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無差別級

1闇夜の鮟鱇★:2003/11/27(木) 17:34 HOST:122.net061211188.t-com.ne.jp
このスレッドは『万有サロン』という名にふさわしく、
あらゆる意見を語り会う為の場にしたいと思います。
もしよろしければ、私のサイトへの疑問や感想もここにお書き下さい 。

128闇夜の鮟鱇★:2015/01/13(火) 11:48:44 ID:???0
  ●●●芭蕉句を添削する●●●(1/9)

既に音楽総評でも少し触れましたけど、今年の古典講読では、
『奥の細道』を中心に、松尾芭蕉の話をやっていますね。
で、書きたいことが沢山たまっている分けですが、
先ず最初は、芭蕉の内妻の駆け落ち説から触れてみたいと思います。

伊賀上野から上京した芭蕉は暫くの間、日本橋に住んでいたそうですが、
ある時、突然深川に転居してしまい、句風も大きく変わったらしいですね。
で、日本橋時代には既に宗匠の地位を得て、名声を確立していたのに何故、
わざわざ深川みたいな辺鄙な所に引っ越したのかが不可解な分けですね。
そこで色々な人がその転居の謎を探っているそうですが、
未だに、ハッキリした結論は得られていないようです。

で、私なりに少し考えてみたんですが、先ず一番考えやすいのは、
やはり、派閥抗争みたいなことに嫌気がさしたという可能性ですね。
実は、芭蕉以前の江戸には高野幽山という宗匠がいて、
江戸俳諧に一定の勢力を持っていたらしいですね。
そこへ後から芭蕉が押しかけて、結果的には幽山を押し退けるような形で、
勢力を拡大していった分けですから、ごくごく常識的に考えても、
何らかの派閥的な確執がなかったとは考えにくいと思います。


その時、そうした世俗的な抗争に嫌気がさした芭蕉は、
敢えて自分から、さっさと深川に移ってしまったと考える分けですね。
ただ、もうひとつ興味深い話が出ていて、芭蕉には内妻がいて、
その内妻が甥と駆け落ちしたという説があるんだそうです。

芭蕉が故郷の伊賀上野に帰った時、姉に頼まれたのか、
その息子を江戸に連れてきて面倒をみていたらしいのですが、
その甥が内妻と良い仲になり、駆け落ちした疑いがあるというんですね。
というのも『芭蕉には内妻がいた』という噂がある一方、その甥が、
芭蕉の元から突然、姿を消してしまったという事実があるらしいです。
そこへ更に『内妻とされた女が、後に出家した姿で芭蕉の周辺に戻っていた』
という話などが加わって、駆け落ち説が導き出されるようです。

一般に、芭蕉の句では『奥の細道』に出てくる句が特に有名ですが、
今回の放送では、それ以外にも沢山の秀句があることに気づかされました。
そうした中で、私が最初に衝撃を受けたのが次の句だったんですね。
  櫓の声波を打って 腸凍る 夜や涙
  (ろのこえなみをうって はらわたこほる よやなみだ)


『おいおい一体、何があったの芭蕉さん』と声をかけたくなりますが、
この句からは、芭蕉の嗚咽が聞こえてくるような気がしませんか!?
これは深川移住のすぐ後に作られた俳句のようですが、
彼にこれほどの打撃を与え得るものとして説明が付くのは、
例の内妻駆け落ち説以外にあり得ないように、私には思われたのでした。

まあ、仮に派閥争いに嫌気が差していたのが事実だったにせよ、
深川移住を決断させる直接の要因として、内妻の駆け落ち説は、
最も説得力のある出来事となりうるのではないでしょうか。
因みに、放送では『当時、駆け落ちは死罪に当たるので、
芭蕉としては甥を守るためにも、世間に真相を悟られたくなかった』
というようなことを言っていたと思いますが。

それから、ネット上には芭蕉の全句集も見つかりましたが、
芭蕉句の全体像を知る上で、色々と役に立つと思います。
  芭蕉全句鑑賞
  http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Studio/4128/zennkusakuin.html

