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福島の甲状腺がんの諸問題の考察〈おもに過剰診断と検診有効性〉

609NATROM:2018/08/10(金) 15:23:07 ID:RzTrYzBo
●なぜ成人の甲状腺がん検診で甲状腺がん死が減らなかったのか

大事なことなので、表現を変えてもう一度言います。がんには以下の5種類があります。

1. 検診では見つからず、検診と検診の間に自覚症状を呈して発見されるがん(インターバルがん)(※)。
2. 検診で見つかったときには既に手遅れで、それから治療してもがん死にいたるがん。
3. 検診で見つかったおかげで、がん死をまぬがれるがん。
4. 検診で見つかったが、検診しなくてもいずれは症状を呈し、それから治療してもがん死をまぬがれるがん。
5. 検診で見つかったが、検診しなければ症状を呈することはなく、一生涯気付かれなかったがん(過剰診断)。

検診が有効なのは3だけです。2と4は検診で予後は変わりませんが、病悩期間が長くなるので検診は害しかありません。5ではさらに検診の害は甚大です。ね、がん検診が有効な条件ってけっこう厳しいでしょう?ぼんやりしていると、4と5を「検診のおかげでがんで死ななかった」と誤解して検診の有効性を過大評価してしまいます。医師でもそんなぼんやりさんが山ほどいます。

検査の間隔や精度を高めてがんが小さいうちに発見し、1や2ではなく、3になるようにすればいいように思いますが、なかなかそううまくはいきません。乳がん検診の検査なんて精度は上がっているはずですが、検診の効率はむしろ下がっています(たぶん治療が良くなったため。昔の治療では3だったのが今の治療では4になる)。検査の精度を上げても3は増えずに5ばかり増えるだけ、なんてことになります。

成人の甲状腺がんは、5が山ほどあって、まれに4、存在するかどうかすらわからないのが3、がんで死ぬのは2と1、というわけです。小児だったら3があるかもしれないとなぜ思えるのか、不思議でなりません。しかも、検診が有効な条件は、ただ「3が存在する」だけではなく、「2や4や5がもたらす不利益を凌駕するだけの数の3が存在する」です。まあ、ありえません。

※細かいことを言えば、インターバルがんの中にも救命できるものもあります。ただ、一般的に、インターバルがんはとても予後が悪いです。


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