研究の共同責任者で、カリフォルニア大学アーバイン校の循環器学教授グレゴリー・トーマス氏によると、「月の子ども(Child of the Moon)」、「アメン神に愛されし者(Beloved of Amun)」とも言われるアーモセは、脳や心臓に血液を送り込む動脈を含めた主幹動脈5本にプラークがあったという。「私がいま王女を診断できたとしたら、脂肪分の摂取を控えて適度な運動を行うよう指示したうえで、心臓手術を行う。2カ所のバイパス手術が必要な状態だ」。
だが、テーベ第17王朝のファラオに名を連ねる「セケネンラー・タア2世(Seqenenre Tao II)」の娘である王女は、調査対象の他のミイラと同様、高い地位にあった。通常より心臓病にかかる確率は上がると言えるだろう。「地位が高いため、欲しいものはなんでも手に入るような生活を送っていただろう。特に体を動かす必要もなく、肉類に代表される高カロリーな食事を摂っていたはずだ」。