129闇夜の鮟鱇★:2015/01/13(火) 11:52:06 ID:???0
  ●●●芭蕉句を添削する●●●(2/9)

次に触れなければならない問題として、捨て子の件がありますね。
『野ざらしを 心に風の しむ身かな』という秀句で始まるのが、
有名な『野ざらし紀行』の旅なんですが、その中に次の句がある、
ということを今回の放送で知りました。
  猿を聞く人 捨子に秋の 風いかに

富士川のほとりで芭蕉が三歳位の捨て子に出会った時、
手持ちの少しの食い物を投げ与えて、その場を立ち去り、
この句を作ったということのようです。
  富士川のほとりの捨て子
  http://www.bashouan.com/Database/Kikou/Nozarashikikou_02.htm

でも……果たして、この捨て子を見殺しにしてよかったのか、
俳句など作っている場合じゃなかったんじゃないかと、
後世の人々からは様々な疑問が投げかけられているようです。
その点で私がひとつ気になっているのは、果たして、
同時代人の批判があったのかどうかという点なんですね。


というのも一方には、現代と比べた場合の当時の圧倒的な貧しさがあり、
それと並行して、命の重さも時代によって大差がある分けですからね。
現代的な感傷から安易に芭蕉を批判するとしたら、
余りに無責任で一方的という気がします。
その意味で大切な事は、当時の社会状況についての深い洞察であり、
当時の貧しさに、どれだけの想像力を働かすことができるかですね。

例えば、奥の細道の旅では、石巻付近で芭蕉がお湯を貰おうとして、
農民たちに断られたという話が出ていましたよね。
芭蕉がこの旅を計画した時、夏に向かう時期を選んだのは、
当然、北国の寒さを計算した結果でしょうが、その夏ですら、
寒くてお湯を欲しくなることがあった、という分けでしょうかね。
でも、水飲み百姓の異名もある当時の農民からすると、
ふらふら出歩いて俳句なんか作っている芭蕉みたいな存在は、
けしからぬ有閑階級としか見えなかったかもしれませんね。

だって、現代のガス・水道のある生活と根本的に違って、
当時は一杯のお湯を作るのにも、大変な労力を必要としたわけでしょ!?
何しろ、どこかから水を汲んで来て器に入れてかまどにかけたら、
次は山で薪を集めてきて火を付けて……という手順な分けですからね。
仮に水や薪のストックがあったにせよ、それらは貴重品だったわけで、
どこの馬の骨か分からない芭蕉に恵むなんて論外だったんでしょうね。


こういう時代には、旅の途中で行き倒れになることも珍しくない分けで、
芭蕉自身、旅先で野ざらしの骸骨を見ることがあったのではないでしょうか。
場合によっては、まだ息がある行き倒れ人を、
見殺しにして行くしかないケースもあったかもしれませんね。
ですから、旅立ち前の句も決して大げさではないわけで、そうした状況から、
『野ざらしを心に』という悲愴な覚悟も生まれたのだろうと思います。

つまり、これから冬に向かうという季節に、紙子一枚で旅に出る事は、
半ば、死ぬ覚悟が必要だったと言えるのではないでしょうか。
現代のようにダウンのジャンパーでも何でもある時代と違って、
当時、幾ら軽いとは言え、紙子という紙で作った衣一つで、
冬の旅に出るというのは無謀と言うしかないですよね。

まあ、あまり立派な身なりだと逆に追剥が心配かもしれませんが。(^^;)
ともかく、そういう状況では、手持ちの食料を投げ与えると言っても、
我々がポケットのスナック菓子を投げ与えるのとは分けが違いますよね。
それは元々、空腹を満たし旅の疲労を回復する為には不可欠なものであって、
それを投げ与えたのは、ギリギリの決断だったかもしれません。

130闇夜の鮟鱇★:2015/01/13(火) 11:55:31 ID:???0
  ●●●芭蕉句を添削する●●●(3/9)

