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欧州情勢・西洋事情

4293OS5(旧チバQ):2023/01/15(日) 20:45:12
議会通過のカギを握る共和党
政府の年金改革案の議会通過のカギを握るのが、現在の政治体制である第五共和制を確立したシャルル・ドゴールなど、歴代大統領や首相の多くを輩出してきた伝統的な右派政党の共和党だ。

マクロン大統領が率いる中道政党・ルネサンス(共和国前進から党名変更)の右傾化と、国民連合の穏健化の間に挟まれ、共和党は地盤沈下が著しい。昨年の大統領選挙の初回投票では、ヴァレリー・ぺクレス候補の得票率が5%に届かず、直後の国民議会選挙でも改選前から56議席を失い、NUPESと国民連合の後塵を拝する第4党に転落した。

党勢回復を目指す共和党は昨年12月、反マクロンで党内最右派のエリック・シオティ国民議会議員を新たな党首に選出した。このことは共和党が中道に寄り、大統領に接近するのではなく、右傾化し、極右政党に奪われた有権者の奪還を目指すことを意味する。

共和党は年金の支給開始年齢引き上げなどの改革の方向性では政府方針と一致している。だが、マクロン大統領に批判的な有権者の支持を集めるためにも、政府案に賛成してマクロン改革の実現を助けたと受け止められることは避けたい。

政府の年金改革案は、マクロン大統領やボルヌ首相が示唆していた当初案と比べて、共和党の代替案に近い。共和党の修正提案に政府が応じた体裁を取ることで、共和党を懐柔する狙いがあったものと考えられる。

政府は反対派による審議妨害を防ぐため、年金改革案を独立した法案としてではなく、社会保障関連予算の改正案として議会に提出することを検討している。この場合、閣議了承の後、国民議会(下院)で最長20日間、元老院(上院)で最長15日の審議を経て、50日以内に両院委員会で最終合意する必要がある。法案の成立は3月末までを目指している。

議会の議決なしに法案を成立するという手もある。それを可能にする憲法49条3項は、1会期につき1回しか使えない切り札だが、予算関連法案についてはこうした縛りがない。同条項に基づく法案成立を阻止する唯一の方法は、24時間以内に内閣不信任案を提出することだ。政府が同条項の利用に踏み切れば、NUPESや国民連合は不信任案を提出するだろう。これに共和党が同調した場合、マクロン大統領は議会の解散・総選挙に踏み切ることを示唆している。

マクロン大統領はこれまでも抵抗勢力の反対を押し切り、強引に改革を進めようとして、国民の反発を買ってきた。多くの国民が反対する年金改革案を議会採決もせずに成立させる場合、さらなる抗議活動の激化を招く恐れがある。

野党勢が一枚岩になれない中、政府は解散カードをちらつかせて法案成立での共和党の協力を仰ごうとしている。だが、強行突破に国民の不満が一層高まれば、解散・総選挙で厳しい審判を突き付けられるのは、大統領会派のアンサンブルのほうかもしれない。

マクロン改革の集大成となるか
年金改革案をめぐる混乱は、経済活動や財政再建の行方にも影を落としかねない。大規模なストライキや抗議行動で経済活動が麻痺すれば、景気後退の瀬戸際にあるフランス経済にさらなる急ブレーキがかかることになる。

年金改革案の成立に失敗すれば、2027年までに財政赤字の対国内総生産(GDP)比率を3%未満に抑制する政府の財政計画は軌道修正を余儀なくされる。借り入れ増加が嫌気され、フランスの国債利回りに上昇圧力が及ぶとともに、さらなる改革期待が削がれ、マクロン大統領の残りの任期はレームダック化が進むことになろう。

逆に共和党の協力で政府が年金改革案の成立に成功すれば、政府の改革遂行能力を示すとともに、1会期1回の憲法49条3項の利用を別の改革関連法案に温存することができる。その場合、マクロン大統領は2期目の最重要内政課題に早々にけりをつけ、2027年の任期満了までの残りの時間をEU改革など外政分野でのレガシー作りに注力できる。

著者:田中 理


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