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仮投下用スレ
1
:
◆qvpO8h8YTg
:2022/08/13(土) 09:40:48 ID:???
本スレ投下前で、仮投下を行われたい場合、こちらに投下ください。
42
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/10(土) 23:14:23 ID:???
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
さぁ 立ち上がれよ 従者にして魔王よ
世界砕き 歌姫の愛で滅せよ
さぁ 現実を哀で包め 己が望むまま蹂躙を
虚構を巡り 崩界を奏
彼方現実に終焉を…永遠に
43
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/10(土) 23:15:01 ID:???
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
青空が、割れている。
快晴の晴天に、黒い断裂。
容姿を引き裂いたような、そんな乱雑さ。
空気と空気が衝突し、大轟音と共に空間の断裂は増えていく。
遥か天空で、黒の魔王と、白の少女が縦横無尽に飛び回る。
原因はたった1つ。二人の覚醒者の衝突が引き起こしたものだ。
『覚醒者』といえど、目覚めた理由や素質からその強さは大きく変動する。
少なくとも、ベルベットより生じた魔王ベルセリアという存在は大当たりだった。
喰魔と言う、業魔の血肉を喰らいその力を手に入れる特性。それをデータを食しそれを糧とするという形で再現された、蒐集の器としての権能。
―――最高傑作、捕食の頂点を前に、白翼の彼女は互角に戦えていた。
空中機雷と言うべき、上空の展開された黒い魔力の塊。
それが歯車の如く稼働しながら、縦横無尽に動いている。
白翼を羽ばたかせ、音速を超えたスピードで隙間を縫い、核の如き爆音とソニックブームを発生させて、通過するたびに機雷は誘爆する。
爆煙に紛れながら接近、接近。所謂掌底のような掌の動きを魔王にぶつけようとする。
魔王はすかさず業魔腕でガード。その激突だけで再び爆音とソニックブームが発生。鍔迫り合い、再び離れる。
放たれる魔王の絨毯爆撃。地上を隙間なく埋め尽くす漆黒の魔力の槍。その暴風雨。
ちょうど彼女たちが飛び交っている真下に位置する大地に流れ弾が降り注ぐ。
全てを消し飛ばしかねない魔星の雨嵐は次々と大地を穿ち破壊していく。
空中戦は止まず、少女たちは飛び交う。
肉薄、衝突、激突。断裂。再び青空に断裂が入る。
次に魔王が用意したのは球状の砲台ともいうべき複数の魔力の塊。
そこから放出される光条、砲台一つに付き1024。視界を埋め尽くす殺意の黒雷があかりに襲いかかる。
「はぁぁっ!!!」
宣誓。魔力の粒子を手に集め、握りしめて顕現させた紅葉色の扇。それを一振り。
吹き荒び現れた翠緑の旋風が鎌鼬となって光条を破断し、砲台を粉砕する。
既に魔王は次の攻撃の準備。二階建てビル程の大きさの魔力槍を顕現、目標に向けて投擲。
迫る脅威を前に、あかりは再び粒子を構築。――二対の翠緑色の魔力の鎖となり、魔槍を縛り上げ、そのまま遠心力で回って投げ返す。
投げ返された魔槍を軽々と回避。背後に見える灯台に激突し粉砕。白の形は崩れ去る。
回避動作と同時に魔王が黒翼より羽の弾丸――フェザーショットを放出。
対する間宮あかりも白のフェザーショットを発射。白と黒が相殺し、再び爆煙が天空の戦場を包み込む。
何度目かの激突、肉薄、鍔迫り合い。そして再び空間が裂ける。
爆煙を抜け、刃物の如き魔王の蹴りが間宮あかりに刺さる。
刺さるというより辛うじて当てたと言う形、公園跡地へと吹き飛ばされ、叩き込まれるもダメージは皆無。
即座にあかりが号内より空いた天井を見上げれば、既に巨大な魔光を掲げた魔王の姿。
「戴冠災器(カラミティレガリア)・侵喰流星(スターダストフォール)」
「……っ!」
公園跡地を覆い尽くす、破壊し穢れを以て腐らせる腐食の流星雨。そこにいる全てを腐らせ溶かす。
だが、それを上空へ弾き飛ばすように間宮あかりが翠緑の障壁を展開。腐りつつある鉄の棒を蹴り、再び上空へ。
障壁を纏い、穢れの雨を凌ぎながら、魔王へと接近する。
44
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/10(土) 23:15:34 ID:???
――カタリナ・クラエスが間宮あかりの情報を保管を行うために使用した紅葉色の扇。
あれは本来、自称幻想郷最速の文屋こと射命丸文が保有する扇だ。
本体情報に遥かに劣るもののの、少なからず射命丸文の情報が含まれている。
それもまた、間宮あかりの『覚醒』に少なからず良い影響を与えた。一つは風の力。そしてもう一つは――
「……捉えた!」
「―――!!」
――速度。風を操る程度の能力の補助を受けた、風による超音速移動だ。
実を言えば間宮あかりに施された強化は魔王には到底及ばない。しかし少なくとも、魔王に匹敵か、それ以上の速度を以て対応できる。
そして、直線距離に対する移動なら、魔王の動体視力であろうと対応には窮する。それが大技発動の隙間を縫った攻撃であるならば尚の事。
構えは天鷹。使う飛び道具は風の魔力。弓を引き絞るように至近距離に肉薄し――放つ!!
見えない塊に衝突して、遥か彼方に魔王が吹き飛ばされる。
だが、その程度のダメージでは魔王はそう安々と斃れない。空中にて姿勢を転換し、再び安定飛行を保つ。
次に行ったのは力場の展開、重力の檻。業魔腕を目の前に翳せば、間宮あかりが沈んでゆく。
「……ッ!!」
押しつぶされるような、肉体が拉げるような感覚。防壁を貼ろうが関係ない。そのまま押し潰してやるという魔王の殺意。一瞬でも気を抜けば押し花の如く真っ平らにされてしまう。
「……はぁぁぁっ!!!!」
―――だからどうした!痛みは無視し集中。体中から上がる悲鳴なんて気にしてる場合じゃない。
風の粒子を集わせて、顕現させるは鉄塊を思わせる巨大な大剣。手に取り、回る。
重力の圧を無視した影響で、体中から血が吹き出る。歯を食いしばり耐え、遠心力を増しながら鉄塊は赤熱、燃え盛る炎を纏う。
魔王は既に次の攻撃に以降。掌を上空に、それを中心に巨大な龍の形をした魔力を形成
ゆっくり手を振り下ろせば、それはあかりに向けて急速に飛んでゆく。
矮小な少女を喰い付くさんとと巨大な顎を開けてその牙で噛み砕こうとする。
「――食いちぎれぇっ!!」
「「いっけぇぇぇっっ!!」」
一瞬だけ、間宮あかりの声に誰かの声が重なったように聞こえた。だが、それは今関係ない。
飲み込まれた直前、あかりが振り下ろした炎の一撃が、黒き穢れの龍を焼き尽くし、その炎は龍をも貫通し斬撃として魔王に迫る。
間宮あかりに取り込まれたシアリーズの情報。それは即ち間宮あかりに炎の聖隷力の行使を可能とした。
風と炎、異なる世界の異なる属性をも、行使できる。託されたが故に行使できる、間宮あかりの権能とも言うべき繋がる力のその一端だ。
「なぁッ……!?」
驚愕と共に、これには回避行動が間に合わず、右翼が切り裂かれる。
バランスを失いそのまま地上に急速に落下、地上に墜落しその周辺を破壊。
「――――ッッッ!」
翼の方は即時再生するも、それを狙いすましたかのように翠緑の鎖が魔王の身体を縛る。
その間にも間宮あかりは突進するかのように最接近。
「私を、舐めるなぁぁぁぁぁっ!!!!」
乱雑に業魔腕を振るい、鎖を無理やり破壊。そのまま穢れをバーストし、そのまま自分も吹き飛ばされる。
飛び散る穢れをあかりは風の障壁で吹き飛ばし、魔王が吹き飛んだ方向へ翔ぶ。
吹き飛んだ先はスポーツジムの上空。既に魔王はさらなる策を展開していた。
「黄金の夜を明けよ(ゴールデン・ドーン)!!――無限(アイン・ソフ)!!」
詠唱を唱え、魔王の身体を穢れが纏う。纏った穢れは膨張、肥大化。
纏い現れるは新たなる躯体、全長15メートルの穢れの鎧によって構築された、怪物のような何か。
悪魔バフォメットを彷彿とさせる巨大な二本の角、その間に魔王ベルセリアの上半身が取り込まれたかのように張り付いている。
背中には一層巨大な黒翼、黒き巨躯にお似合いな穢れし魂沌のバケモノがこの虚構の舞台に降臨する。
『破神顕象――トゥアサ・デー・ダナン!!!!!!!』
大口が咆哮を上げ、世界を震わせる。
歌姫の秩序に歯向かう愚者を文字通り噛み砕だかんと、蒐集の破神が間宮あかりに牙をむく。
45
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/10(土) 23:16:07 ID:???
「………!」
不味い、と本能的に察知。
既に破神は翼を羽ばたかせ動いている。そして、大口より垣間見える赤黒の明光。
それを避けようと死角へと距離を詰めようとしたその時、背後より急速に迫る気配。
「……えっ!? ――がはぁっ!?」
文字通り横槍を入れられたように切り裂かれ、吹き飛ばされる。
気配の正体は赤い輪郭で構築された魔王ベルセリアの人間態。
『虚獄神器・第五階位(セフィロトレガリア・ゲプラー)。夢幻泡影(カマエル)』。破神形態に気取られるであろうあかりの油断を付き、先んじて数人ほど生成していた。
そして、吹き飛ばされた軌道を予測するように―――大口より放たれた赤黒の光条、破滅の光芒が間宮あかりを呑み込んだ。
「―――――ッッッ!!」
直撃0.1秒前にあかりは障壁を展開。だがものの数秒で蒸発し、焼き尽くす痛みがあかりを襲い、再墜落。
墜落先のノルミン島をも光芒は襲いかかり、その大地を破壊し、粉微塵にしていく。
光が止めば、ノルミン島があった場所は水面に浮かぶ岩山を残し消滅する。
「……や、ああああああああああっっ!!」
水面より飛び出したのは、光芒の傷も痛みも堪え、破神の巨躯へ突撃するあかり。頭から血を流し、ボロボロの身体に鞭打ちながら。風の魔力を超至近距離で叩き込もうとする。
だが、身体の大きさはそのまま強固な耐久力にも比例する。間宮あかりの攻撃は破神にとっては蚊に刺された程度でしかない。
だが、ただの蚊だろうと小蝿だとうと、煩わしいことには変わりはない。ただ腕を振るう、それだけで間宮あかりは大きく吹き飛ぶ。
だが、叩きつけられただけなら、先程のビームやら重力の檻やらよりは痛くはない。すぐに空中で姿勢を整えて、次の大技に備えると同時にあの破神の防御を突破できる攻撃を繰り出さなければならない。
『※※※※※※※※※※※――――――ッッッッッ!!!!』
破神の咆哮が再び鳴り響く。再びその大きな躯体が飛び立ち、破神の瞳がキランと音を響かせ妖しく輝く。
あかりが天空を見れば、細長い穢れの鉄塊が降り注ぐ。
魔王がシグレ・ランゲツ戦で使用した『戴冠災器(カラミティレガリア)・歌姫神杖(ロッズ・フロム・ゴッド)』。だが、人間態で放ったそれよりも数も規模も段違い。
破神の鉄槌が、間宮あかりを潰さんと地上へと降り注ぐ。落下箇所の大地及びその直線上にあった魔法学園は既に崩壊し影も形もない。
避ける、避ける、避ける。穢れが肌に擦れ侵食されようと、侵食箇所を即切除することで侵食を阻止。
「くぅぅぅぅ―――!?」
だが、侵食部位を切り離しても侵食された事自体の痛みは、体中の血液が全て毒へと変貌するに等しい地獄の苦しみ。いつの間にか痛覚が鈍っていた間宮あかりでも、その痛みは耐えるには少しばかりきつい代物だ。
「で、もぉ――――っ!!」
風の粒子を大剣に構築し、手に取る。刀というよりもある意味薙刀に近い形状。刃に雷光を纏わせ、再び突撃。
「やああああああっっっっ!!!」
激突、衝突、衝撃波、爆音、空間の破断。―――刃が砕ける音が、虚しく響き渡る。
『―――』
「これでも、まだっ……!」
足りない、ただ破神の躯体を少し後退させただけ。
巨躯に張り付いた魔王の瞳は無感情に間宮あかりを見下ろす。
破神の瞳が再び輝き、その周囲を覆い尽くすかの如く大爆発の連鎖にあかりは巻き込まれる。
爆発は風の障壁で。いや、風圧での風の異能によるバーストの衝撃で爆風諸共霧散した。
46
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/10(土) 23:16:38 ID:???
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
さぁ 飛び立つのだ 従者にして魔王よ
世界砕き 歌姫の愛で滅せよ
さぁ 天を翔ける歌姫の哀よ 虚獄から降る闇よ 審判よ
救われぬ子等祈り 叫びの音を奏
残酷な現実に終焉を… 永遠に
47
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/10(土) 23:17:12 ID:???
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
『―――』
破神は既に己が頭上に巨大な大斧を具現化させている。自由落下のごとく振るわれた大斧と、あかりが咄嗟に貼った障壁が衝突。
結果、破神の大斧は砕かれたものの防壁のままあかりは地面に衝突。ただし障壁ごとだったのが功を奏しダメージは皆無。
――それで魔王の、破神が手を緩めるわけがない。再び瞳が輝く。
間宮あかりに再び襲いかかる重力の檻、腐食の流星雨。さらにそこに穢れの塊たる神の杖。
――付加、夢幻泡影による生成した分身数千による『邪竜咆哮(ダインスレイフ)』の斉射。
――付加、破神の右腕を刀剣へと一時的に変化させ『無明斬滅(ガブリエル)』の準備。
――さらに付加。魔力による黒槍生成。大きさこそ普遍的であれど、『無明斬滅(ガブリエル)』と同等かそれ以上の穢れを蓄積させた、謂わば穢れの爆弾。触れれば穢れが爆散し、周囲一体を汚染する。
『―――――――――』
一斉発射。黒塊が、流星雨が、神の杖が、邪竜の咆哮が、斬滅の刃が、そして穢れの槍が一斉の間宮あかり個人に対して集中する。
勿論あかりも黙ってはいない、障壁を全開にし、それでも凌ぎきれない猛攻は小手先の手段で何とかするしか無い。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛―――――――ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!」
貫通、貫通、貫通、激痛、激痛、激痛。一発一発が当たる度、存在ごと削り取られるような攻撃の雨あられ。意思も、思いも、信念も、魂も。心も、何もかも掘削され、潰されていく感覚に襲われる。
その猛攻に、意識が途切れかけた瞬間、眼前には破神がダメ押しにと飛ばした魔槍、穢れの爆弾―――。
―――直撃、刹那。魔法学園跡地は黒い爆風で全てが消し飛んだ。
核爆発を彷彿とするきのこ雲が発生し、衝撃が周囲に迸り、瓦礫を吹き飛ばしいく。
一帯は既に空間断裂による黒い割れ目が多数発生。歪みによりノイズが発生し地獄絵図のような光景が広がっていた。
魔王としてはこれ以上の会場へ負荷をかける予定ではなかった。
それを考慮してでも、歌姫へ迷惑へ掛けてしまう代償を払ってでも。
あの女だけは、確実に歌姫への脅威へとなり得る間宮あかりは確実に殺さなければならないという確固たる決意のもとに、一切の容赦なく、ほぼ全力で。
そう、歌姫が導く楽園がため、彼女だけは、データ一片すら残さず消し飛ばす必要があるのだ。
まだ殺すべき相手は残っている。ブローノ・ブチャラティ。そしてライフィセットを名乗るラフィの偽物。
後者二人は容易く捻り潰せる。ならばこの間宮あかりは確実に葬る。
……そして、魔王の心配はもうすぐ終わる。大きな躯体より見下ろせば、未だ立って戦意を失っていないらしき間宮あかりの姿。
だが、既に見るも無惨だ。体中から血という血を流している。流れる血が所々黒く点滅しているということは、穢れが混じっている、という証拠。
目は焦点が合っていないし、呼吸しているのかどうかわからない咳き込み、吐き出される血痰。
勝者と敗者の判別など、火を見るよりも明らかだった。
「ぁ」
間宮あかりの痩せこけた瞳が、映し出していたのは。
魔王が最後のトドメとばかりに生成せし、巨大な黒い球体。
確実に、この手で潰すという意思表明。
立つことは出来た、でも動かない、動かせない。
絶望こそがお前のゴールだと突きつけられる。
動かないといけないのに、避けないといけないのに、指一本すら動かせない。
体中が悲鳴を浴びて、全ての臓器がまともに動いていない、機能不全。
そして迫る、死の光が―――――――。
◯
"あかりちゃん"
虚無の奈落の淵に落ちて響く、涙の一滴。
「かた、りな、さん…………。」
武偵憲章10条"諦めるな。武偵は決して、諦めるな。"
――そう、彼女が繋ぎ止めた奇跡は、ここに芽生えた。
48
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/10(土) 23:17:48 ID:???