その点で、ちょっと引っかかるのが、芭蕉の回りの風狂人たちなんですね。
例えば、この句を作った後に立ち寄った名古屋でも俳諧興行があって、
そこには裕福な町人階級も在席していたみたいですね。
江戸でも当然、同様の階層の人々が周囲にはいたわけです。
でも、その裕福な町人という概念がもうひとつ、しっくり来ない分けですね。

芭蕉が半ば死ぬ覚悟で紙子一枚の旅をするというのに、
彼が出発する時、彼を宗匠と仰ぐような裕福な町人たちは、
もう少しましな着物を恵んでやろうとは思わなかったんでしょうかね。
実際の所は、芭蕉が衣類を貰って作ったという俳句も散見しますが、
それらは、どうやら野ざらし紀行の旅より後の話のようです。

  ――嵐雪が送りたる正月小袖を着たれば
  誰やらが かたちに似たり 今朝の春
  ――門人杉風子、夏の料とてかたひらを調し送りけるに
  いでや我 よき布着たり 蝉衣
芭蕉が例の捨て子の話を名古屋で語ったのかどうかも良く分かりませんが、
もし例の句を知ったとして、彼らならどういう反応を示したんでしょうか。


もうひとつ気になって調べたのは、中国の詩人が捨て子に関して、
どんな詩を残しているかということでした。
というのも『猿を聞く人』というのは、まさに中国詩人のことですからね。
私が知る限りで最も有名なのは、李白の『早に白帝城を発す』でしょうね。

  早発白帝城(つとにはくていじょうをはっす)
  http://kanshi.roudokus.com/hakuteijyou.html
後半が『両岸の猿声 啼いてやまざるに 軽舟すでに過ぐ 万重の山』
となっていて、川下りの船で猿の鳴き声を聞いた李白は、
子供をさらわれた母猿の断腸の思いを追体験したようです。

でも『たかが猿の鳴き声にそこまでの思い入れをするのなら、
人間の捨て子が寒風の中で実際に泣き叫んでいるのを聞いたなら、
李白さん、一体どうしたらいいんでしょう』というのが、
あの句で芭蕉が言いたかったことでしょうね。
それでネット上を色々と探し回ってみたんですが……
何故か、捨て子を扱った漢詩というものが皆無なんですね。


やっとひとつ見つけたと思ったら、その『棄児行』の作者が実は日本人で、
雲井龍雄だとか原正弘だとか言われているようです。
  詩吟神風流藤が丘支部
  http://home.u06.itscom.net/mitake/newpage62.html
因みに、例の小椋桂がこれを詩吟でうなっている動画もありました。
  詩吟「棄児行」小椋佳
  http://www.nicovideo.jp/watch/sm21367611

こうなると『当時の中国に捨て子はいなかった』と考えるしかないですね。
だって、あれだけ社会問題で鋭い問題提起をしている杜甫などが、
もし捨て子に出会っていれば、それを詩として残さないはずがないでしょ!?
で、少し捨て子の歴史というものを調べて見たんですが……先ず、
中国で有名な寒山拾得の拾得が、実は捨て子だったという話がありました。

西洋にも似たような逸話は色々あって、例えば、
旧約聖書に出てくるモーゼにしても、捨て子ということになっていますね。
でもそれらは、ごくたまに生じた例外的な事件という扱いなんですね。
それが芭蕉の時代には、捨て子が一種の社会現象になっていて、それで、
他にも捨て子を扱った俳諧が色々あると放送では言っていましたね。

131闇夜の鮟鱇★:2015/01/13(火) 11:59:13 ID:???0
  ●●●芭蕉句を添削する●●●(4/9)

で結局、気づいたのは捨て子が社会現象になる為には、
一定の社会的条件が必要だったのではないかということですね。
先ず、第一には十分に温暖な気候でないと、
捨て子はすぐに凍え死んでしまうような気がします。
その点では、中国の華北地方のような寒冷地では、
捨て子は起りにくかったのではないでしょうか。

そして、第二には捨て子を拾って育てられるだけの状況、
つまり、社会的な余裕が不可欠だったかもしれませんね。
例えば、戦乱続きで庶民が食うや食わずの状態の場合、
捨て子を育てるどころではなかったでしょうからね。
そうした条件が揃って、社会に一定の余裕が生まれた時、
『誰かが拾って育ててくれるかもしれない』という期待が生じ、
育てられない子供を捨てる、という風潮が一般化したんでしょうね。

