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仮投下用スレ

1 ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 09:40:48 ID:???
本スレ投下前で、仮投下を行われたい場合、こちらに投下ください。

2 ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 15:30:15 ID:???
以下まとめwikiでは、規約上そのままでの掲載が難しかったSSの原文を投下します。

3第一回放送 ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 15:32:16 ID:???

参加者の皆様方、ご機嫌よう。
ゲーム支配人のテミスです。
あっ、まだ眠っている方は、起きてくださいね。

うふふふ…ゲームが始まってからの最初の六時間は、如何だったかしらぁ?
我々が用意した極上のエンターテイメント、堪能して頂けていると嬉しいわ。

それでは、まず禁止エリアの発表からいくわね。

B - 5
C - 4
F - 8


この3つのエリアが午前9時から進入禁止になるわ。
このエリアに止まっている人は急いで退避することをお勧めします。
9時以降にこのエリア内にいようものなら、ドカン!っと…。
問答無用で首輪が爆発するので、心に留めて下さいね。

それと残念なお知らせが一つ、C-7にある鉄道の線路が壊されてしまったわ。
その上を走っていた電車も見事に大破。

でも安心してくださいな。代わりの車両を渋谷駅に手配するから。
新しい電車は渋谷駅とスパリゾート高千穂の区間で往復運行するようにいたします。
申し訳ないけど、渋谷駅の車両の設置に伴って、D-2も午前8時から午前10時までの間は、工事期間ということで、一時的に禁止エリアに指定させていただくわ。
工事が完了したら、再度エリアに入れるようになれるし、電車も使えるようになるから、それまでは我慢してくださいね。


さてさて、次は、皆様お待ちかねの死亡者の発表となります。


【田中あすか】
【弓原紗季】
【シュカ】
【傘木希美】
【キース・クラエス】
【エレノア・ヒューム】
【煉獄杏寿郎】
【錆兎】
【アンジュ】
【魂魄妖夢】
【ヒイラギイチロウ】
【浜面仕上】
【霧雨魔理沙】


以上13名が今回の脱落者となるわ。

皆様、やる気があって大いに結構ですこと、残りは62名…。中々良いペースじゃないかしらぁ?
でも、ここまではあくまでもゲームの序章…、本番はこれからよ。
もっともっと苛烈に戦って、我々を愉しませてくださいな。

今回の放送はここまでとしますが、最後に皆様にサプライズがございます。
何となんと、μが頑張る皆様を激励すべく、これから生歌を披露してくれるそうよ!
歌ってくれるのは「コスモダンサー」という曲だけど、皆様の闘争心を震わせてくれる素晴らしい曲なので、是非ご堪能くださいませ。

それでは皆様、次は正午の放送でまたお会いしましょう、ご機嫌よう〜。

4第一回放送 ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 15:32:58 ID:???


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

感情表現の強制パレード
本日のあたしはコレよ
みんなで手と手を合わせ
戦い抗いましょう ハッ(笑)

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


虚な目をした白の歌姫が唄うのは『コスモダンサー』。
この殺戮ゲームの参加者の一人であるウィキッドが手掛けている楽曲である。

欲望。執着。狡猾さ。破壊衝動。
生きている人間なら誰しもが抱くどす黒いものを、腹の底から掬い上げんがため、ウィキッドはこの曲を作成したという。
そういう意味では、このバトルロワイアルという舞台は、まさにウィキッドが望んでいた人間の本質が顕になる絶好の機会になるといえるだろう。
尤も、ウィキッド自身も殺し合いに放り込まれてしまっているが故、彼女自身も観察対象となっているのだが。


「さてさて、どうしたものかしら」


ステージ上で歌うμの様子をぼんやりと眺めながら、テミスはソファに座り、思案に暮れる。
テミスが懸念するのはD-2エリア渋谷駅における、電車の新設作業にある。
会場内にある施設の修復及び新設を行うにあたっては、創造主たるμを降臨させる必要がある。
対象エリアを一時的に禁止エリアに指定したため、参加者と遭遇する可能性は考え辛いが、万が一μの身に危険が迫った場合に、露払いとなる護衛役を同行させる必要がある。
彼女が壊されでもしたら、ゲームの進行に大きな弊害が生じてしまうからだ。


それでは、誰がμのボディガードを務めるか?
テミス自身か? いいや、それはありえない。
テミスの異能《シギル》は直接的な戦闘には向いていないし、彼女はあくまでも司会進行役。
戦場の前線に出るのは相応しくない。


「あら? いらしてたの?」


ふと背後から視線を感じ取り、テミスは振り返る。
そこには彼女を見下ろす一つの人影があった。

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

ほら いつものやつを見せてよ
美しい絆を
反吐が出るほどに下らないと
あたしが教えたげるわ

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


ステージ上では尚もμは歌い続けている。
その傍らで、テミスとその者の視線は交錯しているが、
やがて―――

「丁度良かったわぁ♡ お手隙なら、彼女《アレ》のボディガード、頼めたりできるかしらぁ?」

テミスは眼前の者に対して、妖艶な笑みを浮かべ、μの護衛を依頼するのであった。


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

さあ 世界の寿命が尽きるわ
その時が来る前に
この宇宙の片隅で起こる
悲劇を観ていて

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


【死亡者13名 残り62名】


【???/一日目/早朝】
【μ@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:???
[服装]:いつもの服装
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:テミスに協力する
1.時間になったら、渋谷駅に赴き、新しい電車を創出する

【テミス@ダーウィンズゲーム】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:殺し合いの司会・進行役を務める
1.目の前の者(???)にμの護衛をさせる
※会場全体にμの生LIVE(曲は「コスモダンサー」)が流れました。
※D-2が電車配置のために一時的に禁止エリアに指定されました。
※D-2が禁止エリアとなっている期間、新しい電車の創生のため、μが渋谷駅に降臨します。

5【代理投下】It's My Life ーTir na nOg ー(前編) ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 15:51:35 ID:???
―――渋谷駅に向かおう。

それがリュージの判断だった。

「一応聞いておきますけど、本当によろしいのですね?」
「ああ。仮に線路の破壊を王がやったとしてもあいつが留まる保証はないからな」

線路の破壊を王(ワン)がやったと仮定して、果たしてあの男が大人しくジッと獲物の待ち伏せをしているか。
正直、どちらともいえない。
これが普通のダーウィンズゲーム内ならば破壊痕に酔いしれ高確率で留まるだろうが、今回は主催が渋谷駅に降り立つ可能性が示唆されている。
その情報を逃さなければ、壊れた線路を見に来る輩が来る可能性と、主催に接触しようとする輩が来る可能性、どちらが高いかは火を見るよりも明らかだ。
王が来なくとも、あのコスプレ集団とクランを組んで王の包囲網を作れればそれに越したことはない。
ならば、主催と接触できるこのビッグチャンスを逃す謂れはない。もしも琴子の恋人らしい九朗も向かうならばそちらの方が可能性が高い―――それがリュージの判断だった。

「それに、ブチャラティ達ももしかしたら向かうかもしれねえ。もうアリアも落ち着いてるだろうし、上手くいけば戦力も大幅に上がる」
「確かスタンドという能力を扱う男性と武器術に優れた少女でしたっけ」
「ああ。アリアは武偵とかいうよくわからん職業の学生らしいが、戦闘なら充分に頼れるだろう」
「ふむ」

琴子は脳内にデータとしてとどめてある参加者名簿の『ブローノ・ブチャラティ』と『神崎・H・アリア』の名前を『岩永琴子』と『リュージ』のもとへと移動させる。

(ん...?)

ふと、違和感に気づき、改めてもう一度、実物の名簿を取り出し確認する。

『ブローノ・ブチャラティ』『神崎・H・アリア』『岩永琴子』『リュージ』。

違和感はすぐに見つかった。

「リュージさん。あなたは本名はリュージではないですよね」
「ああ。こいつはゲーム内のコードネームだな。本名は前坂隆二ってフッツーの名前だ」
「なぜでしょうか」
「何故って言われても、そいつは親に聞かねえと...」
「違います。何故あなたの本名が載っていないのでしょうか」
「なんでってそりゃあ...」

言われてみれば不思議なことである。
ダーウィンズゲーム真っ最中の自分たちをこんな催しにわざわざ連れてきたのだ。
主催達が本名を把握していない、ということは考えにくいだろう。

「知り合いの参加者同士がわかりやすいように配慮してくれたんじゃねーの?実際、俺もレインとかの本名は知らねえし」
「そういうことですか。...しかし、それならまたわからないことが増えましたね。リュージさん、あなた外国語は話せますか?」
「洋楽とか映画で齧った程度ならいけるかもしれないが、そこまで自信はないな」
「つまり実際に使う価値には値しないレベルと。よくそれでキースさんやブチャラティさんと話せましたね」
「いや、俺は普通に喋ってて...あん?」

言っていて、リュージも違和感に気づく。
ブローノ・ブチャラティ。神崎・H・アリア。キース・クラエス。
この三人とは聞き存ぜぬ単語の認識の違いはあれど、会話が滞ったことはほとんどない。
苗字からして日本で暮らしていると思しきアリアはともかくとして、どう見ても外国人であるブチャラティとキースに対してもだ。

「そういや妙だな...揃って日本語で話してたから気が付かなかった。あいつらが日本通って感じでも無かったしな」

四人が邂逅した時、最初に言葉を発し宣戦したのはブチャラティだった。
しかし、あの時彼が発したのは母国の言葉ではなく『日本語』だった。
キースという明らかに日本人でない者も紛れている中でだ。

「気になるのはそれだけではありません。ブチャラティさんのスタンド能力とは本来ならば一般人には見えない能力なんですよね?」
「らしいぜ。詳しくは聞いてなかったが」
「能力者であるあなたやキース・クラエスはまだしも、アリアさんはあくまでも無能力者なのでしょう?まあ、彼女が能力を隠している可能性も無きにしも非ずですが」
「その可能性は低いと思うぜ。キースのゴーレムはかなり手ごわかった。アリアもあそこまで追い込まれて使わないことはないだろう」
「と、なるとこの時点で三つわからないことが浮かび上がりましたね」

①本名で載っていない参加者と本名の参加者の違い。
②多国籍間の言語の壁が払われていること。
③スタンド能力はなぜ無能力者にも見えるのか。

前者二つはそうした理由だけは簡単に思いつく。

①普段、ラストネーム(姓)を使用していない参加者間でわかりやすくするため。
②参加者間の情報のやり取りをスムーズに進めるため。

問題は③だ。

「スタンド能力はスタンド使いでしか認識できない。これはスタンド使い特有のルール、特色と言い換えてもいいでしょう。キースのゴーレムは他者に見えること前提で操られていたみたいですし。
しかしそれが撤廃されたとなれば、スタンド使いの特色は消え去ります」
「まあ、向かい合った途端にわけもわからず首輪を攻撃されてお終い、なんてのが繰り返されたら溜まったもんじゃねーわな」
「そこです。こんな調整をするくらいなら最初からそんな参加者を連れてくる必要はないんですよ。能力者だとしてももっと他の参加者にも公平的で手軽な者を呼べばいいだけの話です」

考えれば考えるほど、さらりと流していた部分に足をからめとられるような違和感が湧いてくる。
何故。どうして。その疑問は絶えず己の脳髄に問いかけてくる。
故に琴子は推理する。限られた情報から仮初でも真相に最も近い虚構(しんじつ)を構築するために。

(③において得をするのは主催側の人間でしょう)

主催側はあくまでも参加者間の潰し合いを望んでいる。でなければ殺し合いという形はとらない筈だ。
見る側の立場に立てば、スタンド使いによる一方的な暗殺劇などつまらないにもほどがあるだろう。
故に、どうやったかは置いておくとして、彼女たちはスタンド使い以外にもスタンドに干渉できるようにした。

では、①と②においても同様か?

いや、主催側からして、この二つにおいてはさしたるメリットはない。
他の参加者がハッキリとしないからこそ殺し合いを肯定する者がいれば、しない者もいるし、言語が通じぬ為に争いや諍いが起きるなら願ったり叶ったりではないか。
では上記二つで最も恩恵を受けるのは―――

(...なんだ、簡単なことじゃないですか)

そして、岩永琴子は一つの回答を導き出した。

6【代理投下】It's My Life ーTir na nOg ー(前編) ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 15:52:39 ID:???


「そろそろね」

渋谷駅が禁止エリアに指定される8時まで残り30分を切った。
麦野たち三人食事と休憩を終え、禁止エリアに当たらないギリギリの境界線の森林に立ち、渋谷駅を見据える。

「今のところは何の変哲もないわね」
「律儀にヘリや飛行機で来るとは限らないわ。瞬間移動でもしてくるんじゃない?」
「へえ...学園都市ってところはそんなものも研究してるのね」

そんなことを三人で話している内にも時は過ぎていく。

「...ところで他の参加者が来たら」
「さっきも言った通りよぉ。物見遊山なら首輪の調達に。私たちと同じ目的なら力を見せつける」

ベルベットの確認に夾竹桃が答えると同時。

ガサリ、と草木が揺れる音と共に二つの影が躍り出る。
いち早く反応した麦野とベルベットは影の前に立ち、咄嗟に防御の姿勢を取る。

バチリ、と肉を打つ音が二つ重なった。

「どちらにせよ初手は制圧...どうやらあちらさんもそのつもりだったみたいね」

ベルベットは踵落としを受けた腕はそのままに、異形の左腕で着物の女―――クオンへと攻撃を仕掛ける。
クオンは迫る異形にも怯まず、冷静に攻撃を足で弾き、着地と同時に回転を伴った肘打ちを放つ。
ベルベットはそれを右腕で受け止め、後退するのと同時に砂を蹴り上げ牽制を兼ねた目つぶしを放つ。
クオンは上体を低くし、敢えてベルベットの懐へ飛び込み、追撃の掌底を放とうとするも、ベルベットは蹴り上げていた足をそのまま勢いよく振り下ろす。
追撃を想定していたカウンターだと察すると掌底を防御に回し、次いで振り下ろされる異形の腕を間一髪で躱す。

「あいにくと足癖は悪くてね」
「ふぅん、その腕に頼り切りってわけじゃないってことかな」

ベルベットとクオンが再び肉弾戦を始める一方で、麦野は振るわれた左腕を抑え、男―――隼人とにらみ合っていた。

麦野沈利はその強力な能力のみならず成人男性顔負けの筋力も有している。
その麦野の筋肉は告げている。少しでも力を緩めればこのまま顔を裂かれると。

「まあ―――馬鹿正直に力比べするつもりなんてないけど」

麦野の『原子崩し』は強力なぶん、照準を合わせて放つまでに時間がかかる。
その為、遠距離でこそ本領を発揮するのだが、こうして近づいている場合には威力と範囲を絞れば問題なく放つことができる。

「獲物は二匹、なら一匹は殺しても構わないよねえ!?」

隼人は麦野の背後に輝く光が己の眉間を狙っていると察し、顔を傾け咄嗟に躱す。
そのまま反撃としてもう片方の腕を振るうがそれも麦野に掴まれる。

「さあこれで逃げ場はなくなった。あんたが出来るのはあとは精々情けなく腰振って逃げようとするだけ―――」

麦野と隼人の力は拮抗している。それはつまり、両腕を掴めば容易くは拘束から逃がすことはないということだ。
にも拘わらず、麦野はその手を離した。悪寒がしたのだ。このまま掴んでいるのはマズイと。

「チッ」

舌打ちする隼人の左腕には、既に拳銃が握られていた。麦野が右腕の攻撃に意識を向けたその瞬間に、裾に隠していた拳銃を手品のように取り出し狙いを定めていた。

舌打ちしたいのは麦野も同じだった。よもや浜面にやられたあの拳銃での不意打ちの経験が活きようとは。
あの無能力者に助けられたかと思うと歯がゆい、なんてものでは済まない。

(死んでからもムカつかせてくれるわね、はまづらぁ)

苛立ちの言葉を内心で噛み殺し、隼人へと向き合う。

(初手での拘束は失敗だったか...ビルド達に合図を送るか)

隼人は銃を握る手に力を籠める。
主催殺しの策は余計な障害にならないのがあっての策だ。
明らかにこの三人はゲームに乗っている側の人間だ。
ここでクオンと共に連中を皆殺しにするにしても一時撤退するにしても、ビルドに害を加えられては敵わない。
ならば計画はスッパリ切ってビルドの安全を優先するべきだろう。

「はい、そこまでよ」

パンッ、と両掌を叩く音が響き、四人の注目が夾竹桃へと集まる。

「お互いにそれなりに渡り合える実力があるのはわかったもの。ならもう戦う理由はないわよね」
「どういうことかな?」
「私たち三人はここから主催を狙い撃ちするのが目的。見たところあなた達の目的もそうじゃなくて?」
「......」

沈黙する隼人を肯定とみなし、夾竹桃は話を続ける。

「お察しの通り、私たちは生き残るのに手段は択ばないわ。けれど、それはあくまでも生存が優先というだけの話。もしこれで主催を倒してめでたしめでたしとなれるなら優勝の褒美なんかよりもそちらをとるわよ」
「戦いを続けてもらっても私は構わないけどね。どのみち、奴らに攻撃できるのはそっちのイライラ光線女だけだし」
「消し炭にしてやろうか糞露出マント」
「...どうする?隼人」

勝手に火花を散らし合うベルベットと麦野を他所にチラ、とクオンは隼人へと目で訴えかける。
夾竹桃の言葉を信じるなら、もうこれ以上争う理由はなく、この場だけでも頼もしい戦力となる。
クオンとしても、これ以上彼女たちと争って消耗しなくていいならそちらを取りたい。

数秒瞼を瞑り、目を開けて隼人は決断を口にした。

7【代理投下】It's My Life ーTir na nOg ー(前編) ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 15:53:20 ID:???


