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精霊を性的に愛でるスレ Part.6

1名無しの魔法使いさん:2016/09/16(金) 21:23:28 ID:mtxma/iE
こちらは2ちゃんねるエロパロ板黒猫のウィズスレの避難所です
ギルマスでも精霊の妄想でもエロSSでもエロイラストでもなんでもどうぞ

注意書き
・精霊のバックストーリーの文をそのまま使うことは禁止(元ネタにするのはおk。ただし本文そのままはダメ)
・荒らしが出ても無視推奨
以下必要ならば次期スレに記載

過去スレ
精霊を性的に愛でるスレ
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/17048/1423188536/
精霊を性的に愛でるスレ Part.2
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/17048/1425795357/
精霊を性的に愛でるスレ Part.3
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/17048/1428677321/
精霊を性的に愛でるスレ Part.3(実質4)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/17048/1428677590/
精霊を性的に愛でるスレ Part.5
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/lite/read.cgi/otaku/17048/1449047947/

197名無しの魔法使いさん:2018/01/18(木) 23:02:48 ID:PJ4J6hHE
>>195
当たってしまった
確かな文章力に裏打ちされたとめどない背徳感と迸るエロさがたまらなく最高です
また投稿してください

198名無しの魔法使いさん:2018/01/20(土) 18:07:57 ID:6YBcRjTU
大人シャロン様すばらしいですよね
あの幸せそうな笑顔を快楽でとろとろにして差し上げたい
魔族に捕まって調教された後遺症で毎晩テオに淫らなおねだりをするシャロン様とかをですね・・・!

199名無しの魔法使いさん:2018/02/22(木) 21:06:46 ID:MhDHLFJE
アウトランダー終わったらシトラちゃんで一本書くんだ。。。

200【八百万】ミコト様と神んぐと。【神秘譚】1:2018/05/18(金) 13:39:45 ID:eg/ZOr46
昼間からお前は何を投下しているんだと小一時間。
お久し振りです(生存報告)
5/30が八百万神秘譚1の実装から3周年だけど、多分その頃は投票券集めでそれどころじゃないと思うので。
ちょっとでも面白いと思っていただけましたら幸いです。

【八百万】ミコト様と神んぐと。【神秘譚】


 ――都の外れ。
 手入れされている様に見えるが、『朽ちた様に』感じてしまうのは、この社に奉納されているはずの<謳>が力を失ったからか、それとも。
 鳥居を潜った先にある社殿を見、ミコトは小さく息を飲んだ。
 昏く澱んだ空気が、目に見えるかの様だ。
「……アタシらが来た時と、だいぶ様変わりしてんな……」
 そう、ハヅキが呟く。
 ハヅキとツバキの二人は、一度この社を訪れていた。――紬姫と、共に。
 昼なお昏く鬱蒼とした空気の中を、『ケケケケッ』とけたたましい嗤い声を響かせて、魑魅魍魎が闊歩する。
「結界が喪われたから、でしょうか……」
 呟くツバキの脳裏に、セイの声が響く。
(――結界が解かれたから、というよりは、信仰を喪ったから、が近いかもしれないな。元より、そういった『場』は、力を喪うとあっという間に穢されやすい)
(よーするに、『汚れていない場所は汚しやすい』ってこった)
 セイに続けてスオウがそう言うと、
「ふーん、そういうもんか」
 ハヅキが解った様な解らない様な声で呟く。
「――? ハヅキさん、どうかしました?」
 不意にハヅキの一歩前に立っていたミコトが振り向いた。
 当然ながら、セイの声もスオウの声もミコトには聞こえていない。
「なんでもない」
 気にするなという様にハヅキが手を振ると、ミコトもそれ以上深くは追及しなかった。
 近寄ってくる妖魅を斬り伏せ、または調伏しながら一行は奥へと進む。
 ――社殿の傍に辿り着くと、キュウマとトウマ、キリエは境内の方に向き直る。
「今は結界が喪われているので構わないのかもしれませんが……一応此処は、男子禁制ですので」
「……ハヅキ、ツバキ……ミコトを頼む。ミコトは……」
 其処で一旦言葉を切ったのは、何と伝えたら良いか考えている様だった。
 言葉が決まったのか、キュウマは顔を上げ、
「……頑張れ」
 端的にそう告げる。
 頷いて、ミコトはキュウマから背を向ける様に踵を返し、重い扉に手を掛ける。
 古い木の扉が、まるでミコトたちを飲み込むかの様に、ゆっくりと開く――


 社の中は境内と違い、妖魔の姿は見当たらなかった。
 拍子抜けした様に、ミコトたちは奥へと進む。
 ミコトだけは社殿の中を物珍しそうにきょろきょろと見ているが、ツバキとハヅキは一度紬姫と来たことがあるからか、ミコトの様にきょろきょろはせず、周囲に注意を払っている。
 奥の院の前に着くと、ミコトがごくりと緊張に息を飲んだ。
「アタシらが付き添えるのは、此処までだ」
「一応、この中までは立ち入り禁止ってことだったの。でも、何かあったらすぐ呼んでね」
 ハヅキとツバキに頷き、ミコトは精緻な細工の施された扉を押し開ける。
 ――奥の院の中は六畳ほどの広さだった。奥に祭壇と、神棚が在る。
 ミコトは緊張した面持ちで、懐から神楽鈴を取り出した。
 しゃん、しゃん――と涼やかな鈴の音色が響く。
 ――その鈴の音に混じって、「カタン」と小さな音がしたことに、祝詞を奏上していたミコトは気付いていなかった。
「高天原に神留坐す神漏岐神漏美の命以て――」
 ガタンッ
 一際大きな音が響いて、ミコトの意識はトランス状態から急に現実に引き戻された。
「え、何……!?」
 ミコトの目の前で、神棚に置かれた金銀で蒔絵の施された螺鈿細工の文箱の蓋が、ガタガタと揺れる。
(まずいっ――)
 そう思ったが、間に合わなかった。
 文箱から飛び出して来た黒い『何か』が、ミコトに襲い掛かった。

201【八百万】ミコト様と神んぐと。【神秘譚】2:2018/05/18(金) 13:42:11 ID:eg/ZOr46
 ――カシャン!
「お?」
 ツバキと警護に当たっていたハヅキは、鈴の音を聞いて眉をひそめた。
「今なんか……鈴が落ちる様な音しなかったか?」
「したわね、確かに」
 ハヅキの言葉に、ツバキが頷く。
 二人は一瞬顔を見合わせてから、ハヅキがこんこんと扉をノックした。
「おーい、ミコト? 大丈夫かー?」
 ハヅキがそう声を掛けるが、返事はない。
「っかしーなー。聞こえないとは思えないんだけど」
「集中してるのかもしれないわ」
 ツバキはそう言って、今にも扉を蹴破りそうなハヅキを牽制するが――嫌な予感がするのは、ツバキも同じだった。
 それは、スオウとセイも同じだった様で、
(嫌な予感がする……)
(おいハヅキ、構わんから扉斬っちまえ!)
 スオウにけしかけられたから、というわけではないたろうが、ハヅキは待ってましたとばかりに室内に飛び込んだ。
((ミコト!!))
 部屋の真ん中で、ミコトはぼんやりと座り込んで居た。
 虚ろな表情。目を開けてはいるが、その瞳は何も映しては居ない。
(――チッ!)
 セイは、彼にしては珍しく舌打ちし、文箱の近くを漂っていた邪気の残滓の様なものを斬り伏せた。
 そして気付く――
(これか!)
 セイは文箱の蓋を取り上げ、中を覗き込んだ。
 中には既に力を喪った千年前の和歌の短冊が入っているだけだが――
(いや、これだ!)
 文箱の蓋をひっくり返し、セイは自分の考えが正しかったことを知る。
 ――蓋には、呪符が貼り付けられていた。
(くそっ!)
 してやられたことが、歯噛みするほど悔しかった。
 男子禁制のこの社の結界が解かれてから、赤火が仕掛けたものに違いない。
 よく見れば、文箱の中も外も、短冊の裏にも呪詛が書き込まれている。
 幾重にも重ねられた呪いによって生み出された瘴気が、ミコトの魂を飲み込もうとしている。
(――どうする?)
 セイがスオウを見ると、スオウは苦々しげな表情を浮かべていた。
 恐らく自分も似たような表情を浮かべているだろう。そう思いながら、セイはスオウの言葉を待った。
(此処まで深く入り込まれた以上、オレたちで追い出すしかねーだろう)
(……だな)
 頷くセイに、それまで話の邪魔をするまいと固唾を飲んで口を噤み、二人の話を聞いていたハヅキが声を荒らげる。
「おい、スオウ。ミコトは無事なのか!?」
「表に居るトウマさんたちを呼んで来ましょうか」
 ミコトを心配するハヅキとツバキに、スオウは困った様に言った。
(なあハヅキ。ちっとばかし体を貸して欲しいんだが……)
「はあ!? 今だって十分貸してるだろ!?」
(そうじゃなくて、意識ごと。ハヅキの意識眠らせて、体をまるっと貸して欲しいんだ)
「ンなこと出来るわけ……!」
 怒髪天を衝かんばかりのハヅキを、ツバキが手を差し出して牽制する。
「――それは、ミコトさんを助けるのに必要なことなのね?」
 質問というよりは、確認の様だった。スオウではなくセイに問うツバキに、セイが頷く。
 ツバキは軽く肩を竦め、
「解ったわ。それなら私の体、貴方に貸し出すわ」
 そう言って、ハヅキに向き直る。
 ハヅキも「ミコトのため」と解れば、断るつもりは無い。
 無い――のだが。
「変なことしたら承知しねーからな!」
 それだけ言い残して、ハヅキとツバキが眠りに落ちる。
 スオウとセイは、二人の意識が眠ってから、『本来の姿』を取る。
 『外』に取り憑いたものであれば、斬り離すことも出来るのだが――体内に入り込まれた以上、セイとスオウの神力でミコトの中から追い出すしか無い。
「ミコト……悪いな」
 スオウは一瞬だけ申し訳なさそうな表情を浮かべてから、
「……」
 ぼんやりと座り込んだままのミコトの顎に指を掛け、くいっと上向かせてから、その桜色の唇に吸い付いた。