□□□□□□□□
『何が、起こっている……!?』
開いた口が塞がらないとは、この事だろうか。
確実な決着、逃れようのない結末が、覆された。
淡い光を放ち、無傷に戻った間宮あかりの姿。
そして、魔王の黒き球体を防いだ、"土の壁"
『あり得、ない……!』
それは、間違いなく起こるはずのない光景。
何故間宮あかりのダメージが修復したのか、あの土の壁は何なのか。
だが、魔王の頭脳には、思い当たる事が一つだけ。
『カタリナ・クラエスぅぅぅっっ!』
――気づいた時には遅かった。原因は掴めずとも、要因はそれしか心当たりがない。
魔王ベルセリアの見落としは2つ。一つはカタリナ・クラエスの涙。
あの時琵琶坂永至の攻撃を受け、意識を失う前に零した涙。――あれは一種のカタリナ・クラエスの幸運の雫。一度限りのコンティニューとも言うべき、奇跡の結晶だった。
再び、白翼は蘇る。より輝いて、クリスタル色に透き通って、太陽に照らされる。
「―――私はもう、諦めたくない。」
宣言する。もう二度と、どんな辛いことが、苦しいことがあろうとも。
武偵は決して諦めない。人々を守るその意思を胸にして。
「だから、貴方を止める。シアリーズさんの為にも―――ベルベットさん、貴方を止める!」
託された願いを裏切りたくない。どんなにちっぽけな意思だろうと、それこそ過ぎ去った者たちから受け付いたものを、更に先へ進めるために。
黄金の意思が、間宮あかりを祝福し、照らしている。
『ふざけるなぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!』
魔王の怒号と共に、破神もまた咆哮を上げる。
赫怒の衝動に飲まれ、その眼を血走らせ、憤怒の感情を貼り付けた魔王が、叫ぶ。
『その便所のタンカス以下の名前を、口にするなぁぁぁぁっっっ!!!!!』
怒りに呼応し、魔王の周りに4つの白い球体が、笑顔が張り付いた球状の生き物(ヴォイドテラリア)が排出される。
破神の瞳が赤く染まる。破神の躯体が赤く染まる。
『殺してやる、滅ぼしてやる、その残り滓諸共女神の地平の塵になれぇぇぇぇっっっっ!』
叫ぶ、世界に晩鐘を打ち鳴らさんと叫ぶ憎悪が、ヴォイドテラリアを揺れ動かす。
ヴォイドテラリアは魔王の憎悪に反して何時までも笑顔だった。余りにも不気味で、奇っ怪な魔王の従者。
テラリアたちが笑顔の口を開き、モノクロの光条を放つ。
瞬間、間宮あかりは地上から離脱し飛翔、そのままモノクロの光条を掻い潜り、その口内に猛風の刃を直接叩き込み、テラリアの一体を内部より粉砕。
続く二体目のテラリア。あかりに猛接近しながら身体をハリセンボンのように針を展開し串刺しにしようとする。
「「鳴神よ!」」
再び、魔王はあかりの声が誰かに重なるような感覚を覚えた。間宮あかりを中心に突風が発生。吹き荒れた突風が徐々に雷光を纏い放電。
針千本状態のテラリアが麻痺し行動不全に陥るも、直ぐ様三体目が一体目同様のビームを発射。
即座にあかりは二体目の麻痺したテラリアを盾した後その場から離脱。ビームを受けたテラリアは爆発四散。
破神の瞳がまた輝く。空中で顕現するは魔力で構築された弓矢。弦が引き絞られ、天へ矢が放たれる。
矢は空中で分裂。それぞれ黒雷を纏い、雨となって落ちていく。
49
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/10(土) 23:19:12 ID:???
黒雷の雨矢を避ける。躱し、風を吹かせてその内の一本を誘導。それが三体目に刺さり爆発四散。
四体目はその場から動かず魔王を護るように浮遊している。破神の右腕が龍顎の砲口へと姿を変え、間宮あかりへと穢れの魔力砲を打ち放つ。
間宮あかりが取った手段は――防ぐのではなく、地面に着地する。
「いでよ、土ボコ!」
叫べば、風の力で天へと伸びる土の盛り上がりが魔力砲の光条と激突し、爆発。周囲一体を爆煙が包み込む。
間宮あかりが爆煙を風で吹き飛ばせば、周囲には既に魔王が『夢幻泡影』で展開した大量の分身。それら全てが穢れの魔砲を既に放っている。破神は南へと後退し、体制を立て直すつもりだ。
この時、魔王としてもこれ以上の戦闘の長期化は避けたかった。これ以上の行使は間違いなく会場全体への負荷の度合いが不味いことになる。歌姫ですらカバーしきれない程になってしまったら楽園完成への支障となりうる。
それに、魔王当人にとっても、消耗しすぎた。最初の多対一まではよかった。だが、シグレとの戦いでだいぶ削られしまっていたのだ。いくら二人食らったとは言え、それでもシグレ戦での消耗は回復しきれなかった。
だが、間宮あかりは無数の死の光条が迫っているにも関わらず冷静。
静かに、魂は熱くとも、心は冷静に。0.01秒の間合いを見抜き。―――構えるは風の反射を伴った梟挫。
その結果、死の光条は一つ残らず分身へと反射され、その全てが掻き消される。
『なぁ!?』
不意を疲れたのは魔王だ。跳ね返った光条が破神の右腕と右翼が粉砕され、バランスを崩す。
なお直撃しなかったのは四体目のテラリアが身を挺して守り、その結果光条の向きが僅かにズレたからだ。
『貴様ぁぁぁぁぁっっっ!!!!』
我を怒りに飲まれ、接近しつつある魔王に残った破神の左腕に超巨大な魔力級を生成。
白色矮星の膨張を彷彿とさせるほどの大きさになったそれは、まさに黒い太陽そのもの。
『虚獄神器・第十階位(セフィロトレガリア・マルクト)――万有必滅(サンダルフォン)!!!!』
黒き滅びが、迫る。全てを滅ぼさんと、迫る。
絶望が凝固し、形となった魔王の憎しみが間宮あかりに近づいていく。
あかりが真下を見れば、驚愕の表情を浮かべるリュージたちやメアリの姿があった。
「大丈夫。……次で決める。」
そうにっこり彼ら彼女らに微笑めば、絶望の具現へ目を向ける。
小さな風の領域を展開。増幅し、己に電気を、パルスを貯める。
間宮あかりの身体が帯電する。それは等に人間が放っていいパルスの総量を超えていた。
『絶望に身をよじれ虫けらがぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!!!』
魔王の怒号と共に、絶望の塊がさらに迫る。
それでも間宮あかりは目を瞑り、心で見据えるように。
準備完了。そして、ただ、彼女は沈黙する。
迫る迫る。魔王の憎悪の具現たる巨大な黒い太陽が、間宮あかりの姿が太陽飲み込まれる。
『あはははははっ、あーはっはっはっはっはっはっ―――!』
狂った用に呵々大笑する魔王。憎むべき相手は飲み込まれた。残る邪魔者、そして憎き二人さえ滅ぼせばもう心残りは―――
「超電磁砲(レールガン)」
『……は?』
黒い太陽より、声がする。殺したはずの少女の声がする。魔王の笑いが止まり、呆けて、そして―――。
黒雷の雨矢を避ける。躱し、風を吹かせてその内の一本を誘導。それが三体目に刺さり爆発四散。
四体目はその場から動かず魔王を護るように浮遊している。破神の右腕が龍顎の砲口へと姿を変え、間宮あかりへと穢れの魔力砲を打ち放つ。
間宮あかりが取った手段は――防ぐのではなく、地面に着地する。
「いでよ、土ボコ!」
叫べば、風の力で天へと伸びる土の盛り上がりが魔力砲の光条と激突し、爆発。周囲一体を爆煙が包み込む。
間宮あかりが爆煙を風で吹き飛ばせば、周囲には既に魔王が『夢幻泡影』で展開した大量の分身。それら全てが穢れの魔砲を既に放っている。破神は南へと後退し、体制を立て直すつもりだ。
この時、魔王としてもこれ以上の戦闘の長期化は避けたかった。これ以上の行使は間違いなく会場全体への負荷の度合いが不味いことになる。歌姫ですらカバーしきれない程になってしまったら楽園完成への支障となりうる。
それに、魔王当人にとっても、消耗しすぎた。最初の多対一まではよかった。だが、シグレとの戦いでだいぶ削られしまっていたのだ。いくら二人食らったとは言え、それでもシグレ戦での消耗は回復しきれなかった。
だが、間宮あかりは無数の死の光条が迫っているにも関わらず冷静。
静かに、魂は熱くとも、心は冷静に。0.01秒の間合いを見抜き。―――構えるは風の反射を伴った梟挫。
その結果、死の光条は一つ残らず分身へと反射され、その全てが掻き消される。
『なぁ!?』
不意を疲れたのは魔王だ。跳ね返った光条が破神の右腕と右翼が粉砕され、バランスを崩す。
なお直撃しなかったのは四体目のテラリアが身を挺して守り、その結果光条の向きが僅かにズレたからだ。
『貴様ぁぁぁぁぁっっっ!!!!』
我を怒りに飲まれ、接近しつつある魔王に残った破神の左腕に超巨大な魔力級を生成。
白色矮星の膨張を彷彿とさせるほどの大きさになったそれは、まさに黒い太陽そのもの。
『虚獄神器・第十階位(セフィロトレガリア・マルクト)――万有必滅(サンダルフォン)!!!!』
黒き滅びが、迫る。全てを滅ぼさんと、迫る。
絶望が凝固し、形となった魔王の憎しみが間宮あかりに近づいていく。
あかりが真下を見れば、驚愕の表情を浮かべるリュージたちやメアリの姿があった。
「大丈夫。……次で決める。」
そうにっこり彼ら彼女らに微笑めば、絶望の具現へ目を向ける。
小さな風の領域を展開。増幅し、己に電気を、パルスを貯める。
間宮あかりの身体が帯電する。それは等に人間が放っていいパルスの総量を超えていた。
『絶望に身をよじれ虫けらがぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!!!』
魔王の怒号と共に、絶望の塊がさらに迫る。
それでも間宮あかりは目を瞑り、心で見据えるように。
準備完了。そして、ただ、彼女は沈黙する。
迫る迫る。魔王の憎悪の具現たる巨大な黒い太陽が、間宮あかりの姿が太陽飲み込まれる。
『あはははははっ、あーはっはっはっはっはっはっ―――!』
狂った用に呵々大笑する魔王。憎むべき相手は飲み込まれた。残る邪魔者、そして憎き二人さえ滅ぼせばもう心残りは―――
「超電磁砲(レールガン)」
『……は?』
黒い太陽より、声がする。殺したはずの少女の声がする。魔王の笑いが止まり、呆けて、そして―――。
50
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/10(土) 23:20:02 ID:???
「――鷹捲」
その言葉の直後に、黒き太陽はひび割れ光を放ち、祝福のように砕け消えれば。
破神の身体を貫通し粉砕する、一彗の輝きが通り過ぎた。
超電磁砲とは、一般的に物体を電磁気力によって加速して打ち出す兵器である
要するに、加速して打ち出せれる手段さえ用意できれば、それは超電磁砲になりうる。
例えそれが変哲もないコインであっても。
間宮あかりは擬似的は閉鎖空間、風による電力発電によって自らに電磁パルスを発生、増幅・集約させた。
そして、風の閉鎖空間を開放と同時に風力で音速レベルまで加速。
結果、黒き太陽を、破神ごと粉砕したのだ。
そう、間宮あかりは。自らをレールガンの弾丸とした。
勿論、彼女一人では到底無理だった。彼女"たち"はみんなで、あの魔王を打倒したのだ。
『※▲□◯※▲□◯※▲□◯※▲□◯※▲□◯――――!?』
『ばぁぁぁかぁぁぁなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!??!?!?!?!?!?」
腹部にポッカリと大きな穴が空いた破神は悲鳴とも取れる叫び声を上げて、墜落していく。
魔王もまた、目の前の光景に絶叫しながら破神と共に落ちていき、破神から光が漏れて――大爆発。
ゆっくりと地面に降り立った間宮あかりとは対象的に、激突するように墜落し、仰向けに斃れた魔王は、ただ眼を開いたまま。悲しい瞳で見下ろす間宮あかりの姿を映していた。
51
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/10(土) 23:20:53 ID:???
◯
「……マジかよ。あいつ。」
勝った。あの魔王に、間宮あかりという少女が。
そんな奇跡にも等しい光景を、リュージたちは目の当たりにした。
いや、余りにも超常的すぎて、喜び以上に驚きの方が大きかったのだが。
「……素直に喜べないとは、こういう事を言うのでしょうね。」
岩永琴子も、また同論。魔王の言葉が真実ならば、また『覚醒者』が増えてしまった。
だが、それでも彼女が魔王を倒し、自分たちを危機から救った、と言うのは紛れもない真実なのだから。
「……すご、い。」
メアリ・ハントはただ、見とれていた。と言うよりも唖然としていたと言うべきか。
それ以上に、何故だろうか。間宮あかりに、カタリナ・クラエスの面影をほんの一瞬感じていたのだから。
そして、等の間宮あかりは―――。
「あなたの負けです。大人しく降参してくれませんか。」
見下ろすように、憐れむように、地に伏したベルベットに語りかけている。
シアリーズから彼女の過去を知った。幸せを突如として奪われ、復讐に身を落とすしかなかった可愛そうな少女。真実から、託された願いから、未来からすらも目を背けて、逃げ出した臆病な少女。
「……私は、あなたを殺したくありません。」
そしてこれは、武偵としての矜持。誰も殺さない、その武偵の信念の現れ。
悲しげな瞳ながらも、その奥底は透き通ったまま。優しい声で魔王に語り掛ける。
「……めない。」
「……っ。」
そして、返答は。
「認めるものかぁ!!!!」
振り絞ったような叫び声が、ベルベットの答えだった。
「あんな悍ましいものが私の未来だなんて認めない!! 巫山戯るな!! あんなもの、ただの悪夢だぁ!!」
体中から泥のようなものを垂れ流し、怨嗟を張り付かせて、叫ぶ。
その瞳は、どうしようもなく濁っていた。
「完全体に……完全体になりさえすればぁ!!』
そんな叫びも、間宮あかりからすれば悲しい嘆きにしか思えなかった。
何処までも未来を恐れ、怯え、逃げようとする子ども。今のベルベットが、間宮あかりにはそのようにしか見えなかった。
「………。」
悲しみと憐れみ。それが間宮あかりがベルベットに向ける感情の全てだった。
間宮の秘奥の一つに鷲抂、と言う技がある。脳漿に集中する波形長に整調した技で、 要は対象の精神を赤子のようにすることが可能な技だ。持続効果は半日。
今のベルベットに話をしても無意味だった。ならば安全に無力化するしか無い。そう思ったその時だった。
52
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/10(土) 23:21:23 ID:???
「助けて欲しいのかい、魔王サマ?」
それは、ゆっくりと足音を響かせて、現れた。
「………。」
「この声は……。」
「生きていたのですね、だけど……。」
その声を、皆は知っている。三者三様の反応をする。
ヘラヘラと空気に似合わない笑みを浮かべ、パンツ一丁ならがも余裕の表情を浮かべたままの一人の男。
「……お前は。」
魔王が視線を向けば、その姿が見えた。
「……琵琶坂さん?」
男の名前は琵琶坂永至。この虚構の世界にて、◆◆◆◆に選ばれし者。
――――終幕直前の舞台にて、最後の主役が降り立った。
53
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/10(土) 23:22:12 ID:???
修正版投下し終えました
54
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 10:32:23 ID:???
再修正版となります
55
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 10:33:22 ID:???
◆
「……永……。岩永……起きろっ!」
「……リュージ、さん?」
叫び声と共に、岩永琴子の意識が目覚める。
リュージに体を支えられ起き上がり上空を見れば、その視界には異様な光景が広がっている。
「……どういうことですか、これは。」
目を見開き、それを視認する。それは罅だ、空間に刻まれた黒い罅の数々。
それは地面や建物に発生したとかではなく、文字通り何もない空中に発生した罅。
大きな割れ目。断崖絶壁に発生した地割れの影響に酷似したそれがあった。
さらに言えば、自分たちを包み込むように展開されている緑色の幕のようなものも視認できる。
「……俺にも分からねぇ。さっき目覚めて広がってた光景がこれだ。……それに。」
リュージが視線を上に向ければ、銅鑼の如くけたたましく空気が弾け、吹き飛ぶ音。
ソニックブームよって発生した大轟音が何度も何度も鳴り響いている。
それは、2つの何かがぶつかり合って発生した、衝突の余波。
余波にしては、余りにも絶大な、人智を超えた戦いの残響。
再び、空気が割れ、大轟音が鳴り響く。同時に、空間に黒い割れ目が出来る。
「……一体、誰が戦ってやがるんだ………?」
それが、リュージにとっての疑問であった。
人智どころか化け物同士が戦っているようにしか見えない異常な光景。
空間にすら影響を及ぼす超越者の黄昏。
「……あかりさん。あの怪物と互角に戦ってる……」
「あんたはたしか……。生きてたのか。」
「ええ。なんとか。」
そんなリュージの疑問を返すように現れたのはメアリ・ハント。
今魔王と戦っているのは間宮あかりである。
自分と同じ、理由は分からないが『覚醒』し、あの魔王と戦えている。
「……。」
魔王の言っていた事が岩永の頭の中で反芻する。
『覚醒者』の増加が、楽園の成立に関わるならば、それこそ主催の思う壺ではないかと。
魔王の権能は穢れ。そして捕食による異能の蒐集。所々の魔王の発言の違和感は感じ取っていた。
『……煩わしい。何故、消えない。』
あの時の言葉。間違いなく"別の誰か"が喋っていたような感覚。
魔王の中身はベルベットではなく、全く別のなにか。
"鋼人七瀬"のように誰かの想像力が生み出した怪物。
――ではその怪物の目的は何だ?