「本当に大丈夫なのか?」

遅れてやってきたビルドと義勇は、待ち構えていた三人を見まわし、隼人へと視線を向ける。

「時間もなかったからな。多少のリスクはあろうが、実のある方を取っただけだ」
「実力は確かだと私も思うかな」
「二人がそういうなら心強いよ」
「...お前たちが受け入れているならば俺はなにも言わない」

直接手合わせをした隼人とクオンはもとより、ビルドがこうもあっさり受け入れるならば義勇もそれに従う他ない。
隼人たち四人と夾竹桃ら三人、計七人は名前だけの自己紹介を簡素に交わすと、すぐに準備へと取り掛かる。

まずもって、第一に主催への攻撃手段は麦野の原子崩しとビルドと義勇で造った大砲だけ。
狙撃手は麦野とビルド。では他の五人は適当に時間を潰せばいいかといえばそうではない。
まず、この攻撃の初撃は高確率で失敗するという前提のもとに作戦は動いている。
主催の手の者が直接現れるかもしれないという参加者からしたら絶好のこの機会、相手側もなにかしらの対策は講じているはずだ。
大切なのはその次にどう活かすかだ。
そうでなくても、主催側の用心棒か護衛がこちらを罰しに来る可能性もある。

残る五人はそういった事態への対処だ。ある意味、狙撃手二人よりも重要な役回りであると言えよう。

「時間まであと30秒」

隼人のカウントダウンが始まり、その一秒一秒に、各々の殺気が充満し、一同を包む空気がヒリついたものになる。
二人の砲撃場所はかなり近い。本来ならば距離を置き別々の場所から放つのが定石なのだが、互いのチームの信頼関係が無である以上、傍で撃つべきだと話は纏まった。

「5」

義勇が剣に手をかけ、その姿を見たベルベットの目が細められる。

「4」

夾竹桃はいつでも『毒』を使えるよう懐に忍ばせる。

「3」

クオンは今は一切の同郷の者たちへの感情を抑え、眼前と周囲に集中する。

「2」

隼人は己も拳銃の弾を込めなおし、即座に撃てるよう構える。

「1」

ビルドが渋谷駅周辺に狙いを定め、麦野も同じく照準を定め原子崩しの砲撃準備に入る。

「0」







―――彷徨う心よ 何もかも忘れて この歌が導く世界で理想だけ見て






歌声が響き渡ると共に、渋谷駅より影が降り立つ。
その妖精を思わせるような純白の衣装に身を包む、アイドルのような風貌―――間違いない。
参加者の誰もが忘れられぬ女、μだ。

ビルドと麦野は共に砲撃する。

高速で迫る光弾と砲弾に、μは一瞥もくれない。
ただひたすらに己の歌を唄い続ける。


―――ずっと苦しかったね ずっと悲しかったよね キミの涙を代わりに受け止めてあげるよ


カッ!


閃光と爆音が響き渡り、爆風と砂塵が舞いビルド達の視界を遮る。
その勢いに溜まらず目を隠しながらも、麦野は嗤う。

仮にも自分や垣根提督を巻き込んだ連中がこの程度で終わる筈がない。
これで終わる程度なら最初から優勝の褒美など期待はしない。その程度の力で垣根提督を超えることなどできないのだから。
だから見せてみろ、お前たちの力というものを。

そんな、まるで試しているのはこちらだと言わんばかりの思惑を抱きつつ砂塵の先に目を向ける。

やがて爆風の勢いが収まり砂塵もパラパラと舞い落ち、その先に立つ影が浮かび上がる。


現れたのはμ―――ではない。

黒のコートととズボンに身を包み、二丁拳銃を構えた男...いや、女?
その正体はわからない。なぜならその頭部は透明化した骸骨そのものであるからだ。



―――求めるものは何?なりたいものは何? 叶えてあげるから私に教えて。


透明骸骨が挑発するように指先を左右にゆっくりと振る。


「ハッ、面白いじゃない」

それを見た麦野は不機嫌になることもなく凶悪な笑みを浮かべる。
ソイツがあの拳銃で原子崩しを相殺したというのか。
ならばもう一発撃って確かめる。撃って、その力のほどを確かめる。

麦野に続き、一同が透明骸骨に対応しようとしたその時だ。

カチリ。なにかを踏んだような音が鳴る。

瞬間。

ゴウッ!!

足元から、突如、小規模な台風が発生し、ベルベット、義勇、隼人、クオン、ビルドの五人の身体が巻き上げられる。

「こっ、これは...!?」
「ビルド!」

巻き上げられながらも咄嗟にビルドへと手を伸ばす義勇だが―――届かない。
消えていくビルド達の姿に無力感を抱きつつも、自身も放り出されるように遠心力で吹き飛ばされてしまう。
旋風が収まった時には、もう巻き込まれた五人の姿は何処へと消えていた。

「麦野、一旦態勢を立て直しましょう」
「チッ、なにがどうなってやがる」

残された夾竹桃と麦野は状況の異常さを察する。
おかしい。
状況から見て、なにか罠を踏んだのだろうと判断はできる。しかし、つい先ほどまで何の変哲もなかった場所から突如発生したのだ。
わかるのはただ一つ。
状況は、自分たちが想像しているよりも危険で大きく動いているということだ。

退こうとする夾竹桃だが、しかしその彼女へ向けて光線が放たれる。
骸骨の手に持つ二丁拳銃によるものだ。
夾竹桃の眼前にまで迫るソレは、しかし彼女に着弾することなく弾け飛ぶ。

麦野のほんの小規模な原子崩しの光線が、骸骨のモノに当たり弾いたのだ。

「面白くなってきたじゃない」

不測の事態においても麦野は嗤う。
そうでなくてはつまらない。

学園都市第四位、麦野沈利の踏み台になるならこれくらいはやってもらわないと困る。

「相手してやるわよォ、三下骸骨!!」

麦野の啖呵に、骸骨はその奥でニヤリと笑みを深めた―――気がした。


―――Cry...叫べずに 歌えずに 枯れ落ちるキミの言葉を救い出して


「くっ...」

ビルドは着地の際に痛めた腕を抑えながら、先ほどの狙撃場所へと向かう。
急がなければμが帰ってしまう。
恐らく吹き飛ばされたみんなも再び集まるはずだし、たとえ倒せなくてもなにかできることはあるはずだ。
急がなければ。早く、早く。

カチリ。

なにかを踏んだかのような音が再び鳴ると共に、今度は地面から激しく炎が吹きあがってきた。

「うわっ!!」

あまりの勢いに思わず倒れ込むも、一方で冷静にこの現象の心当たりを探る。

(僕は知っている。これは―――)

「ギラタイルの罠とバギバキューム。きみが教えてくれたものを少し改良したものだよ」

ビルドの心に答えるように、被せられる声。
ビルドは振り返り、信じられないものを見たような表情を浮かべる。

「本来は叩き落とすバギバキュームも発生する風の向きをこうして変えれば吹き飛ばすように使える。こうやって既存のものに手を加えることもきみの『ものづくり』の一環なんだろうね」
「きみは...!」
「その顔...ハハッ、僕なんかを覚えていてくれたのかい。思っていたよりも律儀だったのかな?」

炎が広がり木々が燃え盛る中、歩み寄るその存在の名前をビルドは口にする。

きみはいなくなったはずなのに―――死んでしまったはずなのに。

「リック...!」


―――Cry...叫ぶように 歌うように いつまでも繰り返す 終わらない理想郷(シャングリラ)

8【代理投下】It's My Life ーTir na nOg ー(後編) ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 15:54:41 ID:???
「リュージさん、平行世界というものをご存じでしょうか」
「映画なんかで使われる題材のアレか?」
「ええ。自分のいる世界とよく似た別の世界があるというあの説です」
「なんでそんなことを聞くんだよ。まさか殺し合いに関係あるっていうのか?」
「ええ」

あっさりと肯定する琴子にリュージは思わずギョッとする。
それを合図に、琴子はコン、と杖で地面を叩き琴子は解を口にした。


「これまでの情報を基に解答を導き出しました。一つの解と致しましては」

【この殺し合いの参加者は平行世界を軸に集められている】

「なんだそりゃ...」

リュージは呆れたような声を漏らす。
確かにこの殺し合いはダーウィンズゲーム参加者からしても異常事態ばかりではあるが、まさかいきなりこんなSFチックな話が織り込まれるとは思わなかったからだ。

「一応聞いておくけどよ、根拠はなんだ?」
「根拠も何も一目瞭然ですよ。神崎・H・アリアの『武偵』、キース・クラエスの『ゴーレム』、ブローノ・ブチャラティの『スタンド』、リュージさんの『ダーウィンズゲーム』、アリアの『アストラルシンドローム』。
これら五つの話題を、誰一人として共有していない。それはつまり彼らの世界においてはそれらが存在していない、ということに他なりません」
「そういうもんか?いくら有名でも自分に興味のないことは全然知らないなんてよくある話じゃねえか」

リュージはダーウィンズゲームに参加しているからこそよく知っている。
ダーウィンズゲームで死亡した者は死体の形が残らないよう処理され、正体掴めない『変死』事件として処理されてしまう。
だから情報通なオカルトマニアですら存在を認識できないし、ゲームの存在が周知されることもない。
ならば他の面子もそういう類の事情があるのだろう、とリュージは考えている。

「ええ。あなた方個人ならそういうこともあるでしょうね。しかし、そのどれもを私が噂すら聞いたことがないというのが在りえないんです。リュージさん、『死人に口なし』という言葉はご存じですね?なぜこの言葉が成立するかわかりますか?」
「そりゃ死んでる奴からはなにも聞き出せないからだろ」
「ええ。しかし私にはそれは通じない。この目と左足と引き換えにそういう力を貰いましたから」

琴子はサラリ、と髪をかき上げながら小指で右の眼球を小突く。
コツ、と鳴る無機質な音に再びリュージはギョッとする。

「霊も妖も全国津々浦々に潜み、しっきりなしに面倒ごとの解決依頼を連日寄越してきます。
あなたの『ダーウィンズゲーム』が如何にゲームごとの後処理を完璧にこなしていても、死者を抑えることは叶いません。
にも関わらず、私のもとにダーウィンズゲームの後始末の変死事件でさえ、霊や妖が解決依頼も寄越さないのはありえないんですよ。
そんな情報網を持つ私が『武偵』『ゴーレム』『スタンド』『アストラルシンドローム』『ダーウィンズゲーム』を知らないのが自然だと?
それならば『そもそも私の世界ではそんなものは存在していない』と考えた方が妥当でしょう」

緊張か驚愕か、ゴクリ、とリュージは己が唾を飲み込んだのを自覚する。
リュージの『嘘発見器』は真実を告げている。
琴子は嘘を憑いているでも頭がやられている訳でもなく。
岩永琴子は霊やあやかしの類を認知できる能力を持っているという『真実』を。
それは同時に、琴子の提唱する平行世界の論を肯定することになる。

「ですが、これを成立させるには不可解なことがあります」

先の解答を受け入れた矢先に、琴子は己の出した結論を否定するかのような口ぶりになる。

「仮にテミスが平行世界を渡って参加者を集められる能力を持っているとしましょう。しかしそれではテミスの言っていた『死者の蘇生』は叶えられないんですよ」
「なんでだよ。似たような世界から引っ張ってくればいいんじゃねえの?」
「そうですね...例えば、今から三十秒後に私が爆発四散したとして、心悼めたあなたがゲームに優勝することで別の私を連れてきてもらったとしましょう。
ですがその私は殺し合いでの記憶とあなたと交わした言葉を何も知りません。それは本当にあなたの知る『岩永琴子』でしょうか」
「あぁ、そりゃまあ確かに本人とは言えないな」

テミスの語った『死者の蘇生』が嘘ではないのはリュージが既に嘘発見器で確認している。
その彼女がとる手段が『平行世界のよく似た隣人を連れてくる』というのはどうにも納得がいかないものがある。
リュージが弟の蘇生を願い、テミスが平行世界の弟を連れてきたとしよう。
その弟自身が死ぬ記憶を有しておらず、リュージと記憶の齟齬が生まれればもうそれはほぼ同姓同名の他人だ。
テミスがそれを『死者の蘇生』だと自信をもって豪語するにはチト弱い。

「なら平行世界に死んだ奴も蘇れらせれる道具とかあるんじゃねえの?」
「それは私も考えましたが、しかしそんな生物の生死を容易く干渉できるような世界の住人に『死者の蘇生』なんて褒美になるでしょうか」
「それでやる気にさせるには少し弱いか」
「仮にその手段があるなら、あのセレモニーの際に少年ドールと滝壺と呼ばれた少女を復活させて実演して然るべきですからね。
『お前たちの命なんて私たちの掌の上だ』という全能感のアピールも兼ねれますし、逆らっても無駄だと諦め、殺し合いもより円滑に進むでしょう。
それが無かったということは、彼女たちはそういう道具も持っていなかったと見るべきです。しかし、これでは私の論は両立できませんね。もうちぐはぐです」

諦めたかのように目を瞑りため息を吐く一方で、その手はペンを奔らせている。
先刻と同じように、ここからが主催にも知られたくない内容なのだろうとリュージは察する。
そして突きつけられた文字に、リュージは三度驚くことになる。

【そもそもテミスは平行世界から参加者を集めてきてなどいない】

9【代理投下】It's My Life ーTir na nOg ー(後編) ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 15:55:43 ID:???