202【八百万】ミコト様と神んぐと。【神秘譚】3:2018/05/18(金) 13:43:15 ID:eg/ZOr46
 舌を絡めるスオウに、ミコトが応じる事はない。
 セイがミコトを後ろから抱きすくめる様に、腰の後ろから手を回し、ミコトの袴の裾から指を忍ばせる。
 陰核の包皮を剥いて愛撫を施しつつ、割れ目に沿って指を這わす。
「……濡れてないな」
「交代しよーぜ」
 スオウはミコトから唇を離し、ミコトの屈み込んだ。代わってセイが、ミコトに口づける。
 ミコトの膣に舌を潜り込ませていたスオウが、舌打ちして顔を上げる。
「ダメだな。濡れない」
「神経が断絶されていると見た方がよさそうだな」
「しゃーねえ。少し荒っぽいが――」
 スオウはミコトの耳元に顔を寄せ、素早く囁いた。
「ちっと痛いと思うが、我慢してくれよ、ミコト」
 ズン、と徐にいきり立った肉棒が突き挿れられ、ミコトの体がびくりと痙攣する。
「……あ……」
 ミコトの瞳がほんの僅かに揺らぎ、小さな声が洩れる。
「相っ変わらずキツい締め付けだな……」
 続けて、セイが後ろから挿入する。
「や、あ……」
「ミコト。動かすぞ」
 セイとスオウはミコトの腰を抱え、その細い肢体を持ち上げ、
「〜〜〜〜っ!!」
 そのまま勢いよくミコトの体を下ろした。
 子宮口を突き上げられたミコトが大きく仰け反る。
「――お? 濡れてきたか?」
「あ、はっ……」
 子宮口が突かれる度に虚ろなミコトの瞳が小刻みに揺れる。
 そして――
「……は、っあ……スウちゃん、セイちゃん……?」
 虚ろだったミコトの瞳が徐々に焦点を結び、スオウとセイを認識する。
「ミコト。――良かった」
「意識が戻ったんだな」
「どっか、体に違和感は無いか?」
 スオウに問われ、ミコトは少し考えてからふるふると首を横に振った。
「大……丈夫。スウちゃんと、セイちゃんが……わたしの中に入っているの……ちゃんと、解る……」
 恥ずかしそうにそう言ったミコトは、
「――ひゃうっ!?」
 不意に下から突き上げられ、快楽に身を震わせた。
「ちょ、セイちゃ……スウちゃん、らめぇ……」
「ミコトの体内に入り込んだ瘴気を追い出すから、ち少し我慢してくれ」
「それに――」
 言ってスオウはニヤリと不敵な笑みを浮かべた――ミコトにとっては不吉極まりない笑みを。
「こんだけ『此処』をひくつかせておきながら、『ダメ』ってのは説得力が無えぞ、ミコト」
「ひぅっ!」
 それは指摘されるまでもなく、ミコト自身気付いていた。
 突かれるたびに、子宮が疼く――体がもう、スオウとセイの愛撫と精液を求めている。
「ミコトが下界に落とされてから、ずっと我慢しっぱなしだったからなあ。ちっとばかし濃いと思うぜ」
 スオウの言葉に、ミコトが耳まで真っ赤にして俯く。
「――ミコト。俺たちがお前の中に神力を送り込んで瘴気を追い出すんだが」
「確実に弱らせたいから、オレたちが射精(だ)してる間、声が出ない様に口を押さえておくことって出来るか? 無理なら無理で別にいいんだが」
「う、うん、頑張……るっ!」
 途切れ途切れに何とかミコトがそう答える。
 ――因みに、ミコトの声が途切れているのはスオウとセイに体を上下されているからなのだが、それはともかく。
「はあ、はあっ……」
 瘴気に意識を奪われて芒洋としていた瞳は、今は霞がかかった様にとろんとしていた。
「セイ、ちゃん、スウ、ちゃん……わ、わたし、もう……!」
「ああ、オレたちも、そろそろ――」
「射精(だ)すぞ、ミコト!」
 ズン、と一際深く突き挿れられ、ミコトの体が痙攣する。
 ミコトは必死に口を押さえ、喘ぎを飲み込んだ。
 ――体の中に入り込んだ『何か』が、子宮と腸を満たすスオウとセイの神力に当てられ、パキパキと崩れていく。
「はぁっ……〜〜〜〜、ごほっ!」
 ミコトが咳き込むと、黒い靄の様なものが、ミコトの口から溢れ出す。
 その『靄』は弱々しく漂った後、幻の様に溶けて消える。
 それを見届けてから、ミコトは二人の間から立ち上がろうとし――
 がっしと腕を掴まれて、思いきり頬を引き攣らせた。
「あ、あの、スウちゃん……? セイちゃん……?」
 セイとスオウは、恐怖に震えるミコトににっこりと――とてもとても爽やかで朗らかな笑みを浮かべた。
「またこんなことがあったら困るからな。ミコトの体に魔除けを施しておかないとな」
「魔除けと言う名の刻印だよな。『ミコトはオレのもん』っていう証というか」
「というかぶっちゃけ離れてた間の相手してほしい」
「全力でセイに同意」
 口々に勝手なことを言い、にじり寄る男二人に、ミコトが顔を青ざめさせる。
「あの……ちょ……結局こうなるのー!!!???」
 ミコトの絶頂の叫びが、社の中に響き渡った。

203名無しの魔法使いさん:2018/05/18(金) 13:48:54 ID:eg/ZOr46
すみません、相も変わらず間借りさせてもらいましたw
「身バレしてんのにようやるよ!」と自分でもツッコミ入れたくなります_(:3 」∠)_←どうでもいい。
ご存知の方はご存知かもしれませんが、R18は今までと変わらずこちらに置かせて頂けたらと思います。
というかめっちゃ久し振りにR18書いたら顔から火が出そうなくらい小っ恥ずかしくて悶死寸前ですorz
それでは皆様も、お互い後半戦、今日からの投票券集め頑張りましょー(ユ○ケルを片手に)

204名無しの魔法使いさん:2018/05/22(火) 00:18:40 ID:Mvi5ImCY
身バレはなんのことか分からないけどお久し乙乙!

205名無しの魔法使いさん:2018/09/29(土) 20:26:51 ID:gwr08d0o
一応此処にも報告だけ_(:3 」∠)_
いつもの【】【】の者です。いつも間借りさせてもらってすみません&いつもありがとうございますm(_ _)m

保管庫に
・腐要素あり。
・獣姦的な要素あり。
・お漏らしあり。

という書いてる本人だけがひたすら楽しい特大の地雷原SSを犯させ、もとい置かさせてもらいました。
なお本人は「書いてて楽しかった。折角書いたから何処かに上げたかった」などと供述しておりry

もし地雷原でも気にしないという心の広い方居られましたら、目を通して頂けると幸いです(^_^ゞ

206名無しの魔法使いさん:2018/10/17(水) 03:24:22 ID:06O7Kt5g
ミコトが地上での役目をちゃんとこなして、旅を終えて小さな村に住み着いたところで
スオウとセイが「お前を嫁にしたい。それで迎えに来た」と来るのが浮かんだ。