蒐集の異能、覚醒者の誕生。それを食らって、その果てに―――。
まだ、答えには足りず。だが、今わかることは。
「……あかりさん。」
彼女が、最後の希望。自分たちの未来を繋ぐ境界線。
藁にもすがる思いで、間宮あかりに願いを託すことだけが、今の三人に出来ることだ。
56
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 10:34:07 ID:???
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
さぁ 立ち上がれよ 従者にして魔王よ
世界砕き 歌姫の愛で滅せよ
さぁ 現実を哀で包め 己が望むまま蹂躙を
虚構を巡り 崩界を奏
彼方現実に終焉を…永遠に
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
世界が、割れている。
快晴の晴天の下、黒い断裂。
画用紙を引き裂いたような、そんな乱雑さ。
空気と空気が衝突し、大轟音と共に空間の断裂は増えていく。
黒の魔王と、白の少女が縦横無尽に動き回る。
原因はたった1つ。二人の覚醒者の衝突が引き起こしたものだ。
『覚醒者』といえど、目覚めた理由や素質からその強さは大きく変動する。
少なくとも、ベルベットより生じた魔王ベルセリアという存在は大当たりだった。
喰魔と言う、業魔の血肉を喰らいその力を手に入れる特性。それをデータを食しそれを糧とするという形で再現された、蒐集の器としての権能。
―――最高傑作、捕食の頂点を前に、白翼の彼女は互角に戦えていた。
空中機雷と言うべき、展開された黒い魔力の塊。
それが歯車の如く稼働しながら、縦横無尽に動いている。
超スピードで隙間を縫い、爆音とソニックブームを発生させて、通過するたびに機雷は誘爆する。
爆煙に紛れながら接近、接近。所謂掌底のような掌の動きを魔王にぶつけようとする。
魔王はすかさず業魔腕でガード。その激突だけで再び爆音とソニックブームが発生。鍔迫り合い、再び離れる。
業魔腕を振り上げれば天に出現する黒雲。放たれるは魔王の絨毯爆撃。地上を隙間なく埋め尽くす漆黒の魔力の槍。その暴風雨。
全てを消し飛ばしかねない魔星の雨嵐は次々と大地を穿ち破壊していく。構わず少女たちは動き回る。
肉薄、衝突、激突。断裂。再び世界に断裂が入る。
次に魔王が用意したのは球状の砲台ともいうべき複数の魔力の塊。
そこから放出される光条、砲台一つに付き1024。視界を埋め尽くす殺意の黒雷があかりに襲いかかる。
「はぁぁっ!!!」
宣誓。魔力の粒子を手に集め、握りしめて顕現させた紅葉色の扇。それを一振り。
吹き荒び現れた翠緑の旋風が鎌鼬となって光条を破断し、砲台を粉砕する。
既に魔王は次の攻撃の準備。二階建てビル程の大きさの魔力槍を顕現、目標に向けて投擲。
迫る脅威を前に、あかりは再び粒子を構築。――二対の翠緑色の魔力の鎖となり、魔槍を縛り上げ、そのまま遠心力で回って投げ返す。
投げ返された魔槍を魔王は魔槍を以て相殺、爆発、空間の断裂が増える。
回避動作と同時に魔王が黒翼より羽の弾丸――フェザーショットを放出。
対する間宮あかりも白のフェザーショットを発射。白と黒が相殺し、再び爆煙が戦場を包み込む。
何度目かの激突、肉薄、鍔迫り合い。そして再び空間が裂ける。
爆煙を抜け、刃物の如き魔王の蹴りが間宮あかりに刺さる。
刺さるというより辛うじて当てたと言う形、叩き込まれるもダメージは皆無。
即座にあかりがより上空を見上げれば、既に巨大な魔光を掲げた魔王の姿。
「戴冠災器(カラミティレガリア)・侵喰流星(スターダストフォール)」
「……っ!」
公園跡地を覆い尽くす、破壊し穢れを以て腐らせる腐食の流星雨。そこにいる全てを腐らせ溶かす。
だが、それを上空へ弾き飛ばすように間宮あかりが翠緑の障壁を展開。腐りつつある鉄の棒を蹴りあげ突撃。障壁を纏い、穢れの雨を凌ぎながら、飛び上がり魔王へと接近する。
57
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 10:34:44 ID:???
――カタリナ・クラエスが間宮あかりの情報を保管を行うために使用した紅葉色の扇。
あれは本来、自称幻想郷最速の文屋こと射命丸文が保有する扇だ。
本体情報に遥かに劣るもののの、少なからず射命丸文の情報が含まれている。
それもまた、間宮あかりの『覚醒』に少なからず良い影響を与えた。一つは風の力。そしてもう一つは――
「……捉えた!」
「―――!!」
――速度。風を操る程度の能力の補助を受けた、風による高速移動だ。
実を言えば間宮あかりに施された強化は魔王には到底及ばない。しかし少なくとも、魔王に匹敵か、それ以上の速度を以て対応できる。
そして、直線距離に対する移動なら、魔王の動体視力であろうと対応には窮する。それが大技発動の隙間を縫った攻撃であるならば尚の事。
構えは天鷹。使う飛び道具は風の魔力。弓を引き絞るように至近距離に肉薄し――放つ!!
見えない塊に衝突して、地面に向けて魔王が吹き飛ばされる。
だが、その程度のダメージでは魔王はそう安々と斃れない。落下厨二姿勢を転換し、何事も無く地面に降り立つ。
次に行ったのは力場の展開、重力の檻。業魔腕を目の前に翳せば、間宮あかりが沈んでゆく。
「……ッ!!」
押しつぶされるような、肉体が拉げるような感覚。防壁を貼ろうが関係ない。そのまま押し潰してやるという魔王の殺意。一瞬でも気を抜けば押し花の如く真っ平らにされてしまう。
「……はぁぁぁっ!!!!」
―――だからどうした!痛みは無視し集中。体中から上がる悲鳴なんて気にしてる場合じゃない。
風の粒子を集わせて、顕現させるは鉄塊を思わせる巨大な大剣。手に取り、回る。
重力の圧を無視した影響で、体中から血が吹き出る。歯を食いしばり耐え、遠心力を増しながら鉄塊は赤熱、燃え盛る炎を纏う。
魔王は既に次の攻撃に以降。掌を振り上げ、それを中心に巨大な龍の形をした魔力を形成
ゆっくり手を振り下ろせば、それはあかりに向けて急速に飛んでゆく。
矮小な少女を喰い付くさんとと巨大な顎を開けてその牙で噛み砕こうとする。
「――食いちぎれぇっ!!」
「「いっけぇぇぇっっ!!」」
一瞬だけ、間宮あかりの声に誰かの声が重なったように聞こえた。だが、それは今関係ない。
飲み込まれた直前、あかりが振り下ろした炎の一撃が、黒き穢れの龍を焼き尽くし、その炎は龍をも貫通し斬撃として魔王に迫る。
間宮あかりに取り込まれたシアリーズの情報。それは即ち間宮あかりに炎の聖隷力の行使を可能とした。
風と炎、異なる世界の異なる属性をも、行使できる。託されたが故に行使できる、間宮あかりの権能とも言うべき繋がる力のその一端だ。
「なぁッ……!?」
驚愕と共に、これには回避行動が間に合わず、右翼が切り裂かれる。
「――――ッッッ!」
翼の方は即時再生するも、それを狙いすましたかのように翠緑の鎖が魔王の身体を縛る。
その間にも間宮あかりは突進するかのように最接近。
「私を、舐めるなぁぁぁぁぁっ!!!!」
乱雑に業魔腕を振るい、鎖を無理やり破壊。そのまま穢れをバーストし、そのまま自分も吹き飛ばされる。
飛び散る穢れをあかりは風の障壁で吹き飛ばし、魔王が吹き飛んだ方向へ翔ぶ。
吹き飛んだ先は遥か上空。既に魔王はさらなる策を展開していた。
「黄金の夜を明けよ(ゴールデン・ドーン)!!――無限(アイン・ソフ)!!」
詠唱を唱え、魔王の身体を穢れが纏う。纏った穢れは膨張、肥大化。
纏い現れるは新たなる躯体、全長5メートルの穢れの鎧によって構築された、怪物のような何か。
悪魔バフォメットを彷彿とさせる巨大な二本の角、その間に魔王ベルセリアの上半身が取り込まれたかのように張り付いている。それはまるでラグナロクにおける炎の巨人の如き終焉の担い手。
背中には一層巨大な黒翼、黒き巨躯にお似合いな穢れし魂沌のバケモノがこの虚構の舞台に降臨する。
『破神顕象――トゥアサ・デー・ダナン!!!!!!!』
大口が咆哮を上げ、世界を震わせる。
歌姫の秩序に歯向かう愚者を文字通り噛み砕だかんと、蒐集の破神が間宮あかりに牙をむく。
58
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 10:35:17 ID:???
「………!」
不味い、と本能的に察知。そして、大口より垣間見える赤黒の明光。
それを避けようと死角へと距離を詰めようとしたその時、背後より急速に迫る気配。
「……えっ!? ――がはぁっ!?」
文字通り横槍を入れられたように切り裂かれ、吹き飛ばされる。
気配の正体は赤い輪郭で構築された魔王ベルセリアの人間態。
『虚獄神器・第五階位(セフィロトレガリア・ゲプラー)。夢幻泡影(カマエル)』。破神形態に気取られるであろうあかりの油断を付き、先んじて数人ほど生成していた。
そして、吹き飛ばされた軌道を予測するように―――大口より放たれた赤黒の光条、破滅の光芒が間宮あかりを呑み込んだ。
「―――――ッッッ!!」
直撃0.1秒前にあかりは障壁を展開。だがものの数秒で蒸発し、焼き尽くす痛みがあかりを襲い、墜落。
自分一人を防ぐならまだなんとかなるだろう。だがこの規模は間違いなく事前に施しておいたホテル近くの障壁ごとリュージたちをも巻き込みかねない。だからそれも含めての無理をした結果がこの激痛である。
「……や、ああああああああああっっ!!」
攻撃が止んだ一瞬の隙間、光芒の傷も痛みも耐えて、破神の巨躯へ突撃するあかり。頭から血を流し、ボロボロの身体に鞭打ちながら。風の魔力を超至近距離で叩き込もうとする。
だが、身体の大きさはそのまま強固な耐久力にも比例する。間宮あかりの攻撃は破神にとっては蚊に刺された程度でしかない。
だが、ただの蚊だろうと小蝿だとうと、煩わしいことには変わりはない。ただ腕を振るう、それだけで間宮あかりは大きく吹き飛ぶ。
だが、叩きつけられただけなら、先程のビームやら重力の檻やらよりは痛くはない。すぐに姿勢を整えて、次の大技に備えると同時にあの破神の防御を突破できる攻撃を繰り出さなければならない。
『※※※※※※※※※※※――――――ッッッッッ!!!!』
破神の咆哮が再び鳴り響く。再びその大きな躯体が飛び立ち、破神の瞳がキランと音を響かせ妖しく輝く。
あかりが天空を見れば、細長い穢れの鉄塊が降り注ぐ。
魔王がシグレ・ランゲツ戦で使用した『戴冠災器(カラミティレガリア)・歌姫神杖(ロッズ・フロム・ゴッド)』。だが、人間態で放ったそれよりも数も規模も段違い。
破神の鉄槌が、間宮あかりを潰さんと地上へと降り注ぐ。落下箇所の大地はもはや塵一つ残らない真っ平らへとなっている。
避ける、避ける、避ける。穢れが肌に擦れ侵食されようと、侵食箇所を即切除することで侵食を阻止。
「くぅぅぅぅ―――!?」
だが、侵食部位を切り離しても侵食された事自体の痛みは、体中の血液が全て毒へと変貌するに等しい地獄の苦しみ。いつの間にか痛覚が鈍っていた間宮あかりでも、その痛みは耐えるには少しばかりきつい代物だ。
「で、もぉ――――っ!!」
風の粒子を大剣に構築し、手に取る。刀というよりもある意味薙刀に近い形状。刃に雷光を纏わせ、再び突撃。
「やああああああっっっっ!!!」
激突、衝突、衝撃波、爆音、空間の破断。―――刃が砕ける音が、虚しく響き渡る。
『―――』
「これでも、まだっ……!」
足りない、ただ破神の躯体を少し後退させただけ。
巨躯に張り付いた魔王の瞳は無感情に間宮あかりを見下ろす。
破神の瞳が再び輝き、その周囲を覆い尽くすかの如く大爆発の連鎖にあかりは巻き込まれる。
爆発は風の障壁で。いや、風圧での風の異能によるバーストの衝撃で爆風諸共霧散した。
59
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 10:35:52 ID:???
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
さぁ 飛び立つのだ 従者にして魔王よ
世界砕き 歌姫の愛で滅せよ
さぁ 天を翔ける歌姫の哀よ 虚獄から降る闇よ 審判よ
救われぬ子等祈り 叫びの音を奏
残酷な現実に終焉を… 永遠に
60
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 10:37:25 ID:???
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
『―――』
破神は既に己が頭上に巨大な大斧を具現化させている。自由落下のごとく振るわれた大斧と、あかりが咄嗟に貼った障壁が衝突。
結果、破神の大斧は砕かれたものの防壁のままあかりは吹き飛ぶ。ただし障壁ごとだったのが功を奏しダメージは皆無。
――それで魔王の、破神が手を緩めるわけがない。翼をはためかせ空中に浮かび、再び瞳が輝く。
間宮あかりに再び襲いかかる重力の檻、腐食の流星雨。さらにそこに穢れの塊たる神の杖。
――付加、夢幻泡影による生成した分身数千による『邪竜咆哮(ダインスレイフ)』の斉射。
――付加、破神の右腕を刀剣へと一時的に変化させ『無明斬滅(ガブリエル)』の準備。
――さらに付加。魔力による黒槍生成。大きさこそ普遍的であれど、『無明斬滅(ガブリエル)』と同等かそれ以上の穢れを蓄積させた、謂わば穢れの爆弾。触れれば穢れが爆散し、周囲一体を汚染する。
『―――――――――』
一斉発射。黒塊が、流星雨が、神の杖が、邪竜の咆哮が、斬滅の刃が、そして穢れの槍が一斉の間宮あかり個人に対して集中する。
勿論あかりも黙ってはいない、障壁を全開にし、それでも凌ぎきれない猛攻は小手先の手段で何とかするしか無い。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛―――――――ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!」
貫通、貫通、貫通、激痛、激痛、激痛。一発一発が当たる度、存在ごと削り取られるような攻撃の雨あられ。意思も、思いも、信念も、魂も。心も、何もかも掘削され、潰されていく感覚に襲われる。
その猛攻に、意識が途切れかけた瞬間、眼前には破神がダメ押しにと飛ばした魔槍、穢れの爆弾―――。
―――直撃、刹那。エリア一体を黒い爆風が襲いかかる
核爆発を彷彿とするきのこ雲が発生し、衝撃が周囲に迸り、瓦礫を吹き飛ばしいく。
一帯は既に空間断裂による黒い割れ目が多数発生。歪みによりノイズが発生し地獄絵図のような光景が広がっていた。
リュージたちがいるホテル周辺を守っていた障壁もぎりぎり耐えきったという惨状で、既に障壁は崩壊寸前である。
魔王としてはこれ以上の会場へ負荷をかける予定ではなかった。
それを考慮してでも、歌姫へ迷惑へ掛けてしまう代償を払ってでも。
あの女だけは、確実に歌姫への脅威へとなり得る間宮あかりは確実に殺さなければならないという確固たる決意のもとに、一切の容赦なく、ほぼ全力で。
そう、歌姫が導く楽園がため、彼女だけは、データ一片すら残さず消し飛ばす必要があるのだ。
まだ殺すべき相手は残っている。ブローノ・ブチャラティ。そしてライフィセットを名乗るラフィの偽物。
後者二人は容易く捻り潰せる。ならばこの間宮あかりは確実に葬る。
……そして、魔王の心配はもうすぐ終わる。大きな躯体より見下ろせば、未だ立って戦意を失っていないらしき間宮あかりの姿。
だが、既に見るも無惨だ。体中から血という血を流している。流れる血が所々黒く点滅しているということは、穢れが混じっている、という証拠。
目は焦点が合っていないし、呼吸しているのかどうかわからない咳き込み、吐き出される血痰。
勝者と敗者の判別など、火を見るよりも明らかだった。
「ぁ」
間宮あかりの痩せこけた瞳が、映し出していたのは。
魔王が最後のトドメとばかりに生成せし、巨大な黒い球体。
確実に、この手で潰すという意思表明。
立つことは出来た、でも動かない、動かせない。
絶望こそがお前のゴールだと突きつけられる。
動かないといけないのに、避けないといけないのに、指一本すら動かせない。
体中が悲鳴を浴びて、全ての臓器がまともに動いていない、機能不全。
そして迫る、死の光が―――――――。
◯
"あかりちゃん"
虚無の奈落の淵に落ちて響く、涙の一滴。
「かた、りな、さん…………。」
武偵憲章10条"諦めるな。武偵は決して、諦めるな。"
――そう、彼女が繋ぎ止めた奇跡は、ここに芽生えた。
61
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 10:38:42 ID:???