但し、更に調べてみると『ローマ時代の捨て子は、
奴隷として育てられた』という話が出てきました。
他方では、産業革命後のヨーロッパでも捨て子が頻発し、
彼らは修道院で育てられていたという話があります。


その時、プロイセンのフレデリック大王が修道士に命じて、
『赤ん坊と一切目を合わせずに育てる』という実験をした所、
育つ前に皆死んでしまった、なんていう嘘みたいな話もありました。
こうなると、捨て子も単なる実験材料に過ぎなかったようですね。
  フレデリック大王の実験とネグレクト
  http://www.glico.co.jp/boshi/futaba/no71/con05_05.htm

日本の場合は特に、長い戦乱が終わって江戸時代になると共に、
人命を大切にする風潮が急速に高まった、という事情もありそうです。
しかし、産業革命には尚遠い日本で、既に捨て子が頻発したとすると、
ちょっと不可解ですが、何か仏教教義に変化でもあったんでしょうか。

因みに、野ざらし紀行の旅が1684年ですが、その3年後には、
将軍綱吉による生類哀れみの令が出されている分けですね。
そして、実はその一部として捨て子禁止令が含まれていて、
この禁止令だけは、綱吉の死後もずっと維持されたんだそうです。
ひょっとすると、芭蕉のあの句がひとつの引き金となって、
そうした禁止令が生み出された、と考える可能性もありますよね。


それに比べると、少し時代を逆上って、例えば平安時代に、
捨て子禁止令があったという話は見当たりませんからね。
当時は育てられない子供は即、間引きされたんでしょうね。
少し前の戦国時代には、そこいら中に死体がゴロゴロ転がっていても、
何とも思わなかったんでしょうし、捨て子を見殺しにしたと言っても、
現代的な感覚からは、到底たどり着けない時代感覚があった気がします。

ひとつ気になるのは、当時の東海道にどれだけの人通りがあったかですね。
奥の細道でも、北陸道の市振の関では、同宿した遊女から、
『後を付いて行かせてくれ』とせがまれたという話がありました。
その時『自分たちは寄り道が多い。他の通行人に付いて行けば、
何とか目的地に着けるだろう』と諭して断ったという話が出てきます。

幼児を育てるとなれば、母乳の出る母親が必要だった分けで、
芭蕉たちも、他の通行人に捨て子を託したと考えるのはどうでしょうか。
もっとも母乳というなら、食い物を投げ与えるのは矛盾しますかね!?
ただ、もし通行人が十分多ければ、捨て子には既に人だかりが出来ていて、
芭蕉たちは、それを後ろから覗きこんだだけだったかもしれませんよね。

132闇夜の鮟鱇★:2015/01/13(火) 12:02:22 ID:???0
  ●●●芭蕉句を添削する●●●(5/9)

さて、その先の名古屋で開いた句会で芭蕉が披露したのが次の発句でした。
  狂句こがらしの 身は竹斎に 似たる哉
  (きゃうくこがらしの みはちくさいに にたるかな)
『狂句こがらし』という所は『狂句(俳諧)に焦がれる私』の意味に、
『木枯らしに吹かれてきた私』を掛けているのだと放送で言ってましたね。

始めは、ちょっと無理な解釈のような気もしたんですが、
突きつめて考えてみると、これは大正解かもしれませんね。
だって、ここでわざわざ『狂句こがらし』と直接、続けている以上、
そう取る以外に、道はなさそうですからね。

ただ、私がひっかかったのは、むしろ末尾の『似たるかな』なんですね。
つまり『狂句に焦がれつつ、木枯らしに吹かれてやって来た私』と、
『当時、漫画の主人公として有名だった藪医者の竹斎』とを並べた時点で、
両者が似ていると言いたいことは、誰の目にも明らかでしょ!?
そこへ『似たるかな』では、いかにもぬるいという感じがした分けですね。


