顔を、しかし大河は尚睨み付ける。
 こちらは諦めたのに何でまだそんなに睨んでくるんだ、と竜児は怯える。元来目つきは怖くとも内心は伴わないヘタレそのものなのだ。喧嘩だってしたことは無い。
 竜児がそう内心でビクビクしていると、

「君、ちょっと話を聞かせてくれないか」

 肩に手を置かれて背中から声をかけられる。
 振り返ってみるとそこには公権力の象徴、警察官が立っていた。そういえば交番に駆け込んでいた人がいたっけ。

「先程近くを通りかかった人が恐喝している現場を見たと言ってきていてね、どうなんだね?」

 言葉の上では疑問系だがその口調は決めつけた詰問だった。
 無理も無いと思う。こんな目つきの男が女の子と言い争っているような現場を見たら、誰だって男が悪いと決めつけるだろう。
 竜児はビクビクしながら何とかわかってもらおうと口を開こうとして、

「アンタ本当に警察官? だとしたら警察学校からやり直してきたら? この税金泥棒」

 先に大河が口を開いていた。
 大河の生意気と取れる口の利き方に警察官は眉をピクリと寄せる。
 無理もあるまい。彼にしてみれば女の子を助けようと現れたのにその女の子に暴言を吐かれたのだ。

542気付かない想い ◆QHsKY7H.TY:2011/04/28(木) 13:18:47 ID:???
「どういう意味かな? 私はただ聞き取り調査に来ただけだよ」
「どうだか。さっきの言いぶりだと竜児を恐喝の犯人扱いしてたじゃない。何も知らないでよくそんな事が言えるわね。その男は生まれつき目つきが悪いだけのヘタレ男だってのに」

 どういうつもりか知らないが大河は警察官に噛みついていた。
 竜児としてはオロオロするばかりだが、ヘタレ扱いされようともそれで誤解が解けるなら御の字だった。

「君たちは知り合いか何かなのかな? それともまさか恋人かい? 彼氏に脅迫されているんだったら言いたい事は言った方が良いよ」
「はぁ!? 私達が恋人!? 本当にアンタ目が節穴なの!? コイツとは単なるクラスメートよ!! それ以上でもそれ以下でも無いわ!!」



***



 その後すったもんだがあったものの、近くの懇意にしている店のおじさんが竜児の事を警察官に説明して事なきを得た。
 竜児は苦い顔をしながらも何も起きずに良かったと笑っていた。

「何で笑ってられんのよ、あの馬鹿犬」

 自分の部屋の中央に位置する寝椅子(寝っころがりながら座れるから寝椅子でいいのだ)に一人座って、膝を抱く。
 大河は夕食を高須家で摂った後早々に自分の部屋に帰ってきた。

「誤解だって、さっさと言えば良いじゃない」

 今日警察官が竜児を責めに来たのは自分のせいだとわかっている。
 大河は顔を膝と膝の隙間に埋めてさらに縮こまった。ただでさえ小さい体を小さくして丸まるその姿は、泣いているようにも見えた。
 わかっている。悪いのは竜児ではなく自分だと。自分が“意味も無く”つっかかったせいで勘違いされ、嫌な思いをさせたと。
 でも素直にそれを認める事はできそうに無く、だから無理矢理庇う形で警察官に喧嘩を売った。
 苛々する。無性に苛々する。 悪いとわかっていても謝る気が無い自分に苛々する。
 けど素直に謝ったらそれは自分では無い気がしてそれも苛々する。
 そもこんな事で苛々する原因を作った竜児に苛々する。そうやって竜児に原因をなすりつける自分に苛々する。
 苛々し続けて、自分が何に苛々しているのかわからなくなってきて、苛々する。
 わからなくなるってことは今までに考えた理由が本当の理由じゃない気がして苛々する。でも本当の理由に気付きたくなくて、そんな弱い自分に苛々する。
 結局竜児が悪いと決定付けて苛々を終わらせようとするが、そうやって竜児のせいにする自分に苛々するのを止められない。
 でも、苛々の理由とは別に竜児も悪いとは思う。すぐに否定すればいい。自分は悪くないと訴えればいい。
 それをしない竜児はやっぱり悪いと思う。悪くないのに悪者になる竜児は悪い。そう、竜児が悪くないから悪い。竜児が悪くないから苛々する。
 竜児が否定しないから苛々する。そんな目で女の子を見ていないって言えばいい。自分は悪くないって言えばいい。
 関係無いって言えばいい。否定すればいい。……言って欲しい、否定して欲しい。

 自分はそんな目で女の人を見ていたわけではない、と。
 根も葉も無い事を勝手に言いつけるな、と。
 自分は何も悪い事はしていない、と。
 自分は何もしていない、と。
 恋人じゃない、と。

 自分はヘタレじゃない、と。
 単なるクラスメートでもない、と。
 それ以上であって、以下ではない、と。

「……ぅ……すぅ……」

 大河はやがて寝息を立て始めた。
 他愛の無い一日に過ぎない今日考えた事を、彼女は何処まで覚えているだろう。
 恐らく、微睡みつつの思考など数えるほどしか覚えていないだろう。
 それでも、彼女は自分の性格だけは理解しているだろう。

 自分は“意味もなくつっかかったりなどしない”と。

543 ◆QHsKY7H.TY:2011/04/28(木) 13:19:32 ID:???
すいません、本板に上手く書き込めなかったのこちらに書き込みました。

544高須家の名無しさん:2011/04/29(金) 07:04:15 ID:???
大河切ないなぁ。

545高須家の名無しさん:2011/04/29(金) 09:39:26 ID:???
>>542
3,4巻辺りの大河はヤマアラシのジレンマを自覚したところでほんと切ない。
でも最後の一文が前へ進もうという意思でいいよね。

546高須家の名無しさん:2011/04/30(土) 21:49:51 ID:???
>>543
お久しぶり、GJ。
やっぱ、安心して読めるわ。

547高須家の名無しさん:2011/05/01(日) 00:51:21 ID:???
最後うまいなぁ。何度も読み返したくなる文章です。

548高須家の名無しさん:2011/05/01(日) 04:07:49 ID:???
まとめ人様へお願いがあります。

当スレにて>>443>>476>>494>>515と、本スレの【とらドラ!】大河×竜児【ゴロゴロ妄想】Vol24にて>>10>>26を投稿した者です。
上記6本を時系列順に全面改稿しました。読みにくかったので整形もいたしました。
もしまとめサイトに掲載していただける機会がございましたら、改稿後のものにしていただけないでしょうか。
すでに掲載いただいている>>443も差し替えていただけたら幸いです。

ご迷惑でなければ受け渡し等ご指示下さい。現在テキスト1ファイルで300KBに繋げてあります。
どうぞ宜しくお願い致します。

549まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY:2011/05/01(日) 19:05:20 ID:???
お疲れ様でs

>>548
了解です。
ファイルは以下のアップローダーあたりにDLパスをつけて上げていただければ、こちらで落とします。
受け取ったら報告いたしますので、その後削除していただければ。
ttp://www.uproda.net/
お手数ですがよろしくお願いいたします。

後こちらからもお願いがあるのですが、トリップとか付けていただくことは可能でしょうか。
まとめやすくなったりするので…個別ページ作ったりとか。



あの花。のEDが卑怯すぎる。
1話での使い方とか、花びら逆回転の瞬間とか鳥肌。

550 ◆0/FKyHtS2M:2011/05/02(月) 14:04:41 ID:???
まとめ人様
548です。早速のお返事ありがとうございます。
以下うpしました。パスは目欄に。

ttp://www.uproda.net/down/uproda293580.txt.html

今後書くか分かりませんが、トリップも付けてみました。お手数をお掛けいたします。

551まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY:2011/05/03(火) 03:16:19 ID:???
>>550
ご報告が遅れましたが、テキストファイル受け取りました。
現在まとめ中ですので、もうしばらくおまちください

552 ◆0/FKyHtS2M:2011/05/04(水) 16:47:08 ID:???
>>551
お手数おかけいたしました。ありがとうございました。
なにか不備ございましたらお申し付けください。

553 ◆fDszcniTtk:2011/05/08(日) 01:44:12 ID:???
>>549
私もドはまり中です。あのはな。

とらドラ!もEDへの入り方がうまかったですね。とらドラ!最終回のEDの
使い方を、「あのはな」は1話でやったか、と感慨深く見てました。

私もさびに入るシーンの花に、さっと色が入るところが好きです。

554高須家の名無しさん:2011/05/08(日) 02:08:48 ID:???
>>549 >>553
花に色付くところは鳥肌もんだった。各所で絶賛されてる(んだと信じたい)

ちなみに今日のカウントダウンTV(10位)でも色が変わる瞬間が放送されてたぜ!