□□□□□□□□
『何が、起こっている……!?』
開いた口が塞がらないとは、この事だろうか。
確実な決着、逃れようのない結末が、覆された。
淡い光を放ち、無傷に戻った間宮あかりの姿。
そして、魔王の黒き球体を防いだ、"土の壁"
『あり得、ない……!』
それは、間違いなく起こるはずのない光景。
何故間宮あかりのダメージが修復したのか、あの土の壁は何なのか。
だが、魔王の頭脳には、思い当たる事が一つだけ。
『カタリナ・クラエスぅぅぅっっ!』
――気づいた時には遅かった。原因は掴めずとも、要因はそれしか心当たりがない。
魔王ベルセリアの見落としは2つ。一つはカタリナ・クラエスの涙。
あの時琵琶坂永至の攻撃を受け、意識を失う前に零した涙。――あれは一種のカタリナ・クラエスの幸運の雫。一度限りのコンティニューとも言うべき、奇跡の結晶だった。
再び、白翼は蘇る。より輝いて、クリスタル色に透き通って、太陽に照らされる。
「―――私はもう、諦めたくない。」
宣言する。もう二度と、どんな辛いことが、苦しいことがあろうとも。
武偵は決して諦めない。人々を守るその意思を胸にして。
「だから、貴方を止める。シアリーズさんの為にも―――ベルベットさん、貴方を止める!」
託された願いを裏切りたくない。どんなにちっぽけな意思だろうと、それこそ過ぎ去った者たちから受け付いたものを、更に先へ進めるために。
黄金の意思が、間宮あかりを祝福し、照らしている。
『ふざけるなぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!』
魔王の怒号と共に、破神もまた咆哮を上げる。
赫怒の衝動に飲まれ、その眼を血走らせ、憤怒の感情を貼り付けた魔王が、叫ぶ。
『その便所のタンカス以下の名前を、口にするなぁぁぁぁっっっ!!!!!』
怒りに呼応し、魔王の周りに4つの白い球体が、笑顔が張り付いた球状の生き物(ヴォイドテラリア)が排出される。
破神の瞳が赤く染まる。破神の躯体が赤く染まる。
『殺してやる、滅ぼしてやる、その残り滓諸共女神の地平の塵になれぇぇぇぇっっっっ!』
叫ぶ、世界に晩鐘を打ち鳴らさんと叫ぶ憎悪が、ヴォイドテラリアを揺れ動かす。
ヴォイドテラリアは魔王の憎悪に反して何時までも笑顔だった。余りにも不気味で、奇っ怪な魔王の従者。
テラリアたちが笑顔の口を開き、モノクロの光条を放つ。
瞬間、間宮あかりは地上から離脱し飛翔、そのままモノクロの光条を掻い潜り、その口内に猛風の刃を直接叩き込み、テラリアの一体を内部より粉砕。
続く二体目のテラリア。あかりに猛接近しながら身体をハリセンボンのように針を展開し串刺しにしようとする。
「「鳴神よ!」」
再び、魔王はあかりの声が誰かに重なるような感覚を覚えた。間宮あかりを中心に突風が発生。吹き荒れた突風が徐々に雷光を纏い放電。
針千本状態のテラリアが麻痺し行動不全に陥るも、直ぐ様三体目が一体目同様のビームを発射。
即座にあかりは二体目の麻痺したテラリアを盾した後その場から離脱。ビームを受けたテラリアは爆発四散。
破神の瞳がまた輝く。空中で顕現するは魔力で構築された弓矢。弦が引き絞られ、天へ矢が放たれる。
矢は空中で分裂。それぞれ黒雷を纏い、雨となって落ちていく。
62
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 10:39:21 ID:???
黒雷の雨矢を避ける。躱し、風を吹かせてその内の一本を誘導。それが三体目に刺さり爆発四散。
四体目はその場から動かず魔王を護るように浮遊している。破神の右腕が龍顎の砲口へと姿を変え、間宮あかりへと穢れの魔力砲を打ち放つ。
間宮あかりが取った手段は――防ぐのではなく、地面に着地する。
「いでよ、土ボコ!」
叫べば、風の力で天へと伸びる土の盛り上がりが魔力砲の光条と激突し、爆発。周囲一体を爆煙が包み込む。
間宮あかりが爆煙を風で吹き飛ばせば、周囲には既に魔王が『夢幻泡影』で展開した大量の分身。それら全てが穢れの魔砲を既に放っている。破神は南へと後退し、体制を立て直すつもりだ。
この時、魔王としてもこれ以上の戦闘の長期化は避けたかった。これ以上の行使は間違いなく会場全体への負荷の度合いが不味いことになる。歌姫ですらカバーしきれない程になってしまったら楽園完成への支障となりうる。
それに、魔王当人にとっても、消耗しすぎた。最初の多対一まではよかった。だが、シグレとの戦いでだいぶ削られしまっていたのだ。いくら二人食らったとは言え、それでもシグレ戦での消耗は回復しきれなかった。それともう一つ、破神形態になるまで飛行を渋っていたのは単純なスタミナの理由もある。
魔王の本質は蒐集にして捕食だ。要するに参加者やデータを捕食することでそれを己がエネルギーとしている。
空間の断裂が多発したのはそれが理由だ。シグレとの戦いでの消耗が響き、間宮あかりを潰すためにリソースの供給を『無』から行わざる得なかったから。
紅魔館から此方へと飛行する際は十分なスタミナがあったし、覚醒したてということでリソースも十分だった。その際に無意識に消費されたリソース情報は『ベルベット』の情報であるのだが。
ここまで長引いてしまった以上、消費が供給に間に合わなくなっていたのだ。
間宮あかりは無数の死の光条が迫っているにも関わらず冷静。
静かに、魂は熱くとも、心は冷静に。0.01秒の間合いを見抜き。―――構えるは風の反射を伴った梟挫。
その結果、死の光条は一つ残らず分身へと反射され、その全てが掻き消される。
『なぁ!?』
不意を突かれたのは魔王だ。跳ね返った光条が破神の右腕と右翼が粉砕され、バランスを崩す。
なお直撃しなかったのは四体目のテラリアが身を挺して守り、その結果光条の向きが僅かにズレたからだ。
『貴様ぁぁぁぁぁっっっ!!!!』
我を怒りに飲まれ、接近されつつある魔王は残った破神の左腕に超巨大な魔力級を生成。
白色矮星の膨張を彷彿とさせるほどの大きさになったそれは、まさに黒い太陽そのもの。
『虚獄神器・第十階位(セフィロトレガリア・マルクト)――万有必滅(サンダルフォン)!!!!』
黒き滅びが、迫る。全てを滅ぼさんと、迫る。
絶望が凝固し、形となった魔王の憎しみが間宮あかりに近づいていく。
あかりが真下を見れば、驚愕の表情を浮かべるリュージたちやメアリの姿があった。
「大丈夫。……次で決める。」
そうにっこり彼ら彼女らに微笑めば、絶望の具現へ目を向ける。
小さな風の領域を展開。増幅し、己に電気を、パルスを貯める。
間宮あかりの身体が帯電する。それは等に人間が放っていいパルスの総量を超えていた。
『絶望に身をよじれ虫けらがぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!!!』
魔王の怒号と共に、絶望の塊がさらに迫る。
それでも間宮あかりは目を瞑り、心で見据えるように。
準備完了。そして、ただ、彼女は沈黙する。
迫る迫る。魔王の憎悪の具現たる巨大な黒い太陽が、間宮あかりの姿が太陽飲み込まれる。
『あはははははっ、あーはっはっはっはっはっはっ―――!』
狂った用に呵々大笑する魔王。憎むべき相手は飲み込まれた。残る邪魔者、そして憎き二人さえ滅ぼせばもう心残りは―――
「超電磁砲(レールガン)」
『……は?』
黒い太陽より、声がする。殺したはずの少女の声がする。魔王の笑いが止まり、呆けて、そして―――。
63
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 10:40:21 ID:???
「――鷹捲」
その言葉の直後に、黒き太陽はひび割れ光を放ち、祝福のように砕け消えれば。
破神の身体を貫通し粉砕する、一彗の輝きが通り過ぎた。
超電磁砲というものが存在する。一般的に物体を電磁気力によって加速して打ち出す兵器で。
要するに、加速して打ち出せれる手段さえ用意できれば、それは超電磁砲になりうる。
例えそれが変哲もないコインであっても。
間宮あかりは擬似的は閉鎖空間、風による電力発電によって自らに電磁パルスを発生、増幅・集約させた。
そして、風の閉鎖空間を開放と同時に風力で音速レベルまで加速。
結果、黒き太陽を、破神ごと粉砕したのだ。
そう、間宮あかりは。自らをレールガンの弾丸とした。
勿論、彼女一人では到底無理だった。彼女"たち"はみんなで、あの魔王を打倒したのだ。
『※▲□◯※▲□◯※▲□◯※▲□◯※▲□◯――――!?』
『ばぁぁぁかぁぁぁなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!??!?!?!?!?!?」
腹部にポッカリと大きな穴が空いた破神は悲鳴とも取れる叫び声を上げて、墜落していく。
魔王もまた、目の前の光景に絶叫しながら破神と共に落ちていき、破神から光が漏れて――大爆発。
ゆっくりと地面に降り立った間宮あかりとは対象的に、激突するように墜落し、仰向けに斃れた魔王は、ただ眼を開いたまま。悲しい瞳で見下ろす間宮あかりの姿を映していた。
64
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 10:40:55 ID:???
◯
「……マジかよ。あいつ。」
勝った。あの魔王に、間宮あかりという少女が。
そんな奇跡にも等しい光景を、リュージたちは目の当たりにした。
いや、余りにも超常的すぎて、喜び以上に驚きの方が大きかったのだが。
「……素直に喜べないとは、こういう事を言うのでしょうね。」
岩永琴子も、また同論。魔王の言葉が真実ならば、また『覚醒者』が増えてしまった。
だが、それでも彼女が魔王を倒し、自分たちを危機から救った、と言うのは紛れもない真実なのだから。
「……すご、い。」
メアリ・ハントはただ、見とれていた。と言うよりも唖然としていたと言うべきか。
それ以上に、何故だろうか。間宮あかりに、カタリナ・クラエスの面影をほんの一瞬感じていたのだから。
そして、等の間宮あかりは―――。
「あなたの負けです。大人しく降参してくれませんか。」
見下ろすように、憐れむように、地に伏したベルベットに語りかけている。
シアリーズから彼女の過去を知った。幸せを突如として奪われ、復讐に身を落とすしかなかった可愛そうな少女。真実から、託された願いから、未来からすらも目を背けて、逃げ出した臆病な少女。
「……私は、あなたを殺したくありません。」
そしてこれは、武偵としての矜持。誰も殺さない、その武偵の信念の現れ。
悲しげな瞳ながらも、その奥底は透き通ったまま。優しい声で魔王に語り掛ける。
「……めない。」
「……っ。」
そして、返答は。
「認めるものかぁ!!!!」
振り絞ったような叫び声が、ベルベットの答えだった。
「あんな悍ましいものが私の未来だなんて認めない!! 巫山戯るな!! あんなもの、ただの悪夢だぁ!!」
体中から泥のようなものを垂れ流し、怨嗟を張り付かせて、叫ぶ。
その瞳は、どうしようもなく濁っていた。
「完全体に……完全体になりさえすればぁ!!』
そんな叫びも、間宮あかりからすれば悲しい嘆きにしか思えなかった。
何処までも未来を恐れ、怯え、逃げようとする子ども。今のベルベットが、間宮あかりにはそのようにしか見えなかった。
「………。」
悲しみと憐れみ。それが間宮あかりがベルベットに向ける感情の全てだった。
間宮の秘奥の一つに鷲抂、と言う技がある。脳漿に集中する波形長に整調した技で、 要は対象の精神を赤子のようにすることが可能な技だ。持続効果は半日。
今のベルベットに話をしても無意味だった。ならば安全に無力化するしか無い。そう思ったその時だった。
「助けて欲しいのかい、魔王サマ?」
それは、ゆっくりと足音を響かせて、現れた。
「………。」
「この声は……。」
「生きていたのですね、だけど……。」
その声を、皆は知っている。三者三様の反応をする。
ヘラヘラと空気に似合わない笑みを浮かべ、パンツ一丁ならがも余裕の表情を浮かべたままの一人の男。
「……お前は。」
魔王が視線を向けば、その姿が見えた。
「……琵琶坂さん?」
男の名前は琵琶坂永至。この虚構の世界にて、◆◆◆◆に選ばれし者。
――――終幕直前の舞台にて、最後の主役が降り立った。
65
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 10:42:36 ID:???
以上となります お手数おかけして申し訳ございませんでした
66
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 20:22:52 ID:???
仮投下します
67
:
明日の方舟たち(ArkNights)-正真正銘の怪物-
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 20:23:25 ID:???
◆
「……琵琶坂、さん?」
困惑とは、この事だろうか。
琵琶坂永至という男を間宮あかりという人物の視点から総称すれば『恩人』である。
学園戦においてカタリナ・クラエスと出会い、成り行きで行動することになって。
落ち込んでいた自分に何かと助言してくれたり、手伝ってくれたりと。
少なくとも信頼というものを得るには相応に十分な存在であったと言える。
「……どういう、意味ですの?」
だが、他の人物からすれば。少なくとも彼の本性を知っているメアリ・ハントから見れば話は違う。
琵琶坂永至の本性は自己中心的、傲慢で下水道のドブの如き卑劣漢で、己の望みに忠実な男。
少なくともリュージと岩永琴子は琵琶坂永至という男に何かしらの不信感を抱いていた。
リュージに関しては、初対面での少しの会話で、『必要な部分しか話していない』言い回しに妙な違和感を感じていたかもしれないのだが。
「……なんの、つもり……!?」
首を横に向け、ベルベットは琵琶坂永至に疑問を投げかける。
その時、何か見てはいけないものを見た。いや、これは『魔王ベルセリア』から見えてしまった何か。
――曼荼羅である。もっとも、異世界の出身であるベルベットは曼荼羅が何であるかは理解できていないのだが。琵琶坂永至の背後に曼荼羅が見える。曼荼羅の座に、何かが見える。
汎ゆる進化の到達点が見える。世界の真理が背後に見える。『天国』が見える。『真実』が見える。『運命』が見える。『◆◆』が見える。
魔王の身体が警鐘を鳴らす。冷や汗が止まらない。動悸が止まらない。
「……ッ! ……ッ!」
何だあれは、何なんだあれは、一体自分は何を見せられているんだ?
あの男の背後にある"アレ"は何なんだ、と。
人間という生き物は"未知"という概念を最も恐れる生物である。自らの頭に該当のない事象に混乱するように、無意識にひき逃げ起こした人間が慌てて逃走するように。
"未知"とは恐怖であり、真理に関わる一つである。そしてそれは一種の"秩序"である。
そう、ゲッターは。大いなる"秩序"でもあるのだ。
そして、もう一人。現世と常世の双方を観えるようになったが故、それを視てしまった者。
「……あ、ああ。あああああ………!」
「岩永……?」
岩永琴子。知恵の神。秩序の調停者もまた、見てはいけないものを視てしまった。
その曼荼羅を、六角形の曼荼羅の座に座る『ゲッターロボ』達を。曼荼羅の前に立つ、琵琶坂の笑顔を。
その姿に絶望を見た。秩序を見た。真実を見た。何かを見た。何か何か何か何か何かナニカナニカナニカナニカナニカナニカナニカナニカナニカナニカナニカナニカ違う違うあんなものが秩序なはずがないどうして私は一体今まで何のために助けて助けてどうしてこんな事望んでいなかった助けて嫌だあんなものが世界の秩序であるはずがない信じたくないでもこれは真実で現実で真理で天国で運命でああああああああああああああああああああああああああああああ――――――――――。
「あああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!?」
「岩永!? おい岩永ッ!?」
岩永琴子は発狂した。見たくない現実を見てしまった。幻視してしまった。
秩序を、真実を。現実を。嘘だと思いたかった。でもあれは真実だった、紛れもない現実だった。
あれは、新しい秩序の化身だった。
「こんなっ、こんなことはっ! どうして、嫌だっ、嫌だぁぁっっ!」
「しっかりしろっ、おいっ! ……琵琶坂テメェっ!!」
発狂し錯乱する岩永琴子を何とか抑えながら、琵琶坂永至を睨む。
だが、等の琵琶坂永至は薄ら笑いを浮かべて意気揚々と言葉を紡ぎ始める。
68
:
明日の方舟たち(ArkNights)-正真正銘の怪物-
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 20:23:56 ID:???