で、どっちも大事だから選べないと返すミコトに、「じゃあ俺たち両方ともお前の夫で」と決めて、連れてく……

神様が見初めた嫁なら、人間でも連れて帰れるよな多分。

207【魔王と】ゴドー家の日常の時間【天使と】1:2019/05/25(土) 21:52:49 ID:ljj0Q4TQ
【魔王と】ゴドー家の日常の時間【天使と】

 編み編み。編み編み編み。
「…………」
 編み編み編み編み。
「……………………はぁー……」
 アルドベリクはなるべく気にしない様にしていた努力を諦め、深々と嘆息してから手にしていた書類を執務机に放り投げた。
「……ルシエラ」
「何ですかー?」
 アルドベリクが腰掛けた椅子の肘掛けに腰掛け、一心不乱にアルドベリクの髪を三つ編みにしながら答えるその声は、気負いも衒いも一切感じられなかった。
 アルドベリクはもう一度嘆息してから深く椅子に腰掛け直し、頭痛を堪える様にこめかみに指を当てた。
「あのな、ルシエラ……構ってほしいだけなら、仕事が終わってからにしてくれないか?」
「誰が『構ってください』なんて言いましたかー?」
 口調だけ見れば怒っている様にも感じるが、その声色からは『楽しくて仕方がない』という感情が微かに見え隠れしている。
 ふむ、とアルドベリクは口許に手を宛てて考え込んだ。
 構ってほしい訳ではない。怒っている訳でもない。
 心当たりを思い出そうとするアルドベリクの髪を白く細い指で梳き、
「〜〜♪」
 聞こえるか聞こえないかくらいの微かな声で詩を歌いながら、アルドベリクの髪を編み込んでいく。
 ――アルドベリクとルシエラは数奇な縁で、永いようで短い、短いようで永い付き合いの間柄だ。それでも時々ルシエラの真意を量りかねることが在った。
 特に『今』のルシエラは、文字通り籠の鳥よろしく、檻の中で外界と接触を絶たれて育ったせいか、良く言えば無垢で純粋、悪く言えば『ぶっ飛んだ』思考の持ち主だ。
 今日は三つ編み。昨日は部屋中に魔界のエディブルフラワー……エディブルフラワー(※補食的な意味で)をばら撒かれ、何枚かの書類が犠牲になった。一昨日は特に邪魔もせず、アルドベリクの膝の上に座っていた。
 アルドベリクがルシエラの意図を量りかねて思いあぐねていると、コンコン、と控え目なノックの音が響いた。
「ムールスか」
 返事の代わりに茶器を盆に載せたムールスが顔を出す。
「お仕事も大事ですが、あまり根を詰めすぎてもよく在りませんよ」
 ムールスがティーポットを傾けると、カップに注がれた琥珀色の液体が清廉な香りを放つ。
「――そうだな、休憩にしよう」
 アルドベリクはルシエラの妨害を遮りながら仕事を続けることを諦め、貝殻型の焼き菓子に手を伸ばす。
 当のルシエラは変わらずアルドベリクの髪を編んでいる。

208【魔王と】ゴドー家の日常の時間【天使と】2:2019/05/25(土) 21:55:48 ID:ljj0Q4TQ
「っと、ムールスさん、ちょうど良かった。髪留めとか持ってないですか?」
「ぶっふぉっ!!」
 焼き菓子を頬張ったアルドベリクがルシエラの言葉に驚いて噎せる。焼き菓子を無理矢理香茶で流し込んでから、改めてルシエラに向き直る。
「……おい……まさかと思うがその髪留めを俺に使うつもりじゃないだろうな……」
「可愛いと思いますよ?」
「あのな……」
「残念ながら、髪留めはありませんが――」
 ムールスの言葉にアルドベリクがほっと胸を撫で下ろす。
「――洗濯ばさみならあります」
「じゃ、それで」
 しれっと手を出してくるルシエラの手のひらに、ムールスがエプロンのポケットから取り出した数個の洗濯ばさみを乗せる。
 礼を言って受け取ったルシエラが、編んだ髪の毛を洗濯ばさみで留める。
「ムールス、お前……裏切り者め……」
「滅相も御座いません」
 はぁ、とアルドベリクは今日何度目か解らないため息を吐き、肘掛けに腰掛けている所為で自分より僅かに高い位置にあるルシエラの顔に向けて手を伸ばし、頬に手を添える。
「もしかして――リザとリュディが居なくなって寂しくなったのか?」
 聡明な二人の養い子は、既に巣立ちの時期が来てそれぞれ飛び立っていった。
 それを『寂しい』と感じる気持ちなら、アルドベリクにも理解できなくはな――
 ルシエラはムスッと頬を膨らませ、唇を『へ』の字に引き結んでいた。
「寂しいのは、私じゃなくてアルさんです」
「俺が?」
 首を傾げてルシエラを見る。
 寂しい、と言われても自分ではよく解らない。
「二人には一人で生きていけるだけの技術も知識も与えてある。誇らしく思いこそすれ、寂しがる理由は無いだろう」
「ほんっっっとアルさんて不器用ですね」
「何故かいきなり貶された……」
 やれやれと言わんばかりにルシエラが肩を竦める。
「まだるっこしいな……お前は何が言いたい? 何がしたい? 言いたいことがあるならはっきり言ってくれ」
 負けじとルシエラもずいっとアルドベリクに顔を寄せた。
「アルさんの朴念仁。鈍感。にぶちん」
「だから何が言いたいのか説明してくれ」
「『言いたいこと』が在るのは、アルさんの方じゃないですか」
 そう言われても、アルドベリクに心当たりはさっぱり思い付かない。
 そんなアルドベリクの目の前で、ルシエラがぴっと立てた指をアルドベリクに向けて突き出す。
「?」
 訝しむアルドベリクの眉間に向けて、ルシエラは容赦ないデコピンを叩き込んだ。
「い゛っ……」
「たまには鏡でも見たらどうなんですか」
「鏡なら毎朝見ているが」
「……アルさんのとーへんぼく。今日のアルさんのご飯は私特製の畜生鍋にします」
 言うだけ言って、ルシエラはふわりと羽を羽ばたかせ、座っていた肘掛けから下りる。
 そしてそのままぷいと部屋を出ていってしまう。
「結局何だったんだ……」
 釈然としない様子で呟いてから、アルドベリクはふと自身の眉間に指を宛ててみる。
「……もしかして、眉間に皺が寄っていたか?」
 部屋に残っていたムールスが、茶器を片しながら苦笑する。
「恐れながら、そういうこでございますな。あの二人が居なくなった日からずっと」
「…………っ」
 はぁぁぁぁ〜……と息を吐いて、アルドベリクは執務机に突っ伏した。
「険しい目で書類を睨み付けたまま、目は書類を追っていなかったり、上の空でぼんやりと窓の外を眺めていらっしゃったり……挙げれば枚挙に暇がありませんな」
「窓の外を見てたって、自分の行動なのによく解らないな……」
「あのお二人はよく窓から出入りしていましたから。――ある日ひょっこり窓から『ただいま』と顔を出しそうな気がしてしまうのではありませんか? ――私も、そうですから」
 机に突っ伏したアルドベリクは、前髪を掻き上げようとして――洗濯ばさみが引っ掛かって、思わず「痛っ」と呟いた。
「……そうか……ルシエラがこないだから仕事の時に押し掛けて来ていたのは……」
 心配されていたのか、と漸く気付く。気を紛らわせようとしてくれていたのだ。
 ――ルシエラ、というのはそういう少女だった、と今更思い出す。
 ルシエラは決して、自身の心配を押し付けたりしない。
 『心配すること』が『自分の勝手な行為だ』と理解している。だからこそ、相手が応じようが応じまいが、勝手に心配して、勝手に立ち回って、いつの間にか立ち直らせる。

209【魔王と】ゴドー家の日常の時間【天使と】3:2019/05/25(土) 21:57:26 ID:ljj0Q4TQ
「いいですか、『独り立ち出来る技術と知識を与えた』ことと、『心配すること』は別なんですよ。この機会に言わせていただきますが、アルドベリク様は少々『魔王らしく在ること』を意識しすぎていると思うのですよ」
 一息に捲し立ててから、ムールスは照れた様に首の後ろに手をやった。
「なんて――偉そうなことを言いましたが、全部ルシエラ様の受け売りなんですけどね。……ルシエラ様はまだ無垢でいらっしゃるので言葉足らずになってしまうことは否めませんが……」
 話が逸れたことに気付いて、ムールスは気持ちを切り替える様に首を横に振り、続ける。
「引き留めて、魔界に住まわせることも出来た。そうせずに見送ってしまった。『心配なら魔界に居させれば、良かった』――じゃ、ないんですよ。『それでも心配』っていう選択肢が在ってもいいではありませんか。魔族とはそういうものでしょう? ――それに」
 ふっ、とムールスが微笑する。
「誰が魔王のやることを叱ると言うのでしょう。心配したいなら心配していいし、体裁を気にするなどとアルドベリク様らしくはありませんな。本来なら敵である筈の天使を自身の居城に住まわせている時点で、ルールなんてくそくらえ、でしょう? ルシエラ様なんて、アマン様たちに万が一お二人が死界に行った際にはこちらに引き渡して貰う密約を結んでおりましたよ。それと比べればアルドベリク様の悩みなんて『今更』ですよ」
「――ああ、それもそうだな」
 やっと不敵な笑みを浮かべてアルドベリクが突っ伏していた机から顔を上げる。
「悩んでいたのが馬鹿馬鹿しくなってきたな。――ありがとう、ムールス」
「いえいえ、私の言葉は全部ルシエラ様の受け売りですので」
「それと『俺がムールスに感謝すること』は別の話だろう? やりたいようにやっていい、と言ったのはお前だぞ、ムールス」
「これは一本取られてしまいましたな」
 はっはっ、と笑ってから、ムールスは思い出した様にエプロンのポケットから小瓶を取り出し、アルドベリクに差し出した。
「そうそう、これを」
「何だこれは」
「胃薬です」
 端的な説明に、ルシエラが言い残した一言を思い出したアルドベリクの顔面から血の気が引く。
「…………ムールス」
「はい」
「骨は拾ってくれ……」