555高須家の名無しさん:2011/05/08(日) 13:03:36 ID:???
>>554
そうそう、鳥肌立つ。すっと音が消えて、3人が目を閉じて、ふっと画面が
引いてぱぁっと色がつく。思い出しても鳥肌立つわ。

1話はフジテレビ・オンデマンドで無料なんだけど、エンディング・アニメは
スペシャル版なんだよね。

あの番組見てると、やっぱとらドラ!はスタッフに恵まれてたって思うよ。

556まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY:2011/05/08(日) 15:58:34 ID:???
まとめサイト更新しました。

「虎、帰る」シリーズを改訂後と入れ替えたりしました。
何か不具合等がありましたら、ご指摘をよろしくお願いいたします。
本スレが相変わらず規制中なのでこちらでご報告。



アニメスタイル予約していて良かった…

557ms07b3:2011/05/09(月) 21:59:33 ID:OMdFCukE
高須夫婦の日常①
 高須竜児と大河が結婚したのは、出会ってから8年後、25歳の春だった。
大橋高校の仲間や、大学時代の友人達に囲まれての結婚式は質素ながらも温かい雰囲気に包まれた
披露宴だった。
 新しい新居は、大橋駅から2駅ほど郊外に離れた駅から徒歩で10分程のマンション。
幼稚園教諭になるために専門学校に通う大河の通学の利便上、大橋から離れられなかったのと、
建築設計事務所で働く竜児の終電の時間が遅いというのが決め手だった。
昭和50年代の後半に建てられたマンションは、多少、見てくれも古くさいが、リフォーム済み
で、収納スペースもたっぷりあったのが竜児のお眼鏡に適ったのだ。

 引っ越して2週間。仕事が殺人的に忙しい竜児に代わり、部屋の片付けをしたのは大河だった。
高校時代、家事が全く出来なかった大河も、竜児と別れた一年間の母親との生活と、大学時代の
一人暮らしの結果、それなりに家事をこなすことが出来るようになっていた。
勿論、スキルでいえば未だに竜児に敵うことはできない。でも25歳の新妻としては上等なレベル
に達していた。
 お風呂掃除が終わり、冷えたカルピスを飲みながら、披露宴の時に送られた、お祝いの電報を
読んでみる。
 日程や、物理的な距離から披露宴や二次会に参加出来なかった母親と暮らした街での、一年だけの
クラスメートや、大学時代の友人が送ってくれた祝電。
 自分たちがいかに祝福されて結婚したのか、片手だけでは持ちきれないほどの電報の束に、大河は
幸せをかみしめていた。

 雪の大橋でのプロポーズから8年。長いといえば長い春だった。
 一年の離別を乗り越えて大橋に戻ってきた大河としては、高校卒業と同時に入籍だけでも済ませた
かったのだが、真面目で融通が利かない駄犬は、大学を卒業し、ちゃんとした収入を得るまでは結婚
しないと勝手に決めて、大河が泣こうが喚こうが、手乗りタイガーと化して殴る蹴るの暴行を加えよ
うが、信念を曲げなかった。

 大河にしてみれば、優しくて、気遣いができて、料理が得意で、家事全般に精通している竜児は、
女性からしてみれば、稀少性の高い優良物件だと思っている。
大学生ともなれば、竜児の、地獄を住処とする悪鬼のような三白眼に怯まず、その瞳の奥底にある
優しさを見抜く女性が現れるかも知れない。そんなライバルが現れたとしたら、泣き虫で凶暴で哀れ胸
を持つ自分など太刀打ちできるはずもない。大河の危機感は深刻だった。
 愛していない、いや愛してる。結婚しろ、いや今は出来ない。殺す、殺さない。物騒な言葉が飛び交う
痴話喧嘩の調停者として現れたのが、高須のおじいちゃんだった。
 高須のおじいちゃんは、2人の前に古びた指輪ケースを差し出した、大河がケースを開くと、大きめの
石がついている指輪が収まっていた。
「これは、ばあちゃんから大河さんへの贈り物だ。」居心地が悪そうに、じいちゃんは言う。
二人が好きあっているのは理解している。大河さんが竜児とすぐにでも結婚したいと考える事も理解でき
るし、竜児が一人前の男になるまでは結婚出来ないと考えるのも男として理解できる。
「そこで提案なんだが、恋人から夫婦に一足跳びにいく前に、婚約者というステップを設けてみたらどうだい?」
じいちゃんはそういって笑った。
考えてみれば、恋人→婚約者→夫婦というのはごく普通のステップだ。
しかし、お互いの恋心を認めると同時にプロポーズした(された)二人にとっては、婚約というステップは、
なんだか中途半端な立場のような気がしたのだ。
 竜児にしてみれば、学生の身だから、大河に婚約指輪を買ってあげることが出来ないという引け目もあった。
 大河にしてみれば、婚約という名の下に、結婚が延びてしまうのが悲しかった。
しかし、高須家のじいちゃんが仲介してくれたうえ、おばあちゃんから指輪を贈られると有っては、さすがの大河も、
攻撃の砲弾を撃ち込むのを辞めるしかない。
堅苦しい儀式は抜きで、高須家の祖父ちゃん・祖母ちゃんと泰子。大河の家からは、義理のお父さんとお母さんとが
一堂に会し、顔合わせを行った結果、大河は、サードニクスの婚約指輪を身につけて、大学に通うことになった。

558 ◆n0CyHpL66I:2011/05/10(火) 00:41:37 ID:???
低クオリティ注意

559123 ◆n0CyHpL66I:2011/05/10(火) 00:45:51 ID:???
「温泉旅行」 「みんな」


「本当は混浴が良かったんじゃないの?だって高須君と…ねぇ」
「黙れ発情バカチワワ」
「あれれ〜?逢坂さん顔真っ赤。高須君としてるの想像して興奮しちゃった?」
「おっ?夫婦円満ってやつですなあ」
「みのりんまで…からかわないでよ、大体まだ一度も何もやってないわよ…その…せっくすとかは…」
「嘘つかなくて良いってば逢坂さん。高須君が言ってたわよ、毎日求めてくるから少し疲れたって」
「若さゆえの性の乱れかい?」
「!!…あの駄犬、余計な事を…大体毎日なんて求めてないわよ」
「高須君が言ってたってのは嘘、それにしても逢坂さんのその反応。毎日じゃないけどヤってるのね」
「」




「すっきりしたー、たまには温泉なんてのも良いよね」
「まーアタシは温泉なんて珍しくもなんとも無いんだけどね」
「バカチーが変なこと言うから終始イライラしてたわ」
「そんなこと言って今夜も高須君と夜通し楽しむんじゃないの?高須君と相部屋よね。気使って二人にしてあげたんだから。」
「んじゃ私たちは隣の大部屋部屋でトランプでもしながら適当に過ごすとしますか、あーみん」

560123 ◆n0CyHpL66I:2011/05/10(火) 00:47:10 ID:???
「能登、どうした?」
「いや、高須は良いよね。なんつーかその…タイガーと二人部屋で。俺も木原t」
「えー俺だったらタイガーと二人は嫌だよ、翌朝生きてる保障ないもん。
ってか能登っちは誰と二人部屋が良いの?まさか俺?そっち系は俺無理だよ…」
「(春田…どうしたらそんな発想になるんだよ…)」

「じゃあな、部屋戻るわ」
「おう、じゃあな高須。タイガーと仲良くやれよ」
「高っちゃん明日も生きててくれよ〜」




「もうこんな時間かー早く寝ないと明日起きられないぞ」
「お、流石生徒会長。でも俺は少しやりたい事あるから。な?能登っち」
「いや、知らないけど何すんの?」

「私たちは修学旅行の時みたいにガールズトークでも」
「そうだね、今夜は寝かせないよ」
「逢坂さんたちも「今夜は寝かさない」とか言って盛り上がってる所かもね」
「あはは絶対明日は二人とも疲れてるよ」

561123 ◆n0CyHpL66I:2011/05/10(火) 00:48:19 ID:???
「ねえ竜児」
「ん?どうした?」
「なんかね、その…寒くない?」
「俺は平気だぞ。良かったら上着貸してやろうか?」
「そうゆう事じゃないの。私もそっちのベッドで寝たいの」
「何だ?そのベッド何か問題でも有…って濡れたタオル置いとくなよ。
替えのシーツ持ってくる。俺のベッド使って先に寝てても良いぞ」
「…アンタね…どこまで鈍感なのよ!このダメ犬」
「おわっ、いきなり飛び掛ってくるな。痛ぇだろ」
「良いからじっとしてろダメ犬」
「何だってんだよ…ってお前いきなり脱ぐなよ、北村に影響でもされたのか」
「いいから竜児も脱げー」
「苦しい、首のとこ引っかかってる!ってか無理やり脱がすな」
「うるさい、アンタは今日私と熱い夜を過ごすのよ」
「…なんだよ最初から普通に言えって」
「何よ!こうゆう事はムードとかそういうのを」

562123 ◆n0CyHpL66I:2011/05/10(火) 00:49:40 ID:???
「おい、能登っち。動きがあったぞ」
「春田…盗聴してたのかよ…」
「えーだって気になるじゃん、高っちゃんと大河の様子」
「気になるけど流石にそれは…」
「いや、だって高っちゃんが大河になにかされたらすぐ助けないとヤバいじゃん?」



「ねえ春田見てよ。アイツ必死に壁に耳つけて何やってんだろ」
「さあ?でもさっきからずっとそうしてるね」
「高須君と大河ちゃんの熱〜い夜を観戦したいんじゃないの」
「能登もかなり引いてるよ」
「まあそりゃ誰でも引くよね」
「でも二人とも仲良くてうらやましいね」

563123 ◆n0CyHpL66I:2011/05/10(火) 00:59:53 ID:???
「竜児、早く脱がしてよ。パ・ン・ツ・も」
「おっおう…」
「ねえ竜児…目、逸らさないで。ちゃんと私を見て」
「…」
「アンタのその鋭い目つきは変わらないのね」
「…なんだよそれ。褒めてんのかバカにしてるのか」
「褒めてるのよ、その目で見られると私…」
「お前のその平らな胸も変わらねーよな」
「そう思うなら揉んで…大きくしてよ」
「おう…こんな感じで良いのか?」
「んっ…気持ちいいわ。ねえ、舐めたりしてくれないの?」
「そうだな、舐めるだけじゃなくて吸ってやるよ」
「あんっ、うふふ。竜児、赤ちゃんみたい」
「かっ、からかうなよ」
「だって〜夢中で吸ってるんだもん」

