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福島の甲状腺がんの諸問題の考察〈おもに過剰診断と検診有効性〉
128
:
NATROM
:2018/05/15(火) 10:05:03 ID:RzTrYzBo
>>112
TAKESANさんの記事へのコメントおよび「外側の人の甲状腺検査批判と福島の現実」の記事は拝見いたしました。Jさんのご指摘はごもっともです。事故が起こった時点での検診介入はやむを得なかったと私も考えます。『「大丈夫であること」ときちんと説明して不安を取り除けばいい』なんて主張は正直甘っちょろい、というのはそうなのでしょう。
ただ、それならば、福島の甲状腺がん検診でA2判定やB判定が見つかった方の不安はいかばかりでしょうか。『「大丈夫であること」ときちんと説明して不安を取り除けばいい』では済みません。また、実際に甲状腺がんが発見され治療介入された方は、心理的な不安に加え身体的な負担も加わります。
また、TAKESANさんが今回問題にしている論点の一つは、潜在的な害がある医学的介入についての説明不足です。たとえば早期胃がんの手術は医学的妥当性がありますが、手術にあたって患者さんは害についても十分に説明を受ける権利があります。手術に限らず、薬でもワクチンでも検診でも、この原則は守られなければなりません。不安の解消という利益があるとしても、害を十分に説明せずに介入してよいのか、という問題提起です。
がん検診の害、および有効性の限界については、がん検診の専門家の間では周知されていますが、まだまだ一般の人たちの理解は得られていません(ここでの議論を見ていればわかるでしょう)。検査には害はなく利益しかない、といった誤解に乗じて甲状腺検査を行ったこと、そしてこれから継続することの正当性が問われているのです。
「じゃぁどうすれば良かったんですか」についてですが、たとえば高野徹先生は、触診による甲状腺検査を提案しています。超音波検査は感度が高すぎます。頚部に放射線治療を受けた小児・青年期がんサバイバー(福島県住民と比べて桁違いの被ばくを受けている)の甲状腺がん検診についても超音波検査ではなく触診が提案されています(PMID: 28028762)。私が「もし不幸にも次の原発事故が起こってしまった場合は、チェルノブイリと福島の教訓から、超音波検査による一律の甲状腺がん検診は行われないでしょう」と書いたのは、「超音波検査によらない一律の甲状腺がん検診は行われるかもしれない」ことを念頭に置いています。
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