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欧州情勢・西洋事情

2842チバQ:2018/10/31(水) 10:57:18
■ドイツを中心に縦・横・斜めに亀裂が走る

 ちなみにこうしたドイツとの不仲はかねて南欧が有名だが、実は近年、ドイツの「友人」は少なくなっている印象を受ける。緊縮路線をめぐって関係が悪化したギリシャを筆頭とする南欧はもとより、移民問題をめぐっては東欧(ポーランド、ハンガリー、チェコなど)、EUの運営方式をめぐっては裕福な沿岸諸国(デンマーク、フィンランド、スウェーデンなど)ともぎこちない関係が見られ始めている。こうして今の欧州大陸はドイツを中心として縦・横・斜めに亀裂が走っている現状が指摘される。

 なお、長らくドイツの味方と思われたオーストリアでも、メルケル首相の移民政策を契機に2017年の総選挙で極右政党が台頭した。周辺諸国を見ればウクライナ問題をめぐってロシアとも対立している。去り行く英国との関係は論じる必要もあるまい。域外に目をやれば新自由主義「最後の砦」とも評されるメルケル政権と保護主義を前面に押し出すアメリカのドナルド・トランプ大統領はまさに水と油の関係として世界の知るところだ。両者の違いは経済に限らず基本的人権などへの考え方にも及ぶ。

 こうした不仲のすべてがメルケル首相の政治運営に拠るものだとは言わないが、小さくない部分に責めを負っていることも違いないだろう。もはや親しい大国は中国だけという論評も目にする。この辺りがメルケル政治の功罪のうちの「罪」の部分として議論される対象になるのではないか。

 ドイツを取り巻く政治環境は率直に言って厳しさを増している。今後、リーダーシップを発揮し亀裂を修復するのはメルケル首相ではなく、その後継者の仕事になる。メルケル首相在任中にドイツは「欧州の病人」と言われた状況から復活し、経済は際立った安定を実現、域内での政治的発言力ではフランスを突き放した。だが一方、そうした状況に見合うだけの尊敬や信頼を勝ち得たわけではない。

 前途は多難である。経済面で言えば、メルケル首相は前任のゲアハルト・シュレーダー首相が実施した大胆な構造改革(≒雇用規制改革)の果実を受け取りつつ、危機に乗じた政治的発言力の増大およびユーロ安という「追い風」を受けた。後継者にそのようなものは期待できない。そもそも後継者は誰になるのか。メルケル首相が在任中、対峙しそうな有能な政治家を徹底的に排除してしまったことで候補は乏しいと言われる。

■後継者に課せられた「理想主義の後始末」

 たとえば、党ナンバー2のポストである幹事長に就く女性政治家アンネグレート・クランプカレンバウアー氏の名は頻繁に挙がる。メルケル首相も首相就任前には党幹事長を経験しており、クランプカレンバウアー氏を「ミニ・メルケル」とはやし立てる向きは多い。だが、同氏が地方(今年2月までザールラント州首相)を飛び出し、国政においてどう立ち回れるのかについて評価は定まっていない。そもそも「メルケルのお気に入り」であることが敬遠される理由にもなるかもしれない。

 「メルケルなきEU」において次期首相は「前任が振りかざした理想主義の後始末」をやらされることになる。まずは難民の取り扱い、次に緊縮路線の修正、これと並行してユーロ圏の共同債などに着手することが期待されるだろう。アメリカとの距離が近くバランサーとしての役目が期待された英国が抜けることで、今後のドイツの立ち居振る舞いには一段のバランス感覚が必要になる。政治・経済両面でそれを発揮できるリーダーが必要になる。

 メルケル首相の下で失った「友人」たちを再び引き寄せ、EUの建て直しを図れるのか。後継者を待ち受けるハードルはメルケル首相が経験したものよりも高いかもしれない。


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