564123 ◆n0CyHpL66I:2011/05/10(火) 01:00:23 ID:???
「なあもう良いか?」
「何?あんたのも弄って欲しいの?」
「ああ、そろそろ頼むよ」
「何これもうカチカチじゃない、私の触ってたら興奮しちゃった?」
「…そうだよ。そういうお前もすごい洪水になってるじゃねえか」
「うるさい、エロいにゅ。もういつでも準備OK、挿れられるって事よ。」
「い…挿れてもいいか?」
「アンタがそうしたいなら別に良いわよ」
「んじゃやっぱやめた」
「…なによ…我慢しなくて良いって言ってるのに」
「我慢してるのはお前もだろ?」
「私は別に…その…でもここまでやってるからには最後までやらないと不完全燃焼っていうかその」
「何だよどうしたいんだよ」
「な…なに上から目線になってるのよ。は早く挿れたいなら挿れなさいよ」
「早く挿れてほしいのお前だろ?さっきよりも顔も赤いし下も濡れてるぞ」
「うるさい。もう良い、私が上で動くわ。竜児、早く仰向けになりなさい」
「おうっ、いきなり速すぎる。もう少しゆっくり」
「んあっ…何よ、私から挿れてやったんだから私が決めるわ」
「待て、大河。本当にもう少しゆっくり…だめだ、イク!!」



「出し過ぎよ竜児、それでもう終わりとか言わないでしょうね」
「ちょっと休憩、もう少し待ってくれ」
「うるさい、私はまだイってないのよ早く勃たせなさいよ」
「ちょっと…無理やりやめろって」
「分かったわ…じゃあ手でいいわ…手でしてよ」
「さっきのお返しだ、高速でいくぞ」
「んっああああダメッもうイク、んあああああああ」

565123 ◆n0CyHpL66I:2011/05/10(火) 01:01:21 ID:???
「タイガーの悲鳴が…ついに手乗りタイガーを仕留めたのか高っちゃん!」
「逢坂さん、やっぱりこんな感じで毎日ヤってるんじゃないのかな」
「俺、高っちゃんの所行ってくる。能登っちも行こうぜ、タイガー討伐を祝して乾杯!とか」
「いや、行かねーから。」
「じゃ俺一人で行ってくるよ」
「おい、行くなって。気まずいぞ…ああ行っちまった…」

「おーい高っちゃーん」
「あれ?鍵開いてんじゃん」
「おわっ春田、おまえ何いきなり入ってきてんだよ」
「Let's記念写真だぜ」パシャ「…あれ?二人とも裸?」
「ちょっと…写メるなこの変態アホロン毛!後で覚えてろ」
「うわー助けてー」




「なんか大河と高っちゃんが裸だったよ見てよこの写メ」
「春田…お前、そういう趣味があったのか」
「春田君さすがにそれはまずいんじゃないかと…」
「え?あ、あれ?高っちゃんしか写ってない!
いや俺は別に男の裸に興味とかそんなのは…」
「高須くんの黒いわか…め…」バタッ

566123 ◆n0CyHpL66I:2011/05/10(火) 01:02:29 ID:???
「ねえ竜児」
「なんだ?」
「さっきは一緒にイけなかったじゃない?だからさ、後で続きしよっ」
「おう」

翌朝二人は朝食の席に顔を出さなかった
「お二人さん、どうしちゃったんだろね?」
「昨日の疲れが溜まってるんじゃない?」

二人は昼過ぎまで裸で絡まりあったまま眠っていた


-END-

567高須家の名無しさん:2011/05/10(火) 02:40:40 ID:???


568高須家の名無しさん:2011/05/10(火) 22:25:34 ID:???
乙!
春田……無茶しやがって……(AA略

569高須家の名無しさん:2011/05/10(火) 22:49:44 ID:???
お互いイクの早すぎだろwww
だから高速回転なんですね、分かります

570とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2011/05/20(金) 06:10:41 ID:???
お題 「荷物」「声」「力いっぱい」



「……ねえ竜児、話があるの」
 いつもなら夕食後はお茶を飲みながらのまったりタイム。
 だが今日の大河はなぜか神妙な表情で。
「おう、何だ?」
「あのね、私……夏休みになったらアメリカに行くから」
「おう? ……ひょっとして、最近時々狩野の兄貴からエアメールが来てたのはそれでか?」
「うん」
「海外となると、一泊二日ってことはねえよな……三日か? 四日か?」
「……短くても一ヶ月、以上」
「何!? なんだよそりゃ?」
「竜児、私が通訳目指してるのは知ってるでしょ」
「おう」
「通訳や翻訳ってのはね、単に言葉を変換すればいいってもんじゃないのよ。そこに込められたニュアンスとか意味をきちんと理解して伝えなきゃいけないの。
 そのためには、やっぱりある程度生の英語に触れた経験が無いと……」
「そりゃわかるけどさ、そんな渡米までする必要があるのか?」
「竜児が言ったんでしょ、虎と竜は並び立つんだって」
「おう。だけどそれがどう関係するんだよ?」
「いくら将来竜児のお嫁さんになるのが決まってるっていってもね、通訳って仕事をそれまでの腰掛けにしたくはないのよ。
 竜児のお荷物とかおんぶに抱っこじゃなくて、ちゃんと自分の足で立って、胸を張って結婚したいの、私は」
「金はどうするんだ? いくらなんでも海外で一ヶ月暮らす程の蓄えはねえぞ」
「狩野すみれのツテでね、住む所と短期のアルバイトを紹介してもらえることになってる」
「……わかった。だけど一つ聞かせてくれ。どうしてこんな大事なことを今まで相談してくれなかったんだ?」
「それは、その……もし竜児に反対されたり、引き止められたりしたら……決心が鈍っちゃいそうだったから……」
「……あのなあ、どんなものであれ、大河がきちんと考えて決めた事に俺が反対するわけがねえだろ。力いっぱい応援するに決まってるじゃねえか」
「うん、そうよね……ごめんなさい」
「さて、そうすると急いでパスポートを用意しねえとな」
「いや、それはもう……」
「大河のじゃねえ、俺のだ」
「ふぇ?」
「……何頓狂な声あげてやがる」
「だって……行くの私なのよ? なんで竜児のパスポート?」
「そりゃ、俺も行くからに決まってるじゃねえか」
「えええ!?」
「本場で英語修業ってのはいいアイデアだよな。俺も将来必要になる可能性は高いし」
「ちょ、ちょっと待って!」
「何だよ、一緒に行くのが嫌か?」
「そんなわけないじゃない! だけど、それこそお金とか……」
「おう、そうだな。兄貴に二人分の働き口を頼むのもなんだし、俺は北村にどっか良い所がねえか聞いてみるか」
「竜児、本気!?」
「おう。なあ大河、俺はこうも言ったよな、『ずっと一緒だ』って」

571 ◆Eby4Hm2ero:2011/05/20(金) 06:14:33 ID:???
規制中なのでこちらで。
よかったら転載お願いします。

大学二年の頃のお話。
大河が通訳を目指しているというのは、「シンデレラなんかになりたくない」から頂きました。

572まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY:2011/05/20(金) 23:20:07 ID:???
あなるのかわいさに、こかんがあつくなるな…

573高須家の名無しさん:2011/05/21(土) 01:27:13 ID:???
俺はつるこ(幼少)が可愛いってスレを見てしまって・・・。

574高須家の名無しさん:2011/05/21(土) 01:28:42 ID:???
スレじゃなかったこの画像がああぁぁぁ!
ttp://blog-imgs-44-origin.fc2.com/o/t/a/otajyuu/s-24_1_20110516104007.jpg

575123 ◆n0CyHpL66I:2011/05/21(土) 01:50:11 ID:???
ttp://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira001322.png
ttp://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira001323.png

576 ◆0/FKyHtS2M:2011/05/21(土) 03:07:57 ID:???
新作投稿します。いままでになくエロなのでここに帰って参りました。

タイトル:お姉ちゃんにまかせろ!

内容:ガチエロコメですので少々詳しく内容を記します。趣味に合わないと思われる場合はご
注意ください。生理中えっちで、本番はしませんが、フェラ、ごっくん、手コキ、レイプ妄想、
オナ告白がメニューとなります。また、竜虎ともどもかなりのエロ惚け状態に見えるかと思わ
れます。キャラクター改変は最小限に留めたつもりでおりますがそこは読まれた方にご判断い
ただきたく思います。あ、あとオチもしょうもないです。手乗りタイガーは伊達じゃないです。
……なんだかこれじゃ面白くなさそうに聞こえますが。47KB

↓宜しくお願いします

577お姉ちゃんにまかせろ! ◆0/FKyHtS2M:2011/05/21(土) 03:12:00 ID:???