キミを傷つける そんなものはいらない。
キミの邪魔をする そんなものはいらない
幸せに出口 そんなものはいらない
幸せに痛み そんなものはいらない
残酷な日常 せんぶゼンブいらない


熱を増していく歌声と共に、μの背後ではブリキや鉄材が集まっていき、たちまちに列車が象られていく。
その様を睨みつける麦野。それを邪魔するかのように立ちはだかる透明骸骨。

「夾竹桃。あんたは他の連中のところに行きな」

視線は一切骸骨からは外さず、麦野は夾竹桃に背を向けたまま告げる。

「連中は未だに禁止エリアにいる。あんたがいたところでやることないでしょ」
「それはそうだけど、あなたはいいのかしら?」
「作戦はもうボロボロだが、まだ私が活きている。けど我慢が効かず先走る馬鹿は必ずいる。あんたにはそっちを任せるわ」
「それ、本当に本音?」
「あんたはどう見える?」
「両方。失敗した時に手詰まりにはなりたくないけど、それはそれとして舐められっぱなしも癪ってところ」
「ハッ、わかってんじゃねーの、よっ!!」

骸骨の銃から放たれた光線を麦野は原子崩しで迎え撃ち、衝突は小規模な爆風を巻き起こす。

「わかった、ここはあなたにお任せするわ。背中頼むわよ」

戦場を麦野に託し、夾竹桃は吹き飛ばされた五人のもとへと走りだす。

(ようやく掴めた好機だもの。逃すわけにはいかないわ)

夾竹桃が目指すは神隼人。
隼人は清明から告げられたゲッター線という極上の『毒』に深く携わる者たちの中の一人だ。
先の接触時は状況がひっ迫していた為、ロクにゲッター線のことも清明のことも触れられなかったが、この作戦がこのまま成功しても失敗しても、敵対しなかったというのは彼との友好関係においては大きなプラスだ。
しかしこれは好機と同時に危機でもある。

今回の同盟で、夾竹桃がゲッター線を欲しているのを知っているのは彼女自身のみ。
それを知らぬベルベットや麦野が、隼人に気を遣う必要はどこにもない。

麦野は眼前の敵に集中してくれているからいいが、完全にフリーになっているであろうベルベットがどうなってるかはわからない。
もしも彼女が彼を狙うようなことがあれば、毒を用いてでも止める必要がある。彼女も彼女で早期に合流しておきたいところだ。

(それにこんなにわかりやすいシチュエーションも味わえないしね)

背中に迫る光弾の気配にも、夾竹桃は怖気づかない。麦野がそれをかき消しているからだ。

(『ここはわたしに任せて先に行け』...なんて王道友情モノなシチュかしら。麦野沈利、本当に残したのがあなたでよかったわ)

NETANOTEを取り出し、ペンを奔らせながら夾竹桃は森林へと消えていく。


「悲しいねえ。学園都市第四位がいながら、狙うのはケツ振って逃げる蝶々なんてな。いつからレベル5の価値はそこまで落ちたのやら」

俯きながら、麦野は自嘲気味な笑みを零す。
夾竹桃が完全に消え去るのを認識した骸骨は、狙いを麦野へと変え光線を放つ。

「なら改めて思い知らせてやらないとねえ!」

瞬間、口角が吊り上がり、これでもかといわんばかりに目が見開かれ顔が上げられる。
原子崩しが迫る光線を飲み込み、骸骨の足元を穿った。

「安心しろよ、あの小娘を狙ってチマチマ有利に進めるなんてセコイことはしねえから」

このゲームの終結以上に、麦野には優先すべきことがある。
それは浜面に負けて地の底に落ちた格を取り戻すこと。
原因の浜面は殺したが、だからといってそれで全てが戻るわけではない。
これはその為に必要な儀式だ。
能力の火力も。戦術も。格も。戦いそのものも。
その全てを圧倒し勝利しなければ麦野沈利はかつての栄光を取り戻せない。
μを狙って骸骨をハメ殺した、なんて結末では彼女が納得しようはずもない。

「必死に足掻けよクソ髑髏ォ!!どっちが格上か思い知らせてやるからよォ!!」

麦野の殺気に当てられながらも骸骨は仮面の奥で嗤う。
ああ、これは壊した時の反応が愉しみだと。




正確な世界(リング)では傷を隠せなくて
傷跡の上にまた傷を重ねてくだけ
イビツな世界(リング)では上手に生きられて
誰ひとり悲しまずに幸せがあるだけ

10【代理投下】It's My Life ーTir na nOg ー(後編) ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 15:57:09 ID:???


「くっ...」

燃え盛る炎に遮られ、義勇は二の足を踏んでいた。
着地してすぐにビルド達を探しに行こうとした義勇だが、なにかを踏んだような音がしたと思った瞬間、噴き出した炎が木を焼き始め、火の勢いは瞬く間に広がってしまった。
多少の火傷など覚悟の上だが、しかしビルド達のもとへ辿り着くまでに消耗しきってしまえば元も子もない。
火の手が弱い箇所を探さねば。

どうにかしてビルド達のもとへと向かおうとする義勇の背を見つめる影が一つ。
ベルベット・クラウ。
彼女はその異形の左腕に力を込めて命を狩る機を伺ってる。

(もう、こいつらに用はない)

μの歌は未だに響き渡っている。
それはつまり、麦野はあの骸骨に邪魔されμを仕留められていないということだ。
それでもビルドがあの場に留まっていればまだ作戦は続けられたかもしれない。
しかし、あの竜巻に吹き飛ばされる最中、彼もまた巻き込まれていたのを確認した。
つまりもう作戦は失敗したと判断してもいい。
ならば、殺し合いに反し弱者を護ろうとする義勇たちは必要ない。
この混乱に乗じて首輪解析のサンプル、あるいは優勝の糧にする。

決断と共に、ベルベットは義勇が通るであろうルートに先回りし、身を潜める。
しばし待ち、義勇が通りかかった瞬間、業爪で命を刈り取らんと腕を振るう。

―――水の呼吸 陸の型 ねじれ渦

爪が義勇の眼前にまで迫る瞬間、義勇は身体を大きく捩じり回避、その勢いのままベルベットへと剣を振るう。
その義勇の姿が、先刻戦った宍色の髪の少年の姿が重なった。

「くっ!」

ベルベットは反射的に首を捻り剣を躱す。が、頬に痛みが走ると共に一筋の赤い線が走る。
義勇の追撃を防ぐために放つ足払いは、しかし予測されていたのか跳躍で躱され空ぶる。

―――水の呼吸 弐の型 水車

浮いた瞬間を利用し放たれる回転斬りを、ベルベットは冷静に業爪で受け止め、その威力で互いに弾かれるのを利用し距離をとる。

「俺が構えたあの時、お前の目が変わったのが気にかかった」

隼人がカウントを始めた時、ベルベットの目の色が微かに変わったのを義勇は見逃していなかった。
それは決して友好関係にある者に向けるそれではなく、むしろ見覚えのある敵対していた者へと向ける眼差し。
加えて、いまの水の呼吸の技を知っているかのような反応。ベルベット達が参加者を襲うのも厭わない集団だったという事実。
そこから導き出される答えは至ってシンプル。

「錆兎を殺したのはお前だな」
「そう...錆兎って名前だったのね、あいつ」

ベルベットは義勇を正面から見据える。
別にこの場を誤魔化す嘘をつこうと思えばいくらでも吐ける。
襲ってきたのは錆兎の方。正当防衛の為に戦っただけ。殺したのは別のやつだ。
そんなデマを否定する証拠はどこにもなく、言うだけならばタダだ。

「ええ。殺したわ」

だがベルベットは正直に答えた。
罪悪感なんて感情はもうアルトリウスに叩き込まれた地獄で消え失せた。
復讐を遂げる為ならばどんな手段だって使ってやるとそう決めた。
なのに、嘘を吐けなかった理由は彼女自身わかっていない。
きっとそれは、義勇もまた自分と同じく復讐者の目になっていたから。
今の彼に嘘を吐いて誤魔化すのは自分に嘘をついているように思えてしまったから―――なのかもしれない。

「そうか」

親友を殺した仇が目の前にいるというのに、義勇は相も変わらずの無表情だ。
だが、もしも彼をよく知る者が見れば。竈門炭治郎や鱗滝左近寺がいればすぐにわかるだろう。
いま、義勇は激しく怒っていると。

周囲からは勘違いされがちだが冨岡義勇という男は決して情緒が死んでいる訳ではない。
感情を表に出すのが苦手なだけで、心の中では怒り、悲しみ、呆れといった感情をしっかりと抱いている。

だから義勇は許せない。
この状況下でも他者の為に戦っていたであろう錆兎を殺したというこの女を。

ビルド達を忘れている訳ではないが、どの道、ベルベットを斃さねば先には進めないのだ。
故に、義勇は鬼ではないベルベットにも躊躇うことなく殺気を向ける。

冨岡義勇とベルベット・クラウ。
二人の復讐者の間にこれ以上の言葉はいらない。

今はただ、眼前の敵を屠る為に駆ける。

二人の表には出ぬ激情を表すかのように、炎の勢いが一際大きく増した。

11【代理投下】It's My Life ーTir na nOg ー(後編) ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 15:57:56 ID:???


だからココにいてよ ずっとココにいてよ
もっとキミのために私、頑張るから


ギン、と金属同士がぶつかり合う音が響く。
リックの剣をビルドのハンマーが受け止めた音だ。

「どうして君が...!」
「どうしてだって?そんなことわかってるだろう!」

ビルドの空いた横腹に、リックの回し蹴りが放たれあっけなく地に倒れる。


「僕は死にたくなかった。それは何度も訴えたはずだ!だからあんな裏切りだってしてみせた!」

立ち上がったビルドにリックは再び剣を振り下ろす。それをハンマーで受け止めるも、再び空いたビルドの横腹に蹴りを入れ地面に倒す。
先ほどとまるで同じ光景だ。
なのに、ビルドには受けることしかできず、同じ戦法を防ぐ術もない。

「君はいいよなあ、こんなに弱いくせにみんなに護ってもらえて!ビルダーだからってみんなにチヤホヤされて!怪我したら真っ先に気遣われてさあ!
それに比べて僕はどうだ。いくら死にたくないと訴えても戦いに駆り出されて!きみを護るために傷つくのを強要されて!
いくら腰がすくんでもきみが旗を振るえば死に物狂いでドラゴンにでも立ち向かわなくちゃならなかった!!...そんな僕の姿は滑稽だったかいビルド」
「違う、僕はそんなつもりじゃ...!」
「わかってるよ。きみは悪くなかった。勝ち目のない戦争をし続けていた彼らも悪くなかった...全てが舞台上で仕組まれていたことだったんだから。それでも!」

リックはビルドの腹部を踏みつけ、グリグリと押し付け圧迫する。
ビルドが苦し気な呻き声をあげても力は緩まない。

「振り回されるのはいつだって下の者だ!使命だから受け入れろとそればかりだ!魔物側に寝返ってもそれは変わらなかった。心酔したまま死ねたのが唯一の救いだったかもしれないけどね...でも」

突如、声のトーンを落とし、リックは天を仰ぎ、両の掌で顔を覆い隠す。

「彼女は違った。生き返り目を覚ました僕の手を握ってくれた。ハーゴン様のもとへ行かせろ、と荒れる僕にも泣き言一つ言わず受け入れてくれた。
僕が落ち着いたらシチューまで作ってくれてね。具材の形も大きさもバラバラで不器用なものだったよ。でも...今まで食べた中で一番温かくておいしかった。
僕を励ますために作ってくれたって伝わってきて、生きていいんだよって言ってくれてるようで、嬉しかったんだ...」
「リック...」
「彼女は僕を救ってくれた...だから...だからね」

ゆっくりと掌を下ろしていき、リックの涙がにじむ目が露わになる。

「僕はμを護りたい。ずっと、ずっとこの幸せに浸かっていたい...誰の意思でもなく、僕の意思でそう誓ったんだ。それを邪魔するなら!」

再び足に籠められ、その圧迫感にビルドは呻き声をあげる。

「ア...が...!」
「僕は相手が誰であろうと許さない!邪魔するなら、誰が相手だろうと!!」



「奇遇だな。そいつは俺もだ」


背後よりかけられる声に、リックは慌てて振り返る。
その眼前に迫るは、鋭利に研ぎ澄まされた爪。
リックは咄嗟に剣を盾にしてそれを防ぎ後退する。
乱入者は―――神隼人。


「よかった、見つけた!」

隼人に遅れてやってきたクオンが、傷つき倒れるビルドへと駆け寄る。

「ビルド、大丈夫!?」

クオンは怪我をしている箇所へと手を遣り容体を見てみるが、大した怪我ではないのを確認するとホッと胸を撫で下ろす。

「下がってろお前たち。こいつは俺が相手をする」

ビルドを庇うように立ちふさがる隼人やクオンを見て、リックは舌打ちする。
状況の悪化だけでなく、先に触れた件もあってのことだ。
ビルドはいつだって護られる。シドーが傍にいない今でも、こうしてそのビルダー能力

「そういうところだよ。きみの気に入らないところは!」

剣を構え、リックは隼人へと切りかかる。
隼人はその剣に微塵も動じず―――受け止めた。
剣の腹を左指で掴み止めたのだ。

「なっ!?」

リックは驚愕に目を見開く。
彼は決して弱者ではない。
武闘派の将軍であるアネッサを超える実力を有し、なによりあの苛烈極まるハーゴン教団との戦いを生き残ってきたのだ。
常人では決して敵わない戦士である。

「鬼に比べれば止まって見える」

だが、隼人は生身でも人外である鬼と戦いいずれも重傷を負うことなく生き残ってきた猛者だ。
まものに常に敗北を喫していたリック達ムーンブルグ兵とは文字通り戦いの世界のレベルが違うのだ。

「さっき言っていたな。邪魔する者には容赦しないと...そいつは俺も同じだ。俺も俺の目的の為に戦っている。そいつを邪魔するなら誰が相手だろうと容赦はしない」
「っ!」

隼人は剣を摘まんだ指を力づくで下ろし、その勢いでリックは前のめりの体勢に崩される。

「俺の前にのこのこと現れてただで済むと...思うんじゃねええええええ!!!!」

叫びと共に、空いている右手の爪がリックの両目を切り裂く。

「ギッ、アアアア!目がぁ」
「耳だあああああああ!!!」

突き出された隼人の両腕の指が、リックの両耳を切り裂き千切れ落ちた。

顔を抑えてよろめき悲痛な呻きをあげるリックへと隼人は容赦なく追撃を加える。
リックの顔面を傍に立つ木に叩きつけ、反動で浮いた腹部、横っ面に次々に拳を叩き込んでいく。
叫びの悲鳴すら上げる余裕がなくなっていく。
顔面に激痛が走る度に、虚ろになっていく意識の中、リックは思う。

「ククク...ヒャーハハハハハハハッッ!!!ヒャーハハハハハハァ!!」

この男こそ、まるで魔物だと。

「やっ、やめてくれ隼人!もうやめてくれぇ!」

悲痛な声をあげるビルドにも構わずリックの処刑は続き、隼人が拳を振るう度に鮮血が地面に飛び散っていく。
ビルドは思う。隼人は今までずっと冷静に状況を見据え、頼れる大人だと思っていた。
しかし、今はどうだ。己の暴力衝動を解放し思うがままに力を振るっている。
これが本当に隼人なのか?まるで誰かに操られているようだ。いや、ただ溢れんばかりの狂気を隠していただけで、枷が外れかけているだけなのだろうか。
まだ出会って数時間のビルドにはわからない。

「そこまでだよ」

クオンが背後から隼人の腕を掴み、力づくで止める。

「何の真似だ」
「それはこっちの台詞かな」

クオンとて戦場を駆けてきた戦士だ。敵対する者には容赦するなという精神は同じである。
しかし、隼人のこれはあまりに異常だ。
ここまで痛めつけるなら介錯してやるべきだし、必要のない暴力行為である。

「俺の気が触れたとでも思ったか?」
「私とビルドにはそう見えたかな」
「安心しろ。俺は至って冷静だ。ハナから殺すつもりはないさ」

隼人はリックの首根っこを掴み持ち上げる。

「こいつには聞かなきゃならないことが山ほどあるんでな。それを吐くまでは殺さんさ」

原型がほとんどないほどに腫れあがり、流血するリックは何事かをうわごとのようにつぶやき続ける。

「さあ、吐け。奴らの目的は。首輪の外し方は。主催の殺し方は。お前の知っている全てを吐くんだ」
「隼人!」
「ここで邪魔をするならお前も敵とみなすぞクオン」

リックに構わず首を締め上げる隼人に詰め寄るクオンと隼人の視線が交差し火花を散らす。

12【代理投下】It's My Life ーTir na nOg ー(後編) ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 15:58:38 ID:???



Cry...叫べずに 歌えずに 枯れ落ちるキミの言葉を救い出して

Cry...叫ぶように 歌うように いつまでも繰り返す 終わらない理想郷(シャングリラ)



唄い終えたμは、天を仰ぎ胸元を抑える。

「わかるよ、伝わってくるよリック。あなたの望みが!願いが!!」

笑顔と共に涙すら溢れんばかりの恍惚な表情を浮かべ。

「辛いよね。痛いよね。苦しいよね。でも大丈夫!私があなたを受け止める!私があなたを幸せにするから!」

ガクン、と首を垂れる。
垂れさがった髪で正面からは表情が窺えないがその口元では「嫌だよ」という単語をボソボソと呟いているのが窺える。

そして、彼女は頭を上げ、目を見開く。
まるで誰かの、なにかの想いを訴えかけるように。
彼女は全力で叫んだ。



嫌だよ終わるために生まれた悲劇など!!