以前に『春の俳句講座』のところで書いた言い方に従うなら、
『似たるかな』の五文字は、言わずもがなの無駄と言わざるを得ません。
  http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/study/3729/1123461002/#31
ですから私としては、そこでもうひとひねり欲しかったと思う分けですが、
例えば『身は竹斎の 名残かな』というのも一案でしょうね。

まあ、俳諧興行というものはあくまで、一種の即興ですからね、
その時点で、そこまで詰めて推敲するのは無理だろうとは思います。
でも、後から、それを紀行文としてまとめる段階では、
更に推敲があってもおかしくない分けですね。
例えば奥の細道でも、俳諧興行では『さみだれを 集めて涼し 最上川』
だったのを、推敲して『涼し』を『早し』と直した分けですからね。

ただ……後から更に見直してみると、俳諧興行の時の発句は、あくまで、
芭蕉が自分を漫画の主人公になぞらえて、おどけている感じがありますね。
『似たるかな』を『名残かな』と直す場合、その諧謔味は失われますから、
俳諧興行の時点では、あれ以外の形はあり得なかったのかもしれません。
ならば、芭蕉句の添削はやはり無茶だったのかというと……私としては、
紀行文の段階では『名残かな』でも十分いけそうな気がします。(^^;)


あのう、情報が氾濫するネットでは、とにかく目立つことを書かないと、
誰にも目をとめてもらえない、という困った事情がある分けですね。
ですから『芭蕉句を添削する』なんていう目障りな標題を付けたのも、
まさに、他人の目を引きつけようという私なりの戦術だった分けで……
もし、そこに引っかけられてこれを読み出した人がいたとすると、
その戦術は大成功だったということになります。(*^^)v

まあ私の性格として元々、権威は大嫌いということがあって、ですから、
芭蕉を俳聖などと崇めて祭り上げることには全く興味がない分けですね。
その意味で、幾ら芭蕉でも良い句は良い句、
悪い句は悪い句として扱うことに、全くためらいはありません。
その点では、私が選ぶ芭蕉の三大駄句というのがあります。
つまり、世の中ではやたら有名で、有り難がられているけれど、
私の目には駄作としか思えない、という意味でのワースト・スリーですね。

  古池や 蛙飛びこむ 水の音
  道の辺の 木槿は馬に 喰はれけり
  海暮れて 鴨の声ほの かに白し
因みに、ここでカモ(鴨)と言っているのはカモメ(鴎)のことでしょうね。
江戸時代には、カモとカモメは混同されていたみたいですし、
海岸で良く見かけるのは、カモではなくカモメの方ですからね。

133闇夜の鮟鱇★:2015/01/13(火) 12:06:27 ID:???0
  ●●●芭蕉句を添削する●●●(6/9)

他方、古池やの句は『蛙合』(かわずあわせ)という句集にあるそうですが、
芭蕉さんも、ある意味では商売上手だったと言うべきでしょうか。
この句がここまで有名になったのも、その句合(くあわせ)に参加した、
大衆が広めた結果に違いないでしょうからね。

その点では、芭蕉が杉山杉風に与えたという『あつめ句』にしても、
自薦句とか言われていますけど、何やら大衆迎合の臭いがします。
全体に選句が甘いですし、その名前にしてもぞんざいですから、
これは多分、杉風が好む句を選んで書き与えたものではないでしょうか。

結局、現代のシンガーソングライターにしてもそうですが、
自分が作りたい歌と、売れる歌とは同じではない分けですね。
でも、生きていくには金が必要で、その金を稼ぐ為には、
大衆迎合も必要悪となれば、それをどこまでやるかは、
いつの時代にも、悩ましい問題だったのではないでしょうか。


だからこそ、最後には次のような句も生まれた分けでしょうね。
  この道や 行く人なしに 秋の暮
ここには『自分が目指す道を本当に理解する人は結局いなかった』
という芭蕉の苦い思いが込められているように思います。