「全く、こっちは死にかけたというのにこれとは酷いものだよ。……ねぇ、あかりちゃん?」
「……え……?」
間宮あかりは、訳がわからなかった。今の琵琶坂に何が起きているのか。岩永琴子が発狂した理由が。
「……なぁ魔王。あんたが俺を連れて離脱できるのに何分欲しい?」
「――最低でも五分。リソース不足だから流石に目的地までたどり着く前提なら供給が欲しい。それでも最大乗積は二人が限度よ。」
「じゃあ俺の力を分け与えれば十分か。俺はメビウス関係者だ、連れていく理由にもなるだろう?」
「………。」
岩永琴子の発狂を見て冷静を取り戻したベルベット。すかさず琵琶坂の言葉に答えながら最適解を思考する。
少なくとも今の自分ではこの場を脱するには厳しすぎる。この琵琶坂という男の目論見が健闘付かない以上、恥を忍んでこの男の助けに縋るしか無い。
翼及び飛行可能までの回復は5分。一人か二人を連れては流石に誰でもいいからリソースを喰らう必要がある。少なくとも琵琶坂永至はそれを了承してくれた。本当に不本意だが、乗るしかなかった。
「……琵琶坂さん、冗談ですよね? 嘘ですよね?」
間宮あかりの頭は未だ困惑したままだ。余りにも突出した展開についていけていない。
今まで辛苦を共にした仲間が、信頼できる仲間がこのような事を言い出して。
岩永さんに至っては突然錯乱し始めて。今の間宮あかりは当に「何が起こっているのかまるでわからない」状態である。
「……ああ、そうだ。言い忘れたことがあるんだ。」
だが、あかりの困惑を無視して彼女と、呆然としているメアリにも目を向けて。ヘラヘラと笑いながら、こう告げる。
「すまないねメアリ。あのクソアマ、俺に舐めた口聞きやがったから思わず殺しちゃった。」
「お前ぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!!!!!!!!!!」
「―――ッ!」
二者の行動は早かった。メアリ・ハントの脳内を埋め尽くしていたのは憎悪の感情だた一つだった。
こいつだけは、こいつだけは絶対に許さないという殺意の奔流だった。
結果的に休むことが出来たお陰で、水の魔力でナイフを構築出来るぐらいには回復した。殺す、ただ殺す。その一念で琵琶坂永至に迫っていた。
対して間宮あかりは怒りと悲しみだった。琵琶坂永至がカタリナ・クラエスに手を掛けたと言う事実が信じられなかった。でも、これ以上彼に手を汚させないために、武偵として怒りに飲まれているメアリが琵琶坂を殺すことを阻止したくて動いた。間宮の技なり何でもいい、速攻で二人の動きを止める、その為に動いたのだ。
結果的に挟み撃ちにあった状態の琵琶坂は、余裕綽々と佇んでいる。それどころか嘲笑するような笑みを二人に向けて、そして―――。
「キリク」
一言告げて、撓らせた鞭を地面に叩きつけたと思えば、既に琵琶坂永至の姿は消えて。
地面が凹んだと思えば。間宮あかりの身体が、メアリ・ハントの身体が。そして他の地面も同じく凹んで。
「ガ……ッ!?」
「あ゛……っ゛!?」
何十ののも打撃音、まるで全身に均等に攻撃を食らった用に、何が起きたかわからないまま、二人は血反吐を吐いて地面に伏し倒れる。
そして何事もなかったかのようにあくびをしながらつまらなく立っている琵琶坂永至。
(……こいつ、こいつはっっっ!!!)
ベルベットは琵琶坂が何をしたのかは辛うじて理解した。鞭を地面に打って、その反発力で高速移動。
所々地面を鞭で叩く事で方向修正をして、間宮あかりとメアリ・ハントに対して攻撃を仕掛けた。だが――
(何を、したっ!?)
攻撃の瞬間、目視ではただ交差時になにかした、ぐらいしか確認できなかった。
それだけだった、それだけだったのに何をしたのか全くわからなかった。一体琵琶坂永至は何をした、何をしたのか、ベルベットには分からなかった。
69
:
明日の方舟たち(ArkNights)-正真正銘の怪物-
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 20:24:32 ID:???
――魔神になりそこねた男、オッレルス。彼が使用する術式の一つに『北欧玉座』というものが存在する。
細かい部分を除いて説明するならば、『説明できない力』である。
ではここで、ゲッター線を真に説明できる存在を、解明した上で解説できる人物が、いるだろうか?
いるわけがない。神隼人ですら、その深奥を完全に理解することが出来ていないのだから。
そう、『説明できない現象』なのだ。攻撃の範囲や威力の定義すら曖昧なまま放たれ、攻撃対象に何が起きたか全く理解させず、どのくらい移動すれば回避したことになるのかも曖昧。
琵琶坂永至の今の力の一端は、そういうものだ。『説明できない力』を振るってのわからん殺し。
正しくそれを説明できるものは誰もいない、だから予測しようが無い。
防御しようにも、回避しようにも、それがどの程度の具合ですればいいのかわからないから、そのしようがない。
何故なら、ゲッターを真に理解できるものなど、この世界にほぼ誰も存在しないのだから。少なくとも、この場には居ない。
ダメージを受けた二人は、立ち上がる事が出来なかった。どちらも均等に、公平に全身を叩きつけられる痛みを味わっている。
「……ぁっ……ぁっ……。」
恐怖だった。魔王ベルセリアよりも、この琵琶坂永至の方がよっぽど怖かった。
魔王ベルセリアによる恐怖は分かりやすかった。目に見えてわかる規模と破壊力。でもこの男は違う。何もわからない。一体何がどういうことなのかが全然理解できないのだ。
まるで永遠の闇を彷徨うような感覚に陥る。宇宙の意志に触れたような、根源を垣間見てしまったような恐怖が、絶望としてメアリの思考を埋め尽くしているのだ。
(……動いてっ、動いてっ! 私の身体ッ! ここで動かなかったら……みんながっ!)
間宮あかりも痛みに堪え、動けずに居る。全身に渡り均等に激痛が襲う。そもそも、奇跡の雫による全回復。傷こそ直せど、疲労まで完全に治すことは出来ない。
間宮あかりが今起き上がることが出来ないのは、限界が来たから。先のダメージで、疲労が限界を超えて、立ち上がれない。
本能的な悪寒が背筋に走る。ここで琵琶坂永至を止めなければ―――自分たち全員皆殺しにされるという、強烈な虫の知らせが。
「……全員食べれば足りるかな、魔王サマ?」
「別に全員じゃなくていいわよ。一人……半身でも帰り賃だけなら十分。」
そして、そんな事を気にせず帰還の段取り等を軽く話し合っている琵琶坂。ベルベットも不本意ながら琵琶坂の提示した流れに乗るしか無い。
今、この場を支配しているのは、間違いなく琵琶坂永至と言っても過言ではなかった。
「そっか……じゃあ。」
邪悪な笑みを浮かべ、間宮あかりへと鞭を向ける。
その先端に、何かエネルギーのようなものが充填されていく。
「外は柔らかくて中はジューシーにしてあげるよ。食べやすいように、ね?」
「あたし、味覚とか多分無いわよ。」
他愛のない会話、常軌を逸した状況で、琵琶坂永至は普通にベルベットに話しかけている。
今から放たれる光条は、間違いなく間宮あかりを仕留めて"調理"する為のもの。
誰も彼を止めるものは居ない。岩永琴子も、リュージも、メアリ・ハントも。彼を止めることが出来ない。
(……ごめ、ん。みん、な……。)
ここまで頑張ったのに。最後の最後にこんなあんまりな結末だなんて。
認めたくなくても、これが終着点だった。そう。これが結末だった。
(……くや、しい…よぉ。アリア、せんぱい……!)
間宮あかりの瞳から、輝きが失われていく。これは絶望に瀕した少女が諦めた瞬間である。
誰にも止められない。全ては終わる。たった一人の男の手によって。
「――ゲッタービーム」
「ダメェぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!」
70
:
明日の方舟たち(ArkNights)-正真正銘の怪物-
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 20:25:15 ID:???
◯
目を覚ます。
起き上がる。
静かだった。先程までけたたましかった戦場の音は止んでいた。
切り裂かれた所を見れば、代わりに支給品袋と薬草の燃えカスだけがあった。
そうか、私はこれのお陰で助かったのだと。そう自覚する。
倒れているはずのあの娘の姿が見えなかった。
もしかして、私が気を失っている間に何処かへ行ったのか。
気がつけば、何も考えずに走り出していた。傷なんて考えずに。
何も手に持たないで、荒れた世界を走り抜ける。
心配だった、メアリの事も、みんなの事も、あかりちゃんの事も。
そういえば、あの世界で私はみんなに何故か好かれていたけれど、私はあの娘に、あかりちゃんに惹かれていたのかな?
でも、そんな事は今はどうでもいい。と思ったけれどここに来てからあかりちゃんに助けてもらってばっかりだったかもしれない。
あの娘は私に似ているかもしれないと思った。みんなを知らない内に引きつけて仲良くなって。多分そういう星の下に生まれたんだと思う。
それを才能だなんて言わない。神の祝福だなんて言いたくない。あの娘が今まで歩んできた道筋が結実したものだと。
あかりちゃん。もし元の世界に戻るとして、もう一度出会えるのかな。
もしそうだったら、私の作った野菜食べてほしいし、あかりちゃんと一緒に遊びに行くのも悪くないのかな。
メアリやソフィアを誘って女子会、だなんて悪くないのかな。
……なんて、どうしてこんな事今になって考えたんだろう。そしてなんで私は走ってるんだろう。
わからない。わからなかった。でも、ここで動かなかったら、嫌な予感がするかもしれないって、そんな気がして。
外に出て、見たら。あかりちゃんが殺されそうになってて。
多分、私は周りのことなんて気にしていなくて。
……気がついたら、私の身体は勝手に動いていた。
■ ■ ■ ■ ■
カランッ、と骰子が振り直される音。
軽快に音を鳴らし、廻り廻って骰子が静止する。
賽の目が指した数値は4だった。
彼女はあの娘を助けるために、骰子を振り直した。
■ ■ ■ ■ ■
「あ、え………?」
「なん、で………?」
全ての時が止まったような感覚だった。
カタリナ・クラエスは、琵琶坂永至の放ったゲッタービームに、間宮あかりを庇うかのように直撃した。
「………へぇ。」
予想外の横槍が入ったが、それはそれだった。即座に琵琶坂は鞭を振るい、カタリナ・クラエスの身体を縦に真っ二つ。その下半身に何かを注入したと思えば、それをベルベットの方に投げる。
ベルベットは業魔腕の大口を大きく開かせ、飛んできたそれを捕食。
「嫌あああああああああああああああああああああ!!!!!!」
「……かた、りな、さん?」
未だ動けないままのメアリの悲鳴が大空に響き渡る。
間宮あかりは呆然としたまま上半身だけになって地面に転がったカタリナを見つめたまま。
「――リソースは大丈夫。あと1分稼いで。」
「了解っと。」
ベルベットの簡素な経過報告に琵琶坂永至は目標を変更。次の狙いは岩永琴子。未だ錯乱しており、リュージに介抱されている状態。隙だらけとはこの事か。
「させるかよ琵琶坂永至ぃ!!!」
咄嗟にリュージが岩永を突き飛ばし、逸らす。だが、その結果琵琶坂の鞭で右腕が切り裂かれてキャッチされ、それはベルベットの業魔腕に向けてリリースされる。
来たもの来たものなのでベルベットはそれを無表情で捕食。それはそれとして右腕を抑え琵琶坂を睨むリュージであるが、琵琶坂の鞭は再び生き物のように向きを変えて今度はリュージに襲いかかる。
「待ちやがれ、このクソ野郎がぁ!」
だが、そこに予想外の乱入者。この場にいる誰もかもにとっても未知の存在が琵琶坂永至に殴りかかってきた。
71
:
明日の方舟たち(ArkNights)-正真正銘の怪物-
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 20:25:48 ID:???
◯
結論だけいえば、ドッピオは流竜馬に例の人影の話をすることにした。状況の変化を望むことをドッピオは選択した。
その直後である、大轟音と爆発が衝撃波として襲いかかったのは。
少なくとも流竜馬とドッピオも少なからずその影響で吹き飛ばされたのだ。
ここまでの大規模な何かを引き起こされたのもあったが、流竜馬は何かに導かれるように、黒い影を負う選択をした。
「運命」とは「引力」であり、「重力」である。スタンド使い同士が引き合うように、ゲッター線に選ばれた者同士も、また――――。
「邪魔をしないでくれないかな?」
「ぬおっ?!」
そして今、流竜馬は琵琶坂永至に殴りかかり、空いた手で軽く受け止められ投げ飛ばされる始末。
その結果、鞭の軌道が僅かにずれ、リュージの急所に当たらずその代償として片目が斬り裂かれてしまったが。
「がああああああああああっ!!!」
「……リュージさんっ!? ……っ。これは一体!?」
残った左手で斬り裂かれた片目を抑え、悶える。そしてようやっと、岩永琴子は冷静を取り戻し、変動した状況に困惑する。
「……黒い影を追いかけりゃ、こんな事になるなんてなぁ。殴り合いのあるクソ野郎がちょうどいたんんだからなぁ?」
「いきなり殴り込むなんて乱暴じゃないか? それとも―――君も今から死にたいかい?」
「御託なんざどうでもいい。それに、その力、何処で手に入れやがった?」
「思い込み? まあそう答えるしかないけれどね?」
投げ飛ばされるも直ぐ様起き上がり、流竜馬は琵琶坂永至を睨むも、当の琵琶坂永至は態度を変えずに生易しい声で語りかける。一触即発、どうなるかわからない状況に陥ろうとした時。
「琵琶坂、時間よ。」
ベルベットが起き上がり、黒翼を展開。低空飛行であるが、最大二人まで人を乗せて移動できる程には回復したという言葉に嘘はないようだ。
「ということらしい。だけど……。」
琵琶坂がベルベットの方へと後退すると同時に、鞭を伸ばす。目標はまたしても岩永琴子。だが今度は殺すためではなく捕獲するためのもの。
自分を見て何か錯乱していた、もしくは恐れていたようであるが、もしかしたら何か利用できるかもしれないと。だからこそ捕まえるという選択肢を取っ――――。
グ オ ン
「な、何ぃーーーっ!?」
「ぐ、がぁっ!?」
だが、鞭が捕まえたのは岩永琴子ではなく、全く知らない誰か。――リュージである。
これには、さしの琵琶坂も驚愕していた。一体何が起こっているのか分からなかった。
そしてよく確認すれば、リュージの脇腹には拳の後、何かに殴られた後が――。
「……予定は狂ったが、まあ多少の誤差として受け入れるか。……一応、こいつの身柄は貰っておくよ。」
「リュージさん! ……琵琶坂永至、貴方は一体何を企んでいるのですか!?」
既に気を失ったリュージを縛りあげ、ベルベットの背中に乗る琵琶坂。
そして琵琶坂とベルベットの去り際。岩永琴子はせめて、琵琶坂永至に真意を問いただそうとする。
「――さぁ。それは自分の頭で考えてみなよ。あと、汚いから片付けておいてよ、そのボロくず。」
そう、上半身だけになって死の運命が確定したカタリナの方へ指を指して。
「それでは、さようなら。――次会う時は全員殺してあげるよ。あはははははっ!!!」
「このやろっ――ちぃっ!?」
竜馬が追いかけようとするも、それを妨害するように鞭からゲッタービームが放たれる。その一瞬の回避を竜馬が選択した時には既に一手遅く。既に琵琶坂永至とベルベットは追いかけるには不可能な距離まで話されていた。
「りょ、竜馬さん……。」
「待ちやがれぇぇぇぇぇっ!!!」
いつの間にか竜馬の隣にいたドッピオに抑えられながらも、竜馬はその結末にただ叫ぶしかなかった。
72
:
明日の方舟たち(ArkNights)-正真正銘の怪物-
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 20:26:23 ID:???
◯
(………賭けだったが、上手くいったようだ。)
何故、岩永琴子を捕獲しようとした琵琶坂永至が捕まえたのがリュージになってしまったのか。
その全ての元凶はドッピオ――もといディアボロのスタンド『キングクリムゾン』及び『エピタフ』による予知により察知した自らの正体がバレるかもしれないという危惧からだった。
『エピタフ』の予知を事前に使い、その際に見える未来に。
『何かを確信したかのように此方に目を向けるリュージ』の姿。
それを理解した時、状況を見極め『キングクリムゾン』を発動し、岩永琴子が捕まえられそうになった所を、リュージを吹き飛ばして捕まえさせた。気を失ったのも僥倖だった。
このディアボロの不安であるが、彼は知らないもののリュージの異能『嘘発見器』の事を考えれば全くの杞憂というわけではない。念には念を入れて『キングクリムゾン』の発動時間は0.5秒にした。長く発動したままでは違和感に気付かれる可能性もあるからだ。
(少なくとも流竜馬はあの琵琶坂永至という男への怒りで俺への意識が逸れたようだったからな。)
ディアボロにとって、運命とは「試練」だ。先の出来事も、選択したがゆえに待ち受けていた「試練」を乗り越える。そして今回は何とか難を逃れた。ただそれだけの話。だがそれ以上に気になることが一つある。
(……あの男、「思い込み」がどうとか言っていたな。)
流竜馬との対峙の際の言葉。流竜馬にその力を何処で手に入れたと問われた時の返答。
実を言えば、思い込みというのはディアボロにとっては与太話と済ませられる事ではない。
スタンドも同じことである。スタンドもまた、本人の思い込みで能力の制限が左右される。
出来ると思えば、それは出来て当然なのだから。事実、チョコラータの「グリーン・デイ」がわかりやすく、心の箍が無いが故に、その能力は無差別に人を巻き込み殺す。
(……もしも。もしもの話だ。)
もしも、思い込みで『キング・クリムゾン』をさらなる位階へと進化させることが出来たのなら?
もしも、それが本当に可能であるならば?
(……いや、まだ確証ではない。この事実は今は心の奥底へしまっておくか。今は――)
確証ではないが、もしかすればイタリアどころか全地球上のスタンド使いをも凌ぐ、スタンドの枠組みを超えた何かに目覚めることが出来るかもしれない。
だが、それは今は頭の片隅に置いておき、ドッピオの視点で、この戦いの結末である、ある少女の最後を見届けることにしたのだ。
73
:
明日の方舟たち(ArkNights)-正真正銘の怪物-
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 20:26:58 ID:???
