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欧州情勢・西洋事情

4007チバQ:2021/12/26(日) 13:01:01
 ではなぜ、中東欧の人々は移民を忌避する傾向が生まれるのか?

 クラステフ氏は、中東欧の現在の国々には、ドイツ、オーストリア=ハンガリー、ロシアといった欧州大陸の帝国の崩壊に伴って生まれたという共通の「出自」があると指摘。もともと西欧では多民族が調和的だったが、中東欧では多民族の帝国の崩壊に続いて、民族性が均質な国家が形成されたと説明した。このため、中東欧の人々にとって民族多様性の回復は、過去の混沌とした時代に戻ることと解されるのだという。

 また「難民危機によって東欧の人々はEUが基本に据えるコスモポリタン的価値観を脅威として見るようになった」とし、中東欧に広がる難民敵視は「中欧版のグローバリゼーションへの大衆の反抗」の表れだと分析した。

 さらにクラステフ氏は帝国の崩壊などの歴史的要因だけでなく、冷戦崩壊と自由化・民主化の過程を経て中東欧の人々が抱え込むことになった不信感なども要因に挙げる。移民流入や不安定な経済状況の中で、多くの東欧人が豊かさや社会の安定といった「EU加盟がもたらすと思った願いが、裏切られたと感じたのだ」と言う。そして、東欧人のグローバリゼーションへの反応はトランプ前米大統領を支持した米国の労働者らのそれと同じで「両者とも自分たちが忘れられた敗者だと思っている」と断じた。

 クラステフ氏の論考は、以前私がインタビューしたハンガリー出身の英ジャーナリスト・歴史家、ビクター・セベスチェン氏から聞いた話と重なる。セベスチェン氏は1989年のベルリンの壁崩壊とその後の東欧各国の民主化をつぶさに追ったルポルタージュ「東欧革命1989――ソ連帝国の崩壊」で世界的に著名である。「壁」崩壊から30年の節目の19年秋にインタビューした際、セベスチェン氏はこう語った。

 「東欧では冷戦終結後の最初の20年、人々は望んだものを手に入れた。欧州に再び合流し、自由市場を手に入れ、資本主義世界に加わった。だが、(世界に金融危機が広がった)08年以降、大きく変わった。(それまでも)自由主義経済を至上とする米国やロンドンの銀行家などへの憤りはあったが、それが膨れあがった」「89年の革命は通常の革命とは異なった。多くの革命では敗者が亡命するのに、この革命では勝者の側にあり、教育程度も高い者が国を去り、移民として西側に流出した。このため、東欧ではハンガリーのオルバン首相のようにナショナリズムを訴える者が、成功をつかむことができない人々、あまり教育を受けていない人たちを簡単に魅了できるようになった」

 ◇ナショナリズムと反LGBT

 クラステフ氏はまた、「人口減へのパニック」が、東欧の難民への反応を形成するファクターとして重要との認識を示す。民族的に消滅してしまうのではないかという潜在的な恐れを抱く中東欧の人にとって、大量にやって来る難民や移民は「彼ら(中東欧の人々)の歴史からの退場を示唆する」ものと受け取られるのだという。

 そしてクラステフ氏は、ここから議論を移民から性的少数者へと敷衍(ふえん)する。「人口問題への想像力は、外国人に対する社会の敵意だけでなく、同性婚のような社会の変化に対する否定的な反応を形成しても驚くことではない」「保守派の多くにとって、同性婚は少ない子供やさらなる人口減を示すもので、低い出生率と移民に悩まされている東欧諸国にとって、ゲイ文化を承認することは自分たちの『消滅』を認めるようなものとなる」と中東欧のロジックを説明する。

 クラステフ氏はまた、多様性と移民を巡って見られる西洋と中東欧の分断は、実は西欧の都市部と地方での分断と類似しているとも指摘する。この点は、私がこれまで当コラムで何度も書いてきた、英国の都市部の中間層と地方の労働者階級とのブレグジットを巡る断絶にまさに表れていることだと言ってもいいだろう。トランプ現象やブレグジットの根底にある反グローバル主義やナショナリズムが、中東欧では反LGBTにつながっているのかもしれない。


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