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欧州情勢・西洋事情
3661
:
チバQ
:2020/12/16(水) 10:22:40
もどかしさと焦り
メルケル首相はこれらの言葉を語る際に、拳を振り上げ、声を高ぶらせた。時には、身体の前で手を合わせて、懇願するような素振りもあった。表情をゆがめて、今にも泣き出しそうな表情すら見せた。
ときおり拳で演壇を叩いたので、マイクに「ドンドンドン」という雑音が入った。しかし首相は用意した原稿に視線を落とさず、議員たちを鋭い視線で見つめ、自分の言葉で訴えていた。メルケル首相の真剣さ、真摯さが、ひしひしと伝わってきた。
私は彼女が2005年に首相に就任して以来、幾たびも演説を聞いてきたが、これほど感情を露わにしたのを見たことは1度もなかった。
元科学者であるメルケル首相は、これまで感情を表に出さない政治家として知られてきた。前向きに言えば沈着冷静、悪く言えば鉄面皮である。英国のマーガレット・サッチャー元首相になぞらえて「欧州の新たな鉄の女」と呼ばれたこともある。
そのため演説のトーンは、しばしば一本調子で感情を含まないので、「機械の取扱説明書でも読んでいるかのようだ」と、メディアから指摘されることもあった。
だがメルケル首相は、コロナ禍をめぐる戦況が日に日に悪化する中、ポーカーフェースの仮面をかなぐり捨てた。私の知人の中には、この演説を聞いて「えッ、これがメルケル首相?」と驚いた人もいた。ドイツのメディアも「突然首相が極めて感情的になった」と評した。
私はこの演説を聞いて、首相の危機感がいかに強まっているかを感じた。
メルケル首相はこれまでもウイルス学者たちの意見を重視し、厳しい感染防止策に賛成してきたが、16の州政府の首相の中には、経済への悪影響に対する懸念から、5月以降感染対策の緩和を求める者もいた。
新型コロナによって重症に陥る人の中には高齢者や基礎疾患を持つ人が多く、若年層では感染しても軽症で終わる場合が多い。このため、若者の間には公共交通機関や商店でのマスク着用や、1.5メートルの最低限の距離に関する義務をおろそかにする者も少なくなかった。
感情をむき出しにしたメルケル首相の演説には、科学的な知見に基づく政府の指示を軽視する市民への強い苛立ちと失望感も感じられた。「自分のメッセージが十分に州政府や国民たちに伝わっていない、私は人々に理解されていない」というもどかしさと焦りが、言葉の端々に滲み出ていた。
連邦議会選挙が行われる2021年の秋には、メルケル首相は政界を引退する。16年にわたる任期の幕切れに、「パンデミック対策でしくじり、国民の間に多数の犠牲者を出した政治家」という烙印を押されるのを恐れているのだろう。すでにドイツのメディアからは、
「3〜5月には他の欧州諸国に比べて死者数を少なく抑えることに成功したのに、秋から冬にかけて本格的なロックダウンを実施するのが遅れて、死者数を増やした。ドイツ政府は、2020年春に『欧州のコロナ対策優等生』だった優位性を十分に生かすことに失敗した」
という批判の声が出始めている。
12月13日、メルケル首相は州政府首相たちとのオンライン会議の後、
「今年3月から5月まで行われたのと同じ、厳しいロックダウンに踏み切る」
と宣言した。具体的には、12月16日から1月10日まで、現在すでに営業を禁じられているレストランや喫茶店に加えて、生活必需品を売る店を除く商店や理髪店などの営業も禁止する。
この時期には学校も休校となり、託児所や幼稚園も閉鎖される。自宅でクリスマスを祝う会食は禁止されないが、政府は参加者の数を、14歳以下の子どもを除いて最高5人に制限するよう要請する方針だ。
今年秋には、「ロックダウンは経済的な打撃が大きいので、メルケル政権は第1波で行ったような厳しいロックダウンを繰り返さないだろう」という楽観論が強かった。特にドイツ政府は、前述したように学校の授業を平常通りに行い、学力低下を防ぐことを最も重視していたからだ。だがメルケル政権は、今や大きく方向転換をして、医療崩壊を食い止めることを最優先の政策目標とし、再び厳しいロックダウンに踏み切らざるを得なかった。
ドイツの苦悩は、コロナ・パンデミックという自然の猛威の前には、人間の叡智にも限界があることを如実に示している。
熊谷徹
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