【これまでのあらすじ】親元で一年を過ごし進学した逢坂大河は大橋の町に帰ってきた。高須
家から徒歩3分のワンルームマンションで独り暮らし。ぶじ嫁入りのその日まで!などと大げ
さな話は置いといて瑣末事を綴ったエロコメディ(要するにアニメ版アフターです)

 高校を卒業して、別々に進学した竜児と大河は結婚という遠大な目標に向けて鋭意努力をし
始めていた。他人であったふたりが奇しくも出逢い、惹かれあって、ずっといっしょに居たい
と願った以上、そしてふたりが同性でなかった以上は、当然の帰結と言えた。
 19歳になった逢坂大河と、もうすぐ19歳になる高須竜児は、めでたく恋人以上夫婦未満
といった関係になっている。
しかし、やることはとっくに済ませていても、いまだ親がかりなふたり。
 やはり毎日エロエロアマアマに惚けてるわけにもいかない。そういう甘美な数日間がたまに
はあっても、社会に巣立って、いつかは自分たちだけの家庭を持つための準備を怠るわけには
いかないのだ。したがって、のべつまくなしにイチャついていないで学生の本分を全うしろ!
という自律的な制約を、どちらからともなく課している。
 それは“したくなっちゃうようなエロい行為を平日は自重する”ということ。

 とある日曜日。
 さんざんおためごかしを書いておきながら、日々のつとめをこなしたら制約を解放してもよ
いとふたりが暗黙に決めている休日がやってきて、この話は始まる。


「りゅうじおっはよーーーぉぅっっ!」

 ばあん!と扉が破壊されるような勢いで開けられた。“元手乗りタイガー”逢坂大河が機嫌
よく高須家を訪問した合図だった。
 朝7時。
 かつての大河なら、休日は昼前になってからようやくメシを求めて顔も洗わず寝癖だらけの
ロングヘアをほやほやとぶら下げヨダレを垂らしながら半笑い(愛想のつもり)で訪れていたも
のだが、高校を卒業した今となっては違う。
 淡くけぶって腰まで届く薄い茶髪をきっちりおさげに編み込み、目覚めもさわやか、うっす
らと年齢相応のナチュラルメイクまで済ませて、満面の笑みは開きかけた薔薇のよう。扉を壊
すような粗忽ぶりだけは変わらないものの、竜児の彼女であり且つ婚約者である自覚を十分に
纏っていた。
 左手には先だっての誕生日に贈られたペアリングも光っている。
 基本は美しく貧乳で可愛い女。そして態度は現在もそれに見合ってはいない。

「おう大河、お早う!……もうちょっと静かに開けろよ。泰子起きちまうだろ」
「あ、ああごめん。つい。なんかつい。……もうっ!」

 エプロン姿で手を拭き拭き出迎える竜児に、靴を脱ぎ散らかして駈け込んだ大河は思い切り
のタックルを決めた。あ、まあ抱きついた、ということだ。小柄で軽い大河の激突を受け止め
きれないほど竜児も非力ではなく、しっかりと抱きとめてしばしの一体感を味わう。

 身長差が30センチ以上あるカップルらしく、大河は竜児の鳩尾に顔を埋めて、胴周りに腕
を回し込んで抱きつく。竜児は大河の頭から肩を上から包み込む。
 ふわっと立ち上るなんかの花の香りもして、コロンかトワレを仕込んでいるらしい。以前は
甘いバニラの香りだったから、なんだかずいぶん洒落っけが増したな、と竜児は思う。
 そうして少したったら、最近ふたりで開発した体位(「体位って言うな!」逢坂大河:談)
に移るのがこのところのお約束だった。

 それは、大河を立たせたまま竜児が膝立ちになる。というもの。
 そうすると、竜児の目線は大河の顎の下あたりに来ていつもと真逆、見上げる竜児を大河が
見下ろす。見下ろしながら目をふにゃぁ〜っと糸のように細めて、竜児の頭を抱きかかえたり、
でこちゅーやら瞼ちゅーやら普段はできない愛情表現を、この際は存分に楽しんでいる。

 嫌なら蹴るか殴るか爆発するか頭突きするか逃げるかなにかするだろう、思いついたらやっ
てみる。互いにウケたら次からお約束。という名称未設定メソッドによって、ふたりの愛情表
現は日々新規に開発され続けていた。つまり、これがバカポークォリティというもの。

578お姉ちゃんにまかせろ! ◆0/FKyHtS2M:2011/05/21(土) 03:15:10 ID:???
 もっとも、竜児にとってのこれは、大河に一方的なサービスをしているばかりでもなかった
らしい。

 この体勢になれば彼女の華奢な背中にごく自然に腕を回すことができた。スレンダーであっ
てもきっちりと筋肉の付いたかたちの美しい背中や脇腹の、とくに締まって魅力的なくびれの
辺りを触りまくれる、という。どうひいき目に見たところでエロい目的があったのはまあ間違
いなかろう。なにしろ胸に頬を埋められる位置でもあるし、ちょっと手を下げればきゅっと小
ぶりな尻や意外なボリューム感をもつ太ももを撫でられるわけで。
 その辺はお互いに分かってはいてもギブ&テイク。多少相手がはぁはぁしようと誰かに見せ
るわけでもなければ、何か困るわけでもない。ということで、竜児はおあずけ解禁の今日、日
曜日の朝。遠慮会釈なく大河の背中を撫でまわしていた。

 ――あれ?無え?

 小っこくて貧乳なのは事実であっても、それがどうした。俺はこいつのエロくて可愛いとこ
ろをたくさん知ってるぞ。誰にも教えてやらんがな。――と思っているかどうかは竜児本人し
か知らないことだが、まあ、鼻の穴の広がり具合を見れば当たらずとも遠からじ。
 親愛の情から劣情へといきなりスイッチが切り替わり、ぶくぶく別府温泉のように湧き出し
ているのも想像に難くない。その途中で竜児の手が止まっている。

 ――ねえよな?やっぱり。

 ないのだった。手触りが。ブラの。

 近頃すっかりラフな格好が板に着いた大河は、今日もジーンズ姿であった。
 いま着ている、竜児と出かけたときお揃いで買ってきたプリントTシャツは、一番小さいサ
イズなのにぶかぶか。結局は身体の線など出ない可愛いばかりな格好で、アンダーに何を着て
いてもバレようもないのだが、きっちりハグしてしまえばそれはちゃんと分かる。

 その、ニコライ・A・バイコフが旧満州の森の主たる、とあるシベリアンタイガーの一代記
を書いた『偉大なる王(ワン)』の主人公を模したと思われる、額に「王」の字の紋様を描かれ
た虎のイラストをプリントしたTシャツは、竜児が冗談半分に買ってやったら、大河が意外に
もネタと思わずに気に入って着ているものだ。
 お返しとばかりに大河は某ジャンプの人気漫画に出てくる神龍のTシャツを贈ってくれたの
だが、まあそんな過日のエピソードはどうでもよく、どこがお揃いなのかも本人たちが納得し
ていればいいこと。
 ともかく竜児は迫力満点の虎の顔に頬ずりしながら元虎と呼ばれた女の背中を撫でまわして
いるうちに、無い、と気づいたのだ。

 ノーブラなのだろうか?と凶眼を眇めてつらつら考える。
 そう言えば最近女子の間では流行っていると聞く。アンケートをとると27%がどこまでも
ノーブラで外出するよと答えるとか。そのぐらいの情報なら竜児といえども知っている。とい
うか大河が彼女になってから妙に気にするようになった。27%の大半がAAカップ&Aカッ
プの女性であるという細かいところまで。
 しかしそのアンケートは大手下着メーカーが行ったもので、対象は25〜54歳の女性に対
してのものだったはずだ。19歳は違うんじゃねえか?と思う。
 形くずれたりとか、心配しないのか?
 
 とかなんとか考えていたら、頭上で、ふふん?と笑う声がする。
 エロりゅうじ、ノーブラだと思ったでしょ?相変わらず朝っぱらからあんたの性欲にはほん
っと頭が下がるわねー。ま?

「はぁはぁされると嬉しくなっちゃう私がどうこう言えることではないけど?」
「……俺はそんなのより。……その、形くずれちゃったりしねえかな?って」

 な?心配してただけだよ。……すまん嘘。やっぱり興奮した。お前の色仕掛けにまんまと乗
せられちまった。くそう、こんなに無い乳に!と、ふにょんとした膨らみにぎゅーっと顔を押
し付ける。

579お姉ちゃんにまかせろ! ◆0/FKyHtS2M:2011/05/21(土) 03:17:23 ID:???
 あれ?「ふにょん」?
 これっていつもよりワンサイズ大きくねえ?どうせなにか盛ってるだけなんだろうけど、そ
れにしてもどういうことよ?気になる。気になるじゃねえかあーっ。
 その竜児の頭を抱え込みながら、ある意味で酷い罵倒をやり過ごした大河は、あ、あんたも
なかなか口車が巧くなったもんだわ、持ち上げて、落として、態度で締めるなんてと、まった
く意に介さず。

「まあ、正解はヌーブラ」
「ノーブラでなく、ヌーブラか?」

 そうそう、と身体を離して腰を屈めた大河が、ぶかぶか虎Tシャツの襟口を押し下げて見せ
た。隙間から臍まで見通せてしまった中に、確かにベージュ色に張り付いてる。努力のすえに
作られたわずかな谷間も見えた。

「ほうほう……盛ったもんだ」
「ワキ肉とかあったらもっと盛れるらしいけどね。いまはこれが精一杯」

 というわけでね。どうよ!?腰に手を当てて、傲岸にフンッと胸を反らせてみる、お馴染み
のポーズ。確かにプリントされた虎のほっぺたがふにょんと盛りあがってはいた。いたけれど
も、その態度が男のエロ心を刺激するかと言えば、そんなことは欠片もない。
 とは言え、そこは好きな女がやってること。大河が竜児のなんかのスイッチを、ポチっと押
したのも、また間違いはなかった。