 ルシエラは寄り掛かっていた扉から、ぴょこんと跳ねる様に身を離した。
「――ふふっ」
 ルシエラの唇から華が咲き零れる様に、笑みが浮かぶ。
「アルさんたら、『相変わらず』ですねぇ――『昔から』」
 誰にともなくひとりごちるその言葉には、少なからず『変わっていない』ことへの喜びが滲んでいた。
 くすくすと微笑しながら、ルシエラはスカートの裾を翻してキッチンへと向かう。
「今日の畜生鍋は腕によりをかけないとですねぇー」


 ――その後。
 何故かアルドベリクではなくヤラが3日に渡って腹痛で寝込み、魘され続けたという。

210名無しの魔法使いさん:2019/05/25(土) 21:59:48 ID:ljj0Q4TQ
|ω・)ノ
魔道杯or投票券周回お疲れさまです……!(小声)
ミコト様かサクトくんの販促SSでも書けたら良かったんですが……w


魔道杯で助言くださった方にすごく助けられたのでお礼を兼ねて書いてみた。
でも、直接渡せるほどの勇気が無いので此処に置かさせといてくださいお願いしますm(_ _)m
運が良ければご本人に届く……か?
スキル中の時間と休憩時間で書いた30分くおりてぃ。
好きなキャラは知ってるけれどどんなストーリーが好きなのかは知らないので、口に合うかは解らないし、もし地雷だったらどうしようっていう_(:3 」∠)_

211名無しの魔法使いさん:2019/05/25(土) 22:11:14 ID:ljj0Q4TQ
すみませんなんか本文が長すぎますって出て削ってる時にやらかしたかもしれませんorz
パッと見なので自信はないですが、微妙に前後してるかも……もしちゃんとした分が読みたいという方いらっしゃったら言ってくださいぃぃorz

212【辻歌人】夢で、逢えたら。【元戦神】1:2019/06/22(土) 20:47:54 ID:3Cl9Ig7Y
【辻歌人】夢で、逢えたら。【元戦神】


 都の有力な陰陽師で在るアマノの屋敷。
 その一室で、ミコトは行灯の灯りを頼りに文机に向かっていた。
 ――大月照天の手に依って、ミコトが下界に堕とされてから、暫くが経った。
 その間に、色々な事が在った。
 ヒトとしての生活、辻歌人として名を上げるまでの苦難、キュウマとの出逢い、キュウマに紹介されてアマノの屋敷に居候させて貰ってからの日々。
 都を混沌に陥れようとする赤火との対決、紬姫との邂逅、言霊写しの術、そして――和歌の神の座を紬姫に譲って、自らは下界に遺ったこと。
 長かったような、あっという間だったような出来事を思い返しながら、ミコトは文机に開いた納記帳を前に、思案顔で筆を弄んでいた。
 ――いつからだろうか。こうして寝る前に一首書き記しておくようになったのは。
 最初は下界の生活を記録するだけの日記帳の様なものだったが、『言霊の力』を意識する様になってから、歌人としての和歌の練習のつもりで、和歌を遺すのが日課になっていた。
 ミコトはしばしぼんやりと天井を見上げていたが、
「スウちゃんと セイちゃん今日も 元気かな 明日も元気で 在ります様に……うーん、なんか違うかなあ……」
 そう呟いて、ミコトは嘆息にも似た吐息を吐き出した。
 下界に堕ちてからというもの、スオウとセイの事を思い出さなかった日は一日たりとて無い。
 だが、口に出したのはこれが初めてだった。
 ――秋の夜長が、そうさせたのかもしれない。
 晩春の桜の出来事から、もうそれほどまでに時間が経っていた。
「弱音……なのかな……」
 ぽつりと呟くミコトの耳に、鈴虫の音色が届く。
 ――去年はセイとスオウと一緒に縁側で虫の音を聴いていた。
 中秋の名月を見上げ、月見団子を一緒に食べた。
 あまりにも遠い、穏やかな日々。
 弱音や愚痴は全部自分の中に仕舞っておいた。
 下界に堕とされたのは怠惰な自分の行いの結果だし、当然の結果だと思った。
 それに――セイとスオウに甘えてしまっては、命を賭して都の安寧を願った紬姫に悪いような気がした。
 だというのに。
「……なんで今日はこんなに、スウちゃんとセイちゃんのこと思い出すんだろ……」
 やけに郷愁が胸を衝く。
「――はあっ」
 ミコトはわざとらしく息を吐き、ぼんやりしていた自分を叱咤する様に頬を叩いてから頭を振り、気持ちを切り替える様に納記帳に向かう。
「よしっ、こんな時はさっさと寝るに限る!」
 郷愁を覚えた処で、どのみち『今』のミコトには、スオウとセイに触れる処か、その姿を視ることも出来ないのだから。
 しばしミコトは思案げに納記帳を見下ろしていたが、一つ頷いて墨に筆を沈める。
「十五夜の 虫の音色に 友想い――夢枕でも 一目逢いたい、と……」
 まあせめて、夢枕で逢うくらいなら、きっと紬姫も赦してくれるだろう。
 そんなことを想いながら、使った筆の墨を拭い――
「『夢枕だけでいい』たぁミコトにしちゃ随分謙虚じゃねーか」
 からかう様な快活な声が響き、ミコトはぴたりと動きを止めた。
 壁際の文机。背中から響く声に、傍らの行灯の灯りが揺らぐ。
「俺たちは、夢と言わず生身のミコトに逢いたくて仕方がなかったんだが」
 すぐ後ろから納記帳を覗き込んで居るらしい落ち着いた声音。
「夢だけでいいなんて、欲がないな」
 ――びくり、とミコトの身体が震えた。
「や、やだな……わたし――つ、疲れてる、のかな……あはっ……スウちゃんと、セイちゃんの、声――声、が……聞こえる――なんて――」
 平静を装おうとした声が震える。
 膝の上に置いた手をぎゅっときつく握る――その手の甲に、ぽたっと透明な雫が散った。
 ぐっ、と唇を噛み締めて、頬を伝う雫を拭う。
「あははっ、これ、幻聴ってやつ――かな……は、早く寝なきゃ……」
 口では寝なきゃと言いながら、体は動かなかった。
 だって――今動いてしまったら。
 もし、幻聴じゃなかったとしたら――
「あ、ひっでー。幻聴扱いされてやがる」
「スオウ、あまりそう言ってやるな」
「ミコトはオレたちと逢いたくなかったのか? 夢でしか顔も見たくないとか」
「――そんなっ!!」
 そんなこと、在るはずが無い――そう言おうとして反射的に振り向いた先に、懐かしい笑顔が在った。
 いつもの様に悪戯っぽく笑うスオウと。
 いつもの様に穏やかに微笑したセイと。
「……っ! なんっ、なんで――」
 うまく言葉が出てこない。
 言葉の代わりに、みるみるミコトの瞳に涙が浮かぶ。

