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欧州情勢・西洋事情

3390チバQ:2019/12/29(日) 00:31:11
 労働者が支持する党が労働党であるならば、今や保守党こそが労働党だと言ったら言い過ぎか。労働者が離反する労働党――なんて、労働党にとっては悪夢以外の何ものでもない。どうしてこういう事態が起きたのか。当コラムの2回目に登場したケンブリッジ大の歴史学者、ロバート・トゥームズ教授の論考が興味深い示唆を与えてくれると思うので、ここで紹介したい。

 ◇「愛国的な」労働者たちのブレグジット

 トゥームズ氏はフランス近現代史、英仏関係史の権威であるが、2014年に出版した「イングランド人とその歴史」も高い評価を受けている。自身はEU離脱派で、フランスとの比較などから「英国性」を見つめ、長い歴史的な文脈にブレグジットを置いたうえでの解釈は、考えさせられる点が多い。

 トゥームズ氏は15日の英紙サンデー・テレグラフへの寄稿で、「保守党大勝、労働党大敗」の要因として「階級に根ざした左翼政党の弱体化」を挙げた。「20世紀には強力な政治勢力だった、社会主義者の知識層と組織化された労働者の同盟関係」がついえたとの現状認識を示し、ブレグジットと形態は違うが、トランプ米大統領の誕生をもたらしたうねりのように「労働者たちのナショナリスト的政治への転換」が何年も前から世界各地で顕在化していたと指摘。それをもたらす背景として「19世紀の仏歴史家、ジュール・ミシュレが予言したように、労働者たちは、最終的にはネーション(国家)こそが彼らにとっての生得的な権利となることから、本来愛国的」だということがあると断じた。

 トゥームズ氏は以前、私のインタビューの中で、英国のジャーナリスト、デビッド・グッドハート氏が著書「ザ・ロード・トゥ・サムウェア(どこかへの道)」の中で示した集団の「定義」を紹介し、「『サムウェア(どこかに)』の人々は自分の属する場所に対し強い思いを抱いているが、『エニウェア(どこへでも)』の人々はどこにでも住める。エニウェアの人は親EUの傾向があると思う。人々の場所への強い思いと、国家民主主義や国家主権(を取り戻す)という意味での離脱支持の投票行動とはおそらく関係がある」と述べた。

 自分たちの属する土地、郷土に強い思いを持った愛国的な労働者たちが、EUからの主権の回復を望む――というトゥームズ氏の描く構図は、EU残留を望む議員の多い労働党から労働者が離反した理由の説明として、一定の説得力があると私は思う。

 ◇極右か「ワンネーション保守主義」か

 仮にトゥームズ氏の言うように左翼・左派が弱体化し、左派政党が一定の政治勢力だった時代が終わるとすれば、今後はどうなるのだろうか。これはまさに今、欧米各国で指摘されている社会民主主義政党の衰退と、ポピュリズム(大衆迎合主義)政党、右派・極右勢力の勃興・拡大とに直結した問題と言える。こういった状況に対する懸念はかなり強い。

 私は、「ベルリンの壁」崩壊から30年を迎えた11月、「壁」崩壊とそれに続く一連の東欧各国の社会主義政権の終焉(しゅうえん)を記者として取材し、後にこの時代を詳細に描いた大著「東欧革命1989――ソ連帝国の崩壊」を著した英ジャーナリストで歴史家のビクター・セベスチェン氏にインタビューする機会を得た。

 セベスチェン氏は、冷戦終結から30年がたった東欧、とりわけ自身の生まれ故郷であるハンガリーで「オルバン首相のようにナショナリズムを訴える者が、成功をつかむことができない人やあまり教育を受けていない人を簡単に魅了する」状況が生まれたと指摘。さらに、ナショナリズムの勃興は東欧だけでなく欧州各地で広がっていると述べて、その例示の一つとして英国にも言及し、ブレグジットの一連の動きを巡り「英国でも保守党が本質的に極右政党になった」と批判的に論評した。


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