それは突然のことだった。
隼人が掴んでいたリックのの身体が発光し、隼人、クオン、ビルドの目が眩む。
その僅かの隙に、隼人の顔面に衝撃が走り、痛みと共に吹き飛ばされる。

「隼人!」

リックから最も遠く、視界がすぐに回復したビルドは隼人に駆けよる。

「...心配いらん。大したことは無い」

流れる鼻血を拭い、隼人は向き合う。
今しがたまで瀕死だったはずの、しかし自分を殴り吹き飛ばしたリックと。
そして三人は目の当たりにする。

「ありがとうμ...とても心地いい気分だよ」

負わされた怪我の全てが完治し。
身体も。顔も。全身が全て鋼鉄造りになった彼の姿を。
顔の造形だけがリックとして残り、全てを機械(マキナ)化した彼を。

「お前たちに味わわせてやる、僕の望みを。幸せを!!」

何度も、何度でも彼は訴えかける。
僕の命の邪魔をするなと。

13【代理投下】It's My Life ー永遠の銀(RickReMix)ー ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 16:01:58 ID:???
「くだんというあやかしをご存じでしょうか」
「いや、知らねえが...有名なやつか?」
「それなりには。人語を介する人面の動物で、近い未来を確定するというあやかしです。
例えば、九朗先輩と私のデートでどこに行くかを悩むとしましょう。
お洒落なレストランで優雅な食事を堪能するか、遊園地で童心に帰り無邪気に楽しむか、爛れた欲望に身を任せて大人のホテルに連れ込むか...
ここでくだんが『お前たちはホテルに行く』と予言しました。すると九朗先輩の心が明後日の方へ向いていても身体は正直になり、予言に従い私という華を蹂躙する為にドロドロの欲望を吐き出す他ないのです。
しかし、残念ながらくだんはその結末を見ることは叶いません。くだんは予言を遺すとすぐに死んでしまうからです」
「なんか不憫な生き物だな。で、そのくだんがどうしたんだ」
「くだんのやっていることは、枝分かれする未来の中から一つを選び確定させる、要するに『平行世界』への干渉に近いことです。
その代償として命を払わされてしまう...平行世界に干渉するというのはそれほど代償の重い行為なんですよ」

ここで一旦言葉を切り、琴子は重要な会話は筆談に切り替える。

『つまり平行世界からこれだけの人数を集めて行うのが全員が殺し合うかわからないサバイバルなんて代償が釣り合わなさすぎるんですよ』

確かにな、とリュージは内心で同意する。
テミスが平行世界を股にかけた殺し合いを開くのに必要なのは『平行世界から人間を連れてくる代償を引き受けられる人員数』『会場となる島の設備費』『μを懐柔する手段』『多くの参加者から恨みを買う立場』etcetc...
そしてこれだけの代償を支払っても、絶対に殺し合いが完遂する保証はない。
最後に殺し合いを拒否する者だけが残り、首輪爆破のその瞬間まで意地を張り爆破で全滅という可能性だってあるのだ。
果たして彼女がそんな不安定な催しを多大な代償を支払ってでも開きたいと思うタチなのだろうか。
あるいは、それを払ってでも手に入れたい何かでもあるというのだろうか。

『このことから考えられる回答は二つ。一つは先ほど提示した【そもそもテミスは平行世界から参加者を集めてきてなどいない】ケース。もう一つは』
「支払う代償を気にも留めない太っ腹な黒幕が存在している、といったところでしょうか」

琴子は二つの解の内、一つは筆談に収め、もう一つの解は敢えて口に出した。
リュージはそんな彼女に面食らうもその意図を察し、「本当にそれでいいんだな?」と問いかけ、琴子が頷くと適当に相槌で返す。
テミスの裏に黒幕がいる。これが真実であれば主催の背景は見えるものの、主催の側からしても知られて痛い情報ではない。
黒幕が誰であれこの殺し合いが破綻するほどの影響はないからだ。
だから敢えて口に出した。琴子を『いくら智恵が回ろうとも肝心な部分にはたどり着けない哀れな駒』として主催に見せるために。

『で、もう一つの答えの詳細は?』

目と筆談で催促してくるリュージに、琴子は躊躇うような面持ちで俯き、やがて意を決したかのように顔を上げる。

『ここから先の考えはあくまでも現状から推察されるものです。新たな情報が入り矛盾が出るようであれば早々に棄却されるべきモノです。
それでもあなたは知ろうと思いますか?』

もしもこの光景を、琴子をよく知る九朗や桜川六花が見れば不思議に思うだろう。
彼女は己の推察を聞かせるのを躊躇うことはない。
真実ではない虚構の推理も容赦なく公平公正に伝え秩序を保つ。それが岩永琴子という知恵の神だ。
その彼女がわざわざ警告をしている。それも親しい間柄でもない、これからの関係を気にすることもない会って数時間の人間に対して。
きっと二人が見れば、【まるで琴子自身が信じたくないと思っているようだ】と判断するだろう。


『構わねえ。教えてくれ』

そんな彼女の背景こそは知らないものの、『嘘発見器』により彼女の語ろうとしている推理が嘘八百の出鱈目ではないのを判別し、リュージは受け入れる。
ここまで琴子の推理に驚きっぱなしだったものの、リュージとて既にダーウィンズゲームにおいて奇想天外な経験をしえいる身だ。
伝えられるのを躊躇われるほどヤワではないと自負している。

「...わかりました」
「岩永ー!リュージー!!」

二人の間に割って入るように甲高い叫びが響く。
声―――アリアが二人の進行方向から飛んできた。
アリアは、二人が渋谷駅に向かうと決めた時から、琴子の頼みで先行して情報を探っていたのだ。

「見つけたよ!見つけたんよ!!」

興奮冷めやらぬ勢いでまくし立てるアリアを琴子はなだめる。
彼女の目的であるμまで目と鼻の先なのだ。興奮するのも仕方ない。
むしろ勢いのまま突っ込んでいくのを自制してくれただけでも褒めるべきだろう。

「さて。これで現状で備えられる手札は揃いました。リュージさん、詳細は道すがら語ると致しましょう」

14【代理投下】It's My Life ー永遠の銀(RickReMix)ー ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 16:03:05 ID:???






残された呼吸を 使い果たせば

抱きとめた 記憶さえ 灰へと散る


鼓動とは呪いだと気づきながら

参列者は笑い行く  虚ろな棺


リックの拳のラッシュが隼人へと襲い掛かる。
隼人は脇を固め、腕で防御するも、一撃ごとに筋肉が悲鳴を挙げていく。

(ッ、この感触...本当に鋼鉄になっていやがる...!)

リックの拳は先の剣とは比べ物にならないほど重く、なにより硬い。
鍛え上げた肉体を『鋼鉄のようだ』と称することはある。
しかし、如何な肉体とて本物の鋼鉄に硬度が勝ることはなく、疲労で筋力が落ちることが無ければ、それに伴う威力の低下もない。

(こいつは長期戦は厳しいか...!)

隼人の得意とする肉弾戦は、爪で敵を切り裂く外部破壊である。
内側にまで響く攻撃は投げ技を主とする弁慶の領分だ。

「はああああああ!!」

隼人の不利を悟ったクオンが、リックの頭上まで跳びあがり、回転を伴った踵落としを放つ。

「ッラァ!」

リックがクオンに気を取られた隙を突き、隼人は回し蹴りをお見舞いする。
クオンの踵落としは肩口に、隼人の蹴りは腹部に当たり鈍い音を奏でる。

「うあっ!」
「ッ!」

しかし、苦悶の声を挙げるのは攻撃を放ったクオンと隼人。リックは顔色一つ変えていない。

これこそが鋼鉄の最大の利点。
鍛え上げた達人は衝突の際に技術で相手にダメージを与えるが、鋼鉄はただ攻撃されるだけで相手の肉体を削っていく。



怯んだ隙を突き、リックはクオンの足を掴み、遅れて乱入しようとしていたビルドへと投げつける。
クオンの衝突を避けられなかったビルドは、そのまま衝撃に逆らえず二人諸共地面に叩きつけられた。

リックは残る隼人の胸部を殴りつけ後方へと吹き飛ばす。
その先にあった木に衝突した隼人の身体が反動で跳ね上がり、浮いた瞬間にリックの掌が隼人の顔面を掴み木に叩きつける。
隼人の頭部から血が溢れ、叩きつけられた木がミシミシと悲鳴を挙げ、ほどなくして折れてズン、と地面に沈んだ。

意識がトびかける隼人だが、しかし、寸でのところで踏みとどまり抜いた拳銃でリックの頭部へと銃弾を放つ。
それは真っすぐにリックの眉間へと吸い込まれるが、甲高い音と共に銃弾は弾かれ、リックの眉間には傷一つついていない。

「無駄だよ。そんな玩具はもう僕には通じない」

リックは隼人の顔を掴んだまま腕を振りかぶり、地面へと叩きつけようとする。

「させない!」

復帰したクオンが背後よりリックの背に掌底を当て、隼人への追撃を妨害。
リックがよろめき力が緩むと、隼人は顔の拘束を剥がし距離を取る。

「やあああ!」

視線が隼人へと向いたその隙をつき、ビルドのハンマーがリックの身体を叩いた。
ビルドのビルダーズハンマーは物質を壊し素材にすることができる。
ならばリックの鋼鉄の身体も素材に出来るのではないかと考えた。

が。

リックはそのまま裏拳を放ちビルドの胸部を打ち抜き吹き飛ばした。

「残念だったね。僕は僕、生物だ。モノづくりに使える物質じゃない」

ビルドのハンマーはうごくせきぞうやばくだんいわには有効だ。
しかし、いまのリックは『せきぞう』や『いわ』に意思が宿ったものではなく、『リック』が鋼鉄の身体を手に入れた生物だ。
そのため、ビルドのハンマーも十分な効果を発揮することなく、ただの打撃となってしまった。

リックはビルドを隼人へと投げつけ牽制し、クオンと対峙し再び肉弾戦に臨む。

(ッ...掌底ならいくらかマシとはいえそれでもキツいかな...!)

蹴りや拳といった単純な打撃とは違い、掌底は掌を通じて内部に衝撃を与える技である。
己の酷使するわけではないので、比較的に反動のダメージは少ないがそれでもゼロではない。
なにより人間相手ならばとうに悶絶し動けないであろうほどの数を当てているのに、リックは微塵も動きの衰えを見せない。
内臓までもが鋼鉄になっているとでもいうのか。

(彼を倒すにはやっぱり直接破壊するしかない。なら...!)

リックの蹴りがクオンの腹部を捉え、その重さに喉元から空気がこみ上げる。
次いで放たれる拳を咄嗟に腕で防御し、押される勢いを利用し隼人たちのもとへと降り立つ。

「ゲホッ、ゲホッ」
「クオン、しっかり!」
「だっ、大丈夫だよビルド」
「まだやれるなお前たち」

呼吸を整えようとするクオンとそれを気遣うビルドの前に隼人が先んじて立つ。

「あなたこそ大丈夫なの?」
「当たり前だ。俺には俺の目的がある。こんなところで終わっていられるか」

はた目から見れば、流血し、リックからの打撃を一番受けている隼人が一番重傷だ。
しかし、彼の目からは些かも覇気は衰えず、眼前の敵を見据えている。

「うん...そうだよね。ここで終われば元も子もないかな」

その闘志にあてられたかのように、クオンは隼人の横に立ち小さな声で告げる。

「時間を稼いでほしい。あいつを倒すための準備が必要なの」
「そいつは確かなんだろうな」
「絶対とは言い切れない。けど、いまの私がとれる最後の手段だよ」
「そうか。ならさっさと準備しろ」

二の句も無く引き受けてくれた隼人に内心で感謝し、クオンは戦場を預け背中を向け走りだす。

(いまのコンディションで解放するのは時間がかかる。集中できる場所を確保しないと)
「逃がさない」

火の手で経路が限定されているとはいえ、クオンの向かう先はμのいる方角ではない。
この状況で逃げていく彼女を不審に思ったリックだが、その行く手は隼人とビルドに遮られる。

「行かせないよ」
「眼前の俺たちを無視しようとするななんざ、嘗められたもんだ」
「ビルド...いつまでもきみ如きの相手をしてやると思うなよ。僕が従うのはもうきみでもハーゴンでもない。μだけだ」

15【代理投下】It's My Life ー永遠の銀(RickReMix)ー ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 16:03:57 ID:???



その叫びも やがて 過去に溶ける

暗室の花だけを道連れに

嫌だよ 終わるために生まれた悲劇など





―――水の呼吸 壱の型 水面斬り

水平に振られる斬撃をベルベットは屈んで躱し、返す右腕の籠手で義勇の腹部を狙う。
それを身体を捩じり回避する義勇だが、しかしベルベットはそれを予測し先んじて身体を半回転させ、後ろまわし蹴りを放っていた。
地面に落とされた義勇へと追撃の踵落としを放とうとするベルベットだが、しかし咄嗟に止めて後方に跳躍する。


―――水の呼吸 弐ノ型・改 横水車

瞬き一つすら遅いと感じるほどの刹那、ベルベットの身体のあった場所に義勇の剣先が振られていた。
水面斬りでの先手はフェイク。最初からこの水車が本命であった為の対応の速さだ。
あと一瞬でも気づくのが遅れていたら殺られていた。腹部に刻まれた一筋の線が嫌でもそれを実感させる。

―――水の呼吸 参ノ型 流流舞い
「飛燕連脚!」


だがそれで恐怖に怖気づくベルベットではない。戦いに抱く恐怖など、もうあの紅き月の日に消え去っている。
水流のように滑らかに振るわれる剣にも迷わず迫り、それを搔い潜り義勇の身体を浮かせんと蹴技を放つ。
義勇はそれを跳躍で回避し、そのまま次の型へと繋げる。

―――水の呼吸 捌ノ型 滝壷

振り下ろされた刀は躱された地面を叩き、飛瀑の如き威力を見せつける。
その余波でベルベットの身体は吹き飛ばされ地を後転で転がるも、その最中に炎のリングを牽制として放つ。

「紅炎刃!!」

―――水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦

迫るリングを、回転の威力を伴った斬撃で消滅させ


―――水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き

即座に型を切り替え最速の突きを放つ。
ベルベットは咄嗟に業魔の腕を盾にするが、しかし止めきれず掌を貫通し肩口までもを刃が掠め痛みが走る。
義勇は業爪が刀を握り込む前に即座に刀を引き抜き、後方へ跳躍しひとまず距離をとる。
ベルベットは業魔の腕から伝わる痛みに顔を歪めながら義勇を睨みつける。

(相変わらず厄介ねこの『水の呼吸』ってやつは)

如何な攻撃にも対応し、受け流される水流の如き技。
義勇もまた錆兎のように受けの技量においては確実にベルベットに勝っており、そして型の切り替えの速さや交えてみての手ごたえからしても錆兎よりも実力は上だ。

(けど、呼吸という型に捕らわれているのはあいつと同じね)

ベルベットは敢えて錆兎に対してやったのと同じような攻防を仕掛けてみた。
そこからわかったのは、攻防においては性格の差異はあれど、いざという時の『癖』は似通ってくるというもの。

(紅炎刃への対処は錆兎と同じだった。躱すでもなく真っ先に消しにかかった)

あの距離での牽制だ。義勇は躱すこともできたはずだが、彼は一瞬も迷うことなく紅炎刃を消しにかかった。
相手の攻撃を捌きつつ催促距離でカウンターを狙う。恐らくそれが水の呼吸の特色なのだろう。

(やはり狙うのは刀。あれさえ破壊すれば戦力はかなり落ちる)

義勇にしても錆兎にしても、水の呼吸はあくまでも刀を持っていること前提で構成されている。
ならば刀を失えば攻撃手段はなくなってしまう。それは先の錆兎との戦いで証明済みだ。

(踏み通らせてもらうわよ...あんたの仲間と同じように)
「......」


鳴り響くμの歌もいまの二人の耳には入らない。
雑音としてすら処理されることなく、意識は眼前の敵にのみ向けられる。

16【代理投下】It's My Life ー永遠の銀(RickReMix)ー ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 16:04:42 ID:???