213【辻歌人】夢で、逢えたら。【元戦神】2:2019/06/22(土) 20:49:17 ID:3Cl9Ig7Y
 変わらない笑顔。変わらない優しさ。
 懐かしさがミコトから言葉を奪う。
「『何で』、はこっちの台詞だ」
「気が付いたら此処に居たからな。恐らく、ミコトの謳に喚び寄せられたのだとは思うが」
 肩を竦めて顔を見合わせるスオウとセイに、
「…………ッ!!」
 だっ、とミコトが飛び付いた。
 しゃがみ込んだセイとスオウが、迎え入れる様に両手を広げ、ミコトは一も二もなくその腕の中に飛び込んだ。
「っく、セ……ちゃ、ス……ちゃ……ふ、う、うああああ――――っ!!」
 ぎゅう、と二人の背に腕を廻して、しがみつく様にして幼い子供の様に泣きじゃくった。
 逢いたかった、とか。
 急に下界に堕ちることになってごめんね、とか。
 ちゃんとご飯食べてる? とか。
 聞こうと思っていたことや、話したいと思っていたことは幾らでも在るのに。
「スウちゃん、セイちゃん……!」
 唯々二人の名前を喚ぶミコトに、スオウとセイも感極まった様に瞳を潤ませる。
「――よく頑張ったな、ミコト」
「お前の頑張りは、他の誰が見てなくても、オレたちだけはちゃんと見てるから安心しろ」
 セイが泣きじゃくるミコトを慰める様にぽんぽん、と背中を叩き、スオウがミコトの髪を撫でる。
 二人はミコトが落ち着くまで、何も言わずにじっとミコトを慰め続けた。
「うぅ〜、こ、こんな泣くはずじゃなかったのにぃ……」
 泣き疲れたらしいミコトが、ぼやきながら泣き笑いの表情で顔を上げる。
 漸く浮かべたその笑顔に、スオウとセイの表情も緩む。
「次にセイちゃんとスウちゃんに逢う時には、生まれ変わった様に誤字が減った“すーぱー”なわたしを見せつけながら颯爽と和歌を詠んでみせるつもりだったのにぃ〜……」
「ミコトがへっぽこじゃないって、素直に喜べねーな」
「落ち着かないよな」
「扱いが酷いっ!?」
 ミコトが抗議の声を上げた刹那、
「――ミコト?」
 襖の向こうから響いた静かな声に、ミコトの心臓が飛び上がった。
 内心の動揺を悟られない様に、努めて冷静を装いながら、問い掛ける。
「き、キュウマさん。どうしました?」
「いや――さっきから誰かと話してるのか?」
「いえ、別に、そんなことは――ひゃんっ!!」
 びくんと身を震わせながら、ミコトは桜色の唇を割って零れそうになる喘ぎを必死に飲み込んだ。
「ミコト? どうかしたのか?」
「いえ、なんれもないれす、大丈夫……」
 悪戯っぽくセイと笑みを交わすスオウの指が、ミコトの袴の中に差し込まれて縦横無尽に這い廻る。
「……? 何処か、具合が悪いのか?」
「ほ、本当に大丈夫ですからっ! ち、ちょっと、夢見が、悪くて――ふぁっ……目が覚めちゃった、だけ――なので――」
 襟元から差し込まれたセイの指が、襦袢の下でぴんと尖った乳首を浅く掻く。
「そうか。明日からまた旅に出るんだから、具合が悪いなら早めにトウマに言うことだ」
「相棒の言う通りだぜっ。ミコトは無理しいだからな。旅に出るのを多少遅らせた処で問題ないからなっ!」
 キュウマに続けてフウチにそう言われてミコトは返事をしようとするが、
 ――にゅぷっ。
 スオウの指が口腔内に差し込まれ、舌を弄んでくる。
「〜〜〜〜っ、ふぁっ……う、は、はい……」
 何とかそれだけ答えると、部屋の前、襖の向こうでキュウマが逡巡するような気配が在ったが、
「心配なのは解るが、ミコトが『大丈夫』って言っている以上、でしゃばってもしょーがないだろ、相棒。幾ら何でも深夜に“れでぃー”の部屋に入るもんじゃないぜ」
 フウチにそう言われたキュウマは、
「――おやすみ、ミコト」
 そう言い残して部屋の前を去る。
 キュウマの足音が遠ざかってから、ミコトはスオウとセイの愛撫を振り切る様に身を離し、顔を真っ赤にして涙目で二人を睨み付けた。

214【辻歌人】夢で、逢えたら。【元戦神】3:2019/06/22(土) 20:50:38 ID:3Cl9Ig7Y
「スウちゃん、セイちゃんんんん?」
 ミコトがキッ、と柳眉を逆立て眦を吊り上げる。
「キュウマさん居るのに変な声出る処だったじゃない!!」
「いやむしろ居るからだろ」
「な。」
 セイもスオウも悪びれなくそう言って頷き合う。
「折角久し振りに逢えたというのに他の男と話していたら、妬くくらいはするものだ」
「オレは折角だからいちゃいちゃしてミコトが可愛い処を見せ付けてやりたいかなと」
「もうっ、久し振りに逢えたのにすぐそーいうことする!!」
 何処までもしれっと答えるセイとスオウに、ミコトは警戒心も露に二人を睨むが――刹那、スオウがぐいとミコトの身体を抱き寄せる。
「あっ」
 ぽふっとスオウとセイの腕の中に納まったミコトを見下ろし、スオウはべとべとに濡れた右手を見せ付ける様にミコトの目の前に翳す。
「これ、なーんだ」
「……さっきわたしの口の中に手を突っ込んだからでしょ」
「残念。ミコトの舌を弄ったのは左手なんだよなあ」
 意地悪く笑んだスオウが言わんとする意味を察したミコトの頬が羞恥に染まる。
「そ、それは、だって……!」
「『だって』――何?」
「〜〜〜〜ッ!! スウちゃん、の、いじわるっ!!」
「ミコトが意地悪しがいが在るのが悪い」
 頬を膨らませるミコトの細い顎に指を宛て、くいと上向かせたセイがその珊瑚色の唇を割って舌を差し込む。
「んっ……ふっ……」
「オレらが触る前から此処をこんなに濡らして蕩けさせてたんだから、その分しっかり可愛がってやんねーとな」
 唇を離したセイが、ミコトの口の端を伝う涎を指で拭ってから、不敵な笑みを浮かべてみせる。
「さっき触ったら乳首も尖らせてたぞ」
「ミコト、もしかして欲求不満なのか?」
 前髪を掻き上げる様に額に手を宛てて瞳を覗き込んでくるセイとスオウからミコトは顔を背け、恥ずかしそうに淡い藍色の瞳を伏せた。
「欲求不満……じゃないとは思うんだけど……スウちゃんとセイちゃんの手がわたしに触れてると想うと……なんだか、身体が火照っちゃって……」
 うぅ……とミコトは顔を隠す様に両手で覆う。
「し、暫く逢わないうちに、わたし、い、淫乱になってたらどうしよう……」
 すごく真剣そのもののミコトの呟きに、スオウとセイは一瞬面食らった様にきょとんとしたが、
「ミコト、こっち向いて」
 今度はスオウがミコトの唇に吸い付いた。
 舌を絡めてくるスオウに応じる様に濡れた音を響かせながら、ミコトは注がれる唾液を嚥下する。
 横からセイが手を伸ばし、ミコトの袴の帯を解いて襦袢をはだけさせる。
「ふぁっ……」
 唇を離したスオウが、蕩けた表情で見上げてくるミコトにニヤリと笑む。
「淫乱になったらなったでいいんじゃないか?」
「わたしがよくないよっ!?」
「実際、淫乱になっていようがいまいが、ヤることは変わらないわけで」
「セイちゃんまで何言ってるの!? 何の慰めにもなってな――」
 抗議の声を上げるミコトを、スオウが押し倒して床に横たえる。
「さて――じゃあ、身体が淫乱になってるか確認してみるか?」
「別に、さっきも言ったが淫乱になっていようがなっていまいがミコトが可愛いことに変わりは無いからヤることは変わらないわけで」
「セイは“じょーちょ”ってモンがねぇなあ。和歌の神様から叱られるぜ?」
「スオウにだけは言われたくないが――ふむ。では、和歌の神様に怒られないように、精一杯悦ばせるとしようか」
 つ――とセイの右手がミコトの乳房を撫で、ミコトの身体がびくりと跳ねた。
「やっ、ちょっ、ぁんっ……ふぅっ……」
 力強い指先が乳房を揉みしだき、ぴんと尖った乳頭を爪で弾く。
 反射的にセイの手を払おうとするミコトの両腕を、セイが難なく抑え込む。
「どっちが先にする?」
「ちょっと待ってわたしの意見は?」
「スオウからでいいぞ」
「聞いて? お願いだからわたしの話も聞いて?」
「じゃあ遠慮なく。セイはどっちを……って、咄嗟に押し倒しちまったけど、ミコトが仰向けだとセイがヤりにくいか」
「あの」
「とりあえず抵抗する気力が無くなるまでは仰向けでいいぞ」
「…………」
「それもそうか。どっちにしろオレもセイも口もケツも使うしなあ」
「何回ヤる気なの――っ!?」
 ミコトの悲鳴の様な声に、ミコトの両足を押さえ込み、寝間着らしい浴衣をはぐったスオウが朗らかに笑う。