この辺で、ざっと言葉の整理をしておきますが、
平安朝の連歌から江戸時代に派生したのが俳諧の連歌で、
どちらの場合も、複数の参加者が 5・7・5 7・7 5・7・5 7・7……
と上句と下句を一定の約束を守りつつ続ける分けですね。
そして、その連歌の最初に来る上句の 5・7・5 を発句と言いますが、
芭蕉の頃からその発句だけが、独立性を強めていった分けですね。

で、明治になってから、俳諧の連歌を連句、
その発句を俳句と呼ぶようになった分けです。
その辺の説明は、ここに分かりやすいサイトがありました。
  連歌の歴史
  http://www.h2.dion.ne.jp/~taki99/history.htm
ですから、ここで発句と言うのは俳句のことで、
俳諧(俳諧の連歌)は連句のことです。


それから『俳諧興行』という言い方が良く出てきますが、
興行という以上は『沢山の観客を集めて料金を取って……』
というやり方をするのかと、当初はいぶかっていました。
でも、色々調べてみると、この興行に観客はいないようですね。
『その地方の俳諧好きが集まり、宗匠を招いて連句の句会を開く』
というのが、実際に行われる俳諧興行の実態のようです。

その場合、宗匠を招く以上は何らかのお礼が必要な分けで、
参加者は一定の参加料を払う、という約束なんでしょうかね。
ならばどの道、一定のお金が動くには違いない分けで、
興行という名前も間違いではない、ということでしょうか。
実は現在でも、地方ではそうした俳諧興行が行われているらしく、
ネットを探せば、色々と見つかるようです。

因みに、先のサイトにもあるように、明治期になると、
正岡子規がこうした連歌形式を『文学にあらず』
と言って否定した、という話は有名ですよね。
まあ、ある意味で、こうした俳諧興行というものは、
前述した『大衆迎合』そのものとも言えますからね。

134闇夜の鮟鱇★:2015/01/13(火) 12:08:39 ID:???0
  ●●●芭蕉句を添削する●●●(7/9)

さて、次に気になったのがこの句の読み方の話でした。
  蚤虱 馬の尿する 枕もと
  (のみしらみ うまのしとする まくらもと)
最近の研究の成果で、ここの尿はシトではなくバリと読むべきだ、
とか言っていたんですが、私にはちょっと信じがたい話でした。

古い書き物を調べる内に、そこをバリと表記したものがあった、
だから芭蕉はバリと読んでいたのに違いない、というんですけどね。
そもそも、そんなことを言いだした奴は、
俳句のハの字も知らないんじゃないか、とさえ思いましたね。

というのも、ここは全体の言葉の響きからして、
シト以外の読みはありえない、と思うからなんですね。
つまり、シラミのしとシトのしが響き合っている分けですから、
バリなどと読んだのでは話になりませんよね。


恐らく、芭蕉が句を推敲する過程で、一時的に、
ここをバリとしたらどうか、と迷ったことがあったんでしょうね。
その場合、ただ尿とかけば『シト』と読まれてしまうので、
あえて『バリ』と仮名書きしたんでしょうけど、暫くして、
やはりそれでは駄目と気づいて、元の尿に戻したんだろうと思います。

芭蕉に『句調はずんば舌頭に千転せよ』という言葉があるそうですが、
この句も、実際に舌頭に千転して見れば、優劣は自明でしょうね。
因みにネット上には、千転は大げさだという人もいましたけど、
私には全然大げさとは思えません。

実際問題として、一日一回口に出すとしても一年で365回ですから、
三年なら優に1000回を越えるでしょ!?
俳句を作るなら、そこまでこだわる位でないと意味がないと思います。
例えば私の個人的な例でも、何年たっても決着しない句がある分けですね。


つまり、江ノ島で見つけた芭蕉句から『本句取り』をやった件ですが、
  疑ふな 潮の波も 浦の春
から、次のような句を作ったという話を以前にしましたよね。
  疑うな 浮世の春も 有為の夢
  http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/study/3729/1123461002/#30
この句に関しては、後から次のような案を思いついた分けです。
  疑うな 浮世の春も 有為の浜