息を止めて!そのままで 命よ銀に光れ


果てなき今がいつまでも 続きますように



「どうしたどうしたぁ!威勢こいてでてきた割にはそんなモンかぁクソ髑髏ォ!?」

骸骨目掛けて麦野の原子崩しが降り注ぐ。
骸骨の返す光線はいくらかは原子崩しを防ぐものの、抑えきれない部分は周囲に被爆しその爆風や熱風は徐々に骸骨の衣装や体力を削っていく。
横転から放たれる骸骨の光線も、逃さず相殺して尚降り注ぎ続ける。
遠距離での純粋な破壊力では学園都市第三位の超電磁砲を凌ぎ、殺傷するという目的に限れば第二位と一位にも引けを取らない制圧力。
これが学園都市第四位。これが麦野沈利である。

(...間違いねえ。あのポンコツの歌が変わってからあのクソ骸骨の能力の回転数が上がってやがる)

だが、この絶対的に有利な状況においても麦野は冷静に敵を分析していた。
μが電車が完成するまでに歌っていた曲の時の骸骨は一発撃つたびに、数秒ではあるが明確な溜めがあった。
しかし曲が切り替わってからはその溜めのインターバルが明確に1〜2秒ほど縮まっている。
それだけではない。
先の横に転がりながらの正確な射撃といい、命中精度も格段に跳ね上がっている。

(あのポンコツの曲が骸骨に力を与えてるってのか?だとすりゃ面倒なことになる前に早めにケリをつけるか)

格の違いは充分に見せつけたのだ。
もうあの骸骨はお役御免で消し飛ばそう。
麦野は暴発しない範囲での最大の威力での原子崩しを骸骨へ向けて放つ。
着弾と共に光が視界を包み、爆風が麦野のもとまで届きその長い髪や服をたなびかせる。
殺った―――手ごたえからしてその確信を抱いた瞬間だった。

「なっ!?」

麦野の目が驚愕に見開かれる。
爆風を掻き分け姿を現したのは、骸骨。
左腕が焼き切れ、残った手にも例の二丁拳銃は一つも残されていない。

(あの野郎、二丁の拳銃を一纏めにして軌道を逸らすのに全力を注ぎこみやがったか!)

麦野の感じた手ごたえは消し飛ばした骸骨の拳銃と、それでも防ぎきれなかった為に犠牲にした左腕だった。
それに気づき、慌てて能力の再装填を始めるももう遅い。

「しまっ...!」

骸骨は離れていた距離を高速で動きあっという間に詰め寄る。
麦野の原子崩しの発射準備が完了するよりも早く、その懐へと潜り込み、残された右腕を握りしめ

「―――なぁんちゃって」

麦野は凶悪な笑みと共に突き出された右腕を顔を背け躱し、骸骨の太ももの間と肩口を掴みひっくり返すようにして抱き上げ地面に叩きつける。
ボディスラム。別名:抱え投げ。プロレスラーが用いる基本的な投げ技の一つだ。
無論、麦野にプロレスの技量はなく、感覚任せの大雑把な投げではあるが、ゴリラ並と称された彼女の身体能力であればそれでも十分な威力を発揮できた。

「私を第三位みてえな能力頼りのお子様と一緒にすんじゃねえよ。ま、左腕を捨ててまで食らいつこうとした執念だけは認めてやるよ」

投げのダメージで動けない骸骨を踏みにじり、今度こそトドメを刺すために原子崩しを放つ為に充電する。

「さあ今度こそさよならね。安心しな、すぐにあそこのポンコツも送ってあげるから。それじゃあばいばーい」

語尾にハートマークすら付きそうなほどの上機嫌で、麦野は腕を振り下ろした。


消えたくないよ!消えないで! ただそれだけ望んだ


最後の 最後の 幸せ


誰にも 誰にも 奪わせない


離さない


ドズリ。


突如、麦野の腹部に衝撃が走り、原子崩しも明後日の方向へと飛んでいく。

「ガ、ア...!?」

麦野の口から血反吐が撒かれ、激痛に腹部を抑え蹲る。
麦野の腹部を打ったのは、骸骨の股座から覗かせる地面、そこから伸びる、土気色のスーツに身を包まれた腕だった。

「い...いろんなところまわってたから、よぉ〜、随分遅れちまったが、間に合ったってことだよなぁ〜」

ぬるり、という擬音が似合いそうなほどに、ソイツは地面から這い出てきた。
全身を土気色のラバースーツに身を包んだ男は、たどたどしい言葉を吐きながらキョロキョロと辺りを見回している。
その男の姿に、麦野は理解する。
ベルベット達五人が吹き飛ばされたあの時、既に一度踏んでいた場所にも関わらず風を巻き起こす罠が設置されていたのはこの男の仕業であり、こいつもまた主催の手の者だと。

状況の把握を終えた様子の男は、ギョロリと鋭い眼光を覗かせて麦野を睨みつける。

「おまえ〜〜!お、俺がいない間にあんなにバカバカ撃ちやがってえぇ!μに当たったらどうする、つもりだったんだよォ〜〜〜!!」

男は激昂と共に麦野の顔面を殴りつける。

「ぶがっ」
「このっ、このっ、このっ!!!」

男が殴打している最中、骸骨も立ち上がり、麦野の顔面につま先を突き刺す。

「ヒヒッ、いい気味だぜぇ!オラッ、オラッ!!」
「このっ、このっ、このっ!」

交互に振るわれれる男の拳と骸骨の蹴り。
その度に走る激痛に意識はトびかけ、消え去る瀬戸際

「く、ソ、どもがああヴァア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!!!!」

麦野沈利は―――キれた。
獣のような叫びをあげ、己の被爆すら無視して超至近距離で原子崩しを放つ。
男も骸骨も咄嗟に離れた為にダメージを負わせることは叶わなかったが、麦野はようやく男たちの殴打から解放された。

「ふざけ、やがって...この腰巾着のチンボコ野郎共がぁ!!」

麦野は感情のままに原子崩しを発動し周囲一帯を焼き払う。

「あたしが...学園都市台四位のあたしが、てめえらみてえなタマナシ共に殺られる筈がねえんだよおおおあああああア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!」

17【代理投下】It's My Life ー永遠の銀(RickReMix)ー ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 16:05:30 ID:???
安らかなる日々だけが続けばよかった それを守るだけの力が在ればよかった


静かな夕凪をずっと見ていたかった それを守るだけの力が在ればよかった


安らかなる日々だけが続けばよかった それを守るだけの力が在ればよかった


静かな夕凪をずっと見ていたかった それを守るだけの力が在ればよかった


安らかなる日々だけが続けばよかった それを守るだけの力が在ればよかった


パチパチ、と燃える森林の中でクオンは目を瞑り精神を集中させる。


「スゥ――――ハァ――――」

息を吸い、深く吐く。また吸って、また吐いて。
その繰り返しを行っている内に、己の体内に『氣』が溜まっていくのを実感する。

クオンがいま行おうとしているのは己の中に秘めたる力の解放。
本来のコンディションであればここまでの準備は必要ない。
だが、この会場に連れてこられてからはどうにも集中や邪魔の入らぬ環境などが必要となるほどに、解放するまでの『氣』の充実が遅くなっていた。

【なぜ今になって我が力を使う】

どこからか、そんな声が響く。

【汝があの時我が力を使っていればかの漢は逝かなかった筈だ。なのに何故。何故会ったばかりの者たちの為に力を求めるのだ】

わかっている。わかっているのだ。漢の意地も、矜持も、信頼までもを無視してこの力に手を染めていれば、彼を、ハクを失わなかったかもしれないことは。
だからきっとこの声は自分の後悔が現れたものだろう。

(だからこそ、これ以上失わない為に―――私はこの力に手を染めよう)

これはビルド達や他の参加者たちの為だけではない。

ここに来る前にハクを失った。

ここに連れてこられてからアンジュを失った。

そしてこの地においては、これから先にムネチカやマロロ、果ては己の命すら脅かされている。

彼らが、認めたくはないがオシュトルが、自分が死ねばどうなる。

故郷の皆やここにはいないネコネやルルティエら仲間たちがどれほど悲しむことになるか。

それを防ぐために、いま、主催に繋がる手がかりがすぐそこにある最大のチャンスを掴むために、クオンは己の力を解放する。

「我が父の名において、この身に穿たれし楔を...解き放たん!!」

クオンの叫びと共に、身体から黄金色の『氣』が溢れ、その身体が宙に浮く。
視線の先にある敵を見据えた瞬間―――その姿が消えた。
彼女の通った後には火がかき消えるほどの暴風が巻き起こり、瞬く間に敵―――リックへと肉薄する。

「なっ」

リックが横合いから高速で迫るクオンに気づいた時にはもう遅かった。
彼の鋼鉄の身体がただの体当たりで弾き飛ばされ、地面を何度も跳ねる。

「ク、クオン。その光は...!?」
「......」

驚愕と警戒の籠る視線を受けたクオンはビルドと隼人へと目を向ける。
やはりというべきか、二人は別れる前よりも傷ついていた。

「よく持ちこたえてくれた。あとは我に任せよ」

二人は出会って間もない自分を信用してここまで頑張ってくれた。
ならば彼らに報いねばなるまい。
少なくとも、オシュトルのようなことがあっては絶対にならない。

地面に転がるリックは目を瞬かせた。
なぜ自分がこうも無様な姿を晒している?
なぜ鋼鉄の身体を殴りつけた彼女はああも平然な顔をしている?

「ふざけるな...!」

リックの背中の装甲が開き、スラスターが現れる。
高速で迫るクオンに対してリックもまた、スラスターの推進力で立ち向かう。

「僕の幸福は、幸せは、こんなところで終わらない。終わらせてたまるか!」

クオンの現人神の拳とリックの鋼鉄の拳が交差し、衝撃で突風が巻き起こる。

「僕は守る...μを、この幸せを!!」



リックの強き想いに答えるようにμは唄う。

μの優しき想いに答えるようにリックは叫ぶ。

腹の底から、全てを吐き出すように、二人の声が重なった。

「全てを 捧げても!!」



低空でぶつかり合っていたクオンとリックはたちまちに上昇していき空中で衝突し始める。
リックの掌から放つレーザーを躱し、迫るクオンを拳で迎え、彼女もまた拳で返し。

「な、なにが起こっているかわからない」
「クオンのヤツめ...あんな力を隠していたのか」



二人の離れてはまたぶつかりの瞬間の攻防を、ビルドは全く目で追えず、ゲッター2での高速戦闘に慣れている隼人にしても辛うじて目で追える程度だった。



息を止めて!そのままで 命よ銀に光れ


果てなき今がいつまでも 続きますように


消えたくないよ!消えないで! ただそれだけ望んだ


最後の 最後の 幸せ

「「はああああああああ!!!」」

二人の雄叫びが重なり、衝突するたびに轟音と暴風が荒れ狂う。
クオンの掌底がリックの腹部に当たれば、リックの拳が返される。
実態的にはただの殴り合いも、人智を超えた者同士が行えば神技の如き現象となる。
いや、正確には一人だけだ。
リックの胸の装甲から放たれる熱線も、腕から取り出されるサブマシンガンも、人類の英知は全て現人神の前では無力。
神の如き氣の前では打ち消されるのが運命だ。

ピシリ。


くずれてゆく。

現人神の攻撃を受けた箇所から亀裂が走り、鋼鉄の身体は徐々に崩壊していく。
それは現人神も同じだ。
外部からはわからないが、強靭なヒトの身体をもってしても神の力は耐えきれるものではなく、全身の筋肉が悲鳴を挙げている。

「くあっ」
「!」

痛みに僅かに怯んだ隙をリックは見逃さない。
このまま為す術なく負けるくらいなら、せめて全てを出し切る。
リックの身体の至る箇所の装甲が同時に開き、銃や熱線板、小型ミサイルなど身体に仕込める限りの銃火器の砲門がクオンに向けられる。

(もう長くはもたない...このまま押し切る!!)

クオンとて後退は考えない。
彼女の知る文化の中に銃火器の類はないが、それでも恐怖を抱くであろう銃口の数にも怯まず正面から突破する。


それでも それでも 触れるなら


許さない


「これで最後ッ!!」

クオンの光速の体当たりとリックから放たれる数多の銃火器が衝突し、閃光と爆発の柱が聳え立つ。
衝撃は周囲を揺らし、破壊し、ある種の美しさを醸し出し見る者の目を引き付ける。

18【代理投下】It's My Life ー永遠の銀(RickReMix)ー ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 16:06:05 ID:???


閃光の中から弾かれるように、クオンと上半身だけになったリックが零れ落ちていく。
気を失っているのか、ピクリともしないクオンを隼人が抱き留め落下によるダメージを軽減させる。

一方のリックもまた、歌い終えたμが落下地点で待ち受け受け止めようとする。
しかし、リックの掌から虚空に放たれたレーザーがリックの落下地点をズラし、μに抱き留められることなく地面に重厚な音を鳴らし落ちた。

「リック!?どうして私を避けたの!?」
「きみの腕で受け止められる筈もないだろう。大丈夫、この身体のお陰であの落下程度は耐えられたから」
「でも...」
「おーい、μ!」

一仕事を終えたような呑気な声色で、ラバースーツの男が骸骨を引き連れ腕を振りながら歩み寄ってくる。

「もっ、もう電車は作り、終わったのか、よぉ〜?」
「うん、大丈夫だよセッコ!あとは細かい調整が終わったら完成!」
「ウへへへ、それなら頑張った甲斐があった、ぜえ。なあ、ご褒美、くれるよなぁ〜?」
「もちろんだよ!それより」

ここまで満面の笑みだったμだが、ピタリ、とその笑顔は止み、真顔になる。

「殺してないよね」

先ほどまでの朗らかな声が嘘だったかのように、μはセッコと骸骨に問いかける。

「しっ、心配するなよぉ〜。ちょっと気絶させただけだぜぇ!俺たちがμの悲しむこと、する訳ねえだろぉ?なあ?」

ラバースーツの男―――セッコが身振り手振りで慌てて答え、骸骨もそれに続くようにウンウンと頷く。

「ならよかった」

再び笑顔になるμに、セッコと骸骨はホッと胸を撫で下ろす。

「はい、それじゃあ背中かいてあげるね!ポリポリ、ポリポリ♪」
「ウヒイイィィィィ!そこっ、そこがイイッ!!」

μに背中を掻かれセッコはご満悦な表情で喜び悶える。

「それじゃああなたにも...ってええ!?左腕がないよ!?大丈夫!?」

骸骨の左腕が無いことに今更気が付いたμが驚き、それを宥めるようにガイコツは右手の指を左右に振る。

「戻ったらリックと一緒にすぐに治してあげるからね!もう少しだけ我慢できる?」

μが首を傾げる動作に対し、骸骨はコクリと頷き返す。

もはや、彼らを害する者はいない。

電車はもうすぐ完成してしまう。

麦野沈利も。
ベルベット・クラウも。
夾竹桃も。
冨岡義勇も。
ビルドも。
神隼人も。
クオンも。

主催(かみ)を殺すために集った者たちは時間までに邪魔することも辿り着くこともできはしない。





      ――――――――――――――――――――――――――

     |  MISSION  μを倒せ!!    達成度0/1    |

      ――――――――――――――――――――――――――

―――失敗 ⤵―――





「μ――――!!!」

否、挑戦はまだ終わっていない。

四人のもとに飛んできた小さな妖精―――アリアが、μの眼前に止まり浮かぶ。

「ようやくたどり着けたよμ...って誰さそいつら!?」
「あーっ、アリア!」
「なっ、なんだよオッ、オメー!!どうして禁止エリアに入ってきてんだ、よぉ!?」
「大丈夫だよセッコ。この子はアリア。私と同じバーチャドールだから」
「でっ、でもよお」
「大丈夫だから、ね?」

笑顔で宥めるμに言われては、とセッコはすごすごと下がり、μは改めてアリアと対面する。

「会えて嬉しいよアリア」
「μ、どうしてこんなことするの!?」
「...ごめんね。それには答えられないの。あなたからの質問には答えちゃいけない。それがテミスのお願いだから」

申し訳なさそうに肩を窄め、しょんぼりとするμにアリアは困惑する。
間違いない。話を聞く限りではセレモニーの時のμは操られているような感じだったらしいが、いま、ここにいるμは限りなく正常に近い。
少なくとも、意思を捻じ曲げられた違和感のある洗脳はされていないように思える。

(これも、あんたの予想通りになっちゃったね)

アリアは己の喉元を弄り、そしてしっかりとμを見据える。

『なら、参加者である私の考えを聞いてもらうことはできますね?』
「え?」

―――カツン。

アリアの声がまるで別人のように変わるのと同時、杖が地面を突く音が鳴ったような錯覚に陥った。

『初めまして、というのは不適切でしょうね。私を呼んだあなたなら知っている声の筈でしょうから』
「その声、まさか...」
『岩永琴子です。ご安心を。こちらから危害を加えるつもりはありません。電車の整備が完全に終わるまでの間、少しお話に付き合っていただけたらと存じ上げます』
「うっ、嘘つくんじゃあねえ〜!そうやって油断させるつもりだろおめ〜!!」
「駄目だよセッコ。手を出されない限りは、ダメ」

『琴子』に食ってかかろうとするセッコをμは手で制し、μはなお『琴子』に向き合っている。




「マジかよ...」

送り出したアリアを双眼鏡で眺めながら、リュージは何度目になるかわからない言葉を漏らす。
あれだけの激戦を繰り広げた後だというのに、こちら側の使者であるアリアをああもあっさり受け入れられたのが信じられなかった。


「想定内ですよ。だからこそ、なおのこと先が思いやられるのですが...まあいいでしょう」

はぁ、とため息を吐きつつ、琴子は気の乗らない面持ちながらも杖を握る力を強める。

「それでは始めましょう。バトルロワイアル攻略議会、その序章を」

武力による主催(かみ)への反乱は鎮圧という形で収められた。

しかしまだ終わりではない。

知恵の神による宣戦は、ここから始まる。

19 ◆2dNHP51a3Y:2022/11/28(月) 19:56:17 ID:???
本スレ>>274-276を以下の内容に修正します

20 ◆2dNHP51a3Y:2022/11/28(月) 19:56:51 ID:???