◯
「カタリナ様! カタリナ様ぁ!!」
命が、消えていく。カタリナ・クラエスの魂が消えていく。
琵琶坂永至とベルベットにリュージが連れ去られ、メアリもやっと動けるようになって、水のナイフを急遽傷口を癒やす事に、カタリナの命を繋ぐ事に必死だった。
「……カタリナさん。」
あかりの方は、座り込んだまま動かなかった。
だって、もう手遅れだったから。体半分が真っ二つになって、出血が止まらないから。
メアリ・ハントのお陰で、死ぬまでの時間がただ延長されている、ただそれだけだった。
もう、手の施しようがなかった。
「………。」
「クソっ!!!!」
岩永琴子は神妙な顔で黙ったまま、流竜馬はただやり切れない気持ちをただ吐き捨てるしか無く。
「……あか、り、ちゃん。メア、リ………。」
漸く、カタリナが口を開く。血が漏れ出して、瞳の焦点は合ってない。
メアリが出血を止めようとも、血は止めどなく斬り裂かれた下半身から漏れ出している。
誰がどう見ても、手遅れだ。
「……カタリナ様ぁ! 死なないで! 死なないでぇ! なんで、なんで止まってくれないの! 止まって、止まってぇ!」
必死に、必死に血を止めようと足掻く、無駄だとわかっているのに、子供の癇癪のように、この現実を拒絶するように。
「……ごめんな、さい。ごめんなさい、カタリナさん。」
間宮あかりは、ただ乾いた言葉で、カタリナに謝っていた。守れなくてごめんなさいと、本当に申し訳なく、周りから見ればあまりにも痛々しい姿で。
「……あはは。ほんっと、私ってば、無理ばっかしちゃうの、かな……。」
「……本当ですよ、本当に……。」
「………。」
「……大丈夫、大丈夫、だよ。二人、とも……。」
そんな二人の顔に我慢できなくて、撫でるように二人の手に触れる。既にカタリナの身体はどうしようもなく冷たくなっている。血液が巡らず、命の灯火が消えようとしていた。
「……メアリ、には。たくさん、お世話になっ、て。あかりちゃんにも、ここじゃあ、助けてもらって、ばかり、だった、かな。」
言葉を紡ぐだけでも精一杯、それでも。
「死なないで、死なないでくださいカタリナ様! これじゃあ本当にゲームオーバーじゃないですか! こんな終わり方、破滅フラグで、カタリナ様は、カタリナ様は本当にいいんですか!?」
「……なんだ、しって、たんだ。わたしの、こと。」
メアリ・ハントが自分の真実を知っていたとしても。
「……でも、さ。やっぱり、わたし、みんなが、しあわせ。そのほうが、いいか、な。」
やはり、カタリナ・クラエスという人物は、自分だけ生き残ってしまうという結末は、余りにも堪え難いことなのだ。
本当は破滅フラグを回避して生き延びたかったけれど、それでみんなが傷つくぐらいなら、やはり破滅したほうが良かったかもしれないと。
「……ごめん、ね。」
でも、やっぱり。死ぬのは怖い。友達を悲しませてしまったことは、やっぱり辛い。
「ごめん、ね、みんな。」
視界すら、覚束なくなってきた。
メアリとあかりの姿が、ぼやけて見える。
手に、力が入らなくなってきている。
「カタリナ様? カタリナ様ぁ!」
「……カタリナ、さんっ……!」
終わる。今まで破滅フラグを回避し続けようとした人生が。破滅によって終わろうとしている。
後悔は、あると思う。でも、それでもいいことはあった。
「……でも、わたし、は。――――――――――――。」
それは、みんなと出会えて。キースや、ジオルドや、マリアにメアリ。そしてあかりちゃんに出会えて。
「―――――しあわせ、だった、よ。」
よかった。一番いいたいこと、言えた。
74
:
明日の方舟たち(ArkNights)-正真正銘の怪物-
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 20:27:53 ID:???
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
雲が出て、雨が、降っていた。
次元の断裂が齎した影響で空間が歪み雨雲が発生、戦場の惨禍を洗い流すようにそれは降り注いでいる。
雨に打たれた、三人の少女がいた。
一人は幸せそうな顔で、上半身だけになって死んでいて。
一人はただ、その手からずり落ちた冷えた手を掴んだまま涙を流し。
―――そして一人は。
「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
堪えられず、叫んだ。間宮あかりは、叫び続けた。
声が枯れるまで。岩永琴子に、止められるまで。
75
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/11(日) 20:28:26 ID:???
今回のパートは以上です
次がラストの予定となります
76
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/30(金) 23:04:36 ID:???
仮投下します
77
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/30(金) 23:05:09 ID:???
紅魔館の大図書館に、本来なら配置されていない裏の出入り口が存在する。
これは単純に紅魔館の外観と内部構造があっておらず、おおよそ初見からすれば迷路みたいなものだと言うことで、あと単純に主催の思いつき、と言う一点においても勝手に作られたバックドアと言う事である。
まあ少なくとも、外からは簡単には見つからない仕様にはなっているのだが。
そんな裏口から出た際に広がる光景というのが、獣道と舗装道路が入り混じった歪な光景。
と言いつつも舗装道路側にはベンチがあったりと軽く外でタバコ休憩取るとかなら、存外悪くない景色ではある。
「あ゛――――。」
そんなベンチに、何故か妙に窶れた顔で座り込んでいるのは麦野沈利。
何故学園都市レベル5の第四位、強者である彼女がこんな場所に居るのかと言えば、シンプルに疲れた事によるものである。いや肉体的にではない、精神的にだ。
原因は間違いなく、と言うか避けられない現実というか、夾雑物が脳内に直接流し込まれた悪夢の残響というか。現状同行者たる夾竹桃の百合もの同人誌語りに耐えきれなくなって外へ出た事である。
『伝説の財宝を求めて旅に出た女の子が家族にいじめられていた幸薄お姫様を連れ出しての冒険活劇! 姫様は最初自分を含めた人間不信から女の子のこと全く信じていなかったのに女の子が身を挺して姫様守るために傷ついてばかりで、こんな自分みたいなのをどうしてそこまでして守りたいのかわからなくなった姫様が夜逃げしちゃうんだけどいつの間にか旅する間に女の子にとって姫様に恋しちゃって命より大切な誰かになっていてそれで――』
『わかりますご主人さま私はテントで女子トークやってた時のお姫様の女の子に対する恋心の吐露が好きなんですだって今までツンデレ態度続けてきた姫様がここぞとばかりにデレ全開で―――』
かれこれ1時間ぐらい聞かされたであろう。と言うかミルクよりも甘ったるい感想惚気話を聞かされた麦野の頭はその圧倒的な甘い情報量にシェイクされて溶けた。主に頭の中が。
最初は苛つきながらも相槌打っていた程度であるが、最終的に頭がおかしくなりそうになって逃げた。
この学園都市第四位が、である。不思議にも屈辱は感じなかった、その代わり脳内に何時までも反響する百合トークの言葉が反芻するばかり。
今までの人生の中でここまで「誰か助けてくれ」と心の内から叫びたがっているんだ状態になったことなど無い。多分疲れているんだろう、そうだろう、そう信じたい。信じたかった。
翌々考えれば色々ありすぎた。駅前での激闘やら魔王覚醒やら、衝撃やら未知やらの光景やら雨霰。
「………何がどうしてこんな事になっちまった。」
ふと漏れ出した言葉は、困惑とかその他諸々が多重サンドイッチ状態と化した証左でもあった。
そもそも主催の力分捕るつもりが、いつの間にか世界の危機にまで発展した。まあそれはそれで主催叩き潰すことに変わりはないから別に良い。
良いのだが、魔王が色んな意味で壁だった。思わず震えが止まらなかったあれに、自分はどうやって勝てば良い等と、弱気になってしまった。
「…………。」
地面を、土を黙って見ていた。そういや海外では土食の文化がある国は少なくない。日本でもそういう話があったと聞く。
「……いや何考えているんだあたしは。」
本気で気が狂ったような考えを一旦振りほどく。が、魔王の圧と百合トークが頭で巡りまくって頭が痛くなる。振りほどきたいのになんか勝手にまとわり付いてくる。
いつの間にか、土を手で掬っている。喰うのか、喰わないと発散できないのか? と自問自答状態に陥り、なんかもうどうでも良くなったので本当に土でも食べて気分発散しようと思った矢先に―――。
「……何やってんだ原子崩し(メルトダウナー)。」
因縁と遭遇した。最悪のタイミングで。
78
:
ギャクマンガ虚獄 〜ムギノインパクト〜
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/30(金) 23:05:43 ID:???
●
垣根帝督からの麦野沈利の印象の一言は、まあ『格下』であろう。
同じく暗部組織のリーダーを務めるもの、レベル5。だが、同じレベル5だと言っても根本的に出力が違う。垣根帝督の『未元物質』の強みは多様性だ。状況に適した手段を生み出し、対応する。それが第二位垣根帝督の『未現物質』である。
まあそれは置いといて、遺跡方面に向かっていたはずの彼が偶然見かけたのが、ベンチに座って何故か窶れて現在進行系で土を食そうとしている麦野沈利の姿と来た。
「…………。」
冷めた目で麦野沈利を見つめる。いや本当に何やってんだ、という困惑の方が大きかった。
少なくとも、麦野沈利からすれば自分への印象は最悪だろう。普通に戦闘になる可能性も既に考慮している。
だからこそ、彼女の今の状況を見れば見るほど気分が冷めてくる。正直って殺す価値もない。腑抜けたかなんて思っていたが、彼女の気質からしてあり得ないだろう。
疑問の方が湧いた。そういえばベルベットとか言うのとこいつが一緒にいたという話だ。
「……何があった?」
という訳で事情聴取と情報の聞き出しだ。今の態度と状態を見るにうまく聞き出せるか、等という打算はある。まあ妙に弱っているのだから何かしら聞き出せるだろうと。
対して麦野は、相手が垣根帝督であるという事は理解していた。だがその隣で妙におどおどしているビエンフーの姿を見て――頭が混乱していた。
混乱していた、ではなくて頭のノイズと宿敵の一人の遭遇と、変なマスコットの見かけた事による麦野沈利の頭の情報許容量が限界に達していた。
何をトチ狂ってか土を食おうとしていた所を見られたのが、トドメだった。そして、呟いた言葉は――。
『ということなのよムネチカ。やっぱり序盤の時に食べたくっそ不味いチェリーみたいな木の実を分け合う所好きなのよねぇ。キスしながら口の中で結ぶの。』
『あ、分かりますご主人さま。あの仲直りシーンはジーンと目に来ました!』
「………チェリーで仲直り…………」
「は???????????」
垣根帝督の脳内に思わずボディーブローを喰らったような衝撃が迸った。
いきなり何を言い出しているんだ、というかチェリーで仲直りって何だ、意味がわからない。というか彼女の性格的に仲直りとかまずありえないだろ、等など頭が混乱する。
因みにこの時の麦野は、夾竹桃とムネチカの百合トークが脳内に漏れ出して、その時の内容を断片的に無意識に呟いた事である。ちゃんとした意識があるかどうか不明瞭な状態。
(……どういうつもりだこいつ。チェリーで仲直りって何だ?)
「……キスが、不味い……」
(キスが不味いって何だ?! は? ちょっと待って、どういうことだ?!)
垣根帝督は混乱した。
何の脈絡もなくキスが不味いと言われたのはどういうことだか分からない。というか先程土を食べようとしたとか、妙に窶れているとか、ノイズになる情報が多すぎた。
本当に麦野沈利に何があったのだと、全くもって意味がわからなかった。
(……この人間。もしかして中身可愛い系でフ?)
そして、垣根の困惑に思わず口を挟めずにいたビエンフーが思ったのは、「彼女結構乙女寄りなのでは?」という予想であった。
「キスが不味い」という発言は、もしかしてあまりそういう事にいい思い出がないだけでは?なんて的外れな考えをビエンフーはしていた。
「……おい、さっきの言葉はどういう意味だ。」
変なことになりそうな頭を抑えながら、質問は続く。彼女が何の考えもなしに言葉を発するとは思えない。
警戒するに越したことはない、警戒は緩めない。
妙な空気の沈黙の後、麦野沈利が再び頭に浮かんだノイズのまま曖昧に返事をする。
79
:
ギャクマンガ虚獄 〜ムギノインパクト〜
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/30(金) 23:06:13 ID:???
『……あのお姫様。仲直りしたいからって女の子に自分のおっぱい揉んでっていうの大胆よね。あの時のお姫様はクズ兄貴に色々言われて自暴自棄から闇落ちしかかってたし、姫様の心情考えれば打倒ね。』
『ご主人さまはやはり友情返り咲きの部分がお好みだったでしょうか?』
『ええそうよ! 男の戯言なんか振り切って真の友情で目を覚ますのよ! それでお互い大好きだったってのを再認識して………!』
「……おっぱい揉んで。」
「は?????????????????????」
垣根帝督は混乱した。おっぱい揉んでという、そんな小中学生の性癖ぐらいにしか影響しない言葉を吐いたのだから。というかこの時点で頭がおかしくなりそうだった。
(油断させるつもりか? それともマジか、マジで言ってんのか? いや後者は絶対ありえねぇ! いや冷静になれ、こいつの魂胆に踊らされるな……!)
(だ、大胆でフ……!)
何とかまともな思考をしようとする垣根に対してまたしても的はずれな思考を突き進むビエンフー。
もはや彼の中では麦野は無意識的に恋する大胆な乙女認識になってしまっているのだ。
もしこれを当人らに知られれば間違いなくぶちのめされる事を知らずに。
一方の麦野は、未だ混乱し半分混濁している意識の中、夢遊病の如く朧気な景色。何とか目を覚まそうと彼女なりに必死だった。
(………。)
が、勝手に脳内に浮かんだワードというのは無意識下では何かと漏れやすいもの。
望んでもいないのにあの二人の百合トークの内容が勝手に脳内に思い浮かんでしまう。
そして、次に発する言葉は、麦野沈利の本心には一切の無関係。
「……る。」
「………る?」
そしてそれを、垣根帝督もビエンフーも一字一句聞き逃さなかった。
『……あんまりよぉぉぉっ!』
『ご、ご主人さま落ち着いてください……! 後半の巨大毒蛇戦でふらぐは建ってしまってはいましたが、このような結末は……。』
『お姫様が女の子を自分と言う呪いから解き放つためにわざと嫌われて悪役に徹するのはいいわ。殺し合いの百合も憎まれ口叩きながらモノローグで激重感情は私もやるわよ! でも、それでも悲しいに決まってる!』
『姫様は家の業と言う名の過去逃げられず、少女はすべてを失っても尚姫様を救い出そうとして最終的に相打ち。悲しい結末です。ですが、最後に本当に分かり合えただけでもお二人にとっては救いだったのでしょう。』
『……ええ、そうね。「例えどれだけ憎み合っても傷つけあっても、それでも私は貴方が好きで、来世に生まれ変わっても私は貴方に何度でも恋をします。」……歳にもなく号泣しちゃったわ。』
『ご主人さま、その気持ちわかります………。』
「……例えどれだけ憎み合っても傷つけあっても、それでも私は貴方が好きで、来世に生まれ変わっても私は貴方に何度でも恋をします。」
恐ろしく優しい声で、麦野沈利が朧気な意識でそう反復してしまったのだから。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「……でフ。」
木枯らしが吹いて、沈黙。
いや、この場にいる音という音が一瞬だけ何もかも静止する。
そして、口を震わせ、垣根帝督はただ一言、困惑と混乱の表情で。
80
:
ギャクマンガ虚獄 〜ムギノインパクト〜
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/30(金) 23:06:46 ID:???
「ええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!???????????」
体中が張り裂けそうな程に、絶叫した。
「えっおまっ、はぁぁぁっ?!?! 」
回りくどい言い回しだったが、完全に「私が貴方のことが好きです」と言っているようなものだった。しかもくっそ重い感情的な意味合いだった。
もしこの場に心理定規がいたなら早急に能力使わせてなんとかしている、というかなんとかしなければ不味いと本能的に体中が警鐘を鳴らしている。
訳が分からない。コレばっかりはどれだけ脳内で演算しようにも解が出ない。出るわけがない。
「何だこりゃ、何が一体どうなっちまってんだこりゃぁ!?」
垣根帝督は混乱した。いや、これ以上無くパニクっていた。
一体何を何処でやらかした、一体何処で間違えた? 余りにも突拍子かつ予想外かつ意味不明すぎて頭を抱えていた、文字通り。
「……やはり、そうだったでフか!」
そしてビエンフー、完全に間違っている己が予想が確信に至ったと勘違いした。
間違いない、これは愛の告白だと、何処で何があったか知らないけれど、彼女は誰かに恋をしていたのだと。
そしてその恋の相手というのが、ビエンフーの頭の中では。それを確信して、叫ぼうとして。
「おいビエンフー、今はさっさとここから逃げ――」
「……ちょっと麦野、一体何処に行ったのかしらと思ったらこんな裏口があっただなんて―――」
「ご主人さま、こんな所に」
頭がこんがらがって一旦退散しようとした垣根帝督、いなくなった麦野を探しに同じく裏口からやって来た夾竹桃が居合わせたこのタイミングで。
「………あ?」
漸く意識が正常に戻った麦野沈利が正しく垣根帝督の姿を認識したタイミングで。
「この女の人は、垣根さんの事が大好きなんでフね!!!!」
ビエンフーは、断言した。
再び、木枯らしが吹いて、世界が冷たく沈黙する。
「……あれ、何だか、すごく寒なかった気がするでフ。」
ビエンフーが、空気が変わったことを理解する。
(ビエンフーの頭の中では)彼女が垣根の事が大好き、という結論だ。
やっぱり人の恋路をバラしてしまったのは不味かったのか、などと考えた。
「あ、大丈夫でフ。二人の恋路はこの――――――あれ?」
いつの間にか、般若の顔をした麦野沈利と垣根帝督の姿が、ビエンフーの前と後ろに立ち尽くしていた。
「あ、あっれぇ……、お二人共、すっごく怒ってる?」
「………」
「………」
ビエンフーからは、二人の表情は伺い知れない。
恋心バラしが間違いなく琴線に振れたのか、それとも何か別の要因なのかは知らないが、ただ確かなことは。
ビエンフーは、学園都市最強のレベル5能力者二人を、完全にブチギレさせてしまった、と言うことである。
「……………………あっ。」
そして、ビエンフーの頭が盛大に警鐘を鳴らした時には既に遅し、麦野沈利と垣根帝督の全力全開の拳がビエンフーに直撃。
「あっびゃあああああああああああああっっっ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!!?!?!?」
そのまま盛大に、空の彼方へと吹き飛んでしまったのであった。
81
:
ギャクマンガ虚獄 〜ムギノインパクト〜
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/30(金) 23:07:19 ID:???