215【辻歌人】夢で、逢えたら。【元戦神】4:2019/06/22(土) 20:52:04 ID:3Cl9Ig7Y
「何回っつーか、とりあえず朝まで耐久戦? みたいな?」
「安心しろ。いつまで此の姿でいられるか解らないが、最長でも朝までに帰ると約束しよう」
「待っ――ひぅっ!!」
 びくんっ! とミコトが身を仰け反らせる。
「や、ぁっ……いきなり二本なんてぇ……」
 泣きそう声を上げてスオウを睨むミコトに、スオウはミコトの“ナカ”に差し込んだ二本の指をぐにぐにと動かす。
「お、いい反応。ミコトの声って、なんか嗜虐心を唆るよなあ」
「ば、ばかっ!」
 顔を真っ赤にして抗議の声を上げるミコトに優しく指を動かしていたスオウが、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「なに――やぁっ……!」
 性感帯、所謂Gスポットをスオウが指の腹で撫でる。優しく優しく撫でながら、時折爪で浅く掻く。
「ミコトは“此処”がいいんだよな?」
「別に、悦く、なんか、な――」
 ある種執拗なまでに同じ処を重点的に攻め立てるスオウ。
「久し振りなんだから、しっかり解しとかねーとな」
「ふぁっ、やめ……っ!」
 ミコトの声を遮る様に、セイが唇を重ねる。
「ん、む……」
 膣を弄ばれ、乳房を撫でられ、舌を絡ませながらミコトは絶頂に達した。
「――――ッ!!」
 びくん、と身を大きく仰け反らせてから、足を突っ張りながら腰を浮かす。
 痙攣していた身体からどっと力が抜けると、スオウはミコトの愛液に濡れた指を抜いた。
 唇を離したセイが、ミコトの頭を撫でる。
「もう抵抗出来なさそうだな。――尤も、最初から言うほど抵抗する気は無かったみたいだが」
「そう思うなら、もうちょっと手加減してよぉ……」
「スオウじゃないが、『ミコトが意地悪しがいが在るのが悪い』」
「えぇぇ……横暴だ……」
 抗議の声を上げるミコトを、スオウが抱き起こす。
 起こされたミコトは、スオウに寄り掛かる様にしてぐったりと身体を預ける。
 その肢体を、今度はセイが後ろから抱き竦める様にしてスオウから受け取る。
「ほら、ミコト。舐めて」
「んっ……」
 ミコトの顔の前に差し出されたセイの人差し指と中指に、おずおずとミコトが舌を這わす。
 ちゅぷ、と濡れた音を響かせながら、指先にミコトの唾液を絡めるセイ。
 その様子を見ながら、スオウはミコトの足を押さえて前屈みに身を屈める。
「行灯の灯りでも解るほどびちゃびちゃに濡れてんなあ……やっぱ『暫くお預け』ってのも、これはこれで悪くないかもな」
「…………どちらかと言えば『お預け』で死に掛かってたのはミコトじゃなくてスオウの方だろう」
「かもな」
 ははっと笑って、スオウはミコトの内股に口づける。
「ひゃっ……!?」
「此処なら、幾ら吸い痕をつけた処で、外からは見えないもんなあ」
 ミコトの足を持ち上げ、太股、それも内側の辺りを重点的にちゅ、ちゅ、と桜の花びらを散らす様に吸い痕をつけていく。
 セイはミコトの口から唾液塗れの指を抜き、
「ひっ――!?」
 肛門に指を宛てがわれたミコトは目を見開き、びくん、と身体を震わせた。
「やっ、セイ、ちゃ――」
 そのままセイの指が、ミコトの直腸に沈み込む。
 にゅぷぷ、と音を立てて挿入された二本の指が、ぐねぐねとミコトの腸壁を愛撫する。
「だから……いきなり二本はやだぁ……」
 潤んだ瞳で抗議するミコトを全くもって黙殺し、セイは何かを探る様にミコトの直腸に指を這わす。
「んー……サクトだとこの辺なんだが……もうちょっと手前……いや、もうちょっと奥か」
 男で在れば前立腺の裏に当たる位置を丁寧に撫でると、ミコトの爪先がぴくん、と痙攣した。
「お? 良かったな。ミコトが反応してるぞ、セイ」
「女にも前立腺て在るのだろうか? 男だけにしか無いと書いてあったが……」
「ゼンリツセンて何だ?」
「この間読んだ本に載ってたんだが」
「こないだの本て、なんか魚がいっぱい載ってたやつか?」
「……一応断っておくが、和漢三才図会は魚の本じゃないぞ」
「じゃあ、あの草がいっぱい載ってたやつだ」
「本草綱目のことを言っているなら、違うぞ。異界から借りた本だ」
「誰から借りたんだ」
「えた☆くろの」
「あ、いい。察したからもう言わなくていいぞ」
 何処ぞの同人誌描きの三人組の女神の名前が出た時点で、スオウは全てを察した。
 しかし、本の知識というのも侮れない。
 現にミコトは、両手で口許を押さえ、涙と涎で顔をぐちゃぐちゃにしながら必死に喘ぎを堪えている。
「これはこれで唆るなぁ」
 言ってスオウは口づけをやめ、ミコトの膣に指を差し込んだ。

216【辻歌人】夢で、逢えたら。【元戦神】5:2019/06/22(土) 20:53:03 ID:3Cl9Ig7Y
「ひぁっ――ダメ、今、指っ……挿れられ、たらぁ……っ!!」
「んー、セイの指……この辺、か……?」
「さすがに魔羅を挿れている時ならまだしも、指が入っている位置までは解らなくないか? 一応、この辺りなんだが」
 ぐっ、とセイが指の腹で腸壁の一点を押す。
「何となく、この辺ぽい気がするんだけどな」
 セイが裏から強く押している辺りを、スオウが浅く爪で掻く。
 刹那、
「〜〜〜〜〜〜ッ!!」
 びくん、とミコトが四肢を突っ張って身体を大きく仰け反らせた。
 スオウの指をびしゃびしゃに濡らしながら、ミコトが本日二度目の絶頂に達する。
「潮吹いた……そんなに悦かったのか?」
「ふぇ、あぅぅ……」
 滂沱とミコトの頬を伝う涙を、セイが指で拭ってやる。
「……そろそろ、挿れるか?」
「まだ、もうちょっと……内股に口づけてばっかで『こっち』をまだあまり弄ってないからな」
 言うが早いか、スオウはミコトの陰核に吸い付いた。
 舌先で器用にくりくりと包皮を剥いてから、剥き出しになった其処へ甘く歯を立てる。
「――――っ!!」
 声無き声を上げるミコトを、セイは微笑して上向かせ、その唇に唇を重ねる。
 スオウが陰核に吸い付き、歯を立てる度にセイの口腔にくぐもった喘ぎが注がれる。
 ミコトが三度、絶頂に達してからスオウは漸くミコトの陰核から顔を上げた。
「――挿れていいか?」
 セイから唇を離したミコトはしばし逡巡する様な迷いを見せたが、やがて恥ずかしそうに小さく頷いた。
 両足を抱え、膣口に宛てがったスオウが、ミコトの様子に気付いて首を傾げた。
「ミコト、自分で挿れたい?」
「いや、その……」
 ミコトは慌てて首を横に振りながら、
「ひ、久し振りだから……その……セイちゃんとスウちゃんを、ちゃんと気持ちよく出来なかったら、ごめんね……?」
 顔を真っ赤にして蚊の鳴く様な声で訴えるミコトの頭を、スオウとセイが微笑して撫でる。
「オレたちは、ミコトが『気持ちいい』のが一番気持ちいいから、心配いらないぞ」
「そうそう。そんな心配に気を廻すくらいなら――」
 ――ずんっ、と一息に奥まで貫かれたミコトの背を、電流の様に快感が駆け抜けた。
 崩れ落ちそうになるミコトの身体を、スオウが前から寄り掛からせる。
「気をやるのはまだ早いぜ」
 言うが早いかセイがミコトの腰を押さえ、後ろから挿入する。
 ミコトは縋る様にスオウの身体を抱き締める。
「相変わらず、キツイ締め付けだなあっ!!」
「ふぁ――スウちゃんが、前よりずっと、深い……っ!!」
「久し振りだからか? それとも、スオウの長さが変わったのか?」
「――いや?」
 意地悪く笑んで、スオウはミコトの頬を伝う涙を舌で拭う。
 スオウとセイがミコトの腰を抱え、激しく上下させる。
 そのたびに、濡れた音に混じって、ゴツ、ゴツ、とスオウの肉棒が子宮口を突く音が響く。
「ミコト、多分子宮降りてるわこれ」
「なるほど。それで深いと錯覚してるのか」
「だ、め――あぁっ!!」
 二人の激しい動きに翻弄されていたミコトが、ぎゅう、とスオウにしがみつく。
「セイちゃん、スウちゃん――」
 泣きじゃくりながら、ミコトは切なげにスオウとセイの名を呼んだ。――何度も、何度も。
「――――あああああっ!!!!」
 体内が白で満たされるのと同時、ミコトの意識も白で塗り潰されていった。


 ――目を覚ますと、布団の中だった。
 まだ朝靄が掛かっているのが、空気で解る。
 スオウとセイは居なかった。というか自分は、いつの間に布団で眠っていたのだろうか。
(夢……だったのかな……?)
 だとしたら相当欲求不満な夢を見たものだ、と急に恥ずかしくなって、ミコトは起き上がって赤くなった頬を両手で押さえた。
「――――!」
 起き上がったミコトは、とろりと自分の体内から零れた液体が太股を伝う感触に、『それ』が夢でなかったことを理解する。
「スウちゃん、セイちゃん……」
 ぎゅっと布団の端を握って目を閉じる。
 何となく、布団からスオウとセイの匂いがする気がする――なんて言ったらスオウたちは怒るだろうか、呆れるだろうか。
(でも――もう少しだけ)
 陽が昇るまでは――そう願いながら、ミコトは再び目を閉じた。