芭蕉の句が『う』の頭韻を踏んでいるのにならって、
本句取りの方でも『う』の頭韻を踏んでみたわけですが、
『有為の夢』は言うまでもなく、いろは歌から取った分けですね。
でも……芭蕉の句では『う う は う は』という風に、
韻を踏んでいるとも見られるわけで、そこまで合わせようとすると、
『有為の夢』より『有為の浜』の方が良い分けです。

でも、イメージを喚起する力としては、
『有為の夢』の方が上のような気がする分けですね。
つまり、音の響きでは浜、意味からすると夢という分けで、
これは舌頭に千転しても尚、決着がついていません。(^^;)

135闇夜の鮟鱇★:2015/01/13(火) 12:11:02 ID:???0
  ●●●芭蕉句を添削する●●●(8/9)

他方では、俳句の鑑賞でひとつのポイントとなる問題として、
いわゆる字余りの句をどう味わうべきかということがあります。
例えば、野ざらし紀行の芭蕉の句では、
  牡丹蘂深く 分け出づる蜂の 名残かな
  (ぼたんしべふかく わけいづるはちの なごりかな)
も名句だと思いますが、これも随分な字余りなわけですね。

で、この手の字余り句を鑑賞する為の方便として、
私としては俳句を 5・7・5 の字数で理解する代りに、
3・4・3 のリズムで理解することを推奨したいと思います。
通常の 5・7・5 俳句の場合は例えば、
  2-2-1 2-2-2-1 2-2-1
などと区切れば 3・4・3 のリズムになりますよね。


それに対し先の句の場合、字数では 8・8・5 ですから、
  3-2-3 2-3-2-1 2-1-2
  (ぼたん-しべ-ふかく わけ-いずる-はち-の なご-り-かな)
とすれば 3・4・3 のリズムになります。
これは音楽的に言うと、二連音符の代りに、
三連音符を使う感じになりますね。

先に引いた深川の句の場合はもっと大変で 10・7・5 ですから、
  ろのこえ-なみを-うって はら-わた-こほ-る よや-なみ-だ
つまり 4-3-3 2-2-2-1 2-2-1 と4連音符が必要になりますね。
因みに、音楽総評の所で私が作った句にも 10・7・5 がありましたが、
  くまがわに-きり-みちて のぼ-れば-こい-し ゆの-かお-り
として、ここでは 5-2-3 2-2-2-1 2-2-1 と5連音符が入ることになります。


その点では例えば、英語などの外国語で句を作る場合にしても、
私は 3・4・3 のリズムに従うのが良いように思う分けです。
というのも、音節で 5・7・5 とすると、表現できる内容が多すぎて、
日本語では 5・7・5・7・7 の短歌か、それ以上のものになってしまいます。

俳句の本質のひとつは何と言っても、その短さ自体にある分けですね。
その短さの中に、どれだけ豊かな世界を表現できるかという所で、
四苦八苦する点に、俳句の難しさも面白さもあるのではないでしょうか。
ですから、外国語で俳句を作る場合、その短さを体現するには、
敢えて 5・7・5 でなく 3・4・3 の音節構成にすべきだと思う分けです。

136闇夜の鮟鱇★:2015/01/13(火) 12:13:29 ID:???0
  ●●●芭蕉句を添削する●●●(9/9)

それから、この講読では以前から『芭蕉の紀行文では何故か、
後半になると発句ばかりで文章が減る』という話が出ていましたね。
当初の私は『当時の旅の大変さを考えるなら、後半はバテて来て、
文章を残すのもおっくうになるのではないか』と考えていました。
しかし、放送ではその後の種明かしとして、
『芭蕉は序破急に従ったのだ』とか言っていましたね。

能を始め、日本の芸能を貫く精神として、この序破急は有名ですが、
芭蕉が紀行文を書く時も、そうした美学を意識して、
後半はさっと切り上げようとしたんでしょうか。
確かに、紀行文とは言っても長いものも短いものもありますし、
鹿島紀行みたいな短いものでも、同様に後半は文章が少ないとなると、
『旅の後半はバテるから』という説明は無理になるでしょうね。