「……」
「……」
「……おかわりは?」
「……ちょうだい。ていうか、そんなに見て。いい?」
「え?……お、おう。まあ」

 ふたり差し向かいで朝ご飯の午前8時。日曜日というのは近所の生活音も穏やかで、静まり
返って、天気もよく風もないとくれば、住宅街はほんとうに静かなものだ。
 そんな中で鋭い目の周りをぐるりと朱に染めて、ちらちらと彼女の胸元に視線を投げる竜児
の気、というかオーラ、もしくは期待感、のようなものが大河にも伝染して、爽やかに春から
初夏へと移りゆく気候に似つかわしくない若干しけった空気を醸し出している。

 上目遣いに凶眼を眇めて、描かれた虎を睨みつけては赤くなる彼氏というのも何に興奮して
るのか傍から見たら分からないよね……と思いながら大河が話しかける。

「私、一日空いてるけどどっか行く用事ある?付き合うよ」
「おう……俺も空いてるが。とくに用事は……ねえな」
「じゃ、さ」

 お休みの日とはいえ、やっぱり高須家では昼間っからイイコトはできない。竜児の母、泰子
にもふたりが既にそういう関係であると知られてはいたが、在宅中に事に及べるかとなるとさ
すがにそれはなかった。羞恥心という以前にそんなことで気を使わせたくはない。
 かといって泰子が出勤する夜から深夜にかけてというのも、翌日へ残す影響を考えたらでき
れば避けたい。諸々の状況に適応したら自然と、昼間、大河の部屋で、となる。

 当然ながら、きちんとした性格の竜児もそういうつもりでいるからこそ朝っぱらから劣情を
隠さないわけで、あんまり焦らすの可哀想。私も焦らすの得意じゃないし。

「午前中に家事すませたらさ、私の部屋でえっちしよ?」

 ……したくなかったらしなくてもいいけどいっしょに居て?と大河は大きな鳶色の瞳をくり
くり光らせてねだる。お、おう。なんだか悪びれずに積極的だなと思いながらも、その誘いに
逆らうつもりもない竜児。盛ったらサカった、という分かりやすい構図。

 かくして、昼過ぎには飲み物やお菓子などを買いこみ、ふたりはいそいそと大河の部屋があ
るワンルームマンションへと向かったのであった。

580お姉ちゃんにまかせろ! ◆0/FKyHtS2M:2011/05/21(土) 03:19:29 ID:???

「で、来させちゃってからで悪いんだけど……ね?」
「ん?どうした?」
「実はさ、昨日……来ちゃったのよ。いま二日目」
「おう、そうか。じゃあ今日は無理だな」

 いいさ、気にすんな。どのみちいっしょに居るつもりだから。ベッドわきのラグに寄り添っ
て座り、優しい目をして笑いかける。

 気分を盛り上げられた後にだめを食らってこの切り替え、というか聞きわけのよさ。お年頃
男子としてはがっかりしているのもまた事実なのに、これが竜児という男。
 腹いたくねえ?さすっててやるぜ?などと気も遣う。
 大河としてはこんな反応が予想通りではあっても、思いやりを向けられるとじんわり嬉しく
なってきて、ふひ、と頬が緩んでしまう。
 けど。

「大丈夫、そんなに重くない。それに、無理ってこともないんじゃない?」
「なに言ってる。俺だってそういう事ちゃんと調べてあんだから」

 生理中は傷つきやすいし感染症にもかかり易い、と指折り数えて教え諭す竜児に、ここで少
しでも辛そうな顔を見せでもしたら、そのまんま抱きあげられてベッドに寝かされそうだった。
 それも悪くはないけど、今日考えているのは別のこと。

「うん。汚れちゃうだろうし。竜児はそういうの気にするかな?するよね?」
「そういうことじゃなくてだな」
「私の体調を気づかってくれてるのも分かってる。そうじゃなくてさ?」

 やれるえっちが他にもね?たっくさんあると思うのよ。出来ないことは出来ないでいいから、
それはそれとして竜児をきもちよくしてあげる。気が向いたら私にもして?っていうのがね?
本日のシェフのおすすめランチっていうわけよ。
 いかがっすか?と寄りかかった肩と頭を受け止められて、耳元にちゅっとされる。キス魔の
竜児はすっかり平日モードになってて、このまんま午後いっぱいを過ごしてもお互いになにも
不満はない。けれどね?

「なんでお前が一方的にサービスするんだ?いいよ別にこうしていれば」
「だって……だってさー」

 ちょっとネタっぽくお気軽尻軽に言ったのはマズかったのかな?竜児は人並みにエッチでは
あっても人一倍繊細だからね。
 ま、小細工はやめて正直に言ってみよ。
 りゅうじ私が引っ越してきてから、その、ひとりえっちって……してないでしょ?そのぐら
い分かるもん。ほんとは週一回じゃなくてもっとしたいよね?お年頃だもんね。

「だから私もおつとめ頑張るから……って言い方じゃ竜児も呑めないか。そうねえ?」
「そんなの結局は同じことだろ?俺はほんとに……」
「そう……お姉ちゃんの言うこと聞けない?」

 きょとん、としてから。うわその話まだ続いていたのかよ?と竜児が笑いだした。
 竜児は私より誕生日がひと月遅い。先に19歳になった私は竜児のお姉ちゃん、という口実
でこのところじゃれついているのがふたりのブーム。竜児も私に手を引っ張られるのは少なか
らず楽しいらしくて、お姉ちゃん振りをするとけっこう乗ってくれる。
 分かった分かった、と可笑しそうに提案を受け入れてくれた。

「その代わり、よーーっく見てるからな。具合悪そうだったら即、打ち切りな」
「だーから別に体調は悪くないって。ちゃんとふたりでイイコト探そう?」

 おう。と声が弾んでるのが分かる。そうでしょ?いろいろ考えてたでしょ竜児も。お休みの
日が来たらあんなことやこんなことしたいって。

「ま、お姉ちゃんにまかせろ!いかせまくってやるから」
「あほか。いつもよりスローペースでいいんだよ。つか下品だろっ」
「下品で悪いかこのエロ犬野郎!とっとと独りでシャワー浴びて来いっ」
「いっしょに……は、そか、無理だよな」

「私は今朝きっちり済ましておいたから抜かりなし。ちゃんとキレイにしておいで♪」

581お姉ちゃんにまかせろ! ◆0/FKyHtS2M:2011/05/21(土) 03:21:59 ID:???

 シャワーを済ました竜児が所謂パンイチで出てきて、お?と感嘆の声をあげる。大河が肩丸
出しのチューブトップとハーフパンツに着替えていたから。
 ぶかぶかTシャツから身体にぴったりの薄いニットに変わって、ヌーブラ盛りの胸が強調さ
れている。髪は星柄のシュシュで止められてツインテールに上げていた。
 どこがお姉ちゃんだ、むしろ妹っぽさ全開じゃねえの?と竜児は思ったが。

「姉ちゃん夏っぽいな。いい感じだな」
「あんたの好きそうな感じにしてみた。……好きそうにしたら燃えないかな?」
「そんなことはねえ。寒くないか?」
「ん。大丈夫」

 実際、午前中に差しこんでいた日射しで部屋は少し暑いくらいでもある。

 どうやって竜児をきもちよくさせようか?っていうのは普段からいろいろ考えてる。考えた
ことの大半は空回りだったり、竜児の気持ちより私がしたいだけだったりするのもよく知って
る。だから綿密に計画したりしない。竜児をよく見て、よく感じて寄り添いたい。

 竜児をベッドに座らせて髪を乾かしてあげる。ドライヤーをわざと逆手に持って風を自分た
ちの方に向ける不自然な体勢でね。だってこうするとぴったりくっ付いたりもできる。隙を盗
んでむちゅっとキスしたりして。どうかな?こういうの?
 暑苦しいなあとか苦笑してた竜児がなんか黙っちゃった。
 と思ったら、お?背中にすーっと手を回してきたよ?やった!?やる気でた?

「ちょっとー。じゃまでしょー?もう、ステイもできないの?」
「……だ、だってよ。お前が」
「な、なによ?私のせい?」
「その格好……年下っぽいし、盛ってるし……おれだって……」

「んん?そうなんだ?なんか来た?来ちゃったっ?」
「だぁーーっ、もう、なんだよ!?な、なんかお前らしくねえっ!」
「あ、あれ?……あれれ?」

 あら遺憾な。いきなり空回り?竜児カオ覆って屈みこんじゃったよ。恥ずかしかったのかな?

「ねー」
「……」
「ねーごめんー。恥ずかしかった?」
「……そうじゃねえ」

「もしかして、お姉ちゃん振りムカついてた?」
「ちげえって。……すごく、その。したくなって」
「してもいいよ?気持ち悪くなければだけど」
「それはぜってーやらない。でも、したいって思うと……な?」

「うんうん。男子のおしべと女子のめしべが引きあうんだよねー?アンビバレンツだ?」
「……」

 ていうか、この格好って『らしくない』かな?自分ではけっこー似合ってるかもって、いま
までの経緯からしてもあんたも好きそうだなって思ったんだけど。

「……その態度だよ。甘えるんでなく脅かすんでなく、まるで同い年の女みたいで」
「なに言ってんの?同い年の女だよ。休みの日にあんたとえっちしたい婚約までした彼女だよ」
「なんだか妙な抵抗感があんだよ」

 なんで腰が引けてんのかいまいちよく分からない。でもまあ、私の小細工なんて巧くいった
ためしはないし、嫌ではないだろうから、手を引っ張るだけよね。

「心配いらないよ竜児。ふつーに抱き合ってふつーにイイコトしよう。ね?」

582お姉ちゃんにまかせろ! ◆0/FKyHtS2M:2011/05/21(土) 03:23:53 ID:???
 竜児ががまんできなくなったら、お、おお、おふぇ、おふぇんす……は攻撃。あ、まあ攻撃
なのは確かだわ。おふぇ……、ああもう!ここにブサ鳥がいればちゃんと「ら!」って受けて
くれるだろうにっ!
 はぁっ?と大口開けて驚く竜児に向かって、パッカーっとこっちも大口開けてからすぼめて
みると。うわ!色白でもないくせに胸元から真っ赤になってくわ!そ、そんなに恥ずかしかっ
た?ああ、また引きこもっちゃったよ?