(やっちまった! やっちまったぁぁ!)

思わず、カタリナ・クラエスを殺すつもりで攻撃してしまった。
死んだかどうか確認する余裕すらなかった。せっかくの囮を、自分の手で殺してしまっては意味がない。
感情に振り回されて、最悪の一手をやってしまった。

(もし万が一メアリ・ハントが生き残ってこの事実がバレたら、本当にまずい!!)

自分の行ったことがメアリ・ハントに判明するようなことがあれば、間違いなく自分の立場は急落に落ちる。最悪自分が他の陣営に狙い撃ちにされかねないというのに、完全にやってしまったのだ。

(……だ、だが俺はまだ運がいい!)

だが、不幸中の幸いか。あの魔王の攻撃範囲から、間違いなくあの建物も巻き込まれかねない。
死ぬにしても、生きていたにしても、証拠隠滅レベルの攻撃をしてくれたのなら、「カタリナを殺したのは魔王」という事になる。
それで自分のやらかしはチャラ、恐らくそうなるのだろうと、それを信じて再び走り始めようとするが――。

「が、あっ………!?」

心臓が、締め付けられるような痛みを発して。痛みのせいで倒れ込む。

「く、そ、がぁ………! こんな、所、でぇ……!?」

痣の代償。琵琶坂永至は知らぬことだが、痣の発現自体が寿命の前借りとも言うべき行為である。
しかも先程、戴冠災器・日輪天墜を凌ぐために全力で発現させ、先の衝動に委ねたカタリナの攻撃にも無意識でしようしてしまった。
それが引き金だった、それが琵琶坂永至の寿命を大きく縮めてしまったのだから。

「……ふざ、ける、なぁ……。俺は、他のクズどもとは、違う……!」

怨嗟の如く、呻いて、叫ぶ。

「俺は、特別な存在、なん、だ………!!!!」

それでも、胸の苦しみは収まらず、ただ呻くだけ。
天に向けて、憎むように、断言するように、ただ、命の灯が消える、その直前まで――。

「他の凡百どもとは、断じて、違うんだぁぁぁぁぁっっ!!!」

尽きようとする命の中で、構わず、何もかもを込めて、ただ叫んで―――





「く、そが――――――――あ?」

痛みが、止んだ。
まるで、最初からそんなもの等、なかったかのように。
まるで、身体が万全の状態へと戻っていくかのような感覚を。

「……クク、そうか。」

嗤う。笑う。笑わずにいられない。
再び、歯車が動く幻聴が聞こえる。だけどそれがとても心地よく聞こえるのだ。
ガチリ、ガチリと、何かが噛み合う音が、そんな幻聴が聞こえる。
それは歯車が正しく噛み合い動いているという証左であり、全てが順調であるという証左であり。

「そうだったんだ。そういえば、そうだったんだな!」

思い返し、確信する。
あれが、あの時が分岐点だった。
ミカヅチを殺すため、アレを利用した時点で、全ては始まっていたのだ。

「そうだ、あの時に、そうだったじゃないか」

あの時から、答えは提示されていたじゃないか。
あの時から、その答えは用意されていたじゃないか。
あの時から、自分はそうだったじゃないか。

確信し、確証に辿り着き、歓喜の表情を浮かべる。
方程式に辿り着いた、運命とは試練であり、その困難を乗り越えてこそ絶頂へとたどり着くもの。
そして、男は、その答えにたどり着いたのだ。













「俺は、選ばれたいたのか―――・・・・!!」


歯車は、完璧に噛み合った。

21 ◆2dNHP51a3Y:2022/11/28(月) 19:57:24 ID:???
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痣を発現させた者は齢25以上は生き残れない。仮に齢25を超えたタイミングで痣を発現させたとしても、その者はその日の内に死に至る。ただし、例外は存在した。
――始まりの剣士、鬼狩りの始祖たる継国縁壱。この世で初めて、かつ生まれついて痣を以ていた祝福の子。痣を持ち得ながら齢八十まで生き残った例外中の例外。
齢25までに死ぬ、もしくは発現後その日の内に死に至る寿命の前借り、『人間』であるならそれに例外は存在しない。先の未来におけて鬼舞辻無惨を討伐した後の岩柱・悲鳴嶼行冥のように。

主催陣営はミスを犯した。それは本来『技術』であって『異能』では無いとカテゴライズされる『痣』を、異能としてカウントしてしまった事。
そしてもう一つ、ゲッター線。琵琶坂永至が安倍晴明の炎を耐えきり、痣を発現させるに至ったきっかけの一つ。ある世界において、神すら呑み込む大いなる天空を打ち倒すための力、神の一柱の恩恵とも称されるその力。――即ち、魔術の世界におけて『位相』とカテゴライズされる存在の一端ではないのか?

魔術世界における『位相』とは、端的に言ってしまえば『現実世界』の上に投影されている、あらゆる異世界、宗教概念のことである。
ある世界においては、異なる『位相』で発生した現象が現世において神話として伝えられているらしい。

ではここで、『ゲッター』=『位相』の一つだと当て嵌めてみよう。
ゲッターとは本来意思の力。琵琶坂永至のカタルシスエフェクトも別の言い回しをすれば意思の力とも称される。あの時、安倍晴明に焼かれようとした時、無意識に彼は『位相』の一端に触れることが出来たのではないのか?
もし仮に、琵琶坂永至に発現した『痣』が、元の世界の法則ではなく、『ゲッターという名の位相』を根源として、その力で、データ上に擬似的に再現されたものとして擬似的に再現したものだとしたら。
意志の力という共通点から、カタルシスエフェクトとゲッターの力が『良く馴染む』としたのなら。
……ゲッター線の恩恵を最大限に得てたどり着く通過点。『魔神』と言う、人の身で在りながら神格へと到達した、一種の進化の極致の一つではないのかと。

余談であるが、ゲッター自体にもゲッター曼荼羅なる宗教画、もとい宗教的要素みたいなものなものが存在するのだが……閑話休題。
はっきり言えば、『由来が異能ではない生体現象を無理やりデータ上において異能に落とし込んだ』事自体が、余りにも歪みであるのだ。
煉獄杏寿郎は元々がその概念が存在する世界の住人だったからまだいい。
ミカヅチ、安倍晴明は由来が人間ではないにしろ、自覚までには至らなかった。
琵琶坂永至は、自分が「それ」に愛されているという自覚を持ってしまったのだ。
そう、―――琵琶坂永至は、自分が「ゲッター線」に愛さているという、『認識』を持ってしまった。
そして、この痣の由来を、「ゲッター線」によるものだと、『認識』してしまったのだ。

異能は『認識』であり、『自分だけの現実』である。
だが、主催側によって齎された『痣は異能である』というデータは、本来なら真実とは違う歪んだ認識。
要するに、一つでも綻びが出たなら不明な動作を起こすバグとして作用する。

ゲッターは未知の存在だ。それは、主催陣営からしても完全には解明できていない。
だが、数多の世界の情報を掻き集めたが為、本来ならば作用しない情報が、結び付いてしまう。
異なる情報が、意外な共通点を以て結びつき、予期せぬ反応を起こすこともある。




■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


痣を発現させた者は齢25以上は生き残れない。仮に齢25を超えたタイミングで痣を発現させたとしても、その者はその日の内に死に至る。ただし、例外は存在した。
――始まりの剣士、鬼狩りの始祖たる継国縁壱。この世で初めて、かつ生まれついて痣を以ていた祝福の子。痣を持ち得ながら齢八十まで生き残った例外中の例外。
齢25までに死ぬ、もしくは発現後その日の内に死に至る寿命の前借り、『人間』であるならそれに例外は存在しない。先の未来におけて鬼舞辻無惨を討伐した後の岩柱・悲鳴嶼行冥のように。

主催陣営はミスを犯した。それは本来『技術』であって『異能』では無いとカテゴライズされる『痣』を、異能としてカウントしてしまった事。
そしてもう一つ、ゲッター線。琵琶坂永至が安倍晴明の炎を耐えきり、痣を発現させるに至ったきっかけの一つ。ある世界において、神すら呑み込む大いなる天空を打ち倒すための力、神の一柱の恩恵とも称されるその力。――即ち、魔術の世界におけて『位相』とカテゴライズされる存在の一端ではないのか?

魔術世界における『位相』とは、端的に言ってしまえば『現実世界』の上に投影されている、あらゆる異世界、宗教概念のことである。
ある世界においては、異なる『位相』で発生した現象が現世において神話として伝えられているらしい。

ではここで、『ゲッター』=『位相』の一つだと当て嵌めてみよう。
ゲッターとは本来意思の力。琵琶坂永至のカタルシスエフェクトも別の言い回しをすれば意思の力とも称される。あの時、安倍晴明に焼かれようとした時、無意識に彼は『位相』の一端に触れることが出来たのではないのか?
もし仮に、琵琶坂永至に発現した『痣』が、元の世界の法則ではなく、『ゲッターという名の位相』を根源として、その力で、データ上に擬似的に再現されたものとして擬似的に再現したものだとしたら。
意志の力という共通点から、カタルシスエフェクトとゲッターの力が『良く馴染む』としたのなら。
……ゲッター線の恩恵を最大限に得てたどり着く通過点。『魔神』と言う、人の身で在りながら神格へと到達した、一種の進化の極致の一つではないのかと。

余談であるが、ゲッター自体にもゲッター曼荼羅なる宗教画、もとい宗教的要素みたいなものなものが存在するのだが……閑話休題。
はっきり言えば、『由来が異能ではない生体現象を無理やりデータ上において異能に落とし込んだ』事自体が、余りにも歪みであるのだ。
煉獄杏寿郎は元々がその概念が存在する世界の住人だったからまだいい。
ミカヅチ、安倍晴明は由来が人間ではないにしろ、自覚までには至らなかった。
琵琶坂永至は、自分が「それ」に愛されているという自覚を持ってしまったのだ。
そう、―――琵琶坂永至は、自分が「ゲッター線」に愛さているという、『認識』を持ってしまった。
そして、この痣の由来を、「ゲッター線」によるものだと、『認識』してしまったのだ。

異能は『認識』であり、『自分だけの現実』である。
だが、主催側によって齎された『痣は異能である』というデータは、本来なら真実とは違う歪んだ認識。
要するに、一つでも綻びが出たなら不明な動作を起こすバグとして作用する。

ゲッターは未知の存在だ。それは、主催陣営からしても完全には解明できていない。
だが、数多の世界の情報を掻き集めたが為、本来ならば作用しない情報が、結び付いてしまう。
異なる情報が、意外な共通点を以て結びつき、予期せぬ反応を起こすこともある。

22 ◆2dNHP51a3Y:2022/11/28(月) 19:58:07 ID:???
―――その予期せぬバグの結果が、『別の概念』による補完をした帳尻合わせの結果がこれだ。
これは、覚醒などという生温いものではない。
これは『変容』だ。在り方そのもの変質だ。
人類と言う種が、高次の存在へ進化すること。ゲッターの意思が待ち望んだ、無限の進化。
進化とは他種族の淘汰でもある。巨大隕石の墜落により恐竜が絶滅し、類人猿が人類へと進化したように。
琵琶坂永至は、自らの望みを邪魔するものを淘汰する、傲慢にして外道の極み、絶対悪である。


だからこそ、彼は見初められたのであろう、ゲッターに。
あらゆる敵対者を淘汰し、自らのみの幸福(しんか)を望む、その在り方が。
ゲッターとは大いなる意思とも解釈できる、そして大いなる意思とは本能でもある。
抑圧された内面を、心の内にある本能をカタルシスエフェクトとするのなら。
アリアの力を借りずとも、カタルシスエフェクトを発現し得る才能を持った琵琶坂永至は。
――最初から、彼はゲッターの力を得るに相応しい力を、その片道切符を生まれた時から所持していたのではないのか。








そして、その結論が齎した果てにあり得るものは――もうすぐ、明らかになるであろう。





―――その予期せぬバグの結果が、『別の概念』による補完をした帳尻合わせの結果がこれだ。
これは、覚醒などという生温いものではない。
これは『変容』だ。在り方そのもの変質だ。
人類と言う種が、高次の存在へ進化すること。ゲッターの意思が待ち望んだ、無限の進化。
進化とは他種族の淘汰でもある。巨大隕石の墜落により恐竜が絶滅し、類人猿が人類へと進化したように。
琵琶坂永至は、自らの望みを邪魔するものを淘汰する、傲慢にして外道の極み、絶対悪である。


だからこそ、彼は見初められたのであろう、ゲッターに。
あらゆる敵対者を淘汰し、自らのみの幸福(しんか)を望む、その在り方が。
ゲッターとは大いなる意思とも解釈できる、そして大いなる意思とは本能でもある。
抑圧された内面を、心の内にある本能をカタルシスエフェクトとするのなら。
アリアの力を借りずとも、カタルシスエフェクトを発現し得る才能を持った琵琶坂永至は。
――最初から、彼はゲッターの力を得るに相応しい力を、その片道切符を生まれた時から所持していたのではないのか。








そして、その結論が齎した果てにあり得るものは――もうすぐ、明らかになるであろう。

23 ◆2dNHP51a3Y:2022/11/28(月) 19:58:42 ID:???






これから人類が迎えるものこそ、明日という名の、希望なのか。




はたまた破壊という名の絶望なのか。




それは、神のみぞ知る。




だが、報いは受けなければならん。




そう、その本質がなんであるか知ろうともせず、




無限のエネルギーよとゲッター線を利用しようとした愚かな者ども、













――――さあ、楽園最後の夜明けに懺悔せよ。

――――遂ぞ、あの男は通過点に至ったのだから。

24 ◆2dNHP51a3Y:2022/11/28(月) 19:59:18 ID:???
以上です、此方のミスで>>21が内容二重になってしまい申し訳ございません

25 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:09:36 ID:???
仮投下します

26 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:10:08 ID:???