217名無しの魔法使いさん:2019/06/22(土) 21:04:00 ID:3Cl9Ig7Y
おまいは魔道杯中に何をやっているんだと小一時間。
皆様魔道杯お疲れ様ですm(_ _)m

時系列的には4以降の、秋口くらいに書いてお蔵入りにしてたやつです(多少手直しはしましたが)
文才が無いのでパターンが同じだし、上げるまでもないかなと_(:3 」∠)_
相変わらず神んぐの三人がわやくちゃしてるだけのSSですw

フレさんがこういうのが結構好きらしいと(人伝に)聞いたのでひっそりと投下しておいたり。
そのフレさんじゃなくても、何方かの性癖に刺さってくれたら密かに嬉しいw
相変わらずのお目汚し、失礼いたしましたm(_ _)m

218名無しの魔法使いさん:2020/01/13(月) 00:06:55 ID:b8TuqTeA
避難兼テスト

219名無しの魔法使いさん:2020/02/15(土) 21:16:31 ID:./gUyfGU
テスと

220名無しの魔法使いさん:2020/10/21(水) 06:04:45 ID:6iBAZK4M
死ーん

221【願いは】アルルシ風味に見せ掛けたリザリュディSS【一つ】:2020/12/08(火) 21:09:58 ID:BperRQ/6
※Twitterで、ロスエデ5周年だかアルルシ5周年だかを、やっている様なので、ひっそりと上げてなかったSSを投下してみたり。
※ぽっっかみ時点で書いたSSです
まだ此処を見ている方がどれほど残っているかは解りませんが、ちょっとでも面白いと思って頂けましたら幸いです。

【願いは】アルルシ風味に見せ掛けたリザリュディSS【一つ】


 コンコン、と控えめなノックの音が響いて、アルドベリクは目を通していた書類から顔を上げた。
「ムールスか?」
 問い掛けると、重厚な木の扉が微かに軋んだ音を立てながら開く。
 扉の向こうから顔を覗かせたのは――
「……ルシエラ?」
 お盆に茶器を乗せたルシエラだった。
 驚いた様に片眉を跳ね上げるアルドベリクには構わずに、ルシエラは後ろ手に扉を閉め、アルドベリクの傍らにお盆を置いた。
「夜遅くまで精が出ますね、アルさん。でも、休憩はちゃんと取らないとダメですよー」
 嗜めると言うよりは、からかう様な口調。
「ムールスはどうした?」
「ムールスさんなら、リザとリュディを寝かし付けてますよ」
「…………」
 どうやら抵抗は無駄なようだ。
 諦めて、アルドベリクは読み掛けの書類の束を机に放り投げた。
「毎日毎日大変ですねえ」
 ティーカップに茶漉しを掛けて、其処にティーポットから香茶を注ぐ。
「実質やっていることは領内の事務書類に印を捺すだけの様なものだが、一応書類は全て目を通さないといけないのが面倒だな……」
 アルドベリクは椅子に凭れかかって、酷使した目を解す。
 そうこうしている内に、ルシエラの淹れた香茶の香りが鼻腔を擽ってくる。
「さ、アルさん、どうぞ。疲れが取れる様に、お砂糖を一つ入れてありますよー」
「ああ、ありがとう」
 言ってカップを受け取り、一口啜ってから、
「――ルシエラ」
 かちゃん、とカップがソーサーに戻される。
「はい、アルさん」
 にこにこと、天使の無邪気さそのままにルシエラが返事をする。
「単刀直入に聞くが――何を入れた?」
「黒猫さんとこで一緒になったルシーニアさんから頂いた即効性の媚薬でーす☆ ラティオさんて方でちゃんと試したから効果は折り紙つきだそうです♪ 最近ご無沙汰なのでって言ったら『魔王だと効果が薄いかもしれないから』ってくれた10回分を一気に突っ込みました☆」
「……………」
 悪戯っぽく笑うルシエラに、アルドベリクは頭痛を堪える様に項垂れた。
「おーまーえーはー……」
 白い肌に薄っすらと朱が差したアルドベリクは、照れているのか左手で口許を隠そうとしている。
 ルシエラはそんなアルドベリクの膝に乗り、抱きつく様に背中に腕を廻し、アルドベリクの瞳を真っ直ぐに覗き込む。
「アルさんは、ちょっと真面目すぎると思うんですよ。根を詰めすぎずに、たまには仕事から離れてゆっくり休むことも大事ですよ?」
「――本音は?」
「最近アルさん、リザとリュディに構ってばっかりで寂しいなって。私だって焼きもちくらい妬くんですよって。『そんなに仕事が好きならいっそ仕事と結婚しちゃえ、このワーカホリック』って思って」
 何処までも悪びれなくしれっと答えてくるルシエラに、アルドベリクは深々と嘆息した。
「…………リュディとリザがある程度の年齢になるまで閨事を控えよう、って言ったのはお前だろう、ルシエラ。具体的にはサキュバス科で実習入る様になる年齢まで」
「だからムールスさんに寝かしつけて貰ってるわけで」
「………………そんなにしたいのか?」
「いえ? ぶっちゃけ私はそれほどでも。ただ、アルさんのアルさんが色々と『溜まって』そうなので、大変そうだなあと。アルさんは変な処で素直じゃないので、『右手が恋人』とか言い出してひっそりと自分で処理しかねないので、もういっそ一服盛ってしまおうかと」
「『それほど』ってことは『少しは』その気が在ると……いやそれより、お前は俺をどういう目で見ているんだ」
「こんな――」
「いやいい。実演しなくていい。聞いた俺が愚かだった」
「――あとアルさん」
「何だ」
「さっきから私の足に堅いものが当たってるわけですけど」
「……そうだな」
 悪戯っぽく舌を見せてから、ルシエラは大輪の花の様に表情を綻ばせる。

222【願いは】アルルシ風味に見せ掛けたリザリュディSS【一つ】2:2020/12/08(火) 21:13:02 ID:BperRQ/6
 膝の上に座ったルシエラの腕をぐいと引き寄せて、アルドベリクは不敵に笑み――ルシエラに口づける。
 互いの呼気すら貪るかの様に、奥の奥まで舌を伸ばす。
 何度も何度も、在る種執拗なほどにルシエラと舌を絡め合う。
 アルドベリクが顔を離すと、ルシエラは頬を上気させ、蕩けた様な表情で、自身とアルドベリクを繋ぐ唾液の糸を見詰めている。
「さて――」
 アルドベリクはルシエラの前髪を掻き上げる様に撫でながら、ふ、と小さく微笑した。
 ――それは、傍目には笑った様には見えないかもしれない。ほんの僅かに緩く唇が弧を描いただけ。表情が変わったとはとても思えないだろう。
 だがルシエラは識っている。――それが喜悦から来る笑みで在ると。
 ぞく、とルシエラの背中を一抹の後悔と――多大な期待が快感となって這い上った。
 アルドベリクは、ルシエラの耳許に顔を寄せて囁く。
「魔王に一服盛ったのだから、覚悟は出来ているんだろうな?」
「できてたけど、できてないです……」
「まさか今の口づけだけで満足したわけじゃないだろう?」
「満足はしてないですけど、『ちょっと早まったかも』とは思ってますねぇ……」
「今更止めろと言われても自制できる自信は無いな。まあ、ルシエラが泣いて拒絶するならその限りではないが」
「…………ばか。」
 聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟いて、ルシエラはぷいとそっぽを向いた。その頬が
まるで淡い頬紅を差した様にほんの少しだけ、微かに紅く染まっている。
「……拒絶なんて、出来るわけないじゃないですか……」
「何か言ったか?」
「いーえなんにも。アルさんのキスがえっちいのが悪いって呟いたんです。反省してください」
「それは、反省の気持ちを込めてもう一回口づけたらいいって意味か?」
「聞こえてましたよね? しっかり聞こえてましたよねこれ」
「何の話か解らないな」
 意趣返しのつもりかしれっと答えてから、アルドベリクはルシエラの腰を抱き寄せようとするが――何故かルシエラがアルドベリクの手の甲をつねる。
「此処まで来てまさかのお預けか?」
「違います。『する』のは構いませんが、寝室に連れてってからにしてくださーい」
「別に、此処でも構わないだろう」
「構いますよ。書類がぐちゃぐちゃになったら、誰が片付けると思ってるんですか」
 ずいと顔を近付けてくるルシエラに、アルドベリクは一瞬気圧されそうになったが、