●
「……おい、さっきの言葉、マジか?」
「……そんなわけねぇだろ。思い出したくもねぇ出来事の中身呟いちまったんだよ。」
「……ああ、そうか。そうだろな。うんそうだな。……俺は何も聞かなかった、いいな?」
「……ああ。私もテメェには何も言わなかった、それでいい。……ただの悪夢だ。」
盛大に最低なアクシデントは収まり、第二位と第四位が背中合わせに、お互いの表情を全く見ないでの対話だった。
麦野沈利から垣根帝督の事は聞いていたが、初接触がこんな形になるとは、全くもって予想してなかった。
いや、予想できるわけがなかった。と言うか現在進行系で気まずかった。
「一応、リベンジしたい相手でしょ、いいの? 私としては彼にも協力を申し入れたいところだから決めかねてるんだけれど。」
「………ああ、いい。こいつとの決着はすべて終わってからにする。」
魔王の一件や考察の事もあり、夾竹桃も麦野沈利に事前には聞き、答えがこれだった。
男であることは少々思うところはあれど、少なくとも彼の力は今後のためになる。それにライフィセットたちと出会っていると来た。多少いざこざはあるだろうとは思うが、こうも何かあっさり行きそうな流れはこの際好都合だ。
「……っ、付きやってやるよ。……テメェらに組みするかは情報次第だ。」
「…………何だか、申し訳ないわね。」
何だかよくわからないが、なんか勝手に弱み握ったのかよく分からいというか、どうしてこうなったのか夾竹桃的にも困惑極まりなかった。
だが、この第二位、垣根帝督が協力までとは言えわず情報の交換等に付き合ってくれるかもしれないのだから、重畳というやつだ。もしかしたら、本当に脱出までの協力関係になってくれるかもしれない。
「ムネチカ、彼を案内してあげて。」
「……わかりましたご主人さま。」
そんな訳で、先に垣根を先行させる形でムネチカに道案内を頼み、裏口より紅魔館へと消えていく。
「……ええと、麦野。……大丈夫、私は貴方を信じてるわ。あんな男好きなわけないよね。うんそうよね。私が話してた事、疲れの無意識下で漏れちゃっただけよね、うん。」
そう、何だか辿々しい言い方で、励ましているような優しい声色で夾竹桃が言葉を掛ける。
どう考えても気を使っているようにしか見えなかった。まあ先の問題発言聖隷の言葉がただの嘘っぱちだというのは先の二人のやり取りで判明したのだから。
そして、肝心の麦野はというと。
「不幸だあああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!」
ついさっき起こったことを忘れたくて、絶叫した。
夾竹桃は、優しく麦野の手をつなぎ、一緒に紅魔館へと戻っていった。
※ビエンフーは空の彼方へと吹き飛びました。何処へ吹き飛んだかは後続の書き手にお任せします。
【F-6/紅魔館/一日目/日中】
【麦野沈利@とある魔術の禁書目録Ⅲ】
[状態]:全身にダメージ、精神的疲労(超極大)、百合トークに対しての精神的トラウマ(小)
[服装]:いつもの服装(ボロボロ)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:主催共の目論見をぶっ潰す。願いを叶える力は保留。
0:首輪の解除コードとやらを解明するための情報探し。
1:……どうしてこうなった、どうしてこうなった。
2:フレンダ、テメェに二度目はねぇ。ぶち殺し確定、今度は灰も残さねぇ。
3:ベルベットに関しては警戒。『蒐集の力』は彼女にはまだ伝えない。
4:第二位との決着はすべてが終わってからにする
5:もう百合トークは勘弁してくれた、マジで。
6:あたしは何も言わなかった、いいな!?
[備考]
※アニメ18話、浜面に敗北した後からの参戦です
※3人でアイテムを結成しました
※ベルベットがLEVEL6に到達したと予想しています。
※夾竹桃の知っている【鬼滅の刃、虚構推理、緋弾のアリア、ドラゴンクエストビルダーズ2、新ゲッターロボ、ダーウィンズゲーム、東方Project、とある魔術の禁書目録、スタンド能力、うたわれるもの、Caligula】の世界観について大まかな情報を共有しました。
【夾竹桃@緋弾のアリアAA】
[状態]:衣服の乱れ、ゲッター線に魅入られてる(小)、夏コミ用のネタの香りを感じている。困惑(小)
[服装]:いつものセーラー服
[装備]:オジギソウとその操作端末@とある魔術の禁書目録Ⅲ、胡蝶しのぶの日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、シュカの首輪(分解済み)、素養格付@とある魔術の禁書目録Ⅲ、クリスチーネ桃子(夾竹桃)作の同人誌@緋弾のアリアAA(現地調達)、薬草及び毒草数種(現地調達)、無反動ガトリングガン入りトランクケース@緋弾のアリアAA(現地調達)
[思考]
基本:間宮あかりの秘毒・鷹捲とゲッター線という未知の毒を入手後、帰還する
0:主催の思い通りになるつもりはない。
1:これ以上の『覚醒者』の誕生は阻止したい
2:テミス及びμの関係者らしき参加者の勧誘か誘拐を検討。岩永琴子はなんかベルセリアが乗り気らしいけど……
3:首輪を解除するためのコードを調査
4:神崎アリア及び他の武偵は警戒
5:ゲッター線の情報を得るためにゲッターチームから情報を抜き取ることも考慮
6:夏コミ用のネタが溜まる溜まる...ウフフ
7:なぜ書いた覚えのない私の同人誌が...?
8:ええと麦野? 大丈夫、大丈夫よ。私は信じてるからね、うん。
[備考]
※あかりとの初遭遇後からの参戦です
※3人でアイテムを結成しました
※晴明からゲッター線に関する情報を入手しました
※隼人からゲッター線の情報を大まかに聞きました。
※『今の自分が本物ではない』という琴子の考察を聞きました。
※隼人・ビルド・琴子・リュージ・アリアと共に【鬼滅の刃、虚構推理、緋弾のアリア、ドラゴンクエストビルダーズ2、新ゲッターロボ、ダーウィンズゲーム、東方Project、とある魔術の禁書目録、スタンド能力、うたわれるもの、Caligula】の世界観について大まかな情報を共有しました。
※隼人からゲッター線について聞きました。どれだけの情報が供給されたかは後続の書き手の方にお任せします。
【ムネチカ@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:衣服の乱れ、負傷(中)、精神崩壊、夾竹桃への忠誠心(絶大)、忘却(中)、発情(中)
[服装]:いつもの服装
[装備]:ムネチカの仮面@うたわれるもの
[道具]:基本支給品一色、大きなゲコ太のぬいぐるみ@とある魔術の禁書目録(現地調達)、
[思考]
基本:ごしゅじんさまにしたがう
0:ごしゅじんさま、この本、この本すごいです……!
1:ええと、何この、何……?
[備考]
※参戦時期はフミルィルによって仮面を取り戻した後からとなります
※女同士の友情行為にも理解を示しました。
※画面越しの志乃のあかりちゃん行為を確認しました。
※夾竹桃の処置の結果、何もかもを忘れて夾竹桃に付き従う忠犬になりました。恐らく今後ライフィセットが生きていると判明しても彼女の壊れた心は、よほどのことがない限りは戻らないでしょう。
【垣根提督@とある魔術の禁書目録】
[状態]:疲労(小)、全身に掠り傷、強い決意、混乱(大)、精神的疲労(極大)
[服装]:普段着
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3、ジョルノの心臓から生まれた蛇から取り出した無惨の毒に対するワクチン、ジョルノの首輪、マギルゥの首輪、妖夢の首輪、リゾットの首輪、、土御門の式神(数個。詳しい数は不明)@とある魔術の禁書目録、マギルゥの支給品0〜1、ジョルノの支給品0〜3、顔写真付き参加者名簿、リゾットの支給品2つ
[思考]
基本方針: 主催を潰して帰る。ついでにこの悪趣味なゲームを眺めている奴らも軒並みブッ殺す。
0:成り行きで出会っちまったが、この夾竹桃とかいう女から色々聞く。場合によっては協力関係も検討。
1:とりあえず、大いなる父の遺跡の方角に向かいアリア達に伝言を伝える
2:あの化け物(無惨)は殺す。
3:リゾットの標的だったボスも正体を突き止めていずれ殺す。
4:未元物質と聖隷術を組み合わせた独自戦法を確立する。道中で試しながら行きたい。
5:異能を知るために同行者を集める。強者ならなお良い。
6:俺は何も聞かなかった、いいな? いいな!?
[備考]
VS一方通行の前、一方通行を標的に決めたときより参戦です。
※ジョルノ、リゾット、マギルゥの支給品も垣根が持っています。
※未元物質を代用した聖隷術を試しました。未元物質を代用すると、聖隷力に影響を及ぼし威力が上がりますが、制御の難易度が跳ね上がります。制御中は行動が制限されます。
※首輪の説明文により、自分たちが作られた存在なのではないかと勘繰っています。
※ブチャラティ達と情報交換をしました。
82
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/30(金) 23:07:54 ID:???
仮投下終了しました
83
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/30(金) 23:24:12 ID:???
ムネチカのセリフ周りで言われた部分を修正案を挙げました
『わかりますご主人さま私はテントで女子トークやってた時のお姫様の女の子に対する恋心の吐露が好きなんですだって今までツンデレ態度続けてきた姫様がここぞとばかりにデレ全開で―――』
↓
『わかりますご主人さま私は野宿で二人が話し合っていた際のお姫様と女の子に対する恋心が好きなんです。これがご主人さまが言っていたつんでれなる属性の、そのでれの発露という魅力だったのですね!』
『ご主人さまはやはり友情返り咲きの部分がお好みだったでしょうか?』
↓
『ご主人さまはやはり、そういう友との絆を取り戻す流れがお好きなのでしょうか?』
『ご、ご主人さま落ち着いてください……! 後半の巨大毒蛇戦でふらぐは建ってしまってはいましたが、このような結末は……。』
↓
『ご、ご主人さま落ち着いてください……! 後半で嫌な予感はしていましたが、このような結末は……。』
『姫様は家の業と言う名の過去逃げられず、少女はすべてを失っても尚姫様を救い出そうとして最終的に相打ち。悲しい結末です。ですが、最後に本当に分かり合えただけでもお二人にとっては救いだったのでしょう。』
↓
『姫は家の業と言う名の過去逃げられず、少女はすべてを失っても尚姫様を救い出そうとして最終的に相打ち。悲しい結末です。ですが、最後に本当に分かり合えただけでもお二人にとっては救いだったのでしょう。』
84
:
◆2dNHP51a3Y
:2022/12/30(金) 23:29:40 ID:???
時間帯がミスっていました
正しくは【F-6/紅魔館/一日目/午後】です
85
:
◆diFIzIPAxQ
:2023/01/26(木) 13:04:39 ID:???
仮投下させていただきます
86
:
とある少女の薄明邂逅(エンカウント)
◆diFIzIPAxQ
:2023/01/26(木) 13:07:06 ID:???
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……!!」
少女―――黄前久美子はただ、ひたすらに走っている。
目から涙がとめどなく溢れ、口から涎が垂れていても、涙もぬぐわず涎も拭こうともせずに、両手は走る為に一心不乱に振っている。その目も焦点はまっすぐ向いていないが、これは疲労が原因では決してない。
「私は、わたしは……!!」
何処に向かうという事はなく、誰かに追われているという事もなく、ただ一人で恥も外聞もなく走り続けている。
何の為に少女は走っているのかと考えるのであれば、それは恐らく「現実から逃げる為」。
「ちがう……!あれ、は……!!」
少女は先ほど、ジオルド・スティアートという青年を殺害した。青年は彼自身が愛している人物を生かす為に殺戮を行い、彼女は瓦礫を使って疲労困憊の状態だった青年を撲殺をした。
その部分だけみれば、これ以上の被害を出す事はなくなった為少しは喜ばしいことかもしれない。
しかし殺した事の正当性と彼女の精神の捉え方は全くの別。
ましてや少女は一日前まで命の取り合いとは無縁の日々を送っていたのだ。
「悪くない……!!私は、悪くない……!!!」
殺人の一件だけではない。この殺し合いを主の目的とした島の中で多くの悲しみや苦しみを経験してきた。
どの出来事も彼女に大きな悲しみが抱え込ませたが、そばで支えてくれた同行者達のおかげもあり、なんとか立ち上がり、本物ではないとはいえ母校の北宇治高等学校にたどり着いた。
その同行者達も亡くなり、高校も神々の戦いとビルダーの激戦を経てクレーターの跡地となった。
頼れる人も、縋れるモノも最早なにも無い。今の彼女は精神の限界を遥かに超えてしまって、残酷な現実(じごく)から逃げる事しかできない、ただの弱い少女であった。
「彼が……、かれが悪、ギャ!!」
どれくらいの時間を走っているのか定かではないが、何十分も全速力で走れば大体の人間は限界が来る。吹奏楽部の鍛錬の為に肺活量や体力は全く無いわけではないが、それでもここまで走り続けられたのが奇跡の様なものである。
疲労で縺れた足が絡まる事で躓き、ズザサッと前かがみの状態で転んでしまった。反射的に両手で頭をかばった為、顔から落ちる事はなかったが、それでも手足のあちこちは擦り傷が出来てしまっていた。
転んだ事で、ここに来て久美子は走り続けてから初めて止まる事になった。そして彼女は、これまで衝動的に走っていた事をおぼろげながらも認識し、肩で息をしながら辺りを見渡し始めた。
「…………ここ、は……、駅、の………?」
ゼエゼエと全く息が整わない状態で久美子が目にしたのは、駅のホームと思しき場所。ここで地図を見れば、今の場所がD-7・スパリゾート高千穂周辺だと気づけただろうが、今の彼女にそんな動作を行う余裕はおろか考えるという事すらも全くない。
久美子は、かつて来た道を大体逆戻りしたことになったという事実をいまだに認識してはいないが、立ち上がりゆっくりとホームに移動し始めた。
―――この地で運に恵まれない事が多い彼女であったが、ここでまた一つ不幸な入れ違いがあった。
彼女は、線路の東側沿いをずっと走っていた(最も彼女は走るという事そのものに全て意識が向いていた為、線路など見えてなかったし知らなかった)のだが、ここで線路の西側沿いを走っていたのなら、神隼人の言葉に従って南下してきた平和島静雄とレインの二人組と遭遇していた可能性があり、恐らく保護されていたのだろう。
しかし、反対方向で走っている彼女に気づくことなく、彼らとコシュタ・バワーは北宇治高校方面に一直線に向かい、結果的に黄前久美子はここまで一人で走る事になったのだ。
ホームの中に入り、ベンチに弱弱しく座り込む久美子。いまだに息は整っていないが、安心なんて気持ちは全く浮かんでこなかった。単純に全速力による酸欠に近い状態で、脳がまだ正常に回っていない為か、あるいは考えるという事を本能で否定している為か。
ボーっとした表情で、ただ前を見ている久美子。1分、2分と時間が経過しても何も変わらず、5分程過ぎた頃でようやく息が整って頭が回りはじめ、言葉を発し始める。
「……なんで……、私は…………」
一言、口にしてそのままに無意識に両手で顔を覆う。同時に、ベチャ。と顔に汚いナニカがついた感覚と鉄や生もののような異臭で咄嗟に手を放し、左右の手のひらを見る。
「………………あ」
走った事による汗と、転倒した時の土などで、幾らか汚れや臭いは落ちたが、その程度では「人の脳漿や返り血」が落ちきる事なんてない。
汚れてない場所なんてないといった程に真っ黒な両手や返り血で真っ赤な制服を見て、ようやく、自分がなぜ走っていたのか、走る前に何を行ったのかを思いだした。
「………………もう……嫌ぁ―――」
―――彼女は限界ととうに超えていた。ただでさえいきなり殺し合いに参加された事のストレスや自分を守ってくれた同行者の死に何気なく放った言葉による自己嫌悪と、精神は殺し合いが始まった時と比べて弱り切っていた。
そこに、自分が犯した罪を改めて突き付けられてしまっては、力を持たない彼女は、最早全てを壊れるしかない。
しかし幸か不幸か彼女の本能は、精神を破壊して現実から逃げる事よりも、今目にしている現実を否定する方を選択してしまったそうで。
ふ、と目に光を失い、身体をベンチのある方向に倒れ、腕はベンチから外れて宙ぶらりんの状態になり、気を失った。
それが、黄前久美子という殺人者に許された、最後の防衛手段であった。
87
:
とある少女の薄明邂逅(エンカウント)
◆diFIzIPAxQ
:2023/01/26(木) 13:08:39 ID:???