「下品……。てかそんなのやらせたくねえ」

 あら。また空回りしちゃった。これもヤなんだ?……ほんとに?

「……そか。ねえりゅーじぃ。私が下品だったりエッチだったりするのは、いや?」
「え?」
「そんなにいやならやめるけど。……せっかくのお休みだしね。楽しく過ごさないと」
「お……おい?そんなことは」

 やがて竜児は、言い難いことをちゃんと言葉にして私に告げる。お前が下品なのは置いとい
ても、エッチなのは……その、全然嫌いじゃねえ。いや……好きだ。しかも俺、けっこう好き
みたいだよ。つまり、驚いてるんだよ。
 うん。恥ずかしいのに言ってくれてありがとね。私もちゃんと目を見て答えた。

 じゃあ分かったから、と。座っていた竜児を押して仰向けに寝かせて。その上に寝転がって
みるとお腹に固いものが当たって、押しつぶさないようにちょっと腰を浮かせる。
 案ずるより生むが易しってことよ。慣れよ、慣れ。ほうら、嫌がんない。

「ふふふ。そか。いつも竜児が上になってる時はこんな気分なんだね?」
「わかるか?……ちょっと違うんじゃねえの?」
「ちょっとの違いなんかいいじゃない。私は今日初めて知ったよ?」

 ちゅ……ちゅ……ちゅ……と。竜児の広い胸を吸う。きもちいい?と聞くと、くすぐってえ
と答える。少しずり上がって、顔にも、口にも吸いつく。
 別に私がしたがるから合わせてくれてるんじゃないよね?身体だけじゃなく気持ちでもこう
したいって思ってくれてるよね。

 ぎゅう、と抱きしめられるから分かる。これは、したい、という男の子の意思。目の前にい
る、したい女の子を逃したくなくて、こうしてきつく抱きしめてると分かる。
 したい男の子は、竜児。したいと思われてる囚われた女の子は、わたし。この息苦しさはそ
の証拠。女の子もされたい、と思っているし、したい、とも思ってる。
 今はこの拘束から逃れるのなんて、いやなら身を引き離すのなんて、簡単。でも下から上に
場所を変えただけで見えなかったものが見えてくる驚き。それが私を離さない。
 いつも上から来るのは、彼がやっぱり男の子だから。どんなに優しくてもね。

 逃がさないよう抱きしめていた竜児の手がするっと差しこまれて背中を直に触られた。薄い
チューブトップを少しずつ、くるくるめくり上げられていってお腹とお腹がぺったり触れる。
私は半身を浮かせて脱がせやすく協力してあげる。

「ヌーブラは剥がしちゃうともう一回着けられないからね?いちおう警告」
「そうなのか?……じゃ大事にしねえとな」

「あはは♪大事ってなんだ。好物はとっといて後で食べる性格かー?」
「おう、俺はそうだよ?」

「私は逆だね。だから竜児のおかずは最後にはいっつも私にとられちゃうってわけ」
「なに言ってんだよ。食べ足りないお前のためにとっといてる優しい気持ち分かんねえ?」

 ふふ。知ってるよ。私の棘をぜんぶ受け止めてくれる男の子が好き。私を捕まえて蹂躙した
いと思う男の子も好き。どっちも竜児。竜児のぜんぶが好きだよ。

583お姉ちゃんにまかせろ! ◆0/FKyHtS2M:2011/05/21(土) 03:25:50 ID:???
 竜児の目をじっと見ると瞬きもせず見返される。竜児の視線が時折りつっと泳いで見るもの
は私の唇?また動いた。やっぱり見てる。じゃあ、あげるね。
 くちゅ……ぴちゃ……ごくって、いろんな水の音が聞こえてくるこんなキスはお休みの日だ
けの特別なコト。こればかりは上に乗ったからといってそう変わるものでもない。それでもす
ぐに力が抜けて行っちゃうような感じが、今日はずいぶんと薄い。

 竜児の手がまた私の背中をぎゅうと捕まえて、けどいろんなとこ触りたいらしくて落ち着か
なく動きまわる。腕を支えにして、ぴったり付けていた半身を浮かせてあげると、出来た隙間
にすぐ滑り込んできた。寄せてあるから、今日はちょっとだけ揉める。
 掌がすっごく熱くて、それが胸に当てられて焼かれるような錯覚さえしてくる。むにむに揉
まれるのって、実は今までになかった。なんかいい。しびれる感じ。
 でもエッチな手は同じところに留まっていてはくれない。パンツ越しにお尻をやわやわ揉ま
れたりもして。ん……じわじわお腹の中に熱い塊が生まれてきてきもちいい。
 う……ん……今日は、頑張らないと。

 生理中は、いつもこうだ。普段の倍は敏感になってしまって、そのかわりいつまでもじわじ
わ燃える。いつものように急に跳ね上がったりしないで、くすぐったく、もどかしく、いつま
でもじわじわ暖かい。
 ……けど、登りつめる感じだけは、遠い。
 竜児の手は頬にも当てられ、ツインテの髪を指に絡めて遊んだりもする。したい、だけじゃ
ない竜児の気持ちも、だからこうして感じとれる。

 ようやく唇を離して、はふ、と身体を預ける。落ち着かなかった竜児の手がまた背中に戻っ
てきて、でも力を込めはしない。いたわるように撫でてくれる。いい。これすごくいい。私も
シーツとの間に腕を差し入れて竜児の背中を弄ってみる。ちょっと休憩。

 でもこれじゃいつもとほとんど同じなんだよ。位置が変わっただけ。私を登りつめさせて、
それを見て感じた竜児がいくっていう。
 今日は違うことをしてみたい。
 目の前にある竜児の乳首にちゅっと吸いついてみる。男の子だってここはきもちいい。ゆっ
くりと、優しく、唇と舌と歯を使って刺激する。いつもはあんたが私にしてくれることを感じ
てみてね。


 きもちいいよね?がまんしてるね?何度も腕に力がこもるから分かるよ。お腹に当たってる
固いものがときどき跳ねてるし、もうしたくてしたくてたまんないんだよね?それが分かっち
ゃうと恥ずかしいから、そんなに腰をひねって逃がそうともするんだよね?
 なんて、いちいち問い詰めて遊ぼうなんてつもりまではないから。最後まであんたの死にざ
まを看取ってあげるから。

「別にあんたをいじめてるんじゃないからね」
「おう……。なんか俺も妙な気分だ。されるがままっていうの」
「お姉ちゃんに……まかせろ!大丈夫!……その、くちではしないから、さ」

 お、おう……。と自分の前髪をぐりぐり弄って恥ずかしそうな竜児を見て、かわいい、と思
っちゃった。いちど思ったらそれはわぁっと広がってきて、なんだろう?この気持ち。もう、
なんでもしてあげたい、って思う。
 少しずつずり下がりながら、竜児のお腹にも同じように丁寧にキスをする。薄い皮膚の下に
ある腹筋がときどきぴくっと動くのはきもちいいから?手が届かなくなるのが寂しいのか、半
身を起き上がらせて私の頭を抱え込んでくる。
 ……のはいいんだけど。
 け、けっこう背中がきついっ。あんまり我慢してると攣っちゃうかも?りゅうじ両手後ろへ
ついて?こうか?腰浮かせて?こ、こうか?
 きりきり指示して、がばぁっと。トランクス脱がした。


「……」
「……」
「……す、すごいね?」
「すごいって……見たことも触ったこともあんだろ?」
「明るいとこでじっくり見たことないもん」

584お姉ちゃんにまかせろ! ◆0/FKyHtS2M:2011/05/21(土) 03:28:11 ID:???
 こんなおっきなの、いつもよく入るもんだわ。そういうふうに出来ているんだから不思議は
ないけどさ。それよりも驚いたのは水の量。

「がまん汁……っていうの?こんなにたくさん出るものだったの?」
「まあ……な。知らなかったか?知らねえか。でも今日はすごく多いな」

 『潤滑の役割を果たす』って知識くらいはあるけど。そんなのは女の子の方が受け持ってる
もので、男の子の方は申し訳程度って思ってた。
 それがどうだろ?頭はぬらぬら光って、半ばにも回ってて、先からは続けて水滴が零れ落ち
てる。脱がしたばかりでまだ手に持ってた竜児のトランクスにも、柄物で気づかなかったけど
いっぱい滲みて光ってた。
 思わず匂いをかいじゃったり。

「おいおい、下品だろそりゃ?ちゃんと替えも持ってきてるからその辺置いとけ」
「いいじゃないよ別に。あんただって同じことしたことあるじゃん?」
「え?……ああ。そうか。そういやしたな?……おうぁっ!」

 握ってみた。
 ぬるっという感触は女の子のと変わんない。ちょっと濃いかな?あんまり話し込んで竜児の
やる気が減るのはもったいないし、少しずつでもね?進めないと。
 握った手を開いてみると糸を引いてる。手の中で竜児が魚みたいにびくんって跳ねて、新た
に水滴の球が絞り出されてる。それを指で拭いとって、塗りつけて、ぬるんって滑るのをまた
握って擦ってみた。
 どう?こうしてるときもちいい?竜児の顔を見上げると。

「も、もうちょっとその、優しくしねえ?」
「あっ痛かった?ごめん」
「い、いや……痛いんじゃねえよ。指……きもち良すぎるんだよ」
「わかった。こんな感じ?」
「おう、それそれ」

 擦るのは刺激が強すぎるらしいから、力を込めずに握って開いてお遊戯みたい。それでもき
もちいいらしく、竜児の息が荒くなってくる。肩で息をし始めて、もうどこでもいいから私の
身体に触りたいって感じで手を伸ばしてきてる。
 そういうの分かると、私の方も変になってくる。触られてるわけでもないのに、胸に貼り付
けたヌーブラがもどかしく感じられて。

 何度も見たことある、あの竜児の表情は、たしかもうそろそろマジっていう気分のとき。
 かわいい……かわいいっ、もうっ。もっとこの時間を長引かせたいと思い、この気持ちのま
ま弾けさせてほしいとも思う。
 だから握るのをやめて、竜児の腰骨と内またにキスをした。吸いついたり、軽く歯を立てて
みたりする。固くておっきいのを頬に当てながら、竜児に与える刺激を分散する。
 これならきもちいいのが長く続くよね?
 