その点では実を言うと、以前に『荒海や』の句に関して、
『この頃の芭蕉は病気がちで、それで神経が研ぎ澄まされた結果、
こんな名句が生まれたのだ』とか書いた記憶があります。
  http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/study/3729/1123461002/#30
ところが、実はこの病気も虚構らしいというので、びっくり仰天でした。
曽良随行日記を見ても、俳諧興行の記録はあっても病気の記録はありません。

ということはつまり、実際には色々と文芸活動をしていたのに、
それらの記録をあえてバッサリ切り捨てた、というのが真相のようです。
例えば『荒海や』の句では『銀河の序』という俳文まで作っていたのに、
奥の細道では、芭蕉はそれを意図的にはしょってしまったようですからね。
ここでも、世阿弥が提唱し、当時の芸道で常識とされていた序破急の精神を、
芭蕉が意識した結果、奥の細道もそれに従ったという分けでしょうか。


最後にもうひとつ付け加えると、笈の小文の序文に関して、
直近で少し気になったことがありました。
  http://koten.kaisetsuvoice.com/Kobumi/Kobumi01.html
  見る処花にあらずといふ事なし。おもふ所月にあらずといふ事なし。
  像花にあらざる時は夷狄にひとし。心花にあらざる時は鳥獣に類ス。

これは花と月を並べて風雅論を展開している所ですが、
『おもふ所月にあらず』に対し『心花にあらざる』というのは妙ですよね。
目に対して花、心に対して月と言っている以上、
ここは『心月にあらざる』としないと、バランスが取れません。
その点では『笈の小文は未定稿である』という説が有力ですから、
多分、推敲が進まない段階のミスが、そのまま残されたんでしょうね。

137Enzo Gabriel:2017/06/24(土) 05:11:51 HOST:0c915.enturcrefort.com
adorei o m�todo que voc� usa para escrever .
Fico bem claro de compreender . Sucesso http://emiliobqtp93705.ampblogs.com/5-Tipos-De-Exercicios-Para-Emagrecer-Em-Morada-7921308

138onde omprar:2017/06/30(金) 09:12:08 HOST:192.186.169.82
Ol� possuo um blog no blogger e recebo muito spam
voc� tem id�ia como eu poderia evitar desse problema ?
me perdoe usar seus coment�rios para perguntar isso,
mas vejo que seu blog � bem bom e voc� devem ter tido problemas
com isso em algum momento . agradecido https://www.youtube.com/watch?v=ySGgUW4D9bc

139Maria Ana Luiza:2017/07/14(金) 18:20:35 HOST:198-46-199-85-host.colocrossing.com
Excelente artigo Eu aprendo algo novo nas minhas leituras.
Sempre � interessante ler o artigo de outros escritores e colocar em pr�tica coisas novas. http://www.seguroperros.com

140Jo�o Enzo Gabriel:2017/07/14(金) 22:40:09 HOST:23.236.238.199
Ol� , gosto de ler a maioria dos artigos do seu blog.

Estou passando apenas para parabenizar voc�. Abra�os http://www.collection-cups.com/build-muscle-quickly-turbo-drol/

141Amanda:2017/07/17(月) 14:22:40 HOST:138.128.51.234
Est� dif�cil localizar quem esteja falando com
tanta propriedade sobre isto, por�m parece que voc� domina do que esta dizendo.

Agrade�o por compartilhar seu conhecimento. http://garth2796ed.crimetalk.net/there-are-also-other-advanced-bench-press-techniques-like-board-presses-bench-press-negatives-and-chain-presses

142sexo ao vivo:2017/07/23(日) 18:05:42 HOST:196.16.5.164
esp�cime que � animado inter-relacionado. http://sexonanet.net

143Pedro Jo�o Vitor:2017/07/25(火) 11:02:45 HOST:23-94-149-168-host.colocrossing.com
| Oi , tudo bem ? � claro que voc� est� compartilhando informa苺es impressionantes , isso � realmente
excelente , continue escrevendo!! http://gradyndqd470blog.full-design.com/funciona-Uma-vis-o-geral-7703675

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