▲ ▲ ▲ ▼ ▼ ▼
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……!!」
場所は変わり、太陽の光があまり当たらない森林の中を一心不乱で走る少女がいた。名は、高坂麗奈。
彼女もまた、ひたすらに後ろを振り返ることもなく、自分の身体を傷つける事も厭わずに走り続けていた。
「あぁ……!!うぁああぁあ……!!」
目の焦点は虚ろで、まさに錯乱しているといった状態でありながら、獣の様な速さで道なき道を駆けていく。
この少女もまた、これまでの取り巻く環境や自身の犯した過ちから目を背け続けている。
自分を縛っていた怪物は―――こっちに来ているか、わからない。
自分を傷つけてくる魔女は―――どうなっているか、わからない。
自分に手を差し伸べた恩人は―――生きているのかも、わからない。
わからない、わからない、わからない。
考えたくても理解したくない。納得なんて出来る訳がない。何もかもから逃げ出したい。
最早何処に向かうべきなのか、これからどうするべきなのか、思考を働かせてる余裕なんてどこにも無い。
今の麗奈にある思いは「ここから逃げる」「とにかく離れる」という逃避のみ。
しかし、今の彼女は鬼舞辻無惨の手によって、既に人ならざるモノ、闇の中でしか生きられぬ鬼に変わってしまっている。
森林が生い茂っていた地帯を抜けて、陽の光を当たる所に向かってしまっては―――
「―――ッ!! ガアアアァアアアッ!!」
突如、十代半ばの少女から発したとは思えない叫び声をあげたと思ったら、即座に普通の人体では到底不可能な速さで後ろに跳躍して、自身の身体を襲った激痛を探ろうとする。
激痛の原因はすぐにわかった。左腕の肘から先が、塵となって無くなっていく。
腕がなくなってる。と言葉を発しようとして、自分は先ほどまで腕を切断されたり10本の指を全て折り曲げられた事を思い出し、そして自分が鬼という存在に気が付いたらされていた事を思い出した。
―――彼女はこれまで鬼の最大の弱点である太陽の光を克服する要因であったデジヘッド化は、同じくデジヘッド化していた鬼舞辻無惨と距離を取った事で解除をされていた。しかし、それがプラスに働くという訳ではない。太陽は沈みつつあるとはいえ未だ顕在。その様な刻に、陽光こそ最大の弱点である鬼が放りだされては、本来ならば死は避けられない。
幸いにも、今彼女がいる場所は陰っている場所である事や、周囲には陽を遮る木々や建設物があった為、むやみに走り回らなければ、移動する事そのものは問題はないようには見える。
しかし、彼女が今いる場所から動かないのは日光とは別の部分である。
先ほどまでの錯乱しながら走っていた為、思考を行うことなどとても出来なかったが、一時的に足を止めて自分の姿を見たことで、僅かばかりだが、少しばかり冷静になる事は出来た。
だが、混乱しながらも頭を働かせる事で、自分の今置かれた絶望的な状況を自覚してゆく。
自身は人ならざる化物になった。そうした張本人が今も追ってきてる可能性が高い。誰か助けが来るなんて望みは、間違いなくない。
考えれば考えるほど八方塞がり。自身の手持ちはどれも戦えるものではなく、先ほどは勢い任せで魔女を殴りこんだが戦闘の心得などない為負けてしまう程の拙い戦闘力。追ってきている相手が来たら、これまで同様に痛め付け、逃げることなんてできない様に生き地獄を味合わせてくるに違いない。抵抗など無意味。
そう考えるだけで、身体の全身に悪寒が走りガタガタと震えてしまう。さっきまで何も考えずに走っていたのに、今度は一歩も恐怖で動けなくなってしまっていた。
いっその事ここで太陽の光を全身で浴びて、この世からいなくなった方が総てが楽なのではないのか―――。
そんな考えが脳に思い浮かぶ。本来の彼女では到底考えないだろう発想が、地獄に垂らされた蜘蛛の糸の様に素晴らしいモノに思えてしまう。
陽が沈みつつある現状、太陽を浴びて死ぬなら、今しかない。
88
:
とある少女の薄明邂逅(エンカウント)
◆diFIzIPAxQ
:2023/01/26(木) 13:12:42 ID:???
「うぅ……」
絞る出すような声を出しながら震える麗奈。それでも、身体を太陽にさらすことはなく、頭を抱え額に地面につけ、もがく様に悩み苦しむ姿をさらしている。
齢15、6にしての自死。人の一生、或いは鬼としての生涯と考えても短いモノ。それでも彼女なりに沢山の出会い、沢山の経験、沢山の想い出を築き上げ、楽しかった頃の記憶をさながら走馬灯の様に思い出そうとしている。
なのに―――。
―――………お前はただ私の質問に答えれば良い。それ以外の発言は許さないーーー
―――………お前はこれから私の従者として、私に尽くしてもらう。先程も言ったが拒否権はないーーー
―――………キャハハハハハハッ!! ねぇねぇ、高坂さん、痛いですかぁ? 苦しいですかぁーーー
―――………もういい加減うぜえんだよ、てめぇは!!ーーー
「うううぅううぅ……!!」
―――脳内に思い浮かぶのは、この殺し合いに巻き込まれてから自身に受けた苦痛や痛み、絶望的な事ばかり。
魔女に殺されかけた時にはちゃんとした思い出を駆け巡れた感覚があったが、今は出来ないのは、その後の自身の犯した過ちによってただの被害者ではなくなってしまったと強く自覚している事が理由なのかは定かではない。
わずか18時間にも満たない出来事が、これまで生きてきた全ての想い出をどす黒いペンキで塗り替えられていく様な感覚に陥る。
「……このままじゃあ、私は何の為に生きてきたの……?」
『特別』に憧れていたのに、ボロ雑巾の様に扱われて、そして誰にも知られず無意味に生涯を終えるなんてとても惨めで無様で情けなくなってくる。
「私は、こんな目にあう為にここまで頑張ってきたの……?」
「そんなのは……嫌だ……」
「このまま何も出来ずに死ぬなんて、一方的にやられて終わるなんて、嫌だ……」
ウィキッドを一心不乱のに殴っていた時と似た思いを彼女は馳せる。
あの時はウィキッドが反撃に殴り返してきた事や、命を終わらせられる寸前だった為に悲しみに耽る余裕もあまりなかったが、周囲に誰一人いない状況の今は、沸々と湧く思いに向き合える。
「私は……、死にたくない……。こんな場所で、終わりたくない……」
ゆっくりとした動作だが彼女は立ち上がり、陽の光に当たらないに身体を動かし始める。
生き残りたいという、生物が持つ根本的な欲求。結局の所この思いが高坂麗奈が自殺を選ばなかった
自分を今の状態にさせた当の本人である鬼舞辻無惨が抱く根底的な思いと同一なモノだとは、麗奈は気づいていないし、知った所で理解したくないだろう。
「死んで、たまるか……。生きて、滝先生に……会いたい……」
高坂麗奈と鬼舞辻無惨が似て異なるいう事を挙げるならば、それは生きる理由。
鬼舞辻無惨はとにかく自分が死なない、自分が生き残ればいいという生存欲求に特化している。彼が長年掛けて選別してきた十二鬼月も、言ってしまえば彼が生存確率を上げる為の捨て駒でしかなく、半数を占めた下弦の枠も大半は無惨の手によって処分・解体された。
しかし、高坂麗奈は違う。明確に生きて行いたい事があった。生き延びた先に出会いたい人がいて、伝えたい言葉があった。
滝昇先生。自分が北宇治高等学校に入学する最大の理由になった、麗奈が「愛している」人
あの人は化け物になって、人じゃなくなった私を知ってどうするのだろうか。否定するのだろうか。
それでも、また会いたい。どう思われていてもその顔をもう一度見たい。私の想いを伝えたい。
「それに……、ヴァイオレットさんと、鎧塚先輩に……、もう一度、会わないと……」
そして、再開したい人物は他にもいた。
化け物になった自分を受け入れたのに、自分を衝動に駆られて血を吸ってしまった、この会場で初めて会った人。
独りで逃げだしたと聞かされ、その言葉を鵜呑みにして心を揺れてしまっていた、一度は再開できた学校の先輩。
彼女たちにももう一度会って、今までの事を謝りたい。守って欲しいとか一緒にいて欲しいとかはもう無理だろうけど、それでも言葉を伝えたい。
そんな思いが抱きながら、歩き始める麗奈。本来の彼女と比べれば随分と後ろ向きな考えだが、それでも無惨に支配されていた時や逃げる頃だけだった時と比べれば、瞳の光は幾らか取り戻していた。
「まずは……、月彦さんや、水口さんから離れないと……。それも、少し休めそうな場所で……」
彼女が向かっている方角は、東のスパリゾート高千穂。病院も行先として少し考えたが、この殺し合いの中で数少ない穏やかな時間を過ごした場所で休みたいと、太陽が沈みつつある会場で足を動かしていった。
―――もし、ここで安易に北宇治高等学校に逃げていたら、行きそうな場所だとだと目星をつけていた鬼舞辻無惨に捕まっていただろう事を考えると、結果的に彼女は一つ危機を乗り越えた。
―――もっとも、彼女はその様なありえた未来を知る事などなく、鬼同士の鬼ごっこは、これからも続いていくだろう。おそらく、鬼という存在がこの殺し合いの会場からいなくなるまで。
89
:
とある少女の薄明邂逅(エンカウント)
◆diFIzIPAxQ
:2023/01/26(木) 13:14:42 ID:???
▲ ▲ ▲ ▼ ▼ ▼
「あれ、私……」
私、黄前久美子は、パチリと目が覚めて、心なしか重たい身体を起き上がらせました。
どうやら私はホームのベンチで酔っ払いの様に寝込んでいたそうです。やけに熱を帯びた暖かい身体でも、外で無褒美で寝てたら風邪を引いてしまいます。
今が何時なのかはすぐには確認出来なかったですけど、駅のホームの蛍光灯に明かりがついており、ホームの周り以外は陽が殆ど沈んでいるのか先が見えづらい程に暗くなってきていることから、夜が近い事は脳がボンヤリとした状態でも理解はできました。
どうして私はホームにいるのか、そう考えようとしてすぐに思い出しました。 思い出して、しまいました。
顔がなくて、それでも私を気遣ってくれていたセルティさん。自分の目の前で命を失ったセルティさん。
厳つい顔つきだけどずっと一緒にいてくれた弁慶さん。火だるまになり全身に火傷を負って倒れている弁慶さん。
私の言葉で苦しませてしまったみぞれ先輩。私を庇おうとして炎に飲み込まれたみぞれ先輩。
目の前で次々と人を傷つけていくジオルド……さん。見えちゃいけない中身が見えてる程に頭が潰れてるジオルドさん。 わたしが、ころした、男の人。
「あ……あぁぁああああぁああぁ!!!」
私は自分でもここまで声を出す事が出来るのかと思いたくなる程に叫び声をあげていました。
私が殺していないと否定したくても、てのひらや服装にベッタリとついた汚れは私が行ったのだと突き詰めて。
私は悪くないと思い込みたくても、人殺しから全力で目を背けきれる程心は強くなくて。
それでも自分があのような殺し方をした事を、人を殺したという事を受け入れるには到底受け入れたくなくて。
そんな考えをしているうちに、心身ともに限界に来ているという事を、胸の下辺りからこみ上げてくるモノを吐き出してようやく少しだけ自覚できました。
「オ゛……エ゛ェ゛ェッ」
吐いた事で気持ちが軽くなる―――なんて事は無く、その勢いのまま2度、3度と四つん這いの状態で胃の中のモノを全て吐いてしまいました。
ここじゃない別の駅の待合室で弁慶さんに渡されて飲んだジュースも、この半日以上経った殺し合いの中で僅かに摂取したモノも、汚染物となって何もかも口から出て行ってしまうのは、この世界での思い出が汚れていくように感じ、そう思っただけでまたえづいてしまいました。
やがて吐き出せるものはなくなり、鼻を刺す刺激臭と口の中の残ったモノの残りの感触で、ただただ苦しいだけになり、肩で息をするのが精一杯の状態になりました。
その体勢のまま、ポロポロと涙が流れ、鼻先を伝い、吐しゃ物の中に落ちてゆくのを見ながら、私の心には思いが沸き上がってきます。
どうしてこうなってしまったのだろう。
私は、ただ吹奏楽部の皆と一緒に全国大会を目指していただけなのに、どうして人を殺してしまう様な事をしたのだろうか。
こんなみんなが不幸になるだけの殺し合いに巻き込まれる様な悪い事を、私はしていたのだろうか。
そんな疑問が思い浮かんでは消えて、消えては思い浮かんで、答えなんて出せずに時間だけが1秒10秒と過ぎていきます。
そして3分くらい経った頃に、ふと何か音が聞こえた気がして、私は顔を上げました。
少しだけ耳をすませると、それは誰かが走ってくるかのような、逃げる様な不規則な足音の様な音が聞こえてきました。
「ヒッ」
誰かが来る。そう分かったら反射的に声が出て四つん這いの体勢から尻もちをついた状態に身体が自然と動いていました。
目を左右に見渡しても、今のホームには私以外の人がいる気配はなく、これからやって来る人と二人きりになる状態になるそうです。
「た、助けて……」
逃げる事も隠れる事も、ましてや自衛するなんで考えられず、両腕で抱えるように身体を覆い、目で見るだけしか出来ません。
こっちに来ている人の姿は暗闇で見えないですけと、ホームの明かりが目印になっているのか、ドンドンこちらに近づいているのが私でもわかります。
やがて、線路沿いの反対側から姿をあらわしたその相手は、艶は落ちているけど長い黒髪をした、見慣れたセーラー服を着ている女の人で―――。
90
:
とある少女の薄明邂逅(エンカウント)
◆diFIzIPAxQ
:2023/01/26(木) 13:16:39 ID:???
「もしかして、麗奈、なの…?」
「え……、嘘。久美、子……?」
▲ ▲ ▲ ▼ ▼ ▼
黄前久美子と高坂麗奈。
本来なら、同じ学校・同じ吹奏楽部で研鑽に励み、青春を謳歌し、血生臭い闘争や非日常とは無縁な日々を送っていた乙女二人。
この殺し合いにおいてそれぞれ形は違えど、血を流し、心を傷付き、殺人という罪を犯し、最早逃げるしか無かったか弱い少女達は。
奇しくも両者が共に逃げた先で再開を果たし―――。
そして、3度目の放送が、始まった。
【D-7 スパリゾート高千穂の隣接したホーム/夕方(放送直前)/一日目】
【黄前久美子@響け!ユーフォニアム】
[状態]:全身にダメージ(絶大)、全身に火傷(冷却治療済み)、疲労(絶大)、精神的疲労(絶大)、右耳裂傷(小)、自己嫌悪、半狂乱、身体のあちこちが血と汚れまみれ
[役職]:ビルダー
[服装]:学生服
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、デモンズバッシュ@テイルズオブベルセリア、セルティ・ストゥルルソンの遺体。
[思考]
基本方針: 殺し合いなんてしたくない。
0:麗奈なの……?
0:違う。
0:私じゃない。
0:逃げたい。
1:(岸谷新羅さんに、セルティさんを届ける)
2:(ロクロウさんとあの子(シドー)を許すことはできない)
3:(あすか先輩...希美先輩...セルティさん…)
※少なくとも自分がユーフォニアムを好きだと自覚した後からの参戦
※夢の内容はほとんど覚えていませんが、漠然と麗奈達がいなくなる恐怖心に駆られています
※ロクロウと情報交換を行いました
※ビルドの『ものづくり』の力が継承されました。いまはこのロワでビルドがやったことが出来るだけですが、今後の展開次第ではもっとできることが増えるかもしれません。
※思考欄の()内の項目は今はロクに考えられていません。落ち着いたら改めて考えられるかもしれません。
【高坂麗奈@響け!ユーフォニアム】
[状態]:精神的疲労(絶大)、鬼化、食人衝動(中)、恐怖による無惨への服従(極大) 、ウィキッドへの恐怖 及び苛立ち
[服装]:制服
[装備]:
[道具]:高坂麗奈のトランペット@響け!ユーフォニアム、危険人物名簿@オリジナル
[思考]
基本:殺し合いからの脱出???
0:久美、子……?
0:休めそうな場所に逃げる
1:今ここにいる私は偽物……?
2:月彦さんが怖い……
3:部の皆との合流???
4:水口さんは怖いけど、ムカつく
5:ヴァイオレットさんとみぞれ先輩にもう一度会って謝りたい
6:誰か……助けて……
[備考]
※参戦時期は全国出場決定後です。
※『コスモダンサー』による精神干渉とあすか達の死によるトラウマの影響で、デジヘッド化しました。但し、見た目は変化しておらず、精神干渉を行うレベルに留まっております。現在は、同じくデジヘッド化した無惨からの精神干渉の影響で、デジヘッドの状態を維持しておりますが、無惨と離れればデジヘッド化の状態は、解除されます。
※無惨の血により、鬼化しました。身体能力等は向上しております。
※腕は切断されましたが、鬼化の影響で再生しております。
※ 首輪の分解・解析により首輪の中身を知りました。
※ 首輪の説明文を読み、「自分たちが作られた存在」という可能性を認識しました。
※ 『覚醒者』について纏められたレポートを読み、覚醒者『006』が麗奈、『007』が無惨であることを認識しました。
※無惨と離れた為デジヘッド化の状態は解除されています。しかし、再度強烈な心理的負荷がかかれば再びデジヘッド化する可能性があります(此方は後続の書き手に一任します)
91
:
◆diFIzIPAxQ
:2023/01/26(木) 13:18:46 ID:???
投下終了しました
問題・矛盾した描写がありましたらご指摘お願いします
問題がないようでしたら、本日の日付が変わる頃に本スレに投下する予定です
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