「……永……。岩永……起きろっ!」
「……リュージ、さん?」

叫び声と共に、岩永琴子の意識が目覚める。
リュージに体を支えられ起き上がり上空を見れば、その視界には異様な光景が広がっている。

「……どういうことですか、これは。」

目を見開き、それを視認する。それは罅だ、空間に刻まれた黒い罅の数々。
それは地面や建物に発生したとかではなく、文字通り何もない空中に発生した罅。
大きな割れ目。断崖絶壁に発生した地割れの影響に酷似したそれがあった。

「……俺にも分からねぇ。さっき目覚めて広がってた光景がこれだ。……それに。」

リュージが視線を上に向ければ、銅鑼の如くけたたましく空気が弾け、吹き飛ぶ音。
ソニックブームよって発生した大轟音が何度も何度も鳴り響いている。
それは、2つの何かがぶつかり合って発生した、衝突の余波。
余波にしては、余りにも絶大な、人智を超えた戦いの残響。
再び、空気が割れ、大轟音が鳴り響く。同時に、空間に黒い割れ目が出来る。

「……一体、誰が戦ってやがるんだ………?」

それが、リュージにとっての疑問であった。
人智どころか化け物同士が戦っているようにしか見えない異常な光景。
空間にすら影響を及ぼす超越者の黄昏。

「わかりません。ですが――。」

それは、岩永琴子にとっても同じこと。
片方が魔王ベルセリアであることは容易に想像できる。
だが片方が不明瞭だ。あの生きた災害たるアレ相手取れる人物なぞ早々思い当たらない。
ならば今、魔王が戦っている相手は誰なのか。

魔王の言っていた事が岩永の頭の中で反芻する。
『覚醒者』の増加が、楽園の成立に関わるならば、それこそ主催の思う壺ではないかと。
魔王の権能は穢れ。そして捕食による異能の蒐集。所々の魔王の発言の違和感は感じ取っていた。


『……煩わしい。何故、消えない。』


あの時の言葉。間違いなく"別の誰か"が喋っていたような感覚。
魔王の中身はベルベットではなく、全く別のなにか。
"鋼人七瀬"のように誰かの想像力が生み出した怪物。
――ではその怪物の目的は何だ?
蒐集の異能、覚醒者の誕生。それを食らって、その果てに―――。
まだ、答えには足りず。だが、今わかることは。


「恐らく。そのもう一人が、私達にとっての希望です。」

魔王が勝てば、全ては終わる。
藁にもすがる思いで、もう一人の誰かに願いを託すことだけが、今の二人に出来ることだ。

27 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:10:45 ID:???
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



さぁ 立ち上がれよ 従者にして魔王よ

世界砕き 歌姫の愛で滅せよ


さぁ 現実を哀で包め 己が望むまま蹂躙を

虚構を巡り 崩界を奏

彼方現実に終焉を…永遠に

28 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:11:35 ID:???
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



青空が、割れている。
快晴の晴天に、黒い断裂。
容姿を引き裂いたような、そんな乱雑さ。
空気と空気が衝突し、大轟音と共に空間の断裂は増えていく。
遥か天空で、黒の魔王と、白の少女が縦横無尽に飛び回る。


原因はたった1つ。二人の覚醒者の衝突が引き起こしたものだ。
『覚醒者』といえど、目覚めた理由や素質からその強さは大きく変動する。
少なくとも、ベルベットより生じた魔王ベルセリアという存在は大当たりだった。
喰魔と言う、業魔の血肉を喰らいその力を手に入れる特性。それをデータを食しそれを糧とするという形で再現された、蒐集の器としての権能。
―――最高傑作、捕食の頂点を前に、白翼の彼女は互角に戦えていた。

空中機雷と言うべき、上空の展開された黒い魔力の塊。
それが歯車の如く稼働しながら、縦横無尽に動いている。
白翼を羽ばたかせ、音速を超えたスピードで隙間を縫い、核の如き爆音とソニックブームを発生させて、通過するたびに機雷は誘爆する。
爆煙に紛れながら接近、接近。所謂掌底のような掌の動きを魔王にぶつけようとする。
魔王はすかさず業魔腕でガード。その激突だけで再び爆音とソニックブームが発生。鍔迫り合い、再び離れる。

放たれる魔王の絨毯爆撃。地上を隙間なく埋め尽くす漆黒の魔力の槍。その暴風雨。
ちょうど彼女たちが飛び交っている真下に位置する黒平安京に流れ弾が降り注ぐ。
都市そのものを消し飛ばしかねない魔星の雨嵐は次々と建造物を破壊していく。
空中戦は止まず、少女たちは飛び交う。
肉薄、衝突、激突。断裂。再び青空に断裂が入る。
次に魔王が用意したのは球状の砲台ともいうべき複数の魔力の塊。
そこから放出される光条、砲台一つに付き1024。視界を埋め尽くす殺意の黒雷があかりに襲いかかる。

「はぁぁっ!!!」

宣誓。魔力の粒子を手に集め、握りしめて顕現させた紅葉色の扇。それを一振り。
吹き荒び現れた翠緑の旋風が鎌鼬となって光条を破断し、砲台を粉砕する。
既に魔王は次の攻撃の準備。二階建てビル程の大きさの魔力槍を顕現、目標に向けて投擲。
迫る脅威を前に、あかりは再び粒子を構築。――二対の翠緑色の魔力の鎖となり、魔槍を縛り上げ、投げ返す。

投げ返された魔槍を軽々と回避。遥か背後のピラミットに激突し粉砕。黄金のレンガは崩れ去る。
回避動作と同時に魔王が黒翼より羽の弾丸――フェザーショットを放出。
対する間宮あかりも白のフェザーショットを発射。白と黒が相殺し、再び爆煙が天空の戦場を包み込む。
何度目かの激突、肉薄、鍔迫り合い。そして再び空間が裂ける。

爆煙を抜け、刃物の如き魔王の蹴りが間宮あかりに刺さる。
刺さるというより辛うじて当てたと言う形、バンエルディア号へと吹き飛ばされ、叩き込まれるもダメージは皆無。
即座にあかりが号内より空いた天井を見上げれば、既に巨大な魔光を掲げた魔王の姿。

「戴冠災器(カラミティレガリア)・侵喰流星(スターダストフォール)」
「……っ!」

バンエルディアを覆い尽くす、破壊し穢れを以て腐らせる腐食の流星雨。船はマストも、甲板も、骨組みすらも腐らせ溶かす。
だが、それを上空へ弾き飛ばすように間宮あかりが翠緑の障壁を展開。腐りつつある木の板を蹴り、再び上空へ。
障壁を纏い、穢れの雨を凌ぎながら、魔王へと接近する。

29 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:12:09 ID:???
――カタリナ・クラエスが間宮あかりの情報を保管を行うために使用した紅葉色の扇。
あれは本来、自称幻想郷最速の文屋こと射命丸文が保有する扇だ。
本体情報に遥かに劣るもののの、少なからず射命丸文の情報が含まれている。
それもまた、間宮あかりの『覚醒』に少なからず良い影響を与えた。一つは風の力。そしてもう一つは――

「……捉えた!」
「―――!!」

――速度。風を操る程度の能力の補助を受けた、風による超音速移動だ。
少なくとも、魔王に匹敵か、それ以上の速度を以て対応できる。
そして、直線距離に対する移動なら、魔王の動体視力であろうと対応には窮する。それが大技発動の隙間を縫った攻撃であるならば尚の事。
構えは天鷹。使う飛び道具は風の魔力。弓を引き絞るように至近距離に肉薄し――放つ!!
見えない塊に衝突して、遥か彼方に魔王が吹き飛ばされる。

だが、魔王はそう安々と斃れない。空中にて姿勢を転換し、再び安定飛行を保つ。
次に行ったのは力場の展開、重力の檻。業魔腕を目の前に翳せば、間宮あかりが沈んでゆく。

「……ッ!!」

押しつぶされるような、肉体が拉げるような感覚。防壁を貼ろうが関係ない。そのまま押し潰してやるという魔王の殺意。一瞬でも気を抜けば押し花の如く真っ平らにされてしまう。

「……はぁぁぁっ!!!!」

―――だからどうした!痛みは無視し集中。体中から上がる悲鳴なんて気にしてる場合じゃない。
風の粒子を集わせて、顕現させるは鉄塊を思わせる巨大な大剣。手に取り、回る。
重力の圧を無視した影響で、体中から血が吹き出る。歯を食いしばり耐え、遠心力を増しながら鉄塊は赤熱、燃え盛る炎を纏う。

魔王は既に次の攻撃に以降。掌を上空に、それを中心に巨大な龍の形をした魔力を形成
ゆっくり手を振り下ろせば、それはあかりに向けて急速に飛んでゆく。
矮小な少女を喰い付くさんとと巨大な顎を開けてその牙で噛み砕こうとする。

「――食いちぎれぇっ!!」
「「いっけぇぇぇっっ!!」」

一瞬だけ、間宮あかりの声に誰かの声が重なったように聞こえた。だが、それは今関係ない。
飲み込まれた直前、あかりが振り下ろした炎の一撃が、黒き穢れの龍を焼き尽くし、その炎は龍をも貫通し斬撃として魔王に迫る。
間宮あかりに取り込まれたシアリーズの情報。それは即ち間宮あかりに炎の聖隷力の行使を可能とした。
風と炎、異なる世界の異なる属性をも、行使できる。託されたが故に行使できる、間宮あかりの権能とも言うべき繋がる力のその一端だ。

「なぁッ……!?」

驚愕と共に、これには回避行動が間に合わず、右翼が切り裂かれる。
バランスを失いそのまま地上に急速に落下、産屋敷邸に墜落しその周辺を破壊。

「――――ッッッ!」

翼の方は即時再生するも、それを狙いすましたかのように翠緑の鎖が魔王の身体を縛る。
その間にも間宮あかりは突進するかのように最接近。

「私を、舐めるなぁぁぁぁぁっ!!!!」

乱雑に業魔腕を振るい、鎖を無理やり破壊。そのまま穢れをバーストし、そのまま自分も吹き飛ばされる。
飛び散る穢れをあかりは風の障壁で吹き飛ばし、魔王が吹き飛んだ方向へ翔ぶ。
吹き飛んだ先はスポーツジムの上空。既に魔王はさらなる策を展開していた。

「黄金の夜を明けよ(ゴールデン・ドーン)!!――無限(アイン・ソフ)!!」

詠唱を唱え、魔王の身体を穢れが纏う。纏った穢れは膨張、肥大化。
纏い現れるは新たなる躯体、全長15メートルの穢れの鎧によって構築された、怪物のような何か。
悪魔バフォメットを彷彿とさせる巨大な二本の角、その間に魔王ベルセリアの上半身が取り込まれたかのように張り付いている。
背中には一層巨大な黒翼、黒き巨躯にお似合いな穢れし魂沌のバケモノがこの虚構の舞台に降臨する。

『破神顕象――トゥアサ・デー・ダナン!!!!!!!』

大口が咆哮を上げ、世界を震わせる。
歌姫の秩序に歯向かう愚者を文字通り噛み砕だかんと、蒐集の破神が間宮あかりに牙をむく。

30 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:12:48 ID:???
「………!」

不味い、と本能的に察知。
既に破神は翼を羽ばたかせ動いている。そして、大口より垣間見える赤黒の明光。
それを避けようと死角へと距離を詰めようとしたその時、背後より急速に迫る気配。

「……えっ!? ――がはぁっ!?」

文字通り横槍を入れられたように切り裂かれ、吹き飛ばされる。
気配の正体は赤い輪郭で構築された魔王ベルセリアの人間態。
『虚獄神器・第五階位(セフィロトレガリア・ゲプラー)。夢幻泡影(カマエル)』。破神形態に気取られるであろうあかりの油断を付き、先んじて数人ほど生成していた。
そして、吹き飛ばされた軌道を予測するように―――大口より放たれた赤黒の光条、破滅の光芒が間宮あかりを呑み込んだ。

「―――――ッッッ!!」

直撃0.1秒前にあかりは障壁を展開。だがものの数秒で蒸発し、焼き尽くす痛みがあかりを襲い、再墜落。
墜落先のノルミン島をも光芒は襲いかかり、その大地を破壊し、粉微塵にしていく。
光が止めば、ノルミン島があった場所は水面に浮かぶ岩山を残し消滅する。

「……や、ああああああああああっっ!!」

水面より飛び出したのは、光芒の傷も痛みも堪え、破神の巨躯へ突撃するあかり。頭から血を流し、ボロボロの身体に鞭打ちながら。風の魔力を超至近距離で叩き込もうとする。
だが、身体の大きさはそのまま強固な耐久力にも比例する。間宮あかりの攻撃は破神にとっては蚊に刺された程度でしかない。
だが、ただの蚊だろうと小蝿だとうと、煩わしいことには変わりはない。ただ腕を振るう、それだけで間宮あかりは大きく吹き飛ぶ。
だが、叩きつけられただけなら、先程のビームやら重力の檻やらよりは痛くはない。すぐに空中で姿勢を整えて、次の大技に備えると同時にあの破神の防御を突破できる攻撃を繰り出さなければならない。

『※※※※※※※※※※※――――――ッッッッッ!!!!』

破神の咆哮が再び鳴り響く。再びその大きな躯体が飛び立ち、破神の瞳がキランと音を響かせ妖しく輝く。
あかりが天空を見れば、細長い穢れの鉄塊が降り注ぐ。
魔王がシグレ・ランゲツ戦で使用した『戴冠災器(カラミティレガリア)・歌姫神杖(ロッズ・フロム・ゴッド)』。だが、人間態で放ったそれよりも数も規模も段違い。
破神の鉄槌が、間宮あかりを潰さんと地上へと降り注ぐ。落下箇所の大地及びその直線上にあった魔法学園は既に崩壊し影も形もない。
避ける、避ける、避ける。穢れが肌に擦れ侵食されようと、侵食箇所を即切除することで侵食を阻止。

「くぅぅぅぅ―――!?」

だが、侵食部位を切り離しても侵食された事自体の痛みは、体中の血液が全て毒へと変貌するに等しい地獄の苦しみ。いつの間にか痛覚が鈍っていた間宮あかりでも、その痛みは耐えるには少しばかりきつい代物だ。

「で、もぉ――――っ!!」

風の粒子を大剣に構築し、手に取る。刀というよりもある意味薙刀に近い形状。刃に雷光を纏わせ、再び突撃。

「やああああああっっっっ!!!」

激突、衝突、衝撃波、爆音、空間の破断。―――刃が砕ける音が、虚しく響き渡る。

『―――』
「これでも、まだっ……!」

足りない、ただ破神の躯体を少し後退させただけ。
巨躯に張り付いた魔王の瞳は無感情に間宮あかりを見下ろす。
破神の瞳が再び輝き、その周囲を覆い尽くすかの如く大爆発の連鎖にあかりは巻き込まれる。
爆発は風の障壁で。いや、風圧での風の異能によるバーストの衝撃で爆風諸共霧散した。

31 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:13:41 ID:???
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



さぁ 飛び立つのだ 従者にして魔王よ

世界砕き 歌姫の愛で滅せよ


さぁ 天を翔ける歌姫の哀よ 虚獄から降る闇よ 審判よ

救われぬ子等祈り 叫びの音を奏

残酷な現実に終焉を… 永遠に

32 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:14:14 ID:???
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




『―――』

破神は既に己が頭上に巨大な大斧を具現化させている。自由落下のごとく振るわれた大斧と、あかりが咄嗟に貼った障壁が衝突。
結果、破神の大斧は砕かれたものの防壁のままあかりは地面に衝突。ただし障壁ごとだったのが功を奏しダメージは皆無。

――それで魔王の、破神が手を緩めるわけがない。再び瞳が輝く。
間宮あかりに再び襲いかかる重力の檻、腐食の流星雨。さらにそこに穢れの塊たる神の杖。
――付加、夢幻泡影による生成した分身数千による『邪竜咆哮(ダインスレイフ)』の斉射。
――付加、破神の右腕を刀剣へと一時的に変化させ『無明斬滅(ガブリエル)』の準備。
――さらに付加。魔力による黒槍生成。大きさこそ普遍的であれど、『無明斬滅(ガブリエル)』と同等かそれ以上の穢れを蓄積させた、謂わば穢れの爆弾。触れれば穢れが爆散し、周囲一体を汚染する。

『―――――――――』

一斉発射。黒塊が、流星雨が、神の杖が、邪竜の咆哮が、斬滅の刃が、そして穢れの槍が一斉の間宮あかり個人に対して集中する。
勿論あかりも黙ってはいない、障壁を全開にし、それでも凌ぎきれない猛攻は小手先の手段で何とかするしか無い。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛―――――――ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!」

貫通、貫通、貫通、激痛、激痛、激痛。一発一発が当たる度、存在ごと削り取られるような攻撃の雨あられ。意思も、思いも、信念も、魂も。心も、何もかも掘削され、潰されていく感覚に襲われる。
その猛攻に、意識が途切れかけた瞬間、眼前には破神がダメ押しにと飛ばした魔槍、穢れの爆弾―――。


―――直撃、刹那。魔法学園跡地は黒い爆風で全てが消し飛んだ。
核爆発を彷彿とするきのこ雲が発生し、衝撃が周囲に迸り、瓦礫を吹き飛ばしいく。
一帯は既に空間断裂による黒い割れ目が多数発生。歪みによりノイズが発生し地獄絵図のような光景が広がっていた。

魔王としてはこれ以上の会場へ負荷をかける予定ではなかった。
それを考慮してでも、歌姫へ迷惑へ掛けてしまう代償を払ってでも。
あの女だけは、確実に歌姫への脅威へとなり得る間宮あかりは確実に殺さなければならないという確固たる決意のもとに、一切の容赦なく、ほぼ全力で。
そう、歌姫が導く楽園がため、彼女だけは、データ一片すら残さず消し飛ばす必要があるのだ。
まだ殺すべき相手は残っている。ブローノ・ブチャラティ。そしてラ◯※ィセ◆トを名乗る◆※◯の偽物。
後者二人は容易く捻り潰せる。ならばこの間宮あかりは確実に葬る。

……そして、魔王の心配はもうすぐ終わる。大きな躯体より見下ろせば、未だ立って戦意を失っていないらしき間宮あかりの姿。
だが、既に見るも無惨だ。体中から血という血を流している。流れる血が所々黒く点滅しているということは、穢れが混じっている、という証拠。
目は焦点が合っていないし、呼吸しているのかどうかわからない咳き込み、吐き出される血痰。
勝者と敗者の判別など、火を見るよりも明らかだった。

「ぁ」

間宮あかりの痩せこけた瞳が、映し出していたのは。
魔王が最後のトドメとばかりに生成せし、巨大な黒い球体。
確実に、この手で潰すという意思表明。
立つことは出来た、でも動かない、動かせない。
絶望こそがお前のゴールだと突きつけられる。
動かないといけないのに、避けないといけないのに、指一本すら動かせない。
体中が悲鳴を浴びて、全ての臓器がまともに動いていない、機能不全。
そして迫る、死の光が―――――――。















"あかりちゃん"









虚無の奈落の淵に落ちて響く、涙の一滴。










「かた、りな、さん…………。」










武偵憲章10条"諦めるな。武偵は決して、諦めるな。"










――そう、彼女が繋ぎ止めた奇跡は、ここに芽生えた。

33 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:14:50 ID:???
□□□□□□□□






儚く舞う 無数の願いは この両手に 積もってゆく

切り裂く闇に 見えてくるのは 重く深く 切ない記憶

色褪せてく 現実に揺れる 絶望には 負けたくない

私が今 私であること 胸を張って 全て誇れる!

