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欧州情勢・西洋事情

3506チバQ:2020/04/26(日) 18:43:26
修復に躍起 試される結束
 こうした外からの動きにEUは神経をとがらせる。

 3月末には急きょ、4億1千万ユーロ(約480億円)の緊急支援をセルビアなどEU加盟を目指す西バルカンの国々につぎ込むことを決定。4月に入り、ルーマニア、ノルウェーの医師、看護師をイタリアに派遣した。加盟国間でのマスクや消毒剤など医療品の融通にも力を入れている。当初は自国を優先していたドイツやフランスなどの加盟国も他国の重症患者を受け入れたり、マスクなど医療品を送ったり、連帯の修復に向けた動きが出始めている。

 水面下では、激しい情報戦も展開されている。EUの情報分析チームは「ロシアや中国の政府寄りのメディアが新型ウイルスに関連して偽情報を流している」と指摘。「ロシアはイタリアを助けているが、EUは助けていない」などといった内容だという。EUは、各国の当局と連携し摘発を強化している。

 EUの行政トップ、フォンデアライエン欧州委員長は15日記者会見し、「EUは多国間主義の強力な推進者。世界規模の難題の解決には、多国間主義が価値を与える」と連帯を強調した。だが、EU加盟国間で復活した国境がいつ開かれるかめどが立たず、南北間の経済格差はさらに大きくなりそうだ。

 仏シンクタンク「地政学研究グループ」のブリュッセルオフィス、セバスティアン・リュメ所長は「EUは本来、共通のルールや合意を得るための機関で危機管理の能力が十分ではない。そのため、経済危機や難民危機などの際は、解決策を見つけることでより強くなってきた。今回もEUが試されている」と指摘する。

遠藤乾・北海道大学公共政策大学院長の話

 欧州の新型コロナ対策では「EUの存在感が後退し、国家が台頭した」としばしば言われている。確かに、EUの当初の対応は鈍かった。ただ、危機の際に国家主権が前面に出るのは、ある意味で当然だ。そもそも戦争や感染症対策を担うのは加盟国であり、EUの共通政策ではない。今回、EUの姿があまり見えないのも、ある程度想定されたことだった。

 また、国家が浮上したからといっても、国内が必ずしも一枚岩になったわけではない。感染者と非感染者との溝も顕在化してきている。「国民国家復権」と一言で語れるほど単純な状況ではない。

 「EUは何もしていない」という批判も、当を得てはいない。EUは今回、曲がりなりにもイタリアなど南欧を支援する方向でまとまりつつある。協議体としての役割は十分果たしている。

 懸念が残るのは、当面の問題より、むしろ中期的な影響だろう。

 南欧支援を巡っては、危機対応に必要な資金を賄うために欧州全体で共同で発行する債券、いわゆる「コロナ債」による支援をイタリアやフランスが期待したのに対し、財政規律を重んじるドイツやオランダなどが強硬に反対した。この南北対立に、特にイタリア人は大きく傷つき、反発した。こうした情念を軽視すべきではない。

 最悪の想定を考えると、今後イタリアでは中小企業の倒産が相次ぎ、金融危機から信用危機に発展するかもしれない。その場合、北に対する国民の感情が再燃し、それに乗じてポピュリズムが政権を握り、共通通貨ユーロからの離脱を言い出す恐れも排除できない。EUの原加盟国であるイタリア離脱は、かつての債務危機の際に取りざたされたギリシャ離脱とは比べものにならない衝撃となる。さらにポピュリズムが独仏でも政権を握ると、EU存続の危機につながるだろう。

 つまり、EUの将来は、人々の感情をいかに制御できるかにかかっている。英国に脱退を許したのも、英国民の感情をつなぎとめられなかったからだ。

 一方で、そうなる可能性が高いわけではない。これまでも危機のたびに「EUは崩壊する」との言説が登場した。背景にあるのは「昔はEU内の結束が固かった」という幻想。それは単なる神話に過ぎない。

 EUに過度に期待をかけるべきではない。EUはもともと、グローバル化をうまく管理する一方で、様々な挫折も経験したプロジェクトだ。成功もあったし、失敗もあった。今後も、半分は成功し半分は失敗すると考えた方がいい。(聞き手=国末憲人、野島淳)


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