 はぁはぁ私の息も荒くなってきていたことに、でも、気がついてしまう。
 本当はさっきから熱い塊がお腹を下りていってすごくもどかしい。専用ショーツに夜用を着
けてガードしてるから漏れ出したりはしないだろうけど、私の方だってきゅっと締めてみると
するんするん滑る感じがしてる。こんなのびっくり。きっと大変なことになってる。

 いま、頬にくっ付いてびくびくいってるこれで貫かれてしまいたい。息が止まるほど抱きし
められて、思い切り体重をかけられながらいっしょにいってみたい。
 ここでおねだりしたら、と何度も浮かんできてしまう。きっと竜児は。
 でもそれじゃいつもと変わらない。いつもならそれで良くても、今日生理中なのにえっちに
誘ったのは竜児に楽しんでもらうためだから。私がエッチなお姉ちゃんでなくちゃいけない。

 行きたい、留まりたいの綱引きにちょっとぼうっとしていたかも。
 不意に、頬に竜児の水が垂れてきて、思わずぺろんと舐め取る。と同時にびくんっと跳ねる
竜児の肉と、微かな塩気を感じて。
 ……そうしたら夢中で咥えこんでいた。焦らすもなにもなかった。皮を剥いたバナナにかぶ
りつくように根元を握って、ぱくん、と。
 えっ?と驚いたような声に我に帰り、握ったまま慌てて口を離す。ご……。

585お姉ちゃんにまかせろ! ◆0/FKyHtS2M:2011/05/21(土) 03:30:24 ID:???
「ごごごごごごめんっ。くちでしないって言ったのに」
「お、おう……そんなことは」
「その……ちょっと夢中になっちゃってて」
「顔、真っ赤だな。お前も……したいんだろ?」
「え?あ、まあ。ちょっとだけ。ちょっとだけだから」
「だったら……俺も」
「だめ」
「え?」
「……生理中のあそこなんて、竜児に見られるの、本当は絶対にいや」

 俯いて、ひと芝居打った。竜の目に見抜かれちゃった以上は通じるかどうか分からないけど、
女にだって意地やこだわりはあるよ。竜児がいやなことなんかさせない。

「……そうだよな。じゃあ、くちでしてくれるか?」
「え?それはいいの?」
「俺だってもうたまんねえんだよ。そのかわり、あとで俺にもまかせろ」
「うん。わかった。商談成立」
「商談じゃねえよ。せっかく好きなやつとえっちしてんだからさ」

 相互主義(キリッ)ってやつだよ。と笑う。

「あは、あ、そうだね。じゃあちょっと起き上がってよ」

 竜児をベッドに浅く腰掛けさせて、私は下に降りて膝立ち。これで互いに手も届く。もうち
ょっと膝開いてね。こうか?そうそう、その間にわたしが入り込むから。

 で、こうなると困った。いまさらだけどくちでするってどうやれば?そりゃ思い切り妄想し
たことは何度もあるけど具体的なイメージが思い浮かばないとこは早送りしてたから。
 やった事ないし、やり方を教えてもらった事もない。竜児に訊いても詳しくは知らないって
言う。……まあ、もし知ってたらいろんな意味でお茶の間ドッカンだし訊くまでもなかった。

 じゃあ、と提案。いろいろやってみるから、きもちよくなかったら1回、よかったら2回、
痛かったら連打、頭か肩を叩いて知らせろ。ということにして始めてみた。習うより慣れろっ
て言うし、没頭していれば私の方の熱も増えないだろう。

 しばらく中断していたからか、ちょっと柔らかくなった竜児をぱくん。歯を立てちゃ痛いよ
ね。舌と上あごで挟んで押したり緩めたりしてみる。さっきのお遊戯と同じはずで、ぽんぽん
と2回。くちの中でむくっと膨れてくるのが分かるから、叩かれるまでもない。
 次は舌を前後に動かして擦ってみた。ぽんぽんっ、ぽんぽんっ、と2回を2連続。ん?すご
くいいってこと?上目遣いに見たら、うんうんと頷いてた。そのまんま固定して頭を使って引
っ張ったり押したりしてみると、ぽんと1回。これは良くないらしい。念のため歯を立てて見
たらやっぱり連打。

「実際にはそんな痛いわけじゃねえけど。……ちょっと怖いんだよ」
「ん。わらっら」
「あ、喋るな喋るな。ひっ」

 ひっ、とか言ってるよ。少し可笑しくなりながら、きもちよいと判定された動きを組み合わ
せてしばし専念。ときどき竜児を見上げるとさっきのような表情になってきて、やっぱり切な
さが伝染してきてしまう。

 竜児が私の肩や背中に手を置いて、ときどき力を込めてつかむのは、たぶんきもちいいって
知らせてくれてるんだろう。私も竜児の腿を浮き輪みたいにして、腰に腕を回して抱きついた。
竜児のお尻をわしづかみにして、私にも訪れる波を伝えてしまっている。
 息継ぎをかねてソフトクリームみたいに舐めてみたら、またぽんぽんっ、ぽんぽんっ、と2
回を2連続で叩かれる。あ、こういうのもいいんだ?なんか分かってきた。うまく緩急をつけ
るのがコツなのね。

 よーしわかってきた。ちゅるっ。あーん。ぱくっ。挟みこんで前後に……。竜児の手から知
らされるきもちいい信号をベースに。乗せて私のきもちいいもメロディにして返してる。
 本当は返しちゃいけないのかもしれなかった。私がいい感じになるからあんたも感じるって
いうんじゃないなにかを欲しいのなら。
 でも、なっちゃった。
 そうならないように、注意深くしてきたのに、そうなっちゃった。だって。
 欲しいんだもの!力いっぱい竜児の腰を抱きしめる。

586お姉ちゃんにまかせろ! ◆0/FKyHtS2M:2011/05/21(土) 03:32:33 ID:???
 ごんっ!痛っ!
 竜児が背中を丸めて真上から頭突きを落としてきた。かなり痛いっ。どうしたっ?いったい
何があった?抱え込まれたうしろ頭をせわしなく撫でられてると声が降ってくる。

「たいがっ、や、やばいっ!」

 おおっ、そうか!まかせろ!お姉ちゃんに。元手乗りタイガーは伊達じゃないっ!もちろん
このままアクシズの落着を受け止めてやるわよっ。もういちど腰に抱きついて、尻をわしっと
つかんで、咥えた竜児が今までになく膨れ上がって来るのを舌で擦る。
 すごい、こんなにおっきく?
 びくんっ!と大きく竜児の腰が痙攣した。後から、何度も。

 私の頭に額を付けて、はぁはぁ大きく息をしてる竜児を感じる。初めて感じる言い表しよう
のない……なんだろ?達成感?そういうのといっしょに湧いてくる愛おしさも、また。
 抱きかかえた竜児の痙攣の波が去って行くのを感じて、それからだんだんと小さくなるくち
の中の竜児を吸って、竜児の遺伝子を一滴も残さないように舐め取って。ごくんと飲みほした。

 喉の鳴る音が聞こえたのか、ば、ばかっと竜児が言う。飲むなんてお前!と慌ててるみたい
だった。何で慌てているのか分かんない。飲まないのなら、どうするの?他に?と思う一方で
みるみる私の顔が歪んでいく。な、なにしろっ。

「まっっずぅ〜〜〜いっ!不味い不味い不味い生臭いっ!うっわぁ〜〜!」
「ほ、ほらみろ。早く吐いてこいっ」
「は、はあっ?何言ってんのあんた。もったいないじゃんっ」
「え?」
「でもこれは酷い。酷過ぎる。うがいだけはしてくるっ」

 洗面のあるバスルームへだっしゅ!ガラガラガラガラ……。


「はあ、落ち着いた。……なにさ。どん引き?」
「ちょっと引いた」
「なんでよ?あんたから出たものじゃない?汚いものでも身体に毒なものでもないでしょう?」
「だってよ。飲むものでもねえだろ?」
「そうだけど。そうだけどさ。……味も最悪だし」
「じゃあ何で?」
「私にとっては……大事なものだもん。吐きだして棄てるような汚物じゃないよっ」
「……あ」
「いつかはあれが……って、どうしても思っちゃうもんっ」