                                    ――FripSide、only my railgun









34 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:15:47 ID:???
□□□□□□□□


『何が、起こっている……!?』

開いた口が塞がらないとは、この事だろうか。
確実な決着、逃れようのない結末が、覆された。
淡い光を放ち、無傷に戻った間宮あかりの姿。
そして、魔王の黒き球体を防いだ、"土の壁"

『あり得、ない……!』

それは、間違いなく起こるはずのない光景。
何故間宮あかりのダメージが修復したのか、あの土の壁は何なのか。
だが、魔王の頭脳には、思い当たる事が一つだけ。

『カタリナ・クラエスぅぅぅっっ!』

――気づいた時には遅かった。原因は掴めずとも、要因はそれしか心当たりがない。
魔王ベルセリアの見落としは2つ。一つはカタリナ・クラエスの涙。
あの時琵琶坂永至の攻撃を受け、意識を失う前に零した涙。――あれは一種のカタリナ・クラエスの幸運の雫。一度限りのコンティニューとも言うべき、奇跡の結晶だった。
再び、白翼は蘇る。より輝いて、クリスタル色に透き通って、太陽に照らされる。

「―――私はもう、諦めたくない。」

宣言する。もう二度と、どんな辛いことが、苦しいことがあろうとも。
武偵は決して諦めない。人々を守るその意思を胸にして。

「だから、貴方を止める。シアリーズさんの為にも―――ベルベットさん、貴方を止める!」

託された願いを裏切りたくない。どんなにちっぽけな意思だろうと、それこそ過ぎ去った者たちから受け付いたものを、更に先へ進めるために。
黄金の意思が、間宮あかりを祝福し、照らしている。

『ふざけるなぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!』

魔王の怒号と共に、破神もまた咆哮を上げる。
赫怒の衝動に飲まれ、その眼を血走らせ、憤怒の感情を貼り付けた魔王が、叫ぶ。

『その便所のタンカス以下の名前を、口にするなぁぁぁぁっっっ!!!!!』

怒りに呼応し、魔王の周りに4つの白い球体が、笑顔が張り付いた球状の生き物(ヴォイドテラリア)が排出される。
破神の瞳が赤く染まる。破神の躯体が赤く染まる。

『殺してやる、滅ぼしてやる、その残り滓諸共女神の地平の塵になれぇぇぇぇっっっっ!』

叫ぶ、世界に晩鐘を打ち鳴らさんと叫ぶ憎悪が、ヴォイドテラリアを揺れ動かす。
ヴォイドテラリアは魔王の憎悪に反して何時までも笑顔だった。余りにも不気味で、奇っ怪な魔王の従者。
テラリアたちが笑顔の口を開き、モノクロの光条を放つ。
瞬間、間宮あかりは地上から離脱し飛翔、そのままモノクロの光条を掻い潜り、その口内に猛風の刃を直接叩き込み、テラリアの一体を内部より粉砕。
続く二体目のテラリア。あかりに猛接近しながら身体をハリセンボンのように針を展開し串刺しにしようとする。

「「鳴神よ!」」

再び、魔王はあかりの声が誰かに重なるような感覚を覚えた。間宮あかりを中心に突風が発生。吹き荒れた突風が徐々に雷光を纏い放電。
針千本状態のテラリアが麻痺し行動不全に陥るも、直ぐ様三体目が一体目同様のビームを発射。
即座にあかりは二体目の麻痺したテラリアを盾した後その場から離脱。ビームを受けたテラリアは爆発四散。
破神の瞳がまた輝く。空中で顕現するは魔力で構築された弓矢。弦が引き絞られ、天へ矢が放たれる。
矢は空中で分裂。それぞれ黒雷を纏い、雨となって落ちていく。

35 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:16:19 ID:???
黒雷の雨矢を避ける。躱し、風を吹かせてその内の一本を誘導。それが三体目に刺さり爆発四散。
四体目はその場から動かず魔王を護るように浮遊している。破神の右腕が龍顎の砲口へと姿を変え、間宮あかりへと穢れの魔力砲を打ち放つ。
間宮あかりが取った手段は――防ぐのではなく、地面に着地する。

「いでよ、土ボコ!」

叫べば、風の力で天へと伸びる土の盛り上がりが魔力砲の光条と激突し、爆発。周囲一体を爆煙が包み込む。
間宮あかりが爆煙を風で吹き飛ばせば、周囲には既に魔王が『夢幻泡影』で展開した大量の分身。それら全てが穢れの魔砲を既に放っている。破神は南へと後退し、体制を立て直すつもりだ。
この時、魔王としてもこれ以上の戦闘の長期化は避けたかった。これ以上の行使は間違いなく会場全体への負荷の度合いが不味いことになる。歌姫ですらカバーしきれない程になってしまったら楽園完成への支障となりうる。
それに、魔王当人にとっても、消耗しすぎた。最初の多対一まではよかった。だが、シグレとの戦いでだいぶ削られしまっていたのだ。いくら二人食らったとは言え、それでもシグレ戦での消耗は回復しきれなかった。

だが、間宮あかりは無数の死の光条が迫っているにも関わらず冷静。
静かに、魂は熱くとも、心は冷静に。0.01秒の間合いを見抜き。―――構えるは風の反射を伴った梟挫。
その結果、死の光条は一つ残らず分身へと反射され、その全てが掻き消される。

『なぁ!?』

不意を疲れたのは魔王だ。跳ね返った光条が破神の右腕と右翼が粉砕され、バランスを崩す。
なお直撃しなかったのは四体目のテラリアが身を挺して守り、その結果光条の向きが僅かにズレたからだ。

『貴様ぁぁぁぁぁっっっ!!!!』

我を怒りに飲まれ、接近しつつある魔王に残った破神の左腕に超巨大な魔力級を生成。
白色矮星の膨張を彷彿とさせるほどの大きさになったそれは、まさに黒い太陽そのもの。

『虚獄神器・第十階位(セフィロトレガリア・マルクト)――万有必滅(サンダルフォン)!!!!』

黒き滅びが、迫る。全てを滅ぼさんと、迫る。
絶望が凝固し、形となった魔王の憎しみが間宮あかりに近づいていく。
あかりが真下を見れば、驚愕の表情を浮かべるリュージたちやメアリの姿があった。

「大丈夫。……次で決める。」

そうにっこり彼ら彼女らに微笑めば、絶望の具現へ目を向ける。
小さな風の領域を展開。増幅し、己に電気を、パルスを貯める。
間宮あかりの身体が帯電する。それは等に人間が放っていいパルスの総量を超えていた。

『絶望に身をよじれ虫けらがぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!!!』

魔王の怒号と共に、絶望の塊がさらに迫る。
それでも間宮あかりは目を瞑り、心で見据えるように。
準備完了。そして、ただ、彼女は沈黙する。
迫る迫る。魔王の憎悪の具現たる巨大な黒い太陽が、間宮あかりの姿が太陽飲み込まれる。

『あはははははっ、あーはっはっはっはっはっはっ―――!』

狂った用に呵々大笑する魔王。憎むべき相手は飲み込まれた。残る邪魔者、そして憎き二人さえ滅ぼせばもう心残りは―――

「超電磁砲(レールガン)」
『……は?』

黒い太陽より、声がする。殺したはずの少女の声がする。魔王の笑いが止まり、呆けて、そして―――。

36 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:17:14 ID:???























「――鷹捲」
















その言葉の直後に、黒き太陽はひび割れ光を放ち、祝福のように砕け消えれば。
破神の身体を貫通し粉砕する、一彗の輝きが通り過ぎた。














超電磁砲とは、一般的に物体を電磁気力によって加速して打ち出す兵器である
要するに、加速して打ち出せれる手段さえ用意できれば、それは超電磁砲になりうる。
例えそれが変哲もないコインであっても。

間宮あかりは擬似的は閉鎖空間、風による電力発電によって自らに電磁パルスを発生、増幅・集約させた。
そして、風の閉鎖空間を開放と同時に風力で音速レベルまで加速。
結果、黒き太陽を貫通し、破神の躯体を粉砕したのだ。

そう、間宮あかりは。自らをレールガンの弾丸とした。
勿論、彼女一人では到底無理だった。彼女"たち"はみんなで、あの魔王を打倒したのだ。

『※▲□◯※▲□◯※▲□◯※▲□◯※▲□◯――――!?』
『ばぁぁぁかぁぁぁなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!??!?!?!?!?!?」

腹部にポッカリと大きな穴が空いた破神は悲鳴とも取れる叫び声を上げて、墜落していく。
魔王もまた、目の前の光景に絶叫しながら破神と共に落ちていき、破神から光が漏れて――大爆発。
ゆっくりと地面に降り立った間宮あかりとは対象的に、激突するように墜落し、仰向けに斃れた魔王は、ただ眼を開いたまま。悲しい瞳で見下ろす間宮あかりの姿を映していた。

37 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:17:59 ID:???



「……マジかよ。あいつ。」

勝った。あの魔王に、間宮あかりという少女が。
そんな奇跡にも等しい光景を、リュージたちは目の当たりにした。
いや、余りにも超常的すぎて、喜び以上に驚きの方が大きかったのだが。

「……素直に喜べないとは、こういう事を言うのでしょうね。」

岩永琴子も、また同論。魔王の言葉が真実ならば、また『覚醒者』が増えてしまった。
だが、それでも彼女が魔王を倒し、自分たちを危機から救った、と言うのは紛れもない真実なのだから。

「……すご、い。」

メアリ・ハントはただ、見とれていた。と言うよりも唖然としていたと言うべきか。
それ以上に、何故だろうか。間宮あかりに、カタリナ・クラエスの面影をほんの一瞬感じていたのだから。
そして、等の間宮あかりは―――。



「あなたの負けです。大人しく降参してくれませんか。」

見下ろすように、憐れむように、地に伏したベルベットに語りかけている。
シアリーズから彼女の過去を知った。幸せを突如として奪われ、復讐に身を落とすしかなかった可愛そうな少女。真実から、託された願いから、未来からすらも目を背けて、逃げ出した臆病な少女。

「……私は、あなたを殺したくありません。」

そしてこれは、武偵としての矜持。誰も殺さない、その武偵の信念の現れ。
悲しげな瞳ながらも、その奥底は透き通ったまま。優しい声で魔王に語り掛ける。

「……めない。」
「……っ。」

そして、返答は。

「認めるものかぁ!!!!」

振り絞ったような叫び声が、ベルベットの答えだった。

「あんな悍ましいものが私の未来だなんて認めない!! 巫山戯るな!! あんなもの、ただの悪夢だぁ!!」

体中から泥のようなものを垂れ流し、怨嗟を張り付かせて、叫ぶ。
その瞳は、どうしようもなく濁っていた。

「完全体に……完全体になりさえすればぁ!!』

そんな叫びも、間宮あかりからすれば悲しい嘆きにしか思えなかった。
何処までも未来を恐れ、怯え、逃げようとする子ども。今のベルベットが、間宮あかりにはそのようにしか見えなかった。

「………。」

悲しみと憐れみ。それが間宮あかりがベルベットに向ける感情の全てだった。
間宮の秘奥の一つに鷲抂、と言う技がある。脳漿に集中する波形長に整調した技で、 要は対象の精神を赤子のようにすることが可能な技だ。持続効果は半日。
今のベルベットに話をしても無意味だった。ならば安全に無力化するしか無い。そう思ったその時だった。

38 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:19:57 ID:???

















「助けて欲しいのかい、魔王サマ?」

それは、ゆっくりと足音を響かせて、現れた。









「………。」
「この声は……。」
「生きていたのですね、だけど……。」

その声を、皆は知っている。三者三様の反応をする。
ヘラヘラと空気に似合わない笑みを浮かべ、パンツ一丁ならがも余裕の表情を浮かべたままの一人の男。







「……お前は。」

魔王が視線を向けば、その姿が見えた。












「……琵琶坂さん?」

男の名前は琵琶坂永至。新たに◆◆◆◆に選ばれし者。
――――終幕直前の舞台にて、最後の主役が降り立った。

39 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 17:21:00 ID:???
仮投下終了です
タイトルは「間宮あかりVS魔王ベルセリア 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦」となります

40 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 23:13:23 ID:???
修正版を今から投げます

41 ◆2dNHP51a3Y:2022/12/10(土) 23:13:53 ID:???



「……永……。岩永……起きろっ!」
「……リュージ、さん?」

叫び声と共に、岩永琴子の意識が目覚める。
リュージに体を支えられ起き上がり上空を見れば、その視界には異様な光景が広がっている。

「……どういうことですか、これは。」

目を見開き、それを視認する。それは罅だ、空間に刻まれた黒い罅の数々。
それは地面や建物に発生したとかではなく、文字通り何もない空中に発生した罅。
大きな割れ目。断崖絶壁に発生した地割れの影響に酷似したそれがあった。

「……俺にも分からねぇ。さっき目覚めて広がってた光景がこれだ。……それに。」

リュージが視線を上に向ければ、銅鑼の如くけたたましく空気が弾け、吹き飛ぶ音。
ソニックブームよって発生した大轟音が何度も何度も鳴り響いている。
それは、2つの何かがぶつかり合って発生した、衝突の余波。
余波にしては、余りにも絶大な、人智を超えた戦いの残響。
再び、空気が割れ、大轟音が鳴り響く。同時に、空間に黒い割れ目が出来る。

「……一体、誰が戦ってやがるんだ………?」

それが、リュージにとっての疑問であった。
人智どころか化け物同士が戦っているようにしか見えない異常な光景。
空間にすら影響を及ぼす超越者の黄昏。

「わかりません。ですが――。」

それは、岩永琴子にとっても同じこと。
片方が魔王ベルセリアであることは容易に想像できる。
だが片方が不明瞭だ。あの生きた災害たるアレ相手取れる人物なぞ早々思い当たらない。
ならば今、魔王が戦っている相手は誰なのか。

魔王の言っていた事が岩永の頭の中で反芻する。
『覚醒者』の増加が、楽園の成立に関わるならば、それこそ主催の思う壺ではないかと。
魔王の権能は穢れ。そして捕食による異能の蒐集。所々の魔王の発言の違和感は感じ取っていた。


『……煩わしい。何故、消えない。』


あの時の言葉。間違いなく"別の誰か"が喋っていたような感覚。
魔王の中身はベルベットではなく、全く別のなにか。
"鋼人七瀬"のように誰かの想像力が生み出した怪物。
――ではその怪物の目的は何だ?
蒐集の異能、覚醒者の誕生。それを食らって、その果てに―――。
まだ、答えには足りず。だが、今わかることは。


「恐らく。そのもう一人が、私達にとっての希望です。」

魔王が勝てば、全ては終わる。
藁にもすがる思いで、もう一人の誰かに願いを託すことだけが、今の二人に出来ることだ。


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