「ムールスだな」「ムールスさんですよ!」

 見事に声をハモらせてそう言った。
「書類がしわくちゃになるくらいなら別にいいですけど、書類に私のこう……液とか零れてたらさすがにムールスさんも気まずいんじゃないかと」
「それもそうだな」
 あっさり頷いて、アルドベリクは膝の上のルシエラに向けて左腕を差し出す。
 その腕にルシエラが大人しくちょこんと腰掛ける。
 今でこそその“腕”はリザもリュディもお気に入りの場所だが、元はといえばよくルシエラが腰掛けていた場所だった。
 アルドベリクに抱え上げられ、寝室へ運ばれる。
「久しぶりに、アルさんを独占出来ますねぇ」
「――こうして腕に乗せていると、止まり木に鳥を留まらせてるみたいだな」
「私はどちらかというと、鷹匠っぽいイメージですね」
「ルシエラが鷹……? むしろシマエナガとかその辺だろう、羽も白いし」
「羽の色だけで判断とか、そんなだからアレさんなんて呼ばれるんですよ」
「アレさん……」
 ぴょんとアルドベリクの腕から飛び降りたルシエラは、ふかふかのベッドの上に立ち、迎え入れる様に両手を広げてみせた。
「私はアルさんがアレさんでも、そんなアルさんが大好きですよ」
「アレさんなのは否定しない、と……何一つフォロー入れるつもりのないその清々しさはどうにかならないのか」
 はあ、と嘆息してから、アルドベリクは苦笑してベッドに上がり、ルシエラの身体を抱き締めた。
「――アレさんついでに、折角の感動のシーンを台無しにして悪いんだが」
「はい、何でしょう」
「さっきの薬がめちゃくちゃ効いてきてそろそろ限界なんだが……」
「えっ」
「ちょっと手加減出来る自信は無いからルシエラも覚悟を決めてくれ」
「…………あの。アルさん一口しか飲んでませんでしたよね……?」
「だが現に症状が出ているのは事実だからな。言っておくが、飲ませたのはルシエラだぞ」
 アルドベリクの腕の中で、ルシエラが小さく身を震わせる。
「――期待か?」
「アルさん、“自意識過剰”って言われません?」
「生憎魔王にそんなことを言う勇気のあるやつは一人しか知らないな。ーーさて、無駄話は此処までだ」
 アルドベリクは、横たえたルシエラのひらひらの服に手を掛ける。

223【願いは】アルルシ風味に見せ掛けたリザリュディSS【一つ】3:2020/12/08(火) 21:17:55 ID:BperRQ/6
 シルクの服を割って触れるアルドベリクの手の熱に、ルシエラがびくりと反応する。
 その様子に、アルドベリクは不敵な笑みを浮かべて見せる。
「ーー頭の先から爪先まで、美味しく食べてやるからな」
「もうっ、アルさんったらーー」

 ーーぼとっ。

 ルシエラが頬を染めて声を上げた瞬間、何かーー重さのあるもの。そう、例えば『綿の詰まったぬいぐるみが落ちた様な音』が響き、アルドベリクとルシエラははたと動きを止めた。
「「……………」」
 一瞬だけ互いに顔を見合わせてから、ゆっくりと音がした方をーー扉の方を向き、頬を引き攣らせながら其処に立つ人物を見遣る。
 果たしてーー
 其処には、手にしていたらしいまかたんのぬいぐるみを取り落とし、驚愕に瞳を見開いたリザが居た。
「ル、ルシエラ食べちゃダメええええ!!!!」
 瞳いっぱいに涙を溜めて訴えるリザの姿に、片手でのしかかったアルドベリクを押し退けつつ、片手で服を整えながらルシエラががばっと飛び起きる。
「…………」
 ルシエラは気まずそーにアルドベリクを見上げる。
「………………」
 アルドベリクは朱の差した頬を片手で隠しながら、にっこりとルシエラを見る。
「……………………ルシエラ?」
「…………………………………………はい」

 バタバタバタッと激しい音が響いて、バンッと扉が開け放たれる。
「申し訳ありません。リュディの手洗いについて行っている間にリザがこちらにお邪魔をーー」
 ーー駆け込んだムールスとリュディが見たものは。

 呼吸を荒くし、頬を紅く染め、明らかに情欲を持て余しながら必死に理性で押さえつけ、部屋の真ん中で仁王立ちしているアルドベリクと。
 そのアルドベリクの前で絨毯に額をつけて土下座しているルシエラの姿だった。

224【願いは】アルルシ風味に見せ掛けたリザリュディSS【一つ】4:2020/12/08(火) 21:18:49 ID:BperRQ/6
「ーーなんてこともあったねえ」
「今となっては思い出したくない黒歴史ね」
 何処までも広がる空の下。浮き島の一つに広がる草原に寝転がり、リザは大きく息を吐いた。
 隣では、リザと同じ様に寝転がったリュディが、何かを掴もうというのか、それとも単に眩しくて日除けにしているだけか、空に手を伸ばしている。
「今にして思えば、あれって『そーいうこと』してたのよね。ルシエラには悪いことしたと思うわー。割と本気で」
「それから暫くして、時々『女子会』って言って、リザだけカナメたちのとこに行くようになったよね。俺はムールスが寝かしつけてくれた」
「小さい頃は『お泊まりヒャッホウ』としか思ってなかったけど、冷静に考えるとあれっていちゃいちゃするから追い出されてただけよね」
「ルシエラの土下座姿見たのは、後にも先にもあの一回だけだなあ」
 思い出す様に目を細めるリュディの隣で、リザは「はぁ」と嘆息する。
「…………帰りたい、なあ…………」
 本来リザは弱音を吐いたりする方ではないが、さすがに疲れたと表情が物語っている。
 そんなリザに、リュディは黙って耳を傾ける。
「ーー魔界で助けて貰って、魔族の皆に故郷を救って貰って、魔界で育てて貰って、クソ可愛い神様と一緒に過去と未来で別れたリュディとやっと再会して、故郷に戻ってきて……でも、私が何か変わったつもりなんて無かった。私は、『リザ・ロットレンダー』で『リュディの許嫁』で、何もーー何一つ変わっていないのに」
 溜め込んだ感情を吐き出す代わりか、リザの頬を一筋の涙が伝う。
「私は“英雄”でも“魔物”でもない。そんな実体の伴わないモノなんかじゃないわ」
 故郷に戻ったリザたちを出迎えたのは、奇異の視線、拒絶、好奇。遠巻きに見てくる者はあれど、触れてくる者は居ない。
 『世界を救った者』として持て囃しながら、その実、『魔物の子』として忌み嫌われていることは解っていた。
「……一度壊された世界なんだから、アルドベリクたちも見棄てておけば善かったのよ、こんな世界」
 陰口を叩かれるくらい、どうということは無いと思っていたが、連日連日それが続くと嫌にもなってくる。
「俺はアルドベリクたちのした事を否定しようとは思わないけどね」
「私だって、別に、否定したいわけじゃないけど」
 むう、と頬を膨らませるリザの傍らに身を起こし、リュディはリザの髪に指を絡め、金色の髪を梳く。
「いい加減、『英雄』って呼ばれるのにも飽きたわ。飽きすぎて、英雄が『愚か者』って言ってる様にしか聞こえなくなったし」
「ーーだからといって、衝動的に気流の渦に飛び込むのは止めて欲しいかなあ」
「別にあのくらいの風なら乗りこなせるわ。それに、そのお陰で気流の真ん中にこんな素敵な花畑を見つけられたんだから、感謝して欲しいくらいだわ」
 いつもの強気なリザが戻ってきたことに安堵し、リュディは微苦笑を浮かべる。
「まあね。此処なら誰の声も届かないし、誰にも邪魔されない」
 言って不敵な笑みを浮かべるリュディに、リザが目をぱちくりと瞬かせて、下からリュディを覗き込む。
「ーー俺たちのことを『英雄』と呼ぶなら、勝手にしていればいい。俺はくだらない『英雄』の呼称と引き換えに、此の浮島と土地、そして俺とリザだけの生活を手に入れてやる」
 吐き捨てる様にそう言ってリザの髪に顔を埋めるリュディに、リザも花の様に表情を綻ばせる。
「『私とリュディ』だけじゃ足りないわ。ーーあと一人、未来で待ってるもの」
「ああ、そうだな」
 ーーそれは、願いにも似た〈約束〉。
 寝転がる二人を祝福する様に、風に巻き上げられた花びらが幾重にも降り注いでいた。

225名無しの魔法使いさん:2020/12/08(火) 21:23:36 ID:BperRQ/6
ぽっっかみの時に、リュディくんがほしかったのにリザさんが4枚来てくれて、
再契約に賭けて「リザさんがリュディくん喚んでくれたらリザリュディのR18SS書く」とか言ったらマジでリュディくん連れてきてくれた訳ですが。
結局R18風味になったのはアルルシだったっていう。
まあ、リザリュディをいちゃこらさせようかなとも思ったんですが、なんか蛇足っぽいかなとなってしまってそのままお蔵入りになってたやつを祝いの席で上げる根性よw

というわけで、ロスエデ5周年おめでとうございます( ≧∀≦)ノ

226名無しの魔法使いさん:2020/12/11(金) 09:30:36 ID:WA7uXwIg
おぅ
久し振りにSSキテルネ!!


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