 ちょっと涙目になってた。変なことしたのは分かってる。竜児が引いちゃうのも当たり前と
は思う。男の子にとっては重くてウザいだけのことだろう。でも。でも、分かってもらえなく
ても竜児には言わなきゃならないこと。

「あんたには棄てるものでしかなくて、キモいだろうけど」
「……それは。そうだよ」

 私はちょっとずつだけど、いつも棄ててるのは寂しかったんだ。いつかあれがっていうのと、
あれが身体の中に入らなかったっていうのとあって。

「だから、飲むんなら、って。思っちゃったんだよ」

 竜児が突っ立ったままの私の手を引っ張ってベッドに座らせた。悪かったな、と言いながら
ハグしてくれた。さっきまでの抱きしめと全然違う手の感触が心地いい。でも私が泣いてるか
ら受け入れてくれたとしても、何の意味もないこと。

「気を使わなくていい。わがままなのも分かってる」
「俺から出たものだし、汚くも毒でもねえ。それはそうだ。でも……分かんねえ」

 いまお腹の中だよ。消化されちゃうから。だから本当にはぜんっぜん価値がない。分かって
るけどそれでもね、初めて私の身体に入ったっていうのが嬉しいことなんだ。
 それが嬉しいっていうのを……本当に分かるのは難しいかもしれねえ。

587お姉ちゃんにまかせろ! ◆0/FKyHtS2M:2011/05/21(土) 03:34:55 ID:???
「きっとね、こういうのをわだかまりなく分かった頃にさ……私たちもさ」
「ああ、そうか。そういうふうに思うのか。お前は俺より先にそこ越えたんだ?」

「次飲むかっていったら私だってね、微妙ではあるよ……」
「ああ。分かるようになる。そう思ってるお前に引くのもやめる。そこは謝る」
「うん、わかった」
「ちょっと時間くれ」

 エッチな事しない関係のときだって分かりあうのは大変だったけど、こうなってもまだまだ
あるもんだね?と、向けてみた。
 そうだな、でも全部お前と越えていく。と、答えてくれた。


 抱きしめられてるうちに、もっと竜児にくっ付きたい気持ちになっていく。
 間が空いて、というよりもごっくんでエッチな気分がパァっと飛んでったけれど、んしょ、
っと竜児の腿をまたいで向き合って座ってみた。少し悲しかった反動で、竜児に甘えたい気持
ちばかりが生まれてくる。今日はもうこうしていよう。

 甘かった。
 ちゅ……ちゅ……と軽いキスを交わしただけなのに。なんかもう切なくてたまらなくなって
いる。そんなことするつもりなんてないのに、竜児に胸を合わせてすり付けてしまう。さっき
にも増してもどかしい気分が帰って来てしまった。
 いちど入った火は身体を引き離さなくちゃ消えてくれない。でも離れるのいや。さっき竜児
の火を消しちゃったのに、もう竜児にどうにかしてもらうしかない。ああもうっなんだ?自分
の身体なのに。

「どした?休憩済んだなら約束どおりきもちよくしてやるぞ」

 気配を覚った言葉が嬉しくて、返事の代わりに、ぎゅーーっと抱きついてやった。今度はし
たい女の子が、わたし。したいと思われてる男の子が、竜児。

 首筋から鎖骨、胸へと竜児の唇が這うと、いつもと段違いに感じる。いつもならウォーミン
グアップみたいな、火を起こすための軽いちゅっちゅなのに。うっ……、んっ……、といちい
ち声までもれてしまうの、恥ずかしい。思わず手で口を塞いだ。

「……聞かせろよ、大河」
「んっ……あんたっ……面白がってるっ?」

「面白いに決まってる。最初からこんなになるなんてな」
「さ、最初じゃ……ない……もんっ……ううっ」

 続きだもん、ずっとだもん。そう言おうとする前に、腕を挙げていたから、脇をちゅうっと
吸われた。いつもならくすぐったいだけでここを遊ばれるのは相当あとになってから。それな
のに肩ぜんたいに電流が走ったような衝撃にぶるぶる震えも起きてしまう。
 耳元を吸われ耳朶を噛まれ、そのたびに大きく息を呑んで、気配を竜児に読まれてしまって、
今さらながらお姉ちゃんの面目も丸つぶれ。でもいい。いい。いいの、とっても。

 そろそろ剥がしてもいいかーと、のんびり竜児が訊く。さっきから手の感触を隔てていたヌ
ーブラのこと。……うん。もう直に触ってほしい。ま、剥がしちゃうといつもの控えめなもの
でございますが。と思いながらも大きく頷く。
 ホックを外されて左右一つずつゆっくり剥がされる。剥ぐときの刺激でさえびりびりと響い
てきてきもちいい。ちゃんと粘着面を上にしてローテーブルに置いてくれる竜児は、こんなと
きにもきちんとしてる。

 ちゅるっと竜児がくちに乳首を含んだら、あっ?あっあっ?えっ?なにこれ。背中が攣った
ように伸びて後ろへ反り返ってしまった。
 息ができない?伸びないと、だって。なにかが弾ける。慌てたように竜児が支えてくれる。
 まさかいった?こんなんで?と驚いた竜児が訊くので、かろうじてかぶりを振る。いっては
いない……はず。こんな感じじゃなかった。何が起きたのか私にも分からない。

「わ……分かんないよ。なんか違うと思うけど……分かんない」

 じゃあ、と続けて竜児は胸にこだわる。あまりびくんびくん私が跳ねるので少しずつ柔らか
なタッチに変えては見ている。それで、ちょうどきもちいい当たりをつけてくれた。

588お姉ちゃんにまかせろ! ◆0/FKyHtS2M:2011/05/21(土) 03:37:08 ID:???
「上半身だけいってる……のかな?分かんないけど」
「へえ、そんなこともあるんだ?」

 ほんとに分かんない。衝撃、というより波紋がわっと広がるんだけどお腹まで届いてはいな
かった。程度の差はあってもいつもは直通回線?が通じていたのに今は途中で切れている。

「竜児ぃ……わたし、もう。……そのー、あのー」
「おう。そろそろなんだな?」

 私を抱え上げて身体を入れ替え、ベッドに寝かしてくれる。竜児は添い寝して、直に触られ
るのも嫌だろうし、やっぱ衛生面がなと呟いたりしてる。結局、ハーフパンツ越しに掌を置い
て揉んでみる事にしたらしい。私も片手が入るだけ膝を開いた。

 うあぁっ、って感じだった。掌が置かれて重みを感じただけで。思わず跳ね起きて竜児に抱
きついてしまったくらい、気づかなかったけど、じんじんした切なさがたまりまくっていた。
 すごいことになってるなと驚かれてもしょうがない。揉み始めようとしたらいきなりずるっ
と滑っちゃったんだから。まさに集中豪雨で地滑り寸前の丘、という感じ。

「これって、……本気汁?っていうんだよな?」
「い……いちいち口に出さないでいいから。それよりさ」

 ぜってー俺のより多いだろと恥ずかしいこと言われて返す言葉もないが無視する。漏れは大
丈夫と思うけど、滑ってずれてしまうとちょっとした惨事になるかもしれないからずらさない
ように頼んだ。
 分かった、まかせろと竜児は前向き。


 はぁっ、はぁっ。きもちいいか?うんっ……うんっ!可愛いな、大河。はぁっ、あ?……こ、
言葉責めってやつっ?……なんでだよ?言葉責めってのは、そうだな?『大河、お前ってやつ
はなんていやらしいんだ』とかそういうんだろ?

「そ、そうよ。……私いやらしいよ。エッチなことよく考えてるよ……はぁっ」
「ずいぶん素直に認めるんだな?」
「だってさ……私をこんなにしたのって……竜児だよ。あんたしか知らないもん」
「おま……まあ、それはそうか」

 擦るとずれちゃうなら、じゃあ、押すか叩くしかない。キスされながら探されて、ていうか
直に触ったこともあるんだから探し当てるのは簡単なはず。見つけたら指で叩いて押して、あ
とは私の反応を楽しく見ながら竜児が遊んでる。

「……竜児といろんなえっちするのよく妄想するよ。夢でもみるよ。あっ」
「ごめん、きつかったか?」
「大丈夫……あっ」
「俺も……そうだよ。大河とのことよく妄想してるよ」
「えっ?かわいい、りゅうじ。あっ!あっ!」
「もうすぐか?すぐだな?」

 竜児の首にかじりついて、もうすぐ来る。
 腕枕してくれて、敏感なところを探して指いっぽんで刺激されて、身体をぴったり付けて、
耳元でエッチな事ささやいてくれて。
 もうさっきから何度か波が来てはいた。お腹がぴくっと引き攣れたり、ざわっと鳥肌が立っ
たり。巧く乗れるきっかけがあればすぐにでも来てしまいそうだった。
 竜児がパンツの上から当てた指をくりくりする。乳首を含んで、舌でとんとん叩く。それで
また弾かれたように背中が伸びちゃったけど、やっぱりお腹と連動しなかった。いろいろ探し
ながらしてくれてるけど、やっぱり生理中の私はいきにくい。

「大河、俺さ。独りでいるとお前とのえっちをいつも思い出してる」

 またささやき戦術?……でも?これ効く!?ええっ?触られるのより言葉が効くの!?

「さすがにおかずにするまではなかったけどさ、今度してみようかって思うんだよ」

 そ、そんなこと?面と向かって彼女にお前をおかずにするぜ発言てあんた……あ、ぶるっと
来た。ぞわっと来た。感じるのはやっぱり脳、ってこと?……なん……だね?


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板